約 3,643 件
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/606.html
『シ○○ッ○』 現在希望ヶ峰学園は冬休み中 クラスメートのほとんどは実家に帰ったり仕事だったりして現在学園にはいない 僕は実家に帰る前に部屋の掃除をしていた そして終わったころ外の空気を吸いたくなり屋上へと向かった ドアを開けると流れ込む冷たい冬の空気に身を震わせる 「寒くなってきたなぁ」 はぁ、と吐いた息は白くなり空へと消えていく ポケットに手を突っ込み目的のものを取り出す それを箱から出す 「うーん……手袋つけたままだとやっぱり剥がれないか」 仕方なく右手の手袋を外し封を破る 焼け爛れた右手が露わになるが気にせずそのまま箱の中身を取り出し口に咥える 希望ヶ峰学園の校章が描かれた黒い手袋をはめ直した 「……」 咥えたそれの味をかみ締める 久しぶりに見かけたこれを思わず衝動買いしてしまったけどこれは正解だったかな? 「苗木君……!?」 「霧切さん?」 声に気づき僕が振り返ると信じられないものを見たような霧切さん つかつかと歩み寄り僕の咥えていたそれを奪い取る 「霧切さん!?」 「苗木君!あなたがこんな物を吸うなんて……」 「えっ?」 吸う? ……僕は吸ってなんかしないんだけど? 「こんなもの吸ってたら体を悪くするわよ!それ以前に未成年じゃない!!」 「……もしかして霧切さん勘違いしてない?」 霧切さんの発言から僕はある事に気づいた 確かにこれはよくあれに似ている 昔、妹にも勘違いされ一度僕はまったく悪くないのに怒られた記憶があるし…… 「勘違いですって……言い訳は見苦しいわよ」 「いやいや言い訳じゃなくてさ……ああもういいや」 手っ取り早くポケットから残りを取り出し一本取り出す それを文句を言われる前に霧切さんの口に無理やり咥えさせる 「ちょっと苗木くっむぐ!?」 「はい霧切さんも一本あげるよ」 「そういう事じゃ……えっ甘い?」 咥えさせられたそれを手に取りまじまじと霧切さんは見る 繋ぎ目を見つけ外装を器用に剥がす 「……チョコレート?」 「うん、タバコっぽいやつ。たまたま見かけて懐かしくて買っちゃったんだ」 そう。 僕が咥えていたのはタバコに似せた包装紙に包まれたチョコレートだ 誰もがやったであろう冬に買って白い息を吐いてタバコを吸ってるようにするというアレ ちょっとした気分転換になればいいかなぁ、と思ってそれをやりにきたのだが…… 「……」 「……」 霧切さんはチョコを片手に固まっている 気まずいのと霧切さんの機嫌取りのために彼女の持ってるそれを奪う 「霧切さん、ポッキーゲームってあるよね?」 「……」 それを口に咥えると霧切さんと向かい合う 「霧切ふぁん、ここまふぇいえふぁふぁかふよね?」 「……」 何も言わず霧切さんは反対側を咥えてくれた
https://w.atwiki.jp/anipicbook/pages/3157.html
ダンガンロンパ The Animation A4クリアポスターセット A (苗木誠・舞園さやか・石丸清多夏) ダンガンロンパ The Animation A4クリアポスターセット A (苗木誠・舞園さやか・石丸清多夏) 発売日 :2013年9月15日 商品情報 ・本体サイズ:A4 (W210mm×H297mm) ダンガンロンパ The Animation A4クリアポスターセット B (十神白夜・江ノ島盾子・腐川冬子) ダンガンロンパ The Animation A4クリアポスターセット B (十神白夜・江ノ島盾子・腐川冬子) 発売日 :2013年9月15日 商品情報 ・本体サイズ:A4 (W210mm×H297mm) ダンガンロンパ The Animation A4クリアポスターセット C (霧切響子・桑田怜恩・不二咲千尋) ダンガンロンパ The Animation