約 45,025 件
https://w.atwiki.jp/higumaroyale/pages/150.html
邂逅 「――おい、誰だ、お前?」 島風から取り上げた携帯から聞こえた声は、普段の提督とは全く違う声だった。 それに自分の事を天龍"殿"と呼んでいた。自分の提督が俺の事をそう呼ぶなんてのは、まずありえない。 となると島風はやはり自分の鎮守府以外の場所で建造されたということになる。 ならばこの電話の相手は、島風の言う"提督"である可能性が高い。 『そこのぜかましちゃんの提督。……ヒグマ提督と呼んでくれて構わないよ』 「なっ……!」 あまりにも衝撃的な言葉に、天龍は言葉を失った。 提督がまさかヒグマだとは思いもしなかったからだ。 人語を話すヒグマがいるのは分かっていたが、さすがに艦むすを建造できる程の知識は無いと思っていた。 ヒグマ提督の存在が事実ならば、彼等は艦むすを建造する為の資材と工廠を持っていることになる。 「どうやって、資材を調達した?」 『ヒグマを20体くらい解体してチョチョイっとね。運がよかったよ』 さらに衝撃的な言葉に、天龍は眩暈を起こしそうになる。 ヒグマを解体して資材にしただと? それで島風が建造されたというのか? ――馬鹿げている。そんな建造方法があってたまるか。 それではヒグマは艦むすを、簡単に量産できることになってしまう。 しかも資材にはヒグマだ。ステータスはきっと、ヒグマ並みに馬鹿げた数値になっているに違いない。 ヒグマ並みの能力を持った、ヒグマに仕える艦むす。間違いなく深海戦艦よりも脅威だ。 『さて、私に聞きたいことがあるんだろう? 天龍殿』 「……その前に天龍殿ってなんだよ」 『実験に立ち向かう艦むすに、敬意を表して!』 「どういう目的で島風をここに派遣した?」 『え? 華麗にスルー? ま、まあいいか』 電話越しから露骨に落ち込んだ声が聞こえる。 どうでもいいことを聞いたら、どうでもいい答えが返ってきただけなのでスルーしただけだけど。 ヒグマでも落ち込むことってあるんだなー、天龍は呑気にそう思っていた。 数秒後、考え事は打ち切られる。 「うおっ!?」 「きゃっ!?」 突如として放たれた弾丸に対して、天龍と島風はかろうじて回避する。 弾丸が放たれた方向を見ると、先ほど島風と仲良く遊んでいたヒグマのサーファーがそこにいた。 ヒグマサーファーは高速で動きながら、天龍達を蜂の巣にしようと虎視眈々と狙っている。 「すまん、島風。アイツと遊んでててくれ」 「ええー! 天龍がやってよー! 私は司令官と話さなきゃいけないのー!」 「あれにスピードで勝てるのは島風だけなんだよ。頼む、このままじゃ全員死ぬからさ」 そうこうしている内にヒグマサーファーは狙いが定まったのか、ボードの先端がせり上がり銃口を露出させる。 直後マシンガンが火を吹く。二人は高速旋回し、これを避けた。 「……ちゃんと返してよね」 「悪いな」 渋々といった様子か、島風は頬をぷくっと膨らませながらヒグマサーファーの元へ向かっていく。 悠々とヒグマサーファーを追い越し、ヒグマサーファーも島風のことを追いかける。 マシンガンを乱射し、魚雷も発射するが島風は軽々と避けていく。 そんな島風はさておき、天龍は電話に意識を傾ける。 『どうしたの? 急に可愛らしい声をあげてさ』 「ヒグマに襲われたんだよ……それよりも、だ」 『なんだい?』 「島風の役目は何だ? 火山を調べさせようとしてたみたいだけどよ」 "火山を調べる"という任務を提督から貰っていたなら、自分の身を省みずに遂行する姿勢なのも納得がいく。 しかしなぜ、火山を調べようとしたのか。 それは火山の火口から現れた、巨大な老人に関係するのだろうか。 『ぜかましちゃんの役目は、イレギュラーの調査及び排除だよ』 「イレギュラー? 火山から現れた老人のことか?」 『本来は火山に出来た時空の歪みを調査してもらおうとしたんだけどね』 「じ、時空の歪み……か」 どうにも超常現象が起きすぎて感覚がマヒしているのか、あまり驚けず呆れてしまう。 会場にいるヒグマ達がそうだし、火山から現れた巨大な老人のインパクトがあまりにも大きすぎたからだ。 今更時空の歪みでは驚けない。 『時空の歪み、そして津波。これら殺し合いに支障が出そうな出来事の原因を調査し、可能ならば排除する。 改めて言うけど、これがぜかましちゃんの役目だよ』 「成る程な。よく分かったよ」 ヒグマ達はなんとしても、この実験を成功させたいらしい。 偶発的に発生した出来事で決着するのではなく、あくまでもヒグマと戦わせて決着に導きたいわけだ。 だが原因を究明するだけならまだしも、時空の歪みや津波を島風が排除できるとは到底思えない。 可能ならば、と言っていたが円滑に進めるならば確実に排除しなければならないはずだ。 『もちろん、ぜかましちゃんだけじゃないよ。ぜかましちゃんだけじゃ対応できないからね』 「他には誰がいるんだ?」 『といっても一匹だけなんだけどね。穴持たず47ことシーナーさんが該当するよ』 「どんなヒグマだ?」 『津波を限定的に止めれるから、すんごい強いよ。見つけたら逃げるか逆らわないのが賢明かな』 「……だろうな」 今までに出会ったヒグマは化け物染みていたので、戦闘能力は想像はついた。 それどころか津波を止める力を持っているのだから、どう足掻いても自分では歯が立たないだろう。 『ああ、それと任務はもう二つ程』 「どんな任務だ?」 『一つは参加者が逃げないようにと、外部からの介入を絶つ為に海上をパトロールする事。これは穴持たず56、ガンダム君とミズクマに任せてある。 『そしてもう一つ、増えすぎた参加者の殺害。ちなみにそのどちらにもぜかましちゃんは関与しないよ』 管理は非常に徹底しているらしい。 というか"ガンダム君"とは一体なんだというのか。まさかとは思うがあの機動戦士なのだろうか。 それが海上をパトロールしているなら、こちらでも見えるだろうが生憎その姿を見かけてはいない。 もう一つの名前、ミズクマが気になるが、恐らく自分と同じ水上を走れるヒグマだろうと推測する。 パトロールにヒグマが二匹いれば、参加者が増えすぎる事はないと思うのだが、余程警備がガバガバなのだろう。 そこで天龍は、参加者の殺害を任せられているであろうヒグマの名前を聞いてなかったことに気付く。 『パッチール君に全部任せてるけどねぇ。何してるのかな』 「そのパッチールって―― 「天龍! 後ろに何か来てる!」 俺が電話で対応している間、ずっと黙っていた銀は声を上げて警告した。 慌てて後ろを向く。 「パッチョアアアアアアアアアアアア!!!」 「――っ!!」 『お、パッチール君の声!』 奇声をあげながら水面を走る、筋肉モリモリマッチョマンのヒグマではない何かがそこにいた。 肌色に所々のオレンジ色のぶちが多数存在していて、ぐるぐる眼に飛び出た耳は誰がどう見てもヒグマではない。 姿も尋常ではないが、顔も尋常ではない程鬼気迫っている。 「あ、あれがパッチール!? ヒグマじゃねーじゃん!」 『当然だよ。そこで捨てられていた所にステロイド投与したんだから』 「何してんだてめえら!? 動物実験まで行いやがって! それでもヒグマか!」 『私は関係してないからね!』 「掛け合いをしてる場合じゃありませんよ!」 冷静に銀が突っ込みを入れる傍ら、パッチールはもう直ぐそこまで迫ってきていた。 天龍達まであと数メートルという所で、パッチールは飛び上がる。 「銀、頼む!」 「分かりました! 絶・天狼抜刀牙ッ!」 『あっちょっ! やめなって!』 電話越しの静止も虚しく、銀は天龍の背中を蹴って自らに強烈な縦回転をかけながら、パッチールへ目掛けて突撃する。 対するパッチールは避けようともせず、むしろ迎え撃つ体勢に入っていた。 パッチールの頭上を行った銀は、牙をパッチールに叩きつけようとする。 対するパッチールは勢い良く、拳を振り上げた。 ごきゃっ 銀の顔が空を仰いだ。 銀の縦回転による強烈な一撃は、パッチールの技"ばかぢから"によって制された。 一撃よりも何十倍の威力を誇る攻撃は、犬の頭蓋を砕くのは容易いことである。 銀の体は引力に従って落下していき、水しぶきを上げて水面に激突した。 天龍は眼前で行われた一連の行為を、黙って見つめている事しか出来なかった。 「銀! 嘘だろ……」 『だから止めたのに。ヒグマ特性のステロイド投与したから、並みのヒグマより強いんだぜあれ』 「並みのヒグマより強い……!?」 ワンテンポ遅れてパッチールも落下し、銀と同じく水面に激突する。 しかし銀とは違って直ぐに浮上してくる。 「くそっ……! 逃げなきゃやべえじゃねえか!」 『おうおう、ちゃんと逃げてくれよ。ぜかましちゃんと通話したいんだから』 天龍は戦闘は危険と判断し、オーバーヒートを起こさない限界のスピードで逃げる。 対するパッチールは平泳ぎをしてコチラに迫ってくる。 そのスピードたるや、天龍のスピードに勝るとも劣らない。 「は、はやっ……!」 徐々に距離を詰められていく。 このままでは死んでしまう――天龍は脳味噌をフル回転させて打開策を考える。 (どうする……! 迎え撃つか? 主砲に入っている武器だけで対応できるのか?) 主砲には詰めれるだけ詰めた武器が二つ。 一つは投げナイフ。人相手なら有効だが、ヒグマを相手にするには心許ない。 もう一つはつけもの。なぜこんなものを詰め込んでしまったのか理解に苦しむ。 (しゃーねー。つけもの撃っとくか) 百八十度回転して、パッチールに向けてつけものを放つ。 飛び出したのはつけもの……と呼ぶにはあまりにも大きく、手足が生えていて顔もある不気味なものだった。 くるくると回って上昇し続け、ある高さに到達した時、つけものは弾けた。 「ついにでば―― 「パッチャ!」 セリフを言い終える前に、パッチールがジャンプしてつけものに蹴りを放つ。 哀れつけものは粉々に砕け散り、破片が湖にばら撒かれていった。 (よしっ! 時間は稼げた!) パッチールが参加者の殺害を命じられているのならば、生きている者を見せれば迷わずに襲うだろう。 天龍の読みは見事当たり、パッチールはジャンプしてつけものに攻撃した。 パッチールが落下している間に、天龍は再び限界ギリギリの速度で逃げ出す。 後方からは水面に何かが激突した音と、それに伴い発生した水しぶきが跳ねる音が聞こえる。 (……だがあくまでも時間稼ぎだ。じきに追いつけれる) パッチールの泳ぐ速度は、天龍が出せる限界ギリギリの速度に匹敵する。 追いつかれそうになって苦肉の策としてつけものを撃ったが、それでは何の解決にもならないだろう。 パッチールそのものを何とかしない限り、自分の命は確実に無くなる。 (でも武器が無い。主砲に入っている武器じゃ何もできないし。副砲は武器じゃ……) 言いかけて傍と、天龍は思い出す。 『ポケモンであろうとなかろうとおそらく捕獲できる』 『当てることさえできれば、対象はこのボールの中に入る……』 確固たる信念を持ってヒグマを救おうとし、ヒグマに殺された妙齢の男から託された物。 彼曰く、どんな生物であろうと"恐らく"捕獲できるという代物。 マスターボール、オッサンが残した希望。 そんな一つのボールが、天龍の副砲に詰められていた。 (これを使えば、パッチールを止められるかもしれない) このボールを使えば、パッチールはボールの中へと入り保護が出来る。 しかしオッサンはヒグマを救う為に、保護をする為にこのボールを自分へと託したのだ。 (いや、ヒグマ提督が言ってただろ。そこで捨てられていた、って) 誰かに飼われていたらしいパッチールは、飼い主に捨てられた。 そこからどんな経緯があったのかは分からない。分かるのはそこからステロイドを投与され、参加者を殺すという業を背負わされたということだけだ。 自分からしてみれば、彼もまた被害者だ。 ならば。そうだろう。 (救わなきゃ……いけないだろうがッ!) もう一度百八十度回転。 