約 3,263,717 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2515.html
夜の空を魔女が飛ぶ 箒にまたがる魔女一人 街を見下ろし、飛び回る 「ひっひ……相変わらず、夜もきらびやかだねぇ?」 繁華街の上空を飛びながら、魔女は1人、そう呟く 北区などはそうでもないが、この繁華街の辺りは、夜でもきらびやかで、まるで昼間のように明るく感じる …人間は文明を発達させ、夜を恐れなくなった 夜の暗闇を作り出した光で照らし、恐れなくなっていった 本当に、恐れていない? それは違う、と魔女は思う 本当に恐れていないのならば…都市伝説は、生まれやしない 人間が本能的に闇を恐れるからこそ、都市伝説は生まれ続ける 少なくとも、魔女の一撃たる彼女はそう考えていた だからこそ、夜の明るい街の上空を飛ぶのが楽しいのだ …畏怖すべき対象から目を逸らし、明るさを保つ事でそれを忘れようとしているその様子が、滑稽で仕方なくて それでも、適当に飛んで見下ろしたら、後はすぐに帰るだけだ 目撃されても面倒である ………ただ この日は、いつもと違った 迫ってきた気配に、感じた悪寒 急浮上し、超スピードで接近してきたそれを避けた まるで、竜のような巨大な生き物が、一瞬前まで魔女が飛んでいた場所を通過していく その尻尾の先では、ちろちろと赤い炎が燃えていた 「ひっひっひ……話に聞いている、カイザーとか言う都市伝説かい!」 ぐぉおおおおおおおおん!! 魔女の言葉に答えるように、竜……カイザーが吼えた 背中には、誰も乗せていない だが、カイザーの契約者は、恐らくこちらが見えている位置にいるだろう、と魔女は推理した どうやら、契約者が指示を出す必要がある都市伝説であるらしいから、相手がこちらを見えていなければ意味がない …もっとも、カイザーと契約者が視覚を共用できると言うのなら、別なのだが… おぉおおおおおん!! カイザーが吼える その口の中で、ちろちろと炎が燃えていた 「…っひっひっひぃ!まともに戦っても勝ち目はなさそうだねぇ?」 ならば まともに戦わないに、限る 魔女は、懐から小さな子瓶を取り出すと、カイザーに向かって投げつけた 炎が吐かれる直前にカイザーに当たった小瓶は、ぱりん、と割れて薬品をカイザーにぶちまける ぐぉおん!? 途惑った鳴き声をあげるカイザー 体の自由が利かなくなったのだろう、飛び方がおかしくなる 魔女が投げつけたのは、麻痺薬だ しばし、体が痺れてうまく動けない事だろう ……うっかり、地上に落ちたらどうするのか? まぁ、その時はその時だ 多分大丈夫だろう、多分 万が一の時は、「組織」がどうにかするだろうし そう、他人事のように考えながら、魔女はさっさと逃走しようとした …………しかし ぐぉおおおおおん!!と再び聞こえてきた咆哮 直後、魔女を灼熱の炎が掠った 「おぉっと!?………もう、回復したってのかい!?」 見れば、カイザーは既に体の自由を取り戻していた …おかしい いくらなんでも、早すぎる ぎらり、爪を剥き出しにして、飛び掛ってくるカイザー ひらり、ひらり アクロバティックに飛び回りながら、魔女はそれを避けて…再び、麻痺薬を投擲した ばりん!と小瓶がくだけ、薬がカイザーを襲う 再び、体の自由を奪われたカイザーだったが… …ぴろんっ♪と どこからか、電子音のような音が、響いた様な気がした どこからか現れた、小さな薬瓶 その中身が、カイザーの口に注がれて 次の瞬間、カイザーは体の自由を取り戻す!! 「っちぃ!!…ゲーム系の都市伝説、とか言ってたねぇ。まさか、ゲーム自体と連動しているのかい!?」 ゲームから生まれた都市伝説 もし、その本体が、ゲームの中に存在するとしたら? 傷ついても、毒や麻痺を喰らおうとも …ゲームの中でアイテムを使えば、回復する? 「冗談じゃないよっ!?」 ますます、自分では歯が立たない 魔女は、何とか逃げ道を確保しようとするのだが、カイザーは執拗に魔女に襲い掛かってくる 契約者を探すのだが…どこにいるのか、わからない 恐らく、繁華街のどこかのビルの屋上辺りから見ているのだろうとは思うのだが… どうする? 仲間に助けを求めるか? だが、空中にいる自分を助けられる仲間など… ………いや 「…ひっひ。いいタイミングで来てくれたねぇ?」 空が、曇りだす 雲一つなかった夜空が、暗雲で埋め尽くされていく ばちっ、ばちっ、と その雲の中で…かすかに、雷が光った 「----サンダーバード!!」 魔女の一撃の呼びかけに、答えるように カイザーに向かって、特大の雷が落とされた ばちばちと、雷がカイザーの体を焼いた 雄叫びを上げて、カイザーはビルに向かって落下していく 「……っとと!?」 雷の衝撃は、あまりにも大きくて その衝撃破に、魔女の体も吹き飛ばされた 慌てて、体勢を整える 「---っぶな……ひっひ、でも、助かったよ」 空を見上げて礼を言うと、ごろごろと雷が鳴った …とりあえず、助かったようである ほっと、息を吐いた 「わたしゃ、ただ空を飛んでいただけなのにねぇ?………問答無用とは酷い相手だよ、まったく」 ……とまれ 相手が、想像以上に厄介らしい事はわかった 恐らく、サンダーバードの雷で焼かれたとは言え……また、復活してくるだろう 魔女の一撃は、さっさと教会まで逃げ帰る事にしたのだった そして 魔女の一撃の予想は、当たっていた 「げんきのかけら」 ぴろんっ♪ 「まんたんのくすり」 ぴろろんっ♪ 黒焦げになったカイザーだったが…契約者たる竜宮がゲーム内でカイザーにアイテムを使っていくと、それに連動するように、カイザーの傷が癒えていく あっと言う間に、元の姿に戻る 「ドラゴンタイプも持ってるから、でんきタイプの攻撃にも強いんだけどなぁ……うーん、もっと気をつけないと駄目だね」 ぴこぴこ、旧式のゲームボーイを弄り、カイザーのステータスを見ながら、竜宮は考え込む 「「そらをとぶ」は秘伝技だから忘れられないとして…んー、「かえんほうしゃ」「きりさく」「はかいこうせん」じゃなくて、技を入れ替えてみようかな…?」 むむむ、と少年は1人 己の契約都市伝説の技の選択に、悩むのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4648.html
