約 5,054,510 件
https://w.atwiki.jp/lord_of_vermilion/pages/992.html
wiki内での編集方針などの議論用ページです。 コメント欄では議論しきれなくなった案件や荒らし報告、その他諸々の雑務連絡用にもお使い下さい。 議論が終結した場合、議題を消去してください。 なお、誤字・誤植の報告などは当該のページのコメント欄に、コメント欄が無い場合はWIKIへの要望のページにお願いします。 LoV4カードページについてテンプレート改訂 考察ページの復活 LoV4カードページについて LoV4向けのカードページを提案致します。カードテンプレートはこちら これをテンプレートとして少しずつカードページを作成していこうと思います。 意見がありましたら修正を検討致します。 テンプレート改訂 アビリティ表 下記に変更。 状態 ボーナス アビリティ 召喚 なし なし 武装 なし なし 血晶武装 ATK+20DEF+20 邪星再誕 最大HPが上がる。さらに、自身のHPが多いほど、攻撃力が上がる。 パラメーター 現状維持。 修正情報 ▲Ver4.013(2017.11.01)にて、上方修正 武装ボーナス 血晶武装時防御力:+XX→ +XX アビリティ名 アビリティ修正内容 アーツ「アーツ名」 アーツ修正内容 ▼Ver4.013(2017.11.01)にて、下方修正 アビリティ名 アビリティ修正内容 ◆Ver4.013(2017.11.01)にて、上方及び下方修正 武装ボーナス 血晶武装時攻撃力:+XX→ +XX血晶武装時防御力:+XX→ +XX 考察ページの復活 現状の使い魔個別ページから、「考察」部分を抜き取り、 Verごとに設けたページにまとめる。 復活を希望 (4) 現状維持を希望 (9) 期限:2017/07/22まで 投票の結果、現状維持とさせていただきます。 コメント *主に議論や報告の場ですが、このページの修正指摘等もこちらへお願いします。 投票ありがとうございました。 アビリティ表はC案、パラメーターは現状維持で決定致します。 それに伴い、カードテンプレートページを更新いたしました。 少しずつ修正していただければと思います。 -- (zerouminchu) 2017-07-18 00 25 55 ↑2 当ページに議題として記載いたしました。解釈が間違っているなどがありましたらご指摘のほどお願いいたします。 -- (名無しさん) 2017-07-18 21 43 47 公式の「CARDS」ページに、ver4.0のカードリスト公開されました。 武装・血晶武装のパラメーターが記載されているので反映していただけると助かります。 人獣についてはこちらで反映致しましたので、神族以降をお願いできますでしょうか。 -- (zerouminchu) 2017-07-26 21 44 13 調整で血晶が変化するなら、パラメータの備考欄を活用するのはどうだろう。 -- (名無しさん) 2017-08-24 07 32 48 4.0コモン全種、および手持ちのレア全てFT反映しました。 -- (名無しさん) 2017-11-02 12 45 39 修正情報用の表を編集しやすいもの作成してみました。テンプレを置いておきます。パラメータが頻繁に変動するのでパラメータ直下配置にしてみました。 -- (名無しさん) 2017-11-02 12 54 11 初心者ガイド等を編集してくれてる方々、ありがとうございます。 -- (新参) 2017-11-30 16 37 47 初心者向けに主荒らしについて書こうかと思ったけど、初心者ガイドに書くには文量が多くなりそう というわけで書くなら独立ページでやりたいんだけど、そういったTips的なページはどこにリンク貼るかで悩んでる 案とか型とか作ってくれれば内容は書くと約束するのでどなたか手伝ってくれないかしら -- (名無しさん) 2018-01-23 00 23 06 平成31年3月28日に最終アップデートが為され、LoVはこれ以上変化しなくなってしまいましたね。 このページを見ると、LoV4稼働開始時期に、様々な人がいろいろと考えながら、新しくLoV4 wikiを構築しようとしていたことを思い出します。 私はRe3終盤から4開始期に少しだけ編集をしていました。体調や仕事のこともあり、編集を継続することは出来ませんでしたが……。 ゲームをプレイするのも週末に数回、というのがやっとでしたが、その時はwikiによく頼っておりました。 LoV4稼働初期にテンプレートを作ってくださったzerouminchuさん、個々の使い魔のページを記載し編集し続けてくれる方々、ストーリーモードのあの膨大なデータを書いてくださった方、頻繁なアップデートの度にページ作成して下さった方、コメントに数値などの情報を残してくださった方々、どうもありがとうございました。 皆さまのおかげで楽しくLoVをプレイできました。感謝申し上げます。 ホームはまだ撤去しないようですので、もう少し楽しむ予定です。 今までありがとうございました…お互い無事でいられたら またね -- (名無しさん) 2019-03-30 19 27 24 ↑ありがとうございます。これまで編集してくださった方々には感謝しかありません。 atwikiは1からずっと愛用させていただきました。今後新作が出ればまた皆さんで盛り上げてって欲しいなと思いますが、ひとまずは一区切りですね。 攻略情報に関してはどうしても賛否両論なところもありましたが、FTや世界観のデータ、編集者さんによる原典に関するちょっとした知識などは永久保存版だと私は思ってます。 3以降からメンバーとしてお手伝いさせていただきました。途中から使い魔一覧を個別ページに配分したり、アンケ取って構成見直したり、勝手ながら色々やらせていただきました。 当時は学生時代の貴重な時間使って追加カード入力してたりしましたが、量が多すぎるときに手伝っていただいた編集者さんには助けられました。 あと風呂敷拡げまくって申し訳ありませんでした。更新者も減ってる感じしましたし、私自身もこれは更新続けるのは大変だなと思いました。個人ブログでデータ扱ったり環境考察されてる方は本当にすごい。 4では反省踏まえて利用者重視から編集者重視を目指しました。土台用テンプレはそのままコピペで移せるように…など。 結局は3のときほどのパッションもなく、リアル生活優先だったのでたまにお手伝いする程度になってしまいました。 初心者ガイドを作れたのは良かったですが、1の頃あった乳揺れ同好会やコンパチ使い魔一覧の4版も作りたかったですね。探せばたぶん空っぽのページがあるはず…。 長々と自分語りが過ぎましたが、編集してくださった方々や労いのコメントをいただいた方々に改めてお礼を申し上げたいです。 前述のように世界観データなどは永久保存ものなのでwikiが消えないことだけを願います。新作もいつかくると信じてます。 それまではいつも通り気が向いたときにステルス更新してます。イベントで某Dとお話したときにいただいた情報をどこかのページでちょっぴり加えてたり…。 -- (zerouminchu) 2019-04-07 18 35 48 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/techi/
techi@wikiへようこそ テイルズウィーバーのティチエルに関する情報をまとめたサイトです。 個人的なメモの意味も兼ねてますので、情報が正しいとは限りません。 おまけでテチ以外の再振りレシピもあります。 Presented by ティア鯖のテチ Wikiはユーザー参加型のサイトです。 皆さんからの情報提供が必要不可欠になります。また誰でも編集することができます。 加筆修正できそうなページがあれば、上にある【編集】を押してみましょう。 「おかしい」と思ったり「ここは違う」と思ったら、 自分で編集して下さい。 更新する情報は、あくまで当wikiの趣旨の範疇に収まるようにお願いします。 全ての情報が正しく、あなたにとって有益とは限りません。 このwikiの情報やデータにより発生した損害等は一切保障致しません。 全て自己責任でお願いします。 テチWIKI QRコード
https://w.atwiki.jp/godworldofvalkyrie/pages/216.html
@wiki連合 Wikiには似たようなもので、ページ上部のヘルプバーにある @wiki助け合い掲示板 がありましたが、あまり投稿が見当たらなかったことから、先ずは同じ類のWiki同士で共通点の話題を出そうと、ソーシャルゲーム関連のWikiに設置して見ました。 元スレ:http //www4.atchs.jp/test/read.cgi/yoshisada/1403023618/ このコメントは、2ch専用ブラウザで閲覧可能です。 設定するアドレス http //www4.atchs.jp/test/read.cgi/yoshisada/1403023618 2ch専用ブラウザの対応状況はこちら http //www35.atwiki.jp/atchs/pages/270.html ※専ブラでは、元スレのURLを読み込んで下さい。 #atchs_thread
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/245.html
かいきバード ◆wUZst.K6uE まったく、いったい何度俺を走らせれば気が済むのか。 全国を放浪している身であるとはいえ、移動手段のほとんどが飛行機かタクシー、あるいは電車というこの俺が一日の間にこれほどの距離を自分の足で移動するというのは、実のところ生まれて初めての経験だった。 いや、生まれて初めてというのは嘘だが。 どっちにしても、長距離をわざわざ徒歩で移動するというのはどうにも性に合わない。そんなことを言うと俺がまるで虚弱体質のように聞こえるが、俺の場合は正確に言うと「金を使わず移動する」ことが性に合わないのだと思う。 別に浪費癖があるわけではないが、金は貯めるものでなく使うものだという思想を貫いている俺にとって、金を払えば済むところをそれを惜しんで払わずに済ますというのは金を浪費する以上に無駄な行為であるように思えてしまう。 節約しようとする意識自体を否定する気はないが、使うべき金を使わなかった結果として代わりに何を消費したのかお前は理解しているのかと、倹約家気取りの連中を見るたび俺は問い質したくなる。 金は万能だが、至上のものではない。それを理解しない連中が多すぎる。 まあ実際には俺はそんなこと全く思っていないのかもしれないし、徒歩で移動するのに抵抗があるのは単に疲れるからという理由かもしれないし、自分の足で移動するのも実はそれほど嫌いじゃないのかもしれない。 そもそもここで金の話をするのが間違っている。いちおう江迎のやつと最初に出会ったときに預かっておいた所持金が今の俺の懐にはあるが、ここから脱出した後でもない限り使う機会はまずないだろう。 つまりはただ言ってみただけだ。 俺の言うことを真面目に聞くのは、それこそ時間の浪費でしかない。俺が一人称を務めるパートを読む際には、それを十分に心に留めておくことを強くお勧めする。 「やれやれ……とでも言うべきところなのか、ここは」 ランドセルランドを去ってからどれくらい経っただろうか。 哀川潤と西条玉藻の二人組からまんまと逃げおおせた俺こと貝木泥舟は、ようやくちゃんとした道路がある場所へとたどり着く。 地図の性質上、名前の付いている場所以外で道路から外れたところを移動していると、自分がどこを歩いているのかわからなくなって不安になる。コンパスを見ながら歩けばいいのだろうが、どうにも面倒だ。 後ろを振り返ってあの散切り頭の少女が追ってきていないのを確認し、俺はようやく一息つく。近くの壁に背をもたれ、ペットボトルの水を一口飲む。 一難去ってまた一難とは言うが、こうも立て続けに厄介そうな相手と遭遇していては心休まる暇もない。 何事に対しても万難を排してから臨む主義の俺だが、今の調子では万難を排したところですぐに次の万難が怒涛のごとく押し寄せてきそうな気さえする。 万難排してまた万難。嫌がらせのような言葉だ。 まあ詐欺師という職を営んでいる以上、心休まる暇などあってないようなものだが。 犯罪者には常に心の不安が付きまとう。俺も詐欺師として生きる道を選択した時点で一生を不安とともに生きる覚悟はしているし、いつでも死ぬ覚悟はできている。善良な市民を食い物にするような生き方をするからには、そのくらいの覚悟は当然のことだ。 まあそれも嘘だが。 「さて、次はどこへ向かおうか」 俺は地図を開く。ランドセルランドから北東にまっすぐ進んできたはずだから、現在地はE-7とF-7の境界付近あたりだろう。道なりに進めば、南東なら図書館、西方向ならまたネットカフェに戻ることになる。 ネットカフェに戻る意味は今のところないから図書館に向かうのが順当だろうが、俺の目はもうひとつの場所、図書館とは正反対の方向に位置する施設を捉えていた。 斜道卿壱郎研究施設。 ネットカフェでパソコン越しに会話を交わした、あの玖渚友とかいう奴がいると言っていた場所だ。 すでにそこは禁止エリアに指定されている。とうに下山(「登山」の可能性もなくはないが)は終えているだろうが、問題は竹取山をどっち方向へと抜けていったかだ。 もし玖渚が俺のいる方向へ下山していたとしたら、位置的に見てまだこの周辺をうろついている可能性は、高くはないがありえなくはない。 一度は無視しておくことに決めたが、もしこちらから玖渚友を探すとしたら今が好機ではないか? しかし会ってどうする? わざわざ会いに行くメリットがあるか? いや、一応メリットはある。パソコン越しに会話したとき、あいつはすでに普通では手に入らないような情報まで数多く収集している様子だった。あれからおよそ6時間、新たな情報を入手している可能性はかなり高い。 情報を得るために会うだけでも有益と言える相手ではある。 話を聞くだけなら掲示板の連絡フォームを使えばいいのだろうが、重要な情報を聞き出すのが目的である以上、相手の用意したフィールドでの会話は望ましくない。できればこちらから不意打ちで会いに行くというのが理想だ。 俺から渡せる情報はほとんどないが、そこは俺、相手が喜びそうな情報くらい即興ででっちあげる自信はある。 バレた時が怖いが、その時はまあその時だ。 問題は、俺が玖渚友の人となりについてほとんど把握できていないということだ。相手を騙すには、相手について最低限の知識は得ておく必要がある。 俺が言うのも何だが、玖渚という奴はかなりの食わせ者だ。向こうが設えた場での会話だったとはいえ、俺が騙しきれなかった相手なのだから。 最終的に名乗っていた「玖渚友」という名前が本名だったのかどうかもまた、未だに明確であるとは言えない。さすがにそこまで疑っていたらキリがないだろうが。 今更だが、ここの参加者には俺との相性が悪い奴が多すぎる。 球磨川禊にしても、さっき出会った哀川潤にしても、俺が持つ詐欺師としてのテクがまるで役に立たない。どころか会話を交わす前から本能で「こいつは駄目だ」と直感できるような相手ばかりだというのだから空恐ろしい。 西条玉藻に至っては会話すらろくに成り立たないという始末。マンション付近で追いかけられた時と比べるとある程度まともな様子ではあったが(哀川潤がそばにいたせいだろうか?)、それでも逃げたのは正解だったと思う。 最初のときはナイフが役に立ったが、今度はメイド服が逃走の役に立ったというのだから、いやはや、人生何がどう役立つかわかったものではない。 メイド服に救われる経験など、人生で一度あれば十分だろうが。 唯一俺の手駒として機能していた参加者といえば江迎怒江だが、あれはあれで相性がいいとは言えない。 球磨川や哀川潤が「騙しにくい」なら、江迎の奴は「一方的に信じてくる」だ。こっちが騙すより先に勝手に信じてくるというのだから、球磨川たちとは真逆の意味で騙すことが難しい。 それどころか、たとえこちらから「信じるな」と言ってみたところでおそらく毫ほども意に介さない性格をしているというのだから、基本的に制御のしようがない。 つまりどちらにせよ扱いにくいことに変わりはない。俺のために働いてくれるぶん、江迎のほうがどちらかといえば重宝するだろうが。 ここには狂人しかいないのかと言いたくなる。 そんなことを言うと、まるで俺自身がまともな人間であると言っているように聞こえてしまうかもしれないが、そのとおり、俺は自分のことをまともな人間だと思っている。 詐欺師が何を言うか、などと言う輩がいたとしたら、それは詐欺師に対する誤解だと俺は言い返す。仮に詐欺師が狂人ばかりだったとしたら、そもそも詐欺という犯罪自体成り立っているはずがない。 まともな思考ができるからこそ人を騙せる。まともな人間にこそ人は騙される。 つまりはそういうことだ。 ゆえに俺は、正常な人間らしくこのバトルロワイアルに臨む。狂人に混じって殺し合いを演じる気は始めからない。まともに人を騙し、まともにここから逃げる策略を練る。 「そう、『騙す』――俺がやるべきことは、それに尽きるはずだ」 壁から背を離し、道路に沿って歩き始める。 足は自然と図書館のほうへ向いていた。今の時点で玖渚友と直接対峙するのは、やはりまだ準備が浅い気がする。 今まではほとんど逃げに徹してきたが、それもいよいよ限界だ。禁止エリアの数が増え、参加者の数が減るごとに状況は煮詰まってくる。殺し合いに乗る人間もここから更に増えるかもしれない。 そろそろ本格的に、ここから脱出するための策略を練らなければならない。 すなわち、主催者側と接触を図るための策略。 より直截的に言うなら、主催を騙すための策略。 正味な話、俺が自力で生き残るにはそれしかないと思っている。出会う奴出会う奴すべてを騙し続けていったところで、結局のところその場しのぎにしかならない。 それにさっきも言ったが、ここには俺にとって鬼門となる奴が多すぎる。一切の謙遜を抜きにして、俺が今生き残っていること自体が奇跡以外の何物でもない。 逃げ場のないこのフィールドの中にいては、遅かれ早かれ行き詰まることは確定している。ならば必然、外側に活路を求める以外にない。 主催者側に属する人間が何人いるのかはわからない。ただ、そのうち一人でも接触することができたとしたら、その時こそ俺の詐欺師としての本領発揮だ。 口八丁手八丁、なりふり構わず手段を選ばず、どんな手を使ってでも主催側に取り入ってみせる。 この殺し合いを止めさせるだとか、別にそこまでやる必要はない。俺に付いているこの首輪、これの外し方さえ聞き出せたらそれでいい。 この首輪さえ外すことができれば長居は無用だ。どうにか脱出の算段をつけてさっさとおさらばさせてもらう。 他の参加者たちを置いて俺だけ逃げるというのは良心が痛むが、さすがに全員まとめて救い出すほどの余裕はあるまい。仮にできたとしても、抱えるリスクがでかすぎる。 まあ当然、良心が痛むというのは嘘だが。そもそも俺に良心など残っていたか? 俺は阿良々木暦やその妹のような正義の味方ごっこをするつもりは毛頭ない。俺が誰かを助けるとしたら、それに見合った対価を支払ってもらった時だけだ。支払ったとしても助けるとは限らないが。 しかし実際のところ、主催者の影すらつかめていない現状においてはそいつらを騙して取り入ろうなどという戦略も机上の空論でしかないわけだが。 どの道、協力者を得ないことにはどうにもならない。 主催者にアプローチをかけるための協力者となると、また数が限られてきそうではあるが………… 「……そういや、掲示板はどうなっているんだろうな」 ポケットからスマートフォンを取り出し、掲示板のページを再び開いてみる。 参加者の数ももう20人そこそこまで減ってきているというのに、意外に利用している奴が多いものだ。携帯電話を持っている奴が俺以外にも割といるのかもしれない。 ……まさかすべて玖渚の自演とかいうオチではないよな? 若干の不安を抱きながら、新しい書き込みがないかチェックしようとする。 「――おっと」 そのとき急に足の力が抜け、前のめりに倒れこんでしまう。スマートフォンが壊れないよう庇った形になったせいで、スーツの袖が泥まみれになってしまった。くそ、ここから脱出する前にクリーニング代を請求してやろうか。 疲労がたまったせいで足がもつれたのだろうか、などと思いながら立ち上がろうとするが、どういうわけか両足ともにうまく力が入らない。それどころか腿のあたりにじわじわとした痛みを感じる。 まさか肉離れでも起こしたか? だとしたら厄介だな――と右足にそっと触れる。途端、ぬるりとしたものが指先を濡らすのを感じ、反射的にそちらを見る。 血だった。 両の太腿と、そこに触れた指先がじっとりと血で湿っている。 実は道路に血まみれの死体が倒れていて、それに躓いた際に血が付いてしまったのだった――などということはもちろんなく、正真正銘俺自身の血だった。 その証拠に俺の脚には、直径3ミリほどの小さな穴が空いていた。左右それぞれに一箇所ずつ、後ろから前へ、何かが突き抜けていったかのように。 ……銃創? 