約 72,146 件
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/849.html
パンツで理性喪失 (2) 騎兵砲 銃声より、はるかに重いとどろきが演習場に響く。 ルキアニスは手で押さえていたけれど、それさえ押しぬいて耳を打つ。 ほとばしらせた白煙の中から砲が退いてくる。大きな車輪が土くれを跳ね上げ、それが止まるとすぐさま士卒が駆け寄る。洗棍を砲口に押し込んでさらい、つづいて装薬嚢が押し棒で奥まで押し込まれる。さらに砲丸が入れられた。 砲は、ルキアニスが見知っているものより短い作りのものだ。車輪は大きなものだけれど、砲を支え後ろに伸びる架尾は短めだ。ただ架尾からは二股の棒が延びている。馬につなぐための曳き棒だ。 その曳き棒のそれぞれに従卒がつく。曳くためじゃない。号令とともに二人は一気に砲を押し出し、杭で示された放列位置へと押し込む。さらに砲尾には照準手がつく。背をかがめて狙いを定める。砲の下の螺子を廻し、砲口を上げる。曳き棒に肩をあてた従卒が、じわりとわずかずつ架尾をずらす。 ふいに砲尾の照準手が両腕を上げて何事か言い、砲から退いた。そのときになってやっと、ルキアニスは己の耳を塞いだままでいたことに気づいた。 だがすぐに打ち放たれることはわかっていた。点火棍を携えた発火手が砲尾につく。 火縄が赤く光る発火棍が、点火栓に押し付ける。しゅっと火花が飛ぶ。ルキアニスは耳を押さえる手に力を込める。 「!」 それでも砲声は耳を打つ。放たれた砲丸は、演習場を飛びぬけ緑のなかの標的板の手前で突き刺さり、土くれを跳ね上げる。白煙から砲が退いてくる。砲にふたたび従士従卒たちが駆け寄ってゆく。だが、それで終わりだった。 従士たちはそれぞれのところで気をつけをする。状況の終わりだ。砲小隊長がくるりと振り返り、そしてルキアニスを見てかすかな笑みを浮かべた。 ルキアニスは、耳を押さえていた手をそっと離し、その腕を後ろに廻す。音に驚いてなどいられない。彼らは、騎兵砲中隊だ。これからの相棒になる。馬たちのほうが、落ち着いているくらいだった。馬繋ぎからすばやく二頭の馬が引かれ来る。さっきまで砲声がとどろいていたことなどどこ吹く風で、砲に尻を向けて立たされ、その馬具に砲の曳き棒がそのままつながれる。 ルキアニスとマルクスが魔道課程に派遣されている間に、第十三連隊には騎兵砲中隊が配属されていた。砲は短く、その分だけ軽いのだとルキアニスは聞いた。威力にも限りがあり、帝國軍が砲に求める力に、ぎりぎり届くほどしかないという。 「ま、棍棒には細く、杖には短いって奴だな」 クロワティス参謀は顎鬚をごしごしこすりながら言うのだった。この連隊参謀は、いつでもふらりと現れ、なにやら怪しいことを言い出す。今日もそうだ。連隊長室を辞去したルキアニスとマルクスは、がっつり首根っこを捕まえられて、ここまで引っ張ってこられた。まだ中隊長に帰隊報告もしていないというのに。 「そいつは後回しでかまわんぜ」 などとクロワティス参謀は言いながら、ルキアニスとマルクスを従えて歩いた。 「中隊は演習場だ。帰隊報告されてもどうにもならん」 マルクスは、だから早く中隊に帰隊報告したいんですが、などとぼそぼそあらがったけれど、この参謀に通じるはずもない。 ルキアニスたちの中隊は、中隊としてまとまったかたちの訓練に移っていた。けれどルキアニスとマルクスは、今までずっと魔道課程に派遣されていて、中隊訓練には参加していない。もちろんそれは連隊長の命令だからだ。シルディール連隊長にはいつものように何か考えがあるんだろうとルキアニスは思っていた。 機装甲は中隊で扱われるべきものだと、帝國軍は定めていた。どんなに少なくなっても小隊より小さく切り分けて使うべきではないとしていた。だから帝國軍の機甲部隊は、中隊で戦うよう訓練されている。その訓練から外されるのは、中隊には要らないと言われているような気がした。 「それで、だ」 クロワティス参謀の声に、ルキアニスは顔を上げた。砲と馬たちは、馬場を巡り歩いていた。砲を曳く馬は二頭立てだ。それだけでなく、砲を操っていた士卒らもそれぞれに馬に乗っていた。そうして騎兵は砲を得た。 ただ、ルキアニスたちの前で砲を操って見せた士卒たちだけは、どうみてもおっかなびっくりに馬に乗っていた。騎兵には見えない。 そう、彼らに限っては仕方が無い。彼らはもともと騎兵ではない。 「ありゃ砲兵から引っ張ってきた」 「砲兵ですか?」 問い返すマルクスに、クロワティス参謀はにやりと笑みを見せる。 「騎兵は操砲を知らんからな。騎兵から砲兵に人を送って習得させるゆとりも無い」 馬さばきの上手い砲小隊は、砲を扱うときには怒鳴り声が絶えなかったし、唯一つだけある操砲の上手い小隊は、おっかなびっくり馬に乗っている。 だが、と参謀は言って髪をぼりぼりと掻いて、おっかなびっくりの砲兵達を見る。 「あいつらも馬にもてあまされているしなあ」 「大丈夫なんですか?」 「馬鹿野郎、あれ見て大丈夫だと太鼓判を押せるやつがあるか」 参謀は腰に手をあて、冗談とも本気ともつかぬ口調で言う。 「あいつらが使い物にならなかったら、連隊の火力はお前ら二人ということになる」 「・・・・・・」 マルクスは思わず黙り込む。クロワティス参謀のにやにや笑いは変わらない。 「と、いうことで、お前達は火力展示を行う」 「展示?」 思わずルキアニスはマルクスと顔を見合わせる。クロワティス参謀は顎鬚をつまみこすりながら続ける。 「連隊で魔道戦を指揮できるのは、連隊長のほかにはお前達の小隊長しかいない。各中隊長も、大隊長も、連隊幹部も、もちろん連隊長も期待している」 「れ、連隊長はさっきは何も言ってませんでしたけど・・・・・・」 「だが、細部不明な点があれば、連隊長が直接指導してくださるそうだ」 「ええ!」 ルキアニスとマルクスは、揃って声をあげて退く。クロワティス参謀は楽しげに声を上げて笑う。 「つまりだ、お前達は連隊幹部の魔道戦演習の大事な演習問題ってことだ」 「!」 「何てことを、連隊長から直に言われたら、お前ら・・・・・・」 クロワティス参謀は、言いかけて息をつき、ぽりぽりと髭のあごを掻いた。 「・・・・・・ま、がんばれや」
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1065.html
