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【検索用 とおまわり 登録タグ AO IA VOCALOID と なゆごろう 曲 曲た 赤髪】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:なゆごろう 作曲:赤髪 編曲:赤髪 唄:IA 曲紹介 曲名:『遠回り』(とおまわり) 歌詞をなゆごろう氏。イラスト 動画はAO氏。動画の文字はなゆごろう氏によるもの。 歌詞 (PIAPROより転載) あたしの今を繋いでる絵を今日も足して あなたとの思い出は置いてくけど ほんとはずっとその決断を悔やんでること 今日も不器用に遠回り だんだん消えていくその鼓動も だんだん薄れてく影も知ってたの きっとずっと気づいていたから 逃げてしまっただけなの もっと早く伝えたかったけど 今もまだ好きだよ あの日の夜あなたが忘れたこのTシャツが いつまでも大好きだった匂いで 星空がみずたまりに落ちて逆さまになる 今日も雨粒と溶けてゆく あなたに伝えたい言葉はきっと 単純な言葉じゃ 伝えきれないよ きっとあのとき気づいたふりして 間違えてしまったの もっと早く伝えたかったけど まだ忘れられないよ あのとき隠した 胸の隙間 あなたには言えずに 心を覆い隠して 今まで過ごした日々が 幻みたいだよ ねえ 一人にしないでよ きっとすぐにあなたとの日々は 忘れて消えちゃうの そんなこともう分かってはいるけど 今はまだ好きだよ まだ忘れられないよ コメント 大好きだこの曲 -- 名無しさん (2015-09-24 07 19 02) ↑本当それ -- 名無しさん (2016-04-09 17 38 33) 名前 コメント
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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第33弾 『遠回り』 「眞一郎くん」 今では聞きなれた比呂美の優しい呼び声 以前のような遠慮がちな響きとは少し違う声 いつまでも聞いていたい透き通った声 そんな事考えながら返事をする 「おつかれ」 「待った?」 「いや」 「よかった」 校門を並んで過ぎながら考える 比呂美はこんな他愛もない会話の最中も気を使う そんな気遣いをさせてしまうことを申し訳なく思う 「今日、何か予定とかはあるの?」 「いや、なんにも」 「じゃあ、つきあって欲しい場所があるんだけど いいかな?」 こちらを見上げながら 『お願い聞いてくれるかな』 そんな表情と共に訊いてきた 比呂美が道草の提案とは珍しい 夕食の買い物なら特にこんな言い方はしないはずだ まあなんにせよ こんな顔でお願いされたら普通了解するしかない 「いいよ」 「ホント? よかった」 「どこ?」 「えへへ 内緒♪」 不安げな表情から一転して楽しそうな表情へと変化する 本当に表情が豊かになった 元々クラスで女友達とのやり取りを見ていたのでこれが自然だと思う 俺の前ではやっと自然になってきた というより最近はさっきのような不安げな表情は 演技では? などといらぬ事まで心配してたりもする しかし、これはお付き合いをしている仲の特権だろうとも納得する 比呂美がさっきのような表情を誰彼かまわず振りまいていたら それはそれでかなり面白くないというものだ 真っ直ぐ帰宅コースから 途中 比呂美の示す方向へ経路を変える この辺りは日常の行動半径内なので特に珍しくもない辺りだ 何度か『内緒♪』の中身を訊き出そうとしたがはっきりとはしない ただ比呂美は少し恥ずかしそうにしている 一体どこへ行きたいのだろう? 服かアクセサリーとかの見立てにでも付き合えということなのだろうか? その手の話ならプレゼントにするしないとの問答に発展しかねないので 比呂美の性格からして自分から誘ってはこないと思うのだが… 比呂美はある交差点である方向へと向きを変えた なにかイヤな予感がする このまま進めば例の場所のはずだ まさか比呂美は何か知っているのか? 今まで気付かれそうな話題をしたことはないはずだ 少なくとも俺自身は… では、誰か他の奴から聞いたのか? それなら、ありそうなルートから 考えるのも嫌なルートまでいくつかはありうる まて、その場合だとしても どこまで知っている? 胸のうちの不安をどうにか隠しながら比呂美の表情を覗う 特段、怒っているようには見えない むしろ小さな子供が連れて行って欲しい場所に 連れて行ってもらっているような 満足そうな表情ではある どこへ行きたいのかは分からないが 取りあえず修羅場では無さそうだ と油断していたのだが… 比呂美の目的地はどうやら例の場所に限りなく近そうだ せめて前をとおり過ぎるだけにしてくれとの願いもむなしく その場所の前で比呂美は立ち止まった いまさら看板など見る必要もないが あいちゃん 何度見ても間違いなくここは俺とミヨキチが入り浸っている 例の場所である 比呂美はここで俺に 「お願いね」 と俺に鞄を預けたあとで店に小走りで入っていった ひとり取り残された俺は店の前で 両手に自分と比呂美の荷物を提げながら 『どうか何もおきませんように』 とひたすら祈り続けていた すぐに戸が開き、比呂美が戻ってきた 引き続いて誰も登場しそうにないので 幾分ホッとする 比呂美は両手に紙袋を大事そうに抱えている 悪戯っぽい表情を浮かべながら 「はいっ、今川焼き、あんこは黒と白、どっちがすき?」 そう訊いてきた とりあえず 最悪の展開では無さそうなので 祈りが通じた礼を天にしながら 俺は安堵した にしても… 本当に大丈夫なのか? そもそも比呂美はこの店を何で知っている? などどつらつら考えていたのがいけなかった 「あの、眞一郎くん、甘いもの嫌い?」 比呂美の言葉に我に返り 慌てて比呂美を見た さっきまでの悪戯っぽい表情は消えうせ すっかりしょげ返っていた 「え?」 何が起きているんだ? 甘いものがなんだって? 「ごめんなさい… わざわざつきあってもらたのに…」 俺に向かって差し出していた紙袋の中身 今川焼きが二つ見える それも今は比呂美の腕と共に下がってしまっている 比呂美はすまなそうな表情まで浮かべてしまっている ひょっとして、今川焼きが食べたかっただけなのか? 