約 2,954,443 件
https://w.atwiki.jp/netmiracle/pages/17.html
只今ネットミラクルショッピング@wikiでは ネットミラクルショッピングの放送お知らせメールや 重要なお知らせ、最新情報をお届け致します! 登録はメールアドレスだけ! *メールアドレス (確認用)
https://w.atwiki.jp/milestonematome/pages/94.html
etcなメール 名前のない人たちや、その他脇役からのメール。 スパム、差出人不明、ニュース、 よくわからないオタクの人など、差出人は様々。 「電波が乱れている状況」のため、このようなメールが届く状況なのだと思われるが、 情報集めのために片っ端からメールを受信するようにシギが改造した説もあり。 SPAMメール メール@UNKNOWNなど メール@マシマ系のオタク メール@名無しの一般人 メール@案内人 メール@レンカク メール@九の内ニュース メール@中央管制システム
https://w.atwiki.jp/indignation/pages/7.html
メールフォーム 管理者(ShoAsuka)への連絡はこちらからお願いします。 名前 メールアドレス 内容
https://w.atwiki.jp/wiki9_m2/pages/116.html
メールフォーム 名前 メールアドレス 内容
https://w.atwiki.jp/dryilse/pages/47.html
メール送信フォーム みんなの役に立つ情報や前向きなご意見をお待ちしています。 お返事は書けるかどうか分かりませんが、全部読みたいと思っています。 どうしても返事を必要とされる場合以外は、メールアドレスは書かなくても大丈夫です。 名前についても自由にしてもらってOKです(私がまだ名乗ってないので)。 私信以外で、サイトに掲載されて困る内容を書く場合はその旨を明記してください。 情報を公開する時の情報提供者の名前は希望されない限り掲載しません。 クラス別の情報を提供してくださる場合は、どのクラスなのかを忘れずに記入してくださいね。 注意:2005/11/21よりメールフォーム再開しましたが、現在は管理人さんではなくて副管理人(S)へ送信される設定となっております。 その他上記情報はそのままですが、管理人さん宛てに送ったけど、もう一回送ります。みたいな情報もお待ちしております。・・・素早い反映を期待されると辛いですが。(o_ _)o 名前 メールアドレス 内容
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2444.html
トンネルの暗闇のような眠りを抜けると、そこは昼……。 「……ああ、こんな時間」 カーテンの縁から溢れる光で、かがみは時計が示す後刻が、日付ではなく午前から午後に変わろうという時間帯である事を知って嘆息する。 導眠剤代わりに読み始めた本に熱中し、やっとの事で疲労感と睡魔を誘致した頃にはもう明け方だった。以前と違うのは、その朝が休日の朝である事のをいい事に、起こさないでほしいという旨をメールでつかさに伝え、そのまま惰眠を貪った事である。 惰眠の「惰」は怠惰の「惰」。とはいえ、たまには惰眠も貪るものである。空腹がひどい点を除けば、目覚めは悪くない。むしろすこぶる付きでいいくらいだ。 何か良い事/悪い事が起きた時、「これで運/不運を使い果たした」と言う人の事を「運命定量論者」というらしいが、「惰眠定量論」の立場に立つとすると、今日の分の惰眠はかがみが貪ってなくなったというべきであろう。両親と姉たちは、皆公用やら私用やらなんやらで出払っている。それは珍しくもないとして、今日はつかさもかがみよりは早く起きて、どこぞやかに出かけたらしい。