「見たところさほど手練というわけでもなさそうだが、一度痛い目を見ているのでな――念のため下手な動きができないようにさせてもらった」 声のするほうを振り返ると、そこには奇矯な衣服をまとった男が立っていた。 どことなく怪鳥を思わせる風貌と、全身に巻かれた鎖。両手には一丁ずつ拳銃が握られている。 それぞれの銃口から立ち上る硝煙が、まさに今発砲されたばかりだという事実を示していた。どこへと向けて発砲されたのかは考えるまでもないだろう。 「貝木泥舟だな。おぬしに恨みはないが、死んでもらう」 恐ろしく冷たい目をしたその男は、恐ろしく冷たい声でそう言った。 「…………」 やれやれ、どうやら早くも次の一難が大手を振ってご登場のようだ。 しかも今度の一難は、そう簡単に去ってはくれそうにない。 ◆ ◆ ◆ 「足を潰されても取り乱す気配を見せぬというのはなかなかに意外だな。貝木泥舟。どうやら我が思うほど、凡庸な人間というわけでもないらしい」 片方の拳銃をこちらに向けたまま、男は探るような目で俺を見てくる。 俺は地面に突っ伏したまま、その視線を受け止める。最初に「死んでもらう」と豪語されているだけに今すぐ頭を撃ち抜かれてもおかしくない状態ではあるが、先んじて足を潰した余裕か、会話を交わす気はとりあえずあるらしい。 こういう余裕は正直ありがたい。 俺に取り乱す気配がないとこいつは言ったが、そんなもの混乱が表に出ないよう無理矢理取り繕っているだけに決まっている。心中では、あまりに唐突過ぎる展開と焼けつくような両足の痛みで脳がオーバーフローを起こしかねない勢いだった。 まず、こいつはいったい誰だ? 参加者の一人であることは当然として、なぜ俺の名前を知っている? いや――名前が知られていることに特段の不思議はないのかもしれない。俺のことを他の誰かに聞いた可能性は十分にあるし(又聞きでなければ江迎か球磨川、あるいは戦場ヶ原あたりか)、ランドセルランドで俺がやったように、名簿の名前から類推した可能性もある。 いきなり初対面である俺を殺そうとしている理由もあえて考える必要はあるまい。「恨みはないが」と前置きしているところからしても、おおかた腕に自身ありで馬鹿正直に殺し合いに乗っている者のうちの一人だろう。 あえて他の可能性を考えるとしたら、こいつは他の参加者の誰かから――例えば戦場ヶ原ひたぎあたりから俺のことを抹殺するよう依頼を受けていて、今まで俺のことを探し回っていた――という可能性はどうだろう。 考えられなくはないが、さすがにそこまで愉快な展開を期待するのは贅沢がすぎるというものだろう。そもそもあの女は、殺意を抱くほど憎い相手なら自分の手で殺さないと気が済まなさそうなタイプだからな。 …………ん? 冷静に考えてみるとこの状況、不可解な点などひとつもないんじゃないか? たまたま行きがかった殺人者が、たまたまここにいた俺を射殺しようとしている状況。 文章にしてみれば一行でこと足りる。 なんだ、ならややこしくあれこれ考える必要などない。やはり足を撃たれたショックで混乱していたようだ。 実のところ、こいつが何者なのかも服装を見た時点で予想できているしな。 「……初対面の相手にいきなり銃弾とは、随分なご挨拶じゃないか」 最大限平静を装いながら俺は言う。足の痛みで額には脂汗が浮かんでいることだろうし、地面に這いつくばった姿勢のままなので、どう取り繕ったところで無様にしか見えないだろうが。 「いくら殺し合いの場とはいっても、礼儀や作法をおろそかにするのは感心しないぞ。まして俺のように人畜無害な、見てのとおり丸腰の人間に不意討ちでしかも銃とは、外道以下のやり方だな。 何があったのかは知らんが、ここに来るまでによっぽど怖い目に会ったと見える。お前は素人相手にすら警戒心を抱きながらでないと向き合えない、ただの臆病者だな」 心にもないことを俺はまくしたてる。精一杯挑発してやったつもりだったが、相手は眉ひとつ動かさず、瞬きひとつすることなく、虫けらでも見るように俺を見下すだけだった。それどころか、 「ふむ――おぬしもこの刀が『銃』であることを知っているのか。あのときの青年が炎刀の名を口にしたときも少々驚いたが……どうやら我の認識以上に、変体刀に関する知識を持っている人間がこの場には存在しているらしい」 などと意味不明なことを口走る。 炎刀? 変体刀? 刀が銃ってどういうことだ。 「それと貝木泥舟よ、我のやり方に対して外道などと難癖をつけるのは全くの見当違いだ。我らしのびは卑怯卑劣こそが売り。礼儀作法というのであれば手段を一切選ばないことこそが礼儀であり、不意討ち闇討ち騙し討ちこそが作法。それに異を唱えるなど笑止千万」 俺の適当な挑発に対して真面目に受け答えてくれるのはありがたいが、残念ながら全く興味はなかった。ネットの掲示板にでも書き込んでいてくれ。 しかしこの男、自分のことをしのびと言ったか? 妙な風体をしているとは思ったが、言われてみれば一風変わったしのび装束に見えないこともない。 どうやら最近の忍者は平気で拳銃を使うらしい。ドーナツを食う吸血鬼よりはリアリティのある話かもしれないが、まったく末恐ろしい世の中だ。 「さて、死ぬ前にいくつか質問に答えてもらうぞ、貝木泥舟」 「……さっきから俺のことを貝木と呼んでいるが、残念ながら人違いだ。俺の名前は鈴木と――」 言いかけたところで、男が一切躊躇する様子なく拳銃の引き金を引く。弾丸は俺の脇腹あたりに命中し、両足の痛みが消し飛ぶほどの痛みを与える。 「ぐ…………うっ!」 うめきながら俺は、腹を抱えて上半身だけうずくまるような格好になる。急所は外しているようだが、おそらくわざとだろう。 さすがは忍者、生かさず殺さずのテクニックにも長けているようだ。 「我に虚言は通用しないものと思え。これ以上無駄ごとを口にするなら、次は素手で肉を抉り取るぞ」 そう言ってしのびの男は地面から石をひとつ拾い上げると、それを右手の力だけで粉々に握り潰して見せた。 ……なるほど、見た目からは想像もつかないが、どうやらとんでもない怪力の持ち主のようだ。俺の身体など、片手だけで易々と解体してしまえるに違いない。 「ふむ……付け替えた当初と比べてだいぶなじんできたようだな。あのままでは炎刀を握ることすらままならぬ有様であったし、力の加減が利くようになったのはありがたい」 また何かひとりごとを言っているようだが、こっちは痛みでそれどころじゃない。そのまま一人で喋っていてくれればいいのに。 「我がおぬしの名を知っている理由を説明してやる気はない。おぬしがそれを知ったところで、我にとってもおぬしにとっても何の意味もないのだからな」 そりゃそうだ。俺もそんなことを説明してほしいとは思っていない。 しかしここで黙ってしまったら、こちらから口を挟む余地がいよいよなくなる。そうなればもう俺が助かる可能性はゼロだ。助からないにしても、このまま唯々諾々とこいつの言いなりになって死ぬというのは面白くない。 ここは小悪党らしく、あがけるだけあがいてみようじゃないか。 痛みをこらえながら、俺はなんとか口を開く。 「そうだな、俺がお前の名前を知っていることに何の意味もないようにな、真庭鳳凰」 ここでようやくしのびの男――真庭鳳凰の表情に、微細だが虚を突かれたような気配が見てとれた。よし、どうやら正解のようだ。間違えていたら最悪だったが。 「…………どこで我の名を知った」 自分では意味がないと言っておきながらそんなことを訊いてくる鳳凰。一方的に名前を知っていることで優位に立ったつもりでいたか、馬鹿め。 「いや、少し前にお前の仲間にたまたま会ってな。そのときにお前のことも聞いた」 言うまでもないが嘘だ。会ったことは会ったが、どっちもすでに死体だったからな。 しかしその死体を見たことでこいつの正体を看過するに至ったのだから、全くの嘘とは言えないのかもしれない。 ネットカフェとランドセルランドで見た「真庭」と同じく、残りの二人もあんな珍妙な格好をしているかどうかは正直微妙なところだと思っていたが、どうやらこいつらは全員が全員、こんな見た目から名前が推測可能であるような装束を身に着けているらしい。 こいつら本当に忍者なんだろうな? いまひとつ説得力に欠ける。 相手の顔色を窺いながら、俺はさらに嘘を重ねる。 「名前は確か狂犬と喰鮫と言ったかな。殺し合いに関してかなり乗り気でいるようだったから、俺が相手をしてやった。ちなみに言うが、挑んできたのは向こうのほうからだぜ。俺は仕方なく応じただけだ」 「ほう、それでその二人はどうした」 「殺した。俺が両方ともな」 ここでこいつが激昂して取り乱すような仲間思いの間抜けであったなら、俺が助かる可能性も0.01%くらいはあったかもしれない。しかし鳳凰は、俺の言葉に何ら動揺の気配を見せることなく、 「嘘だな」 と冷たく言い放った。 「真庭のしのびを甘く見るな。多少度胸は据わっているようだが、おぬしがそこまで腕の立つ人間とは思えん。あの二人はもとより、真庭の里の誰を連れてきたところでおぬしごときが敵うはずがない」 「は、偏見だな。人は見かけによらないものだぞ。こう見えて案外、武術の心得はある」 余裕ぶって笑ってみせたが、確実に相手の言うほうが正しいだろう。 実際の忍者がどんなものなのかなど知る由もないが、俺に勝てる要素があったとしたら精々逃げ足くらいのものだろうし。 「……とはいえ、俺の力だけで殺したわけじゃないのは事実だ。実を言うとその二人は、俺が会ったときにはすでに手負いの状態だったんだよ。他の参加者と戦闘した後だったのだろうな。 そいつらから聞いた話だと、喰鮫のほうは黒神めだか、狂犬のほうは――江迎怒江とかいう奴とやりあった後だと言っていたな。おかげで俺でも楽に殺すことができたぜ。俺が言うのもなんだが、まあお気の毒さまだな」 「…………」 「その証拠に――と言えるほどのものじゃないが、俺の荷物を見てみるといい。お前の仲間から奪い取ったぶん、通常より支給品の数が多いのがわかるはずだ」 そう言って、俺のすぐ傍に落ちている自分のデイパックを顎でしゃくってみせる。 こいつの仲間を殺した証拠にはならないにしても、「戦利品」の多さを示してやることで俺の実力について誤解を与えてやることくらいはできるかもしれない。 誤解は多ければ多いほどいい。 「…………」 鳳凰はしばらく疑わしそうな目でこちらを見ていたが、やがて「ふむ」とうなずき、 「そうだな……おぬしの言うことはどうにもあてにならんようだから、先に『視て』おくとするか」 などと言い、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。 そのままデイパックを拾うかと思ったそのとき、鳳凰は俺の脇腹あたり、つまり先ほど銃弾を撃ち込んだ部分を、右のかかとで思いきり踏みつけてきた。 「ぐはぁ…………っ!!」 せっかく麻痺しかけていた痛みが体内で爆発する。いや、本当に腹の中身が爆発したかと思った。内臓がすべて消し飛んだと言われても今なら信じてしまうかもしれない。 傷口からさらに血が溢れ出る。頭の中では絶叫しながらのたうち回っているつもりなのだが、実際には完全に息が詰まり、指一本すらも動かせなかった。 気を失わなかったのは見事だと言う外ない。俺でなく、こいつの技術がだ。 「重ねて言うが、妙な動きはするな」 念を押すように言って、鳳凰は左手の拳銃を懐にしまい、今度こそデイパックを拾い上げる。そして動けない俺をそれでも警戒するように、そのまま数歩ほど後ろに下がった。 すぐに中身を改めるかと思いきやそうはせず、なぜか左手でデイパックをつかんだまま静かに瞑目する。何かを念じているようにも見えるが、いったい何をしている? 隙だらけに見えるが、俺への警戒は解いていないのだろう。 未だ呼吸すらできない俺は、それをただ見ていることしかできない。 「――ほう、鑢七実と会ったか。あの化物と二度も顔を合わせて二度とも逃げおおせるとは大した健脚だな……七実の隣にいる刺青顔の少年は何者だ? まさかあの女に協力者がいるとでもいうのか? 随分な命知らずだな」 今度は俺のほうが虚を突かれる番だった。 さっき俺がやったような、断片的な情報から事実を推察するようなテクニックとは違う、事実そのものを知っていないとわからないはずの情報をこいつは今、口にした。 「なるほど、狂犬と喰鮫の所有物を得たというのは真実のようだ。しかし殺したというのはやはり嘘か。死体の傍らに放置されていたのをいいことに拾っただけのことを、よくもまあ『奪い取った』などと。礼儀作法を学ぶべきは、どうやらおぬしの側のようだな」 「…………」 ぐうの音も出ないとはこのことだった。何だこれは? 俺の記憶でも読んでいるのか? いや、こいつがデイパックに触れたときから語り始めたことから察するに、俺の記憶というよりは「俺の所有物の記憶」を読み取るような能力をこいつは持っているのかもしれない。 いわゆるサイコメトリーとかいうやつだ。 この手の超能力や心霊術の類は、大半がトリックを用いているだけの偽者と相場が決まっているものだが(俺も似たようなものだが)、俺の目の前にいるこいつは、まさか本物だとでも言うのか? 「……はっ、喰鮫や狂犬はおろか、まだ誰一人として殺してなどいないではないか。女子供にすら逃げの一辺倒とは大したものだ。武術の心得が聞いて呆れる」 俺は死刑宣告を受けた気分だった。 間接的にとはいえ俺のこれまでの行動をこれほど明確に読み取れるというのは、安易な嘘をついても逆効果にしかならないと宣告されたようなものだ。自分に虚言が通用しないというあれはハッタリでも何でもなく、ただの事実だったということか。 俺の処世術である「騙し」は、この時点でほぼこいつに殺されたも同然だった。 「嘘と騙しはしのびの常道。しかし下手な嘘ほど己の首を絞めるものはない。相手を騙しぬいてこそ嘘は嘘として価値を持つ。おぬしのやったことは、己の寿命を無意味に縮めたのと同じこと」 俺は言い返せない。 「つい数刻前にも、我を嘘で縛ろうと試みた男がいたな。だがそいつの辿った末路といえば、己の得物で勝手に自滅した上に我にかけた嘘も自ら無に返すという、救いようもないほどに無様な最期だった。 あの男がもう少し格調の高い嘘吐きであったなら、死した後でもなお、我に呪縛を遺すくらいのことはできたであろうに」 なるほど、最初にこいつが言っていた「痛い目」というのは多分そのことだろう。 こいつが他の誰かに騙されたばかりだった、というのも俺にとっては不運だったかもしれない。そうでなければこいつは俺に対してここまで警戒していなかっただろうし、いきなり発砲されるということも多分なかっただろう。 誰かは知らんが余計なことをしてくれたものだ。どうせ騙すなら最後まで責任を持って騙しきれ。 「どうやらこのまま尋問を続けても、おぬしの口からまともな真実は聞けぬようだな」 ひと通り記憶を読み終えたのか、鳳凰はデイパックを放り捨てる。 「しかし――この状況においてもなお虚言を吐き続けることのできるその精神だけは評価に値するといえよう。このまま殺しても構わんが、興が乗った。おぬしが口を開ける間に、少々試させてもらうとしよう」 俺に見せ付けるように鳳凰が右腕を構える。ただの人間の腕なのに、俺はそれに肉食獣の牙のような凶々しさを感じた。 「おぬしがこれ以上、嘘を吐くことを諦めて偽りなく我の質問に答えるというなら、これ以上苦痛を与えず、一思いに殺してやってもよい。 しかしあくまで嘘を吐き続けることを選ぶというのであれば、我はこの右腕でおぬしを死なぬ程度に喰らい続ける。おぬしの命が尽きるのが先か、はたまた精神が尽きるのが先か、ここで試してみようではないか」 「…………」 よくわからんが勝手に何か始めやがった。 何が「興が乗った」だ。今までの会話のどこに興が乗る要素があったというのか。そんなものに乗せた覚えはないぞ。 やはりこいつも狂人か。 しかしまあ、「嘘をつき続ける精神」とは随分と高く買われたものだ。こんなもの評価どころか非難するにも値しない、ただの悪癖だというのに。 俺は嘘を吐くことに何のこだわりもない。皮膚呼吸をするように嘘を吐く俺だが、もしここで命が助かるというならその皮膚呼吸すら止めることも厭わないつもりだ。 この男が本物のしのびだというなら、拷問の作法にも精通していることだろう。俺のちっぽけな精神など、ものの数分で崩壊してしまうに違いない。 俺にはもう、この男を騙すことはできない。悔しいがこいつの言うとおり、騙しきれない嘘に価値などない。そもそも俺は、嘘に価値があるとも思っていないが。 だから俺が今ここですべきことは、素直に許しを請うことだろう。恥も矜持もすべて捨て去って、質問には正直に答えるから命だけは助けてくれと、あるいは一思いに殺してくれと懇願する。それが俺にできる唯一にして最善のことであるはずだった。 億にひとつでも助かる可能性があるのなら、俺は迷わずそうすることを選ぶ。 足を潰され、嘘を封じられ、もはや一般人以下に成りさがった俺にできることは、それくらいしか残されていない。 少なくとも、この期に及んでなお意固地になって無意味な嘘を重ねるなど、考えうる限り最悪の手段だろう。寿命が少し延びる代わりに、地獄の苦痛を味わわされるだけだ。 俺が仕事で使うもうひとつの得意技である「偽者の怪異」も、ここではまず役に立たない。 指で突く隙を与えてくれないのは当然のこと、怪異でこいつに打ち勝つためにはこいつにとって有効な怪異を選んで使用する必要がある。今からそれを即興で用意しろというのは無理な話だ。 阿良々木暦の妹を刺すのに使った囲い火蜂も、こいつには通用するまい。相手は畏れ多くも、神獣の名を名乗っているような奴だ。 蜂が鳳凰に効くものか。 「…………」 出血で意識が朦朧としてくる。痛みはぼんやりとしか感じないのに、地面の冷たさだけはやたらはっきりと感じることができた。 かすんだ視界の中、鳳凰が近づいてくるのが見える。一歩一歩、まるでスローモーションのようにゆっくりと。 命乞いをするなら今のうちだ。ぼやぼやしていると、本当に口も開けない状態にされてしまうかもしれない。 「……ああ、そういえば」 繰り返すが、俺は嘘を吐くことに何のこだわりもない。矜持も、思想も、信念も、嘘に対して掲げられるものは何ひとつとして持ち合わせてはいない。 しかし。 それでも。 だからこそ。 俺はこいつの思惑通りになるのが嫌だった。撃たれたことも踏みつけられたこともどうでもいいし、これから殺されることも仕方がないと思っている。 ただ、俺の嘘吐きとしての属性をこいつに完全破壊されるのが我慢ならなかった。 「興が乗った」など、そんな思いつきの暇つぶし程度の理由で俺から嘘を奪おうとしているこいつの傲慢さが許せなかった。 こいつにはせめて一矢報いてやらないと気が済まない。俺はそんな俺らしくもないことを思った。 俺にも詐欺師としてのプライドというものが、もしかしたらあったのかもしれない。 死が眼前にまで迫ってきているというのに、俺はそれが少しだけ愉快だった。 「――鳳凰というと鳥の怪異として有名だが、元ネタである中国の伝承によると、キメラみたいに何種類かの動物の部位が繋ぎ合わさった姿をしているものらしいな…… 時代によって違ったりもするようだが、元々はたしか嘴が鶏で、顎は燕だったか? 他にも蛇やら亀やら混ざっていたような気がするが、よく覚えてねえな……」 俺まであと三、四歩ほどの距離で、鳳凰の足がぴたりと止まる。 「……何の話だ?」 「いや、別にどうでもいい話さ……ただ、鳳凰ってのはたしかに神の鳥ではあるが、そう聞くと案外、普通のものの寄せ集めでしかないように思えてしまうものだな」 あまりに脈絡のない俺の言葉に気がそれたのか、鳳凰の注意がほんの一瞬だけおろそかになる。 その一瞬を俺は見逃さなかった。 「だから鳳凰、お前に蜂は効かないだろうが――」 かちり。 脇腹を撃たれてからずっと身体の下で抱え込むようにしていた手で安全装置を外す。 そして「それ」を握った右手を勢いよく腹の下から引き抜き、 「――鶏よりも燕よりも強靭で獰猛な、鷲ならどうかという話だ」 俺に残されていた唯一の武器、デザートイーグルを鳳凰めがけて発砲した。 放たれた弾丸は、驚愕に目を見開く鳳凰の顔面、その眉間のど真ん中へと寸分狂わず命中し、そのまま頭部の上半分を木っ端微塵に吹き飛ばした。 ◆ ◆ ◆ というのはもちろん嘘で、俺の撃った弾丸は鳳凰にかすりもしなかった。油断はしていてもさすがは忍者、俺が拳銃を取り出した時にはすでに回避行動をとっていた。まあ避けなくとも当たらなかっただろうが。 非力な者がデザートイーグルを撃つと反動で肩が外れるとか後ろへ吹き飛ばされるとか未だに言われることもあるようだが、実際には撃ち方さえ間違わなければ女子供でも撃つことはできるらしい。 しかし今の俺の撃ち方は、うつ伏せのまま片手だけで、しかも無理に腕を伸ばした状態で発砲するという大口径拳銃の扱い方としてはおよそ最悪に近い形だったため、発砲の反動は覿面に俺の右腕へとダメージを与えていた。 肩が外れたかどうかはわからないが、筋くらいは痛めたかもしれない。ついでに耳栓なしで撃ったせいで耳が痛い。 俺が拳銃を持っていたことがよっぽど意外だったのか、鳳凰は反射的にといった感じで懐から拳銃を取り出し、俺に狙いを定める。 引き金が引かれる前に俺はせめてもの抵抗にと、もう片方の手で握っていたスマートフォンに拳銃の台尻を思い切り叩き下ろし、粉々に破壊した。 