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銀「さあて全員の持ち寄ったものを放り込んでやったわぁ。」 真「さしずめ絆鍋ってところかしら。」 金「アリス鍋でもいいんじゃないかしら?」 蒼「本当にみんな入れちゃったんだね。」 翠「蒼星石は何を入れましたか?」 蒼「お鍋だから変なものを入れてもね。だし汁を入れておいたよ。」 マ(それはそれで味の崩壊に寄与するだけな気がするんだけど・・・) その様子を遠目に眺めていたマスターは心の中で突っ込みを入れて自分の作業に戻った。 翠「煮えてきましたよ。誰か味見してみるです。」 銀「あんたが食べればいいじゃない。」 真「長女のあなたが先でいいわよ?」 雛「カナどうぞなのー。」 金「一番下の妹に譲るべきじゃないかしら?」 銀「それもそうね。」 翠「たまにはいい事も言いますね。」 蒼「・・・とりあえず僕は遠慮しておくよ。」 真「じゃあ雛苺に譲ってあげるわ。」 雛「ヒ、ヒナやーよ!!」 その時、突然後方の鏡が光を放った。 雪「食べたい・・・雛苺・・・食べさせて・・・」 鏡の中、純白のドールが現れる。 蒼「雪華綺晶!」 金「第七ドール・・・よね。」 翠「ちょうどいいです。そんなに食いたきゃお前これ食ってみろです。」 雪「え・・・?」 銀「いらっしゃぁい♪」 真「姉達からのもてなしがあるのだわ。」 両脇から真紅と水銀燈が雪華綺晶をがっしりと捕まえる。 雪「あの・・・お姉様方?」 雛「どうぞなのーー!!」 金「遠慮は要らないんだから!」 雛苺と金糸雀が二人がかりで口の中に鍋の中身を流し込む。 雪「ちょ・・・熱い・・・。」 銀「味の方は平気なわけぇ?」 雪「味ですか?・・・くどくて、甘くて、生臭くて・・・うぐぅっ!!」 雪華綺晶が激しく咳き込みながら鏡の中に消えていった。 真「レディがはしたないわねえ。」 蒼「やっぱ変なものを入れすぎなんだよ。」 金「これは・・・強力な武器になる予感かしら!」 銀「どうやら作り直しのようねぇ。」 翠「失敗作が空になって良かったですよ。」 ピンポーン♪ インターフォンが鳴る。 マ「あれっ、誰だろ?宅配便かな。」 マスターが玄関へ向かう。 マ「お待たせしま・・・」 槐「やあ!孤高の天才ドールクリエイター槐とその最高傑作である薔薇水晶が来てやtt ぱたん・・・ 蒼「誰?」 マ「間違いだった♪」 槐「こらー!爽やかに無視するな!!」 ドアが開けられた。 マ「勝手に開けないでよ。非常識だなあ。」 蒼「あ!・・・これはこれはどこのどちら様でしょうか?本日は何をしにいらっしゃたんでしょうかねえ?」 槐「丁寧な口調の中にも嫌味が利いていてお見事だよ。」 マ「で、用件は何さ?今日は平和に鍋をやってるんだけど。」 蒼「まさかまたくだらない事を企んでいるんじゃないだろうね。」 蒼星石がマスターをかばうように前に立つ。 槐「無論、ばらしーも参加してローゼンメイデンとの格の違いってやつを・・・ ぱたん・・・ ガチャ マ「そっちのお鍋は美味しくできそう?」 蒼「作り直す事になっちゃった。」 マ「大変だね。」 二人して台所へと戻る。 槐「だから無視するなーー!!」 槐は大声を出しながら戸をドンドンと叩いている。 近所迷惑になりそうなので仕方なく戸を開ける。 マ「もう・・・正直に言うけど今日は変な争いの種は持ち込んで欲しくないんだ。」 槐「今日は戦わせたりしない。だからどうか頼む!」 マ「以前の一件は話を聞いただけの部外者みたいなものだけど・・・やっぱり許せない。 対抗意識であんな事をしでかせる人を引き入れても完全に調和を乱す不協和音になるとしか思えない。」 槐「頼む!ばらしーを仲間に入れてやってくれ!!」 蒼「仲間?」 槐「ばらしーは本当は寂しかったんだ!確かに僕が変な対抗意識で戦わせていたが、ばらしーはそんなのを望んでいなかったんだ。 だから、今日だけでも頼む、この通りだ!!」 槐が土下座までして頼み込む。 マ「ローゼンを超えたいってのはどうなったのさ?・・・かつてのあなたはそれで闇に堕ちた。」 槐「それは今も変わらない。だけどそのエゴで薔薇水晶を悲しませたくはない。彼女には彼女の心があるんだ! ローゼンを超えるにせよ戦い以外の他のやり方でやってやるさ。」 正座したままの槐がマスターを正面から見据えた。 その視線を受け止めたマスターが口を開く。 マ「・・・蒼星石、薔薇水晶ちゃんを連れて他のみんなに途中参加者が来たって伝えてきて。」 蒼「うん、分かった。」 薔「おじゃま・・・します。」 蒼星石と薔薇水晶の姿が台所へ消えたのを見計らってマスターが口を開く。 マ「蒼星石の前じゃとても言えないけど・・・人形職人としての腕の優劣は素人だから僕には分からない。 だけど、『父親』として世話をして育てていくという点では今のあなたの方が上かもしれませんね、ひょっとしたら。」 マスターが手を差し伸べる。 マ「さ、行きましょうか。」 槐「ありがとう・・・。」 その手を取って槐が立ち上がった。 マ「ところで、何でこの集まりの事を知ってたんですか?」 槐「ふふふ、ばらしーに社会勉強をさせるために君達の様子をウォッチンさせてたらたまたまね。」 マ「やっぱりあなただけは帰ってください。そんな事させて一体何を教える気なんですか。」 槐「待った、それだけは勘弁!人形用のアクセサリーとかいろいろあげちゃうから!!」 マ「そこまで言うなら参加してくれてもいいですけど・・・ただ我は忘れないでくださいね。」 次へ 前へ
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魔法学院の正門をくぐって、王女の一行が現れた。 整列した生徒達が一斉に杖を掲げて、歓迎の意を表す。 本塔の玄関にはオスマン氏が立ち、王女の一行を出迎えた。 呼び出しの衛士が、緊張した声で王女の登場を告げる。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなりであるッ!」 枢機卿のマザリーニに続いて現れた姫殿下の姿を見て、 生徒達は歓声を上げた。 アンリエッタはニッコリと微笑を浮かべて、優雅に手を振った。 誰も彼もが、緋毛氈の絨毯を進む一輪の華に釘付けかと思われたが、 いつの時も、例外はある。 「ねぇ、ルイズ。 さっきの授業……少しばかりやりすぎじゃなかった? そりゃあ、胸がスッとしたのは確かだけど」 観衆達より一歩引いた場所にいたルイズ御一行である。 キュルケは、最初こそ異国トリステインの王女を物珍しげに眺めていたが、 あらかた値踏みをすると、瞬く間に興味を失っていた。 「言及無用よツェルプストー。 あのゲス、思い返しただけでムカムカするわ。 あんなのがのさばってたら、貴族の格が落ちるっての。 殺したいほどだわ……!」 物騒なルイズの返答に、キュルケは空恐ろしいものを感じた。 皆王女に夢中なので、今現在話し相手がルイズしかいないキュルケは、 自己憐憫に終始することとなった。 タバサは……まだ帰ってきていない。 心配といえば心配だが、まさか取って食われたりはしないだろう。 そう考えて、この場にいない親友の無事を祈りつつ、 キュルケは再びルイズを見た。 先程まで、キュルケと同じように暇そうな空気を纏っていたルイズが、 途端に真面目な顔つきで一点を見つめている。 何事かと思い、キュルケはルイズの見ている方に目を凝らした。 その先には、見事な羽帽子をかぶり、これまた見事な髭をたくわえた、 凛々しい貴族の姿があった。 特に、髭のもたらすダンディーな雰囲気が、 キュルケにとってストライクであった。 