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「そうよ、みんな静かになさい!」 むっ、この偉そうな声は! 月明かりの下、月よりも赤い髪が跳ね上がった。月のように美しいおっぱいを持つその女は……。 「キュルケ!」 ゴーレムが進行方向を変えた理由が今分かった。 敵の攻撃と味方の自爆でどうしようもなくボロッボロになったわたし達よりも、効きもしない炎を背後から撃ってくる赤毛の方が鬱陶しかったんだ。 「お集まりいただいた皆々様、今から歌劇をおっぱじめますわよ。主演女優はあ、た、し」 ああっ、あの女、短時間でばっちり化粧し直してる! 「なァに格好つけてるの! あんたの炎はこれっぽっちも通用しなかったでしょ!」 「あたしが魔法だけの女とでも思って? 反吐でも吐きながら桟敷席でご観覧くださいな」 「待ちなさいってば!」 「あんたはそこであたしの活躍見てなさいルイズ。近づいたら命の保障はしないわよ」 何かよく分からない。でもとてもまずいような気がする。 魔法が通用しないのにしゃしゃり出るってことは、魔法以外の手段を使うってことよね。 キュルケが使う魔法以外の手段っていえば、使い魔くらいしかないわよね。 キュルケの使い魔っていえば、水をお湯に変える……。 「や、やめなさいキュルケッ! あんたそれで何をどうすれば勝てると思うの!?」 「この子がわたしの中で騒ぐのよ。殺戮こそが全て、闘争こそが生きがい、闘わせろ、闘わせてくれ……って」 無茶苦茶言ってる。 兵隊蟻だってそんなこと考えるかもしれないけどね、だからってドラゴンにかかっていけば踏み潰されて終わりでしょ。 ゴーレムはキュルケを障害物とさえ考えていないようで、全く歩みを緩めない。 「やめてキュルケ! 逃げて!」 愚かな真似をやめさせるため、走り寄ろうとしたわたしの肩に堅く厚い手が置かれた。 「蚤の無謀は勇気とは呼べん」 「ぺティ! あんたキュルケ見捨てる気!?」 「落ち着きたまえルイズ嬢。キュルケ殿の勇気、どうやら蚤の無謀ではないようじゃ」 「蚤の無謀以外の何だって言うのよ!」 キュルケはその場から動こうとしない。足を止めたまま、胸の谷間から引き抜いた杖を天に掲げた。 「ルイズ。まさかあんた、この子が水をお湯にするだけの力しか無いと思っていないでしょうね」 不敵とか大胆とかいう形容のぴったりくるその顔は、いかにもキュルケって感じ。悔しいけどかっこいい。 「あれはあくまでも訓練。この子の力をコントロールするための練習ってやつよ」 杖の先がわなないた。何かが、得体の知れない何かが集まっていく。 「あたしはこの子の力が暴走しないよう制御するための器。あたしだけがこの子の力を抑えることができるの」 ゴーレムがキュルケの目前に、その巨大な足を突き出した。 風圧で豊かな髪がはためき、もっと豊かなおっぱいがプルプルと震えるも、キュルケ自身は両の足でしっかりと地面を掴み、小揺るぎもしていない。 杖を振り、先に集めていた「何か」を飛ばした。一直線に飛んだ「何か」はゴーレムの膝を直撃する。 「何よあれ……」 震えていた。巨大な土の塊が鳴動していた。 歩行時の振動なんてものじゃない、大きな揺れがわたし達のいる所まで響いてきた。 立っているのもやっとという揺れなのに、キュルケは平然とおっぱいのみを揺らしている。 「分子空動波……って名前らしいわ。お味はいかが?」 ただ震えているだけじゃない。何かおかしな形に……膨らんでいる? 縮んでいる? 作ってる途中のシチューみたいな……あれはひょっとして……沸騰している!? ぐっつぐつに煮えたぎって、赤い泥みたいになった土が崩れていく。 崩れた膝では自重を支えることができずに尻餅をついた。キュルケは最初の位置から一歩も移動していない。 三十メイルからなる巨躯が倒れ、強い地響きとともに土の飛沫が飛んできてもキュルケは動かない。 キュルケに達する直前で、飛来した土くれはどこへともなく消え去った。 見てるわたしは何をしているのか全く分からないんだけど、そんなわたしの思いはオール無視、キュルケは追撃の手を緩めない。 謎の衝撃――キュルケ曰く分子空動波――を次々に撃ち込み、 「随分タフなのね……でもそういうところ好きよ。