補っておこうと思って忘れてたw オービジクランポス≒ラテン語の関所+草原 すなわち関ヶ原。 連合=西軍 枢軸=東軍。 展開の断章 (4) 「戦場機動力を生かし半包囲にまでいたりながら、敵からの正面攻撃で瓦解した戦例がある。オービジクランポスの戦いの連合側の動きだ」 急な言葉に、ルキアニスは戸惑った。 もちろんルキアニスも戦史は覚えている。関所乃原と呼ばれる草原を見下ろす山での戦いだ。 将軍は今、敵勢を見る丘の斜面で、昔のことを当たり前のように語る。 「当時、枢軸側主力の合一は遅れていた。その合一を阻止するために、連合側は強行軍で追従し、半包囲体制を構築した」 「・・・・・・だが半包囲翼は動かず」 応じたのはシルディール連隊長ではなく、マルクスだった。 「そのうえ正面攻撃を受けて・・・・・・」 だがマルクスは迂闊なことを口にしたとばかり、途中で言葉を途切れさせる。 「その通り、消耗し突破された」 将軍は楽しげだ。 「枢軸側は戦力の合一をはからぬまま、連合側を撃破した。教訓は深いだろう。戦場機動による優位の確立は、常に危うい剣ヶ峰だ。それでも行うのは、もって敵の弱点を痛打しうる策を取りうるからだ。しかしその策が不発ならば、構えのまま押し崩される」 サウル・カダフ将軍は、傾きかけた日差しの中で再び敵勢へと振り返る。 「ここには王太子殿下をぜひお連れしよう。これから帝國とのお付き合いも長く長くなるだろうからねえ」 腰に手をあてて、砂っぽい風に吹かれる。そのまま腰の後ろに手を組んだ将軍は、振り向きもせずに言った。 「13連隊長。儂は9連隊を南西斜面に放列展開させる。13連隊は兵力の半数をもって街道南側を進出、展開。9連隊の放列展開を援護せよ。これより、日没までの間にだ」 「はい、閣下」 「13連隊の残りの半分は動かせない。むしろ別の援護行動を行わねばならない。なぜなら我々が機動を開始すれば、アル・ディオラシス国王陛下とて逆襲を考えるだろう」 将軍は続ける。 「展開時こそが我が軍最大の弱点だ。ゆえに7、8連隊は、前進して敵軍の行動を抑制する。統制線はメッセナ街道そのものだ」 シルディール連隊長は、じっと眼下の街道を見つめていた。 前には敵のいる丘があり、その広い裾野には三個の機甲方陣がある。すそ野はすこしずつ下り行き、街道となり、街道を南に越えれば、ふたたびゆるやかなのぼりの斜面となり、ここに至る。斜面はさらに背後の第二の丘の頂となる。 ルキアニスにもわかった。敵の丘を半包囲するように旅団は展開する。敵前で構えながら、左の腕を大きく伸ばすようにして。 それは剣術より拳闘の方が近いとルキアニスは思った。左から横殴りに打とうとするなら、敵のまっすぐで早い拳をしのがねばならない。横殴りに打つために、またまっすぐで早い拳をしのぐために、第13連隊を使うとサウル・カダフ将軍は言っている。 それを今から、お日様が落ちるまでの間にだ。陽は傾きはじめている。もうあと一刻と少ししかないだろう。 「お任せください、閣下」 シルディール連隊長は凛と応じる。 その声を背に受けて、肩越しに頷き返したサウル・カダフ将軍はもう一度、敵勢のある丘を見やった。 夕刻へ傾いてゆく日差しの中で、風が止まる。 「王には王の愉悦を、将軍には将軍の愉悦を、英雄には英雄の愉悦を」 不意の言葉は、独り語なのだろうか。 「俺は広い世界を見たいと思っていた。いつの間にか、遠くへ来ちまったもんさ」 将軍はシルディール連隊長に聞かせようとしたのか、あるいはルキアニスたちにも聞かせようとしたのだろうか。 「だがすべてはひとときのこと。時は移り、すべては過ぎ去る。明日が我らの日となろうとなるまいと」 こちらの時間も無いな、ちょっとばかり急がねばならん。将軍は言いながら、警衛を呼ぶ。 「では、ここを退くとしよう。ここは本陣を置くにはちょうどいいが、ちょうど良すぎて目立ちすぎる」 あ、そうそう、とサウル・カダフ将軍は言ってルキアニスを見た。 「君はお茶の約束を忘れないようにね」 急に呼びかけられてルキアニスは驚いた。将軍は思わせぶりに片目をつむって見せて、ルキアニスはさらに驚いた。 「・・・・・・はい、閣下」 そのルキアニスを、連隊長とマルクスがともに見ている。その目が妙に居心地悪い。 「アモニス上騎、任務に戻ります」 ルキアニスはあわてて己の機へ向かい、その背を這い上がった。 愉悦と言われても困る。ルキアニスは思いながら操縦席についた。仮面をつけて心を開き、いつものように機体と己を一つに重ねる。 夕暮れが近づいている。 時は移り、すべては過ぎ去る。その言葉のようにサウル・カダフ将軍は馬を駆けさせる。ルキアニスも後を追って駆ける。 英雄の愉悦か、とルキアニスは思った。シルディールは西日を横顔に受けながら、何を思っていたのだろう。広い世界なのか、遠くなのか、ルキアニスにはわからない。連隊長は同じ丘で同じものを見ながら、何を見たのだろう。 いつかの時、帝都の学院でほんの少しだけ話をした子が、こんな遠い国にお輿入れされるなんて、思ってもみなかった。 いくさにあって、人は傷つくのですよね、と問われたことは、もう遠い昔に思える。あの時の学生さんは、今では王太子妃殿下だ。閲兵の時に遠くに見ていただけだ。 気付けばルキアニスも遠く遠くへやってきてしまっていた。西方から帝都へ、帝都から再び西方へ。あの雨の夜を越えて、再び森の国トイトブルグへ。そして今、はるかはるか南のこの国へとやってきている。どれほど遠いところへ来てしまったのだろう。 この鑓はあの子のために振るわれるのだろうか。帝國軍のすべてが、そのために来たのだろうか。 もちろん、わかっている。 すべては帝國のために。連隊長がそう命じるなら、その命じるままに。 帝國のために。 そう「帝國」のために。
https://w.atwiki.jp/theregulation/pages/65.html
※イメージ画像です。 スペル:James Foster 国籍:アメリカ合衆国 階級:大佐 年齢:56歳 身長:180cm 体重:80kg 誕生日:5月28日 略歴 アレン・フォスターの父親であり、アメリカ陸軍 第75レンジャー連隊の連隊長でもある人物。 アメリカ陸軍に入隊した後、第1歩兵師団に配属された。 その後、第75レンジャー連隊、その次にアメリカ陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)へと転属する。 豊富な経験、作戦遂行能力の高さ、指揮官として統率力から第75レンジャー連隊の連隊長に任命され、大佐となる。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/814.html
五 「はぁ? あんた何言ってるの」 「だから、そろそろ連隊全体の事も考えよう、って言ってるんだって」 「何それ、まるでわたしが連隊長として仕事していないみたいじゃない」 「だーかーらー、そういうんじゃないって。なあ、ルイ、確かに今お前がやっている事は、ものすごいと思う。でも、そのものすごい事についてこれるように、連隊に実力をつけさせないとヤバイって、俺はそう思うんだ」 こうなる事が判りきっていたせいもあって、ヒリガルは、ルイ・フランシスの怒り心頭に発している表情に内心でうんざりしていた。 そんな彼の内心が判るのであろう、ルイは、怒りの矛先を自分の副官から参謀長へと変更した。 「コルベルクでしょう。あのハゲ、あんたに何吹き込んだのよ!?」 「違うって。演習を中止して、射撃試験をやるんだったら、必要な物品の手配の変更があるだろ。それが俺の仕事なんだから」 「じゃあなに、あんた、副官の分際で連隊長であるわたしの決心に反対しようっていうの?」 「ルイ!!」 あたり構わず怒りの矛先を向けるルイ・フランシスの態度に、さすがのヒリガルも堪忍袋の尾が切れたのか、とうとう怒鳴りつけた。 「コルベルク先生は、お前の事をしっかり支えてくれているだろ! わざわざ連隊本部に参謀が配属された意味を考えろよ」 「うるさいうるさいうるさい!!」 