約 164,652 件
https://w.atwiki.jp/shareyari/pages/524.html
作者:◆peHdGWZYE. 代樹はマドンナの腕を一本、二本と数えてみたが途中で、なんとなく馬鹿馬鹿しくなり やめてしまった。これは桜花に任せておけばいいだろう。 代樹は鑑定士らしい思考に戻った。 マドンナの能力は体の一部の変化。体全体を変化させる事はできないが、それ以外は制 約らしき制約はなく、非常に汎用性に優れる。 ところが実際のマドンナの使い方を見ると、手先の刃物化、かわされた次は腕自体を増 やしてきた。安直といえば安直、堅実といえば堅実な用法だ。 つまり、彼女は便利な能力を持つにも関わらず、奇策やトリッキーな戦術に主点を置い ていないという事になる。いっさい、それらの策を使わないという訳ではないが、さほど 頼りにしていないのは確かだろう。 『彼女は能力で戦うというよりは、能力を戦闘技術に活かすタイプだ。それと増えた腕は すべて利き腕同然に使えると考えた方がいい』 『え、どうして分かるの?』 スタンロッドを握ったままの指先で、難儀そうに桜花はジェスチャーを返した。 代樹はそれに返事をしようとするが、それはマドンナの言葉にさえぎられた。 「作戦会議は終わったの? 別に終わって無くても――」 マドンナが踏み込むと同時に、多腕が一つ一つ文字通り諸刃の剣に変化し、いっせいに 桜花に襲いかかる。 能力により腕を鞭のようにくねらせ、前方と左右、多方面からの刺突。 これは盾を構えるだけでは防げない。 「っ!」 後方に跳躍する事で回避する桜花。その目前で多数の刃が宙を貫く。 前方から襲い来る腕は跳躍先にも届く勢いだが、それに対して桜花は盾を構える。 うまく防ぐが、まるで矢の雨を受けたような音と衝撃に桜花は眉を潜めた。 「……終わって無くても、手を止めたりはしないけど」 言いつつも、マドンナは伸びきった腕を引き戻す。 「止めなくてもいいけど、せめて手は二本までにしてよ」 桜花は軽口を返したが、それほど余裕は無かった。 最初の攻防ではマドンナの方が後退したが、これは一時的な不利を解消したにすぎない。 それに対して、桜花の後退は完全な不利によるものだ。 死角が無い、それに尽きる。腕が多いうえに、マドンナはこの状態を前提とした訓練を 重ねているらしかった。攻撃と防御の絶対数が多く、通常の隙が生じないため、桜花は有 効な防御も反撃手段を見出せない。 そして、対処が後退しかないとすれば、追い詰められればそれで終わりだ。 『これは……正面から突破は無理だな』 代樹は言わずもがなの事を伝えた。彼の冷静さにひびが入る程、状況は不利だった。 マドンナが戦闘している間に自分が逃げようとしても、何本かの腕を割けば簡単に阻止 できてしまう。おそらく集中力強化の能力で、攻撃を回避する事は可能だろう。しかし、 そのまま部屋から逃げ出せるか、というと分の悪い賭けとなる。 話が違うぞ、と不毛ながら代樹は思わざるを得ない。 劣勢ながら勝負が成り立っているのは、桜花が守護の仮面見習いとしては、かなり優秀 である事とマドンナが最初に手加減をした事、両方の要因が重なったからだ。 この攻勢は、明らかに試験の範疇を超えている。 『分かってるよ。何かいい考えは無いの? このままじゃ……』 どうにか桜花はスタンロッドで牽制しているが、大して効果は無いようだった。 マドンナが防御には無関心の様子で、再び攻撃を仕掛けたのだ。 次は単純な上段からの振り下ろし。ただし、刃の数は尋常ではない。 桜花は上方に盾を構えることで、刃の嵐を受け止める。多数の金属音が鼓膜を乱打した。 しかし、攻撃はそれで終わりではなかった。 「チェック」 チェスにおける王手宣言。 マドンナの袖口から新たな腕が伸び、草を刈るように桜花の足元を狙う。 攻撃を受け止めている今、身を守る盾が逆に桜花を押さえ込み、これを回避する事がで きない。一瞬で桜花の足首が切断されようとしていた。 