約 5,593,734 件
https://w.atwiki.jp/h2so4/pages/21.html
@wiki。まだよく分かっていません。 PukiWikiは普通に使えるようになったので、 pukiwikiライクモード を選んでます。 Wikiって、ちゃんと使えばいろいろなことができそう。。。と期待先行中。。。。 これって(行頭に + )、番号付きリストじゃないの? どうなるかな? 確認したら、ちゃんと番号付きリストになっていました。 色指定とかで } の後ろに ; が要らないみたい。FC2WIKIと同じだ。 pukiwikiライクモードでは、} のうしろに ; を入れても、入れなくてもOKっぽい ! •@wikiモードで作成する •【初心者向け】ワープロモード (ワープロ感覚でページ作成する) •テキストモードで作成する •pukiwikiライクモードで作成する •ウィキペディアライクモードで作成する •hikiモードで作成する •fswikiモードで作成する •Text Hatenaモードで作成する
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/71.html
物語シリーズからの支給品 赤墨で何か書かれた札 なでこスネイク、直接ではないがまよいキョンシーで登場。 怪異としての霊的エネルギーをまとまらせず散らすことができるらしい。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 無し [所有者] 戯言遣い(45話、55話、72話(1)(2)(3)(4)、84話(1)(2)、88話、095話、101話、114話、118話、121話、130話、135話、137話(前)(後)、139話(前)(後)、151話、154話、156話、161話、169話、172話) [メモ] 支給品ではなく学習塾跡の廃墟から調達したもの。 45話から戯言遣いが所持。 阿良々木暦のマウンテンバイク 阿良々木暦が高校への通学用に使っていたもの。 するがモンキーで破壊されたが本ロワではちゃんと使用できる状態で支給されている。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 時宮時刻 [所有者] 時宮時刻(15話、30話、52話) [メモ] 時宮時刻の初期支給品だが初登場は52話。 30話で左腕を欠損した時刻には使えないため現在はG-8のレストラン付近に放置されている。 エピソードの十字架 ハーフヴァンパイアのエピソードが武器にしていた巨大な銀の十字架。 吸血鬼相手なら効果は抜群だ!が、一般人相手でも普通に鈍器として使える。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 阿久根高貴 [所有者] 阿久根高貴(2話、20話) ↓ 真庭蝙蝠(20話、46話、73話、83話、89話) [メモ] 登場話から阿久根高貴に使用。 20話で真庭蝙蝠に奪われ、89話で軋識のとどめをさすのに使われた。 以降D-5に放置。 お守り 蛇切縄を還すために使われたお守り。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 無桐伊織 [所有者] 無桐伊織(11話、39話、49話、85話(前)(後)、93話、107話、125話、131話、136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話) ↓ 櫃内様刻(166話、169話、171話) [メモ] 無桐伊織の初期支給品だが初登場は107話。 以降も伊織が所持していたが164話で図書館前に放置され、166話で櫃内様刻が回収した。 心渡 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの眷属が自身の骨肉から作り出した妖刀。 本家心渡と違いレプリカなので怪異性のあるものしか切ることはできない。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 串中弔士 [所有者] 串中弔士(8話、36話) ↓ 黒神めだか(36話、70話、74話、79話、94話、98話、113話、124話) ↓ 供犠創貴(124話、137話(前)(後)、144話、150話、155話、158話(前)(後)) [メモ] 串中弔士の初期支給品だが初登場は36話。 同話で黒神めだかに奪われ、解析用にと以降めだかが所持しているが多分本来の目的は忘れられ、124話で供犠創貴の手に渡った。 以降は創貴が所持していたが158話で創貴が死亡、放置されている。 シュシュ クチナワさんが変化した姿……ではなく真っ白なただのシュシュ。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 否定姫 [所有者] 否定姫(27話、50話、66話) ↓ 真庭鳳凰(66話、92話、102話、116話、126話、128話、131話、136話) ↓ 櫃内様刻(136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話、166話、169話、171話) [メモ] 否定姫の初期支給品だが初登場は126話。 66話で否定姫から回収して以降は真庭鳳凰が所持していたが136話で櫃内様刻が奪った。 以降は様刻が所持。 彫刻刀 千石撫子が蛇切縄の呪いを解くために使っていたもの。 余談だが女子中学生が蛇を素手で掴むってかなり凄いことだと思う。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 黒神真黒 [所有者] 黒神真黒(12話、42話、59話、91話、105話) ↓ 零崎人識(105話、120話、121話、123話、125話、137話(前)(後)、139話(前)(後)、146話、150話、153話、155話、158話(前)(後)、162話、164話) ↓ 櫃内様刻(166話、169話、171話) [メモ] 黒神真黒の初期支給品だが初登場は123話。 105話で零崎人識に拾われてからは人識が所持していたが164話で図書館前に放置され、166話で櫃内様刻が回収した。 日本酒 貝木泥舟が北白蛇神社に参拝するときたまに持っていっていたもの。 一升瓶に入った地酒。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 鑢七花 [所有者] 鑢七花(4話) ↓ 真庭鳳凰(4話、37話、53話、66話、92話、102話、116話、126話、128話、131話、136話) ↓ 櫃内様刻(136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話、166話、169話、171話) [メモ] 鑢七花の初期支給品だが初登場は126話。 4話で七花から真庭鳳凰の手に渡り126話で一時的に西東天の手に渡るも、西東が死んだことで結局は鳳凰が所持していたが136話で櫃内様刻が奪った。 以降は様刻が所持。 ミスタードーナツの詰め合わせ 阿良々木暦が忍野メメに差し入れようとしていたものだったが結果はご存知の通りである。 中身はゴールデンチョコレート、フレンチクルーラー、エンゼルフレンチ、ストロベリーホイップフレンチ、ハニーチュロ、 ココナツクルーラー、ポン・デ・リング、D−ポップ、ダブルチョコレート、ココナツチョコレート。 劇伴の曲名にもなった忍野メメが好きなオールドファッションは入っていない。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 想影真心 [所有者] 想影真心(16話、30話、53話、97話、109話、117話、132話) ↓ 哀川潤(132話) ↓ 宗像形(132話、133話、137話(後) ↓ 玖渚友(137話(後)、144話、155話、158話(前)(後)) [メモ] 想影真心の初期支給品だが初登場は155話。 132話内で哀川潤がネットカフェに置き、後程訪れた宗像形の手に渡る。 それを137話で玖渚友が(勝手に)貰い、以降は玖渚が所持。 いくつかは食べられたが、残りは158話で爆破に巻き込まれた。
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/41.html
【性別】女 【口調】一人称:私 二人称・三人称:あなた、○○さん 【性格】子供らしい? 【能力】 蝸牛の迷子 幽霊である彼女は、家に帰りたくないと思う時に見えるようになっていた。 現在は阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎが解決。 言葉遣いのうまさ 言葉の使い方がうまい。 それ以外にはない。 【備考】 蝸牛に迷った少女。ツインテールの小学生で、5年3組在籍。 背中に巨大なリュックを担いでいる。旧姓は綱手(つなで)。 毎度のように暦からの出会い頭のセクハラを受け、喧嘩になる。 初めこそじゃれ合いの様なものだったが、回を追う毎に内容がエスカレートし 終いには阿良々木家へ連行されたこともある。 以下、バトルロワイアルにおけるネタバレを含む +開示する 八九寺真宵の本ロワにおける動向 初登場話 戯言語 登場話数 3 スタンス 殺し合いはしたくない 現在状況 戯言遣い、ツナギと行動中 現データ スーパーマーケットの口戦 キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 戯言遣い 共に行動中 戯言さん 協力関係 戯言語 ツナギ 共に行動中 ツナギさん 協力関係 :一寸先は口!? 阿良々木暦 元の世界での友達? 阿良々木さん 他 頼りになると思っている まだ遭遇していません 羽川翼 元の世界での友達 羽川さん 被害者の会 まだ遭遇していません
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/46.html
◆T7dkcxUtJw氏が手掛けた作品 話数 題名 登場人物 004 今、再び語られる物語 鑢七花、真庭鳳凰 013 「それでは零崎を始めよう」 零崎双識、真庭蝙蝠 016 「いーちゃんに会いたい」 想影真心、とがめ 1回 鑢七花、真庭鳳凰、零崎双識、真庭蝙蝠、想影真心、 とがめ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/279.html
