約 24,974 件
https://w.atwiki.jp/psn_newgame/pages/123.html
ゲーム名 みんなで読書 捕物帳 半七&右門 安吾 顎十郎 旗本退屈男 対応フォーマット PSP ジャンル その他 プレイヤー人数 オフライン 1人 販売価格 ¥1,500 配信開始日 2009/11/19 対応周辺機器 映像出力 音声出力 販売元 ドラス 開発元 まとめサイト 関連スレor板 備考/PSN等 体験版 無し
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/125.html
「三月ウサギの方がずっと面白そうだし、それに今は五月だから、むちゃくちゃに気が狂ってる、 ってことはないよね。――少なくとも、三月の時ほどじゃあない」 ――――「不思議の国のアリス」三月ウサギの家への道を辿る前のアリスの自問自答 ――――それは黄金色の昼下がりでした。 「あれ、ここ何処だろう?」 白い制服着た少女はそんなことを呟いた。 オールを漕ぐ手を止めて、周りを見渡す。そこはAQUAが火星と呼ばれていたころの廃墟(プラ)跡(ント)だった。 前に迷い込んでしまって以来ここには来ないようにしていたのに。 ――――おかしいな、どうしてこんなところにいるんだろ。 どうしてここにいるのかうまく思い出せない。 「まるで不思議の国に迷い込んだみたい……」 いつもならここで「恥ずかしい台詞禁止!」とか、「でっかい恥ずかしいです」 とかが返ってくるのだが。 「……誰もいない」 建物に絡みつくようにまるで草木にも生気が感じられず、風も音もしない。 切り取られた世界の中で一人きりになってしまったかのような、そんな感覚。 オールを掴む力が少し強くなる。 そばに誰もいないということが少しばかり心細く、自身の身が頼りなく感じられる。 「ふむ、お嬢さん。お困りのようだがどうかしたのかね?」 さっきまでは誰もいなかったはずなのに。振り返るとそこには帽子を深くかぶりコートを着た人がいた。 帽子のせいで顔がうかがえないが、声を聞く限り男性のようである。 「あ、よかった~~。実はちょっと道に迷ってしまって……」 誰かに出会えたことからの安心感と照れから、思わず顔がほころんでしまう。 「ふむ、そうですか。では出口まで案内致しましょう。――――失礼しますよ」 そう言い、彼は返事も聞かずにゴンドラに乗り込む。……不思議とゴンドラは揺れることはなかった。 「ありがとうございます」 「いえいえ、お気になさらずに。困ったときはお互い様ということで」 帽子の男は肩をすくめてみせた。 「そういえば、あなたのお名前は?」 「私の名前かい?――――ただのしがない帽子屋ですよ」 この日水無灯里は、ネオヴェネツィアから姿を消した。 それは黄金色の昼下がりの出来事。 柊蓮司と退屈なお茶会(A Mad Tea-Party) Scene 1 “Down the Rabbit-Hole”(ウサギの穴に落ちて) ――――温泉街駅前にて 「ふう」 そんな声とともに列車から降りたのは、「全世界のアイドル」「アンゼロットのおもちゃ」 「絶滅危惧種」こと柊蓮司だった。その顔はいつもの不機嫌そう顔ではなく、晴れ晴れとしている。 「ふ、ふふふふふふ」 不気味に含み笑いをする彼を怪訝に思う人はいるが、すぐに離れていく。……賢明な判断である。 「あっははははあははははははっ!!やったぞ、ついにやってやったんだ!ざまーみろ、アンゼロットォォぉぉぉ!!」 魂の叫びが、駅の構内に木霊した。 ……彼の周りからさざなみが引くように人々が離れていったが、今の彼にとっては些細なことだろう。 彼は目頭を押さえ、今までの苦難を反芻する。 ああ、ここまでくるのにどんなに苦労しただろう。 卒業を迎えた彼を待っていたのは、度重なる任務の嵐。「学校」という楔から離れた柊蓮司をアンゼロットはこき使った。 やっとの思いで手に入れた卒業証書は「世界結界を守るためです」の一言で満面の笑顔と共に破かれ燃やされ、 せめて灰だけでもとかき集めようとすると、ロンギヌスに羽交い絞めにされ止められ、ミキサーで灰をさらに 粉々にされたうえに北極海へとぶちまけられた。 この時のアンゼロットの表情はロンギヌスいわく「実に清々しくまるで聖女のようだった」そうな。 任務の間隔が数時間しかないってありえるのだろうか? そういえばウィザードに残業手当はでるのだろうか?労働組合に訴えてやりたい。 ただでさえ少ない任務の間の休憩時間にさえ、アンゼロットの脅威はあった。 なんでお前のネトゲーのレベル上げや、レアアイテム集めをしなきゃならないんだ。 俺の貴重な休憩時間を返せ。 もちろん任務を終えた後何度も何度も逃走を試みた。トイレに行く振りをして、変装もしたし、 プライドすらもかなぐり捨てて女装すらもした。 なのに、なのに何処まで逃げても追ってくるアンゼロットの追っ手。 ロンギヌスはどうやら個々によって微妙に異なるプラーナの反応をたどって追って来ているらしく、 彼には抗う術はなかった。 そんな逃げ場のない袋小路に追い詰められた彼を救ったのは、とあるアイテムだった。 そのアイテムの効果は「自身のプラーナを隠蔽し、ウィザードをイノセントへと偽装するもの」。 元々ウィザードの気配に敏感なエミュレーターを狩るために作られたモノである。 使い捨てで持続時間は一週間。副作用でレベルは下がる上に、一介のウィザードには手が出せないほどの高価。 ……呪錬制服が買えるほど値段の張る使い捨てなど買う奴は普通いないだろう。 柊蓮司を除いては。 