「……まだっ!」 しかし、半瞬で桜花は具現した盾を消去し、後ろに下がる。 盾を押さえ込んでいた多数の腕は、力の行き場を失い床に叩きつけられる。 これを好機と見た桜花は直後に前進し、反撃を見舞う。しかし、次の瞬間には腕が跳ね 上がり、桜花が振るうスタンロッドと激突。攻撃を逸らした。 互いに攻撃の糸口を失う。二人は距離を取り、ふたたび睨みあった。 「チェックメイトには早かったみたいね」 「そう? 本当に、まだ詰んでいないのかしら?」 マドンナの指摘は辛辣だった。今のところ、代樹と桜花に勝機は無く、徐々に追い詰め られている事を指摘したのだった。 助けを求めるように桜花は代樹を見遣った所、落ち着いた調子で動作が返ってきた。 『いや、まだ詰んではいないよ。むしろ、着々と布石を打てている』 桜花は少しばかりうさん臭く思ったのだが、他に有効な手も無い。 一応、頭脳が現実に向けて働いている限り、代樹は頼りになる青年だ。さすがに、この 事態では思索の世界に迷い込む余地もないだろう。 『なにか考えがあるみたいね。全部、聞かせてくれる?』 とても試験とは思えない強敵を相手に、桜花は命運を代樹に託すのだった。 優秀な守護の仮面見習いと問題児の鑑定士候補。 能力鑑定専門学校の資料に書かれた一文は、マドンナの興味を引いた。なんとなくでは あったが、この個性的な組み合わせはバフ課の隊長、副隊長を連想させたのだった。 桜花の方はそつが無いタイプの優等生で、むしろ彼女に対する興味はなぜ問題児と交流 するに至ったのか。その点につきる。 代樹は様々な意味で変わった存在だったようだ。能力鑑定の技術、様々な人間に対する 機転と俊才めいた一面があるのは確かだが、日常レベルでは欠点も多く指摘されている。 こうして、バフ課の協力者となり得る新人のリストに興味本位と直感によって、二人の 名前が連ねられたのだった。 現在は試験の協力も兼ねて、リストの人物の吟味が始まっている。 マドンナの目前で、代樹と桜花の二人は何らかの情報交換をしていた。 この二人は言葉ではなく、手先の動作によって詳細な会話が行えるらしい。 「それを待ってあげる義務もないのだけど」 内心が口からこぼれ、それが火蓋を切った。 多数ある腕を伸ばし、先端の刃で桜花を突き刺そうとする。桜花は寸前で横に跳躍し、 回避すると同時に椅子を掴み、マドンナに向けて投擲した。 椅子は回転しつつも、マドンナに向かって直進する。 白兵戦で勝てなければ飛び道具。その発想の正しさはマドンナも認めた。 「でも、通用するかは話が別よ」 マドンナは冷静に、温存していた二本の腕で椅子を切り払う。容易く椅子は破壊され、 攻撃としての意味を失った。 腕を伸ばせば、たしかに本体が無防備なるが、それだけに全ての腕を攻撃に使うような 真似はしない。 しかし、椅子と同時に、また別の小さい何かが飛来していた。 通常ならば椅子に気が取られ、それには気付きもしない。しかし、鋭敏なマドンナの感 覚と動体視力は確かにそれを捕らえていた。 ――腕時計!? 本来、無視するべき物に向けられた注意。マドンナには僅かな死角が生じていた。 「今っ!」 桜花は腕を掻い潜り、スタンロッドを突き出した。電光が火花を散らす。 外せば終わる。そんな覚悟を秘めた捨て身の一撃だった。段違いに速く鋭い。 マドンナはそれを回避しえない事を悟った。 全体重を乗せたスタンロッドが胴体に直撃し、マドンナは数歩分の距離を吹き飛んだ。 加えて、電撃によるダメージ。このスタンロッドは威嚇用のものではなく、皮製のライ ダースーツを貫通するほどの電圧を有している。 衣服の一部を焦がしつつ、電流が全身を蝕む。 いくら戦闘技術を誇ろうとも、マドンナも人間には違いない。その膝はゆっくりとだが、 崩れおちようとしていた。 桜花は荒れた呼吸を整えた。 「ふう、危ない所だったけど、私達の勝……!?」 その瞬間、不意に真横から襲い掛かる多数の腕。 桜花が盾を具現化できたのは技術よりも、反射神経の賜物のように見えた。 