約 5,054,486 件
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/70.html
新本格魔法少女りすかからの支給品 影谷蛇之のダーツ 影か体に刺すと口以外は動かせなくなる魔方陣が組み込まれたダーツ。 制限により止められるのは5分間。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 櫃内様刻 [所有者] 櫃内様刻(15話、30話、49話、85話(前)(後)、93話、107話)、125話、131話、136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話、166話、169話、171話) [メモ] 櫃内様刻の初期支給品だが初登場は107話。 以降も様刻が所持。 カッターナイフ まだ本バトロワでは言及されてないが、おそらく水倉りすかのものであると思われる。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 水倉りすか [所有者] 水倉りすか(6話、40話、59話、78話) ↓ 零崎双識(78話、101話、105話、120話、127話、129話) [メモ] 登場話から水倉りすかが装備。 78話で零崎双識に奪われ、以降は双識が所持していたが129話にて江迎の過負荷により腐敗。
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/263.html
共犯者(教範者) ◆ARe2lZhvho 東から昇る満月を左に、僕は伊織さんを背負って歩く。 デイパックで両手が塞がっているせいで地図を開くことはできなかったが、山火事のおかげで方向だけは間違っていないと確信できた。 地球温暖化がどうのこうのと叫ばれている現在、森林火災ともなればそれこそ温室効果ガスがなどと言われるのかもしれないががそんなもの命の前には二の次だ。 生憎というほどでもないが、文字通り自分に火の粉がかかりさえしなければ僕に関わる筋合いはない。 そもそも殺し合いが行われている場所で同行者のことならともかく、山火事を心配するくらいなら自分の身の心配をするに決まっている。 尤もなことを言ってしまえば、こんなことをやらせる主催がたかが山火事をどうにかできないとは思えないし。 僕のような平々凡々な高校生だけなら別として、玖渚さんのような人まで巻き込めるような奴らが。 ――どうも皆さん。時間になりましたので…… ……参ったな。 放送が始まってしまった。 できることなら放送が始まる前に辿り着いてからゆっくりメモをとりたかったのだが…… そうでなくとも、薄暗くなってきているし街灯が周囲にない今普通にメモを取るだけでも厳しいものがある。 ……あ、そうだ。 伊織さんが起きないよう気を遣いながら、ポケットにつっこんでいたスマホを取り出す。 本題に入るまでの話が長いという老人にはよくある習性のおかげか、録音機能を起動させるまでの間に大事な情報が読み上げられることはなかった。 それでも聞いておいて損はないのと、余計な雑音は入れない方がいいだろうと思って、足は止めておいた。 よく見たらメールの着信を示すアイコンがあった――これがさっき玖渚さんが言ってたメールのことだろう。 後で確認しておこう。 「…………ま、処置はこんなものでいいか」 その後、薬局に到着した僕は店内にあったソファーに伊織さんを寝かせると、外に出て手頃な枝を二本、切り落としてきた。 もちろん添え木にするためだ。 普通に生活していれば中々身に付く機会はないであろう骨折の処置の知識を僕が持っているのは、一度妹である夜月の足を折ったことがあるからだ。 これだけ言えば、妹に虐待を強いる酷い兄としか思えないだろうがこれにはちゃんと事情があった。 あったのだが、今になって思い返してみると妹の骨を折る必要はどこにもなかったわけで…… しまったな、まったく弁解になっていない。 やはり機会があったら昔の僕をぶん殴っておこう。 まあ、それはそれとして。 僕は考える。 先の放送について。 西東天 哀川潤 想影真心 西条玉藻 零崎双識 串中弔士 ツナギ 左右田右衛門左衛門 宇練銀閣 貝木泥舟 江迎怒江 死者はこの順番で呼ばれていたが、順番の法則性がわからない。 五十音順でないのなら可能性としては死んだ順番だろうか? だが、それもDVDを再生してみれば違うということがわかってしまった。 DVDのナンバリングは死んだ順番になっていたし。 ならば死んだ場所で区別しているのかと思えばそうでもない(ほぼ同じ場所で死んでいた人がいたし)。 となると、僕の凡庸な頭脳から導き出される答えは一つしかない。 ――僕達が知らない何か独自の法則が存在する もったいつけたが言ってしまえばわからないのと同義だ。 実は適当という可能性だってないとは言い切れないんだし。 これ以上考えても堂々巡りになるだけだと判断し、別のことを考える。 時宮時刻と、その前に日之影空洞という青年をもを殺していた和服の女と近くにいた学ランの男についてだとか。 ちなみに薄々予感はしていたのだが、時宮時刻が死ぬ瞬間を見ても何の感慨も湧かなかった、和服の女についても同様。 零崎軋識を殺した人物が最初は伊織さんのお兄さんである零崎双識と全く同じ外見をしていたのに白髪(とがめ、だったか)の女に変身していたことだとか。 ツナギと零崎双識が殺された映像と江迎怒江が死んだ(自滅した?)映像では途中から上空から撮影された映像に切り替わっていたのはどうしてなんだろうだとか。 串中弔士と貝木泥舟を殺した真庭鳳凰の右腕の威力に被害を受けることはなくてよかったと今更ながら安堵したりだとか。 禁止エリアの場所からして真庭鳳凰は逃げ遅れて今頃死んでしまったのだろうかだとか。 僕は考える。 今の僕にはそれくらいしかやれることがないから―― 「ぅ……むぅ……ふわぁ、……ぉはようございます……」 「おはよう。と言ってももう夜だけどね」 「起きたときにはおはようと言うものでしょう。……えーと、今何時ですか?」 「七時はとっくに過ぎてるよ。それと事後承諾で悪いけど伊織さんの持ってたDVDも全部見させてもらった」 「それは別に構いませんが、どうやって見たんですか?」 「鳳凰さんからもらったデイパック、あの中にノートパソコンがあったから使わせてもらった。他にも役立つものはいっぱいあったし後で分けようと思うんだけど」 「異論はありませんが……」 「どうしたんだ?口ごもって」 「いや、本題には入らないんですねえと思って」 ようやく目覚めた伊織さんと他愛のない会話を交わすが、やはり躱すのは不可避のようだった。 ふう、と一息ついて、告げる。 「……いいニュースと悪いニュース、どちらから聞きたい?」 「こういうときはいいニュースから聞くものじゃないですかねえ」 「そうかい……いいニュースは玖渚さん達も人識もまだ生きてるってことだ」 「で、悪いニュースは双識さんはもういない、と」 「それと、哀川さんも、だったよ」 僕とは関わりのなかった人だけに正直に言うならなんの感情も持てないのだが、それなりに気まずそうな表情で言う。 そんな僕の心情を知ってか知らずか、伊織さんはきょとんとした表情で、 「はあ、そうですか」 と答えただけだった。 その顔面の裏表のなさに拍子抜けした僕はつい訝しんでしまい、聞く必要もないことを聞く。 「……反応はそれだけか?」 「こう見えても驚いてはいるんですよ?でもどこか納得してるだけで。いくら哀川のおねーさんでも死なない保障はどこにもなかったんですし……ただ」 「ただ?」 「約束、破ってしまいましたなあって。人識くんに怒られちゃいますよう……」 殺人を犯してしまったことより約束を破ってしまったことを気にする様は一般的に見れば滑稽に映るかもしれないが、僕はそうは思わなかった。 ――僕も同類だし。 以前夜月から借りた推理小説を読んだときに『なぜ足し算や引き算をやるような感覚で人を殺すのか』考えたことがあったが今なら身に沁みてわかる。 ニュースなんかでよく見る『かっとなって殺してしまった』という理由の方がしっくりくるかもしれないが。 だからこそ、僕は未だに伊織さんと共にいるのだろう。 その道を先に行く教範者として――あるいは同じ道を逝く共犯者として。 かつて『世界対しに嘘をついた』から『世界から騙されている気がしている』ように、『殺す』ことを知ってしまったからこそ『殺される』ことを意識せざるを得ない。 りりすと箱彦もこんな気持ちだったのだろうかと今更のように思い知る。 もっと早く気づいていれば全てを間違えてきたようにはならなかったかもしれない――これも今となっては詮のない話だが。 だが、しかし。 「なんだ、それなら心配する必要はないさ」 「どういうことですか?」 「掲示板に貼られていた動画は8本しかなかっただろ?」 「一つが様刻さんのもので……つまり」 「まあ、そういうこと。先に破っていたのは人識の方だったからそこまで気に病むことはないよ」 人一人殺しておいて気に病むことはないとは大した言い種だが、正直な感想だしそう思ってしまうのも仕方がない。 彼女と親友が殺人を犯していたところで変わらず接し続けられるような人間なのだから――結局のところ僕というやつは。 「どっちにしたっていずれ死んでしまったらあの世で絶対に怒られちゃいますよう」 「いずれ死ぬとか人聞きの悪いことを言うなよ。……まあそのとき僕もいたら一緒に謝ってやるからさ」 「人間生きてればいつかは死ぬものですよ。たとえこの殺し合いをなんらかの形で乗り切ったとしてもいつかは死ぬときがやってきます。申し出はありがたいですけどね」 「……できれば普段から意識せずに過ごしたいものだけどね」 「そういえばどうして人識くんのこと知っていたんです?生きてたことじゃなくて、殺してたことの方ですけど」 「玖渚さんからメールが来てた。動画の方はおまけで宗像さんが目覚めるのがいつになるかはわからないからランドセルランドに到着するのが遅れるかもしれないってさ」 『おまけ』などと銘打っていたが、本来ならこっちも本題に匹敵するようなものだとは思うが。 というか、あえて僕がまだ伊織さんに伝えてない『本題』がなければ動画の方が本題になるのは間違いなかった。 罪を犯した映像を見せることで自戒させようだとか玖渚さんはこれっぽっちも考えちゃいないだろう。 僕がこういう人間であることを差し引いてもきっと微塵も思っちゃいない。 ただ、無いよりは有った方がいいから、伊織さんもいるから人識の情報を伝えるついで、程度で送ったんだろうなということくらいは十分予想できる範囲だった。 再確認するが、やっぱり玖渚さんは――異常だ。 人間なのか疑いたくなるくらいに。 「……遅くなるというのならもう少しここで休んでも大丈夫ですかね」 「できるだけ急いだ方がいいのは確かなんだけど……少しくらいならいいんじゃないか?」 「松葉杖や車イスはなかったんですよね?」 「薬局だからな、処方箋受付のコーナーにこうやってソファーがあっただけでも御の字だ」 「では交代しましょうか」 「交代?」 「様刻さんもお疲れでしょうし、ここで一度身を休めてみてはどうかと。具体的に言っちゃえば寝てしまえと」 休息は図書館でとったとはいえ、言われてみれば始まってからまともに睡眠はとっていなかったのを思い出す。 早朝に泣き疲れて研究所で少しだけ寝てしまっていたが、あれをまともな睡眠とは呼びがたい。 それに、いざ意識してしまうと途端に眠気が襲ってきた。 「……伊織さんがそういうならいいけど、何かあったらすぐ起こしてくれよ」 「わかっていますよう、でないと私もお陀仏ですし」 「ああ、それと、僕が寝てる間にDVDを見るなら別に反対はしないしスマホから動画を見たって構わない。放送も最初の部分は入っていないけど録音もしてある。 一度に情報を出し過ぎるのも、と思ってさっきは言ってなかったけど玖渚さんからのメールは絶対見ておくべきだね。 基本的に全部僕のデイパックの中に入っているし、首輪探知機もあったから周囲700メートルくらいは人が入ったらわかると思う。 そしてこれは余計なおせっかいかもしれないけど、伊織さんが一番見たがってるであろうDVDは26番で僕個人としてはオススメしないのが28番だ。 もちろん伊織さんが見たいというなら反対はしないけどね……他に質問は?」 「そこまで丁寧に言ってくださったのにあるわけありませんよう。まあ、何かあれば対応できる範囲でなんとかしますし無理そうなら起こしますから」 「うむ、ならよし」 そう言い残して僕は横になる。 窓から広がる空は山火事の影響を色濃く残し、一つも星は見えない。 膝枕などを狙うつもりは毛頭ないが粗相をしでかす事態を避けるために頭は伊織さんの方に向けておいた。 「おやすみなさい」 「おやすみなさい」 果たして、どちらが先に言ったのだったか。 どちらだったところで薄れる意識の中では些事にすぎないことだけど。 …………そういえば、昨日も満月じゃなかったっけ……? 【1日目/夜/G-6 薬局】 【櫃内様刻@世界シリーズ】 [状態]健康、睡眠、『操想術』により視覚異常(詳しくは備考) [装備]スマートフォン@現実 [道具]支給品一式×7(うち一つは食料と水なし、名簿のみ8枚)、影谷蛇之のダーツ×9@新本格魔法少女りすか、バトルロワイアル死亡者DVD(11~28)@不明 炎刀・銃(回転式3/6、自動式7/11)@刀語、デザートイーグル(6/8)@めだかボックス、懐中電灯×2、コンパス、時計、菓子類多数、 輪ゴム(箱一つ分)、首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1、ノートパソコン@現実、けん玉@人間シリーズ、日本酒@物語シリーズ、トランプ@めだかボックス、 鎌@めだかボックス、薙刀@人間シリーズ、シュシュ@物語シリーズ、アイアンステッキ@めだかボックス、蛮勇の刀@めだかボックス、拡声器(メガホン型)@現実、 首輪探知機@不明、誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、デザートイーグルの予備弾(40/40)、 「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、ノーマライズ・リキッド、チョウシのメガネ@オリジナル×13、小型なデジタルカメラ@不明、三徳包丁@現実、 中華なべ@現実、マンガ(複数)@不明、虫よけスプレー@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、おみやげ(複数)@オリジナル、 食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、『箱庭学園で見つけた貴重品諸々、骨董アパートと展望台で見つけた物』」 (「」内は現地調達品です。『』の内容は後の書き手様方にお任せします) [思考] 基本:死んだ二人のためにもこの殺し合いに抗う(瓦解寸前) 0:zzz……。 1:休んだら玖渚さん達と合流するためランドセルランドへ向かう。 2:時宮時刻を殺したのが誰かわかったが、さしたる感情はない。 3:僕が伊織さんと共にいる理由は……? [備考] ※「ぼくときみの壊れた世界」からの参戦です。 ※『操想術』により興奮などすると他人が時宮時刻に見えます。 ※スマートフォンのアドレス帳には玖渚友、宗像形が登録されています。また、登録はしてありませんが玖渚友からのメールに零崎人識の電話番号とアドレスがあります。 ※阿良々木火憐との会話については、以降の書き手さんにお任せします。 ※支給品の食料の一つは乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。 ※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前、エリアの境界線が表示される。範囲は探知機を中心とする一エリア分。 ※DVDの映像は全て確認しています。 ※スマートフォンに冒頭の一部を除いた放送が録音してあります(カットされた範囲は以降の書き手さんにお任せします)。 すうすうと寝息をたてる櫃内様刻の横で無桐伊織は食い入るようにスマートフォンの画面を見つめる。 放送の内容も一度聞けば十分だったし、既に本人から教えてもらっていることをわざわざ見る必要もないと『病院坂黒猫』のファイルは再生すらしていなかった。 人を殺すという行為は思ったより気持ちが悪いということを伊織は身を以て知っている。 故に消去法で彼女が何度も再生を繰り返すのは『匂宮出夢』とタイトルがつけられたファイルのみ。 最初は自身のよく知る顔面刺青の青年だけを見ていた。 12時間以上前のこととはいえ、彼女にとってはやっと確認できた姿であることは間違いない。 まずは健在を喜んだ。 続いて、今まで目にする機会がなかった彼の戦闘技術に感心した(以前に哀川潤と共闘したときは圧倒的すぎて手も足も出なかった)。 いつしか、焦点が相手の女性に移っていく。 「……人識くんがやたら言ってた出夢って人、こんな方だったんですねえ……」 感慨深げに呟き、思いを馳せる。 今まで知ることがなかった新たな一面を知ったことで思うことはあるのだろう。 「……キスまでしちゃって……電話して冷やかしてあげちゃいましょうか――なんちゃって」 玖渚からのメールには零崎人識の電話番号も添付されていた。 必要な情報が埋もれるのを避けるために最後に回したのは様刻の配慮だったらしい。 「そういえばランドセルランドの番号も持ってましたし、人識くんがいるかもしれないのならそっちに電話するのもありかもしれませんが……」 聞く者はいないとわかっていても口を動かすことはやめない。 「……それにしても、双識さん、半信半疑でしたがいたんですねえ……哀川のおねーさんだって人類最強じゃなかったんですか……なんで死んじゃったんですか……でも……」 独白する声が滲んでいく。 「……人識くん……本当に、本当にっ、無事でよかったですよぉ……っ」 思いが、溢れる。 が、その目から雫が零れ落ちることはない。 その選択肢を選んだとしても今はそれを見る者も咎める者も誰もいないというのに―― 【1日目/夜/G-6 薬局】 【無桐伊織@人間シリーズ】 [状態]両足骨折(添え木等の処置済み) [装備]『自殺志願』@人間シリーズ、携帯電話@現実 [道具]支給品一式×2、お守り@物語シリーズ、将棋セット@世界シリーズ [思考] 基本:零崎を開始する。 0:………… 1:曲識、軋識を殺した相手や人識君について情報を集める。 2:様刻さんが起きたら玖渚さん達と合流しましょうか。 3:黒神めだかという方は危険な方みたいですねえ。 4:宗像さんと玖渚さんがちょっと心配です。 5:人識くんとランドセルランドへの電話は…… [備考] ※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。 ※黒神めだかについて阿良々木暦を殺したらしい以外のことは知りません。 ※宗像形と一通りの情報交換を済ませました。 ※携帯電話のアドレス帳には箱庭学園、ネットカフェ、斜道郷壱郎研究施設、ランドセルランド、図書館の他に櫃内様刻、玖渚友、宗像形が登録されています。 ※DVDの映像は匂宮出夢と零崎双識については確認しています。他の動画を確認したか、またこれから確認するかどうかは以降の書き手さんにお任せします。 不死鳥(腐屍鳥) 時系列順 一足一動 働物語 投下順 一足一動 きみとぼくのずれた世界 無桐伊織 三魔六道 きみとぼくのずれた世界 櫃内様刻 三魔六道
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/181.html
帰り道――――120%悪巧みで書かれた小説です―――― ◆xR8DbSLW.w ◎ ◎ ◎ 「過負荷って何だと思う」 「知りません、過剰な不可思議の略なんじゃないですか。 身近に一人は欲しいですけれど、そんな満足いくような人は中々いませんし。 右往左往するのも納得かもしれませんね。よっぽど大変なのでしょう」 「求めているんじゃなくて、見下したいだけなんじゃないの。だからみんな大変なんだよ。 案外みんなは自分に醜いところはないと思い込んでるし、いや思い込みたいのからかな。自分より下に人がいると、安心するからね」 「あなたは、どうなんですか?」 「ぼくは普通になりたいよ」 「よくそんなへらへらと言えるものですね」 「きみはどうなの?」 「わたしは既に手遅れですよ。何に関してもです」 「そりゃあよかったね――――いや、悪かったのかな」 「ですかね」 ◎ ◎ ◎ なぜこうなった、と訊かれたらぼくが聞きたいと疑問を疑問で返す真似をするだろう。 なんでこんな真宵ちゃんは溌剌としているんだろう、とは心の中では思うけれど、やはり無茶をしているとは傍目から直ぐに分かる訳で。 けれどぼくがなにも言えないのは、真宵ちゃんが、いい意味で暦くんのことを吹っ切れた。 いや、多少なりともまだわだかまりはあるだろう、けれどそれを感じさせないほど、元気でいてくれている。 それが例え無茶でも、もしくは苦茶でも、二つ合わさって無茶苦茶でも。 いい切っ掛けだと信じて。ぼくは放置している。 「ていうわけで、コミカルにいきましょう、コミカルに。暗いのばかりでは疲れます」 「うん、そうだね。時たまには空気を読まず笑い飛ばすのもいいかもしれないね」 まあそんなかんじで、真宵ちゃんが笑いながら、 笑みを浮かべ――――貼り付けながら、喋りかけてくる。ぼくはわざわざその不自然さを指摘したりはしなかった。 「ええ、これぞコミカライズですね」 漫画化されていた。 ちなみにコミカライズにそんな意味はない。 「なんです、戯言さん。その『ぼくが本来は大先輩でアニメ化されるならぼくの方をやってほしいと願いながらも、 まさかの後輩の方に先を越されてやるせなさに暮れている中、それをさせる張本人が目の前にいてどうしようもない憤りを感じる』みたいな顔をなさって」 「十割捏造の嘘ていうのも中々珍しいよね」 漫画化の次はアニメ化だった。 「ま、それはそうとで」と、真宵ちゃんは続け、 どうやら話の続きをするよう。 今現在ぼくらは、互いの情報交換をしている最中である。 真宵ちゃんから話を初めて、放送のこと、死亡者のこと、ツナギちゃんのこと、さっきの大男――――日之影空洞と言う人のこと。 全てがつながった。なにか小規模なパズルを完成させた、そんな感覚。 で、今度はぼくが話をし始め、安心院さんのこととかを話したところで、次の言葉に行く。 「なるほど、つまりは戯言さんは、僕と契約して『主人公』になってよ! と……なんでしたっけ、そう、安心院さんと言う人に言われたんですね」 「……? まあ大体そんな感じだね。それはそうとなんかすごい似ていたね。いまの契約して云々のところ。もしかして声真似得意なの?」 「ええ、わたしはよく加藤英美里さんみたいな声だと近所から評判ですからね」 「やけに具体的だな」 「きっと戦場ヶ原さん辺りは、『その必要はないわ』とか阿良々木火憐さんていう人はきっと『あたしって、ほんとバカ』とか言ってるんですよきっと」 「ぼくはその人たちを知らないし、その人たちの正体が何であるか分かんないけれど、具体的すぎるだろ、って言うツッコミはできるからね」 「それはそうとじゃれごとさん」 「割とシンプルな噛み方だけど、ぼくの呼称は戯言で一貫してくれ」 「失礼噛みました」 まあ一回の失敗を咎めるほどぼくも人間小さくない。 ここはスルーの方向に行こうと思う。よかったね、真宵ちゃん。ぼくが大きな人間で。 「あれ、不思議と戯言さんが自分を棚に上げているような」 「おいおいおい、あらぬ理不尽な申しつけでぼくを陥れようとしないでよ。やだなあ」 「…………そう、ですか」 言い切ったぼく。 そう、後ろめたいことなんて何一つない。 戯言も程々にしてほしいよね、まったく。 「まあともあれです、戯言さん」 「ん?」 「主人公なんていうものは本来誰かがなりたくてなれるようなものじゃないんですよ」 「だろうね、ぼくもそう思う」 「つまるところ、主人公なんてものは宿命なんです。 足掻こうだなんて、それは神を冒涜するかのような行為なんですよ。 そう、言うなれば千石さんにマリオがクリボーにするかような踏みつけをするみたいな、そんな冒涜です」 わたし的には千石さんはこれから何かしでかすとみています、とのこと。 …………誰だよ、千石って。 「まあ努力云々だとかでどうこうできるものではないってことですね。 けれども、それを人為的に行おうとしている安心院さんとやらは、正直言って夢見がちな中学生的思考の持ち主で無い限り。 そんな人が本当にいれば大変危険な事態ですよ、戯言さん。理解しているだろうとは思いますが」 「……まあね」 「そしてそれを真に受けるような人も相当かと思いますが」 「……同感だね、きっとそんな言葉を真に受ける人はそうとうなキチガイに違いない。 けれどぼくはあの人の言葉には、不思議とそれすらも可能にさせる。そんな魔力っつーか魅力があると感じたからね」 もしくはぼくが無力なだけかもしれないけれど。 「ともあれ、余計な伏線はこれからのストーリー展開に支障をきたしますからね。気を付けてくださいよ」 「ダメだしっ!?」 まさかのぼくの完全なる巻き添え! 十割方安心院さんが悪いのに!? 訴訟したら今ぼくは勝てる! 「まったく、わたしという逸材を有しているんですから少しぐらい上手く事を運んでほしいです」 「さっきまで泣いていた人間の言葉じゃないよね! それ」 なんかオーバーヒートしてるけど。 大丈夫か。この子。 色々、背負いこみ過ぎてないといいけれど。 目的を追いかけ過ぎて自分に余計な負荷を与えてなければいいんだけどね。 「まったく、わたしは今度は戯言ハーレムいりですか。やれやれ、人気者はつらいものです」 「待て。なんだその不可解な悪趣味グループは。ぼくはそんなものを組織しちゃいないよ」 「初期メンバーの鳳凰さんは退会してしまいましたからね……。後継ぎを探すのは一苦労でしょう」 「鳳凰とやらはきみの夢の中の話であるし、そもそもあんな一瞬出会っただけの人を一々入れるな! 後継ぎ探すのは簡単すぎて逆に苦労するよ!」 「『あんな一瞬』……ですか。まるでわたしの夢の中をのぞいたかのような言い分ですね」 ……げ。 ……まあ正直言っちゃえば、暦くんの死を乗り越えれた彼女のこと。 今更あの時のことを言っても動揺はしないんだろうけど、それこそ今さらだし。 隠していたこと、っていうのがまあなんていうか釈明がめんどいし、隠したままにしておくか。 「実を言うとね真宵ちゃん…………ぼくは超能力者なんだよ」 …………。 はっきりいって反吐が出そうになった。 何が悲しくてあの島にいた、占い師とおなじ役柄に就かなければならないのか。 不条理だ。……戯言か。 「な、なんですって……っ。ならわたしたちの出会いは……」 なぜか真宵ちゃんは乗ってきた。 ノリノリだ。 まあ話を逸らす上では都合がよかったので特別何を言うわけでもない。 ぼくも話に乗っておく。 「ああ、実を言うと仕組まれたものでね。ぼくたちがこうして話すであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」 「地味にむかつきますね、その語尾」 「そうなるであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」 「なんかやめてください! 気持ち悪いです」 ずいぶんな言い草だった。 本人や巫女子ちゃんあたりに謝ってほしい。 「死にたい気分ダ」 「一つのツッコミがまさかの展開に!?」 「例え相手が幽霊であろうとも、ぼくの称号は戯言使い。ぼくの前では悪魔だって全席指定、 正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討ってご覧に入れましょう」 「全面対決ですか!?」 「さあ、十全だから行くよ、お友達(ディアフレンド)。 あなたも戦う覚悟を決めたのなら、防御だの守備だの、そういう甘ったれた言葉を安易に使うのはやめたら。みっともないよ」 「わたしはそんな物理的な意味では戦いをする気はさらさらありません!」 「はぁん? 何でこのぼくがきみの命令に従事しなくちゃなんねーの?」 「ただの横暴ですよ! ていうかいよいよわたしにパクリキャラとか言えなくなってきてますよ!」 「パクリじゃないよ、オマージュだ」 「……くぅ」 あ、折れた。 まさかの展開である。 「そういえば、わたしもパクリキャラを目指そうだとかそんな設定を付け加えられてましたね」 「そうだったね、そういえば。キャラの薄い真宵ちゃん」 「……墓穴を掘りました」 しかし今思えばなんかこれも伏線に見えてくるよな。 なんていうか主人公にはキャラの濃さは付き物だし、同時に主人公と同行する人たち。 いわばパーティメンバーもキャラが濃くなきゃ面白くないからね。 「で、結局どうなりそうなの? 真宵ちゃんのキャラは」 「ふっ、戯言さん。やはりわたし思うのですよ。わたしはこのままのキャラでいようと」 「へえ」 「ですから戯言さん。わたしは貫き通す勇気をもって、これから過ごしていこうかと思っているんです」 「そりゃ御立派だね。ぼくには到底まねできない」 「まあ勇気という言葉を加味することで前向きに誤魔化しているだけで、本当はただの意地っ張りなんですけどね!」 「……」 せっかくいい言葉言ったと思ったら、ぶっちゃけやがった。 「勇気と言う言葉を最後に付ければ大抵の日本語はポジティブに置換できますよ」 「んな馬鹿な事言わないでよ。そんなわけないだろ。日本語はそんな単純なものじゃねーよ」 「……やってみますか?」 「やってみせてよ、きみの惨敗は目に見えているけどね。 そうだな、どっちかが負けたら、お互い知られたくない秘密でもバラそうか」 「秘密の暴露ですか」 「うん、結果的にどんな謝罪なんかよりも一番効率的だと思うからね。 相手の弱みを握るということは。そこから相手を一生脅し続けるのは最高だよ」 ほら。 こんな格好よく言っても言ってることがダメなら格好良くならない。 これが日本語だよ、真宵ちゃん。 「ふふ、その勝負なら……あの時みたいには、なりそうにないですね。いいでしょう、受けて立ちます」 「その無駄な度胸だけは認めるよ」 「飛んで火にいる冬の虫とはあなたのことです、戯言さん」 「なんか入る前からぼく死にかけだよね!? それ!」 「では」 こほん、と咳払いする真宵ちゃん。演出過剰だ。 「まずは小手調べから行きましょう。恋人に嘘を吐く勇気」 「お」 やるね。 やってることは普通に恋人に嘘を吐いているだけなのに、 後ろに勇気と付けるだけで、まるでそれが優しい嘘であるかのようだ――――。 そんなこと一言も言っていないのに。 「仲間を裏切る勇気」 「むむ」 わーお。 結果としては仲間を裏切っただけなのに、まるでそうすることで、 仲間を助けたような行動をとった印象が残る。 ――――そんなことは、一言も言ってないのにね。 「加害者になる勇気」 「お、おお……」 唸らざるを得ない。 ただ単に人に迷惑をかけているだけなのに。 まるで自分から汚れ役を買って出たような男の中の男を見せつけられた気分になる。 ――――そんなことは一言も言ってないのに。 「痴漢をする勇気」 「く……くそ」 完璧に劣勢じゃないか。 痴漢という卑劣極まりない(ちなみにぼくが崩子ちゃんを抱き枕……もとい奴隷……もとい「ともだち」にしているのはこれに含まれない) 犯罪を犯しているのにも関わらずに、まるで別の目的があって、その確固たる目的のためにやむなく冤罪を被ってあげましたよ的なものを感じる。 ――――やっぱそんな事は一言も言ってないのに。 「怠惰に暮らす勇気」 「こ、これは……」 最早後がない。 何もしてなく無駄に時間を浪費しているだけのはずなのに。 わざわざあえてその境遇に身を置き、大義のため、貧窮にあえいでいるかのようでさえあった。 ――――そんな事は一言も、本当に一言も言っていないのに! 「負けを認める勇気」 「…………ま、負けを」 と。 言いかけてぼくは止まる。 い、いや待ってよ。 