目の前の液体を手ですくい、飲んでみる。 まずい。鉄っぽい味がする。喉に絡んで気持ち悪い。 殺人鬼の中にはコレを飲んでいた人間もいたらしいが、よくもまあこんな物を飲めたものだ。 さて、目の前に横たわるこの死体。どうしようか。 学校帰りに近道に通った路地裏で見つけた女性。 ん?下半身が切り裂かれてるな。 「強姦の証拠隠滅か、趣味で持ち帰ったのか……」 「それはそういうモノなんだよ」 背後から声をかけられた。 振り返るとコート姿の外国人。手にナイフ。返り血。 「なんだ、切り裂きジャックか。」 「なんだ、とは失礼だねぇ。と、言うより君は怖く無いのかい?」 「何が?」 「何が、って……私はその女性を殺した犯人で、都市伝説だよ?」 「あぁ、そんな事ですか。そういう血筋なんで」 「……?」 「な、何してんだお前ら!?」 「んぅ?」「おや?」 声の方を向くと、ふむ、中学生ぐらい、僕と同じぐらいの男の子。それと手を繋いでいる小学生ぐらいの女の子、あれは花子さんだな、たぶん。 「そ、そこの男、都市伝説だな!お前らがその人を殺したのか!?」 少年が死体の女性を指差しながら叫ぶ。 んー。んー? 「あれ?お前ら、って事は僕も犯人扱い?なんで?」 「……先程から気になっていたのだが、何故君の口のまわりは血まみれなんだい?」 ジャックが話しかけてくる。 「さっき血を飲んだから。」 「……何故」 「どんな味か試してみたくて」 「理解に苦しむ」 切り裂きジャックにそんな事言われるとは思わなかった。純粋な探究心なんだから、こっちの方が断然健全だと思うんだが。 でも確かに、手も血まみれだし、学ランにも血ついてるし。ジャックと並んだら仲間と思われるか。 「お前らが殺したのかって聞いてんだよ!!」 んー、さっきから「あなたさっきから五月蝿いですね。」 おや、ジャックと意見が一致した。 不意にジャックが走りだす。 「え?うわっ!?」 少年を蹴り飛ばすジャック。都市伝説の力で蹴られた少年は数メートル地面を転がり、うめく。 その間にジャックは都市伝説の方、花子さんを一瞬で地面に捩伏せ、 その首に、朱く煌めくナイフを振り下ろ 「ストップ、ジャック!!」 花子さんの首にナイフが刺さる寸前でジャックの手が止まる。 「何ですか?君は私の契約者ではないんですから、命令する権利はありませんよ。」 「ちょっと試したい事があって。その子を殺せなかったら僕を殺して良いから。」 「…………数分だけ待ちましょう。」 「ありがと。さて少年」 ジャックの蹴りの痛みがやっとひいたのか、起き上がりだした男の子に声をかける。 「花子さんを殺した後、君は死ぬ。」 「な!」 男の子が驚いたような声をだす。 「でも、チャンスをあげよう。」 「チ、チャンス?」 男の子から目を逸らさず鞄から手探りでアレを取り出す。 「ここに拳銃がある。」 黒光りするソレを男の子に向ける。 「僕が五秒数える。そして撃つ。その五秒の間に君に与えられた選択肢は二つ。 逃げるか、撃たれるか。」 男の子が怪訝な顔をする。ふむ、まだ理解できていないらしい。できの悪い子だ。 「つまり、そこの君が契約している花子さんを見捨てて逃げるか。僕に一発撃たれる覚悟でこの銃を取りにくるかって事だよ。 僕から銃を奪えば、そこの花子さんを押さえ付けている都市伝説を撃てばいい。都市伝説だって撃たれたら無事じゃすまないだろう。隙をついて花子さんと逃げればいい。 僕は君の心臓を狙うから、君は死ぬかもしれないけどね。」 逃げれば、確実に花子さんは死に、自分は助かる。 逃げなければ、高確率で自分は死に、花子さんが絶対に助かる保証はない。が、もしかすると、二人とも助かる可能性もある。 「さて、君はどうするかな?」 男の子が震えながら、花子さんの方を見る。 「おに……ちゃ、たすけ……」 男の子の視線に気づき花子さんが助けを求める。 花子さん、あんなに涙目になって………… まるで本当に生きているみたいじゃないか。 「ああ、そうだ少年。」 僕の呼びかけに男の子がこちらに顔をむける。 「君は漫画でしか見た事ないだろうけど、本物の銃で撃たれたら、さっきの蹴りの数倍は痛いよ?」 僕の言葉に、ジャックの蹴りを思いだしたのか、男の子の顔が青くなる。 「さて少年、心は決まったかな?」 そして、五秒を数えた。 「私は君と契約しようと思うのだが。君、名前は?」 切り裂きジャックが口を開く。 「契約?また突然だね。下の彼女はほっといて良いの?浮気はダメだよ?」 ジャックの下には花子さん。 少年は、逃げた。 「予想より早く逃げたな。まさか二秒目数えるより早いとは……」 手にした黒光りするモノを見つめる。 パンッ と、気まぐれに花子さんの顔の近くで発砲。手に伝わる軽い感触。響く安っぽい音。放たれたプラスチックの玉。 「一般人が本物の拳銃なんか持ってるはず無いのにねぇ。」 目に涙を溜め、しゃくり上げる花子さんに話しかける。 「ごめ、なさ……たす、ヒック……たすけ……て、ヒック、エグ」 あ、人の話聞いてない。 「助けを求めているぞ?マスター」 どうやらジャックの中では、契約は決定事項らしい。マスターて。 「……助けて欲しいの?」 花子さんに問う。 「ヒック……うん、グスッ」 「んふふ、じゃあジャック、『好きにして良いよ』」 「では、好きなように殺そう」 おやー、助けても良かったのにー、ジャックが殺したいなら仕方ないなー 契約する都市伝説の意見は大切にしないといけないしなー、うんー、仕方ない仕方ないー。 さて、そろそろ帰るか。 「マスター、まだ君の名前を聞いていない」 「んぁ、そだっけ?王隠堂すみれ。よろしく」 「よろしく、マスター。…………すみれ?」 ジャックが花子さんを解体しながら首をかしげる。 「あぁ、この学ランは趣味だよ」 僕は正真正銘、女である。 終
https://w.atwiki.jp/legends/pages/287.html
スパニッシュフライ ヨーロッパにおける伝統的な媚薬。 蝿の一種である。 この媚薬は、日本でのイモリの黒焼きに相当するものでらい、その有効性の真偽のほどもそれに順ずるものとなっている。 その服用法は、焼いたスパニッシュフライを粉末化し、ワインに混ぜて相手に飲ませると言う単純なものだ。 これを服用した相手は、たちまちのうちに恋の虜となって、自分に惚れてしまう……とされていた。 が、前述したように、この媚薬の有効性には疑問点がある。その最たるものが、スパニッシュフライの実在の真偽が明らかではないという点だ。 スパニッシュというからにはスペイン産の蝿だろうが、それと思われる蝿は存在しない。おそらく「陽の沈まぬ帝国」スペインが未開地で見つけた神秘の媚薬と言う触れ込みで売られていただけの、普通の蝿なのだろう。 以上、新紀元社 「魔導具辞典」のスパニッシュフライの項目から抜粋 そして!!そっから妄想した、都市伝説「スパニッシュフライ」の能力はこれだっ!! 都市伝説「スパニッシュフライ」 分類的には、イモリの黒焼きなどの古来の民間伝承系都市伝説 黒こげの蝿の姿をしており、自由自在に飛び回る。 そして、対象の体内に侵入することで、言い伝え通りの効能を発揮する。 花子さんの契約者は「同性相手には効果を発揮しないだろう」と考えていたが、残念ながら同性相手にも効いてしまう それなんて腐女子や百合スキーの妄想材料? 弱点としては、所詮蝿なので生命力や防御力はなく、普通に蝿叩きでも殺せることと 体内に入り込んでいる場合、その対象が気絶すると体外に強制排出されてしまう事である なお、学校町内に何匹出現したかは不明 ネタに使えそうだったらゆっくり使っていってね!!! ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3418.html