しかし、幸運は長く続かない。マドンナの腕は盾で防がれるのも構わず、力ずくで桜花 の体を盾ごと宙に浮かせ、そのまま壁に叩きつけたのだった。 重い音で大気と試験会場が振動する。 この攻撃は盾で防ぐ事は適わない。盾の上から攻撃し、そのまま放り投げるのだから、 必然的に壁に叩きつけられのは裏にある体、という事になる。 桜花も例外ではなかった。 力なく体が崩れ落ち、一瞬おくれて具現化していた盾も消滅する。 「…………」 「盾には、こんな突破法もあるの。覚えておきなさい」 言葉にならない呻きに、マドンナは一瞥すると返答した。 聞こえているかは半々だが、聞こえていなくても体で思い知った事だろう。 「さて、と。頼みだった守護の仮面役は、動けなくなったのだけど……」 桜花が動かないのを確認すると、マドンナは残された代樹の方に向き直った。 万策尽きたのだろうか、その表情は堅い。 「大人しく降参しなさい。治療能力者の手を煩わせる必要はないでしょう?」 降伏勧告に代樹は一瞬だけ小首を傾げると、左右に頭を振った。 マドンナは苦笑すると言葉を重ねた。 「少なくとも、私の採点では合格よ。あなた達の立ち回りは優秀だった」 嘘は言っていない。それどころか、マドンナの推測を超えていた。 襲撃のタイミングを完全に読んで見せた所、片手とはいえ互角に渡り合った事、そして 本気の攻撃を凌ぎ、先ほどの奇襲だ。 飛び道具で攻撃するだけと思えば、大人しくしていた鑑定士が、突然腕時計を投げる。 優れた対応力を逆手にとり、反応した隙に守護の仮面が捨て身の攻撃を仕掛ける。 あの一撃を耐え切れたのは、能力で体の体積が増えていたため、電流が分散した事。 残りは激痛に耐えうる、強い精神力の手柄だった。 あるいはバフ課の新人としてなら、十分通用する実力かもしれない。 しかし、残念ながら、というべきか鑑定士の協力者としては不足だった。この程度では 能力鑑定局側が危険に晒すことを承知しないだろう。 「あなたにはこれ以上、抵抗する理由がない。そのはずよね?」 「…………」 代樹は握り拳を作ると、親指だけ突き出し、自分自身を指した。 自分が傷つかない限り、終わりじゃない。という意味だろうか。 それとも、自分が戦い勝ってみせる、という意味だろうか。 「……そう」 正確な意味はマドンナには分からない。 しかし、どちらにせよ、その眼には不退転の意志が宿っていたのは確かだった。 それを悟ったマドンナは決着をつけるべく、多数の腕を構えた。 登場キャラクター 三島代樹 吉津桜花 マドンナ 上へ
https://w.atwiki.jp/valiantlegion/pages/77.html
情報提供募集中!このページにキャプチャ画像をアップしていただければ、私のほうでアップします!よろしくお願いいたしますm(__)m - 管理人 2014-01-22 17 51 19 士官試験は協力が必要なので、パーティルームで戦術話あうのがおすすめです! - 管理人 2014-01-22 17 53 15
https://w.atwiki.jp/thmugen/pages/542.html
試験中「ゴリアテ人形」 試験中「ゴリアテ人形」 スペル シンボル:青 必要コスト<青:2 無:2> このカードの効果が解決された場合、このカードを以下のテキストと「属性:人形」を持つ攻撃力0、耐久力9のキャラクターとして活動状態で場に出す。 『《誘発》:このカードは、戦闘に参加した場合、戦闘フェイズの終了時に廃棄される。』 「」 illust:9LAW コメント 耐久力は9とトップクラスなのに対し攻撃力は0である。いかにも攻撃力のありそうな名前なのに…。 耐久力が高いことをいかして壁キャラに、と思っても戦闘に参加すると戦闘終了後に廃棄されてしまう。さすが試験中。 1体の攻撃を防いで終わり、では4コストも払う価値がない。よほど戦闘回避や筒粥「神の粥」を使った方がマシである。 正式版ゴリアテ人形への布石か? 関連 雹の人形遣い「アリス・マーガトロイド」