そのため、外には休日の参拝客の気配が絶え間なく流れているものの、家の中はひっそりと静まり返っている。 今日だったのかな……。着替えを選びながらかがみは考える。 数日前、つかさがあやのと話し込んでいるのを見かけた。後で話を聞くと、峰岸家に呼ばれて、行く事にしたのだと話していた。 何をするのかは想像に難くはない。趣味をほぼ同じくする二人である。人間は本能的に、同好の士との接触を図ろうとするものである。 「同好の士……」 この言葉で、こなたの顔がポンと浮かんできてしまった。 「いやいやいやいや」 壊れたワイパーのように手を振って、浮かんできたものを振り払う。 あっちが勝手にそう思ってるだけだから! 全力で辞退してるし。 そうじゃなくて……。 一方的な同好の士認定を追い出して、エプロンにひょっとしたら頭巾もつけ、女らしいというよりは女の子らしい営みに従事するつかさとあやのを思い浮かべる。 ぐう……。 そしたら腹の虫が鳴いた。何か食わせろと不平を述べた。つかさのクッキーの釣られて、炎天下の柊家まで遠征をしたこなたを笑えない。 意識してしまえばもう最後。つかさの帰りを待つか、電話を入れて自分も峰岸家の客にさせてもらうかという、割りと深刻な問題が立ちはだかる。 ……いや、その前にとにかく朝食だ。 甘い誘惑を振り払い、着替えを終えると、自分の携帯が無言で着信を告げているのに気付いた。つかさからのメールで、かがみからの起こさないでねメールの返信の形で、今日の予定であるところの、峰岸家での営みについて書いていたのだが……。 「んなっ!?」 文面の文字を見て愕然とする。 言葉を失い、声を失い、ショックの大きさに冷静さまで失くしてしまった。 我に帰るまで数秒。冷静さをなくしたまま、かがみは行動に移った。 家を飛び出すと自転車を出し、力の限り漕ぎ出す。 目指すは同じ町内の峰岸家。 つかさとあやのの、女らしいというよりはメスのそれと言うべき営みを阻止すべく。 昼下がりの峰岸家のリビングには、暖かな午後の日差しが降り注ぎ、惰眠を貪るには格好の空間となっている。そこに漂うのが、焼き菓子の甘い匂いともなればなおさらである。 「出来たわ」 オーブンから取り出した鉄板皿上のガレットを見て、あやのが顔だけでなく声まで輝かせる。 「わー」 持参した白いエプロンを身につけたつかさも覗き込み、その出来栄えに満足する。 数日前、土曜に自分を残して家が空くので、互いの趣味を高めないかという趣旨の誘いを受けた。つまりは一緒に菓子でも作らないかということだった。 つかさとしては誘い自体に異存はなかったのだが、 「じゃあお姉ちゃんも……」 と、かがみを同伴させたがったのには首を横に振った。 「ちょっと変わった物を作ってみようと思うの」 その為にはつかさの協力が必要だし、そしてそれと知らせずにかがみに食べてもらおうというのだ。それが何かというと……。 「ちゃんと焼けたね。加藤さんのプランター」 「……妹ちゃん。それ違うから」 大カトーことマルクス・ポルキウス・カトー・ケンソリウスといえば、紀元前二世紀の対カルタゴ最強硬派の政治家で、共和政を守るために時の英雄(大スキピオことスキピオ・アフリカヌス)を弾劾し失脚させたほどの、共和政ローマを代表する堅物である。一方で農業書を記し、そこでローマ時代の焼き菓子のレシピを後世に伝えている。二人が焼いたのはプランターではなく、プラチェンタというクレープの親戚みたいな古代の焼き菓子である。 あやのの言うちょっと変わった物とは、奇特なヨーロッパの料理研究家によって復元された、古代や中世の洋菓子のいくつかだった。といっても古いものばかりではなく、現代の定番たちもすでにできあがっていて、家族や友達に配るために袋詰めしたものが、所狭しとキッチンの隅の冷暗所にひしめき合っている。 「片付けは後にして、お昼にしようよ。