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登録日:2022/01/27 (木曜日) 01 50 50 更新日:2022/08/14 Sun 14 26 18NEW! 所要時間:約 ? 分で読めます ▽タグ一覧 81093 おもいっきり探偵団 覇悪怒組 フジテレビ 不思議コメディシリーズ 少年探偵団 東映 東映不思議コメディーシリーズ 石ノ森章太郎 覇悪怒組 魔天郎 ※推奨BGM:摩天楼のヒーロー おっす!オレ、ヒロシ。 そして、これがオレの仲間。 こんなオレたちが集まれば、 みんなが「アッ!」と驚くすごいことやりたくなるの、わかるだろ? だけど、オレたちの邪魔をする謎の男・魔天郎が現れたんだ。 魔天郎!勝負してやろうじゃんか!! 新番組! おもいっきり探偵団 覇(は)悪(あ)怒(ど)組(ぐみ) みんなで、でっかいことやろうぜ! 『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』新番組予告より △メニュー 項目変更 「俺達5人、体は別々でも」 「誕生日は違っていても」 「血液型はバラバラでも」 「小遣いは別勘定でも」 「頭の出来に差があっても」 「「「「「どんなときでも心は一つ。打倒、魔天郎!オー!」」」」」」 おもいっきり探偵団 覇悪怒組(はあどぐみ)とは、1987年(昭和62)にフジテレビ系日曜朝9時に放映されていた東映製作の「東映不思議コメディーシリーズ第7弾および今作に登場する少年探偵団の名称。 概要 竹早小学校5年3組の仲良し5人組であるヒロシ、サトル、ススム、タケオ、ヤスコが結成した探偵団。 突如出現してヒロシのパソコンを盗んだ(*1)幻の怪人「魔天郎」から「パソコンを返して欲しければ私と知恵比べをして勝ってみせろ」と挑戦をされた事をきっかけに結成された(*2)。 名付け親はヒロシであり、由来は「思いっきり魔天郎と戦うハードボイルドな探偵」から。 メンバーエムブレムに施されている数字も「81093(はーどぐみ)」。 竹林寺の縁の下に隠されていた、仏教が迫害された時代に作られたと思われる隠し地下室を秘密基地として利用している。 基地への出入りは階段や滑り棒で行い、階段の前には鉄格子の扉がある。 内部にはテレビやビデオ、冷蔵庫、オーブントースター、ファミコン、アマチュア無線機、電気スタンド、ダーツ、バスケットゴール等、メンバーが家から持ち寄ったり、まだ使えそうな粗大ゴミから集めた品物が揃っており、5人で食事や寝泊まりをする事もある。 また外の様子を探るための、赤外線スコープ内蔵の潜望鏡や、他者がアジトへ接近している事を知らせる警報も備えている。もはや小学生が作ったとは思えないレベル。だが冷暖房は無い。 電気は竹林寺から引いており、電気代として毎月千円を賽銭箱に払っている。 ちなみに竹林寺の神主である洋漢和尚は、秘密基地どころか隠し地下室の存在自体を知らない。 『探偵団スペシャル 魔隣組対覇悪怒組 ジゴマVS魔天郎』では中学生になった5人が登場。部活や勉強の多忙さから、かつての冒険心を失っており(ヒロシに至ってはやさぐれていた)、魔隣組からの協力要請を一度は断ったが、最終的には覇悪怒組を再結成し、魔隣組のピンチに駆けつけた。 メンバー ◆黒樹 洋(演 渡辺博貴) 物語の主人公で覇悪怒組のリーダー。8月2日生まれのO型。 正義感が強く、リーダーとしての指導力もあるが、現金な部分や調子に乗りやすい一面もある。 スポーツ万能で、パソコン操作も得意だが、勉強はからきし駄目。 魔天郎は本来、彼が自主製作映画用にパソコンでデザインしたキャラである。 父・志郎は安月給のサラリーマンで、ヒロシのパソコンは彼がボーナスをはたいて買ったもの。母・広子はデパートにパート勤めをしている。 彼の家のカレーにはアイスクリームが入っているらしい。 覇悪怒組のメンバーは小学5年生という設定だが、ヒロシを演じた渡辺博貴氏とヤスコを演じた上野めぐみ氏は、放送当時は中学生だった。 ◆城金 悟(演 中島義実) 眼鏡の少年。10月4日生まれのA型。 手先が器用で手品と料理が得意。幼少より好奇心旺盛で百科事典やギネスブックも丸暗記している。伝書鳩を飼っている。 短気で無鉄砲なところがあり、気になる事にのめり込んで騒動を起こす事もある。 両親はフランス料理店「レストランボンボン」を経営しており、父・研介はフランスの超一流レストランのビストロ・デ・シティで修行したコック。母の名前は不明で、ススムを「八百屋の馬鹿息子」となじったり、自分達より格上のフランス料理のおいしさを「セックスみたい」と評したりと、自重しない発言をする事がある。 彼の家のカレーにはバナナが入っているらしい。 ◆青野 進(演 雨笠利幸) 小柄な少年。11月1日生まれのAB型。 勉強はまるで駄目だが画才があり、将来は漫画家になりたがっている。だが現在の興味は忍者の技を会得する事であり、手裏剣を携帯している他、自前の忍び装束を持つ。 怒ると何をし出すか分からないところがある。また、食べられそうな物を手にするとすぐに口にする癖があり、26話ではそのせいで酷い目に遭った。 両親は八百八商店を経営している。父・八郎はお得意様を逃がしたくないが故に客の万引きを見逃す等、やや頼りなく、強気な妻の尻に敷かれがち。母・歌子の子守唄には強力な催眠効果があり、幼少からこれを聞かされてきたススムは、この子守唄を聞かなければ眠れない体質になってしまった(*3)。 彼の家のカレーには南京豆が入っているらしい。 ◆君原 猛夫(演 石井孝明) やや大柄な少年。7月12日生まれのB型。 勉強嫌いで落ちこぼれ寸前だが無類の動物好きで、動物の言葉が分かる。指笛で鳥の鳴き真似ができる。また山に関する知識は豊富。 力持ちでもあるが、意外と気が弱い。サトルと行動を共にする事が多い。また、落合先生が魔天郎という説には否定的。 父・章一郎は辛切警部の幼馴染であり、有名な高山植物学者だが、仕事の傍ら徳川の埋蔵金を探しに行った事もある。母・花子は若くて美人。 ペットに犬のサスケやモルモットのモルモ3号がいる。 彼の家のカレーにはこんにゃくが入っているらしい。 ◆赤川 矢須子(演 上野めぐみ) 探偵団の紅一点。12月13日生まれのA型。学校では放送部員を務める。 勉学、スポーツ共に抜群の成績で、合気道一級の腕前を誇る。他4人のようないたずら者ではないが、かなりのじゃじゃ馬でもある。 ヒロシとは幼馴染で、両思いの仲だが、無意識のうちに魔天郎に惹かれていた事もあった。他のメンバーから妄想の対象にされる事も多い。 魔天郎の正体が落合先生ではないかと最初に疑ったのは彼女である。 父・公三郎と母・富貴子は赤川産婦人科医院を経営しており、父は合気道三段の師匠でもある。 弟で小学1年生の森介がおり、正式な覇悪怒組メンバーではないが、初期の話では覇悪怒組と一緒に行動する事があった。また竹林寺の隠し地下を発見したきっかけを作ったのも彼である。 クラスメイトで金持ちの息子・金成千吉から度々アプローチをかけられているが、彼の嫌味で傲慢な性格を嫌っており、また前述の通りヒロシと両思いである事もあって全く相手にしていない。 彼女の家のカレーには特に変わった食べ物は入っていないらしい。 覇悪怒組規則 13話で壁に貼られていた規則。 1.覇悪怒組基地は団員だけの秘密とし、親兄弟といえども決して明してはならない。 2.いかなる場合でも集合の合図があった時は、すみやかに基地に集合する事。 3.集合の時間は厳守する事。 4.基地は常に清潔にし整理整頓を心掛ける事。汚した者はバツとして一週間の掃除当番をする事。 5.備品を壊したときは三日以内に弁償の事。それができない者は、直ちに退団すべし! 他にも「魔天郎の追跡には原則としてタクシーを使う事を禁じる」(26話)、「魔天郎の追跡はチームワークで行う」(30話)という規則も登場した。 探偵グッズ メンバーが小遣いを出し合って購入、製作したものであり、持ち回りでメンテナンスを行っている。 探偵グッズの多くには「覇悪怒組」「HadoGumi」の文字や、黄色い「W」と青い四角と赤い丸と「81093」の数字で構成されたエンブレム(「覇」の字を元にしたデザイン)が描かれている。 ◆シュウオンサー 銃型の集音機。覇悪怒組を象徴する探偵グッズの1つ。普段は分解してウェストポーチやリュック、ショルダーバッグ等に収納している。部品代は6000円で、これを破損させたサトルは前述の三日以内に弁償の規則に追われ、費用の工面に苦労した事がある(ちなみにこの規則を作ったのはサトル本人である)。ただし、1つしか製作されていないというわけではなく、5人分製作されている。 ◆キンミッケル 金属探知機。覇悪怒組を象徴する探偵グッズの1つ。普段は柄の部分を縮めてウェストポーチやリュック、ショルダーバッグ等に収納している。飛行中のUFOを探知したり、不発弾を発見した事もある。これも5人分製作されている。 ◆ジオラスコープ ラジオと方位磁針を内蔵した双眼鏡。ただし本編でラジオとして使用した例は無い。 ◆ハードシーバー トランシーバー。商品化された物は有効範囲約50メートルとされているが、本編の物は通常のトランシーバーの範囲を超えた高性能さを見せている。 ◆覇悪怒組手帳 メモ帳兼身分証明書。メンバーの誕生日や現住所、電話番号、血液型まで書かれている。ヤスコが製作。男子4人の物は黒でヤスコの物は赤。タケオはこれを警察手帳のように人に見せたがる。 ◆シークレットカード 暗号作成カード。左上から1、3、4、2と右下までの四隅に小さな穴が存在し、これを指定した順に左上に合わせ、本文用に空けられた四角い穴から文字を書き込む。これにより40文字の暗号文を作成でき、同じカードを持っていてその使用方法を知る者にしか解読できない。ヤスコが製作。使用されたのは初登場の29話のみであった。 ◆パチ魔110(パチマワンテン) 覇悪怒組仕様の110ポケットカメラ。4話と20話で使用されたにも関わらず、33話の総集編では紹介されなかった(*4)。商品化された物はスケールプリントシステム付き。 ◆全10工(ゼンテンコウ) 栓抜き、マイナスドライバー、鋸、スケール、釘抜き、ボルト用スパナ(4種類)、ネジ用スパナ、ロープカッター、ヤスリ、方位磁石(紐で吊るして使用)の10つの道具を掌サイズの金属板にまとめたサバイバルツール。36話でヒロシが落合先生に貸した道具はこれである。マイナーな道具だが商品化はされている。 ◆五習技(ゴシュウギ) ボールペン、メジャー、ルーペ、長さスケール、ペーパーナイフ兼深さスケールの5つの文具を掌サイズのカードにまとめた多機能ステーショナリー。マイナーな道具だが商品化はされている。 ◆アクアボーイ 30メートル防水仕様のデジタルウォッチ。方位磁針とアラーム内蔵。男子4人の物は黒でヤスコの物は赤。 ◆覇悪怒組キャップ 団結の証として作られた帽子。ススムがデザインした。5人それぞれ色が違い、それぞれの苗字にちなんだ色が割り当てられている(ヒロシ→「黒」樹、サトル→「城金(白銀)」、ススム→「青」野、タケオ→「君(黄み)」原、ヤスコ→「赤」川)。 ◆覇悪怒組ベスト、グラブ、エンブレム 覇悪怒組仕様の共通衣装。黒いベストと、黒い手袋と、安全ピンで肩に着けるワッペン。ベストは中盤から着用するようになった。 ◆スリングショット プラスチック製のゴムパチンコ。 ◆投げ縄 魔天郎に対して度々使用されるも、いつも逃げられている。覇悪怒組のトレーニングの中にも投げ縄の練習が組み込まれており、主にサトルが得意としている。 ◆魔天郎探知機 魔天郎個人を探知するわけではなく、スリングショット等で標的に発信機を取り付け、それを探知するGPSのようなもの。37話で使用。 ◆投網発射機 サトルが開発した、自転車を改造したと思しき、投網を発射する装置。8話で使用するも、サトル自身が投網を被る羽目になった。 ◆ドライバーセット 覇悪怒組ロゴが貼られたケースに入っている、差し替え式ドライバーセット。探偵グッズのメンテナンスや開錠に使用する。 ◆懐中電灯 「HadoGumi」の文字が貼られた黄色い大型懐中電灯。主にタケオが使用する。 ◆登山用磁石 「HadoGumi」の文字が貼られた方位磁針。44話で登場。 ◆目潰し球 白い粉を詰めた目潰し球。28話で使用。また37話では、サトルが卵の殻に塩や胡椒を詰めた胡椒爆弾を作って使用している。 ◆鉤縄、縄梯子 49話でススムが使用。 追記・修正は魔天郎からの挑戦を受ける勇気を持った人がお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 当初は恐らく同期のメタルダーの人気をかっさらっていったけど、後にメタルダーBlackと続けて視聴可能になった時期よりメタルダーの人気も上昇傾向になっていた→ウインスペクターでの人気爆発に繋がるという皮肉。それと、戦隊以外のなりきり玩具の力の入れようは後のジバンの警察手帳で開花するという。そういう意味では様々な所に影響を与えている作品だと思う。 -- 名無しさん (2022-01-27 07 49 04) ↑加えて、摩天楼役の春田純一氏のバトル描写も後のちゅうかなぱいぱいに引き継がれていて、これもポワトリン→セーラームーンへの流れになっているという。 -- 名無しさん (2022-01-27 07 51 44) 読み切り版清村くんと杉公路くんで知った俺は希少か。 -- 名無しさん (2022-01-27 12 23 32) 進役の雨傘氏はとなりのトトロのカン太の声の人 -- 名無しさん (2022-01-27 15 05 54) 覇悪怒組、大好きだった -- 名無しさん (2022-01-27 21 54 04) 少年探偵団っていう題材が監督とか制作側の少年時代の思い出にぶっ刺さったのかノリノリで楽しく作品作ってた現場だったらしい -- 名無しさん (2022-08-14 14 26 18) 名前 コメント
