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どうすればいいのだろう 作、 茄子 まりさは苦悩していた。それは 『赤ん坊』だ、親を馬鹿にしているのだろうか 自分のいうことをまっったく聞かない どうすればいいんだろう、れいむも話を聞かないし… 「いい!?おとうさんのまねをしてするんだよ!みてて!」 そう言って親まりさは肛門を地面に触れるか触れないぐらいに 近づけて、『うんうん』をした、これが正しい『うんうん』の仕方 「おとーしゃん…なにうんうんしてるの?ばきゃにゃにょ? こどみょにきょうもんみしぇてはずかしきゅにゃいにょ? しゅーちぷれいにゃにょ?」 「みょういいよみゃりしゃ、うんうんとうちゃんはほっといて ごはんしゃんをたべようよ」 「…ッ!!」 これだ、こうやって親の話を聞かないのが悩みなのだ しかも妻のれいむは… 「さっさとかりへいってこいッ!!!」 どうすればいいんだろう… 「ごはんしゃんもたべたしうんうんしゃんをしゅりゅよ!!」 「しゅりゅよ!!」 果たしてちゃんとできるのか親まりさはどきどきして見守りました 「うんうんしゅりゅよーーーっ!」 赤まりさはひっくりかえりながらうんうんをしました 案の定顔にうんうんが付きました 「ゆっぴゃあああ!!くしゃいいいい!!!」 隣では赤れいむがうんうんにはまっていました、 どうして… 「うんうんくしゃいいいい!!!!」 「ゆぴゃあああああああああ!!!」 「しょうがないね、ちゃんとまりさのを見てなかったから こうなったんだよ!!」 そう言って親まりさは赤ゆ供をぺーろぺろしました 所が、 「なにきょどものうんうんしゃんにゃめてりゅの?」 「しょんにゃにりぇいむのうんうんしゃんにゃめたいの?」 「ッ!!」 さすがに親まりさも堪忍袋の緒が切れたようです 刹那、親まりさが赤ゆを突き飛ばしました、 「「ゆっぴゃああああああ!!!」」 「にゃにしゅりゅにょおおおおお!!!」 「しどうだよ!おやとしての!!!」 「ふざけるなあああああああああアッ!!!」 なんと親れいむが親まりさに向かって タックルをしたのです 「ゆべえええええええええ!!!!」 「なにがしどうだよ!!このこたちは こどもなんだよっ!!おやなんだから なんだっておしえなきゃいけないんだよっ!! じっくりじっくりとね!!! まったくこれだからまりさはだめなんだよ! かりしかのうがないくせに!!! だめおや!ぎゃくたいちゅう!! このくそあんっこさんがああああああああああ!!!」 すると、まりさの頭の中で何かが 『はじけました』 なやむ?どうすればいい? そんなのかいけつするのはかんたんだ それはっ… 「ゆっぎゃああああああッ!!!!」 「れいむがいけないんだよ!!!」 まりさは帽子に隠していた『棒』を れいむに突き刺しました 「いだいッ!!はなぜっ!!!」 「ゆははははははハッ!!!」 まりさは口を一の字に振りました するとどうでしょう、 綺麗にれいむの体が一の字切れたではありませんか 「ゆぎゃああああああああッ!! くそでぃーぶいがああああ!!!」 「くるしまくるしめくるしメッ!!!!」 まりさは踊っていました、れいむも踊っていました それは『死の踊り』あんこが飛び散る、踊りッ!!! 「ゆはー…ゆはー…」 「…………」 ペースト状になったまりさはものすごい快感におぼれました それはカタルシス、あぁ、また味わいたい、 まりさは後ろを向きました、そこには おびえている2匹の子供、 「おちびちゃん…」 「「っぴぃッ!?」」 赤まりさのはらからちーちーがでてきた 「おもらししちゃだめだよぉ 『掃除』しなきゃねッ!!」 親まりさは赤まりさの髪をくわえて ちーちーした場所に叩きつけました 「こうやってッ…そうじッ…するんだよッ!!!」 親まりさは赤まりさを地面に8の字の形に 擦り付けてました、 「ゆぴゃあッ!!やべッ!!やべでッ!!」 「だめだよ!じぶんがしたことは じぶんでかたづけなきゃねっ!!!!」 ぶちゅ… 「あはははっはああああああああ!!!」 又、この世のものとは思えない快感に 酔うまりさ、 解釈 きゅりゅってるよ!? (くるってるよ!?) にゃんであのばきゃおやはみんにゃを (なんであのばかおやはみんなを) きょりょしたにょ!?つぎはりぇいむのばん? (ころしたの!?つぎはれいむのばん?) きょろしゃりぇるの?あのばきゃに!? (ころされるの?あのばかに!?) その時、赤れいむは思い出した 親まりさの後ろからタックルして ぼろぼろにしたことを… しょうだ…りぇいむはあいつに (そうだ…れいむはあいつに) あんなきずをおわしぇたんだ!! (あんなきずをおわせたんだ!!) ほんきでやりぇばきゃてる!!! (ほんきでやればかてる!!!) 正直都合のいい妄想ですけどね まだ、まりさは快感の余韻に 浸っている、 赤れいむはまりさの後ろに回り… タックルッ!!!!! 「ゆふん!!りぇいむのすとろんぐたっくる!! いたしゅぎてちにぇ!!!!」 「…にげればいいものを…ほんとばかだね」 「ゆ?」 ビリリッ!!! 赤れいむの自慢の髪飾りが破れた いや、破かれた、まりさは、知能を得たのだ、 『ゆっくりを殺す知能!苦しませて殺す知能!』 「ゆわあああああ!!りぇいむのじみゃんの きゃみかじゃりいいいいいい!!!!!」 「ゆふふふ…もっと苦しませて、殺してあげるよ!」 知能も得たのだ ぶちゅ しゅみましぇん ぐちゅ やめて ゆるちて どちゅ ゆっぴゃあああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああ あああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 「まだ、味わいたいこの感覚に」 まりさは群れへいどうしていったのだ
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「ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭/コメントログ」 赤ゆザマァwやっぱりこういう話は落ち着いて読めるな! -- 2011-01-21 17 42 04 個じゃなくて匹ってどういう事? 人でもないし -- 2011-03-16 21 45 51 ↓↓この人でなし!自分の子供に対してこのSSのような態度がとれるのか!!! -- 2011-08-23 13 42 40 愛好家「パクッ! これは虐待の味!」 -- 2011-11-28 17 23 43 ↓↓はいはい凸厨はアンチ掲示板に帰ってね -- 2012-01-01 11 22 56 おかーさーん!汚饅頭かってよー! -- 2012-04-10 21 58 23 xfgbhifh -- 2012-05-25 00 39 17 ↓×2 汚饅頭www -- 2012-11-17 13 48 00 湯栗町→ゆぐりまち→ゆっくりまち こんな感じの設定ですか? -- 2012-11-25 17 22 38 アンチがわざわざこういう場所に来るってのはあれか?ツンデレって奴か? -- 2013-01-18 09 36 54 すばらしい -- 2015-09-03 01 37 57 それなり -- 2018-08-25 23 33 33 美味そう -- 2019-03-30 13 53 36 やめてやれよー(建前グゥレイトっ!(本音 -- 2022-10-24 14 48 57
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『ゆジャンク後日談』 13KB 考証 愛情 不運 番い 飼いゆ 現代 六作目 前作のおまけ これは anko4303 ゆっくりジャンプワーク のおまけです。 愛ででも虐待でもなく、ただゆっくりを飼う事の難しさを書いています。 ゆっくり飼育の入門書を手に取り、ページを開く。 そこにはこう書かれている。 『ゆっくりがおちびちゃんを欲しがったら、それがそのゆっくりの寿命だと考えて下さい』 ゆっくりを飼う上で避けては通れない道がこれだった。 ゆっくりとは非常に貧弱なナマモノだ。それ故に繁殖欲求が強い。 貧弱でも沢山産めば、運が良い幾らかの赤ゆは生き残れる。そういう繁殖スタイルなのである。 (余談だが、魚のマンボウは一回の産卵で三億匹産んで、そこから無事に成魚になれるのはたった二、三匹らしい) 亜成体と呼ばれる成体一歩手前の段階、野良や野生なら独り立ちする時期辺りからゆっくりは番を求め始める。 そして番を見つけてら適した季節を選んですっきりーをする。 野良も野生も冬場や梅雨時は避けるし、野良は水不足が懸念されるので夏場も避けるだろう。 すっきりーをする季節を間違えば産まれてくる赤ゆは勿論のこと自分自身まで永遠にゆっくりしかねないので、余程の馬鹿でない限りここは間違えない。 しかし飼いゆっくりにそんなことは関係無い。 我慢しなければ死ぬ野良や野生、我慢しなくても死なない飼いゆっくり。 普段から快適な場所で生活をしている飼いゆっくりは年がら年中繁殖期なのだ。 『飼いゆっくりにすっきりーを我慢させるのはヘビースモーカーに禁煙させるより困難です』 入門書にはソフトな文章が書かれているが、俺は別の比喩を耳にしたことがあった。 それは、『男子高校生にオナ禁させるようなもの』である。 ……うむ。これは非常に難しい。一日二日ならともかく永遠に禁止となると我慢できない奴の方が多いんじゃなかろうか。 勿論、生まれつき性に関して淡白だとか強靭な精神力で我慢するとか悟りを開いて欲求を消すとか方法はあるかも知れないが、俺には無理だ。 このことを踏まえて飼いゆっくりのいる状況を例え話にしてみると、 家が金持ちな男子高校生がいたとする。 好きなものは何でも買ってもらえて美味い飯も食える。 ただしエロ関係はNG。エロ本もAVは当然ダメ。自慰も禁止。許可無く女性と性的な関係を持ったら家を追い出す、とまで言われている。 で、そいつが外に出てみると、貧乏そうな女の子が群がってくる。 服装は微妙なのだが、顔は可愛かったりスタイルが良かったり性格が良かったりするわけだ。 そんな女の子達が、 「わたし、君と仲良くしたいなっ☆」 「一緒にお散歩しよう? これ、デートのお誘いだからね♪」 「……好き///」 などと猛烈にアピールしてくる。 中にはいきなり服を脱いで股を開き、 「ねぇ、私と楽しいことしない?」 という直球勝負をしてくる奴もいる。 さて、その状況下でオナ禁を強制させられている男子高校生は欲望を我慢出来るだろうか? 金バッジのゆっくりが野良とすっきりーしてしまっても、それは責められない事なのかも知れない。 だが現実問題としてゆっくりの数が増えれば飼い主の負担も増える。 快適な環境でどんどん増えるゆっくりを飼い続けられるはずもない。 だから入門書に書いてあるのだ。 『ゆっくりがおちびちゃんを欲しがったら、それがそのゆっくりの寿命だと考えて下さい』と。 それ以上買い続けても碌な事にならない、と。 ゆジャンクには成分を調整したラムネがセットで付いてくる。 このラムネを食べたゆっくりは眠るように意識を失い、そのまま永遠にゆっくりする。 ゆジャンクを売り出している加工所は「飼いゆっくりは使い捨てのおもちゃ。ある程度楽しんだら処分するべき」と考えているようだった。 俺はソフトボールサイズまで育ったれいむを見る。 れいむはビー玉を転がしては追いかけて、一人で楽しそうに遊んでいる。 俺とれいむは「大家と入居者」という関係だ。入門書にもそういう関係が良いと書いてあったし、実際上手くいってる。 だから俺は、出来る限りそういう関係のままで行ってみようと思った。 月日は流れ―――― 既に亜成体、バスケットボールサイズにまで成長しているれいむは番を作りそうになっていた。 近くの自然公園に住んでいる野良まりさと良い感じらしい。 俺は百均ショップで風船を買ってきた。 そしてそれを膨らませてれいむのぷれいすに置く。 「れいむ。番と暮らすとぷれいすが狭くなるぞ。具体的にはこのぐらい狭くなる」 「このくらい、へいきっだよ!」 「番が出来たらおちびちゃん作るだろ。おちびちゃんが大きくなったらぷれいすがもっと狭くなるぞ」 俺は風船をどんどん膨らませてはれいむのぷれいすに置いていく。 「こ、これはせまいかもしれないよ。でも、いつでもすーりすーりできてしあわせーだよ!」 「大きくなったおちびちゃんが、番が欲しい、おちびちゃんが欲しい、って言ったらどうする。もっともっと狭くなるぞ」 「……ゆっ、そうだよ! おにいさん、れいむのぷれいすをひろげてね! ごはんさんはらうよ!」 「それだと俺のぷれいすが狭くなって俺がゆっくり出来なくなる。だから幾らゆっくりフードを用意してもダメだ」 「ゆぅ……でもでも! れいむは まりさといっしょにゆっくりしたいんだよ!!」 「れいむ。お兄さんとれいむ、どっちが頭が良い?」 「おにいさんだよ。おにいさんはれいむに たっくさんのことをおしえてくれたよ。でもおうたはれいむのほうがじょうずだよっ!」 「そうだな。じゃあ頭が良いお兄さんが教えてやる。番とおちびちゃんを諦めた方が長生きできるぞ」 「なにいってるの? ゆっくりはゆっくりするためにいるんだよ! おちびちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!」 「おちびちゃんがいないゆん生には意味が無い、って言うのか?」 「ちがうよ! おちびちゃんがいればとってもゆっくりできるよ。とってもゆっくりしてたら、ながいきさんだってできるんだよ!」 ゆっくりしてる奴が偉い、強い、素晴らしい。 だからゆっくりしてれば万事上手くいく。そしておちびちゃんはとてもゆっくりできる。そういう考え方か。 まぁゆっくりにありがちな思考ではある。 「もう一回だけ聞くぞ。頭が良いお兄さんの言うことを信じて、番とおちびちゃんを諦めないか?」 「いやだよ! おにいさんはあたまがいいけど、こんかいはまちがってるよ!!」 「……そうか。分かった。ならもう何も言わない。家賃さえ払っていれば、そこはれいむのぷれいすだから好きにすれば良いさ」 ゆっくりフードなんて安いものである。 それに、ゆっくりのうんうんを加工所に持っていけばフードと交換してもらえるサービスもある。 だから俺の経済的にはれいむが番や子供を作っても何ら問題ない。 問題はその後のことだ。 その時が来たら、俺は飼い主としての務めを果たさなければいけないんだろうなぁ。 れいむは狙ったようにゲスと番になっては離婚を繰り返し、四匹目である善良ありすとの間にようやく赤ゆが生まれた。 俺がありすに「胎生妊娠で出来るだけ赤ゆの数を少なくしろ」と言っていたにも関わらずれいむが押し切り、数が多くなる植物型妊娠での出産だった。 赤れいむ二匹の赤ありす二匹、それに両親を足して合計六匹だ。家の中はにわかに騒がしくなり、明るく楽しくなった。 れいむとありすは可愛いおちびちゃんに囲まれてとてもゆっくりしていた。俺もゆっくり出来た。 だが、楽しい時間というのはあっと言う間に過ぎ去るものである。先延ばしにしていた結論を出す時が、いつかはやってくるのだ。 ここから先を続ける前に、先に説明しておくことがある。それは去勢についてだ。 前述の通り、ゆっくりは繁殖の欲求が非常に強い。おちびちゃんを持つことがゆん生で最高の幸せとすら考えている。 だから去勢する場合は時間をかけて説得し、ゆっくりが納得した上でする必要がある。 そうでないと自分がおちびちゃんを作れないと知った時にショックのあまり吐餡死したり、内に閉じこもる卑屈で陰気なゆっくりになったりする。 それはもう人が「飼いたい」と思うゆっくりとは別物だろう。 もし銀バッジ以下のゆっくりが去勢されているとしたら、ラムネで眠らせている間に勝手に処理していると考えてまず間違いない。 そしてゆっくりは「おちびちゃんをつくってゆっくりするんだ!」という思いを胸に、不能の体で不毛なゆん生を歩んでいくのである。 だから俺はれいむの去勢をしなかった。そしてそれが間違いだった。今思えば勝手に去勢しておけばよかったのだ。 そうすれば俺の部屋にいるゆっくりはれいむと番だけで済んだのだから。 生まれた赤ゆは子ゆになり、亜成体にまで成長した。(便宜上 子れいむ、子ありす と呼ぶ) そうなるとゆっくり達のぷれいすはかなり狭くなってしまう。 一畳のスペースに、バスケットボール六個、アタッシュケース、体重計、皿二枚を置けば大体そんな感じだ。 既に家として使っていた段ボール箱は取り除いてある。今はもう邪魔にしかならないからだ。 ぷれいすの一角に雑巾をまとめて置いてあり、寝るときはそれを足元に敷いて寝る。ゆジャンクの感圧板の上で寝るゆっくりもいる始末。 子れいむと子ありすが小さかった頃はぷれいすから出てこない日も多かったが、今では毎朝必ず入場料を払って俺のぷれいすに入ってくる。 そうしないと狭すぎてゆっくり出来ないからである。 そして、そんな状況にも関わらず子れいむと子ありすは番を欲しがるのだ。 ゆっくりにとってのすっきりー禁止がどれだけ難しいかは前に述べた。そしてゆっくりである親れいむと親ありすは身に染みて理解している。 しかし俺はぷれいすの拡張を認めない。それを認めればゆっくりはもっと増える。キリが無いからだ。 その状況下でゆっくり達が出した答えは、 「おにいさん! れいむたち、のらになるよ!」 「おそとならおちびちゃんがいてもへいきっだよ!」 「ありすはすっきりーしておちびちゃんをつくりたいの!」 口々に叫ぶゆっくり達。あぁやっぱりこうなったか。 子れいむ子ありすにはゆジャンクセットのDVDを見せて野良の厳しさを教えてある。 だが親ありすは元々野良だったので野良生活のノウハウがある。それが皆の拠り所になったらしい。 「ありす。本当に良いのか? お前、本当に野良に戻るのか?」 「……とかいはなおちびちゃんに、のらのいきかたをおしえられるのはありすだけなのよ」 「そうか。分かった。でもいつもの自然公園には連れて行けない」 「なんでえええええええええ!?」 「あそこにはありすのぱちゅりーがいるのよ! あそこじゃないとだめなのよおお!?」 「そうだよ! れいむのまりさだっているんだよおおおお!!」 「あの公園は一斉駆除されたからだ。これから何度も何度もやるらしいから、あそこに住むと駆除されるぞ」 「……ゆ、ゆんやあああああああああ!!」×4 子れいむと子ありす達は番になろうと思っていたゆっくりが駆除されたと聞き、絶叫した。 親れいむと親ありすはあまりのことに呆然としている。 この一斉駆除、実は嘘である。 ゆっくりを捨てるのはマナー違反だ。飼い主として最低の行為だ。だから俺がこいつらを野良にすることは出来ない。 しかしラムネを食べさせて殺すのも嫌だった。それで何か方法は無いかと頭を悩ませた。 結局、正攻法でやってみて後は運に任せるしかない、と決心した。 知り合いを当たってみた。だれも引き受けてくれなかった。 ネットの掲示板で里親を探した。見つからなかった。 スーパーの掲示板コーナーに張り紙をしてみた。見つからなかった。 当然である。 そもそも俺が増えたゆっくりを上手く飼えずに困っているのだ。 赤ゆを欲しがっているゆっくりを引き取ってくれる人などいるはずがない。いるとしたらそれは加工所か虐待派だ。 今時ゆっくりなんて掃いて捨てるほどいる。希少種か金バッジ持ちならともかく銅バッジの通常種を欲しがる人なんていないのだ。 捨てることは出来ない。だがこの状態で飼い続けてもそれは単なる飼い殺しで、俺もゆっくりも全然ゆっくり出来ないだろう。 『ゆっくりがおちびちゃんを欲しがったら、それがそのゆっくりの寿命だと考えて下さい』 やはりこの言葉は正しかった。 人間がゆっくりと仲良く過ごせるのは、ゆっくりが番を欲しがる前の子供の時だけなのだ。 もうラムネを食べさせて殺すしかないと思ったが、駄目元で近所にある雑木林の地主に交渉してみた。 もう飼えなくなったので手放したい。引き取ってくれる人はいなかった。だが殺処分はしたくない。 どうかこの雑木林にゆっくりを住ませてくれないか。 そういう内容の事を、出来る限り丁寧な口調で説明した。 俺が手土産に持っていったケーキを食べながら、その地主は言った。 「勝手に捨てていく人が多い中、わざわざ断りを入れに来る心掛けが気に入った。好きにしなさい」 俺の努力が実を結んだ瞬間だった。 これでゆっくりを死なせずに済む、と思ったが地主の言葉はまだ続いた。 「だが近隣の住宅から依頼された加工所が駆除に来る事もあるし、立ち入りは禁止してないからゆっくりを狩りに来る人もいる。それでも良いかね?」 「…………はい」 これはもう仕方無いだろう。 俺とゆっくり達は「大家と入居者」という関係だったが、それでも本質は「飼い主と飼いゆっくり」だ。 飼い主として、そこらの公園に捨てるなんて無責任なことは出来ない。受け入れ先があっただけでも御の字なのだ。 だから俺は「自然公園は一斉駆除があった」と嘘を付き、ゆっくり達を雑木林へと放すことにした。 俺は最後に「すーりすーりがしたい」と言うとゆっくり達は喜んで応じた。 一匹ずつ持ち上げ、頬を摺り寄せる。手ですーりすーりする事は何度もあったが、頬と頬でするのは初めてだ。 ゆっくり達も俺との別れを強く意識したのか、砂糖水の涙を流していた。 「おにいさん、いままでありがとう!」 「ありすたちがいなくても、ゆっくりしていってね!」 「おにいさんはとってもゆっくりしたにんげんさんだったよ!」 「ゆわああああああああああん!!」 「ゆううううう、ゆっくりいいい、ゆっくりしていってねええええええ!!」 「ゆぐっ……ゆっ……さ、さようならだよ……」 「あぁお前達。ゆっくりしていってね」 それから数日して。 今まで賑やかだった俺の部屋は、今はとても静かだ。 六匹もいたゆっくりが全部いなくなり、残ったのが俺一人なのだから当然である。 胸にぽっかりと穴が空いたような気がした。ぶっちゃけ、すげぇ寂しい。 ペットを失った人の悲しみを癒すにはペットを飼うのが良いらしい。 もう一度ゆっくりを飼ってみようか? そうだな、そうしよう。 ゆっくりとの付き合い方は理解したし、今度は銀か金バッジ持ちのを買っても良いだろう。 それか去勢済みの銅バッジでも良い。おちびちゃんは作れないが番と仲良く過ごしてくれ、と思う。 ……エゴだな、これは。だが仕方ない。 俺は仕事帰りにゆっくりショップへと足を運んだ。 男が夕暮れの道を歩いている。 その手にはゆっくりショップの箱が握られていた。 男はとても上機嫌で、今にも小走りしそうなほどだ。 それでいて手に持った箱を揺らさないようにゆっくり歩いているので、傍目にもウズウズしているのが分かる。 道端に車が停めてあった。 後部座席には小型の透明な箱が幾つも積み重なるように置かれていて、そこにはゆっくりが入れられていた。全部で十匹ほどだろうか。 ショップの箱を手に持った男がその車の傍を通る。 すると透明な箱に入れられたゆっくりの内の六匹が凄まじい反応を見せた。 大きく口を開き、涙を流し、泣き叫ぶ。 しかしその声は透明な箱によって阻まれ、男の耳には届かない。 男は手に持ったショップの箱ばかり見ていたので、1メートル離れた場所で騒ぐゆっくりにはまるで気付かなかった。 遠ざかっていく男の背中に何時までも叫び続ける六匹。 そこに車の持ち主であるモヒカン頭の男がやってきた。 モヒカン男は車のドアを開け、透明な箱を自宅の中へと運び込んでいくのであった。 了 挿絵:
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『人間の世界でゆっくりが見た夢(中)』 三、 夕日が街を赤く染めていく。人間もゆっくりも等しく帰路へと着いていた。一日の仕事に疲れ切った人間たちの視界にゆっく りは入らない。歩道をずりずりと移動していても、それを気に留める者は少なかった。「あぁ、ゆっくりがいるな」くらいにし か思っていないのだろう。ゆっくりに関わることのない一般人の反応などは大体こんなものだった。苦情を出す者。受ける者。 街のゆっくりに対する扱いに関してあれこれと考えているのはごく一部の人間でしかなかったのだ。その他大勢の人々にとって、 ゆっくりは心底どうでもいい生き物だったと言える。 それでも、廃材置き場で暮らす野良ゆたちは時折遠くから聞こえる同族の悲鳴に怯え身を寄せ合っていた。徐々にではあるが 聞こえてくるゆっくりの悲鳴は日を追うごとに増えてきているように感じる。そして、その感覚は間違ってはいなかった。街は ゆっくりに対する策を講じ始めていた。とは言ってもまだまだ保健所職員などが駆り出される頻度が増したくらいのもので、街 全体に影響を与えるようなものではなかったが。 「むきゅ。 あれをみてちょうだい」 ぱちゅりーの視線の先にあるのはビルの前に設置されている大型のテレビ画面だ。たまに行き交う人々が足を止め、テレビに 映し出された映像をぼんやりと眺めている。目の前のバス停に座っている女子高生たちもそれに視線を向けていた。 まりさとちぇんはぱちゅりーの言う“メディアさん”がどういったものかを理解した様子で目を丸くしたまま動かない。あの テレビ画面に映し出された自分たちが“人間さんの街からゆっくり出て行くよ!”と嬉しそうに話す姿を妄想すると、自然と顔 がニヤケてしまう。自分たちで出て行くと言うのだから人間にしても大助かりのはずだ。そう確信していた。事実、殺される恐 怖も殺す手間も省けるのだ。 「でも、どうやってあの“めでぃあさん”のなかにはいればいいの……?」 「そうだねー……。 あんなににんげんさんがたくさんいるところにはいっていったら、ゆっくりできなくさせられちゃうよー」 「むきゅぅ……」 さすがにそこまではぱちゅりーにも分からない。時計が午後七時を指す。夕方のニュースが始まったようだ。路地裏の入り口 付近から人間たちと同じようにテレビ画面を眺める三匹。そこに映し出されたのはゆっくりの姿だった。三匹が互いの顔を見合 わせる。 ニュースのテロップには“増えるゆっくり被害・駆除活動追い付かず”との文字が見えたがぱちゅりーたちには何と書いてあ るかが分からない。ニュースの内容は主に“飼いゆっくりブームの終了から野良ゆの蔓延”までがドキュメンタリー調で報道さ れており、保健所職員たちによる現場での生々しい声が伝えられていた。しかし、テレビの音声はぱちゅりーたちの元までは届 かない。テレビ画面の中には人間の家の中で幸せそうに暮らすゆっくりの姿があった。その姿を自分たちが幸せに飼われていた 頃と重ねてしょぼくれる。どれからともなく三匹は廃材置き場へと無言で引き返した。 メインのニュースはぱちゅりーたちがその場を去って行ったあとに始まったのだ。テレビは保健所などに寄せられた苦情や事 件をまとめて一斉に報じている。周囲でテレビを眺めていた人間たちは、“その話題”に移ってから注目を始めた。人間は直視 すべき問題の取捨選択をする。ブームを巻き起こした飼いゆっくりの話題などに興味はなかった。それはもはや過去の出来事で しかない。しかし、今ブラウン管を通じてニュースが伝えているのは現在の出来事である。テレビ画面には薄汚れた野良ゆの家 族や、意地汚くゴミ箱を漁る数多のゆっくりたちの姿が映し出されていた。人々が眉をしかめる。極めつけは野良ゆの起こす事 件を処理する職員たちの悲痛な声。 それらのニュースが終わった後に数人の女子高生たちが野良ゆについての会話を始めた。 「ていうかさ、……ゆっくりってキモくない?」 「だよねー。 なに生意気に街で暮らそうとしてんのって感じ……?」 到着したバスの中に乗り込みながらそんなやり取りを交わす。辺りには夜の帳が下りようとしていた。淡く瞬く星々。夜空を 見上げれば人間にもゆっくりにも等しくその光は映ることだろう。しかし、人間の見る世界とゆっくりの見る世界は同じのよう に見えて、全く異なるものであったのかも知れない。 街灯の光も届かない廃材置き場に戻ってきたぱちゅりーたちの暗い表情に気がついたのか数匹のゆっくりたちが寄ってくる。 「どうしたのぜ……? なんだかげんきがないんだぜ……?」 「むきゅっ……なんでもないのよ……」 まりさの無事を喜ぶありすが微笑んで頬をすり寄せる。ちぇんが二匹の微笑ましい様子を見ながらぱちゅりーを壊れた傘の向 こう側へと呼び寄せた。 「どうしたのかしら?」 「あのね……ぱちゅも、いちどだけかわまでのみちをおぼえたほうがいいとおもうんだねー」 「むきゅ。 