毛を逆立てた猫のようになって、ルイは、ヒリガルに向かって怒鳴った。 さすがに息が切れたのか、ぜいぜいと息を吐いているルイに向かって、ヒリガルは、今度は声の調子を落として言い聞かせるように話し始めた。 「コルベルク先生は、一度退役したのを、わざわざ復役してくれたんだぜ。俺達が教え子だからってさ。それに、あの人がお前の面子を潰すような真似を一度でもした事があるかよ? なあ、誰もがお前みたいに息継ぎもせずに走り続ける事なんて、できないんだって。だからさ、今は一旦立ち止まって、後からついてくる奴らの事を待とう。な?」 「……………」 「連隊のみんなだって、砲兵なんだから、装砲訓練だけじゃなくって実弾演習をやりたいのも判るだろ? だけどさ、今までは展示演習の参加小隊ばかり実弾を撃たせて貰って、他の小隊はその分割を喰っていたんだ。それでも誰も文句を言わなかったのは、展示演習がどれだけ大切か、それを判っていたからだぜ。だからさ、ここで一区切りついたんだし、一回基本に立ち返ってみる必要もあると思うんだ、俺は」 不満そうな表情でじっとヒリガルの事を見つめていたルイ・フランシスは、視線を外すとその場にぺたんと尻餅をついた。 「だって、旅団長は、あのサウル・カダフ将軍よ? シルディール元帥の懐刀で、大ガイユス元帥の信頼も篤くて。そんなすごい人が、わたし達がやっている事の問題点に気がつかないわけ、ないじゃない……」 「そりゃそうさ。でも、それを実際に指摘されたわけじゃないだろ? まだその段階じゃないって、将軍も判ってくれているんだって」 「そうかな? 大丈夫かな。判ってもらえているのかな」 「ああ、大丈夫だって」 女の子座りをしてうつむいたまま、とつとつと呟くルイ・フランシスに、ヒリガルはしっかりとした声でそう太鼓判を押した。 内戦中は第十二軍団長を務め、戦後は参謀次長の重職にあったサウル・カダフが何を考えているのか、そんな事は一介の騎士長に過ぎないヒリガルに判るわけがない。だが、今はそう言ってルイを元気づけるほか、できる事なんてありはしない。 「…・・・判った」 「じゃあ、どうする?」 「事前計画の通り、部隊演習をやるから」 「そっか。じゃあ、それで書類は作るから」 「うん」 とりあえず事が穏便に済みそうで、ヒリガルは、ふぅ、と、安心したように一息ついた。
https://w.atwiki.jp/nikuq-niuniu/pages/1665.html
嗚呼、聖フィネア連隊 依頼主 :アルフィノ(クルザス西部高地 X16-Y22) 受注条件:レベル51~ 概要 :聖フィネア連隊の露営地のアルフィノは、異端者の情報収集にとりかかりたいようだ。 アルフィノ 「私は、この辺りの数人から、情報を集めてみる。 君も「氷の巫女」や異端者にからんだ証言を、 集めてみてくれないか?」 聖フィネア連隊の露営地で情報を集める 無骨な槍兵 「すまんが、異端者なんぞ見かけてないな。 見てのとおり、人の往来なんざなきに等しい場所だ。 大人数の集団が通れば、わかりそうなもんだが・・・・・・。」 無骨な弓兵 「・・・・・・異端者を見たかだって? 知らん知らん、目の前を通り過ぎたって、気にしないね。 何せ俺の狙いは、ドデカいドラゴン族を狩ることだからな。 はやく獲物が来ないもんかと、空ばっかり見上げてる。 地上を駆けずり回る、ザコどもは眼中にないのさ。」 ルシェー 「異端者を探してるって? だったら、ピエリケにでもあたっとくれ。 アタシは、連隊のバカどものために、 飯を作ったり何だり、面倒みてやるので手一杯さ。 露営地の外のことなんざ、気に懸けてる余裕はなくてね。」 ピエリケと話す (クエスト進行前) ピエリケ 「へぇ、この露営地のことでしたら、 ジャントゥロー様にお尋ねになったほうがいいかと・・・・・・。 なんせ、ここの連隊長様でいらっしゃいますから・・・・・・。」 ピエリケ 「へい、あっしに何の要件でございやしょう? はぁ・・・・・・異端者でございやすか。 あっしは、見かけたことはねぇんですがね・・・・・・ 役立つかもしれねぇことなら、知らんこともないでさぁ。」 アルフィノ 「それは本当かい? 異端者に繋がる情報があれば、ぜひ教えてほしい。」 ピエリケ 「へい、旦那様・・・・・・。 今じゃこうして、兵隊やっとるあっしですがね・・・・・・ 何も、望んで槍を担ぎはじめたワケじゃあないんでさぁ。 連隊長のお父上様に徴兵されて、 命じられるまま、槍働きをしている次第で・・・・・・。 あっしとしては、給金さえもらえりゃ満足ですがね。 ・・・・・・ところが、無理矢理に徴兵された平民の中には、 戦いに疲れて、不満を抱え込んでる奴らがおるんですわ。 異端者どもは、そういった平民たちに声をかけて、 仲間に引っ張り込むわけでございやす。 民に自由をとか何とか・・・・・・甘い、甘い、言葉でねぇ。」 アルフィノ 「「氷の巫女」たちが、急速に勢力を拡大したのは、 そうした背景あってのことか・・・・・・。」 ピエリケ 「へい、実際に勧誘を受けた者から聞いたんですがね。 何でも、異端者の仲間に加わりたいのなら、 西部高地で「紫色の煙」で狼煙を上げればいいとか・・・・・・。」 エスティニアン 「・・・・・・いい情報じゃないか。 追いかけ回すのにも飽き飽きしていたところだ。 こちらから、異端者どもを呼びつけてやろう。」 アルフィノ 「このような手段で、異端者が仲間を獲得していたとは・・・・・・。 ともかく、狼煙を利用してみるしかなさそうだな。」 ジャントゥロー 「よお、あんたには期待してるぜぇ・・・・・・? ドラゴン族どもを、沢山狩ってくれや。」 ピエリケ 「冒険者さんもお強いんでしょうなぁ・・・・・・。 いやはや、あっしのような小兵とは大違い・・・・・・。」 無骨な槍兵 「さてと、そろそろ巡察に出るとするか・・・・・・。」 無骨な弓兵 「いつまで経っても、ドラゴンは見えず・・・・・・。 こうなったら、アッシュプールの方まで探しに行くか。」 タタル 「仕事終わりに作ったまかないが好評で、 お客さんにも、お料理を出すようになりまっした。 特製薬茶とロフタンシチューがオススメでっす!」 ルキア 「何やら秘策があるようだな。 その成果に期待はするが、頼りはしない。 いざという時に備え、防備を固めておこう。」 アンドゥルー 「ドラゴン族再攻撃の一報を受け、 皇都防衛を担う神殿騎士団は、臨戦態勢に入った・・・・・・。 だが肝心の対竜バリスタの復旧率が思わしくなくてな。」
https://w.atwiki.jp/zoids-bcg/pages/131.html
Gray A.Henderson 共和国軍特殊工作師団第107高速戦闘連隊連隊長。 Birthday ZAC2061 Race 風族 Sex 男 Class 大佐 アークたちが所属する特殊工作師団第107高速戦闘連隊の連隊長。アークいわく「本部で最も信頼できる人物」。 連隊の戦略会議などでも常に落ち着いており、この戦争の行く末を見ている。 ヘンリーやエリーにとっては雲の上の人なのであまり登場しませんが、アークにとってはなじみの深い人物。という設定。でも、常に冷静、見たいな描写が目立ちますが彼だってジェノザウラーの登場とかには、彼なりに驚いてます。