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【TOP】【←prev】【DISK SYSTEM】【next→】 おもいっきり探偵団 覇悪怒組 魔天郎の挑戦状 タイトル おもいっきり探偵団 覇悪怒組 魔天郎の挑戦状 機種 ディスクシステム 型番 BAN-HRD ジャンル アクション 発売元 バンダイ 発売日 1988-3-25 価格 3300円 駿河屋で購入 ファミコン(ディスクシステム)
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※ ここまでのあらすじはおもいっきり探偵団 覇悪怒組の第49話をご覧ください。 魔天郎のアジトに突入を果たした覇悪怒組、順子先生、そして内山重夫とパチンコ組は、魔天郎によってブラックホールに飲み込まれてしまった。 異次元空間をひたすら流されていく一同。 延々と続く闇の中を抜け──気が付いた時、覇悪怒組と順子先生は、四方を光る壁に囲まれた箱のような部屋にいた。 ヒロシ「助かった……」 ススム「俺、もう死ぬかと思った」 サトル「安心するのはまだ早いぜ。魔天郎の奴、俺たちをここに閉じ込める気だ」 ヤスコ「なんだかエレベーターの中みたいね」 ヒロシ「脱出口があるかもしれない。みんな、探すんだ」 壁に手を近づけたとたん、壁が強く発光。思わず手を引っ込める覇悪怒組。 順子先生が床に魔天郎のマークを見つける。 順子先生「魔天郎マークよ」 マークに注目する一同。 魔天郎マークの両目が点滅している。 ヒロシ「これだな」 ヒロシが両手でマークの目をふさぐと、壁の光が消え、壁の一角がシャッターのように開いた──。 さらば魔天郎 部屋の外は、暗い地下道のような場所。 魔天郎が待っているだろう場所へ続くものは一切見えない。 ススム「すっげぇ……」 よく見ると、覇悪怒組の目の前に青い台車が置かれている。 体を狭めれば6人全員どうにか乗れる程度の大きさだ。 ススム「ヒロシ、見ろよ」 ヒロシ「これに乗れっていうことだな」 タケオ「だけどさ、千尋の谷底に真っ逆さまってこともあるぜ……」 ヒロシ「ヤスコ、どうする?」 ヤスコ「やるっきゃないわ」 ヒロシ「……よし、決めた!」 サトル「乗るぞ」 ススム、タケオ「おう!」 サトル、ススム、タケオが前列、ヤスコと順子先生が後列、ヒロシが最後尾にスタンバイ。 ヒロシ「いいな!?」 無言でうなずく5人。 ヒロシ「ススム、ロープをほどけ」 ススムが台車を固定しているロープをほどいた途端、台車が猛スピードで射出された。 悲鳴を上げたい気持ちを必死にこらえ、前方の闇をにらむ子供たち──。 ふいに、台車の車輪が何かにぶつかる。 台車から投げ出され、地面に叩きつけられる一同。 ススム「ここはどこだ?」 吹っ飛ばされた先は洞窟の中だった。 そこへ、魔天郎の笑い声がこだまする。 ヒロシ「魔天郎、どこだ!! 正体を現せ!!」 覇悪怒組が洞窟の中を見回す。順子先生はまだ不安げな面持ち。 そして魔天郎からの返礼とばかりに、無数の火矢が暗闇の中から飛んでくる。 ヤスコと順子先生がついに悲鳴を上げる。 さらに魔天郎の手下の黒服たちが無数に現れ、覇悪怒組の行く手を阻む。 全員が、手に青龍刀を持っている。 ヒロシ「よし、行くぞ!!」 ススム、サトル、タケオ「おう!!」 ヒロシたち男子メンバーが地面や岩壁に刺さった火矢を引き抜き、手に持って、魔天郎の手下に立ち向かっていく。 ヤスコは順子先生に張り付き、しっかりと守っている。 ヒロシ「ヤスコ、お前と順子先生だけは逃がしてやるぜ!! 大人になって、誰かと結婚しても、俺のこと忘れんなよ!?」 が、火矢を次々と切り払われ、覇悪怒組は完全に丸腰に。 そのまま行き止まりに追いつめられる。 とどめを刺そうと、魔天郎の手下たちが一斉に青龍刀を振り上げた瞬間──何かが魔天郎の手下たちに命中した! ヤスコ「パチンコ組よ!」 異次元空間から脱出・合流したパチンコ組が、トレードマークのパチンコで援護射撃しているのだ。 魔天郎の手下は不意を突かれ、防御に精一杯。 ヒロシ「今だ!!」 覇悪怒組も反撃に移る。たちまち乱戦になる。 内山「ヒロシ、無事か!?」 ヒロシ「内山、どうしてここに!?」 内山「お前に借りを返そうと思ってさ!」 ヒロシ「内山、礼を言うぜ!」 覇悪怒組とパチンコ組の息の合った連携攻撃に、逆に追い詰められていく魔天郎の手下たち。 内山「ヒロシ!」 ヒロシ「なんだ!?」 内山「魔天郎との勝負があるんだろ? ここは俺たちに任せろ!!」 ヒロシ「頼むぜ! みんな、行くぞ!!」 覇悪怒組と順子先生は、洞窟の最奥へと走っていった。 洞窟の奥に、魔天郎マークのレリーフが彫られた鉄製の大扉がある。 ヤスコ「魔天郎は、本当にここにいるのかしら」 ヒロシ「確かめてみようぜ」 扉はあっさりと開いた。 侵入する一同。 扉の奥には、膨大な量の貴金属や芸術品、金の延べ棒が収蔵されていた。 ヒロシ以外の面々が貴金属を手に取る。 ススム「すっげぇ……」 サトル「目がつぶれそうだ……」 ヒロシ「勝手につぶれろ」 順子先生「これだけあったら、どんな贅沢だってできるわね」 サトル「俺、でっけえヨット買ってさ、世界一周をやるのさ」 タケオ「俺は動物園でもやるかな」 ススム「とにかくこれを家に持って帰ろうぜ? 父ちゃんと母ちゃん大喜びだ!」 ヤスコ「私はこの大きいの一個でいいわ」 ヤスコが大粒のダイヤモンドをみんなに見せつける。 しかし、ヒロシだけは貴金属に全く興味を示さない。 ヒロシ「ヤスコまでなんだよ!」 ヤスコ「何怒ってるの? ほんのちょっとつかの間の夢を楽しんだだけじゃない」 ヒロシ「何が夢だよ。みんな、俺たちの夢はただひとつ、魔天郎を倒すことのはずだ」 うつむくヤスコたち。 ヒロシ「落合先生が魔天郎だったら悲しいけど…… それでも俺たちは、魔天郎を倒さなければならないんだ! それが、どんな価値があるかって言われたら…… 俺だって分かんないけどさ……」 ヤスコたちが次々と貴金属を机の上に置いていく。 ヤスコ「ヒロシ君…… ごめんなさい」 サトル「ヒロシ、俺たちが悪かった」 うなずきあう覇悪怒組。 そこに、魔天郎の手下のピエロたちが手に槍を持って出現。 タケオ「ピエロ部隊だ!」 机の上の貴金属を投げつけて応戦する覇悪怒組。 ピエロ部隊がひるんだ隙を突いてさらに奥へ向かうが、前方から青龍刀部隊が迫ってきた。 後ろからもピエロ部隊が追いすがる。 覇悪怒組と順子先生は、入り組んだ洞窟の中をひたすら走り続けた。 覇悪怒組の進む道はやがて斜面となり、勾配がきつくなってきた。 そして順子先生が足を滑らせ、落下── 覇悪怒組「順子先生──っ!!」 多くの苦難を乗り越えてようやく洞窟の中から魔天郎のアジトの洋館に戻ってきた覇悪怒組だったが、順子先生を失ったショックで、誰も言葉を口に出すこともできない。 ヤスコ「順子先生……」 ヒロシがヤスコを見つめる。 ヒロシ「ヤスコ、もういい」 顔を上げ、うなずくヤスコ。 ヒロシ「行くぞ」 覇悪怒組が、洋館の最上階を目指して再び歩き出した。 階段を上り、さらに奥へ奥へと進む。 ヒロシ「あっ!」 息をのむヒロシ。 覇悪怒組の目の前に、魔天郎の仮面が架けられた扉があった。 覇悪怒組が、意を決して扉を開ける──。 部屋の中には、巨大な魔天郎の仮面のレリーフと、小さな丸机と椅子だけがあった。 魔天郎「ようこそ、覇悪怒組の諸君」 魔天郎の声だけが無人の部屋に響く。 椅子がひとりでに回り始め、一回転すると同時に、すでに魔天郎が椅子に座っていた。 ヒロシ「魔天郎……」 魔天郎「君たちなら間違いなくここに到着する、そう信じて待っていたぞ」 ヒロシ「な、何のために?」 魔天郎「今夜はもう遅い。明日の朝、じっくり君たちと、話そう」 再び高笑いとともに消える魔天郎。 一方、奈落に落ちたかに見えた順子先生は無傷でどこかに飛ばされていた。 窓から差し込む朝の光と鳥のさえずりで、順子先生が目を覚ます。 順子先生「ここは…… ここは落合先生の部屋だわ! どうして私がここに?」 ドアが開く。 入ってきたのは──落合先生。 順子先生「落合先生……」 落合先生「順子先生…… いやぁ、感激ですな。先生は、私の帰りをずぅっと待っていてくれたんですか?」 順子先生「落合先生、今までどこに行ってらしたの!?」 落合先生「田舎ですよ…… 私の生まれた田舎に、どうにも断りきれない用事がありましてね」 順子先生「落合先生…… 私には、せめて私には真実をお話し下さい!!」 落合先生「真実を……?」 落合先生が、様々な感情がまぜこぜになったような表情を浮かべる。 そして、ただ時だけが流れた。 順子先生が泣いている。 落合先生は神妙な面持ちで、何も言わずそれを見ている。 順子先生「落合先生……」 落合先生「順子先生…… どうぞ、わかって下さい」 順子先生が泣きながら部屋を飛び出す。 目を固く閉じ、頭を下げる落合先生。 魔天郎のアジトでは、魔天郎に見守られながら、覇悪怒組が円卓を囲んで朝食を摂っている。 魔天郎「覇悪怒組の諸君、君たちは実に健康だ。昨日あれだけのことがあったのに、今は食欲もりもりだ。それでこそ、私が見込んだ覇悪怒組だ」 覇悪怒組が一斉に牛乳を飲み干す。 ヒロシ「魔天郎、食事は終わった。本題に入ろうじゃないか」 魔天郎「よかろう。私の後をついてきたまえ」 覇悪怒組は中庭を抜けて、また魔天郎の仮面が架けられた扉の前に立った。 魔天郎「ヒロシ、扉を開けてごらん」 ヒロシが言われたとおりにする。 部屋の中はコンサートホールのような作りになっていて、その中心部に、黄金に輝く棒状のものが置かれている。 棒状のものに近づく覇悪怒組。それは、塔の模型だった。 ヒロシ「これは?」 魔天郎「これは1万分の1の模型だが…… これから私が建設する『光の塔』だ」 ヤスコ「光の塔!?」 魔天郎「そうだ。私が今まで幻の怪盗として宝石や金銀財宝を盗んできたのは全て、この光の塔を作らんがためだ。地下300メートル、地上1万メートル。エベレストよりも高い塔だ。これが完成すれば、日本のどこにいてもこの塔を見ることができるだろう」 サトル「なんのために、こんなでっかいものを……」 魔天郎「光の塔は君たち少年のためのものだ」 タケオ「俺たちの……?」 魔天郎「今、この世には、大人たちの悪意に傷つけられ、心を病んだ少年少女たちが大勢いる。この光の塔は、そんな子供たちの心を癒すために私が建てるのだ」 ススム「どういうこと?」 魔天郎「光の塔は全て、太陽の光子エネルギーによって作動する。模型を見たまえ。地下300メートルは5千人の子供たちを収容し、宿泊所・レストラン・プール・図書館などがある。ただ、地上1万メートルの塔の中はがらんどうで、部屋は一つもない。だが子供たちは光子エネルギーを利用した空中浮遊装置によって、この空間を自由に遊泳できるのだ」 ヤスコ「前に私たちを実験台にしたのはこのためだったのね」 魔天郎「その通りだ。子供たちは、この空間を自由にプカプカ浮遊することにより、昼は光子エネルギーをたっぷり摂り、夜は空の星々と交感して、傷つけられた心を癒してゆくのだ。心身ともにすこやかになって、再び自分たちの世界に戻ってゆくのだ」 覇悪怒組「すげえ…… 素晴らしい……」 魔天郎「覇悪怒組の諸君。どうだ、私の協力者として、この光の塔作りに参加してくれないかね」 サトル「俺たちが……!?」 サトルたち4人が、魔天郎を囲んでヒロシを見る。 サトル「ヒロシ!」 ススム「やろうぜヒロシ、素晴らしいことだしさ」 ヤスコ「ヒロシ君、私もすごく素晴らしいことだと思うわ」 しかし、ヒロシの答えは── ヒロシ「俺も、すごいことだと思う。できれは参加したい! だけど…… 違うと思うんだ」 魔天郎「ヒロシ…… 何が違うんだ」 魔天郎が静かに、しかし厳しく問いかける。 少しだけたじろぐヒロシ。 ヒロシ「俺にも、よく分かんないけど…… だけど…… 盗んだお金で、塔が建てられていいのか? 光の塔は、傷ついた子供たちが何かに祈った時、その心に見えればいいんじゃないの? 目的のためなら、どんな手段をとってもいいっていう考えには、俺はどうしても同意できないんだ」 ヤスコ「ヒロシ君……!」 ススム「ヒロシ! 俺たちも同じだよ」 4人が再びヒロシの横に並び立ち、魔天郎と対峙した。 覇悪怒組に背を向ける魔天郎。 魔天郎「『光の塔は、子供たちの心にあらしめよ』…… 素敵な考えだ」 そしてまた振り返り── 魔天郎「覇悪怒組の諸君! 私の負けだ。私は潔く、光の塔建設計画をとりやめよう」 ヒロシ「魔天郎……」 魔天郎「私はしばらく日本を離れて、私自身を鍛錬してくるよ」 魔天郎が、覇悪怒組の面々を一人ずつ、穏やかに見つめる。 魔天郎「いつの日か、再び君たちに挑戦する、その時まで…… さらばだ、諸君!!」 魔天郎の体が黄金の光に包まれた。 ヤスコ「待って、魔天郎!! あなたは…… 落合先生じゃないの!?」 魔天郎「さらばだ!!」 魔天郎が光を放ったまま宙に浮き、そして幻のように消え去る。 ヤスコ「答えて!!」 覇悪怒組「魔天郎──!!」 覇悪怒組の絶叫が、誰もいないホールにこだました。 それから程なくして── 覇悪怒組が、必死に自転車をこいで電車を追っている。 電車の中には、落合先生の姿が。 落合先生(ヒロシ、サトル、ススム、タケオ、ヤスコ。先生は急に、生まれ故郷に帰ることになった。君たちに会わずに去るのは非常に辛いが、先生は君たちには安心しておるんだよ。君たちはこの1年間、怪人・魔天郎と戦うことによって、人の喜びと悲しみを知った。心と体をたくましくして、辛いことがあっても生きる希望を決して捨てない少年に成長した! 覇悪怒組の諸君、先生はいつの日か、また君たちに会うことを楽しみにしているぞ。さらばだ諸君。さらば、さらば……) 落合先生を乗せた電車が小さくなる。 電車に向かって力いっぱい手を振る覇悪怒組。 覇悪怒組「落合先生──!! 落合先生、さようなら──!!」 覇悪怒組は泣きながら手を振り続ける。 遠くを見つめる落合先生。 そして── ヒロシ「あっ!」 電車の屋根に、魔天郎が姿を現した。 覇悪怒組「魔天郎!」 魔天郎はいつもの高笑いとともに大きく跳躍し、いつの間にか待機させていた気球の縄梯子を掴んで、空のかなたに消えていく。 覇悪怒組「魔天郎、さようなら──!!」 魔天郎を乗せた気球が完全に見えなくなる。 そして覇悪怒組も、魔天郎と落合先生との思い出を胸に、未来へ向かって走り出した。 完