コーヒー淹れるね」 「うん……」 つかさはエプロン姿のまま、日当たりの良いテーブルにつく。テーブルの上にはよくある料理本のほかに、つかさには初見のヨーロッパ古代・中世のレシピ本、古代から現代までのスイーツの通史の本、それにどこか見覚えのある男の人の横顔が表紙になった「ポンペイ」の写真集まである。その場にあまりに不似合いだったため、つかさは思わず手に取ってしまった。 「それ、学校の図書館で借りたの。テレビで見たあれが載ってるかなって思って」 コーヒーにクロワッサン、それと自分たちですぐに食べると決めていた分のクッキーを盆に載せ、テーブルの対面についたあやのが言った。 「ポンペイって……」 「うん?」 「あ、いただきます」 本を開きながら、クロワッサンに伸びかけた手を慌てて引っ込め、行司から懸賞金を受け取る相撲力士のように動かしたつかさが言った。 「いただきます」 あやのも微笑みながら手を合わせる。ちなみにつかさは、「ポンペイって落語家さん?」と言おうとしたのだが、本の中の窯に目が留まってうやむやになる。 「これ、パンを焼いた窯?」 「どれどれ? うん、現代のピザ焼き窯とほとんど変わらないんだって」 「へー、そうなんだ」 「それから、銅製のクッキーの型なんかも出土してるんだって。ほら、これ」 「あ、本当だ」 焼き菓子はローマ時代に高い水準に達したこと。アルプスから運ばせた万年雪を、かき氷のようにして食べたローマ皇帝がいたこと。でもかける物が、ハチミツくらいしかなかったこと。従ってブルーハワイを味わえなかった事。コーヒーとクロワッサンは、オスマントルコの第二次ウィーン包囲(1683年)とはどうやら関係がないらしい事。ヨーロッパ内陸部には、日本よりコーヒーの伝来が遅い地域があること。……そもそも、つかさがポンペイについてよく分かっていなかったこと。 話題は弾み、菓子は減る。満たされた空腹と、解けた緊張、それに暖かな日差しがつかさを惰眠の快楽へと誘う。惰眠定量論的に見て、峰岸家の惰眠はまだ消費されていないらしい。 「妹ちゃん、眠い?」 あやのが苦笑しながら聞く。自分が眠ってしまわないために、コーヒーは割と濃い目に淹れたつもりだったのだ。 「ごめん……な……さい」 うつらうつらと舟を漕ぎ、途切れ途切れに口にする。 「ううん、いいよ寝ちゃって。何ならソファに横になっても。毛布とかは……いらないかな」 日差しを額で跳ね返しながら、日取り窓を見上げて目を細めたあやのが言う。だがつかさはソファに移動するのさえ億劫なのか、そのままテーブルに突っ伏してしまう。惰眠前最後の力を振り絞って目を開けると、ポンペイの写真集の表紙、マケドニア王・アレクサンドロス三世、またの名をアレキサンダー大王の壁画が目に入った。つかさはしばらくの間、睡魔に抗いながら大王の顔を見ていたが、やがてすっくりと目を閉じて眠っていってしまった。 きっとつかさは、あやのが古代の菓子に興味を持った事を不思議に思っているはずである。 「憧れたのかもね……」 あやのは、写真集を手にとってそう呟いた。大王に、ではない。そっと開いたページには、地に伏した格好の石像たちが載っていた。 火山灰に埋もれた死体は分解されてなくなってしまうが、死体があった部分は、地層の中に空洞となって残る。考古学者たちはそこに石膏を流し込み、空洞の型を取り(あるいは空洞を型したと言った方がいいかもしれない)死体の状態を復元した。そうして石膏像として蘇った古代の住民たちは、人間のみならず犬なども含まれていたが、その表情には一様に死の苦悶が刻まれていたという。 その中の一体(正確には二体?)、火砕流に飲み込まれる瞬間、互いを庇って抱き合ったまま永遠の眠りについたカップルというのがあった。TVにほんの十秒くらい映っただけのそれに、あやのは強く感情を掻き立てられるものがあった。