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「ふたば系ゆっくりいじめ 943 軽いイタズラ/コメントログ」 こういうの好き。 -- 2010-06-15 02 24 57 ふふふ… -- 2010-06-20 10 59 01 軽いイタズラはゆっくりできるよ -- 2010-06-24 18 08 08 こういうのは好きです。こんなの本当に些細なイタズラですよね -- 2010-07-05 01 49 52 どぼじで赤ゆが全部死んでないのぉぉぉぉぉぉ!! 越冬用の食料を全部食べずに出てきた家族は潰さないと駄目でしょおおおおおお!? -- 2010-09-20 06 45 59 ↓そのとおりだよおおおお!!みなごろしはきほんでしょおおおおお!! -- 2010-09-27 23 47 50 良い悪戯じゃないかw こういうの大好き -- 2010-11-27 17 44 22 この人は紳士。 -- 2010-12-15 06 28 44 やりくりじょうずでごめんね!にイラッ☆ときたw -- 2011-05-09 00 46 34 んっほおおおおおおおおおおおおおおお!すっきりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! -- 2011-10-27 21 55 42 思い込みのナマモノなんだから冬を春と思い込みそうなもんだがな -- 2012-03-01 15 42 09 この人すばらしいな!!それに比べて糞饅頭ときたら -- 2012-07-26 16 30 38
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ザァァァァァァァァァァァ・・・ ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ 「あんちゃん!雨が強くなってきたよ!」 「わかってるって!黙って走れ!」 学校帰りに季節外れの大雨に降られ、慌てて走る兄弟がいた。 「もう少し先にバス停があるからそこまで走るぞ!」 「うん!」 兄弟は河川敷を並走するこの村で唯一の舗装道路を走っていた。 村から都会へ一日2本のバスが走る道でもある。 兄はこの道沿いにあるバス停の待合室で雨宿りをしようと考えていた。 「見えたぞ!あそこで雨宿りするぞ!」 兄は猛スピードで走りぬけ、そのままの勢いで待合室である小屋に飛び込んだ。 「いっちばーん!」 グチャ 「「「「ゆ゛っ!」」」」 兄は飛び込んだ瞬間、なにかを踏みつけた。 「・・・うへええええええええええっ?!」 そして小屋の中が予想を超える状況であったことに思わず叫んだ。 「あんちゃん置いてかないでよ・・・うわっ!なにこれ!」 そこに遅れた弟が到着し、息を呑んだ。 バス停の小屋は2畳ほどの広さで、戸や窓は無く、ベンチ代わりなのであろう 木の板一枚が奥のトタン壁を背もたれにするように設置されている、とても簡素な作りであった。 その小屋一面すべてにゆっくりがいた。 それも隙間無く、みっちりと。 「ゆああああああ!まりさのかわいいれいむがあああああ!」 「ゆぴいいいいい!ありちゅのおねーちゃんがあああああ!」 「にんげんさん!!なんてことするのおおおおおおお!!?」 大小合わせて30匹は超えるであろうゆっくりの群がその小屋にはいた。 そこへ、子供とはいえ人間一人が飛び込んできたのである。 兄の足元には数匹のつぶれまんじゅうができていた。 まさにおしくらまんじゅうである。 「うわっ!靴が餡子でベタベタだ!かあちゃんになんて言おう」 「どうせ雨でずぶ濡れだし帰ったら丸洗いしようよ」 「ゆ゛ぅ!!れいむのはなしをちゃんときいてね!」 ゆっくりどもが阿鼻叫喚の中、兄弟は親への言い訳をのんきに話し合っていた。 そこへ一際大きなゆっくりれいむが声高に宣言した。 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ゆっくりできないにんげんさんはでていってね!」 「「「「ぷくー!!!」」」」 ベンチの真ん中にその大きなれいむはいた。 一般的な成体ゆっくりよりふた回りは大きく、その大きさを生かして頭の上に赤ゆっくりを数匹乗せていた。 数種類いることから、群の赤ゆっくりすべてをまとめて乗せているのであろう。 えらそうに真ん中に鎮座し、頭の赤ゆっくり共々ぷくー!と威嚇している。 「でっかいれいむだな、お前が長か?」 「そうだよ!れいむはつよいんだよ!だからあまあまをちょうだいね!ぷくー!わさわさ!」 ぷくー!と同時に今度はもみ上げをわさわささせるれいむ。 それを見て短気な兄のこめかみに血管が浮き出る。 「あ、あんちゃんちょっと待ってね」 弟はいまにも潰しにかかりそうな兄を止め、長れいむに話しかける。 「きみらにちょっと聞きたいことがあるんだけど」 「いいからはやくあまあまをちょうだいね!ぷくー!わさわさわさわさ!」 子供とはいえ人間相手にケンカを売るあたり、長なのにあまり頭は宜しくない固体のようだ。 そう判断した弟は、長れいむに見えないように先ほど潰れたゆっくりを後ろ手に一掴みにしてぎゅっと握る。 「はい、おいしいあまあまだよ」 即席のまんじゅう握りだ。 「うっめ!これめっちゃうっめ!」 「ゆー!れいみゅにもー!」 「まりちゃもたべたいー!」 さきほど潰れた仲間の中身とは気付かないで、あっという間に貪りつくす長れいむ。 赤ゆっくりに分け与えないあたり、このゆっくりはゲスの部類なんだろう。 「たりないよ!もっとちょうだいね!!」 「質問に答えてくれたらもっとあげるよ」 あまあまを食べて少し落ち着いたのか素直に話を聞きだす。 「この辺にはゆっくりは住んでないはずだけど何処から来たの?」 弟が言うとおり、この周辺のゆっくりは絶滅しているはずであった。 農家が大多数をしめるこの村では、定期的に村人総出でゆっくり駆除を行っている。 兄弟が通う学校でも行事の一環として、ゴミ拾いならぬゆっくり拾いがあるほどである。 元々ゆっくりに興味があり、ゆっくり関連の書籍を読みあさっていた弟のアイデアで ゆっくりがおうちにしやすい横穴を掘っておき、人間が管理できる場所におうちを作らせて 数が増えたら一斉駆除するようにした。これにより畑の被害は激減し、周辺のゆっくりもほぼ絶滅に追いやれた。 それでもいつのまにか増えるで定期的に駆除が必要だが。 そして数日前に一斉駆除をやったばかりなので、これほどの数が生き残ってはいないはずであった。 「れいむはおやまのむこうからやってきたよ!」 「ドゲスのせいでゆっくりできなくなったのぜ」 「あんなドスはとかいはじゃないわ!」 どうやらこの辺に住んでいたゆっくりではなく、山の向こうの群のようだ。 元々住んでいた場所を最近やってきたドゲスの群に追い出されて、新たなゆっくりプレイスを求めてやってきたそうだ。 おうちを見つける前に急な雨に振られたので、仕方なくこのバス停の小屋に避難したそうだ。 「ドスかぁ、またゆっくりが増えそうだな」 「帰ったらとうちゃんに教えてあげようよ」 「そうだな!ドスを一番に見つけたならお小遣い貰えるかも!」 兄弟はドスの情報を親に伝えればお小遣いが貰えると喜び始めた。 この村ではゆっくりは害獣扱いなので有益な情報には村から報奨金がでるのだ。 前に弟のアイデアで貰った報奨金からお小遣いを貰えているので味をしめたらしい。 「ゆー!いいからさっさとでていってね!あまあまはおいていってね!たくさんでいいよ!」 一向に去ろうとしない兄弟に痺れを切らした長れいむが怒り出した。 「おまえはゆっくりの癖に生意気なんだよ!よし、外に捨ててやろうぜ!」 「ゆゆっ!?」 掴みかかろうとする兄弟を避けようと体を動かす長れいむ。 「いいのか?下手に動いたら頭の赤ゆが落ちて死ぬぞ?」 「ゆ゛ぅ!?」 長れいむは急いで赤ゆっくりを安全な場所へ降ろそうとするがそんなスペースはない。 おろおろしているうちに足元のゆっくりどもを蹴散らし長れいむの前に立つ。 「赤ゆが邪魔だな」 兄はおもむろに赤ゆっくりを掴むとそのまま外へ投げ捨てた。 外はますます天候が悪化し土砂降り状態だった。 投げ捨てられた赤ゆっくりに容赦ない雨が叩きつけるように降り注いだ。 「ゆー!おしょらを『バチバチバチ』ゆ゛あ゛っ!」 「ゆー!わからにゃ『バチバチバチ』わ゛がらっ!」 もはやスコールに近い勢いの雨に打たれ、肌の柔らかい赤ゆっくりは地面に着地する前に粉々になった。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!でいぶのゆ゛っぐぢじだあ゛がぢゃんがあああ!」 「す゛でぎなおぼう゛じをかぶったあ゛がぢゃんがああああ!」 「どがい゛はのお゛め゛め゛をじだあ゛がぢゃんがああああ!」 あまりのことに叫ぶゆっくりたち。その間に長れいむを左右から挟む。 「よーしこっちは持ったぞ」 「こっちも持ったよあんちゃん」 「いくぞー!せーの!」 片手でリボンを、もう片手でもみ上げを掴み、掛け声と共に長れいむを前転させるようにベンチから転がり落とした。 「ゆー!?おそらをとんでるみたい!」 ブチッグチャブチッ 「「「ゆげげ!」」」」 転がり落ちた長れいむは地面にいたゆっくりたちを押し潰す。 兄は転がる長れいむをそのまま勢いよく外に蹴り飛ばす。 「うげぇ!こーろこーろする『バチバチバチ』ゆぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!」 巨体が助けとなりスコールのような雨の中でも溶けずに転がりでたはいいが、 そのまま舗装道路を横切って河川敷の坂を転がり始める。その先は雨で増水した川だ。 「ゆぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!だれかとめてええええええええええええ!!!!」 ザパーン! 雨音にも負けない爽快な着水音を確認した兄弟は空いたベンチに座る。 「ゆひいいいいいい!!ころさないでえええええええ!!」 「ま、まりさのかわりに、れいむをころすのがいいのぜ!」 「どぼぢでぞんなごどいうのー?!!」 長れいむがあっという間に殺されてパニックに陥るゆっくりたち。 「まだまだ沢山いるね」 「メンドクサイなぁ、腹も空いたしもう帰ろうぜ」 「野良ゆを見逃したらとうちゃんに怒られるよ」 そこで弟が新たなアイデアを思いついた。 「あ、あんちゃん、お腹空いたならいい方法があるよ」 弟はおもむろに近くにいたありすを持ち上げる。 「いやあああああ!ありすまだしにたくないいいいいいいい!」 ありすの叫びを無視して揺すりだす。 それを見て弟のやりたいことを理解した兄が他のありすを揺すりだす。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ?!」 ゆっくりは震動により発情する。その際ありす種だとレイパー化しやすい。 この群のありすは共存のため、レイパー化しないように定期的にひとりすっきりー!をして性欲を抑えていた。 しかし今はおうちをドスに追い出された直後であり、強行軍で移動してきたためひとりすっきりー!をする暇がなかった。 さらに大雨による恐怖と人間による虐殺で死に直面したことにより、ありすの生存本能が大いに刺激されていた。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆんほおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「「「ゆ゛ぎゃあああああああああ!!れいぱーだああああああああ!!」」」 あっという間にレイパー化したありすたちが群を襲う。 全員必死に逃げるがこの狭い小屋ではどう足掻いても逃げ切れない。 そして外はまだ大雨だ。 「「「「すっきり!すっきり!すっきり!すっきり!」」」」 「ゆわわ!れいむをおそわないでえええええ!すっきりー!」 「まりさじゃなくちぇんをおそうがいいのぜ!すっきりー!」 「すっきりー!・・・もっどゆっぐり・・したかった・・・」 逃げ場を失い次々と茎を生やしで黒ずむゆっくりたち。 茎を生やしたまま母体が死ぬと、茎の赤ゆっくりは死んだ母体から急激に餡子を吸収し生まれようとする。 「「「ゆっくちうまれりゅよ!」」」 「おっと、赤ゆは生まれる瞬間が美味しいんだよなー『むしゃむしゃ』 「ゆ゛ぐっ!」 「このぷちぷち感がたまらないねー『もぐもぐ』 「ゆ゛げっ!」 長れいむの頭にいた赤ゆっくりたちはドロで汚れていたので食べずに捨てたが 生まれたての赤ゆっくりは綺麗なものである。 レイパーにより手間をかけずに数を減らしていくゆっくりたち。 さらに生まれた赤ゆっくりは兄弟がオヤツにしていく。 そして、ものの十数分で小屋の中は静かになった。 レイパーたちがすっきりのしすぎで干からびたのを確認した後、まだ息のあったゆっくりをすべて踏み潰す。 「おっ、いつのまにか雨もあがったな」 「もう帰らないとかあちゃんに怒られるよ」 「腹もいっぱいだし、そろそろ帰るか」 そのとき、小屋の出口付近で黒ずんでいたまりさの帽子から、子れいむが外へ飛び出した。 「ゆっ!ゆっくりにげるよ!」 「あっ!隠れてやがったな!」 この子れいむは長れいむの子であり、親ゆずりのズル賢さで雨が止むまで隠れていたのである。 兄弟が油断した瞬間を狙って舗装道路に飛び出し河川敷を目指した。 子れいむは長れいむが転がり落ちたのを見ていた。 足の遅いゆっくりでも坂まで行けば転がり落ちることにより逃げ切れると考えていた。 子れいむなりの思いつきなので転がり落ちた後の止まり方まで考えてはいないようだ。 「ゆっくりいそぐよ!ゆっくりにげるよ!」 たしかに河川敷の坂まで逃げ切れば兄弟は追いつけないだろう。 しかし所詮は子ゆっくりのスピード。道路を渡りきる前に追いつける程度だ。 兄弟は子ゆっくりを捕まえようと小屋から出る。 「・・・ゆっくりやめてね!おちびちゃんにてをだしたらゆるさないよ!」 そこにはなんと川に落ちたと思われた長れいむがいた。 後でわかったことだが、河川敷を転げ落ちた後、運良く川岸にあった大きな石に当たったおかげで落水せずに済んだようだ。 (着水音は当たった勢いで崩れ落ちた石だった) 舗装道路まで這い上がってきた長れいむは、打撲と雨で中身を漏らしながらも子ゆっくりを必死にかばう。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!!」 「おかーちゃん!ゆっくりー!すーりすーり!」 感動の再会で喜びのすーりすーりをするゆっくり親子。 あれだけいた群もこの親子2匹だけになった。 長れいむはこの子だけはゆっくり育てるよ!と強く誓った。 それを何も言わずに見守る兄弟。 いや、何もする必要がない。 ブロロロロロロロロ『グチャ』キー!プシュー そして、本日最終便のバスが到着した。 そこにいた、ゆっくり親子を踏み潰して。 「こりゃー!バス停で遊ぶなとあれほどいっとろうがー!」 ゆっくりを引いたことにまったく気付く様子がない、年老いたバスの運転手が降りてきた。 「やっべえ!逃げるぞ!」 「あー!まってよあんちゃん!」 慌てて逃げる兄弟たち。 帰り道を走りながら汚れた靴の言い訳を二人で話し合っていた。 すでに兄弟の頭の中にはゆっくりのことなど忘れ去られてた。 季節外れの大雨が上がったあと、バス停横の川に綺麗な虹が架かっていた。
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むらさの舟歌 32KB 観察 希少種 自然界 現代 独自設定 うんしー ぺにまむ むらさのための一話です。 作:神奈子さまの一信徒 淡々とした観察系小ネタです。 南の島シリーズでちょっと出したむらさの生活史について考えてみました。 ほとんど独自設定、ちょっとだけ南の島後半の外伝要素あり、ご注意ください。 『むらさの舟歌』 地球の表面積の七割を占める、海。 母なる海と賛美されるその場所は、太古の昔から、生命のゆりかごであり、 同時に、大空や地上よりも古くから激闘が繰り広げられてきた戦場でもある。 水中の覇権を争うもの、海底の覇権を争うもの、 海藻の上、砂の隙間、わずかなニッチを争い、共有し、 命の欠片は今日も桜吹雪のように海中に狂い咲き、舞い散っていった。 「よーそろー!!!」 そのような環境に進出したゆっくりがいた。 むらさである。 むらさは、ゆっくりの中でも珍しい海棲種であり、主に浅海域に棲息してい る。にとり同様、表面に特殊な皮があるため、水に溶けないとされているが 詳細はまだ分かってない。 大きさは成体でサッカーボール程度、サイズ自体は標準的なゆっくりで ある。外見的特長は黒い髪、真っ白な水兵帽と、その中にしまい込んである 石灰質のあんかーである。中には柄杓を持っている個体も観察されているが、 すべての個体が持っているわけではないらしい。 むらさは希少種として知られ、大枚をはたくことをいとわなければ、ペット ショップでも手に入ることがある。水上まりさよりも飼育は困難であり、繁 殖に成功したという例は正式な報告としては確認されていない。 しかしながら、天然の浅海域においては、むらさ種は決して珍しい種ではな く、海域によっては食物連鎖の重要な地位を占めていることもある。 近年は飼育技術・分子生物学の発達によって、品種改良を受けた、純淡水産 むらさ種、陸上飼育用むらさ種などが試験的に生産され、ダム湖やビオトー プへの放流、愛玩用として少数ながら出回っている。これらについては本報 告では触れない。 ここに、近年の研究によって明らかになったむらさ種の天然環境下での生態 について記す。 春はむらさ種の繁殖期にあたる。冬の間、浅海域に生育する海藻類をたっぷ りと食べた成体むらさは、春になって南からの暖かい海流が勢力を増すと、 発情し、すっきり、産卵を行う。 「むらむらするよ~!!!とってもむらむらするよ~!!!」 「「すっきりー!!!」」 「あ゛~、もうがまんできない!!まだむらむらしちゃう~!!!」 頬を赤らめ、全身からぬめぬめした粘液を放出してすっきりするむらさ、し ばらくするとその頭から茎が伸び、先端に半透明のカプセルに包まれた赤む らさが生じる。 「むらむらするあかちゃん!ゆっくりしていってね!!!」 どこか間違っているが、とりあえず赤ちゃんが生まれたことを喜ぶ親むらさ。 植物性出産の場合、すっきり後2−5日で、赤むらさが自分でカプセルを食 べて孵化する。 「ゆっくちちていってね!!」 「ゆっくちむらむらちゅるよ!!!」 「よーしょろー!!!」 生まれた赤むらさは合計13匹。彼らは親の保護を受けず、そのまま海へと 散っていく。植物型出産の場合、生まれる赤むらさは小さく、その代わりに 水兵帽が体に対して大きい。この水兵帽の中にガスを分泌し、それによって 海面近くに浮き、海流に乗って分散するのである。 「うみさんにぷーかぷーかしゅるよ!!」 「ぷーかぷーかはゆっくりできりゅね!!!」 この時期を赤むらさの「浮遊期」と呼ぶ。 浮遊期のむらさには、遊泳能力はほとんどなく、その移動は海流任せとなる。 そのため、生きていくのに不都合な環境にたどり着いてしまうケースも多い。 「ゆゆ!?なんだかおみじゅさんのあじがかわっちゃよ!!」 この赤むらさは河口に近づいているようだ。満潮時の海から川への逆流に乗 って、川の中に侵入する。 「ゆゆ!?きょきょはごはんしゃんがいっぱいだよ!!!」 河口付近の海水と淡水が交じり合う汽水域は、河川が上流域から運んできた 栄養塩が流れ込むため、プランクトンなどの餌が豊富なエリアである。 そのため、汽水域に集まり、餌が豊富なこの環境で幼い時期を乗り切る魚種 は少なくない。 「むらむらしゅる!!むらむらしゅるよ~!!!」 先程の赤むらさは全身を紅潮させ、粘液を放出している。 「ねばねばさんにごはんさんついちゃよ~!!むーしゃむーしゃ…ちあわし ぇ~!!!」 浮遊期のむらさはこの粘液を網のように海中を振り回し、そこに付着したプ ランクトンや水中懸濁物を粘液ごと食べるのである。 「ゆゆ~!!!ぽんぽいっぱいだよ…ちょっちょくるちいよ…」 だが、それは食べすぎのせいだけではなかった。この赤むらさは川に深く入 り込みすぎていた。 「ゆぴぴぴぴ…くるちいよ…ゆっくり…できにゃい…」 淡水の影響が強い水域に入り込むことで、むらさの浸透圧調整能力の限界を 越えてしまったのだ。淡水が全身からむらさの体内に入り込んでくる。 ビー玉ぐらいの大きさだった赤むらさは、今や、テニスボール大にまで膨れ 上がっていた。だが、その体は薄く風船のようであり、今にも破裂しそうだ った。 そして、限界が訪れる。 「もっちょ…むらむら…しちゃ…ゆびびっ!!!」 ポンッという音が聞こうてきそうな勢いで赤むらさは破裂した。目と皮は四 散し、中身の黒蜜だけが少しずつ海水に混ざり、分散していった。 成長すると、塩分変化への耐性も備えるようになるが、浮遊期の赤むらさは まだまだ脆弱である。 また、この時期は外敵に対して無防備であり、浅海域の表層付近を遊泳する ボラやイワシ、アジなどに捕食される。また、ミズクラゲも運動能力の乏し い浮遊期のむらさには脅威である。 「ゆゆ~!?なんじゃかゆっきゅりちたものがぷーかぷーかちてるよ!!」 ミズクラゲがその傘の部分で作り出す水流、またはその触手に触れれば最期 である。 「いじゃい!!!いじゃいいい!!!ぴりぴりはゆっぐりできにゃ!?きもぢ わぶっ!!!ゆげえええ゛!!!」 先程の赤むらさはミズクラゲの触手に絡め捕られ、無数の刺胞を打ち込まれ ていた。人間ならピリッと一瞬痛みが走る程度だが、赤むらさには致命傷で ある。体は麻痺し、もう逃げることは出来ない。 「ゆげっ!!ゆ゛!ゆ゛!ゆ゛!!」 そのままクラゲの口に取り込まれ、胃に収められてしまった。こうなっては 消化されるだけである。クラゲは体が半透明な種類が多いため、赤むらさが クラゲの体内で溶けていく様子はじっくり観察できる。 一時間もすれば、赤むらさの皮はぐちょぐちょになり、体のどこがどこなの か見分けがつかなくなるだろう。 ミズクラゲには効果がないものの、これらの捕食を避けるために、浮遊期の 赤むらさは流れ藻に集まり、隠れ潜むように生活するものも多い。 ただし、流れ藻にたどり着けるかは、完全に運次第である。 この脆弱な浮遊期も後半になると、赤むらさはスーパーボールぐらいの大き さに成長し、この頃から海水中の炭酸カルシウムを取り込んで、石灰質のあ んかーを作り出す。また、水兵帽の体に占める割合が小さくなり、徐々に浮 力を失って、生活圏を海の表層から、次第に底層へと移していく。 餌は相変わらず、粘液によるプランクトン捕食が中心だが、浮遊期後半には ある程度の遊泳力も発揮できるようになり、海藻などにしがみつき、その表 面に付着している微小甲殻類なども捕食するようになる。 だが、まだまだ捕食者に対しては脆弱である。 「ゆあああああ゛!!!だじゅげで!!!おざがなざんはゆっぐりでぎないい いいいい゛!!!」 このむらさはメバルに追われていた。生活圏が底層に移行することで、主な外 敵はメバルや、マダイ、クロダイ、アイナメなどに変わってくる。鋭い歯で何 度も齧りついてくるフグ類も恐ろしい捕食者である。 「ゆびいいいい゛!!!いやああああ゛!!!ごれじゃあむらむらできなああい いいい!!!ゆぎっ!?」 アイナメがむらさを一飲みにしようとする。しかし、むらさが動いたため、背 中の皮が少し千切れただけだった。 「ゆぎゃああああああ゛!!!いじゃい!!!いじゃいよおおおお゛!!!」 アイナメの追撃により今度は水兵帽を食べられてしまう。 「ゆあああああ゛!!!