抵抗というにはあまりに子供じみているが、こいつに使われるくらいならこうしたほうがましだ。右腕に更なる激痛が走ったが、そんなことはもう気にならない。 ついでにこのデザートイーグルを可能な限り遠くへ放り投げてやろうかと思ったが、さすがにそこまでの猶予を与えてはくれなかった。 軽い発砲音とともに、鳳凰の拳銃が火を噴く。俺のときとは違って、弾丸は俺の方めがけてまっすぐに飛び、正確に頭部を撃ちぬいた。 暗転していく意識の中で、俺は何かをやりきったかのような満足感に浸っていた。状況的に言えば悪あがきに失敗してとどめを刺されただけのことだろうが、鳳凰にとっては「思わず殺してしまった」形だろうから、俺としてはしてやったりな気分だった。 負け惜しみにしか聞こえないだろうが、俺の銃撃がこいつに命中しなかったことも良かったと思っている。 他人の生き死にに何かを感じるような心が残っている俺ではないが、自分の手で直接誰かを殺すのはなんとなく嫌だった。 殺人者の肩書きを得るのが。 詐欺師という汚名を、殺人者というくだらない汚名で上書きするのが嫌だった。 俺は俺のまま、詐欺師のままで死にたかった。だからこのバトルロワイアルで一人も殺さないまま死ねたことに、俺は誇りすら感じていた。 こんなつまらないことに誇りを感じる自分の小ささに正直嫌気がさしたが、どうせ死の間際だ。何に誇りを感じてもいいじゃないか。 やるべきことをやったと言い切ることはできないが、今やりたいことはすべてやった。 安らかに死ぬにはそれで十分だ。 最後に走馬燈でも見ようかと思ったが、今までに騙してきた相手の恨み顔しか見える気がしないのでやめた。見ようと思って見れるものでもないだろうが。 だから代わりに戦場ヶ原ひたぎのことを思い浮かべる。 あの女が今も無事どうかはわからない。だが、俺はあいつが最後まで生き残れると信じている。俺がいなくても、きっと立派にやっていけるだろう――と、口に出したら歯が浮きそうな嘘を考えている自分がいることに安堵し、俺の意識は今度こそ闇へと落ちる。 地獄の沙汰も金次第と言う。貯金のない俺だから、江迎のやつから金をいくらかせしめておいて本当によかったと、あの頭のおかしい女に俺は少しだけ感謝した。 【貝木泥舟@物語シリーズ 死亡】 ◇ ◇ 後日談にもオチにもまだまだ早いが、もう少しだけ俺の一人称を続けさせてもらう。実は生きていたというオチではないから安心していい。 もう死んだのだからあとはナレーションにでもまかせてさっさと逝けと罵声が飛んできそうだが、残念ながらこの回では俺の行動に関する描写はすべて俺の視点から語ると決めている。たとえ神にもその役割を譲ってやる気はない。 なに、ほんの少し補足を入れるだけだ。 すぐに済むから、しばしご清聴願いたい。 鳳凰に脇腹を撃たれた後、俺がずっと両手で腹を抱えるようにしていたのは言うまでもなくデザートイーグルを取り出すタイミングを窺っていたからだが、実はもうひとつ理由がある。 俺が最後に銃の台尻で粉々に破壊したスマートフォン、あれを身体の下で操作するためだった。 俺が動けないがゆえの油断だったのか、それとも俺のことを不必要に警戒しすぎていたからなのか、鳳凰が俺に対して身体検査を一切しようとしなかったのは、俺にとって最大の幸運だったと言える。 もしされていたら、悪あがきの手段さえ完全に奪われていただろうからな。 で、スマートフォンを使って何をしていたかというと、玖渚が作ったあの掲示板に書き込みをしようとしていた。 ある意味ダイイングメッセージのようなものだ。ネット掲示板にダイイングメッセージ、なんとも現代的でいい感じじゃないか。 ただし身体の下で操作していたわけだから、当然画面もボタンも見えない完全ブラインドタッチだったので、ちゃんと文字が打てていたかどうかわからないし、そもそも書き込みができていたのかどうかも確認できていない。 これで投稿できていなかったら間抜けすぎる。 誤字だらけなのは仕方ないとして、最低でも投稿できていると信じたい。 まあ、あんな書き込みをしたところであいつにとって致命的となるわけでもないし、内容が信用されるとも限らない。むしろ無駄になる確率のほうが高いだろう。 だからこれもただの悪あがきだ。自己満足と言い換えてもいい。 何の意味も持たなくとも一向に構わない。 さてさて、死人があまりでしゃばるのも問題なので、言うことも言ったし今度こそ退場させてもらうとしよう。 これ以後は正真正銘、金輪際俺の出番が来ることはない――なんて俺がこんなことを言うと、ひょっとしたら嘘になるかもしれないけどな。 2:目撃情報スレ 4 名前:名無しさん 投稿日:1日目 夕方 ID:IJTLNUUEO E7で真庭法王という男におそわれた拳銃を持ている。危険 鳥のよな福をきている、ものの乃記憶を読めるやしい 黒髪めだかと組んん出いる可能性あり 付近にいるのは注意されたしい ◇ ◇ 「…………不愉快だ」 頭を撃ちぬかれた貝木泥舟の死体を見下ろしながら、鳳凰は憎々しげに呟いた。 その死に顔がなぜか満足げなものだったことも、鳳凰の苛立ちに拍車をかける。 「まさかこんな、口先だけの大法螺吹きにまたも一杯食わされるとは、例えようもなく不愉快だ……しかし、我のほうにも慢心があったことは認めざるを得まい。猛省せねばなるまいな」 鳳凰としては、まさか相手も『銃』を持っているとは思わなかったのだろう。 鳳凰の世界における『銃』が極めて特殊なものであるがゆえに、相手が同じ武器を所持しているという可能性を予想できなかった。 さらにその武器がいかに強力なものかを知っているがゆえに冷静さを欠き、急所を外す余裕もなく、反射的に撃ち殺してしまった。 あえて言うならもうひとつ、鳳凰が拳銃の存在を予想できなかった理由として、貝木の所有物に対する先入観が挙げられる。 忍法記録辿りによる先入観。 鳳凰の左手に宿る忍法、記録辿り。それは物に残された残留思念を読み取るものであり、当然のこととして読み取る対象物に関わりの深いものの記録しか読むことができない。 例えば貝木のデイパックであるなら、それをずっと所有していた貝木自身の行動の記録。あるいは、デイパックから出し入れされた物の記録。 もしデザートイーグルが貝木のデイパックに入っていた支給品だったとしたら、あるいは一度でもデイパックの中にしまわれていたとしたら、その記録を読み取った時点で十中八九、拳銃の存在には気付けていただろう。 しかしデザートイーグルが取り出されたのは、真庭狂犬のデイパックの中からだった。 加えて貝木はそれを自分のデイパックにしまうことなく、スーツの懐に入れて携行していた。 つまり鳳凰にとって不運なことに、そして貝木にとって幸運なことに、デザートイーグルに関する記録は貝木のデイパックにとって対象外の記録だったのである。 スマートフォンについても同様の理由だ。ただしこっちは、存在が読めていたところで何に使うものなのか鳳凰にはわからなかっただろうが。 鳳凰が貝木に対し身体検査をしなかったのは、むしろそれが原因だったのかもしれない。 なまじ記録を読むことができたことで、「貝木の所有物はすべてデイパックの中に入っている」という先入観を作ってしまったということ。 そこは完全に、鳳凰の油断であり慢心だった。 「……まあよい。生き残ったのが我であるという事実に変わりはない――それに、随分な収穫もあったことだしな」 鳳凰は貝木の死体を足で仰向けに転がすと、右手に握られたままの拳銃を力任せにむしり取る。 それを確認するようにしばらく眺めてから、近くの壁に向けておもむろに銃を構え、発砲した。 強烈な銃声とともに、弾丸は決して薄くない壁を優々と貫通する。銃声の残響があたりにこだまする中、鳳凰は彼にしては珍しく感嘆したような声を出した。 「素晴らしい……炎刀と比べて連射性こそやや劣るが、威力のほうは比べ物にならんな。これが手に入ったというだけで、わざわざこの不吉な男のもとを訪れた甲斐があったというものだ」 炎刀・銃の上位互換に当たる武器、鳳凰はデザートイーグルをそんなふうに解釈し、それを炎刀とともに懐へしまう。 その際、記録辿りでデザートイーグルの記録を読むことも忘れなかったが、先ほど貝木が撃った以外ではまだ一度も使われていない、という事実しかわからなかった。 さらに傍らへ放り捨ててあった貝木のデイパックを改めて拾い上げ、その中身を検分する。 基本の支給品以外では、日本刀、金槌、巨大な棍棒、予備の弾丸、金属で作られた諸々の道具、そして―― 「これが……誠刀・銓?」 説明書きを読んだだけでは疑わしかったが、記録辿りでその鍔と柄しかない刀を読んだことで「それ」が「そう」であることを確信する。 変体刀十二本がうち一振り、「誠実さ」に重きを置いて作られた日本刀、誠刀・銓。 炎刀の類似品だけでなく、誠刀までここで手に入るとは……。 「しかしこれは、戦闘に使える代物ではないな……当然、これが本物の完成形変体刀である以上、真庭の里の復興のため所有しておくことに変わりはないがな」 そう言って、誠刀を自分のデイパックの中へ丁重に納める。 さらにもうひとつ、鳳凰にとって不可解なものがあった。先端に針のついた透明の容器に入れられた、何かの薬品のような怪しい液体。 幸いそれも、記録辿りによって用途を確認することに成功した。ただしその内容は、投与しただけで「天才」を「凡人」に改変してしまうという、実に眉唾くさい代物だったが。 貝木の持ち物のうち、不要と思しきもの(地図や名簿など)を除いたすべて支給品を自分のデイパックへ移し変え、さらに今更ながら貝木の死体を検分する。しかし見つかったのは懐の中に入っていた紙幣と硬貨くらいで、めぼしいものは発見できなかった。 地面に散らばっているスマートフォンの残骸にも少し目を向けたが、それは無視しておくことに決めた。あの状況で優先して破壊するほどのものだったのかと少し気にはなったが。 念のため、貝木の身に着けている衣服などに対しても記録辿りを行使してみたが、得られた情報はデイパックを読んだときと大差なかった。 ただひとつ、少しだけ不可解に思うことがあった。 あの橙色の怪物と対峙する前、破壊される直前の建物と、その付近にあった自動車の記録を読み取ったときにも感じた違和感。 と言うよりは、この殺し合いの中において忍法記録辿りを行使するたびに必ず、その違和感はあった。 この場に用意されている物からは、すべて「新しい記録」しか読み取ることができない。 デイパックを含めすべての支給品、建物、さらに衣服の類ですら、その性質や用途はおおまかに読み取ることはできるものの、ここ数日以前の記録がまったく存在しない。 たった今読み取った誠刀・銓にしてもそうだ。それが本物の完成形変体刀であるということは理解できるのに、戦国の時代を渡り歩いたはずのその刀から、何の歴史も辿ることができない。 まるで。 まるでここに存在しているすべてのものが、例外なくこの殺し合いのためだけに作り出されたものであるかのように。 「…………やめておこう。これ以上、余計なことを考えるのは」 鳳凰はデイパックを静かに地面に置くと、瞑想するかのように両の目を閉じる。 「いらぬ雑念に囚われているから、こんな口先だけの輩につけこまれるのだ――我はもうこの先、誰の虚言にも踊らされぬ。迷いも油断も慢心も、この場ですべて消して失せよう」 そう言うと鳳凰は、右腕を天へと向けて高々と振り上げる。 そして竹取山で匂宮出夢の死体にしたのと同じように、その右腕を貝木の死体めがけて力の限り振りかざした。 《一喰い》(イーティングワン)。 破壊というよりは、それは爆砕。 力の制御が利くようになったはずのその右腕は、しかし出夢の死体のときより荒々しく、そして圧倒的に貝木泥舟の死体を爆砕した。 血も肉も骨も、すべてを霧散させんばかりの一撃。 デザートイーグルの威力など、まるで霞んでしまうような人外の破壊力。 地面深くまでめり込んだ右腕を引き抜き、血振りをするようにぶん、と振るう。 先ほどまで貝木がいたはずの場所には、千々に弾け飛んだ肉片と、申し訳程度に破壊を免れた貝木の身体、そして重機で掘削されたかのようにざっくりと抉られたアスファルトが残されていた。 「――これより我に迷いなし。ここに存在する全ての者を皆殺しにし、我の悲願を成就させる。それこそが我の進むべき唯一の道」 そのためなら我は、奈落にでも堕ちよう。 そう宣言した鳳凰の目には、もはやこの世のものとは思えないほどの深い覚悟が宿っていた。 闇のように深く、底知れない覚悟が。 「随分と時間を食ってしまったな……まあ急ぐ道理もあるまい。ゆっくりと確実に、一人ずつ消していけばよいだけのこと。派手に動いて周りに警戒されるのも好ましくない」 言いながらデイパックの中に手を差し入れる。 すでに所持品の数が尋常ではなくなってきているが、それがマイナスになるような真庭鳳凰ではない。もたつく様子もなく、すぐに目的のものを中から取り出す。 数刻前に西東天から鳳凰の手に渡った支給品、首輪探知機。 現在の区域であるE-7内に反応はないが、ここからF-7までは目と鼻の先だ。境界をまたげば、また誰かの名前を見つけることができるやも知れぬ。ついでに図書館とかいう場所を探索しておくのもよいか―― そんなふうに行動の指針を決め、首輪探知機を片手に歩き出そうとする鳳凰。 が、そこで何かを思い出したようにはたと足を止める。 「そういえば、これをまだ調べていなかったな」 そう言って取り出したのは、鳳凰の元々の支給品であるノートパソコンだった。 何に使うものかすら不明だったがゆえに調べることすらせず放置していたが、西東天がそれを見た際の発言からかなり利便性の高い道具であることは想像できた。 使い方さえ把握できれば、これも強力な武器となるかもしれない。 「どれ、読んでみるとするか……可能な限り、念入りにな」 もはやルーチンワークのような動作で、鳳凰はノートパソコンを左手でつかみ瞑目する。 それに残された記録を余すところなく掬い上げようと、左手に意識を集中させる。 深く、深く、深く。 記憶の残滓の中へ、己の意識を潜行させる。 数十秒か、あるいは数分か。それなりに長い時間をかけて、鳳凰はそれの記録を読み取った。 「…………なるほど」 しばらくののち、記録を辿り終えた鳳凰は閉じていた目を開き、静かにそう呟く。 そしてそのままノートパソコンを開くことも起動することもせず、それを自分のデイパックの中へそっとしまいこんだ。 「さっぱり分からん」 【1日目/夕方/E-7】 【真庭鳳凰@刀語】 [状態]身体的疲労(小)、精神的疲労(小)、左腕負傷 [装備]炎刀・銃(回転式3/6、自動式7/11)@刀語、デザートイーグル(6/8)@めだかボックス、匂宮出夢の右腕(命結びにより) [道具]支給品一式×6(うち一つは食料と水なし)、名簿、懐中電灯×2、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、 首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1、ノートパソコン@現実、けん玉@人間シリーズ、日本酒@物語シリーズ、トランプ@めだかボックス、鎌@めだかボックス、 薙刀@人間シリーズ、シュシュ@物語シリーズ、アイアンステッキ@めだかボックス、蛮勇の刀@めだかボックス、拡声器(メガホン型)@現実、首輪探知機@不明、 誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、デザートイーグルの予備弾(40/40)、 「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、ノーマライズ・リキッド、チョウシのメガネ@オリジナル×13、小型なデジタルカメラ@不明、 マンガ(複数)@不明、三徳包丁@現実、中華なべ@現実、虫よけスプレー@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、 食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、おみやげ(複数)@オリジナル、『箱庭学園で見つけた貴重品諸々、骨董アパートと展望台で見つけた物』」 (「」内は現地調達品です。『』の内容は後の書き手様方にお任せします) [思考] 基本:優勝し、真庭の里を復興する 1:F-7へ移動し、他の参加者がいたら殺しに向かう 2:虚刀流を見つけたら名簿を渡す 3:余計な迷いは捨て、目的だけに専念する 4:ノートパソコンや拡声器については保留 [備考] ※時系列は死亡後です。 ※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません ※支給品の食料は乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。 ※右腕に対する恐怖心を克服しました。が、今後、何かのきっかけで異常をきたす可能性は残ってます。 ※記録辿りによって貝木の行動の記録を間接的に読み取りました。が、すべてを詳細に読み取れたわけではありません。 ※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前、エリアの境界線が表示される。範囲は探知機を中心とする一エリア分。 拍手喝采歌合 時系列順 ×××××&×××××――「あ」から始まる愛コトバ 拍手喝采歌合 投下順 ×××××&×××××――「あ」から始まる愛コトバ 友情の手前、憎しみの途中 貝木泥舟 GAME OVER Let Loose(Red Loser) 真庭鳳凰 零崎舞織の暴走
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/252.html
『』 ◆mtws1YvfHQ 踏み躙られていた球磨川が小さく、動いた。 気付いたのか、安心院が跳び、教卓に座った。 それが自然であるように、更には足まで組んで。 実際座り慣れているような調子で。 「…………」 球磨川がゆっくりと起き上がる。 安心院が悠々と見ている。 何時の間に持っていたのだろう。 握られていた大螺子が一個、飛ぶ。 「…………」 しかし頭の動きだけでそれを避けた。 知っていたようにもう片手に握られていた螺子がその顔面に、螺子込まれる。 刹那、安心院は笑った。 抱き寄せるように。 優しく。 抱き抱えるように。 柔らかく。 『過身様ごっこ』『飽くまで遊び』『模範記憶』『無様な背比べ』『現実がちな少女』『無人造』『冷や水で手を焼く』『明日の敵は今日の奴隷』『豪華地獄をご招待』『失態失敗』 『時感作用』『私のかわりはいくらでも』『蹴愚政治』『名乗るほどの者ではない』『名を名乗れ』『伊達の素足もないから起こる』『脅威の胸囲』『次元喉果』『弓矢に選ばれし経験者達』『巣喰いの雨』 『人間掃除機』『魔界予告』『帰路消失』『卵々と輝く瞳』『いつまでも幸せに暮らしました』『勿体無い資質』『有限実行』『眼の届く場所』『話は聞かせてもらった』『馬鹿めそれは偽物だ』 『存亡』『有数の美意識』『手書きの架空戦記』『忘脚』『生合成無視』『殺人協賛』『舌禍は衆に敵せず』『穴崩離』『選択の夜討ち』『収監は第二の転生なり』 『確率隔離食感』『自由自罪』『頓智開闢』『歴史的かなり違い』『禁断の錬金術』『若輩者の弱点』『溺愛を込めて』『思いやりなおせ』『即視』『時系列崩壊道中膝栗毛』 『全身全霊に転移』『真実八百』『鹵獲膜』『王の座標』『成功者の後継者』『死なない遺伝子』『美調生』『行進する死体』『数値黙殺』『生まれたての宇宙』 『軽い足取り』『目障りだ』『競争排除息』『お気の無垢まま』『死者会』『故人的な意見』『起立気を付け異例』『天罰敵面』『頂点衷死』『逃げ出した人達』 『死んでなお健在』『ぼやけた実体』『掌握する巨悪』『敵衷率』『懐が深海』『不思議の国の蟻の巣』『神の視点』『驚愕私兵』『影の影響力』『防衛爪』 『命令配達人』『全血全能』『晦冥住み』『寝室胎動』『頬規制』『不老所得』『控え目に書いた勿論』『座して勝利を待つ』『吸魂植物』『ためらい傷の宮殿』 『蘇生組織』『別想地』『光ある者は光ある者を敵とする』『質問を繰り返す』『最後の最後の手段』『人間強度』『不自由な体操』『心神操失』『目一杯』『実力勝負』 軽やかに。 蹴散らした。 「 !」 「――さて。またきみの負けだ」 「………………」 「それでも立ち上がる。それでも挑む。そんなきみの決意を、本心を、教えておくれ?」 座ったまま。 安心院なじみは問い掛ける。 立ったまま。 球磨川禊は口を開く。 「あいつらに勝ちたい 格好よくなくても 強くなくても 正しくなくても 美しくなくとも 可愛げがなくとも 綺麗じゃなくとも 格好よくて 強くて正しくて 美しくて可愛くて 綺麗な連中に勝ちたい 才能に恵まれなくっても 頭が悪くても 性格が悪くても おちこぼれでも はぐれものでも 出来損ないでも 才能あふれる 頭と性格のいい 上がり調子でつるんでいる できた連中に勝ちたい 友達ができないまま 友達ができる奴に勝ちたい 努力できないまま 努力できる連中に勝ちたい 勝利できないまま 勝利できる奴に勝ちたい 不幸なままで 幸せな奴に勝ちたい 嫌われ者でも! 憎まれっ子でも! やられ役でも! 主役を張れるって証明したい!!」 そして。 そうして。 