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さて、自分達の部屋はどこだったか? ユグドラシル内で、うっかりと迷子になってしまった裂邪とミナワ …部屋番号、ちゃんと覚えておくべきだったか どうしようか、彷徨いながら歩いていて ……ふと 視界に、小さな女の子の姿を、見つけた おかっぱ頭に白いブラウス、真っ赤な吊りスカート姿の、少女 世界樹内の通路に添えつけられたベンチに腰掛け……とろん、とした眼差しで、半分眠りかけているようだ うとうと、うつらうつらしているその様子は……どこか、幻想的でも、あって 思わず、裂邪とミナワは、その姿に引き寄せられた うとうと うつらうつら… ……こっけん 「「あ」」 あ そのまんま、横に倒れた ぱちり その衝撃で、目を覚ましたのだろうか? 可愛らしい瞳が見開かれ、裂邪とミナワを視界に納める そして 「………みぃ?」 ………鳴いた そのまま、にぱ~、と笑みを浮かべてくる まるで、天使のような、笑顔 ロリコンの裂邪でなくとも、ついつい、見とれてしまうというものだ 「…都市伝説の、気配?」 「みー??」 ふと ミナワが、それに気付いた 少女から感じる、都市伝説の、気配 都市伝説契約者ではなく、都市伝説、そのものの… 「み?おねーちゃんは都市伝説で、おにーちゃんはけーやくしゃ?」 少女も、ミナワが都市伝説である事を そして、裂邪が、契約者である事を、見抜いたようだ …COA内に、そして、ユグドラシル内にいる、都市伝説 すなわち…恐らくは、COA事件解決に動いているものの一人なのだろう そう、あたりをつけた裂邪 この少女と、接触を取ってみることにした ミナワの手を引き、少女に近づく 「はじめまして、えぇと…」 「私は、花子さんなの」 ぴ!と元気に少女は名乗ってきた なるほど、「トイレの花子さん」か 確かに、そのようなイメージの服装をしている 裂邪とミナワも、花子さんに名前を名乗った …その間、花子さんの視線が、ミナワに集中していたのは気のせいだろう、多分 ちょっと羨ましそうに見えたのも気のせいだろう、多分きっと 「裂邪おにーちゃんとミナワおねーちゃんは、ここに引っ張り込まれたの?それとも、自分達から入ったの?」 「俺達は、自分達の意志で、だな」 「み!なら、けーやくしゃと一緒なの」 けーやくしゃ どうやら、花子さんには契約者がいるようだ しかし、その姿が…見えない 「花子さんの契約者さんは、どこにいるんですか?」 「けーやくしゃは、今、ここの「組織」の人達と、難しいお話をしてるの。だから、花子さんはここで待ってるの」 「…難しい話?」 「そうなの。無力な一般人を預けるのだから、本当に信頼できるかどうか見極めなくちゃいけない、って、けーやくしゃは言ってたの」 ちょっぴり難しい事を、花子さんはさらりと言い切った ……確かに、花子さんの言う通りだろう 恐らく、その契約者は、事件の被害者を保護して、ここにたどり着いたのだ それを預けるからには、絶対の信頼がある相手でなければなるまい 「ここに、悪い人達が来て暴れないか、とか、色んな事をチェックしなくちゃいけないの。特に…」 「……ここを管理している者が。他者の命をどのように見ているか…………少なくとも、他者の命を物のようにしか扱わない奴や…………他人を平気で実験材料にするような奴がいるならば。任せたくはない」 聞こえて来たのは、高校生くらいの少年の、声 見れば、前髪で目元がよく見えない少年が、近づいてきていた っぱ、と 花子さんが、満面の笑みを浮かべる 「けーやくしゃ、お話、終わったの?」 「……あぁ、待たせて、すまない」 花子さんの言葉に、その少年は答える ……何故、だろうか その少年を、見た瞬間 ぞくり、悪寒を感じたのは? 「…?」 少年が、裂邪とミナワを見た……の、だろう 目元は見えないが、顔を向けてきた事で、それを感じ取る 「けーやくしゃ、このおにーちゃん達も、事件を解決するために動いてるんだって」 「……そうか」 花子さんの言葉に、少年の反応は………薄い 興味を持っていないような 関わる事を、避けているような……そんな、気配 事実、少年は花子さんの手を引いて、さっさと立ち去ろうとしているようだった だが 「…?お知り合い、ですか?」 ふと 虚空を見て、誰かと会話したように…見えた それは、現実世界と、ボイスチャットで会話でもしているような、様子で 『裂邪、ミナワ?聴こえるか?』 「え?」 「へ?…翼のにーちゃん?」 『あぁ、良かった、そっちにも繋がったか』 そして 現実世界からのボイスチャットの声が、裂邪とミナワにも、届いた 『龍一、この二人は、信用しても大丈夫だ』 「………わかりました、翼さん」 翼の言葉に、龍一が頷く くるり、裂邪達に向き直った 「………はじめまして。獄門寺家 若頭 獄門寺 龍一………契約している花子さんと共に、今回、事件の解決に、動かせてもらっている」 小さく頭を下げ、そう名乗った龍一 頭を上げた、瞬間……その長い前髪の間から、高校生にしては鋭すぎる眼光が、見えて その、目に 裂邪は一瞬………何か、不吉にも似た、重苦しい気配を覚えたのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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両親が死んだ。死因は不明。 酷い死に方だったらしい。病院に駆け付けた時には既に死んでいて、遺体は見せてもらえなかった。死体はあちこち虫に喰われ、発見した人は吐いたらしい。 そんな事件にも拘わらず、新聞やテレビで両親の事はほとんど報道されなかった。 揉み消された。そう感じた。 だから、これは都市伝説関係の事件だと思った。 両親の死によって、私は一人になった。二人とも親戚がいなかったのだ。 正確には、私が契約している都市伝説もいるから二人なのだが、私にとってそれはあまり意味のある事では無かった。 一度、自殺も考えた。いきなり一人になった家は、寂しかったのだ。 けれど、結局自殺はしなかった。私は、両親を殺した都市伝説を探そうと考えた。理由は、復讐。今の、私の生き甲斐。 宛があったわけではない、ただ、死ぬ前に何かしたかった。 「よう、」 「あ、先輩。おはようございます。」 通学途中、先輩に声をかけられた。先輩は私と同じ部活で数少ない男子だ。寝不足なのかよく寝ている姿を見かける。 「あー、その、何だ。まだ、落ち込んでるのか?」 「いえ、大丈夫です。」 実際、今は落ち込んでなんかいない。少し前までは泣き続けていたが、それよりも犯人を見つけなければ。 「なんつーか、最近は物騒だな、行方不明とか殺人とか。お前、危なくなったら引っ越せよ。」 引っ越しなんかするわけない。先輩が心配してくれているのは分かるが、犯人はこの辺に住んでいる可能性が高いのだ。引っ越したら復讐の機会を失うじゃないか。 「あ、お帰りなさい」 家に帰ると、私の都市伝説がいた。まあ、昼間から外を出歩けるような容姿ではないから当然なのだが。 私がこの都市伝説と出合ったのはそれほど昔の事ではないが、都市伝説が実際に存在している事を知ったのはいつのことだったか。 たしか、よく遊んでいた子が契約者だったような気がする。珍しくあの子が嘘をつかなかったと驚いたものだ。 犯人捜しは一向にに進まなかった。 情報が無いのだ。 都市伝説による事件など、連続殺人か大量殺人でもないかぎり隠蔽される。と言っても、この辺りでは事件が多過ぎるのか、隠蔽しきれずに怪情報が飛び交っているが。 「そうは言ってもですね、そんな噂だけでですね、犯人を見つけるなんてですね、無理があると思うんですね。」 「五月蝿い。そんな事分かってるわ。それでも捜すのよ。」 「あ、あ、ごめんなさい。怒らないでほしいんですね。 で、でもですね、この辺はですね、一応平和って事になっているんですね。