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『逃げこんできたゆっくり親子』 28KB 虐待 制裁 観察 誤解 飾り お家宣言 家族崩壊 同族殺し 番い 赤ゆ 現代 虐待人間 比較的普通な虐待をと思って書きました 初投稿です。 逃げこんできたゆっくり親子 薄くなっていたはずの意識が、引き戻されてくる。 目が冴えてきてしまっている。 今の時間は深夜。 今日はいまいち寝つきが悪く、それでも今やっと眠れそうになったところだった。 だがそこに何やら不審な音が聞こえ、驚きとわずかな恐怖で目が覚めてしまったのだ。 窓を叩くような音。 隣の居間だ。最も、この狭いアパートでは、部屋という部屋はこの寝室とその居間くらいなのだが。 俺の安眠を妨げるのは一体何者だと、わずかに夢心地に入って朦朧とした意識により、怒りだけ駆られて跳ね起きる。 戸を引いて居間に入り掃き出し窓の外を見てみると、外のわずかな光に照らされたそこには、ゆっくりれいむの親子の姿があった。 どちらもれいむ種の、親一匹子一匹。 やたら切羽詰まった表情で思いっきり窓への体当たりを繰り返しているので、とっとと開けることにする。 いくらゆっくりでも、壊されるのではと少し怖くなったのだ。 俺が窓を開けると二匹は素早く部屋に滑り込んで来て、親れいむが叫ぶ。 「ほら、はやくしめてね! れみりゃがきちゃうよ!」 ふむ。なるほど、こいつらは追われて焦っていたということか。 外を見てみると我らアパート住民の庭に、街灯に背を照らされた胴つきれみりゃらしき影が、やたらよたよたしながら入ってくるのが見えた。 ただのゆっくりに逃げられる要領の悪さが、シルエットだけでも窺える。 ちなみにその庭部分は、手を伸ばせば隣の塀に届きそうなほど狭い。 我が家が惨劇の舞台になっても困るので、一応窓を閉めてやることにする。 振り返ると薄汚れたれいむ親子がこちらを見ていた。 「ありがとうございますう! たすかりましたあ!」 「ゆ、ゆ、ゆーぅ」 赤ゆの方は既に疲れきっているのか、ふらふらだ。 こちらは無理に起こされたところだというのにな。 「あのれみりゃから逃げてきたのか?」 「そうですぅぅ、まりさともはぐれちゃって……」 「大変だな。そいつはもう食べられちゃったのかね」 「ゆぐ……と、とにかく、れみりゃがいるおそとにはでられないです! どうかここにとめてください!」 「えー……?」 小汚いこんなやつらを泊めてやるのなんて、正直ごめんだ。 明かりが少ない状況だが、こいつらが例にもれず汚いことはよく分かる。 が、これ以上面倒なことを起こしたくもなかった。 追い出そうとすればうるさいだろうし、れみりゃとて決して静かなやつでもないだろう。 なんといっても今は早く寝たいのだ。 親子にそこまでゲスな雰囲気は見てとれないし、一晩できちんと追い出せばいいだろう。 そう思って俺は親子を泊めることを許した。 「ゆん! よかったあ、ありがとう!」 親れいむの一応の感謝が、右耳から左耳に抜けていく。 飲み物を箱買いしたときの段ボールに新聞を敷いてスペースを作ってやり、そこにのせる。 一応そこから出ないよう言って聞かせ、俺は寝室に戻った。 せめて今からでも安眠を迎えたい。 翌朝、俺はまたも音によって意識を覚醒させられることとなった。 目覚まし時計をセットしていたわけではない。 全く夜も朝も無理に起こされるなんてついてないなー、なんて思っている場合では無かった。 俺の耳に飛び込んできたのは昨日とは比べ物にならないとんでもなく大きな音だったのだから。 昨晩以上に体に力を込めて跳ね起き、居間への戸を叩きつけるように開いた。 そこに広がっていたのは昨日とは違う居間の光景だった。 見事に荒らされ散乱とした部屋。 どシンプルな三段の小さいキャビネットは引き出しを引かれ、中のものを掘り返されている。 なにに使う訳でも無い折り畳みナイフに、昨日駅前でもらったゆっくり保護団体のチラシ等々。確かにきちんとしまっていたはずのものは今は無造作に放り出されている。 そして、あまり物を置いていなかったスチールラックが引き倒されている。先程の音の主はこれらしい。物をのせ無さ過ぎて不安定だったのかもしれない。 そばには、それに乗せていたはずのゆっくりみょんをかたどった、陶器の小物入れが落ちて割れていた。 なかなか気にいっていたのだが、置くところが高すぎたか。 俺にとってこれは惨劇だ。結局この部屋で、起こってしまったわけだ。 基本的に大したものは置いていないので被害はそれなり。だが、これを片づけることを思わされると気が重い。 そして何より、ここまで触れてきていないがこれらを引き起こしたその原因。 いや、それはもはや考えるまでもない。 やはり昨日無理をしてでも追い出してれみりゃに捧げてやればよかったのだ。 まさか、一晩で評価をひっくり返すことになろうとは。 そうその原因は、やはりと言うべきか。……ゆっくり親子だった。 「あ、にんげんさん」 こちらを見つけ浮かべる笑みに嘲りを感じた。 そんなつもりはないだろうなとも思う。 「にんげんしゃん! あみゃあみゃちょーだいにぇ!」 足元から赤ゆの声がする。 こんなことをして、なぜ平気な顔でいられるのだろう。 そこまでこいつらはどうしようもない生物か。 「にんげんさん、ここはれいむのものだよ! さっきにんげんさんがくるまえにせんげんしたからね!」 「しょうなんぢゃよ! ゆっくちりかいしちぇね!」 なんだそりゃ。 ここは俺の家だって、流石のこいつらにも分かっているはずなのに。 「ゆゆ~ん、にんげんさんはじぶんのおうちにもどってね! こっちにくるならあまあまちょうだいね! たくさんでいいよ!」 ちら、と俺が出てきた寝室を見ながら言うれいむ。 どうやらこの部屋をもらったと、そう言いたいらしい。 「これ、お前らがやったのか?」 「ゆ? そうだよ! あまあまさがしだよ! なかったけどね! どこにかくしたのか、おしえてくれてもいいよ!」 眠りに落ちるのを邪魔され、れみりゃから助けてやって、更に一晩泊めてまでやった。 その見返りがこれとは。今まで冷静を保っていたはずの俺の心に、怒りが沸き起こるのをここにきて感じた。 後押ししてくれるこの感情。 これに任せよう。平気で恩を仇で返すこんなやつらに、遠慮してやる道理がどこにある。 気付くと俺は親れいむを蹴りあげていた。 白い壁にぶつかるれいむ。 「ゆ……! び……! ゆうっ、ゆうんやあああぁぁぁ!! いだいいいいぃぃぃ!! いだいよおおおぉぉ!」 「お、お、おかーしゃ……! くしょにんげん! おかーしゃになにしゅる……ゆぴ!」 飛びついてきた赤ゆを、傷つけない程度に軽く蹴り上げる。 脆い方は扱いづらいな。 「おしょらをとん……ゆぺ」 定型句を唱えかけてから地面に落ちる赤れいむ。 「そんなに強く蹴ってないって……お前のかーさん根性ないな」 そう言ってやってから親れいむに近づく。 「ゆぴぃ……! あやばり! あやばりばず! あやばりばずからぼうげらだいで!」 早くも白旗を上げるとは、やりがいのない奴だ。 だがこんな程度で腹の虫がおさまるわけがない。 れいむを両手で挟みこむようにもちあげ、一言投げかける。 「そんなの聞けないなー。なんでこんなことしたのかねぇ……」 「ゆあ……、と、とってもゆっくりしてるばしょだとおもってぇ……。 それにおきたらだれもいなかったから……ゆぎ! ゆぐ!」 挟んだ手で、れいむをねじり上げる。 ルービックキューブを捻るようにだ。 これで理由になると思っているのだろうか。おめでたいな。 これが人間だったら、別に真意でもあったのだろうか。 等と思ってから人間ならこんなことはしないな、と自分で突っ込みを入れる。 結局、昨晩の判断は間違っていたのだ。善良だと思ったのは何かの間違い。 疲れていてゲスな部分を出す余裕がなかったのかもしれない。 もしかすると寝ぼけた俺がそういう部分を見逃しただけなのかもしれない。 結局は見抜けなかった俺も悪いのだろうか。 そう思うとどこか少し冷静になった。 だがそんなことで許せるのか。許せるはずがない。 こいつらは俺に恩義を感じこそすれ、こんな目にあわせる理由はないはずなのだ。 そしてあまつさえこんな風に責任を感じさせてまでいるのだ。 そう思うと、強い苛立ちが沸き起こるのを感じた。 「ゆぎ! ゆぎ! いだいいいぃぃ……!」 「おかーしゃぁ……」 れいむを持つ手に力が入りかける。だがこんなことで潰してしまっては仕方ない。部屋も余計に汚れてしまう。 なんとか、最低限の痛みを感じてくれる程度におさめる。 そしてすぐに軽い捻りの限界に達したらしく、これ以上は動かなくなる。 まあ、いい。とりあえずこれはやめよう。正直ただ蹴る方がすかっとする。 手を離し、れいむが落ちる。成体なら人間の手元から落ちても案外平気だ。 「ゆっ! うぇっ……! ちょっと! きゅうにおとさないでね!」 次は赤ゆだ。 親れいむを足で押しのけて赤ゆに手を伸ばす。 一度逃げられるも、赤ゆの速度では大したことはない。きちんと捕まえ手のひらの上に載せる。 「ゆゆーん、れいみゅはとりしゃんー!」 すると母性に訴えかけられたか、怯えて固まっていた親れいむが声を上げる。 「ゆ! おちびちゃんはやめてあげてね! れいむのおちびちゃんなんだよ!」 だからなんだっていうんだ。 逐一イライラさせられる。こいつらはいらつかせる精神攻撃が得意技なのだろうか。 「それで? だからなんだって?」 「ゆ!? おちびちゃんはとってもゆっくりしてるんだよ! ほらよくみてね! ゆっくりしてるでしょ! ね!」 たしかにとってもゆっくりだ。 今見るとどうしようもなくいらつく、それはそれはとってもゆっくりな顔をしている小さな饅頭。 「ゆ?」と呟く赤ゆの顔に、もはや無意識でデコピンをお見舞いする。 「いぢゃいいいぃぃぃぃ!! なにじゅるのおおぉ! ゆうううぅぅぅ!」 「おちびちゃあぁん! ゆぐぅ! くそじじい! おちびちゃんをかえしてね!」 足元にぶつかってくる親れいむ。 ゆっくりってやつは柔らかい。正直痛くも痒くもなかった。 「れいみゅぷきゅーしゅるよ! ぷっきゅうううぅぅぅ!!」 「せいっさい!するよ! くそじじいはしんでね! すぐでいいよ!」 無駄な反抗を見せる二匹 それではと、親れいむに赤ゆをとり返すチャンスをやることにする。 散らかった部屋に転がっていた折り畳みナイフを拾い、ひろげる。 親れいむに見せて言ってやる。 「おいれいむ……、これみえるか?」 「ゆ! なんだくそじじい! みえるよ! ばかにしないでね! で、なにそれ! あまあま!?」 「これはナイフって言ってな。物に当てるとよく切れるんだ」 「ぷきゅううううぅぅぅ!」 ぎらつくナイフを親れいむによく見せてやる。 「ないふ? きれるのはゆっくりできないよ!」 さっきまで怒っていたのに、なかなか素直だ。 馬鹿なのは、使いやすいという利点をもっているというわけか。 「お前の体で試してやろうか?」 「ゆ!? い、いいよ! ないふさんはすーぱすーぱさんだね! れいむわかったからきるひつようないよ!」 「ぷぅー、きゅううううぅぅ!」 「じゃあおちびで試そう」 話題に出されて、手のひらの上で必死に膨らんでいた赤ゆが反応した。 「ゆぴ!?」 その顔には恐怖が浮かんでいる。 うむ、気分が良いってことはないがこの顔ならイライラはしないで済むな。 「ゆああああぁぁぁ!? どぼじでそんなごというのおおおぉぉぉ!!」 「嫌か?」 「ゆ! いや! いやじゃよ! れいみゅすーぱすーぱさんいやじゃよおおぉ!!」 「おちびちゃんいやがってるでしょおおぉ!! だめだよおおぉぉぉ!!」 否定の色を強く表わし訴える二匹。 そんなことを言える立場じゃないと分からせてやることすら、難しいようだ。 「じゃあお前がかわるか?」 「どぼじでぞうなるのぉ!」 「お前がやったらおちびを切ったりはしないし、ちゃんと降ろしてやろうかなって思ってるんだけどなー」 「ゆ!?」 「ほ、ほんとうに……?」 「うん、約束は破らないさ」 そんなんじゃ、恩も返せないこいつらと一緒になってしまうからな。 「ゆぐぅ……」 「おかーしゃ……」 俯いて考え始めるれいむ。 自分の体が裂かれるのとおちびちゃんのどっちが大事か、もはや逆に及びもつかないほどの単純思考っぷりでじっくりと考えているんだろう。 「ゆ……わかったよ。れいむはどうなってもいいからおちびちゃんをはなしてね!」 手のひらのおちびが安堵の息を洩らすが、すぐに気付いて親に心配そうなまなざしを向ける。自分の安易さに気付き、親の運命を憂いているといったところか。 さて、よく選んだ。 そうでなくちゃ困る。おちびを見捨てられたりしたら、あとはもう単純に痛めつけるしか手段が無くなってしまうのだから。 「よし、じゃあ……持っておいてやるからお前が自分で体当てて切れ」 「ゆ」 「ゆぴ!? お、おかーしゃ……!」 少し屈んで、ナイフを床に立てるようにして抑えてやる。もちろんおちびを持った手は、高く掲げて降りられないようにしておく。 ナイフには角度を付けておいてやろう。自ら飛び込みやすいように。 「さ、どうした?」 れいむはどうやら予想外だったらしく、その場で硬直する。 俺は切れ味を試すと言っただけで、直々に刻んでやるなんて言った覚えはないのだが。 なんといっても両手がふさがっているのだ。是非協力して貰わなくては。 「……りです……。」 親れいむがぼそりと呟く。 「ん? なに?」 聞き返すと、俺の顔を見上げ口を開いた。 「むりです……!」 「なにがー?」 「むりいいぃ! むりですう! じぶんからいたいいたいはむりですうぅぅ!」 「ゆ!?」 「そっか……。じゃあ仕方ない、おちびだな」 「やべでえぇえ!」 おちびが手のひらの上でびくりとする。 そして俺の方へとゆっくり振り返ってきた。 俺はそんな可哀想なおちびに笑顔を向けてやる。 お前の親が不甲斐ないばっかりにな。 「お、おかーしゃ……」 「やべで! やべでえぇぇぇ! おちびちゃんはまだちっちゃいんですうう!」 立ち上がりナイフを持ち直す。おちびのデコに突きつけ、言う。 「まー、いいや」 「ゆ……?」 「ゆ!!」 「やっぱやめとくか。刃物なんて俺もちょっと危ないしな」 「ゆ、ゆあああぁぁぁ! やっちゃ! たしゅかっちゃよぉぉ!」 「にんげんさんありがとおおぉ! ゆ、ゆ! はやくおちびちゃんをおろしてねぇぇ!!」 なんと勝手な。 それにまさか、自分で言った感謝の言葉まで台無しにするようなことまで言うとは。 「解放してやるとまでは言ってないぞ」 「どぼじでぞんなごというのお!」 「ゆん! もうおかーしゃをいじめないでにぇ! れいみゅもおろしちぇにぇ! しゅぐでいいよ!」 本当に、どうしてこいつらはこうも瞬時に調子に乗れるのだろう。 一度ゆっくりの思考を覗いてみたいものだ。 ナイフをたたんで床に置き、おちびを先程の親れいむと同じ刑に処す。 顔を挟んで持っての雑巾絞りだ。 このサイズでは持つよりつまむという感じだが。 「ゆ……ゆぎ! いぢゃいいいぃぃ! やべでねぇぇ!」 声を上げるが、もちろん続ける。 おちびは柔らかいが小さいので加減が難しい。 こいつならもっと面白い状態になってくれるかと思ったのだが、結局親と同じ程度にしか捻れないようだ。残念ながら。 「ゆぎ、ゆぎぎぎぎぎぎ!」 仕方ないのでひとまず終えてやって離すことにする。 もちろん手のひらの上から降ろすわけではない。 「ゆ……ゆふぅー! みょうおわり? おわり? れいみゅたえちゃよ! ゆっへん!」 「すごいよぉ! おちびちゃあぁん!」 「なんだきゃれいみゅ、みゃえよりふにゃふにゃしゃんになったきがしゅりゅよ! れいみゅは、なめくじしゃん!」 「おちびちゃんよくがんばったねえぇ!」 まったく、俺が加減してやったからだというのに。 こんなことでぎゃあぎゃあと、いちいち面倒な奴らだ。 おちびを褒め尽くしたれいむが今度はこちらをキッと睨みつける。 「いいかげんにしてね! そろそろおちびちゃんをはなしてね!」 まだ言うか。 おちびを軽く痛めつける程度では、堂々巡りにしかならないらしい。 同じことばかりうるさく言われ続けるのは、もう勘弁してほしいところだ。 またしてもイラッとしてしまったので親れいむの顔にもう一度蹴りを入れてやる。 ただし今度はさらに弱め、小突く程度だ。 「ゆちー、なんだきゃやわやわしゃんしゅぎちぇ、れいみゅゆるゆるしゃんだよぉ」 おちびがもはや訳のわからないことを言っている。もうこいつは無視だ。 「ゆぎっ! いだい! ゆんやああぁぁあ!!」 「ゆぅー、うんうんでりゅよ!」 本当に軽くなのに大袈裟にわめく親れいむ。 さっきの一撃を思い出したってだけで叫んでいるのではなかろうか。 ……なに、うんうん? 「うんうんしゅっきりー! ぎゅいぃーでゆるゆるしゃんになっちゃからいっぴゃいでちゃよ!」 ……見ると、おちびが手のひらの上でうんうんをかましてくれていた。 それもきれいに手のひらに収まるように。 黒い餡子の塊が何やら仄かにあったかい。 ああ……なんだか、もういいや。 「……ゆっ! なにしゅるの! れいみゅのおかざりしゃんかえしちぇね!」 おちびを指でおさえ、もう片方の手でリボンを抜きとる。 それをポケットにしまってから、もう一度おちびをしっかりおさえる。 そして、手のひらの上の排泄物をおちびの髪に塗りたくった。 「おかざ……ゆぴぃ! うんうんちゅけないでにぇ!」 それはこっちの台詞だ。 うるさく言ってくるが、もちろんやめてなどやらない。 大方塗り終えると、だいぶ手のひらにも広がってしまっていた。 「おちびちゃんになにじでるのおおおぉぉ!」 「ゆんやああぁ! くちゃいいぃ! ゆぴいいいぃぃぃ!! れいみゅのさらさらかがやくごくじょうっ!のかみしゃんがくちゃいぃぃ!」 うるさく泣きわめくおちびを掃き出し窓から狭い庭部分に放り出し、窓を閉める。 「ゆ!? お、おちびちゃん!」 まず手を洗おう。そしたらもう、いいかげん終わらせてしまうとしよう。 俺ももはや限界だ。しかし何とも屈辱的な方法で本気にさせられてしまったものだ。 おちびの贈り物を洗い落した後、未だ散乱した居間に戻ると親れいむが窓に向かって体当たりしていた。 外から中から、窓がそんなに好きか。と言う冗談は置いといて。 さっきから親れいむの声は部屋に響いていた。 もちろんその目的はただ一つ。おちびの元に行こうと奮闘している、というわけだ。 「おちびちゃん! いまあけてあげるからね! まっててねええぇぇ!」 だが窓は大きな音を立てるばかりで、割れてまではくれない。 俺は足に体当たりされた感触を思い出して、あの力じゃ無理だろうな、と思った。 昨夜のれみりゃは既にいなくなっていて、外には脅威が存在するわけでもなんでもない。 それでも親れいむが必死なのは、さっきのことでおちびちゃんが泣きっぱなしだからだろう。くちゃいくちゃいと。 親れいむを後ろから捕まえ、体当たりを止める。 「なにするくそじじい! おちびちゃんをはやくもどせ!」 「戻す?」 「ここはれいむのゆっくりぷれいすだっていってるだろおおぉ! はやくもどせ!」 しつこい奴だ。と思って、そういえばまだきちっと否定してやってなかったことを思い出す。 「戻すね……、まあ賛成してもいいな」 ただし言葉尻をとって、の話だが。 「じゃあはやくもどせ! おちびちゃんをもどせ! それからあまあまもってこおおぉい!」 「お前が戻れよ。元の外にさ」 「ゆが!? そんなのおかしいでしょおお!? ここがれいむのゆっくりぷれいすなんだよお!!」 「ここは俺の家なんだよ。この部屋もあっちの部屋も。お前が来るずっと前に人間流のおうち宣言をしてるんだよ」 「ぞんなのじるがああ! いいがらおぢびぢゃんをもどぜ! ばやぐじろおおぉぉ!」 やはり言っても無駄か。 なにも聞かず傲岸不遜を貫き続けるしかない。ある意味一貫しているわけだ。 そんなお前たちを気にいってくれる人の所に飛び込めば、よかったのにな。いればだが。 親れいむのリボンも抜き取り、窓の外に出してやる。 ただしこいつは、おちびより強くだ。真っ直ぐ投げてやると、目の前のコンクリートブロックの塀に潰れるようにぶつかるれいむ。 それでも平気でぼてっと地面に落ち、泣き声を上げてみせるのは流石の丈夫さだ。柔軟性のなせる技だろうか。 俺は先ほどのナイフを持ち、サンダルをつっかけて庭におりる。 素早くおちびに飛びつこうとする親れいむに先んじて手を伸ばし、おちびを持ち上げた。 「さーて、さっきの約束やっぱ守ってもらおうかな」 そう言ってナイフをおちびにあてる。 怯えるおちび。 親れいむは愕然とした表情で固まっていた。 「こいつで切れ味試すって約束だったよな」 親れいむが表情に絶望を交え、悲痛な声をあげる。 「さっきはやめるっでいったでしょ! やべで! やべで! おぢびちゃんをだずげて! ごんどごぞがんばりばすがら!」 「あのな……二度も同じチャンスは訪れないものだよ」 そう言って、ぷるぷる震えるおちびの口にナイフを突っ込む。 深くまで差し込んだナイフで、頬の皮を切り裂く。後頭部近くまで広がる口。 「いぢゅあい! いぢゅぁいゆお……おかーしゃ……ゆぴいいいいぃぃ!」 泣き叫ぶおちびを押さえ込んで反対側も同じようにする。口裂けゆっくりが完成した。 さらに騒ぎ始めるおちびを強く抑え込む。 自分の体なのに騒ぎ過ぎれば餡子が漏れて危ないと分かっていないのか。 餡子が漏れ出さない内に地面に置き、親れいむと再会させてやる。思えば俺に捕まって以来の再会だ。 だが親れいむはそれどころではないのをきちんと弁えているようだ。流石に慎重な姿勢を見せる。 「おちびちゃん! しずかにしてね、あんこさんがもれちゃうよ」 「ゆ……おかしゃ、ゆうぅ……しゃべりにきゅぅいぃぃー!」 「おちびちゃん! しずかにしないとだめだよ!」 おちびを叱り必死にその動きを止めようとする親れいむ。 だがすでに切り口からは餡子が漏れかけている。このままではもっと漏れていくだろう。 だがそれよりもまず、おちびの体はぱかぱかと開いてみせていた。 おちびが喋るのに乗って上顎が持ち上がるのだ。 バランスを崩せば、あの体はすぐ開いてしまうだろう。 おちびはそんな自分の体の状態に困惑しながらも、叫ぶのをやめられない。 親れいむもそんなおちびを見て焦りを募らせ始めたようだ。 「おい、れいむ。おちびちゃんを後ろから支えてやった方がいいぞ」 親れいむに声をかけてやる。 親れいむははっと気づいたようにして、こちらに一瞥をくれることもなくおちびの背後に回る。 「おちびちゃん、おかあさんがささえてあげるからしずかに……ゆ! く、くさっ」 最後にれいむは反射で呟く。 そう、髪にはさっきうんうんを塗りつけたばかり。 つい出てしまった親れいむの小さな声を、おちびは聞き逃さなかった。 大口を開け、とうとう―― 「なにいっちぇるの……! おかーしゃがいけにゃいんでちょ……! おかーしゃがぜん! びゅっ! ……べ……べ」 叫ぶ勢いで上あごがあがりきり、頭が地面に落ちる。 まさにと言うべきか、首の皮一枚で繋がっておちびはゆっくりの開きになってしまった。 「お、おちびちゃああぁん!」 下あごに多くのあんこが残されているのがわかる。 上あごにもいくらか持っていかれているが、下あご部分では餡子がこんもりと山になっていた。 もしかするとあれが中枢餡というやつなのかもしれない。変わった様子はないのでよく分からないが。 下あごの先でずらりと半円状にならんだ歯の真ん中、舌がぴくぴくと痙攣していた。 先っちょは丸められていて、おちびが痛みに耐えているのがうかがえる。おそらく風前の灯だろうが、おちびはまだ生きているようだ。 そしてその身を二つに裂かれた苦しみを味わっているのだろう。 親れいむがもはやどうしていいか分からずに――いや、あれは既におちびを亡くした悲しみを感じているのかもしれない――顔を絶望に固め立ちすくんでいた。 だが、おちびは確かにまだ生きている。 この声が届くかは分からないが、こんな半端で終わらせても仕方ない。仕上げてやらねば。 「おちび、ジャンプしたら戻れるんじゃないか?」 俺の声にピクリと反応する二匹。 親れいむの顔が、本格的に絶望から悲しみへと変わった。 「おちびちゃん! うごいちゃだめ!」 だがおちびは、その台詞とほぼ同時に飛んでしまっていた。 苦しみに支配されたその思考は、きっと究極的に単純だったのだろう。 ジャンプの頂点からの落ち際に、確かに元の体を取り戻すおちび。 疲弊しきって濁った瞳にわずかの希望が浮き上がった。 だがその体はバランスを崩し、顔を地面へと向けてしまう。後ろを気遣いすぎて前に重心が乗っていなかったのだろう。 そしておちびは落ちた。 地面にあんこをはきだし潰れるおちび。今度こそピクリとも動かなくなる。 親れいむはそれをもはや生気のない目で見つめていた。 「あーあ、潰れちゃったな」 俺が言うと、ゆっくりこちらを見上げる親れいむ。 「さて、次はお前かな」 継いだ言葉に震え上がって、恐怖を浮かべた顔をする。 その表情のまま、ずいと前に出て叫び出す。 「ゆるじで! おぢびぢゃんぼばりざぼなぐじで、れいぶかばいぞうなんでずぅ!」 「ふーん、可哀想とは思わないけど……許されたいのか」 「ゆるじでぐだざい!」 「でもねぇ、俺もこのまま許すわけにはな」 「なんでぼじばず! なんべぼじばずがらゆるじで!」 「ん? そうか、なんでもするか。ならひとつ方法があるよ」 「ゆ! なに! なんでずが! ばやぐいっで!」 わずかに顔に喜びを浮かべ、食いついてくる。 俺の言ったことはろくに実現できていないこいつだが、次こそやってくれるだろうか。 「そのおちび、食べてくれ」 「ゆ……!」 れいむが表情を固め、たじろぐ。やはり無理だろうか。 「嫌か?」 「ゆ! ばっで! ばっで……」 戸惑い、怯えた表情を浮かべるれいむ。 なんだかんだで、色んな表情を見る羽目になったな。 「そうだよな、助かりたいよな」 「ゆ……」 俯く。 「でもおちびは食べたくないか? でもさあ、考えてみろ。」 顔を上げ、こちらを見る。 怯えを残したままの、救いを求める表情だ。そんなものを与えようとは思わないが。 「お前だけが許されたらおちびはここであのままだぞ」 「ゆ……!?」 「親に見捨てられ、野ざらしのまま段々朽ちていく……。可哀想じゃないか?」 「……」 「おちびはもう動けないんだ。れいむが自分の体に取り込んでさあ、ここから連れて行ってやれよ。そしたら、ずっと一緒にいられるじゃないか」 「ゆ……ずっと……ゆっくり……」 「そうそう、ずっと一緒にゆっくりできる。それに、俺もおちびを片づけてやらなくてすむから、助かるんだよ」 「ゆ……」 「俺とおちびを助けると思って、頼むよれいむ」 「ゆ……あ……」 ゆっくりとおちびに近づくれいむ。 うんうんの臭いもまだ残るであろうその体に、れいむは今度こそ躊躇わずに食いついた。 ゆっくりと咀嚼する。 すすり泣く声が聞こえたのは、最初だけ。 食べ終えて動かなくなったれいむの前に回る。 おちびは餡子のひとかたまりも残さずに、消えている。土をなめてでも、れいむが食べ尽くしたからだ。 口がだらしなく開かれ、その目はまたも生気をなくし焦点があっていなかった。 そんなれいむに告げてやることとする。 「よしれいむ、今度こそできたな」 わずかに見上げるれいむ。 だが未だにその目は遠くを見ている。 最後だけだが、やっと俺の指図を行動に移せたか。 「これで許してやれるぞ、れいむ。俺はこれ以上お前に危害をくわえない。後は好きに逃げな」 「ゆ!」 れいむの顔に一気に驚きと喜びが灯った。 「ほんとうにゆるしてくれるの!?」 信じられていなかったのだろうか。 「ああもちろん、約束は守らなくちゃな。あ、その前に」 「ゆ?」 「お飾り返してやるからな」 家から出すときに奪い取ったリボンを取り出し、れいむに見せる。 「つけてやるよ。……もう何もしないから、来な」 そう言ってやると、おずおずと近づいてくるれいむ。 さっきの約束は本当だ。だから俺はもう本当に危害を加える気はない。 後はこの親子を逃がしてやるだけだ。 れいむの後頭部の辺りに元通りにしっかりリボンを結んでやった。 「もうちょっとだからな」 そう言ってれいむを少し引き寄せ軽く押さえる。 そして頭にリボンを結ぶ。 れいむは静かに任せている。顔を見ると喜んでいるようだ。お飾りが戻ってきて嬉しいのだろう。 「さ、出来た。もういっていいぞ」 「ゆん……ありがとう! それじゃあ、さよなら」 ゆっくり去っていくれいむを見送る。 れいむは昨晩れみりゃが現れた辺りから逃げていった。 さて、やっといなくなったな。 下手に潰して掃除の手間を増やすのに比べれば、ましなやり方だったろう。 鬱憤もそれなりに晴らせたのだし。 俺は正直おちびがつぶれた時点で充分だった。既に飽きていたのだ。 だがそのおちびもれいむに片づけさせられたし、結果だけ見ればゆっくりの被害にあった割には上々な対処ができた方なのではないだろうか。 そして残ったれいむも、これから自らゆっくりできない所へ飛び込んでいくことになるのだ。 さ、部屋の掃除に取り掛かろう。 れいむは必死に走っていた。 あの人間が見えなくなった時点で、追ってくるのではと俄かに恐くなったのだ。 持てる力の全てで、全力疾走する。 まあ人間の子供の歩行よりと同じ程度の速度だったが。 気付くとれいむは、やたら草の生い茂った土地の前に立っていた。 周りは人間の家が立ち並んでいるばかりなのに、この場所だけに背の高い草が並んでいる。 何のことはない、ただの空き地だった。 だがそんなことれいむは知らず、とりあえず仲間でもいないかと、近づかないで覗き込むようにして見る。 もちろん逃げてきた方への警戒も怠らない。 と、その時ガサッと草をかき分ける音がした。空き地の方で何かが動き、そして近づいてくる。 れいむは一歩二歩と下がり警戒しながらその何かが現れるのを待った。 そして、あらわれたその姿は……ゆっくり。ゆっくりまりさだった。 れいむはそのまりさに見覚えがあった。昨日はぐれた番のまりさだ。 食われたかと思っていたが、生きていたのだ。 「ゆ! まりさぁ!」 「ゆ! れいむ! いきてたんだ……ぜ……」 言葉を尻すぼみにするまりさ。もしかして傷ついているのだろうかと、れいむは思った。 「まりさ! だいじょうぶだったんだね!」 「……ゆ、れいむこそだぜ」 「しんぱいしたんだよ、まりさ」 「ゆ、そうかぜ」 わずかに俯くまりさ。帽子に隠れて表情が窺いづらい。 「まりさ、どうしたの? ようすがおかしいよ?」 「……れいむ、おちびはどうしたのぜ」 「ゆ……おちびちゃんは……にんげんさんに……。 いっしょにつかまっちゃって、たいへんだったんだよ」 「そうかぜ」 後ろを向くまりさ。 れいむは思った。おちびの死を悲しんでいるのだろうと。 あんなにゆっくりとしていたおちびちゃんだったのだ。仕方ない。 まりさが振り向く。 「なら、その……ちいさいおかざりはなんなのぜ!?」 「ゆ!?」 まりさはれいむの頭を見上げ、怒りの表情を浮かべていた。 れいむは戸惑う。まりさが何を言っているのか、分からない。 「お、おかざりってなんのこと?」 「そのあたまについたちいさなおかざりのことなのぜ! ふたつもつけて、おかしいのぜ! それはおちびのじゃないのかぜ!?」 まりさの言う通り、れいむの頭の上はいつもと様子が違っていた。 自前のお飾りは問題なく付いている。 だが、一まとまりの黒い髪が、真っ直ぐ上にのびアホ毛のように突っ立っていた。 その根元を小さいお飾りに支えられて。 「そんなつけかたして! おちびをばかにしてるのかぜ!!」 「ゆ! ゆぴ!?」 混乱しだすれいむ。 緩む思考から何とか絞り出して、れいむは自分とおちびのお飾りのことを思い返す。 自分のお飾りは一度取られたものの、きちんと人間に返してもらったはず。そして、おちびのお飾りは……。 「ゆ! まりさ! にんげんさんのしわざだよ! きっとあのにんげんがれいむに」 れいむの餡子に皮が裂ける音が響いた。 「ゆゆ、ああ、あぁぁぁ!」 まりさが口に石をくわえ、ぶつかってきたのだ。 わずかな裂け目かられいむに痛みが伝わる。 「おかざりをうばったのぜ……!! おちびちゃんから!」 「ま、まりさ! ちがうよ! これはにんげんが」 「うるさいのぜ! ふざけるなだぜ! そんなのうそなのぜ! うそなんかききたくないのぜ!」 「まりざ!」 「おちび! かたきはとるのぜ!」 「やめで! やべでばりざあ!」 まりさのくわえた石が襲いかかる。れいむの体を裂き、ひっこめられてまた襲い、裂く。 れいむの体はぼろぼろになっていった。 まりさの体当たりの衝撃で、増えゆく穴から餡子がさらに漏れ出す。 まりさは石を捨て、れいむの上に乗っかった。 れいむの上で体重を乗せて何度も跳ね、れいむの体から餡子を追い出しながら潰していく。 やがてれいむがピクリとも動かなくなると、まりさは吠えた。 「ゆっゆおおぉぉー!! おちび! かたきはとったのぜえ!」 ゆおーゆおーと、高らかに叫ぶまりさは気付かない。 草陰から自分を見つめる存在に。 昨夜逃した獲物を、再度見つけた捕食者の視線に。 おわり 挿絵:
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『ふたば系ゆっくりいじめ 777 南の島のまりさ』の続編です。 読みにくいところが多いと思いますが、ゆっくりしていただければうれしく思います。 独自設定多めです。ご注意ください。 設定 地理:亜熱帯気候に位置する無人島です。 絶海の孤島で、島の周囲のほとんどは断崖絶壁に囲まれています。 観察者:避難小屋に拠点を置き、周辺の漁師らの協力を得ながら観察しています。 避難小屋は島周辺で漁をすることもある近隣の島々の漁師たちが悪天候 に見舞われた際の避難所として使っているものです。 南の島のまりさ2 『南の島の生命賛歌』 季節は晩秋、とはいえ常夏の陽気に包まれたこの島に劇的な気候の変化は現れない。 夏に比べて若干降雨量が減少する程度で、依然として島は花に、虫に、海は魚に、その他 の小動物たちにあふれていた。しかし、この時期になると干潮を迎える時間帯が次第に夜 間へと移行していく。そのため、まりさ種以外でも海に漁にでかけられるようになるが、 夜の海は捕食者たちが動き出す危険な場所であった。また、視界も悪いため、この季節に なると食料は海での漁よりも林での狩りに依存する割合が高くなっていく。 この島の数少ない穏やかな海岸にある、ゆっくりのコロニー。 そこに一つの変化があった。 長く長老として群れを率いてきた老ぱちゅりーが息を引き取ったのである。 老ぱちゅりーは死ぬ場際、その枕元に、次のリーダーとなる若きぱちゅりー、ずっと長老 を支えてきたぶれーんの老ありす、群れ一の狩りの名手である父まりさらを集めた。 枯れ草を積んだベッドの周りに集まった面々をじろじろと疲れた目で見回した後、老ぱち ゅりーは口を開いた。 「げほっげほっ…もうぱちぇと一緒に海岸に引っ越してきた仲間たちは、みんな永遠にゆ っくりしてしまったわ…げほっ…最期の言葉…みんなに伝えておきたいことが、げほっ」 老ありすが優しくすーりすーりをする。みな、一言も言葉を発せずに、老ぱちゅりーの次 の言葉を待った。 「ありすは知らないんだったわね…げほっげほ…ぱちぇたちが山から逃げてきたことを…」 「ええ、ありすは逃亡中にゆっくり生まれた世代だわ。」 「ぱちぇたちのむれは最初、山の中にいたの…お水さんが豊かで、木陰もたくさん、カニ さんも虫さんもたくさんいた、とてもゆっくりしたぷれいすだったわ。」 「すごいわ!ぱちぇもおばちゃまのその、ゆっくりぷれいすに行って見たいわ!」 老ぱちゅりーの話に興味を示す若ぱちゅりー。 しかし、老ぱちゅりーは静かに首を横に振った。 「げほっげほっ…ひゅー…ひゅー…ぱちぇたちは逃げてきたの…山の中はとてもゆっくり できたけど、ゆっくりしているのはぱちぇたちだけじゃなかったのよ…ひゅー…」 老ぱちゅりーは呼吸を整えるのに数分を要した。 「…むきゅ…山の中には魔物がいるの」 老ぱちゅりーの話をまとめるとこうだ。 山の中は水・食料とも豊かだが、それを奪い合う、さらにはゆっくりを食べようとする魔 物がいるという。魔物は三種類いるらしい。 まず、キングベヒんもス 名前はこれに襲われたてんこが、「き、キングベヒんもス…」という言葉を残して事切れ たことに由来する。ゆっくりの巣を壊し、掘り起こし、ゆっくりが蓄えたエサやゆっくり 自身を捕食するという。前述のてんこは山にあったいくつかの群れの一つのリーダーだっ たが、この群れは三匹のキングベヒんもスによって全滅した。老ぱちゅりーによれば、豚 さんという生き物ではないか、という話だった。 次に、ぴかぴか 名前はこの魔物の目が夜間に爛々と輝くことからきている。物音一つ立てずに忍び寄り、 ゆっくりを永遠にゆっくりさせてしまうらしい。実質的な被害はキングベヒんもスに比べ ればたいしたことはなかったみたいだが、一度その姿を見ると恐怖のあまり死ぬまでしー しーを垂れ流したゆっくりが続出したらしい。時折、ものすごい声で鳴くことがある。 最期に、赤ゆ泥棒 名前はこの魔物は夜間に巣に音もなく忍び込み、赤ゆたちをさらっていくことに由来する。 子ゆっくりぐらいのサイズでもさらわれたことがあるらしいが、成体が襲われることはな かったという。 ぴかぴかと赤ゆ泥棒は夜行性、特に、赤ゆ泥棒は昼間の襲撃例は一つもない。 しかし、ぴかぴかは少数だが、夕方、明け方に襲われた事件もあり、明るいからといって 油断はできないという。 話を聞き終わったゆっくりたちはあまりの恐怖にゆっくりできなかった。 父まりさなどは、巣にいる新しい赤ゆたちが無事かどうか確認したくて気が気ではないよ うだ。 「ごほっ…う…ここも決して安全ではないけど…あの三種類の魔物に比べればたいしたこ とないわ。もし、ここにもあの三種類の魔物が来るようになったら他のゆっくりぷれいす を探しなさい…う!げほげっほっ!!」 老ありすが老ぱちゅりーの背中をすーりすーりする。 「今はみんななんだかんだで穏やかに暮らしてるわ。むきゅう…すてきなことね…げほっ でも、このゆっくりらいふは…当たり前のことじゃ…げほげほっ!!」 「おばちゃま!」 「次のりーだーはぱちぇよ…ひゅー…ひゅー…ゆっくり……」 こうして老ぱちゅりーは永遠にゆっくりし、山での生活や、海岸での生活を切り開いた実 体験を持つ世代はいなくなった。この先どのように転ぶにしろ、この群れは新しい時代を 迎えつつあった。 晩秋、雨季最後の長雨が何度か続く、ある日の夕方、山の奥の水源地から「それ」はやっ てきた。最初に異変に気づいたのは狩りに出ていた父まりさだった。 「ゆ?ここなっつの林さんが真っ赤だよ!!ゆっくりできないよ!!」 真っ赤なカーペットのようなものが、少しずつ、染みが広がるように海へと広がってくる。 這い寄る混沌、というものを見たとしたら、こんな感じだろうか? 「あれは?…カニさんだよ!!ゆっくりできないカニさんの群れがやって来たよ!!」 それは雨季最期の大潮に一斉産卵を海で行うアカガニの群れだった。 数万匹?いや数十万匹だろうか?そのすべてが卵を抱えた雌であり、ただ産卵をするため だけに海へと殺到する。その途中にあるものは、倒木だろうが、谷だろうが、ゆっくりの 巣だろうが情け容赦なく蹂躙し、ただただ海を目指していた。 「ゆゆ!かわいいかわいいれいむに食べられに来たんだね!いいこころがけだよ!ゆっく り死んでね!」 中にはカニがたくさん食べられると喜ぶゆっくりもいたが、巣の中、どこへでも入り込ん で来るため、すぐに大騒ぎになった。 「やめてね!入ってこないでね!カニさんゆっくりしないで出てってね!」 「ちねくちょがに!れいみゅのたからもにょかえちぇ!かえちて!ゆえええええええ!」 中には食べ物やたからものをアカガニに持っていかれて泣き喚いているゆっくりもいた。 この時期のアカガニは産卵に全力を注ぐため、ほとんど摂餌などは行わない。 ゆっくりのエサやたからものなど見向きもしないはずなのだが、余程気に入らなかったの だろうか?ゆっくりたちにつぶされても、吹っ飛ばされても、他の個体が拾い上げ、まる でバケツリレーのようにそれらは海へと持ち去られていった。食料などの貯蔵庫は、備蓄 品の管理や内装・道具の加工を担当するありす種がフタをしたため、入り込まれることは なかったが、何百というアカガニに侵入され、群れは大混乱を起こしていた。 その一方で、この大量のアカガニはいい獲物でもあり、普段狩りをしないれいむ種なども 外でアカガニを追い掛け回していた。なにせ、今は産卵にのみ集中しているのか、攻撃さ れても反撃よりも、海へ向かって逃げるほうを選ぶアカガニが多い。 かつてタカラガイにこだわっていた子まりさの妹は、子れいむといえるサイズにまで成長 していた。子れいむは大好物のカニの大群を相手に無双乱舞を披露していた。 「ちね!ちね!くちょがに!きゃわいいれいむのためにちね!」 かつて姉のまりさに作ってもらった狩り用の棒を振り回し、あちらこちらのアカガニへと 叩きつける。通常、ゆっくりの棒切れ程度ではこのサイズのアカガニを潰すことはできな いのだが、子れいむの執拗な攻撃によって脚が何本がもげ、片目がつぶれたアカガニは、 体当たりによって岩に叩きつけられ、ぐったりと黒い泡を吹いて動かなくなった。 子れいむは器用に小石を投げつけ、外骨格にひびが入った部分を棒で執拗に殴りつける。 「ゆへ!ゆっはー!れいむの強さ!おもいちったか!」 得意げにもみあげをぴこぴこわさわさするれいむ。アカガニのキチン質の甲殻の隙間から は黄色い内臓が飛び出、大事に山から抱えてきた卵は辺りに散乱していた。それをなめと るように食べていく子れいむ。 「うめ!これめっちゃうっめ!」 このアカガニの産卵大移動は毎年恒例であり、ゆっくりの巣も少なからず被害を受けるも のの、まだ幼いゆっくりに栄養価の高い卵やカニを食べさせることで、成長を促進する大 切な季節イベントでもあるのだ。そもそも、ゆっくりの跳ねる速度で捕らえられるカニは 限られており、そのようなカニは甲殻が堅く、岩場で割るにも一苦労するものが多い。 だが、今なら、海岸にものすごい数が集中しているため、適当に石を投げるだけでもアカ ガニを仕留めることができる。海岸で生きる上で、このアカガニのように産卵のために集 まってくる生物は貴重な食料源なのだ。 あの子まりさも石や棒切れを使ってカニを次々と仕留め、新しい妹たちへのごはんを集め ている。(既に子まりさと表現し辛いサイズまで成長しているのだが、便宜上この表現を 使わせていただく) 「ふう、れいむはもうおなかいっぱいだよ!」 アカガニを三匹平らげた子れいむは巣に戻って、お昼寝しようとしていた。 しかし(巣内はそれどころではないのだが)、アカガニがなにやらきらきらしたものを持っ てゆっくりの巣から海へと歩いていく。 「ゆ?しょくもつれんちゃのてーへんが、ゆっくりからたからもにょをうばおうなんて、 ゆるちぇないよ!げちゅはせーさいするよ!それはれいむがもらっちぇあげるよ!」 子れいむは巣から誰かのタカラガイを持ち去ろうとしたアカガニにとびかかり、三秒後 には十三匹のカニにはさまれていた。 「ゆげえええええええええ!!ばばじぇくじょがにいいい!!」 余程存在が腹立たしかったのか、アカガニは何をするわけでもなく、ただひたすら子れい むをはさみ続けていた。一匹のアカガニがぴこぴこわさわさと動くもみあげをはさみでつ かむ。 「やめりょおおお!れいみゅのきゃわいいもみあげにじゃわるなあああ!ちね!くじゅ…」 ぶちぶちぶち 「ゆぎゃああああああ!!れいみゅのぴこぴこきゃわいいもみあげがあ゛あ゛あ゛!」 アカガニは引きちぎったもみあげを口にしたが、食事に興味がないのか、美味しくなかっ たのか、泡と一緒に口から出して捨ててしまった。 「あぎゃああああああああああ!!」 そうしている間にも、髪を、口を、リボンを、あにゃるを引っ張られ、子れいむが悲惨な 姿になっていく。 「ゆ゛え゛え゛え゛!!どぼじででいぶがごんなめじいいいい!!!」 そこへ子れいむの異常に気がついた父まりさと子まりさが駆けつける。 「れいむー!今ゆっくりしないで助けるよ!」 「カニさん永遠にゆっくり死ね!」 父子まりさが数匹のアカガニを棒で叩きつけると、アカガニたちは我に返ったかのように 海への向かって走っていった。 「ゆぎゃああああ゛いじゃい!いじゃいよおお!どぼじでぼっどばやぐたじゅげにごない の!ばかなに!じぬにょ?」 「どぼじでぞんなごというのおおおおお!?」 子れいむの暴言に餡子がペタフレアした子まりさを押さえるように父まりさが割って入る。 「ケンカはあとだよ!ゆっくりしないでぱちゅりーたちのところにれいむをつれてくよ!」 「ゆ…ゆっくりりかいしたよ…」 二匹のまりさは泣き喚き暴言を二人に向かって機銃掃射する子れいむを抱えて、巣の奥に いるぱちゅりーのもとへと連れて行った。その後には子れいむのあにゃるからもれたうん うんが点々と残っていた。 その日の夜、多大な犠牲を払ったアカガニたちは一斉産卵を行った。 海水に体を洗われながら、全身をふるわせ、ゾエア幼生を海に放っていく。 たまに、卵塊ごと落下してしまうものもあったが、海中で孵化し、ゾエア幼生は新しい世界 へと拡散していった。 翌朝、海岸を埋め尽くすほどのアカガニの死体が残された。 ゆっくりたちはこの数日のうちに確実に肥え、巣の各地ですっきりーが行われることになっ た。他の地域のゆっくり同様、ゆっくりたちの集団繁殖を促す要因は栄養状態である。一般 的にゆっくりは越冬後、新たに豊富な食料を集められる春が到来したことですっきりを行う。 その行動は、気温の上昇と栄養状態の二つがカギになっていると考えられてきた。 しかし、ここ南国のゆっくりたちは、常に温暖な環境に棲息しており、栄養価の高いエサを 豊富に摂取した状態になると年中すっきりすることが確認された。その中でも、このカニの 大移動、産卵に伴う一斉すっきりは、この島の生態系に適応した繁殖戦略といえる。 だが、生物が産卵のために一箇所に集中する現象はときにゆっくりたちに悲劇をもたらした。 あのカニの産卵から数日後、群れのまりさつむりたちは一斉に夜の海に繰り出していた。 まだ生きている弱ったカニを選別し、ついでに潮が引いた海岸の付着性二枚貝、貝殻の薄め の巻貝、ヤドカリなどを集めていた。太陽の光が和らぐ、これからの季節には軟らかくて食 べやすい海藻も期待できた。主だった食用海藻は夏場はその強烈な太陽光線が生育を阻むた め、冬が盛期となるのだ。 まりさつむりが夜の漁に動員されたのは、夜間は強力なはさみを持ったカニ類が活動するた めである。野球ボール以上の大きさのまりさつむりならば、貝殻の中に身を隠すことで、潮 間帯のたいていの捕食者をやり過ごすことができる。カニ類は夜行性というよりは、潮の干 満に合わせた活動リズムを持っているため、夜だから特に危険というわけではない。しかし、 夜間の狩りは視界が不明瞭であり、月の光だけでは十分な警戒が行えないため、生存性の高 いまりさつむりが選ばれたのである。 「ゆ!ゆっくりできないカニさんだよ!」 大きなカニの接近を察知したつむりが殻の中に閉じこもる。そのとき、入り口を拾った小石 や貝殻の破片でふさげば「ぜったいぼうぎょ」の完成である。 カニははさみでつむりの貝殻を割ろうとするが、このサイズのカニには厚すぎるようだ。 「ゆ!ゆ!まりさはここにいないよ!ばかなカニさんはゆっくりいなくなってね!」 しばらくしてカニがいなくなると、つむりはひょっこり顔を出し、エサの収集を再開する。 「ゆゆゆ!まりさのぜったいぼうぎょを崩そうなんて無駄な足掻きだったね!」 高笑いをしながらタイドプールの回りのエサを集めるまりさつむり。 そのとき、水面下に危険な眼があることには気がついていなかった。 「この貝さんはおいしいよ!ゆっくりできるね!」 また一つおいしそうなエサを見つけて貝殻にしまい込むまりさつむり、次の瞬間なにかに 貝殻を絡め取られ、水中へと引っ張られる。 「ゆゆ?なに!?なんなの?」 すかさず貝殻に引っ込み、フタをしめる。 「まりさはここにいないよ!ぜったいぼうぎょの前にゆっくりしないであきらめてね!」 まりさつむりを水中に引きずり込んだのは大きなタコだった。タコはつむりを口元に抱え るとそのまま水中の物陰で動こうとしない。 つむりは焦っていなかった。捕食者がいなくなった後、素早く水上にでなければならない がこの場所に深いタイドプールはないはずだった。 「ゆー!ゆっくりしないでまりさを放してね!まりさはとってもかわいいんだよ!」 つむりがタコに捕らえられ10分ほど経ったときだった。 小さな音と共に、つむりの貝殻に小さな穴があき、つむりの体にちくりとした痛みが走る。 「なに?なんなの?ゆっくりできな…うべえええええええええ゛!!!」 つむりは急にに気持ち悪くなり、餡子を吐いてしまった。息苦しくて餡子がとまらない。 「ぎぼじわるいいいい゛!だじゅげで!」 つむりが今の状況を忘れて貝殻から顔を出すのに時間はかからなかった。 「ぐばっぼみじゅじゃんはゆっくじ…!!!!!」 次の瞬間タコの腕に絡め取られ、貝殻から本体のみ引っ張り出される。つむりはそのまま タコの鋭いくちばしでかじられていった。 「!!!!!」 タコは貝やカニを捕食する際、殻に小さな穴を開けて毒を注入することが知られている。 毒で麻痺させた後に、貝殻から中身を引っ張り出したり、カニをばらばらにして食べるの だ。しかし、このタコはまりさつむりを少しかじるとすぐ捨ててしまった。 タンパク質性のエサを好むタコは、炭水化物の塊である饅頭に価値を見出さなかったので あろう。 タコから開放されたものの、つむりは水中で麻痺状態にあり、このまま何もできずに溶け ていくしかなかった。 同様の悲劇は他のつむりにも起こっていた 「ゆあああ!タコさんだああああ!ゆっくり貝殻に避難するよ!」 「ゆげええ゛ぎもじば…おぼぼぼぼぼぼぼ」 タコはカニが大好物である。おそらく、この前のアカガニの集団産卵に魅かれて浅瀬へ来 たのであろう。かなりの数のタコがこのエリアに集まっていた。まりさつむりたちはタコ に巻貝だと誤認され、貝殻に穴を開けて毒を抽入され、死んでいった。 まりさつむりがタコによって大きな被害を受けた翌日、今度はヤシガニが巣を襲った。 悪いことは重なるものである。襲ったと言っても、うまく割れずに巣の前に放置して おいたヤシの実を食べて帰っていっただけであった。しかし、まりさたちは勇敢に応戦 し、三匹が永遠にゆっくり、八匹が重軽傷を負った。 と言ってもそのほとんどが、歩いているヤシガニに勝手に潰されただけなのだが。今回襲 撃したヤシガニは15kgはある個体で、まりさたちの棒きれも石もまるで通用しなかっ た。れいむたちは必死にぷくーっをしたが、ヤシガニはれいむを一瞥すらしなかった。 結局、ヤシガニはヤシの実でなごむと去っていき、れいむたちはまりさですら叶わなかっ たヤシガニをぷくーっで追い返したと認識、増長した。 「ゆゆゆー!れいむたちのいだいさの前にへんなのは逃げてったよ!」 「あんなのも倒せないなんて、まりさもありすもぱちゅりーもたいしたことないね!」 ヤシガニのはさみで貝殻ごとまっぷたつにされたつむりや、踏まれて中枢餡をかき回され たまりさの死骸が横たわる中、れいむたちは意気揚々と巣に帰っていく。老ありすは、こ の状況を苦々しく思っていた。 かつてこの群れの7割はまりさ種で占められていた。まりさ種がエサを集め、れいむ種が 生まれた子を育て、ぱちゅりー種がエサ場や環境の変化を読み取り、ありす種がそれに応 じて巣の改造の指揮をとったり、備蓄量をコントロールしたりしていた。 しかし、まりさ種が連続する災厄によって減少し、今ではゆん口こそ夏の頃の9割を保っ ているものの、その半分をれいむ種が占めるようになっていた。おまけにゆん口構成は、 カニの大移動に伴う一斉すっきりーによって、若い方へ大きく傾いている。 エサを自力で取れるベテラン、将来性を期待できる若い個体が不足していた。 「むきゅう…このままじゃ群れはゆっくりできないわ…」 新しくりーだーとなった若ぱちゅりーが苦悩に満ちた表情を浮かべる。 「みんなですっきりーすれば、きっとごはんさんをとってきてくれるまりさが増えるよ!」 そう発言したのは、かつてカニにもみあげをちぎられた子れいむだった。あの後、ぱちゅり ーたちの懸命な治療によって、片方のもみあげ以外は回復したのだ。今では、勝手に側近気 取りで若ぱちゅりーの周りにくっついて歩いている。正直、若ぱちゅりーはこのゆっくりで きない子れいむを嫌っていたが、親があの狩りの名人父まりさであるため、今まで耐えてき た。 「れいむ、今みんなですっきりしてもまりさは増えないわよ…むきゅう…分かるでしょ?」 子れいむは何を言うわけでもなく、片方だけになったもみあげをぴこぴこ上下させている。 何も分かっていないようだった。若ぱちゅりーは小さく舌打ちをした。 頭を抱える若きりーだーの隣にいつの間にか老ありすがいた。 老ありすは静かに口を開いた。 「話はゆっくり聞かせてもらったわ。この群れは滅亡するわよ!」 「「ゆがーん!!な、なんじゃってー!!」」 固まる若ぱちゅりーと側近たち。 「最近、まりさたちがたくさんゆっくりしてしまったせいで、食料は不足、おまけに巣内に 残っているのは、にんっしんしているれいむばかり。もし、またまりさたちがたくさん永遠 にゆっくりしてしまうようなことがあれば、例え春まで生き延びても、おひさまがゆっくり できなくなる頃にはエサがなくなってしまうわ。」 若ぱちゅりーが疲れたような顔をあげる。 「ありす、ならどうすればいいのかしら?むきゅう…いっそ、たくさんのお水とごはんさん でゆっくりできる、あのおばちゃまが住んでいた山の中に…」 「ダメよ!」 老ありすが声を張り上げる。思わぬ剣幕に若ぱちゅりーは冷たい汗をかいた。 「ごめんなさい、こんなのとかいはじゃないわね。山はだめ。忘れたの?ぴかぴかやキング ベヒんもスのことを?」 「…山の中にみじゅもあまあまさんもたからものもいっぱいのゆっくりぷれいす…じゅる…」 子れいむは大事なところをまるで聞いていなかった。その上勝手に妄想まで付け加えている。 だが老ありすはそんな子れいむの戯言を聞いてはいなかった。 「狩りを集団で行うことで、少しでも永遠にゆっくりしてしまうまりさを減らす。そして、 今までとは違う場所にゆっくりぷれいすをつくることもゆっくりしないで検討すべきよ。」 側近たちがざわめく。ほかはともかく、このゆっくりぷれいすを捨てるという選択は、彼ら にとってゆっくりできない提案だった。一方で、老ありすはこの程度でざわめく若い個体に 苛立ちを感じていた。この比較的安全なゆっくりぷれいすで長い間に渡ってゆっくりしたこ とで、お外の危険を、狩りの危険を、そして生き延びることの大変さを知らない世代が増え ていた。 いや、若い世代のせいにするのは老人の傲慢か? 老ありすは考え直した。初夏から秋にかけての完全な分業―狩りはまりさ種頼み―体制をあ たり前と思い込み、巣の中でのんびりすることばかり考えているゆっくりが増えてしまった のだ。今も若ぱちゅりーたちはまりさ種を増やすことを考えている。 それが間違いなのだ。 みんなでお外に出なければ、何も変わらない。 「ぱちゅりー、後で話があるわ。ゆっくり相談にのってくれないかしら?」 「むきゅ?わかったわ。いつでもいいわよ。」 この後、老ありすはぱちゅりーの知恵を借り、肉厚の葉っぱを素材として、まりさ種以外で も夏のお外で行動できる帽子を開発することになる。 「それからまりさ、あなたのゆっくりした子供に、新しいゆっくりぷれいすをゆっくり探し てもらいたいのだけど」 父まりさは表情を強張らせた。 翌日、若手のホープとして期待されている、子まりさを中心とした、 「にゅーゆっくりぷれいすたんけんたい」、通称「最後の大隊」が結成された。 メンバーは六匹のゆっくり、まりさ種が二匹、まりさつむりが一匹、ちぇん種が一匹、あり す種が二匹、そして、あの老ありすの娘の一匹である水色リボンのろりすである。ぱちゅり ー種やれいむ種は外した、完全に屋外探索を目的とした編成である。 老ありすはメンバーに山の魔物の話を伝え、選別として海藻を乾燥させた携帯食料、開発し たばかりのまりさ種以外のためのお帽子、そして万が一のための武器(錆びた釘)を与えた。 ほかのゆっくりぷれいすを探すことが知れ渡ってはパニックになることが予想されたため、 見送りに来ているのは家族のほかは、若ぱちゅりーと老ありすのみである。なお、子れいむ は昼寝の時間ということで来なかった。 穏やかな秋の午後の陽気の中、巣からゆっくりのあんよで一時間ほどの野原でお別れとなる。 他のゆっくりに気取られないよう、巣から離れた場所で出発することにしたのだ。 「おとーさん、おかーさん、行ってくるよ。元気にゆっく…」 子まりさは最後まで言い切れずに涙ぐんでしまった。両親はそんな子まりさを優しくすーり すーりする。 「いつでも待ってるよ。」 「体にはゆっくり気をつけてね」 「「おねーちゃーん!はやくかえってきちぇねー!」」 何も分かっていない妹の赤ゆたちの言葉が、子まりさや両親には辛かった。他の家族もしん みりとした別れの言葉を交わしている。 「ゆっくり行きなさい。帰りを待っているわ。」 目を真っ赤にした老ありすがみなに声をかける。その声に促されるようにゆっくりたちは ゆっくりした足取りで、野原を越え、低木林に入り、見えなくなってしまった。 残された家族は、そんな彼らの後ろ姿をいつまでも、いつまでも見続けていた。 見送りの家族たちが巣に戻った頃にはすっかり日が暮れていた。 行ってしまった。 まりさとれいむのおちびちゃんだった子まりさは、新しいゆっくりぷれいすを探す旅にで かけてしまった。後ろでは母れいむが嗚咽をもらしている。 もう会うことはない。 直感的にそう感じた。 まりさ、どこに行ってもゆっくりしていってね。 心の中でそう祈ると父まりさは巣に戻ることにした。もう夜の闇も深まり、空には満点の星 が輝いている。赤ゆたちを寝かせなければゆっくりできない。 「さあれいむ、おちびちゃんたち、帰ろうね。今日はぱぱが『すたーだすとればりえ★』の お話をしてあげるよ!」 「ゆゆ!とってもゆっくりできそうなお話だよ!」 「れいみゅは!『むそーふいーん♪』のお話がいいよ!」 そのとき、赤ゆの一匹は気づいてしまった。父まりさの後ろから二つの光る目が近づいている ことを 「…ゆ、ゆあああ…ぴゃぴゃ…そんにゃ…うちろに!うちろに!…ゆあああ…目が!」 「ゆ?」 後ろを振り返ろうとした父まりさが最期の瞬間に認識したのは、自分の体を貫く生暖かい牙の 感触だった。 私は内陸部の探検から帰ってきた。 ほとんど前人未到の島の奥地を探検してきたのだ、体のあちこちをダニやヒルに食われ、そ の日はレポートをまとめることもできす、治療に勤しんだ。 机の上には幾つか論文が置いてある。 この島の棲息する動物相、植物相についてまとめた短い論文である。投稿先の雑誌が十年前 に廃刊されたものであったため、探すのには苦労した。これによれば、この島にはワシやミ ミスクなどの肉食性鳥類や雑食性のイノシシが棲息している。この中でゆっくりを捕食する とすればイノシシであろうか?鳥類も捕食するであろうが、鳥類よりも悪食のイノシシの方 が群れに大打撃を与えそうな気はする。 もちろん、これは私の感想に過ぎない。捕食者たちの糞や胃内容物から帽子やリボンといっ たゆっくりを捕食した証拠を見つけなければ結論は出せないだろう。 しかし、だ 山の中で聞いたあの鳴き声はなんだろう。 「んごー!んごー!」 という鳴き声。明らかに獣の鳴き声であった。それとも自分が未熟なだけで、何か鳥かカエ ルの類だろうか?カエルといえば、論文では爬虫類や両生類がほとんど調査されていない。 大型の爬虫類や両生類はいるのだろうか?彼らはゆっくりを食べるのだろうか? 森でヒキガエルの鳴き声は聞いた気がするが、他はどうだろう? ゆっくりたちが海岸にコロニーを設けた理由、 常識的に考えれば、海岸が適していた、または海岸に避難してきた、の二択である。 私はゆっくりたちがそもそも水に弱いことから、内陸の捕食者から逃げてきて、または、内 陸にもゆっくりのコロニーがあり、エサをめぐる競合から海岸へ追いやられたと推測してい る。内陸部の調査で、ぼろぼろになった帽子やリボンのようなものを発見することができた。 おそらく、内陸部にもゆっくりが住んでいるか、住んでいたのだろう。 現時点ではまだ結論は出せない。 私はたまっているゆっくりたちの行動を記録した映像や音声記録をチェックすることにした。 捕食種ゆっくりは棲息している痕跡がさっぱりだったが、イノシシは確実にいる。 幾つか、ススキやササを積み重ねたイノシシの寝床を発見した。寝床からは無数のダニが検 出できたため、今も使っているはずである。内陸部にもカメラを設置すると共に、糞の調査 を行おうと思う。内陸部を動いていれば、いずれあの鳴き声の正体にも会えるかもしれない。 私は紅茶を入れ、ゆっくりたちの巣が見える位置にしかけたカメラと、指向性マイクの記録 の再生を始めた。 続けようと思う 神奈子さまの一信徒です。 前作にて感想をくださった皆様、ありがとうございました。 皆様からのコメント、本当に嬉しく、励みとなりました。 幹部クラスのゆっくりたちの会話が、頭良すぎますね。
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町人Aの憂鬱 【前書き】 * 初投稿。 * 幻想郷が舞台です。そこに住む"町人A"の物語。 * ゆっくりは割と標準設定に準拠ですが、ドスの設定が標準(?)と違います。(主にサイズ) * 原作キャラがチョイ役で出てきます。 幻想郷の人里。 ここにAという名の男が居る。 歳は25、背丈は高く無愛想。 村はずれで果樹園と家庭菜園を営んでいる、農家である。 季節は秋の暮れ、初冬。 今年も男に仕事が舞い込んできた。 男は愛用のスコップを担ぎ、河童から買ったリュックを背負って山に行く。 それにしても今年は何だか憂鬱だ。 男はだるそうに山に入って行った。 Title 町人Aの憂鬱 ~森の中の切れ込みまりさ~ Author 旅人あき ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「Aは居るかい?」 白髪の老人が今年もやって来た。 見ると片腕が無い。珍しい人型だ。そんな人型を俺は一人知っている。 「じいさんか?何か用か?」 Aは無愛想に答える。 「何だ生きてたのか。ああ、今年も副業を頼みに来た」 「毎回言ってる気がするが、前置きがおかしくないか?」 先月顔を合わせたし、寿命はお前が先だろう、と思いながらも年寄りの話を聞き出した。 「そろそろ冬だから、森のゆっくり共を間引きして欲しいんだ」 そう、これがAの副業だ。 田畑を食い荒らす害獣であるゆっくりを、適正数まで間引く。 ゆっくりは数が増えると森から人里まで下りてくる。それが農家達の被害に繋がる訳だ。 だからこの農家達の元締めのじいさんが、有志や"そうで無い者"に依頼を行う。 畑に近い森に住むゆっくりを間引き、降りてこない様にする。 俺はじいさんに借りがあるから断われはしない。良い計算だ。 「まぁ別に構わんけどな」 「それは俺のセリフだ・・・」 このジジイは主語を抜く。略したのは"断わっても"だろう。 俺も主語を抜く。略したのは"受けても"。 時に無愛想に見える事もあるらしいが、気にしない。 日本語は美しい。 「で、報酬は?」 「米や味噌だ。お前の農園じゃ足りんだろう」 「ああ、それで良い」 これは毎年同じだ。俺の生活を把握している。だからまぁ農家の大将なんかやってられるんだが。 これで冬も寝て過ごせそうだ、と思っていたら後ろから誰か来た。 緑髪の女性で、巫女服を着ている。 「どちら様で?」 「初めまして。新しくこちらに越してきた守矢神社の者です」 そういえば妖怪の山に神社が出来た噂を聞いていた。 そこの巫女さんなんだろうか。変な髪飾りをしている。 「こちらがゆっくり仕置人のAです」 ジジイからの素敵な紹介を預かった俺を、守矢の使者はジロジロと見ている。なかなか可愛いと思う。 段々話が読めてきた。ジジイが連れて来たな。こんな村はずれに来るはずが無い。 「実は今日はAさんの家にも分社を建てて欲しくてお願いに来ました。守矢神社では2人の神を祭っており・・・」 なんか良く分からんが御利益の話を始め出した。面倒なのでああ良いですよと生返事をする。可愛いから許す。 「本当ですか?有難う御座います。機会があれば是非本社にお越しください」 「ああ、機会があればね」 「所で質問なんですが、ゆっくりを間引くというのはいつもしているんですか?」 「いや、秋と春だけしかやってないな」 「時間が掛かる物なんですか?」 「さぁなぁ、他は知らないが俺は1日で済ますから、そのぐらいじゃないかな」 「その日限りなんですか?」 「そうなるな」 「なるほど・・」 気のせいか緑巫女は俺を見下す様な憐れむ様な目で見初め 「つまりAさんは、"日雇い"さんなんですね(ニコッ)」 後で寺子屋の先生に聞いたが、日雇いというのは外の世界の蔑称らしい。思い出してもあの笑顔に腹が立つ。 あの巫女はいつか泣いたり笑ったりゆっくり出来なくしてやる。もとい○す。犯○。 だが俺は凡人。ただの町人。聞けば現人神な巫女に敵うはずは無い。 いっそ分社の前で祈ってみようか。願いが叶うかも知れない。 俺が今日憂鬱なのは、これが原因なのだ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ リュックを背負って山に入ったAは、紅葉が落ち始めた森を散策していた。 外の人間が忘れた森の原風景。紅葉落ちる終わりの秋。美しい。 だが今日探すのは景色では無く、ゆっくりの群れである。 村では秋と冬にゆっくりを間引いているが、これには理由がある。 ゆっくりは冬は穴や洞窟に籠る。籠ってその中で越冬をする。 冬の寒さに耐えれないからだ。 故に秋は越冬のための食糧を集める。つまり外に出ている時間が長い。見つけやすい訳だ。 また春も同様である。越冬を経て飢えているゆっくり達は、ここぞとばかりに餌を探しに行く。 秋と春は『狩り時』という訳だ。 森に入って30分、そうこうしている内に数匹のゆっくりれいむを見つけた。 もみじ色の落ち葉が多く木々が邪魔で見えにくいが、その中で動く肌色の物などゆっくりしかいない。 どうやら例年通り餌を探している様だ。近くに寄って行く。 「ゆ!? おきゃーしゃん!」 「ゆゆ? どうしたのおちびちゃん」 「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがいりゅよ!!」 赤ゆっくりが気付いた様だ。親れいむもこちらに気付いた。 「「「にんげんしゃん!! ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」 赤れいむ3、親れいむ1か。 まぁ個体数はどうでも良い。れいむ達に確認する。 「お前ら何してるんだ?」 「ゆゆ!? れいむちゃちは"かり"をしちぇるんだよ!」 「ふゆごもりにはくしゃしゃんがいっぴゃいいるんだよ!」 「おかあしゃんはかりのめいじんなんだよ!」 「ゆ! にんげんさんはあまあまをちょうだいね!! れいむたちはかわいそうなんだよ!! むのうなにんげんさんだね!!」 最後のは親れいむだ。ああ良いだろう。 警戒心の無い親を持って哀れだな。 リュックサックを地面に置いて中に手を入れ、巾着袋を取り出す。 「よし あまあまをやろう」 干しぶどうを数個袋から取りだし、ゆっくりたちの前に撒く。 ゆっくりは見たこともない物を目にし、固まっている。 食い付かない所を不審に思っていると 「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがあまあまをくれちゃよ!」 「ゆあああ! おちびちゃんだめぇぇぇぇぇぇ!! どくかもしれないでしょうぉぉぉぉ! いつもいってるでしょぉぉぉぉぉ! おかあさんがどくみするからゆっくりまっててね!!」 前言撤回だ。警戒心はあるらしい。人間が怖くないだけか。 地面の一粒を舌ですくい、咀嚼する親れいむ。 「むーしゃむーしゃ・・・ゆああ~~~~・・・ このまめさんとってもおいしいよ!!! うめ!! めっちゃうめ!!!」 うっとりしたと思ったら突然がっつきだす親れいむ。地面に落ちてた数個の干しぶどうを全て頬張る。 嫌悪感が全開で叩き潰したい衝動に駆られる。 この親れいむは全て食べやがったのだ。子供に残さずに。 「おきゃーしゃん・・・ れいむのぶんは?」 「おきゃーしゃんがじぇんぶたべちゃった」 「ゆゆ!? ごめんねおちびちゃんたち・・・おいしくてついぜんぶたべちゃったよ」 「おきゃーしゃんのびゃきゃぁぁぁぁぁ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」 「おきゃーしゃんだけじゅるいぃぃぃぃ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」 「ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! おきゃーしゃんのくじゅぅぅ!! くじゅはしねぇぇぇ!!」 「どぼじでぞんなごどいぶのぉぉぉぉぉぉ!!! みんなのおがあざんでしょおおおおおおお!!!」 目の前で泣き喚きだすゆっくり共。私利私欲、雑言罵倒。 俺はこの光景を見ていつも思う。ゆっくりは神が作った人間の汚い部分の寄せ集めなんじゃないかと。 赤ゆに至ってはしーしーまでして悔しさを表している。人間の赤ん坊でもここまで醜悪じゃない。 地獄の縮図の様な光景を見て、毎度内心辟易する。 そんな中、俺は例年通り話を進める。 「泣くなゆっくり。まだ袋に一杯ある」 「ゆああ!! にんげんさんははやくおちびちゃんたちにあまあまをちょうだいね!! あとれいむにもちょうだいね!! ゆっくりしないではやくしてね!!」 「だが俺にも用がある。お前らが俺のお願いを聞いてくれたらな」 「おねがいをきくからはやくちょうだいね!!」 「約束は破るなよ。俺は鬼じゃないが約束を破る奴は嫌いだ」 そう言って袋の中から更に何個か取りだし、ゆっくり達に撒く。 それを見て親れいむと赤ゆ共は"まめ"を食い出す。 「ゆあああ!! おちびちゃん!! あまあまだよ!! ゆっくりたべてね!! おかあさんにもちょうだいね!!」 「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」 干しぶどうなんか自然界に無い。普段虫や草を食ってるこいつらからしたらかなりのあまあまなんだろう。 赤ゆに至ってはうれしーしーをしている。潰したい。 もっととねだる馬鹿共を見て、ようやく本題に入る。ここまで仕込むのが大変だ。 俺に懐柔させるのが。 「そんじゃお願いを聞いてもらおうか」 「ゆゆ! なんでもいってねにんげんさん!!」 「じつはこの大きな袋(リュックサック)にはお野菜さんが入っててね。 クズ野菜で要らないから捨てる所を探してるんだ。 