約 23,554 件
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/37.html
その七 飲み会の様子 Aside 【投稿日 2005/11/18】 カテゴリー-1月号 荻「こらー!笹原完治―!」 バン!ふすまを勢いよく開ける。 笹「あ、おぎうえしゃん・・・どしたの・・・」 荻「あったしの同人誌、見ちゃダメって言ったのに見たでしょー!」 笹原の首に抱きつく。笹原は酔っ払ってろれつが回らない。 笹「ごめんなしゃい。れもわざとじゃないんれすよ、わざとじゃ」 荻「だめー、ゆるさないー」 笹原にさらに強く抱きつく。 笹「おぎうえしゃん・・・、そんなにむねをおしつけられたら・・・おっきしちゃうんれすけど・・」 荻「おっきして!おっきー!肩車!肩車!」 惠子「すっかり、幼児化しちゃってるよ・・・」 咲「荻上ー!しっかりして!正気を、正気を戻して!とんでもないことになった!あー、水!いや!消火器!ああなんかトラウマが・・・(アタフタオロオロ)」」 斑「落ち着くのは春日部さん!キミだって!落ち着いて!」 笹「ちがうところがおっきして立ち上がれましぇーん」 荻上は笹原の首にまたがって飛び上がってせがんでいる。 荻「えー、じゃあ、お馬さん!お馬さん!ささはらさんってえっちなんだー。あたしもささはらさんとまだらめさんのえっちなとこ想像してるもん!きゃははは」 笹「・・・れも俺がえっちなことかんがえるのはおぎうえしゃんらけれす・・・。」 荻上は笹原の正面にしゃがみこんで笹原を見つめる。 荻「ほんと?」 笹「うん、エロゲー以外で俺がえっちしたいと思ってるのはこの先生涯でおぎうえしゃんだけれす・・・。」 荻上は大きな目からハラハラと涙を流して 荻「うれしい!!!」 笹原に飛びつく。そのまま倒れこみ二人とも寝てしまう。 惠子「うわっ、だっせー。エロゲー以外って・・・こんなロマンの無い告白聞いたことねー。あーあ、二人とも涙と鼻水でくしゃくしゃじゃん!ふいてやっか!」 大「やさしいですね・・・」 惠子「こんでも兄貴だしなあ。この人も身内みたいなもんか・・・もう。」 斑「どうなることかと思ったけど・・・でどうする?春日部さん?」 咲「どうするって、目的達成じゃん!なんか問題あんの?」 斑「いや・・・少し背中を押すのが最初の目的だったけど・・・これは予想以上じゃん。二人が正気に戻っても大丈夫?覚えてたらまずいんじゃないの?特に荻上さんが!!ひょっとして、なにも・・・考えて・・・無い・・・とか?」 咲「・・・!(滝汗)けっ惠子!二人を離せ!大野!その辺片付けて痕跡を消せ!これは・・・『夢落ち』!!ということにしよう!しらばっくれろ!何聞かれても!」 惠子「うわっさらにだっせー」
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/32.html
女性向け同人における男達の考察 【投稿日 2005/11/07】 カテゴリー-現視研の日常 「しかし、女っていうのは何でヤオイが好きなんだろうな?」 それは唐突な斑目の一言から始まった。 「え・・・。なんでまた。」 ちょうど、笹原は少女漫画の名作、『森と嵐の唄』を読んでいるところだった。 その内容は現在における女性オタクたちによるヤオイ、BLの源流とも呼べるものである。 女性向けではあるものの、男も読めなくはない内容ではある。 「ヤオイだけじゃなくボーイズラブっていうのもそうなんだけどよ。 なんでなんだろうなっと。」 「うーん。確かに、この漫画でもそういう描写が主ですからねえ。」 「まあ、なに、そこには俺らにはわからない何かがあるんじゃないのか?」 そこで発言をしたのは田中だった。 「田中はどうなのよ。大野さんは読んでるんだろ?そういうの。変に思ったりはしないのか?」 「いや、別に・・・。 前から交流のあるコスプレイヤーの女の子達は大概多かれ少なかれそういう気はあったからね。 男における「萌え」と似たようなものじゃないのか?」 「いや、それは違うだろ。 仮に「萌え」=「ヤオイ」ならば、そこには決定的に違いが露呈するじゃないか。」 斑目が言った言葉に田中も笹原も考え込んでしまった。 「か、絡みとかってこと?」 そこまで黙っていた久我山が発言する。 「そうだ、「萌え」は単体でも成立するわけだが、「ヤオイ」は男の絡みが必ず入る。 もちろん、「萌え」においても「絡み萌え」が存在するわけだが・・・。」 「なるほど、男同士の絡みを確実に入れているわけですね。」 「うーん、確かに。濃度の違いはあるにせよ確実に描写はされるな。」 一同納得である。 「となると、「ヤオイ」はなぜ女性に支持されるのか。」 「男の「百合」好きとはまた違うんですかね?」 笹原が上げたのは女性同士が愛し合ういわゆる「レズ」を題材としたものである。 「うーむ、「百合」は「ヤオイ」ほどの潮流にはなっていないからな・・・。」 「そ、そうだよね。た、確かに「百合」好きは少なくはないけどさ、 や、「ヤオイ」ほどの人気はないよね。」 田中と久我山により笹原の意見は却下される。 「そう、そこがキーとなるんじゃないのか? 女性の嗜好にそこまでフィットした「ヤオイ」の良さ、それはなんなのか。 ここで「ヤオイ」の特徴を挙げていってみよう。」 立ち上がり、いつもあまり使われることのないホワイトボードを移動させる斑目。 「そうですねえ・・・。「男同士の絡みである」。」 「確かにそうだな。」 「後はそうだな・・・。「実在の人物も取り上げる」。」 「え?マジっすか?」 田中の発言に驚いたのは笹原。 「知らないのか? ジャージズ事務所あたりからビジュアル系バンド、スポーツ選手、政治家まで幅広くな。」 「うはー、俺そこまでのは知らなかったすよー。」 「まー、比較的マイナーではあるジャンルだよな。」 斑目がそれもホワイトボードに記入する。 「そ、そうだな・・・。け、「決してエロが前提ではない」。」 「ああ、あるね、エロなし「ヤオイ」。」 「そういうのだとまだ読めるのってあるんですよね。」 「まあなー。しかし男が熱烈に絡みだすのだともう読めないがな。」 「そ、それもそんなに少なくはないんだよね。」 「それも特徴だな・・・。」 そこまで意見が出たとき、一人ここまで話してなかった朽木が発言する。 「はーい、はーい、特徴言えますにょー。」 「・・・ま、いってみろ。」 少しうんざりした表情で指名する斑目。許しがきて朽木は嬉々とした表情になる。 「「気持ちが悪い」!!」 「「「「それは特徴じゃない!」」」」 全員から否定されて落ち込む朽木。 「まー、朽木君は置いといて・・・。まあ、こんなところか?」 「そうだな・・・。あとは「ヤオイ」の語源もチェックしておくべきだろう。」 「えっと、「やまなし」「意味なし」「落ちなし」でしたっけ。」 「そう、その通りだな。」 「な、何でそうなったんだろうね。」 「昔の同人で書かれてたころ、そういう系の本が大概4Pぐらいの内容だったからだそうだ。」 「まー、諸説あるからどれが正解かはわからないんだけどね。「萌え」と一緒さ。」 ここまでの内容が記載されたホワイトボードを、斑目が軽くたたく。 「ここまでの内容でどうだ?わかったことはあるか?」 「んー、そうですねえ・・・。」 少し考える一同。朽木は相変わらず落ち込んでいる。 「一つ思ったことなんですが・・・。」 おずおずと声を出したのは笹原。 「なんだ、言ってみろ笹原。」 「俺たちはキャラを見るときにその特徴や正確、容姿や環境で萌えたりするわけじゃないですか。」 「たしかにね。 まったく同じ設定のキャラでも、眼鏡一つで違うものな、感じ方が。」 「だけど「ヤオイ」の場合は、一人一人の特徴とかよりも関係性に重点をおいてるような・・・。」 「な、なるほど。だ、だから、お、男同士が必ず絡むのか。」 「女性は単体の特徴よりも関係性のほうを好む、ってことか。」 そういって斑目は青い色のマジックでボードに「関係性が重要」と記入する。 「確かに、少女漫画には恋愛色、つまり男女の関係性がメインだ。 いや、それしかほぼ無いと言ってもいいだろう。」 「し、少年漫画にもラブコメはあるけど、き、キャラ個性を強く押し出してるしね。」 「ふむ。かといって俺たちがキャラの関係性をまったく無視しているわけではないだろう?」 「それもそうですね・・・。でも、女の人もキャラの個性を無視してるわけじゃないっすよね。」 「どっちよりかってことだろう。比重をどっちにおいてるか。」 「そ、そうだね・・・。あ、あと、何で男のみなのかってこと。 こ、これがわからないと「ヤオイ」には人気があるのかっていうのはわからない気がするな・・・。」 そこまでいって、考え込む男達。 「そうだ、こういうのはどうだ?」 そういったのは斑目。 「物をキャラ化するブームがネットであったじゃないか。」 「ああ。あったね。びん○ょうたんとか。」 「あれの主導は男にあったっていうのに異論はないな。」 「たしかにそうっすね。好むのは男だと思いますけど・・・。」 「そう、男っていうのは極化するとキャラありきで萌えることが出来る。」 「ああー、そ、そういうのって多いよな。」 「そしてそこからキャラ周辺の状況などを生み出していくわけだ。」 「あー、O○たんとかそんな感じでしたねー。」 「逆に、女が極化すると、シチュエーションありきで萌えることが出来るってことなのでは?」 おおー、と歓声が上がる。 「つまり、「ヤオイ」はその語源からもあるように、前後の深い設定や、キャラの描写はなくとも、 ある特徴を持った二人がある一定状況で絡んでるだけで萌えられる、ということか。」 「そうだ、田中が今まとめたとおりだ。「ヤオイ」も、萌えの一種ではということだ。」 「でもそういう関係性を持ってくるのには男同士じゃなくてもいいのでは?」 「あ、き、聞いた事あるんだけどな、お、女の人って男の友情みたいなものが不思議に見えるって・・・。」 「女性は女性の感性を知っているから、好きな状況を考える上で女性性は違和感につながるんだろう。 そこで、久我山がいったとおり未知の領域である男の友情を持ってくる・・・。」 「そしてそれを徹底的に自分が好きな状況にしてしまうわけだな。 なるほど、男に理解できない、女のみが作れる理想世界を構築するわけだ。 もしそうなら人気が出るのもわかる気がするな・・・」 ある一つの結論にたどり着き、皆一端息をはく。 「でも、これって当たってるんですかね・・・。」 「どうだろうな・・・。いいところはついてるとは思うんだが・・・。」 「なあ・・・。」 そういって少し斑目が黙る。そして次に口を開いて出た言葉は。 「本人達に聞いてみるか・・・?」 「本人たち?ま、まさか・・・。」 「お、大野さんと、お、荻上さんにってこと?」 そういうと皆の顔に冷や汗が流れる。 「いやいや、すまん、言ってみただけだ。」 「そう、そうですよね。そんなこと聞けるわけが・・・。」 「大野さんはともかくとして・・・。荻上さんに聞いたらマジ切れされるだろうな・・・。」 安堵の空気が皆を包む。と、そこで誰かがドアを開けた。 「こんにちは。」 入ってきたのは荻上。 「こ、こんにちはー。」 「や、やあ。」 口々にあいつを交わすもののどこかぎこちない男達。 「?なにかあったんですか?」 部員達の態度の異変を感じる荻上。 しかし、その目にホワイトボードの内容が目に入るのは時間の問題だった。 「・・・。」 無言になって席に座る荻上。明らかに不愉快になっているのがわかる。 (やっべーよ、来る事考えてなかった・・・。) (明らかに怒ってますよ!オーラがでてます!) しかしここでホワイトボードの内容を消しだすのも勇気がいった。 「あのー。オギチンー?」 そこで空気の読めない男、朽木が荻上に声をかける。 「・・・。何ですか?」 よりにもよって声をかけたのが朽木である。さらに不愉快さを滲み出す荻上。 「なんでヤオイ好きなの?」 かーっと顔に血が上る荻上。男四人がビクッと体を跳ねさせる。 「な、なにを聞いてくるんですか!!!!」 「先輩方が何で女の人はヤオイが好きかって言う論議をしてたにょー。 そこで実際に聞いてみようかなーって思ったにょー。」 「・・・!」 言葉の出ない荻上に対し、朽木はさらに突っ込みをかける。その間も、声を出せないヘタレ四人。 「で、何でなのかにょー?」 「どうしてにょー?」 「答えてほしいにょー。」 しつこく聞かれ続け、ついに荻上の臨界点がマックスを超えた。 ガターンと立ち上がり、息を荒げる荻上。すでに涙目になっていた。 そして窓に向かってダッシュし始めた。 「と、とめ・・・・。」 斑目が言うより早く、笹原が窓の前に立って食い止める。 「お、落ち着いて、荻上さん。」 「いかせてください!もう嫌です!」 捕まえた笹原の腕の中でなおも暴れる荻上。そこに更なる来客が登場した。 「ういーっす・・・。ってなんなんだ、この状況は!」 「あ・・・。」 咲と高坂である。 「あ、春日部さん、いいところに来た。荻上さんがまたダイブを・・・。」 「ええー!なにが原因なんだよー!」 その言葉に合わせて四人の視線は一人に集まる。朽木。 「またお前かー!!」 ばちこーん!! またもビンタで朽木を屠る咲。くるくる回転しながら朽木は落ちた。 「ほらほら、もう大丈夫だから落ち着きなさい・・・、ってまたすごい状況だね・・・。」 はっと荻上が我に帰ると、自分が笹原の腕の中にすっぽり納まってる状況になっている事に気付く。 「あああああ!も、もう大丈夫ですから!」 顔を真っ赤にして腕から逃れようとする荻上。 「そ、そう・・?ご、ごめんね・・・。」 「・・・べ、別に謝らなくたっていいですよ・・・。」 ようやく落ち着いた荻上は、ゆっくり席に戻る。笹原も。 「ったく・・・。 しかし、だいの男がそろいもそろって何でクッチーがやること黙ってみてたんだよ。」 