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共犯者(教範者) ◆ARe2lZhvho 東から昇る満月を左に、僕は伊織さんを背負って歩く。 デイパックで両手が塞がっているせいで地図を開くことはできなかったが、山火事のおかげで方向だけは間違っていないと確信できた。 地球温暖化がどうのこうのと叫ばれている現在、森林火災ともなればそれこそ温室効果ガスがなどと言われるのかもしれないががそんなもの命の前には二の次だ。 生憎というほどでもないが、文字通り自分に火の粉がかかりさえしなければ僕に関わる筋合いはない。 そもそも殺し合いが行われている場所で同行者のことならともかく、山火事を心配するくらいなら自分の身の心配をするに決まっている。 尤もなことを言ってしまえば、こんなことをやらせる主催がたかが山火事をどうにかできないとは思えないし。 僕のような平々凡々な高校生だけなら別として、玖渚さんのような人まで巻き込めるような奴らが。 ――どうも皆さん。時間になりましたので…… ……参ったな。 放送が始まってしまった。 できることなら放送が始まる前に辿り着いてからゆっくりメモをとりたかったのだが…… そうでなくとも、薄暗くなってきているし街灯が周囲にない今普通にメモを取るだけでも厳しいものがある。 ……あ、そうだ。 伊織さんが起きないよう気を遣いながら、ポケットにつっこんでいたスマホを取り出す。 本題に入るまでの話が長いという老人にはよくある習性のおかげか、録音機能を起動させるまでの間に大事な情報が読み上げられることはなかった。 それでも聞いておいて損はないのと、余計な雑音は入れない方がいいだろうと思って、足は止めておいた。 よく見たらメールの着信を示すアイコンがあった――これがさっき玖渚さんが言ってたメールのことだろう。 後で確認しておこう。 「…………ま、処置はこんなものでいいか」 その後、薬局に到着した僕は店内にあったソファーに伊織さんを寝かせると、外に出て手頃な枝を二本、切り落としてきた。 もちろん添え木にするためだ。 普通に生活していれば中々身に付く機会はないであろう骨折の処置の知識を僕が持っているのは、一度妹である夜月の足を折ったことがあるからだ。 これだけ言えば、妹に虐待を強いる酷い兄としか思えないだろうがこれにはちゃんと事情があった。 あったのだが、今になって思い返してみると妹の骨を折る必要はどこにもなかったわけで…… しまったな、まったく弁解になっていない。 やはり機会があったら昔の僕をぶん殴っておこう。 まあ、それはそれとして。 僕は考える。 先の放送について。 西東天 哀川潤 想影真心 西条玉藻 零崎双識 串中弔士 ツナギ 左右田右衛門左衛門 宇練銀閣 貝木泥舟 江迎怒江 死者はこの順番で呼ばれていたが、順番の法則性がわからない。 五十音順でないのなら可能性としては死んだ順番だろうか? だが、それもDVDを再生してみれば違うということがわかってしまった。 DVDのナンバリングは死んだ順番になっていたし。 ならば死んだ場所で区別しているのかと思えばそうでもない(ほぼ同じ場所で死んでいた人がいたし)。 となると、僕の凡庸な頭脳から導き出される答えは一つしかない。 ――僕達が知らない何か独自の法則が存在する もったいつけたが言ってしまえばわからないのと同義だ。 実は適当という可能性だってないとは言い切れないんだし。 これ以上考えても堂々巡りになるだけだと判断し、別のことを考える。 時宮時刻と、その前に日之影空洞という青年をもを殺していた和服の女と近くにいた学ランの男についてだとか。 ちなみに薄々予感はしていたのだが、時宮時刻が死ぬ瞬間を見ても何の感慨も湧かなかった、和服の女についても同様。 零崎軋識を殺した人物が最初は伊織さんのお兄さんである零崎双識と全く同じ外見をしていたのに白髪(とがめ、だったか)の女に変身していたことだとか。 ツナギと零崎双識が殺された映像と江迎怒江が死んだ(自滅した?)映像では途中から上空から撮影された映像に切り替わっていたのはどうしてなんだろうだとか。 串中弔士と貝木泥舟を殺した真庭鳳凰の右腕の威力に被害を受けることはなくてよかったと今更ながら安堵したりだとか。 禁止エリアの場所からして真庭鳳凰は逃げ遅れて今頃死んでしまったのだろうかだとか。 僕は考える。 今の僕にはそれくらいしかやれることがないから―― 「ぅ……むぅ……ふわぁ、……ぉはようございます……」 「おはよう。と言ってももう夜だけどね」 「起きたときにはおはようと言うものでしょう。……えーと、今何時ですか?」 「七時はとっくに過ぎてるよ。それと事後承諾で悪いけど伊織さんの持ってたDVDも全部見させてもらった」 「それは別に構いませんが、どうやって見たんですか?」 「鳳凰さんからもらったデイパック、あの中にノートパソコンがあったから使わせてもらった。他にも役立つものはいっぱいあったし後で分けようと思うんだけど」 「異論はありませんが……」 「どうしたんだ?口ごもって」 「いや、本題には入らないんですねえと思って」 ようやく目覚めた伊織さんと他愛のない会話を交わすが、やはり躱すのは不可避のようだった。 ふう、と一息ついて、告げる。 「……いいニュースと悪いニュース、どちらから聞きたい?」 「こういうときはいいニュースから聞くものじゃないですかねえ」 「そうかい……いいニュースは玖渚さん達も人識もまだ生きてるってことだ」 「で、悪いニュースは双識さんはもういない、と」 「それと、哀川さんも、だったよ」 僕とは関わりのなかった人だけに正直に言うならなんの感情も持てないのだが、それなりに気まずそうな表情で言う。 そんな僕の心情を知ってか知らずか、伊織さんはきょとんとした表情で、 「はあ、そうですか」 と答えただけだった。 その顔面の裏表のなさに拍子抜けした僕はつい訝しんでしまい、聞く必要もないことを聞く。 「……反応はそれだけか?」 「こう見えても驚いてはいるんですよ?でもどこか納得してるだけで。いくら哀川のおねーさんでも死なない保障はどこにもなかったんですし……ただ」 「ただ?」 「約束、破ってしまいましたなあって。人識くんに怒られちゃいますよう……」 殺人を犯してしまったことより約束を破ってしまったことを気にする様は一般的に見れば滑稽に映るかもしれないが、僕はそうは思わなかった。 ――僕も同類だし。 以前夜月から借りた推理小説を読んだときに『なぜ足し算や引き算をやるような感覚で人を殺すのか』考えたことがあったが今なら身に沁みてわかる。 ニュースなんかでよく見る『かっとなって殺してしまった』という理由の方がしっくりくるかもしれないが。 だからこそ、僕は未だに伊織さんと共にいるのだろう。 その道を先に行く教範者として――あるいは同じ道を逝く共犯者として。 かつて『世界対しに嘘をついた』から『世界から騙されている気がしている』ように、『殺す』ことを知ってしまったからこそ『殺される』ことを意識せざるを得ない。 りりすと箱彦もこんな気持ちだったのだろうかと今更のように思い知る。 もっと早く気づいていれば全てを間違えてきたようにはならなかったかもしれない――これも今となっては詮のない話だが。 だが、しかし。 「なんだ、それなら心配する必要はないさ」 「どういうことですか?」 「掲示板に貼られていた動画は8本しかなかっただろ?」 「一つが様刻さんのもので……つまり」 「まあ、そういうこと。先に破っていたのは人識の方だったからそこまで気に病むことはないよ」 人一人殺しておいて気に病むことはないとは大した言い種だが、正直な感想だしそう思ってしまうのも仕方がない。 彼女と親友が殺人を犯していたところで変わらず接し続けられるような人間なのだから――結局のところ僕というやつは。 「どっちにしたっていずれ死んでしまったらあの世で絶対に怒られちゃいますよう」 「いずれ死ぬとか人聞きの悪いことを言うなよ。……まあそのとき僕もいたら一緒に謝ってやるからさ」 「人間生きてればいつかは死ぬものですよ。たとえこの殺し合いをなんらかの形で乗り切ったとしてもいつかは死ぬときがやってきます。申し出はありがたいですけどね」 「……できれば普段から意識せずに過ごしたいものだけどね」 「そういえばどうして人識くんのこと知っていたんです?生きてたことじゃなくて、殺してたことの方ですけど」 「玖渚さんからメールが来てた。動画の方はおまけで宗像さんが目覚めるのがいつになるかはわからないからランドセルランドに到着するのが遅れるかもしれないってさ」 『おまけ』などと銘打っていたが、本来ならこっちも本題に匹敵するようなものだとは思うが。 というか、あえて僕がまだ伊織さんに伝えてない『本題』がなければ動画の方が本題になるのは間違いなかった。 罪を犯した映像を見せることで自戒させようだとか玖渚さんはこれっぽっちも考えちゃいないだろう。 僕がこういう人間であることを差し引いてもきっと微塵も思っちゃいない。 ただ、無いよりは有った方がいいから、伊織さんもいるから人識の情報を伝えるついで、程度で送ったんだろうなということくらいは十分予想できる範囲だった。 再確認するが、やっぱり玖渚さんは――異常だ。 人間なのか疑いたくなるくらいに。 