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185 転生恋生 第十二幕(1/5) ◆.mKflUwGZk sage 2009/08/04(火) 22 13 30 ID FZPA4iXV せっかくのゴールデンウィークを病院で過ごさなければならないお袋は気の毒だと最初は思った。けどまあ、考えてみれば専業主婦のお袋にとってはあまりゴールデンウィークのメリットはないし、むしろ家事から解放されるから、本当の意味で骨休めになるのかもしれない。 現在大阪に単身赴任中の親父は、お袋が入院したという話を聴いて最初は心配したようだが、すぐに退院できると知って安心すると、急に関心をなくしてしまった。 「それじゃあ、家に帰ってこないのか? 1度くらい見舞いに行ったら?」 「虫垂炎ならどうってことないだろう。わざわざ金と時間を費やして戻る必要があるとは思わん」 「久しぶりに我が家に帰ろうとは思わないわけ?」 「母さんがいるならゆっくりできるが、入院中の家事は仁恵がやることになるんだろう? 父さんの面倒まで見させるのはかわいそうだ。少しでも負担を軽くするために父さんは大阪に残る」 俺としては姉貴の関心が少しでも親父に向いて、俺の負担が軽減されることを期待したんだが、親父は察してくれなかった。 「母さんの留守をしっかり守れよ。仁恵に全部押しつけないで、太郎も少しは手伝うんだぞ」 いっそ、姉貴の魔の手から俺を守ってほしいと泣いてすがりつくべきだろうか。 「それじゃあ、元気でな」 そう言って親父は電話を切ってしまった。 やれやれ、俺はこれから5日間、独力で貞操を守らなければならないわけだ。 ……どんなに希望的観測を重ねたシミュレーションを繰り返しても、陥落必至という答えしか出ない。なんとかして親父を呼び戻す手を考えなきゃならんな。 「たろーちゃん、夕食にしましょう」 ダイニングから姉貴の声が聴こえてきた。お袋は夕食の支度中に倒れて病院へ運ばれたわけだが、俺たちふたりで入院手続きを済ませて帰宅してから、姉貴が作りかけの夕食を完成させた。これからいつもより遅い夕食だ。 こういう点は姉貴がいてくれてよかったとは思うが、どうにも素直に感謝できない。 食卓に向かい合って座り、「いただきます」とハモってから食事にかかる。 「ねぇ、こうしてふたりっきりでご飯食べてるとさぁ……」 姉貴がニコニコしながら話しかけてきた。食卓に会話があってもいいとは思うが、姉貴とふたりきりの場合は「黙って食え」と言いたくなる。どうせくだらない話題だろう。この後の姉貴の台詞も想像がつく。 「まるで新婚夫婦みたいだよね、私たち」 相変わらず予想を外さない。無視しようかとも思ったが、暴走するくらいなら適度に相手をしてやって、多少方向性を修正しようと試みる。 「産まれてこのかた、十年以上も一緒に暮らしてるんだから、新婚なんていうほど初々しくないだろ」 「そうだね。もう、酸いも甘いもかみ分けて、お互いのことは性感帯も好きなプレイも全て知り尽くしてる熟年夫婦だよね」 俺は姉貴の性感帯なんか知らないし、知りたくもない。 「熟年夫婦ってゆーか、むしろ倦怠期だな」 「それじゃあ、刺激を取り戻すために過激なプレイに挑戦しようよ」 俺の方向修正の努力をものともせず、姉貴は姉弟相姦に向けて突っ走り続ける。もう、これ以上話すと食欲が失せそうなので、黙って食うことにした。 俺が食っている間も、姉貴は延々とラブラブ会話をひとりで続けた。そのせいで食事が遅れていたが、俺が「ごちそうさま」と言って席を立つと物凄い勢いで食べ終える。 「さあ、一緒にお風呂に入ろうね」 歯を磨き終えたところで俺は姉貴に拘束された。有無を言わさず風呂場へ引きずられていき、服を剥がされて洗い場へ連れ込まれる。とりあえず腕力ではかなわないので、俺は無駄な抵抗はしなかった。 「うふふ……、今夜はふたりっきりだから、長い夜にしようね。大声あげても誰も来ないから」 本人はムードを出しているつもりだろうが、途中からまるっきり強姦魔の口調だ。 世の男たちは一生のうち何人の女と一緒に風呂に入ることができるだろうか。まあ、恋人ないし夫婦関係になる女の数とほぼ等しいだろう。 では17歳でそのような経験ができる男は全体の何パーセントか。これはかなり小さい数字になると予想できる。 だが、そのような経験ができて、なおかつ相手が実の姉だという男は、日本でも片手で数える程度しか存在しないだろう。 幸か不幸か、俺がまさにその一人だ。 186 転生恋生 第十二幕(2/5) ◆.mKflUwGZk sage 2009/08/04(火) 22 14 32 ID FZPA4iXV 現在、俺と姉貴は真っ裸で浴室にいる。俺は椅子に腰掛け、姉貴は鼻歌交じりで俺の背中を流しているという構図だ。 「たろーちゃんの背中は広いねー」 俺の背中は石鹸の泡で包まれ、弾力のある感触が上下に往復している。姉貴が胸を押しつけて洗っているのだ。 ……まあ、風俗物のAVで見たことがあるから、ソープランドでそういう洗い方をするというのは、知識としては知っている。 だけど、どう考えてもこんな洗い方で垢が落ちるわけがないよな。姉貴はさっきから鼻息を荒くするばかりだが、俺は全く反応しない。 「じゃあ、今度は腕ね」 姉貴が右側に回り、俺の二の腕を胸の谷間に挟み込んで上下にこする。更に手の先を股間にこすりつける。 ……陰毛があるから、まだしも摩擦が働くか。スポンジたわしみたいなものかな。まあ、逆に何かが付着しそうな気がするが。 同じことを左腕にもやり、続いて俺の足に跨って股間をこすりつけた。姉貴は息が荒くなる一方だが、俺は相変わらず反応しない。 いくらプロポーションがよくても、美人でも、身内の体なんて肉と脂肪の塊でしかない。普通のAVやエロ雑誌なら興奮するわけだから、相手が姉貴であるということが唯一最大の要因なわけだ。 「たろーちゃん、どう? 気持ちいい?」 いつの間にやら、姉貴は俺にのしかかって、俺の胸に乳房を押しつけている。俺が平然としているのに気づいているのかいないのか、まるっきり風俗嬢のノリだ。 身内にこんなことをされると、どんどん気分が悪くなる一方だ。なんでわからないんだろう? 「それじゃあ、いよいよ……」 目をぎらつかせながら、姉貴は俺の前に膝をついて、泡まみれの両掌で俺のペニスを包み込む。竿と玉袋にまんべんなく泡をまぶし、優しくしごく。 傍から見ると鼻血モノの光景のはずだが、俺としては気持ち悪くて仕方がなかった。肉親に性器をいじられるなんておぞましいと思う俺が異常なんだろうか。 いや、俺が正常だ。断じて異常ではない。そうでなければ、世界は異常者で満ち満ちていることになってしまう。姉貴の方が異常なんだ。 姉貴は目を血走らせて興奮しまくっているが、どうしてこんなことができるんだろう? ……俺のことを弟と思っていないからか。それはそれでショックだな。 死んだ恋人の代償として俺相手に性欲を発散させようとしているのだと思うと、裏切られた気分だ。 俺は姉貴をキモいと思うが、肉親に対する愛情は持っているつもりだ。それが一方通行な思いで、姉貴は俺を都合のよい肉人形か何かとして扱っているとなると、本気で凹む。 もう、いい加減終わりにするか。 「姉貴さぁ」 「なぁに?」 「さっきから色々やってるけどさ。俺は全然気持ちよくないぞ。むしろ気持ち悪い。手を離してくれ」 姉貴はがっくりと肩を落とした。 「ごめんね。私が下手で」 「そういう問題じゃないよ。巧くてもダメだと思う」 「まさか、そんな……」 姉貴は青くなった。 「たろーちゃん、女に興味がないなんて言わないわよね? 男が好きだなんて……」 「違うよ!」 途方もない誤解が生じそうになったので、俺は慌てた。 「俺はノーマルだよ。普通にAVも見るし」 「ああ、よかった」 姉貴は胸を撫で下ろした。 187 転生恋生 第十二幕(3/5) ◆.mKflUwGZk sage 2009/08/04(火) 22 15 37 ID FZPA4iXV 「でも、それならどうして私に反応しないの? 自分で言うのもなんだけど、スタイルには自信があるのよ。たろーちゃんに気に入ってもらえるように努力して磨いてきたんだから」 確かに、姉貴はスタイルがいい。バストの大きさや形、ウェストからヒップにかけてのラインなんかは申し分ない。だけど、姉貴の体というだけで台無しだ。 「姉貴の体じゃ興奮しないんだよ。手コキされたって同じことだ。自分でする方がよっぽどいい」 「なんですって!」 右手にも劣ると言われて、さすがに姉貴は傷ついたらしい。上体が揺れて、床のタイルに手をついた。よろめいてしまったんだな。 「思うにさ、姉貴は俺に裸を見せ過ぎたんだ。見慣れちまったんだよ」 物心ついた頃から一緒に風呂に入っていたし、胸を押しつけられるのもペニスをしごかれるのも日常茶飯事だ。非日常的な刺激こそが最良の媚薬だということが、姉貴にはわかっていないんだな。 エロ本だって、今にして思えば中学生の頃に人目を気にしながらコンビニでこっそり立ち読みするのが一番興奮した。姉貴のアソコなんか、散々拝まされてきたから、ありがたくもなんともない。 「どうしてよ? 私はたろーちゃんの体を見るだけで濡れるわよ」 「でも、俺の方は見飽きたんだよ」 「ひどい! 私の体に飽きただなんて……!」 誤解を招くような言い方をするな。……いや、ある意味正しいか。 「さっきさ、熟年夫婦に喩えただろ? 実際、夫婦も長年一緒にいると異性として意識しなくなるらしいしさ。姉と弟だって同じだよ」 「同じじゃないもん! 私は物心ついた頃からたろーちゃんに欲情し続けてきたもん! 私とたろーちゃんがセックスできる年齢になるまで、一日千秋の思いで待ち続けてきたのよ!」 知るか、そんなこと。物心ついた頃からって、姉貴が幼稚園児で、俺がまだよちよち歩きの頃からか? 嫌過ぎる幼児だな。 「とにかく、俺は姉貴を異性としては見られないんだよ」 俺は自分でシャワーを使って泡を洗い流すと、湯船に浸かった。姉貴は恨みがましい目つきで俺を見やったが、この場は諦めたのか、自分の髪と体を洗い始めた。 さっさと風呂場を出ようかとも考えたが、これからの数日間を考えると、いやこの先の人生を考えると、どこかで腹を割って話さないといけない。 姉貴が体を洗って湯船に入ってくるのを待って、俺は極力真剣な声を出して語りかけた。 「姉貴さ、さっきの続きだけど、大学行けよ。そしてちゃんと仕事しろ。それが姉貴のためだし、俺がそうしてほしい」 「たろーちゃんは、嫁に家にいてほしくないの?」 この場合の「嫁」が一人称であることは明らかだった。俺はため息をつきたくなるのをこらえる。 「そうだな、どっちかっていうと、働く女の人が好みだな」 おふくろは専業主婦だが、一日中家にいて退屈じゃないだろうかと思う。友達の話を聴いても、共働きの母親の方が若々しい気がする。 「じゃあ、考える」 案外素直に姉貴は前言を撤回した。そうか、こういう言い方をすれば説得できるのか。 「学校へも進路希望を出し直しておけよ」 「でも、たろーちゃんと同じ大学に行きたいから一浪する」 わかってねーよ! 「そういうの、もういい加減にやめてくれよ! 姉貴の人生は姉貴の人生だろ! いつまでも俺にべったりくっつくのはお互いのためにならないんだよ!」 堪えきれずに声を荒げた俺に対して、姉貴は浴槽の中で体を寄せてきた。湯に浮く乳房が俺に押しつけられる。 「私たちはずっと一緒にいなければいけないの! そう誓ったんだもの! やっとめぐり逢えたのに、離れ離れになるなんて考えられない!」 姉貴も珍しく声を苛立たせている。まるで姉貴の話を理解できない俺が悪いと言いたげだ。いや、本気でそう思っているんだろうな。 「やっとめぐり逢えたって、どういう意味だよ。ずっと家族として一緒に暮らしているっていうのに」 「千年ぶりに逢えたって意味だよ」 188 転生恋生 第十二幕(4/5) ◆.mKflUwGZk sage 2009/08/04(火) 22 16 34 ID FZPA4iXV またその話か。もううんざりだ。 いよいよ俺は切り札を出すことにする。 「姉貴、俺はもう知っているんだ」 「何を?」 「姉貴が俺以外の男に恋をして、その相手に死なれたせいで、俺を身代わりにしようとしているってことさ」 姉貴の顔色が変わった。やっぱり、一番の急所を突かれたせいだろう。 「悲しい恋の終わり方をした姉貴には同情するよ。だけど、俺をその男の身代わりにするのは間違っている。早く吹っ切って、新しい出会いを……」 「何の話をしているの!」 姉貴が血相を変えて俺を遮った。こんな表情の姉貴を見るのは初めてだ。ちょっと怖いが、勇気を奮って続ける。 「だから、姉貴が前に付き合っていた男の話だよ」 「そんな人はいないわ! 私がたろーちゃん以外の男を好きになるわけないでしょ! 誰の話をしているの!」 「誰かは知らないけどさ、当事者から聴いたんだよ」 「誰よ! 誰がそんな嘘を吹き込んだの!」 姉貴が俺の両肩をつかんで詰め寄る。指が食い込んで痛い。雉野先輩の名前を出したくはなかったが、痛みと怯えのせいで口を滑らせて閉まった。 「雉野先輩から聴いたんだよ」 「あのクソキジが! あいつが何を言ったの!」 ますます指が食い込んできた。皮膚を破って血が出そうだ。 「昔、雉野先輩とその友達が取り巻きをやっていた男を姉貴が奪い取って、その後男が死んでしまったせいで、姉貴と先輩たちの関係が悪くなったって、雉野先輩から聴いたんだよ」 姉貴はキツネにつままれたような顔をした。俺の肩をつかむ力が急に脱けていく。俺は姉貴の手を振り払ってまくし立てた。 「元はといえば、姉貴が他人の男にちょっかいを出したのが原因だろ? そりゃ、恋愛は自由だし、好きになったものはしょうがないだろうけどさ。姉貴が恨まれるのは当然だよ。何より、俺を巻き込むのはやめてくれ!」 湯の中で叫ぶのは意外と体力を使うらしい。俺は少し息が荒くなっていた。 黙って聴いていた姉貴だったが、いつの間にか冷静な表情に戻っていた。 「なーんだ、そのこと」 拍子抜けしたように言う。 「たろーちゃん、誤解してるよ。あのクソキジが紛らわしい言い方をしたせいだね」 「どういう意味だよ。雉野先輩が嘘を言ったっていうのか?」 「嘘というわけではないわね。まあ事実を歪めているけど」 「男を奪い合ったっていうのは事実なんだろ?」 「本当のことよ」 あっさり認めやがった。改めて本人の口から聴くと、ちょっとショックだな。あれだけ俺にべったりしておきながら、他の男を好きになっていたなんて。 だが、姉貴は俺が全く予想していなかったことを言った。 「だって、その男ってたろーちゃんのことだもの」 何を言っているんだ、このキモ姉貴は。 「クソキジが言ったのは千年前のことよ。あいつら、たろーちゃんの家来だったの。でも、私がたろーちゃんと愛し合うようになって、嫉妬に駆られて主人を裏切ったのよ」 「おい、ちょっと待て」 「まるで私のせいでたろーちゃんが命を落としたように言うなんて、本当にクズだわ。性根が腐っているのは相変わらずね」 当時のことを思い出したかのような口ぶりだが、それはおかしいだろ。 189 転生恋生 第十二幕(5/5) ◆.mKflUwGZk sage 2009/08/04(火) 22 17 15 ID FZPA4iXV 「さすがに刑事事件になったら面倒だと思って見逃していたけど、今度もまた私とたろーちゃんの仲を引き裂こうとするなら、本格的に痛めつけてやらないと……」 「待てって言ってるだろ!」 俺が怒鳴ったせいで、姉貴はひとり語りをやめた。 「何?」 「俺は姉貴の妄想話のことなんか訊いちゃいない。姉貴が雉野先輩と奪い合った男の話をしているんだ」 「だから、千年前の話だって言ってるんじゃない」 「違うだろ! せいぜい一昨年かそこらの話のはずだ。おおかた、俺が中学生のときに高校で付き合っていた男がいたんだろ?」 「そんなわけないじゃない。私はたろーちゃん一筋なんだから」 憤慨したように言う。待て待て、どうにも話が噛み合わない。姉貴は俺を死んだ彼氏の身代わりにする為に、千年前からの絆云々の話をでっち上げて、俺にまとわりついていたんじゃないのか? ……いや、でも確かに姉貴は物心ついた頃から俺にべったりだった。生まれ変わりの話も随分昔から口にしていた。昨日今日作った話じゃない。 だとすると……、馬鹿な、そんなことあるわけないじゃないか。 「姉貴、雉野先輩と男を奪い合ったこと自体は認めるんだな」 「そうよ。前から何度も話しているじゃない。私とたろーちゃんは千年前からの絆があるって。……ああ、そうか」 姉貴は腑に落ちたという顔になる。 「考えてみれば、千年前に私とたろーちゃんがあいつらのせいで命を落としたという話はしなかったわね。あんまり思い出したくなかったし、私たちが愛し合っていたということの方が大切だから」 「じゃあ、雉野先輩は千年前のことをさも最近のできごとのように話したっていうのか?」 「そのとおりよ」 「それだと、雉野先輩は千年前の仇の生まれ変わりで、しかもその記憶を持っているっていうことになるぞ!」 「別に不思議なことじゃないでしょ」 わかりきったことといわんばかりの姉貴に、俺は一気に湯冷めしそうなほどの寒気を覚えた。 姉貴がイカレているのはいい。今に始まったことじゃない。だが、雉野先輩まで姉貴に話を合わせているだと? どういうことだ? 雉野先輩が仲の悪い姉貴と話を合わせる必要があるのか? そんなわけがない。 雉野先輩が嘘を言った? 何のために? 俺はふたりの仲が悪い理由を教えてほしいと頼んだ。その理由を説明するのに、もっともらしい嘘をついたのか? だが、姉貴は雉野先輩の話は本当のことだと言う。仲の悪い先輩をかばう必要はない。やっぱり、ふたりが意図的に話を合わせたとすると不自然なことになる。 とすると、ふたりとも嘘は言っていないと考えるしかない。同じ男を奪い合ったことは事実だ。 でもそれは千年前のことだと? それじゃあ、それじゃあ……、雉野先輩も姉貴の同類で、千年前の生まれ変わりがどうのなんて話を信じているサイコ女なのか!? いや、辻褄が合いすぎる。千年前の話が事実だと思うしか……。 そんなことあってたまるか! 「顔が赤いよ。そろそろ出ようね」 長く湯に浸かりすぎたせいか、湯当たりしてしまったらしい。 ぼうっとして頭がふらつく俺を、姉貴が抱きかかえて風呂場から連れ出した。姉貴の腕力なら、どうってことなく軽々と俺を運べる。 そのまま姉貴はふたりして全裸のまま俺の寝室に入り、俺をベッドに寝かせて絡みついてきた。体中を撫で回され、特に局部を刺激されたが、やっぱり俺は反応しなかった。 最終的に姉貴は添い寝するだけで満足することにしたようだが、俺は雉野先輩のことが頭の中をぐるぐると駆けめぐり、なかなか寝つけなかった。 あの笑顔の裏で、エロ親父な態度の裏で、俺を千年前に失った男として見ていたのか……? 確かめないといけない。でも確かめるのは怖い。雉野先輩が姉貴の同類だとしたら、今までどおり接することはできない。 唯一の逃げ道は姉貴が嘘をついていると思うことだ。そう思うことにしよう。 その結論に達して、ようやく俺は眠りにつくことができた。既に明け方近かった。 戻る 目次 次へ