古代の名もなきカップルの愛は、考古学という学問が人類の中に存在する限り、永遠に語り継がれるのではないか。 「憧れたのかも、ね」 そんな二人に。そんな愛に。……そんな二人が愛を語らいながら食べたかも知れない菓子に。 憧れでは補えない部分をつかさに補ってもらった。文献を集めたのはもちろんあやのだが、つかさの仕事ぶりを振り返るに、さすが職業にしようとしている人は違う、と思わずにはいられなかった。 「……」 この動機を、つかさに打ち明ける事は出来ないだろう。あるいは古代人のカップルに関しては、つかさはこういうエピソードを好むかもれないが、あやのに関しては単なるノロケでしかない。 でもまあ、古代菓子の再現は、つかさにとっても良い経験となっただろう。互いを少し知り合う事ができた事も。そうでなければ、こんな満足げな顔で午睡する事もない……はずだ。 ……そう言い聞かせる事で後ろめたさを振り払うと、あやのは決断した。 「よし、片付けちゃお」 皿とカップをまとめてシンクに運んだら、外で練習不足&才能不足のヴァイオリンの音色のような音がした。誰かが自転車のブレーキを乱暴にかけたようである。ほどなくインターホンが鳴った。 「みさちゃんかな?」 みさおが予告なしに押しかけたのだと思って、インターホンに出ると、火山爆発が起きた……のかと思う程の怒声をインターホンは吐き出した。 大規模な火山爆発の地震波や衝撃波は地球を何週もし、音は数千キロ先まで届くというから、鷹宮から一番近い火山が那須火山帯のいずれの山だとしてもありえない話ではないが、あいにくモニターに映った相手の表情から察するに、その訪問者から発せられたのに間違いはないようだった。 「ひ、柊ちゃん!?」 たじろいだあやのが発した声に、つかさが「……あと五分だけ~」と寝言を言った。色々間違っている。 かがみの怒声は、インターホン越しになおを続く。 「峰岸!! あんたって奴は、人の妹捕まえて何してんのよ!?」 「ご、ごめんね。とと、とりあえず落ち着いて。今開けるから」 あやのはプラチェンタの一つをティッシュで包んで持つと、玄関に向かった。普通に考えて、かがみの言う「何」はこれ関連のはずだ。食べ物の恨みはナントヤラで……。 「いらっしゃい、柊ちゃん」 あやのがかがみを迎え入れる。 「え……と、プラチェンタ、食べる?」 「プランターなんていらないわよ!」 かがみが噴火したまま答える。やっぱり二人は姉妹なんだな、とあやのは思う。 「それより」 かがみはあやのの肩を掴み、凄まじい形相で睨みつける。本当は襟首を掴むか、首を締めたいのだろうけど、長年の付き合いが辛うじて思いとどまらせたのだろうということが、あやのにもなんとなく伝わってきた。その掴んだ肩を揺すって、かがみが喚く。 「つかさはどこ!? あの子に何かあったら責任取ってよね。心の傷とかもふくめて」 「え? ……ええ??」 ここにきてあやのは、ようやくおかしなことになっているのに気付く。責任だの心の傷だの、食べ物の恨みの延長にしては大袈裟過ぎる。揺するのをやめると、かがみの手には、別の振動が伝わってきた。あのあやのが、泣きそうな顔で震えていた。怒ると怖いが、身に覚えのない怒りをぶつけられて、逆ギレのしようもない。 「ごめん……」 かがみは気まずそうに手を離し、目をそらす。 「これは……つかさが望んだことなの?」 あやのは目の前に二又の道があって、片方には地雷が埋設されていると悟ったが、地雷探知機の持ち合わせがなかったため、正直に話すことにした。 「ううん、私が―」 呼んだの、とは続けられなかった。 「やっぱあんたか~!!」 「やーん」 かがみ、再び噴火。かがみを震源とする火山性の地震があやのを襲う。 「とにかくつかさに会わせて! どこ!?」 「妹ちゃんはリビングで……」 「リビングなの!? 寝室とかじゃなくて?」 「う、うん……。