https://w.atwiki.jp/tangura_gta/pages/34.html
機動隊 紹介 組織名 たんグラ機動隊(タングラキドウタイ) 業種 公務員 開業日 2024年09月13日 所在地 8047番地 連隊長 春風 かるた - 目次を開く 目次 基本情報 職員名簿 退職者 事件簿 基本情報 たんグラの舞台ロスサントスに設けられた独自の法律に基づき犯罪行為を取り締まる組織。 たんグラ警察(TGPD)は治安維持に務める警察組織の中で銃撃戦に対応する独立組織である。 また、発展途上のロスサントスにおいて立法・司法が独立しておらず一手に担っている。 砂漠署、北署があり、テレポートが出来る。 新人0→隊員1→分隊長2→中隊長&事務官3→大隊長4→連隊長5 職員名簿 職員職員 No. 備考 No. 階級 名前 就職日 備考 1 連隊長 春風 かるた 24/09/05 連隊長としてみんなをまとめる。運転は下手だが、撃ち合いは強い。 2 連隊長 阿澄真 パラ 24/09/05 春風 かるたの二枚看板で支えてる。 3 大隊長 killer swimmer 24/09/05 ヘリは猛威であり、サーマル報告はピカイチ 4 隊員 春風 やまだ 24/09/13 無線報告の質はトップクラス。運転技術に不安あり。 5 隊員 紅ノ 悠陽 24/09/13 現場では安定してこなしていく。IGLの育成中。 6 隊員 辺銀 おてし 24/09/13 なんでもこなせるオールラウンダー。 7 隊員 R neru 24/09/13 へりを猛特訓中。みんなのお姉さん 9/20① 8 中隊長、事務官 宜野座 羅磁 24/09/13 運転技術はトップクラス。全体のサポートもしてくれている。初の事務官。 9 隊員 鍵乃 いつき 24/09/13 撃ち合いの強さはトップクラス。前衛の破壊神。 11 隊員 オルタミィス 24/09/13 地上はすべてこなせる万能型。 12 隊員 和魂 ロウ 24/09/13 所的な戦術理解力が高く、連携力を高い。 13 隊員 あな あきこ(??) 24/09/13 戦術理解力が高く、サブIGLと現場でも落ち着いて周りが見れる。 14 隊員 グロウ ミグルディア 24/09/13 熟練の警察官いる中でも、撃ち合いの強さはトップクラス。 15 隊員 甘猫 らにゃ 24/09/13 サーマルヘリ、チェイスの練習を欠かさない。サポート系の安定感は抜群 16 隊員 ロゼ・グレース 24/09/13 無線では上司が欲しい情報を的確に報告し、隊員のサポートもしてくれてる。 17 新人 ヤヴァイ リンターマン 24/09/13 いるだけでおもろい 18 隊員 BAB Les 24/09/13 撃ち合いは犯罪者の壊滅かポンのどっちかの男。IGLを行うと知恵熱がでる。 19 隊員 かまてつ。 24/09/13 期待の新星。経験は浅いが、多くの現場で活躍している。 20 隊員 天泥 熊虎 24/09/13 かわいいのにヘリが得意。 21 隊員 青輝 おとわ 24/09/13 やばいヤツ。上司の胃に穴開けるランキング堂々の1位 22 隊員 まかろん 24/09/16 緑のコーンがなかったらまかろんではない。 23 隊員 冬月 しろみ 24/09/21 ヘリの操縦はトップクラス、ヘリアタックもうまい 退職者 職員名簿 No. 備考 No. 役職 名前 退職日 備考 1 名前 24/09/05 何かあれば 事件簿 事件の名前 + 詳しく 説明 活動者 配信日付 ○日目 配信タイトル(リンク) 備考 名前 yyyy/mm/dd n 配信タイトル mm/dd n 配信タイトル
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/270.html
まだまだ煮詰め不足です。 でもこんな感じじゃないかと 状況を特定していません。 サンプルとして、アリア姫救援戦争の状況を思い浮かべないわけではないですが、 それもSSの作法みたいなものです。 彼らは丘の一つを上ってゆく。中腹あたりでぐるりとめぐり、進んでゆく。丘の背後を臨むところで、そこでもまた誰何を受ける。 手間ではあったが、クロトワ参謀は満足だった。丘の背後には、連隊本部がある。ここまでにあるのは、連隊本部の守りなのだから。 丘の背後には、膝を着き、待つ機装甲らの影と、幕舎がある。いずれもが、闇の中に沈んでいる。 帝國近衛軍団第十三連隊は、いつものように最先陣にある。 「ただいま戻りました」 入り口の幕をクロトワはくぐった。 「騎兵大隊展開の一時報告取りまとめがあがりました。諸々の状況報告は、こちらの大隊参謀から」 「お疲れ様です」 連隊長のシルフィス・シリヤスクス・シルディールが応じる。 クロトワはうなずき、また大隊参謀にうなずきかけて、報告の用意を促した。 「旅団長、何してるんですか」 まるで当たり前のような顔をして彼はいた。 状況棋板を前に椅子を置き、そこに足を投げ出すように座り、足を組んでいる。亜麻色の豊かな口ひげを彼は撫でていた。南方大陸に祖をもつ獣人らしいすがた。 耳はただびととは違う形で、長く伸びている。 肘掛に頬杖をつきながら、サウル・カダフ旅団長は言った。 「旅団本部にいると仕事させられるからなー」 「何を言ってるんすか。戦争やってるんですぜ?」 「だって、旅団本部が俺にやらせたいのは、参謀仕事だもん」 「旅団長……」 「今、一生懸命中央決済しても仕方ない。敵情を知らずに、敵をつついて動かすこともできん。そして動きもしない敵相手に、叩き合う戦ができるほどこちらには数も無い。なにより、こっちに着ていれば状況はつかめるし」 まじめで良い子は目の前の仕事をこなしたがるし、早め早めに仕事の方をこなせといいたがるんだよなー。仕事なんて状況をおっかけてするもんだろう。 「んなら、騎兵大隊に行けば、届いたままの状況がわかりますぜ?」 「大隊本部に旅団長なんてことになったら、重石が効きすぎる。ここだったら、俺がだらだらしていても、誰も気にしないだろう」 シルディール連隊長がくすくす笑う。連隊参謀連中も苦笑いをしていた。 「だらだらって何ですかそれは。ほんとにもう」 「指揮官を忙しくさせたければ、参謀が駆け回らんといかんよ。インスピレーションを形にするパースぴレーションは、働き者の仕事だろう」 「駆け回って来ましたよ。騎兵大隊は動かせる手持ちをかたっぱしから索敵に放り込んでます。今、派出させた各騎兵からの第一報の取りまとめがつきました」 クロトワ参謀は顔を上げる。 「連隊長、ついでですから、第七連隊の参謀に同席願いましょうか」 「そのように」 「おい、ちょっとひとっ走り行ってくれ。十三連隊で騎兵偵察の情報説明を行う。たまたま旅団長がサボりに来ていることでもあるし、耳をもってこい、だ」 身も蓋も無いいいように、連隊本部の気はかえって和んだ。 「騎兵大隊本部は、変わらず前進配置で、偵察騎兵を統制しています」 錬度甲の騎兵部隊なら、すべての分隊が斥候任務を果たす能力がある。十三連隊騎兵大隊にはまだそれだけの力は無い。すべての小隊から、斥候を出す能力はある。 同時に、13連隊の騎兵部隊は、機装甲に随伴する乗馬騎兵の能力も求められている。 