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人肉料理店とその契約者 09 「特訓だな!!」 買い物帰りに唐突にそんな事を言い出す。 「いきなりどうしたんですか?」 「禿さんと同じ高みを目指す為だっ!それにこないだの戦いで判った事がある!オレは弱い!!…認めたくねーけど」 言ってから軽く落ち込む少年。なら言わなきゃいーのに。あと前半はスルーしておく。 「それで特訓と言いましたが具体的にはなにを?」 「いや、まだ決めてない。どーしよっか?」 どうやら勢いだけで何も考えずにいた様だ。 「先ずは何処を鍛えたいかを考えてみては?」 「うーん?攻撃はオーナーがそばにいればそれなり、か……問題はやっぱ防御かな?」 「契約したとはいえ、今の所身体能力は一般人と大差ありませんからね」 「身のこなしをどーにかする?でも急になんとかなるモンじゃねーしな。 逆に攻撃力をもっと上げれば……いやそれも同じか……ん?攻撃力?」 思い出すのは契約した時の事。同時に嫌な記憶も頭を過ぎるが、振り払う。 (……そーいやあの時アホみてーに速く動けたよな?あん時の力を自由に使えたら?) 「妙な事を考えていませんか?」 「思考を読むなオーナー。いや契約した時の事をだな「いけません」 最後まで聞かず、即座に却下される。 「な、なんでだよ?あんときみたいに動けりゃ滅多な事じゃ負けねーだろ?」 「……言っていませんでしたね。 あれは暴走の様なものです。下手すれば都市伝説に…【人肉料理店】に飲み込まれます」 「飲み込まれたら……どうなるんだ?」 「解りません。最悪二人共自我が消滅し、言葉通りの【人肉料理店】になる可能性もあります」 言ってからふと考える。 (普通、あそこまで堕ちていればそのまま飲み込まれている筈……何故少年は戻ってこれた?) 「どしたの?オーナー?」 「いえ、なんでもありませんよ。……おや、あなたは…?」 「……はぁ。やっぱ地道に走り込みとか組み手でもするしかないか」 「そうぢゃな。そもそもいきなり強くなろうというのが間違っておるんぢゃよ」 「いやそうはいってもなー?早いに越したこたぁないし?さっさと体治すにゃー一発ガツンと…つよ……く……」 自然に会話に交ざってきた老婆を見て絶句する少年。オーナーはさっきから気付いていたのだが、敵意が無い様子だったので放っておいたのである。 「な、な、な、なんでこんなトコに居んだよ!?ばーちゃん!」 「お前さんが学校町に越したって聞いたからぢゃよ? あたしも昔ここに住んでたからねぇ。久々に見物がてら様子を見にきたんぢゃよ」 「はぁ?ばーちゃんが学校町に?」 「お祖母様?……本当ですか?」 困惑する少年。 怪訝な表情のオーナー。 「本当ぢゃよ。お前さんかえ?今、孫と暮らしちょる人は?」 「はい、オーナーと申します」 「あたしゃひきこというもんぢゃ。いつも孫がお世話になっちょるようで」 「いえとんでもない……失礼ですが、本当にお祖母様で?」 「ほぅ?納得いかんっちゅう顔ぢゃな? この子は正真正銘、あたしと血の繋がった孫ぢゃよ」 「……ですが…そんな事が?」 「実例が目の前にあるんぢゃから観念せい。」 「待て待て待て二人だけで話を進めんな!?わけわかんねーよ!一体なんの話だよ!?」 すっかり置いてきぼりをくらった少年が叫ぶ。 「ほっほっほっ、驚きんしゃい?」 あたしゃ都市伝説【ヒキコさん】ぢゃよ 固まる少年。ギ、ギ、ギ、と音がしそうな動きで傍に佇むオーナーに視線を合わせる。 「確かに彼女は都市伝説です。信じられませんが」 自身が都市伝説だと暴露した祖母を見る。 「……え?なに?じゃあオレ都市伝説の孫?」 「うむ、そうぢゃ。契約者はお爺ちゃんぢゃよ?契約したのは50年も前ぢゃが。 ちなみにお前さんの両親はなーんも知らんぞい?あたしらが近づけさせんかったからのぅ」 祖母のさらなる爆弾発言に完全に動きを停める。もはや少年の処理能力を越えていた。 「成る程。もしかしたらその影響で取り込まれずに……」 「ん?なんの話ぢゃ?」 「あ、いえ、私と契約した時の事なんですが――― (説明中) ―――といった訳です」 「そりゃあれぢゃな?あたしの血が入っちょるせいで耐性があったんぢゃろ」 「やはりそうでしたか……ある意味必然、ですかね?」 「いんや、運が良かったんぢゃよ。……ほれ、いつまでほうけてるつもりだい?」 未だに固まったままの孫に呼び掛ける。 「ぼやぼやしとらんと!とっとと帰るよ!」 「うぇ!?まさかついてくる気かばーちゃん!?」 「ほっほっほっ、お前さんの特訓とやらに付き合っちゃるわい。 うむ、久々に腕がなるのぅ♪」 「ばーちゃんの馬鹿力で稽古つけられたら死ぬわ!?…ってあの怪力は都市伝説だったからか!? うわっ!ちょっ!?離し……オーナー助けてっ!?」 「……申し訳ありません」「見捨てられたっ!?」 「ほれ、早くきな」 「やだぁぁあぁあぁぁぁぁっ!? ゆ、許して、ばーーーーーーちゃぁぁあぁ…ぁぁ………ぁ………」 終 前ページ次ページ連載 - 人肉料理店とその契約者
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「悪いんだけどさ、お嬢ちゃん」 男は嫌悪感を抱かずにはいられない、嫌らしい笑みを浮かべながら、口を開いた。 「この包丁で、君の両親、殺して?」 男が指差す先には、縄で縛られ頭から血を流し、ぐったりとした男女。 「……………………」 少女は奮える手で、男から包丁を受けとると 「………………!」 「お?」 そのまま、男に向けて突き刺した。 けれど、その包丁は男には刺さらなかった。 まるで、男の身体が石でできているかのように、硬質な音を響かせ、包丁は止まってしまう。 「いけないなあ、お嬢ちゃんは」 「…………っ!」 男は少女を殴る。 男の握りこぶしには、びっしりとフジツボがはえていた。 男は、それなりに有名な部類となる都市伝説と契約していた。 有名なだけあって、男の能力を見れば一目で何の都市伝説て契約しているか分かるだろう。 もちろん、都市伝説の関係者なら、だが。 そして、数時間前まで一般人だった少女にとって、その男は化け物以外の何者でもなかった。 「あのね、お嬢ちゃん。弱い奴は強い奴に逆らっちゃ駄目なんだよ。これ、社会の常識ね」 「……………………」 頭から血を滲ませる少女に、男は再び、包丁を握らせる。 「ほら、ちゃんと握って。上手に殺せたら、ご褒美をあげよう」 そう言って男は、下品な笑みを浮かべ、少女の身体を舐めるように見回す。 「でも、上手にできなかったら……」 男は少女の視界に、握りこぶしをちらつかせる。 「………………!」 少女は、頭の痛みに、目の前の化け物に怯え、しっかりと、包丁を握りしめる。 そうして、ふらふらと、微かに息をしている両親の前に立った。 「よくできたねえ。ご褒美あげるからね」 吐き気をもよおす笑みを浮かべながら、裸の男が少女にのしかかる。 もはや、泣く気力もない少女の手にはいつの間にか、 何かのカプセルが握られていた。 終