A4クリアポスターセット C (霧切響子・桑田怜恩・不二咲千尋) 発売日 :2013年9月15日 商品情報 ・本体サイズ:A4 (W210mm×H297mm) TVアニメ「ダンガンロンパ」 キャラポスコレクション BOX TVアニメ「ダンガンロンパ」 キャラポスコレクション BOX 発売日 :2013年8月31日 商品情報 ・ポスターサイズ:182×525mm ・1BOX=8個入り ・1個=ポスター2枚入り ・全16種類 ダンガンロンパ The Animation B2タペストリー ダンガンロンパ The Animation B2タペストリー 発売日 :2013年11月15日 商品情報 ・本体サイズ:W728×H515mm (B2)
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/527.html
ボクはいつの間にか、暗い眠りに落ちていた。 夢の中で、白と黒の「もや」が揺らめく。これは── 正体不明の「もや」を捕まえようとして思わず伸ばした手が空を斬り、バランスを崩した感覚に目を覚ます。 次の瞬間、ボクは硬い木の板に額を打ちつけていた。 「痛っ……」 どうやらボクは机に突っ伏して眠っていたらしい。痛みのおかげでどんどん頭は冴えてきたが…… まだ少しぼんやりした意識をはっきりさせる為に、ボク自身の事を少し整理しておこう。 ボクの名前は、苗木誠だ。どこにでもいそうな、平凡な男子高校生。 今日は──そう、希望ヶ峰学園の入学式の日だ。 各分野での一流の才能を持った高校生だけが入学を許される超エリート校に、 抽選で選ばれた“超高校級の幸運”として招かれたボクは、今朝、学園の校門をくぐって、それから── ────それからの記憶がすっぽりと抜け落ちている。 一体何があったのか、どうしても思い出せない。いや、それよりまず……ここはどこなんだ? 今、ボクがいるのは同じデザインの机と椅子のセットが沢山、しかも同じ向きに規則正しく並んだ部屋だ。 そしてボクから見て正面の壁には、まるで学校の教室みたいに黒板が備え付けられている。 ……教室みたい、じゃないな……。どう見ても学校の教室だ。 ──ここが、希望ヶ峰学園なのか? だけど、本来窓があるべき方向の壁は分厚い鉄板で覆われていて、天井には監視カメラが取り付けられている。 これだけでも十分異様な雰囲気だが、何より気味が悪いのはこの静けさだ。 ボクが目を覚ましてからゆうに5分は経っているはずなのに、これまで何の物音も聞こえない。 漠然とした強い不安にかられ、ボクはごくりと喉を鳴らして唾を飲み込む。 とにかく、この部屋から出よう。自分の置かれた状況をしっかり把握しないと、居ても立ってもいられない……。 『教室』の扉に鍵がかけられていなかった事にホッとしながら外に出ると、そこは広い廊下になっていた。 少し照明が落としてある事以外はここも教室と似たような──要するに異様な雰囲気だ。 一見、ありふれた学校の廊下にも見えるが、やはり壁の鉄板とあちこちに仕掛けられた監視カメラが目に付く。 ……この廊下を、どの方向に歩いていけばボクの求める答えがあるんだろうか? 途方に暮れながら当ても無く辺りを見回す。 ──と、その時。コトリと微かな物音がして、ボクは身を震わせた。 振り返ると、その音はボクが出てきた教室の隣の部屋から聞こえたようだ。 扉のすぐ上には『1-B』と書かれたプレートが掲げられている。 よく見ればボクがいた教室の方には『1-A』のプレートが掲げられている事にも気がついた。 やはり、「教室」と呼んで差支えは無さそうだ。 ボクは物音の正体を確かめる為に、恐る恐る1-Bの教室の方に向かった。 1-Bの教室の扉を開けて目に飛び込んできた光景に、ボクは息を飲んだ。 そこも1-Aの教室と全く同じと言っても良さそうな構造なのだが、 ボクの座っていたのとほぼ同じ位置にある席に一際目を引く「もの」が立っていた。 