この戯言遣い、精々が小学生に口喧嘩に負けるのか……? お、落ち着くんだ、ぼく。 なにかあるはずだ、なにか……。 「――――認めない」 「ほう」 自分でもそれこそたかだか小学生相手になにをムキになってんだとも思いつつ、 自分のターンへと、強引にもってった。 「じゃあぼくもちょっとはその勇気シリーズに便乗して、言ってみてもいいかな」 「ええ、どうぞお好きに。どうせ戯言さんの負けは目に見えていますけどね!」 では、とぼくも同じく咳払いをして、演出過剰に語り始める。 「一日一時間殺戮を犯す勇気」 「……はい?」 一見、殺戮を犯す上でもなにかしょうがない理由があって、殺戮をしているかのように見える。 しかし一日一時間と言う無駄に謙虚な言葉を付属させることで、その意識を薄めることが出来る。 結果的に涙ながらに、一時間だけ殺戮を犯す光景も浮かぶけれど、本当はもっと殺戮を犯したいけれどしょうがなしに一時間に抑制している。 そんな光景も同時に再生することが出来たりする。 真宵ちゃんも同じ考えに至ったのか、ガクガクと震え始めていた。 「勇気を出す勇気」 「な、なんですか……それ」 もはやこれは卵が先か鶏が先か、的なやつである。 勇気を出すのに勇気が必要であるが、その勇気がない。その勇気を生み出すためには、勇気が必要な訳で。 これは実を言うと、根暗な子を想像させる。 そう、活発な子ではありえない悩みな訳で、どう足掻いてもこれはネガティブなのだ。 たとえば一世一代の告白のをするためにこれが必要なのかもしれない。 けれど最終的に必要なのは、勇気ではなく勢いだ。 故にぼくはこれはポジティブにはならず、ネガティブになるんじゃないかと講じる。 そしてぼくは静かに言う。 「――――負けを、認める勇気」 「…………ま、負けを認めます」 実際には、負けを認めただけであり。 実際にやられると、それはどんな幻覚もなく、ただただ敗者の姿が在るだけであった。……何か悲しい。 ちなみに、真宵ちゃんは、「ああ! 言葉の格好よさにつられて言ってしまいました! 実際はただ負けを認めただけです! 日本語って難しいですね!」と、 両肘両膝と、両掌を地へと付け、頭を振り乱しながら喚いていた。 「う、うう……。まさか自分の技に溺れて逆に傷を負うなんて……」 「まあ別に秘密は今は暴露しなくていいよ。聞いてよさそうなことなんてないだろうからね」 「う、うう…………」 何ていいながらも、立ち直り始めたのか。 うろめきながらも徐々に足元をしっかりとさせてゆく。 …………そんなに負けたことショックだったのかな。 「ま、まあそれはともかくとしてですね、洒落事さん」 「なんとなくオシャレなイメージがあって、ぼくとしてもまんざらではないんだけど、 やはりその辺りはしっかりして欲しいからね。ぼくの呼称は戯言さんに一貫して」 「失礼噛みました」 「違う、わざとだ」 「噛みまみた」 「わざとじゃない!?」 「神マミった」 「神様殺しちゃダメだよ。ていうかまさかの振り出しに戻った!」 もしかしてぼくは、彼女の手のひらに踊らされていたとでもいうのか。 なんということだ。 これで某アニメのキャラ。赤い子以外全員出てるじゃないか。――――赤い子、ねえ。 「話を戻しますよ、戯言さん」 「あ、ああ、うん」 戻された。 「ともあれ、『主人公』なんてものは、目指してなれるものではありません」 「…………」 「わたしは、そう思いますよ」 「……うん、ぼくも、そう思うよ」 正直、正義の味方になることはできても、それはイコールして主人公につながる、というのは違うのだ。 最近では、ダークヒーローなんていうものも流行っている。 暑苦しい正義が必ずしも『主人公』なんていうことでも、やっぱりないのだ。 そんな風に思っていると、彼女。 八九寺真宵ちゃんは言葉を、繋いだ。 「ですが、それでも、わたしは戯言さんを応援してみようかと思います」 「…………」 「わたしだって最低限の観察眼ぐらいありますからね、今までの触れ合いを見て、不思議とそんな風に感じます」 「……そう」 ぼくは素っ気なく返す。 けれどその言葉は、確かにぼくの胸に届いて、温かかった。 「別にそれこそ戯言ハーレムではありませんが、わたしは、あなたを信じてみたいと思います」 「……ぼくは戯言遣いだよ。きみに接してきた全てが、戯言塗れの大嘘なのかもしれない」 「それでも、ですよ。あなたの主人公の物語であれば、それはきっとハッピーエンドで、終わるんですよ。そう、思います」 …………。 この子は、強かった。 ぼくが見届けることもなく、単純に、強かった。 大切な人が死んだというのに、それでも、強く生きている。 凄いことなんだと思う。 凄まじいことなんだと思う。 ……無理をしている感が、正直否めないけど。 それでも、健気に生きている。前に進んでいる。 この子は、凄かった。 「……ま、なんであれ一人ぼっちはさみしいですからね、わたしが一緒にいてあげます」 「…………」 全員でたよ。 この子凄いや。 「……そっか、ありがと。――――時に真宵ちゃん。ねえ、ひとつお願いがあるんだけど」 「はい、なんでしょう」 「一回さ、『師匠』って呼んでみてくれない?」 「はい? え、ああはい、『師匠』?」 「うん、ありがと」 ……。 …………うん。 やっぱり違う。 姫ちゃんとは、やっぱり違う。 代理品は代理品でしかなくて。 もしかしたら見当違い甚だしくて、代理品ですらなかったのかもしれない。 けれども、今更ぼくの決意は揺るがなかった。 友は、勿論。真宵ちゃんも当然。 ぼくは、救ってみせよう、と。 故に、ぼくは歩く。 一歩、一歩、また一歩と。 さっさと、この物語の幕を閉じるべく。 加速していく物語に終止符を打つべくぼくは、歩く、歩く。 ◎ ◎ ◎ 「特別って何だと思う」 「どうでしょうね。他人と区別の略なんじゃないですか? まあ特別って言うぐらいなんだから、おなじと言うわけにはいけませんしね。 求めることも仕方のないことなのかもしれません。右往左往しすぎだとは思いますが」 「そうだね、特別な人って言うのは欲しいものなのかもね。 とはいえ互換性と唯一性は相反するものだと思ってるからね、いや思い込みたいのかな」 「あなたはどうなんです?」 「ぼくは別に」 「さいですか」 「きみはどうなんだい?」 「さあ、そんなのはわたしの決めることではありませんよ。 他人の評価は他人が決めるものですし、同じくわたしの評価は他人が決めることですからね」 「そりゃそうだ」 ◎ ◎ ◎ 戯言遣いこと、戯言さんがわたしの前を歩く。 その背中は大きくて、まあ成人男性としてみれば少し小さめなのかもしれませんが、 阿良々木さんに見慣れていると、とても、とても大きな姿に見えてしまいます。 そう、今わたしの隣にいるのは、戯言さん。 最初は、なんだこの人、と本能的に、身体の奥底から湧いて出るような、そんな衝動な気がします。 けれど、今は、隣にいる。一緒にいてくれている。 実際、なんだかんだで察する能力は高そうな戯言さんのこと。 きっと、わたしが無理して元気を出していることぐらいは、察しているんでしょう。 それでも黙っていてくれている。 優しさなのかなんなのか。もしかしたらわたしが高く見過ぎて気付いていないだけかもしれませんけれど。 それを含めて、戯言さんのいいところなんでしょう。 そう思います。 わたしの空元気。 ギャグをしようと、一生懸命笑おうと、心の底から楽しもうと。 まだ少々慣れないですけど、戯言さんとの会話は、面白いですし。 そう、先ほどの通り。 阿良々木さんが、綺麗に。潔く、天国に行けるように。 そりゃ、わたし以外にも心残りな方はたくさんいるでしょう。 戦場ヶ原さんだとか。羽川さんだとか、妹さんだとか。 けれども、いえ、だから。 わたしなんかに構っていないで、大事な皆さんに、すこしでも憑いてあげたら。 そう、思うんです。 わたしは元気です。 わたしは大丈夫です。 わたしは泣きません。 わたしは喚きません。 わたしは既に一人じゃありません。 わたしはもう、一人じゃない。 もう、何も怖くない――――訳では勿論ないですが。 頑張るには、たります。 傍には戯言さんも付いていてくれます。 わたしだって、もう、弱くはないんです。 だから。 言わせて下さい。 最後に一つだけ。 まだ阿良々木さんが見ているなら、わたしに一言だけ言わせてください。 そう。 最後に、わたしは、言いたいことがあるんです。 今更過ぎるかもしれませんが、だけど遅すぎることは、何の理由にもなりません。 わたしのけじめの問題だから。決着をつけたいんです。 ゆらゆらと揺れる変幻自在のアホ毛を付けた、少し伸びた黒髪の男性。 いつでもわたしの雑談につきあって、本当に楽しそうにしていてくれたあの男性の姿を――――今でもここにいるかのように、 見ることが出来る、わたしの唯一無二の親しかった、愛しかった、小さな、だけども大きな人を思い浮かべて。 「さようなら」 ――――お別れの台詞はいらない。 そうでしたね。 ……失礼、噛みました。 【一日目/午前/E-3】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、 [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達) [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ランダム支給品(4~6)、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 1:真宵ちゃんと行動 2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流 3:診療所、豪華客船、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。 ※名簿、八九寺の動向について知りました(以後消してもらって構いません) ※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている) ※球磨川禊との会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。 ※何処に向かっているかは後続の書き手様方にお任せします。 ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]健康、精神疲労(中) [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:生きて帰る 1:戯言さんと行動 [備考] ※傾物語終了後からの参戦です。 ※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします 「ありがとう、ございました」 阿良々木暦さん。 あなたに遭えて、幸せでした。 泰平に向けて 時系列順 交信局(行進曲) 泰平に向けて 投下順 交信局(行進曲) この世に生きる喜び 戯言遣い 探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード この世に生きる喜び 八九寺真宵 探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/142.html
鷹と剣士の凌ぎ合い ◆mtws1YvfHQ ≪赤き征裁≫、≪死色の真紅≫、≪疾風怒濤≫、≪一騎当千≫、≪赤笑虎≫、≪仙人殺し≫、≪砂漠の鷹≫、≪嵐の前の暴風雨≫、などなど。 彼女は様々な名前で呼ばれている。 その中でも彼女、哀川潤を最もよく表している言葉がある。 裏の世界に、暴力の世界に、身を浸す存在ならば、知らぬ者は決していないだろう名が。 誰もが彼女を、こう呼び恐れ慄くだろう。 誰もが彼女を、こう呼び逃げ惑うだろう。 誰もが彼女を、こう呼び泣き叫ぶだろう。 誰もが彼女を、こう呼び震え忍ぶだろう。 誰もが彼女を、こう呼び嘆き狂うだろう。 誰もが彼女を、こう呼び忌み嫌うだろう。 誰もが彼女を、こう呼び畏れ敬うだろう。 たった一つの名。 哀川潤にのみ許された名。 『普通』からは程遠く、総合力に秀でた『特別』でも届かず、一点特化に特化を重ねた『異常』でもなお足りない。 無論、『過負荷』などと言う生易しい物である訳もなく、『悪平等』などと言う名の存在でもある訳がない。 哀川潤を表し得る言葉は一つしかない。 それは―――― 砂漠の一角で、二人は遭遇した。 いや、遭遇したと言うのは相応しくない。 ポケットに手を突っこんだまま歩いていた哀川潤が、砂漠の中を一人で歩く、何処か眠そうな男を偶然見付けたと言うのが正しいのだが。 「おーい」 それに何の躊躇いもなく声を掛けた所で気が付いた。 此方を向いたその、眠そうな男が差している刀が血に濡れている事に。 しかしやはり何の躊躇いもなく、その男へと近付いて行く。 その男も男で近付いて来る哀川潤の存在に気付いたようだが、特に気にする様子もなく歩き続け、そして、それなりに距離を開けた所で、どちらとも言わずに足を止めた。 「……一応聞くけどあんた、もう人殺したか?」 どちらも黙ったままお互いを観察し合っていたが、哀川潤がそう聞いた。 男は何も言わずに、眠そうに刀の柄を掴んだ。 それだけでも十分、とまでは行かなくともそれに近い答えになっているはずだ。 それでもなお、哀川潤は無遠慮に近付く。 近付こうとした。 ――しゃりん。 唐突に、音が一つ鳴った。 はらりと哀川の目の前を、幾つかの髪が束となって落ちて行く。 赤い髪。 間違いなく、それは、哀川潤自身の赤い髪だった。 暢気に頭に手を伸ばす哀川潤を尻目に、男は二歩ほど後ろに下がり、刀の柄から僅かに手を離した。 「――――来るなら斬る」 ぽつりと呟くように、一言言った。 だがその一言はかなり現実味を帯びた一言だった。 何と言っても何時の間にか髪を斬った事。 更には人間を斬り捨てるのに対して躊躇いがない事。 それは良くも悪くも血に濡れた刀が証明していた。 男の言った一言。 それに頷く。 「なるほど――分かった」 理解したように頷いた、 「『言葉』ではなく『心』で理解できた!」 時には、哀川潤の足が、男の肩に、当たる寸前だった。 一瞬にして、男の左肩に蹴りを入れようとしていた。 「っ!」 突然、と言うより咄嗟に、男は衝撃を逃がす為だろう、後ろへと跳んだ。 蹴り、蹴られる事によって、お互いの距離が開いた。 だが同時に、男の方は驚いた表情を見せていた。 恐らく、予想よりも遥かに蹴りの威力が低かった事に対して。 哀川潤はにやりと笑う。 「でもそんなん心意気じゃ駄目だなァ……斬ると思った時は! 既に行動を終わってる――それぐらいの粋じゃなきゃこのあたしは倒せないぜェー!」 何処ぞの悪役辺りが言いそうなセリフ。 それにしてもこの哀川潤、ノリノリである。 対して男は、無言で刀の柄に手を置いた。 眠そうだったものなど既に、影も形もない。 その目に宿る物は、「来るなら斬る」と言う生易しい物ではない。 もっと壮絶な、「絶対に斬る」とでも言うような気迫。 理解したのだろう。 警告の為に髪だけを斬ったように、その借りを返す意味と同じ警告の意味を込めて、刀を掴まない左の肩をわざわざ狙って軽く蹴った事を。 男の目の前にある哀川潤の存在が、「来るなら斬る」程度の物では届かない、「絶対に斬る」でもどうか分からない、そんな存在だと言う事を。 何よりも、たった一度の気が向いたからした警告に命を救われた事を。 「ヒッヒッヒ――」 「――――――――」 「――――――――」 「――――――――」 哀川潤は一瞬だけ笑いはしたものの、互いに無言で対峙する。 お互いに借りを返すと言う意味では既に、対峙する必要性は無くなっている。 しかし対峙する。 明確な敵対関係はないにも関わらず対峙する。 男はどうなのか分からないが、哀川潤は物凄く楽しんで対峙する。 強くて積極的までは行かないが、強い奴に出会えた事。 目にも止まらぬ速さで髪を斬る。 暴力の世界で蠢くプロのプレイヤーの中でも、ここまで極端に行き着いた者はそう居ないだろう。 閃光の一つも見せない居合いの技。 