「あ、もしかして原因はあれですか?」 そういって高坂は目線をホワイトボードにやる。 「いや、荻上さんが来る前に見ての通りの論議をしてたんだが・・・。 そういうことを考えずに盛り上がってしまって。一応来たあとはやめたんだがな・・・。 朽木君がこのことを荻上さんにしつこく聞いてしまって・・・。」 「何でヤオイがすきなのかって?」 「そういうこと。止められればよかったんだが、下手を打って興奮されすぎてしまうのもと思ってな・・・。」 咲はそこまで聞くと、目線を荻上に向けた。 「何で?」 「聞くのかよ!」 そういって抗議の声を上げたのは斑目。 「だって知りたいじゃない。」 そういってニヤニヤ顔になる咲。荻上はうつむいて答えようとしない。 「あー、まあ、そこまでにしようよ・・・。」 「えー、笹やんは知りたくないのー?」 「いや、まあ、興味はなくはないけど・・・。 でも、ここまで嫌がってるのを聞くのはよくないよ・・・。」 「ふーん、まあ、会長様がそういうならね。」 そういって、咲はそれ以上の詮索をやめにした。 「じゃ、大野が来たらきこ!」 「ま、まあ、話してくれるならね・・・。」 「いやー、話すでしょ、あいつなら。ね、田中ー。」 「ん・・・。だろうね・・・。」 そういって苦笑いする田中。そしてタイミングよく来るものである。大野が入ってきた。 「こんにちはー。アメリカの友達から電話があって遅れちゃいましたよー。」 ニコニコ顔で入ってきた大野はその空気がいつもと違うことに気付く。 涙目の荻上、ニヤニヤ顔の咲、冷や汗だらだらの男達(高坂は除く)、落ちてる朽木。 「な、何かあったんですか・・・・?」 「いやね、男供があのボードの通りの議論をしてたんだって。 まー、それでいろいろあったんだけどさ。」 「へ・・・?「第一回なぜ女性はヤオイ好きか会議」?なるほど・・・。」 「まー、あんたの口から回答を、と思ってね。」 「えー、私が言うんですかー?」 大野は、そうはいっても、顔が笑顔である。 「そう。いえるっしょ。」 「えー・・・。でも男の人にはわからない感性ですからねえ。」 「そういうもんなの?」 「私にもよくわからない部分はあるんですよ。口でいくらでもいえるんですけどね。 こういうシチュエーションで、こういう台詞があるとすごいいいとか。 でも、なんで?って改めて聞かれると・・。」 「よくわからないってこと?」 「そうですね・・・。そういうことですね。」 「そういうものって嫌いになろうと思っても無理ってことか。」 「ですね。恥ずかしいことなのかなって思ってた時もありましたけど。 もうはっちゃけちゃいましたし。」 「だなー。最近あんた会ったころよりより生き生きしてるもんねー。」 女達の会話を聞きつつ、緊張が解けていく男達。 「まー、なんだな。本人達にもよくわからん、ってことか。」 「確かに、俺たちも何でこのキャラが好きなのって言われたときに、突き詰めたらよくわからないっすよね。」 「そうだな。嗜好って言うものは何かよくわからんものに左右されてるのかもな。」 「ま、まー、とりあえず、お、落ち着いてよかった。」 荻上は二人の会話を聞いてないフリをして思いっきり聞いていた。 たまに頷きつつ、反論しかけてやめたりしながら。 今日も現視研は、騒動もありつつも、平和です。 「しかし、笹やんよく止められたね。」 「ああ、たぶんそうなるだろうなって思ったからね・・・。 その前に止められればよかったんだけど言葉が出なくて。」 「へー、で、オギーの抱き心地はどうだった?」 「へ?そんなの考える暇なかったよ・・・。あはは・・・。」 「オギーは?抱かれてどうだった?」 「なにを聞いてくるんですか! そういうことばっか聞いて頭の中ピンク色ですか!」 「あー、それ誰かにも言われたっけな・・・。 そんなにやらしいか?わたし。」
https://w.atwiki.jp/fujoshi/pages/13.html
腐女子に関係しそうな本や漫画について色々。 紹介文にも考察文にもなりきれず、なんとも中途半端。 簡単に指標を設けてみました。 腐女子関連度 ─ 腐女子に関係するもの(分析、考察、描写)をどれだけ含んでいるか おすすめ度 ─ 読み物としての面白さ(超主観) ※アフィリエイトについて※ アフィ厨ではないので、リンク先から買ってくださいとは言いません。 普通に検索して購入or書店でお買い求めください。 ただIDを設定しないと@wikiにお金が入るそうで、それはなんだか癪だと思い独自にID取得しました。 腐女子関連書籍 げんしけん 美少女 の現代史 げんしけん 木尾士目(著) 講談社、2002年。 腐女子関連度…★★☆☆☆ おすすめ度…★★★★★ 大学のオタクサークル(現代視覚文化研究会、略して現視研)を舞台に繰り広げられるオタクな日常を描いた作品。 コミケやコスプレといった話題から、恋愛や就活といった話まで。 どちらかというと、男性のオタクの比重が高いものの、腐女子についても観察がなされています。 作中に登場する主な腐女子は大野さんと、荻上さんの二人。 大野加奈子 げんしけんに登場する大野さんは腐女子かつコスプレイヤー。 腐女子の代弁者としてしばしば 春日部咲=一般(非オタク)人 大野加奈子=腐女子 という構図が利用されます。 荻上千佳 過去のトラウマが原因で、腐女子であることに後ろめたさを感じている。 その反動で、開き直った腐女子である大野さんとは対立。 最終的にはとある出来事を経てトラウマを乗り越え、大野さんとも和解する。 荻上さんの「どうしてそんなにホモが好きなんですか?」という問いに対する、 「ホモが嫌いな女子なんかいません!!」という大野さんの回答はネット上でAAまで作られたほど。 げんしけんには、オタク心をくすぐるあるあるネタが登場しますが、 中でも荻上さんの心理描写は秀逸だと思いました。 例えば荻上さんが大野さんを嫌うのは、一種の同属嫌悪、あるいは心理学で言うところの投射という防衛機制です。 同じ腐女子だからこそ彼女は、大野さんの行動が許せない、"痛い"と感じます。 もちろんこの背後には、荻上さんのトラウマが関係するのですが このトラウマとは現実の多くの腐女子が抱えている(であろう)後ろめたの原因とほぼ同義でしょう。 いささか乱暴かもしれませんが、これはそのまま、 ネットの腐女子による腐女子叩きに当てはめることができるように思います。 美少女 の現代史 ササキバラ ゴウ(著) 講談社現代新書、2004。 腐女子関連度…★☆☆☆☆ おすすめ度…★★☆☆☆ 1970年代以降の美少女に萌えてきたオタクの歴史を分析した新書。 男性のオタクについての考察が大半ですが、腐女子についても少しだけ言及しています。ホントに少しだけ。 第4章「美少女という問題」の中の「『かわいい』という価値観」や「視線としての私」 と題された論評は非常に興味深いと感じました。 著者自身もそう述べていますが、「かわいい」という価値観を与えられる存在から逃れようとし 「視線としての私」へなろうと試みたのが腐女子に他ならないからです。 ただ著者の、視線を投げかけることで実存を確立するという図式は若干の疑問があることを付け加えておきます。
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/60.html
めぐりあい、アキバ 【投稿日 2005/12/05】 カテゴリー-笹荻 「あれ?」 「あ・・・。」 休日の昼、アキバのメイン通り。 ばったり、といった表現が似合いすぎる状況で出会った二人。 笹原と荻上。 「こんにちは。」 「こ・・・、こんにちは。」 少しぎこちなく挨拶を交わす。 「買い物?」 「ええ・・・、まあ、そんなところです。」 「お昼食べた?俺これから行くんだけど、一緒に行かない?」 笹原にしては勇気を出した発言であった。 「へ?・・・私もこれから食べようと思ってたんでかまいませんけど・・・。」 荻上としても断る理由がなかった。そう思っていた。 いや、断りたくなかったのかもしれない。 「じゃ、行こうか。どこか希望とかある?」 「いえ、特には・・・。」 「そう?」 アキバといえどもマックぐらいはある。 二人はそこで食事をすることにした。 「いつもマックで食べるんですか?」 「いやー。うどん屋とか定食屋とかね。色々あるけど。」 少し話がしたかった笹原は、落ち着ける場所を選んだのである。 笹原、今日はがんばってます。 「そうですか。」 「そういえば、買い物っていってたでしょ?何買いに来たの?」 「えっと・・・。パソコンのパーツなんですけど・・・。」 話によると、この前買ったPCの動きが多少悪くなったようなのである。 「フォトショ使ってるときに特に良くなくて・・・。 ネットとかで色々読んだんですけど・・・。訳わかんなくて・・・。 CPUとか、換えればいいのかなって思ってきたんですけど・・・。」 まだまだPC初心者である荻上には、わからないことが多い。 「いやー。たぶんメモリが足りてないんだよ。容量の問題もあるかな?」 「メモリ?」 「うーん、この前あのPCの形とかは見てるから、どうすればいいか分かるよ。」 「本当ですか!?」 「うん。それじゃ、ご飯食べた後に一緒に見に行こうか。」 「え・・・。笹原先輩も何か用があってきたんじゃ・・・。」 「いやいや。いつもの巡回。気にしないでいいよ。」 「はあ・・・。じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」 さて、到着したのはパーツショップ。 「中古でも出回ってないわけじゃないんだけどね、値段そう変わんないからさ、 新品買った方がいいだろうねえ。穴の数も分かってるし・・・。」 「はあ・・・。」 この二年間でそれなりのPC知識が笹原にはついていた。 ああいうものを持つと色々いじりたくなるのは男の性である。 「他になんか欲しいものとかないの?」 「タブレット使ってみようかなって思うことはあります・・・。」 「ああ、そういうのあると便利そうだよね。」 会話をしながら笹原は必要なメモリを店員に訪ねていた。 「えっと、1万ぐらいだね。」 「え、そんなもんでいいんすか?」 CPUの値段を見てきた荻上にはすごく安く感じた。 「まあ、メモリでもおっつかなくなったらCPU換えた方がいいけど・・・。 多分、当面はそれですむと思うよ。」 「はあ・・・。それじゃ、タブレットも見てみようかな・・・。」 「うん、それがいいんじゃない?」 タブレットに関してはたいした知識がない笹原だったが、 店員に話を聞きにいったり、色々と手助けをしてまわった。 購入して、外に出る。 「結局、二つあわせても予算より安く済みました・・・。」 「うん、良かったね。」 パーツショップからの帰り道。同人ショップの目の前に差し掛かる。 「ちょっと寄ってく?」 「え・・・。あ、はい・・・。」 荻上ははじめ寄って帰るつもりだったが、笹原と一緒に行動しだして諦めていた。 しかし、店の前に差し掛かったとき、顔に出てしまったのだろう。 気を利かした笹原が声をかけたのである。 「じゃ、買い物終わったら店の前で待ち合わせね。」 おそらく、買い物風景を見られたくないだろう荻上を思い、 店内では別行動にすることを提案した笹原。 まあ、見られたくないのは笹原も一緒だろう。 「わかりました・・・。」 そういって別れ、それぞれ買い物をする。 (何かさっきの約束、恋人みたいだったなあ・・・。) 買い物をしながらもそんなことを考えて顔が真っ赤になる荻上。 しかし、すぐに顔を振って、その考えを打ち払おうとする。 (いやいや・・・。そんなんじゃねえって。笹原さんは別にそんなんじゃ・・・。) しかし、先ほどの言葉が頭でリフレインしては同じ問答の繰り返しである。 買い物が終わって、階段を下りていくと、入り口にはすでに笹原がいた。 「あ、すいません!」 思わず出た謝罪の言葉に気付いて、笹原はこっちを振り向く。 笑顔で手を軽く振って、気にしてないよ、の合図を送る。 しかし、あせって駆け下りていく荻上は、後二段のところでつまずいてしまう。 「きゃ・・・。」 階段から転げ落ちそうなところを笹原が抱きかかえた。 「・・・大丈夫?」 「え・・・。あ、はい・・・。」 抱きかかえられた状況に、少ししてから恥ずかしくなる荻上。 「あ、あ、も、もう大丈夫ですから・・・。」 「あ、ご、ごめん・・・。」 しっかりと荻上を立たせて手を離す笹原。 「いえ・・・。迷惑おかけしました・・・。」 「いやいや・・・。」 お互い、妙な緊張感が走っていた。 「じ、じゃあ、いこうか・・・。」 「は、はい・・・。」 駅に向かう途中で、次に寄ったのはゲームショップ。 歩いているうちに徐々に緊張感はほぐれていた。 「最近のゲームって面白いのあります?」 「ワンダ、面白かったよ。」 「へえ。イコのチームが作ってるんですよね。」 「そうそう。やって損はないよ。今度貸してあげるよ。」 「じゃあ、お願いします・・・。」 ふと、荻上がショップの二階に向かう階段の張り紙を見る。 あるソフトのタイトルが書いてあった後にこうあった。 『本日13時より限定版販売します!』 二階はいわゆるパソゲー、もっと端的に言うとエロゲーなのだが、 それが今日発売してるのがあったようなのである。 (あ、もしかして・・・。) 前、そのゲームのタイトルを斑目と話しているのを聞いたことがあった。 「あの、先輩、もしかして、あのゲーム買いに来てたんじゃ・・・。」 ん?と言われてそっちの方を向く笹原。 「あはは。まあ、目的のひとつじゃないって言えば嘘になるけどね。」 今はすでに15時。限定版はもうないだろう。 「す、すいませんでした。」 「え、え、別にいいよ。時間通り来ても買えるとは限らないしさ。」 「で、でも。」 「それじゃ、これからそれ通常版で買ってくるよ。ちょっと待ってて。」 「は、はあ・・・。」 