「それ」は、とても綺麗な人形に見えた。 外見は真っ白い肌をした、黒髪の可愛い女の子。 何より特徴的なのはその身を包む衣装で、フリルやレースなどの可憐な装飾を凝らしたゴシック調の── ──なんてくどくどと並べる事はない。一言で言えばゴスロリ服というやつだ。 さっきの物音は、この人形の……? ボクは無意識に「それ」に触れてみようとして、何気なく足を踏み出す。 すると──虚空を見つめているかのようだった彼女の赤い瞳が、くるりとこちらを向いた。 そして「にっこり」としか言いようの無い、無邪気な笑み。ボクの心臓は一瞬、驚きのあまり縮み上がる。 ……に、人形じゃなくて本物の人間だったのか! 「お初にお目にかかりますわね。わたくしの名前はセレスティア・ルーデンベルクです」 ボクの動揺をよそに、ゴスロリ服の女の子はごく自然な口調で言った。 続いて、優雅な仕草でスカートの端を持ち上げ、うやうやしくお辞儀をしてみせる。 君は誰? ここはどこ? 今、ここで何をしてたの? 他に誰か見なかった? ──様々な質問が瞬時に頭に浮かんできたが、一度に聞いても初対面の相手を困らせてしまうだけだろう。 とりあえず相手が名乗った以上、自分も名乗っておかないと。 「えっと、はじめまして。ボクの名前は──」 「苗木誠君でしょう。知っていますわ」 先に言われてしまった。……でも、どうしてボクの名前を? ボクが聞き返すと、ゴスロリ服の少女は口元に上品な笑みを浮かべて答える。 「今期の新入生のうち、他の皆さんにはすでにお会いしましたので、 残るは“超高校級の幸運”である、苗木君……あなたしかいないというだけの事です」 「他の皆さんに……? って事はセレスティア……ルーデ……さんも……」 「セレスティア・ルーデンベルクです。“セレス”と呼んでくださって結構ですわ」 セレスティア・ルーデンベルク──彼女の事は、ボクも聞いたことがあった。 希望ヶ峰学園の生徒は(ボクのような例外を除いて)全員が“超高校級”の才能を持った天才高校生だ。 だから、入学前から各分野の第一線で活躍している人ばかりで、メディアで取り上げられる事も少なくない。 ──何でも、彼女は負け知らずの“超高校級のギャンブラー”で…… ゴスロリ服を愛するという事以外、全てウソのベールに包まれているんだとか……。 「これから、よろしくお願いしますわ」 そう言って再び、にっこりと笑うセレスさん。 ──良かった。ちょっと変わってるけど、いい人そうだ。 こちらこそよろしく、と返して今の状況について尋ねてみる事にした。 「ところで、ボク……気がついたら隣の部屋で寝てたんだけど、入学式はどうなったのかな?」 ボクの言葉に、セレスさんは急に真顔になって答える。 「……やはり、あなたもですか。実はわたくしや他の方も同じなのです。目を覚ました場所こそバラバラですが、 気がつくとこの建物の中にいて……どうやら入学式どころか、訳のわからないイベントに強制参加させられているようですわ」 同じ……? それに、訳のわからないイベントって……? 呆気に取られているボクに、彼女は続ける。 「ひとまず、この建物の中を歩き回ってみるといいでしょう。他の皆さんも思い思いの場所にいらっしゃいますわ。 そのうち、あなたにもこのイベントの主催者から説明があるでしょうから……」 他に当てがある訳もなく、ボクはセレスさんに言われるままに建物の中を探索してみる事にした。 彼女によれば、この建物は『校舎棟』と『寄宿舎』の二つのエリアに分かれているらしい。 ボクが目を覚ました『教室』があるこちらは、当然『校舎棟』だ。 そして──ボクは自分と同じ希望ヶ峰学園の新入生達に出会った。 校舎棟で出会ったのは………… 占い界(?)の超新星──“超高校級の占い師”、葉隠康比呂。 数々の画期的なプログラムを開発した──“超高校級のプログラマー”、不二咲千尋。 日本最大最凶の暴走族の総長──“超高校級の暴走族”、大和田紋土。 