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タルブ村の中央に位置する、丸い広場。 その石段でできた広場に設置された噴水。 流水が涼しげに波紋を作っている。 その光景を最もよく見えるように、大きくテラスを張りだたせた建物。 その建物は、入り口が南側。壁は、白い漆喰。 「ここみたいね」 キュルケが、午後の太陽の光を背中に浴びながらいった。 彼女たちの目的地は、ここ、『魅惑の妖精亭・本店』である。 タルブ村は平凡な田舎村でありながら、実は、特異な郷土料理で有名な村であった。 その郷土料理の名声は、遠くゲルマニアの地にまで聞き及ぶ。 物好きな豪商や貴族たちは、この魅惑のリストランテまで足を運んで、己の舌に鼓 を打つのだった。 このリストランテは、貴族や豪商にも利用できるように清潔に整備されている。 店内には、席が百席ほど用意されているだろうか? ルイズはそう見て取った。 「ついたわよ、ダーリン」 キュルケのその言葉にも、ブチャラティは気づかない。 なにか書かれている紙を手に持ち、それを一心に見つめている。 ブチャラティが、タバサの竜に乗っている間中、ずっとだんまりを決めていたのも このためだ。 彼は、道中、ずっとこの店のメニューを見ていたのだ。 「う~ん……やはりマルガリータは当然頼むとして…… ボルチーニ茸をのせてもらうか……」 「あの……ブチャラティさん……?」 さすがのギーシュも、ブチャラティの異様な態度に気がついたようだ。 「イカスミが無いのが残念だが……」 ルイズは、大きく息を吸い込んだ。 一瞬の間のあと、広場を少女の大声が支配した。 「ブチャラティ!!!」 「なんだ? ルイズ、そんなに大声を出して?」 「着いたわよ、『ピッツァ』が食べられる店」 「おおっ! そうか!」 ブチャラティはそういい残すと、やっと顔をあげた。 「ずいぶんと、人が並んでいるな」 そういった口は、不満の色を隠せない。 彼の言うとおり、『魅惑の妖精亭』の前にあつらえてある、待合椅子には、三十人 ほどの、いかにも身なりの良い人たちが並んで座っている。 おそらくは、メイジの客なのだろう。 「こんなに混んでるんだったら、相当待ちそうだな」 ギーシュは自分のおなかをさすりながら言った。 今の時刻は、とうにお昼時を過ぎている。 今頃トリステイン学院では、食事も終わり、食後の紅茶が配られている頃だろう。 この時間になっても、貴族たちですら並んでいるという事実は、ブチャラティに希 望を抱かせた。 だが、同時に、ルイズたちも、結構な時間を待ち時間に浪費する、という真実を示 してもいた。 「どのくらい待つだろうかな?」 多少は冷静さを取り戻したブチャラティは、誰ともなしに発言してみた。 彼は、まともな返答が返ってくる事は期待していない。 だが、それにもかかわらず、彼の原始的な欲求は、心の中でやくたいもない不平を 量産していくのであった。 くそっ。 これがもし故郷のネアポリスであったならば。 あの、なじみのポモドーロおばさんの店だったのであれば。 自分の不登校な息子のことで愚痴を言いながらも、俺に優先してピッツァを包んで くれるのに。 だが、ここは異世界。 ブチャラティ以外に、生粋のイタリア人はいない。 その代わりに、彼らに声をかけるものがいた。 「お~い」 ルイズは、その声が店内からかけられたことまではわかったが、正確な位置はわか らない。それほどまでに、この店は混んでいたのだ。 「あそこ」 タバサが人差し指を店内の一点に向ける。 ルイズは見つけた。 タバサが指さす、店の奥に設置された大き目の丸テーブルを。 それをたった三人で占拠していた。 そのうちの一人が、彼女らに声をかけた張本人。 岸辺露伴だ。 「うまい! 最高だ。ネアポリス特有の厚めの生地。それを、外側はかりっと、内 側はややふんわり焼いてある。 しかも、このマルガリータピッツァにのったモッツァレラチーズは、フレッシュ タイプの水牛のものだな。臭みがまったく無い」 ブチャラティが露伴の隣に座り、熱々のそれを口に運ぶ。 とろけたチーズと、トマトが舌の上で絶妙に絡みつく。そこに、ルッコラの葉がア クセントを加える。この店の自慢の一品である。 「ええ、ブチャラティさん。このチーズを作るお牛さんは、おじいちゃんがわざわ ざ東方の地から探してつれてきたそうですよ」 シエスタは、ブチャラティのコップに赤レモンのジュースを注ぎながら答えた。 「すごいな、君のおじいさんは。こんな地で、本場のイタリア料理が食えるとは思 いもしなかったよ。このパッケリのパスタと、トマトソースは実によく合う! なんというか、どこかのバカとプッツンの組み合わせだ。いい意味でな」 露伴はレモンジュースを飲みながら言った。彼が今、食べているパスタはアツアツ のボロネーゼだ。 タルブ村に降り注ぐ、真っ赤な太陽をたくさん浴びて育ったレモンの酸は、露伴の 舌にいまだ残る、モッツァレラチーズの後味と混ざり合わさり、さわやかな快感を 露伴の脳に感じさせた。 「いえ、私のお爺ちゃんは、故郷を探しにいった帰りに見つけたらしく『ついでだ』 といってました。ただ、この赤いお野菜のほうは、わざわざ探したみたいです。 『世界中を探して回った』といってたそうです」 「そうすると、君は曽祖父も、祖父もハルケギニアの人間じゃないのか?」 「はい。ええと、『タケオ』曾おじいちゃんは、お母さんのおじいちゃんですね」 ブチャラティとシエスタ、岸辺露伴が、このように魅惑の妖精店内で舌鼓をうってい たころ。 ルイズたち、トリステイン学院の学生たちはその恩恵を受けられずにいた。 なぜなら、彼女たちは、コルベールの前で、小さくなっていたからだ。 「ミス・タバサ。私は言ったハズです。学生に、長期休暇は与えられないと」 「……」 タバサは上目遣いに、その人物を見やった。 コルベールではなく、彼の奥に座っている露伴を。 「余所見をしないでください!!!」 「……はい」 「特に、あなたは御家の事情とかいうもので、何かと休みがちなのです。いくら成績 がいいとはいえ、あまり感心できません」 ルイズたちは椅子に座って、コルベールの頭越しに、ブチャラティたちの宴を見せ付 けられているところである。 「コルベール先生。タバサも反省していることですし、その位になされては?」 タバサとは反対に、キュルケは、明るい感じでコルベールの顔を直視した。 コルベールの額が日光で輝いている。その反射光は、キュルケの谷間を照らしていた。 「ミス・ツェルプストー。これは、あなたたち学生には共通して言えることですぞ!」 「フフフ、すみません。でも、来てしまったのはしかたがありませんわ」 「むむむ……そういわれては……」 危うく、キュルケの誘惑に陥落しそうなコルベールであったが、彼の脆弱な男心に、 意外な助っ人が表れた。彼の前で恐縮しきっている男子生徒、ギーシュである。 「コルベール先生。まあ、今回はブチャラティさんが『この店に行きたい』といって のことです。あまり長居はしませんってば」 この言葉に、コルベールは教職としての本分を何とか思い出した。 「それならば、なぜあなたたちがついてくるのです? 彼はミス・ヴァリエールの使 い魔であって、君達の使い魔ではありませんぞ? 特にミスタ・グラモン。 君は、私の『基礎地歴学』の単位を落としているではないですか。追試は来週です。 ここに来るほど、君は試験の成績に自信があるのですか?」 「う゛……」 「それにですな。ミスタ・ブチャラティは、使い魔であっても中身は立派な成人男子 です。ミス・ヴァリエール、君がこのタルブ村まで付き添う必要はないではありま せんか」 「いえ……でも、自分の使い魔の管理はちゃんとしないと……」 「はっきり言って、日ごろの生活態度から見るに、ミス・ヴァリエール。あなたこそ がミスタ・ブチャラティに監督される立場ではないですかな?」 「……はい、そうです……」 コルベールの説教癖のせいで、ルイズたちは、日が落ちるまで彼の御言葉を拝聴しな くてはならなかった。 そのおかげで、ルイズたちは一泊だけ、タルブ村の、シエスタの実家に泊まることを 許可された。 コルベールが、学生たちに夜半の、危険な旅をさせることに反対したからである。 だが、ルイズたちは、学院を抜け出した罰として、昼食にありつける事はなかった。 俗に言う、『おあずけ』というやつである。 To Be Continued...