自分の空回り加減に愛想をつかす 罪滅ぼしに少し大胆になってみる 「比呂美はどっちが好き?」 「え?」 「だから、黒あんと白あん」 「あの、ううん、眞一郎くんの好きなほう選んで?」 比呂美は少し元気が出てきたみたいだ 「じゃあ、黒を貰おうか」 「うん、…あれ、どっちか分んなくなっちゃった」 「え?」 「お店の人に教えて貰ったんだけど…」 悪ノリすることにした、比呂美を笑わせたくて 「じゃあ、比呂美が味見して」 「味見?」 「責任を持ってどっちがどっちか確かめて欲しいな」 「う、うん」 そういうと今川焼きを取り出して割ろうとする 「待った!」 「え?」 比呂美は驚いてこちらを見た 「それは邪道だ、今川焼きの神様に対して失礼になるんだ」 少し大げさに似非ウンチクを並べてみる 「そ、そうなの?」 比呂美はそんなの聞いたことないと言いたげな表情だ 「今川焼きはちゃんとかぶりついて食べるのがマナーなんだ」 似非ウンチクを続行する 「うん、じゃあ そうするね …あれっ?」 意味が分ったらしい 「それじゃあ…」 比呂美は頬を赤くしながら俺を見上げる 「ホラ、早くしないと冷めちゃうよ」 意味が分ったかい? と目で付け加える 「う、うん」 比呂美は迷ってから片方の今川焼きを一口だけ可愛く食べた 「あたり! こっちが白です」 比呂美はくじ引きで大当たりでも引き当てたみたいに嬉しそうだ 「うーん」 「はい、じゃあこっちが黒ね」 残った方を俺に差し出してくる もちろん、ここで引き下がるわけには行かない 「いーや、まだ分らない」 「え?」 「店員さんが間違えているかもしれない」 「そんなこと…」 「もう片方も責任を持って確認してくれ」 「え? も、もう、わかっててそんなイジワルなこと…」 「冷めちゃうから急がないと」 「イジワル…」 恨めしそうな表情でそういうと 比呂美は後ろを向いて残りの今川焼きを味見した 「はい、間違いなく 黒でした」 向き直った比呂美は少しだけ怒ったような顔をしている だけど頬に加えて耳の辺りまで赤くなってるので 本気で怒っているわけではないのは確実だ 比呂美の両手にはそれぞれ黒と白の今川焼きが握られている もちろんどちらもカワイイかじり痕のおかげで中身が確認できる 「うむ、ご苦労、では早速…」 恥ずかしさを飲み込んで口をあけた 「え? え?」 「比呂美が食べさせてくれないと、俺 荷物持ったままだし…」 両手の荷物を少し掲げて見せた 「あ、そうだね、ごめんね」 比呂美はそういって荷物を引き取ろうとするが 両手は今川焼きで塞がってしまっていることに気がついた 「困ったね」 「ああ、これは仕方のないことなんだ」 「仕方のないこと?」 「ああ、いくつもの偶然が重なってしまった事故なんだよ」 「事故なの?」 「嬉しい事故さ」 「もう、なんだか人為的な事故のような気もするけど?」 「ほら、冷めちゃうよ」 「…うん」 比呂美は覚悟を決めたみたいだ 恐る恐る俺の口元に差し出してくる 不安げな表情と少し開いた口元が 俺を魅了した 「じゃあ、はい、…あーん」 比呂美自身の口もあーんって感じで小さく開いている あまりのかわいらしさに 差し出された甘味を忘れてしまう 俺は動けなかった 俺の無反応を訝しく思ったのか 比呂美が目を開け再び俺を不安そうに見上げた 「あの… どうして食べてくれないの?」 比呂美は少し泣きそうな顔になってしまった 「…ごめん」 『比呂美が可愛すぎて』とは言いにくく言葉が続かなかった 「あ、もしかして冗談だったのを、私が真に受けちゃったのかな?」 比呂美は困り顔を耳まで赤くさせたまま 目尻にうっすら涙まで浮かべてしまった あわてて、言葉を続ける 「いや、冗談じゃなかったんだけど、急に照れくさくなって…」 比呂美は一瞬きょとんとしてから 「もう、照れくさいのは私もおんなじなんだから…」 困り顔のまま少し怒っている 取りあえず泣かれるよりは良かった このまま比呂美に恥をかかせたまま終わる訳にはいかない 覚悟を決める 「冷めないうちにいただこうか」 俺はそう言って口をあけた 「はい」 比呂美はそう答えると 再び甘味を差し出してきた ワザと横にずらしてあるのだろう 比呂美の食べかけの部分からかぶりついた 見ていた比呂美はハッとして俯いてしまった 俺も恥ずかしさのあまり 愛ちゃんには悪いが何の味も感じない これはあまりにも恥ずかしい もうこうなったらヤケである 「比呂美の味付けも効いていて すごく甘いな」 そう言って二口目、三口目と頬張った 「しらない…」 比呂美は困り顔のままで俺を見上げる 少しボーっとなっているみたいだ 残りひとかけらを口で受け取り お礼を指先にお返しした 「あんっ」 比呂美はかわいい悲鳴を上げた 「な、なに?」 あわてて手を引っ込めながら そう訊いて来た 「あんこが付いてたんでね」 そううそぶいた 「本当?」 少し苦笑しながら俺の顔を覗き込んでくる 「ウソの方がよければ そうしとこうか?」 こちらも少し笑いながらそう返す 「もう、不意打ちは反則です」 「ごめん」 「クスッ」 「ははっ」 少し笑った後、残りの問題を片付けることにした 「じゃあ、交代」 「え?」 「だから、今度は俺が比呂美に食べさせる番」 「え、私はいいよ」 「あ、比呂美は俺の手からのものは食べられないんだ?」 「そんなつもりじゃ ないんだけど…」 「よし、じゃあ、ハイこれ」 そういって比呂美の空いた手に比呂美の鞄をにぎらせる 「かして」 紙袋に残ってる比呂美の分の甘味を半ば強引に受け取る 「じゃあ、ハイ」 そう言ってから比呂美の前に甘味を差し出す 比呂美は困り顔の表情のまま固まっている あれ? 比呂美と視線があう 呪縛を解かれたお姫様はこうおっしゃった 「眞一郎くんはしてくれないの?」 「何を?」 「何って、味見…」 「だって、もう中身は判ってるし…」 「ううん、私は眞一郎くんの好きな味を味見したけど 眞一郎くんは私の方の味を確かめてくれてないもん」 「それは…」 これは罠か? さっきのお返しに違いない… 意を決し さっきの比呂美を真似てみる 比呂美に背を向け 比呂美のかわいい歯形の横に並んで歯形を残す やっぱり味なんてさっぱり分らない とにかくこれでクリアした 向き直る 今度こそ 「ハイ、どうぞ」 比呂美の口元に差し出そうとした 「眞一郎くんは言ってくれないの?」 