笹原の気遣いにまた少しどきどきする荻上であった。 笹原の目的がエロゲーであるという事実は、どうでもいいようだ。 二人は近くに住んでいるので、降りる駅も一緒である。 電車の中でも色々話をした。 ゲームのこと、漫画のことから、取り留めのない日常のことまで。 駅の改札から下りて、二人の家への分かれ道。 「今日は、本当にありがとうございました。」 「いやいや。今度からは何かあったら先に相談してよ。 今日俺にあわなかったら大損してたよ?」 「本当、そうですね・・・。反省しました。」 「あはは。まあ、それつけるのに分からないことがあったらメールでもしてよ。」 そういって、買ったメモリに視線を送る。 「はい・・・。何から何まですいません。」 「いや、でも、今日は楽しかったよ。」 「そうですか?・・・そうですね。楽しかったです。」 にっこり笑う笹原の言葉に、 最初疑問で返したのは迷惑だったんじゃないだろうかという気持ちがあったから。 でも、その笑顔に、また今日を振り返って、楽しかったと思った。 「それじゃ、また大学でね。」 「はい。また。」 そして、二人はそれぞれの帰途についた。 荻上は思った。 (今思うと、ああやって二人で歩いたのって二回目だけど・・・。 周りから見たらそういう関係って思われてたのかな? うわー。スゲーハズカシー・・・。でも、本当楽しかったな・・・。) 顔を赤くしながら、歩く。 笹原は思った。 (よし、今日は頑張った。頑張ったよな? 最後、楽しいって言ってくれたし。俺も楽しかったし。 限定版捨てて良かった。本当に、良かった。) ガッツポーズを決めながら、歩く。 「こにょにょちは~。」 「こんちは。」 「・・・・こんちは。」 「こんにちは。・・・何かご機嫌ですね?」 「いやいや、昨日アキバへ行きましたらこんなシーンを撮りまして・・・。」 「ま、まさか・・・!」 「あら!笹原さんと荻上さんじゃないですか!」 「あちゃー・・・。」 「あらあらあら・・・。こんな風にデートする中だったんですねえ・・・。」 「違います!たまたま会って、買い物手伝ってもらっただけで・・・!」 「いずれにせよ、朽木くん、GJですよ!」 「いや~、褒められると嬉しいですにょ~。」 「あはは・・・。」
https://w.atwiki.jp/kss_oniren/pages/71.html
曲名 レベル 星間飛行 3
https://w.atwiki.jp/purochidatabase/pages/229.html
北海道日本ハムファイターズ( 09~) 計12種類 2014 121 2015 018 182 2016 AS-05 T-10 154 SJ-26 2017 SJ-27 2018 099 2019 015 2020 170 2021 099
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/391.html
『はじめてのおつかい』 【投稿日 2006/09/29】 カテゴリー-笹荻 「戦略会議?」 荻上千佳がすっとんきょうな声を上げたのは、目の前の大野加奈子のセリフが一瞬理解できなかったからだった。 「そそ、そーです。会議です」 加奈子は楽しくてしょうがないという表情をしている。 「第二回・荻上さんのコミフェスデビューを現視研で応援しよう会議~!」 「なんでそんなコトしなきゃならないですかっ!」 テンションの上がってくる加奈子の声に負けないように、千佳も声を張り上げた。 「私の個人サークルで参加してるんですからご迷惑はおかけしないって説明したじゃないですか。それになんですか第二回って!」 7月はじめのとある午後。いま現視研部室にいるのは加奈子と千佳、そして二人に背中を向けて履歴書を量産中の笹原完士の3人だけだった。 「なーに言ってるんですか水臭い。荻上さんだって現視研の一員でしょう?メンバーがサークルの趣旨に沿った活動をしてるんですから、手伝わないって手はありません」 加奈子が言葉に力を入れる。 「それに第一回はついこないだやったじゃないですか、荻上さんが当選したの教えてくれた日に」 「う」 千佳の動きが止まる。そのことは……思い出したくなかった。 千佳が夏コミの当選を知ったのは6月のおわりのことだった。冬には覚悟を決めて申し込んだ即売会だったが、数ヶ月を経る間に記憶も覚悟も当時の勢いを失っていた。 いざ当選通知をポストで発見してみると、「自分にできるのだろうか」「漫画なんか描けるのだろうか」などと不安と後悔ばかりが先に立ち、翌日顔を出した部室で千佳は加奈子にぽろりと本心を吐露したのだ。 そんな彼女を加奈子は先輩として友人として励まし力づけ、それに千佳も勇気づけられた。それまでギクシャクしていた二人の仲も、わずかではあったが近づいた日だった……千佳が加奈子にコスプレをさせられたこと以外は。 「あの会議、笹原さんも憶えてますよねー?」 加奈子が笹原の後頭部に話しかけると、彼はこの位置でも判るくらい顔を紅潮させた。 「あー!笹原先輩忘れてくださいってお願いしたじゃないですか!」 「あ、あ、ごっごめん」 真っ赤な顔で振り向いて詫びる。が、千佳の顔を見てあの日のことをさらに思い出し始めたのは明らかだった。頭の上に雲型の吹き出しが見えるようだ。 「えーと、いや、なにも憶えてないよ?ホラあの日俺は部室に顔出さなかったんじゃ……」 「荻上さんのベアトリーチェ、かわいかったですよねー?笹原さん」 「ぶ!?」 「大野先輩~っ!」 笹原先輩に見られた日。あんな恥さらし、一緒の不覚だ、そう思って忘れようとしてるのに。大野先輩のバカ。 「そんなくだらない話ばかりしてるんなら、もう帰りますからね!」 捨てゼリフを投げつけて帰ろうとする。 「荻上さん、からかったのはごめんなさい、でも一人じゃ大変ですよ」 加奈子は立ちあがろうとする千佳を呼び止めた。 「去年の笹原さんたちの話聞いてみて、人手はやっぱり必要だって思ったんです。設営や撤収なんか力仕事もあるし、トイレや食事の間スペース閉めたくないでしょう?せっかく本作るんなら、いっぱい人に見て欲しいんじゃないですか?」 中腰のまま動きを止めて、痛い所を突いてきた加奈子を睨む。 実際、一人で全てをやれなくもないとは思っていた。これまで下調べをして、当日の運営の仕方は頭には入っている。しかし、そもそもサークル参加が初体験の千佳にとっては不安材料も多く、なにより加奈子が言うとおりブースが無人になる時間が惜しかった。 先日の加奈子との話し合いで個人誌を発行する覚悟は決まった。が、どうせ出すなら一人でも多くの人に、自分の作品の出来を見て欲しいのが心情というものだ。 たった数時間の開場時間に、知名度も根回しもない自分の本の前で立ち止まってくれる人が一体どれほどいるというのか、そう思うと、これから制作する作品たちとなるべく一緒に過ごし、目前を通り過ぎる人たちに一言でも自分の漫画をアピールしてやりたいと思った。 食事は最悪、抜いたっていい。だけどトイレは?冬にも思い知ったあの熱気の中で具合が悪くなったら?不測の事態が起こったら? 「わたしたちも荻上さんが頑張ってるの、知ってますよ。だから、ちょっとでいいからお手伝い、させてください。ね?」 火のつきそうな千佳の視線をものともせず、にこにこと笑いながら加奈子が提案する。ようやく汗が引いてこちらを見ている笹原も、千佳を見つめてうなずいた。 「……わかりました。確かに人手があるに越したことはないですから!」 我ながら素直じゃないなと思いながら、根負けした風を装い椅子に座る。加奈子の笑顔が一段と輝いた。 「ありがとうございます!わたし、頑張りますね。笹原さんも頑張りましょうね」 「あ。うん、そうだね」 「いや、お礼言うの、私のほうですし。すいません。ありがとうございます」 詫びるのも感謝するのも慣れていない自分の声が、まるで棒読みのように聞こえる。それでも二人は、にこにことこちらの言葉を聞いている。イヤミでもなんでもないのは、もう解っていた。現視研の人たちというのは、こういう人種なのだ。 「じゃあじゃあ、いつにしましょうか、荻上さんちに行くの」 「え……」 「はあっ?なんで私の家なんですか!」 「いーじゃないですかぁ、リーダーの家に集まるなんて決まりみたいなもんですよ。参加要領とかいろんな資料も荻上さんちなんでしょ?持ち歩くより、自分で保管してるほうが絶対安心ですよ」 「あー。去年やった時にも入場券見当たらなくなって慌てたんだよね、ギリギリで」 「……わかりましたよ!もういいです私の家で」 「荻上さん、そこはもっと明るく『Welcome home,my dear~』って」 「英語なんか喋れません!」 「Oh,no」 「おーのーじゃねっスよ、いっくら大野先輩だからって」 「ぷっ」 笹原が吹き出した。 「?」 「どうしたんですか?笹原さん」 「あー、あ、ごめん」 慌てた様子で謝るが、笑いをこらえているのが明らかだ。 「いや、大野さんと荻上さんの掛け合い、なんかテンポよくなってきたなーって思ってさ」 「あらまあ」 「そっ……!」 まんざらでもない様子の加奈子と、条件反射的に怒り出す千佳。この対比がまた笹原のツボに入って大爆笑する。 「あっはははは!」 こんなことで笑えるなんて、就職活動でそうとう疲れてんだなァ……そんなふうに思っていると、いつのまにか隣に寄ってきた加奈子が紙片を見せた。 「荻上さん、ここだけよろしく」 「は?」 戸惑う暇も与えず千佳を引っ張って立たせ、今度はなんだと興味津々の笹原に視線を送る。 「曜湖と!」 千佳の脇腹をつつく。紙切れに書いてあった文字。『荻上さんのセリフ→』……。 「あ、あっ……鳴雪のっ」 「「げんしけんシスターズでーす!」」 「ってナニやらせんですかーっ!」 セリフを合わせるばかりかうっかりポーズまでとってしまい、慌てて抗議するものの、加奈子はどこ吹く風だ。 「ノリいいじゃないですか荻上さん。ほら笹原さんもたいそうお気に召したようですよ」 悶絶している笹原を指す。笑いすぎで声も出ないらしい。 「笹原さん笹原さん、今度は咲さんに『ミナミハルオでございます』って言ってもらうバージョン、準備しときますから」 「古いっすよ大野先輩」 「も、やめて……死んじゃうよ俺」 「ほら、笹原さん困ってるじゃないスかぁ」 笹原が楽しんでいるらしいのはありがたい。が、あまり恥さらしな真似ばかり彼の前でしたくないのも本音だった。これまでの千佳の記憶でも、笹原の前では自分はまったくいいところを出せていない。 思い起こしてみれば、1年前の夏コミ準備ではみんなが一生懸命なときに勝手に泣き出し、冬コミでは変装までしてやおい同人誌を買いこんでいるのを見つかり、先日はついに恥ずかしいコスプレまで……。 「ふざけてるんなら本当に帰りますよ!」 「あああごめんなさあい~!」 まったく、3人が集まれる日付を確認するだけのことになぜこんなに時間を食わされるのか。結局『第二回ナンタラ会議』は本題3分、雑談27分を費やして終了した。 **** 「それじゃ来週、よろしくお願いします。ご迷惑かけます」 「だから硬いですよ荻上さん、もっと楽に楽に」 いずれにしても気分がそがれた千佳は、テーブルの上の荷物を片付け始めた。今日はもう講義もないし、自宅で原稿の続きでもしよう。その前にペン先のストックが切れているし、気分転換に買い物でもしてこようか。 「あれ、荻上さん帰っちゃうんですか?」 「ええ、あとは家帰ってやります」 「それじゃ、俺も出るよ。大野さん4限あるんでしょ」 「あ、すいませえん。履歴書書き、はかどりました?」 「ご覧のとおり。ちょっと失敗しすぎちゃったよ、もう少し買ってこなきゃ」 あ。千佳の頭にセリフがまたたいた。『あ、私も生協寄るんで、一緒に行きませんか?』どうせついでだし、さっきの無愛想な態度を詫びるチャンスもあるかもしれない。 「あ……」 口を開くと同時に、笹原の携帯電話が着信を告げる。聞きなれた着メロではない、普通の呼び出し音だ。 「あ、ちょっとごめん……ハイ笹原です……あ、はいお世話になります。先日はありがとうございました」 彼が一気に緊張したのがわかる。たぶん就職の面接先だろう。これまでにも何度か同じ場面に遭遇していた。 「はい、はい……え、ホントですか?」 口調が明るくなった……いいニュースだろうか。同じように固唾を飲んで見守る加奈子と顔を見合わせる。 「ええ、はい、大丈夫ですよ。お願いします、ありがとうございます。15時半に本社ですよね、はい、行けます」 そのあともしばらく会話が続き、電話は切られた。笹原は時計を確認すると、壁にかけてあったスーツを手にする。加奈子が聞いた。 「笹原さん、いいお話ですか?」 「うん、二次面接やるから来いって。福間書房」 嬉しそうに答える。大手出版社の名前に、千佳も心が浮き立った。 「あ……おめ」 「ええー!すごいじゃないですか笹原さん!」 おずおずと発せられた千佳の声はしかし、アメリカ仕込みの加奈子の大声にかき消された。 「あ、ありがとう、でもこの先が長いからね。それにもう出なきゃ。あ、履歴書どうしよ……ここに置いておいて……いや、明日も朝から出ちゃうし……しょうがないな、持って行くか」 「……ぁ、あのうっ!」 「わっ、え、なに?」 勇気を振り絞って出した声は、今度は少々大きすぎたようだ。笹原も加奈子も、目を丸くしてこちらを見ている。 「あ、すいません……私、帰る前に生協で買い物して行こうと思ってたんですが、その」 笹原に目を合わせられない。余計なお世話じゃあるまいか。断られたらどうしよう。 「履歴書、ついでに買っておきマスよ?……それに、その書きあがった分も、笹原さんの家にお届けするくらい、なら」 言ってしまった。お節介に取られないだろうか。お節介だよなあ。 「あ……ありがとう、荻上さん。でも迷惑じゃ……」 笹原が遠慮しそうだと思ったところまでは予想通りだった。が、その声にかぶせて、加奈子の予想外の大声が響く。 