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月の下、絶叫が響き渡り、血飛沫が飛ぶ 野生の兄貴が、今夜も狩られる 憎悪と殺意を漲らせ 一人の青年が、兄貴達をメッタ切りにしていた かくして、今宵もまた、十数体の野生の兄貴が、「かごめかごめ」の契約者によって退治されたのだった 「お見事ですね。流石は「組織」の人間です」 そんな青年に、淡々と声をかけてきた女性がいた …この学校町の警察組織において、幹部クラスに身を置いている女性で、名前は広瀬 美緒 どうやら「組織」と繋がりがあるようで、今回の野生の兄貴出没報告をしてきたのは彼女なのだ 正確には、彼女が「組織」のエージェントである黒服Hに連絡し、そこから青年に仕事が回ってきたのだが 「…あれに関しては、本当、ご迷惑かけます」 「全くです。一般人の被害報告がどれだけ出ていると思っているのです」 頭を下げた青年に、容赦なく広瀬はそう告げた 反論できないのが、痛い 「聞いた話によれば、あれが発生した原因は「組織」のとある黒服が原因だとか……「組織」は、一体何をやっているのです。訴えますよ?勝ちますよ?」 「「「あれを制御できる奴なんて、この世に存在しない」」」 きっぱり 青年と、ハクとコンの言葉が見事にシンクロした うん、あの禿をコントロールできる存在なんて、この世に存在してくれていない 悲しいことに 青年達の答えに、広瀬は小さくため息をついた 「…まぁ、いいでしょう。再び、あれの出没証言がでましたら、あなたに伝えます。連絡先を教えてくださるでしょうか?」 「えぇ、構いませんよ」 携帯電話の番号をやり取りする 正直、直接連絡してくれた方が、即座に退治にいけるから、ありがたい 滅びよ、野生の兄貴 ゲイなんぞ滅びよ 軽く、憎悪をたぎらせる青年 そんな様子に気付いているのかいないのか…広瀬は、小さくため息をついた 「…あなたのようなまともな人も、「組織」にいて助かりました。むしろ、あなたのような方と、先に接触したかったです」 「………まぁ、最初に接触したのが、あのHじゃねぇ」 うん、となにやら納得した様子のハク あの男は、色んな意味で問題があるから …特に、女性にとっては 「全くです……よりによって……」 ……ふと 広瀬の表情に……寂しさのような、悲しさのような そんな色が、混じったような そんな錯覚を、青年は覚えた しかし、すぐにその表情は、冷たい物へと変わる 「…それでは、私はこれで」 「あ、はい」 かつかつと、ヒールをならして立ち去る広瀬 その最中、仕事の電話が入ったのだろうか 歩きながら対応している …なかなかに、忙しそうだ 「……うん?どうしかしたのか?」 「あぁ、いえ」 その後ろ姿を、無意識にじっと見つめてしまって コンに話し掛けられて正気に戻った青年は、軽く首を振った 気のせいだろうか あの広瀬という女性は、都市伝説のことを口にしている時 ハクやコンと話している時…憎悪を、押し隠しているような気配がした 都市伝説を、憎いんでいるのだろうか 憎んでいて、そうだと言うのに いや、それだからこそ、「組織」と繋がりを持って、都市伝説の存在を隠そうとしているのか …ただ、それだけでは、なくて 「…気のせい、ですかね」 気のせいならいいのだが あの広瀬という女性が、何か、都市伝説に付いて…もしくは「組織」に関する何かに関して 何か、因縁を持っているような そんな錯覚を、青年は覚えたのだった to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「君の命は百円だよ」 ピエロは笑顔で言った。 「厳密に言うともっと安いけどね。こう言ったほうがわかりやすいだろ」 「そうだな、そっちのほうがイメージしやすい」 「随分冷静だね」 「それが取り柄だ」 手足にかけられた手錠は本物。 いくら力を入れてもびくともしない。 「【マク○ナルドのハンバーガーには人肉が混ざっている】か。随分悪趣味な都市伝説だな」 「挑発はほどほどにしたほうがいいよ。ミンチになる時間が早くなるから」 「別に気にしない。なんなら、今すぐにでも実行すればいい」 「……生意気なガキは好きじゃないよ」 ピエロは肉切り包丁を手にした。 やけに様になっている。 「今まで何人バラした?」 「君は今まで食べたハンバーガーの数を覚えているかい?」 「四個だ」 「随分少ないね」 「ああ、だって俺は」 下半身に慣れた痛み。 「フライドチキンが好きだからな」 「なっ!?」 ピエロが驚愕の表情を浮かべた。 「サイコキラーが何を驚いている」 「……そりゃ驚くよ。いくら僕が手馴れだからって六本足の人間は捌いたことがない」 「足が四本増えただけだ。気にするな」 「いやいや、そこまで図太くないよ。しかも、それが商売敵の都市伝説とあっちゃね」 俺の契約都市伝説は、【ケン○ッキーに使われている鶏は六本足】。 飲食系都市伝説の中ではメジャーな方だ。 「まさか、手錠を外さずに移動を可能にするなんてね」 「といっても、割と不便だぞ。いくら、足が六本あるといっても中心の二本が使えないから歩きにくくてしょうがない」 「いいんだよ、それで。じゃないと、捌くのが余計難しくなる」 いつの間にか、ピエロは空いていた手にも肉切り包丁を握っていた。 「包丁の二刀流ってのはどうなんだ?」 「君の足が六本なんだ。このくらいしないと見劣りする」 「そうかい」 会話はそれっきりだった。 俺とピエロは睨み合う。 一瞬の隙も見逃さないとばかりに。 「ラン」 ピエロが小さく呟いた。 「ラン」 俺も同じ言葉を口にする。 「ルー」 「ルー」 俺と奴はほぼ同時に動き出した。 おまけ(六本足の獣を一通り読んでからどうぞ) 「カーネル君、昨日そんなことしてたの!?」 「ファーストフード界の名誉のためだ」 「その情熱を他のものにも向けようよ! でも、わざと捕まる必要はあったの?」 「工場を特定するためだ。捕まれば、精肉にするため連れて行ってくれる」 「あ、そっか。……あのさ、工場には『人肉ハンバーグなら腐るほどあった』オブラートに包もうよ!!」 「事実だしな」 「だからこそだよ! ちなみに、生存者は?」 「一人いた」 「おお!」 「蹴り飛ばしておいた」 「ファ!?」 「錯乱して襲いかかってきたからな」 「ああ、なるほど。その後は?」 「師匠に任せておいた。人肉バーガーの話を俺にしたのも師匠だ」 「ふーん、本当に血なまぐさい春休みを送っているね。カーネル君は」 「いつものことだ」 「当たり前のように言わないでよ! 私もめちゃくちゃ覚えがあるけど!」 「だったら言うな」 「……来月、高校に入ってもこんな感じなのかな?」 「知らん」 言葉通り、彼は知らなかった。 この春、一人の少女と元巫女と関係を持つことを。
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そして運命の日の明朝。 自動車のエンジン音が、明るくなりかけた朝の空に響く。 (黄昏母 気をつけてね。 (黄昏父 あぁ。 正義、母さんを困らせちゃダメだぞ? (正義 うん! お母さんはボクに任せて! あ・・・お兄ちゃんもお父さんを困らせたらダメだからね。 (裂邪 ヘィヘィ・・・ ブロロロロ... 自動車が出発した。 既に機嫌の悪かった裂邪だが、さらに機嫌が悪くなる。 (裂邪 (あ~ぁ、出発しちゃったよ・・・さらば、俺の世界征服の夢・・・) (黄昏父 寂しいか? 父が話を持ち出した。 叱る以外では、癌が自然に完治するぐらい非常に珍しいことである。 (裂邪 ま、まぁね。この町にも思い出はあるし。(どうかしたのか親父?) (黄昏父 そうだろうな。この町はお前が生まれて、正義が生まれて、そして育った町だからな。 そういった後、暫く間をおいて、また父が口を開いた。 (黄昏父 ―――今まですまなかった。 (裂邪 っ!? な、何さいきなり? (黄昏父 俺は、お前に立派な兄になってもらいたかった。 だが、いつの間にかお前に強く当たるようになってしまって・・・父親として失格だ。 (裂邪 ・・・んなことねぇよ。確かに俺は父さんに褒められた事も少なかったし、 愛情が偏ってるって感じたこともあった。 だけど、その度に俺は耐えて、耐えまくって、いつの間にか精神ばっかり強くなっちまった。 俺を強く育ててくれたのは、紛れもなく父さんだよ。 (黄昏父 裂邪・・・ (裂邪 「ライオンは我が子を崖に突き落とす」っていうし。てか、無視され続けるよりマシ――― (黄昏父 ありがとう・・・お前、本当に強くなったな・・・ 父の言葉を聞いて、照れくさそうに窓の外を見る裂邪だった。 暫くして、学校町東地区――― (裂邪 ぅわお! デカッ! こんないい家よく見つかったな。 (黄昏父 署に用意してもらったんだ。荷物は父さんが入れておくから、 お前は探検にでも行ってきなさい。 (裂邪 中学1年生になる息子に町の探検させるのかよ; (黄昏父 嫌ならいいぞ? この重い荷物を運んでもらうがな。 (裂邪 いってきま~す。 (黄昏父 ハハハw 昼には帰るんだぞ? (裂邪 さて、私、黄昏裂邪! 都市伝説の聖地「学校町」にやって参りましたぜ! (シェイド 見レバワカル。ココガ学校町カ・・・デ、サッキハカナリ湿ッポソウダッタガ? (裂邪 なんだ、聴いてたのか。 (シェイド マァナ。 シカシ、オ前モ世界征服ヲ諦メル時ガキタカ――― (裂邪 ハァ!?何言っちゃってんの?前に理由話したけど、 親父と仲悪いから世界征服したかったなんて言ってないぞ? (シェイド ソ、ソウナノカ・・・何故カ安心シタガ、ドコカ残念ダ・・・ とその時。「キャー!」とどこからか少女の叫び声。 意外に近い。 (シェイド 都市伝説ダナ。 (裂邪 行くぞ! シェイドの道案内の通りに暫く走ると、幼稚園ぐらいの少女が、 緑色のクネクネした人型の「何か」に襲われていた。 (裂邪 な、なんだありゃ!? (シェイド 少女ノ方ハワカランガ、緑ノ方ハ恐ラク「ゴム人間」ダナ。 (裂邪 「ゴム人間」?えらくマイナーな―――待て、あのコも都市伝説か? (シェイド アァ。 ドチラカラ片付ケル? (裂邪 「どちらから片付ける」ぅ!? 「どちら」って何だ!? 目標は一つしかねぇだろ! (シェイド ム?一ツ―――ア、ソウカ。 (少女 いやぁ・・・来ないで! (ゴム人間 ゲヘヘヘ、お嬢ちゃん、今ラクにしてあげるから――― (裂邪 こぉんのド変態がぁ! 裂邪は久々のメガトンキックをゴム人間に食らわせる。 流石はゴム、しなやかに伸びた後、まっすぐ遠くに飛んでいった。 (裂邪 ヒハハハハ、よく飛ぶねぇ~。 ん゛ん(咳払い)、お嬢さん、お怪我は? (少女 あぁ、はい、大丈夫です。 あの・・・ありがとうございます。 (裂邪 お礼なら後で。今からヤツを消してやるんで! 吹っ飛んだゴム人間がクネクネしながら戻ってきた。 (ゴム人間 効かんねぇ、「ゴム」だから―――ん? そいつはシャドーマン・・・ まさかお前、黄昏裂邪!? (裂邪 ほぇ? 意外や意外。 この俺の名がまさか学校町にまで届いているとは。 光栄だねぇ。 (ゴム人間 バカな!あれは『田舎で都市伝説狩りをしている』という都市伝説だったはず! (裂邪 俺都市伝説扱い!? はらわたが煮えくり返っちまいそうだぜ。 シェイド!『シャドークロー』! (シェイド 了解シタ。 その直後、シェイドが黒い爪状のものになり、裂邪の右腕に装備される。 (ゴム人間 な!? なんだそれはぁ!? (裂邪 『シャドークロー』だ。知ってるか? 「影はどんな形にもなる」、ある漫画家のお陰でそんな定義が生まれたのさ。 (シェイド (丁度良ク相手ガゴム人間ダナ。) (少女 か・・・かっこいい・・・ (ゴム人間 ・・・フン、だが遠くから攻撃すれば問題ない! ゴム人間が強く腕を引き、拳を前に突き出す。すると、例の海賊漫画のように腕が伸びる。 (裂邪 あ、想定外だった。 (シェイド 何ッ!? (裂邪 ―――ん・・・れ? 裂邪はゆっくりと目を開ける。 虹色に輝く薄い膜の球体が、緑の拳をプヨン、と弾いていた。 (裂邪 ・・・何これ? (少女 あの、大丈夫ですか? ふと裂邪は少女を見る。 彼女の手には、ストローがしっかりと握られていた。 (裂邪 ・・・もしかして、「シャボン玉」? (少女 あ、はい。 私、童謡の「シャボン玉」の都市伝説なんです。 (ゴム人間 クッ・・・そうだったのか! (裂邪 (あいつも知らなかったようだな。動揺してる今がチャンス)よし、ありがとう! 裂邪はシャボンの膜を破り、左手でゴム人間の腕を掴む。 ゴムの性質により、腕は縮み、ゴム人間は裂邪の元へ。 (ゴム人間 し、しまっ――― (裂邪 ヒィ~ッハァ! 裂邪は右手の爪でゴム人間の頭を鷲掴み、アスファルトに顔面をぶつける。大量の血が流れ出た。 (ゴム人間 グアァ!? なんで・・・ゴムなのに!? (裂邪 『シャドークロー』は触れた相手の能力を一時的に無力化する能力がある。 あと、何かの隙間があったら、こんなことも。 そう説明した後、ゴム人間を近くの塀の割れ目に押さえつける。 緑のゴムのボディが、掃除機で吸われるように引っ張られている。 (ゴム人間 グエェェェ・・・だ、だずげで・・・ (裂邪 悪いな。消すつもりはなかったが、これもまためぐり合わせ・・・恨むなよ。 ゴム人間は隙間に完全に吸われ、安堵の表情を浮かべる少女。だが、シェイドはどこか気がかりだった。 (シェイド (「悪いな」?「消すつもりはなかった」?「恨むなよ」? コイツ今マデソンナコト言ッテイタカ?) (裂邪 おっと、もうこんな時間か。 シェイド、帰るぞ。 (シェイド ッ! ア、アァ。 シェイドが元の姿に戻り、家路をたどろうとすると、目の前に瞳をきらめかせる少女が立ちふさがる。 (少女 あ、あの・・・ (裂邪 はい? (少女 も、もしよかったら・・・け、契約してもらえないでしょうか? (裂+シェ ハイ!? 流石の急展開に驚きを隠せない2人。 少女はさらに続ける。 (少女 き、急にごめんなさい! 実は私、最近この町で生まれたばかりで、 他の都市伝説に襲われては逃げての繰り返しで・・・ 私にやさしくしてくれたのは、あなたが初めてなんです! あなたに契約してもらえなかったら、私・・・ 涙を浮かべる少女。 汚れ、迷い、そして偽りのない涙だった。 裂邪は一瞬その澄んだ瞳に見惚れてしまった。 (裂邪 え、ど、どうしようかな・・・べ、べつに良――― (シェイド [待テ裂邪! 多重契約ハ何カト「デメリット」ガ多イトキク。 コノ娘ニハ申シ訳ナイガ、断ッタ方ガ身ノ為ダ!] (裂邪 [そ、そうか。残念だが・・・]ご、ごめんなんだけd――― (少女 あ、この姿はイヤですか? 年頃の女の子の方が好きですよね? 私、子供の女の子だったらどんな姿にでもなれるんです! (シェイド (イヤ何デ? 「シャボン玉」ノ有名ナ都市伝説ト大キク変ワッテシマウゾ? ドウイウ辻褄合ワセナンダ?) そもそも「シャボン玉」は、 『作詞者の子供が生まれてまもなく死んでしまった為、その様を「シャボン玉」にあてた』とされている。 つまり、この少女が幼稚園児の姿でいる事自体がつっこみどころなのだが。 (裂邪 いや、そういうわけじゃ――― ドロンッ! 幼稚園児のような姿だった少女は、一瞬で小学校高学年ほどの少女に変わった。 それと同時に、裂邪の目の色も一瞬で変わった。 (少女 あ、ご、ごめんなさい! 同い年ぐらいにするはずだったんですが・・・もうちょっと歳を――― (裂邪 いやいい! それでいい! 契約するからずっとその姿で俺のそばにいてくれ! (シェイド 裂邪貴様ァァァァァァァ!? とうとう本性を見せた裂邪。 しかし少女はどこまでも純粋だった。 (少女 ありがとうございます!・・・お役に立てないかも知れませんけど・・・ (裂邪 んなことないって! さっきも俺の事守ってくれたじゃん! 最高のパートナーになるよ!えっと・・・名前とかある? (少女 いえ、ありません。 暫く悩む裂邪。 その後、「そうだ」と呟いて、ポン、と両手を叩く。 (裂邪 『水泡』って書いて『ミナワ』って読むんだが、どう? (少女 ミナワ・・・素敵な名前です! (裂邪 決まりだな。 ミナワ、今日からお前は俺の2人目のパートナーだ! (ミナワ い、命を救ってくれた上に名前まで・・・私、一生お付き合いします! ご主人様♪ 『ご主人様』。 その言葉が裂邪の心に深く突き刺さった。 と同時に、彼の心のシャボン玉が弾けたようだった。 (裂邪 (・・・メイドとか全ッ然興味なかったのに・・・ なんで今はこんなに清々しいんだろう・・・) (シェイド (・・・駄目ダコイツ、早ク何トカセネバ・・・) (裂邪 よし、帰るぞシェイド!ミナワ! 今夜親父が寝た後に軽く宴会だぁ! (シェイド 了解シタ。 (ミナワ はい、ご主人様♪ ...END 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
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ファンキーな口裂けさん 14 男「そういや外国にも都市伝説ってあるのか?」 メリー「たくさんありますデース」 口裂け女「へぇ、なんか一つ教えてよ」 メリー「んー、そうデスねー…トゥース・フェアリーなんてどうデースか?」 男「歯の妖精か…そういや聞いた事があるな」 メリー「抜けた乳歯を枕の下に置いとくとコインと交換してくれるデース」 口裂け女「へぇ、随分気前の言い都市伝説ね」 トンカラトン「繰り返すと金持ちになれるっスね」 口裂け女「そうだ、男ちょっとやってみ 男「断る」 ですよねー」 メリー「代わりにこの男さんの部屋で拾ったちぢれ毛なんてどうデース?」 男「そんなもん変態以外誰も交換してくれねーよ!ていうか部屋に勝手に入るな!!」 口裂け女「男のちぢれ毛…ゴクリ」 男「反応するな!!!!」 前ページ次ページ連載 - ファンキーな口裂けさん
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様々な出来事がありつつ、長かった夏休みが終焉を迎え、 中央高校にて、新学期がスタートした ――――――――のだが、 「どうなってんのよあたし達の学校はぁっ!?」 始業式のあった日の放課後 制服姿で南区の繁華街を歩きながら、彼女―――紅坂 百花は叫んだ 契約者になると、都市伝説や他の契約者の気配が分かる事があるという 彼女はまさにそのパターンなのだが、その所為で色々ショックを受けていた 久しぶりの学校は、都市伝説の気配で充満していた 入学した4月から7月までの4ヶ月、よくもこんなところで普通に授業を受けたりしたものだと自分を感心した まず、契約者の数が多すぎる それは先輩だったり同級生だったり、はたまた教師だったり 果ては校長先生までが契約者である 「荒神先生、高元先生、後樹先生、エトセトラ、エトセトラ……出道校長まで契約者だったなんて……」 「ま、まぁ、そうじゃなくてもこの町は都市伝説が多かったし、仕方ないと思うけど;」 「現実は受け入れるべきだぞー」 「あんた達は何とも思わない訳!?」 「始めは僕も驚いたけど、すぐに慣れるよ」 「気にしても仕方ないしな」 「ハァ、あんた達は楽天家過ぎだと思う………」 「でも神経質だとすぐに疲れちゃうの」 横から口を挟んだのは、制服姿の蒼樹 月夜だった 実は彼女、今学期から中央高校に転校してきたのだ しかも偶然、百花達と同じクラス 因みに彼女には都市伝説の存在をきちんと話しているので、その話題に関しては何ら問題は無い まだ、彼女自身の契約都市伝説の事は話していないのだが 「少しくらい神経質になっても良いと思うんだけどなー!?」 「「「何で???」」」 「もう良いわよ知らない!!」 何故か怒り出す百花に、全員が首を傾げた ふと、月夜が視線を反らすと、新しいおもちゃを見つけた子供のように、ぱっと笑顔が輝いた 「月夜、どうしたの?」 「えへへへ♪」 ちょいちょい、と指で何かを指し示す 全員がそちらを向くと、ファッション専門店のショーウィンドウの前で、カップルが仲睦まじく話していた カップル、とは言え、年齢はまだまだ子供だった 少年の方は中学生くらいで、学校帰りだろうか、制服姿だった 少女は青い髪の小学校高学年のように見え、どちらかというと兄妹のようだったが、会話の内容は正しくカップルのものだった 「ミナワならこれとかも似合いそうじゃん」 「えぇ~!? こ、こここれもやっぱり派手すぎますよぉ///」 「お前なぁ、女の子は一度くらい着飾った方が良いぞ?」 「で、でもぉ……こ、これ結構高いですよ?」 