今度は確実に、狙って当てないといけない。 しかし外れた場合は、もれなくパッチールの拳が突き刺さり湖の底に沈んでしまうだろう。 (確立は五分五分。外せば死は間違いない……フフ、怖いか?) あの時と同じように、自問する。答えはあの時と同じで、身体が教えてくれた。 轟沈するかもしれない恐怖が眼前まで迫ってきており、確立も五分という博打に近い状況。 対応できうる武器が無い今、不利なのは天龍の方であった。 (ああ、怖いさ。でも目の前に救える命があるんだ……迷ってらんねえ!) パッチールがジャンプする。 天龍は狙いを定める。 「天龍、水雷戦隊、目標を捕獲する!」 一縷の望みを乗せたボールが放たれる。 そのボールは。 パッチールへと吸い込まれるように向かっていって―― 「PA!」 ――しかし無常にも、ボールは繰り出された拳によって吹き飛ばされた。 天龍の頬をボールが掠め、後方へと吹き飛んでいった。 (……ハハッ、そんなのありかよ) 呆れるように、関心するように天龍は掠れた笑い声をあげる。 希望は、あっさりと壊された。 (すまんな島風。電話、返せそうにねえ……) パッチールはなおも空中で落下し続け、顔には勝ち誇った笑みを浮かべていた。 体勢を立て直したパッチールは、自分の体に力を溜めていく。 4倍に膨れ上がっていったパワーがより一層膨れ上がっていき、十倍二十倍へと変化していく。 技の作用によるものか、パッチールの足元の水面は波を打っている。 「PAAAAAAAAAAAAAAA!!!」 デデンネとヒグマによってボコボコにされた鬱憤を晴らすかの如く、威力はフルパワー。 攻撃は、天龍に振り下ろされる―― 「天龍、危ない!」 □□□ 今、少女は音速を超えた! 今、少女は光速を越えた! 次元を超えた速度は、自信の体を量子化し亜空を走る! 空間を歪ませる威力は何にも耐え難し! 歪みに触れれば、体はもたず爆発四散! 例え四倍の硬度を以ってしても、致命傷は免れぬ! 骨を砕き、内臓を破壊す! 使用者である島風に外傷は無し! 致命の一撃は他者にのみ影響を残す! 連続では使用は不可だが、時間を置けば何度でも使用が可能! その技はッ! ヒグマを資材に利用したからこそ、成せる技なのだ! その技はッ! 速さの極みに到達したからこそ、成せる技なのだ! 「これが……極みなんだ……!」 到達せし者に無限の満足を! 到達せし者に無上の至福を! 到達せし者に栄光を! その行為によって得られる物は計り知れないであろう! 「はあ……私が一番、早いんだ……!」 □□□ 一部始終を見守っていた天龍の口は開いて塞がらず、唖然とするばかりだった。 突如としてパッチールの後ろへ現れた島風は何の傷も無かったが、パッチールには見たこともない傷が刻まれていたのだ。 島風は無事に水面に着地したが、パッチールは血を吐きながらゆらりと巨体を後ろに逸らし、水面に叩きつけられ沈んでいく。 そういえばヒグマ提督が、資材にはヒグマを使ったと言っていたことを思い出す。 今目の前で起こった現象こそが、ヒグマを資材にしたことによる影響なのだろう。 『天龍殿ー? 聞こえてるー?』 「……悪い、存在忘れてたわ。それで? なんだよ、ヒグマ提督」 『ぜかましちゃん、やっちゃった?』 「見事にやってくれたよ」 今まで手に持っていたのを忘れて、ヒグマ提督の声で天龍は思い出す。 その声音は天龍を心配するものではなく、島風を心配するものだった。 まあそうじゃなきゃおかしいのだが。 『まあどうでもいいんだけどね』 「どうでもいいのかよ……」 『別にアレが死のうが私には関係ないしね』 心底パッチールの事がどうでもいいらしいのか、パッチールの話題はさっさと切り上げてしまった。 ぜかましちゃんに代わって、とヒグマ提督にお願いされたので島風の元に行く。 島風は未だに余韻に浸っているようで、顔は未だにニヤケ顔だ。 「おーい、島風ー」 「私は早いぃぃ……私はスピーディー……」 「島風!」 「オゥッ!? ……あ、天龍」 「ほれ」 島風を現実に戻した所で、携帯電話を島風に返す。 携帯電話を見ると、慌てて島風は携帯を引ったくり、俺から離れながら耳元に当てる。 しばらくは何か会話をしていて、自分はその間待たされることになった。 何十分か経過した後に、携帯電話をしまって俺の元へ戻ってくる。 「何の話だったんだ?」 「指令。首輪を解除できるポイントを教えてもらったよ。天龍も来ていいって」 「そうか……首輪を解除できるポイントを……、んなぁっ!?」 もう驚く事は無いであろうと思っていたが、さすがにこれは驚かざるを得ない。 会場から脱出しようと、首輪が爆発して死ぬので、首輪を何とかしない限り逃げることは不可能だ。 例え首輪を解除しようと、海上をパトロールするヒグマがいるから難しいだろうが。 「D-6に行けって。電波が妨害されてるから爆発しないし、解除する道具もあるらしいって」 「じゃあ善は急げだな! D-6に行くぞ!」 「あ、待って!」 早速D-6に行こうとすると、島風が止めた。 何だよと思って振り返ろうとすると、島風に手を掴まれる。 この時点でクエスチョンマークが頭に浮かんだが、疑問を口に出す前に島風は走り出した。 島風の速さは常軌を逸していて、身体が宙に浮いてしまう程に速い。 しかも妙に腕力も強い為、振りほどこうにも振りほどけないのだった。 「お、おい島風! どこに行くんだよ!」 「聞いてよ天龍! 私はヒグマと追いかけっこしてたじゃん?」 「あ、ああそうだな」 「それでさ! 後ろを見たらヒグマがいなくなってたんだよ! サーフボードはあるのに!」 まるで神隠しにでもあったかのような、そんな不可思議な現象を島風は体験していた。 更に詳しく話を聞くと、どうやら俺の後方で現象は発生したらしい。呆気に取られつつも、前を向いたら俺が危機に瀕していたので助太刀に入ったとか。 それなら別に手を引っ張る必要はないんじゃないのか、と思ったが執拗に速さに執着するこの島風のことだから、いの一番に見せたかったのだろう。 そんな事を考えていると、現場に到着した。案の定それなりに近い。 「ね? サーフボードにはこれしか残ってなかったの」 「……これって!」 サーフボードの上にあったのは――パッチールの攻撃で吹き飛んだ、マスターボールであった。 上半分が紫色でMのアルファベットが象られていて、間違えようがなかった。 「…………」 サーフボードに置いてあるマスターボールを手にする。 どうやら上半分は透けているらしく、中の様子が確認できた。 中に入っていたのはやはり見間違えようがない、俺達を襲ったヒグマのサーファーだった。 「は、ははっ……オッサン、恐らくなんかじゃなかったぜ」 オッサンが託した、ヒグマを保護できるかもしれないというボール。 ボールには見事にヒグマが入っており、役目は果たしたといえる。 まさか思いもよらない形で捕獲作戦は成功したが、結果オーライだ。 「後は、この殺し合いを止める。銀の為にも、な」 「サーフボードもーらおー♪」 無邪気に島風はサーフボードへ乗っかり、そのままD-6へと向かおうとする。 「あれ……動かない……」 「当然だろ。波がねえんだから」 しょんぼりとした様子で島風はサーフボードから降り、放置したままD-6に向かう。 仕方ないのでサーフボードを拾い、デイバッグにしまうと自分も歩き出す。 「――天龍、水雷戦隊、目標は殺し合いの打倒。出るぜ」 二度目、再びの決意。 島風の元へ、天龍は動き出した。 【銀@流れ星銀 死亡】 【つけもの@ボボボーボ・ボーボボ 死亡】 【E-4:水没した街/午前】 【島風@艦隊これくしょん】 状態 健康 装備 連装砲ちゃん×3、5連装魚雷発射管 道具 ランダム支給品×1~2、基本支給品 基本思考 誰も追いつけないよ! 0 ヒグマ提督の指示に従う。 1 首輪を解除する為にD-6に向かう。 [備考] ※ヒグマ帝国が建造した艦むすです ※生産資材にヒグマを使った為、基本性能の向上+次元を超える速度を手に入れました。 【天龍@艦隊これくしょん】 状態 小破 装備 日本刀型固定兵装 主砲・投げナイフ 道具 基本支給品×2、(主砲に入らなかったランダム支給品)、マスターボール(サーファーヒグマ入り)@ポケットモンスターSPECIAL 基本思考:殺し合いを止め、命あるもの全てを救う。 0 ヒグマを捕獲することには成功した。後は殺し合いを止めるだけだ。 1 島風とD-6に向かう。首輪を解除できるらしい。 2 ごめんな……銀…… [備考] ※艦娘なので地上だとさすがに機動力は落ちてるかも ※ヒグマードは死んだと思っています ※水の上なので現在100%の性能を発揮しています □□□ 水没した街といえど、それなりの高さがあるビルの最上階は、まだ水の中に沈んではいなかった。 命からがらにパッチールはビルに辿り着き、力を振り絞って水から上がると床に倒れた。 ステロイドによって強化された身体と、ばかぢからによる四倍のパワーが無ければ今頃は藻屑と化していたであろう。 それでも自身の身体はボロボロで、ここまで来るのもギリギリだったが。 「がはっ……、どうしてだ……何故……」 自分は力を、何者にも勝る力を手に入れた筈だ。 だが結果を見てみればどうか。散々たるものではないか。 一度目は優勢に立てていたというのに、技を使われて特性を変更されて、劣勢に立たされた。 結局参加者を減らすという目的は果たせず、フラフラダンスを用いて無様に逃げだした。 「力があるはずだ……! ワシには……っ」 二度目は確かに参加者を一人減らした。 それまでだった。 自身の攻撃と防御はヒグマに勝るとも劣らないというのに、上回る攻撃によって打ち砕いたのだ。 ――それも長い髪の少女の手によって、だ。 「もっと、力が欲しい……」 力が欲しかった。 何者にも勝る力が。 見返す力が。 無力さを引っくり返す力が。 何よりも、欲しかった。 「力が欲しい……」 力を与えられた時は歓喜した。 誰にも負けない力が。 見返すことのできる力が。 強者をぶっ潰せる力が。 何よりも、歓喜した。 「力が――」 だが現実はどこまでも残酷であった。 力があれど特性を変えられては形無しだ。 力があれどそれを上回られてば台無しだ。 だからまだ欲しい。 「――欲しッ!?」 ――このステロイドは、ヒグマの科学力を用いて作られた特製のステロイドである。 人間が作ったステロイドよりも遥かに凌ぐ効果を持っており、使ってトレーニングすれば筋肉が馬鹿みたいにつく事間違い無しだ。 但し、この薬物はヒグマが作成した物である。 ヒグマが使う事を前提として作られた為に、成分はヒグマに馴染む成分しか無い。 それを使ったら、ヒグマ以外に使えばどうなるだろうか。 「があ……あっ!? ああああ!!」 答えは、使っても"最初の内"は何も起こらないし拒絶反応も起こらない。 ただちょっとした副作用で疲れ易く且つ精神が不安定になるが、それだけだ。 ――尤も先にも書いた通り、最初の内はそれだけで済む。 「毛……? 毛が!?」 段々と成分は今の身体へと馴染んでいき、既存の細胞を蝕んでいく。 成分が既存の細胞を急激に成長させて、ヒグマ本来の細胞へと進化させていく。 ヒグマの細胞へと成り代われば、当然身体もヒグマの特徴を模していく。 茶色の毛むくじゃらな姿、凶悪に発達した爪、肉球、突き出た口。 最初の姿は残しつつも、ヒグマの姿へと変貌する。 「何じゃ……、こんなのは聞いていないぞ!」 元々、この薬は試験的運用の代物だった。 作ってみたものの、ヒグマは質を高めれば良いわけで無用の産物であり、マイナスの効力しかもたらさない。 本来ならば破棄される筈だった。そこで眼をつけたのが、プラスをマイナスに変える特性"あまのじゃく"を持つパッチールである。 ステロイドの効力によるマイナスの効果を、プラスに変える力は正しく試験体にうってつけだった。 試験体運用の序でとして、参加者の調整を命じられたパッチールは知る由も無いことだが。 「い、嫌じゃ! こんなのはっ!」 