もしもの時のために貯めていた軍資金。コレを使うときが来るとは。 このアイテムの存在を知った彼の行動は速かった。 盗聴を危惧し使い捨て式の携帯を契約。唯一信頼できるエリスに連絡を取り、温泉宿の予約を頼んだ。 真っ先に幼馴染みの名前が出ないのがなんというか彼らしい。まあ、 「そ、そんな駄目ですよ。ふっ二人きりで温泉だなんて……」 などと誤解されたが。誤解をといたあと微妙に機嫌が悪そうだったが何かしたか? アンゼロットの任務をこなしながら秘密裏に旅行の準備を進めていく。 そして、実行の時は来た。 任務の終了時にドサクサに紛れて戦線離脱。例のアイテムを服用した後、 三日以上前にロッカーに預けていたバックを回収、現在に至るというわけである。 今の柊蓮司はとてつもなくクレバーだった。きっと中の人補正でも入ったのだろう。 今にも「計画通り」とか「新世界の神になる!」などと言い出しそうである。 「さて、久しぶりの、本っ当に久しぶりの休暇だ!大いに羽を伸ばすとするか!!」 この上なく上機嫌である。まあ調子に乗っているとも言うが。 そういえば途中で髭を生やし、太鼓を担いだ変な中年が見かけたがスルー。 触らぬ神にたたりはないのだ。 「ごめんくださーーい!予約した柊ですけど!」 そう言った彼を迎えたのは、髪を逆立てた「竹の塚を征した」不良っぽい番頭さんではなく、 「にゅ?」 白っぽい何かだった。 ――――ARIA COMPANYにて アリア社長はいつものように社員である水無灯里を起こし行った。 これは彼が行う自主的な日課でもあるのだが……。 「んにゅ?」 部屋には灯里はいなかった。もう起きて出かけたのだろうが? 「ぐーー」 とりあえずおなかがへったので、考えるのは後回し。ご飯を食べてからにしよう。 彼は一階へと降りていく。 「アリア社長、おはようございます」 そういって朗らかな笑顔で迎えたのは社員であるアリシアだった。 彼女は「水の三大妖精」と言われる優秀なウンディーネ(水先案内人)である。 「ぷいぷいにゅ」 「あらあら、ご飯ですね。少し待ってくださいね」 通じるのは、長年の付き合いだからだろう。イスに着いてアリシアがテーブルにつくのを待つ。 ここらへんは知能が人間並みに高い火星猫故か。 「ぷいにゅ?」 首を傾げる。テーブルにはお皿が二枚しかない。気になって周りを見渡す。 ――――何かが欠けているような気がする。そうか、灯里の分がないのだ。 「いただきます」 「ぷいにゅ」 とりあえず食べよう。ご飯はいつものお気に入り。 同じ味なのにいつまでたっても飽きないというのはすごいと思う。 「えぷ~~~っ」 「あらあら。社長ちゃんと噛んで食べなきゃ消化に悪いですよ?」 穏やかな表情で言うアリシアを尻目に自身のデスクへと向かう。 彼は人間の言葉は理解できても話すことはできない。 なので意思疎通の方法がボディランケージぐらい。 もう一つはデスクの上に置いてある彼専用のタイプライターだ。 慣れた手つきで打っていく。 「ぷにゅ」 「どうかしたんですか?社長」 『あかりはどこ?』と打たれた紙を食器を洗い終わったアリシアに見せた。 「あかり……?アリア社長のお友達ですか?」 小首をかしげ彼女は尋ねた。 「ぷいにゅ!?」 からかわれているんだろうか。それとも喧嘩でもしたのだろうかと不安になる。 でも彼女は自分をからかうような人ではないし、彼女達が喧嘩している姿も思い浮かばない。 この二人はいい意味でも、悪い意味でも似た者師弟なのだ。 ……まさか。不意に『彼』の持つ預言書のことが頭によぎる。かつて『彼』から聞いたある予言。 いくら『彼』の言うことでも信じられなかった。……いや違う、信じたくなかっただけかもしれない。 「ぷいにゅ!!」 「あ、アリア社長!?」 呼び止める声を無視して、あのことを確かめるべく『彼』の元へ駆け出していった。 ← Prev Next →
https://w.atwiki.jp/quq0731/pages/8.html
@wikiにはいくつかの便利なプラグインがあります。 アーカイブ コメント ニュース 動画(Youtube) 編集履歴 関連ブログ これ以外のプラグインについては@wikiガイドをご覧ください = http //atwiki.jp/guide/
https://w.atwiki.jp/quq0731/pages/2.html
メニュー トップページ プラグイン メニュー メニュー2 @ウィキ ガイド @wiki 便利ツール @wiki 更新履歴 取得中です。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1149.html
わたしの朝はクレイドルから始まる。 朝、タイマーによって起動したわたしはまず今日の日付を確認する。これは体内に内蔵されたカレンダーでも出来るものなのだがどうも、紙でできたカレンダーのほうが好きなのだ。 そして日付を確認した後、わたしのオーナーであるハルナを見る。 ・・・・これはまたなんとも。 「寝相が悪いですね。はだけ放題じゃないですか」 体だけ見れば十分大人なのに・・・・もったいない話です。 さて、そんな毎朝抱く感想は置いておくとして起こさなければいけませんね。ハルナを起こすのはわたしに課せられた使命ですから。 ・・・・しかし、どうやって起こしたものか。 寝起きがあまりよくないのですよね。ハルナは。 何か道具が無いかとあたりを見渡すと、白と赤で着色されたパッケージが目に入りました。アレは確か昨日、ハルナが買ってきたジンギスカンキャラメル・・・・使えますね。 