「……遅くなるというのならもう少しここで休んでも大丈夫ですかね」 「できるだけ急いだ方がいいのは確かなんだけど……少しくらいならいいんじゃないか?」 「松葉杖や車イスはなかったんですよね?」 「薬局だからな、処方箋受付のコーナーにこうやってソファーがあっただけでも御の字だ」 「では交代しましょうか」 「交代?」 「様刻さんもお疲れでしょうし、ここで一度身を休めてみてはどうかと。具体的に言っちゃえば寝てしまえと」 休息は図書館でとったとはいえ、言われてみれば始まってからまともに睡眠はとっていなかったのを思い出す。 早朝に泣き疲れて研究所で少しだけ寝てしまっていたが、あれをまともな睡眠とは呼びがたい。 それに、いざ意識してしまうと途端に眠気が襲ってきた。 「……伊織さんがそういうならいいけど、何かあったらすぐ起こしてくれよ」 「わかっていますよう、でないと私もお陀仏ですし」 「ああ、それと、僕が寝てる間にDVDを見るなら別に反対はしないしスマホから動画を見たって構わない。放送も最初の部分は入っていないけど録音もしてある。 一度に情報を出し過ぎるのも、と思ってさっきは言ってなかったけど玖渚さんからのメールは絶対見ておくべきだね。 基本的に全部僕のデイパックの中に入っているし、首輪探知機もあったから周囲700メートルくらいは人が入ったらわかると思う。 そしてこれは余計なおせっかいかもしれないけど、伊織さんが一番見たがってるであろうDVDは26番で僕個人としてはオススメしないのが28番だ。 もちろん伊織さんが見たいというなら反対はしないけどね……他に質問は?」 「そこまで丁寧に言ってくださったのにあるわけありませんよう。まあ、何かあれば対応できる範囲でなんとかしますし無理そうなら起こしますから」 「うむ、ならよし」 そう言い残して僕は横になる。 窓から広がる空は山火事の影響を色濃く残し、一つも星は見えない。 膝枕などを狙うつもりは毛頭ないが粗相をしでかす事態を避けるために頭は伊織さんの方に向けておいた。 「おやすみなさい」 「おやすみなさい」 果たして、どちらが先に言ったのだったか。 どちらだったところで薄れる意識の中では些事にすぎないことだけど。 …………そういえば、昨日も満月じゃなかったっけ……? 【1日目/夜/G-6 薬局】 【櫃内様刻@世界シリーズ】 [状態]健康、睡眠、『操想術』により視覚異常(詳しくは備考) [装備]スマートフォン@現実 [道具]支給品一式×7(うち一つは食料と水なし、名簿のみ8枚)、影谷蛇之のダーツ×9@新本格魔法少女りすか、バトルロワイアル死亡者DVD(11~28)@不明 炎刀・銃(回転式3/6、自動式7/11)@刀語、デザートイーグル(6/8)@めだかボックス、懐中電灯×2、コンパス、時計、菓子類多数、 輪ゴム(箱一つ分)、首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1、ノートパソコン@現実、けん玉@人間シリーズ、日本酒@物語シリーズ、トランプ@めだかボックス、 鎌@めだかボックス、薙刀@人間シリーズ、シュシュ@物語シリーズ、アイアンステッキ@めだかボックス、蛮勇の刀@めだかボックス、拡声器(メガホン型)@現実、 首輪探知機@不明、誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、デザートイーグルの予備弾(40/40)、 「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、ノーマライズ・リキッド、チョウシのメガネ@オリジナル×13、小型なデジタルカメラ@不明、三徳包丁@現実、 中華なべ@現実、マンガ(複数)@不明、虫よけスプレー@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、おみやげ(複数)@オリジナル、 食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、『箱庭学園で見つけた貴重品諸々、骨董アパートと展望台で見つけた物』」 (「」内は現地調達品です。『』の内容は後の書き手様方にお任せします) [思考] 基本:死んだ二人のためにもこの殺し合いに抗う(瓦解寸前) 0:zzz……。 1:休んだら玖渚さん達と合流するためランドセルランドへ向かう。 2:時宮時刻を殺したのが誰かわかったが、さしたる感情はない。 3:僕が伊織さんと共にいる理由は……? [備考] ※「ぼくときみの壊れた世界」からの参戦です。 ※『操想術』により興奮などすると他人が時宮時刻に見えます。 ※スマートフォンのアドレス帳には玖渚友、宗像形が登録されています。また、登録はしてありませんが玖渚友からのメールに零崎人識の電話番号とアドレスがあります。 ※阿良々木火憐との会話については、以降の書き手さんにお任せします。 ※支給品の食料の一つは乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。 ※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前、エリアの境界線が表示される。範囲は探知機を中心とする一エリア分。 ※DVDの映像は全て確認しています。 ※スマートフォンに冒頭の一部を除いた放送が録音してあります(カットされた範囲は以降の書き手さんにお任せします)。 すうすうと寝息をたてる櫃内様刻の横で無桐伊織は食い入るようにスマートフォンの画面を見つめる。 放送の内容も一度聞けば十分だったし、既に本人から教えてもらっていることをわざわざ見る必要もないと『病院坂黒猫』のファイルは再生すらしていなかった。 人を殺すという行為は思ったより気持ちが悪いということを伊織は身を以て知っている。 故に消去法で彼女が何度も再生を繰り返すのは『匂宮出夢』とタイトルがつけられたファイルのみ。 最初は自身のよく知る顔面刺青の青年だけを見ていた。 12時間以上前のこととはいえ、彼女にとってはやっと確認できた姿であることは間違いない。 まずは健在を喜んだ。 続いて、今まで目にする機会がなかった彼の戦闘技術に感心した(以前に哀川潤と共闘したときは圧倒的すぎて手も足も出なかった)。 いつしか、焦点が相手の女性に移っていく。 「……人識くんがやたら言ってた出夢って人、こんな方だったんですねえ……」 感慨深げに呟き、思いを馳せる。 今まで知ることがなかった新たな一面を知ったことで思うことはあるのだろう。 「……キスまでしちゃって……電話して冷やかしてあげちゃいましょうか――なんちゃって」 玖渚からのメールには零崎人識の電話番号も添付されていた。 必要な情報が埋もれるのを避けるために最後に回したのは様刻の配慮だったらしい。 「そういえばランドセルランドの番号も持ってましたし、人識くんがいるかもしれないのならそっちに電話するのもありかもしれませんが……」 聞く者はいないとわかっていても口を動かすことはやめない。 「……それにしても、双識さん、半信半疑でしたがいたんですねえ……哀川のおねーさんだって人類最強じゃなかったんですか……なんで死んじゃったんですか……でも……」 独白する声が滲んでいく。 「……人識くん……本当に、本当にっ、無事でよかったですよぉ……っ」 思いが、溢れる。 が、その目から雫が零れ落ちることはない。 その選択肢を選んだとしても今はそれを見る者も咎める者も誰もいないというのに―― 【1日目/夜/G-6 薬局】 【無桐伊織@人間シリーズ】 [状態]両足骨折(添え木等の処置済み) [装備]『自殺志願』@人間シリーズ、携帯電話@現実 [道具]支給品一式×2、お守り@物語シリーズ、将棋セット@世界シリーズ [思考] 基本:零崎を開始する。 0:………… 1:曲識、軋識を殺した相手や人識君について情報を集める。 2:様刻さんが起きたら玖渚さん達と合流しましょうか。 3:黒神めだかという方は危険な方みたいですねえ。 4:宗像さんと玖渚さんがちょっと心配です。 5:人識くんとランドセルランドへの電話は…… [備考] ※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。 ※黒神めだかについて阿良々木暦を殺したらしい以外のことは知りません。 ※宗像形と一通りの情報交換を済ませました。 ※携帯電話のアドレス帳には箱庭学園、ネットカフェ、斜道郷壱郎研究施設、ランドセルランド、図書館の他に櫃内様刻、玖渚友、宗像形が登録されています。 ※DVDの映像は匂宮出夢と零崎双識については確認しています。他の動画を確認したか、またこれから確認するかどうかは以降の書き手さんにお任せします。 不死鳥(腐屍鳥) 時系列順 一足一動 働物語 投下順 一足一動 きみとぼくのずれた世界 無桐伊織 三魔六道 きみとぼくのずれた世界 櫃内様刻 三魔六道