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《転生炎獣の聖域(サラマングレイト・サンクチュアリ)》 フィールド魔法 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 ①:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、 自分が「サラマングレイト」リンクモンスターをリンク召喚する場合、 自分フィールドの同名の「サラマングレイト」リンクモンスター1体のみを素材としてリンク召喚できる。 ②:「サラマングレイト」モンスターの戦闘で自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に、 1000LPを払い、自分フィールドの「サラマングレイト」リンクモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力を0にし、そのモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のLPを回復する。 使用キャラクター 穂村尊(Soulburner) タグ一覧 フィールド魔法 転生炎獣 魔法カード コメント 名前 コメント
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533 『転生恋生』序幕 ◆U4keKIluqE sage 2008/10/09(木) 02 12 11 ID SnefjSDy 昔々あるところに、人と鬼の間に生まれた娘がいた。 娘は人並み外れて美しく、膂力に勝っていたが、気が優しく人を傷つけるようなことは一切しなかった。 それでも村人は人外の娘を恐れ、娘が長じると村八分にして、村から追い出してしまった。 追い出された娘は村外れの大きな川にある中州に小屋を建てて住みついた。いつしかその中州は「鬼が島」と呼ばれ、恐れられて人が寄りつかなくなった。 ある日、一人の若い侍が村を訪れた。侍は人語を解する猿・雉・犬を家来に連れており、自らの武勇を誇る機会を探して旅をしていた。 村人は侍に鬼が島の鬼を退治してくれるよう頼んだ。二つ返事で引き受けた侍は意気揚揚と鬼が島へ乗り込んだが、出てきたのは恐ろしい鬼どころか、美しく気立ての優しい娘だった。 拍子抜けした侍は娘の身の上話を聞いて同情し、退治する気をなくしてしまった。そして三匹の家来が諌めるのも聞かず、娘の小屋に住み着いて夫婦になった。 主に裏切られたと憤慨した家来たちは村人に、「侍が鬼に誑かされて村を焼き打ちするつもりでいる」と虚言を吹き込んだ。 そうとは知らない侍は、何とか村人に娘のことを受け入れてもらおうと考えるようになった。危ぶむ娘が止めるのも聞かず、侍は一月ぶりに村へ向かった。 その夜、村人が大挙して鬼が島に押し寄せた。驚いた娘が小屋を出ると、足元に何かが放り投げられた。それは侍の首だった。 半狂乱になって首を抱きしめた娘に、村人の放った矢が夥しく刺さった。そして油がかけられ、火がつけられた。 炎に包まれながら、娘は侍に詫びていた。 私に情けをかけたせいで命を落とすことになってごめんなさい。次に生まれてきたときは、必ず私があなたを守り、二人で幸せになりましょう。 末期の願いが天に通じたのか、娘と侍の魂は千年の時を経て同じ国に転生した。しかしながら、二つばかり問題が生じた。 一つは、娘は前世の記憶を持っていたのに侍の方は忘れていたこと。 もう一つは、二人が姉弟として生まれたということだった。 534 『転生恋生』第一幕1/5 ◆U4keKIluqE sage 2008/10/09(木) 02 15 28 ID SnefjSDy 目覚まし時計の音で目が覚めた。 反射的にボタンを押さえて音を消すと、「あと5分……」とつぶやきながらベッドの中でまどろむ。 まあ、これが平均的男子高校生だろうと思う。俺は凡人だから毎朝これを繰り返している。 だが普通の人と違うのは、きっちり5分を超えると怪物が起こしに来るということだ。 わかっていたはずなのに、昨夜ゲームで夜更かししたのが祟って、俺は5分を過ぎても布団から出られなかった。 目覚まし時計が鳴ってからちょうど5分後、勢いよく俺の部屋のドアが開けられた。すぐに影が俺の真上におおいかぶさる。 「おっはよーっ! たろーちゃん、朝だよーっ!」 衝撃でうめき声をあげながら、俺はもそもそとベッドから這い出る。 寝ぼけ眼に映るのは、やや癖のある黒髪を背中まで流している若い女。 俺の姉貴だ。身内の眼から見ても器量よしで、スタイルもいい。 とはいえ美人は三日で飽きるという言葉があるくらいだから、かれこれ十数年も一緒に暮らしている俺は免疫ができている。なんとも思わない。 「おは…よ。……つーか、離れろ」 一応朝の挨拶をしながらも、俺は抱きつこうとする姉貴を引き剥がそうとする。高校生にもなって、過剰なスキンシップは恥ずかしいし、うっとうしい。 「んー、たろーちゃんはあったかいなー」 ……聞いちゃいねぇ。 「離れろってんだろ!」 姉貴の顔を手で押しのけて離そうとするが、凄い力で俺を抱きしめていてびくともしない。姉貴は女とは思えないほど腕力が強いからだ。毎年身体測定で背筋力と握力の計測器を壊している。 「……頼む。お願いします。離して下さい」 こうなると俺は下手に出てしまう。我ながら情けないが、しかたがない。 535 『転生恋生』第一幕2/5 ◆U4keKIluqE sage 2008/10/09(木) 02 16 32 ID SnefjSDy 体格も容姿も成績も運動神経も、ありとあらゆる要素が平均値でできている俺の、ただ一つ特異な点がこの姉貴だ。 同じ両親から生まれたとは思えないほど容姿端麗、文武両道な女子高生でありながら、レベルMAXに達した怪力ブラコン女なのだ。 おまけに、前世で自分たちは恋人同士だったなどと真昼間から公言する電波女でもある。俺以外の人間に対してはその話をしないのが救いだが、対象である俺としては相当に辛い。 実際、中学二年で俺が精通を迎えてからは、入浴中や就寝中に姉貴が乱入してきて、貞操の危機に瀕したことが一度や二度ではない。 というより、姉貴がブルーデイである日を除いて、常に俺は性的暴行一歩手前の仕打ちを受けている。 なにせ人間離れした怪力だから、本気で襲ってきたら洒落にならない。 ……今もうっとりした顔で俺のトランクスの中に手を入れようとしていやがるし。 「いいかげんにしろっ! DVで警察呼ぶぞ! おふくろーっ、助けろーっ!」 俺が母親に助けを求めようとしたので、姉貴はしぶしぶながら俺を解放した。「初めてはたろーちゃんから求めてほしい」という乙女らしい願望を捨てきれていない姉貴は、いつも最後の一線を自分から越えることはかろうじて自制している。 これでも俺を誘惑しているつもりらしいが、俺としては本気でうざい。とりあえず姉貴を部屋から追い出して、手早く着替える。今は春休みだから、私服だ。 536 『転生恋生』第一幕3/5 ◆U4keKIluqE sage 2008/10/09(木) 02 20 22 ID SnefjSDy 傍から見ると美人の姉にスキンシップをされるのは羨ましい境遇ということになるらしいが、俺は姉貴に全く劣情を催さない。小さいときから一緒に育ってきた慣れがあるというのも理由だが、決定的な転機があった。 あれは自慰を覚えて最初の夏だった。俺がなけなしの勇気を出して、隣町のコンビニで、客がいない時間帯、それもわざわざ中年のオヤジがレジに立っている時を選ぶという細心の注意で人生初のエロ本を買った。 家に帰って、部屋でじっくり堪能した後、俺はそのエロ本をベッドの下に隠して、風呂へ入って思いっきり抜いた。平均的中学生としてはちょっとした冒険を達成したという満足感と、これからはオカズが常備してあるという余裕を味わっていた。 だが、翌朝には隠したはずのエロ本が消失していた。代わりにあったのはミニアルバムで、中には姉貴のヘアヌード写真がびっちり貼り付けてあった。自分で撮ったらしい。 実の姉がそんなことをするのもショックだったが、初めて見る女性器は中学生にはグロ過ぎた。興奮するどころかトラウマになってしまった。 それ以来、俺は姉貴がキモくてしかたがない。 朝食の席で、姉貴がにこにこしながら話しかけてきた。 「ねぇ、たろーちゃん。今日はデートしてくれる約束だよね? 忘れてないよね?」 「……買物に付き合う約束はした」 俺はきっちり訂正する。どうしても欲しいソフトを買うために、先だって姉貴から借金をした。その代償として約束させられたのだ。あくまでも「買物」であって「デート」ではないと理解しているが。 もっとも姉貴は既に電波時空に入り込んでいる。これも一つの心神喪失状態だろうか。だとすると俺に犯罪行為をしても責任が問えないから困るな。 「映画みてー、買物してー、お食事してー、最後はホテルでお泊りしよーねー。あ、お母さん、夕食はいらないから」 「馬鹿なこと言ってんじゃないよ、この子はっ!」 お袋がお盆で姉貴の頭を叩く。まるで容赦がないが、やたら頑丈にできているらしい姉貴はびくともしない。 ため息をつきながら俺は朝食を終える。 538 『転生恋生』第一幕4/5 ◆U4keKIluqE sage 2008/10/09(木) 02 26 39 ID SnefjSDy 結局お泊りこそ断念させたものの、俺は姉弟相姦ものの映画と、カップル向きのカフェでのラブラブランチ2人前用と、ランジェリーショップでの買物に付き合わされて春休み最後の1日を終えることになった。 特に最後のはきつかった。他の女性客にじろじろ見られて、羞恥プレイもいいところだった。 その帰り道、俺と姉貴はチンピラ3人にからまれた。俺は平均的男子高校生としてケンカ慣れしていない上に姉の買物の荷物持ちで手が塞がっていたが、まるで慌てる必要はなかった。 むしろ、相手のことを心配しなければならなかった。「見せつけてくれるじゃねーか」「金を貸せ」「ちょっと付き合え」といった定番の台詞を口にする連中に、俺は紳士的に忠告した。 「俺たちは姉弟で、あんたらに貸す金は持っていなくて、もう家に帰らないといけないんだ。構わないでくれないかな、怪我してほしくないから」 俺の言葉はチンピラ3人組に届かなかった。連中はゲラゲラと下品に笑い、そのうちの1人が殴りかかってきた。……はい、入院確定。 姉貴の手が脇から伸びて、俺の顔面に到達するはずだった拳を掴み取った。俺を殴ろうとした男は予想外のことに驚いたが、すぐに顔色が変わる。 「うふふ、正当防衛成立ね」 位置的に俺からは見えなかったが、姉貴は酷薄な笑いを浮かべていたに違いないと思う。チンピラたちの表情が恐怖に歪んだ。 まず、姉貴は1人目の拳を握り潰した。皮膚から細い骨が飛び出して血まみれになっているのが見える。俺を殴ろうとした男は聴くに堪えない悲鳴をあげてのたうち回る。 「てっ、てめぇぇっっ!」 よせばいいのに、2人目が姉貴に掴みかかろうとした。が、それより早く姉貴のボディブローが炸裂し、相手の男は5メートルほど後方に吹っ飛んだ。 体を「く」の字に曲げて倒れ、泡を吹いて痙攣を起こしている。肋骨が砕けて、内臓も破裂していると見た。 「ひっ……」 3人目は戦意を喪失しているのが明らかだったが、走って逃げればいいものを立ちすくんで動けないようだ。 「キミはこれで勘弁してあげる」 姉貴はその男の鼻先にデコピンを食らわした。男は両手で鼻を押さえてもんどりうった。おそらく鼻骨骨折だろう。 539 『転生恋生』第一幕5/5 ◆U4keKIluqE sage 2008/10/09(木) 02 30 56 ID SnefjSDy 俺にはこの結果が見えていた。 過去にも、俺がチンピラや野良犬に遭遇する度に、どこからともなく姉貴が駆けつけて、相手を武力鎮圧した。俺に危害を加える者は、姉貴にとって存在自体を許すべからざる大罪人だ。 まして二人でいるときなら尚更だ。俺と一緒に過ごす時間を邪魔する罪は常に倍して重い。 全員を一撃で倒した姉貴は、満足そうに振り返る。 「それじゃあ、帰ろっか」 さわやかに言う姉貴を俺は止めた。 「駄目だろ、救急車呼ばないと。正当防衛ったって、瀕死の怪我人放っておいたら、何かの罪になるんじゃないのか?」 「えー? これは害獣駆除だよぅ」 可愛らしく拗ねて見せるのがかえって怖い。 「俺は姉貴に逮捕歴がつくのが心配なんだ」 「……そっか。たろーちゃんは私のことを心配してくれるんだね。愛されてるなぁ、私。 やっぱり私たちは前世から変わらぬ愛を誓って結ばれている運命的恋人だから、きっとたろーちゃんも普段は素直じゃないけど本当は私とラブラブファックしたいのよね。 それなのにあえて嫌がるそぶりをするなんて、それなんて焦らしプレイ? でもやっぱり最初は男の人から求めてほしいと思うのが可憐な女心ってものだし、そんなこと考えて我慢する私ったら、なんていじらしい……」 「いいから、電話しろ」 救急車と一緒に警察も来た。1人につき1回しか手を出していないということで正当防衛は認められたが、俺は買物に加えて警察への説明で、心身ともに疲れた。 明日から新学期だ。平和に過ごせますように。姉貴が学校で恥ずかしいことをしませんように。とりあえず今晩はぐっすり安眠したいので、姉貴が夜這いをかけてきませんように。 そんなことを思いながら眠りに落ちた。 目次 次へ
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転生八犬士封魔録 女向けゲ一般板スレ1-219~222・224・231~234・238~240・244~248・262~270・281~292・300~308 219 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/21(水)19 17 18ID ??? ~プロローグ~ 「この姫には、呪いがかかっておる。」 無表情の幼い姫に重い口調で語る老人。 彼が姫にあるもの見せると、生まれてから一度も表情を変えたことのなかった姫が笑った。 「姫よ、おぬしの身に刻まれた呪いは途方もなく強い。 しかし、その八つの石はおぬしを永劫に守ってくれるじゃろう。 そしていつか……遠い先、呪いというくびきからおぬしを解き放ってくれるかもしれん。 大切に、するんじゃぞ。」 ~1章 転生、八犬士~ 高校の入学式当日、鏡に向かって制服姿をチェックしてる少女がいた。 彼女の名前は桐沢結奈。 2年前に両親をなくし、現在はペットの飼い犬“ナポリタン”と二人暮し。 そこへ近所に住んでおり、昔から家族ぐるみで交際している親友の八尋香澄がやってくる。 香澄はやっぱり私の家で一緒に暮らさないかと提案するが いくら両親が友達同士でも、そこまではお世話になるのは悪いと結奈は断る。 「私にはナポリタンもいるし、亡くなった両親、おばあちゃん。 それからおばあちゃんが残してくれた代々伝わるペンダントもあるから。 これをおばあちゃんだと思って大切にしている。だから、ひとりじゃないんだよ。」 新たな学園生活の舞台となる高校の話題で盛り上がりながら 高校に着いた結奈と香澄。しかし校門の前に辿り着くと、突如空が犬が降ってくる。 いきなり大勢の野犬に取り囲まれるあせる二人。しかもなぜか野犬は 逃げる他の生徒たちには目もくれず、結奈たちだけを狙ってくるのだった。 剣道の心得がある結奈は、カバンで応戦してみるが 香澄を守りながら竹刀もない状態で戦うには限界がある。 そのとき、祖母から受け継いだペンダントが光り、なぜか野犬が怯む。 一瞬の隙を突いて急いで逃げるものの、しつこく二人を追いかけ続ける野犬たち。 光らなくなったペンダントへの期待を捨て どこかに武器になるものはないかと結奈が考えたときだった。 「勇ましい姫君だな。貴方がそんなことをする必要はない。」 220 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/21(水)19 18 23ID ??? 学園の生徒会長である飼葉万珠が現れ、簡単な自己紹介を済ませると 野犬はただの凶暴な犬ではなく、“業羅”という異常な力で生み出されたもので 普通の人間では倒せない存在であると解説。そして上着を脱いで上半身裸になった。 いきなり半裸になった生徒会長に慌てる少女たちをよそに あくまで冷静に飼葉は結奈に告げる。 「僕の身体のどこかへ痣があるだろう? 君には見えるはずだ!」 飼葉の言う通り、結奈が彼の身体を見ると確かに右脇腹に痣をあった。 するとなぜか飼葉は喜び、 「やはり君で間違いない。八犬伝の物語は本当にあったのか。」と一人で納得し その痣に触ってくれとまで言い出す。 知らない男の人の肌になんて触れないと嫌がる結奈に対し このままでは君も君の友達も犬に襲われてしまう、それでもいいのかと痛いところを付く飼葉。 触れれば香澄のことも助けてくれると了承され、恥ずかしながら触ってみることに。 痣に触れると、視界が揺らめき不思議な感覚に襲われる。 (……不思議な形の痣、なにかの花みたい。 ……なんだろう、この感触。ずっと昔に、どこかで……) 結奈に触れられたことにより、力を解放した飼葉は野犬を倒すことに成功。 入学式の後に生徒会室で詳しい説明をしてくれる約束をし、飼葉とは一旦別れる。 説明を聞くために生徒会室にやってきた結奈と香澄。 飼葉は君たちは南総里見八犬伝という物語を知っているか?と質問する。 飼葉によると、江戸時代に滝沢馬琴によって書かれた小説の南総里見八犬伝とは別に この地にはひとつの八犬伝の伝説があると言うのだ。 「伏姫が八房の妻となった後、八房が玉梓の転生であると気づいた伏姫は、 里見家への恨みに満ちた八房を何とか救いたいと考え、彼を慈み愛情を注いだ。 また、八房も真摯な伏姫の愛に心を開き、次第に恨みを忘れていった。 ところが、伏姫たちが暮らす山の近くに住む、八房に恐怖心を抱く村人たちが 村を訪れた尼の言葉に扇動され、八房を殺そうと行動を起こした結果、八房を庇った伏姫を殺してしまう。 愛する妻を失った八房は怒り狂い、伏姫によって静まりかけた恨みが 里見家だけでなく、人間すべてに対するものに変わり、周りのすべてを攻撃し始めた。 そこで立ち上がったのが伏姫の幼馴染で 八房に嫁いだ伏姫の無事を祈るため、若くして出家した灯如尼という女性だ。 彼女は伏姫の形見であり、姫の魂が宿る首飾りを使って八房を封印。 その際、首飾りから八つの光りが日本の各地に飛び散り、八人の人間がこの光りを受けた。 その八人は首飾りに宿る伏姫の魂が選んだ、封印を守るための存在、すなわち八犬士なんだよ。」 飼葉の語ったもうひとつの伝説。だが、それも架空の話のはず。今の状況と何の関係があるというんだろう…。 結奈に疑問に、飼葉は幼い頃から見ていた夢について語り始める。 221 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/21(水)19 20 50ID ??? ひとりの姫が犬を庇って殺され、ひとりの女性が光り輝く首飾りを掲げて 何かを封印する光景と、迫ってきた光が自分の腰を強く打った後 そこに牡丹の形をした痣と「信」という文字が浮かぶ夢。 幾度なく見続けた夢の影響で八犬伝について調べるうちに、この地にあった八犬伝は 過去に実際に起きたことで、南総里見八犬伝はその伝承を元に作られた話ではないか、 そして自分は八犬士の生まれ変わりなのではないかと考えるようになったと話す。 