玖渚友の利害関係 ◆ARe2lZhvho 「「かんぱーい」」 真庭蝙蝠がいなければ宗像形の兇刃からまず逃れられなかったであろうぼく、供犠創貴はブースの扉を開けた先、女子二人が酌み交わす光景を見て、 「……………………」 しばらく沈黙していた。 ◆ 「やっほー、おかえり創貴ちゃん」 「おかえりなさいなの、キズタカ」 無言で立ったままのぼくに玖渚友と水倉りすかは気さくに声をかける。 それほど席を外したつもりはなかったはずなのだが、その間に随分と仲を深めていたらしい。 このネットカフェの一階部分全域が戦場になる可能性がある以上二階に移動したいと玖渚が願い出たのは合理的な判断だったし、ぼくたちも好都合だと承諾した。 死体を移動させるのは容易なことではないが必要なのは首輪だけであり、頭を切り離せば済む問題だ──このときの蝙蝠の反応については今更述べるまでもない。 りすかを残さなければならない以上、ソファータイプの一人用ブースよりも複数で利用できるいわゆる座敷タイプの方がいいだろうという考えもなんらおかしくない。 ……しかし、ドリンクバーで飲み物を取りに行った上ドーナツを食べているというのはいくらなんでもくつろぎすぎではないだろうか。 剣戟の音は間違いなく聞こえていたはずだろうに。 「まあまあ、そんな顔しなくても大丈夫だって。創貴ちゃんの分もちゃんとあるからさ」 「そういうことが言いたいんじゃない」 悪態をつきながら腰を下ろし、ドーナツを一つ取る。 チョコレートがふんだんに練り込まれた生地の上から更にチョコレートで上半分をコーティングした、ダブルチョコレートだ。 頬張る。 うむ、甘い。 「じゃ、創貴ちゃんも戻ってきたことだしいいかな」 「何を」 「いーちゃんにメールを送りたいんだ。できれば一刻も早く送りたかったのにりすかちゃんが創貴ちゃんが戻るまでダメって言うから」 「それくらい別に……いや、いい心がけだ」 見張っていろ、との指示に対しちゃんと必要な意思を汲み取ってくれたのは上出来だ。 ドーナツを持っていない方の腕でりすかの頭を撫でてやる。 「ま、僕様ちゃんもせっかくの同盟を解消したくはなかったしね。そんじゃあお言葉に甘えて」 言うが早いか玖渚の手が携帯電話に伸び、淀みなくボタンを叩いていく。 その間にりすかに確認をとっておくか。 念のために。 「怪しい素振りはしていたか?」 「なかったの」 「ドリンクバーには二人で行ったか?」 「もちろん……でもすごくうるさかったのが下からなの」 というかその状況でよくドリンクバーに行けたな。 まあ、まだうるさいのは確かだし戦況が互角なら逆に安全と考えるのは悪くはない判断ではあるが…… 「休憩しない? って提案したのは僕様ちゃんだよ。一々声を出すりすかちゃんはかわいかったねえ」 やっぱり玖渚の発案か……いくらなんでもりすかにしては度胸がありすぎると思ったんだ。 金属音が飛び交う中を共に乗り越えたと思えば親近感が湧くのもある意味仕方のないことか。 そうしているうちにメールを作成し終わったようだ。 少しの間動きが止まる。 再び指を数回動かし、また止まった。 そしてまた操作したかと思えばぼくに画面を見せてきた。 to:いーちゃん title:もしかして text:ランドセルランドに腕4本脚4本のロボットが襲ってくるかもしれないから気をつけてね なんなら僕様ちゃんたちがいるネットカフェに来てもいいけどその場合は教えてくれると嬉しいな 案外いーちゃんのことだからこのメールを読んだときにはもう遭遇しちゃってるかもしれないけど、僕様ちゃんは対処法を知らないからそのときはそのとき! 「これなら問題はないよね?」 下手な情報は漏らしていないということらしい。 メールに記載してあったロボット――名前は日和号だったか――とは掲示板にあったあの動画でとがめとかいう女性を殺したものだろうか。 確か玖渚本人の話によれば詳細名簿にも載っておらず、誰かの支給品か主催が配置したかということもわかってないとのこと。 だが、掲示板の情報によればあの地域一帯だけを徘徊しており、玖渚の見立てでも不要湖から出る可能性は低いだろうという話だった。 なぜ今更。 そんなぼくの顔を見て、携帯をポケットにしまうと玖渚は語り出した。 「疑問を浮かべてる顔をしてるね? 「もちろんちゃんと説明するよ。 「と言っても気づいたのはりすかちゃんのおかげだけどね。 「ほら、さっき都城王土の話をしたでしょ? 「それについて創貴ちゃんがいなくなった後もりすかちゃんが興味を持ってね。 「電気もりすかちゃんの弱点の一つである以上、対策を練っておくのは殊勝だと思うし、主催側である彼についてはしっかり考えておくべきだと僕様ちゃんも思ったからさ。 「創貴ちゃんたちが会った後、彼がどうしていたかについては全く情報がないし。 「ないだけで、僕様ちゃんの知ってる誰かが、僕様ちゃんの知らない誰かが遭遇してることは十分に考えられるけどね。 「最悪の可能性というのは常に想像しておかないといけないもの。 「例えば、都城王土が言ったことは嘘で忠実な主催の手先だった、だから盗聴機もしっかり仕掛けられていてこの会話も主催に筒抜け、だとか。 「例えば、主催にとっては都城王土の行動すら想定内であり、今更僕様ちゃんたちがどんな反抗をしようと無意味に終わる、とかさ。 「それに比べたら日和号が都城王土に操作されてランドセルランドに向かうことなんてマシな部類でしょ? 「マシな部類って言っても襲われる人間はたまったもんじゃないと思うけど、それはそれ、これはこれ。 「あのDVDは会場の中全てを監視していると言ってるのと同義なんだし、それを踏まえれば多くの人間がランドセルランドに向かっていることは予想できただろうからね。 「創貴ちゃんたちにとって黒神めだかとの同盟のうまみも薄れてるだろうし、いーちゃんをこっちに呼んだことについては問題ないでしょ? 「これがただの僕様ちゃんの考えすぎ、思い過ごし、杞憂ならいいけど本当に本当だったらいざランドセルランドに着いたら餌食になりました、じゃ冗談じゃ済まないし。 「創貴ちゃんたちが恐れてる零崎人識との邂逅だって、見つかる前に隠れるなりすればいいだろうしね。 「さすがにそれくらいは僕様ちゃんだって気遣うよ。 「見つかった場合? 「いや、さすがにそこまでは保証できないって。 「邪魔したら僕様ちゃんだって殺されちゃうかもしれないし。 「むしろランドセルランド行ったら出会い頭に問答無用で老若男女容赦なく、殺されて解されて並べられて揃えられて晒されるかもしれないんだから、それに比べたらね。 「ま、どっちにしてもまだ時間はあるはずだし続けようか」 ……本当に油断できやしない。 ◆ 「やっぱ電話の一つでもかけてやった方がいいかねえ」 「いやいや、だからと言って俺からかける必要性ってないだろ」 「『人識くんったらそんなに私のことが心配だったんですか? 余計なお世話ですよう』とかなんとか言って茶化すに決まってる」 「俺にだけ教えて向こうには教えてない、なんてこともねーだろうし」 「さすがにそれくらいの気遣いくらいはしてるだろ」 「仮に場所とかがわかったとしてどうにかなることでもねーしな」 「それで向こうからかけてこないってことはそれだけの理由がないってことだろ、うんうん」 「かといって欠陥製品にかけるのもなあ……あ、そういや『あいつ』の電話番号……」 「ってダメじゃん! ぜってー声聞かれた瞬間切られるのがオチだっつーの」 「ちぇっ、どうせならアドレスとか全部聞き出しといてくれりゃーよかったのによ」 「あーあ、こんなときコナン君の蝶ネクタイでもありゃ楽勝なんだが」 「ま、高望みしすぎなのはわかってるけどな」 「……ん? こいつは……」 「…………へえ」 ◆ 「で、首輪に魔法、ないしはスキルが使われてるかもしれないってのが僕様ちゃんの考えなんだけど、どうかな?」 「難しいのが実行なの。考えるのが簡単なのが理論だけど、危険があるのが暴発」 「ぼくもりすかと同じ意見だ。『魔法使い』でも『魔法』使いでもそんな繊細な魔法式が使えるとは思えない」 「魔法陣の可能性は……もっとありえないか」 「あの影谷蛇之ですら二十本もダーツを作ってはいなかったのに、その倍以上となるといくらなんでも無理がありすぎる、とぼくは思うが」 「だよねえ。さっちゃんからの情報をもらう前に形ちゃんにもそれとなく話を聞いてはみたけど、思い当たる人はいないって言ってたし」 「そうでなくとも便利ではないのが魔法なの」 「ファンタジーやメルヘンじゃあありません、ってことかなあ。さすがに他の世界にはこういう技術はないと思うんだけどなあ」 そして現在、静かになったブースでぼくも交えて主に首輪についての考察が広げられている。 しばらく経ってもどちらも上がって来ないということは相討ちか、大方重傷を負いつつも辛勝したというところだろう。 考えたくはないが宗像形が生きているかもしれない以上確認しに行くようなことはしない。 そこで死ぬようであれば蝙蝠はそこまでの駒だったということだ。 玖渚の考えによれば首輪の外殻には未知の物質が使われており、おそらくそれは魔法かスキルによって作られたのではないかとのことらしい。 顕現『化学変化』の魔法を使えばできなくはないかもしれないだろう。 だが、それを見せしめの分も含めて計四十六も作るとなると、さすがに無理があるのではないだろうかというのがぼくとりすかの考えだ。 そうでなくともそう都合よく目的に沿うような魔法があるとも思えない──水倉神檎でもあるまいし。 「普通に考えたらさ」 そう言って玖渚は箱からドーナツを一つ取り出した。 小さな球が八つ連なって一周しているポン・デ・リングだ。 八つの球を四つと四つに分ける。 「こんな風に二つのパーツを組み合わせて首に嵌めるものでしょ?」 「だろうな」 「いくら二重構造になってて内側はこのようになっているとしても、外側もこうなってないとおかしいと思うんだよね」 「ただ作るだけならできなくはないだろうが……」 「問題なのが人間に嵌めるということ?」 「それなんだよねえ。内側を普通に嵌めたとしても綺麗にコーティングするのだって……あ、ちょっとごめんね」 雑音がないと着信音がよく響く。 電話ではなくメールか。 二つに分かれたポン・デ・リングが箱に戻される。 ……口をつけたわけでもないしいいか。 読み終えるとそのまま畳んでポケットに戻された。 「……返信しないのか?」 「いーちゃんがこっち向かうってさ。それと創貴ちゃんたちには朗報かな、零崎人識は別行動になったからいないって」 ぼくが反応を返すより早く、りすかが大きく息を吐き出した。 さっきの話を聞いたとき随分と肩をこわばらせていたからもしやとは思っていたが、未だに恐怖心が消えていないらしい。 いざというときそれが妨げにならなければいいんだが…… 「別行動、ね」 「うん、別行動。今一緒にいるのは八九寺真宵と羽川翼だけのようだから創貴ちゃんたちも心配しなくていいと思うよ」 「そうか……」 羽川翼。 放送の前、ぼくが電話越しで話した女性。 玖渚が得た情報によるとかなり頭の切れる人物らしい。 そういった人間と直接接触できるというのは好都合だろう。 