あのですね、都市伝説だらけでですね、なかからでは異様さに気付けないんですね。色々と飽和状態なんですね。」 こいつは何が言いたいんだ。犯人捜しなんか無理だと言いたいのか? ふと、気付く。気付いてしまう。 先輩は何故、殺人や行方不明が多い事を知っていたんだろう。気にしていたんだろう。いや、それだけなら気にする程の事ではない。 「危なくなったら引っ越せ」って何だ!?「危ないから気をつけろ」なら分かる。だが、引っ越せ? 間違いない、先輩はこの辺りの異常さに気付いている。先輩は契約者だ。まさかとは思うが、先輩が犯人の可能性もある。そう、先輩が、犯人。 落ち着け。決めつけてはいけない。確かめないと、先輩が、犯人かどうか。 「行くよ!」 「え?え?何処にですか?」 「先輩の家!!」 「で、でも、もう夜なんですね。迷惑になるんzy「はやく準備しろ!!!」 わ、わ、ごめんなさい。」 今夜は新月か。 私は先輩の、犯人の家へ駆け出した。 あいつを外に待機させ、先輩の家に入る。なぜか鍵は掛かっていなかった。そして先輩の家で見たモノは、リビングに転がる 先輩の死体だった。 死体には無数の虫。1mはあるミミズに似た生物達。そいつらが死体を喰っていた。 「おや、お客さんのようだ。応対しなくて良いのかい?って、死んでるから無理だわな。」 そして、二十歳ぐらいの男がいた。そいつは薄気味悪い笑みを浮かべ、何故か右目を閉じていた。見えないのだろうか。 「あなた、誰ですか?」 「俺が誰か、か。名前、所属、身分、どれを言っても分からんわな?まあ、その質問に答えるなら モンゴリアン・デスワームの契約者だわ」 「なんで先輩を殺したんですか?」 そう、何故先輩を。私が殺すはずだったのに。 先輩を、先輩を、先輩を先輩を先輩を先輩を犯人を先輩を先輩を犯人を犯人を先輩を殺す殺す殺す殺すはずだったのに。私の復讐を台なしするなんて。 「先輩?あ、この男のことか。んー、君に分かるかな。この男、組織って集団の人間なんだわ。で、俺は反組織集団に所属してるんだわ。まぁ、一番の理由はそれだわな。 あ、ちょっと聞いてくれる?俺さぁ、組織が嫌いでそこに所属したんだわ、なのに最近全然活動しねぇの。だからさぁ、最近憂さ晴らしに道歩いてた夫婦襲ったんだわ。」 ………………え? 「その話したらさ、こいつすっげえ怒ったんだわ。後輩の親がどうのこうのーってさ、そんな事、知らないって。 んん?後輩?先輩?……あー、もしかして後輩って」 「おぉぉまあぁあぁえぇぇぇぇぇかあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!!!!」 「おー恐い恐い。ま、君が怒ったとこで、何も出来やしないわな。」 「私だって契約者だ!来い!!テケテケ!!!」 「は、はいですね!」 「テケテケ?ハハッ、そんなので俺と戦おうってのかい?そいつは何が出来るんだ?速く走れるのか?上半身しかないが、そいつは戦えるのか?」 こいつは何を言って……ああそうか、モンゴリアン・デスアームはそれ自体に戦闘力があるから、特殊能力を知らないのかもしれない。今まで、そういう相手と戦った事がないのかもしれない。 「知ってます?テケテケの話の一つ。事故で下半身が無くなった後、寒さで血管が収縮し血が止まり即死出来ずに暫く苦しんだ、って話なんですけど。」 「それくらい知ってるさ。で、それがどうしたよ。」 「本当に知らないみたいですね。都市伝説の特殊能力のこと。」 「特殊能力?」 「ところで、今日は随分と寒いですが、虫は大丈夫ですか?」 私のテケテケは温度を操る。今、犯人と虫のいる場所の気温は氷点下。寒くなれば虫は冬眠する。これであいつを守るモノは無くなる。 このまま凍死させる事も出来る。しかし、それじゃ私の気がすまない。この手で、私の手で、殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスころすbxd殺スこロsuコロす殺す 「なるほど、確かにこれは寒い。凍え死にそうだ。 それじゃ、こっちからも質問。モンゴリアン・デスアームって、電気だせるって知ってた?」 そう言って、犯人は右目を開き バチンッ 家が停電した。 突然の暗闇に何も見えなくなる。 部屋の何処かの窓が開く音と犯人の声が聞こえてくる。 「あっちこち電線をショートさせたから暫く明るくならないんで。そいじゃ、また会おう。」 は?……逃げる?犯人が、逃げ、る? 「にぃがああぁすかああああぁぁぁ!!!」「だ、駄目ですね!!」 馬鹿が私の腰にしがみついて邪魔をする。邪魔邪魔邪魔、あいつをあいつをころコロさないと殺さナぃト犯人が逃げる逃げる父さんの仇母さんノ仇先輩のイ九殺す殺さないと殺せ殺そう 「駄目ですね!あっちまだ虫がいるんですね!罠があるかもなんですね!この暗闇じゃ虫が近寄って来ててもわからないんですね!はやくここを離れたほうが良いんですね!」 知るか知るか知るか知るかあああぁぁあぁあいつを殺させろぉぉおおぉぁぉおお前から先に死ぬかああああわたしの邪魔をするなあああぁぁEjEtPGめつネ$†@#*〆∞仝⊇∝∬‰¶!!! 多くの人が私の前を横切る。 月曜日の朝。怠そうな顔のサラリーマン、友達を見かけ笑顔になる小学生、テストがある事を忘れていたと泣き顔の中学生。 本当なら私もあのなかの一人のはずだ。でも、私にそんな事ををしている暇はない。 私は犯人の顔をを見たのだ。そして犯人ははこの辺りにいるはず。だから捜さないと、捜さないいと。 必ず見つけててやる。必ずず殺してやる。あのの馬鹿は家ににおいてきたた。これでで私のの邪魔をする奴はいない。 父さん、母さん、先輩へ そちらへへは暫く行けそうににありません。 でも必ずあいつを犯人をを仇を殺すすから、仇ははとるから。 待ってていてねね。 それが終わわれれば、必ずそっちにに行くくから。 お終り 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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【上田明也の探偵倶楽部after.act4~こぼれた砂の最後の一粒~】 聖杯を巡る戦いの間にメルは俺の側を離れていっていた。 まあ今の俺はもう冷酷な殺人鬼なんかじゃない以上、俺と居るメリットも無いか。 俺はあいつに獲物を与え、あいつは俺の怒りを発散させる力を与え。 乾いた物を互いに満たし合う、ギブアンドテークなだけの関係。 結局その程度だったのかもしれない。 ちなみに拝戸がメルと契約するしないで現在は揉めているそうだ。 「で、回想終わり。」 「何を言っているんだお前?」 「ちょっと感傷に浸っていたんだよ、その間に逃げれば良かったのに。 突き出されるのは警察、それとも組織、どっちが良い?」 「ますますお前が何言っているのか解らないなあ。」 「証拠は挙がっている。お前が宝石店から大量の宝石を盗んだこそ泥だろう? “牛の首”契約者さんよ。 正体不明の特性を使えば足が着かないとでも思ったのか?」 「…………ばれてたのか。」 「お前みたいな子供まで契約犯罪なんてね、世も末だ。」 目の前に立っているのは高校生くらいの男性。 外見は真面目そうだがこれでも“牛の首”の契約者である。 正体不明に加えて人食いや怪力の特性を持っている厄介な敵である。 契約者さえ一級品ならば、だが。 「だがおっさん!あんたに何が出来るって言うんだ! この牛の首は俺の声を聞かせるだけで相手が恐怖にかられて何も出来なくなる能力もあるんだぜ!?」 「おっさん、ねえ。まあ許そうか。もう妻子持ちな訳だし。」 俺はそのままスタスタと少年に歩み寄る。 どうみても只の子供なのだ。 何を恐れる必要があるというのだ。 「って……おい、なんで近づいてこれるんだよ?」 「いや、だって怖くないし。」 「来るんじゃねえよ!」 「いや、行くよ。捕まえるから。」 「何と契約してるんだよ!?