それでも確信があったわけではなかった。結奈に出会うまでは…。 香澄から 「あなたが痣に触れるまでは、先輩に痣は見当たらなかった。けどあなたが触ったら途端、急に浮かんできたの。」 と告げられた結奈は、どうして自分だけが痣をハッキリ確認できたのか…私は一体何なのかと戸惑う。 伝承では伏姫の首飾りは灯如尼の手から里見家に戻され、大切に祭られたらしい。 夢で首飾りを見ていた飼葉は、結奈が持っているペンダントがそれと全く同じものであり 結奈にしか痣が見えなかった事実を挙げる。 結奈は里見家の遠い子孫で伏姫の生まれ変わり、だから狙われたのだろう。 「そして、八犬士として君を守るのが僕の使命なんだ。」 仮に私が伏姫、先輩が八犬士の生まれ変わりだったとしても なぜ私が狙われて、先輩の使命が伏姫を守ることなのか分からない結奈に 飼葉は再び説明を始める。 この地のどこかに封印された八房だが、その封印は完全なものではなく 解けてしまう可能性も十分にある。 近頃、業羅(恨みや憎しみによって作られた化け物)と思われる野犬が出没始め 行方不明者や幽霊の目撃談が急増し、妙な占いと呪いが流行り出したのは 八房の封印が解けかかっているせいかもしれない。 八房が復活すれば、人間すべてに向けられた憎しみで世界を滅ぼそうとするだろう。 だが、万が一八房の封印が解かれてしまっても 八犬士と伏姫が揃えば、再封印することも可能である。 しかしこの事実は熱心に調べれば、簡単ににわかってしまうことであるため 伝承を知った誰かが八房の復活を企み、再封印されないために 封印の要となる伏姫を消してしまおうとしていても不思議ではない。 もう一度封印を行うためには、伏姫の転生である結奈を失うわけにはいかない。 だから、八犬士の使命は、伏姫を守ることでもある。 222 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/21(水)19 27 12ID ??? 「八房の復活を望む者がいて、君を狙っている。もう始まってしまった。 君を守り、そして一刻も早く八犬士を集めることが、事態を収める一番いい方法なんだよ。」 「先輩、結奈の気持ちも考えてください。協力しろとか守るとか 今日初めて会った人に言われたって信じられません」 香澄の反論と、結奈の少し考えさせて欲しいという言葉を聞いた飼葉は 「確かに急にこんなことを言われても困るのは当然だ。 返事はそれほど急がなくてもいい、考えがまとまったらいつでも来てくれ」と告げた。 家に帰った後、今日の出来事について結奈は考えていた。 そこへ香澄から電話がかかってくる。 八犬伝について、家族の話、そして励まし…。 香澄との会話は、結奈にある決断を下させた。 (私のこと、必要とする人がいて、支えてくれる友達もいる。 生まれ変わりとか、前世とか、関係ない。困っている人を助ける、それでいいじゃない。 明日、飼葉先輩のところに行こう。) 次の日の放課後、協力を承諾をしに来た結奈に飼葉は礼を言う。 「ありがとう。でも、危険は承知の上なのかい?」 「もちろんです。けど、なにかわからないで狙われるのもすっきりしないし 私にできることがあるのなら、お手伝いします」 「君は強い子だな。正直、お姫様の生まれ変わりだから もっと気の弱い子を想像してたんだけど、いい意味で想像を裏切られた。 これからなにが起こるか分からないし、命の危険もあると思う。 僕は、八犬士のひとりとして、この身をかけて君を守るよ。」 結奈が大変な目にあってるのに知らん顔できない、私も協力しますと言い張る香澄を交えて 今後の行動について話し合うことにする三人。 敵の正体も出方も分からない今、とりあえずは八犬士集めに専念するに決まる。 飼葉が言うには、最近学園で起こる事件は、業羅によって引き起こされることはほぼ間違いなく 結奈を狙っている何者かが業羅を利用していることを考えれば 事件の原因を調べていけば、誰かに行き着くに違いない。 そして、八犬士も自然と事件に関わってくるんではないだろうか… すると、そこへまたも突然業羅が現れ、三人を襲う。 「ここでも業羅か…。 ひょっとしたら相手は、僕たちよりも事態をよく知っているのかもしれないな。」 業羅を倒すが、部屋はガラスが割れめちゃくちゃになってしまう。 入学式に続いて事件に巻き込まれたら、言い逃れができずに面倒なことになるため 話の続きは明日にして、結奈たちはその場を後にする。 その夜、屋上には謎の人物が立っていた。 「あれが伏姫と、八犬士のひとり。ようやく八犬士を集める気になってくれたか。 道化たちはすでに放たれた。あとは、踊りだすのを待つだけ……。」 231 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/23(金)19 05 55ID ??? 二章 八犬士を探せ 結奈と香澄が登校すると、騒いでる生徒たちの姿が目に入る。 その原因は高校生徒会主催の中高合同の水泳大会を知らせたポスターにあるらしい。 話しかけたきたクラスメイトは、季節外れの大掛かりな水泳大会を不思議がる。 奇妙な事件を追うと話し合ったばかりだというのに、飼葉先輩は一体何を考えてるの? 結奈から問い詰められた飼葉は、水泳大会の目的は八犬士集めだと答える。 「八犬士の証は君にしか見えない。つまり、君が裸を見て痣を確認するのが唯一の方法なんだ。 だからって、事件に関わる人間を手当たりしだいに脱がせるわけにもいかないだろう? 水泳大会なら、全員が水着になるから労することなく、この学校のほとんどの生徒の身体を確認できる。 これで少なくとも学校内に犬士がいた場合には、対応できるんだ。」 要するに「周りの水着姿をチェックしろ」、そういうことだった。 最初は拒絶する結奈だが、他にいい方法も思いつかないため、渋々承諾する。 そして痣を確認しやすくするため、結奈、それから香澄も 大会運営側に回るということになる。 水泳大会で痣をチェックしなければならないことでどんよりしながら、香澄と帰る途中、 朝知り合ったばかりの上級生、江積と遭遇する二人。 二人がこの街に引っ越してきたばかりだと知った江積は、世話好きの性格からか 案内を申し出るが、ふと香澄を見ると彼女の表情は暗い。 「結奈……。あっち、見て。」 香澄が示した方向にいたのは、野犬の姿をした業羅がいた。 しかも、必死で飼葉のところまで逃げよう二人を、なぜか江積までも追いかけくる。 「なんで先輩までついてくるんですか!?」 「バカ、ほっとけるか! 大体こいつら、なんでお前らを追っかけてんだよ!」 業羅はいきなり違う方向から襲ってくるが、江積が庇ってくれてたおかげで 結奈は難を逃れる。けれど江積は業羅に噛み付かれて制服が破れてしまう。 だが破れた制服から露出した江積の肌を見た結奈は驚く。 江積の脇腹には牡丹の形をした痣が浮かんでいた。 「江積先輩が……八犬士?」 説明してる暇がない結奈は簡単に謝ると、江積の肌を触り彼を覚醒させる。 事情がわからないままの江積と共に業羅を倒し、ホッと息をつくと、タイミングよく飼葉が現れる。 嫌な予感がしたので先に帰った結奈たちを追いかけてみると、江積を覚醒した所を見つけた。 すぐに現れなかったのは、江積の力がどれくらいなのか様子見したのだという。 そして飼葉は手短に八房と八犬士のことを江積に説明するが、あまり反応は良くない。 江積は少し黙った後、結奈に問いかける。 「なあ、お前は、自分が伏姫だって言われてどうだったんだ?」 「……最初は、困りました。けれど、私のことを必要とする人がいて、その人の手助けになりたいから。 今は生まれ変わりとか前世とか関係なく、困っている人を助けるつもりで……います。」 結奈の飾らない答えを気に入った江積は、困ってる人を助けるってのは俺だって同じ、 だから俺がお前を助けてやると承諾する。 「桐沢は俺が守ってやる。文句は言わせねーからな。」 「は、はいっ! ありがとうございます!」 232 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/23(金)19 06 45ID ??? 後日、水泳大会運営の手伝いのために生徒会室を結奈と香澄が訪れると、飼葉の他に 風紀委員長で飼葉の幼馴染でもある矢尾がいた。彼は開催された水泳大会についての小言を始めるが 他の生徒たちが来たため、その場から立ち去る。 その場に集まったのは、運営を担当することができない水泳部のかわりに 協力を申し出てくれた弓道部の代表者である高等部3年の坂下と 同じく剣道部の代表として来た中等部2年の袴田、救護係を務める校医の村崎、 臨時で手伝うことになった江積、結奈、香澄。 そして主催者である飼葉を含んだ7人。 坂下は入学したばかりで生徒会の役員でもない結奈たちが手伝うことを不思議がるが うまくごまかして坂下を納得させ、表向きの水泳大会運営話し合いは無事に終わる。 一方、結奈たちだけの話し合いでは、飼葉は独自に調べた 「水着姿を確認しやすいチェックポイントの場所」を書き記した結奈専用の資料を渡し それをちゃんと暗記するよう指示する。 「まさか大会中にその資料を持ってウロウロするわけにもいかないだろう? それにそのデータは、万が一他人に知られたら悪用される可能性が高い。 だから君が覚えたらすぐに処分したいんだ。」 「がんばってね! 結奈」 「うん、がんばる……。」 233 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/23(金)19 08 39ID ??? いよいよやってきた、水泳大会当日。 結奈はプールで出くわした袴田の太ももに、飼葉や江積と同じような牡丹型の痣があるのを発見するもが 位置が位置だけに、一体どうやって切り出せばいいのかと悩む。 そのとき、突然プールの水が渦巻きはじめ、生徒たちはパニックに陥る。 その上、飼葉と江積、どちらの姿も見当たらないことに結奈は気づく。 (もしかしてこれも業羅の仕業で、先輩たちは巻き込まれたの?) 結奈は香澄に更衣室の見張りを頼み、袴田を更衣室に連れて行く。 袴田を覚醒させるために…。 説明もそこそこに袴田を覚醒させた結奈が再びプールに戻ってみると 水が飼葉と江積を襲っていた。やはり今回の騒ぎは業羅の仕業なのだと結奈は考える。 「先輩! プールサイドに誰かいます! みんな避難したはずなのに。」 袴田の言うとおり、プールサイドにはクラスメイトの夏見あかねが突っ立っている。 今まで事態を見ていた香澄によると、あかねが水を操って飼葉たちを襲ったという。 「水を操るって、そんなこと……あかねちゃんが業羅だって言うの!?」 「否定。私は業羅ではない。私は私の主のためにこの力を行使する、 その意思を持っている。これでこの二人は戦えない。残る排除対象は、あなた。」 普段の内気で大人しいあかねとは全く違う、機械的な喋り。 あかねの言う「主」が今まで業羅を使って結奈を襲ってきた人物なのか。 しかしだとしても、なぜあかねがこのような力を使えるのかまでは結奈にはわからない。 ただひとつわかっているのは、あかねを止めようとしたら、攻撃体勢に移り襲ってきたこと。 袴田と一緒にあかねと戦い、彼女を追いつめるが あかねはまたも不思議な力を使ったのかあっさりその場から消えてしまう。 とりあえず消えたあかねは放っておき、急いで先輩たちを村崎に診てもらうことにした。 村崎の診断によると、病院に行くほどでもなくどちらも大丈夫とのこと。 無事だったことに安心して、話は自然に袴田が犬士だったことへと移る。 「結奈先輩、僕、貴方を守ります。 遠い昔からの約束なんて、とてもすてきな話じゃないですか。 先輩方、これからもよろしくお願いします!」 「くぁー。なんつーか恥ずかしいやつだな。でもまあ、よろしくな。」 「よろしくね、遥平くん。」 そんな中、飼葉だけはあることを考えていた。 「同じ学校内に三人も犬士がいるなんて。……気になるな。」 234 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/23(金)19 09 35ID ??? その日の夜の屋上 「……あの、これでよろしかったのですか? あの場で、犬士と姫、四人とも葬ることも可能でしたが。」 「お前は黙って命令を遂行していればいい。それが、役目だろう?」 「申し訳ございません。」 「今後、姫や犬士たちとの接触を絶て。そろそろ、ひとりめの道化が踊りだす頃だ。 お前はそのサポートに回れ。後始末役はまた別に用意したからな。」 「了解いたしました。」 238 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/25(日)21 56 21ID ??? 三章 ~共通パート~ 水泳大会以来、あかねは学校に来なくなった。 飼葉の話によると、あかねは自らの意思で家を出て 警察に家出として捜索願いが届け出されたらしい。 (誰かに操られてるのではなく、自分の意思で行動してるのかな? それとも巻き込まれただけ?) 結奈は精神集中するために一人で剣道の稽古をするが、あかねのことが気になって練習に身が入らない。 そこへ飼葉から「すぐに生徒会室に来て欲しい」と結奈に伝えるよう頼まれた香澄がやってくる。 香澄と一緒に生徒会室に行くと、飼葉だけでなく江積と袴田も待っており この間の事件について話し合いが始まる。 水泳大会の事件は排水機械の故障による事故ということで処理されることや あかねは依然として行方不明なことを飼葉が報告し終わると、 話題は八犬士が瀧田学園で三人も見つかったことへと移る。 袴田は伏姫である結奈が学園に来たから、八犬士も周りから選ばれたのではないかと言うが 飼葉が八犬士は生まれたときから決まっているようだからそれはないと否定する。 そもそも結奈が瀧田学園の入学を決めたのも、奨学金制度があったからに過ぎない。 それにあかねのこともある。 偶然にしては出来すぎてる以上、学園で何かが起こってると考えるのが自然だが これ以上話し合っても結論は出ないため、この件は一旦保留となり、 八犬士集めのため学園で起こっている妙な噂や事件を追うことになった。 239 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/25(日)21 58 48ID ??? 三章 ~生きた人形~ルート 江積が最近学園内で起こっている、ある騒ぎについての話を始める。 「夕方、中庭や校庭から校舎を見上げると、長い髪の毛をしたゾッとするような美人の女子生徒が 校舎の廊下の窓からこっちを見ている。なんだろうって見返すと、フッと消えちまうんだと。 その女子生徒はこの学園のどこにも存在しないから、幽霊ってことになってる。見たやつは結構多いぜ。」 江積本人も目撃者の一人で、しかもその幽霊が知り合いに似ているらしい。 だが、チラッと見ただけだから、知り合いかどうかは確信が持てるわけじゃないとも言う。 「知り合いに似ている幽霊か。それは気になるだろうな。 もともと八犬士探しの有力な手がかりはないことだし、この幽霊騒ぎを調べてみよう。」 まず幽霊が本当に実在しない生徒かどうかはっきりさせるため、飼葉と江積が調べ 他の三人は幽霊についての情報収集をすることで決まる。 飼葉は知り合いについてなにか思い出したらすぐに報告してくれと江積に言うが、 江積はわかったと口では言いながらも、その表情は沈んでいた。 幽霊が本物なら学園内で亡くなったか、学園に関わる事件で亡くなったのではないかと考え 学園内の図書館へと足を運んだ結奈。するとそこでいびきをかいて居眠りしてる江積を見つける。 呆れながら、飼葉と一緒に幽霊について調べたんじゃないかったのかと聞くと それはもう調べ終わった、やっぱりこの学校には存在しない生徒だったと江積は答える。 お前はなに調べてんだ?と聞かれた結奈は図書館に来た目的を素直に話すが、それに対して江積は なにも出てこないだろうと言ってしまう。 即効で否定した江積を不思議に思って理由を問うが、 彼はうっかり本心を漏らした自分に舌打ちし、忘れろとしか言わない。 結奈は明らかになにかを隠してる江積の様子に怒りを露にする。 「わかった、わかったよ。話してやるから機嫌直せ。 第一、面白くもない話だけど、それでも聞くのかよ?」 「先輩が話してくれるのならちゃんと聞きます。」 「まあ、はっきり言っちまうとな、俺、あの幽霊が誰かわかってるんだ。 あの幽霊はな、俺の幼馴染に似てるんだよ。似てるってもんじゃねぇ、そのものだって言っていい。」 240 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/25(日)22 00 28ID ??? 「……あいつ、生きてれば俺たちと同じ高校生だったはずだ。」 子供の頃に隣の街まで探検に行ったとき知り合い、それから何度か遊ぶようになったが 学校も違い共通の友人もいなかったため、彼女が病気になっても入院するまで知らなかった。 そして最後には会ったのは、葬式。 「あの、えっと、その……。幽霊は美人だって評判ですけど、その人もきれいな人だったんですか?」 「ガキだったし、美人だったかはわかんねぇ。でも、将来きれいになるってよく言われてたな。 まあ、少なくともお前よりは、ずーっとかわいかったな。」 「……。思い出は美化されるものですよ、先輩。」 「言うじゃねぇの。まあ、辛気くせえ空気出されるよか、全然マシだけどな!」 しんみりした雰囲気から、明るい雰囲気に戻りつつあったとき…… 「見つけたぞ、このドロボウ女!」 人形を抱えた男子生徒が現れ、腹話術で結奈を泥棒扱いする。 男子生徒は1年の藤岡で、常に人形を持ってるために学園でも有名な生徒だと江積が説明する。 「腹話術までやるようになったとは、さすがに知らなかったけどな。」 藤岡の後を追いかけ、彼を止めようとしている香澄に事情を聞くと、 友人と会話をしてた最中に藤岡が急に教室に入ってきて、結奈はどこだと騒ぎ出し ここまでやってきたのだという。 「俺の大事な人形、盗んだんだろ!」 身に覚えのないことで責められた結奈は反論するが、何を言っても藤岡は耳を貸さず 「人形を返せ」の一点張り。 ついに怒りが頂点に達した藤岡は、人形を動かして襲ってくる。 (あかねちゃんと同じ……敵なの!?) まだ三章の途中ですが、今日はここまで。 244 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/26(月)20 29 22ID ??? 「うわぁ! 人形が、人形がっ!」 襲ってきた藤岡を江積と撃退すると、人形を傷つけられた藤岡は錯乱したまま、その場から逃げ出す。 飼葉への連絡を香澄に任せ、結奈は江積と藤岡を追いかけることにしたが 藤岡の姿をなかなか見つけられない。かわりに廊下で女子生徒が倒れてるのを発見した二人は 慌ててその場へ駆けつけるが、少女のそばへ近寄った江積は急に言葉を失う。 彼女の胸にはナイフが刺さっているのに、なぜか血が一滴も流れてなかった。 「……なんだ。よく見たらこれ、人形ですね。 もしかして、これが藤岡くんの探し物でしょうか? これだけの人形ならとっても大事にしてるだろうし、あれだけ取り乱してもおかしくないですよ。」 「………。」 