(日差しが)気持ち良くて寝ちゃったみたい」 「気持ち良くて……」 かがみは燃え尽きたように見えた。朝・昼食抜きですっ飛んできて、火山活動にエネルギーを使ったのだから無理もない。 「上がらせてもらうね……」 かがみは諦めたように言って、靴を脱ぐための予備動作に入ったとき……。 「あやちゃん……?」 廊下奥のリビングから、つかさが姿を現した。包丁を手にして……。 以前柊家で、まつりがうっかりセールスマンを玄関の中に招き入れてしまった時、かがみの献策で使った手である。包丁を持ったつかさが台所から来て、「お姉ちゃん、お鍋の様子を見ていて欲しいの」。 玄関の方から聞こえてくるかがみの噴火活動により、五分を経ずして目を覚ましたつかさは、あやのが玄関で招かざる客に捕まっているのだと思い、救出するために同じ手を使おうとしたのである。だがそこにいたのは、他ならぬかがみだった。策士、策に溺れる……(違)。 「つかさ!」 かがみは靴を脱ぎ飛ばし(文字通り飛んだ。ちゃんと脱いだ点を称賛すべきか、脱ぎ方にケチをつけるべきか、靴の飛び方を着地も含めて採点すべきかは、意見の分かれるところであろう)、つかさに駆け寄る。つかさは包丁を振り上げる。かがみに刺さったりしないように振り上げる。 「お姉ちゃん、危ないよ」 抱きついてきたかがみに、溺れるような形になったつかさが言った(包丁を振り上げたまま)。 「つかさ、つかさ……。ひどい事されたわね。もう大丈夫よ」 「ひどい事なんてされてないよ。あやちゃん、良くしてくれたよ?」 「良くして……? 良かったんだ……」 かがみが再び意気消沈する。「パンがなければお菓子を食べればいいのに」と言ったマリー・アントワネットは、囚われの牢獄で一晩にして白髪頭になってしまったというが、パンもお菓子も食べずにここまで来たかがみも、お菓子の香り漂う峰岸家でその轍を踏もうとしているようである。だが幸い、かがみはここである事に気付いた。 「ていうか……」 つかさを離し、二人を下から上へと視線で一舐めにし、不審そうな顔になった。 エプロン姿である事に違和感を抱いたのだろうか? あやのが言う。 「エプロンのままお昼にしたの。お菓子とか、気をつけないとけっこうこぼれるでしょ」 「私はエプロンのまま寝ちゃったよ……」 つかさも照れながら言った。 「……」 かがみの違和感はそれでも晴れないらしい。不審そうな顔のまま手を伸ばし……。 「柊ちゃん!?」 「お姉ちゃん!?」 ……二人のエプロンをめくった。 スカートをめくられたわけではないし、下にちゃんと着けていたのだが、それでも落ち着くものではない。 「ちゃんと着てるわね……」 かがみ、それとなく変態発言。 「当たり前でしょ! 着けてなかったら、は、裸エプロンじゃない」 その言葉自体口にするのが恥ずかしいあやのは、カァッと赤面した。しかしかがみ、それでも引き下がらない。 「私はよく知らないんだけど、そういうものじゃないの?」 「そんなの、女同士でおかしいよ」 「……男相手なら良いんだ?」 「あ……う……」 やり込められた形のあやのだが、ふと起死回生の一撃を思いついた。クラゼヴィッツでいうバック・ハンド・ブロー。後手からの一撃。煌く報復の剣! ……単純な事である。 「着ている筈ないって思っていたってことは、柊ちゃんの見立ては外れたってことだよね?」 「う……」 「柊ちゃんは、私たちが何をしていると思ってたの?」 「それは……」 ようやく何かおかしいと気付き始めたかがみは、白旗の代わりに携帯電話を取り出した。つかさからの返信を表示した状態で、二人に見せる。副将軍とは異なり、印籠のような効果はここでは得られない。 文面はこうなっていた。 お姉ちゃん、おはよう。 起こしちゃいけない事、みんなに伝えておくね。 私は今日、峰岸さんの家で子作りするから、夕方まで帰りません。