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夜の公園を二人の男が走る。 片方は神父のような恰好をした人の良さそうな中年の男。 もう一人は、対照的にダラけてた服装の、目つきの悪いずる賢そうな若い男。 突然、二人の足が止まる。 目の前には、大きな池。昼間なら小船を漕いだりできるが、さすがに夜にそんな事をしている人はいないようだ。 「やぁっと追いついたぜぇ」 二人の後ろから、若い男が現れる。その傍らには、白い鰐。 都市伝説「下水道の白いワニ」の契約者である。 神父風の男が振り返り、口を開く。 「何なんですか、あなたは。急に襲い掛かって来て。危ないでしょう」 「うるせぇ!お前らが母ちゃんから取った二百万!返して貰うぞ!」 「取ったって……アレは貰ったんだぞ?」 目つきの悪い男が言う。 「そうです。アレは寄付ですよ?」 神父風の男が同意する。 「何が寄付だ詐欺師ども!お前らが契約者なのは分かってんだ! 何と契約してるか知らねえが!その能力を奇跡とか言って宗教やってるらしいじゃねえか!このペテン師ども!」 男は二人に怒鳴る。 その言葉に、二人は黙ったまま何も言わない。それを見て、男は言い訳もできないらしいと判断した。 「金を返すなら見逃してやる。返さないなら、ワニの餌だ!!」 男の言葉とともに、鰐の口が大きく開かれる。 「あなたは、何か思い違いをしているようですね」 神父風の男が静かに口を開く。 「確かに、私達は契約者です。しかし、私達はやっぱりあなたのお母様を騙してなどいない」 「この野郎、そんなにワニの餌になりてぇか……」 「まあ見なさい」 神父風の男は、地面に落ちている石を拾った。はずだったが、それが男の胸の高さまで来た時、その手にはパンが握られていた。 「……は?」 「分けてあげますね」 神父風の男はそう言うと、石だったはずのパンをちぎって男に投げた。 何かの罠かと、男は受けとらず、パンは地面に落ちる。 「何を……」 「もう一つあげます」 神父風の男はまたパンをちぎる。 ちぎっては男に投げる。何度も繰り返し、いつしか、男の足元には大きなちぎられたパンの山ができていた。 しかし、神父風の男の手にはいまだにパンが一つ。 「ま、さか……」 「ご理解いただけたようですね。 私は石をパンに変える事ができます。この池の水をワインに変える事ができます。 水の上を歩く事も、死人を生き返らせる事もできます。」 そして、神父風の男は言った。 「私が契約しているのは、『キリスト』です」 「そ、そんな馬鹿な……」 「まだ信じられませんか?水をワインに変えて見せましょうか?」 神父風の男はにこやかに言う。 「だから言ったろう。あれは寄付だって」 ずっと黙っていた、目つきの悪い男が口を開く。 「確かにこいつは契約者だけどな、キリストの契約者だ。人を救う力を持つ。何も問題は無いはずだ。 それでもまだ文句があるっつうなら、そのワニで、戦ってみるか?神の子と」 男は迷っていた。「キリスト」の契約者、そんなモノに勝てるのか。人を救う能力を持つモノを殺して良いのか。 「お前は、何の契約者なんだ……?」 男は、目つきの悪い男に尋ねた。この男も契約者だったはずだ。この男が人に害をなすなら、こちらだけでも。 そう考えた。 「俺か?俺はこれさ……」 そう言うと目つきの悪い男は、公園の池の方を向き、手をあげる。 その瞬間、池が割れた。 「これが俺の都市伝説、『モーゼ』だ」 男が呆然と立ち尽くすのを尻目に二人は割れた池を歩いて去っていった。 「なーんかさあ、この辺り都市伝説と契約者多くね?」 「そうですね。早めに別の町に移った方が良いかもしれませんね」 夜の公園の池、小船から二人の男がおりる。 「コップや洗面器以外の水を割って『見せる』なんて久しぶりだぜ」 「私はいつもやって『見せて』いる事をしただけですけどね」 二人は公園の外に停めていた高級な車に乗り、話し合う。 「いくら稼いだよ」 「この辺りではまだ、一千万と少しですね。まだ他の町の半分です」 「んー、どーすっかなぁ。ここ金持ち多いけど、契約者も多いし。俺らの都市伝説がばれる事は無いとは思うが……」 「ばれるだなんて、何言ってるんです。私たちの都市伝説は『キリスト』と『モーゼ』でしょう?」 神父風の男が人の良さそうな顔を崩し、ニヤリと笑いながら言う。 「おおっと、そうだったな」 それに合わせるように目つきの悪い男も笑うのだった。 この二人の都市伝説が「青森のキリストの墓」と「石川県のモーゼの墓」であり、 その能力はそれぞれの人物の行った事を「見せる」事だと。その幻影を見せる能力だと、 ただの聖人の真似事をしているだけだと、気づけたモノは誰もいない。 終 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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#blognavi lv42で未だにトンコーも特化も無いおんみょーですコンニチハ。orz わいら狩りから帰ってきて実験。 それは「番号付きの断片を持ってスクラッチを削ると、 足りないのが出やすい」というもの。 都市伝説っていうかおまじないの類デスケド 足りないのが三椏4(叢雲)だから取りに行けない。 →こういうのにも頼りたくなるんです・・・(´・ω・`) というわけで三椏1~5までを持ってスクラッチを削ってみました。 1枚目・・・三椏4。 2枚目・・・三椏4。 ∑( ̄□ ̄;)!? ・・・ホントかもしれない。 普段番号ありを持たずに削ると、2と3が出やすいんですよ。 2枚中の2枚なので偶然の範囲ですがw 試してみる価値はあるのかもです。 カテゴリ [真人] - trackback- 2005年06月07日 21 16 40 ミツマタ5が、25枚位になった罠‥。 -- カムイちゃんです。 (2005-06-08 15 17 57) スクラッチの偏り方って絶対作為的だと思ってますw -- 真綾 (2005-06-10 00 41 47) 名前 コメント #blognavi