https://w.atwiki.jp/syukensya1990/pages/292.html
大学センター試験・国家試験等の問題作成・採点を行う独立行政法人。 概要 所在地 〒003-0003 新都府北区上見町3丁目9-1 あさがお不動産ノースビル 所管官庁 教育文化省 理事長 和泉 勉学 内部組織 総務部 経理部 広報部 試験管理部 試験採点部
https://w.atwiki.jp/goodgames/pages/126.html
お昼休みが終わってしまう... こちらを御覧の皆さんは既にベースアタック防止機能の酷い不具合について御存知かと思います。 言い訳にもなりませんが「テスト出来ない」のが最大の問題だったりします。 もちろん一人でテスト出来ない機能は投入後しばらくの間、 サーバの裏からゲーム内を監視し、正常に稼働している(ように見える)ことを確認していますが。 そもそもなぜテスト出来ないのかと申し上げれば、 クライアント側環境が一つしか無い サーバにプレイヤーさんが接続していると新しいモジュールを投入出来ないことがある この二点につきます。 クライアント側環境は二つ目のアカウントを入手したので多くの試験は実施可能になりました。 しかし、サーバの問題は時間帯を選ばない限り解消出来ません。 しかも... ここ一週間ばかり、午前中から満員状態が続いています。 ちなみに本日(2011/06/20)は無人状態になったのが午前6時から午前7時頃だけ。 と言うわけでサーバも手配しました。 アムステルダムとの時差の関係で、日本時間のゴールデンタイムに直撃しますが、 本日中にはサーバを1台追加しVehicleと入れ替える予定です。 そのタイミングでVehicleサーバは一時的に停止します。 御了承願います。 本日はお昼休みが無くなりました。 (2011/06/22 追記) サーバ移行が完了致しました。 尚、試験用サーバについては当面特殊な試験に用いる予定です。 本件については別途御案内致します。 ( - )
https://w.atwiki.jp/generation-genesis/pages/714.html
MSN-01 サイコミュシステム高機動試験機 性能 COST EXP SIZE HP EN 攻 防 機 移 宇 空 地 水上 水中 SFS 防御 17900 400 L 9200 100 140 110 160 6 A - - - - - - 武装 名前 射程 威力 EN MP 属性 命中 CRI 武装効果 使用適性 対応適性 備考 宇 空 地 水上 水中 宇 空 地 水上 水中 腕部5連装メガ粒子砲 2~5 4000 20 0 BEAM射撃 80% 0% なし ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 半減 オールレンジ攻撃 2~6 3500 20 20 BEAM射撃 65% 0% サイコミュ ○ ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ 無効 アビリティ 名前 効果 備考 なし 開発元 開発元 2 ジオング 4 ビショップ 設計元 設計元A 設計元B 設計不可 開発先 開発先A 開発先B 開発先C 開発先D 2 ザクII 3 ビショップ 5 ブラウ・ブロ 8 ジオング 捕獲可能ステージ ステージ 出現詳細 該当ステージ無し GETゲージ ステージ 出現詳細 なし クエスト No. クエスト名 達成条件 該当クエスト無し 備考 登場作品『MSV』 高機動時のサイコミュや武装の動作試験のために作られた試作機。俗称タコザク。 ビショップと比較するとHP+200、機動力+40。移動力も+1され宇宙適正Aあるため宇宙での移動には困らないが、反面脚部がバーニアで埋まっているためSFSに乗れず、地上での運用は不可能。 2種類武装の消費ENは同じ。火力が欲しい、あるいはテンションを上げたい際には腕部5連装メガ粒子砲を、射程が欲しい際にはオールレンジ攻撃を使うといいだろう。 開発はやはりジオング……と言いたい所だが、ブラウ・ブロも意外に開発元が少ないのでお勧め。