「値段は気にするな、お前が喜んでくれたら何でも買うよ」 「……い、やっぱりダメです、ご主人様に悪いですから……」 「んー、いつも控えめな値段の服しか選ばないから、どうかなーと思ってたんだけどなぁ… ま、いっか、お前は服の値段関係無く、何着ても可愛いし♪」 「ひゃんっ/// も、もぉ、人前ですよ?///」 「いーじゃんいーじゃんスゲーじゃん、もう慣れたっしょ?」 「うぅ……そ、それはそうですけどぉ///」 聞こえるようにわざとやってるのか、その場にいる人間の半数が「もげろ」と言いたくなる光景 玄鳥も風音も、月夜につられて思わず笑みを零した 「なんだか、こっちまで和やかになるよね、人が仲良くしてるところって」 「そうだな……なぁ、百花はどう思ッ」 だが百花は違った その表情、目つき、オーラ、何もかもを漢字2文字で表すとしたならば、それは間違いなく“嫉妬” 10年以上も付き合いのある想い人に未だに心中を明かしていない彼女からすれば、 それは一種の挑発行為、否、宣戦布告のように思えた 必死に宥めようとする玄鳥達の声も聞かず、腕を撥ね退けてずかずかと2人に近づいていった 「そこの2人ィ!!」 少女はびくっと跳び上がって少年に隠れながら、 少年は平然とした様子で少女を庇うように百花を見た 「…中央高校の花の女子高生さんが俺達に何か用ですか?」 「さっきから見てたらイチャイチャイチャイチャと! 苛つくのよ!」 「はっはぁ~ん、さては姉ちゃん彼氏いない歴=年齢か? それで年下の俺が彼女とイチャラブってるのを見て逆恨みと そういうの、DQNって言うんだけど、知ってる?」 少女が止めようとするが、少年は「大丈夫大丈夫」と逆に制止する 爆発寸前だった百花の怒りが、とうとうビッグバンを起こした 「ああああああああ!! もう良いわ、あんたも契約者なんでしょ!? 戦いなさい!!」 「「はぁ!?」」 これには外野にまわっていた玄鳥と風音も度肝を抜かれた 「へぇ、姉ちゃんも契約者か、都市伝説は引かれ合うってのはマジだな、それ自体が都市伝説ってレベルで」 少年はその場にしゃがみ込むと、己の影に手を突っ込んだ ぎょっとする百花に構わず、中からベルトを取り出し、腰に巻いて金色の四角い物体を掴む 「ご、ご主人様、宜しいんですか?」 「下がってろミナワ、ご指名は俺だ」 「ふん、子供だからって容赦しないわよ!」 「お、おい百花、本気でやるのか!?」 「黙って見てなさい! こいつだって、あのおっさんと爺さんの仲間かも知れないでしょ!? 契約者全員が味方だなんて限らないのよ! それを皆気楽に考えちゃって! あたしが正義だってこと、分からせてやるんだから!!」 ペンダントを手に取り、握りしめる百花 「光の力を秘めし杖よ、真の姿を我の前に示せ。契約の下、百花が命じる……封印解除!!」 ひょい、と軽く手の中のものを投げると、ペンダントが「ロータス・ワンド」として顕現し、 百花は再びそれを掴んでくるりと回して構えた 「暗闇より出でし者達を、閃光の力を借りて掻き消さん! 紅き花、ここに咲く! 我が名は魔導少女クリムゾンブロッサム!!」 約2名が頭を抱えて呆れている そして約2名―――月夜とミナワは目を輝かせていた 「わお、結構面白そうな都市伝説じゃん 俺としては遊んであげたかったんだけどなー、お前は俺を怒らせた」 「はぁ?」 「俺がこの世で最も嫌いな言葉は――――――――“正義”だ!!」 手に取った金色のパスを空中に投げる それが落下してベルトのバックルの真ん前に来た瞬間、ぴたりと宙に止まり、 《レイヴァテイン》という電子音声が流れ、バックルの水晶体が黄金色に輝く 「……変、身」 パスが一瞬だけ植物の枝のような形を取ると、直後に金色の液体に変わり、少年の身体を包み込んだ 徐々にそれは、各部に鋭利な刃物の装飾が施された眩い鎧となった 「わあ、綺麗なの♪」 「え、あれも都市伝説なのか?」 「信じられない……あんな都市伝説聞いた事ないよ……」 (変身か……良いわね、考えておこうかしら) 暫しそんなことを考えてから、彼女は蓮の杖の先端に光を宿した 「光よ、命の輝きよ、世を覆う闇を振り祓え! 『トゥキャプミィ・レウォルフ』!!」 杖を振りかぶり、百花は少年に向かって先制攻撃を仕掛ける 「ウヒヒヒヒヒ、挨拶は真っ向から受けようか……『真・黄昏地獄拳』!!」 少年は右手で拳を作ると、黄金色の雷光を走らせ、迫る百花の攻撃を攻撃で返した 爆破音と痺れるような衝撃が広がり、2人は互いに吹き飛ばされるがすぐに態勢を整える 「くぅっ! 罪無き人々に害をなす者よ、罪無き世界の平和を脅かす者よ! 今こそその悪に染まりし穢れた心を、身体を、魂を、光に変えて闇に融けなさい! 我は汝を裁き、汝に罰を与える者なり!」 杖の先端に光が凝縮され、それが大きな光の花を咲かせる 「舞い散れ、『イャル・レウォルフ』!!」 ばっ!と光の花が散ったかと思えば、花弁が光の刃となり、軌跡を描いて少年に向かう しかし少年は、鋭い爪で空を裂くように腕を振ると、衝撃波を発生させて刃を相殺させる 「っ!? ふ、防いだ!?」 「ヒハハハハハハ! そんなもんかぁ? 攻撃ってのは……こうすんだよぉ!!」 両掌を内側にして合わせ、胸の前に構えると、掌の間にエネルギーの塊が発生する それを頭上に大きく振りかぶり、 「滅ぶのはお前だ! 『クェーサー』!!」 フリースローの要領で光弾を投げつける 咄嗟に、彼女は呪文を唱えて光の盾を作り出し、攻撃を防いだ 繁華街のド真ん中で激しい爆風が生まれる 光の盾は彼女を守ったが、光弾の威力が強すぎたのか、ぼろぼろと崩れてしまった 「っ……『スィギア・レウォルフ』を破壊するなんて、やるじゃない」 「ウヒヒヒヒヒ、「レイヴァテイン」の破滅の力を受け切る奴は初めてだぜ 何だろうな、あんたと戦ってると凄く楽しい気分だ、ぜぇ!!」 少年は拳を振り上げ、百花に飛びかかった 「それは奇遇ねぇ……あたしもおんなじ気持ちよ!!」 百花もまた、光を纏った「ロータス・ワンド」を叩きつけた ぶつかり合う拳と杖は再び激しい衝撃を生み出した 玄鳥達も、立っているのがやっとだ 「うぐっ……つ、玄鳥、あいつら止められないのか!?」 「そうしたいんだけど……他の追随を許さないって、こういうことじゃないかな……!」 「うぅ、2人とも頑張って欲しいの!」 「「何で!?」」 互いにまた間合いを取る百花と少年 ところが、百花の表情からは疲労の色が見え始めた 少年は顔こそ見えないが、呼吸が荒いのが分かる 「ヒ、ヒヒヒ……次が正念場だな」 「そうみたいね……これで、終わらせる!」 少年は全身に雷光を纏い、地面を蹴って高く跳び上がって、煌めく雷光を伸ばした右脚に集中させる 百花は呪文を唱え、杖の先に眩い光の力を集約させ、巨大な蓮の花を咲かせる 「『究極!ゲシュペンストキック』!!!」 「百花繚乱! 『グナブ・ギブ・レウォルフ』!!!」 今日一番の、町全体を震わせる程の爆音が轟き、爆発を生み出した がちゃ、と金属音を鳴らして煙の中から落ちてきた少年は、落下直後に鎧が元のパスに戻った 百花もその場でへたり込んでしまい、手から零れ落ちた「ロータス・ワンド」はペンダントに戻ってしまう 「っはぁ、はぁ………あ、あんた……結構、やるじゃ、ない………」 「……ヒハハハハハハハ……姉ちゃんも、な」 「ご主人様!」「「百花!」」「百花ちゃん!」 各々が、己の心配する者の元へと駆け寄った 支えられながら、よろよろと2人は立ち上がる と、少年が最初に口を開いた 「よし、もういいだろ……出て来いよおっさん!」 「おっさん?」 「……何故私をおっさんと呼ぶのだ?」 建物の陰から、黒いマントの男が、巨大なゴキブリの怪物を連れて現れた 「あれは確か……ケセド!」 「誰だあのおっさん?」 「知らないの」 「……コホン、コクマーの報告通り、確かに人数が増えてる……そちらの2人は報告に無いが」 「仲間だって言いたいなら俺達は違うぞ、今戦ったところだ」 「ふん、まぁいい……人間共に虐げられたその憎しみを解き放つがいい!」 「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァァァァ!!!」 「くっ、こんな時に……いい加減にしなさいよね!」 百花はもう一度、「ロータス・ワンド」を顕現させた が、戦闘の直後である為、身体がふらついている 「無茶しちゃダメだぞ百花、ここは俺が――――」 「ううん、あたしがやらなきゃ……」 「すっげぇ、なんかザケンナーみたい。何の都市伝説だろ」 「ナケワメーケにも見えますね」 『ザケンナー』、そして『ナケワメーケ』 その言葉の意味を知っているのは他でもない、『プリキュア』視聴者のみである 「っね、ねぇねぇ! 『プリキュア』見てるの!?」 「へ? あ、うん、毎週見てるよ」 「なぁんだぁ、早く言ってくれたら良いのにー! 『スイート』最高よね、メロディ超最高!」 「ほぅ、俺はキュアビート一択だな、ミューズは露出が少なすぎる」 「リズムも良くないですか? あの決め台詞、私は好きですよ♪」 「あー『気合のレシピ、見せてあげる』っていう奴? いいよねあれも! でもあたしはやっぱり『ここでやらなきゃ女が廃る』に惚れたわー♪」 さっきの戦闘は何処へやら 百花はかなり嬉しそうに、少年と少女と3人で『プリキュア』の話で盛り上がっていた 「……モエルーワ?」 「…構わん、殺れ」 「そうだ姉ちゃん、ここであったも何かの縁、いっちょ“あれ”で片付けない?」 「え、もしかして、“あれ”ですか?」 「良いわね“あれ”! やろうやろう!」 「「「“あれ”って?」」」 百花は「ロータス・ワンド」に光を溜める 少年は再び「レイヴァテイン」を呼び出し、それをステッキにして先端に雷光を纏わせる 少女は何処からともなく先端にリング状の装飾が施された青い杖を手にした 「「「駆け廻れ! トーンのリング!」」」 3人同時に、杖で大きく円を描き、 百花は白い光、少年は黄金の雷光、少女は七色のシャボン玉で大きな輪を作り出した 「「「プリキュア! ミュージックロンド!!!」」」 3つの輪は地平を走り、ゴキブリの怪物を捕縛して、フラフープのようにくるくると独りでに回る それを見た後、3人はまたも同時に、杖を頭上に上げ、振り下ろす 「「「三拍子! 1、2、3……………フィナーレ♪」」」 「モッ…モエルゥゥゥゥゥゥゥゥワ―――――――――――――――」 本日何度目かの花火が上がった 怪物はその姿を消し、爆煙の中からゴキブリが現れ、路地裏の中に消えていった 「…………久々の戦闘なのに出番これだけか……」 何故か哀愁を漂わせながら、彼はすぅっと消えていった 「やったぁ! そうよ、やっぱり『プリキュア』を愛する者に悪い奴なんていないのよ!」 「そうそう、『プリキュア』最高! 『プリキュア』万歳!」 (こいつら……どんな神経してるんだぞ;) 「…あ、ご主人様、お時間が…」 「マジ? あうち、もうこんな時間か。またね姉ちゃん、今度会ったらミューズの正体について語ろうや」 「楽しみにしてるわ! あ、あたし、紅坂 百花っていうのー!」 「俺は黄昏 裂邪! じゃあなー百花の姉ちゃん!」 互いに名乗り、手を振って別れを惜しむ2人 こうして、奇妙であり且つ混沌とした友情が、芽生えたのだった 「…ところで、さっきの技って何なの?」 「ハァ!? じゃあ今からあたしの家で『プリキュア』観賞会よ!」 ...続く 「ぐえっ、レクイエムさん、マジすいませんでした」 「やりすぎだ馬鹿者!! 少しは働く身にもなれ!!」 ...今度こそ続く 前ページ次ページ連載 - 花鳥風月