「……先輩? あの、どうしたんですか?」 口を開いた江積は予想外のことを言い出す。 こいつは怪我人だから、早く保健室に運ばなければいけない、だからお前も手伝えと。 「こいつは人形じゃない、生きてるんだ!」 自分の言葉を信じない結奈に痺れを切らした江積は、一人で人形を抱えて保健室へ行ってしまう。 (どういうことなのかさっぱりだけど、とにかく先輩を追わないと!) 保健室へたどり着き、校医の村崎に急患として人形を見せる江積。 突然人形の診察を頼まれた村崎は話がわからず、戸惑いを見せる。 そこへ飼葉と香澄もやってきた。 人形は生きてるという自分の主張を信じない周りに対して、 とにかくこいつに触ってみろと言い出す江積。 彼の言うとおりに村崎や飼葉が人形に触れてみると、確かに体温があり、脈もしている。 事情を聞かれた江積は、俺にもよくわからない……でも この人形は知り合いにそっくりで、しかもそいつは心臓の病気で死んだのだと答える。 結奈はその知り合いが、図書館で話してくれた幼馴染のことだと気づき、 だからあんなに取り乱したのかと納得がいく。 「……わかった。目の前に怪我人がいるんだ。助けるのが私の務めだね。」 江積の答えを聞いた村崎は人形を治療すること意思を見せ 治療に必要な物を集めるくるよう、皆に指示する。結奈も手芸用の糸を探してくることにした。 治療が終わった後、結奈が保健室に向かうとそこには江積しかいなかった。 ずっと目を閉じたままで息もしていない「生きた」人形を見つめながら、江積は 幼馴染の思い出を結奈に語る。 「なんでいまさら、あいつが……俺と同じように年を重ねて、 着れるわけねぇ制服着て、ここにいるんだ? これ、藤岡の仕業なのか? だとしたら……俺は……。」 (藤岡くんの仕業としても、目的もどうして先輩の過去を知ってるのかもわからない。 本当に……なにが起こってるんだろう?) 245 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/26(月)20 34 54ID ??? 再び人形を診察した村崎は、薬が効いて落ち着いたようだと診察の結果を告げる。 「薬が効くということは、やっぱりこの人形は生きてるんですか?」 「わからない。私の印象だと人のふりをしている人形、という感じだね。 人形が無理やり、人のふりをさせられている。そう言えばいいのかな。 ……君たちはこの人形の正体を知っているんじゃないかな? それだけじゃない。先日のプールの一件も、なにか事情があるんじゃないかい?」 村崎から問われ、返事に窮してると、突然、部屋が大きく揺れ動き 怪我をした袴田が駆け込んでくる。 袴田は僕ひとりではやっつけることができなかったと謝る。 「見つけたぁ! 俺の人形! 俺の人形!」 袴田に続いて、たくさんの人形を連れた藤岡が現れ、 やっぱりお前が人形を隠してたんだと結奈に襲い掛かる。 とっさに村崎が庇ってくれたために、結奈は怪我をしないで済むが 村崎から押し倒されてるような状態になり、肌に触れてしまう。 だがその瞬間、過去に数度体験した、ある感覚に襲われる。 「この感じ……! 八犬士の封印が解けた?」 先生が八犬士だったのかと驚く江積たちに対し、事情を知らない村崎は当然ながら困惑する。 ところが、暴走した藤岡が説明する時間を与えてくれるはずもなく 説明は後にし、藤岡から生きた人形を守るため、村崎も他の犬士と共に戦うことになる。 結奈たちに負けて力が尽きた藤岡は気絶し、それと同時に 生きた人形もしおれて普通の人形に戻った。 「藤岡ぁ! お前、これはどういうことなんだ、説明しやがれ!」 殴りかかる程の剣幕で、気を失ってる藤岡に詰め寄る江積を、村崎が冷静に止める。 そして藤岡や痣のことなど、さっき起きた不思議な出来事について尋ねるのだった。 「いまなら……話してもらえるかな?」 一連の事情を聞いた村崎は、八犬士として協力してくれることになったのだが 結奈は彼にお礼を言いながらも、どこかすっきりしない気分だった。 (四人目の犬士が見つかった。でも、なんだかスッキリしない。これでよかったのかな……。 とにかく、藤岡くんが目を覚ましたら詳しいことを聞いてみるしかないか) 246 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/26(月)20 35 34ID ??? 夜の屋上 「報告は、以上です。また、先ほど藤岡健吾の反応が消えました。いかがいたしますか?」 「放っておけ。それで予定通りに事は進む。多少陳腐な演出を施してやったが しょせん駒のひとつ。奴がどうなろうと、どうでもいいことだ。」 「はい。おっしゃる通りです。」 三章終了 247 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/26(月)20 37 56ID ??? 三章 ~呪いのサイト~ルート 「呪いのサイト?」 「はい、携帯で見られるネットのページらしいんですけど。 結奈先輩は知らないんですか? 僕、高校の人に聞いたんですよ。」 袴田は具体的にどういうことが起こるなどの詳しいことは知らないが サイトの呪いを受けた生徒が、もう何人も休んでるのは本当だと言う。 実際に休んでる生徒が何人もいる以上、調べてみる必要があるという飼葉の言葉で みなで手分けして話を聞いて回ることになった。 情報収集の結果、呪いのサイトの詳しい内容が判明する。 呪いのサイトの名前は「99の呪い」といって 呪いたい相手の名前を書き込むと、別のページに飛ばされ そうやって99番目まで同じことが繰り返されると、呪いが成就しその相手が呪われるというもの。 つまり、呪いは99番目の書き込みにしか発動しないのだが 99人分の恨みが重なるだけに、99人目にかけられた呪いは大きくなる。 また、これは一人一度まで、今が何番目の書き込みなのかはわからないルールとなっていて 10日間の間に99番まで書き込みが届かなかったら、書き込んだ人間全員に呪いがはね返ってくる。 現に、呪いの被害を受けた生徒が何十人も出ていた。 さっそくサイトにアクセスしてみるも、これといって手がかりは見つけられず 各自で何かいいアイデアはないかと考えてみるのだが、なかなか思い浮かばない。 そんな中で唯一、飼葉はあるアイデアが出たらしいがお世辞にもいい考えとは言えないらしい。 とりあえず、飼葉のアイデアに任せることにする。 飼葉の出したあまりよくないアイデア… それは運が悪いことで有名な校医、村崎の名前を呪いのサイトに書くことだった。 「村崎先生がちょうど99人目だったみたい。運の悪いことに。 いや、この場合は運のいいことに、かな?」 「それって、偶然じゃ……。」 「まあ、賭けだと言えばその通りだけど、あの人の運の悪さは筋金入りだからね。 どういうわけか、いつも貧乏くじを引いてしまう。 そういう星の下に生まれてきたんだね。」 「心配しなくてもだいじょうぶ。先生のことは僕たちが必ず守る!」 「いや、あの、力強く言われても。それに僕「たち」って……。」 飼葉を信じて本当によかったんだろうかと結奈は少し後悔した。 248 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/06/26(月)20 39 34ID ??? その夜、村崎を校庭に呼び出して囮にして、 呪いのサイトの首謀者がやってくるのを待つことにする結奈たち。 そこへ村崎を取り囲むように、人形が出現する。 「……人形? いきないり、どこから現れて……。」 「村崎先生、危ないっ!」 「桐沢さん!? それに飼葉くんも? これは一体、どういうことなんだ?」 「事情はのちほど説明します! とにかくいまは、僕の指示に従ってください!」 「わ、わかった。君たちの邪魔をしないように、引っ込んでいるよ。」 ところが、結奈たちが人形を倒しても、 遠くに逃げてなかった村崎が別の人形に囲まれてしまう。 「危ないっ!!」 結奈が素早く村崎を助け、彼の肌に触れると、村崎を囲んでいた人形が瞬時に消える。 「人形たちが……消えた……。私がやったのか?」 「ウソ……村崎先生が八犬士だったの!?」 そこへ1年の藤岡が巨大な人形を連れて現れる。 「なんでだぁぁ! なんで邪魔するんだよぉぉ!!」 俺はみんなの願いを叶えてやったんだぞ? それなのに……。 お前たち、邪魔するな邪魔するなぁぁ!!」 怒り狂って襲ってきた藤岡に勝つものの、彼は 「人形……。願いを……かなえて……。」 と呟くと、気を失ってしまった。 この後、村崎に事情を話す展開になりますが これ以降は生きた人形と同じなので省略します。 262 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 21 51ID ??? 4章 共通パート 生徒会室に呼び出された結奈を待っていたのは 飼葉が水泳大会のときに撮っていた、生徒たちの水着写真のチェックだった。 痣のある生徒はいないかと探しながらも、思わずため息が出てしまう。 (飼葉先輩は大真面目なんだろうけど、拷問に近いよ、これ) 「写真でも痣って見えるの?」 「見えるよ。でもなにかを媒介している場合は 覚醒後でも私にしか見えないみたい。」 香澄と話をしながら写真をひとつひとつ確認していくと、 同じ1年の川瀬の背中、上級生らしき男子生徒の左肩にそれぞれ痣があるのを見つける。 するとそこへ江積が現れて、藤岡が病院から消えたこと、そのことについて 他の犬士たちと相談するから、保健室へ集まるよう言いにくる。 病院側の話によれば、藤岡は着替えや荷物など持たないまま、病室から忽然と消えてたという。 しかも藤岡は、姿を消すまで意識は戻っていない状態だった。 あかねの言っていた「主」が、邪魔になった藤岡を消したのだろうかという流れになるが その主の正体が全くわからない以上、話は進みようがない。 「このまま推理合戦をしていても仕方ないか。そうだ、写真のチェックは終わったのかい?」 結奈は二人見つけたことを報告し、痣のあった生徒の写真を皆に見せると 左肩に痣のある生徒は2年の桧山だということが分かる。 そして桧山は飼葉と村崎が、川瀬は結奈が話をしにいくことになった。 263 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 23 02ID ??? 教室で香澄と会話していた結奈のもとに、 飼葉と村崎から八犬士の話を聞かされたばかりの桧山が会いにやってくる。 「ホンマは放課後まで待てと言われとったけど あんましオモロそうなので会いに来てしもたんや。」 「は? 面白そうって?」 「ここで話すわけにはいかへんころやろ。ちょいと付き合うてな。」 「え、ちょっと、先輩、もうすぐ予鈴が……。先輩~!?」 強引に連れてこられた先は、誰もいない特別教室だった。 鍵までかけ、ここならしばらく誰も来ないだろうと言い出す相手に、結奈は微妙な危機を感じる。 軽やかに服を脱ぎ始め、覚醒を促す桧山。ノリノリの犬士の登場に結奈の方が引いてしまうが、 協力的であることには変わりはない。結奈は桧山を覚醒させた。 「……これで終わり? なんや、あっさりしたもんやな。 どこが変わったか知らんけど、これでキミを 業羅とかいう化けモンから守る力も使えるようになるんやろ?」 「……はい。それってつまり、命の危険もあるってことなんですよ?」 「わーかっとる。不肖・桧山真心、キミを命賭けて守らしてもらうで。 こないオモロイこと、乗らずにおられへんわ。」 川瀬と昼休みに会えなかったため、放課後も川瀬の教室に行ってみるが、既に帰った後だった。 いつも授業が終わるとすぐにいなくなってしまうらしい。 「忙しい奴だとは知っとったけど、そこまでとは。 またバイト増やしたんかもしれんなぁ。」 所属する部活に勧誘したことから、少し川瀬と面識のある桧山によれば、 川瀬はひとり暮らしで、生活費を稼ぐためバイトをいくつも掛け持ちしており 学校内に友人はおろか、まともに口をきく相手もいないのだという。 264 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 24 02ID ??? 四章 割られた鏡 ルート 結奈はその日に川瀬に会うことは諦め、明日再び川瀬に会いにくることにした。 次の日の昼休み。香澄と一緒に川瀬に会いにいく途中、結奈は慌てていた村崎とぶつかる。 村崎から保健室の鏡が粉々に壊されていたこと聞かされて誰の仕業かと気になるが 早く川瀬を捕まえなければいけないことを思い出し、村崎と別れる。 だがその日も結局川瀬には会えずに終わった。 翌日、学園中の鏡が割られた事件についてクラスメイトから聞かされてる最中、 校内放送で川瀬が校長室に呼び出される。 「どうする、結奈?」 「これは校長室に行ってみるしかないよね。」 こっそり校長室を窺う結奈と香澄。 校長室では、川瀬が学園中のほとんどの鏡が割られた事件の犯人ではないかと校長から問い質されていた。 鏡が割れた現場で川瀬を見た証言が原因らしいが、本人が否定するにも関わらず 話が退学にまで及んでることに腹が立ち、我慢できなくなった結奈は校長室に入る。 「ちょっと待ってくださいっ!」 「なんだい、いきなり? お前さんは確か……。」 「1年C組の桐沢結奈です! 今の話、聞かせてもらいました。 本人が違うって言ってるのに、いきなりなんてひどいじゃないですか!」 校長は入学式の日に続き、またも事件に絡んできた結奈を 騒動に首を突っ込みたがる子だと評して呆れつつ、 私も川瀬くんを退学にしたいわけじゃない、しかし 先生方を抑えるにはそれなりの条件を出さなきゃならないんだと本心を言う。 「じゃあ、私が真犯人を捕まえてみせます! それなら、文句はありませんよね?」 一枚や二枚じゃなく、学園中の鏡が割られるなんて普通じゃない。 ただの愉快犯ではなく何か目的があるはず。 私たちがそれを突き止めてみせると宣言する結奈。 「…わかったよ。そこまで言われちゃ、私も先生方を説得しないわけにはいかないね。 ただし、いつまでも任せちゃおけないよ。期限は一週間。 それまでに、なんらかの答えを出しとくれ。」 校長室を出た後、川瀬からなんで俺をかばうんだと聞かれた結奈は 八犬士に関する話を彼にするが、俺には関係ないしそんな話信じられるかと突っぱねられる。 「とにかく、俺は降りかかった火の粉は自分で払う。ほっといてもらおうか。」 その言葉を言い終わると川瀬はさっさと立ち去ってしまうが 川瀬のことを放っておくことのできなかった結奈は、香澄と別々に学園内を回り、聞き込みを開始した。 265 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 25 27ID ??? 聞き込みの結果、事件についてはある程度詳しくなった一方で、 本来の目的である、川瀬の無実の証明となるような情報は入手できなかった。 こうなると残る手がかりは川瀬の姿を事件現場で見たと証言した人物しかない。 結奈と香澄は再び校長室へ行き、証言者が誰なのか尋ねることにする。 校長から証言者は高等部3年生・三船梨沙だと聞かされた結奈は 三船から直接話を聞くため、香澄と二手に別れて、彼女を捜し始める。 そんな折、結奈が三船を捜してるとどこからか聞きつけた桧山が 体育準備室のほうへ歩いていく三船を見かけたと教えてくれる。 そして桧山と一緒に体育準備室へ行ってみるのだが、そこには誰の姿も見当たらない。 念のためにと室内をくまなく捜してみるが、それでも三船は見つからなかった。 「なあ、そっちの机の下は、どうや?」 「はい、えっと……ひゃああ!? なななな、なに!?」 机の下からひょっこり現れたのは、業羅と同じ気を持つ大きな蛇だった。 「いよいよ、八犬士の力の見せ所ちゅうわけやな。いっくで~!」 二人きりの戦闘やや苦戦しながらもなんとか大蛇を倒すと、背後から三船が姿を見せる。 「なんでなのよ……。せっかく片付けてあげようと思ったのに。それなのに……。 なんで、失敗するのよ!?」 鏡を割った理由を聞こうとして三船の顔を見た結奈は息を呑む。 彼女の顔面には、蛇のウロコのようなものが浮き出ていた。 業羅の力を派手に使ったから隠し切れなくなったんだろう、 人の目には見えなかっただけで、鏡にはずっと映っていたはず、 桧山の推測を聞いた結奈は、三船が学園中の鏡を割った理由に気づく。 「どうして、そんな顔をするの? アタシの顔が醜いとでも言うの!? アタシは醜くなんかない。醜くなんか……醜くなんか……。 アタシは、誰よりも美しいのよ!」 狂乱した三船は結奈に襲い掛かる。 266 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 28 53ID ??? 結奈の危機を間一髪のところで川瀬が救う。 「危ないところだったな。借りは返したぞ。」 「あ、ありがとう。でも、どうしてここに?」 「話はあとだ。まずはあの化けモンをなんとかしねえとな。」 「アタシの秘密を知ったやつは生かしておけない」、殺意を見せる三船に対抗するため 結奈は川瀬にせかされるまま彼を覚醒させて、三船に立ち向かう。 戦闘に勝利した後、なぜそんな力を使えるようになったんだと三船を問い詰め始めたとき、 全身をマントで覆った謎の人物が現れて、三船をさらって逃げてしまった。 ここは深追いしない方がいい、第一もう追いつかないと桧山から言われて ガッカリする結奈に川瀬が声をかけてくる。 「なに、川瀬くん。」 「いや、その、なんだ……。テメェには……感謝してる。」 「ううん、いいの。前にも言ったけど、私は理不尽な処分に納得できなかっただけだから。」 「そうか。けど、まあ……ありがとな。それだけ言いたかった。じゃ、じゃあな!」 「……やれやれ。ホンマ、不器用なやっちゃな。 けどまあ、これでまた八犬士の仲間がひとり増えたっちゅうことやな。」 「ええ、そうですね。」 校長には、学園内に入り込んだ不審者が犯人で、その犯人を捕まえようとしたけど逃がしてしまったと説明。 桧山が証人なってくれたこともあり、なんとか信じてもらうことができた。 (それにしても……三船先輩をさらったあの人は、一体?) 夜の屋上では、いつものように、主に報告をするあかねの姿があった。 「八犬士は、残り二名です。」 「ようやく、ここまで来たか。次の舞台の用意は?」 「万事、問題なく。」 「聞くまでもなかったか。」 「はい……。」 267 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 29 27ID ??? 四章 散らないサクラ ルート 学校でこれ以上川瀬を捜してみても意味がないため、 結奈は香澄と桧山と共に、直接本人の家へ向かうことにする。 川瀬の家へ行く途中、美しく咲き誇った学園内の桜に目を留める三人。 桧山は他の桜がほとんど散ってしまっているにも関わらず、学園の桜だけが いまだに咲き続け、いっこうに散る気配のないことを訝しがる。 「この学園だけ、か。なんや、事件の匂いがする感じやな。」 川瀬の家を訪ねるてみるも、留守で会えなかったため 明日の朝、また学校で川瀬の教室へ行ってみることにしたのだが 次の日の朝と昼に川瀬の教室へ寄ってみるも、既に彼はどこかへ移動した後ですれ違ってしまう。 