そうね。 それじゃあ、あしたはぱちゅもいっしょにおでかけすることにするわ」 ぱちゅりーでしか気付けない事もあるだろう。計画の首謀者たる自分が移動ルートを把握していないわけにはいかない。ちぇ んとの話し合いで明朝、やはり、まりさとちぇんと一緒にぱちゅりーも堤防までは行ってみることになった。孤ゆと共に暮らす というれいむにも会って話がしてみかったのだろう。 「ゆ……ゆっくりしていってね……っ!」 廃材置き場に見慣れないゆっくりが現れた。ありす種とみょん種のゆっくりである。一目で野良と分かる風貌で怯えながら声 をかけてくる様子を見て、ぱちゅりーは無言で微笑みと一緒に挨拶を返した。最近、こうして廃材置き場の群れと一緒に暮らす 事を願うゆっくりが増えてきているようである。幸い、廃材置き場は広く新たにおうちを作るスペースには事欠かない。事情を 聞くとやはり、人間に飼われていたところを捨てられてしまったというごくありふれた話であった。この群れで暮らす第二世代 のゆっくりとは別に、新たに捨てられてしまうゆっくりも後を絶たない。 「ありがとう……っ! ほんとうにありがとう……っ!!」 ありすとみょんが泣きながら群れのゆっくりたちに礼を言う。その涙は他のゆっくりたちと同様、やり場のない怒りと悲しみ、 そして暖かな優しさに心打たれた事により溢れたものであると言える。二匹はずりずりと積み上げられたコンパネの後ろに這っ て行った。 眠りにつくゆっくりたち。そんな中、ぱちゅりーが一匹で星空を見上げている。ぱちゅりーの母親ゆっくりである親ぱちゅり ーは、森の中から見上げる星空の美しさを何度も語って聞かせてくれた。人間に飼われていた頃は天井に遮られ星空がどんなも のかを知ることはできなかったが今は違う。あのゆっくりできた日々はどうやっても帰ってこないが、その代わりに得た物も決 して少なくはなかった。ぱちゅりーは仲間と共に生きていくことの大切さを野良になって初めて学んだ。そして、一緒に頑張れ ばどんなことだってできるのだと信じる力を手に入れた。この気持ちを森で暮らすゆっくりたちに伝えたかった。野良として過 ごした時間は決して無駄にはならないだろう。 「ぱちゅ……」 「ちぇん。 どうしたのかしら……? こんなよるおそくに……。 れみりゃにたべられちゃうわよ……?」 「それはぱちゅもおなじなんだねー……」 「……むきゅきゅ。 ……そうね」 「ぱちゅ。 あのおはなしのこと……かんがえてくれたのかな……?」 「ちぇんとずっといっしょにゆっくりしてほしい、というはなしのことかしら……?」 ぱちゅりーは少しだけ恥ずかしそうに目を伏せた。ちぇんは頬を真っ赤に染めながらぱちゅりーの横顔を覗きこんでいる。ち ぇんはぱちゅりーに恋心を抱いていた。どれだけ危険な役目を担おうとも、それを遂行する強い意志の原動力はぱちゅりーへの 想いからくるものである。 「もりにかえるまでは……まってくれないかしら……?」 「りかいしたよー……。 こんなだいじなときに、こんなはなしをしてごめんねー……」 「き、きにしないでちょうだい……。 そ、その……ぱちゅもみんながもりにかえるまでは、いそがしいから……」 ちぇんが呆けたような表情を浮かべる。それが月明かりにほんのりと照らされぱちゅりーの視界に映し出された。今度はぱち ゅりーが頬を染める番だ。ぱちゅりーもちぇんの事が好きだった。無事に、森に帰ることができたのならば、ちぇんのプロポー ズを受け入れて共に静かに暮らしたいと願うほどに。 「じゃあ……もりにかえれたら……?」 「む、むきゅぅ……///」 二の句を継げないでいるぱちゅりーの仕草をちぇんはプロポーズの肯定と受け取っていた。真夜中だというのに太陽のような 笑顔を浮かべてぱちゅりーに頬をすり寄せる。邪気は無かった。親愛の意味を込めて、ちぇんは優しく、儚く、切なく、ぱちゅ りーの頬に触れている。ぱちゅりーもまた、それに応えた。 「ぜったい、いっしょにもりにかえろうねー……っ!」 「むきゅ。 とうぜんよ。 それで、みんないっしょにしあわせー!になりましょう」 「やくそくだよっ?」 「やくそくよ」 夜の冷たい空気が二匹の頬を撫でた。見つめ合う二匹は動かない。それから一呼吸置いて、どちらからともなく笑みを浮かべ た。 野良ゆたちの悲願。未だ見ぬ故郷。思い描く夢。その夢が、二度と醒めない魔法をかけるために日々を過ごしてきた。自分た ちは人間と一緒に暮らすことはできない。それを知ってから長い月日が流れた。人間たちにしてみれば僅かな時間であったかも 知れない。それでも、野良ゆたちにとっては永遠にも等しい時間だったと言える。 梅雨が近づいているというのに穏やかな天気が続いていた。野生で暮らすゆっくりたちは自然の恩恵を受けながらはしゃいで いる事だろう。その夜ぱちゅりーは夢を見た。ゆっくりでも夢を見る事があるのだ。見覚えのない景色の中に灰色の床や壁はな い。緑色の柔らかい草の絨毯の上でのんびりと日向ぼっこをしている。ただ、それだけの夢。 翌朝。ぱちゅりーは涙を流していた。ぱちゅりーを起こしにきたちぇんとまりさが不安そうに覗きこむ。ぱちゅりーは一瞬だ け戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐにいつもの沈着冷静な顔に戻った。まりさが散策の準備をするために一度おうちへと 帰っていく。残ったちぇんは無言でぱちゅりーの頬にぺーろぺーろをした。ぱちゅりーが“ありがとう”と呟く。支度を終えた まりさが廃材置き場の真ん中で待機していた。二匹揃って仮の巣穴から這い出す。少しだけ纏わりつくような湿気があり、気温 よりも体感温度は高く感じた。 「それじゃあ、ゆっくりしゅっぱつするよ」 「むきゅ。 ゆっくりりかいしたわ」 まりさとちぇんに守られるような形であんよを這わすぱちゅりー。野良として今日まで生きてきたぱちゅりーは守られなけれ ばならないほどに弱い存在ではない。しかしぱちゅりーは群れのリーダーに当たる。万が一の事が起きてはならない。三匹は物 陰に隠れながらずりずりと移動を続けた。 「そのれいむはゆっくりできているのかしら……?」 「れいむはゆっくりしたゆっくりだとおもうよー……。 でも、ちびちゃんたちをそだてるのがいそがしくて、ゆっくりするじ かんはあんまりなさそうだねー……」 「むきゅー。 やさしいのね」 人通りが少ないうちに大きな道路を横切る。体力を温存するためにあんよをずりずりと這わせていたが、ここだけはぴょんぴ ょんと飛び跳ねなければならない。少しだけ息が乱れたぱちゅりーを休ませた後、再びあんよを堤防へと向ける。まりさもちぇ んも道筋を正確に記憶しているようだった。ぱちゅりーが何度も二匹にあんよを運ばせたのにはこういう意図があったのだろう。 お世辞にも自分たちは記憶力が良くない。だがさすがに一日置きくらいに同じ場所へと通えばゆっくりと言えども記憶すること ができるようになる。ゆっくりたちが多少なりとも知恵を身に付けたのは、毎日街で辛い生活を送ってきたからだ。 「や゛べでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ッ!!!」 朝の澄んだ空気を切り裂くかのような悲鳴が上がった。まりさとちぇんが顔を見合わせる。聞き覚えのある声だ。ぱちゅりー を後方に配置してゆっくりとあんよを進める。三匹とも額に冷や汗が伝っていた。 「い゛ち゛ゃい゛ぃ゛ぃ゛!! お゛ぎゃーじゃあ゛ん゛っ!! だじゅげちぇぇぇ!!!」 三匹の視界に飛び込んできたのは数人の小学生男子。そして少年の手の中にいる赤ゆたち。れいむが泣きながらアスファルト に額をこすりつける姿。 「おねがいだよっ! ちびちゃんたちをおろしてあげてねっ!! すごくこわがってるよ!!!」 哀願するれいむの顔が滑稽に映るのか少年たちは声を上げて笑っている。指で下腹部を圧迫された赤まりさが小さな口からポ トポトと餡子を吐き始めた。眉を潜める小学生の一人。 「うわっ! 汚ぇ!! なんだコイツ!!!」 赤まりさがアスファルトに叩きつけられた。その衝撃で小さな体の皮が一瞬で弾け飛び餡子を四方に散らす。もはや形を成さ ない体で痙攣を起こしている。消え入るような声で「おかあさん……」とつぶやいていたが、しばらくしてピクリとも動かなく なってしまった。 「もっちょ……ゆ、っく……――――」 「う……うわああぁぁぁぁ!!!!」 れいむがボロボロと涙をこぼしながら跳ね寄る。崩れた赤まりさの残骸に必死で舌を這わせていた。 「ちびちゃん!! ちびちゃん!! ゆっくりしないでなおってね!! ぺーろぺーろ!!!」 「治るわけねーじゃん!!」 言い放ちれいむを蹴り上げる少年。宙に舞ったれいむは堤防にぶつかった後、斜面をごろごろと転がり落ちてきた。その様子 がまたツボに入ったのか大笑いをする。 「ゆっくり、ってさ。 案外簡単に潰れるんだなー」 「見ろよあの顔。 ゆっくりのくせに何泣いてるんだよって感じじゃん」 ぱちゅりーたちがガタガタと震えていた。目の前の人間たちは“白衣の悪魔”ではない。それなのにどうして執拗にれいむ親 子を潰しているのだろうか。違和感はそれだけではなかった。あの笑顔。なぜ、人間たちは笑っているのだろう。それも、あん なに楽しそうに。顔をぐしゃぐしゃにして大泣きしているれいむとの対比があまりにも異常に感じた。 「おきゃーしゃああああん!!!!」 掴まれていた赤れいむが手の中から逃れようとあんよを滅茶苦茶に動かしていた。 「くすぐってぇ……けどなんか気持ちわりぃ!!」 それだけ言って赤れいむの顔を真っ二つに引き千切った。勢いよく口が裂けた瞬間、呻くような短い声と一緒に大量の餡子が 吐き出される。舗装された道路の上にボトボトと餡子が落ちた。赤れいむは口を中心に上下に引き裂かれている。即死だったの だろう。目玉は裏返り白目を剥いている。その姿を見たれいむが更に大声を上げた。それを面白がってれいむの顔面に蹴りを入 れる。息苦しさに折られた歯と一緒に餡子を吐き出しながらも、子供たちの身を案ずるれいむは本物の母性を持つ母親ゆっくり の姿だ。しかし、無邪気ゆえに残虐な少年たちの前でその優しさや想いはまるで意味のないものだった。赤ちぇんの尻尾が引き 千切られる。びくびくと痙攣を起こしながら助けを求める赤ちぇんを踏み潰す少年。れいむはもう声を上げる気力さえ残ってい ないようである。それでも少年たちの“遊び”は終わらない。“遊び”の目的はれいむのリアクションを楽しむ事から、無抵抗 の赤ゆを潰すことにすり変わっていた。 「ありしゅのあにゃるしゃんがぁぁぁ!!!」 赤ありすのあにゃるに自身の幅の三分の一ほどもあるサインペンが突き刺された。あにゃるを引き裂かれる激痛に身を捩る。 少年はサインペンを摘み、動くことのできない赤ありすの顔面を何度も何度も固いアスファルトに打ち付ける。最初のうちは叫 び声を上げて抵抗を試みていたが、すぐに動かなくなってしまった。既に赤ありすは死んでしまっているのだろう。それによう やく気付いた少年が壊れた玩具に飽きたかのような表情であにゃるからサインペンを引き抜き、絶命した赤ありすを堤防の向こ う側に投げ捨てた。赤ぱちゅりーは束ねた髪の毛を全てむしり取られてしまったいる。その禿頭を消しゴムのようにしてアスフ ァルトにこすりつけられた赤ぱちゅりーは摩擦熱と擦り傷のせいで、中身を大量に吐き出しすぐに死んでしまった。赤みょんは れいむの足下に勢いよく叩きつけられて爆散した。最後の最後まで「助けて」、「ごめんなさい」と繰り返す叫び声がれいむの 脳裏に纏わりついて離れない。 ほんの一瞬の出来事だった。ぱちゅりーたちは絶句してその場を動くことができない。さっきまで七匹も目の前にゆっくりが いたのに、今はれいむ一匹だけだ。恐ろしくて声も出すことができなかった。少年たちがれいむに歩み寄る。れいむは涙を流し ながら少年たちを睨みつけていた。その顔が癇に障ったのか少年の一人がれいむの揉み上げを片方踏みつけて、その自由を奪っ た。打ち合わせたかのようにもう一人の少年がれいむを蹴り飛ばす。固定されていた揉み上げは根元から千切れ飛び、れいむは 堤防に作られたコンクリート製の階段に叩きつけられてしまった。うつぶせのような姿でぶるぶる震えている。 「こらぁっ! あんたたち!! さっさと学校に行きなさい!!!!」 「やっべ! 遅刻しちまう!!! おい、もう行こうぜ!!! こいつはまた“帰って来てから蹴って遊ぼう”!!!」 本当に無邪気な笑い声を上げながら走り去っていく少年たち。ぱちゅりーたちはその後ろ姿を呆然と見ている事しかできなか ったのだ。 惨劇が終わりを告げた。辺りが静寂に包まれる。後に残されたのはぐしゃぐしゃになってひしゃげた顔のようなもの。まき散 らされた餡子。被害に遭ったのが赤ゆたちばかりだったせいか飛び散った量は少ないように感じた。しかし、実に七匹分の命が アスファルトにこびりついている事を思えば一種のおぞましさを感じさせるに十分な量である。同じように散在する髪の毛や飾 り。見ようによっては凄惨な事故現場を連想させるその地獄の中で、母親であったれいむが呆然と立ちつくしていた。そのあん よの下にぽたぽたと涙が落ちる。 「ちびちゃん……どうして……どうしてぇ……? とてもゆっくりしたいいこたちばっかりだったのに……。 ゆぅ……ゆぐっ、 ひっく……ゆああああん!!!!」 まりさの目から涙が溢れた。自分たちと同じ目に遭わされたれいむの姿に過去を重ねているのだろう。擦り傷だらけのれいむ の元にぱちゅりーがそっと近寄る。れいむは自分に近づく気配に恐れ慄き逃げようとしたのか、バランスを崩して後ろ向きに倒 れてしまった。 「ゆあぁ……やめて……やめてよぉ……!!」 顔面蒼白で「やめて」と繰り返すれいむの瞳は暗く淀んでいた。不自然なまでに流れ出る汗の量も常軌を逸している。ぱちゅ りーを視界に入れてもれいむの恐慌状態は一向に収まる気配がなかった。 「こ……こないでねっ!! こないでねっ!!! れいむ、なんにもわるいことしてない……してないよぉ!! だからいたい ことしないでねっ!!! ゆんやあぁぁ!!!」 駄々をこねる子供のように顔を横に激しく振りながら大粒の涙を流す。そこに先日出会ったときの優しい母親ゆっくりの面影 は微塵も残されていなかった。 「れいむ……」 「こないで、っていってるでしょぉぉぉ??!!!」 れいむの体当たりがぱちゅりーを捉えた。突き飛ばされてごろごろと転がるぱちゅりー。慌ててまりさとちぇんがぱちゅりー に駆け寄る。気がつくとれいむはいつの間にか三匹の視界から消えてしまっていた。気温と湿気のせいか三匹もまた大量に嫌な 汗をかいている。ぱちゅりーは少しだけ苦しそうな表情を浮かべていたが、やがてポツリと呟いた。 「……いまはそっとしておいてあげましょう……」 「ゆ……そうだね」 「でも、かならずあのれいむもいっしょにもりへつれてかえりましょう。 ぱちゅはあのれいむのことをほうってはおけないわ」 「わかるよー。 ちぇんもおなじきもちなんだねー」 三匹は堤防を後にした。いつまでもここに留まってはいけないような気がしていたのだ。ずりずりとあんよを這わせて路地裏 を引き返す。三匹の胸中は様々だった。トラウマを揺さぶられたまりさ。ちぇんはみょんの事を思い出しているのだろう。ぱち ゅりーは、初めて見た人間の行動パターンの違和感について考えを巡らせていた。 人間たちの嬉々とした笑顔。ぱちゅりーも白衣の悪魔に仲間が潰されてしまうところを見てしまったことがある。しかし、彼 らはあんな表情を浮かべていなかった。あんなに笑い声を上げながら自分たちを襲いはしていなかった。 (いったい……どうしてなのかしら……?) 戸惑いを隠せないぱちゅりー。じっとりした空気が紫色の髪に絡まる。急に不安感に煽られたぱちゅりーがあんよを止めた。 遅れて二匹も立ち止まって振り返る。 「どうしたのー?」 ちぇんがぱちゅりーに声をかけると、我に返ったようにぱちゅりーが笑顔を作って見せた。それが取り繕いの笑顔でしかない 事はまりさもちぇんも、本人も理解している。嫌な予感だけが頭の中をちらついていた。何かが起ころうとしているのだ。しか し、その何かが何なのかを知る術はない。不安は他者に伝わる。先ほどの惨劇もあってか三匹は言葉を失ってしまった。思考回 路がフリーズしかけているのだ。こうなってしまったゆっくりはしばらくその場を動くことができない。 「……おうちにかえりましょう」 振り絞るように呟いたぱちゅりーの言葉が二匹の金縛りを解く。それからとぼとぼと廃材置き場まで戻ってきた三匹は誰にも 何も言わずにそれぞれのおうちに戻ってしまった。ありすが心配そうにまりさに何があったのかを尋ねるが、まりさは答えよう とはしなかった。ありすもそれ以上深く追求しようとはしない。何かあったに違いないのだ。言いたくなければそれでも良かっ た。 ぱちゅりーはおうちの中でずっと考えているようだった。心の底から恐れる人間は“白衣の悪魔”だけと言っても良かったの だ。それ以外の人間であれば、出会ってすぐに逃げ出せばわざわざ追いかけてくるような者はいなかった。しかし、今日の惨劇 を引き起こしたのは“白衣の悪魔”以外の人間である。それが何を意味するか。そう遠くない将来、全ての人間が自分たちを執 拗に排除する日が訪れるのではないのだろうか。それを思うとぱちゅりーは震えが止まらなかった。これまで自分たちが何とか 生き延びてこれたのは、執拗にゆっくりを追い回す人間の絶対数が少なかったからだ。人間の数は凄まじい。あんなにたくさん の人間が一度に襲ってきたら、どんなに賢いゆっくりでも即座に叩き潰されてしまうだろう。 「むきゅぅ……。 ぱちゅたちのことがきらいなら、そういってくれればいいのに……。 なにもいってくれないから、ぱちゅ たちもにんげんさんとなかよくするほうほうがすこしもわからないわ……」 考え続けているうちに眠ってしまったようだ。ちぇんがおうちの中に飛び込んできて自分を叩き起こすまでぱちゅりーは泥の ように眠り続けていた。慌てるちぇんをジト目で睨みつけながらぱちゅりーが身を起こす。 「れいむが……あのれいむが、“めでぃあさん”のなかにはいってるんだねー!!!」 「……?」 ちぇんの後を追って飛び跳ねるぱちゅりー。そこにはまりさとありすがいた。二匹とも路地裏の隙間から大きなテレビ画面を 食い入るように見つめている。ぱちゅりーもそこへ視線を向けると、確かにそこにはれいむがいた。朝、会ったときと同じよう にボロボロの状態である。大画面にアップで移されたれいむが泣きながら、恐ろしい形相で何か叫んでいる。 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛ッ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛にんげんざんはじね゛ぇッ!!! れいむは……に゛んげん゛ざん なんで、だいっぎら゛い゛だよッ!!! あ゛っぢにいっでね゛!!! すぐでいい゛よ゛ッ!!!!!」 威嚇をしながら画面いっぱいに広がるれいむの顔。テレビカメラに向けて体当たりをしているのだろう。四匹がガタガタと震 え出す。 「れいむ……そんなことを、にんげんさんにいったら……」 「じね゛ッ!!! じんでじま゛ぇ゛ぇ゛!!! れいむはぜったい゛にゆ゛る゛ざないよっ!!!」 路地裏の入り口を歩いていた主婦二人がテレビを見ながら会話をしている声が四匹に届いた。 「ゆっくりって怖いのね……」 「あんなのが街の中にいるなんて危なくてしょうがないじゃない。 ゆっくりなんかに子供がケガさせられたら、保健所に頼ん で一匹残らず殺してもらわなきゃ」 ありす以外の三匹がうつむいて唇を震わせた。れいむも、子供を殺されたからあんなに怒っているだけなのだ。あんな酷い事 をされても自分たちは怒ることもできないのか。悔しくてたまらなくなって、自然に涙が溢れてくる。ゆっくりにしてみれば、 逆ギレ以外の何物でもない。しかし、それを主張することはできないのだ。人間とゆっくりは決して対等などではない。野良で 生きるぱちゅりーたちはそれを痛いほどに理解していた。 「……にんげんさんは、ゆっくりできないね……」 翌朝。まりさとちぇんが堤防まで行ってみたがそこにれいむの姿はなかった。どこか遠くに逃げてしまったのだろうか。そう だと信じたい。二匹は辺りに漂う赤ゆたちの死臭に耐えられなくなり、足早にその場を後にした。ゴミ捨て場に捨てられていた ボロボロの赤いリボンは目に留まらなかったようだ。 四、 それからしばらくして、初めて地区単位によるゆっくりの一斉駆除が行われた。早朝、まだ眠っているゆっくりを巣ごと破壊 するのだ。逃げ惑うゆっくりも一匹残らず追いかけて潰した。成体、子ゆ、赤ゆ、種族問わず片っぱしからあらゆる方法で殺さ れていく。この段階になって他のゆっくりたちもようやく気がついたようだ。自分たちがあまりにも弱い存在であるということ。 徒党を組んで人間の領域に入り込み、それが上手くいっていたゆっくりたちほど意外にも事態の深刻さを深く理解していた。な ぜなら、人間が徒党を組んだのだ。自分たちよりも遥かに強い人間たちが自分たちを殺すためだけに。 「ごべんな゛ざい゛ぃ゛ぃ゛!!!」 どれだけ命乞いをしてもそれを聞いて躊躇う人間は少なくなってしまった。ゆっくりを生き物ではなく喋る害獣として淡々と 駆除を行っているように思える。少しずつ人間の意識は変化し始めていたのだ。その引き金を引いたのは他ならぬ自分自身。 「だずげでぐだざい゛い゛ぃ゛ぃ゛!!!」 黙々と叩き潰す人間たちの横顔はまるで機械のようだった。ゆっくりたちは調子に乗りすぎていたのだ。自分たちを潰せない のをいいことに好き放題やっていた。それを見た人間たちはついに自らゆっくりに手を下すことを決意したのだ。先日のニュー スで出た「人間は死ね」と言っていたれいむの影響も強い。迷惑な害獣から、殺すべき敵へとその意識を変えたのだ。殺戮の矛 先は街で暮らす全てのゆっくりに向けられた。 「どおしてこんなことするのぉぉぉぉ??!!!」 「ひどいよぉぉ!! れいむたち、ゆっくりしてただけなのにぃぃぃぃぃ!!!!」 いつの世も、人々は事象の側面しか見ることができない。街には二種類のゆっくりがいる。人間の領域に集団で侵入し、社会 を荒らし回るゆっくり。人間から隠れ、静かにひっそりと暮らすゆっくり。本当に悪事を働いていたゆっくりも、本当に何も悪 い事をしていないゆっくりも、等しく人間たちに潰される。一部のゆっくりのせいで、全てのゆっくりが命を脅かされる事とな ったのだ。 その余波は廃材置き場で暮らすゆっくりたちにまでも及んでいた。とは言っても、このゆっくりたちが暮らす地区はまだ一斉 駆除は行われていない。その代わりに多くの難民と化したゆっくりたちが集まってきたのだ。廃材置き場の周辺にもゆっくりの 姿を多く見かけるようになった。 「むきゅー……。 こまったわ……。 こんなにたくさんゆっくりがあつまっていたら、すぐににんげんにみつかってしまうわ」 今のところ、人間たちが廃材置き場まで入ってきた事は無い。ここはできるならば視界に入れたくない都会の負の遺産だ。そ れに加えて決して明るいとは言えないこの路地裏の奥で、ゆっくりたちの反撃に遭うのを恐れているという面もあったのかも知 れない。ここにも、堤防のれいむがニュースで叫んだ言葉が影響を及ぼしていたのだ。ぱちゅりーたちはそれには気づいていな かったがメディアの及ぼす影響力というものがどれほどのものか、身をもって示していたのである。 そんなある日のこと。 「皆さん! 今日は都会のゆっくりたちのコミュニティ……。 路地裏の奥にあるという廃材置き場で暮らすゆっくりたちの姿 を見てみようと思います!」 白昼の路地裏に数人の人間たちがついに廃材置き場へと侵入してきたのだ。入り口付近で暮らしていたゆっくりたちが飛び起 きて奥へと逃げて行く。ニュース番組の取材だった。ぱちゅりーたちは気づかないだろうが、堤防で暮らすれいむをカメラに収 めたのもこのテレビ局である。彼らは都会で暮らすゆっくりたちの特集を組んでいた。なぜか。それは暗にゆっくりがどういう 場所を好んで住みつくかを一般人に周知する意図が組まれている。人間たちはあらゆる手段を使って、ゆっくりたちに対して先 手を打ち始めていたのだ。 「ぱちゅ~~~!! たいへんなんだね~!!!」 ちぇんとまりさが勢いよくぱちゅりーのおうちに駆けこんできた。ぱちゅりーも外が騒がしいのは気づいていたので、難しい 表情をしている。 「……にんげんさんが、きたのね?」 「そ、そうだよ……っ。 ど、どどど……どうしよう。 みんな、えいえんにゆっくりさせられちゃうよっ!!!」 「……ぱちゅが、にんげんさんとおはなしをしにいってくるわ」 「だ、だめだよーー!! ぜったいゆるさないんだねーーー!!!」 「……どうして? ぱちゅがなにもしなくても……きっと、もう、みんなぶじではすまないはずよ……?」 「みんでいっしょにもりにかえる、っていったよねーーー!!!」 「むきゅ。 いっしょにかえるために、にんげんさんとあってくるのよ」 「わ、わからないよー……」 ぱちゅりーがのそのそとおうちを出て行った。ぐるりと辺りを見回すと、ゴミの隙間のあちらこちらからゆっくりの不安そう な顔が覗いている。ぱちゅりーは、ずりずりと廃材置き場の中央へとあんよを進めた。テレビカメラを持った男が廃材置き場の 中をゆっくりと歩いている。リポーターの若い女性もゆっくりたちの住処に興味津々のようだ。 「下手に手を突っ込まないほうがいいですよ。 噛まれるかも知れない」 「そうなんですか?」 「――――あなたたちは、ゆっくりの事を知らなさすぎる」 黒服に身を包んだ長身の男が静かに言い放つ。リポーターの女性が少しだけ怯えている。 「ぱちゅたちは、そんなことはしないわ」 テレビ局の人間たちの前に一匹のゆっくりが現れた。カメラをそちらに向ける。不気味なほど静まり返った廃材置き場の真ん 中でぱちゅりーと人間たちが対峙した。 リポーターの女性がテレビカメラに向き直り喋り出す。 「みなさん! ゆっくりがいました……! 確かぱちゅりー種です」 「むきゅ? ……にんげんさんは、ぱちゅのことをしっているのかしら……?」 「――――カメラを止めろ」 「え?」 黒服の男がぱちゅりーへ歩み寄った。ぱちゅりーは黒服を見上げたまま動かない。 「お前がこの群れのリーダーなんだな」 「むきゅ。 そのとおりよ。 おにいさんはゆっくりできるひとかしら?」 「――――知らんな」 「おにいさん。 ぱちゅ、ゆっくりおねがいがあるのだけれど、きいてもらえないかしら……?」 「言ってみろ」 「……ぱちゅに、“めでぃあさん”とおはなしをさせてちょうだい。 にんげんさんたちにつたえたいことがあるのよ」 静かに言葉をつなぐぱちゅりーに、リポーターを含めた局の人間が戸惑いの表情を浮かべていた。いつのまにか、ぱちゅりー の言葉に耳を貸してしまっている。そして、このゆっくりが人間に何を伝えようとしているのか純粋に興味があった。 「――――局に連れて行け。 取材は終わりだ」 黒服の無感情な物言いに眉を吊り上げるカメラマン。慌てて他のスタッフがなだめに入る。 「駄目ですよ! “公餡”の言うことは絶対だって言われてるじゃないですか!」 「抱きかかえて連れて行くんですか?」 「好きなように持って行くといい」 「むきゅきゅ。 ぱちゅはわがままはいわないわ。 にんげんさんたちのあとをついていくだけでもかまわないのよ?」 結局ぱちゅりーは若い男に抱きかかえられてテレビ局の車へと乗り込んで行った。人間の気配が完全に無くなったのを見計ら い、たくさんのゆっくりたちが広場に集まってくる。どのゆっくりも不安で表情を曇らせている。自分たちの中で最も頭の良い ぱちゅりーが人間たちに捕まってしまった。少なくとも、ゆっくりたちにはそう見えた。 「ぱちゅりー……」 ゆっくりたちが呟く。薄曇りの空の下、ゆっくりたちはぱちゅりーが無事に戻ってくることだけを願っていた。眠気も、空腹 も忘れてしまうほどに。 ちぇんは巣穴の中でずっと泣いていた。大好きなぱちゅりーが人間と共にどこかへ行ってしまったことが不安で仕方がないの だろう。ちぇんは、一度みょんが人間に連れ去られたところを見ている。その時の光景とダブってしまっているのだろう。涙が 絶え間なく溢れてくる。ぱちゅりーを失うのが怖くて怖くてたまらなかった。 まりさもありすも、おうちの中で震えていた。人間たちはこの場所を覚えた事だろう。