「よかったじゃないですかぁ笹原さあん!」 「え?」 「笹原さん、次の会社の履歴書なんか持って歩いたら面接の気迫に欠けますよ!それになにかの拍子に面接先で見られちゃったら大マイナスじゃないですか」 「あ、なるほど」 「せっかく荻上さんがああ言ってくれてるんです。甘えない手はないですよ!」 加奈子が千佳に目配せを送る。千佳も慌てて言葉を重ねた。 「あっ、ほっ、ホントに大丈夫ですついでですから!笹原さんの家の場所も判りますし、あの、ポストにでも入れておきますから」 笹原は千佳を見つめる。そして、ほっとしたように微笑んだ。 「……ありがとう、荻上さん。それじゃ、お願いしてもいいかな」 笹原の役に立てる。それだけで、なぜかは判らないが安堵感が心に広がった。まあこれで、少しは自分のイメージを挽回できる。それだけでもいいではないか。 封筒に入れた履歴書の束と、今から買う分の代金を受け取る。三人で部室を出て、加奈子がドアに鍵をかけた。 「それじゃあ荻上さん、ごめんね、ありがとう。ポストに放り込んでおいてくれればいいから」 「はい、わかりました」 「笹原さん笹原さん。合鍵渡しちゃったらどうですか?」 「……ナニ言ってんの大野さん。それじゃ行ってくるね」 「頑張ってくださいね!ほら荻上さんも!」 「あ、頑張って……クダサイ」 スーツの上着を肩にかけて駅へ急ぐ笹原の背中に、やっとの思いで声をかける。片手を挙げて振り向き、笑ってくれた笹原に、もっと大きな声で言えたらいいのにと思った。 「荻上さん」 もう見えなくなった廊下の先をぼんやり見ていると、加奈子に声をかけられた。 「あ、はい」 「荻上さんも頑張りましょうね!」 顔中に力を込めて自分に笑いかける加奈子に、そこまで気合を入れなくても、と思う。とはいえ、この雰囲気に慣れてきている自分がいるのも確かだった。 「ありがとうございます。原稿描き、頑張りますね」 今のセリフは自然に言えた。自分としては満足だが、……なぜか加奈子の表情は微妙だった。 「……あれ?私なにか変なこと言いましたか?」 「いっいえいえ、なんでもありませんよ。じゃ、わたし講義あるんで失礼しますね」 「はい。じゃ、また」 「さよなら。……荻上さん」 きびすを返して歩き出すが、数歩で加奈子から呼びかけられた。歩きながら振り返る。 「はい?」 「頑張ってください、ね!」 「だーから頑張りますって!」 まったくおかしな人だ。原稿頑張るって言ってるでねェか。 自分の頬が熱くなっているのはあえて無視して、千佳は売店へ急ぎ足で向かった。 **** そして……そして数時間後。 千佳は現視研の名簿から書き写した笹原の住所を見つめながら、夕焼けの住宅街を歩いていた。顔には妙な疲労感が見て取れる。 「……なんだってこんなことになっちまったのか」 もう何回繰り返したか判らない呟きをもらし、ため息をつく。 つまづき始めは生協の売店だった。 文具売り場へ行くなり、学生と店員との話し声が聞こえてきたのだ。 「ええ~?おばちゃんそりゃないよォ!」 「ごめんねー、さっき来た学生さんが残ってた履歴書根こそぎ買ってっちゃって」 耳を疑い近づいた千佳に、続いて言葉が聞こえてくる。 「明日の朝イチで入るから、それ待ってね、すいません」 「もー。いいよ、コンビニ行ってくるから」 「ほんとごめんねー」 事情は飲み込めた。学内の売店はここしかなく、ようするに手近に履歴書用紙を買う場所がない、ということだった。 「(困ったな。……買っておくって言っちまったし、これで手ブラはねえよなー)」 千佳は立ち止まって考えた。 「(コンビニは……なんか間に合わせっぽくて印象良くねえな……『え?わざわざ街まで出て買ってきてくれたの?荻上さん、俺嬉しいよ(感涙)』……ちょっと行ってくっかな、どうせヒマだし)」 降ってわいたイメージアップのチャンス。それに、言いつけられた買い物くらいこなせないでどうする。モノレールで10分のターミナル駅には大きなショッピングセンターがあるし、行って帰ったって小一時間の散歩だ。 ……そう思ってたどり着いた文具店が、なんと改装工事中だった。 「(あー、あー、えーと、町ん中の文房具屋……場所も知らねしこれでまた定休日とかいうオチがついてたら目も当てられねし、そっそうだ、絶対あるトコ!)」 もうこの段階でテンパった千佳の脳には、はるばる特急に乗って新宿に出るしか選択肢がなくなっていた。途中にもターミナル駅や大きなデパートのある街もあるのだが、不運が重なってくると悪魔にでも魅入られたような気分になってしまう。 「(時間がかかるって言ったってここまで来てれば片道30分だし、ほら大きな画材屋だってあるでねェか、そーだそーだちょうど絵の具なんかも見ときたかったんだ、ええい行っちまえ)」 ……と、いったことがあって、千佳の帰還がこんな時間になってしまったのだ。 実際買物はスムースに済んだし、ペン先のほかにも以前から使ってみたかった彩色具も買うことができた。さらにせっかく新宿まで来たんだしとばかりにいろいろ他の買い物までしてしまった千佳がようやく笹原の家を探し当てたときには、もう日が暮れようとしていた。 アパートのドアをノックしてみるが返事がない。彼はまだ帰宅していないようだ。 「(まだ帰ってねェのか、まあでも余計な心配させずにすんでよかった)」 紆余曲折はあったがきっちり用事を果たせることにほっとしながら、バッグから文具店の紙袋を取り出す。ドアノブの下の郵便受けを見つめる。 「(コレだけ放り込んで帰ったら、そっけなさ過ぎるかな?手紙かなんか、つけた方がいいだろか……いやいや、頼まれたモン買って来ただけなんだから……でもなにもナシだと、迷惑してたみたいに取られるかな)」 紙袋を見つめながらまた堂々めぐりを始める。知らず知らず、思考が声に出ていた。 「電話かメールでもしとくか……『いま着きました。履歴書、ポストに入れておきますね』……用件伝えるためだけにメールすんのもなァ」 仮想メールの文面を読み上げる声が乙女モードになっているが、これも本人は気付いていない。 「……『面接お疲れさま!頼まれたものと一緒に栄養ドリンクも買ってきました。これで元気だして下さいね』いや買ってねェし……あ、でも今から買ってきて」 振り向いた千佳の目の前に、人の影。 「荻上さん?」 「ひゃあッ!」 そこには笹原が……ちょうど帰って来た彼が、目を丸くして立っていた。 「さ……」 「え、荻上さん、こんな時間にどうしたの?」 「あ……っ、あの、頼まれものを」 狼狽しながら、とにかく手に持っていた用紙を手渡す。笹原は受け取ったものの、新宿のデパートの紙袋に首をひねっている。 「え、あ、ありがとう……って、えっ生協で買うって言ってなかった?」 「それが……売り切れで」 「それでわざわざ新宿まで行ったの?」 「や、ちょ、ちょっと買い物もありましたし」 「それにしたって……」 こちらを見る笹原の目つきが『それにしたってこんな無駄なことを』と言っているようで、いたたまれなくなる。 「あっ、す……すいません、それじゃこれで」 感情が爆発しそうになるのを感じて、笹原の脇をすり抜けようとする。と、笹原がその手を掴んだ。 「荻上さん、待って!」 「は……っ」 「あ……びっくりした?ごめん」 よほど驚いた表情をしてしまったのか、手を離して詫びる。 「……荻上さん、とんだ手間かけさせちゃったね。ごめんね、ありがとう」 「いっいえ……さっきも言ったとおり、ついでですから」 「あの……せっかくだし、お茶でも飲んでく?」 「……え?えええ?」 「あ、あー、いや、きたない部屋だけどまあ掃除くらいしてるし、その……なんだ、お礼……ってほどにもなんないか、えーっと」 目の前の人物が動揺しているのを見て、千佳はようやく我に返ることができた。 「あ、あの、ありがとうございます。でも今日は帰ります。笹原さん、お疲れだと思いますし、明日も朝から面接ですよね」 「え……あ、うん」 「お使い、こんな時間になってかえってご迷惑おかけしました。でも、また何かあったら気にせず言ってください。それじゃ失礼します」 一気に喋って、くるりと体を回転させて歩きだす。今度は笹原は引き止めなかった。 「……あのっ」 その代わりに、こう話し掛けてきた。 「来週、打ち合わせ、よろしくね。楽しみにしてるから」 千佳は体をわずかに回し、顔を彼に向ける。笑えればいいのに、と思うが、今の自分には無理そうだ。 「はい、よろしくお願いします……私も」 せめて、できるだけ普通の顔をして、彼に答える。 「私も、楽しみですから」 「うん。じゃあね」 「はい、おやすみなさい」 彼の視線を感じながらアパートを出て、自宅に向かって歩きだす。笹原のアパートは通路の蛍光灯も暗く、これなら赤くほてった顔は彼に知られずにすんだだろう。 『楽しみにしてるから』笹原の言葉が脳内にリフレインする。とっさに握ってきた手の温もりを思いだす。どうしたことかそれに重なって、加奈子の『頑張って下さいね』という言葉も浮かんできた。 一心不乱に歩く耳に、ようやく笹原が部屋に入る音が聞こえた。充分タイミングを測って、立ち止まり、振り返る。 遠くに見えるアパートのドア。あの奥に、笹原さんがいる。今日は、ちょっとは役に立てたろうか。 ふと、さっきの自分を思い返す。笑顔こそ見せられなかったが、一生懸命、自然な会話をしようとした自分。うん、あの自分は悪くなかったんじゃないかな。けっこういいんじゃないだろうか。あれなら、……ええと、そう、信頼できる後輩。信頼される後輩になれてると思う。 「……あ。あれ?」 ふと気付いて頬に手を当てる。緊張のせいかなんのせいか顔が赤くなっているのは感じていたが、……あれ。笑ってる。 「ふ……ふふっ。うはー、なんだコレ。うふふっ」 頬の筋肉がひきつれて戻らない。えーと、そか、おつかい無事に終えて安心してんだな、私。 笑いかけてくれた笹原の顔が脳内によみがえる。かつて、落書きノートに描いたみたいな強気の、包み込むような笑顔を見せる彼。 ああ、私は笹原さんのことを……ええっと……うん、『尊敬』、してんだなァ。 家路をたどるステップも軽い。大荷物の重さも感じない。時々軽くスキップしているのも、本人は気付いていない。 この先、まだまだ暑くなる初夏の夜を、千佳は踊るような足どりで帰っていった。 おわり
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/203.html
高×笹 【投稿日 2006/03/07】 カテゴリー-現視研の日常 管理人注 管理用にタイトルは勝手につけさせていただきました。ご容赦。 「あれ? 今日は笹原君1人?」 「うん。荻上さんも大野さんもまだ来てないよ」 高坂が部室に入ると、そこには今日発売されたばかりの少年マガヅンを読んでいる笹原の姿があった。部室には2人だけだ。 「あ、マガヅンだ。僕、まだ読んでないんだよね。くじアン読んだ?」 「いや、まだだよ」 そう言いながら笹原がページを捲ると、お待ちかねのくじアンが始まった。 「くじアン読んだら次、読む?」 「いいよ。2人で一緒に読もう」 「え?」 「駄目かな?」 「あ、いや…いいけど…」 「よかった、早く読もうよ。続きがもう気になるんだ」 2人は、1つのマガヅンを一緒に読み始めた。高坂が読んだのを確認して、ページを捲る笹原。 1冊の雑誌を2人で読んでいるため、2人の距離は肩と肩がくっつくぐらいに近い。というか、くっついている。 しばらくして、2人はくじアンを読み終わった。しかし…。 「こ…高坂君?」 一向に高坂は笹原から離れない。あろうことか、更に距離を縮めてきた。 「…笹原君…いい匂いがするね…」 「こ、高坂君!?」 離れようとする笹原の背中に腕を回し、抱き寄せる高坂。 「こっ…!」 「ふふ、可愛いよ笹原君」 「やめてよ! 俺たち、男同士だろ!?」 「そんなの、関係ないんじゃない?」 微笑むと、高坂は笹原の唇を塞いだ。あまりにも突然の出来事に、目を見開く笹原。 最初は抵抗していた笹原だったが、徐々に力が抜けていくのが分かった。 唇を離すと、つ…と銀の糸が2人を結んだ。 「笹原君……ごめんっ」 「え!? ちょっ…」 笹原を押し倒す高坂。 「もう我慢できないや…」 「こ、高坂君!? 駄目だよ! 荻上さん達が来ちゃうよ!」 「見せ付けてあげようよ」 「ちょっ…待っ…そこは…」 「ふふ…最高に可愛いよ、笹原君…」 「や、やめ……ふぁああぁッ!!」 「ふぅ、続きはどうスっかね」 荻上は1人部室で原稿を描いていた。たまには笹原が「受け」なのもいい。 そこに、咲と大野が現れた。 「ちーす。お、荻上なに描いて…」 原稿を覗き込むと、咲は固まる。しばらくして、ぷるぷると震えだした。 「おっ…お前………なに描いてやがんだああぁぁぁああッ!!!!」 「そうですよ! 荻上さん!」 拳を握りながら大野。 「高坂さんはどうみても『受け』でしょう!?」 「そっちかよ!」 急に目が覚めたので書いてみた。今は反省している。
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/501.html