できたのはお姉ちゃんにもあげるね。 「子作り……」 かがみの中でつかさは、あやののところへ子作りをしに行った事になっていたらしい。 「二人とも来て」 あやのは二人を手招きして、電話機の前まで行った。通報するためではない。それどころか怒った様子さえなく、むしろ笑いを堪えているようだった。 「妹ちゃん」 「はい」 「妹ちゃんは、携帯メールが苦手だったりする? 打つ方が、だけど」 「う……ん。最近は慣れてきたけど、おねえちゃんに返信した時は、まだ眠かったかも。最初は変換の間違いとか、文字が足らなかったり、余計だったり」 「それに気付いたって事は、直したんだよね?」 「うん」 あやのは電話機横のメモ帳に、備え付けのペンで「子作り」と横書きした。かがみも肯く。 「『子作り』以外は、特に変な所はないわね」 だからこそ、かがみは内容を真に受けたのだ。 「その時、元々正しかった部分を、間違って消しちゃったんじゃないかな? この二文字を……」 あやのは「子作り」の上に、「お菓」と書き込む。 お菓 子作り 「「おかしづくり」」 柊姉妹がハモった。連絡事項がうまく伝わらなくても、やはり姉妹である。 私は今日、峰岸さんの家でお菓子作りをする…… 「邪魔したわね」 かがみは峰岸家を後にするつもりらしく、玄関に向かってよろよろ歩き出す。その背中があまりに小さく見えたので、つかさとあやのは顔を見合わせる。かがみが脱ぎ飛ばした靴(何故かきれいに揃えられていた)に達する前に、あやのが声を掛ける。 「柊ちゃん」 凛として響いた声に、かがみのみならずつかさもビクッとした。つかつかとかがみに追いつくと、ずっと手にしていたものを差し出した。 「プラチェンタ、食べない?」 「そうだよ、お姉ちゃん」 つかさもやって来て、かがみの腕を捕まえる。 「加藤さんのプランター以外にも―」 「大カトーのプラチェンタ」 「―色々作ったから、一緒に食べようよ」 「いや、私お腹空いてないし」 そう言っているそばから、腹の虫が悲鳴を上げる。朝・昼食を抜いたかがみは、精神的要因もあり、空腹を通り越して衰弱しかけていた。だがかがみは、何が何でも峰岸家から離れたいらしかった。 「ダイエット中だし……」 「ダイエット?」 「そう、ダイエット、ダイエット」 「ここまで自転車で来たんだから、その分は食べても平気でしょ?」 「そ、そんな……」 「お姉ちゃん、家でちゃんと食べてきた? 朝ごはんとか」 「うん、食べた食べた。食べ過ぎてダイエット……」 「本当に?」 「本当本当」 「嘘ね」 「んなっ!?」 「妹ちゃん、そっちしっかり持って」 「うん」 「ちょ、おま、HA☆NA☆SE」 二人がかがみを連行しようとすると、少し前にも聞いた練習不足で才能不足なヴァイオリンの音が、今度は和音で聞こえ、開けっ放しの玄関ドアの向こうに、こなたとみさおが走ってくるのが見えた。 「つかさ~、もうデキちゃった?」 「兄貴の代わりに止めに来たってヴァ!」 つかさの子作りを阻止すべく、かがみが呼び寄せた増援が到着した瞬間だった。 「ごめん……」 つかさとあやのに捕まっていたかがみは、むしろ二人に掴まるよいうにして力なく項垂れた。 配って回る予定だった菓子のいくらかは、峰岸家を出ずして消費されそうである。 今さらだが、「惰眠定量論」は誤りらしい。 相変わらず惰眠に最適な峰岸家のリビングでは、こなたとつかさが、本塁で憤死した逆転サヨナラのランナーのようにテーブルに突っ伏してテーブルの半分を埋め、みさおが一人でソファを占領してそれぞれに惰眠を貪っている。もし定量論が正しければ、峰岸家の惰眠はすでに貪りつくされ、負債を抱えているはずである。 「食べも食べたり……」 テーブルや つわものどもの 宴の跡 などと小粋に一句詠みたくなるほど散らかったテーブルの残り半分を見て、かがみが嘆息する。