「騎兵は半分以上の騎兵を出払ってます。機装甲第一中隊第一小隊が前進して直接支援中です」 「甘藷の子のところか」 「そうです。夜間偵察ですから、偵察漏れはかなりあるはずです。夜があけてからの報告を待たねば、敵の展開の全貌は明らかになりませんな」 旅団長は言った。 「手元には実質、二個機装甲中隊と、警備程度の乗馬銃兵。連隊長はこんな部隊を引っ張って、よく怖くないな」 「身が軽いですから」 「襲撃されたら、わたしは13連隊長についてゆこうっと」 「連隊長は機装甲ですぜ?」 「え?それはこまったなあ」 「第七連隊連隊長が到着されました」 「連隊長?こりゃまあ、お休み中をご苦労なことで」 「失礼」 「よう。夜遅くにお疲れだねー」 「お疲れ様です。13連隊長も。夜間授業と伺って飛んできました」 「書記、口述筆記の用意を。これより13連隊騎兵大隊参謀による偵察結果報告を実施します。なお、情報は夜間偵察、進入配置報告第一報に基づくもので、位置の錯誤等、拭いきれません。その前提で判断を。では、騎兵大隊参謀。頼む」 #状況はサンプル 河川、丘、低湿地、丘と低湿地をつなぐ森、氾濫で作られた荒地、開墾された農地。それから集村 集村を巡り、丘を巡って街道が延びる。 XXという街 丘に見下ろされながら伸びた街道は、XXの街にうねりながら伸びてゆく。街は自らを封じ、守り立てこもっている。その街への包囲網に、最初の楔を打ち込んだ友軍が、丘を見下ろす街道にあった。 「現在、敵は丘を迂回してさらに後方に進出し、街道を遮断しています」 「規模は?」 「正確には不明ですが、軽歩兵中隊程度に、騎兵の掩護があるようです」 「遮断か」 騎兵大隊参謀の説明はクロトワ参謀の所感の背景を仔細に説明するものだった。 騎兵大隊は、わずかな予備を残して、三個中隊のすべてを分散投入していた。そして敵の包囲陣地を外側から確認する形をとっていた。 「大まかに言えば、敵は二重包囲というところです。街道沿いのこの丘に、友軍ががんばってます。数次の敵の正面攻撃を退けているので、今は包囲に入っているようです。敵は攻撃準備中でしょう。次の攻撃は砲兵を伴ったものになるでしょうな」 「うーん」 「なんですか、旅団長」 「砲兵の確認は?」 「夜間ですから、無理です。近接偵察を命じても、報告が来るのは朝以降ですな」 #普通は、指揮官がいきなり結論を出したりしないらしい。 「身代金を取るにはこうするしかない」 「と、いうと?旅団長?」 「こちらの伝令を遮断し、突進してくる前衛を阻止する。一つの都市を包囲され、それを回復できないと言うことが、この手の王国では、王権への疑いをもたらす。長いゲームの一部さ。短いスパンで言えば、敵は自らの軍勢に餌を食わしてやらねばならん」 「では、長期戦だと?」 「いや、敵は一刻でも早くXXの町に突入したいはずだ。あるいは、XXの街から相応の身代金を引き出したい」 「……」 「だが、丘を占拠堅守している友軍がいるかぎり、降伏せずに済む幻想を抱く。我ら帝國軍なら、都市など後回しにして敵軍を撃破して支配を確立する。だがそういったいくさが、どこでも行われるとは限らない」 だが、とサウル・カダフ旅団長は言った。 「だからといって敵を侮ることは出来ない。予断を持たず、緻密に状況情報を収集してくれ。 わたしは旅団本部に帰って寝る」
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1458.html
闇の零 (5) その近衛騎士が何という名であるのか、ルキアニスは知らないままだった。 内務省が踏み込んだ時、観念したが、捕縛されることを選ばなかったと聞いた。知られた時点で終わりだとマルクスは言っていた。生きたまま捕縛されれば、あらゆる手で、知っていることを引きずり出されただろうから、と。 「だから、思い当たることがあったんだろうさ」 笑えるだろう、と、冷たく言った。 それから機場、と呼ばれるところが、近衛騎士らの邸宅街からそれほど遠くないことも知った。マルクスは笑った。機場の決闘騒ぎとか、知らないか、と。そういうことがあったのだという。そんなことルキアニスが知るはずもない。 マルクスの様子はいつもと少し違っていた。笑えるだろう、なんてことは、今までほとんど言わなかったのに。人の死には、それが敵味方にかかわらず、それなりの顔をしていた。 街はいつもと変わりない。今は城壁越しにまぶしい朝日が横なぎに来る。あの壁の所為で帝都の朝は遅いのだとも。それでも、朝の街は忙しく人が出入りし、夜の時と同じように、朝の機体を物珍し気に見上げる。朝の街の人に交じって、屋台で朝ご飯を食べたことが、もうずいぶん昔のようだ。あの子はどうしているだろう、とふと思った。いつの間にか、もう思い出せないほど昔に遠ざかってしまったように思えた。 交代の部隊は来なかった。要の薄い部隊は、やはりそう簡単に帝都に入れてくれはしないらしい。代わりに要となれば、宮城の三の丸にそのまま入れてもらえるのだから、帝國のやることは隙もない。 おかげで休む暇もない。普段なら、騎士が機を降りた時に周囲を警戒してくれる騎兵がいっしょにいる。今は、あたりに人が多すぎる上に、内務省の人らは騎士にも休憩や休息が要るなんて思っていないようだ。おかげで休憩はほんのわずかで、少しの話をしただけで、また機に戻ることになった。騎士を守るに一番良いやり方は乗り続けていることで、マルクスとルキアニスは機体で立ち番となった。黒騎士たちも、軍旗小隊も同じであるらしい。帝都の石造りの建物の向こうに、立ち番をする機体が見え隠れする。 シルディール連隊長は違う。連隊長には、伝令と内務省からの警衛がついている。それに内務省部隊と連絡するには、機を降りていた方がいい。辻の入り口に機体を寄せて、そこにいつものように片膝をつかせかがませている。連隊長は機を降りて、どこから持ってこさせたのか椅子に座っている。 内務省が何をしているのか、もちろん知らされなかった。 結局、ルキアニスたちの任務が解除されたのは、昼過ぎになってからだ。彼らの幌馬車が街区に入ってゆき、また幌をかけたまま出てきた。どこで、何を探していたのかはわからない、誰を捕縛したのかもわからない。そもそも言われていた機神格の目標とは何だったのだろう。ルキアニスたち機装甲は、内務省の馬車のあとに続く形で、街区を離れた。隊列のさらに背後には、内務省の徒歩組が続く。帝都の人らは辻や家々の間口からこわごわと見送るばかりのようだ。 向かう先は宮城ではなく、内務省だった。後で聞いたのは、どこかの貴族を廃絶したのちに、その帝都屋敷を接収して作ったという。住まうための建物ではなく、内務省の者が仕事をするためだけの建物だ。それまでの貴族屋敷の並びの中で、誰にでもはっきりとわかる、切り出した石そのものの冷たさと、鋭さを感じさせる建物だ。 その前庭が、ルキアニスたち13連隊機装甲の降機場所となった。馬車や徒歩組はそのまま裏へと回ってゆく。機を降りたら、もう眠たいばかりだった。しかし何度目かの機側待機が命じられ、連隊長は内務省の者と、建物の中へ入って行ってしまった。 いつもなら、行軍装具は必ず機に備えているから、休憩とあればお茶も入れられるし、夜営用の折り畳み寝具もある。