自分たちよりも遥かに記憶力のある人 間たちがこの場所を忘れるはずがない。それは、いつ人間たちがここに現れて自分たちを殺しに来てもおかしくないという事だ った。また目の前で仲間を失うのが、怖くて、怖くて、たまらなかった。 日が陰っていく。ゆっくりたちは動かない。皆、ぱちゅりーの帰りをひたすら待っていた。信じてはいたが、数匹のゆっくり たちはぱちゅりーが既に永遠にゆっくりしてしまったのだと諦めているものもいた。人間たちは恐ろしい。自分たちを平気で殺 す。そんな人間たちに捕まってしまったぱちゅりーが無事で済むわけがないのだ……と。 「むきゅ」 廃材置き場に聞き慣れた声が響いた。群れのゆっくりたちが一斉に広場へと飛び出す。そこにはぱちゅりーがいた。ゆっくり たちが歓声を上げる。ちぇんも恐る恐るぱちゅりーの元へと近寄って行った。 「どうしたのかしら?」 「ぱちゅ……? ぱちゅなんだよね?」 「むきゅきゅ。 そうよ」 「よかったよーーー!!! ゆわーん、ゆわーん!!!」 ぱちゅりーに頬をすり寄せながら泣き叫ぶちぇん。それを見て周りのゆっくりたちも一安心と言った様子だ。余談ではあるが、 ちぇんがぱちゅりーの事を好きだということを知らないゆっくりは一匹もいなかった。だから、ぱちゅりーの無事と嬉しそうに 涙を流すちぇんの顔を見て、ホッとしたのだろう。ずりずりとあんよを這わせておうちの中へと戻っていく。いつのまにか、ま りさとありすも二匹の元へとやってきていた。 「むきゅ。 みんなで“めでぃあさん”のところへいきましょう」 「どうして?」 「ぱちゅは、“めでぃあさん”とあって、おはなしをさせてもらったのよ。 “めでぃあさん”はぱちゅたちのきもちをにんげ んさんにつたえてくれるとやくそくをしてくれたわ」 「そ、それじゃあ……っ!!」 「むきゅ。 みんなでいっしょにもりへかえりましょう!!」 「ゆ、ゆっくり~~~~~~!!!!」 “ゆっくり”。この言葉を使ったのは久しぶりだった。いよいよ森へと帰る時が来たのだ。ぱちゅりーの話によれば、人間た ちは思った以上に自分の言葉を真剣に聞いてくれたらしい。人間たちが自分たちの事が嫌いなら仕方がない。だから、自分たち で森へ帰る。その言葉に対して異論を唱える者はいなかったと言う。その想いを他のたくさんの人間たちに必ず伝えると約束し てくれた。そして、ぱちゅりーは少しも酷い目に遭わされずにここへ帰してもらった。 「やさしいにんげんさんもいるんだねー……」 「むきゅ。 そうよ。 ぱちゅたちも、にんげんさんも、おなじなのよ」 「どういうことなの?」 「やさしいゆっくりもいれば、わるいことをしてしまうゆっくりもいる。 ……ぱちゅたちも、にんげんさんはみんな、こわく てゆっくりできない、っておもいこんでいたのかもしれないわね……」 「いつか……にんげんさんとなかよくなれるひがくるかな……??」 「すぐにはむりかもしれないけれど……。 いつかきっと、にんげんさんたちもゆっくりのことをすきになってくれるひがくる とおもうわ。 ……ぱちゅは、そう、しんじていたい」 自分たちが生きている間は無理かも知れない。でも、自分たちの子供の子供の……そのまた子供たちなら、仲良く人間と一緒 にゆっくりと過ごす日が来るかも知れない。そんな夢のような光景を瞼の裏に思い浮かべながら、四匹は路地裏の入り口へとあ んよを跳ねさせた。軽やかなジャンプは心の奥で閉ざされていた扉が解放されたことによるものだろう。まだ見ぬ森に想いを馳 せると自然に涙が溢れてくる。泣くのは早いと分かっていても、溢れてくるのだ。ぱちゅりーはそれだけでなく、新しい希望を 自分たちに見せてくれた。遠い未来、人間とゆっくりが仲良く暮らす優しい世界。飼いゆっくりとして飼い主と一緒に過ごした 時間の記憶は消えてしまったわけではない。ゆっくりたちの多くは、なぜ自分たちが捨てられたか理解していないものが多かっ た。だから、本心では仲直りを望んでいるゆっくりたちも少なくはない。 だが。現実はそんな夢を簡単に打ち砕いた。 「どういうこと……なの?」 「わからない……わからないよー……」 「ぱちゅ、りー……?」 「そ、そんな…………。 そんな……っ!!!」 大画面の中で人間と話をするぱちゅりー。“メディアさん”の中のぱちゅりーは、静かな声でテレビの前に集まっていた人間 たちに語りかけていた。 「にんげんさんはゆっくりできないげすばかりだわ。 ひっしにいきているぱちゅりーたちをゆっくりさせてくれないなんてあ んまりよ。 ぱちゅりーは、けんじゃだから……ばかなにんげんさんとはちがうのよ? やさしいぱちゅりーたちをおこらせた らどうなるか……ゆっくりとおしえてあげるわ」 「具体的にはどうするんですか?」 「きまっているでしょう……? にんげんさんたちがぱちゅりーたちをころしにくるんだから、ぱちゅりーたちもにんげんさん たちをころしにいくわ」 「殺す……? ゆっくりが、人間を……?」 「そうよ。 ぱちゅりーたちはもうがまんのげんっかいっ!だわ。 にんげんさんたちはぱちゅりーたちのことがきらいでしょ う……? ぱちゅりーたちも、にんげんさんたちのことが……だいきらいだわ」 そのニュースに釘付けになっているのは、ぱちゅりーたちだけではない。そこに集まる人間たちも食い入るようにテレビを見 つめていた。 「むきゃきゃ!! かくごしてちょうだいっ!!! ぱちゅりーたちをゆっくりさせないげすなにんげんさんは……っ!! み んなでせいっさいっ!してやるわ!!!!!」 ガタガタと震えるぱちゅりーを三匹が見つめる。ぱちゅりーは口をパクパクと動かしていた。三匹はぱちゅりーを廃材置き場 へと移動させる。それでも震えが収まらないぱちゅりーに三匹が静かに頬をすり寄せた。ようやく落ち着きを取り戻したのか、 ぱちゅりーが消え入るような声で呟く。 「……いってない……。 あんなこと、ぱちゅはひとことも……いってないわ……っ」 「で、でも……」 “メディアさん”の中にいたのは間違いなくぱちゅりーだった。疑いの念を持つのは当然のことである。ちぇんがまりさの前 に立ちはだかった。 「まりさ! ゆっくりしてよー! ぱちゅが、あんなことをいうわけがないんだねー!!!」 「おねがいよ……しんじてちょうだい……。 しんじて……っ!!」 泣きながら訴えるぱちゅりーの姿を見る限り、嘘をついているようには見えない。まりさがぱちゅりーに謝った。ありすもそ れに続く。しかし、何故こんなことになってしまったのだろうか。人間を制裁するなどと言ったら、どれほど人間たちが怒るか 分からない。 まだニュースは続いていた。それは告知である。明日、保健所による大規模なゆっくりの一斉駆除を行うとの通達。一般市民 によるボランティア活動も積極的に促されていた。明日は休日である。テレビで流れた“ぱちゅりー”の言葉が数多の引き金を 引いた。保健所には駆除活動のボランティア参加表明の電話が殺到していたのである。街の人間たちが一つになった。全ては、 街で暮らす野良ゆっくりを一匹残らず殲滅するために。 一方で、少しだけ落ち着いたぱちゅりーは群れのゆっくりたちを広場に集めて宣言した。 「むきゅ!! みんな、ゆっくりきいてちょうだいっ!!!」 静まり返る一同。 「いまから、みんなでもりにむかってかえりましょう!!!」 突然の計画実行に戸惑いを隠せないゆっくりたち。ぱちゅりーは仲間のゆっくりたちが納得するまで懇々と説得を続けた。人 間たちが本気で自分たちを殺しにやってくるかも知れない事。ここに固まっていれば皆一緒に捕まって永遠にゆっくりさせられ てしまうかも知れない事。群れのゆっくりたちはようやく重い腰を上げた。 「ゆゆっ! ゆっくりすすむよ! そろーり! そろーり!!」 「もりにかえるまえにごはんさんをむーしゃむーしゃしようね!!!」 「ゆっくち! ゆっくち!!」 「かわいくってごめんねっ!!!」 若いゆっくりはぴょんぴょんと廃材置き場を飛び出して行った。家族連れのゆっくりは赤ゆに合わせて移動をしている。動き はバラバラだった。こればかりはぱちゅりーたちではどうすることもできない。ぱちゅりーが苦々しい顔で空を見上げた。今日 は星空が見えず、月に傘がかかっていた。 「……むきゅっ! ぱちゅたちもいきましょう!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 「わかったんだねー!!」 「みんなでもりにかえりましょう!!!」 最後尾をぱちゅりーたちが進む。 午後十時三十七分。夜の街の中、ゆっくりたちが大移動を始めた。決死の脱出劇の始まりである。 会議室に三人の男たちが集まっていた。保健所の所長。テレビ局のプロデューサー。黒服の男。 「――――どうですか。 これなら、街中の野良ゆを一斉に駆除することができるでしょう」 「……そうだな。 ……感謝はしている」 「むきゅ。 だからはじめからぱちゅりーたちにたのんでいればよかったのよ」 床に一匹のぱちゅりー種がいた。ナイトキャップに金色のバッジがつけられている。プロデューサーが黒服に質問をした。 「このぱちゅりーに付いているバッジは一体なんなんですか?」 「公餡に所属するゆっくりの証ですよ」 「これだけで分かるもんですかねぇ……」 「そのバッジには発信器と識別番号が振ってあります。 まぁ、私たち公餡の人間が自分たちの組織に所属するゆっくりと他の ゆっくりを見間違えるなどあり得ない話なので必要はないのですが」 「むきゅ。 さっきからしつれいよ。 ぱちゅりーたちのおかげで、“くじょ”のじゅんびがととのったくせに!」 喚く金バッジのぱちゅりーが気に入らないのか所長が悪態をついた。 「多額の依頼金を出してお前みたいな若造しか寄越さないとはな……っ!!」 「――――すみませんね。 今はちょっと九州支部の尻ぬぐいで有能な連中が出払ってまして」 野良ゆ対策に追われて疲弊し切った保健所は公餡・関東支部に助力を申し出た。それで派遣されたのがこの黒服の男である。 男はあっと言う間に一般市民を使った野良ゆ包囲網を作り上げた。全ては明日の一斉駆除のためだけに焦点を合わせて。野良ゆ の特集は全て公餡によって仕組まれたものだった。人々はゆっくりを自分たちに近しい何かと勘違いしている。ならば、ゆっく りの負の面だけにスポットを当て、報道を繰り返すことで「ゆっくりはどうしようもない害獣」という世論を作り上げたのだ。 「あの野良ぱちゅりーにも、発信器を仕掛けてあります。 あの群れだけは街から出してはいけません」 「何故だ?」 「人間と関わった熊が、人間を襲う人食い熊になるという話はご存じでしょう?」 「ははは。 ゆっくりが人間を襲うようになるか! 傑作だな」 「……まぁ、街で得た人間の知識を野生の群れに持ち帰られるのはよろしくない。 あの野良ぱちゅりーの目的は街を出る事だ と言ってましたね?」 「そうだが……?」 「……ゆっくりが道具を使うようになったのも、徒党を組んで悪さをするようになったのも、全て人間から得た知識です。 そ れを野生に伝えたらどうなるか……」 一呼吸置いて、続ける。 「森で暮らすゆっくりの大群が徒党を組んで、街を襲撃しにくる……なんてことも考えられますよ」 腹を抱えて笑う所長とプロデューサーを金バッジぱちゅりーが睨みつける。黒服の男はクスリと笑った。 「……既に農村部でゆっくりによる畑荒らしの被害に遭っている農家もいるというのに、呑気な連中だ……」 聞こえないように、そう、呟いた。 つづく
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作:神奈子さまの一信徒 淡々とした観察系小ネタです。 南の島シリーズでちょっと出したむらさの生活史について考えてみました。 ほとんど独自設定、ちょっとだけ南の島後半の外伝要素あり、ご注意ください。 『むらさの舟歌』 地球の表面積の七割を占める、海。 母なる海と賛美されるその場所は、太古の昔から、生命のゆりかごであり、 同時に、大空や地上よりも古くから激闘が繰り広げられてきた戦場でもある。 水中の覇権を争うもの、海底の覇権を争うもの、 海藻の上、砂の隙間、わずかなニッチを争い、共有し、 命の欠片は今日も桜吹雪のように海中に狂い咲き、舞い散っていった。 「よーそろー!!!」 そのような環境に進出したゆっくりがいた。 むらさである。 むらさは、ゆっくりの中でも珍しい海棲種であり、主に浅海域に棲息してい る。にとり同様、表面に特殊な皮があるため、水に溶けないとされているが 詳細はまだ分かってない。 大きさは成体でサッカーボール程度、サイズ自体は標準的なゆっくりで ある。外見的特長は黒い髪、真っ白な水兵帽と、その中にしまい込んである 石灰質のあんかーである。中には柄杓を持っている個体も観察されているが、 すべての個体が持っているわけではないらしい。 むらさは希少種として知られ、大枚をはたくことをいとわなければ、ペット ショップでも手に入ることがある。水上まりさよりも飼育は困難であり、繁 殖に成功したという例は正式な報告としては確認されていない。 しかしながら、天然の浅海域においては、むらさ種は決して珍しい種ではな く、海域によっては食物連鎖の重要な地位を占めていることもある。 近年は飼育技術・分子生物学の発達によって、品種改良を受けた、純淡水産 むらさ種、陸上飼育用むらさ種などが試験的に生産され、ダム湖やビオトー プへの放流、愛玩用として少数ながら出回っている。これらについては本報 告では触れない。 ここに、近年の研究によって明らかになったむらさ種の天然環境下での生態 について記す。 春はむらさ種の繁殖期にあたる。冬の間、浅海域に生育する海藻類をたっぷ りと食べた成体むらさは、春になって南からの暖かい海流が勢力を増すと、 発情し、すっきり、産卵を行う。 「むらむらするよ~!!!とってもむらむらするよ~!!!」 「「すっきりー!!!」」 「あ゛~、もうがまんできない!!まだむらむらしちゃう~!!!」 頬を赤らめ、全身からぬめぬめした粘液を放出してすっきりするむらさ、し ばらくするとその頭から茎が伸び、先端に半透明のカプセルに包まれた赤む らさが生じる。 「むらむらするあかちゃん!ゆっくりしていってね!!!」 どこか間違っているが、とりあえず赤ちゃんが生まれたことを喜ぶ親むらさ。 植物性出産の場合、すっきり後2−5日で、赤むらさが自分でカプセルを食 べて孵化する。 「ゆっくちちていってね!!」 「ゆっくちむらむらちゅるよ!!!」 「よーしょろー!!!」 生まれた赤むらさは合計13匹。彼らは親の保護を受けず、そのまま海へと 散っていく。植物型出産の場合、生まれる赤むらさは小さく、その代わりに 水兵帽が体に対して大きい。この水兵帽の中にガスを分泌し、それによって 海面近くに浮き、海流に乗って分散するのである。 「うみさんにぷーかぷーかしゅるよ!!」 「ぷーかぷーかはゆっくりできりゅね!!!」 この時期を赤むらさの「浮遊期」と呼ぶ。 浮遊期のむらさには、遊泳能力はほとんどなく、その移動は海流任せとなる。 そのため、生きていくのに不都合な環境にたどり着いてしまうケースも多い。 「ゆゆ!?なんだかおみじゅさんのあじがかわっちゃよ!!」 この赤むらさは河口に近づいているようだ。満潮時の海から川への逆流に乗 って、川の中に侵入する。 「ゆゆ!?きょきょはごはんしゃんがいっぱいだよ!!!」 河口付近の海水と淡水が交じり合う汽水域は、河川が上流域から運んできた 栄養塩が流れ込むため、プランクトンなどの餌が豊富なエリアである。 そのため、汽水域に集まり、餌が豊富なこの環境で幼い時期を乗り切る魚種 は少なくない。 「むらむらしゅる!!むらむらしゅるよ~!!!」 先程の赤むらさは全身を紅潮させ、粘液を放出している。 「ねばねばさんにごはんさんついちゃよ~!!むーしゃむーしゃ…ちあわし ぇ~!!!」 浮遊期のむらさはこの粘液を網のように海中を振り回し、そこに付着したプ ランクトンや水中懸濁物を粘液ごと食べるのである。 「ゆゆ~!!!ぽんぽいっぱいだよ…ちょっちょくるちいよ…」 だが、それは食べすぎのせいだけではなかった。この赤むらさは川に深く入 り込みすぎていた。 「ゆぴぴぴぴ…くるちいよ…ゆっくり…できにゃい…」 淡水の影響が強い水域に入り込むことで、むらさの浸透圧調整能力の限界を 越えてしまったのだ。淡水が全身からむらさの体内に入り込んでくる。 ビー玉ぐらいの大きさだった赤むらさは、今や、テニスボール大にまで膨れ 上がっていた。だが、その体は薄く風船のようであり、今にも破裂しそうだ った。 そして、限界が訪れる。 「もっちょ…むらむら…しちゃ…ゆびびっ!!!」 ポンッという音が聞こうてきそうな勢いで赤むらさは破裂した。目と皮は四 散し、中身の黒蜜だけが少しずつ海水に混ざり、分散していった。 成長すると、塩分変化への耐性も備えるようになるが、浮遊期の赤むらさは まだまだ脆弱である。 また、この時期は外敵に対して無防備であり、浅海域の表層付近を遊泳する ボラやイワシ、アジなどに捕食される。また、ミズクラゲも運動能力の乏し い浮遊期のむらさには脅威である。 「ゆゆ~!?なんじゃかゆっきゅりちたものがぷーかぷーかちてるよ!!」 ミズクラゲがその傘の部分で作り出す水流、またはその触手に触れれば最期 である。 「いじゃい!!!いじゃいいい!!!ぴりぴりはゆっぐりできにゃ!?きもぢ わぶっ!!!ゆげえええ゛!!!」 先程の赤むらさはミズクラゲの触手に絡め捕られ、無数の刺胞を打ち込まれ ていた。人間ならピリッと一瞬痛みが走る程度だが、赤むらさには致命傷で ある。体は麻痺し、もう逃げることは出来ない。 「ゆげっ!!ゆ゛!ゆ゛!ゆ゛!!」 そのままクラゲの口に取り込まれ、胃に収められてしまった。こうなっては 消化されるだけである。クラゲは体が半透明な種類が多いため、赤むらさが クラゲの体内で溶けていく様子はじっくり観察できる。 一時間もすれば、赤むらさの皮はぐちょぐちょになり、体のどこがどこなの か見分けがつかなくなるだろう。 ミズクラゲには効果がないものの、これらの捕食を避けるために、浮遊期の 赤むらさは流れ藻に集まり、隠れ潜むように生活するものも多い。 ただし、流れ藻にたどり着けるかは、完全に運次第である。 この脆弱な浮遊期も後半になると、赤むらさはスーパーボールぐらいの大き さに成長し、この頃から海水中の炭酸カルシウムを取り込んで、石灰質のあ んかーを作り出す。また、水兵帽の体に占める割合が小さくなり、徐々に浮 力を失って、生活圏を海の表層から、次第に底層へと移していく。 餌は相変わらず、粘液によるプランクトン捕食が中心だが、浮遊期後半には ある程度の遊泳力も発揮できるようになり、海藻などにしがみつき、その表 面に付着している微小甲殻類なども捕食するようになる。 だが、まだまだ捕食者に対しては脆弱である。 「ゆあああああ゛!!!だじゅげで!!!おざがなざんはゆっぐりでぎないい いいいい゛!!!」 このむらさはメバルに追われていた。生活圏が底層に移行することで、主な外 敵はメバルや、マダイ、クロダイ、アイナメなどに変わってくる。鋭い歯で何 度も齧りついてくるフグ類も恐ろしい捕食者である。 「ゆびいいいい゛!!!いやああああ゛!!!ごれじゃあむらむらできなああい いいい!!!ゆぎっ!?」 アイナメがむらさを一飲みにしようとする。しかし、むらさが動いたため、背 中の皮が少し千切れただけだった。 「ゆぎゃああああああ゛!!!いじゃい!!!いじゃいよおおおお゛!!!」 アイナメの追撃により今度は水兵帽を食べられてしまう。 「ゆあああああ゛!!!ぶらざのほごりだがいおぼうじがああああ゛!!!」 ガスを貯める水兵帽を失うと、むらさは浮力の調節ができなくなるため、もう 逃げることはできない。例え、逃げ切ったとして、海底で這い回ることしかで きなくなり、生存確率は激減する。 「おぼうじいいいいい゛!!!ぶらざのぼうぶぶっぺっ!?」 浮力を失い、ゆっくりと沈んでいくむらさはアイナメにパクリと食われ、咀嚼 されて死んだ。アイナメはあんかーをぺっと口から吐き出すと、次の餌を求め て泳ぎ去っていった。 あんかーが一定の大きさになるまで生き延びることが出来ると、むらさは海底 に着底し、海底付近に生活圏を移す。この頃には子むらさと呼べる大きさに成 長し、遊泳力も成体に比べて遜色のないものとなる。この時期を「着底期」と呼 ぶ。 また、あんかーによって砂の中に潜ることが可能となる。 「ゆゆ!!ここならすなさんにもぐれそうだよ!きゅーそくせんこー!よーそ ろー!!」 子むらさはまず、表面の砂を口からの水流で吹き飛ばし、そこにあんかーを差 し込む。潜砂性の底棲生物としてはゴカイや二枚貝が知られているが、ゴカイ では体液の充填により膨張させた頭部を、二枚貝では砂の中に滑り込ませた足 を膨張させ、アンカーとすることが知られている。そして、それを足がかりに 体を砂中に潜り込ませていくのである。 「すなさんをぷーぷーするよ!!からだをもじもじさせるよ!!またぷーぷー するよ!!」 基本的な潜砂行動は、ゴカイ、二枚貝、そしてむらさも同様である。 水を吹き付けることで、砂の間隙を作り、掘りやすくする。そこへ、あんかー へ体を引き寄せるようにして、砂の中に体を潜り込ませていくのである。 このとき、むらさは体を小刻みに震わせることで、砂の中への侵入を容易にし ている。この行動を「もじもじさせる」とむらさは呼んでいるようだ。 「すなのなかでおもうぞんぶんむらむらするよ……うひょおおおお゛!!」 こうして砂の中に潜り込んだむらさは、水兵帽の先端と目だけが砂から出るよ うに位置を調整し、その姿勢で外敵の通過や、餌生物の接近を待つ。 「…ふぅ…」 ちょうど、むらさが潜った辺りに小さなエビがやってきた。砂の中を探るよう にハサミ脚を突っ込み、有機物の破片などを次々と口に運んでいる。 むらさは体の上に乗っている砂が落ちないように、姿勢をやや高めにとる。 餌がよく見えるようにである。 「そろーり…そろーり…」 そして砂に隠れたまま、少しずつ、エビに接近する。不意にエビがむらさの 方に接近したその瞬間、 ぱくっ! むらさは砂の中から飛び出し、周囲の水ごと飲み込むようにして、エビを口 内に納めてしまった。エビがびくびくと動いて抵抗するが、後はもう咀嚼す るだけである。 「むーしゃむーしゃ…すぃあわすぇ~!!!」 そして、しあわせ宣言を済ませると、再び砂に身を隠す。慣れた個体だと、 一連の行動に一分費やさないという。 「…むらさはここにはいないよ~…」 この他、むらさはバカガイや小さなアサリなど、貝殻の薄い二枚貝をあんかー で割って捕食する。巻貝は割りにくいのか、捕食した事例は観察されているも ののあまり好まないようだ。 「着底期」からは、このような潜砂行動と、遊泳力の向上によって、むらさの生 存確率は一気に高まる。ここまでくれば成体はあと一歩であるが、やはり外敵 に襲われ命を落とす個体もいる。 先程のむらさに何やら魚影がせまる。 ナルトビエイである。 エイは頭を砂の中に突っ込み、二枚貝や甲殻類を探して捕食する。むらさに対 しては特に好んで攻撃しているわけではないが、うまく逃げなければ捕食され てしまう。 ナルトビエイが砂の中を頭部で探り、砂の中に隠れていたむらさをツンツンと つつく。 「…む、むらさはここにいないよ~…つつかないでね!…そんなにつつかれたら むらむら…ぎょわあああああ゛!!!」 むらさはナルトビエイに吸い込まれるようにくわえられた。 「はなじでね!!むらさはおいじぐないよ!!はなじでね!!むらさはゆぎゅう うう!?」 むらさはナルトビエイにゴリゴリと咀嚼され、体がぐちょぐちょにされてしま った。 「ゆぎゃあああああああああ゛!!!ぶらざのがらだがあああああああ!!!ぶ ぎゅう!?」 そして、飲み込まれ、あんかーだけが吐き出された。 ナルトビエイが接近してきた時点で、タイミングよく全力で泳ぎ去れば、まだ逃 げられたかもしれない。 こちらでは、むらさマダコに捕まっていた。 触覚で砂の中にいる貝類を探るタコにとって、むらさのように表面近くに潜砂 する小動物は決して捕獲するのは難しい餌ではない。 「やべでね!!!タコさんやべでね!!!ぞんなにざれだら、むらさごわれぢゃ うううううううっ゛!!!」 いろいろと勘違いしているようである。 マダコは食べられるのか確かめるように、むらさを腕でいじくりまわす。 「ゆひいいいいいっ!!!きゅうばんさんですりすりされるとっ!!!んほおお おおおおおおんほおおおっ!!!」 だが、タンパク質代謝で生きるタコにとって、炭水化物が多いゆっくりは魅力の ある餌ではなかったらしい。マダコはむらさを放り出すと、さっさと次の餌を求 めて行ってしまった。 「どぼじでええええええっ!?どぼじでずっぎりざぜずにいっじゃうのおおおお おお゛!!?」 中途半端にむらむらさせられたむらさは、その後しばらく、海中で吼え続けた。 このような砂で底質が構成された浅海域で子むらさは成長する。そして、夏にた くさんの餌を食べ、急速に成長したむらさは、晩夏には成体サイズになり、言葉 も巧みに話せるようになる。 この頃になると、体が大きくなったことで、むらさを積極的に襲う捕食者は浅海 域にはほとんどいなくなる。また、あんかーで潜砂することはあまりなくなり、 あんかーは純粋に捕食のための道具として、堅い貝類やウニを割るのに使われる ようになる。 成体になると、皮が丈夫になり、度々海岸に上陸して餌を探したり、干潮時の干 潟で跳ねている姿が目撃されている。呼吸はそもそも皮膚呼吸であるため、水中 でも陸上でも呼吸は可能である。 ここまで来ると、適時水分を補給しさえすれば、一般家庭でも水槽を用意しなく ても飼育も可能であるため、成体はペットショップに出回ることがある。 よく、いたずらで、水上を帽子で移動するまりさを攻撃するところが目撃されて いるが、それは成体のむらさによるものである。 「まりさはこの川を渡ったら、れいむに告白して、ふぁーすとでぃーぷちゅっ ちゅをするんだ!」 とある河川の河口近く、まりさは水路を対岸に向けて渡っていた。まりさは滅多に 行かない浜辺に行き、きれいなピンク色のサクラガイを拾ってきた。 これをプレゼントとして、今日こそれいむに告白するつもりなのだ。ずっといっし ょにゆっくりしようと。 「れいむ、ゆっくりまっててね!まりさはいまいくよ!!」 自然と櫂を漕ぐ動作も軽快になる。 まりさは告白することに何の心配もしていなかった。れいむの態度から、れいむも きっと自分のことが好きなんじゃないかと、感じられる節があった。 「ゆ?」 異変に気がついたのは、水路の中ほどまで来たときだった。帽子が浸水しているの である。 「どぼじでおぼうじざんにぉみずざんはいっでぎでるのおおおおおお゛!?」 よく見ると、帽子の先端がちぎられたようになくなっていた。 「おみずさんこないでね!!まりさのおぼうしからでていってね!!」 だが、水はどんどん入ってくる。 「どぼじでおみずざんどまらないのおおおおおおおっ!!!」 まりさは慌てて櫂を漕いだが、もう帽子の半分まで水が来ている。 「てきかんげきちん!!よーそろーっ!!!」 まりさの後方でむらさが声をあげる。このむらさがこっそりまりさの帽子の先端を齧 り取ったのだ。 「そんなごどよりだじゅげで!!!ばでぃざじんじゃう!!!たじゅげでええ゛!!」 泣きながら助けを求めるまりさに対して、むらさは答える。 「あ~あ、早く行かないと愛しのれいむちゃんがとられちゃうよ!!」 「いいからだじゅげでえええええええ゛!!!」 「きっと今頃、ほかのゆっくりとすっきりしてるんじゃないかなぁ?」 「ぞんなごどないいいいいいっ!!!」 まりさは顔を真っ赤にして反論する。 それに対して、むらさはからかうような声で答えた。 「すごい~!すごいよ~!れいむむらむらしちゃう~!!!まりさなんかとは比べ物 にならない~っ!!すっきり~っ!!!」 「やめろおおおおお゛っ!!!ぞんなわげあるがああああっ!!!」 まりさはかんかんに怒り、帽子が沈みつつあることも忘れていた。既にあんよの皮が ふやけ、少しずつ餡子が水に溶け出している。 「まりさってだれ!?そんな変なお帽子野郎のことなんか忘れてもっとすっきりして ええええっ!!!」 「ふんぎいいいいいいっ!!!でいぶはばでぃざがずぎなのおおおおっ!!!」 「きっと今頃まりさよりも汚くてかっこ悪いゆっくりにだまされてたくさんすっきり してあかちゃん産んじゃってるじゃない?全弾命中!よーそろーっ!!!」 