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「このギアッチョによォォ~ 容赦しねェだと?ええ?おい やってみろクソガキがッ!!」 とは言え、男―ギアッチョには最初からフルパワーで行く気はなかった。よってたかってピンク頭に野次を投げかけていたガキ共は、ギアッチョの凍てつかんばかりの殺気に恐れをなして蜘蛛の子を散らすように我先に逃げ出していたし、年齢から考えて教師であると思われるハゲ野郎は仲間を呼びに行ったのかもうこの場にいない。ちなみに当のピンク頭は彼の下で腰を抜かしている。 ―そのオレに恐れることなく立ち向かってくるガキ・・・どうやらこいつが筆頭格の強さを持っていると理解していいようだ―ギアッチョはそう考えた。こいつをブッ倒し、奴らの戦意を喪失させてからここを出る。なかなかいい作戦じゃあねえかおい。 「今ここでオレのジェントリー・ウィープスを全開にすればこの中庭を丸ごと凍らせるのはたやすい・・・しかし逃げ出したガキ共にそいつを見られると面倒なことになりそうだからなァァ~~」 「何をぶつぶつ言ってるのよ!くらいなさいッ!」 キュルケが言い放ちざま大型の火弾を打ち出すが、ギアッチョはそれを意にも解さずキュルケに向かって歩き出す―氷でシールドを作ることもせずに。その余裕ぶりにキュルケはカチンときたが、「いいわ、ナメているのならそのまま燃え尽きればいい」と思いなおした。2・・・1・・・着弾ッ!! バシュウゥウゥウッ!! 「なッ・・・!!」 しかし火弾はギアッチョに当たる寸前、大量の水をブッかけられたかのような音を立てて「消え去った」!! 「そんな 嘘でしょ・・・!?」 眼前の出来事を信じられないキュルケは2発、3発と火弾を放つ。しかしまぐれであれという彼女の 願いも虚しく、彼に撃ち出された火弾はその全てが直撃寸前に消滅するッ! ギアッチョは歩き続ける。氷のように冷たい眼でキュルケを見据えて。 「炎ってよォォ~~・・・」 ザッ・・・ザッ・・・ 「一般的には火が激しくなったものを言うんだが・・・」 ザッ・・・ザッ・・・ 「実際に火が激しいはずの単語には炎じゃなくて火が使われることが多い」 ザッ・・・ザッ・・・ 「噴火だとか火柱だとかよォー・・・ 」 ザッ・・・ザッ・・・ 「なんで噴炎って言わねぇーんだよォォオオォオーーーッ それって納得いくかァ~~おい?」 ザッ・・・!ザッ・・・! 「オレはぜーんぜん納得いかねえ・・・」 ザッ・・・!! 「な・・・何なの・・・こいつ・・・」 キュルケはもはや完全に敵に呑まれていた。ギアッチョがついに目の前までやってきたというのに―構えることすら出来なかった。そして。 バキャァアアッ!! 「なめてんのかァーーーーッこのオレをッ!!炎を使え炎を!チクショオーーームカつくんだよ! コケにしやがって!ボケがッ!!」 キュルケは宙を舞った。 「うぐっ・・・い・・・痛ッ・・・ フフ・・・だけどおかげで眼が覚めたわ 今よフレイムッ!!」 「ムッ!?」 どこからか現れた化け物が―実際にはギアッチョの眼に入っていなかっただけだが―彼に向かって火炎を吐き出す!しかしそれも彼に当たる直前にことごとく消え去ってゆく。「・・・まだ理解しねーのか?え?おい 隙を突こうが無駄なんだよッ・・・・・・」 そこまで言ったところでギアッチョは気付いた。今火を噴いた化け物の存在に。 「・・・なんだァ~?こいつがてめーのスタンドってわけか・・・?」 とは言ってみたが・・・どう見てもこれは「ビジョン」ではない。実体である。 ―いや・・・そういうスタンドがあってもおかしかねー・・・世の中にゃ無生物に命を与える スタンドもいるくれーだからな・・・―ギアッチョはそう思いなおすとキュルケに眼を戻し、 「こいつでブチ割れなッ!!」 直触りを発動しようとしたその時。 ドゴォッ!! 「うぐぉおぉッ!?」 上空からギアッチョに空気の塊のようなものが撃ちつけられた! 「タバサ!」 キュルケが日の落ちかけた空に向かって叫んでいる。 「ナメやがって・・・上かァーーッ!?」 ギアッチョが見上げた空には。 バサッ これまたどう見ても実体の― 「ドラゴン・・・?」 ―それに乗ってこっちを見下ろしている少女。そして何より彼女の後ろに二つの月が 「・・・なんだ・・・ありゃ・・・」 二つの、月が。 ―ここはトリステイン王国の― 「マジで・・・別世界だってェのか?」 流石のギアッチョも呆然とせざるを得なかった。 ルイズはじりじりとギアッチョに近づいていた。正直自分が何かの役に立つとは思えなかったが、因縁の相手のはずの自分を体を張って助けてくれたキュルケを見殺しになど出来なかったのだ。キュルケは「とっとと逃げなさいよゼロ!」と必死に眼で語っているが、そこは妙な意地を張らせたらトリステイン一のルイズである。聞き入れるわけがなかった。 一方ギアッチョは―静かに沸騰していた。 ここが花京院もビックリのファンタジー世界だとほとんど確定してしまった以上、とりあえずは武器を収めて情報の収集にかかるのが最善手だろう。しかしギアッチョに売られた喧嘩を見過ごす選択などあるはずがない。 「後のことは・・・てめーらをブッ倒してから考えるッ!!そっちが空中にいるってんならよォォ~~ ちょっとだけ本気をださせてもらうぜェェェー!!」 ギアッチョの足元が凄まじい速度で凍っていく。それはギアッチョの靴を覆い足首を覆い・・・ルイズは眼を疑ったが、どうやら氷のスーツを形成しようとしているらしい。 ―マズいッ!! 少女は遅まきながら確信した。何だかよく分からないがこいつの魔法はヤバい!この氷の発生速度、スーツを形成する精密さ、何よりそれが無詠唱で行われているということ!更にこの殺人をも厭わない覚悟!どこまで暴れるつもりか知らないが・・・死人は出る!絶対にッ!そしてそれを阻止するチャンスは今ッ、このスーツが完全に形成されるまでの間しかないことを! ルイズは反射的に動いていた。反射的に―だが決死の覚悟で、ギアッチョに飛び掛ったッ!完全にタバサに気を取られていたギアッチョは一瞬反応が遅れ、そして―ルイズの殆ど頭突きのようなキスをまともに「食らい」、頭からブッ倒れた! 「ガフッ!!てめー何をしやがったァァ~~!?毒か!?