おかしいだろうが! 牛の首の話を聞いても恐怖で精神を乱さないようになる都市伝説って――――!」 「いや、違うんだよね。俺頭おかしいから。別に精神攻撃なんて怖くないの。 契約している都市伝説は赤い部屋。 被害者の居た部屋が血で赤く染まっていたという逸話から相手を流血させたりできてね。 契約の副作用から少々力が強くなっているが……。 まあそれは所詮その程度のことだろ?」 愛する茜さんの顔だけを脳裏に浮かべる。 そうすることで都市伝説【赤い部屋】単体の力を極限まで引き出す。 この状態だと瞳が赤く染まって見えるそうだ。 「う、うわぁぁぁああ!」 牛の首の契約者は恐怖にかられて俺に飛びかかってくる。 だがまるで素人の動きなので見切って躱すことは容易い。 すれ違いざまに彼の足を指でなぞる。 そこから真っ赤な血が噴き出した。 「さぁ少年、このまま赤くなりたいか?」 「…………あ、う。」 「立てないならば良い、盗んだ宝石はもう勝手に回収したから君に拷問をするつもりはないしね。」 腰を抜かした少年に手をさしのべる。 駄目だ、子供ができると思ってからと言う物子供に甘くなってしまった。 自分の子供の頃を思い出せば子供だからと言って戦闘時に優しくする必要が無いことは解るはずなのに。 最近では子供相手に欲情する罪悪感でコミックLOの定期購読までやめてしまったのだ。 俺がさしのべる手を掴むこともなく少年はやぶれかぶれで殴りかかってきた。 それを咄嗟にパソコンで受け止める。 そのパソコンの形はとても奇妙だ。 液晶に浮かぶ赤い部屋のポップアップ。 キーボードがあるはずの場所にはYesと書かれた巨大なボタンが一つだけ。 まるで盾みたいなデザインだ。 「ふむ、まだやる気があったのか。」 「こんなところで捕まってたまるかよ!」 「いいや、捕まっておけ。今ならまだ取り返しがつくんだから。 そんな台詞は取り返しがつかなくなってから吐くものだよ。」 赤い部屋のポップアップが消え去る。 それと同時に液晶画面から真っ赤な手が大量に出てきた。 「な、なんだよこれ!?」 「赤い部屋だろ、お前がイエスを押すから悪いんだ。まあ少し中で反省してな。」 逃げようともがく暇もなく、牛の首の契約者はパソコンの中に引きずり込まれてしまった。 このまま真っ赤にしても良いのだがそうすると依頼成功にならない。 こいつはパソコンの赤い部屋に閉じ込めたまま持ち運びして組織に引き渡して、 依頼人にはこいつの盗んだ宝石を返して、それで依頼は終了だ。 「さて、今日の仕事は終わりっと。」 パソコンを懐にしまって歩き始める。 探偵の仕事はビルの経営より地道で稼ぎも少ないが中々どうして充実感がある。 警察よりも自由に、組織よりも勝手に、都市伝説の事件に関与できるというのは中々悪くないものだ。 多重契約より単一契約の方が都市伝説の力を引き出しやすい。 当然のことである。 そもそもほとんどの人間が単一契約しかできないのだ。 そして多重契約できる人間がたった一つに契約を絞った時、 通常では考えられないレベルでの都市伝説との同調が可能になるらしい。 それが今の俺、とサンジェルマンは言っていた。 多重契約のハイパワーさは無い代わりにたった一つの都市伝説の力を極限にまで引き出している。 ある意味俺の特化した才能にぴったり合っている状態なのだそうだ。 この眼が赤くなるのだけは少し恥ずかしいのだが……まあそれはそれか。 「帰りはラーメンでも喰っていくか……な!?」 「飯……、腹減った……。」 ボソボソと聞こえるつぶやき。 チラッと路地裏を眺める。 男とも女ともとれる外見の人間らしき何者かがそこで倒れていた。 間違いない、新手の都市伝説だ。気配はないがそうに違いない。 「おい、あんた大丈夫か?」 「腹減った……。」 「解ったよ、ついてこい。なじみの店が有るんだ。」 厄介ごとが飯の種である探偵稼業。 俺は迷わずそいつを助けることにした。 ラーメン屋の暖簾をくぐると店主がいつも通り暇そうに座っていた。 「おおっ!?笛吹さんどうしたんだい?」 「いや、厄介事(メシ)の種がそこらへんに転がっていたんで……。」 「…………。」 「この人には味噌大盛り細切れチャーシュー葱マシマシの背脂アリアリで頼む。 俺は魚介醤油メンマ多めな。」 「あいよっ!」 「それとビールと餃子、先にお願いできるかな?」 「よしきた、ちょっと待っててな。」 さて数分後、俺の餃子とビールは出てくると同時にすべて奪われていた。 何時の間にか俺の魚介醤油まで喰われており、結局俺は同じラーメンを三度頼まねばならなくなった。 一体どれほどの間こいつは物を喰ってなかったのだろうか。 「おいあんた、俺は私立探偵の笛吹丁っていうんだけどさ。 あ、ちなみにこれ名刺ね。……名前を教えてくれないか?」 「ん……あれ、あんた誰だ。今までの記憶がすっぽり抜けてて……。」 「笛吹丁、探偵だ。」 「おー名刺だ。成る程成る程、それで、なんで俺は探偵さんと飯喰ってるんだ?」 「空腹で倒れていたから俺がラーメン屋さんに連れてきた。」 「そうだったのか!そりゃあありがたい!」 「それで名前を……。」 「ああ、俺の名前は禰門椿、格闘家だ!」 格闘家、また妙な身分の相手と知り合った物だ。 まあ私立探偵を名乗る自分も人のことは言えないが。 こうなれば乗りかかった船だ、最後まで助けることにしよう。 とりあえずこいつに今晩宿の当ては有るのだろうか、と本人も気にしていないようなことを俺は真剣に悩み始めたのである。 【上田明也の探偵倶楽部after.act4~こぼれた砂の最後の一粒~fin】
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【上田明也の協奏曲32~月夜に踊る踊る踊る~】 俺の契約する都市伝説にはまだ進化の余地がある。 これから戦いがよりいっそう激しくなることが予知される現在、俺はその進化をせねばならない そう結論した俺は夜中こっそりバイクで事務所を抜け出して特訓をしようとしていた。 努力をしなければ進化なんて、より強くなるなんてありえないからだ。 「…………さて、」 とは言ったものの何をしよう。 真夜中に一人で近所をうろうろするって完全に痛い高校生じゃないか。 夜の散歩で己の影に向かう俺かっこいいーってか? おお寒い寒い。 ――――――――――真面目に考えると 都市伝説の能力でまだ使ってない部分を引き出すか もう使っている部分を更に強化するか 自分がやれることはそのどちらかである。 自分は都市伝説の中でも“操作系”の都市伝説能力の扱いに適正があるらしい。 更に“操作系”に対する飛び抜けた才能から説明のしようがない系統の都市伝説能力も引き出せるそうだ。 逆に何かを“変化”させる能力や 有りもしない物を“作り出す”能力、 そして自らの身体を“強化する”能力も引き出しづらいらしい。 さて自分は都市伝説の“操作する”能力を引き出したが、それ以外には大して何もしていない。 ならば自分は操作系以外の能力を試しに引き出してみれば良いのではないだろうか。 「月の綺麗な晩だなあ……。」 何の気無しに空を見上げると月が綺麗だった。 赤くて黄色くて青くて黒くて白くて明るい丸い月。 さっきまで自分は何を考えていたのだかも忘れてしまいそうだった。 そうだ、俺は月夜の晩に散歩するといつもなにか出会いがある。 今日もそれを待つとしようか。 「イヤアアアアアアアアアアアアア!」 ああ、どこかで誰かが襲われている。 まあとりあえず助けに行ってみるか。 本当に助けるかどうかは襲われている人間見てから決めればいいし。 そもそもあれが今日の俺に与えられた出会いかもしれない。 俺は悲鳴の方向にバイクを走らせた。 俺が見たのは芥子色のセーターを着た女性に襲いかかる首無しライダーだった。 暗くても俺にはよくわかる、あの変態的なファッションセンスを除けば中々好みのタイプだ。 いいやむしろ! 可愛い女の子はちょっと変人なくらいの方が萌える! なぜなら親しみが持てるから! 