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花中島マサル(セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん) 数々の名言で知られる作品の主人公。アニメのOPも必聴。 主役らしくセクシーLv6~9と高めから最大まで成長するほか、 チャームポイントで初手からセクシーコマンドー使用可能、 弱点である前フリ技の不発でも心眼により強引に当てられる、 挑発で無理やり射程内に呼び寄せることもできるなど、 セクシーメイトとして一流の能力を持つ。 他にも耐久が少し高めで抵抗力Lv1もありエリーゼ不発時も少し安心で、 Lv1脱力という特徴もありフォルダ内ではかなり使いやすい。 なお、超回避Lv1も持つが、手動で素の回避は低めなので忘れていい。 可能なら特殊効果発生率の補強が第一だがめったに存在しないため、 普通はセクシーコマンドー使用回数確保のためEN強化か、 不発時の安定性補強のために耐久強化が選択肢になる。 セクシーコマンドー(セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん) 作品タイトルにもなっている格闘技の総称。 達人であろうと隙を突くことで倒せるという理念のもと、 隙を作りだすことに特化している。 詳しくは原作を読もう。 データでは『エリーゼのゆううつ(以下エリーゼ)』からの追加攻撃で 『セクシーコマンドー(以下コマンドー)』が発動するようになっている。 (※一部例外あり) 特徴が複数あり、箇条書きにすると 『セクシーコマンドー全体』 エリーゼ(&放課後キャンパス)からの追加攻撃でコマンドーが発動する。 『エリーゼのゆううつ』 射程1。気力105。 先SL0精視属性。 CT+15 & セクシーLv×2%増加。 『セクシーコマンドー』 エリーゼから自動発動する追加攻撃。 射程1。EN30。気力105。 命中-99(エリーゼのSL0発動が命中の条件になる) 基礎火力1500+KL0+オR(セクシーLv×50上昇)。 つまり、コマンドーの火力はほどほどに高く使い勝手も良いが、 必中がない限りコマンドーの命中はエリーゼのクリティカル頼りになり、 安定感に欠ける、ということになる。 また、射程1なので射撃中心の相手には防戦一方になるのと、 EN30と比較的大きく連射に不向きなのが弱点。 肝心のSL0発動率だが、主役のマサルさんが技量166、最大セクシーLv9なので、 技量130ザコ=81%、技量150汎用=41%と雑魚にもあまり安定しないが、 技量200ボス=16%と大物にもワンチャン狙えるようになっている。 下手をすれば雑魚にも苦戦するが、上手くすればボスも無傷で倒せると、 ある意味で非常にらしい性能をしている。
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カテゴリー 笹荻 一人ぼっちの現視研 家出少女・荻上 家出少女・荻上 続編 荻上さん、入院する 夏コミ前の話 笹荻 笹荻の帰省 巫女神楽 めぐりあい、アキバ いくらハンター いくらハンターⅡ いくらハンターⅢ 雪の華 華風 そして、すれ違い・・・ 君に読む物語 夢であるように リライト ある朝の風景 ある朝の風景-おまけ- 五月雨 If I ever hear you knocking on my door 8823 パンを焼く 影踏み ランプ ランプ-続き- テーブルの距離 テーブルの距離─おまけ─ とりかえばや物語 嬉し涙 いつか見た夢の続きを 事後 事後・side荻上 甘い話 指 不機嫌 なごり雪 手をつなごう お家にかえろう バレンタインデー あなたに会いたくて アルバムを覗けば 普通の日 笹荻BADEND ヨモギ らびゅーらびゅー 短編集 夕立 不快指数 スケッチブック ザクロ promise かなしいライオン 罪と罰 あつい話 『マル。』 『はじめてのおつかい』 スレスレ? 二つの幸せ やわらかい月 月を見上げて 逃げ道 『カエデ』 気付いた時が恋のはじまり きゃんでぃ☆デート 底冷え TOP
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不快指数 【投稿日 2006/07/20】 カテゴリー-笹荻 七月のある週末のこと、生ぬるい空気の中、小雨が金曜夜から しとしとと降り続いていた。そんな中、土曜も朝から起き出して 荻上は、夏コミに向けての原稿を書いている。 個人的なものと、現視研としての出品分なので、描くのが早い 荻上も大変なようだ。部屋は修羅場らしく衣類やゴミが散らかり、 台所の流し台にも洗い物が溜まっている。 クーラーはつけているが、その額には汗が浮かび、前髪が 数本、ぴたりと張り付いている。 いや、前髪だけではない。Tシャツも背中に張り付いて うっすら透けていて、かなりの汗だ。 「あーーもう!動いてないのに汗が出るなんて!」 ガタッと立ち上がると台所の冷蔵庫に向かうのだった。 台所へ移動しただけで眼鏡が曇るほどに湿気ている。 「はー、シャツ、着替えよう…。」 寝室の扉の向こうで、タオルを使う音と衣擦れの音が聞こえてきた。 ごしごしと汗を拭いて着替えたようだが、 「…着替えてもすぐ汗で濡れるって!うー、ムカツク!」 こんなに独り言を言うほどの状態に追い込まれている。 しかし原稿は、やらねばならない。 その時、「~~~♪」机の上の携帯が鳴る。 (あっ、笹原さんだ。) 電話をぱかっと開くと、受話ボタンを押す。 「はい、荻上です…や、いえいえ、すみません、原稿が―――。」 しばらく電話に耳を傾け、話を聞いているようだ。 「いえ、嬉しいんですけど、来て貰っても原稿やってるから、 今週末は無理ですよ。うちの部屋には入れませんから。」 そして左手で額の汗をぬぐいながら、また笹原の言葉を聞いている。 「え?そんなつもりじゃ……。そんな事言ってないですよ!」 「もう!私だってホントは―――!……もう、いいです!」 そう言って電話を切ってしまった。 その携帯電話の液晶画面をしばらく見続けると、ティッシュを1枚取り 表面に付いた汗をふき取りながら、溜息をついた。 「はー、もう…いくらなんでも、こんな荒れた部屋に入れるなんて 恥ずかし過ぎて絶対、嫌なのに…。」 ティッシュをゴミ箱へ投げつけてから、机の上の原稿に眼をやる。 「私も行きたいけど、原稿有るし…会いたいのに…それを!あーもう!」 ソファのクッションをボスボスと殴りつける荻上。 こんな状態では原稿も出来ない…かと思えば、ちょうどハードかつ欝な場面 を描くところで、荻上は机に向かうと、猛然とこのストレスを紙面にぶつけ、 強くなったり弱くなったりする雨音も耳に入らない様子で、その日の午後は 原稿がすごい勢いで進んだのだった。 ひと段落した夕方のこと、荻上は霧雨のような弱い雨の中に傘を差して 歩き出すと、コンビニに向かった。冷房で冷えていた眼鏡が曇ったが、 歩くうちに温まり、眼鏡の曇りは晴れた。空は晴れない。 とめどなく、汗も出てくる。 道路の向こうに、見慣れたコンビニが見えるが、ガラスが擦りガラスの ように真っ白で、中が見えない。見慣れない光景だ。 ゴロッ…ドドド…。 その時、低い空から雷鳴が響いてきた。雲も光り始めた。 急いで店内に駆け込むと、カミナリを伴って大きな粒が地面を叩きつける ようにして、強い雨がやってきた。 みるみるうちに、道路に川のような流れが出来る。 曇っていたガラスを雨が洗い流し、そんな様子をしばらく眺めていた 荻上は、食べ物や飲み物をカゴに確保すると、雑誌の立ち読みを始めた。 20分もすると雷が少し鳴り、急に日の光が差して景色が照らされ、 明るくなってきた。白いもやが遠くに立ち上っている。 買い物カゴをレジに運ぶと、荻上は店外に出た。さっきまでの どうしようもない湿気と暑さはどこへやら、ひんやりとした空気が 肌に心地良い。荻上は、はっと思い出して傘立てから自分の傘を抜き取り、 ずれていた眼鏡を上げると、遠くの空を見て歩き出した。 「ん?………あ!」 荻上が急に携帯を取り出して、写真を撮り始めた。 そして、歩きながら携帯をいじると、嬉しそうに歩き始めたのだった。 やがて掛かって来る電話。 「あ、もしもし!メールの写真見ました?まだ今なら虹、見えますよ!」 苛々していたのが嘘のように、笑顔で話をしている。 「や、とんでもないです、…こちらこそ。そうそう、アレが―――。」 大きな虹の下を歩きながらの長電話は続く。
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726 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 18 59 32 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [220/297] できました。ご笑納くだされば幸いです 中島/川西 三式艦上戦闘機「陣風」 全長:10.2m 全幅:12.5m 全高:4.5m エンジン:プラットアンドホイットニーR-2800-34W(日本名:「木星34型」)×1 プロペラ:ロートル社式3.84m径4枚プロペラ 出力:離翔2400馬力 定格2100馬力(高度6100m) 速力:最大686㎞/h(高度6560m) 航続距離:正規1710㎞ 150ガロン増槽あり2560㎞(戦闘航続半径950㎞+全力40分) 武装:ホ5 20ミリ機関砲×6 【解説】――中島飛行機が開発した帝国海軍の主力艦上戦闘機 1943年初頭より機動部隊に配備が開始され、それまでの零式艦上戦闘機と急速に置き換えられたことから大戦中期の帝国海軍の主力戦闘機とされる エンジンは、ライセンス生産された当時最新のR-2800-34Wエンジン(開発中だったXF‐7‐Fなどと共通)を採用し、当時の戦闘機としては最高レベルの出力を確保し、プロペラは英国ロートル社からライセンス生産したスピットファイアと共通のものを採用 この組み合わせにより、試作機は最大711 #13214;/hに達する快速を誇ったが、パイロット損耗を抑えるべく追加された防弾装備や主翼折り畳み機構の追加によりやや速度は低下し高度6560mで最大686 #13214;/hとなっている 武装は、零式艦上戦闘機用のエリコン社製改良型に替えて陸海軍共通の軽量20ミリ機関砲(両軍とも20ミリ以上は砲と呼称を統一)ホ5を6門搭載。 イスパノ社製機銃ほどではないもののスピットファイアや米国のF4Uを上回る大火力となった 三菱の「烈風」と異なり太平洋においても使用を考慮して設計されたことから航続距離は長大で、英国製ペーパータンク(300ガロン)搭載時には3000キロにも達する ただし艦上運用上は150ガロン搭載の方が一般的であった 本機の開発に際して帝国海軍当局は完全に米国技術導入のために開き直ったとも称される態度で臨んでおり、エンジン製造ラインや艤装の製造ラインも米国から製造機械ラインを購入している さらに多国籍での運用も考慮して人間工学的な配慮がされた操縦席回りはそれまでの日本機からすると雲泥の差といわれる居住性が確保されていた 特に艤装において米国からのライセンス部品が多用されたことは現場において非常に好評であり、のちの戦闘機のスタンダードとなった 本機の開発は中島飛行機の倉崎重蔵技師と川西飛行機の菊原静男技師が指名され共同で行われたことに特徴があるが、二人はまるで旧知の間柄であるかのようにスムーズに作業をこなし、周囲を驚かせたという なお本機は、のちに国産のハ‐44こと土星発動機(2800馬力)に換装され(陣風改)、1947年の終戦時にあっても二線級部隊に一定数が配備されていた 733 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 20 56 29 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [221/297] 【開発】――1940年、バトルオブブリテンを辛くも乗り切った帝国海軍はひとつの困難に直面していた 傑作機となった零式艦上戦闘機の後継機問題である 幸いにも、まるで図ったかのように三菱の堀越二郎技師は機体各部とエンジンを強化した22型(史実52型)と、エンジンを1500馬力級の「金星」発動機に換装した33型(史実64型)の構想を提出していたことから当分はこれで十分ではあった だが、それに続く新型戦闘機の開発において困難が生じた のちに政財官において「従軍派」と呼ばれることになる欧州戦線従軍組の人々が前線から届ける要望と、中央の要求に乖離が生じていたのである 欧州戦線からは、バトルオブブリテンにおいて英国製スピットファイアに惚れ込んでしまった士官級搭乗員たちからまず加速力と最高速力を確保し、軽快な運動性も有する、いってみればスピットファイア強化型が要望されていた 場合によっては英国製の機体の導入も考慮すべきと申し添えて 帝国海軍としては、太平洋上でも艦上機を使用することから欧州戦線に比べれば長大な航続距離が必須である。だが当分の間日米戦の脅威など存在していない現実からある程度妥協もやむなしと考えられ、1940年7月、三菱を、もっというと零戦の堀越二郎を指名して15試艦上戦闘機の発注が行われた だが彼らは堀越二郎という男を見誤っていた いつの間にか英国メーカー各社に伝手を作っていた彼は、英国が次期戦闘機用に開発している新型液冷エンジン グリフォンの存在を嗅ぎつけておりその人脈の限りを尽くして試作品を日本に持ち帰ってしまっていたのだ 英国としても本国が再び爆撃を受けた場合に備えて日本本土に製造ラインを確保するというのは魅力的な提案であり、帝国海軍当局が気付いたときには既に三菱と英国メーカーの間で覚書が交わされる状態にあったのだった 海軍航空黎明期に欧米製の液冷エンジンを輸入して使用経験があった海軍当局は少々顔をしかめた 海外製はもとより、国産化された液冷エンジンは油漏れやノッキングなどのトラブルを頻発させ、整備面で大幅に問題を抱えていたからである 「とてもいやな予感がする…」 空技廠の和田操廠長がいみじくもこういった予感は当たっていた 「誰だァ!こんな機体作ったのは!!」 横須賀海軍航空隊から海軍省に殴りこんできた担当者は開口一番そう叫んだという 彼らが試験的に購入し運用していたのは、英国海軍のシーファイア艦上戦闘機 その整備性は控えめに言っても最悪であり、特に帝国海軍機動部隊で運用するなど考えられない代物だったのだ 海軍のトラウマはさらに強化された だが、堀越二郎は抜け目がなかった なんと彼は英国海軍を抱き込んでいたのだ 英国海軍のイラストリアス級空母のエレベーターサイズは特に横幅わずか6.8m。バトルオブブリテンで高性能ぶりと長大な航続距離から防空戦闘における救世主となった零式艦上戦闘機は運用不可能だった そのため、英国海軍は主翼の折り畳み機構追加を要望し、そこに堀越は海軍の次期艦上戦闘機計画を匂わせたのであった 堀越としては善意の行動であった 当時英国海軍は新型艦上戦闘機を計画しておらず、シーファイア艦上戦闘機は陸上機からの改設計であることから無理が多発していたからである そこで彼は自分の欲望に正直になった 彼はわずか1か月でマーリンの後継、グリフォンを使用した新型戦闘機の構想を練り上げたうえで日英共通戦闘機とする構想を海軍当局に吹き込んでいたのだ 気が付いたときにはもう遅かった 「これを機に帝国海軍でもグリフォンが運用可能なように組織改革を行うべきでは?