スタンド・・・いや魔法かッ!?」 ギアッチョとは逆方向にブッ倒れたルイズは、よろよろと立ち上がりながら告げた。 「・・・契約よ・・・!」 「・・・ああ?どういう事だッ!ナメやがって クソッ!・・・・・・ぐッ!!?」 ギアッチョの左手が光り始め、 「っづぁああぁああぁあああああッ!!!」 その甲にルーンが浮かび上がったッ! こいつを説得するなら今しかない!ルイズはギアッチョの前に仁王立ちになる。 「聞きなさい!あなたがどれだけ強いか知らないけどここには300のドラゴンを一人で倒した 偉大な学院長や太陽拳を使える先生がいるのよ!これ以上騒ぎを起こせば先生方は 黙ってないわ!万一囲いを破って逃げ出せたとしてもあなたみたいな危険人物は四六時中追っ手に追われ続けるわよ!悪魔の軍団を一人で倒せるような追っ手達にね!」 半分以上は今適当にでっちあげた話だったが、 「・・・」 ギアッチョには思いのほか効果があったようだった。ルイズは疑われる前に話を進める ことにする。 「ま、貴族を3人も殺そうとしたんだから今のままでもまず終身刑は免れないわね ちなみにあなたが入るのは水族館と呼ばれる脱獄不能の監獄よ!」 これもデタラメである。 「・・・で、てめーはオレにそれを聞かせてどうしようってんだ?え?おい」 食いついたっ!ルイズは心中でガッツポーズをした。 「話は最後まで聞きなさいよ あなたが罪を問われない方法が一つだけあるわ・・・ 私の使い魔になることよ!」 「・・・・・・一応聞いとくが・・・そのツカイマってのは何なんだ」 「主の剣となり盾となるものよ」 「・・・・・・」 一瞬の逡巡の後、ギアッチョは舌打ちをしながらもルイズに答えた。 「まぁいいだろう・・・この世界のことがわかるまではここにいるのも悪い選択じゃあねぇ」 実際は一度使い魔になってしまえば死ぬまで契約は執行されるのだが―今それを 言うとこいつはまたブチ切れるだろうと思ったのでルイズはとりあえず黙っておくことにした。 ←To Be Continued・・・ 前へ 戻る 次へ
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峡谷の山道に作られた小さな港町、ラ・ロシェール。その酒場は今、内戦状態のアルビオンから帰って来た傭兵達で溢れ返っていた。 「がっははははは!アルビオンの王さまももうおしまいだな!」 「いやはや・・・『共和制』ってヤツが始まる世界なのかも知れないな」 「そんじゃあ『共和制』に乾杯だ!」 そう言って野卑な声で笑う彼らが組していたのは、アルビオンの王党派だった。 雇い主の敗北が決定的になった瞬間、彼らは王党派に見切りをつけてあっさり逃げ帰ってきた。別段恥じる行為ではない。金の為に傭兵をやっているのだから、敗軍に付き合って全滅するほど馬鹿らしいことはないということである。 ひとしきり乾杯が終わった時、軋んだ音を立ててはね扉が開いた。フードを目深に被った女が車輪のついた椅子に座っており、白い仮面で顔を隠した貴族の男がそれを押しながら入ってくる。 真円に可能な限り近づけようと苦心した跡が見てとれるその車輪はしかし急ごしらえの為に満足な丸さを持てず、回転する度に耳障りな音を立てて車体を揺らした。女はローブに隠れる己の足を見下ろし、忌々しげに舌打ちする。 「不便ったらありゃしないね・・・この車椅子とやらは」 「そう言うな、お前の為に急いで作らせたものなのだからな」 仮面の男はそう言って車椅子を止めると、珍しいものを見て固まっている傭兵達に向き直った。 「貴様ら、傭兵だな」 その言葉と同時に、返事も確認せずに金貨の詰まった袋をドンとテーブルに置く。 「先ほどの会話からすると、貴様らは王党派に組していたようだが?」 あっけに取られていた傭兵達は、その一言で我に返った。 「・・・先月まではね」 「でも、負けるようなやつぁ主人じゃねえや」 そう言って傭兵達はげらげらと笑う。口を半月に歪めて、仮面の男も笑った。 「金は言い値を払う だが俺は甘っちょろい王さまじゃない・・・逃げたら、殺す」 「ワルド・・・ちょっとペースが速くない?」 抱かれるような格好でワルドの前に跨るルイズが言う。ワルドがそうしてくれと言ったせいもあって、雑談を交わすうちにルイズの口調は昔の丁寧な言い方から今の口調に変わっていた。 「ギアッチョは疲れてるわ 馬に乗り慣れていないの」 その言葉にワルドは後方を見遣る。血走った眼で馬を駆るギアッチョの身体からは漆黒の怒気が漂っていた。今にも馬を絞め殺さんばかりの勢いである。 「・・・何やら怒っているようにしか見えないが」 「疲れた結果よ!あいつは怒りやすいんだから」 ふむ、と言ってワルドはその立派な口髭を片手でいじる。 「ラ・ロシェールの港町まで止まらずに行くつもりだったんだが・・・」 「何言ってるの、普通は馬で二日はかかる距離なのよ」 「へばったら置いていけばいいさ」 当然のように言うワルドに、「ダメよ!」とルイズが反論する。 「どうして?」 「使い魔を置いていくなんてメイジのすることじゃないわ それにギアッチョは凄く強いんだから!」 ワルドはそれを聞いてふっと笑う。 「やけに彼の肩を持つね・・・ひょっとして君の恋人なのかい?」 「なっ・・・!」 その言葉にルイズの顔が真っ赤に染まり、 「そそ、そんなわけないじゃない!ああもう、姫さまもあなたもどうしてそんなことを言うのかしら」 なんだか顔を見られるのが恥ずかしくなって、ルイズは綺麗な髪を揺らして俯いた。 「そうか、ならよかった 婚約者に恋人がいるなんて聞いたらショックで死んでしまうからね」 そう言いながらも、ワルドの顔は笑っている。 「こ、婚約なんて親が決めたことじゃない」 「おや?ルイズ、僕の小さなルイズ!君は僕のことが嫌いになったのかい?」 昔と同じおどけた口調でそういうワルドに、「もう小さくないもの」とルイズは頬をふくらませた。 「・・・ところで、彼はそんなに強いのかな?」 「勿論よ 私の自慢の使い魔なんだから! 詳しくは話せないけど・・・」 ワルドの質問に自慢げにそう答えるルイズを見て、ワルドは何かを考える顔をした。 疲労と怒りをこらえながら、ギアッチョは馬を駆る。朝からもう二回も馬を交換していた。 