https://w.atwiki.jp/for-ring/pages/47.html
試験用ダンジョン クリアレベルの目安: 出現敵 名前 弱点属性 備考 コカトリス 雷 ガーゴイル 火・氷・光 闇耐性 サハギン 火・雷 氷無効 ヴァンパイア 雷 氷無効 +ボス(ネタバレ注意) 名前 弱点属性 備考 ボス
https://w.atwiki.jp/examinationroom/pages/38.html
断片集 九条むつみ まだ夜も明けたばかりの頃の灰色がかった風景の中を、荷物を抱えた作業服の男達が歩いている。 場所は市街。それもどうやら歓楽街の一角らしいということが周りの風景を見ると判る。 間もなくして立派な劇場の前と辿りつき、彼らはそれが目的の場所であったことを確認すると中へと入っていった。 その様子をモニターのガラス越しに見ていた九条むつみは、ひとつ息をつくと視線を机の上へと移した。 机の上には年輪の様にコーヒーの飲み跡をつけたマグカップと、彼女が設計した首輪とがある。 九条は首輪を手に取り、そしてまたモニターへと視線を戻すと、今度は深い溜息を吐いた。 完成させたはずの首輪であるが、つい先ほど再設計の指令が上より下されたのだ。 この後に開催される殺し合いという姿を借りた邪まな野望を達成する為の儀式。 それを円滑に進める為、または儀式の根幹に関わる機構が彼女の手にする首輪の中には備わっている。 ただの枷というだけでなく、様々な機構が小さな環の中に組み込まれていた。九条が優秀であり苦心した結果でもある。 個々の機能について語るのは控えるとして、現在問題とされているのは監視システムにある不備のことであった。 首輪の中にはその位置情報を知らせる発信機と、音声を拾う集音機とが存在する。 これは儀式の参加者が勝手に場外へと逃げ出したり、または問題となる行動を起こさないかを監視する為のものだ。 現在、一番地とシアーズ財団の作業員らが総出で島中に配置している監視装置と合わさることでそれは更に確かなものとなり、 彼らの要望により九条が首輪の中に内臓したカメラも加われば、その監視体制から死角は消える――はずだった。 九条が見つめるモニターの画面の内はいくつかの升目で区切られており、幾種類かのアングルが存在していた。 首輪から発信される位置情報を元に参加者の姿を捉える周囲の監視装置からの映像と、 その参加者――この場合は試験として作業員が――嵌めている首輪に内臓されたカメラからの映像とだ。 問題は後者。首輪から送られてくる映像の方にあった。 内臓されたカメラは嵌めた人間の首元に当たる場所に設置されているので、当然その人物の正面を映すことになる。 だがしかし、(最初はそれで十分だと言っていたにも関わらず)それだけでは意味がないというのが上の意見だ。 正面と言っても、あくまで首を基準にした場合の正面でしかない。そして首から上。つまり人間の頭は非常によく動く。 眼球。つまりは視線にしてもそうで、監視について厳格な一番地とデータ収集に神経質なシアーズ財団の両方から同じ要望が届いた。 曰く、カメラに参加者が見ているものを映せ――という要望である。 2日後。新しい設計図を提出した九条は、久しぶりに眠気覚ましではなく味わう為のコーヒーを口に流し込んだ。 ほぅ、とゆるく息をつき椅子に預けた身体を弛緩させて、自身を緊張より解放する。 先日に発生した問題であるが、作業としてはそれなりであったが、解決するのはさほど難しくはなかった。 九条は、まず監視装置に認識システムを組み込み、映像の中から人物を検知し、その顔や眼球の向きを読み取れるようにした。 