久方ぶりに己の胸に去来する微熱を感じつつ、 キュルケはしたり顔で笑った。 ほほぅヴァリエールめ、近頃妙に豪儀に見えたが やはり色事には弱いと見える――― そう思い、早速からかってやろうとしたが、 ルイズの真面目な表情は、 次第に苦虫を噛み潰したようなそれへと移り変わった。 そして、見ているだけで不安になってくる程真っ青になって、 ブルブル震え始めた。 「ロ、ロードローラーが……」 などとブツブツ独り言を言い出す始末。 少なくとも、好いた惚れたといったような反応ではない。 どう声をかけてやればよいか分からず、その場に立ちすくむキュルケをよそに、 ルイズは踵を返して、寮の方へと帰っていってしまった。 そして、のっしのっしと肩を怒らせて歩み去るルイズと入れ替わるように、 タバサがキュルケの方に歩いてきた。 ミスタ・コルベールによる教育的指導が終わったのだ。 本を片手に俯いているので、どんな顔をしているのかは分からなかったが、 大丈夫なようだ。 「あらタバサ! お勤めご苦労様といったところね。 心配してたわよ!」 そう労って、キュルケはタバサの頭をガシガシと撫でた。 綺麗な空色の髪がボサボサになったが、 いつものことながらタバサは無反応だった。 「ま、これでわかったでしょ? あの先生の前で、頭の話は禁句なの」 キュルケのからかい半分の言葉に、タバサの肩が僅かに揺れ、 ゆっくりと顔を上げた。 顔を上げたタバサの目には、 光が全くなかった。 虚ろな、死んだ魚のように黒く澱んだ瞳が、 ぼんやりと虚空を捉えている。 「彼ノ頭ハ素晴ラシイ」「へ?」 突如口を開いたタバサ。 キュルケはタバサの声を聞いて、ようやく彼女の異変に気づいた。 彼女の形相はまさに、邪教徒が教祖を崇めるそれであったのだ。 「彼ノ頭ハ、コノ黄金ニ輝ク太陽ヨリモ明ルク、 私達ノ道ヲ照ラシ出シテイル……」 まるで無理やり合成して絞り出したかのような無機質な声である。 キュルケの目から、ポロポロと涙が零れた。 ―――あぁ、何ということか。 あまりにも過酷な仕打ちに、このか弱い少女の心は 耐えきれずに押し潰されてしまったのだ。 流れる涙を拭いもせず、キュルケはタバサを抱きしめた。 温かな胸の中で、タバサがもがいたが、 それは余りにも弱々しいものだった。 「彼ノ頭ハ……!」 「えぇ……えぇ! 分かったわ。 分かったから、私達も行きましょう、ね?」 譫言のように繰り返すタバサの手をそっと取って、 キュルケは学生寮へと向かった。 おぼつかない足取りのタバサだが、それでも握った手は離さない。 2人の手は固い何かで結ばれているかのように、 しっかりと繋がれていた。 ……まぁ、一晩したら治るだろう。多分。 その日の夜、ルイズはベッドに腰掛け、 枕を抱いてぼんやりと自分の使い魔を見つめていた。 ソファーに横たわるDIOは、相変わらず本を読んでいる。 もう殆どトリステインの言語体系を身につけたのか、 本のレベルが近頃上がっている気がする。 明けても暮れても本本本なこの使い魔、図書館をコンプリートするつもりだろうか。 ルイズは思う。 これまでの立ち振る舞いで分かったが、 元いた世界では、DIOはかなり身分の高い者だったのだろう。 実際はジャイアニズムの体現みたいなことばかりやってるくせに、 文句一つ言われないのがいい証拠だ。 みんな自覚の有る無しは別として、無意識下で認めてしまっているのだ。常に人を使役する者のみが身に纏うオーラ。 DIOからはそれが痛いほどに伝わってくる。 だからこそ不思議だった。 そこまで唯我独尊な奴が、どうしてホイホイ私の使い魔なんかになってくれているのか。 そしてそれよりも、DIOがこれまで送ってきた人生に強い興味を持っている自分がいた。 「そういえば、アンタってば召喚された時、 バラバラのグッチョグチヨだったのよね……」 何の気なしに声を掛けられて、 DIOは本から顔を上げた。 「何があったのかしら? よければ教えて頂戴。 興味があるの」 DIOは深い苦悩のため息をついた。 およそ自分を帝王と名乗るような男には不釣り合いな行動に、 ルイズは少し眉をひそめた。 DIOは暫く言うべきかどうか悩んだ後、 ようやっと口を開いた。 「……ルイズ、君は『運命』を信じるか?」 何を急にロマンチックな事を言い出すのかと思ったが、 DIOの顔は真剣そのものである。 部屋を支配し始めた緊張に、ルイズは背筋を伸ばした。 「運命……?」 「そうだ。 どれだけ絢爛な路を歩んでいようが、 ふとした瞬間、何の間違いか道端に転がる石に躓いてしまう。 ……神が本当にこの世にいるとして、 そうした采配を司る運命というものの存在を、 君は信じるか?」 言われて、ルイズの脳裏には、仇敵であるツェルプストーの顔が浮かんだ。 何代にもわたって紡がれてきた因縁の歴史。 殺し殺された一族の人数は、双方とももはや数え切れないほどだ。 領地も隣同士で、その上魔術学院では部屋も隣同士。 なるほど、運命と言っても過言ではないかもしれない。 ツェルプストーの胸が豊かなのに比べて、 私の胸が、その、お世辞にも大きいとは言えないのも。 私が魔法を使えない『ゼロ』なのも、 ひょっとすると運命なのだろうか。 「私が若い頃……まだ人間だった頃…… ジョースターという一族の男と争うことになった。 ジョナサンという名でな。 叩けば叩くほど伸びる、爆発力を持った男だった。 奴との争いの日々の中、私は吸血鬼となり、 人間という枠を超えた生物となったが……」 「その、ジョースターって奴に?」 「…うむ、不覚を取った。 私は敗れ、海中に逃れ、百年の眠りにつく羽目になった。 そして目覚めた後も……そう、一度ならず二度も、 私は同じ一族の末裔に敗れたのだ。 まさに運命の巡り合わせによる皮肉と言えるだろう」 ルイズは目を見開いた。 信じられない。 負けたというのだ、このDIOが。 それも二度も。 どんな傷だって治るし、 どんな貴族だってかなわないほどエレガントなこのDIOが。 変な能力だって持ってるし、 目からビームだってだせるのに。 敗れたというのか。 最初こそ何てキモい使い魔かと思ったものだが、 今ではすっかり慣れたものだし、慣れればなかなか役に立つ奴だ。 何を考えているかとんと分からないが、 強いし頼りになる。 俄かには受け入れられない話だった。 「それが、あんたの人生で、 取り除かねばならない汚点……!!」 唇を血が滲むほどに噛み締め、ルイズは震えた。 我が事のように、ルイズは怒りを覚えていたのだ。 見たことも、聞いたこともない一族に対して、 メラメラと黒い炎が燃え上がる。 それは、ルーン越しに伝わってくるDIOの感情なのか、 それともルイズのシンパシーなのかは最後まで分からなかったが。 怒りに打ち震えるルイズの前に、DIOが立ち上がった。 「ルイズ、覚えておけ。 君が覇道を進むにおいて、いつか、何らかの形で障害が現れるだろう。 それは試練のようなものだ。 君はそれを乗り越えねばならない。 あらゆる恐怖を克服しろ…… 帝王にはそれが必要だ」 もちろん、彼の話は他人事として聞き流すことが出来ないものであった。 得体の知れない怒りの中であっても、ルイズの心の冷静な部分が、 DIOの話を一つの教訓として刻んでいた。 「……って、ちょっと待ってよ! それじゃまるで、私が世界征服でも目論んでるみたいじゃない!!」 ルイズの突っ込みに、DIOはさぞ驚いたというような顔をして笑った。 「じ、冗談じゃない!…………………かな? い、いや、私の言いたいことはそういうことじゃなくって!」 