わたしはお菓子のパッケージに近づくとナイフで箱を開けました。中には一個一個丁寧に包装されたキャラメルがたっぷりと詰まっています。 その中から二つほど拝借し、銀紙を取ってハルナが眠るベッドに向かいます。 よじ登って辿り着き、寝ているハルナの口の中に放り込みました。 さて、後は放っておきましょう。しばらくすればうなされていい表情を見れますから、観察しつつ起きるのを待ちましょうか。 クラブハンド・フォートブラッグ 第三話 『主の日常と姫君の退屈』 「・・・・・・・あのクソ女・・・」 いつもより念入りにうがいを済ませた私は鏡に向かって毒づいた。 「よりによってジンギスカンキャラメルを口に入れるか・・・・しかも寝てる時に・・・・」 お陰で今朝はひどい夢を見た。焼肉屋さんでラード(脂肉)ばっかり生で食べさせられる夢。うえぇ・・・口の中にまだ味が残ってる・・・・。 「いやいやとても素晴らしいものを見させていただきました。若き乙女の苦悩する姿は非常に良かったですよ」 と、洗面台のコップの中に入って遊んでいたサラがいう。 「黙りなさいこのタコ頭。しまいにゃきれるわよ・・・・?」 「きれる中学生! 今朝の新聞の一面ですね」 「あんたに今ある選択肢は二つ。そのままコップに蓋をされて閉じ込められるか電子レンジでチンされるかよ!!」 「神姫を電子レンジに入れると爆発しますよ?」 「するんだ!? 爆発するんだ!?」 と、いけないいけない。今日は月曜で学校があるんだった。 サラに付き合ってたら遅刻しちゃうわ。 「私は学校行くけどあんたは留守番よ?」 「判ってますよ。とりあえず部屋まで乗せていってください。神姫に階段はキツイです」 嘘付け。平気で上り下りしてたじゃないのよ。 その言葉を飲み込み、私はサラが入ったままのコップを持つと二階に向かって歩き出した。 「・・・・・気持ちわる」 「七瀬、大丈夫?」 机に突っ伏していると八谷が話しかけてきた。 うぅ・・・お心遣いありがたし。 気を紛らわせるために、今朝の事情を説明する。 「そんなにジンギスカンキャラメルってヤバイの?」 「寝起きに食べてみなさい。一発で目が覚めるわよ。・・・・うぅ・・冗談で買ってきたのに・・・・・八谷にでも食べさせようかと思ったのにぃ・・・」 「標的僕だったのか!? ならそれは自業自得なんじゃないかな!?」 「私が食べさせてあげようかと思ったのにぃ・・・・」 「いや、それは嬉しいけど、七瀬みると遠慮したくなるよ・・・?」 苦笑しながら八谷は頭をかいた。 ・・・・結構かわいいかも。 神姫バトルじゃ私より強いのにな。 「・・・そういやあんた。マイにゃんの調子はどう?」 マイにゃんと言うのは八谷の神姫だ。 猫型MMSで、かなり自由気ままな性格をしている。鈴の代わりに首に数珠をつけている変な猫だ。 「ふつー。多分今は日向ぼっこしてるんじゃないかな」 「ふぅん。・・・そういやマイにゃんと八谷は勝率高いんだよね」 私がそう言うと八谷は笑いながらこういった。 「七瀬、それ昨日も聞いたよ?」 「む・・・・どうも駄目ね。今日は調子が良くないかも」 恐るべしジンギスカンキャラメル。 こうも爽やかな朝を妨害してくれるとは。 「それじゃぁ気分がよくなることを一つ。駅前のクレープ屋に新作が出たから帰りに食べに行こうよ。奢るからさ」 「その話乗ったわ・・・・にしても男の子らしくない会話ね」 「う、・・・いいじゃないか。甘いもの好きなんだから」 「甘いものだけじゃなくてファンシーなのも好きなんだよねー? 知ってるわよ。八谷の部屋にはぬいぐるみと犬猫の写真集がずらりと並んでるって」 「別にいいじゃん!? っていうか七瀬だってよく写真集借りてくじゃないか」 「私は女の子だから良いの」 「酷っ! ・・・・奢るのやめようかなー」 「あぁんウソウソ。いいと思うわよ男の子ファンシー」 「それだと何か違うものに聞こえるよ!?」 確かに。 何となく半ズボンはいてそうなイメージがある。 「はぁ・・・七瀬は僕を虐めるのが趣味なの?」 「それに近いものはあるかもネ?」 「なぜ語尾がカタカナなのか論理的な説明を求むよ」 ふふ・・・あぁ楽しいなぁ。 普段はさらに突っ込んでばっかりだから、誰かをからかうのが楽しくなってるなぁ・・・・。 あれ? もしかして私結構ヤバイ? 「まぁいいけど。先生来たから席に戻るよ。また授業の後にね」 「おっけ。居眠りすんなよ?」 「キミに言われたくないね?」 そういって八谷は席に戻っていった。 ・・・さて、私は寝ようかな? ・・・・・さて、ハルナが学校に行っている間、どうやって暇を潰したものか。 あぁ、弄る相手がいないと言うのは割かし寂しいものです。 「・・・・ふむ。最近は縞模様が好みみたいですね」 まぁハルナがいなくともハルナの部屋には色んなものがあるのですけど。 さしあたってわたしはタンスの下着入れを物色していたりします。主の好みを把握しておくことも、神姫として当然の事なのですよ。 ・・・・それにしても、歳の割りに大きい胸ですこと。わたしが二人分入れますね。フル装備で。 「ん? これは・・・・生理用品ですか。流石にこれはスルーしておきましょう。・・・・・・しかし胸は大人なのに下着は随分と歳相応ですねぇ・・・・お、この袋は・・・・? ・・・・お年玉袋ですか。つまらないですね」 ・・・・なんですね。 ハルナが登校してから二時間、流石に物色するのにも飽きたのでネットサーフィンでもしましょう。 戻る進む
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/158.html