俺は女性を守るようにその首無しライダーを奴のバイクごと我が愛車IMZ・ウラルwithサイドカー(戦闘仕様)で挽き潰す。 目前の敵の骨を粉砕撃滅するいい音が響いた。 「ライダー!ヴィア・エクスプグナティオ!? 私がマスターにでもなるの?」 何を言っているのだろう、頼むから日本語で話して欲しい。 「……ライダーって、仮面ライダー?」 「え、あ、……何でもないです。ってあれ? よく見たら貴方は…………。」 「お久しぶりです看護婦さん。お変わりありませんか?」 「今は看護師なのです。」 ――――――――――ていうか、知り合いだったのだ。 彼女は俺が先日起こした病院破壊事件で病院の建物が崩落する所に巻き込まれた看護婦だった。 俺が思わず助けてしまった後、精神が錯乱していたので放っておいていたのだが……。 「いやあそれにしても探偵さんには二回も助けられてしまいましたね。」 「なに、趣味でやってるから気にしないでください。 それよりもこの辺りは危ないですから……良ければ送りましょうか?」 「いやいや悪いですよ。 三回もお世話になってちゃ申し訳ないです。」 「それを言ったら俺だって前に病院で迷った時に道案内して貰っていますから。」 「ああ、そうだ! そういえばあの患者さんは今日退院でしたよね!」 「そう……ですね、まあ忙しくて中々あれ以来見舞いにも行けなくて……。」 「それは駄目ですよ、あの子……純ちゃんでしたっけ? 絶対探偵さんのこと好きですよ、罪な人ですねえあんな小さい女の子にまで好かれるなんて。」 「ははは……そうなんですかね?」 「そうですよそれは。」 「なのかなあ?あ、こっちのサイドカーに乗ってください。」 「わぁ、サイドカーなんて始めて乗ります!」 サイドカーに乗り込む看護婦さん。 ところで、サイドカーは運転席より少々低いところにある。 セーターで解らなかったが、上から見ると中々どうしてたゆんとしていらっしゃる。 素晴らしいことだ。 胸は無くても良いが有っても良い。 どちらにせよ均整のとれた麗しい形であれば良いのだ。 でも、この大きさは素晴らしい。それだけで一つの美として認めざるを得ない。 偶然にも立ったこのフラグは大事にせざるを得ないだろう。 修行なんて後回しだ。 友情・努力・勝利とか目の前のおっぱいに比べたら犬の餌なのだ。 「住所は?」 「えっと、北区の外れですね。ハッピーピエロ北区店の近くです。」 「了解。」 バイクは静かに走り出す。 月をかげらせる雲が伸びて辺りは急に暗くなっていた。 「そういえば探偵さん、探偵さんって何者なんですか? ビルを爆破してみたり空飛んでみたり……。」 「え、俺は探偵ですよ。ビル爆破したり空飛ぶだけの。」 「そうですか。」 「そうですね。ところで俺だけ質問されるのもあれなので俺から質問しても良いですか?」 「はい、どうぞ。」 「看護婦さんの名前を教えてください。」 「看護婦さんは看護婦さんです。」 「俺が聞いたのは名前です。」 「そうですか、じゃあ倉光とでも呼んでください。」 「解りました看護婦さん、じゃあそういうことにしておきます。」 「それじゃあ今度は私の質問です。 私をさっき襲った首の無い人は何者だったんですか?」 「都市伝説と呼ばれる物です。あれは首無しライダーかな?」 「なるほどなるほど……。」 何時の間にか質問合戦のようになっている。 面白い、俺と質問合戦しようなんて俺を知る人間は考えない。 だが今俺の前の前にいる彼女は俺をあまり知らないのだ。 ならば良いだろう、どうせだからとことん遊んでやろう。 まずはどれくらい狂っているのかを試すか。 「看護婦さん、あの事件の時に貴方は人命は軽いと言っていましたが……。 本当にそうなんでしょうか?」 「それはそうですよ、だってあんな良い人だった院長先生が死んでしまうんですもの。 だったら人間の一人や二人、簡単に死んでも構いませんよね。」 交互に質問をするというルールを無視してたたみかける。 「人間の一人や二人死んでも良い、それは正しいのでしょうか? 貴方はさっき襲われて悲鳴をあげた。 前に貴方を助けた時も貴方は恐怖だけでなく安堵の色を見せていた。 貴方自身は死にたくないんじゃないですか?」 「それはそうですよ、私はまだ死にたくないです。」 「貴方は人間じゃないですか。」 「ええ、人間です。人間だけどそれ以前に私です。」 「ふぅん……、そうですか。」 「じゃあ私からの質問を……。」 「ああ、【ちょっと待って】ください。」 狂う素質が有るかどうかのテストは及第点だ。 バイクを運転しているくせに隣に座っている彼女の瞳を覗き込んでお願いをする。 決めた、この娘で遊ぼう。 「もう、仕方ない探偵さんですね。」 「ありがとうございます。いや、【貴女に興味が出てきた物ですから】。」 言葉が浸透していく。 俺の言葉が、俺の気持ちが、相手の意志を無視して浸透していく。 相手は内側へ入り込んできた俺の気持ちを何時しか自分の気持ちと取り違える。 そして俺は相手のわずかな言葉から相手の気持ちを想像し、自分の中に取り込む。 勝手に想像して勝手に取り込んだ物を相手の内側にまた流し込む。 フィルターを使って都合の良いものだけを抽出するような作業。 「貴女は人間だけどそれ以前に自分は自分だと言いましたね。 だから人間が死んでも良いけど、自分は死にたくない。 ふむ、そうですよね。 世の中なんて無くなっちまえ、ただし自分除いて。 良くある話だ。 でもね、無くなっちまえとか、死んでも良いとか、 そんなこと考えている時にそう思っている対象って大抵人間全体じゃないんですよ。 むしろ人間ですらないことが多い。 貴女だって本当に無価値に思えたのは人間の命じゃない。」 「じゃあなんなんですか?」 「都市伝説のような非日常ですよ。 貴女が尊敬していた太宰院長の命を、尊い命を容易く奪った非日常。 貴女が非日常と言う言葉にどんな価値を認めていたか私には解らない。 でも心優しい一人の老医師の命をあんな簡単に奪う物ならば、 非日常という存在には価値なんてない。 そんなものただただ陰惨で残酷なだけだ。 そう思って貴女は非日常に絶望した。 でもそれを認めたくないから、貴女は人の命の価値がないと言うことにした。 …………なんて、戯れ言ですよ。探偵って仕事やってるとつい、こんな馬鹿なことを言ってみたくなる。」 自分で言っておいてあれだが自分は何を言っているのだろうか。 非日常の無価値さを認めたくないから、人の命の価値をおとしめて自らの平衡を保った。 だとしたら彼女はどれだけ非日常に夢を抱いているのだ。 「…………じつは、そうなのかもしれません。」 え゛っ? ……えっ? ―――――――ええええ!? どんだけ非日常に夢抱いちゃっているのこの子!? 「私、小さい頃から絵本が大好きだったんです。 お伽噺には何時でも出てくるじゃないですか、白馬の王子様。 ああいうのが何時か自分にも来てくれると信じて生きていたら何時の間にか大人になっていて……。 今も実家に暮らしていて両親に迷惑かけ続けで…… 趣味なんて絵本の代わりに何時の間にか嵌っていたゲームしかなく……。 女子力ダウンってレベルじゃない残念な現実ですよ。 そしてそこから逃げる為にまたゲーム等に逃避して……。」 たゆん 再びチラリと胸を見る。 あなたの女子力はどうみてもMAXです。 完全にカンストどころかオーバーリミットしてメーター振り切れているので安心してください。 「でも看護婦さん。俺思うんですが逃避するって悪いことですかね?」 「えっ?」 「俺なんてそこそこまともな家の生まれだったのですが家業が嫌で逃げ出しました。 商才だけは両親に似たらしくって探偵事務所は切り盛りできているんですけど…… まあこれも逃げですよね。 あと昔付き合っていた女性が最近結婚するらしいんですけど、 その結婚相手が俺のことをある理由から滅茶苦茶恨んでいてデスねえ……、、 なんていうかこのまま放っておくと後々面倒になりそうなんですけど俺は何も出来ていません。 