否定しきれないところが、ルイズの迷いの現れだった。 モニョモニョと指をいじくりながら、 恥ずかしそうに俯くルイズだが、意を決して顔を上げた。 「……やっぱり私は『運命』なんて受け入れない。 信じるとしても、良い運命しか信じないわ。 例え崖から突き落とされたって私は諦めない。 最後の最後まで、ロープが垂れてくるって信じてる。 悪い運命なんて、それこそ叩き潰してしまえばいいんだわ。 あんただってそうするでしょう、違う?」 DIOはルイズの目を覗き込んで、笑みを深めた。 そして、ルイズの頭をクシャクシャと撫でた。 綺麗な桃色の髪がボサボサになったが、 ルイズは思わず目をつむってされるに任せた。 カトレアに抱き締められるのとはまた違った安心感が、 ルイズを包む。 「ハハハハハ……だからこそ君は私の 『マスター』なのだよ、ルイズ」 DIOの手は冷たくて、死人のように温度を感じなかったけれど、 ルイズは確かな温もりを覚えていた。 「な、何笑ってんのよこのバカ!!」 慌てて頭に置かれた手をはねのけて、 ルイズはDIOの胸をバシバシと叩いた。 本当は頭を叩いてやりたいところだったが、 悲しいかな、ルイズの身長ではどれだけ背伸びをしても、 胸のあたりで精一杯だった。 羞恥心で真っ赤になりながら叩くルイズだが、 DIOはそれでも笑っていた。 子供扱いされている気がして、ルイズの羞恥は頂点に達した。 「ッッ~~~笑うなァ!」 とうとう蹴りを入れはじめたのであった。 そんな風にルイズが一人相撲をしていると、 ドアがノックされた。 初めに長く二回、それから短く三回と……。 規則正しく繰り返されるそのノックの仕方に覚えがあるのか、 ルイズがはっとした顔になった。 いそいそと乱れたブラウスを正してドアへと駆けより、 ルイズはドアを開いた。そこに立っていたのは、 真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった少女だった。 to be continued……
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ンドゥールがいま現在の主人の部屋に戻る。その主人、ルイズはとうに着替 えを済ませていた。 「遅いわよ。それじゃあ食堂に行くから、ついてきなさい」 「わかった」 ルイズは部屋を出て廊下を静かに歩いていく。途中すれ違う人物の、好奇と 見下す視線は耐えるしかなかった。後ろからはカン、カン、と杖を突きなが らンドゥールがついていく。規則正しい音が響いている。 食堂に着くと、相変わらずルイズはンドゥールにはパンとスープしか与えな かった。だが彼は静々とその出されたものを床の上で食べていった。言って はなんだが、慣れた様子だった。 周りも飽きたのか、初日にあった平民の使い魔への嘲笑も薄れており、ルイ ズはこれまでとなんら変わらぬ光景を送っていた。ところが、今日この日は 少し変わったことがあった。 「一体どうしてくれるっていうんだ!」 誰かが怒っていた。ルイズがその声がした方向を見ると、金髪の同級生であ るギーシュがなぜかずぶぬれになって一人のメイドに激昂していた。 内容は彼女の周囲の声で聞き取ることはできなかった。 だが、すぐそばの男にはそんな騒がしさなど問題ではなかった。 「恩はかえさんとな」 「ちょっと! ンドゥール!?」 主人の制止の声など耳に入らないのか、彼はまっすぐ諍いの場に歩いていっ た。ルイズも怒りながら後をついていった。 「少年、ギーシュと言ったか、そこまでにしておけ。恥の上塗りだ」 「――な、いきなりなにを!」 「二股がばれて両方に振られる。そんなことを声高に宣伝しているのだぞ」 「え、ちょっとほんとなの」 ルイズがそれを聞いて軽蔑の視線を向けた。周りからも失笑が漏れ、ギーシュ の顔は瞬く間に赤くなった。 「大体、それだけ自分の器が小さいだけだ。貴族というのは誇り高いらしい が、お前は例外か」 「なんだと!」 「……ンドゥール、もうやめなさいよ」 ルイズはとめようとするが、それでも彼はわざわざ煽るかのよう言葉を並べ ていく。ギーシュは歯をかみ締め、瞳はいつのまにかつりあがっていた。 そして怒りが頂点に達すると、彼は手袋をンドゥールに投げつけた。 「決闘だ!」 「お、落ち着きなさいよギーシュ」 「うるさい! ここまで馬鹿にされて黙っていられるか! 広場で待ってい るからな!」 もうギーシュの憤慨は治まりそうになかった。彼は無責任に騒ぎたつ人垣を 抜け、食堂を出て行った。成り行きを眺めていた野次馬も大勢追っていった。 残ったルイズはすました顔をしているンドゥールを叱責する。 「あんた、はやくギーシュに謝りなさい。いまならまだ許してもらえるわ!」 「断らせてもらう。私が頭を下げるのはただのお一人だけだ」 「んな……!」 ルイズの心に苛立ちが募る。召喚してからこれまで大人しくしたがっていた が、やはりこの男は彼女に対して忠誠などしていないのだ。 「あのね、平民が貴族に勝てるわけないでしょ! メイジなのよ!」 「それがなんだというのだ。恐いものなどここにはなにもない」 「あのね……」 「――ンドゥールさん」 ギーシュの怒りを受けていたメイドが彼の名前を読んだ。 「私からもお願いします。はやく謝りに行きましょう」 「そういうわけにはいかんのだよ。礼は返さんとな」 はっきりと、ンドゥールは重く響く声で言った。そして、大きく無骨な手を シエスタの頭に乗せた。 食堂の騒ぎから数分後、広場で二人は対峙していた。結局ンドゥールはルイ ズとシエスタの制止を聞かずに決闘をすることにしたのだ。 彼は右手に杖を持ち、左手には喉が渇いたということでシエスタに用意して もらった水筒を持っていた。 「よく来たね。いま謝ったら許してやらないこともないよ」 「いつ始める?」 「……いま始めてやるよ!」 ギーシュの前に一体の青銅の像が現れた。ゴーレムだと誰かが言った。 女性の姿をしたそれは一歩一歩ンドゥールに近づいていく。その足音は当然 彼にも聴こえているのだろうが、水筒を地面に落とし、まったく動じること なくいつものようにしっかりとした足取りでギーシュへ向かっていく。 (あいつ、気づいてないの?) 見学に回っているルイズだけでなくほかの誰もがそんなことを考える。 このままでは簡単にぶちのめされる。しかし、そうはならなかった。 ゴーレムがいよいよンドゥールを攻撃しようとしたとき、唐突に倒れたのだ。もがいても起き上がることができない。 ざわつきの中、ルイズは気づいた。 (ゴーレムの足、歪んでる?) ゴーレムが再び現れる。 またしても肉薄するが、同じように倒れてしまった。 ギーシュは全力なのか今度はいくつものゴーレムを出現させた。だが、そう しても意味はなかった。全てのゴーレムがひとりでに倒れてしまったのだ。 ギーシュの身体に厳冬のような寒気が押し寄せてきた。 彼にはわかった。この迫ってくる男がなにかをしているのだと。練金が甘い わけではないと。 巨大な男が光のない瞳で見下している。 押しつぶされそうな圧力を感じてギーシュは声が出なかった。彼は知らない が、いま感じているのは死の恐怖だ。 「ふん!」 太く堅い拳で殴られる。ギーシュは唇を切って、血を吐き出してしまう。 それでもンドゥールは歩み寄り、鼻っ柱をぶん殴った。芝生に鼻血を撒き散 らし、ギーシュは痛みで悶絶する。 ンドゥールは呆れたようにため息をつき、ギーシュを見下ろした。 「まだやるか?」 「……ま、まいった!」 平民が貴族に勝利した。その事実に野次馬は驚愕し、大きな歓声があがった。