今度の比呂美は『私いま一生懸命です』 という表情でそう訊いて来た 「なに?」 「だから、こういうときのお約束…」 「んー ん?」 数秒で気が付いた まさか『あーん』なのか? 視線で問いかける 『当たり』 そんな視線が比呂美から返される 恥ずかしそうに何かを期待している表情 それならば と言いかけて気が付いた なかなか『あーん』などとは言えない 恥ずかしい すごく恥ずかしい とてつもなく恥ずかしい 簡単な一言がものすごいプレッシャーだ さっきの比呂美はこのプレッシャーをどうやって 跳ね除けたんだろう? 先程の破壊力絶大な比呂美の表情が浮かぶ… いかん、ここで引いたら比呂美ひとりに 恥ずかしい思いをさせることになる 「ん、んんっ」 軽く咳払いしてから覚悟を決める 「はい、あーん」 『これは劇だ』自分にそう言い聞かせながら 比呂美の前に再び甘味を差し出す 「いただきます」 そう告げてから俺の歯形のほうから食べだした 空いてる手で口元を隠しながら 「えへへ 誰かさんの味付けのせいで、すごく甘い…」 比呂美は悪戯そうにそう告げると 続けて二口目、三口目と続けた テレながらニコニコしてる こうして見ていると まるでかわいいリスかウサギを相手にしているような 気分になってくる やがて最後のひとかけらを口で受け取った比呂美は… 俺よりも大胆だった 俺が指先へのお返しを期待していると すっと、一歩近寄ってきて 背伸びしながら俺の頬に なさった… お返しを… 「えへへ ほっぺにあんこが付いてたよ」 すっと元の位置まで後退 比呂美は真っ赤になりながら 微笑んでそう告げた さっき比呂美はなんと言ったっけ? 記憶検索を拒否する脳を何とかして思い出した 「ふ、不意打ちとは卑怯なり」 「クスッ」 「はあ」 うーん、どこまで本気なんだか… まあ、これで終わりだ うやむやのうちに話題を変えて… それから戦線離脱を… 「いよう、おふたりさん」 側面からの新たな脅威が出現した 勘弁してくれ! ニヤニヤしながらミヨキチが現れた 忘れてた ここは奴のテリトリーだ 「相変わらず仲がよろしいようで…」 「ミヨキチ!」 「野伏君!」 思わず二人とも一歩ずつ飛びのいた こんなときの息はピッタリだ ミヨキチはニヤニヤしながら近寄ってくる 逃げるか? 俺は比呂美に近寄った イザというときには 比呂美の手を取って逃げることにする 「なあ、眞一郎、俺からプレゼントがあるんだが」 「プレゼント?」 「ああ、ひょっとしたら湯浅も欲しがるかもしれん」 「私も?」 「ちょっと、待ってな…」 そう言うとミヨキチは携帯を取り出し操作し始めた この先の展開が全く読めない 何が起きてるんだ 比呂美を覗う 比呂美も訳が判ってないみたいだ 突然、俺の携帯に着信音がした ミヨキチを見るとこちらを見てニヤッと笑っている 携帯を取り出して確認する ミヨキチからのメールだ チラとミヨキチを見てから開封する やられた 写真が添付されている 4枚 俺が比呂美の手から甘味を食べているところ 俺が比呂美の手にお返しをしているところ 比呂美が俺の手から甘味を食べているところ 比呂美が俺の頬にお返しをしているところ 確実にハッキリと写っていた 覗き込む比呂美も言葉を失っている ミヨキチを見据える どういうつもりだ? 「おっと、誤解すんなよ」 ミヨキチはそういって自分の携帯を 俺達の方に向けながら操作し 先程の写真を消去してみせた 「記念になると思ったんでな あとはお前さんたちの好きにしな」 「声くらい掛けてくれれば…」 「ははっ、でもな、俺に全然気付かずに二人の世界に浸ってる お二人のお邪魔は出来ないさ」 「う…」 「でも、気をつけろよ、俺以外誰も見てなくて、な?」 「あ…」 「じゃあなー」 ミヨキチはそう言い残すと店に入っていった ここはひとまず退散だ うつむいて固まっている比呂美の手を引き撤退開始 しばらく歩いて公園のベンチで一休み 「びっくりしたね」 「ああ」 「野伏君、あのお店知ってるのかな?」 「ああ、そうみたいだな」 「ごめんね」 「なにが?」 「あのお店、バスケ部の子に教えてもらったの」 「うん」 「あのね、私、ホントはさっきみたいな事じゃなくて… 学校の帰りに眞一郎くんと一緒に何か食べながら 並んで歩いてみたかっただけなの…」 「え?」 「前からね、一度やってみたかったの 少しお行儀悪く 同じ物を食べながら 一緒に歩いてみたかったんだ」 「そか」 「うん」 俺とミヨキチなら毎日のようにやっていることでも 比呂美にとってはそれがとても大切な夢だったのかもしれない だとすると今日の俺の行いはやりすぎだ 「ごめん、俺が悪ノリしすぎたな…」 「ううん、あれはあれで楽しかった… かな? ずいぶんエスカレートしちゃったけど、クスッ」 「でも、比呂美って大胆なんだな」 「だって、今日の眞一郎くん、少し強引だったから… 私もなんだか調子が狂っちゃった」 「まあ、見られたのがミヨキチでよかった」 「野伏君なら大丈夫?」 「ああ、アイツなら誰にも言ったりしないさ」 「ふうん、野伏君かあ、なんだか頼りがいがありそうだもんね…」 「…ああ」 「ん? え? あ、ち、違うの! ヘンに思わないでね!」 「うん」 「わ、私にとっては、なんといっても眞一郎くんが1番で…」 ここで俺の顔を窺ってから少し小さな声で付け加えた 「2番や3番や… 特に4番なんて 全然無いんだから…」 俺は内心驚いていた 比呂美が駄洒落なんて… ずいぶん砕けてきてくれた リラックスしてくれている 比呂美にとって俺は安らげる相手になりつつある そんな事がとても嬉しかった 「あの、ごめんなさい… 嫌なこと思い出した?」 比呂美が俺の顔を心配そうに覗き込んできた ああ、また失敗だ 「いや、比呂美が駄洒落なんていうから… 明日の天気を心配してたんだ」 俺はそう答えてニヤッと笑いかけた 「もうっ! 気分を悪くさせちゃったかと思って、 心配したんだからっ」 比呂美はそう言ってあっちを向いてしまった 「なあ?」 「なあに?」 背中を向けたまま比呂美が答える 「今度は俺がつきあって欲しい場所があるんだけど いいかな?」 「え?」 「あー、今度の部活が休みの日とかどうかな?」 「どこか連れてってくれるの?」 嬉しそうに身体ごとこちらに向き直ってくれた 「今日のお返しに、おでんのおいしい店なんだけど」 「おでん?」 「あ、やっぱり女の子は嫌かな?」 