さっきからルイズが何回か心配そうにこちらを見ていたが、ギアッチョは休憩させてくれなどと言うつもりは微塵もない。 そんな情けないことはギアッチョのプライドが受け入れなかった。十四歳――とギアッチョは思っている――の子供にこんなことで心配されたという事実がその意地を更に強固にしている。 ――ナメんじゃねーぞヒゲ野郎・・・ついて行ってやろうじゃあねーか ええ?オイ 口から呼気と共に殺気を吐き出しながら、ギアッチョはそう呟いた。 このまま放っておけば自分に累が及びそうだったので、デルフリンガーは彼の怒りを逸らすべく口を開く。 「あ、あのですねーダンナ・・・」 「ああ!?」 「ヒィィすいません!」 熊も射殺さんばかりのギアッチョの眼光にデルフリンガーは一瞬で押し黙ったが、気持ち悪いから途中で止めるなというギアッチョのもっともな発言を受けて恐る恐る話題を再開した。 「い、いやー・・・ルイズの婚約者らしいッスねぇあのヒゲ男」 「そうだな」 「そ、そうだなって・・・なんかないんスか?結婚ですよ結婚」 ギアッチョの意識をなんとか婚姻の話題に持って行こうとしたデルフだったが、彼の「ああ?」という一言で全てを諦めた。 何度も馬を変えて昼夜を問わず飛ばし、ギアッチョ達はその日のうちに――といっても夜中だが――なんとかラ・ロシェールの入り口まで辿り着いた。 「・・・なんだァァ?ここのどこが港町なんだオイ?」 ギアッチョは周りを見渡して言う。四方八方を岩に囲まれた、まごうこと無き山道であった。 月明かりに照らされて、先のほうに岩を穿って作られた建物が立ち並んでいるのが見える。まだ走らせる気かと、いい加減ギアッチョの怒りが限界に達しつつあった。 「ああ、ダンナはしらねーのか アルビオンってのは」 と喋る魔剣が口を開いた瞬間、崖の上から彼ら目掛けて燃え盛る松明が次々と投げ込まれ、 「うおおッ!」 戦闘の訓練をされていないギアッチョの馬は、驚きの余り暴れ狂ってギアッチョを振り落とした。 よく耐えたと言うべきか。一昼夜を休み無く走らされた挙句に馬上から振り落とされて、ギアッチョの怒りは頂点に達した。 デルフリンガーを引っつかんで鞘から乱暴に抜き出し、崖上に姿を現した男達を猛禽のような眼で睨んで怒鳴る。 「一人残らず凍結して左から順にブチ割ってやるッ!!!ホワイト・アルバ――」 しかし彼の咆哮は予想だにしない咆哮からの攻撃で中断され、彼の口からは代わりにもがッ!!というくぐもった声が響いた。 「どういうつもりだクソガキッ!!」 己の口に押し当てられた手を引き剥がしてギアッチョが怒鳴る。ギアッチョに飛びついて彼の攻撃を中断させたのは、他でもない彼のご主人様であった。 「それはこっちのセリフよ!」 ギアッチョに負けじとルイズが怒鳴る。 「見たとこ夜盗か山賊の類じゃない!こんなところで堂々とスタンドをお披露目してどうするのよッ!」 「ンなこたぁもうどうでもいいんだよッ!!離れてろチビ!!一人残らずブッ殺してやらねーと気が済まねぇッ!!」 ブッ殺したなら使ってもいいッ!とペッシに説教しているプロシュートの姿が浮かんだが、ギアッチョはいっそ爽やかなほど自然にそれをスルーした。 「だっ、誰がチビよこのバカ眼鏡!あと1年もしたらもっともっと大きくなるんだから!」 どこが?と言いたかったデルフリンガーだったが、二人の剣幕に巻き込まれると五体満足では済みそうになかったので黙っておくことにする。 「とにかく!」とルイズは小声になって怒鳴る。 「ワルドはわたしの婚約者だけど、同時に王宮に仕えてるってことを忘れないでよ! そんなことしないとは思うけど・・・万が一王宮にあんたのスタンドのことがバレたらどうなるか分かったもんじゃないんだから!」 「そうなってもよォォォ~~~~ 全員凍らせて逃げりゃあいいだろうが!!キュルケだのタバサの国によォォォォ!とにかく邪魔するんじゃあねえ!!そこをどけッ!!」 「何無茶苦茶言ってるのよ!あんたの責任は私にも及んでくるんだからね!! 勝手な行動は許さないんだから!!」 再び大音量で怒鳴る二人を不思議そうな眼で眺めながら、ワルドは小型の竜巻で飛んでくる矢を弾き逸らす。そうしておいて、ワルドは攻撃の為の詠唱を始めた。 このままではワルドに全部持っていかれてしまうと気付き、ギアッチョはちょっとルイズを眠らせてしまおうかと考えたが―― ばさりというどこか覚えのある羽音が聞こえ、ギアッチョ達は上を見上げた。 直後男達の悲鳴が聞こえ、それと同時に彼らは次々に崖下に転落する。 「あれ・・・シルフィード!?」 ルイズ達の驚きにきゅいきゅいという声で答え、シルフィードとその上に乗った三人――キュルケとタバサ、それにギーシュが降りてきた。
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すっかり九州新幹線の列車として定着した「つばめ」。 だが過去は国鉄の看板列車として本州を駆け抜けていたことがあった。 今回はそんなつばめの生い立ちを語ってみようと思う。 アクロバティック超特急”燕” 1929年、東京~下関間に1日2往復走ってた特別急行列車に公募により愛称が付けられることになり、結果得票数1位の「富士」と3位「櫻」が採用され、2位の「燕」はその後新設される特急列車まで温存されたのは第二回でも少しふれた。 そして翌年1930年、晴れて特急「燕」は東京~神戸でデビューする。 ▲最初の牽引機は東京~名古屋は主にC51、名古屋~神戸はC53が担当していた。 燕の恐ろしさはその速さにあった。 特急「富士」「櫻」は東京~大阪を10時間50分ほどで結んでいた。 これに対して、燕は同区間をなんと2時間30分早い8時間20分で結んでいたのである。 ちなみに東京~神戸の全区間の所要時間は9時間である。 この驚異的な早さから、人々は燕を「超特急」と呼んだが、その実現のために当時の鉄道省は相当な無茶をしていた。 東京~国府津は電化されていたため、通常ならば東京から国府津までは電気機関車、国府津からは蒸気機関車によって客車をけん引していたが、国府津での機関車交換の時間を惜しみ、東京から蒸気機関車の牽引とした。 途中の停車駅は絞りに絞って、下りは横浜・国府津・名古屋・大垣・京都・大阪・三ノ宮、上りは上りは三ノ宮・大阪・京都・名古屋・沼津・横浜のみであった。 