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夢の『否定』 ◆xzYb/YHTdI 「う、うぅぅ~。やっぱり夢なんかじゃなかった」 そういっているのは否定姫。 金髪に豪華絢爛の衣装に身を包む彼女は少し眠たそうだった。 というか今まで眠っていたのだから当たり前かもしれない。 えっ?なぜかって? そういう君たちの為に数刻前の彼女の様子を見てみよう。 ◇ ゲーム開始直後。 彼女はこう言っていた。 「ああもう!なんでこうなるのよ!七花く~ん。し・ち・か・く~~ん! 助けてよ~。何で誰もいないのよ~。利用すらもできないじゃない! あの女じゃないけどわたしは一人だと何もできないわよ」 あくまで利己的な彼女の言い分に耳を傾ける者は誰もいなかった。 彼女は一人ぼっちで佇んでいた。 その後ろ姿にはなにやら色々な気持ちを背負っていた。 「否定する。わたしはこの現実を否定する。そうこの現実はきっと夢か何かよ。そういうときは確か…」 そう言うと、彼女は自分の頬をつねる。 しかし夢は覚めなかったようだ。顔が青ざめていく。 「そ、そうよ。こういうときは夢の世界で眠ると、 現実世界に帰れるようになっているのよ。きっとそうよ。 そんな噂、確かどっか聞いたことがあるわ」 そんな噂聞いたこともないが、彼女はこの現実を否定するのに精一杯のようだった。 そして彼女は眠りについた。 ◇ 「う、うぅぅ~。やっぱり夢なんかじゃなかった」 彼女は奇跡的に殺されていなかった。 運がよかったのかもしれない。 しかしそれにしても、やっぱりということはある程度というか まぁここは現実だってことはわかっていたんだろう。 ただの現実逃避にすぎないことは彼女自身はよくわかっていたのだろう。 だけど彼女は否定した。 彼女が否定姫と呼ばれる由来通りに。 肯定しなかった。したくなかった。 だけどさすがにもう逃げることは無理だろう。 それも彼女はわかっていた。 「よし、そうね。まずは七花くんでも探そうかしら」 彼女はこの現実を肯定したのであった。 【1日目/黎明/H―8】 【否定姫@刀語】 [状態]健康、軽い眠気 [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:殺し合いや主催者を否定する 1:七花くんはどこにいるのかしら [備考] ※本編終了後からの参戦です。 後悔と決意 時系列順 破壊臣に墓石 後悔と決意 投下順 破壊臣に墓石 START 否定姫 悪意の裏には善意が詰まっている
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Q&A(玖&円) ◆xR8DbSLW.w 《登場人物紹介》 鑢七実(語り部)―――――虚刀流 八九寺真宵(語り部)―――迷い牛 ぼく(語り部)――――――傍観者 ◎ 加害者面するなよ ◎ 「それで、どういうことですか。説明してください」 月は降りはじめ、徐々に朝日が姿を見せる。 朝だ。 1日の始まり。 軽く首を鳴らす。 まだ少し肌寒い。昨日もこんなに寒かったか? 覚えていない。 ホットコーヒーを一口含む。 パーティというには白けた雰囲気。 賑やかな露店が軒を連ねるストリート。 成果物を確認し、少し話し合った後、ぼくたちは各々散らばってこれからに備えている。 色々あった。 心を揺さぶる何かはあった。 しかしとりあえず今は。 櫃内様刻。彼の動向を待たなければいけない。 一度この場を離れたようだけど、だけど、それでも、待つという姿勢は必要だった。 人間未満が粉々に砕いたチュロスをちまちま食べているのをはた目に、 真宵ちゃん――八九寺真宵ちゃんが、てくてくと寄ってきては苦虫を噛み締めた表情で説明を求めてきた。 「ああ、そうだね。ER3出身のぼくが織りなすレピュニット素数の証明だろ? 任せろよ、数字の基本にして基礎。入門にして最奥。人類の叡智の結晶たる壱の神秘について解説するぜ。 七愚人も膝を打つぼくの話術についてこれるかな」 「そんな話はしておりません」 「してたよ」 「してないですよ」 「だっけ?」 「です」 今、真宵ちゃんと話をするならこれしかないと断じていたけれど、 そこまで強く否定されてしまってはぼくも立つ瀬がない。 やれやれ、こどもの我儘に付き合うのも大変だな。 レピュニットなんて優しい語感、小学生女児にはたまらないはずじゃ? 半濁音だぜ? 崩子ちゃんなら誰もが見惚れる無表情で受け答えしてくれただろうに。 戯言だ。 世迷言でさえある。 では何の話をしてたんだ、ぼくは。 忘れたな。ぼくの記憶力だ、さにもあらん。 けれど思い返す間もなく、横から答えが投げかけられる。 「――玖渚友さん、の話ではないですか」 鑢七実。 小柄な見た目や、肉付きの薄い――病的以上に退廃的でさえある細身の身体から、 ついつい「七実ちゃん」だなんてフレンドリーなファーストインプレッションを済ませてしまったけれど、 実際のところぼくみたいな若造には及びもつかない最年長だ。 さすがに800歳とは言わないにせよ。 場の空気を読む――読んで、見ることもお手の物らしい。 目敏いものだ、まったく。 「人間未満のことは?」 「……あなたたちとも仲良くやってね、とのことですので」 「それでこっちに? 律儀ですね」 「それに、羽川翼さんともお話をなさりたそうでしたので」 ふうん。 確かに――二人は何か話しているようだ。 翼ちゃんも人間未満が散らかしたチュロスの一欠片を何食わぬ顔で味わい、相伴にあずかっている。 委員長な見た目のわりに、汚い食べ方を叱るというわけではないようだ。 言っても聞かなかっただけかもしれないが。 と、雑談をしていても、本題が逸れることも当然なく。 「それで」 と、真宵ちゃんが仕切り直す。 学習塾跡で抱いたはずの苦手意識があるだろうに、鑢七実を前にしても引かず。 随分と強かになったものだ――いや、あるいはこれが彼女本来の強かさなのかもしれない。 強がりではない、彼女の強さ。 目が合う、逢う、遭う。 「どういうことですか、と聞いたんですよ。戯言さん」 八九寺真宵は、同じ質問をぼくに投げかけた。 だからぼくは粛々と答える。 「どうもこうも、過ぎてしまったことはどうにもならない」 「どうしてそう、平然としていられるのですか」 「平然ではないさ、別に。ただ、どうしても、実感がわかないだけで」 同じ答えの繰り返し。 実感がない。掌から零れる水のように、実体がない。 玖渚友の死に。 だから、そう。 だから。 だけど。 だけど、真宵ちゃんは。 ぼくの目を見つめたままに。 「戯言ですよ、それは」 端的に、ぼくの言葉を切り捨てた。 「戯言さん。 戯言遣いさん。 あなたは自分のことを多く語ろうとしませんよね。 騙ってばかりで。 取り繕うばかりで。 嘘か真か、信頼に足るかも怪しい曖昧な言葉を遣って。 もしかすると、自分でさえ自分の心がわかってらっしゃらないかと思うほどに。 それでも。 車の中で語ってくれた玖渚さんの話。 先ほどお話しいただいたこれからの話。 そして、これまでのお話。 楽しく語るあなたではありませんでしたけれど、 これらの話は本当に心の底から抱き、真摯に伝えようとしたことだって。 私はそう思うんです。感じるんです。 そう、信じたいのです。 人が神様に願うように。 人が怪異に縋るように。 私は人間を信じたいんでしょう。 阿良々木さんを信じていたように、あなたという人間を。 あなたは多くの現実を殺してきた。 人であれ、独であれ、者であれ、物であれ、 関係であれ、奸計であれ、創造であれ、想像であれ。 多くの墓標の上に生きてきた――とおっしゃりましたよね 「多くの死。 多くの屍。 良いも悪いも関係なく。 すべてがおしまいに近づいていく。 幽霊であるわたしなんかよりもよっぽど、 あなたは物事の死に近かったんじゃないですか? あなたの欠落が招くままに。 あなたの欠損が誘うままに。 あなたの欠陥が障るままに。 誰かが死んだときも冷静でいられたあなたの姿に。 冷静に立ち合うあなたの態度に、 冷徹に立ち回るあなたの勇姿に、 冷血に立ち上がるあなたの覚悟に、 わたしは助けていただきました。 ありがとうございます。 ありがとうございました。 「けれど、その冷静さ。 異様なまでの冷徹さ。 温もりなどない冷血さ。 あなたは見て見ぬふりをしたから耐えられたというのですか? わたしのように。 幽霊になってまで死を受け入れられなかったように。 阿良々木さんが死んだことを受け入れきれず、多大なご迷惑をかけてしまったように。 誰よりも死と等しいがために、死に現実味がなかったわたしと、戯言さんは一緒だったのですか。 違うでしょう。 知ったようなこと言わせていただきますけれど、違うはずです。 戯言さんは死を受け入れてらっしゃいました。 重々しくなくとも、決して軽々しくはなく。 あるがままに、あるように、受け入れてきましたよね。 死を否定し、拒絶し、排斥する人ではなかったでしょう。 誰かの死を聞いては、『ぼくが悪い』と背負い込んでました。 死が当然であり。 死が必然であり。 死が身近であり。 死が隣人であり。 死が恋人である戯言さんにとって、 死とは驚愕に値するものではないかもしれません。 誰よりも死を肯定できてしまうからこそ、認めざるを得なかったんでしょう。 ツナギさんの最期の言葉を聞き、正面から受け止めていた戯言さんを、わたしは隣でしかと見届けました。 電話越しでも。 ツナギさんの死を背負って。 主人公になると、わたしたちを守れるようにと。 「それで、最後にもう一度だけ聞きますけれど」 一拍おいて。 三度目の正直。 三度目の戯言。 「一体どういうことなんですか、戯言さん」 真宵ちゃんは問うのだった。 ◎ 「――あなたは目を閉じないのですね」 真宵ちゃんの問い掛けに。 