「ううん、眞一郎くんが連れてってくれるんならどんなトコでも付いて行くっ!」 「いや、あんまり期待されても困るんだけどな」 「うん、じゃああんまり期待せずに待ってる」 比呂美はニコニコ顔に戻ってくれた とりあえず今日のご機嫌は直ったみたいだ あとでミヨキチに相談だ ホントに比呂美を連れてって大丈夫かどうか… 多分、大丈夫だと思うけど… いつまでも知らん振りできないしな ミヨキチの言っていた ダブルデートなんて出来るんだろうか? まあ心配してもしょうがない いざとなったらいさぎよく怒られよう もし、あのこと比呂美が知ったら… 怒るだろうか? 泣くだろうか? 気にしないだろうか? 愛想を付かされるだろうか? もし、俺が逆の立場なら? 比呂美を許せるだろうか? 許す? そもそも比呂美は俺に許しを請うことなど 何一つしてはいない 少し遠回りしただけだ 「眞一郎くん?」 「ん?」 「どうしたの?」 「いや、何でも」 「目を閉じて瞑想でもしてるのかと思っちゃった」 「比呂美のこと考えてた」 「え? 私のこと?」 「ああ」 「あの… 私のなに?」 「内緒♪」 「あー、ズルイ」 「帰ろ」 「もう」 「おいてくゾ」 「待ってったら」 「遠回りしちゃったな」 「うん、でもこの方が一緒に長く歩けるよ」 「クッ、そうだな」 「あのね?」 「うん?」 「いつものコースに戻るまで もう少し近くに寄ってもいい?」 「ああ」 「よかった♪」 「そんな事が嬉しいのか?」 「もちろん!」 「そか」 「毎日だって遠回りしたいくらい」 「それも悪くないかもな」 「うん あ、さっきの写真転送してもらっていいかな?」 「え?」 「記念に、ね」 「ホントか?」 「あー、眞一郎くんは私との思い出いらないの?」 「い、いや、それは…」 「いいもん、ちゃんと転送してね、私は永久保存するんだから」 「永久?」 「もちろん! パパとママの記念って事で」 「え?」 「ううん、なんでもない♪」 了 ●あとからあとがき 9話まで視聴済み とにかくイチャイチャさせるためのおハナシです 本シリーズ中初の「4番」登場?です(本人が出てくることはありえません) 本編では愛ちゃんからのキスについて比呂美の知るところとなるかどうか… 怖いですね
https://w.atwiki.jp/nichonazo/pages/46.html
遠回りの封筒の表面の模様です
https://w.atwiki.jp/pixno/pages/76.html
『遠回りの三人』 作者:S i t z(シッツ) ステータス:完結済 タグ:短編、現代 リンク:(別窓) コメント: 黒い男とパジャマの少女が、夕暮時の病院の屋上で会話をするお話です。
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15 遠回り 前へ 戻る 次へ 必死で走って来たせいかしらね……。 リーザス塔まで辿り着くと、夏の日差しの暑さもあって、私はかなり汗ばんでいたわ。 前門をくぐり抜け、塔の前庭に入ると、塔が影になってひんやりとしていた。 私はそこで汗を拭き、少し息を整え、夏草が生い茂る庭の中を急いで歩みを進めた。 塔を駆け上っていくと、まだ昼だっていうのにドラキーや夜の帝王とか、 夜にしか出ない魔物がたくさんいたのよね。 ……何だか異様な雰囲気だったわ。 最上階まで辿り着いたら、リーザス像の前に派手な服装の男が立っているのが見えた。 ピンク地に赤い水玉のシャツ、カエルみたいな真緑色の裾が広がったズボン、 先が槍の先みたいに尖がった黄色い革靴……。 ……テオドールだったわ……。 オウムかインコかと思ったわよ……。 テオドールの足元には、大きなトロールが身動きせずにごろんと横になっている。 テオドールは針金みたいな細い足で、その魔物を蹴り飛ばしていたのよ。 私が静かに歩み寄っていくと、私の気配に気づいたらしく、テオドールはトロールを蹴るのを止め、 気持ちの悪い笑顔を満面に湛えて、私に駆け寄って来た。 「……おお!ゼシカさん!」 「……あんた、何やってんの?」 私が怪訝そうな顔を思いっきりしてるにも関わらず、テオドールは笑ってるとは思えないくらい 不気味な笑顔のままで話し続けたわ。 「見てください!私がこの魔物を倒したんですよ!いや~、大変でした! 私はね、暴力は嫌いなもんですから……武器は持たない主義なんですよ! それでこの魔物と相対した時にですね……なんと!」 テオドールはズボンの後ろポケットからゴソゴソと何かを弄り出した。 「これを振りまいたんですよ!」 そう言って、私の目の前に小さな小瓶を差し出した。 瓶には赤い粉が入っていて、ラベルには「ヌーク草(粉末)」と書いてある。 「こんな大きい魔物でも、わが故郷オーニクス名産、ヌーク草の目潰しの前にはイチコロでした! 目が見えなくなって、自分の足につまづいて……ほら!このザマァですよ!」 「それって……倒したっていうか……気絶させただけなんじゃない?」 「武器など無くても、あなたのような美しい女性を守ることが出来るってことですよねぇ!」 ……このバカには、私の話なんか耳に入っていないようだった。 テオドールはさも魔物を仕留めたのが自慢のように、長く伸びたもみ上げを くるっとカールさせるように触っている。 ……うわっ……気持ち悪い……。 全体はかなり短く刈り揃えている髪形なのに、なんでもみ上げだけバカみたいに長くしてんのよ! 「それよりもゼシカさん!旅から戻られたのですね!で、帰ってきてすぐに 私に会いに来て下さった、と!……いいえ、もうそれ以上は何もおっしゃらなくて結構です。 私の魅力があなたをそんなに私の虜にしていたとは……」 ――こいつのアホな話なんて聞いてらんないわよ!トロールがいつ目覚めるか判んないんだから! 私はとにかくこいつとトロールから、さっさと離れたい一心だったわ。 「……早くここから逃げましょ。この魔物がいつ正気を取り戻すか判らないし……」 私の言葉を聞いて、テオドールはもみ上げから手を離し、ポンと拳で手のひらを打った。 「おお、そうですか!早く村へ帰って、お母様に報告したいのですね!僕との結婚を……! 早く日取りも決めなくてはいけませんね!」 ――このバカ……どうしよう……。 私は何だか頭がガンガンして来ていた。 思わず頭を押さえながら、私はテオドールの顔を見たわ。 