前書き 世界観説明&プロフィール 飛ばしても可です。 また逢ったね。 前回の鈴宮南麻だ。 所でさ、僕の住んでいる街は、四ツ葉丘市桐羽郡槃町(よつばおかし きりゅうぐん たらいまち)と云う。 最後の世紀末に、銀河系同盟(GSA)が世界の7割を統一し、わが国ミュンテット(海雲鉄島)共和国もその一部になった訳。 マヤ歴の終わりが近付くと、国民は皆人が変わったようになった。 預言者の幼女が全国民を従え、銀河系同盟へ加盟。 それに、何だか宗教めいた怪しい団体も偶に見掛ける。 今では何人かに一人が、その新興団体に属し、団体同士で勢力争いをしているらしい。 さて、本題とするか・・・・・。 槃町は、窪地に位置する町で、僕の家はその中央付近にある。 街を横断・縦断する2つの道路が中央で交差し、十字の形を成している。 道は傾斜がある。 道沿いには繁華街もあるけど、左右に逸れれば静かな住宅街が続く。 僕の家の隣は大きな病院、ビルがある。 ビルといってもそんなに高くなくて、上空から見ても、少し目立つ程度。 車道に出る迄、徒歩5分といった所。 ネットで見掛けた噂話によると、どうもそのビルが怪しいらしいんだ・・・。 都市伝説は、東口から行ける隣町・桐羽町(きりゅうちょう)で手に入る。 桐羽町の中心部には、この周辺では珍しいビル群があるけど、町の半分近くは山で、山沿いは田圃が多いという極端な町だ。 山には神社があり、山の入り口には赤い鳥居が建っている。 そこから最も近い場所に、怪談や都市伝説関連の販売店、レンタル店や出版社が立ち並ぶ。 ネットではそこを「怪奇郷」と呼ぶらしい。 マニアの人がよく行くけど、レトロを感じる不思議な場所だ。 そこで買った本によると、どうやらお隣さんのビルが怪しいらしんだ。 写真も一致したから間違いない。 確かに最近、マニアと思しき連中が、夜、うろついてるように感じる。 案外友好的な人が多く、その内の一人から話し掛けられた事もある。 話の膨らみ次第、ドアに「取材お断り」の張り紙でもしようか・・・。 (続) キャラクター・プロフィール 名前 鈴宮南麻(すずみや なお) 1990年12月23日生まれ。 ショタ・男の娘属性。 今回の舞台は2006年なので、高校1年生の15歳。 帰宅部所属で、偶々通り掛かった振りをして都市伝説を買い求める等、都市伝説に対してはツンデレ。 学校は槃町の北側から行けて、そのまま桐羽町に行ける。 過去に男子10人以上に告白され振った経験を持つ。 対しガールズラブも苦手。 オタクに関しても同属嫌悪。 身長158㎝で体重50㎏。 小回りが良く、筋肉質で見た目よりかなり腕力が強い。 筋肉質は元から体質 だが、「舐められない為に」自宅でのトレーニングは毎日欠かす事がない。 好きな物は駄菓子と怪談話。 嫌いな物は嫌味。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1358.html
三面鏡の少女 19 「第130回あたし会議ー」 「議題はあたし達とかほったらかしで宴会に行ったあたしの糾弾でーす」 「勝手に議題出さないで!?」 「たっぷり呑んだとかいいもん色々見たとか羨ましいぞー」 「あたし達にもアルコールの摂取とセクハラ対象の提供を要求するー」 「首塚のチャラいおにーさんのメイド姿見たいー」 「歌手のおねーさんのスカートめくりたーい」 「Dさんが酔っ払ってるところに絡みたーい」 「思い出させるなー!? 色々やらかして後悔しきりだってのにー! あとDさんには絡んでないっ、呑ませちゃったけど!」 三面鏡の鏡台をばんばん叩きながらのた打ち回る少女 「今回の議題はっ! 診療所のバイトおにーさんが行方不明だとか、学校の男子や先生が急にお休みが増えたとか、そこいらへん!」 「後者は新型インフルエンザでいーじゃん」 「実際それで休んでる人多いしねー」 「てかもう学級閉鎖通り越して学校閉鎖間近だしー」 「かく言うあたしのクラスもお休みでね」 「いやいや、なんか組織の方も結構バタバタしてるみたい。都市伝説絡みの事件な感じ!」 「でもお呼びが掛からないって事は数いるだけじゃ何もできない相手って事よね」 「下手に出ていくとまた怪我してHさんやドクターに迷惑掛けるよー?」 「むしろそれが狙い? Hさんやバイトさんに助けられたい?」 「そういう方向に話を持っていかなーい!?」 「でもあたし達としては彼氏とか欲しいでーす」 「隣の席の彼とか結構脈ありだと思いまーす」 「陸上部にいる彼、練習中でも通り掛るとこっち見てるよねー」 「いつも買い物にいくスーパーの若店長、なんか凄く優しいよねー」 「買い物帰りによく公園で遊んであげてる小学生の子、お姉ちゃんをお嫁さんにするって割とマジ顔で言ってるよねー」 「何これ、意外とモテモテ?」 「しかも年齢層が幅広いです、隊長!」 「終了! その話題は終了!」 「それでは宴会の件の糾弾を再開しまーす」 「それも無し!」 ぱたむと三面鏡を閉じて、溜息を吐きながらぺたんと座り込む少女 「あーもう、ホントにあたしの契約した都市伝説って使いでが無いなー」 今回の騒動に関しては何が起きてるのかすらまだ知らない 黒服Hも積極的な干渉はしないつもりらしく、その事からあまり関わらないようにとだけは伝えられていた 「うーん、契約コストが軽い別の都市伝説とも契約する事も視野に入れた方がいいかなー。鏡系でなんか良いの無いかなっと」 とりあえず図書館にでも行って勉強がてら都市伝説について調べようかと、ぱたぱたと身支度を整えて玄関に出る 「あら、お出掛けー?」 リビングの向こうにあるキッチンから、のんびりとした母親の声が聞こえてきた 「うん、図書館行ってくるー」 「ちゃんとマスクしていきなさいねー、インフルエンザとか拾ってこないようにねー」 「はーい」 玄関から一歩外へ出ると、秋の冷たい風が頬を撫でていく 「寒……コートとマフラー新調しようかな」 寒空の下、お気に入りではあったが着古したコートをまじまじと見詰めて考え込む 「図書館行く前にちょっと見に行こうっと……LOLIQLOとかデザイン好きなんだけど、子供服以外も出してくれないかなー」 前ページ次ページ連載 - 三面鏡の少女