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前のゲーム | 次のゲーム クリア条件:EDを見る 開始時間:2007/04/18(水) 22 38 41.82 終了時間:2007/04/19(木) 01 45 37.39 正式名称は「おもいっきり探偵団 覇悪怒組 魔天郎の挑戦状」 「覇悪怒組」と書いて「はあどぐみ」と読む。でも決して暴走族ではない。 おそらくFCタイトル中、最も画数の多いタイトルになると思われる。 1987年、フジテレビにて、日曜朝の東映不思議コメディーシリーズ枠にて放送された 「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」を元にゲーム化された作品。 東映不思議コメディーとは、石ノ森章太郎原作・東映製作の、いわゆる子供向けの 特撮番組枠のことで、1981-93年まで放送されていた。「もりもりぼっくん」 「美少女仮面ポワトリン」など、男女問わず幅広い内容であったので、 実際にその枠の放送を1つでも見ていた人は結構多いのではないだろうか? その放送枠にて87年に1年間放送されたのが「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」。 ちなみに続編として、翌年より「じゃあまん探偵団 魔隣組」が1年間放送され、 こちらの方も同様にFCDでゲーム化されている。いずれ「し」行で攻略するだろう。 原作ストーリー(ウィキペディアより転載) 竹早小学校の5年3組の仲良し5人組、ヒロシ、ヤスコ、サトル、タケオ、ススムは、 自分達が考えた「怪人魔天郎」が実際に現れた事に驚く。魔天郎から挑戦を 仕掛けられたのを機に探偵団「覇悪怒組」を結成する。やがて新任の落合先生が 魔天郎と変な所で共通点があることに気づくのだが、真偽を確かめる事が出来ない。 覇悪怒組は果たして魔天郎を捕まえられるのか? そして魔天郎の正体とは……? ゲームストーリー(ゲーム研究所3948様より転載) このところ連日のように新聞紙上はかの大怪盗魔天朗の活躍?ぶりでにぎわっている。ボクはいてもたってもいられず、竹早小学校にいる覇悪怒組のリーダー・ヒロシ君に 会いにいったんだ。そして、覇悪怒組の入団を正式に申し込んだ。 でも、初対面のこのボクを簡単に仲間にしてくれるほど覇悪怒組はヤワじゃない! ヒロシ君はボクに「君の熱意はわかった。それならば君が今回のこの魔天朗の挑戦に 対して実績をあげてくれれば、正団員として覇悪怒組に迎え入れよう。それまでは 見習い団員だ、いいね?」といってくれた。 さっそく、ボクは仮入団し、メンバーに紹介され、覇悪怒組グッズ(ハードシーバー・シュウオンサー・キンミッケル・スリリングショット・ジオラスコープ)を借りて、 魔天朗の挑戦を受けてたつべく覇悪怒組アジトを出発したのであった。 果たして、魔天朗のアジトへ潜入するための地下入口は?挑戦状に書かれていた 謎の暗号文は何を意味するのか?さらに、暗闇一族と、難かんが待ちかまえている。 だが、何としても黄金像を取り戻し、魔天朗をつかまえるのだ! つまり主人公は覇悪怒組に新たに入団したゲームオリジナルキャラクター。 ゲームを開始すると、いきなり入団テストとしてミニゲームをやらされる。 これをクリアしないとゲームが始まらないというやや面倒な仕様。 ゲーム内容はACT+謎解きADV。 詰まったり目的が分からなくなれば、とりあえず入ったことの無い建物に入るかハードシーバーを使えば情報が得られるので、あとは指示どおりに行動すればよい。 ミニゲームの内容 1.中央に4人のキャラがランダムに2回づつ表示されるので、順番を答える。 2.覆面男が投げてくるバラを拾う 操作方法 十字キー…移動 ↑で建物等に入る ↓でしゃがむ 階段・梯子の昇降も↑↓ スタート…ポーズ&アイテム選択 セレクト…セーブ画面へ A…ジャンプ B…パンチorアイテム攻撃 アイテムの種類(ゲーム研究所3948様より転載) 種類 用途 ◆◆◆◆◆◆◆ スタート時よりある物 スリリングショット 唯一、攻撃用のアイテム。敵から離れて攻撃できる。 キンミッケル 地中に埋まっている金属物を探すアイテム。金属物に近づくと、音のパルス間隔が短くなる。 シュウオンサー 小さい音や遠くの物音を察知できる。敵などが近づいてくるとパルス音の間隔が短くなり知らせる。 ハードシーバー 地上だけでしか使えないが、大事なヒントや指示を聞くことができる。 ジオラスコープ 偵察用の双眼鏡アイテム。向いた方向の一画面分先を見ることができる。 ◆◆◆◆◆◆◆ ゲーム中に捜して使う物 シークレットカード 暗号解読用アイテム。情報画面から得た暗号文の上に置いて解読する。 懐中電燈 地下ではなくてはならない物だ。自分のまわりの限られた部分を明るくする。 ロープ 侵入・脱出用のアイテム。ただし、登るだけでロープを掛けられる場所も限られている。 カギ1 どこかにある隠し部屋に入るために必要なアイテム。 カギ2 魔天朗のアジトに入るためには絶対必要なカギだ。 ◆◆◆◆◆◆◆ その他(主に学校にアリ) パン 体力回復のアイテム。1コで2ゲージ回復する。(10ゲージ回復のもある) 電池 電力回復のアイテム、取ると満たん(10ゲージ)に回復。 アイテムの使い方(ゲーム研究所3948様より転載) アイテムを選んで使うには、コントローラIのSTARTボタンを押してポーズ状態にしよう。 次に十字ボタン←→でカーソルを移動しAボタンで決定する(色が変わる)。 アイテムを換えたいならカーソルにカーソルを換えたいアイテムに合わせBボタンを押す。(キャンセル) アイテムは一度に2つまで選べる。ただし、電池を使うアイテムは、電池の表示がゼロだと使えない。 ※ポーズを解除してアイテムを使用する。 ついに魔天郎との対決? と思ったら簡単に返してくれました でも勝負はまだまだこれから? 1936年生まれの少年(?いろんな意味で)探偵誕生 わかりにくいけど歓迎の胴上げ
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登録日:2016/03/27 (日) 22 51 23 更新日:2024/03/27 Wed 10 44 11NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 おもいっきり探偵団 覇悪怒組 不思議コメディシリーズ 哀しき悪役 少年色のメロディ 怪人 怪人魔天郎 怪盗 怪盗紳士 摩天楼のヒーロー 春田純一 本編より先に立った項目 東映不思議コメディーシリーズ 秋野太作 覇悪怒組 魔天郎 黄金仮面 私は、蜃気楼の国からやって来た幻の怪人・魔天郎! 悲しみの涙は夢のかけらに流し込め! 怒りの涙は炎と燃やし火の鳥となって空を渡れ! 君達の挑戦を待っているぞ! ◇◆魔天郎◆◇ M A T E N R O U 演・声 秋野太作 演 春田純一(スーツアクター) 怪人「魔天郎(まてんろう)」は、1987年(昭和62)にフジテレビ系日曜朝9時に放映されていた東映製作の不思議コメディシリーズ第7弾『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』に登場してくるキャラクター。 同作のシンボル的な存在であり、実際に当番組が高い視聴率を誇る人気作品であった事もあってか、現在でも人気は高い。 当時を知るファンからも「流石に番組の詳しい内容までは忘れてしまったが、魔天郎の事だけは覚えている」という声が聞かれる位のインパクトを当時の少年少女に残した。 その人気は高く、ソノラマ文庫からスピンオフ小説「怪人魔天郎」(著:飯野文彦)も出るほど。 巷を騒がす怪盗紳士にして主人公であるヒロシ達「覇悪怒組(はあどぐみ)」の宿敵として、子供達への挑戦を繰り返す魔天郎の目的とは……? 【解説】 日本では江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズから続く怪盗紳士の系譜に属する、由緒正しい“怪人”である。 黄金の仮面にシルクハット、黒いスーツとマントに赤い薔薇という普遍的なデザインは、世代を越えた人気を魔天郎に獲得させたと言われる。 名前の由来は主題歌「摩天楼のヒーロー」からも解る様に、超高層建築の古い呼び名である摩天楼から。 これらのコンセプトは「少年探偵団」シリーズ+少年少女の成長を描くジュブナイルと云う、 番組コンセプトをそのまま体現したと呼べるものであり、魔天郎を不思議コメディシリーズ随一のダークヒーローとして記憶させているのだと云う。 【概要】 竹早小学校5年3組でも一番の問題児ヒロシ、サトル、タケオ、ススム。 彼ら四人が担任の落合先生に叱られた際、「ド肝を抜くようなでっかいことが出来んのか」と言われたことで自主製作映画を創作。 ヒロシが自身のパソコンで作成した架空の怪人が、「魔天郎」であった。 クラスメートで放送部のヤスコと弟のシンスケを巻き込ませたヒロシらは、理科の授業中に完成した映画「怪人魔天郎」を放送。 クラスはバカ受けだったがヒロシたちはこっぴどく叱られてしまう羽目になった。 その夜、その魔天郎が現実に出現。生みの親である筈のヒロシのパソコンを盗み取り、ヒロシ達に挑戦状を叩きつけて来た。 自らを“蜃気楼の国の住人”と称するその姿は、前述の様に正に探偵小説や漫画から抜け出して来たような“怪人”の姿をしている。 因みに、衣装はヒロシ達が自作していた時とデザインは変わっていないのだが、流石に小学生と大人ではコスチュームの出来に雲泥の差があった。 【能力】 変幻自在の変装術と、魔法としか呼べないような手品や大仕掛けを駆使して警察をも翻弄。 数々の財宝や秘宝を鮮やかに盗み出し、高笑いと共に気球に掴まって空に消えてゆく、まさに“怪人”に相応しき振舞い方が特徴。ただし罪もない者をむやみに傷付ける事はしない。 そんな魔天郎だが、何故かヒロシ達が魔天郎の挑戦を受けて結成した「覇悪怒組」には何かしらの意図をもっており、とりわけ子供達の勇敢さに執着するかの様にして挑戦を繰り返していた。 その正体については、物語の開始当初から“何か怪しい”5年3組の新担任の落合先生(演 秋野太作)ではないかと疑われていたが……。 その明確な正体は誰が何と言おうとも、最終回まで明かされる事は無かった。 この「最後の最後まで正体不明だが誇り高き怪人」と言うコンセプトは、次回作『じゃあまん探偵団 魔隣組』の大怪盗ジゴマへと受け継がれている。 赤い薔薇や自らのシンボルが描かれたカードを飛ばす御約束めいた得意技がある他、 覇悪怒組が本物の悪人に捕らえられた際には「怒り仮面」なる戦闘形態をとって、ムチを武器に悪人を懲らしめた事もある。 『探偵団スペシャル 魔隣組対覇悪怒組 ジゴマVS魔天郎』ではパンドラの箱を狙っていたところでジゴマを待ち構えていた魔隣組と遭遇、更にジゴマも現れて、怪盗怪人同士の対決を繰り広げるも、箱の鍵を魔隣組に奪われた事から一時休戦する事に。更に箱を狙う悪人・左文字博士も出現し、鍵を守ろうとする魔隣組&覇悪怒組と3つ巴の戦いが繰り広げられる。 この時は、薔薇から炎を出す術を使用し、ジゴマステッキから冷気を出すジゴマに対抗していた。 何人かの部下を連れて行動する事も多かった。 基本的には悪漢として振る舞う一方、上記のように覇悪怒組を助ける事もあれば、 覇悪怒組の面々が間違った方向に進んだ時には手厳しい方法で灸を据える事もあった。 ミステリアスな存在感を見せつける一方で、「ダンディな私」「私の仕事は完璧だ」などと自画自賛したり、有刺鉄線にマントを引っかけて剥がした際に指を怪我する、棒高跳びで塀を飛び越えて逃走したらその先にあった池に落ちる(*1)といったドジを踏む一面も見られた。 これら、覇悪怒組との関係はいい意味でも悪い意味でも子供に強い影響を与えてしまう“大人”の姿の投影と縮図なのだとも言える。 登場時には専用のBGMが流れるが、48話でこのBGMが流れた際、その場にいる全員が反応した(サトルに至っては「この曲は!?」と発言している)事から、このBGMは視聴者だけでなく作中の人物達にも聞こえているようだ。 覇悪怒組との丁々発止のやり取りでは、遊んでいるようにすら見える魔天郎だが、 それと同時に莫大な財宝を集め続け、何かしらの行動を起こそうとしている。 ……果たして、魔天郎の最終目標とは? 以下、ネタバレにつきステルス。 魔天郎の目的は、大人達の悪意に傷つけられた子供達の心を癒す施設・光の塔を建設する「MTR計画」だった。 光の塔は太陽の光子エネルギーで作動する塔で高さ10000m、地下300m(*2)に及び、地下に5000人の子供達を収容し、宿泊所、レストラン、プール、図書館等の施設があり、地上部分はがらんどうになっていて、子供達は空中浮遊装置で空間を浮遊する事で、昼は光子エネルギーを全身に浴び、夜は空の星々と交感して心の傷を癒し、心身共に健やかになって元の世界に帰って行くというものだった。 魔天郎は塔の建設に協力するように覇悪怒組を誘うも、ヒロシの「盗んだ金で塔が建てられて良いのか、光の塔は傷付いた子供達が何かに祈った時に、心に見えれば良いのでは、目的の為にどんな手段を取っても良いという考えには同意できない」という考えを聞かされた事で、負けを認めて塔の建設をやめ、日本を離れて自身を鍛錬し、いつの日か再び挑戦する事を宣言して姿を消した。 その後、故郷に帰る落合先生の乗った電車を覇悪怒組が見送っていると、魔天郎がその電車の屋根の上に出現し、そこから頭上の気球に飛び移って去っていった。 【関連人物】 ■覇悪怒組 竹早小学校5年3組の仲良し5人組で結成された少年探偵団。名前の由来は「ハードボイルドな探偵」 魔天郎は、序盤では彼らを「君」付けで呼んでいたが、次第に呼び捨てが多くなった。 5人組のバランスは、製作会社である東映の戦隊シリーズを意識したものなのだろう。 