英米の技術水準に一気に追いつくこれは好機ですよ」 文句を言ってきた海軍省の担当者に堀越はこう告げた 腹が立つことであるが、それは事実だった だがまだ問題があった 堀越らが試案を提出した機体は確かに高性能ではあったし陸上運用すれば素晴らしい戦闘機になることが約束されたような機体だった だが、英国から技術導入されることになった樹脂強化された大容量の紙製燃料タンクを使っても、航続距離はわずか1500 #13214;程度だったのだ 確かに欧州で使用するにはこれでも構わないだろう だが、海軍は北海や地中海のみで活動するわけではないのだ それに、まるで何かの鬱憤を晴らすように一人の設計者に海軍当局が振り回されてしまうのも癪に障る話だった (なお、こうした堀越に代表される態度は戦中の帝国航空技術者やメーカーにほぼ共通している。最後まで帝国海軍はそんなアクの強いメーカーたちに振り回され続けることになるのである) 734 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 20 57 02 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [222/297] そして、和田操空技廠長はいい笑顔でこう言った 「私にいい考えがある」 彼は、元海軍機関大尉であるにも関わらず海軍とは疎遠であったはずの中島飛行機から一人の設計者に白羽の矢を立てた 倉崎重蔵技師 人物としては英国から帰ってきてから奇人変人度を天元突破させた堀越とどっこいどっこいの若手設計者である どこからか和田の個人的な知己を得ていた倉崎はお偉方の前でこうのたまった 「どぅあーいじょうぶ!むゎーかせて!!」 その言葉の通り、倉崎は1940年11月、空技廠に簡単な設計図を持ち込んでのけた 長年温めていたという戦闘機の構想がそこにはあった 英国との関係上、既に仮称「烈風」と呼ばれるようになった三菱案の開発案は中止にできない ひとまず14試局地戦闘機という名目で発注をかけられていた三菱をあてにできない以上、彼らは中島に頼るしかなかった 倉崎は海軍当局が自分も暴走しかねないと危惧しているのを察し、自ら海軍子飼いの航空メーカーである川西飛行機(彼らは英国向け飛行艇の設計と水上戦闘機の開発に忙殺されていた)と空技廠から人員の派遣を受けることを申し出た のちに19試甲戦と呼ばれる帝国海軍最後のレシプロ艦上戦闘機の開発にも関わることになる菊川静男技師がまるで厄介払いされるようにつけられたのはそういったわけだった (彼は水上機でなく陸上戦闘機を設計させろとうるさかった) こうして1940年12月30日、辛うじて15試(海軍昭和15年試作艦上戦闘機)となった機体は開発が開始された この段階で、倉崎が望む馬力を出せるエンジンは存在していなかった 帝国の航空各社がそろって「海外からの技術導入がなければ2000馬力級発動機は1943年頃まで開発不可能」と訴えているのを無視して海軍当局が試作を進めていた小型高性能発動機は試験こそされていたが 「量産性最悪だこれ。こんなのシーファイア運用する方がまだマシだぞ」 といわれる代物であった。文句をいっても 「だからいわんこっちゃない」 と冷淡な態度をとるようになっていた航空メーカー。彼らは彼らで飛行機狂いの政友会総裁でもある中島知久平に感化されて「太平洋横断超重爆撃機Z機」や「最後のレシプロ戦闘機用のレシプロエンジン」の開発に血道を挙げていたのだが今はその話は置いておこう 「なら米国からライセンスすればいいじゃなーい。こっちは空冷だぞ」 倉崎と和田が軽い態度でそう述べたとき、選択肢はもはや存在しなかった 川崎? マーリンエンジン積んだ新型機にかかりきりですが何か? かくて1941年3月、帝国海軍の懇願によりレンドリースの適用を受けることになった航空エンジンとして、P&W-2800シリーズが来日する その安定した高性能ぶりは海軍当局を狂喜させ、すぐさまライセンス生産が決定する 代償として差し出されたのは、帝国海軍が誇る秘密兵器だったはずの酸素魚雷だった (なお米海軍の駆逐艦乗りたちは狂喜した) このような紆余曲折を経て開発が開始された機体は、「烈風」と対になるものとして「陣風」という仮称が早くも内定 1941年8月にモックアップ審査にこぎつけると1942年10月に試作1号機が初飛行する このころになると、関係各所の努力によって日本国内にアメリカ標準のエンジンや艤装品の量産工場が稼働を開始しており、海軍当局は制式採用を待たずすぐさま量産を指示した 1943年1月、「陣風」は初期製造分が欧州戦線に配備 奇しくもそれは英国機動部隊に「烈風」が納入されるのと同時であったという 735 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 20 59 18 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [223/297] というわけで開発経緯について一本 戦歴については後日…
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その四 花言葉【投稿日 2006/01/30】 カテゴリー-4月号予想 1.《えにしだ》(金雀枝、金雀児、Broom) 虚、卑下、清楚、博愛 合宿が終わり、大学に近い最寄の駅で解散してから笹原は直接どこにも寄らずに、 自分のアパートに戻った。惠子も直接実家に帰った。部屋に入るや、荷物をどさ っと降ろして、着替えも片付けもせずに、ごろりと寝っころがった。 (くたびれた・・・。たった三日なのに、なんか色んな事があった気がする) 笹原は携帯を取り出し、受信メールのメッセージをぼんやりと眺めた。 『明日私の部屋に来て下さいませんか?』 『例のものをお見せしようかと思うのですが。』 「明日か・・・」 笹原はつぶやいた。そして思った。 メールが来たときにはドギマギした。しかし今は少し不安と焦燥を感じる。荻上 さん、少し急いていないだろうか? (俺にしてはよくやった方だよなあ・・・) 成り行きとはいえ、告白までもっていったのだ。自分の気持ちは伝えたし、そ の答えも明日わかる。荻上さんの抱えている問題も彼女の口から聞いた。その すべてを理解しているわけでは無いが、彼女の心に少しだけ近づけたとも思う。 なのに何故か胸につかえるものがある。進展の早さに戸惑っているのか?いや むしろ遅かったくらいだ。彼女から見せてくれるというのだ。何の問題がある のか。別に自分をネタにしたやおい本見せられても大丈夫だ。そう思う。しか し・・・笹原は惠子の携帯に電話を入れた。 荻上もまた、笹原が自宅に着いたのとほぼ同時刻にアパートにたどり着いた。荷 物を降ろして、へたり込んで、ふーと一息つく。 (疲れた・・・。休みてえ・・・。ああ、でも部屋片付けなくてなんねなあ・・・) よろよろと疲れた体を奮い立たせて、旅行の荷物を片付け、部屋の掃除を始めた。 本だらけにしているので、少し掃除をさぼると埃だらけになる。 「明日だもんなあ・・・」 掃除しながら荻上はつぶやいた。そして思った。 急ぎすぎただろうか?そんな事は無い。意を決してメールを送った時、これ以 上先延ばしする事は自分の為にも笹原さんの為にもならないと覚悟を決めたで はないか。その決意に変わりは無い。でも・・・。 (どうなるんだろう・・・) 不安がよぎる。怖い。笹原さんがどんな反応をするか・・・。でも彼の気持ちに 応えて勇気を奮わなければならないと荻上は思った。そして携帯を開いて、返信 メールのメッセージを見つめた。 『明日ですね。わかりました。大丈夫です。』 『みんなには言わない方がいいですね?』 『時間は後でメールください』 荻上は明日午後一時にしたいと返信を送った。すべては明日・・・。 2.《わすれなぐさ》(勿忘草、忘れな草、Forget-Me-Not) 実の愛、記憶、私を 忘れないで 笹原は電車を乗り継ぎ、荻上のアパートに向かっていた。駅に降り立ち、以前訪 問した荻上のアパートまで歩いていった。歩きながら、昨日惠子との携帯での会 話を思い出していた。 恵『そうだよ・・・大体それが飲み会で聞いた話の大筋!兄貴、難しいよ、あの 女!あたしにゃ関係無いけど・・・』 笹『うるさいな!余計なお世話だ!』 と言って携帯を切った。 もちろん今日の事は惠子にも言っていない。ずるいとは思ったが、心の準備とい うか、不安を打ち消す為に惠子に詳細を聞かずにはいられなかったのだ。 (聞いて正解だったのか・・・聞かない方が良かったのか・・・) だが自分の胸中にわだかまっていた不安と焦燥の正体が分かりかけてはいた。 こんな事に意味があるんだろうか・・・。自分から言い出した事とはいえ、こ の不可思議な、そして異様な事態に戸惑いを感じていた。彼女の事は好きだっ たはずである。でも結局分かったのは自分が何も彼女の事を理解していなかっ たという事だった。 自分の心と言葉がうそ臭く感じられてきた。就職活動に行き詰まってた時に感 じた気持ちに似ていた。俺、何で彼女の事が好きだったんだっけ?コスプレの 衣装見て、可愛いって意識したから?愛してると言うにはあまりにも成り行き に流されて現実感が乏しかった。 そうこう考えているうちに、とうとう荻上のアパートの前に来た。笹原は心臓 の鼓動が高ぶるのを感じながら、チャイムを押した。 荻上はもうすぐ約束の時間が迫ってくるのにそわそわし始めた。まわりを見渡 し、散らかっているように見えないか気になった。衣装も気になる。おかしく ないか。以前と違って今日は大野先輩はいない。笹原と二人きり・・・。特別 派手で露出の多い服はさけた。でもパーカーとかの普段着では・・・。結局、 藍系のブラウスにいつも通りのジーンズを選んだ。 他人を拒絶し、女性らしさを否定していながら、こんな時に服装を気にする女 心を隠せない自分が嫌だった。でありながら煽情的な服装を避ける自意識過剰 ぶりもたまらなく嫌だった。鑑を見ながら、心がはずむ気持ちを認めるのが嫌 だった。 (これでいいのかな・・・本当に・・・・) あの時・・・笹原さんの事をずるいと言った。でも本当にずるいのは自分では無 いのか・・・。彼は自分の事を好きだと率直に言ってくれた。それなのにわたし は笹原さんが「それ」を見たら・・・と・・・試すようなまねを・・・。そして わたしは一言も・・・この期に及んで自分の気持ちを口にしていない!なんてい やらしい人間だろう。わたしはわたしの心が分からなくなった・・・。わたしは 本当に笹原さんの事が好きなんだろうか?夏コミでわたしに見せてくれたわたし を見守るあの笑顔が素敵だったから? チャイムが鳴る。 (とうとう来た・・・) はっとして荻上は玄関に向かった。 3. 《くちなし》(山梔子、梔子、Cape Jasmine) 洗練、清潔、沈黙、とてもうれ しい 笹「やっやあ・・・」 荻「どっどうぞ・・・」 笹「うっうん・・・お邪魔します・・・」 部屋に通された笹原は緊張した面持ちでそわそわとテーブルに座った。 笹「いつ来ても片付いてるよね・・・俺の部屋とは大違い!」 静寂の間を持たせようと、笹原はうわずった声でしゃべった。 荻「いえ・・・来客があるときだけですよ・・・普段は散らかしてて・・・」 笹「そっそう?」 荻「あっあの・・・今日はわざわざすみません・・・どうぞ、ジュースでいいで すか?何も無くてすみません・・・」 笹「いや!お構いなく!」 二人だけの気まずさをお互い意識しながら、沈黙の途切れが来るのを恐れて二人 は何げ無い会話を続けた。 荻「あっあの・・・それで・・・例の・・・」 荻上は顔を赤らめ、うつむきながら、スケッチブックを差し出した。 笹「あっ、それが例の・・・じゃあ・・・でもちょっと緊張するなー、はは」 笹原は荻上から『例の』スケッチを受け取り、めくり始めた。 しばらく二人に沈黙が続いた。 荻上はテーブルの隣で正座して、うつむきながら、ちらちらと笹原の表情を見て いる。 笹原は荻上のそうした視線を傍から感じながらも、表情を変えないでスケッチを 見ていた。ただ時々感嘆の声をあげた。 笹「へえー、俺の特徴とらえてるね。あっ斑目さんそっくり!」 笹「ほほー、なるほどねー」 気まずい間を紛らわすために、独り言のように言葉を発しながら、笹原はスケッ チを眺め続けた。 そして描写が過激な部分に差し掛かると、荻上は耐え切れず目をつぶってうつむ き、震えていた。 笹原はその震える表情を見て思った。 (本当に恥ずかしくてつらいんだろうな。自分の裸をさらけ出しているようなも んだもんな・・・) 笹「うん、見終わったよ」 と言い、笹原はスケッチブックを荻上に返した。 心の準備はしていたので、思ったほどショックや動揺は無かった。しかし緊張か らか、ひたいに汗がにじんでいた。 (気付かれたか?) 4. 《とけいそう》(時計草、Passion Flower) 聖なる愛、キリストの受難 荻「どうでしたか?無理しないでいいです。ウソは嫌です」 笹「・・・まあ・・・予想していた通りの感想かな・・・」 荻「というと・・・」 笹「まあ・・・似てるけど漫画にディフォルメされてるし・・・気持悪いという ほどでは無いね。俺ってこんなに凛々しく見えるんだ!はは!まあ、過激な描写 は巷に溢れているし、抵抗力や免疫もあるしね。ただ・・・面白いとか、興奮す るとかはしないし、よく分からないというのが正直な感想。でも事情を知らない 人が見れば確かに嫌かもね。」 荻「・・・でしょうね・・・。正直な感想、ありがとうございました。」 笹「・・・ねえ、こういう反応は分かりきってる事じゃないの?」 荻「え?」 笹「ずっとわだかまっていた事なんだけど・・・、あの・・・こういう知識の無 い中学の友達に見せた時の状況が、予備知識のある俺に見せて同じ反応になるな んて・・・ありえないよね。もちろん、中学以来、そういうのを俺以外に人に見 せた事無いと思うし・・・」 荻「そんな事はありません!もちろんアレ以来男の人はおろか、大学に入るまで 他人に見せた事はありませんよ!でも現に笹原さんだって、不快に感じたはずで す!表情見れば分かります!男の人には無理なんです!ましてや本人が描かれて いるなんて・・・。だから・・・彼は・・・」 荻上の表情が苦悩にゆがみ、自嘲する表情を見せた。 その表情に笹原は少しひるんだ。だがここで逃げてはいけない。そんな気がした。 笹「その過去はもう変えようが無いじゃない!そうやって過去を気にして生き続 けてもしょうがないよ!そんなに昔した事が悔やまれるんだったら、俺が一緒に 当事者に謝りに行ってもいいよ!荻上さんがそれで気がすむなら・・・。」 荻「・・・会ってくれるわけありませんし、会わせる顔もありません・・・いま だに懲りずに続けてるんですよ・・・やめられないんですよ・・・」 笹「だったらなおさら今が大事じゅない!俺は別に見ても平気だし・・・。