配る対象の厳選を余儀なくされるほど諸々の菓子は消費され、大カトーのプラチェンタに至っては、カンネの戦いのローマ軍を髣髴とさせるほど豪快に全滅していた。 「うふふ……」 あやのは、育ち盛りの我が子の成長を喜ぶ母親のように笑う。 「一番食べてたの、柊ちゃんだったと思うよ」 「……一番笑っていたのは日下部よね、間違いなく」 増援に駆けつけた二人は、事に真相を聞かされてまず脱力し、続いて笑い転げた。その後に開かれたお茶会でも、みさおに笑い続けていた。食べるか笑うかどっちかにしろとかがみは叱ったのだが、結局器用にも両方こなしていた。実は只者ではないのかもしれない。 「柊ちゃんも寝てていいよ」 「いや、私も手伝うわ。片付け」 かがみは申し訳なさそうに言う。 「べつに、最初から怒ってなんかいないんだけどなあ」 あやのの背後といわず前後左右に、黒いオーラが立ち上る。 「そんな風に笑ったら余計怖いんだけど……」 結局手伝ったかがみだが、あやのは途中で、まだ何かあるのではないかという仮説に行き着いた。かがみの様子にはそわそわと落ち着きがなく、外をしきりに気にしているように見える。それにリビングに漂う、微妙な違和感。何かが、いや誰かが決定的に足りないような気がする……。 その時だった。 ピンポーン まるでクイズ番組の正解のチャイムのように、峰岸家のインターホンが鳴る。 「あ、出るから」 弾かれたように、かがみが玄関に向かう。当然、あやのも後を追う。 果たして……。 玄関を開けたら、そこには女が一人倒れていた。 可及的速やかに駆けつけたため疲れきっており、雰囲気的には「アテネ軍はマラトンで勝ったヨ」と言い出してもおかしくなかったが、あいにく彼女は、ペルシア軍との決戦場ではなく、東京から駆けつけた事は明白だった。 「みゆき……」 「高良ちゃん……」 「つかささんが子作りをなさると聞いて、飛んでまいりました……」 みゆきはそう言い遺して、そのまま惰眠に入った。気を失った、とも言う。かがみは県外にまで増援を求めていたのである。 「ごめん……」 かがみは、みゆきに対してともなく、あやのに対してともなく謝った。 彼女が家族の誤解を解くべく奮闘し、奔走するのはまた別の物語。 おわり コメントフォーム 名前 コメント かがみんwww メールの後半部分で 気が付きそうなもんだが…真に受けちゃったかw >子作りするから、夕方まで帰りません。 >できたのはお姉ちゃんにもあげるね。 シュール過ぎるwwwwww とにかく面白かったっす!w -- 名無しさん (2010-04-09 20 41 05) らき☆すた好き&古代ローマ好きなので、とても興味深く読ませて頂きました。 あなたの雑学を交えた理知的な文章が大好きです。 -- 名無しさん (2010-01-01 01 17 49) これはおもしろかった。(>ω<)Ъ<GJ!) お菓子作り→子作りかあ~ そりゃかがみんもあせるわwww でもこんなドタバタとほのぼのがらきすたに一番合っている気がする。 -- 名有り (2009-01-12 22 48 41)
https://w.atwiki.jp/sephi/pages/121.html
メールフォーム 連絡はこちらのフォームからお願いします。 名前 メールアドレス 内容
https://w.atwiki.jp/haruhi_aska_sui/pages/85.html
メールフォーム どうぞご利用ください 名前 メールアドレス 内容
https://w.atwiki.jp/pokeaa/pages/112.html
管理人にメールを送ります。 名前 メールアドレス 内容
https://w.atwiki.jp/ddr-nara/pages/4.html
メールフォーム 管理人kimへの連絡はこちらからお願い致します。 名前 メールアドレス 内容