ンドゥールが盲目であるということも関係しているのか、盛り上がりは少しも冷めることはない。 しかし、その熱狂の中心である男の一応の主人であるルイズは、腑に落ちな い顔をしていた。 彼女の手にはンドゥールが落とした水筒がある。そんなに容積があるわけで はない。グラスに五杯ぐらい注げられるていどだ。それでも、横にしていた ところで空になるようなものではない。 なのに逆さまにしたところで一滴たりとも水が出てこない。確認したが地面 にも水が浸み込んでいなかった。 ルイズは見物人のなかのある人物に近寄っていった。 「ちょっとあなた、ええとシエスタって言ったわよね」 「あ、はい。なにようでしょうかミス・ヴァリエール」 頬が若干赤くなっているが、ルイズはそのことに気づかず質問をした。 「あなた、この水筒にどれだけ水を入れたの?」 「いっぱいにですけど。それがなにか……」 「いいえ、なんでもないわ」 念のためにかルイズは水筒に指を突っ込み、内壁を滑らせてみた。水は一滴 たりとも付着していなかった。 水はどこにいったのか。 答えは一人、ンドゥールだけが知っている。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2504.html
ディオはルイズによって召喚された。だが、彼は四系統のいずれにも当て嵌まる覚えはなかった。 ディオは自らが召喚された理由を考えるが、その間にも運命の歯車は回り続ける。 おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第五話 朝食の席で特筆するような事はなかった。食堂に入ろうとするディオをルイズは物陰に引っ張り込み、 使い魔が食堂に入れる事自体が特別なんだから床で十分だと説明した。 そして床に皿を用意してやるからさっきの自分に対する態度を謝れば食べさせてあげない事もないと言ったが、 ディオは憎々しげな視線をルイズに向けると黙って立ち去った。 朝食が終わり(何故か今日の)、授業の為に教室へ行くと、いつの間にかディオが後ろを歩いていた。 大学の講義室のような教室に入るとすでに教室に入っていた生徒達から囁きが漏れる。 ルイズの召喚した前代未聞の平民の使い魔にみな興味津々なのだ。 そんな教室の様子にも我間せずといったかんじで入るとディオはルイズの隣に座ろうとした。 それを制止し 「あんたの席はここじゃないわ。ここはメイジの席。使い魔は…」 と言いかけたところでルイズは先程の出来事を思い出した。床に座れなどと言おうものならまたディオに殴られるか 黙って教室から出ていってしまうだろう。しかも今回は衆人監視の元で。 そうなったら恥ずかしい処の話ではない。使い魔も満足に御せないダメルイズ、やっぱりゼロはゼロだったと 嘲笑雑じりに馬鹿にされるのは目に見えている。 そこでルイズは―――使い魔と同じく剛巌不遜な態度に徹する事にした。 だがルイズは知らない。自分が無意識のうちにディオに恐怖していたという事を。 教室の先客にはキュルケもいた。キュルケの周りには何時も通り男生徒達が群がっている。 だが本当になかった事にしたのか、あるいはプライドが傷つくと考えたのかフレイムを蹴られた事を言い触らすつもりはないらしい。 それどころかディオと目線が合うとウィンクをする始末であった。 そんなキュルケを無視し、慣れた様子で『椅子に』座り、周りを見渡すディオ。 成る程、使い魔にも色々とあるらしいな。蛇や蛙、昆虫といった中にキュルケのサラマンダーをはじめとしてお伽話にしか 出てこないような動物がちらほらと見える。 だが、あいつらは全てジョジョのペットであったダニーと同じように主人の顔色を窺うようなゴミ以下の奴らでしかないッ! メイジ共は自分に都合良く動くように洗脳しただけのそれを友情とごまかしているだけなのだ! そうして暫くすると中年の優しそうな風貌をした女性が入ってきた。どうやら彼女が教師らしい。 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 と、ここで野次が飛ぶ。 「先生!一人その辺を歩いている平民を召喚しちゃって失敗した人がいます!」 小太りの生徒、マリコルヌだ。それにつられて爆笑する生徒達。 シュヴルーズはそれを睨むとルイズの方を向き、ディオをしげしげと観察する。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 その間の抜けた発言と皆の笑いに気をよくしたのかマリコルヌは更にルイズを馬鹿にし、ルイズの応戦に挑発する。 そのやり取りはシュヴルーズがマリコルヌ他の口に赤粘土を貼り付けて口を封じるまで続いた。 その間ディオは表情一つ変えず、まるで自分は全く関係ないかのように一連の騒ぎを冷ややかに見つめていた。 「私の二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します。 魔法の四大系統はご存知ですね?ミスタ・マリコルヌ」 「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。『火』『水』『土』『風』の四つです。」 生徒達には今更の話題であるらしく、あまり真面目に聞いていないが、ディオは熱心に聞いていた。 この世界では当たり前の事であるが、ディオにとっては初めて耳にする事ばかりである。 この先この世界で暮らしていく以上、どんな些細な事でも知っておく必要がある。 だが系統の話を聞いているうちにディオには一つの疑問が湧いてきた。『何故おれは召喚されたのか』という事である。 シュヴルーズの話では、使い魔は主人であるメイジの系統に沿ったものが召喚されるらしい。 だがディオには今の四つの系統に当て嵌まるような覚えはない。 主人の系統を知っておく事は大切かもな。そう考えるとディオは熱心に授業を聞いているルイズに尋ねる事にした。 横目でみるとシュヴルーズはどうやら石ころを錬金術で変質させたらしい。キュルケが身を乗り出して質問をしているが、 あまり興味は引かない。魔法や空想の生き物が存在しているのだ。錬金術くらい存在して当たり前である。 「ルイズ、少し聞いてもいいかい?」 「なによ」 ディオは小声で隣のルイズに尋ねる。 「さっき聞いたところ四つの系統が存在しているらしいが、君はどの系統なんだい?」 「…うっさい」 と、ルイズは表情を暗くすると呟く。 「主人の系統を知りたいのは普通だろ?まさか『虚無』の使い手なのかい?」 「うるさいって言ってるでしょ!?」 突然ルイズが怒鳴る。シーンと静まり返る教室。憮然とした顔付きをしているディオが ふとキュルケを見るとやっちゃったなというジェスチャーをされた。 「ミス・ヴァリエール!私にむかって煩いとは何事ですか!」 「あ…いえ…その…違…」そして盛大に勘違いをする教師。自分の話に熱中していて前後を聞いていなかったらしい。が、 「そこまで自信があるのであれば、あなたがやってみなさい!」 途端にざわめきだす教室。中には早々と机の下に潜り込む者もいる。 「先生、ルイズは止めておいた方がいいです!」 誰かが言う。 「どうしてですか?」 「あまりにも『危険』だからです!」 ルイズ以外の顔を出している生徒全員が頷く。 「な、なんなら私がやります!」 とキュルケ。しかし 「だが断る。」 容赦なく死刑宣告は下された。 「このシュヴルーズの好きな事はできないと思われている生徒に成功させることよ。 しかもミス・ヴァリエールには今回自信があるみたいです。