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○月×日 21:00 保健室 保健室に乱入してきた少女が、白い鰐の首を素手で刎ね飛ばした にわかには信じがたい光景ではあるが、彼女が都市伝説契約者である事を推測すれば、さほど問題ではないのだろう とまれ…白い鰐という脅威は消えた あとは、鼠だけだ 白い鰐が倒されたその衝撃で、鼠たちの間に一瞬の動揺が走る ……ちゃりんっ!! 「ちゅ!?」 一匹の鼠に絡みつく鎖 それは、5円玉や50円玉が連なった、鎖で 「勝って嬉しい はないちもんめ!!」 少女が、高らかと歌い上げる …この教室にいた、鼠たちが 彼女の支配下に、落ちた 「やっと捕まえたわ」 ふぅ、と息を吐くはないちもんめの少女 ちゅうちゅうちゅう!! 鼠は束縛から逃れようとじたばたするのだが、ガッチリ絡んでしまって脱出不可能だ 「他にも鼠がいたら厄介ね。この鼠たちを向かわせておくわ」 「すみません、お願いします」 …ようやく、保健室の寝台から降りる事ができそうだ ちゅうちゅうちゅう、保健室から出て行く鼠の群れを見送り…黒服は、自分たちの危機を救ってくれた少女達に視線をやった 確か、彼女たちは… 「「怪奇同盟」に所属していらっしゃる方々、でしたでしょうか……危ない所を、ありがとうござました」 小さく、頭を下げる黒服 手についた血を、その辺りに投げ出されていたシーツで拭いていた鰐の首を刎ねた少女…姫さんが、黒服の言葉に首をかしげる 「え?知っているの?」 「あなたのお姿は、「首塚」の宴会の時も、少々拝見しましたから」 そう、遠目にではあるが、見覚えがある 確か、あの時は… ………… …うん、頭頂部が寂しい同僚に勝負を挑んでいた姿については、忘れよう 「やはり、「怪奇同盟」も動きましたか」 「はい。今回の事は、都市伝説の存在を広く伝えてしまいかねませんから」 答えてきたのは、もう一人の少女 彼女からは、都市伝説の気配がする この少女も、「首塚」の宴会の時に、ちらりとだが姿を見た覚えがあった 「服装から推察しますに、「組織」の黒服さん、ですね?あなた方がどのくらい、この状況に関して情報をお持ちか、教えていただきたいのですが」 「はい…こちらとしましても、あなたたちが把握しております情報を伝えていただけると、ありがたいです」 思った以上に、この保健室で足止めを食ってしまった その間に、どれだけ状況が動いたかわからない 今は…少しでも、情報が欲しいのだ 黒服は、少女達との情報交換を開始した ○月×日 21:10 3年生教室 情報交換をしつつ、普段、授業が行われているのであろう、その教室まで移動した 途中の廊下で戦闘の跡を確認 食堂方向が、かなり破壊されているようだった 途中、Tさんらしき人の声も聞こえたような気がするから…Tさんが、向こうで戦闘を行っていたのだろう 何とか、合流できれば良かったのだが 「…あの子の位置は、わかりますか?」 鎖で縛り上げた鼠をぶんぶん振り回しているはないちもんめの少女に、黒服はそう尋ねた 目が回るのだろう、鼠はちゅうちゅう、嫌がって悲鳴をあげている 「………2階、ね。傍に誰かいる……」 「2階ですか…」 「13階段」を警戒している、この状況 あまり、階段は使いたくない だが、そうなると二階にあがる手段は限られてくる 「あなたたちのお仲間は、窓を破って侵入したのですね?」 「はい。2階より上はそうでもしなければ、侵入しようがありませんから」 …どこかの木か、体育館の壁でも登ってその屋根から、2階に侵入するべきだろうか? いや、外に魔女の一撃がいることと……巨大飛行都市伝説の存在がある 外をそうやって移動するのは、危険だ 「怪奇同盟」のメンバーが、攻撃を受ける事無くそうやって2階以上に侵入できたのは、恐らく幸運もあったのだろう …そして、自分達に、その幸運がもたらされるとは、限らない 何とか、手段はないものか 「……………え?」 …と、その時 はないちもんめの少女が、驚いたような声をあげて…振り回していた鎖を、止めた 「どうなさいましたか?」 少女の様子に、黒服はやや心配して声をかけた 彼女は、支配権を握った都市伝説の状態を感知したり、出会った事のある都市伝説の気配を感じ取れたりできる 何か、不味い都市伝説でも近づいているか 「…チャラ男が、気絶した」 「…………え」 「…気絶、してるはずなのに……どんどん、移動してる」 …気絶? マッドガッサーの一味と接触して、交戦状態になった? それとも、先ほどまで自分達が交戦していた鼠と? 「え?待って、気絶しているんでしょ?なのに、どうやって移動してるの?」 二人の会話を聞いていた姫さんが、疑問の声をあげる もっともだ 気を失っている、と言うのなら…どうやって、移動できると言うのだ 「……誰かに、担がれて、連れて行かれてる」 「-------っ」 それは マッドガッサーの一味に、捕まった可能性が、高い 早く、助けに行かなければ 「どこに移動しているかわかりますか?」 「外に出てる。多分、ここの窓から出て追いかけるのが早い」 位置は、はないちもんめの少女が把握できる ならば……追える! 「すみません、私たちは、家族を救助に向かいます…あなたたちが、マッドガッサー達を止める事を優先なさるのでしたら、別行動です」 姫さん達に向き直り、黒服はそう告げた 後悔が、黒服を支配する どうして、もっと早く辿り着けなかった どうして、もっと早く、あの子と合流できなかった 後悔していても、仕方ない 状況がそのように動いてしまったのなら、自分はあの子を救うだけだ 自分などと契約してくれた、あの青年を 自分は、なんとしてでも救わなければならない 「…………」 黒服は、気づいていない はないちもんめの少女が…「日焼けマシン」の契約者を連れ去っている、その気配の正体に わずかに、気づいているかのような様子を、見せている事に to be … ? 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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街中を駆ける、ヘンリエッタとG-No.1 都市伝説の気配を探りながら進むのだが…コーク・ロア契約者は、まだ見つからない 代わりに、悪魔の囁き憑きの被害者が次々と見付かり、見つけては、暴れるそれを取り押さえる作業に追われていた 「むぅ………やはり、表を動き回ってはおらぬのだろうか。どこかの建物の中にでもおるか…?」 ぐしゃ、と被害者の体内から排出した悪魔の囁きを踏み潰しつつ、呟くヘンリエッタ と、なると、建物内の気配に集中しなければならない ……しかし、この騒ぎに感づき、隠れている契約者や都市伝説、と言う可能性も捨てきれないのだ、建物内の気配となると そう言った者達と、無用な騒ぎは起こしたくない ………だからと言って、動かない訳には、いかないのだ 「ジェラルドよ、屋内の都市伝説の気配に集中するのじゃ」 「……了解いたしました、お嬢様」 気絶させた悪魔の囁き憑き被害者の記憶を操作していたG-No.1…ジェラルドが、立ち上がった 一定範囲内の都市伝説の気配を感知し、屋内のそれを厳選して、位置を確認していく 「ここからさほど離れていない空きビルの中に、都市伝説契約者の気配を二つ。