30人いる!その8 【投稿日 2007/09/02】 ・・・いる!シリーズ 恵子「そんじゃあ配役決めようか?」 伊藤「着ぐるみの人以外は、冬樹、夏美、それにモアちゃんだニャー」 男性会員たちを見渡す恵子。 恵子「うーん、お前ら不細工じゃないけど、イケメンや美形もいねえな。うーんと…」 その時、豪田の頭の中でピンッという音が鳴った。 そしてズンズンと有吉に近付く。 有吉「えっ?」 豪田は有吉から眼鏡を外した。 有吉「ちょっ、ちょっと、返してよ」 有吉を凝視する一同。 イケメンや美形とまでは行かないが、割と知的で整った顔立ちだった。 沢田「こ、これは?」 巴「行ける!」 恵子「おしっ、有吉、お前冬樹やれ!」 有吉「ぼっ、僕ですか?」 巴「監督命令となれば、しょうがないわね」 有吉「(マジ顔で)分かりました、監督。(情けない顔に戻り)それより豪田さん、眼鏡返してよー」 豪田を追う有吉、荻上会長の肩を掴んだ。 荻上「えっ?」 有吉「あれっ?豪田さん、えらく小さくなったね?それに華奢だし、(筆握り)頭に筆があるし、何か会長みたい…」 神田「いや有吉君、あなた掴んでるの会長だし…」 豪田「ほら眼鏡」 言いながら豪田、有吉の眼鏡をかけてやる。 有吉「わっ、会長?しっ、失礼しました!」 慌てて荻上会長から離れる。 荻上「まっ、まあ見えなかったんだからしょうがないわよ。気にしないで」 豪田「ネタでやってるのか、それとも本当に見えないのか…」 沢田「どうもマジでやってるみたいよ」 恵子「まあ冬樹って動かんキャラだから、何とかなんだろう。よし、次は夏美だな」 一同「うーん…」 台場「夏美ってさ、数年後だったらやっぱり、秋ママみたいな体型になってるんだろうな」 神田「クルルの銃で大人になった夏美って、確かにナイスバディだったわね」 有吉「ナイスバディでスポーツ万能と言えば…」 会員たちの視線が巴に集中した。 巴「(自分を指差し)わっ、私?」 恵子「まあ髪は染めればいいか。よしマリア、お前夏美やれ!」 有吉「監督命令なら、しょうがないね」 巴「…分かりました、やります」 伊藤「あとはモアちゃんだニャー」 豪田「アンジェラでいいんでねの?ちと胸デカ過ぎだけど」 台場「うーん…金髪はいいとして、青い目はどうだろう?」 荻上「その点なら心配無いわよ」 台場「どゆことです?」 荻上「アンジェラの瞳の色は、光の加減によって褐色や黒にも変わるのよ」 浅田「なるほど、それなら照明やカメラアングルで上手く誤魔化せるかも知れませんね」 台場「それならいいですね」 恵子「よっしゃ、モアはアンジェラで行こう!ミッチー、連絡してやれや」 神田「はーい。千里、ちょっとパソコン借りるわよ」 神田は国松の部屋のパソコンで、アンジェラにメールを送った。 (アンジェラは日本語の読み書きは何とか出来るので日本語で送った) 向こうは夜のはずだったが、アンジェラは起きていたらしく、すぐにメールが返って来た。 神田「アンジェラからの返信メールです。えーと何々…日垣君、コスよろしく…快諾してくれたようですね」 日垣「コスっていうと、ハルマゲドンの時のあの格好のことかな?」 伊藤「うーん、予定ではその格好するシーンは無いんだがニャー」 恵子「無いなら追加してやれよ」 伊藤「うーんと、それじゃあ…そうだ!ベム出てきたとこで、モアちゃんが例の格好でベムどついてクルル時空に叩き込むってのはどうでしょうかニャー?」 恵子「いいんじゃねえか。それで行けや」 伊藤「かしこまりましたニャー」 日垣「夏コミの時はアンジェラのコス、ほとんど田中先輩1人で作ってたから、サイズが分かんないな。神田さん、メールで訊いといてくれる?」 国松「サイズなら分かってるわよ」 日垣「国松さん採寸手伝ったの?」 国松「この間夏コミの時に、アンジェラのコス姿見たから、大体分かるわよ」 しばし時間が凍結した。 荻上「国松さん、見ただけでサイズ分かるの?」 国松「ええ、田中先輩に服の上から見てサイズを目測するコツをお聞きしたんです。そんで試してみたら、ほぼ当たりました」 1年女子一同『そう言えば夏コミで絶望先生コスやる時、制服のサイズなんて既製品なのに、千里しつこくサイズ聞いてたな。あれがそうだったのか…』 1年男子一同『国松さん恐るべし!』 「あと着ぐるみ組の配役だけど、日垣君、僕チンがベム演るから君アル演ってくんない?」 1年生たちの発言が活発で切り込みにくかったせいか、それまで意外に大人しくしていたクッチーが突如口を開いた。 日垣「俺ですか、アル?でもこのプロットだと、どっちかと言えばアルの方が攻め込んでますから、俺じゃ無理じゃないですか?」 朽木「その点は大丈夫。このプロットのアルって、ジャイアントロボみたいなロボットムーブの方が合いそうだから、練習すればすぐ出来るにょー」 日垣「まあそれなら動きは何とか。でもベムの方がカット数多そうだし、大丈夫ですか、就職活動の方は?」 朽木「さっきも言ったように、僕チンは警官の試験受けるから、試験日当日以外は目いっぱい撮影に付き合えるにょー」 日垣「いいんですか?」 朽木「いいんです。それにこの話だとアルよりベムの方が打たれ強さ要りそうだし。体力は日垣君の方がありそうだけど、打たれ強さなら僕チンでしょ」 恵子の了承を得て、結局アルが日垣、ベムがクッチーということで落ち着いた。 一方女子の着ぐるみ班も配役の相談を進めていた。 沢田「まあクルルがスーちゃんで、軍曹さんが会長は決まりとして…」 荻上「決まりなんだ…」 国松「スーちゃんはそもそもクルル希望ですし、何と言っても会長も軍曹さんもリーダーですから、やっぱリーダーの立ち位置でないと」 荻上「まあ、それはいいけど、残るはタママとギロロとドロロかあ…」 国松「それなんですけどニャー子さん、タママお願いしていいですか?」 沢田「なるほど、タママなら声可愛いし、適役かも」 国松「それにタママって、格闘技やってる割には肉弾戦よりタママインパクトばっかしだから、動きは意外と少ないでしょ」 荻上「一応他所から招いたお客さんってことで配慮した訳ね」 国松「そうです。どう、ニャー子さん?」 ニャー子「タママなら声作れますニャー。(可愛い高音で)ハーイモモッチー!(ドスの効いた低音で)うだるぞぬしゃー!」 一同「おー!」 沢田「これなら吹き替えは要らなさそうね」 ニャー子「でも私、タママインパクトは出来ませんニャー」 こける一同。 国松「その点は大丈夫ですよ。タママの顔は通常のものと別に、タママインパクト発射用の顔も作りますから。ニャー子さんはポーズしてくれるだけでいいです」 ニャー子「光線はどうするのかニャー?」 国松「シネカリでフィルムに直接描き込みます」 ニャー子「しねかり?」 国松「8ミリ特撮の技法で、フィルムに針みたいなもので軽く傷を付けて、光線っぽい絵を作る方法です」 沢田「でもそれ、8ミリのフィルムにそれって…」 国松「もちろんかなり手間で根気の要る作業だけどね。何しろ虫眼鏡でフィルム見ながら、ひとコマひとコマに描き込んで行くんだから」 「そういうのなら、私にまかせなさい!」 台場が話に割り込んだ。 国松「晴海、やったことあるの?」 台場「(笑って)無い無い。でもその代わり、私米に字書けるわよ」 室内にザワッという音が轟く。 国松「米に字って、例えばどんな?」 台場「まあさすがに2文字までが限度だけどね。画数的にも、薔薇とか憂鬱とかぐらいが限度ね」 一同『どうやればそんな複雑な字が米に書けるんだ…』 国松は台場の右手を両手で力強く握った。 国松「お願いするわ、光学合成担当!」 一同『それは光学合成と言うのか?』 沢田「あと残るはドロロとギロロかあ…」 国松「それなんだけど彩、あなたドロロでいい?」 沢田「ちょ、ちょっと待って!私、運動神経無いんだから、あんな動き無理!」 国松「(笑って)あんな動き、誰も出来ないって。大丈夫よ、何も生であの動きやれっていう訳じゃないから」 沢田「そんじゃあどうするの?」 国松「カメラワーク駆使するのよ」 沢田「カメラワーク?」 国松「例えば軽く走ってるとこをカメラ低速で撮影して、再生時は標準で回して早回し状態にして、凄く速く走ってる図の出来上がりとか」 沢田「なるほど、あと他には?」 国松「えーとね…例えば飛び上がるポーズをしたとこを撮り、続いて同じ背景をドロロ無しで撮り、それをつなげば消えるように高速でジャンプする図の出来上がりとか」 沢田「それなら私でも出来るかも。分かった、私ドロロ演るわ」 荻上「ということは、国松さんギロロ演るつもりなの?」 国松「まあギロロだけは実際に武器持って動かなきゃならないし、そんなキツイの人様には押し付けられませんから、言い出しっぺが責任取りますよ」 荻上「国松さん…」 国松「大丈夫ですよ、会長。これでも私、多分ケロロ小隊役の5人の中で、1番体力あると思いますから」 こうして着ぐるみ班の配役が決まり、神田はホワイトボードにそれを書き込んだ。 恵子「さてと、配役も無事決まったことだし、次はスタッフの役割分担を決めるか。先ずは千里、とりあえず特撮関係はお前が全部仕切れや」 国松「はいっ!」 「ということは、こうですね?」 そう言いながら、神田はホワイトボードに「特技監督 国松」と書き込んだ。 国松「そうじゃないわよ、ミッチー」 国松はホワイトボードに近付き、特技監督を消して「特殊技術」と書き直した。 神田「とくしゅぎじゅつ?」 国松「本来特技監督ってのは、特撮班と本編班の2班体制で撮影する場合の名称なのよ。 うちの場合は全部ひっくるめて総監督だから、その名称は不向きよ。それに…」 恵子「それに?」 国松「本来特技監督を名乗っていい人物は1人だけなんです」 恵子「誰?」 国松「円谷英二です」 国松によれば、円谷英二の直弟子の特技監督は、円谷プロの初期の作品では自らを特殊技術と称していたという。 これは彼らにとっての特技監督とは円谷英二ただ1人であり、自分ごときが特技監督を名乗るのはおこがましいという考え方の為だ。 国松「だから私も、それに倣おうと思います」 恵子「わあった、そんじゃ千里それで行けや」 「さてと特技監督、じゃなくて特殊技術が決まったとこで、あと助監督なんだけど…」 恵子は一同を見渡し、伊藤と眼が合ったところでピタリと止まった。 オドオドする伊藤。 恵子「お前さあ、脚本書いた後はヒマだろう?」 伊藤「まっ、まあそうですニャー」 恵子「そんじゃお前、チーフ助監督やれや」 伊藤「ぼっ、僕がチーフですかニャー?」 恵子「まあ助監督は原則手の空いたもん全員だけど、通しでやる奴が1人は要るだろ?」 有吉「なるほど、伊藤君なら脚本の隅から隅まで把握してるから、全体を見ながら現場を仕切るのには適役かも知れないな」 国松「それに普段のパシリっぷりから見て、助監督の必要最低条件のフットワークの軽さもあるしね」 恵子は普段から、手の空いてる者は誰彼構わず命令したりこき使ったりしているのだが、眼が合うとオドオドする習性のあるせいか、伊藤が命じられる確率は高かった。 恵子「つう訳で、いいな伊藤?」 伊藤「かしこまりましたニャー」 『何のかんの言っても恵子さん、監督らしくなってきたわね』 そんな様子を見て、荻上会長は内心感心していた。 みんなが役割分担について話し合っている傍らで、豪田はプロットを読みながら、まるで北島マヤが台詞を覚えてる時のように、1人片隅で何やらブツブツとつぶやいていた。 荻上「どしたの?」 豪田「あっ、荻様。今この映画に必要なセットを考えてたんです」 荻上「セット?」 豪田「先ずケロロ小隊の作戦司令室とクルルズラボが要りますね。日向家内部の各部屋とクルル時空は、どっかでロケするとして、あとは最後のボロボロになった日向家ですね」 立て板に水の如くスラスラと撮影場所について述べる豪田に、沈黙する荻上会長。 豪田「まあ作戦司令室とクルルズラボは、ベニヤ板でそれらしいのが作れると思います。日向家は適当にガラクタ並べるか、解体中の家探して交渉するか。あとは…」 荻上「あとは?」 豪田「ベム1号とケロロ小隊が戦うシーンで、ケロロたちが吹っ飛ばされるでしょ?女の子が入った着ぐるみを地べたにモロにぶつける訳には行かないじゃないですか」 荻上「(改めてプロットを読んで青ざめ)確かにそうね…何かいい方法があるの?」 豪田「ウレタンか綿を布で包んで岩みたいな感じに塗装して、岩型のクッションをいくつか作って、クルル時空になる原っぱなり野原なりに配置すればいいと思うんです」 荻上「いい考えだと思うけど、そんなこと出来るの?」 豪田「その点はお任せ下さい。この豪田蛇衣子、伊達に8年も舞台美術やってませんから」 一同「8年?!」 豪田「小学5年生の時の学芸会以来、何故か私のクラスって劇に縁があってね、中3までずっと文化祭やら何やらで、毎年1回は舞台セット作ってたのよ」 荻上「でも8年って言ってたよね?高校では?」 豪田「高校では同じ中学から来た子が私の噂広げちゃって、学祭で劇やる他所のクラスや演劇部からお誘いがあったんですよ」 台場「て言うことは、蛇衣子の作った舞台セット、好評だったってことね」 巴「凄いわね」 豪田「まあ最初は、単に昔からこの通りの体型だったから、舞台でやれる役が無いから回ってきただけだったんだけど、これでも図画工作や美術はいつも成績5だったからね」 恵子「よっしゃ蛇衣子、お前美術担当な」 豪田「はいっ!あと照明も私でいいですか?ライトやレフ板持つ人は出来るだけ統一した方がいいと思うんですけど」 岸野「確かにライティングはカメラとワンセットなポジションだから、なるべく統一した方がいいね」 浅田「もしかして豪田さん、照明もキャリア8年とか?」 豪田「さすがにそんなにはやってないわよ。舞台の方動かしたりするの、私が現場仕切ってやること多かったからね。せいぜい3~4回ってとこかしら」 巴「十分やってるじゃん…」 恵子「よっしゃ、ほんじゃ照明もお前に頼むわ」 豪田「はいっ!」 台場「あの、あと私、渉外関係の仕事一括して受け持っていいですか?」 恵子「しょうがい?」 台場「平たく言えば、外回りの仕事ってことですよ」 恵子「どんなことやるんだ?」 台場「まず予算まだ増やしたいですから、スポンサー集め続けようと思います。そのついでに、関係官庁への行ったり、著作権関係のことやったり」 一同「著作権?」 台場「そりゃそうでしょ。現在放送中のアニメの実写版映画作って、学祭とは言え木戸銭取って客に見せるんだから。いろいろ手続きは要るはずよ」 荻上「なるほど、そこまでは考えてなかったわね。関係官庁ってのは?」 台場「この手の撮影には、いろいろ許認可が絡んでくるはずです。特にうちは爆発シーンなんてやるんですから」 荻上「確かに外回りの仕事関係、一括して担当した方が効率良さそうね」 恵子「よっしゃ、晴海それやれ!」 神田はホワイトボードに「プロデューサー 台場」と書いた。 神田「ということですね、監督」 台場「プロデューサーなんだ、私…」 岸野「あと監督、俺たちシネハン担当していいですか?」 恵子「何それ、シネハンって?」 岸野「ロケハンとも言いますが、撮影に使える場所を探して回る仕事です」 浅田「カメラテストも兼ねたいので、俺たち2人で回ろうと思うんですが」 恵子「わあった、お前らに任す」 「あと私、内勤系の事務やらせて下さい」 ホワイトボードを背に、唐突に神田が進言する。 恵子「ないきんけい?何やるつもりだ?」 神田「これだけのシーン数のある映画作る以上、記録係要りますよね?」 国松「確かに要りそうね」 神田「それにスケジュール管理も要ると思うんです」 恵子「と言うと?」 神田「このシーン数から考えて、効率良く撮れるように撮影の順番考えなきゃいけないし、それにクッチー先輩の試験のスケジュールも考慮しなきゃいけないし」 朽木「すまんねミッチー」 神田「あと他のOBの方々にも小まめに連絡しなきゃいけませんから」 荻上「まあ確かに、部室に来られる方多いからね」 神田「特にシゲさんは、撮影中はほぼ毎日連絡しなきゃいけませんしね」 恵子「わあった。じゃあその辺りの仕事、よろしくな」 神田はホワイトボードに「シネハン 浅田・岸野」「記録 神田」「スケジュール管理 神田」と書き加えた。 神田「千里、私特撮のことは全然分かんないから、特殊技術担当としてのアドバイス、よろしくね」 千里「うん」 いよいよ役割分担も決まり、本格的に始動した映画制作プロジェクト。 このまま一気にクランクインと思いきや、下準備作業はまだまだ続く。 そしてこのプロジェクトに次々と乱入者が… 30人いる!その9に続く