授業には出ていたらしいので、一応学校には来ているらしいのだが…。 こんな調子では放課後も会えない可能性が高い。 結奈と香澄は残りの昼休みを使って、手分けして川瀬を捜すことにした。 いくつかの場所を回った後、ようやく屋上で川瀬と会うことが出来た結奈は 八犬士の話を説明して、私たちに力を貸して欲しいと頼み込むが、信じてもらえない。 「信じられるか、そんなバカな話。第一、俺には痣もねぇよ。」 「その痣は私にしか見えないの。川瀬くんの背に、確かにあるんだよ!」 食い下がる結奈に、川瀬はひとつの条件を出す。 それは、学園の桜の木がどうしていまだに満開なのか その原因を突き止めたら、痣を確認させてやってもいいというものだった。 結奈は桜になにかあるのかと気になるが、川瀬は 俺個人の思い出があるだけとしか言わず、それ以上は答えない。 「約束、忘れないでね。突き止めたら、だよ。」 「俺は、約束は破らない。……テメェはどうだか知らねぇがな。」 268 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 31 04ID ??? 放課後、結奈は香澄と学園の桜の木を調べるが、幹も花も特に変わった様子はない。 ただ、地面に花びらが落ちてるにも関わらず、花が減った様子が全くなかった。 (ん? ここの地面……。ちょっとだけ色が違う? 普段はここまで人が近づかないからかな?) 桜を調べると、熱心に桜を見ている二人が気になったのか 3年の三船梨沙が声をかけてくる。 「ふたりとも、この桜がどうかしたの? ずいぶん熱心に見ていたけど。」 「えっと……この桜、ずっと満開でしょう? 不思議に思って。」 「三船先輩は、なにか知ってますか? この桜について。」 「さあ、特別なことは知らないわ。今年はずいぶん長く咲いてるとは思っているけど。 でも、いいんじゃない? こんなに美しいんだもの。 己の美しい姿を皆に見せたいと願う。それは、この世にある欲求のひとつよ。 美しさは永遠であるべき。アナタたちもわかってるんじゃなくって?」 三船が立ち去った後、香澄が桜の枝に引っかかっているリボンを見つける。 香澄はそのリボンを職員室に届け、結奈はまだ校舎に残ってる人たちに 桜についての話を聞くことになり、二人は別れた。 その後、香澄と図書館で合流するも、お互いこれといった収穫はなし。 強いて言うなら、古典の教師から聞いた、昭和初期の小説が元になった 「美しい桜の下に死体が埋まっているというのは、根元に埋められた死体を養分として花を咲かせるから」 ということくらいかなと言う。 「最近、街とかこの学園で、家出とか行方不明事件が多いみたいだから。 その先生も、そんな連想したのかも。」 香澄の話を聞いてる最中、結奈はふと、 先ほど拾ったリボンを香澄がまだ持っていることに気づく。 なんでも、職員室で遭遇した村崎が数学の問題集をうっかり床にばらまいてしまい それを手伝っていたため、届けるのを忘れてしまったらしい。 「先生、相変わらず苦労してるんだね…」 269 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 31 50ID ??? そこへ桜について調べてる二人を不思議がる桧山がやってくる。 桧山に川瀬から出された条件のことを話すと、桧山も手伝ってくれることになった。 「ほな、まずはどないすんのや?」 「正直、手がかりがないんです。木を調べたりしたけど、別にごく普通でおかしな点もないし。」 「そういえば、一応、このリボンはそこで拾ったものですけど、関係はないですよね。」 「あれ? それって……。」 リボンを見せられた桧山は、心当たりがあるような様子を見せる。 桧山によると、そのリボンは同じクラスの女子生徒がよくつけていたものと同じであり しかもその女子生徒は1週間前から行方不明の状態だった。 表向き家出ということになってるが、非常に真面目な子だったため 事件に巻き込まれたという話も出ているという。 「……行方不明、連れ去られる。桜の木……、まさか?」 さっき桜の木を調べたとき、桜の根元の地面の色が、他の場所とは違っていたことを思い出す結奈。 もしかしたら一度掘ってまた埋めたらからなのかも… そう考えた彼女は、地面の色が他と違っていた部分を掘ることにした。 (女の子っ! 根っこに絡みとられてる……!) 結奈の考えた通り、桜の木の下にはリボンの持ち主である 桧山のクラスメイト、芦屋音々が埋まっていた。 結奈はまだ息のある音々を助けるため、音々に絡んでいる根を切り払おうと スコップを叩きつけるが、根は突然動き始める。 「根っこやない、蛇や!」 普通の蛇では考えられない程の跳躍を見せる大蛇。 それが業羅だと思い当たった結奈たちは大蛇と戦い、音々を救い出した。 すると桜の花がいっせいに散り始め、一人の女が現れた。 「アナタたちのせいよ。 桜の永遠の美しさを邪魔するとは、あなた、随分と無粋ねぇ。」 270 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/03(月)00 33 09ID ??? 「三船先輩!?」 音々を埋めたことを肯定した三船は 悪びれるどころか、自慢でもするように手口を話し始める。 「彼女、この桜の美しさがずいぶんとお気に入りだったみたい。だから、その糧にしてあげたの。 彼女の生気を吸い取って自らの養分とし、光合成で作り出した酸素と 根から吸い上げた水を彼女に与えて生かす。そして、また生気を吸い取って……。 フフ、完璧でしょう?」 「いまなら、まだ間に合うわ。芦屋さんと八尋さんと、桐沢さん。ついでに桧山くんも。 アナタたちのその生気があれば、桜はまた、その美しさを取り戻す。」 蛇を使って、桧山と香澄を捕らえた三船は、まずはあなたからと結奈に手を伸ばした。 「大・丈・夫、痛くしないから。」 この後は割られた鏡ルートと大体同じ展開なので省略。 (襲われた結奈を川瀬が助け、彼を覚醒させて三船を倒すが、三船は謎の人物に連れ去られる) 三船が連れ去られた後、どうしてここに来てくれたのかと結奈に聞かれた川瀬は 助けに来たと思ってるなら違う、この桜を見に来ただけ、 そして桜についてもこれ以上答える気はないと返答する。 「で、どうするんや? 八犬士としてこれで証明されたわけやし協力してやってくんか?」 「……俺が約束をしたのは桐沢だ。お前らと馴れ合うつもりはねぇ。」 「じゃあ、私個人に協力して。 それがひいては、八犬士として協力してもらうことになるから。」 「わかった。……テメェを守るってことなら、やるだけ、やってやるよ。」 「うんうん。これでまるーく収まったな。」 意識を取り戻した音々を皆が保健室に運ぼうとしたとき、 桜がすべて散ってしまったことを知る結奈。 残念な気持ちが芽生えるが、すぐに考えを改める。 (ううん、これでいいんだ。限りある綺麗なものだって、たくさんあるんだから) 四章終わり 281 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)22 50 48ID ??? 五章 共通パート 授業中に考え事をして教師の話を聞いてなかった結奈は廊下に立たされてしまう。 そこに運悪く矢尾が通りかかり、小言を言った後 最近結奈たちが生徒会室によく出入りしていることを指摘して どんな良からぬことを企んでいるのか知らないが、そのうちしっぽを掴んでみせると言い出す。 「良からぬことって! なにもしてませんよ!」 「どうでしょうね? 実際、君たちが集団として働くようになった水泳大会より前後して、 この学園内で妙な事件が頻発している。風紀委員長としては、見過ごせませんね。」 通りかかった江積が助け舟を出してくれるが 江積にまで廊下に立たされたことを知られ、結奈はバツが悪くなる。 そんなことがあった日の放課後、いつものように生徒会室に集まって話し合いを行う結奈と犬士たち。 あかねと藤岡の行方についてはいまだに分からず、警察の方でも進展はなし。 それは先日謎の人物に連れ去られた三船にも言えたことだった。 次に、いよいよ残り二人となった犬士がどこにいるかの話になり 既に見つかった六人が学園内にいたということは、残り二人も同じように 学園内の関係者である可能性が高いのではないか、 その理由は、瀧田学園の一芸入試や推薦制度で日本中から生徒を集めている方針、 整った奨学金制度のためではないかという話になるが それだとしても、あまりにも確率が高すぎる。 「なんにせよ、そう考えると水泳大会をやったのはあながち的外れでもなかったんだな。」 「そうなんだけど、水泳大会で得られた情報から探っていくのは、もう限界だ。 こうなると、次は水泳大会に出場していなかった生徒を片っ端から当たるしかないね。」 飼葉の提案で、まずは生徒会からアンケートを取るという形で 水泳大会に出場しなかった生徒に接触して 彼らをそれとなく監視し、痣を見る機会をうかがうことになる。 そしてアンケートは結奈と香澄が任され、犬士たちは結奈の身辺の注意と 失踪者についての調査を引き続き行うことで話し合いはお開きになった。 282 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)22 56 24ID ??? 五章 蜘蛛の巣ルート 「ねえねえ、ふたりとも知ってる?」 友人の浜崎と衣本から、最近この学園の生徒で行方不明になってる人がいると聞かされた結奈。 てっきり、あかねたちのことが噂になってるのか思いきや、どうも話が違っていた。 「いなくなったのって、女の子ばっかりなんだよね。」 「えっ!?」 そのとき、袴田が結奈を訪ねに教室に入ってきた。 浜崎たちに年下の彼氏かとからかわれた結奈は慌てて袴田を屋上へと連れて行く。 結奈になにかあったかと聞かれた袴田は 特に用事はなかったけれど、最近女の子が行方不明になる事件が続いていて心配になり 結奈の手伝いに来たのだと答える。 「それ、浜崎さんたちも言ってたけど……あかねちゃんとか、三船先輩のことじゃないの?」 「どうも、それだけじゃないみたいなんですよ。 他にも二年の先輩がふたりと三年の先輩がひとりいなくなってるみたいで……。 しかも、いなくなったのはこの学校でのことらしいんです。」 「どういうこと?」 「いや、カバンや靴が置いたままだったり校門を出た形跡もないから、 そうだろうっていうだけなんですけど。」 警察が校舎を捜索しても、手がかりはなにも見つからなかったのだという。 どうして次から次へとヘンな事件が起きるんだろう…頭を痛める結奈に 失踪事件のことは自分たちに任せ、結奈はアンケートに専念してくれと飼葉から言われたことを 結奈に伝える袴田。 「うう~、やっぱりそうなんだ。」 アンケートを取りにいく作業に乗り気じゃない結奈はガッカリするが、仕方がないので 袴田と別れた後、アンケートを取りに行くことにした。 アンケート回収がある程度終わった後、廊下で矢尾から注意されている袴田を見かけた結奈は そこへ割って入るが、先日、廊下に立たされたとき同様に 生徒会の行いを怪しんで詮索する矢尾から追求されてしまう。 飼葉の幼馴染で友人なら 本人を信用して任せるとかそっと見守るとかできないのかと聞き返す結奈に 矢尾は幼馴染が、結奈と香澄のように良好な関係を常に築いていられるとは限らないと答えた。 「幼馴染が……? でも、先輩たちは本当に仲がいいんですよね?」 「悪くはありませんね。私も別に万珠のことを憎んだりしているわけではない。 ただ、少々……意地になっているだけです。一度は万珠に勝ってみたい、と。」 万珠とは勉強や運動、学園生活の評価などあるゆる面においてよく比べられ お互いを良きライバルとして切磋琢磨を繰り返してきたが 一度も万珠に勝ったことがない。いつだったか、マラソン大会で勝負したときも 万珠に勝つために、雨の日も風の日も土手沿いの道を走り続けて必死で特訓するも、結局負けてしまった。 大会当日に40度の高熱を出して、途中で棄権するしかなかったから。 運までもが万珠に味方をしていた。 「まったく……。これでは、私はまるで万珠の引き立て役ですよ。」 283 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)22 58 57ID ??? 幼馴染へのコンプレックスを吐露する矢尾。そんな彼を袴田が勇気付ける。 「勝てないからといって文句を言ってるだけではダメだ、 何十回、何百回と負けようと最後に勝てば矢尾先輩の勝利なんだから」と。 しかし、矢尾は中学生から説教を受けたことにショックを受けて、立ち去ってしまう。 矢尾が立ち去ると、結奈は袴田と一緒にまだ残っていたアンケートの回収を再開するが それらしい人間はなかなか見つからず、ついに最後のひとりになってしまう。 その相手は、水泳大会の運営委員会の話し合いのときに会ったことのある三年の坂下那智だった。 坂下に会うため、彼の所属する弓道部の部活動が行われてる武道館に足を運ぶと 坂下が上半身裸で弓道の自主練習をひとりで行っているところだった。 「あれっ!?」 弓を引く坂下の右腕に牡丹の痣を見つけた結奈は、 さっそく坂下に話しかけて、一連の事情を説明する。 話を聞かされた坂下は、最近の生徒会の妙な動きはそのためだったのかと納得する。 「そう、緊張した顔をするな。 信じがたい話ではあるが、妄想だと笑い飛ばす気もない、ただ…」 そのとき、なにかを見つけた坂下が突然壁に矢を放つ。 「最近、クモが多い……。」 そっと呟く坂下の言葉通り、矢の先には蜘蛛がいた。 黙ったまま、厳しい顔で蜘蛛を見つめてなにかを考えている坂下。 口を開いた彼は、今すぐにでも私の力を解放して仲間にしたいのは重々承知だが 少し考えたいことがあるから、返答は明日までに待ってくれないか、と答えた。 その日の帰り道、袴田に送ってもらうことになった結奈は 犬士の中で一番年下ながらも、最も紳士的な袴田を褒める。 「みんな少しくらいは、遥平くんのことを見習ってほしいよ。」 「なにを見習うんだってぇ?」 「あっ……。」 「よっ、桐沢チャン! 今日もカワイイな~。」 「ど、どうも、乾先輩。」 声をかけてきたのは、学園一のプレイボーイ、二年の乾幸城だった。 いつものように口説いてきた乾を結奈は拒むが、乾はしつこく食い下がる。 その上、話を中途半端に聞いていた彼は、結奈が頼りになる彼氏が欲しいと解釈して オレがアンタの王子様になってやるからとまで言い出す。 「お礼は、そうだなぁ……キスでいいよ。今日のところは。」 「キ、キス!?」 「そ。おやすみのキス。もちろん、ほっぺとかじゃなく唇で頼むよ?」 「………。」 呆れて何も言えない結奈を、袴田が逃げましょうと急き立てて、二人は乾から逃げ出す。 「……って、どうしたんだよ、ハニー!? 照れなくてもいいんだよ~。」 284 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)22 59 51ID ??? 翌日、休み時間になった途端、結奈は香澄を連れて廊下へと走り出す。 今朝、玄関を出たときからずっと付きまとっている乾から逃げるためだった。 「お疲さま。結奈も大変な相手に見込まれたもんねー。」 「もうっ、他人事だと思って。」 「2年の乾先輩だっけ? 結奈の王子様。」 「違うって。なにを勘違いしたのか、向こうが勝手にそう言ってるだけ。」 こんなんじゃ、学校の中もおちおち歩けない…カンベンして欲しい。 ため息をつく結奈の前に、話題の張本人がやってくる。 「見~つけた。」 「わわっ!?」 「やあ、ハニー。オレから逃げようとしたってムダだよ。オレと一緒に、めくるめく愛の時間を過ごそうよ。」 「きゃー、助けてぇー!」 全速力で保健室へ駆け込んだ結奈は、そこで少し休むことにする。 「ここなら乾先輩もムチャできないだろうし、なんてったって村崎先生もいるし。」 「先生ならおらんで。」 いきなり返ってきた声に、まさかまた乾かと恐怖する結奈。 彼女が声のした方向へ言ってみると、そこにはベッドに横たわる桧山がいた。 「桧山先輩!? よかったぁ……。 って、なんで寝てるんですか。体調が悪いとか?」 「うん? いや、今日はええお天気やしちょっと眠くなってもうてなぁ。 で、どうしたん? なんや、テニス部の幸城に追いかけられとるんか?」 「そうなんですよ。乾先輩ったら、なにを勘違いしたのか。」 どうしたいいんだろと困ってる結奈に 学園中の女子に片っ端から声かけるようなやつやから マトモに相手にせんほうがええ、本気やないと教える桧山。 「手当たり次第ってやつですか? なんだ、誰でもいいんだ……。」 「ガッカリしたん? 女心はフクザツやな~。」 「そ、そんなじゃないですよ。」 「実際、あいつも女子に人気がないわけでもあらへんしな。」 女子といえば、最近行方不明になってるのは女子ばかり… もしかすると、幸城のやつがハーレムを作ってるんではと 大真面目な顔で言い出した桧山に結奈は落胆する。 「意外とええ推理やと思うんやけど。違うか?」 「もうっ、冗談はやめてください。私はもう行きますからね。」 「ほな、またな。幸城に見つかんよう、気ぃつけるんやで~。」 285 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)23 03 52ID ??? 保健室を出た結奈は、坂下から返事をもらうため、彼を捜し始めるが 武道館をはじめ、行った先々では遭遇することができなかった。 するとそこで携帯が鳴り、袴田と一緒に坂下を捜していた香澄から 坂下が見つかったと連絡が入る。教えられた場所が今いる場所のすぐ近くだと知った結奈は そこへ向かうとするが、またも乾が現れる。 「ひどいじゃないか、ハニー。オレをこんなに焦らすなんてさ。」 「あの……。私、やっぱり先輩とは……。」 「でも、もう逃がさないよ。オレの糸で、アンタのことからめとっちゃうからさ。あっはははは!」 いきなり笑い出した乾の目が普通でなく、 それが見覚えのあるものだということに結奈は気づく。 「さあ、来いよ、桐沢チャン。たっぷりかわいがってあげるぜ。」 「そこまでだ!」 香澄と袴田と一緒に姿を見せたのは、坂下だった。 坂下は弓を乾に向けて、彼が女子生徒行方不明事件の犯人だと言い出す。 しらばっくれる乾に対し、乾に交際を申し込んだ女子生徒が 彼と一緒にいたところを目撃されて以来行方不明になり 今は体育倉庫にクモの糸によって捕らわれてる事実を話す。 「見てきたように言いますねぇ。」 「実際に見たからだ。君がクモを使い、その生徒を捕らえて手首に食らいつくところを。」 「………。」 「どうだ!? 言い逃れはできまい、乾幸城!」 みなから問い詰められた乾は女子生徒を誘拐した理由を言う。 こんなチンケな巣に囚われてるのがシャクになり、オレの力でどれくらいのことができるか この学園で試してみたくなったのと、食料を調達するためだと。 「まさか、ほんとにハーレムを作ってたなんて。」 「ハーレム? いいねぇ。この学校を壊して、ここにオレのハーレムでも作ってみっか。 もちろん、桐沢チャンも入れてあげるから安心しなよ。」 「……とことん、ふざけた男だ。」 乾は自分がクモを操っていることを知りながら、 黙って行動に出なかった坂下を、オレが怖かったからなんでしょとバカにし アンタの弓じゃオレを倒せないから、試しにどうぞと挑発する。 