尚、当作は次回作の『魔隣組』と並び、不思議コメディシリーズでは歴代最高視聴率2位の記録を持ち、覇悪怒組と魔隣組の共演スペシャルまで放送された経験がある。 ■落合先生 不自然なタイミングで竹早小学校に赴任してきた、5年3組の新担任。 同僚の純子先生にアプローチをしてはフラレるのを繰り返したりと、うだつの上がらない三十男に見えるのだが、 まだ担任になる前からヒロシ達の姿を監視していたり、魔天郎と同じ場所に怪我をしていた例が何度かあったり、魔天郎出現中は行方不明になっていることが多かったりと怪しい行動が多い。 その為、劇中でも早い段階から覇悪怒組に「魔天郎」の正体として疑われたりもしたが、先生と魔天郎が同時に出現した事や、 覇悪怒組やその家族、周囲の人間達と落合先生の絆が深まる中で、終盤までには「魔天郎の正体として落合先生を疑いたくない」との想いや葛藤が生まれていった。 ……尚、演じた実力派俳優の秋野太作氏は特殊メイクをして魔天郎が変装した怪人物をノリノリで演じていたりするが「正体隠す気ねーだろwww」……とかは言ってはいけない。 ■辛切警部 魔天郎を捕らえる事に執念を燃やす警察庁捜査二課の警部。だが捜査の腕はイマイチ。タケオの父とは幼馴染。 20年前、東京美術館の警備中にアメリカマフィアに美術品を盗まれた事からエリートコースから外れ、結婚もできなかったという過去を持つ。 魔天郎は彼のガッツを評価しており、前述の美術品を見つけて彼に返してあげた事がある。 だが失敗続きな為か、警視総監から直々にとらばーゆ(転職)を勧められたショックから、自分を心配するススムの心を利用して魔天郎を捕らえようとした事で魔天郎に同情され、「警察官が犯罪者に同情されるようになったらおしまい」と退職を決意、屋台「からきりラーメン」を開いた。 登場話は9、14、15、22、40話の計5話と少ない。 さらばだwiki籠りの諸君! 君達の追記修正を待っているぞ! ● 立 ■ △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 子供心に怪獣や改造人間とは違ったまさに「怪しい人」然とした姿が魅力的だった -- 名無しさん (2016-03-28 02 33 42) この手のキャラは今のテレビにはいないんだよなぁ…善とも悪とも言い切れない謎の存在は素敵だ -- 名無しさん (2016-03-28 08 54 58) この番組、そんなに視聴率良かったのか… -- 名無しさん (2016-03-28 22 38 14) なんか、探偵団の誰かが勉強してなかったのかと呆れてた場面で落合先生じゃないのかって匂わせたりもしてた。 -- 名無しさん (2016-11-23 12 08 48) 結局最後まで正体わかんなかったんだよな。多分落合先生だろうという感じで。 -- 名無しさん (2021-02-02 09 11 28) 落合先生が純子先生に真実を告白する場面はあるけどあくまでも視聴者の創造にゆだねるって感じで「僕が魔天郎なんです」って直接言う描写を避けてるのが意外だった -- 名無しさん (2022-02-26 18 41 19) 名前 コメント
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おもいっきり探偵団 覇悪怒組 毎週日曜09 00~09 30(CX) 視聴率はビデオリサーチ調べ(関東地区) 参考資料 テレビ視聴率季報 【表組】 # サブタイトル 放送日 視聴率 01 怪人魔天郎現わる! 1987/01/11 15.2% 02 ぼくらの秘密基地 1987/01/18 15.4% 03 恐怖の地底探検 1987/01/25 15.7% 04 謎の怪物屋敷 1987/02/01 14.4% 05 空を飛ぶ怪人 1987/02/08 14.3% 06 透明人間 1987/02/15 18.5% 07 ぼくのパパは魔天郎 1987/02/22 16.8% 08 タコと魔天郎 1987/03/01 15.5% 09 宿敵!辛切警部現る 1987/03/08 17.1% 10 黄金の万手観音 1987/03/15 16.6% 11 タイムマシンの秘密 1987/03/22 12.2% 12 食物のない世界 1987/03/29 15.8% 13 魔天郎の大魔術 1987/04/05 14.9% 14 妖怪千年婆あ~ 1987/04/12 17.3% 15 魔術師テンオー 1987/04/19 16.4% 16 先生は大変人間 1987/04/26 14.7% 17 危険なサイクリング 1987/05/03 17.8% 18 優しさ泥棒 1987/05/10 16.3% 19 怒り仮面登場!! 1987/05/17 18.3% 20 怒り仮面の逆襲 1987/05/24 18.6% 21 魔天郎の子守唄 1987/05/31 12.6% 22 辛切警部の罠 1987/06/07 15.9% 23 仕返し戦争 1987/06/14 17.1% 24 デート停戦 1987/06/21 16.9% 25 白骨村の伝説 1987/06/28 16.8% 26 宇宙からの使者 1987/07/05 17.3% 27 オルゴールの屋敷の少女 1987/07/12 19.0% 28 忍者志願 1987/07/26 15.0% 29 シークレットカードの謎 1987/08/02 14.8% 30 魔天郎からの招待状 1987/08/09 13.7% 31 怪奇!竹林寺の妖女 1987/08/16 9.9% 32 燃えろ!落合先生 1987/08/23 15.3% 33 さらば夏の魔天郎 1987/08/30 15.2% 34 花盗人は魔天郎 1987/09/06 15.9% 35 水飲み男 1987/09/13 18.2% 36 魔天郎の宝物 1987/09/20 13.1% 37 魔天郎の迷宮ゾーン 1987/09/27 14.7% 38 ロマンスは甘き香り 1987/10/04 13.9% 39 哀しみの魔天郎教 1987/10/11 14.9% 40 辛切警部のある決断! 1987/10/18 15.6% 41 ママは名探偵!? 1987/10/25 16.3% 42 ヤスコの冒険 1987/11/01 14.4% 43 魔天郎はグルメ 1987/11/08 16.0% 44 狸ばやしに誘われて 1987/11/15 18.0% 45 落合先生を閉じ込めろ 1987/11/22 18.3% 46 君は勇気を見たか 1987/11/29 14.2% 47 魔天郎の誘惑 1987/12/06 17.1% 48 田園調布博士の野望 1987/12/13 14.3% 49 いざ、魔天郎王国へ 1987/12/20 19.6% 50 さらば魔天郎 1987/12/27 16.2% 平均視聴率 15.84% 最高視聴率 19.6% #49…1987/12/20放送 最低視聴率 9.9% #31…1987/08/16放送 prev 不思議コメディ next もりもりぼっくん おもいっきり探偵団 覇悪怒組 じゃあまん探偵団 魔隣組 視聴率一覧へ戻る トップページへ戻る
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今日は日曜日。 ヒロシの家では、足を骨折したヒロシの父が退屈そうにしている。 そこへヒロシの母が紙の束を持ってきた。 ヒロシの母「あ~、もうやだ! あなた、ねぇこれ見てよこれ。ヒロシったら、1学期のお知らせやテスト、こんなに詰め込んだまんまなのよ」 ヒロシの父「どれどれ、ちょっとテスト見せてごらん」 ヒロシの母「見たらびっくりしますわよ」 ヒロシの父「国語が…… 60点か。うーん、70点は行かんとなぁ…… 算数が55点、ひどいなぁ。社会が70点…… うん、こりゃまあまあだな。えー、理科…… 45点!? うーん……」 ヒロシの母「うーんってあなた、もう、唸ってる場合じゃないでしょ? こんなことじゃ中学に行ったらどうなると思ってるんですか」 ヒロシの父「しかしな、中学に行って伸びる子もいるわけだし……」 ヒロシの母「あのねぇ、小学校でできない子が中学行って伸びるわけないじゃないですか」 ヒロシの父「何言ってるんだ。中学に行って急激に、10センチ・20センチと伸びる子は大勢いるぞ」 ヒロシの母「私は勉強の話をしてんです」 ヒロシの父「勉強も同じ。伸びないわけない。ヒロシは私の子ですよ」 ヒロシの母「だから信用できないんですよ。酔っぱらって駅の階段踏み外して、骨折するような人の子ですからねぇ」 ヒロシの父「ちょっ、なんだ! コラ!」 ヒロシがリビングに降りてくる。 ヒロシ「行ってきまーす」 ヒロシの父「待てヒロシ! 日曜日ぐらい家で勉強したらどうだ」 ヒロシ「ヤスコの家でみんな集まって、宿題することになってんだ」 ヒロシの父「うん、よろしい。行きなさい」 ヒロシ「行ってきまーす」 ところが、ヒロシはヤスコの家には行かず、ススム、サトル、タケオと一緒にフェンスで隔てられた町はずれの廃屋を覗いていた。 サトル「あの小屋だな」 ヒロシ「そうだ」 水飲み男 ヒロシ「ずーっと誰も住んでなかったのにさ、一週間ぐらい前から、ボロっちい服を着た変な男が住み始めたんだ」 ススム「そいつ、何やってんだよ」 ヒロシ「なんにもやってるもんか! 朝から晩まで、水ばっかり飲んでるんだ」 タケオ「朝から晩まで!?」 ヒロシ「うん。俺、覗いて見たんだ」 サトル「食べ物を買うお金がないんだな?」 ヒロシ「そうに決まってるさ! だから俺は、奴のことを『水飲み男』って呼んでるんだ」 サトル「水飲み男か。そりゃいいや、ははは!」 ふいに廃屋のドアが開き、件の「水飲み男」が顔を出す。 隠れる4人。 サトル「ヒロシ、面白いってこのことか?」 ヒロシ「待てよ、本番はこれからさ。みんな、手ごろな石を2・3個拾っとけよ」 タケオ「石を拾って、どうすんだよ」 ヒロシ「バーカ、投げるに決まってるだろ。窓ガラスに命中すると、水飲み男が飛び出してきて、ものすごい勢いで追いかけてくるからさ。そしたら逃げるんだ」 ススム「スリルあるじゃん」 ヒロシ「捕まったら、2・3発ぶっ飛ばされる覚悟だけはしとけよ」 サトル「よし、やってやろうじゃんか。目標は30メートルってとこだな」 サトルが石を投げる。 石は廃屋まで飛ばず、フェンスのすぐ近くに落ちている段ボール箱に当たった。 ヒロシ「そう簡単には命中しないって」 覇悪怒組「よーし、えいっ!」「よいしょ!」「ヒロシ、もうちょい右、右!」 次々に石を投げ始める4人。 騒ぎを見た近くの主婦が、竹早小学校に通報する── とうとう投石が廃屋の窓ガラスに命中。窓ガラスが割れる。 ヒロシ「よーし!」 覇悪怒組「やったぁ!」 ヒロシの言った通り、すぐさま水飲み男が飛び出す。 水飲み男「こらぁ!」 ヒロシ「逃げろ!」 公園に逃げ込んだ覇悪怒組を捕まえようとする水飲み男だが、4人は遊具をうまく使って立ち回る。 水飲み男「どこ行ったぁ!」 水飲み男が見えなくなったところで、隠れていた4人が顔を出す。 ヒロシ「どうだ? 面白いだろ!」 ススム「最高最高、スリルだらけじゃん!」 サトル「ヒロシ、またやろうぜ!」 ここで、サトルがヒロシの背後に誰かが立っていることに気づく。 ヒロシ「あたりきよ!」 その「誰か」が、ヒロシの肩を叩いた。 タケオ「あっ、教頭先生!」 教頭先生「逃げても駄目っ! あーたたち、現行犯逮捕です! 職員室へいらっしゃい」 一方、ヒロシの家にはヤスコが来た。 ヤスコ「こんにちは」 ヒロシの母「はい…… あれ? ヤスコちゃん」 ヤスコ「ヒロシくん、いますか?」 ヒロシの母「ヒロシはヤスコちゃんの家で勉強するって言って出てったのよ?」 ヤスコ「えっ?」 ヒロシの父「あいつ、またどこかで悪さを……」 電話が鳴る。 ヒロシの母「はいもしもし、黒樹でございます…… えっ? あっ、ちょっとお待ちください…… あなた、学校から」 ヒロシの父「えっ!? ……あっ、もしもし、電話代わりました。ヒロシの父ですが、ヒロシが何か…… はあ。はあ…… なんですと!? ヒロシが民家に石を投げて、窓ガラスをガチャンと!? ……いや、あぁ…… お母さん、ちょっと電話代わって」 ヒロシの母「えっ!?」 ヒロシの父「いや、は、早く……」 ヒロシの母「都合の悪いことは全部私に押し付けるんだから、っとに! ……もしもし、あっ、あの、誠に申し訳ございません。ただいま、あの、お詫びに至急そちらに参上いたします……」 竹早小学校── 教頭先生「あんたたち…… わかってるわね?」 覇悪怒組「はい」 ヒロシの両親とヤスコが職員室に駆け込む。 ヒロシの父「ヒロシっ! このバカたれ!! 父はお前に、他人の家に石を投げよと教えしか!」 ヒロシの母「あなた、いつの時代の言葉使ってるんですか」 ヒロシの父「いや、わかってる…… ヒロシ! 誰だって、自分の家に石を投げられるのは嫌なもんだ。お前、自分の家に石を投げられてみろ。そこんとこ考えろ!」 ヒロシ「わかってるよ、そんなこと……」 ヒロシの母「わかっててどうしてやったのよ!」 ヤスコ「あんたたち、覇悪怒組のメンバーなのよ? 恥ずかしいと思わないの!?」 ヒロシ「うるせー女」 ヒロシの父「ヒロシ! お前なぁ、悪いとわかっていてなぜやった? 答えてみろ! 返答次第によっては……」 そこへさらに、落合先生が入室。 落合先生「まあまあまあ、お父さん。おっ、どうなさいましたその足は」 ヒロシの父「いや、あの、これは…… ちょっと……」 落合先生「ああ、そうですか…… おい、野郎ども。休みだというのに先生を休ませてはくれんなぁ、ああん? どうだ、面白かった?」 覇悪怒組「面白かった」 落合先生「そうなんだよ、あれは面白いんだよ! 先生もお前たちの頃なぁ、よく石を投げて追いかけられてなぁ、田んぼの中這いずり回って逃げたりしたもんだよ、うん! あれは面白い、うん。お父さんもどうですか、よくやりませんでしたか?」 ヒロシの父「えっ、私!? ……私だってやりましたよ!」 