姿の殆どをヒグマに変えた今、パッチールだと分かるのは長い耳だけだった。 パッチールの特徴である、オレンジ色のぶちも、ぐるぐる眼も、無くなっている。 そこに存在しているのは、紛れも無いヒグマ。 「ワ、ワシは。こんな力は望んでいない」 強すぎる力の代償、それは望まぬ進化。 「これでは、ワシは、パッチールでは――」 見事彼は手にしたのだ。 「パルルルルルアアアアアアアア!!!」 強靭な体。 俊足の足。 越えられない壁を見事に越えたのだ。 自我の死をもって。 【パッチール@ポケットモンスター 死亡】 【ヒグマール 誕生】 【E-4:水没したビル/午前】 【ヒグマール@穴持たず】 状態 健康、重傷、ステロイドによる筋肉増強 装備 なし 道具 なし 基本思考:キングヒグマの命令により増えすぎた参加者や乱入者を始末する 0 参加者を手当たり次第殺す [備考] ※ばかぢから、ドレインパンチ、フラフラダンスを覚えています ※質よりも量の穴持たずの数倍は強いです ※特性あまのじゃく、パッチールの耳の原型は残っています。 □□□ 「そういやミズクマはどうしてんだろうなあ」 帝国内のとある場所にある、キングヒグマがいる研究所とは別の研究所。 研究所内の一室に、ヒグマ提督はモニターとにらめっこしていた。 室内にあるのはデスクトップPCが二つと、脇に受話器が一つ、デスクトップPCの上にはモニターが三つ。 デスクトップモニター上に一つには艦隊これくしょんの画面、もう一つにはエリアマップが表示されている。 PCの上にあるモニターにはヒグマ帝国内の様子が映し出されている。 「異常は無しっと。それにしてもぜかましちゃんは大丈夫かな」 質よりも量を求めたヒグマの中でも、切れ者と称されるヒグマ提督はある程度の地位は保っていた。 艦むすを建造出来た唯一のヒグマとして、キングヒグマからもある程度の信頼は得ている。 彼の役目は島風に命令をして実験に支障が出そうな現象を調査及び排除させることと、帝国内の監視の二つだった。 万が一ヒグマ帝国内に何者かが侵入した時に対処できるように、彼が配置させられていたのだ。 「首輪の件話しちゃってるだろうし。どうしよう……」 自分が喋ったのは知っていても対処できないであろうという物だけだ。ミズクマ、ガンダム君、シーナーさんは知っていても対処する事は難しい。 特にミズクマはちゃんとした知識が無ければ、存在を誤認する事間違いなしであろう。水中で活動できるヒグマだろうとしか、想像できない筈だ。 問題なのはぜかましちゃんの方で、今しがた自分はぜかましちゃんに指令を下したが、天龍に聞かれればおいそれと話してしまう可能性が高い。 首輪を解除できる+ヒグマ帝国へ入る事のできる場所の位置、を教えただけでも実験にかなり支障が出る。 自分も処罰されるだろうし、ぜかましちゃんは解体されてしまうかもしれない。 「まあ何とかなるしいいか。さて」 ヒグマ提督はイスから立ち上がると、携帯電話を取り出しとある穴持たずに電話をかけた。 「あーあー、もしもし穴持たずNo.118? ヒグマ提督なんだけど。ヒグマ何十体か解体しといて。 島風とは別の艦むすを建造しておきたいんだ。解体するヒグマの条件? 別に何でも良いよ。 はいはい……それじゃあよろしく頼むよ」 携帯電話をしまうと、もう一度イスに座ってモニターを眺める。 大型建造もいいかもしれない、そう思いながらマウスのカーソルを動かし、カチッとクリックする。 「メインサーバーが落ちてるのか……情報見れないじゃん」 不満を漏らしつつ、ここで言っても仕方ないと諦めて艦これのプレイに戻るヒグマ提督。 「ぜかましちゃんを帰還させてもいいかもしれないなあ。天龍殿も連れて」 \天龍、水雷戦隊、出撃するぜ!/ お供に島風を連れて、モニター上の天龍は出撃する。 「姉妹艦、必要だよね」 【ヒグマ帝国内:研究所跡/午前】 【穴持たず678(ヒグマ提督)】 状態 健康 装備 なし 道具 携帯端末 基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため、危険分子を監視・排除する 0 別の艦むすを建造する為の資材もしくは指令待ち。 1 ぜかましちゃん大丈夫かなあ 2 もしもの時の為にも艦むすを建造しとこー No.117 狛枝凪斗の幸福論 本編SS目次・投下順 No.119 Hidden protocol 本編SS目次・時系列順 No.106 水雷戦隊出撃 銀 死亡 天龍 No.133 Phantom Sniper Portable 島風 ヒグマ提督 No.122 帝都燃えゆ No.110 強すぎる力の代償 パッチール No.124 ゆめをみていました
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/1495.html
379 名前:乙女たちの邂逅 1/5 :2008/12/11(木) 14 18 14 ID ??? これは、ほんの少しだけ前のお話。 ミケロ「銀色のあs」 ソーマ「遅いっ!」 ドスン! ミケロ「ゲッフー!!」 強烈な一撃を受けたモヒカン頭の男は軽やかに宙を舞い、 ゴミ捨て場に積み上げられていた袋の山に頭から突っ込む。 ミケロ「ガンダム・ファイターのこの俺が…小娘に…」 ソーマ「フン! ガンダム・ザ・ガンダムやシャッフル同盟ならいざ知らず、 名もないザコGFに、超兵の私が後れを取るものか」 ミケロ「ぐふっ!」ザコジャナイモン… (主に精神的)ダメージにより気を失う元ネオイタリア代表。 ソーマはそれを確かめると構えを解き、背後を振り返った。 ソーマ「怪我はないか?」 ティファ「はい」 見た目は儚げな少女だったが、よほど芯の強い魂を持っているのだろう。 ワンピースの襟元を裂かれながら、連れの少女をかばって立つその姿は毅然としており、 ある種の畏怖すら感じさせる。 フェルト「ティファ…」 ティファ「大丈夫。 もう、大丈夫だから」 もう一人の少女は見たところ被害はなさそうだが、血の気はすっかり失われており、 こちらの方がよっぽど被害者らしく見える。 ティファと呼ばれた少女はしがみつく少女の手を握り、安心させるように微笑んで見せた。 ソーマ「どこかで一休みしたほうがいいな。 私が世話になっている家がすぐそこなのだが…よければ来るか? 服も貸してやれるが」 地味なモスグリーンのジャンパー―背中のエンブレム“わいるど・べあ”は妙に可愛らしいが―を ティファの肩にかけ、八極拳の奥義を見せた少女が固い表情で問う。 ソーマ「私はピーリス。 ソーマ・ピーリスだ」 ティファ「ティファ・アディールです」 フェルト「フェルト・グレイス…」 それが、後に「乙女同盟」と呼ばれる少女たちの出会いであったという。 380 名前:乙女たちの邂逅 2/5 :2008/12/11(木) 14 19 08 ID ??? “荒熊精肉店” 商店街の外れという立地であり、また店長以下従業員のほとんどが“こわもて”であることから 敬遠する客もいるが、誠実にして堅実な経営方針と、当の店長の真面目な人柄から ご近所では評判になりつつある新規店である。 ソーマ「中佐、ただいま戻りました」カッ セルゲイ「ご苦労。 だが、店では店長と呼びなさいといっているだろう。 それと、敬礼は止めなさい」ヤレヤレ ソーマ「も、申し訳ありません!」カッ ミン「また敬礼」ニヤニヤ ソーマ「あ…」(////) セルゲイ「お客さんかね?」 ソーマ「はっ。 商店街で狼藉者に絡まれていたため救助しました。 着衣に損傷と、精神的にショックを受けている模様でしたので、保護を」 ミン「ふむ… 最近よく聞きますね」 セルゲイ「警察の手が足りていないのかもしれんな…ともあれ、よくやったな少尉。 上でゆっくりして行ってもらいなさい」 ソーマ「はっ! 失礼します」カッ セルゲイ「うむ」 ミン「“少尉”と、敬礼」 セルゲイ「む…」イカンイカン ソーマ「あう…」(////) フェルト「あの、軍人さんなんですか?」 ソーマ「予備役だ。 …すまんな、驚かせてしまったか?」 フェルト「い、いえ…」 店舗横の狭い階段を上がると、二階からは住居になっていた。 落ち着いた雰囲気のリビングを抜け、二人が案内されたのは私室の一つであったが… フェルト「…ここ、ピーリスさんのお部屋なんですか?」 ソーマ「少々殺風景だとは、よく言われる」ゴソゴソ 床は板張り、家具と言えばベッドと机、そしてクローゼットが一つきりである。 モデルルームでももう少し生活感があるだろう。 テ&フ「「(………少々?)」」 ソーマ「この服に着替えなさい。 少し丈が大きいかもしれないが」 言ってティファに差し出したのは可愛らしいピンクのワンピースである。 ソーマ「いただきものなんだが、私が着るには、その、少しばかり可愛すぎるからな。 あなたなら似合うだろう」 ティファ「そんなことありません」 ソーマ「えっ?」 ティファ「ピーリスさんにも、きっと似合うと思います」 柔らかく言うティファの傍らでは、フェルトもコクコクとうなずいている。 ソーマ「そんなことはっ! …いや…そ、そうかな…」(////) 381 名前:乙女たちの邂逅 3/5 :2008/12/11(木) 14 20 05 ID ??? knock!knock! セルゲイ『しょ…ピーリス君』 ソーマ「あ、はい!」 フェルト「(また少尉って言いかけてたw)」 セルゲイ『お茶を入れたので、着替えが終わったらリビングに来てもらいなさい』 ソーマ「はっ! ありがとうございます!」 再び案内されたリビングには、ティーセットと、そして… フェルト「コロッケ?」 テーブルに載せられた大皿には、こんがり狐色のコロッケが、山と積まれていた。 ソーマ「ちゅ、店長、これは?」 セルゲイ「店で売りに出そうかと思って作った試作品だ。 紅茶に合うかは、その、微妙だが…少し意見を聞かせてほしくてな」 ソーマ「肉屋で、惣菜ですか?」 セルゲイ「こちらでは、普通に扱っているそうだ」 ティファ「ラードで揚げたコロッケは、人気があります」 ソーマ「そうなのか…」 階下のミン『店長! ラルさんがお見えです!』 セルゲイ「判った! すぐ行く! すまないがピーリス君、お客さんのもてなしは頼むぞ」 ソーマ「はっ!」 セルゲイ「ゆっくりしていってくれたまえ」 ティファ「はい。 ありがとうございます」 セルゲイを見送った一同はソファーに座る。 フェルト「むぅ…」 ソーマ「中佐…がんばりすぎです…」 眼前の小山は、とても女性三人で片付けられる量ではない。 ソーマ「すまない。 軍人は基本的に大喰らいなものだから… 無理して食べる必要はないからな」 ティファ「はい。 でも、とっても美味しそう」 382 名前:乙女たちの邂逅 4/5 :2008/12/11(木) 14 21 46 ID ??? フェルト「(えっと、ソースは…)」 何気なく取り上げた陶製の瓶。 蓋を開けると、甘い香りが立ち上る。 フェルト「…ジャム?」 ソーマ「ミンちゅ…副店長の自家製だ。 その辺の市販品よりずっと旨いぞ」 フェルト「(ジャム…コロッケに、ジャム?! …で、でも、トーストにジャムを塗るんだから、意外と合うの?)」 思わず凍りつくフェルト。 ソーマ「?」 その様子を見て何を考えているのか察したティファは、苦笑しつつ、手を伸ばす。 ティファ「先…いい?」 フェルト「え…えっ! でも、ジャムだよ?」 ソーマ「??」 会話の意味が飲み込めずに首をかしげるソーマ。 そしてティファは瓶を受け取ると、ティースプーンでルビー色のジャムをティーカップに落とす。 フェルト「ええっ!」 思いもよらなかった行動に目を丸くするフェルトと、その声に驚くソーマ。 ティファ「ロシアンティーって言うの。 こうやって飲むのは、本場の人には少ないそうだけど」ハイ ソーマ「そうだな。 だいたい皆、そのまま食べて紅茶を飲むが…」アリガトウ 言いつつ、ソーマも受け取った瓶からジャムを紅茶に落とす。 