ぶらざのほごりだがいおぼうじがああああ゛!!!」 ガスを貯める水兵帽を失うと、むらさは浮力の調節ができなくなるため、もう 逃げることはできない。例え、逃げ切ったとして、海底で這い回ることしかで きなくなり、生存確率は激減する。 「おぼうじいいいいい゛!!!ぶらざのぼうぶぶっぺっ!?」 浮力を失い、ゆっくりと沈んでいくむらさはアイナメにパクリと食われ、咀嚼 されて死んだ。アイナメはあんかーをぺっと口から吐き出すと、次の餌を求め て泳ぎ去っていった。 あんかーが一定の大きさになるまで生き延びることが出来ると、むらさは海底 に着底し、海底付近に生活圏を移す。この頃には子むらさと呼べる大きさに成 長し、遊泳力も成体に比べて遜色のないものとなる。この時期を「着底期」と呼 ぶ。 また、あんかーによって砂の中に潜ることが可能となる。 「ゆゆ!!ここならすなさんにもぐれそうだよ!きゅーそくせんこー!よーそ ろー!!」 子むらさはまず、表面の砂を口からの水流で吹き飛ばし、そこにあんかーを差 し込む。潜砂性の底棲生物としてはゴカイや二枚貝が知られているが、ゴカイ では体液の充填により膨張させた頭部を、二枚貝では砂の中に滑り込ませた足 を膨張させ、アンカーとすることが知られている。そして、それを足がかりに 体を砂中に潜り込ませていくのである。 「すなさんをぷーぷーするよ!!からだをもじもじさせるよ!!またぷーぷー するよ!!」 基本的な潜砂行動は、ゴカイ、二枚貝、そしてむらさも同様である。 水を吹き付けることで、砂の間隙を作り、掘りやすくする。そこへ、あんかー へ体を引き寄せるようにして、砂の中に体を潜り込ませていくのである。 このとき、むらさは体を小刻みに震わせることで、砂の中への侵入を容易にし ている。この行動を「もじもじさせる」とむらさは呼んでいるようだ。 「すなのなかでおもうぞんぶんむらむらするよ……うひょおおおお゛!!」 こうして砂の中に潜り込んだむらさは、水兵帽の先端と目だけが砂から出るよ うに位置を調整し、その姿勢で外敵の通過や、餌生物の接近を待つ。 「…ふぅ…」 ちょうど、むらさが潜った辺りに小さなエビがやってきた。砂の中を探るよう にハサミ脚を突っ込み、有機物の破片などを次々と口に運んでいる。 むらさは体の上に乗っている砂が落ちないように、姿勢をやや高めにとる。 餌がよく見えるようにである。 「そろーり…そろーり…」 そして砂に隠れたまま、少しずつ、エビに接近する。不意にエビがむらさの 方に接近したその瞬間、 ぱくっ! むらさは砂の中から飛び出し、周囲の水ごと飲み込むようにして、エビを口 内に納めてしまった。エビがびくびくと動いて抵抗するが、後はもう咀嚼す るだけである。 「むーしゃむーしゃ…すぃあわすぇ~!!!」 そして、しあわせ宣言を済ませると、再び砂に身を隠す。慣れた個体だと、 一連の行動に一分費やさないという。 「…むらさはここにはいないよ~…」 この他、むらさはバカガイや小さなアサリなど、貝殻の薄い二枚貝をあんかー で割って捕食する。巻貝は割りにくいのか、捕食した事例は観察されているも ののあまり好まないようだ。 「着底期」からは、このような潜砂行動と、遊泳力の向上によって、むらさの生 存確率は一気に高まる。ここまでくれば成体はあと一歩であるが、やはり外敵 に襲われ命を落とす個体もいる。 先程のむらさに何やら魚影がせまる。 ナルトビエイである。 エイは頭を砂の中に突っ込み、二枚貝や甲殻類を探して捕食する。むらさに対 しては特に好んで攻撃しているわけではないが、うまく逃げなければ捕食され てしまう。 ナルトビエイが砂の中を頭部で探り、砂の中に隠れていたむらさをツンツンと つつく。 「…む、むらさはここにいないよ~…つつかないでね!…そんなにつつかれたら むらむら…ぎょわあああああ゛!!!」 むらさはナルトビエイに吸い込まれるようにくわえられた。 「はなじでね!!むらさはおいじぐないよ!!はなじでね!!むらさはゆぎゅう うう!?」 むらさはナルトビエイにゴリゴリと咀嚼され、体がぐちょぐちょにされてしま った。 「ゆぎゃあああああああああ゛!!!ぶらざのがらだがあああああああ!!!ぶ ぎゅう!?」 そして、飲み込まれ、あんかーだけが吐き出された。 ナルトビエイが接近してきた時点で、タイミングよく全力で泳ぎ去れば、まだ逃 げられたかもしれない。 こちらでは、むらさマダコに捕まっていた。 触覚で砂の中にいる貝類を探るタコにとって、むらさのように表面近くに潜砂 する小動物は決して捕獲するのは難しい餌ではない。 「やべでね!!!タコさんやべでね!!!ぞんなにざれだら、むらさごわれぢゃ うううううううっ゛!!!」 いろいろと勘違いしているようである。 マダコは食べられるのか確かめるように、むらさを腕でいじくりまわす。 「ゆひいいいいいっ!!!きゅうばんさんですりすりされるとっ!!!んほおお おおおおおおんほおおおっ!!!」 だが、タンパク質代謝で生きるタコにとって、炭水化物が多いゆっくりは魅力の ある餌ではなかったらしい。マダコはむらさを放り出すと、さっさと次の餌を求 めて行ってしまった。 「どぼじでええええええっ!?どぼじでずっぎりざぜずにいっじゃうのおおおお おお゛!!?」 中途半端にむらむらさせられたむらさは、その後しばらく、海中で吼え続けた。 このような砂で底質が構成された浅海域で子むらさは成長する。そして、夏にた くさんの餌を食べ、急速に成長したむらさは、晩夏には成体サイズになり、言葉 も巧みに話せるようになる。 この頃になると、体が大きくなったことで、むらさを積極的に襲う捕食者は浅海 域にはほとんどいなくなる。また、あんかーで潜砂することはあまりなくなり、 あんかーは純粋に捕食のための道具として、堅い貝類やウニを割るのに使われる ようになる。 成体になると、皮が丈夫になり、度々海岸に上陸して餌を探したり、干潮時の干 潟で跳ねている姿が目撃されている。呼吸はそもそも皮膚呼吸であるため、水中 でも陸上でも呼吸は可能である。 ここまで来ると、適時水分を補給しさえすれば、一般家庭でも水槽を用意しなく ても飼育も可能であるため、成体はペットショップに出回ることがある。 よく、いたずらで、水上を帽子で移動するまりさを攻撃するところが目撃されて いるが、それは成体のむらさによるものである。 「まりさはこの川を渡ったら、れいむに告白して、ふぁーすとでぃーぷちゅっ ちゅをするんだ!」 とある河川の河口近く、まりさは水路を対岸に向けて渡っていた。まりさは滅多に 行かない浜辺に行き、きれいなピンク色のサクラガイを拾ってきた。 これをプレゼントとして、今日こそれいむに告白するつもりなのだ。ずっといっし ょにゆっくりしようと。 「れいむ、ゆっくりまっててね!まりさはいまいくよ!!」 自然と櫂を漕ぐ動作も軽快になる。 まりさは告白することに何の心配もしていなかった。れいむの態度から、れいむも きっと自分のことが好きなんじゃないかと、感じられる節があった。 「ゆ?」 異変に気がついたのは、水路の中ほどまで来たときだった。帽子が浸水しているの である。 「どぼじでおぼうじざんにぉみずざんはいっでぎでるのおおおおおお゛!?」 よく見ると、帽子の先端がちぎられたようになくなっていた。 「おみずさんこないでね!!まりさのおぼうしからでていってね!!」 だが、水はどんどん入ってくる。 「どぼじでおみずざんどまらないのおおおおおおおっ!!!」 まりさは慌てて櫂を漕いだが、もう帽子の半分まで水が来ている。 「てきかんげきちん!!よーそろーっ!!!」 まりさの後方でむらさが声をあげる。このむらさがこっそりまりさの帽子の先端を齧 り取ったのだ。 「そんなごどよりだじゅげで!!!ばでぃざじんじゃう!!!たじゅげでええ゛!!」 泣きながら助けを求めるまりさに対して、むらさは答える。 「あ~あ、早く行かないと愛しのれいむちゃんがとられちゃうよ!!」 「いいからだじゅげでえええええええ゛!!!」 「きっと今頃、ほかのゆっくりとすっきりしてるんじゃないかなぁ?」 「ぞんなごどないいいいいいっ!!!」 まりさは顔を真っ赤にして反論する。 それに対して、むらさはからかうような声で答えた。 「すごい~!すごいよ~!れいむむらむらしちゃう~!!!まりさなんかとは比べ物 にならない~っ!!すっきり~っ!!!」 「やめろおおおおお゛っ!!!ぞんなわげあるがああああっ!!!」 まりさはかんかんに怒り、帽子が沈みつつあることも忘れていた。既にあんよの皮が ふやけ、少しずつ餡子が水に溶け出している。 「まりさってだれ!?そんな変なお帽子野郎のことなんか忘れてもっとすっきりして ええええっ!!!」 「ふんぎいいいいいいっ!!!でいぶはばでぃざがずぎなのおおおおっ!!!」 「きっと今頃まりさよりも汚くてかっこ悪いゆっくりにだまされてたくさんすっきり してあかちゃん産んじゃってるじゃない?全弾命中!よーそろーっ!!!」 「ゆがががあああああああっ!!!ゆ゛ゆ゛!?おみじゅざんがっ!!!ぶぶぶ…」 まりさがむらさの戯言に付き合っている間に、帽子は浸水し、まりさはもうあんよが 溶け出して動けなくなっていた。 「せめて…すっきりしてから……」 結局、ばら色の新婚生活を夢見たまりさは溶けてしまった。 「りあ充しね!」 むらさはそういい残すと、満足そうに海へと帰って行った。 このような行動から、むらさの棲息する水域は水難事故が多い難所として、まりさたち に恐れられているという。 秋になると、むらさは繁殖シーズンを迎える。むらさの繁殖シーズンは春と秋の年二 回であり、春に生まれた個体が秋に成熟し、にんっしんっ可能となるのだ。 この時期の海中では、発情したむらさが番をつくり、あちこちですっきりをしている。 「むぅらぁむぅらぁするよほほほほほほほほほほほひひひっ!!!」 「ふう…すっきり…♪…」 飼われているむらさはともかく、天然の環境下ではいつでも繁殖できるわけではない。 生まれた赤ゆたちがゆっくり育つことが出来る季節、それを狙って、繁殖期を合わせて いるのだ。このような一斉すっきり時のむらさは「むらさむらむら」と呼ばれることもあ る。一斉すっきりをしなくても生きていける飼育環境下では見られない行動だが、むら さのシンボルとも言える繁殖様式である。 「むらさのぺにぺには世界一ィィィッ!」 「よぉぉぉおそろぉぉぉぉぉお゛っ!!!」 「仰角15度!!!んほおおおおおおっ!!!初弾!!命中!!!」 むらさの下腹部にそびえ立つは劣情の摩天楼。 全身から大量の粘液を放出しながら、すっきりが行われる。むらさの飼育が難しいと されるのは、この大量の粘液によって、一般的な水槽の水量では急激に水質が悪化し てしまうためである。そのため、通常はむらさが陸上生活に適応するのを待って、繁 殖を行おうとするブリーダーが多いようだ。 この時期は夏の豊富な餌によって、春の繁殖よりも肥えた個体が多く、そのため、すっ きりも、動物型が中心となる。 動物型すっきりの場合、生まれてくるのは、既にスーパーボールほどのサイズにまで成 長した赤ゆであり、植物型の赤ゆとは違い、生まれてすぐに海底に着底、砂に潜って生 活する。直達発生と呼ばれるタイプの、浮遊期を経ない、赤ゆである。 「ゆっくり!!ゆっくりあかちゃん産んでね!!!」 ここでも一組のむらさのカップルに新しい命が生まれようとしていた。 「みゃみゃからしゅっこうちゅるよ!よーしょろー!!!」 「よーちょろー!!!ゆっくちしていってね!!」 「おちびちゃああああん!!!ゆっくりしていってね!!!」 「ぱぱににて、すごいゆっくりしたおちびちゃんだよ!!」 父むらさも母むらさも元気そうな赤ゆの誕生に心から喜んでいた。 動物型にんっしんっのため、一度に生まれる数は少ない。その代わり、春産卵群とは異 なり、親とともに生きていくことが出来る。そのため、秋産卵群は生存確率は高く、生 息域の拡大ではなく、安定した環境で個体数を維持するための産卵群であると言えた。 「さあ、おちびちゃんたち、ごはんさんにするよ!!」 父むらさが捕まえておいた、ハゼや二枚貝を持ってきた。ハゼは予め、頭部を噛み砕い てある。また、二枚貝はバカガイ(アオヤギ)や小さめのアサリのような殻の薄いものを、 石灰質のあんかーで割ってから捕食する。 「むーしゃむーしゃ!!しあわせ~!!!」 「ぐぅ~れいとぉっ!!!」 直達発生によって生まれた赤ゆたちは、この後、両親と共に漁の練習をする。 「きょうはぱぱがごはんさんの捕り方を教えるよ!!」 「「ゆっくりりかいしたよ!!よ−そろー!!」」 父むらさは二匹の赤むらさを藻場に連れてきた。砂地にアマモが繁茂しているが、夏は 強い紫外線によって、多くの海藻・海草類が減少する季節であり、この時期に見られる のはまだ幼草体を中心とした小さな藻場である。 しかし、既にアマモの根本に付着したイガイ類、その表面や間隙に棲息する微小甲殻類、 その周辺には雑多な稚魚が集まっており、漁の練習台としては申し分なかった。 「くささんには、いろんなごはんさんが隠れてるんだよ!ゆっくり捕まえてね!!」 「おしゃかなさんうごかにゃいでね!!!」 「ゆええええ!!なんじぇにげりゅのおおおおおっ!!!」 赤ゆたちは無駄な動きが多く、稚魚を捕まえることが出来ない。何度か、父むらさが見 本を見せたが、一向にダメだった。 「むぅ~…最初はみんなへたくそだよ。むらむら頑張ろうね~!!」 父むらさが赤ゆたちを励まし、海藻表面にくっつく甲殻類や二枚貝の食べ方を教え始め た。 「こういう草さんの周りにはあみさんが群れてるよ。」 父むらさが示したのは、海藻や藻場、海底付近に蚊柱のような群れをつくるアミである。 アミはエビに似た外見を持つ小型甲殻類で、海水魚飼育などの生き餌としてよく利用さ れる。 父むらさはアミの群れの周りをぐるぐるとまわり、少しずつアミの群れを小さく、しか し、密度の濃いものにしていく。 「おちびちゃんたち!!今だよ!!!」 「「よーしょろー!!!」」 二匹の赤むらさは勢い良く、アミの群れに飛び込み、口いっぱいにアミをくわえる。 「むーしゃむーしゃ…しあわしぇ~!!!」 「あみしゃんはむりゃむりゃできるよぉ~!!!」 父むらさからすれば無駄の多い食事であったが、初めての漁に、二匹とも満足してい るようだった。 こうして赤むらさたちは両親の指導を受けてすくすく成長し、一ヶ月もすれば、子む らさと言える大きさにまで成長していた。 晩夏から秋半ばにかけて、この地域は度々台風が襲ってくる。大型の台風はその風雨に よって沿岸域の生態系を一時的に攪拌してしまう。 沖合いの生物が沿岸に持ち込まれ、逆に沿岸の生物が沖合いに運び去られる。 さらに高波によって、砂浜は削られ、海藻はちぎれ飛んでいった。 「まだだよー!!」 「がんばっててーはくしてね!!おちびちゃんたち!!!」 台風などで水中が荒れたとき、通常、むらさ種はあんかーを砂の中に打ち込んで、荒波 や水流に流されないようにする。しかし、今回の台風のように、あまりにも水中の攪乱 が強い場合、丈夫そうな海藻などの茎に齧りついてやり過ごすのである。 むらさたちは、このような行動を「てーはく」と呼んでいた。 「ゆぎいいいひいいひいひいっ!!!もうむりじゃよおおおお゛っ!!!」 「おぎゃああじゃあああんっ!!!おぎゃあさんのおくちさんにいれでえええっ!!!」 直達発生の赤ゆたちは既にそれなりの大きさであるため、親むらさの口の中に隠れられ るのは生まれて最初のうちだけである。 赤むらさたちは自力で歯を食いしばり、荒れ狂う水界に立ち向かわなければならなかった。 「ゆぎいいいいいっ!!!ひゃあっ!!!」 姉むらさが遂に力尽き、食らいついていた茎を離してしまう。 「おねえちゃあああんっ!!!」 妹むらさは必死にあんよを伸ばした。しかし、姉むらさが噛み付いたのは、妹むらさが必 死に差し出したあんよではなく、お尻だった。 「お゛ね゛え゛ぢゃあああああああああああああああんっ!!?」 姉むらさは流されまいとして、必死に妹むらさの尻に食らいつく。生まれてからとりあえ ずひどい目にあっていないはずの妹むらさのぷりぷりした尻に、ぐいぐいと姉むらさの歯 が食い込んでいく。 「ふごごごっ!!!ほへんへええええええっ!!!」 「いじゃあああいいいいっ!!!むらじゃのぷりちーなももじりがあああああっ!!!」 姉むらさの顎が耐えられなくなるのが先か、それとも妹むらさの尻が耐えられなくなるの が先か… ぶちっ! 「「!!?」」 一番最初に荒れ狂う海に耐えられなくなったのは、二匹が噛み付いていた海藻だった。 「おぢびぢゃあああああああああっ!!?」 「むらざのびずぼじだだるいいぶずめがああああああっ!!?」 「おぎゃああしゃああああんっ!!!」 「おどうじゃあああああああんんんん!!!」 子むらさの姉妹は荒波にもまれ、海藻もろともどこか遠くの海に流されてしまった。 流されたむらさ姉妹は大きな流れ藻にあんかーをひっかけて海面を漂っていた。周 囲には同じように沿岸域から流されたのであろう、何匹かの稚魚が流れ藻の影を泳 ぎ、流れ藻の上には甲殻類の幼生や小さなタコの子供がしがみついている。 もうどれくらい海を漂っているのか分からない。海は深まり、海底はとっくに見え なくなっていた。眼下には底の見えない海が広がり、太陽光線も届かないその奥底 には、何やら薄暗い空間が広がっている。時折、大きな魚影が真下を通ったり、夜 中に光る何かが周囲を泳ぎ回っては、姉妹は身を寄せ合うように流れ藻にしがみつ き、息を潜めた。 「ねえさん、またおさかなさんいっぴきいなくなってるよ。」 「きっと、ゆっくりできなくなったのよ…」 その日、姉妹はこの流れ藻のマスコット的存在であった、可愛い小さなタコを分け 合って食べた。妹は流されて以来よく遊んでいたこのタコを食べるのを最後まで嫌 がったが、もう簡単に食べられそうな流れ藻の付着生物は食べきってしまっていた のだ。また、稚魚の類はまだ漁の経験が乏しい二匹には捕まえるのが困難であった。 姉むらさは一度稚魚を捕まえようとしたものの、気がついたら流れ藻から遠く離れ た、真っ青な海中に稚魚と二匹で取り残されたことがあった。なんとか懸命に泳い で流れ藻にたどり着き、事なきを得たものの、まだ子供のむらさ姉妹には、この広 い海の真っ只中で、一匹取り残されるという感覚はトラウマとなった。 それ以来、姉妹が流れ藻を離れて行動しようとすることはなかった。 「むーしゃ…むーしゃ……」 「ふう…そこがみえないうみじゃ、ゆっくりもむらむらもできないよ…」 現状では起きていても体力を消耗するだけである。姉妹は食事を終えると、まだ日 も高いうちから交代で眠りについた。日中は、片方が起きて警戒と、周囲の観察を 行う。そして、夜間は二匹とも眠りにつき、命を運に任せてきた。どうせ、夜行性 ではないむらさの目では、夜間はほとんど何も見えなかった。 ふと姉妹が目を覚ましたとき、周囲にはかつてないほど無数の生命がうごめき、何 かが光り、そして泳ぎ回っていた。 「おねえちゃん!!おほしさまがうみのなかにっ!!!」 かつて父むらさが内陸部で見たことがあるという、蛍とはこういうものなのだろう か?それともこれは人の巣の光だろうか? それは日周鉛直移動−昼と夜で深海と表層を往来するアミやハダカイワシの群れだ った。ちょうど、複数の海流がぶつかる栄養塩に満ちた海域まで流されてきたのだ ろうか?そして、それらに導かれるように、真っ暗な深海の奥底から、影しか見え ない魚が、煌びやかな光を身にまとったクラゲが、そして流れ星のような不思議な 動きをする生き物(姉妹は知らなかったが、発光器官を備えた外洋性のイカである) が海中の星空へと加わっていった。 「きれいだねえ…おねえちゃん、おほしさまはうみのなかでもとてもゆっくりして いるよ。」 「でもなんだかむらむらしてて、ゆっくりできないおほしさまもいるよっ!!!」 それは獰猛な捕食者たちによる凄惨な捕食の現場であった。 一つ、また一つと小さな光が消えるたびに、儚い命が海へと還っていく。 それはまるで、宇宙の深遠で誕生と消滅を繰り返す星々の無窮動曲のようであった。 そのとき、いくつかの影が流れ藻に接近してきた。影は流れ藻の周りに集まると、 つつくようにして、流れ藻表面の微小な付着生物を食べていく。 微かな星明りに浮かぶ黒い羽のシルエット、トビウオだった。 その度にむらさ姉妹があんかーでしがみつく流れ藻はぐらぐらと揺れた。 「ゆええええええっ!!!やべでね!!!ゆれるよ!!!ちんぼつしぢゃうよおお おおっ!!!」 「あっぢいっで!!!おざがなざんあっぢいっでね!!!じーじーずるよ!!!」 トビウオの大きさから丸飲みにされることはないだろうが、自分達の唯一の拠り所 が揺れる度に恐怖し、姉妹は泣きじゃくった。姉はお尻を振りながらしーしーをば ら撒いたが、ちゃんと流れを読んでしーしーしなかったため、自分のところに戻っ てきただけだった。 「ゆわあああんっ!!!おねえじゃんのじーじーのにおいがずるっ!!!」 「ゆべべ!!!しーしーのんじゃっだよっ!!!」 あまりに騒ぎすぎたせいか、それともしーしーの臭いに魅かれたのか、トビウオは 姉の体を口でつまむように突いてきた。 「いやあああああああああ゛っ!!!やべでえええっ!!!むらざおいじぐないよ おおおおっ!!!つつかないでえっ!!!」 「やめてね!!おねえちゃんにひどいことしないでね!!!」 ぷくーっをして威嚇する妹むらさ。しかし、この程度の大きさのぷくーっではトビ ウオ相手にお話にならなかった。もっとも、今は夜なので、どのみち外敵を威嚇す る効果など皆無なのだが。 べりりっ! 「ゆんやあああああああああああああああ゛っ!!!」 姉むらさの頬の皮が薄くはがされてしまった。 「ゆぎゃあああっ!!!いじゃいいいっ!!!いじゃいよっ!!!だじゅげでぱぱ ぁっ~!!ままぁ~っ!!」 泣き喚く姉むらさ。幸い、まだ中身の黒蜜は漏れていなかったが、トビウオに取り 囲まれている限り、それは時間の問題のように思えた。 「だじゅげでええええっ!!!いじゃいいっ!!!じにだぐないいいいっ!!!」 流れ藻から離れて泳いで逃げるべきか?それともこのままトビウオがいなくなるの を待つべきか? 姉妹は迷った。 このまま流れ藻に留まれば殺られる。 かといって、逃げたところで、浅海域に棲息するむらさがこの海底の見えない沖合 いの海域で生きていけるとは思えなかった。 第一、食べるものにも困り、疲労しきった自分達が、このトビウオから逃げられる 保証はないのだ。 「おねえじゃんっ!!!」 逃げよう! そう妹むらさが言おうとした瞬間だった。 ぱっと散るようにして、トビウオの影はむらさ姉妹がしがみついている流れ藻から 離れた。姉むらさを突いていたトビウオだけ反応が遅れる。 姉むらさを突いていたトビウオの体が不自然によじれ、何者かに捕らえられた。 アオリイカによる攻撃である。 アオリイカは沿岸性のイカであり、釣りの対象として有名である。 アオリイカはトビウオを触腕で捕らえ、まず、トビウオの頭の後方、人間で言えば 頚椎のあたりを齧り、脊髄を分断してトビウオの動きを封じると、その肉をゆっく りと齧りながらどこかへ行ってしまった。 「た…た…たすかった…?」 むらさ姉妹はそれ以上言葉をつむぐことも出来ず。ただ流れ藻に隠れるようにしが みつき、その夜を過ごした。 翌日、いつの間にか眠ってしまっていたむらさ姉妹が目を覚ますと、中天の太陽光 が燦々と海水に突き刺さっていた。心なしか、水の色が明るく、水そのものも暖か い。 「ねえさん、なんだかうみさんがぽーかぽーかするよ!!!」 「ほんとうだね!!むらむらしてくるよっ!!!」 傷は大したことなかったのか、姉むらさは軽口を叩いた。 「ゆ!?よーそろー!!!ろくじのほうこうになにかいるよっ!!!」 