落合先生「そうでしょ!?」 ヒロシの父「これでねぇ、なかなかのわんぱくでしたからねぇ。一度ならず二度・三度、もう捕まったら最後だと思って必死に逃げたもんですよ」 落合先生「それで駆け足が速くなったりしましてなぁ」 教頭先生「落合先生!! 教師たるものがなんですか!」 すっかりゆるみきった2人を教頭先生とヒロシの母が諫める。 平身低頭の落合先生。 落合先生「申し訳ございません、どうも……」 教頭先生「……とにかく、民家に石を投げるということは道徳的に許されることではございません。今から、そのお家へ行って謝罪をしてきていただきます」 その頃、水飲み男は公園の水を飲んでいた。 落合先生と覇悪怒組、ヒロシの両親が廃屋を訪ねる。 ヒロシの父「この家か…… おっ、こりゃひどい。窓ガラスがめちゃくちゃだ」 ヒロシの母「ここはだいぶ前から誰も住んでないはずなんですよ?」 ヒロシの父「うーん…… 家のない人が勝手に住み着いてんじゃないかなぁ」 落合先生「ごめんください」 落合先生が扉を叩くが、反応はない。 ヒロシの母「誰もいないじゃないの」 ヒロシの父「私たちに見つかっちゃ具合が悪いんで、逃げ出したんじゃないか? どうせ不法侵入者に決まってるよ……」 落合先生「失礼して、入らせてもらいますよ?」 内部に踏み込む落合先生。しかし、中には誰もいない。 机の上や棚には水がなみなみと注がれたコップやどんぶり、実験器具、そして紙の束が置かれている。 その表紙には「水道水のカルキの量と味の違い」の文字──論文か何かのようだ。 ヒロシの母「帰りましょうよ…… 気味が悪いわ」 ヒロシの父「うーん、そうは言っても学校の手前があるからなぁ…… 謝るだけはきちんと謝っておかないとね、うん」 ヒロシの父が扉の前に立った。 ヒロシの父「どうも、えー、どうも! この度は、息子と友人連中が大変ご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ありません。えー、二度とこのようなことはさせませんので、どうかお許しください。ヒロシ、君たちも、いいね?」 覇悪怒組「はい……」 ヒロシの父「おお、そうか、よしよし。じゃあ行こう」 ヒロシ「なんか父さん、調子いいんだよなー、大人って」 ヒロシの父「いや、だって当人がいないんだから仕方ないじゃないか。ねぇ」 ヒロシ「当人に謝らないとさぁ…… 相手はボロっちい男だけど、俺たちが悪いことしたのは本当なんだし……」 ススム「ボロっちい男が怒って飛び出してくるの、面白かったんだけどなぁ」 落合先生「ちょっと待て」 落合先生の剣幕が一気に変わった。いつものとぼけた雰囲気は消え失せ、その声色はまるで別人のように怒気に満ちている。 落合先生「お前たち、相手がボロっちい姿をしていたから、面白がって石を投げたのか」 ヒロシたちはうつむいて何も言わない。 落合先生「そうなんだな!?」 ヒロシ「……はい、そうです」 落合先生「馬ぁ鹿者ぉ!!」 落合先生がヒロシたちの頭を何度も叩く。 ヒロシの母「落合先生、何をするんですか!」 落合先生「だまらっしゃい! 不肖・落合、多少の子供たちのいたずらぐらいでは怒りませんよ。しかし、ボロっちい姿をしていたから石を投げたというのは、断じて許しませんぞ!! おいお前たち、当人を見つけて、誠心誠意謝ってこい!!」 ヒロシの父「いや、しかし落合先生…… もし相手が凶悪な男でしてね、子供たちに危害を加えたらどうしますか!」 落合先生「謝ることがまず先決です!」 ヒロシたちの背中を押す落合先生。 落合先生「行ってこい! 行けっ、この!! 早く歩けっ、コノヤロ!!」 しぶしぶ謝りに行くヒロシたち。 ヤスコ「ヒロシくん、私も行くわ……」 ススム「ヒロシ、どこ探しゃいいいんだよ?」 ヒロシ「水があるところを探すんだ」 サトル「いるかなぁ」 覇悪怒組は各地の水場を回り始めた。 ススム「ねぇ、おじさんおじさん!」 作業員「あん?」 サトル「水飲み男、見なかった? こういうの」 サトルが水を飲むジェスチャーをする。 作業員「はぁ? 知らねぇなぁ」 ヒロシ「二手に分かれよう」 ヒロシとヤスコはガソリンスタンドの洗車コーナーと神社の手水鉢、ススム・サトル・タケオは古いポンプのある場所を調べたが、水飲み男を探すことはできなかった。 5人が再度合流したその時、公園で水を飲む水飲み男を見つける。 ヒロシ「あっ、いたぞ!」 ヒロシと水飲み男の目が合う。 ヤスコ「ヒロシくん、きちんと謝るのよ?」 ヒロシ「わ、わかってる……」 水飲み男に近づく覇悪怒組。 水飲み男「来たな、小僧たち…… 捕まえてやるぞっ!」 水飲み男が覇悪怒組を追い回す。覇悪怒組はとても謝罪どころではなくなり、必死に逃げた。 ススム「ああ、もうダメだ……」 ヤスコ「追ってくるの、諦めたみたい」 タケオ「助かったぁ…… 殺されるかと思ったよ」 ヒロシは4人と別れ、家に帰った。 ヒロシの家の庭で、水飲み男が水を飲んでいる。 ヒロシ「あ、あの…… その…… 俺、あっ、僕……」 水飲み男「……小僧、また石投げにおいで。ん? ひっ捕まえてやるからな」 水飲み男は笑いながら去っていった。 ヒロシ「なんだ、あいつ! せっかく謝ってやろうと思ったのに。そっちがそうなら、謝ってなんかやるもんか!」 その夜、ヒロシは悪夢にうなされていた。 夢の中で、ヒロシは「ボロっちい姿」をして、疲労困憊になりながら魔天郎に石を積まされている。 魔天郎「ヒロシ、手を休めずに石を積め!」 魔天郎が、手にした鞭でヒロシを冷酷に打ち据え、積まれた石の山を蹴り崩す。 ヒロシ「冗談じゃないよ! どうして俺がこんなことしなくちゃなんないんだ!」 魔天郎「黙れっ!!」 ヒロシ「答えろ魔天郎! なぜだ!?」 魔天郎の鞭が飛ぶ。 ヒロシ「やめろ、やめてくれ!! やめろ──!!」 ヒロシが目を覚ました。顔中に汗が浮かんでいる。 ヒロシ「そうか…… 夢の中で俺が魔天郎に罰を受けたのは、ボロっちい姿をしてるというだけで石を投げたからだ。そんなの人間として一番卑怯だもんな。魔天郎と戦う資格なんてないもんな……」 窓の外では、魔天郎が何も言わずヒロシの呟きを聞いている。 ヒロシ「わかったぜ、魔天郎! 俺、あの人に謝るよ。謝って、魔天郎と互角に戦える男になってやるぜ!」 その言葉を聞いた魔天郎は、満足げに去っていった。 翌朝── ヒロシ「母さん、米少しもらうよ」 ヒロシの母「ん?」 ヒロシ「行ってきまーす」 ヒロシの父「おい、ヒロシ!」 ヒロシの母「あなた…… 今度は何やらかす気かしら」 ヒロシは仲間たちの家を次々に尋ね、食料を集めさせた。 ヤスコ「ヒロシくん、果物持ってきたけど、どうする気?」 タケオ「俺んちの冷蔵庫に、ハムしかなくてさ」 ススム「ヒロシ、説明しろよ」 サトル「キャンプでもやるつもりか?」 ヒロシ「……水ばかり飲んでたら、体、もたねぇよ。病気になっちまうよ」 ススム「えぇ?」 サトル「何!?」 ヤスコ「あの人のことね……」 ヒロシ「そうだ。俺、夢ン中で魔天郎に鞭でぶっ叩かれたよ……」 ヤスコ「夢の中で?」 ヒロシ「俺たち、面白がって石を投げたんだけど、投げられた方はたまんねぇよな。ものすごく、傷ついたと思うんだ。そこんとこ考えろって、魔天郎に言われたんだと思う」 ヤスコ「そう…… それでこの食料を……」 ヒロシ「お詫びの印さ。吹っ飛ばされてもいいから、謝ってスカッとしようぜ!」 覇悪怒組「うん!」 覇悪怒組は再び廃屋を訪ねた。 ヒロシ「ごめんください、俺たち、石を投げた……」 ススム「いねぇな」 ヒロシ「中で待とう」 先日訪れた時には見向きもしなかった机の上の水に注目する覇悪怒組。 サトル「おい、見ろよ。水の器に全部ラベルが貼ってあるぜ」 タケオ「これは昨日、多摩川から採った水だ」 ヤスコ「もしかしたらあの人は、水の研究をしている人じゃないかしら?」 落合先生「その通りだ」 落合先生が、水飲み男を連れて現れた。 覇悪怒組「先生!」 落合先生「このお方は、政府の要請を受けて日本全国の水の汚染調査をしておられる、京都大学の神(じん)保(ぼ) 太(た)郎(ろう)博士だ」 ヒロシ「は、博士!? そんな……」 神保博士(水飲み男)「水はすべての生き物の源だ。その水が今、日本中いたるところで汚されとる。放っておいたらどういうことになるか、私は心配なんだよ」 落合先生「お前たち、人を見かけや着ているものだけで判断したらダメだぞ! 人間の価値を決める基準は、その人が、どれだけ多くの人のことを考え、多くの人の役に立とうとしているかだ。人間と自然との未来を、深く考えているかどうかだ。いいか、お前たち、仕事に夢中な人間というものは、外見など気にはしないものだ」 ヒロシ「はい! 俺たちもそう考えて…… 石を投げたりして、すいませんでした!」 覇悪怒組「すいませんでした!」 神保博士「ははははは、君たちとの鬼ごっこ、実に楽しかったなぁ」 サトル「楽しかった? あんなおっかない顔して追っかけたくせに……」 神保博士「当たり前だ! 私が苦心して集めた水を、君たちの石ころでめちゃくちゃにされたらたまらんからな」 神保博士が、フラスコの中の水をコップに注ぐ。 神保博士「どうだ。この水、みんなで飲んでみないか」 「水の汚染調査」という言葉から、注がれた水が少なからず汚染されていることを想像し、逡巡する覇悪怒組。 落合先生が助け舟を出す。 落合先生「神保先生はな、君たちがどんなに飲んでも、おなかを壊したり病気になったりしない、おいしくてきれいな水を研究しているんだ」 コップの水を一息に飲み干す落合先生。 それを見て、覇悪怒組も恐る恐る水を飲み始めた。 (続く)
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覇悪怒組の通う竹早小学校5年3組は、二学期の終業式を迎えていた。 落合先生が訓示を述べる。 落合先生「諸君! 明日からは、冬休みだ。1月10日の三学期の始業式まで2週間、勉強するもよし、遊ぶもよし! どっちにしろ、しっかりとやることだ。寒いからと言って、こたつでぬくぬくしているような奴はろくなもんじゃないぞ! 寒い時こそほど、よく体を動かし、頭脳を鋭く研ぎ澄まさせろ? 冷たい北風の中に身を置くと、体がさーっと緊張して、遙かなるものに挑戦しようという気持ちがぐーっと強くなるんだな。冬こそ諸君、体の芯を明々と燃やし、夢をともせ!」 ススム「いいぞ先生、その調子!」 落合先生「先生は、梅の花が好きだ」 ヤスコ「私も好きです」 落合「梅の花はいいものな…… 梅の木は、寒い冬の中で、冷た~い雨や雪に打たれながらも、じーっとつぼみをため、やがて来る春を待ち続けるんだ。先生がすごいな~と思うのは、梅の木は春が来ることを信じて疑わないことだ! 必ず春が来ると信じているからこそ、どんなに辛い冬の寒さにも耐えられるんだ。途中でヤケクソになって、つぼみを放り投げたりは決してしないということだ。春が来ると、待ちかねたように、木いっぱいに可憐な花を咲かせるんだ! 素晴らしいじゃないか! 諸君、先生は諸君に、梅の木になってもらいたいと思っているんだ」 タケオ「梅の木に?」 落合先生「そうだ、梅の木だ! 春は必ず来ると信じて、どんなに辛いことにも耐えられる精神を、諸君に持ってほしいということだ。諸君、先生は冬休みの間に、諸君が一段とたくましくなることを心から祈っている」 ヒロシ「なんだよ先生、まるで別れの挨拶みたいなこと言うじゃないか」 落合先生「そんなことはないぞ? 先生は1月10日に、一段とたくましくなった諸君の姿を見たいと思っているんだ。それまで、しばらくのさらばだ」 チャイムが鳴る。 「バサラ、バサラ」とつぶやき、手を振りながら教室を去る落合先生。 ヒロシ「落合先生!」 ヒロシが急に立ち上がる。 サトル「ヒロシ、どうしたんだよ」 ヒロシ「あ…… うん、なんでもないよ」 我に帰ったように着席するヒロシ。 いざ、魔天郎王国へ 覇悪怒組はいつも通り5人で下校中。 だが、ヒロシの表情は相変わらず優れない。 サトル「ヒロシ、さっきっからおかしいぞ」 ヒロシ「うん、変な気分なんだ。俺な、落合先生には、もう二度と会えないんじゃないかって…… そんな気になっちまったんだ」 ススム「バ、バカ言え!」 タケオ「そうだよ。そんなことあるわけないんじゃないか?」 ヤスコ「考えすぎよ、そんなの」 ヒロシ「そうだよな。俺の考えすぎだよな」 ヒロシが気持ちを切り替えて4人に向き直る。 ヒロシ「どうだ、みんな! 順子先生を誘ってさ、これからみんなで落合先生のアパートに押しかけないか? みんなで料理を作ってさ、一緒に飯を食おうぜ」 さっそく5人は分かれて食材を買い集め始めた。 ヒロシは精肉店、タケオはパン屋、ヤスコは順子先生を連れてスーパーへ。ススムとサトルは自宅(*1)のあまりものを持ってきた。 6人が落合先生の住んでいるアパートの玄関先に集合する。 サトル「順子先生! 来てくれたんですね!」 順子先生「そりゃあ来るわよ! 落合先生は普段ろくなものを食べてないから、栄養バッチリつけさせてあげなくっちゃ」 ススム「もう花嫁気分!」 順子先生「ススム君ったら、おませなんだから」 ススム「照れてやんの!」 順子先生をはやし立てながら落合先生の部屋まで向かう5人。 が── 旅にでますのでしばらく留守にします 落合 ドアの前には張り紙が。 ススム「せっかくみんなで来たのにさぁ」 サトル「みんなで上がって、料理作って食べちゃおうか?」 ヤスコ「鍵がないわよ」 順子先生「鍵なら…… 私が預かってるけど」 順子先生が部屋の鍵を取り出す。 ススム「あっ、……通い妻!」 またもはやし立てるススム、サトル、タケオ。 ヒロシとヤスコもニヤニヤ笑っている。 順子先生「そんなんじゃないのよ! まさかの時のために預かってほしいと頼まれたのよ」 それを聞いたヒロシの表情が変わる。 ヒロシ「順子先生、その鍵、貸して下さい」 ヒロシが前に進み出た。 順子先生「ヒロシ君? どうするつもりなの?」 ヒロシ「落合先生が魔天郎かどうか、調べたいんです」 ヤスコ「ダメよ、ヒロシ君!」 ヒロシ「だけど絶好のチャンスじゃないか!」 ヒロシが順子先生の手から鍵を奪い、鍵穴に入れる。 