ぼくはなんて答えたのだろう。 意識はこんなにも統率されているというのに、まるで夢うつつのようだ。 夢なのか? そんなわけがあるか。 こんなにも空気が冷たい。 実感がないなんて嘘――そう、まさしくその通り。 ぼくにとって死とはなんてことはなく。 超常あらざる日常として隣り合わせだった。 最愛の妹がいなくなってしまったのも。 真心がER3で死亡してしまったのも。 結局のところぼくの生活においては延長線上の出来事であって。 この一年の間でも。 多くの死と向かい合ってきた。 孤島で天才が無情に死んだ。 大学の級友が無駄に死んだ。 異常な学生が無謀に死んだ。 異様な学者が無影に死んだ。 表裏の兄妹が無惨に死んだ。 愚昧の弟子が無為に死んだ。 死んだ。 死んだ。 誰も彼も。 良いも悪いも。 酸いも甘いも。 強いも弱いも。 関係なく。 関連なく。 死んだ。 終息した。 収束した。 わかる。 そうだよ。 嫌悪感も。 嘔吐感も。 抱くかもしれない。 だとしても、ぼくにとって死とは受け入れて当然のものだった。 だからこそ、不思議だ。 姫ちゃんの死にあれほど取り乱したぼくが、 どうして友の死を悼めないのだろう。 いや。 悼んではいるのか。 傷んではいるのか? 労ってはいるのか? でも感情ってなんだっけ。 ぼくは今何をしてるんだ? そう遠くない昔。 過去の出来事。過ぎた記憶。 屋上で友と喋った。 城咲の、彼女の自室のあるマンションの屋上のフェンスで。 《屍(トリガーハッピーエンド)》の用意した最期の邂逅。 好きだと言った。 好きだと言われた。 必要だと言った。 必要だと言われた。 鞘と刃。 枷と鎖。 拘束と束縛と呪縛。 《青色サヴァン》について。 いろいろ話した。 色んな話を聞いて、伝えた。 でもあの時は無駄だった。 一緒に生きようと言ったのに、ぼくたちは反対の道を歩んでしまった。 一緒に死んでと言われたのに、ぼくたちは反発の傷を与えてしまった。 ボタンを掛け違えていた末路。 最初から間違っていた。 最後まで無様で、滑稽で、惨めだ。 あの時。 友がにこやかに別れを告げた時。 別れを――すなわち呪いからの解放を選んだとき。 ぼくは動き出した。 ぼくは変わる。 憎くて恋しくて嫌いで大好きな最愛の友と誰かを較べる人生から、ぼくの凡庸な人生へと。 変えるという気持ちが他殺であるならば、ぼくは紛れもなく殺された。 かつてのぼくはもはやどこにもいない。 それから、ぼくは友を死んだものとして扱っていた。 嘘かもしれないけれど、本当だった。 本当のような嘘だった。 ぼくはすっと受け入れていた。 受け入れるしかなかったから。 我ながら驚くほどに。 パニックとは無縁に。 薄情なほど酷薄に、それでもぼくのどこかに、ぽっかりと穴が開いたような心地だった。 だから。 今。 ぼくが取り乱さないのは必然とも言える。 友との別れは既に乗り越えたことだ。 タイミングを逸していただけで、ぼくと友との話はもともと終わっている。 だから。 真宵ちゃんの質問にぼくはこう返そう。 どういうこともなにも、あるべき形に収まっただけなのだからと。 元の鞘に収まった。ただそれだけの話である。 だから。 本当に? 哀川さん――潤さんなら今のぼくを見て、どんな風に蹴っ飛ばしてくれるのだろう。 「そう、あなたは泣かないのね」 七実ちゃんがなにか言っている。 泣く――泣く? すっきりさせる行為のことか? どうだろう、寝起きの時にはしているかもしれないけれど。 それが一体どうしたという。 「禊さんに近しく、同時に対称に位置するいっきーさん。 有象無象の雑草にも劣るほど弱く、それゆえに強いあなたと少しお話をしましょう」 柄ではないですが。 禊さんの頼みでもありますので、と。 ぼくの真正面に立つ。 ちなみに真宵ちゃんはぼくの隣にいた。 お茶を飲みながら、椅子に座っている。 もしかしたら、ぼくの返事を待っているのかもしれない。 「いっきーさん」 見つめられる。 儚い光を湛えた双眸は、ぼくの目を射抜く。 冗談のように寒気がする。 見透かされているような。 見抜かれているような。 看取られているような。 おそろしくおぞましい悪寒。 浅く息を呑む音が隣から聞こえる。 「やれやれ、蛇に睨まれた蛙の空々しさを味わった気分だ」 「蛇に睨まれたら人間でも怖いでしょう」 「そりゃそうだ。見守られるのならともかくね」 「蛇は古くから神様との結びつきが強いといいます。蛇が見守るというのも案外道理を外してはいないかもしれないわ」 よく知らないけれど、と。 七実ちゃんは他愛のない話を打ち切る。 可愛げのないことだ。 とはいえぼくに服従しているわけでもなし。 彼女は一帯の警戒を緩めることなく、静かに語る。 「あそこにばらされております日和号――その正式名称をご存知でしたね」 「……微刀『釵』って聞いたかな」 「ええ、完成形変体刀が一振り、微刀『釵』。それが日和号の本来の銘ということになるのでしょう」 人形が刀だなんて奇妙な話ではあるけれど。 同じように、変人奇人の奇行に意味を見出すのも奇怪な行いとも言えるのだろう。 その刀鍛冶を確か、四季崎記紀といったか。 戦国の世を鍛刀をもってして支配した鬼才――。 「理解に苦しむ刀工、四季崎記紀も人を愛したそうです」 どんな奇人であれ、人を愛することだってあるだろう。 生殖の本能。 あるいは人間の本質。 恋し、愛す。 つがいになるために。 生きるために。 ぼくも愛していた。 あいつを。 憎いほどに、憎々しいほどに、憎たらしいほどに。 玖渚友を愛していた。 そのはずだった。 「偏屈な刀鍛冶は愛するあまり、その女性を模した刀を鍛造しました。 贈呈するでもなく、餞に渡すものでもなく、愛したという証を残したといいます」 「つまりそれが、日和号だと?」 「ええ。『釵』とは女性の暗喩。微とはすなわち美の置き換えであり、 本来の銘を微刀とするならば、根源の銘は美刀――口にするのも恥ずかしいですが」 「刀に名づけるには、些か型破りな銘だ」 「きざ、もといロマンチックなお方ですね」 「名は体を表す。一方的に懸想される女性にしてみれば甚だ迷惑極まりないですが、それもひとつの愛の形でしょう」 芸術とは表現であり、体現だ。 作品を紐解けば、表出するのは思想であり、理想であり、懸想である。 鴉の濡れ羽島で会った天才画家――スタイルを持たない画家と称された彼女の作品にも思いは込められていたのか。 突き詰めれば刀鍛冶も表現者の一員であり、 そうであるならば四季崎なる刀鍛冶が女性を《打った》としてもなんらおかしな話ではない。 思い返せば、日和号の容姿は確かに女性らしさが垣間見えた。 おしろいを塗り、口紅を添えたような、一端の女性として。 ――そんな裏話を知っていてなお、ぞんざいな扱いを出来る七実ちゃんの胆力も大したものだ。 「どんな腐った人間であれ、愛を表現することもあるということよ」 愛。 愛の表現。 ぼくの言葉は、お前に届いていたのかな。 戯言遣い、一世一代の偽らざる気持ちだったのだけれど。 いない。 玖渚友は、おそらくもういない。 おそらくなんてつけるからダメなのか? 仮に放送で名前が呼ばれたとして、ぼくは同じようなことを言うんじゃないか? 放送で名前が呼ばれたからなんだ、と。 戯言だ。 間抜けな戯言だ。 真庭鳳凰に与えた戯言が巡り巡ってぼくにまで帰ってきたような錯覚。 しかしまあ、なんというか。 七実ちゃんは楽しそうだ。 当然それはぼくとおしゃべりしているから、なんてつまらない理由からではないだろう。 「そういう七実ちゃんは、誰かを愛してるんですか?」 「はい、彼を――禊さんを愛することに決めたわ。一目惚れ――というものなのでしょう」 告げる七実ちゃんの表情に、感情が乗っている気がした。 人間未満の様子といい、ぼくたちが別れてから色々あったらしい。 まあ、学習塾跡で露わにさせた狂態を表さなければ支障はない。 ぼくはどんな表情をしているんだろう。 わからない。どんな表情を浮かべればいいんだ。 それで、本題なのだけれど、と七実ちゃん。 「そして、彼に惚れようと決めた時。すなわち禊さんの死を前にして――わたしは泣いていたの」 すべてを見通す目を閉じて。 人間未満の死に泣いたのだと。 泣いている七実ちゃんの姿などおよそ想像もできないけれど、 ひるがえるに、ぼくには想像もつかないほどの思いが、七実ちゃんの中で発生した。 たがが外れるほどの愛を自認したのだ。 泣いたことによる愛の発露。 泣けたことによる愛の自覚。 刀というには、あまりにも人間のような仕草だった。 「そして彼女――今生の好敵手を喪った時、禊さんもまた、泣きそうな顔で動転していたわ」 「あの人がですか?」 「ええ、禊さんが、です」 格好つけない未満と遭遇した時間はわずかではあった。ただ、理解できる。 装いを解いた人間未満であるならば、動転のひとつぐらいしても可笑しくないだろう。 あの時の彼はどうしようもないほどに傍迷惑(マイナス)ではあったが、腐ってはなかった。 不貞腐れてなどいなかった。 真っすぐに曲がった性根であれば。 内なる気持ちを曝け出すこともあっただろう。 彼の真実。 彼の偏愛。 大嘘つきの、飾らない思い。 「…………まあ、ワンパターンというのも恐縮ですが、それでいうならわたしも泣いてましたね」 「ああ、うん」 「その節はご迷惑をおかけしました」 「――いや、こちらこそ」 真宵ちゃん。 