お前達の群れにやるから群れに案内してくれ」 「ゆゆ! そんなことならかんたんだよ!! れいむのむれにあんないするよ!! おやさいさんをくれるなんてにんげんさんはとってもゆっくりしてるね!!」 「ただ条件が有ってな。 ドスが居る大きな群れを探してるんだ。 お前の群れにドスは居るか?」 「れいむのむれにはドスがいるよ!! あんないするからおやさいさんとあまあまをちょうだいね!!」 「よし案内してくれ」 俺の言葉尻がおかしい事に気付かない。面倒で雑になってしまったんだが、所詮餡子だ。 ぽよんぽよんと奇妙な音を出しながら跳ねて行く親れいむと赤ゆ共。 さて、いよいよ大詰めだ。 俺はこの重いリュックサックから解放される事を想像し、顔が緩んだ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 親れいむの後に続く赤ゆ達。その後に続く俺。 ガサガサと落ち葉を踏み敷く音がしていく。 が、何か音がおかしい。音が多い。 気配を感じ、後ろを振り向く。 「ゆぐ!!」 振り向くとそこにはゆっくりまりさが居た。 身体はデカイ。親だな。 帽子は膨らんでおり、どうやら餌が詰まっている用だ。 俺に見つかったまりさは俺の横をぴょんぴょんと急いで素通りし、先頭の親れいむを呼びとめる。 「れいむ!」 「ゆ?」 「「「おとーしゃん!」」」 親れいむの番の様だ。 「ゆゆ! どうしたのおとうさん」 「どうしたのじゃないのぜ! なんでにんげんさんといっしょにいるんだぜ!」 「このにんげんさんはあまあまさんをくれるんだよ! れいむのどれいなんだよ!!」 なるほどそういう認識か。これで憐れむ気もしなくて済む。 それにしてもこれはだぜまりさか。珍しい。 「なにいってるんだぜ! にんげんさんはどれいになんかならないのぜ! ぎゃくにえいえんにゆっくりされちゃうんだぜ! さっきのあまあまだってなにかのわななんだぜ!!」 どこかから覗いていたのか。それも最初の方から。 番のれいむが危ないというのに観察とは、ゲスなのかも知れないな。 だが頭は良い様だ。多少のゲス性は生きる上では必要だしな。 「まりさはしんぱいしょうだね! れいむはゆっくりしていてつよいんだよ! にんげんさんはゆっくりできないくずだからよわいんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむのほうこそゆっくりりかいするんだぜ! それにこっちはむれのほうがくなんだぜ! どすにおこられるぜ!」 「ゆうう!!! れいむおこるよ! にんげんさんはおやさいさんをくれるからつれていくんだよ!! どすもれいむにかんしゃするにきまってるよ!! これでれいむもむれのじゅうやくいりだよ!!!」 群れの重役か。 お花畑もここまで来ると羨ましい。このまりさに同情するよ。 「れいむはばかなんだぜ! どうなってもしらないのぜ!」 「まりさはばかだね! こんなおとーさんはいらないよ!」 「「「おとうしゃんはいりゃにゃいよ☆」」」 赤ゆの反応に驚いた。複雑な家庭の様だ。 結局親まりさが折れる形で、群れへの帰路に就いた。 俺に対してずっと警戒しているのか、一定の距離を保っているのは殊勝だ。 歩く事20分。 といってもゆっくりの速度だから、たいして離れていない。 どうやら群れに付いた様だ。 森の中、紅葉とその落ち葉が景色を覆っているが所々ゆっくりが見える。 親れいむに群れの中心まで案内させ、そこにリュックサックを置いて座り込み一息付いた。 中心は大きな木の様で、そこに続々と群れのゆっくり共が集まってくる。 また撒き餌の出番だ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「ゆゆ!むれについたよにんげんさん! はやくあまあまちょうだいね!!」 「「「ちょうだいにぇ!!」」」 クソ共が騒ぐ。野菜の事はもう頭に無いらしい。巾着袋からまた数個取りだし、その辺に撒く。 そうこうしているうちにゆっくり同士で会話が始まった。 「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」 「むーしゃむーしゃ、しあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「むきゅ、これはいったいどういうこと?」 「みてのとおりなんだぜ。れいむがにんげんさんをむれにつれてきたんだぜ」 「このにんげんさんはとかいはなの?」 「むきゅきゅ、にんげんさんはゆっくりできないっていったのに」 「なんでもおやさいさんをくれるらしいぜ」 「そうだよ!このどれいはおやさいさんをくれるからつれてきたんだよ!! れいむのおかげだよ!! これでれいむもむれのじゅうやくいりだね!!」 「「「おきゃーしゃんはえりゃいんだにぇ!! きゃわいきゅちぇごめんにぇ!!」」」 「むきゅう、あたまがいたくなってきたわ。にんげんさんはほんとうにおやさいさんをくれるの?」 「もりではおやさいさんはほとんどみないから、とかいはとしてはたべてみたいわ」 ああそうだろうよ。ただ中には野菜をたらふく食ったゆっくりもいるだろうが。 さて、そろそろ本題に入ろう。 「ああ、お前らに野菜をやるよ。ただ条件がある」 「むきゅ」 「じょうけん?」 「群れの数を確認したいから、全員を集めてくれ。当然ドスもな。 家にまだ野菜があるから、それを群れの数だけ持って来てやるかも知れん」 「むきゅ、おやさいさんはにんげんさんにとってもだいじなんでしょう? どうしてわたしたちにくれるの?」 「人間が食べない様なクズ野菜だからだ。色が悪いとか、形が悪いとか。"食い残し"とか。 お前らなら食べるだろう。 このリュックサックに入ってるんだ」 「むきゅう、なるほどわかったわ。 いまはふゆごもりまえだからしょくりょうがほしいし、みんなをあつめるわ。 にんげんさん、ありがとう」 「おやさいさんはどんなあじなのかしら」 有難うか。確かに現世は地獄だしな。 森の重役らしいゆっくりぱちゅりーが群れの巣を周っている。 当然その位置を把握する。 ぞろぞろとゆっくりが集まってくる。 「とかいはのありすはぜんしゅるいたべたいわ」 「わかるよー、おやさいさんはゆっくりできるんだねー」 「おやさいさんがてにはいるのはたすかるみょん」 「むきゅ、にんげんさんみんなをよんできたわ」 ぱちゅりーに狩りに出ている奴がいないかを確認した所、今日はまりさ達のみだったらしい。 きけば今日は群れの全ゆっくりの休息日らしい。まりさの家は子供が多いため今日も出ていたそうだ。 ゆっくりにも休息日があるのに驚いた。作ったのはぱちゅ種だろう。 ざっと見渡して数は成体が40匹程。細かいのを入れれば100匹か。赤ゆ子ゆ親ゆの混成。上出来だ。 恐らくすっきり制限をしている群れだな。成体が多い。 「よし、それじゃあお野菜さんを渡す。 ただ一つお願いがある。 食べた事のある野菜があれば、それを教えてほしい。」 「むきゅ? どうしておしえるの?」 「気が向けば同じ野菜を持って来てやるからだ」 リュックサックから大きめの袋を取り出し、それを地面に向けて逆さまにする。 どさどさと落ちる野菜。 どれもこれも誰かの食い残しの様な野菜だ。 それを見て声が上がる。 「わかるよー、ちぇんはそのおやさいさんたべたことがあるよー」 「れいむもそのおやさいさんをたべたことがあるよ!」 「「「おいちかったにぇ!!」」」 「そうか、どこで食べたんだ?」 「やまをおりたところにはえてたよー、いっぱいはえてたよー」 「れいむもやまをおりたところでたべたよ!! とってもおいしかったよ!! ぜんぶたべれなかったから、またいきたいよ!!」 「「「とっちぇもおいちかったにぇ!!」」」 そうか。 それとさっきのあまあまをもっとちょうだいね!!くちょじじぃ!!!とほざきやがる。 その食い残しは俺がジジイから証拠として引き取った物だ。 ジジイの話では、実際に被害が出たらしい。 そして一言付け加えた。「見つけたら制裁を頼む」と。 今年は念入りの方が良い様だ。 ふとだぜまりさを見ていたら、れいむが言うや否や顔を強張らせ巣の方へ走っていった。今回はあいつかな。 それを一瞥した後、今日最後の仕事を俺はやりだした。 「よし、こんだけだ」 「ゆゆ! ぜんぜんたりないよ!! ばかなの?しぬの? はやくあまあまちょうだいね!!!!」 「「「あまあまよこちぇくちょじじぃ!!!!」」」 「これだけなんてとかいはじゃないわね。ぜんぜんたりないわ」 「むきゅ、たしかにこれだけじゃみんなにいきわたらないわ。」 「にんげんさんそのおおきなふくろはなんなんだみょん? ふくらんでるみょん」 「わかるよー、そのふくろにいっぱいはいってるんだねー。 ひとりじめはずるいねー」 ちぇんの一言で場が沸き立つ。なかなか勘が冴えてるな。 ああ、袋に"いっぱい"入ってるよ。 「ゆゆ! ぐずのどれいのにんげんさん!!ばかなの?しぬの? はやくそのふくろからあまあまちょうだいね!!!!」 「そのふくろをひっくりかえせばいいんだねー、わかるよー」 「お前ら袋の中身が見たいのか?」 「みたいよー、なかみがほしいよー」 「とかいはならだしおしみせずにだすべきよ」 「はやくだすみょん!」 「分かった。お前らの選択だ。止めはせんよ」 元々俺がひっくり返す予定だったが、ご要望がある方がやりやすい。 俺はこれみよがしに立ち上がり、リュックサックを持ち上げ逆さにし、中身を地面に放り出す。 その様をゆっくり達が期待に満ちた目で見守る。 二つのバスケットボール程の大玉が地面に落ちる。 (ドサッ) 「いだっ!!」 「いだっ!!」 その瞬間、全ゆっくりが凍りついた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「う~~、いだいどぉ~~」 「う~~、いだいよ~~~」 中から出てきた2匹のゆっくり。それを見て周りのゆっくり達が悲鳴を上げる。 「「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」」」 「「「ゆぎぃぃぃぃ!! れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 「ふらんもいるぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! わ"がら"な"い"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!」 「「「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」 外の世界で言うおーけすとらと言う奴だろうか。ゲスの悲鳴は心地良い。 顔がぐしゃぐしゃになっている様は心が踊る。 赤ゆ共は泣き喚き、おそろしーしーは当たり前。口から餡子を吐いている個体も居るな。 「んあああ!? あまあまだど~☆」 「あまあま~! ☆れみ☆りゃ☆うー!!」 「むきゅあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!どすぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」 阿鼻叫喚。 ゆっくりれみりゃとゆっくりふらんが宙を舞う。両方胴は無い。 どのゆっくりも逃げ出したいが、動いたら狙われそうで動けない様だ。蛇に睨まれた蛙か。 「あーあ、れみりゃとふらんに出くわすとは、お前ら永遠にゆっくりだな」 一人大きな声でつぶやく。ゆっくりによく分かる様、永遠にゆっくりと。 つまりお前らは今日死ぬのだと。 だが俺も鬼では無い。俺は"助け舟"を出してやった。 「よしお前ら、一人だけ助けてやる」 唖然とするゆっくり達。そのまま続けてやる。 「聞こえなかったか? "生き残った奴"を一人だけ助けてやる。 さぁ頑張れ」 「にんげんさん、たすけるって?」 ゆっくり達は理解出来ていない様で、聞き返してくる。 聞き返したのはだぜまりさか、巣から戻ってきた様だ。 「まりさ、聞こえなかったか? お前らのうち一人だけ助けてやる。 どのみちれみりゃとふらんが揃ったら、お前ら全員助からん。 中身の餡子を吸われてぽいぽいぽーいだ。 だけど偶然ここに俺が居るから、生き残った奴は"一人だけ"助けてやる」 「むきゅきゅ! もとはといえばにんげんさんのふくろからでてきたんでしょおぉぉぉぉ! だいたいひとりだけってどういうことなのぉぉぉぉぉぉぉ!!」 ざわめくゆっくりたち。ぱちゅ種が居るとやりにくいなやはり。 だが無視する。去年もそうだった。 「知らんよ。 言っただろ、逆さにしたのはお前らの選択だ。 それに俺は嘘は付かん。 生き残りたければ他のゆっくりを殺せば良いんじゃないか? 一人は助かるんだから。 そうだろうぱちゅりー?」 「むきゅうぅぅ!! ほ、ほかのゆっくりをころせるわけがないでしょおおおおお!!」 「じゃあ皆食われればいいんじゃないか。 お前らの選択だ。好きにしろ。 それとドス、お前も入ってるからな」 俺は目の前に居るゆっくり達のはるか後ろを見て、最後にそう言った。 ドスは驚いた顔でこちらを見、その後近寄って来た。 周りのゆっくりが間を空ける。 そしてちょうど、俺とドスは正対した。 「おどろいたよ。 にんげんさんにはどすがみえてるんだね。 ならゆっくりしてるんだね」 「そうだな。 俺はゆっくりしている」 「にんげんさんはどすすぱーくをしらないの? れみりゃやふらんぐらいなら、どすすぱーくでたいじができるんだよ」 「ああそうなのか?なら好きにすればいい」 にへらにへら笑うドス。そういえば去年もこうだったな。 「ほんとうはぜんぶにんげんさんがしくんだんでしょ? にんげんさん、あまりどすたちをおこらせないほうがいいよ。 どすはどすすぱーくをにんげんさんにうって、にんげんさんをたいじできるんだよ」 「ほう、そうなのか。なら好きにすればいい」 「・・・にんげんさんはばかなんだね。 どすはむれをまもらないといけないから、どすすぱーくをにんげんさんにうつよ!!」 みんなはなれてね、と続けるクソデブ饅頭。 ドスを支点にゆっくりたちが放射状に左右に分かれる。さしずめ俺を中心とした扇形だ。 俺を"たいじ"して、れみりゃとふらんも"たいじ"する算段か。 どおりでこの群れが成体が多い割に落ち着いている訳だ。普通は我先に逃げ出している。 「どすがにんげんさんをせいさいするよ! おちびちゃんはよくみていてね!!」 「「「ばかにゃにんげんしゃんはゆっくちちんじぇね!!!」」」 「わかるよー!! にんげんさんがもえるんだねーー!」 「こんだけしかおやさいさんをわたさないにんげんさんはせいさいしろみょん!!」 「みんなばかなんだぜ、にんげんさんにかなうはずがないんだぜ。 いなかものはこれだからいやなんだぜ・・・」 「ばかなんていうまりさはとかいはじゃないわね。 どすみたいなとかいはなゆっくりになりたいわ」 おのおの歓声が上がる。 よく見ると一部のゆっくりは枝を咥えている。臨戦態勢の様だ。 俺は必要事項を処理するため、相手を目測する。これが最後の作業だからな。 通常、ゆっくりは赤ゆがピンボール(直径3cm)程の大きさだ。 それが子ゆでソフトボール(直径10cm)程になり、成体でバレーボール大(直径25cm)程になる。 胎生妊娠中ならもう一回り大きくなる。 そしてドスと言われるまりさははまりさ種の変種だ。 体長が60cmほどを超えるとドスと呼ばれ出す。大体は最後は150cm辺りまで育つ。 それ以上の個体は殆ど居ない。越冬出来ずに死ぬからだ。 身体がでかい個体は、入る穴にも困る。1mの大穴など、掘れてもすぐに崩れてしまう。 ぱちゅ種指導による綿密な穴掘りか、大木を削って作った空洞に入るとかをしないと生き残れない。 育ち過ぎたドスの大半は冬に凍死する。 100cmを超えていたら、そいつは過酷なゆん生を乗り越えた、頭も回る大物という訳だ。 目の前のドスは体長およそ150cm。生存可能な最大クラスのサイズ。大物だ。 重量はおおよそ70kgぐらいか。成体ゆっくりの約100倍。跳躍も50cmは堅い。 普通のゆっくり達から見たらこのドスは文字通りバケモノだろう。 まず勝てるはずが無い。それは信頼もされる。お前らの世界ではな。 身長170cm後半のAとドスまりさが対峙する。 正対距離は約2m。とんがり帽子のせいでドスの方がAより全高が高い。 ドススパークはスパークキノコを使って熱線を放つドスまりさの魔法だ。 ゆっくりなら熱で燃えてしまう。捕食種も同じだ。 燃えると言うのはゆっくりにとっては致命傷であり、全身火傷の激痛のショックで即死もありえる。 人間でも大やけどを負う。場合によっては服が燃える。だが死にはしない。そこが大きく違う。 このデブは人間様と対峙した事が無いのだろう。哀れだ。 ふとさっきのだぜまりさを思い出したが、すぐに止めた。 俺は善意を持ってドスに一言伝える。 「ドス、先に言っておく。俺に攻撃しようとする度に片目を貰う」 「なにいってるの? どすのおめめはどすのものだよ。 にんげんさんはゆっくりどすすぱーくの"さび"になってね」 スパークには溜めがいるらしいが、俺の知っている個体で溜めの無い個体が居るから、無い物と考える。 俺はドスの動きだけを、ただだるそうに眺める。 ドスが帽子を動かし、中から何かを落とそうとする。 その瞬間、俺は"抜刀"した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ バズゥッ!!!! 「ゆぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ" あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」 悲鳴を上げ、餡子を撒き散らしながらのたうち回るドス。 縦一文字に右目、顔面右部を大きく切り裂かれたドスは絶叫する。 ドスが帽子からきのこを落としたのが見えた瞬間、Aは背に担いだスコップを"抜刀"していた。 スコップ。 それは土を掘り起こす道具であり、またとても頑丈な"金属加工物"である。 薄く堅く、鋭利。 Aはこの道具が人間の首でも刎ね跳ばせる事を知っていた。 ドスの帽子には大きく切れ込みが入り、その様は真上からスコップに切られた事を表す。 一見ただのスコップだが、実は凶器。 文字通りAにとってスコップは"刀"なのである。 妖怪からの自衛目的にと練習を始めたこの"スコップ"は、今やゆっくり殺しの域にまで高められていた。 「ゆぎびぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ" い"だい"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」 「どすぅぅぅぅ!! すぱーくをうつのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」 横からぱちゅりーが指示をする。顔面を切り開かれたドスに無茶を言う。 だがドスは涙を流し餡子を漏らし、のたうち回りながらもきのこを拾おうとする。 なかなかガッツがあるドスだが、顔中に変な汗と汁が出ていて気持ち悪い事この上無い。 俺は善意を持ってドスに一言伝える。 「いいのか? ドス」 「ゆふぅーーー! ゆふぅーーー! な"に"がっ"!!」 「いいのか? 両目を失ったら、生き残れないぞ」 「どずはぐずのにんげんざんをごろじで、ゆっぐりずるよ!!!」 「俺の動きが見えなかったんだろう? なら次も見えない。 ゆっくりは人間には勝てないんだよ。 試したかったらそのきのこを拾えばいい。 次は左目を貰う」 ドスの動きが止まる。 人間に遭遇しなかっただけで、壮絶なゆん生を歩んできた筈だ。 こいつはもう分かっている。おそらくこいつに指示したぱちゅりーも。 まわりの成体ゆっくりも唖然としており、子ゆ赤ゆに至ってはドスの餡子を見てゆんゆん泣き喚いている。 俺は更に付け加える。 「ドス、俺は一人だけ助けてやる、と言った。 お前も含まれている」 「ゆふぅーー・・・ ゆふぅーー・・・ 」 「どすぅぅ!! きいちゃだめよ!!」 「ドス、死にたくないんだろう?」 「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」 「ドス、片目しかないお前じゃれみりゃはともかくふらんは無理だろう。 勿論俺を倒すのも無理だ。 だがもしお前が最後まで生き残れば、それで助かるんだ。 どうするかはお前の自由だ。 まぁ俺がこんなことを言うのもなんだが、 生き残る可能性が高い方に賭けた方が良いんじゃないのか? ドス。 "他人は他人"だろう?」 「う"~~~ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"~~~~!!!」 ドスは涙を流し涎を流し、左目を強く瞑って唸っている。葛藤しているんだろう。 一方のぱちゅりーは顔面が蒼白だ。もう悟ったのだろう。口に枝を咥えだした。笑いが出そうになる。 俺は上で旋回しながら待機していたれみりゃとふらんに合図をする。 あまあまが腹いっぱい食える、と1日断食させていたのだ。群れの一つ程度は食い荒らすだろう。 2匹の捕食者は急降下し、地面に群がる餌に飛びついて行った。 「(がぶがぶ)うう~~ あまい~~☆」 「ゆぴぃぃぃ!? ゆびっぎぃぎぎぎぎ・・・」 「ゆんああああぁぁぁぁぁ!! ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「ゆああぁぁぁぁぁ!! きょわぃよぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆぅぅ! おちびちゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 俺の方に注目していたゆっくり共は、捕食者が降りてきた事に気付くのが遅れた。 まずはれみりゃが俺を案内したれいむの赤ゆの1匹に噛み付き、餡子を吸いだした。 ふらんは空を旋回し"品定め"をしている。 奇声を上げて白目を剥き痙攣する赤れいむ。それを見てしーしーを漏らしながら泣き喚く2匹の姉妹。 空を飛んでいたれみりゃが降りてきた事により、ドスの右手側のグループはパニックに陥っていた。 まぁどの道赤ゆが生き残る事は無い。せいぜい恐怖で震えて甘くなってくれ。 「みんな! ちがうほうこうににげるのよ!! そうすればたすかるわ!!」 「ゆゆ!! おちびちゃんたち!! ゆっくりついてきてね!!」 「ゆー!! ありすたちもにげるよ!!」 「「「みんな!! ゆっくりにげるよ!!」」」 ありすがゆっくり達に生存策を伝える。このありすは群れの重役かな?確かにそうだな。 それを聞いた一部のゆっくりの親子は逃げ始めた。良いぞその調子だ。 だから俺は付け加える。 「このふらんは俺から離れた奴を優先的に食う。 食われたい奴から逃げれば良い。お前らの自由だ。」 これは事実だ。そう仕込んだ。 案の定なんの命令もしていないのに、ふらんが逃げ出したゆっくりを追い出した。 「う~~~☆ ふらんもあまあまたべたいど~~☆ にげるやつはつまみぐいだど~~☆」 「じゃあこのおおきいのはれみりゃのぶんだど~~☆」 「ゆああああああああ!! こっちこないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆんあああああ!! にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 逃げ出したゆっくりと指示したありすが悲鳴を上げる。 だがもう遅い。四方に逃げたゆっくり達はみな"つまみ食い"をされ、足を無くすだろう。 成体ふらんが一匹居れば、どの道助からないのだ。食うのよりも嬲り殺すのが目的なのだから。 タックルされて身体を倒され、あんよを噛みちぎられ、それで一生が確定する。 ふらんは逃げる奴を食い荒らし、れみりゃは動いてない奴を食い荒らす。 ありすは自分の言った事で仲間が"つまみ食い"をされる様を見て、顔が青ざめていく。 ぱちゅりーはというと、えだを噛み締めて何かを観念した様だ。目が据わっている。 「ゆううううう!! ぱちゅりー!! なんとかしてね!!」 「ゆっくりしないではやくしてね!! れいむたちをたすけてね!!」 「ぱちゅりーはほんとにぐずだね!! ひとりでかりもできないしね!!」 「ありすのせいでふらんがきたよ!! ありすのせいでゆっくりできないよ!!」 「「「ありすとぱちゅりーはほんとゆっくりできないゆっくりだね!!」」」 「どぼじでそんなこというのぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ぱちぇもありすもがんばってるでしょぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"」 「そうだみょん!! ぱちぇもありすもわるくないみょん!!」 ゆっくりに責められ泣き出すありす。質の悪い群れの様だ。みょんだけが味方をしている。こいつも重役か? まぁゆっくりにとって「ゆっくりできないゆっくり」と言われるのはゲス以下、死に値するほどらしい。 そこまでこき下ろされたら泣き出すのも無理は無いか。ありす種はプライドが高い様だし。 まぁ俺には関係無い。 その一部始終を眺めた後、俺はドスを生温かい目で見つめていた。 ぱちゅりーと同じく目の据わったドスが満身創痍で動き出したからだ。 「(ブルブル)ゆ"ぅ"ぅ"~~ ・・・じにだぐないぃぃ・・・ どすは・・・」 『・・・!? どす!?』 「どすは、」 『だれか!! どすをとめて!』 「どすは、いきのこるよ!」 『みょん! どすをえださんでさしてぇぇぇ!! はやくぅぅぅぅ!』 「(パクツ)」 「!? わかったみょん!! どすうぅぅぅぅ!! ・・・!?」 ぱちゅりーが叫び、みょんが枝を咥えて突進する。異変に気付いた様だ。なかなか速い。 だが一歩早く、ドスはキノコを舌で取り口に含み、みょんの居るドスの左手側に向き直った。 ああ、位置が悪かったな。むしろ運か。 右手側に居れば、ドスには位置が分からなかったのにな。 カッ! (ボッ)「「「「ゆぎぃぃぁぁああああああああ!!!!!」」」」 ドスはキノコを咥えると、身体を左手に半回転させ口元をみょんの正面に向けた。 予想通り溜めなど無かった。一瞬で眩い光が放たれ、みょんを含む左手のゆっくり達が燃え出す。 ドスから左手側のグループを牽き潰す様に、炎の軌跡が生まれていた。 「「ゆぎゅ"う"う"う"う"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!!!」」 「「あじゅい"い"い"い"い"い"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」 「「だずげでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」」 「「「「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」」」」 「「「「ぴぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」」」 赤ゆは即死。子ゆと成ゆは全身が炎に包まれ転げ回っている。 みょんも絶叫しながらのたうち回る。ぽよんぽよんという音では無く、バスンバスンと狂った様に。 ゆっくりの肌は人間よりも敏感らしい。ならばこの全身を包む炎は想像を絶する地獄だろう。 およそ左手側の9割が直撃、即死を免れた20匹程のゆっくりが独自のファイヤーダンスを踊りだす。 ゆっくりにとって火が付くと言うのは殆ど死を意味する。顔しかないゆっくりは自分で火を消せないからだ。 しーしーとうんうんを撒き散らしながら飛び跳ねるクソ共を見て、その様を楽しむ。 同時に山火事にならない様に、燃え出した枯れ葉を踏んで消火するのも忘れない。 そしてドスの右手側をAグループ、左手側をBグループとするなら、既に両方にパニックが起きていた。 A側はれみりゃが食い荒らし、B側は火炎地獄となっている。仲間割れも散見出来た。 もう終わりだろう。 A側に居た司令官と思われるぱちゅりー自身が、枝でありすを突き刺しているのだから。 (ザクゥッ!) 「ゆぎゅ"う"う"う"!! ぱちゅりーどぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」 「むきゅうぅぅぅぅぅ!! どすがいないいじょう、もうたすからないのよぉぉぉ!!! ならぱちゅりーは、このえださんでみんなをころしていきのこるわぁぁぁぁ!!! さいごのひとりになるのよぉぉぉぉぉぉ!!!」 むきゅきゅきゅきゅー、と笑いだすぱちゅりー。 そうだな。頑張れ。お前では無理そうだが。 「どぼじであ"り"ずな"の"お"ぉ"ぉ"ぉ"!! ごうなっだのはでいぶのせきに"んでしょぉぉぉぉ!! さぎにでいぶをさすべぎでしょぉ"ぉ"ぉ"!!」 流石成体、刺された程度ではまだ死なんか。言ってる事も一理ある。 まぁ言ってる事自体はゲスなんだが、この状況でゲス化しないゆっくりなどいない。 それを聞いたちぇん親子が枝を咥えてれいむに向きだした。 「「わかるよーー!! ぜんぶれいむのせきにんなんだよーー!!」」 「だれかぁぁぁぁ!! おちびちゃんをたずぶぎぃい!!」 まだ叫んでたのかお前。もう死んでるだろ。 2匹のちぇんの枝が左右かられいむの顔に突き刺さる。 引き抜かれた穴から餡子が漏れ、痛みで泣き喚くれいむ。 そしてそれをお構いなしに、付近のゆっくりがれいむに噛みつき出していった。 「れいむのせいだよ!! くずのれいむははやくしんでね!!」 「れいむがしねばたすかるんだよ!! ゆっくりしないでしんでね!!」 「「「くずのれいむ!! ゆっくりごろし!! ゆっくりできないれいむはゆっくりしないでしんでね!!」」」 「ゆぎぎぃぃぃぃ!! どぼじでこ"ん"な"こ"と"す"る"の"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! や"べでぇぇぇぇぇ!! い"だい"い"い"い"い"い"い"い"!!! ばでぃざばずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 皮を引っ張り引き千切り、中から餡子が漏れ出す。 逃げようと必死に飛び跳ねるが、飛び跳ねるごとに皮を噛みちぎられ餡子を撒き散らしている事に気付いていない。 すぐに飛べなくなり、顔の半分以上の皮を持って行かれたれいむが見えてきた。 「ゆ"べぇ"ぇ"!! だずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 口から残り少ない餡子を吐いて助けを求める親れいむ。 聞こえないかのごとく執拗に枝で殴る刺す噛みつく引き千切るをするまわりのゆっくり達。地獄絵図だ。 その様を見ていたれいむの赤ゆ2匹は、恐怖でうんうんとしーしーを垂れ流し、口から餡子を漏らして悶死していた。 ふとこいつの番のだぜまりさを探す。 少し離れた所で何かをしているが、よく見ると枯れ葉を集めてその中に隠れようとしていた。 無言で顔は必死だ。全然ゆっくりとしていないが、中々賢いな。 視線を戻すとB側はほぼ壊滅、生き残ったA側のゆっくりがドスを刺し殺そうと枝で突き刺しているのが見えた。 「むきゅうぅぅぅぅぅ!! みんなぁぁぁぁぁ!! どすをころすのよぉぉぉぉ!!! じゃないとどすにころされるわぁぁぁぁぁぁ!!!」 「どすははやくしんでね!! れいむたちがいきのこるよ!!」(ザクッ!) 「いきのこるのはみょんだみょん!! みょんいがいはみんなしぬみょん!!」(ザクゥッ!) 「う~~☆ おっきなあまあまさんなんだど~☆」(ガブゥゥ・・・ブチィ!) 「い"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"」(ドスン!ドスン!) 「むきゅ!? どすぅぅぅぅ!! こっちこないでべぎゅ!!」(ブチャァ!) 「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!! ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサユサユサ) 「だずげでぇぇぇぇぇぇ!! だれがばでぃざをだずげでぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサ・・・) いよいよ本当の地獄になってきた。 ドスを殺そうとするぱちゅりーがゆっくりを誘導し、れみりゃまでもがドスに噛みつき皮を剥いでいる。 痛みで飛び跳ねたドスがぱちゅりーを体半分踏み敷き、圧迫された生クリームが破裂してぱちゅを四散させた。 奥を見ると刺されてないありすがまりさをれいぷしている。すっきり制限で我慢もあったのだろう。 顔は恍惚、舌を大きく出してだらしなく涎を垂れ流すありす。 性欲全開でまりさを犯す様は反吐が出そうになる。しかも相手は子まりさだ。 「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」とありすが奇声を上げた後、まりさは餡子を吐きながら黒ずんで行った。 「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」 体力だけはあるクソデブが飛び跳ねる。だがもう身体の下半身は穴だらけだ。 飛び跳ねるだけで餡子が飛び出し、とうとう皮が裂け始めた。 裂けた状態で飛んだ瞬間、大きく皮が裂け餡子が盛大に飛び出した。 「い"ぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! たずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 「どすはしねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ザスッ!) 「ッッッばあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!! ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 もうあんよが裂かれ、飛べなくなったドスの左目にまりさが枝を突き刺す。 両目を失ったドスが絶叫する。この瞬間、ドスが生き残る可能性は消えた。 「おちびちゃん、ごめんねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「やべでおぎゃあしゃん"ん"ん"!! でいぶをがまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 甲高い悲鳴のする方を見ると、親れいむが子れいむを噛み潰そうとしていた。 すでに近くの赤ゆは誰かに噛み潰された様だ。無残に四散しており、誰の子で誰にされたかは容易に分かった。 ゆっくりは人間同様、子と親の体格差が大きい。子では勝てないだろう。 周辺では他人の子ゆっくりを殺し、また自分の子ゆっくりが他人に殺されるという光景が広がっていた。 殺しやすい相手から、赤の他人からという事なんだろう。 れみりゃはドスを食い荒らすのに夢中で、ふらんは逃げたゆっくりを嬲っている最中だ。 