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-----あなたは、だぁれ? あなたは、その問いかけを誰にしているのか それを、理解していますか? Red Cape 「う……うぅん…」 「あ、起きた?…ねぇ、この子、目を覚ましたよー」 「骨を溶かすコーラ」の契約者からそう声をかけられ、彼は休憩所に入り込んだ 仮設ベッドに寝かされている少女は、確かに意識を取り戻したようだ …良かった、とほっと胸を撫で下ろす 「それじゃあ、僕、兄さんの所に戻ってるね」 「はい……どうか、お気をつけください」 「うん、大丈夫。兄さんだけを護るから」 「……お願いですから、ちゃんと仕事をしてください」 まったく、このヤンデレは… ため息をつき、黒い浴衣を着た少女に駆け寄る 「大丈夫ですか?」 「あ……え、えぇ」 こくこく、頷いてきた少女 どうやら、かなりショッキングな体験をしたようである …大体、想像できるのが嫌だ 「えぇと、私…」 「準備中のお化け屋敷に入り込んで、気を失った、と聞いています」 黒服の言葉に…何か、思い出したのか びくり、少女は体をすくませた …トラウマになりかけている、もしくは既にトラウマになっているようなので、あまり触れるべきではなさそうだ 「あのお化け屋敷には…とある都市伝説の契約者が、都市伝説と共に待機しているんです。その都市伝説と遭遇したようですね」 「……そう、みたいね」 思い出したようで、ぐったりしている少女 黒服は小さく苦笑し、そっと、少女の頭を撫でた 「落ち着くまで、この休憩所で休んでいてください……一応、ここは安全地点ですし」 「安全地点、ね……あなたは、どうするの?」 じ、と少女に見つめられる …何故、彼女はこの町から、逃げてくれなかったのか もしも…万が一の時に、備えて できれば、逃げていて欲しかった 「…私は、まだ、仕事がありますので」 すくり、立ち上がる …まだ、やらなければならない事がある 明日は、Tさんの作戦を手伝う必要もあるのだ 今日のうちにできる事は、全てやっておかなければ 日焼けマシンの契約者によって、半ば無理矢理休まされているから…体力は、少し余裕がある 少女が、何か引き止めるようなことを言った気もしたが…聞こえなかったふりをして、休憩所を出た 「………」 …この気配 気のせいだと、いいのだが 「…恐らく、違うのでしょうね」 小さく、苦笑する …とうとう来たか、というのが、正直な感想だ 自分は、確実に「組織」の暗部に敵対している形だ ……そもそも、今まで、こんな事態にならなかった方が、おかしい 黒服は、祭でにぎわう通りを避けるように歩き出し…人気のない場所へ、人気のない場所へ、と進んでいく 誰かを巻き込んではいけない 誰にも見られてはいけない さぁ、喰らい付け そちらとて、目撃される事は好まないだろう? 人気のない路地を、ゆっくりと進んでいると… 「………っ!?」 っが!!と 地面に、押し倒される 「やぁっと、見つけたぜ……!」 黒服を、押し倒し …同じく、真黒なスーツを着た男が、笑った 少女は、慌てて休憩所を飛び出していた あの黒服の姿は……駄目だ、見つからない 秋祭り初日、人通りは多く…あっと言う間に、その中に紛れてしまった 何故だろう どうして、そう思ったのだろう …黒服を、一人で行かせてはいけない そんな気が、したのだ 人波に逆らうように歩きながら進む 黒い服を着た人物は何人か見かけるのだが…あの黒服が、見付かってくれない 早く、早く見つけなければ 何か、取り返しのつかないことになってしまうような、嫌な予感 必死に、黒服の姿を探す中… …見つけた別の人物に、少女はやや嫌な思いを抱えつつも…背に腹は変えられず、そちらに向かって駆けていった やっと やっと、見つけた まったく、苦労させやがって あの端末め、壊れてんじゃないのか、こら 不良品を渡しやがって…! だが、まぁいい やっと、見つけたのだ これで、ターゲットを始末できる 「…暗部の者、ですね」 地面に押し付けられながら…D-No.962が、そう、口を開いた あぁそうさ、とB-No.004は笑ってやる 「何故、俺が差し向けられたか、わかるか?」 「……やはり、暗部は私が、邪魔ですか」 D-No.962が、小さくため息をつく なんだ、わかっているのか わかっていて、あんな行動をとっていたと言うのなら…こいつは、とんでもない馬鹿だ 「「組織」を裏切る行動をとったんだ、当然だろう?」 「…「組織」を裏切るつもりはありませんよ」 っは!! 何を、今更そんな事を! そんな言い訳が通じるとでも思っているのか B-No.004は、ナイフを構える 「……「組織」がこのままでいいとは、思えませんよ」 裏切り者が、何を言う? さて、どこを切り裂いてやろうか 喉元か、それとも、心臓を一突きしてやろうか… 「…わかりませんか?」 じ、とD-No.962が見上げてくる 何が、わからないと言うのか? 裏切り者の言い訳など… 「…都市伝説やその契約者が公の存在になる事を防ぐ…それが、「組織」の役目」 「あぁ、そうだな」 そうだ そんな、世の為の活動をしている俺達を、こいつは裏切って… 「…わかりませんか?今、暗部が行おうとしている事こそが…その「組織」の役目に、背いている事に」 ---ピタリ 思わず、ナイフを、止める D-No.962は、静かに、静かに …まるで、憐れむように、B-No.004を見上げてきていた 「「鮫島事件」の発動…むしろ、都市伝説の存在を公にしかねない、そうは、思いませんか?」 酷く、静かで、悲しそうな声だった --何を言っているのだ、こいつは そんな訳がない 「鮫島事件」が発動すれば、都市伝説の存在は隠される これは、正しい事なのだ 間違っているはずがない!! 何故、ナイフを止めたのか 何故、こいつの何の根拠もない言い訳を聞いてしまったのか B-No.004はやや、後悔しながら…今度こそ、D-No.962にナイフを振り下ろそうと… ----ッガ!! 「っ!?」 手に、何か当たった その衝撃に、思わずナイフを落とす 手に当たり、ちゃりん、と地面に落ちたのは…百円硬貨? 誰が、そんな物を投げつけて、邪魔をしてきたのか B-No.004がそちらに顔を向けると…そこには、黒い浴衣を着た、少女の姿と …こちらに向かってかけてくる、金髪の青年の姿が、見えた どちらも「組織」の人間ではない 何者だ? とにかく、百円硬貨を投げつけてきたのは、恐らく体制的に少女 この二人を「敵」であると認識し、B-No.004は落としたナイフを拾おうとして その手を、金髪の青年に、捕まれた じゅううううううううううううっ 「---っぐ!?」 手が……焼けている!? 激しい高温で、焼かれている感触 このまま、接触され続けるのは不味い!? B-No.004は青年の手を振り払うと、彼らから距離を取った 少女と青年が、D-No.962を庇うように、間に割り込んでくる…! …一緒に黒服と契約しようと同盟っぽいものを組んでいたガキが、何やら慌てていた 黒服を、探しているようだった 嫌な予感がするのだ、とそう言ってきて こちらとしても、いい加減、黒服に契約の話を持ちかけようと思っていたところだったから こいつと一緒に、あいつを説得しようと思って探した 俺達が、見つけたのは 同じ、黒いスーツを着た男に押し倒されている黒服の、姿と …あの黒服を押し倒している男が、ナイフを振り上げていた、姿 敵だ 俺達は、同時にそう理解した 少女が百円硬貨を、敵に投げつける 何らかの都市伝説と契約して、その能力を使おうとしているのだろうが…その攻撃が上手く決まるか、わからない だからこそ、俺もそいつに接近する 今から能力を発動しても、間に合わない だが、接近すれば……! 落としたナイフを拾おうとした敵の手を、掴む じゅうっ、と 体温が急上昇した俺の体が、そいつの手を焼いていく 激痛を感じたのだろう、そいつは急いで俺の手を振り払って、距離をとった よし、黒服から引き剥がせた! 「大丈夫!?」 「はい…」 けほ、と小さく咳き込んでいる黒服 良かった、まだ、どこも怪我していない 「てめぇ…っ」 ギロリ、俺は敵を睨みつけた …この黒服と、似たような格好 「組織」か!? 「何だよ、こいつは」 「…「組織」の…暗部の、者です。私を裏切り者と認識して、消しに来たようですね…」 自嘲するように笑っている黒服 こいつは、「組織」から消されるのを覚悟で、ここ数日、ずっと動いていた …もしかしたら、覚悟していたのかもしれない 自分が、消されるだろうと そして、その時が来たら…もしかしたら、受け入れるつもりだったのかもしれない …ふざけるな! そんな事をさせるか! 「っ気をつけてください。彼は、「組織」の暗部の中でも、暗殺を専門としている者です」 「…っは…暗部の情報を、どれだけ把握していやがるんだか…」 敵は、忌々しそうに黒服を睨んだ --そっちの事情など、知るか こちらは、何があろうと、こいつを「組織」から解放したいのだ てめぇらなんかに、こいつを殺させて溜まるか! 