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/411.html
26人いる! 【投稿日 2006/11/12】 ・・・いる!シリーズ この話を初めて読む方の為に、オリジナル設定等のまとめ ①今年の新1年生は、男子5人女子6人の計11人、さらに秋にはスー&アンジェラも合流します ②部室が手狭になったので、サークル棟の屋上にプレハブ製の部室を新設しました ③斑目は相変わらず部室に昼飯食いに来てますが、4月以降は外回りの仕事も手伝っているので、昼休み以外の時間帯にも時々部室に来ます ④斑目は1年生女子からシゲさんと呼ばれています ⑤クッチーは去年の秋頃から空手を習っています ⑥諸々の事情で、クッチーは児童文学研究会にも掛け持ちで入会してます 児文研会長の勧めにより、普段は大人しくなりましたが、イベントになると必要以上に大騒ぎします ⑦荻上会長は巷談社主催の春夏秋冬賞という漫画コンクールに応募して審査員特別賞を獲得し、それがきっかけで今年の秋に「月刊デイアフター」で新連載開始の予定です 神田美智子 両親と兄1人の4人家族だが、家族全員がオタなので幼少の頃よりコミフェスに参加していた。 ノーマルなカップリング中心だが、最近ヤオイも始める。 国松千里 元々は特撮オタで、アニメや漫画のオタとしては初心者。 垂れ目ながら大きな瞳のロリ顔美少女。 豪田蛇衣子 腐女子四天王(クッチーが命名した、新1年生の腐女子4人組の通称)のリーダー格。 小学生の頃から少女漫画を描いている。 大柄で肥満体のゴッグのような体格。 沢田彩 四天王の1人。 元々はジュニア小説を書いていた、ショートカットで色白の文芸少女。 台場晴海 腐女子属性はむしろリーダーより濃い、四天王の参謀格。 見た目秀才っぽい、スレンダーなメガネっ子。 巴マリア 四天王の1人で、元ソフトボール部の体育会系腐女子。 巨乳でなかなかの美人だが、夏ミカンを握り潰せるほどの握力の持ち主でもある。 日垣剛 元野球少年の初心者オタ。 身長185センチの肉体派オタだが 気は弱く温厚で大人しい性格。 初心者同士のせいか、国松と仲がいい。 有吉一郎 高校時代は漫研。 いかにも理屈先行型オタという感じの、細面のメガネ君。 伊藤とは同じ高校出身でよく一緒にいるので、それを腐女子四天王にネタにされている。 伊藤勝典 高校時代は文芸部。 脚本家志望だが、ラノベやSSも書く。 猫顔で、動作も猫に似ていて、喋る時も語尾に「ニャー」と付ける。 浅田寿克 高校時代は写真部。 神経質そうなメガネ君で、1年生会員たちの会話ではツッコミ役になりがち。 岸野と一緒にいることが多い為、有吉×伊藤同様、腐女子四天王にネタにされている。 岸野有洋 浅田と同じ高校出身で、部活も写真部だった。 リーゼント風のひさしの目立つ髪型以外に取り立てて特徴が無く、あまり目立たない。 浅田と共に、様々な雑用で縁の下の力持ちとして力量を発揮する。 **本編** 「笹原君、君、ヤオイっちゅーもんを知ってるか?」 漫画家のA先生が笹原にそう声をかけて来たのは、笹原が新たに担当になってから1週間ほど経った、ある日のことだった。 漫A「君確か自己紹介で、学生ん時に何たらいうオタクのサークルに居った言うてたな?そしたらそういうことにも詳しいやろ?」 笹原「ヤオイがどうかしたんですか?」 漫A「君、すまんけどわしにヤオイっちゅーもんについて、いろいろ教えてくれんかな。先ずは何でヤオイって言うかからやな。やっぱり八尾の朝吉とかが関係あんのか?」 笹原「八尾の朝吉?」 笹原はA先生に、そもそもヤオイという言葉の語源から、順を追って丁寧に説明を始めた。 (注釈)八尾の朝吉 映画「悪名」シリーズで勝新太郎が演じていたやくざの名前で、本編とは特に関係ない。 ヤオイに縁の無いオッサンの一般的な認識と流して下さい。 A先生は、主に中高年やブルーカラー層を購読者とする、実話系雑誌でやくざ漫画を描き続けてきた、この道30年のベテランである。 実話系雑誌とは、芸能・スポーツ・風俗・賭博・政治・犯罪など、スポーツ新聞的なネタに加えて、普通のマスコミがあまり扱わない暴力団関係の記事が充実している雑誌のことである。 非オタ系漫画の極北のポジションに居たこの先生を、笹原は失礼ながら担当が決まるまで知らなかった。 A先生は推定年齢55~60歳で、笹原の両親より多分年上だ。 顔付きは強面で、体付きは大柄でいかつく、喋り方も柄の悪い関西弁だ。 経歴は公式には不明とされているが、裏社会にしっかりした情報網を持っていることから、裏社会の住人だった時期があったと思われる。 正直言って苦手なタイプであった。 そのA先生が、無骨な外見に似合わず凄まじいスピードで丹念にメモを取りつつ、矢継ぎ早に質問を次々とぶつけてくる。 ヤオイから派生したオタク関係の質問が次々と出て、話題は夏コミへと移って行った。 漫A「ほな君、今年もその夏コミっちゅーのに出るんか?」 笹原「ええ、上手く休み取れたら3日とも顔出そうと思ってるんですが、まだ決まってません」 漫A「よっしゃ笹原君、その件わしが編集部に話つけたるわ。3日とも休みにしたるから、行ってきい夏コミ」 笹原「えっ?」 漫A「その代わりスマンけど君、その3日間で夏コミについて可能な限り取材して来てくれんかな。ひとつ頼むわ」 笹原「取材…ですか?」 漫A「せや。デジカメでええから、ようけ写真撮って、君のサークルのもんとか他のお客さんから話聞いて、それをレポートにまとめてわしに提出してくれたらええ」 笹原「まあ、それはいいですけど…」 漫A「あ、それからな、資料として同人誌っちゅうのを買うて来てえや」 懐から分厚い札入れを取り出し、無造作に万札を十数枚掴み出して笹原に渡す。 笹原「こっ、こんなにいいんですか?これだとさすがに、物凄い量になりますよ」 漫A「かまへん。どのみち君の話聞く限りでは、そんだけ出しても会場で売ってる本、全種類は買えんやろ?」 笹原「それはそうですが…」 漫A「ええか、何の話でも話を書く時にはなあ、可能な限り最新の情報を仕入れるのが基本中の基本や。どんな絵空事な話でも、その土台にはリアルな現実の情報が要るんや」 さらにA先生は、今考え始めている企画について話し出した。 A先生が現在「実話鉄拳」で連載している任侠漫画がもうじき終わる。 次の作品の連載も決まっているのだが、その内容に編集部から注文があった。 最近雑誌の部数が落ちているので、新しい読者層を取り込めそうな話を描いてくれというのだ。 そこでA先生が目を付けたのはヤオイブームだった。 彼の得意なヤクザ漫画にヤオイネタを絡め、腐女子を新たな顧客にしようと考えたのだ。 漫A「まあ具体的な話を言うとや、昔は漫画家を目指してた絵の上手いテキヤがヤオイブームに目え付けて、ヤオイ同人誌を新しいシノギにしようとする、まあそんな感じや」 笹原「あの先生、ひとつ伺いたいのですが、今先生が描いてらっしゃる絵柄でそれ描かれるお積りですか?」 笹原が憂慮したのは、A先生の絵柄だった。 先生の描くやたらと無骨な顔立ちのキャラは、任侠漫画ならともかくヤオイには不向きだ。 漫A「君の言いたいことは分かるわ。つまりヤオイやったら…」 そう言いかけ、A先生は先程まで使っていたメモ帳に、何やら絵らしきものをサラサラと描き込む。 そして描き終わると、それを笹原に差し出しつつ言った。 漫A「こういう絵を描かなあかんねんやろ?」 笹原「ひへっ?!」 思わず自分の彼女のような驚き方をする笹原。 先生が描いたのは、普段描いてる作品のような無骨な顔ではなく、最近のヤオイ漫画にありがちなレディコミ風の端正なイケメンだった。 笹原「先生、これはいったい?」 漫A「わしこれでも下積みの時は少女漫画のアシスタントやっとったからな、こういう絵えでも描けるんや」 一抹の不安を覚えつつも一応納得した笹原、もうひとつ疑問をぶつけた。 「それに先生、いくら何でもヤオイだと、腐女子以外の人からは拒絶される危険が大きいと思います」 だが先生は意外な返答をした。 「その点は大丈夫や。君は知らんやろけど、実は極道もんには、その手の趣味のもんが意外と多いんや」 笹原「(意外そうに)そうなんですか?」 漫A「今の大卒の経済ヤクザはともかく、昔のヤクザもんが出世しよう思たら、ヤバい仕事やってムショで何年か修行して来なあかんかったんや」 笹原「?」 漫A「まあ君みたいな真面目な子には想像しにくいかも知れんけどな、そうなると女抜きで何年か暮らさなあかんから、どうしてもこっち系で代用することになる訳や」 先生は「こっち系」のところで、手の甲を頬に当てた。 オカマを示すジェスチャーだ。 漫A「そんでムショ出た後も、そのまんまそっち系の趣味続けるもんもけっこう居んねや」 笹原「そういうもんなんですか?(汗)」 思わず後ずさりしてしまう笹原。 漫A「安心しい。わしにはその気は無いから」 その後A先生は鷲田社に電話して、笹原の夏コミ3日間の休みの確約を取ってくれた。 そして細かい打ち合わせを終えた頃、もう1人の担当編集者が来たので、笹原はその担当氏に後を任せてA先生宅を辞することにした。 ヤオイに関する疑問から派生して、コミフェスその他のオタク趣味にも深い興味を持ったらしいA先生に対し、帰り際に笹原は大真面目にこんな誘いをかけた。 笹原「あのう先生、取材はやりますけど、1度ご自分でも夏コミに参加されてはどうですか?知識や情報はともかく、あの独特の雰囲気や空気は、あの場所でしか体感出来ませんから」 マジ顔で誘う笹原に、A先生は笑って応えた。 漫A「堪忍してえや、笹原君。君の話聞く限り、この歳ではキツイで、夏コミデビューは」 この後笹原は、他に担当している漫画家の所も回る予定だ。 現在笹原は先ほどのA先生の他に、キャリア15年ぐらいになるB先生と、今年デビューしたばかりで椎応の漫研の3年生でもあるC先生の、3人の漫画家を担当していた。 もっとも担当と言っても、笹原1人でその漫画家についての仕事を全てこなしている訳ではない。 A先生とB先生には元々メインの担当者が付いている。 (つまり先ほど来た編集者がメインの担当者だ) 笹原の仕事は、その担当者たちの補佐であった。 まあ早い話が雑用係である。 編集者という仕事には、いろいろな雑用が伴う。 その雑用の大半を笹原が引き受ける訳だ。 ひと口に雑用と言っても本当に様々である。 資料を集めて来たり、ちょっとしたお使いを頼まれたり、時には家事をこなすこともある。 そんな雑用の合間に、先輩の仕事ぶりを盗み見しながら仕事を覚える。 感覚的には落語家や相撲取りの新弟子に近い、今日的には前時代的な感じの教育方針だが、真面目な男笹原はめげること無く働いた。 笹原はC先生と打ち合わせをすべく、椎応大学のサークル棟に向かった。 漫研の現役会員であるC先生は、今日は部室でネームを書いているのだ。 その後夜になってからB先生の所にも顔を出す予定だ。 B先生は、それなりに作品は売れているのだが、「分かる人にだけ分かる」ネタと作風の為に今ひとつメジャーになり切れずにいた。 その為ベテランでありながら業界の評価は、前座プロレスラーや2番バッターみたいな中堅扱いであった。 そのせいか、精神構造はネガティブ思考でメンヘル気味で時々発作的に自殺を図る。 (実は半分狂言気味で、本音は止めて欲しいらしいのだが) そこで〆切が迫ってなくても定期的に顔を見に行くように、もう1人の担当者に厳命されているのだ。 漫研の部室でC先生のネームをチェックすると、笹原はGOサインを出した。 この先生に限って笹原は単独で担当していた。 作品の人気やレベルはそこそこだが、とにかく真面目で仕事が速い。 編集にとっては手の掛からない漫画家なので、編集部が笹原1人でOKと判断したのだ。 B先生宅に寄る予定の時間には間があったので、笹原は現視研の部室に寄ることにした。 屋上の床には、ブルーシートが敷かれており、その上に何かが立っている。 さらにその傍らに、こちらに背を向けてしゃがみ、体を丸めて何かしている人影があった。 