「ゆがががあああああああっ!!!ゆ゛ゆ゛!?おみじゅざんがっ!!!ぶぶぶ…」 まりさがむらさの戯言に付き合っている間に、帽子は浸水し、まりさはもうあんよが 溶け出して動けなくなっていた。 「せめて…すっきりしてから……」 結局、ばら色の新婚生活を夢見たまりさは溶けてしまった。 「りあ充しね!」 むらさはそういい残すと、満足そうに海へと帰って行った。 このような行動から、むらさの棲息する水域は水難事故が多い難所として、まりさたち に恐れられているという。 秋になると、むらさは繁殖シーズンを迎える。むらさの繁殖シーズンは春と秋の年二 回であり、春に生まれた個体が秋に成熟し、にんっしんっ可能となるのだ。 この時期の海中では、発情したむらさが番をつくり、あちこちですっきりをしている。 「むぅらぁむぅらぁするよほほほほほほほほほほほひひひっ!!!」 「ふう…すっきり…♪…」 飼われているむらさはともかく、天然の環境下ではいつでも繁殖できるわけではない。 生まれた赤ゆたちがゆっくり育つことが出来る季節、それを狙って、繁殖期を合わせて いるのだ。このような一斉すっきり時のむらさは「むらさむらむら」と呼ばれることもあ る。一斉すっきりをしなくても生きていける飼育環境下では見られない行動だが、むら さのシンボルとも言える繁殖様式である。 「むらさのぺにぺには世界一ィィィッ!」 「よぉぉぉおそろぉぉぉぉぉお゛っ!!!」 「仰角15度!!!んほおおおおおおっ!!!初弾!!命中!!!」 むらさの下腹部にそびえ立つは劣情の摩天楼。 全身から大量の粘液を放出しながら、すっきりが行われる。むらさの飼育が難しいと されるのは、この大量の粘液によって、一般的な水槽の水量では急激に水質が悪化し てしまうためである。そのため、通常はむらさが陸上生活に適応するのを待って、繁 殖を行おうとするブリーダーが多いようだ。 この時期は夏の豊富な餌によって、春の繁殖よりも肥えた個体が多く、そのため、すっ きりも、動物型が中心となる。 動物型すっきりの場合、生まれてくるのは、既にスーパーボールほどのサイズにまで成 長した赤ゆであり、植物型の赤ゆとは違い、生まれてすぐに海底に着底、砂に潜って生 活する。直達発生と呼ばれるタイプの、浮遊期を経ない、赤ゆである。 「ゆっくり!!ゆっくりあかちゃん産んでね!!!」 ここでも一組のむらさのカップルに新しい命が生まれようとしていた。 「みゃみゃからしゅっこうちゅるよ!よーしょろー!!!」 「よーちょろー!!!ゆっくちしていってね!!」 「おちびちゃああああん!!!ゆっくりしていってね!!!」 「ぱぱににて、すごいゆっくりしたおちびちゃんだよ!!」 父むらさも母むらさも元気そうな赤ゆの誕生に心から喜んでいた。 動物型にんっしんっのため、一度に生まれる数は少ない。その代わり、春産卵群とは異 なり、親とともに生きていくことが出来る。そのため、秋産卵群は生存確率は高く、生 息域の拡大ではなく、安定した環境で個体数を維持するための産卵群であると言えた。 「さあ、おちびちゃんたち、ごはんさんにするよ!!」 父むらさが捕まえておいた、ハゼや二枚貝を持ってきた。ハゼは予め、頭部を噛み砕い てある。また、二枚貝はバカガイ(アオヤギ)や小さめのアサリのような殻の薄いものを、 石灰質のあんかーで割ってから捕食する。 「むーしゃむーしゃ!!しあわせ~!!!」 「ぐぅ~れいとぉっ!!!」 直達発生によって生まれた赤ゆたちは、この後、両親と共に漁の練習をする。 「きょうはぱぱがごはんさんの捕り方を教えるよ!!」 「「ゆっくりりかいしたよ!!よ−そろー!!」」 父むらさは二匹の赤むらさを藻場に連れてきた。砂地にアマモが繁茂しているが、夏は 強い紫外線によって、多くの海藻・海草類が減少する季節であり、この時期に見られる のはまだ幼草体を中心とした小さな藻場である。 しかし、既にアマモの根本に付着したイガイ類、その表面や間隙に棲息する微小甲殻類、 その周辺には雑多な稚魚が集まっており、漁の練習台としては申し分なかった。 「くささんには、いろんなごはんさんが隠れてるんだよ!ゆっくり捕まえてね!!」 「おしゃかなさんうごかにゃいでね!!!」 「ゆええええ!!なんじぇにげりゅのおおおおおっ!!!」 赤ゆたちは無駄な動きが多く、稚魚を捕まえることが出来ない。何度か、父むらさが見 本を見せたが、一向にダメだった。 「むぅ~…最初はみんなへたくそだよ。むらむら頑張ろうね~!!」 父むらさが赤ゆたちを励まし、海藻表面にくっつく甲殻類や二枚貝の食べ方を教え始め た。 「こういう草さんの周りにはあみさんが群れてるよ。」 父むらさが示したのは、海藻や藻場、海底付近に蚊柱のような群れをつくるアミである。 アミはエビに似た外見を持つ小型甲殻類で、海水魚飼育などの生き餌としてよく利用さ れる。 父むらさはアミの群れの周りをぐるぐるとまわり、少しずつアミの群れを小さく、しか し、密度の濃いものにしていく。 「おちびちゃんたち!!今だよ!!!」 「「よーしょろー!!!」」 二匹の赤むらさは勢い良く、アミの群れに飛び込み、口いっぱいにアミをくわえる。 「むーしゃむーしゃ…しあわしぇ~!!!」 「あみしゃんはむりゃむりゃできるよぉ~!!!」 父むらさからすれば無駄の多い食事であったが、初めての漁に、二匹とも満足してい るようだった。 こうして赤むらさたちは両親の指導を受けてすくすく成長し、一ヶ月もすれば、子む らさと言える大きさにまで成長していた。 晩夏から秋半ばにかけて、この地域は度々台風が襲ってくる。大型の台風はその風雨に よって沿岸域の生態系を一時的に攪拌してしまう。 沖合いの生物が沿岸に持ち込まれ、逆に沿岸の生物が沖合いに運び去られる。 さらに高波によって、砂浜は削られ、海藻はちぎれ飛んでいった。 「まだだよー!!」 「がんばっててーはくしてね!!おちびちゃんたち!!!」 台風などで水中が荒れたとき、通常、むらさ種はあんかーを砂の中に打ち込んで、荒波 や水流に流されないようにする。しかし、今回の台風のように、あまりにも水中の攪乱 が強い場合、丈夫そうな海藻などの茎に齧りついてやり過ごすのである。 むらさたちは、このような行動を「てーはく」と呼んでいた。 「ゆぎいいいひいいひいひいっ!!!もうむりじゃよおおおお゛っ!!!」 「おぎゃああじゃあああんっ!!!おぎゃあさんのおくちさんにいれでえええっ!!!」 直達発生の赤ゆたちは既にそれなりの大きさであるため、親むらさの口の中に隠れられ るのは生まれて最初のうちだけである。 赤むらさたちは自力で歯を食いしばり、荒れ狂う水界に立ち向かわなければならなかった。 「ゆぎいいいいいっ!!!ひゃあっ!!!」 姉むらさが遂に力尽き、食らいついていた茎を離してしまう。 「おねえちゃあああんっ!!!」 妹むらさは必死にあんよを伸ばした。しかし、姉むらさが噛み付いたのは、妹むらさが必 死に差し出したあんよではなく、お尻だった。 「お゛ね゛え゛ぢゃあああああああああああああああんっ!!?」 姉むらさは流されまいとして、必死に妹むらさの尻に食らいつく。生まれてからとりあえ ずひどい目にあっていないはずの妹むらさのぷりぷりした尻に、ぐいぐいと姉むらさの歯 が食い込んでいく。 「ふごごごっ!!!ほへんへええええええっ!!!」 「いじゃあああいいいいっ!!!むらじゃのぷりちーなももじりがあああああっ!!!」 姉むらさの顎が耐えられなくなるのが先か、それとも妹むらさの尻が耐えられなくなるの が先か… ぶちっ! 「「!!?」」 一番最初に荒れ狂う海に耐えられなくなったのは、二匹が噛み付いていた海藻だった。 「おぢびぢゃあああああああああっ!!?」 「むらざのびずぼじだだるいいぶずめがああああああっ!!?」 「おぎゃああしゃああああんっ!!!」 「おどうじゃあああああああんんんん!!!」 子むらさの姉妹は荒波にもまれ、海藻もろともどこか遠くの海に流されてしまった。 流されたむらさ姉妹は大きな流れ藻にあんかーをひっかけて海面を漂っていた。周 囲には同じように沿岸域から流されたのであろう、何匹かの稚魚が流れ藻の影を泳 ぎ、流れ藻の上には甲殻類の幼生や小さなタコの子供がしがみついている。 もうどれくらい海を漂っているのか分からない。海は深まり、海底はとっくに見え なくなっていた。眼下には底の見えない海が広がり、太陽光線も届かないその奥底 には、何やら薄暗い空間が広がっている。時折、大きな魚影が真下を通ったり、夜 中に光る何かが周囲を泳ぎ回っては、姉妹は身を寄せ合うように流れ藻にしがみつ き、息を潜めた。 「ねえさん、またおさかなさんいっぴきいなくなってるよ。」 「きっと、ゆっくりできなくなったのよ…」 その日、姉妹はこの流れ藻のマスコット的存在であった、可愛い小さなタコを分け 合って食べた。妹は流されて以来よく遊んでいたこのタコを食べるのを最後まで嫌 がったが、もう簡単に食べられそうな流れ藻の付着生物は食べきってしまっていた のだ。また、稚魚の類はまだ漁の経験が乏しい二匹には捕まえるのが困難であった。 姉むらさは一度稚魚を捕まえようとしたものの、気がついたら流れ藻から遠く離れ た、真っ青な海中に稚魚と二匹で取り残されたことがあった。なんとか懸命に泳い で流れ藻にたどり着き、事なきを得たものの、まだ子供のむらさ姉妹には、この広 い海の真っ只中で、一匹取り残されるという感覚はトラウマとなった。 それ以来、姉妹が流れ藻を離れて行動しようとすることはなかった。 「むーしゃ…むーしゃ……」 「ふう…そこがみえないうみじゃ、ゆっくりもむらむらもできないよ…」 現状では起きていても体力を消耗するだけである。姉妹は食事を終えると、まだ日 も高いうちから交代で眠りについた。日中は、片方が起きて警戒と、周囲の観察を 行う。そして、夜間は二匹とも眠りにつき、命を運に任せてきた。どうせ、夜行性 ではないむらさの目では、夜間はほとんど何も見えなかった。 ふと姉妹が目を覚ましたとき、周囲にはかつてないほど無数の生命がうごめき、何 かが光り、そして泳ぎ回っていた。 「おねえちゃん!!おほしさまがうみのなかにっ!!!」 かつて父むらさが内陸部で見たことがあるという、蛍とはこういうものなのだろう か?それともこれは人の巣の光だろうか? それは日周鉛直移動−昼と夜で深海と表層を往来するアミやハダカイワシの群れだ った。ちょうど、複数の海流がぶつかる栄養塩に満ちた海域まで流されてきたのだ ろうか?そして、それらに導かれるように、真っ暗な深海の奥底から、影しか見え ない魚が、煌びやかな光を身にまとったクラゲが、そして流れ星のような不思議な 動きをする生き物(姉妹は知らなかったが、発光器官を備えた外洋性のイカである) が海中の星空へと加わっていった。 「きれいだねえ…おねえちゃん、おほしさまはうみのなかでもとてもゆっくりして いるよ。」 「でもなんだかむらむらしてて、ゆっくりできないおほしさまもいるよっ!!!」 それは獰猛な捕食者たちによる凄惨な捕食の現場であった。 一つ、また一つと小さな光が消えるたびに、儚い命が海へと還っていく。 それはまるで、宇宙の深遠で誕生と消滅を繰り返す星々の無窮動曲のようであった。 そのとき、いくつかの影が流れ藻に接近してきた。影は流れ藻の周りに集まると、 つつくようにして、流れ藻表面の微小な付着生物を食べていく。 微かな星明りに浮かぶ黒い羽のシルエット、トビウオだった。 その度にむらさ姉妹があんかーでしがみつく流れ藻はぐらぐらと揺れた。 「ゆええええええっ!!!やべでね!!!ゆれるよ!!!ちんぼつしぢゃうよおお おおっ!!!」 「あっぢいっで!!!おざがなざんあっぢいっでね!!!じーじーずるよ!!!」 トビウオの大きさから丸飲みにされることはないだろうが、自分達の唯一の拠り所 が揺れる度に恐怖し、姉妹は泣きじゃくった。姉はお尻を振りながらしーしーをば ら撒いたが、ちゃんと流れを読んでしーしーしなかったため、自分のところに戻っ てきただけだった。 「ゆわあああんっ!!!おねえじゃんのじーじーのにおいがずるっ!!!」 「ゆべべ!!!しーしーのんじゃっだよっ!!!」 あまりに騒ぎすぎたせいか、それともしーしーの臭いに魅かれたのか、トビウオは 姉の体を口でつまむように突いてきた。 「いやあああああああああ゛っ!!!やべでえええっ!!!むらざおいじぐないよ おおおおっ!!!つつかないでえっ!!!」 「やめてね!!おねえちゃんにひどいことしないでね!!!」 ぷくーっをして威嚇する妹むらさ。しかし、この程度の大きさのぷくーっではトビ ウオ相手にお話にならなかった。もっとも、今は夜なので、どのみち外敵を威嚇す る効果など皆無なのだが。 べりりっ! 「ゆんやあああああああああああああああ゛っ!!!」 姉むらさの頬の皮が薄くはがされてしまった。 「ゆぎゃあああっ!!!いじゃいいいっ!!!いじゃいよっ!!!だじゅげでぱぱ ぁっ~!!ままぁ~っ!!」 泣き喚く姉むらさ。幸い、まだ中身の黒蜜は漏れていなかったが、トビウオに取り 囲まれている限り、それは時間の問題のように思えた。 「だじゅげでええええっ!!!いじゃいいっ!!!じにだぐないいいいっ!!!」 流れ藻から離れて泳いで逃げるべきか?それともこのままトビウオがいなくなるの を待つべきか? 姉妹は迷った。 このまま流れ藻に留まれば殺られる。 かといって、逃げたところで、浅海域に棲息するむらさがこの海底の見えない沖合 いの海域で生きていけるとは思えなかった。 第一、食べるものにも困り、疲労しきった自分達が、このトビウオから逃げられる 保証はないのだ。 「おねえじゃんっ!!!」 逃げよう! そう妹むらさが言おうとした瞬間だった。 ぱっと散るようにして、トビウオの影はむらさ姉妹がしがみついている流れ藻から 離れた。姉むらさを突いていたトビウオだけ反応が遅れる。 姉むらさを突いていたトビウオの体が不自然によじれ、何者かに捕らえられた。 アオリイカによる攻撃である。 アオリイカは沿岸性のイカであり、釣りの対象として有名である。 アオリイカはトビウオを触腕で捕らえ、まず、トビウオの頭の後方、人間で言えば 頚椎のあたりを齧り、脊髄を分断してトビウオの動きを封じると、その肉をゆっく りと齧りながらどこかへ行ってしまった。 「た…た…たすかった…?」 むらさ姉妹はそれ以上言葉をつむぐことも出来ず。ただ流れ藻に隠れるようにしが みつき、その夜を過ごした。 翌日、いつの間にか眠ってしまっていたむらさ姉妹が目を覚ますと、中天の太陽光 が燦々と海水に突き刺さっていた。心なしか、水の色が明るく、水そのものも暖か い。 「ねえさん、なんだかうみさんがぽーかぽーかするよ!!!」 「ほんとうだね!!むらむらしてくるよっ!!!」 傷は大したことなかったのか、姉むらさは軽口を叩いた。 「ゆ!?よーそろー!!!ろくじのほうこうになにかいるよっ!!!」 妹の声にふと、姉むらさが後ろを向くと、後方の表層を何か、黒くて大きなものが 泳いでいた。 「なんだろう!?むらむらするよかんが…」 「えいさん!?」 それはマンタ、オニイトマキエイであった。 「よーそろー!とってもおおきなえいさんだよっ!!」 マンタは熱帯、亜熱帯の暖かい海に生息する。プランクトン食の大型エイであり、 その体重は3トンにも達する。我々が夏の海で遭遇するようなエイが、一般的に 砂地の中に隠れている底棲生活者であるのに対して、マンタはその大きな胸鰭で 悠然と泳ぐように表層を遊泳する。 「ゆっくりしていってね!!」 「あんなおっきなおさかなさんはむらむらするよぉっ!!!」 マンタはぐんぐんと水中を飛ぶように前進し、勢いをつけて水の外へと飛び出し た。 「「おおおおおおおおっ!!!」」 マンタのジャンプが一体何のために行われるのかは、今も結論が出ていない。一 説には寄生虫を払うためとも言われている。 「「よーそろおおおおおおおっ!!!」」 むらさ姉妹は感嘆の声を上げ、マンタのジャンプを注視した。 何トンという体が空中を飛ぶのだ。圧巻である。 そして、マンタは倒れこむように、空中から海中へ、ちょうどむらさ姉妹の真上 へと着水する …真上? 「ぼんばぁぃえ゛っ!!!」 「ねえざあああああああああああああああああああんっ!!!」 マンタの巨体はむらさ姉妹がしがみついていた流れ藻を直撃した。 濛々と白い気泡が辺りを乱舞し、流れ藻はマンタの体に割られるように四散した。 姉むらさには最期のセリフを言う時間すら与えられなかった。 そして、姉むらさの体も、流れ藻に混じって、ちぎれ、水中をぼろぼろと落下して いった。 「ねええざあああああああああああああんっ!!!」 妹むらさはマンタの着水の衝撃で流れ藻から放り出され、水中をくるくると回転し ていた。その間、妹むらさが最後に見た姉むらさの姿は、ぼんやりと水中を分散して いく黒蜜の姿だった。 その日の夜も前日と同じ光景、深海からやってくる血生臭いプラネタリウムがむらさ の下方で展開された。しかし、前回のように、それを美しいと思うことも楽しむこと もできなかった。 ただ一匹、水面近くから眺める真っ黒な深淵は、舞い踊る光の乱舞は、ただひたすら 不気味だった。 妹むらさは流れ藻の破片にしがみつき、夜明けが来るのを待った。しかし、もう限界 が近かった。流れ藻はちぎれ、餌らしい餌は何も残っていなかった。おまけに、流れ 藻に集まっていた稚魚もどこかへ行ってしまった。 そして何より、これ以上、ただ浮かんでいるだけの長旅を一人で続ける自信も、理由 もなかった。妹むらさはそっとあんかーを流れ藻の破片から外した。 「おとうさん…おかあさん…ねえさん…むらさは…もう…」 むらさは目を閉じて波の動きに身をゆだね、ゆっくりと沈んでいった。 そして、むらさの体はサンゴ礁に横たわった。 とある南の海、サンゴ礁が鮮やかな海で、一匹のむらさがウミガメから逃げていた。 「来ないでね!!!むらさは食べられたくないわ!!」 お尻に残った実の姉の歯形の痕…あの妹むらさの成長した姿である。 どうやら、むらさはそれなりに場数を踏んできたようだ。 巧みにウミガメの追撃をかわし、サンゴの影に隠れる。 ウミガメはしばらく辺りを泳いでいたが、諦めたのか、それとも別の獲物を見つけたの か、どこかに泳ぎ去ってしまった。 「ふう…やっとゆっくりでき…」 そのとき、むらさの視界に入ってきたのはレモンザメだった。レモンザメは最大で3m ほどにもなる暖かい海に生息するサメである。その名はそのレモン色の体色から来てい るが、実際は個体差もある。 今回、むらさが見つけたのは、体長70cm前後のまだ若いレモンザメだった。若い個体 はしばしば、リーフ内の浅い海に入ってきて捕食を行う。いくら海中に適応したむらさ でも分の悪い相手であった。 砂に潜るか…それとも陸に逃げるか…? 妹むらさは成体と言えるサイズになって皮が丈夫になり、乾燥への耐性を備えたことで ある程度陸上でも行動できるようになっていた。 むらさは一度上陸して、この捕食者をやり過ごすことにした。隙を見てサンゴの影から 抜け出すと、波打ち際に飛び跳ねるように逃げていく。 「…ふう…ここまでくればゆっくりできるわ…」 そこは真っ白なサンゴ砂に覆われた浜辺だった。海の中では感じることのなかった、照 りつけるような太陽が痛い。まだ、陸上での生活経験が乏しいむらさには強すぎる太陽 だった。 それでも、さめさんといっしょよりはゆっくりできるわね… むらさは太陽から逃げるように木陰に跳ねていった。 「おや?見ないゆっくりだね!ゆっくりしていってね!」 そこにいたのは見たことのない二匹のゆっくりだった。 大きな耳を持った笑顔の素敵なゆっくり 「ぼくはなずーりん」 そしてもう一匹は頭に可愛い花を乗せた、少しおどおどしたゆっくり 「…しょうです…」 「むらさ、わたしはむらさよ。」 むらさは初めて会う別のゆっくりにどう振舞っていいか分からなかった。 「きみはどこの飼いゆっくりなんだい?」 なずーりんと名乗ったゆっくりはむらさが野生だとは思わなかったようだ。 南国の太陽の下、照りつける太陽に濡れた黒髪に魅かれるものがあったのかもしれない。 「わたしは海から来たの。にんげんさんに飼われているわけじゃないわ!」 「すごいや!しょう聞いたかい!?海に棲んでるんだって!!」 なずーりんは目を輝かせる。むらさはなずーりんが一体何に驚いているのか良く分から ず、少々困った顔をしていた。 「うん…海の中ってどんな感じなのかな?…とっても興味あるよ…」 しょうと名乗ったゆっくりも海に興味があるらしい。このゆっくりたちにとっては、海 の中の世界がそんなに珍しいのだろうか? 「ねえ、むらさ?これからぼくらが面倒見てもらっているお兄さんのゆっくりぷれいす に行かないかい?きみの棲む海の中に興味があるんだ!ゆっくりした話を聞かせてよ!」 「わたしも…お話聞いてみたいかな?…」 まあ、いいか むらさはそう思った。どうせレモンザメがいなくなるまで、海の中に戻るつもりはない。 それに一度、地上をゆっくり見てみたかった。 「いいわよ!みんなで一緒にゆっくりしましょう!」 快諾したむらさの笑顔に、なずーりんとしょうの顔もほころんだ。 「ねえ、むらさぼくらと同志になってくれないかな?」 「同志ってなに?」 「一緒に遊ぶと楽しい友達のことさ」 なずーりんの笑顔は無邪気でとてもまぶしかった。 むらさはこの二匹と一緒ならば、たくさんゆっくりできるような気がした。 海の中しか知らなかったむらさは、なずーりんとしょうの二匹に出会い、様々な思い出を 作っていくことになる。 陸地から海に進出し、また再び陸にも上がろうとするむらさ種、このゆっくりはどこを目 指すのだろうか? まぶしい太陽の下、むらさの新しい生活が始まった。 完 神奈子さまの一信徒です。 私の専門である水棲ゆっくりって、にとり、むらさしかいないなぁ~ってことで書いてみ ました。すわこはカエル、いくは深海魚、ぬえはカニっていうイメージもあるのですが、 どうなんでしょう? あまり一人で独自のゆっくり量産するのも気が引けましたので、南の島シリーズ後半でち ょい役で出てきたむらさにスポットライトを当ててみました。 こんなのむらさのイメージと合わないという方、ごめんなさい。 お目汚し失礼いたしました。 挿絵:絵本あき
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お誕生日おめでとう! 11KB 虐待-いじめ 餡娘ちゃんお誕生日ネタ ※お祝い絵はたくさん産まれるのに、お祝いSSが産まれないので 『お誕生日おめでとう!』 D.O 季節はもうすぐ春です! って言っても、相変わらず寒い毎日は続くわけで、 たまたま私がやって来た、この木々もまばらな林の中でも、 ゆっくりの跳ねまわる姿なんて、全然見えない。 「でも大丈夫!なんと言っても今日は、私、餡娘の誕生日なのだ!」 餡娘は、ゆ愛での化身! だから、餡娘がこの林に来た以上、ゆっくりが発見される事はあり得ないのだ! しかもしかも、今日は餡娘ちゃんの誕生日なんだからねっ!! 「ゆゆ~ん。おちびちゃん、ゆっくりうまれてね~。」 「れいむとまりさのおちびちゃん、とってもゆっくりしてるね~。」 あ・・・ホントに居た。 数分後。 私は、林の中にある一本の大きな木の根元で、うつ伏せに寝転がっていた。 木の洞に作られた、野生のれいむとまりさのつがいが住むおうちの中を覗き込むためだ。 「ゆっくりどっかいってね!ぷくー!」 「や・だ。うふふふ。」 おうちをじーっと覗き込まれて、れいむもまりさも機嫌がよろしくない。 そりゃまあ、ゆっくりだっておうちの中はプライベートスペースだもんね。 プライバシーを完全無視じゃ、気分がよくないのもわかるわ。 それに、このつがいがナーバスになる理由は、なんと言ってももう一つ。 「おちびちゃん、ゆっくりうまれてね~。」 「おねーさんは、はやくゆっくりどっかいってね!ぷくー!」 れいむの額から伸びた茎、そこにはなんと! 2匹の赤まりさと3匹の赤れいむ、かわいぃ~・・・ 肌つやは最高で、栄養状態はすこぶる良好!! 表情もとってもゆっくり~。 冬ごもりのシーズンに子作りしてる割には、親子そろってゆっくりしてるよー。 「もうちょっとだけ、ね。私もお誕生日なのに、だーれもお祝いしてくれないのよぉ。一緒にゆっくりしよ~。ね?」 「ゆゆっ!?じゃあ、おねーさんもおちびちゃんと、ばーすでーさんがおんなじなんだね!」 「ゆっくりしてるね~。まりさ、おねーさんにも、おちびちゃんのうまれるところ、みせてあげようね!」 この、れいむの頭上に実った新しい命たちは、 今にも生まれそうにプルプルと震えているのだ。 ゆ愛で世界のトップランナーである私とおんなじ誕生日なんて・・・なんて幸せーなおちびちゃん達。 ぷるっ!ぷるぷるっ! 「ゆっ!?おちびちゃん!うまれそうだよ!!」 色々考えてる間に、茎にぶら下がってる赤ゆっくり達が震え始めた。 両親達の期待に胸いっぱいな表情!とっても幸せそう。 「おちびちゃん、ゆっくりうまれてね!ゆっくりだよ!」 「れいむ、ちゃんとべっどさんにおとしてあげてね!おちびちゃんがゆっくりできないよ!」 うふふ・・・きっと、この日のためにがんばってきたんだろうな。 木の洞に作ったおうちも、土を掘って拡張した跡もあるし、 中には小石一つ転がってないよ。 おうちの一番奥には、冬だって言うのに草花や木の実、虫さんまでたっぷり蓄えてあるし、 あのネコジャラシさんとかは、ひょっとしておちびちゃんのためのオモチャかな? 産まれてくるおちびちゃん達を受け止めるクッションも、 枯れ草とか木の皮まで編み込んで、まるで鳥の巣みたい・・・作るの大変だったよね。 「おぢびぢゃん、ゆっぐぢぢでいっでね!ゆっくりしびぇっ・・・っ!!」 「まりさ、おちついてね!ごあいさつはゆっくりしないと、おちびちゃんがかわいそうだよ!」 あのうろたえ方・・・きっと、初めてのおちびちゃんなんだね。 きっと私も、産まれてくる時はこんな風に、 期待されて、祝福されて、愛されて産まれてきたんだな・・・なんか、もう感動してきちゃった。 「きゃわいいれいみゅが、ゆっくちうまれりゅよっ!!」 ぷるぷるっ・・・・ぷちっ! ひゅーん・・・べしゃっ!! 赤れいむを受け止めたのは、両親が丹精込めて作ったベッドの中・・・ ・・・に私が置いた、平たい石。多分、テーブルとかに使ってるのかな? 「びぇっ・・!?・・・ぴ・・ぴぇぇぇえええ!!いぢゃいぃいいいい!?」 「ゆぁぁああああ!?どうぢでべっどさんに、てーぶるさんがおいてあるのぉぉおお!?」 「ゴメン。つい、置いちゃった。」 「「どうぢでそんなごどずるのぉぉおおお!?」」 「だって、かわいいんだもの~。」 「ゆぁーん、いちゃいよぉ、ゆっくちできにゃいぃぃ。」 そうは言っても石の下にあった、ベッドのクッション性のおかげで、特に怪我は無かったみたい。 おとーさんとおかーさんに感謝してね!! 「ゆっくりちかづかないでね!おちびちゃんがゆっくりできないよっ!!」 「おちびちゃん、ゆっくりしてね。ぺーろぺー『ぷるっ!!』ゆゆっ!?ほかのおちびちゃんもうまれるよ!!」 今度は、父まりさが、平たい石(テーブル)を踏んで、私が触れないようにしてる。 一回で対処してくるなんて、ゆっくりしたおとーさんだね! 「しゅてきなまりしゃが、ゆっくちうまれりゅよっ!!」 ぷるぷるっ・・・・ぷちっ! ひゅーん・・・ぐしゃっ!! まりさを受け止めたのは、両親が丹精込めて作ったベッドの中・・・ ・・・ではなく地面の上。私もベッドさん、触ってみたかったんだもん。 「ぴゃ・・・ぎ・・ぴゅぁぁああああ!?まりしゃの、わいるどなあんよしゃんがぁぁああ!?」 「ゆぎぃいいいい!!おねーさん、いいかげんにしてねぇぇえええ!!」 「ちょっとくらいいいじゃん。ケチ。」 そんなこんなで、5匹の赤ゆっくりは、ちょっと泣いちゃったけど、 怪我も病気も無く、元気いっぱいに誕生! ベッドさんの中でもしょもしょと這いまわり、ぷにぷにと動き回ってる。 「あんよはいたくない?ぺーろぺーろ。」 「ゆぅ~ん、ゆっくち~。まりしゃ、たふがいだから、ゆっくちだいじょうぶにゃんだよ!」 「ゆふふ、しょうらいがたのしみだよ~。」 「くきさんをむーしゃむーしゃしてね。」 「むーちゃむーちゃ・・・ゆぁーん、かちゃいよー。」 「ゆふふふ、ちょっとまってね。『ぽりぽりむしゃむしゃ・・ぺっ』ゆっくりたべてね。」 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 「みゃみゃー。しゅーりしゅーり、ちあわちぇー。」 