有名進学校の風紀委員──“超高校級の風紀委員”、石丸清多夏。 女子高校生から絶大な支持を集めるカリスマ──“超高校級のギャル”、江ノ島盾子。 学祭で同人誌一万部を売り上げた伝説を持つ──“超高校級の同人作家”、山田一二三。 皆、一度はテレビやネットで取り上げられた事がある有名人だ。 そんな彼らにも軽く自己紹介をして話を聞いてみたが──セレスさんに聞いた以上の情報は出てこない。 ボクは混乱をさらに深めつつ、続いて寄宿舎の方へ行ってみる事にした。 薄暗い廊下を歩いていくうちに、あちこちにカギがかかった部屋を見つけた。 それらの部屋はカギがかかっているだけでなく、ドアに黄色いテープを何重にも貼って閉鎖されている。 テープには黒い文字で『準備中』と書かれていたが……警察の規制テープそっくりで、いかにも不吉だ。 『絶望ホテル』と彫られた大理石の看板の先が、寄宿舎エリアだった。 寄宿舎と一口に言うが、食堂や倉庫、大浴場などの施設も付属しているらしい。 そこでボクが出会ったのは………… 地上最強の女子高生──“超高校級の格闘家”、大神さくら。 次々と高校記録を更新する万能のアスリート──“超高校級のスイマー”、朝日奈葵。 国民的アイドルグループのセンターマイク──“超高校級のアイドル”、舞園さやか。 全国大会常連校のエースで4番──“超高校級の野球選手”、桑田怜恩。 恋愛小説を得意とするベストセラー作家──“超高校級の文学少女”、腐川冬子。 世界的巨大財閥の御曹司──“超高校級の御曹司”、十神白夜。 やはり皆、ボクでも知っている有名人だ。逆に皆は一般人に過ぎないボクの事なんか知らない訳だけど……。 そしてもう一人………… 廊下の壁に、ホテルのように同じデザインのドアが集まって並んでいる。 これらが全て個人が生活する為の部屋だとすれば、まさに『寄宿舎』だろう。 ただし、どのドアも校舎棟で見たのと同じ『準備中』のテープで塞がれている……。 一人廊下に立って何か考えている様子だった十神クンと話し、別れた先に彼女はいた。 十メートルほど先の部屋の前でロングヘアの女の子が屈み込んでいる。 最初は体調が悪くてうずくまり、ドアに寄りかかっているのかと思ったら── 近づいてみると、ドアに耳をくっつけて、真剣な表情で何かに集中しているようだ。 「……あの……はじめまして」 恐る恐る話しかけたボクに、彼女は口元に人差し指を当てて小さく「しっ」と応じる。 それでもボクが何か言おうと口を開きかけると、今度は親指を立ててドアの方を指し示した。 ……もしかして、中の音を聞いてるのか? ボクもこの奇妙な女の子に習ってドアに耳をくっつけてみる。すると── 『ドドドドド……!』『ガリガリガリ……!』『ギコギコギコギコ……!』 様々な音が微かにドアの向こうから聞こえてきた。 な、なんだこれ……? 工事現場みたいな音がする……! 部屋の中では派手な工事が行なわれていそうだが、音があまり漏れてこないのは防音加工が施してあるからだろうか。 しばらくボク達はそうして音を聞いていたが、やがてピタリと止んで何も聞こえなくなった。 数秒ほどしてから、女の子は小さく息を吐いて、音も無く立ち上がる。 「……はじめまして。霧切響子よ」 彼女は何事もなかったかのように、あっさりと名乗った。 表情は無表情で、ごく自然に腕を組んだポーズがモデルのようにサマになっているが…… それきり口を噤んで、まるで取り付く島がない……。 謎の威圧感に気圧されつつも、ボクは何とか霧切さんから会話を引き出そうと試みた。 「……えっと、ボクの名前は」 言いかけると、霧切さんは黒い皮手袋をはめた右手の平を突き出してそれを遮る。 「……苗木誠君ね。“超高校級の幸運”の」 気づけば、彼女は左手に黒い表紙のついた手帳を持ち、開いていた。 霧切さんはこちらをチラリと一瞥しただけで、視線をその手帳の方に注いでいる。 「……あの、それ」 「希望ヶ峰学園の『電子生徒手帳』らしいわ。