最後の一人になるべく、どのゆっくりも同族と殺しあっていた。笑いがこみ上げる。 そう、いつしか俺は、この光景を見ることだけが生き甲斐になっていた。 燃えさかるゆっくりたち。親子殺し、隣人殺し。強姦。暴行。罵倒。雑言。恐怖。苦悩。苦痛。諦観。 この地獄劇場が永遠に続けば良いと思いながら、俺は阿鼻叫喚を心行くまで堪能していた。 「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!! ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ガサガサガサガサ) ありすのれいぷ宣誓が聞こえた。ふと見るとさっきぱちゅりーに刺されたありすだ。 カスタードを傷口から垂らしながら、枯れ葉の山にガサガサと突進していく。 狙いは隠れているだぜまりさの様だ。 まりさはというと心底嫌そうな顔をし、枯れ葉から出て枝を咥えて応戦しだした。 「どぼじでうけとめてくれないのぉぉぉぉぉぉ!!」 「まりささまのつまはこのむれにくるまえにしんだれいむだけなんだぜ!! れいぱーありすやげすのれいむはごめんなんだぜ!!」 「まりさはありすよりもれいむをえらんだぁぁぁぁぁぁ!! ありすはむれのじゅうやくなのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「どすがわるいんだぜ!! あのれいむがだんなをなくしたからつがいになってくれといってきたが、 きょひするならむれからでていけといったんだぜ!! まりささまはしょうだくしたくなかったんだぜ!!」 「ならどうしてありすをえらばなかったのぉぉぉぉぉぉぉ!! むれのおとなのゆっくりはつがいにならないとだめなのよぉぉぉぉ!! まりさがれいむをえらんだからありすはいまだにひとりなのよぉぉぉぉぉぉ!! ありすだってすっきりしたいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「おまえみたいなげすなれいぱーといっしょになるくらいなら、 げすれいむとゆっくりのないゆっくりせいかつをおくるほうがましなんだぜ!! おちびちゃんのきょういくにわるいんだぜ!!!」 「んはぁぁぁぁぁぁ!! ならありすはまりさとまりさのこどもですっきりしてやるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ありすをこばんだばつなのよぉぉぉぉぉぉ!! んほぉぉぉぉぉぉぉ!!」 傷口からカスタードを垂れ流しながらもまりさを襲うありす。 顔は狂喜し舌を垂らして涎をふりまき、ぺにぺにを突き出して突進していく。 きっとまりさを気に入ってるんだろう。尋常じゃない執着ぶりだ。狂ってやがる。 このまままりさが負ければ、親子共々すっきりされてしまうだろう。 まあ俺には関係無いがな。 高みの見物をしていたら、逃げたゆっくりを食い終えたふらんが戻ってきた。 「う~~!! もっとあまあまくいたいど~~!!!」 「んほぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆぅぅ!? ゆううううううう!!!」 ふらんとありすに挟まれたまりさ。丁度一直線上だ。終わったな。 だが俺の期待と裏腹に、まりさは後ろのふらんの方に走り出した。 ふらんが慌てて急降下する。ありすもまりさを追い掛ける。 噛みつこうとするふらんの下を紙一重で滑り込み、そのまま枯れ葉に潜る。 ふらんはそのまま後ろにいたありすに激突する。 「ん"ほぉ"ぉ"ぉ"ぉ"んぶぎゅ!! い、いだい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 ありすに噛みつき、そのまま空高く舞い上がるふらん。 持ち上げたありすを空から落とす。俺が以前教えた「もっと甘くなる方法」をしている様だ。 「ゆ! おそらをとんでるみだばぎゃ!!」 べちゃぁ!!と墜落するありす。 あんよから地面に落ちた様で、傷口が裂けカスタードを撒き散らしていた。 悲鳴を上げるありす。それを見ていたれみりゃが、ちぇんを咥えながら寄って来た。 咥えているのは、どうやら畑を食い荒らしたちぇんの様だ。 しーしーを漏らしながら必死に牙から離れようともがいている。 「う~~☆ ふらんはなにをやってるんだど~~☆」 「う~~☆ そらからおとすとあまくなるんだど~~☆ おにいさんがいってたど~~☆」 「う~~☆ れみりゃもやるど~~☆」 「う~~☆ ふらんがおてほんをみせてやるど~~☆」 ちぇんとありすはそれぞれ上に持ち上げられ、何度も何度も執拗に地面に落とされた。 叩きつけられる度に中身を飛び散らせ、しーしーを漏らして痛みに身悶える。 ちぇんの方は泣き叫びながら「わからないよぉぉぉ」「らんしゃまぁぁぁぁ」と叫んでいる。 ありすの方は「やべでぇぇぇぇぇ」「ばでぃざぁぁぁぁぁぁ」と叫んでいる。 どちらも助けは見込めそうに無い。 ありすの方が可能性は大だが、そのまりさは枯れ葉の中でだんまりを決めているのだから。 「いだい"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ら"ん"じゃ"ま"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」 「までぃざぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ありずぼだずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」 「う~~ そろそろあまあまになってるんだど~~☆」 「ならたべるど~~☆」 「いだび"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! かまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"」 「やべでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!! すっぎり"し"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」 畑を荒らしたちぇんはれみりゃに。 最後まですっきりしたがっていたありすはふらんに食べられた。 周りを見ると、もう動いているゆっくりは数匹しか居ない。 俺はスコップを片手に、最初に見ていた巣穴に向けて動き始めた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「・・・おまえ生きてるのか?」 「し、しんでるんだぜ。ほっといてほしいんだぜ」 枯れ葉を足でどかし、隠れているだぜまりさを見る。良い反応だ。 俺はまりさに一言伝える。 「もうゆっくりは皆死んだ。生き残ってるのはお前"だけ"だ」 「ゆ? ほ、ほんとに?」 「ああ、まわりを見てみると良い」 そういうとまりさが枯れ葉の山から出て行った。 辺り一面ゆっくりの死骸だらけ。 焼け焦げたゆっくり、中身が吸われしぼんでいるゆっくり、皮が裂け餡子が漏れ出ているゆっくり。 動いているゆっくりは無く、そこには死体と焼け焦げた匂いしか残っていなかった。 「どうだ? この焼け焦げた匂い。 俺は確信した。 勝利の香りだ」 「しょ、しょうり?」 「ああそうだ。 ゆっくりの神様はお前に味方したようだな」 「・・・・・・」 呆然と周りを見詰めるまりさ。 あのドスが。あのぱちゅりーが。あのありすやれいむ達が。皆変わり果てた姿で横たわっている。 まりさがいつこの群れに入ったのかは知らないが、思う所もあるのだろう。無言だった。 ふらんとれみりゃは中心の木で横になっている。よく食べたからな。 俺は構わずスコップで後始末をする。 「ゆ? にんげんさんなにしてるの?」 「ん? お前らの巣を埋めてるんだ。 残していたらまたここに群れが出来るからな。 人里に近い巣は全て埋める」 そう、スコップはこの為に持って来たのだ。ドスが居れば応戦に使うが、これが主な目的。 手際良く埋め立てて行くと、ある巣の前に来た時にまりさが血相を変えて飛びついて来た。 「やめてね!! にんげんさん!!」 「なにが? 巣ならもっと奥に作れ」 「ゆぐ! わかったからやめてね!! つちさんをかぶせないでね!」 「だからなんで?」 「ゆ・・・ す、すがなくなると、ふゆがこせなくなるよ!! やめてね!!」 「そこの野菜を持って他の群れに行けば、場所ぐらい貰えるだろう。 それにお前一人なら冬が越せるぐらいの量だろう、あの野菜は」 「ゆーー!! ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだよ!! はやくはなれてね!!」 ぽよんぽよんと音を立て猛抗議をするまりさ。口調まで普通に戻っている。 よほど慌てているらしい。 生き残ったと言うのにここで喧嘩を売るとは、死にたいのか? 少し考えたあと、ある事を思い出してまりさに一つ質問する。 「まりさ、番のれいむとは同じ巣に住んでたのか?」 「ゆ! べつのすにすんでるよ!! わかったらはなれてね!!」 「そうか。まぁいい。他の巣は全部埋め立てた。そろそろ帰るよ」 それを聞いたまりさは安堵し、口調も戻った。 「ゆゆ、にんげんさんはゆっくりかえるんだぜ!! まりささまももっともりのおくにいくんだぜ!!」 「ああ、そうした方が良いな」 寝ている2匹をリュックに入れ、帰路に付く。 その様子を凝視しているまりさを尻目に、俺は歩き出した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 20分後、俺は再び群れの中心に戻って来た。 もうお分かりだろう。 まりさの巣と思われるところにスコップを当て、土を掘り返す。 異変に気付いたまりさが巣から飛び出し、顔をぐしゃぐしゃに崩しながら問いかけて来た。 「にんげんさんんんん!! なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「ああ、忘れ事をこなしにな」 そう言いながらもスコップで土を掘る手は止めない。 せっかく待ってやったのに、何をしてたんだか。 「にんげんさんんんん!! やめるんだぜ!!」 「それは出来ないな」 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! やべでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 泣き出して必死に俺の脚にぼすんぼすんと体当たりをしてくるまりさ。"うい奴"だ。 上から掘る事で巣が見え出し、真上から巣の全体が見えるまで掘った。 入口に木や石で堅牢なバリケードが敷かれているが、奥に部屋が二つある。 手前の入口側が食糧保管庫兼台所、後ろの部屋が寝室の様だ。 そして寝室には、子まりさが2匹と赤まりさが3匹居た。 「「ゆゆ!! にんげんしゃんだよ!!」」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!」」」 そう、まりさは賢いまりさだった。 出会った時に帽子が膨らむ程食料を集めていたのは、家族が多いから。 それは休息日に活動する点からも分かる。 休息日に休息していないまりさは、さぞゆっくりしてないゆっくりに見えただろう。 番のれいむからも、その赤ゆからも馬鹿にされる訳だ。まぁもっともここはれいむもだが。 巣に急いで走って行ったのも、バリケードを塞いで子供を助けるため。 ありすを拒んだのも、まりさ種ばかりのため。 それなら別居で済むれいむの方が良い訳だ。れいぷの危険が無い。 ゆっくり如きがここまで頭が回る事に感心しながら、まりさに問いかける。 「さぁまりさ、続けようか」 「ゆう"う"う"う"う"う"!!! なにお"お"お"お"お"お"お"お"!!!?」 「決まってるだろう? 一人"だけ"助けてやる」 「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! どぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!」 「まりさ、はやくしないと上のふらんが食い出すぞ? 隠れなくて良いのか?」 空を旋回するふらん。やはりれみりゃよりふらんの方が役に立つ。 ふらんはニヤニヤしながら今か今かと合図を待っている。 涙を流し涎を流し、哀願するまりさは愛おしくも思う。 「ま"り"ざの"お"お"お"お"お"お"お"お"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!! どっ"でも"ゆ"っ"ぐり"じだゆ"っ"ぐり"な"ん"でずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ああそうなのか。まぁ俺には関係無いが」 「ま"り"ざば"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!! う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」 何を言ってるのかさっぱり分からん。 まりさの子供は事態が飲み込めず、姉妹ですーりすーりしている者も居る。ふらんが見えて無いのだろう。 どう足掻いても、絶望。 「ゆっぐりのがみざばはあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ばでぃ"ざの"みがだじゃ"な"い"ん"でずがぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」 「いやぁ味方なんじゃないかな? 生き残ったのはお前の"家族"だけだ。 次は1人になるまで頑張れ」 「ぞん"な"の"い"や"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」 憐れなまりさ。親が泣くなよ。れみりゃに追われたか。 ゆっくりふらんが空から降りて来て、わざとまりさの横に座り穴を見た。 中の子ゆっくりと目が合い、合唱が始まる。 「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ごわ"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」」 「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」 中枢餡レベルに刻まれた捕食種への強烈な恐怖がゆっくりを襲う。 ガタガタ震えしーしーを漏らす赤ゆと子ゆっくり達。悪いがその様は興奮する。 親まりさの方は歯を食いしばり、歯と歯の間から涎を垂れ流している。勿論泣いているので汁塗れだ。 ゆっ、ゆっ、と子供が泣いた時の様にえづきながら泣いている。かわいそうに。 だが俺も鬼では無い。仕方が無いからまりさに"助け船"を出してやった。 「なぁまりさ、誰が生き残るのか決められないのか?」 「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 「じゃぁこうしよう。 まりさが死ぬか。子供が全員死ぬか。 これなら選べるだろう」 「ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 「なら子供を殺すしかないな」 「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 優柔不断なゆっくりだ。譲歩したというのに。本来なら皆殺しなんだがな。 まぁ子ゆっくりも赤ゆを脱した程度の大きさだ。確かに越冬は無理だろう。 まりさがたまらず哀願を続ける。仕方がないので聞いてやる。 「おでばいじばずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 「お前が生きれば良いだろう? 違うのか?」 「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ずでごなんでずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! お"や"がい"な"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 「捨て子か? 別に珍しくも無い」 そうだ。この幻想郷では別に珍しくも無い。 人間でさえ、妖怪に親を食われる事があるのだからな。 「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ばでぃ"ざがお"や"がわりな"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! ばでぃ"ざもお"や"がい"な"がっ"だん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! だがら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"だげば"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! だずげだい"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!! だずげでぐだざい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」 親が居なかったこのまりさは、同じ境遇の親がいない他の子まりさを助けたい訳か。 なるほどな。 くだらん。俺が怖くないのか? だがそうだな。子ゆ共はまだ小さい。親がいないと子は死ぬしか無いだろうな。ああそうだろう。 だから俺は、 "ゆっくりの神様"に決めて貰おうと思う。 「よしまりさ、これが見えるか?」 俺は一枚のコインを取りだす。幻想郷の外の世界の硬貨だ。 表に桜が、裏に数字が刻まれている。名前は100円玉という。古道具屋で仕入れた物だ。 まりさはぶるぶると震えながらそれを見る。 「いいかまりさ。この花が載っている方が表だ。花が無い方が裏だ。 このコインを投げて、出た方を殺す。 表が出たらまりさを殺す。 裏が出たらまりさの子供を全員殺す。 これでいいな? 出た方を殺す。 そして投げるのはお前だ。 分かったな?」 「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 「いいかまりさ。 お前はさっきゆっくりの神に味方された。 だから今回も味方されるのを祈れば良い。 早く咥えろ。 そして、それを高く放り投げろ」 「ゆ"う"う"う"う"う"!!! ゆ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」 もはや思考もままならないのだろう。 言われるがままに咥えだす親まりさ。 「咥えたな? 思い切り上に放り投げろ。 神に祈りながらな」 「ゆ"う"う"う"う"う"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」 ヒュン。 顎を使い大きく上にコインを放つまりさ。 空を舞うコイン。時刻は夕暮れ。運命のコイントス。 真っ赤な陽光が俺とゆっくり達を包んでいる。幻想的な世界。まるであの日の様だ。 世界がスローで進んでいく。 光を反射し紅葉色に煌めくコインは、そのまま上昇が終わると弧を描きながら落下した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「おぢびぢゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!!! う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」 「「「「「ゆびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」 屋根の無くなった巣の外で身を寄せ合うまりさ親子。 まりさの投げたコインは、まりさの元妻の体に突き刺さっていた。 餡子に垂直に刺さったコインは、表も裏も表さない。 どうやらゆっくりの神というのは本当に居るのかも知れない。俺には分からないが。 俺は約束通り、"出た方"を殺して帰る事にした。出た方が無いのだから、殺す相手も居ないのだが。 コインを餡子から引き抜き、まりさに一言伝える。 「にんげんしゃんんん!! ゆっくりかえってね!! にどとこないでね!!」 「さぁな。 あとまりさ、これはやるよ」 俺は泣いているまりさにコインを投げる。 「ゆぐう!?」 「おまえは運命に打ち勝った。 それは記念に持っておけ」 「うんめい?」 「ああそうだ。 コイントスは人間の持つ、運命を試す方法の一つだ。 困った時に使うと良い」 コインを渡すと、俺は踵を返す。 安堵するゆっくり共の声が聞こえる。それが勘に障る。 そうだ。コインの代価を貰っておこう。 バチンッ!! 「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ま"り"ざの"おぼうじがあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」 親まりさの帽子の"つば"を、仕事用の果樹園用はさみで盛大に切る。 右目の上の部分に切れ込みが入り、人間視点でなかなか"りりしく"なった。 「助かっただけ有り難いと思え」 ただの八つ当たりには違いない。 命よりも大事な帽子に切れ込みが入り、以後のゆん生は難儀するだろう。 命を張ってまで助けた相手が、それほどの価値があるのか。俺が知る事は無いだろうがな。 ふらんは自分でリュックの中に入り、そのまま眠りに付いた。 まりさ親子は助かった事に涙し、俺は仕事を終えて帰路に付く。 もう会う事も無いだろう。まぁ俺には関係無い。 太陽はもう殆ど落ちていた。もうすぐ妖怪の時間だ。 助かった事に安堵する声を後ろに、俺は自宅へと歩き出した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ * Epilogue - 「ふああああ あやちゃんのぱんつみたい」 夏。炎天下。 男は一人つぶやく。叶う筈が無いんだが。 唯一の楽しみである"文々。新聞"を読みながら、ため息を付く。 今回の記事の内容はゆっくり特集。 山の奥に居る希少種などについて書かれていた。 最近はドスの亜種に面白いゆっくりが出てきたらしい。 体長60cmほど、まだ若いドスまりさが人里の果樹園に近い森に居る。 ドスの帽子には大きな切れ込みがあり、あまりゆっくりできていなさそうだ。 だが本人はとてもゆっくりしているらしい。 このドスは一人で生活しており、群れには属していない。 子供が居たが既に独立し、今は悠々自適に生活しているとの事だ。たまに子供が会いに来るらしい。 一人立ちした子供の元気な姿を見てはゆっくりしているらしく、ゆっくりにしては素晴らしい家族関係だ。 そして出会う捕食種やゲスゆっくりに対して、このドスはある"ゲーム"を仕掛けるそうだ。 それはコインを投げるゲーム。 表が出ればドススパークで焼き殺し、裏が出れば帽子を奪う。 どちらにしてもゆっくり的にはゆっくり出来ない、恐ろしい結果だ。 だが回避方法もあるらしい。 どちらの目も出さなければ良いのだ。 そんな事は不可能だと思うが、このドスは昔どちらの目も出さなかったらしい。 曰く「ゆっくりの神が味方した」との事。そんな神が居るのだろうか。 ただ例え回避出来ても、帽子はずたずたにされるらしい。だが取られるよりはマシだろう。 真相は闇の中だが、今回はこの辺で終わりたいとする。次回は町ゆに焦点を絞り・・・ * o + * o + # * o + # * o 森の中。 ゆっくり達の悲鳴が木霊する。 あるゆっくりが溜めこんでいる食糧を奪おうと、ゆっくり達が徒党を組んでやって来たのだ。 しかし結果は返り討ち。ゲス共の命運はここに尽きた。 襲われたゆっくりが声を掛ける。 「さぁ、まりささまはせつめいしたんだぜ。 はやくそのこいんさんをくわえるんだぜ。 そしてそれをたかくほうりなげるんだぜ。 "かみにいのりながらな"」 帽子に切れ込みのあるドスまりさは、そういって目の前のゆっくりの「運命」を試しだした。 陽光煌めく幻想的な、あの日の様に。 森の中の切れ込みまりさ 種族:ドスまりさ 能力:ゆっくりの運命を試す程度の能力 おしまい 【後書き】 ゆっくりの重さに散々悩んだ結果、成ゆで700g(バスケットボール7号球とほぼ同じ)という事に。 ただ餡子が詰まってるのなら、直径25cmの球体ならもっと重いはず。 * o + とかスーパーに行って餡子の缶詰見ながら思った今日この頃。重いと蹴りにくいので軽めに設定。 「さぁ続けようか」 「地獄じゃ! 神はなぜ弱者に自由を与えて下さらん」
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・「町れいむ」シリーズの方が、間を開けすぎて頭の中で整理つかないんでリハビリ中。 ・本作ではれいむが多少酷い目に会います。 かつて大規模なゆっくり被害にあったことで、かえってゆっくりとの距離を縮めることに成功した都市、虹浦市。 中でも虹浦町は、市内の実験森や実験農場同様、町全体を使った大規模なゆっくり生態研究地域として有名だが、 隣町の湯栗町の方は、ゆっくり産業の盛んな地域として、これまた有名であったりする。 まあ、愛で=熱心な保護、というわけでもなく(それではゆっクリンピースになるので)、 ゆっくりに対する理解が深く、ペットにしろ食用にしろ、抵抗なく受け入れるという意味なのだからしょうがない。 そんな湯栗町では当然、ペットだけではなく、ゆっくりを原材料とした多様な製品が開発されている。 熱心な愛好家の中には、衣類や家具はもちろん、家自体が大型ドスまりさやリオれいむを加工したモノという本格派もいるくらいだ。 とはいえ、さすがにそれはやり過ぎの感が否めず、量産化されるわけもない。 では、もっとも発展している分野は何かといえば、やはり飲食料品系であろう。 何と言ってもこれなくしては、ゆっくり産業を語ることはできない。 少年チャン○オンにおける弱虫○ダル、ヤングア○マルにおけるセス○スみたいなものだ。 と、いうわけで今回は、そんな湯栗町でも特に人気の高い商品を紹介してみたいと思う。 『銘菓湯栗饅頭』 D.O 箱を開けると中には今にも語りかけてきそうな生き生きとした表情の赤れいむ達が並んでいる。 赤れいむの表情は、いずれも満面の笑顔であり、これから購入者に食べてもらえることが心底嬉しそうだ。 3個入りで150円、9個入りのファミリーパックはちょっとお得な400円。 『銘菓湯栗饅頭』は、湯栗町の名物中の名物として有名な商品である。 しかし、この一見単純な商品の開発には、同市がゆっくり研究に携わり培ってきた、技術の粋が込められているのだ。 それではこれから、その生産工程を追ってみよう。 長さ100m以上はあるであろう真っ白な廊下。そこにはほこり一つ舞っていない。 幅2m以上の廊下の両脇の壁には、無数のコインロッカーのような扉が並んでいる。 ウィーン・・・ 自動ドアが開き、エアシャワー室からこの廊下へと入ってきたのは、加工所職員である。 白い衣服で全身を包んだ職員は、当然マスクに帽子、長靴から手袋まで真っ白だ。 パカッ。チョキッ×5。パタン。コロコロコロ・・・・パカッ。チョキッ×5。パタン。コロコロコロ・・・・ ロッカーの扉を開き、ハサミで何かを切り離し、卵パックを並べたようなトレイに入れていく。 いくつものトレイを積んでいるコンテナカートは、あっという間に一杯になり、カートは別の部屋へと運ばれていく。 その職員は、ロッカー扉の開閉音と、カートの車輪音の他に、何の音もしないこの部屋で、ひたすら『収穫作業』を続けていた。 縦横40cm、奥行き60cm程のロッカーの中には、 あんよを太さ3mmほどの、返しが付いた針を剣山状に並べた固定器具に貫かれ、数本のチューブにつながれながら 「ゆぅ・・・ゆぎぃぃ・・・」 と歯を食いしばって痛みに耐えているれいむが1個づつ入っていた。 頭にはツタが生え、赤れいむがぴったり5個づつ成っている。 職員は、そのツタを等間隔にハサミで切り取り、実ゆに直接触れることのないようにそっと1個づつ切り離していく。 切り離した実ゆは、もうすぐ産まれようとしているサイズであり、ここで切り離しても死にはしない。 正確には、今収穫している赤れいむ達は、今から25分後の、6時12分00秒に産まれ落ちるよう設定されている。 「ゆ・・・ゆぎぃ。おぢびぢゃ・・・がえぜぇ。」 誰も答える者のいない抗議を続けるれいむ。 一方収穫の終わった職員は、そのロッカーに設置されている赤いボタンを押し、 扉をパタンと閉じて次のロッカーに作業を移していた。 赤いボタンの押されたロッカーは、収穫済みということであり、 扉を閉じられてから間もなく、これで数10回目になる強制すっきりーが開始される。 まむまむに接続された、れいぱーありすを模した繁殖用器具から 「むほぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」 という作動音とともにれいむ種から抽出した精子餡を注入されるわけだ。 必要とされるのはれいむ種だけなので、当然本物のれいぱーありすを使うわけにはいかない。 「ありずぅ・・・もぉ、ゆっぐりざぜでぇぇぇぇ・・・」 こうして、「生産室」では日夜無数の赤れいむが生産され続けている。 所変わって収穫された赤れいむを満載したカートは、その隣の部屋に運び込まれている。 ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン・・・・・・・・・ 広大な部屋一面には15cm間隔で低い壁板に仕切られた、何本ものベルトコンベアーが配置されている。 2枚の壁板に仕切られた空間の中央には、赤れいむのツタを引っかけておくフックが設置されており、 赤れいむ達がこのベルトコンベアー上で産声を上げるように設定されていることが分かる カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・ 「ゆぅ・・・?・・・ゆぅ・・ゆぅ・・」 赤れいむたちは、全員がベルトコンベアーの進路側面、同じ方向を向くようにフックに取り付けられる。 その方向にあるのは、大画面のスクリーンとスピーカー。 これが、これから産まれ落ちようとしている赤れいむ達の、味と表情を決定する装置となるのだ。 次にベルトコンベアーの床面を見てみよう。 見た目ではリノリウム床のような質感を感じさせるシートの中央には、 ちょうど赤ゆのあんよの大きさの赤い丸が描かれている。着地点を示しているのだ。 手で触るとぺたぺたと微妙に吸いつき、低反発枕を柔らかくしたような感触を感じさせる。 もともとは飼いゆっくりを傷つけずにスパンキングする目的でつくられた新素材なのだが、 わざわざ加工所で採用されたのには理由がある。 ああ、そろそろフックに固定された赤れいむたちが産まれ落ちる時間のようだ。 「ゆ・・・ゆぅ・・・」 ぷる、ぷるぷる・・・ぷちり! べちょり! 「ゆ・・・ゆぅ、ゆっくち、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!!」 返事は無い・・・ 「ゆ?ゆっくちっ、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!ゆっくち・・・」 キョロキョロと全身を捻ってあたりを見回すが、返事どころか母れいむらしき姿自体どこにも見当たらない。 「ゆ、ゆぅん。ゆっくちおきゃーしゃんさがしゅよ。ゆ・・・ゆぅ?あんよしゃんうごいちぇにぇ?」 そして、ゆっくりした母が姿を一向に見せようとはしないことを不審に感じて探し回ろうとするが、 赤れいむのあんよはなぜか動いてくれない。ずぶずぶと床に沈みこむ様な嫌な感触が返ってくるだけである。 「ゆあーん。ゆっくちできにゃいー。」 * o + 実は、これこそがベルトコンベアーの床面の、新素材の効果だ。 以前はあんよを焼いたり、削り取ったり、接着テープや針等で固定したりしなければ動きを止めることができないと考えられていたが、 歩行能力の低い赤ゆに関しては、低粘着・低反発素材の上では身動きが取れなくなるということが、偶然発見された。 あんよと呼ばれる饅頭底部全体をダイナミックに動かすことで這い、跳ね回るゆっくりならではの弱点なのだろう。 おそらくゆっくりにとってこの床面は、砂漠の流砂に沈み込むような感覚であるに違いない。 ともあれ、この床のおかげで、湯栗饅頭はゆっくり本来の食感、見た目の美しさを残したまま加工できるようになったのだ。 「ゆ・・・ゆぅぅぅ・・・あんよしゃん、うごいちぇにぇ。ゆっくちしちゃいー。」 この間にも周囲では500個以上の赤れいむが産まれ落ち、最初の1個と一言一句まったく同じ言動を行い、メソメソと泣き始めた。 そうして十分に赤れいむ達が自分の現状を認識した頃、ブゥゥン、という音とともに、プロジェクターとスピーカーが作動する。 「・・・ぃびちゃん、おかーさんはこっちだよ。おちびちゃん、こっちむいてね。」 それは、赤れいむ達が産まれ落ちる前のまどろみの中、ずっと聞き続けた声だった。 「おきゃぁしゃん!ゆっくちー!」 赤れいむ達は、産まれる前のおぼろげな意識の中で、ずっと自分に語りかけてきてくれた母れいむの声を聞いて生気を吹き返す。 無論、実際は疲労と苦痛にもだえ苦しむ母れいむ達が語りかけてくれていたはずも無く、 実は繁殖ロッカー内にスピーカーで流され続けていた、「理想の母れいむ」の声を聞いていたに過ぎないのだが・・・。 そして、スクリーンにはそのゆっくりした声の主、母れいむの姿が映し出されている。 その姿は、美しいおリボンとふくよかな下膨れの、まさに赤れいむ達が理想とした、ゆっくりした美れいむであった。 「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「ゆーん、おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇるにぇー。」 「ゆっくち!ゆっくち!」 しかし、赤れいむ達が望んだ反応、 「ゆっくりしていってね、おちびちゃん。」 という初めての挨拶も、 「れいむのおちびちゃんはかわいいね!すーり、すーり、しあわせー。」 という、スキンシップも帰ってくることは無かった。 「・・・なに、このゆっくりしてないおちびちゃん。ちかづかないでね・・・」 「・・・きたないおりぼんだね。ゆっくりできないよ・・・」 「・・・うんうんくさいよ。ゆっくりしないでむこうにいってね・・・」 「・・・こんなゆっくりできないゆっくりは、れいむのおちびちゃんじゃないね・・・」 一瞬前までとてもゆっくりしていた母れいむ。 しかし、赤れいむ達が語りかけた瞬間、その表情は180度反転した。 その瞳は、まるでお飾りが無いゆっくりを見るかのように侮蔑する気持ちを一切隠さず、 その声は、山盛りのうんうんに対してよりも容赦なく吐き捨てるような、嫌悪の感情そのものであった。 「ゆ・・・・ゆぁぁぁぁああああ!!!おきゃあしゃん、どぼじで、どぼじでしょんなこというにょぉぉぉおお!!」 