妹の声にふと、姉むらさが後ろを向くと、後方の表層を何か、黒くて大きなものが 泳いでいた。 「なんだろう!?むらむらするよかんが…」 「えいさん!?」 それはマンタ、オニイトマキエイであった。 「よーそろー!とってもおおきなえいさんだよっ!!」 マンタは熱帯、亜熱帯の暖かい海に生息する。プランクトン食の大型エイであり、 その体重は3トンにも達する。我々が夏の海で遭遇するようなエイが、一般的に 砂地の中に隠れている底棲生活者であるのに対して、マンタはその大きな胸鰭で 悠然と泳ぐように表層を遊泳する。 「ゆっくりしていってね!!」 「あんなおっきなおさかなさんはむらむらするよぉっ!!!」 マンタはぐんぐんと水中を飛ぶように前進し、勢いをつけて水の外へと飛び出し た。 「「おおおおおおおおっ!!!」」 マンタのジャンプが一体何のために行われるのかは、今も結論が出ていない。一 説には寄生虫を払うためとも言われている。 「「よーそろおおおおおおおっ!!!」」 むらさ姉妹は感嘆の声を上げ、マンタのジャンプを注視した。 何トンという体が空中を飛ぶのだ。圧巻である。 そして、マンタは倒れこむように、空中から海中へ、ちょうどむらさ姉妹の真上 へと着水する …真上? 「ぼんばぁぃえ゛っ!!!」 「ねえざあああああああああああああああああああんっ!!!」 マンタの巨体はむらさ姉妹がしがみついていた流れ藻を直撃した。 濛々と白い気泡が辺りを乱舞し、流れ藻はマンタの体に割られるように四散した。 姉むらさには最期のセリフを言う時間すら与えられなかった。 そして、姉むらさの体も、流れ藻に混じって、ちぎれ、水中をぼろぼろと落下して いった。 「ねええざあああああああああああああんっ!!!」 妹むらさはマンタの着水の衝撃で流れ藻から放り出され、水中をくるくると回転し ていた。その間、妹むらさが最後に見た姉むらさの姿は、ぼんやりと水中を分散して いく黒蜜の姿だった。 その日の夜も前日と同じ光景、深海からやってくる血生臭いプラネタリウムがむらさ の下方で展開された。しかし、前回のように、それを美しいと思うことも楽しむこと もできなかった。 ただ一匹、水面近くから眺める真っ黒な深淵は、舞い踊る光の乱舞は、ただひたすら 不気味だった。 妹むらさは流れ藻の破片にしがみつき、夜明けが来るのを待った。しかし、もう限界 が近かった。流れ藻はちぎれ、餌らしい餌は何も残っていなかった。おまけに、流れ 藻に集まっていた稚魚もどこかへ行ってしまった。 そして何より、これ以上、ただ浮かんでいるだけの長旅を一人で続ける自信も、理由 もなかった。妹むらさはそっとあんかーを流れ藻の破片から外した。 「おとうさん…おかあさん…ねえさん…むらさは…もう…」 むらさは目を閉じて波の動きに身をゆだね、ゆっくりと沈んでいった。 そして、むらさの体はサンゴ礁に横たわった。 とある南の海、サンゴ礁が鮮やかな海で、一匹のむらさがウミガメから逃げていた。 「来ないでね!!!むらさは食べられたくないわ!!」 お尻に残った実の姉の歯形の痕…あの妹むらさの成長した姿である。 どうやら、むらさはそれなりに場数を踏んできたようだ。 巧みにウミガメの追撃をかわし、サンゴの影に隠れる。 ウミガメはしばらく辺りを泳いでいたが、諦めたのか、それとも別の獲物を見つけたの か、どこかに泳ぎ去ってしまった。 「ふう…やっとゆっくりでき…」 そのとき、むらさの視界に入ってきたのはレモンザメだった。レモンザメは最大で3m ほどにもなる暖かい海に生息するサメである。その名はそのレモン色の体色から来てい るが、実際は個体差もある。 今回、むらさが見つけたのは、体長70cm前後のまだ若いレモンザメだった。若い個体 はしばしば、リーフ内の浅い海に入ってきて捕食を行う。いくら海中に適応したむらさ でも分の悪い相手であった。 砂に潜るか…それとも陸に逃げるか…? 妹むらさは成体と言えるサイズになって皮が丈夫になり、乾燥への耐性を備えたことで ある程度陸上でも行動できるようになっていた。 むらさは一度上陸して、この捕食者をやり過ごすことにした。隙を見てサンゴの影から 抜け出すと、波打ち際に飛び跳ねるように逃げていく。 「…ふう…ここまでくればゆっくりできるわ…」 そこは真っ白なサンゴ砂に覆われた浜辺だった。海の中では感じることのなかった、照 りつけるような太陽が痛い。まだ、陸上での生活経験が乏しいむらさには強すぎる太陽 だった。 それでも、さめさんといっしょよりはゆっくりできるわね… むらさは太陽から逃げるように木陰に跳ねていった。 「おや?見ないゆっくりだね!ゆっくりしていってね!」 そこにいたのは見たことのない二匹のゆっくりだった。 大きな耳を持った笑顔の素敵なゆっくり 「ぼくはなずーりん」 そしてもう一匹は頭に可愛い花を乗せた、少しおどおどしたゆっくり 「…しょうです…」 「むらさ、わたしはむらさよ。」 むらさは初めて会う別のゆっくりにどう振舞っていいか分からなかった。 「きみはどこの飼いゆっくりなんだい?」 なずーりんと名乗ったゆっくりはむらさが野生だとは思わなかったようだ。 南国の太陽の下、照りつける太陽に濡れた黒髪に魅かれるものがあったのかもしれない。 「わたしは海から来たの。にんげんさんに飼われているわけじゃないわ!」 「すごいや!しょう聞いたかい!?海に棲んでるんだって!!」 なずーりんは目を輝かせる。むらさはなずーりんが一体何に驚いているのか良く分から ず、少々困った顔をしていた。 「うん…海の中ってどんな感じなのかな?…とっても興味あるよ…」 しょうと名乗ったゆっくりも海に興味があるらしい。このゆっくりたちにとっては、海 の中の世界がそんなに珍しいのだろうか? 「ねえ、むらさ?これからぼくらが面倒見てもらっているお兄さんのゆっくりぷれいす に行かないかい?きみの棲む海の中に興味があるんだ!ゆっくりした話を聞かせてよ!」 「わたしも…お話聞いてみたいかな?…」 まあ、いいか むらさはそう思った。どうせレモンザメがいなくなるまで、海の中に戻るつもりはない。 それに一度、地上をゆっくり見てみたかった。 「いいわよ!みんなで一緒にゆっくりしましょう!」 快諾したむらさの笑顔に、なずーりんとしょうの顔もほころんだ。 「ねえ、むらさぼくらと同志になってくれないかな?」 「同志ってなに?」 「一緒に遊ぶと楽しい友達のことさ」 なずーりんの笑顔は無邪気でとてもまぶしかった。 むらさはこの二匹と一緒ならば、たくさんゆっくりできるような気がした。 海の中しか知らなかったむらさは、なずーりんとしょうの二匹に出会い、様々な思い出を 作っていくことになる。 陸地から海に進出し、また再び陸にも上がろうとするむらさ種、このゆっくりはどこを目 指すのだろうか? まぶしい太陽の下、むらさの新しい生活が始まった。 完 神奈子さまの一信徒です。 私の専門である水棲ゆっくりって、にとり、むらさしかいないなぁ~ってことで書いてみ ました。すわこはカエル、いくは深海魚、ぬえはカニっていうイメージもあるのですが、 どうなんでしょう? あまり一人で独自のゆっくり量産するのも気が引けましたので、南の島シリーズ後半でち ょい役で出てきたむらさにスポットライトを当ててみました。 こんなのむらさのイメージと合わないという方、ごめんなさい。 お目汚し失礼いたしました。 挿絵 by絵本あき トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓のコメント誰が書いたんだろwww -- 2019-10-12 13 18 36 L(・_L)ズン(ノ_.)ノドコL(・_L)ズン(ノ_.)ノドコ -- 2019-10-12 13 16 16 ナイスむらさ! -- 2018-07-06 02 34 04 こwwwれwwはwww -- 2017-12-03 15 26 31 リア充爆発しろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! -- 2017-04-04 13 35 48 すばらしい -- 2011-03-02 21 13 47 これは面白い。むらさの生態が細かく描写されていてとてもゆっくりできましたー! -- 2010-11-22 20 38 47 どうして貴方の書くまりさ(つむり)はこうも生理的嫌悪感を掻き立てるのか。相変わらずのキショさで逆に安心するぜガクブル -- 2010-09-22 20 02 37 このなずーりんが後にゲスになるとは… -- 2010-08-27 06 14 40 いいね! -- 2010-06-16 02 49 38 面白かったよ。 -- 2010-06-14 22 52 38
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ゆっくりを、叫ぶだけ 12KB ※M1あきさんのネタ振りに触発されて書きました。 雨が降っていた 大粒の雨に、強い風。豪雨だった。 そんな雨の音にかき消され、それでもかすかに歌が聞こえた。 「ゆ~♪ ゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪」 調子っぱずれで耳にうるさいその歌は、ゆっくりのものだった。 木の下にできた穴はゆっくりの巣になっている。その中に一匹の成体れいむと子まりさの 親子がいた。 ゆっくりを、叫ぶだけ。 「おちびちゃん~♪ きょうはおかーさんのことをおはなししてあげるね~」 ゆっくりにとって、雨は最もゆっくりできないものの一つだ。 子まりさの不安を紛らわせたいのか、れいむの声は明るく穏やかなものだった。 「しんじゃったまりさおとーさんはね、『かいゆっくり』だったんだよ」 れいむはある日、人間さんに連れられたまりさと出会った。 飼いゆっくりは普通、野生のゆっくりより栄養状態が良く、いわゆる「美ゆっくり」であ ることが多い。れいむが目を奪われたのは確かだ。 だが、何よりれいむが惹かれたのは、まりさにとてもゆっくりできるものを感じたからだ。 人間で言うなら、運命の紅い糸を目にしたような衝撃を覚えたのだ。 それはれいむばかりでなかった。まりさもまたれいむに一目惚れしたと言った。 まさに運命の出逢い。 ゆん生はあまりにも短く、ゆっくりの恋は早い。 二人は一日で仲良くなり、ツガイとなる決心をした。 「おにいさん! まりさはれいむとずっとゆっくりしたいよ!」 まりさの真摯な願いをおにいさんは聞き届けた。 そして二匹は晴れてツガイとなった。 「まりさはとってもかしこいゆっくりだったんだよ!」 初めての野生生活だったが、まりさはれいむの教えを受け、狩りや巣作りなどを次々に覚 えていった。そればかりか、れいむの知らないキノコの知識や高度な巣作りについての技 術までも知っていた。飼われていた頃、「てれび」というもので覚えていたのだという。 すぐに野生での生活に馴染んでいった。本当に優れたまりさだった。 だが、なによりまりさが賢かったと言えるのは。 「まりさはね……れいむとあったひ、にんげんさんにすてられちゃうって、わかってたん だ……」 それは二匹の生活が安定した頃、まりさが告白したことだった。 飼い主のおにいさんはまりさを捨てようと、この森まで来たのだそうだ。人間の事情はよ くわからないまりさだったが、ずっと連れ添ってきたおにいさんの「ゆっくりできない雰 囲気」には前々から感づいていた。だから、あらかじめ野生で暮らす勉強をしていたのだ。 「でも、れいむにはほんとうにひとめぼれしたんだよ! もりでくらすためになかよくし たんじゃなくて……すごくすごくれいむがゆっくりできるとおもったから、れいむとずっ とゆっくりすることにしたんだよ!」 まりさは餡子を吐くように、苦しげに言った。隠しごとをしていたという罪悪感があった のだろう。れいむはそんなまりさの優しさが嬉しかった。とてもゆっくりできると思った。 「れいむもまりさのこと、だいすきだよ! まりさとゆっくりできてうれしいよ!」 「ありがとう、れいむ!」 「ゆんゆん、まりさ、だいすきだよ!」 「「ゆっくりしていってね!」」 そして、その晩。 二人は初めてすっきりーした。 すっきりーし終えると、れいむのぽんぽんが膨れた。胎生型にんっしんだった。 「それがおちびちゃんがだったんだよ」 目を細め、傍らの子まりさを見つめる。ぽんぽんを痛めて産んだ子供が、一際愛おしいも のだ。 子まりさは恥ずかしくなってしまったのか、顔を上げようとしない。 それを見て、れいむは穏やかに微笑んだ。 「でも……おちびちゃんはまりさおとーさんにあえなかったね……」 れいむのぽんぽんも大きく膨らみ、もう二、三日もすれば産まれるという頃だった。 れいむは動けず、まりさが狩りにでかけていた。まりさはもうれいむよりずっと狩りが上 手くなっていた、子ゆっくりがうまれても大丈夫なよう、食べ物も充分に備蓄できていた。 なんの不安もなく、れいむはゆっくりとしていた。 平和でゆっくりとした森。れいむには、まるで森がれいむたちを祝福してくれているみた いに思えた。 「おちびちゃん~♪ ゆっくりしてね~♪ でも、はやくいっしょにゆっくりしたいよ! ゆっくり~……」 「ゆぐぅ!」 れいむの平穏を破ったのは、まりさだった。 「まりさ! どうしたのぉぉぉぉ!」 酷い有様だった。まりさの綺麗だった金髪。その後ろ髪のほとんどが無くなっている。 後頭部が無くなっていた。 餡子の露出したその痛々しい断面は、なにかに食いちぎられたように無惨なものだった。 まりさはれいむに答えず、黙々と巣穴を厳重に偽装し始めた。 動くたびに、傷口から餡子が漏れた。 「まりさぁ、ゆっくりしないと……!」 「ゆっくりしずかにしてねっ……!」 叫び出しそうになるれいむを、まりさの押し殺した声が制止する。その真剣さにれいむの 餡子が冷える。ひどくゆっくりできないことが起きている。 やがて、巣の偽装が終わると、まりさの身体は崩れ落ちた。 元気だった姿は見る影もない。まりさの身体には、もうかつての半分も餡子が残っていな かった。 「れいむ……おおきなこえをだしちゃだめだよ……すあなのふたはいぬさんのきらいなに おいのするくさをつかってるから、しずかにしてればだいじょぶうなはずだよ……」 「まりさぁ……いったいなにがおきてるのぉ……」 「にんげんさんが、いぬさんをつかってゆっくりを『くじょ』してるんだよ……」 れいむにはわからなかった。 この森は人里から離れている。人間を見る機会はなく、れいむが知る人間はまりさを連れ てきた優しそうなおにいさんだけだ。だからこのまりさのケガと人間が結びつかない。 だが、犬のことは知っていた。とても強くて鼻が利く、とてもゆっくりできない生き物だ。 それが、まりさをこんな風にしてしまったのだ。 れいむは必死にまりさをぺーろぺろした。しかし、もうゆっくりがふさげるような傷では ない。まりさの死は確実だ。それがわかっても、れいむはなにもせずにはいられなかった。 「まりさぁ……」 「れ、い……む……」 「まりさぁ……まりさぁ……」 「ゆっくり……していってね……」 そして、まりさは永遠にゆっくりした。 れいむは泣いた。声を押し殺して泣いた。自分と、お腹の中のあかちゃんをゆっくりさせ ようと頑張ったまりさのために、歯を食いしばって声を抑えた。 「それでね……おちびちゃん。まりさはえいえんにゆっくりして、ほかのみんなもいなく なっちゃったんだよ……」 れいむは思い出す。 あの日、まりさが永遠にゆっくりしてから二日が過ぎた。食べ物の備蓄に不安を感じ、思 い切って外に出てみた。 森は静かだった。 にんっしんした身体は動きづらかったが、巣にずっとこもるわけには行かない。一人で過 ごすのは難しい。だから、助けを求める必要があった。 ゆっくり慎重に進む。 そして……誰とも出会わなかった。 近くに住んでいたちぇんも、物知りのぱちゅりーも、普段なら他のゆっくりと確実に出会 う広場に行っても、何もなかった。 森は静だった。残酷なぐらい、静かだった。 「おちびちゃん、さみしかった……? れいむはさみしかったよ。でも、おちびちゃんが うまれてさみしくなくなったよ!」 そして、れいむは一匹で出産することになった。産まれたばかりの子まりさを受け止める のはまりさの帽子のハズだったが、二匹で仲良く寝ていたベッドがその代わりを務めた。 幸い、出産は成功した。産まれたのは子まりさだった。死んだまりさによく似た、とても ゆっくりした子ゆっくりだった。 だが、ゆっくりしてはいられなかった。 野生でのしんぐるまざーは過酷だ。餌あつめと子育ての両立は並大抵の苦労では済まない。 普通なら群れの仲間に助けを求めるところだが、人間の”駆除”によってあたり一帯のゆ っくりは全滅していた。 しかし、まりさが命を懸けて守ってくれたのだ。れいむは何があっても子まりさを守ろう と決意した。 だが。 「おちびちゃん……おなか、すいた……?」 子まりさのまわりには食べかすがたくさん散らばっている。 全て、子まりさの吐き出したものだ。 れいむが集めてきた草も、花も、ちょうちょさんもいもむしさんもきのこさんも……あら ゆる食べ物を、子まりさは受けつけなかった。 噛んで柔らかくしても、口移しで食べさせようとしてもだめだった。 何を与えてもどんなに手を尽くそうと、子まりさは「むーしゃむーしゃ」も「ごっくん」 もが出来ないのだ。 これは親のまりさが飼いゆっくりであったためだ。 市販のゆっくりフードを産まれたときから食べ、味覚ばかりでなく体質そのものが変化し ていた。ゆっくりは本来、何でも餡子に変換する能力を持つ。だが人工的に作られたゆっ くりフードの摂取は、その能力を弱めてしまったのだ。 親まりさの餡子を多く受け継いだ子まりさは、もはや野生では生きていけないゆっくりに なってしまっていたのだ。 厳しい狩り。 一向にうまくいかない子育て。 他のゆっくりがいないという孤独。 永遠にゆっくりしてしまったまりさ。 ゆっくりできないことばかりだった。 だが、れいむは微笑む。泣きたくても微笑む。泣けばゆっくりできない。子まりさをゆっ くりさせてやれない。 子まりさが産まれて以来、れいむがずっと顔に張り付かせているのは虚ろな微笑みだけだ った。それ以外の顔はできなかった。許されなかった。 そんな微笑みに、母ゆっくりの無言の愛情に、しかし子まりさは答えない。 れいむは不安になる。最近子まりさの衰弱が激しい。当然だ。産まれてからなにも口にし ていないのだ。 そして、雨。ゆっくりできない雨がここ数日続いている。せめてひなたに出れば少しは元 気も出るだろうに。 れいむは巣の入り口、その向こうから響く雨音を睨んだ。 その時だ。 突風に、巣穴を偽装していた蓋が吹き飛ばされた。強い風と雨が吹き込んでくる。 「おちびちゃん! おうちのおくにかくれてね!」 再び蓋をするにしても雨や風の侵入は避けられない。衰弱した子まりさには雨風の負担は 大きすぎるだろう。 だが、子まりさは動かない。 「おちびちゃん!」 風に、子まりさの帽子が飛ばされる。 それでも子まりさは動かない。ゆっくりにとって飾りは命。それが飛ばされて動けないこ となんてありえない。 だから、れいむは嫌でも知ることになった。 「おちびちゃん……」 子まりさは、とっくの昔に「永遠にゆっくり」していたのだ。 モチモチと膨らんでいた頬は、すっかりやせこけてしまっていた。キラキラ輝いていた金 髪は、今はすっかりくすんでいる。可愛らしかった大粒の瞳は、しなびた瞼に痛々しく閉 じられていた。 「……ゆっくりしていってね……」 れいむはただそう、一言告げた。 本能によるものだ。子まりさにできる唯一の手向けだ。 しかし、れいむはその言葉を憎んだ。 なにがゆっくりしていってね、だ。 「おちびちゃんは、ぜんぜんゆっくりできなかったよ……!」 まりさが命がけで守ってくれた子まりさをちっともゆっくりさせてあげられなかった。 れいむに落ち度はない。何一つ悪かったことなどない。むしろよく頑張ったと言える。 だが、れいむには自分を責めることしかできなかった。 やがて、ゆっくりできない感覚が全身を包む。 巣穴の蓋は剥がれたまま。激しい風と雨が吹き込んでくる。それはとてもゆっくりできな いことだ。すぐに対処しなくてはならない。 それなのに、れいむは動こうとしなかった。 「まりさ……もう、ゆっくりしてもいいよね……?」 まりさはいなくなった。子まりさも永遠にゆっくりしてしまった。まわりにもゆっくりは いない。 なにも、ない。 だかられいむは吹き込む風と、あんよを覆う水の感触に……残酷で慈悲深い自然に、自ら の行く末を委ねた。 れいむは日のまぶしさと暖かさに目を覚ました。 「ゆ……?」 巣穴から降りそそぐ陽光。 雨は上がっていた。れいむは生きていたのだ。 「ゆうぅ……」 失望とも安堵ともつかないため息。 そして、れいむはあたりを見回す。 巣の中はひどい有様だった。 風に吹き荒らされ雨に蹂躙され、まりさといっしょにつくったゆっくりできるベッドもテ ーブルも食料の貯蔵庫もグチャグチャだった。床は浅く浸水していて、それは巣穴にムッ とする湿度をもたらしていた。 そして。 子まりさの死体がある。 雨に濡れぐちゃぐちゃになっている。腐敗はまだ始まっていないが、ゆっくりのみが感じ る独特の死臭がひどい。巣の中にむせかえるほど充満している。 ここはもうゆっくりの巣ではなくなっていた。 絶望の支配する、墓場より一歩地獄に近づいた廃墟だ。 れいむは震え上がる。 ここは、ゆっくりできない。 見上げれば、暖かな陽の光がある。 生というものは、平穏な暮らしの中では実感できない。 生は死を意識して初めて本当に輝くのだ。 全てを諦め死を受け入れたはずのれいむは、今やこの巣穴に充満する生々しい死を恐れて いた。 せめて陽光の中に行きたい。強くそう願った。 それなのに。 「どぼじでれいむのあんよさんうごかないのぉぉぉ!」 侵入した雨はゆっくりにとって死をもたらす量ではない。だが、れいむは長く水に浸かっ た。あんよはぐずぐずに溶けて、もはやその機能を完全に失っていた。 その事実が、れいむを恐慌に突き落とした。 「やだあぁぁぁぁぁ! ここはやだぁぁぁぁ! ゆっくじでぎないぃぃ! ゆっぐじでぎ ないよぉぉぉぉ! ごごにいだくがないぃぃぃ!」 叫びは巣の中で反響し、何倍にもなってれいむに響く。それがなおさら絶望をかきたて、 死を意識させる。ゆえにれいむは生にしがみつく。本当の死を前にすれば、誰だって生き たいと思う。思ってしまう。 「ゆっくりさせてぇぇぇぇぇ!」 絶叫する。 森はただその声を木々の間に吸い込んだ。 この森にはもう他のゆっくりはいない。 ゆえに救いはもたらされない。 この森に捕食種はいない。 ゆえに喰われて死ぬという救いはもたらされない。 森は残酷なほど静かで、壮絶に無慈悲だった。 ただ、ひとつだけれいむに死をもたらしてくれるものがある。 それは、時間。 ゆるやかに、しかし確実に、れいむを殺してくれるだろう。 だが、それはあまりにも遅い。れいむが望まない「ゆっくり」だ。 ゆっくりを、叫ぶだけ。 れいむが死ぬまでにできて、ずっと続けたことは、ただそれだけだった。 それから数年後。 ゆっくりのいなくなった森は切り開かれ、別荘やゴルフ場ができた。 人間のための施設で埋め尽くされた。 そこには、ゆっくりの暮らしていた痕跡など何一つ残らなかった。 了 by触発あき 元ネタ絵 byM1 触発あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓↓じゃあこれ見んなよカス わざわざ嫌なものを見に来る程頭がわるいのか? -- 2016-01-31 15 09 01 ↓お前が狂ってる -- 2014-08-24 19 24 02 このSS見て虐待したいなんて言う奴は頭が狂ってる -- 2012-09-18 20 24 51 __ 〈〈〈〈 ヽ 〈⊃ } ∩___∩ ∩___∩ | | | ノ --‐ 、_\ | ノ ヽ ! ! 、 / ,_; ; ;ノ、 -=・=- / ● ● | / ,,・_ | ( _●_) ミ | ( _●_) ミ/ , ’,∴ ・ ¨彡、 |∪| ミ 彡、 |∪| / 、・∵ ’ / ヽノ ̄ヽ / __ ヽノ / / /\ 〉 (___) / / / -- 2012-04-05 20 21 23 親れいむよくぞ頑張った!天国で永遠にゆっくりしておいで…。 -- 2012-03-18 09 34 46 人間の食べ物しか食べられない赤まりさざまあみろ!! 永遠に赤まりさは泣け、苦しい顔をして叫びながら大号泣しやがれ!!!! -- 2012-03-03 23 02 48 れいむ頑張ったのにな~。普通の野良との子供なら幸せになれたのにな~。その幸せを俺らが潰すんだがwww -- 2011-12-21 19 51 43 お食べなさいしてやったところで意味なくね? 親の体の餡子なら食えるかもしれんけど、それ喰い尽くしたらもう食えるもの無いしょ 舌肥えた状態で作られてるんだし。 てかそれ以前に食料を集める技術がないだろうし。 -- 2010-11-15 05 00 17 自分の餡子を食わせる選択肢はなかったのか? -- 2010-10-09 11 43 35 幸せという言葉ほどゆっくりに似合わない言葉はないな。やつらは不幸の申し子だから。 -- 2010-09-03 19 18 08 赤ゆは不幸に死ぬために生まれてくるんだね。ざまあ。 -- 2010-08-20 11 29 09 途中までだけど、強く生きたれいむだなぁ ゆっくりの生きざまを見て、我が身の在り方を恥じるなんて…… -- 2010-08-08 01 33 58 取り合えずこの赤ゆを虐待したい 特に意味は無いが、赤ゆと言うだけで虐待したくてQNQNする -- 2010-07-27 00 43 02 ゆっくりの不幸は蜜の味だわ。 -- 2010-07-26 22 37 59