ソーマ「こうすると香りが立つ。 副店長はあまり良い顔をしないがねw」 曰く、茶の香りが楽しめないとの事だという。 ソーマ「もっとも、ウチはそれほど良い葉を使ってるわけじゃないから… お茶に五月蝿い中国人は嘆いてばかりだ」 フェルト「そんな飲み方、あるんだ…」 ソーマ「というか、こちらでは紅茶にジャムは入れないのか?」 ティファ「だいたい、砂糖と、ミルクかレモンですね。 大人の人はお酒を入れる人もいるそうですけど」 フェルト「スメラギさん、いつもお酒をいっぱい入れて、クリスに怒られてる…」 ソーマ「ああ! 中佐の知り合いにもそういう人はいるぞ。 今は自動車工をしているそうだが…一口飲むたびにフラスコの中身を継ぎ足すから、 お茶を飲んでいるのか、酒を飲んでいるのか判らなくなるんだ」 ようやく緊張が解けてきたのか、酒飲みを肴に盛り上がる二人。 383 名前:乙女たちの邂逅 5/5 :2008/12/11(木) 14 23 17 ID ??? ティファ「…よし」 打ち解けた様子に安心したティファは、ガラステーブルの中央に鎮座する小山に向き直る。 取り皿も、箸やフォークも無く、傍らに紙ナプキンが積んであると言うことは、 手づかみで食べろという事なのだろう。 コロッケとはそう言うものかも知れない。 ナプキンでコロッケを摘み上げたティファは、意を決して一口かじる。 サクッ! フェルト「………」 ソーマ「……どう、かな?」 ティファ「…おいし♪」 ソーマ「そ、そうか。 それは、良かった…」 安心して微笑むソーマは、自らもコロッケ山に手を伸ばす。 こちらはナプキンも使わずに取り上げると、そのままかじりついた。 ソーマ「うん、旨い」 うむうむと頷くソーマに、フェルトも意を決して手を伸ばす。 フェルト「…おいしい」 ソーマ「売りものになる、かな?」 フェルト「大丈夫だと思う…」 ティファ「あ、でも、もう少し薄味の方が良いかも… 薄味が好みの人には、ちょっと味付けが濃いと思うから… 物足りない人はソースを使うでしょうし」 ソーマ「そうか…なるほど… 後で中佐に報告しておこう」 指に付いた油をぺろりと舐め取り、ソーマは二つめに手を伸ばす。 フェルト「きっと、人気商品になりますよ」 こちらは紙ナプキンで丁寧に指の油をぬぐう。 三者三様の食べ方に、ティファはくすくすと笑った。 おわり
https://w.atwiki.jp/mgsurvive/pages/112.html
目次 邂逅「1964」 BP SHOP 邂逅「1964」 通信用ワームホールの再生成に成功した。 奴の邪魔が入る前に、新たな任務の詳細を伝えよう。 大規模な重力異常を検知した。 どうやらワームホールが”ある時代”への結びつきを強めているようだ。 東西冷戦直下、第二次大戦を駆け抜けた伝説の兵士が死に、新たな伝説が誕生した時代。 そう、”BIGBOSS”のはじまりの時代だ。 未だ君が出会っていない物資や”巨大な兵器”の漂着を確認している。漂着地点へ向かい、調査を行え。 君達のボスの歴史を体感できる無二の機会だ。よもや断りはすまい? ……それでは、早速任務に移りたまえ。 グッドラック、キャプテン。 BP SHOP アイテム名 個数 購入制限 必要戦績ポイント 備考 オボロス銅貨 1 2 10000 30000 50000 山猫部隊ベレー帽 1 1 250 一度切り 山猫部隊ベレー帽[バラクラバ] 1 1 250 一度切り ワニキャップ 1 1 1000 一度切り 野戦服[ネイキッド・スネーク] 1 1 5000 一度切り スニーキングスーツ[ネイキッド・スネーク] 1 1 5000 一度切り スニーキングスーツ[ザ・ボス] 1 1 5000 一度切り ジャンプスーツ[EVA] 1 1 5000 一度切り フェイスペイント:グリーン 1 1 400 一度切り フェイスペイント:ブラック フェイスペイント:スプリッター フェイスペイント:ウッドランド フェイスペイント:ゾンビ フェイスペイント:オヤマ ネームプレート:FOX 1 1 1000 一度切り ネームプレート:PATRIOT ネームプレート:SHAGOHOT ネームプレート:ツチノコ ジェスチャー:いいセンスだ 1 1 1000 一度切り ジェスチャー:撃てるのか? 1 1 20000 ジェスチャー:ダップ:ファイヤワークス カセットテープ:[Metal Gear Solid 3]Takin`On The Shagohot 1 1 1000 一度切り レシピ:大型サバイバルバッグ 1 1 5000 一度切り レシピ:中型サバイバルバッグ 1 1 2000 一度切り レシピ:小型サバイバルバッグ 1 1 1000 一度切り SVコイン 20 3 500 蘇生薬 1 3 500 フィールドマニュアル:開発班 1 4 500 フィールドマニュアル:糧食班 1 4 500 フィールドマニュアル:医療班 1 4 500 フィールドマニュアル:拠点開発班 1 4 500 フィールドマニュアル:拠点防衛班 1 4 500 フィールドマニュアル:探索班 1 4 500 ウェポンケース 1 1 5000 ギアケース 1 1 5000 ウェポンケース 1 ---- 1000 ギアケース 1 ---- 1000 マテリアルケース 1 10 5000 マテリアルケース 1 40 1000 マテリアルケース 10 ---- 3000 マテリアルケース 1 ---- 300 マテリアルケース 10 ---- 2000 マテリアルケース 1 ---- 200 マテリアルケース 10 ---- 1000 マテリアルケース 1 ---- 100
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/11010.html
今日 - 合計 - グラップラー刃牙 バキ最強烈伝の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月12日 (金) 11時24分03秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
https://w.atwiki.jp/galgerowa/pages/365.html
邂逅(前編) ◆/Vb0OgMDJY 太陽が落ちて、すっかり暗くなった町。 いつの間にか空の月は輝きを増し、その下にある全てのものに、美しく、やさしく、そして無慈悲な光をそそいでいた。 その光の中、南に向かって進む一団があった。 「……鳴海孝之が…………そう、……なの」 「ええ、鳴海さんはこの島の現実に耐えられず、夢の中に逃げ込む事しか出来なかったようです」 「………………」 「………………」 天才少女、二見瑛理子。 エルダーシスター、宮小路瑞穂。 ブルースピリット、アセリア。 そして、人形使い、国崎往人。 彼女ら四人は、共に行動することを決めた後、F-2地区を南下し、次の目的地である図書館へと向かっていた。 本来なら、往人の疲労を考え、休憩するべきだったのだが、 本人が、 「俺の事はいい、既に俺のせいで大分時間を使った。 ただでさえ俺達のルートが一番長いんだ、これ以上時間を掛けては予定に間に合わなくなる。 休憩は、図書館か港で人を探す間だけでいい」 と言ったので、――幾分ゆっくりとしたペースではあるが――そのまま図書館へと移動することにした。 そして、その道中に、色々と情報交換を行っていた…………のだが、 話をしているのは、専ら瑛理子と瑞穂の二人だけだった。 瑞穂は、やはりまだ往人の事は割り切れてはいないため、往人に対してはどうしても話のテンポが悪くなる。 往人も、そのことは理解しているので、自分からはほとんど話に参加していかなかった。 それに彼自身、消耗が激しい為、あまり話す元気もなかったという事もあった。 そしてアセリアは、元々口数の多いほうではないのだが、往人と全く話そうとしないばかりか、露骨にあさっての方角を向いている。 やっている事は丸っきり拗ねた子供のそれなのだが、こちらの話はちゃんと聞いているようなので、そのままにさせている。 それに、日が落ちたこの状況下では、戦いに慣れたアセリアの感覚だけが、周囲を警戒する手段でもあるので、二人とも無理に話に参加させようとはしなかった。 そうして、瑛理子と瑞穂は情報交換を行っていたのだが、瑞穂達がハクオロ達からほとんど話を聞かずに別れたと聞いて、瑛理子が “首輪は盗聴されている” と書いた紙を見せた為、 落ち着いて話の(筆談の)出来る図書館に着くまでは、瑞穂がほとんど一方的に話をし、時たま瑛理子が補足を求めるという状況だった。 そうして、温泉での約束や、アルルゥ、アセリアとの出会いの話を経て、茜を殺した狂人、鳴海孝之の話に差し掛かった時、僅かに瑛理子の様子が変わった。 最初は、あまり歓迎していない雰囲気だったが、瑞穂の話が進むにつれて、徐々に口数が減っていった。 そうして、瑞穂がその手で孝之の命を絶った事を話した頃、 漸く住宅街のはずれにある、周りよりも遥かに大きな建造物――図書館が一行の視界へと入ってきた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「思っていたよりも大きそうな図書館ですね」 瑞穂が口にした内容に、俺も内心で同意しておいた。 俺は図書館なんてそんなに知っている訳じゃあないが、それ専用の建物を持っているとなると、そこそこ大きい町にでも行かなければ無さそうな規模だ。 「あれなら、かなり詳しい専門書もあるかもしれないわね」 瑛理子は妙に大きな声でそう言うと、少しペースを上げて歩き出した。 彼女だって足を怪我している筈なのに、女ってのはたくましいもんだ、と苦笑しながらもそれに続く。 体は元々痛みっぱなしなので、そんなに負担は変わらなかったが、やはり根本的に動かし辛く感じ、瑛理子よりも若干遅いペースで進む。 そんな俺を見て、瑞穂が若干迷ったような表情をみせていた。 だが、俺はその視線を無視して、また少しペースを上げた。 ……瑛理子にしろ、瑞穂にしろ、優し過ぎる。 俺には、既にその優しさに甘える資格なんて無い。 ハクオロ、瑛理子、高嶺、瑞穂、…………観鈴。 今の俺は、皆の優しさと強さによって、ここにいる。 だから、これ以上、皆の優しさに甘えるわけにはいかない。 今のこの身は、ただ犯した罪を償い、背負い続ける為だけに存在している。 安息なんて望んでは、いけない。 そうして、瑛理子に続いて図書館の正面側に周った時、不自然なものが俺の視界に入った。 図書館の入り口の近くに、白いボディに赤いペイントがされた車――救急車が停まっていた。 それは、明らかに不自然。 病院ならともかく、こんな所に救急車がある理由……そんなもの、一つしか思いつかない。 「誰か、中にいる……そう考えるのが自然ね」 「ああ、だけど……」 そのことは疑いようがない、だが問題なのは『何故、こんな目立つ場所に救急車が置いてあるのか』ということだ。 言うまでもなく、あんな所に救急車があれば、誰だって図書館に人がいると思うだろう。 つまり、中にいる相手は、自分(達?)の存在を主張しているということになる。 問題は、その意図が何なのか、だ。 「中に居るって主張してるということは、こちらに入って来いと言っている訳よね」 「仲間を集めている、と考えるのは危険過ぎますね」 「ああ、むしろ罠がある、と考えるべきだろうな」 重要なことなので、俺が話かけても、瑞穂は何も言わなかった。 そうして三人で意見を出し合ったのだが、話し合ったところで答えが出るものでもない。 念の為、と救急車を調べてみたが、キーが抜いてあるだけで、ガソリンはまだ残っている。 つまり、乗り捨てて行ったのではなく、図書館に居るのは確実と見ていいだろう。 