俺は、そいつを睨み続ける 敵の肌は、徐々に…日焼けしていていっている あと、もう少しで攻撃が出来る …その、瞬間 敵の姿は、俺たちの目の前から……消えた 「…っ」 まずい 相手の能力が何であったのか そこまでは、知らなかったのだが…この瞬間、理解する 「…「透明人間」ですか…!」 何という事だろう 相性が、悪すぎる 相手は単体 「はないちもんめ」の能力は、通じない そして、相手がこうやって姿を消す、となると …「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力も、通じない この青年が契約している、「日焼けマシンで人間ステーキ」には、攻撃発動までに時間がかかると言う弱点の他に、もう一つ …目視できない相手には攻撃できない、と言う弱点もあるのだ この青年が視認できない相手は、攻撃できない 相手が姿を消していては、攻撃が届かない どうする? どうすれば、この二人を逃がす事ができる? 彼は必死に考えるが…その間にも、その気配は、確実に、彼らに迫ってきていた ----畜生! 透明人間、なんて、そんなの有りかよ!? それも都市伝説なのかよ!!?? どこぞの国で、透明人間を作り出す薬ー、って都市伝説でもありやがるのか 誰だ、んな都市伝説生み出しやがったのは!? 苛立っても、どうにもならない 青年は、黒服と少女を護るように、敵の気配を探ろうとする 自分の契約している都市伝説の欠点が、弱点が、嫌になってくる 決まれば強いが、発動まで時間がかかるし、見えなければ攻撃できない 不意打ちには最適なのだが、そうじゃなければどうしても不利になる 畜生 どんなに強い力でも、今、こいつを護れないんじゃ、意味がない 今、こいつを護れない力じゃあ、意味がない!! 力が 力が、必要なんだよ 今!こいつを護れる、力が!! 今のこの力だけじゃあ、それが足りない!! 青年は、拳を握り緊める どうすれば、今、戦っている相手を攻撃できるか? 必死にそれを考える -----力が、欲しいか? ざわり そんな声が、頭に響いた気がした ----もっと、強い力が、欲しいか? あぁ、欲しいよ こいつを護れるだけの力が、欲しい!! かつて、俺を護ってくれたこいつを、今度は俺が護るのだ それだけの力が、欲しい!!! -----そうか、なら………くれてやろう!! そんな声が、はっきりと、頭の中に響いた気がして どくんっ、と 体中で、何かの力が脈打ったのを…俺は、確かに感じた あぁ、畜生 邪魔なんだよ、お前ら!! なんで、そんな奴を庇うんだ そいつは「組織」の裏切り者の黒服なのだ もはや、「組織」に不必要な存在なのだ 「組織」に不要とされた黒服に、最早存在している意味などない それを、どうして庇うというのだ お前らにとって、D-No.962にはどんな価値があるというのだ? 「組織」以外にとって価値がある黒服なんて、この世に存在するはずが…… (…そう、言えば) …そもそも、D-No.962は「組織」に対して裏切り行為を働いたのだ 「組織」にとって、最早不要なはずなのだ ……おかしい 「組織」にとって、不要な存在となった時点で…そもそも、自分が差し向けられなくても… …その存在は、消えるはずでは、ないのか? (………いや) 余計な事など、考えるな 自分がすべき事は、D-No.962を殺す事 そして、D-No.962を護ろうとしている、この人間二人も消す事だ 「透明人間」の力を発動したまま、B-No.004に近づいていく まずは、目標であるこいつから、消す 静かに、静かに、ゆっくりと、近づいていく 人間二人も都市伝説契約者のようだが…どうやら、視認できない相手は、攻撃できないようだ 警戒する必要も、ない 再び、ナイフを振り上げる さぁ、今度こそ……! この時 B-No.004と呼ばれる、この黒服は…最早、自分の仕事は完了したと、そう感じた そう信じて…疑いは、しなかった ナイフを振り下ろす その、瞬間 自分に襲い掛かってきた、紅蓮の炎に気づく事ができなかったと、しても それは、B-No.004には…何の落ち度も、無い事なのだ …炎、が 襲い掛かってきた暗部の黒服が…業火に焼かれていく様子を 彼は、呆然と眺めていた はないちもんめの契約者の少女も、驚いたように目を見開いている めらめらと 紅蓮の炎は揺れている …日焼けマシンの契約者の、その右手が 暗闇の中、美しいほどに揺らめく炎に包み込まれていた 「------っ!!??」 悲鳴をあげることすら、できないのだろうか 暗部の黒服は、炎に包まれ、燃やされ続けている 「…っの、野郎が…こいつに、手ぇ出すんじゃねよ…!」 青年が、燃え行く暗部の黒服を、睨みつけている 青年が向けるはっきりとした怒気が、暗部の黒服をますます強く焼いていく …何が、起きたのか? 正確には、理解できない ただ、はっきりとしているのは 突然、青年の右手から炎が出現し…その炎が、姿を消してこちらに襲い掛かろうとしていた暗部の黒服を包み込んだ事 見えなければ、発動しないはずの「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力 …それを越えた能力が、発動している 「…まさか…厨2病との、多重契約、ですか…っ」 --何という事か 多重契約など…そんな、リスクの高い事を!! 多重契約は、基本的にリスクが高い 似たような系統の都市伝説ならば、そのリスクは低いものの…基本的に、危険である事に変わりはない …辛うじて幸いと言えるのは、その多重契約した都市伝説が「厨2病」である事くらいだろうか 「厨2病」は、きわめて特殊な都市伝説である 先に、別の都市伝説と契約していた場合…元から契約していた都市伝説を、進化させる可能性がある その場合の多重契約のリスクは………その、多重契約する瞬間が、一番危ない 場合によっては、そのまま、一気に都市伝説に飲み込まれてしまうのだ その事実を、知っていたのか、否か …この青年は、一か八かの賭けをして…それに、勝ってみせたのだ 「日焼けマシンで人間ステーキ」…その、高温によって相手を焼く、という力をさらに拡大解釈させて、炎を生み出したのだ 暗部の黒服が、燃え続けている メラメラ、メラメラと 炎を振り払おうと、必死に地面を転がるが しかし、青年がそれを許さない 青年の右手から生まれる炎が、暗部の黒服を追撃した さらに、さらに、高温で焼かれ続け……暗部の黒服は、やがて動かなくなる 「……舐めるなよ」 ぼそり 青年は、低く呟いた 「俺は、こいつの為だったら……命の一つや二つ、惜しくはないんだからな」 その言葉が、暗部の黒服に、届いたかどうか 灼熱の炎に包まれて…暗部の黒服は黒く焼け焦げ、灰になっていこうとしているのだった 「……っと?」 ぐらり 一瞬、体が揺らいだ …酷く、体力を消耗したような気がする よくわからないが、自分は炎を出せるようになったようだ しかも、相手が見えなくても使える! これは、何とも便利だ 「大丈夫か?」 「…あなたこそ、大丈夫ですか?」 黒服が、ゆっくりと立ち上がる 少女は、そんな黒服のスーツのすそをしっかりと握りながら…こちらを、やや警戒するように見上げてきている なんだよ どうして、こんな警戒されなきゃなんねぇんだよ、俺が 「俺はどこも怪我なんてしてないぜ?」 ぼしゅ、と炎を消す 炎で包まれていたはずの右手は、火傷一つしていない 「…怪我、ではなくて……「厨2病」との多重契約など、無茶なリスクを…」 「お前の為だから」 きっぱり、堂々と、悪びれもなく、言い切ってやる そうだ、こいつを護る為なのだ その為なら… 「……っとと?」 ぐらり なんだ? なんで、こんなに疲れてんだ? 「…急に多重契約なんて、したからですよ」 ため息をつかれた …どうやら、炎を出す力、随分と俺の体力を消耗しやがるらしい ……便利なんだけどなぁ 連発は、無理そうか 「…それより。場所を移動しましょう。派手な事したから、人が来るわよ」 少女が、ぼそ、とそう言ってきた …あ、やべ 確かに、派手に炎を出したから、ヤバイかも…? 「…傍に、墓場がありましたね?あそこに移動しましょう……あそこなら「組織」の目も届きませんし、万が一「夢の国」が出現しても、大丈夫でしょう」 「あぁ、そうだな」 …まずは、そこに移動しよう そして、そこで、こいつに契約の話を持ちかけるのだ 大丈夫 二人がかりで説得すれば…きっと、こいつは受け入れてくれると思う 絶対に、こいつを救い出して見せるのだ その決意を胸に、青年は黒服と少女と共に、足早に路地から離れていった …あとには 黒く焼け焦げた、暗部の黒服…B-No.004の死体だけが、残されて しかし、その死体も、やがてはじめからそこに存在などしていなかったかのように…急激に風化して、風にふかれて、消えてしまったのだった さぁ 時は来た 全ての準備は整った …全ては、己が望みの、為に Red Cape 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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正体不明 05 逃がした獲物を追う時は、つい力が入るものである 姿を忍ばせたり気配を消したり、そんな事には慣れていないせいもあるが 「あ、逃げた」 真夜中に笑顔で駆け寄ってくる少女というのは、絵面的には結構恐いので当然のリアクションかもしれない つい先週ぐらいに取り逃がしたはずの獲物、旗上詩卯の姿を見つけ嬉々として追いかけたのは良いのだが、その姿を見た途端に詩卯は駆け出していた 当の詩卯はというと、その状況よりも少女の笑顔の下に潜む得体の知れない何かを察して逃げ出したのだが 「やばいなぁ、あの子はこないだのアレと同じ気配でやんの」 前回は居合わせたZ-No.999の能力でギリギリ逃れる事が出来たが、今回彼は報告や仕事があるという事で早々に駅で別れてしまっている つまり、逃げ切るのは不可能だという事 「都合良くまた助けがくれば別だけど」 やや諦め気味に、ちらりと後ろを振り返る 立て板に水を流すような勢いで迫る『ブロブ』 そして、その向こう 遠くに立つ少女の呟きが、まるで目の前の不定形生物が囁いたように詩卯の耳に届いた 「いただきます」 喰われる そう感じた瞬間、圧倒的な恐怖と絶望が思考を塗り潰した 「諦めるな、走れ!」 