「ついでにいくつか情報ももらったから参加者全員の動向もほぼわかったしね」 「全員?」 「あくまでも予想だけどね。メールによると途中で黒神めだかと遭遇したから球磨川禊と鑢七実、ついでに零崎人識も車から降りたって。 鑢七花は創貴ちゃんたちが会ってたし、舞ちゃんたちや真庭鳳凰はまだ東側にいるだろうしね」 「つまり警戒しておくべきは鑢七花と球磨川禊・鑢七実が来る可能性、か」 「黒神めだかに関しては大丈夫だろうし、そんなとこだと思うよ」 玖渚から聞いてやっとわかったことだが球磨川禊と鑢七実の二人は都城王土が言っていた着物の女と学生のコンビで間違いないだろう。 一分持つまいとまで言われ、蝙蝠がどうなったかわからない今もし殴り込まれでもしたら対抗手段がりすかしかない。 それもただの時間移動ではなく大人りすか一択だ。 一日に二度も切り札を切らせるのは愚策である以上、来ないことや好戦的でないことを祈るしかないがこればかりはどうしようもないことだ。 ……ふと気付く。 今玖渚は全員の動向がほぼわかったと言ったが、一人足りなくないか……? 放送の時点での生存者は十七人。 このネットカフェにぼくたちと階下の蝙蝠、宗像で五人。 東側に無桐伊織・櫃内様刻、真庭鳳凰の三人。 ランドセルランドからこちらに向かっているのが戯言遣い・八九寺真宵・羽川翼の三人。 残りのうち玖渚の口から出たのが球磨川禊・鑢七実、鑢七花、黒神めだか、零崎人識の五人。 全員合わせても十六人だ。 残る一人――確か戦場ヶ原ひたぎ、について言及していない。 「そろそろ、いいかな」 訝しんでるぼくを尻目に玖渚が小声で呟き、 「ところでさ、今こうして私は創貴ちゃんたちにありとあらゆる情報を提供してるわけだけど、これって大きく分けて三つのパターンがあると思うんだよね」 ふいに話題を切り換えた。 不思議には思ったが返す意外の選択肢が浮かばない。 「パターン? 何のだ」 「情報を差し出す理由、とでも言えばいいのかな」 「わたしたちとクナギサさんみたいな?」 「それが一つめだね。利害の一致とか取り引き材料で情報交換したり一方的に渡したり」 「二つめはぼくとりすかのようなもの、か」 「うん、損得感情抜きでそれだけのことをする価値がある相手の場合だね。私といーちゃんみたいな、さ。 それで最後、三つめ」 「目的が時間稼ぎの場合、だな。もしくは相手を動揺させるのが狙いだったりってのもあるか? いずれにせよ言えることは相手を消すためであり、渡してしまっても問題ないということ、だろ?」 ぼくのものでもなく、りすかのものでもない、もちろん玖渚友のものでもない第三者の声が割り込んだ。 「大正解! 言われた通り私は時間稼ぎに徹したし殺さないで欲しいな」 「ご心配なく。気まぐれをおこさなきゃな」 即座にぼくは立ち上がり、りすかの腕をつかんで体の向きを反転させる。 扉に背を向けたままでいるのは明らかにまずい。 直後、音もなく扉が切断されこちらに向かって倒れ込んできた。 身構えたときにはぴたり、とぼくとりすかの首筋に刀が突きつけられる。 ……あれは蝙蝠が持っていた刀だ、ということは蝙蝠は──などということは考えさせてはくれないらしい。 「さっき言ったいーちゃんからのメールの内容ってのは嘘。 「いーちゃんからじゃなくてしーちゃんからだったんだよね。 「『ちょうど今ネットカフェにいる。すぐ向かうから逃がさないように時間稼ぎよろしく』ってね。 「おまけにいーちゃんたちや下で何があったかの情報までつけてくれたし。 「さっき言ったでしょ? 「『最悪の可能性は常に想像しておくもの』だって。 「創貴ちゃんが戻ってきたということは少なくとも圧倒的有利な状況ではないということ。 「だからあらかじめ手を打っといたんだよね。 「いーちゃんのメールには追伸を。 「『しーちゃんが探してる相手ならここにいるからしーちゃんがそこにいるなら一緒にいた方がいいかもねって伝えといて』って。 「そしていーちゃんと離れた可能性もあったからひたぎちゃんにも同時にメールした。 「『ネットカフェにしーちゃんが探してる人がいるよ。方向的に黒神めだかを殺せるかもしれないしあなたにとっても悪い話じゃないと思うけど』って。 「創貴ちゃんたちの前で二回手を休めたのはそのためだよ。 「携帯の操作権を渡さなかったとはいえ、いーちゃんへのメールをちゃんと最後まで読めばわかっただろうにね。 「仮にしようとしたところでさせなかったけど。 「あのとき直接しーちゃんの連絡先を取得してなかったから伝わるか不安ではあったんだけど、ひたぎちゃんを殺して携帯をちゃんと回収してくれたから結果オーライ。 「裏切った理由? 「そんなの決まってるじゃん。 「ぐっちゃんを、私の所有物を壊したからだよ。 「例え役立たずでも、捨てたものでも壊していい理由にはならないよ。 「拾われるだけでも不愉快なのにましてや壊されるなんて、ねえ? 「気づいてないとでも思ってた? 「真庭蝙蝠がぐっちゃんと『だいたい』同じ顔をして、私がカメラ越しで見たのと同じ服を血だらけで着ていて、わからないとでも思った? 「真似られるだけでも不快なのに、壊した相手を目前にしてそれを壊し返せるチャンスを逃がすような真似をするとでも? 「もちろん、打った布石が無駄に終わる可能性もあったからそのときはさっきまでの続きをやっていただろうけど、こうなってしまった今それはどうでもいいことだよね。 「そりゃあ私にとっての優先順位の第一位はいーちゃんで揺るぎないけど、他の有象無象にも一応順位は存在するんだよ。 「という感じで、どうかな?」 「うんにゃ、解説ごくろーさん──ということでお終いの時間だ、ガキのお遊びにしてもやりすぎだぜ? 兄貴が世話になった分と軋識の大将と曲識のにーちゃんを殺してくれた分、ここで全部利子も含めてまとめて返済だ。 殺して、 解して、 並べて、 揃えて、 晒して、 刻んで、 炒めて、 千切って、 潰して、 引き伸ばして、 刺して、 抉って、 剥がして、 断じて、 刳り、 貫いて、 壊して、 歪めて、 縊って、 曲げて、 転がして、 沈めて、 縛って、 犯して、 喰らって、 辱めて、 それからまた殺して解して並べて揃えて晒して――零崎を、始めてやるよ」 そしてぼくに向けた。 闇を刻み込んだような、深い眼を。 神を使い込んだような、罪深い瞳を。 さて、この程度の『障害』をどう乗り越えるか。 ぼくは睨み返す。 【1日目/夜中/D-6 ネットカフェ】 【玖渚友@戯言シリーズ】 [状態]健康 [装備]携帯電話@現実 [道具]支給品一式、ハードディスク@不明、麻酔スプレー@戯言シリーズ、工具セット@現実、首輪×2(浮義待秋、真庭狂犬)、ランダム支給品(0〜4) [思考] 基本:いーちゃんに害なす者は許さない。 0:とばっちりを受けないようにしないと。 1:もう黒神めだかの悪評を広めなくても大丈夫かな? 2:いーちゃんは大丈夫かなあ。 [備考] ※『ネコソギラジカル』上巻からの参戦です ※箱庭学園の生徒に関する情報は入手しましたが、バトルロワイアルについての情報はまだ捜索途中です ※めだかボックス、「十三組の十三人」編と「生徒会戦挙」編のことを凡そ理解しました ※言った情報、聞いた情報の真偽(少なくとも吸血鬼、重し蟹、囲い火蜂については聞きました)、及びそれをどこまで理解したかは後続の書き手さんにお任せします ※掲示板のIDはkJMK0dyjが管理用PC、MIZPL6Zmが玖渚の支給品の携帯です ※携帯のアドレス帳には櫃内様刻、宗像形、無桐伊織、戦場ヶ原ひたぎ、戯言遣い(戯言遣いのみメールアドレス含む)が登録されています ※ハードディスクを解析して以下の情報を入手しました ・めだかボックス『不知火不知』編についての大まかな知識 ・不知火袴の正体、および不知火の名字の意味 ・主催側が時系列を超越する技術を持っている事実 ※主催側に兎吊木垓輔、そして不知火袴が影武者を勤めている『黒幕』が存在する懸念を強めました ※ハードディスクの空き部分に必要な情報を記録してあります。どんな情報を入手したのかは後続の書き手様方にお任せします ※第一回放送までの死亡者DVDを見ました。内容は完全に記憶してあります ※参加者全員の詳細な情報を把握しています ※首輪に関する情報を一部ながら入手しました ※浮義待秋の首輪からおおよその構造を把握しました。また真庭蝙蝠たちの協力により真庭狂犬の首輪も入手しました ※櫃内様刻に零崎人識の電話番号以外に何を送信したのかは後続の書き手にお任せします ※本文中で提示された情報以外はメールしていません ※零崎人識からのメールにより以下の情報を入手しています ・戯言遣い、球磨川禊、黒神めだかたちの動向(球磨川禊の人間関係時点) ・戦場ヶ原ひたぎと宗像形の死亡および真庭蝙蝠の逃亡 【零崎人識@人間シリーズ】 [状態]健康 [装備]斬刀・鈍@刀語、絶刀・鉋@刀語、携帯電話その1@現実 [道具]支給品一式×11(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚) 千刀・ツルギ×6@刀語、 手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、小柄な日本刀、S W M29(6/6)@めだかボックス、 大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ 携帯電話その2@現実、文房具、炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、お菓子多数 [思考] 基本:戯言遣いと合流する。 0:今度こそ逃がさねえ。 1:いやはや、ちょうどいいタイミングでの情報提供に感謝だな。そんで蝙蝠も後で探し出してぶっ殺す。 2:伊織ちゃんと連絡を取る。合流するかどうかは後から決める。 3:零崎を始める。とりあえず戯言遣いと合流するまでは。 4:哀川潤が生きてたら全力で謝る。そんで逃げる。 5:黒神めだか? 会ったら過剰防衛したとでも言っときゃいいだろ。 6:ぐっちゃんって大将のことだよな? なんで役立たず呼ばわりとかされてんだ? [備考] ※曲絃糸に殺傷能力はありません。拘束できる程度です ※Bー6で発生した山火事を目撃しました ※携帯電話その1の電話帳には携帯電話その2、戯言遣い、ツナギ、無桐伊織が登録されています ※携帯電話その2の電話帳には携帯電話その1、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします 【供犠創貴@新本格魔法少女りすか】 [状態]健康、人識に斬刀を突きつけられている [装備]グロック@現実 [道具]支給品一式×3(名簿のみ2枚)、銃弾の予備多少、耳栓、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0〜X)」、心渡@物語シリーズ、シャベル@現実、 アンモニア一瓶@現実、携帯電話@現実、スーパーボール@めだかボックス、カスタネット@人間シリーズ、リコーダー@戯言シリーズ [思考] 基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない 0:玖渚友も排除せざるを得ない、か…… 1:ランドセルランドで黒神めだか、羽川翼と合流する、べきか……? 