「ゆっくちしちぇ、ゆっくちしちぇよぉ!」 赤れいむ達が泣き叫ぼうと、母れいむの冷酷な反応はまったく変化しない。 「・・・なに、このゆっくりしてないおちびちゃん。ちかづかないでね・・・」 「・・・きたないおりぼんだね。ゆっくりできないよ・・・」 「・・・うんうんくさいよ。ゆっくりしないでむこうにいってね・・・」 「・・・こんなゆっくりできないゆっくりは、れいむのおちびちゃんじゃないね・・・」 「ゆぴぃぃぃぃぃ!!!ゆっぐぢぃぃぃい!!」 よく聞けば、まったく同じ台詞、映像を30秒毎にリピートしているだけなのだが、 所詮は食用の赤れいむ達が、そのことに気づくことは無い。 ちなみにこの撮影の際に母れいむ(仮)の前に置かれたのは、 おリボンともみあげにハサミを入れてズタボロにした挙句、うんうんを全身に塗りたくった実の娘れいむであった。 この母れいむも、餡子は美味だったらしいが、なかなかのクズ饅頭っぷりである。 「ゆ、ゆぁ、おきゃしゃ・・・」 「ゆぴぅ・・・ゆっくち・・・」 それを続けること約3分、すっかり憔悴しきった赤れいむ達が、 あまりのゆっくり出来なさに、もはや世界の終わりのような表情でうなだれてくれば下ごしらえの完了である。 しかし当然、このままでは、ゆっくりした表情が売りの湯栗饅頭には向かない。 そこで、次の工程が必要になる。 「ゆ・・・ゆっくちしちゃいよ・・・」 「・・・おきゃーしゃ・・っくちぃ・・・」 500個以上の赤れいむ達が産まれ落ちてから4分15秒後、 そのお通夜のような空間に、再びゆっくりした優しい声が響く。 「・・・ぉちびちゃんたち、ゆっくりしてね。すーりすーりしようね。」 「ゆゆっ!!ゆっくち!?」 赤れいむ達が顔を上げると、そこには、先ほどまでとはまるで別のゆっくりのような、優しい笑顔の母れいむ。 「かわいいれいむのおちびちゃん、ゆっくりしていってね!」 母のやさしい笑顔とゆっくりと語りかけてくる声、 それは、赤れいむ達の乾ききった心に、砂漠に滝が突然生まれたかのごとく、ゆっくりを注ぎ込む。 打ちひしがれていた赤れいむ達は、もはや母れいむの変貌振りに不審を抱く隙間すら生まれず、 周囲3方向から自分に照準を定めるアームの存在にすら気づかずに、その喜びを全身で爆発させる。 「ゆっくち!!ゆっくちしちぇっちぇにぇっ!!!」×513 ブゥン・・・・・・ それが、赤れいむ達が最後に発した言葉らしい言葉だった。 このアーム、最近ゆっくりの遠隔発情用に開発された、超指向性の振動波発生装置である。 本来の用途は、100m以上離れた場所からゆっくりの餡子を揺らして、 瞬時に発情させて繁殖させるという、無駄にテクノロジーを使った、おそらくは虐待用途以外のための製品だ。 しかしこの工場のように、1個のゆっくりに対して複数方向から囲むように放射した場合、 うまく入射方向を調整することで、中央に立つゆっくりの中枢餡を瞬時にかき回し、 食品として不必要な生態機能を止めることも出来る。 この工程で、赤れいむ達は中枢餡の実に7割近くをかき回され、 言語を自由に発することも、表情を変えることも永遠に出来なくされるわけである。 この処置を終えた赤れいむ達は、言葉を聞き取ることはできても、自分から話すことはできない。 餡子をかき回された激痛と吐き気の中で、その本能にまで刻まれた唯一つの言葉しか発することが出来なくなるのだ。 すなわち、 「ゆ゛・・・ゆっくりしちぇっちぇにぇ・・・」 そして、その目の前では、動画の続きとして次のようなやり取りが延々15分ほど流れ続ける。 「ゆーん、れいむのおちびちゃんはゆっくりしてるね。」 画面端からぴょんぴょんと跳ねてくる、一匹の赤れいむ。 「おきゃーしゃん、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!!」 「おちびちゃん。ゆっくりしていってね。」 「ゆーん。ゆっくちちちぇっちぇにぇ!ゆっくちちちぇっちぇにぇ!」 「ゆふふ。おちびちゃん。ゆっくりしていってね。」 「ゆわーい。ごあいしゃつはゆっくちできるにぇ!」 「むーちゃ、むーちゃ。ちあわちぇー。」 「ゆゆーん、おくちのまわりがよごれてるよ。ぺーろ、ぺーろ。」 「ゆぅーん!しゅっきりー。」 「おきゃーしゃん。しゅーり、しゅーり。」 「ゆふふ、おちびちゃん。すーり、すーり。」 「しゅーり、しゅーり。ちあわちぇー。おきゃーしゃん、きもちいーにぇ。」 「それじゃあ、そろそろすーやすーやしようね。おちびちゃん。」 「ゆっくちー。れいみゅ、ひちょりでおふとんしゃんしけりゅよ。みちぇちぇにぇ。」 * o + # * o + # * o 。 こうして、赤れいむ達が笑顔のままボトリボトリと涙を流し続け、その涙が枯れ果てたころに動画は終わり、 コンベアーは再び動き始めるのである。 こうして、「調整室」における全工程が終わった赤れいむ達は、コンベアーの流れに沿って、 最終工程、「蒸ゆ室」で、加熱調理・殺菌が行なわれる。 「ゆぇぇぇぇ・・・ゆっくちしちぇいっちぇぇぇぇ・・・」 「ゆっぐぢぃ・・ゆっぐぢぢぢぇいちぇにぇぇ・・・・・」 「ゆぇぁぁぁぇぇぇ・・・ゆぇぇぇぇぇぇ・・・」 無論、永遠にゆっくりして鮮度が落ちてしまっては、せっかくの新鮮な赤れいむが台無しとなってしまう。 温度、湿度から調理時間にいたるまで、生かさず殺さずの、綿密な計算の上で設定がなされているのだ。 笑顔のまま室内全体に断末魔の悲鳴を響かせ続ける赤れいむ達は、 この最終工程で、その甘さとふっくらとした柔らかさをさらに増していくのである。 こうして「蒸ゆ室」でじっくりと調理された赤れいむ達は、ぷりぷりとした肌、 赤白の鮮やかなおリボン、そして、ゆっくりとした満面の笑みをたたえた表情の、すばらしい饅頭となる。 銘菓・湯栗饅頭の完成だ。賞味期限は赤れいむが永遠にゆっくりするまで。 あとは、それぞれ3個、もしくは9個毎にパッケージされて、店頭に並ぶ。 湯栗饅頭は今日も母親と一緒に買い物に来ている子供達や、部活帰りの中高生に大人気だ。 「いつみてもゆっくりしてるわねー。この赤れいむ。」 「やっぱり食用のゆっくりは、食べられるのがゆっくりー!なのよ。」 「ゆ゛・・・ゆっくちしちぇっちぇにぇ・・・」 「きゃー!カワイイー!」パクリッ 「ゆぐぢぃぃぃ・・・」 「おかーさーん!おまんじゅうかってよー!」 「もー。しょうがないわねぇ。それじゃあ、3匹入りくださーい。」 「へいへーい。今日のれいむ達も、ゆっくりしてますよー!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ・・・」 「いっただきー!」ムシャムシャ・・・ 「ゆ゛・・・ゆっぐぢぃぃ・・・ゆぐぢっ!・・・・・・」 「お行儀悪いわよ。お家に帰ってからにしなさい。」 * o + 加工所の目玉商品である湯栗饅頭、その生産工程は厳重に隠され、これからも明かされることはないであろう。 その甘さに、明らかな虐待の匂いを感じ取っているのは、現在のところ、ごく一部の愛好家のみである。 先日ペッパーあきさんからもお話しあったのですが、 私の適当に使っている「虹浦町」「虹浦市」「湯栗町」などの固有名詞や、 その他シリーズもので使っている各種舞台設定等については、ご自由に流用していただいて結構です。 むしろありがた過ぎます。 別に専売特許というわけでもないし、倉塚校長とか、湯宇川教授とか、儚井さんとか、M枝・わん五郎夫妻とか、 こちらこそ無断で遊びすぎてるくらいですからねぇ。 ていうか大丈夫なのだろうか。倉塚校長は変態街道ばく進中、M1さんに至っては老夫婦になってるし。 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 プラス本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 翌年 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ)
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串焼き 焼き鳥もも 150円 ねぎま 160円 手羽 200円 皮 150円 つくね 180円 ナンコツ 150円 ハツ 150円 砂肝 150円 カシラ 180円 串焼き豚バラ 200円 トマ豚 230円 ささみ梅 180円 ささみわさび 180円 ピーマン 150円 ミニトマト 180円 しいたけ 280円 ししとう 150円 ねぎ 150円 タコ串 500円 カキ串 450円 エビ串 300円 ホタテ串 600円 盛り合わせ、お任せなどもできます。お気軽にお申し付けください。
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※俺設定注意 「ゆっくりしようね、れいむ!!!」 「ゆっくりしようね、まりさ!!!」 今、僕の家の中で嬉しそうに頬を摺り寄せるのは2匹のゆっくり。 れいむとまりさだ。 彼女たちは、「お菓子をあげる」という僕の誘いに乗ってここまでやって来た。 基本的に僕はゆっくりが好きだ。 人間の生首をデフォルメしたような容姿、なんとも言いがたい微妙な表情。それらが僕の関心を惹いて離さない。 一般的には愛でお兄さんと言われる部類の人間ではないだろうか。 でも、そんな僕が最近気にかかっている事がある。 ゆっくり全体、その繁栄の基盤を揺るがすような重大な事だ。 恐らくだが、このまま誰もが放っておいたらゆっくりは遠からず未来で絶滅してしまうだろう。 それは嫌だ。「僕の好きなゆっくり」には、この先もずっと生き残って欲しい。 だから僕はこの二匹を家へと呼んだ。 この部屋はこれと言った家具が無い。もし彼女たちが暴れても、何一つこちらも、あちらも損害を被る事は無い。 それに今からやる事は彼女たちにとっても良い事のはずだ。最初は悲しみこそすれど、後に僕に感謝するようになるだろう。 少なくともその事だけは確信している。 さぁれいむ、まりさ。 今から僕が、君たちの決定的な矛盾点を取り除いてあげよう。そうすれば君たちは生物としてより強くなれるはずだ。 そうすれば絶滅なんかしない。ずっと僕の好きなゆっくりで居られ続ける。 始めようじゃないか。 あかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ! 「ゆ~ゆゆ~ゆ~♪」 「ゆっゆ~♪」 ふにふにと、頬を摺り合いながられいむとまりさは間抜けな歌声を晒している。 この二匹は、今現在「とてもゆっくりしている」状態にあった。 事の起こりは数十分ほど前。 いつもの様に日向ぼっこをしていた二匹の前に、男が現れてこう言ったのだ。 「美味しいお菓子をあげるから、うちに来ないかい?」と。 深く物事を考え(られ)ないゆっくり二匹。二秒と考えずに、男の誘いを快諾した。 彼に連れて来られたのは、ゆっくりの常識に当てはめるなら途轍もなく広いおうちだった。 そこの一室に通される二匹。勿論そこも、ゆっくりからして見れば異様なほど大きいおうちだ。 そしてそこに降って湧いた沢山のお菓子と男の「ここをれいむ達のお家にしていいよ」という言葉。 労せずしてれいむとまりさは誰もが羨むおうちを手に入れたという訳だ。 菓子を平らげ、そのままそこでゆっくりしだす二匹。 ゆーゆー歌を歌ったり、昼寝をしていたりするがゆっくりは基本娯楽に乏しい生活を送っている。 しかもつい先程巨大な住処を手に入れた二匹の取る行動と言えば、最終的にはたった一つ。 「ゆほおおおおお!!!れっ、れいむううううぅぅぅぅ!!!」 「まりさあああああああぁぁぁ!!!ゆうううぅぅぅん!!!」 交尾だ。 食・住が満たされれば即交尾に繋がる。他にやることが無いから。これは田舎の人間とかにも当てはまることだ。 今かなり(人間に対して)失礼な説明をしたが、とにかくこの二匹は生殖を選択した。 「ゆううううぅぅぅぅ・・・・・・すっきりー!!」 「んほおおおおおおおおお!すっきりー!!」 ほぼ同時に達する二匹。それに伴い、母親役のれいむからにょきにょきと生えてくる茎。 年中発情期のゆっくりは、交尾すればすぐさま子供が生まれる。 一部では例外があるものの、このれいむ達はその中には含まれなかったようだ。 異常ともいえるスピードで成長する茎。 まるで実が成るが如く、赤ん坊のゆっくりが茎の先に実っていく。 中々にこの全世界の生物にとって反常識的・冒涜的・嘲笑的な産まれ方だと言えよう。 「ゆううぅぅぅ~!!!あかちゃんがうまれるよおおおぉぉ~!!!」 「ゆっ!!」 「ゆっくち!!」 「ゆんっ!!」 「まりさのあかちゃん、とってもゆっくりしてるよぉ~!!!」 茎の先に実ってから生まれ落ちるまでたったの五分。 そのサイズに比べて余りにも早いスピードで赤ゆっくり達は生を受けた。 感動の涙を流す親ゆっくり。 命の尊厳を感じさせるには少々軽すぎる雰囲気だ。 「ああ、おめでとう。可愛い赤ちゃんだね」 「「ゆゆっ!!」」 赤ん坊に囲まれ、幸せの絶頂にいる二匹に声がかけられる。 この部屋をれいむ達に与えた男。れいむ達にとっては、優しいお兄さんだ。 「ゆっ!!おにいさんがれいむたちにりっぱなおうちをくれたから、かわいいあかちゃんがうめたよ!!」 「ありがとう、おにいさん!!あかちゃんたち、こっちにでてきてね!!」 「「「ゆぅ~?」」」 赤ゆっくり達を呼び寄せるまりさ。 男に赤ちゃん達を見せて、ゆっくりして貰おうというのだ。 可愛らしい赤ん坊達を、前に並ばせる。 「あかちゃんたち、かわいいでしょ!!ゆっくりしていってね!!!」 「おにいさんにはとくべつに、かわいいかわいいあかちゃんみせてあげるね!!!」 「「「ゆっ!!きゃわいくてごめんしゃい!!!」」」 こんなに赤ちゃんは可愛いんだから、きっとお兄さんもゆっくりできる。 そんな考えの下、れいむとまりさは誇らしげに胸を張った。 各々の赤ゆっくりも、それぞれ最も自分が可愛く見えるポーズをとっている。 「ああ、可愛いね。とってもゆっくり出来るよ」 笑顔を浮かべながら赤ゆっくりの前にしゃがみ込む男。 その笑顔を見て、お兄さんがゆっくりしていると思って嬉しくなるゆっくり一同。 とてもゆっくり出来る笑顔を浮かべたまま、男は右手を赤ゆっくり達の方に差し出して――― ―――そして、そのまま押し潰してしまった。 れいむとまりさの、動きが止まる。 にっこりと笑顔を貼り付けたまま、石膏の象のように動かなくなる。 二匹の視線は、億劫そうに手を振り、餡子をはらうお兄さんへ。 「「・・・・・・な゛に゛じでる゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!?」」 クワッと眼を見開き、ぶるぶると震えながら叫ぶ二匹。 今しがたのお兄さんの行動が理解出来ない。いや、そんなことよりも。 赤ちゃんが。とってもゆっくりした赤ちゃんが。赤ちゃんが死んでしまった。 「・・・え?何って赤ゆを潰したんだけど?」 さも当然、蚊が居たから叩き潰しました、とでも言うように答えるお兄さん。 何の感慨も無い。後悔の欠片すら見受けられない。 二匹はついさっきまで信頼に値していた筈の人間に対して、疑問をぶつける。 「どぼじであがぢゃんをごろじぢゃっだのおおおぉぉぉ!!!」 「あがぢゃんはどっでもゆっぐりでぎるのにいいいぃぃぃ!!!」 涙を流し、身を振りかぶりながら悲しみをアピールする二匹。 どうしてこんなに可愛い赤ちゃんを。赤ちゃん達ももっとゆっくりしたかった筈なのに。 悲しみに胸(無いけど)が引き裂かれそうだ。何故、何故こんなことを。 「ああ、それそれ。それだよ、それ」 そんな二匹の態度こそ、彼が懸念しているものだった。 ピタリと動きを止める二匹。一体何の事だろう。もしかして、なにかお兄さんがゆっくりできない事だったのかも――― ―――いや、そんな事はもうどうでもいい。どうしてこんな事したの。今はただ、赤ちゃんのために謝って欲しい――― 二匹の願いをよそに、彼は素気無く言い放つ。 「君達さぁ、野生動物でしょ?もうちょっとそれらしく生きたら?」 「君達ゆっくりは弱い。そりゃもう弱い。人に負け、犬に負け、鼠に負け、下手したら蟻にも負ける。 いや別にそれが悪いって事は無いよ。君達は『そういう風に』出来てると考えたら何もおかしい事は無い。 とてつもなく弱くて、ちょっとしたことですぐに死ぬ。だから沢山子を産まなきゃならない」 れいむとまりさは呆然としている。 お兄さんは、一体何を言っている?理解できない。いや、したくない。 「で、君達は所謂多産多死の生物なわけじゃないか。それは、問題ないんだ。 でもさぁ、そこからがおかしいんだよ。多産多死型の生物ってのは、基本的に親の助けを借りずに成長するんだよ。 マンボウとかさ、三億個も卵産むらしいけど親は一切面倒を見ないわけ。そんで自生して、成長するんだ。 他にも身近な所だと蟷螂とか、鮭とか・・・哺乳類は多分鼠辺りが該当するんじゃないかな?まぁ君達は哺乳類じゃないからどうでもいいけど」 まんぼうさん、かまきりさん、さけさん。ねずみさん。 それがどうした?それがれいむ達と、何の関係がある・・・・・・? 「いいかい、君達は、沢山産んで、沢山死ぬ。 なんで他の動物を見習わないんだい?子供なんかいくらでも産めるだろう? 一昔前は『あかちゃんしんじゃったから、またたくさんつくろうね!!!』とか言ってたじゃないか。 それが今では、人間並みに母性だの、愛情だの、そんな所だけ発達して・・・誰かが言ってたけど、それ、歪んでるとしか言いようが無いよ」 知らない。知らない。知らない。 昔なんて知らない。昔のゆっくりがそんな事を言ってたとしても、れいむ達には何の関係も無い。 歪んでる・・・誰がそんな事を決めた?れいむ達が、赤ちゃんを愛することがそんなに悪いのか? 「ぶっちゃけさ、君達にとって赤ちゃんなんてデコイ兼餌扱いくらいでいいと思うんだよ。 普段は産み捨てて、手元に置くなら外敵に対して囮にするか非常食として食べる。それくらいでいい。 レイパー・・・だっけ?そっちの方がまだ自然だとすら思うね、僕は」 赤ちゃんをそんな風に扱うなんて信じられない。 このお兄さんは、赤ちゃんの事を一体何だと思っているのか。 それに、レイパーだと。あんなゆっくりできないレイパーが・・・自然? 「このままだと、遠からぬ未来に君達は絶滅しちゃうと思うんだ、僕は。 そんなの嫌だ。僕はゆっくりが大好きでね。君たちの居ないこの世の中なんて、想像出来ない。 昔のようになれば、きっと君達は生き延びられる。だから僕は身近な所から手を打つことにしたんだ。 安心して、れいむ、まりさ。僕が君たちを、きっと立派に世界に『適応』させてみせる。矯正だよ」 そう言って、彼はにこりと微笑んだ。 れいむとまりさは何も言えない。言う気にすらならない。端的に言えば、絶望していた。 これから何が待ち受けているのかが凡その所、理解してしまった。『野生動物』に相応しい振る舞いをする矯正・・・それがどういうものなのか。 彼の指導の下、『矯正』日々が今、始まる。 大体は二匹の予想の通りだった。 毎日毎日子供を強制的に産まされ、そして色々なシチュエーションの下、殺していく。 ただ産み捨てる場合、雨の日の場合、寒い日の場合、虫や獣、人間に襲われた場合―――。 赤ちゃんたちの悲鳴が、れいむの心を壊していく。赤ちゃんたちの助けを呼ぶ声が、まりさの精神を磨り減らしていく。 徐々に、徐々に二匹の価値観は壊され、そして新しい価値観を刷り込まれていった。 そして、現在。 「おかーしゃん・・・・・・どうちて・・・・・・」 「ふん、うるさいよ!!!れいむはすっきりー♪できればいいんだよ!!!あかちゃんはひとりでかってにいきてね!!!」 「あんまりやかましくするなら、まりささまがたべちゃうのぜ!!!おまえらちびどもは、とってもおいしいのぜ!!!」 一匹で力無く震える赤ゆに、容赦ない罵倒を浴びせる親ゆ二匹。 言うまでもなく、かつてのれいむとまりさだ。 その表情は醜く歪み、赤子を赤子とも思っていないと言わんばかり。 赤ゆ・・・赤れいむは、多数の姉妹と一緒に産み捨てられた(お兄さんの家の庭に)。 親に会いたい一心でなんとかお兄さんの家に姉妹達と一緒に潜り込んだが、そこで待っていたのが親であるはずの二匹からのこの待遇。 既に半分以上の赤ゆ達は叩き出され、残りは食われた。今両親の前に立つのは、この赤れいむただ一匹のみ。 「おかーしゃん・・・おとーしゃん・・・すりすりしてね・・・」 「んほおおおおおおお!!!まりっざあああああああああ!!!」 「れいぶうううううう!!!れいぶのもぢはだはあいがわらずざいごうなんだぜええええええ!!!!」 泣きかける我が子を全く意に介さず、ネチョネチョと粘液を飛ばしながら交尾に耽る二匹。 今となっては二匹にとってこれが当然の事となっていた。 赤ちゃんは産み捨てる。運がよければ勝手に育つ。だから自分たちはひたすら子を作る。 産んだ後の事などは関知する必要などないのだ。だから目の前のガキもどうでもいい。 「すっきりー!!!・・・・・・ふぅ、おなかすいたね」 「それならあかちゃんをたべればいいのぜ!!ぶちっ!!むーしゃむーしゃ!!」 「お、おとーしゃんなにやっちぇるのおおぉぉぉ!!!?」 れいむの頭に生えた妹達を引き千切り、咀嚼する両親に対して赤れいむは恐怖さえ覚えた。 こんなに赤ちゃん作っているんだから、たまにはこうやって茎の状態からでも食べてもいい。自然界ではよくある事。 もはや二匹の価値観は完全に通常とは逸脱していた。いや、これこそが正しい姿なのか。 「まりさ、いまのあかちゃんたちだけじゃすくないよ!!!このあかちゃんもたべようよ!!!」 「ゆっ!!!いいかんがえなのぜ、れいむ!!!」 「ゆっ・・・ゆあああぁぁぁ!!!おとーしゃんおかーしゃんやべちぇええぇぇl!!!」 言うや否や赤れいむに襲い掛かるれいむとまりさ。 抵抗も出来ずに、噛まれ、潰され、絶命する赤れいむ。 二匹は幸せ。だってこんなに美味しい餌が食べられたんだから。たとえそれが、我が子の餡子だったとしても。 「んほおおおおおおおおおう!!!まりざあああああああああ!!!!」 「れいぶっれいぶうううううううううううううう!!!ゆっほおおおおおおおおおおお!!!」 一息つく間もなく、またネチョネチョと交尾を始める二匹。 惨殺した子供のことなど頭の片隅にも留めてはいない。 だってそれが自然なのだから。お兄さんが言ってた、本来のゆっくりなのだから。 最早理性と呼べるものがあるのかどうかも疑わしい饅頭二匹。 部屋の隅に佇んでいた彼はそんな二匹をじっと見つめている。 そして、ポツリと一言、こう呟いた。 「・・・うーん。これってゲスゆっくりだよなぁ。いかん、矯正しなきゃ」 おわり ――――― 書き溜めです。 要約するとゆっくりにリアリティを持たせたらゲスゆっくりになりました、とこんな感じ。 お兄さんはゲスも嫌いなら不自然すぎるゆっくりも嫌いな頭の可哀想な人です。 ゆっくりが絶滅だって。ゆぷぷ。ゆっくりは勝手に生えてくるのにね!!げらげら!!! このSSに感想をつける
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俺とゲスと自業自得な餡子脳 22KB ・二作目だよ! ・前作のコメントで指摘を受けて、色々試してみたよ! もし悪化して読み辛くなってたりしたらごめんね! ・一応現代設定だよ! ・俺設定満載だよ!嫌いな人は気を付けてね! ・感想やご指摘があれば、とってもうれしいよ! むしろもっといじめてね!!! ・最後に、相変わらず自己満足からできた物ではありますが、 お一人でも楽しんでいただければこの上なく幸いです。 それでは、どうぞごゆっくり… れいむは困っていた。 望まぬ出産でごはんが足りなくなってしまったのだ。 とは言っても別にレイパーによる強制にんっしんっなどではない。 ちゃんとした番である、まりさとの子だ。 れいむと番のまりさは町に巣食う、いわゆる野良である。 野良ゆっくりが害獣指定されて野良に対して厳しい環境の中、 親姉妹がいないもの同士でそれなりに上手くやってきた。 が、ここ最近の寒さのせいで震えながら互いに寄り添って寝ていたことで、 つい振動がもたらす快楽に我慢できず、すっきりしてしまったのだ。 どこぞの路地裏で生まれ、路地裏で育った生粋の野良であるれいむ達。 町での生き方は他のどのゆっくりよりも熟知しているつもりだ。 なので、うかつに狩りという名のゴミ漁りもできないこの世の中、 食欲旺盛な食い扶持が増えてもそれを賄えなどしないことぐらいわかっていた。 それでも解決策までは思いつかない。 いっそ死産してしまえば、とも思った。 だが比較的安全な胎生にんっしんっだった事も手伝ってか、全部で3匹の赤ゆは全て無事に生まれてしまった。 生まれてしまった赤ゆ達を前にして、一時的には空腹も忘れて幸せな気分に浸れた。 しかし、もちろんそれだけで本当に腹が膨れなどしない。 子供が生まれてから数日後、赤ゆたちが寝静まったある夜。 かつて必死で蓄えたごはんも底を尽きかけているという現実を目の前にして、 二匹はようやく慌てて、対策を練ろうとした。 番のまりさは、辛いがもうおちびちゃんを捨ててしまおうと提案したが、れいむはそれを有無を言わさず一蹴した。 ゲスとでいぶというどうしようもない組み合わせの二匹ではあるものの、 実際に我が子を目にして、れいむの中に生まれたなけなしのぼせい(笑)がそれを拒んだのだ。 だが他に妙案も浮かばず時間だけが過ぎ、貴重な食料は減っていく。 そして現在に至る。 「れいむ、どうするんだぜ?おちびちゃんたちもおなかをすかせはじめてるし このままじゃぜんいん、えいえんにゆっくりしちゃうんだぜ…」 自分が必死に考えているというのに、まるで他人事のように話すまりさ。 先程の無慈悲な提案も相まって、イライラしていたれいむはまりさに対してきつく当たった。 「うるさいよ!いわれなくたってわかってるよ! いちいちわかりきったこといわないでね!!まりさばかなの?」 「いらいらしてるからってまりさにあたるのはやめるんだぜ! まりさががんばってだしたていあんをいやだっていったのはれいむなんだから れいむがかわりをかんがえるのはとうぜんなんだぜ!! どっちがばかなのかゆっくりりかいしてね、ばか!!!」 だが、同じくイライラしていたまりさに言い返されてしまった。 確かにまりさの言い分を一方的に蹴ったのは自分である。返す言葉も無い。 れいむは再び口を閉ざし考え込んでしまった。 「ゆぅ…どうしよう…… いいかんがえなんてまったくでてこないよ。 やっぱりまりさのいうとおり、このこたちをすてるしか… こんなにゆっくりできるこたちなのにぃ…… ……ゆっ?」 眠っている赤ゆ達を見つめながらうちひしがれるれいむだったが、 急に何かに気がついたように、顔を上げた。 「どうしたんだぜ?れいむ?」 「まりさ!れいむいいことおもいついたよ!! これならにんげんのたべてるおいしいあまあまもいっぱいもらえるよ!!!」 「ゆっ!?それはほんとうなのかぜ!? まりさにもはやくおしえるんだぜ!!!」 「あのね………」 夜は更けていく――― ―――――――――― 朝。 早朝独特の爽やかな空気を吸い込んで最高だった俺の気分は、 路地裏から這い出て来た、奴らを視界に入れた事で直下降した。 「「にんげんさん。ゆっくりしていってね!!!」」 「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 少し視線を下げると、そこには薄汚れてところどころゴミの付着した汚饅頭が2匹と、 何か癇に障る声で舌足らずに話すチビ饅頭が3匹。 ―――出たな、ゴミ饅頭め。 ふてぶてしい顔でお決まりの挨拶を吐く饅頭どもを見て、俺は陰鬱な気分になった。 つい十数秒前まではあんなに晴れやかな気分だったのに一瞬でこれだ。 それもそうだ。こいつ等と関わって喜ぶような人間はいないし、 一々潰すのも面倒臭い。後片付けだって楽じゃないしな。 が、いくら面倒臭くとも、野良を見つけた場合は確実に駆除。 そういう決まりがあるのだから、放っては置けない。 そのために、市が設置した公共の野良ゆっくり専用ゴミ箱なんかがある。 (えっと野良専用のゴミ箱はっと…) さっさと潰してしまおうと、近くに野良専用ゴミ箱があるか探す俺に不穏な空気を感じたのか、 慌てた様子で親ゆっくり達が話しかけてきた。 「ま、まってね、にんげんさん!!まりさたちのはなしをきいてね!!!」 「れいみゅたちなんにもちてないよ!!!」 うるっせえなぁ… 何もしてないもクソもお前らは存在してるだけで害悪だろうがよ。 ただでさえこっちは朝っぱらから汚いもん見せられて気が立ってるのに、 甲高い声で喚くなっつーの。俺のストレスがマッハだわ。 20メートルほど先に野良専用ゴミ箱を見つけた俺は早く済ませようと足を上げる。 「にんげんさん! れいむたちはおたがいがゆっくりできる“とりひき”がしたいんだよ!!! ゆっくりしないでりかいしてね!!!」 「「りきゃいしちぇね!!!」」 あん?取引だ? 妙な事を言い出した親れいむの話に、思わず足を止めてしまった。 それを好機とみたのか、親ゆっくり達は次々とまくし立てる。 「かわいいれいむたちはおなかがすいてるよ!! にんげんさんをゆっくりさせてあげるから れいむたちにあまあまよこしてね!!」 「そうなんだぜ!! ちゃんとゆっくりしたらさっさとあまあまよこすんだぜ!!!」 言いたい事はなんとなく伝わったけど、話を勝手に進めすぎて大雑把にしかわからん。 興奮しすぎてゲスの本性を出し始めた親ゆっくりに一応確認してみる。 「あー、つまり俺をゆっくりさせてやる代わりに 食い物よこせって事でいいんだな?」 「ゆっ!そうだぜ! りかいがはやいとたすかるんだぜ!!!」 うるせーよ、餡子脳。舌引っこ抜くぞ。 なんでいつ見ても常に上から目線で偉そうなんだ、こいつら。 「まあそれはいいんだけど、どうやって俺をゆっくりさせる気だ? まさか『かわいいれいむのうつくしいこえがきけたんだから、ゆっくりできたでしょ?』 とか言わんだろうな。 もしそうなら問答無用でゴミ箱へ直行してもらうが」 「ゆっ!?ちがうよ! そんなこというわけないでしょ?なにいってるの?」 「ばかなの?しぬの?ってか。 それはともかく、それならどうすんだよ。 やるなら早くやってみせろ。時間がもったいない」 「とりひきせーりつだね!わかったよ!! じゃあゆっくりさせてあげるね!! おちびちゃんたち!!!」 親れいむの号令で赤ゆたちがそろって俺の前で得意げに胸(?)を張る。 「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」 そのまま数秒間静寂が場に流れる。 ここからどうするのかと思っていると 一仕事終わったとでもいうような顔で親れいむが言った。 「はい!ゆっくりできたでしょ? さっさとれいむたちにあまあまよこしてね!!!」 「よこしぇ~!!」 「あみゃあみゃ~♪」 「あみゅあみゃはゆっくちできりゅんだじぇ!!」 ……はい? どういうことか理解できないので、改めて聞いてみる。 「で、俺をどうゆっくりさせてくれるんだ?」 「ゆ?なにいってるの? れいむのかわいいおちびちゃんたちをみてゆっくりできたでしょ?」 「ゆゆ~ん♪まりささまのあかちゃんはとってもゆっくりできるんだぜ~♪」 「「「かわいくっちぇごめんにぇ!!!」」」 ―――ああ、そういうことかよ。要するに、いつもやってる事と変わんねえじゃねーか。 こいつらの言わんとした所を理解した俺は、あまりの野良饅頭共の馬鹿さ加減に思わず頭を抱えたくなった。 ―――――時は戻って深夜――――― 「だから、かわいいあかちゃんをみせて ゆっくりしてないにんげんたちをゆっくりさせてかわりにあまあまもらえばいいんだよ!!!」 「ゆ!?でもれいむ、まりさたちがなにをいっても にんげんたちはきかずにころそうとしてくるんだぜ!! そんなにんげんにおねがいしようだなんてきけんなんだぜ!!!」 そう。伊達にまりさやれいむとて長年野良をやってはいない。 人間にはどう足掻いても敵わないことは身にしみてわかっていたし、 自分達を目の敵にしていることも知っていた。 まりさ達だってこれまで人間に見つからないように、必死になってきた筈だ。 そんな恐ろしい人間に自ら近づこうなんてれいむは何を言っているのだろうか。 なんとかれいむのやる気を失くさせようするまりさをれいむは鼻で笑うように言った。 「だからおねがいじゃないよ!!これは“とりひき”だよ!! にんげんとは“いーぶん”なかんけいなんだからもんだいないよ! 『そうごのりえき』をついきゅーしたけっかがこれだよ!!! まりさもゆっくりりかいしてね!!!」 普通に考えれば問題だらけ、穴だらけなプランだ。 と言うよりも、いつもゆっくりがやっているやり口の見方を変えただけである。 しかし、まりさはれいむのゆっくりにしては小難しい言葉と 持ち前の餡子脳に惑わされて、至極あっさりと話に乗った。 「ゆぅ~!すごいんだぜ、れいむ!!! まりさだってそんなことかんがえもつかなかったんだぜ!!! こんなかしこいれいむをおよめさんにもらってまりさはしあわせものなんだぜ!!!」 「ゆぅ~♪ほめすぎだよ、まりさ!!」 番にほめられてグネグネ蠢く汚饅頭。 気色の悪いことこの上ないが、そこまで調子付くのも無理からぬ事。 この汚饅頭たちにとっては、今が間違いなくゆん生最高の時だったのだから。 結局その日の夜は有頂天になったまま寝てしまい、次の日の朝早く親ゆっくり達は赤ゆ達に考えを簡単に説明した。 「…というわけで かわいいおちびちゃんたちならぜったいににんげんなんかいちころだよ!!!」 「わーい!にんげんしゃんのあみゃあみゃがちゃべれりゅんだじぇ!!!」 「ゆっくちれいみゅたちのきゃわいいところみしぇてあげようにぇ!!!」 「きゃわいくちぇごめーんにぇ!!!」 「さあ!じゃあだれでもいいからにんげんをみつけて“とりひき”しにいこうね!!!」 「「「「「ゆっゆっおー!!!」」」」」 意気揚々と、巣である汚いダンボールからずーりずーりと這い出てくる野良一家。 その威勢の良い様子とは裏腹に、これから先ろくでもない運命しか待ち受けていないのは明白なのだが。 ―――――――――― そんなこんなで、自慢げに食料を要求してくる饅頭達を見ながら、俺はどうしようかと思っていた。 無論食料をやろうかやるまいかではない。このままさっさと潰そうかどうしようかだ。 普通ならこのまま言っていることを無視して潰すのだが、 貴重な休日の朝一の散歩を邪魔された腹いせもあるし、少し暇潰しでもしてみるか。 ま、どの道最後に潰すのは変わらないけどな。饅頭潰すか、暇潰すかの違いだ。 「どうしたの?さっさとかわいいれいむたちにあまあまよこしてね!!!」 「じぶんだけゆっくりしようなんてげすのかんがえることなんだぜ!!」 「しょーだしょーだ!!」 「ゆっくちしゃしぇろー!」 「ゆっくち♪ゆっくち♪」 どんどん調子に乗り出すクソ饅頭達。 ならば、俺はこう返すしかないだろう。 「あ?嫌だよ。何で俺がお前らにメシなんぞやらなきゃいけないわけ?」 「「「「「ゆ゛!?」」」」」 俺の言っていることが理解できないとばかりに一斉に固まる野良達。 「あん?言ってることわかんねーのか?お前らなんかにやるものなんぞ何もねーっつってんだよ」 もう一度言ってやると、一拍置いて饅頭共が騒ぎだす。 「どおじでぞんなごどいうの゛ぉぉ゛ぉ゛ぉ!!!」 「うぞづぎはゆっぐりでぎないぃぃぃぃぃぃ!!!」 「うしょちゅきはゆっくちちね!!!」 