順子先生「ヒロシ君!」 ヒロシは順子先生を無視してドアを開けた。 落合先生の部屋の中は整然としている。 ヒロシ「みんな、落合先生が魔天郎なら、何か証拠があるはずだ。みんなで手分けして探してくれ」 ススム、サトル、タケオ「おう!」 流し場の食器棚やトイレの中に至るまで、部屋中をくまなく漁る覇悪怒組。 順子先生はそれを不安げに見つめている。 ススムが押し入れを開けると、落合先生の洗濯物が雪崩のように落ちてきた。 ススム「うわー、きったねぇ! 落合先生、全然洗濯してないじゃん。順子先生、あんたの責任!」 サトル「そうだよ!」 ふざけて洗濯物を投げつけるススム。 しかし順子先生は先ほどのように反撃せず、ただ泣きそうな顔でうつむいている。 ススム「あれ……? 怒んないの? なんだよ順子先生、何も泣くことないじゃないか。俺、ほんの冗談のつもりでさ……」 順子先生「違うの…… 落合先生が魔天郎だったらどうしようかと思って」 サトル「その時は失恋だね、先生」 順子先生が再びうつむく。 ススム「サトル、意地の悪いこと言うなよ」 タケオ「そうだよ。順子先生、落合先生はシロだから安心しなよ」 サトル「魔天郎だったらどうすんだよ?」 タケオ「そしたら俺…… 悲しくて泣いちゃうよ……」 ヤスコ「私だって、きっと泣いちゃうと思う」 気まずい空気が漂う。 ヒロシ「……やめだ、やめだ! なんだよみんな、俺だって、落合先生はどこまで行っても落合先生でいてほしいんだ。なんだよ、俺一人悪者みたいじゃないか」 そう言うのもつかの間、ススムが押入れの奥に何かを発見。 ススム「おいヒロシ、パソコンがあるぞ!」 ヒロシ「えっ!?」 ふすまを開いて覗き込む一同。 確かにパソコン(NECのPC-9801)が置かれている。 ヒロシ「パソコンだ。落合先生にパソコンだなんて変だよな?」 サトル「使えんのか?」 言うまでもないが、1987年当時のパソコンはかなり高価なもの。落合先生の安月給で買えるはずはない。 ヒロシ「出そうぜ」 サトル、タケオ「おう!」 ヒロシたちがパソコンを引っ張り出す。 サトル「ヒロシ、ここまで来たら引き下がれないぜ」 ヒロシ「ああ。ススム、電源!」 ススムがコンセントを挿し、ヒロシが電源を入れる。 ヒロシ「毒を食らわば皿までだ」 操作を開始して数分後、パソコンの画面に魔天郎の絵が映し出された。 ヒロシ「これは、俺がパソコンで作った魔天郎だ(*2)」 ヤスコ「落合先生、ヒロシ君のパソコンから魔天郎のイメージを盗んだのかしら」 順子先生「だったら…… 落合先生が……!?」 ヒロシ「こんなもの、決定的な証拠になんないよ」 ヒロシが操作を続行。 今度は洋館の写真が映し出される。 ススム「なんだ?」 サトル「魔天郎のアジトかもしれないな」 タケオ「決めつけるなよ」 ヤスコ「場所はどこなの?」 ヒロシが再び操作。 洋館の地図が映し出される。 ヒロシ「高見町の郊外だ! ほら、高見台団地のずーっと向こうのほうだ」 ヤスコ「ヒロシ君……」 ヒロシ「ここに行ってみよう! ここに行けば、落合先生が魔天郎かどうか、わかるはずだ!」 順子先生「ヒロシ君、私も一緒に行くわ」 了承するヒロシの表情は険しい。 翌朝、ヒロシの家── ヒロシの母「あなた!! あなた、起きて!! ヒロシが……」 ヒロシの父「うるさいなぁ、朝早くからガラガラ怒鳴るもんじゃありません! ヒロシがどうしたの?」 ヒロシの父がパジャマ姿で居間に来る。 ヒロシの母「こ、こ、これ!」 ヒロシの母が机を指さす。机の上に書置きが置かれている。 書置きを手に取り、読み上げるヒロシの父。 父さん母さん 僕たち覇悪怒組は魔天郎との最後の勝負にでかけます順子先生も一緒です 男がこうと決心してやることです 父さん母さんは何があっても心配しないで下さい洋(ヒロシ) 読み終えたヒロシの父が卒倒する。 覇悪怒組と順子先生は自転車で洋館へ。 洋館から少し離れた自然公園に隠れ、ジオラスコープ(双眼鏡)で様子を探る。 そして洋館に突入しようとした時──ヒロシが人の気配に振り向いた! そこにいたのは魔天郎の手下──ではなく、覇悪怒組のライバル・内山重夫率いるパチンコ組。 これまでにも3度ほどやりあった宿敵だ。 ヒロシ「パチンコ組だ……」 身構える覇悪怒組。 内山「ヒロシ、何か面白いことをやろうとしてるようだな。俺たちも仲間に入れろ!」 ヒロシ「内山…… 悪いけど今日は、お前たちの相手をしてる暇はないんだ」 内山「なんだと?」 内山の舎弟の一人がパチンコを構えて威嚇する。 ヒロシ「内山、俺たちは今から魔天郎に最後の勝負を挑もうと思ってるんだ。負ければ、死ぬかもしれない。だけど…… 俺たちは大好きな落合先生のために、戦わなければならないんだ」 内山「落合先生のために? どういうことだ!?」 ヒロシ「理(わ)由(け)は、今話せない。分かってくれ、内山……」 静寂── 内山「分かった。行けよ、ヒロシ」 ヒロシ「……内山、元気でな」 覇悪怒組と順子先生は、身を低くして洋館へ向かった。 もはや何も言わず、それを見送るパチンコ組。 内山「奴ら、命がけだぜ」 洋館の中では、魔天郎が何かの図面をにらみながらパソコンを操作している。 「MTR計画設計図」──そう題された図面には、巨大な塔の絵が描かれていた。 ふいに警報が鳴る。 監視カメラの映像を呼び出す魔天郎。テレビ画面に覇悪怒組と順子先生の姿が映される。 魔天郎が計器類を素早く操作していく。 忍者好きのススムが窓の一つに鉤縄をかけ、それを伝って洋館の中に侵入。 縄梯子を下ろし、残る5人もススムに続いて侵入を果たす。 その様子をパチンコ組が陰から覗いている。 内山が、侵入成功を見届けて満足げにうなずいた。 覇悪怒組と順子先生は、魔天郎のマークが書かれた大扉の前に来た。 ヒロシ「やっぱり魔天郎のアジトだったんだ……」 サトル「ということは…… 落合先生は魔天郎だったってことだ」 順子先生が顔を曇らせる。 ヒロシ「入るぞ」 ドアに手をかけるヒロシをヤスコが止める。 ヤスコ「待って、中に入ったら突然空中に投げ出されるかも知れないわ」 タケオ「前にもそんなことあったよな」 落合先生と覇悪怒組が出会ってまだ間もない頃、魔天郎は、空中浮遊の実演と称して覇悪怒組を無重力室に閉じ込めたことがある。 その記憶を思い返す覇悪怒組。 ススム「だけどあの時は楽しかったよなぁ」 ヒロシ「今度もあの時と同じっていう具合にはいかないさ。みんな、気をつけろ」 ヒロシが一同を代表してドアを開ける。 ドアの先は下り階段になっていて、そこを下りていくと薄暗い倉庫のような空間があった。 覇悪怒組と順子先生の前に、怒り仮面が立ちはだかる。 ススム「怒り仮面だ!!」 引き返す一同。その行く手をふさぐように、天井から妖怪・千年婆ぁ~が現れる。 タケオ「千年婆ぁ~だ!!」 千年婆ぁ~「遊んでおくれ、遊んでおくれ~」 さらに逃げ、奥の小部屋に退避する一同。 棚の上に、大勢の人間のデスマスクが置かれている。 サトル「す、水道橋博士だ……」 ヤスコ「魔術師テンオーよ! でも、何か変よ……?」 デスマスクを調べる一同。 それはいずれも変装用の小道具であった。 ヒロシ「これは、変装道具だ。魔天郎はこれを使って、いろんな人間に変装していたんだ」 かつらや覆面を着けてふざけあう覇悪怒組。 気を取り直して、一同はさらに先へ進む。 また、魔天郎のマークが書かれた大扉の前に来た。 ヒロシ「ここが魔天郎の部屋かもしれないぞ」 ヒロシが意を決してドアを開ける。 扉の中は防音室のような作りになっていて、壁の一つには丸い窓のようなもの、もう一つには真っ赤な半球体が付いていた。 順子先生「変な部屋ね、何に使うのかしら」 ヒロシ「魔天郎はきっと、この部屋を使って異次元空間を自由自在に行き来してるんだ」 タケオ「宇宙人かもしれないな。きっとそうだよ!」 ススム「だったら…… 落合先生も宇宙人ということになる……」 順子先生「ススム君! 断定しちゃダメよ」 ヒロシ「魔天郎の奴、何を企らんでんのかな? 前に俺が捕まった時、魔天郎の王国を作るって言ってたけど…… 何のことだかさっぱりわかんねーよ」 そこに、魔天郎の高笑いが響き渡る。 丸い窓のようなものに魔天郎の姿が浮かび上がった。 魔天郎「覇悪怒組の諸君! 私は今、私自身の壮大な夢を実現しようとしているんだ。いいか諸君、私は、私の夢の実現を邪魔しようとする者は決して許さない! 君たちは私の良きライバルとして十分私を楽しませてくれた…… だが、それもこれまでだ。君たちには、私の邪魔ができないように、遠い世界に消えてもらうぞ」 ヒロシ「な、何っ!?」 身構える覇悪怒組。 赤い半球体がけたたましい音とともに点滅し、部屋の明かりが消える。 宙に浮かぶ一同。 ヤスコ「空中浮遊装置よ!!」 ヒロシ「魔天郎、俺たちをどうするつもりだ!?」 魔天郎の映像が消え、直後に窓が変形して穴になった。 その中に吸い込まれていく一同──。 その頃、パチンコ組も洋館の中に突入していた。 覇悪怒組と順子先生の悲鳴を聞きつけ、件の部屋に飛び込むパチンコ組。 内山「な、なんだあれは!?」 部屋の中は完全にもぬけの殻。 覇悪怒組も順子先生も、穴の中に引きずり込まれた後だった。 内山「バ、バカな! ブラックホールがこんな所にあるなんて!!」 パチンコ組もまた、穴に飲み込まれていく。 穴の中をただ流されていく一同。 ヒロシの絶叫が異次元空間に響く── ベッドの中で、パジャマ姿のヒロシの母が目を覚ます。 すでに時刻は深夜を過ぎていたのだ。 夫を起こすヒロシの母。 ヒロシの母「ヒロシが真っ暗な穴の中に落ちてく夢を見たのよ」 ヒロシの父「……何だって!?」 ヒロシの母「助けてくれ、って呼んでるの。あなた、どうしよう?」 ヒロシの父「……やはり明日…… 警察に捜索願を出しましょう……」 順子先生とヒロシたち覇悪怒組、そして内山重夫とパチンコ組は、魔天郎によってブラックホールに飲み込まれてしまった。魔天郎の壮大な夢とは何なのか?そして…… 魔天郎の正体は、果たして落合先生なのであろうか……? つづく ※ この続きはおもいっきり探偵団 覇悪怒組の最終回をご覧ください。
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謎の誘拐団・暗闇一族によって、小学生の男の子が次々とさらわれるという事件が起こっていた。悪辣な誘拐に怒った魔(ま)天(てん)郎(ろう)は、微笑みを消して「怒(いか)り仮面」に変身した!おもいっきり探偵団 覇(は)悪(あ)怒(ど)組(ぐみ)は、敢然と挑戦した。だが、悟(サトル)、進(ススム)、猛(タケ)夫(オ)の3人がさらわれ、そして落合先生と洋(ヒロシ)も、恐るべき魔の手によって、千尋の谷に転落してしまったのである。 怒り仮面の逆襲 暗闇一族の屋敷──その地下牢で、落合先生が目を覚ます。 落合先生「タケオ! サトル! ススム、ヒロシ! おい、おい!」 目を覚ました4人を抱き寄せる落合先生。 落合先生「みんな無事だったか!」 ススム「先生ーっ!」 4人もこぞって先生に抱き着き、涙を流す。 そこに暗闇一族の幹部の男女が現れた。 落合先生「おい、約束が違うぞ。身代金を届ければ、一郎(*1)を返してくれるはずだ」 幹部・男「棟梁がお呼びだ。出ろ」 落合先生「棟梁? 大工の棟梁か!」 幹部・男「言葉を慎め! 我らが暗闇一族の、棟梁がお呼びだ」 落合先生「か~っこつけてくれちゃって。なぁ?」 言うことを聞かない落合先生と覇悪怒組を見かねて、幹部2人が牢の鍵を開ける。 幹部・女「出なさい」 落合先生「命令口調が、気に食わないね! 『出てください』と、どうして言えないの?」 幹部・女「うるさい!」 女幹部が落合先生にビンタを食らわせた。 屋敷の渡り廊下には、戦国時代の武者鎧がたくさん飾られている。 ススム「これ本物かな?」 タケオ「本物だよ」 ヒロシ、サトル「すげー」 渡り廊下の奥の階段に、暗闇一族の棟梁が立っていた。 棟梁「はははは、驚いたか。みんな、わしのコレクションじゃ。落合先生、覇悪怒組の諸君、さあ来たまえ」 上階に通される5人。 畳敷きの部屋に、暗闇一族が誘拐した小学生男児が集められ、全員正座で待機させられていた。 一郎「落合先生……」 落合先生「一郎! 無事だったか!」 覇悪怒組「一郎!」 覇悪怒組の4人が一郎に駆け寄る。 ススムの手を取る一郎。 一郎「みんなに会えてうれしいよ!」 一郎が安堵のあまり泣き出してしまう。一郎を慰める覇悪怒組。 それを見て、落合先生が暗闇一族の棟梁に詰め寄る。 落合先生「あんた! 子供たちをこんなところに集めていったい、何を企んでるんだ? お金が欲しいんだったら汗水たらして働いたらどうなんだ!」 棟梁「私の目的は身代金じゃない」 落合先生「じゃ、いったいなんなんですか?」 棟梁「私が欲しいのは、優れた子供だ。学問・スポーツ・武芸、すべてにわたってパーフェクトな子供だ! その上に、強い運の持ち主でなければならない」 落合先生「なんですと!?」 棟梁「いつの日か日本を支配し、地球を支配するような男の子が、私は欲しいのだ」 落合先生「あんた、頭おかしいんじゃないの!?」 棟梁「黙れ!」 棟梁が落合先生を鋭く睨む。しかし落合先生も負けていない。 落合先生「いいえ、黙りませんよ! 子供はみんな夢を持っているんです。その夢を、膨らませたり、縮めたりして、大きくなっていくんです!」 棟梁「くううっ、この男をぶちのめせ!!」 幹部の男が部屋の隅に立てかけられていた木刀を2本取り、1本を落合先生に投げ渡した。 幹部・男「来い」 落合先生「冗談じゃない、私は剣道なんか知りませんよ!」 だが、幹部の男は落合先生を無視していきなり襲いかかってきた。 子供たちが慌てて避難する。 ヒロシ「落合先生、負けるな!」 しかし、落合先生は幹部の男の攻めに防戦一方。 落合先生「危ないっ、危なーいっ!! ……木刀は無茶だ、頭が割れる! 竹刀にしよう、竹刀に!」 幹部・男「黙れっ!!」 幹部の男はやはり落合先生の抵抗を無視し、その顔めがけて木刀を振り下ろしてきた。 とっさに木刀を掲げて防ぐ落合先生。 幹部の男が落合先生を突き飛ばす。落合先生は柱に顔面をぶつけて倒れこんだ。 