そうして、どうしたものかと考え込んでいたその時、 一人会話に参加していなかったアセリアが、堂々と図書館の入り口の方へと向かって行った。 慌てた瑞穂が、 「あ、あのアセリアさん、そんな堂々と入っては危険だと思いますが」 と声を掛けたが、 「ん、考えても分からない」 一蹴されてしまった。 だが、アセリアの言う通り、考えたところで答えは出ない。 なら普通に入って行くしか方法は無い。 そう考えた俺が後に続いたので、瑛理子と瑞穂もしぶしぶといった感じだが、ついて来た。 だが、入り口の近くまで来て、見える範囲に人がいなそうなのが確認出来たところで、俺はアセリアに声を掛けた。 「アセリア」 「…………」 見事に無視された。 だが、へこたれている場合ではないので、もう一度、今度は用件を伝える事にした。 「俺が先に図書館に入る。 アセリアは俺の少し後ろに続いてくれないか」 「……………………何故」 ひどく不機嫌そうな返事が来た、無視するわけにもいかないので、渋々答えたと言う感じだ。 「俺達の中で、一番の戦力はアセリアだ。 だから、罠があるかもしれない所に入られて、傷を負われては困る。 まずは俺が罠や待ち伏せが無いか調べるから、その後に続いてくれ」 アセリアに傷を負われては、戦うことも、逃げることも難しくなる。 図書館に近づくまでは、何時でも下がれる為、戦闘に慣れたアセリアに先行してもらったが、危険度と選択が増える屋内では、アセリアをフリーにしておいた方が選択の幅は広い。 そう思って発言したら、 「国崎往人、あんたさっきの話をもう忘れたとか言わないわよね」 瑛理子から怒りの篭った言葉を頂戴した。 だが、まあ来るだろうとは思っていたので、そんなに慌てずに済んだ。 「まさか、俺にはもう自分から死を選ぶ権利なんて無い。 俺は、これが最も安全だと思っている。 もし、中に危険があった場合、アセリアになにかあれば、それだけで俺達全員の危険度は増す。 だから、アセリアの次に戦いに慣れている俺が先行して、アセリアには状況に応じて動いてもらう。 これが『俺達全員にとって』最も安全な選択だ」 なので、今の正直な意見を告げた。 三人とも、少しポカンとしていたので、その隙に、 「だから俺が先頭、その少し後にアセリアで、瑞穂はその後ろでバックアップを頼む。 瑛理子は怪我しているから、一緒には入らないで、合図があったら続くようにしてくれ」 それだけ告げて、俺はさっさと図書館のドアを開けて、何もなさそうなことを確認すると、中に入った。 どうやら、見た目通り二階建てで、ロビーにはカウンターと事務室、そして大きめの階段がある。 上か、下か。 篭城するつもりなら、周辺の監視のしやすい上にいるだろう、と当たりをつけ、二階フロアが少し見える位置まで移動した時、 二階の奥の方から複数の人影がやってくるのが見えた。 それに対して銃を向けようとして、そのうちの一人の顔が見えた時、俺は思わず反応できなかった。 「待ってくれ!俺達は殺しあ「国崎さん!!」いに……」 何か言おうとした少年の声を遮って、聞き慣れた声が聞こえた。 「……美凪……か」 ◇ ◇ ◇ ◇ 倉成武と佐藤良美を退けた圭一達は、住人たちよりも30分ほど前に図書館に到着していた。 彼らの仲間である武を助ける手段を探す為、そして追ってくる武と良美を待ち伏せする為、彼らは、車を停めてすぐに、図書館の中に入った。 そうして、まずは武の症状と思われるH173、及び特効薬らしいC120について調べようとしたのだが、すぐに行き詰ってしまった。 なにしろ、何を調べていいのか解らないのだ。 詳しい情報を調べる為に、沙羅の持つフロッピーを調べようとも考えたのだが、後2枚しかない上に、図書館にある全てのパソコンが使えなくなってしまうとあっては、 簡単に使うわけにもいかず、だが他に手も無いので、パソコンを立ち上げたところで、入り口の方から人の声がすることに気付いた。 それで、慌てて入り口の方へと移動したのだが、圭一が目にしたのは、倉成武ではなく、見知らぬ男性の姿だった。 それで圭一はまず、自分達が殺し合いに乗っていないことを伝えようとして、 「待ってくれ!俺達は殺しあ「国崎さん!!」いに……」 美凪の声に遮られた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 俺の呼びかけは、遠野さんの声に遮られた。 住人という名前は、遠野さんから聞いたことがある、と思った時に、 「……美凪……か」 と、目の前にいる男性――国崎さんで間違いないらしい、が遠野さんに声を掛けた。 「はい、国崎さん、……お久しぶりです」 住人さんの声に答えて、遠野さんが返事をする。 その声には、安堵、歓喜、困惑などなど様々な気持ちが込められていた。 遠野さんの知り合い、それは間違いない、だけど、 「……美凪と一緒にいる少年、俺は、……いや、俺達は殺し合いには乗っていない。 美凪と一緒にいるって事は、恐らく君達もそうなんだろ」 こちらの気持ちを見透かしたかのように、国崎さんが俺に声を掛けてきた。 「俺達ってことは、仲間がいるってことですか?」 遠野さんの知り合いというなら、それだけでほとんど信用してもいいと思ったが、一応気になることを聞いておいた。 仲間がいるとなれば、殺し合いに乗っている確立は、グンと低くなるからだ。 「ああ、俺達は4人。 それと別の場所で待ち合わせしている仲間が4人いる。 君達は2人だけか?」 「いや、あと一人、奥にいます。 ……とりあえず、奥の方で話しませんか」 8人とはまたえらい大所帯だ。 そして、それだけの人数で殺し合いに乗っているなんて、まず考えられない。 なので、住人さん達を奥へと誘った。 「ああ、すまない。 ……アセリア、それに瑞穂と瑛理子、ここは大丈夫みたいだ」 そう声をかけた少し後、三人の女の人が、図書館に入って来た。 そのまま、俺達は図書館の二階で待っていた沙羅さんのところまで行き、事情を説明した。 そして、閲覧スペースでお互いの自己紹介ということになった。 まず、唯一の男性が国崎往人さん、遠野さんの知り合い。そしてえらくボロボロな人だ。 その横の、傘を杖代わりに使っている人が二見瑛理子さん。 なかなかキツそうな人だ。 長い髪で、いかにもお嬢様といった雰囲気が漂っているのが宮小路瑞穂さん。 俺の周りにはいないタイプだ。 ……武さんの仲間の人だと思う。 そして、すこし離れている外人さんがアセリアさん。 どうでもいいが青い髪と目に、鎧って何処の国の人だ? とりあえず、レナが生きていたら間違いなくお持ち帰りされそうな面々と自己紹介をしたところで、住人さんが、 「エルルゥ、倉田佐祐理、エスペリア、アルルゥ、神尾観鈴、この中に知り合いが居たら、教えてくれないか」 という、妙な質問をしてきた。 どれも、放送で呼ばれた名前だ。 それに神尾観鈴って、そもそも遠野さんたちの知り合いだろ? 訳が分からないが、とりあえず答えを返した。 俺達の答えを聞いた後、往人さんは俺達に、主に遠野さんに向けて、『そのこと』を話し出した。 俺達は、その内容に声も無く、ただ呆然と聞いていた。 そうして、往人さんが遠野さんに 「……すまない」 と言って、話は終わった。 そうしてしばらく誰も何も言わなかったが、やがて遠野さんが往人さんのそばに近づき、 パチッ という音が響いた。 「…………は…反省しました、で賞は、あげません」 往人さんの頬を叩いて、遠野さんはそう言った。 その、大した力の篭っていない一撃は、おそらくどんな拳よりも響いただろう。 「……すまない」 そうして、放たれる真摯な言葉。 だが、そんなもので、犯した罪は消えるはずが無い。 「国崎さんは……ずるいです。 ……神尾さんが、そう言ったのなら、私は往人さんには…………何も、言えません」 泣きそうな声で、遠野さんが言った。 その言葉は、何よりも往人さんの心を抉るだろう。 そしてその間、俺も沙羅も、動けなかった。 当然だろう、誰が罪を犯した――人を殺した相手と共に居られるだろう。 だから、俺達は何も出来なかった。 けれど、 “圭一を、許しましょう” どこで聞いたのか思い出せない声が、俺の頭の中に響いた。 そうだ、犯した罪は消えない、でも、その罪を自覚し償おうとしている。 ならば、それ以上、その罪が責められるべきではない。 往人さんは、許される事は望んでいない。 そして、遠野さんも、責めるべきではないと分かっている。 だから、 「俺は、往人さんを信用する」 そう、告げた。 その言葉に皆が俺の方を向く 「往人さんは、ちゃんと自分の罪を自覚して、向き合っている。 許されたいと思っていないけど、ちゃんと償おうとしている。 俺には、往人さんの罪は許すことは出来ない。 でも、全てを話してくれた往人さんを、信じることは出来る」 かつて、どこかで言われた言葉を、俺の言葉で、告げた。 罪を犯した俺を、皆は仲間だと言ってくれた。 □□ちゃんは、許すと言ってくれた。 俺には、往人さんの罪を許す資格はない。 でも、遠野さんが信じている往人さんを、信じることは出来る。 ◇ ◇ ◇ ◇ 前原くんというらしい男の子には驚かされた。 彼がどういう人間なのか、大体のところは理解出来た。 恐らく彼は、決して人を見捨てたりはしない。 ……鳴海孝之の顛末は、私に衝撃を与えた。 彼が狂う事になった原因は、私にもあるのだろう。 それが私の罪であるかは兎も角としてだ。 私の理性は、私の行動が間違いでないと告げている。 けど、私の感情は、それで良かったのかと言っている。 どちらが正しいのかは、わからない。 ただ、前原圭一の言葉によって、私たちと彼らの距離が、随分狭くなった。 その後は、話はスムーズに進んだ。 まず、彼らの当面の目的は、仲間である倉成武(瑞穂の仲間でもある)を救う為らしい。 H173という薬は聞いた事も無い。 そもそも、具体的な病名がわからなければ、どうしようもない。 なので、そのC120とやらに頼るしかないのだけど、それについては瑞穂と圭一の話で当たりがついた。 瑞穂が温泉で倉成武と別れたとき、彼は平穏そのものだったらしい。 そして、その後病院で圭一達と会った後にはそのような薬品に心当たりはないそうだ。 (前原くん達の話だと、病院は随分なダメージを受けているらしい、実際に見てみなければ判断出来ないけど) ならば、恐らく、誰かの支給品。 もしくは、可能性は低いけど病院で投与された、そのどちらかと考えるのが自然だ。 ただ、懸念するべきは前者。 誰かの、といわれても特定なんて出来ないし、それが死者なら探すことも難しい。(そして他人に投与するとなると、可能性は圧倒的に前者の方が高い) ただ、その言葉を受けて、 「もしかしたら、誰かの支給品にまぎれているかもしれない」 ということで、皆の持ち物検査をすることになった。 そして机の上に、支給品が広げられたのだが、案の定そんな薬はなかった。 それはいい、でももう一つ、有るべきものが無かった。 「瑞穂……鳴海孝之の荷物の中に、ノートパソコンは無かった?」 「ノートパソコンですか? いえ、彼が持っていたのは武器と、このボイスレコーダーだけでしたよ」 どこかで落としたのかしら? まあ、考えても仕方の無いことなんだけど、沙羅の話を聞いてから、少し気になっていたことがある。 この図書館だけではなく、レジャービルにもパソコンはあったらしい。 そして、衛の話から考えると、この島の至る所で物が拾えるらしい。 なら、既に禁止エリアではあるけど百貨店、あるいはその辺りの民家に行けば、ノートパソコンがある可能性は高い。 なら、何故ノートパソコンが支給されたのか、特に意味がないという可能性もあるけど、何か重要な意味があるのかもしれない。 