都市伝説の気配を三つ、確認しました」 「む…多重契約者なのか、それとも、囁きに憑かれておるのか…とにかく、そこに急ぐか」 再び、駆け出す 少しでも早く、コーク・ロアの契約者達を抑えたい それがすめば、朝比奈 秀雄の元に向かっているであろう者達の手伝いもしたいのだが… しかし それを妨害するかのような気配が、二人に近づく 「…っ、お嬢様、都市伝説と契約者の気配が、こちらに接近……悪魔の囁き憑きです」 「む………接触は避けられぬか?} 「明確に我々を狙って移動しているわけではないようです。接触を避ける事も可能でしょう」 ジェラルドのその言葉に、ヘンリエッタは悩む ……自分達は、急がなければならないのだ だが、だからと言って、悪魔の囁き憑きの被害者を放っておく気にはなれない 自分達がそれを放っておけば、犠牲者が出る可能性もあるのだ 「……ジェラルド、接触を避けようとした場合、目的地到着にかかる時間に、どれほどの差が出る?」 「ほんの数分程度かと。相手と接触した方が、時間をロスします」 「………それでも…放っておく訳にはいかぬ、か。接触を避けぬ。悪魔の囁き憑き被害者と遭遇したならば、その場で払おう」 「…了解いたしました」 ヘンリエッタの言葉を受けて、警戒モードに入るジェラルド いつ、相手と遭遇しても……その瞬間に、相手がヘンリエッタに攻撃してきたとしても即座に対応できるよう、備える 気配は、どんどん近づいてきて それらしき相手の姿が見えた…その、瞬間 「----っ!!」 「ジェラルド!?」 すぱんっ、と ヘンリエッタを庇うように突き出された、ジェラルドの右腕が……その、手から肩にかけての、その中間の間接辺りで…きり飛ばされた …一瞬で、目前まで接近してきたその相手は…鎧武者 「夜彷徨う鎧武者」と言ったところか 手に握られている錆だらけのその刀で、ジェラルドの右腕を軽々、切り飛ばしたらしい 「…いい反応じゃないか」 くっく、と聞えてくる、笑い声 鎧武者の背後に若い男が現れた …こちらが、契約者か 「お前は、男を殺れ。餓鬼は俺が切る……!」 「---お嬢様!」 「……良い。契約者の相手は妾がやる。お前は都市伝説を抑えよ」 男を止めようとしたジェラルドだったが、ヘンリエッタの言葉を受け、かすかに迷いを見せながらも従う 再び切りかかろうとしてきた鎧武者に、切られた腕の断面を向けたジェラルド 直後 ダダダダダダダダダダダダダ……と、銃声音が響き渡った 男は、その銃声音を気にする様子なく、ジェラルドの横を駆け抜け、ヘンリエッタに向かって突進していた その手には、何時の間にか鎧武者が手にしているのと、全く同じ刀が握られていて ひゅん、と振り下ろされる刃が、ヘンリエッタに襲い掛かる 「…やれやれ、自分の契約都市伝説の心配はしないのかの?」 呆れたように呟き、刃を避けるヘンリエッタ 男は、ギラギラと狂気交じりの眼差しでヘンリエッタを見つめてきており…恐らく、ヘンリエッタの言葉は、耳に届いていない もしかしたら、断続的に続いている銃声も、聞えていないのかもしれない どろどろと、その胸元に、黒い染みが浮き出始めていた …まだ、具現化はしないか 悪魔の囁きの駆除剤でも打ち込めば、もう少しでてくるか? ヘンリエッタが思案している間にも、男は狂気の笑顔をヘンリエッタに向けてきている 「逃げるなよぉ……餓鬼の柔らかい肉を、思う存分切り刻みてぇんだよぉ……!!」 「…やれやれ、ロクでもない願望を抱えておったようじゃのぅ…」 ヘンリエッタは、小さくため息をついて ……その目が、赤く、光った 「……仕方ない。少々、痛い目を見てもらうかの?」 ダダダダダダダダダダ……… 銃声は、鳴り止む様子を見せない 近距離から無数の銃弾を喰らい、鎧武者の鎧がどんどん、ボロボロになっていく その隙間からは……何も「見えない」 ただ、真っ暗な闇だけが広がっていた 「………」 ジェラルドは、無言で鎧武者に攻撃を続けている 切断された、腕の断面 そこから、無数の銃弾を撃ち放ち続けていた …よく見れば、その断面からは、何か、糸のようなものが数本、垂れ下がっている そして、断面の中央からは、銃口が僅かに顔を見せていた G-No.1 人間としての名前は、ジェラルド・グライリッヒ 彼は、主であるヘンリエッタに、絶対の忠誠を誓っている それは、もはや狂気の沙汰と呼んでいいレベルのものだ ヘンリエッタのためならば、己の身など省みない 彼女の力になれる為ならば…己の体に手を加えることも、途惑わない 「フランケンシュタインの怪物」と呼ばれる都市伝説に飲み込まれ、怪物を使役する側から、怪物へと成り果てた時点で、その心はどこか壊れていたのかもしれない …もっとも、その「フランケンシュタインの怪物」となったがために、己の体に手を加えるなどと言う芸当が可能になっているのも事実だが …銃声が、唐突に止んだ どうやら、弾切れのようだ 鎧武者は……まだ、生きている ボロボロになりながらも、まだ、ジェラルドを切り殺そうと、刀を向けてきている どれだけ傷つこうとも、主の…契約者の命令に、従おうというのだろう そのような強い忠誠心を見せ付けられたからといって、ジェラルドは手加減をするつもりはない 一刻も早くヘンリエッタの援護に回るためにも、手を抜くわけにはいかないのだ 鎧武者が、再び刀を振るおうとする …しかし、その動きが、ぴたり、止まった 止められた 鎧武者の、腕は 何時の間にか…ジェラルドの、切り飛ばされた右手が、がっちりと捕まっていた 確かに、切り飛ばされたはずの腕は、しかし、ジェラルドの意思に従い続けている …がっしりと鎧武者を抑えている右手からは、ジェラルドの右腕の断面と同じように、糸が垂れている これが、ジェラルドの能力であると、鎧武者は気づいていない 体中つぎはぎだらけのフランケンシュタインの怪物 …つぎはぎ部分であれば、切り離されても、それはダメージになりえない 縫い直せば元に戻るし、このように切り離された状態でも、ジェラルドの意思に従って動かす事ができるのだ ……まぁ、つぎはぎ部分以外を着られたらアウトなのだが 「…そのまま、大人しくしていろ」 だん!と ジェラルドの右手が、鎧武者を組み伏せた 鎧武者はもがくが、ボロボロのその体では、右手だけすら、振り払えない ジェラルドは、鎧武者から視線を外し、ヘンリエッタの加勢に向かおうとして… 「………不味いのぅ」 そこで、見たのは 口の周りを赤く染めた、ヘンリエッタと そのヘンリエッタに踏みつけられ、首筋を赤く染めている、鎧武者の契約者 そして……ヘンリエッタの右手にしっかりと握られている、悪魔の囁き ぐしゃり ヘンリエッタは、あっけなく、悪魔の囁きを握りつぶした 「…ジェラルド、右腕を縫い直す。