時は進む。 季節は移ろい、廻る。 くるくる廻ってまたひと廻り。 でも、前に迎えた春と、今向かえる春は違う。 廻り回って、元の位置に来るはずなのに。 違う。 変わらないと思ってた日常は変わり、 ずっと続くと思っていた日常は変わってしまう。 穏やかな日々は終わり、 大切な人々との別れは来る。 別れたくないのに。 ずっと一緒にいたかったのに。 ――――なら終わらせなければいいではないですか そうだ。 なら、終わらせなければいいんだ。 ずっとこの夢を続けてしまえばいい。 廻り回ったこの春が、以前に迎えた春と寸分違わぬように。 時から切り取られたこの切り絵のような箱庭の中で。 ずっとずっと続けてしまえばいいんだ。 春先にみる暖かな夢のような暖かい日々を。 柊蓮司と退屈なお茶会(A Mad Tea-Party) Scene 4 生きた花の庭 “The Garden of Live Flowers” 紅い月が照らす路地裏。 そこに佇むのは、三人の夢使い。 「下がっていろ、今のキミでは足手まといだ」 その言葉に少女――アリス――は顔をしかめるが言葉に従った。その姿に少し苦笑する。 覚醒直後のため体がふらついて、立っているのがやっとの彼女が参戦したところで足手まといにしかならない。 ――――それにこのエミュレイターは強い。おそらく魔王級。 ――消えろ―― 『ヴォーティカルショット』 彼が右手を掲げる。周囲の空間が歪み、複数の小さな魔弾が生じ放たれた。 路地裏の闇に溶け込むようにして魔弾が四方から帽子屋へ襲い掛かる。 「帽子屋」は避ける素振りも見せず悠然と立ち尽くしている。 帽子屋は動かず、空中からステッキを取り出し、カツンっと地面を突いた。 『ノーリーズン』 パンッ。 魔弾は異形の寸前で破裂し、クラッカーのような音を立て散っていく。 不意を撃つように帽子屋の背後から影に溶け込むようにして撃たれた魔弾も、だ。 帽子屋が杖を向ける。同時、空中に複数の暗い刃が形成された。 宙に浮かぶのは均一されたハンドナイフ。 『ダークブレイド』 一斉に放たれた。避けられない。避ければ後ろの少女に中る。 「どりぃ~む」 正面に手を突き出し、ぐるぐると回す。その動きに伴うようにして、光が生まれる。 『マジックレジスト』 光の障壁が、魔刃と衝突。 僅かな均衡を保った後、五本のうち三本が弾かれ二本が障壁を貫いた。 一つを手で弾き、もう一つは右肩を貫く。 ――低レベル魔法でこの威力か!?―― 自身の障壁が貫かれたことに内心舌を打ち、 「おやおや、まだ終わりではないですよ」 思考は、帽子屋のその言葉で止まる。 『英雄幻想』 帽子屋から黒い、黒い霧が噴出した。 帽子屋の周りを囲む霧は一点に集まっていき、打ち上げ花火のような音を立て散逸する。 散逸した霧は凝結していき、太い触手の形をとった。 周囲から植物の根がコンクリートを突き破り、蔓が路地裏を取り囲む。 太い茎の上には垂れ下がるようにしてつぼみができる。 「げぎゃぎゃげぎゃあぎゃぎゃっげぎゃ」 花が咲き笑う。それには本来花にはないはずの牙が生えている。 「さあ、久しぶりの獲物ですよ。たんと味わいなさい」 食虫植物ならぬ食人植物が襲い掛かる。 つるが鞭のようにしなり、矢のようにはじけ飛ぶ。 「ふん」 『現の夢』 自身の「現実」を塗り替え「虚構」を纏う。 彼の周囲を風が纏い、彼はその場から消失する。 少女を肩に担ぎ、その場から尋常ではない跳躍力を発揮する。 轟音と共に蔓が先ほどまでいた場所に叩きつけられ、歩道に生々しい跡を残した。 「コレならどうだ」 少女を抱えながら、宙を舞い帽子屋の頭上に手をかざす。 ナイトメアの魔力の波動に帽子屋はその場から離脱をはかろうとするが、 「コレは『傀儡糸』……!?」 細い糸が足元に絡みつき、地面へと縫い付けられていた。 『リブレイド』 光の斬撃が帽子屋の左腕を斬り飛ばし、その余波で後ろにいる植物の触手を吹き飛ばした。 帽子屋はバランス崩し、よろめきながらも。 「おやりなさい、ダイアナ」 花が膨らみ、弾けた。 爆竹が弾けたような音とともに、無数の太い棘がナイトメアの逃げ込んだ場所に撃ちだされる。 舌打ちとともに、ナイトメアは少女を突き飛ばす。 その僅かな時間のロスが仇となり、彼は全身を串刺しにされ、聖人のように磔にされる。 帽子屋は斬り飛ばされた左手を右手で抱え、左肩へと当てる。 接合面から黒い霧が噴出し、黒い糸となり左腕を縫い合わせた。 帽子屋は左手を何度か握り返し、修復した左腕の調子を確かめながら聞く。 「さて、夢使いの優劣を決めるのは何だと思いますか?」 帽子屋は磔にしたナイトメアを眺めながら、突き刺した棘を持ち傷口を広げるようにかき回し引き抜く。 丸くきれいに開いた穴から血が湧き水のように噴出した。 「言ってしまえば、それは自身の内面を現実として外界へと映し出す能力の差。 自身の内面を外界とリンクさせ塗り替える。その力の差です」 苦悶の表情を浮かべるが、悲鳴一つ上げないナイトメアを帽子とコートの隙間から僅かに覗かせる灰色の瞳で見つめ。 「貴方と私ではその力に歴然とした差がある。貴方は夢使いとしてはおそらく一流でしょう。だからこそ貴方は私に勝てない」 抜いた棘を手で弄びながら、どうでもいいとばかりに言い放ち。 「これにて終幕。キミが夢使いでなければいい勝負になっただろうに。残念だよ」 残念というその声には別段何の感情も感じられず。 「オ・ルヴァール・コント」 別れの言葉を吐き捨てた。帽子屋が右手をナイトメアの胸に当てる。 ぎちり、ぎちり。周囲の空間が張り詰め、ひび割れるような音をたて歪み始める。串刺しにされた建物が軋み始めていく。 ―弾け 「ぐおおおおおおおおおおっ」 急に帽子屋が声を上げた。圧迫されるような空間の歪みは消え、膝を落とす。 「まだ調整が、クソが」 嫌らしいまでに丁寧な口調が消え、罵詈雑言を掃き捨てる。彼のコートと帽子が波のように、揺らめく。 「ナイトメアさん!!」 突き刺さっていた棘が消え崩れ落ち、倒れた。 壁はべったりと血に塗られ、紅く染められている。 「黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ。黙れ」 帽子屋は頭をかかえ狂ったように抑揚をつけずに淡々と呟く。 『キュアウォーター』 私はナイトメアさんの元へ駆け寄る。祈るように両手を合わせ、指先を合わせながらゆっくりと開く。螺旋を描くように水が集結していき、それは癒しの力を持つ。特にひどい両足の傷に伸ばすように水を広げる。 だめ、傷が塞がらない。 幾分か薄くはなっているが、それだけ。 「余計な真似してんじゃねえよ!!」 帽子屋に蹴り飛ばされ、首を締め上げられる。 「かはっ」 「もうソイツは終わってんだよ、何しても無駄だ!」 荒々しい、そこらへんのチンピラのような物言いする異形に思わず笑ってしまう。それが感にさわったのか、締め上げる力が強くなる。 意識が遠くなり、体の力が抜けていく。 少女の眼から光が薄れ もう駄目かと思ったとき、 『エア・ブレード』 風が突き抜けた。突風は帽子屋に直撃し吹き飛ばす。少女は倒れこみ、むせながらも呼吸を整える。 「大丈夫か?」 その声に後ろを見る。そこには剣を担いだ一人の青年がいた。茶色の髪に黒い瞳。どこか年寄りじみた雰囲気を持つ青年は気遣うように聞く。 「アリア。ナイトメア、そこにいる黒い服着たおっさんに傷の手当を」 その指示を受け、どこか見覚えのある白いものが近寄ってきた。 「ぷいにゅ~にゅ!!」 「アリア社長!?」 アリア社長が傷に触れる。傷口が鈍い光を発しながら、しわを寄せるようにして結合した。アリア社長の右前足がナイトメアさんから離れる。先ほどまでのひどいは傷一つなくなっていた。 「ふうっ、失礼しました。客人の前で取り乱すなどもってのほかですのに」 「ああもういやになる。どうやらもうお茶会の時間らしい。仕方あるまい、三月ウサギも待っていることだし、ここで失礼させていただこう」 元の口調に戻り、「帽子屋」は懐中時計を取り出し時間を確認した。いつも変わらない時間を示すその時計を。 「逃がすと思ってんのか?」 青年は僅か一歩で十メートルもの間合いをつめ、魔剣を振るう。帽子屋は避けることも、防ぐこともできず斬り裂かれた。両断にされた帽子屋は愉悦を浮かべながら、呆れたように言う。 「やれやれ、いきなり斬りつけるとは。礼儀がなってませんね、全く」 「幻覚かっ!?」 引き裂かれたはずの帽子屋は黒い霧となって消え、その後ろには先ほどまでと変わらずに悠然と立っている、 とぷんっ。 帽子屋の足元に黒い沼ができ、沈み込むようにして消えていく。 ――それではまたお会いしましょう、小さなレディ―― 帽子屋が消えると同時に月匣は消え去った。 「動けるか?」 とりあえず後ろにいた少女の安否を確認した。見たところ肘とかを擦りむいてはいるが、大きな傷はないようでほっとする。 「大丈夫です」 伸ばした手を借りずに自力で立ち上がる少女に少し苦笑する。 「あなたは……」 「柊蓮司だ」 「私はおれんじぷらねっとのアリスです」 「状況はまったく飲み込めねえんだが、とりあえずおっさんを休ませねえとな。どこか休める場所知ってるか?」 月衣に剣を収めながら、アリアに聞く。いきなり紅い月が出て、月匣に突入したらナイトメアのおっさんはぶっ倒れてるわ。知らないやつはいるわ。あのエミュレイターも何か。いいかげん状況を整理したい。 「ぷいっにゅ」 柊がナイトメアを背中に担ぎ、一同はアリアについて行った。 「ここか?」 足元にいるアリア社長に確認を取るように柊は言った。柊の目の前にあるのは、水の上に立っている二階建ての小さな住居。特徴といえば二階に比べ、一階がやけに小さいことぐらいか。小さな看板には「ARIA Company」と書かれていた。 近くには小船が浮かんでいる。運送屋なのだろうか、そういえば此処に来るまでに一度も車やバイクを見なかったし。たぶん小船がここの運行手段になっているんだろう。 「ぷいにゅ」 前を見ると、アリアが家の入り口の前に座っていた。 「おっ、おい!?」 アリアが小屋へと入ってしまった。勝手に入っていいのかよ 「大丈夫です。アリア社長はここの社長ですから」 社長という言葉に一瞬顔をしかめるが、それを聞くのはとりあえず後回し。 「あら、アリア社長おかえりなさい。それに鈴木さんや、アリスちゃんまで。後ろにいる方はお友達ですか?」 金髪の穏やかな物腰をもつ女性がいた。眼の覚めるような美人だが、あいにく柊の視点はその背後――時間を早送りにしているように暴食をくり広げる小柄な少女に釘付けになっていた。 その光景はまさに絶対的な強者による圧倒的な暴虐。両脇にはバベル塔がごとく皿が並び立ち、一心不乱に食い尽くしている。 激しく見覚えのある少女に思わず気が遠くなった。もう一度確かめるようにして見る。薄紫色の短い髪に、活発そうな灰色の瞳。懐が一揆に寒くなるような恐ろしい幻覚に襲われる。……どうやら間違いなさそうだ。 少女はようやくこちらの視線に気づいたのか、顔を上げる。 「は、はわっ!?ひーらぎ!どうしてここに!?」 「それはこっちの台詞だ!何でここにいんだよ?ポーリィ!!」 そこにはかつてともに戦った一人の少女がいた。 ← Prev Next →?