と、そこまで考えたところで、 ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏━━━┛┃┏┓ ┏━┛┗━┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓┏━━┛┗┓┏┓┃┃ ┗━┓┏━╋┛┗━┳┳┳╋━┓┏━╋━┛┗┳━┛┗┳━┛┗╋━┓ ┏┻┛┗┫┃ ┃┃ ┗┓┏┓┃┃┃┣┓┃┃┏╋┓ ┏┻┓ ┏┻┓ ┏┛ ┃┃┃┏━┓┃┃ ┃┃ ┃┃┗╋┻┛┃┃┃┃┃┣┛┃┃┏┛┃┃┏┛┃┃┏━┛┃┣╋━┛┣┫ ┗┛ ┗┛ ┗━━┻┛┗┛┗┻━┻┛┗━┻┛┗━┻┛┗━━┻┛┗━━┻┛ ┏━━━━━━━━┓ ┏┓ ┏━━━━━━┓ ┏┓ ┏┳┓ ┃┏━━━━━━┓┃┏┓┏━┛┗━┓ ┃ ━━━━ ┃ ┏━━┛┗━━┓┃┃┃ ┃┃┏━━━━┓┃┃┃┃┗┓┏┓┏┛ ┃ ━━━━ ┃ ┗┳━━━━┳┛┃┃┃ ┃┃┗━┓┏━┛┃┣┫┣┳┛┃┃┗┓┏┻━━━━━━┻┓ ┃┏━━┓┃ ┃┃┃ ┃┃┏━┛┗━┓┃┃┃┃┣━┻┻━┻╋┳━━┳━━━┳┛ ┃┗━━┛┃ ┃┃┃ ┃┃┗━┓┏┳┫┃┃┃┃┣┳━━┓┏┛┃ ━ ┣┳ ┏┛┏━┻━━━━┻━┫┃┃ ┃┃┏━┛┗┛┃┃┃ ┃┃┏┓┃┃ ┃ ━ ┃┣ ┗┓┃┏┳━━━━┳┓┃┃┃ ┃┃┗━━━━┛┃┣━━┛┃┗┛┃┃┏┛ ━ ┣┛┏┓┃┃┃┃┏━━┓┃┃┣╋┫ ┃┗━━━━━━┛┃ ┗━┳┛┃┗━━┓┣━┛┃┗┫┃┃┗━━┛┃┃┃┃┃ ┗━━━━━━━━┛ ┗━┛ ┗┛ ┗━┻┛┗━━━━┛┗┻┻┛ という声によって私の思考は遮られた。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………………………俺?」 「『国崎最高ボタン』……茜さんの支給品だそうです……」 瑞穂の説明が入ったけど、誰も反応が取れなかった。 何ソレ? どんな意味があるのよ。 なんでわざわざ往人を崇めなきゃいけないのか。 そんな皆の気持ちが一つになった所に。 “イヤッホォォォオゥ国崎最高!!” 再び、例の声が響いた。 何故だか、アセリアが押したらしい。 そのアセリアは“じ~~~~”という擬音を浮かべながら、 ポチッ “イヤッホォォォオゥ国崎最高!!” ポチッ “イヤッホォォォオゥ国崎最高!!” ポチッ “さあ、楽しい人形劇の始まりだ” ポチッ “イヤッホォォォオゥ国崎最高!!” 何故か知らないけど、ボタンを連打していた。 …………貴方、往人の事嫌いじゃなかったの? ◇ ◇ ◇ ◇ “イヤッホォォォオゥ国崎最高!!” “イヤッホォォォオゥ国崎最高!!” 私たちの中に、いい感じに倦怠感が流れていた。 アセリアさんはまだアレを連打している。 でも、そんな事をしていられないと思ったのか、瑛理子さんが“パンパン”と手を叩いて皆の注目を集めた。 「とりあえず今後の事を“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”うわよ……って、 後にしなさい!!」 机を叩きながら、瑛理子さんがアセリアさんに言った。 「じゃあ、気を取り直して話をするわよ」 今度は邪魔は入らなかった。 瑛理子さんは最初、没収しようとしていたけど、ここにいる人間では物理的に不可能なので、国崎最高ボタンは今もアセリアさんが持っている。 また押したりしないか心配だ……。 そんな心配をよそに、会話は進んだ。 瑛理子さんが、話の前に“首輪には盗聴器がしかけられている”という紙を見せた為、筆談も交えて進行していた。 その際、瑛理子さんは、筆談も警戒されている可能性を訴え、文字を書いていても問題のない状況、それぞれの情報を紙に纏める事を提案した。 幸い此処は図書館なので、コピー機があるから丁度いい機会だった。 「まず、私たちは3チームに分かれて、参加者を探しながら、次の放送までに病院を目指しているの、当面の拠点としてね」 “首輪の解体が可能かもしれないしね” そして、遠野さんの支給品だという、顔写真付名簿を捲りながら続けた。 「仲間の名前は、高嶺悠人、千影、ハクオロ、衛、この4人よ、それで」 「待ってくれ!!」 瑛理子さんの話を、前原さんが遮って、 「ハクオロ、だって? アイツは危険な人間なんだぞ!!」 そう、続けた。 「ハクオロが危険? そんなはずはないわ」 「ああ、ハクオロは信頼出来る仲間だ。 アイツが居なければ、俺は今此処にはいない」 瑛理子さんの言葉に、往人さんが続ける。 ……私は何も言わなかったけど、ほとんど同じ意見だった。 アルルゥちゃんがあんなに懐いていた人が、そんな人間とは思えない。 けど、前原さんは、 「いや、ハクオロは大石さん達を騙した人間なんだ!」 と否定した。 大石といえば、既に放送で名前が呼ばれている人物だ。 「とりあえず、詳しく話してもらえませんか」 その相手が、何を言ったのだろうか。 それで前原さんは、月宮あゆさんという方から聞いたという話をした。 ……恐らくだけど、そのあゆさんが嘘を吐いている可能性は低いと思う。 わざわざ自分が人を殺したという嘘を吐く人間がいるとは思えないから。 けれど、その話の途中で、 「ちょっと待って、……暴発?」 意外な人物がその会話を遮った。 「沙羅、それがどうかしたのか?」 「うん、ちょっと心当たりがあるの」 そう言って、沙羅さんは自分の支給品だという、フロッピーディスクの話をした。 それによると、支給品の中には暴発する銃が含まれているそうです。 「だから、ハクオロがその大石さんに対して、害意があったかは半々だと思うわ」 そう沙羅さんが言い、 「まあ、その話は私も初耳だから、本人にも直接聞いてみるべきね」 瑛理子さんが繋げた。 それを聞いて 「……解かった、本人に会うまでは確定はしない」 前原さんも矛を収めてくれた。 161 Don t be afraid./散りゆくものへの子守唄(後編) 投下順に読む 162 邂逅(後編) 160 予期せず出会うもの 時系列順に読む 162 邂逅(後編) 153 歯車二つ(後編) 前原圭一 162 邂逅(後編) 153 歯車二つ(後編) 遠野美凪 162 邂逅(後編) 153 歯車二つ(後編) 白鐘沙羅 162 邂逅(後編) 148 求め、誓い、空虚、因果(後編) 国崎往人 162 邂逅(後編) 148 求め、誓い、空虚、因果(後編) 二見瑛理子 162 邂逅(後編) 148 求め、誓い、空虚、因果(後編) 宮小路瑞穂 162 邂逅(後編) 148 求め、誓い、空虚、因果(後編) アセリア 162 邂逅(後編)
https://w.atwiki.jp/openoreguild/pages/350.html
【邂逅】 汚らしい子供だ。 「寄るな……ッ!」 見たところ十歳にも満たない少女。 ぼろ雑巾のほうがいくらかマシとさえ思えるような布切れを身に纏っている。 垢や泥にまみれて酷い匂いを放つその布地から覗く肌はがさついていて水気がなく、老婆のようだ。 力なく地面に座り込んでいるというのに、今にも飛び掛かってきそうなほどにギラつく黄金の瞳は僕の喉笛を見据えている。 彼女の背後で木に寄りかかるようにしているのは彼女の母だろうか。いや僕にとってソレが彼女の母であるかどうかは甚だどうでもいいことだが、周囲に立ち込めて森の獣どもを引き寄せている腐臭からしてソレがすでにこと切れているのは明らかだった。 僕を呼ぶ『ナニカ』に応えてきてみれば、ただの残留思念だったわけだ。 ——実に下らないな。 未だに睨みつけてくる少女を一瞥し踵を返そうとした瞬間、ぼろ雑巾のような布地から覗く手足の『興味深さ』が僕の動きを止めた。 「ほう?」 獣とは違う、龍やシャドーといった魔物の類とも違う。それは見るからに硬質で骨のように白い、外骨格のようだった。 「見せろ」 手にしていた魔術儀礼用の身の丈ほどもある大型の杖で彼女の身体を支える手を払う。 身体の支えを失った少女は案の定地面に転がって、先ほどまで外套のように身を包んでいた布地に隠されていた手足をさらけ出した。 「面白い」 鎧かと見まごうほどの素晴らしい『外骨格』がそこにはあった。 滾る炎のような赤い文様の浮かび上がったそれは、彼女の手足の肘や膝をすぎたあたりから『生えて』おり、それが彼女が身に着ける防具などではなく本来の手足なのだと主張している。 腰に巻いた布切れの下からは、太い獣の尾の骨にも似た長い尻尾がのぞく。 「ッ……!!!」 震える手で支えながらやっとのこと上半身を起こした少女が『殺してやる』と言わんばかりの形相で睨んでくるが、僕はすっとしゃがんでお構いなしにその手首を握って自分の顔の前へと運ぶ。 僅かに暖かくたしかに血の通っているそれは、まぎれもなく、生身だった。 「殺す……ッ!! 殺してやるッ!!」 凄むにはか細すぎる叫び声をあげて彼女が僕の手に噛みつこうとするのをもう片手に握った杖で打ち据えて制す。 「無理だな」 手を離してやると少女は打たれた肩を抱くようにして地面に這いつくばった。 「それに、僕は一応君の『母』に呼ばれてきた身でね」 言いながら顎で遺体を指す。 「……母……さん……っ」 「このままならその母親だけでなく、君も死ぬ。……生きろ、と言われたのではないのかね?」 「ッ……!!」 「睨むのも、断るのも君の勝手だが、僕は君に興味がわいた。ここで死なせるには惜しい」 言いながら右手を掲げる。すると僕の背後の空間に無数の亀裂が入る『音』がして、そこからぬっと漆黒の毛並みの大きな龍が顔をのぞかせた。 少女の瞳に初めて怯えの色が宿るのを、見逃しはしない。 「僕の興味を満たしてくれるなら、これと同じ力を君に与えよう。そうでないなら、僕はこれ以上君に干渉すまい」 よく知っている。こんな時、こんな境遇の人間がどうするかなんてことは、よく知っている。 「……母さんは」 「弔ってやろう。墓も作ってやる」 「……わかった」 「交渉成立だ」 まず彼女の母の遺体を、崩れてしまわないように龍の背に乗せる。 続いて彼女を抱き上げようとするがその手はピシャリと払われた。 「自分で、立てる」 重い手足を引きずるようにして立ち上がりながら彼女ははっきりと言う。 「お前の手は借りない」 その言葉に僕は確信する。 この少女はあの日の『僕』だ。こんな偶然があるのだろうか。 期待のような、悲しみのような、喜びのような、怒りのような、悔恨のような。胸に渦巻き始めてそんな感情とともに一瞥した『母』の腐りかけた顔は『してやったり』と笑っているように見えた。
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/8363.html