特に国府津・沼津~名古屋は運転停車なしの完全なノンストップ。 蒸気機関車は水を大量に消費するため定期的に給水目的での停車が必要だったが、燕では機関車と客車の間に水槽車を連結し、走行中の給水を可能にした。 また乗務員の交代要員をあらかじめ前の方の席に待機乗車させ、走行中に交代を行うということもやっていた。 機関車と客車には今述べた通り水槽車があるので、交代する乗務員は水槽車の外に設けられた小さな歩み板をつたって移動するという危険極まりないことをしていた。 さらに肝心なのが下りの国府津・大垣、上りの沼津停車である。 この時の東海道本線の国府津~沼津の区間は今の 御殿場線を経由していた。 この区間は急こう配が続く難所。大垣~関ヶ原の下り線も同様に急な上りこう配があった。 そのため下りは国府津・大垣で、上りは沼津で補助機関車を連結するのだが、連結に要する時間はたったの30秒だった。 さらにとんでもないのが坂を登りきった後。 国府津・沼津からの補助機関車は御殿場駅で、大垣からの補助機関車は柏原駅で走行中に補助機関車を切り離していた。 これらのような荒技とも言える数々のありえない行いによってこの大幅な時間短縮が実現、燕は一躍人気列車となった。 ▲静岡停車になってからは東京~名古屋でもC53が使用されるようになった。最後尾には1等展望車が連結されている ただし、1934年に丹那トンネルが開通したことにより東海道本線は今の熱海経由のルートに切り替わった。 これによって国府津・沼津での補助機関車の連結がなくなり、さらに所要時間に余裕が出ることから静岡に給水目的の停車をすることで水槽車の連結も取りやめになった。 ▲C53にはこんな流線型の車両も。当時の流行のスタイルだ。 花形特急として君臨した戦後 戦争が激化してくると特急列車は廃止され、戦後もしばらく特急列車が運転されない日々が続いた。 そんな中、1949年に東京~大阪を結ぶ待望の特急列車が登場。 その名も「へいわ」という、文字通り平和を願ってつけられた名前だった。 ▲戦後の非電化区間では国内最大級の蒸気機関車C62が牽引を担当、ヘッドマークも付けられるようになった しかし特急列車に慣れ親しんだ人には「へいわ」より「つばめ」が良かったのだろう。 翌年には「つばめ」に改称される。晴れてつばめ復活だがこの時からひらがな表記の「つばめ」となっている。 また同じ年には僚友として特急「はと」が登場。シンボルともいえる一等展望車やリクライニングシート付きの特別二等車という豪華な車両を連結。 つばめの一等展望車 さらに「つばめガール」「はとガール」と呼ばれる女性の客室乗務員を配しれ車内サービスを行うという他の列車との差別化が図られた。 当時の有楽町のあたり この時東京~浜松が電化されていることから同区間は電気機関車、浜松~大阪は蒸気機関車が牽引することになったが、徐々に電化区間が拡大。 ▲EF58が牽引する「青大将」編成 1956年に東海道本線全線電化が完成し、全区間を電気機関車EF58が牽引することになった。 その際、外部塗装が「青大将」と呼ばれるライトグリーンに変更された。 このまま東海道の花形列車としてつき進むかと思われていたつばめだったが1958年を機会にその座が危ぶまれることになった。 この年に登場した国鉄発の特急型電車151系電車を用いた特急「こだま」の存在だ。 「こだま」は新製時より全車冷房車、リクライニングシートを採用。さらに東京~大阪を6時間半で結ぶ俊足ぶりを見せる。 客車これに比べてつばめは遅く、車内も古くて見劣りがするようになってきた。 そこで「つばめ」も「こだま」同様151系電車に切り替えることにした。 ▲今はなき東京駅の15番線にて 客車時代のつばめの最後部に連結されていた展望車を電車でも再現すべく、1号車(下り側先頭車)には大型窓を採用し側面展望を実現した車両「パーラーカー」が登場。 定員わずか18名と言う特別な車両で「こだま」と差別化を図ろうとしたが後に「こだま」と共通運用になり差がなくなった。 なお、一時つばめに吸収される形で消滅していた「はと」だったが「つばめ」同様の装備をもった特急として1961年に復活している。 1962年に山陽本線が広島まで電化され、「つばめ」は運転区間を広島まで延長し東京~広島の900km弱を走破する長距離特急となった。 大阪~広島のダイヤスジはそれまで走っていた特急「へいわ」から吸収。 「へいわ」はこれで2度も「つばめ」に仕事を奪われることとなった。 とは言ってもこの時の「つばめ」は増発が続き増えに増えた東海道特急の一列車に過ぎないポジションだった。 つばめは西へ ここからが本題と言えよう。 1964年の東海道新幹線開業により、東海道本線を走る列車は大幅に左遷・リストラされた。 ▲通称「セノハチ」と呼ばれる区間を補助機関車に押されてがんばるつばめ つばめも例外ではなく、僚友のはとと共に新大阪で新幹線と接続し九州を結ぶ特急という新しい仕事を与えられた。 その時のダイヤがこちら。 ▲今回から背景を入れてみた 下り列車はつばめが東京8 00発のひかり5号、はとが東京9 00発のひかり7号から接続。 上り列車ははとが新大阪17 00発のひかり22号に接続し東京21 00着、つばめが新大阪19 00発のひかり26号に接続し東京23 00着であった。 このつばめを走らせるにあたって、2つの問題があった。 一つが広島乗り入れ時から起きていた問題だが、広島の東側、八本松~瀬野間、通称「セノハチ」という存在。 正確には「大山峠」という場所だが、長い急こう配区間が存在する。 製造当初この区間を通ることを想定してなかった151系電車ではパワーが足りず、初代燕以来の補助機関車を連結してしのぐことになった。 ちなみに、今も貨物列車がこの区間を通る時は補助機関車を連結している。 もう一つの問題が九州内の電化方式が交流であったこと。 今までつばめが走っていた本州の電化は直流だったため、151系は直流専用の電車として造られた。 それゆえ交流電化の区間にそのまま乗り入れられず、下関で交直両用の電気機関車EF30に引っ張られて海を越え門司へ、門司で交流専用の電気機関車ED73に交換されて博多まで運転されていた。 