いつかと同じような だが違う男の声 視線を前に戻すと、そこにはやはりZ-No.999ではない見知らぬ青年が立っていた 「鞘甲亜網!」 男が拳を地面に叩きつけると、そこから地面が白く染まる スナック菓子を磨り潰すような音と共に、白い物体が詩卯の足元を駆け抜けるように広がり、道路を塞ぐかのように白い壁となって『ブロブ』を受け止めた 「長くは持たない! 逃げるぞ!」 「え、あ、うん」 男に手を引かれて、何が起きているか判らないまま駆け出す詩卯 その背後では白い壁に食むように纏わりつく『ブロブ』が蠢く姿があった ――― 「んもー、目の前のものから食べる癖は直らないんだから」 少女は白い壁をぐずぐずと溶かし取り込もうとするブロブをぺたぺたと叩く 「ていうか、これ食べれるの? 美味しい?」 白い壁は近くで見るとごつごつとしており、小さな貝のようなものの集合体である事が判る 「なんだっけこれ……えーと、フジツボ?」 ――― 「追っては来ないようだな」 息一つ切らさずに辺りを警戒する青年 対して詩卯は、完全に息が上がってその場にへたり込んでいた 「大丈夫か?」 「あ……あんまり……」 汗だくになりぜいぜいと荒い息を吐く詩卯を、青年は軽々と抱き上げる 「人気の無いところに留まっているのはまずい。どこか落ち着ける場所まで送ろう」 「や、流石に、歩けないほどじゃ」 「歩けてないだろう? 気にするな、身体は鍛えてるから人間の一人や二人なら余裕で運べる」 「えっと、そういう意味じゃなくて」 流石に汗だくで異性に密着するのは女としては気まずいものなのだが、相手は全く気にした様子は無い 「しかし……あれはヤバいな。俺みたいなフリーランスじゃどうにもならない。『組織』の方で動いてくれると良いんだが」 「あ、それなら大丈夫だと思いますよ。その『組織』とかってのの人が報告するって言ってましたから」 「ん? 都市伝説の類については知識はあるのか」 「諸事情により一週間ばかりレクチャーされましたとも」 「そうか」 青年はやや顔を顰めて詩卯を見詰める 「人間と都市伝説の関係は、縁であり絆である。一度何かしらに遭遇すると、都市伝説を引き付けやすくなるんだ」 「うへ。危ないのにしょっちゅう遭遇するようになるのはヤダなぁ」 「多少なりとも都市伝説について知っているのなら、何かしら都市伝説との契約を考えた方がいい。身を守る手段にもなるし、強く引かれ合う都市伝説が居れば他の都市伝説をあまり引き付けなくなる場合もある」 「なるほどねぇ。ところでお兄さんは人間? 都市伝説?」 「悪いが俺は人間だ。契約できる都市伝説を探すなら、レクチャーしてくれた奴に相談したらどうだ?」 「んー、どっかなー? 一応連絡先は聞いてあるけど……あんまり深く関らない方が良いって言ってたし」 「まあ物騒な業界であるのは確かだ。強い奴は際限なく強いし、どれだけ強くても相性一つで倒される事もある」 青年は何か嫌な思い出でもあるかのように、溜息を一つ漏らす 「ともかくだ。しばらくは町を離れるか、やばい奴相手でも対応できる奴に匿ってもらうといい」 「んー、一週間ばかし学校無断で休んじゃったしなぁ」 「命とどっちが大事なんだ?」 「両方」 「おい」 「そりゃ命は大事だけどね。私が私として生きていく背骨っていうの? これが折れちゃったら、それはそれで命を失うのに等しいと思うのよ」 「とんだ我侭女だな……だったら早いところ護衛してくれる存在でも見つけろよ。また出会ったら今度は逃げきれるとは思えないぞ」 「守ってくんないの? フリーなんでしょ?」 「さっきは不意打ちで、しかも逃げに徹したからどうにかなっただけだ。アレは俺じゃどうにもならん」 「相性ってやつ?」 「ああ。俺は格闘、物理攻撃専門だがあいつにはそれが全く効かない」 「そっかー、残念」 人通りのめっきり少なくなった駅前通り お姫様抱っこという姿を衆人環視に晒さなくて済んだのは幸いかもしれない 青年は詩卯を下ろすと、そのままくるりと背を向ける 「後は好きにするといい。俺は町の見回りを続ける」 「どうにもできない相手がうろついてるのに?」 「それでも、襲われてる誰かを助けるぐらいならできるからな」 「そっか……気をつけてね。えーと、名前は」 「いいさ、契約者である俺と深く関ると都市伝説との関りも深くなる」 背を向けたまま手を振って、夜闇の中へと消えていった 「さってと、それじゃあ私はどうしようかな」 しばらく実家や友人を頼ってこの町から離れるのも良いのかもしれない だが、脳裏に浮かぶのは化物と共に現れた少女の顔 「……やっぱ、最後まで関った方がいいのかな」 そう一人呟くと、詩卯は夜を明かすべく漫画喫茶の入り口をくぐるのであった ――― 「元Z-No.1以下二名の協力を要請する」 「うるせぇ、帰れ」 音門金融の社長室で向かい合う、元Z-No.0のサロリアスと現Z-No.0の斬九郎が、びりびりと殺気じみたものを漂わせながら睨み合っていた 「俺んとこに来る前に、他の部署の連中に協力を仰げ。何のための『組織』だ」 「そのしがらみが嫌で逃げたお前なら良く判っているだろう? 部下の立場を守るためには他所の部署になど頼ってはいられん」 「π-Noの二人には頼ってたじゃねぇか」 「あいつらは完全な独立愚連隊だった上に、必要な時には居ない事の方が多かっただろう。『組織』内の力関係に影響はしない」 「……相変わらず面倒臭ぇままか、あの『組織』は」 「自我のある者が集まれば自然とそうなる」 ぎちりと椅子を軋ませ、斬九郎はサロリアスを睨む 「『組織』の体質の話は後だ。今も『ブロブ』とその契約者による被害がこれ以上広がる前に片を付ける」 「梨々は俺んとこに居るが、あと二人はとっくに引退して地元で暮らしてる。たまに近況報告をするぐらいで大した縁も残っちゃいねぇよ」 サロリアスがそう言った途端 ばたむと社長室のドアが豪快に開け放たれる 「やっほう、さっちゃん元気してたー? 京都くんだりから久々に遊びに来てやったよー」 「忙しいとは思ったんですが、ご無沙汰していたところを誘われたのでつい……すいません」 現れたのは、どこかのんびりとした雰囲気の二人の女性 「ん、どったのさっちゃん?」 「あら、そちらは斬九郎さん……という事は『組織』のお仕事?」 その間の悪さにサロリアスは思わず頭を抱える 「直接交渉する分には構わんだろう?」 「……勝手にしろ」 この二人の人の良さはサロリアスも良く知っている そして押しの強さも 二人が斬九郎の要請を引き受ければ、梨々も引っ張り出されるのはほぼ間違い無い 「相変わらず難しい顔してるねー。八つ橋食べる? お土産だよー」 「こちらのお土産で、お煎餅もありますよ。仕事中はダメですけど日本酒も」 「暢気なもんだな、お前ら」 溜息を吐きながら、サロリアスは二人をソファへと招く 「言っておくが、巻き込む以上は危険な目には遭わせるなよ」 「危険でないはずがない。だがやらなければいけないのが、『組織』の仕事だ」 「そうやって割り切れる辺りが、お前の嫌いなところだ」 「被害が拡大して身内に迫るまで、割り切れずにぐずぐずしているのが、お前の嫌いなところだ」 睨み合うサロリアスと斬九郎 その雰囲気を察してか、それとも空気を全く読まずにか 「はいはい、恐い顔してないでちゃっちゃと仕事を終わらせよー。折角遊びに来たんだしねー」 「そういう事だ。早急に片付けるためにも、もう一人呼び出してもらおう」 「お前が指図するな……ったく」 渋々といった様子で、梨々に呼び出しの電話をかけるサロリアス かくして駒は揃ったものの、それを動かす手腕が問われる事となる 借り物の駒で指す一手は、吉と出るか凶と出るか 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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はらり、はらり 桜の花びらが、静かに舞い散る 北区にある、古ぼけた教会の裏 大きな桜の木の下にて 「そっか…宏也さん、妹さんがいたんだ」 「あぁ」 佳奈美を背後から抱きしめるように座っている黒服H、広瀬 宏也 …そんな体勢に、佳奈美はやや赤くなっていたりもするのだが まぁ、他に誰も見ていないので、問題あるまい 「まぁ、俺はこの通り、都市伝説に飲み込まれて黒服になっちまった訳で。会ってもわからないだろうけどな」 「……寂しく、ないの?」 ぽつり、そう尋ねてきた 宏也はぽふぽふと佳奈美の頭を撫でながら、苦笑しつつ答える 「まぁ、寂しくないっちゃあ嘘になるがな……いっそ、気付かれない方がいい、って事もあるからな」 自分達兄妹は、都市伝説を憎んでいたから …自分が、都市伝説と化した事を知ったら 妹の心に、どれだけの傷を与えてしまうか …それを考えると、伝える事など、できないのだ 「…そんな事、ないよ」 きゅ、と 自分を抱きしめてきている宏也の手に、そっと手を重ねて 佳奈美は、そう呟くように言う 「だって、家族なんだから……家族と会えないなんて、悲しいから…」 「………佳奈美」 俯く佳奈美の体を、優しく抱きしめる宏也 …佳奈美の優しさが、宏也の壊れた心に、染み渡る 「…ありがとうな。佳奈美」 「ふ、ふぇ!?」 ふわり 額に、口付けを落とされて ぽぽぽ!!と、佳奈美の頬が、赤く染まった 「ひ、宏也さん!?」 「…お前のお陰で、決心ついたわ……色々とゴタゴタ片付いたら、妹に話してみる」 宏也の、言葉に 佳奈美はほっとしたように、笑った 「そっか……妹さん、きっと、わかってくれるよ」 「あぁ……だと、いいな」 その為にも…まずは、成し遂げるべき事を、成し遂げなければ 佳奈美の体を抱きしめたまま、宏也は決意を固めるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者