しばし動くな」 「………申し訳ありません、お嬢様」 悪魔の囁きが握りつぶされたことによって、鎧武者と契約者は気絶した そうじゃなくとも、ヘンリエッタに血を吸われたのだから、鎧武者の契約者はしばらく動けなかっただろうが ちくちく、ちくちく ヘンリエッタは、この場でジェラルドの切り放された右腕を縫い直していく …ジェラルドの体を縫い直す事ができるのは、ヘンリエッタだけなのだ 「良い。お前は、妾を護る為に、傷ついてしまったのじゃから。お前を治すのは、妾の役目じゃ」 きっぱりと、そう言いきるヘンリエッタ …彼女は、自分が原因で誰かが傷つく事を好まない 自分を守る事で、誰かが傷つく事を好まない 自分には、護られる価値など存在しない 彼女は、そう信じきっているから 「…これで良いか?」 「……問題ありません」 縫い直された右腕を、軽く動かすジェラルド その様子を見て、ヘンリエッタはほっとしたような表情を浮かべた 「では、行くぞ」 「はい」 再び、二人は目的地に向かう 少しでも多く、朝比奈 秀雄の牙(兵)をもぐ為に もっとも 二人が向かうその目的地には、コーク・ロアの契約者はいないのだが…二人がそれに気づくのは、目的地に付いてからの事である to be … ? 前ページ次ページ連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者
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○月×日 久しぶりに学校町に来た …そうしたら、中央高校の上空を、何か随分と大きな鳥が飛んでいるのを見かけた 多分、都市伝説だろう そして、街中を歩いていたら、白装束を来た女(なんだか、牛の刻参りでもするような格好だった)と、幽霊のような女性が、黒焦げた蝿の群れに追いかけられているのを見た どうにも、黒焦げた蝿はあんまりよくない存在っぽかったし、どう考えても都市伝説だったし、問題ないだろう あれで、あの二人も助かっただろうし、いいじゃないか …と、言うか、さ 中央高校の上空を飛んでた鳥が、何時の間にかロボットっぽいのと大バトルを繰り広げていたり その周りを、何か筋肉っぽいのが飛んでいるのは何なのだろうか あれも都市伝説なのか? …相変わらず、この街は都市伝説が多い 多すぎると言っていいくらいだ しばらくの間学校町を離れていて、それを実感する …翼は、無事だろうか? 何か都市伝説に襲われていたりしないだろうか? と、言うか 明らかに、中央高校で何か起きている最中な訳で まさか、巻き込まれてないだろうね? (ここから数ヶ月、記述がない) ▲月□日 昨日から、雪がちらつきだした これは、ちょっとつもるかもしれない それにしても、学校町に来て軽く二ヶ月くらいたつのだが、翼の姿が見つからない バイト先はほぼ全部見つけてチェックしているつもりなんだが…姿をまったく見かけない まぁ、あの子は厨房の方にいる事が多いみたいだけれども それでも、一切、姿を見る事ができないだなんて やはり、私は避けられているようだ 当たり前といえば、当たり前ではあるのだが しかし、ここまで徹底されると、ちょっと傷つく どうしても、私と顔を合わせたくないというのか …一応、あの子と一緒に歩いている姿を目撃されたちみっこにも声をかけてみたけど、知らないと言われた 今思えば、本当にあのちみっこは、翼を知らなかったのだろうか? …もしかして、知っていたのに、答えなかった? いや、まさかねぇ ちみっこってのは、純粋な心を持っているはずだろう? 私は、それを信じたい (ここから一ヶ月近く、記述がない) ◇月●日 久しぶりに、あの黒服と顔を会わせた 初めて、その姿を見た時から、全く姿の変わっていない、黒服と …今、ようやく気づいた あの黒服、人間ではなかったのだ あの黒服なら、きっと、翼の居所を知っている そう思ってたずねてみたが、答えてはもらえなかった きっと…いや、確実に あの黒服は、翼の居所を知っていたはずだ 私は、翼の母親なのに…それでも、教えてはもらえない いや 「……あなたは、母親の義務を全うしていたでしょうか?…あなたに、あの子の母親を名乗る資格があると?」 そう、黒服に言われた その通りだ 私には、翼の母親を名乗る資格なんて、ない …だが、それでも 翼に会いたいのだ あの子が、何か厄介事に巻き込まれそうな気がして、心配なのだ 嫌な予感がする 早く、翼の無事を確認したい (ここから二ヶ月近く、記述がない) ◎月△日 また、あの黒服と顔を合わせた 黒服の対応から見て…黒服も、私を嫌っているようだ それは、そうだろう 私は、翼に散々嫌われているし、翼の友人の誠君にも、あまりいい印象をもたれていない この黒服にだって、嫌われる条件は整っている …それは、わかっているさ わかっている、けどさ どうして、素直に事情話して、翼の居所を聞けなかったんだ、私は!? 話せばいいじゃないか 翼に謝りたいのだと 母親として、認めてもらえなくてもいい ただ、会って、謝りたいのだと…どうして、言えなかったのだろう どうにも、あの黒服と顔を合わせると、張り合ってしまう 翼に、きっと、父親のように思われているだろうあの黒服が、羨ましくて 「…あの子は…私の、家族ですから」 なんて、言われたら 余計、悔しいじゃないのさ 私は、翼に家族として認めてもらえていないのに…血が繋がっていないあいつが、認めてもらえるだんなんて …だとしても、ちょっとは素直になって聞き出せば良かった 翼に早く会いたい、謝りたい to be … ? 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