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1214.html
―――この物語はIFでありどうせ幻想に決まってます 本編と関係あるはずもありません――― これは、少し昔の話 まだ、「首塚」組織が出来る前の話…… 「ん……------」 目の前で酩酊状態の少年を前に、店主はほくそえんだ 本人は高校生だ…と言い張っていたが、まだ中学生だろう 年齢を偽ってバイトの面接に来た時点で、訳アリに決まっている だから…たとえ、この少年が行方不明になったとしても、周囲はさほど騒ぎ立てないだろう いや、騒ぎ立てたところで、彼はそれを問題とはしないのだが -----ねぇ、知ってる? あのお店のバイトの子って、しょっちゅう入れ替わるでしょ? あれって、どっかの国に売られてるからなんだって どうして売られるかって? そりゃあ、エッチなお仕事につかされるためらしいよ? 面接の時点で、既に選別されるんだって そこで選ばれると…売られちゃうんだって そんな噂があった そんな都市伝説があった 店主は、その都市伝説と契約していた …いや、そもそも、彼には「契約した」と言う自覚はない 自覚などないままに、彼はその仕事を行っていた 面接にきた、主に女性を相手に、水に能力で作り出した特殊な液体を混ぜて飲ませ、今のこの少年のような状態にして そして、じっくり、じっくりと選別して 売り物になりそうだったら、売り払う その相手がどうなるのか、彼は知らないし興味がない ただ、対象の初物を得られるのが楽しくて、彼はそれを続けていた 彼は気付いていない 無意識に都市伝説と契約してしまった時点で、彼は既に都市伝説に飲み込まれかけていた …それ以前から、彼は別の都市伝説とも契約していたからだ あまりにジャンルが違う都市伝説同士の多重契約 もともと、さほど器が大きくなかった彼は、それによって…都市伝説に、飲み込まれかけた 既に彼は、彼自身が半ば都市伝説となりかけている 「…さぁて、男相手は久々だが…」 相手は、まだ中学生だ …この年頃で、まさか後ろの経験なんぞある訳ないだろう あったらむしろ驚く 元から契約していた能力で配合した薬も、水に混ぜておいた たとえ、そっちの才能がなかったとしても…じっくりと、開発してやればいい 「------んん」 するり シャツの下に、手を滑り込ませた 少年特有のきめ細やかな肌の感触を堪能する 薬の効果が表れているだろう、ぴくりっ、少年の体は触れられた事に反応し、小さく跳ねる つつ、と脇腹からゆっくりと、手を上へ上へと移動させ…そこに、到達する 「---っ」 くに、とそこを弄ってやれば、少年の体はますます跳ねた 執拗に弄ってやれば、そこはぷくり、立ち上がってきて せっかくだ、味も見させてもらうとするか シャツをたくし上げ、露出させた肌に、舌を這わせようとした…その時 「---そこまでです」 「っ!?」 駆けられた声に、慌てて振り返る 彼の能力が発動し、誰も入り込めないはずの部屋 …その部屋の入り口に、何時の間にか、黒服の男が立っていた 彼に銃を向け、静かに告げてくる 「…その少年から、離れなさい」 「っく……「組織」か!?」 都市伝説の知識などほぼないはずの彼であったが、なぜか「組織」の事は知っていた その理由を、彼は知らない 彼の以前にこの都市伝説と契約し、「組織」に消された人間がいるなど…そんな事実を、彼は知る良しもないし だからこそ、その知識を自分が受け継いでいるのだ、と言う事実など知らない ただ、彼がいますべき事は あの黒服を、どうにかする事だ 幸い、ひょろりとした体格で弱そうだ 不意さえ打つ事ができれば… そう考えて、彼はそれを発生させた 己の体から、人間だけではなく、都市伝説相手すら効果のある薬を生み出す それが、彼の力 薬の効果は、彼の思いのままに作り上げられる 睡眠薬なり媚薬なり、毒殺できるような薬こそ作れないが、他人を思いのままにできる薬を作り出せる その、応用だ 体内で睡眠薬を合成し、彼は体中から発生させる 霧状になったそれは、部屋を包み込み… ----しかし、黒服に、変化はない 「…対策を打たずに来るとお思いますか?」 「っち……」 眠らせてやろうと思ったのだが…中和剤か何かでも飲んできたか!? 薬が効かないとなると、不味い あの銃で一発でも撃たれたら、彼は死ねる 彼自身の肉体は、強化などされていないのだから 「…く、くそっ!」 少年は惜しいが、仕方ない 彼は急いで部屋の奥へと走り、隠し扉の奥へと逃げ込んだ そのまま、外へと…… 「おぉっと、残念」 「ーーーーっ!?」 ……しゅるんっ ! 彼に向かってきた、それ 彼は、それを寸前で避けた びたんっ!と壁に張り付く 「お?」 しゅるり 黒い、まるで触手のようになった髪を操る黒服の男が、そこにはいた …逃走経路は既に抑えられていたか! だが、甘い! にょろん、ズボンの裾から真黒な尻尾をはみ出させ、彼はひたひたと壁を垂直に登っていく 「……「イモリの黒焼き」との多重契約かい。それで、イモリっぽい能力もあるってか?」 っち、とその黒服は舌打ちしてきた しかし、彼はそんな事は聞いていない 今は、逃げるべきなのだ 逃げて、どこか遠くでこの商売を続ければいい そう、彼は考えていた 殺されるつもりなんざ、さらさらない……! 「…だが、逃がさねぇよ」 黒服も、彼を逃がすつもりなどなかった しゅるり、際限なく伸び続ける髪が、彼を追う ごがっ! ごがっごがっごがっ!!! 強烈な薙ぎが、次々と壁に打ち付けられる 彼は、それを必死で避けて逃げ続けた 捕まるものか、捕まるものか まだ、自分は生き続けるのだ 仕事を続けるのだ …自分を生み出した噂は、まだ生き続けているのだから……!! 「…残念ゲームオーバーだ」 しゅるりっ 彼の、そのズボンからはみ出した尻尾が……捕らえられた 「お前、もう飲み込まれてるよ」 無慈悲な声と、共に 彼の体に、黒服の髪の毛が一斉に絡まりだした 「大丈夫ですか?しっかりしてください」 「……ん」 …駄目だ 睡眠薬の類でも、摂取させられたようだ 意識が定まっていないのだろう、ぼんやりとしていて…こちらの声も、聞こえているかどうか 呼吸が荒く、頬が紅潮している辺りを見ると…他の薬も混ぜられているのかもしれない とにかく、急いで解毒してやらなければ 黒服は、すぐに「ユニコーンの角の粉末」を鞄から取り出した 少年に、飲ませようとするが… 「………」 …口を、空けてくれない 水は…コップに入ってる分は問題外だ。