その周囲には、塗料の入った小皿や缶がいくつか並べられていた。 笹原が近付いてみると、立っていたのは何かの体だった。 いや正確には、逆さまにされて、材木を組んで作ったらしいスタンド状の器具に固定されていた。 灰色がかった茶色のそれには、鋭い爪の生えた手足があり、腹のあたりが蛇腹状になっていた。 腕や脚の中にも材木が通してあるらしく、四肢はピンと張っていた。 首を切って逆さ磔にした、ヒューマノイドタイプのモンスター、そんな風に見えた。 笹原の気配に気付いたのか、しゃがんでいた人影が振り返りつつ顔を上げた。 人影の正体は、筆を持った国松だった。 「あっ笹原先輩、こんにちは」 「こんちわ…わっ?!」 驚いて声を上げてしまう笹原。 国松の足元に、不気味な顔があったからだ。 脳を肥大化させて露出したような感じの頭でっかちな頭部に、細く吊り上った瞳の無い目と、牙とギザギザの歯の生えた口があった。 よく見ると見覚えがあった。 笹原「それってもしや、ベム?」 国松「そうです、妖怪人間ベムの変身後です」 笹原「(先程の胴体と顔を見て)これってフィギュアなの?」 国松「いえ、コスです」 笹原「コス?ってことは…」 国松「着ぐるみです。今度の夏コミのコスプレで『妖怪人間ベム』やりますんで」 笹原「へえー。しかしこれ、よくできてるね」 思わず胴体に手を伸ばす笹原。 国松「あっダメです!まだ乾いてません!」 数ミリ手前でピタリと笹原の手が止まり、サッと引っ込める。 笹原「ごっ、ごめん。これってどうやって作ったの?何で出来てるの?」 国松「ラテックスです。石膏で型作って、それにラテックス塗って剥がして原型を作りました。今日はそれに色塗ってるとこです。塗り終わったら今日はここまでです」 笹原「まだ続きがあるの?」 国松「色塗ったのが乾いたら、中にウレタン貼って形整えます。そして朽木先輩に実際に着てもらって、体に合わせていろいろ調整します」 笹原「朽木君がやるの?」 国松「はい。万が一朽木先輩が来れない時に備えて、日垣君でも着れるように少し大きめに作ってあるもんですから、ちょっと念入りに調整しなきゃいけません」 日垣はクッチーより5センチほど背が高く、肩幅や胸囲なども少し大きかった。 国松「まあ朽木先輩が着る分には、かなり余裕があると思います。あんまりピッタリ過ぎたら動きにくいし、汗の逃げ場が無くなって余計に暑いし、第一皮膚呼吸が出来なくなります」 笹原「へえ、本格的だね」 国松「まあ技術レベルはともかく、基本的な作り方は本物の着ぐるみと同じですから。機電も一応仕込みますし」 笹原「きでん?」 国松「機械の機に電気の電で機電です。まあ簡単に言うと、機械で着ぐるみの一部を動かす仕掛けのことです。まあ今回は、目を電球で光らせるだけですけど」 笹原「凄いね」 その後笹原は、国松の溢れんばかりの、いや溢れ過ぎでダム決壊状態の怒涛の着ぐるみ愛を延々と小1時間ばかり聞かされる破目になった。 普段はどちらかと言えば無口で大人しい国松だが、こと特撮の話になると垂れ気味の大きな目をキラキラ輝かせて、楽しそうに話し続ける。 笹原『まるで漫画描いてる時の荻上さんだな』 愛する人と同じ種類の目の光を見てしまった以上、すげなくすることは出来なかった。 ようやく部室に笹原が入ると、こちらはコスの山だった。 2つの机の上には、同様のデザインの制服らしきコスが数着ずつ、4種類ほど見られた。 肩ビラの色が紺色のものと水色のものと2種類のセーラー服、青のブレザーに黒いズボンの男子用らしき制服、そして紺色のロングコートタイプの軍服らしき制服。 さらにその他にもさまざまなコスが並べられている。 その片隅で斑目は遅い昼食を食べており、日垣は一心不乱に(多分田中が持ち込んだのであろう)ミシンに向かっていた。 あとはやや困り顔の荻上会長、田中、恵子、クッチー、そしてただひとり上機嫌な大野さん、という面子だった。 互いにひと通り挨拶と近況報告を終えると、話題はコスプレのことになった。 笹原「外で国松さんに『妖怪人間ベム』のコスやるって聞いたけど…何かいろいろいっぱいあるね」 大野「(にこやかに)はいっ!」 田中「今回は大野さん、学生として参加する最後の夏コミだからね、3日間目いっぱいコスするんだよ」 大野「3日とも違うんですよ」 笹原「凄いね」 大野「1日目と2日目は、私が会長だった代の会員中心でやるんです。で、1日目が『妖怪人間ベム』で、主役のベムは朽木君にやってもらいます」 朽木「あの、大野さん、何故わたくしだけ変身後なのでありますか?」 田中「コミフェスは長物禁止だからだよ。変身前のベムでステッキ無しだと、さまにならないだろ?」 大野「それに変身後の方が、目立つし、ウケるし、かっこいいじゃないですか。主役だから立ててあげたんですよ」 目立つ、ウケる、かっこいい、主役、クッチーの好きそうなキーワードを並べ立てる波状攻撃作戦は、見事に功を奏してクッチーは納得した。 でも芸に生きる男クッチーは、お約束も忘れない。 朽木「早く人間になりたいにょ~~~!!」 笹原「てことは、荻上さんもやるの?」 荻上「私がベロで、大野先輩がベラです」 笹原「ベロかあ…」 大野「何ですか笹原さん。もっとロリロリなのとか、露出の多いの見たかったんですか?」 笹原「(赤面し)ちっ、違うよ。よく荻上さん承知したなあと思って」 田中「これでも知恵しぼったんだよ。大野さんの代のメンバーで出来るコスで…」 大野「荻上さんがコスやってくれる条件に出した、ロリロリじゃなくて露出の少ないキャラってことで、荻上さんのキャラから逆算して考えたんですから」 荻上「何かそれじゃあ私が我がままみたいじゃないですか。どっちかと言えば…」 大野「ええそうですとも。我がままなのは私ですよ」 胸を張ってにこやかに開き直る大野さんだった。 荻上会長は先程の続きに話題を戻す。 荻上「それとあと、恵子さんがキラやります」 笹原「キラ?」 ガンダムのパイロットや、ノートに名前書いて殺人するインテリ君を連想する笹原。 荻上「新シリーズに出てくる新キャラですよ。ベロの友だちの女の子です」 笹原「ベロの友だちってことは…小学生?恵子が?」 大野「ええ、最後だからってことで頼んだら、快く承諾してくださいました」 コスの山の中から、キラの小学校の制服を取り出して見せる大野さん。 ブレザーにミニスカートにベレー帽という格好だ。 恵子を見る笹原。 笹原「そうなのか?」 手招きする恵子。 笹原「?」 笹原が恵子に近付くと、恵子は腕を掴んで部室の隅に笹原を連れて行き、顔を寄せた。 恵子「(小声で)しゃーねーじゃん。あの暑苦しい巨乳の大女に涙目で迫られたら、断れねーじゃん」 笹原「まるでアームストロング少佐だな」 恵子「まあその代わり、バイト代もらえるけどね」 笹原「バイト代?」 恵子「2日目に何とかいう金髪のキャラやる代わりに、タダで金髪に染めれる美容室の券もらったんだよ」 笹原「お前今度は金髪かよ」 恵子「1回やってみたかったんだ。さすがに春日部姉さんいる間は遠慮してたけどね」 こいつがそういう気の使い方をするようになったのかと、笹原は妹の人間的な成長に少し感心した。 そして同時に、春日部さんに対する恵子の尊敬や親愛の情を微笑ましく思った。 再びみんなの方に2人が戻ると、さらにコスについての話は続いた。 笹原「それで2日目は?」 大野「荻上さんの希望を入れて『ハガレン』にしました」 荻上「私がエドで、朽木先輩がアル。大野さんがラストで、田中さんがグラトニーです」 朽木「わたくし2日連続で着ぐるみであります」 笹原「大変だね」 恵子「そんで私が…何だっけ?」 荻上「ホークアイです。いい加減覚えて下さい」 斑目「そして俺がヒューズさ」 食事の途中の斑目が割り込むように言った。 笹原「斑目さんもやるんですか?」 斑目「ああ。今年は土日休み取れたし、それにまあ俺も大野会長期の、部室の備品みたいなもんだからな」 そう言いつつ手招きする斑目。 笹原が近付くと、斑目は顔を寄せてきた。 斑目「(小声で)しょうがねえだろ。あの胸近付けて凄え力で肩掴んで涙目で(以下略)」 笹原「犠牲者その2ですか」 斑目「お前は今年はどうよ?」 笹原「3日とも出ますよ。上手く休み取れましたんで」 笹原は、A先生用レポート作成の為に、3日とも休みを取れるようになった顛末を話す。 斑目「半分仕事で夏コミか…それはそれで大変そうだな」 ふと嫌な視線を感じて振り返る笹原。 大野さんが赤面でニヤニヤし、荻上会長は意識が亜空間飛行中だった。 笹原は、斑目から見えない角度で「それは無し!」という感じで手をヒラヒラさせつつ2人に近付く。 そして荻上会長の筆を激しくシビビビする。 荻上「はっ、ここは誰、私はどこ?」 苦笑する笹原。 荻上「(赤面)すっ、すいません」 再び嫌な視線を感じる笹原。 振り返ると同時に、大野さんに右肩を左手で、物凄い力で掴まれた。 笹原「えっ?」 大野「笹原さん、3日とも出れるんですね」 笹原「うん、出るけど…」 大野さんは右手で「ハガレン」の軍服を1枚掴み、笹原の方に差し出した。 大野「ちょうどここに、笹原さんのサイズの軍服があるんですよ」 笹原「何であるの?(汗)」 大野「田中さん、例のものを」 田中は傍らの自分のリュックから白い手袋を出して、笹原に差し出す。 笹原「その模様はもしや…」 手袋には魔法陣みたいな記号の模様があった。 田中「錬成陣だよ」 助けを求めるように、荻上会長の方を見る笹原。 あきらめて下さいと言わんばかりに、片手拝みのポーズの荻上会長。 笹原「犠牲者その3か…」 結局笹原は、2日目にロイ・マスタング大佐のコスをやる破目になった。 考えてみればコスプレ初体験である。 A先生用のレポートのネタが増えたし、まあいいかと笹原は1人納得した。 笹原「で、3日目は何やるの?」 大野「まだ何するかは未定なんですけど、私はアンジェラとペアでやる予定です」 笹原「やっぱり今年も来るんだ、あの2人」 大野「まあ秋からは正式にここの会員ですからね。で、実はそれと別班でもうひと組やるんですけど、遅いな神田さん…」 笹原「神田さん?」 傍らで食事していた斑目の食べるペースが、何故か急に速くなった。 神田「遅くなりました!」 晴れやかな笑顔を浮かべ、神田が部室に入ってきた。 神田「あっ笹原先輩こんにちわ。(大野さんに)遅くなってすいません」 神田は手に持った風呂敷包みを机に置いて開ける。 包みの中身は、袴と井の字模様の羽織という組み合わせの着物だった。 笹原「これは?」 神田「お祖父ちゃんの着物です。亡くなってからもう20年ぐらい経つ上に、お祖母ちゃん物忘れがひどくなっちゃって、なかなか見つからなくて…」 笹原「???」 神田「前にお祖母ちゃんに写真、見せてもらったの覚えてたんです。で、似てるなあと思って、お祖母ちゃんに出してもらったんです」 笹原「あの、それで何のコスプレなの?」 神田「今試着してもらうのを見れば分かりますよ。お祖母ちゃんの話だと、お祖父ちゃんの背5尺8寸だったそうだから、多分あまり調整しなくて済むと思いますよ」 荻上「5尺8寸って、どれぐらいなの?」 神田「およそ175~176センチってとこです。明治の人としては長身だったみたいですよ。私が生まれる前に亡くなったんで、会ったことは無いんですけど」 斑目がそろそろとドアの方に向かう。 その腕を「ムズンパ」と擬音が聞こえそうなタイミングで神田が掴む。 神田「どこ行くんですか、シゲさん?」 斑目「いや、そろそろ会社に戻んないと…」 神田「大丈夫ですよ、あそこの社長さんイージーだから、少々遅れても怒られませんよ。それよりさっそく寸法合わせましょうよ。さあ、みなさん向こう向いて下さーい」 数分後、斑目は神田の持ってきた着物を着込んだ。 カッターシャツの上から着たので、袖口からカッターの袖が見える。 神田「わーピッタリ!」 それを見た笹原が呟いた。 「絶望先生…」 恥ずかしい一方で、斑目のキャラ作り魂が目覚めた。 「知ったな!うわああああああ!」 絶叫しつつ部室を飛び出して行く斑目。 コミフェスという非日常のハレの場ならともかく、日常的な部室で身内相手にコスするのは却って恥ずかしいものらしい。 いつか荻上会長が部室でコスした時に逃げようとしたのも、単に露出が激しいコスだからというだけでなく、そういう心理もあってのことだったのだと笹原は改めて理解した。 神田「ねっ、大野さん、私の言った通りでしょ?」 大野「そうですね、あそこまで似合うとは予想出来ませんでしたね」 笹原「あの、これはどういう?」 荻上「今のコス、言い出したの神田さんなんです」 神田「シゲさんも絶望先生も総受けキャラだから、絶対似合うと睨んでたんです」 笹原『1年の女子の間でも、斑目さん総受け認定なのか…』 大野「それでそこから発展して、斑目さんと1年生の女子で『さよなら絶望先生』のコスやることになったんです」 神田「でも実は、他にもちょっとしたサプライズを用意してるんですよ」 悪戯っぽく笑う神田。 笹原「へー、どんな?」 神田「(唇に人差し指を当て)秘密です」 大野「どうですか笹原さん、なかなかの名プロデューサーでしょ、神田さん?」 笹原「何やら嫌な予感が…」 笹原「とすると、あっちのセーラー服とブレザーは?絶望先生のとは違うみたいだけど」 荻上「あれはハルヒの学校の制服です」 笹原「それもコスプレするの?」 荻上「うちの同人誌の売り子用なんです」 笹原「…ということは、同人誌のネタってハルヒなの?」 荻上「そうです。『涼宮ハルヒの憂鬱』です」 笹原「またえらく男性向けなのを題材に選んだね」 荻上会長は、その経緯を説明し始めた。 7月も後半に入り、印刷所への入稿〆切まで残り10日を切ったある日のこと。 その日も部室では、サークル参加の同人誌のお題についての議論が続いていた。 