2:行橋未造を探す 3:このゲームを壊せるような情報を探す 4:蝙蝠は残念だが…… 5:掲示板の情報にどう対処すべきか [備考] ※九州ツアー中、地球木霙撃破後、水倉鍵と会う前からの参戦です ※蝙蝠と同盟を組んでいます ※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします(少なくとも包帯や傷薬の類は全て持ち出しました) ※主催者の中に水倉神檎、もしくはそれに準ずる力の持ち主がいるかもしれないという可能性を考えています ※王刀の効果について半信半疑です ※黒神めだかと詳しく情報交換しましたが蝙蝠や魔法については全て話していません ※掲示板のレスは一通り読みましたが映像についてはりすかのものしか確認していません ※心渡がりすかに対し効果があるかどうかは後続の書き手にお任せします ※携帯電話に戦場ヶ原ひたぎの番号が入っていますが、相手を羽川翼だと思っています ※黒神めだかが掲示板を未だに見ていない可能性に気づいていません ※玖渚友から彼女の持つ情報のほとんどを入手しました ※真庭蝙蝠は死んだ可能性が高いと考えています 【水倉りすか@新本格魔法少女りすか】 [状態]零崎人識に対する恐怖(大)、人識に絶刀を突きつけられている [装備]手錠@めだかボックス、無銘@戯言シリーズ [道具]支給品一式 [思考] 基本:キズタカに従う 1:? ? ? [備考] ※九州ツアー中、蠅村召香撃破直後からの参戦です。 ※治癒時間、移動時間の『省略』の魔法は1時間のインターバルが必要なようです(現在使用可能) なお、移動時間魔法を使用する場合は、その場所の光景を思い浮かべなければいけません ※大人りすかについての制限はこれ以降の書き手にお任せします [備考] 玖渚友たちがいるブースの中央にミスタードーナツの詰め合わせ@物語シリーズが置いてあります 中身はエンゼルフレンチ、ストロベリーホイップフレンチ、二つに割れたポン・デ・リング、D−ポップです 支給品紹介 【ミスタードーナツの詰め合わせ@物語シリーズ】 想影真心に支給。 阿良々木暦が忍野メメに差し入れようとしていたものだったが結果はご存知の通りである。 中身はゴールデンチョコレート、フレンチクルーラー、エンゼルフレンチ、ストロベリーホイップフレンチ、ハニーチュロ、 ココナツクルーラー、ポン・デ・リング、D−ポップ、ダブルチョコレート、ココナツチョコレート。 劇伴の曲名にもなった忍野メメが好きなオールドファッションは入っていない。 三魔六道 時系列順 My Generation 三魔六道 投下潤 鉛色のフィクション 牲犠 玖渚友 禍賊の絆 (前編) 背信者(廃心者) 零崎人識 禍賊の絆 (前編) 変態、変態、また変態 供犠創貴 禍賊の絆 (前編) 牲犠 水倉りすか 禍賊の絆 (前編)
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/86.html
「いーちゃんに会いたい」 ◆T7dkcxUtJw 千刀『ツルギ』。 戦国時代、四季崎記紀によって作られた十二本の完成形変体刀が内の一本にして、完全なる同一を誇る、千本で一本の刀。 その千刀の内の三本を地に並べ――とがめは熟考していた。 「……三本が三本とも、寸分違わぬ出来。これらはまさしく千刀に相違ない」 そう語るとがめの顔には、明らかに困惑の色が混じっていた。 それも当然のこと、これら三本は先刻宗像形によって突き刺されたものだが――本来ならば、今、この場にあるはずがないものだ。 千刀は――去る弥生、出雲にて、他でもないとがめ自身が蒐集していたのだから。 入手した千刀は、一本残らず尾張城へと移送した。それらが失われたなどという報告は受けていない。 また、尾張城には否定姫がいる。 認めたくはないが、奴がいながら完成形変体刀が奪われるなどという失態は絶対に起こり得ないと、とがめは確信していた。 ならば、ここにある千刀はいったい何なのか。 「贋作、という線は薄いな……出雲では嫌と言うほど千刀を見続けたのだ。今でも形状ははっきりと覚えている。 それに、贋作だとすればこれらがこうも同一である説明がつかない。千刀を完成形変体刀たらしめる理由は、そこにこそあるのだから」 千刀に付着した自分の血液を拭き取りながら、とがめはいくつかの可能性に思いを巡らす。 まず、尾張幕府がこの殺し合いの首謀者である可能性。これならば千刀の存在に説明はつくが――幕府に利点がない、と即座に却下する。 仮に幕府がとがめの素性に感づいたとしても、自分を始末するためにこんな大掛かりな舞台を用意する必要性は皆無だろう。 ならば、尾張幕府をも凌ぐ力を有する何者かが首謀者である可能性ならばどうか。 力づくで尾張幕府が保有する完成形変体刀を奪えるような存在が、この殺し合いを催したのではないか。 「いや……たしかに全盛期と比べれば幕府の力は弱まってはいるが、だとしても未だ絶対的な力を保有しているはずだ。 幕府以上の力となれば、国内にはまずありえぬ。……それこそ、諸外国に目を向けるしかあるまい。 しかし、そのような動きがあれば軍所総監督の私の耳に入らぬはずが――」 と、まあしばらくの間そんな風に悩んでいたとがめだったが。 現状、これ以上悩んでみたところで答えは出ないだろうとしめくくり、地面の千刀を拾う。 二本は背負い袋に入れ、残った一本を左腰に帯びる。 実際にこの刀を振るうつもりはない――とがめは剣士ではないし、刀を使った戦闘の経験もない。 だから、この刀はあくまで今後の他の人間との交渉を優位に進めるための飾りでしかない。 刀を帯びていれば、相手も考えなしにとがめを襲うということはしないだろうし、ならばそこに交渉の余地が生まれるだろう。 それに、下手に扱って千刀を失いでもしたらことだ。 千刀は千本で一本の刀、それゆえに一本でも欠けてしまえば千刀はその価値を失う。 そして、それはすなわち、とがめたちの刀集めの旅の失敗を意味する。 こんなわけのわからない殺し合いで、刀集めを終わらせてなるもるわけにはいかない。 「おそらく残りの九百九十七本はあの男、宗像形が所有しているはず……いずれ回収する必要があるか。 わたしを刺したように、あちこちに千刀を撒き散らされると厄介だが……いや、撒き散らされる程度ならまだいい。 宗像形よ……頼むから、頼むから一本たりとも折ってくれるなよ……。 たしかに使い物にならなくなったら代用できるのが千刀の利点てはあるが、それをされてはわたしが困る」 新たに生まれた心配事に頭を抱えつつ、とがめは再び歩き始めた。 何処へ向かうというわけでもないが、ひとまず山を下りたい。山道は、どうにも苦手だ。 とにかくあちらこちらがでこぼこしていて、よく見て歩かなければ転びそうになる。 宗像の見よう見まねではあるが、支給品の懐中電灯の使い方を理解できたのは幸運だった。 これがなければ、月明かりすらろくに届かない鬱蒼とした森の中だ。何度無様にすっ転ぶはめになっていたかわからない。 文明の利器を片手に、とがめは慎重に山道を進んでいく。 「……む?」 視界に突如出現した、鮮やかなオレンジ。 奇策士が橙なる種と出会ったのは、それから間もなくのことだった。 ■ ■ 「俺様は、想影真心だ」 無防備にも、大木に背を預けて眠っていたその少女は――寝惚け眼を擦りながら、想影真心と名乗った。 話を聞けば、最初の場所で強制的に眠らせられてから、一度はここで目を覚ましたものの、その直後に二度寝を始めたらしい。 悪びれもせず「だって俺様、眠かったし」と、しれっと言い放つ真心に、とがめは心の中で呆れる。 言うまでもなく、今は殺し合いの真っ最中である。斯く言うとがめも、つい先ほど宗像に危うく殺されかけたところだ。 だと言うのに、目の前の少女は寝入っていた。とがめが起こさなければ、そのまま寝続けていただろうことは想像に難くない。 この状況下で、あまりにも危機感が欠如している。 とがめが呆れ返るのも、無理なきことだった。 「まったく……見つけたのが、わたしのような善良かつ清廉潔白な人間でなければ、どうなっていたことか」 「うーん。多分、どうにでもなったと思うけどな。俺様、人よりちょっと強いから」 「たわけ。このわたしよりも、さらにさらに細身なその体で、なにができると言うのだ」 真心の小柄な体躯を指差して、とがめは言う。 とがめも決して背が高い方ではないが、真心はそれに輪をかけて小さい。童女と言っても何ら差し支えないほどだ。 童女でありながら、人並み外れた怪力を有する凍空こなゆきを、そして凍空一族を知っていたものの―― なまじ彼女の力を知っていたがゆえに、あのような規格外な存在がそうそういるはずがないと、とがめは考えてしまう。 目の前の少女が“こなゆき以上に規格外な存在である”という可能性には――至らない。 「まあいいや。えーと……とがめ、だっけ?」 「うむ。尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所――軍所総監督、奇策士とがめだ」 「んー。じゃあ、とがめ。あんた、これからどうするんだ?」 「これから、か。とにかく、なんとしてでもこの忌々しい首輪を外して、ここから脱出したいところだ。 わたしにはやり残したことがある――こんな殺し合いで死ぬわけにはいかないのだ。……それに、待たせている者もいるのでな」 嘘ではない。 最初に“今の段階では”を付けていない以外は、概ねとがめの本心そのままだ。 少なくとも現時点では、それが最も生き残れる可能性が高いと、とがめは踏んでいる。 その答えに、そっか、と真心は呟く。 「俺様もとがめと同じだ。殺し合いとか、実験とか……そんなのはどうでもいいし、面倒臭い。 できるなら、とっととここから抜け出して――いーちゃんに会いたい」 「……それが、おぬしの理由か」 「ああ。俺様は、いーちゃんが好きだ。好きだから、いーちゃんの、いーちゃんたちのいる場所に早く帰りたい」 「では、真心――わたしに協力してはくれぬか」 真っ直ぐに、真心の橙色の瞳を見つめ。 とがめは、少なからず緊張を含んだ表情で、そう言う。 力のない者が、この場で生き延びるには徒党を組むしかない。 身の安全を確保するにしても、脱出のための情報を集めるにしても、協力者は必要不可欠だ。 「別にいいぞ」 とがめの申し出に、真心は二つ返事で応える。 そして続けて、 「どうせ一人でいても、何をすればいいか俺様には判断つかないしな。 それなら、とがめを手伝ってた方が、時間の使い方としては有意義だろうし」 と、屈託のない笑顔を浮かべながら言った。 「これからよろしくな」と、真心が微笑み。 「こちらこそよろしく頼む」と、とがめが頷いた。 こうして―― はからずも、奇策士は最強の手駒を手に入れた。 けれど、奇策士は気付かない。 橙なる種自身も――気付いていない。 橙なる種に仕掛けられた罠――時宮時刻によって施されていた“操想術による解放”、その瞬間が刻一刻と迫っていることに―― 彼女たちはまだ――気付いてはいなかった。 【1日目 深夜 E-8】 【とがめ@刀語】 [状態] 腹部に負傷(止血済み) [装備] 千刀・ツルギ [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) 千刀・ツルギ×2 [思考] 基本:どんな手段を使っても生き残る 1:想影真心と行動しつつ、利用できそうな人間と合流。身を守ってもらう。 2:ひとまずは脱出優先。殺し合いに乗るのは分が悪い [備考] ※千刀・?(ツルギ)についての情報を持つ以降から 【想影真心@戯言シリーズ】 [状態]軽い眠気 [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:いーちゃんのところに帰りたい。 1:とがめと協力して、脱出の術を探す [備考] ※ネコソギラジカル(中)、十月三十一日から 全てが0になる 時系列順 出陣だ 全てが0になる 投下順 出陣だ 「正義は必ず勝つんだぜ」 とがめ 混沌は始まり、困頓はお終い START 想影真心 混沌は始まり、困頓はお終い