まあこれもまたまた逃げですよええ。 とまあ学校町の名探偵と名高い笛吹さんですらこれですよ。 人間ってのはむしろ逃げない方が難しい。」 「名探偵……?」 「さっきの首無しライダーみたいなの退治して回っているんですよ。 料金は応相談、名刺には書いてませんけどね。 ちなみに暇な時は浮気調査やら失せ物探しやら人探しやらやってます。 都市伝説っていうかそっちの筋ではそこそこ有名なんです、そこそこ。」 「へぇ……。」 「で、まあさっきの逃げる逃げないの話に戻りますけどね。 現実から逃げるのは決して悪くないです。 ただ追いつかれるだけなんですから。 ただ追いつかれた時に痛い目に遭うだけですから。最悪振り切ればいい。 此処で問題なのはまたも貴女の言葉が貴女の心理を正確に表していないことなんです。 あなたは貴女が逃げているのは現実じゃなくて日常です。 ストレスの多い普段の生活から逃げたいと思っているだけです。 でも、貴女が逃げ道にしていた非日常も今回の事件で最低だと解ってしまった。 だから貴女は人の命の価値を切り捨ててまで非日常という自分の為の逃げ場を維持しようとした。」 「探偵さん、気になるんですけど……。」 「なんですか?」 「探偵さんが私を分析したことで私は日常にも非日常にも逃げ場がなくなっちゃったんじゃないですか?」 「いいえ、貴女はこれからも非日常を逃げ場にし続けたらいい。」 「え、だって私がもう非日常にも絶望しているって言ったじゃないですか。」 「ええ、でも日常と非日常は違います。 非日常は自らの意志で変えてしまいやすい。 日常は貴女以外にも沢山の貴女と関係有る人間が干渉してきます。 家族とか友人とか同僚とかですね。 そうするとそれを変えることに遠慮するでしょう? でも非日常ならそんな心配要らない。 なんせ貴女の非日常を知るのは私と貴女だけだ。 貴女は貴女の望むように貴女の非日常を楽しめばいい。 たとえば……、コスプレしてさっきみたいな都市伝説を倒してみるとか。 軽くヒーロー気分ですよ?」 「そんなの無理ですよ、だってあんなお化けみたいなの倒せる訳無いじゃないですか!」 「それが】【貴女の】【思い込みだ。」 なんとなく、遊びが最終段階に入ったと感じる。 あと少し方向性を示すだけで彼女は完全に狂う。 「そもそも都市伝説を倒すなんて簡単だ。 貴女も都市伝説の力を借りればいい。 いいや、それすら必要ない。 たとえば銃弾で眉間をぶち抜く。 もしくは毒薬でこっそりと命を奪う。 あとは俺みたいな人間を騙して都市伝説を無料で倒させても良いかもしれない。 まあ方法は任せますけど。 ありとあらゆる都市伝説について調べ抜いてその攻略法を探求していけば…… 極論ですが、只の人間でも都市伝説は倒せる。 そもそも妖怪だのお化けだの都市伝説の元になったもの達は 『人間に退治される為に生まれた』存在だと言われていますから。 彼等も所詮人間の望みから生まれた以上、人間に消されるのが宿命なんでしょうね。」 「…………なるほど。」 「わかってくれましたか? 只の人間だからって非日常に巻き込まれるだけである必要は無い。 むしろ楽しまないといけません。 物事は何でもハレとケがあります。 非日常を自分の望むように変革すれば、きっと楽しい人生を送れますよ?」 俺は微笑む。 彼女の顔が輝く。 眼と眼があってそこに一瞬の間が生まれた後、彼女は口を開いた。 「なるほどなるほど……そうですね! 最初からそうすれば良かったんだ、ありがとうございます!」 ――――――――――――――ああ、完璧だ。 もともと狂気に陥る素質が有る人間を完璧に堕とすのは何時でも楽しい。 だって彼等が本当に幸せそうにしてくれるから。 俺の作業が終わるとそこから先はたわいもない世間話をした。 お気に入りの中華料理店とか、お気に入りの麻婆豆腐とか。 そうやって話している内に何時の間にか彼女の家の前までついていた。 「困ったことがあったら何時でも言ってください。 これ、私のプライベートの方のメールアドレスと携帯の電話番号ですから。 都市伝説の倒し方までなら無料で教えられますし。」 「わぁ、ありがとうございます! あれ……今携帯もって無いんですか、赤外線通信の方が早いですよ?」 「そういえばそれもそうか。あんまりやったこと無いんだよなあ……。 これで大丈夫ですか?」 「はい、ばっちり登録されました!」 おいおい、白衣の天使のメアドゲットできちゃったよ。 流石俺、流石名探偵俺。 故意……じゃなくて恋の行方も操作……じゃなくて捜査しちゃうぜ!ってか。 「それじゃあ今日はここのところで。」 「はい、今日は本当にありがとうございました。 今度こそお礼させてくださいね、その中華料理店とかでご飯でもごちそうさせてください。」 「良いんですか?嬉しいなあ、無駄遣いして今週ピンチだったんですよ。」 今週ピンチとか当然嘘ですごめんなさい。無駄遣いなんてする性格じゃないです。 自分が持っているビルのテナント代も入っているのでほくほくです。 でもちょっとだらしないところを見せた方が良いじゃないですか、可愛らしく見えて。 心の中で看護婦さんに謝りながら俺はMZ・ウラルで事務所に向けて走り出した。 【上田明也の奇想曲32~月夜に踊る踊る踊る~fin】
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それは、明日 晶が、上田 明也から幼zy……少女、穀雨 吉静を預かっていた間のこと 「晶おねーちゃん、あれ、なぁに?」 「うん?…あぁ、アイスのワゴンだね」 穀雨と一緒に、食材の買いだしに出かけていた晶 …この穀雨と言う少女、外見に似合わずなかなか素敵な食欲の持ち主である 1人暮らしをしていた晶の家には、この少女の分の食材までは備蓄していなかったのだ 当然、買出しに出かける必要は発生する 「アイス?」 キラリーン 瞳を輝かせる穀雨 愛らしいその様子に、晶は釣られたように笑みを浮かべた 子供は苦手な晶だが、この穀雨と言う少女の無垢で無邪気な様子は、純粋に可愛らしいと思う 超能力を使わなくても、はっきりとわかるくらい伝わってくる感情は、見ていて何だか和んでしまう 「それじゃあ、荷物が増えて大変になる前に、食べようか?」 「いいの?」 いいよ、と頷いてあげれば、穀雨はますます瞳を輝かせた ぐいぐい、晶の手を引っ張ってくる 「早く行こうよー」 「わっ、とと、そんな引っ張らないでって」 苦笑しながら、穀雨に手を引かれて行く明日 アイスのワゴンに近づいていく、その最中 『-----わわっ!?』 「みゃっ!?」 「わたっ!?」 どんっ!!と 目の前から歩いてきた青年と、ぶつかってしまった 青年は、大きな荷物を抱えていて、前がよく見えていなかったようだ ぶつかった拍子に、荷物の中身が…リンゴが、道にぶちまけられた リンゴ、だけではない ぱらぱらと散らばっているのは…何かの、種? 『わ、わわわ……』 おたおたと、リンゴを拾い始める青年 リンゴは、転がりきる前に何とか拾えたようだが…ぶちまけられた種は、拾いきるのは大変だろう それを見て、穀雨が、種を拾うのを、手伝いはじめた ぶつかってしまったのが原因でぶちまけられてしまったのだから、手伝わなければと思ったのか… (…いや、違うか) 単純に、目の前で困っている人がいるから、助ける そんな動機で穀雨が青年を手伝ってあげているのに気づき、晶は笑みを浮かべた 本当に、いい子だ ……上田から、悪い影響を受けなければいいのだけれども 晶も青年を手伝って、種を拾っていってやる この形……リンゴの種か? 「はい、どうぞ」 「どうぞー」 「ア、アリガト、ゴザイマス」 晶達の言葉で、彼女達が日本人だと理解したのだろう 青年は、片言の日本語で、そう言って来た 晶は、改めて、その青年を観察する まるで、リンゴのように赤い髪の青年だ ひょろっ、とした頼りない長身を…言っちゃ悪いが、少々みすぼらしい服で包んでおり、ボール紙製の、ひさしの広い帽子を被っている …そして、よく見ると、裸足だ 街中を裸足で歩いて、痛くないのだろうか 「日本語、話せるの?」 