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どうすればいいのだろう 作、 茄子 まりさは苦悩していた。それは 『赤ん坊』だ、親を馬鹿にしているのだろうか 自分のいうことをまっったく聞かない どうすればいいんだろう、れいむも話を聞かないし… 「いい!?おとうさんのまねをしてするんだよ!みてて!」 そう言って親まりさは肛門を地面に触れるか触れないぐらいに 近づけて、『うんうん』をした、これが正しい『うんうん』の仕方 「おとーしゃん…なにうんうんしてるの?ばきゃにゃにょ? こどみょにきょうもんみしぇてはずかしきゅにゃいにょ? しゅーちぷれいにゃにょ?」 「みょういいよみゃりしゃ、うんうんとうちゃんはほっといて ごはんしゃんをたべようよ」 「…ッ!!」 これだ、こうやって親の話を聞かないのが悩みなのだ しかも妻のれいむは… 「さっさとかりへいってこいッ!!!」 どうすればいいんだろう… 「ごはんしゃんもたべたしうんうんしゃんをしゅりゅよ!!」 「しゅりゅよ!!」 果たしてちゃんとできるのか親まりさはどきどきして見守りました 「うんうんしゅりゅよーーーっ!」 赤まりさはひっくりかえりながらうんうんをしました 案の定顔にうんうんが付きました 「ゆっぴゃあああ!!くしゃいいいい!!!」 隣では赤れいむがうんうんにはまっていました、 どうして… 「うんうんくしゃいいいい!!!!」 「ゆぴゃあああああああああ!!!」 「しょうがないね、ちゃんとまりさのを見てなかったから こうなったんだよ!!」 そう言って親まりさは赤ゆ供をぺーろぺろしました 所が、 「なにきょどものうんうんしゃんにゃめてりゅの?」 「しょんにゃにりぇいむのうんうんしゃんにゃめたいの?」 「ッ!!」 さすがに親まりさも堪忍袋の緒が切れたようです 刹那、親まりさが赤ゆを突き飛ばしました、 「「ゆっぴゃああああああ!!!」」 「にゃにしゅりゅにょおおおおお!!!」 「しどうだよ!おやとしての!!!」 「ふざけるなあああああああああアッ!!!」 なんと親れいむが親まりさに向かって タックルをしたのです 「ゆべえええええええええ!!!!」 「なにがしどうだよ!!このこたちは こどもなんだよっ!!おやなんだから なんだっておしえなきゃいけないんだよっ!! じっくりじっくりとね!!! まったくこれだからまりさはだめなんだよ! かりしかのうがないくせに!!! だめおや!ぎゃくたいちゅう!! このくそあんっこさんがああああああああああ!!!」 すると、まりさの頭の中で何かが 『はじけました』 なやむ?どうすればいい? そんなのかいけつするのはかんたんだ それはっ… 「ゆっぎゃああああああッ!!!!」 「れいむがいけないんだよ!!!」 まりさは帽子に隠していた『棒』を れいむに突き刺しました 「いだいッ!!はなぜっ!!!」 「ゆははははははハッ!!!」 まりさは口を一の字に振りました するとどうでしょう、 綺麗にれいむの体が一の字切れたではありませんか 「ゆぎゃああああああああッ!! くそでぃーぶいがああああ!!!」 「くるしまくるしめくるしメッ!!!!」 まりさは踊っていました、れいむも踊っていました それは『死の踊り』あんこが飛び散る、踊りッ!!! 「ゆはー…ゆはー…」 「…………」 ペースト状になったまりさはものすごい快感におぼれました それはカタルシス、あぁ、また味わいたい、 まりさは後ろを向きました、そこには おびえている2匹の子供、 「おちびちゃん…」 「「っぴぃッ!?」」 赤まりさのはらからちーちーがでてきた 「おもらししちゃだめだよぉ 『掃除』しなきゃねッ!!」 親まりさは赤まりさの髪をくわえて ちーちーした場所に叩きつけました 「こうやってッ…そうじッ…するんだよッ!!!」 親まりさは赤まりさを地面に8の字の形に 擦り付けてました、 「ゆぴゃあッ!!やべッ!!やべでッ!!」 「だめだよ!じぶんがしたことは じぶんでかたづけなきゃねっ!!!!」 ぶちゅ… 「あはははっはああああああああ!!!」 又、この世のものとは思えない快感に 酔うまりさ、 解釈 きゅりゅってるよ!? (くるってるよ!?) にゃんであのばきゃおやはみんにゃを (なんであのばかおやはみんなを) きょりょしたにょ!?つぎはりぇいむのばん? (ころしたの!?つぎはれいむのばん?) きょろしゃりぇるの?あのばきゃに!? (ころされるの?あのばかに!?) その時、赤れいむは思い出した 親まりさの後ろからタックルして ぼろぼろにしたことを… しょうだ…りぇいむはあいつに (そうだ…れいむはあいつに) あんなきずをおわしぇたんだ!! (あんなきずをおわせたんだ!!) ほんきでやりぇばきゃてる!!! (ほんきでやればかてる!!!) 正直都合のいい妄想ですけどね まだ、まりさは快感の余韻に 浸っている、 赤れいむはまりさの後ろに回り… タックルッ!!!!! 「ゆふん!!りぇいむのすとろんぐたっくる!! いたしゅぎてちにぇ!!!!」 「…にげればいいものを…ほんとばかだね」 「ゆ?」 ビリリッ!!! 赤れいむの自慢の髪飾りが破れた いや、破かれた、まりさは、知能を得たのだ、 『ゆっくりを殺す知能!苦しませて殺す知能!』 「ゆわあああああ!!りぇいむのじみゃんの きゃみかじゃりいいいいいい!!!!!」 「ゆふふふ…もっと苦しませて、殺してあげるよ!」 知能も得たのだ ぶちゅ しゅみましぇん ぐちゅ やめて ゆるちて どちゅ ゆっぴゃあああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 「まだ、味わいたいこの感覚に」 まりさは群れへいどうしていったのだ
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「ふたば系ゆっくりいじめ 481 虐待・後篇/コメントログ」 狂人が -- 2010-03-02 18 11 22 とりあえずその結婚式あげた瞬間両親族から縁切られるのと会社で白い目で見られるのは免れないな -- 2010-03-06 03 19 11 ↓自分に似ているからかわいそうだと思うんですねわかります。余白あきさん面白かったです。ところでお兄さんのほうは虐待でなく虐殺お兄さんなのでは? -- 2010-03-08 21 02 55 ひでえ内容とコメントw -- 2010-05-26 08 32 28 ウホッ!!!エグいSSだったな -- 2010-06-02 13 25 11 全てが凝縮されている感じがした -- 2010-06-09 23 14 48 すっきりー -- 2010-06-20 21 13 38 これぞ虐待! -- 2010-06-24 22 37 16 二人の結婚式の話し読みたいです。 -- 2010-06-28 22 21 36 うげぇ。 -- 2010-07-12 00 07 34 面白かった 何だかんだ言ってお似合いのカッポォーですな それにしても赤まりさの我が儘振りには思わずぶっ潰したくなってしまった、お前の所為で親が苦しんでるだろうがよ!w -- 2010-07-12 01 24 05 赤ゆは苦しんで死ぬためにうまれてくるんだね。 -- 2010-07-28 02 57 50 HENTAIお姉さんと虐殺お兄さんですな -- 2010-08-03 14 37 13 ↑ここではこれが普通。お前が狂人w 満足! すっきりーwww ただ自分で潰したいwww -- 2010-10-11 18 13 31 あれ、結婚できなくなるかと思ったのに意表を突かれたぜ… お食べなさいをすれば、意趣返しできたのになぁww -- 2010-10-12 19 21 26 とてもゆっくりできました! 確かにお姉さんの言うようにあっさり潰したら勿体無いですよね 徹底的に追い込んで心を砕かないとw ただお兄さんの赤ゆの「ちゅっ、ちゅぶれりゅ!」を我慢出来ずに 一気に潰しちゃう気持ちも分かりますけどねw ともあれ夫婦で共通の趣味を持てる事は素晴らしい事ですね 人に言えない趣味ですとなおさらですw -- 2010-11-11 23 02 12 前編で、アンチ虐待と結婚しなくてよろしいと書き込みかけたけど安心しましたwww 二人に祝福を。 ゆっくりにZETUBOUを。 -- 2010-12-18 21 28 50 「ちゅっ、ちゅぶれりゅぅぅ!」と言われて潰さないのはもはや失礼に値する。 -- 2011-01-09 19 32 50 ゲームの理由はこれか…… -- 2011-04-27 22 09 08 面白いねー リアルだねー 作者はリアルに虐待経験あるねー -- 2011-07-05 22 45 08 HENTAIお姉さんて、いいよね -- 2011-09-07 02 22 41 つい先ほど前作の方でお姉さんをゴミを可愛がる異常者と書いてしまったが前言を撤回させてくれ このお姉さんは常識人なうえに自分の中に確固たる芯のあるとても素晴らしいお姉さんだよ。 -- 2011-11-04 17 33 47 正直なところ、なんか雑な虐め方する男だなあと思ってしまったがオチで納得。 虐殺お兄さんと虐待お姉さんのカップルだったんだね。 -- 2012-03-25 20 11 13 か カップルでしたか・・・俺も非常識 とか書いてしまいました。すみません。 -- 2012-05-05 00 18 07 この二人のガキが誘拐されて虐待されて殺されればいいのに -- 2012-09-21 23 12 51 ↓アンチさんはこないでねー、わかれよー -- 2012-09-27 22 40 56 後日、アンチは内臓ずたずたにやられました -- 2014-05-03 02 29 18 確かにただ闇雲に潰すだけでは三流と言われても仕方ないかもしれんな・・・ -- 2014-06-05 17 32 40 結婚おめでとう -- 2019-03-31 22 20 30 ありがとうございます😊😊😊 -- 2019-05-27 17 50 38 うるさい!死ねば? -- 2019-05-27 17 51 40
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『遠い海から来たゆっくり 猛る母性』 39KB 越冬 群れ 自然界 現代 独自設定 うんしー ぺにまむ 蠢動と停止の続きです ※「遠い海から来たゆっくり 異郷にて」 「遠い海から来たゆっくり 冬、来たり」 「遠い海から来たゆっくり 蠢動と停止」の続きになります。 まだここでは完結しませんので、ご注意ください。 『遠い海から来たゆっくり 猛る母性』 まりさがいなくなってから、れいむは暗闇で一人ぼっちだった。 れいむはまりさの凶行がショックだった。 れいむはまりさとは別の形で、自分に諦念を抱いたゆっくりだった。それほど美ゆっくりでないのは、幼い頃から分かっていた。だけどれいむはハート美人、ちょっと性格悪いかもしれないけど、実はいいゆっくり……それがれいむのコンセプトなのだ。しかし、誰も理解してくれなかった。 そんなれいむの価値を理解してくれたのが、あのまりさだった。 ずっと一緒にゆっくりしようと約束した当初は、もっと素敵なゆっくりが自分の前に現れ次第乗り換えられないかなぁと思う時もあったのだが、なかなかそんな機会は到来しなかった。また、せっせとご飯さんを持ってきてくれるまりさを見ていて、こんな生活も良いかと思うようになっていた。だから、身の回りのことはせっせとやった。二匹で仕事を分担すれば、後々ゆっくりできることぐらいは知っていたのだ。 今まではうまくやって来たのだ。れいむは知っていた。まりさがれいむに心底惚れているからここまで尽くしてくれることを。だから、それに応えるためにれいむもそれなりに頑張ってきた。 この北の大地で「冬眠」が始まったとき、れいむは不安でいっぱいだったが、すぐに巣穴の中がある種の楽園であることに気がついた。 おちびちゃんはいなかったが、狩りはしなくていい、動かなくていい、あったかい洋服がある、たくさんのご飯さんがある、そして何よりゆっくりできる時間がたくさんあった。 なのに、まりさはゆっくりできなかった。ご飯さんをたくさん食べてはいけないと言っていたし、すっきりすることも拒絶された。 まりさはこの群れに来てからというもの、群れのことばかり心配して、れいむとゆっくりする時間は削られる一方だった。 なんで、まりさがここまでゆっくりできないゆっくりになってしまったのか、れいむには見当もつかなかった。 「ゆっぐ……れいむのとでもゆっぐりじだもみあげしゃん……ぺ~ろぺ~ろ」 まりさから暴行を受けてから数時間、れいむはずっと自慢のもみあげを元に戻すべくぺ~ろぺ~ろし続けていた。だが、まりさにちぎられ、踏まれ、ぐじゃぐじゃにされたもみあげがれいむの体に戻ってくることはなかった。 「まりさはほんっどにぐじゅだよっ! いままでれいむがあんなにゆっぐりざせであげだのにっ! 恩を仇で返されたよっ!! じねっ! どこかでのだれじぬといいよっ!! ばーきゃばーきゃ!!」 れいむはぶつくさと文句を言いながら、なおももみあげをぺ~ろぺ~ろし続ける。その無駄な行為を諦めたのは、おなかがぐーぐーなってからだった。 「ゆゆ? れいむはおなかがすいたよっ! とりあえず、む~しゃむ~しゃするよっ! どんなときでも、む~しゃむ~しゃすればゆっくりできるんだよ!!」 だが、おうちに持ち込んでいた群れの備蓄食糧は食べ尽くしてしまっていた。また取りに行かなければならない。れいむは体を休めていたベッドからそろそろと降り、洞窟奥の食糧備蓄庫へと向かった。 「ゆ!? しゃ、しゃぶいいいいいい!! なんなのごのざむざはっ!? ゆっぐりできないいいいっ!!」 おうちの外は、冬眠を始めて以来かつてないほど寒くなっていた。まりさが外出する際に、洞窟入り口の栓を取り除いたことで冷気と雪が入り口付近に侵入するようになっていたのだ。この冷気のせいで、洞窟の入り口近くにおうちを構えていた、めーりんとありすの一家は冬眠から目覚めることのないまま凍って永遠にゆっくりした。後は春になり、死体がゆっくりぐずぐずに溶けていくのを待つだけだった。 「さぶいよっ!! なんなのこれはっ!? 全然ゆっくりできないじゃないっ!!」 れいむは何に対して罵ればいいのかも分からないまま、食料備蓄庫へと懸命に跳ねた。もし、まりさ同様に、もみじが拾ってきてくれたゆっくりの洋服がなければ、跳ねることもままならず、震えて永遠にゆっくりしていたことだろう。 そして、食糧備蓄庫に行くと、口の中に詰め込めるだけのご飯さんと共に帰路に着こうとした。だが、それはできなかった。入り口から冷たい風が吹き込み、れいむのおうちへの帰宅を邪魔するのである。 「さて、れいむはゆっくり帰ってむ~しゃむ~しゃするよ!……ゆっびぃぃぃぃぃっ!! 寒いよぉぉぉぉぉっ!! 風さんかわいいれいむをゆっくりさせでよおおおおっ!!!」 れいむのおうちそれ自体は、風の入り込みにくい、洞窟内でも比較的暖かな場所に設けられていたが、そこに行くまでにはゆっくりできないくらい寒い道を跳ねなければならなかった。 「ゆぎぎっ! ゆびぃぃぃっ!! これじゃあ帰れないよ!! 仕方ないから、れいむは一夜の宿さんを借りさせてもらうよっ!!」 そう言って、れいむは手近な横穴に飛び込んだ。そこはみょんとさなえの番の住むおうちだった。 「ゆっくりお邪魔するよ! みょんとさなえはゆっくりしていってね! れいむは勝手にゆっくりさせてもらうよっ!!」 だが、みょんとさなえから返事はなかった。当然だ、二匹は冬眠の最中にあり、深い眠りについていたからだ。寄り添うようにして眠るみょんとさなえの表情はとてもゆっくりしていて、れいむは少しだけ、まりさとのゆっくりした日々を思い出してしまった。れいむはまりさの凶行を許せなかったし、なぜ、あんなことになったのか理解できなかったが、その感情は昔の淡い思い出まで侵食することはなかったのだ。 ぎこちない動きですーりすーりをして、初めてのおちびちゃんを授かった頃が懐かしかった。 「ゆぅ……おちびちゃん……れいむのとてもゆっくりしたおちびちゃん……」 れいむははらはらと涙を流しながら、備蓄庫から持ってきたどんぐりをむ~しゃむ~しゃした。南の島出身のれいむには、少し苦く感じられるどんぐりは、今日はちょっとだけしょっぱかった。 おなかいっぱいになると、れいむは少しここで眠らせてもらうことにした。どうせおうちの主は冬眠しており、眠っている群れのゆっくり達がちょっとやそっとでは起きないことは、「冬眠」がなんだか分かっていないれいむでも気付いていた。 「ゆっくりお邪魔するよ! みょんもさなえもとってもゆっくりしたゆっくりだね!」 寒さをしのぐために、よじよじと二匹が眠っているベッドの真ん中に割り込むようにして潜り込む。 「ゆゆっ!?」 れいむはびっくりした。みょんの肌が驚くほど滑らかだったのだ。これほどゆっくりした肌のゆっくりは初めてだった。みょんはとてもゆっくりした美ゆっくりだったのである。いや、イケメンならぬイケみょんであった。 「す~りす~り……ゆぅっ!! みょんはとってもゆっくりしているよぉぉぉっ!! これはすごいよぉぉぉっ!! す~りす~りが気持ちいいよ!!」 れいむはす~りす~りをまりさに拒否された時、れいむの方から誘っておいて断られたことで、そのないーぶはーとを大いに傷つけられていた。そして、今確信した。れいむは、再びゆっくりするために、ゆっくりした美ゆっくりとおちびちゃんを作らなければならないことを。みょんやさなえの事情など、れいむの頭のどこにも引っかかってすらいなかった。今はおちびちゃんのことでいっぱいだったのだ。 「みょん、ゆっくり起きてね! れいむはさなえが眠っているうちにみょんとゆっくりしたすっきりをしたいよ! ゆっくりしないで起きてね! れいむを焦らさないでね!」 だが、みょんは名前を呼んでも、ゆすっても、ぺ~ろぺ~ろしても、ちゅっちゅしても起きなかった。冬眠中のゆっくりは、思い切り体当たりするぐらいのことをしなければ起きないのである。れいむはため息をつき、仕方なく、二重に着込んだゆっくりの洋服をがさがさと脱いだ。保温性の高い服のせいで、ちょっとムレた、しっとりでっぷりした肌が露になる。 「れいむのすいっみんっかんは愛があるよ! だから、ゆっくりしてイってね!」 ぺにまむを使ったすっきりはできないが、す~りす~りのすっきりならできる、そう考えたのだ。 「す~りす~り……ゆほぉっ!! すべすべだよっ! みょんはとってもゆっくりしているよっ! みょんもれいむに夢中になってゆっくりしてねぇぇぇ!!」 一方的に粘液を撒き散らしながられいむはす~りす~りのスピードを上げていく。これほど燃え上がったす~りす~りは初めてだった。 「ゆ゛……ゆひ……」 一方のみょんはまだ目覚めていなかったが、どことなく苦しそうな表情でうなされていた。 そもそも、冬眠はただ眠っているわけではない。余分なエネルギー消費を抑えて、低い代謝で体が死なないように維持管理を行っているのである。そう簡単に、目覚めて通常の活動状態、例えばいきなり逃げ出すとかいつものようにしゃべる、というわけにはいかないのだ。 すっきりはかなりエネルギーを消費する行動である。そのため、断続的な冬眠を行う、ここのゆっくりが冬にすっきりをしようと思ったら、まず低代謝の冬眠モードになってる体を通常モードに切り替え(車のギアを変えるようなものである)、冬眠中に失った分の栄養を補充しなければならない。 そして、それは通常では有り得ないことなのだ。たまに人間がいたずらで彼らを叩き起こさない限り、気候の異常で冬に暖かい日がある程度続きでもしない限り、自分達ですっきりをしようとすることすらできないのである。 「ゆふぅ~……きもちいいよぉぉぉぉ~!! すごいよ、みょん~! ゆひっ!! ゆふうううううっ!! ゆほほほっほほっ!!」 ゆっくりは冬眠中、代謝が下がって、いろいろな体の機能が低下している。しかし、す~りす~りによる粘液の分泌はゆっくりの意志とは別に機能しているのか、少しずつみょんの表面もじっとりしてきた。ある種反射のようなものなのかもしれない。 れいむはどんどんす~りす~りのペースを上げていった。 「ゆっほぉぉぉぉっ!! きもぢいいよぉぉぉっ!! でもいけないよぉ、れいむにはまりさがいるんだよぉぉぉぉっ!! ゆほほほほほ!!」 「……!! ぬふぅっ!!」 れいむが勝手なことを叫び始めた段階で、やっとみょんが冬眠から強制的に目覚めさせられた。 「ゆっべぇぇぇぇぇっ!!? なにこのれいむぅぅぅぅっ!? どぼじでみょんとすっぎりしてるみょぉぉぉぉんっ!?」 だが、時既に遅しであった。 「「すっきりーっ!!」」 あっという間にみょんの額から蔓が伸び、三匹の赤ゆっくりがその蔓に実る。 「ゆわぁぁぁん!! れいむとみょんの赤ちゃん、とってもゆっくりしているよぉぉぉっ!! きっと二人ににて、ゆっくりした美ゆっくりに育つよぉぉっ!!」 「ゆがああああっ!! なにごれぇぇぇぇっ!? ゆっぐりできないみょおおおんっ!! さなえ゛~!! みょんをだずげでぇぇぇっ!!」 さが、さなえは起きない。隣で泣き叫んだくらいでは起きないのだ。 「ゆゆ! みょんは失礼だねっ! れいむがいるのにさなえの名前を呼ぶなんてっ!! でもれいむは今機嫌がいいから、すぐさなえのことを忘れさせてあげるねっ!!」 「ゆひっ!?」 言うが早いか、れいむは再び情熱的にす~りす~りを始めた。先ほど分泌された粘液がれいむとみょんの体にべっとりと付着しているので、すぐにす~りす~りするペースが加速していく。