機付きと一緒に機体の手入れをして、籍簿に書き足して、なんてこともしなければならない。でも今は所在なく立っているくらいしかない。日差しが温かいことだけは助けだった。疲れ果てて内務省の庭に座り込むほどではないけれど、先行きがわからない。ひょっとしたら、また帝都で立ち番かもしれない。そういえば朝ごはんも食べていない。最後は倉庫の時のお茶とちいさな麺麭だった。 「いくさだと、結構我慢できるのに、帝都だと、なんだかとっても疲れた気がする」 「そうだな」 マルクスは眠たげであるけれど、まだまだ平気そうだ。士学の時もそうだった。学生中隊長をやっていた時も妙にゆとりありげで、下級生にもよく休みを取らせていたのに、行動が間に合わないということはなかった。だから下級生たちはマルクスの言うことなら何でも聞いていた。 「なあ」 「なに」 「シナプス卿は、たぶん関わってない」 「何に」 「何かわからないけど、今のことに、さ」 自身の機の脚に寄りかかったまま、腕組みをして、マルクスは言った。 「こないだ行ったときは、もう本当に隠居した、って感じだった。それにあの堅物ぶりだものな。意にそぐわない奴は追い返すだろう」 「うん」 「内務省がこれほど有無を言わせず動いてる。わずかでも関わっていたら根こそぎだ」 うん、とルキアニスは応えたけれど、マルクスが何を言いたいのかわからない。マルクスも迷ってるように見える。それはあまり無いことだ。 「どうかしたの?」 「何でもねえよ」 どういうわけか拗ねたように言い、そっぽ向く。そんなことされても、わからない。けれどマルクスは横目でルキアニスを見る。 「・・・・・・」 「なに?」 「いや、俺がこっち側に回るなんて、思っていなかった。でも、俺の本当の役目って、こっちの方なんだよな」 ルキアニスはまたたいてマルクスを見た。こんなマルクスを見るのは、いつ以来になるんだろう。ひょっとしたら初めてなのかもしれない。いや、ずっと昔に、士学で見ていたかもしれない。マルクスは照れたように少し笑う。 「お前に言ってみたのが間違いだったな」 「何の話か分からないよ」 「いいんだよ。うちの話だ」 それからマルクスはわざとらしく、あーあと声を上げて伸びをし、こきこきと首をひねる。背中も尻も痛い、とぼやく。マルクスは、よく当家は末席だとか、うちは落ち目だとか言っていた。ルキアニスには貴族の家の盛衰はわからない。ケイロニウス御一門の上とか下とか、わかるはずもない。マルクスは帝都に生まれて、貴族として育ち、ルキアニスの知らないことをたくさん知っている。こうして一緒にいられるのは、ただの、神様の天秤のかたよりゆえだ。いつかそれも、めぐりながらかき混ぜられてゆくという。その時、どこへ連れてゆかれるのだろう。 「ごめん」 「何だよ」 うん、と応じるルキアニスに、マルクスは笑みを見せる。 「どうした。熱でもあるのか。お前が熱を出すと、ろくなことがない」 「ないよ」 「もう少し頑張れよ。あまり続くようだと、内務省だって自らの手に負えないって認めざるを得なくなる。そうなればもっと大きく動く。増勢だってされる。今だって、連隊長に支援を求めてるのか、連隊長に使われて・・・・・・あ」 不意にマルクスは言葉を途切れさせる。 「どうしたの?」 「・・・・・・内務省も連隊長に使われてるみたいだ、って思ったんだよ。まさかそこまでじゃない。でもまあ、似たようなものかな」 それからマルクスは、憶測は無しだったな、と付け足して口をつぐむ。 憶測も何も、わからないことだらけだ。ただ連隊長が何事か決められるなら、きっといまの様子に満足はしてないだろうな、と思う。マルクスは知らん顔だ。もう何も言うつもりはないらしい。いつまで我慢できるか知らないけれど。いつもなら見てると勝手に喋りだす。 内務省の前庭に、日差しが射しこんでくる。ようやく、温かくなってきた。お日様は、何事も知らぬげに毎日めぐってくる。陽神の姿と聞かされたり、太陽という名の諸相の集積体で、この地のどこよりも遠くにあるのだとも聞いた。 「ルキアニス」 「なに」 振り向くルキアニスに、マルクスは腕組みをし、それから少し顔をそらす。 「これが終わって暇になったら、ちょっと遊びに行かないか」 「うん」 「・・・・・・」 父上が、と言いかけて、マルクスは言葉を改める。 「親父が、一度くらいお前を領地に連れて行ってやればいいっていうし」 「お父様お元気かな。僕はずっとご無沙汰してて」 「親父のことはいいだろ」 なんだか不機嫌にマルクスは言う。ルキアニスは応じる。 「よくないよ」 「それより、来るのか来ないのか」 「行くよ。そういったじゃない」 「そうか」 何を苛立ってるのだろう。そう思ったときに、マルクスは少し笑って続ける。 「実は俺もほとんど行ったことがない。内戦の間は、家族はほとんど帝都だったんだ」 そういえば、前にそんな風に言っていたかもしれない。なんだかずいぶん前のことに思える。 「姉貴もよく知らないままだったらしい。母さんは、いいところだって言ってた。だから、内戦も終わったし」 「うん。連れてって」 ルキアニスはそう答えた。けれどマルクスは言うのだ。 「お前もう少し、貯めというのは無いのか」 「・・・・・・間合いとかの?」 「お前に期待した俺が馬鹿だった」 「また勝手なこと言ってる」 そもそもマルクスから言い出したことじゃないか。 「・・・・・・まあ、いいさ。とにかく、忘れるなよ」 なぜだかマルクスは一人でうつむき、小さく笑い、顔を上げて黒髪を掻き撫でる。なんだか知らないけど、それで、気が済んだらしい。己の機の脚に背を預けて、彼は日差しへと目をやる。まぶしげに、その目を伏せる。 連隊長が戻ってきたのは、それからしばらくしてからだった。 見方によっては、内務省のヴェルナウスを引き連れているようにも見えた。ただ連隊長だったなら、誰が後ろに歩いていても、引き連れているように見えるかもしれない。集合したルキアニスたち乗り手を、連隊長はねぎらい、今回の行動が終了したことを告げた。今回の行動は、帝都の治安のために欠くべからざるものであり、これがつつがなく達成されたことを、皇帝陛下に報告できることは、栄誉である、と。 それから内務省のヴェルナウスが一歩踏み出した。今回の行動に迅速な協力が得られたことに感謝するとかなんとか言った。でも彼の言いたかったことは、多分そのあとのことだ。 「今回の行動について、帝國軍の機密措置がそのまま適用されると本職は確認している。今後、口外が禁じられていることを、諸君は常に留意されたい」 ともあれ、長い夜はそうして終わった。 そのはずだった。 連隊長に引率されて、また内務省の騎馬に先導されて、元のXX大門へと至る。門はいつものように開かれたままで、日差しが城壁を照らし、また開いたままの門をすり抜けて広場の石畳を照らしている。朝の人出の多いはずの時間だけれど、屋台が残されたままの広場にはその姿はほとんどなく、代わりに、広場の中央には機装甲の列があった。片膝をついて侍る姿は、白の六のものだ。今は13連隊にしか装備されていない。それらはまるでシルディール連隊長を待っていたかのようだ。その先頭にあるのは、サキス副連隊長の姿で、いつもの黒眼鏡に日差しを真っ向から浴びながら、こちらを見上げている。 