棟梁「見たか、お前たち。こんなだらしない大人にはなりたくないだろう。この男を牢獄にぶち込んどけ!」 落合先生に駆け寄る覇悪怒組。 サトル「先生、しっかりしろよ!」 ヒロシ「先生!」 ススム「先生っ!」 落合先生「私は大丈夫だ。ヒロシ、みんな、これから何があろうと、生きることをあきらめるなよ。死のうなんてするな? 『ネバー・ギブアップ』だ!」 そこに暗闇一族の雑兵が現れ、落合先生を連れていく。 落合先生「がんばれ、みんな…… がんばれ、みんな!」 覇悪怒組「先生ーっ!!」 幹部・男「座ってろ!」 落合先生に駆け寄ろうとする覇悪怒組を、幹部の男が引き留める。 無理やり座らされる覇悪怒組。 棟梁「みんな、聞けい! これからあらゆる分野にわたって、選抜テストを行う。最後に勝ち残った者1名を、我が暗闇一族の後継者とする」 ヒロシ「暗闇一族の後継者!?」 ススム「勝ち残れなかった者はどうなるの?」 棟梁「そんな奴は生き残る価値がない! 我ら一族の奴隷とする」 覇悪怒組「奴隷!?」 顔を見合わせる子供たち。 一方、落合先生は再び地下牢へ──。 学力テストが始まった。 算数のテスト用紙には分数の掛け算・割り算などが載っている。 ススム「こんなの習ってねーよ……」 ヒロシ「習ってたってできないってのにさ」 サトル「おいみんな、見せ合おうぜ」 4人で問題を解こうとする覇悪怒組を見とがめた幹部の男が𠮟責する。 幹部・男「こらっ! カンニングはマイナス10点だ。マイナス点が100点になった者は、その場で奴隷にするぞ!」 慌ててそれぞれのテスト用紙に向き合う覇悪怒組。 続いて、体力テスト。 タイヤを引きながら屋敷の周囲を走らされる小学生男児たち。 疲労のあまり倒れた一郎を、雑兵が無理やり立たせる。 覇悪怒組「一郎っ!」「大丈夫か!」 覇悪怒組が雑兵を押しのけて一郎に駆け寄る。 すると、幹部の男がアサルトライフルを中空に向けて撃った。ひるんだ覇悪怒組はその隙に列に戻され、一郎も走らされる。 雑兵「ぼやぼやするな! さっさと走れ!」「ほら、走れ走れ!」 覇悪怒組が屋敷の一室に滑り込む。 タケオ「俺、もうダメだ! 死にそうだよ!」 ヒロシ「バーカ。ここで死んでどうするんだよ?」 サトル「だけどさぁ、いつまでこんなテスト続けるんだよ?」 ススム「ちっきしょう、死んだほうがマシだよ」 ヒロシ「あきらめるな! 生き抜いてここを脱出するんだ。『ネバー・ギブアップ』、落合先生もそう言ったじゃないか!」 覇悪怒組「ネバー・ギブアップ!」 とは言っても、状況を打開する方法がすぐに思いつくわけもない。 ススム「……あーあ、家に帰りてぇなぁ」 ふいに、外で車のエンジン音がした。 窓に走る覇悪怒組。 スーツ姿の初老の男が、男女の秘書を連れて白い高級車に乗り込もうとしていた。 ヒロシ「あっ、あの車は!」 その車は、暗闇一族が小学生男児誘拐に使っていたものと同じ車だった。 ヒロシ「サトル、カメラだ!」 サトル「OK!」 サトルが、隠し持っていたカメラで車のナンバープレートを撮影する。 車はそのままどこかへ走っていった。 覇悪怒組はネガを小さな筒の中に入れ、サトルが連れてきた伝書鳩の足に結わく。 サトル「よし……!」 伝書鳩は大空高く、覇悪怒組の通う竹早小学校で待つ矢(ヤ)須(ス)子(コ)のもとへ飛んでいった。 サトル「頼むぞ!」 一郎の家では、一郎の両親が息子の無事を祈り続けている。 ヒロシの両親も気が気でない。 ヒロシの父「金子さん、一郎くんは帰ってきましたか!?」 一郎の母「それがまだなんですよ。ヒロシくんたちはまだですか!?」 ヒロシの父「……ヒロシも落合先生も誰一人帰ってこないんですよ……」 一郎の父「ああ~、一郎~!」 ヒロシの母「ヒロシ~……」 ヒロシの父「もう、こんなことだったらヒロシをやるんじゃなかった! つい、あんたの口車に乗せられてしまった……」 一郎の父「……口車とはなんですか! 犯人が指名してきたんだからしょうがないじゃないですか」 一郎の母「そうですよ!」 ヒロシの父「あんたが金持ちだから悪いんだ!」 ヒロシの母「そうですよ! 大体ねぇ、あくどいことしてお金儲けるから子供を誘拐されるんですよ!」 一郎の母「あくどい!? あくどいとはなんですか! お金がどんどん入ってくるんだもん、しょうがないじゃないですか!」 一郎の父「そうですか、わかりました。そこまでおっしゃるなら、一郎が無事に戻った時には、一郎の身代金・一千万、あなたに差し上げましょう!」 一郎の母「ああ、あげましょう!」 ヒロシの父「それ本当ですか!?」 一郎の父「ええ」 ヒロシの母「あなた!! あたしたちはそんなものは要りませんよ。まったくあさましい!」 そこに警察官と刑事が入ってきた。 彼らは身代金を持たされた覇悪怒組と落合先生を護衛していたのだが、まんまと暗闇一族の罠にかかり、ボコボコに痛めつけられて逃げ帰ってきたのだ。 一郎の父「け、刑事さん、どうしたんですか!?」 刑事「申し訳ない! 落合先生もヒロシ君たちも、みんなさらわれてしまった!」 一郎の父「な、なんですって!?」 刑事「すみません……」 一郎の両親が抱き合いながら泣き崩れる。 その頃、伝書鳩は無事に竹早小学校に到着していた。 ヤスコ「あっ! サトル君の伝書鳩だわ」 ヤスコが口笛を吹き、伝書鳩を降下させる。 伝書鳩の足に結わかれた筒に気づくヤスコ。音楽教諭の順子先生が筒を開く。 落合先生も僕たちも無事です。ネガを現像して犯人を突き止めてくれ! 覇悪怒組 現像は学校内の暗室で行われた。 順子先生「車だわ! 品川33・は・60-40……」 調査の結果、車の持ち主は、吉岡不動産会社社長・吉岡作蔵氏と判明した。 ヤスコ「信じられない! 吉岡不動産って言ったら、超一流会社よ? その社長が誘拐犯人だなんて……」 順子先生「まだ犯人かどうかはわからないわ。でも、何か関係があることだけは確かね」 ヤスコ「先生、どうしましょう?」 順子先生「落合先生やヒロシ君たちのためだもの、どんな人か会ってみましょうよ」 ヤスコと順子先生は吉岡不動産の本社ビルに向かった。 秘書・女「何か?」 ヤスコ「竹早小の新聞部代表なんですが、社長さんにインタビューをしたいんですけど」 順子先生「新聞部部長の菊田です。よろしく」 順子先生が名刺を差し出す。いぶかしげに見つめる秘書の男女──。 ヤスコと順子先生は社長室に通された。 社長室には戦国時代の武者鎧が飾られている。 吉岡「君たちかね? 私にインタビューをしたいというのは」 ヤスコ「はい。よろしくお願いします」 吉岡「うむ。なんでも聞いてください」 ヤスコ「……最近、誘拐事件が相次いで起こっていますが、社長さんはどうお考えですか?」 吉岡「誘拐事件……? 私はまた、土地に関する質問かと思ったんだが。誘拐事件ねぇ…… くだらん。私は興味ないね」 順子先生「社長さんにはお子さんがいらっしゃらないようですね? お子さんがいたら、興味ないなんて決して言えないはずですわ!」 吉岡「私には立派な息子がいるんだ。学問・スポーツ・武芸、すべてにパーフェクトな素晴らしい息子だ! 帰りたまえ、インタビューは終わりだ」 憮然とした様子で部屋を出る吉岡。男の秘書がその後ろに続く。 尻尾をつかんだことを確信し、ヤスコと順子先生が顔を見合わせた。 ヤスコと順子先生の調査の結果、意外な事実が判明した……。 吉岡不動産の本社ビルにほど近いカフェテラスで、順子先生がヤスコに数枚の写真を見せる。 順子先生「吉岡社長には、ミツル君という小学5年生の息子がいたのよ。でもそのミツル君が、半年前に、ビルの屋上から飛び降りて、自殺してしまったの……」 ヤスコ「自殺!? そんな……」 写真の中には、アスファルトの地面に叩きつけられ、後頭部に血溜まりのできた少年の遺体を写したものも含まれていた。 ヤスコ「でも、そのことと誘拐事件が結びつくんですか?」 順子先生「吉岡社長は、ミツル君は死んだと思いたくないのよ。だから、ヒロシ君たちを誘拐して……」 ヤスコ「ミツル君の身代わり……!?」 暗闇一族の体力テストが再び始まった。 落合先生が囚われている地下牢の前で、マット運動やトランポリンをやらされる小学生男児たち。 幹部の男が、前転に失敗して倒れこんだ一郎の胸ぐらをつかんでねじり上げた。 雑兵「やる気があるのか、お前は!」 幹部・男「忍耐力のない人間は、支配者にはなれんぞ」 そこへヒロシが止めに入る。 ヒロシ「冗談じゃないよ!! 支配されるのも、支配するのもまっぴらだっての!」 幹部・男「うるさいっ!」 雑兵「ガキのくせに生意気なこと言うな!」 マットの上に押し倒されたヒロシの体に、雑兵たちが容赦なく鞭を打ち込む。 落合先生「ヒロシ~!! 負けるな、がんばれ!!」 立ち止まり、ヒロシを助けるべきか迷う小学生男児たちに、女幹部が檄を飛ばす。 幹部・女「早く続けて!」 落合先生「みんな、がんばれ!!」 体力テストはなおも続く。 土嚢を担がされ、ひたすら歩かされる小学生男児たち。土嚢を降ろした者はもれなく鞭打たれる。 長時間のしごきで限界に達した一郎は、もはやまともに歩くことすらできず、倒れて動かなくなった。 ヒロシ「一郎っ!」 幹部・男「余計なことするんじゃない!」 一郎に駆け寄ろうとするヒロシを幹部の男が捕まえ、往復ビンタを見舞う。その様子はまるで大日本帝国じみている。 ススムたちが助けに入るも、雑兵に引きはがされ、同様にビンタを食らって倒れる。 そこへ、怒り仮面となった魔天郎が姿を現した。 怒り仮面「許さんぞ…… 許さんぞ!!」 ヒロシ「怒り仮面だ! 怒り仮面が助けに来たんだ!!」 幹部・男「こしゃくな…… かかれ!!」 暗闇一族の雑兵たちが怒り仮面に群がる。 だが怒り仮面はマントを翻して敵を寄せ付けず、怒りに満ちた格闘術で次々と返り討ちにしていく。 怒り仮面の猛攻から辛うじて逃れた幹部の男が、屋敷の支柱の裏側に隠されたスイッチを押す。 すると、怒り仮面の足元に隠されていた落とし穴が開き、怒り仮面は真っ逆さまに落ちていった。 怒り仮面「うわわわわーっ!!」 幹部・男「フフフフフ、この下は奈落の底だ! いくら魔天郎でも、これでおしまいだな」 ススム「魔天郎が死んじゃった…… もうダメだよ!」 幹部・男「お前ら、何やってる! 戻れ! さあ、早く!」 覇悪怒組以外の小学生男児は、全員が疲労困憊となって倒れていた。 幹部・男「ほら続きだ続きだ、担げ担げ!」 ヒロシ「魔天郎が死んでたまるか! みんな、弱音を吐くな。歩くぞ、いいな? ネバー・ギブアップ!!」 覇悪怒組「ネバー・ギブアップ!!」 覇悪怒組は「ネバー・ギブアップ」を合言葉に、必死に自分たちを励まし続けた。 重い土嚢を担ぎながら洞窟の中を通り、切り立った崖に出た。 幹部・男「よーし、荷物を降ろせ。さすが覇悪怒組だ、ここまでの難関を突破してきたのはお前たち4人だけだな」 ヒロシ「もうたくさんだ!! 俺たちを家に帰してくれ!!」 幹部・男「そうはいかん。これから最後のテストを行う」 ススム「最後のテスト?」 幹部・男「お前たちの運が強いか弱いか、試すテストを行う」 サトル「な、何をさせるんだ!」 幹部・男「この崖から飛び降りて…… 命が助かった者こそ、本当に運の強い人間だ。その人間こそ、我らの次の棟梁になられるお方だ!」 サトル「じょ、冗談じゃないよ!」 ヒロシ「ふざけるな!! こんなところから飛び降りたら、死んじゃうよ!」 幹部の男がヒロシにアサルトライフルを向ける。 幹部・男「飛び降りないなら、この場で射殺する!」 命がかかっているだけあり、覇悪怒組の誰も飛び降りることができない。 崖下に移動した女幹部が命じる。 幹部・女「突き落としなさい!」 雑兵たちが、一斉に覇悪怒組を落とした。 ススム、サトル、タケオはもろに地面に叩きつけられて失神したが、ヒロシだけは、落下の恐怖に気を失いながらも偶然近くに生えていた蔦を掴んで落下を免れていた。 ヒロシは吉岡不動産本社ビルの社長室に連れてこられた。 秘書(幹部)・男「お連れしました」 吉岡「黒樹 洋。君は、勇気と忍耐を兼ね備えた、素晴らしい少年だ。見たまえ」 吉岡がカーテンを開ける。経済都市・東京の夜景が眼下に広がる。 吉岡(暗闇一族・棟梁)「君は、私の後継者として、このビルのオーナーになり…… やがてはこの街を支配し、日本を支配する立派な人間になるんだ!」 ヒロシ「お断りだ。誰があんたの後継者になんてなるもんか! 俺には父さんと母さんがいるんだ、父さんと母さんの所に帰してくれ!」 吉岡「聞き分けのない奴だ。私の後継者になるのはどうしても嫌か?」 ヒロシ「ああ、嫌だ! 俺が好きなのは父さんと母さんだ、あんたの子供になんてなるもんか!」 吉岡「君には私の後継者になる資格はないようだな…… この子供をぶち殺せっ!!」 逃げ出すヒロシを秘書の男女が追う。 前方からも、吉岡が雑兵たちを引き連れて迫り来る。 挟み撃ちにされるヒロシ。秘書の男がヒロシに拳銃を向けた──その時! 怒り仮面が投げつけた魔天郎カードが、悪人どもに炸裂した! ヒロシ「怒り仮面! 生きていたんだな!?」 怒り仮面「ヒロシ、私は不死身だ。その者たちはどうしても許せん、私が成敗する!」 怒り仮面が鞭を振るい、雑兵たちを薙ぎ払う。 そして秘書2人をも一瞬で無力化し、逃げる吉岡を捕らえた。 怒り仮面「吉岡作蔵! 子供を事故で失った悲しみはわかるが、ヒロシたちを誘拐して息子の身代わりを作ろうなどとは、許せんぞ!!」 吉岡「私は、息子に小さい頃からエリート教育を受けさせた! 息子は、学問・スポーツ・武芸、すべてに秀でた息子だった…… 将来は、日本の指導者になるはずだったんだ!!」 食い下がる吉岡に、怒り仮面が鞭を突き付ける。 怒り仮面「馬鹿者!! お前の過大な期待がミツル君を押しつぶして自殺させたことがまだわからんのか!? 子供には子供の夢を与えよ!! 大人の打算で子供を苦しめるなっ!!!」 怒り仮面の鞭が吉岡を容赦なく打ち据える。 怒り仮面「これは、さらわれた子供たちの苦しみ!!」 さらに、秘書2人にも鞭を浴びせる。 怒り仮面「これは、さらわれた子供たちの親の悲しみ!!」 その時、ヤスコと順子先生が警察を連れてビルに踏み込んできた。 ヤスコ、そして順子先生と怒り仮面の視線がかち合う。 怒り仮面「さらばだヒロシ、また会おう!」 怒り仮面は憤怒を解き、魔天郎の姿に戻ると、非常ドアから非常階段へ出て、上空に跳ぶ。 魔天郎を乗せた気球は、夜の闇に消えてすぐに見えなくなった。 翌朝、落合先生とススムたち、そしてさらわれた小学生男児が全員暗闇一族のアジトから生きて帰ってきたことは言うまでもない。 しかし、魔天郎は子供の味方なのか? 犯罪にすべてを懸ける怪盗紳士か? それはまだ、誰にもわからない──。 (続く)