「すーりすーり、私のお肌、気持ちいい?」 「しゅーりしゅ・・・ゆ?おにぇーしゃん、だりぇ?」 「「・・・ゆぁぁあああ!!おぢびぢゃんにざわらないでぇぇええ!!」」 せっかく家族の団らんに混ぜてもらおうと思ったのに・・・残念。 でも、このゆっくりした家族なら、きっと私のお誕生日も、おちびちゃん達の分と一緒に、 お祝いしてくれるよね! 絵師さんや作家さんみたいに薄情じゃないよね!! 「れいむ!まりさ!おちびちゃん達!」 「「さっさとどっかいってね!ぷっくー!!」」 気にしない気にしない。 「おねーさんと、お誕生日会しましょ!!」 「ゆぅ?」×5 「お、おねーさん?おたんじょうびかいって?ゆぅ?」 「今日産まれた事を、みんなでお祝いするのよ。ゆっくりできるでしょー!」 「ゆ・・・ゆわーい!れいみゅ、ゆっくちおいわいされちゃーい!」 さすがゆっくりしたおちびちゃん。 ノリも最高ね! 「お、おちびちゃ・・・」 「まりさ。おいわいは、ゆっくりできるよ。おちびちゃんたちとゆっくりしようね。」 「ゆぅぅ・・・れいむぅ。あのおねーさんは、ゆっくりできないよぉ。」 「でも、おねーさん。」 「ん、何?れいむ。」 「おたんじょうびかいって、なにをするの?」 「お祝いの歌を歌ってー、ケーキのろうそくの火を吹き消してー、お誕生日の人にプレゼントをあげるの。」 「ゆぁーい!けーきしゃん、あみゃあみゃ!あみゃあみゃー!」×5 「へぇ。産まれたてなのに、ケーキ知ってるんだ。ま、いいか。それじゃ、お歌歌おうね!」 「ゆっくちー!」×5 ハッピー・バースディ 詞・曲 餡娘 空は碧く澄みわたり 風は草原の爽やかな香りを運ぶ でも、私は一人 瞳が空の碧さをうつす事は無く 心にうつる空はいつもくすんだ灰色 足元には餡子の染みが一つ この餡子は私の移し身 消えてしまいたいと背を丸めるが 私の願いはかなう事も無い ああ ハッピーバースディ 私のバースディ 誰もいない 誰も気付かない 私のバースディ 「・・・・・・。」 「ゆ・・・ゆぁぁああああん!!ゆっぐぢでぎないぃいいいい!!」×5 「「おぢびぢゃんをいぢめるなぁぁあああ!!!」」 「・・・・・・。じゃ、ろうそくに火、つけよっか。」 「ゆっ?」 ぼっ・・・ぼぅわっ! そして、餡娘は赤ゆっくり達のお飾りに、ライターで火を灯した。 「ゆ・・ゆぴゃぁぁああ!!れいみゅのりぼんしゃん!もえにゃいでぇぇえぇ!!」 「まりしゃのおぼうち、もやしゃにゃいで・・・『ぼぅっ』ゆぴゃぁぁあああん!!」 「「やべでぇえええ!!おぢびぢゃんをもやざないでぇぇえええ!!」」 「おちびちゃん・・・うふふ。今、消してあげるね・・・」 ふぅっ・・・あれ?消えないね。ふぅー。うふふ、逃げちゃだめよ。 ・・・・・・。 餡娘は、とても楽しそうに、ゆっくりと一匹づつ、息を吹きかけてあげた。 火を消すにはあまりにも弱く、優しく、ゆっくりと。 ・・・・・・。 「おぢびぢゃ・・・おぢ・・ぺーろぺ・・ゆっぐぢぢでぇ・・・」 「ゆ゛・・・ぴゅぅ・・ゆぴぇ・・・」 おリボンの上手に外せない赤れいむ達は、そのまま全身を炎に包み、 ベッドごと全身を焼かれ、黒こげで痙攣を続けるだけの饅頭になった。 「おぼうち・・・まりしゃの。・・・まりしゃのおぼうちぃいぃいい・・・」 「おぢびぢゃん、ゆっぐぢ、ゆっぐぢぢでぇぇぇ・・・」 お帽子を脱ぐことができた赤まりさ達も、 ゆっくりにとっては命と同等の、お飾りを焼き尽くされた事では同様であった。 「「どうぢで・・・どうぢでぇ・・・」」 このつがいは、夢にまで見たゆっくりしたおちびちゃん達を、 手に入れて数分で奪われたのであった。 「だって・・・私の、お誕生日なんだもん・・・」 そう言った餡娘ちゃんの両手には、両手に一本づつ、 その辺で拾ったのであろう、太い木の枝が握られていた。 「「ゆ・・や、やめてね。ゆっくりできないよ。ゆ、ゆっくりやべでぇ・・・」」 「素敵なプレゼント・・・ちょうだいね・・・・・・。」 半刻後。 つい先ほどまで明るい声で鳴いていたおちびちゃん達は、 一匹残らず黒く焦げた塊に姿を変えていた。 そして、たくさんのおちびちゃん達に囲まれた、 ゆっくりとした未来を夢見ていたれいむとまりさのまむまむには、 ささくれ立った木の枝が、そっけなく突き刺されていた。 2度とおちびちゃんを産む事が出来ないように。 2度とお誕生日のお祝いが出来ないように。 ※こんなことにならないように、餡娘ちゃんのお誕生日はしっかり祝ってあげましょうね! 餡小話掲載作品(またちゃんと整理します。) その他(舞台設定のみ共有) ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 854 ごく普通のゆっくりショップ ふたば系ゆっくりいじめ 873 ゆっくり向けの節分 ふたば系ゆっくりいじめ 924 みんな大好きゆレンタイン ふたば系ゆっくりいじめ 934 暇つぶし ふたば系ゆっくりいじめ 943 軽いイタズラ 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか ふたば系ゆっくりいじめ 753 原点に戻ってみる ふたば系ゆっくりいじめ 762 秋の実り 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけはそうでもない) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道(おまけ) 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 734 未成ゆん(おまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 678 飼われいむはおちびちゃんが欲しい(おまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけ) 夏-1-6. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけ) 夏-1-7. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 冬-2. ふたば系ゆっくりいじめ 910 寒い日もゆっくりしようね 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(仮) ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた ふたば系ゆっくりいじめ 807 家出まりさの反省 D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ………おいおいw 「ゆっくりだって生きてるのに」 アホかw どうせお前もゲスを見れば死ねばいい、って思うだろw 残念な優しさで哀れみを持つなにわかw にわかがコメするな -- 2017-01-02 14 31 53 なんで擁護が湧いてるの?ゆっくり出来ないってわかれよー -- 2013-09-22 07 06 27 お・・・・・お誕生日おめでとうございます(棒) -- 2013-09-15 18 55 00 餡娘が一方的にやった凶行かよ、ただの愉快犯か -- 2013-09-09 13 50 35 ↓2蟻潰して喜ぶ大人はいない いたら相当のバカか池沼 -- 2013-08-01 02 39 51 恐ろしい子! -- 2013-01-04 13 45 36 ↓蟻に置き換えればわかることでしょ。 ただ喋るからそういう気持ちになるだけで。 -- 2012-10-30 12 13 38 ゆっくりだって生きてるのに・・・ ひでぇ、うん、クズだ。 想像してごらん。自分と自分の家族が殺されることを -- 2012-06-10 23 05 57 最後いいなwww -- 2012-04-04 22 35 54 最後まむまむを破壊し子供を出来なくする所が最高w簡単に殺すよりか地獄だなw -- 2011-01-24 11 15 40 内容はともかく生まれた早々無残なゆん生を終えた赤ゆにはゆっくりできた。 -- 2010-08-03 00 49 34 やなガキだ -- 2010-07-01 00 54 26 ↓心せまいなあ -- 2010-05-27 17 52 09 >ちょっとくらいいいじゃん。ケチ この一言でゆっくりできなくなった -- 2010-04-17 05 03 36
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「やべでええええええええ!!!!でいぶのあがぢゃんがえじでええええええ!!!!!」 「この赤ちゃんはお兄さんが見つけたからお兄さんの赤ちゃんだよ!独り占めするれいむはゆっくりしないで死ね!」 さてそんなわけで俺は茎についたままの赤ゆっくりを採ってきた。 ぱちゅりー種が二匹、れいむ種が三匹の合計五匹、今はまだ茎についたままだがすぐに生まれてくるだろう。 茎を砂糖水に浸しておけば親の栄養が無くてもある程度何とかなるらしい。 さすがは不思議生物(?)だ。 「ゆ…。」 「ゆっくち…。」 「…ゆゆ…。」 茎から声が聞こえ赤ゆっくりが震え始める。 どうやらそろそろ生まれるらしい。 「ゆっくち!」 プチリ、ビチャ! 「ゆびば!?」 一匹目の赤れいむが地面に落ちたとたんにはじけとんだ。 「なん…だと…?」 やはり茎を刺したコップをテーブルの上においたのがまずかったのか。 一メートルの高さから落ちたら死ぬんだな、学習したぜ。 そんなわけでコップを床へ下ろし落下予測地点にタオルを敷く。 自然に生まれるよりいい環境だ、これで大丈夫だろう。 そうこうしている間に二匹目の赤ゆっくり、ぱちゅりー種の一匹が生まれようとしている。 ぷるぷる、プチン、ポテ。 「むきゅ!ゆっきゅりしっちぇっちぇね!」 どうやら無事生まれたらしい。 元気そうな赤ゆっくりで何よりだ。 「むきゅ~?おきゃーしゃん!ゆっきゅりしっちぇっちぇね!」 「ああ、ゆっくりしてってね。」 俺に向かって元気に挨拶する赤ぱちゅりー。 死んだ奴は置いといてこいつを長女ということにしよう。 と、そうこうしている間に次々と赤ゆっくりが生まれる。 「むきゅ!ぱちゅりーのいもーちょがうまれりゅわ!」 プチプチ、ポテポテ。 「「ゆっきゅりしちぇっちぇね!」」 「ゆゆ~ん♪ぱちゅりーのいもうちょたちゆっきゅりしちぇっちぇね!」 立て続けに二匹が生まれる、どちらもれいむ種だ。 最後の一匹もそろそろ生まれるな、どれ手伝ってやろう。 俺は茎を摘むと振ってやる。 「れいみゅはれいみゅだよ!」 「ぱちゅりーはぱちゅりーよ!」 「れいみゅはれいみゅだよ!」 赤ゆっくり三匹はお互いに挨拶をし合っていて気づいていない。 というかれいむ二匹はまったく同じじゃないか面白れえな。 あれ?それにしてもこいつなかなか生まれねえな、もっと強く振るか。 ぶんぶん、ぶち、べちゃ! 「ゆぎば!!」 …強く振りすぎた、地面にぶつかって潰れちまった。 「ゆ!?れいみゅのいもーちょがいにゃいよ!」 「ゆゆ!ほんちょだ!おきゃーしゃん!まだうまりぇてにゃかっちゃいもーちょはどこ?」 「むきゅー。」 「あっはっは、いやいやお前達は三匹姉妹だろう!妹なんかいなかった!ほら!ごはんだぞ!」 適当にごまかし茎を指ですりつぶしながら与える。 「むーちゃ、むーちゃ!しあわしぇ~。」 「「むーちゃ、むーちゃ!」」 どうやら誤魔化しきれたらしい。 「よーし食べ終えたな!ここが君達のおうちだよ!」 三匹が食事を終えるのを待ち用意してあった箱庭(2メートル四方程度の透明な箱を改造しただけだが)に入れる。 「ゆび!いじゃいいいいいいい!!!!!!」 「むぎゅううううう!!!!」 「おきゃーしゃん!あんよがいじゃいよおおおおおおおおお!!!!!」 その箱には床一面にプラスティック製の芝のマットが敷かれているのだ。 足(?)が発達した大人のゆっくりならば滑り止め程度にしかならないそれも赤ゆっくりにとっては足を切り裂きかねない危険物だ。 「そこが赤ちゃん達のおうちだよ!お母さんはごはんを捕りに行かなきゃならないからもう行くよ!」 「ゆびいいいいいい!!!いじゃぐでありゅけないよおおおおおおおお!!!!」 「むぎゅううう!!!!おきゃーしゃんおいちぇかにゃいでええええええええ!!!!」 「それじゃあお母さんのところまで来てね。そうしたら一緒に連れて行ってあげるよ!」 痛いところから連れ出すために自力で抜け出せというなんとも矛盾した要求だが赤ゆっくり達はきちんと応じる。 「しょろー、いじゃいいいいいいい!!!!!」 先頭の三女れいむが一歩分すら動かず弱音を上げる。 「むきゅ!ぱちゅりーおねーちゃんのうえにのっちぇね!しょうすればれいむはいちゃくにゃいわ!」 「ゆゆ!おねーちゃんありぎゃちょう!しょろーりしょろーり!」 散々わめいて痛がっていた割には長女のぱちゅりーの上に乗るための移動はかなり迅速だ。 まじめにやってなかっただけじゃないのか? そうしてはいずるように頭を低くする長女ぱちゅりーの上に乗る。 「ゆゆ~ん♪」 「むぎゅぎゅ…しょろーり、しょろーり。」 「おねーちゃん!れいみゅものしぇちぇね!」 「むぎゅ、ふちゃりはのしぇられないわ。れいみゅはおねーしゃんだきゃらじぶんでありゅいちぇ…。」 「しょーだよ!わがままいわにゃいでじびゅんでありゅいちぇね!」 「どぼじでじょんなこちょいうのおおおおおおお!!!!!」 早くも姉妹喧嘩が始まる。 というかこの三女、長女が怒って叩き落としても文句言えないようなこと言ってやがる。 「喧嘩しないでね!早く来ないと置いていくよ!」 「ゆ!ぎょめんなしゃいおきゃーしゃん。」 「おねーしゃん!いしょいじぇね!」 「むぎゅーん!しょろーりしょろー…いじゃいいいいいいい!!!!」 見れば長女ぱちゅりーは底部からクリームを流していた。 自分だけならばともかく二匹分の体重を支えて、しかも頭の悪いことにこすり付けるように這いずるのだ。 多少痛くても跳ねたほうが軽症だと思うんだが。 「ぱちゅりー!?大丈夫か!ほら!じゃまなれいむはさっさと降りてね!」 「ゆべ!」 そう言って上に乗っている三女れいむをデコピンで叩き落し長女ぱちゅりーを拾い上げる。 「む…むぎゅ…。」 「二人は遅いからそこに置いて行くよ!それとおねえちゃんに怪我させたれいむは後でお仕置きだよ!」 「「どぼぢでじょんなごじょいうのおおおおおおお!!!!!」」 「うるさいよ!のろまなれいむたちが悪いんだよ!言っておくけどさっきみたいに喧嘩したらもっと酷いお仕置きするよ!」 「「おきゃーしゃあああああああああああん!!!!」」 叫ぶ二匹にそれ以上取り合わず長女ぱちゅりーを連れて隣の部屋へ行く。 「大丈夫かぱちゅりー?ほら今直してやるぞ!」 そう言いながらぱちゅりーの怪我を確認する。 何のことは無い少し切れた程度だ、小麦粉とオレンジジュースをつければすぐにでも直る。 ここにはそのどちらも無いけどね♪ 虐待用にも普通に飼うにしても必須の品だがあえて今回はそれらを使わずにおこうと思う。 さて俺が持ってきたものはガスバーナー。 どうするかはご想像の通り。 「むぎゅうううううううううう!!!!!!あじゅいいいいいいいいいいい!!!!!おきゃーしゃんやめちぇえええええええ!!!!!!」 「我慢してね!こうしないとぱちゅりーの足は治らないんだよ!」 もちろん足焼きである。 怪我はちゃんと治してるよ、ただしその代わり二度と歩けないけどね。 「あら?」 やわらかい底面がカチカチになるまで火であぶると頬の辺りまでこげが広がっていた。 やばいガスバーナーでは赤ゆっくりを焼くには火力が強すぎたらしい。 「む、むぎゅ…。」 すでに息も絶え絶えだが死にはすまい、多分。 「三日もすればまた歩けるようになるよ!ほら妹達のところに行こうね!」 もといた部屋に戻るると長女ぱちゅりーを箱庭に叩き込んだ。 「むぎゅ!?い、いじゃいいいいいい!!!!!!」 頬までカチカチだし多少乱暴に扱ってもビクともすまい。 「さてと、これかられいむへのお仕置きだね。」 「おきゃーしゃん、ごめんなしゃい!れいみゅがわりゅかっちゃよ!だきゃらゆるしちぇね!」 「ダーメ♪」 三女れいむを連れて隣の部屋へ行くと今度は待ち針を取り出す。 「さーてれいむ。これからお仕置きするからね。」 「や、やめちぇね!れいみゅおしおきいやだよ!」 無視して一本目をれいむの目に突き刺す。 「いじゃいいいいいい!!!!!りぇいみゅのおめめぎゃああああああああああ!!!!!」 「うるせえなあ、よっと。」 「ゆぎああああああああああああああああ!!!!!」 二本目を足から喉あたりに貫通させる。 三本目を余っている方の目に。 「いぎいいいい!!!!!ゆーは、ゆーは…。」 四本目は頭から。 「うぎがあああ!!!!!!」 五本目は後ろからなんてどうだろう。 「ぐぎ!!!!?」 六本目は横からかなっと。 「うび!!!…。」 七本目。 「!!…。」 八本目。 「…。」 九本目 「…。」 十本、十一本、…ってあれ? 「あららもう死んじまいやがった。」 三女れいむはすでにハリセンボンのような饅頭になっていた。 まったく根性のねえこった。 さてとこいつはあいつらへの飯にするか。 三女れいむの死骸に刺さった針を抜き髪は適当に剃る。 目と口は塞いで底面になるように変形させる。 さすがに気づくんじゃないか? 「むーちゃ!むーちゃ!ちあわちぇ~!!!あまあまさんすごくゆっきゅりちてりゅよ!!」 「むきゅー!むーちゃ!むーちゃ!ちあわちぇ~!!!!おきゃーしゃんしゅごいわ!」 無駄な懸念だったようだ。 二匹とも気づかずにパクパク食べている。 「おきゃーしゃん、いもうちょのれいみゅはどこにいりゅのかしら?」 「れいむなら隣の部屋でまだお仕置き中だよ!元気にしてるから心配しないでね。」 「ゆみゅ~。れいみゅねむくなっちぇきたよ。」 「むきゅ~。ぱちゅりーもよ。」 食うだけ食ったら眠くなってきたらしい。 まあ赤ゆっくりだし当然だな。 「ほらほられいむ、おねーちゃんは怪我してるんだからこっちでお母さんと一緒に寝ようね。」 「ゆ、わかっちゃよ~。」 眠そうにしながら差し出された俺の手の上に乗る次女れいむ。 再び隣の部屋へ移動する、さて今日はこのくらいにしておくか。 「ゆぴ~、ゆぴ~。おきゃ~しゃ~ん。」 寝息を立て寝言を言いつつ寝る次女れいむ。 俺はその微笑ましい様を見る。 「おらぁ!!!」 ブチャ! 断末魔すら上げず次女れいむは餡子の染みとなった。 「はっ!?しまった!」 あまりにも無防備な次女れいむの姿に反射的に放り投げてしまった。 残るは口が聞けるだけの長女ぱちゅりーのみ、なんてこった一日で五匹がほぼ全滅かよ。 あんなのいじめてもつまんねえな、よし、ここは…。 「ゆうううううううううう!!!!!」 「むきゅ、なきやんでれいむ。またあかちゃんはいつかつくりましょう。」 ぱちゅりーが狩から帰ると番のれいむが口から餡子を吹き出して倒れていた。 おまけに頭にあった子供達は影も形も無かった。 何とか瀕死のれいむを介抱し、事情を聞くと人間に子供を奪われたというのだ。 二人で泣きそして泣きつかれて寝てしまったのだが翌朝になってもれいむはまだ泣いていた。 そこへ何かが転がり込んでくる。 「ゆぴ~。むきゅ~。」 「ゆ!?れいむのあかちゃん!?」 「まちがいないわ!ぱちゅりーたちのあかちゃんよ!」 見間違えようはずも無い、茎についていた頃から何度も見ていた我が子の一匹なのだから。 「かえってきたんだねえええええええええ!!!!!」 「むぎゅううううう!!!!!」 二人して歓喜に泣く。 帰ってくるはずも無いと思っていた自分達の子が戻ってきたのだから。 「むきゅ~、ゆ?きょきょはどきょかしら?」 「おちびちゃん!ここはおかーさんたちのいえだよ!ゆっくりしていってね!」 「むきゅー!ゆっくりしていってね!」 しかしそれを聞いて赤ぱちゅりーは嫌そうな顔をする。 「へんなこちょいわないでにぇ!おばしゃんたちがぱちゅりーをゆーかいしたのね!ぱちゅりーはおきゃーしゃんのときょろにかえるわ!」 「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおお!!!!!!」」 歓喜の後であるからこそその悲しみは大きい。 二匹の叫びが響き渡った。 「やれやれ、いい事した後は気分がいいねえ。」 よく朝早く俺はあの赤ゆっくり達を採ってきた場所に長女ぱちゅりーを帰した。 さてあの親たちはままならぬ一人娘をどうするのだろうか。 殺すのか?生かすのか? さっきの様子からして殺すって事は無いだろう。 足は黒こげで一生歩けず頬もこげているため親愛の証であるすりすりもろくに出来ない。そんな子をあいつらは愛せるだろうか。 さーて、俺は次の赤ゆっくりを探すとするか。 今度はせめて五日程度は持たせたいものだ。 ──────────────────────────────── by デストラクション小杉?
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『はるごもり』 10KB 観察 小ネタ 自業自得 群れ 捕食種 ドスまりさ 自然界 人間なし 某所でもらったお題「規制解除」で 「すっきりーきせいをかいじょするよ!」 月明かりが僅かに差し込むだけでほとんど視界の利かない森の中、一体のドスまりさが声を張り上げる。 声は森の奥まで深々と響き渡る。 「すっきりーきせいをかいじょするよ!」 辺りに、ドスまりさが長を務めている群れの仲間は一体もいない。 「すっきりーきせいをかいじょするよ!」 ドスまりさの声に応えるかのように、森の木々は梢をざわざわと鳴らした。 「すっきりーきせいをかいじょするよ!」 辺りに満ちる濃密な闇を押しのけるようにドスまりさは声を張り上げる。 ざわざわと森が応える。 すっきり規制を解除する準備は、こうして整った。 ―群れ― 「すっきりーきせいをかいじょするよ!」 黒いとんがり帽子をかぶり、金のお下げを揺らしながらドスまりさは宣言した。 もうずいぶん長い間群れを納めている長は大きい。 体長は五メートルを超し、その堂々たる大きなおぼうしはは群れのまりさたちの憧れだ。 れみりゃやふらんが襲ってきても撃退できる、歴戦のドスだった。 「おやからうけつがれたとおりに、しっかりこどもをそだててね!」 群れの集会場として使っている、開けた野原でのことだった。 足下には群れのゆっくり五十体ほどが勢揃いし、昼下がりの光の中ドスの方をぽかんと見上げている。 群れが待ちに待ったすっきり規制の解除だ。 今まで何度も議題に上がり、懇願を重ねてもドスはすっきり規制を解除しなかった。 群れの仲間は解除が信じられず、ある者は口を半開きにし、ある者は首をかしげるように少し傾いてドスの言葉を噛みしめた。 「んっほおおおお! ついにありすのじだいがきたのねえええ」 レースをあしらった赤いカチューシャで、短めの金髪を飾っているゆっくりが真っ先声を上げる。 「むきゅ、ありすはよくがまんしたわ。えらいわよ」 つがいなのだろう。たっぷりとした紫の髪をおさげにして、三日月の飾りをワンポイントにあしらった帽子のゆっくりが追従する。 「ぱちゅりー! いますぐおうちにもどるわよおおお! こんやまでねかさないわああ!」 「ありす、おちつくのよ」 「こんやもねかさないわああああ」 ぱちゅりーはありすによってひきずられるようにおうちの方向へ去っていった。 それを呆けたように見ていた群れの仲間も、ようやく解除を実感したのだろう。 「ゆわああああ! ゆめみたいだよ! ついにれいむのおちびちゃんができるんだね!」 赤地に白のレースをあしらったリボンを付け、黒髪を頭の横で二束くくっているゆっくりが声を上げる。 「ゆふふ! ついにまりささまの『すーぱーてくにっく』をみせるときなんだぜ」 つがいのまりさはれいむと何度も体を擦りつけ合う。 黒いとんがり帽子から垂れた三つ編みが、体の動きに合わせて踊った。 広場では誰も彼もが同じように満面の笑みでつがいと喜びを噛みしめ合っている。 ほとんどのつがいはひとしきり喜びを噛みしめ合うと、蜘蛛の子を散らすように広場から退散した。 今からおうちに戻って思う存分すっきりーをし、大量の子ゆっくりを産むのだろう。 待ちきれずにその場ですっきりーをし始めるつがいが数組いる以外で、広場に残っているゆっくりはいなくなる。 「きせいを、かいじょしたよ」 ドスは辺りを見回して、噛みしめるようにもう一度呟いた。 二週間が経過した。 群れは蜂の子をつついたような騒ぎになっている。 誰も彼もが望んだとおりに幸福な子供を授かり、群れは幸せな喧噪が満ちている。 時間の掛かる胎生にんっしんを望んだゆっくりはかなり少なかった。 みんな一瞬でも早く赤ゆの顔を見たくて、植物型にんっしんを選んだ。 頭から生えた茎に鈴なりとなった赤ゆっくりを見て、つがいは相好を崩し、ゆっくりに浸る。 衝動任せに胎生にんっしんしたつがいの中には、腹に子がいる間に更に植物型にんっしんをする者もあった。 今や植物型にんっしんをしたつがいはほとんどの赤ゆを産み落とし、辺りは赤ゆの声でずいぶんうるさい。 群れの数を少なく抑えていたため、森の食糧事情はかなり良かった。 それを当てにして複数の茎を生やし、赤ゆの数が二桁に届くつがいもある。 本当に少数の、先を見通せるつがいだけが胎生にんっしんで三体ほどの子ゆを授かった。 けれどそんなつがいは、十に満たないほどだ。 ほとんどのつがいは思う存分すっきりーした赤ゆ達のため、備蓄の食糧を順調にすり減らしている。 両親共に少しでも長く巣にとどまってゆっくりとした子供を見ているのだから当然だった。 豊かな森の恵を敷いてあぐらをかき、安穏と暮らすほとんどのつがい達は、そのことに気づきもしなかった。 三週間が経過した。 胎生にんっしんをしたつがいからも子ゆっくりが産まれ、群れは最高に騒がしくなっている。 早くも自分の家にある備蓄を食い潰し、子供を養い切れないつがいが出始めている。 このままでは群れの中で治安の悪化が懸念されるだろう。 ドスは親ゆっくり達を再び広場に集めると、口を開いた。 「むれのみんな! たくさんのおちびちゃんをうんで、しょくりょうがたりないよね?」 広場に集まった群れのゆっくり達は、我が意を得たりとばかり騒ぎ立てる。 「んっっほおおお! そうなのよー!」 「むきゅ、さすがはどすね、よくわかってるわ」 「れいむのかわいいおちびちゃんにごはんをとってきてね! たくさんでいいよ!」 「ついでにまりさたちのごはんもなのぜ! おちびちゃんからはなれるわけにはいかないのぜ!」 少数の堅実に子を育てているつがいは、自身にとばっちりが来るのではないかと気が気ではない。 子供がいない時分から、現在ドスに向かって勝手なことを言っているゆっくり達とは話が合わなかった。 どうにも勝手すぎる言い分に辟易することが何度かあったからだ。 そういった少数の賢い個体は息を潜めて広場の趨勢を見守る。 「みんなに、うれしいおしらせがあるよ!」 ゆっくり達が固唾を呑んで見守る中、ドスは言う。 「どすのいえにおひっこし! すればいいよ! どすのいえには、たべものさんがたくさんあるよ!」 群れのゆっくり達は顔を見合わせると、満面の笑みを浮かべた。 「さっすがどすねえええ。とかいはだわあああ」 「むきゅ、どすは、けんじゃとよぶにふさわしいわ」 「れいむのかわいさなら、そのくらいとうぜんだね!」 「ゆふふ、どすはすばらしいのぜ。よくわかってるんだぜ」 そんな賞賛の声を、ドスは面白くもなさそうに見下ろしていた。 「さあ、みんな! すぐにどすのどうくつへおひっこし! するといいんだぜ!」 「とかいは!」 「むっきゅー!」 「ゆーゆーゆっくりー」 「わかるよー」 「いそぐんだぜ」 口々に喜びの言葉を発して、群れのゆっくり達は広場から去っていく。 後には、将来を考えて胎生にんっしんをした少数の親ゆっくり達が残った。 その賢い個体の中でも世話役のような立場のぱちゅりーが、言い辛そうに口を開く。 「むきゅ……どす、いったいなにをかんがえているの。ゆっくりできないわよ?」 「ぱちゅりーは、ひっこし! しないの?」 「しないわ。こどもたちには、かりをおぼえさせるひつようがあるもの」 「そのようすだと、そうこのたべものも、のこっているね?」 「むきゅ、とうぜんだわ。おとうさんと、おかあさんのいいつけどおりよ」 「そのいいつけは、こうじゃなかった?」 ドスは一旦口を閉じると、僅かの間だけ目を閉じる。 