鞄にミネラルウォーターが入っているから、それを使えばいい ただ、どちらにせよ口をあけてくれない事には… 「…仕方ありませんね」 強引にでも、飲ませなければ そう考えながら、黒服はミネラルウォーターのペットボトルをあけた ミネラルウォーターとユニコーンの角の粉末を、そのまま口に含むと、少年の顎に手をかけた 少し力を入れると、少年の口が、うっすらと開いて その口内に、ユニコーンの角の粉末を含んだ水を流し込んでいく ……ぴくりっ、と 黒服の腕の中で、少年の体が小さく跳ねた 「………んん」 まだ、意識は戻っていないが…ユニコーンの角の粉末の効果が現れているようだ 呼吸が、落ち着いてきている 黒服がほっと息をはいて、少年の頭をそっと撫でてやったのだった 「悪いねぇ、お前さんに恨みはないんだけどよ……むしろ、女の子相手にエロエロする。それに関しては羨ましいと思うよ」 しゅるしゅるしゅるしゅる その黒服の伸びる髪が、店主を束縛する 全身を髪の毛で覆われ、店主は苦しそうにもがき苦しんでいた …それだけ、ではない 全身を締め付けられ、呼吸など最早できていないはずだ 「でも、まぁ、こっちは黒服成り立てでよ……上の信頼を得なきゃいけないだわ、これが」 困ったように笑いながら、黒服はそう言って …そして、残酷に言い切った 「だから、悪いけど死んでくれや。俺が上から信頼を得るために」 ぶちんっ!! 店主の首を、髪で引きちぎる ぽい、と、なるでボールのように投げられたそれは、壁にぶつかり、ごろん、と床を転がった 「うっし、終わりー!」 ぐぐぅ、と背伸びする黒服 とてもじゃないが、たった今、人殺しをしたようには見えない …と、携帯が着信を告げて、黒服はすぐに応対した 「あ、はいはい……あぁ、始末したぞ………ん?あぁ、被害者がいたのか……まぁ、未遂かどうかは割りとどうでもい…あ~、わかったわかった。そう責めないでくれよ。とりあえず、そいつ、送ってやるのな?……わかった」 …やれやれ なんとも、優しい同僚がいたものだ 黒服に優しさなど、必要なのか? …この黒服には、その必要性がわからない 「ま、いいか」 後始末は任せられた ……すなわち! 「店のどこかにいるかもしれない、囚われのおねーちゃんたちの扱いは俺に任せられた、という事だな!!」 しゅるしゅるしゅるしゅるしゅる!!! 物凄い勢いで、髪を伸ばし この黒服はスキップなどしつつ、店内へと入っていったのだった 「………あれ?」 「あぁ、目が覚めましたか?」 少年を背負って、店を出た …薬の効果が切れたのだろう 少年が、意識を取り戻した 「…あれ…俺…」 「あまり、無理に喋らなくてもいいですよ…とにかく、家に送りますから」 「家………嫌だ……」 ふるふると 少年は、小さく首を振る 「…あんな所……もう、戻らねぇ…」 ……また、家出だろうか? 一瞬、そう考えたのだが…少年の声から感じられたのは、「家には絶対に帰らない」と言う、はっきりとした強い意志 今までの家出とは、明らかに違う もう二度と、家には戻らない…あの両親に対する、はっきりとした拒絶を感じ取れた 「…それでは、どちらにお帰りになられるので?」 「…………」 …返事はない ほぼ無計画で家を飛び出したのだろう 全く、困ったものだ ……しかし、少年の考えもわからなくはない あの家は…この少年には、酷すぎる環境だから 「わかりました、今夜は、ホテルに送りますから…家から、私物は持ち出しているのですか?」 「…きょーかしょとか、着替えとかは……ダチの家に…」 「わかりました。明日、その友人に連絡するのですよ?」 わかった、とそう頷いてきて 少年はこてん……と、力尽きて、寝息を立て始めた 小さく、ため息をつく この少年は、まだ中学3年 生活費を稼ぐ為に、アルバイトをしようとしたのだろうが… …あぁ言う都市伝説に引っかかってしまうようでは、危ない せめて、安全なアルバイト先を見極められるようになるまでは、自分が援助してやらないと 黒服はそう考えながら、少年を背負い、夜の街を歩き続けたのだった fin
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2695.html
南区のその一角で、銃声が鳴り響く 三人の警察官が、襲い掛かってくるコーク・ロアに支配された被害者達に、その影響を取り除く特殊な薬品を内臓する特殊弾を放っていく …何らかの都市伝説の影響が働いているのだろう 一般人の姿がない為、わりと遠慮なく発砲し続けている 「あぁ、くそ、弾切れか!?……ッ広瀬警部補!」 「今、そちらに装填済みの銃を………っ!?」 中年の警察官に、特殊弾を装填済の銃を投げ渡そうとした広瀬 美緒 しかし…その彼女の体を、背後から現れた何者かが、押さえ込んだ 振り返れば、包帯塗れの顔の何者かがいて……その、ぽっかりと空洞になったような目の位置に、狂気がにじみ出ていて その体に、漆黒の蛇が巻きつき、ゲラゲラと笑っていた 「注射ぁ……して、あげようかぁあ……?」 『ヒャッハハハハハハハハ!!やッチマエ!!タップリト注射シテヤレヨォオオ!!』 「--ッ注射男……!」 その腕から逃れようとするが、都市伝説の強い腕力で押さえ込まれ、身動きできない 注射男の片腕に…どす紫色の液体の入った注射器が、現れて 中年警官が、急いで駆け寄ろうとしてくるが……距離がありすぎる 間に合わない 注射器は、そのまま、美緒の腕に、注射を打とうとして 「----っぎ!?」 『グァ!?』 すぱぁんっ、と その腕が……あっけなく、切り飛ばされた 鮮血を撒き散らし、注射男は痛みに悶え、美緒から手を離す 「無事ですか!?」 「…影守、さん…………はい、問題、ありません」 刀を手にし、鎧を纏った影守が美緒を背後に庇うように、注射男の前に立った 刀の切っ先は、痛みに悶える注射男に向けられている 「都市伝説や、悪魔の囁き憑きの相手は、俺達が引き受けます。あなた達は、コーク・ロア被害者の対処を!」 「……わかりました」 影守がきたことで………少し ほんの、少しだけ 美緒は、ほっとしたような表情を、浮かべたのだが その表情は、すぐにいつもの、どこか冷たい表情へと、戻った 「無事か?警部補殿」 「…問題ありません。都市伝説の相手は「組織」の方にお任せしましょう」 駆け寄ってきた中年警官に、弾を装填済の銃を手渡す美緒 あぁ、と中年警官は、頷いて 「……よかったな?ここに駆けつけたのが、あの兄ちゃんで」 「……………どう言う意味ですか?」 「いや、警部補殿としては、嬉しいんじゃないかと思ってな」 「この状況で、馬鹿な事を仰らないでください。訴えますよ?そして勝ちますよ?」 わかったわかった、と苦笑して、中年警官は再び、コーク・ロア被害者達に向かっていく 美緒も、そちらに応戦したいが……自分は三人のサポートで精一杯だ 駆けつけた影守のサポートも…彼女には、無理だから 「………どうか………………誰も、死なないでくださいよ……」 ぽつり、と 小さく呟かれた、美緒の言葉は 誰の耳にも届く事なく、喧騒の中吸い込まれて、消えた to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4514.html