電気機関車に引っ張られている間は自力で車内電源が確保できないので、サヤ420と言う電源車を連結してまかなっていた。 ▲交直両用481系電車による「はと」 この変則的な運転は翌年、第一回で述べた特急「雷鳥」「しらさぎ」で実績を得た、交直両用の481系電車を投入することで解決した。 この時、運転区間が名古屋~熊本と、つばめ史上最長の運転区間に延ばされている。 1972年に、山陽新幹線が岡山まで開通したことでつばめは岡山~博多・熊本に、はとは岡山~下関の運転に改められた。 それと同時に本数が増やされつばめとはとは同系統の特急「しおじ」と共にエル特急に指定される。 1973年には一部が西鹿児島(現・鹿児島中央)まで足を伸ばしている。 そして1975年に山陽新幹線が全線開通したことで、「つばめ」「はと」は廃止された。 この時代、すでにつばめは国鉄の主役から遠ざかっていたのであった。 そしてJR九州でよみがえるつばめ つばめの廃止から12年経った1987年、国鉄は分割・民営化されJRグループが発足した。 ▲旅立ちJR西日本号、テールマークもつばめを模している この時運転された記念団体列車「旅立ちJR西日本号」にはかつてつばめで使われていた一等展望車が連結されていた。 つばめが廃止されて12年が経っても、やはり国鉄と言えば「つばめ」という印象が強かったのかもしれない。 と、同時にこの車両で運転することは、つばめとの永遠の決別をも暗示していたのかという思惑を感じることもできた。 しかしそんなことはなかった。 ▲デビュー当初の783系電車 1988年、JR発足後最初の特急型電車として、JR九州が783系電車、通称ハイパーサルーンをデビューさせた。 この電車は博多~熊本・西鹿児島の特急「有明」に使用されることになったが、ほどなくして博多~西鹿児島の列車を別の名前にして独立させた。 ▲デビュー当初の787系電車 それが、1992年に登場した特急「つばめ」であった。 写真の787系電車はつばめ型電車と言われるほど、「つばめ」のために造られた電車だった。 食堂車はないが久々にビュフェ車を備え、「つばめレディ」という女性客室乗務員がサービスを行う。 まさに現代版のつばめと呼ぶにふさわしかった。 なお、つばめ設定当初は787系の数が少なく、783系も多く投入された。 783系に乗務する客室乗務員は「ハイパーレディ」と呼ばれていた。 こうして順調に新たに九州の顔となっていったJRのつばめ。 1993年には夜行の「ドリームつばめ」も登場した。 しかし、進化はとどまることを知らなかった。 ▲博多駅にて 2004年、九州新幹線の新八代~鹿児島中央が暫定開業。 つばめの名は九州新幹線の列車に使用されることになった。 博多~新八代は787系を使用した「リレーつばめ」が運転されたが、ビュフェ車は廃止。 代わりにDXグリーン車が新たに用意された。 新幹線の名前になったことで、九州新幹線全線開通の暁にはつばめは再び東京に顔を出すのではないかと期待が寄せられていた。 しかし、実際に山陽新幹線乗り入れを果たしたのはかつての寝台特急の名前である「さくら」と「みずほ」であった。 そればかりか、日中は運転区間が博多~熊本の各駅停車タイプに限定されてしまった。 (朝晩とか、一部は鹿児島中央まで走っているが本数的には小数派) つばめにしてみればさくらはかつて格下の特急だったので下剋上という感が否めなかった。 (さらに言えば、みずほもさくらより格下の寝台特急だったのでこれも下剋上感があった) こうして今は、博多で「のぞみ」や「ひかり」と接続し、遠くから来たお客様を運んでいる。 2012年3月17日ダイヤ改正では「つばめ」にも動きがある。 一部列車が山陽新幹線に乗り入れ、小倉・新下関まで運転されるというものである。 わずか1・2区間の延長ではあるが、新下関行きが出来たことで定期列車の「つばめ」は実に37年ぶりに本州に乗り入れることになる。 2012年2月25日
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新幹線の開業でそれぞれ新しい人生を歩み始めた東海道本線の特急たち。その中で最も劇的な運命をたどったのが今回取り上げる列車である。すでに愛称が消滅しており、馴染みのないマイナーな列車だがそれゆえのエピソードがあったりするのだ。 その列車は名古屋のために生まれた 1958年、国鉄初の電車特急「こだま」が2往復デビューし、1960年には特急「つばめ」2往復が電車化され、東海道の特急は徐々に充実してきた。 戦前、超特急「燕」がそうだったように特急は最もメインである東京~大阪・神戸という区間を意識して設定・増発していた。増発する際、どこが重要かを考えれば当然な話である。 しかし実際、途中停車駅の一つである名古屋での利用客も多かった。 東京~名古屋では準急「東海」をはじめとする準急列車が数往復設定されていたが、速さと快適さから特急を選ぶ人は少なくなかったのである。 その上、特急のさらなる増発が求められていたことから、国鉄は1961年10月にダイヤ改正(通称「サン・ロク・トオ」)を実施し、東海道線にはそれまでのほぼ倍にあたる、7往復の特急を設定した。 その中に1往復、東京~名古屋に新しく設定された列車があった。 その列車こそが特急「おおとり」である。 「おおとり」は東京と名古屋の間を4時間15分で結んだ。 もっと言えば朝7時45分に名古屋を発車し、12時ちょうどに東京に到着。 そして東京を18時ちょうどに発車し、名古屋に22時15分に着く。 東京での滞在時間はジャスト6時間と日帰り出張するのにも十分なダイヤ設定であった。 編成は他の電車特急「こだま」「つばめ」「はと」「富士」と共通で151系電車の11両編成。 そのためつばめと同様、1号車には1等特別車「パーラーカー」が連結されていた。 3年働いた線に別れを告げ北海道第2の特急へ こうしてサン・ロク・トオ以降、東海道特急の全盛期の一員として活躍していた「おおとり」であるが、早くも転機が訪れる。 そう1964年10月。東海道新幹線が開業したのだ。それに伴い東海道線の昼間の特急は廃止。 「こだま」はその新幹線列車に召し上げられ、「富士」は夜行の寝台特急として(第2回参照)、「つばめ」と「はと」は新幹線と接続して九州へ向かう特急へ(第4回参照)それぞれ転属となった。 