主にというか完全にれいむによって。 「ゆぎゃああああっ!! やべでっ! みょんはれいむとすっきりしだぐないみょんっ!! ゆんやぁぁぁぁぁっ!!」 だが、毎日しっかり食べて肥えたれいむに、冬眠から強制的に目覚めさせられたばかりで、体格も体力も落ちているみょんは敵わなかった。れいむに体重をかけられてす~りす~りさせると、脱出することは不可能だった。 「「すっきりー!!」」 そして、二度目のすっきりが宣言され、今度はれいむの方から蔓が伸びた。 「ゆゆ~ん!! ゆっくり! ゆっくりぃぃぃっ!! とってもゆっくりした赤ちゃんだよぉぉぉっ!!」 れいむは蔓に実った四匹の赤ちゃんに喜びの涙を流した。 「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」 その横にはげっそりした姿で、痙攣しているみょんの姿があった。 冬眠中に無理矢理すっきりさせられ、その上赤ゆまで実らされた。冬眠のために低代謝になってるとは言え、みょんの体は蓄えた栄養の残量が減少していた。そろそろ起きてむ~しゃむ~しゃしなければいけないタイミングだったのだ。 だが、む~しゃむ~しゃする余裕すら与えられず、無理矢理すっきりさせられたことで、みょんの体は一気に赤ゆに栄養を吸い取られて枯れ果てたのだった。子供のゆっくりがすっきりすると、黒ずんで死んでしまうのと同じだ。体は大きくても、赤ゆやにんっしんを支えられるだけの栄養がない状態だったのだ。 「ゆぎょべぁぁぁぁぁっ!!」 みょんは幾たびか大きく痙攣した後、一気にホワイトチョコレートを吐いてしまった。おまけにあにゃるからも得体の知れない液体が吹き出る。 「ゆぎゃあああああああああっ!! れいむの天使のように滑らかなびはだに得体のしれない液体がぁぁぁぁぁぁっ!! ゆっげぇぇぇぇぇぇっ!! ご飯さんにもなんか、かかっでるぅぅぅぅぅっ!!!」 れいむはそのまま、みょんとさなえのおうちから転がり出ると、寒さを避けるために、また別のおうちへと逃げ込んでいった。 「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」 みょんは餡子を吐いた段階で意識を失っていた。それからしばらくは生きていたが、翌日、そのまま静かに永遠にゆっくりし、その頭上に実っていた赤ゆも運命を共にした。冬眠中のさなえは最後までみょんが死んだことに気付けなかった。 それから一ヶ月が経過した。 ひんやりとした洞窟の中で、れいむは己が幸せを噛みしめていた。寒い空間ではあるが、たくさんのご飯があり、ゆっくりできる時間があり、そしておちびちゃんもできた。 「おきゃーしゃん、ゆっくいだじぇ! ゆっくいだじぇ!」 「みゃみゃっ! みょんにおうたさんうたってみょんっ!」 「ゆえーん! しゃむいよぉぉぉぉっ!! おきゃーしゃん!! れいみゅとすーりすーりしてぇっ!!」 「れいみゅのぶりりあんとうんうんたいむ! はっじまっるよーっ!!」 れいむは数えられなかったが、合計で十二匹の子ゆ・赤ゆ達はそこにはいた。永遠にゆっくりしてしまった美ゆっくりのみょんをはじめ、何匹かのゆっくりととてもゆっくりした愛を交わした結果がそこにはあった。 無邪気に自分のゆっくりをアピールする赤ゆ達の姿に、母親となったれいむの頬も自然と緩む。以前、まりさに見捨てられてたとき、まさかこんなゆっくりした幸せが自分のところにやって来るとは思いもしなかった。 「ゆふふ……やっぱり神様はちゃんと見ていてくれるんだね! れいむはとってもゆっくりできているよ!!」 赤ゆ達とす~りす~りを交わし、片方だけになってしまったもみあげでそのゆっくりした頭を優しく撫でる。 「おきゃーしゃん、しゅーりしゅーり!」 「ゆっぴぇ? ゆゆ~ん、みゃみゃだいしゅきっ!」 「おかあさんもおちびちゃん達のことが大好きだよっ! さあ、そろそろむ~しゃむ~しゃしましょうね? おかあさんは狩りに行ってくるよ!」 おうちの隅に蓄えておいたご飯さんをまた食べ尽くしてしまったのだ。たくさんの赤ゆっくりが、急速な成長のためにブラックホーゆのようにご飯さんを消費しているのだ。 母れいむは昨日も狩り(と言っても、食糧備蓄庫からもらってくるだけだが)にでかけたのに、今日も出かけなければならなかった。だが、それは苦痛ではなかった。れいむにとって、おちびちゃんの笑顔に勝るゆっくりなどありはしないと信じていたのだ。ましてや、半分近くの赤ゆは生まれる前に寒さで永遠にゆっくりしてしまったのだ。生き延び、元気に成長してくれているおちびちゃんの笑顔は、その分輝いてい見えた。 「今日もおかあさんはゆっくり狩りをするよ!! 狩りは大自然との闘いだよ!!」 そう言って、母れいむはせっせと備蓄庫に蓄えてあるどんぐりや干した海藻を口に詰め込んで行く。滋養豊かなミノムシやほのかに甘い干しブドウはとっくに食べきってしまっていた。 さすがに、冬眠開始時点に比べれば、食料備蓄庫に蓄えられている食糧は目に見えて減って来たが、それでもまだまだゆっくりできることが見て取れた。 「ゆぅ……でもどんぐりさんは固くておちびちゃんがむ~しゃむ~しゃできないよ……」 子ゆっくりぐらいになればまだしも、赤ゆっくりはまだまだ歯が弱い。母れいむは良く噛み砕いて、たくさんいるおちびちゃんに少しずつ食べさせていかなければならなかった。これは結構な重労働である。 「でも、かわいいおちびちゃんのためだよ!」 母れいむは決意を新たに、備蓄庫からおうちへの帰途に着いた。幸い、今日は洞窟入り口からの風の吹き込みが弱く、外の冷気はそれほど苦ではない。 「れいむはおうちでおちびちゃんの世話をしながら、ゆっくりお歌を教えてあげるよ!!……その前にしーしーするよ!!」 「れいむ! ゆっくりしていってくださいね!!」 「ゆ?」 れいむが挨拶の声にびっくりして振り返ると、そこには一匹のさなえがいた。母れいむにとって、まりさと自分のおちびちゃん以外と挨拶を交わすのは初めてのことだった。 「さなえもゆっくりしていってね!……さなえもご飯さんを取りに来たの?」 「さなえは別の用事ですよ!」 そう言ってさなえはこっそりとれいむに耳打ちするような姿勢をとる。つられてれいむも身を乗り出す。 「実は、みょんとすっきりしたとてもゆっくりしているゆっくりを探してるんです! みょんがあまあまをあげたがってるらしいんですよ!」 「ゆ!? それはれいむのことだよっ! はやくあまあまを……ゆ?」 一瞬にしてさなえの目がゆっくりしたそれから、危険な光を帯びたものへ、ぎらりと変化した。 「おまえかぁぁぁっ!! このクサレどまんじゅうぅぅぅぅっ!!」 「ゆっぼおぇぇぇぇっ!! なにずるのおおおおおおっ!!?」 さなえは渾身の力を込めて、棒切れを突き出した。だが、重ね着したゆっくりの洋服に阻まれてすべり、れいむの左の頬を浅く削り取るに留まった。 「ゆっぎいいいっ!! やべでねっ! ゆっぐりできないよっ!! れいむは……れいむはしんぐるまざーなんだよっ!!」 思い出したように、慌ててしんぐるまざーを強調するれいむ。それは全ゆっくりにとって同情すべき存在のはずだった。事実、れいむとすっきりした冬眠中のゆっくりはみょんも含めて四匹いたが、そのうち三匹が黒ずんで永遠にゆっくりした。残り一匹は、一度目覚めてにんっしんしているのを知りびっくりしたが、低温の前にはなす術がなく、眠りなおしてしまった。必死にむ~しゃむ~しゃはしたようだが、冬眠後まで母体、胎内の赤ゆともに元気でいられるかどうかは厳しいところだろう。 「れいむがみょんをれいぽぅしたんですね! 絶対に許さなえっ!!」 そこには先ほどまでの礼儀正しい口調のさなえはいなかった。一匹の修羅がいた。そこでやっとれいむは思い出した。このさなえが、一緒にすっきりしたみょんの隣にいたさなえであることに。 「ゆぅ!! 何言ってるの!? みょんはれいむの誘いを断らなかったよ!! れいむはれいぽぅなんてしてないよ! ゆっくり理解して……」 ぷるぷると怒りに震えていたさなえの感情が爆発する。 「お前のせいでみょんは永遠にゆっく……許さなえ! この外道、許さなえっ!!」 さなえは幾度となく、体当たりを繰り返してきた。 「うぶっ? なにずるのおおおっ! ゆげっ!?」 れいむはゆっくりの洋服を重ね着しているため、思うように動けなかった。これでは逃げることも、反撃することもままならない。 「怯えろ! 竦め! ゆっくりできないまま永遠にゆっくりしてしまえっ!!」 だが、洋服を着込んでいたことは悪いことばかりでもなかった。重ね着した洋服が衝撃を吸収してしまい、れいむの体には大した衝撃が伝わらないのだ。 さなえもある程度む~しゃむ~しゃはしたのであろうが、本来ならまだ冬眠し続ける気温である。さなえは無理をしていた。ただ怒りだけで動いていたのだ。動きに力が入っていなかった。そして、れいむはさなえの体当たりが大したことないことに気がついていた。 「ゆぷー! みょんがれいむの魅力にめろめろになったから、れいむにしっとしてるんだね! おお、あわれあわれ! くやしかったら、肥やし買ったら? ゆっくり力の差を思い知っていくといいよ!!」 「ゆぎぃぃぃぃぃっ!! じねぇ!! ゆっぐりごろしのれいむはじねぇぇぇぇっ!!」 さなえが絶望的な体当たりを繰り返している間にれいむは体勢を整えていた。そして、さなえが疲弊して、攻撃の手を緩めた瞬間を見逃さなかった。 「今だよ! 倍返しだよっ!!」 たくさんの食糧によって、肥えに肥えたれいむの一撃が、さなえを襲う。 「ゆ?……うヴぉぁぁぁぁぁぁあああ゛!!」 さなえは勢いよく弾き飛ばされ、洞窟の岩盤が露出している部分に叩きつけられた。当たった場所と当たる角度が悪かったのだろう、その下半身は弾ける様に飛び散り、辺り一面を緑色のずんだ餡が覆った。 「……さなえと……みょんの……わせを……お前が……お前がぁ……」 「……」 れいむは呪いをかけるかのように恨み言を吐き続けるさなえを冷めた目で見ていた。 「しーしーしたくなったよ……」 「!!」 忘れていた尿意を思い出したらしい。れいむがやや仰向けに体を倒すと、そのしーしー穴からレーザービームのように勢い良くしーしーが発射され、さなえの眉間を撃ち抜いた。さなえは無言で絶命した。 「ゆっくりできないゆっくりは永遠にゆっくりするしかないんだよ……」 れいむは捨て台詞を残すと、さなえの死体を巣の隅にずりずりと引っ張り、良く踏み散らかして証拠の隠滅をはかった。 「ゆ~……なんでれいむがこんなことを……ゆっくりしたいよ……」 さなえの死体を片付け終わったれいむは、無理に明るい笑顔を作って、おうちに入っていった。 「ゆっくりただいま~! ご飯さんを持ってきたよ!!」 「おきゃーしゃん! ゆっくち! ゆっくちーなんだねー!!」 「ゆっくりお帰りなさい、おかーしゃんっ!!」 「まりしゃはぽんぽすいたのじぇーっ!!」 「ぽーくびっつ!!」 れいむはかわいいおちびちゃん達に余計な心配はさせたくなかったのだ。元気に挨拶を返すおちびちゃんの姿を見て、疲れていたれいむの顔がみるみるゆっくりしたものになっていく。 「狩りはとっても大変なんだよ! だからおかあさんをそんけーしてね! そしておちびちゃん達も周りからそんけーされるようなゆっくりにゆっくり育ってね!」 そう言って、れいむは口の中から次々と食糧を出し、それを噛み砕いては、赤ゆ達に食べさせていった。噛む力の強くなった子ゆ達は、思い思いにどんぐりを拾ってはむ~しゃむ~しゃしている。 「れいみゅのいもーちょ、おねーちゃんとむ~しゃむ~しゃしようね!!」 れいむの長女である子れいむは、母を助けるべく、せっせと妹達に噛み砕いたどんぐりを食べさせていた。 「れいむはとってもゆっくりしたゆっくりだよ……」 我が子の優しさ溢れる行為に思わず涙腺が緩む。れいむは、この長女の将来がとても楽しみだった。 だが、異変はその数日後に起こった。れいむのおちびちゃんのうち、子ゆっくりにまで成長した個体の半分が、群れのほかのゆっくりと同じように長い眠りにつき、朝が来ても目覚めなくなったのである。その中にはあの長女れいむの姿もあった。 「おちびちゃ~ん……とってもゆっくしてるけど、寝すぎだよ……れいむは心配でゆっくりできないよ……」 普通に眠っては起きてを繰り返している子ゆや赤ゆの世話をしながら、いつになっても目覚めない子ゆの姿に、母れいむはやきもきしていた。 このれいむのおちびちゃん達は、南国出身であるれいむと、北国出身であるゆっくりとの間にできた子である。そのため、遺餡子のイタズラによって、冬眠できるゆっくりとできないゆっくりが、寒さに強いゆっくりと弱いゆっくりが生まれていたのである。 寒さに弱いゆっくりは、蔓から落ちる前に永遠にゆっくりしてしまったため、今、ここに生き残っているのは、「寒さに強く、冬眠できるゆっくり」と「寒さに強く、冬眠できないゆっくり」であった。眠りについた子ゆ達は前者であり、子ゆにまで成長したことで、低温による冬眠のスイッチがオンになったのだ。ちなみに赤ゆのうちから冬眠しなかったのは、急速に成長する赤ゆの時期は、成長や代謝を抑制する冬眠の能力が発動できないためと考えられている。無論、れいむはそんなことを知る由もなかった。 れいむが耳をそばだてると、目覚めない子ゆ達はみんなゆっくりした寝息を立てていることが分かる。永遠にゆっくりしているわけではなく、ゆっくりできないことになっているわけでもなさそうだ。 「おちびちゃん、おかあさんがぺ~ろぺ~ろしてあげようね……おちびちゃん、ゆっくりしてるね、でもそろそろ起きてね……」 とりあえず、れいむは気を紛らわせ、他のおちびちゃん達の面倒を一生懸命見ながら、冬眠に入ってしまったおちびちゃん達の目覚めを待つことにした。 「そうだ! れいむはゆっくりお歌を歌うよ!!」 れいむは、冬眠した子ゆを心配する余り、大好きなお歌をここ数日忘れていたことに気がついた。 「ゆ~♪ ゆ~♪……ぼえ゛~っ!!」 「ゆびゃあああっ!! おきゃーしゃんおんちなんだじぇぇぇぇ!!」 「やべじぇええ!! 聞くにたえないみょおおおんっ!!」 「せかいがおわりゅぅぅぅぅっ!!」 だが、壊滅的に音痴であることには、死ぬまで気付きそうになかった。 さらに時は過ぎ、人間の暦でいう二月も半ばになった。時折訪れる温暖な日には、雪が溶け、地面や新しい緑が顔をのぞかせることもあった。だが、その数日後には決まって冬の冷気が勢いを盛り返し、垣間見えた春をすかさず覆い隠してしまう、そんな日が続いていた。 「じゃあ、ゆっくりお歌を歌うよ! みんな!」 「ゆっくり歌うよ!」 「おかーさんと歌うよ! れいむはあいどるになるよ!!」 「ゆっきゅりー!」 「うぃんなー!」 巣の中には六匹の子れいむと、母であるあのれいむが起きてゆっくりしていた。残りの六匹は、成長しないままゆっくりと眠っていた。彼らもだいたい一~二週間に一度くらいのペースで目覚めては、母であるれいむと一緒にむ~しゃむ~しゃやす~りす~りをして、またすぐ眠るというサイクルを繰り返していた。だが、何度か目覚めてゆっくりしたことで、母れいむは彼らの安否についてはかつてのように心配していなかった。 「ゆ~♪ ゆ~♪……ぼえ゛~っ!!」 「ゆぼえええあああああ!! やっぱりおーんち!!」 「あばばば!! まりしゃのみみさんがぁぁぁぁっ!!」 「ぎんががおわりゅぅぅぅぅっ!!」 誰も自分を止めるものがおらず、ご飯さんもたくさんある巣の中で、れいむはゆっくりするために自重しなかった。その代わり、母性も自重などしなかった。 母れいむ一人の手でこれだけのゆっくりしたおちびちゃんを育ててきたのだ。跳ねる死亡フラグとも呼ばれる赤れいむ達だが、無事生れ落ちた個体は一匹たりとも欠けていなかった。寒い中、苦労して「狩り」を行い、うんうんやしーしーをせっせとおうちの外へと捨てた。おちびちゃんがなかなか寝付けなかった時には、かつて暮らしていたとてもゆっくりした南の島の話を聞かせてあげた(南の島での暮らしには当然危険も伴っていたのだが、それらはすっかり忘れていた)。おちびちゃんが成長してくると、ベッドさんが狭くなってきてしまったので、近くのおうちのベッドさんを借りたり、材料を分けてもらって(ちょろまかして)新しくベッドさんを作ったりもした。 その結果、母の愛情を受けて元気いっぱいに育った子れいむ達がそこにはいた。 ちなみに、母れいむにおちびちゃん達ができ、みんなでせっせと群れの備蓄食糧をむ~しゃむ~しゃしていることを把握しているゆっくりはいなかった。 なぜならば、越冬中、ここのゆっくりは空腹を覚えた頃に目覚めてはむ~しゃむ~しゃ、そしてすぐ寝るという生活を繰り返すため、れいむ達に遭遇した個体はほとんどいなかったのである。また、まだこの時点では備蓄庫に食糧を取りに行ったゆっくりも皆無であった。なかなか寝なおさずにゆっくりしていた個体は、れいむのおちびちゃんを目撃したりしていたが、冬の低温の環境下ではすぐに体が冬眠モードに戻ってしまうため、「目撃した」以上のアクションを起こすことは出来なかった。 そんなある日、れいむ達が目覚めるといつもよりも洞窟の中が暖かかった。そして、どこからか湿った土の臭いがした。 「ゆゆ! なんだかあったかいよ……もしかして春さんが来たんだね!!」 この異郷の地の寒い冬をれいむ達はゆっくり過ごしてきた。この地の春はきっと南の島の春とは違うのだろう。だが、冬眠前に、もみじ達が春が来るのを楽しみにしていたことから、きっとあったかくてゆっくりできるのだろう、そう思っていたのだ。 ずっと眠っているおちびちゃん達も、起きて母れいむとゆっくりしてくれるかもしれない、暖かいお外に出ておちびちゃん達とお歌を歌えるかもしれない、緑の野原でおちびちゃん達とぴくにっくさんができるかもしれない…… ずっと薄暗い洞窟に閉じこもっていた母れいむの心は躍った。そして、母れいむは踊る心を抑えきれず、外の様子を見に行くことにした。そろそろ甘い汁気たっぷりの新鮮なご飯さんもむ~しゃむ~しゃしたかった。 「おちびちゃん達、おかあさんはお外の様子を見に行くよ! でも、お外は危ないから、おちびちゃん達はおうちでゆっくり待っていてね!」 「ゆっくりりかいしたよっ!」 「しゃうえっせん!!」 「みゃみゃ! ゆっくちー! ゆっくちー!!」 「ゆーゆゆーん!?」 れいむは、比較的成長している子ゆっくりに後事を託すと、洞窟の出入り口に向かって跳ねていった。ゆっくりの洋服をぐっと引き上げ、寒さに備える。だが、そんな母れいむの後を追ってくるものがいた。 「おきゃーしゃーんっ!! まりさも! まりさもお外を見てみたいんだじぇえええっ!!」 それは子まりさであった。言うまでもなくこの子まりさは、番であったまりさとの間に生まれた子ではない。冬眠しているゆっくりに対する、れいむの一方的なすっきり(すいっみんっかん)によって誕生したゆっくりである。れいむのおちびちゃん達の中でも、特に好奇心が強く、母れいむが話す南の島の話を質問で中断させまくったり、限られた視界の中でも洞窟内を探検しようとしたりと、とにかく元気いっぱいな子であった。 「じゃあ、おちびちゃんだけ特別に連れて行ってあげるね! でもおかあさんから決して離れちゃだめだよ、ゆっくり覚えておいてね!」 「ゆっくりりょーかいしたんだじぇっ!!」 れいむは元気一杯の子まりさを連れて、洞窟入り口に向かう。 かつて、この洞窟の入り口の狭まった部分には、枯れ木や枯れ葉とゆっくりの唾液で作った栓がしてあったのだが、れいむの番であったまりさが外に出るために壊してしまっていた。しかし、その後、雪が降り積もったことで、入り口は再び封鎖されて今に至る。 「ゆゆっ? お外からあったかい空気が入ってきてるよ!!」 だが、雪が溶けたのであろう、洞窟入り口には、れいむ達を邪魔するものはなかった。そして、外からは暖かな空気が流れ込んでいた。母れいむと子まりさは喜び勇んで外へと出た。 「……ゆ?」 外は真っ白だった。確かに大気は暖かかったが、辺りはまだ雪景色に覆われていた。気温は二月にしては高いのだろうが、それでも風が一陣吹くと、母れいむと子まりさはその寒さに震え上がった。 「ゆっぴゃああああああああっ!! つめたい!! こりゃつめたくちぇゆっくいできにゃいんだじぇっ!!」 ゆっくりの洋服を重ね着している母れいむはともかく、子まりさには、あんよから直に伝わる雪の冷たさがきつかった。 「ゆえええええん!! やめでにぇ! まりさにいじわりゅしにゃいでほしいんだじぇっ!!」 「おちびちゃん! れいむの可愛いおちびちゃん! おかあさんのお口の中でゆっくりしようね! お外はまだゆっくりできなかったね! おうちでゆっくりしようね!」 雪の冷たさに泣き出してしまった子まりさ、母れいむは子まりさを慌てて口の中に収納し、おうちへと戻ろうとした。その時だった。 「おおいなる捕食者、すぱいや~まっ!」 上方から一匹のゆっくりが子まりさ目掛けて飛びかかってきた。金髪に黒いリボンをした、牙の鋭いゆっくり、やまめである。洞窟入り口に生えている低木に隠れていたのだろう。一時的とは言え、この暖かい風によって、活動を開始したのはれいむ達だけではなかったのだ。 「情け容赦のないゆっくり、すぱいや~ま!」 「ゆんやぁぁぁぁぁっ!! まりじゃをはなじでぇぇぇぇっ!! まりじゃはかわいいんだよ! たべちゃだめなんだゆぶっ!?」 やまめは瞬く間に子まりさを口にくわえると、がぶりと一噛みした。牙から麻痺毒が注入され、子まりさが痙攣を始める。 「ゆ゛っ……ゆ゛……」 「さらだばー!」 やまめは子まりさを捕まえると、素早い動きで低木の茂みに飛び込み、逃亡をはかった。 「れいむのっ!! れいむの可愛いおちびちゃんをがえぜぇぇぇぇぇ!!」 れいむは全力で体当たりをしかけた。れいむはいろいろと問題あるが、その母性とおうちの管理は本物、そうまりさが評価した母性の力が闘争心へと昇華されたのだ。 「ゆびゃあっ!?」 「れいむのおちびちゃんっ!!」 やまめはそのまま、雪へと叩きつけられた。次に、まだ切り離していなかった尻から伸びる糸の弾力によって、バンジージャンプのように枝へと戻り、全身をしたたかに打った。子まりさは放り出され、それをれいむがもみあげでダイビングキャッチする。 れいむはゆ、ゆ、と痙攣する子まりさをそっと雪の上に下ろすと、やまめをにらみつけた。 「れいむのかわいいおちびちゃんを殺そうとするなんてゲスはせいっさいっだよ!! あまあまを持ってきてね、持ってきたらせいっさいっするよっ!! 持ってこないなら、せいっさいっするよっ!!」 「!!」 やまめは自分で糸を切り、雪の上に柔らかく着地した。 やまめの目がさっきまでの、ゆっくり特有ののほほんとしたものから、ギラリと輝く野生のそれへと変わる。ゆっくりを麻痺させられる毒牙を持つ捕食種やまめと、冬眠中の充実した生活によって、立派な体格を得るに至ったれいむ、いずれにしろ次の攻撃が生死をわけることになると瞬時に理解したのだ。そして、逃走という選択肢は、今この二匹にはなかった。 「れいむのらいおんさんもしーしーちびるタックルで、ゆっくりじねぇぇぇぇぇぇっ!!」 先に飛び掛ったのはれいむだった。 「決して逃げない、勇気あるゆっくり! すぱいやーまっ!!」 やまめは尻から糸を飛ばす。 「ゆげぇっ!?」 糸はれいむの髪に付着した。やまめは飛び上がり、糸の反動の突進してきたれいむの動きによって、その背後へと回り込む。 「ゆっぎゃあああああああああああああっ!!」 ぶすり、という音と共にれいむの背中に激痛が走った。 「やべでねっ!! なにじでるのっ!! れいむの世界がうらやむ美肌に傷つけないでねっ!!」 背中が熱くなり、何かが体内に入ってくるのが感じられた。毒をれいむに注入しているのだろう。