あらゆる機会を捉えて生徒を成長させるのが教師の務めなのですよ。 さあ、やってみなさい」 今度こそ我先にと机の下に潜り込む生徒達。後ろで待機している使い魔を呼び寄せる生徒もいる。 ディオも周囲の危険を察知してゆっくりと机の下に潜る。 ルイズはそれらを横目に暫く逡巡していたが、やがて意を決すると教壇へと足を進めた。 「さあ、錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 必死に連想するルイズ。その顔は美しいが悲しいかな、それを見ているのはシュヴルーズだけである。 次の瞬間、石と教卓が物凄い音を立てて爆発した。使い魔や生徒達の悲鳴や祈りの言葉が教室内に充満する。 グラウンド・ゼロにいたルイズはひっくり返って気絶しているシュヴルーズを見、頭に手を当てた。 「てへ、ちょっと失敗しちゃった」 その場にいた全員から突っ込みを入れられたのは言うまでもない。 先生が気絶してしまったので残りの時間は休講となり、ルイズは罰として教室の掃除を行う事になった。 そしてディオはルイズの文句を聞き流しながらルイズが『ゼロ』と呼ばれている事を理解し、今の出来事について考えるのであった。 to be continued…
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「おや、『風』の呪文だね……うぷ…」 シエスタによる公開屠殺を強制的に見せられて、今にもゲロを吐きそうな顔をしていたワルドが、 青い顔をしたまま呟いた。 未だに鉄錆にも似た異臭が漂う死地に、ばっさばっさと翼を羽ばたかせる音が響く。 どこかで聞いたことのある羽音だった。 「シルフィード……だったかしら」 名前はともかく、確かにそれはタバサの使い魔の風竜であった。 重なりかけた月を背景に、悠然と空に浮かぶ幻獣。 そのシルフィードが、何故この場にいるというのか。 ルイズの疑問に応えるように、風竜はゆっくりと地面に舞い降りた。 場に満ちる死臭が、人間の何倍もの嗅覚を誇る風竜の鼻を襲い、 シルフィードは実に嫌そうな顔できゅいきゅい鳴いた。 その風竜の背には、主人であるタバサの姿。 パジャマ姿のまま、本を読んでいる。 さっきシエスタを吹き飛ばしたのは、タバサの『風』魔法だったのだ。 (お姉さま、ここクサい! シルフィお鼻が曲がっちゃうのね! クサい! クサい! ク~サ~い!) (……我慢する) そのタバサの後ろから、炎のように真っ赤な髪の女性が機敏な動作で飛び降りて、髪をかき上げる。 キュルケであった。 憎きツェルプストー。 ルイズの生涯のライバルであった。 「いくら礼節を弁えない者相手とはいえ、やり過ぎでなくて、ヴァリエール?」 後ろでヨロヨロと立ち上がり、頭を振っているシエスタを横目で見ながら、ルイズは肩をすくめた。 「あんたの夜の情事よりは幾分穏やかだわ。 ……で、どうしてここにいるわけ?」 「ッッ! …………朝方、窓からあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、気になって後をつけたのよ」 柳眉を逆立てて、キュルケは言い放った。 本当は助けに来たつもりだったのだが、ルイズの嫌味に対する反発心から、 つい無難な理由を述べたのだった。 しかし、良い所を邪魔をされたとあって、ルイズの嫌味は歯止めがきかない。 ウンザリした顔で、シッシッと追い払う仕草をする。 「おととい来て下さらないかしら、マダム? 大事な大事な男娼達が、首を長くして待ってるわよ? あら失礼、長くしているのは首じゃなかったわね……オホホホホ」 ほくそ笑むルイズ。 仮にも十八の乙女に対してマダム呼ばわりである。 これには流石のキュルケも腹に据えかねたらしい。目つきが据わってきた。 「言ってくれるじゃない、『ゼロ』のクセに……」 「…………何ですって?」 「何よ!」 バチバチと火花を散らしながら睨み合う二人。 やがて、いつものように壮絶な罵りあいが始まるのであった。 売女! ナイムネ! 脂肪細胞の無駄遣い! 言ったわね!? 野蛮人! おチビ! 色狂い! 独り身! ツラに一発ぶち込むわよ!? ケツに一発食らわすわよ!? ………………………………… …………………………………。 あらかた罵倒のネタが出尽くしたところで、タバサが止めに入った。 彼女がその身長よりも大きな杖を振ると、二人の体が宙に浮かぶ。 "レビテーション"の魔法を使ったのだ。 「非常時」 ポツリと呟くタバサの言葉で冷静になったのか、二人は渋々矛を収めることにしたようだった。 大人しくなった二人を、タバサはゆっくりと地面に下ろす。 「……改めて聞くけど、どうしてあなたがここにいるの、ツェルプストー? 私たち、お忍びの仕事の最中なの」 「ふん、勘違いしないで。貴方を助けに来た訳じゃないの。 ……ねぇ?」 ルイズに対する渋い顔を一転、キュルケはしなをつくってワルドににじり寄った。 「おひげが素敵な紳士様。身を焦がすような情熱に興味はおあり?」 じりじりと近づいてくるキュルケを、しかし、ワルドは青い顔で押しやった。 「あら、どうして?」 「婚約者が勘違いしては困る。 それに……こんな場所で、そんな気にはとてもじゃないが……なれないな」 確かに、とキュルケは納得して頷いた。 辺り一面には、依然として濃厚な血の匂いが漂っている。 直ぐに危険な野獣が集まってくるだろう。 既に上空では、匂いに誘われてカラスやハゲタカが群を為し始めていた。 彼らは、地上にある今晩の食事をご所望であったが、シルフィードがいるために手が出せずにいた。 ギャアギャアという、彼等の愚痴にも似た叫び声が響くこの場所では、 とてもじゃあないがロマンチックな気分にはなれない。 ワルドの言うことは至極もっともであった。 そして、それにもましての驚愕の事実が、キュルケの興味を強く刺激していたのであった。 「なあに? ルイズ、あなた婚約者がいたの? よりにもよってあんたに?」 「いちゃ悪いの? それに、まだ私は結婚するって決めた訳じゃないわ」 驚天動地といった顔をするキュルケだが、以外や以外、ルイズはあんまり気にしていないようだった。 もっと顔を赤らめるなりして照れるかと思ったのにつまんない、とキュルケは思った。 最近のルイズは、やけに冷静……というより、冷徹なのだ。 さらには、以前はまだまだ希薄であったはずのルイズから感じられるオーラのようなものが、 洗練され、さらなる深みを見せているようにも思われた。 何というか、カリスマ? とでも言うのだろうか。キュルケはルイズから発せられるそれをうまく説明することが出来なかった。 ただ一つ明らかなのは、ルイズが本格的に変わり始めた原因はDIOにあるということであった。 今でこそ、短絡的な感情表現をしてくれることもあるが、それもいつまで続くのか分からない。 ルイズの行く末を案じるキュルケであったが、そんな彼女をよそに、 ルイズは運良く生き残った一人に尋問を開始することにした。 地面に情けなく横たわって気絶している男にルイズはドカドカと近寄り、容赦なく鳩尾を踏んづけた。 激しく咳き込みながら、男は意識を取り戻した。 ゆっくりと目を開いた男は、自分を見下ろしているルイズの姿を確認すると、 途端に取り乱した。 「た、助けて!! 許して! 俺はただ、雇われてただけなんだよぉ……!! 」 「ほらほら、五月蝿いわね……静かにしなさいよ、大人げない」 しかし、男は喚くのを止めない。それどころか、脇に立つシエスタの姿を目にするや、その叫び声を益々大きくしてゆくのであった。 