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バラバラにされたお人形 頭、胴体、手足 バラバラ、バラバラ、バラバラに? ボクの頭はどこにいったの? ボクのおててはどこにいったの? ボクの足はどこにいったの? ねぇ、見つからないの どうしても、どうしても ボクの足が一本だけ、見つからないの ……だから、ねぇ お兄ちゃんのその足を、一本 ボクに、ちょうだい? 「兄貴~?どこ~?」 …暗くて、不気味 誰もいない夜の校舎って言うのは、どうしてこんなに不気味なだろう? あたしはそんな事を考えながら一人、歩く …あの、馬鹿兄貴 夜に家を抜け出して、どうして学校になんか来てるんだろう ここは、妹として、何をしているのか監視せねばなるまい もし、いや、万が一でも有り得ないが、女と会ってるとかだったら …その女、ぶち殺す うっかり物騒な考えが思いついたが、気にしない事にして あたしは、兄貴の姿を探していた 「兄貴、どこにいるのさ~?」 兄貴が通っている高校 ここに入り込んだとこまでは見たのだが…見失ってしまった 先ほどから呼びかけ続けているのだが、返事はない かつん、かつん ただ、あたしの靴の足音だけが響いている …それにしても、本当に不気味だ こんな時、理科室の前だけは通りたくない うっかり中を覗いて、人体模型とかと目があったりしたら、泣ける 「夜、理科室で人体模型が動く」とかって、よくある都市伝説だし 「……「都市伝説」……」 …ぴたり あたしは、足を止めた 都市伝説 そう言えば、何年前だったろうか それを、耳にした事があった あれは、いつだったろうか? 兄貴に、背負われていた時 …あれ、そう言えば あの時…どうして、背負われていたんだっけ? 思い出そうとして…ずきり、頭が痛む 「……あれ?」 …何だっけ? 思い出せない 痛い、痛い、痛い、痛い 思わず、その場にうずくまりそうになって 「……?」 あたしは、それに気付いた 学校の廊下に、似つかわしくないものが…そこに、落ちている 「……う、腕?」 それは、小さな腕に見えた 多分、人形の腕 赤ん坊の腕くらいの大きさの、人形の腕だ そう、人形の腕 人形の腕じゃなくてナマだったら泣く、むしろ気絶する …どちらにせよ、なんであんな物が、ここに? あたしは、ゆっくりとそれに近づく キューピー人形か何かの腕だろうか 何の気なしに、あたしはそれを拾ってみようかと、近づいて… 「………ッ拾っちゃいかん!!」 「え?」 ぴたり 突然かけられた制止の声に、思わず止まる …誰? 辺りを見回すけど、誰もいない でも、はっきりと、聞こえた 歳をとった、お婆ちゃんみたいな女性の声 それが、あたしを止めた 「逃げなさい!それから離れなさい!!」 「……え?」 何?誰? そう、尋ねようとした時 かたんっ、と音がして ……あたしは、自分が見ているその光景が、現実には思えなかった ふわり 浮かんでいる 何がって? …落ちていた、人形の、腕が ふわり、ふわり 重力を無視して、それは浮かび上がり わきわきと、そのちっちゃな指先が、動いている ぞくり 背筋を走りぬける、悪寒 逃げなくちゃ 逃げなくちゃ、駄目だ ピーピーと、警告音のようなものが頭に響き渡る …なのに、足が動かない 目の前の、非現実の光景に、体が麻痺したように、動かない ふわり、ふわり 浮かぶ、それは ぎゅん!と、あたしに向かって飛んできて… 「………っきゃあ!?」 直後 あたしの体は、ぐい、と横から引っ張られて っちょ、そこ、壁!? ってか、鏡が… ……… 鏡? そう、その鏡から 細い、細い…白い腕が、突き出ていて それに捕まれたあたしは、そのまま、鏡の中に引きずり込まれた 「…ん?今、何か聞こえたか?」 「み?……わかんない」 かくん 花子さんが、首をかしげる 深夜の校舎内 …誰か、入り込んできたのか? 「不味いな、早く何とかしないと……って、来たぁ!?」 「け、けーやくしゃ!こっちこっち!」 ぎゅん! 迫り来るそれから、俺たちは逃げ出す …それは、頭 キューピー人形の頭部が、ケタケタと不気味に笑いながら、追いかけてくる 都市伝説「バラバラキューピー」 バラバラにされてしまったキューピー人形 足だけが、見つからない キューピー人形は探している 見つからないその片足を捜している キューピー人形、どうしてもその足が見つからない だから、ある日、閃いてしまった …足が見つからないなら、他人の足を奪えばいいじゃないか こうして、バラバラキューピーは人を襲うようになった 話にとって、足りないパーツは違うわけだが…こいつは、よく聞く話通り片足が無い その片足求めて、人を襲うのだ 自分にちょうどぴったりあう足が見付かる、その日まで 「…っつか、人形サイズの脚もってる人間なんているかよっ!?」 思わず、叫ぶ しかし、その叫びはバラバラキューピーには届かない けたけたけたけたけたけた 壊れたように、笑い続けている バラバラキューピーの能力…それは、改めて、自分の体をバラバラにして、相手を攻撃する事 両腕は怪力を備え、胴体はタックルを繰り出し、片脚は強烈なキックを飛ばし そして、頭は、本来キューピー人形に備わっていないはずの鋭い牙で、噛み付いてくる 今ごろ、不良教師も白骨標本と人体模型をつれて、他のパーツと戦っているだろう バラバラキューピーの厄介な所は、全てのパーツを倒しきらないと、そのうち復活してしまうという事 できれば一箇所に固まってくれていた方がありがたいのだが、相手はそれを許してくれない 一箇所に固めるべく、誘導しようとしているのだが… 「くそっ、どんどん引き離されてる気が…うぉわ!?」 「っけ、けーやくしゃ!」 っひゅん!!と 恐ろしいスピードで、キューピー人形の頭が、一瞬前まで俺の首があった場所を通り過ぎる …っあ、危ねぇ 首の頚動脈噛み切られるところだった!? 「けーやくしゃに何するの!」 ぷんすか怒った花子さん その意思に従うように、すぐ傍の女子トイレから、激流が流れ出してきた ごぽごぽごぽごぽごぽ!! 大量の水が、バラバラキューピーの頭を押し流す! その隙に、俺は携帯電話をポケットから取り出した 「先生!そっちはどうなった!?」 『今、理科室だ。片脚と片腕がいる。そっちも、片腕見付かったか?』 向こうは、自分たちのテリトリーに相手を誘いこめたのか! …と、なると、こちらの相手も、そっちに誘導した方がいいだろう 「いや、頭だけだ。片腕がまだ!」 『…わかった。こっちは片腕片脚を押さえ込んどく。死ぬ気でもう一方の腕探しとけ』 わかってるよ、と答えて、電話を切る ごぽぽぽぽ 水に飲み込まれ、頭部がもがいている …後は、片腕だけだ 「花子さん、探すぞ」 「うん!」 ごぽんっ! 頭部を飲み込んだ水を移動させながら、花子さんはこっくり、頷いてきた ……… えっと ここ、どこ? あたしは、この状況を何とか理解しようとした 白い、真っ白な世界 そこに、あたしはぺたりと座り込んでいて 「大丈夫だったかい?」 ちょこん、と 目の前に、知らないお婆さんが座っている 白い着物を着たお婆さん ……誰? 「お婆さん、誰?」 何とか、声を絞り出す ほっほっほ、とお婆さんは、穏かな笑みを浮かべてきた 「私かい?一応、「鏡の中の四次元ババア」なんて呼ばれてるけどねぇ。長いから、「鏡婆」とでも呼んでおくれ」 「…鏡、婆……「鏡の中の四次元ババア」……?」 …聞いた事がある 四時四十四分四十四秒 その時間に、ある場所の鏡を覗き込んではいけない 鏡の中に住んでいる四次元ババアに、鏡の中に引きずり込まれてしまうから え、あれ 今、そんな時間だったっけ? ってか、あたし、鏡の中に引っ張り込まれた? ほっほっほ、とお婆さんは、人懐こい笑みを浮かべ続けている 「しかし、危なかったねぇ。よりによって、都市伝説同士が戦ってる現場に巻き込まれるなんて」 「…都市伝説?戦う?」 「そうさね、ほら、見てご覧」 っぱ、と すぐ傍に、鏡が浮かび上がった そこに映し出されたのは、あたしたちの姿じゃなくて…さっきまで、あたしがいた場所だ そこを、あの人形の腕が、ふわふわ、ふわふわ、浮かんでいて …あたしを、探している? ふわふわ、ふわふわ 浮かんでいた、人形の手 やがて、ふわり、映っていた範囲から、消えてしまった 「バラバラキューピー…困った子さね。そう言う話として生まれてしまったからには、仕方ないのかもしれないけどねぇ…せめて、本当の脚が見付かれば、良い子になってくれるのかもしれないけど」 どこか、同情したように鏡婆は言う え~と どう言う事? 多分、あたしの頭の上に、「?」マークが一杯浮かんでいたんだと思う 鏡婆は、丁寧に説明してくれた …曰く、あたしたち人間が語る都市伝説は、ある一定以上まで広がり、それが「都市伝説」として認識された時、実体を持つ 曰く、都市伝説たちは、人間と契約する事により、本来活動できるテリトリーから移動する事が可能になったり、新たな能力を手に入れる 曰く、テリトリーから動けない都市伝説も、契約によってそこを離れることが可能 曰く…都市伝説は、人間と契約して、他の都市伝説と、戦う 「じゃあ、その…バラバラキューピーも、誰かと契約して?」 「いや、あの子は契約はしとらんよ。あの子にとって、人間は獲物だからねぇ…」 …曰く 都市伝説の中には、積極的に人間を襲うものが存在する だから、人間と契約する都市伝説は、それらの都市伝説と戦うのだ 人間が死んでしまったら…自分たちを生み出す源も、なくなってしまうから 「今、ね。契約者が二人、そのバラバラキューピーと戦っとるんじゃ。花子さんと契約した子と、白骨標本と人体模型と契約した人間じゃったか……おや、ちょうど、花子さんの契約者が、来たね」 廊下の光景を映していた鏡 そこに、人影が映りこむ その姿に…あたしは、目を疑った 「兄貴!?」 そうだ あたしが、わざわざ探してやっていた、兄貴 それが、小さなおかっぱ頭の女の子を連れて、走り去っていったのだ 背後に、水の球みたいなのが浮かんでいて…その水の球の中に、キューピー人形の頭部が見えた 「おや、お前さんのお兄さんかい?」 「う、うん…」 なんで? なんで、兄貴が? 混乱するあたしの脳裏に…一つの記憶が、蘇る 小学生の時 学校で流行っていた花子さんの噂 あたしは、好奇心から、それを確認しようとした 奥から三番目の扉、とんとんとん、と三回ノックして、「花子さん」と呼びかける たった、それだけの事 何も現れず、やっぱり噂は噂、と帰ろうとした… …その瞬間に、あたしは意識を失った 気がついた時には、兄貴の背中に背負われていて …兄貴の、横を あの、おかっぱ頭の女の子が、歩いていた …あぁ、そうか あの時、あたしは兄貴に助けられていたんだ 今更ながらに、自覚する 「あ、兄貴は、バラバラキューピーと戦ってるの?」 「そうさね…しかし、あれは厳しいねぇ。何とか、全部のパーツを一箇所に集めてやらないと。