沈黙が下りる。 目を閉じていた安心院は。 ただ開き、変わらず黙って教卓から降り、球磨川は動かない。 そして一瞬の、 「ちゅ」 事だった。 重なって離れ、それでおしまい。 何事もなかったように安心院は教卓に戻り、唇に指を当てた。 「ふふふふ」 「…………」 無言で口を拭く球磨川を見て笑う。 「と言う訳で、返して上げたよ。よかったね」 「……ありがとう」 「どういたしまして。公平な僕だから、返しただけでそれ以外は何もしてないよ? 大嘘憑きも」 その言葉に動きを止め、一度強く口を拭ってから、背中を向けた。 何事もなかったように。 安心院は変わらない様子で軽く手を振る。 刹那、思い出したようにまた口を開けた。 「ところで、やっぱり彼女を蘇らせる気かい?」 その問い掛けに、一瞬の間を置いてから球磨川は頷く。 予想外の事ではなかったのだろう。 むしろ予想通りの事なのか、安心院は何度か首を縦に振る。 しかし何も言わない。 その、奇妙と言えば奇妙な対応に不審を抱いたらしい球磨川が振り返る。 際に投げ付けたネジは軽く避けられた。 「…………」 小さく舌打ちし、それを見て首を傾げた。 それだけで、今度こそ歩き始めた。 教室の扉を開く。 そのまま慣れた様子で通り抜けながら呟く。 「オールフィクション」 言い終えた時には、その姿は消えていた さて、そう言う訳で僕は蘇った。 晴れて禁断の過負荷を取り戻して。 しかもありがたいことに『大嘘憑き』はそのままだ。 予想した通り、妙な具合に改善されているらしいけど。 関係ない。 死んでも死にたくない。 だけどそれより、死んでも勝ちたい。 いや勝つ。 そのために言ったんだ。 「初めまして。欠陥製品、七実ちゃん」 少し騒がしい。 呟きながら身を起こす。 だから、死ぬ前に勝つ。 黒神めだかに勝ってみせる。 「僕が、球磨川禊です」 目を開けて、見た。 欠陥製品が吊り上げられていた。 七実ちゃんに。 「えっ」 思わぬ状況に声が漏れていた。 聞こえたのか七実ちゃんと、下ろされた、欠陥製品が僕を見る。 どう言う状況だよ。 「おはようございます、球磨川さん。丁度良い所でした……いえ、悪いのかしら?」 「………………一先ずお早う」 何か言いたそうな顔をしながら、欠陥製品は近付いて、何も言わずに僕の後ろに回った。 え、何なの。 「任せる」 「そうですね。球磨川さんならもちろんご存じでしょう」 「?」 話が見えない。 とりあえずやたら背中を押してくる欠陥製品は何なんだ。 それに七実ちゃんは何を聞きたいんだろう。 可能な限り答えるけど。 僕が聞く前に、口を開けた。 「裸エプロンってなんですか?」 「………………」 「裸は分かるのですけど、そのえぷろんと言う言葉の意味を知らないものですから。聞いた事もない言葉ですので。いっきーさんたら聞いても話を逸らすばかり。今さっき強引に聞こうと思っていた所で」 「本当に蘇りやがったんだよ。そう言う訳だ人間未満。自分で撒いた種は自分で何とかしろ」 「…………」 『僕は、知らない。よく分からなかったけどとりあえず欠陥製品の話に合わせてただけだ。だから、僕は知らない』 場が完全に沈黙しました。 あ、どうもわたし、鑢七実です。 しかし球磨川さん。 その顔で知らないはないでしょう。 何と言いますか、わたしの目がなくとも一目で嘘だと分かります。 言いたくないようならどうしましょうか。 二人同時に問い詰めればその内に吐くでしょう。 けどどちらも無駄に口は固いでしょうし。 「さて……」 と、小首を傾げます。 一先ず見ているとしましょう。 それがいいし、悪い。 表情も変えずに呆然とした様子だったいっきーさんがまず復活されました。 意外とかかりましたね。 「人間未満」 『僕は悪くない』 「違う! 大嘘憑きで車は直せるか?」 『もちろん。だけどそうしてどうするんだい? むしろ密室で逃れないぜ?』 あ、確定しました。 お二人とも、裸えぷろんなるものをご存じのようです。 まずそこから吐かせる手間が省けました。 しかしどうもお二人、気が動転しているようで。 気付いてもよさそうな失敗を、悪そうな失敗に気付く様子もなく。 一応小声ですけど聞こえてますし。 珍しい。 そんなに慌てているなんて。 背中だけは向けて、目の前で今後の相談を始めました。 隠れるゆとりすらありませんか。 「とりあえずこの場から離れる名目で車を走らせる。無駄話はなしって事を言い含めて」 『乗ってくれるかな?』 「何とかしろ。それからぼくが適当に車を走らせる」 『適当に?』 「そうだ。上手く人間失格に会えれば良し。会えなくても考える時間はある」 『よしきた。それじゃ何かの間違いで診療所に着かなければ幾らでも時間は稼げる訳だ』 「あぁ、そうなると怖いのは自分だけだ」 『……負け続けの人生だけど』 「失敗ばかりの人生だけど」 『今回ばかりは』 「勝つ」 妙に息の合った会話を終えて、お二人がわたしを見ます。 「裸えぷろんとはなんでしょう?」 試しに出鼻を挫いてみました。 口を開く前に突っ込みます。 口だけは上手いですから乗せられないようにしないと。 と言う事で。 あからさまに呻いて、狼狽える様は何と言いますか。 そんなに言いたくないのでしょうか、裸えぷろん。 ですがまあこうなれば意地でも聞かせて頂きますけど。 『はっ、羽川さんはどこか知らない? 直った車に乗せてあげないと!』 「あちらに。それと」 「おーいたい……おい、人間未満」 『なんだい欠陥製品』 目を向けず指差した先に急いで駆けたいっきーさんの足が止まりました。 横目で見て、ふと異変が目に入ります。 羽川。 まにわに風の装束を纏った、まあ装束の方はボロボロですが、白髪の女。 のはず。 だと言うのに。 何時の間にか、 『……黒髪?』 髪が全て黒に変わっています。 どう言う事でしょうか。 少なくとも殺してしばらくは白だったはず。 ちらりと視線を四季崎にやっても首を振るだけ。 四季崎は関係ないと。 早速役に立ちませんね。 「少し、失礼」 いっきーさんに退いて頂き、目をしっかりと開きます。 見る。 視る。 診る。 果たして異常はないかどうか。 見続けて理解しました。 結果は、 「…………何の変化も見当たりません」 変わらない。 単に猫のような部位が消え、髪が黒に変わっているだけで。 何も見当たらない。 むしろ良い方向に変わった位でしょうか。 ええ、悪い方向ではなく。 そのまま目をお二人にまずは。 いっきーさんは少し顔をしかめているだけですか。 それだけでも珍しい気はしますけど。 ですが球磨川さんは、 『………………』 今まで見た事もないような、険しい表情を浮かべています。 さも何かに気付いたような。 何に気付かれたんでしょうか。 「球磨川さん」 『僕は、羽川さんをただ復活させただけでそれ以上の事はしてない。したとすれば……』 目を閉じて、開いた時には元の表情に戻っていました。 ですが動揺は隠し切れていませんね。 微かですが見て取れます。 しかしこれ以上突っ込むだけ無意味でしょう。 さてならば、 「………………」 未だ寝たフリを続けている彼女はどうか。 動揺に焦りに焦燥。 状況に焦っているだけでそれ以上の何物でもない。 何に焦っているかが少々気にはなりますが。 あ、球磨川さんが蘇られた事にでしょうか。 だとしたらやはり別の原因と言う事、か。 「人間未満」 『なんだい、欠陥製品?』 「お前の大嘘憑きで元には戻せないのか?」 『無いものは無くせない。それになかった事にした事をまたなかった事には出来ない』 「本当にお前のせいじゃないのか?」 『僕は弱い者の味方だ。弱い者を更に貶めるような真似はしない。強い者は幾らでも貶めるけどね』 それだけで、二人は押し黙りました。 沈黙。 ふざけあっているお二人にしては珍しく。 言葉に不自由のない二人にしては珍しく。 完全に押し黙ってしまいました。 はぁ、とため息を溢して考えてみます。 どうも訳の分からない事態が発生してしまったようですが、考えるだけ無駄と言う物でしょう。 「……見た所、気絶しているだけです。ですから何処かで休ませれば起きるのではないですか?」 「…………そうだね」 『じゃ、車に運ぼうか。七実ちゃんは真宵ちゃんを運んでくれる?』 そう言って、格好付けた球磨川さんが羽川を持ち上げようとして潰されました。 代わりにいっきーさんが背負って運んでいきます。 それを何やら羨ましそうに見ているのは何ででしょうか。 どうでもいいけど。 どうでも悪いけど。 お二人が何処にも異常の見当たらない車に乗るのを横目に、見下ろします。 あからさまに固まりました。 気にせず小脇に抱えあげます。 「診療所までゆっくり考えるんですよ」 小声で。 呟くと体を震わせました。 思わず小さく笑いながら車に乗り込みました。 横には球磨川さんが。 羽川は助手席とやらに乗せられています。 「どうぞ」 『急ごう』 「えぇ。着いたらゆっくりお話しましょうか」 途端、体を固くした三人を尻目に。 動き始める外を眺めます。 あの橙色は見えないものかと。 思っていても残念ながら見えませんでした。 戯言さんだと思いましたか。 残念でした、八九寺ちゃんでした。 可愛い可愛い八九寺ちゃんでした。 ごめんなさい。 こんな冗談でも言わないと心臓が持ちません。 訳が分からないとはこの事です。 何なんですか一体。 何なんですか一体。 大事な事ですから何度でも言いますが何なんですか一体。 突っ込みどころが多過ぎます。 過多です。 過多過多です。 「…………はぁ」 なんてため息を吐いてるこの人。 目を閉じてても分かります。 この人、あの人を殺した人ですよね。 その人の膝枕を受けてる時点で心臓が危機的状況です。 ところがどっこいそれだけじゃありません。 『………………』 何やら視線を感じます。 多分、球磨川と言う人の物でしょう。 羨ましいですか。 そうですか。 でもあなた、頭ふっ飛んでましたよね。 見ましたからね私。 転がってる頭を見て悲鳴を上げそうになったんですから。 なのになんで生きてるんですか。 吸血鬼状態のらららぎさんでも多分死にますよ。 失礼噛みました。 よし、少し余裕が出来てきました。 餅つきましょう。 失礼かみまみた。。 とりあえず時々話題に上がっている例のオールフィクションなる物が絡んでいるんでしょう。 何かをなくせる怪異か何かでしょうか。 「…………」 と言う訳で最後に来ましたよ戯言さん。 私の。 私の記憶を消すとはどう言う事ですか。 確かにどうしようもないです。 ですが、私に黙って勝手な結論を出すのは頂けませんね。 役立たずかも知れません。 足手まといかも知れません。 それでも。 あなたと一緒にいた時間を、思いを、勝手に消されては敵いません。 だから絶対、消させはしません。 「………………」 なんて、気軽に言えたらなんていいでしょう。 言える訳が、ありません。 私が足手まといなのは事実。 それに戯言さんと関係のない部分の記憶が負荷になっているのも事実です。 悔しいですけど。 今、一考して冷静に物を考えられているように感じられるのは奇跡に近い偶然でしょう。 混乱し過ぎて一周した感じに。 その内、また、何も考えられないような状態になるかも知れない。 そうなれば私は、負担でしかない。 戯言さんにとって邪魔でしかない。 「……………………私は」 私は。 いえ。 もう少し、考えましょう。 それからでも遅くないはずです。 無意味な先伸ばしでは、ないはずですから。 だから。 だからどうか。 もう少しだけ、考えさせて。 【一日目/夕方/F-4】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、車で移動中 [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) 、錠開け道具@戯言シリーズ、 タオル大量、飲料水やジュース大量、冷却ジェルシート余り、携帯電話@現実 [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 0:診療所で羽川さんを休ませる。 1:それから真宵ちゃんの記憶を消してもらう 2:掲示板を確認してツナギちゃんからの情報を書き込む 3:零崎に連絡をとり、情報を伝える 4:早く玖渚と合流する 5:不知火理事長と接触する為に情報を集める。 6:展望台付近には出来るだけ近付かない。 7:裸エプロンに関しては戯言で何とか。無理なら人間未満に押し付ける。 [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。 ※夢は徐々に忘れてゆきます。完全に忘れました ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。 ※携帯電話から掲示板にアクセスできることを知りましたが、まだ見てはいません。 ※携帯電話のアドレス帳には零崎人識のものが登録されています(ツナギの持っていた携帯電話の番号を知りましたがまだ登録されてはいません)。 ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]寝たふり、ストレスによる体調不良(発熱、意識混濁、体力低下)、動揺 、鑢七実から膝枕、一周回って一時的正気、車で移動中 [装備]人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス [道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語 [思考] 基本:生きて帰る 1:戯言さんと行動 2:なんでこの二人が 3:記憶を消すとはどう言う事ですか 4:こっそり聞きたいけど隣に居て聞けません…… 5:頭が上手く回りません…… 6:なに、この……なに? [備考] ※傾物語終了後からの参戦です。 ※本当に迷い牛の特性が表れてるかはお任せします 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ。お腹は満腹だ。それに車で移動中さ』 [装備]『大螺子が2個あるね』 [道具]『支給品一式が2つ分とランダム支給品が3個あるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』 [思考] 基本:「黒神めだかに勝つ」」『あと疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』 『1番は欠陥製品の返答を待つよ』 『2番はやっぱメンバー集めだよね』 『3番は七実ちゃんについていこう! 彼女は知らないことがいっぱいあるみたいだし僕がサポートしてあげないとね』 『4番は善吉ちゃんの無念をめだかちゃんにぶつけてあげよう』 『5番は宇練さんについてだけど、まあ保留かな』 『6番は裸エプロンに関しては欠陥製品に押し付けよう! それが良いよね!』 [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります。 存在、能力をなかった事には出来ない。 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません。 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り1回。 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用不可能) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。 ※始まりの過負荷を返してもらっています。 ※首輪は外れています 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(中)、交霊術発動中、八九寺真宵を膝枕中、車で移動中 [装備]四季崎記紀の残留思念×1 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6)、球磨川の首輪×1 [思考] 基本:弟である鑢七花を探すついでに、強さと弱さについて考える。 1:七花以外は、殺しておく。 2:もう面倒ですから適当に過ごしていましょう。 3:気が向いたら骨董アパートにでも。 4:途中で裸えぷろんの事でも聞きましょうか。 5:宇練さんは、次に会った時にはそれなりの対処をしましょう。 6:四季崎は本当に役に立つんでしょうか? [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました。 ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました ※宇練の「暗器術的なもの」(素早く物を取り出す技術)を不完全ですが見取りました。 ※弱さを見取れる可能性が生じています ※交霊術が発動しています。なので死体に近付くと何かしら聞けるかも知れません 【羽川翼@物語シリーズ】 [状態]健康、ノーマル羽川、車で移動中 [装備]真庭忍軍の装束@刀語 [道具]支給品一式×2(食料は一人分)、携帯食料(4本入り×4箱)、毒刀・鍍@刀語、タブレット型端末@めだかボックス、黒い箱@不明、トランシーバー@現実、「ブラウニングM2マシンガン×2@めだかボックス、マシンガンの弾丸@めだかボックス」 [思考] 基本:不明 1:不明 [備考] ※ブラック羽川が解除されました。 ※化物語本編のつばさキャット内のどこかからの参戦です。 ※全身も道具も全て海水に浸かりましたが、水分はすべて乾きました。 ※トランシーバーの相手は哀川潤ですが、使い方がわからない可能性があります。また、当然ですが相手が哀川潤だということを知りません。 ※道具のうち「」で区切られたものは現地調達品です。他に現地調達品はありませんでした。 教室らしき部屋の中。 その唯一無二の教卓の上。 「ニャオ」 と、鳥籠の中の真っ白な猫が鳴いた。 それを膝に置いた女は笑う。 「不安かい、ご主人様が?」 「ニャ」 何か不愉快に感じたのだろう。 猫は籠の隙間から、一心に女へと爪を伸ばす。 だが届かない。 近いはずの距離があたかも数千里以上あるかのように。 何れだけ腕を伸ばしても、ほんの僅かに届かない。 届きそうで届かない。 それを見て女は笑う。 「まったく――――下らねえ。誰も彼も有象無象も等しく平等なのに。何だってそんな執着するんだい? もし何だったらご主人になりそうな別の誰かくらい五万と紹介するぜ?」 「ニャオン!」 と声を張り上げなお爪で引っ掻こうとする様を見詰め、女はため息を吐いた。 「ま、これで多少動くだろうし、いいけどさ。それにそのご主人様が本当に君を必要とするなら、こんな鳥籠なんて意味ないぜ?」 「ナウ?」 「『無効脛』を適当に弄って作っただけの籠だ。設定的な話を言えば、『大嘘憑き』の効果と君の逃走の二つ防ぐ目的でした使ってない。どっちかって言うと過負荷寄りの君ならその内、抜け出せるかも知れないぜ?」 「ニャーン」 「かもだけどさ――しっかし今回の行動からして、わざわざする価値があったかどうか。良い結果になると良いなーと思ってやってるんだぜ、これでも。あ、いや違うか。こう言う時は」 猫を見る目はそのまま変わらず。 道端の石ころでも見ているように。 言った事すらもどうでもよさそうに。 何もかもどうでもよさそうに。 それでいて、 「悪い――んだったっけ? そう言えば良いか。いや、悪いか――それこそどっちも何も、変わらねえのになあ……」 悪そうに、笑った みそぎカオス 時系列順 拍手喝采歌合 「意外と楽でいいが」 投下順 きみとぼくのずれた世界 みそぎカオス 戯言遣い 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 鑢七実 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 羽川翼 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 八九寺真宵 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 球磨川禊 君の知らない物語(前編)
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/259.html