そり ゃあ理解はできないけど・・・それを言ったら俺ら男の二次元萌えだって興味無 い人には理解できないものだと思うし・・・だから・・・」 荻上は泣いてかぶりを振って答えた。 荻「ちがうんです!そんなことじゃないんです!」 笹「違うって・・・?」 荻「わたしが本当に恐れているのは・・・わたしの妄想が・・・わたしの醜い妄 想を見て・・・わたしの心をおぞましいと思われる事が怖いんです!」 笹「そんな事・・・思ってなんか・・・」 荻「・・・そして・・・そして・・・何よりも!自分が悪いのに!本当は巻田君 を憎んでました!わたしを許さず消えた彼を!そしてわたしを裏切った友人も! そしてそれを許せない浅ましい身勝手な自分を誰よりも蔑み、憎んでました!わ たしはこういう人間なんです!」 5.《のいばら》(野茨 Rosa multiflora ) 花- 素朴なかわいらしさ 実- 無意識の美 荻上は顔を手で覆って、泣き崩れた。とてもでは無いが、笹原の顔を見ることはできなかった。 そして思った。自分自身認めようとしなかった心の真実に自分はたどり着いた。 こんな自分に愛される資格があるだろうか・・・。 荻「・・・だからこんな自分を消してしまおうと・・・飛び降りて・・・」 (言った・・・。もうだめだ。自分でまた台無しにした・・・。終わらせてしまった・・・。) そう思ったから、荻上は笹原の次の行動にとても驚いた。笹原は黙って荻上に静 かに寄り添い、荻上をそっと優しく抱しめ、離さなかった。 荻「えっ!?」 笹「もういいよ・・・何も言わなくていいから・・・一人でそんなに苦しまなく ていいから・・・だから・・・しばらくこうしていたい・・・」 荻上は笹原の腕のすきまから、笹原の顔を覗きこむと、泣いているのに気付いて、 驚いた。そしてうつむき、静かにそのままでいた・・・。 時間の感覚は無かった。まるでこの部屋の空間だけ別世界のような感覚だ。 静かな静寂が二人を包む。 (本当に小さいんだな・・・) 笹原は荻上を抱きすくめ、そのぬくもりを感じながら、そう思った。結局のところ、笹原自身にとって荻上がどんな存在であるか、笹原は理解した。 触れれば刺々(とげとげ)しく、こっちが傷つきかねない。でもその茨の奥に咲く花と実に大分以前から気付いていたのだ。今それを知った。 その花と実こそ自分がずっと求めていたものだった。自分も柔和な笑顔と愛想 の表情の奥に、心の澱(おり)をずっと溜めていた。時として自分を偽る事へ の後ろめたさ。この真っ直ぐで素朴な心情がどれほど自分の心を動かすか・・・。 ずっと前から気付いていたのだ・・・。 (彼女は俺の表であり裏だ。そして俺も彼女の裏であり表なんだ・・・) (大きくて、温かい・・・) 落ち着きを取り戻し、安堵の表情で静かに笹原にもたれかかりながら、荻上は 思った。後悔、怒り、憎しみ、恐怖、これらから解放されたわけではない。自 分の醜い心の面と向き合う事はこれからもあるだろう。 でもそれは誰でもあることで、少なくとも自分は一人でそれに向き合う事は無 い事を知った。そして笹原が自分にとってどういう存在であるかが重要であっ て、自分の妄想が笹原にとってどのようなものであるかが、重要な事ではない 事を知った。 6.《れんげそう》(蓮華草、Astragalu) あなたは幸福です、私の幸福、緩和す る、あなたが来てくださると私の苦しみがやわらぐ、感化 時は動き出した。 二人は急に「その」状況に気付いた。 笹「ごっごめん!なっなんか妄想はとめられないみたいで・・・」 荻「あっいえ・・・こちらこそ・・・何言ってんだろ・・・」 荻上は真っ赤になってあたふたと笹原から離れた。 笹「あっそうだ!お腹すいたね!外で散歩がてらに何か食べに行こうか!」 荻「そっそうですね!」 二人は外出した。そしてゆっくりと並んで歩いた・・・・。 荻「笹原さん・・・」 笹「ん?」 荻「故郷に蓮華草がきれいな草原があるんです。花盛りにいくとまるで薄青い雲 の上を歩くみたいなんです。いつか・・・一緒に見に行きませんか?」 笹「そうだね・・・。見てみたいね」 9月中旬の気候はまるで小春日和を思わせるような暖かさで、清々しい晴天はその 蒼さを深めていた。二人は穏やかな表情をしながら、黙って歩きつづけた。
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笹原 11 00 【投稿日 2005/12/19】 げんしけん24 笹原が学食に向かうと、まだ昼には早いので、学食の中は閑散としていた。 だから荻上の姿を見つけるのにそう時間はかからなかった。 笹「荻上さん!ずいぶん早いね!どうしたの?」 荻「あら、笹原さんこそどうしたんです?わたしは午前の予定の講義が休講 になったんで、遅めの朝食と早めの昼食を取りにきたんです。」 笹「俺も同じだよ。俺の場合は就職活動だけどね」 荻「大変ですね」 そう言いながら二人は同じテーブルで食事を取り始めた。 荻「いつもあの教授は勝手なんです!」 荻上は憤慨していた。 笹「まあ、俺の時からそういう人だったからねえ・・・」 あいかわらず、怒りや軽蔑、敵意を隠そうとしない。それで漫研でトラブル になったのに・・・難しい子だよな・・・と笹原は思っていた。 笹「午後からは部室に顔出すの?俺もヤボ用片付けてから、顔出すつもりだ けど・・・」 荻「ええ、そうですね、あいかわらず、大野先輩はコスプレの事しか頭にあ りませんけどね!そう、わたし・・・」 と言いかけて荻上は口をつぐんだ。 笹「どうしたの?何か相談したいことでも?大野さんの件は俺からも少し釘 をさしとくけど・・・」 荻「いえ、別に・・・」 時々、この子は不可解な行動や言動を取るな・・・。無意識の行動にも見え る。でも礼儀正しく素直なところも見せる。惠子もこんなだったら、妹萌え もできたかな?と笹原は内心で苦笑していた。 突然、荻上はそわそわし始めた。見ると向こうのテーブルに例の漫研女子が 数人固まって、こっちを見てクスクス笑っている。 荻「わたしこれで失礼します!」 笹「じゃあ、また後で・・・」 荻上は立ち去った。 (荻上さんは何を過剰に意識しているのだろう。不可解だ。サークルの先輩 と後輩が飯を一緒に食っても別に変じゃあるまい。漫研女子の下世話なかん ぐりでも気にしているのだろうか・・・。女子のそういう噂話などよくある ことではないか・・・。でも漫研の女子に一般教養で一緒になった子もいる。 無視はできない。声をかけるか・・・) 笹「やあ、久しぶり」 漫「ひさしぶり!仲いいわね!変わってるでしょ、あの子」 笹原は内心むっとした。そんなことは分かっている。だが彼女を何も知らな い他人からそんな事を言われると何故か腹が立った。 笹「おかげさまでうちじゃ仲良くやってるよ!」 とにっこりして答えた。表情と裏腹の強い皮肉の言葉に漫研女子も黙りこく った。 さて・・・見栄でヤボ用とは言ったものの時間がぽっかり空いてしまった。どうしたものか・・・と笹原は思いながら学食を後にした。
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配信者 このwikiを作った人。 2008年9月23日にニコニコ動画でゲーム実況を始める。 2009年5月頃、生放送を始める。 2010年1月頃、UstreamChecker1次に登録される。 そうやって活動中。 限界集落村長と名乗り、視聴者を村民と呼んだりする。
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17人いる! 【投稿日 2006/08/14】 ・・・いる!シリーズ 注:データ量の関係でニ分割しています 前作「11人いる!」のオリジナル設定等のまとめ ①今年の新1年生は、男子5人女子6人の計11人です (しかも9月にはスー&アンジェラも合流する予定) ②諸々の事情で卒業生たちは以前より顔を出すようになり、それもあって部室が手狭になったので、サークル棟の屋上にプレハブ製の部室を新設しました ③斑目は相変わらず部室に昼飯食いに来てますが、4月以降は外回りの仕事も手伝っている(その為に普通免許取りました)ので、昼休み以外の時間帯にも時々部室に来ます ④作業着姿でガリガリでメガネで甲高い声でテンションの高い喋り方なので、斑目は1年生女子からシゲさんと呼ばれています ⑤クッチーは去年の秋頃から空手を習っています ⑥諸々の事情で、クッチーは児童文学研究会にも掛け持ちで入会してます 児文研会長(いろいろあって、クッチーは「お師匠様」と崇拝してます)の勧めにより、普段は大人しくなりましたが、イベントになると必要以上に大騒ぎします ⑦荻上会長は巷談社主催の春夏秋冬賞という漫画コンクールに応募して審査員特別賞を獲得し、それがきっかけで今年の秋に「月刊デイアフター」で新連載開始の予定です (ちなみに当初新部室を建てる資金には、この賞の賞金を充てる積りでしたが、いろいろあって初代会長が出してくれました) 神田美智子 キャラクターモデル 「かってに改蔵」の神崎美智子 元隠れオタ。 高校時代は周囲にはオタ趣味を隠し、オタであることがバレそうになると走って逃げていた、 言わば初期型笹原と初期型荻上さんの合体キャラ。 両親と兄1人の4人家族だが、家族全員がオタ (しかも全員同人誌を作る側のオタで、1人1台ずつコピー機を所有している)なので、 幼少の頃よりコミフェスに参加していた。 中学時代からは売る方でも参加している。 ノーマルなカップリング中心だが、最近ヤオイも始める。 入学当初は普通の大学生活をする積もりだったが、 オタスメルに引き寄せられてついフラフラと現視研の部室に乱入してしまい (たまたま鍵を閉め忘れたまま、全員席を外していた)本能的にエロ同人誌を発見。 ついつい読み耽っているところ、トイレから戻った荻上会長とファーストコンタクト。 「違います!私オタクじゃありません!コーディネイターが遺伝子操作された新人類だなんて、全く知りません!」 訊かれもしてないのにオタ知識を披露するセルフ語るに落ちる状態&赤面で逃走するセルフドッキリ状態となる。 そのことがきっかけとなって、荻上会長に説得されて入会する。 国松千里 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の国枝千里 元々は特撮オタで、それも50年代から70年代にかけての、東宝・円谷プロのミニチュア・着ぐるみ・光学合成主体の非CG特撮命の遅れてきた世代。 (でも今の特撮も、文句言いつつもちゃんと見ている) 将来は脚本家志望だが、その前に特撮撮影現場でスタッフとして働きたいと思っている。 高校からアニメにも興味を持ち始めてアニオタ道に入る。 だがいかんせん積み重ねが無いので、アニオタにとっての一般教養がところどころ足りない修行中の身。 垂れ目ながら大きな瞳のロリ顔美少女。 身長も150センチと小柄なので、見た目は中学生ぐらいに見える。 豪田蛇衣子 キャラクターモデル 「ドラえもん」の剛田ジャイ子 腐女子四天王(クッチーが命名した、新1年生の腐女子4人組の通称)のリーダー格。 小学生の頃から少女漫画を描いていて、投稿作品が何度か賞を取っている。 大柄で肥満体のゴッグのような体格。 だがその体格に似合わず、描く漫画は王子様や貴族が活躍する、少々古臭いが乙女チックな作風。 多少レズっ気があり、荻上会長を時と場所を選ばずハグする。 腐女子四天王は、某巨大掲示板の801板のオフ会で知り合って結成された。 (出身校は全員バラバラ) 彼女たちが高校3年の時、当時2年生の荻上会長は笹原の勧めで春夏秋冬賞に応募して審査員特別賞を獲得し、受賞作品は「月刊デイアフター」に掲載された。 中学の時の「あの一件」を元に描かれたその作品は、一部の腐女子の間で熱狂的に支持された。 四天王のメンバーもまた、その作品がきっかけで荻上会長を崇拝するようになり、彼女を追って椎応に入学した。 なおこの4人は、荻上会長を「荻様」と呼称する。 沢田彩 キャラクターモデル 「彼氏彼女の事情」の沢田亜弥 四天王の1人。 元々はジュニア小説を書いていた、ショートカットで色白の文芸少女。 ある時友だちにBL小説を見せられてヤオイに目覚め、ヤオイラノベ道に踏み入る。 元ネタを知る為に漫画も読み出し(それ以前はあまり漫画は読んでなかった)自分で絵も描きたくなってヤオイ漫画道に入る。 絵は初心者レベルだが、ストーリーの構成力や台詞回しに秀でる。 元々書いていた小説にはSF系のものが多く、そのせいかロボットアニメやファンタジー系アニメを題材に選ぶことが多い。 自室でしか吸わないが、実は1年生唯一の愛煙家。 台場晴海 キャラクターモデル 「さよなら絶望先生」の藤吉晴美 腐女子属性はむしろリーダーより濃い、四天王の参謀格。 男子が何か咥えていると、たちまちワープする。 イケメン君は彼女の前では、うっかりコーラも飲めない。 見た目秀才っぽい、スレンダーなメガネっ子。 巴マリア キャラクターモデル 「おおきく振りかぶって」の百枝まりあ 四天王の1人。 元ソフトボール部の体育会系腐女子。 部活の傍らヤオイを描いていた変り種。 高校球児フェチで、男臭く汗臭いスポーツ漫画や格闘漫画をネタにすることが多い。 蛇衣子ほどの上背は無いが、肩幅が広く大野さん並みの巨乳。 顔も目鼻立ちのはっきりしたなかなかの美人で、長い黒髪を三つ編みにしてることが多い。 やはり少しレズっ気があり、荻ハグ常習犯。 夏ミカンを握り潰せるほどの握力の持ち主。 日垣剛 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の曲垣剛 元野球少年でポジションは投手。 と言っても、毎年予選一回戦で帰ってくる弱小校で、彼自身もさほどの戦跡は残していない。 (まあそれでも、素人には打てない程度の剛速球と変化球は投げられるが) 肩を壊して休んでいた時にアニメや漫画の面白さに目覚め、オタ道に入る。 身長185センチの、クッチーの後継ぎ的肉体派オタ。 でも気は弱く、温厚で大人しい性格はむしろ初期笹原に近い。 実家は華道の家元で、本人も華道有段者。 有吉一郎 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の有島 高校時代は漫研。 腕より理論が先行するタイプ(もちろんそれなりに絵は描けるが)なので既存の漫研には馴染めないと考えて、初心者や非生産型のオタの集う現視研を選んだ、言わば絵心のある斑目的キャラ。 いかにも理屈先行型オタという感じの、細面のメガネ君。 人前でアジ演説風に喋るのが好きで、会長不在時のミーティングでは議長的役割をすることが多い。 伊藤とは同じ高校出身でよく一緒にいるので、それを腐女子四天王にネタにされている。 伊藤勝典 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の伊東 高校時代は文芸部。 脚本家志望で、もともとはアニメも実写ドラマも区別なく見る、一般人とオタクの境界線上のポジションに居たが、アニメの方が自由度が高いと考えて次第にアニメ中心にシフトしていく。 猫顔で、動作も猫に似ていて、喋る時も語尾に「ニャー」と付ける。 