練習台に持ってこいなんですもの」 苦し紛れに伸ばしてきた手を空中三回転で回避した。今度は空から正射を始める。 ってことはフライと同時に使ってるってことよね。やっぱりあれ魔法じゃないんだ。 ゴーレムは全身がまだらな赤に染まり、まともに動くこともままならない。 見下ろし、キュルケは微笑んだ。そりゃもう妖艶に。なんていうか抱いてください。 「それじゃそろそろフィニッシュといきましょう。ギャラリーも飽きちゃうからね」 いやいや飽きてませんって。 破壊の女神が巨人の胸に降り立った。熱くないのかしら。 「分子……地動波」 着地点を中心に、緋色の亀裂が縦に走った。横に、斜めに、縦横無尽に駆け抜けた。 体の部分部分を鉄にして抵抗しようとしているみたいだけど、鉄も岩も同じように沸騰している。 「ドラゴンズ・ドリームやヨーヨーマッとは性質の違う力」 うおっ、タバサ。復活したと思ったらいきなり解説するのね。忙しい子。 「波紋とも違うようじゃ。おそらくはまた別の世界……魔人とでも言うべき力じゃな」 このメンバー、解説役が多いわね。 「な、なんだかよく分からないけど……すごいことしてるってことだけは分かるよ」 マリコルヌ、あんたは別に出てこなくてもいいから。 「濃密な宇宙エナジーを感じます。おそらくは第三平行世界における汎宇宙的生命体の力を借り……」 あんたも引っ込んでなさい。 うっはあ、暑い暑い、ここまで熱が届くってどういうことよ。 キュルケ平気な顔してるけど、あの子神経通ってないんじゃないの? ゴーレムが崩れていく。もうすでに原型留めちゃいないけど、それよりも激しく崩れていく。沸騰が気化に移行しつつあった。 タイミングを合わせたんでしょうね、キュルケがパチンと指を弾くと同時にゴーレムは塵になった。 塵に……ゲホッ、ゲホゲホッ、ちょ、ちょっと、風に乗って流れ……ゴホゴホゴホッ! 「さよなら来訪者!」 「何がさよなら来訪者よ! ゴホッ! フーケはまだその辺にいるかも……ゲホッ!」 「そんなのあたしの知ったことじゃないわ」 無責任よ! ゴーレム倒したんだからフーケも倒す義務がある! たぶん! 「みんな気をつけて! フーケがまだその辺に潜んでいるわ!」 「さすがモンモランシー、素晴らしい推理だ! みんな、警戒を怠るな!」 今わたしが言った事復唱しただけでしょうが。 ま、何にしても気をつけなきゃいけないわね。今のわたし達がボロボロの状態ってのは変わらないわけだもの。 あのレベルの魔法を使う余力は無いでしょうけど、それでも警戒に値するわ。 一人一個師団のキュルケとはるか遠くへ逃げたグェス、マ役リ立コたルずヌ以外の全員で背中合わせに輪を作った。 うっ……臭うと思ったら右隣にヨーヨーマッがいる。何か冷たいと思ったら左隣はワルキューレじゃないの……ひょっとしてわたし嫌われてる? 「しかしこのまま待っていてもいいものじゃろうか。逃げられてもまずいのではないかね」 そりゃそうだけど……でも、こちらから攻勢に出るには視界が悪い。 塵になったゴーレムのせいで五メイル先も見えやしない。キュルケっていつも考え無しなのよね。 学院からの応援を待とうにも、そんなもの待っていれば本当に逃げられちゃう。 かといってこちらから出て行けばいい的よね。 「……手詰まりね」 「まだ」 タバサ? あのね、親友の尻拭いしようって気持ちは分かるけど、あまり無理しない方がいいわよ。 「攻撃する」 眼鏡が……眼鏡じゃない。眼鏡の奥がキラリと光った。 風に流されたのか、それとも確固たる意思の元動いたのか、ドラゴンズ・ドリームが主の前で浮遊している。 タバサが首肯し、ドラゴンズ・ドリームが大きく頷き返した。 いったい何をする気なの? 自分の体よりも大きな杖を頭の上まで振り上げて……え? ドラゴンズ・ドリームに向けて振り下ろした! ……新手のプレイ? 「大凶、決定」 すいません、わたしには趣旨も意味も理解できません。 要するに、タバサがドラゴンズ・ドリームを殴りつけた。ここまでは分かる。 趣旨はともかくとして何をやったかは分かる。で、ここからが理解不能なのよ。 タバサに殴られたドラゴンズ・ドリームは何一つ変わることなく浮遊し続けていた。 