ここに、今回集められた新入生のリストがあるの。 ……あなたは、まだ貰っていないのね」 セレスさんや霧切さんに自己紹介を先取りされるのはその手帳のせいだったのか……。 何かモヤモヤとした気持ちになってボクはため息をついた。 ……そう言えば──ボクはふと気がついた。 「君は、何の“超高校級”なの?」 今まで会った他の十三人の事は聞いた事があったが、『霧切響子』という名前は初耳だ。 好奇心もあり、会話のきかっけになればと思って言ったわけだが──彼女はそ知らぬ顔で黙ったままだ。 ……ち、沈黙が辛い! 「え、えっと!……じゃあ霧切さんは、今ここで何をしてたのかな?」 「…………」 「…………」 ……随分無口な人なんだな……。 ボクが諦めてその場を離れようとした時、ようやく霧切さんが口を開いた。 「“準備中”……そう書いてあるけど、一体何を準備しているのかしら? 私達をここに閉じ込めた人物が、これから何をしようとしているのか……知る必要があるわ」 静かな口調の中に、聞き逃せない言葉が混じっていた。 『閉じ込めた』だって? 閉じ込めたって、一体── 聞き返そうとして口を開きかけた時、突然、学校でお馴染みのチャイムの音が鳴った。 『あ、あ、あ~~。新入生の、苗木誠君。至急、体育館まで来て下さい。……大至急、マジでお願いします』 何だか少し間の抜けた不思議な声が、スピーカーを通して不気味に静まり返った寄宿舎に響く。 ボクはしばらく唖然としていたが……我に返って霧切さんの方に目を向けた。 すると彼女は肩をすくめて、ボクが以前通った校舎棟の方を指差す。 「……校舎棟に入って、一番奥が体育館よ」 ボクは猛烈に嫌な予感に襲われながら、小さく頷きを返してその場を離れた。 寄宿舎から校舎棟に戻り、ひたすら廊下を歩いて一番奥へ。 緊張で手の平に汗を滲ませながら、両開きの大きな扉を開いて中に入った。 そこは今まで見たどの部屋よりも、ずっとずっと広い部屋だった。 板張りの床に、高い天井。正面奥にはステージがあり、壇上に希望ヶ峰の校章が入った教卓が置かれている。 ……ここが体育館、だよな……だけど────誰もいない……? 不審に思いながらステージの近くまで足を進めると、突然、さっきの不思議な声が辺りに響いた。 『やあやあ、よく来たね、苗木誠クン! ……ゴメンねえ、呼び出しが遅れちゃって。 本当は皆一緒に集めたかったんだけど、なにせ突貫工事で準備が間に合わなかったからさー。 目を覚ました順に、ここに来てもらったってワケだよ。最後のキミを呼び出して、ようやく先生も一安心だね!』 今度はスピーカーごしじゃない。間違いなく声の主はこの部屋の中にいる。 不気味な施設に正体不明の人物……ボクは強い不安に襲われ、反射的に叫んでいた。 「だ、誰だ!? どこにいる!?」 『ああ、そこからじゃ見えないか。ちょっと待ってね。…………よっと!』 掛け声と共に、教卓の向こうの陰から何かが飛び出した。『それ』は、そのまま教卓の上に腰掛ける。 ……な、何だこれ!? ────姿を現したそいつは、縦半分で白黒に分かれたクマだった。 「な、何だよ、お前!?」 ボクの言葉に、謎のクマは当然の事のように言い返す。 「何だよとは失礼だなあ。ぼくはこの希望ヶ峰学園の学園長、“モノクマ”だよ。偉いんだよ」 が、学園長だって……? こいつが? 目の前の冗談めいた光景にまるで理解が追いつかない。 混乱し続けるボクの事などお構いなしに、モノクマは話し続けた。 「えー、新入生全員に何度も同じ話を繰り返すのは面倒なので、手短に済ませたいと思います。 今回、オマエラには“この学園の中だけ”で、“一生の共同生活”を送ってもらう事になった訳ですが──」 ……一生を、この学園の中だけで?? さっき霧切さんに聞いた、『私達をここに閉じ込めた』という言葉が脳裏に蘇る。 「どうしても、外に出たいという人の為に『卒業』というルールが存在します。 