ルイズは痛む頭に手をやり、ゆっくりと杖を取り出して男に突きつけた。 「黙れ」 首を吹っ飛ばされた仲間達の姿が、男の脳裏にフラッシュバックする。 男はピタッと静かになった。 「では、聞くわ。 あんたたち誰に雇われたの?」 「は、はい、ラ・ロシェールの酒場でメイジに雇われました……女です」 早くもアルビオンの貴族に気付かれたかと、ルイズは焦った。 しかし、思った通りこいつは唯の三下だ。 根掘り葉掘り聞いた所で、実りのある情報が得られる確率は絶望的といえた。 それでも、ルイズに対する恐怖からか、男の返事が素直そのものであったのが、唯一の救いだった。 余計な手間がかからずに済んだと思いつつ、ルイズは先ほどの戦闘で感じた疑問を男にぶつけた。 「じゃ次。 さっきの戦いで、どうして私だけ襲ったの?」 「雇い主にち、注文されたんでさぁ、へへ……。 緑色の髪をした、美人のメイジに言われたんです……。 桃色の髪をしたチビだけは絶対にこ、殺せって……。 胸がペッタンコだから、すぐ分かるって……。ヒヒヒ、本当にすぐ分かりましたよ」 「緑色? どっかで見たことあるような……。 それとあんた、一言多いわ。 こんど余計なこと言ったら、せっかく拾った命を無駄にすることになるわよ」 調子に乗りかけてニヤついていた男の顔が、再び凍り付いた。 ルイズはいったん振り返ってキュルケ達をチラリと見た後、男に向き直った。 「もう聞くことはないわ。あんたは用無し。 殺してやるつもりだったけど……フン、せいぜいキュルケに感謝しなさい」 どうやら、命だけは助けてやると言っているらしい。それを聞いた男の顔が少しだけ和らいだ。 希望に包まれ始めた男の顔は、ルイズにとって非常に神経に障るものであったが、この際我慢することにした。 何だかんだで自分はキュルケに弱い……この瞬間、ルイズはそのことを強く自覚した。 いずれは克服せねばならない課題だった。 そのためには理由を知る必要があったが、ルイズには何となくそれがわかっていた。 キュルケはルイズの姉に似ているのだ。 優しいカトレアに。厳しいエレオノールに。 そう考えてルイズは、ハッとなる。 基本的に姉には頭の上がらないルイズにとって、これはゆゆしき事態であった。 『ルイズは姉に頭が上がらない→キュルケは姉に似ている→ルイズはキュルケにも頭が上がらない』 こういうカラクリだから、キュルケはこれからのルイズにとって乗り越えねばならぬ障害足り得たということか。 ならば、ルイズの為すべきことは一つである。 キュルケを乗り越えるためには、まず二人の姉を…………。 自分は二人の姉を……どうするというのか。 そう考えるとモヤモヤしてくる自分の胸の内を誤魔化すように、ルイズは男を追い払った。 男は振り向くことなく駆け、やがてラ・ロシェールの夕闇に包まれていった。 「てっきり殺すと思ったが……慈悲深いじゃないか。 あのキュルケとやらに負い目を感じているのか?」 いちいち痛いところを突く使い魔だと、ルイズは思った。 人の心を纏う鎧の、ほんの僅かな隙間を縫って、中心に針を突き立ててくる。 ふてくされた顔で、ルイズは馬上のDIOを見上げた。 「……何なら、消してやろうか? 可愛い御主人様の為なら、はてさて……どうってことはない。遠慮するな」 DIOの悪魔の囁きである。 ここでYESと答えれば楽なのだろうが、ルイズは首を横に振った。 「いいえ、嬉しい申し出だけれど断るわ。 これは私とキュルケの……いえ、私だけの問題よ」 「そうか」 拍子抜けするほどあっさりした返事を残して、DIOはさっさとラ・ロシェールの街へと移動し始めた。 その後に、デルフリンガーを回収したシエスタがしずしずと付き従う。 だが、ルイズは遠ざかっていくDIOの馬を追いかけ、ひらりとその背に跨った。 突如として自分の後ろに飛び乗ってきたルイズに、DIOは振り向いた。 「私の馬、さっきの戦いで死んじゃったの。 だから、ラ・ロシェールまで乗せなさい」 そっぽを向いて一息に言い切ったルイズにDIOはニヤリと笑い、直ぐに前に向き直った。 DIOがルイズに見せた笑みは一瞬であったが、しかし、ルイズは見た。 DIOの目。 何もかもお見通しと言わんばかりのDIOの目は、確かにこう言っていた。 『キュルケを乗り越えるために、まず姉を殺せ』 殺す? 私が? エレオノール姉様と、カトレア姉様を? ………………………………。 ルイズは自分の杖をぎゅっと握り締めた。 両脇を峡谷に挟まれた、ラ・ロシェールの街の灯りが、怪しく一行を迎えていた。 ―――ルイズ一行、無事にラ・ロシェールへ。 to be continued……
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こうして間近で見ると、やはりこの死体はただものではないとルイズは感じた。 死体の癖に何とも怪しい魅力を放っている。 それに……その…コレの近くにいると、おかしなことに、何と「心が安らぐ」のだ。 死体なんて、気持ち悪いだけのはずなのに………もっと近くにいたいと思ってしまう。 コレに自分の全てを委ねたくなる衝動を、ルイズは主としてのプライドで必死で抑えた。 深呼吸。 「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ。」 契約の呪文を唱え、目を瞑り、唇を重ねる。 その口付けはしかし、契約の儀式という形式的な物の割には、そして16歳の生娘が初めてする割には、些か情熱的に過ぎる物だったが……… 不意に "ズキュウゥゥン!!!" ヘンな音が聞こえた。 気のせいじゃない。 忘我状態で唇を重ね続けていたルイズだったがふと我にかえってあわてて顔を離す。 その時 「ッ痛ゥ!」 ルイズは何かで唇を切ってしまった。 結構深く切ったようで唇から垂れた血がポタポタと数滴垂れたて死体の顔に掛かってしまった。 痛みに顔をしかめながら見てみると、目を瞑っていたせいで分からなかったが、死体の開いた口元から、異常に発達した犬歯が覗いていた。 まるで牙のように。 これで唇を切ったのか…… 唇を抑えて止血を試みていると、後ろからキュルケの声が聞こえた。 一方のキュルケ達は、危なげなしに契約を完了したルイズに胸をなで下ろしていたが、その安堵は、徐々に疑問に変わっていった。 キスの時間がやたらに長い…… 契約の際のキスなど、それこそ小鳥の啄むようなソレで良いはず。 なのに、ルイズときたらあれではまるで………その……恋人にするようなキスではないか。 もう十分だろう――――――そう判断したキュルケは、ライバルが道を踏み外さないうちに止めることにした。 「ルイズ!あんた大丈夫なの?何ともない?」 三人が自分に対して変態のレッテルを貼ろうとしていたのを知ってか知らずか、ルイズは内心の照れを誤魔化しつつ、疑問文に対して疑問文で答えた。 「ツ、ツェルプストー! 今の聞いた!?」 キュルケは話が通じてないことに少しイライラしつつ意趣返しとばかりに、質問文に対して質問文で返した。 「聞いたって、何よ? 何も聞こえなかったわよ。ねえ、二人共?」 コクリと、二人は肯定する。 三人には聞こえなかったのか? ルイズは混乱した。 「えぇッ!?だってさっき、"ズキュウゥゥン!"ってはっきり……」 1人思考に没し始めたルイズに対し三人は『話の通じないアホ』のレッテルを貼りかけた。 ほとんど完全にイタイ子扱いである。 そんな三人の視線に気づいたのか、ルイズはあわてた。 パラノイア扱いは御免だった。 「ちちちちょっと、ツェルプストー!変な勘違いしないでよ!私はただ……」 そんなルイズの 手の中では。 死体の顔に掛かったルイズの血が、まるで乾いた土に水を垂らしたように、スゥッと死体の肌に吸い込まれていったのだがキュルケの方を向いていたルイズはそのことに気付かなかった。 そして、さっきまであらぬ方向を向いていた死体の目が、ギョロリと一点を見つめだしたことにも……… 3へ 戻る 5へ