浅田寿克 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の浅野 高校時代は写真部。 神経質そうなメガネ君。 1年生会員たちの会話ではツッコミ役になりがち。 岸野と一緒にいることが多い為、有吉×伊藤同様、腐女子四天王にネタにされている。 岸野有洋 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の岸田 浅田と同じ高校出身で、部活も写真部だった。 リーゼント風のひさしの目立つ髪型以外に取り立てて特徴が無く、あまり目立たない。 ↓ここから本編↓ 「なすてわたすはここに居る!」 荻上会長の雄叫びが轟く。 筆頭のまま被れるせいか、ソンブレロのような大きな麦藁帽子を被っている。 服装の方はと見れば、地味なワンピースの水着の上からパーカーを羽織っている。 「それ今日7回目ですよ」 すかさずにこやかにツッコミを入れる大野さん。 大野さんもまた同様の格好だ。 そして2人の眼前には、水平線が広がっていた。 夏休みに入ったばかりのある日、現視研の一行は海水浴にやって来た。 場所は3年前に訪れた、あの海水浴場であった。 参加者は新1年生11人、荻上会長、大野さん、クッチー、恵子、そして斑目と田中というメンバーだった。 この日は運悪く、担当している原稿の〆切日だったので、笹原は来れなかった。 春日部さんも店が開店したばかりで忙しいし、高坂と久我山は相変わらず忙しいので、今回は参加出来なかった。 ちなみに大野さんはある旅行代理店に就職が決まり、クッチーは未定であった。 大丈夫か、クッチー? 朽木「就職活動にも合間に息抜きが必要だにょー」 荻上「朽木先輩の場合、息抜きの合間に就職活動やってません?」 朽木「荻チンナイスツッコミだにょー」 荻上「皮肉が通じねえ…」 503 :「17人いる!」 その2 :2006/08/14(月) 01 47 30 ID ??? 今年の夏コミで、現視研は久々にサークル参加に当選した。 ちなみに今回荻上会長は、現視研の作品にはタッチしない積りだ。 秋から「月刊デイアフター」で新連載を開始して本格的に漫画家デビューするので、この時期は他の原稿にまで手を出す余裕は無い。 幸い今年の1年生には絵描きが6人も居るから、全面的に任せることにした。 描き手は有吉以外女子ばかりなので、当然のごとく内容は女性向けとなった。 だがそこからが問題だった。 腐女子にとって同人誌創作の1番のキモは、題材よりもむしろカップリングだ。 カップルの構成メンバーが同じでも、A×BとB×Aでは内容が全然違ってくる。 腐女子にとってヤオイのカップリングとは、己の全人格を賭けた大問題なのだ。 それゆえ1度こじれ出すと互いに一歩も引かず、泥沼の膠着状態となる。 現視研でもそれは例外では無かった。 7月に入ってからの部室は、毎日がケンケンガクガクの議論の連続だった。 恵子「お前らさあ、とりあえず海水浴でも行って頭冷やせよ」 いい加減ヤオイカップリング論争にウンザリした恵子がこう切り出し、議論が膠着して煮詰まっていた会員たちも一時休戦とばかりにそれに賛成した。 いつの間にか恵子は、某ラノベ原作のアニメのイベント好きのヒロインのように、現視研をイベントに導くポジションになっていた。 恵子「いいでしょ、姉さん?」 会長という立場を考慮してか、恵子はこの頃には荻上会長のことを「お姉ちゃん」ではなく「姉さん」と呼ぶようになっていた。 ここ数日間の部室内の、険悪な空気を憂慮していた荻上会長は、この案に乗ることにした。 荻上「いい気分転換になりそうだし、行きましょうか」 実は荻上会長は、後述する「ある理由」の為に海水浴には乗り気では無かったのだが、今の彼女はそんな個人的な理由で反対するほど子供では無かった。 (ちなみに冒頭の叫びは、斑目に「会長はこれ言うのがお約束だから」と唆されたから) 即座に日取りと場所が決まり、続いて「第2回海水浴に何持って行く会議」が開かれた。 前述のラノベヒロインの影響か、今年の1年生たちは意外とイベント好きで、様々な提案が出た。 「やっぱスイカ割りでしょう」 「うち、ビーチバレーの道具一式あるけど」 「お前確か、ゴムボート持ってたよな?」 「あそこの海水浴場って、バーベキューできましたっけ?」 「夏はやっぱり花火でしょう」等々。 結局その殆どが採用された。 (不採用になったのは、「それをやるような時間までは居ない」ということで花火とキャンプファイヤー、そして「運転する人だけが飲めないのも気の毒」ということで酒類ぐらいだ) 書記として「持って行くもの」をホワイトボードに書き出していた神田が呟いた。 「これ全部持って電車乗るんですか?」 ボードいっぱいに書かれたグッズの数々をよく見ると、確かに凄い荷物になりそうだ。 そこで誰か車を出せるかという話になった。 現役会員は恵子を入れて13人、4年生とOBが何人か来ることを考慮すると、出来れば4台欲しい。 荻上会長の知る限りでは、現視研で普通免許を持ってるのは全員OBだ。 恵子「試しに訊いてみようよ。誰か免許持ってる?」 意外なことに新1年生たちには、入学して4ヶ月足らずのこの時期に、普通免許を取得している者が6人も居た。 彼らは皆、大学合格の直後から自動車学校に通っていたそうだ。 彼らの親は皆、むしろ本人以上に免許取得に積極的だった。 大学に入ってからは、いろいろ資格取る為の勉強するだろうから、普通免許ぐらいは早目に取っておけということらしい。 就職難の時代ならではの現象である。 6人とも実家に車があって多分貸し出せると言う。 では誰の車で行くかという話になり、先ず伊藤が名乗りを上げた。 「僕は泳げないから泳がないニャー。だから疲れないから帰りも安全運転だニャー」 彼の発言によって免許持ちで泳げない人を募った結果、先ず有吉、沢田、そして伊藤の3人が車を出すことになった。 残りの1台を提供したのは、傍らで昼飯を食っていた斑目だった。 「俺も泳げないし、その日は休みだから行くわ。それにこういう時にでも使わないと、車もったないしな」 斑目の車は、社長からもらった中古の軽だった。 何でも今期はボーナスが無かったので、その代わりということらしい。 もらったはいいが、彼は日々の生活に車を使う機会は少なかった。 相変わらず徒歩で通勤していたし、仕事中使う車は会社のものだ。 (最初は人手不足で外回りの仕事を手伝っていたが、今では外回りの仕事の方がメインになりつつあった) 車が要るような大規模な買い物は滅多にしないし、助手席に乗せる彼女もいない。 かと言って売ってしまうのも悪い気がする上に、どのみち古過ぎて売れそうになかった。 こうして今回現視研の面々は、4台の車に分乗してやって来た。 駐車場に車を停め、男子会員が中心になって場所取りと荷物の運び出しが始まった。 先ずビニールシートで場所を確保する。 よく見るとそれは、大きな一枚のブルーシートだった。 それを畳んで横に細長い形に陣取る。 普通のビニールシートを3枚ぐらい並べた程度の面積だ。 斑目「まるで殺人事件の現場だな」 次にシートの中央部が日陰になるように、アウトドア用の屋根だけのテントを設置する。 続いてシートの端にパラソルを広げる。 そして荷物の大半をテント下に運び入れる。 パラソルの反対側の、シートの端っこから3分の1程度のスペースは、日焼け用にわざと日陰から外してある。 妙に手馴れたセッティングぶりだ。 後で聞いたところによると、場所取り関連のグッズは浅田と岸野が高校の写真部から借りてきたそうだ。 その写真部は年に何度か撮影旅行や合宿を行なっていて、この手のグッズには事欠かないし、2人もその取り扱いに熟練しているのだという。 運び終わった荷物の数々を見て、荻上会長は慄然とする。 『これ全部、今日1日でやるの?』 表で見た時にはピンと来なかったが、改めて並べてみると凄い量だ。 スイカ、金属バット(スイカ割りの棒代わりだそうだ)、ビーチバレーのボールとネット、浮き輪、ゴムボート、エアマット、アウトドア用の大型コンロ、クーラーボックスに入った食材、その他の調理器具、そして十数個のサッカーボール、等々… 『なしてサッカーボールが?』 不意に肩を叩かれて顔を上げる。 大野「どうしたんですか、荻上さん?笹原さん来なくて寂しいんですか?」 荻上「(赤面)そっ、そんなんじゃねっす!」 本音を言えば寂しいことは寂しい。 だが笹原の盆休みと夏コミの日程が重なり、少なくとも夏コミでは一緒だから我慢出来る。 それに平日休みの笹原と、何とか時間をやりくりして会う生活を繰り返す内に、何日か会えないシチュエーションにも耐性が付いてきた。 それに今の自分は、会員たちを監督し見守る立場だ。 (とは言っても、こんな遊びの場であれこれ指図する積もりは無いが) 上に立っている者が、下ほったらかしでイチャイチャしてる訳には行かない。 こういうことに関しては、相変わらず荻上会長は生真面目だった。 大野「(笑って)分かってますよ。(荷物を見て)それにしても凄い荷物ですね」 荻上「今日じゅうにこれ全部やれっかなあ…」 大野「大丈夫ですよ。まだお昼には時間あるし」 荷物が運び終わり、1度全員集合する。 恵子が新調したビキニを1年生たちに見せびらかしている。 恵子「いいっしょ、これ?春日部姉さんの店でもらったんだ!」 本当にもらったのか、春日部さんの方はあくまでもツケで売った積もりなのかは定かではない。 あとの女子会員たちは全員無難なワンピースだ。 「荻様かわいい~!!」 例によって巴と豪田が荻ハグすべくダブルで突進して来る。 だがさすがに慣れたらしく、軽やかなフットワークでかわす荻上会長。 結果巴と豪田は誤爆して、互いにハグしあう破目になる。 すぐに離れるかと思われたが、2人とも体がきしむ音がしそうなほど強く抱き合っている。 巴・豪田「こっ、これはこれで、なかなか…」 恵子「やめんか!」 2人をどついて止める恵子。 一方男子会員たちは、少し赤くなりつつも女子会員たちを見つめていた。 だが巴に視線を向けた彼らの目には、軽い失望の色があった。 その空気に気付いた豪田がツッコむ。 豪田「なあに、そんなにあたしのビキニが見たかったの?」 男子一同『んなわけねえだろ!』 まあ確かに、水中用モビルスーツみたいな豪田がビキニを着ても、ボンレスハムみたいになるだけだ。 スレンダーな台場、神田、国松、沢田はともかく、巴の巨乳はぜひビキニで拝みたかった、というのが男子たちの本音であった。 地味な競泳用の水着の巴は妙にソリッドな感じがして、巨乳というより大胸筋が丸く盛り上がっているみたいで、あまり色気は感じられなかった。 もっとも巴に比べれば貧弱な体格の1年女子たちも、みんなそれなりに顔立ちは整っていて全体的にスレンダーなので、出るべきとこが不足気味でもなかなか目の保養になる。 一方もう1人の巨乳、大野さんも相変わらず無難なワンピースの上、上に羽織ったシャツを脱ごうともしない。 荻上「コスプレの時は、あんなに露出してるのに…」 コスプレイヤーとしての大野さんと、個人としての大野さんとには、羞恥心にえらく差があることは長年の付き合いで分かっている。 だがそれにしても、大柄で巨乳の大野さんが1年生たちよりも恥ずかしそうにしてる図は、何とも違和感があった。 昼食と帰りの集合時間を決め、後は自由行動として解散する。 結局ブルーシートには、荻上会長、大野さん、田中、沢田、伊藤、有吉が残った。 他のメンバーはさっそく泳ぎに出かける。 伊藤と有吉は互いの背中にオイルを塗り合い、さっそくシートの日なたの部分で寝転ぶ。 荻上会長と沢田は、そんな2人を見て一瞬軽くワープしつつも、テント下で自分の体に日焼け止めを塗っていた。 大野「荻上さんは泳がないんですか?」 荻上「私、皮膚が紫外線に弱くて、軽く焼いてもすぐ真っ赤っかになっちゃうんで、こういうとこではあまり長いこと日なたに出れないんです」 それは本当だった。 荻上会長は3歳の時、家族で海水浴に行ったことがあった。 他の地方に比べて日差しの弱い東北地方の海水浴場で、家族と一緒に普通に海水浴しただけなのに、その日の晩の風呂や布団の中でのたうち回り、その後何日か皮膚科に通う破目になった。 それ以来今日まで、海水浴というものに行ったことが無かった。 家族のレジャーのメニューからは自然消滅し、友だちに誘われても断った。 プールでの水泳の授業すら、念の為に日差しの強い日には見学する徹底ぶりだ。 ちなみに医師の診断によると、どうも皮膚が神経過敏気味で極端に敏感らしいとのことだった。 だから笹原との初めての時も、そりゃあもう… 話を海水浴場に戻そう。 沢田「荻様も太陽ダメなんですか?」 荻上「沢田さんもそうなの?」 沢田「私の場合は、あまり長いこと日に当たってると立ちくらみするんです。ここ数年、夏休みはずっと部屋にこもって原稿書いてましたから」 田中「まるでドラキュラだな」 大野「それにしても…」 ブルーシートの上と海の方を交互に見る大野さん。 大野「3年前ここに来た時って、まともに泳いでたの3人ぐらいでしたよね」 田中「ああ、確か春日部さんと高坂君、それに恵子ちゃんか。あと、笹原が最後にちょっとだけ泳いでたかな」 荻上「で、あとの方は何をなさってたんですか?」 田中「パラソルの下でガンダムしりとりやって、ちょっとだけ水浴び。俺と大野さんは砂の城作り」 荻上・沢田「海水浴場でガンダムしりとり…(汗)」 田中「それに比べて、今年の1年たちは元気だな、8人も泳ぎに出てるんだから。(大野さんに)今回はどうしよ?」 大野「昼バーベキューやるから、先に準備しときましょう」 結局大野・田中コンビは昼御飯の用意を始める。 沢田が手伝おうとしたが荻上会長はそれを止め、2人に軽く会釈しつつ見送った。 荻上「あのお2人が何かやってらっしゃる時は、頼まれない限り手伝わない方がいいわよ」 楽しそうに笑う2人を見て納得する沢田。 沢田「そうですね、何かお邪魔しちゃ悪いみたいですもんね」 荻上会長を見る沢田の目付きが、不意に妖しいものに変わった。 沢田「ところで荻様、(日焼け止めを持って)お背中の方は私に塗らせて下さい。ささ、うつぶせになって下さい」 荻上「あっそう…そんじゃお願い」 とまどいつつも、うつぶせになる荻上会長。 その白い背中を、沢田の手が妖しく這い回る。 日焼け止めを塗るというより、愛撫しているような手付きだ。 荻上「ちょっ、ちょっと沢田さん!手付きが変!」 沢田「荻様って肌きれい。素敵!」 いつの間にか紅潮して息が荒くなっている沢田、思わず覆い被さる。 荻上「(最大赤面)ひへっ!?」 沢田「荻様~!」 不意に荻上会長の背中から負荷が消えた。 恵子が沢田の耳をつまんで引っ張り上げたのだ。 沢田「痛たたたたたたた…」 恵子「(耳から手を放し)ったく、レズっ気あるのは蛇衣子とマリアだけだと思ってたのに、お前もかよ!」 沢田「申し訳ありません。荻様肌きれいだからつい…」 恵子「頭冷やしがてら、ジュースでも買って来い!」 沢田「はーい」 麦藁帽子を被って、沢田はテントから出て歩き出した。 恵子「ったく。(シートに腰下ろして寝転び)あー疲れた、もう泳ぐのはいいわ」 荻上「もうそんなに泳いだんですか?」 みんなで海に入って行ってから、まだ30分も経ってない。 恵子「あいつらのペースでやってたら死んじゃうよ。ノンストップでガンガン泳いで沖まで行っちまうんだもん。