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ヒロシは、母・広子の命を救うために、魔天郎の家来になってしまった。果たして、魔天郎の企みはいったいなんなのか?そして、残された覇悪怒組のメンバーは、ヒロシを無事、助け出すことができるのであろうか……。 魔天郎のアジトに連れてこられたヒロシは、魔天郎と2人きりでプラネタリウムを見させられている。 魔天郎「ヒロシ、この銀河系宇宙を見てみろ。宇宙は限りなく、広く大きいぞ。この広大な宇宙に比べたら、地球など芥子粒のようなものだ…… それなのに、人間どもは地球人がまるで宇宙の支配者であるかのようにおごり高ぶり、地球の支配をめぐり争い、いたるところで小さな戦争を起こしている。多くの子供たちが、飢えに苦しんでいるというのにだ!」 魔天郎が壁面のパネルを操作。プラネタリウムの映像が終わる。 魔天郎「ヒロシ! 私は、子供たちの王国を作ろうと思っているのだ」 ヒロシ「子供の王国!?」 魔天郎「そうだ、ヒロシ。すべての子供たちが、飢えの苦しみやいじめの苦しみから解き放たれて、のびのびと光り輝いて生きられる、王国だ!」 ヒロシ「魔天郎! 具体的に話してくれ!」 魔天郎「それはダメだ」 ヒロシ「なぜだ、魔天郎!」 魔天郎「それはなヒロシ、お前がまだ私の忠実な部下であるかどうか、わからんからだ」 うつむくヒロシ。 魔天郎「ヒロシ! 命令を下す。お前は覇悪怒組のメンバーを叩きのめしてこい!」 ヒロシ「なんだとっ!?」 魔天郎「私の忠実な部下ならできるはずだ」 ヒロシ「ふざけるな!! 俺に仲間を裏切れっていうのか!? そんなこと、できるもんか!!」 魔天郎「ヒロシ、お前は私の部下になった男だ。命令に背くのか?」 両者がにらみ合う。 ヒロシは少しだけ目をつぶり、そしてもう一度魔天郎をにらんだ。 ヒロシ「……ああ。嫌だと言ったら嫌だね」 何も言わず指を鳴らす魔天郎。 すると、魔天郎の手下のピエロたちが巨大な黄色い箱を持って出現する。 2人のピエロが背後からヒロシを捕まえた。 魔天郎「ヒロシ…… 嫌だと言うなら、お前は一生この暗い箱の中に閉じ込められて、二度と外には出られんようになるのだぞ」 ヒロシ「やだ、やだやだ! それでも嫌だ!!」 ピエロを振り払って逃げようとするヒロシ。 ピエロの1人がヒロシの足を払い、転ばせ、倒れたところを残りの2人が再び捕らえる。 そしてヒロシを縛り上げ、箱の中に放り込んでしまった。 魔天郎「ヒロシ、考え直すなら…… 今だぞ」 ヒロシは必死に首を横に振った。 箱の蓋が閉まる。 魔天郎「ヒロシ…… 私の忠実な部下になる気になったら、いつでも合図しろ」 ヤスコの冒険 その頃、竹林寺地下の覇悪怒組アジト── ススム「魔天郎はひどい奴だ。やっぱりあいつは悪党だったんだ!!」 サトル「ヒロシもヒロシだよ、俺たちを裏切って魔天郎の家来になるなんてさぁ……」 タケオ「お母さんを助けるためだもん、仕方ないじゃないか」 ヤスコ「私はヒロシ君を信じるわ。ヒロシ君が魔天郎の家来になんてなるもんですか! きっと、私たちが助けに行くのを待っているはずよ」 ススム「ヤスコ、どうやってヒロシを見つけるんだ?」 ヤスコ「あなたたちは、交代でアジトに待機してヒロシ君からの連絡を待って」 サトル「ヤスコはどうすんだ?」 ヤスコ「私は、落合先生にアタックするわ」 前々から魔天郎の正体ではないかとささやかれていた落合先生は、今回の騒動でいよいよ本当に魔天郎と同一人物である疑惑を向けられていた。 アパートに戻ってきた落合先生が、物陰に潜むヤスコに気づく。 落合先生「ヤスコ? どうした」 ヤスコ「先生……」 落合先生「おいおい、そんなにじーっと見つめないでくれたまえ。君のまぶしい目でじーっと見つめられると、先生な、なんだか自分が悪いことをしたんじゃないかと、妙にドギマギしてしまうんだよ」 ヤスコ「先生…… 先生がもし魔天郎だったら、ヒロシ君をどうしますか?」 落合先生「私が魔天郎だったら……? うーん、難しい問題だね。ただひとつ言えることは…… ヒロシのような勇気ある少年を、殺したりはしないだろうということだ」 ヤスコ「ヒロシ君は、生きているんですね?」 落合先生「おいおい、先生は魔天郎じゃないんだよ。魔天郎ではないが、ヒロシは生きていると信じている! ヒロシが死んでたまるか……」 ヤスコ「先生、私はヒロシ君を助けたいんです! どうしたらいいのか教えてください!」 落合先生「……『愛』だよ、ヤスコ君」 ヤスコ「愛!?」 落合先生「人を愛する心。ヒロシを助けたいと願う、君の熱烈な心。そして…… 祈り……」 ヤスコ「祈り……」 落合先生「そうだよ、ヤスコ君。力で魔天郎を倒すことは先生も不可能だと思う。ただひとつ、君の純粋な心から生まれる、愛と、祈りが…… 魔天郎を倒す、大きな力になるかもしれないね……」 ヤスコ「愛と…… 祈り……」 家に戻ったヤスコは、一心不乱に祈り続けた。 ヤスコ(神様、どうぞヒロシ君を助けてください! ああ、私に超能力があれば、ヒロシ君の姿が見えるのに…… 私にテレパシー能力があれば、ヒロシ君に語り掛けることができるのに……!) ヤスコの瞳が潤む。 ヤスコ「……ダメだわ、私にはそんな力がないんだ…… ヒロシ君…… ヒロシ君、無事でいて!」 そして深夜──眠りながらひと筋の涙を流すヤスコの脳裏に、箱の中に監禁されているヒロシの声が響いた! ヒロシ(ヤスコ…… ヤスコ、苦しいよ! 助けてくれ!) 思わず飛び起きるヤスコ。 ヤスコ「……ヒロシ君……」 翌日── ススム「ヒロシが箱の中に閉じ込められて!?」 ヤスコ「そうなの。暗い箱の中で、『苦しい、苦しい』って言ってたの…… ヒロシ君、やっぱり魔天郎の家来にならなかったんだと思う。だから、きっと罰を受けて……」 サトル「だとしたら、俺たちに何か連絡してくるな。ヤスコ、俺たちはアジトで待機する!」 ヤスコ「頼むわよ!」 ススムたちと別れて単独でヒロシを探し始めたヤスコ。 その前に、あの怪しいピエロが現れて行く手をふさぐ。 手招きをするピエロ。 誘われるままヤスコが向かった先では、ピエロのショーが行われていた。 ヤスコは、舞台に大きな箱が積み木のようにたくさん積まれていることに注目する。 ヤスコ(箱だわ……) 意を決して、もう一度祈りを送るヤスコ。 ヤスコ(ヒロシ君、いるの? いるのなら応えて!) 果たして、箱の中にはヒロシが閉じ込められたものも混ざっていた。 ヒロシの脳裏にヤスコの声が響く。 ヒロシ(変だぞ? ヤスコの声だ! ……ヤスコ! ヤスコ、俺はここだ。ここにいるぞ!!) ヤスコ(ヒロシ君の声だわ! あの箱のどれかに、ヒロシ君がいるんだわ…… ヒロシ君、待ってて。私が必ず助けるわ) ヤスコは舞台袖にまわり、そこにある箱をひとつひとつ調べていく。 ヤスコ「ヒロシ君! どこ!? ヤスコよ!」 黄色い箱をノックすると、箱がガタガタと動いた。 確信するヤスコ。 ヤスコ「ヒロシ君、今開けるわ」 落ちていた鉄の棒を使って、箱をこじ開けようとする。 その時、箱にダーツが刺さり、ピエロたちがヤスコを囲んだ。 ヤスコ「魔天郎の手下ね? ヒロシ君を返して!」 ピエロが吹き矢を放つ。箱のひとつを盾にして防ぐヤスコ。 さらに向かってきたピエロを得意の合気道で迎え撃つも、ピエロの1人が放った吹き矢を肩に受けてしまう。 ピエロ「その吹き矢には毒が仕込んであるぞ!」 その隙にヒロシの入った箱を持ち去るピエロたち。 ヤスコが後を追う。 ヤスコ「ヒロシ君!」 ピエロの一団を追っているうち、ヤスコの体に毒がまわり始めた。 ヤスコの視界がゆがむ。 ヤスコ(毒のためだわ! ……負けない! ここで負けたら、ヒロシ君が……!) ピエロたちの姿はどんどん遠くなる。 ハードシーバーを取り出すヤスコ。 覇悪怒組アジト── 『こちらはヤスコ、ヒロシ君を発見・追跡中……』 ススム「ヤスコ!? どこだ、場所を教えろ!」 ヤスコは息を切らせながらピエロを追い続ける。 『ヤスコ、どこにいんだ!?』『ヤスコ!!』『ヤスコ、答えろよ!!』 ヤスコのめまいはますます悪化の一途をたどり、顔中から汗を拭きだしている。 朦朧とした意識の中で、すべての景色がゆがみ──ゆがんだ幻影が鏡のように砕け散り、崩れ落ちた。 ピエロの手拍子が反響し、周囲に霧が起こる。 ヒロシの入った箱を担いだまま、霧の奥に消えるピエロ。 ヤスコ「ヒロシ君───!!」 誘われるまま、ヤスコも霧の中に飛び込む── 霧を越えた先には、大勢の子供たちがいた。 その誰もが、地面にへたり込んだり、家の壁に寄りかかったりして、ぼんやりとうつむき、あるいはうつろな目で空を見上げている。 ヤスコ「ピエロたちが、箱を運んでくるのを見かけなかった? ……お願い、答えて!」 ヤスコが話しかけても、肩をゆすっても、子供たちは目線さえ動かさない。まるで人形のように──。 そこにバイオリンの音色が響く。音のする方向へ向かうヤスコ。 バイオリンを弾く魔天郎がいた。 ヤスコに気づき、演奏の手を止める魔天郎。 ヤスコと魔天郎が対峙する。 魔天郎「ようこそ、ヤスコ君。君が現れるのを私はずぅっと、待っていたんだよ」 ヤスコ「ここはどこなの?」 魔天郎「ここは地図から消えた幻の町。世の中から落ちこぼれた子供たちの町だ」 ヤスコ「なんですって……!?」 魔天郎「来たまえ」 魔天郎が、ヤスコにもう一度町の全景を見せる。 魔天郎「見るがいい。生きる希望を失った子供たちが、道端の石ころのように並んでいるだろう。数日後には皆、死に絶えてしまうだろう」 ヤスコ「なんてことを…… あなたはそれを放っておくつもりなの?」 魔天郎「誰があの子たちに生きる勇気を与えることができるというのだ。あの子たちは、学校や家庭から見放され、生きる希望を失った子供たちなんだぞ」 ヤスコ「教えて。どうしたらあの子たちを救えるの?」 魔天郎「生きる勇気とは、人間を信じる力からしか湧き上がってはこないものだ。ヤスコ、お前にそれができるのか」 ヤスコ「……できない。私にはそんな力はないもの」 せせら笑う魔天郎。 魔天郎「だったら、ヒロシを助けることも不可能だ……」 ヤスコ「えっ!?」 魔天郎「見ろ! ヒロシならあそこだ」 ピエロたちが、箱の中からヒロシを出す。 ヤスコ「ヒロシ君……! 魔天郎、教えて。私はどうしたら、ヒロシ君と子供たちを救えるの?」 魔天郎「ヒロシとあの子たちを助けたければ、私との賭けに勝つことだ」 ヤスコ「賭け? どんな賭けなの?」 魔天郎「この町の入り口から出口まで、ほんの一瞬立ち止まることもなく、何があっても決して振り返らずに、走り抜けることだ」 ヤスコ「ほんの一瞬も立ち止まることなく、何があっても振り返らずに?」 魔天郎「そうだ。もしお前がこの約束を破れば、ヒロシも子供たちも、たちどころに死ぬことになるだろう!」 ヤスコが息をのむ。 ヤスコ「……わかったわ。何があっても、私は決して立ち止まらない! 振り返らない! そうすれば、ヒロシ君と子供たちは助けてくれるのね?」 町の入り口に立つヤスコ。ヒロシとヤスコの視線がかち合う。 ヤスコ(ヒロシ君、私、やり遂げてみせる) ヤスコが駆け出す。 ヤスコ(私は立ち止まらない! 振り返らない!) 「生きる希望を失った子供たち」が、ゾンビのようにヤスコにまとわりつく。 ヤスコ「どいて!! 私の邪魔をしないで!!」 子供たちを振り切るヤスコ。 その横で、ピエロが子供を痛めつけ始める。命乞いの悲鳴を必死に無視するヤスコ。 2階の窓から飛び降りようとする子供たちがヤスコの目に映る。 ヤスコ「やめて!! お願いだからやめて!!」 走りながら呼びかけるヤスコ。それもむなしく、子供たちはうつろな目をして── ヤスコ「やめて───!!」 今度はヒロシがピエロたちに剣を突きつけられている。 ヒロシ(ヤスコ……) ヤスコ(ヒロシ君!) ヒロシ(俺にかまわず、走り抜けろ!) ヤスコ(ヒロシ君!!) 一瞬の交感──ヒロシの横を通り過ぎるヤスコ。 走りながら、ピエロに痛めつけられる子供の命乞い、飛び降りようとする子供のうつろな目、そしてヒロシの顔がヤスコの脳裏を駆け巡る。 そして──ヤスコの足が止まり、振り向いて、叫んだ。 ヤスコ「ヒロシ君っ!!」 その瞬間、激しい地鳴りとともに町が崩れていく。 子供たちは誰ひとり逃げようとせずに瓦礫に飲み込まれ、そしてヒロシも── ヤスコ「許して…… みんな、許して!! 神様、みんなを助けてください! 私の体を引き裂いてもかまいません。ヒロシ君とみんなを助けて!!」 ヤスコがひざまずき、泣きながら絶叫するが、無情にもすべては灰燼の中に消えていった。 土煙が晴れる。 町は跡形もなく消え失せ、空き地の真ん中にヒロシだけが立っていた。 ヤスコ「ヒロシ君……」 ヒロシ「……ヤスコ」 ヤスコがヒロシに駆け寄り、抱き着く。 ゆっくりとうなずくヒロシ。 「お──い!!」「ヒロシ──っ!!」「ヤスコ──!!」 そこにススムたちが来る。 タケオ「無事だったか、ヒロシ!」 ススム「ヤスコ~!」 サトル「大丈夫だったか!?」 その時、高笑いとともに魔天郎が姿を現した。 ヤスコ「魔天郎、なぜなの!? 私は約束を破って立ち止まり、振り向いてしまったわ。それなのに、なぜヒロシ君を助けてくれたの!?」 魔天郎「ヤスコ! 君の愛と祈りが、私の呪いを打ち砕いてしまったのだ。もし君が死に瀕した子供たちを前にして、ほんの一瞬も立ち止まらず、振り返りもしなかったら、君は私の呪いに打ち勝つことはできなかったろう。覇悪怒組の諸君! また会おう!」 魔天郎は姿を消した。 魔天郎の真の目的を知った今、覇悪怒組と魔天郎の戦いは佳境を迎えつつあった。 (続く)