夜の公園を二人の男が走る。 片方は神父のような恰好をした人の良さそうな中年の男。 もう一人は、対照的にダラけてた服装の、目つきの悪いずる賢そうな若い男。 突然、二人の足が止まる。 目の前には、大きな池。昼間なら小船を漕いだりできるが、さすがに夜にそんな事をしている人はいないようだ。 「やぁっと追いついたぜぇ」 二人の後ろから、若い男が現れる。その傍らには、白い鰐。 都市伝説「下水道の白いワニ」の契約者である。 神父風の男が振り返り、口を開く。 「何なんですか、あなたは。急に襲い掛かって来て。危ないでしょう」 「うるせぇ!お前らが母ちゃんから取った二百万!返して貰うぞ!」 「取ったって……アレは貰ったんだぞ?」 目つきの悪い男が言う。 「そうです。アレは寄付ですよ?」 神父風の男が同意する。 「何が寄付だ詐欺師ども!お前らが契約者なのは分かってんだ! 何と契約してるか知らねえが!その能力を奇跡とか言って宗教やってるらしいじゃねえか!このペテン師ども!」 男は二人に怒鳴る。 その言葉に、二人は黙ったまま何も言わない。それを見て、男は言い訳もできないらしいと判断した。 「金を返すなら見逃してやる。返さないなら、ワニの餌だ!!」 男の言葉とともに、鰐の口が大きく開かれる。 「あなたは、何か思い違いをしているようですね」 神父風の男が静かに口を開く。 「確かに、私達は契約者です。しかし、私達はやっぱりあなたのお母様を騙してなどいない」 「この野郎、そんなにワニの餌になりてぇか……」 「まあ見なさい」 神父風の男は、地面に落ちている石を拾った。はずだったが、それが男の胸の高さまで来た時、その手にはパンが握られていた。 「……は?」 「分けてあげますね」 神父風の男はそう言うと、石だったはずのパンをちぎって男に投げた。 何かの罠かと、男は受けとらず、パンは地面に落ちる。 「何を……」 「もう一つあげます」 神父風の男はまたパンをちぎる。 ちぎっては男に投げる。何度も繰り返し、いつしか、男の足元には大きなちぎられたパンの山ができていた。 しかし、神父風の男の手にはいまだにパンが一つ。 「ま、さか……」 「ご理解いただけたようですね。 私は石をパンに変える事ができます。この池の水をワインに変える事ができます。 水の上を歩く事も、死人を生き返らせる事もできます。」 そして、神父風の男は言った。 「私が契約しているのは、『キリスト』です」 「そ、そんな馬鹿な……」 「まだ信じられませんか?水をワインに変えて見せましょうか?」 神父風の男はにこやかに言う。 「だから言ったろう。あれは寄付だって」 ずっと黙っていた、目つきの悪い男が口を開く。 「確かにこいつは契約者だけどな、キリストの契約者だ。人を救う力を持つ。何も問題は無いはずだ。 それでもまだ文句があるっつうなら、そのワニで、戦ってみるか?神の子と」 男は迷っていた。「キリスト」の契約者、そんなモノに勝てるのか。人を救う能力を持つモノを殺して良いのか。 「お前は、何の契約者なんだ……?」 男は、目つきの悪い男に尋ねた。この男も契約者だったはずだ。この男が人に害をなすなら、こちらだけでも。 そう考えた。 「俺か?俺はこれさ……」 そう言うと目つきの悪い男は、公園の池の方を向き、手をあげる。 その瞬間、池が割れた。 「これが俺の都市伝説、『モーゼ』だ」 男が呆然と立ち尽くすのを尻目に二人は割れた池を歩いて去っていった。 「なーんかさあ、この辺り都市伝説と契約者多くね?」 「そうですね。早めに別の町に移った方が良いかもしれませんね」 夜の公園の池、小船から二人の男がおりる。 「コップや洗面器以外の水を割って『見せる』なんて久しぶりだぜ」 「私はいつもやって『見せて』いる事をしただけですけどね」 二人は公園の外に停めていた高級な車に乗り、話し合う。 「いくら稼いだよ」 「この辺りではまだ、一千万と少しですね。まだ他の町の半分です」 「んー、どーすっかなぁ。ここ金持ち多いけど、契約者も多いし。俺らの都市伝説がばれる事は無いとは思うが……」 「ばれるだなんて、何言ってるんです。私たちの都市伝説は『キリスト』と『モーゼ』でしょう?」 神父風の男が人の良さそうな顔を崩し、ニヤリと笑いながら言う。 「おおっと、そうだったな」 それに合わせるように目つきの悪い男も笑うのだった。 この二人の都市伝説が「青森のキリストの墓」と「石川県のモーゼの墓」であり、 その能力はそれぞれの人物の行った事を「見せる」事だと。その幻影を見せる能力だと、 ただの聖人の真似事をしているだけだと、気づけたモノは誰もいない。 終 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/343.html
買って嬉しい はないちもんめ まけて悔しい はないちもんめ あの子が欲しい あの子じゃわからん この子が欲しい この子じゃわからん 相談しよう そうしよう 俺が組織からの命令は○○町に組織に非協力的かつ危険な契約者がいるから始末して来いと言う物だった 組織の命令でしかも危険な契約者となれば戸惑う必要はどこにも無く二つ返事でOKした俺だったが今は少し後悔している その契約者はまだ年端も行かぬ少女だったからだ 「おじさん?」 「・・・ん?」 イカン・・・考え事をしていた所為で標的が目の前まで来ている事に気付かなかった 「少しお願いがあるの・・・あの帽子を取ってくれない?風で飛ばされちゃったの」 見ると確かに木に帽子が引っかかっている 本当なら今すぐ始末するべきだったんだろうが相手が子供な事からこの任務に抵抗を感じていた俺は最後の頼み位聞いてやろうと帽子を取ってやった 「ありがとう、叔父さん良い人ね」 「あ、あぁ・・・」 「だからね」 少女が朗らかに笑い 「苦しまないように殺してあげるわ」 背筋が凍る様な声でそう言った 「え?」 俺の戸惑いを他所に後ろにあったマンホールの蓋が飛び、中から巨大な生物が現れる 白いワニ、俺が契約した都市伝説だ 「何?!」 契約者の俺の意思と関係なしに鰐が出てきた・・・どう言う事だ!? 「やだ、組織から私の能力聞いてなかったの? 相変わらず杜撰な所ね・・・最期だから教えてあげるわ 私の都市伝説はね――はないちもんめ」 「・・・まさか」 「はないちもんめ」は有名な童謡だがその歌詞の内容は人身売買の歌だと聞いた事がある 「そ、相手にお金を渡す事で相手の都市伝説や仲間を操る事が出来るようになる・・・それが私のはないちもんめの能力」 「金を渡す・・・だと?」 「鈍いわねぇ、帽子の裏を見て御覧なさい」 言われて帽子の裏を見る 帽子の裏には100円玉が貼り付けてあった 「・・・・・・」 「その100円で、あなたのワニ買わせてもらったわ」 とても楽しそうに笑う少女 こんなの、子供のする表情じゃない・・・ 「子供相手だと油断した時点で貴方の負け・・・食べちゃえ」 少女のその言葉を聞いてワニがこちらに向ってくる 今まで何年も共に戦った相棒が俺に・・・・・・バクンッ クチャ・・・クチャ・・・ 「さよなら、間抜けな叔父さん」