目を凝らしても見えるかどうかと言うそれに、興奮していた。 「――――名前」 「あん?」 沈黙を保っていた。 だがそれを男が破った。 「名前、何て言うんだ?」 「なんで聞くんだ?」 「殆ど忘れかけてたんだが、ある奴から遺言を預かっててな……伝える奴かの確認だ」 恐らくそれ以外にも意味はあるだろう男の言葉。 哀川潤は笑う。 少なくとも決して良い笑顔の分類には入らない、凶悪な笑顔を浮かべて笑った。 「哀川潤だ。ちなみに、上の名で呼ぶ奴は敵だけだぜ――それであんたは?」 「宇練銀閣だ――哀川」 男、宇練が呼んだのは、哀川潤の上の名。 まだ敵対するに足る理由がなかった筈の二人が、この時、完全に敵対した。 苦手意識があった訳でも、同族嫌悪があった訳でも、憎悪関係があった訳でもなく、何と無く敵対した。 上の名を聞き終えて、哀川は動く。 嬉しそうに動く。 名前を聞いても逃げないでいてくれる敵に向かって、何十にも、何重にも、先程髪を斬られた経験ととりあえず勘を合わせて適当に作った見当を元に宇練の居合いの間合いギリギリと思う辺りでフェイントにフェイントを重ねに重ねた上で、 「――――――――!」 突っ込んだ。 居合いの名は、零閃。 宇練家に伝わる、一瞬で斬り終えている居合いの技にして、ある種居合いの極地。 それを、最初に髪を斬られた時に、それを、見た筈なのに正面から突っ込んで来る哀川に対して何の異常も感じない程には、宇練は暢気ではない。 何か策がある。 当然のようにそう思いながら、自信を持って宇練は構える。 絶対の自信。 斬れぬモノなど何もないという自信。 それこそ、「斬ると思った時は! 既に行動を終わってる」、と思えるだけの自信を持って。 迎え待つ。 「――――零ッ」 刀の間合いに入った。 決して抜け出せない、決して逃がさない、決して斬り損ねない所まで這入った。 確信と共に、抜く直前、哀川の姿は消えた。 かに見えた。 しかし宇練は視界の上端、視界の上で、赤い何かを捕えていた。 一気に後ろに跳びずさり、上を向くと同時に、 「閃!」 鞘走りの音。 ――しゃりん。 少し強引に斜め上に向けて零閃を放った。 その時にはもちろん、既に一刀両断を終わっている。 空中の物を一瞬で斬り終えていた。 一瞬で。 それ故に気付くのが遅れた。 一瞬で。 斬った確信があった故に気付くのが遅れた。 速過ぎたが故に何を斬ったか気付くのに遅れた。 斬ったのは人間ではないと気付くのが遅れた。 「……な!?」 「オラァ!」 秒にしてもほんの一秒か、多くて二秒程度。 何を斬ったか気付き、驚愕する宇練に、斜め下から何かが突き刺さった。 無意識に口が開くが、何も入って来ない。 それでも震える体を無理矢理動かし、視線を下に向け、何があったのかと見る。 そこには、頭をめり込ませた体勢のままの、 「――――」 「ぐ……ァ、哀」 哀川潤がそこにいた。 見えるのは後頭部ぐらいの物だったが、それでも理解するには十分だった。 負けた。 あっさりと負けた。 「……川――」 そう理解しながら、宇練の意識は消えて行く。 急速に消え行く意識の最中、宇練はただ、思う。 これでゆっくりと眠れるのか。 「――じゅ、ん」 そう思った。 「…………ふぅ」 哀川潤は息を吐きながら首を軽く回した。 ありとあらゆる名で呼ばれる彼女。 彼女にこそ相応しい名が、一つある。 唯一。 ≪人類最強≫。 最強の名を冠する彼女。 だがそれはあくまでも人類と言う範疇である。 銃に撃たれれば、人は死ぬ。 頭を砕かれれば、人は死ぬ。 血が無くなれば、人は死ぬ。 火で焼かれれば、人は死ぬ。 土に埋もれれば、人は死ぬ。 当り前の事だが、人は死ぬ。 だから何時かは、彼女も死ぬ。 と言うか、身体が真っ二つにされれば、≪人類最強≫でも死ぬのだ。 故に、間もなく放たれる居合い抜刀、宇練銀閣の零閃は、鬼門に近かった。 だから、と言う訳ではないが少し小賢しい手を使ったのだ。 目立つ物を上に放り投げ、そちらに気を取られた隙を突く。 それは見事に成功した。 拾い上げた物は、 「あーあー」 上の服だった。 ≪人類最強≫に不可能は殆どない。 神技的な速さで上の服を脱ぎ、上に放り投げて自分は地面スレスレを走る事など造作もないのだ。 ちなみになぜ上に投げたのが服だったかと言えば、手近にある物で、目立つ物だったからと、次いで己の姿を見え難くするのにも一役買うだろうと思ったから。 赤と言う目立つ服を着ていたので、それが無くなっただけでも目に止まり難くなる可能性と、肌色と砂の色がお互いに似ているから多少なりとも見え難くなるとも考えて。 それは物の見事に成功を納めた。 咄嗟に宇練が哀川が何処にいるかを判断したのは、眼の上端で捉えた赤で、結果、一刀両断されたのは服だった。 どちらも目に止まっていたら、普通に考えれば二分の一の確率。 しかし哀川は気付いていなかったが、正直な所、もっと危険な橋だった。 零閃は別に、一瞬に一回だけ刀を抜いて納める技ではない。 一瞬で五回抜いて納める、通称、零閃編隊・五機と言うとんでも技まであったのだ。 更に言えば、斬刀と血の二つさえあれば一瞬で十回斬り終えている大技、通称、零閃編隊・十機と言う技まで。 だから勝てたのは偶然と言って良い。 いや、実の所を言えば偶然と言っては悪い。 今回の戦い、実は過去に、宇練銀閣が負けた時の筋を若干ながら辿っていたのだ。 鑢七花と言う男と戦い、正面から零閃を避けられ、蹴り飛ばされ、上から攻められ、散った。 正面から蹴られた。 これが奇しくも宇練の脳裏に刻まれていた敗北の記憶を刺激し、無意識に上への警戒心を強めた。 運も実力の内と言えば十分実力の範疇だが、偶然だけでは決してなかった。 しかしそれでも代償はちゃんとある。 「真っ二つか……」 横に真っ二つに斬り裂かれた服。 丁度、真ん中辺りで斬られた服。 着ればヘソ出し、着ずはブラのみ。 しばらく真っ二つにされたそれを眺めながら、どうするか悩んだようだったが、選んだのは、ヘソ出し。 砂を払ってからそれを着ると、何を思ったのか徐にポーズを決める。 「蝶・セクシー!」 しかし残念ながら周りには、倒れている宇練を除いて影も何もなし。 突っ込みも何もない。 どのぐらいの時間が過ぎたかは分からないが、ポーズを辞める。 戯言遣いのような、突っ込む相手が居ないでボケても単純に虚しくなるだけだと分かったからだ。 とりあえず足先で倒れている宇練を軽く触った。 反応はない。 「――おーい?」 声を掛けながらしゃがんで身体を揺するが反応はない。 首を傾げて、宇練の胸に手を当てた。 沈黙。 そして顔に一筋の汗。 「やべえ、心臓止まってる」 【宇練銀閣@刀語シリーズ 死亡】 哀川潤は少し焦ったように呟きながら腕をまくり、肩を回す。 「流石に加減しないとな……一姫みたいに肋骨折っちまったらいーたんに文句言われそうだし」 そして、宇練の胸の上に両手を乗せて、押す。 心臓マッサージは始まった。 あっさりと終わった。 【宇練銀閣@刀語シリーズ 復活】 「復ッ活ッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ」 宇練銀閣の止まっていた心臓は、色々と犠牲を払ったものの無事に動き始め、無事に復活。 このような場に来ても、全てを無視したような無茶苦茶さは健在と言える。 いや、戦った相手すらも巻き込む台風のような存在は傍若無人さと言う方があっているか。 意のままにならないと言わず、意を考える暇もないような、酷く激しい暴風雨。 宇練は運悪くそれに巻き込まれたのだ。 そんなのに巻き込まれ、そんな暴風雨に巻き込まれ、安眠など出来る訳もなく、寝れると思うだけ甘かった。 「…………さてと、一人ボケ……じゃなくて冗談もほどほどにして、刀は没収、荷物も没収っと」 何の躊躇もなく宇練の持ち物を奪い取り、その上で、 「よし、連れてくぞ?」 一応声を掛けてから肩に担いだ。 しかし気絶中の相手に声を掛けた所で返事がある筈もなく、実質強制連行でしかない。 もっとも、とある人物をスタンガンで気絶させた上で拉致した事のある哀川潤が、その程度の事を気にする訳もない。 肩に担いでいる宇練の重さを気にも留めず、と言うか重さを感じさせぬ足取りで、早足気味に歩き続けるのだった。 何はともあれ、哀川潤にとっての命の掛かった殴り合いで宇練銀閣にとっての鎬を削る殺し合いは、哀川潤の勝利で幕を閉じたのだった。 ≪人類最強≫ それが、哀川潤を表し得る言葉にして、哀川潤にのみ許された名である。 【1日目/早朝/H‐5】 【哀川潤@戯言シリーズ】 [状態]健康、まあまあ満足 [装備] [道具]支給品一式×3、ランダム支給品(1~6)、首輪、血濡れの刀@不明 [思考] 基本:バトルロワイアルを潰す 1:とりあえずバトルロワイヤルをぶち壊す 2:いーたん、 玖渚友、想影真心らを探す 3:積極的な参加者は行動不能に、消極的な参加者は説得して仲間に 4:東に向かう、(骨董アパートを目先の目標) 5:とりあえず宇練を持ってく [備考] ※基本2の三人は居るだろう程度で探しています。本当かどうかは放送待ち ※基本3の積極的はマーダー、消極的は対主催みたいな感じです ※道具の中にある首輪の存在には気付いていません ※まだ刀は使える状態です ※想影真心との戦闘後、しばらくしてからの参戦です 【宇練銀閣@刀語シリーズ】 [状態]気絶中、肋骨数本骨折 [装備] [道具]なし [思考] 基本:因幡砂漠を歩き、下酷城を探す 1:流れに身を任せる 2:斬刀を探す [備考] ※気絶中 骨倒アパートの見るものは 時系列順 魔のつく二人の人探し 図書館での静かな一時 投下順 魔のつく二人の人探し [知られざる英雄(知られた英雄) 哀川潤 崩壊を受け追う(抱懐を請け負う) 破壊臣に墓石 宇練銀閣 崩壊を受け追う(抱懐を請け負う)
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/135.html
「鬼」そして《鬼》 ◆mtws1YvfHQ 「殺したい」 気付けば、そんな言葉が口から漏れ出していた。 少し慌てて周りを見渡したけど、幸い火憐さんは居ないみたいだ。 危ない危ない。殺したい。 二手に分かれてるからって、油断し過ぎだ。 何も見付からないからって、暢気が過ぎる。 殺したい。 無意識とは言え、あんな事呟くなんて、火憐さんに聞かれてたらどうなってたか。 考えたくもない。殺したい。 それはそれとしても、 「……だけど本当に多いな」 本の数が多過ぎる。 閉架だから難解な物が多いだろう程度にしか思ってなかったのに、無駄に多い。殺したい。 難解な事ばかり書かれた研究書から、持っただけで崩れそうな古書と何から何まで、 「無駄に多いと言うか……殺したいと言うか……」 また言ってしまった。 周りを見渡すけど、やっぱり火憐さんはいないみたいだ。 大丈夫、か。殺したい。 さて、止めていた手を動かさないと。 「…………こんな所に僕を連れ込んだ理由は殺し合いの促進で間違いないだろう。だけど、火憐さんが連れて来られた理由が分からない」 適当に持った本は古書だった。 いらないな。殺したい。 「特別でもない、異常でもない、ただの普通の、ただの一般人を巻き込む理由が、分からない」 それこそ学園の特別や異常を集めて殺し合いをさせれば良いのに、なんで、よりにもよって一般人を連れ込んだのか。 験体名「枯れた樹海」。 異常は「殺人衝動」。 全ての道がローマに通じるように、全ての思考が殺人に通じる。殺したい。 そんな僕が衝動を堪え切れなくなれば、待っているのは屍の山。 は、流石に無いだろう。 僕より強い人間はいくらかいるだろうし。殺したい。 だけど誰も殺さずに済む事はない、と思う。 「……ん?」 一応裏の情報がなさそうだから適当に、本を選んで取ったつもりだったけど、違う。 これは、ファイルだ。 表紙を見てみよう。 「――――」 適当に引いたのに、予想以上の大当たりが出た。 参加者名簿と書かれたファイルだ。 開ける前にその辺りの本を引き抜いて中身を軽く確認する。 けど、特に何も書かれていない。殺したい。 他も引き抜いては中身を見て戻すけど、なにもなかった。 「さてと」 結局、重要そうな物はは参加者名簿以外は見付からなかった。殺したい。 近くを軽く見渡してみても、何かあると言う事はなさそうだし、 「何が書いてあるのか」 ページを開く。 最初に書かれていた名前は、 「…………誰?」 知らない人だった。 最初は都城王土か黒神めだかのページだと思ったのに。殺したい。 念の為に次のページを見ても違う人。 ページをざっと流してようやく都城王土、ではなく黒神めだかと書かれたページに出た。 まあ、居るのは予想通りだ。 フラスコ計画。 新しい候補。 その彼女が居ない方に違和感を感じるぐらいだ。 と言うか、彼女の『異常』が何かもう分かっているみたいだ。 『異常』の名前は「完成」。 他人の『異常』を完成させる『異常』。 なるほど。殺したい。 『完全な人間』の創造と、「完成」の『異常』。 無関係ではなさそうだ。 これに彼女が乗るかどうかは完全に別問題だけど。殺したい。 「次は」 人吉善吉。 言っては何だけど、予想通りだ。 黒神めだかが居ればまずいると思った。 速い内に会いたい。殺したい。 次は、球磨川禊。 次。 「……僕のページもあるのか」 次には丁度、僕自身の姿があった。 あるのに一瞬驚いたけど、参加してるんだから当然の事か。 詳しく見ると当然の事ながら「枯れた樹海」の異常の事も載っていた。 あまり、普段ならいざ知らず今の状況下で、知られたい事じゃない。 特に火憐さんには知られたくない。殺したい。 「――――――」 周りを確認してから、コッソリとそのページの根元から引き千切り、ポケットに仕舞う。 何時の間にか随分と後ろのページまで来ていた。 少し前に戻る途中、阿良々木の文字が目に付いた。 ただし下の名前は火燐では暦だった。 名前の横にある写真を見るけど、どう見ても男。 ファイヤーシスターズなのに男とは如何に。 と、思いきや、この人には妹が二人居るみたいだ。殺したい。 妹の一人が火燐さんと言う事か。 そのままの調子で目を下に向ける。 「――ッ!」 と、あった。 明らかに、『普通』ではありえない、『特別』か『異常』に類するだろう単語がそこに、しっかりと書かれていた。殺したい。 火憐さんに何か『特別』か『異常』の類があると思えないとすると、 「そう言う事か」 火憐さんは巻き込まれただけだ。殺したい。 そう理解する。 「吸血鬼」の名を冠する『異常』。 まさか本物の「吸血鬼」ではないだろうから、その名を冠するに足る『異常』を持った男なんだろう。殺したい。 兄に『異常』があるから、妹にも何かしらあるかも知れないと巻き込まれた。 そう考えるのが自然か。 だけど念には念を入れた方が良い。 次のページを捲る、けど違う人だった。 名前の欄に阿良々木の文字があるページを探せばいいのだから楽な事だ。殺したい。 適当にめくっただけで、あっさりと見付けた。 名前は、阿良々木火憐。 心の中で勝手に個人情報を見るのを謝りながら、見る。 けど、 「良かった……いや、この場合は彼女が生き残るために役に立つ『特別』も『異常』も無い事を嘆きべきなのか?」 『異常』な単語は何一つなかった。殺したい。 精々がファイヤーシスターズ。 良かった。 ページを捲る。 「あれ?」 けど、阿良々木の文字はなかった。 妹が居るんだから次の所に書かれてると思ったのに、予想が外れて何とも虚しい気分に襲われる。殺したい。 念のためのさっきと同じ手順で阿良々木の名前を探すけれど、ない。 もう一度探すけれど、二つしかなかった。 何度探しても同じだった。 「……どう言う事だ?」 何で一番下の妹が居ないんだろう。殺したい。 何かしら今回の事に関わっている、と言う事はないと思うけど、 「もしかして……」 その妹が今回の事に関わっているとか。 次いで、と言うよりも本命で、名前がなかったから都城王土の関わりもあるかも知れない。 いや、最悪の場合は僕以外の十三組の十二人、つまり裏の六人すらも、関わってる可能性もある。 少し考え過ぎかも知れない。 だけど、頭の片隅ぐらいには入れて置こう。殺したい。 