球磨川禊の人間関係――鑢七実との関係 ◆xR8DbSLW.w ■ ■ ■ 第-3槽『球磨川禊の愛した置き土産』 ■ ■ ■ ――おいおい、旧知の二人の決闘だぜ。まさか邪魔するだなんて言わねえよな―― そんな傍迷惑な、耳障りな、けれど真っ当なことを言われ、 わたしは車を降りたところまではよかったけれど、二人の決闘を傍から眺めることにした。 二人は楽しそうに、戦っている。 黒神めだかについてわたしが知っていることはほとんどないけれど、ただならぬ間柄であることは伝わってきた。 気持ちは分からないでもない。 わたしも七花と決闘をして死んだ身。 邪魔立てされるとなるならば、そんな雑草は早々に刈るべきだ。 だからわたしは静観していた。 静かに、 邪魔にならないようにひっそりと。 二人は泥臭く極めて乱暴な戦いを繰り広げている。 そもそもわたしはどうして車を降りたのでしょう。 分からない。 後ろの三人が煩わしかったというのはある。 確かにその通り。 わたしには雑草が群がっているようにしか見えない。 邪魔な雑草は刈り取りたくなる。 わたしの数少ない趣味の一つ。 しかしそれだけだろうか。 違う、と思う。 少なくとも、この一同と渡り歩くぐらいなら、と球磨川禊さんを選んだ。 まるで、わたしの心に何かが、『螺子込まれた』みたいに。 わたしと禊さんの人間関係――欠落関係。 未だ、よく分からない。 よく分からないが、付いてきている。 不思議だ。 ――不思議よね。 七花はとがめさんと、日本中を練り歩いていた。 その結果、腑抜け、錆びていた。 だからわたしは七花の錆をふるい落としたのだけれど――今度はわたしが錆びているのかしら? 『ぬるい友情』で。 ぬるい水の入った、水槽の中で――。 それはとても可笑しいことだ。 くすくすと笑いだしてしまいそうだ。 七花はどうしてとがめさんと練り歩いていたのかしら――? と、悩むまでもなく覚えている。 一目惚れと言っていた。 惚れっぽい子だ、と我が弟ながらに思うけれど、事実とがめさんと七花の相性は、そこそこによかったのでしょう。 だから一緒に居た。 所有者と刀、あるいは一組の男女として。 だとしたら。 だとしたら――わたしは、禊さんに惚れている? いや、 考えておきながら、その理屈はおかしい。 七花は七花。 わたしはわたし。 同じ鑢家と言えども、そこまで同じと言うわけではない――とは思う。 思いたいのだけれど、どうなのかしら。 まあ。 どちらであれ、わたしが錆ついているのは不本意ながら――なのかしら、確実なのだろう。 球磨川さんが幸せそうに戦っている。 別にそのことはどうとも思わないけれど、仮にここで禊さんが殺されたら、わたしはどうするでしょう。 わたしが『見たところ』、殺人者扱いされておきながら、黒神めだかに殺意は窺えないけれど、 なんていうんでしたっけ? けーたい、そう、けーたいとやらで見させられた殺害映像に、確かに黒神めだかさんは映っていた。 だから、ここで禊さんが死んでもおかしくない。 その時、わたしはどういう行動を――どういう心情を、思い描く。 わたしの親は、死んでいる。 そのことに深い意味も、深い感慨も得られなかった。 他にわたしと近しい者は、今まで七花ぐらいなものだった。 だけど、本来わたしは七花よりも先に死んでいる。 七花が死んだ時の感情なんて知る由もない。 今もどこをほっつき歩いているのかは知らないけれど、ここでも死んでない様だし。(まあ簡単に死なれてもわたしだって困っちゃうわね)。 わたしは。 わたしは、死んでもらいたくない人間の死に立ち会った経験なんて、殊の外見てきていない。 分からない。 分からないけれど――うすら寒い。 この感情がもしも。 もしも、彼の言う『三つのモットー』の影響だとしたら、彼には責任を取ってもらわなきゃなりませんね――。 なんて考えていると。 車が去っていった方向から、人影が窺えた。 短く切りそろえた、ここに来て何度か見ているが相変わらず見慣れない構造の服をきた女――。 戦場ヶ原ひたぎさん、とおっしゃいましたか。 彼女が刀を持ち、駆けている。 ――車の時でも感じていたけれど、必死で隠すよう努めていたらしいけれど。 めだかさんが現れてから、彼女の殺意が大きく肥大化したのは知っていました。 だから警戒した。 めだかさんが殺されて困ることは、生憎わたしにはありませんが ――ともあれ、決闘の邪魔立てをしてもらっちゃ、なんとなく困ります。 禊さんも楽しそうに戦っていますし。 外部からの干渉は出来る限り避けたいところ―― と、動いた時。 ――おれの娘―― また耳障りな声がする。 なんなんでしょうかこの人は。 肝心な時に役に立たない癖して――あなたに構っている場合ではないというのに。 ――錆びるのは勝手だが――あまり支障をきたすようじゃあ――鑢の名が泣くぜ―― いきなり何を言い出すんでしょう。 あちらだって、今は動くべき場面であることは分かっていように。 ただ。 ここでわたしが失敗したというなら、四季崎の声に耳を傾けてしまったことに尽きるでしょう。 その尤もらしい、そして今しがたわたしが考えていたことに関することだったからといって、少し頭を働かせてしまったことだ。 その幾許か足を止めてしまった間に、ひたぎさんは――もう近くに居た。 禊さんは目を丸くしている。 何故彼女がここに居るんだろ言わんばかりに。 そして標的である黒神めだかさんの髪は、色素が抜け落ちたように真っ白で、胸には大きな螺子のが、貫かれている。 しまった。 なんて、思わなかったが四季崎の意図がなんとなく、見えてきた。 四季崎は、ひたぎさんの支援をしただけだ。 わたしが邪魔しないように――敢えて耳を傾けてしまうことを回りくどく婉曲に、もったいぶって、言ったのだろう。 ――まあ一度は戦場ヶ原ひたぎも消えてほしいとは思っていたが――ここで登場するとは面白い―― 不敵な声が。 耳障りな声が またしてもわたしには聞こえる。 ――完成(ジ・エンド)と完了――どちらに転んだとしてもおれにとっては興味深い―― あくまで四季崎記紀は刀鍛冶だ。 おそらくわたしのことも刀としか思っていないし、ひたぎさんやめだかさんも、実験道具の一部としか見ていないだろう。 それに憤慨をするわたしではないにせよ、四季崎の思惑通りに事が進んでしまったのは面白くなかった。 けど、思い上がらないでもらいたいわ。 この距離ならば、間に合わないことはない。 忍法足軽と虚刀流の足運びによる超接近。 もしくはとがめさんを切ったように、斬撃を飛ばして殺してしまいましょうか――どちらでもわたしは構いません。 だけど。 わたしには、一瞬何が起きたのか分からなかった。 正鵠を射るならば、『見えた』――『理解した』。 ひたぎさんはこちらを制するように、何かを投げる。――見たところ(といってもわたしの知るそれとは随分趣が異なりますが)火薬弾でしょう。 だから、地面に思い切りぶつけられた衝撃で、爆発した。 不承島で戦ったまにわに……蜜蜂さんでしたか、彼の使った忍法撒菱指弾に比べたら当然ですが精密性はない。 ――でも、火薬弾にそこまでの精密性は問われない。 火薬弾で恐いのは、爆熱よりも爆風。 わたしの動きを止めるのには十分な爆風が、わたしを襲う。 肌が焼かれるようだ。 まあ、この程度の外傷ならば、放っておいてもすぐに治ってしまうんでしょうけれど。 この場合それは関係ないんです。 今、動きを止められたという事実が、大きいのです。 巻き起こされた爆風は、禊さん、めだかさん、めだかさんを襲わなかったらしい。 これが冷静な計算通りと言うのであれば、成程、とどのつまり雑草ごときとは言え、大したものです。 風が晴れて、わたしも顔を覆うようにしていた手を、降ろす。 視界が十全になった。 よく見える。――よく『見れる』。 目の前に広がる景色は、ますます面白くなかった。 わたしが何かを施せる時間もなく。 次々と物語は刻まれていき――――球磨川禊が、死んだ。 ■ ■ ■ 「かはは――おお、人間未満よ死んでしまうとは情けねえ」 禊さんが死んだ直後というには間が空いたが、 ひたぎさんもめだかさんも、何も行動を起こさない硬直状態、膠着状態が続いた時。 ――いきなり。 いきなり――いた。 戦場ヶ原ひたぎの目前に、黒神めだかの目前に――その奇妙な風体の少年は、零崎人識さんは、存在した。 何の予兆もなく、何の前兆もなく、唐突にとしか言いようのないタイミングで、 二人が同時に瞬きした瞬間を狙ったとしか説明のつかないようなタイミングで以もってして、人識さんは、存在した。 「いやはや全く、恐れ入るぜひたぎちゃん。 てめーの殺意は確かに研ぎ澄まされていたけどよ、まさかこのバケモンばっかの魔窟ん中に飛び込むたあ、思わなかったぜ」 大して面白くはない状況ですけれど、人識さんは笑っております。 それを二人を見つめ、呆気に取られたように――少し、違いますね。 呆然と立ち尽くすしかないように、微動だにしません。 ひたぎさんは刀を握ったまま、黒神さんは蘇生されてから数分経ち体勢を整えつつあった状態から、ぴたりとも、微動だにしない。 ちなみにわたしはと言うと、本来の目的も達することが出来ず、今更動いてもしょうがない、 と禊さんとめだかさんとの戦いを観察していた場所に、座りなおしていました。 まあ、禊さんも程々になったら蘇生(かえって)こられるでしょう。 「まあ、一度寝とけよ」 そういって人識さんは、ひたぎさんの身体をしっかりと固定して、首筋に手刀を降ろす。 簡単に決まるものとは思えませんが――手口としては鮮やかなものでした。 ひたぎさんは、意識を失い、ぐったりし始めました。――身体が倒れることはなく。 まるで何かに支えられている……糸、ですかね。 「ふむ、雲仙二年生の鋼糸玉(ストリングボール)を思い出すが――原理は少し違うようだな」 「鋼糸玉ってのがわからねーが、しかし大方それとは別もんだと考えてもらえばいい。 かはは――曲絃糸がそうそうある技術でたまるかってんだ」 「面白いな、今度私に教えて頂きたいものだ」 「生憎だが一子相伝門外不出なものでね」 戯言だけどよ――と、話を締めくくる。 見たところ、糸を使った拘束術、と言ったところでしょうか。 人識さんの言葉の正否はともかく、もう一度見ないと、完璧には真似できそうにありませんね。 難しそうです。 と人識さんが拘束を解いたのか、めだかさんは自由に身体を動かし始めた。 柔軟体操らしいです。 ふむ、距離として遠いというわけではありませんが、糸は近くで見ないと流石に分かり辛くはありますね。 「まあよ。ひたぎちゃんがこれじゃあ、おめーが幾ら呼びかけたって無駄だぜ。 てめーら揃って一回落ち着けってんだ。正しいことやってりゃ許されるたぁ、思っちゃいけねーぜ」 「しかし後回しにしろ、いずれはしなくてはならんことだ。 それに貴様零崎人識だろう? 聞いとるよ――勇あり少年・供犠創貴小学生から殺人鬼だから気をつけろとな」 「あぁ? なんだってまた――って供犠創貴ってあのやろーか……全く不都合っちゅーか不通っちゅーか」 「そんな輩にみすみす戦場ヶ原上級生の身体を貸すのは、私としては心苦しいばかりだ」 「 ―― 」 「 ――― ――」 まあ。 わたしにとってはどうでもいい会話の瑣末は置いておきましょう。 ひたぎさんがどうなろうとも、わたしの知る由ではありません――と。 ――おれの娘よ―― またしても耳障りな、声がする。 四季崎記紀ですね。 ……面倒臭い。 「……はあ」 ――ため息すると幸せが逃げるっていうぜ――ってのも今更かい―― 「嫌味を言うためだけに喋ったのなら散りなさい、耳障りで目障りです」 ――まあ、待てよ――これでもお得情報を持ちこんで来たつもりだぜ―― この方の言葉を鵜呑みするのも危うげですけれどまあ、一応聞いておきましょうか。 ――人間未満――球磨川禊――どうしてあいつは、今になっても復活しないと思う?―― 「さあ、先ほどだって随分と間を開けて復活なされましたけれど」 ――じゃあ質問を変えようか――どうして球磨川禊は黒神めだかの盾になったんだと思う?―― それは。 そういえば、それはどうしてでしょう。 黒神めだかが何回殺されようと、その度に復活させればいい。 盾になってまで死ぬ必要が、どこにあるんでしょう? ――こういう考え方は出来ねえか――あいつはもう人の死を『なかったこと』には出来ない――もう蘇生は出来ない――と―― ……。 …………。 ………………。 それは、確かにそう言うことでしょう。 ――第一、何回も何回も蘇生出来てちゃあ――バトルロワイアルの意味がまるでないだろうよ―― そう、だ。 改めて考えると、その通りです。 あまりに彼が何気なく使うものだから、そういったことを、一切考えていなかった。 けれど簡単なことです。 簡単すぎることです。 殺し合いで、ばんばんと蘇生されては――たまりません。 ――だからよ――球磨川禊は――もう還って来ねえってことかもしれねえのさ―― どくん、と。 その時胸が鳴った。 大きく、 明確に。 どくん、どくん。 高鳴りが止まらない。 どうして、でしょう。 七花がとがめさんの死を知った時、どんな反応をとっていたんでしょう。 分からない。 けれど単純な七花のことです。 泣いたのでしょう。 声をあげて、 恥も外聞もなく、取り乱して。 わたしは、どうだ。 どうだ。 どうだ? 「戦場ヶ原――ひたぎ」 わたしは、ポツリと名前を零す。 彼を殺したのは、あの雑草だ。 殺してしまっても、いいだろう。 固よりわたしは全員を殺すつもりで、ここにいる。 む、と。 めだかさんがこちらを向く。 人を観察する様なその目は、わたしと似ているようで、正反対の様に思えます。 けれど、どうしてか、その顔が、徐々に滲んでいく。 ……ん? 「どうした、貴様。泣いておるのか」 めだかさんに、そう言われる。 そう言われたら、そうなのかもしれない。 何故泣いているんだろう。 何故喚いているんだろう。 静かに――涙を流している。 気がつけば、わたしは駆けていた。 人識さんが背負った、その短髪の女に向かって。 「おい、人識殺人鬼。……一先ず戦場ヶ原上級生を何処かに避難させろ。貴様よりも、あやつの方が、危険そうだ」 「何処かって何処だよ」 「好きにするといい――!」 言いながら、わたしの貫手――虚刀流『蒲公英』を放ったその手を掴む。 その間に人識さんは、戦場ヶ原さんを背負って、人識さんは離脱する。 姿が見えなくなった頃、わたしの手首から、手を離す。 「退いていただけませんか?」 「断るよ。私もあやつにはまだ用が有るんでな」 それに。 と、めだかさんは言葉の末を継ぐ。 「貴様は球磨川と一緒に居たということはおよそ『過負荷』なのであろう――」 過負荷。 まいなす。 まいなす十三組。 禊さんは、そう言っていた。 三つのモットー『ぬるい友情』『無駄な努力』『むなしい勝利』。 ――だとしたら、わたしは。 「そういうことかも、しれませんね」 「ふん、だとしたら。話は早い――貴様も週刊少年ジャンプは読むのであろう? こういうときは、こう言うものだ」 不敵な笑みを。 零す。 めだかさんは声高らかに。 「ここを通りたければ、私を倒してからしろっ!!」 声高らかに、そう言った。 ――頭に乗らないでくださらないかしら。 雑草が。 「これこそまさに、めだ関門!!」 「五月蠅い」 ■ ■ ■ 第-4槽『球磨川禊のもたらした歌詞が欠けている鎮魂歌』 ■ ■ ■ 戯言遣いくんたち一行から、戦場ヶ原ひたぎちゃんと零崎人識くんが抜け出している経緯について簡単に説明しよう。 それは球磨川くんたちが車を降りてから案外直ぐのことだった。 「車を止めなさい――さもないと、落とすわよ」 八九寺ちゃんの記憶をなかったことにしたのをまるで無碍にするように、 殺意を以て戦場ヶ原ちゃんは戯言遣いくんの首に、斬刀・鈍の刃を寄せたんだ。 まあ、戯言遣いくんに、勿論なす術はなかったし、人識くんは車を運転中だったから、その凶行を未然に防ぐことはできなかった。 そして成す術なく素直に戦場ヶ原ちゃんを降ろした。 羽川ちゃんも降りて話し合いをしたいと主張したけれど、戦場ヶ原ちゃんの気迫には屈せざるを得なかった。 そんでまあ、戦場ヶ原ちゃんは来た道引き戻り、いよいよもってめだかちゃんと球磨川くんを殺した訳だ。 最近の若者ってのは刃物をブンブンと振り回して危なかっしいねえ。 じゃあ次は人識くんに関してだが、察しの通りだろう。 気まぐれで戦場ヶ原ちゃんと行動を共にしていたが、彼は殺人鬼にして人が良すぎるみたいでね。 放っておくって選択肢をとれなかった。 まあ、彼の言葉を借りるとするなら――『傑作』というわけさ。 あるいは、『戯言』なのかもしれないね。 かくして男一人と女二人の三人旅。うち二人は記憶消失と言うおかしな事態になっているが。 その三人旅について、それでは焦点を当てていこうと思う。 といっても、特別語ることはない。 ランドセルランドに着いて、暇を弄ぶように迷子案内センターでくつろいでいる。 それだけだよ。 車はと言うと、勇気ある羽川翼ちゃんのお陰で仕舞えているぜ。 その時の戯言遣いの顔ときたら、確かに傑作だったにせよ、ここはさらなる蛇足だ。省かせてもらおうか。 真宵ちゃんと羽川ちゃんが遊んでいるのを、遠巻きに眺める戯言遣いくん。 記憶を消そうと嗾けたのは紛れもなく球磨川くんだが、それでも止めなかったのは戯言遣いくんだ。 思うところがあるんだろう、と僕は思っているよ。 第三回放送は、彼の心に疵をつけるのには十全だったというわけさ。 十分すぎて、十全すぎる。 人類最強・哀川潤。 人類最終・想影真心。 人類最悪・西東天。 ――なるほど、彼を左右する重要人物がことごとく脱落したとなれば、彼の身に降り注ぐ心労も計り知れないというものだ。 死には慣れている。 関係人物が死んでいくのには慣れている。 そうはいっても、こうも同時に ――それに哀川潤ちゃんのような殺しても死なない様な人間が死んでしまったとなると、それはそれは厳しいものだぜ。 そう言う意味では球磨川くんも、江迎ちゃんと言う同じ過負荷の立場に立っていた人間を失った。 相当な苛立ちだったんだろうね。 彼はああ見えて人一倍他人に、身内に優しいからね。 実質、八九寺真宵ちゃんの記憶の件も、球磨川くんにとってはなんら無為となった八つ当たりなのかもしれない。 球磨川くんのメンタルと言うのは、外堀から攻めていくと、案外あっさり籠絡するもんだ。 そう言った話もさておいて。 いよいよ彼は青色サヴァンと合流を果たそうとしようとするわけなんだが――。 しかし分かんねえかなあ。 まあ分かんねえだろうけれど。 双識くんの視力が戻ったように――八九寺ちゃんの記憶が戻ってきてもおかしくないだなんて、どうして気付かねえかなあ。 ■ ■ ■ 続いては人識くんと、戦場ヶ原ちゃんの二人に関してだけれど、 こちらに関してはよりシンプルだ。 戦場ヶ原ちゃんが人を殺し――人識くんは勝手に双識くんが死んだことにキレている。 尤もその怒りを表に出すほど、人識くんは腐っちゃいなかった。 というより、そっちも大事だけれど、彼の場合、もう一つ放送に関して話が湧く。 ――人類最強が死んだってっことは俺は人を殺していいんかね。と 元々、基本的に人識くんが不殺を貫いていたのは、哀川ちゃん――潤ちゃんの約束があったからだ。 人を殺すなと言う、単純明快口約束。 彼女が死んだ今、彼にそれを守る義理はないんだろう。 守る義理はなく。 貫く意味もない。 だとするならば、彼はどうするだろう。 ……いざとなったら、彼を再び零崎を始めるのかもしれないね。 殺して 解して 並べて 揃えて 晒してやる。 彼の前口上通りに、『零崎』として行動するのかもしれない。 どちらであれ、人類最強と言う、真っ赤な鎖はなくなって、彼は解き放たれた状態だ。 一歩間違えば、 一本踏み違えれば、 最後に残った零崎の片割れとしての才覚を――果たす。 まあ。 それも先の話だ。 先にもないかもしれない話だ。 ――かもしれないなにかの話だ。 現に今、戦場ヶ原ちゃんを殺していない。 殺さず、運んでいる。 一旦戯言遣いたちがいるランドセルランドとは違う場所に。 こんな危険な、全身刃の様な危なっかしい女の子を、八九寺ちゃんたちの傍においておけないという風に感じたらしい。 大きなお世話だ。 少なからず殺人鬼がする心配じゃあない。 それでも、おそらくは戯言遣いくんたちにとっては、ありがたくはあるのだろう。 ガサツなようで細かい気配らせが出来る男の子ってのは魅力的だね。 今はまだ危険信号。 信号で言うなら黄色の状態。 それでも今はまだ、牙を剥かない。 ■ ■ ■ 僕の予想通りと言うか。 まあ、大方の予想通り、鑢七実は大敗を喫した。 しょうがない話である。 彼女の主人公性――も勿論あるんだろうが、この場においては、このバトルロワイアルにおいてはいまいち説得力に欠けるだろう。 純粋に能力の、 単純に生様の、差。 プラスとマイナス。 プラスし続ける者と、マイナスし続ける者の差。 想影真心ちゃんに対してそうだったように、黒神めだかちゃんと鑢七実ちゃんの対戦カードでも、同じことが起こった。 そして鑢七実は最後まで、本気と言う本気を見せなかった。 さもありなん。 それはきっと、鑢七花に対してとっているのだから。 彼女はまだ鑢七花の現状を理解していないからね――そういうことを言える。 正直なところ、今の鑢七花は多少武芸に覚えがある人間ならば勝てるのではないかと言うほど、弱体化している――腐っている。 だから本来はそうした気遣いも無用なのだけれど、 無知と言うものは仕方がない。なんだかんだ、弟が好きなブラコンな姉には、 七花がここまでボロボロにされるヴィジョンが浮かばないのかもしれない。 話を戻そう。 鑢七実について。 というよりも、現在の彼女の身の回りについて。 現在からの近くには既に黒神めだかの姿はない。 めだかちゃんは一通りズタボロにしたあと、戦場ヶ原ちゃんを追いかけてった。 それをボロ雑巾のようになった七実ちゃんは、眺めるしかなかったみたいだね。 とはいえあんまりにも一方的だったかと言うと、そう言うわけではない。 七実ちゃんも幾度とめだかちゃんに、これまで習得してきた『強(よわ)さ』をぶつけていた。 めだかちゃんの姿も同じくボロボロだった。 