「ゆあぁぁぁん!あみゃあみゃちゃべちゃいよぉぉぉ!!!」 「どうちてあみゃあみゃくれにゃいにょぉぉぉぉ!!?」 「嘘つきも何も嘘なんぞついとらんがな。」 「じゃあざっざどあ゛まあ゛まよごぜぇぇぇぇ!!!」 「だから何でやんなきゃいけないんだっつってんの。人の話聞けよ。 そもそもそんなブッサイクなガキ見たってゆっくりできないっつーの。」 「「「「「ゆ゛っ!?」」」」」 またもや固まる饅頭達。 また騒がれる前に、言いたいことは言っておきたい。 「あのなぁ、お前ら『赤ちゃんはゆっくりできる』とか言ってるけど そりゃお前らの中での話だろ。何で俺までそうなると思えるんだ?」 「どおじでもなにもあがじゃんがゆっぐりでぎるのはどおぜんでじょおぉぉぉ!!!」 「じゃあ自分の子供だけ見てゆっくりしてればいいだろうが。 別にメシなんぞ無くともお前らにとっては『ゆっくりすること』が一番大事なんだろ?」 「なに゛いっでるの゛ぉぉぉ!!おながへっでじゃゆっぐりでぎない゛でじょぉぉ!!!」 「へぇ、じゃあお前らにとって子供はメシにも劣る存在なのな。 おい、聞いたかチビども!お前らの親はお前らよりもメシの方が大事なんだってよ!」 俺と親の会話を聴いて、さっきまで固まっていた赤ゆ達が急に騒ぎ始めた。 「ゆ゛っ!?どういうこちょ!?」 「おかーしゃんちゃち、れいみゅがだいじじゃにゃいにょ…?」 「ち、ちがうよ、おちびちゃんたち!おかーさんそんなことおもってないよ!!」 「そうなんだぜ!おい、にんげん!へんなこというんじゃないんだぜ!!!」 つっかかってくる親まりさを気にもせず、更に続ける。 「変なことも何もお前らが言ったんだろうが。 『赤ちゃん見てるよりも、メシ食ってたほうがゆっくりできる』ってな。 可愛いおちびちゃんはゆっくりできるなんて人には言いながら その実メシの方が大事ってわけだ。大した役者だよ、お前ら。」 それを聞いたチビたちは、更に大声で泣き喚く。 親れいむは子をあやすのに必死だったが、親まりさは違った様だ。 簡単にこっちの挑発に乗ってきた。 「ゆぐぐぐぐ……だまるんだぜ!! おとなしくしてやってれば…もうゆるさないんだぜぇ。 おちびちゃんやまりささまをばかにするげすにんげんはまりささまがせーさいしてやるのぜ!!!」 俺が鼻で笑うと、堪忍袋(笑)の緒が切れたまりさがこちらに飛び掛ってきた。 たかが饅頭とはいえ親サイズともなればそれなりの重量はある。 ゆっくりにしては中々に早い動きで急に飛び掛って来たまりさに、 油断していた俺は膝を横から殴られるような形で突撃され、思いっきり吹っ飛ばされた。 ―――などという事は無く、普通に向かって来た所をカウンターの要領で蹴り飛ばした。 「ゆ゛びゃあぁぁぁぁ!!! ぶびゅっ!!!」 「……ば…ばりざぁぁぁぁ!!!」 「「「おとーしゃぁぁぁん!!!」」」 反動付きで蹴り飛ばされた親まりさは、壁に激突してボテンと落ちた。 歯は抜け落ちてボロボロになっていて、帽子も壁に激突した拍子に破れたようだ。 微かに動いてるところからしてまだ生きてるらしい。しぶとい饅頭め… 俺は親まりさに近づき、踏みつけてから更に足で壁に押し付けるようにして力を込める。 「何だ、制裁って?俺はお前らが言った事解り易くしただけだろうが? 言った内容まで人のせいかよ。そんだけでゲスになんのか、あぁ? なら、自分の言った事に責任持たずに人に擦り付けるお前らもゲスだよなぁ。 じゃあお前の言う通りゲスは制裁しないとな!」 更に足に力を込めると、今度は親まりさの尻から餡子が漏れ出した。 「あ゛あ゛あ゛あ゛!!ごべんなざい゛い゛い゛!!! ばでぃざがわるがっだでずぅぅ゛!!! いだい゛!じんじゃう!!! おでがいじばずがらぜいざい゛じないでぇぇ゛!!!」 「簡単に謝るくらいなら最初からでかい口叩くんじゃねーよ。 自分の発言に責任も持てないなら言うんじゃねえ、ボケ!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 まりさは餡子を吐いて呻くだけで、何の反応もしなくなった。 他の奴らはさっきまでの勢いはどこへ行ったのか、 未だかつて見た事の無い光景にしーしーを漏らしながらガタガタと震えている。 その様子に少しスカッとした俺は足を親まりさからどけて、他の饅頭達に話し掛けた。 「よう、クソ饅頭共。ありがとよ、その不細工なチビよりはゆっくりできたぜ」 「なに゛いっでるのおぉぉ!ごんなのゆっぐりでぎるわげないでじょぉぉ!!!」 「そりゃお前らはな。でも俺はゆっくりできるんだよ、わかるか?」 「にゃんでぇぇ゛!?わがらな゛いよぉぉぉぉ!!!」 なにか違う種類のゆっくりになりかけてるれいむに対して、俺は続ける。 「あー、ったくめんどくせぇなぁ。まあおとなしく聞けや、汚饅頭。 例えばだ、ありす…レイパーっているだろ」 「ゆ!?れいぱーはゆっくりできないよ!!」 「お前達にとってはな。 でも無理矢理他のゆっくりにすっきり仕掛けてる時が、 あいつらにとっちゃ一番ゆっくりできる時なんだよ。 なんでかわかるか?」 「そんなのわからないよ! れいぱーみたいなゆっくりしてないゆっくりのきもちなんてわかんないよ!!!」 「ああそうだろうな。じゃあ聞くけどよ、 レイパーの気持ちはわかんないのに、何で人間の気持ちはこうだって言えるんだ?」 「ゆ?」 「ゆ?じゃねーよ。バカか、お前。 何でお前らは、人間がお前らのクソチビ見てゆっくりできるって考えれんだっつってんの。 お前らの不細工なガキ見てゆっくりできる奴なんぞお前らぐらいしかいねぇよ。 少なくとも人間にはそんなもん当てはまらねーっつーの」 親れいむはボケーッと馬鹿面下げて聞いている。うん、これはわかってないな。 「つまり、個人や種族によって『ゆっくり』の形はいくらでも変わるんだよって事だ。 お前らとは別に、レイパーにはレイパーの、俺には俺の『ゆっくり』があるんだよ」 「だ、だってれいむたちはかわいいおちびちゃんたちみてゆっくりできるんだよ? れいむたちがゆっくりできるならほかのみんなもゆっくりできるって……あれ?」 混乱している親れいむが言っている事に心底呆れた俺は、更に続けた。 「はぁ…ホンットどうしようもないな、お前。 そもそもゆっくりってやつは、誰かをゆっくりさせようとするものなんじゃねーの? なのにお前ら見てると、自分達がゆっくりするために他の奴らを都合よく使ってやろうって魂胆しか見えないんだよ」 「ゆっ、そんなこと…」 「無いって言えるのか? ありとあらゆる価値観を自分が中心になるように都合よく当てはめて、 それを他の者に押し付けて好き放題しようとするお前らが?」 「ゆぐっ…ぐぐ…ぐぐぐ……」 「おかーしゃぁん…」 「にゃんだかゆっくちできにゃいよぉ……」 「今回だってどうせ自分の事だけしか考えてないんだろうが。 『お前をゆっくりさせてやるから、こっちもゆっくりさせろ』だ?何様だ、お前。 そういうのはまず相手の気持ちを汲んでやれて初めて成立するものなんだよ。 自分の『ゆっくり』=他者の『ゆっくり』だと思ってるお前らにはできねえよ。 お前らのやってる事は取引じゃない。ただのこじ付け、屁理屈の類だ。」 親れいむの顔は、とどまる事を知らずに醜く歪んでいく。 「自分の価値観のみで作った、自分に都合のいい恩を押し売って、 その代わりに自分が欲しいものを自分が望むだけお前から貰いますってか? ゆっくり理解しときな。 そういう、お前らの様に相手の『ゆっくり』を無視して、自分の事しか考えないような奴をゲスって言うんだよ」 「ゆっぐり…だばれ……」 「ハッ!何で黙らなきゃいけないんだよ。 お前ら言い返せなくなったらそれしか言うことないのな。 なあ、実際の話お前らほど『ゆっくりしていってね』って台詞が相応しくない奴はいねーよなぁ。 挨拶も『ゆっくりさせていってね』に変えた方がいいんじゃねーの? あ、もう態度からして言ってるようなもんか。 さすがゲスは一味も二味も違うな!俺の頭では理解しきれんわ」 「ゆがぁぁぁぁ!!だま゛れえぇぇ!!! ぞれいじょうでいぶをばがにずるどゆっぐりでぎなぐじでやるぅぅ゛!!!」 「うるせーよ、黙んのはテメーだゲス饅頭!」 ブヂッ!! 「エ゛ン゛ッ゛!!!」 「「「おがーじゃぁぁん゛!!!」」」 先程のまりさと同じように、こちらの言う事に耐え切れなくなって 飛び掛ってきた親れいむを、迎え撃つようにしてリボンごと上から踏んづける。 「ゆ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛!やべでぇぇぇ゛!! あんごでじゃう!でいぶじんじゃうぅぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 こちらもいい加減我慢の限界が近い。 踏みつける足にも、つい力が入ってしまう。 「別にいいじゃねえか、死んじまっても。 で、何だ、ゆっくりできなくしてやるだ? ああそうかよ。でも生憎とお前らが何もしなくても、 お前らがいるだけでゆっくりできねーんだよ、こっちは! …どんだけ言っても無駄かよ。クソっ、やっぱ変な事考えなきゃよかったぜ。 とんだ暇潰しになっちまった。さっさと潰すか、気分悪い。」 そう言った途端に全員、さっき蹴り飛ばして息も絶え絶えだった親まりさまでもが、 潰すという単語に反応したのか、命乞いを始めた。 やはり自分の命には相当執着するものらしいが…… 「だ、だずげでぐだざい…ばでぃざだげでも!ばでぃざだげでぼぉぉぉ!!!」 「でいぶはおにーざんをゆっぐりざぜれるように゛がんばりばずがら!! がわいぞうなでいぶはづぶざないでぐだざい!!!おでがいじばずぅぅ!!!」 「ゆぁぁぁん!ちにちゃくにゃいぃぃ!! だれきゃきゃわいいれいみゅをたしゅけちぇぇ!!!」 「ゆんやぁぁぁ!こんにゃにょっちぇにゃいよぉぉぉ!!! れいみゅゆっくちしちゃいだけにゃにょにぃぃ!!!」 「にんげんしゃん、まりしゃをゆっくちしゃしぇてほしいんだじぇ!! いもうちょたちはみんにゃちゅぶしちぇもいいかりゃ まりしゃはたしゅけちぇほしいんだじぇ!!」 見苦しい事この上ねえな。この期に及んで、自分だけは~か。 そりゃ生きる上では誰だって持ってる本能だろうが、家族を全部売ってまでしがみ付きたいもんなのかよ…… まあいいさ。どうであれ、こいつら野良がどうしようもないやつってことには違いない。 せめて最後はお前らの流儀に合わせて、潰してやる。 「あー、じゃあ取引だ。」 「ゆ゛っ!?ど、どりひぎ!!?」 「なんでぼじばず!!ばでぃざなんでぼじばずがら!!!」 「あっそう。じゃ、俺はお前達でゆっくりさせてもらう事にするわ。 その代わりお前らをゆっくりさせてやるよ」 俺の言葉に少し顔色がよくなる饅頭達。 「ゆ、ゆっくちさしぇてくれりゅの……?」 「ほんちょに…?」 「……まりしゃたしゅかりゅんだじぇ?」 「に、にんげんざん、あでぃがどうございばずぅ!!」 「までぃざだぢなんでぼじばず!!!」 急に明るくなって、涙を流しながら感謝の言葉まで言い出す饅頭達。 ……なにか勘違いしてんな、こいつら。 「いや、別になんもしなくてもこっちで勝手にやるから、さっと!」 「ゆ゛ぴぃ゛!!!」 言い終わると同時に赤ゆを一匹踏み潰す。れいむ種だ。 「……ど、どぼじでぇぇぇぇ゛ぇ゛!!?」 「う゛わ゛ぁぁ゛ぁぁ゛!!でいぶのおぢびぢゃんがぁぁぁ!!!」 「れーみゅぅぅ!!」 「まりちゃのいみょうちょがぁ!ゆっきゅりちてぇ!!」 あー、うるさい。 今更言うのも何だけど近所迷惑だな、こりゃ。さっさと終わらせよう。 次は、うろたえているもう一匹のれいむに大股で近づく。 「おかーしゃんたしゅけ…ゆっ、ゆっ、も…もっちょゆっきゅりぢぃ゛!!!」 プチュン!! 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ばでぃざのあがぢゃんん゛ん゛ん゛!!!」 言わせるかよ、ゲスが。 お前らみたいな他者の事を顧みないゴミ屑に『もっとゆっくりしたかった』などとほざく権利があると思うなよ。 「おぢびじゃぁぁん゛!!! どぼじでごんなごどずるの゛ぉぉ゛ぉ゛!!?」 「どうしてって俺がゆっくりするために決まってんだろうが」 「な゛んでごんな゛ごどじでゆっぐりでぎるの゛ぉ゛ぉ゛!?」 「ゆっくちできにゃいぃぃ!!!」 「お前らの都合なんぞ知るかよ。 人間は、って言うか俺はこうしなきゃゆっくりできないんだっての。 さっき俺が言った事もう忘れたのか?餡子脳。お前らが居るとゆっくりできないの。 俺がゆっくりできないのは可哀相だろ? もう理解しなくてもいいから、さっさと潰されろ。いい加減めんどくせーし」 止めを刺そうとした俺に饅頭たちは尚も食い下がる。 「ばでぃざだぢゆっぐりでぎでないよ゛ぉぉ゛!!! どりひぎばどうなっだのぉぉ゛ぉ゛!!?」 「取引?ちゃんと守ってるだろうがよ」 「どごがぁぁぁ!?でいぶのがわい゛い゛おぢびぢゃんえいえんにゆっぐりじぢゃっだでじょぉぉ!!?」 「永遠にゆっくりしたんだろ? どんな形であれお前らをゆっくりさせてやってるじゃん。ほら、何も間違えて無い」 俺の答えを聞いて、饅頭達の顔が一気に青白くなった。 「「「ぞ、ぞんな゛ぁぁ゛ぁ゛「もういいよ、おまえら。じゃあな。」 「ゆ゛ん゛やぁぁ!!ゆ゛ん゛やぁぁ゛ぁ゛!!!」 「いやだ、いやだいやだいやだ!!ま゛だじにだぐない゛!! ばでぃざま゛だごれがらもっどゆっぐりずるんだぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 「なんでがわ゛いいでいぶがごんな゛め゛に゛ぃ゛… ごんなごどならごども゛なんがうばなぎゃよがっだ……」 親れいむの後悔の言葉を最後に、野良一家はその惨めなゆん生を終えた。 ―――――――――― 胸糞悪いやり取りを終え、ゴミ箱に捨て終わった後に時計を見ると、早朝というには少し遅すぎる時間になっていた。 帰ろうと後ろを振り向くとすぐそこに、昔っから俺の苦手なカミナリおじさんが青筋たててこっちを睨んでいる。 そりゃ朝っぱらからあんなに饅頭騒がせてりゃ、大迷惑に決まってる。 せっかくの休日の朝が台無しになった事に俺は深く悲しみ、いい歳こいて説教を受け、おじさんに謝りながら思った。 ―――ゆっくりゴミ饅頭なんかの戯言を聞いた結果がこれだよ、と ・あとがき 今作は「もっとゆっくりしたかった」と言わせたくないという、 ふとした想いからまたもや衝動的に生まれたものです。 その割にはえらく長いうえにどこかで見たような話に… でも反省はするけど、後悔はしません。多分。 もっと簡潔、かつ解り易くするのが今後の課題かも。 本当は…おもいっきり希少種愛でるようなやつも書きたいです…… では、ここまで読んで下さった全ての人に感謝を。 本当にありがとうございました!! ・過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 所詮はゆっくりだね。こいつらで「すっきりー!」するなんてさっさと潰したりサンドバッグさんにするしか無いんだねー。わかるよー。 -- 2015-08-12 21 31 12 すっきりー! -- 2014-11-09 13 32 43 どこかにまともなゆっくりはいないもんかねぇ、、、ってそんな事考えても無駄か -- 2014-07-23 16 14 24 ゲスは、やっぱりくずだw -- 2013-09-08 21 08 33 取引の意味を学んで来い!(【取引】商売として、商品を売り買いすること) -- 2013-02-26 00 54 47 ドス以外の取引はしんようできないよー。わかるよー。 -- 2012-03-25 19 53 22 エ゛ン゛ッ゛!!!wwww -- 2011-12-12 19 29 33 この話好きだなぁ、すっきりー。 -- 2011-05-11 00 09 56 ゲス親のせいで殺される赤ゆっくりが不幸すぎる まあたぶんゲスに成長するんでしょうがね。というかもうゲスだし。 なんかよくわからなくなってきた。ゲスは制裁 -- 2011-04-14 03 57 46 「エ゛ン゛ッ゛!!!」wwwwww -- 2011-04-13 23 33 36 お兄さんに矛盾を突かれたという事を 僅かでも理解出来てるから かなり優秀な個体だよね でいぶというよりかは賢い(ゆっくりレベルで)ゲスかな -- 2010-11-06 14 08 27 お兄さんが正論すぐる… 野良ゆなんかと会話すべきじゃなかったんだね、わかるよー -- 2010-10-10 18 29 27 ゆっくりは喋るゴミ -- 2010-09-30 00 31 32 こんなことなら生まなきゃよかった って、まりさはそういう提案してたんだけどな れいむが諸悪の根源 まりさはゲスなりにまだまともだった -- 2010-09-28 13 07 04 説教されたお兄さん可哀想だけどゴミの会話に付き合ったせいだし自業自得かなぁ -- 2010-08-29 19 37 42 お兄さんの言うことがあまりにも正論すぎる -- 2010-08-10 23 28 02 ゴミと真面目に会話しようとするなんてキチガイ -- 2010-08-02 05 57 50 人間がゆっくりできたと自ら認めたんだから取引き成立じゃね? 野良どもに約束どおり報酬を渡すべき。渡すあまあまは潰した親まりさで -- 2010-07-27 23 17 08 そんな…可愛いおちびちゃんを見てゆっくりできないなんて…うそだろ… -- 2010-07-24 17 24 29 結局自己中なんだよゆっくりは。こんなの潰してすっきりだよ。 -- 2010-07-24 08 36 04
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◆ 皆さんのSSを読み、触発されて初投稿に至った次第です ◆ 拙い文章だとは思いますが、感想フォーム等を参考に、今後の改善に努めたいと思います ◆ 性的描写あり ◆ 虐待よりもギャグの方が目に付くかもしれません、こんな筈じゃなかったのに・・・! ◆ 実は一作目が頓挫して二作目を投稿してるのは内緒 『にんっしんしたゆっくりを虐待したい。』 そう思い立ったのはつい最近のことだ。 通常の虐待に行き詰まりを感じ、僕にゆ虐を教えてくれた先輩にアドバイスを請うたところ にんっしんしたゆっくりの虐待を薦められたのである。 にんっしん虐待・・・そういうのもあるのか! やはり先人達は偉大だ。 『新しい命の誕生を踏み躙る・・・その背徳感と、目の前で赤ん坊の命をもぎ取られたあいつらの顔がたまらないのよ! 』 嬉々として語る先輩の顔は、ある意味神々しかった。 でも饅頭に命っていう概念はあるのかな? 「ただいまだぜ。れいむ、きょうもたっくさんえさをとってきたんだぜ! 」 「ゆゆっ、まりさはさすがだね! かりのめいじんだよ! 」 「ゆっへん! それほどでもないんだぜ! それよりいっぱいたべて、げんきなあかちゃんをうむのぜ! 」 「まりさ・・・」 「れいむ・・・」 「「す~りす~り・・・ゆゆぅ~♪」」 今回の虐待には、我が家の軒下に(勝手に)住んでる番のこいつらを使おう。 二匹の大きさはおよそバスケットボール程、そして都合の良いことに、れいむは胎生にんっしんをしている。 ちなみに、まりさの言う『えさ』とは僕がこいつらが餓死しないようわざわざ庭に置いておいた生ごみのことだ。 そりゃたっぷり取れるわな。 「はいはい、お楽しみのところちょっと失礼しますよ。」 「ゆゆっ、にんげんさんはゆっくりできないよ! まりさ、なんとかしてね! 」 「まかせておくんだぜ、れいむ! まりさにかかればにんげんさんなんていちころぎゃぶぅっ!? 」 やかましいので、ハエタタキで二、三発殴りつけて黙らせておく。 大抵のゆっくりにとって、『人間=ゆっくりできない』程度の認識らしい。 相手の強さを測る能力なら、イヌやネコにも備わってるって誰かの右手が言ってた気がするが・・・。 こいつらは一体どうやって野生動物として生き延びてきたのだろう。 ・・・いや、動物などと言っては生命に対する冒涜かもしれない。口を謹んでおこう。 「まりさ、まりさ! しっかりしてね! 」 「ゆぴぃ・・・からだじゅうががんがんするのぜ・・・」 ハエタタキの振動はゆっくりの全身に伝わる。 つまり、頭部のみで構成されるゆっくりの体が脳震盪を起こした形になるのだ。 加えて、ゆっくりは体全体が聴覚器官の役割を果たしているため、その衝撃は計り知れない。 まりさがおとなしくなったところで、二匹を虐待部屋に連行する。 「にんげんさん、れいむとまりさをゆっくりはなしてね! れいむはにんっしんしてるんだよ!? 」 「だから苛めるんだよ! ゆっくり理解してね! 」 「どぼじでぞうなるのぉぉぉぉぉ!? 」 軽く会話のキャッチボールも済ませたところでさぁ虐待だぁ! さて、取り出しましたるは特製アイテム「にんっしん促進薬」。 要はレイパーと名高いアリスの特濃体液汁だ。 こいつを注射器にセットし、やや内角をねらい・・・ 「ゆゆっ? おにいさん、なにそれ? なんだかゆっくりできなさそうだよ・・・」 えぐりこむように打つべし! 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁ!? 」 あ、いけーねいけね。針全部刺しちゃったよ。 薬は注入されたみたいだからいっか。 「ゆがぁ・・・? ぽんぽんさんがへんだよぉ・・・」 れいむの膨れ上がった下腹部が蠕動を始めた。 早くも薬が回り始めたらしい。次の段階に移らねば。 先輩によれば、通常は『まむまむ焼き』で産道を塞ぐらしいが・・・。 今回はもう少し趣向を凝らすことにする。 アイテムその2、「ゆっくり用瞬間接着剤(小麦粉製)」の登場だ。 「さーて、れいむちゃんの下のお口はどこかなー? 」 顎の中腹よりやや下辺り、不気味にひくひくと蠢く穴があった。 穴があったら入るのが男ってもんだぜ! ま、入るのは僕じゃないけどね。 「ゆぅぅぅぅ!? れいむのぷりてぃーなまむまむになにするのぉぉぉぉぉぉ!? 」 「はいはい、良い子だからおとなしくしようねー」 れいむのぷりてぃー(笑)なまむまむに接着剤を流し込む。 これで子供は産めず、出産の時には産道が広がる代わりにまむまむを激痛が襲うことになる。 あ、そうだ。あにゃるの中にも接着剤流し込もう。こいつら適当な体の構造してるからな。 尻から産まれた桃太郎なんて駄洒落にもならん。 「ゆっ・・・はなせぇぇぇ! れいむにさわるなぁあぁぁ! 」 腹部を庇っているせいか、れいむがこちらにあにゃるをぷりぷりと振りかざしてきた。 わっしとばかりにそれを掴み、興味本位であにゃるに中指を突っ込んでみる。 たまには違う穴でもいいよね! 「ゆぴ・・・? おにいさん、ゆびぬいてぇぇぇぇぇぇ! 」 「ふふふ・・・コリコリ弾力のある中枢餡に触っているぞぉ、れいむ・・・」 指を少し下げると、丸っこい感触のものがあった。これが赤ちゃんかな? あにゃるに親指と人差し指も突っ込み、可能な限りに拡大し、れいむの胎内に向かって叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!! 」 『ゆっ・・・して・・・ね・・・』 僅かだが反応があった。胎教ってきっとこうやるんだな。勉強になった。 予定通りあにゃるも固めておく。 「ゆひゅぅ、ゆひゅぅ・・・れいむ、もうおこったよ! にんげんさん、ゆっくりしないでかくご・・・ゆぎぎぎ・・・! 」 れいむを解放してしばらくすると変化が起こった。いよいよ出産の時がきたのだ。 「うっ、うっ、うばれるうぅぅぅ・・・!? 」 下膨れた顔に、もこもこと隆起する二つのテニスボール大の凹凸。どうやら二匹の子宝に恵まれていたようだ。 れいむのまむまむが塞がれているため、出る場所がわからずに戸惑っているに違いない。 「ゆぎぃ・・・あがぢゃん、もうちょっとゆっくりじでいってね・・・」 でなければ、親の腹から生れ落ちようとはしないはずだ。 「れいむ、れいむ! いまたすけるのぜ! 」 ハエタタキに殴られて、先程まで無様に失神していたまりさが駆け寄り、必死に介抱しようとする。 が、この状態でゆっくりに出来ることなどたかが知れている。 「ど、どうなってるのぜ・・・!? れいむのまむまむはどこなのぜ!? 」 「ゆがぁぁぁ・・・でいぶのあがぢゃん、おねがいだがらうごがないでね・・・」 博識な皆様方ならご存知だとは思うが、ゆっくりの出産時に飛び出す子供の勢いは中々のものだ。 原理は知らないが、例えるならば腹の中でパチンコ玉を撃つ様、と言ったところか。 その衝撃が、内側かられいむの腹部に加えられているのだ、痛みは推して知るべし。 「でいぶのおなががぼごぼごしてるぅぅぅ! きもい! おもにはらがぎぼいぃぃぃぃぃ! 」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉ!? ばでぃざはでいぶのおむござんでじょぉぉお!? ごどものぜぎにんどっでぇぇぇ! 」 二匹が昼ドラめいた会話を繰り広げる中、れいむの懇願も虚しく赤ゆっくりは外に出ることを止めようとはしなかった。 れいむのもっちりでっぷりとした腹部がメリメリとひび割れていく。 出産の勢いは母胎の強度に勝ったようである。 「うがぁぁぁ! おやをぐるじめるようなあがぢゃんはうまれないでゆっぐりじねぇぇぇ! 」 同時にれいむの自己愛も母性(笑)に打ち勝ったようだ。 胎児にとっては産まれることなど無意識の行動であろうに。 「もっと・・・ゆっぐりじだがっだ・・・」 断末魔の声にかぶさり、ブチブチと母親の胎を食い破りながらも、赤ゆっくりが生れ落ちた。 「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!! 」」 赤れいむと赤まりさの番が産声をあげたが、 「れいむ!? おへんじしてよ、れいむぅぅぅ! 」 遺された親まりさは動揺して構う余裕はなかったようだ。 エイリアンの如く産まれた子供を前に、そりゃ冷静で居られるわけがないわな。 ・・・あ、そうだ。赤ゆっくり同士も胎生にんっしんさせてみよう。 オレンジジュースに浸しながらドッキングさせれば、栄養不足で死に至ることもないはずだ。 「ほ~ら、ご飯でちゅよ~。」 「ゆぴぃっ!? 」 「ゆひっ!? 」 先程の特濃アリス汁を赤ゆっくりに注射し、溺れない程度のオレンジジュースで満たされた容器に浸しておく。 「さぁ、お次はすっきりしましょうねー。」 「れいむぅ・・・。ゆ? おちびちゃんはすっきりしちゃだめだよぉぉぉぉ!? 」 やっと気付いたようだがもう遅い。親まりさには剣山という特等席を用意しておいた。 彼女には、生れ落ちて間もない我が子同士が交尾するのを、心行くまで見ていてもらおう。 「ゆぎゃぁぁぁ!? までぃざのあんよがぁぁあ!? 」 「ほーらおちびちゃん、す~りすり~♪」 「「ゆ・・・ゆゆっ? 」」 赤ゆっくりの番に振動を与え、強制的に発情させる。 子供でも一応発情する事は先達が証明済みだ。 「にゃ、にゃんだかからだがあちゅくなってきちゃよ・・・? 」 「まりちゃ、もうがまんできにゃぃぃぃ! 」 つくづく単純な体構造してるな、ゆっくりって。 しかし普通に交尾させるだけじゃつまらないな。 まりさのぺにぺににとんがりコーンでも被せておくか。 うん、実にお洒落なルーデサックじゃないか! 滑稽だよ、まりさ。 「いれりゅよ、れいみゅ・・・」 「はやくちてぇ・・・れいみゅのきょきょのうじゅきをしじゅめてよぉ、まりちゃ・・・」 そんな僕の気遣いを知ってか知らずか、いそいそと交尾の準備を始める二匹。 この台詞回し、こいつら本当に赤ん坊か。 既に二匹の体表はぬめぬめとした粘液に覆われ、電灯の光を受けて怪しく輝いている。ぶっちゃけきもい。 人間で言う四つん這いの格好になった赤れいむのまむまむに、 赤まりさが己の股間に聳え立つとんがりコーンを荒々しく挿入する。 「ゆゆ? れいみゅのきょきょはなんだきゃきゃたくてゆっきゅりできないよ? 」 「いちゃぃいいぃ! さけちゃうううぅ!? 」 各々勝手に感想を漏らしつつも、ぬちゃぬちゃと音をたてながら体を重ねあう。 前後運動が激しくなり、聞こえてくる音が更に濁ってきた頃。 「ゆふっ、ゆふっ、れいみゅ、ちょろちょろ、だちゅよ? 」 「ぽんぽんがごりごりしゅるよ、いぢゃいよぉぉぉ!!」 「「すっきりぃいぃぃぃぃぃぃぃ!!! 」」 二匹が絶頂を迎えた。 「ゆぐっ、ぐずっ、ばでぃざの、あがぢゃんがぁぁぁ・・・」 深い悲しみに包まれた親まりさは目から砂糖水を垂れ流している。 さぁ、第二ラウンドと行こうか! 親まりさを剣山から外し、赤ゆっくりのいる容器に放り込む。 荒い息の赤ゆっくりに、再び薬を打ち込んで発情させる。 今度は己の親が性欲の捌け口となるのだ。 おっと、とんがりコーンも忘れちゃいけねぇぜ。 赤まりさのはれいむの体内に残ってしまったようなので、二匹それぞれに被せておこう。 「ゆけけけけ・・・おかしがいのありちょうなまりちゃがいるのじぇ」 「うしろはれいみゅがもらっちゃよ! 」 「やめてね、やめてねおちびぢゃん・・・ゆぎぃっ!? 」 薬のせいか、生まれ持った性質なのか、赤ゆっくりの口調はゲスのそれに近いものとなっている。 それにしても子供の交尾を見せられた挙句、その子供に犯される親の心境は之如何に。 加えて前からも後ろからも、生殖にはとても向かない異物を挿入されているのだ、肉体的な苦痛も大きい。 「ゆふぅ、まりちゃのここはゆるゆるだよ? とんでもないばいたじゃにぇ!」 「やめちぇといいながらもていこうしにゃいなんて、いんらんなのじぇ! 」 「ゆっぐ、ゆっぐ、おぢ、び、ぢゃん・・・」 突かれる衝撃で喘ぎながらも我が子に懇願する親の姿は、子供の目には映らなかったようだ。 悲しみに打ちひしがれてはいるものの 「「「ずっぎりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」 不思議とここだけは声を合わせるんだよなぁ。 先程と比べてその声には疲労が滲んでいるが。 「ゆげぇっ・・・もう、すっぎりは、いやだよ・・・」 赤ゆっくりが吸収したため、容器にオレンジジュースはもう僅かしか残っていない。 親まりさは餡子を吐き、生まれたことを、或いは生み出したことを嘆きながら絶命した。 それと入れ替わるように、赤れいむの産道がみちみちと開き始める。 「ゆぎゅ!? う、うばれりゅよぉぉ・・・」 産道からゆっくりのふてぶてしい顔が覗き、次の瞬間。 「れいみゅのあきゃちゃん、ゆっきゅりうまりぇて・・・ゆぴぃっ! 」 赤れいむの体が四散した。胎内の赤ゆの成長が、特濃汁によって異常に促進された結果である。 成体ならともかく、赤れいむの体では自分の体ほどもある赤ゆの出産には耐えられなかったのだ。 「ゆ? ゆ!? にゃにがおこっちゃの!? 」 「ゆっくりしちぇいっちぇにぇ! 」 「・・・は? 」 流石に驚いて声をあげてしまった。新たに生まれた赤まりさ(孫まりさと言うべきか)の生殖器が・・・ 「「どぼじでどんがりゴーンなのぉぉぉぉぉぉぉぉ!? 」」 ● 「ひっさつのどりるぺにぺにをくらうのぜ! 」 「ゆぎゃぁぁぁ、もうゆるぢでぐだざぃぃぃぃ!! 」 「おにぇーちゃん、すごーい!! 」 「ゆぷぷぷ、にきゅべんきはぶじゃまだにぇ!! 」 結局、意図せずして新種の開発に成功してしまった僕は、彼らを新たな虐待道具として使うことにした。 ちなみに成長した赤まりさはとんがりコーン専用の肉便器として現役を貫いている。ま、今は貫かれてるけどね。 呆れたことに、奴らはとんがりコーンを介して生殖行為を行ったため、その特徴をも子に引き継いでしまったらしい。 しかもこのとんがりコーン、あたかもドリルの様に回転するのだ。 従って、貫かれる側は体内の餡子をかき混ぜられ、五臓六腑を引っ掻き回されたような錯覚に陥るのだという。 無論、まむまむとの間に擦過傷も発生し、その痛みも尋常なものではないだろう。 「さぁ、つぎにつらぬかれたいやつはだれなのぜ? 」 さぁ、次はこいつでどんな虐待をしようか? おやつのとんがりコーンを口に含みながら、僕は新たな虐待方法を考えることにした。 * 完- <あ・と・が・き> 深夜のテンションって怖いですね、次からはちゃんとプロット立ててから書こう、うん・・・。 もっと精進せねば。