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/68.html
人間シリーズからの支給品 七七七(アンラッキーセブン) 裏切同盟の1人、罪口摘菜が製作したシュレッダー鋏。 自殺志願を凌ぐ得物として作られたため殺傷性も高い。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 病院坂黒猫 [所有者] 病院坂黒猫(15話、30話) ↓ 零崎人識(30話、35話、43話、48話(前)(中)、78話、101話、105話、120話) ↓ 零崎双識(120話、127話、129話) [メモ] 病院坂黒猫の初期支給品だが初登場は78話。 30話で零崎人識が黒猫の死体から回収し、以降は人識が所持していたが120話で零崎双識に手渡される。 以降は双識が所持していたが129話の鑢七花との戦いで破壊された。 カスタネット 零崎人識の人間関係、零崎双識との関係冒頭で零崎曲識が使っていたもの。 一般人が手にすればただの楽器である。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 人吉善吉 [所有者] 人吉善吉(2話、22話、33話、42話、61話、64話(上)(下)、74話) ↓ 黒神めだか(74話、79話、94話、98話、113話、124話) ↓ 供犠創貴(124話、137話(前)(後)、144話、150話、155話、158話(前)(後)) [メモ] 人吉善吉の初期支給品だが初登場は124話。 74話で黒神めだかが回収したものが124話で供犠創貴の手に渡り、以降は創貴が所持していたが158話で創貴が死亡、放置されている。 奇野既知の病毒 小瓶に液体状で入っており、気体にして拡散させれば原作と同じ症状を引き起こす(制限により持続時間は20分)。 そのまま全量を被験者に投薬すれば永遠の眠りに導くこともおそらく可能。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 病院坂迷路 [所有者] 病院坂迷路(15話、30話) ↓ 零崎人識(30話、35話、43話、48話(前)(中)、78話、101話、105話) ↓ 鑢七花(105話、111話、120話) ↓ 零崎双識(120話、127話、129話) ↓ 不知火半袖(148話、159話) [メモ] 病院坂迷路の初期支給品だが初登場は78話。 30話で零崎人識が迷路の死体から回収したが、105話で事故った際にこぼれ落ち七花に拾われ、120話で零崎双識が回収。 以降は双識が所持していたが129話にて双識が死亡したためB-3に放置、148話で何者か(159話で不知火半袖と判明)が回収している。 けん玉 零崎双識の人間試験漫画版に出てくるオリジナルキャラクター花撒小鹿が使用していたもの。 見た目にそぐわず、玉の部分で人間の顎を吹っ飛ばせる威力がある。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 真庭鳳凰 [所有者] 真庭鳳凰(4話、37話、53話、66話、92話、102話、116話、126話、128話、131話、136話) ↓ 櫃内様刻(136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話、166話、169話、171話) [メモ] 真庭鳳凰の初期支給品だが初登場は126話。 以降も鳳凰が所持していたが136話で櫃内様刻が奪った。 以降は様刻が所持。 ゴム紐 人間の力では伸びも縮みもしない特殊なゴム紐。頑丈な刃物でなければ切断することも容易ではない。 「緊縛女子高生之図」を構成する重要な要素。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 玖渚友 [所有者] 玖渚友(011話、039話、049話、054話、067話、085話(前)(後)、112話、125話、132話) ↓ 宗像形(132話、133話、137話(後)、144話、150話、153話) [メモ] 玖渚友の初期支給品だが初登場は125話。 宗像形が玖渚と自分の体を固定するために使用したため、実質その時点での使用者は宗像形。 132話内にて左腕を欠損した宗像が止血兼武器として使用したため所有権が宗像に移り、以降は宗像が使用。 153話で宗像の死体と共に切り刻まれた。 コルト・パイソン 闇口濡衣が竹取山で零崎双識に対して使ったゴム弾を使用した『殺意なき弾丸』。 徹底的に改造済みで匂いの残る火薬は使用しておらず、銃声も最小限に留めてある。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 阿良々木火憐 [所有者] 阿良々木火憐(1話、25話、47話、57話、77話、86話、93話) ↓ 宗像形(93話、107話、116話、125話、132話) [メモ] 阿良々木火憐の初期支給品だが初登場は107話。 93話で宗像形が火憐から回収し以降は宗像が所持していたが132話で全弾使われ現在はD-7に空の状態で放置。 愚神礼讃(シームレスバイアス) 鉛を鋳造した完全一体性の凶器。愚神礼賛(シームレスバイアス)零崎軋識の専用武器。 大戦争以前からの軋識の得物で普段は専用のバッグに入れ携帯している。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 零崎軋識 [所有者] 零崎軋識(6話、25話、43話、69話、89話) ↓ 真庭蝙蝠(89話、99話、120話、124話、137話(前)(後)、144話、150話、153話、160話、163話、168話、170話) [メモ] 登場話から零崎軋識が装備。 89話で真庭蝙蝠に奪われて以降は蝙蝠が所持していたが170話で死亡したため現在はE-5に放置されている。 手榴弾 ベリルポイントお手製の手榴弾、3個入り。 自爆用だったことから考えるとおそらく爆風で狭い範囲を殺傷するコンカッションタイプ。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 零崎双識 [所有者] 零崎双識(11話、26話、48話(前)(中)、78話、101話、105話、120話、127話、129話) ↓↓ ↓零崎人識(78話、101話、105話、120話、121話、123話、125話、137話(前)(後)、139話(前)(後)、146話、150話、153話、155話、158話(前)(後)) 不知火半袖(148話、159話) [メモ] 零崎双識の初期支給品だが初登場は101話。 うち一つは78話から零崎人識がくすね、158話で使用された。 双識が所持していた二つのうち一つは129話の鑢七花との戦いにて消費され、残る一つは148話で何者か(159話で不知火半袖と判明)が回収。 薙刀 匂宮の分家、早蕨兄弟の次男、薙真が使用していたもの。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 否定姫 [所有者] 否定姫(27話、50話、66話) ↓ 真庭鳳凰(66話、92話、102話、116話、126話、128話、131話、136話) ↓ 櫃内様刻(136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話、166話、169話、171話) [メモ] 否定姫の初期支給品だが初登場は126話。 66話で否定姫から回収して以降は真庭鳳凰が所持していたが136話で櫃内様刻が奪った。 以降は様刻が所持。 少女趣味(ボルトキープ) 罪口商会の罪口積雪が製作した少女趣味(ボルトキープ)零崎曲識の専用武器。 打撃武器としてかなりの威力を持ちながら、かつ最上位の音楽家が扱うとグランドピアノ級の音階が出る楽器でもある。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 零崎軋識 [所有者] 零崎軋識(6話、25話、43話、69話、89話) ↓ 真庭蝙蝠(89話、99話、120話、124話、137話(前)(後)、144話、150話、153話、160話、163話、168話、170話) [メモ] 軋識の初期支給品だが初登場は99話。 89話で真庭蝙蝠が軋識の死体から回収し、以降蝙蝠が所持していたが170話で死亡したため現在はE-5に放置されている。 自殺志願(マインドレンデル) 11代目古槍頭巾が製作した大鋏で自殺志願(マインドレンデル)零崎双識の専用武器(後に所有権が無桐伊織に渡る)。 半月輪の形をしたハンドルの、鋼と鉄を鍛接させた両刃式の和式ナイフを螺子で稼動するように固定した合わせ刃物。 ※以下、ロワ内でのネタバレ + 【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] 無桐伊織 [所有者] 無桐伊織(11話、39話、49話、85話(前)(後)、93話、107話、125話、131話、136話、142話、154話、156話、158話(前)(後)、162話、164話) ↓ 櫃内様刻(166話、169話、171話) [メモ] 登場話から無桐伊織が装備していたが164話で図書館前に放置されるも、166話で櫃内様刻が回収した。