れいむは恐怖で真っ青になったが、子まりさのことも、生き残ることも、ゆっくりすることも、何一つあきらめてはいなかった。 「れいむをゆっぐりざぜないげずはじねぇぇぇぇぇっ!!!」 やまめごと背中を全力で近くの木に叩きつける。 「やばっ……め……」 れいむの肥えた体と木にサンドイッチされたやまめは、生キャラメルを吐き出し、れいむの背中から剥がれる様にして雪上に倒れた。その両目は圧迫によりつぶれ、体も歪にひしゃげている。 「おおいなる力には……おおいなるゆっくりが……」 「ゆっぐりじないでじね!」 そして、飛び上がったれいむによってのしかかられ、やまめは永遠にゆっくりした。雪上には、茶色い染みだけが残った。 「おちびちゃん! しっかりしてね! れいむのかわいいおちびちゃん! ゆっくり! ゆっくり!」 母れいむは、自身の背中の怪我のことも忘れ、必死に子まりさをぺ~ろぺ~ろした。 「ゆ゛……ゆ゛……」 だが、子まりさは相変わらず、痙攣するだけだった。 結局、母れいむも子まりさも、初めての銀世界をゆっくり鑑賞する間もなく、洞窟へと撤退していった。母れいむが内心期待していた、新鮮なご飯さんはお預けとなった。 母れいむは子まりさをおうちに置くと、そのまま食糧備蓄庫へと跳ねて行った。とにかく子まりさに栄養をつけさせて、ゆっくりさせないといけない。途中、この群れの変態てんことすれ違う。 「ゆ! てんこも起きたの? ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり~……ちょっとお散歩してたんだけど……てんこは寝なおすわ……ふぁあ……」 まだまだこの群れのゆっくり達は冬眠しなければならないらしい。冬眠も終わりが近づいてきたのか、ぼちぼち、巣内をうろつくゆっくりの姿を目撃するようになってきた。だが、相変わらずみんなすぐ眠り直してしまうため、挨拶以上の交流はなかった。 「ゆぅ~……もうご飯さん随分減ってきちゃったよ……これじゃあ全然ゆっくりできないよ……みんなまだ、起きて狩りに行かないなんて……ゆっくりしすぎだよぉ……」 れいむは食糧備蓄庫をのぞきながら、ぶつぶつと身勝手な不平を漏らした。もちろん、本気でみんなが自分のために狩りに行ってくれるなどと信じてはいなかったが、楽な状態で食糧とおちびちゃんに恵まれたことで、れいむの心は、その下腹のように弛んで来ていた。 それでも、可愛いおちびちゃんのため、生死の境をさまよっている子まりさのために、れいむは必死に備蓄庫の食糧からゆっくりしたご飯さんを探し出す。 甘い味がする干した果実の類は真っ先に食べつくしてしまった。比較的食べやすかったどんぐりや、滋味溢れるミノムシ、食べなれた味である干した海藻ももうほとんどない。 残っている食料は、味は悪くないが、堅くて割るのが難しいオニグルミ、群れのゆっくりが人間の町から拾って来た安物ゆっくりフード(パサパサしていてまずい)、そしてれいむには食べ方がさっぱり分からないトドマツの球果…… 備蓄庫の一角には枯れ木の破片が積み重ねられていた。ここのゆっくりはこんな、ゆっくりできなさそうなものまでむ~しゃむ~しゃするのだろうか? れいむはそう思ったが、さすがに枯れ木までむ~しゃむ~しゃしてみる気にはなれなかった。 仕方なく、食べやすそうなゆっくりフードをたくさん、面倒くさそうなオニグルミを少しだけ持ち帰ることにした。ふと、れいむは備蓄庫の隅に注意を向けた。今まで、どんぐりやら干したヤマブドウやらにばかり意識が行って気がつかなかったが、備蓄庫の隅、少しだけ日が当たるところに数匹のゆっくりがいた。 「ゆゆ? ゆっくりしていって……ゆぅ?」 変なゆっくりだった。緑色の髪のそのゆっくりは静かに眠っているようだ。洞窟内の小さな凸凹にすっぽり収まるようにして、体を固定している。まるで動く気配がなかった。 それは、冬眠する前にまりさが見たゆっくり、きすめだった。 ふと、れいむは番であったまりさから聞いた話を思い出した。確か、このゆっくりは、この群れで守り、世話をする代わりにご飯さんを提供してくれるのだと。そして、それはこの髪であると。 「ゆ? ゆっくりしていってね、れいむ! きすめはきすめだよっ!」 近づいたことで、きすめはれいむに気がついたようだった。 「ゆっくりしていってね! きすめはれいむをゆっくりさせてくれると聞いたよ! れいむはご飯さんに困ってるよ! ゆっくりしないで助けてね!」 きすめは困惑したような表情をした。 このきすめ達は、非常時、特に越冬後、まだ春が来たばかりで食糧が十分に確保できない時のご飯さんとして、その髪を提供する代わりに、せっせと群れのゆっくりに面倒を見てもらってきた。だから、髪をご飯さんとして提供するのは承知の上だが、去年よりもその時期が早いように感じたのだ。だが、約束は約束、それに髪は一定量残してもらえば、また光合成によって栄養を蓄え、生やすことが出来る。 「ゆっくり分かったよ! でもあんまりたくさん持っていかないでね! ちょっとだよ! ちょっとでもきすめの髪さんは栄養満点だからね!」 「大丈夫だよ、れいむはちょっとしかもらわないよ、でもおちびちゃんの分もちょっともらってくね! ゆっくり我慢してね!」 そう言うと、れいむはぶちぶちと、きすめの緑色の髪をすべて毟り取ってしまった。成体になってからは、固着生活がメインとなるきすめは、逃げることも抵抗することもできなかった。れいむにしてみれば、ちょっとしかもらっていない。おちびちゃん一人につき、ちょっとずつなのだ。 「ゆぎゃあああああああああっ!! どおじでぜんぶむしっじゃうのぉぉぉぉぉっ!!!」 きすめは葉緑体を髪に持ち、そこで養分を生産して、それを消化吸収することで生きている。そのため、葉緑体を十分に蓄えた成体ならば、水と空気さえあれば生きていけるのだ。また、髪で生産される養分が少なければ、木の実や虫などをむ~しゃむ~しゃをすることも可能である。葉緑体はあくまで植物から盗み、利用するものであって、基本は生産者ではなく、消費者なのだ。 だが、髪を一度に大量に奪われては、自身の必要とする栄養をまかなうことができず、髪の再生に養分を回すことができない。さらに、今は冬で外にも出れない上、出れたとしてもきすめの鈍重な移動能力では捕食種にあっという間にやられてしまうだろう。自力でのご飯さんの確保は不可能に近い。このままきすめが生き延びるためには、食糧備蓄庫にあるご飯さんをむ~しゃむ~しゃするしかなかった。 「きすめ、ゆっくりありがとう! 抵抗があるけど、とにかくむ~しゃむ~しゃしてみるよ! む~しゃむ~しゃ……」 母れいむは、毒見もかねて、まず自分できすめの髪を食べてみた。 「ゆ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛、ぎずめのがみざんがぁぁぁぁぁっ!!!」 「……すぃぃあわせぇぇぇっ!!」 れいむは数ヶ月ぶりに食べる瑞々しい緑の味に感動した。葉緑体に富んだきすめの髪の味は、新鮮な水に洗われた草を食べているような感覚を与えてくれたのだ。 「む~しゃむ~しゃ! きすめはとってもゆっくりできるね!!」 「がえぜえええええっ!! ちょっとでもがみざんがえぜえええええっ!!」 母れいむは、久々の新鮮な味に感動し、ついついきすめの髪を平らげてしまった。これではおちびちゃんに与える分がない。 「おちびちゃんの分がないよ! これじゃあ、ゆっくりできないよ!!……こっちのきすめの髪さんももらうね! れいむのおちびちゃんをゆっくりさせてね!」 「やべでぇぇぇぇぇっ!! ぐるなぁぁぁぁっ!! ごっちにぐるなぁぁぁぁぁっ!!」 こうして、備蓄庫にいたきすめ種は数日間のうちに全ての髪を毟り取られてしまった。ある個体はショックと栄養不足によって餓死し、またある個体は、必死に食糧備蓄庫内の食糧を食べることでその命をつなごうとした。 れいむがきすめを絶望のどん底に叩き落していた頃、巣内の異変に気がついたゆっくりがいた。 「わふぅ? なんでしょう……ゆっくりできない臭いがします……」 長のもみじである。ゆっくりの中には、特定の感覚を発達させたものがいる。例えば夜行性のれみりゃやふらんは夜間視力に優れ、うどんげは夜間の視力を発達した聴力(長い耳は触覚にもなっているという説もある)で補うことで解決している。さなえ種は空気中の水分から天候の変化を敏感に感じ取り、すわこ種も同様の能力によって、雨を予報するという民話が伝わっている。 このもみじ種の場合、最大の武器はその嗅覚である。 経験を積んだもみじ種は、相手の体やうんうんしーしーの臭いの違いから、相手を特定したり、相手の属する群れを判別するくらいのことはできるようになる。一部の駆除業者やゆっくり関連の大学研究室では、ゆっくりを追跡する補佐役として採用されていることもあるという。 また本来なら、低温に曝されてすぐ眠り直すところだが、今日は比較的気温が高かった。おうちの中の食糧をおなか一杯になるまでむ~しゃむ~しゃし、もみじは、少し行動するくらいの余裕はあると判断した。 「誰かが……ぐちゃぐちゃになった臭いがします……いや、たく……さん?」 もみじの嗅覚が探り当てたのは、冬眠中にれいむにすいっみんっかんされて永遠にゆっくりしたゆっくり達、そこから生まれてすぐに永遠にゆっくりした赤ゆっくり達、そして復讐を挑んで潰されたさなえの死臭だった。 ゆっくりの死臭はいつまでも落ちずに残っているようなものではない。所詮は化学物質、環境にもよるが、最長でも一ヶ月も経てば、たいていのゆっくりの嗅覚では検出不可能なレベルにまで死臭は低下するのだ。 しかし、もみじの嗅覚は「たいていのゆっくり」には当てはまらなかった。学習済みの臭いの探知、臭いによるゆっくりの個体識別や群れの行動範囲の推定といった能力では、もみじに並ぶゆっくりはいなかった。 「……ああ、みょん!……どうして、どうしてこんなことにっ!!」 臭いの先にあったのは、みょんの死体だった。洞窟内に棲息する微小昆虫や細菌の類に分解されたのだろう。最早、汚れたお飾りと皮の一部しか残っていない。だが、その臭いで、もみじはそれがみょんであることにすぐ気がついた。 「一体なんで……ゆっくり冬眠していた間に敵が来たのでしょうか?」 もみじは敵となるゆっくりに心当たりがなかった。あるとすればむらさだろうが、冬にこんな内陸まで来る種ではない。 皆が冬眠している冬の間に活動するとなると、飼いゆっくりか、その成れの果ての野良だろうか? 彼らは飼育に適した性質を生み出し、保持するために、かなり品種改良が進んでおり、餡統によっては野生種からまったく別の性質を持つに至ったものも存在する。無論、飼育条件下にあっては、冬眠など不要な能力であり、また、遺餡子には冬眠能力がしっかりと刻み込まれていても、外部より安定して温暖な室内環境では、冬眠のスイッチが入らないという。 赤ゆっくりのお飾りもあったことから、すっきりさせられて永遠にゆっくりしたことが見て取れた。もみじは心を痛めながらも捜索を続け、次々とゆっくりの死体、あるいは死体だったものを見つけていった。 「これは……みょんと番だったさなえですね!……さなえもとってもゆっくりしていたのに、どうして……?」 そして、もみじの嗅覚はしっかりと嗅ぎ取っていた。大半の死臭にセットになって臭って来る、とある臭いを。それはどこかで嗅いだことのある臭いだった。この群れの構成員とは、少し違う系統の臭いであった。 「すんすん……なんでしょう……この臭い、嗅いだ覚えが……すんすん……まさかこれは……」 この群れの構成員とは異なりながらも、嗅いだことのある臭い。答えはすぐに見つかった。これは、あの南の島から来たまりさとれいむに共通する臭いだった。 あの二匹と過ごした時間はまだ短いため、この臭いがまりさとれいむどちらのものか、その決定には迷いがあったが、少なくとも群れの内部には他に該当者がいなかった。そして、洞窟のあちこちに乾いたうんうんがあることから、二匹の臭いであることを確信した。 あの二匹、もしくは片方が、みんなが冬眠している間にこの洞窟で活発に活動し、みょんやさなえの死に何らかの形で関わっている……? 「一体……どうして……?」 もみじはなぜこんなことになっているのかまでは、さすがに分からなかった。なぜ、みんなが冬眠する季節に、あの二匹だけ活発に活動できたのか、分からなかった。 とにかく、幹部を集めて、南の島から来たまりさとれいむに聞かなければならない。この洞窟で何が起こっていたのかを。 「わふ……でももう……ふぁあ……」 時間は夕方だった。再び気温が低下し、もみじの体を否応なしに冬眠モードへと連れ去ろうとする。冬眠するゆっくりは、冬眠を呼び込むこの体のシステムには逆らうことが出来なかった。 人間で言えば睡眠薬を飲んでしまったようなものだ。まだ眠っているゆっくり達に危険を警告したかったが、もはや意識が混濁し始めており、それすら不可能だった。 もみじはとりあえず寝ることにした。嫌でも眠らなければならなかった。簡単におうちに侵入できないよう、尖がった石を幾つか並べ、ベッドで尻尾を抱えるようにして丸くなった。友達だったはずのまりさとの語らいを思い出しながら。 つづく 作:神奈子さまの一信徒
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01の続き ========== 「だ、だれなんだぜえぇぇ!! まりさは目をつぶってるから、正直に名乗り出るんだぜえぇぇ!?」 「あ、ありすおねえさんは、まりさと一緒にいたよ! だから、ありすおねえさんとまりさは違うよ!」 「…まりさ…ひろばに戻るときは…わたしたち…別々に戻ったわ……」 「あ、ありすおねえさん…! ち、違うよ! まりさじゃないよ! まりさは…!」 犯ゆんを特定しようと足掻くもの。 「だ、だれだあぁぁ?! で、でいぶは死なないよっ! ぜっだいにいぎるよおぉぉ!」 「ゆ…ゆふふ…死んじゃうんだね…れいぶだぢ…みんな死んじゃうんだね…ゆっくりりかいしたよ…」 生に執着するもの。生を諦めるもの。 「ゆやあぁぁ!! れいみゅたち、ちんじゃうのおぉぉ?! きょわいよぉ…」 「うー!? いやなんだどー!? じぬのはいやなんだどー!! さぐやー!!」 「ゆ、ゆっ! だ、だいじょうぶだからねぇぇ! れいむのおちびちゃん達ぃ…! おちびちゃんは、おかあさんが絶対に守ってみぜるがらねえぇぇ!!」 ただ恐怖に震えて寄り添い合う母と子。 長ぱちゅりーから知らされた驚愕の事実は、ゆっくり達にとって、何の救いにもならなかった。 いまや、仲間だと思っていたゆっくり達の、誰もが信用できない。 隙を見せれば、次に死ぬのは自分かもしれない。 身動きする事すら恐ろしく、ゆっくり電車がガタゴトと音を響かせる中、沈黙が場を支配する。 「そ、そうよ! あのゆっくりの中身は餡子さんだったわ! だったら、おさとありすは、犯ゆんじゃないでしょ!?」 沈黙を破ったのは、ありすだった。 「……むきゅ…ありす…それは私も考えたわ… でも…例えば犯ゆんが私とまりさを殺したとして、まりさのお帽子を私の死体に被せて、自分は私のお帽子を被れば、 まりさの餡子さんを残して私になる事もできるのよ。絶対ではないの…」(※121ページ 図1参照) 図1 ▲ ⌒ ? ま ぱ 犯 ↓ 無 ▲ ⌒ ま ぱ 犯 餡 ま ぱ ←ゆっくりにはこう見える 「……そう。つまりぱちぇは、ありすも疑ってるのね…」 「……」 「…おさ…おさを信用して聞くわ。何か犯ゆんを見つける方法はないの…?」 再び沈黙が流れた後、口を開いたのはやはりありすだった。 このまま事態を動かせず、いたずらに疲弊するよりは、勝負に出る事を選んだのだった。 「むきゅ…むきゅう……」 長ぱちゅりーは考える。 今まで、群れの皆が困ったときに助けてくれたのは、経験と知識。 つまりは、お兄さんがくれた思い出達だった。 だから、きっと今度もぱちぇを助けてくれる。 そう信じて、長ぱちゅりーは、お兄さんとの思い出を振り返る。 …… むきゅん!? おにいさん いきなり どうしたの!? おにいさん…き…きもちいいわぁ~ ぱちぇのなかの くりーむが とろけちゃう… もっと もみしだいて~ ……! 「むきゅうっ!!」 「おさ、何か思いついたのね。ありす達に説明してちょうだい。」 「むきゅ、いいこと? みんなこれから、ふたりずつで一組になってちょうだい。 そして、お互いに体をくっつけあって、他の組とは離れるの。」 「ゆ…? どおおしてそんなことするのぉ?」 「まだ続きがあるの。ゆっくり聞いてちょうだい。もし、その状態で誰かが襲われて死んだとするわ…」 「い、いやなんだどー! まだじにたくないどー!?」「ゆんやあぁぁ!!」 「しーっ! れいむのおちびちゃん達! ゆっくりおさの言うことを聞いてね!」 「うー…」「ゆぅぅ…」 「…他の組のゆっくりを殺すには、自分が組になっているゆっくりから離れなければならないわ。 だから、誰かが襲われた時に、他の組がみんなお互いに離れていなければ…」 「襲われたゆっくりと組んでいたゆっくりが犯ゆん…なのぜ」 「そうよ。そして、他の組で離れたゆっくりがいれば…」 「その組のゆっくりのどちらかが犯ゆん…ということね」 「むきゅ。そうね。その場合は、どちらが犯ゆんかは決まらないわ…可愛そうだけど、同じ組のゆっくりには…」 一回で理解したありすと運転士まりさを除く他のゆっくりに何回か説明をした後、 赤ゆっくり以外の全員がようやく長ぱちゅりーの作戦を飲み込む。 「で、でも?! それって誰かひとりは襲われるってことでしょおぉぉ! それに犯ゆんと同じ組になったら、むじつなのに殺されちゃうかもしれないよぉぉ! れいむはいやだようぅぅ!! じにだぐないよおぉぉ!?」 真っ先に異を唱えたのは、痴ゆんれいむ。 他のゆっくりの中にも、口にこそ出さないが、戸惑いを隠せない者はいる。 「このまま一人ずつ殺されてゆくよりは、よっぽどマシでしょ! 他に何か手があるの?! れいむ! 覚悟を決めなさい! とかいはじゃないわよ!」 「ゆ…ゆう………ゆっくりりかいしたよ…」 「…また霧さんが出てきたんだぜ…」 運転士まりさの声を機に、ゆっくり達が互いに組を作り始める。 長ぱちゅりーとしんぐるれいむ ありすと若まりさ 運転士まりさと痴ゆんれいむ つがいれいむと、二匹の赤ゆ達 段々と霧が深くなって行く中、青ざめたゆっくり達を乗せ、ゆっくり電車はひた走る。 「むきゅ! みんな! 犯ゆんがわかったら、戦えるゆっくりは全員でかかるのよ! 倒せなくてもいいわ! でんしゃから落とすだけでいいの! 逃げ切れば私達の勝ちよ!」 「とかいはに生き残るわよ!」「ゆ、ゆう…!」「だぜぇっ!」「でいぶはじぬもんがぁ!」 「ゆふふ…もうどうでもいいよ…れいむはおちびちゃんに会いにいくよ…」 「おちびちゃん達は絶対に守るよ!」「ゆぅぅ…きょわいよぅ…!」「うー♪」 そして霧が全てを包み隠す。 ========== 「むきゅ? おそらを…むきゅうううぅぅぅ!?!?」 「「「「おさあぁぁぁ!?!?」」」」 「むきゅうう!! みんなぁっ! まだうごかないでっ!! むぎゅうううっっっ!!!!!」 「だ、誰か離れた?! ありすとまりさは離れてないわ!」「ま、まりさはありすおねえさんと一緒だよ…!」 「まりさとれいむも離れてないんだぜ!」「で、でいぶはいぎでるよぉ!!」 「おちびちゃん達は絶対に離さないよ!」「おきゃあしゃあん…!」「うー♪ なんだかたのしいんだど~♪」 「ゆふふふ……」 長ぱちゅりーは、帽子ごと何かに髪を掴まれ、宙に浮いていた。 じたばたと身を捩り、髪が何本か抜けるが、それで逃げられる訳がない。 「むきゅうう!! みんなぁっ! まだうごかないでっ!!」 生け贄の羊は自分自身だった。 だが、それでいい。元より、自分が考えた策だ。 あとは、ありすが…最悪、ありすが犯ゆんだった場合、運転士のまりさなら皆を引っ張ってくれるだろう。 不意に、スッ…と、体が下に下がったかと思うと、次の瞬間、激痛があんよを襲った。 「むぎゅうううっっっ!!!!!」 一瞬遅れて、体が地面に擦りつけられているのだと気付く。 高速で走行するゆっくり電車に、地面を引きずらている状態だ。 「むきゅううぅ!! いたいいたいいたいぃぃ!!! はなしてぇぇ!」 細かい砂がざりざりざりっと底部の饅頭肌を削り取り、尖った小石が高速で掠めて長ぱちゅりーのあんよを切断する。 傷口から漏れだした生クリームが、乾いた地面に白い筋を何本も描いて行く。 なんとか痛みから逃れようと、体をくねらせて、地面とあんよが平行になるようにする。 ただ引きずられていては、あっという間に体を削り取られて絶命する。 地面を跳ねる事で、設地する時間を減らすのだ。 せめて、霧が晴れ、皆が反撃の体勢を取れるようになるまで、生きて、時間を稼ぎたい。 その一心で、長ぱちゅりーは大きく跳ねようとする。 だが 何か、巨大な力が、ぱちゅりーの頭を押さえつけていた。 跳ねようと、上に向かった力は、全てその力に押し返される。 地面と、上からかかる力に挟まれ、長ぱちゅりーのあんよが、凄まじい勢いでガリガリと削れて行く。 あんよの皮が一瞬でベロリとめくれ、千切れて、体から離れていった。 ゴポリと、大量の生クリームが地面に零れる。 「むぎょぉぉっ?!?! たすけてえぇぇっ!!! お そこで下顎がなくなり、それ以上は声を出せなかった。 生クリームが漏れ出す度に、その中の記憶が流れ出すのか、走ゆん燈のように、長ぱちゅりーの記憶が脳裏に浮かんでは消える。 その記憶の中に 森のけんじゃは、真実を見い出した ========== 霧が晴れる。 「ぱちぇえええぇぇえぇぇっっ!?!?」 「「「「「おさあああああぁぁっ!?!?」」」」」 ゆっくり達の絶叫が響き渡る。 ゆっくり達の真ん中に横たわっていたのは、口から下がなくなった長ぱちゅりーだった。 見開いた目からは涙が溢れ、電車の床を濡らしている。 口より上の部分からも相当量の中身が漏出しているのか、長ぱちゅりーの後頭部はベッコリとへこんでいた。 「ぱちぇえぇっ!! ぱちぇえええっ!! いやあっ!! こんなのいやああぁっ!!」 ありすの声に反応したかのように、長ぱちゅりーの上唇が微かに動く。 最後の力を振り絞って、仲間達に何かを伝えようとするように。 (…犯人……は…………) しかし、もう長ぱちゅりーの体に、声を出すための機構は存在しない。 長ぱちゅりーの瞳から最後の涙が零れ落ちると共に、唇の動きも止まった。 「ゆふふふ……」 ゆっくり達の視線がその声の元に集まる。 殺気と畏怖を込めた視線を向けられながら、しんぐるれいむは笑っていた。 ありすが最初に動いた。 みょんの亡骸に刺さっていたはくろーけんを咥え、しんぐるれいむに突進する。 「ゆ゛っ…」 はくろーけんが、グシュと音を立てて、しんぐるれいむの下腹に突き刺さり、しんぐるれいむは僅かに呻く。 「ゆ…ゆわぁぁぁ…!!!」 「ゆ゛ぎっ…」 若まりさが帽子から小ぶりな枝を取り出し、しんぐるれいむのあんよに突き刺す。 「よぐもれいぶのまりざをぉぉ!!!」 「ゆ゛がっ…」 つがいれいむが、死んだまりさの帽子から枝を取り出し、しんぐるれいむのあんよに突き刺す。 「じねえええっ!! よぐもぱちぇをぅぅ!! ゆっぐりどじだ! とかいはなぱちぇだっだのにぃぃ!! いっづも! むれのごどばがりかんがえでる! ゆっぐりどじだ! おさだっだのにぃぃぃ!!!!」 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛げげっ……」 ありすが、叫びながら、はくろーけんを抜いては刺し、抜いては刺しを繰り返す。 「ありす…もういいのぜ…その怪我なら…ソイツはもうまともに動けないのぜ… それに…今のありすを見たら…おさは…とかいはじゃないって言うのぜ…」 運転士まりさの言葉に、ようやくありすの動きは止まり、ポロリとはくろーけんを取り落とした。 ========== 「ゆ゛っ…ゆ゛げっ…ゆ゛っ…ゆふふ……」 二本の枝が刺さったまま、しんぐるれいむが、壊れた呻き声を上げ続ける。 「ぱちぇ……ぱちぇぇ……」 「ゆうう……ありすおねえさん……」 ずっと泣き続けているありすに、若まりさがそっと寄り添い、頬を押しつける。 「れいむのおちびちゃん達…もう大丈夫だよ…ぜんぶ…おわったからね…」 「ゆぅぅ……おきゃあしゃん……」「うー! ぷっでぃーん♪ たべたいんだど~♪」 「ゆ…そうだね…おうちに戻ったら、ごはんさん、むーしゃむーしゃ、しよう…ねぇ…!」 赤ゆ達をあやしながら、れいむが車窓から外を見やる。 林道は崖沿いの道に差し掛かり、遙か下には広い地面が広がっている。 ゴンッ… 「ゆ?」 何か硬い物が床を叩く音に、れいむや他のゆっくり達の注意が向く。 音のした場所には、人間の握り拳大の石が転がっていた。 そこに、 ゴンッ… もう一つ、同じくらいの大きさの石が降ってくる。 「上から来るんだぜ! 気をつけるんだぜ!!」 運転士まりさの声に、ゆっくり達が一斉に上を見上げると、ちょうど三つ目の石が落ちてくるところだった。 (え……?) 降ってくる石を見ていたありすの目が、視界の下端、床の方に何か動くものを捉えた。 次の瞬間、ありすの体が何かに強く押され、バランスを崩したアリスの体がコロコロと、車内を転がる。 崖下を望む、ポッカリと開いたゆっくり電車の乗車口へと向かって。 「ゆああぁっ?!」 「ゆっ?!」 ありすが悲鳴を上げるのと、若まりさがありすの窮地に気付いたのはほぼ同時だった。 ありすの体が乗車口から転げ落ち、崖下へ向けて一直線に落ちて行く。 だが、落下はすぐに止まる。 「ゆ…ぎぎぎ……!」 間一髪、若まりさが飛びついて、ありすの髪を咥えて落下を阻止していた。 しかし、成体になり立てで、まだ小さい若まりさの体では、ありすの体を支えきることはできない。 若まりさの体も、ずりずりと乗車口の外に向けて引きずられ、コロンと落下する。 「まりさあぁぁ?!」 「ゆうぅぅ~?!」 しかし、またも落下は阻止。 今度はつがいれいむが、若まりさの髪を、痴ゆんれいむが、つがいれいむの髪を咥えて支えていた。 それでも、まだ危機が去ったわけではない。 「「ゆーえす! ゆーえす!」」 二匹のれいむが、若まりさとありすの体を引き揚げようとするが、仮にも成体二匹の重量。 一気にひっぱりあげられる物でもない。 そして、新たな破滅の綻びが生まれた。 ビリ 「ゆぎっ?!」 綱引きの綱の一番弱い部分、若まりさのまだ弱い頭皮がわずかに破れた。 「まりさ…?」 「だ、だいじょうぶだよ! ありすおねえさん! すぐに助けるからね!」 ビリ ビリ 「ぎっ!!」 「ゆ? ゆあぁぁ?! ま、まりさのあたまが破れちゃうよおぉ!!」 気付いたつがいれいむが、後ろから叫ぶ。 「…! まりさ! ありすを離しなさい! このままじゃ、ふたりとも死んでしまうわ!」 「ゆうう! やだああぁぁ!! まりさはありすおねえさんを守るんだぁぁ!」 「ま、まり…さ……」 「まりさは、ありすおねえさんとゆっくりしたいよぉぉ!! ずっといっしょにゆっくりしてほしいよぉぉ!!」 「………まりさ………ありがとう……ゆっくりしていってね…」 「ゆゆっ? ゆぴゃあっ?!」 突然、若まりさの片目に何かが飛び込み、驚いて咥えていたありすの髪を思わず離してしまう。 「ゆ…ゆああぁぁ!!! ありずおねえざあぁん!!!!」 若まりさが、無事な方の目を下方に向ける。 その瞬間には、ありすの体はまだすぐそこに浮いていた。 ただし、もはや若まりさからは絶対に届かない距離だが。 そこで、ありすは、にっこりと笑っていた。 ニュルリとした精子餡が滴るぺにぺにを、若まりさの顔に向けておっ勃てたまま。 「あら、失礼♪ ありすったら、とんだいなかものね!」 ありすの笑顔はすぐに小さくなって行き、やがて崖下へと消え去り見えなくなった。 ========== 「ゆうぅぅ…! ゆうぅぅ…!」 「どうしてぇ…どうしてありすが死ななきゃいけないのぉ…もう殺ゆん鬼は倒したのにぃ…」 「おきゃあしゃん…」「うー?」 「………」 若まりさがすすり泣き、つがいれいむも、赤ゆ達に擦り寄られながら涙を流す。 痴ゆんれいむは何も言わず、運転士まりさは、何も考えないようにしているのか、前を見据えたまま電車を操る事に専念している。 「…ゆっ! れいむ、いい事考えたよ!」 「「「ゆ?」」」 痴ゆんれいむが唐突に、そう宣言し、他のゆっくり達が疑問の声を出す。 「ゆ…れいむ…おねーさん…?」 ニコニコと笑いながら近づいてきた痴ゆんれいむに痴ゆんをされた記憶が蘇り、若まりさが顔を引きつらせる。 そのれいむの背中、若まりさからは死角にあったものを見て、つがいれいむが直感にまかせて叫ぶ。 「まりさ、逃げてぇぇっ!!」 「ゆ……?」 つがいれいむの叫びが届いた時には、痴ゆんれいむが隠し持っていたはくろーけんが、若まりさの口から背中までを貫いていた。 「ゆ……なん…で…ゆ…?」 ゴボリ、と若まりさの口から餡子が漏れ、体が痙攣を始める。 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ……ありず…おねえ…ざん……ごべんな…ざい…………」 「どおおおじでごんなごどずるのおぉぉ!?!?」 「なにするんだぜぇぇ?! でいぶぅぅぅ!?!?」 痙攣が止まった若まりさの体から、はくろーけんを抜いた痴ゆんれいむに向けて、つがいれいむと運転士まりさが叫ぶ。 「ゆっ! このまま帰ったら、れいむは痴ゆんの罪で捕まって群れを追放されちゃうんだよ! でも、れいむひとりしか帰らなかったら、れいむは無罪だよ! かんっぺきっな作戦だね! ゆっくりりかいしてね!」 「このげずうぅぅ!! ゆっぐりじでないげずは、ゆっぐりじないでさっさどじねえぇ!!」 「死ぬのはれいむの方だよ!」 はくろーけんを咥えて突進してきた痴ゆんれいむに対して、つがいれいむは身を捩って交わす。 頬を掠めたはくろーけんが、つがいれいむの饅頭皮を切り裂く。 痛みに怯んだ隙を逃さず、痴ゆんれいむが体当たりをしかけ、弾き飛ばされたつがいれいむは電車の壁にぶつかって、餡子を吐く。 「ゆぶぶ…!」 「れいむ! これを使うんだぜ!」 運転士まりさが自分の帽子から枝を取りだし、つがいれいむに向けて放り投げる。 枝を拾ったつがいれいむは、殺気の籠もった目で痴ゆんれいむを見据える。 「おお、こわいこわい! こわいから、れいむは赤ちゃんから殺すことにするよ!」 「ゆ?! ゆあああぁ?! やべでえぇぇ!!」 「ゆんにゃあぁぁ! きょないでえぇぇ!! おきゃあしゃあん!! たしゅけちぇぇ!!」 「うー…」 つがいれいむが飛びかかるより先に、痴ゆんれいむは赤ゆ達のすぐ隣まで跳ね、一匹の赤れいむにはくろーけんの切っ先を向ける。 「ゆふふ! れいむの赤ちゃんはとってもゆっくりできるね! れいむ、赤ちゃん助けたい? 助けたければどうすればいいか、ゆっくりりかいしてね!」 「れいむ! だめなんだんぜ! れいむはきっとみんな殺すのぜ! 言うことを聞いたらゆっくりできなくなっちゃうんだぜ!」 「うるさいよ! まりさ! まりさは群れの近くに着くまでは殺さないであげるよ! だから大人しく運転しててね!」 「ゆ…ゆぅぅ………」 つがいれいむが悔しげに歯を食いしばるが、すぐに枝を放り捨てる。 「ゆぷぷ! じゃあ、れいむから殺してあげるから、ゆっくりとこっちにきてね! そうしたら、赤ちゃんだけは助けてあげるよ! ほんとだよ! れいむはうそつかないよ!」 「おきゃあじゃああん!! きょわいよぉぉ!! おねいちゃああん!!」 「うー…なんだがこばらがへってきたんだどぉ……そうだどー! おやつのじかんにするどぉ~♪」 「ゆ?」 ========== 何? 何がおきたの? どおおして… 痴ゆんれいむは困惑していた。 赤ゆが生意気にも噛み付こうと飛び掛ってきたので、もみあげで叩き落した…はずだった。 だが、次の瞬間、自分の体に激痛が走っていた。 「ゆ゛っ…ゆがあああっ?! いだあいいっ!! ゆぎいぃっ!! どぼじでえぇっ!?」 痛い 痛い 痛い 頭が痛い おめめが痛い 何? 何がおきたの? どおおして… つがいれいむは困惑していた。 れいむの赤ちゃんが、あのれいむに飛び掛ろうとしていた。 制止の声すら間に合わず、れいむのもみあげが動き、赤ちゃんを叩こうとする。 だが、次の瞬間、あのれいむの頭がもみあげごとゴソッと欠けていた。 右のほっぺから、右目の中心を通って、頭頂部やや右側まで。 何かで抉り取ったように、無くなっていた。 「うー!!」 むしゃむしゃと何かを咀嚼する音が聞こえる。 それからまた、痴ゆんれいむの頭が、更にゴッソリと欠けた。 「ゆ゛がっ…ゆ゛ががっ…でい…ぶは…じぬ…もんが……じにだぐ……な………」 「うー♪ …うー? なんだか、あんまりおいしくないんだどー…こんなものはぽいっするどー!」 赤れいむが、半分ぐらいに減った痴ゆんれいむを電車の外に投げ捨てた。 そして、くるりと向きを変え、もう一匹の赤れいむに顔を向ける。 「うー♪ こっちのほうがおいしそうなんだどー! えれがんとなおぜうさまのおやつにふさわしいんだどー!」 「ゆぅ…? おねい…ちゃん…?」 「ゆぴいぃぃいぃっ?! おねいちゃあんっ! れいみゅいちゃいよぉぉ! はなちちぇぇ! どうちてこんにゃゆぎいぃっ?!」 「うー♪うー♪」 「お、おちびちゃん! やめてあげてね! いもうとのおちびちゃんがいたがってるでしょおぉ!!」 赤れいむが赤れいむに噛み付き、ズゾゾゾ…と中の餡子を吸っている。 赤れいむの凶行を止めようと、つがいれいむがリボンに食いついて引っ張るが、 赤れいむの小さな体はびくともせず、リボンだけがすっぽ抜けて髪から外れた。 「「…ゆ……? れ、れ、れみりゃだああぁぁぁ!?!?」」 つがいれいむと運転士まりさが同時に叫ぶ。 飾りがなくなり、「れいむである」認識が消えると同時に、ゆっくりの餡子脳は認識の更新を始めた。 水色の髪、赤い瞳、鋭い牙、二枚の羽。 トレードマークの帽子こそないが、それがれみりゃだと認識するには十分だった。 「ゆやあぁぁ…!? ゆびっ…?! だじゅげ…おきゃあじゃあゆびゅっ? …ゆびゅっ…ゆびゅっ……もっ…ゆ…」 「うー♪ さっぱりあまあまでおいしいんだどー!」 成体の胴なしれみりゃに中身を吸い尽くされ、赤れいむはしわしわの皮だけに成り果てた。 「れいぶのがわいいおぢびぢゃんがああぁぁ!!」 「ど、どおじで、れみりゃがいるんだぜえぇぇ?!」 「このごみはいらないんだどー! ぽいっなんだどー!」 そう言って、れみりゃが赤れいむの皮を電車の外にポイ捨てする。 「あああがぢゃああん!! よぐもれいぶのぎゃばいいおぢびぢゃんをぉぉ!!」 捕食種への恐怖も忘れ、れいむがれみりゃに突進するが、れみりゃはパタパタと羽ばたいて軽く突進を交わす。 勢い余ったれいむはゴロゴロと転がり、隅に放置されていたしんぐるれいむにぶつかった。 「ゆべしっ!?」 「ゆげ…」 「おぜうさまは、まだはらはちぶんめなんだどー! おまえもくわれるんだどー!」 れいむの背後から、れみりゃが迫る。 「ゆっ…! ゆっ…! ゆゆっ!?」 「いただきまずなんだ… プスッ うぎゃあああぁぁ!!」 れみりゃの悲鳴が上がる。 れいむが、しんぐるれいむに刺さっていた、つがいのまりさの枝を見つけて引き抜き、 振り向き様にれみりゃの頬を突き刺したのだ。 だが、十分に狙いを定める余裕がなかったため、急所から大きく逸れる。 「うがー! おぜうざまのかりずまなびぼうに、なにずるんだどー!!」 ベシッ! ベシッ! ベシッ! 「ゆぶっ! ゆぶっ! ゆぶっ!」 怒り狂ったれみりゃが、左右に羽を振り回し、ベシベシとれいむの頬を打つ。 最初のビンタで枝を取り落としてしまったれいむは、なすがままに往復ビンタの洗礼を受け、みるみる内に頬が腫れ上がる。 「ゆひぃ…! ゆひいぃぃ…!」 「おとなしくしないから、いたいめにあうんだどー!」 戦意を喪失し、しーしーを漏らしながら震えているれいむの姿に満足したのか、れみりゃはいつもの笑顔にもどる。 そして、れいむの頭上へと上昇し、あんぐりと口を開けた。 「うー! いただきま 「だぜえぇっ!!!」 ぶぎゃっ!!」 まりさが、ゆっくり電車を岩にぶつけ、電車がガクンと揺れる。 その衝撃でれいむの体が転がり、れいむめがけて急降下したれみりゃは、顔面から床に激突した。 「うー!? うー!? いだいんだどー! れみり゛ゃは ごーまがんのおぜうざまなんだどー!?」 無様に大声を上げて泣き喚くえれがんとなお嬢様。 「れいむぅ! なにやってるんだぜぇ!? いまのうちにれみりゃを倒すんだぜぇ!」 「ゆぅ…ゆぅ……」 運転士まりさの叱咤が飛ぶが、れいむのあんよはブルブルと震えて言うことを聞かない。 「はやぐ! はやぐずるんだぜぇ! 永遠にゆっくりしちゃったおちびちゃんの仇を取るんだぜぇ!」 「ゆ…だめだよぉ…れいむにはむりだよぅぅ…おぢびぢゃん…ごべんねぇ…おがあざんをゆるじでねぇ…」 …その時、れいむのもみあげが、ピクリと動いた。 「うー!! もうゆるざないんだどー!! おぜうさまはおこったんだどー!!」 ようやく泣きやんだれみりゃが、恐怖に怯えるだけのれいむの方を振り向き、ゆっくりと近づいて行く。 もう不意打ちを食らわないように、じわじわと距離を詰め、そして、れいむの目の前で、口を開く。 「うっぎゃああああぁっ!?」 鳴り響いたのは、れみりゃの悲鳴。 驚きに目を見開くれいむの目に映るのは、涙を流して悲鳴を上げるれみりゃと、その後ろにいる、しんぐるれいむの姿。 先程まで、ピクリとも動かなかったしんぐるれいむが、背を向けたれみりゃの羽に噛み付いていたのだった。 「はなぜー! はなぜー!! うぎゃあぁ!!」 「…れいむは……れいむは…しんぐるまざーで…かわいそうなんだよ…」 羽が千切れそうになる痛みにも構わず、れみりゃが体を振ってしんぐるれいむを引き剥がそうとするが、 半死半生のしんぐるれいむの何処にそれだけの力があったのか、その歯がしっかりとれみりゃの羽に食い込んだまま、剥がれない。 「うがああぁぁっ!! ちょおじにのるなあぁ!!」 「かわいいおちびちゃんまで…しんじゃって…とっても、とっても…かわいそうなんだから…」 れみりゃが、電車の壁に、しんぐるれいむの体を叩きつける。 仲間達に付けられた傷口から餡子がボロボロと零れるが、それでも、れいむはれみりゃの羽を離さない。 「いだいんだどぉー!! やべるんだどぉー!!」 「優しくしないと…だめ…なんだよっ!!」 れみりゃが、無我夢中で更に激しく暴れる。少しずつ羽が千切れてきている事にすら気付いていない。 一層激しく叩きつけられたしんぐるれいむは、片目が潰れ、体内の餡子を半分近く失って縮んでいた。 それでも、れいむはれみりゃの羽を離さない。 「ざぐやー! さぐやー! おぜうざまをだずげるんだどー! どうじでだずげでぐれないんだどー?!」 「だがら…かわいそうなれいむに…ひどいごどずるれみりゃはあぁ…!」 戦意喪失したれみりゃを引きずりながら、しんぐるれいむが、ずりずりと這う。 そして 「ゆっぐりじないでさっさどじねええぇぇ!!!!!」 れみりゃを道連れに乗車口から転がり落ちた。 「うぎゃああぁぁっ!! ざぐやあぁぁーーっ!!」 疾走する電車から落下したれみりゃは、まだ羽に噛み付いているれいむのせいで飛ぶ事もできず、 れいむともつれあったまま堅い地面に激突した後、勢いよく転がり、 木や岩に体を打ち付け、餡子と肉まんの具を撒き散らしながら、瞬く間に見えなくなって行った… ========== ガタゴト… ガタゴト… 夕日に赤く染まり始めた山道を、ゆっくり電車が揺れて行く。 じっと前を見据えてゆっくり電車を操る運転士まりさ。 その横で、れいむがまりさにもたれかかってた。 「ゆうぅぅ…まりさ…みんな死んじゃったよぉ…みんな…とっても…ゆっくりしてたのにぃ…ゆっくりできないよぉ…」 「…れいむ…ゆっくりできないけど…それでもまりさ達はゆっくりしなきゃいけないのぜ… じゃないと…みんなもゆっくりできないんだぜ…」 「………ゆん……」 吹き付ける風に、れいむの赤いリボンがたなびき、まりさの体をくすぐる。 ……… 「………れい…む…?」 「ゆ?」 「…れいむ達の…おりぼんさんは…自分でつけられるのかぜ…?」 「れいむ達のおりぼんさんは…自分ではつけられないよ。誰かにつけてもらわないとだよ」 「じゃあ……あのれみりゃに…れいむの赤ちゃんのおりぼんさんをつけたのは……誰なのぜ…?」 「………」 二匹の言葉が止まる。 いや、言葉だけではなく、体の動きも瞬きすらも止めて、互いに互いを見つめていた。 一瞬たりとも、相手の動きを見逃さないとするかのように。 そして、張りつめた空気を破るかのように、一陣の風が吹いた。 「!? ゆあああぁぁっ?! ばりざのおぼうじがああぁぁーーーーーーー 木のバッジがついた帽子が風に舞い、まりさの視線は帽子を追った。 ========== 「ばりざのおぼうじがああぁぁーーーーーーー ぁぁぁ……あ~あ、行っちゃった…まあ、いいか。十分楽しませてもらったし」 まりさが地面に足を降ろして、すぃーを徐々に減速させて止める。 「ふう~…しっかし、下り坂とは言え、この大きさだと足だけで操るのはきっついなぁ… いや、俺が特別な訓練を受けていなければ無理だったよな、実際のとこ」 「ま、まり…さ……? どこ……行ったの……? お兄さん……だれ……?」 カタカタと震えるれいむに、"まりさ"は満面の笑みを向けた。 「やあ。僕は ========== 「ゆうぅ…おそいのじぇ…」 沈みかけた夕日の中、群れの広場でゆっくり電車の帰りを待つ子まりさズ。 ゆっくり電車のお迎えも、彼らの仕事。 「ゆっ! きたよ!」 赤い太陽に照らされながら、ガタゴトと、ゆっくり電車がやってくる。 「ゆゆっ! おかえりなさ……?」 ガランとしたゆっくり電車に乗るのは一匹のゆっくりのみ。 「ゆ~? どうして、れいむおねーさんが運転してるのじぇ?」 「ゆぅぅ…みんなはどうしたの?」 「ゆ? まりさ、おそらを飛んでるみた~い♪」 れいむの腕が、子まりさズを抱え上げた。 「終点『ゆっくりプレイス』だよ~ 『ゆっくりプレイス』だよ~ …ゆっくり楽しませてね?」 おわり ========== あとがき というわけで、ゆっくりの群れに電車を与えて、 よくあるラッシュの風景+よくある暴走特急の風景で「ミニ社会化」としてみたのですが、 こんなテーマ解釈でよろしかったでしょうか? 後半部分は「ベタなパニック(サスペンス?)物風味」を書いてみたかったのですが、自分の力量ではどうにも。 深刻な破綻箇所とかあるかもしれませんが、お手柔らかにお願いします。 餡子ンペ出展は作者名が必要との事なので、これを機に「お説教されたいあき」と名乗らせていただきます。 以下は、虐待成分が少なかったとお嘆きの貴兄と私へのささやかなオマケ、兼、わかりにくい?ネタを補うための何かです。 ========== 『れいむの記憶』 「……! ……!」 「さあ、れいむ。これを食べてごらん。楽しいモノが見られるかもしれないよ?」 れいむが、憎しみに満ちた目を男に向ける。 男に飛びかかろうとするが、男の手にしっかりと頭を押さえつけられ、体がひしゃげるのみ。 ガムテープで塞がれた口からは、くぐもった呪詛の声がわずかに漏れ聞こえてくる。 男が、容器の中でマーブル模様を描く餡子とクリームをスプーンで掬い取り、れいむの頭に開けた切れ目から差し入れた。 れいむの中に何かが流れ込んでくる。 『れみりゃだああぁぁぁ!!』 『だずげでええぇぇ!!』 『どおぉじで、れみりゃがいるのおおぉぉっ!?』 陽光が降り注ぐゆっくりプレイス。 れいむの目に映るのは、逃げ惑う仲間達の姿。聞こえるのは、悲鳴。 『うー♪ あまあまたべちゃうどー!!』 『ゆぎゃああぁ!! た、たべないで! れいむをたべないでえぇぇ!!』 れいむの口から悲鳴が発せられる。 眼前にれみりゃの牙が迫り、次の瞬間、れいむの頭に激痛が走る。 『でいむー!? わがらないよー!!』 『ゆ゛っ…もっと…ゆっぐり……じだがっだ……』 ブツンッ 不意に、テレビの電源が落ちたように、その光景と音が消え、別の何かがれいむの中に流れ込んでくる。 『ゆぇぇぇん!! おきゃあしゃあん!! どきょー!? まりしゃ、きょわいよおぉぉ!!』 れいむのおちびちゃんの泣き声。 (おちびちゃん!どこにいるの?!おかあさんはここだよ!) 叫ぼうとするが、れいむの口から漏れるのは、おちびちゃんの泣き声だけ。 『おちび! はやくにげるんだぜ! ここにいたら、れみりゃに食べられちゃうんだぜぇ!! まりさのお帽子の中に隠れるんだぜっ!!』 お帽子に木のバッジをつけたまりさが、れいむを咥えてお帽子の中に隠す。 ぐにゃり そこで、視界が歪み、目の前の光景が消える。 そしてまた、流れ込む。 餡子の持ち主の記憶が。 『ゆゆっ? なんだかひろばのほうがにぎやかだね! みんな、何してるのかな!』 『ゆっ! ゆっくり見に行こうね!』 『やあ! ゆっくりしていってね!』 れいむの目の前に男が立ちはだかる。 『ゆっ? ゆっくりしていってね! お兄さんはゆっくりできるひと?』 『全然できない人だよ』 風を切る音と共に、何かを握った男の腕が動いた。 ブツンッ 『ゆぅぅ…にゃんだか、ゆっくちできにゃい こえがしゅるよ…れいみゅ、おきちぇね!』 れいむが話し掛ける先には、石の影ですやすやと寝ているれいむのおちびちゃん。 『ゆぴー…れいみゅ、もうちゃべられにゃいよ…』 『どうちて おきにゃいのぉぉ? ゆ?』 頭上を遮った影に、上を仰ぎ見ると、れみりゃと男がこちらを覗き込んでいた。 『ゆええぇぇ…! れいみゅのおりぼんしゃん、かえちてー!』 『うー! おぼうじとらないでほしいんだどー!』 『我慢しろ。あとでぷっでぃーん食わせてやるから』 『うー…』 男が涙目のれみりゃの髪に赤いリボンを結ぶ。 『ほら、できたぞ。ソイツは食っとけ。皮も残さず食えよ』 『うー! おどりぐいだどー!』 『ゆにゃああぁぁ?! れいみゅー! おきちぇー! たちゅけちぇー! いちゃああいっ!』 『ほら、こぼすな、バカ肉まん。それ食ったら後は休んでていいぞ。昼寝でもしてろ』 『うー! おぜうさまはしぇすたのじかんだどー♪』 『ゆぴっ! ゆぴいぃぃっ!! おぎゃあぢゃあぁ…あ…ぁっ…!』 赤れれみいりむゃの牙が食い込み、れいむの体はグシャグシャに砕かれながら闇に飲み込まれていった。 ブツンッ 男はすぃーの上に散らばったゆっくりの中身もれいむの頭に流し込む。 『むきゅううぅ!! いたいいたいいたいぃぃ!!! はなしてぇぇ!』 霧に閉ざされた白い闇の中で、ガリガリとあんよが削れて行く感覚が流れこんでくる。 『むぎょぉぉっ?!?! たすけてえぇぇっ!!! お』 兄さあああんっ!! むきゅ… お兄さん…?! お兄さんのおてて…? お兄さんとおんなじ…強くて大きい…おてて!! 伝えなきゃ みんなに伝えなきゃ ぱちぇは"おさ"よ みんなを守らなきゃいけないのよ その思考と繋がるようにして、あるゆっくりの顔が脳裏に浮かぶ … "ぱちゅりー!" … …! 違う…! ぱちぇは"ぱちゅりー"じゃない!! ぱちぇは…ぱちぇは"おさ"よぉ!! 霧に閉ざされていた視界が開け、ありす達の顔が映る。 ごべんなざいぃぃ! ぱちぇが間違ってたのおぉ…! 犯"人"は…犯人は人間さんなのよぉ…! れいむじゃないのよぉ…! 人間さんはおててがあるから、離れたところからでも私達を殺せるのよぉ…! 涙を流しながら、何かを叫んでいるありす達の後ろで、アイツがクスリと笑いを浮かべた。 おまえがっ! おまえがぁぁ…!! ブツンッ 『ゆふふふ…』 俯いて泣いているゆっくり達をどこか達観した気分で眺めながら、れいむの口から笑いが漏れる。 