「少シ、話セル、デス」 穀雨の言葉に、微笑んでそう言って来た青年 ぺこりと、頭を下げてくる 「親切、シテモラッタ、オ礼、スル、デス。アソコノ、ワゴンノアイス、ゴ馳走スル、デス」 「え、いや、そんな、悪いですよ」 どうやら、日本語がわかるようなので、日本語で応対する晶 …アメリカ暮らしをしてはいるが、彼女、英語がちょっぴり苦手なのである が、青年は人のいい笑みで続けてくる 「イエ、親切ニシテモラッタカラ。オ礼、シマス」 にこにこと微笑んでいる青年 …そして、アイスをご馳走してくれると言うその言葉に、瞳を輝かせている穀雨 ……うーん (…ま、いいか) 悪人とかではなさそうだし 「それじゃあ、お言葉に甘えて」 「アイスー!」 無邪気な笑顔の穀雨の様子に、晶も青年も、思わず和んだ笑みを浮かべたのだった 「ワタシ、ジョニー・アップルシード、イイマス」 もぎゅもぎゅもぎゅ 美味しそうに、バケツサイズの入れ物に入ったアイスを食べている穀雨 …これだけ食べて、おなかを壊さないだろうか そして、アメリカのアイスは、カロリーがとっても素敵な事になっているのだが…大丈夫だろうか 同じ女性として、そこを心配する晶 そんな最中、青年…ジョニーから、自己紹介を受けていた 「ジョニーさんか。私は明日 晶。この子は…」 「穀雨 吉静だよ」 口の周りにアイスをつけたまま、自己紹介した穀雨 …うん、口の周りを拭いてあげるのは、食べ終わってからでいいだろう 「ミス・アキラ、ト、ミス・ヨシズ、デスネ。ホントニ、アリガト、ゴザイマシタ」 ぺこり、と 改めて、頭を下げてきたジョニー 晶は、小さく苦笑した 「いえ、こちらこそ。ご馳走になっちゃって」 もぎゅもぎゅもぎゅ 再び、アイスに夢中になっている穀雨 …アイスに夢中で、多分、他の事は耳に入ってこないだろう そう考えて…穀雨は、ジョニーに尋ねる 「…ジョニーさん、都市伝説でしょ?」 「……!ワカル、デスカ?」 「うん、まぁ、ちょっと」 超能力と契約している晶 それくらいは、わかる …この、ジョニー・アップルシードと名乗った青年は、都市伝説だ だが、危険な存在ではない どちらかと言うと、聖人とか、そう言う類に近い存在のようだ 「ハイ、ワタシ、都市伝説、デス。リンゴ、アメリカ中ニ広メタ、言ワレタ、デス」 「あー…聞いたことあるようなないような。開拓者にリンゴの種を配った、アメリカ西部にリンゴをもたらしたって言われている人か」 …それで、リンゴの種を持っていたのか、あんなに大量に ちょっと、納得した 「アナタ達、都市伝説、怖イ、違イマスカ?」 「怖くはないよ。ジョニーさんは、危険な都市伝説じゃないしね」 危険な都市伝説だとわかったならば、そもそも、こうやってのんびり、穀雨をはさんでベンチ座って話していたりしない アイスだけご馳走になって、とっくに逃げている 「アメリカも、結構しゃれにならない都市伝説多いからね。でも、ジョニーさんはそう言うのとは違うでしょ?」 「…ソウ、言ッテモラエル、嬉シイ、デス。ソウ考エナイ、人間、多イ、デス」 そばかすだらけの顔に、笑みを浮かべるジョニー 都市伝説だと知られるだけで、大変な目にあう事も多いのかもしれない ジョニーは、晶と穀雨を、じっと見つめてきて… …そして、ごそごそと、持っていた荷物をあさりだした どうしたのだろう? 晶が首をかしげて、その様子を見つめていると…ジョニーは、一つのリンゴを取り出した それは、金色のリンゴだった 金メッキした、とか、そう言う感じはしない …元からこの色なのだ、と、そう確信できる、そんなリンゴ まさしく、黄金のリンゴだ 「コレ、アゲマス、デス」 「え…」 「アナタ達、ナラ、悪イ事ニハ、使ワナイ、思イマス」 渡された、黄金のリンゴ 晶は、それをじっと見つめる 「…これも、都市伝説…?」 「ハイ、ギリシャノ方ノ、神話ニ、出ル、戦争ノ原因、ナッタ、リンゴ、デス」 「もしかして、トロイア戦争の…?」 ギリシャ神話にて とある神と神の披露宴に投げ込まれた、黄金のリンゴ それには、「もっとも美しい女神へ」と書かれていた 披露宴に呼ばれなかったとある女神が、腹いせに投げたそのリンゴ 書かれた文字に、三人の女神が手を伸ばした 詳しくは割愛するが……ここから、トロイア戦争へと、話は動いていくのだ 「ワタシ、契約者、アッタ頃、ソノリンゴ、手に入レタ、デス。ワタシ、ソレ、アッテモ、使ウ、ナイ、デス」 「…でも、いいんですか?本当にもらっても」 「イイ、デス。アナタ達ナラ、大丈夫」 にこり、ジョニーは笑った そして、荷物を抱えてすくり、立ち上がる 「ソレデハ、ワタシ、モウ、行ク、マス。ミス・アキラ。ミス・ヨシズ。オ元気デ」 「アイス、ごちそうさまでした…ほら、穀雨ちゃん、お礼を言わないと」 「ありがとーございました!」 …おぉう、ジョニーと話している間に、穀雨の口の周りがアイスで凄い事にっ!? 慌てて、口の周りを拭いてやる晶 その、まるで姉妹のような様子に、ジョニーはにっこり、笑みを浮かべて リンゴとリンゴの種が一杯入った大きな荷物を抱えて、裸足で街中の喧騒へと、消えていった 後には、まだ何も書かれていない、黄金のリンゴが一つ 残されていったのだった to be … ? 前ページ / 次ページ
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□トレーラー 流れ、揺蕩い、巡りゆく 水は全ての源です 世界を巡り続ける水から得られるものは多いはず 罪や穢れを水の慈悲で雪ぎ、輪廻の罪業を落としましょう そうして魂を磨き続ければ、今生での解脱も可能です さあ、今日もお勤めに励みましょう 都市伝説と契約者TRPG キャンペーン 『怪異緊急対策特命室 夜雀たちの事件簿』 「File.5:真峯慈雨聖会跡地」 __神何処 □ハンドアウト(敬称略) ■神無月・恭介 取り乱す三葉、タマと呼ばれていた都市伝説”夜”、そして未来から来た水無月が立ち去った後。三葉の生家…木暮神社に入れなくなった。それと関連性は不明だが、各地の都市伝説が異常に活性化しているらしく、ただでさえ人手の足りぬ組織は猫の手も借りたい状況のようだ。 そんな中、あなたは本部から帰ってきた暗い顔の水無月に話しかけられる。 ■生川・紗良々 三葉と未来から来た水無月の失踪、及び夜と名乗る謎の都市伝説。わからないことだらけの中、伝手を当たりまくってなんとか手がかりらしきものを掴むことに成功した。三葉が契約した「夜」という化け物は相当古い伝承に残っているらしく、古よりの名門「土御門家」ならば何か知っているかもしれないらしい。とはいえ京都の閉じた名門、そう簡単にアクセスできる筈もなく、「土御門遙」と名乗る当主代理の少女はとりつくしまなくあなたを追い返した・・・と室長に報告しにいくこととなった。気が重い。 ■薄瀬・幸 三葉と共に消え去った青年・・・未来から来た水無月が使役していた黒龍、彼女(?)の声はかつて倒した「りゅうじんさまのゆめ」とまるきり同じであった。その件を室長に報告した結果、「りゅうじんさま」の事情聴取を執り行うこととなった。現在あなたは室長そして水無月と共に「りゅうじんさま」の死体に向き合っている・・・。 ■灰ヶ峰・紅葉 三葉と未来から来た水無月が立ち去ったのに前後して、各地で都市伝説が活発化しており、三葉の案件を抱えた室員たちも様々な任務に駆り出される始末。そんな中、あたたは室長の様子がおかしいことに気がつく。妙にため息が多いし、影響を受けたか室長室・・・実験室13号の内装もいつもより暗い。とはいえいつも通りに仕事はこなしており、その日もいつも通りPC達を呼び出して、眉間にシワを寄せて告げた。「このクソ忙しい時に悪いが、参考人に繋がるかもしれない野暮用を頼まれちゃくれないか」 ・・・強烈なデジャブに、ズキリ、と脳が痛んだ。