69看板娘の邂逅2017/04/08(土) 14 00 46.40ID mqFPH6Sh0 セルゲイ精肉店 ソーマ「いらっしゃいませ」 ジュリエッタ「フン、ここがセルゲイ精肉店ですか。思ったより小さい店ですね」 ソーマ「ム、なんだ貴様は。営業妨害に来たのならば帰れ!」 ジュリエッタ「私だって来たくて来たのではありません。ラスタル様も認めるロシアの荒熊、彼が扱う肉がどれほどのものか確かめに来ただけです」 ソーマ「ラスタル?そうか、貴様向こうの焼肉屋の店員か」 ジュリエッタ「ですが肉はともかく接客はなっていませんね。こんな小さな娘に売り子をさせるなんて」 ソーマ「どこを見て言っている!私はもう18歳だ!それに貴様も人のことを言える体ではないだろう!」 ジュリエッタ「わ、私は着やせするタイプなんです!ともかく肉を貰いましょう。焼き肉用のカルビとロース、それにハラミを100gずつください」 ソーマ「フン、素人め!大佐は肉の真価はホルモンでわかると仰った。アボミも50g入れてやる!」 ジュリエッタ「なんですって、実は私がホルモン系に目がないと知っての所業ですか!」 ソーマ「ついでにミニメンチも揚げたてだから一個サービスだ!」 ジュリエッタ「くっ、この心配り!これでは馬鹿な人が釣られてまた来たくなってしまうではありませんか!」 ソーマ「フン!また来るならポイントカードを作ってやる。毎週火曜日はポイント2倍だ!」 ジュリエッタ「フン!たぶんもう来ることはないでしょうが、一応貰っておいてあげましょう!お会計は!?」 ソーマ「○○○○円だ!二度と来るな!ありがとうございました!」 ジュリエッタ「フン!思った以上にお手頃ですね!言われずとも二度と来ませんよ!」 その日の夜 焼肉アリアンロッド ジュリエッタ「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」 セルゲイ「予約していたスミルノフだが」 ジュリエッタ「スミルノフ?…あ」 ソーマ「あ」 ジュリエッタ「ふ、フン!まさか一日に二回もあなたの顔を見るとは思っていませんでしたよ」 ソーマ「ふ、フン!誤解するなよ、私は大佐が『たまには見識を広めるのも必要だから』と仰るからお供しただけだ」 ラスタル「おお、来たか荒熊の!」 セルゲイ「約束通りお邪魔させてもらった。政財界の食通をも唸らせるというアリアンロッドの肉、楽しみにしているぞ」 ラスタル「ふ、ロシアの荒熊にそこまで言われては恐ろしいな。どうしたジュリエッタ、お二人を案内しろ。一番いい席にな」 ジュリエッタ「わかりました…」 70看板娘の邂逅2017/04/08(土) 14 01 56.99ID mqFPH6Sh0 94 ラスタル「…食事は終わったか。どうだったかな、今宵の肉は」 セルゲイ「堪能させてもらった。肉の切り方、コースの組み立て方一つとっても細部まで実に気が利いている」 ソーマ「はい、とても美味しかったです…」 ラスタル「お嬢さんは浮かない顔だな。何か気に障った所でもあったかね?」 ソーマ「いえ、あの…」 セルゲイ「どうも今日、そちらのお嬢さんとケンカしてしまったらしくてな。顔が合わせづらいというのだ」 ラスタル「確かにジュリエッタにはセルゲイ精肉店に勉強に行くよう申し付けてあったが…どうやら失礼があったようだな、荒熊のご息女を怒らせるとは。後で私から叱っておこう」 ソーマ「いえ私も言い過ぎましたし、それに私は大佐の実の娘では…」 ラスタル「そうなのか?随分仲睦まじく見えたから、本物の親子かと」 セルゲイ「私はいずれそうするつもりなのだがね。それに、店も将来的には彼女に継いでもらいたいと思っている」 ソーマ「た、大佐!そ、そんなことを考えていらっしゃったのですか!?」 セルゲイ「ああ、そうだ。まだお前には言っていなかったがな。無論、嫌ならばそれで構わない」 ソーマ「嫌だなんてそんな…!」 ラスタル「そうであったか、奇遇だな。……ジュリエッタ!」 ジュリエッタ「はい、お呼びですかラスタル様」 ラスタル「このジュリエッタも私と血の繋がりはないが、幼い頃から目をかけていてな。いずれ私の後継者にと考えている」 ジュリエッタ「え、あ……ええ!!?」 ラスタル「何を驚いている。元々そのつもりでお前を引き取り、私の傍で働かせていたのだぞ?」 ジュリエッタ「そ、そうだったのですか…!」 ラスタル「だが後継者となるには、この娘にはまだまだ見識が足りない。…どうだろう、将来同じ肉界を背負って立つ者同士、二人は友達になってみては」 ジュリエッタ「え!?」 ソーマ「え!?」 セルゲイ「うむ。それはいい考えだ。この娘も根はいい子なのだが、なかなか人付き合いがうまくできないところがあってな」 ラスタル「それはジュリエッタとて同じこと。どうも彼女は、気になる相手にはつい憎まれ口を叩いてしまうところがあるようだ」 ソーマ「う…」 ジュリエッタ「むう…」 セルゲイ「そうだ。隣町に去年オープンした評判のいい肉料理店があったな。今度、二人で行ってみてはどうだね」 ラスタル「あそこか。確かに私も気にはなっていたが、中々時間が取れなくてな。二人に代わりに行ってきて貰えれば助かる」 ジュリエッタ「ラ、ラスタルさま!ですが私も店がありますし…!」 ソーマ「そうです大佐!私も仕込みをしませんと…」 ラスタル「言っただろう、ジュリエッタ。お前にはまだまだ見識が足りないと」 セルゲイ「それはお前もだ、ピーリス。その為ならば店などいくらでも休んでいい」 ジュリエッタ「…………」 ソーマ「…………」 ジュリエッタ「フン!別にあなたと行きたい訳ではありませんがラスタル様が言うならば仕方ありません。アドレスを交換しましょう」 ソーマ「フン!私だって大佐が行けというから行くのだからな。とりあえず来週の日曜でいいか?」 ジュリエッタ「フン!ならば私が予約をしておきましょう」 ソーマ「フン!では私は店までの道のりを調べておく」 ジュ・ソ「「べ、別に全然楽しみじゃありませんからね(ないからな)!!」」 ラスタル「(ほっこり)」 セルゲイ「(ほっこり)」 71通常の名無しさんの3倍2017/04/08(土) 14 09 09.49ID /LQ4va0a0 ティファ(ほっこり) フェルト(ほっこり) 72通常の名無しさんの3倍2017/04/08(土) 14 11 25.87ID FxtobOEq0 76 77 子熊(またハブか…良いさ、焼肉くらい自分の稼ぎで食べられる) link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ ジュリエッタ・ジュリス セルゲイ精肉店 ソーマ・ピーリス 焼肉アリアンロッド
https://w.atwiki.jp/nenohitohatiue/pages/1045.html
_ー=ァ 丶、 \ 、 ー=ニ ⌒~、 )ノ) ア -‐ ''"´ ハ 、 ,,,.、イ ア `¨ア / j .、 ∧ ー=ニ / / / / Λ ., ./〇', ⌒ア / -=彡 /-‐ ''"´/ /-l ! |ヽ, ‐ ・ .・ `>、./! /イ l //⌒"''///_,,..| /ハ| , .-= "  ̄  ̄ > 、. 0| // j \ /ィ巧⌒ / 乏人 |リ / ' ,∨ 、 / / /八 \ "´ 、 l | | , ' / , ∥ } i \ //,.ノ乂 | \ ' ,l ト| ∥ / /_ { _ ∧ |、 i ! ; |イ Λ| /|、 ‐- -‐ 从 { ! ! ∥ |' /_';.ト', ! .∥ ! ', ノハ | />。、 ,' | ' '、 ! !斤ミ .)/¨ハ"'ミ、} / ∥ ' i 从/ ´"'' ‐く | .| \{ ヒソ ヒソ '/ / / | ノ ~、、 ト、 .' ! ′ , ' / i /Λ゙ 、 ``~、 / ゙ \‐- _ .{'; '、 / / ! | 、丶| ‘, 、 ,.ィ >''―、} \  ̄ ‐ 、 ' '、 \´` // / / / i | .!. 、丶` | , \ j ゙ 、 __ ト、 ∠'; | ≧二.〃 / / / / / 〃 i }. γ''´―- | Λ \f包) ゙ 、 ̄ ゙、 l ‘, __}从/0 ∩/ / /- ' ノ〃〃' ノ|'/ / \ ‐―-/ ゙ 、\ | ゙ 、 Y rf斧㍉.l ‘, ∠ . . . .__. . .=-‐〃 i// . -=ニ丶} '′ .! | -‐ ''" ゙、 \ ! ゙ .| 《《包刈 ,.-‐ . . . . o.'. {.Oノ . .o . . . . .` . . . . . . . . . . .\ | ゙ 、 ゙、 \ |゙、 込竺彡 / ィ'" ̄ ̄  ̄ ̄ ¨ ''< . . . . . . . . . . . . . . . . . ',- 、. | ゙ 、 ゙、 \ | ゙、 〈ハ〉 ,i ! ==- ´ \ . . . . . . . . . . . . . . i >‐ 、 | ゙ 、. ゙、 \ .| ', ', / !.{  ̄ ̄  ̄ / `;. ';. . . . . . . . . . . .!' / \. | ゙ 、. ゙、 \l ', ',/ /'、'、 | ! .| . . . . . . i . . . .′ ' !|∨ } / ゙ 、. ', | ',./ ′.`ー- - =≧x .! ,.! .! .! . . . . .! . . .′ ,、丶` /.| ∨ / ゙ 、 ', | / / !/./ ` =;--‐ .| . . i . . . . . | . ./_/ |\ / / \ イ ゙ 、. ', |O ./ . / ! i | ,' __ ./| . . | . . . . .i . イ |./ / \ |、ノ~"'' ‐ , ゙ 、 , . . . ', / . ∥ l | ! _ ./ `/ / .! .| . . . . . . ′. 〈 o./ \ | Λ ゙ 、 \ ./ . . . |! .| //  ̄ / / ./l . .| .| . . . . ./ < O \、 |/ Λ O } , ' . . . . .|! .|./ i ./ / ! . .l .| . . . . ′ O ハ 、 l / Λ | . / . . . . . ..|! .|、 / , < /! . . ! .! . . .;′三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 カード名 . ..: 蒼と紅の邂逅 全 [極彩色]≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ レアリティ...: ARC - IF≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ 汎用スキル...: 【反響】 【懐古"A"】≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ カードスキル : 反響 自全領域から"異聞"を手札に加えてデッキに戻る。ゲーム中[清廉の思い出]により"白兎"が消滅していれば、このカードは消滅し、手札の"異聞"を[IF-キセキの仔兎]に変換リアライズ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ 武装化 : コスト:6 [反響 自デッキから"思い出"か"伝説"を1枚手札に加えて手札に戻る]≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ ステータス. ....: AP:00 / RP:00 / CP:00≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ フレーバー : 彼は切なる願いを示し、彼女は秘めたる祈りを届かせた――二対の蒼と紅三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 +口上 交差する邂逅。それは魔剣の因果を砕く、私の我儘。ここに、想いと伝説の、その先を描く異聞を!ARC-IF、インキピット!武装化―― [蒼と紅の邂逅]!by山桐キル子@【銀糸紡ぐは、夜空彩る箒星】―― これは幻想。我が銀糸が紡ぐ、在り得ざる異聞。遍く今までを積み上げて、身勝手な私が描く、新たなる未来!―― それを傲慢と誹るのなら。ええ、傲慢のまま描きましょう。我示す色は、IFの向こう側。―― 怪異の描く、因果に仇為す"愛"の名の物語。ARC-IF、インキピット。[蒼と紅の邂逅]ッ!by山桐キル子@【銀糸紡ぐは、夜空彩る箒星】
https://w.atwiki.jp/sfcross/pages/124.html