https://w.atwiki.jp/kisidakyodan_wiki/pages/173.html
退屈の月 原曲:亡き王女の為のセプテット 作詞:ichigo 編曲:ルシュカ 収録:OSUSHI PROJECT ① 歌詞 貫けないなら 愛すのをやめて 返り散る美しい紅の中踊れ 春待ち 雪舞う 心騒ぐ夜 舞い落ちる美しい花の中逝けばいい 一から千まで数えてはまた逆さにして弄ぶ 沈む意識の底に重なり絶えゆくは 現の破片 望みは数多 叶うは幾つ? 愛しい程に 痛みが募る 隠せないような 鮮やかな青 不可能ならば 奇跡起こすだけ。 此処は何処でもない 名前も意味がない 呼ぶ声もいつからか ひとつになった。 千から一まで数えてはまた逆さにして弄ぶ 眠るあなたはどこに?転がる先は 冷たくヒトリ 欠けてゆく月 もの言わぬ空 美しい程に 闇が蝕んでゆく 隠せないような 鮮やかな青 それが運命なら 夢を見せるだけ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/901.html
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/144.html
幻想が現実となり、紅き月が水の都に昇る。 虚構は現実へ、現実は虚構へと。 時は停滞し、日々は繰り返される。 都の護り手は、その力を封じられ、 白の導き手は、少女を連れ戻すべく奔走する。 水の導き手たる共感者が堕ちたとき、世界は闇に包まれるだろう。 この危機を防ぐためには「柊蓮司」の力の必要になる。 ――――とあるバカップルの予言写本より 「おはよっ、後輩ちゃん!」 振り返るとそこには青く短い髪に、勝気そうな瞳をした自分より少し年上の少女が立っていた。 私に声をかけたのは、姫屋のウンディーネの藍華先輩。勝気そうに見えて、意外と泣き虫なところがあるひとで、 所属している会社は別なのだが、いつの間にか一緒に合同練習をするのが日課になっていた。 「おはようございます、藍華先輩。……灯里先輩はまだ来ていないみたいですね」 いつもなら誰よりも先に来ているはずなのに。……珍しい。 「あかり?誰それ、オレンジぷらねっとの人?」 両手につけた手袋をつけ直しながら、藍華先輩は言った。 「?なにいってるんですか?」 そう問いかけても、わけがわからないという風に首をかしげている。 どういう事でしょう、からかわれているんでしょうか? アテナ先輩や晃先輩ならともかく、藍華先輩がこんな突拍子もないことをするとは思えない。 喧嘩したにしても、こういう陰険な態度を藍華先輩がとるとは思えないし、 でもふざけているようにも……でっかい不思議です。 「おう、なんだこれから練習か?ガチャベン」 そう言って声をかけてきたのは、サラマンダー(火炎之番人)の暁さん。 黒い髪をポニーテールにしているが、れっきとした男性である。 「うっさい、アンタには関係ないでしょ?ポニ男」 むすっとした顔で言葉を返す藍華先輩。相変わらず仲が悪いんですね、この二人は。 そうだ。 「暁さんは、灯里先輩のことを知ってますよね?」 少し声が震えてしまう。まるで自分が別の世界に迷い込んだような気になる。 「あ、誰だそいつ?知り合いか?」 何を言ってるんだ?という感じで首をかしげる。 「もみ子っていつも暁さんが呼んでいる人ですよ」 「もみ子?そんなセンスのないあだ名、俺様はつけんぞ」 「……すみません、藍華先輩。用事があったのを思い出しました。失礼します」 「ちょ、ちょっと後輩ちゃん!?」 嫌な胸騒ぎを感じる。 ほんの数メートル先のいつもの光景が壁に遮られたように、 まるで別もののように見えて。 ソレを否定したくて、ここに居たくなくて、そこから私は逃げ出した。 柊蓮司と退屈なお茶会(A Mad Tea-Party) Scene 2 白猫、不幸な男を送り込む “The Cat Sends Unhappy Man” 柊蓮司は、目の前の物体を前に固まっていた。 「なんだ、シロクマなのか……コレは?」 まあ平安時代っぽい眉を除けば確かにそう見えなくもないが。 ……でも「にゅっ」ってなんだ「にゅっ」って。 いや、シロクマの泣き声なんて知らないけどソレは明らかに違うだろ。 それになんつーか間抜けっぽいしコイツ。 北極最強の肉食獣であるシロクマとは思えない。 「ぷいにゅ!」 じりっ。少しずつ気取られないように、後退りする。 やばい、なんだかわけが分からないがトラブルの匂いがする。 柊の、主にアンゼロットのせいによる不幸によって研ぎ澄まれた危機察知能力が警告を発する。 じりじり。今だ!!身を翻し、唯一の出口から逃走をはかる。 「せっかくの休暇をつぶされてたまっ……」 ――――ドカッ。次の瞬間柊は見えざる壁に顔面からぶつかっていた。 「ぐ、ぐお……」 大いなる者の特殊能力「次元断」によって唯一の退路を封じられ、 「にゅ?」 ――――ガコンッ。 痛みに顔面をおさえ、前後不覚になった彼の足元に唐突に広がる暗闇。 急に訪れるのは浮遊感。 「お、俺の休暇を返せ~~~!!」 哀れにも柊蓮司は唐突にできた穴から地下へと下がっていった。 柊は危機を察知できても、回避はできないということか。 ……にしてもアリア社長とぼけた顔でこんなことをするとは意外と外道である。 「……いったいどういうことなんでしょう。でっかい謎です」 ベンチで一人うなだれる。誰も覚えていないなんて。 晃さんも、郵便屋さんも、ムッくんも、アリシアさんも、誰一人覚えていないなんて。 からかわれているにしても、いくらなんでも度が過ぎます。 「まぁ社長は覚えていますよね、灯里先輩のこと?」 まぁ社長は首をかしげるだけで、答えを返してくれない。 八方ふさがりでもうどうしていいのかわからなくなって。 世界に一人きりになってしまったような気がした。 「あら、こんなところに座り込んで。どうかしたの?」 その少女は銀色の髪に、金色の瞳。見たこともない制服の上にポンチョを着込み、 じゃがバターをほおばっている。彼女は不敵な笑みを浮かべていた。 「あっ、ベルさん……」 彼女の名前はベル・フライ。アテナ先輩のお得意様で、 二年に一度黒髪の少女とともにネオヴェネツィアを訪れる。 今回黒髪の少女は来ていない。なんでも別の用事があって来られなかったらしい。 「ふうん、それは妙な話ね」 「はい……」 気がつけば今までのことを彼女に話していた。誰かに聞いて欲しかった、身近な人ではない誰かに。 「ベルさん、私どうすればいいのでしょうか?」 「それは貴方がどうしたいかによるわね」 「どこをさがせばいいんでしょう?」 「それは貴方がどこをさがしたいかによるわね」 「まあ、それはそうなんですけど……」 のらりくらりととらえどころのなく答える彼女に思わず眉をしかめてしまう。それを見てベルさんは微笑を浮かべる。 「そうね、それじゃあ一つだけヒントをあげましょう」 「ヒントですか」 「そうヒント。貴方しか覚えていないというその先輩。 周りの人が誰も覚えていなくて貴方だけが知っているというその先輩。 普通に考えるならそんな先輩はいないってことになるわ、ふつうに考えるならね」 「でもね、これは周りが普通だったときにいえること。もしそうでないのならば」 「そこには必ずなんらかの歪みが、矛盾が生じるわ。 それは些細なものかもしれないけど、明らかにおかしな異変 ……私が言えるのはこれぐらいね」 そう言った彼女はじゃがバターを食べ終わると、 それが入っていた袋をくしゃくしゃに丸めベンチから立ち上がる。 「じゃ、がんばってね。……ここが消えてしまうのは、つまらないしね」 消える。その言葉になんだか不穏なものを感じ、呼び止めようとしたが、 「ベルさん……!?」 彼女の姿はそこにはなく、丸められた袋が捨てられていただけだった。 柊が眼を覚ましたのは、どこかの路地裏。 レンガ造りの高い建物に切り取られた空を見上げると、 小島や見たこともない船が浮かんでいる。その小島には線が走っていて、 どうやらロープウェイで地上とつながっているようだ。 ……また異世界に飛ばされたらしい。 すんなりとそのことを受け入れられる自分の順応能力の高さになんだか泣けてきた。 「で、俺をここまで拉致ってきたのにはちゃんと理由があるんだろうな白いの?」 顔が少しひきつりながらも、目の前にいる諸悪の根源(仮)を睨む。 睨みつけられた諸悪の根源(仮)は涙目だが逃げるつもりはないらしく、 「ぷ、ぷいにゅ…」 くすん、くすん。