そうは言っても両者とも、片や一億の病魔の副作用で、片や掠め取った吸血鬼性と持ち前の(制限されているとはいえ)再生力を活かして、 何事もなかったかのように完治させるんだろうけれど。 何とも末恐ろしい話だよ、まったく。 それでも、鑢七実ちゃんは負けた。 揺るぎようのないぐらいはっきりと、負けた。 詳細に関しては彼女の名誉のためにこの場では伏せさせてもらうが、激闘の末に彼女は負けた。 負けは負け。 それまでただ一度しか知らなかった敗北を、何処のものかもよく分からない通りすがりに負けた。 夢だった普通の敗北を知って、 念願だった苦汁をなめる行為をして、 それでも彼女、七実ちゃんは泣くしかなかった。 むせび泣いた。 七花くんがそうだったように、彼女もまた、近しい者の死が、純粋に悲しかった。 好きな相手と一緒に駄目になる。 愛する人と一緒に堕落する。 気に入った者と一緒に破滅を選ぶ。 ――尽くしたい刀と、一緒に錆びていく。 これはめだかちゃんの球磨川くんに対する言のだが、結構じゃないか。 七実ちゃんは、球磨川くんの真っ二つにされた遺体に近寄って、 今か今かと還ってくるのを待っている――それは無駄だと分かっていながら。 第一、長く無人島生活をし、人慣れをしない――ロクな人間関係を作れなかった経緯(よわさ)をもつ七実ちゃんに対して、 人の弱さにつけこんで、螺子込んで、人心掌握をしてしまう球磨川くんのような人間に、人間未満に出遭ってしまっては、 こうなる結果も見えていようというのに。 と。 何やら七実ちゃんはひとりごちる。 違うなあ。 亡霊――四季崎記紀くんと対話をしているようだ。 「――弱さを、受け入れる」 生憎幽霊の声をなんのスキルもなしに聞くのは、流石の僕でも厳しいところがある。 だから、使わしてもらうとするぜ。 ――そうだ――弱さを受け入れる―― 「……」 そういえば彼女は一度江迎ちゃんに会っているそうだが、 しかしその際、彼女は『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』を習得することはなかった。 彼女はそれを、真似できないと判断した。 自らを制御するのに、負なるものは必要ないと判断した。 だがそれは、厳密に言うと違う。 彼女は真似できなかったのではない――真似をしなかった。 過負荷を習得することで、彼女の目指す『普通の生』は成しえないし、弱さを自らの長生きに繋げることはできないと考えた。 だから敢えて見なかった――江迎が施した目隠し、 つまりはドーム状に組み立てられた『柵(しがらみ)』を、彼女が立ち去るまで、かき消さなかった。 一度見れば大体は、二度見れば盤石に習得してします――だからこそ、一度だけで、七実ちゃんは済まそうとしたんだろうね。 僕から見たら、そう『見える』。 ――球磨川の野郎も言っていただろう―― そう言えば、言っていたね。 こう。 相変わらず括弧つけた喋り方で。 『大事なのは強がることじゃないんだぜ。弱さを受け入れることさ』 『不条理を』 『理不尽を』 『堕落を』 『混雑を』 『冤罪を』 『流れ弾を』 『見苦しさを』 『みっともなさを』 『嫉妬を』 『格差を』 『裏切りを』 『虐待を』 『嘘泣きを』 『言い訳を』 『偽善を』 『偽悪を』 『風評を』 『密告を』 『巻き添えを』 『二次災害を』 『いかがわしさを』 『インチキを』 『不幸せを』 『不都合を』 『愛しい恋人のように受け入れることだ。』 ――受け入れて――錆ついて――なにが悪い―― 「………………」 七実ちゃんは、沈黙している。 考え込んでいる。 それは一本の錆びた刀として――過負荷の一人として ――固よりおれの完了形変態刀は最後の最期まで『錆』にしようか迷ってたんだ―― 「………………」 ――腐って――錆びて――あいつに勝てよ――おれの娘――鑢七実―― そこで。 七実ちゃんは立ち上がった。 その様は死人のようだ。 ――死人と言うより、死体。 死体と言うより、物体のようだ。 人と言う気がしない。 虚ろにして、儚げ。 そんな僕の感じる彼女の雰囲気に、新たな項目が加わった。 そうだ。 これは。 これは球磨川くんたち、過負荷の―――― 「受け入れて――錆ついて――なにが悪い――いえ、いいじゃないですか、それもまた」 七実ちゃんは。 零す。 過負荷として。 虚ろな刀の流れ――虚刀流としてではなく。 虚ろな構築の流れ――虚構流として。 虚刀『錆』として――正真正銘、弱さを受け入れて。 「おーるふぃくしょん――球磨川禊さんの死を、なかったことにした」 【球磨川禊@めだかボックス 復活】 ■ ■ ■ 「禊さん。起きてもらって早々で悪いのですが――いいのですが」 「一つ言わせてもらわなければなりません」 「わたしはあなたに惚れることにしました」 「あなたの刀として、あなたの傍においてください」 ■ ■ ■ 「うん、任された。そういうことなら、僕も格好つけずには、括弧付けずにはいられないね。 生き返らせてくれてありがとう――七実ちゃん。めだかちゃんに勝つことを僕はまだ、諦めない」 ■ ■ ■ 『また勝てなかった』 「――でも次は、勝つ」 【一日目/夜/E-6 ランドセルランド】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]精神的疲労(中) [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) 、錠開け道具@戯言シリーズ、 タオル大量、飲料水やジュース大量、冷却ジェルシート余り、携帯電話@現実、解熱剤、車 [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 1:ランドセルランドで玖渚と合流。 2:掲示板を確認してツナギちゃんからの情報を書き込みたいけど今できるかな。 3:不知火理事長と接触する為に情報を集める。 4:危険地域付近には出来るだけ近付かない。 [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です ※携帯電話から掲示板にアクセスできることを知りましたが、まだ見てはいません ※携帯電話のアドレス帳には零崎人識、ツナギ、玖渚友のものが登録されています ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※八九寺真宵の記憶を消すかどうかの議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]ロワ中の記憶消失 [装備]人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス [道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語 [思考] 基本:? ? ? [備考] ※傾物語終了後からの参戦です ※本当に迷い牛の特性が表れてるかはお任せします 【羽川翼@物語シリーズ】 [状態]健康、ノーマル羽川、混乱 [装備]パーカー@めだかボックス、ジーンズ@めだかボックス [道具]支給品一式×2(食料は一人分)、携帯食料(4本入り×4箱)、毒刀・鍍@刀語、タブレット型端末@めだかボックス、黒い箱@不明、トランシーバー@現実、 真庭忍軍の装束@刀語、「ブラウニングM2マシンガン×2@めだかボックス、マシンガンの弾丸@めだかボックス」 [思考] 基本:? ? ? 0:ランドセルランドへ。黒神めだかと話せるのなら話したい。 1:阿良々木くんが死んでいるなんて…… 2:情報を集めたい。 3:戦場ヶ原さん髪もそうだけど……いつもと違う? 4:真宵ちゃんの様子もおかしい。 5:どうして私がこんな物騒なものを。 [備考] ※ブラック羽川が解除されました ※化物語本編のつばさキャット内のどこかからの参戦です ※全身も道具も全て海水に浸かりましたが、水分はすべて乾きました ※トランシーバーの相手は玖渚友ですが、使い方がわからない可能性があります。また、相手が玖渚友だということを知りません ※ブラック羽川でいた間の記憶は失われています ※黒神めだかの扱いについてどう説得したか、他の議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします 【一日目/夜/E-5】 【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】 [状態]健康、強い罪悪感、しかし確かにある高揚感、気絶中 [装備] [道具]支給品一式×2、携帯電話@現実、文房具、包丁、 炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、斬刀・鈍@刀語、お菓子多数 [思考] 基本:優勝する、願いが叶わないならこんなことを考えた主催を殺して自分も死ぬ。 1:阿良々木君の仇を取るまでは優勝狙いと悟られないようにする。 2:黒神めだかは自分が絶対に殺す。 3:掲示板はこまめに覗いておきましょう。 4:羽川さんがどうしてここにいるのかしら……? [備考] ※つばさキャット終了後からの参戦です ※名簿にある程度の疑問を抱いています ※善吉を殺した罪悪感を元に、優勝への思いをより強くしています ※髪を切りました。偽物語以降の髪型になっています ※携帯電話の電話帳には零崎人識、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています。 また、登録はしていませんが供犠創貴、貝木泥舟の電話番号を入手しました。 ※黒神めだかの扱いについてどう説得されたか、他の議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします 【零崎人識@人間シリーズ】 [状態]健康、戦場ヶ原ひたぎを背負っている [装備]小柄な日本刀 、携帯電話@現実 [道具]支給品一式×6(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚)、 医療用の糸@現実、千刀・ツルギ×2@刀語、 手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、 S W M29(6/6)@めだかボックス、大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ [思考] 基本:戯言遣いと合流する。 0:一先ずこいつ(戦場ヶ原ひたぎ)をどうにかしてーな 1:戦場ヶ原ひたぎ達と行動。ひたぎは危なっかしいので色んな意味で注意。 2:伊織ちゃんと連絡を取る。合流するかどうかは後から決める。 3:真庭蝙蝠、水倉りすか、供犠創貴、宇練銀閣を捕まえる。 4:哀川潤が放送で呼ばれたし殺人をしないつもりはない? [備考] ※曲絃糸の射程距離は2mです ※曲絃糸に殺傷能力はありません。拘束できる程度です ※りすかが曲識を殺したと考えています ※Bー6で発生した山火事を目撃しました ※携帯電話の電話帳には戯言遣い、ツナギ、戦場ヶ原ひたぎ、無桐伊織が登録されています ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします 【一日目/夜/E-5】 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ』 [装備]『七実ちゃんはああいったから、虚刀『錆』を持っているよ』 [道具]『支給品一式が2つ分とエプロン@めだかボックスがあるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』 [思考] 基本:「黒神めだかに勝つ」 今度こそ僕は、勝つ。 黒神めだかに、僕は勝つ。 ――七実ちゃんもその気みたいだしさ [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります 存在、能力をなかった事には出来ない 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用可能) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします ※始まりの過負荷を返してもらっています ※首輪は外れています 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(小)、交霊術発動中 [装備]四季崎記紀の残留思念×1 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6)、球磨川の首輪×1 [思考] 基本:弟である鑢七花を探すついでに、強さと弱さについて考える。 1:七花以外は、殺しておく。 2:球磨川禊の刀として生きる。 [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました ※宇練の「暗器術的なもの」(素早く物を取り出す技術)を不完全ですが見取りました ※弱さを見取れます。 ※大嘘憑きの使用回数制限は後続に任せます。 ※交霊術が発動しています。なので死体に近付くと何かしら聞けるかも知れません ※球磨川禊が気絶している間、零崎人識と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします ※黒神めだかの戦いの詳細は後続にお任せします。 【1日目/夜/E-5】 【黒神めだか@めだかボックス】 [状態]『不死身性(弱体化)』 [装備]『庶務』の腕章@めだかボックス、箱庭学園女子制服@めだかボックス、王刀・鋸@刀語 [道具]支給品一式、否定姫の鉄扇@刀語、A4ルーズリーフ×38枚、箱庭学園パンフレット@オリジナル [思考] 基本:もう、狂わない 1:戦場ヶ原ひたぎ上級生と再会し、更生させる 2:話しても通じそうにない相手は動けない状態になってもらい、バトルロワイアルを止めることを優先 3:哀しむのは後。まずはこの殺し合いを終わらせる 4:再び供犠創貴と会ったら支給品を返す 5:零崎一賊を警戒 6:行橋未造を探す [備考] ※参戦時期は、少なくとも善吉が『敵』である間からです。 ※『完成』については制限が付いています。程度については後続の書き手さんにお任せします。 ※『不死身性』は結構弱体化しました。(少なくとも、左右田右衛門左衛門から受けた攻撃に耐えられない程度には) ただあくまで不死身性での回復であり、素で骨折が九十秒前後で回復することはありません、少し強い一般人レベルです ※都城王土の『人心支配』は使えるようです。 ※宗像形の暗器は不明です。 ※黒神くじらの『凍る火柱』は、『炎や氷』が具現化しない程度には使えるようです。 ※『五本の病爪』は症状と時間が反比例しています(詳細は後続の書き手さんにお任せします)。 また、『五本の病爪』の制限についてめだかは気付いていません。 ※軽傷ならば『五本の病爪』で治せるようです。 ※左右田右衛門左衛門と戦場ヶ原ひたぎに繋がりがあると信じました ※供犠創貴とかなり詳しく情報交換をしましたが蝙蝠や魔法については全て聞いていません ※『大嘘憑き』は使えません ※鑢七実との戦いの詳細は後続にお任せします。 ※首輪が外れています。 働物語 時系列順 不死鳥(腐屍鳥) 第三回放送 投下順 働物語 君の知らない物語(前編) 戯言遣い 残り風 君の知らない物語(前編) 零崎人識 冠善跳悪 君の知らない物語(前編) 鑢七実 Velonica 君の知らない物語(前編) 戦場ヶ原ひたぎ 冠善跳悪 君の知らない物語(前編) 羽川翼 残り風 君の知らない物語(前編) 八九寺真宵 残り風 「意外と楽でいいが」 黒神めだか Velonica 君の知らない物語(前編) 球磨川禊 Velonica
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/221.html
哲学思考(欠落思想) ◆aOl4/e3TgA 放送の声が変わったな。 それが、球磨川禊の抱いた最初の感情であった。 最初の放送でも声の主は不知火袴ではなく、名前も知らないような老人の声だったが、今度は女の子の声だった。 殺し合いの主催役の片棒を担いでいることを分かっているのか。 そんなお節介じみた疑問を一瞬抱いたが、それ以上は考えない。 何故なら、どうでもいいことだからだ。 死者を淡々と読み上げた少女と、その前の放送で同じく死者を読み上げた老人と、更にまだ居るやもしれぬ共犯者。 彼らがいったい何を考えているのか。 彼らがいったい何を求めているのか。 彼らがいったい何を知っているのか。 彼らがいったい何を握っているのか。 彼らがいったい――何を、目指すのか。 さぞ希望に溢れたことだと思う。 だからこそそれは、球磨川禊というマイナスにはどうでもいい。 殺し合いを主催するような連中のことだ。 週間少年ジャンプなら決してロクな目に会えないまま、正義のヒーローに格好良くぶちのめされるような悪党。 そんな連中なら、甘くて温い友情を築いていることだろう。 チョコレートのように甘くて、蜂蜜のようにドロドロで、粉砂糖のように吹いたら散ってしまうほど軽い軽い友情を。 ――それでもだ。 それでも彼らは幸運だと、球磨川は思う。 彼らの向かう先にあるのは紛れもない勝利だ。 いや、正しくは《ある筈》のものと云うのが正しいだろうか。 しかしだ。 しかしながら、そういった勝利が約束されない者もこの世には在る。 ぬるい友情を築いて。 無駄な努力を積み重ねて。 そうしてむなしい勝利にたどり着く。 それが球磨川禊をはじめとする生まれながらの負け組――《過負荷》と呼ばれる存在である。 ――その彼は。 放送にて告げられた一つの名前を反復していた。 『人吉……善吉?』 その名前が呼ばれることは、今もどこかで変わらず正義を貫いているだろう生徒会長に比べれば当然とさえいえたことだ。 彼は《異常》でもなければ《過負荷》でもない、《普通》の少年。 まあ、黒神めだかという一つの生ける伝説にずっと連れ添っている事実は異常と言う他ないだろうが、彼の存在そのものはごく普通だ。 ホームズとワトソンの関係で言うなら、間違いなくワトソン。 どんなに大きな活躍をしてみせたところで、結局は黒神めだかというホームズに見せ場を奪われる、それだけの存在。 球磨川禊にとっては、黒神めだかほどに特別な意味を持ちはしない。 《そういえばあの子は元気かな》ってくらいの認識をされるのがせいぜいの、記憶には残っても脅威にはならない、そんな記号。 『――おいおい』 なのに球磨川は苦笑する。 彼が死んでしまった事実に苦笑する。 現実から逃げる気はないが、とにかく苦笑する。 彼が接触し、ちょっかいをかけた相手の死に、苦い笑いをこぼす。 『おいおいおいおいおいおいおいおい!』 それはやがて明確な笑いへと変わっていった。 球磨川はマイナスであるが、卑屈になりすぎて自分を追い込むようなタイプとはまた違うマイナス性を持ち合わせている。 負け組どものヒーローとしての、同族を引きつけるカリスマ性。 或いは、勝っているのにいつもどうしてか負けてしまう――敗北の星のもとに生まれてしまったがゆえの、《敗北者性》。 自らを負け組と誰より理解しているからこそ落ち込まない。 そのメンタルはまさしく要塞。 彼には敗北は水だ。 彼を敗北させればそれは魚に水をやるのと同じこと。 彼の心を真に動かすのは、彼の仲間に何かがあった場合。 球磨川は異常なほど仲間想いという側面を持っている。 これが球磨川禊という最底辺の敗北者へ与えられた唯一のプラスなのかは定かではないが、とにかく彼にも弱さはある。 ――いや、弱さなんて曖昧な言葉を用いると彼自身が弱さが服を着て歩いているようなモノなので、とんだ誤解を生みかねないが。 彼にとって人吉善吉は仲間ではない。 阿久根高貴とは違い、彼が仲間であったことは過去にはない。 だからその死はまさしく無価値。 《隣の家に住んでたおじさんが体を壊して死んじゃった》くらいのどうでもいいことである――のだが。 『なんだよ善吉ちゃん――きみ、死んじゃったのかい』 素直に球磨川は驚きを覚えた。 善吉がこんなところで死んでしまったことに驚愕した。 驚愕して、反芻して、やがて笑いがこみ上げてきた。 それは敗者を踏みにじる質の悪い笑顔とはどこか異なり。 だけど決して、旧知の知人を失ったことに傷つきながらも、無理に笑って前を向こうとしている――そんな健気なものではない。 なんとも形容し難い笑いだった。 彼自身、何が可笑しくて笑っているのか分からない。 ゆえに誰にも分からない。 球磨川禊がどうして笑うのか、分かる者は此処にはいない。 『そうだなあ。これってさ、ポケモンで例えるとサトシ君がピカチュウに逃げられた――みたいなもんだよね! そっかそっか、善吉ちゃん!』 それはどれほど滑稽なことだろうか。 誰とでも分け隔てなく接する主人公が、窮地に立たされているまっただ中に相棒と呼んでも差し障りのない存在を失う。 少年漫画だったら、それだけで鬱ルート真っ逆様の大事件だ。 きっと格好良くラスボスを倒した後にでも《わけのわからないパワー》なんかで都合よく復活されるのが読めてるけど熱い展開でもある。 ――だが、これは少年漫画じゃない。 