それはそれとして、流し見た時に見付けた気になる名字の人達を見る。 零崎。零崎人識。零崎双識。零崎軋識。零崎曲識。 その中の僕を、零崎に似ていると言った、零崎軋識の詳細を見させて貰う。 探すまでもなく、当然の事のように『異常』な文字は書かれていた。殺したい。 《零崎一賊》。 忌み嫌われた殺人鬼。 『殺し名』順列3番目。 血の繋がりではなく、流血で繋がっている一族。 家族に仇なすものを老若男女人間動物植物区別なく容赦なく皆殺し。 そんなことはどうでも良い。殺したい。 それよりも、重要なことは別だ。 理由なく殺す《殺人鬼》。 零崎軋識が僕が零崎に似ていると言った意味が分かった。殺したい。 確かにこれは、似ている。 「殺人衝動」を持つ僕と、意味なく殺す《殺人鬼》の一賊。 もしかしたら、似ていると言うよりも同じなのかも知れない。 だけど違う。 唯一つだけ違いがある。 僕がまだ人を殺していない。 まだ、《殺人鬼》になってはいない。 殺したら同じになるかも知れないけど。 だけど、だからこそ、一つの希望もある。殺したい。 殺す為に生きる一賊。 殺す事で活きる殺人鬼。 殺す者に尽きる殺す者達。 それはつまり、もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら、僕に似た衝動を抱えている人達なら、 「だから」 普段を人間生活に生きているのなら、衝動を抑えて生きて行く方法を知っているんじゃないか。 蛇の道は蛇。殺したい。 殺人鬼なら、《殺人鬼》だからこそ、衝動を何とかするコツのような物を知っている人の一人や二人居るんじゃないか。 「殺す方法」に長けていれば、「殺さない方法」に精通するように、「意味なく殺す」のならば、「意味なく殺さない」でいる方法があるんじゃないか。 意味なく殺すと言っても、堪えなければならない時もあるはずだ。 だからきっと、可能性は、なしではない。 「殺す」 会いたい。 「だから」 聞きたい。 「殺す」 話したい。 「だけど」 教えて貰いたい。 「死なせたくない」 殺したい。だけど、死なせたくない。 この矛盾を抑える方法を。 この矛盾に生きる方法を。 軋識みたいな人ばかりかも知れないけど。 話を聞いてくれる人が居ないかも知れないけど。 それでも、この矛盾の答えを、この矛盾の果てを、この矛盾の終わりを、知っている人が居るかも知れない。 僕は、殺したい。 だけど。 僕は、死なせたくない。 だけど、何時かは如何にかなるかも知れない。殺したい。 死なせたくなければ、殺さずにいられるのか。 殺したくなくとも、死なせなければならなくなるのか。 どうか、教えて下さい。 どうか、知っていて下さい。 どうか、どうか。殺したい。 零崎の名字を持った四人の個人情報をしっかりと見終わった後で、その辺りのページを見ていたら、 「――あ」 名前の欄に書かれているのは零崎ではなかったけど、女の子の詳細に零崎の事が書かれていた。 本名は、無桐伊織。 零崎としての名前は、零崎舞織で、最も新しい零崎と言う事らしい。 覚えておこう。殺したい。 時計に目を向ける。 「あれ?」 まだまだ時間があると思ったら、もうあと十五分足らず約束の時間になりそうだった。 あんまり内容を見れなかったけど、少し早目に待ってないと心配だし仕方がないか。殺したい。 「よいしょっ、と」 立ち上がったは良いけど、参加者名簿をどうするか。 少し悩んだけど、刀と一緒に仕舞う。 これは、火憐さんには見せない方が良いかな。 軽く中身を見た段階なのに、奇声を上げて手当たり次第に火憐さんの言う正義を実行しに行きそうな相手しか居ないし、その相手が全部口だけじゃない事は、嘘が書かれてさえなければだけど、軽く見ただけで分かる時点でもう尋常じゃない。殺したい。 別の場所に移動するならしばらく見れないけど、また此処で調べる事になったらゆっくりと見る時間もあるし。 「さてと」 行かないと。殺したい。 何と無く時計を見ると、約束の時間まであと十三分だと示していた。 【1日目/早朝/F-7図書館閉架1階】 【宗像形@めだかボックス】 [状態]健康 [装備]千刀・?(ツルギ)×872 [道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)、参加者詳細名簿×1、宗像形のページ×1 [思考] 基本:殺したいけど、死なせたくない 1:火憐さんと合流、そして守る 2:誰も殺さない。そのために手段は選ばない 3:殺人衝動は隠しておく 4:機会があれば教わったことを試したい 5:とりあえず、殺し合いに関する裏の情報が欲しい 6:零崎一賊の誰かと話がしたい 7:火憐さんに参加者詳細名簿は見せない [備考] ※生徒会視察以降から ※阿良々木暦の情報はあまり見ていないので「吸血鬼」の名を冠する『異常』持ちだと思っています ※無桐伊織を除いた零崎四人の詳細な情報を把握しています ※参加者全員の顔と名前などの簡単な情報は把握しています オオウソツキ 時系列順 悪意の裏には善意が詰まっている 悪意の裏には善意が詰まっている 投下順 善意の裏には悪意が詰まっている 図書館革命!? 宗像形 正義の味方
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/270.html
解決(怪傑) ◆ARe2lZhvho とある一室。 モニターもマイクもなく、ソファーとテーブルだけが置かれた簡素な部屋。 応接室と呼ぶには多少威厳が足りないその場所に『彼女』はいた。 ソファーの中央に腰掛け、何をするでもなく目を閉じたまま佇んでいる。 眠っていると呼称するには背筋がきちんとしすぎているし、考え事をしているというには彼女の醸し出す雰囲気に似付かなかった。 笑みを浮かべ、時折口元や眉が僅かに微動だにするが、それだけ。 どれくらいの時間そうしていただろうか。 不意にガチャリ、とドアノブを捻る音が響く。 「あひゃひゃ、こんなところにいたんですか。てっきりこのまま匂わすだけ匂わせといて登場しないものだと思ってたんですけどねえ、安心院さん?」 這入ってきた小柄な女は部屋の主となっていた女――安心院なじみに話しかける。 尊大な言葉を裏切らず、態度にも相手を敬うという姿勢は感じられない。 「正直気付かれずにいられるのもそろそろだと感じていたところだったし。ま、真っ先にここに来るのは君だと思ってたけどね、不知火ちゃん」 一方、それまでしていた行為を中断させられたはずなのに気にもとめず安心院なじみは表情を変えることなく目を開けると、女――不知火半袖に応えていた。 ぽきゅぽきゅと独特の擬音を鳴らして不知火半袖が対面に座るのを待つと続けて口を開く。 「君こそこんなとこにいていいのかい? 萩原ちゃんが用事があるんじゃなかったっけ」 「もちろん問題ありませんよ。というより、そこまで把握してるんなら説明するまでもないでしょう?」 「さあね。実は当てずっぽうの可能性だってないわけじゃないんだぜ?」 「当てずっぽうならもう少しぼかすでしょう。例えば、『西部の腐敗をほっといていいのかい?』とか」 「ああ、それはそうだ。僕としたことが迂闊だったかな」 「萩原さんの名前を出しておいて迂闊もなにもあったものじゃないでしょう」 あひゃひゃ、とこれまた独特の笑い声で返すと一拍置いたのち、向き直る。 御託はいい、本題に入ろうじゃないかと物語るように。 そして安心院なじみも逆らわない。 「お互い聞きたいこともあるだろうし、それじゃ、僕からでいいかい?」 「別にいいですけどせっかくですから公平性を出しましょうよ」 「『質問は交互にしよう』ってやつかい」 「さすが、理解が早くて助かります」 「言うまでもないとは思うけど正直に頼むよ」 「もちろんですよ。正喰(しょーじき)に、ね」 お互い笑みを浮かべてはいたが、それは柔和とはほど遠かった。 「最初の質問は……そうだな、どこで僕の存在に気付いたんだい?」 「きっかけはハードディスクの中身、ですよ。今になって思えば決定的過ぎましたね。 それと詳細名簿と死亡者DVDですか。あたしでも把握してないことはありますから誰かがやったと言われても納得はできなくもないですがやっぱり不自然でした。 まあ確信したのは零崎双識の様子ですが。あれ、カメラには映ってませんでしたけど双識さんの様子を見れば何かがあったのかくらいは察しがつきます」 「やっぱり出しゃばりすぎちゃったかねえ。まあいいや、次は不知火ちゃんの番だよ」 「どうやって、は聞くまでもないことでしたね。どうしてわざわざこの世界に来たんですか?」 「ちょっとした寄り道の途中さ。僕もあちこちの世界を渡り歩いてきたがこんなに捻くれた世界を見たのは初めてだったものでね」 「捻くれた、ですか。そりゃまあ五つも世界繋がっちゃいましたしねえ。せっかくですしどんな世界を見てきたのか教えてくださいよ」 「別に大したもんじゃないさ。 隕石が東京のど真ん中に落ちたけど運よく全住人が避難していて怪我人が一人で済んだはいいが、一緒に堕ちてきた宇宙人を巡っててんやわんやする世界とか、 地球によって全世界の人口の三分の一が減少させられ、魔法少女や人造兵器たちと奮闘する無感情な英雄のいる世界だとか、 不思議な街に住み、十七番目の妹が死ぬたびに映画を見に行き熊の少女と交流を深めることになる男がいる世界だとか、 就職活動中のはずだった女性がなぜか探偵と共に殺人事件の解決に付き合わされることになった世界だとか、 苗字は違えど同じ名前を持つ者達が奇妙な本読みに遭遇しては価値観の違いについて考える世界だとか、 ああ、そうそう。デスノートとかスタンド使いのいる世界にも行ったねえ」 「最初二つがスケール大きすぎません? というか実在したんですか、デスノートとスタンド使い」 「僕は傍観に徹しただけさ。基本的には次の世界に渡るための踏み台でしかなかったから無用な干渉は避けたかったし。 でも、結末を知っていたとはいえ実際に見ると滾るよ、ああいうやつは。さすが名シーンと言われるだけはあったね」 「それについてはあたしも興味がないではないですが、今はやめておきますか。それじゃ、安心院さんの番ですので二つどうぞ」 「さっきのまで含めなくてもいいのに、律儀だねえ」 「質問は質問でしたから」 「ならお言葉に甘えるとするよ」 そう言ってしばしの間黙りこむと、ふむ、と一人で勝手にうなずいて再び口を開いた。 悪そうな笑みを浮かべたまま。 「じゃあ、紫(・)木(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)や(・)神(・)原(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)は(・)い(・)る(・)の(・)に(・)行(・)橋(・)く(・)ん(・)は(・)い(・)な(・)く(・)て(・)都(・)城(・)く(・)ん(・)に(・)あ(・)あ(・)偽(・)っ(・)た(・)理(・)由(・)、それと、不(・)知(・)火(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)、君(・)は(・)不(・)知(・)火(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)本(・)人(・)で(・)い(・)い(・)の(・)か(・)な(・)?」 「……………………」 「黙り込むなんて雄弁な不知火ちゃんにしては珍しいねえ? まさか理由を知らない、なんてわけがないだろう」 「……あひゃひゃ、本当に人が悪いですね。いや、この場合は人外が悪いというべきですか」 「なんなら洗いざらい話してしまってもいいんだぜ?」 「それはまだ早いのでご勘弁願いたいところですね。…………わかりました、わかりましたよ」 「やっぱり僕の想像通りなのかなあ」 「もったいぶらなくて結構ですって。ええ、その通りですよ。 行橋未造なんて最初からここにいません。都城王土にはそういう理由をすり込んだだけです、その方が動かしやすいですからね。 雪山や密室に閉じ込めて放置とかじゃ人質にすらなりませんし。万一何かあっては人質の意味がありません、マーダーと遭遇したら本末転倒もいいとこですよ」 「『ここ』に置いておくという手もなくはないと思ったけどね」 「やむにやまれぬ事情ってやつですよ。正直に言うなら必要性を感じなかった、というところですか。 紫木一姫と神原駿河は最初は参加者にするつもりだったんですが『失敗』だったらしくて、見せしめにする手もなくはなかったんですが。 データ採取の一環であえて主催側においてみようかという話が持ち上がりましてああなった次第ですよ。 数合わせの人選には閉口する他ありませんでしたがね。元の世界の人員に偏りがあると結果が揺らぐのはデータに出てるはずなのに上は何を考えていたのやら。 二つ目の質問は証明する手立てはありませんがこうやってあなたの目の前にいること、情報の精度からご本人と思ってくださいとしか言いようがないですね」 「『証明する手立てはありませんが』――ねえ。どこぞの人類最悪じゃないがよく言ったものだよ」 「そう言われましてもね――おっと、失礼」 会話を中断させたのは無機質な電子音だった。 不知火半袖は音源――携帯電話をポケットから取り出すと、対面に一応の許可を得て応答ボタンを押す。 「はいはーい、不知火ちゃんですよ。……終わった? それで現在位置は? ……なるほどねー。止められたのは元凶だけってこと? まあ仕方ないか。 デイパックは回収してる? うんうん。その場所がセーフならあっち側も大丈夫でしょ、一応。ご苦労様、策士さんには報告しとくからそのまま戻ってちょーだい」 簡潔に通話を終えるとポケットに電話をしまい、向き直った。 「お待たせしました。んじゃあたしの番ですけど今の電話の内容説明しときます?」 「その必要はないんじゃないかな。要するに江迎ちゃんが最期に残した過負荷がこれ以上拡がらないようにしてきたんだろう? 不(・)知(・)火(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)が(・)、直(・)接(・)」 「あひゃひゃ、余計なお世話でしたか。首輪やらデイパックやら、それに地面や外壁などを腐らせないようにしたのが仇になった感じみたいでしたね」 「僕に言わせればそもそもそうやって能力に制限をかけるってのがおかしいとは思うんだけど、ね」 「『大嘘憑き』でバンバン生き返らせられては破綻しちゃうじゃないですか。『完成』も然りですよ」 「それなら殺し合わせなければいい話じゃないのかい。これも少し視点を変えれば仮説が浮かび上がるんだけど」 「完(・)全(・)な(・)人(・)間(・)は(・)参(・)加(・)者(・)四(・)十(・)五(・)人(・)の(・)中(・)に(・)は(・)い(・)な(・)い(・)――とかね」 「どうかな? 僕の想定は」 「……質問はあたしの番のはすですよ。…………その質問に対しては沈黙をもって判断してくださいな」 「質問したつもりじゃなかったんだけどねえ。ま、沈黙をもらえただけ僥倖ってことにしておこう」 「言ってくれるじゃないですか、久しぶりに会ってもそのふてぶてしさは相変わらずですねえ。じゃ、質問に戻らせてもらいますか。 どうして『平等なだけの悪平等』のあなたがここではこんなに介入するんですか? 他の世界を『踏み台』と言ってのけた、あなたが」 「ここがイレギュラー中のイレギュラーってのもあるけど、別世界とはいえ友達が巻き込まれてるのにほっとけないだろう」 返ってきた質問の答えに、きょとんとした表情を浮かべ、不知火半袖はそれまでどのような質問を投げかけられたときよりも長く沈黙し、 「あっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! あなたが!? 友達!? 聞き間違いじゃないですよね!? 一体全体実際問題何があったらそんな風になるんですか! 封印が解けてる時点でおかしいとは思ってましたけど、あなたそんなキャラじゃなかったでしょう! 別世界だからキャラも別だなんてオチが待ってませんよね!? 黒神めだか? 球磨川禊? それとも人吉善吉? あるいは彼ら全員? 更にそれ以外の生徒会の面々も含めて? 誰があなたをそこまで変えたんですか? というか正直誰でも構いませんけど、安心院さん、あなたそんなことする人だったんですか!? いやー、これはびっくりですよほんとにもう! 無駄足踏んで無駄骨折ったとか今まで思っててごめんなさいね! それを聞いただけで来た甲斐ありましたよ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」 目尻に涙を浮かべ、腹を抱えてこれでもかと身を捩った。 「……いやはや、まさかここまでおもしろい反応を示してくれるとはね」 「からかったわけじゃないでしょうに。あー笑いすぎてお腹痛い」 「補足しておくと君も友達の範囲に入ってるんだぜ、不知火ちゃん」 「これ以上笑わせないでくださいよ。もっと話を聞きたいところですが時間が押してるのが残念で仕方がないですね。 どうせ後々空き時間ができるでしょうしまた来ますよ。安心院さんも子猫の相手しなければいけないんでしょう?」 「なあんだ、知ってたのか」 「これでもリアルタイムで情報を把握できる身分にいるものでして」 ぴょこんとソファーから飛び降り不知火半袖は入ってきたドアへと向かう。 そのまま出ていくと思われたが、ドアが閉まる直前に身を翻し顔を覗かせた。 「あ、そうそう。最後に一ついいですか?」 「言ってごらん。答えられるものなら答えてあげるさ」 「どうして真っ直ぐ『安心院さんが元々いた世界』に帰らないんです? あなたならできないわけがないでしょうに」 「なあに、ちょっとした気まぐれだよ。土産話になるかもと思ってね」 ※腐敗の拡大は止まりました。が、腐敗そのものはそのままなので範囲内に入れば『感染』します。 めだかクラブ 時系列順 変態、変態、また変態 めだかクラブ 投下順 My Generation START 不知火半袖 第四回放送