これは水泳の授業かっつうの」 荻上「へえ、そんなに…」 恵子「オタクなんて運動音痴ばっかしと思ってたのに…」 どうやら泳ぎ出すまで、野球出身の日垣と、ソフト出身の巴を忘れていたようだ。 荻上「11人も居るんですよ、1年生。そりゃいろんな人が居ますよ」 恵子「そりゃそうだわな。さて、あたしも焼くか」 日なたに出てる方のシートに移動し、伊藤の隣に寝転ぶ恵子。 たじろぐ伊藤。 トイレにでも行ったのか、有吉は席を外していた。 恵子「伊藤くーん」 伊藤「ニャッ?何でしょう?」 恵子「(うつぶせになってビキニの紐を外し)オイル塗って」 伊藤「(赤面し)ニャニャニャ?!」 恵子「つべこべ言わずに塗る!」 伊藤「かしこまりましたニャー」 女性の背中にオイルを塗るのは初めてらしく、赤面しつつ怖々した手付きで塗る伊藤。 恵子「ちょっと、くすぐったい(笑)」 そこへ戻ってきた有吉、2人の様子を見て硬直している。 有吉「伊藤君…前々から怪しいとは思ってたけど…」 こける一同。 荻上・沢田「(ハモって)怪しいんだ…」 実はこれ以前から、恵子は何かと伊藤をこき使うことが多かった。 もちろん恵子は特別彼を意識している訳ではなく、居れば1年生なら誰でも(いや厳密にはクッチーや斑目すら平気で)こき使っていたが、恵子と目が合うとビクッとする猫的な動作ゆえか、伊藤が頼まれる確率は高かった。 伊藤「ごっ、誤解だニャ!」 恵子「ちっ、ちげーよ!そういうんじゃねえから!」 有吉「邪魔しちゃ悪いから、僕は席外すね」 立ち去りかける有吉。 伊藤「待って有吉君、誤解だって!」 追いかけて引き止める伊藤。 恵子「お前らなあ…」 立ち上がりかける恵子、うっかりブラの紐を解いたままなのを忘れて一瞬ポロリ。 恵子「おっといけねえ!(ブラを直す)ん?」 2人はポロリを見てしまって、赤面したまま気絶していた。 恵子「あーあ、しょーがねーなー。童貞君にはチト刺激が強過ぎたか」 その時ふと背後に嫌な視線を感じ、恵子は振り返る。 そこにはジュースを買って帰ってきた沢田が、これまた赤面していた。 沢田「有吉君が、伊藤君を恵子先輩に盗られたと嫉妬して…ハアハア」 恵子「違うっつーの!彩、落ち着け!姉さん、こいつ何とかして!」 だが恵子の呼びかけも空しく、荻上会長の意識もまた何光年か彼方に向かって、亜空間を超光速で移動中だった。 恵子「あちゃー姉さんもワープ中かよ…(近付いて筆毛を激しくシビビビし)こら筆!目を覚ませ!戻って来い!」 荻上「はっ!ここは誰?わたすはどこ?」 恵子「ったく、腐女子ってやつぁ面倒見切れねえなあ…」 いつの間にか恵子は、かつての春日部さんのように、現視研のオタ常識と一般常識との橋渡し的な役割を引き受ける破目になっていた。 正気を取り直した荻上会長は、テントを離れて各人の動向を見に出かけることにした。 冒頭のシーンで被っていた、大きな麦藁帽子を被り、パーカーを羽織る。 とりあえず有吉の誤解は解け、恵子たちは再び日光浴に精を出し、沢田もパラソルの下で寝ていた。 そこへ浅田、岸野、日垣、国松、神田、台場の6人が戻って来た。 全員えらく疲れてる様子だ。 17人いる!(後編)
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空の下、大切な場所 【投稿日 2006/05/10~11】 カテゴリー-斑目せつねえ (斑目のSS「さくら」の続編。斑目の話。) 5月の初め。空は青く青く透き通り、辺りは爽やかな春の日差しに包まれている。 …痛いほどに、明るい日光が自分の心にまで差し込んでくる。 そのためだろうか。見ないようにしていた生傷まで鮮明に見えてくるのは。 もう幾度めかのため息をつく。 どうしたら、この痛みから抜け出せるのか。 何故これほどまでに痛みから解放されないのか。 あれからもう1ヶ月はたっているのに。 …いや、4年という月日を忘れるのには、1ヶ月では全然足りないということか。 卒業式の日から、あの思い出から抜け出せない。 あの花のような笑顔を忘れられない。 思い出すたびに、息苦しくなる。 なぜだろう?昔は、あの人の顔を思い出すだけで楽しい気分になれたのに。 今の感情を一言で言うと、不完全燃焼、だった。 終われなかった思いがくすぶって、黒い煙をいつまでも吐きつづけている。 まっすぐ刺すようだった悲しみが、いつの間にか鈍い痛みを残し続けている。 暗く深い水の中で、息ができない。ぎりぎりまで息ができない。 ふっ、と苦しみが和らいだかと思うと、またすぐに引き戻される。 ただ、そんな日々。 いつの間にこんなものを背負い込んでいたのだろう。 大学の校門をくぐる。 …そう、俺は未だにここに通い続けている。 階段のすみに、向こうのベンチの影に、あの人の幻影を探す自分がいる。 こんな所にいるはずがないのに。 覚悟はしていたはずだった。もう、「安心」を得られない覚悟を。 この体中の力がなくなっていくような喪失感を、頭ではイメージできていたはずだった。 少し、覚悟が足りなかっただけの話だ。 斑目は部室のドアを叩いた。 奥から、少し低い女性の声で「どうぞ」と聞こえた。 ドアを開ける。そこには荻上さんがいた。 荻「あ、ども…」 斑「こんちは」 斑目はいつもの笑顔で答える。 (…大丈夫、ちゃんと笑えてるはずだ) 荻「あ、すいません片付けますね」 部室のテーブルには、ベタ入れした原稿が散乱している。乾かしていたのだろう。独特の墨の匂い。 斑「悪いね」 荻上さんが原稿をまとめるのを見ていた。手伝おうと思うのに、体が動かない。力が入らない。 荻「どうぞ」 斑「ん、アリガト」 斑目はようやく席に座る。 最近荻上さんと部室で会うことが多い。荻上さんはたいてい原稿をかいているか、ネーム作業をしている。 斑「また新しいやつ?」 荻「ええ、今回は投稿用なので、801ではないんですけど」 斑「フーン、できたら見せてくれな」 荻「ま、まだ駄目です!もう少し自信がついてから…」 荻上さんは慌てて言う。少し顔が赤くなる。 斑「ん、またいつでも、荻上さんのタイミングで」 荻上さんは乾いた原稿をまとめると、またすぐ描きかけの原稿に向かった。 よく飽きないなと感心する。 たまに、話しかけても答えないときがある。ものすごく集中しているときだ。 …どうしようかなと思ったが、話しかけることにした。 斑「今描いてるのって、801じゃないんだよね?どんな内容?」 801のときは、内容まで聞かない。原作は何かだけ聞いたりはするが。 荻「あ…少女漫画です」 斑目はコンビニで買ってきた昼飯を広げた。今日はサンドイッチだ。 斑「へえ、荻上さん少女漫画描くんかー」 荻「一度描いてみようと思って。笹原さんに、私の絵は少女漫画向きじゃないかって言われたんで」 斑「笹原、元気?最近忙しいって言ってたけど」 荻「ちょっと疲れ気味ですね…ストレスたまってるみたいです。最近イライラしてて」 斑「そうなん?」 荻「…ええ。今まではこっちが甘えてる状態だったのに、最近は逆です」 荻上さんは少し苦笑した。 付き合い始めのころは、恥ずかしがってこんな話しなかったのに、今ではすごく自然に笹原との話をする。 (可愛くなったよなー荻上さん…。入部したときとはえらい違いだ…。) 『オタクが嫌いな荻上です!』 最初の挨拶を思い出す。あのときの周り全てが敵という感じの、挑むようなあの目つき。 (…そういえば、春日部さんもある意味そんな感じだったな) 初めて部室に春日部さんが来たときのことを思い出した。 高坂が初めて部室見学に来たときに、一緒についてきたのだ。 ……………… 高「こんにちは。僕、高坂といいます。こちらのサークル見学したいんですけど、いいですか?」 高坂ははきはきと喋った。 そのとき初代会長は席をはずしていた。 斑「お、見学!?ようやく来たな!」 田「はは。このまま来ないかと思ったよ」 久「ぜ、ぜんぜん勧誘してなかったからなー。やる気なかったからなー」 斑「お前もな!」 田「…ん?そっちの人は?その人も見学?」 高坂の後ろから、仏頂面でくっついてきた女がいた。 高坂の服装と似ていた。黒いジャケットに赤いネクタイをしている。化粧が濃い。 その女が開口一番にいった言葉。 咲「オタクはだまってろ」 すごむような目つきでそう言った。まるでヤンキーだ。 思わず固まる一同をよそに、その女は高坂に甘えるようにこう言った。 咲「ねーコーサカぁ、天文研にしとこうよ!あそこ、夏は合宿あるらしいよ」 高「うーん、そうだね…。でも今はこのサークル見学してからね」 咲「じゃ、このサークル見学したら、あとで行こうよ。」 高「そうだねー…。あの、すいません。ここはどんな活動されてるんですか?」 高坂はその女の提案をやんわり流し、自分の聞きたいことを聞き始めた。 斑「そーね。うちは現代視覚文化研究会つって、漫画からアニメから、果ては同人誌から、なんでも研究するサークルなのです!!」 田「ま、なんでもありってことだ」 斑「研究内容は、その都度積極的に会議で話し合われ、不定期に「メバエタメ」という雑誌に編集されマス! あ、今は俺が編集してんだけど」 田「ま、てきとーにくっちゃべって、気がむいたら本にしてるんだ、こいつが」 斑「おーーーい田中、さっきからツッコミがキビしいぞーー?」 田「ああ、気にすんな。こいつ、演説好きなんだ。俺の言ったことでだいたい合ってるから。」 高「あはははは」 高坂は楽しそうに笑った。 咲「…なに、その内容。ただの雑談?サークルでする必要あんの?」 その女はずばりと言った。再び固まる空気。 (…この女、痛いところを…) 最近、アニ研の近藤にも似たようなこと言われた。 その時は口八丁で煙に巻いてきたが、本当はちょっと、気にしていた。 (………でもなあ。田中も久我山も、あんまりやる気ないしなあ…。) それを、いきなりさっき見学についてきたばかりの女に指摘され、ちょっとムッときた。 斑「あのさー君、さっきから何なの?興味ないなら帰れば?」 田「おーい、そういうこと言うな」 斑「こっちの『コーサカ』君は興味あるんだし。君、オタクじゃないんでしょ? 君とサークルの内容について話し合いする必要はないと思いますがネ?」 咲「ああん?喧嘩売ってんのか」 再び睨まれ、ちょっと怯むが、ここで引いたらオタクがすたる。 斑「そっちが先に売ってんだろ。こっちは別に迷惑かけてないんだから、一般人は口出し無用!自分の星にカエレ!」 田「おい…」 田中が制した。ちょっと言い過ぎたかと思ったが、生意気な一般人には、こんくらい言っといたほうがいいのだ。 棲み分けのために。これでこの女も来なくなるだろう。 するとその女はつかつかとこっちに向かってきた。 お、やるのか、と身構える前にいきなり右ストレートが自分の顔面に炸裂した。 「!!」 思わずよろける。一瞬だけ頭が真っ白になる。 そんなに思ったほど痛くなかったが、ついよろけてしまったのがショックだった。 斑「…ってーな、何しやがる!」 咲「だからオタクは駄目なんだよ」 春日部さんは毅然とした態度で言った。 …そのときは、春日部さんの言葉の意味がよく分かってなかった。そのときは。 (あ、「親父にもぶたれたこと(ryって、言うの忘れた………)とか思っていた。 ……………………… 今となっては、懐かしい。自分の未熟さとか、春日部さんの攻撃性とか、そういうイタい面も含めて。 思い出して、少し可笑しくなる。同時に、心がちくりとする。 そんな時代もあったのだ。 斑「そう言えば、笹原には漫画見せてるの?」 荻「ええ。…やっぱり、編集者ですから、自信がないのでも見てもらったほうがいいかなって。 というか、笹原さんがしょっちゅう見せろって急かすので…。」 荻上さんは笑う。 斑「フーン、でもどうなん?あいつちゃんと評価してくれる?」 荻「ええ、笹原さんけっこう厳しいんですよ」 斑「へー、あいつ意外と言うからね」 荻「前は褒めてくれたんですけど、最近は仕事疲れでイライラするせいか、酷評されますね。 あんまりストレートなんで、腹立つこともあります」 斑「腹立つ?荻上さんが?」 最近の穏やかな荻上さんを見ていると、腹を立てているところが想像できない。 荻「ええ。あんまり腹立ったんで、こう言ってしまったんです。『笹原さんって見る目あるんですか?』…って。」 斑「………………(汗)」 荻「そうしたら笹原さんにこう言われました。 『荻上さんこそ、本当にこの漫画面白いと思って描いてるの?だとしたらすごいね!』」 斑「………………………………………(激汗)」 荻「さすがにそう言われたときはショックでしたけど。 でも、ストレートに言ってくれたほうが自分のためになるってわかったんです。 笹原さんも、あとで何度も謝ってくれましたし」 斑「………なんか壮絶だね、君タチ」 荻「私、けっこうキツいこと言ってしまうタイプだし、笹原さんも思ったことそのまま出ちゃう人ですから。 だから、その方がかえって楽なんですよ」 荻上さんは相変わらず笑っている。心からそう思っているのだろう。 (…そういえば、春日部さんとよく喧嘩したな。春日部さんもやたらムキになって…。 本当なら、ウザがられて無視されるとこだよな。たいていはさ………。) 初対面のときから、何かと口喧嘩しまくっていた。 今思えば、本当に言いたい放題言ったのだが、春日部さんが部室に来なくなることはなかった。 もちろん、高坂のために来ていたんだが。 どんなにこっちの言いたいことを言いまくって、その後ちょっとだけ後悔しても、春日部さんは再び,、こりずにオタクに対する自分の疑問(喧嘩のネタ)を持ってやってくる。 面白くなった。根性ある一般人だな、と。 だから、とことんからかってやろうと思ったのだ。 (あれも、ある意味コミュニケーションだったんだなーー…。) いつからだろう、口喧嘩しなくなったのは。 …あれは俺が4年のときか。なんだか急に、春日部さんを強く意識し始めて、それからは言えなくなった。 そのころ、春日部さんも丸くなって、あまり喧嘩越しの態度に出てこなくなった。 親しくなったからか。少なくとも春日部さんは、そう思ってくれていたんだろうか。 (憧れだったんだろうな………春日部さんの存在が…。 すごくしっかりしてるとことか、実は情に厚いとことか、面倒見がいいとことか。 もちろん美人なとことか、そのわりに気取ってないとことか。意外と内面が繊細だったりとか………。) また、心が疼き始める。『いい思い出』のはずなのに、苦しみと表裏一体になっている。 荻「斑目先輩?」 斑「…ん?」 荻「どうしたんですか?」 荻上さんは心配そうな顔で、こちらを見ている。…そんなにひどい顔をしていたんだろうか。 荻「疲れてる、とかですか?」 斑「あ、いや!大丈夫。」 荻上さんは心配そうな顔でこっちを見る。…そんなに心配されると、なんだか照れくさい。 斑「いや、本当に平気よ?ちょっとボーッとしただけ!」 荻「…そう、ですか。」 荻上さんは言葉を止めた。 荻「…寂しいですね。」 斑「え?」 荻「いえ、新入生が、4月は入ってこなかったんで…大野先輩は就職活動だし、朽木先輩も何だか忙しいようですし」 斑「あれ、じゃ朽木君、最近来てないの?」 荻「いえ、夕方になったら来るんですけど。1,2年生のとき遊びすぎたらしくて、3年になってから単位取るために授業たくさん取るハメになったらしいです。自業自得ですね」 荻上さんは呆れたように言った。 斑「あーそう…じゃ、朽木君が会長に、って話はなくなったのかね?」 …だいぶ前に大野さんから、そんな話が出ていると聞いたとき、正直驚いた。 大野さん自身不安そうにしていたが、それでも前向きに考えているようだった。その大野さんの変化にも驚いたものだ。 (…それにまあ、あの朽木君に任せて大丈夫なんか?という不安もある。やっぱり。) 荻「いえ、今は朽木先輩が会長ですけど」 斑「え…マジで!?いや、こういう言い方はアレかも知れんけど、あの朽木く…」 荻「全然頼りになりませんよ、はっきり言って。」 荻上さんはズバッと言ってのけた。 斑「…あ、やっぱり?」 荻「書類の提出期限は破るわ、会議は脱線するわ、遅刻するわムダ口が多いわ、会長としては最悪ですね」 斑「………………」 どんな状態かはっきりとイメージできてしまう。 では何故、朽木くんに任せてるんだろう。どう見ても荻上さんのほうが向いている。 荻「…でもですね。最近朽木先輩変わったんですよ」 荻上さんの口調が、少し柔らかくなった。 荻「あの変な挙動は相変わらずなんですけど、少しずつ人に気を遣えるようになってきたみたいなんです。 あと、場を寒くするような言葉が大分減りました」 斑「ほー!あの朽木君が!」 荻「自分がまとめる立場になって、ようやく他人の苦労が分かったんじゃないですかね。 だから良かったと思います。あと、こっちも我慢強くなりました。些細なことで怒っても仕方ないって思うようになって」 荻上さんは少し皮肉まじりに言い、笑った。 斑「会長になったら、みんなすごく成長するんだなあ…」 荻「でも斑目さんは元々会長向きだったんじゃないですか?」 斑「いやいや、俺も例外じゃないよ」 荻「そうなんですか?」 荻上さんは意外そうな顔をした。荻上さんは自分と春日部さんがさんざん口喧嘩していた頃を知らない。 斑「春日部さんがなぁ…」 荻「え?」 (………ん?) 妙な沈黙。 荻「春日部先輩が…何ですか?」 斑「…え?あ、あーいや、最近寂しいっていってたからさ! 笹原もだけど、春日部さんも高坂も卒業したから寂しいのかなーーーって!」 慌てて取り繕う。 荻「え、ええ…そうですね…」 (うわ、ヤベーヤベー!思わず口から出てたよ…最近こんなことばっか考えてっから…) 荻「…そう言えば、春日部先輩、昨日来てましたよ」 斑「え、昨日?部室に?」 荻「ええ、久しぶりに顔見に来た、って」 斑「…へー!そうなんだ」 荻「ちょうど斑目先輩と入れ替わりで…昨日は大野先輩もいましたし」 斑「へえ、それは会いたかったなー」 (…ここで「会いたい」って言っても不自然じゃあるまい) 荻「ええ、春日部先輩も、会えなくて残念って言ってましたよ、斑目先輩に」 斑「え、春日部さんが?そんなこと言ったの?」 荻「ええ」 斑「フーーーン………………」 (…あれ、何か、スゲー嬉しいような………) 急に、体が熱くなるのを感じる。 (会えなくて残念…………………春日部さんが?本当に?) 荻「あの…」 斑「ん?」 荻「春日部先輩と、何かあったんですか?」 斑「…へ!?」 荻上さんはじっとこちらを見てくる。 斑「え、いや別に………な、何で!?」 荻「いえ、先輩最近元気ないから……………」 斑「え、そ、そうかな!?」 (バ、バレてる!?えーーー、どこまでバレてんだ!?) 焦ってしまい、頭が回らない。冷や汗がダラダラ出てくる。 斑「えーとその、そーいうアレじゃ…」 荻「えっ?」 斑「別に春日部さん意識してたとかじゃなくて、ただの仲間というかそんなんだから!!」 荻「…え?あの、春日部先輩と喧嘩でもしたのかな、と思っただけなんスけど………………」 斑「へっ!?」 荻「…いえ、それで気にしてるのかな、って…………………………」 目を見開いていた荻上さんの顔が、見る間に赤くなる。 (………アレ?なんか今いらん事言っちゃった?? えーと、『墓まで持っていく』つもりで『墓穴を掘った』みたいな。 あ、今うまいこと言ったな。 ………………………って、全然うまくねーーーーー!!!!!) 荻「………………………………(汗)」 斑「………………………………(激汗)」 沈黙。嫌な汗が出てくる。 (………荻上さんにバレた?今ので…………バレたよな。 ていうか何言っちゃってんの俺……?アレ?え、どーすんだコレ………) 荻「え、春日部先輩のこと…?」 斑「………いやその………………」 しばらく固まっていたが、次第に、急激に体中の力が抜けていくのがわかった。 胸の奥が締め付けられる。 見ないようにしていた苦しみが、一気に襲ってくる。 自分でも驚くほど、狼狽している。がっくりと肩を落とした。 (………何で………何でこんなに、落ちてるんだろう……………。 というか、今まで誰にも言わなかったのに………言わないつもりだったのに………………) 正直、誰にも言わずにいるのは辛かった。でも、誰かに言っても状況が変わることがない以上、その人にまで秘密を背負わせるのはどうかと思った。第一こういう話をすること自体苦手だし。 …なのに。 (…とりあえず、荻上さんには黙っていてもらおう。それしかない………) 斑「………荻上さん」 荻「は、はい」 斑「その…。誰にも言わないでくれるかな………。頼む!!か…春日部さんにも言ってねーし………………」 言いながら、自分の声が震えるのが分かる。 荻「…言いません」 少し低い声で答えが帰ってくる。斑目は顔を上げた。 荻「言いません。絶対、誰にも言いません。」 荻上さんは真剣な目でこっちを見ていた。それを見てほっとする。同時に色々な思いが込み上げてくる。 斑「…ちょ、ちょっと頭冷やしてくるわ………」 そう言って席を立つ。部室の扉を開けて出て行った。 トイレで顔を洗う。…いつから自分はこんなに弱くなったのだろう。 冷たい水に、少しだけ冷静さを取り戻す。同時にひどく空しくなった。 戻ってくると、荻上さんも動揺していた。心配そうな目でこちらを見上げる。 荻「あ、先輩………」 斑「…変なこと言ってスマンね」 荻「いえ!そんな………」 そう言いかけて荻上さんは視線を泳がせる。 斑「アハハ……墓の中まで持っていこうと思ってたのになー…」 そう言いながら思った。 (重いって、そんな言葉…荻上さんにこれ以上気を遣わすなって………!) 荻「…それが先輩の秘密なんですか?」 斑「え?ああ、そうね………」 荻「最近元気ないの、それが原因ですか?」 斑「…情けねーよなー俺…たかがそんなことでさ………」 荻「そんな風に言わないで下さい」 斑「え?」 荻「私も、人に自分の秘密が言えなくて、心を閉ざしてました…このサークルに来るまで。 人は何かしら心に傷を抱えてると思います。傷一つない人間なんていないと…私も………」 そこまで言って荻上さんは口を閉じた。少しためらい、再び話し始めた。 荻「…私も、斑目先輩に秘密にしていることがあります。」 斑「え?」 荻「………じゃあ、今度は私がそれを打ち明けたいと思います。明日の昼、また部室に来てもらえますか?」 斑「あ、明日?いいけど………?」 荻「明日、私の秘密を見せたいと思います。」 ……………………… 会社に戻りながら、考えていた。 (…『私の秘密を見せたい』って、何だろ? ていうか、それなんてエロゲ…いやいや、ゲームのやり過ぎだっての。 …しかし、つい言っちまったなぁ……) 言ってしまったことが、やはりショックだった。だが、今は明日のことに気をとられている。 (何を見せられるんだろう…?) 次の日、斑目はある意味「エロい」ものを見ることになるのだが、それはまた次のお話。 「明日、私の秘密を見せたいと思います。」 ………………今日の昼、荻上さんにそう言われた。 その夜、斑目はベッドの中で、なかなか寝付けないでいた。 暗がりでじっと考えていると、昼間よりもさらに気持ちが急降下していくのが分かる。 (…ずっと「底」だ、と思っていたのに…。まだ底があるんだな………………) こんな形で本音が出てしまうなんて。しかも言う相手を間違えている。 過去の幻影にすがっても、得られたものは苦しみしかない。 …本当はずっと分かっていた。でも、忘れることもできず、振り切ることもできず、打ち明けることも出来ない。 ただじっと身をかがめてやりすごす方法しか、自分は知らない。 だから耐えるしかないと思っていた。それなのに。 明日、本当は部室に行きたくない。 これ以上格好悪いところを見られたくない。…でも。 (荻上さん…すごく真剣な目だったな………。 行かなかったら、あの目を裏切ることになるんだな………。) (どうしようか…) 頭が少しずつ思考停止してゆく。考えすぎて疲れた。 ゆっくりと浅い眠りの中に落ちていった。 ……………………… 次の日の昼休み。直前まで悩んだが、やっぱり部室に行くことにした。 行かなかったら、荻上さんと気まずくなってしまう気がする。それは避けたかった。 斑「………………」 部室のドアの前で固まる。一度深呼吸して、決意を固める。ゆっくり2回ノックする。 荻「はい」 いつものように荻上さんの声が聞こえ、斑目はドアを開けた。 荻「あ、ども…」 斑「や~どうも。今日は暑いね、特に」 荻「そうですね、5月だっていうのに夏みたいな気温ですね。」 荻上さんが右に座っている。自分はドアに一番近いところの椅子を引いた。 最初は当たり障りのない話から入った。斑目は笑顔を作る。 斑「今年は気候が極端だよな~」 荻「きっと地球温暖化ですよ」 斑「ああ…温暖化ネ…」 荻「………………」 荻「で、これが例のモノなんですが!!」 斑「は、ハイ!?」 荻上さんは急に大声で言った。びっくりする斑目。 荻上さんは手に大きめの茶封筒を持っている。 斑「え~それが”私の秘密”??」 荻「…そうデス」 荻上さんが封筒を差し出したので受け取る。 斑「見ていいの?」 荻「…どうぞ」 茶封筒を開けて中の紙束を取り出しかける。その間荻上さんは体を硬くして縮まっていた。 何かをこらえるようにぎゅっと目をつぶる。 斑「お、荻上さん?大丈夫?」 荻「大丈夫です…とりあえずそっちを見てください」 大丈夫に見えないのだが、ひとまず言われたとおりにする。封筒から紙束を取り出す。 (…あ、やっぱ801漫画か………) 一応予想はしていた。荻上さんは今までちゃんと見せようとしなかったのだが、ようやく見せてくれる気になったのだろう。 最初に見たのは2人の男の顔のアップだった。 (?…何の漫画のキャラなんだろ?麦男?でもこっちのメガネは千尋っぽくないな…) 紙をめくると、その2人が裸で抱き合ってるところだった。 めくるごとに表現が直接的になる。 …ただ、今まであらゆる成人向けの同人誌を読んできたので、それほど驚くような内容でもない。 (…フーン、こんなんなのか…絵がきつくないから見れなくはない、かな…ん?) コマ割りで漫画になっている表現の絵が出てきた。 そのページを見て、固まる。 『ネクタイの正しい使い方を教えてあげますよ…斑目さん』 『さ、笹原…何を……』 『お仕置き…ですよ』 そこにはちょっと眉毛がつり上がり気味の笹原と、妙に線の細い女の子みたいな自分(?)の姿が。 (………………………ていうかこのメガネ、俺!!!???) 他の絵も同じキャラのようなので、…この絵は全部、笹原と自分を描いたモノらしい。 (…はーーー!!そういや801って実在の人物もネタに描くらしーけど…まさか自分が描かれてたとは…。 うわーこれは…いや、内容はともかく…………………………。) (俺が受けなんだ…orz) (えーそうなんだ…組みしかれてる絵が多いけど…俺ってそんな弱そうに見えるのかね?うーむ…) 荻「言っていいですよ、気持ち悪いって」 荻上さんが言った。 斑「え、いや、その…」 荻「言ってください、正直に」 荻上さんは真剣な目でこっちを見ている。この絵を見せるのに、そうとうの覚悟をしていたらしい。 斑「………正直言うと…俺、『受け』なのかー、って」 荻「…ああ、それですか…」 斑「え?」 荻「試しに笹原さんが受けの漫画を描いて、笹原さん本人に見せたことがあります。そしたら、やっぱりそこで引っかかってました。 攻めのほうがいいかな、って」 斑「………………」 荻「もし描かれるなら、攻めで描かれてたほうがいいんですかね…?」 斑「…まあ、人によると思うけど…。」 荻「私…中学生のとき、クラスの男の子の『総受け本』を描いた事があります。それは私と仲間の周りだけで見せ合うだけの本だったのに、その男の子本人の手にそれが渡ってしまったんです。 …その男の子は、不登校になって…転校してしまいました。私のせいで。」 斑「………………」 荻「もしかしたら『総攻め』だったら結果は違ってたのかも。…いえ、801自体が受け付けなかったのかもしれませんが…。 …今となってはもう、分かりません。聞くこともできないですし。」 荻上さんの瞳に、少し翳りが見えた。 荻「私はその時からずっと、自分の趣味が男の人に激しく嫌悪されるもので、恥ずかしいものだと思ってました。でも…。 もっと深く考えてみる必要があったんじゃないか、と思ったんです。 なぜ『嫌悪される』のか、それでもなぜ自分がこんなに801を描きたくなるのか。 801好きの人がなぜこんなにいるのか、って。…だから、男の人の意見を聞きたかったんです。」 荻上さんはそう言うと、ひとつ息をついた。青ざめて、額に汗をかいている。 荻「…でも、すみません。気持ち悪いもの見せて…」 斑「うーん、でもさ、例えば女の人で、男性向け同人誌見て拒否反応示す人いるし…。それに似てるんじゃないか? 単に個人の趣味とか、許容範囲の問題じゃないのかね。 …まー確かに、中学生の時に自分のそういうの見たらショック大きいかも知れんけど。今は801がどーいうモンか知ってるしなぁ。 笹原も俺も、前知識があるからそんなに気持ち悪いとは思わんよ。 …ま、俺の意見は参考程度にしといてな。他の感じ方もあるだろうし。」 荻「そうですか…。そう言ってもらえると…。 でも…中学のときに私がしたことは、悪気がなかったからといって許されることではないです。それはわかっています。 だからこそ男の人の率直な意見を聞きたかったんです。過去と向き合うために。 でも、コレ最初に笹原さんに見せたとき、何ていったと思います?」 斑「…?何だろ。『攻め』で良かった、とか?」 荻「…えーと、その………一瞬だけど『反応した』って言うんです」 斑「反応?」 荻「ええ、その、アレが……………(///////)」 斑「………………」 斑(ささはら………………………………………orz) 荻「直接的な表現が多くて、絵柄がキツくないからって言ってました。別にホモなワケじゃないけど、『エロいから』ってことでした」 斑「なんかあまりにストレートで…つーかそういうこと言うかフツー?好きな女の子の前で!」 …自分が昔、春日部さんに「正月休みに冬コミ新刊がないとヒマでしょーがない!」とか言ったことは忘れている斑目であった。 荻「ええ、でもそのストレートっていうか、『見当違いな答え』なのが良かったんです」 斑「?」 荻「ああ、この人嘘つかないな、って。その上で気持ち悪がられなかったんです。だからすごくホッとしました…」 斑「ナルホド、フツーだったらもっと気を使って発言しそうなトコだもんな。全くあいつは…」 荻「そうですねー」 荻上さんは思わず苦笑する。それを見て自分もホッとして笑う。 斑「…しかし俺、受けなのかー…」 荻「受けです。というかですね、私が『メガネ受け』萌えだからです」 斑「そーなん?」 