それは過去に思いを馳せるような仕草だった。 「おさのめいれいがあるまで、そうこのたべものは、たべるな」 ドスはゆっくりと、言いつけを復唱した。 ぱちゅりーはそれを聞いて驚いたように目を見開く。 「どす……そのとおりよ。どうして……」 「ぱちゅりーのりょうしんは、とってもいいゆっくりだったよ。 ドスのいいつけをまもったった んだからね」 「いいつけは、どすがあたえたものだったの?」 「そうだよ」 それは、今の群れのゆっくり達全員の親に伝えたことだった。 親から子へと受け継がれるものは等しくない。 全く同じように教えたはずなのに、情報は伝達のたびに劣化していく。 十の知識を与えて五か六しか受け継がない者もいれば、生活の中で十二にする者もいる。 今ここに残っている者は程度の差こそあれ、十の知識を受け継いだ者達だ。 受け継いだ知識を十二にするべく、日々を過ごしている者達だ。 「そして、いまこそどすは めいれい するよ。 いまからみんなには はるごもり をしてもらうよ!」 「むきゅ? ふゆごもりのように、いえのなかでじっとしているの?」 「そうだよ。どすは、あらしをよぶよ」 「あらし?」 「あらしはもう、すぐそばにいるよ。じゅんびは、ととのったんだから」 「むきゅう……くわしいことは、あとでおしえてもらえる?」 「おしえなくても、ぱちゅりーならきづけるよ。さあ、みんなおうちにもどって。 ふゆごもりみたいに、きっちり、いりぐちをしめておいてね」 ぱちゅりーはおとなしく従った。 ぱちゅりーが従えば、世話役となっているコミュニティも従った。 少数の胎生にんっしんした子ゆっくりと、その賢い両親はドスも、ぱちゅりーも信頼していたからだ。 賢いゆっくり達は、その日の午後を全て使って はるごもり の準備を終えた。 夜の森に、ドスの声が響き渡る。 「はるごもりだよ!」 森がざわめく。 「はるごもりだよ!」 闇が膨らむ。 「はるごもりだよ!」 木々の梢から影が飛び立つ。 「うー! はるごもりなんだどー!」 辺り一面から、れみりゃが飛び立つ。 「さあ、れみりゃ。ことしも はるごもり が始まったよ」 ドスの声に応えて、一体のゆっくりれみりゃが舞い降りてくる。 れみりゃはドスのお帽子の上にぽすんと着地すると、声を出す。 「うー! ことしも、ごちそうになるんだどー」 「れみりゃ、ひょうげんに、ひんがないよ。むれのおさらしく、おぜうさまらしくしてね」 「うー? よくわからないんだどー」 「どすがごちそうするわけないじゃない。むれのみんなは、うらぎれないよ」 「うー?」 「どすは、はるごもりしたから むれをおそってもむだだよ っていっただけだよ」 「うー、わざわざごくろうさまだどー」 「れみりゃのむれをあいてにすると、ちょっとだけ、いたいからね」 「しってるど! れみりゃは、ぱぱとままにやめとけっていったんだど。けっきょくばかおやはしんだんだど!」 過去にドスはれみりゃの群れに襲いかかられたことがあった。 けれど、充分に皮が厚くなったドスにとってれみりゃの攻撃は痒いものだった。 自分に向かってくるれみりゃを概ねたたき落として踏みつぶした後に、当時は子れみりゃだったこいつと出会ったのだ。 「だからどすは、ことばがつうじるなら、ことばでかいけつしたいんだよ」 「それはわかってるんだど?」 「けど、ことばがつうじなかったら、しょうがないよね。れみりゃも、むれも」 「うー! わかったんだど! どのむれにも、いうこときかないやつは、いるんだど!」 「そうだね。いってもきかないなら、しかたないよね」 「うー! うー! しかたないんだど! うっかりみつけちゃうんだど!」 れみりゃは嬉しそうにドスの帽子のつばから飛び上がったり、着地したりを繰り返す。 「どすはもうすこし、はるごもりしたことをれみりゃのむれにつたえるよ」 「たのんだど。はむかうなっていってあるんだど。けど、もしも、むかってきたら……」 ドスがその言葉を継ぐ。 「どのむれにも、いうことをきかないやつは、いるんだよ」 「うー! そのとおりだど!」 れみりゃはその言葉を最後に再び高く飛び上がる。 飛び上がりながらうー! うー! と何度も声を発した。 生き物の気配を爛々とたたえた森が一つの意志を持って動き始める。 ドスの群れの方へ。 今頃は思う存分ドスの洞窟にあった食料を食い散らかし、眠りこけているだろう群れの方へ。 れみりゃはいつも通り、眠りこけた群れのお荷物を巣へと連れ帰るだろう。 そして、じっくりいたぶりながら長い時間を掛けて食べるだろう。その間、群れの平穏は保たれる。 さて、ドスにはドスの仕事が残っている。 長れみりゃが飛び去った後にも、群れの統制を乱す我の強いれみりゃが上空を飛び回っている。 あいつらは、邪魔だ。 はるごもりを終えた群れにとって、長れみりゃのカリスマに従わないれみりゃは危険だ。 そいつらをある程度落とした頃には、長れみりゃも今日持てるだけの荷物を持って一旦引き上げるだろう。 今年も無事に、はるごもりが始まったのだ。
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・6作目です ・作者は取り立てあきですω ・HENTAIなしです。 ・よろしくおねがいします! かねてから飼いゆの二匹はおちびちゃんについて話し合っていた。 しかし飼い主のおねえさんから絶対におちびちゃんは作るな、 作ったら面倒は一切みないし餌もあげないときつく言われていた。 どうなっても知らないからねとも言われていた。 「れいむおちびちゃんがほしいよ。とてもゆっくりできるよ。」 「でもおねえさんにしかられちゃうのぜ?」 「でもでも・・!おちびちゃんはかわいいよ!おねえさんもゆっくりできるよ!」 「れいむ・・・ゆっくりきくのぜ・・・にんげんさんはようしゃをしらないのぜ・・」 「おねえさんはちがうよ!とてもゆっくりしたにんげんさんだよ!」 「おねえさんもにんげんさんなのぜ。りかいできるのぜ?」 「ゆっくりしたにんげんさんじゃなかったら、れいむたちをかいゆになんかしてくれなかったよ!」 話の内容からもわかるとおり、だぜ口調ではあるがまりさの方が賢いゆっくりだ。 それに比べてれいむのほうは餡子脳まるだしの理論を繰り広げる。 「おちびちゃんのときにすてられたれいむたちをひろってくれたんだよ!?」 「だからこそ、なのぜ。」 「ゆ?」 「だからこそ、おねえさんのいうことはきかないとゆっくりできないのぜ」 話し合いは並行線。 まりさもれいむもおちびちゃんは欲しいものの、まりさは飼い主の言いつけの方が優先、 れいむはぼせい(笑)のほうが優先している。 実りのない話し合いはおねえさんに内緒で何日か続いた。 そんなある日、おねえさんの友人が飼いゆのぱちゅりーをつれて遊びにきた。 「じゃあおねえさんたちはお話してるから、ゆっくり同士で遊んでてね」 「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」 まったりとした休日の午後、おねえさんとその友人は話に花を咲かせていた。 「ぱちゅりー!ひさしぶりだね!ゆっくりしていってね!」 「ひさびさなのぜ!ゆっくりしていってね!だぜ!」 「むきゅん!おふたりさんはなかよしなのね!ぱちぇもゆっくりするわ!」 三匹は宝物を自慢しあったり、ぱちゅりーの賢者の話(笑)をきいて感心したりしていた。 「さすがぱちゅりーだね!とてもけんじゃだよ!」 「むっきゅん!それほどでもあるわ!」 そんなこんなで遊んでいると、 「まりさー。ちょっとこっちきてー!」 「ゆ!おねえさんいまいくよ!」 最近取得したまりさの金バッチの話であろう。 だぜ口調は人間には極力控えているらしい。まりさはお姉さんたちの話の輪の中へといった。 ちなみにれいむは銀バッチも取れていない。 残されたのはぱちゅりーとれいむ。 新しく考えたおうたをぱちゅりーに披露していた。 「ゆんゆ~♪ゆんや~♪~」 歌い終わり、ゆっくりなりの礼をする。 「むきゅ!さすがれいむね!おうたがじょうずだわ!でも、なんだか『ゆんやー』は ゆっくりできないからおうたからはずしたほうがけんじゃよ!」 「ゆん!さすがぱちゅりーだね!ゆっくりりかいしたよ!」 おうたも終わり、ぱちゅりーにすりよっていくれいむ。 「む!むきゅ!?どうしたのれいむ!ち、ちかいわ!ぱちぇ、そんなきは・・!!」 「ゆん!ごかいしないでね!ないしょのおはなしだよ!」 「む、むきゅ・・!ぱちぇのはやとちりさんね。れいむどうしたの?」 「ゆっくりきいてね・・・れいむおちびちゃんがほしいよ・・・」 「む!むきゅ・・!ぱちぇは!こころのじゅんびが!!!」 「だからちがうよ!ぱちゅりーとのおちびちゃんじゃないよ!」 「むっきゅー!ごめんなさいね!とりみだしてしまったわ!」 「ゆん。わかればいいんだよ・・・おちびちゃんがほしいんだよ・・・ でもおねえさんはおちびちゃんはきんししてるんだよ・・」 「おちびちゃんがもしできたらどうなるのかしら?」 「ごはんさんがもらえなくなるんだよ。れいむたちはかいゆだから、 かりはできないんだよ。だからたいへんさんになるんだよ・・・」 「むきゅ・・・それはいちだいじね。おちびちゃんはあきらめるっていう せんたくしはないのかしら? 「ゆ!れいむはれいむだよ!おちびちゃんがいるととてもゆっくりできるんだよ!」 なんだか理屈ではないらしい。れいむ種ならではのいいわけである。 「・・・・むきゅ・・さんこうになるかわからないけれど・・・」 ・ ・ ・ 楽しかったティータイムも夕方前には終わった。 「それじゃーまたねー!ぱちゅりーもまたね!ほら、れいむとまりさも挨拶して」 「ゆん!ゆっくりまたこんどね!」 「たのしかったのぜ!ぱちゅりーまたくるといいのぜ!」 「むきゅ!またこんどゆっくりあそびにくるわ!」 その後二匹はいつもどおりおねえさんにごはんをもらい、ゆっくりした夜をすごしていた。 「ゆん!おねえさんそろそろれいむたちはすーやすーやするよ!」 「ゆっくりおやすみなさい!おねーさん!」 「そうね。そろそろおねえさんも寝るわ。ふたりともおやすみなさい」 おねえさんは自分の寝室へとはいって行った。 そして二匹は自分たちのゆっくりハウスへとはいっていった。 「ゆぅぅ~!まりさ!おねえさんにないしょですっきりー!しちゃおうよぉぉ~!」 「ゆん!れいむなにをいっているのぜ?まえにもはなしたとおりだぜ!」 いきなり色目を使いだすれいむをしり目に、冷静なまりさ。 「だいじょうぶなんだよ!おちびちゃんがいてもごはんさんもらえるんだよ!」 「そんなわけないのぜ!おねえさんからそんなことはいわれてないのぜ!?」 「ゆっふっふ!まりさはなにもしらないんだよ!いまはとてもゆっくりできるじだいなんだよ!」 「なにをいっているかわからないのぜ!とにかく!まりさはそんなことしないのぜ!」 「ゆぅぅ~!まりさはつんでれなんだね!どうっていっ!さんなんだね!」 「ゆ!な!なにをいっているのぜ!そんなことはなしてないのぜ!」 「ゆぅ!れいむがゆっくりふでおろしっ!してあげるよぉぉぉ!!!!」 「もういいのぜ!まりさはゆっくりすーやすーやたいむに・・・ ・・ゆんやぁぁぁ!!!!やめるのぜぇぇぇぇ!!!!ゆあぁぁぁ・・・!!!」 ・ ・ 運動能力ではれいむにまさるまりさだが、れいむの勢いに押されてしまった。 すーやすーやしようと思い後ろを向いたときに不意を突かれてしまったのだ。 一度火がついたものは止められない。悲しいかなゆっくりの本能がそうさせてしまった。 「「すっきりー!!!」」 れいむに押し倒される形ですっきりしてしまったのだった。 れいむのぼせい(笑)が強いせいか、茎はれいむの額に伸びていった。 実ゆが3匹なっていた。 「ゆぅぅぅ!!!!やっぱりおちびちゃんはかわいいよぉぉぉ!!!」 「ゆぅ!なんだかよごされたきぶんなのぜぇ・・・!」 少し涙ぐんでいるまりさを横に、すっかりおちびちゃんに夢中のれいむ。 「ゆわぁぁぁ!おちびはゆっくりできないのぜぇ!!!おねえさんにしかられるのぜぇ!?」 「ゆん!まりさはおちびちゃんがかわいくないの!?ばかなの!?しぬの!?」 「そ、そんなことはないんだぜ!おちびはゆっくりできるのぜ!で、でもぉぉ!!!」 「だいじょうぶなんだよ!まりさはしんぱいっ!しないでね!れいむはつかれたから すーやすーやするよ!まりさもゆっくりおやすみなさい!」 「ゆぅぅ・・・。こまったのぜ・・・おねえさん・・・ごめんなさいなのぜ・・・」 そんなこんなで二匹は眠りについた。 次の日・・・ まりさは悩みの種が横にいるせいかゆっくり眠ることができなかった。 「おねえさんにしょうじきにはなしたほうがいいのぜ・・・」 ぐーすか寝ているれいむをおいておねえさんが朝ごはんの支度をしているところへいった。 「・・・おねえさん・・・ゆっくりおはよう・・・」 「あらまりさ。おはよう。今日は早いのね。お休みなんだしゆっくり寝ていいのよ?」 「おねえさん・・ゆっくりできないそうだんがあるのぜ・・・」 「まりさ?どうしたの???」 おちびちゃんの話を切り出そうとしたとき、背後から 「ゆん!ゆっくりおはようだよ!!!」 元気に額から茎を伸ばしたれいむが挨拶をしてきた。 「・・・!!!!!!・・・何・・・それ・・・!!!!」 おもわず絶句するおねえさんだった。 「お!おねえさん!まりさのはなしをきいてほしいのぜ!!ゆ!ほしいんだよ!」 あわてておねえさんにだぜ口調を使ってしまうまりさ。 「ゆん!おねえさんもまりさもゆっくりれいむのはなしをきいてね!」 なんだか自信たっぷりのれいむ。 あわあわしているまりさ。 状況がつかめないおねえさん。 「れいむ!おはなしどころじゃないのぜ!お、おねえさん!まりさはいやいやさんしたんだぜ! なのに!なのにれいむがぁぁぁ!!ごべんなだいぃぃ!!!」 どうしていいのかわからず、まりさは泣き出してしまった。 「ゆふん!ちちおやのくせになさけないね!れいむはしんぐるまざーになってでも、 おちびちゃんたちとゆっくりするよ!てだすけはいらないよ!」 おねえさんも冷静さを取り戻し少し考えてみた。 まりさはれいむよりも賢いことはわかっている。 おねえさんにも誠実だ。問題はれいむだ。 「まりさ・・・。よしよし、こっちおいで」 「ぉぉねえさぁあん!!!うわぁぁーん!」 まりさはおねえさんの膝のうえでゆんゆん泣いていた。 金髪をゆっくりと撫でながらまりさを慰めるおねえさん。 「えーっと。れいむ。正直に答えてね。どうしておちびちゃんつくったの?」 「ゆん!おねーさんにめいわくはかけないよ!」 「・・・そうじゃなくて。ごはんさんあげないっていったよね?忘れたの?」 「ゆふふ!おねーさんからごはんはもういらないよ!」 「・・・野良になるの?自分で狩りするの?」 「そうだぜ!れいむはかりなんかできっこないのぜ!」 、 「おちびちゃんてあてがあるんだよ!!!」 れいむはキリッとした顔でそう言い放った。 「・・・は????」 「ゆ・・・????」 一瞬空気が凍りついた。時が止まった。スタンド使いはここにはいない。 理解できないおねえさんとまりさを見て、れいむはあのムカツク表情で話し始めた。 「せいけんっこうたいっ!があってはとぽっぽさんがやまからきたんだよ! それでおちびちゃんてあてがもらえるんだよ!れいむはかしこいからしってるんだよ!」 「ゆぅぅ!!!いみふめいなのぜぇぇ!めをさますんだぜぇぇ!」 「ゆん!なさけないちちおやはだまっててね!まりさがしゃべるとたいきょうっ!にわるいよ! ぐずなちちおやはえいえんにゆっくりしたことにするよ!おちびちゃんにはそうおしえるよ!」 「・・・・んーっと。れいむ。じゃあご飯はおねえさんからいらないのね?」 「しつこいおねーさんはきらいだよ!いらないよ!ゆん!」 「おねえさん・・・まりさは・・・まりさは・・・」 「いいのよまりさ。大丈夫。なんとなくわかってきたから。まりさは今まで通りでいいのよ・・・」 「ゆん・・・もうれいむにはついていけないのぜ・・・」 まりさはれいむに愛想を尽かしたようだった。 れいむは馬鹿だがまりさにとってはとても大事なゆっくりだった。 しかし、かってにすっきりされた揚句ぐずなど罵られ、もうどうでもよくなっていた。 その日を境にれいむとまりさは別居をした。 おねえさんはまりさのために別のゆっくりハウスを用意したのだ。 餌入れにも『まりさ』と書いたものを用意した。 れいむはというとおうちの中でのんきにお歌を歌っていた。 「ゆんゆ~♪ゆっくりうまれてね~♪」 おうちの外からはおねえさんとまりさの遊ぶ声が聞こえる。 「そうよ!じょうずよまりさ!」 「ゆん!まりさはがんばるよ!ゆん!ゆぁぁ!」 ボールを転がして遊んでいるようだ。 「もぉ。まりさはボール遊びが好きね」 「ゆ!おねーさんにもらったたからものだよ!おねーさんゆっくりありがとぉ!」 「そんなに何回も言わなくていいのよ~。そんないい子のまりさに・・・!じゃーん!」 「ゆ!ゆわぁぁぁ!!!きれーなのぜ!!!こ、これもらってもいいの?」 中にきらきらしたものが入ったスーパーボールをあげるおねえさん。 「ゆわぁぁぁ!!!すごくゆっくりしてるね!おねーさん!たからものありがとぉ!!!!」 そんな楽しそうな声をきいてれいむは 「ゆふん!おちびちゃんはゆっくりできるのにね!ぜんぜんうらやましくないよ! げすなちちおやなんかいらないよ!ゆんゆ~♪」 などとのたまっていた。 おねえさんは冷静だった。れいむが予想以上に馬鹿だったのはびっくりした。 れいむの行く末を手助けはしないが見守るつもりだった。 しかしおねえさんも鬼ではない。 どうしてもご飯が欲しくて、きちんと謝りさえすれば里親でも探してやろう、 馬鹿れいむの子とはいえ、父親は金バッチまりさだ。 貰い手は見つかるかもしれない。などと考えていた。 その夜、もはや生まれ落ちようとしていた。 飼いゆで初めての子ということもあり、栄養状態がいいのかもう実ゆがふるふる震えていた。 おねえさんは遠目かられいむの初出産をみている。 「ゆん!ゆっくりうまれてね!」 うるうるした目で感動しているれいむ。ぽとりと生まれ落ちる実ゆ。 「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!!!」」」 「ゆぅぅぅ!!!!かわいいよぉぉぉ!!!おちびちゃんままだよ!ゆっくりしていってね!」 「ゆぅぅ!みゃみゃ!ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!!・・・ぴゃぴゃは・・・???」 「ゆん!げすなちちおやはえいえんにゆっくりしたんだよ!ままはしんぐるまざーだよ!」 「しょーにゃにょ・・?」「あちょこにいりゅまりちゃは・・?」 不思議そうに首(?)をかしげる赤ゆ。 「ゆん!あれはあかのたゆんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「ゆぅぅ?りきゃいしちゃよぉぉ・・・。」ふに落ちてない赤ゆはまりさ種だ。 「ゆん!りきゃいしちゃよ!」何も疑問に思わないのはれいむ種。そのまま餡子が遺伝したようだった。 「ゆん!おちびちゃんたち!くきさんをむーしゃむーしゃしてね!」 「「「すーぱーむーちゃむーちゃたいみゅだよ!!」」」 赤ゆにごはんをあげてれいむは辺りを見回した。 「ゆふぅ~。れいむもつかれたよぉ!・・・きょーろきょーろ」 何度も周りを確認する。 「どおしててあてさんがきてないのぉぉぉぉ!!!!!????」 れいむは赤ゆを産めばおちびちゃんてあてなるものが届けられると餡子脳で思い込んでいた。 「ゆぅぅ・・・あしたなのかもしれないよぉ。きょうはあきらめてすーやすーやするよ・・・」 れいむ一家は眠りについた。 次の日も手当てなるごはんは当然ない。 「どぼじでぇぇぇぇ!!!!!!!」 「ゆぅ?みゃみゃゆっきゅりしちぇにゃいよぉ?」 「ゆ!おちびちゃんはだまっててね!ままはいーらいーらしてるんだよ! しんぐるまざーはたいへんなんだよ!はとぽっぽさんがおそいんだよ!」 まったく意味がわからない赤ゆはれいむの様子が尋常じゃないのでびくびくするばかりだ。 「・・・ゆ!!!!!・・・わかったよ!!!!」 れいむは自分のおうちをでて、まりさのおうちの前に立った。 今日はおねーさんはお仕事で朝早く出かけて行った。 れいむたちは寝ていたが、まりさはおねーさんにいってらっしゃいをして二度寝に入っていたのだ。 「ゆわ~。まだねむたいのぜぇ・・・なんなのぜ・・・ぶぎゃ!!!!!」 寝ぼけ半分で出てきたまりさにれいむが体当たりを食らわせたのだ。 「ゆぅぅ!!!このげすゆっくり!!!!おてあてさんをとったね!!!」 「ゆぅぅ!いたいのぜ・・!それになんのことなのぜ!???」 「どろぼうをするゆっくりはせいっさいっ!だよ!!!!」 「ゆわぁぁぁ!!!!!」 れいむはいつまでたっても来ない手当てをおかしいと思い、だした結論がまりさが盗んだということだった。 その状況を、おうちの陰から赤ゆのぞいていた。 「や、やめるのぜぇ!なんなのぜぇ!!!!」 「うるさいっ!!!はじめからせいっさいっ!しておけばよかったよ!!!!」 「ゆんやぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 またしても不意をつかれたまりさ。あんよがいうことをきかない。 「はやくおてあてさんをかえすんだよ!そうしたられいむもゆるすかもしれないよ!」 「なんなのぜ!それはなんなのぜぇ!」 「はとぽっぽさんだよ!ゆ!これだね!!!!むーしゃむーしゃ!!!!」 「まりさのごはんさんがぁぁぁ!!!」 『まりさ』と書かれた餌入れのごはんさんをすごい勢いで食べつくすれいむ。 「ゆふん!やっぱりとってたんだね!!!げすなゆっくりはこうしてやるよ!!!」 そう言い放ち、渾身の体当たりをかますれいむ。 「ゆげぇぇぇ!!!」 餡子を少し戻してしまったまりさはぐったりとしてしまった。 「ゆっふっふ!げすなまりさはれいむのうんうんでもたべるといいよ! すーぱーうんうんたいむだよ!!!!!」 「ゆ!みゃみゃはさいきょー!にゃんだにぇ!りぇいみゅもかちぇーしゅりゅよ!!」 「ゆん!さすがれいむのおちびちゃんだよ!いっしょにいくよ!」 「「すっきりー!!!」」 まりさはうんうんにまみれてしまった。 「ゆぅぅぅ!!!くさいぃぃぃー!!!!!ゆげぇぇぇ!!!!」 「おぉあわれあわれ!」 「おぉあわりぇあわりぇ!」 れいむと赤れいむはどや顔だった。 「ゆぅう・・・にゃんだかゆっきゅりできにゃいんだじぇ・・・」 赤まりさは加勢しなかった。 「ゆん!きょうのところはこれでゆるしてあげるよ!れいむはこそだてでいそがしいからね!」 そういってれいむ親子は引き返して行った。 「ゆん!おちびちゃんたち!すーやすーやたいむだよ!」 「ゆー!」 れいむ親子はお昼寝を始めるのだった。 まりさは虫の息だ。 「ゆぅぅ・・・もぉ・・・えいえんにゆっくりしそうなのぜ・・・」 大げさではあるがダメージは大きいのも確かである。 「ゅぅぅ。こーしょこーしょ。・・・だいじょうびゅなのじぇ?」 赤まりさが心配して様子を見に来たのだ。 「にゃんだきゃゆっきゅりできにゃかっちゃのじぇ・・・おみじゅ・・あげりゅのじぇ・・」 二匹の赤まりさは小さい体で動けないまりさのところまで水が入った器を押してきたのだ。 「ゆうぅぅぅ!!!!お、おちびちゃんたちぃぃぃ!!!!!」 まりさは感動していた。事故のようなもので出来たおちびとはいえ、かわいいのは当たり前だ。 ましてや自分のことを心配してくれているなんて。 砂糖水の涙が止まらなかった。 ガチャガチャ そうしているうちにドアのカギを回す音が聞こえてきた。 「ただいまーまりさー!今日は早くお仕事おわったからおやつ一緒に・・・」 そう言いかけておねえさんはケーキの箱を床に落としてしまった。 「まりさ!!!!」駆け寄るおねえさん。 「ゆぅぅ!!!おねーさんー!!!!ゆわぁぁぁぁぁん!!!!」 「なにがあったの!?」 「れいむが!れいむがぁぁぁ!!!!はとぽっぽがなんとかってぇぇ!」 そう言いかけたところで、 「ゆん!おねーさんはてだししないでね!げすはせいっさいっ!されてとうぜんだよ!」 「げすなんかじゃないのぜぇぇ!!!」 「おねーさんゆっくりきいてね!はとぽっぽさんのおてあてさんをげすがとったんだよ! せいとーぼーえいっ!だよ!かわいそうなのはれいむだよ!」 「みゃみゃはちゅよいんだにぇ!げしゅはゆっきゅりちんでにぇ!」 まりさは泣くばかりで話にならない。 「まりさが何か取ったってこと?」 「そーだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「正当防衛って・・まりさがなにかしかけたの?」 「ゆん!そーゆーことだよ!」 餡子脳で都合がいいように変換されているらしい。 「ゆ!なにをいってるのぜぇぇ!」 「おちびちゃんたちもままのみかたしてね!」 「みゃみゃはちゅよかっちゃよ!げしゅをしぇーしゃいしちゃよ!」 赤れいむは興奮した様子で話した。 「・・・ゆぅ!おにぇーしゃん・・!」 ちびまりさがキリッとしたいい顔でおねーさんを見据えた。 「ゆ!れいむのおちびちゃん!」 れいむはおちびちゃんがまた加勢してくれるとおもい、きらきらした目で見ていた。 「・・・いきにゃりこのおじしゃんをみゃみゃがしぇーしゃいしたのじぇ・・」 「なにをいってるのぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」 「しょれじぇ、うんうんをおじしゃんにかけちゃのじぇ」 「どぼじでぞんなごとゆぅのぉぉぉ!? ・・・わかったよ!まりさににてげすなんだね!ままがせいっさいっ!してあげるよ!かんしゃしてね!」 とびかかるれいむ。 「ゆっくりしんで・・ぶぎゅぁ!」 その瞬間、おねーさんのコークスクリューがれいむにクリーンヒットした。 「どぼじでぇぇぇぇ!!???」 おねえさんはニコニコしていた。 「お、おねーさん・・・?れいむ・・ゆぎゃ!」 右・左とおねーさんはリズムよくパンチを繰り出す。 「うふふ♪いいかげんにしなさいよ?」 言葉とは裏腹にボスッボスッドスッっといいパンチの音が繰り返される。 おねえさんはぐったりしたれいむの頭をアイアンクローよろしく片手でつかんだ。 「まりさ?絶対にのぞかないでね?約束よ?」 「ゆ!ゆ!ゆっくりりかいしたよぉ!!!!!」少し震えながら答えるまりさだった。 「そうそう、あんたも一緒にきなさい」 「おしょりゃをちょんじぇるみちゃいー!」のんきな赤れいむとれいむは隣の部屋へもっていかれた。 隣のへやからおねえさんの笑い声が聞こえる・・・ まりさはぶるぶると震えながら 「ぉ、おちびちゃんたち!ゆっくりしないでおみみ(?)をふさぐんだぜ!!!」 「「ゆ!りきゃいしちゃよ!」」 おねえさんはやけにすっきりした顔で部屋をでてきた。 「ゆ!お、おねぇさん・・・れ、れいむ・・・は・・・」 「あらまりさ。このおうちにはまりさ達しかいないわよね?」 「れ、れい・・」 「まりさたちだけよねぇ???」 「ゆ、ゆん!ま、まりさたちだけだよぉ!」 「よろしい。」おねえさんはにこにこ笑っている。 いつもはやさしいおねえさんだが、人間さんにはかわりない。 怒らせるとゆっくりなどはゴミのようなものだ。 まりさは改めて思い知らされるのであった。 おねえさんの温情によりちびまりさは飼いゆになった。 父ゆずりの誠実さと賢さが功を奏したのであろう。 おねえさんはその後まりさ達の前では鬼神となることはなかった。 「おちびたち!おとーさんところころするよ!」 「「ゆん!こーろこーろ!!」」 その後、親子だということもおちびたちは理解し、仲睦まじくしている。 「なーんてことがあったのよー。」 「そっかー。それは大変だったね・・・」 おねえさんの友人がまたぱちゅりーをつれてあそびにきていた。 テーブルの下でその話をすべて聞いていたぱちゅりーは生きた心地がしなかった。 ちなみにあのれいむ親子は、秘密の趣味ができてしまったおねえさんの サンドバッグとして開かずの間にひっそりと生きている・・・・。 アトガキ 予想以上に長くなってしまいました(私としては) 読みにくくなかったでしょうか? 落ちをつけることってむずかしいなとおもいます。 過去に書いたもの anko1396 しゃっきんさん anko1427 しゃっきんさん その後。 anko1439 むしゃくしゃさん anko1445 おりぼんさん anko1470 しんぐるまざーって大変だね!