腰がひけ、ふるふると震えている。 「はあ~~」 なんだかそんな姿を見ると、こちらが弱いものいじめをしているような気になる。 気が抜けてしまい、思わず座り込んでしまう。 まあそれに柊にとってみれば、拉致され無茶なお願いを 「はいかYesでお答えください」とごり押しされるのは日常茶飯事のことだし。 「ぷいにゅ」 「?」 ぴとっと前足が柊の額にあたる。ぷにぷにとしている肉球が気持ちいい。 「っつ……!?」 頭にいろいろな映像や知識が流れ込んでくる。 「これって……」 以前にめんどくさがり屋な「世界の守護者」が使った安直魔法「かくかくしかじか」に似ている。 入ってきた情報を吟味しながら、確かめるように柊は尋ねた。 「つまりここは『ガイア』のような平行世界の火星でお前はウィザードで、 水無灯里がエミュレーターにさらわれたから救出するのに手を貸してくれっていうんだな?」 「ぷいにゅ!!」 「でも、なんでわざわざ俺を呼んだんだ?こっちの世界でもウィザードはいるんだろ?」 ……何故か意思疎通ができている。安直魔法にはそんな力はないはずなのだが。 「ぷい」 「預言書?何でそんなものに俺の名前が……」 ふと思い出すのはあのバカップルの記した「未来に書かれた日記」。 こちらにとっては迷惑きわまらない代物だったな……。 どこか不安げに見つめるアリアという猫? いまだに猫とは思えないのだが、 知り合いのフェレットの例もあるのでとりあえずスルーすることにする。 「わかった。じゃあ、まずは情報収集からだな。 こっちにも聖堂教会やコスモガードみたいなウィザードのあるんだろ?」 アリア社長の不安を吹き飛ばすように彼を励ますようにして、柊蓮司は笑ってそう言った。 「あれここは……」 ベルさんと別れた後灯里先輩を探して入り込んだのは、見たこともない小路(カッレ)だった。 彼女の趣味は散歩である。入り組んだ迷路のような薄暗い小路(カッレ)、 それを抜けていくと子供の遊び場になっている光差す広場(カンポ)。 運河(カナレッジョ)に架かった橋(ポンチ)。 会社の先輩たちには年寄りくさいって言われるけど、 規則正しくそれが繰り返され変わっていく町並みはいつも穏やかな気持ちにさせてくれる。 なのにどうしてでしょうか、こんなに不安な気持ちになるのは。 風が吹く。帽子が飛ばされないように手で押さえる。 春も終わりを迎えようとしているのに舞う枯葉を、唖然として見つめた。 枯れ葉が風に舞い、視界は遮られ世界は一変する。 風が止み、視界が戻る。 さっきまで明るかったはずの空が急に暗くなり、空を見上げると紅い月が天に昇っていた。 「紅い月……」 見たこともない禍々しい色をした月。 あまりの異様な事態に呆然とし現実逃避しそうになる。 だが世界は少女にそれを許さない。 紅き月が現れると時を同じくして、闇の眷属は姿を現す。 轟音とともにソレは、闇夜から降り立った。 自身の体を確かめるように背伸びするようにして体を伸ばす。 「獅子の石像……!?」 それは彼女にも馴染みの深いもの。 この街に多数点在する福音史家マルコーを表した翼ある獅子の石像。 石像であるはずのソレが体を震わせ、彫られているだけのはずの眼は紅く輝く。 動かないはずのものが動く、そのことがただ恐ろしくて、 少女はまるで糸の切れたマリオネットのように、座り込んだ。 この地を護る正義の化身が、彼女に牙を向ける。 震え座り込む少女にはなすべくもなく、その牙は振るわれた。 ← Prev Next →
https://w.atwiki.jp/3kshiki/pages/426.html
span style="font-size medium;" id=title strong 下ネタという概念が存在しない退屈な世界 /strong /span - a href="http //www55.atwiki.jp/3kshiki/pages/426.html" target="_blank" 編集タグ /a br / a href="http //www.shimoseka.com/" target="_blank" アニメ公式 /a / a href="https //ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E3%83%8D%E3%82%BF%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%A6%82%E5%BF%B5%E3%81%8C%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E9%80%80%E5%B1%88%E3%81%AA%E4%B8%96%E7%95%8C" target="_blank" Wikipedia /a / a href="https //twitter.com/shimoseka" target="_blank" Twitter /a br / br / div style="border-style solid;border-width 1px;padding 5px 5px 5px 5px;width 200px;" strong 目次 /strong ul li a href="#basics" 基本情報 /a /li li a href="#musicinfo" 音楽情報 /a /li li a href="#musicmenu" 各話使用音楽一覧 /a /li /ul /div table tr bgcolor="#DEB887" td colspan="2" align="center" id=basics strong 基本情報 /strong /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" width="120" 監督 /td td 鈴木洋平 /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 音響監督 /td td a href="https //ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E7%94%B0%E5%B7%9D%E4%BB%81" target="_blank" 明田川 仁 /a /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 音楽制作 /td td a href="https //ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%89" target="_blank" スターチャイルドレコード /a /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 話数 /td td 全12話 /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 放送時期 /td td 2015年07月~2015年09月 /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 原作区分 /td td ライトノベル /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 関連作品 /td td /td /tr /table h4 id=musicinfo 音楽情報 /h4 hr / table width="700" tr bgcolor="#DEB887" td width="65" align="center" strong 区分 /strong /td td align="center" width="300" strong 楽曲情報 /strong /td td align="center" strong 発売情報 /strong /td td width="105" align="center" strong 発売日 /strong /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" rowspan="2" 劇伴音楽 /td td rowspan="2" a href="https //ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E5%B1%B1%E7%A7%8B%E8%88%AA" target="_blank" 立山秋航 /a /td td span style="color #32CD32;" BD /span strong 『下ネタという概念が存在しない退屈な世界 1【初回生産限定版】』 /strong br / ※Blu-rayの初回生産限定版特典として、サントラ①収録のCDが付属。 /td td a href="http //www55.atwiki.jp/3kshiki/pages/394.html#d20150826" target="_blank" 2015年08月26日 /a /td /tr tr td span style="color #32CD32;" BD /span strong 『下ネタという概念が存在しない退屈な世界 4【初回生産限定版】』 /strong br / ※Blu-rayの初回生産限定版特典として、サントラ②収録のCDが付属。 /td td 2015年11月25日 /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" OPテーマ /td td id="op" strong 「B地区戦隊SOX」SOX /strong (第2話~第12話) br / 作詞・作曲:吟(Busted rose) 編曲:長谷川智樹 br / ※第7話からサビ前の速水 奨による語りが変更されている。 br / ※第11話では挿入歌としてのみ使用。 br / /td td span style="color #0000FF;" S /span strong 『B地区戦隊SOX』 /strong SOX /td td a href="http //www55.atwiki.jp/3kshiki/pages/394.html#d20150708" target="_blank" 2015年07月08日 /a /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" EDテーマ /td td id="ed" strong 「Inner Urge」上坂すみれ /strong (第1話~第12話) br / 作詞・作曲:松浦勇気 編曲:橋本由香利 br / ♪ a href="https //www.youtube.com/watch?v=iRI2dNtVPis" target="_blank" YouTube Edit /a (Youtube)[01 49] /td td span style="color #0000FF;" S /span strong 『Inner Urge』 /strong 上坂すみれ /td td a href="http //www55.atwiki.jp/3kshiki/pages/394.html#d20150722" target="_blank" 2015年07月22日 /a /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 挿入歌 /td td id="in01" なし br / /td td なし /td td なし /td /tr /table div align="right" a href="#title" topに戻る /a /div h4 id=musicmenu 各話使用音楽一覧 /h4 hr / 各話で使用された音楽の一覧。 br / br / ・ここでのOP・EDの定義はクレジット上の表記ではなく、OP・EDクレジットのテロップが表示されている場面(多くはOP・ED映像と共に流れる)で流れていた楽曲。 br / ・基本曲名のみで表記。歌手などが違う場合その都度表記。 br / ・初使用の楽曲は太字で表記。 br / br / table width="700" tr bgcolor="#DEB887" td width="45" strong 話数 /strong /td td width="175" strong サブタイトル /strong /td td width="170" strong OP /strong /td td width="170" strong ED /strong /td td width="150" strong 挿入歌他 /strong /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第1話 /td td 公序良俗は誰が為に /td td なし /td td strong 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /strong /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第2話 /td td 妊娠のなぞ /td td strong 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 /strong /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第3話 /td td 人の愛し方 /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第4話 /td td 世界いわく、愛は正義 /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第5話 /td td 下ネタテロは誰が為に /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第6話 /td td 手作りのぬくもり! /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第7話 /td td SOXが作りし者 /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 br / ※サビ前の速水 奨による語りが変更されている。 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第8話 /td td 悪魔が来たりてホラを吹く /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 br / ※サビ前の速水 奨による語りが変更されている。 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第9話 /td td アンドロイドは電気アンマの夢を見るか /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 br / ※サビ前の速水 奨による語りが変更されている。 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第10話 /td td ジイ級クエスト /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 br / ※サビ前の速水 奨による語りが変更されている。 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第11話 /td td テクノブレイク /td td なし /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 br / ※OPテーマ。 /td /tr tr td bgcolor="#FFEFD5" 第12話 /td td 下ネタよ永遠に /td td 「 a href="#op" B地区戦隊SOX /a 」 br / ※サビ前の速水 奨による語りが変更されている。 /td td 「 a href="#ed" Inner Urge /a 」 /td td なし /td /tr /table div align="right" a href="#title" topに戻る /a /div