『卒業』とは、学園の秩序を破った者に、出て行ってもらう事なのですが」 ここでモノクマは一旦、言葉を切り、黒い顔半分だけでニヤリと笑った。 「では、学園の秩序を破るとはどういう事なのか? それは人が人を殺す事です。どんな方法でも構いません。 『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』……とってもシンプルですね!」 ……一瞬、自分の耳を疑った。急激に動悸が高まり、頭痛がしてくる。 ボクはあまりの展開にこらえきれずに、怒号をあげた。 「な……何、言ってるんだよっ! そんな事できるわけ──」 「できない? いいのかなあ、そんな事で。キミができなくても、きっと他の人がヤっちゃうよ? むしろ、もうヤっちゃってたりしてね。他の生徒諸君にはもう説明してあるし……うぷぷぷ」 何がそんなに面白いのか、モノクマは気味の悪い笑い声を上げ始める。 それから唖然としたボクを放ってしばらく笑い続け、ピタリと止めた。 「まあそんな訳で、最初の説明はこれで終了です。質問は一切受け付けませんので悪しからず……。 では、君も晴れて希望ヶ峰学園の生徒という事で“これ”を渡しておきましょう!」 モノクマはどういうつもりか自分のお腹のあたりをゴソゴソと手で探り、 すぐに間違いに気づいたかのように、慌てて手を自分の背中の方に回した。 「じゃーん! 『電子生徒手帳』ー!」 再び身体の前に出した手には霧切さんの持っていた物と同じ、黒い表紙の手帳が握られれている。 「とっても便利で大切な物だから、失くしたり壊したり、むやみに人に貸したりしないように。……ほいっ」 軽い掛け声と共にその手帳をボクの方に投げてよこすモノクマ。 ……いや、大切な物じゃないのかよ! ボクは大きく体勢を崩しながら、慌ててそれを受け止めた。モノクマはそれを見て満足そうに何度も頷く。 「実はキミがここに着く少し前に、ようやく寄宿舎の個室の工事が終わったので、ドアを開放してあります。 まずは自分の名札がついた部屋に行ってみてよ。……そうすれば……君も少しはやる気になるだろうからね……うぷぷぷぅ」 またも不気味な笑い声を残し、モノクマは再び教壇の後ろに飛び込んで姿を消した。 ……ボクの部屋……? そこに、何があるんだ……? 寄宿舎エリアに向かう為に、体育館を出て校舎棟の廊下を歩く。 途中、1-Bの教室の前に、セレスさんが立っているのが見えた。 「モノクマに会ったのですね……?」 ボクが頷くと、彼女は微かに笑みを浮かべる。 「……あなたは、どう思われますか? あの話……」 「たちの悪い冗談だと……思いたい……けど」 「冗談にしては、手が込みすぎていますわね。実際、何人かの方が出口を探してみたそうですが、結果は芳しくありません」 ボク自身も、さっきあちこち歩き回った時にそれとなく見ていたが、出口らしい所は見当たらなかった。 セレスさんの言う通り、冗談にしては手が込みすぎている。それに── 「さっき、モノクマに言われたんだ。『寄宿舎の自分の部屋に行ったら、やる気になるだろう』って。 もしかすると、そこにあるのかもしれない。ボク達があの話を受け入れなきゃならなくなるような物が……」 ボクの言葉に、セレスさんは口元に手を当て、目を丸くした。 「まあ。……モノクマが、そんな事を? 寄宿舎の部屋と言うと、『準備中』のドアがたくさん並んでいたエリアですわね。 準備が終わって、部屋が解放されたという事ですか。……苗木君の部屋……」 小さく呟いて、じっとボクの目を見つめるセレスさん。大きな赤い瞳がどうするのか、と問いかけている。 「とりあえず、行ってみるよ。ちょっと怖いけど……」 「……わたくしも、ご一緒させて頂きましょうか。ここでじっとしていても落ち着きませんし。 ……もし、何かあったらわたくしを守って下さいね?」 ボクが少し戸惑いながらも頷くと、セレスさんは初めて会った時のように、にっこりと笑った。 