振り返ってみると、 巨大なる大英雄の死を目の当たりにし、 代替の効かないお友達の死を知らされて、真宵ちゃんも泣いていた。 その姿は記憶に新しい。 頑張ると決めて。 暦くんが易々と死んでしまったことを後悔するぐらいに楽しく生きてやると。 家に帰ると決めた、覚悟の涙。 さようならの涙。またいつかの雫。 友愛の結実だった。 「とりたてて、いっきーさんの挙動がおかしいという旨を伝えたいのではございません。 わたしでさえ、自分が人の死で泣くだなんて想像だにしていませんでしたから」 「いや、いいんですよ。七実ちゃんたちの反応の方が健全なんだと思う」 「ああ、慰めたいわけでもありませんので」 「……じゃあどういった用件なんでしょう」 「最初にお伝えした通りですよ。お話をしましょう」 一呼吸を入れて。 今までお話したのは、彼女にまつわる愛の話。 だとするならば、今から物語るべきなのは。 「わたしが聞きたいのは、あなたのお話です。――あなたの愛の話です。 いっきーさんの経験ならば、禊さんの糧にもなりましょう」 「空っぽなのはお互い様ですよ、おそらくね」 「それならそれで構いません。――わたしの裁量で迷い子を誘うだけですので」 ふうん、ずいぶんと好かれたものだ。 四季崎記紀の愛にはまるで興味を示さなかったのに、ぼくなんかの愛に興味を示すとは。 厄介(マイナス)も迷惑(マイナス)も変わってないにもかかわらず。 芯がぶれているというのに。――ぶれているのはもしかしてぼくもなのか? 七実ちゃんの要望に一瞬たじろぐぼくの様子を見かねたのか、真宵ちゃんも乗じてきた。 「戯言さん、勘違いをして欲しくはないんですけれど、わたしは別に責めているわけでも、詰っているわけでもないんです。 ドライな対応をせざるを得ない――あなたの生き様を否定したいのではないのです」 ただ、と。 あなたが、なにかに迷っているのなら。 それに寄り添うのがわたしの役割ですから、と。 「戯言さん。わたしにもお聞かせください、改めて。 戯言さん自身の気持ちを整理するためにも、もう一度。玖渚友さんについて、あなたから。 そういう寄り道ぐらい、いいんじゃないですか?」 みんな好き勝手言って。 まるで悲しむのが当たり前みたいな空気を作って。 悲しんでるさ、ぼくだって。 これは優先順位の問題であって。 ぼくは生きると決めたから。 大切なものが増えすぎてしまったから。 友の後を追うことが出来ないだけで。 前を向くしかないだけで。 現実を見るしかないだけで。 ――笑って生きていくしかないだけで。 それすらも戯言なのか。傑作なのか。大嘘なのか。 同じことをずっと考えている。 ぼくの思考は円を描くように、9の字を描くように、渦を巻く。 ぐるぐる、ぐるぐる。 蝸牛のように。渦は広がる。 考えれば考えるほどに、渦から逃げ出せない。 しようがない。 だったならば。 どうせ様刻くんの決断まで――放送まで時間はまだ残っている。 落ち着くためにも、ぼく自身のためにも。 現実を見るために、ぼくは語ろう。 他愛のない、愛の話を。 「始まりは復讐だった」 ◎ しかし。 些か不思議なものですね。 彼女――八九寺真宵に対して。 見れば見るほど、ただの少女――むろんのこと、黒神めだかにも感じた怪異性なる異常性はあるにせよ――肉体も精神も、取るに足らない雑草に違いはないはずですが。 ――ならば、その怪異性にこそ、意味が、意図があるんだろうよ なるようにならない最悪。 視れば視るほど、引きずり込まれるような深淵。 直視してはいけない。 人間の生存本能に背く存在。 されどわたしは彼を見る。 禊さんと相似にして背反する存在を。 欠けているものが多すぎる。 そのために、心がくすぐられる。 そわそわと、ぞわぞわと。 なでるように、さかなでるように。 首を絞められるようだ。 そんな彼。 戯言遣いなるいっきーさんに。 一日以上付きっ切りになってなお、 まるで変わらない。 廃墟で見かけた時から。 記憶を消された時から。 今に至るまで。 根底にあるものは変化していない。 記憶が戻って、なお。 正気、なのでしょうか? 既に正気を喪失されているのかしら。 いえ、いえ。 八九寺真宵の孕む少女性はその実一切揺らいではおりません。 こどものように喜び。 こどものように悲しみ。 こどものように許し。 こどものように恨む。 禊さんを睨むようにするその視線は感心しませんが、 ただ、それだけ。 憎悪に塗れるでもない。 忘我に染まるでもない。 わたしたちと廃墟で出遭ったとき。 癇癪の末に同行者から逃げ出したと聞きますが、癇癪程度こどもの所作の範疇にすぎません。 ――まったく、こどもとは変化をする象徴でしょうに。 斬って捨てようかしら。 冗談ですが。 今のところ。 「わたしは変わりませんよ。――変われません。いくら受肉をしようとも、わたしはしょせん怪異ですから」 怪異は名に縛られる、というのは四季崎記紀の言。 変わったが最後、――本分を忘れたが最後、無窮の監獄――《くらやみ》とやらに飲み込まれるそうで。 どうでもいいですけれど、悪いですけれど。 あれから少し、お話をすることとなりました。 ほんの少し、些細な接触。些末な折衝。 「鑢七実さん」 「なんでしょう」 「わたし、あなたを許せません」 「そうでしたか」 「人を殺して楽しいですか」 「さて」 「だったらなぜ」 「あなただって、飛んで回る羽虫は鬱陶しいでしょう」 「わたしにはあなたたちが理解できません」 「ええ、当然のことです。 ですが、それでいうならいっきーさんのことだって、理解できたりしないでしょう」 「お言葉を返すようですが、それも当然のことなのですよ、七実さん。 人が人を理解できないように、怪異だって人を理解できているわけではありません」 「その割に口幅ったく進言したようですが」 「ご存じないですか? 怪異って存外にいい加減なんですよ。相手のことを知ったかぶって、憑りつくのです」 「いい迷惑ね」 「知ってます。怪異なんてもの、本来遭遇しない方が良いに決まってます」 「なら離れればいいじゃない」 「おっしゃる通り、本来そうするのが正しいのでしょう。 わたしが足を引っ張っているのは事実ですから。あなたに襲われたことも含めて」 「あなたがいなければあの大男ももう少しうまく動けたでしょうに」 「……日之影さんには申し訳ないことをしてしまいました。 ツナギさんにも、戯言さんにも、頭が下がるばかりです」 「そうね」 「――玖渚さんがお亡くなりになったことに実感が持てない理由があるとするならば、 彼が彼女に対して何もできなかったことも、要因として大きいのだと思います」 「……」 「この六時間、わたしたちはこのランドセルランドに待機をしていました。 そういう手筈だったから――ですが、もしもわたしたちがいなければ、戯言さんは違う行動もとれたでしょう」 「少なくとも、あなたは、体調が優れないようですが」 「七実さんほどじゃないでしょうけれど――わたしが熱で倒れたりしなければ、と思わずにはいられません」 「思い出しましたが、いっきーさん主人公がどう、とおとぎ話のようなことをおっしゃっておられましたね」 「はい。ですが実際のところ、どれだけ議論を重ねようと、意味はありません」 「まあ、元来主人公というのは目的を指す言葉ではないでしょう」 「その通りです。主人公とは善であれ悪であれ、行動を起こしてなんぼの役職でしょう。 それで、戯言さんがこの一日やっていたことはどれほどありましょう」 「あなたの子守に他ならないのではないですか?」 「まったく自分でも恥ずかしいですが、言葉もありません。 おかげで、事の中枢にはまるで関われなかった。 知らない間に、話は勝手に始まり終わっている。あなた方の馴れ初めを知らないように」 「右往左往して、さながら迷子のようね」 「迷子であり傍観者です。無駄足ばかり踏んで、ヒロインを助けられない主人公がどこにいますか」 「いるでしょう、どこかには」 「共感を得られない作品のことなんて知りませんよ」 「あなた、相応数の方を敵に回しましたね」 「こういうのは王道でよいのです。奇を衒う必要なんてないんです」 「はあ、あなたの持論はどうであれ、でしたらなおのこと、あなたはどこかへ行けばいいのではないですか」 「――事が済めばそれもいいでしょう。いつまでも迷惑をかけるわけには参りません。ですが、仕事はやり遂げなければ」 「ああ、先ほどいっきーさんにおっしゃっていた――」 「はい。わたしは迷いへ誘う蝸牛ですけれど、――裏を返せば迷子に寄り添う怪異ですから」 「ふうん――それで。結局。 いっきーさんを助けたいとでもいうのかしら」 「そうしたいのは山々ですが、戯言さんが自分で答えを見つけられますよ、きっと」 「主人公として――とでも?」 「いいえ、一人の人間として」 どうか、わたしたちの帰り道を阻まないでくださいね、と。 八九寺さんは言う。 それはこちらの台詞なのだけれど。 迷子の禊さんのともにあるのはわたしなのですから――。 刀として、仕えましょう。 女として、支えましょう。 刃こぼれを起こす前の七花は、とがめさんに四つの誓いを立てたそうだ。 とがめを守る。刀を守る。己を守る。――そして、己を守る。 軍所の出身のわりにとがめさんも甘いことをおっしゃるのだなと感じたものですが、 わたしもずいぶんとぬるま湯に慣れてしまったようですね。 