その挑発に坂下は乗るが、乾の言う通り、それは何の効果もなかった。 「どうっスか? 力の差ってやつが、わかりました?」 「……よくわかったよ、乾。君がもう、人間でないものになっているということがな。」 286 :466:2006/07/05(水)23 05 16ID ??? 坂下は、乾の力が未知数であったこと、そして決定的な行動を起こすのは待つために 乾の行動を黙って見ていたと告白する。 「クモの増加と君の行動から推測し、事が起こるのは今日あたりではないかと 睨んでいたたが、大正解だ。その前に、君に対抗する力を与えてくれる桐沢さんが 私の前に現れたのは、運命といったところか。」 「桐沢さん、待たせてすまなかった。私の力を解放してほしい。 君を守るため、乾に対抗するために。」 坂下を八犬士として覚醒させて、乾が操るクモと戦うが クモを片付ける頃には、乾は既に逃げた後だった。 袴田に飼葉たちへの連絡を任せて、結奈は坂下と香澄と共に 急いで乾が逃げた先だと思われる体育倉庫に向かうことにする。 体育倉庫にやってきた結奈が見たのは、部屋中にクモの巣が張られ 糸にからめとられている女の子たちの姿だった。 女の子たちが気を失っているだけで、命に別状はないと知り クモの糸を切ろうとする結奈たちの前に、乾が姿を見せる。 「勝手に手を触れないでもらえますかね? オレの大切なコレクションなんスから。」 そんなのおかしい、先輩は普通じゃないと皆から言われても 動じるどころか、褒め言葉として受け取るとちゃかす乾。 「彼女たちだって、喜んでいるはずっスよ。ココにいれば、 生きたまま永遠の美が保証されるんスからね。それに、なにより…… このオレのそばにずっといられるんスから! あっはははは!」 「お前は……正気じゃない。クモの力が、お前をそうさせたのか。 ならば、その力を私がこの矢で断ち切ろう!」 「私もやります! このままにはしておけない!!」 女子生徒を香澄に任せて、結奈と坂下は乾と戦う。 自分を追い詰めてきた二人に戸惑いを見せて、急にしおらしい態度になる乾。 彼の急変した態度に結奈が隙を見せた、その瞬間… 「いけっ!」 乾はまだ生きていたクモの糸を使って香澄を人質にする。 だが形勢が逆転した直後、香澄に巻き付けられたクモの糸を素手で切り裂いて 乾を気絶させる人物が現れる。 287 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)23 08 15ID ??? (三船先輩をさらったのと同じ人だ!) マントに覆われて正体がわからない謎の人物だが その相手目掛けて坂下が矢を放ったため、フードがめくれてマントの一部が破れてしまう。 「あ、あれは……!」 フードから覗いた顔は、結奈の知っている男子生徒だった。 だがそれ以上に結奈を驚かしたのは、八犬士の証…牡丹の痣が腕にあったこと。 彼は乾を抱えたまま、素早く逃げてしまう。 「何者だ、あいつは。もう少しで顔が見えたんだが……。」 (そっか、角度からして私にしか見えてなかったんだ。 ……今の人、知ってる。一度、少しだけ話したことがある、よね。 でもどうして、彼が?) そこへ袴田が呼びに行った残りの犬士たちもやってくる。 結奈と坂下は、乾がこの事件の黒幕だったことや 詳しい話を聞く前にマントの人物にさらわれてしまったことを皆に話す。 「三船先輩のときと同じです。けど、香澄を助けてくれたとも言えるんです。」 「敵なのか、味方なのか。それもわからない……。」 「……はい。謎が深まっちゃいました。」 「でも、坂下先輩っていう心強い味方を見つけられましたね。」 自分のことに話題が移った坂下は、 結奈に、改めて挨拶をしておきたいと言い出す。 「私は八犬士になったのだろう? そして、君が守るべき姫だと。」 「私は、乾がクモを操っているらしいと知って、独自に奴のことを調べていた。 それに片をつけたら協力しようと思っていたのだが、 まさかこんな形で……君に助けられるとはな。」 「助けた、なんて。そんな。」 「いいや、君が八犬士としての私を見つけ力を与えてくれなかったら 間違いなく、乾に破れていた。」 「過去からの、因縁か。「歴史は繰り返される」……。 陳腐だが、この言葉が最も相応しいな。私は八犬士のひとりとして、 君を守る盾に、そして剣になろう。これから、どうぞよろしく。」 「こちらこそ、よろしくお願いします!」 288 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)23 09 03ID ??? 「これで、七人。残りはあとひとりか。」 「……!!」 飼葉の言った言葉で、結奈は気づいてしまう。 最後の犬士は、あのマントを被った男子生徒だということに。 マントの彼から痣を発見したことを話そうかどうか考えてる結奈の姿を見て 飼葉はもしかして、なにか違和感を覚えてるんじゃないかと聞いてくる。 「僕はそうなんだ。なんに対してなのかはうまく言えないんだけれど。 いや、変なことを言っちゃったね。気にしないでくれ。」 「いえ……。」 (いまは、言うのをやめよう。もう一度、よく考えてみよう。 本当に彼なのか、どうか……) その日の夜。教室で、あかねは主に報告をしていた。 「ご報告いたします。乾幸城もこちらの手に。例の場所にて眠らせてあります。」 「そうか。彼は実に良い仕事をしてくれるな。 まあ、この一件が終わるまで道化たちには眠っていてもらおう。 なにか使い道があるかもしれない。」 「それでは、八犬士たちの監視に戻ります。」 「ああ。……哀れなものだな、誰も彼も。」 289 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)23 10 27ID ??? 五章 吸血グモ ルート その日の授業が終わると、結奈は香澄から、飼葉から別の仕事を頼まれたため アンケートについては手伝えなくなったと聞かされる。 そこへ友人の浜崎がやってくるが、彼女は突然小さい悲鳴をあげる。 「どうしたの、浜崎さん。」 「あっちの壁、見て! クモがいる。」 浜崎の言う通り壁にはたくさんのクモがいた。 なんだか最近、学校内に虫、特にクモが多くなってる気がすると浜崎と話しながら 目の前にいるクモをどうしようかと悩んでいると、 特注の殺虫剤を抱えた村崎が現れて、クモを退治しようとしたのだが… 「うわぁ! む、虫が、こっちに!」 虫に慌てて村崎は机の中に突っ込み、派手に転んでしまう。 「は、はは。またみっともないところを見せちゃったな。」 「……いえ。それよりも、大丈夫ですか?」 「ああ、平気だよ。虫は……なんとか退治できたな。」 村崎によると、やはり二、三日前から特に虫が大量発生してるのだという。 結奈は村崎、浜崎たちと別れて、アンケート回収を開始する。 アンケートの回収も一段落着き、残るのは三年生の分だけ。 その前に一度、教室で飼葉が頼まれた仕事をしている香澄の様子を見に行く結奈。 すると教室では、矢尾からなにかを追求されて困っている香澄の姿があった。 *ここで飼葉への劣等感を矢尾が告白するくだりは 「蜘蛛の巣」ルートと同じなので省略します。 矢尾の心情を聞いた香澄は、考え方の問題じゃないか 私たちだって見ようによっては私が結奈の引き立て役なのかもしれないと言い出す。 「え? どうして?」 「ほら、私、結奈が手を引っ張ってくれないとなにもできないじゃない。」 「そう? むしろ、私が香澄の女の子らしさを引き立ててる気がするけど。」 「……はいはい。君たち、それは私に対する嫌味かなにかですか?」 「ええ? そんなつもりないですよ!」 290 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)23 11 18ID ??? 柄にもなくつまらない話をした。今のは忘れてくれと言って矢尾が立ち去った後 自分の仕事が終わった香澄が、結奈のアンケート探しを手伝ってくれることになる。 *坂下を見つけるくだりは「蜘蛛の巣」ルートと同じなので再び省略します。 下校途中に中庭を通った二人は、校舎の壁にべったりくっついて なにかをしている村崎の姿を見かける。 結奈は村崎に声をかけ、坂下のことを話す。 「坂下くんが八犬士。そうだったのか。 水泳大会で知り合ったふたりがどちらも八犬士だったとは、なかなか因縁を感じるね。」 「ですね……。怖いくらいです。」 「でも、坂下くんはなかなか評判のいい生徒だし、頼もしい仲間が増えるんじゃないかな。」 そのとき、壁から妙な音がしていることに結奈は気づく。 村崎によると、壁にくっついていたのはこの音が気になったため調べていたためらしい。 その音は虫たちが壁の中を動き回っている音で 虫たちが学校の壁の食い荒らしてる可能性もあると村崎は言う。 まさかホラー映画じゃあるまいし…ありえませんよと結奈が否定したとき、 2年の乾が声をかけてくる。 「なにしてんの? 仲良く壁に耳なんて当てちゃって。」 「む、虫がいるんですよ。壁に中に、たくさん!」 「まあまあ、落ち着いて。そんなに必死になられたらオレ、困っちゃうよ。 こう、思わず抱き寄せて慰めに……。」 「んん! 乾くん、不純異性交遊はだめだよ。」 止めに入った村崎に、こんなの挨拶だしカワイイ女の子への礼儀だと なんでもないことのように返した乾は、結奈たちを送っていこうかと言い出すが、結奈は断る。 (目つきがやらしいよ~。絶対になんか変なこと考えてる、この人) 乾が立ち去った後、結奈たちは村崎に送られて帰ることにした。 291 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/05(水)23 12 53ID ??? 次の日、虫が異常発生したため、校内では1日中消毒活動が行われることなり 生徒たちは体育館や武道場に待機することになった。 結奈と香澄は万が一に備え、村崎と一緒にいるよう飼葉から指示されたため こっそりと他の生徒たちが待機している場所から抜け出し、保健室にいた。 するとそこへクモが現れる。村崎が作った銃型の殺虫剤でクモを退治するが 今度は普通のクモではない、業羅らしきクモまでが現れる。 「戦うしかないか。桐沢さん、私の側を離れないように!」 村崎とクモを倒した後、生徒たちが騒いでる声が聞こえてくる。 「……まずい。もしかしてこのクモはここだけでなく、校内全体に現れたのか?」 「皆を助けないと! 浜崎さんや衣本さんたちじゃこのクモに対抗できない!」 「でも、どうやって? 殺虫剤はこれだけしかないんでしょう?」 「いや、昨日使っていたものもある。しかし、これだけでは、たかが知れてるな。」 困った二人に対して、香澄が坂下の名前を挙げた。 昨日クモを射ったときに、なにかを知ってそうな雰囲気だったじゃない、と。 坂下を捜しにいこうとする結奈を危険だからと村崎が止めるが 保健室に助けを求めてくる人がきっといる、だから先生はここにいるべきだと説き伏せ 香澄のことを頼むと、結奈は保健室を出た。 坂下を捜してる結奈のところへ香澄が駆けつけてくる。 「どうして保健室から出てきたの! 危ないじゃない!」 「わかってる! けど、結奈に教えなくちゃいけないことがあって!」 香澄は、さっき保健室に来た人が、弓を持った坂下が 乾を追うために屋上に向かったのを見たという話をする。 なぜ坂下先輩は乾先輩を? 事情が分からない結奈だったが、香澄と一緒に屋上へ行くことにした。 結奈たちが屋上へ行くと、乾を弓で狙う坂下の姿があった。 結奈からその行動の理由を聞かれた坂下は、乾が虫騒動の犯人だと答える。 自分がある女子生徒を捕らえて、手首に食らいつくところを坂下が見ていたと知った乾は 言い逃れるのをやめて、開き直った。 「あの女は、食事っスよ、食事。オレ、普通のメシじゃ満足できないんスよ。 オレが操ってるクモたちと同じで人間の血が、一番美味しく感じるんスよねぇ。 いやー、まいっちまう。」 「食事って、そんな! 人間なんですよ、同じ!」 「べーつーに。人間なんていくらでもいるじゃん。 ひとりぐらい減ったって問題ないっしょ。」 「……まともな思考を期待しないほうがよさそうだな。」 この後は「蜘蛛の巣ルートと」ほとんど同じ。 (ちなみに学園中に現れたクモは、操っていた乾がいなくなったことでどこかに消え去った) 五章終了 292 :名無しって呼んでいいか?:2006/07/05(水)23 18 48ID ??? これで前半終了です。長くかかっちゃってすみません。 あと個別ルートがないので、7章以降は共通ストーリーの合間に一番親しい犬士とのイベントがぼちぼち起こるんですが それは飼葉で進める予定です。 300 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 42 24ID ??? 六章 裏切りの八犬士 結奈は悩んだ末に、痣のあったマントの男、1年の塚野昴に八犬士の話をしにいく。 塚野は犬士として結奈を守り、他の犬士や香澄に危害を加えることはしないと約束してくれるが そのかわりなぜ三船や乾をさらったかの理由は言えないと答える。 ただし、八房の封印を行った後なら話してやってもいい…とつけ加えて。 さっそく結奈は塚野のことを飼葉たちに紹介する。 犬士たちの反応は様々だったが、今は八房を封印することが最優先であると意見が一致したため、 八房の封印を行うことになる。 八房が眠る場所、学園の地下の社へと向かった犬士たちは 封印が解けかけて襲ってきた八房を戦い、八房が弱って攻撃をやめた際に封印にとりかかった。 ところが、結奈がいくら祈っても何も起こらない。 それどころか、八房が怒りだしはじめ、逆効果にしかなってなかった。 祈るだけじゃなく、ペンダントが必要なのかも…あせった結奈はペンダントを掲げようとするが 再び襲ってきた八房に驚いて、ペンダントを香澄がいる方向へと飛ばしてしまう。 香澄がそれを拾おうとしたとき…初めて業羅に襲われた入学式の日以来 一度も光ったことのなかったペンダントが光りはじめる。 そして、八房の姿が徐々の小さくなっていき、ついに姿を消した。 飼葉たちが地下を捜しても、八房の姿はどこにも見当たらなかった。 封印は成功、これで八犬士の使命を達成した そのはずなのに、誰もがすっきりしない複雑な思いを抱く。 301 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 43 42ID ??? 七章 伏姫 それから数日間、食事も着替えもする気になれず、ずるずると学校を休んでいた結奈のもとへ 風邪は治ったかと心配した香澄がやってくる。数日振りに香澄と一緒に学校に行くことにした結奈は ずっと学校を休んでいた彼女を気にかけて、迎えに来た坂下と川瀬に通学路で会う。 八房は封印されても、あかねの主などの敵の正体はわからないままで心配だし 八房が消えたからといって縁がなくなったわけじゃない、 姫と犬士としての関係が終わっても、友人として付き合っていくことは可能だろうと言う。 その日の放課後、犬士たちが集まり、封印後の状況を報告しあう。 八房を封印してから、学園とその周辺で起きていた妙な事件はぴたりと止み 行方不明だった藤岡、三船、乾たちも意識不明とはいえ、一応生きた状態で発見されることが分かるが あかねの行方だけは分からない。 事情を知ってるだろう塚野もだんまりを決め込み、何も話そうとしなかった。 そして話題は、封印の日以来の疑念「伏姫は結奈ではなく香澄ではないのか」に。 ペンダントを代々受け継いできた里見家の子孫であり、 犬士たちの痣を見つけて覚醒させてきたのは結奈だが ペンダントを光らせ、八房を封印したの香澄。一体どちらが伏姫なのか 八房を封印したんだから、どっちが伏姫でもいいだろと言う他の犬士に対して 飼葉は、一番最初になにかを間違えた気がする、 その間違いは僕の犯したものかもしれないんだと拘る。 そして飼葉は結奈たちの出生になにか秘密があるのではと睨んで 海外にいる香澄の両親に連絡し、香澄の母、和歌子が学園を訪れる。 結奈と香澄が和歌子が待っている校長室へ行くと、和歌子は八犬伝に関わる重要な話をするから 犬士たちもここに呼んで欲しいと告げる。 犬士たちも校長室にやってきた後、和歌子は今まで隠してきた真実を話し出す。 それは香澄こそ里見家の血を受け継ぐ桐沢夫妻の娘で、 結奈は八尋家の娘だというものだった。 歴史学者だった桐沢夫妻は、里見家の血筋に生まれた女子が 伏姫の生まれ変わりである可能性があることを知り、学術的な好奇心で 生まれたばかりの娘に代々受け継いできたペンダントを触れさせる。 ところが、ペンダントは微かながらも光り出し、自分たちの子供が伏姫だと判明する。 伏姫、八房、八犬士…それらのことが伝承ではなく本当のことだと分かった二人は 将来自分たちの子供が命の危険にさらされる可能性が高いことに動揺し、 同時期に生まれた友人の八尋夫妻の娘と入れ替えてしまった。 罪悪感に耐えれなくなった桐沢夫妻は、結奈と香澄が小学校を卒業した直後に、 そのことを友人夫婦に告白するが、まだ幼い結奈と香澄にそんなことを説明できるはずもなく 四人でじっくり話し合った結果、今まで通りの生活を続けて 少女たちが高校を卒業するまでこのことは黙っていようと決めたと明かす。 私は、香澄の身代わりだったの? 伏姫の代わりに危険な目にあうための…。 それなのに、八房を封印しようとあんなに必死になってたんだ… 真実のショックと、自分の心情よりも、事実や使命を優先させる飼葉の冷たい言葉に傷ついた結奈は 香澄にペンダントを無理やり渡すと、校長室から逃げ出した。 屋上へ向かった結奈を、飼葉が追いかけてくる。 勝手に八尋夫妻に連絡してすまなかった、まさかこんな事情が隠されてたなんて思ってもみなかった。 使命も大事だけど、君の気持ちに配慮すべきだったと謝罪する。 そして結奈に対して芽生えはじめた特別な感情を言い表そうとするが 不用意な言葉まで一緒に言ったため、結奈をまたも傷つけてしまう。 302 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 47 09ID ??? 八章 軋轢 真実を知って以来、香澄のことを避け続ける結奈。 そんな自分を嫌悪するが、それでも前のように接することができない。 そんな結奈のもとへ、飼葉が姿を見せる。 香澄ならここにはいないから、すぐに捜しに行った方がいいと急かす結奈に対して 「僕は君に用があってきた」、強く言い返す飼葉。 そして今から君に付き合って欲しい場所があるんだと言うと、結奈をある場所へ連れて行く。 彼が結奈を連れて行った先は、美しい夕日が見える海岸だった。 デートみたいだと照れくさくなる結奈に、 僕は絵を描くのが好きで、ここによくスケッチをしに来るんだと話し出す飼葉。 初めて知った飼葉の趣味。考えてみたら、彼とまともに趣味の話なんてしたことがなかった。 飼葉は、僕も君がどんなことが好きとか、どんな場所が好きだとか知らない、 君とこうして趣味や好きなことを語り合うこともしてなかったと思うと、情けなくなる。 でもそれ以前に、八犬士としての使命に気を取られるあまり 君がひとりの女の子だってことを見落としてたと本心を明かす。 