寄宿舎エリアに入ったボクたちは、まっすぐに例の個室が並んだ廊下に向かった。 なるほど、確かに各部屋のドアについていた『準備中』のテープが剥がされ、 代わりに各人の名前とイラストがついた白いプレートが(磁石か何かで?)貼り付けられている。 きょろきょろと左右のドアを見ながら歩き続け、ようやく廊下の端に『ナエギ』のプレートがついたドアを見つけた。 ここが……ボクの部屋──? ボクが緊張しながらドアノブを握ると、セレスさんはボクの背に隠れるようにして一歩引いた場所に立った。 ……扉は少し重い。手に力を込めて、ゆっくり開いていくと、そこには── 「な、何だよ、これ……」 思わず口にしてしまうような光景がそこにはあった。 中は天井に監視カメラ、壁にモニターが付いている事以外は特徴のない内装だが、床や壁──そこら中に切り傷がついている。 おまけに壁際の棚に置かれていたらしい筒状の花瓶が床に転がっていて、丸テーブルが一台、ひっくり返されていた。 部屋が──誰かに荒らされてる? 部屋の入り口から数歩進んだまま、呆然と立ち竦むボクの背中に、セレスさんの声が投げかけられた。 「苗木君……何がありましたの?」 はっとしたボクは、まず辺りに視線を走らせて、さしあたり危険はなさそうだと判断する。 それから廊下で待つセレスさんの方へ振り返り、そこからでも中が見えるように道を譲った。 セレスさんは中を見て小さく驚きの声をあげたが、口元に手を当てて黙ってしまう。 「それで…………どうですか、苗木君。『やる気』になりましたか?」 しばらくの沈黙の後、再び口を開いたセレスさんの問いに、ボクは首を横に振って答えた。 「いや……むしろ、やる気がなくなったよ」 ……ボクに対する、嫌がらせだろうか。これで『やる気』が出たらどうかしてる……。 「それとも、モノクマが言っていたのはもっと別の事なのでしょうか? いかがです、もっとよく調べてみては……」 セレスさんの言う通り、ボクは気を取り直して再び辺りを見回した。 と言っても、さほど広い部屋でもなく、他に目に付くものは── 入り口とは別の位置についたドア。ここが生活の場なら、トイレか浴室に通じているのだろう。 一度肩透かしを食らっている分、緊張はさほどでもない。ボクは何気なくノブに手をかけ、そっとドアを開いた。 ──そして、次の瞬間にはそれを後悔した。 トイレが付属したシャワールーム。一人の男が壁にもたれた格好で崩れ落ちている。 彼の体と周りの床には、毒々しいほどの鮮やかな色────! ボクは衝撃のあまり声も無く、一歩、二歩と後ずさった。 そんなボクを見て不審に思ったのか、セレスさんの声が廊下の方から近づいてくる。 「どうしましたの? そこに、何が──」 「来ちゃダメだッ!! …………これは………見ない方がいい」 とっさに口から飛び出した自分自身の声の大きさに驚きながらも、なんとか歩いてくるセレスさんを押し止める。 こんな事って……どう見ても、これはもう……死── その時、部屋のモニターの電源が入り、そこからチャイムの音がした。 『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、“学級裁判”を開きまーす!』 チャイムに続いて聞こえたのはモノクマの声。 ……学級……裁判? 謎の言葉を口の中で繰り返していると、今度はボクのすぐ後ろから声がした。 「説明しましょう! 学級裁判とは──」 驚いて振り返ると、そこにはモノクマ本人(?)が立っている。 い、いつの間に……!? 訳がわからずセレスさんの方を見るが、彼女も眉をひそめて首を横に振るだけだった。 「えー、『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』というルールは説明しましたが、 それだけではダメです。自分が犯人だと他の生徒に知られてはいけません。 その条件をクリアしているかどうかを査定するのが、“学級裁判”なのです!」 