試面邂逅 エキスパートクエスト 難易度: ★×20 必要レベル:30+1 中ボス:本文参照 第1ボス:テネブラクリア評価用 第2ボス:クロウ・クルワッハレコード用 クリア報酬:金貨 650G、トレジャーコイン 5枚、名声値 45 プレイ後開放レシピ:無し マップパターン数:ステージ 一人プレー全討伐時獲得経験値:ランダムにより変化 獲得熟練度:160 Qチケット:肆x1~10(レベルで変動) 固定アイテム:無し 獲得通り名: Sラッシュ制覇◆01 攻略 2012/12/10日より公開クエスト。 「クロスエリュシオン Ver.B Rev.07調整版」(Ver2.05)初の【 エキスパートクエスト 】。 持ち込みアイテムが使用できる代わりに コンティニュー&クロスゲージ使用不可! ボスラッシュの上を行く サバイバルラッシュ と言う新形式クエスト。 又、通常のボスラッシュと異なり部位破壊時にランダムでアイテムのみ出現する。素材は出ない。 また協力モード初の 時間制限あり&6人参加可能 レイドクエストでもある。 初期の持ち時間は150秒で時間切れで終了となる。 また、ボスを撃破ごとに一定タイムが追加される。 追加時間は、 ステージ1 +60秒 ステージ2 +70秒 ステージ3 +80秒 ステージ4 +90秒 ステージ5 +90秒(?) ステージ6以降 一律+10秒 クリア例からの最終ステージまでの参考タイム[ ステージ5クリア後340秒 ]・[ ステージ10開始時90秒 ] いわゆる持ち込み可能な時間制限ありのボスラッシュ。 ステージ毎に一定時間後に「 WARNING! 」のメッセージと同時に、増援が出現することがある。(ステージボス撃破またはステージボス出現後一定時間経過) どのステージで出現するかは毎回ランダムで、出現回数上限は5回。 ラストのクロウ・クルワッハのみ増援はない。 クリア評価はステージ5までのトータルタイムで決定され、以降はクリアであっても途中終了であってもクリア評価は変わらない。(S評価は通常のボスラッシュ同様に、ステージ5までを6分未満?) なお、ステージ5までクリアせずタイムアップの場合は死に落ちと同じ扱いでクリア報酬を獲得できない! (*1) ステージ5が終了した時点で、ステージ6に進むかそこで終了して脱出するかを選択できる。(2種類のワープゾーンが出現する。) ステージ5撃破以後は結果の如何にかかわらずクリアと同じ扱いになる。 又、ステージ6以降は途中終了であっても得た報酬は持ち帰ることが可能。 ステージ6以降はボス撃破毎に何らかの武器防具素材を獲得できる。ステージが進むに連れて得られる素材のランクが上がっていく模様。 尚、各ボスの部位を破壊しても素材は手に入らず、ステージ5クリア時の宝箱から幻視の蕾が2個確定出現するのみとなっている。 ステージ10クリア時は2個目の宝箱が出現し真竜の槍角が2個確定出現する。 特定のボスに特化したような装備で挑むと、それ以外のボスが出てきた時に火力が下がる可能性が生じる。 全てのボスに対して安定した火力の出せる装備が求められる(立ち回りも同様)。 レジェンド装備前の実装クエストであり、ある程度の装備があればレコード取得も難しくはない。 ここでサバイバルラッシュ形式に慣れておこう。 参考までに中間1000万、最終5000万ダメージ前後。 中ボス ステージ1ナイトギア、特定時間経過後ガリオンスマッシャー×2 ステージ2GNT-028、特定時間経過後ブレイザー×2 ステージ3リンドブルム、特定時間経過後グレアパニッシャー×2 ステージ4フロストドラゴン、特定時間経過後キマイラ×2 ステージ6GNT-063、特定時間経過後GNT-114 SERIESからランダムで1機。 ステージ7ヴァジュラ、特定時間経過後魔道騎士ナイトギア。 ステージ8黒蹄王、特定時間経過後白蹄王。 ステージ9アナンタ、特定時間経過後キマイラクリムゾン×2。 ボス 中継ステージ5テネブラ、特定時間経過後アサルトスマッシャー×2ここまで撃破でクリア評価決定、及び1度目のクリア報酬が得られる。獲得後ステージ6へ継続可能。 ラストステージ10クロウ・クルワッハ時間内に撃破できれば2度目のクリア報酬が得られる。またレコード獲得の条件でもある。 外部リンク 参考元、youtubeよりクリア参考例 http //www.youtube.com/watch?v=HyzZYNU54UA
https://w.atwiki.jp/okarowa/pages/56.html
01◆邂逅一番 天候は薄曇り。 薄い灰色に彩られた空は、否応なしに終末を予感させる。 今は一体、何時なのか。太陽の姿が隠れるこの天気では、それを判断することも出来ない。 体内時計は夜十時半を差しているが――これは今や役には立たない。 なぜなら、白衣の女は明言していたからだ。 この娯楽施設は、「世界から隔絶された空間である」と。 「珍妙な事に巻き込まれたものじゃなあ……」 娯楽施設の巨大駐車場の一角、D地区と銘打たれた場所。 まばらに車が止まっているその無機質な空間に、空を見上げながらため息をつく一人の老人が居た。 彼の名前は、東奔西走。 この実験場に連れてこられる前は、××××という名前でさる道場の師範代に付いていた。 しかし、それ以外のことはほとんど忘れてしまっている。 記憶を操作された東奔西走が覚えていたのは、自分が武術の使い手であることと、もう一つ。 「じゃが、あの者を許すわけにはいかぬじゃろうな。 強大な力を手にし、その力に溺れておった。ああいう奴はろくなことにならん」 自分はこの殺し合いに乗るような人間ではない、ということだけだ。 「渡された地図によれば、北東に向かえば施設にたどり着くようじゃ。 強者も弱者も皆、まずはそこを目指すであろう。食糧の問題もあるしの」 空から手元に視線を移す。 手に持つ地図には、3×3、9マスに分けられたこの世界の地図がある。 広いとはいえ区切るほどではないと最初は思ったが、 ルール用紙によれば、一定時間ごとに1マスが侵入不可となるらしい。そのための区切りというわけだ。 この「駐車場D地区」は、中心のマスの一つ下。 そして「娯楽施設」本体は北東のほうに、3マスにまたがる形で存在している。 「わしもまずは、施設を目指して移動するしかないじゃろうな。 うむ、この実験とやらについて、しっかり腰を据えて話し合えるような輩が、いればいいのじゃが」 希望的観測とともに、地図を閉じる。 東奔西走はさしあたっての行き先を決め、北東へと歩を進めようとした。 しかし、その時。 東奔西走は気づいたのだった――自らに課せられている、重大な「ルール能力」に。 「ほう、これは……」 「――そこの老人。もしやあなたも、実験の参加者だろうか」 落ち着いた、青年の声がした。 一歩を踏み出そうとしていた東奔西走はその足を戻し、声が聞こえた方を向く。 「誰じゃ」 「切磋琢磨と申します。 あなたは相当の使い手と見える。こんな場で何ですが、是非ご指南をお受けしたい。 俺はどうやらこの場では、戦いたくて仕様がない性分に「なって」いるらしいのです」 名を尋ねるとあっさりと青年は応え、礼儀正しく勝負を申し込んできた。 東奔西走は値踏みする。 赤茶の髪に耳ピアス、両手にボクシングのグローブをつけた男は、 一見するとならず者にしか見えないが、強き者に礼を払うだけのわきまえはあるようだ。 それに……目が、真っ直ぐに澄んでいる。 (純粋、じゃな。記憶操作の影響もあるのじゃろうが、元から悪い男ではないと見た。 戦いに対して、ひたすらにストイックじゃ。「切磋琢磨」の名を受けるのも分かるわい。 東奔西走――世界を渡りたくさんの猛者と戦ってきた、わしが見るのじゃから間違いない) 最初に出会う参加者としては僥倖の部類に入るだろう。 そう結論づけた東奔西走は、前後に足を開き手を構える。一の型、待機。 「構わん。その勝負受けよう。ただしピアスは外せ。どこかに引っかかって耳が千切れても知らんぞ」 「はっ……! 見落としてました、すいません。そうか、寝る直前だったからな……」 青年がピアスを外し、配布されたデイパックへ入れる。 と同時に、二人の間にはもう、闘いの前特有の緊張感が流れていた。 再度支給品のグローブを付け「お願いします」と頭を垂れた切磋琢磨に――東奔西走は言う。 「試合の前に、一つハンデがあることを伝えておこう、青年」 「ハンデ、ですか」 「そうじゃ。あの白衣の女が言っておったであろう。 わしらには一人一人特有の、ルール能力があると。 わしはこの言い方に少し引っかかりを感じておったのじゃがな――、 ついさっき、娯楽施設に赴こうとして謎が解けたわい。 つまりルール能力とは、《個人に課せられた絶対のルール》なのじゃ。お主にも、あるじゃろう?」 「あるはずだとは思いますが……説明がない以上、何とも。 ただ、闘いを行うことでそれが分かるような、そんな予感はしています」 「ふむ。ならばわしも、全力で応えよう。 ただお主にも勝機は与える。わしのハンデは、わしのルール能力じゃ。それを教える。 どうやらわしは――《東西にしか動けない》ようじゃ。お主はそれを踏まえて、攻めて来い」 東奔西走は、東西にしか動けない。 それを聞かされた切磋琢磨は一瞬、驚きに目を見開いたが―― 強烈な地面を蹴る音に、すぐ頭を上げ前を見る。 二の型、突進。 「わしも、攻めるからの」 「試合開始ですね、老師!!」 ぐっと拳に力を込めて、切磋琢磨はごう、と迫ってくる東奔西走を迎え打つ。 老人と青年、二人の拳が真っ直ぐに合わさって、戦闘が始まった。 ◆◆◆◆ そして終わった。 「あおお……強すぎます老師……」 「いや、お主が弱すぎるのじゃ。まさか大した描写もなくやられるとは。 そのへんのならず者のほうがまだ強いぞ。期待してただけにがっかりじゃ。 お主、ここに来る前は何をしておったのじゃ?」 「寂れたボクシングジムで用具の片づけや帳簿の記録、その他雑用。 あとは、先輩方のマッサージなどを一身に引き受けていた記憶はあります。うう、肩が痛い」 「つまり最弱見習い雑用だったというわけじゃな」 「はい、まあ……いててて」 肩に与えたほんのあいさつ程度の掌打で地面をのたうちまわる切磋琢磨を横目に見ながら、 東奔西走は再びため息をつく。この男、全く使えない。 これからあるであろう、「実験に乗った者と戦う」という不可避の戦いまでに稽古を付けることは確かに出来る。 が、時間が足らなさすぎる。 せめて元が少しでも強ければすぐ鍛えられたが――この弱さでは手加減し、徐々に鍛えなければならない。 基礎体力、筋力もよくよく見れば全然足りていない。意気込みだけでは、さすがに無理だ。 「まあよい、ともあれわしは一人では東西にしか動けぬ。 当面の間お主にはわしをおぶってもらうことにしよう……ん?」 「いたたた……おや? ろ、老師! なんでしょうこれは! 俺の体が真っ赤に光って――ち、力が! 漲るううう!?」 「これは……!」 切磋琢磨の全身が突如、ぼんやりと赤く発光し。 すると尋常ならざるスピードで――筋肉が増加していく。まるで一週間鍛えたかのように。 「ろろろ老師! これは一体!?」 「ふむ。どうやらお主のルール能力は――《戦うたびに強くなる》のようじゃな。切磋琢磨の名通りじゃ。 喜べタクマよ、今のお主ならならず者にも負けぬだろう。戦闘を重ねていけばわしにも勝てるやもしれぬ」 「ほ、本当ですか老師!」 「いや、まあ推測じゃがな……立て。急に上がった力を使いこなさねばならん。もう一度手合せじゃ」 「は、はい!」 手を握り、東奔西走は切磋琢磨を引き上げる。 移動制限を課された達人と、成長促進を受けた弱者―― 正反対の二名はこうして出会い、そして意気投合したのだった。 【B-3/駐車場D地区】 【東奔西走/老師】 【状態】健康 【装備】なし 【持ち物】不明武器1 【ルール能力】東西にしか移動できない 【スタンス】対主催 【切磋琢磨/見習いボクサー】 【状態】肩に鈍痛 【装備】ボクシンググローブ 【持ち物】ピアス 【ルール能力】誰かと戦うごとに強くなる 【スタンス】戦いたい 都市伝説 前のお話 次のお話 顔面隠し 前のお話 四字熟語 次のお話 切磋琢磨 張子の車 東奔西走 張子の車 用語解説 【娯楽施設】 本来ならテーマパークなど遊具がある場所に使う熟語であるが、 殺し合いの場である仮想ショッピングセンターは主催側からこう呼称されている。 実験といえど所詮お遊び、ということなのかもしれない。