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死の行軍 都市伝説の説明 レミング(タビネズミ)は個体数が一定以上に達すると集団で海や川に飛び込んで死ぬ、というもの。 「現象系」の都市伝説なので力を持つには人との契約が必要 契約による能力 「契約者が指定した生物と半径10km以内にいる同種族の生物を自殺させる」という能力 指定した生物が人でも契約者に効果は出ない 能力対象の生物達は24時間以内には自殺する 能力対象の人は能力が発動した時点で感情といえる感情は無くなる 制約は 指定する生物は契約者から5km以内で姿が認識できてないといけない 自殺方法は指定できない 24時間以内に拘束されているなど自殺できる状況にならなければ能力は解除される
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赤い靴 所属・フリー(?) 童謡「赤い靴」は人攫いの歌である、と言う都市伝説から生まれた存在 日本人離れした男性の姿をしている 「10歳以上は皆ババア」と公言してはばからない真性のロリコンである 駄目だこいつ、早くなんとかしないと 能力としては、相手を異空間に引きずりこむ事と、童謡内にて「異人さん」としか歌われておらず、どこの国の出身かわからない事の拡大解釈から世界中の言語を話せる事である また、契約者に己と同じ身体能力を授ける事もできるようだ なお、過去には幼女を連れ攫い、残虐に殺してしまう老紳士として存在していた しかし、現在ではそんな過去の自分を嫌い、30代ほどの男性の姿になっているようだ 個体名としてジブリル・ドソワーニュ=メユール (Djibril・Daussoigne-Mehul)という名前を持っている事が判明した 「赤い靴」の契約者/赤坂 美樹 所属・フリー 小学校1,2年生くらいの少女 親にものすっごい甘やかされて育った我侭ガール 多分、親が会社社長なスーパー金持ち 私立の金持ち学校に通っているほか、バレエ、ピアノなど習い事多数 赤い靴と契約した経緯は不明 ダレン・ディーフェンベーカー(Darren Diefenbake) 黒い髪に黒い瞳、ひょろりと高い背丈の20代後半ほどの外見の青年 顔立ちは、どちらかと言うと西洋的である 黒服D並かそれ以上に慈悲深いお人好し どうやら、「組織」に狙われているらしい 都市伝説に飲み込まれ済っぽい ディラン・ドランスフィールド (Dylan Dransfield) 褐色肌に黒い髪、黒い瞳の青年 ダレンの知り合い ちなみに都市伝説である
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(このお話で出てくる怪奇チャンネルの契約者は、読み切りの主人公ではありません) 吐く息が白く、凍り付く。 少女はドアを開け、外を見た。 満点とまではいかないが、綺麗な星が輝く夜空だった。 マンションの7階から見える、下半分の世界は少女からすると澱んで見えた。 澱みを一睨みすると少女は、近くにあったファーの付いたケープを羽織り、玄関から足を踏み出す。 「まったく、これじゃお嬢様と言わんばかりのコーディネートじゃない」 少女は玄関の鍵をかけ、ヴァイオリンケースを模した鞄に鍵をしまい込む。 「ま、いっか。こんな時間に出歩いてる人は、ある程度までは、同じような人よね」 夜は氷点下まで冷え込むと、普通のテレビのアナウンサーが言っていた。 普通じゃないアナウンサーは、こう言っていた。 『今夜は、冷や汗も凍る寒い夜になるでしょう』 少女は、スカートのポケットからケータイを取り出す。 ケータイでスカートが、ぽっこりでるのは女の子としてどうだろうとも思うが、いざって時に一番頼れるのがこれしかないので、仕方がない。 カチカチとケータイをいじりながら、夜の町の探索を始める。 ケータイのメニューを開き、ワンセグをクリックする。 普通じゃないアナウンサーの出る番組がもうすぐ始まる。 時刻は、1 59 少女のケータイがあり得ないテレビ局の電波を受信する。 N○Kが映るはずのチャンネルで、二時を知らせる時報が鳴る。 怪奇チャンネルの始まりだ。 ○にも奇妙な物語を調子っぱずれにしたOPが流れる。 少女は、ケータイを見つめながら、周囲に神経を張り巡らせた 。 こんな夜中に女性が一人。 良くも、悪くも、人を寄せ付ける。 まぁ、系統的には弱ロリータファッションだが、今時珍しくもないだろう。と、思う。 少女が悶々と自身を変な自信で勇気づけている間に、番組は進行していく。 今日の内容は『人魚と魚人の違い』と『あの世ツアー地獄巡り三巡目』と、あとはちょっと覚えてられなかった。 「今日はハズレか。もう30分もたってるのに」 少女がいくら厚着しているとはいえ、とっくに体の芯まで冷えている。 「帰ろう、作戦の立て直しだわ」 『次は、学校町のピックアップ都市伝説&契約者です』 「待ってました!!」 食い入るようにケータイを見つめ、本体を握り直す。 画面の中の喪服のアナウンサーは淡々と抑揚のなく、まるでお悔やみを申し上げるように都市伝説と契約者の名前を告げていく。 「さあ、早くしないとあなたの名前が出るわ」 少女は、首から下げたネックレスを服の上から確認する。 少女の気持ちの高ぶりとは裏腹に、付近には物音一つしない。 街頭や、殆どの家から消されたはずのわずかな明かりだけが、世界からの文化的な息遣いだった。 『では、続いて次の~』 気が付けば、44分人の都市伝説と契約者の名前が垂れ流され、何事もなかったように次の番組に移行していた。 「・・・。ダメか」 少女はふう、と真白の青息吐息。 「実行してみただけ、良いよね。寒いし、帰ろう」 少女が踵を返そうとしたとき、足が止まった。 怪奇チャンネルが映し出していたのが、学校町。しかも、自分が今さっき通ってきた場所だったからだ。 画面が激しくブレている。カメラを持ったまま走っているところなのだろう。 脇のテロップを見る。ケータイの画面では、小さくて読めない。 『我々は今、ピックアップ都市伝説、ワーストランキングに入るだろう期待の新人を追っています』 ちょうど良く喪服のアナウンサーの説明が青白い顔と共に入り、画面外に消えていった。 ごくり。 少女は、生唾を飲んだ。 この、近くだ。怪奇チャンネルのクルーがこの近くまできている。 少女にとっての問題は勿論怪奇チャンネルのクルーではない。 「都市伝説・・・ワースト・・・」 少女が、身を強ばらせたときだった。 「動くな」 背後で男性の声がした。 声から多分、老けていないことはわかった。 それ以上にわかったことは、後ろの人間の尋常じゃない殺気と、背中に当たる尖ったものだった。 殺気に関しては、まだ。認識はしているが、理解はしていなかった。 こんな時間に出歩いているなんて、変質者か、犯罪者か、目的があって動いているやっぱしちょっと認識のはずれた人かしかいない。 平たく言えば、同族なんだろう。 都市伝説という言葉を吐いた、タイミングと言い。 思惑は、当初の作戦通り。 後ろをとられたことは、作戦のイメージ外だった。 少女は、今のところ"動くな"という命令に従っていた。 次に動きがあれば、打開策に打って出る。 少女が気合いを入れて、ヴァイオリンケースを握りしめたときだった。 「チッ、お前は違う」 背中に付いた、尖った感覚が離れていく。 後ろの人物が駆け出すのと、振り向いたのはほぼ同時。 まず目に入ったのは、ファー付きの白いダウンジャケット。 フードを被った頭は、顔は見えない。黒いズボンに、白いスニーカー。 少女は、今し方まで突きつけられていた、凶器の確認をする。 愕然とした。 思わず、言葉が口を付いて出た。 いや違う。言葉が常識、配慮、その言葉を吐いたことで陥る気まずい空気。何もかもをすっ飛ばして出てきた。 