参加者は腐女子四天王の豪田、台場、巴、沢田、ヤオイは最近始めたばかりの神田、ただ1人の男性の絵描きの有吉、そして荻上会長という面子だ。 部室の外では、国松が妖怪人間ベムの着ぐるみコスを作っていた。 今日の作業は、溶かしたラテックスを石膏の型に塗りつける作業なので、さすがに部室の中ではやり辛い。 ちなみに日垣は田中、大野と共に資材の買出しに出ている。 クッチーは就職活動中だ。 そして浅田と岸野の2人は、ここ数日夏コミ用の軍資金を稼ぐべくバイトに精を出し、部室にはあまり姿を見せていなかった。 海水浴効果(「17人いる!」参照)でわだかまりが無くなり、みんな我を通さなくなったものの、今度はそれが逆に足枷となって議論を長引かせていた。 例えばAさんがaという案を主張し、Bさんがbという案を主張していたとする。 やがてAさんがbという案もいいなと言い始める。 ところがその頃には、今度はBさんがaという案(あるいはCさんのcという案)もいいなと言い始める。 その一方で、Dさんがdという案を捨てて、新たにddという案を出したりする。 そんなことの繰り返しで、結局のところ1つの案に賛同者がなかなか2票集まらないという状態が続いた。 もっともここまで議論が長引くのには、もうひとつ理由があった。 それはコミフェスへの出品が、必ずしも毎年出来るとは限らないということだ。 毎年必ず出品する枠が設けられている大手と違い、現視研のような無名の弱小サークルは次はいつ出品出来るか分からない。 くじ運が悪ければ、今回が彼女たちの大学での最後のサークル参加になるかも知れない。 そう考えると、どうしても今回最高の本を作らねばという思いが過剰になってしまう。 テーマひとつ選ぶのにもついつい慎重になり過ぎてしまうのも、ある意味仕方ないことかも知れなかった。 強権発動して決めてもよかったのだが、荻上会長は敢えて1年生だけで納得行くまで話し合わせて決めさせることにした。 今回の同人誌の件については、荻上会長はオブザーバーに徹し、暴走した時だけ止め役に回る程度以上には介入しないと決めていた。 彼女たちを信頼しているというのもあったが、もうひとつ別の目的があった。 それは次期会長に誰を推すか選定することだった。 順調に原稿が上がれば、10月末に出る「月刊デイアフター」12月号から荻上会長の作品は連載開始する。 8月中に第1回の原稿を上げ、以降月に約20Pずつ原稿を上げていかなければならない。 編集部の担当の人は「学生さんなんだから、1回や2回原稿落としても大丈夫だから、気楽にやりなさい」と言ってくれてはいるが、その言葉に甘える積りは無かった。 やるからには絶対に原稿は落とさない、当たり前のことだがそう決心していた。 ただそうなると、やはりどうしても会長としての職務はおろそかになるかも知れない。 現に今でも、3年生は荻上会長1人きりで手が回らないので、会計は台場(簿記の資格を持ってたので)に任せてるし、書記や様々な提出書類は神田(ペン習字1級で字が上手いので)に任せていた。 とりあえず今考えてるのは、秋頃に誰かを会長代行(あるいは名称は副会長でもいいかも知れない)に任命して、半年近いテスト期間を経て決めるという方法だ。 あるいは男女ほぼ半々で2桁の人数なのだから、体育会系のクラブみたいに男子リーダーと女子リーダーを1人ずつ選んでもいいかも知れない。 ただそれにしても、今年の1年生は人数が多い上に、リーダー候補が多過ぎた。 先ず腐女子四天王にはリーダー格の豪田がいる。 彼女は決して押しの強さと口数だけでリーダーぶってる訳ではない。 小学生の時から少女漫画を描いてて、経験に裏打ちされた知識や技術には、各自それなりに敬意は払っていた。 それに世話好きで面倒見のいい一面もあった。 四天王の参謀的な役割の台場は、ヤオイ方面の知識と情報量と理論では誰にも負けない。 口数は少なく前に出ることは少ないが、巴は高校時代ソフトボール部のキャプテンの経験がある。 さらに高校時代の経験で言えば、有吉は漫研の会長、伊藤は文芸部の部長だったそうだ。 その一方で、荻上会長は逆のことも考えていた。 と言うのも斑目会長のように、どっちかと言えばリーダーっぽくない押しの弱そうな人が会長やって上手く行った(そうか?)例もあるからだ。 今の1年生たちの代のリーダー候補たちは皆個性的なので、役職と責任で縛るより好き勝手やらせてやり、別のリーダーが止め役として制御した方がいいかも知れない。 その意味でどっちかと言えば大人しそうな、沢田、神田、国松、日垣、浅田、岸野という目もあるかも知れない。 その辺を見極める為の試金石、荻上会長は今年の夏コミをそう捉えていた。 ケンケンガクガクの議論の末、台場が妥協案を出した。 まず各々が描きたいと思うお題をメモ用紙に書く。 そのメモを四つ折りにして、ちょうど空になったティッシュの箱に入れる。 そしてよく振って荻上会長に1枚引いてもらい、当たったものを今回のお題とする。 まあ早い話がくじ引きである。 台場「最も公平で民主的で、そして神聖なる方法よ」 豪田「でもここまでモメて、くじ引きってのも…」 台場「慌てないで、その辺のフォローも考えたから」 台場が考えたのは、次のような方法だった。 くじで外れた者は、当たりの原稿を手伝う一方で、自分の書いたお題のコピー本を作れる。 ただしコピー代は自腹なので、作る作らないは各自の判断に任せる。 そしてコピー本は、印刷所で刷った方の同人誌に「おまけ」として付けるのだ。 おまけを付けるか付けないかは、お客さんの希望に従う。 おまけ付きの特装版も、おまけ無しの通常版も値段は同じにするので、どっちにしてもお客さんには損は無い。 あくまでもお客さんの好みや都合で選んでもらえばいい。 捨て身の「損して得取れ」商法だ。 巴「値段均一はちょっと無理が無い?」 沢田「本体の値段に、おまけ分上乗せ出来ないの?」 台場「本体は基本20ページぐらいで1冊500円の予定だから、上乗せ分は殆どないわ」 豪田「てことは、完全に自腹?」 台場「だからこの方法は強制にしない方がいいと思うの。自腹でも自分の本出したい人は出す、うちの同人誌に全力つぎ込むって人は出さない、そんな感じでいいんじゃない?」 しばし考える一同。 豪田『うーん、今度の同人誌は200部刷る予定だから、仮に半分おまけ付けるとしても100部、全部に付けたら200部か…』 巴『おまけコピー本を仮に10ページ程度として、2ページ並べてコピーすれば、コピー代は1部50円』 沢田『仮にコピー代1部50円ぐらいなら、100部なら5000円、200部なら10000円か』 有吉『普段なら5000円や10000円ぐらいなら出せるけど、夏コミを控えたこの時期にそれだけの出費は痛い』 一同『うーむ…』 ちなみに彼女たちに、パソコンのプリンターを使うという選択肢は無かった。 「昔プリンターで大量にコピーしたら、途中で壊れてえらい目に遭った」 「コピー本をコピー機以外で作るのは邪道」 「パソコンで原稿描く場合以外で、プリンター使うのは邪道」 理由はいろいろだが、何故か全員プリンターに対して禁忌意識を持っていた。 金がネックになって議論が膠着したので、荻上会長は助け舟を出すことにした。 荻上「ねえ台場さん、コピー代ぐらいはうちの予算で出せない?」 台場「今回はコスプレで相当使ってるから、印刷代までで赤字なんです。それにこの方法、僅かな金額とは言え自腹がかかってるからこそ真剣になるし、燃えるんです」 台場の瞳に怪しい光を見て荻上会長は少したじろいだが、それでも金でもめるのは避けたかったので別の財源を提案した。 荻上「いざとなれば、初代会長が好きに使ってくれっておっしゃってたOB会費も預かったままだし、私も春夏秋冬賞の賞金残ってるし…」 台場「(大声で)それは絶対ダメです!」 凍り付く一同。 台場「…すいません、大声出して」 荻上「何でそんなに無理に自分たちだけでやろうとするの?そりゃ同人誌についてはみんなに任せたけど、こういう問題ぐらい私に相談してもいいじゃない?」 台場「こういう問題だからこそ自分たちで解決しなきゃいけないんです。だって荻様…会長もうすぐ本格的に漫画家としてデビューされるから」 はっとなる一同。 台場「大野先輩は9月で卒業するし、恵子姉さんは来年専門学校卒業だし、朽木先輩も来年卒業です。残るのは私たちと、秋に来る外人さんたちだけになってしまいます」 一同「…」 台場「来年には、もう私たちがこの現視研の主力になるんです!私たちで現視研守っていかなきゃいけないんです!だから、何時までも会長に甘えてちゃいけないんです!」 荻上『台場さんがこんなに長々と熱く語るの初めて見たなあ。意外と熱血だったんだ、この子…』 熱くなったせいか、台場の演説は脱線し始めた。 台場「地球の平和は、我々地球人の手で守り抜かなければならないんです!俺たちの翼で!」 一同「俺たちの翼?」 台場「(赤面し)すっ、すいません、今のは無しです。最近千里に薦められて『ウルトラマンメビウス』見出したもんで、つい…」 豪田「ウルトラマンってことは特撮?」 台場「そうよ。特撮っていうと畑違いみたいに思えるかも知れないけど、我々腐女子にとっては宝の山よ」 巴「そうなの?」 台場「まあ戦隊シリーズとか仮面ライダーシリーズがネタになること多いけど、メビウスは凄いわよ」 豪田「そんなに?」 台場「だってどう考えても、私たちみたいな視聴者層を狙ってるとしか思えない台詞とか状況がバンバン出てくるのよ。例えば、男同士で『僕たちの思い出の場所』とか…」 巴「マジ?」 台場「だから千里にヤオイの何たるかを教え込むのには、絶好のテキストになったわ」 有吉「国松さんまで引っ張り込むの?」 台場「引っ張り込むというより、本来の姿に戻すだけよ」 有吉「本来の姿?」 台場「(右拳を握り)ホモが嫌いな女子はいません!」 女子一同「(首を前後にコクコクしつつ)うんうん」 その後も特撮とヤオイに関する議論がしばらく続いた。 ひと区切り付いたところで、荻上会長は軌道修正を図る。 荻上「さあみんな、本題に戻るわよ」 先程まで殆ど発言していなかった神田がポツリと言った。 「あの…うちのコピー機使えば、そんなにお金かからないと思うけど…」 一同「うち?」 荻上「神田さんの家って、コピー機あるの?」 神田「ええ、ありますよ」 豪田「ミッチーの家って、文房具屋さんかコンビニなの?」 神田「ううん、普通の一戸建て」 巴「じゃあ家が設計事務所か何かとか?」 神田「ううん、パパただの会社員よ。ママ専業主婦だし」 沢田「それじゃあいったい…」 神田「みんなの家って、コピー機無いの?」 一同「(首を横に振りつつ)無い無い無い!」 神田「そうなんだ…案外コピー機ある家って少ないのかなあ?」 有吉「いや普通ある家の方が少ないから」 神田「そうなの?昔小さい時、パパやママのお友達の家によく遊びに行ったけど、どこもあったわよ。だからコピー機って、どこのご家庭にもあるもんだと思ってた」 一同「(首を横に振りつつ)無い無い無い!」 台場「ミッチーそんなもん、何時から家にあったの?」 神田「何時からって…昔からあったからなあ。買ってもらったのは中学入った時だけど」 一同「買ってもらった?!」 神田「うん、小学生の間はママの借りてたんだけど、中学入って私も欲しいって言ったら、パパが買ってくれたの」 巴「ママのって?」 神田「ママのが1番機能充実してるのよ。パパのだと白黒しか出来ないし、お兄ちゃんのはA4までしか使えないから」 一同「はい?」 有吉「あの、神田さん、それはもしや、家族全員がそれぞれ1台ずつコピー機を所有している、という意味?」 神田「普通そうじゃないの?」 一同「(首を横に振りつつ)無い無い無い!」 荻上「つまりそれって、もしかして神田さんのご家族って、全員同人誌作ってるってこと?」 神田「はいっ、毎年1人7~8冊は作ってますよ。私も今回は現視研の分と別に、うちの家族の知り合いのサークルに委託で置いてもらう分作るし…」 神田一族のDNAに戦慄する一同。 荻上『ある意味この子、1番現視研の会長に向いてるかも知れない…』 神田のコピー機提供により、くじに外れた者のコピー本も費用は紙代オンリーとなって気楽になったので、台場の案は採用された。 荻上会長がくじを引く。 くじを開いてみると「涼宮ハルヒの憂鬱」と書かれていた。 ブーイングが起きた。 豪田「ちょっと待ってよ!それじゃあカップリング1つしかないじゃない!」 台場「そうよそうよ、古泉のニヒル攻めとキョンの逆切れ受けしかないじゃない!」 豪田「ちょっと、それは逆でしょ?キョンの強気攻めに古泉の冷静解説受けじゃない!」 ケンケンガクガクのカップリング論争が続く。 荻上「もうみんな、その辺にしなさい!それよりハルヒって書いたの誰なの?」 有吉「僕です」 一同「有吉君?何で?」 有吉「みんなハルヒ好きだし、ハルヒならカップリング出来るキャラ限られてるから、あんまり揉めないかなと思ったんだ。結局揉めたけどね」 荻上「うーん…あのね有吉君、例えば男の子が18禁同人誌作る時、まず気に入ったキャラにあれこれすることが主眼になるでしょ?」 有吉「そうですね」 荻上「でも女の子の場合は、そういう人もいるけど、先に状況設定とかストーリーとかがあって、その必然としてカップリングが出来るのよ」 有吉「なるほど…」 荻上「だからあれこれ議論になるのは、それぞれの頭の中の設定やストーリーがそもそも違うからなのよ。それをまとめるには、納得いくまで話し合うしか方法は無いのよ」 巴「まあ結局のとこは、どっちかが折れないと決まらないのが実情だけどね」 豪田「でもその話し合いがまた楽しいのよ、女の子は」 有吉「そんなもんなんですか」 荻上「そんなもんなのよ。とは言っても、そろそろ〆切も迫ってるから、今回は有吉君の意見採用すべきだと思うの。みんないい?」 筆のひと声、もとい鶴のひと声で同人誌のお題は「涼宮ハルヒの憂鬱」に決まった。 26人いる!その2