大門を抜け、連隊長は停止の手信号を示す。隊列は石畳に脚を止め、それから降機の点信号とともに、一斉に片膝をつく。ルキアニスも機をおりた。閲兵の時と同じように、機の左側から、機の前に。いつもならだいたい踵を合わせるくらいの略式で、すぐに集合の号令がかかるのだけれど、今日は違っていた。機の列をシルディール連隊長が歩いてくる。機列の真ん中で、皆を見回す。 そしてのその頬に、わずかに笑みを浮かべる。 「今回、事態が帝都内部で進展せずに済んだが、これは僥倖にすぎない。しかしより悪化して進行していたとしても、連隊はこれに対応できただろう。 抑止の本質は、実力にある。連隊はこれを備えていると、連隊長は確信する。ご苦労だった。以上」 一息だった。思わず敬礼が遅れそうになるくらい。敬礼しながら思わずまたたいてしまい、連隊長と目があった。いや目が合うこと自体は敬礼として正しいのだけれど。その口元にかすかに笑みが浮かぶのを見た。 シルディール連隊長は、何も伺わせず答礼をした。くるりと背を向ける。搭乗の時にしている一本束ねの髪が揺れる。 「副連隊長、連隊長は報告のために参内する。連隊を任せる」 すれ違いざまの命令に、サキス副連隊長は了解しましたと静かに応じる。そしてルキアニスたちへという。 「臨時編成を解散する。通常編成に復帰し、休養待機せよ。連隊は原位置で警戒にあたる。諸君らの機体は原位置のまま。整備は連隊工部と機付きに任せてよい。ご苦労だった。以上、解散」 いつもの敬礼と答礼。ルキアニスは息をつく。 「終わったかな」 「さあな」 言ってマルクスは歩き始める。あくびをかみ殺しながら言う。 「目標ってやつが、どこにあるのか、ついぞ判らないままだろ」 その背中を追いかけ、追いついて、ルキアニスは小声で問う。 「何だったんだろう」 「聞いた通りなんだろうさ。どこの誰の何かは秘密。知りようがない」 機神格。聞いたのはそれだけだ。ほんとうに。それだけ。 「あとは内務省のお仕事」 言ってマルクスは振り向く。歩きながら口元に一本、指を立てる。 「俺たちはこれ」 「・・・・・・」 そういわれるともう何も言えない。言ってはならないと釘も刺されている。マルクスは、寝乱れるなよ、臣民が見てるんだから、とかなんとか言って自身の小隊へ戻っていった。 乱れないよ、と言い返すには、少し離れすぎていて、それこそ皆に聞こえてしまいそうだった。 そして、終わりだと思っていたことは、終わっていなかった。 内務省が実働部隊として摘発部隊を持っているのは間違いない。 新選組相当なのだと思う。戦列歩兵ではなく、切込みを任務とする抜刀隊相当に、狙撃担当の銃兵と。 彼らが摘発のための機卒を持ってるとは思うが、機甲戦に備えた機装甲を持っているかどうかというと、現時点では無いと考えた。ちなみに持っている機卒はおそらくシリヤスクスのブツで、かつ主要な任務は近接戦闘か障害物排除と考えられるから、コミック版パトレイバーの第一小隊レイバーのようなものじゃないかと考えている。廃棄物13号相手に電撃をかましたアレだ。アニメ版のタイショーみたいなのもあるかもしれないけど。 諸侯の武装解除、あるいは経済的自主的な武装削減が急速に進み、一方で外交大権の皇帝化も進むわけで、アリア姫戦争のような諸侯が養った軍事力を背景に、辺境候や中央との強いつながりを持つ、そういうタイプの諸侯関係も急速に低調化してゆくのだろう。武威で鳴らす西方ですら内紛を起こしたフラウィスなんかは軍の軍事力を背景に、処理されちゃうわけだから。 よって、現在の内務省が部隊を養う必要性は薄いのだろう、と。 ただ、黒の零事件以後、機甲戦が可能な突入部隊の編制は、彼らの悲願となってもよいかもしれないと思わなくはない。 しかし、たとえレイヒルフトが是としたとしても(しない気はするがw)黒の零のような機神格の物の行方が分からなくなった事態の、突入部隊として運用できるはずはないとは思う。 10年も経つと、実際、キャラの方がキャリアを積んでいて、書いている方が忘れかけていたり、その時期に戻れなかったりして、大変苦労した。 やはりこのネタ自体が、時のはざまに消えてゆくべきものなのかもしれない。 黒の零事件は、セッションの上では、いろんなエピソードが検討されていたんだが、実際に「あまり大騒ぎにならず、しかし事態は進行する」みたいな狭間に落とし込むのは大変だった。本当に大騒ぎになるのは、この後なのだから。 検討エピソード以外をあえてぶっこむことで、検討エピソードのフリーを保っていると善意に解釈していただけると助かる。この状況ならヴァンパ准将は自裁だし、黒の龍神乗りは宮城を動けない。アドニス殿下は主上は御無事かと宮城に突っ込むのは当然だし、765訓練隊の機神は夜のうちに所在を確定される。その後どう動かされるのかはわからない。続いて朝にはケイロニウス一門の機神何柱かについて宮城への集合という状況になるだろう。レオニダス公爵家のミノールは神具の鑓をもって、機神がコントロール下にあることを報告するのだろう。旧近衛騎士系への尋問は苛烈を極め、人間関係があぶりだされて、しかし肝心の黒の零については行方が知れずで、内務省の混乱は極まるだろう。リランディア陛下にお知らせせずに、などとやろうとしたら、皇帝陛下にお知らせできないことなどありましょうか、などとレイヒルフトにやられてしまおうw さて、その辺どうなるのやら。何人処断されるのやら。ナナミアの宮廷日記はやはりこれを帝都の一番長い夜と形容するのだろう。 その混乱の最中で、オスミナ事件の最初の一報が見逃されるのだろう。 機神管理体制という、枢密中の枢密の動きの粗さが、かえってイサラの暴走を見逃すことにもなったろう。もって最終処断の実力部隊としての近衛騎士団の再整備は、黒騎士の再生同様に、帝國中枢にとって喫緊の課題であろうし、毒を以て毒を制するイサラの計画中枢化はやはり必然でもある。 ちなみにシル子は、宮城にある自由に使える部屋で寝るために参内している。カイルは眠い姉にちょっかい出すのは最小限にするだろう。しかしおそらく、彼が一番、真実に近いところにいたはずだ。帝都から出る手段は、転移だけじゃない。運び出す手段は一体のまま船に乗せてでもない。中枢のみが運び出され、プロトタイプの特性、つまり新規に接続される構造部と違和感なくよくなじむ性質が悪用され、本来は形成できない新規の機体となったのだろう。下手をすると、仮面との関係性すらある種のイレギュラーがありえたかもしれない。接続される構造部も、トルテンヌス一門の最良の機装甲、あるいは機神のための補充装備などだったかもしれない。そうか、鉄血のバルバトスな状態か。さすが10年の月日だな。 膨大な帝国内輸送について、何らかの管理体制を作ることは、もちろん帝國にとって重要な懸案になるはずだが、それに一枚かんでいたやつが、アル・ダキアのために古人やらそのための何やらやらを、同じ輸送体制でこっそりやった、とかひどいいかさまではある。レイヒルフトが笑って許すような何かをしなければ、やる気満々の内務省とアレになるだろう。 10年かけて蓄えたネタが、交差して再びそれぞれの方向へ向かってゆく。 それらネタを無駄にせず、過干渉せずに使えたかというと、忸怩たるところはある。 しかし、今できることは、今にできることだけなんだ。ご容赦願うしかない。 目の前の僕らのネタは何物にも代えられない舞台、それは昔も、今も変わりない。 きっと、そうだろうと、信じようとはしている。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1289.html