「……あんた、頭がどうかしてんじゃないの!?」 「そうです!僕はあなたの魅力でどうかしてしまっているのですよ! ……ああ……ほんとに魅力的だ……ゼシカさん……」 私はテオドールの雰囲気が突然変わったのに気づいた。 気持ち悪い笑顔が、気持ち悪さはそのまんまで、とびっきりスケベそうな顔になっていたのよ! テオドールは摺り足でジリジリと私に近寄り、両腕を無理矢理掴んできた。 こんな細い男にこのバカ力がどこにあるのか解らないけど……ものすごく痛い。 この力を、トロール倒すのに使いなさいよ! 私は必死で振り払おうとしたけど……腕に食い込むくらいの力でぎゅっと二の腕を握られていたので、 抵抗しようとすればするほど、かえって痛みが強くなってしまった。 何とか自由になる両方の手のひらでテオドールの胸を押し退けてはいたけど、 私の目の前にじわじわとテオドールの顔が迫ってくる。 そして……プチュチュンパみたいな気持ち悪い唇が、目の前に段々近づいてきた。 「ゼシカさん……再会の喜びのキスを……」 私は顔を横に向け、背中を思いっきり仰け反らせたわ。 テオドールの押してくる力の強さに、私の足は耐え切れず、後ろへと滑り出していた。 私は思いっきり叫んだ。 「……やめてよ!!……気持ち……悪いってばぁ!!!!」 その時だったわ。テオドールの背後から唸り声が聞こえて来たのよ。 ぐぉぉぉぉ……という、低音の地を這うような声だったわ。 テオドールの肩越しに、ゆらゆらと大きな影が見える。 そして、ドスンドスンと、こちらへ近づいてくる足音がした。 ……さっきテオドールの足元にいたトロールが、目を覚ましていたのよ……。 ゆっくりと、ゆっくりと、体を揺らしながら、テオドールの後ろへと着実に近づいていた。 いくらバカなテオドールでも、その声や足音には気づいたらしく、 振り向いて魔物の姿を確認すると、突然絶叫した。 「ああああああああ!!!」 テオドールは私から手を離し、私を押しのけるようにして 階段の方向へ駆け寄って、逃げようとした。 しかしトロールは持っている棍棒でテオドールの行く手を叩きつぶして遮った。 逃げることが出来なくなったテオドールの襟首をトロールは空いている手で捕まえ、 顔の位置にまで持ち上げた。 「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!」 テオドールは泣きじゃくるような叫び声を上げた。 私は咄嗟にメラゾーマを唱えようとしたわ。 でも……とりあえずテオドールを巻き添えにするのは避けたほうがいい……わよね? 私は腰に付けている鞭を構え、トロールに鞭を振り上げようとした瞬間―― 空気を劈くような、乾いた、剣の切り裂く音が聞こえた。 トロールはその音がすると同時に動きを止め、床に倒れこんだ。 テオドールは、トロールが倒れる時にトロールの手から離され、叩きつけられるように床へ落とされていたわ。 それでもへっぴり腰で逃げようとしていたから……どうやら無事だったみたいね。 トロールの体は、蒸発するかのように白い霧を上げて次第に消えていき、 その霧の向こう側に、うっすらと人影が見えた。 よく目を凝らして見てみると、そこにいたのは……ククールだった。 左手に持ったレイピアには、魔物……多分さっきのトロールの血らしき跡が付いていて、 それを振り落としていたのよ。 突然のククールの出現に私は驚いてしまい、ククールの顔をただぼーっと見つめていた。 ククールは激怒しているかのように厳しい顔をしていて、 目の力がいつもより一段と強くなっているように見えたわ。 そして目線を、腰を抜かして床にへたり込んでいたテオドールへ向け、ゆっくりと近づいていった。 石造りの塔の床に、ククールのブーツの音が響いていく。 テオドールの目の前にまで来ると、ククールはレイピアの切先を、テオドールの顔に向けた。 テオドールの顔は……恐怖でくしゃくしゃに歪んでいたわ。 「……魔物倒すっていうのに、素手で来たバカさ加減は褒めてやるよ。……でもなぁ……」 ククールはそう言うと、しゃがみこんで、テオドールの顔を覗き込み、 レイピアの切先をテオドールの頬へくっつけた。 「ひぃぃぃ……」 レイピアの感触に驚いたのか、ククールの迫力に慄いたのかは判らないけど…… テオドールは小鳥の鳴き声みたいな甲高い悲鳴を上げている。 「愛しの婚約者を押し退けてさ……自分だけ逃げようとするなんて……いい度胸だな……おい」 ククールに凄まれたテオドールは、抜けた腰を引きずるように手を使って体を動かし、 まるで魔物に襲われた時と同じように絶叫しながら、塔の階段を転げ落ちるように逃げていった。 私は魔物とテオドールが目の前からいなくなってほっとしたのか、 力がすーっと体から抜けていきそうになったわ。 だから何とか堪えて足を床に踏みしめていたのよ。 ククールはそんな私の方へ顔を向け、少し目の力を弱めた。 「あれがお前の新しい婚約者なのか?」 「……母さんが勝手に決めただけよ」 私が静かにそう言うと、ククールはレイピアを腰のソードベルトに付いている鞘に収めた。 「それにしてもお前は男運に恵まれねぇな! この前のラグサットといい、今回のあのバカといい……」 「よっ……余計なお世話よ!あんたにそんなこと言われる筋合いなんてないわよ!」 「あーそうだな!それよりもさ、助けてもらって礼もねーのかよ!」 「はいはい、ありがとうございました!!でもね、誰も助けて欲しいなんて頼んだ覚えは無いわよ!」 「ったく、口の減らねー女だな!」 ――こんなところで、何ケンカしてんのよ、私たち……。 本当は……ククールにリーザス村へ送ってもらったら、今日こそはちゃんと ククールに自分の気持ちを伝えようと思っていたのに……あのバカが面倒くさいことにしてくれちゃってさ……。 私は昨日、サヴェッラの宿で今日のために覚悟を決めていたのよ! それなのに……この騒ぎのせいで、その覚悟もすっかり萎んじゃったわよ……。 私は何だか悔しくなって来て、少し泣きそうになっていたわ。 そのおかげで、ククールの言葉に反撃する気も失せてしまった。 私がずっと黙っていると、ククールは急に真面目な顔つきになった。 そしてゆっくりと塔の天井を見上げ、静かに目を閉じた。 私は涙を飲み込もうと必死で、スカートに付いた汚れを払い落としたりして、気を紛らわせようとしていたのよ。 