なぜか殴った杖の先が欠けている。右前方からくぐもった悲鳴と誰かが倒れたような音。 で、タバサの「大凶、決定」宣言。はい、意味が分かりません。 わたしにできることといえば、次第に晴れていく塵の煙幕を待つことだけ。 少しずつ、ほんのちょっとずつ、視界が開けてきた。月の明かり、星の明かりが中庭を照らす。 四方八方に飛び散る城壁、ゴーレムが暴れた跡、なぎ倒された木、それら破壊された物の中に横たわる人影。 「あれは……ミス・ロングビル!」 「大丈夫ですか、ミス・ロングビル!」 いの一番で駆け寄るわたし。貴族の鑑ね。 付け加えておくと、助け起こすドサクサでおっぱい触ってやろうなんて思ってないわよ。 あーあ、誰がやったのよコレ。頭頂部で立派なたんこぶがぷっくりと膨れていた。 ちょっとつついてみようかな。 「フーケ」 「は? 何言ってるのタバ……」 「動かないで! 動けばお友達の命が無いわよ」 抱き起こそうとしたミス・ロングビルは、わたしの首に腕を絡めて抱き締めた。 背中におっぱいの感触が……ひょっとしてミス・ロングビルって……わたしのことが……。 「お察しの通り、あのゴーレムを動かしていたのは、わたし」 ええそうでしょうね。そうでしょうとも。現実逃避しようとしてましたよ。 しかしミス・ロングビルが土くれのフーケだったなんて。予想もしなかったわ。 「動くなと言ってるでしょう、ミス・ツェルプストー。あなたの力でお友達ごと灰にするおつもり?」 あっ、キュルケが杖を下ろした。闘いこそ生きがいなんて言ってたけど、わたしのことも考えてくれてはいるのね。 「全員近寄るな! 指一本動かせば小娘を殺す!」 普段は絶対に見せない表情でロングビルが怒鳴った。 じりじりと近寄ろうとしていたぺティが足を止める。止めるしかない。 ていうか近寄ろうとしてたのがぺティだけってどういうことよ。あなた達わたしがどうなろうといいってわけ? ああ、どうしよう。このままじゃマリコルヌを超える足手まといだ。 「悪いけど一次撤退させてもらうわよ。そろそろ学院の方も騒がしくなってきたようだし」 人質にとられたわたし、人質をとったミス・ロング……フーケ、手が出せないキュルケ達。 皆が皆焦っていたのに、一人と一匹だけが泰然自若に構えていた。タバサとドラゴンズ・ドリームだ。 「……勇気があるのね。お友達が生きようが死のうがどうでもいいの?」 「ちょっと違う」 ちょっとなの? わたしとしては全然違っていてほしいんだけどな。 「あなたは大凶。すでに決定済み」 「ふん、わけの分からないことを」 フーケは自分の太股のあたりをまさぐった。 「あなたはそこでじっとしてなさい」 今度は胸元をまさぐった。 「じっとしてさえいれば……」 落ち着き無く足元に目をやっている。 「この子は無事に……」 心なしか顔が青ざめてきたような……ゴソゴソと全身を探っていた。 これ、ひょっとして……。 「あの……ミス・ロングビル……じゃなくてフーケ」 二十メイルは離れた木の影から、グェスがこちらに向けて手を振っている。 「何? 今、人質とお話している暇はないんだけど」 そんなこと言いながらわたしの質問に返事してくれるあたりこの人も律儀よね。 手を振るグェスの右手にはわたしの杖が握られ、左手には見覚えのない杖を一本握っていた。アレって……アレよね。 「あなたひょっとして、杖を失くしたんじゃ……」 フーケは動きを止めた。体温が上がり、そして下がり、滲み出た汗が服越しに伝わってきた。 「……そんなわけないでしょう」 ぺティが走った。キュルケも走った。タバサも走った。ワルキューレ軍団も走った。主に押されたヨーヨーマッや大釜背負ったギーシュまで走った。 巻き上がる土ぼこり、かき消された悲鳴、巻き込まれないために逃げ出すだけで精一杯。 ふう。ちょっとあなた達、わたしの分も残しておきなさいよ。
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お熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ!-1 お熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ!-2