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その深夜、セッコは彼にしては珍しく悩んでいた。 ルイズは“フリッグの舞踏会”の疲れか、完全に眠りこけていた。 学院長室でのやりとりを思い出す。 「でも?」 「何も分からんでも、恨まんでくれよ。記憶を~」 あのヒゲジジイ、分かっても教える気がねえんじゃねえだろうな。 だが調べようにもここの図書館へは、使い魔や平民は入れんらしい。 そもそも入ったところで字が読めねえ。 元々読めなかったのか、それともここの字がダメなのかは分からねえ。 この時点で自力という選択は却下だ。 誰かに、ヒゲではない誰かに調べてもらうしかねえ。 第一案。 目の前で寝ているルイズを見る。左手の印も見る。 怖いし却下だ。 第二案としてギーシュの顔が浮かんだ。あいつなら何でも聞いてくれるだろ。 だがなあ。 「やっぱし、馬鹿もダメだあ。」 つい口に出しちまった。うう・・・ そうだ。頼めそうな奴がもう一人いるじゃねえか。頭もオレよりよさそうだ。 まだ起きてるかなあ、やるなら早い方がいい。 ルイズは自分のベッドの上で、夢を見ていた。昔の夢。 舞台は生まれ故郷のラ・ヴァリエールの領地にある屋敷。 「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの?まだお説教は終わっていませんよ!」 「ルイズお嬢様は難儀だねえ。」 「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに・・・」 もうやだ、逃げなきゃ。頑張ってるのにお小言ばっかり。 「泣いているのかい?ルイズ」 後ろから声をかけられる。何で、何でこんなときに憧れの子爵様が。 はずかしくて仕方ない。 「子爵様、いらしてたの?」 幼いルイズは、慌てて平静を取り繕った。 「今日は君のお父上に呼ばれたのさ。あのお話のことでね。」 「いけない人ですわ。子爵様は・・・」 「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」 「いえ、そんなことはありませんわ。でも・・・わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」 ルイズははにかんで言った。 「ミ・レイディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ。」 「でも・・・」 「また怒られたんだね?安心しなさい。僕からお父上にとりなしてあげよう。」 手が差し伸べられる。大きな手、憧れの手。 その時、足元が突然崩れだした。風景が、地面が歪む。 子爵は“フライ”で飛び去ってしまった。 ルイズは飛べない。足が、腰が、沈んでいく。 「た・・・すけ・・て・・・セ・・・」 「あ、あら?!」 とんでもない悪夢だったみたい、このわたしが途中で目覚めるなんて。ひどい汗。 今日はいろいろなことがありすぎて、神経が昂っていたのかもしれない。 「セッコ、水汲んできて。」 反応がない。こんな深夜にどこへ行ったのだろう? いや、あいつがいつの間にかいなくなるのは毎度のことなのだけれども。 「セッコ!」 反応がない。 今まで大声で呼んで来なかったことは一度もなかった。 気になるわ、探してみようかしら。視聴覚の共有ができないって不便ね。 ルイズが目覚める少し前。 「確かに、前シルフィードが止まったのはこの部屋だったと思うんだがなあ」 いくらドアを叩いても反応がない。しかもカギがかかっている。 “潜って”もいいかな? タバサには学院長室で壁から出てくるところを見られているはずだ。 なら、隠さなくてもいいだろ。多分。 セッコの脳に、倫理的な問題云々などという項目はないのであった。 タバサはちょうど“今日の分”を読み終わろうとしていた。 と、ドアがノックされている。 どうせキュルケだろうけれど、こんな夜更けになんだろう? 無理矢理押し入ってこないということは、非常時ではない。無視して寝よう。 パジャマに着替えてからドアと壁に“サイレント”を掛け、静けさを手に入れる。 しかし安息は訪れなかった。 「なあー。」 何者かにいきなり肩を叩かれた。すわ刺客か?慌てて枕元の杖を掴み飛び下がる。 「そんなに驚かなくてもいいじゃねえか。」 幾分しょぼくれた表情のセッコがそこにいた。 「驚くなと言う方がおかしい」 「そうかなあ。」 無邪気そのものの表情で即答された。 セッコの感覚は間違いなく普通とかけはなれている。 人のことは言えないかもしれないけれど。 「で、何?」 「こっそりと頼みがある。」 妙に真剣だ。嫌な予感がしなくもない。 まあ、こちらから訊きたいことも多かったし聞いてもいいか。 「質問に答えてくれるなら。可能な範囲で聞く」 「わかった。」 「うーん、セッコが深夜に行きそうな場所なんてねえ。」 誰に聞かせるでもなくルイズは呟いた。全く行きそうな場所が思いつかない。 夜の学院事情なんて知らないわよ。 ああそうだ、夜に詳しい奴が隣にいたじゃない。あんまり頼りたくないけど。 まだ起きてるかしら? ドアをノックする。 「なによ、眠いんだけど。」 反応があったわ。さすがね、お肌に悪いわ。 「ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら。」 「物凄く珍しいわね。やれることよりやらないことの方が多いわよ?」 キュルケがぶつぶつ言いながらも部屋から出てきた。 いつもながらこの乳むかつくわね。 そうだ、今はそんなこと考えてる場合じゃなかったわ。 「セッコが行きそうな場所とか知らない?」 「いきなりどうしたの?」 「気づいたらいなかったのよ。いつもと違って呼んでも来ないし。」 「そんなこと言われても知らないわ。 私の魅力より朝食の方が大事な男にはさすがに興味ないし。」 あの朝の事をわりと根にもってるみたい。心の中でセッコを褒めておく。 「やっぱり聞かなければ良かった。」 「うるさいわね。ああ、タバサなら知ってるかもしれないわ。」 「なんでよ?」 「シルフィードとえらい仲よさそうだったわよ、セッコ。」 ああ、そういえばそうだわ。 「案内して。」 「はいはい、恩にきなさいよヴァリエール。」 キュルケについていく。 「あら、ノックする前からサイレントが掛かってるなんて珍しい。」 「それじゃ起こしようがないじゃない。」 「多分起きてるわよ。」 そんなこと言われてもね。 「でも、音が通らないんじゃ気づいてもらえないわ。」 「タバサに話訊いてみたい?」 「そりゃきけるもんなら訊きたいけど。」 サイレント掛かってるんじゃないの? 「・・・アンロック」 「ちょ、ちょっとキュルケ!」 「あなたが話訊きたいって言ったんじゃない。」 「まあそうだけど。」 「と、取り込み中だったかしらあはははは」 キュルケが、気まずそうに言った。 「・・・・・・」 目に飛び込んできたのは、二人の予想を遥かに超越した光景だった。 タバサとセッコがベッドに座って何か話している。 しかもタバサはパジャマ姿だ。 これが意味するものは一つね。一つ・・・ 「うお、何かあったのかルイズ?」 