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4569.html
悪の秘密結社 11 ぴん、と 金属を弾く澄んだ音が響く 空中踊る十円玉をぱしりと掴み取り、くいと引き絞る 「こっくりさんこっくりさん、ヴィクトリアとかいう女の隠れ家はこの先か」 その言葉に応じて、三Z-No.592の肩に群れていた人の獣耳尻尾の少女達がぱっと散開し、頑丈そうな鉄扉に群がっていく 少女達が嬉しそうにぺしぺしと扉を叩くと、扉に『こ』『の』『と』『び』『ら』『の』『さ』『き』という文字が浮かび上がっていく 「ひのふの……八文字か、充分だな」 「がんばったよー」 「ほめてほめてー」 「あとでなでてー」 腕に群がる少女達から、爆発的に膨れ上がった霊力が十円玉に注がれる 「いちげきひっさーつ!」 狐少女の号令と共に放たれた十円玉は、轟音と共に冷凍用の倉庫ほどもある鋼鉄製の扉を易々とひしゃげさせ、建物そものを揺るがせた 「お、吹っ飛ばなかったか。すげぇ頑丈」 曲がった極太のビス数本で、辛うじて壁にぶら下がっていた扉を、豪快に蹴り飛ばすZ-No.592 暗い下り階段を、壁に引っ掛かり表面を削りながら転げ落ちていく扉だったもの 「さーって、お邪魔しますよーっと」 ポケットに手を突っ込んで、じゃらりと十円玉の量を確認し Z-No.592はきゃいきゃいとはしゃく少女達を率いて、階段を軽い足取りで降りていく あちこちが落ちた扉に削られへこまされたコンクリートの階段を、こつこつと どこか色合いのおかしい照明に照らされて、深く深くへと 「あー、なんつーかこれ、アレかな」 表向きは古臭いビルでしかなかった建物の地下に、洞窟でもくり抜いて最新の軍事基地でも差し込んだかのような、ちぐはぐな通路が伸びている光景 無意味に無駄に無闇に、あちこちでちかちかと明滅するランプ Z-No.592はぽんと手を打つ 「悪の秘密結社、ってやつか」 通路の先に、じわりと浮かび上がるように現れる、黒い全身タイツのような姿の戦闘員達 「正義の味方ってガラじゃないんだけどね、俺」 質量を感じさせない、奇妙なステップで向かってくる戦闘員達に、くいと腕を突き出して 「まあ、アレだよ。乗ってやる」 十枚ほどの十円玉を握り込み、Z-No.592は叫ぶ 「こっくりさんこっくりさん! どうせこいつら、一発でぶっ倒せんだろ!」 「はったおせー!」 「ぶったおせー!」 「ですとろーい!」 飛び交う狐、狗、狸の少女達が、戦闘員の額に、左胸に、次々と触れて『はい』の文字を浮かび上がらせ 「それじゃあまとめて! さようならっと!」 その手から放たれた十円玉は絡み合うような軌道で通路を縦横無尽に駆け、戦闘員達の頭部を、胸を、容赦無く貫いていく 「個も持たねぇがらんどうの雑魚は引っ込んでな!」 「じゃあ、雑魚でなければいいのね?」 ぱきん、と 乾いた音を立てて、十円玉の一枚が真っ二つに割れる 「ようこそ、我ら『悪の秘密結社』の秘密基地へ」 満面の笑顔で両手を広げ、心の底から歓迎の意を表した、似た面影を持つ数人の女 「あんたがヴィクトリア? ああ、あんた『達』かな?」 「ええ、近しい方々からはヴィッキー、もしくは教授と呼ばれています。以後お見知り置きを」 「んで、後ろの毛色の違う連中は?」 Z-No.592が放った十円玉を叩き割った何者か その姿は、人間の造形に昆虫の外殻を貼り付けたような、不気味な姿 戦闘に立つ一人は、すらりとした赤い鞘翅を背負った女性のような姿をしており 大きな複眼に覆われた頭部と、人の面影を残した頬から顎のラインを隠すように覆う甲殻が、僅かに震える 「ネエ」 感情の篭らない声が、二の句を告げる 「ワタシ、キレイ?」 「『口裂け女』みたいな文言だな。まーフォルムは綺麗だと思うぜ、嫌いじゃない」 「キレイナノ? コレデモカ!」 口元を覆っていた甲殻がばくんと開き、昆虫らしい大きな顎がぎちりと開く 床を蹴り滑るように迫り来る赤い昆虫人間 その腕を覆う甲殻が変形し、蟷螂のような鎌が、蟹のような鋏が現れる 「オマエモオナジカオニシテヤロウカ!」 「まるっきり『口裂け女』じゃないかこいつ。お前、何しやがった」 視線はヴィッキーに向けたまま、赤い昆虫人間の刃を掻い潜り懐に潜り込み 普段は腕を支点に弓のように開くこっくりさんの台紙型の力場を、親指と人差し指の間に展開して、パチンコのように十円玉を番える 「こっくりさんこっくりさん、虫っぽいこいつの装甲薄いのはどこだ?」 ぽつぽつと、赤い昆虫人間の腹部に浮かび上がるいくつかの『お』『な』『か』の文字 「悪いが、手加減できそうなほど余裕のある力量差じゃなさそうなんでな」 ずどん、と 鋭い衝撃音と共に赤い昆虫人間の身体が浮いて、突っ込んできた勢いそのままに空中に放り投げられ、通路に叩きつけられ転がったまま動かなくなった 「もう一回聞くが……こいつらは何なんだ?」 「我々の悲願ですよ」 ヴィッキーは笑顔のまま、苦労して作り上げたものを見せびらかすように、興奮を隠さず語る 「『悪の秘密結社』には、やはり怪人が必要でしょう?」 「今まで作れてなかったのかよ」 「殺して、死体から自分を模した『フランケンシュタインの怪物』を作ってはいたんですが……それはただの死体人形ですからね」 ねー、と顔を見合わせて肩を竦め合うヴィッキー達 「やっと私の趣味に合う方法で怪人を作るための技術を手に入れて、もう嬉しくてたまらないんですよ」 「随分と趣味が悪いこったな」 「そりゃあもう、『悪の秘密結社』のプロフェッサーたる者が、趣味が悪くないとダメでしょう?」 そう言うとヴィッキーは、きらきらと淡く輝く結晶体をポケットから取り出す 「これ、何だと思います?」 「俺に質問をするかね」 するりと十円玉を取り出し、腕に展開した台紙の上に置く 「こっくりさんこっくりさん、あれ何だ?」 その言葉に反応して、十円玉の上に手を置いた少女達が、やや戸惑いを浮かばせながら十円玉を動かしていく 十円玉が指し示した文字は『と』『し』『で』『ん』『せ』『つ』 「都市伝説?」 