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西区にほど近い、廃棄された製薬会社。 黒服に指定されたその場所に着いた。 錆びついた看板や窓枠の外された外観が不気味な印象を与えてくる。 「なんだか、嫌な雰囲気の場所だね…」 「そう、だね… でも、紗江ちゃんは私が護るから!」 『都市伝説の気配が致すな…お二人共、用心下され』 アンサーが呟いた。 「お待ちしていましたよ」 建物の入り口から、担当の黒服が姿を現した。 「「…黒服さん?」」 「おや、私が現場にいる事がそんなに不思議ですか…?契約者を担当している黒服も、現場に出る事はありますよ…こちらです」 黒服について、建物内部に入る。 階段を下りて、地下室の、同じような作りの部屋がいくつも並ぶ長い廊下を歩きながら黒服が話す。 「今回の任務ですが…とある都市伝説を救って頂きたいのです」 「都市伝説を…救う?」 「ええ。都市伝説は、忘れられると消滅します。存在を保つには、一人でも多くの人間に存在を知ってもらわなければなりません…貴女方には、この場所にいる都市伝説の存在を保つための手伝いをしていただきたいのです」 どうやら今回の任務はとある都市伝説を救う事らしいが…担当の黒服の不穏な情報の事もあり、その言葉を信じきる事が出来ないでいた。 「……あの、黒服さん…以前お伺いした件なんですが…」 ここで聴き逃したらチャンスが無いような気がして、意を決して、紗江が尋ねる。 廊下の突き当たりの扉を開けながら黒服が呟いた。 「ああ…担当の黒服を変えられるか、という話ですね。その件でしたら、特殊な事情があれば変えられますよ」 あっさりと返ってきた肯定を、喜ぶべきか迷った。 促されて、部屋に入った姉妹。黒服は自分も部屋に入った後、扉を閉めた。 広めの部屋には、二人の黒服がいた。一人は、部屋の中心にビデオカメラを設置している。 もう一人はビデオカメラの近くの床の上に、鉈、鋸、鋏、金属バット等を置いている。 「ぅ…………!」 明らかに異様な光景。そして、部屋の中には猛烈な血の匂いが充満していた。思わず、口元を押さえる。 ふと、部屋の隅に無造作に転がっているものが目に入った。 ―家を出るまで生きて話をしていた、姉妹の、両親の死体だった。 「――――――!!」 「ぁ……うあ……!」 悲鳴を上げたはずだったのに、口からは途切れ途切れの言葉しか出てこなかった。 紗江が、紗奈に死体を見せないように、庇うように前に出た。 両親の死体は、巨大な獣にでも食われたかのように所々食い荒らされていて、腹部に至ってはその中身がこぼれ出ていた。本来は射殺されているのだが、その傷口のあった周辺も食われていた。 「ああ…救って頂きたい都市伝説は『スナッフフィルム』といいます。娯楽用に流通させる目的で行われた、実際には存在しないといわれている殺人ビデオの事です。 なにしろ、存在しないといわれているだけあって、個体数がなかなか確認できていないので… 『スナッフフィルム』が学校町中に広まれば、面白い事になるでしょうからねぇ… ご両親ですが…娘が死ぬのに、親だけ残しては可哀そうですからねぇ…先にあちらに送って差し上げました」 姉妹の前に立って、笑みを浮かべながら話す、A-No.666。 …それは、ある意味で実験材料と呼べるものだったのかもしれない。 ―そんなことの為に、両親を殺したのか 「――貴方っ…!」 言葉が途切れた。いつのまにか傍に来ていた、凶器を並べていた黒服に髪を掴まれて横倒しにされ、仰向けに転がされた。紗江ちゃん!と自分の名を呼ぶ紗奈の声と、床と擦れる背に感じる痛みにも似た摩擦熱と、髪を引っ張られる痛みを感じながら、そのまま部屋の奥までずるずると引きずられていく。 紗江が引きずられていくのを見て、助けようと反射的に上着のポケットから携帯を取り出した。 直後、担当の黒服に携帯を奪い取られた。 「全く…助けを求めるにしろ、都市伝説の能力を使うにしろ、私を忘れてもらっては困りますねぇ…」 そういいながら、無造作に携帯を開くと、ばきり、と真ん中から二つにへし折った。 携帯の残骸を床に落とし、紗奈の腕を掴むと、部屋の真ん中―ビデオカメラの前に引きずって行き、勢いよく突き飛ばした。 ビデオカメラを設置していた黒服が、カメラを回し始める。 ―― 部屋の奥まで引きずられ、ようやく黒服が止まった。 起き上がろうとしたら、三、四回ほど顔を殴られた。 黒服が、懐から何かを取り出した。カチャリ、という金属音。パン、という乾いた音と、脚に激痛を感じた。 思わず目を向けると、脚が赤く染まっていた。 黒服が手にしている拳銃から、硝煙が上がっていた。 黒服は拳銃をしまうと傍にあった金属バットを、紗江の左腕に叩きつけた。 二の腕が赤黒く変色し、曲がるべきではない方向に曲がった。 「……………!!」 声も出ないほどの激痛とおぞましい感覚に、額に嫌な汗が浮かんだ。 そうして、首を絞められた。 ぎりぎりと爪が食い込んで、痛い。息が出来ない。苦しい。 少しずつ周囲の音が遠くなっていく中、紗奈の悲鳴が聞こえた。 (紗奈ちゃん……!?) もがいた右手に、何かが触れた。 それ――小振りの斧を掴んで、黒服の頭に思い切り叩きつけた。生暖かい返り血を浴びた。 首を絞めていた手が外れ、血をまき散らし、斧を頭から生やしたまま、黒服が真横に倒れこんで、動かなくなった。 げほげほと咳き込み、激痛に堪えながら壁を支えにして上体を起こす。 (紗奈ちゃんは―――!?) 視界に、血塗れの紗奈にのしかかった担当の黒服の姿と、三つ首の大きな獣の首の一つが紗奈の脇腹に食らいついているのが見えた。 あの獣が、どこから出てきたかなんてどうでもいい。両親と最愛の妹を害した。それだけ分かれば十分だ。早く殺して、紗奈が手遅れになる前に救急車を呼ばないと。 一人になりたくない、紗奈を失いたくない。 紗江の憎悪に引きずられて犬神が徐々に数を増していくが、その姿は蜃気楼のように揺らいでいて、酷く不安定だった。 紗江は、犬神の数が増える度に、自分が自分で無くなっていくのを感じていた。 (………私はどうなってもいい。紗奈ちゃんだけは、絶対に助ける) 担当の黒服を睨みながら、行って、と犬神達に指示を出す。どうにか形を保っている二十から三十匹ほどの犬神の群れが担当の黒服と、その後ろでビデオを回している黒服に向かっていく。 ――― 両親が無残な姿になっていた。巻き込まれて、死んでしまった。 携帯電話を壊された。 一応、アンサーとの繋がりは感じ取れるものの、都市伝説の能力も使えないし、天地達に助けを求める事も出来ない。 (――どうしよう…どうしよう…!) 腕を掴まれてビデオカメラの前まで連れて行かれ、突き飛ばされた。焦りと恐怖と混乱で半ばパニックになっていた紗奈の視界に、担当の黒服の姿が映った。 ――担当の黒服がサバイバルナイフを振り上げていて、がつっ、と左の掌を貫通して床に突き刺さった。 「――うぁ……!?」 黒服は、床に置いてある凶器の中から小刀を選ぶと、紗奈にのしかかり、右目に小刀を近付けて――ぶつ、と上瞼に突き刺した。 「――あああああああああああああああああああああああああああ!」 ――痛い!痛い! 絶叫を上げた。視界が真っ赤に染まった。 刃ががりがりと瞼の肉を削ぎ、眼窩の骨を削り、神経を寸断しながら何度も何度も抜き差しを繰り返して右目を蹂躙して行く。 自由になっている右手で必死になって小刀を持った腕を引き剥がそうとするも、少女の力では引き剥がせず、ただ縫いとめられた左手の傷を広げていくだけだった。 