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サーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔-1
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小屋の外から叫び声がする。ルイズたちの声だ。 小屋の窓越しに全長30メイルにも達しようとするゴーレムの姿が見えた。 「何だとッ?!」 「僕はミス・ロングビルが『杖を振る』のを確認してないぞ?」 「フーケはロングビルじゃなかったのか?」 「と、とにかく『破壊の杖』はこれです! 早く脱出しましょう!」 ミス・ロングビルはそういいながら『M72ロケットランチャー』を手に取り、外に出て行ってしまった。 「あ、ああ!」 「そうしよう!」 出て来たとたん、土のゴーレムは三人を執拗に攻撃しだす。 「ロハン!皆を連れて学院に逃げろ! こいつは俺が足止めする!」 「分かった!行くぞ!ロングビル! この状況じゃどこにフーケがいるか分からん!」 「は、はい!」 (さっき『薪に似せた杖』を投げるフリをして振った… まだ、『私がフーケである事実』はまだバレてないようね… それに『露伴』と『ブチャラティ』を引き離した! 危なかったけど計画通り!) 露伴はロングビルと共にタバサ達と合流した。 「あれすごく強いわロハン! 私の炎も、タバサの竜巻も効かないわ!」 「退却」 「ああ、そうしよう。『破壊の杖』はロングビルがGetした」 「ルイズは?」 「あ、あれ?…」 「!あそこ」 ルイズはブチャラティのすぐ後ろにいた。 つまり、ゴーレムのすぐそばである。 巨大なゴーレムの顔に小さな土煙が上がる。 どうやらルイズの魔法のようだ。 「ブチャラティ!!ルイズを頼む!」 「アリアリアリアリアリアリアリ!!!!!!」 「拙いな…!俺の『スタンド』との相性は最悪だ…」 ブチャラティはそうつぶやいた。 先程から、ゴーレムの両足を 『スティッキィ・フィンガーズ』全力で細切れにしているが、土でできた『ゴーレム』は『切断』していく端から再生していく… 「『足止め』する分にはいいんだが…」 ふと、目の端に仲間の姿が映る。 「何ッ!」 ロハンとミス・ロングビルは無事にキュルケたちに合流できたようだ。 問題は、ルイズだ。こちらに走ってくる! 杖を振りかざしながらもこちらに走ってくるのをやめないッ! 「こいつと戦うつもりなのかッ!」 間一髪。 ブチャラティはルイズとゴーレムの間にわが身を入れることができた。 「お前もロハンたちと逃げろ!」 「いやよ!こいつを倒せば、誰も私のことを『ゼロのルイズ』と呼ばないでしょ!」 「何を言っている!いまはそんな場合じゃない!」 スティッキィ・フィンガーズでゴーレムの攻撃を解体しながらしゃべったため、ブチャラティに、少しずつ、だが確実に飛石のダメージがたまっていく… 「だって、ヒック。悔しくて…私…」 「くッ…マズイ… ここはルイズだけでも逃がさなくては…」 「ブチャラティ!!ルイズを頼む!」 「こいつを受け取れ!」 露伴が何かを投げた。 「飛んで飛んで飛んで飛んで…♪」 「回って回って…♪」 「落ち~るぅぅ~~♪」 そのまま露伴が叫ぶ。 「君のそのルーンは武器を持ち、主人を守る意思を持ったときに、又は、心を振るわせたときにその真価を発揮する!」 「おそらく『スタンド』もパワーアップするはずだ!」 今度こそ露伴達は走り去ってゆく。 ブチャラティは『デルフリンガー』を拾った。 右手で握ると、『ローマで体験した精神入れ替わり直後の感覚』にいた感覚だ。 (あの時は、『スタンド』の能力がパワーアップしていた…) (こらならいけるッ!!) 後ろに隠れているルイズに左手を差し出す。 「分かった。俺一人では正攻法でこいつを倒すのは困難だ。 ルイズ。力を貸してくれ。『二人で』あのゴーレムを倒そう」 「…分かったわ!」 ルイズは、差し出されたブチャラティの手を握る。 ブチャラティのルーンが光り輝いていく… そして二人が叫ぶ。 『『スティッキィ・フィンガーズ!!』』 