禊さんを助け、守る――ただそれだけを誓って。 とりたてて意味のない幕間はこれにておしまい。 放送の時間でした。 ◎ ――生きたいと願った。 阿良々木さんがばかばかしくて笑っちゃうぐらい楽しく生きたいと、わたしは希う。 ですが、本来、それは過ぎた願いなのです。 わたしは死んでいますから。 とうの昔に。 殺し合いなんかとは関係なく。 脈絡もなく、わたしは死んでしまったのです。 阿良々木さんに『助けていただいた』――なんていうと忍野さんや阿良々木さんは否定されるかもしれませんが、 ともあれ、お声をかけていただいた母の日に、わたしは『迷い牛』としての束縛から解放されました。 地縛霊から浮遊霊に昇格――。浪白公園の辺りを迷い、いったりきたり、そんな生活とはおさらばしました。 阿良々木さんとお話できた三ヶ月間、わたしは楽しくて、嬉しくて、満足しています。 ともすれば、成仏してしまいそうなほどに。 殺し合いが始まる前でしたなら、消えるとなっても受け入れられたでしょう。 怖くても、きっと。わかんないですけど。 でも、もう充分与えられてきましたから。 都合よく――わたしは生きていた。現世に留まり続けている。 ですがそれは厳正なる結果というわけではないのでしょう。 怪異は存外にいい加減だから、今はまだ見逃されているだけであって、 世の摂理がきっと、こんな反則を認めることはないのです。 怪異は名に縛られる――阿良々木さんの主にして従者、傷を分け合った吸血鬼のなれの果てを忍野忍と改名させたように。 迷い牛は人を迷わせる怪異。 迷わせもしないわたしはつまり、迷い牛ではないのでしょう。 それなのに、わたしはまだここにいる。 わたしを救ってくれた阿良々木さんや戦場ヶ原さんを差し置いて。 幸運に、幸運を重ねて。 のうのうと。 一度記憶を失ったからか、ちょっとばかり俯瞰的に――蝸牛にあるまじき鳥瞰的な視野で物事が見える。 七実さんとお話させていただいて、改めて実感しました――突きつけられる。 わたしが足を引っ張っている、というのは、歴然たる事実なのです。 残念ながら、残酷ながら。 皆さんから離れた方が、良い方に転がる。 忍野さんは一度限りのウルトラCで違う解法を見出しましたが、本来、わたしという怪異の対処法とはわたしから離れること。 戦場ヶ原さんから教えてもらうまでもなく、感じ取っていた。 「あなたのことが嫌いです」――いうなれば、それがわたしの処世術だったのですから。 世に馴染まない――怪しくて異なる、わたしの処世術。 だけど、独りよがりなのかもしれないけれど、支えなければとも思うんです。 戯言さんたちに支えてもらったように、わたしも。 他には何もできないかもしれませんが、それぐらいなら。 ここまで恵まれておきながら「嫌い」になれるほど、わたしは薄情にはなれなかったのです。 戦場ヶ原さんの蟹も、神原さんの猿も、羽川さんの猫も。 こんな風に表現したら彼女たちから非難されるかもしれませんが、怪異は人に寄り添う現象です。 意に沿っていたかは別でしょうけれど、怪異は求められたから与えたのです。 どこにでもいて、どこにもいない。 思いに、呼応する。 生きるために何をするか。 わたしは何をするべき存在なのか。 怪異には発生する理由がある。 突き詰めれば、わたしがここにいる意味は、きっと。 誰かに寄り添うためなのだ。 迷える誰かの隣のいること。 独りぼっちは寂しいですからね。 しょうがありません。 人は一人で助かるだけ――戦場ヶ原さんたちにしろ、 本来、怪異なるよるべが必要なかったように、今後の答えは戯言さんなら出してくれるでしょう。 彼は、そういう強かさをもってらっしゃる方ですから。 七実さんにも言い切ったように、おそらく、あの人なら大丈夫です。 ですけれど、どうか。 わたしは役に立ちたいのです。 『迷い牛』ではない、きっとわたしの――『八九寺真宵』の思い。 自分の我儘さ加減には我ながら腹立たしくもありますが、 おんぶにだっこは、それはそれで嫌なのです。 阿良々木さんのようには誰にでも優しくできるわけではないですけれど、 阿良々木さんのように、困っている人には寄り添いたいとは、思ってしまうのです。 背負えることは、ないでしょうか、わたしにも。 こう見えていつもは、とっても大きいリュックサックを背負ってるんですよ? 戯言さんがハッピーエンドを望まれるのであれば、 鬼にも悪魔にでも、新世界の神にだってなりましょうとも。 というのは、いかにもな大言壮語で恐縮ですが。 生きたいと願う。 わたしは帰りたいと希う。 今でも変わらない、わたしの指針。 過ぎた願いだとしても、まかり通りましょう。 生きて帰るんです、絶対に。 退屈で静かになった帰り道へ。 わたしはわたしの役割を背負って、これからも。 【二日目/早朝/E-6 ランドセルランド】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、右腕に軽傷(処置済み) [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) 、錠開け道具@戯言シリーズ、 タオル大量、飲料水やジュース大量、冷却ジェルシート余り、解熱剤、フィアット500@戯言シリーズ、 タブレット型端末@めだかボックス、日和号のデーターメモリー [思考] 基本:「■■■」として行動したい。 1:これからどうするかを考える。 2:不知火理事長と接触する為に情報を集める。 3:その後は、友が■した情報も確認する。 4:友の『手紙』を、『■書』を、読む。読みたい。 5:危険地域付近には出来るだけ近付かない。 [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です ※携帯電話から掲示板にアクセスできることを知りましたが、まだ見てはいません ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※八九寺真宵の記憶を消すかどうかの議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします ※日和号に接続されていたデーターメモリーを手に入れました。中身は共有されています。 ※玖渚友が最期まで集めていたデータはメールで得ました。それを受け取った携帯電話は羽川翼に貸しています。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]体調不良(微熱)、動揺 [装備]人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス [道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語、携帯電話@現実 [思考] 基本:変わらない。絶対に帰るんです。 [備考] ※傾物語終了後からの参戦です ※玖渚友が最期まで集めていたデータ、日和号のメモリーデータの中身は共有されています。 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(小)、交霊術発動中 [装備]四季崎記紀の残留思念×1 [道具]支給品一式×2、勇者の剣@めだかボックス、白い鍵@不明、球磨川の首輪、否定姫の鉄扇@刀語、『庶務』の腕章@めだかボックス、 箱庭学園女子制服@めだかボックス、王刀・鋸@刀語、A4ルーズリーフ×38枚、箱庭学園パンフレット@オリジナル [思考] 基本:球磨川禊の刀として生きる 0:禊さんと一緒に行く 1:禊さんはわたしが必ず守る 2:邪魔をしないのならば、今は草むしりはやめておきましょう 3:いっきーさんは一先ず様子見。余計なことを言う様子はありませんから。 4:羽川さんは、放っておいても問題ないでしょう。精々、首輪を外せることに期待を。 5:八九寺さんの記憶は「見た」感じ戻っているようですが、今はまだ気にするほどではありません。が、鬱陶しい態度を取るようであれば…… 6:彼は、害にも毒にもならないでしょうから放置で。 7:四季崎がうるさい…… [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました ※宇練の「暗器術的なもの」(素早く物を取り出す技術)を不完全ですが見取りました ※弱さを見取れます。 ※大嘘憑きの使用回数制限は後続に任せます。 ※交霊術が発動しています。なので死体に近付くと何かしら聞けるかも知れません ※球磨川禊が気絶している間、零崎人識と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします ※黒神めだかの戦いの詳細は後続にお任せします Q&A(12+1) 時系列順 Q&A(旧案と宴) Q&A(12+1) 投下順 Q&A(旧案と宴) 待ち人は来ず 戯言遣い [[]] 待ち人は来ず 鑢七実 [[]] 待ち人は来ず 八九寺真宵 [[]]