そんなことを話しながら少しいい雰囲気になってた二人の前に 八房が封印されたことで消えたはずの業羅が出現する。 わけが分からないまま、業羅と戦って勝つが 飼葉は業羅がまだ存在してるなら伏姫である八尋さんが危ない、 君は一人で家に帰るようにと言うと、香澄のところへ向かう。 一人で置いてかされた結奈は、やっぱり八犬士にとって一番大切なのは伏姫だ、 今日のことだってきっと香澄から頼まれたんだろうなと思い込み、勘違いした自分を哂う。 翌日、浜崎たちと遊ぶ気にもなれず一人で下校しようとした結奈に 飼葉から結奈を生徒会室に呼ぶよう頼まれた塚野が声をかけてくる。 気が乗らないまま生徒会室へ行くと、香澄の家の周りに多くの業羅が現れたという情報が入り 和歌子のことを心配して家に戻ろうとする香澄を守るため、犬士たちは皆、香澄と一緒に行ってしまう。 一人で留守番することになった結奈は、あかねと再会する。 あかねは結奈に、我が主が貴方を必要としているから迎えに来たと告げる。 しかし主が自分以外の女を必要としてることに嫉妬を覚えた彼女は、結奈に危害を加えようとする。 それを突然現れた塚野が助けてくれるが、塚野はなぜか結奈の意識を失わせるのだった。 香澄の家へ向かった犬士たちは、いっせいに立ち去った業羅たちを訝しがる。 あまりのタイミングの良さに、業羅が香澄の家の周りに現れたのは 自分たちをここへ引き付けるための罠だったのだと飼葉は気づくが 敵は既に目的の、結奈拉致を果たしていた。 303 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 48 20ID ??? 九章 八房、解き放たれる 目を覚ました結奈は自分が八房が封印されていた学園の地下の社にいることに気づく。 手足を縛られて身動きのできない彼女の前に、見知った人物が現れた。 矢尾春輔、彼は自分が結奈をここに連れてくるよう命じたのだと言い出す。 矢尾先輩があかねちゃんの主…? 信じられない結奈に、詳しいことは最上のタイミングで明かしますよと言うと 矢尾はどこかへ行ってしまう。 一方、行方不明になった結奈と塚野を心配する香澄や犬士たちの前に あかねが姿を見せ、結奈を学園の地下の社に捕らえていることを教えに来る。 わざわざ効率の悪い手段を選ぶ敵を変に思いながらも、香澄と犬士たちは結奈救出に向かった。 社に到着した香澄たちから、なぜ結奈をさらったかと問われた矢尾は もちろん八房を復活させるためだと答え、八犬士の本当の伝承を語り出す。 灯如尼が行った封印というのは、伏姫の首飾りへと流れ込んだ八房の恨みの力を八つに分け、 全国各地の強靭な精神を持つ八人の人間の中に封じ込めることだった。 恨みの力は消して消えることなく、転生のたびに受け継がれる… 八犬士とは、八房の恨みの力を宿らせた人間のことだった。 全国に散らばった犬士を集めて、伏姫の首飾りを使い 伏姫の魂を持つ人間を介して八房に戻せば、八房を復活させることができる。 つまり八犬士とは、八房を復活させないために決して集まってはいけない存在のこと。 集ってはいけないことも知らずに、 仲間だなんだと犬士集めに一生懸命になっていた飼葉らを嘲笑する矢尾。 飼葉は知らず知らずのうちに、八房復活の手助けをしていたのだった。 話終えた矢尾は、結奈を人質にして、全ては貴方次第だと香澄に迫る。 結奈を犠牲になんかできない。迷うことなく結奈を選んだ香澄は 矢尾の指示する通り、復活の儀式を執り行なうことになった。 儀式が進行し、自分たちの中に宿る恨みの力が八房に戻っていったことで 次々に倒れていく犬士たち。そんな中で、飼葉は苦しみながらも 君の願いはなんだ、僕には春輔がそんなに不満を抱えてるのかわからないと矢尾に問いかける。 矢尾は、全てにおいて万珠に及ばなかった だから万珠に勝てる力が欲しいと願った、八房の恨みの力を手に入れば、誰にも負けることはないと答える。 そして彼が願った通り、ついに八房が復活してしまう。 ところが矢尾の思惑とは裏腹に、八房は矢尾に恨みの力を与えるどころか、襲ってくる。 予想のしてなかった事態に矢尾が困惑してると、その疑問に答える声が返ってくる。 「八房は人間を恨んでいるんだぞ、手を貸すと思うか?」 304 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 49 08ID ??? 現れたのは、校長の国枝妙子だった。国枝は、自分の本当の名前が妙椿であること、 お前は八犬士を操っていたつもりだが、実際には私の手のひらで踊らされたに過ぎないと矢尾に告げる。 妙椿? どうして校長が矢尾先輩を? 事情が分からず、二人の間で交わされる会話の内容が理解できない結奈。 そのとき、暴れ出した八房の力で、地下にあった社が地上に出て校舎が崩壊する。 結奈、香澄、犬士らは校舎の崩壊に巻き込まれることもなく無事だったが、矢尾とあかねの姿は見当たらなかった。 八房に力をほとんど取られて業羅を倒すのも一苦労の彼らを、新たな業羅が追いつめる。 その状況を、香澄が伏姫のペンダントと伏姫の魂の力を使い 香澄の家へ瞬間移動するという形で救うが、大きな力を使った香澄は倒れてしまった。 とりあえず香澄を休ませて、結奈や犬士たちも香澄の家で待機することになる。 夜中にリビングにやってきた結奈は、考え事をしていた飼葉と遭遇する。 考えがまとまった、そう言った飼葉の口から次に出た言葉は 君はもうこれ以上、この事件に関わってはいけない、逃げて欲しいというものだった。 君がこのまま関わり続ければ、命の危険もある。 取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。 だが結奈は、いくら危険を訴えられても 自分だけが逃げることなんて出来ないと飼葉の頼みを拒否する。 どうしても承諾しない結奈に、お願いだから黙って逃げて欲しい。 僕から言えるのはそれだけだと、最後に告げて、飼葉はそこから立ち去った。 その日の夜、結奈はある夢を見た。 暴走した村人たちに伏姫が殺されて、妻を失った怒りと悲しみで暴れる八房を 姫の遺志を継いだ灯如尼が恨みの力を八つに分けて、封印する光景。 そして、八房の恨みの力が再び集まることのないよう 恨みの力を宿した八人の人間にも封印を施すため、灯如尼が八犬士を探す旅に出るところを…。 305 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 50 11ID ??? 十章 願い 目が覚めた結奈は、それがただの夢ではなく 八房が復活したことで目覚めた、自分の前世の記憶だと確信する。 私の前世は、八房の恨みの力を八人の人間に分散させて封印し、 さらに八房が復活しないよう、八犬士たちを探し出して、彼らに新たな封印を施した伏姫の幼馴染、灯如尼なんだ。 だから、八犬士の痣を見つけることも、封印を解除して力を解放させることも 私にしか出来なかったのだと結論にたどり着く。 記憶を取り戻した結奈は香澄にそのことを話して、彼女と和解した。 それを影で見ていた和歌子は、仲直りをした二人の娘の姿に安堵する。 結奈は灯如尼の生まれ変わりであり、八房を封印することができるのは彼女だけであること、 暴れる八房を、香澄が前世で彼に聞かせていた子守唄で落ち着かせ そこを結奈が封印する、という計画を犬士に話す。 犬士の役目は伏姫を守ることではなく、八房の力をその身に封じておくことだから 私たちの盾になるために、先輩たちがついてくる必要はない、 昼間は他の人間に見られる可能性があるから、夜になったら行きます。 二人は犬士たちにそう告げた。 夕方、結奈は飼葉から、どうしてそんなに勇気を持つことができるんだと聞かれる。 僕を今まで駆り立てていたのはリーダーとしての責任感だった、 でも僕がしたことは八房の復活の手助けだけ。 途中で何度もおかしいと思ってたのに、その疑問に対してなにもしてこなかった。 最後にせめて、君を危険を遠ざけようと説得したが、それすらも出来ない。 結局、すべては無駄だった…。 自信を失くして、初めて弱気な態度を見せる飼葉に、結奈は自分の想いを伝える。 私が頑張ろうと思ってたのは、飼葉先輩がいたから。 それが八犬士としての義務だったとしても、 先輩がいつもそばにいてくれたから、頑張ろう、戦おうって思うようになった。 この強さをくれたのは先輩なんです、だから無駄だなんて言わないでください。 結奈の答えを聞いた飼葉は、無駄だと言うことは 結奈の気持ちまで否定することになると気づいて、君の気持ちを否定したりしちゃいけない、 僕が君の事を大切に想うように、君の想いも大切にすると答える。 306 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 52 51ID ??? 夜になり、八房の元へ行こうとした結奈と香澄に 八犬士としてじゃない、ひとりの人間として君たちを守りたい、だから 自分たちもついていくと犬士たちは言い出す。 八房の所へ向かった結奈らを待っていたのは、やはり妙椿だった。 自分のことを聞かれた妙椿は、全てを語る。 元は狸だった彼女は、八房に乳を与えた影響で恨みの力を得て人間に化けれるようになった。 そして八房の里見家への復讐を手伝おうとしたが、当の八房は 伏姫から愛情を注がて次第に里見家への恨みが薄れていってしまう。 だが妙椿はそれを逆手に取る。村人を煽って伏姫を殺し、八房を憎しみの塊へと変えさせたのだ。 しかしそれも、灯如尼によって封印という形で阻止される。 その封印を解く方法を探るのに、かなりの年月を費やすはめになる妙椿。 次の機会にこんな苦労をしないため、 封印が弱まる六百年後に向けて、彼女は周到な準備を始める。 まずは、集めてはいけない犬士を、集めるべきなのだとすり替えた偽りの伝承を広める。 これを元に書かれた「南総里見八犬伝」のおかげもあって、誤った伝承は全国に広めることに成功、 それと同時に、後々のために 真実も記した書物も用意しておいて、それを社に隠しておく。 それから数百年後、八房の封印が緩み始めたことを知ると 社のある土地を資産家を丸め込んで買いとり、滝田学園を作らせる。 八犬士だと目星をつけた人間をうまく誘導して、滝田学園に入学させ、監視してきた。 そして矢尾が学園内を点検してる最中、地下にある社と そこに隠されていた真実を記した書物を発見したのを知ると 矢尾の中にある飼葉への妬みや憎しみを利用して、 八房の振りをしたまま、彼に業羅を操る力を与えた。 八房の願い「人間全てを滅ぼす」、それを叶えてやりたいと言う妙椿に対し 八房の本当の願いはそんなことじゃない、平穏な生活だと結奈は反論する。 愛する妻がいなくなっても、彼女のことを想い続けながら静かに暮らしたいに違いない。 妙椿が抵抗する気をなくしたことを知り、結奈と香澄は八房に封印に取り掛かる。 前世の記憶を思い出し、結奈は封印を始めるが、 ペンダントに流れ込んできた八房の思念の重さに押し潰されそうになる。 負けるわけにはいかないんだ…必死で耐える結奈の耳に飼葉の声が聞こえてくる。 驚く結奈に、宿命や使命なんて関係ない、 僕自身が君の傍にいたい、君を助けて、君と一緒に未来を作っていきたい、 その願いを叶えるために、僕はここに来たんだと告白する。 二つの想いが重なったことで、軽くなる八房の力。そしてついに封印は成功する。 封印したことになり石像となった八房の前で、自分もこの地に封印してくれと結奈に頼む妙椿。 だが、八房の封印方法しか知らない結奈に、妙椿を封印することはできなかった。 またひとりで悠久の時を過ごさなければならないのか…妙椿は寂しげに呟くと 石像になった八房に、母はまた必ずお前を助けに来ると言うと、どこかへ立ち去った。 それから五ヶ月後。 結奈たちの住む安房市を襲ったパニックの原因は地震だと発表され 矢尾、あかね、妙椿は行方不明のままだったが、藤岡、三船、乾の三人は、無事に意識を取り戻した。 八犬士は、八房を復活させないために、結奈が再び封印を施した後、この地を離れて全国に散らばった。 そして結奈はというと、 ナポリタンも連れて、香澄の家で家族四人と一匹の生活を始め 唯一この街に残った八犬士、飼葉と一緒に自分たちが体験した出来事をまとめた 「新たな八犬伝」作り始める。 307 :転生八犬士封魔録◆l1l6Ur354A:2006/07/08(土)11 54 06ID ??? 要約(ノーマルエンド) 主人公の桐沢結奈は、高校の入学式当日に 自分が伏姫の生まれ変わりであり、八犬士を見つけ出して 封印が解けかかっている八房を封印しなくてはいけないと生徒会長の飼葉万珠から教えられる。 学園内で起こる事件を追いながら、次々に犬士を集めていく結奈。 そしてついに全員見つけ出し、封印が解けかけて暴れる八房の封印にとりかかるが 八房を静まらせたのは、結奈ではなく親友の八尋香澄だった。 実は結奈と香澄は生まれた直後に 自分の娘が伏姫だと知り、将来危険にさらされることを恐れた桐沢夫婦によって 入れ替えさせられていたのだった。 しかも、飼葉が調べた伝承、伏姫と八犬士が八房を封印するというのは偽の伝承であり 本当の伝承は、八犬士は八房の恨みを宿らせた人間だから 決して集まってはいけないというものだった。 しかし、結奈を人質に取られた香澄は、八房復活の儀式を 敵の指示する通りに実行してしまう。 自分の前世は、過去に八房を封印した灯如尼という女性だと思い出した結奈は 香澄の協力のもと、八房の封印に成功、 八犬士は、封印を解かないために、全国各地、ばらばらに散ったのだった。 八犬士と別れ、元の日常生活に戻った結奈。 剣道の大会当日、優勝を狙うとはりきる結奈の前に、犬士たちが現れる。 結奈の試合があると聞いて、いてもたってもいられなくなり飛んできたという。 封印も一日くらいなら、大丈夫だろうと。 久しぶりの再会に感激した結奈は、彼らに大会優勝を誓った。 308 :名無しって呼んでいいか?:2006/07/08(土)11 54 45ID ??? これで終わりです。前半、台詞抜粋が多くてすみませんでした。
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やる夫転生■ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1294754445/
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関連スレナリチャの勢いで自キャラ語り 538 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 22 41 01.06 ID ??? 自分が困GMだった告白を一つ。システムは真女神転生(初版)です。 むかーしの、高校生くらいのガキだった頃に私がGMでやってたセッションではPCはみんな 神様の転生という設定で、PCの転生前がどんな神様だったかはGMの私が決めていました。 (職業とか技能は先にPLに決めてもらって、それに合わせて転生前を決める感じ) しかし、今思うとたいへんガキだった私は クーフーリンの転生だからという理由で(神話にあるから)腕を吹っ飛ばしたり。 タケミナカタの転生だからという理由で(神話にあるから)タケミカズチにボコらせたり。 最悪だったのは(ただでさえシステム的に不遇な)魔法使いのキャラを、 特にそれらしい理由もなく北欧神話のフレイという神様の転生体にして、 (神話にあるからという理由で)せっかく手に入れた強い魔法剣を手放すハメにさせて殺した挙句、 次のキャラが死んだキャラの妹という設定だったという理由だけで妹神のフレイヤの転生体にして、 (神話にあるからという理由で)シナリオに必須のアイテムを入手する手段として4人のドワーフと エロいことしろとか、すげぇ目に遭わせてしまったことです。 まだその頃の友人とは仲良くやってるのですが、あの頃のことについては 『今同じことされたら殴るだろうねー』と笑顔で言われました。 今思い出すだけで自分自身を火口に投げ込みたい気分です。 542 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 22 44 41.11 ID ??? なんだもう反省してるうえに笑い話になってるんじゃないか 544 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 22 46 34.85 ID ??? 神話だからって理由で無茶やりたいなら ルーンクエストやるべきだよね! 545 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 22 47 17.27 ID ??? 539-541 報告来てるのに板違いとはw 失せろww 538 報告、乙・・・ 考え無しなときのイタイ行為って、思い出すと悶絶するよな・・・ 548 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 22 52 07.91 ID ??? 未だに延々と続けてるならアレだけど 報告が来て数分の間に書き込んでるし 気がついてなかったんだろうから許してやれよw 538 あるある過ぎて俺もダメージ受けた スレ288
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Format Title Artist Label Model Number Release Press 12 輪廻転生 SOLDIER 符和 √9,ULTRA-VYBE R9EP-007 2020/06/10 - Side Track Title Produce A 1 輪廻転生 符和 2 再会 feat.E.G.G.MAN 符和 3 再会(INGENIOUS DJ MAKINO REMIX) feat.E.G.G.MAN INGENIOUS DJ MAKINO 4 天ノ啓示 符和 B 5 地下からの反逆 feat.FORTUNE D a.k.a. NINJADOOPA 符和 6 Seven Words feat.40 GUTTER 符和 7 Here today, gone tomorrow feat.Yoshiaki Nagami 符和,Yoshiaki Nagami 8 再会(Inst) ~R.I.P Kouichi Sugahara~ 符和 PERTAIN RECORD AMAZON 輪廻転生(アナログ) [Analog] HMV Soldier / 符和/輪廻転生 (Ltd)
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《転生炎獣の熱芯(サラマングレイト・カーネル)》 装備魔法 EXモンスターゾーンの自分の「サラマングレイト」モンスターにのみ装備可能。 ①:装備モンスターは、リンクモンスター以外の相手モンスターが発動した効果を受けず、 そのコントロールを変更できない。 ②:装備されているこのカードは効果では破壊されず、効果では除外されない。 ③:装備モンスターが相手モンスターに攻撃するダメージステップの間、 その相手モンスターの攻撃力は800ダウンする。 ④:1ターンに1度、装備モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、 代わりに自分の墓地のリンク2以下の「サラマングレイト」モンスター1体をEXデッキに戻す。 このターン、装備モンスターは戦闘・効果では破壊されない。 使用キャラクター 穂村尊(Soulburner) タグ一覧 装備魔法 転生炎獣 魔法カード コメント 名前 コメント