丘 (5) ルキアニスは白の三の胎内に滑り込むと、仮面をつける。 それは機装甲と対になって作られ、胎内の乗り手を、機装甲そのものに重ねるように感じさせるものだ。その魔術の仕掛けによって、乗り手は機装甲を己の体のように感じ、また動かすことができる。その魔導の双眸に映したものは、その目で見るように感じられる。 「周囲注意。三号機起立する」 警句は周囲に人がいるときの決まりだ。そこにいるのはシルディール連隊長一人であったけれど。 その姿は、ルキアニスの機を見上げている。それが決まりだからだ。起動した機装甲の周囲にいるものは、事故防止のために適切にふるまわねばならない。安全な距離をとること、稼働中の機卒機装甲から目を離さず、危険域に入らないようにしなければならない。ただそれだけだ。そもそもシルディール連隊長がここにきて、機を降りたのは、ただ命令を伝えるためだった。新しい命令は、追撃の終了と、連隊の針路復元だった。 シルディール連隊長は、ただそれだけであったのに、自ら命じに来た。 「連隊の任務は変わっていない。速やかに前進し、旅団の前進を援護することだ」と。「連隊は元の針路を回復する。よって、先導の針路も変更する」と。 「村落の北側の森を踏破し、村落の背後に進出せよ」 それが新しい命令だった。林中に道を作る余裕はない。そのために前方の村落と、その周辺草原帯を突破する、と。敵あればこれを撃破して前進する。ただし、村落周辺草原帯は、敵の罠がしかけられていたところであり、この通行には注意を要する、と。 ルキアニスとマルクスは、ようするにこれへの偵察であり、優勢な敵が残存していたなら、待ち受ける主力へと誘引する。任務は今まで通りで変わらない。そもそもルキアニスの機は魔術攻撃を行うほど魔力を残していなかったし、マルクスの機もあと一度くらいしかない。 「ではかかれ」 戦場では敬礼を禁じられている。内戦でも何人もが狙い撃ちされている。それでもルキアニスとマルクスは踵を合わせ、背を正す略式の敬礼を行った。機へと駆け戻るとき、マルクスは駆けながら器用にぼそぼそ呟いた。 「連隊長も結構我慢してるよな」 ルキアニスが驚いて足を止めた。なにが、と声を上げかけ、あわてて声を落とした。マルクスは機に向かうまえに足を止める。ルキアニスも足を止め、機ではなく、マルクスへと振り向く。 「なんで?」 「連隊長が黒の二でやれば、一人で何でもできる。黒騎士としてここにいたら、間違いなくあの白いのを仕留めてただろうし」 あの白いの、というのは、飛び込んできた魔獣とヴァルトシュタイン将軍のことだ。ルキアニスは問うた。 「君は、なんで仕留められなかったと思うの?」 「追い打ちかけなかっただろ。部隊捨てて追いかけるわけに行かない」 「・・・・・・」 それではまるで、連隊が足を引っ張ると言ってるようだった。マルクスは続ける。 「命令するより自分でやる方が早い。でも連隊長は一人しかいない」 「・・・・・・」 まるます足を引っ張ってるみたいだ。 「じゃ、足を引っ張らないようにしろよ」 マルクスは軽く手を振り、自機の背を這い上る。ルキアニスには言いかえす言葉もなく、だからと言ってこのままもたもたしているわけにもゆかず、ひとり唸って機へ向かうしかなかった。シルディール連隊長が見ていたのもわかっていたし。 そうしてルキアニスは自分の白の三へと乗り込み、マルクスと、それから随伴騎兵とともに森を進んだ。シルディール連隊長の姿は、すぐに房飾りをつけた連隊長機へと戻ってゆく。 進み始めてすぐに気付いた。木々の隙間を白く煙が流れてくる。村から漂い流れてくる煙だった。霧のような薄い煙の中に、動くものは無い。大部隊が伏せていた様子はない。刈ってきた枝を配して、鹿砦を成してはいるが、本格的な陣地でもない。ここは伏せて隠れるためのところなのだ。 連隊が村の周囲の草はらへ、縦隊のまま入ってくるのを待つためのところだ。そうすれば、草はらを突撃のための疾走距離として使える。森では機装甲は使いづらいけれど、騎兵にも似たところはあるのだとルキアニスは思った。 見通しはだんだん効かなくなってくる。機装甲の中にいると、煙の焦げ臭さはあまり感じない。機装甲には臭いを嗅ぐところが無いから、機装甲と類感魔法で繋がっている乗り手には良く感じられない。 『ルキアニス、待て』 マルクスの声が、風水晶の魔法陣をきらめかせる。ルキアニスはその言葉通りに足を止め、それから片膝をついて身を低くする。 「なに?」 『探知の魔術を使う』 マルクスらしい慎重さだなと思う。ルキアニスの機はもう魔術攻撃を行うほど魔力を残していない。マルクスの機はあと一回くらいは行えるだろう。その残りの魔力を、敵を知るために使うのだから。 『注意』 屈み、地に広げた掌をおしあてて、マルクスは言う。しかし続くのは言葉ではなく、言葉にならないきらめきばかりだ。 「どうしたの?」 『多数の人の反応。百碼も離れてない』 「敵?」 『騎馬じゃない。それに伏せている様子でもない』 「前進して確かめる」 『了解した。機装甲で前進し、煙域を突破する。随伴騎兵はここで待機。俺が前衛に代わる』 「了解」 マルクス機が立ち上がり、物見鑓を手にゆっくりと歩きはじめる。ルキアニス機の横を通り過ぎ、白い煙の中に押し入ってゆく。あまり離れぬようにルキアニスも機を立ち上がらせ、そのあとに追従する。マルクスの機はゆっくりと歩き、不意に足を止め、それから避ける。けむるなかに急に木々が現れる。 村の近くの木々は、それほど広く枝を広げているわけではない。避けるのも楽だし、いつもは日差しが差しこんでいて通り安いけれど、今ばかりは、その日差しが煙に指し込んで、白く明るく見通しづらい。 やがてその煙も薄れてゆく。やがてマルクス機は足を止めた。 「・・・・・・」 いつもなら、マルクスは見えたものが何なのかすぐに言葉にして報じる。風水晶の魔法陣は言葉なら上手く伝えられるけれど、見たものを見たまま伝えることはできないから。 「状況は?」 『いや・・・・・・』 マルクスはわずかに口ごもる 『前方に、難民群。敵影ではない』 進み続け、ルキアニスも薄れゆく煙の先を見た。それは木々の間を逃げゆく人らだった。騎馬でもなく兵でもない。その数すらさして多いとも思えない。たぶん百にも満たない。その人らはただ木々に隠れ、ただこわごわとルキアニスたちを見上げ、さらにそれらの向こうの燃える村を見ている。 「・・・・・・随伴騎兵、前進し、機装甲と合流せよ」 だとしてもルキアニスはそう命じた。機装甲単独、騎兵単独、いずれも危うい。 「先導より本隊へ。北側林縁には難民とおぼしき人員百程度あり、武装、抵抗の様子なし。村からの煙はかなりある。視界は良くない。先導はさらに前進する。マルクス、前へ」 『了解した』 風水晶の魔法陣からのマルクスの言葉の後に、なにか言葉とは違うきらめきがこぼれる。 それはため息なのだろうとルキアニスは思った。