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話数 題名 登場人物 作者 101 ナイショの話 戯言遣い、零崎人識、零崎双識、水倉りすか、八九寺真宵 ◆0UUfE9LPAQ 102 稀少種(鬼性手) 西東天、串中弔士、真庭鳳凰 ◆wUZst.K6uE 103 マイナスパイラル ツナギ、江迎怒江 ◆0UUfE9LPAQ 104 コイスルオトメ 戦場ヶ原ひたぎ ◆0UUfE9LPAQ 105 自己愛(事故遭) 零崎人識、零崎双識、水倉りすか、鑢七花、黒神真黒 ◆wUZst.K6uE 106 第二回放送 萩原子荻、四季崎記紀 ◆0UUfE9LPAQ 107 解放された者と抑える者 無桐伊織、櫃内様刻、宗像形 ◆ARe2lZhvho 108 哲学思考(欠落思想) 鑢七実、球磨川禊 ◆aOl4/e3TgA 109 友情の手前、憎しみの途中 哀川潤、想影真心、西条玉藻、貝木泥舟 ◆ARe2lZhvho 110 猫の首に鎖 羽川翼、(四季崎記紀) ◆wUZst.K6uE 111 無名(夢影) 鑢七花、左右田右衛門左右衛門 ◆aOl4/e3TgA 112 繋がれた兎(腐らせた楔) 玖渚友、(兎吊木垓輔、萩原子荻) ◆aOl4/e3TgA 113 成し遂げた完成(間違えた感性) 黒神めだか ◆aOl4/e3TgA 114 虚構推理 戯言遣い、八九寺真宵 ◆xR8DbSLW.w 115 トリガーハッピー・ブレードランナー 鑢七実、宇練銀閣、球磨川禊 ◆wUZst.K6uE 116 神隠し(神欠し) 西東天、串中弔士、真庭鳳凰、宗像形 ◆aOl4/e3TgA 117 撒き散らす最終(吐き散らす最強) 哀川潤、想影真心、西条玉藻 ◆aOl4/e3TgA 118 rough rife(laugh life) 戯言使い、ツナギ、八九寺真宵、江迎怒江 ◆wUZst.K6uE 119 地獄(至極) 戦場ヶ原ひたぎ ◆aOl4/e3TgA 120 絡合物語は 零崎人識、零崎双識、供犠創貴、水倉りすか、鑢七花、真庭蝙蝠 ◆mtws1YvfHQ 121 鏡に問う 戯言遣い、零崎人識、鑢七実、八九寺真宵、球磨川禊 ◆xR8DbSLW.w 122 忍者装束と機関銃 宇練銀閣、羽川翼、(四季崎記紀) ◆ARe2lZhvho 123 ――かもしれない何かの話 零崎人識、戦場ヶ原ひたぎ、(萩原子荻、都城王土) ◆ARe2lZhvho 124 Daydreamers 供犠創貴、水倉りすか、真庭蝙蝠、黒神めだか ◆ARe2lZhvho 125 配信者(廃神者) 玖渚友、零崎人識、無桐伊織、櫃内様刻、戦場ヶ原ひたぎ、宗像形 ◆wUZst.K6uE 126 Let Loose(Red Loser) 西東天、串中弔士、真庭鳳凰 ◆ARe2lZhvho 127 拍手喝采歌合 零崎双識、鑢七花、(安心院なじみ) ◆ARe2lZhvho 128 かいきバード 真庭鳳凰、貝木泥舟 ◆wUZst.K6uE 129 ×××××&×××××――「あ」から始まる愛コトバ 零崎双識、鑢七花、江迎怒江 ◆xR8DbSLW.w 130 みそぎカオス 戯言遣い、鑢七実、羽川翼、八九寺真宵、球磨川禊、(四季崎記紀) ◆mtws1YvfHQ 131 零崎舞織の暴走 西条玉藻、無桐伊織、櫃内様刻、真庭鳳凰 ◆ARe2lZhvho 132 Overkilled Red(Overkill Dread)前編 玖渚友、哀川潤、想影真心、宗像形 ◆wUZst.K6uE 133 Overkilled Red(Overkill Dread)後編 玖渚友、宗像形 ◆wUZst.K6uE 134 「意外と楽でいいが」 黒神めだか ◆ARe2lZhvho 135 『』 戯言遣い、鑢七実、羽川翼、八九寺真宵、球磨川禊、(四季崎記紀、安心院なじみ) ◆mtws1YvfHQ 136 きみとぼくのずれた世界 無桐伊織、櫃内様刻、真庭鳳凰 ◆xR8DbSLW.w 137 君の知らない物語(前編)君の知らない物語(後編) 戯言遣い、玖渚友、零崎人識、供犠創貴、水倉りすか、鑢七花、鑢七実、真庭蝙蝠、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、八九寺真宵、球磨川禊、宗像形、(四季崎記紀) ◆ARe2lZhvho 138 第三回放送 不知火袴、斜道卿壱郎、萩原子荻、紫木一姫、神原駿河 ◆wUZst.K6uE 139 球磨川禊の人間関係――黒神めだかとの関係球磨川禊の人間関係――鑢七実との関係 戯言遣い、零崎人識、鑢七実、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、八九寺真宵、黒神めだか、球磨川禊、(四季崎記紀) ◆xR8DbSLW.w 140 不死鳥(腐屍鳥) 真庭鳳凰 ◆wUZst.K6uE 141 働物語 日和号、都城王土 ◆mtws1YvfHQ 142 共犯者(教範者) 無桐伊織、櫃内様刻 ◆ARe2lZhvho 143 一足一動 真庭鳳凰 ◆mtws1YvfHQ 144 牲犠 玖渚友、供犠創貴、水倉りすか、真庭蝙蝠、宗像形 ◆xR8DbSLW.w 145 Velonica 鑢七花、鑢七実、黒神めだか、球磨川禊、(四季崎記紀) ◆ARe2lZhvho 146 冠善跳悪 零崎人識、戦場ヶ原ひたぎ ◆mtws1YvfHQ 147 めだかクラブ 鑢七花、鑢七実、黒神めだか、球磨川禊、(四季崎記紀) ◆xR8DbSLW.w 148 解決(怪傑) 安心院なじみ、不知火半袖 ◆ARe2lZhvho 149 My Generation 鑢七花、鑢七実、黒神めだか、球磨川禊、(四季崎記紀) ◆ARe2lZhvho 150 変態、変態、また変態 零崎人識、供犠創貴、真庭蝙蝠、宗像形 ◆mtws1YvfHQ
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Welcome to jabberwock Wikiとは 後で、解説を書いたりする。 とりあえず 右上のヘルプみながら 練習用ページで練習してみてください。
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ひたぎニューイヤー 「あけおめ!」 「うるせえ忍!」 「ことよろ!」 「ちょっと黙ってろ!」 元旦。 謹賀新年。 明けましておめでとう、である。 一年の計は元旦にありだとか何だとか言うが、別にそんな根拠のない迷信を信じ ている訳でもなく、かといって特別な日であることだけは実感しつつも何も珍奇 な事をするわけでもなくて只普通につつがなく僕は新年を迎えていた。 はずだった。 はずなのだ。 して、僕のいる場所が問題であった。 「忍…一つ聞いていいか」 「ん?何じゃ?」 「年越しそばも食べてゆく年くる年で鐘の音を聞いた後新年早々あけおめメール の返信に明け暮れ終わる頃には初日の出が登っていて『あー今年も新年かー、そ ろそろ寝よー』と思って布団に潜り込もうとした僕の足を引っつかんで『ゴルチ ョコじゃ!復活じゃ!福袋じゃ!1/15から新メニュー追加じゃ!』とか言って僕を無 理矢理国道沿いのミスドに連れてきて行列に並ばせる必要性がどこにあるってい うんだよ!」 回想いらず。 驚異の説明率。 「そんなもの……言わんでもわかるじゃろう?」 「なん…だと……?」 まさか―――― 「初ドーナツじゃ」 「わかってました――――!」 大コケ。 新年初コケである。 「うむ、ならよろしい」 「よろしくねぇよ!ていうかどうして新年早々たかがドーナツ福袋で散財しなけり ゃいけないんだよ!」 ちなみに今の僕の状況。 開店5分前。 行列は前に二人。 後ろに、……たくさん。 「『たかが』とは何じゃ『たかがドーナツ福袋』とは!」 ドーナツ福袋。 新年を記念して毎年各地のミスドで販売される。 店舗により価格や内容に多少の差異はあるものの、もれなくおいしいドーナツが 食べられる。 どうぞ、皆様お買い求め下さい。 「そうだ、その少女の言う通りだ、我々はドーナツに命を賭けているから今こう してここに並んでいるのだ」 行列の前から聞こえる声。 聞き覚えのある声。 「その声は…」 ドラマツルギー。 同族殺しの吸血鬼。 春休みの僕の――敵だ。 フードで顔はよく見えないが、その優に2mを越える姿を見間違うことはない。 「そーだぜ、『たかが』ドーナツならこんなに人集まるわけねーじゃん?お前バ カじゃね?マジウケるwww」 「お前は…」 エピソード。 人間と吸血鬼のハーフ。 その口調と、三白眼。 また、間違えるはずがない。 「おや、これはいつぞやのアンダーブレードの眷属ではないか」 「どうして…お前ら」 「決まっているだろう、我々もドーナツを買いに来たのだ」 「いやでも……」 「お前知らねぇの?今こっちの職ではマジドーナツがブームなんだぜ?」 「なんで…」 「なんででも、そうなのだ」 巨体と三白眼。 こんな奴らがドーナツ買いに来たら、店員さんが逃げ出してしまうだろう。 「まあ、あのアロハのキモいおっさんが流行らせたんだけどな!?」 「忍野ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 来年の夏の流行はアロハで決まりとでも言うのか。 しかも、ピンクでサイケな。 「だとしたら…いったい何を買いに」 「「ドーナツ福袋」」 「やっぱそれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ミスド大人気。 「思えばお前ら…いや何だろう」 「どうした?何か気になるのか?」 