私がそんなことをしている間、ククールはそのままの姿勢でじっとしていると、 少しして、突然目を開け、顔を下に向けて話し始めた。 「……こんなケンカ……したい訳じゃ、ないん……だよな」 ククールはそのままの姿勢で、苦笑いして、肩を震わせた。 「何かあると……口ゲンカばっかりだったよな……オレたち。 初めて会った頃は、さ。それから結構経つのに……変わってないな」 ククールは左手を開き、手のひらをじっと見つめている。 しばらくして開いていた手を強く握り締めた。 「最初から……ちゃんと言えばよかったんだよな……。 何でオレはこうも……遠回りばっかりなんだろうな……。ほんとに……時間がかかり過ぎて……」 そう言ってククールは、私へと少し近づき、私の顔を真正面から見つめて話し続けた。 私はスカートの生地を両手でぎゅっと握り締めていたわ。 「最初にゼシカと会った時はさ、可愛いな、とだけ思ってたんだよ。 可愛いだけじゃなく、スタイルもいいし、胸も大きいし……さ。オレ好みだなー……なんて思って……ね。 強気な性格も、その方が落とし甲斐があっていいや、何て思ったり……」 ククールはちょっと照れたみたいに少し上目遣いになり、首を少しかしげた。 「でもさ、いつからか判んないけど……それだけじゃなくなってたんだよな……。 暗黒神倒して、旅が終わって、ゼシカと離れ離れになって……生きた心地がしなかった」 「わっ私も……」 私はククールの言葉を聞いて、思わず声が出てしまった。 私は胸に手を当てて、必死で自分を落ち着かせようとしたわ。 「えっとね、えーっと……私もね……えーっと……ククールと会えなくなってからね、 ずーっとククールのことばっかり考えて……会いたくてどうしようも無いのに、 会いに行く勇気も無くって……いざまた会えるとなったら、会いたくないような気もしたりして……」 言いたいことはたくさんあるのに、何だか空回りしちゃって……自分でも何を言ってるのか判らなかった。 だから、もう覚悟を決めて、素直な言葉を口にしたのよ。 「とっ……とにかくね!ククールと……一緒にいたいの……。ククールじゃなきゃ……ダメ……なのよ」 ……やっと自分の気持ちを言えた……って思ったら、体がものすごく熱くなってきたのが判ったわ。 顔なんて、ほんとに火が出そうなくらいに熱い。 するとククールは私へ歩み寄り、両手で私をぎゅっと抱きしめた。 ククールの鼓動の音が、私の鼓動に重なり合って聞こえてくる。 ククールの首筋からは、ほのかに練り香水の匂いが漂って来ていた。 甘くて、涼しげで、心が落ち着くような、タイムの香り……。 両手の力を少し緩めると、ククールはお互いの額をこつん、とくっつけた。 ククールの顔が私の目の前にあって、とびっきりの笑顔で微笑んでいたのよ。 「……オレたち何やってたんだろうな……こんなに近くにいたのに」 ククールがそう言うと、私は可笑しみが込み上げてきて、思わず声を出して笑ってしまった。 ククールも目を細めて笑っている。 「ほんと……遠回り、だね。エイトたちとした旅みたい……。 行かなきゃ行けないところがあるのに……カジノ行ったり、迷っちゃって全然違う町に行ったり……」 「そう……だな。あの旅みたいだな……」 そして……ククールは少し目を伏せ気味にして、呟いた。 「ゼシカ……もうこれしか言えねーや」 そう言ってククールは額を離し、ふうっ、と深く息を吐いた。 「愛してる」 その言葉に続けるように、ククールの両手が私の顔を包み込んだ。 手の当たっている頬の部分が脈打つようにドクドクと騒ぎ出す。 ククールはしばらくそのままで、私の顔をじっと見つめていた。 彼の青い瞳の中に、私が小さく映り込んいる。 次第にククールの顔が私に近づき、彼の唇が私の唇を優しく包み込んだ。 彼の唇は私の唇を確かめるように、ゆっくりと深く潜り込む。 でも次の瞬間には、唇が離れないギリギリのところにまで戻っていって、その繰り返しをしていく。 私は瞳を閉じて、彼の唇の動きに身を任せていたわ。 どれくらい時間が経ったのかは判らなかったけど……不意に唇が離され、私は目を開いた。 目の前には、微笑むククールがいる。 私は何だか目の前がチカチカしてきて、ククールの胸にもたれ込んでしまったのよ。 そんな私を、ククールは柔らかな力で抱きしめてくれた。 ちょっと躊躇しながら、私も彼の背中に手を回した。 上着を通して、彼の固い筋肉や背骨の感触が手に当たる。 私を抱きしめたままで、彼は私の額に唇を付けた。 そこから唇はゆっくりと下に降りてきて、眉間に辿り着く。 両方の瞼へ口づけしながら、今度は左の頬へ唇が当たる。 頬で少し留まっていたと思ったら、少ししてククールは頬から滑るように耳元に唇を寄せ、 耳朶へ甘噛みするように口づけた。 すると、耳朶から背筋にザワザワとした感覚が走り、私は思わずびくっと体を震わせた。 「な……何するのよ!!!」 私は彼の体から手を離し、耳を押さえながらククールを睨みつけた。 自分の顔が真っ赤になって、首までも赤く染まっていくのを感じていたわ。 ククールは私の体に腕を巻きつけたままで、ニヤニヤ笑って、そんな私の顔を覗き込んでいる。 「……残りは後でのお楽しみ、ってこと……かな?」 「……サイテー」 私が恥ずかしさのあまりプイと横を向くと、ククールはため息を一つついて、私の額に唇を付けた。 そして私の体から手を離し、右手を私の前に差し出した。 「……帰ろう」 「うん……」 私は短く返事をして、彼の手に自分の手を重ね合わた。 そして強く握りしめた。 二人で塔を出ると、リーザス村まで歩いて帰ることにしたのよ。 ククールの移動呪文を使えば、すぐに村へ着くことは出来るんだけど…… 時間がかかってもいいから、二人で手を繋いで、歩いて帰りたかったのよ。 リーザス村まで続く道は、夏特有のむっとする草いきれが立ち込めていたわ。 太陽も少し陰ってきていたのに、暑さは塔に来たときと変わっていない。 いつもだったらうんざりしそうな、そんな道のりも、二人でいたら苦にならなかったのよね。 歩いている間、二人とも話したいことはいろいろあるはずなのに……無言のままで、 お互い顔を見合わせて微笑み合うだけ……だったわ。 ……何だかね、言葉にして話しちゃうと、いろんな思いが逃げていってしまいそうな気がして……。 私はククールの顔を見つめていられるなら、話さなくっても、それだけで十分だった。 ◇ リーザス村の入り口に着くと、私はククールが昨日言っていたことをふと思い出したのよ。 「そう言えば……これからパルミドに行くんだったよね?」 私が訪ねると、ククールははっと思い出したようにな顔をした。 「ああ、そうだったな。とりあえず調べることは調べとかないと……」 「私も……行く!!一緒に行く!!絶っ対に行く!!」 「え……?そりゃ嬉しいけど……」 ククールは私の息巻いている姿に、びっくりしているようだった。 「ちょ……ちょっとここで待っててね。母さんに話してくるから!」 私はククールを村の外で待たせたまま、村の中に走って入っていった。 村の人たちは私を見ると、「おや、ゼシカお嬢様、お帰りなさいませ!」 「急いでどうなさった?」と話しかけてきた。 だけど私は気が焦っていたので、「ごめん!後でね!」とだけ叫んで、 家へ向かって全速力で駆けていったわ。 家に着き、ドアを開けて入っていくと、出迎えたメイドにも目もくれず、二階へ駆け上がった。 二階にある広間で、母さんはお茶を飲みながら、レース編みをしていた。 「母さん!!」 私が呼ぶと、母さんは驚いた表情をしてこちらを見た。 「あら!ゼシカお帰りなさい。……いつ帰って来ていたの?」 私は息を切らしながら、母さんの横にまで歩いていった。 「今はそんなこと、どーでもいいのよ!」 私が言うと、母さんは編みかけのレースをテーブルに置き、私のいる方へ体を向けた。 「どうでもよくないわよ!さっきテオドールさんが血相変えて帰ってきてね、 『怖い魔物や怖い男がいるような、こんな村はもうたくさんだ』って言って、 オーニクスに戻ってしまわれたのよ!……あなた、テオドールさんに何かしたの?」 母さんが私に疑いの目を向けるので、私は必死で反論したわ。 「してないわよ!しようとしたのはあいつの方で……ってもう……その話は後で!それよりも……母さん!」 私はごくりと息を呑み、母さんの顔を見据えて、言った。 「私……好きな人がいるの!その人が……どーしても行かなきゃ行けないところがあるのよ! だから、その人について行くために……また旅に出ます!……ごめんなさい!」 そう言って私が頭を下げると、少し間を置いて、母さんは突然高い笑い声を上げた。 「あーら、全然構わなくってよ。あなたがあの銀髪のハンサムな騎士さんと一緒に、どこに行こうとねぇ……」 「なっ……何で知ってんのよ!!ククールのこと!!」 ――信じられない……どうして母さんが知ってるの!? ……だって……私、ククールのことを思ってるなんて、誰にも言ったことが無いはずなのに……! 「これでもあなたを生んで育てた母親ですからね、あなたの顔を見れば一発で判ります」 つんと澄ましたような態度をして、母さんが私に微笑みかけた。 私は驚きのあまり、口を開けたままで動きが止まってしまっていたわ。 「……最初の旅の時、あなたが村へ帰ってくる少し前だったかしら……旅の仲間の方々と一緒に、 ここへ寄ったことがあったでしょう?確か……まだ空が真っ赤に染まっていた頃だったわよね? リーザス塔にオーブとやらを探しに来た、とか言っていた時のことよ。 おてんばで男勝りなあなたが……あのハンサムさんを見る時だけ、 恋する女の子の顔になってるんですもの! ……きっと勝ち気なあなたのことだから、誰にも気づかれてないとでも思っていたんじゃなくって?」 母さんの話を聞いているうちに、私は恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤になって行くのが判った。 だけど母さんは、そんな私の様子を気にも止めず、ゆったりとお茶を飲んでいる。 照れ隠しもあって、私は大きな声で母さんを問い詰めようとした。 「じゃ……じゃあなんで、あんな婚約者なんて用意したのよ!」 母さんはティーカップをカップ皿の上に静かに置き、首を傾げて話し始めた。 「だって……あなた、私が『好きな人はいるの?』って聞いたら、何にも答えなかったでしょう? だから、もうあのハンサムさんとは何でもないのかなー?……なんて思っていたのよ。 私はアルバート家に嫁いで来た者として、この家を存続させるのが役目ですもの! とにかくあなたには結婚してもらわないとねぇ……。 たまたま良いご縁のお話が来たものだから、あなたに紹介しただけのことよ」 ……白々しいわ……。 この調子だと、私が村に帰って来てからも、ククールのことをずっと思ってたことを絶対知ってたはずよ……。 母さんは私の反応になんて目もくれず、まだ話し続けていた。 「それにテオドールさんだって、いろいろ頑張って下さったのよ。 あなたがいない間、この村の見回りもしてくれたし、畑の農作業も、家の掃除も、 庭の芝刈りも、帳簿付けも……お願いしたら、ぜーんぶやって下さったのよ! サーベルトが亡くなって……滞ってた作業が全て片付いたんですから!本当に助かったわ……」 「それって……体よくテオドールを利用した……ってこと?」 私は腕を組んで母さんを睨みつけた。 それでも母さんはいつもと変わらない、上品なマダムの表情を湛えていたわ。 「まぁ!そんな言い方は良くないわよ、ゼシカ。テオドールさんがお人好しなだけ、でしょう?」 ……私は頭がズキズキ痛んできそうだった。何考えてるのよ……母さん。 私が何と言い返せばいいか判らずに黙っていると、母さんはゆっくりと椅子から立ち上がった。 そして私の右手を自分の左手に取り、その上から右手を乗せて、 私の手を大事なもののように、静かに撫で始めた。 「親と言うものはね……まず自分の子供の幸せを第一に考えるものなのよ。 ……あなたにとっての幸せは、親の言いなりになって、家柄のいい男性と結婚して、 何の苦労もせずに生きて行くことだと、私はずっと思っていたわ。 ……サーベルトが亡くなって、あなたが旅に出ると言い出すまではね」 母さんは少し目を伏せて、静かな口調で話を続けた。 「でも……それが間違いだったことに気づいたのよ。 あなたがあのハンサムさんを見つめる眼差しを見てね……。 ああ、やっとこの子はサーベルト以外で、自分を素直に出せる人を 見つけることが出来たのね……と思って……私は気づいたの。 あなたは……幸せを人から与えられるのではなく、自分で見つけることが出来る子、だったのよね」 言葉をそこで止め、母さんは私の手を離した。