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「ゆっくり漂流記 漂う命」「ゆっくり漂流記 抗う命」の続編・完結編です 『ゆっくり漂流記 漂流の果てに』 れいむとまりさが脱出を試みてから二日が過ぎた。 太陽熱蒸留器のおかげで水はまだ残っていたが、食糧はもう非常食2本を残すばかりに なっていた。そのうち、1本はもう、半分食べてしまった。 あれ以来、れいむとまりさにも食事は与えられていたが、それはかつての滋養に溢れた 非常食ではなく、救命いかだの底部に付着し、シイラに餌となっているエボシガイなど をくだいたものであった。それだけでは空腹を訴えるので、おじさんの「特別の温情」 によって、定期的にサラダ油を飲まされていた。 サラダ油とはいえ、脂肪分は動物の三大代謝基質(炭水化物、タンパク質、脂肪)の一つ であり、主に、短期間の素早い動きのエネルギー源として使用される。 れいむとまりさはサラダ油をゆっくりにしては大量に摂取させられることで、空腹を覚 えることは少なくなっていたが、その体表は少し、てかるようになりつつあった。 夕食の後、寝ようにも、背中にあった大きな海水腫瘍が潰れて痛み、なかなか寝付けな かった。何十回かという寝返りの後、やっと眠りにつくことができた。 その日の夢は、息子が大学を卒業したときの夢だった。 息子は手がかからない、利発な子だった。反抗期には取っ組み合いも何度か演じたもの の、更年期に情緒不安定となった妻や、歳を取り、怒りっぽくなった父ともよく大学の ことや、様々な話題を話していた。 今思えば、会話に対して怒鳴り声が増え始めた家の中で、息子は、息子なりに家庭を安 定させようと努力していたのかもしれない。 本来ならば、それは私がしなければいけない役回りだったにも関わらず。 息子は、今はゆっくりの生態を研究するべく、地方の小さな国立研究所で、ゆっくりを 研究している。利発で、できた人間であったが故に、私は息子に甘えていたのかもしれ ない。もっと息子を評価し、甘えさせてやるべきだったのではないだろうか? そのような後悔もどこかに沈み、夢の場面がめまぐるしく変わっていった。今は、夢の 中でだけ、私はゆっくりすることができた。 夜、おじさんが寝静まった後、れいむとまりさはもはや恒例となった夜の会話を始めた。 まりさは焦っていた。自分の試みが失敗した以上、これまで通りの生活は望めない。 例え、この漂流生活を乗り切ったとしても、捨てられてしまうのではないか? その恐怖がずっとまりさを支配していた。もっとも、ゆっくりに命を危険に曝された人 間が、捨てるだけで済ませてくれるのならば、それは僥倖というべきなのであるが。 「だめだよまりさ!おちびちゃん作ったらごはんさんがっ!!」 「そんなことはわかってるよ!れいむ…ゆっくり聞いてね!」 まりさはれいむの目をじっと見つめ、そして話し出した。 「まりさたちはいま、海の上なんだよ!おじさんがまりさたちをゆっくりさせてくれな い限り、まりさたちはゆっくりできないんだよ!」 れいむは黙っていた。まりさはそれを同意と見なし、話を続ける。 「まりさはれいむといっしょにゆっくりするために、おじさんがゆっくりできるように とおうちに帰ろうとしたよ!でもおじさんは怒ってしまった…もうむかしみたいにまり さとれいむをゆっくりさせてくれないよ…」 れいむはまりさの一言一言にうんうんとうなずいた。まりさの言う通りだった。 「だから、おちびちゃんをつくらなきゃいけないんだよ!」 「???」 れいむはさっぱり分からなかった。銀バッジのまりさよりも、金バッジの自分の方が頭 が良いとずっと思っていたが、ひょっとして自分はとんでもない馬鹿なのだろうか? 「おちびちゃんを作ればきっとゆっくりできるよ!いつ永遠にゆっくりしてしまうか分 からないんだから、今のうちにおちびちゃんを作って少しでもゆっくりしなきゃいけな いんだよ!」 まりさは、まりさなりに、少しでもこの苦しい漂流生活を楽しいものにしようとしてい るのだろうか?れいむにはそれどころではないように思えたのだが。 「おちびちゃんを見れば、きっとおじさんもまた笑ってくれるよ!海さんだってゆっく りしてくれるよ!ねぇ…ゆっくりしよう!すっきりしてゆっくりしようよぅれいむぅ!」 そう言ってまりさはれーろれーろと、れいむの口内に舌を侵入させてくる。 「ま?まりさ!!?ゆぐ…」 かつて、れいむとゆっくりすることは、まりさのゆん生の目的だった。 それが今となっては、おじさんの庇護の下で生き延びるための手段となりつつあった。 れいむは、まりさの強引さに戸惑いを覚えながらも、まりさの変化には気がついていな かった。 「ゆふふふ~!まりさはれいむとちゅっちゅするよ~!でぃーぷちゅっちゅはゆっくり できるんだよぉ~ん!!!」 れいむの関心をひくべく、懸命に愛撫を行い、舌をれーろれーろとビオランテの触手の ように動かしてれいむの口内を蹂躙する。微かな月明かりに照らされるその姿は、もし、 おじさんが起きていたら、まりさを海に叩き込んでもおかしくないくらい、おぞましか った。 「れいむぅ~!れいむぅ~!ゆっくりぃぃぃぃっ!!!ゆっくりくりぃぃぃぃっ!!!」 まりさは銀バッジだけあって、現在の状況をゆっくりなりに理解していた。 まりさは、おじさんに赦されなければ、生きていけないのだ。おじさんの関心を引くた めなら、手段はいとわなかった。 おじさんは元々はゆっくりを愛するゆっくりできる人間さんなのだ。 赤ゆっくりが生まれれば、無垢な存在をムゲにすることはないだろう。 それに、まりさは信頼を失ってしまったかもしれないが、まだれいむはおじさんの中で 堕ちていないはずだった。実際、れいむは脱走の首謀者ではなかったし、まりさは必死 にれいむをかばった。 れいむの赤ゆっくりならば、おじさんの心を再び動かすことができる。 そして、赤ゆっくりをゆっくりさせるためには、両親の存在が必要不可欠となるはずだ った。 「だいすっきっだよぉぉぉっ!!!れいむぅぅぅっ!!!」 親愛の印ではなく、スキンシップでもなく、欲情にたぎった熱を帯びたすーりすーりを するまりさ。その行為は次第に打算によるものから、一時的であれ、かつてのれいむへ の慕情によるものへと変貌し、まりさのすーりすーりは情熱と粘液にまみれていく。 「だめだよぉ…!あかちゃんは!あがぢゃんはぁぁぁぁっ!!!」 「ゆほぅ!!ゆほほほほっほおぉぉぉぉいっ!!!」 「「すっきりぃぃぃぃぃっ!!!」」 塩にまみれ、がさがさになった肌を通して、まりさの餡がれいむに浸透し、新しい命が 誕生する。れいむの額から茎が伸び、そこに何かが実り始めていた。 「ゆゆ!…あかちゃん…れいむの…れいむとまりさのあかちゃん…」 これは許されざるすっきりかもしれない。 その思いがれいむにはあったものの、それでもなお、母性を特徴とするれいむ種には、 赤ゆっくりを実らせることには、他の何者にも変えがたい喜びがあった。 「ゆふぅ…れいむぅ…まだだよ…まだまだゆっくりしようね…」 だが、まりさはすーりすーりによるすっきりだけでは物足りなかったようだ。 その下腹部からはぺにぺにがいきり立っている。 「ま、まりさ!!?」 まりさは購入時点で去勢済みであった。しかし、ぺにぺにがある。 矛盾するようだが、これは事実である。 通常、去勢は生まれてすぐに店内で済ませるか、購入した飼い主が専用のキットで行う ことが多い。この場合、?麻酔や睡眠薬などで眠らせる、?興奮剤でぺにぺにを起たせ る、?ぺにぺにを物理的に切断する、?小麦粉と水で尿道を修復、または再形成する、 という手順を踏む。 しかし、素人が去勢を行った場合、?で尿道を圧迫して潰してしまったり、?で修復や 再形成に失敗したりするケースが相次いだ。このような場合、しーしーが明後日の方向 に発射され、部屋を汚してしまう、あるいはしーしーをうまく排出できずに体内に溜ま ってしまうなどの症状に苦しむことになるのである。 そこで、近年は、生まれてすぐ、または母体に直接生化学物質を抽入することで、遺餡 子に直接働きかけ、ぺにぺにから精子餡が出ないようにすることが可能になったのであ る。具体的に言うならば、ぺにまむ部分の表皮から、しーしーのような粘性の低い液体 以外は通さないようにするのである。 これは元々は、一好事家が売春婦ならぬ売ゆん婦を作ろうとした課程で生み出されたも のである。開発された手法には化学的なものと精神的なものがあったらしいが、そのう ち化学的手法が、手軽で確かな去勢方法として、近年、広くペットショップで採用され ていた。さらに、ゆくゆくは、成長したゆっくりでも去勢できるよう技術の改良が進め られている。 とにもかくにも、まりさは劣情に駆られ、ぺにまむによるすっきりをしようとしたので ある。既に額から伸びた茎に子を宿したれいむに。 「れいむぅ!!!ゆっくりぃっ!!!ゆっくりさせてあげるねぇぇぇぇん!!!」 おそらく、今まで溜まっていた恋慕の情が、半ば強引にすーりすーりをやり遂げたこと によって、爆発し、より情熱的なすっきりを求めたのかもしれない。まりさのぺにぺに からは精子餡自体は出ないにもかかわらず。 「なにしてるのまりさ!!?やめて!れいむはそっちのすっきりはできないよ!!!ゆ っくりしないでやめてね!!あかちゃんおちちゃうよ!!」 だが、れいむが施されたのは、旧来の去勢方法、ぺにまむの部分を切り取り、しーしー のために尿道を再形成する方法であった。 そのため、れいむの下腹部にはしーしー穴しかなく、伸縮性の乏しい皮で作られたその 器官は、当然、ぺにぺにを迎えることなど出来ない。 「いたいっ!!!いたいよまりさぁぁぁっ!!!やべでっでばぁぁぁっ!!!」 まりさは自分のしようとしていることが、自分の企みを台無しにしようとしている行為 であると認識できていなかった。去勢は、生まれてすぐに施されるものであり、その後 自分の体に疑問を持つには、去勢されていない個体との交流がなければ不可能である。 おじさんの家やその周りにそのような個体はおらず、また、れいむと自分とでは、去勢 によって体の構造が異なっているなどと、知る由もなかった。 まりさは全身からぬめぬめしたものを垂れ流しながら、ただひたすら、ぺにぺにを差し 込もうとするが、それはれいむに痛みを与えるだけの無益な行為であった。 「いぃぃぃっやぁぁぁほぉぅぅぅぅっ!!!まむまむぅぅぅっ!!!れいむのまむまむ さがすよぉぉぉっ!!!」 「やべでぇぇぇぇっ!!!なにずるのまりざぁぁぁっ!!!おっごっぢゃうよぉっ!! あがぢゃんがぁぁぁっ!!!」 「うるさいぞっ!!!」 二人の嬌声によって、夢の国から強制帰還させられたおじさんが怒号と共にコップを投 げつける。コップは二匹に命中することなく、救命いかだの壁にぼよんと当たって落ち た。 「ゆひぃぃぃっ!!!ゆっくりごめんなさい!!!」 慌てて謝るれいむ、反射的に物陰に隠れるまりさ…そして、れいむの額から伸びた茎に 実った4つの影… 「れいむ…」 おじさんはれいむから伸びる茎を確認すると、二匹に向けて拳を振り上げた。 「やめて!おじさん!れいむのあかちゃんだよ!!!れいむはおじさんのおかげでゆっ くりできたよ!!れいむのあかちゃんもおじさんと一緒にゆっくりして欲しいよっ!!」 れいむの決死の訴えを物陰からそっと見守るまりさ。 おじさんは、振り上げた拳で、救命いかだの床をどんと叩くと、そのまま横になってし まった。 まりさは声を出さずに、ニヤリと笑った。 まりさの企ては成功したのである。 (ゆぅ~…これでまたゆっくりできるよ…いっしょにゆっくりしようね~れいむ♪おち びちゃん♪) まりさは思わず舌なめずりをした。まりさの口の周囲からは、れいむのほのかに甘い 唾液の味がした。 私はれいむの額から茎が伸びているのを確認すると、一度は怒りに任せて、一発殴ろう とした。 私を裏切っておいて、しかも食糧も水もほとんどないというのに、何を思ってすっきり したのだろう? そもそも、私がまりさとれいむに、残り少ない食糧を分け与えると信じているのだろう か? だが、同時に赤ゆっくり自体には罪はないと言うこともできる。 私は、まりさには赦せないものを感じていたが、れいむとはまだ、元のゆっくりした関 係に戻れるのではないかという期待が心の隅に残っていた。その期待は、周囲を不信感 でべったりとコーティングされたものではあったが。 いや、それどころじゃない、そんなことよりも、今、この状況を生き延びることを考え るんだ。 私は自分のそう言い聞かせた。そして、ふと気がついた。 まりさとれいむは、私から失った信頼、そして食糧の配給を、ゆっくりできる可愛い赤 ゆっくりを作り、それを私に見せることで、回復しようと考えたのではないかと。 二匹の裏切りを見せ付けられる前だったならば、私は彼らの行動を、彼らなりの配慮、 この緊急事態において、せめて我が子の顔を見てみたいという、愚かしくも、哀しい行 為として受け入れられたかもしれない。 だが、今ではもうそのようには考えられなかった。単なる小賢しい、いや、赤ゆっくり を作ることで食糧の消費を増やしているのだから、愚劣な企てとしか考えられなかった。 そして、何より、もう食糧はほとんど残っていなかった。 漂流15日目 翌朝、私が目を覚ましたのは、れいむとまりさの悲鳴によってだった。 「あがぢゃああああああああんっ!!!」 「どぼじでぇっ!!!どぼじであがぢゃんじんじゃっでるのぉぉぉぉっ!!!」 れいむとまりさはイマーション・スーツだった汚れた塊をクッションにして、赤ゆっくり を産み落としたようだ。 「ゆ゛…ゆげぇ…」 だが、それは断末魔の呻きだけを残して永遠にゆっくりしてしまった。親の茎を離れてか ら永遠にゆっくりするまで、十秒とかからなかった。 「あがぢゃん!!!ゆっぐり!ゆっぐりじでぇぇぇぇっ!!!」 泣き喚くれいむと唖然とするまりさの前にあるのは、真っ赤に膨れ上がり、所々がぐずぐ ずに崩れた赤ゆっくりだったものだった。お飾りから判断してれいむ種だろうか? 「おぢびぢゃんゆっぐりじでね!!いまままがぺーろぺーろじであげるがらねぇ!!」 唖然と赤ゆっくりの死体を見つめるまりさを尻目に、れいむは赤ゆを必死にぺーろぺーろ しようとした。れいむは四匹の赤ゆっくりに栄養を取られてしまったせいか、少しやつれ ていた。 「ぺーろぺー…ゆびっ!!?しょっばいいいいいいっ!!!」 赤ゆをぺーろぺーろしたれいむは、数回ぺーろぺーろしたところで、餡子を吐いてしまっ た。 「ゆげええええっ!!!どぼじであがぢゃんじょっばいいのおおおおっ!!!」 まりさとれいむの肌は長期間潮風、海水に曝されたことで、表面にかなりの塩分が付着し ていた。そして、すーりすーりを行った際に、この塩分がにんっしんっのための粘性の高 い餡に混ざったことで体内に吸収されていったのである。 塩分は甘味であるまりさ種やれいむ種にとって、大敵である。 それでも、このまりさとれいむは飼いゆっくりとして栄養豊富な餌を与えられ、大きな体 に育っていたために、塩分への耐性もそれなりについていた。特に、人間によって、味の 濃い食物を与えられてきたこともそれに貢献していた。 だが、赤ゆっくりにそこまでの耐性はなく、ゆっくりの母体に溜まった毒、この場合は塩 分は赤ゆっくり、特に一番先端にぶら下がっている個体に集中した。そのため、この長女 になるはずだったれいむは、塩によって体の形成が阻害され、崩れかけた餡塊として生ま れ、一生を終えたのであった。 「ゆえええええええええええええええん!!!おぢびぢゃああああん!!!れいむのおぢ びぢゃんがあああああああああああっ!!!」 しかし、望まなかったものとは言え、この長女れいむの自己犠牲は、他の三匹―れいむ種 一匹、まりさ種二匹の命をつなぐこととなった。毒は全て長女の体に溜まり、排出された からである。 「れいむ!おちびちゃんが!!」 れいむが泣き喚いたせいだろうか?ぴくぴくと、他の三匹の赤ゆっくりが動き、一匹、ま た一匹と下に敷かれたイマーション・スーツのクッションへと生れ落ちた。 「「ゆっくちちていっちぇね!!!」」 「おぢびぢゃんっ!!!れいむのおちびぢゃん!!!ゆっぐりしでいっでねっ!!!」 感極まった涙を流しながら赤ゆっくりに挨拶をするれいむ、しかし、新しく生まれた一匹 の赤れいむと二匹の赤まりさは怪訝な顔をして母を見つめていた。 「ゆゆぅ…まりしゃのおかーさん、おりぼんがないんだじぇ…」 「みゃみゃ、ゆっくちちてないよ・・・」 れいむのリボンはあの一件以来、私が預かっていたのだ。だが、れいむは慌てずに、赤ゆ っくりたちにすーりすーりをした。 「ゆっくりできないお母さんでごめんね…でもおちびちゃんたちがいれば、お母さんはゆ っくりできるよ…」 「ゆゆ!…みゃみゃ!!」 「おきゃーしゃんっ!!!ゆゆ~ん♪」 優しくすーりすーりをされた途端、喜び、とてもゆっくりした表情を見せる赤ゆっくりた ち。私は、勝手に子を作り、食糧の消費を増やそうとしているこの二匹を赦せなかった。 しかしながら、心からゆっくりし合い、愛情を確認し合っている親子を潰す気にはなれな かった。 私は無言で、ゆっくりたちから目を背け、朝食の支度に取り掛かった。 れいむは、茎を舌で巧みにむしりとって噛み砕き、赤ゆっくりたちに与えていた。 「おちびちゃぁぁぁん!ぱぱですよぉぉぉっ!!!すてきなぱぱと一緒にごはんさんをむ ーしゃむーしゃしようねぇ!!!」 赤ゆっくりの前に現れたのは、「可愛い赤ゆっくりを見守る良き父」を演じようと懸命に ネコ撫で声を上げる、帽子がない上に、くねくねうごく汚れた禿げ大福だった。 「おじさん!まりさとれいむもごはんさんむーしゃむーしゃしたいよ!ごはんさんがない と可愛いおちびちゃんを育てられないよ!ごはんさんがないとやさしいぱぱとままが可愛 いおちびちゃんとゆっくりできないよ!!」 我が子と人間に媚びた笑顔を振りまきながら餌をねだるまりさ。私が飼っていたゆっくり はこんなにも醜いナマモノだったのだろうか? 「どうしたのおじさん!まりさのおちびちゃん可愛いでしょ?ゆっくり見てね!!さあ、 おちびちゃん!おじさんにご挨拶しようね!ぱぱとままにもごはんさんくれるよう、お願 いしようね!!じゃないとみんなでむーしゃむーしゃできないもんね!!」 「うるちゃいよこにょはげまりしゃ!」 不気味な笑みを浮かべながらくねくねと動くまりさへの罵声は予想していなかった場所か ら飛んできた。 「ゆっわあああああああああん!!!こんなゆっくちできにゃいおとーさんいやなんだじ ぇ~!!」 「おなじまりちゃとちてはずかちいよ!なんじぇちょんなにきちゃにゃいにょ?ばきゃで しょ?ちねよ!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!まりざはだんでぃずむがかおるぱ ぱなんだよぉぉぉぉぉっ!!!」 誤算だった。まさか、可愛いおちびちゃんが自分を受け入れてくれないなど、有り得ない ことだった。 だが、ここでこの赤ゆっくりたちに親として認められなければならない。それ以外にまり さがおじさんの世話になるための手段は、今現在持ち合わせていないのだ。 「ゆ…ゆゆ~ん!そんなこと言っちゃダメだよ!お・ち・び・ちゃ・ん!」 まりさは努めて明るく振る舞い、赤ゆっくりに向けて素敵なウィンクをした。汚らしい上 に異臭を放つ禿げ大福が媚を売るその姿は、実に不気味だった(汚くて異臭を放っている のはれいむも同じであるが、見た目のインパクトは段違いであった)。 「さぁぁぁ、おちびちょわぁぁぁん♪ぱぱとすーりすーりちまちょうねぇんっ!!!」 所々に汚い雑草のような、金髪だった何かを残した大福がすーりすーりしてくる。 赤ゆっくりたちはその姿に怯え、まりさの媚びた笑みを浮かべたすーりすーりに吐き気す ら催した。 「ゆげぇぇぇぇっ!!!やべでぇぇぇ!!やべちぇね!!!ゆっくりできにゃいぃぃっ!」 「ゆぶっ……!」 私はまりさを手で払いのけた。 「何やってんだお前は?赤ゆが嫌がってるだろ!!」 「ゆびっ!!」 そして、私は長女になるはずだった赤れいむの死体を摘み上げた。 「おじさん…その子は…」 「……」 私は赤れいむが死んでいることを確認すると、先日作り上げた釣り針に引っ掛けた。 「おじさんっ!!?」 「うるさい!」 れいむはそれ以上何も言わなかった。ただ、静かに涙を流していた。 その後ろでは、抜けてしまった金髪を元に戻すべく、まりさが抜け毛の上をごろごろと転 がっていた。額やお尻に張り付いた金髪を落とすまいとぺーろぺーろするまりさの姿は、 哀れを越えて滑稽だった。 「どぼじでぇぇぇっ!!!どぼじでかみのけさんおぢでぐのぉぉぉっ!!!」 髪の毛はまりさに愛想を尽かしたのだろう。 ダメな父親になってしまったな、と言いたかったが。私にその権利はないだろう。 釣りをすべく、出入り口を開いて驚いた。海の様子が変わっていた。 陸地が近くなってきたのだろうか?時々、流れ藻が所々に浮かんでいるのである。しかし、 肝心の陸地はまだ見えなかった。 私は釣り糸を垂らした。果たして、釣竿も浮きもなしで、手への感触で魚が食いついたこ とを感じられるだろうか?いや、それよりも魚は赤ゆの死体に食いついてくるのだろうか? どんっという振動が救命いかだに走る。シイラの体当たりだ。もはや、私もゆっくりも慣 れっこになってしまっていたが、不慣れな赤ゆっくりたちはぴーぴー泣いていた。 つんつん、と釣り糸に反応があった。慌てずにそっと釣り糸を引き上げる。 そこには、半分ほど体のなくなった長女れいむだったものしか残っておらず、その残骸も 海水から上げたときに崩れ落ち、海に散っていった。 海面から下をのぞいて見ると、鮮やかな色合いのカワハギの仲間が一匹、餡子を突いてい た。カワハギの仲間はおちょぼ口のような口に強力な歯を持っている。これで、サンゴの ポリプや、小型甲殻類、巻貝などを噛み砕いて食べるのだ。 どうやら、カワハギによって、釣り針を回避するように、周りから餡子を齧られてしまっ たらしい。釣りは失敗だった。 私はため息をついた後、昨夜の食べかけの非常食に齧りついた。非常食はあと1本である。 昼過ぎ、赤ゆっくりたちは空腹を覚えたのか、ぴーぴーと泣き始めた。 「ゆぴぇぇぇぇん!!おにゃかちゅいたよぉぉぉぉっ!!!」 「まりしゃはぽんぽぺーこぺーこなんだじぇぇぇぇっ!!!」 「みゃみゃ~!!!ごはん!ごはんさんがほちいよぉぉぉっ!!!」 だが、ごはんさんはおじさんにもらう以外、手に入れる手段がない。 「ゆぅぅぅ…」 れいむとまりさは、どのタイミングでおじさんに話しかけるべきか迷っていた。 「ゆゆ!?なんだきゃたべらりぇそうなもにょがありゅよっ!!」 一匹の赤まりさがなにやら白い塊に目をつけた。 「まりちゃはぺーろぺーろしゅりゅよ!!ぺーろぺーろ…ゆげぇっ!!こりぇどきゅはい っちぇる…ゆべぇぇぇっ!!!」 空腹を覚えた赤まりさがぺろぺーろしたのは、救命いかだの内部で結晶化していた海水で あった。哀れな赤まりさは盛大に餡子を吐き出し、動かなくなってしまった。 「おじびぢゃん!!!どぼじでおぢびぢゃんがじんでるのぉぉぉぉぉっ!!!ゆわああ! じっがり!ゆっぐりじっがりじでねぇぇぇっ!!!」 れいむがいくら泣き叫んだところで、いくらぺーろぺーろしたところで、赤まりさの目が 再び開かれることはなかった。 「おじさん!おねがいだよ!おちびちゃんに!おちびちゃんにごはんさんをあげてほし いよ!!」 れいむが泣き腫らした目と強張った表情で、私にそう語りかけてきたのは、それから一時 間後のことであった。私は彼らに今日は何も与えていない。れいむの後方では、きらめく 金髪を体中にまとったまりさがこちらを見つめている。その姿はまるで、くたばり損ない のミノムシのようだった。 「ゆうぇぇぇんっ!!!まりしゃのぽんぽぺーこぺーこなんだじぇぇぇぇっ!!!」 「ゆっぐ…ごはんしゃん…れいみゅおにゃかちゅいたよ…ゆぴいいいっ!!!」 赤ゆっくりのうち、ゆっくりは体に対して摂取しなければならない食物の量が、成体のそ れよりも多い。これは急速に成長しなければならない時期だからである。さらに、体内に 一度に収められる食物の量がまだ少ないため、空腹になる速度も成体のそれより早かった。 私はナイフを取り出し、彼らに食糧を用意した。空腹に泣く赤れいむの姿に、かつのれい むの面影を見てしまったのだ。私は、れいむとまりさをどうするべきなのか、依然として 迷っていた。もうかつてのようには可愛がれそうにないのに。 私が与えたのは、救命いかだの底部に付着していたエボシガイを砕いたものだった。それ だけでは足りなさそうなので、溶けそうになっている流れ藻にサラダ油をたっぷりかけて やる。これが私が彼らのために用意してやることの出来る、精一杯の餌だった。 私はエボシガイを一つ口に入れてみた。蔓脚と呼ばれる触手のような部分がシャキシャキ とした食感を残す。慣れればそれなりに食べられそうな味であった。 「れいむ、これはお前の赤ゆっくりに与えた餌だ。お前とまりさは私を裏切った。飼い主 を裏切るのは飼いゆっくりとして、とてもゆっくりできないことだ。ごはんは赤ゆっくり 達から分けてもらえ。赤ゆっくりが許可しない場合、ごはん抜きだ。」 私はまりさとれいむの企てに唯々諾々と従ってやるつもりはなかった。もっとも、実際、 私にはそれ以上の餌を彼らのために用意する余裕すらなかったのだが。 「ゆゆ!!おちびちゃん!おじさんにお礼を言おうね!おじさんが頑張ってくれたから、 ごはんさんでゆっくりできるんだよ!!」 「ゆゆ~ん!おじちゃんありがとうなんだじぇ!」 「ゆっくちありがちょう!!」 しっかりとお礼を言ってから、食事を始める二匹の赤ゆっくり、どうやらいつの間にか、 れいむが飼いゆっくりとしてのいろはの教育を施し始めていたようだ。 「ゆぶっ!!こりぇおいちくにゃい…」 「でもぽんぽいっぱいにならないと、ゆっくりできないんだじぇ…むーちゃ…むーちゃ」 人間との生活である程度の塩味に慣れている親と違い、赤ゆっくりには、塩味の強い食べ 物はまだ美味しいとは感じられなかったようだ。だが、今手に入るのはこれだけである。 「ゆゆ~ん!おにゃかいっぱいだよ!!ちゅぎはみゃみゃがむーしゃむーしゃちてね!」 「おじさん!ごちそうさまなんだじぇ!!おきゃーしゃん!むーしゃむーしゃはゆっく ちできりゅよ!!」 小さな赤ゆっくり二匹には多すぎたのか、それとも油がきつかったのか、二匹はすぐにお なかいっぱいになってしまった。なんだかんだいって、空腹を満たせたことで満足したよ うである。 赤れいむは母であるれいむに、半分以上残ったごはんさんをむーしゃむーしゃするよう促 す。 「おちびちゃぁぁぁん!ぱぱも一緒にごはんさんをむーしゃむーしたいよぉぉぉん!!!」 うわぁ… もう私は、このまりさが何をしても不快に感じるようになってしまった。無事全員帰還で きた暁には、どうにかしてしまいそうである。 「ゆぴっ!!?ゆっくちできにゃいまりさはこっちこにゃいでほしんだじぇっ!!」 「おちょーしゃん、きちゃにゃいよっ!!こっちこないでにぇっ!!!」 私はまりさに少しだけ同情した。娘に彼氏ができたとき、加齢臭のする親父は部屋に入る なと散々に怒鳴りつけられたのを思い出したからである。思えば、娘が引きこもる原因と なったのも、彼氏との交際とその後の破局から来た人間不信によるものであった。娘の彼 氏や人間関係がどんなものだったのか、私は知らなかった。娘は話そうともしてくれなか った。短期大学入学以降、娘は学校の中での友達との関係を何よりも大切にし、それに反 比例するかのように、家族との関わりを避けていったのだ。 あそこですごすごと引き下がらずに、娘に積極的に関わっていれば、また違った展開もあ ったのだろうか?積極的に関わっていれば、助けてやれるような問題だったのだろうか? そして自分にそれだけの器量や知識があったのだろうか? 今、娘は私のことをどう思っているのだろう… 「ごはんしゃんをむーしゃむーしゃしゅるのはみゃみゃがさきだよ!みゃみゃはれいみゅ たちをゆっくちさせてくれちゃよ!ぴゃぴゃはなにもちてくれにゃかったよ!!」 「おちょーしゃんのわらいかちゃはゆっくちできにゃいよ!!きもちわりゅいよ!!」 私が意識を海の彼方にいるはずの家族へ向けている間に、まりさのストレスは、怒りは臨 界点を越えつつあった。何せ、ゆっくりするために作った赤ゆっくりが自分をゆっくりさ せない原因となっているのである。 「おぢび…ゆぎ…ゆぎぎぎぎぎぎ……」 怒りのあまり、歯軋りするまりさを見て、れいむが慌てて赤ゆっくりをしかりつける。 「おちびちゃん!いいすぎだよ!!みんなで、みんなでゆっくりしようね!!」 おそらく、赤ゆっくりたちの父への嫌悪感は、子供なりに、まりさの邪心を見抜いた結果 なのだろう。愛情のこもったれいむの優しいすーりすーりとは違い、強引にすーりすーり をして、自分たちをダシにおじさんから何かをもらおうとする、そのような態度を繰り返 した結果、赤ゆっくりたちは、まりさを、自分達をゆっくりさせてくれないものとしてし か認識していなかった。 「ゆがぁぁぁぁぁっ!!!ぱぱをゆっくりざぜないくそちびどもはじねぇぇっ!!!」 「ゆ゛みゃ!?」 一瞬のことだった。 怒り狂ったまりさの体当たりは、赤れいむを弾き飛ばし、赤れいむは救命いかだから転落 し、海の底へと消えていった。私が驚いて、海面に顔を出したときには、救命いかだの周 囲を泳ぎ回るシイラ以外、何も見えなかった。 「おぢびぢゃんっ!!?」 れいむがまりさの凶行に気がついたとき、まりさは赤まりさに対して攻撃の態勢に入って いた。どうやら、同種でも赦す気はないらしい。 「まりざはゆっぐりぃぃぃっ!!!れいむとゆっぐりぃぃぃっ!!!」 「ゆっぴゃああああっ!!!」 赤まりさはまりさに押しつぶされ、さらに噛み付かれた。 「ゆっぴゃあああああああああああっ!!!いぢゃいいいいいいっ!!!たちゅげで!! おぎゃあああざあああああんっ!!!」 「やべでね!まりさぁっ!!いだがっでるよぉぉっ!!!やべであげでね!!!」 私は慌てて、まりさを平手打ちで撃墜した。 「ゆびぃぃぃっ!!?」 「ゆぐっ!!?」 赤まりさの後頭部は、実の親によって食いちぎられていた。目の焦点は合っておらず、痙 攣が始まっている。もうダメだろう。 「ゆあああああああああん!!!あがぢゃんがあああっ!!!れいむのがわびびあがぢゃ んがあああっ!!!どぼじでごんなごどにいいいいいっ!!!」 まりさの打算によってこの世に生を受けた赤ゆっくりたちは、まりさの激情によってその 命を奪われた。 「ばでぃざはわるぐないぃぃぃっ!!!くぞぢびがぁぁぁっ!!くそぶっ!!?」 私はまりさの顔面に拳を打ち込み、そして、まりさの底部を根こそぎ剥ぎ取った。 べりっ…べりべりりっ!!! 「ゆっぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!」 まりさは目からかつてないほどの涙を流しながら、あんよだった部分に残った餡子をうね うねと動かした。 私はまりさの目の前で、剥ぎ取った底部を食べた。 「ゆびいいっ!!やべでだべないで!!ばでぃざのあんよざんだべないで!!!ゆぐわぁ ぁぁぁぁぁっ!!!ばでぃざのあんよざんっっっっっ!!!」 皮は塩辛く、何やらゆっくりできない臭みを感じたが、餡子のしっとりとした甘みは私の 舌を、そして胃袋を喜ばせた。そして、まりさに摂取させていた油分によって、私の空腹 は久しぶりに満たされた。 私がごくん、とまりさのあんよだったものを飲み込んだとき、まりさは呆然とした表情で 力尽きたように、動かなくなった。 私はまりさの傷痕にビニール袋をはりつけ、塩まみれの輪ゴムでラップを止める。 これであんよの傷口から餡子が漏れていくのを防ぐことができる。餡子が乾燥してしまう 前に救助されれば、助かる可能性もあるだろう。 「これでもう二度と暴れることも、逃げることもできん。どうせ、お前だけ逃げても生き 延びられないんだ。おとなしくしていろ!もし、助かったらちゃんと治療を受けさせてや るかもしれん。」 私の言葉はまりさには届いていなかった。 「ゆぎっ…ゆぐ…まりざのあんよ…まりざのずでぎなあんよ…どぼじで…まりざがこんな めに…えっぐ…」 その泣き言を聞いたとき、私はまりさをもう一発殴ってやりたかった。 だが、そのような行動は、ただでさえなくなりつつある私の気力と体力を奪うだけだった。 その後、私は懸命に陸地を、船を捜したが、その日は水平線と人の顔のような入道雲以外、 何も見えなかった。 「ゆっぐ…いじゃいよぉぉぉっ!!!れいむぅ…まりさの…まりさのたくましいあんよが なくなっちゃっだよ~…れいむぅ…ぺーろぺーろしてよ~…まりさ、いだぐですーやすー やでぎないよ~…れいむぅ~…」 真っ暗な夜の救命いかだの中で、まりさの呼び掛けに答える者は誰もいなかった。 漂流16日目 私が朝起きたとき、まりさは生きていた。あんよの痛みで眠れなかったのか、目の下には クマができており、泣き腫らした目は真っ赤に腫れ上がっていた。 残る非常食は1本、これは最後の最後まで取っておきたかった。私は昨日死んだ赤ゆっくり の死体を口に放り込むと、救命いかだの出入り口を開き、太陽熱蒸留器を海面に送り出した。 「…ゆあ…」 一瞬、れいむは悲しそうな表情をしたが、もはや私に自分以外の世話をしている余裕はなか った。手持ちの食べ物がないのである。そして、救命いかだ底部に張り付いているエボシガ イも、手の届く範囲のものはほとんど取り尽しており、他の動物を捕獲する必要があった。 とりあえず、私はれいむに水だけ与えた。 れいむは昨日、産んだばかりの赤ゆっくりがあっさりと全滅して以来、塞ぎ込んでおり、そ の表情や瞳は暗く沈んだままだった。 まりさも横倒しにし、水を飲ませてやる。生かすにしろ、殺すにしろ、こいつをそう簡単に 永遠にゆっくりさせるつもりはなかった。 「おじざん…おでがいじまず…ごはんさんを…ばでぃざになにがだべるものをぐだざい…」 私はまりさの口にサラダ油をダイレクトに注いでやった。食べ物に関しては、イノシシ並 みに悪食にもなれるゆっくりのことだ。死ぬことはあるまい。 「ゆべ…ゆえええ…きぼぢばるび…ゆえええ…これじゃあゆっぐりできないよ~…」 私は、近くを流れていた流れ藻を拾い上げてみた。今回の流れ藻はまだ新鮮なもので、その 表面には小さなカニやエビ、巻貝が付着していた。どうやら、釣り餌には困らなくて済みそ うである。 私は小さなカニを、苦労して釣り針に差し込み、海へと投げた。 しかし、海に着水した瞬間、カニは釣り針から外れて、海の底へ沈んでいってしまった。気 を取り直して、もう一度チャレンジする。今度は…やはりカニでいこう。 エビはそのまま私が食べることにした。 私はそっと、釣り糸を垂らす。空腹と海水腫瘍から来る痛みのせいで、釣り針に餌を付ける だけで疲れてしまった。 そして、釣り糸を伝わってくるであろう感触をひたすら待つ。これほど真剣に釣りをしたの は生まれて初めてだった。 ぴくん 微かだが、引っ張られる感触…アタリだ! 「こんなエサにはつられないむらぁぁぁぁっ!!?」 釣りあがったのは、トビウオでもなく、カワハギでもなく、シイラでもなく、むらさだった。 むらさはまだ室内での大量繁殖技術が確立されていないため、ペットショップに出回ってい るものは高価である。近年、値段は漸進的に低下してきているが、それでも学生や子供には 買えない値段であった。 「むらさを海にかえしてね!!むらさは海の中じゃないとむらむらできないよっ!!!」 救命いかだのゴム床の上でぴちぴちと跳ねるむらさ。以前、まりさが脱走したときに見た個 体とは別個体のようだった。 私は、このような何の罪もないゆっくりを殺して食べることに一瞬躊躇した。だが、それを 言ったら、私たちの、いや、植物以外の何かを食べて生きている動物は全て断罪されなけれ ばならない。 「ゆるしてくれ…」 私はせめて一撃で楽に逝けるよう、ナイフを中枢餡めがけて差し込む。 「ゆぎいっ!!?」 そして、ぐるりとナイフをまわした。 「…も…むらむ…」 私は動かなくなったむらさを皿の上でてきぱきと切り分けると、はやる気持ちを抑えること が出来ず、切ったそばから口の中に放り込んだ。 微かに塩味がする皮と、濃い甘みととろみをもった黒蜜。口の中がむらむらしそうな美味し さだった。新鮮なむらさならではの味であろう。私は少し残しておこうと思っていたのだが、 気がつくと全てを平らげてしまっていた。 「ゆぅ…ゆぅぅぅ…」 れいむとまりさは空腹の限界であったようだ。私がゆっくりを貪り食っている間にも、ちら ちらと訴えかけるような目でこちらを見ていた。 私は流れ藻を切り刻み、たっぷりの油をかけてかられいむに食べさせ、その残りをまりさに 差し出した。 「ゆひっ!!!むーしゃ!むーしゃ!しあわぜえええええっ!!!」 久々のまともな食事にしあわせーをするまりさ。本当はぶちのめしてやりたい気持ちもある のだが、ゆっくりを殺してしまったら、自分ひとりになって、やっていけるのか?精神を保 てるのか?という不安があった。 その後、さらに釣りをしようとしたが、波が少し出てきたので、太陽熱蒸留器を回収し、出 入り口を閉めた。ポンプで救命いかだに空気を送り込み、窓から外を眺める。 私の体力は目に見えて衰えていた。以前は、救命いかだがぱんぱんに膨れ上がるのに、1時 間ほどのんびりとしたペースでポンプを押していればよかった。しかし、最近は、2時間近 く、押さなければ満足に膨らまない。私が途中ですぐに疲れてしまうからだ。 私は後何日、漂流すればいいのだろうか? そして、この救命いかだはいつまでもつのだろうか? 通常、救命器具などにも耐久日数というものがある。どんなに品質が高くても、劣化しな いものは存在しない。私は不安に駆られ、もう少しだけと、ポンプで空気を送り込む作業 を再開した。 私はこういう作業をしているとき、可能な限り、空想を楽しむようにしていた。 最近、肩が凝ると言っていた妻を温泉にでも連れて行こうか? 息子は自然科学が好きなので、山奥など自然が残っているような小さな温泉地の方が喜ぶ だろう。 娘はどうやって連れ出せばいいだろうか?何を言ってもウザイウザイと相手にしてくれな いだろう。私はどうしてやるべきだったのだろう… そして父と… ああ、お父さん、ごめんなさい…ごめんなさい… その夜のことであった。 その日の夢は、妻と結婚したばかりの頃の夢であった。 父は妻の料理を大層気に入り、いつも過分な嫁をもらったなと、私をからかっていた。 あの頃は何をするにも妻と一緒だった。歳を取ってからも決して仲は悪くなかった。 妻は更年期に入って以降、些細なことで怒ってばかりいた。 そして、歳を取り、短気になった父とことあるごとに怒鳴りあいを演じていた。 