セッコが何か言ってるわ。何か。じゃあないわよね。 「ねえ、セッコ」 「うん」 「あんたが誰とつきあおうが、あんたの勝手。」 「おあ?」 「でも、でもね」 タバサをちょっと見る。うん。間違いない。 「[それ]は犯罪でしょうーーーーーーーー!!」 絶叫と同時に右ストレートでセッコをぶん殴る。 「い、いてえええ!な、なんなんだルイズオメー」 「何じゃないわよ!どう見たって犯罪よ犯罪!!!帰るわよ!」 セッコの足を掴んで引き摺る。 「おああ、おいちょっと待て」 パシッ 「待たないわ。」 「話を聞けっ、よ、寄るなあぁー」 バシッ 「うるさい黙れ。」 「うおあオレ悪くねえ!」 メキッ 「そういう問題じゃないわ!」 「いでえ、何怒ってんだあ!」 ガッガッガッ 「うるさいうるさいうるさい」 「アギェー」 キュルケはセッコを引き摺りながら部屋に戻っていくルイズを見送り、タバサに声を掛けた。 「なんだかんだ言って、よろしくやってんじゃない。」 「だから。勘違い。」 「そうかしら」 セッコがその思慮の浅さにより、ルイズに散々とっちめられている頃・・・。 遠く離れたトリステインの城下町の一角にあるチェルノボーグの監獄で、土くれのフーケはぼんやりとベッドに寝転んで壁を見つめていた。 「まったく、か弱い女一人閉じ込めるのにこの物々しさはどうなのかしらね?」 苦々しげに呟く。全く杖のないメイジは無力極まりない。 それからフーケは、自分を捕まえた奴のことを思い出した。 「たいしたもんじゃないの、あいつらは!」 とても人間とは思えない素早い動き。 そして、ゴーレムに塗り込めたと思ったのにいつの間にか背後にいたこと。一体何者だったんだろう? しかし、今となってはどうでもいいことだ。 貴族たちを散々振り回したのだ。きっと来週にも死刑だ。 自分の編み出した様々なテクニックも永久に失われてしまうだろう。 諦めて寝ようとすると、聞き慣れない足音に気づいた。 しかも、その足音はフーケの前の鉄格子で止まった。さっと身を起こす。 「おや、こんな夜更けにお客さんなんて珍しいわね。」 黒マントに白い仮面という露骨に怪しい人物が自分を見下ろしている。 杖も携えている。おそらくメイジだ、正直刺客としか思えない。 「[土くれ]だな?」 「誰がつけたか知らないけど、確かにそう呼ばれているわ。」 「話をしにきた」 「話?」 「そうだ、土くれもといマチルダ・オブ・サウスゴータ」 誰も知るはずのない、捨てさせられた自分の本名。 「・・・聞かない、という選択肢はなさそうね。強制かしら?」 「まあ、そうだな。」 「弁護でもしてくれるって言うのかい?」 「弁護どころか、扉を開けてやれるんだがな。こちらの組織に身を寄せてくれるなら、だが。」 「寄せなかったら?」 「この場で殺す。」 「ふん、そうかい。じゃあ仕方がないね。」 「手伝ってもらえるな?」 「ああ。組織の名を教えてくれるならね。」 男はポケットから鍵を取り出し、錠前に差し込んで言った。 「レコン・キスタ」 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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ゴブリンスレイヤー 2018年秋にアニメ版が放映されている。 ゴブリンスレイヤー 実力者でありながら小鬼(ゴブリン)を殺すことにのみ執着している謎多き仮面の冒険者。 B 短剣投げ 手にした短剣で前方の相手を貫く。威力は高いが武器を手放してしまうため一部攻撃のリーチが落ちてしまう。 ヒットorシールド防御されるor外れるとステージ上に剣が落ちるので、拾うか一定時間経過すると再使用可能。 上B 円盾突き上げ 装備している円盾で殴り上げながら上昇する。跳躍距離はそれほど高くないが、発動時前方からの攻撃を一発までなら相殺可能。 横B 松明投げ 火のついた松明を放物線軌道で投げ込む。単体ではBよりも威力も速度も低い軽ダメージの火炎属性攻撃だが、下Bと組み合わせることで真価を発揮する。 下B 粉塵撒き 前方に小麦粉を詰めた袋を投げ上げ、相手にヒットすると粉塵塗れ状態にして一定時間移動速度を落とし、地面に袋が当たると周囲に粉塵が飛ぶ状態になる。 粉塵のある場所や相手に横Bなど火炎属性の攻撃が触れると粉塵爆発が起こり範囲内の相手をふっ飛ばすことができる。 (短剣非所持時に)下B ガソリン撒き 剣を持っていない時はこちらの技になる。小ビンに入ったガソリンを投げ、当たった相手または地面に一定時間ガソリンを撒く。 相手に当たった場合は相手が滑り&転倒しやすくなり、地面に撒いた場合はその位置を歩く時に滑りやすくなる。 粉塵撒き同様ガソリンの触れた相手や地面に火炎属性の攻撃が触れると広く燃え広がる。 最後の切りふだ 転移の巻物 異空間への扉を繋げる巻物を開き「海の底」とつなげる事で広げた巻物から高圧の海水を噴出するマリオファイナル風飛び道具型切りふだ。横方向に押し出す力が強い。 勝利台詞 「ゴブリンは一匹残らず俺が殺す」
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真「スレカラを御覧の皆さん…」 全「今晩わぁーーーーーーー(なのだわ(ぁ(ですぅ(っ(なのよー(かしらー(…わんばんこ」 銀「ちょっとぉwばらしぃー、今時そのネタはないわぁwwww」 翠「ったくおめぇーは笑福○鶴○ですかぁww」 薔「ショウヘイヘーーーーイ!!」 蒼「ちょwwwwばwwwwばらwwばらしーーwwもう辞めてwwwwこのままじゃwwwwwwうぇっwwっうぇw」 デデーーーーン♪ 蒼「嫌ああああぁぁぁぁ!!!(´;ω;`)まさかこの効果音はwwww」 薔「別に何も無いよ…ビックリした?」 今の効果音は薔薇水晶の手元にあるキーボードからの音だった… 蒼「もぅ辞めてよwwwばらしーwww寿命が3年は縮まったじゃないかーーーーー!!!」 真「ッホン…本日より『スレタイでカラオケ12th~177th Take 薔薇乙女編』は『スレタイでカラオケ12th~177th Take 薔薇乙女編SeasonⅡ』へとバージョンアップするのだわ!」 蒼「思ったよりも早く再開しちゃったね…」 雛「なーんか作者さんがお外で考え事してたら次から次へとポンポンネタが浮かんだって聞いたのよー」 金「作者さんはきっと家に篭っているより外で新鮮な空気を吸いながら考えた方が良さそうかしらー」 蒼「ところで真紅。Season2では一体どんな見所があるんだい?」 真「そうね。ちょっとネタバレ気味だけど少しだけ紹介しましょう。 何とSeason2では、ばらしーに隠された77の人格(28話参照)の詳細が明らかになるのだわっっ!!」 全「な、なんだってぇーーーーーーーっっ!!!??」 銀「ってばらしーww貴女のことでしょぉ…一緒に驚いてどぉすんのよwww」 薔「みんなと…一緒に混ざりたかった…それだけ…」 蒼「何か調子狂うけど…そろそろ幕開けの時間だ!あぁもう出演時間に間に合わないww」 真「えぇ、それじゃ読者の皆様方!!」 全「Het bekijken van dat!!【御覧あれ!!】」 … … … 薔「皆知ってる?真夏のお鍋って意外に美味しいんだよ…」 翠「こら!!ばらしー、舞台がもう始まるですぅ!!早くこっち来やがれですぅ!!!#」 ギュウウウウゥゥゥ 薔「ヤメテヤメテ痛い痛い痛い…うわぁーーーん!!銀ちゃぁーん、翠星石が耳引っ張ったぁーーー!!!。・゚・(ノД`)・゚・。」 長編SS保管庫へ/第1話へ続く