荻「その人を低く見てるとか、弱そうに見えるとか、そういうことじゃないんです。そのメガネキャラに萌えたから、受けさせたいんです! というかこの配役も、メガネキャラを受けさせたいがために笹原さんを強攻めにしたんです!」 荻上さんは熱く語る。 荻「…あ、でも、あくまでキャラとしてなので…」 斑「ほほう…ま、荻上さんが実際付き合ってるのは、メガネキャラじゃないしな、笹原。」 荻「そうです…そーいうモノなんですよ」 斑「ふーん、なるほどねー…」 属性と、実際好きになる人が違う。…それは自分もそうだから分かる気がする。 荻「ま、『カワイソスギ』なのはさすがに…そこに入れてませんし…ブツブツ…」 斑「へ?」 荻「い、いえ何でも!!…あっそうだ、大野先輩は『斑目先輩はへタレ攻めのほうがしっくり来る』って言ってましたよ」 斑「………君らいつもそんな話してんの?(汗)」 荻「いっ、いつもじゃないスよ!…いやでもスミマセン(汗)」 斑「まぁ複雑な気持ちにはなるわな」 荻「スミマセン………」 斑「…例えば、例えばだよ?俺が笹原や他の男どもと、百合モノで『大野さん×荻上さん』について語り合うよーなモンかね?」 荻「え!?」 斑「いや例えばの話。そんな話はしたこと無いけど」 荻「…それは…複雑ですね………。」 斑「でしょ?きっとその違和感と同じよーなモンなんだよ。」 荻「わたすが受けなんですか………orz」 斑「そっちかい!!!」 荻上さんが「受け」に不満があるようなので、試しに逆の、 『荻上さん×大野さん』について考えてみた。 ↓ 荻「なんですかこのネクタイは?わたすを置いて卒業しようとでも?(ニヤリ)」 大「いっ、いえ違うんです、コレは………!」 荻「わたすから逃げられっとでも…いやわたすを忘れられるとでも思ってんですか?」 大「くうっ…」 斑・荻「………………………………………。」 斑「変だろ(汗)」 荻「変ですね…(汗)」 …会社に戻りながら、さっきまでのことを考えていた。 荻上さんは、自分が絵を見ている間ずっと顔色が悪かった。きっとそうとうな覚悟で、あの絵を見せたのだろう。 …話を聞くことで、荻上さんは少しでも楽になったのだろうか?楽になったのならいいのだが…。 その次の日も部室に行った。 自分にも、話したいことがある。今まで誰にも言えなかったことが。 斑「…でさあ、何かついてるなーと思って見てみたら………………鼻毛出てたんだよ」 荻「は、鼻毛ですか!?」 斑「やーもうびっくりしてさ、思わず飲んでたお茶噴きそうになったよ。 …注意してあげよーかと思ったけど、ホラ相手が仮にも(笑)女の子だしさー。」 荻「確かにそれ、男の人に注意されたらハズカシイですね…。でも、教えてあげなかったんですか?」 斑「もちろんそーしようと思ったが!でも、下手な言い方したら傷つくかも知れんよなーって思って、どんな風に言おうか考えててさ。 それに俺、一回話しかけたのに無視されたしさーーー。ジュースもいらないって言われたし。声かけづらかったんよ。 どーしようかなーって、頭の中にゲームの選択画面が!!」 荻「ああ、わかります!私もそんなことあります。」 斑「でも良く考えたら、いねーよな。…絶対いねぇ~、『鼻毛のヒロイン』!!」 荻「ぶっ…そ、そうですね………」 荻上さんは思わず噴き出した。 斑「俺ぁ心の中で叫んだね。 『気づいて~~~春日部さ~~~ん!!色んな意味で!!!』」 荻「ぶはっ!あはっ、は、はは………!!」 荻上さんはお腹を抱えて笑っている。 斑「も~俺一人でオロオロしてさー。でも言おうとしたんだぜ?このままじゃ自分に負けるっつーか、何かに負けてしまう気がしたのだよ、魂的に!!そんで勇気を出して春日部さんに近づいたらっ!」 荻「ど、どーなったんですか?」 斑「変に力んじゃっててさ。急に春日部さんの方に近づきすぎたらしくて、ビビった春日部さんに殴られた。」 荻「殴られたんですか!?」 斑「『うわーーーーー!』って叫ばれて、バシーン!!吹っ飛ぶ俺とメガネ!!!」 荻「あ、あはは…ははっ………!!先輩、ハハ…腹痛ぇ……!!」 斑「あ、その勢いで鼻毛も飛んでったみたいでな。殴られた後に見たら、もうついてなかった。よし! 結果オーライ!!!みたいな」 グッと握り拳を作る。 荻「あ、はははははっ………!!」 荻上さんは笑いすぎて呼吸困難になっている。 荻「…す、すいません、笑っちまって………」 荻上さんはまだ肩を震わせて、涙目になっている。 斑「いや、笑ってくれて助かったよ。」 荻「え…そうですか?」 斑「うん。」 …話せて良かった。 誰かに笑って話すことができて良かった、と思った。 もう少しでこの思い出さえ、「辛い思い出」に変わってしまうところだったから。 だから…良かった。 妙に体が軽くて、不思議だった。 特に何か状況が変わったわけでもないのに。…春日部さんに言ったわけでもないのに。 肩の荷物をようやく降ろせたみたいな………。 ……………………… …その日から一週間が経っていた。 斑目は今日も昼休みに大学に来ていた。部室に行こうとして、ふと廊下から中庭を眺める。 最近は以前のような、胸が締め付けられるような気持ちにはならなかった。 5月の空は相変わらず高く、青く透き通っている。 (いい天気だなぁ…) 今日はとても過ごしやすい日だった。 日光が降り注いでいたが、涼しい風が吹いている。 しばらくじっと中庭を眺めていた。 「斑目!」 不意に自分を呼ぶ声がして、振り返る。 すぐ後ろに春日部さんが立っていた。 咲「よっ」 斑「…ひ、久しぶり」 咲「久しぶり。どうしたのこんなトコで」 斑「あー、ちょっと中庭見てた」 咲「ふうん?」 春日部さんは自分の横に来て、中庭を眺める。 …少し髪を短くして、跳ね気味だった髪を内巻きにしている。 襟のついた袖なしの少しぴったりしたワンピースを着ていた。白地に薄い青のストライプが入っている。 ちょっと大人っぽい服装になった。 思わず見とれていると、春日部さんはこっちに気がついた。 慌てて目をそらし、中庭のほうを見る。 咲「ん?何、どうしたのニヤニヤして」 斑「…え、マジ?ニヤニヤしてた!?(汗)」 咲「なんかいいことでもあった?」 春日部さんも笑いながら言う。 斑「え、あ、まーね…………………」 咲「そーいえばさ、さっき校門のトコで笹原に会ったんだけど」 斑「お、今日笹原も来てるのかー」 咲「…なんかさ、変なこと聞いたんだけど」 斑「ん?どんな」 咲「最近荻上さんがアンタの話ばっかする、って。なんか不安そーにしてんの、笹原が」 斑「はぁ…。何で不安になるのかね?」 咲「だからアンタと荻上が…って思ったんじゃないの?」 斑「は!?何だそりゃ。笹原のやつ何考えてんだ?」 咲「私もまさかって思ったけどさ」 斑「馬鹿だなー。荻上さん、俺に笹原のノロケ話とかすんだぞ?」 咲「へえ!そうなんだ、あの荻上が?じゃあ、笹原の話って…」 斑「ない。全然ない。」 咲「なあんだー、アハハハ。心配しすぎだね」 斑「ったく、笹原はー…」 アハハハと2人で笑う。 さて。そのころ部室では、笹原が同じことを荻上さんに聞いていた。 荻「………は?」 笹「いや、その、ねえ?だって最近ずっと斑目さんの話ばっかするからさー…」 荻「…笹原さん、もしかして妬いてるんですか?」 笹「え、んんー…。まあねえ………」 荻「………くすっ」 笹「荻上さん?何で笑うの?」 荻「いや、スミマセン。なんだか嬉しくて…」 笹「え?」 荻「笹原さん。私は斑目さんのことなんとも思ってませんよ。ていうかなんでそんな話になるんスか」 笹「いや、ホラ…。例の801漫画でも、斑目さんの方が気合いいれて描かれてたし…」 荻「それはそれ、コレはコレです。」 笹「…そっか。」 荻「それに斑目さんは、か………」 言いかけて、止まる。 (あ、駄目だ。これ言っちゃいけねって。絶対言わないって約束したでねか!) 笹「ん?斑目さんが?」 荻「え、えーと…斑目さんはメガネキャラだからです!私が『メガネ受け』が基本なんで。でもあくまでキャラとしてですよ?」 荻上さんは慌てて取り繕った。 笹「ふうん、なるほどね…………」 (そうかァ…笹原さん妬いてくれたんだァ…) 妙に嬉しくなって、一人でニヤニヤしてしまった。 廊下では、斑目と春日部さんがまだ話をしている。 斑「最近どう?店とか。やっぱ忙しい?」 咲「そうだね、大変だよ。特に今の時期…オープンしたてで、まだ客足はあるけど。今後どうなるか…。」 斑「フーン…大変なのか…」 咲「覚悟はしてたつもりだけど、ね…。気苦労がね…」 春日部さんはひとつ息をついた。 斑「…高坂はどうしてんの?」 咲「それがねぇ…全然顔合わせられなくてさ。」 斑「そーなん?」 咲「休みも合わないし。出勤時間も違うから、せっかく来ても、こっちが寝てる時間に来て、私が起きる時間にはまだ寝てたりさ…。 これじゃあねえ…」 斑「………」 咲「…でも仕方ないかな、って思うようにしてる。コーサカも仕事頑張ってるわけだし。寂しいなんて言ってられな…」 斑「それ言っといたほうがいいんじゃないか?」 咲「え?」 春日部さんは斑目の顔を見た。 斑「言っとくだけでも全然違うと思うぞ。言わなきゃ伝わらんし。高坂もそんな風に思ってるかも知れねーし。」 咲「………………そう、か…。そうだね…。」 春日部さんは頷きながら言った。 咲「アンタ、たまにすごく良いこと言うよね」 斑「たまにって失礼な」 思わず苦笑する。 咲「でも、そうだね…言ったほうがいいんだよね………」 春日部さんは少し考え込むように俯いた。 咲「ねえ斑目」 斑「ん?」 咲「…アンタさ、私に何か言い忘れてることって、ない?」 斑「へ?ないけど…?」 咲「…本当に?」 春日部さんはじっと斑目のほうを見つめる。 斑「………………。」 言い直すことにした。 斑「…前はあったけど…今はねーよ。」 咲「…………そっか。」 斑「うん。」 春日部さんはしばらくこっちを見ていたが、再び中庭に目をやる。自分も中庭のほうを見た。 咲「…ならいいや。」 斑「うん。」 (言わないって自分で決めたからな………。) 今、自分は穏やかに笑えていると思う。 あの時、卒業式の日、春日部さんに言ったことを思い出した。 (『幸せに』………か。今は本気でそう思う。) 木々の緑がまぶしい。まだ柔らかい若葉の色をしている。 風が吹いて、ひとつひとつの葉が日光を浴びて輝きながら揺れる。 しばらく黙って木が揺れるのを眺めていた。 大「あ、咲さーん!斑目さんも!!」 後ろから大きな声が聞こえた。 振り向くと、大野さんがこっちへ歩いてくる。後ろに朽木君もついてきていた。 咲「おお!大野じゃん。元気だった?」 大「はい!最近ずっとコスプレのイベントに行ってたんで忙しかったんですけどね。今とっても充実してます!」 咲「…ふうん、そりゃよかった………」 大「良かったら咲さんも…」 咲「もー絶対やらん!!!(怒)」 大「わかってますよ。もう無理じいはしません。咲さんが『やりたい』って言ってくれる日まで気長に待つことにします!」 咲「安心しろ大野。そんな日は絶対来ないから!」 大「あうう~…」 斑「…朽木君?なんか疲れてるようだけど、どーしたの?」 さっきから妙に大人しい朽木に話しかけた。朽木は猫背のまま、がっくりとうなだれている。 朽「…ハア。実はワタクシ、最近五代目会長に就任いたしまして…。」 斑「あー、それは知ってる。荻上さんに聞いた」 咲「へー、クッチーが会長やってるんだ」 朽「そーなんデスガ…慣れないことやるとどーしても、投げ出して外に飛び出して行きたくなりまして…。毎日、自己の衝動と闘っているでアリマス。 今のトコ7割くらいの割合で、衝動に打ち勝っているでアリマスが!!」 咲「…つまり3割の確率で、外に飛び出してるワケね?(汗)」 斑「…まあ、今までの朽木君のことを思えば、成長したか…な?(疑問形)」 朽木君は急に姿勢を正して右手を額につけ、ビシッと敬礼する。 朽「不肖朽木、皆さんの期待に応えるべく、至らないながらも立派に勤め上げてみせマス!!」 大「ええ、本当にまだまだ『至らない』んで、頑張ってくださいね?」 朽「おおぅ、大野先輩の厳しい突っ込み!これぞ私が求めていたものだァ、アハハハハ!!」 斑「…朽木君、ヤケクソになってないか?」 咲「ま、いいんじゃない。クッチーにはいい薬でしょ。」 皆でわいわい話しながら、部室に向かう。 5月の中頃。空は青く青く透き通り、辺りは爽やかな春の日差しに包まれている。 …とても暖かく感じるほどに、明るい日光が自分の心にまで差し込んでくる。 そのためだろうか。今は心が弾むように軽い。 五月晴れの空の下、大切な場所は、今も変わらずここにある。 END
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Zせんこくげんしけん1 【投稿日 2006/03/12】 せんこくげんしけん 【2005年8月8日/19 45】 斑目は力なくアパートのドア開けた。一日の仕事を終え、外で適当に夕食を済ませて帰ってきた。上着をベッドに脱ぎ捨てて、イスにどっかりと腰を下ろし、フゥとため息をついた。 疲れる一日だった。仕事で、ではない。 いつも通りに現視研部室で昼食を取っていた時、大野がアメリカ人を連れてきたのだ。しかも2人も。しばらく自分一人での対応(というか流されるまま)だったので、午後のスタミナも奪われるような脱力感があった。 後でやってきた咲は、自分とは対照的に流暢な英会話で会話をしていたというのに。 斑目は虚空をうつろに見つめながら、「ケョロロ将軍ねえ……」とまた独り言。話題のアニメが気になるわけではない。彼女と自分との能力格差が、今頃になって心に小さな穴をつくっているのだ。 「あ~あ、かなわねーなァ!」イスの上で背伸びをした斑目は、1枚の封筒を手にしたが、中の「あの写真」を取り出すことはなかった。「眺めたところで、何が変わる……」 斑目は自分の気持ちを高ぶらせ、憂鬱な気分を珍しく速攻で振り払った。 「ええい、気を確かに持て。そんなことはどうでもよいではないか! 立てよ俺!」 12日からコミフェスが始まるのだ。しかも社会人になった今年は、額こそ少ないがボーナスも入った。これを同人誌につぎ込まないで何になる。斑目はギラギラした目つきでコミフェスのパンフレットに目を通しはじめた。 その中でひときわ目立つ告知は、同人誌の“業界”を席巻する大物「Hi」のもの。ここ2年ほど、801をメインに、大物作家を使って次々に流行を生み出すプロデューサー的な人物だ。「Hiは、今年は801だけか…」 その時、急にデスク上の携帯電話が小刻みに震えだす。ディスプレイを見て小首をかしげた。 「公衆電話…?」 電話に出ると、『斑目、斑目か?近藤だけど!』と、うろたえた様子の声が聞こえてきた。アニ研OBだ。 「あー近藤さん、久しぶり。どう?仕事の方は慣れた?」 『それどころじゃないんだ。サークルが変だ。OBの手には負えん……アニ研も“すでに押さえられた”。俺は明日大学事務に相談する』 「何の話?」 『気をつけろ……狙いは現視研の……』 (ガガッ!……ガチャ!!)「近藤さん?」 (ツー…、ツー…)その夜、再び電話がかかってくることはなかった。 【8月9日/11 30】 夏期休講中。直上からの日差しがコンクリートを焼き、日陰のコントラストをハッキリとさせている。