転属とは言っても「富士」は時間が夜に変わっただけで東海道を走っているし、「つばめ」と「はと」も大阪~神戸と短いながらもまだ東海道線の走行区間が残っていた。 だが「おおとり」だけは違った。 この改正で東北本線上野~青森に初めての寝台特急「はくつる」が登場したが、青森~函館で青函連絡船を介し、函館から札幌・網走・釧路へ結ぶ特急が新設され、これに「おおとり」と名付けたのである。 こうして「おおとり」はわずか3年で東海道を去り、北の大地にやってきたのだった。 ちなみにサン・ロク・トオでは北海道で初めての特急「おおぞら」がデビューしており、「おおとり」は北海道で2番目の特急となった。 その時のダイヤがこちら 函館~札幌は室蘭本線・千歳線を経由。今の特急「北斗」などと同じである。なので札幌で進行方向が変わる。網走行きはさらに遠軽でも方向が変わっている。 下りは上野18 30分発青森6 10着の寝台特急「はくつる」、そして青函航路3便から接続しており、上りは青函航路4便、そして青森22 40発の「はくつる」に接続し、上野に朝10 20に到着するダイヤが組まれている。 列車は特急型気動車のパイオニア、キハ80系12両編成で運転。(というか当時これしか特急型気動車がない。) 網走行きと釧路行きがあるが両者は滝川で分割・併合。列車番号からして網走行きの方が基本編成になるはずだが網走行き5両、釧路行き7両と、釧 路行きの方が多い。 しかも食堂車は釧路行きの方に連結されていた。 札幌を跨いで運転する最後の特急に 「おおとり」が北海道に移籍した翌年1965年には函館~旭川を室蘭本線経由で結ぶ北海道第3の特急「北斗」が、1967年には函館~旭川を倶知安・小樽経由で結ぶ北海道第4の特急「北海」が登場し、徐々に北海道にも特急が増えてきた。 その中で「おおとり」はしばらくは特に変化もなく安定した毎日を送っていたが、1970年に輸送力増強のため釧路行き編成を「おおぞら2・1号」として分離・編入した。これによって「おおとり」は函館~網走の単独運転となったのである。 ただしこの時、分離によって網走行きの輸送力が増強されたわけでもなく、6両と短い編成で10時間以上走るにも関わらず食堂車もなかった。 1972年、「おおとり」に待望の食堂車が連結され7両編成になった。 この時、本州では今まで気動車で運転されていた特急「白鳥」「いなほ」「ひたち」が電車化されることになり、そのあおりで要らない子になった80系気動車を北海道に転属させる。 これらの車両を使用して札幌~網走に新たに特急を1往復新設した。これが特急「オホーツク」である。 「オホーツク」の登場で札幌~網走の特急は「おおとり」と「オホーツク」との2往復体制となったのだが、1981年と1985年にそれぞれ急行「大雪」1往復ずつ特急に格上げされ「オホーツク」に編入された。 これによって「おおとり」1往復に対し、「オホーツク」3往復と、「おおとり」は徐々に肩身が狭くなってきた。 しかも1979年に北海道向けの新型特急気動車であるキハ183系がデビューし、今までキハ80系で走っていた特急を次々と置き換えて行く中、「おおとり」だけは置き換えられずキハ80系で淡々と走っていた。 「おおとり」は北海道の特急の中で一番最後、国鉄分割民営化間近の1986年11月でようやくキハ183系に置き換えられたのだった。 キハ183には食堂車が付いてなかったため、この「おおとり」は北海道最後のキハ80系使用列車であると共に北海道最後の食堂車付きの列車でもあったのだ。 (※厳密に言えば、寝台特急「北斗星」など食堂車連結は今でも存在するが道内のみ、または昼行だと「おおとり」が最後だと言える。またキハ80系全体の最後の運用は名古屋~紀伊勝浦の特急「南紀」である。) 国鉄が分割・民営化され、JRとなっても「おおとり」は相変わらず函館~網走の長距離で運転されていた。 他の特急は既に札幌を境に系統が整理されており、札幌を跨いで運用される特急はもはや「おおとり」だけとなっていた。 だが、この貴重な存在が運用における不合理さを生み出していたのは間違いなかった。 民営化翌年である1988年3月。 JR化後初の全国ダイヤ改正によって函館~札幌を「北斗」に、札幌~網走を「オホーツク」に任せて「おおとり」はその名前が消滅した。 東海道ではたった3年だったのに対して北海道では8倍の24年に渡る活躍であった。 歴史は繰り返す。 米原で新幹線から接続し、北陸の金沢まで最速で結んでいた特急「きらめき」が今は九州の博多~小倉・門司港を結ぶライナー特急として走っている。 かつて東京対九州の名門ブルートレインで名を馳せた寝台特急「はやぶさ」が今は東北新幹線の最速達列車に君臨している。 このように、一度廃止された列車の愛称が全く異なったところで復活するケースは鉄道史のなかにいくらかある。 しかし「おおとり」ほどあまりメジャーでないのに極端なのはあまり思い当たらない。 2012年10月13日
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こんにちは。ちぃは黒ちぃというちぃ。 簡単にちぃがどういう人間かというと 小学生のころから人一倍ドラえもんが大好きで、うる星やつらにもはまっており、 その一方で科学クラブとか入ったりパソコンショップに通ったりして理科に関心があり、 本はSFを図書館で熱心に読んでたり、映画ではやはりSFを好んでいたちぃ。 ただ美術と国語と社会とただ走る以外の運動が苦手だったので、 そのころから趣味がアニメ視聴で実益が理科によってしようと思ってて、 その態度は今も変わらないちぃ。 (でもときおり物語の夢を見てはよい話だったな、書けば良いかもと思うってのは、話作りに興味があるのかも) んで画像ですが、ちょびっツの白ちぃと黒ちぃのぬいぐるみ。 そういう画像を載せるだけちょびっツにはまってるちぃ。(ペットの写真を載せるのに似た禁戒かも)