続けて少女達が指し示したのは『は』『な』『こ』『さ』『ん』という文字 「花子……さん」 その言葉に反応して、結晶体を持ったヴィッキーの後ろで、他のヴィッキーがぱちぱちと手を叩く 「優秀な都市伝説と契約しているのですね。素晴らしい」 「あんたに誉められても嬉しかないけどな……それが『花子さん』ってのはどういう意味だ」 「文字通りの意味ですけどね?」 手のひらの上で結晶体を転がし、弄びながらくすくすと笑い声を上げる 「都市伝説の人間化の研究、ご存知ですか?」 「それをかっぱらった馬鹿を叩きのめすために来たんだけどな、俺は」 「まあ研究内容を知っている前提でお話させてもらいますよ? 都市伝説の人間化というのは、手っ取り早い話……都市伝説の意志と記憶、つまり『魂』を取り出して保存、残る都市伝説要素のエネルギーを材料に人間の身体を構築するという錬金術です」 「らしいな。それが怪人を作る事にどう繋がるんだよ」 「簡単ですよ。『魂』を取り出した後のエネルギー、都市伝説としての存在そのものを結晶化したものが、これです」 ヴィッキーがぱちんと指を鳴らすと、背後に控えていた怪人がすいと道を開け 戦闘員が、一人の若い女を引き摺ってくる 「この結晶を、人間と合成するとどうなると思います?」 「……っ! こっくりさんこっくりさん、あいつの――」 Z-No.592が言葉に紡ぐよりも早く ヴィッキーの手の結晶は、焼けたナイフがチーズに刺さるかのように、するりと女性の後頭部に差し込まれる 「あ、ああああああ、ああああああああああああああ」 がくがくと震えながら、頭を押さえ身体を丸める女性 「契約という共生をするにせよ、呑み込むという支配をするにせよ……そこには互いの意志が存在しますが。それを介在しない場合、都市伝説というエネルギーに都市伝説という個が存在しない場合」 ぷちり、ぷちりと ぎちり、ぎちりと 音を立てて、女性の身体が変貌していく 「人体は、都市伝説というエネルギーを排除しようとします。強固な意志があれば充分可能なのかもしれませんが……例えば、脳改造などで命令を聞くだけの木偶人形などの場合」 髪の毛が抜け落ちて、頭部を覆う黒いおかっぱにも見えなくもない外骨格 肌が変質して盛り上がる甲殻の胸部を走る赤いラインは、吊りスカートの名残か 「本能と肉体が都市伝説エネルギーを拒否し排除しようとするものの、それは体表に留まりながら内部に浸透し……やがて変質したまま一体となるわけです」 腰周りに鎧のようなスカートのような甲殻が広がり 出来上がった『もの』は、『トイレの花子さん』をモチーフにした『怪人』としか言えない代物だった 「まだ一人につき一つの都市伝説しか埋め込めませんが。この結晶を複数埋め込めたり、取り外し可能にしたりするアタッチメントも製作中ですからご期待下さいね」 「なるほどね……こりゃまあ確かに、放っておくとやばそうだ」 「あなたの後ろのそれも、放っておくとまずいんですが。修理してはダメですか?」 「悪の秘密結社の怪人なんて、倒されてナンボなんじゃないのか?」 「それはそうですが。ではそのままで」 ヴィッキーがポケットから取り出したスイッチをぽちりと押し込むと、Z-No.592とヴィッキーの間に強固なアクリル板のような障壁がシャッターのように下りてくる 「最近はただ消滅するだけの怪人が多いですが……古式ゆかしい特撮の怪人って」 にたりとヴィッキーの笑顔が歪む 「死ぬと、爆発するんですよね」 「なっ――」 直後に、背後に感じた熱波と衝撃が Z-No.592の全てを飲み込んだ ――― 辛うじて、意識だけはまだあった だがその身体が原型を留めているのが不思議なぐらいの有様は、見ずともに判る 「こっくりさん、こっくりさん……俺、あとどんだけ、持つ?」 あわあわと泣きそうな顔をしている狐、狗、狸の少女 だが問われた事は問われたままに返すしかできない彼女達は、ただ十円玉を動かすだけしかできない 綴られた文字は『あ』『と』『ご』『ふ』『ん』 「……うっし、んじゃその五分で……こいつら全部、ブッ潰す」 Z-No.592の脳裏に浮かぶのは、目を覚ました途端に親友の心配をし そして、友人の無事を知らされると、今度は悪の存在を必死で伝えようとしていたメイの姿 都市伝説に呑まれかけ、その力と存在を否定されかけてなお、何処かの誰かに向けられる悪を止めて欲しいと懇願するその姿 「あの子に……心配かけらんねぇからな……きっちり……片付けてやんねぇと」 赤くぬめる指先で、焦げて歪んだ十円玉を掴み 突き出した腕に、弓状の力場を展開する 「こっくりさん、こっくりさん! あのクソ女は、間違いなく悪い奴だな! そして……怪人どもは、止めてやるべきだな!」 涙目の少女達が目にも留まらぬ速さでヴィッキー達に迫り その場に居る『悪の秘密結社』側の者、その全ての全身に余す事なく『はい』の文字を刻み付ける 「くたばれ、地獄で懺悔しろ」 放たれた数十枚の十円玉は、ドリルのように渦を巻き 先程の爆発に耐えた障壁をあっさりと打ち砕き、通路そのものを抉り取り、そこにある全てを粉微塵に粉砕していった ――― 重い地響きが伝わってくる様子に、さほど動じた様子も無くスピーカーの向こうで大首領がふむと唸る 《大丈夫かね、この基地は?》 「大丈夫でしょう。大首領の間はおろか、この研究室にすら届きませんよ」 笑いながら、ヴィッキーは一抱えほどもある大きなガラス容器を引っ張り出す それは大小様々なケーブルが容器の内部まで続いており、それに詰められたものに接続されていた 「あの黒服の少年は少々勿体無いですが、実験段階の怪人を相手に遊んでもらって、データを収集する事にします」 ガラス容器の中には、大量のケーブルやチューブが接続された、ミイラのような老婆の首が溶液に漬されていた それは、『ヴィクター・フランケンシュタイン』と契約したオリジナルのヴィクトリア 「さて、魂を移し変える技術が手に入った事ですし、実験も充分にしたので活用させてもらう事にしますよ。『フランケンシュタインの怪物』に任せ切りでは、『私』も面白く無いでしょうから」 そう語りながら、やや表情に残念そうな色を隠せない様子もある 「できれば、エルフリーデ女史か……メイちゃん、沙々耶ちゃん、いずれかの肉体が欲しかったですね。かつて善良な人間だった肉体を乗っ取るとか、悪の華でしたし」 溜息を一つ吐いて気を取り直し、ヴィッキーはいつもの調子に戻り 紋章の刻まれたレリーフの、大首領の声を伝えるスピーカーに向かってヴィッキーは深々と頭を下げる 「『私』のより一層の忠誠と悪意にご期待下さい、大首領閣下」 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