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真・女神転生 Eternal Apocalypse 管理人 Winder素材区分 P 備考 要事前報告 真・女神転生if Eternal Apocalypse 管理人 Winder素材区分 PU 備考 要事前報告 真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE 暴れ牛渋滞中 管理人 野牛素材区分 U 備考 名前なんだっけ。 管理人 silve素材区分 PU 備考 悪魔アイコン 名前なんだっけ。 管理人 silve素材区分 PU 備考
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66 :転生恋生 第二十三幕(1/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 20 37 ID bK7n9yTd 奇跡が起きた。いや、よく考えれば奇跡ではなく必然なんだが、俺には奇跡としか思えなかった。 神様が、哀れな俺に救いの手を差し伸べてくれた。そう思いたい。 日曜日の朝、姉貴は明らかに体調が悪く、とても外出できない状態になっていた。 理由は生理だ。考えてみると、ちょうど猿島と最初にデートしてから約1ヶ月だった。 「うー……。動けない……」 姉貴は今のソファで横になったまま、一歩も動こうとしない。 俺は努めて表情を変えずに、「今日は無理だな。おとなしくしてろ」と言って、昼過ぎにこっそり玄関を出た。 司とメールで打ち合わせたとおり、駅の改札で待ち合わせた。 俺が到着するのとほとんど同時に、司が姿を見せた。ピンクのキャミソールに白いショートパンツというラフな格好だ。肩からポシェットを提げている。 「えへへ……。じゃあ、案内するね」 司は俺の左腕にしがみつくように腕を絡めてきた。司の胸では大した感触じゃないけど、俺は鼓動が早くなるのを感じた。 もうすぐ司を丸裸にして、欲望の限りをぶつけることができると思うと、股間が膨らむのを押さえきれない。 それでも、一応デートなんだから、いきなりホテルへ直行というのは余裕がなさすぎやしないだろうか。 がつがつした男は嫌われるって言うしな。 「なあ、司」 「なに?」 「その……どこかでお茶するとか、そういうのしなくていいのか?」 司は不思議そうな顔をして俺を見上げた。 「どうして? さっさと行くとこ行こうよ」 「いいのか?」 「ご主人様だって、ボクとエッチしたいでしょ?」 直球だな、おい! けど、願ってもない。 「わかった。目的地に行こう。……って、どこへ行くんだ?」 司が逢引に都合のいい場所を知っているということだったが。 「電車で行くの。任せて! 落ち着ける場所だから」 電車の中では、ふたりでくっついたままで、何も喋らなかった。 俺は心臓が狂ったように踊り始めて、全く言葉が出なくなっていたし、司もいつものお喋りはどこへやら、ただ俺にすがりついていた。 傍から見ると静寂バカップルに見えたかもしれないが、全く気にならなかった。 電車で4駅進んだところで、司が降りるよう促した。目的地が近いことを悟って、俺の鼓動がギアを上げたが、更にバスに乗ると聞かされてやや落ち着く。 そしてバスで7つ目の停留所まで来たところで降りた。「ここからはすぐだよ」と言われて、また心臓が踊りだす。 15分ほど歩いてたどり着いたのは、大きな洋館だった。見るからに金持ちオーラの漂う門がそびえている。 67 :転生恋生 第二十三幕(2/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 21 28 ID bK7n9yTd 「ここだよ」 司の言葉は、俺にとって待ち望んでいた言葉だったが、それ以上に驚きをもたらした。 ひょっとして、この豪邸が司の家なのか? 雉野先輩なみのお嬢様だったのか? 「……おまえの家か?」 「違うよ」 あっけらかんと司は答えた。 「ボクの知り合いの家だよ。でも、離れを自由に使っていいって言われてるの」 そう言って門を開ける。鍵はかかっていなかった。 「おいおい、他人様の家かよ」 これはさすがにためらわれる。だいたい、知り合いに場所を提供する相手の心理も理解しがたい。 やっぱり、ホテルに行くべきだったんじゃないか? 「ほら、さっさと入って! 時間の無駄だよ」 「でも……」 ぐずぐずしていた俺の背中を司が無理やり押して門をくぐらせた。本気で抵抗できないあたり、俺も欲望に正直だ。 司は俺の手を引いて、勝手知ったる我が家とでもいうように、広大な庭の片隅に立つ平屋建ての一軒家へ誘った。 これが離れか。普通に一戸建て住宅として売れそうだな。 玄関で靴を脱いで中へ入ると、和風の造りだった。外観から想像するよりもわりとスペースがあって、部屋も複数ある。 廊下を奥へ進んで襖を開けると、8畳敷きの和室の真ん中にダブルベッドが置かれていた。 「……っ!!」 ベッドを目の前にして、さすがに俺も引き返せなくなった。司の肩をつかんで、俺に向き直させる。 「司……」 「ちょっと待って。支度するから」 司はやんわりと俺の手を外すと、ポシェットから小さな紙の箱を取り出した。 「ほら、ここを読んで」 言われるままに箱を手にとってみると、「経口避妊薬」と書いてある。先日言っていた薬らしい。 効能書きはやたら細かいので、ざっとしか読まなかったが、ナマでヤっても妊娠しなくなる薬だということは理解できた。 「見ててね」 司は中から錠剤を取り出すと、俺の目の前で飲み込んで見せた。 「これで、生でヤっても大丈夫だよ。だから、心配しないで、思いっきり楽しもうね」 俺は反射的に司を抱きしめていた。なんて細やかな気配りだ。 もう止まらない。俺に好意を寄せてくれる、目の前にいる女の子に俺の欲望をぶちまけずにはいられない。 「あ……」 司はちょっと慌てたようだった。 「ねえ、シャワー浴びなくていいの? 汗臭いかも……」 「そんなの気にしない」 俺は司をベッドの上に押し倒した。 68 :転生恋生 第二十三幕(3/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 22 38 ID bK7n9yTd 「きゃっ!」 司がかわいい悲鳴をあげる。俺の手に震えが伝わってきた。やっぱり緊張しているらしい。 それは俺も同じだ。口の中がカラカラに乾いている。 俺は司の上に覆いかぶさって、そのまま唇を重ねた。ひんやりとした感触を味わう。 湿った音を立てながら、俺たちは舌を絡み合わせた。 「ん……」 司の震えが収まるのを確認してから、俺は唇を離して、司の体をキャミソールの上から撫で回す。 昂ぶりは鎮まらないのに、俺は不思議と冷静だった。次に何をしたらいいか、なんとなくわかる。 キャミソールの裾をめくって、司の腹を撫でてみた。 「ふぅんっ……!」 司がびくりと体を震わせて、切なげな吐息を漏らした。 そのまま指先で円を描くように、司の腹を撫で続ける。 「はぁ……ん……」 司の目がとろんとしてきた。キャミソールの生地の下で、俺の指は上へ上へと進んでいき、突起に触れる。 「……ブラジャーはつけていないのか?」 「キャミソールがブラになってるの」 確かに、指で生地の裏側から触ってみると、胸に当たる部分が硬い素材になっていて、ブラジャーも兼ねているらしい。 どのみち、司のほぼぺったんこな胸だと無意味だけどな。 でも、俺の掌はかすかな膨らみを感じている。左右の掌で包み込むように司の胸を刺激するうちに、乳首が固くなるのがはっきりとわかった。 「気持ちいいか?」 「言わせないでよ……ばかぁ……」 息を荒くして目を潤ませる司に、俺は嗜虐心をそそられた。 「脱がしてほしいって言えよ」 「ご主人様が脱がしたいんでしょ……」 「言え。命令だ」 俺はこれまでにないほど高圧的な態度になった。直感的に、司が支配されたがっているとわかったからだ。 「……ご主人様ぁ、脱がしてください」 司は素直におねだりした。俺はその言葉を聞くと同時に、一気にキャミソールの裾をめくり、司にバンザイをさせながら脱がした。 初めて目にする司の裸は、まるっきり子供だったが、俺は感動した。 自分が好きな女の子の裸は、それだけで美しくて、いやらしいものなんだ。 次は当然下半身だろう。俺はもう、司に断ることなく、ショートパンツのファスナーを下ろして、脱がせた。 司も協力的に腰を浮かせて、脱がせやすくしてくれた。 69 :転生恋生 第二十三幕(4/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 23 26 ID bK7n9yTd 「……さすがに下は穿いているんだな」 「あたりまえだよ……」 幼児パンツみたいなのを予想しないでもなかったが、さすがにそんなことはなかった。清潔感のある、ピンクのショーツだった。 真ん中に染みができている。指で触れると、とろとろに湿っていた。もう濡れていたんだ。 上半身とは逆に、下半身は引き締まった太腿がセクシーで、大人の女の脚だった。 「ひぁっ……!」 ショーツの上から指でなぞると、司は弓なりに背を反らした。 俺の指が溝に沈んでいく。粘液まみれになりながら内壁をなぞると、司は嫌々をするように首を左右に振った。 「痛くないか?」 デリケートな部分だそうだから、やっぱり気になる。 「大丈夫……気持ちいい……」 その言葉を聞いて安心したので、指を上へ滑らせると、突起に触れた。 「んぁうっ……!」 司が一瞬、激しく震えた。どうやら、クリトリスに触れたらしい。 「もう……脱がせて……」 俺も脱がしたかったから、希望通りショーツを引き下ろしてやった。 あれ? 毛がない……? まさか、体が大人になっていないのか? ちょっと慌てたが、よく見ると薄い陰毛がまばらに生えている。落ち着け、俺。司はちゃんと生理があるって言っていたじゃないか。 「うぅ……。ご主人様も脱いでよ……」 言われて初めて、俺は自分が服を着たままなのに気づいた。 もどかしさを振り切るため、俺はTシャツを素早く脱ぎ捨て、ジーンズもトランクスごと脱いだ。 びきびきに勃起したペニスが顔を出す。 「うわぁ……そういう形なんだ……」 司がまじまじと見つめるので、ちょっと気恥ずかしい。 「おまえ、この前見ただろ」 体育倉庫の中でヌいてもらったのが随分昔のように思える。 「だって、暗かったからよく見えなかったんだもん。匂いと味は覚えているけど」 俺の方はもう限界だった。とにかく司の中に入れたくて仕方がない。 「司、入れるぞ」 「うん……」 そう言いながらも、司は脚を閉じている。 「脚、開けよ」 「恥ずかしい……」 司は両手で顔を覆いながらも、おずおずと内股で脚を開く。俺は司の両膝の間に体を割り込ませた。 先端が司のアソコに触れた。……そうだ、陰唇っていうんだっけ。 70 :転生恋生 第二十三幕(5/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 24 09 ID bK7n9yTd 俺の切っ先が司の「唇」を割って、中に入っていく。すぐに抵抗を受けた。 膜か? いや違う。両側から挟みこむような圧力だ。単純に、司の膣がきついんだ。 「司、大丈夫か?」 「うん。まだ入り口だし……」 もう少し力を抜くように言ってから、俺は司の腰をつかんで、体ごと前進した。 まるで咬みつくように圧力をかけてくる司の膣の抵抗をはねのけながら押し入っていくと、今度は明らかな障害物にぶつかった。 「痛い……っ!」 司が両手でシーツをつかむ。歯を食いしばっている様子を見るに、本当に痛いらしい。気持ちよさはふっとんだようだ。 慣れている男なら、ここで愛撫を加える余裕があるんだろうが、あいにく俺も切羽つまっていた。 締めつけが強すぎて、俺の方も気持ちよさより痛さの方が上回っているのに、俺の体は退却命令を受け付けない状態だ。前進あるのみ! 「んぁ……っ!」 司が悲鳴のような吐息を漏らした。何かがカチリとはまったような感覚に陥った。行き止まりまで達したんだ。 これ以上先へ進めなくなって、俺は司を見直す余裕を取り戻した。 痛みに耐えている司が健気で、たまらなく愛しい。 その気持ちを伝えるために、俺はキスをする。唇に、首筋に、乳首に。 「ご主人様ぁ……」 かすかな嗚咽を漏らしながら、司が俺の首に両腕を絡めてしがみつく。 俺はいつの間にか、腰を前後にグラインドさせている。司の中は相変わらずきついけど、液が湧き出して、前後運動できる状態になった。 火照った肉棒が強い締めつけを受けながら、摩擦熱も加わってどんどん熱くなる。 その熱が俺の脳を焦げつかす。 体の奥から、マグマが噴き上げてくるのを感じたときには、もう押さえ切れなかった。 「うぉぉっっ……!!!」 俺は生まれて初めて、女の体の中に射精した。 終わってからも、たっぷり5分は体をくっつけていたと思う。 体を離してみて、シーツに赤い染みができているのにぎょっとした。知識でわかっていても、やっぱり実際に目で見るとショックを受ける。 深い血の色が、司の感じた痛みを表しているように思えた。 「司、痛かったか?」 「うん……。覚悟していたけど、凄く痛かった」 疲れたような口調から、快感は苦痛で打ち消されていたことがわかった。なんだか申し訳なくなってきた。 71 :転生恋生 第二十三幕(6/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 24 47 ID bK7n9yTd 「でも、ボクはとっても幸せな気分。……ご主人様はきもちよかった?」 「ああ……。最初は締めつけがきつくて痛かったけど、最後は頭の中がはじける感じがした。すげー気持ちよかった」 「よかった。ご主人様が喜んでくれて」 力ない微笑みに、俺は司を抱きしめてやった。 「次は司も気持ちよくしてやりたい。頑張るよ」 「えへへ……ありがとう」 とはいえ、すぐに2回戦突入というのは無理だった。思った以上に、俺も疲れていた。 自家発電と違うのは、腰が痛いということだ。それだけ激しく動いたんだな。 司の方も、やつれている。女は男から精力を吸い取って元気になるのかと思っていたが、女もセックスで疲れるんだな。 その上、血の匂いが漂っていて、けっこうきついものがある。気分的にも、戦闘続行は困難だった。 「ねぇ……シャワー浴びたいな」 事実上の終結宣言だった。司の方から切り出してくれたので、俺は男のプライドを守れた。 一緒に入ることにして、俺たちは裸のまま浴室に向かった。脱衣場にはバスタオルが用意されていた。 中はというと、湯の沸いたバスタブがある。 「俺が洗ってやるよ」 ひととおりシャワーをふたりで浴びてから、俺は備え付けのボディソープで泡立てたスポンジで、司の体を洗ってやった。 血がこびりついていた部分は、特に念入りに洗う。司はくすぐったそうにしていたが、いつの間にか元気を取り戻したらしい。 「じゃあ、今度はボクが洗ってあげる」 いつものノリで司が俺に抱きつく。体で洗うつもりのようだ。 俺を洗い椅子に座らせ、司は俺の腕や脚を又で挟んでこすりつける。背中は胸を押しつけて洗ったが、正直大した感触じゃなかった。 それでも、司の肌と触れ合うのがうれしい。 「最後はコレだね」 司は泡まみれの両掌で俺のサオを包み込み、揉み始めた。見る見るうちに大きく固くなっていく。 血の匂いが消えたことと、シチュエーションが変わったことで、俺も司もムラムラきたわけだ。 「こんなのが入ったんだ……。人体って不思議だね」 「俺も、司が壊れやしないかって、ちょっと不安になった」 そんなやりとりをするうちに、俺は完全復活した。 「えへへ……これはヤるしかないよね」 司はシャワーで泡を洗い流してから、俺の上にまたがるような体勢になって、上から体を合わせてくる。 今度もきつかったが、初回よりはスムーズにいった。 「ふぁ……。気持ちいい?」 「ああ……。司は?」 「もう痛くない。気持ちいいかはよくわかんないけど……なんかほっとする」 72 :転生恋生 第二十三幕(7/7) ◆.mKflUwGZk :2010/11/11(木) 22 25 32 ID bK7n9yTd 司は俺の方に手をついて体重を支えると、ゆっくり体を浮かし、ある程度までいってから勢いよく体を沈める。 「うぉ……」 この動きは俺の脊髄を直接くすぐるような快感を与えてくれた。俺も司の尻に手を回して、司の体重を支える手伝いをする。 「ふぅ……んっ……」 司は上下の運動をゆっくり繰り返す。俺は司の乳首に吸いついた。 エレベーターのような運動がゆっくりと繰り返され、俺の快感が増幅されていき、あっけなく達してしまった。 こらえるだけの気力が湧かなかったあたり、やはり疲れていたらしい。 「やっぱり、2回目だと量が減るんだね」 「そんなこと、見なくてもわかるのか?」 「わかるよ。ご主人様はボクの中に入ってるんだから」 微笑む司が、ちょっとだけ俺よりお姉さんに見えた。なんか悔しい。 この次こそ、司を気持ちよくさせてやらないといけない。明らかに、絶頂に達していないからな。 それとも、愛撫だけだったらエクスタシーに達していたのか? そっちの方は確かに感じているのがわかったもんな。 セックスは奥が深いや。繰り返さないとうまくならないのは、どんなことでも同じなんだろうな。 これから何度でも、司と経験していこう。 その後ふたりでバスタブに浸かった。言葉を交わすことなく、ひたすら体をくっつけあった。 これ以上はさすがにヤる気にならなかったが、お互いの体の感触が伝わってくるだけで満ち足りた気分になった。 バスタオルで体を拭いてから服を着なおして、そのまま離れを出た。 司はポシェットから替えの下着を出していたが、こういう用意をしてきたあたりに、女の子なんだなと感心した。 それにしても、汚れたシーツなんかをそのままにして大丈夫だろうか? 怒られないかな。 「大丈夫だよ。ここの人は全部承知しているから」 司が太鼓判を押してくれたが、ちょっと非常識なことをしていないだろうか。俺たちも、屋敷の持ち主も。 それでも、今の俺は司で頭がいっぱいだ。面倒なことは後から考えよう。 「司、好きだ」 「うれしい」 そんなことを小声で囁きあいながら、俺たちはバスと電車を行きとは逆に乗り継いで、家路についた。 最初の待ち合わせ場所に戻ったときは、とても別れがつらくなった。 俺がこの童顔幼児体型の女の子に夢中になるなんて、4月の出会いのときは露ほども予感しなかった。 人生って、わかんないもんだな。 また機会を作ることを約束して、司と分かれた。 幸せな世界が広がっていく気がした。だけど、我が家が近づくにつれて、重苦しい不吉な雲が俺の胸の中に広がっていった。 姉貴をどうにかしない限り、姉貴の圧倒的暴力による支配から逃れない限り、俺と司の幸福な未来はないからだ。 戻る 目次 次へ