都合のいいところで味方は助けに来ない。 都合よく悪役は主人公の口上が終わるのを待っちゃくれない。 そして、死人は生き返らない。 『きみは――《好きな女の子を一人残して》死んじゃったのかい!』 黒神めだかを人吉善吉が愛していたのはむろん知っている。 めだかもその好意に鈍感な訳じゃなく、むしろ自覚した上で彼を側に置いているようだった。 彼女は悲しむだろう。 中学時代に、副会長の顔面を剥がした時のように暴れるだろう。 いいや、あれの比ではないかもしれない。 何しろ、十数年を共に過ごした存在をあっさりと失ったのだ。 彼女を乱心もとい乱神させるには、十二分に事足りる話である。 『そいつはマイナス的に見てもマイナスだぜ。どうもきみは、恋愛漫画の主人公には向いてなかったようだね』 女の子を傷つける意図は善吉にはなかっただろう。 当人はむしろ、誰かを助けて満ち足りて死んでいったのかもしれない。 ああ、そいつはありそうだと球磨川は思う。 彼もまた、正義感が熱い男だったのをよく覚えていた。 『さぁて』 球磨川禊は、側で眠る同行者・鑢七実をちらりと見やる。 彼女は強い、それこそ黒神めだかにも引けを取らないくらいに強い。 おまけに過負荷だ。バリバリの危険思想家、というかそれ以前にそもそも彼女は殺し合いに乗っている。 傷心のめだかとも、いずれ行き遭うかもしれない。 そうなれば、果たしてあの主人公少女は勝てるのか? 七実を破っても自分がいる。 自分がいるなんて言っても、どんなに弱っていたって彼女に勝てるだなんて夢を描けるほど球磨川は理想家ではない。 めだかは勝つだろう。 ひょっとすると七実を破った上で、その上で何の苦もなく自分を蹴散らして、二人の過負荷を見事に無力化してのけるだろう。 ――そう。 黒神めだかは必ず勝つ。 『善吉ちゃん、きみはたぶん立派だったんだろう。僕の知らないところでめだかちゃんを支えていたんだろうし、今回惜しくも殺されてしまったことだって、きみのことだから名誉の戦死だったんだろう。僕は信じるよ』 『だから』 『――きみのぶんまで、きみの無念も一心に背負って、だけどきみを誰が殺したのか分からないから――』 ――ただし。 『背負ったきみの無念を、たまたま通りかかっためだかちゃんにぶつけてやることにするぜ』 相手よりも圧倒的に深い傷を負いながら。 球磨川禊はなにも負けるために挑むのではない。 生まれついての負け組だからといって、それが一切の勝利欲を有していないかといえば、それは確実にノーである。 彼は証明したいのだ。 負け組でも。 嫌われ者でも。 幸福な連中に足蹴にされる雑魚敵でも。 それでも、幸せな連中に勝てるんだってことを証明したい。 それが球磨川禊の、願いらしい願い。 殺し合いを勝ち抜くなんて手間をかけなくたって、この会場にいる《彼女》と戦うだけで叶えられる願い。 『――――』 何かを思うように虚空を見上げる球磨川。 しかし、彼の物思いに耽る時間は数秒と許されなかった。 「どうやら――わたしは殺されてしまったようですね」 身体を地面に預けたままで、眠っていた筈の七実が言葉を発した。 もう少し眠っているものだと思っていたので、声がかかったことに少しだけ球磨川は驚く様子を示した。 当たり前だが、彼女に傷なんてものはない。 死んだ事実を《なかったこと》にされた彼女は、一度腹を捌かれたなんて嘘のように、そこに存在している。 『ああ、お節介かもしれないけど僕の過負荷を使ったよ』 「そうですか、ありがとうございます」 七実はつとめて冷静に礼を言うと、本来痛ましい傷口がある筈の、真心に切り裂かれた場所をそっと右手でさする。 当然だが、傷なんてない。 「油断しました」 『気にすることじゃないよ、僕も仇討ちにかかったら秒殺されたし』 七実の強さは、これまで同行してきた球磨川もよく知っている。 だから彼女が敗北したのは彼にとっても驚くに値する出来事だった。 不本意な形とはいえ休憩を取ったことで、彼女の内部に蓄積していた疲労も少しは和らいだようだし、結果オーライかもしれない。 殺し合いは加速している。 たとえばこうして七実と言葉を交わしているその間にも、誰かが放送を聞いて泣いたり怒ったり決意を新たにしたりしている筈だ。 そしてまた六時間の後に――変わらず放送はやってくる。 「では、そろそろ進みましょうか。不覚を取りましたが、くすぶっていても仕方がありませんし」 『そうだね、行こう。あの橙ちゃんもどっか行ったみたいだしね』 橙、というワードに七実が一瞬反応した。 やはり彼女の戦闘能力は、七実からしても相当なものだったのだ。 油断したと言った彼女のそれは、言い訳などではなく真実だろう。 最初から強大な存在を殲滅する為に、全力までいかずとも注意を払って臨んでいれば、待つのは必ずしも敗北ではなかったかもしれない。 『それに、僕にもやることが出来たしね』 球磨川はぽつりと呟いた。 七実に言ったのではなく、それは自分自身へと発した台詞。 マイナス十三組を結成しての理事長抹殺、ここに違いはない。 ただその前に、ひとつイベントを挟むだけのことである。 黒神めだか――彼女へと善吉の無念をぶつける。 人吉善吉の死を知ってから、どうしてかそうしなければならないと思い始めるようになった。 どういう心境の変化かは彼にも分からない。 ただ一つ言えるのは。 「簡単には負けてやれないよ」 今回は、負けることを前提としない。 負け犬として勝利することを目指す。 そして証明するのだ。 負け犬でも主役を張れることを。 「禊さん、なにかおっしゃいましたか?」 『ん? いいや、なんにも』 「そうですか。気のせいか、初めて禊さんの《気取っていない》台詞を聞いたような気がしたのですが」 『間違いなく気のせいだね』 気取らない――括弧つけない。 球磨川禊のバトルロワイアルは続く。 彼を待ち受けるのは、果たしてはじめての勝利かお約束の敗北か―― 【一日目/真昼/G-6 薬局付近】 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(中) [装備]無し [道具]支給品一式×2、錠開け専門鉄具、ランダム支給品(2~6) [思考] 基本:弟である鑢七花を探す。 1:七花以外は、殺しておく。 2:骨董アパートに行ってみようかしら。 3:球磨川さんといるのも悪くないですね。 4:少しいっきーさんに興味が湧いてきた。 [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。 ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ。お腹は満腹で、疲れは結構和らいだね』 [装備]『大螺子が2個あるね』 [道具]『支給品一式が2つ分とランダム支給品が3個あるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』 [思考] 『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』 『1番はやっぱメンバー集めだよね』 『2番は七実ちゃんについていこう! 彼女は知らないことがいっぱいあるみたいだし僕がサポートしてあげないとね』 『3番はこのまま骨董アパートに向かおうか』 『4番は――――まぁ彼についてかな』 『5番は善吉ちゃんの無念をめだかちゃんにぶつけてあげよう』 [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります。 存在、能力をなかった事には出来ない。 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り1回。 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用不可。残り45分) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。 ※戯言遣いとの会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。 解放された者と抑える者 時系列順 友情の手前、憎しみの途中 解放された者と抑える者 投下順 友情の手前、憎しみの途中 赤く染まれ、すれ違い綺羅の夢を 球磨川禊 トリガーハッピー・ブレードランナー 赤く染まれ、すれ違い綺羅の夢を 鑢七実 トリガーハッピー・ブレードランナー
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/124.html
冒し、侵され、犯しあう(後編) ◆xzYb/YHTdI 第七話 ~江迎怒江~ 色。 それに意味があるとするならば、何を挙げられるのだろう。 挙げるだけならばその議題には様々な答えが返ってくると思われるが。 その中でも最も重要だと思われるのは『イメージ』ということだ。 赤を見たら、何を思い出すであろう。 青を見たら、何を思い出すであろう。 橙を見たら、何を思い出すであろう。 勿論のこと、その答えは様々出てくることは確かだ。 しかし、ある一貫して導き出されていく答えと言うものは必ず存在する。 赤でろうが、青であろうが、橙であろうが。 そう言った意味では、無色と言うものは何を暗示しているのであろうか。 ■ ■ 「泥舟さん。泥舟さん。泥舟さん。泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん 泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん 泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん泥舟さん」 「せっかくまた逢えたっていうのに。逢えたっていうのに。逢えたっていうのに。逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに 逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに 逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに 逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに 逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに逢えたのに 「全部。全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部 全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部 全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部」 「球磨川さんの所為だ。球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ 球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ球磨川さんの所為だ」 「あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。 あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。 あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。 あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。あの人が余計なことを言わなきゃ。」 「あぁ、そうだぁ。球磨川さんは私の味方かと思っていたけど敵だったのぉ」 「だったら、殺さなきゃ。殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ 殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ 殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ 殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ 殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ」 殺さなきゃ。 江迎は、運動場の給水所にて、喉を潤す。 江迎はわずか2回目の別れで、病んだ。 文字通り病的なまでの愛だ。 標的を球磨川禊に定め、江迎もまた動き出す。 あなたの色は何色ですか? 分かりません。 【一日目/早朝/D‐4 箱庭学園運動場】 【江迎怒江@めだかボックス】 [状態]身体的疲労(中)、ヤンデレ化 [装備]無し [道具]無し [思考] 基本: 泥舟さんとの恋を邪魔する者は問答無用で殺す 1:球磨川さんを殺す [備考] ※『荒廃する腐花 狂い咲きバージョン』使用できるようになりました。 (第七話―――了) 第八話 ~鑢七実と球磨川禊~ 何百年前のことである。 二人――――二本の刀がそこにはあった。 特にこれと言って描写すべきことなど起きず、ただ平凡に暮らしていた。 そこにある一人の奇策士が乱入する。 とがめ。 ただし事態は彼女が乗り込んだ。だけでは済まされなくなっていき、終いには愛すべき一本の刀を持ち去っていった。 寂しかったと言われてもそうとは分かる訳もなく。 悲しかったと言われてもそうとは分かる訳もなく。 虚しかったと言われてもそうとは分かる訳もなく。 ただ変わらず残された一本の刀は過ごしていた。 しかし、そんな日常も壊れていくこととなった。 4月の真庭忍軍の奇襲。 それを境に残された一本の刀も動き出すこととなる。 ■ ■ 二人はとうに箱庭学園を抜け出して、今は貝木に言われた二か所を目指し歩いている。 「――――で、禊さん。あなたはどうして私についてくるのですか」 『ん?だって君は記念すべき二人目の-十三組だ。だったら仲間でしょ?」 「仲間――――まぁそうでしたね。ですが私はあなたのことを容赦なく斬り落とすこともできるわけですよ」 『いいや、君はそんなことしない。僕はそう信じている』 「中々あなたも拍子抜けさせてくれますね。でもいいでしょう。――――悪いのかしら。 今回は私も易々と結託の大盤振る舞いしてしまいましたから。仕方ありません。別に私と七花の邪魔さえしなければどうしようとあなたと勝手です」 『そうだよ。これは僕の勝手な行為だ。七実ちゃんの気にする話ではないよ。』 「なんで先ほどから私はちゃん付けされているのでしょうか」 『それほど七実ちゃんが可愛いからじゃない?』 「……そうですか」 『そうだよ。――――ちなみにさ、人識ちゃんってさ、どんな子なの?』 「気分屋……という感じですね。私はあまり人柄なんてくだらないもの観察しませんので」 『ふぅん。僕さ、彼とどっかであった気がしてならないんだ』 「では遭っているのでないですか。意外と」 『…そうなのかなぁ』 二人の歩みはとまらない。 意味もなく、時間が進んでいく。 【一日目/早朝/D‐3】 【鑢七実@刀語】 [状態]健康 [装備]双刀・鎚@刀語 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6) [思考] 基本:弟である鑢七花を探す。 1:七花以外は、殺しておく。球磨川さんは仕方ありませんね。 2:クラッシュクラシックか学習塾跡の廃墟を目指す。 3:とがめさんは残念だけど仕方がない。 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ』 [装備]『大螺子が2個あるね』 [道具]『支給品一式とランダム支給品が3個あるよ』 [思考] 『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』 『1番はやっぱメンバー集めだよね』 『2番は七実ちゃんについていこう!』 [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります。 存在、能力をなかった事には出来ない。 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り3回。 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。 (現在使用不可。残り30分) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。 (第八話―――了) 第九話 ~貝木泥舟~ 泥舟さん。 大好きですぅ。 死ぬほど愛していますぅ。 だから勝手にシナナイデ。 ■ ■ 貝木は歩く。 さすがに走ってばかりはいられない。 どうやら、追ってくる気配もなかったし。 「怒江のやつ……どうしようか」 結構本気で悩んでいた。 あのまま置き去りにしてしまったし、なにより後が怖そうで嫌だったのだ。 最高でも、右手腐敗。 最悪で、全身腐敗からの死。というおぞましき想像が掻き立てられる。 「いや、大丈夫だ。大丈夫のはずだ。俺が命令すればいい」 小言を呟く。 叶えられるか分からない戯言を吐いて。 「それよりもこれからのことだ。―――――ネットカフェ。そこにいこう」 その行動原理は極めて簡単。 情報がどこかしらに埋まっているかもしれない。ただそれだけだ。 しかし、既に玖渚友という、コンピューター系のプロ、化物でもどうしようもなかったので、望みは薄い。 だが、貝木にはそれすら知る方法は無い。 歩まなければ、何も知ることはできない。 「怒江のことは………後で考えるか」 彼は進む。生きるため。死なないため。利益のために。 【1日目/早朝/D‐5】 【貝木泥舟@化物語】 [状態]身体的疲労(小) [装備] [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(1~5)、「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、貴重品諸々、ノーマライズ・リキッド」(「」で括られている物は現地調達の物です) [思考] 基本:周囲を騙して生きのこる 1:ネットカフェに行く 2:怒江はとりあえず保留 [備考] ※貴重品が一体どういったものかは以後の書き手さんにお任せします。 ※取得した鍵は、『箱庭学園本館』の鍵全てです。 (第九話―――了) 最終話 ~終息する物語(収束する者語り)~ 人が死ぬとき、そこには何らかの『悪』が必然、『悪』に類する存在が必然だと思う。 と、誰かは唱えるらしい。 確かにその通りだ。人が死ぬ時は大抵…いや、必然的に『悪』が付き纏ってくるだろう。 ただ、それは何も人が死ぬときだけではないだろう。 日常生活のあらゆる場面で、『悪』は必然し、死に直結する場面もなきにあらずである。 何かを食べる、そのときは例えば牛肉だったとするならば、牛を殺した者は『悪』になるだろう。 歩く、そのとき靴を踏みつける当人が『悪』だ。 究極的に言うのであれば、生きている、それは酸素を吸っているから、地球上のすべての生物が『悪』となる。 閑話休題。 この物語で、様々な人物が動いた。 少年こと零崎人識 少女こと鑢七実 瀕死の少年こと球磨川禊 ヒトゴロシの少女こと西条玉藻 細身の青年こと零崎双識 詐欺師の青年こと貝木泥舟 病んだ少女こと江迎怒江。 交差したものもいれば、交差しなかった者もいる。 ただし、物語の歴史が変わったと言えば変わっただろう。 零崎人識は出夢との約束を延長させられる羽目にあった。 鑢七実は次々と相方が入れ替わっていったことに多少思うこともできた。 球磨川禊はようやく-十三組の素質のあるものに出会えたことに歓喜した。 西条玉藻はとうとう見つけた愛ナイフを再び失くした。 零崎双識は《家族》に対して思うことができたしまった。 貝木泥舟は相方に多少畏怖しながら過ごすことになってしまい。 江迎怒江は病んだ。 どれだけ、文章を重ねようとも、その事実は変わらない。 誰が『悪』とする物語だったのか。 誰が『善』とする物語だったのか。 一概には言えないし、そんなことはどうでもいいだろう。 そんな事実があった。それだけの物語である。 ただし歴史は変わる。――――いや、その言い方には語弊がある。 歴史とは、あるものではなく、積み重ねていくもの。 本来は、どんなに頑張ろうとも未来などは存在しない。 あるのは過去と現在だけ。 だから、だからこそ物語にはピリオド、区切りができるだ。 終わりなき始まりなどない、始まりがあれば終わりはない。始まりの連続が繰り返されて終わりを迎えていくのだから。 そういって見たとき、これは物語としては、不十分だ。 発散するだけして、全然まとまってなどいない。 結論として、まだ始まってばかりなのだ。この物語。このお話は。 だから、この物語は終わらない。 始まった物語は、終わらない。 (最終章―――了) 属性は「肉」、種類は「変態」 時系列順 ネットカフェで一服 図書館革命!? 投下順 今まで楽しかったぜ 天災一過 零崎人識 疑心暗鬼(偽信案忌) 天災一過 鑢七実 三つのモットー 偶然目が合ったので 西条玉藻 何に狂うか何に病むか +と-、二人の考え方 球磨川禊 三つのモットー 後悔と決意 零崎双識 疑心暗鬼(偽信案忌) 人は変わる、ただし一部を除く 貝木泥舟 ネットカフェで一服 人は変わる、ただし一部を除く 江迎怒江 何に狂うか何に病むか