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/46.html
◆T7dkcxUtJw氏が手掛けた作品 話数 題名 登場人物 004 今、再び語られる物語 鑢七花、真庭鳳凰 013 「それでは零崎を始めよう」 零崎双識、真庭蝙蝠 016 「いーちゃんに会いたい」 想影真心、とがめ 1回 鑢七花、真庭鳳凰、零崎双識、真庭蝙蝠、想影真心、 とがめ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/279.html
玖渚友の利害関係 ◆ARe2lZhvho 「「かんぱーい」」 真庭蝙蝠がいなければ宗像形の兇刃からまず逃れられなかったであろうぼく、供犠創貴はブースの扉を開けた先、女子二人が酌み交わす光景を見て、 「……………………」 しばらく沈黙していた。 ◆ 「やっほー、おかえり創貴ちゃん」 「おかえりなさいなの、キズタカ」 無言で立ったままのぼくに玖渚友と水倉りすかは気さくに声をかける。 それほど席を外したつもりはなかったはずなのだが、その間に随分と仲を深めていたらしい。 このネットカフェの一階部分全域が戦場になる可能性がある以上二階に移動したいと玖渚が願い出たのは合理的な判断だったし、ぼくたちも好都合だと承諾した。 死体を移動させるのは容易なことではないが必要なのは首輪だけであり、頭を切り離せば済む問題だ──このときの蝙蝠の反応については今更述べるまでもない。 りすかを残さなければならない以上、ソファータイプの一人用ブースよりも複数で利用できるいわゆる座敷タイプの方がいいだろうという考えもなんらおかしくない。 ……しかし、ドリンクバーで飲み物を取りに行った上ドーナツを食べているというのはいくらなんでもくつろぎすぎではないだろうか。 剣戟の音は間違いなく聞こえていたはずだろうに。 「まあまあ、そんな顔しなくても大丈夫だって。創貴ちゃんの分もちゃんとあるからさ」 「そういうことが言いたいんじゃない」 悪態をつきながら腰を下ろし、ドーナツを一つ取る。 チョコレートがふんだんに練り込まれた生地の上から更にチョコレートで上半分をコーティングした、ダブルチョコレートだ。 頬張る。 うむ、甘い。 「じゃ、創貴ちゃんも戻ってきたことだしいいかな」 「何を」 「いーちゃんにメールを送りたいんだ。できれば一刻も早く送りたかったのにりすかちゃんが創貴ちゃんが戻るまでダメって言うから」 「それくらい別に……いや、いい心がけだ」 見張っていろ、との指示に対しちゃんと必要な意思を汲み取ってくれたのは上出来だ。 ドーナツを持っていない方の腕でりすかの頭を撫でてやる。 「ま、僕様ちゃんもせっかくの同盟を解消したくはなかったしね。そんじゃあお言葉に甘えて」 言うが早いか玖渚の手が携帯電話に伸び、淀みなくボタンを叩いていく。 その間にりすかに確認をとっておくか。 念のために。 「怪しい素振りはしていたか?」 「なかったの」 「ドリンクバーには二人で行ったか?」 「もちろん……でもすごくうるさかったのが下からなの」 というかその状況でよくドリンクバーに行けたな。 まあ、まだうるさいのは確かだし戦況が互角なら逆に安全と考えるのは悪くはない判断ではあるが…… 「休憩しない? って提案したのは僕様ちゃんだよ。一々声を出すりすかちゃんはかわいかったねえ」 やっぱり玖渚の発案か……いくらなんでもりすかにしては度胸がありすぎると思ったんだ。 金属音が飛び交う中を共に乗り越えたと思えば親近感が湧くのもある意味仕方のないことか。 そうしているうちにメールを作成し終わったようだ。 少しの間動きが止まる。 再び指を数回動かし、また止まった。 そしてまた操作したかと思えばぼくに画面を見せてきた。 to:いーちゃん title:もしかして text:ランドセルランドに腕4本脚4本のロボットが襲ってくるかもしれないから気をつけてね なんなら僕様ちゃんたちがいるネットカフェに来てもいいけどその場合は教えてくれると嬉しいな 案外いーちゃんのことだからこのメールを読んだときにはもう遭遇しちゃってるかもしれないけど、僕様ちゃんは対処法を知らないからそのときはそのとき! 「これなら問題はないよね?」 下手な情報は漏らしていないということらしい。 メールに記載してあったロボット――名前は日和号だったか――とは掲示板にあったあの動画でとがめとかいう女性を殺したものだろうか。 確か玖渚本人の話によれば詳細名簿にも載っておらず、誰かの支給品か主催が配置したかということもわかってないとのこと。 だが、掲示板の情報によればあの地域一帯だけを徘徊しており、玖渚の見立てでも不要湖から出る可能性は低いだろうという話だった。 なぜ今更。 そんなぼくの顔を見て、携帯をポケットにしまうと玖渚は語り出した。 「疑問を浮かべてる顔をしてるね? 「もちろんちゃんと説明するよ。 「と言っても気づいたのはりすかちゃんのおかげだけどね。 「ほら、さっき都城王土の話をしたでしょ? 「それについて創貴ちゃんがいなくなった後もりすかちゃんが興味を持ってね。 「電気もりすかちゃんの弱点の一つである以上、対策を練っておくのは殊勝だと思うし、主催側である彼についてはしっかり考えておくべきだと僕様ちゃんも思ったからさ。 「創貴ちゃんたちが会った後、彼がどうしていたかについては全く情報がないし。 「ないだけで、僕様ちゃんの知ってる誰かが、僕様ちゃんの知らない誰かが遭遇してることは十分に考えられるけどね。 「最悪の可能性というのは常に想像しておかないといけないもの。 「例えば、都城王土が言ったことは嘘で忠実な主催の手先だった、だから盗聴機もしっかり仕掛けられていてこの会話も主催に筒抜け、だとか。 「例えば、主催にとっては都城王土の行動すら想定内であり、今更僕様ちゃんたちがどんな反抗をしようと無意味に終わる、とかさ。 「それに比べたら日和号が都城王土に操作されてランドセルランドに向かうことなんてマシな部類でしょ? 「マシな部類って言っても襲われる人間はたまったもんじゃないと思うけど、それはそれ、これはこれ。 「あのDVDは会場の中全てを監視していると言ってるのと同義なんだし、それを踏まえれば多くの人間がランドセルランドに向かっていることは予想できただろうからね。 「創貴ちゃんたちにとって黒神めだかとの同盟のうまみも薄れてるだろうし、いーちゃんをこっちに呼んだことについては問題ないでしょ? 「これがただの僕様ちゃんの考えすぎ、思い過ごし、杞憂ならいいけど本当に本当だったらいざランドセルランドに着いたら餌食になりました、じゃ冗談じゃ済まないし。 「創貴ちゃんたちが恐れてる零崎人識との邂逅だって、見つかる前に隠れるなりすればいいだろうしね。 「さすがにそれくらいは僕様ちゃんだって気遣うよ。 「見つかった場合? 「いや、さすがにそこまでは保証できないって。 「邪魔したら僕様ちゃんだって殺されちゃうかもしれないし。 「むしろランドセルランド行ったら出会い頭に問答無用で老若男女容赦なく、殺されて解されて並べられて揃えられて晒されるかもしれないんだから、それに比べたらね。 「ま、どっちにしてもまだ時間はあるはずだし続けようか」 ……本当に油断できやしない。 ◆ 「やっぱ電話の一つでもかけてやった方がいいかねえ」 「いやいや、だからと言って俺からかける必要性ってないだろ」 「『人識くんったらそんなに私のことが心配だったんですか? 余計なお世話ですよう』とかなんとか言って茶化すに決まってる」 「俺にだけ教えて向こうには教えてない、なんてこともねーだろうし」 「さすがにそれくらいの気遣いくらいはしてるだろ」 「仮に場所とかがわかったとしてどうにかなることでもねーしな」 「それで向こうからかけてこないってことはそれだけの理由がないってことだろ、うんうん」 「かといって欠陥製品にかけるのもなあ……あ、そういや『あいつ』の電話番号……」 「ってダメじゃん! ぜってー声聞かれた瞬間切られるのがオチだっつーの」 「ちぇっ、どうせならアドレスとか全部聞き出しといてくれりゃーよかったのによ」 「あーあ、こんなときコナン君の蝶ネクタイでもありゃ楽勝なんだが」 「ま、高望みしすぎなのはわかってるけどな」 「……ん? こいつは……」 「…………へえ」 ◆ 「で、首輪に魔法、ないしはスキルが使われてるかもしれないってのが僕様ちゃんの考えなんだけど、どうかな?」 「難しいのが実行なの。考えるのが簡単なのが理論だけど、危険があるのが暴発」 「ぼくもりすかと同じ意見だ。『魔法使い』でも『魔法』使いでもそんな繊細な魔法式が使えるとは思えない」 「魔法陣の可能性は……もっとありえないか」 「あの影谷蛇之ですら二十本もダーツを作ってはいなかったのに、その倍以上となるといくらなんでも無理がありすぎる、とぼくは思うが」 「だよねえ。さっちゃんからの情報をもらう前に形ちゃんにもそれとなく話を聞いてはみたけど、思い当たる人はいないって言ってたし」 「そうでなくとも便利ではないのが魔法なの」 「ファンタジーやメルヘンじゃあありません、ってことかなあ。さすがに他の世界にはこういう技術はないと思うんだけどなあ」 そして現在、静かになったブースでぼくも交えて主に首輪についての考察が広げられている。 しばらく経ってもどちらも上がって来ないということは相討ちか、大方重傷を負いつつも辛勝したというところだろう。 考えたくはないが宗像形が生きているかもしれない以上確認しに行くようなことはしない。 そこで死ぬようであれば蝙蝠はそこまでの駒だったということだ。 玖渚の考えによれば首輪の外殻には未知の物質が使われており、おそらくそれは魔法かスキルによって作られたのではないかとのことらしい。 顕現『化学変化』の魔法を使えばできなくはないかもしれないだろう。 だが、それを見せしめの分も含めて計四十六も作るとなると、さすがに無理があるのではないだろうかというのがぼくとりすかの考えだ。 そうでなくともそう都合よく目的に沿うような魔法があるとも思えない──水倉神檎でもあるまいし。 「普通に考えたらさ」 そう言って玖渚は箱からドーナツを一つ取り出した。 小さな球が八つ連なって一周しているポン・デ・リングだ。 八つの球を四つと四つに分ける。 「こんな風に二つのパーツを組み合わせて首に嵌めるものでしょ?」 「だろうな」 「いくら二重構造になってて内側はこのようになっているとしても、外側もこうなってないとおかしいと思うんだよね」 「ただ作るだけならできなくはないだろうが……」 「問題なのが人間に嵌めるということ?」 「それなんだよねえ。内側を普通に嵌めたとしても綺麗にコーティングするのだって……あ、ちょっとごめんね」 雑音がないと着信音がよく響く。 電話ではなくメールか。 二つに分かれたポン・デ・リングが箱に戻される。 ……口をつけたわけでもないしいいか。 読み終えるとそのまま畳んでポケットに戻された。 「……返信しないのか?」 「いーちゃんがこっち向かうってさ。それと創貴ちゃんたちには朗報かな、零崎人識は別行動になったからいないって」 ぼくが反応を返すより早く、りすかが大きく息を吐き出した。 さっきの話を聞いたとき随分と肩をこわばらせていたからもしやとは思っていたが、未だに恐怖心が消えていないらしい。 いざというときそれが妨げにならなければいいんだが…… 「別行動、ね」 「うん、別行動。今一緒にいるのは八九寺真宵と羽川翼だけのようだから創貴ちゃんたちも心配しなくていいと思うよ」 「そうか……」 羽川翼。 放送の前、ぼくが電話越しで話した女性。 玖渚が得た情報によるとかなり頭の切れる人物らしい。 そういった人間と直接接触できるというのは好都合だろう。 「ついでにいくつか情報ももらったから参加者全員の動向もほぼわかったしね」 「全員?」 「あくまでも予想だけどね。メールによると途中で黒神めだかと遭遇したから球磨川禊と鑢七実、ついでに零崎人識も車から降りたって。 鑢七花は創貴ちゃんたちが会ってたし、舞ちゃんたちや真庭鳳凰はまだ東側にいるだろうしね」 「つまり警戒しておくべきは鑢七花と球磨川禊・鑢七実が来る可能性、か」 「黒神めだかに関しては大丈夫だろうし、そんなとこだと思うよ」 玖渚から聞いてやっとわかったことだが球磨川禊と鑢七実の二人は都城王土が言っていた着物の女と学生のコンビで間違いないだろう。 一分持つまいとまで言われ、蝙蝠がどうなったかわからない今もし殴り込まれでもしたら対抗手段がりすかしかない。 それもただの時間移動ではなく大人りすか一択だ。 一日に二度も切り札を切らせるのは愚策である以上、来ないことや好戦的でないことを祈るしかないがこればかりはどうしようもないことだ。 ……ふと気付く。 今玖渚は全員の動向がほぼわかったと言ったが、一人足りなくないか……? 放送の時点での生存者は十七人。 このネットカフェにぼくたちと階下の蝙蝠、宗像で五人。 東側に無桐伊織・櫃内様刻、真庭鳳凰の三人。 ランドセルランドからこちらに向かっているのが戯言遣い・八九寺真宵・羽川翼の三人。 残りのうち玖渚の口から出たのが球磨川禊・鑢七実、鑢七花、黒神めだか、零崎人識の五人。 全員合わせても十六人だ。 残る一人――確か戦場ヶ原ひたぎ、について言及していない。 「そろそろ、いいかな」 訝しんでるぼくを尻目に玖渚が小声で呟き、 「ところでさ、今こうして私は創貴ちゃんたちにありとあらゆる情報を提供してるわけだけど、これって大きく分けて三つのパターンがあると思うんだよね」 ふいに話題を切り換えた。 不思議には思ったが返す意外の選択肢が浮かばない。 「パターン? 何のだ」 「情報を差し出す理由、とでも言えばいいのかな」 「わたしたちとクナギサさんみたいな?」 「それが一つめだね。利害の一致とか取り引き材料で情報交換したり一方的に渡したり」 「二つめはぼくとりすかのようなもの、か」 「うん、損得感情抜きでそれだけのことをする価値がある相手の場合だね。私といーちゃんみたいな、さ。 それで最後、三つめ」 「目的が時間稼ぎの場合、だな。もしくは相手を動揺させるのが狙いだったりってのもあるか? いずれにせよ言えることは相手を消すためであり、渡してしまっても問題ないということ、だろ?」 