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/142.html
鷹と剣士の凌ぎ合い ◆mtws1YvfHQ ≪赤き征裁≫、≪死色の真紅≫、≪疾風怒濤≫、≪一騎当千≫、≪赤笑虎≫、≪仙人殺し≫、≪砂漠の鷹≫、≪嵐の前の暴風雨≫、などなど。 彼女は様々な名前で呼ばれている。 その中でも彼女、哀川潤を最もよく表している言葉がある。 裏の世界に、暴力の世界に、身を浸す存在ならば、知らぬ者は決していないだろう名が。 誰もが彼女を、こう呼び恐れ慄くだろう。 誰もが彼女を、こう呼び逃げ惑うだろう。 誰もが彼女を、こう呼び泣き叫ぶだろう。 誰もが彼女を、こう呼び震え忍ぶだろう。 誰もが彼女を、こう呼び嘆き狂うだろう。 誰もが彼女を、こう呼び忌み嫌うだろう。 誰もが彼女を、こう呼び畏れ敬うだろう。 たった一つの名。 哀川潤にのみ許された名。 『普通』からは程遠く、総合力に秀でた『特別』でも届かず、一点特化に特化を重ねた『異常』でもなお足りない。 無論、『過負荷』などと言う生易しい物である訳もなく、『悪平等』などと言う名の存在でもある訳がない。 哀川潤を表し得る言葉は一つしかない。 それは―――― 砂漠の一角で、二人は遭遇した。 いや、遭遇したと言うのは相応しくない。 ポケットに手を突っこんだまま歩いていた哀川潤が、砂漠の中を一人で歩く、何処か眠そうな男を偶然見付けたと言うのが正しいのだが。 「おーい」 それに何の躊躇いもなく声を掛けた所で気が付いた。 此方を向いたその、眠そうな男が差している刀が血に濡れている事に。 しかしやはり何の躊躇いもなく、その男へと近付いて行く。 その男も男で近付いて来る哀川潤の存在に気付いたようだが、特に気にする様子もなく歩き続け、そして、それなりに距離を開けた所で、どちらとも言わずに足を止めた。 「……一応聞くけどあんた、もう人殺したか?」 どちらも黙ったままお互いを観察し合っていたが、哀川潤がそう聞いた。 男は何も言わずに、眠そうに刀の柄を掴んだ。 それだけでも十分、とまでは行かなくともそれに近い答えになっているはずだ。 それでもなお、哀川潤は無遠慮に近付く。 近付こうとした。 ――しゃりん。 唐突に、音が一つ鳴った。 はらりと哀川の目の前を、幾つかの髪が束となって落ちて行く。 赤い髪。 間違いなく、それは、哀川潤自身の赤い髪だった。 暢気に頭に手を伸ばす哀川潤を尻目に、男は二歩ほど後ろに下がり、刀の柄から僅かに手を離した。 「――――来るなら斬る」 ぽつりと呟くように、一言言った。 だがその一言はかなり現実味を帯びた一言だった。 何と言っても何時の間にか髪を斬った事。 更には人間を斬り捨てるのに対して躊躇いがない事。 それは良くも悪くも血に濡れた刀が証明していた。 男の言った一言。 それに頷く。 「なるほど――分かった」 理解したように頷いた、 「『言葉』ではなく『心』で理解できた!」 時には、哀川潤の足が、男の肩に、当たる寸前だった。 一瞬にして、男の左肩に蹴りを入れようとしていた。 「っ!」 突然、と言うより咄嗟に、男は衝撃を逃がす為だろう、後ろへと跳んだ。 蹴り、蹴られる事によって、お互いの距離が開いた。 だが同時に、男の方は驚いた表情を見せていた。 恐らく、予想よりも遥かに蹴りの威力が低かった事に対して。 哀川潤はにやりと笑う。 「でもそんなん心意気じゃ駄目だなァ……斬ると思った時は! 既に行動を終わってる――それぐらいの粋じゃなきゃこのあたしは倒せないぜェー!」 何処ぞの悪役辺りが言いそうなセリフ。 それにしてもこの哀川潤、ノリノリである。 対して男は、無言で刀の柄に手を置いた。 眠そうだったものなど既に、影も形もない。 その目に宿る物は、「来るなら斬る」と言う生易しい物ではない。 もっと壮絶な、「絶対に斬る」とでも言うような気迫。 理解したのだろう。 警告の為に髪だけを斬ったように、その借りを返す意味と同じ警告の意味を込めて、刀を掴まない左の肩をわざわざ狙って軽く蹴った事を。 男の目の前にある哀川潤の存在が、「来るなら斬る」程度の物では届かない、「絶対に斬る」でもどうか分からない、そんな存在だと言う事を。 何よりも、たった一度の気が向いたからした警告に命を救われた事を。 「ヒッヒッヒ――」 「――――――――」 「――――――――」 「――――――――」 哀川潤は一瞬だけ笑いはしたものの、互いに無言で対峙する。 お互いに借りを返すと言う意味では既に、対峙する必要性は無くなっている。 しかし対峙する。 明確な敵対関係はないにも関わらず対峙する。 男はどうなのか分からないが、哀川潤は物凄く楽しんで対峙する。 強くて積極的までは行かないが、強い奴に出会えた事。 目にも止まらぬ速さで髪を斬る。 暴力の世界で蠢くプロのプレイヤーの中でも、ここまで極端に行き着いた者はそう居ないだろう。 閃光の一つも見せない居合いの技。 目を凝らしても見えるかどうかと言うそれに、興奮していた。 「――――名前」 「あん?」 沈黙を保っていた。 だがそれを男が破った。 「名前、何て言うんだ?」 「なんで聞くんだ?」 「殆ど忘れかけてたんだが、ある奴から遺言を預かっててな……伝える奴かの確認だ」 恐らくそれ以外にも意味はあるだろう男の言葉。 哀川潤は笑う。 少なくとも決して良い笑顔の分類には入らない、凶悪な笑顔を浮かべて笑った。 「哀川潤だ。ちなみに、上の名で呼ぶ奴は敵だけだぜ――それであんたは?」 「宇練銀閣だ――哀川」 男、宇練が呼んだのは、哀川潤の上の名。 まだ敵対するに足る理由がなかった筈の二人が、この時、完全に敵対した。 苦手意識があった訳でも、同族嫌悪があった訳でも、憎悪関係があった訳でもなく、何と無く敵対した。 上の名を聞き終えて、哀川は動く。 嬉しそうに動く。 名前を聞いても逃げないでいてくれる敵に向かって、何十にも、何重にも、先程髪を斬られた経験ととりあえず勘を合わせて適当に作った見当を元に宇練の居合いの間合いギリギリと思う辺りでフェイントにフェイントを重ねに重ねた上で、 「――――――――!」 突っ込んだ。 居合いの名は、零閃。 宇練家に伝わる、一瞬で斬り終えている居合いの技にして、ある種居合いの極地。 それを、最初に髪を斬られた時に、それを、見た筈なのに正面から突っ込んで来る哀川に対して何の異常も感じない程には、宇練は暢気ではない。 何か策がある。 当然のようにそう思いながら、自信を持って宇練は構える。 絶対の自信。 斬れぬモノなど何もないという自信。 それこそ、「斬ると思った時は! 既に行動を終わってる」、と思えるだけの自信を持って。 迎え待つ。 「――――零ッ」 刀の間合いに入った。 決して抜け出せない、決して逃がさない、決して斬り損ねない所まで這入った。 確信と共に、抜く直前、哀川の姿は消えた。 かに見えた。 しかし宇練は視界の上端、視界の上で、赤い何かを捕えていた。 一気に後ろに跳びずさり、上を向くと同時に、 「閃!」 鞘走りの音。 ――しゃりん。 少し強引に斜め上に向けて零閃を放った。 その時にはもちろん、既に一刀両断を終わっている。 空中の物を一瞬で斬り終えていた。 一瞬で。 それ故に気付くのが遅れた。 一瞬で。 斬った確信があった故に気付くのが遅れた。 速過ぎたが故に何を斬ったか気付くのに遅れた。 斬ったのは人間ではないと気付くのが遅れた。 「……な!?」 「オラァ!」 秒にしてもほんの一秒か、多くて二秒程度。 何を斬ったか気付き、驚愕する宇練に、斜め下から何かが突き刺さった。 無意識に口が開くが、何も入って来ない。 それでも震える体を無理矢理動かし、視線を下に向け、何があったのかと見る。 そこには、頭をめり込ませた体勢のままの、 「――――」 「ぐ……ァ、哀」 哀川潤がそこにいた。 見えるのは後頭部ぐらいの物だったが、それでも理解するには十分だった。 負けた。 あっさりと負けた。 「……川――」 そう理解しながら、宇練の意識は消えて行く。 急速に消え行く意識の最中、宇練はただ、思う。 これでゆっくりと眠れるのか。 「――じゅ、ん」 そう思った。 「…………ふぅ」 哀川潤は息を吐きながら首を軽く回した。 ありとあらゆる名で呼ばれる彼女。 彼女にこそ相応しい名が、一つある。 唯一。 ≪人類最強≫。 最強の名を冠する彼女。 だがそれはあくまでも人類と言う範疇である。 銃に撃たれれば、人は死ぬ。 頭を砕かれれば、人は死ぬ。 血が無くなれば、人は死ぬ。 火で焼かれれば、人は死ぬ。 土に埋もれれば、人は死ぬ。 当り前の事だが、人は死ぬ。 だから何時かは、彼女も死ぬ。 と言うか、身体が真っ二つにされれば、≪人類最強≫でも死ぬのだ。 故に、間もなく放たれる居合い抜刀、宇練銀閣の零閃は、鬼門に近かった。 だから、と言う訳ではないが少し小賢しい手を使ったのだ。 目立つ物を上に放り投げ、そちらに気を取られた隙を突く。 それは見事に成功した。 拾い上げた物は、 「あーあー」 上の服だった。 ≪人類最強≫に不可能は殆どない。 神技的な速さで上の服を脱ぎ、上に放り投げて自分は地面スレスレを走る事など造作もないのだ。 ちなみになぜ上に投げたのが服だったかと言えば、手近にある物で、目立つ物だったからと、次いで己の姿を見え難くするのにも一役買うだろうと思ったから。 赤と言う目立つ服を着ていたので、それが無くなっただけでも目に止まり難くなる可能性と、肌色と砂の色がお互いに似ているから多少なりとも見え難くなるとも考えて。 それは物の見事に成功を納めた。 咄嗟に宇練が哀川が何処にいるかを判断したのは、眼の上端で捉えた赤で、結果、一刀両断されたのは服だった。 どちらも目に止まっていたら、普通に考えれば二分の一の確率。 しかし哀川は気付いていなかったが、正直な所、もっと危険な橋だった。 零閃は別に、一瞬に一回だけ刀を抜いて納める技ではない。 一瞬で五回抜いて納める、通称、零閃編隊・五機と言うとんでも技まであったのだ。 更に言えば、斬刀と血の二つさえあれば一瞬で十回斬り終えている大技、通称、零閃編隊・十機と言う技まで。 だから勝てたのは偶然と言って良い。 いや、実の所を言えば偶然と言っては悪い。 今回の戦い、実は過去に、宇練銀閣が負けた時の筋を若干ながら辿っていたのだ。 鑢七花と言う男と戦い、正面から零閃を避けられ、蹴り飛ばされ、上から攻められ、散った。 正面から蹴られた。 これが奇しくも宇練の脳裏に刻まれていた敗北の記憶を刺激し、無意識に上への警戒心を強めた。 運も実力の内と言えば十分実力の範疇だが、偶然だけでは決してなかった。 しかしそれでも代償はちゃんとある。 「真っ二つか……」 横に真っ二つに斬り裂かれた服。 丁度、真ん中辺りで斬られた服。 