倒すのは難しいよ」 鏡婆は、同情したように、そう呟いている …ひやり 背筋を、冷たい物が通り抜けていく 「ねぇ…バラバラキューピーって…人の足を奪うん、だっけ?」 うろ覚えの、聞きかじりの知識を引っ張り出す 鏡婆は、そうだよ、と頷いてきた …それじゃあ もし、兄貴が負けたら 兄貴は、脚を持っていかれる? ……冗談じゃない!! あたしの兄貴の足を、あんなよくわかんない相手に持っていかれてたまるか! 「ねぇっ!鏡婆、あんたも都市伝説なんでしょ!それじゃあ、あたしと契約できる!?」 「できるけど…いいのかい?あんたも、本格的に、戦いに巻き込まれちまうよ?ここにいれば、この戦いが終わったら、出してやるから…」 嫌だ 冗談じゃない あの、根性なしの馬鹿兄貴でもできる事が、あたしにできない訳がない …それに あたしは、一度、あの馬鹿兄貴に助けられたのだと、知ってしまった 借りを作りっぱなしなんて、ますます冗談じゃない!! 「いいよ!それくらい、やってやるわ!兄貴にできる事が、あたしにできないはずがない!」 「…困った子だねぇ」 鏡婆は、あきれているような…しかし、同時に感心したような笑顔を浮かべた すくり、立ち上がってくる 「それじゃあ…私も、戦いに参加しようかねぇ」 まるで、これから散歩にでも出かける、という感じの口ぶりで、そう言って すぅ、と静かに、目を閉じてきた っぱ ぱっぱっぱっぱっぱ あたしたちの周りの、真っ白だった世界に…いくつも、鏡が浮かび上がる そして、その鏡全てに…校舎の中の、あちこちの光景が映し出された 「契約してもらったお陰でね。この校舎の鏡全て…私の、テリトリーだよ」 にこり、と、笑った鏡婆 なんだか釣られて、あたしも笑みを浮かべた …怖くない訳じゃない 本当は、すごく怖いのだと思う でも、それを認めてしまったら、兄貴に負けたようで悔しい だから、あたしは怖くないのだ これから、多分、色々巻き込まれるだろう戦いだって……怖くない!! 「さぁて…どうたら、理科室にパーツが二つ固まってるね。あなたのお兄さんが引っ張ってるのが頭部……と、なると、残りのパーツは」 「さっき、あたしを襲ってきた…腕」 「そう、それを探そうかねぇ」 無数に浮かぶ鏡の中 あたしは必死に目を凝らして、あの腕の姿を探した 「…胴体、捕まえたぁ!!」 ぎゅるんっ 花子さんが放ったトイレットペーパーが、こちらにタックルしてこようとしていた胴体を捕獲する 頭と、胴体 …あとは、腕だ!! 「け、けーやくしゃ。流石に二つ同時に押さえ込むのは辛いの~」 「わかった。とにかく、理科室に行くぞ。あっちなら、先生たちのテリトリーだからな」 そこでなら、こいつらを押さえ込む事も可能だろう ごぽごぽごぽごぽ じたばたじたばた 花子さんに取り押さえられている頭部と胴体が暴れている 急いで、理科室に向かわないと …この間に、腕に襲われたら、それこそ全速力で逃げるしかない 廊下を疾走し、俺たちは理科室に向かう 幸い、途中腕に襲われる事はなく、無事理科室にたどり着いた 「先生っ!」 「…追加、来たか」 教卓に腰を下ろしてタバコを吸っている不良教師 くそっ!余裕ぶっこきやがってこの野郎 人体模型と白骨標本が、片脚と片腕を、がっちりと押さえ込んでいた 『頭と胴体やな!後は腕がもう一本か!』 『すみません、私たち、押さえ込むので精一杯です!もう一本の腕も、探してきてくれますか?』 わかった、と俺は息を整えながら頷いた 花子さんの方は、と言うと、息切れひとつしておらず 胴体と頭部を、人体模型と白骨標本に手渡している …こう言う時、自分の体力の無さが本当に情けなくなってくる これでも、昔よりはマシになっているのだが 「息切れしてるぞ、青少年。大丈夫か?」 「大丈夫だよ畜生。多分、明日の体育の時間は死んだが」 だからと言って、休んでいる訳にもいくまい 今夜中に、決着をつけなければ そろそろ棒になりかけていた足を、叱咤しようとした…その時 『っきゃ!?』 「!?」 …ばしゃんっ!と 花子さんが制御していた水の球から…キューピー人形の頭部が、飛び出した …しまった!? やはり、テリトリー外では、完全に押さえ込めなかったか!? 白骨標本が取り出そうとしていたその頭部は、再び、高速で飛びまわりだし 「……っ!」 「けーやくしゃっ!」 俺に向かって ケタケタ無気味に笑いながら…牙を剥き出し、襲い掛かってきた …あ、やべ 今日こそ、死んだか? 走馬灯が、いそいそと準備をし始めた 「……っ兄貴!!」 あぁ、聞こえる妹の声は、幻聴か? 「諦めてんじゃないわよっ!この、馬鹿兄貴ーーーっ!!」 煩い妹だ 幻聴でくらい「お兄ちゃま」とか可愛い呼び方しやがれ… ……あれ 幻聴じゃ、ない? はっきりと聞こえてきた、妹の声 その、発信元は 「…え?」 鏡 理科室の、鏡から 妹が…体を半分、突き出していてきて え、お前 どうして、そんなところにいるんだよ なんで、ここにいるんだよ? 俺が、そんな疑問の声を発するよりも、先に 「っほら!!これがあればいいんでしょっ!?」 と、ぶんっ!!と 何かを、俺に襲い掛かろうとしていた頭部に向かって、投げつけた それは、腕 俺達が探していた…バラバラキューピーの、最後のパーツ 妹が全力で投げつけたそれは、バラバラキューピーの頭部に見事直撃し 頭部がバランスを崩して、床に落下する 頭部 胴体 右手左手 片脚 …全てのパーツが、今 理科室に集結した 「っ花子さん!」 「うん!」 っしゅん!と 持ってきていたトイレットペーパーが花子さんの意思どおりに動き、頭部と胴体を締め付ける 「…お前ら、やれ」 『っはい!』 『ほな、いきまっせー』 じゃきんっ! 刃物と化した白骨標本の腕が、片脚に突き刺さり 人体模型の内臓が、両腕を狙い打つ 深夜の理科室内、一箇所に集められたバラバラキューピーの体のパーツ その、全てが 一斉に、破壊された ……さて 何とか、バラバラキューピーに勝てた訳で 今、俺がすべき事は、一つ 「なんでお前がここにいるんだよ!?っつか、何深夜に家を出てんだ!?危ないだろ!!」 「兄貴に言われたくないし!!」 兄妹喧嘩 じゃない、妹への説教だ まったく、この物騒な時期に! いくら可愛くない凶暴極まりない妹とはいえ、何かあったらどうするか!! 「まぁまぁ、そう怒らないでやっておくれ」 鏡の中から、鏡婆が話し掛けてくる …あぁ、まったく 以前、妹が俺が契約しているのとは別の花子さんにとり憑かれた事件 あの時に危惧していた事が、とうとう現実になってしまった 妹まで、都市伝説と契約してしまうとは… 「この子のお陰で、あんたは助かっただろう?」 「そうよ!あたしに感謝しなさい!!」 ない胸を張ってくる妹 …そう言われても 確かに、今回は助かったが ……が 俺としては、妹にこんな危険な事に首を突っ込んで欲しくないのだ 都市伝説の危険度は、個体毎に差がありすぎる 今回のバラバラキューピーだって、危険性で言えば中の上と言った所 これより恐ろしい存在の戦いに、首を突っ込んでほしくない だと、言うのに 「これからは、あたしが兄貴を手伝うから!ッベ、別に、兄貴の為じゃないんだからね!ただ、兄貴に何かあったら、母さんたちが悲しむからだからねっ!!」 「おぉ、凄いな、生ツンデレ。はじめてみたぞ」 「つんでれってなーに?」 …何、見学しとるか不良教師!! そして、こら、そこの変態人体模型、花子さんにツンデレを解説しようとすんなぁあああ!! 頼む、白骨標本、そこの変態を止めてくれ!! 「お前こそ、何かあったらおふくろたちが悲しむだろうが!?お前は首を突っ込むな、家で大人しくしとれ!!」 「何よ!あたしの方が兄貴より運動神経いいんだから!」 ぎゃいぎゃいぎゃいぎゃい 煩い妹を、何とか説得しようとするのだが、暖簾に腕押し あぁ、もう、こいつは! どうして昔から、俺の言う事を聞かないのか!? 「ほっほっほ、仲がいい兄妹だねぇ」 鏡婆の、呑気な声が理科室に響いた …こうして とうとう、俺の妹までもが、都市伝説に首を突っ込んでしまい 俺の日常が、ますますヒートアップしてしまうであろう事は、容易に想像がついてしまい 俺は、おのれの運のなさを、ただ呪うしかないのだった fin 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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警官A「あ~面倒臭ぇ」 警官B「アンタが街中であんな物ぶっ放すからでしょう・・・つか何で始末書一枚で済むんだ?普通捕まっても文句言えませんよ?」 警官A「んなもん、『ここが学校町だから』の一言で済むに決まってんだろうが」 警察B「今更ながらに何て町だ・・・orz」 警官A「『都市伝説対策課』なんてのを本気で作ろうとする様な奴まで居るくらいだからな・・・まぁ、俺も必要だとは思ってるけどよ」 警官B「はぁ?」 警官A「都市伝説かどうかは別だけどよ、この町は怪事件の数が多すぎる・・・しかも、おかしな事にな、ちゃんと調べると殆どの事件が噂があってから起こるんだよ」 警官B「・・・意味がわかんないんすけど」 警官A「普通、事件が起こって始めて噂になるだろう? この町は逆、『噂』が広まって、それから本当の『事件』になる・・・まぁ、事件が起こったらまた噂も広まるから誤解されやすいけどよ だから実際『都市伝説対策課』で無くともそういう『変な事件』を調べる為の部署は必要かもしんねぇ」 警官B「・・・何か気味が悪いですね」 警官A「だろ?噂には気をつけろよ?」 「はい、そこ無駄話してないでさっさと始末書を仕上げなさい」 背後から女性の声・・・若干怒ってるッぽい 警官A「別にコレ位良いだろ?そういうアンタも秋祭りの最終日仕事ほっぽり出して黒服の兄ちゃんとキャッキャウフフしてたって聞いたぞ?」 「アレも仕事の内ですしそもそも私と彼はそういう関係じゃありません、今度そんな事言って見なさい、訴えますよ?そして勝ちますよ?」 警官A「ハッ、この程度の事で訴えられるかな?」 「町で銃乱射したことを・・・なら?」 警官A「スンマセン、勘弁してください」(土下座) 「よろしい」 地に額こすり付けて懇願する先輩と、ソレを見下して笑う上司を前に 本気で転職を考える警官Bでした 終わっちまえ 前ページ次ページ連載 - はないちもんめ