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第二回「夜を駆ける蒼い流れ星、再デビューした特急」 東海道新幹線の開業は東海道本線・山陽本線の昼間のダイヤを大きく変えた。特に東海道本線を走る昼間の特急が全てリストラされたことが当時の時代の転換を象徴していると言える。 一方、夜を駆け抜ける寝台特急列車は「蒼い流れ星」とも呼ばれるブルートレインの人気が絶賛上昇中であった。 新幹線が出来たと言っても大阪までだったので、九州へ行く人にとってはまだまだ夜行の方が有利だったのである。 そんなわけで1・2列車さくら、3・4列車みずほ、5・6列車あさかぜ、7・8列車はやぶさに続いて、5番目の蒼い星が流れ出したのだった。その列車は9・10列車と番号がふられ、この愛称が付けられた。 富士 と。 富士の名は元々戦前、最初の特急列車の愛称として登場し、近年「はやぶさ」と共に最後の九州ブルートレインとして残り、2009年3月14日に廃止されたということで有名であるが、この寝台特急の新しい人生の始まりはまさにこの時である。 その時のダイヤがこちら 富士の編成は電源車1両と14両の客車の15両編成で、1号車と8号車に1等寝台車(今のA寝台車)、2号車に食堂車、7号車に2等座席車(今の普通車)、その他が2等寝台車(今のB寝台車)という内容。8号車から14号車は東京~下関でのみ連結される付属編成だった。 この編成内容「みずほ」と同様である。 当時は1等寝台車の中でもA,B,Cと三種類のグレードが存在し、みずほと富士はBのみが存在。さくらとはやぶさはAとBの2グレード構成とやや格が高め。 あさかぜもAとBだが、1等寝台車自体が6両もあり、ブルートレインの中でもフラッグシップ的な存在だった。 これで見ると富士はみずほと共に格下の感があった。 他の寝台特急が全て博多を通り、九州の西側や南側を結んでいるのに対して、富士は日豊本線を通り九州の東側の輸送を担う列車となった。 その後年を経て宮崎や西鹿児島まで運転される時代もあり、富士は廃止の日まで日豊本線を代表する寝台特急として存在し続けるのであった。 ところでこの富士、寝台特急として再デビューを図る前に2度の人生を送っている。 1度目は先にも述べたが、最初の特別急行列車。走り始めたのは明治45年(1912年)だがこの時はまだ愛称と言うものがなかった。 実際に愛称が付いたのは昭和4年(1929年)と世界恐慌の煽りをうけ、日本も大不況の真っただ中という頃。 どうにか世の中を明るくできないかと考えていた鉄道省(JRの前身の国鉄の前身)は東京~下関を結ぶ2本の特急に一般公募によって愛称をつけることを思いつく。 そして数ある応募の中から見事1位に輝いたのが「富士」であり、2本のうちの片方に付けられた。 ちなみにもう1本の特急には3位の「櫻」という愛称が付けられた。2位には「燕」が入っていたが、これは後に東京~大阪・神戸を当時としては恐るべきスピードで駆け抜けた特急の名前になる。 そういうことで各特急の最後尾にはその列車の愛称が書かれたテールマークが取り付けられ華々しく東海道を駆け抜けたが、そのうち戦争が始まると鉄道は徐々に軍需輸送に特化されていく。 1942年には関門海峡トンネルが開通し、九州は長崎まで運転区間が伸びたものの翌年 には「特急」というものがなくなってしまい、富士は第一種急行という種別に変更されてしまう。そして戦争が激化した1944年に廃止となった。命名から15年で消えるという運命にさらされたのだった。 戦争が終わり16年が経った昭和36年(1961年)10月、全国で大規模なダイヤ改正が行われた。ファンの間ではサンロクトオと呼ばれている。 この改正は7月に「もはや戦後ではない」と経済白書が歴史的名フレーズを残した通り、戦後からの復興が終息し、次の高度経済成長を見据えたものだった。 事実この頃から列車の混雑は増す一方、大幅な列車の増発が必要だった。 そんな状況から実に13本の特急が登場したのだが、その中に「富士」の姿があった。今度は電車の特急として東海道本線の降臨。1日2往復が設定され、1往復は東京~神戸だが1往復は東京~宇野で運転。当時の宇野は宇高連絡船を介し当時の宇野は宇高連絡船を介し四国の高松に連絡するための重要拠点。富士は四国連絡の役目も担い、つばめ・はと・こだま・おおとりと言った名だたる特急達と共に東海道を疾走したのだ。 しかし新幹線建設はすでにこの頃より前から既に始まっていた。電車特急として再デビューしたと同時に余命宣告をされた瞬間でもあった。 結局、富士が電車特急として君臨したのはわずかに3年。新幹線の開業に伴い特急達はそれぞれ転勤を命ぜられる。こだまは新幹線へ。つばめ・はとは山陽本線へ。おおとりは北海道へと大異動しているがそれはまた別の話。 その頃、寝台特急みずほは熊本行きと大分行きの2つの行き先を持っていた。だが門司で大分行きを切り離すと7両編成。少なくとも博多まではフル編成が欲しかったし、さらに増える需要を考えると大分行き編成を独立させてもう1本寝台特急を仕立てるべきと考えた。 そんな背景から東京~大分の新しい寝台特急の任は職にあぶれかけてる富士に託されることになった。特急として3度目の門出となった富士は1度目は15年、2度目は3年の命だったのに対し、実に45年もの間走り続けることになるという安定感を世に見せつけた。 西鹿児島行きの時は1574.2kmを24時間かけて走りぬく定期最長距離列車ともなった。 こうして富士はブルートレインの衰退によって一つまた一つと消えゆく僚友を見送りながら最後まで残り続け、東京対九州ブルートレイン終焉を自らの幕引きで飾ったのであった。 ところで本州と九州を結ぶ寝台特急は消えても寝台特急が消えたわけではない。東京からは高松行きと出雲市行きの電車寝台特急、サンライズ瀬戸・出雲が出ているし、豪華寝台特急、カシオペアと、トワイライトエクスプレスは健在だ。また今なおブルートレインで東北・北海道方面へ向かう、あけぼのや、北斗星は当分安泰のようだ。 さらにJR九州によると九州を1周する豪華寝台特急を計画中だと発表している。昔とは寝台特急を使う動機が変わってきてはいるが、まだまだ可能性がなくなったわけはない。 今後の寝台特急の動向にも注目である。 2012年1月22日
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