着ればヘソ出し、着ずはブラのみ。 しばらく真っ二つにされたそれを眺めながら、どうするか悩んだようだったが、選んだのは、ヘソ出し。 砂を払ってからそれを着ると、何を思ったのか徐にポーズを決める。 「蝶・セクシー!」 しかし残念ながら周りには、倒れている宇練を除いて影も何もなし。 突っ込みも何もない。 どのぐらいの時間が過ぎたかは分からないが、ポーズを辞める。 戯言遣いのような、突っ込む相手が居ないでボケても単純に虚しくなるだけだと分かったからだ。 とりあえず足先で倒れている宇練を軽く触った。 反応はない。 「――おーい?」 声を掛けながらしゃがんで身体を揺するが反応はない。 首を傾げて、宇練の胸に手を当てた。 沈黙。 そして顔に一筋の汗。 「やべえ、心臓止まってる」 【宇練銀閣@刀語シリーズ 死亡】 哀川潤は少し焦ったように呟きながら腕をまくり、肩を回す。 「流石に加減しないとな……一姫みたいに肋骨折っちまったらいーたんに文句言われそうだし」 そして、宇練の胸の上に両手を乗せて、押す。 心臓マッサージは始まった。 あっさりと終わった。 【宇練銀閣@刀語シリーズ 復活】 「復ッ活ッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ、宇練銀閣復活ッッ」 宇練銀閣の止まっていた心臓は、色々と犠牲を払ったものの無事に動き始め、無事に復活。 このような場に来ても、全てを無視したような無茶苦茶さは健在と言える。 いや、戦った相手すらも巻き込む台風のような存在は傍若無人さと言う方があっているか。 意のままにならないと言わず、意を考える暇もないような、酷く激しい暴風雨。 宇練は運悪くそれに巻き込まれたのだ。 そんなのに巻き込まれ、そんな暴風雨に巻き込まれ、安眠など出来る訳もなく、寝れると思うだけ甘かった。 「…………さてと、一人ボケ……じゃなくて冗談もほどほどにして、刀は没収、荷物も没収っと」 何の躊躇もなく宇練の持ち物を奪い取り、その上で、 「よし、連れてくぞ?」 一応声を掛けてから肩に担いだ。 しかし気絶中の相手に声を掛けた所で返事がある筈もなく、実質強制連行でしかない。 もっとも、とある人物をスタンガンで気絶させた上で拉致した事のある哀川潤が、その程度の事を気にする訳もない。 肩に担いでいる宇練の重さを気にも留めず、と言うか重さを感じさせぬ足取りで、早足気味に歩き続けるのだった。 何はともあれ、哀川潤にとっての命の掛かった殴り合いで宇練銀閣にとっての鎬を削る殺し合いは、哀川潤の勝利で幕を閉じたのだった。 ≪人類最強≫ それが、哀川潤を表し得る言葉にして、哀川潤にのみ許された名である。 【1日目/早朝/H‐5】 【哀川潤@戯言シリーズ】 [状態]健康、まあまあ満足 [装備] [道具]支給品一式×3、ランダム支給品(1~6)、首輪、血濡れの刀@不明 [思考] 基本:バトルロワイアルを潰す 1:とりあえずバトルロワイヤルをぶち壊す 2:いーたん、 玖渚友、想影真心らを探す 3:積極的な参加者は行動不能に、消極的な参加者は説得して仲間に 4:東に向かう、(骨董アパートを目先の目標) 5:とりあえず宇練を持ってく [備考] ※基本2の三人は居るだろう程度で探しています。本当かどうかは放送待ち ※基本3の積極的はマーダー、消極的は対主催みたいな感じです ※道具の中にある首輪の存在には気付いていません ※まだ刀は使える状態です ※想影真心との戦闘後、しばらくしてからの参戦です 【宇練銀閣@刀語シリーズ】 [状態]気絶中、肋骨数本骨折 [装備] [道具]なし [思考] 基本:因幡砂漠を歩き、下酷城を探す 1:流れに身を任せる 2:斬刀を探す [備考] ※気絶中 骨倒アパートの見るものは 時系列順 魔のつく二人の人探し 図書館での静かな一時 投下順 魔のつく二人の人探し [知られざる英雄(知られた英雄) 哀川潤 崩壊を受け追う(抱懐を請け負う) 破壊臣に墓石 宇練銀閣 崩壊を受け追う(抱懐を請け負う)
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/151.html
何に狂うか何に病むか ◆mtws1YvfHQ 西条玉藻は狂っていた。 元から狂ったような人格を持っていた彼女だが、今はそれを超えて狂っていた。 毒刀の猛毒刀与。 人を斬りたくなると言う刀の毒に侵されて、更に狂っていた。 それでも彼女は然程狂っていないように見えた。 元から狂ったような存在だったが故に、人を斬りたくなる毒の効果が薄かったのかも知れない。 そんな彼女は今、狂人の意思を持ってとある存在、零崎一賊秘中の秘、零崎人識を探していた。 己の愛しき獲物の片方を持っているだろうと言う確信とただ好奇心の二つを持って探していた。 探していたと言っても手掛かりがある訳ではないのでただ無作為に歩き回っているだけだった。 そんな彼女が箱庭学園の中で放送を耳にしたのは必然だったかも知れない。 様々な建築物の建ち並ぶそこに足を踏み入れ、迷い歩いていたのだ。 そんな彼女は一時間後に此処が禁止エリアになる事など知りもしない。 しかしそれでも人間が減った事だけは朧に理解していた。 それでもただ人を、あるいは殺人鬼を、探し歩いているだけだった。 そんな中で、まるで何かに導かれるように彼女は一つの建物に足を踏み入れた。 なんで踏み入れたか聞かれれば答え辛い。 しかし強いて上げるとすれば、微かに何かが聞こえたからだ。 「……ゆらぁり」 と。 壊れたように。 病んだように。 踏み入った場所には、一つの影が佇んでいた。 江迎怒江は病んでいた。 泥舟さんのためだったら何だってできるのに、二度目の離れ離れ。 たった二度、と人は言うかも知れない。 だがその二度は、彼女にとって何物にも勝る二度だった。 ただ幸せになりたいと願う少女にとって、たった二度の別れは、身を二つに裂かれるような物。 辛く、辛く、ただ辛い。 愛しい人と引き裂かれる事は、ひたすらに辛い。 そんな彼女が放送を迎えるにあたって、箱庭学園の一角、「木漏れ日」と言う名の植物園に居たのは必然だった。 なぜならば、泥舟が教えてくれた『荒廃する腐花』の新しい使用方法である植物操作を最も活用できる場所がそこであり、きっと泥舟さんなら私を頼ってそこに居てくれる。 儚い幻想に縋り付こうとするのも、幸せになりたいから。 しかしその幻想はあっさりと現実によって否定されたのだが、諦め悪く居続けていた。 結果、届いた放送は最悪とまでは行かなくとも、今の彼女には最低の物だった。 「なんで」 ぼそりと小さな呟きに始まり、 「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」 壊れたように口から漏れ出した言葉の数々は、 「ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ」 淡々と植物園の中を響き渡る。 なんで、と言う呟きは、悲痛の響きを持って。 なんで皆、私の幸せの邪魔ばかりするのかと。 壊れたように。 狂ったように。 響きが消えて行く場所に、一つの影が現れた。 「ナンデナンデナンデナンデナンデ」 淡々と、壊れたレコードから同じ音が出続けるように、同じ言葉だけを吐き続ける江迎怒江。 「――――ぴたり」 ゆらゆらと、幽鬼の如く不気味に体をゆらしながら、歩いていたが足を止めた西条玉藻。 病的な少女と、狂気の少女。 二人の戦いは、狂ったような目と病んだような目との二つが合わさり絡まり、始まった。 「ゆらぁ――――」 傍から見ていると、西条玉藻が唐突に顔から地面に倒れようとしたように見えた。 だがそれは間違いである。 次の瞬間には既に間合いを閉じようと玉藻は駆けていた。 地面すれすれを、毒刀を引き摺るようにしながら、不吉な金属音を奏でながら。 速い。 刀とナイフを持っているのかと疑いたくなるような速さ。 しかし怒江は慌てず、地面に手を付けた。 じゅくり。 「ナンデ」 と、怒江が触れた地面が音を立てて、腐り果てた。 そしてそれから一瞬の間を置いて地面が、否、世界が変貌する。 蠢き波打ち鳴り響き。 蠢動し流動し鳴動し。 「ナンデ」 植物の、根が、枝が、葉が、幹が、乱れ、暴れ、壊れ、破れ、狂い果てたように、病み切ったように、四方百八十度と言わず八方三百六十度から、 「皆、邪魔を!」 玉藻へと襲い掛かる。 三百六十度。 上下左右に前後全てを含んだ文字通り全方位からの殺到。 物量による奔流の如き圧倒。 しかし果たして玉藻はどうしたかと言うと、 「――ぁり!」 怒江に向かって走っていた事をなかった事にしたように、後ろへと飛びずさり、斬り裂く。 あたかも膨大な重量を持つ筈の刀とナイフが分裂しているかのように俊敏に動き回り、後方から圧殺せんとした植物群を斬り裂いた。 無理に跳んだ所為で玉藻は地面に倒れた。 しかしそれでも、後方に跳んだ判断は正しい。 斬り抜けたと思った数瞬の後、先程まで、あるいはあのまま走り抜けようとすれば玉藻が居たであろう場所は後方よりも遥かに多いその他からの植物によって押し潰された。 前方の植物の質量が圧倒的に多かったのは、怒江の無意識な自己防衛の表れか。 後方の植物は退路を断つ目的よりも、牽制の方の意味合いの方が強かったのか。 どちらにせよ、あるいはどちらでなかったとしても、玉藻は斬り抜けた。 怒江にとっては不幸な事に、斬り抜けられてしまった。 押し潰したと思ったまま、斬り抜けられてしまった。 「ナンデナンデナンデナンデナンデ! 皆皆皆皆皆! 邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかり邪魔ばかりっ!」 怒江からは植物が邪魔で玉藻が倒れたなど見えないし、音も犇めく音で聞こえない。 植物と植物が更に絡まり合う。 中に居るだろうと思いながら、相手の原形すら留めまいと蠢く。 しかしそれはあくまでも、相手が中に居ることが前提での行動。 質量を持って押し潰したと思って、油断していた。 見えないけれど潰したと思って、油断していた。 あろう事か地面に手を付いたまま、油断していた。 そして怒江は、 「私が」 声を震わせ、俯いた。 それに合わせて植物の動きも止まる。 しかし全くと言って良いほど関係無い。 この場合に関係あるのは、下を向いてしまった事だけだ。 最早何の植物が絡み合っているのか分からない塊の横をすり抜け、前屈み気味の玉藻がそんな怒江に向かって走る。 地面を引き摺られている刀が不気味に輝く。 恐ろしいほどに毒々しい輝きを見せる。 「私が幸せになっちゃぁ――っ?!」 音に気付き、俯いていた怒江が顔を上げたが既に遅く、 「――きりころされてくださいよぅ」 それ以上の反応の隙を与える間もなく、凶刃が、振り抜かれた。 鮮血。 血が散る。 刀を振り抜き、その重量に従って少し歩いていた玉藻が呟き、 「……きりころされて?」 首を捻った。 