『『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!!』』 あれほど修復を繰り返していたゴーレムがあっという間に崩れていく… ルイズは実感していた。 (私一人では『ゼロ』だけど、「使い魔」いえ、『仲間』と一緒なら何でもできる!) (今ならそんな気がするわ!) バ―――――z______ン! 『『アりーヴェ・デルチ!!』』 あと、十歩。 そこに行けば、乗ってきた荷車に到達できる。 学院に「救援」を要請できる… 「そこに止まりなさいロハン!それにミス・ツェルプストー!」 声の先には、タバサの喉元に杖を突きつけたミス・ロングビルがいた。 不意に当身でも食らわせられたのか、タバサは気を失っているようだ。 あと、五歩。 だが、立ち止まらざるを得ない。 「まずミス・ツェルプストー。あなたは杖を捨ててもらいます」 「…あなたが『土くれのフーケ』だったのね…」 キュルケは杖を草むらに放り投げた。 「そしてロハン。あなたはこの『破壊の杖』の使用方法を教えなさい。 あなた、『宝物庫』でこの使い方を知っているような話し方をしていたでしょ?」 「僕が話すと思っているのかい?」 「ええ、『この子の命』と引き換えならね…」 「……分かった。『諦めた』。話そう」 「ロハン!…」 「いいか、よく聞け。 まず、リアカバーを引き出して、インナーチューブをスライドさせる。 照尺を立てた後、照準を合わせてトリガーを引くんだ。 最大射程距離は1000メートル。10メートル以内は信管が作動しないからな。 ついでに言っておくが、後方45度、25mにはバックブラストが行くから注意が必要だ。どうだ、簡単だろ?」 「?」 「?何言ってるの?」 ミス・ロングビル、もとい、『土くれのフーケ』は戸惑っているようだ。 「この子の命が惜しくないの?私に分かるように説明しなさい!」 「分かった。まず、そこの、そう。それがリアカバーだ。 それを引き出して…」 露伴が指で指し示しながらフーケに近づいた。 「待って!それ以上近づくんじゃあねーわよ!」 フーケの杖を持つ手に力がこもる。 「分かった。もう近づかない。 すでに一歩『射程内』にはいったからな…」 「?」 『ヘブンズ・ドアー』! 『タバサ達を攻撃することはできない』! 「う、動けない!」 突然、フーケが身動き一つできなくなる。 「もう大丈夫だ。キュルケ。こいつを縄でぐるぐる巻きにしてやれ」 気絶したタバサをお姫様抱っこしながら、露伴が言う。すでに勝利したような表情だ。 「は、はい!」 キュルケはフーケの杖を取り上げ、用意していたロープで縛り上げた。 「何したのよ!答えなさい!」 「僕が『諦めた』といったのは『ブチャラティに僕の能力を隠し通す事』だ」 「あの男、ゴーレムと戦っている最中にも周囲に気を配っている… 本当に戦闘経験豊富なやつだな…」
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サーレーの母の病気の原因は肺ガン。 治療にはSPW財団のガンの発育を抑える薬が要る。 それには莫大な金とSPWに顔利きが出来るぐらいの地位が無ければ買えなかった。 その薬が手に入るまで、サーレーの固定化で症状の悪化を防いでいた。 しかし、現在サーレーと母親との距離は遠い。 固定化の効果が切れるまで後大体3日。 この間に帰る必要が有った。 第三話 「使い魔サーレーと黒髪メイド」 ルイズ日記 ●月▼日 あ、有りのままに起こったことを書くわ! 今日私の召喚した使い魔なんだけど、最初逃げたり、生徒たちの総攻撃を止めまくったり すごいと思わせるようなことをやりまくったのに故郷に帰れないと知ってイキナリ取り乱したりとんでもなく凄かった! 何を言っているかわからないと思うけど、先住魔法や家庭の危機とかチャチな物では断じてないわ!!もっと凄い物の片鱗を味あったわ。 なんかお母さんが何とかって言ってたわね・・・。 わめき疲れて今は寝てるけど、こいつに何があってどんな理由で逃げようとしていたのかは聞くのは明日になりそう・・・。 俺は何をしていたんだろう。何か疲れて寝ていたんだけど。 て、床アア阿亜阿亜嗚呼!? ・・・大して驚くような事でもなかった。 