これは元々、シアーズ財団で試用が進められていたもので、データを使用する許可さえ下りれば組み込み作業は簡単なものである。 次に、複数の監視装置から送られてくる風景の映像を統合し、それにより擬似的な3DMAPを作り出す仕様を組み込んだ。 これに、先に読み込んだ参加者の位置情報に眼球の向きの情報も加え、シミュレートの中で視線の先を特定する。 そしてそのデータを首輪へと発信し、 可動式に改良された首輪内のカメラがそちらへと向くことで、参加者の見ているものがモニターに映し出されるという寸法である。 九条は両腕を高く上げると、身体をひねり溜まった凝りをほぐす。 問題の解決は容易で、解決案を出すこと自体は数時間もかからなかったが、 膨大なシミュレートを行うコンピュータに掛かる負荷を低減する為の最適化を行うことと、 実際の人間の視線の動きとカメラの動きとのラグを解消するためのシステム作りには、 二日の間、昼夜を問わずキーボードを叩き続ける必要があったのだ。 カップに残ったコーヒーを飲み干すと、九条はモニターへと目を向けた。 その中では改良された首輪をつけた作業員らが島内を歩いている様が映し出されている。 正確に参加者の視線の動きをトレースする映像は監視員が酔ってしまうのではないか? などとも思うが、動作は概ね良好だ。 再び、改良を命じられることはないだろうと、九条は自らの仕事の出来栄えに安堵する。 もっとも、このシステムを活用する為に倍の監視装置が必要となり現在追加分の設置に大童なのだが……まぁ、それは別の話だろう。 しばらくぼうっとしていた九条だが、おもむろに立ち上がると部屋の隅にある簡易ベッドへと足を向けた。 もう間もなく始まってしまう儀式。一旦始まれば目を離す暇もないだろうから今のうちに休もうと、そう考えたのだ。 脱いだ白衣を作業台の上に放って、九条はマットレスの上へと横になり目を瞑って瞼の裏の暗闇を見つめる。 暗闇――彼女の娘も今は暗闇の中で眠りについている。 ここへと連れてこられ九条が一番最初に見せられたのは、闇に覆われた室内に横たわっている幾人もの少年少女の姿であった。 眠っているのかというとそれは定かではない。 何日もそのままであることを考えれば、おそらくは何か異能の力で仮死状態なり特別な処置がとられているのだろう。 ともかくとして、彼女はその中に実の娘である玖我なつきがいると知らされ、確認し、そして今彼等に従い任務をこなしている。 無論。九条はただ娘が儀式の生贄になる様を見届ける為にここにいて、首輪の作成に勤しんでいるわけではない。 たったひとりの娘を救う為だ。その可能性がどれだけ低くとも、決して諦めるつもりは彼女の中にはない。 僅かではあるが作業の合間を縫ってその手段も用意してはいる。娘以外の何者もを犠牲にする覚悟ももう終えていた。 人工HiME計画。シアーズ財団ですらまだ実用には程遠いそれを、今回の儀式の主催者はひとつの装置でいとも容易く実現している。 表向きは黒曜の君である神崎黎人が主導者であるように見えるが、一番地でも不可能な以上、更に黒幕がいるのは明白だ。 一番地からは逃げ出し、シアーズ財団に囲われ、実の娘に母だと名乗り出ることもできないただの敗北者である女。 そんな自分に今更何ができるのか。自問は身を苛むが、しかし九条はまだ自分が母であるという想いを胸にそれへと挑む。 儀式開始まで後、24時間。 九条むつみは孤独な戦いを前に、娘の名前を心の中で呟き、その意識を安らかな闇の底へと手放した――……。
https://w.atwiki.jp/masurai/pages/48.html
出典 パーソナル百科事典『マスペディア(Masupedia)』 弁理士試験についての記事をまとめたカテゴリ ページ一覧
https://w.atwiki.jp/src-today/pages/15.html
2008/10/17 SRC-Today試験運用開始 17日、SRC-Todayの試験運用が開始される。 【SRC-Today】【新企画】 【文責 プラチナ木魚】