ぼくのものでもなく、りすかのものでもない、もちろん玖渚友のものでもない第三者の声が割り込んだ。 「大正解! 言われた通り私は時間稼ぎに徹したし殺さないで欲しいな」 「ご心配なく。気まぐれをおこさなきゃな」 即座にぼくは立ち上がり、りすかの腕をつかんで体の向きを反転させる。 扉に背を向けたままでいるのは明らかにまずい。 直後、音もなく扉が切断されこちらに向かって倒れ込んできた。 身構えたときにはぴたり、とぼくとりすかの首筋に刀が突きつけられる。 ……あれは蝙蝠が持っていた刀だ、ということは蝙蝠は──などということは考えさせてはくれないらしい。 「さっき言ったいーちゃんからのメールの内容ってのは嘘。 「いーちゃんからじゃなくてしーちゃんからだったんだよね。 「『ちょうど今ネットカフェにいる。すぐ向かうから逃がさないように時間稼ぎよろしく』ってね。 「おまけにいーちゃんたちや下で何があったかの情報までつけてくれたし。 「さっき言ったでしょ? 「『最悪の可能性は常に想像しておくもの』だって。 「創貴ちゃんが戻ってきたということは少なくとも圧倒的有利な状況ではないということ。 「だからあらかじめ手を打っといたんだよね。 「いーちゃんのメールには追伸を。 「『しーちゃんが探してる相手ならここにいるからしーちゃんがそこにいるなら一緒にいた方がいいかもねって伝えといて』って。 「そしていーちゃんと離れた可能性もあったからひたぎちゃんにも同時にメールした。 「『ネットカフェにしーちゃんが探してる人がいるよ。方向的に黒神めだかを殺せるかもしれないしあなたにとっても悪い話じゃないと思うけど』って。 「創貴ちゃんたちの前で二回手を休めたのはそのためだよ。 「携帯の操作権を渡さなかったとはいえ、いーちゃんへのメールをちゃんと最後まで読めばわかっただろうにね。 「仮にしようとしたところでさせなかったけど。 「あのとき直接しーちゃんの連絡先を取得してなかったから伝わるか不安ではあったんだけど、ひたぎちゃんを殺して携帯をちゃんと回収してくれたから結果オーライ。 「裏切った理由? 「そんなの決まってるじゃん。 「ぐっちゃんを、私の所有物を壊したからだよ。 「例え役立たずでも、捨てたものでも壊していい理由にはならないよ。 「拾われるだけでも不愉快なのにましてや壊されるなんて、ねえ? 「気づいてないとでも思ってた? 「真庭蝙蝠がぐっちゃんと『だいたい』同じ顔をして、私がカメラ越しで見たのと同じ服を血だらけで着ていて、わからないとでも思った? 「真似られるだけでも不快なのに、壊した相手を目前にしてそれを壊し返せるチャンスを逃がすような真似をするとでも? 「もちろん、打った布石が無駄に終わる可能性もあったからそのときはさっきまでの続きをやっていただろうけど、こうなってしまった今それはどうでもいいことだよね。 「そりゃあ私にとっての優先順位の第一位はいーちゃんで揺るぎないけど、他の有象無象にも一応順位は存在するんだよ。 「という感じで、どうかな?」 「うんにゃ、解説ごくろーさん──ということでお終いの時間だ、ガキのお遊びにしてもやりすぎだぜ? 兄貴が世話になった分と軋識の大将と曲識のにーちゃんを殺してくれた分、ここで全部利子も含めてまとめて返済だ。 殺して、 解して、 並べて、 揃えて、 晒して、 刻んで、 炒めて、 千切って、 潰して、 引き伸ばして、 刺して、 抉って、 剥がして、 断じて、 刳り、 貫いて、 壊して、 歪めて、 縊って、 曲げて、 転がして、 沈めて、 縛って、 犯して、 喰らって、 辱めて、 それからまた殺して解して並べて揃えて晒して――零崎を、始めてやるよ」 そしてぼくに向けた。 闇を刻み込んだような、深い眼を。 神を使い込んだような、罪深い瞳を。 さて、この程度の『障害』をどう乗り越えるか。 ぼくは睨み返す。 【1日目/夜中/D-6 ネットカフェ】 【玖渚友@戯言シリーズ】 [状態]健康 [装備]携帯電話@現実 [道具]支給品一式、ハードディスク@不明、麻酔スプレー@戯言シリーズ、工具セット@現実、首輪×2(浮義待秋、真庭狂犬)、ランダム支給品(0〜4) [思考] 基本:いーちゃんに害なす者は許さない。 0:とばっちりを受けないようにしないと。 1:もう黒神めだかの悪評を広めなくても大丈夫かな? 2:いーちゃんは大丈夫かなあ。 [備考] ※『ネコソギラジカル』上巻からの参戦です ※箱庭学園の生徒に関する情報は入手しましたが、バトルロワイアルについての情報はまだ捜索途中です ※めだかボックス、「十三組の十三人」編と「生徒会戦挙」編のことを凡そ理解しました ※言った情報、聞いた情報の真偽(少なくとも吸血鬼、重し蟹、囲い火蜂については聞きました)、及びそれをどこまで理解したかは後続の書き手さんにお任せします ※掲示板のIDはkJMK0dyjが管理用PC、MIZPL6Zmが玖渚の支給品の携帯です ※携帯のアドレス帳には櫃内様刻、宗像形、無桐伊織、戦場ヶ原ひたぎ、戯言遣い(戯言遣いのみメールアドレス含む)が登録されています ※ハードディスクを解析して以下の情報を入手しました ・めだかボックス『不知火不知』編についての大まかな知識 ・不知火袴の正体、および不知火の名字の意味 ・主催側が時系列を超越する技術を持っている事実 ※主催側に兎吊木垓輔、そして不知火袴が影武者を勤めている『黒幕』が存在する懸念を強めました ※ハードディスクの空き部分に必要な情報を記録してあります。どんな情報を入手したのかは後続の書き手様方にお任せします ※第一回放送までの死亡者DVDを見ました。内容は完全に記憶してあります ※参加者全員の詳細な情報を把握しています ※首輪に関する情報を一部ながら入手しました ※浮義待秋の首輪からおおよその構造を把握しました。また真庭蝙蝠たちの協力により真庭狂犬の首輪も入手しました ※櫃内様刻に零崎人識の電話番号以外に何を送信したのかは後続の書き手にお任せします ※本文中で提示された情報以外はメールしていません ※零崎人識からのメールにより以下の情報を入手しています ・戯言遣い、球磨川禊、黒神めだかたちの動向(球磨川禊の人間関係時点) ・戦場ヶ原ひたぎと宗像形の死亡および真庭蝙蝠の逃亡 【零崎人識@人間シリーズ】 [状態]健康 [装備]斬刀・鈍@刀語、絶刀・鉋@刀語、携帯電話その1@現実 [道具]支給品一式×11(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚) 千刀・ツルギ×6@刀語、 手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、小柄な日本刀、S W M29(6/6)@めだかボックス、 大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ 携帯電話その2@現実、文房具、炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、お菓子多数 [思考] 基本:戯言遣いと合流する。 0:今度こそ逃がさねえ。 1:いやはや、ちょうどいいタイミングでの情報提供に感謝だな。そんで蝙蝠も後で探し出してぶっ殺す。 2:伊織ちゃんと連絡を取る。合流するかどうかは後から決める。 3:零崎を始める。とりあえず戯言遣いと合流するまでは。 4:哀川潤が生きてたら全力で謝る。そんで逃げる。 5:黒神めだか? 会ったら過剰防衛したとでも言っときゃいいだろ。 6:ぐっちゃんって大将のことだよな? なんで役立たず呼ばわりとかされてんだ? [備考] ※曲絃糸に殺傷能力はありません。拘束できる程度です ※Bー6で発生した山火事を目撃しました ※携帯電話その1の電話帳には携帯電話その2、戯言遣い、ツナギ、無桐伊織が登録されています ※携帯電話その2の電話帳には携帯電話その1、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします 【供犠創貴@新本格魔法少女りすか】 [状態]健康、人識に斬刀を突きつけられている [装備]グロック@現実 [道具]支給品一式×3(名簿のみ2枚)、銃弾の予備多少、耳栓、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0〜X)」、心渡@物語シリーズ、シャベル@現実、 アンモニア一瓶@現実、携帯電話@現実、スーパーボール@めだかボックス、カスタネット@人間シリーズ、リコーダー@戯言シリーズ [思考] 基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない 0:玖渚友も排除せざるを得ない、か…… 1:ランドセルランドで黒神めだか、羽川翼と合流する、べきか……? 2:行橋未造を探す 3:このゲームを壊せるような情報を探す 4:蝙蝠は残念だが…… 5:掲示板の情報にどう対処すべきか [備考] ※九州ツアー中、地球木霙撃破後、水倉鍵と会う前からの参戦です ※蝙蝠と同盟を組んでいます ※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします(少なくとも包帯や傷薬の類は全て持ち出しました) ※主催者の中に水倉神檎、もしくはそれに準ずる力の持ち主がいるかもしれないという可能性を考えています ※王刀の効果について半信半疑です ※黒神めだかと詳しく情報交換しましたが蝙蝠や魔法については全て話していません ※掲示板のレスは一通り読みましたが映像についてはりすかのものしか確認していません ※心渡がりすかに対し効果があるかどうかは後続の書き手にお任せします ※携帯電話に戦場ヶ原ひたぎの番号が入っていますが、相手を羽川翼だと思っています ※黒神めだかが掲示板を未だに見ていない可能性に気づいていません ※玖渚友から彼女の持つ情報のほとんどを入手しました ※真庭蝙蝠は死んだ可能性が高いと考えています 【水倉りすか@新本格魔法少女りすか】 [状態]零崎人識に対する恐怖(大)、人識に絶刀を突きつけられている [装備]手錠@めだかボックス、無銘@戯言シリーズ [道具]支給品一式 [思考] 基本:キズタカに従う 1:? ? ? [備考] ※九州ツアー中、蠅村召香撃破直後からの参戦です。 ※治癒時間、移動時間の『省略』の魔法は1時間のインターバルが必要なようです(現在使用可能) なお、移動時間魔法を使用する場合は、その場所の光景を思い浮かべなければいけません ※大人りすかについての制限はこれ以降の書き手にお任せします [備考] 玖渚友たちがいるブースの中央にミスタードーナツの詰め合わせ@物語シリーズが置いてあります 中身はエンゼルフレンチ、ストロベリーホイップフレンチ、二つに割れたポン・デ・リング、D−ポップです 支給品紹介 【ミスタードーナツの詰め合わせ@物語シリーズ】 想影真心に支給。 阿良々木暦が忍野メメに差し入れようとしていたものだったが結果はご存知の通りである。 中身はゴールデンチョコレート、フレンチクルーラー、エンゼルフレンチ、ストロベリーホイップフレンチ、ハニーチュロ、 ココナツクルーラー、ポン・デ・リング、D−ポップ、ダブルチョコレート、ココナツチョコレート。 劇伴の曲名にもなった忍野メメが好きなオールドファッションは入っていない。 三魔六道 時系列順 My Generation 三魔六道 投下潤 鉛色のフィクション 牲犠 玖渚友 禍賊の絆 (前編) 背信者(廃心者) 零崎人識 禍賊の絆 (前編) 変態、変態、また変態 供犠創貴 禍賊の絆 (前編) 牲犠 水倉りすか 禍賊の絆 (前編)
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/223.html
友情の手前、憎しみの途中 ◆ARe2lZhvho ◆ 「――いーちゃん」 ◆ ふむ。 阿良々木の妹も死んだか。 こんな殺し合いの場でなくとも二度と会いたくなかったのでもう遭う可能性が潰えたのはありがたい話だ。 それだけ。 それだけのこと。 禁止エリアのうち二ヶ所はここから遠く離れたエリアの端なのはいいとして、残る一ヶ所が玖渚のいる場所になったのが問題だが。 しかし、禁止エリアとなる時間まで三時間、俺以外にも協力者はいるようだしどうにかなるだろう。 どうにかするだろうし、なんとかなるだろう。 例え、取り返しのつかないことが起こっていたとしても。 もし、そのような結果が起きたとしたら、潔く諦めよう。 いつまでも固執していてはみすみす他の可能性を見過ごしてしまいかねん。 さて、放送も終わったことだしもうここにいる理由がない。 いい年した大人が一人でアトラクションに乗ったところで誰に得があるのか。 華がなさ過ぎる。 淋しいだけだ。 しかしその前にやっておきたいことがある。 江迎と真庭二人から回収した支給品。 それに自分本来の支給品。 たまたまナイフがあったからあの危ない少女から逃げ切ることができたが、もしもあのとき持っていなかったら抵抗する手段すらなかったかもしれない。 せめてもの足掻きが許されるくらいの装備は欲しいところだ。 だからこその取捨選択。 現時点でのデイパックの数は四つ。 一人で持つには明らかに多い。 いくら背負えるとは言え二つでも多いくらいだ。 だがもちろんその対策は考慮済み。 デイパックの中にデイパックが入るのは江迎から回収したところで確認している。 容量に限界はないようだし、ここで大まかに二つに分ける。 一つは武器などのすぐに出せるような重要度が比較的高いもの。 もう一つは食料などのすぐに出す必要がない重要度が比較的低いもの。 それぞれを一つのデイパックにまとめたら今度は重要度が低いものを高い方へ入れる。 これでかなりコンパクトになるはずた。 その肝心の支給品だが。 柄と鍔しかない刀。 日本刀。 狼牙棒。 金槌。 拳銃。 メイド服。 そしてスマートフォン。 内訳は俺が柄と鍔しかない刀。 江迎が日本刀と狼牙棒。 真庭狂犬が金槌と拳銃。 真庭喰鮫がメイド服とスマートフォン。 俺のは誠刀・銓と言って相手を斬る刀ではなく、自分を切る刀、自分を試す刀などと説明書には書かれているが刃もない刀で何を切れというのか。 これは外れだな。 江迎の日本刀。 刃長四尺反り一寸足らず。 刃文は細い直刃。 刀身には虎の彫り物。 富岳三十六刀工の一人、壬生傘麿の初期作品とあるが聞いたことがない。 まあそんなことは関係なく使えるか使えないかで言えば使えるものだ。 当たりの方のデイパックに入れる。 続いて狼牙棒。 重くて簡単に振り回せるものではない。 外れだ。 金槌。 鈍器として役に立つがいかんせん他に使い勝手の良いものがある。 外れでいいだろう。 拳銃。 デザートイーグルか。 間違いなく当たりだな。 撃ち方さえ気をつければ反動も少なくすんだはず。 予備弾は40発か、まあまあだ。 予備弾は当たりのデイパックに入れてデザートイーグルは装備する。 メイド服。 外れ。 スマートフォン。 スマートフォン、か。 操作する。 データは入っていないようだ。 玖渚は『掲示板みたいな物は作って置いたから、他の参加者とそれを使って情報交換をすると良い』と最初に言っていた。 そんなものを作っておいてまさか携帯やスマホから繋げられないはずがないだろう。 操作する。 繋がった。 書き込みがあるのは探し人・待ち合わせと目撃情報だけか。 顔面刺青というのは零崎人識で間違いないとして、妹がいるだと? 会場にいた零崎は全部で四人。 一緒に行動しているとあるので一回目の放送で呼ばれた曲識は除外。 軋識だとすると先程呼ばれたのに玖渚の名前は呼ばれなかったことから考えると可能性は薄いだろう。 何か危機があって逃がすために身代わりになったというのも一応考えられるが。 となると双識か。 しかし、『識』という字が入っているのが気になるな。 零崎は男女関係なく全員に『識』がついているのだろうか? 零崎という名前が本名でない可能性は大いにある。 他の参加者がその妹である可能性も念頭に入れておいた方がいいだろう。 