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町人Aの憂鬱 ~森の中の切れ込みまりさ~ 51KB 町人Aの憂鬱 【前書き】 初投稿。 幻想郷が舞台です。そこに住む"町人A"の物語。 ゆっくりは割と標準設定に準拠ですが、ドスの設定が標準(?)と違います。(主にサイズ) 原作キャラがチョイ役で出てきます。 幻想郷の人里。 ここにAという名の男が居る。 歳は25、背丈は高く無愛想。 村はずれで果樹園と家庭菜園を営んでいる、農家である。 季節は秋の暮れ、初冬。 今年も男に仕事が舞い込んできた。 男は愛用のスコップを担ぎ、河童から買ったリュックを背負って山に行く。 それにしても今年は何だか憂鬱だ。 男はだるそうに山に入って行った。 Title 町人Aの憂鬱 ~森の中の切れ込みまりさ~ Author 旅人あき ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「Aは居るかい?」 白髪の老人が今年もやって来た。 見ると片腕が無い。珍しい人型だ。そんな人型を俺は一人知っている。 「じいさんか?何か用か?」 Aは無愛想に答える。 「何だ生きてたのか。ああ、今年も副業を頼みに来た」 「毎回言ってる気がするが、前置きがおかしくないか?」 先月顔を合わせたし、寿命はお前が先だろう、と思いながらも年寄りの話を聞き出した。 「そろそろ冬だから、森のゆっくり共を間引きして欲しいんだ」 そう、これがAの副業だ。 田畑を食い荒らす害獣であるゆっくりを、適正数まで間引く。 ゆっくりは数が増えると森から人里まで下りてくる。それが農家達の被害に繋がる訳だ。 だからこの農家達の元締めのじいさんが、有志や"そうで無い者"に依頼を行う。 畑に近い森に住むゆっくりを間引き、降りてこない様にする。 俺はじいさんに借りがあるから断われはしない。良い計算だ。 「まぁ別に構わんけどな」 「それは俺のセリフだ・・・」 このジジイは主語を抜く。略したのは"断わっても"だろう。 俺も主語を抜く。略したのは"受けても"。 時に無愛想に見える事もあるらしいが、気にしない。 日本語は美しい。 「で、報酬は?」 「米や味噌だ。お前の農園じゃ足りんだろう」 「ああ、それで良い」 これは毎年同じだ。俺の生活を把握している。だからまぁ農家の大将なんかやってられるんだが。 これで冬も寝て過ごせそうだ、と思っていたら後ろから誰か来た。 緑髪の女性で、巫女服を着ている。 「どちら様で?」 「初めまして。新しくこちらに越してきた守矢神社の者です」 そういえば妖怪の山に神社が出来た噂を聞いていた。 そこの巫女さんなんだろうか。変な髪飾りをしている。 「こちらがゆっくり仕置人のAです」 ジジイからの素敵な紹介を預かった俺を、守矢の使者はジロジロと見ている。なかなか可愛いと思う。 段々話が読めてきた。ジジイが連れて来たな。こんな村はずれに来るはずが無い。 「実は今日はAさんの家にも分社を建てて欲しくてお願いに来ました。守矢神社では2人の神を祭っており・・・」 なんか良く分からんが御利益の話を始め出した。面倒なのでああ良いですよと生返事をする。可愛いから許す。 「本当ですか?有難う御座います。機会があれば是非本社にお越しください」 「ああ、機会があればね」 「所で質問なんですが、ゆっくりを間引くというのはいつもしているんですか?」 「いや、秋と春だけしかやってないな」 「時間が掛かる物なんですか?」 「さぁなぁ、他は知らないが俺は1日で済ますから、そのぐらいじゃないかな」 「その日限りなんですか?」 「そうなるな」 「なるほど・・」 気のせいか緑巫女は俺を見下す様な憐れむ様な目で見初め 「つまりAさんは、"日雇い"さんなんですね(ニコッ)」 後で寺子屋の先生に聞いたが、日雇いというのは外の世界の蔑称らしい。思い出してもあの笑顔に腹が立つ。 あの巫女はいつか泣いたり笑ったりゆっくり出来なくしてやる。もとい○す。犯○。 だが俺は凡人。ただの町人。聞けば現人神な巫女に敵うはずは無い。 いっそ分社の前で祈ってみようか。願いが叶うかも知れない。 俺が今日憂鬱なのは、これが原因なのだ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ リュックを背負って山に入ったAは、紅葉が落ち始めた森を散策していた。 外の人間が忘れた森の原風景。紅葉落ちる終わりの秋。美しい。 だが今日探すのは景色では無く、ゆっくりの群れである。 村では秋と冬にゆっくりを間引いているが、これには理由がある。 ゆっくりは冬は穴や洞窟に籠る。籠ってその中で越冬をする。 冬の寒さに耐えれないからだ。 故に秋は越冬のための食糧を集める。つまり外に出ている時間が長い。見つけやすい訳だ。 また春も同様である。越冬を経て飢えているゆっくり達は、ここぞとばかりに餌を探しに行く。 秋と春は『狩り時』という訳だ。 森に入って30分、そうこうしている内に数匹のゆっくりれいむを見つけた。 もみじ色の落ち葉が多く木々が邪魔で見えにくいが、その中で動く肌色の物などゆっくりしかいない。 どうやら例年通り餌を探している様だ。近くに寄って行く。 「ゆ!? おきゃーしゃん!」 「ゆゆ? どうしたのおちびちゃん」 「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがいりゅよ!!」 赤ゆっくりが気付いた様だ。親れいむもこちらに気付いた。 「「「にんげんしゃん!! ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」 赤れいむ3、親れいむ1か。 まぁ個体数はどうでも良い。れいむ達に確認する。 「お前ら何してるんだ?」 「ゆゆ!? れいむちゃちは"かり"をしちぇるんだよ!」 「ふゆごもりにはくしゃしゃんがいっぴゃいいるんだよ!」 「おかあしゃんはかりのめいじんなんだよ!」 「ゆ! にんげんさんはあまあまをちょうだいね!! れいむたちはかわいそうなんだよ!! むのうなにんげんさんだね!!」 最後のは親れいむだ。ああ良いだろう。 警戒心の無い親を持って哀れだな。 リュックサックを地面に置いて中に手を入れ、巾着袋を取り出す。 「よし あまあまをやろう」 干しぶどうを数個袋から取りだし、ゆっくりたちの前に撒く。 ゆっくりは見たこともない物を目にし、固まっている。 食い付かない所を不審に思っていると 「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがあまあまをくれちゃよ!」 「ゆあああ! おちびちゃんだめぇぇぇぇぇぇ!! どくかもしれないでしょうぉぉぉぉ! いつもいってるでしょぉぉぉぉぉ! おかあさんがどくみするからゆっくりまっててね!!」 前言撤回だ。警戒心はあるらしい。人間が怖くないだけか。 地面の一粒を舌ですくい、咀嚼する親れいむ。 「むーしゃむーしゃ・・・ゆああ~~~~・・・ このまめさんとってもおいしいよ!!! うめ!! めっちゃうめ!!!」 うっとりしたと思ったら突然がっつきだす親れいむ。地面に落ちてた数個の干しぶどうを全て頬張る。 嫌悪感が全開で叩き潰したい衝動に駆られる。 この親れいむは全て食べやがったのだ。子供に残さずに。 「おきゃーしゃん・・・ れいむのぶんは?」 「おきゃーしゃんがじぇんぶたべちゃった」 「ゆゆ!? ごめんねおちびちゃんたち・・・おいしくてついぜんぶたべちゃったよ」 「おきゃーしゃんのびゃきゃぁぁぁぁぁ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」 「おきゃーしゃんだけじゅるいぃぃぃぃ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」 「ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! おきゃーしゃんのくじゅぅぅ!! くじゅはしねぇぇぇ!!」 「どぼじでぞんなごどいぶのぉぉぉぉぉぉ!!! みんなのおがあざんでしょおおおおおおお!!!」 目の前で泣き喚きだすゆっくり共。私利私欲、雑言罵倒。 俺はこの光景を見ていつも思う。ゆっくりは神が作った人間の汚い部分の寄せ集めなんじゃないかと。 赤ゆに至ってはしーしーまでして悔しさを表している。人間の赤ん坊でもここまで醜悪じゃない。 地獄の縮図の様な光景を見て、毎度内心辟易する。 そんな中、俺は例年通り話を進める。 「泣くなゆっくり。まだ袋に一杯ある」 「ゆああ!! にんげんさんははやくおちびちゃんたちにあまあまをちょうだいね!! あとれいむにもちょうだいね!! ゆっくりしないではやくしてね!!」 「だが俺にも用がある。お前らが俺のお願いを聞いてくれたらな」 「おねがいをきくからはやくちょうだいね!!」 「約束は破るなよ。俺は鬼じゃないが約束を破る奴は嫌いだ」 そう言って袋の中から更に何個か取りだし、ゆっくり達に撒く。 それを見て親れいむと赤ゆ共は"まめ"を食い出す。 「ゆあああ!! おちびちゃん!! あまあまだよ!! ゆっくりたべてね!! おかあさんにもちょうだいね!!」 「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」 干しぶどうなんか自然界に無い。普段虫や草を食ってるこいつらからしたらかなりのあまあまなんだろう。 赤ゆに至ってはうれしーしーをしている。潰したい。 もっととねだる馬鹿共を見て、ようやく本題に入る。ここまで仕込むのが大変だ。 俺に懐柔させるのが。 「そんじゃお願いを聞いてもらおうか」 「ゆゆ! なんでもいってねにんげんさん!!」 「じつはこの大きな袋(リュックサック)にはお野菜さんが入っててね。 クズ野菜で要らないから捨てる所を探してるんだ。 お前達の群れにやるから群れに案内してくれ」 「ゆゆ! そんなことならかんたんだよ!! れいむのむれにあんないするよ!! おやさいさんをくれるなんてにんげんさんはとってもゆっくりしてるね!!」 「ただ条件が有ってな。 ドスが居る大きな群れを探してるんだ。 お前の群れにドスは居るか?」 「れいむのむれにはドスがいるよ!! あんないするからおやさいさんとあまあまをちょうだいね!!」 「よし案内してくれ」 俺の言葉尻がおかしい事に気付かない。面倒で雑になってしまったんだが、所詮餡子だ。 ぽよんぽよんと奇妙な音を出しながら跳ねて行く親れいむと赤ゆ共。 さて、いよいよ大詰めだ。 俺はこの重いリュックサックから解放される事を想像し、顔が緩んだ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 親れいむの後に続く赤ゆ達。その後に続く俺。 ガサガサと落ち葉を踏み敷く音がしていく。 が、何か音がおかしい。音が多い。 気配を感じ、後ろを振り向く。 「ゆぐ!!」 振り向くとそこにはゆっくりまりさが居た。 身体はデカイ。親だな。 帽子は膨らんでおり、どうやら餌が詰まっている用だ。 俺に見つかったまりさは俺の横をぴょんぴょんと急いで素通りし、先頭の親れいむを呼びとめる。 「れいむ!」 「ゆ?」 「「「おとーしゃん!」」」 親れいむの番の様だ。 「ゆゆ! どうしたのおとうさん」 「どうしたのじゃないのぜ! なんでにんげんさんといっしょにいるんだぜ!」 「このにんげんさんはあまあまさんをくれるんだよ! れいむのどれいなんだよ!!」 なるほどそういう認識か。これで憐れむ気もしなくて済む。 それにしてもこれはだぜまりさか。珍しい。 「なにいってるんだぜ! にんげんさんはどれいになんかならないのぜ! ぎゃくにえいえんにゆっくりされちゃうんだぜ! さっきのあまあまだってなにかのわななんだぜ!!」 どこかから覗いていたのか。それも最初の方から。 番のれいむが危ないというのに観察とは、ゲスなのかも知れないな。 だが頭は良い様だ。多少のゲス性は生きる上では必要だしな。 「まりさはしんぱいしょうだね! れいむはゆっくりしていてつよいんだよ! にんげんさんはゆっくりできないくずだからよわいんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむのほうこそゆっくりりかいするんだぜ! それにこっちはむれのほうがくなんだぜ! どすにおこられるぜ!」 「ゆうう!!! れいむおこるよ! にんげんさんはおやさいさんをくれるからつれていくんだよ!! どすもれいむにかんしゃするにきまってるよ!! これでれいむもむれのじゅうやくいりだよ!!!」 群れの重役か。 お花畑もここまで来ると羨ましい。このまりさに同情するよ。 「れいむはばかなんだぜ! どうなってもしらないのぜ!」 「まりさはばかだね! こんなおとーさんはいらないよ!」 「「「おとうしゃんはいりゃにゃいよ☆」」」 赤ゆの反応に驚いた。複雑な家庭の様だ。 結局親まりさが折れる形で、群れへの帰路に就いた。 俺に対してずっと警戒しているのか、一定の距離を保っているのは殊勝だ。 歩く事20分。 といってもゆっくりの速度だから、たいして離れていない。 どうやら群れに付いた様だ。 森の中、紅葉とその落ち葉が景色を覆っているが所々ゆっくりが見える。 親れいむに群れの中心まで案内させ、そこにリュックサックを置いて座り込み一息付いた。 中心は大きな木の様で、そこに続々と群れのゆっくり共が集まってくる。 また撒き餌の出番だ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「ゆゆ!むれについたよにんげんさん! はやくあまあまちょうだいね!!」 「「「ちょうだいにぇ!!」」」 クソ共が騒ぐ。野菜の事はもう頭に無いらしい。巾着袋からまた数個取りだし、その辺に撒く。 そうこうしているうちにゆっくり同士で会話が始まった。 「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」 「むーしゃむーしゃ、しあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「むきゅ、これはいったいどういうこと?」 「みてのとおりなんだぜ。れいむがにんげんさんをむれにつれてきたんだぜ」 「このにんげんさんはとかいはなの?」 「むきゅきゅ、にんげんさんはゆっくりできないっていったのに」 「なんでもおやさいさんをくれるらしいぜ」 「そうだよ!このどれいはおやさいさんをくれるからつれてきたんだよ!! れいむのおかげだよ!! これでれいむもむれのじゅうやくいりだね!!」 「「「おきゃーしゃんはえりゃいんだにぇ!! きゃわいきゅちぇごめんにぇ!!」」」 「むきゅう、あたまがいたくなってきたわ。にんげんさんはほんとうにおやさいさんをくれるの?」 「もりではおやさいさんはほとんどみないから、とかいはとしてはたべてみたいわ」 ああそうだろうよ。ただ中には野菜をたらふく食ったゆっくりもいるだろうが。 さて、そろそろ本題に入ろう。 「ああ、お前らに野菜をやるよ。ただ条件がある」 「むきゅ」 「じょうけん?」 「群れの数を確認したいから、全員を集めてくれ。当然ドスもな。 家にまだ野菜があるから、それを群れの数だけ持って来てやるかも知れん」 「むきゅ、おやさいさんはにんげんさんにとってもだいじなんでしょう? どうしてわたしたちにくれるの?」 「人間が食べない様なクズ野菜だからだ。色が悪いとか、形が悪いとか。"食い残し"とか。 お前らなら食べるだろう。 このリュックサックに入ってるんだ」 「むきゅう、なるほどわかったわ。 いまはふゆごもりまえだからしょくりょうがほしいし、みんなをあつめるわ。 にんげんさん、ありがとう」 「おやさいさんはどんなあじなのかしら」 有難うか。確かに現世は地獄だしな。 森の重役らしいゆっくりぱちゅりーが群れの巣を周っている。 当然その位置を把握する。 ぞろぞろとゆっくりが集まってくる。 「とかいはのありすはぜんしゅるいたべたいわ」 「わかるよー、おやさいさんはゆっくりできるんだねー」 「おやさいさんがてにはいるのはたすかるみょん」 「むきゅ、にんげんさんみんなをよんできたわ」 ぱちゅりーに狩りに出ている奴がいないかを確認した所、今日はまりさ達のみだったらしい。 きけば今日は群れの全ゆっくりの休息日らしい。まりさの家は子供が多いため今日も出ていたそうだ。 ゆっくりにも休息日があるのに驚いた。作ったのはぱちゅ種だろう。 ざっと見渡して数は成体が40匹程。細かいのを入れれば100匹か。赤ゆ子ゆ親ゆの混成。上出来だ。 恐らくすっきり制限をしている群れだな。成体が多い。 「よし、それじゃあお野菜さんを渡す。 ただ一つお願いがある。 食べた事のある野菜があれば、それを教えてほしい。」 「むきゅ? どうしておしえるの?」 「気が向けば同じ野菜を持って来てやるからだ」 リュックサックから大きめの袋を取り出し、それを地面に向けて逆さまにする。 どさどさと落ちる野菜。 どれもこれも誰かの食い残しの様な野菜だ。 それを見て声が上がる。 「わかるよー、ちぇんはそのおやさいさんたべたことがあるよー」 「れいむもそのおやさいさんをたべたことがあるよ!」 「「「おいちかったにぇ!!」」」 「そうか、どこで食べたんだ?」 「やまをおりたところにはえてたよー、いっぱいはえてたよー」 「れいむもやまをおりたところでたべたよ!! とってもおいしかったよ!! ぜんぶたべれなかったから、またいきたいよ!!」 「「「とっちぇもおいちかったにぇ!!」」」 そうか。 それとさっきのあまあまをもっとちょうだいね!!くちょじじぃ!!!とほざきやがる。 その食い残しは俺がジジイから証拠として引き取った物だ。 ジジイの話では、実際に被害が出たらしい。 そして一言付け加えた。「見つけたら制裁を頼む」と。 今年は念入りの方が良い様だ。 ふとだぜまりさを見ていたら、れいむが言うや否や顔を強張らせ巣の方へ走っていった。今回はあいつかな。 それを一瞥した後、今日最後の仕事を俺はやりだした。 「よし、こんだけだ」 「ゆゆ! ぜんぜんたりないよ!! ばかなの?しぬの? はやくあまあまちょうだいね!!!!」 「「「あまあまよこちぇくちょじじぃ!!!!」」」 「これだけなんてとかいはじゃないわね。ぜんぜんたりないわ」 「むきゅ、たしかにこれだけじゃみんなにいきわたらないわ。」 「にんげんさんそのおおきなふくろはなんなんだみょん? ふくらんでるみょん」 「わかるよー、そのふくろにいっぱいはいってるんだねー。 ひとりじめはずるいねー」 ちぇんの一言で場が沸き立つ。なかなか勘が冴えてるな。 ああ、袋に"いっぱい"入ってるよ。 「ゆゆ! ぐずのどれいのにんげんさん!!ばかなの?しぬの? はやくそのふくろからあまあまちょうだいね!!!!」 「そのふくろをひっくりかえせばいいんだねー、わかるよー」 「お前ら袋の中身が見たいのか?」 「みたいよー、なかみがほしいよー」 「とかいはならだしおしみせずにだすべきよ」 「はやくだすみょん!」 「分かった。お前らの選択だ。止めはせんよ」 元々俺がひっくり返す予定だったが、ご要望がある方がやりやすい。 俺はこれみよがしに立ち上がり、リュックサックを持ち上げ逆さにし、中身を地面に放り出す。 その様をゆっくり達が期待に満ちた目で見守る。 二つのバスケットボール程の大玉が地面に落ちる。 (ドサッ) 「いだっ!!」 「いだっ!!」 その瞬間、全ゆっくりが凍りついた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「う~~、いだいどぉ~~」 「う~~、いだいよ~~~」 中から出てきた2匹のゆっくり。それを見て周りのゆっくり達が悲鳴を上げる。 「「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」」」 「「「ゆぎぃぃぃぃ!! れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 「ふらんもいるぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! わ"がら"な"い"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!」 「「「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」 外の世界で言うおーけすとらと言う奴だろうか。ゲスの悲鳴は心地良い。 顔がぐしゃぐしゃになっている様は心が踊る。 赤ゆ共は泣き喚き、おそろしーしーは当たり前。口から餡子を吐いている個体も居るな。 「んあああ!? あまあまだど~☆」 「あまあま~! ☆れみ☆りゃ☆うー!!」 「むきゅあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!どすぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」 阿鼻叫喚。 ゆっくりれみりゃとゆっくりふらんが宙を舞う。両方胴は無い。 どのゆっくりも逃げ出したいが、動いたら狙われそうで動けない様だ。蛇に睨まれた蛙か。 「あーあ、れみりゃとふらんに出くわすとは、お前ら永遠にゆっくりだな」 一人大きな声でつぶやく。ゆっくりによく分かる様、永遠にゆっくりと。 つまりお前らは今日死ぬのだと。 だが俺も鬼では無い。俺は"助け舟"を出してやった。 「よしお前ら、一人だけ助けてやる」 唖然とするゆっくり達。そのまま続けてやる。 「聞こえなかったか? "生き残った奴"を一人だけ助けてやる。 さぁ頑張れ」 「にんげんさん、たすけるって?」 ゆっくり達は理解出来ていない様で、聞き返してくる。 聞き返したのはだぜまりさか、巣から戻ってきた様だ。 「まりさ、聞こえなかったか? お前らのうち一人だけ助けてやる。 どのみちれみりゃとふらんが揃ったら、お前ら全員助からん。 中身の餡子を吸われてぽいぽいぽーいだ。 だけど偶然ここに俺が居るから、生き残った奴は"一人だけ"助けてやる」 「むきゅきゅ! もとはといえばにんげんさんのふくろからでてきたんでしょおぉぉぉぉ! だいたいひとりだけってどういうことなのぉぉぉぉぉぉぉ!!」 ざわめくゆっくりたち。ぱちゅ種が居るとやりにくいなやはり。 だが無視する。去年もそうだった。 「知らんよ。 言っただろ、逆さにしたのはお前らの選択だ。 それに俺は嘘は付かん。 生き残りたければ他のゆっくりを殺せば良いんじゃないか? 一人は助かるんだから。 そうだろうぱちゅりー?」 「むきゅうぅぅ!! ほ、ほかのゆっくりをころせるわけがないでしょおおおおお!!」 「じゃあ皆食われればいいんじゃないか。 お前らの選択だ。好きにしろ。 それとドス、お前も入ってるからな」 俺は目の前に居るゆっくり達のはるか後ろを見て、最後にそう言った。 ドスは驚いた顔でこちらを見、その後近寄って来た。 周りのゆっくりが間を空ける。 そしてちょうど、俺とドスは正対した。 「おどろいたよ。 にんげんさんにはどすがみえてるんだね。 ならゆっくりしてるんだね」 「そうだな。 俺はゆっくりしている」 「にんげんさんはどすすぱーくをしらないの? れみりゃやふらんぐらいなら、どすすぱーくでたいじができるんだよ」 「ああそうなのか?なら好きにすればいい」 にへらにへら笑うドス。そういえば去年もこうだったな。 「ほんとうはぜんぶにんげんさんがしくんだんでしょ? にんげんさん、あまりどすたちをおこらせないほうがいいよ。 どすはどすすぱーくをにんげんさんにうって、にんげんさんをたいじできるんだよ」 「ほう、そうなのか。なら好きにすればいい」 「・・・にんげんさんはばかなんだね。 どすはむれをまもらないといけないから、どすすぱーくをにんげんさんにうつよ!!」 みんなはなれてね、と続けるクソデブ饅頭。 ドスを支点にゆっくりたちが放射状に左右に分かれる。さしずめ俺を中心とした扇形だ。 俺を"たいじ"して、れみりゃとふらんも"たいじ"する算段か。 どおりでこの群れが成体が多い割に落ち着いている訳だ。普通は我先に逃げ出している。 「どすがにんげんさんをせいさいするよ! おちびちゃんはよくみていてね!!」 「「「ばかにゃにんげんしゃんはゆっくちちんじぇね!!!」」」 「わかるよー!! にんげんさんがもえるんだねーー!」 「こんだけしかおやさいさんをわたさないにんげんさんはせいさいしろみょん!!」 「みんなばかなんだぜ、にんげんさんにかなうはずがないんだぜ。 いなかものはこれだからいやなんだぜ・・・」 「ばかなんていうまりさはとかいはじゃないわね。 どすみたいなとかいはなゆっくりになりたいわ」 おのおの歓声が上がる。 よく見ると一部のゆっくりは枝を咥えている。臨戦態勢の様だ。 俺は必要事項を処理するため、相手を目測する。これが最後の作業だからな。 通常、ゆっくりは赤ゆがピンボール(直径3cm)程の大きさだ。 それが子ゆでソフトボール(直径10cm)程になり、成体でバレーボール大(直径25cm)程になる。 胎生妊娠中ならもう一回り大きくなる。 そしてドスと言われるまりさははまりさ種の変種だ。 体長が60cmほどを超えるとドスと呼ばれ出す。大体は最後は150cm辺りまで育つ。 それ以上の個体は殆ど居ない。越冬出来ずに死ぬからだ。 身体がでかい個体は、入る穴にも困る。1mの大穴など、掘れてもすぐに崩れてしまう。 ぱちゅ種指導による綿密な穴掘りか、大木を削って作った空洞に入るとかをしないと生き残れない。 育ち過ぎたドスの大半は冬に凍死する。 100cmを超えていたら、そいつは過酷なゆん生を乗り越えた、頭も回る大物という訳だ。 目の前のドスは体長およそ150cm。生存可能な最大クラスのサイズ。大物だ。 重量はおおよそ70kgぐらいか。成体ゆっくりの約100倍。跳躍も50cmは堅い。 普通のゆっくり達から見たらこのドスは文字通りバケモノだろう。 まず勝てるはずが無い。それは信頼もされる。お前らの世界ではな。 身長170cm後半のAとドスまりさが対峙する。 正対距離は約2m。とんがり帽子のせいでドスの方がAより全高が高い。 ドススパークはスパークキノコを使って熱線を放つドスまりさの魔法だ。 ゆっくりなら熱で燃えてしまう。捕食種も同じだ。 燃えると言うのはゆっくりにとっては致命傷であり、全身火傷の激痛のショックで即死もありえる。 人間でも大やけどを負う。場合によっては服が燃える。だが死にはしない。そこが大きく違う。 このデブは人間様と対峙した事が無いのだろう。哀れだ。 ふとさっきのだぜまりさを思い出したが、すぐに止めた。 俺は善意を持ってドスに一言伝える。 「ドス、先に言っておく。俺に攻撃しようとする度に片目を貰う」 「なにいってるの? どすのおめめはどすのものだよ。 にんげんさんはゆっくりどすすぱーくの"さび"になってね」 スパークには溜めがいるらしいが、俺の知っている個体で溜めの無い個体が居るから、無い物と考える。 俺はドスの動きだけを、ただだるそうに眺める。 ドスが帽子を動かし、中から何かを落とそうとする。 その瞬間、俺は"抜刀"した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ バズゥッ!!!! 「ゆぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ" あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」 悲鳴を上げ、餡子を撒き散らしながらのたうち回るドス。 縦一文字に右目、顔面右部を大きく切り裂かれたドスは絶叫する。 ドスが帽子からきのこを落としたのが見えた瞬間、Aは背に担いだスコップを"抜刀"していた。 スコップ。 それは土を掘り起こす道具であり、またとても頑丈な"金属加工物"である。 薄く堅く、鋭利。 Aはこの道具が人間の首でも刎ね跳ばせる事を知っていた。 ドスの帽子には大きく切れ込みが入り、その様は真上からスコップに切られた事を表す。 一見ただのスコップだが、実は凶器。 文字通りAにとってスコップは"刀"なのである。 妖怪からの自衛目的にと練習を始めたこの"スコップ"は、今やゆっくり殺しの域にまで高められていた。 「ゆぎびぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ" い"だい"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」 「どすぅぅぅぅ!! すぱーくをうつのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」 横からぱちゅりーが指示をする。顔面を切り開かれたドスに無茶を言う。 だがドスは涙を流し餡子を漏らし、のたうち回りながらもきのこを拾おうとする。 なかなかガッツがあるドスだが、顔中に変な汗と汁が出ていて気持ち悪い事この上無い。 俺は善意を持ってドスに一言伝える。 「いいのか? ドス」 「ゆふぅーーー! ゆふぅーーー! な"に"がっ"!!」 「いいのか? 両目を失ったら、生き残れないぞ」 「どずはぐずのにんげんざんをごろじで、ゆっぐりずるよ!!!」 「俺の動きが見えなかったんだろう? なら次も見えない。 ゆっくりは人間には勝てないんだよ。 試したかったらそのきのこを拾えばいい。 次は左目を貰う」 ドスの動きが止まる。 人間に遭遇しなかっただけで、壮絶なゆん生を歩んできた筈だ。 こいつはもう分かっている。おそらくこいつに指示したぱちゅりーも。 まわりの成体ゆっくりも唖然としており、子ゆ赤ゆに至ってはドスの餡子を見てゆんゆん泣き喚いている。 俺は更に付け加える。 「ドス、俺は一人だけ助けてやる、と言った。 お前も含まれている」 「ゆふぅーー・・・ ゆふぅーー・・・ 」 「どすぅぅ!! きいちゃだめよ!!」 「ドス、死にたくないんだろう?」 「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」 「ドス、片目しかないお前じゃれみりゃはともかくふらんは無理だろう。 勿論俺を倒すのも無理だ。 だがもしお前が最後まで生き残れば、それで助かるんだ。 どうするかはお前の自由だ。 まぁ俺がこんなことを言うのもなんだが、 生き残る可能性が高い方に賭けた方が良いんじゃないのか? ドス。 "他人は他人"だろう?」 「う"~~~ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"~~~~!!!」 ドスは涙を流し涎を流し、左目を強く瞑って唸っている。葛藤しているんだろう。 一方のぱちゅりーは顔面が蒼白だ。もう悟ったのだろう。口に枝を咥えだした。笑いが出そうになる。 俺は上で旋回しながら待機していたれみりゃとふらんに合図をする。 あまあまが腹いっぱい食える、と1日断食させていたのだ。群れの一つ程度は食い荒らすだろう。 2匹の捕食者は急降下し、地面に群がる餌に飛びついて行った。 「(がぶがぶ)うう~~ あまい~~☆」 「ゆぴぃぃぃ!? ゆびっぎぃぎぎぎぎ・・・」 「ゆんああああぁぁぁぁぁ!! ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「ゆああぁぁぁぁぁ!! きょわぃよぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆぅぅ! おちびちゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 俺の方に注目していたゆっくり共は、捕食者が降りてきた事に気付くのが遅れた。 まずはれみりゃが俺を案内したれいむの赤ゆの1匹に噛み付き、餡子を吸いだした。 ふらんは空を旋回し"品定め"をしている。 奇声を上げて白目を剥き痙攣する赤れいむ。それを見てしーしーを漏らしながら泣き喚く2匹の姉妹。 空を飛んでいたれみりゃが降りてきた事により、ドスの右手側のグループはパニックに陥っていた。 まぁどの道赤ゆが生き残る事は無い。せいぜい恐怖で震えて甘くなってくれ。 「みんな! ちがうほうこうににげるのよ!! そうすればたすかるわ!!」 「ゆゆ!! おちびちゃんたち!! ゆっくりついてきてね!!」 「ゆー!! ありすたちもにげるよ!!」 「「「みんな!! ゆっくりにげるよ!!」」」 ありすがゆっくり達に生存策を伝える。このありすは群れの重役かな?確かにそうだな。 それを聞いた一部のゆっくりの親子は逃げ始めた。良いぞその調子だ。 だから俺は付け加える。 「このふらんは俺から離れた奴を優先的に食う。 食われたい奴から逃げれば良い。お前らの自由だ。」 これは事実だ。そう仕込んだ。 案の定なんの命令もしていないのに、ふらんが逃げ出したゆっくりを追い出した。 「う~~~☆ ふらんもあまあまたべたいど~~☆ にげるやつはつまみぐいだど~~☆」 「じゃあこのおおきいのはれみりゃのぶんだど~~☆」 「ゆああああああああ!! こっちこないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆんあああああ!! にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 逃げ出したゆっくりと指示したありすが悲鳴を上げる。 だがもう遅い。四方に逃げたゆっくり達はみな"つまみ食い"をされ、足を無くすだろう。 成体ふらんが一匹居れば、どの道助からないのだ。食うのよりも嬲り殺すのが目的なのだから。 タックルされて身体を倒され、あんよを噛みちぎられ、それで一生が確定する。 ふらんは逃げる奴を食い荒らし、れみりゃは動いてない奴を食い荒らす。 ありすは自分の言った事で仲間が"つまみ食い"をされる様を見て、顔が青ざめていく。 ぱちゅりーはというと、えだを噛み締めて何かを観念した様だ。目が据わっている。 「ゆううううう!! ぱちゅりー!! なんとかしてね!!」 「ゆっくりしないではやくしてね!! れいむたちをたすけてね!!」 「ぱちゅりーはほんとにぐずだね!! ひとりでかりもできないしね!!」 「ありすのせいでふらんがきたよ!! ありすのせいでゆっくりできないよ!!」 「「「ありすとぱちゅりーはほんとゆっくりできないゆっくりだね!!」」」 「どぼじでそんなこというのぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ぱちぇもありすもがんばってるでしょぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"」 「そうだみょん!! ぱちぇもありすもわるくないみょん!!」 ゆっくりに責められ泣き出すありす。質の悪い群れの様だ。みょんだけが味方をしている。こいつも重役か? まぁゆっくりにとって「ゆっくりできないゆっくり」と言われるのはゲス以下、死に値するほどらしい。 そこまでこき下ろされたら泣き出すのも無理は無いか。ありす種はプライドが高い様だし。 まぁ俺には関係無い。 その一部始終を眺めた後、俺はドスを生温かい目で見つめていた。 ぱちゅりーと同じく目の据わったドスが満身創痍で動き出したからだ。 「(ブルブル)ゆ"ぅ"ぅ"~~ ・・・じにだぐないぃぃ・・・ どすは・・・」 『・・・!? どす!?』 「どすは、」 『だれか!! どすをとめて!』 「どすは、いきのこるよ!」 『みょん! どすをえださんでさしてぇぇぇ!! はやくぅぅぅぅ!』 「(パクツ)」 「!? わかったみょん!! どすうぅぅぅぅ!! ・・・!?」 ぱちゅりーが叫び、みょんが枝を咥えて突進する。異変に気付いた様だ。なかなか速い。 だが一歩早く、ドスはキノコを舌で取り口に含み、みょんの居るドスの左手側に向き直った。 ああ、位置が悪かったな。むしろ運か。 右手側に居れば、ドスには位置が分からなかったのにな。 カッ! (ボッ)「「「「ゆぎぃぃぁぁああああああああ!!!!!」」」」 ドスはキノコを咥えると、身体を左手に半回転させ口元をみょんの正面に向けた。 予想通り溜めなど無かった。一瞬で眩い光が放たれ、みょんを含む左手のゆっくり達が燃え出す。 ドスから左手側のグループを牽き潰す様に、炎の軌跡が生まれていた。 「「ゆぎゅ"う"う"う"う"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!!!」」 「「あじゅい"い"い"い"い"い"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」 「「だずげでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」」 「「「「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」」」」 「「「「ぴぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」」」 赤ゆは即死。