右目が痛みの坩堝と化していた。涙なのか血液なのかも分からない、熱い液体が頬を濡らしていく。 永遠のようにも、一瞬にも感じた蹂躙が終わりを告げた。 やがて、ごぼ、と濡れた音をさせて、眼球が掘り出された。瞼の裏に、空気が入り込んだ。頬を伝い、眼球は、血の跡を引きながら床に転がり落ちて行った。 朦朧とする意識のなか、涙でぼやけた左目の視界に大きな獣の姿が映った。 直後、脇腹に熱さと苦痛を感じて、一瞬、息が止まった。 呼吸をする度に、脇腹の傷が、絞られる様に痛む。 (…紗江ちゃん、ごめんね…護るっていったのに……) 溢れ出る血液が、体温を奪っていく。 (私…紗江ちゃんに…何にも言えてない……ちゃんと…伝えておけば、良かった…) 紗江への想いを自覚したものの、嫌われたくなくて伝えられなかった事を後悔しながら意識を失った。 閉じられた左目から、一条の涙が零れ落ちた。 「おや…この程度で気を失うとは情けない。もっと楽しませて貰いたかったのですが… ケルベロス、出てきてしまったんですか。仕方ありませんねぇ…」 A-No.666は、血の匂いに反応して出てきたケルベロスに、やれやれ、と肩をすくめた。 首の一つは、紗奈の脇腹に食らいついている。 (都市伝説の存在を一般人に知らせる訳にも行きませんし……このテープは、過激派への土産にでもしましょうか) 「次は……ハラワタでも、引きずり出してみましょうかねぇ」 『グルァァ!』 犬の咆哮が聞こえ、目を向けると二十から三十匹ほどの犬神が、群れとなってこちらに向かってきていた。 「ひっ………!」 後ろでビデオを回している黒服が、引き攣った声を上げた。 だが、A-No.666に焦りは無い。 直後、ケルベロスの二つの頭が、ごう、と口から炎を吐いて、こちらに向かってきていた犬神の群れを一掃した。 『ギャッ!』と、犬神の断末魔が上がり、灰も残さず消滅した。 炎が消えた後、残ったのは床の焦げ跡と、血に染まり、荒い息を吐きながらこちらを睨み据えている紗江の姿だった。彼女の周囲に何十匹もの犬神がいたが、それらは蜃気楼のように揺らいでいて、酷く不安定だった。 能力に、器の方が追い付いていないだろうことは一目で分かった。 都市伝説に、飲まれかけている状態。放っておいても勝手に自滅する。 何より、ケルベロスの炎に耐えられるものなどいない。 己の絶対な優位を疑わず、A-No.666は笑みを浮かべた。 続く…?
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イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ 例えば、どこかの樹海。 例えば、どこかの海岸。 例えば、どこかの踏切。 自殺の名所と呼ばれる場所。 イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ そんな場所にまつわる、ありふれた都市伝説。自殺者が地縛霊となり人を引きずり込む。 本当にその場所で死人がでたのか。そんな事は関係ない。その都市伝説は既に広まっているのだから。 イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ イキタイ どこからが自殺者で、どこからが被害者か。そして、どこからが本当に生きていた人なのか。 そんな区別も無く、彼等はその場所に縛られ続ける。 終わらない苦痛。 イキタイ イキタイ イキタイ そして、その苦痛から逃れようと、彼等は今日も助けを求め、手をのばす。 逝きたい 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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《ちっ……まだ使える都市伝説があったのか》 「その“使える”って意味によるけどな 使用できる都市伝説ならこの通り、今の時点では俺の切り札だ 便利な都市伝説は残念ながら手元に無い」 『そんな言い草は無いだろう? まぁ、君のような単細胞契約者は一生かかっても僕を使いこなせないだろうがね』 「何だとぉ!? 人殺ししか脳に無いお前よりは遥かにマシだろうが!!」 「け、喧嘩は止めなよ!」 喧嘩とは言え、傍から見れば剣に向かって裂邪が一方的に八つ当たりしているようにしか見えない それに、一見すると黄金の柄の剣が口を聞いているように思えるが、実際は剣にとり憑いている紫の霊魂だ 「ティルヴィング」、「憑依霊」、「エルクレスの塔」、「ヴァルプルギスの夜」、そして「神出鬼没」 5つの都市伝説に飲まれた元人間である、裂邪の6つ目の都市伝説―――ナユタ 元々は人から人へ憑依して回り、他人の命を奪って愉しんでいた姿無き快楽殺人鬼だったが、 それを止める為に裂邪が強制的に仮契約を行った為、このような現状になっているのだ 《だが何を使えようが関係ない、俺は並行世界をも支配する男だ! 例え別世界の俺だろうと、たった1人の契約者が止められる訳がない!!》 周囲の小型UFOが砲撃の準備を開始する その数、凡そ20機ほど 「……おい殺人鬼、ここは一時休戦と行こうぜ」 『本当は即刻取り下げたいところだが…仮契約だか何だが知らないが、それでも君との繋がりは深いらしい 君に死なれると僕が消える……それだけは避けたいからね』 裂邪が「ティルヴィング」を前方に構える きらり、と切っ先が光を反射して輝いた 『言っておくが、足手纏いにはならないでくれたまえ』 「お互い様だろ馬鹿野郎……行くぞ、ナユタ!」 『…仰せのままに』 《撃てぇ!!》 UFOから、裂邪に向けてレーザーが一斉に発射される それらは全て彼に被弾した――――と思いきや、逆に放射状にレーザーが放たれ、20機のUFOが撃墜された 《何っ!? どういう事だ!?》 「ヒハハハハハハ! 「エルクレスの塔」は光を反射して敵軍を焼き払った「アレクサンドリアの大灯台」の縮小型だ! だったらもう分かるよな? レーザーも光だろ!?」 《こ、小癪な……余り目立つ事はしたくなかったが、構わん! 全軍、黄昏裂邪を撃ち殺せ―――――》 命令されたと同時に、傍のUFOが両断され、爆音と共に木っ端微塵になった 何事か、と軍服裂邪が確認しようとした次の瞬間に1機、また1機と墜ちてゆく 《ええい、今度は何が――――――ッ!?》 彼はそこでようやく気付いた 先程まで地上にいた筈だった裂邪が、そこにいなかったのだ では、何処に行ったのか? 何気なく視線をやった先に、彼はいた 今まさに、小型UFOを真っ二つにせんとしている あ、と言う間もなく断ち斬ると、その瞬間に彼の姿が消える 「神出鬼没」による、擬似的なテレポーテーションだ 《消えた……!? 