「いや…こう何だかさ…」 「早く言えっつーの、てか引き延ばしとかマジウザいんだけどwww」 ウザいのはお前だよ! 「やっぱり…足りないんだよな」 「「足りない?」」 そうだ。 足りないのだ。 ドリフでいえばいかりや長介が。 ダチョウ倶楽部でいえば肥後さんが。 TOKIOでいえばシゲさんが。 「……ギロチンカッターだ!」 「「「ギロチンカッター(故人)?」」」 「…何を言っている、眷属よ」 「…てか、意味フじゃね?」 明らかに僕をからかう態度。 「…何がおかしい」 「それは……」 「だって………」 「だから何――」 「「そこ」」 「……こんにちは」 「――――はうわっ!?」 志村後ろ! 「あ、いや、間違えました。では改めて、明けましておめでとうございます」 「いやいやそういう問題じゃないから!」 「何?何か問題でも?」 「いやいやお前死んだはずだろ!」 「はい?まあその通りですが」 「じゃあ何でこんな所でドーナツ買い求めてんだよ!」 「それはまあ……色々と」 「何だよ色々って!」 お前は幽霊か! 「ちなみに小学生の幼女さんとは知り合いですので」 「何か変な所で話繋がっちゃってる!」 「照れ屋少女は僕の所のシスターです」 「いやそれ作品違うから!」 もはや謎のフィールドワーク。 「ほら、そんなことを言っているうちに開店しましたよ?お買い求めにならない のならば僕が」 「まてい!」 「いきなりどうした忍!?」 「おやおや、これはこれは」 「貴様ら…儂のドーナツを奪いに来たのじゃな」 「ほほう…これは随分と小さくなりましたねアンダーブレード、心も身体も!」 「貴様…この自慢のロリ体形を馬鹿にするとは……許さん!」 自慢するな! そして心は小さくていいのかよ! 「それはこちらも同じですっ!」 うわー。 何か超絶バトルの予感がビンビンするー。 妖怪レーダー、バリ3。 「おい待て!二人とも落ち着け!」 「悪いがあるじ様、しばらく口を挟まんでくれるかのう」 「そうです、これはドーナツわ賭けた『聖戦』なのですから」 「わかったわかった!だからお前らミスドの前で火花を散らしたり武器を取り出し たり変化したりするな!」 店員さん怖がって逃げ出しそうじゃねえか! そして、ドーナツを大量購入したはいいが忍に『あるじ様にはD―ポップのチョ コしかやらん』と言われて新年早々凹んで家路につこうとしていた僕。 「あら」 「よう」 僕は、戦場ヶ原ひたぎと出会った。 「あの…ひたぎさん……」 「はい?」 「一言……いいですか」 「いいわよ、でも正直、私としては新年早々素人童貞阿良々木くんのつまらない セリフを聞くことなんて苦痛でしかなくて『あー今年もこんな感じで過ぎていく のかー』みたいな陰鬱とした気分に陥りたくないのだけど」 「僕のほうが陰鬱になりそうだよ!」 明けまして暴言(口を)、戦場ヶ原ひたぎ。 「で、一言って何よ、早くしなさい。でないと明けるわよ」 「何をですかひたぎさん!」 もはや意味不明。 「じゃあ、言わせてくれ」 「ええ、いいわよ」 「すごく――――――――綺麗だな」 ぽっ、と戦場ヶ原の顔が赤くなる。 そうなのだ。 戦場ヶ原ひたぎは今、 赤を基調とした振り袖。 上に掻きあげた日本髪。 つまり―――和装なのだ。 「阿良々木くんにそんなことを言われるなんて……一生の不覚、今すぐ井戸に飛 び込んで皿を数えたいくらい」 「お前はお菊さんかよ!」 新年早々縁起が悪いわ! 「もう初詣に行けないわ」 「いやそこ普通は『もうお嫁に行けないわ』だから!」 「流石は僕の娘だ、阿良々木くんもきっと褒めてくれると思っていたよ」 「いつからいたんですかお父さん!?」 めっちゃナイスミドル! 「…なんちゃって」 「今ボケたんですかお父さん!?」 やべぇ、高度すぎてどこがボケだかわからねぇ! 「ひたぎは僕の娘だ、振り袖を着て可愛くないわけがない」 「もう、お父さんたらっ」 「そして暴言も世界一だな、僕の娘なだけのことはある」 「もう…おだてても何も出ないわよ?」 「今おだててたの!?」 何だこの親バカなやりとり。 親子そろって、何なんだ。 「じゃあお父さん、ここからは若い二人に任せて、よろしく」 「ああ、そうだな」 と言って、元来た道を戻る戦場ヶ原父。 「おい戦場ヶ原、お父さんはどうして…」 「忘れ物よ」 「でも…初詣に忘れ物って……」 「忘れ物よ」 「……わかった、だからその綺麗に彩られたかんざしを使って僕の左の眼球をえ ぐり貫こうとするのはやめてくれひたぎさん!」 明けましておめでとう(眼球に穴が)。 そして、僕らは家の近くにあるそれなりの大きさの神社に初詣に来ていた。 「おや、これはこれは阿良々木先輩に戦場ヶ原先輩ではないか」 「よお、神原も初詣……ってうぉっ!?」 「ん?ああこの衣装か、家を出る前おばあちゃんが着ていけと言ったのでな」 「やべぇ…すげぇ……」 可愛い。 すげぇ可愛い。 振り袖姿の神原、むっちゃ可愛い! こいつにこんな女の子チックな服が似合うとは。 恐い。 とても恐い。 恐いくらい、可愛い! 「うん?どうしたのだ阿良々木先輩?まさか私の振り袖姿を見て新年早々卑猥な 妄想が止まらないのか?だとしたらお任せいただきたい、私はいつでも阿良々木 先輩との新年初○○○の準備はできている」 「いやそれ新年じゃなくても初だから!」 てか新年早々下ネタ全開かよ! 「よく似合っているわ、素敵よ神原」 「いやいや、戦場ヶ原先輩こそ素敵なお姿ではないか、また惚れなおしてしまい そうだ」 「ありがとう神原、私も神原の振り袖姿が見れて嬉しいわ」 「いやあ、照れてしまうではないか戦場ヶ原先輩」 「いいのよ、存分に照れて、存分に甘えて、存分に愛しなさい」 ――そして、二人はすっと互いを抱き寄せる。 「神原……」 「戦場ヶ原先輩………」 「わかったわかったお前ら二人の振り袖姿がとても綺麗なのは認める、だからと いって新年早々お互いの帯に手をかけてほどきあおうとするのはやめろ!」 「「えー」」 「『えー』じゃない!」 もう、背景が百合だらけ。 「まあ、私神原としてはらぎ子ちゃんの振り袖姿が見たかったのであるが仕方あ るまい、来年の初詣まで持ち越すとしよう」 「またそのネタかよ!」 来年も未来永劫着ねえよ! 「あら、じゃあ阿良々木くんにこの後私の振り袖を着せてあげてもいいのよ」 「丁重に辞退させていただきます!」 どんなフェチ気質と思われているんだ僕は。 「そうか、阿良々木先輩は腰帯派ではないのか、では私と戦場ヶ原先輩のあられ もない淫らなうなじを今からここで披露させていただこう」 「やめてとめてやめてとめてアッ―――――――!」 そして神原の方は絵馬を猫いてくるとか何とか言ってその場を去り、僕と戦場ヶ 原は本殿で一年の祈願をすませ、おみくじを引いていた。 「…あら、大吉だわ」 「…僕は末吉」 「とても阿良々木くんらしい結果じゃない、新年早々相変わらず落胆させてくれ るわ」 「落胆してるのは僕の方だよ!」 これならいっそ大凶がよかった! 「さて、どうせ阿良々木くんのことだから末吉なのに書いてある事は『待ち人 来 ず』に始まる大凶同然の戦いを繰り広げているのでしょう」 「そんなに悲惨なおみくじなんて神社が作らねぇよ!」 いっそ大凶って書いてくれ! 「……いやでも戦場ヶ原、そうでもないぞ」 「…え?」 「ついでにお前のも見せてくれよ」 「…いやらしい事を考えている目つきね」 「考えてねぇよ!」 どうしてこの状況で! 「…ふーん」 「何よ、思うことがあるなら早く言わないと瞼綴じるわよ」 「それは勘弁……」 漢字違ぇよ。 またホチキスか。 「で、阿良々木くん、何か面白いことでも書いてあったのかしら?」 「ん?ああ、あったよ」 「…期待外れね」 「何がだよ…」 どこに期待されてたんだ、僕は。 「いや、ここは珍しいなー、って思って」 「どこよ」 「ここの所、だってほら」 といって、僕が指差したのは「恋愛」の項目。 「……あら」 「だろ?」 「………そうね」 「な?」 「……うん」 ―――僕と戦場ヶ原のおみくじの「恋愛」に書かれていたこと。 僕と戦場ヶ原のこれからの「恋愛」について占われたこと。 こんなこと、あるのだろうか。 いや、今ありえたから、きっとありえのだろう。 計らずしも、二人とも同じ内容であった。 おみくじに書かれていた内容。 それは―――――――――― そして僕らは適当に合格祈願の絵馬をかけ、人の混みいる神社を抜けだし家路へ とついた。 「なあ戦場ヶ原、一つ聞いていいか?」 「何かしら阿良々木くん?」 「お前、初詣で何を祈願したんだ?」 「……言わなければいけないのかしら」 「え?いや、言いづらいことだったら別にいいんだけど」 「そうじゃないわ、私が言いたいのは、わざわざ言う必要性があるのか、ってい うことなのよ」 「あ……」 そうだ。 そうなのだ。 言う必要性など、ないのだ。 僕達二人には、わかりきったことなのだから。 「ちなみに阿良々木くんは何を祈願したのかしら?」 「僕?僕は……言わなきゃダメかな」 「別にいいのよ、どうせ私と同じでしょうから」 「……そうだな」 「ええ、きっと―――そうよ」 僕が初詣で願ったこと。 きっと、戦場ヶ原もわかっているのだから。 僕も、わかっているのだから。 ―――――お互いに、同じ願いだから。 next → 戻る
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