ジワジワ、ジージーとセミの鳴き声は止むことがない。 人気の少ないサークル棟3階の現視研部室では、団扇を片手に語りあう笹原と荻上の姿があった。夏のコミフェスで大野が売り場に立てなくなったので、急きょ2人で会合を持つことにしたのだ。 笹原は、「今回の主役だから」とテーブルの一番奥に荻上を座らせ、自分はその右手に座った。 笹「まあ、ちょっとした動きの確認だけだからね」 荻「はあ」 笹「それにしても今年は猛暑だね。地球温暖化だね…ははは」 荻「そうでしょうね」 座る位置からちょっとした話まで、気を使っている笹原と、愛想の無い荻上の、たわいもない会話が続く。 そこに、「ここで良いから寝かせてくれぇ」とうめきながら、咲がやってきた。まだまだ自分の店の開店準備で忙しいらしく、目にクマを作って疲労困憊の様子。 が、笹原と荻上しかいないことに気付き、「あらあらー、2人で何やってんの?」と、笹原の向かい側に座ってさっそく茶々を入れる。 「打ち合わせです」と味も素っ気も無い荻上。咲はニヤニヤしっぱなしだ。 何かを期待している。荻上にはそれが嫌なほど感じられる。(先輩誤解してる)とは思う。しかし、(自分自身はどうなの?)(嬉しくはないの?)と自問するが、怖くて自分の心に素直になれなかった。 ガチャ、部室のドアが開いた。 「や~久しぶりだね」と、顔をのぞかせたのは、なんと“あの”原口だった。 「!?」あまりに意外な人物の登場に3人は言葉も無い。むしろ(コイツいまだに学内ウロウロしてるのか)とあきれて言葉も出ない。 笹原は先日、荻上の部屋での打ち合わせで、「結局あの人どこで何してっかわかんないし」と原口を評したばかりだった。 全ての人には見えない線が繋がっていて、想ったり噂したり、何かが起きた時に、その線を通じて相手に通じるという話を聞いたことがある。「虫の知らせ」なんかもその類いだという。笹原は、その話を思い起こして自分の発言を後悔した。 「……何か、用ですか?」と訪ねる笹原は無視して、原口はドア直近のイスにどっかり腰を下ろし、荻上に向けて言葉を発した。 「荻上さんだっけ? “あなたのとなりに”はもうミナミ印刷に入稿したんだっけ?」 荻上の表情が青ざめる。まだ笹原にも大野にも伝えていない自分の同人誌のタイトルではないか。「!?……なんでソレを知ってるんですかッ!?」と声を荒げる。 原口は、気にも留めず、「麦男×千尋というのは使い古されたパターンで新しさはないけれど、キミの画力で見せてるよねぇ。あれはね、しっかり宣伝すれば売れるよ」と続けた。 もう荻上は言葉が出ない、両肩はワナワナと震え、原口をにらみ据える瞳には涙がにじんできた。 (……誰にも見せてないのに……あの人にも決して見せないと……) (汚された!) ガタンッ!とイスを弾き飛ばすように立ち上げる荻上を、咲が支えるように押しとどめ、「アンタ、ちょっと無神経じゃねーの!」と原口に向けて口を尖らせた。 「ああ、ごめんごめん、あんまりいい出来だったんでね。もったいないよね。小さな印刷所で50程度の発行部数なんて、儲からないよ~」 傷つけられた人間への配慮はまったく感じられない。 原口は本題に入った。 「そこでね、僕のツテで、トッパンで1万5千部印刷させてあげるよ、ミナミ印刷発注分は僕が買い取るから心配いらないよ。それでもまだ利益を得られるんだからね」 笹原は驚いた。編集者を目指す上で印刷業界のことも少しは勉強している。トッパンといえば日写と並ぶ印刷業界最大手ではないか。しかも1万5千なんてベラボーな数字だ。大手で個人誌を大量印刷なんて前代未聞、いや不可能だ。 思わず、「……そんなこと、できるわけないじゃないスか。第一、荻上さん個人の趣味の本ですよ。売るために作るわけじゃない……」と、腹の底から絞り出すような低い声が漏れた。 「それは売り方を知らないからだよ。君はいつまでもオナニーだな」原口は切り捨てるように返し、「聞いたことないかなあ。2年前から同人業界で新しいムーブメントを作ってる“Hi”って。あれ、僕なんだよね」とサラリと言った。 「大物作家に2、3原稿上げてもらってるから、そこのメインに荻上さんのマンガを入れる。さっそく刷って、製本を行ってギリギリで出す。僕がプロモーションをかけるから売れるよ~」 荻上を売り出す気らしい。 笹原はいい加減腹が立ってきた「荻上さんのことを何も知らない癖に、何を言ってるんだ!」強い語気で迫った。 「知ってるよ。少なくとも3年前からね……荻上さんが何を書きたいか、キミより理解しているつもりなんだけどね」 原口は、自分のカバンから、古ぼけた一冊のノートと同人誌を取り出した。 「!!!」荻上は驚愕する。原口が持っているノートは、今、自分の手元にあるノートと全く同じ物……。 いや、ノート自体は市販品だから「同じ商品」かもしれないが、それと一緒に掲げられたのは、まだ印刷もされていないはずの、同人誌「あなたのとなりに」製本版ではないか。 荻上は、ふらふらと後ずさりし、気を失いそうになった。咲も立ち上がって背中を支える。笹原も無意識に立ち上がっていた。 原口は続ける、「ボクならキミをメジャーにしてあげられるんだよね荻上さん。プロになれる。儲かるよボクと組むと」 荻上は気力を振り絞り、「誰があなたみたいなオタクと!」と叫ぶ。 「出版社にもアタリは付けてるんだ。友達にキミの腕前なら買ってもいいっていう編集者も居てねぇ。現役大学生作家として大いに売り出そうよ」 「嫌!」荻上は涙をポロポロと流しながら叫ぶ、もう立っているのもやっとだ。 笹原は、普段の彼からは想像もできない刺すような視線を向けて、「原口さん……帰ってください」とだけ呟いた。咲も怒り心頭の表情を向ける。 席を立つ原口、「仕方が無いなあ。もちろん学生の間は、現視研の活動扱いにして利益を還元してくれれば、学内サークルも大いに助かるんだよ?」 「だからッ……」原口は叫びそうになる笹原の発言を押しとどめ、フゥとため息を付いて目を細める。 「残念だけど、ゴネるようなら君たちは“解散”…だ」 ドンッ!とドアが乱暴に開き、見知らぬ男達が部室に入ってきた。3人、黒塗りのマスクをかぶっている。 咲「はい? マスク? 何コレ?」 原口は部室占拠の暴挙に出た。「サークル自治会といくつかのサークルは、ボクの提案に賛成してくれてね」と語る。 マスクマンは助っ人だ。「あんまりゴネるとこちらのプロレス同好会の皆さんが黙っちゃいないけど?」と強気に出た。 異様な緊迫感が部屋を包むなか、ガチャ! とドアが開いた。 「イルチェーンコ!シェフチェーンコォォォォォオ!ヘローヘロォ!」と体いっぱいに己の精神性を表現しながら朽木が現れた。 部屋中の誰もが、マスクマンの皆様も、朽木の狂態に顔中に汗をしたたらせて耐えた。 「アレ……ドシタの皆さん? おおっ、スーパーストロングマシン(マスクの人)が3人も!」朽木は状況が飲み込めないまま一人で盛り上がり始めた。 この隙をついて、咲は荻上の手を取り、腰を低くして男達の前をすり抜けた。「ササヤン!」と叫ぶ咲の声に反応して、笹原も駆け出す。しかし咲に連れられた荻上は足がもつれ、原口に肩を掴まれた。 「!」咲は荻上の手を離してしまう。 ドアから出かかった笹原が手を伸ばす。荻上も思わず手を伸ばす。 「荻上さん!」「ささは……ッ!」 しかし、視界にガタイの大きなストロングマシンが横切り、二人の手は振払われた。 笹原の片手は咲に引かれて部室の外に、訳も分からずその場の勢いで走る朽木を先頭に、咲、笹原は部室を飛び出した。 騒ぎが収まった部室を、サークル自治会長の木村が訪れた。左手が不安げにTシャツの端をいじっている。 「こ、これで良かったんですかね」という木村に、原口は、「みんなの利益のためだからね~、一部の人には我慢してもらわなくちゃね」とにこやかに笑った。 「じゃあ、今日からここは、“新現視研”ということで。あ、木村君、アニ研から沢崎君呼んできてよ。彼にここを任せるから」 どんどん話を進める原口の傍らで、荻上は抜け殻のように放心状態で座っていた。男達が騒がしく右往左往する中で、彼女だけ時間が止まったように動かない。ただ涙だけがスルスルとその頬を伝って落ちた。 視線の先には、まだ製本されているはずのない「あなたのとなりに」が1冊、無造作に置かれていた。 【8月9日/12 05】 昼休み。斑目はいつものように部室に向かう。しかし今日は、前夜の電話が気掛かりで、誰かが部室に出てくるのを期待していた。 サークル棟に向かう道すがら、別の門から学内に入ってきた恵子とバッタリ出くわした。 「あ、君もこれから部室デスカ」 「悪い?」 斑目は、(コイツじゃ事情は分かんないよなあ)とうなだれながら再び歩き始める。恵子は斑目の少し後ろを歩き、携帯をいじったり、無意識に斑目の手に揺られているコンビニ袋に視線を落としている。 別に語ることもなく、2人がサークル棟の階段を上り始めた時、恵子が沈黙を破った。 「あのさー」 「はい?」 「本っ当にこのサークルって合宿する気ないの?」 斑目は、階段を登る歩みを休めることなく、「この前も言った通り、我々にとって夏といえばコミフェスですよ。合宿にまわす金などない。あと……俺OBだよ。決定権ないし」と、素っ気なく答えた。 「第一、キミは他にも夏にアチラコチラへ連れてってくれるイカツイお友達くらい沢山いるでしょうに!」 ちょうど踊り場にさしかかった時に、寂しげな口調で答えが返って来た。 「ココの面子だから、いいんじゃん……」 斑目は立ち止まり、ハタと恵子を見て(あ、俺また無神経なこと言っちまったよ……)と自分の舌禍を後悔した。 恵子は慌てて、「あー、ホラッ、何はなくともコーサカさんいるし……」と取り繕ったが、すぐに、「……まあ、最近は何つうか居心地がいいんだよね。みんないい奴ばっかりだし。キモイのもいるけどね……」と本音が出た。 (素直なんだな)斑目は少しばかり恵子を見直し、「ああ、俺もだな。居心地いいのは同感だ」と、自分の気持ちを吐露した。 「だから就職しても寄生してるんだ」 「キミウルサイ」 階段を上り切って3階の廊下に出た時、斑目の背後でヴヴヴッという振動音が聞こえ、恵子が携帯を取り出した。 「あ、ねーさんだ」との言葉にピクッと反応する斑目だが、部室の近くで3、4人の男がざわついているの見て立ち止まった。 直後、恵子が斑目の半袖ワイシャツの端をクイッと引っ張った。 「何か、ヤバいみたいよ……ねーさんが部室に近寄るなって」 「もう、遅いんじゃないかなァ?」 すでに斑目の前には、久しぶりに目にする“嫌な男”が歩み寄っていた。 【8月9日/12 20】 「新現視研!?」部室前の廊下で原口の話を聞いた斑目は、耳を疑った。 「同人誌の件、荻上さん自身は納得してるんですか?」「ほかの現視研メンバーの同意は?」との質問にも原口は、のらりくらりと答えるばかり。鈍い斑目でも、昨晩の近藤の電話はこの件だったのかと推測した。 原口からは、「まあ斑目も、いつまでもこんな所をウロウロしていないで、仕事に戻ったらどうだ」と、痛いところを突かれた。(あんたも社会人じゃねーのか?)と心の中で突っ込みつつ、斑目はいつも通りの低姿勢で穏便にやり過ごそうと話をしていた。 納得いかないのは恵子だ。 「斑目サン、誰よこのデヴ!」 原口は細い目をさらに細めて恵子にらみ付けてから、斑目に向き直り、「何だ、この躾のなってないコギャルは?」と問いただす。 「笹原の妹デスよ……」 恵子は収まらない。「斑目もこんなのに敬語使う必要ないんだよ。ふざけんな“せっかくの居場所”をかき回すんじゃねーよ!」と噛みつく。 「居場所?」原口が反論する「この現視研は君らがタムロするための場所じゃないんだ。もっと有効に“活用”するために整理させてもらったんだよ」 部室のドアが開き、斑目にとって見覚えのある顔が出てきた。沢崎“新会長”だ。 驚く斑目に沢崎は、「今日のところはお引き取りください。あなた達学外の人間にとやかく言われる筋合いはないんです」と話に割って入り、「原口さん、ちょっと……」と呼んだ。 斑目は、原口の「さ、帰ってくれ」の言葉に黙ってうなずき、「ハイハイ、分かりましたよ……」と言いかけて、沢崎が空けたドアの向こう、部室のテーブルの一角に、無表情で座っている荻上の姿を見た。 荻上も、ハッと隙間から覗く斑目に気付き、2人の視線が交錯した瞬間、ドアは堅く閉ざされた。 斑目は険しい顔つきで、ドアの向こうをにらむ恵子の腕を取り、来た道を引き返しはじめた。 (今日の午後は代休になっちまうな)と斑目は思った。恵子の携帯に入ったメールには『学内にいる現視研は稲荷前に集合セヨ』とあったのだ。 部室内で沢崎は、部室の鍵を取り返す必要があるのではないかと原口に尋ねた。 「今日来ていた誰かが持っているかも知れないな。捜させよう」こうして原口の息のかかったサークルが、大学内で現視研を追いつめるべく動き出した。 【8月9日/13 00】 椎応大学の主な出入り口は、サークル棟に一番近い東端のテラス門、近所の動物公園につながる北門、そして南側の正門、西門の4カ所がある。 原口・沢崎による新現視研と一部サークルは、現視研メンバーの脱出を許さない構えだ。同調するサークルの人間が、普通の素振りをしながら見張りに立っていた。 しかし、その「見張り」が問題だった。 みんなプロレス同好会謹製の「スーパーストロングマシン」マスクを着用しているのだ。しかも緑色、量産型だ。実に分かりやすい。 椎応大学内には、緑豊かな茂みの中に、稲荷の小さなほこらが建てられている。咲、笹原、朽木はそこへと逃れていたが、話題は“追っ手”の容姿に及んでいた。 咲「あいつら、本当に馬鹿なんじゃないの?」 朽木「いやいや、悪の組織に量産型戦闘員は不可欠でありマス!」と朽木が目を輝かせる。 咲「悪ってオイ……」 朽木は、「あの人もなんだかんだ言ってオタクですなぁ……」と、原口を評した。 「ではさっき部室にいた黒いマスクは“三連星”ってことデスカ!ウヒョー!誰が踏み台になるんですかねぇ!」 話がドンドン暴走していく朽木は無視して、笹原は、「荻上さんを助けないと」と歯ぎしりした。 その後ろで朽木は、ガサガサとカバンから何かを取り出しはじめた。 咲「アンタこんな非常時に何遊んでんのよ」 朽「イヤイヤ誤解はナッスィングですよー」 朽木が持っていたのはトランシーバーだ。運動関係サークルが常用する無線の周波数はすでに知っているというのだ。 「うちの大学はよく駅伝出てるデショ。この回線を知ってると、連絡内容が聞こえたりして面白いんですヨ」 驚かされる咲、というかあきれていた。(コイツ盗聴まで……) 笹原「なるほど、相手も大人数だから携帯じゃ連携とりずらいし。無線を使いそうだよね」 咲「でもクッチー。あんたいつもそれ持ち歩いてんの?」 朽木は都合の悪そうな質問はスルーしつつ、鼻歌を歌いながら通信を傍受した。 「それほど人数はないみたいですな。サークル棟自体は見張りが少ないですニョ」 「そう…」咲はフーとため息をつくと、「あいつら何とかギャフンと言わせて、荻上取り戻さなきゃね」と呟き、笹原は無言でうなづいた。朽木はまた鼻歌を歌っていた。 予告編 ※BGM:ガクト(嘘) (カミーユ調で)「ハラグーロ!! 貴様はオタクの浪費の源を生むだけだ!!」 邪道SSの正統なる続編、望まれもしないのに登場!! “新現視研”に囚われた荻上奪還作戦が始まる!! 「Zせんこくげんしけん/オタの鼓動は萌」