違う能力か!?》 《レーダーニ反応アリ。敵ハ303号機ニ乗ッテイマス》 《ちっ、550号機、753号機! 奴を303号機ごと撃て!!》 《《了解》》 指示通り、2機のUFOから再びレーザーが放たれる しかしその真っ直ぐ伸びる光条は、紫色に怪しく燃え上がる炎によって掻き消された 邪念の篭った攻撃を容赦なく祓う「ヴァルプルギスの夜」である 「あーぁ…良い具合にチートだよな、お前」 『素直に喜びたまえよ、今は君の力なのだから』 「ティルヴィング」を振り下ろし、UFOを撃墜すると、瞬間移動して先の2機も分断し、 飛んできたレーザーを全て跳ね返して確実に撃ち落とす 気がつけば、飛んでいるUFOは母艦だけだった 「ウヒヒヒヒ…おーい、世界の支配者さんよーぃ まさかこれで終わりとは言わねぇよなぁ?」 《……成程、腕は確かなようだ。ならこれはどうだ?》 母艦から謎の光が伸び、不気味な影が降り立った 全身は緑、脚は2本だが、鋭い爪を持った腕が6本あり、先端が棍棒になっている尻尾も2本伸びている 珍しく翼は生えてなく、代わりに胸部には赤く輝く結晶体が埋め込まれていた 目は左右に4つずつ、口はX字に裂けており、滴る涎がアスファルトを溶かす 「ジ・ジ・ゼ・ジ・ゾ……」 《今度はその「ミュータント」が相手だ》 「わお、これどこの三流RPGよ、何故か血が騒ぐぜ」 『子供かね君は』 「男はずっと子供なんだよ、馬鹿みたいに大人びるからあんなことになるんだ」 呟きながらも「ミュータント」の地面を穿つ攻撃はしっかりと回避する と言うより、本人が意識せずに、勝手に身体が動き出していた 「……おい、契約者には憑依できないんじゃなかったのか?」 『さぁね、仮とはいえ、契約したお陰じゃないかな?』 ナユタの本体は「憑依霊」だ 過去には契約者や都市伝説には憑依できず、一般人に憑依して戦闘を行っていたが、 どうやら今は裂邪に憑依できるらしく、彼の身体能力を底上げしているようだ 『ま、憑依してはいるが、君の意識が残っているのはちょっとショックだよ』 「ざまぁみろ、好き勝手にゃさせねぇよ!」 尻尾の棍棒を「ティルヴィング」で弾き返し、爪による斬撃を「ヴァルプルギスの夜」で無力化する 「神出鬼没」で背後に周り、背中から襲いかかる すぐに気付いた「ミュータント」も尻尾で応戦し、何とか背中の一撃は免れたものの、 その代償として尻尾の先が、鮮血を散らして空に舞う 小さくガッツポーズを決める裂邪だったが、体液を飛び散らせて再生した尻尾を見て萎える 「やっぱ再生すんのか…厄介な」 『再生しないように細かく斬り刻むか、焼くしかないようだ』 「殺しに関しては天才だな、お前」 次の瞬間、「ミュータント」の胸部の水晶体から、赤い光線が放たれる またレーザーかよ、と文句を垂れて「ティルヴィング」の切っ先を向け、「エルクレスの塔」の能力で光線を跳ね返す 光は水晶体もろとも焼き焦がし、「ミュータント」の身体に風穴が空く 咆哮を上げ、「ミュータント」は一瞬怯んだ 「っし、ナユタ、数撃手伝え!」 『言われなくともそのつもりだ』 裂邪は居合の構えで「ミュータント」に飛びかかる すれ違いざまに目にも止まらぬスピードで剣を振り、軽やかに地に足を付けた ぼと、ぼとぼと、と化け物は細切れになり、溶けて消えて無くなった 「………す、すごい……あんな化け物を、一瞬で……!」 路地裏から戦いを見ていた少女裂邪は、密かに感動を覚えていた 同時に、腹の底から湧き起こるようなとてつもない感情に、徐々に気付きつつあった 「ヒハハハハハハハ、そ~ら、もう終わりか? 何だったら遠慮なくその無駄にデカい船をぶっ壊させて貰うぞ!」 意気込む裂邪だったが、実は少しばかり体力の限界が近づいていた 殆どナユタの憑依による自動操縦状態だったが、裂邪は運動嫌いで且つ体力は同年齢の平均以下 UFOからUFOへと飛び回っていれば、その減り具合も納得である 《……ふん、安心しろ、まだ用意してある》 再び怪しげな光が出現し、先程の「ミュータント」が現れた ここまでは同じだが、問題はその数である 全部で、5体……流石の裂邪も、顔に出してしまう程の多さである 『もう体力切れか? 全く、よく多重契約なんて出来たものだ、呆れを通り越して…やはり呆れるね』 「どうも有難う、それよりまずいぞ、何とかしたいが……ん?」 目の前には、水晶体にエネルギーを溜める6体の「ミュータント」 恐らくこの後、先程のように胸から光線を出すのだろう 裂邪はポケットからスマホを取り出し時間を確認した後、空を見上げ、にやりと笑った 「問題です、雲の上には何がある?」 『は?』 「あぁ全く常識問題だ、答えは太陽 あの雲さえ退ければ、太陽が見られる訳だ」 『それがどうした――――――――あぁ、そういう事か』 5体の「ミュータント」が同時に光線を発射する 一つになって巨大化した光線を、裂邪は「ティルヴィング」の切っ先で天に向けて反射させた 《血迷ったか、何処を狙っている?》 「見りゃわかるだろ、雲だよ! そして、俺が狙ってるのは、その先に在る希望だ!」 反射した光線は雲を貫き、空に巨大な穴を開ける その穴から、眩い光を放つ神の目玉が、ぎょろりと覗いた 町中が、光に包まれる 町に、そして裂邪の背に、“影”が生まれる 「…ッヒヒ、やっぱ用意が良いな……来い!シェイド!ミナワ!理夢!ウィル!」 「了解シタ」 「はい、ご主人様!」 「OKィ!」 「がってんでい!」 裂邪の影から、黒いローブを纏った人影、青い髪の少女、白い毛並みの獣、赤い人魂が次々と飛び出した 「シャドーマン」のシェイド 「シャボン玉」のミナワ 「獏」の理夢 「鬼火」のウィル 全て、裂邪の契約都市伝説 これまで彼を支えてきた、仲間であり―――家族 《ッバカな!? 一体幾つと契約しているんだ!?》 「都市伝説が……4つも増えた!?」 驚愕する2人の裂邪だったが、この光景はもはやお馴染みなので当の裂邪も半笑いである 「お前ら、状況は分かってるな?」 「全テ影ノ中デ見テイタ……ソコノ少女ノ事モナ」 「もぉ、厄介事に巻き込まれすぎですよ、ご主人様は」 「ついこの間まで誰かと入れ替わってたテメェが言う事かよ?」 「違ぇねぇ、結局は『都市伝説は引かれ合う』って奴でい!」 『のんびり話している暇があるなら前を見たまえ、来るぞ』 「ミュータント」が爪を立て涎を垂らし、ゆっくりと前進してくる ふん、と裂邪は鼻で笑うと、右手を前に差し出した 「まずは奴らの撃破……戦闘開始だ!」 ぱちんっ、という指の音と共に、彼等は一斉に行動を開始した ...To be Continued 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影