自分の言った事に疑問を抱いたように、首を捻った。 その後ろで怒江は、恐る恐る顔へと手を伸ばす。 口元から斬り裂かれた頬から、思い出したように血が噴き出し、その手を濡らす。 手が血で濡れ、その血が腐り始め、微かな腐臭が漂い始める。 幸いにして斬り裂かれたのは頬だけだった。 右の頬だけが口元から大きく斬り裂かれただけで、命は残っている。 顔を上げた時に口が若干開いていた事、玉藻の腕の位置が低かった事。 この二つが幸いして、歯や骨は斬られていなかった。 血が止まりさえすれば命に別状はないだろう。 「なんで?」 「………………いや」 「ずたずたじゃなくて」 「…………いや」 「なんできりころす?」 「……いや」 「なんで?」 「いや」 沈黙が二人の間に降りた。 玉藻と怒江の体が不気味に振動し始める。 目玉が尋常ではない速度で動き回る。 何かを理解しようと動き回る。 「いぃいぃぃいぃィィイィイィィィイィイ」 「――……じぎぎざざざぎぎぎぎぎぎぎぎ」 そして、 「イィィィイイヤァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアよくも!」 怒江は絶叫し、 「荒廃した腐花狂い咲きバージョンタイプマンドラゴラ!」 少し距離を取ってから、再び手を地面に触れさせた。 植物が、波打つ。 それらは根も葉もなく組み合わさり絡まり合い繋がり合い、ただ無数の塊に、否、無数の人の形をした塊に変わり果て、 「 !」 無言の雄叫びと共に、呻き続ける玉藻へと群がる。 だが、一手、あるいは一歩、遅かった。 「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎあ、ずたずたにしたうえできりころせばいいか」 玉藻は納得したように頷き、 「ずたずたにきりころされてくださいよぅ」 壊れたように、狂ったように、玉藻は、笑みを浮かべた。 襲い掛かる人の形が無数で腕の数は数多。 対して、玉藻は一人で腕が二本。 この差は武器があった所で埋められる物ではない、はずだった。 刀が地を這い、ナイフが宙を滑る。 二本の腕が四本に、四本から八本と、更に増して増して増して、残像を持つほどの速度で駆け廻る。 そして、駆け廻った後には、 「――うそ」 バラバラに斬り刻まれて跡形も無くなった植物が、地面に落ちた。 玉藻の刀が黒く輝く。 そして、怒江に向かって駆ける。 「ひ、ぃっ荒廃する腐花狂い咲きバージョンタイプ柵!」 その瞬間。 怒江が躊躇いなく叫ぶと、玉藻と怒江の間の地面が不気味に盛り上がり、脇にあった木々花々が狂い咲き、ツタとツタが連なり絡まり結合し、巨大な数メートルはあろうかと言う植物の柵が出来上がった。 玉藻は勢いのままに刀を振るい、次いでナイフも振るう。 弾かれこそしかったが、、木材を鉋で削るが如く、大して斬れていない。 向こう側まで斬り開くには時間が掛かりそうだ。 この隙を付いて更に植物が玉藻を襲い掛かる。 事は、なかった。 そのまま怒江は、逃走した。 玉藻から走って逃避して行った。 「嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる 嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる 嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる 嫌われる嫌われる嫌われる嫌われる」 一時怒りに我を忘れたものの、恐ろしさの余り逃げ出した、逃避した江迎怒江の思考は、 「嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない 嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない」 口から漏れ出す言葉以外の何物も含んではいなかった。 怒江は病んでいる。 だがそれだけだ。 貝木泥舟に対して盲目的であったとしても、泥舟との間を邪魔する相手には神経質だったとしても、それ以外に対して同じ訳ではない。 頭は一応周り、考えもきちんと纏まる。 不幸にも。 頬から血が流れて服に染み込み地面に垂れる程の出血と口の中まで血の味がする事実、それに顔を横切り引き裂くような痛み。 顔を、口元から頬に掛けて斬られた。 その事実をあっさりと考え、認識してしまった。 そんな顔をしていると思い、気付いてしまった。 だからこそ。 こんな顔じゃ、嫌われる。 だけど、嫌われたくない。 そんな思いに支配されていた。 幸せになりたい。 だけどこのままじゃ嫌われる。 幸せに、なれない。 嫌われないにはどうしたらいいか。 無意識的にか意識的にか、足は自然と動く。 自然と、傷を治療する為の施設へと足が動いていた。 泥舟を捜すよりも前に、治療する為に。 仕方がない。 幸せになりたい、と思う彼女を誰が責められようか。 しかし、幸せになりたいと言う焦りに限らず、焦りは重要な物を見落とさせる。 例えば。 服から滴り落ちる血、とか。 【一日目/早朝/D‐4】 【江迎怒江@めだかボックス】 [状態]身体的疲労(大)、出血(中)、口元から頬に大傷(半分口裂け女状態)、ヤンデレ化 [装備]無し [道具]無し [思考] 基本:泥舟さんとの恋を邪魔する者は問答無用で殺す 1:顔の傷を治療する 2:球磨川さんを殺す [備考] ※『荒廃する腐花 狂い咲きバージョン』使用できるようになりました。 ※西東診療所か診療所のどちらかを目指しています。 西条玉藻が柵を斬り抜かずに乗り越えた時には、既に江迎怒江は影も形もなかった。 それを残念がるそぶりを微かに見せたものの、歩き始めた。 怒江が逃げて行ったと思しき方向へと歩き始めた。 植物が道を遮り、視界を横たわる明らかに不信な群生地帯。 それを気にする様子もなく乗り越え、斬り捨て、たまにある植物で出来た怒江の偽物を斬り倒して、ゆらゆらと建物の外へ向かって、 「ゆらぁ、り……?」 歩いている最中に、異様な物が現れた。 硝子張りの壁。 それが綺麗に腐り落ちていた。 人一人が歩いて通り抜けられるだけの大きさの穴を開けて。 ぎょろりと目玉を動かして周囲を見渡し、また歩き始める。 その足取りは実に適当見溢れるそれだが、目玉だけは常に周囲を見渡していた。 獲物が近くにいる事は分かっているのだから。 それ程歩いていない内に、 「ぴたり」 玉藻の足が止まった。 運良く箱庭学園を抜け出したから、では勿論ない。 動きが止まったのは、血の跡を見付けたからだ。 血。 分かり易い、誰かの痕跡。 その行く先へに向けて、歩き始める。 血の跡を追って、動き始める。 誰の物かも知れない血の跡を追って、狂戦士は行く。 その先の相手を、■■■■。 目的はそれだけ。 血の先に居るのが江迎怒江だろうと零崎だろうと関係ない。 「ゆらり――――ゆらり」 どちらにしろ、■■■■。 変わりはない。 人間だろうと鬼だろうと、狂戦士の前では変わりない。 過負荷だろうと異常だろうと、狂戦士の前では変わりない。 【1日目/早朝/D‐4】 【西条玉藻@戯言シリーズ】 [状態]身体的疲労(小)、毒刀・鍍による発狂状態 [装備]毒刀・鍍、エリミネイター・00@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:あてもなく、ぷらぷらする。が、もう一本の方も欲しい 1:血の跡を追い掛ける [備考] ※「クビツリハイスクール」からの参戦です。 ※追い掛けている血の跡は江迎怒江か零崎双識のものです。 傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語 時系列順 立つ鳥 傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語 投下順 立つ鳥 冒し、侵され、犯しあう 江迎怒江 この世に生きる喜び -Theory that can be substituted- 冒し、侵され、犯しあう 西条玉藻 つばさゴースト
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/94.html
その男、取り扱い注意にして ◆xzYb/YHTdI 滅んだ世界とはどんなものか。 草一本生えない荒れ果てた大地か。 氷河に包まれた凍り果てた大海か。 灼熱に燃え盛り焼け果てた大空か。 今頃心臓を貫かれ、ただの死体と成り果てた元不死身の吸血鬼であった少年はこう考えた。 人間がひとりもいない世界が滅んだ世界といえるだろう。と。 さて。それでは、自分が世界を滅ぼそうとするとき何をすればいいのだろうか。 一木一草も残さず全てを荒野と化せば世界は滅ぶのか。 一切合切例外なく全てを氷河と化せば世界は滅ぶのか。 根こそぎに覆う程全てを熱空と化せば世界は滅ぶのか。 老若男女に拘らず全てを無人と化せば世界は滅ぶのか。 とある呪い名からいわせれば、人類最終なる者がいれば十分らしい。 では、この男は何をもってすれば世界は終わると考えるのだろう。 この男は何を考えて行動しているのであろうか。 この男は何を目的とし生きているのであろうか。 この男…人類最悪は結局何がしたいのだろうか。 ◇ 真っ白な、まるで死に装束のような和服姿。 すぅっと伸びた感じのその身体にぴったり合っているようで、 非常に涼しげな印象を与える。とても似合っている。 右手には死亡フラグの定番アイテムでもある、拡声器。 そして顔には、狐のお面。 そう。知ってる人は知っている。《人類最悪》こと西東天、その人である。 そして、その彼はというと、 「う~ん。どうする俺。言いたい。とても言いたい。叫びたい! しかし…。ふん。俺がここまで悩むとは。なかなかあることじゃあねぇぜ」 …ウズウズしていた。悶々としていた。 この普段何も考えていない。と自分で断言できる程の彼が こんなに悩んでいるのは確かに珍しい。…が。 「零崎人識に代わる代理品を見つける絶好の舞台だ。 しかし、リスクが大きい。こんな愉快な物語を早々に読めなくなるのも 惜しい。そう考えると、ここでジッと傍観しててもいいが、どうしたものかな」 とても常人では考えられないお悩みをおもちのようである。 というか、どんな思考回路しているんだ。という感じである。 まあ、そんなこんなで時間は流れていく……。 【1日目/深夜/A‐6】 【西東天@戯言シリーズ】 [状態]健康 [装備]拡声器(メガホン型)@現実 [道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2) [思考] 基本:悩み中 1:悩み中 [備考] ※零崎人識を探している頃~戯言遣いと出会う前からの参加です ※拡声器を使うor傍観するかで悩んでいます 反抗開始 時系列順 「許せねえな」 反抗開始 投下順 「許せねえな」 START 西東天 狐の達観