それにしても此処は一体何処なんだ? サーレーはすっかり昨日起こったことを忘れていた・・・訳ではなかった。 「ああ、俺。あのクソ生意気な小娘に何かよびだされたんだったっけ。」 サーレーは身の回りの状況を把握する。 中々外装が豪華な部屋だ。 辺りの目ぼしい物を漁ってみることにした。 もしかしたらこの場所がどこか分かるかもしれない。 サーレーはルイズの寝ているベッドに近ずく。そして眠りこけているルイズの顔をそっと覗いた。 ネクリジェ姿でかわいらしい寝顔のルイズを見ていると幼いころの妹を思い出す。 「この寝顔だけ見てれば可愛いんだがな・・・。」 昨日のルイズの高飛車っぷリを思い出してみる。 やべえ、何かやる気萎えてくる。 ああいう高飛車な女、好きじゃねえんだよなー。 サーレーはそう思いながら身の回りを漁るのを再開する。 机の上に何やら本が見えた。ちょっと読んでみよう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「なにこれェ!!こんな言語見たことも聞いたことも無いぞ!!」 でも、イタリア語通じてたよな・・・。 サーレーの頭に疑問が浮かぶ。 昨日まで言語は問題なく通じていた。多分、今でも通じるだろう。 しかし何か頭の奥底に違和感が残る。 この国は一体どこなのか。母にかけている固定化が自分のスタンドと繋がっている感じがしない。 ・・・・ 只考えていては仕方ない。何かしなければ。 サーレーには考えている余裕は無い。彼には帰るべき家と守るべき家族がいる。 こんな所で立ち止まっている場合じゃない。 サーレーは今度はクローゼットを開いて物色を開始する。 「・・・服ばっかりだな。」 しばらく物色していると何やら黒いひも状の布製品が見つかった。 「何だ、コリャ?」 この余計な発見でサーレーは後に地獄を味わうことになる。 「ふああ・・・。」 サーレーが起きてグッと伸びをするルイズに近ずいていく。 「よう。起きたか。」 サーレーがルイズの顔を覗く。 まだ眼がトロンとしていて眠そうだ。 「もしもーし・・・。」 返事なし。 今度は耳元で声をかけてみる。 「もしもーし。ボン・ジョルノ!!(おはようございます)」 反応なし。 しかたない・・・最終手段発動まで3!2!1! 「こんの・・・ぺちゃパイがアアアアア!!さっさとおきやが「誰がぺちゃパイじゃあああ!!」」 ・・・首の曲がる嫌な音がした。 「いてえ・・・。」 ルイズの回転膝回し蹴りで首が90度回転して変な方向に曲がった。 「だれがぺちゃパイよ!!この蜘蛛頭!!」 「誰が蜘蛛頭だ!!このチンくしゃ!!」 まさに売り言葉に買い言葉!馬鹿と傲慢、二大関わりたくない人種の共演! これぞまさに究極のシンフォニー(究極的に駄目な意味で。)!! とまあ、こんな感じで口喧嘩は進行していたのだが・・・・・。 ここに一人、乱入者が現れる。 「ちょっと!うるさいわよ、ヴァリエール!!」 そう!この状況で一番被害を受けているであろうキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーである!! 「な、何よ!ツェルプストー!勝手に入ってこないで!!」 「あんたらがウルサイから文句言いに来たんでしょう!!まったく・・・朝っぱらから何やってんのよ・・・。」 そこまで言うとキュルケは次にサーレーを一瞥した。 (昨日はトンデモナイ化け物に思えたけれど・・・案外人間味の有る奴なのね。) あのネボスケを起こしてやるなんて、案外いい奴なのかも・・・。結構イイ男だし・・・。 実は手がかりが見つからずルイズに直接聞こうとしていたという事は本人は知る由も無い。 「分かったわね!今度うるさくしたら、只じゃ置かないから!」 「うるさいわね!!わかったわよ!!」 ルイズがそういうか言わないかの間にキュルケはルイズの部屋を出て行った。 「あんた!たとえあんたがメイジだとしても人の悪口を耳元で叫ぶなんてどういう神経してんの!!」 ルイズが随分怒ってサーレーに怒鳴る。 「ああ、もう悪い。悪う御座いました。」 サーレーはそれを聞き流した。なにやら言い争っているのが馬鹿らしくなってきたのだ。 