そして、私の肩をポンと叩いた。 「……いってらっしゃい、ゼシカ。アルバート家の女はね、代々情熱的なのよ。 ……リーザス像を作った、リーザス様がそうだったようにね」 母さんはそう言って微笑み、私を優しい瞳で見つめた。 私は何だか気恥ずかしくって、うまく母さんと視線を合わせることが出来なかったけど…… それでも何とか母さんの顔をちらっと見て、言うことが出来たのよ。 ――「いってきます」ってね……。 私は母さんに見送られながら、家を後にした。 家から続く緩やかな下り坂を半分まで駆け下りると、ふと後ろを振り返って、家を見上げた。 ――ここは、私の家……。 ご先祖様が築いてくれた歴史の上にあって、揺ぎ無い場所。 私が生まれて、育ってきた……家。 私はやっぱり、いずれここに戻って来て、母さんのように家のために生きていくのかしら? 私はそんな思いを打ち払うように、首を軽く振った。 そして家に背を向け、急いで走り出した。 とりあえず今、私が行くべきところは……ククールの待つ場所なんだから……。 前へ 戻る 次へ
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作詞:なゆごろう 作曲:赤髪 編曲:赤髪 歌:IA 翻譯:セキ 繞道 與我的此刻相連的那幅畫 今天亦持續添加著 雖然將與你有關的回憶 拋到了一旁 卻一直對於這個決定 感到十分地後悔 今天依然笨拙地繞著遠路 逐漸消失的那心跳聲亦然 逐漸淡薄的那道身影亦然 我都是知曉的 肯定早就察覺到了吧 唯一能做的只有逃跑 想再更快些傳達出去 至今依然喜歡著你啊 那一夜你忘記帶走的這件T恤 有著我一直都很喜歡的味道 滿天星空倒映在水漥之中 今天亦與雨滴一同溶散開來 想要讓你明白的話語 肯定 只以單純的言詞 是無法好好傳達的吧 肯定那時就已察覺到了吧 如此糟糕的誤會 想再更快些傳達出去 至今仍無法忘記你啊 將那時埋於心中的 無法向你說出口的 那份心意隱藏起來 至今為止度過的每天 就如同幻影一般 吶 不想要孤單一人啊 和你一起度過的那些日子 肯定馬上就會遺忘消散了吧 不過就算明白了那種事 至今仍然喜歡著你啊 至今仍無法忘記你啊 同時上傳 なゆごろうver.
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水恋/遠回りハイウェイは、河野万里奈の楽曲である。 目次 概要 作家情報 クレジット 試聴動画 収録CD一覧 配信情報 概要 「遠回りハイウェイ」は2017年3月25日に開催された『DEARSTAGE WEEK supported by japanぐる~ヴ Let's Play Ball!~シーズン開幕戦~』にて初披露された楽曲。「水恋」2019年に発売された再デビュー2ndシングルの楽曲。楽曲が同じで歌詞が異なるバージョンとなっている。田中秀和が作曲・編曲を担当した。
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https //ja.wikipedia.org/wiki/帰り道は遠回りしたくなる https //48pedia.org/帰り道は遠回りしたくなる
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【検索用 とおまわりのみちにしかさかないはな 登録タグ 2019年 COBA x5884x VOCALOID VY1 albh と ニコニコ外公開曲 初音ミク 曲 曲た】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント VY1×初音ミク版 初音ミク版 作詞:COBA x5884x 作曲:COBA x5884x 編曲:COBA x5884x イラスト:albh 唄:初音ミク・VY1 曲紹介 曲名:『遠回りの道にしか咲かない花』(とおまわりのみちにしかさかないはな) COBA x5884x氏、13作品目。 歌詞 (動画より書き起こし) 何をしても上手くなんかいくことなく 何の為に生まれてきたかも分からず いつの間にか素直に笑えなくなっていた また自分が大嫌いになっていた・・・ 何度も「もう、消えたい・・・」って思ってた それでも、僕はまだ この「今」を生きてる 誰もしない遠回りの道にしか 咲かない花を美しいと思える日は来るかな 周りの楽しそうな声が嫌になり いつの間にか一人が好きになっていた 誰かにこの気持ち、分かってほしい でも分かってたまるかって思ったりもしている 耐え続けるなんてちっともえらくない 頑張って耐えても 本当につらいなら 耐え続けた先に何もないのなら 今すぐその場所を捨てて逃げ出してもいいはず 誰だって幸せだけを 願いながら 求めながら 生きてる 誰かに認められたくて 僕はまだ 今でも、僕はまだ この「今」を生きてる 誰もしない遠回りの道にしか 咲かない花を美しいと思える日を 信じて 明日へ 未来へ コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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ppphp は PHP を難しくするサイトです。 初心者に優しいと評判の PHP を、遠回りに地道に、難しく解説していきます。 勿論、すぐ PHP を使えるようにはなりません。 早く PHP を使ってサイトを作りたい人は回れ右して下さい。 PHP は、確かに初心者でも手軽に使うことの出来るプログラミング言語です。 ただし、初心者が作ったサイトは、十中八九、セキュリティホールを抱えてしまいます。 PHP は、文法エラーなどは教えてくれますが、セキュリティホールに対しては警告も出してくれないからです。 (当然のことですね) このサイトでは、そういったセキュリティ周りのことを中心にしながらも、 情報処理一般技術からインターネットの構造、 Unix/Linux に Apache 、 PHP 以外の選択肢や、良いプログラムを書くための指針など、 WEB プログラマとして必要なものを一通り解説する予定です。 ppphp は Progressive/Proper PHP の略ですが、後付の上にどう考えても名前負けです。 本当にありがとうございました。