子ゆと成ゆは全身が炎に包まれ転げ回っている。 みょんも絶叫しながらのたうち回る。ぽよんぽよんという音では無く、バスンバスンと狂った様に。 ゆっくりの肌は人間よりも敏感らしい。ならばこの全身を包む炎は想像を絶する地獄だろう。 およそ左手側の9割が直撃、即死を免れた20匹程のゆっくりが独自のファイヤーダンスを踊りだす。 ゆっくりにとって火が付くと言うのは殆ど死を意味する。顔しかないゆっくりは自分で火を消せないからだ。 しーしーとうんうんを撒き散らしながら飛び跳ねるクソ共を見て、その様を楽しむ。 同時に山火事にならない様に、燃え出した枯れ葉を踏んで消火するのも忘れない。 そしてドスの右手側をAグループ、左手側をBグループとするなら、既に両方にパニックが起きていた。 A側はれみりゃが食い荒らし、B側は火炎地獄となっている。仲間割れも散見出来た。 もう終わりだろう。 A側に居た司令官と思われるぱちゅりー自身が、枝でありすを突き刺しているのだから。 (ザクゥッ!) 「ゆぎゅ"う"う"う"!! ぱちゅりーどぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」 「むきゅうぅぅぅぅぅ!! どすがいないいじょう、もうたすからないのよぉぉぉ!!! ならぱちゅりーは、このえださんでみんなをころしていきのこるわぁぁぁぁ!!! さいごのひとりになるのよぉぉぉぉぉぉ!!!」 むきゅきゅきゅきゅー、と笑いだすぱちゅりー。 そうだな。頑張れ。お前では無理そうだが。 「どぼじであ"り"ずな"の"お"ぉ"ぉ"ぉ"!! ごうなっだのはでいぶのせきに"んでしょぉぉぉぉ!! さぎにでいぶをさすべぎでしょぉ"ぉ"ぉ"!!」 流石成体、刺された程度ではまだ死なんか。言ってる事も一理ある。 まぁ言ってる事自体はゲスなんだが、この状況でゲス化しないゆっくりなどいない。 それを聞いたちぇん親子が枝を咥えてれいむに向きだした。 「「わかるよーー!! ぜんぶれいむのせきにんなんだよーー!!」」 「だれかぁぁぁぁ!! おちびちゃんをたずぶぎぃい!!」 まだ叫んでたのかお前。もう死んでるだろ。 2匹のちぇんの枝が左右かられいむの顔に突き刺さる。 引き抜かれた穴から餡子が漏れ、痛みで泣き喚くれいむ。 そしてそれをお構いなしに、付近のゆっくりがれいむに噛みつき出していった。 「れいむのせいだよ!! くずのれいむははやくしんでね!!」 「れいむがしねばたすかるんだよ!! ゆっくりしないでしんでね!!」 「「「くずのれいむ!! ゆっくりごろし!! ゆっくりできないれいむはゆっくりしないでしんでね!!」」」 「ゆぎぎぃぃぃぃ!! どぼじでこ"ん"な"こ"と"す"る"の"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! や"べでぇぇぇぇぇ!! い"だい"い"い"い"い"い"い"い"!!! ばでぃざばずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 皮を引っ張り引き千切り、中から餡子が漏れ出す。 逃げようと必死に飛び跳ねるが、飛び跳ねるごとに皮を噛みちぎられ餡子を撒き散らしている事に気付いていない。 すぐに飛べなくなり、顔の半分以上の皮を持って行かれたれいむが見えてきた。 「ゆ"べぇ"ぇ"!! だずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 口から残り少ない餡子を吐いて助けを求める親れいむ。 聞こえないかのごとく執拗に枝で殴る刺す噛みつく引き千切るをするまわりのゆっくり達。地獄絵図だ。 その様を見ていたれいむの赤ゆ2匹は、恐怖でうんうんとしーしーを垂れ流し、口から餡子を漏らして悶死していた。 ふとこいつの番のだぜまりさを探す。 少し離れた所で何かをしているが、よく見ると枯れ葉を集めてその中に隠れようとしていた。 無言で顔は必死だ。全然ゆっくりとしていないが、中々賢いな。 視線を戻すとB側はほぼ壊滅、生き残ったA側のゆっくりがドスを刺し殺そうと枝で突き刺しているのが見えた。 「むきゅうぅぅぅぅぅ!! みんなぁぁぁぁぁ!! どすをころすのよぉぉぉぉ!!! じゃないとどすにころされるわぁぁぁぁぁぁ!!!」 「どすははやくしんでね!! れいむたちがいきのこるよ!!」(ザクッ!) 「いきのこるのはみょんだみょん!! みょんいがいはみんなしぬみょん!!」(ザクゥッ!) 「う~~☆ おっきなあまあまさんなんだど~☆」(ガブゥゥ・・・ブチィ!) 「い"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"」(ドスン!ドスン!) 「むきゅ!? どすぅぅぅぅ!! こっちこないでべぎゅ!!」(ブチャァ!) 「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!! ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサユサユサ) 「だずげでぇぇぇぇぇぇ!! だれがばでぃざをだずげでぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサ・・・) いよいよ本当の地獄になってきた。 ドスを殺そうとするぱちゅりーがゆっくりを誘導し、れみりゃまでもがドスに噛みつき皮を剥いでいる。 痛みで飛び跳ねたドスがぱちゅりーを体半分踏み敷き、圧迫された生クリームが破裂してぱちゅを四散させた。 奥を見ると刺されてないありすがまりさをれいぷしている。すっきり制限で我慢もあったのだろう。 顔は恍惚、舌を大きく出してだらしなく涎を垂れ流すありす。 性欲全開でまりさを犯す様は反吐が出そうになる。しかも相手は子まりさだ。 「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」とありすが奇声を上げた後、まりさは餡子を吐きながら黒ずんで行った。 「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」 体力だけはあるクソデブが飛び跳ねる。だがもう身体の下半身は穴だらけだ。 飛び跳ねるだけで餡子が飛び出し、とうとう皮が裂け始めた。 裂けた状態で飛んだ瞬間、大きく皮が裂け餡子が盛大に飛び出した。 「い"ぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! たずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 「どすはしねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ザスッ!) 「ッッッばあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!! ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 もうあんよが裂かれ、飛べなくなったドスの左目にまりさが枝を突き刺す。 両目を失ったドスが絶叫する。この瞬間、ドスが生き残る可能性は消えた。 「おちびちゃん、ごめんねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「やべでおぎゃあしゃん"ん"ん"!! でいぶをがまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 甲高い悲鳴のする方を見ると、親れいむが子れいむを噛み潰そうとしていた。 すでに近くの赤ゆは誰かに噛み潰された様だ。無残に四散しており、誰の子で誰にされたかは容易に分かった。 ゆっくりは人間同様、子と親の体格差が大きい。子では勝てないだろう。 周辺では他人の子ゆっくりを殺し、また自分の子ゆっくりが他人に殺されるという光景が広がっていた。 殺しやすい相手から、赤の他人からという事なんだろう。 れみりゃはドスを食い荒らすのに夢中で、ふらんは逃げたゆっくりを嬲っている最中だ。 最後の一人になるべく、どのゆっくりも同族と殺しあっていた。笑いがこみ上げる。 そう、いつしか俺は、この光景を見ることだけが生き甲斐になっていた。 燃えさかるゆっくりたち。親子殺し、隣人殺し。強姦。暴行。罵倒。雑言。恐怖。苦悩。苦痛。諦観。 この地獄劇場が永遠に続けば良いと思いながら、俺は阿鼻叫喚を心行くまで堪能していた。 「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!! ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ガサガサガサガサ) ありすのれいぷ宣誓が聞こえた。ふと見るとさっきぱちゅりーに刺されたありすだ。 カスタードを傷口から垂らしながら、枯れ葉の山にガサガサと突進していく。 狙いは隠れているだぜまりさの様だ。 まりさはというと心底嫌そうな顔をし、枯れ葉から出て枝を咥えて応戦しだした。 「どぼじでうけとめてくれないのぉぉぉぉぉぉ!!」 「まりささまのつまはこのむれにくるまえにしんだれいむだけなんだぜ!! れいぱーありすやげすのれいむはごめんなんだぜ!!」 「まりさはありすよりもれいむをえらんだぁぁぁぁぁぁ!! ありすはむれのじゅうやくなのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「どすがわるいんだぜ!! あのれいむがだんなをなくしたからつがいになってくれといってきたが、 きょひするならむれからでていけといったんだぜ!! まりささまはしょうだくしたくなかったんだぜ!!」 「ならどうしてありすをえらばなかったのぉぉぉぉぉぉぉ!! むれのおとなのゆっくりはつがいにならないとだめなのよぉぉぉぉ!! まりさがれいむをえらんだからありすはいまだにひとりなのよぉぉぉぉぉぉ!! ありすだってすっきりしたいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「おまえみたいなげすなれいぱーといっしょになるくらいなら、 げすれいむとゆっくりのないゆっくりせいかつをおくるほうがましなんだぜ!! おちびちゃんのきょういくにわるいんだぜ!!!」 「んはぁぁぁぁぁぁ!! ならありすはまりさとまりさのこどもですっきりしてやるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ありすをこばんだばつなのよぉぉぉぉぉぉ!! んほぉぉぉぉぉぉぉ!!」 傷口からカスタードを垂れ流しながらもまりさを襲うありす。 顔は狂喜し舌を垂らして涎をふりまき、ぺにぺにを突き出して突進していく。 きっとまりさを気に入ってるんだろう。尋常じゃない執着ぶりだ。狂ってやがる。 このまままりさが負ければ、親子共々すっきりされてしまうだろう。 まあ俺には関係無いがな。 高みの見物をしていたら、逃げたゆっくりを食い終えたふらんが戻ってきた。 「う~~!! もっとあまあまくいたいど~~!!!」 「んほぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆぅぅ!? ゆううううううう!!!」 ふらんとありすに挟まれたまりさ。丁度一直線上だ。終わったな。 だが俺の期待と裏腹に、まりさは後ろのふらんの方に走り出した。 ふらんが慌てて急降下する。ありすもまりさを追い掛ける。 噛みつこうとするふらんの下を紙一重で滑り込み、そのまま枯れ葉に潜る。 ふらんはそのまま後ろにいたありすに激突する。 「ん"ほぉ"ぉ"ぉ"ぉ"んぶぎゅ!! い、いだい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 ありすに噛みつき、そのまま空高く舞い上がるふらん。 持ち上げたありすを空から落とす。俺が以前教えた「もっと甘くなる方法」をしている様だ。 「ゆ! おそらをとんでるみだばぎゃ!!」 べちゃぁ!!と墜落するありす。 あんよから地面に落ちた様で、傷口が裂けカスタードを撒き散らしていた。 悲鳴を上げるありす。それを見ていたれみりゃが、ちぇんを咥えながら寄って来た。 咥えているのは、どうやら畑を食い荒らしたちぇんの様だ。 しーしーを漏らしながら必死に牙から離れようともがいている。 「う~~☆ ふらんはなにをやってるんだど~~☆」 「う~~☆ そらからおとすとあまくなるんだど~~☆ おにいさんがいってたど~~☆」 「う~~☆ れみりゃもやるど~~☆」 「う~~☆ ふらんがおてほんをみせてやるど~~☆」 ちぇんとありすはそれぞれ上に持ち上げられ、何度も何度も執拗に地面に落とされた。 叩きつけられる度に中身を飛び散らせ、しーしーを漏らして痛みに身悶える。 ちぇんの方は泣き叫びながら「わからないよぉぉぉ」「らんしゃまぁぁぁぁ」と叫んでいる。 ありすの方は「やべでぇぇぇぇぇ」「ばでぃざぁぁぁぁぁぁ」と叫んでいる。 どちらも助けは見込めそうに無い。 ありすの方が可能性は大だが、そのまりさは枯れ葉の中でだんまりを決めているのだから。 「いだい"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ら"ん"じゃ"ま"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」 「までぃざぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ありずぼだずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」 「う~~ そろそろあまあまになってるんだど~~☆」 「ならたべるど~~☆」 「いだび"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! かまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"」 「やべでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!! すっぎり"し"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」 畑を荒らしたちぇんはれみりゃに。 最後まですっきりしたがっていたありすはふらんに食べられた。 周りを見ると、もう動いているゆっくりは数匹しか居ない。 俺はスコップを片手に、最初に見ていた巣穴に向けて動き始めた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「・・・おまえ生きてるのか?」 「し、しんでるんだぜ。ほっといてほしいんだぜ」 枯れ葉を足でどかし、隠れているだぜまりさを見る。良い反応だ。 俺はまりさに一言伝える。 「もうゆっくりは皆死んだ。生き残ってるのはお前"だけ"だ」 「ゆ? ほ、ほんとに?」 「ああ、まわりを見てみると良い」 そういうとまりさが枯れ葉の山から出て行った。 辺り一面ゆっくりの死骸だらけ。 焼け焦げたゆっくり、中身が吸われしぼんでいるゆっくり、皮が裂け餡子が漏れ出ているゆっくり。 動いているゆっくりは無く、そこには死体と焼け焦げた匂いしか残っていなかった。 「どうだ? この焼け焦げた匂い。 俺は確信した。 勝利の香りだ」 「しょ、しょうり?」 「ああそうだ。 ゆっくりの神様はお前に味方したようだな」 「・・・・・・」 呆然と周りを見詰めるまりさ。 あのドスが。あのぱちゅりーが。あのありすやれいむ達が。皆変わり果てた姿で横たわっている。 まりさがいつこの群れに入ったのかは知らないが、思う所もあるのだろう。無言だった。 ふらんとれみりゃは中心の木で横になっている。よく食べたからな。 俺は構わずスコップで後始末をする。 「ゆ? にんげんさんなにしてるの?」 「ん? お前らの巣を埋めてるんだ。 残していたらまたここに群れが出来るからな。 人里に近い巣は全て埋める」 そう、スコップはこの為に持って来たのだ。ドスが居れば応戦に使うが、これが主な目的。 手際良く埋め立てて行くと、ある巣の前に来た時にまりさが血相を変えて飛びついて来た。 「やめてね!! にんげんさん!!」 「なにが? 巣ならもっと奥に作れ」 「ゆぐ! わかったからやめてね!! つちさんをかぶせないでね!」 「だからなんで?」 「ゆ・・・ す、すがなくなると、ふゆがこせなくなるよ!! やめてね!!」 「そこの野菜を持って他の群れに行けば、場所ぐらい貰えるだろう。 それにお前一人なら冬が越せるぐらいの量だろう、あの野菜は」 「ゆーー!! ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだよ!! はやくはなれてね!!」 ぽよんぽよんと音を立て猛抗議をするまりさ。口調まで普通に戻っている。 よほど慌てているらしい。 生き残ったと言うのにここで喧嘩を売るとは、死にたいのか? 少し考えたあと、ある事を思い出してまりさに一つ質問する。 「まりさ、番のれいむとは同じ巣に住んでたのか?」 「ゆ! べつのすにすんでるよ!! わかったらはなれてね!!」 「そうか。まぁいい。他の巣は全部埋め立てた。そろそろ帰るよ」 それを聞いたまりさは安堵し、口調も戻った。 「ゆゆ、にんげんさんはゆっくりかえるんだぜ!! まりささまももっともりのおくにいくんだぜ!!」 「ああ、そうした方が良いな」 寝ている2匹をリュックに入れ、帰路に付く。 その様子を凝視しているまりさを尻目に、俺は歩き出した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 20分後、俺は再び群れの中心に戻って来た。 もうお分かりだろう。 まりさの巣と思われるところにスコップを当て、土を掘り返す。 異変に気付いたまりさが巣から飛び出し、顔をぐしゃぐしゃに崩しながら問いかけて来た。 「にんげんさんんんん!! なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「ああ、忘れ事をこなしにな」 そう言いながらもスコップで土を掘る手は止めない。 せっかく待ってやったのに、何をしてたんだか。 「にんげんさんんんん!! やめるんだぜ!!」 「それは出来ないな」 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! やべでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 泣き出して必死に俺の脚にぼすんぼすんと体当たりをしてくるまりさ。"うい奴"だ。 上から掘る事で巣が見え出し、真上から巣の全体が見えるまで掘った。 入口に木や石で堅牢なバリケードが敷かれているが、奥に部屋が二つある。 手前の入口側が食糧保管庫兼台所、後ろの部屋が寝室の様だ。 そして寝室には、子まりさが2匹と赤まりさが3匹居た。 「「ゆゆ!! にんげんしゃんだよ!!」」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!」」」 そう、まりさは賢いまりさだった。 出会った時に帽子が膨らむ程食料を集めていたのは、家族が多いから。 それは休息日に活動する点からも分かる。 休息日に休息していないまりさは、さぞゆっくりしてないゆっくりに見えただろう。 番のれいむからも、その赤ゆからも馬鹿にされる訳だ。まぁもっともここはれいむもだが。 巣に急いで走って行ったのも、バリケードを塞いで子供を助けるため。 ありすを拒んだのも、まりさ種ばかりのため。 それなら別居で済むれいむの方が良い訳だ。れいぷの危険が無い。 ゆっくり如きがここまで頭が回る事に感心しながら、まりさに問いかける。 「さぁまりさ、続けようか」 「ゆう"う"う"う"う"う"!!! なにお"お"お"お"お"お"お"お"!!!?」 「決まってるだろう? 一人"だけ"助けてやる」 「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! どぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!」 「まりさ、はやくしないと上のふらんが食い出すぞ? 隠れなくて良いのか?」 空を旋回するふらん。やはりれみりゃよりふらんの方が役に立つ。 ふらんはニヤニヤしながら今か今かと合図を待っている。 涙を流し涎を流し、哀願するまりさは愛おしくも思う。 「ま"り"ざの"お"お"お"お"お"お"お"お"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!! どっ"でも"ゆ"っ"ぐり"じだゆ"っ"ぐり"な"ん"でずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ああそうなのか。まぁ俺には関係無いが」 「ま"り"ざば"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!! う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」 何を言ってるのかさっぱり分からん。 まりさの子供は事態が飲み込めず、姉妹ですーりすーりしている者も居る。ふらんが見えて無いのだろう。 どう足掻いても、絶望。 「ゆっぐりのがみざばはあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ばでぃ"ざの"みがだじゃ"な"い"ん"でずがぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」 「いやぁ味方なんじゃないかな? 生き残ったのはお前の"家族"だけだ。 次は1人になるまで頑張れ」 「ぞん"な"の"い"や"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」 憐れなまりさ。親が泣くなよ。れみりゃに追われたか。 ゆっくりふらんが空から降りて来て、わざとまりさの横に座り穴を見た。 中の子ゆっくりと目が合い、合唱が始まる。 「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ごわ"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」」 「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」 中枢餡レベルに刻まれた捕食種への強烈な恐怖がゆっくりを襲う。 ガタガタ震えしーしーを漏らす赤ゆと子ゆっくり達。悪いがその様は興奮する。 親まりさの方は歯を食いしばり、歯と歯の間から涎を垂れ流している。勿論泣いているので汁塗れだ。 ゆっ、ゆっ、と子供が泣いた時の様にえづきながら泣いている。かわいそうに。 だが俺も鬼では無い。仕方が無いからまりさに"助け船"を出してやった。 「なぁまりさ、誰が生き残るのか決められないのか?」 「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 「じゃぁこうしよう。 まりさが死ぬか。子供が全員死ぬか。 これなら選べるだろう」 「ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 「なら子供を殺すしかないな」 「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 優柔不断なゆっくりだ。譲歩したというのに。本来なら皆殺しなんだがな。 まぁ子ゆっくりも赤ゆを脱した程度の大きさだ。確かに越冬は無理だろう。 まりさがたまらず哀願を続ける。仕方がないので聞いてやる。 「おでばいじばずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 「お前が生きれば良いだろう? 違うのか?」 「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ずでごなんでずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! お"や"がい"な"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 「捨て子か? 別に珍しくも無い」 そうだ。この幻想郷では別に珍しくも無い。 人間でさえ、妖怪に親を食われる事があるのだからな。 「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ばでぃ"ざがお"や"がわりな"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! ばでぃ"ざもお"や"がい"な"がっ"だん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! だがら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"だげば"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! だずげだい"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!! だずげでぐだざい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」 親が居なかったこのまりさは、同じ境遇の親がいない他の子まりさを助けたい訳か。 なるほどな。 くだらん。俺が怖くないのか? だがそうだな。子ゆ共はまだ小さい。親がいないと子は死ぬしか無いだろうな。ああそうだろう。 だから俺は、 "ゆっくりの神様"に決めて貰おうと思う。 「よしまりさ、これが見えるか?」 俺は一枚のコインを取りだす。幻想郷の外の世界の硬貨だ。 表に桜が、裏に数字が刻まれている。名前は100円玉という。古道具屋で仕入れた物だ。 まりさはぶるぶると震えながらそれを見る。 「いいかまりさ。この花が載っている方が表だ。花が無い方が裏だ。 このコインを投げて、出た方を殺す。 表が出たらまりさを殺す。 裏が出たらまりさの子供を全員殺す。 これでいいな? 出た方を殺す。 そして投げるのはお前だ。 分かったな?」 「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」 「いいかまりさ。 お前はさっきゆっくりの神に味方された。 だから今回も味方されるのを祈れば良い。 早く咥えろ。 そして、それを高く放り投げろ」 「ゆ"う"う"う"う"う"!!! ゆ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」 もはや思考もままならないのだろう。 言われるがままに咥えだす親まりさ。 「咥えたな? 思い切り上に放り投げろ。 神に祈りながらな」 「ゆ"う"う"う"う"う"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」 ヒュン。 顎を使い大きく上にコインを放つまりさ。 空を舞うコイン。時刻は夕暮れ。運命のコイントス。 真っ赤な陽光が俺とゆっくり達を包んでいる。幻想的な世界。まるであの日の様だ。 世界がスローで進んでいく。 光を反射し紅葉色に煌めくコインは、そのまま上昇が終わると弧を描きながら落下した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「おぢびぢゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!!! う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」 「「「「「ゆびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」 屋根の無くなった巣の外で身を寄せ合うまりさ親子。 まりさの投げたコインは、まりさの元妻の体に突き刺さっていた。 餡子に垂直に刺さったコインは、表も裏も表さない。 どうやらゆっくりの神というのは本当に居るのかも知れない。俺には分からないが。 俺は約束通り、"出た方"を殺して帰る事にした。出た方が無いのだから、殺す相手も居ないのだが。 コインを餡子から引き抜き、まりさに一言伝える。 「にんげんしゃんんん!! ゆっくりかえってね!! にどとこないでね!!」 「さぁな。 あとまりさ、これはやるよ」 俺は泣いているまりさにコインを投げる。 「ゆぐう!?」 「おまえは運命に打ち勝った。 それは記念に持っておけ」 「うんめい?」 「ああそうだ。 コイントスは人間の持つ、運命を試す方法の一つだ。 困った時に使うと良い」 コインを渡すと、俺は踵を返す。 安堵するゆっくり共の声が聞こえる。それが勘に障る。 そうだ。コインの代価を貰っておこう。 バチンッ!! 「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ま"り"ざの"おぼうじがあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」 親まりさの帽子の"つば"を、仕事用の果樹園用はさみで盛大に切る。 右目の上の部分に切れ込みが入り、人間視点でなかなか"りりしく"なった。 「助かっただけ有り難いと思え」 ただの八つ当たりには違いない。 命よりも大事な帽子に切れ込みが入り、以後のゆん生は難儀するだろう。 命を張ってまで助けた相手が、それほどの価値があるのか。俺が知る事は無いだろうがな。 ふらんは自分でリュックの中に入り、そのまま眠りに付いた。 まりさ親子は助かった事に涙し、俺は仕事を終えて帰路に付く。 もう会う事も無いだろう。まぁ俺には関係無い。 太陽はもう殆ど落ちていた。もうすぐ妖怪の時間だ。 助かった事に安堵する声を後ろに、俺は自宅へと歩き出した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Epilogue - 「ふああああ あやちゃんのぱんつみたい」 夏。炎天下。 男は一人つぶやく。叶う筈が無いんだが。 唯一の楽しみである"文々。新聞"を読みながら、ため息を付く。 今回の記事の内容はゆっくり特集。 山の奥に居る希少種などについて書かれていた。 最近はドスの亜種に面白いゆっくりが出てきたらしい。 体長60cmほど、まだ若いドスまりさが人里の果樹園に近い森に居る。 ドスの帽子には大きな切れ込みがあり、あまりゆっくりできていなさそうだ。 だが本人はとてもゆっくりしているらしい。 このドスは一人で生活しており、群れには属していない。 子供が居たが既に独立し、今は悠々自適に生活しているとの事だ。たまに子供が会いに来るらしい。 一人立ちした子供の元気な姿を見てはゆっくりしているらしく、ゆっくりにしては素晴らしい家族関係だ。 そして出会う捕食種やゲスゆっくりに対して、このドスはある"ゲーム"を仕掛けるそうだ。 それはコインを投げるゲーム。 表が出ればドススパークで焼き殺し、裏が出れば帽子を奪う。 どちらにしてもゆっくり的にはゆっくり出来ない、恐ろしい結果だ。 だが回避方法もあるらしい。 どちらの目も出さなければ良いのだ。 そんな事は不可能だと思うが、このドスは昔どちらの目も出さなかったらしい。 曰く「ゆっくりの神が味方した」との事。そんな神が居るのだろうか。 ただ例え回避出来ても、帽子はずたずたにされるらしい。だが取られるよりはマシだろう。 真相は闇の中だが、今回はこの辺で終わりたいとする。次回は町ゆに焦点を絞り・・・ 森の中。 ゆっくり達の悲鳴が木霊する。 あるゆっくりが溜めこんでいる食糧を奪おうと、ゆっくり達が徒党を組んでやって来たのだ。 しかし結果は返り討ち。ゲス共の命運はここに尽きた。 襲われたゆっくりが声を掛ける。 「さぁ、まりささまはせつめいしたんだぜ。 はやくそのこいんさんをくわえるんだぜ。 そしてそれをたかくほうりなげるんだぜ。 "かみにいのりながらな"」 帽子に切れ込みのあるドスまりさは、そういって目の前のゆっくりの「運命」を試しだした。 陽光煌めく幻想的な、あの日の様に。 森の中の切れ込みまりさ 種族:ドスまりさ 能力:ゆっくりの運命を試す程度の能力 おしまい 【後書き】 ゆっくりの重さに散々悩んだ結果、成ゆで700g(バスケットボール7号球とほぼ同じ)という事に。 ただ餡子が詰まってるのなら、直径25cmの球体ならもっと重いはず。 とかスーパーに行って餡子の缶詰見ながら思った今日この頃。重いと蹴りにくいので軽めに設定。 「さぁ続けようか」 「地獄じゃ! 神はなぜ弱者に自由を与えて下さらん」 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ピンボールは4cmだ、よく覚えとけ -- 2013-07-15 13 35 13 依頼が1日で終わるだけで日雇いって訳じゃないんだが、早苗は腹が黒いな原作通りだ ゆっくり駆除系の中では珍しい終わり方だな、ハッピーエンドが受け入れられずに 騒いでる奴が居たようだが、ゲスゆに通ずる所があるな、後この作品好きです。 -- 2013-01-16 12 31 45 面白かった。個人的にこの手のシナリオで善良が生き残るのは当然の既決だと思ってる その分、ゲスやアホは地獄を見てざまぁw しかし最後のどうあがいても絶望から奇跡を起こすとは…… -- 2012-09-24 15 28 23 ↓×5 へー、じゃああなたはもっと上手に自作新種ゆっくりを書けるんですねーすごいなー(棒) 偉そうに評論家ぶるなよ 気に入らなかったら自分でストーリー書いて喜んでろ 自分の思考しか認めない奴とか、凸厨くらい嫌いです -- 2011-12-31 01 17 41 ダーティに運命をベットする切れ込みまりさマジかっけぇ。 まぁ、赤ゆが虐待されんで不満垂れてる人もいるが、別にこの駆除人は虐待お兄さんじゃないんだから、ありだと思いますがね。 -- 2011-08-24 03 34 32 ↓3 過剰ってほどではないだろう。ゆっくりは三以上は数えられない設定もあるし、単に気づいてないだけで結構な数が死んでるのでは? 善良っぽいゆっくりを出す場合、贔屓が入るのは明らか。中にはどうしようもないことになるやつもあるかもしれないが、基本は善良は優遇されるだろ 確かにあの場面で赤ゆが出てきたら期待はするけど、あの結果は贔屓ではないだろ。奇跡のような偶然とはいえ、何億分の一の確率でも、起こりうるんだし。 長々と書いたが、結論。 見たい奴があれば自分で書け。気に入らないからって否定するのはおかしい 以上 -- 2011-05-07 17 41 01 何このドスかっこいい ちょっと潰してきますw -- 2010-11-11 18 45 13 まあ何言っても作者の自由だけどな -- 2010-10-11 17 40 10 途中までは面白かったけど欲張って森の中の切れ込みまりさなる 新ゆっくりまで詰め込んだのが大失敗の元でしたね どの作者も自分の考えた新ゆっくりには過剰贔屓になりがちですが この森の中の切れ込みまりさも典型的な例ですね 帽子に切れ込みがあり、コインで運命を決める俺のカッコイイまりさを 作りたかったのはまあいいとして 守ってた赤まりさ達も無事生き残らせたのは完全に過剰贔屓でしたね 子ゆ達を立派に育てあげた俺のカッコイイまりさにしたかったんでしょうが あのタイミングで赤まりさ達が出てきたら当然虐待を期待するわけです それが俺のカッコイイまりさの為に無傷で生き残ってしまいイラつきました 僕・私の考えた新ゆっくりを出す時は過剰贔屓に注意しましょう -- 2010-10-02 04 10 42 すごく面白かったです! ただ残念なのが必死に隠してた子まりさ・赤まりさが見つかった時に 私の心が完全に虐待モードになってしまっていたので この全員が助かる結末にフラストレーションを感じちゃいました もちろんストーリー的にはとても面白い結末です どんな善良なまりさでも地獄を見せないと気が済まないという 私の心が歪んでいるせいなんですけどねw -- 2010-09-08 23 38 16 これ、いいよなー -- 2010-07-31 10 12 36 早苗さんに言葉責めされるとか、完全にご褒美。 -- 2010-07-17 23 05 34 面白かった! -- 2010-07-09 16 12 15