「・・・スプーン・・・」 少女の頭の中で、小さくなる白い服と、小学生の時に食べた給食の時の映像がダブる。 そう、給食で使った金属のスプーン。別名、すいかスプーン。 少女は、疑問を感じた。 何故自分はあれを、尖った凶器だと勘違いしたか? どう考えてもあれは、尖った凶器にはなり得ない。 もう一つ。何故、あんなにハッキリとスプーンが、スプーンだと認識できたか? 街灯があるとはいえ、夜の闇の中。 去っていく人間を確認できたのも、白い服を着ていたからだった。 「・・・?、去って・・・。ああ!」 少女は、頭を抱えた。みすみす見逃したのだ。 向こうから現れた、都市伝説の契約者を! 見ず知らずの自分を狙ってくるあたり、無差別の犯罪者だ! 「あれ、でも・・・」 少女は頭の中でリピートする。 "お前は違う"という台詞。 「意味は何?誰なら、当たりなのよ?」 ひどく不鮮明になった頭とは逆に、ようやく昨日を思い出した五感は電気信号を脳に伝える。 聴覚が、流れっぱなしの怪奇チャンネルの音声を拾う。 ケータイを見た。 『今、この公園に潜んでいる模様です』 テレビクルーのライトだけが、当たりを照らしている。 昼間のうちに、学校町の地図は頭に叩き込んだ。 街灯が一つもない公園。あそこしかない! 少女はヴァイオリンケースを小脇に抱え、走り始めた。 プロローグ 終
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(このお話で出てくる怪奇チャンネルの契約者は、読み切りの主人公ではありません) 吐く息が白く、凍り付く。 少女はドアを開け、外を見た。 満点とまではいかないが、綺麗な星が輝く夜空だった。 マンションの7階から見える、下半分の世界は少女からすると澱んで見えた。 澱みを一睨みすると少女は、近くにあったファーの付いたケープを羽織り、玄関から足を踏み出す。 「まったく、これじゃお嬢様と言わんばかりのコーディネートじゃない」 少女は玄関の鍵をかけ、ヴァイオリンケースを模した鞄に鍵をしまい込む。 「ま、いっか。こんな時間に出歩いてる人は、ある程度までは、同じような人よね」 夜は氷点下まで冷え込むと、普通のテレビのアナウンサーが言っていた。 普通じゃないアナウンサーは、こう言っていた。 『今夜は、冷や汗も凍る寒い夜になるでしょう』 少女は、スカートのポケットからケータイを取り出す。 ケータイでスカートが、ぽっこりでるのは女の子としてどうだろうとも思うが、いざって時に一番頼れるのがこれしかないので、仕方がない。 カチカチとケータイをいじりながら、夜の町の探索を始める。 ケータイのメニューを開き、ワンセグをクリックする。 普通じゃないアナウンサーの出る番組がもうすぐ始まる。 時刻は、1 59 少女のケータイがあり得ないテレビ局の電波を受信する。 N○Kが映るはずのチャンネルで、二時を知らせる時報が鳴る。 怪奇チャンネルの始まりだ。 ○にも奇妙な物語を調子っぱずれにしたOPが流れる。 少女は、ケータイを見つめながら、周囲に神経を張り巡らせた 。 こんな夜中に女性が一人。 良くも、悪くも、人を寄せ付ける。 まぁ、系統的には弱ロリータファッションだが、今時珍しくもないだろう。と、思う。 少女が悶々と自身を変な自信で勇気づけている間に、番組は進行していく。 今日の内容は『人魚と魚人の違い』と『あの世ツアー地獄巡り三巡目』と、あとはちょっと覚えてられなかった。 「今日はハズレか。もう30分もたってるのに」 少女がいくら厚着しているとはいえ、とっくに体の芯まで冷えている。 「帰ろう、作戦の立て直しだわ」 『次は、学校町のピックアップ都市伝説&契約者です』 「待ってました!!」 食い入るようにケータイを見つめ、本体を握り直す。 画面の中の喪服のアナウンサーは淡々と抑揚のなく、まるでお悔やみを申し上げるように都市伝説と契約者の名前を告げていく。 「さあ、早くしないとあなたの名前が出るわ」 少女は、首から下げたネックレスを服の上から確認する。 少女の気持ちの高ぶりとは裏腹に、付近には物音一つしない。 街頭や、殆どの家から消されたはずのわずかな明かりだけが、世界からの文化的な息遣いだった。 『では、続いて次の~』 気が付けば、44分人の都市伝説と契約者の名前が垂れ流され、何事もなかったように次の番組に移行していた。 「・・・。ダメか」 少女はふう、と真白の青息吐息。 「実行してみただけ、良いよね。寒いし、帰ろう」 少女が踵を返そうとしたとき、足が止まった。 怪奇チャンネルが映し出していたのが、学校町。しかも、自分が今さっき通ってきた場所だったからだ。 画面が激しくブレている。カメラを持ったまま走っているところなのだろう。 脇のテロップを見る。ケータイの画面では、小さくて読めない。 『我々は今、ピックアップ都市伝説、ワーストランキングに入るだろう期待の新人を追っています』 ちょうど良く喪服のアナウンサーの説明が青白い顔と共に入り、画面外に消えていった。 ごくり。 少女は、生唾を飲んだ。 この、近くだ。怪奇チャンネルのクルーがこの近くまできている。 少女にとっての問題は勿論怪奇チャンネルのクルーではない。 「都市伝説・・・ワースト・・・」 少女が、身を強ばらせたときだった。 「動くな」 背後で男性の声がした。 声から多分、老けていないことはわかった。 それ以上にわかったことは、後ろの人間の尋常じゃない殺気と、背中に当たる尖ったものだった。 殺気に関しては、まだ。認識はしているが、理解はしていなかった。 こんな時間に出歩いているなんて、変質者か、犯罪者か、目的があって動いているやっぱしちょっと認識のはずれた人かしかいない。 平たく言えば、同族なんだろう。 都市伝説という言葉を吐いた、タイミングと言い。 思惑は、当初の作戦通り。 後ろをとられたことは、作戦のイメージ外だった。 少女は、今のところ"動くな"という命令に従っていた。 次に動きがあれば、打開策に打って出る。 少女が気合いを入れて、ヴァイオリンケースを握りしめたときだった。 「チッ、お前は違う」 背中に付いた、尖った感覚が離れていく。 後ろの人物が駆け出すのと、振り向いたのはほぼ同時。 まず目に入ったのは、ファー付きの白いダウンジャケット。 フードを被った頭は、顔は見えない。黒いズボンに、白いスニーカー。 少女は、今し方まで突きつけられていた、凶器の確認をする。 愕然とした。 思わず、言葉が口を付いて出た。 いや違う。言葉が常識、配慮、その言葉を吐いたことで陥る気まずい空気。何もかもをすっ飛ばして出てきた。 「・・・スプーン・・・」 少女の頭の中で、小さくなる白い服と、小学生の時に食べた給食の時の映像がダブる。 そう、給食で使った金属のスプーン。別名、すいかスプーン。 少女は、疑問を感じた。 何故自分はあれを、尖った凶器だと勘違いしたか? どう考えてもあれは、尖った凶器にはなり得ない。 もう一つ。何故、あんなにハッキリとスプーンが、スプーンだと認識できたか? 街灯があるとはいえ、夜の闇の中。 去っていく人間を確認できたのも、白い服を着ていたからだった。 「・・・?、去って・・・。ああ!」 少女は、頭を抱えた。みすみす見逃したのだ。 向こうから現れた、都市伝説の契約者を! 見ず知らずの自分を狙ってくるあたり、無差別の犯罪者だ! 「あれ、でも・・・」 少女は頭の中でリピートする。 "お前は違う"という台詞。 「意味は何?誰なら、当たりなのよ?」 ひどく不鮮明になった頭とは逆に、ようやく昨日を思い出した五感は電気信号を脳に伝える。 聴覚が、流れっぱなしの怪奇チャンネルの音声を拾う。 ケータイを見た。 『今、この公園に潜んでいる模様です』 テレビクルーのライトだけが、当たりを照らしている。 昼間のうちに、学校町の地図は頭に叩き込んだ。 街灯が一つもない公園。あそこしかない! 少女はヴァイオリンケースを小脇に抱え、走り始めた。 プロローグ 終