あんよとおなかがズキズキと痛むが、何故だかそれがどうでもいい事のように思える。 その視界の中で、石が飛び上がり、重力に引かれて落ちる。 ゴンッ… 石が床に落ちると同時に、もう一つ石が飛び上がる。 あるゆっくりの背中越しに。 三つ目の石が飛び上がった時、そのゆっくりが叫んだ。 『上から来るんだぜ! 気をつけるんだぜ!!』 どうでもいいよ… ぐにゃり 『ゆええぇ…うんてんちしゃん…まりしゃたちもちんじゃうのぉ…?』 頭の上からおちびちゃんの泣き声が聞こえる。 『大丈夫なんだぜ! おちび! あそこにまりさのでんしゃがあるんだぜ! まりさのでんしゃなら、れみりゃでも絶対においつけないのぜ! ゆ?』 『やあ、まりさ』 『ゆっ! 人間さん! 助けてほしいんだぜ! 悪いれみりゃがまりさ達を…』 (だめえええぇぇっ!!! にげでええぇぇっ!!!) 『まりさが、あのすぃーを運転しているのかい?』 『そうなんだぜ! まりさは、うんてんしなんだぜ…ゆあっ?! ば、ばりざのおぼうじ! とらないでなんだぜっ?! ばっじさん!! ばりざのばっじさんがえぜぇぇぇ!! ゆぎぴぃっ?!』 れいむのおなかに男のつま先が食い込み、頭の上にいたれいむのおちびちゃんと一緒に地面に転がった。 『ふんふふん~♪ 運転手は僕だ~死体は君だ~♪』 ピーラーを握った男の手がれいむの肌を撫で、肌色の饅頭肌の切れ端が次々に舞い落ちる。 『ゆびいいいっっ!!! どおじでっ!! どおじでごんなごどずるんだぜぇぇ!! ゆびいぃっ!! いやだあああぁぁ!! ばりざ、じにだぐないいぃぃ! うんてんじになっだのにぃぃ!! ばりざ、いっばいがんばっだのにぃぃぃ!!! じにだぐないよおぉぉ!!!!』 『はいはい、ゆっくりゆっくり』 ブツンッ 『…だのにぃぃぃ!!! じにだぐないよおぉぉ!!!!』 グシャッ グシャッ グシャッ 『ゆっ…ゆわっ…ゆわっ……』 『んー、どうしたのかなー? おちびまりしゃちゃあん? そんなに、ちーちー漏らしちゃってぇ。 大丈夫でちゅよー? まりしゃちゃんのちっちゃなお帽子さんは取らないからねー だからね? 別に用はないから…』 頭上に男の足が見える。 それは、れいむのおちびちゃんが見ている光景か、それとも 「『ゆっくり死んでね」』 『ゆやああぁぁぁ!!!! おきゃあしゃああああああん!!!!!!!!』 ブツンッ…! ……… 「さあ、───。これを食べてごらん。楽しいモノが見られるかもしれないよ?」 これまでに書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 229 たくすぃー ふたば系ゆっくりいじめ 344 ゆっくりで漬け物 ふたば系ゆっくりいじめ 404 ただ一つの ふたば系ゆっくりいじめ 471 えーき様とお義母様 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 社会崩壊とか、笑えない -- 2016-03-12 00 00 01 人間の歌は踊る駄目人間かな -- 2014-07-22 16 00 55 ヤバイ、これはアカン -- 2014-07-10 17 58 14 こうしてみるとちゃんと伏線は張ってあるんだよな 前半の「ぱちゅりー! どうしたんだぜ!」とか ただ恐怖に震えて寄り添い合う母と子の部分で赤れいむの一匹がれみりゃのセリフだったとか 長ぱちゅりーが死ぬ時の(…犯人……は…………)とか -- 2013-12-12 05 24 35 少し変なところもあったが凄い面白くて素直に関心した。 -- 2012-07-19 18 59 53 痴ゆんとか電車描写にワロタw -- 2012-02-20 04 48 34 明らかにおかしいだろ!と思うところでも気づかないのは読んでて楽しいな。 うーうー言ってるの見るたびに笑っちゃったよ れみりゃだけかと思ってたから人間登場は驚いた ってか下り坂だし進むのは足だけでどうにかなるとしても曲がりはどうしてたんだw ぱちゅりーが人間の関与が分かったのは手の感触、誰が人間か分かったのはいつもなら「おさ」と呼ぶのに「ぱちゅりー」って言ったから? -- 2011-05-07 16 10 15 ↓別に推理しろなんて誰も頼んで無いし、読者にも推理させる本格ミステリーとして作った作品とも書いていない。 勝手に推理ごっこ始めといて、何を人様にミステリーの十戒とかほざいてるんだい? -- 2011-01-12 19 22 54 人間がどうやってハンドルもないすぃーを運転してたんだ? 最後になって特別な訓練を受けていましたとか言われても推理できないよ 特別な技能というよりかはもう超能力レベルだし あとぱちゅりーの犯人が分かった理由が瀕死の自分を見て笑ってたからって 言われても、その描写も無かったし推理のしようがないよ ミステリーの十戒だか二十戒だかにふれるんじゃないのこれ -- 2010-12-12 02 17 52 まさかのどんでん返しでびっくりした -- 2010-12-05 00 06 25 面白かったけど… 人間とゆっくりじゃ大きさ全然違うだろ、気づけよww -- 2010-10-14 17 37 12 面白かった! れみりゃのせいかと思ってたけど違かったのね -- 2010-09-17 09 15 21 普通に面白かった。 -- 2010-07-04 02 36 36 ラストの鬼意山はパチュリーの元飼い主? -- 2010-06-11 22 39 54
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竹取り男とゆっくり 10(最終回・中編) まりさのあにゃる噴水の横で、何かに目覚めた男が強烈な存在感を発揮していた。 「ゆぶゔゔゔ!!?? どすはぎゃくさつおにいさんとはゆっくりできないよお!! ゆっくりしんでねええええええええええっ!!!」 キュバアァァァァァァ!! キュバアァァァァァァ!! キュバアァァァァァァ!! 連射されるドスパーク。 男はケモノのような身のこなしでドスパークを避けながら群れの中に飛びこむと、布袋から伸縮性の竹槍を取りだした。 「おらあ!」 男の槍が、足元でマゴマゴしていたれいむの口から後頭部を貫く。 「おぼおっ!!?」 さらに、飛びかかってきたまりさの口から後頭部を貫く。 「ゆぼおっ!!?」 またまた、襲ってきたありすの口から後頭部を貫く。 「ごぼおおおっ!!?」 仲良く槍に刺さった赤、黒、黄色のオーソドックス3匹……春らしい三色団子(饅頭だけど)の出来上がりだ! 「いっただっきまぁぁぁっす!!」 皮を食いやぶり、グッチャグッチャと中身を食い荒らす男の姿に、群れのゆっくりは両眼を見開いて震えあがった。 「ごちそーさまでしたぁ!!」 「「「「「「「「ゆぎゃーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」 前線にいたゆっくりは恐怖で逃げ出した。 だが人間の足にかなうはずもなく、ふん捕まえられて一方的に中身を味見されて終わった。 ズドォォォォォォォォォォォォン……!! 「「「「「「「「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛っ!!?」」」」」」」」 大爆発が起こるたびに、無数の饅頭が空を舞う。 仲間などおかまいなしに放たれるドスパークはゆっくりをはねあげ、男の身を何度も焦がした。 「どぼじであたらないのおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!????」 固定砲台・ドスまりさが叫ぶ。 男は俊敏に動けないドスの弱点をついて、その背後へ背後へと回ってドスパークを避けつつ、ゆっくりを駆逐していたのだ。 「れいむたちとゆっくりできないにんげんはゆっくりしんでね! ゆげえっ!!?」 体当たりしようとしたれいむが、縦に一閃されて真っ二つになる。 れいむの右目は左半身を、左目は右半身を……生き別れになった自分自身を凝視しながら、地面に中身をぶちまけた。 「ありすは"ふくへい"だからこうげきしないでね! そろーり…そろーり…ゆぎゅぽっ!?」 身を伏せて忍び寄っていったありすは、一撃も加えないうちに踏み潰された。 踏まれた瞬間に寒天質の目玉が飛び出し、ぽっかり開いた穴からカスタードが噴き出した。 「ゆぎゃーっ!! あたまがいだいよぉ!! ばでぃざのおぼうしがぁ!! あだまがああああ!! おぼうじがああああ!!」 不用意に近づいて男の振りまわす槍に頭を切り飛ばされたまりさ。 フタのない餡子壷となったまりさは、傷の痛みと帽子を失ったダブルショックに苛まれながら、黒々としたツブ餡をあふれさせた。 「ゆゆっ? れいむをもちあげないでね! ゆっくりやさしくおろしてね!」 男は布袋から竹トンボを取りだすと、捕まえたれいむの脳天に埋めこんで主軸を回した。 「ゆぎゃあああ!! でいぶおそらをとんでるみたいぃぃ ぃ ぃ ぃ ぃ ……」 回転する竹トンボであさっての方向へ飛んでいったれいむは、どこかに墜落して餡子を撒き散らした。 「ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ! ゆっくりできないじじぃはさっさとどっかにいってね!」 「ここはまりさのゆっくりぷれいすだぜ! いたいめにあいたくなかったらしっぽをまいてにげだすんだぜ!」 「ここはありすのゆっくりれじでんすよ! いなかもののじじぃはさっさとでていってね!」 直接攻撃するのが怖いのか、遠巻きになって竹取り山をおうち宣言する3匹。 男は布袋から竹の水鉄砲を取りだすと、3匹に向かって辛子水を発射した。 「ゆ! おみずさんだよ!」 「ゆっくりのむんだぜ!」 「ごーくごーく!」 さっきまでの罵倒はどこへやら、3匹は嬉しそうに敵の水を飲みはじめたが、急に目を見開いたかと思うとブバッと噴き出した。 「ゆげぇっ!! からいいいい!! ゆっくりできないいいいいい!!」 「ぐぞじじい!! ばでぃざにあやまれえええええ!!」 「れでぃーにどくをのませたわねえ!? このいなかも…の…………ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ」 自分から飲んだくせに抗議を始めた3匹は、すぐに痙攣をはじめてから白目を剥いてショック死した。 「あでぃずのばでぃざがああああああ!!!!」 もはやどのまりさか分からないが、長年ゆっくりしてきたつがいを殺されて怒り狂ったありすが、歯茎をヒン剥いて飛びかかってきた。 男は餡子と砂糖汁でナマクラになった槍を投げ捨てると、飛んできたありすをキャッチした。 「ガブッ!」 「ゆんやぁっ!! あでぃずの"ももじり"があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 おしりを噛みちぎられたありすは、生きたまま中身を吸い上げられて目玉をギュルンギュルン回した。 「おまえ、味も食感もゲロ悪!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおお!!!??」 投げ捨てられたありすは一命を取りとめたかに見えたが、後続の仲間に押し潰されて地面を黄色く染めた。 「うっうまれるっ!! みんなっ、でいぶのあかちゃんがうまれるよおおおおおおおおおおおお!!!!」 戦場で産気づいた目立ちたがり屋の胎生にんっしんっれいむが、唸り声をあげて赤ちゃんをひり出していた。 「ゆ゙ゔ~っ!! ゆ゙ゔ~っ!! でいぶのあがぢゃんをゆっぐりみていってねえええええええええ!!!」 「その赤ゆ、よこせ」 出産宣言を聞きつけてやってきた男の姿に、れいむは「ゆ゙っ!?」と驚愕した。 「ゆひいっ!? おにいざんなんがよんでないよぉ!! あがぢゃんででごないでねええ!!! ゆっぐじながにもどっでねええええ!!!」 れいむは必死に産道を閉じて赤ゆっくりを押し戻そうとしたが、男はすばやく穴に手を突っこんで赤ゆっくりの数をさぐった。 「「「ゅっ…! ゅっ…!」」」 撫で回されるのを嫌がってゆんゆんと身をよじっていた3匹の赤ゆっくりを、産まれる前にプチプチプチッと握りつぶす。 「やめてね! あかちゃんがゆっくりできないでしょ! ……ゆ? ゆ? ゆゆっ? れいむのあかちゃんがかんじられなくなったよ? どうして?」 だが、産道から小さなカチューシャやリボンが餡子汁に乗って流れてきたのを見た瞬間、れいむはすべてを悟った。 「あ、あかちゃんが……れいむのかわいいあかちゃんがっ……せかいでいちばんゆっくりしてたあかちゃんがっ……」 もう二度と赤ちゃんとゆっくりできないと理解したれいむ。 「あかちゃんと……いっしょにゆっくりしたかった………………カハァ」 れいむは魂のようなものを吐いて動かなくなった。 男は赤ゆっくり3匹分の餡子で気分転換すると、長い舌を垂らして絶望死しているれいむを残し、もとの戦場に戻っていった。 「れいむはしにたくないよ! もぉおうちかえるぅ! どいてね! どいてね! どぼじでどいてぐれないのぉぉぉぉぉぉ!!?」 「ゆぅぅぅぅ! まりさのおぼうしがなくなっちゃったよ! だれかもってないのぉぉぉ!?」 「ちょっとそこのれいむ! ありすにきやすくさわらないでね!」 戦場は大混乱だった。 「面倒だ!」 隙間なく群がるゆっくりに嫌気がさした男は、布袋から折りたたみ式の竹馬を取りだすと、その上に乗ってデタラメに闊歩した。 「ゆぎゃんっ!」 「ゆぎぃ!?」 「ゆぶしっ」 「ゆげぇ!」 「ゆぼぉ!?」 一歩踏み出すたび、竹馬に踏みぬかれたゆっくりの悲鳴が面白いように聞こえた。 男の通った後には、潰れたゆっくりの皮や餡子、カスタードが混ざり合って甘ったるい匂いを放っていた。 ここへきてやっと劣勢だと気づいたドスまりさ。 長く生きているためドスパーク用のキノコはまだまだあるが、ゆっせゆっせと狙った方向へ体を動かしているうちに疲れてしまった。 「ゆ゙ふぅぅぅっ! どすはつかれたからゆっくりきゅうけいするよお! れいむしょうぐん、でばんだよおおおおお!!」 「おぉでばんでばん!」 ありす将軍に匹敵する、これまた巨大なゆっくりれいむが応えた。 「みんな、じゅんびはいいね!?」 「「「「「「「「「ゆーっ!!!」」」」」」」」」 れいむ将軍の合図で、男の前に9匹の胎生にんっしんっれいむがズラリと並んだ。 本当はもう1匹いたはずなのだが、なぜか行方不明だった。 「ゆっ! ゆっくりさくせんをかいししてね!」 れいむ将軍が合図した瞬間、 「「「「「「「「「ゔ …… ゔ ば で どぅ (うまれる)ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!!!!」」」」」」」」」 9匹のにんっしんっれいむが一気に産気づいた。 れいむたちは集団でミチミチミチミチと9つの産道を広げたかと思うと、この世のものとは思えない醜悪な顔でおたけびを上げながら、 赤ゆっくりを次々にしゅっさんっしていった。 「まだだよぉ!! きゅーとなあかちゃんまだまだうまれるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 まだ産み終わらないれいむは、ネバつく餡子汁を噴き散らしながら息張っていた。 「……ゆゆ! さくせんかんりょうだね! ゆっくりようすをみようね!」 しばらくして、任務を終えた9匹のれいむは、ふた回りも小さくなって産後の余韻にひたっていた。 一方男の足元では、湯気でも立ちそうな20匹前後の赤ゆっくりがとてもゆっくりした姿(ゆっくり視点)でウニウニと小さな体を振っている。 「ゆっくちちていっちぇにぇ!」 「ゅ~! ゅ~!」 「ゆっくちーん♪」 「ゅっゅっ! ゅっゅっゅっ!」 「ゆ? おじちゃんはゆっくちできりゅひちょ?」 これは、生まれたばかりのゆっくりした赤ちゃんを見せて敵を骨抜きにするという、れいむ将軍の恐るべき作戦のひとつである。 だが… 「ヒャッハァ!! 赤ゆだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 竹馬から両手を広げてダイブする男。 なにもわからない赤ゆっくりは、飛んできた男に目を輝かせた。 「ちゅご~い! おしょらをとんでりゅみちゃい~~~♪」 ドザンッ! ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぃっ!! 「「「「「「「「「ゆぎゃあああ!!!?? でいぶのあ゙がぢゃんがあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!」」」」」」」」」 産後のゆんゆん気分から一転、赤ゆっくり全滅地獄に転落した母れいむたちが絶叫する。 「うっめ! 赤ゆ超うっめ! やっぱ産みたて最高!」 「ゆぐううううっ!! よぐもでいぶのあがぢゃんをっ!!!」 「あんなにゆっぐりじでだのにぃ!!!」 「ゆっくりごろしいいいいい!!!」 「ごろずぅっ!! でいぶがぜっだいごろじでやるうっ!!!」 赤ちゃんをミンチにされて食べられ、怒り狂った母れいむたちが凄まじい形相で迫ってくる。 だが、しゅっさんっで体力を失い、体を引きずることしかできないゆっくりれいむの始末など、男には造作もなかった。 赤ゆっくりにくわえ、特務を与えた9匹の部下がいとも簡単に粛清されたのを見て、れいむ将軍は怒り狂った。 「れいむはおこったよ!! みんなのかたきうちだよ!! とむらいがっせんだよ!!」 そう叫びながら、目から餡子汁を飛ばしてボヨヨンボヨヨンと飛び跳ねてくる。 男は布袋から竹の切り株(以下、火炎竹)とマッチを取りだした。 この火炎竹には油が入っていて、火をつけて投げることで対象物を燃焼させる、いわゆる火炎瓶のようなものだ。 もちろん、れいむ将軍はただの竹の切り株だと思っている。 「ゆゆ? そんなのでれいむをたおせるわけないでしょ! おじさんばかなの!? あんこのうなの!?」 ボハァッ!! 「ゆぎえ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁあ゙ぁあ゙ぁあ゙ぁあ゙ぁ!!!!???」 火だるまにされたれいむ将軍は、醜い悲鳴をあげてゴロンゴロンと転がった。 しかし小麦粉でできた皮が油を吸収しているため、どんなに転がっても火は消えなかった。 「ゆがあ゙あ゙あ゙!! ゆがあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! だずげでえっ!! はやぐううっ!! あづいよおおお!! んごおおおおおっ!!」 最初は激しく暴れていたのに、しだいにぐったりとなってゆくれいむ将軍。 「あづいい…もっどゆっぐりじだいいい…かひっ…かひぃっ…きひぃっ! ひくっ……ひくっ…………………ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ」 燃えさかる炎に焼きつくされ、とうとうビクンビクンと痙攣をはじめる。 まっ黒な特大焼き饅頭となったれいむ将軍は、全身から湯気をたてながら、その数年間のゆん生を終えた。 「れいむの丸焼き、一丁上がりだ」 焦げた皮を剥がすと、ホクホクした熱い餡子が露出する。 全身大ヤケドの苦痛で甘くはなっていたが、高齢のゆっくりにありがちな餡子のパサパサ感はぬぐえず、非常に残念な味だった。 男がムダにデカい焼き饅を蹴っ飛ばすと、ゴロンと転がって群れのほうを向いた。 あんなに大きくてゆっくりしていたれいむ将軍の凄惨な死にざまに、群れのゆっくりはぷるぷる~っと震えていた。 「……やっぱりれいむはいなかものね! ありすがでるわよ!」 「ゆゆ!? ありすのとうじょうだよ!」 「ゆっくりまかせるよ!」 「きょうもありすはとかいはだね!」 群れのナンバーワン・ありす将軍の出陣に、ゆっくりの士気がよみがえった。 「また年増か」 「どぼじでそんなこというのぉぉぉ!? あでぃずはもぎたてのぷるぷるよおおおおお!!??」 「まぁいい、かかって来い」 「ゆっくりかくごしてね! しんのとかいはのありすが、おにいさんを"きょうふのゆんどこ"におとしてあげるわよ! ゆんっ!!」 先手必勝とばかりに、ありす将軍はその巨体で男を突き飛ばし、倒れた体に乗っておさえつけた。 「ゆっくりかもん!」 「「「「「「「「ゆっくりとりつくよ!!」」」」」」」」 ありす将軍の合図で、成体ありすが次々に飛び乗ってくる。 これは、大量のゆっくりありすの重みで敵を押し潰そうという、ありす将軍が考案した恐るべき作戦のひとつである。 取り付いたゆっくりありすの数が増すにつれて、まるい大きな黄色いかたまり…ありす団子が形成される。 細胞のようにボコボコした団子の表面……それらはすべて、ありすのおしりだった。 「ゆふふふ。おもいでしょ? くるしいでしょ? ありすのごーじゃすなぼで~に、ゆっくりつぶされていってね!!」 ゆっくりありすもこれだけの数になるとかなり重い。 男は振りほどくのを諦め、全身をブルブルと震わせた。 まるで発作を起こした患者のように、激しく体を揺すった。 「むむむむむむほほほほほほっっっっっ!!!!????!?!?」 最初に発情したのは、男に一番近いありす将軍だった。 男の振動はありす将軍を介して、まわりのありすにも伝播していった。 「むほ?」 「むほ!」 「むほぉ!?」 「むほーっ!!」 外周に向かって発情してゆくありす団子。 個々の体からは透明な粘液がにじみ出し、ありすたちは互いの粘液ですべって落ちていった。 そうして崩れたありす団子の一角から、男は無事に脱出した。 周囲には、ヌチョヌチョしながら熱い吐息を漏らしている危険な状態のありすの群れ。 「おい、あそこにまりさがいるぞ」 男はあっちでお昼寝しているドスまりさを指した。 ほてった体を持て余していたありすたちは、ドスを見るなり一斉に飛んでいった。 「「「「「「「「「「どすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!!」」」」」」」」」」 「むーにゃむーにゃ…………ゆっぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!?????」 疲れて眠っていたドスは、たくさんのグッチョリありすに取り付かれて悲鳴をあげた。 みんなドスにすっきりさせてもらおうと、夢中で体を擦りつけている。 その中央に陣取って、ドスのまむまむと思われる場所を激しく擦っているのがありす将軍だった。 「どすぅ!! おっきくてすてきよぉ!! あでぃずのらぶあんどぴーすをうけとってねえええ!!」 「どおしてこんなことするのおおおおおお!!!?? ゆっくりやめてねえええええええええ!!!」 ず~りず~り! ず~りず~り! 「ゆふん!! ゆふん!!」 「どぼじでやめでぐれないのおおおお!!!?? ごんなごどざれだらゆっぐりできないでじょおおおおおおおおおおお!!!!」 もうこんなありすとはゆっくりできないと思ったドスは、体を激しく揺さぶって振りほどいた。 「まぁどすったら!! ほんとうは"どえす"だったのねえ!!?? でもあでぃずは"でぃーぶい"だってへっちゃらよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「もういやだよお!! どすはありすなんていらないよお!! ゆっくりあっちにいってねええええ!!」 「つんでれなどすもだいすきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!???」 ドスパークを撃ちこまれた発情ありすたちは、集団で炭素と化した。 (後編)へ