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/151.html
何に狂うか何に病むか ◆mtws1YvfHQ 西条玉藻は狂っていた。 元から狂ったような人格を持っていた彼女だが、今はそれを超えて狂っていた。 毒刀の猛毒刀与。 人を斬りたくなると言う刀の毒に侵されて、更に狂っていた。 それでも彼女は然程狂っていないように見えた。 元から狂ったような存在だったが故に、人を斬りたくなる毒の効果が薄かったのかも知れない。 そんな彼女は今、狂人の意思を持ってとある存在、零崎一賊秘中の秘、零崎人識を探していた。 己の愛しき獲物の片方を持っているだろうと言う確信とただ好奇心の二つを持って探していた。 探していたと言っても手掛かりがある訳ではないのでただ無作為に歩き回っているだけだった。 そんな彼女が箱庭学園の中で放送を耳にしたのは必然だったかも知れない。 様々な建築物の建ち並ぶそこに足を踏み入れ、迷い歩いていたのだ。 そんな彼女は一時間後に此処が禁止エリアになる事など知りもしない。 しかしそれでも人間が減った事だけは朧に理解していた。 それでもただ人を、あるいは殺人鬼を、探し歩いているだけだった。 そんな中で、まるで何かに導かれるように彼女は一つの建物に足を踏み入れた。 なんで踏み入れたか聞かれれば答え辛い。 しかし強いて上げるとすれば、微かに何かが聞こえたからだ。 「……ゆらぁり」 と。 壊れたように。 病んだように。 踏み入った場所には、一つの影が佇んでいた。 江迎怒江は病んでいた。 泥舟さんのためだったら何だってできるのに、二度目の離れ離れ。 たった二度、と人は言うかも知れない。 だがその二度は、彼女にとって何物にも勝る二度だった。 ただ幸せになりたいと願う少女にとって、たった二度の別れは、身を二つに裂かれるような物。 辛く、辛く、ただ辛い。 愛しい人と引き裂かれる事は、ひたすらに辛い。 そんな彼女が放送を迎えるにあたって、箱庭学園の一角、「木漏れ日」と言う名の植物園に居たのは必然だった。 なぜならば、泥舟が教えてくれた『荒廃する腐花』の新しい使用方法である植物操作を最も活用できる場所がそこであり、きっと泥舟さんなら私を頼ってそこに居てくれる。 儚い幻想に縋り付こうとするのも、幸せになりたいから。 しかしその幻想はあっさりと現実によって否定されたのだが、諦め悪く居続けていた。 結果、届いた放送は最悪とまでは行かなくとも、今の彼女には最低の物だった。 「なんで」 ぼそりと小さな呟きに始まり、 「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」 壊れたように口から漏れ出した言葉の数々は、 「ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ」 淡々と植物園の中を響き渡る。 なんで、と言う呟きは、悲痛の響きを持って。 なんで皆、私の幸せの邪魔ばかりするのかと。 壊れたように。 狂ったように。 響きが消えて行く場所に、一つの影が現れた。 「ナンデナンデナンデナンデナンデ」 淡々と、壊れたレコードから同じ音が出続けるように、同じ言葉だけを吐き続ける江迎怒江。 「――――ぴたり」 ゆらゆらと、幽鬼の如く不気味に体をゆらしながら、歩いていたが足を止めた西条玉藻。 病的な少女と、狂気の少女。 二人の戦いは、狂ったような目と病んだような目との二つが合わさり絡まり、始まった。 「ゆらぁ――――」 傍から見ていると、西条玉藻が唐突に顔から地面に倒れようとしたように見えた。 だがそれは間違いである。 次の瞬間には既に間合いを閉じようと玉藻は駆けていた。 地面すれすれを、毒刀を引き摺るようにしながら、不吉な金属音を奏でながら。 速い。 刀とナイフを持っているのかと疑いたくなるような速さ。 しかし怒江は慌てず、地面に手を付けた。 じゅくり。 「ナンデ」 と、怒江が触れた地面が音を立てて、腐り果てた。 そしてそれから一瞬の間を置いて地面が、否、世界が変貌する。 蠢き波打ち鳴り響き。 蠢動し流動し鳴動し。 「ナンデ」 植物の、根が、枝が、葉が、幹が、乱れ、暴れ、壊れ、破れ、狂い果てたように、病み切ったように、四方百八十度と言わず八方三百六十度から、 「皆、邪魔を!」 玉藻へと襲い掛かる。 三百六十度。 上下左右に前後全てを含んだ文字通り全方位からの殺到。 物量による奔流の如き圧倒。 しかし果たして玉藻はどうしたかと言うと、 「――ぁり!」 怒江に向かって走っていた事をなかった事にしたように、後ろへと飛びずさり、斬り裂く。 あたかも膨大な重量を持つ筈の刀とナイフが分裂しているかのように俊敏に動き回り、後方から圧殺せんとした植物群を斬り裂いた。 無理に跳んだ所為で玉藻は地面に倒れた。 しかしそれでも、後方に跳んだ判断は正しい。 斬り抜けたと思った数瞬の後、先程まで、あるいはあのまま走り抜けようとすれば玉藻が居たであろう場所は後方よりも遥かに多いその他からの植物によって押し潰された。 前方の植物の質量が圧倒的に多かったのは、怒江の無意識な自己防衛の表れか。 後方の植物は退路を断つ目的よりも、牽制の方の意味合いの方が強かったのか。 どちらにせよ、あるいはどちらでなかったとしても、玉藻は斬り抜けた。 怒江にとっては不幸な事に、斬り抜けられてしまった。 押し潰したと思ったまま、斬り抜けられてしまった。 「ナンデナンデナンデナンデナンデ! 皆皆皆皆皆! 邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかりっ!」 怒江からは植物が邪魔で玉藻が倒れたなど見えないし、音も犇めく音で聞こえない。 植物と植物が更に絡まり合う。 中に居るだろうと思いながら、相手の原形すら留めまいと蠢く。 しかしそれはあくまでも、相手が中に居ることが前提での行動。 質量を持って押し潰したと思って、油断していた。 見えないけれど潰したと思って、油断していた。 あろう事か地面に手を付いたまま、油断していた。 そして怒江は、 「私が」 声を震わせ、俯いた。 それに合わせて植物の動きも止まる。 しかし全くと言って良いほど関係無い。 この場合に関係あるのは、下を向いてしまった事だけだ。 最早何の植物が絡み合っているのか分からない塊の横をすり抜け、前屈み気味の玉藻がそんな怒江に向かって走る。 地面を引き摺られている刀が不気味に輝く。 恐ろしいほどに毒々しい輝きを見せる。 「私が幸せになっちゃぁ――っ?!」 音に気付き、俯いていた怒江が顔を上げたが既に遅く、 「――きりころされてくださいよぅ」 それ以上の反応の隙を与える間もなく、凶刃が、振り抜かれた。 鮮血。 血が散る。 刀を振り抜き、その重量に従って少し歩いていた玉藻が呟き、 「……きりころされて?」 首を捻った。 自分の言った事に疑問を抱いたように、首を捻った。 その後ろで怒江は、恐る恐る顔へと手を伸ばす。 口元から斬り裂かれた頬から、思い出したように血が噴き出し、その手を濡らす。 手が血で濡れ、その血が腐り始め、微かな腐臭が漂い始める。 幸いにして斬り裂かれたのは頬だけだった。 右の頬だけが口元から大きく斬り裂かれただけで、命は残っている。 顔を上げた時に口が若干開いていた事、玉藻の腕の位置が低かった事。 この二つが幸いして、歯や骨は斬られていなかった。 血が止まりさえすれば命に別状はないだろう。 「なんで?」 「………………いや」 「ずたずたじゃなくて」 「…………いや」 「なんできりころす?」 「……いや」 「なんで?」 「いや」 沈黙が二人の間に降りた。 玉藻と怒江の体が不気味に振動し始める。 目玉が尋常ではない速度で動き回る。 何かを理解しようと動き回る。 「いぃいぃぃいぃィィイィイィィィイィイ」 「――……じぎぎざざざぎぎぎぎぎぎぎぎ」 そして、 「イィィィイイヤァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアよくも!」 怒江は絶叫し、 「荒廃した腐花狂い咲きバージョンタイプマンドラゴラ!」 少し距離を取ってから、再び手を地面に触れさせた。 植物が、波打つ。 それらは根も葉もなく組み合わさり絡まり合い繋がり合い、ただ無数の塊に、否、無数の人の形をした塊に変わり果て、 「 !」 無言の雄叫びと共に、呻き続ける玉藻へと群がる。 だが、一手、あるいは一歩、遅かった。 「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎあ、ずたずたにしたうえできりころせばいいか」 玉藻は納得したように頷き、 「ずたずたにきりころされてくださいよぅ」 壊れたように、狂ったように、玉藻は、笑みを浮かべた。 襲い掛かる人の形が無数で腕の数は数多。 対して、玉藻は一人で腕が二本。 この差は武器があった所で埋められる物ではない、はずだった。 刀が地を這い、ナイフが宙を滑る。 二本の腕が四本に、四本から八本と、更に増して増して増して、残像を持つほどの速度で駆け廻る。 そして、駆け廻った後には、 「――うそ」 バラバラに斬り刻まれて跡形も無くなった植物が、地面に落ちた。 玉藻の刀が黒く輝く。 そして、怒江に向かって駆ける。 「ひ、ぃっ荒廃する腐花狂い咲きバージョンタイプ柵!」 その瞬間。 怒江が躊躇いなく叫ぶと、玉藻と怒江の間の地面が不気味に盛り上がり、脇にあった木々花々が狂い咲き、ツタとツタが連なり絡まり結合し、巨大な数メートルはあろうかと言う植物の柵が出来上がった。 玉藻は勢いのままに刀を振るい、次いでナイフも振るう。 弾かれこそしかったが、、木材を鉋で削るが如く、大して斬れていない。 向こう側まで斬り開くには時間が掛かりそうだ。 この隙を付いて更に植物が玉藻を襲い掛かる。 事は、なかった。 そのまま怒江は、逃走した。 玉藻から走って逃避して行った。 「嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる 嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる 嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる 嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる」 一時怒りに我を忘れたものの、恐ろしさの余り逃げ出した、逃避した江迎怒江の思考は、 「嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない」 口から漏れ出す言葉以外の何物も含んではいなかった。 怒江は病んでいる。 だがそれだけだ。 貝木泥舟に対して盲目的であったとしても、泥舟との間を邪魔する相手には神経質だったとしても、それ以外に対して同じ訳ではない。 頭は一応周り、考えもきちんと纏まる。 不幸にも。 頬から血が流れて服に染み込み地面に垂れる程の出血と口の中まで血の味がする事実、それに顔を横切り引き裂くような痛み。 顔を、口元から頬に掛けて斬られた。 その事実をあっさりと考え、認識してしまった。 そんな顔をしていると思い、気付いてしまった。 だからこそ。 こんな顔じゃ、嫌われる。 だけど、嫌われたくない。 そんな思いに支配されていた。 幸せになりたい。 だけどこのままじゃ嫌われる。 幸せに、なれない。 嫌われないにはどうしたらいいか。 無意識的にか意識的にか、足は自然と動く。 自然と、傷を治療する為の施設へと足が動いていた。 泥舟を捜すよりも前に、治療する為に。 仕方がない。 幸せになりたい、と思う彼女を誰が責められようか。 しかし、幸せになりたいと言う焦りに限らず、焦りは重要な物を見落とさせる。 例えば。 服から滴り落ちる血、とか。 【一日目/早朝/D‐4】 【江迎怒江@めだかボックス】 [状態]身体的疲労(大)、出血(中)、口元から頬に大傷(半分口裂け女状態)、ヤンデレ化 [装備]無し [道具]無し [思考] 基本:泥舟さんとの恋を邪魔する者は問答無用で殺す 1:顔の傷を治療する 2:球磨川さんを殺す [備考] ※『荒廃する腐花 狂い咲きバージョン』使用できるようになりました。 ※西東診療所か診療所のどちらかを目指しています。 西条玉藻が柵を斬り抜かずに乗り越えた時には、既に江迎怒江は影も形もなかった。 それを残念がるそぶりを微かに見せたものの、歩き始めた。 怒江が逃げて行ったと思しき方向へと歩き始めた。 植物が道を遮り、視界を横たわる明らかに不信な群生地帯。 それを気にする様子もなく乗り越え、斬り捨て、たまにある植物で出来た怒江の偽物を斬り倒して、ゆらゆらと建物の外へ向かって、 「ゆらぁ、り……?」 歩いている最中に、異様な物が現れた。 硝子張りの壁。 それが綺麗に腐り落ちていた。 人一人が歩いて通り抜けられるだけの大きさの穴を開けて。 ぎょろりと目玉を動かして周囲を見渡し、また歩き始める。 その足取りは実に適当見溢れるそれだが、目玉だけは常に周囲を見渡していた。 獲物が近くにいる事は分かっているのだから。 それ程歩いていない内に、 「ぴたり」 玉藻の足が止まった。 運良く箱庭学園を抜け出したから、では勿論ない。 動きが止まったのは、血の跡を見付けたからだ。 血。 分かり易い、誰かの痕跡。 その行く先へに向けて、歩き始める。 血の跡を追って、動き始める。 誰の物かも知れない血の跡を追って、狂戦士は行く。 その先の相手を、■■■■。 目的はそれだけ。 血の先に居るのが江迎怒江だろうと零崎だろうと関係ない。 「ゆらり――――ゆらり」 どちらにしろ、■■■■。 変わりはない。 人間だろうと鬼だろうと、狂戦士の前では変わりない。 過負荷だろうと異常だろうと、狂戦士の前では変わりない。 【1日目/早朝/D‐4】 【西条玉藻@戯言シリーズ】 [状態]身体的疲労(小)、毒刀・鍍による発狂状態 [装備]毒刀・鍍、エリミネイター・00@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:あてもなく、ぷらぷらする。が、もう一本の方も欲しい 1:血の跡を追い掛ける [備考] ※「クビツリハイスクール」からの参戦です。 ※追い掛けている血の跡は江迎怒江か零崎双識のものです。 傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語 時系列順 立つ鳥 傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語 投下順 立つ鳥 冒し、侵され、犯しあう 江迎怒江 この世に生きる喜び -Theory that can be substituted- 冒し、侵され、犯しあう 西条玉藻 つばさゴースト
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/53.html
戯言語 ◆VxAX.uhVsM 0 え?始まってたのか。 1 僕が目を覚めたのはいつもの部屋だった。 「あれ…?夢オチ?」 そんな訳はない。 目の前で起きた事を思い出せば、それが現実であった事が分かるだろう。 「人が死ぬのを見る事くらい、覚悟してたけどね」 現に、大事な人間が何人も死ぬところを見てきた。 姫ちゃん、巫女子ちゃん、萌太くん。 まだまだ数え切れないほど死んだところを見てきた。 それでも、くぐりぬけてきた。 他人を犠牲にして。 「戯言だけどね」 うん、ここにいても仕方ない。 知り合いがいるかもしれないから動いた方がいいからな。 せめて潤さんとかがいればな……。 「ま、どうなるかはわからないし」 とりあえず、部屋の外に出る。 「うん、そっくりだけど…違うな」 外に出たら分かったが、全然違う。 周りの景色がまったくと言っていいほど違っていた。 「まあ、別にただのアパートなんだけどね」 そして、階段を下りるとそこには 女の子がいた。 2 さて、目の前に女の子がいる。 たたかう にげる さらう ⇒ はなしかける うん、さすがにこんな状況で女の子を置いて行くのは人間がなってない。 しかし、僕は年上の人が好きなんだ。 決してロリコンじゃない。 でもとりえず声はかけないとな。 「ねぇ、そこの君、ちょっといい?」 少女はこちらに気付いたようだ。 少女は振り返り、こう言った。 「話しかけないでください、あなたの事が嫌いです」 なんということだ。 まさかいきなりこんな事を言われるとは。 というか初対面で嫌いって。 どういうことだ。 「うん、そうか分かった」 よし、この子は無視しておこう。 なんでこの結論に至ったかなんて言うまでもないだろう。 「ちょっと待ってください!」 さっきの少女が声をかけてきた。 「……」 「なんであのままどこかに行こうとするんですか!主人公的にそれはないでしょう!」 いや、主人公って。メタ発言じゃないか。 なんて危なっかしい子供だよ。 「とにかく!こんなにかわいい子供を無視するって!どういう事ですか!」 おいおい、どれだけ自惚れてんだよこいつ。 相手するのがめんどくさくなってきた。 もう逃げようかな? そう思い始めていたところで。 「さて、話を元に戻しましょう」 戻されたよ。 これじゃあ逃げるわけにもいかない。 「あなたは、この状況を把握してますか?」 無理だろう。 まず把握できる事が一つもない。 「まあ、そうでしょうね私もわかりません」 当たり前だ。 小学生くらいの子供に分かってたまるか。 というかこの子が分かって僕がわからなかったら僕はどれだけ知能が低いんだよ。 「まあ、私は探したい人がいるので、協力してくれませんか?」 「その人がいるという確証でも?」 「こういう面倒な事には必ずいるんですよ」 面倒なこと…ね。 あながち、僕と似たような人かもしれない。 でも、似ている人間はいてもそのままそっくりな人間はいない。 その探している人については知らないが、手伝ってやるか。 「ああ、分かったよ。手伝ってやるよ」 「本当ですか!?」 やっと彼女がにっこりとした笑顔を見せた。 ああ、この笑顔、あいつそっくりだな。 僕は、もし友がいて死んでしまったら……。 どうするんだ? もし、あいつが死んでしまったら?でも、いないかもしれない。 分からない、分からない、分からない。 …戯言だけどね。 「よし、じゃあ行こうか」 「あ、まだ自己紹介がまだでしたね。私は八九寺真宵です」 いきなり前振りもなくかよ。 まあ自己紹介に前振りなんかいらないけど。 「真宵ちゃんか、僕はいーちゃんとよく呼ばれている」 「あれ?本名は何なんですか?」 「……聞くな」 「え?教えてくださいよ」 しつこいな… 「ねぇ、戯言さん?」 「こっちにはいろいろ事情があるんだよ」 「ほう、過去のなんとかというやつですか」 そんなことわざあった覚えはない。 「過去なんて捨てちゃいましょうよ!」 「じゃあ、もし名前を知ったら死ぬなんて事があったら?」 「……え?」 「そう言うことだ。忘れてくれ」 「いえ、問題ないですよ」 は?問題ない? 死ぬかもしれないのに? 「私はもう死んでますから」 え? 今何て言った?死んでいる? あ、あり得るはずがない。 「さあ!過去なんて捨てて!私に教えちゃってください!」 は? 過去を捨てて? 何を言ってるんだこいつは。 過去を捨てろ? 何を言ってんだよ。 ふざけるな! 「黙れっ!!!」 八九寺が黙りこんでしまった。 やってしまった。 ……ごめん。 いまさら言っても遅いだろうがとりあえず謝るのが先だろう。 「問題ないですよ」 しまったな、つい頭に血が。 ……ていうかこれくらいでな。 落ち着きがない証拠だ。 「じゃあ、今度こそ行こうか」 「はい…」 【一日目/深夜/H-6骨董アパート前】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]落ち着きがない、八九寺に対する苛立ち。 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:殺し合いをする気はないし、あの爺さんをどうにかする気もない。 1:八九寺と行動。 ?:友が死んだら…? [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]戯言遣いに対する恐怖 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:殺し合いをする気はない。 1:戯言遣いと行動、でも怖い…。 2:阿良々木暦の探す。 [備考] ※傾物語終了後からの参戦です。 今、再び語られる物語 時系列順 ランドセルランドの虐殺劇 今、再び語られる物語 投下順 ランドセルランドの虐殺劇 0 はじまりはじまり 戯言遣い 一寸先は口!? START 八九寺真宵 一寸先は口!?