思えば、あの頃から私は家庭のことに鈍感になったのかもしれない。怒鳴りあいの度に 磨り減っていく、私の弱い精神を守るために。 テレビをつけたまま、ソファーで眠っている私を妻が起こそうとする。 昨日は娘の運動会で疲れたのだ。もっと寝かせて欲しい。まさか借り物競争に出るはめ になるとは思わなかった。 「おじさん…おじさん…」 いや、待て…妻が私をおじさんと呼ぶことはない。これは…誰だ? 「おじさん!…」 目の前にいたのは、れいむだった。まりさは昨夜眠れなかったせいか、ぐっすりと熟睡 している。 「なんだ?…どうした?」 私はしばらく、ここが夢の中なのか、現実なのか分からなかったが、救命いかだに打ち 付ける波の音と、背中や脚の海水腫瘍の痛みが私に現実を突きつけた。 「…れいむ?…」 暗闇で、私の目はれいむの輪郭を微かに捉えていたが、その表情は見えなかった。 「おじさん…れいむはおじさんにおねがいにきたよ…」 れいむの声はいつになく真剣だった。私を裏切ったことを考えれば、相手をせずに眠っ てしまっても良かったのだが、れいむの声はそれを許さない何かを含んでいた。 「おじさん…せめて、まりさをゆるしてやってほしいよ…きっと、きっとこんなことに なっていなかったら…ずっとおじさんのゆっくりぷれいすでみんなゆっくりできたよ…」 「…」 れいむは静かに語った。 ペットショップでの懐かしい日々を。 おじさんとの楽しい思い出の数々を。 まりさがうちに来たときのことを。 どうしてまりさと救命いかだを離れようとしたかを。 私は知らなかったが、れいむはずっと後悔していた。 「れいむは、おじさんには無事、おじさんのゆっくりぷれいすに帰って欲しいよ。そし てこれからもゆっくりしてほしいよ!れいむはおじさんが飼い主でほんとうによかった と思っているよ…」 おじさんを裏切るような真似をしたことを。 「…れいむ?…」 「れいむはただのゆっくりだよ…おじさんにしてあげれることなんて何もないよ…だか らせめて、できることでおじさんを助けたいよ…」 れいむはじっとおじさんの瞳を見た。そして、大きく息を吐き出した。 「さぁ…」 まりさと救命艇を離れて以来、れいむはかつてのように微笑んでくれないおじさんの視 線が何よりも辛かったのだ。 まりさよりも、おじさんの愛情を理解していたからこそ、それを失った日々に耐えるこ とが出来なかった。 飼い主をゆっくりさせられない、飼いゆっくりの存在価値を、れいむは知らなかった。 だからせめて最後に、償いをして永遠にゆっくりしたかった。 それが、れいむの疲弊した精神に、ぼろぼろの体に残っていた、金バッジとしての最期 の矜持だった。 「おたべなさい」 「…れいむ…」 返事はなかった。 そこにあるのは、かつてれいむだったもの、 二つに割れた、汚れた饅頭だった。 「れいむ…ありがとう…一緒にゆっくりしてくれて…ありがとう…」 いつの間にか、私は泣いていた。涙に滲んだ視界で、真っ二つに割れたれいむがふっと 笑ったように見えた。 こうなると気付くことができたならば、せめて最後にれいむの頬を、頭を、撫でてやり たかった。 れいむの犠牲を無駄にしないために、私はなんとしても生き延びなければならなかった。 私は泣きながら、れいむとの思い出を一つ一つ反芻していった。 結局、朝になって、何度目かの腹の音が私の脳に空腹を警告するまで、私はれいむに口 をつけることができなかった。 れいむは最後の瞬間に、自分よりも、自分の番よりも飼い主を優先した。 金バッジの輝きは、伊達ではなかった。 だが、それはゆっくりに対する裏切りとも言えた。 「ゆゆ…あんよがいじゃいよぅ…れいむ~…ゆゆ!?れいむ!?」 まりさが目を覚ましたとき、外は既に明るくなっていた。 れいむは、まりさが赤ゆっくりを永遠にゆっくりさせてしまって以来、まりさに口を利 いてくれなくなっていた。 まりさは焦った。このままれいむに嫌われては、まりさは精神的に大きな傷を負ってし まうだろう。いろいろあったが、まだまりさの中では、れいむへの慕情は燃え上がって いたからである。 そして、もはやおじさんの庇護下では、れいむの関心なしには、生き延びることは出来 ないのだ。一時の感情に任せて台無しにしてしまった自身の計画の尻拭いを、なんとか 無事に済ませなければならなかった。 「れいむ?」 れいむはいつもの場所、自分の隣にいなかった。 まりさは救命いかだの中をきょろきょろと視線を動かした。そして見た。 おじさんが何かを食べているのを。それを見間違えるはずはなかった。 「…ゆ?…あ…あ゛…あ゛あ゛あ゛あ゛!れいむぅぅぅっ!!!」 まりさはれいむが「おたべなさい」をしてしまったことに気がついた。 まりさの目の前には、は真っ二つに割れた「れいむだったもの」を貪り食う、見るから にゆっくりできない髭と髪が伸び放題の汚い人間の姿があった。その人間の口が動き、 まりさの愛したれいむをがぶりと食べ、咀嚼していく。 「ゆわぁぁぁぁぁんっ!!!れいむ!れいむぅ!!!なんで!!!なんでぇぇぇ!!! まりざはっ!!まりざはれいむのごどが一番大事だったのにぃぃぃっ!!!」 まりさは理解できなかった。なぜ、れいむがおじさんのためにおたべなさいをしてしま ったのかを。まりさを放置して。 まりさは自分の行為が直接的に、間接的に、れいむを追い込んでいたことに気がついて いなかった。自己反省能力が確立されているか否か、それは金と銀とを分ける、一つの 指標だった。多少なりとも有能であり、性格が良く、自分を省みることができる個体は 金として、要するに人間と共に暮らす資格があるものと認定される(一時的にそのよう に振る舞う狡猾な個体のせいで、金馬鹿による事件が絶えないわけであるが)。それが 金色の輝きなのである。 それに対してある程度性格は良いが、人間のルールに疎い、優秀だが性格に難がある個 体に与えられるのが銀色の輝きである。銀は交流するためではなく、ただ飼う、手元で 見るためだけの愛玩動物として優秀ということを示しているのだ(もちろん、銀や銅であ りながら、試験を受けていないために、試験で実力を見せられないがために、それ以上 の価値があることを飼い主以外にアピールできない個体も多い)。 結局、このまりさは、自発的に飼い主のために何かをするということが、できなかった。 そして、理解できなかった。 「やべろおおおおおっ!!!だべるなああああっ!!!がえぜ!!ばでぃざのれいむを がえぜえええええっ!!!」 まりさはおじさんをボコボコにしたかった。あんよさえ動けば、今にもおじさんに飛び 掛って行ったであろう。おじさんはまりさの愛するれいむを汚している、そうとしか見 えなかった。 「れいむをだべるなああああっ!!!おばえがっ!!!おばえなんがが!!!れ、れい むを!!ばでぃざのれいむをおおお!!!がえぜええええっ!!!れいむうううっ!!」 おじさんはれいむの四分の三をあっという間にたいらげてしまった。 「ゆあああ…れいむ…どぼじで…まりさのれいむ…」 「まりさ…」 おじさんがまりさに話しかけるのは久しぶりだった。 「れいむがおたべなさいをする前に、お前をよろしく、と言った。」 「ゆ!?」 そして、おじさんがまりさの前に突き出したのは、れいむの体の四分の一だった。 「食ってやれ。れいむが好きだったのならば食ってやれ。」 「ゆゆ!!?」 おじさんは、まりさの前に、舌を伸ばせば届く距離にれいむだったものを置くと、水 を飲んでいつものように窓から外を眺める位置に移動し、まりさの方を振り返ること はなかった。 「…れいむぅ…なんで…なんでまりさをひとりに…」 結局、夜の闇が辺りを包むまで、まりさはれいむを食べられなかった。 おじさんが寝静まった後に、まりさは泣きながられいむを味わい、れいむとの思い出、 すーりすーりしたときの肌触りを思い出し、また泣いた。 漂流17日目 その日の早朝のことだった。まだ東の空がうっすらと紫色のベールを脱ぎ始めていた とき、私は何かの物音に気がついて目が覚めた。 波の音か…? だが、波の音に混じって微かに何か別の音が聞こえる。 私は変な体勢で眠っていたせいで、痺れてしまった脚をなんとか動かし、立ち上がっ た。窓から外を見たが、何も見えない。 私は広い視界を求めて、出入り口を開けた。朝のひんやりとした潮風が救命いかだの 中に吹き込み、私の、靄がかかったままになっていた頭脳を目覚めさせていく。 「ゆ…ゆぅ…しゃむいよ…」 まりさも冷たい潮風で目が覚めてしまったようだ。 私は出入り口から首を出し、まだ暗い洋上を眺めた。 「!!!」 船だった。しかもかなり近くを航行している。 波の音に紛れていた「別の音」は、船の機関の音だったのだ。 「船だっ!!!」 思わず口走り、私はしまいこんであった救難用紅炎を取り出した。まだ暗い洋上で果た して煙による信号が通じるのか不安ではあったが、距離が近いだけに見張りがちゃんと 仕事をしていれば、可能性はあった。私ははやる気持ちを抑え、ひもを力強く引っ張っ た。これで、家族にまた会える! 「!!?」 だが、救難用紅炎は発煙することなく、ひもだけが切れた。不良品だったのか、それと も、まりさが奪っていった課程で劣化したのか… いずれにしろ、私から船に助けを求める手段はなくなってしまった。 救命いかだの先端についている、レーダー反射板は役に立っているのかどうかさっぱり 分からなかった。こうしている間にも船は進んでいく。 太陽の光が辺りを明るく照らすにはまだ、時間があった。このままでは日が昇る前に船 は通り過ぎていってしまう。 何かないのか!?何か! 私は信号弾が残っていないかと、救命いかだのポケットを、脱ぎ捨てたままになってい る衣類のポケットを探った。私が見つけたのは、ライターだけだった。 それは、客船脱出時から持っていたものの、タバコを忘れてきたために使うことのなか ったライターだった。 ライターの光はあの船から見えるだろうか? 確かに、船は近くを航行しているものの、ライターの光はあまりに微弱だ。 私は泣きそうになった。 なんでいつもこうなんだ!前は信号弾を上げても気付いてもらえなかった! 今度は近くを船が通過しているのに、アピールするものがない!! 私の脳裏を家族の顔が浮かんでは消えた。 会いたい! 妻の愚痴を聞いてやりたかった。 息子を褒めてやりたかった。 娘ともう一度会話がしたかった。 父に謝りたかった。 私はライターをじっと見た。 もはや手段を選んでいる暇はなかった。 これが助けてもらう最後のチャンス、そう思った私は、リュックからまりさの帽子を 取り出した。長い時間、その他の荷物や私の体重によって圧迫され、帽子は今やぺし ゃんこの布切れのようになっている。 「ゆ…ゆ?…おぼうし…ま…りさの…まりさのおぼうし!」 まりさが久々に見た自分の帽子の姿に、その弱々しい目を力いっぱい輝かせる。 その目には、お帽子を返してもらえる、という期待にあふれていることが簡単に読み 取れた。私は、即席ゆっくりはうすだった、発泡スチロールの中に、れいむのリボン、 非常食の包装、私の薄汚れたシャツを放り込んだ。 「返してくれるの!?まりさのお帽子返してくれるの!?」 最後にまりさに、サラダ油で一杯にした帽子を押し込むように被せ、発泡スチロール に入れて水に浮かべる。 「ゆびゃあああっ!!どぼじでごんなごどずるのおおおっ!!!ぬるぬるずるよぉ! きもちわるいよおおおおっ!!!」 よし、浮力は大丈夫だ。 私はまりさを軽く揺すり、発情させる。 「ゆゆ!?なにしてるの!?やめて!まりさはれいむとしか…ゆほぉぉぉっ!!!」 そして屹立したまりさのぺにぺににマニュアルの1ページで作ったこよりを差し込ん だ。 「ゆぎいいいっ!!!なにずるのおおおっ!!!いじゃいよおおおっ!!!ばでぃざ のぺにぺにでいたずらじないでぇぇぇっ!!!」 サラダ油は日常生活で火災の原因となるのを防ぐために、灯油などと比べて発火点が 高い。しかし、点火のために燃える素材があれば、サラダ油に引火させるものがあれ ば、その炎によって熱せられたサラダ油は燃え上がるのである。 私はサラダ油をまりさの上から全て振りかけ、ぺにぺにに突き刺さっているこよりに ライターで火をつけた。ぺにふぁいあである。 「やべで!!やべでね!!ひさんはざっざどぎえ…ゆぎゃあああああああああああ゛ っ!!!ばでぃざのぉっ!!!ばでぃざのべにべにがぁぁぁぁっ!!!」 暗い海の上で、ぺにぺにから炎を発しながら泣き叫ぶまりさの姿は滑稽であったが、 私の命をつなぐための希望の光だった。 私はさらに化学繊維で出来た私の服に火をつけ、それを洋上の発泡スチロールに素早 く突っ込んだ。しばらくして、服の炎はサラダ油に引火し、さらに燃え広がっていく。 「やべでええええっ!!!ごないでえええっ!!!どぼじでひざん、ばでぃざにいじ わるずるのぉぉぉっ!!?」 必死にぺにふぁいあをぺーろぺーろして消そうとするまりさ、しかし、ぺにぺにをぺ ろぺーろしようとしたまりさの舌を伝って、炎が、口内、顔の油へと引火していった。 「ゆぎゃあああああああああっ!!!ばでぃざのおがおが!!!ばでぃざのおがおが がじざんだよっ!!!あぢゅい!あぢゅいよおおおおっ!!!だじゅげでえええええ えっ!!!」 私はまりさに負けじと叫んだ。 「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!ここだぁぁぁっ!!!たすけてくれぇぇぇっ!!」 まりさは炎の勢いを増し、燃え続ける。最近はサラダ油を餌代わりに摂取していたこ ともあってか、思いのほか良く燃えていた。火はシャツやゴミにも引火し、明々と漆 黒の洋上を照らす。 「おじざん!おねがいだじゅげでえええっ!!!ばでぃざをだじゅげでえっ!!!ば でぃざはおじざんどゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉっ!!!ばでぃざをみずでないでぇ ぇぇぇぇぇぇっ!!!」 「おぉぉぉぉぉぉいっ!!!」 まりさの皮は炎に焼かれ、黒く焼け焦げた部分が、まるでまりさの体表を這い回る不 定形の悪魔のように広がっていく。 「おねがいでず!だじゅげでぐだざい!ばでぃざいいごにじまず!おじざんをみずで だりじばぜん!だがらおじざんもばでぃざをみずでないで!!!ぎょっぼぼぼぼっ! ばでぃざのおべべがああああっ!!!」 まりさの寒天の目が炎によって、どろりと崩れ落ち、めらめらと燃え上がる火はまり さの眼孔から餡子を焼き尽くしていく。船はすこしずつ進路をこちらに向けているよ うに見えた。気がついてくれたのだろうか? 「たすけてくれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」 私は塩で焼かれているのどを張り裂けんばかりに酷使し、叫び続けた。 その時、ボーッという汽笛の音が、朝の冷たい大気を引き裂くかのように轟く。 見つかったのだ!見つけてくれたのだ! 「ゆびゃあああああああっ!!!いやじゃ!!!じにだぐないいいいっ!!!だず げでっ!!!ばでぃざはゆっぐぢずるのぉっ!!?かっは?…あぎゃぎゃぎゃぎゃ ぎゃっ!!!」 まりさものどが焼かれているようだ。ただし、塩ではなく、炎で。 「ゆびーっ!!!ゆぎぎ!!?おみずざんだよっ!!!ばでぃざだじゅがっだ…わ ぎゃああああああっ!!!」 発泡スチロールにまで引火すると同時に、海水が侵入し、火が消えていく。その代 わりに傷口に海水が入り込むことで、塩による痛みが全身を襲った。 「ひぎっ!!!ひっぎぎぃぃぃっ!!!おでがび!!!ばでぃざをだじ!!!ばで ぃざばぼぼぼぼ…ごぼっ……」 だが、それも束の間のことだった。海水の浸入によってバランスを崩した発泡スチ ロールは転倒し、その中身を海中へとばら撒いた。そして、まりさも沈んでいった。 まりさは残りわずかな生の中で、何も見えない暗闇の中でゆっくりと自分の体が溶 けていく感覚を味わっていった。 まりさは焼死する寸前で、その運命を溺死へと変更されたのだった。 船が私のすぐ横に来たのは、まりさが沈んでから、20分後のことであった。 私の漂流生活は唐突に始まり、そして今、唐突に終わった。 私は無事、船に救助された。 今や、さっきまで私の全てであった救命いかだは折り畳まれ、甲板上にロープで固 定されている。 私は震えが止まらなかった。本当に救助されたことが嬉しくて、言葉では言い現せ られなかったが、ただ、嬉しさのあまりに泣いていた。 つい一時間ほど前までは、ずっと死ぬことだけを恐怖し、生きて帰れることをただ 願っていた。だが、人間とは欲深い生物だ。今となっては別のことが怖い。 私は楽しみな反面、怖かった、家族に再会することが。 あれだけ、遭難中は家族に会いたいと思い続けていたが、どんな顔をして帰ればい いのだろう?家族に何と言えばいいのだろう?それが分からなかった。 いや、それよりも、家族はどんな顔で私を迎えてくれるのだろう? その後、私は近海で私を捜索していた海上保安庁の船に移乗し、近くの港に下ろさ れた。 そこには家族がいた。 妻が泣いていた。息子が泣いていた。 引きこもりで二年以上部屋から出て来なかった娘もそこで泣いていた。 そして、 ああ ああ… お父さん… 私がやっと搾り出したのは 「ごめんなさい…ごめんなさい…」 それだけだった。 私を昔のように抱きしめてくれた父の手は、かつてのように暖かかった。 父の前で泣いたのは、最後に怒られて以来…そう、高校生のとき以来だった。 それはいつも通った道だった。 何一つ変わらない家路だった。 でも、今まで見たどの風景よりも、暖かく、懐かしく、そして、心からゆっくりで きる道だった。 家族みんなで家路を歩いたのは、何年ぶりだろう… 私は父の車椅子を押しながら、一歩一歩を噛みしめるように歩いていった。 私はゆっくりによって、死にそうになり、ゆっくりによって生きることが出来た。 私はあの時、れいむによって生かされたと思っている。 れいむが最後の最後で見せてくれた、ゆっくりとしての矜持に。 私の漂流は終わってはいない。 私の家族はまだ漂流している。 漂流している理由も、その状況もみんな違う。 だが、少なくとも今回の一件で、我々の目的地がどこにあるのか、気がつくことが できたような気がする。 だから、少しでも目的地に近づけるよう懸命に櫂を漕ごうと思う。 少しでも、私の愚かさによって失った時間を取り戻すために。 今度ばかりは自力で漕がなければいけない。 誰にも、流れにも、助けを期待するわけにはいかないのだ。 懐かしい玄関をくぐる。 家の臭いがすっと鼻に入ってくる。それは何よりもゆっくり出来る臭いだった。 「…ただいま…」 ― ゆっくり漂流記 完 ― 作:神奈子さまの一信徒 最後までお読みいただきありがとうございました。 また、楽しみに待っていてくださった読者の皆様、wikiや餡さいくろの編集を担当 してくださった方々、ありがとうございました。 なお、漂う命で述べたように、著者に船上での活動の経験はあっても、漂流した経 験はありません。おかしな描写等ありましたら、私の非力によるものです。 お目汚し失礼致しました。 過去作という名の一点突破の歴史 ふたば系ゆっくりいじめ 777 南の島のまりさ ふたば系ゆっくりいじめ 783 南の島の生命賛歌 ふたば系ゆっくりいじめ 793 南の島の葬送行進曲 ふたば系ゆっくりいじめ 817 南の島の風葬墓 ふたば系ゆっくりいじめ 827 南の島のスカーレットクロス ふたば系ゆっくりいじめ 846 南の島の天の河 ふたば系ゆっくりいじめ 866 あまりにも南の島のまりさ ふたば系ゆっくりいじめ 890 とてつもなく南の島のまりさ ふたば系ゆっくりいじめ 908 むらさの舟歌 ふたば系ゆっくりいじめ 932 まりさときのこ狩り ふたば系ゆっくりいじめ 958 うつほは舞い上がる、空高く ふたば系ゆっくりいじめ 992 北方ゆっくり戦史 二つの群れ ふたば系ゆっくりいじめ 1001 北方ゆっくり戦史 ヴェルギナの星の旗の下に ふたば系ゆっくりいじめ 1050 偽者の生きる価値 ふたば系ゆっくりいじめ 1117 ゆっくり漂流記 漂う命 ふたば系ゆっくりいじめ 1138 ゆっくり漂流記 抗う命
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バス停 10KB 制裁 悲劇 自滅 駆除 群れ れいぱー 現代 虐待人間 初投稿です ザァァァァァァァァァァァ・・・ ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ 「あんちゃん!雨が強くなってきたよ!」 「わかってるって!黙って走れ!」 学校帰りに季節外れの大雨に降られ、慌てて走る兄弟がいた。 「もう少し先にバス停があるからそこまで走るぞ!」 「うん!」 兄弟は河川敷を並走するこの村で唯一の舗装道路を走っていた。 村から都会へ一日2本のバスが走る道でもある。 兄はこの道沿いにあるバス停の待合室で雨宿りをしようと考えていた。 「見えたぞ!あそこで雨宿りするぞ!」 兄は猛スピードで走りぬけ、そのままの勢いで待合室である小屋に飛び込んだ。 「いっちばーん!」 グチャ 「「「「ゆ゛っ!」」」」 兄は飛び込んだ瞬間、なにかを踏みつけた。 「・・・うへええええええええええっ?!」 そして小屋の中が予想を超える状況であったことに思わず叫んだ。 「あんちゃん置いてかないでよ・・・うわっ!なにこれ!」 そこに遅れた弟が到着し、息を呑んだ。 バス停の小屋は2畳ほどの広さで、戸や窓は無く、ベンチ代わりなのであろう 木の板一枚が奥のトタン壁を背もたれにするように設置されている、とても簡素な作りであった。 その小屋一面すべてにゆっくりがいた。 それも隙間無く、みっちりと。 「ゆああああああ!まりさのかわいいれいむがあああああ!」 「ゆぴいいいいい!ありちゅのおねーちゃんがあああああ!」 「にんげんさん!!なんてことするのおおおおおおお!!?」 大小合わせて30匹は超えるであろうゆっくりの群がその小屋にはいた。 そこへ、子供とはいえ人間一人が飛び込んできたのである。 兄の足元には数匹のつぶれまんじゅうができていた。 まさにおしくらまんじゅうである。 「うわっ!靴が餡子でベタベタだ!かあちゃんになんて言おう」 「どうせ雨でずぶ濡れだし帰ったら丸洗いしようよ」 「ゆ゛ぅ!!れいむのはなしをちゃんときいてね!」 ゆっくりどもが阿鼻叫喚の中、兄弟は親への言い訳をのんきに話し合っていた。 そこへ一際大きなゆっくりれいむが声高に宣言した。 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ゆっくりできないにんげんさんはでていってね!」 「「「「ぷくー!!!」」」」 ベンチの真ん中にその大きなれいむはいた。 一般的な成体ゆっくりよりふた回りは大きく、その大きさを生かして頭の上に赤ゆっくりを数匹乗せていた。 数種類いることから、群の赤ゆっくりすべてをまとめて乗せているのであろう。 えらそうに真ん中に鎮座し、頭の赤ゆっくり共々ぷくー!と威嚇している。 「でっかいれいむだな、お前が長か?」 「そうだよ!れいむはつよいんだよ!だからあまあまをちょうだいね!ぷくー!わさわさ!」 ぷくー!と同時に今度はもみ上げをわさわささせるれいむ。 それを見て短気な兄のこめかみに血管が浮き出る。 「あ、あんちゃんちょっと待ってね」 弟はいまにも潰しにかかりそうな兄を止め、長れいむに話しかける。 「きみらにちょっと聞きたいことがあるんだけど」 「いいからはやくあまあまをちょうだいね!ぷくー!わさわさわさわさ!」 子供とはいえ人間相手にケンカを売るあたり、長なのにあまり頭は宜しくない固体のようだ。 そう判断した弟は、長れいむに見えないように先ほど潰れたゆっくりを後ろ手に一掴みにしてぎゅっと握る。 「はい、おいしいあまあまだよ」 即席のまんじゅう握りだ。 「うっめ!これめっちゃうっめ!」 「ゆー!れいみゅにもー!」 「まりちゃもたべたいー!」 さきほど潰れた仲間の中身とは気付かないで、あっという間に貪りつくす長れいむ。 赤ゆっくりに分け与えないあたり、このゆっくりはゲスの部類なんだろう。 「たりないよ!もっとちょうだいね!!」 「質問に答えてくれたらもっとあげるよ」 あまあまを食べて少し落ち着いたのか素直に話を聞きだす。 「この辺にはゆっくりは住んでないはずだけど何処から来たの?」 弟が言うとおり、この周辺のゆっくりは絶滅しているはずであった。 農家が大多数をしめるこの村では、定期的に村人総出でゆっくり駆除を行っている。 兄弟が通う学校でも行事の一環として、ゴミ拾いならぬゆっくり拾いがあるほどである。 元々ゆっくりに興味があり、ゆっくり関連の書籍を読みあさっていた弟のアイデアで ゆっくりがおうちにしやすい横穴を掘っておき、人間が管理できる場所におうちを作らせて 数が増えたら一斉駆除するようにした。これにより畑の被害は激減し、周辺のゆっくりもほぼ絶滅に追いやれた。 それでもいつのまにか増えるで定期的に駆除が必要だが。 そして数日前に一斉駆除をやったばかりなので、これほどの数が生き残ってはいないはずであった。 「れいむはおやまのむこうからやってきたよ!」 「ドゲスのせいでゆっくりできなくなったのぜ」 「あんなドスはとかいはじゃないわ!」 どうやらこの辺に住んでいたゆっくりではなく、山の向こうの群のようだ。 元々住んでいた場所を最近やってきたドゲスの群に追い出されて、新たなゆっくりプレイスを求めてやってきたそうだ。 おうちを見つける前に急な雨に振られたので、仕方なくこのバス停の小屋に避難したそうだ。 「ドスかぁ、またゆっくりが増えそうだな」 「帰ったらとうちゃんに教えてあげようよ」 「そうだな!ドスを一番に見つけたならお小遣い貰えるかも!」 兄弟はドスの情報を親に伝えればお小遣いが貰えると喜び始めた。 この村ではゆっくりは害獣扱いなので有益な情報には村から報奨金がでるのだ。 前に弟のアイデアで貰った報奨金からお小遣いを貰えているので味をしめたらしい。 「ゆー!いいからさっさとでていってね!あまあまはおいていってね!たくさんでいいよ!」 一向に去ろうとしない兄弟に痺れを切らした長れいむが怒り出した。 「おまえはゆっくりの癖に生意気なんだよ!よし、外に捨ててやろうぜ!」 「ゆゆっ!?」 掴みかかろうとする兄弟を避けようと体を動かす長れいむ。 「いいのか?下手に動いたら頭の赤ゆが落ちて死ぬぞ?」 「ゆ゛ぅ!?」 長れいむは急いで赤ゆっくりを安全な場所へ降ろそうとするがそんなスペースはない。 おろおろしているうちに足元のゆっくりどもを蹴散らし長れいむの前に立つ。 「赤ゆが邪魔だな」 兄はおもむろに赤ゆっくりを掴むとそのまま外へ投げ捨てた。 外はますます天候が悪化し土砂降り状態だった。 投げ捨てられた赤ゆっくりに容赦ない雨が叩きつけるように降り注いだ。 「ゆー!おしょらを『バチバチバチ』ゆ゛あ゛っ!」 「ゆー!わからにゃ『バチバチバチ』わ゛がらっ!」 もはやスコールに近い勢いの雨に打たれ、肌の柔らかい赤ゆっくりは地面に着地する前に粉々になった。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!でいぶのゆ゛っぐぢじだあ゛がぢゃんがあああ!」 「す゛でぎなおぼう゛じをかぶったあ゛がぢゃんがああああ!」 「どがい゛はのお゛め゛め゛をじだあ゛がぢゃんがああああ!」 あまりのことに叫ぶゆっくりたち。その間に長れいむを左右から挟む。 「よーしこっちは持ったぞ」 「こっちも持ったよあんちゃん」 「いくぞー!せーの!」 片手でリボンを、もう片手でもみ上げを掴み、掛け声と共に長れいむを前転させるようにベンチから転がり落とした。 「ゆー!?おそらをとんでるみたい!」 ブチッグチャブチッ 「「「ゆげげ!」」」」 転がり落ちた長れいむは地面にいたゆっくりたちを押し潰す。 兄は転がる長れいむをそのまま勢いよく外に蹴り飛ばす。 「うげぇ!こーろこーろする『バチバチバチ』ゆぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!」 巨体が助けとなりスコールのような雨の中でも溶けずに転がりでたはいいが、 そのまま舗装道路を横切って河川敷の坂を転がり始める。その先は雨で増水した川だ。 「ゆぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!だれかとめてええええええええええええ!!!!」 ザパーン! 雨音にも負けない爽快な着水音を確認した兄弟は空いたベンチに座る。 「ゆひいいいいいい!!ころさないでえええええええ!!」 「ま、まりさのかわりに、れいむをころすのがいいのぜ!」 「どぼぢでぞんなごどいうのー?!!」 長れいむがあっという間に殺されてパニックに陥るゆっくりたち。 「まだまだ沢山いるね」 「メンドクサイなぁ、腹も空いたしもう帰ろうぜ」 「野良ゆを見逃したらとうちゃんに怒られるよ」 そこで弟が新たなアイデアを思いついた。 「あ、あんちゃん、お腹空いたならいい方法があるよ」 弟はおもむろに近くにいたありすを持ち上げる。 「いやあああああ!ありすまだしにたくないいいいいいいい!」 ありすの叫びを無視して揺すりだす。 それを見て弟のやりたいことを理解した兄が他のありすを揺すりだす。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ?!」 ゆっくりは震動により発情する。その際ありす種だとレイパー化しやすい。 この群のありすは共存のため、レイパー化しないように定期的にひとりすっきりー!をして性欲を抑えていた。 しかし今はおうちをドスに追い出された直後であり、強行軍で移動してきたためひとりすっきりー!をする暇がなかった。 さらに大雨による恐怖と人間による虐殺で死に直面したことにより、ありすの生存本能が大いに刺激されていた。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆんほおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「「「ゆ゛ぎゃあああああああああ!!れいぱーだああああああああ!!」」」 あっという間にレイパー化したありすたちが群を襲う。 全員必死に逃げるがこの狭い小屋ではどう足掻いても逃げ切れない。 そして外はまだ大雨だ。 「「「「すっきり!すっきり!すっきり!すっきり!」」」」 「ゆわわ!れいむをおそわないでえええええ!すっきりー!」 「まりさじゃなくちぇんをおそうがいいのぜ!すっきりー!」 「すっきりー!・・・もっどゆっぐり・・したかった・・・」 逃げ場を失い次々と茎を生やしで黒ずむゆっくりたち。 茎を生やしたまま母体が死ぬと、茎の赤ゆっくりは死んだ母体から急激に餡子を吸収し生まれようとする。 「「「ゆっくちうまれりゅよ!」」」 「おっと、赤ゆは生まれる瞬間が美味しいんだよなー『むしゃむしゃ』 「ゆ゛ぐっ!」 「このぷちぷち感がたまらないねー『もぐもぐ』 「ゆ゛げっ!」 長れいむの頭にいた赤ゆっくりたちはドロで汚れていたので食べずに捨てたが 生まれたての赤ゆっくりは綺麗なものである。 レイパーにより手間をかけずに数を減らしていくゆっくりたち。 さらに生まれた赤ゆっくりは兄弟がオヤツにしていく。 そして、ものの十数分で小屋の中は静かになった。 レイパーたちがすっきりのしすぎで干からびたのを確認した後、まだ息のあったゆっくりをすべて踏み潰す。 「おっ、いつのまにか雨もあがったな」 「もう帰らないとかあちゃんに怒られるよ」 「腹もいっぱいだし、そろそろ帰るか」 そのとき、小屋の出口付近で黒ずんでいたまりさの帽子から、子れいむが外へ飛び出した。 「ゆっ!ゆっくりにげるよ!」 「あっ!隠れてやがったな!」 この子れいむは長れいむの子であり、親ゆずりのズル賢さで雨が止むまで隠れていたのである。 兄弟が油断した瞬間を狙って舗装道路に飛び出し河川敷を目指した。 子れいむは長れいむが転がり落ちたのを見ていた。 足の遅いゆっくりでも坂まで行けば転がり落ちることにより逃げ切れると考えていた。 子れいむなりの思いつきなので転がり落ちた後の止まり方まで考えてはいないようだ。 「ゆっくりいそぐよ!ゆっくりにげるよ!」 たしかに河川敷の坂まで逃げ切れば兄弟は追いつけないだろう。 しかし所詮は子ゆっくりのスピード。道路を渡りきる前に追いつける程度だ。 兄弟は子ゆっくりを捕まえようと小屋から出る。 「・・・ゆっくりやめてね!おちびちゃんにてをだしたらゆるさないよ!」 そこにはなんと川に落ちたと思われた長れいむがいた。 後でわかったことだが、河川敷を転げ落ちた後、運良く川岸にあった大きな石に当たったおかげで落水せずに済んだようだ。 (着水音は当たった勢いで崩れ落ちた石だった) 舗装道路まで這い上がってきた長れいむは、打撲と雨で中身を漏らしながらも子ゆっくりを必死にかばう。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!!」 「おかーちゃん!ゆっくりー!すーりすーり!」 感動の再会で喜びのすーりすーりをするゆっくり親子。 あれだけいた群もこの親子2匹だけになった。 長れいむはこの子だけはゆっくり育てるよ!と強く誓った。 それを何も言わずに見守る兄弟。 いや、何もする必要がない。 ブロロロロロロロロ『グチャ』キー!プシュー そして、本日最終便のバスが到着した。 そこにいた、ゆっくり親子を踏み潰して。 「こりゃー!バス停で遊ぶなとあれほどいっとろうがー!」 ゆっくりを引いたことにまったく気付く様子がない、年老いたバスの運転手が降りてきた。 「やっべえ!逃げるぞ!」 「あー!まってよあんちゃん!」 慌てて逃げる兄弟たち。 帰り道を走りながら汚れた靴の言い訳を二人で話し合っていた。 すでに兄弟の頭の中にはゆっくりのことなど忘れ去られてた。 季節外れの大雨が上がったあと、バス停横の川に綺麗な虹が架かっていた。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 仲のいい兄弟だな〜 -- 2019-04-03 18 30 39 仲の良い兄弟でほっこりする。 子供の言い分に最初から耳を傾けようとしない老がi・・・お爺さんに(笑) 野良のゆっくりや動物に対して、この兄弟みたいな行動をすると 「酷い人間だ」「可哀想じゃないか」とか言う奴が現実社会やテレビで見かけるが、 根本的解決をしない偽善者ばかりと毎度思う。 例)野生の鳩に餌やるくらいなら飼えよ!街中のフン片付けろよ!出来ないくせに余計な事するな!って思っちゃう。 -- 2018-03-18 10 56 10 素晴らしい兄弟愛だね -- 2012-12-01 01 41 45 仲の良い兄弟だな、見ていて微笑ましかったね。 めでたし、めでたし -- 2010-10-21 16 12 04 美しい兄弟愛だ -- 2010-10-08 12 31 53 仲の良い兄弟で何よりだ。 -- 2010-09-23 17 49 05 にんげんさんはひどくないよ!ゆっくりはしね!! -- 2010-08-01 15 07 21 ハッピーエンドは良い。 -- 2010-07-20 16 21 38 にんげんさんひどいんだぜ… -- 2010-07-17 03 22 29 めでたしめでたし -- 2010-07-14 19 05 13 こういうのもいいな -- 2010-06-11 04 38 34