そして目撃情報の方は……これは十中八九戦場ヶ原だろうな。 阿良々木火憐、八九寺真宵、羽川翼が書くとは考えにくい。 だが、何かが引っかかる。 玖渚は黒神めだかの悪評を広げようとしていてそれに戦場ヶ原も乗った。 一見筋が通ってるように見えるがおかしい。 阿良々木を殺した相手に対し戦場ヶ原があんな穏便な書き込みで済ませるか? そもそも黒神が阿良々木を殺したというのが……ん? どうにも話が見えない。 少し整理してみよう。 江迎の話から察すると黒神は殺し合いに乗るような人物ではない 玖渚が黒神を危険視するのは『正しすぎる』から 戦場ヶ原の書き込みによると阿良々木暦は黒神に殺された 要点をまとめるとこうか。 なるほど、通りでおかしかったはずだ。 先二つと後一つで真逆の内容だったのだから。 これらの情報をできるだけ矛盾なく繋げてみる。 本来の黒神は殺し合いに乗るような人物ではないが何らかの理由で乗った 乗った黒神に阿良々木は殺された そして玖渚はおそらくそのことを知らない 戦場ヶ原の書き込みは他の参加者を黒神に近づけないため? 最後は当てずっぽうだが戦場ヶ原が阿良々木を殺した相手をみすみす放っておくとは思えないしな。 あのときミスドの店内で見た牙の抜けた戦場ヶ原のままだというなら話は別だが、そんな戦場ヶ原は見たくないな。 まあ、どちらだったところで俺のやることは変わらん。 誰かに会えば騙し手込めにするか無難にやり過ごすか。 用も済んだし出るとしよう。 ◆ ――――橙は、ただ駆ける。 ◆ 座標は変わって地図上ではF-5地点。 診療所から更に北寄りのとある場所にその二人はいた。 「なあ、玉藻ちゃん。今聞こえた声は『あいつ』のものだよな?」 「……みたいで、すねえ。ぎはらはせんぱ……ゆらぁり……いの声――」 「ええい、まどろっこしい。とっとと話せ」 「あうぅ」 デコピンが飛んだ。 零崎の少年と同じく人類最強も中々の短気ようである。 尤も、これを聞けば即座に双方とも否定するだろうが。 「ま、いいや」 そして話題の切り替え。 相手の都合を全く考えていないが、相手は狂戦士――西条玉藻。 人類最強の請負人――哀川潤でなくともそもそも考える必要は無い相手なのである。 「玉藻ちゃんさあ、なんか荷物多くね?その割には支給品すくねーし」 「そうですかあ?」 「というか明らかに多いぞ、食料とか水とか二人分あるじゃん。持ってるのナイフだけだし」 「玉藻ちゃんはあ……覚えてま……ゆらぁり……せんねえ」 「ふーん。ちっ、これ以上聞いても意味なさそうだ」 「舌打ちとか……しないでく…………ださいよう」 「だったら情報洗いざらい話せ」 「ひゃうぅ」 しっぺが飛ぶ。 その度に玉藻の呻き声が響くがどちらもおかまいなしのようだ。 特に哀川潤は楽しんでいる節もある。 「んで、このまま進むとランドセルランドっつー遊園地があるけど、どうする?」 「遊園地――ですかあ?」 「そ、遊園地」 「どうするって……言われましても、ねえ」 「おいおい、遊園地ですることっつったら一つだろ――遊ぶんだよ」 「………………いいんですかあ?」 「玉藻ちゃんまだ中学生なんだろ?こういうのは今のうちやっておかないと後悔するんだって」 「はあ」 「お、なんかあそこに人いるじゃん。ぼこって情報聞き出そうぜ」 「私が言うのもなんですけどお……潤さんも大概ですねえ……」 ◆ 「――あか」 ◆ さて。 厄介なことになった。 ランドセルランドを出た直後、やってきた二人組に捕まったわけだが、どちらもやりづらい。 最初に江迎と別れた直後に遭遇した危ない少女が見えた瞬間、逃げようとしたが隣にいた赤い女がそれをさせないオーラを放っていたからだ。 例えるなら――何でも知っているあの先輩を相手にするような。 危ない少女もなんだか毒々しい雰囲気が消え失せているし二人のどちらが立場が上かというのはなんとなくわかったから襲われることはないと踏んだのだが。 だが。 話のペースを全く掴ませてもらえない。 詐欺師としてこれは致命的だ。 これでは詐欺にかけようとすることすらできない。 ……仕方ない、情報を聞き出すことに専念しよう。 最悪、こちらが損さえしなければいいのだ。 「――あたしは日之影クンと銀閣っつー侍みたいな格好したのしか会ってねーんだわ。日之影クンもさっき呼ばれちったし」 日之影空洞に宇練銀閣か。 どちらも情報はないな。 「俺が今まで会ったのはそこの少女に江迎怒江、鑢七実くらいだな、名前までわかっているのは」 本当はまだいるが、ここは出し惜しみしよう。 残りを出すかどうかは向こうからの情報次第だ。 「名前わかんねーやつの外見とかそういうのわかんねーの?」 穏便に進んでいるように見えて実際は有無を言わせぬ気迫を出しているのだから恐ろしい。 ちなみに少女はさっきから地べたに座り込んでいる。 ナイフを持ったままなのが危なっかしいが害がないのなら放っておいてもいいだろう。 「顔面に刺青を施した男と至って平凡そうな男の二人だな」 「平凡そうな男?」 聞いた感じ危なそうな顔面刺青の零崎人識より外見だけは平凡そうな球磨川禊に反応するのか。 知り合いなのだろうか。 「学ランを着ていたからおそらく高校生だろうが知り合いなのか?」 「高校生?じゃあいーたんじゃねえな。今頃どこでほっつき歩いてるのかねえ」 いーたん……? 確か名簿には「い」で始まる名前はなかったはずだが。 無桐伊織はおそらく女だろうし。 カマをかけてみるか。 「その『いーたん』というのは『戯言遣い』のことか?」 「ん、そうだけど知ってんのか?」 「いや、ただの推測だ。 名簿では『い』から始まる名前はないし、無桐伊織は女だろうからな。 後は唯一名前らしい名前でなかった『戯言遣い』ではないかと思っただけだ」 「なるほどねー、確かに正解だよ。そういや伊織ちゃん下手すりゃ義手つけたばっかの可能性もあるのか」 哀川潤と無桐伊織、戯言遣いには繋がりがある、と。 無桐伊織と戯言遣いに繋がりはあるかどうかは不明のようだが。 持っている情報が多い分、こちらが少し話を持っていきやすくなったな。 少し踏み込んでみよう。 「顔面刺青の男には心当たりはないのか?」 「それ零崎人識くんだよ。こんな声してただろ、かはは」 声帯模写か。 見事な腕前だな。 確かに聞いた声と寸分違わない。 感想を表に出すことはしないが。 「なるほど、そういえばそんな声をしていたような気もする。知り合い――以上の関係のようだな」 「まあ、こないだ伊織ちゃん共々仕事を手伝ってもらったりしたしな」 『伊織ちゃん共々仕事を手伝ってもらったりした』か―― まさか、な。 「零崎人識と無桐伊織は兄妹だったりするのか?」 あの気まぐれの権化のような男が赤の他人といるというのは考えにくい。 『識』と『織』は漢字も似ているしな。 これはこじつけだが。 「そ、あんた結構詳しいな。本当にそんだけしか会ってないの?」 怪しまれるのも仕方がないか。 ここらであのことを話してみるか。 「いいや、なに、携帯からアクセスできる掲示板というものを見つけてな、そこに顔面刺青の妹――つまり無桐伊織と共に行動していると玖渚友から聞いたのだ」 「え?玖渚ちん?お前なんで玖渚ちん知ってるの?」 「ネットカフェでやり取りしただけの話だが、それがどうした」 「だって玖渚ちんに会ったなんて一言も……」 「実際会っていないからな、ネットカフェからパソコンを通して通信しただけだ」 玖渚友とも繋がりがあったか。 それにこういう形で意表を突けるとは思わなかった。 しかし、少しやり過ぎたか? 怒らせてしまうと交渉も何もないからな。 そう思った刹那、視界が傾いた。 直後、衝撃と同時に誰かの声。 突き飛ばされたと理解する。 そこまで怒らせるつもりはなかったのだが。 …………何も聞こえないな。 おかしい。 首を上げるといたのは少女一人だけだった。 哀川潤はどこへ消えた? 「哀川潤がどこへ行ったか知っているか?」 「潤さん……ですかあ?オレンジ色の……髪をした人がやって……ゆらぁり……きてえ」 乱入者が現れて哀川潤だけを連れ去っていった……のか? 目的が見えないが……突き飛ばされたのは哀川潤に助けられたということなのだろうか。 まあいい、目下のところ考えるべきはこの二人きりの状況をどうするかだ。 逃げてもまた追いかけられる可能性がある以上迂闊には動けんがこのままでも危ない。 「そういえばお前の名前を聞いていなかったな」 「玉藻ちゃんはあ……西条玉藻って言うんですけどお……ゆらぁり……でも教えちゃだめって言われていてえ」 西条玉藻か。 しかし名前がわかったところでどうにもならんな。 ……そうだ。 「服が泥だらけだが大丈夫か?せっかくだから着替えをやろう」 「……いいんですかあ?」 「ああ、俺には見ての通りサイズが合わん、気に病む必要はない。 ただ着替えなんて見るものじゃないからな、服をやるから向こうで着替えてこい」 ごそごそと取り出したメイド服を渡すとナイフを持ったまま行ってしまった。 よし、今のうちに逃げよう。 【1日目/真昼/E-6】 【貝木泥舟@化物語】 [状態]健康 [装備]デザートイーグル(8/8)@めだかボックス、スマートフォン@現実 [道具]支給品一式×2、誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、予備弾(40/40)、「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、貴重品諸々、ノーマライズ・リキッド」(「」で括られてる物は現地調達の物です) [思考] 基本:周囲を騙して生き残る 1:玖渚と手を組む代わりに黒神めだかの悪評を広める 2:ランドセルランドから離れる 3:麦藁帽をかぶり、釘バットを持った男(軋識)に出遭ったら伝言を(伝えられれば)伝える 4:球磨川禊と会ったら同盟を提案 5:怒江はとりあえず保留 6:零崎、真庭、黒神、鑢、西条玉藻、無桐伊織とは出来れば接触しない [備考] ※貴重品が一体どういったものかは以後の書き手さんにお任せします。 ※取得した鍵は、『箱庭学園本館』の鍵全てです。 ※言った情報(少なくとも吸血鬼、重し蟹、囲い火蜂については話しました)、聞いた情報の真偽、及びそれをどこまで理解したかは後の書き手さんにお任せします。 ※哀川潤とほとんど情報交換できていません ※哀川潤との会話から、戯言遣い、玖渚友、零崎人識、無桐伊織が知り合い同士である可能性に気付きました ◆ 貝木を突き飛ばした哀川潤は今、太い橙色の三つ編みの髪をした少女――想影真心と相対する。 「ごほっ……真心ちゃんさあ、あぶね!」 否、相対というには緊迫していた。 貝木を庇うために真心の突進の威力を全てその身に受けたためかあばらを何本か折ったらしい。 「■■■■■■■■!!」 哀川潤の話を聞く素振りは一切見受けられずその矮躯ながらも《暴飲暴食》を繰り出す真心。 溜めの隙をついてすかさずバク転で回避する哀川潤。 「髪切ってないって時点でやっぱりって思ってたけどめんどくさいとこから連れてこられちまってんな、真心ちゃん。 せっかく玖渚ちんやいーたんのこと聞けるかもってとこだったのに邪魔した代償は高くつくぜえ?」 「■■■■■■■■■■■■■■!!!!」 《暴飲暴食》を空振ったことで大きな隙が生まれるがそれをつくようなことはしない。 まるでわがままな娘を宥める母親のように言い聞かせるのみ。 戯言遣いの名を出したことで真心は殊更激昂するが、お構いなしのようだ。 哀川潤は笑う。 いつものようなニヒルな笑みではなく、かつて大厄島の頂上で相見えたときのように。 「ま、しょーがねーなー、子供の躾は母親の責任ってことで。 始めようぜ、真心ちゃん。 盛大な親子喧嘩と行くか!!」 ここに最強と最終の頂上決戦が始まる―― 【1日目/真昼/E-5】 【哀川潤@戯言シリーズ】 [状態]あばら数本骨折 [装備] [道具]支給品一式×2(水一本消費)、ランダム支給品(0~4)、首輪、薄刀・針@刀語、トランシーバー@現実 [思考] 基本:バトルロワイアルを潰す 0:真心と喧嘩する 1:とりあえずバトルロワイヤルをぶち壊す 2:いーたん、 玖渚友、想影真心らを探す(今は玖渚を優先) 3:積極的な参加者は行動不能に、消極的な参加者は説得して仲間に 4:後で玉藻ちゃん拾いに行かねーとな 5:阿久根の遺言を伝える 6:もうちょっと貝木と情報交換したかった [備考] ※基本3の積極的はマーダー、消極的は対主催みたいな感じです ※トランシーバーの相手は宇練銀閣です ※想影真心との戦闘後(無桐伊織との関係後)、しばらくしてからの参戦です ※主催者に対して仮説を立てました。詳細は以下の通りです。 ・時系列を無視する力 ・死人を生き返らせる力 以上の二つの力を保有していると見ています 【想影真心@戯言シリーズ】 [状態]解放 [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:壊す。 1:いーちゃん。狐。MS-2。 2:車。 3:赤。 [備考] ※ネコソギラジカル(中)、十月三十一日から ※三つの鎖は『病毒』を除き解除されています ※忍法断罪円を覚えました。 ※虚刀流『雛罌粟』、鑢七実の戦闘スタイルの一部を会得しました ◆ 「あれえ……?」 メイド服を着た見た目だけは女子中学生の玉藻が出てきたそのとき。 周囲に誰もおらずぽつん、という擬音がとてもとても似合いそうな状況だったという。 【1日目/真昼/E-6 ランドセルランド入口】 【西条玉藻@戯言シリーズ】 [状態]身体的疲労(小) [装備]エリミネイター・00@戯言シリーズ、メイド服@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2 [思考] 基本:どうしましょう……かねえ 1:敵が出たなら―――ずたずたに。 [備考] ※「クビツリハイスクール」からの参戦です(正確には、戯言遣いと遭遇する前からの参戦)。 ※毒刀の毒は消えました。 支給品紹介 【誠刀・銓@刀語】 貝木泥舟に支給。 「誠実さ」に主眼が置かれており、人間の姿勢を天秤にかけるように、人によって受け取り方さえ違う曖昧な刀。 刃なき刀であり刀の柄と鍔だけしかない。 【日本刀@刀語】 江迎怒江に支給。 刀語一巻でとがめが所持していたもの。 ようするに普通の日本刀。 【狼牙棒@めだかボックス】 江迎怒江に支給。 宗像形の持つ暗器の一つ。 物理法則を超越した収納方法はあの世界では必須スキルのようです。 【金槌@世界シリーズ】 真庭狂犬に支給。 くろね子さんの探偵七つ道具のひとつで、ドアノブを破壊するのに使用された。 ピッキング?なにそれ知らない。 【デザートイーグル@めだかボックス】 真庭狂犬に支給。 宗像形の持つ暗器の一つ。 装弾数8発の自動式拳銃。 【メイド服@戯言シリーズ】 真庭喰鮫に支給。 春日井春日が骨董アパートで戯言遣いを誘惑するのに使ったり。 【スマートフォン@現実】 真庭喰鮫に支給。 普通のスマホ。 哲学思考(欠落思想) 時系列順 猫の首に鎖 哲学思考(欠落思想) 投下順 猫の首に鎖 黒いスーツとランドセル 貝木泥舟 かいきバード 再覚醒 哀川潤 撒き散らす最終(吐き散らす最強) 再覚醒 西条玉藻 撒き散らす最終(吐き散らす最強) 赤く染まれ、すれ違い綺羅の夢を 想影真心 撒き散らす最終(吐き散らす最強)
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/45.html
◆H5vacvVhok氏が手掛けた作品 話数 題名 登場人物 006 ランドセルランドの虐殺劇 零崎軋識、真庭喰鮫 009 クラッシュクラシックの赤い魔法 零崎曲識、水倉りすか 011 真庭狂犬の災難 玖渚友、西条玉藻、無桐伊織、真庭狂犬 015 全てが0になる 時宮時刻、零崎人識、櫃内様刻、病院坂黒猫、病院坂迷路 035 NO ONE LIVES FOREVER 零崎人識、匂宮出夢、鑢七実 2回目 零崎人識 1回目 零崎軋識、真庭喰鮫、零崎曲識、水倉りすか、玖渚友、 西条玉藻、無桐伊織、真庭狂犬、時宮時刻、櫃内様刻、 病院坂黒猫、病院坂迷路、匂宮出夢、鑢七実 名前 コメント