言い争いはこれぐらいで切り上げ、ようやく本題に入る。 「なあ、ルイズ。お前、前にここから俺が帰りたいと言った時無理だと言ったよな?一体なんでなんだ?」 「だって使い魔は主人を守る・・・。」「いや・・・その話は昨日の腐るほど聞いた・・・。」 そう・・・。」 ルイズはそこまで言うとチラリと自分の部屋の時計を確認する。 「時間が無いわね・・・。ねえ、あんた。洗濯言ってきてよ。」 「はあ!?何で俺が行かなきゃならないんだ!?」 ルイズがサーレーをジロリと睨む。 「あんたの仕事は私を守ることだけど何も無いときは何をするの?で、考えたんだけどしばらくは家事をやってもらいたいのよ。あんたは聞くところ魔法は使えるけど貴族じゃ無さそうだしね。」 サーレーは呆れてしばらくポカーンとしていた。 何せ自分の着た服や下着を初対面の人間、しかも男に洗えという。 デリカシーの無いにもほどがある。 「年頃の娘の言うことじゃないだろう・・・。」 「なんか言った?」 サーレーは肩をすくめた。 (まあ、暫くはここで世話になるんだからこの位やるか・・・。こんなチンクシャの下着なんか洗ってもやる気と希望もムンムン沸いて来ないんだよな!!・・・多分。) ほんの少しチョッとした邪念が入っているサーレーなのであった。 このサーレー、完璧に当初の計画を忘れている。 「はああ、っと。ここで洗濯すればいいとか言ってたな・・・。」 サーレーは巨大な洗濯物の山を持って水汲み場まで来ていた。 そこでサーレーは一つ重大なことに気が付く。 「あ、洗濯板と洗剤忘れた・・・。」 だめジャン俺!! な、状態のサーレーの視界に一人のメイド服の少女が飛び込んできた。 普段なら気にしないその少女も今のサーレーにとっては救いの神だった。 なぜなら彼女は洗濯をしていたのだ!! 洗濯板と石鹸を持って!! そして、サーレーは彼女から借りれば態々あの鬼ガキのところまで返らずに済む!! 横顔も可愛かったし、もしかしたら・・・・。うへへへへへへ・・・・。 邪念たっぷりなサーレーはメイド服の少女に近ずいていった。 「あのーすんません・・・。」 「きゃっ!」 少女が驚いて飛びのく。 「あ、すんません。ちょっと洗濯板と石鹸貸して貰っていいですかね?いやー最近来たもんでどこに何があんのか分からなくて・・。」 あ、この子。横顔もだけど正面も可愛い!! 「あ、貴方がミス・ヴァリエールに召喚された人ですね?」 「あれ、俺そんなに有名になってんの!?」 「ハイ。何でも奇妙な術でメイジの貴族の方々を相手に大暴れしたとか。」 ヤバイ・・・こんなところで目立っちまった!! 正直スタンド使いが目立つのはご法度だ。 能力を相手に示すことは本人にとって同時に弱点をさらけ出すこと。 まだ、奇妙な術程度の認識だから良い物のばれれば対策を立てられて終わりだ。 この前の戦闘で俺を眼の敵にしている奴は五万といる。 まあ、正直いって自業自得なんだが・・・。 「あのー・・・。どうしました?」 少女が悩んでいるサーレーを心配そうに見た。 「ん、ああ、スマン。洗剤と洗濯板だったよな。」 考えていてもしょうがない・・・。 そういう問題はそのときに考えよう。 サーレーの顔が焦った顔から普通の(堅気の人専用)顔に戻った。 その顔に戻ったのを見て少女は安心したのかニッコリとしてサーレーに顔を向けた。 何やら悪い物が洗い流された気がする。そんな感じの笑顔だった。 「私はシエスタって言います。はじめまして。」 「俺はサーレー。名前は故郷の言葉で塩だ。」 「変な名前ですね。塩って。あ、でも覚えやすくていいかも・・・。」 サーレーはその問いにへへっと笑った。 この二人の出会いが今日、トンデモナイ事件を引き起こすことはまだ誰も知らない・・・。 「ン出よ、シエスタ。」 「はい?何ですか?」 「なんで月が二つあるんだ?」 ・・・・・・・・・・・・・・ 「何イイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」 まだまだサーレーは前途多難なようです・・・・。 ルイズ「ちょっと!私の出番!良いとこないじゃない!!」 今度こそルイズに出番がありますように・・・・。 TO BE CONTINUED