こちらの動揺などお構いなしに、モノクマの説明は続く。 要するに──誰かが殺された場合、一定時間後に全員で集まって犯人……クロが誰かを議論する。 そこで投票によって正しいクロを指摘できればクロが“オシオキ”され、残りは学園に留まる。 正しいクロを指摘できなかった場合は、クロが学園の外に出て、他の全員が“オシオキ”される──という事らしい。 そして“オシオキ”というのは、つまり……処刑という意味だ……。 「さて、そんなこんなでオマエラはこれから事件の捜査をする訳だけど、その前にこれを渡しておくね。 ──じゃじゃーん! 『ザ・モノクマファイル』ー!」 モノクマの手から、ボクとセレスさんに「01」と書かれた大判のファイルが配られる。 「そこに、死体の状況や死因なんかをまとめておいたからね。捜査の参考にして下さい。 ……じゃあ、生き延びたかったらせいぜい頑張ってね。ぼくは忙しいから、もう行くよ!」 止める暇すら無く、モノクマはすごい勢いでセレスさんの横を走り抜けて出て行った。 帰りは普通に出て行くのか……。 ……とにかく、今はもう目の前の現実を受入れるしかないようだ。 ボクは暗澹たる気持ちで受け取ったばかりのモノクマファイルを開いた。 『被害者は“超高校級の占い師”、葉隠康比呂』 『発見現場は寄宿舎エリア個室のシャワールーム』 『右肩に打撲の痕があるが、致命傷は鋭利な刃物による腹部の刺し傷』 ──そう、被害者は占い師の葉隠クンだ。 少し前に自己紹介を交わした時の、人懐っこい笑顔が目に浮かぶ。その彼が── 恐る恐るシャワールームに目をやると、やはり変わらず、同じ姿勢で事切れている……。 彼を発見した時は、とても余裕がなくて気がつかなかったが、お腹に刺さったままの【凶器は包丁】のようだ。 「なるほど……そこで葉隠君が殺されていたのですね?」 セレスさんの方を見ると、彼女も真剣な表情でファイルを覗き込んでいる。 「うん……。お腹に、その……包丁が刺さってる」 出来れば女の子に残酷な犯行の結果を伝えたくはないが、自分達の命がかかっている以上、そうもいかない。 「包丁ですか。……という事は、凶器は食堂の厨房から?」 さすがに、凶器を手に取って確かめる勇気は無い。 ボク達は個室と同じ寄宿舎内にある食堂に向かう事にした。 部屋を出る時、新入生のうち数人がぞろぞろと集まってくるのに出会った。 先頭を歩いているのは霧切さんで、彼女は迷う事なく部屋の中に踏み込んでいく。 他の皆は中に入るのを躊躇っているようで、少し離れた場所でヒソヒソと話すのが聞こえた。 「どうする?」 「でも……」 「……何で苗木の部屋で?」 「そんなの決まってるわよ……」 やってきたメンバーの一人の腐川さんがボクの顔を盗み見る。 ……もしかして、ボクが疑われてる? 弁解しようかとも思ったが、逆の立場なら当然かもしれない。諦めて食堂の方に足を向ける。 食堂の中では朝日奈さんが一人でお茶を飲んでいた。 他の人達は死体発見の知らせを聞いて現場に行ったか、ボク達と同じように手がかりを探しているのだろう。 セレスさんが朝日奈さんに何故動かないのか尋ねると、彼女は「何をすればいいか、わからないから」と答えた。 ……それも自然な反応かもしれない。女の子二人が話してる間に、ボク一人で厨房に入った。 数々の調理器具や食材が置かれた厨房内。壁に包丁セットがホルダーと一緒に備え付けられている。 見ればサイズ違いの包丁が並んだ中、不自然に一本分だけスペースが空いていた。 ……やっぱり、ここから……。 ほぼ間違いはないだろうが、一応は確認しておこう。ボクは厨房を出て食堂に戻った。 「ねえ、朝日奈さん。厨房の包丁が一本、無くなってるんだけど……知らないかな?」 ボクの問いに、朝日奈さんは首を少し傾げながら答える。 「ああ、それ……私も変だと思ったんだよね。私、ずっとここでお茶を飲んでたんだけど、 最初にお茶を入れた時には確かに全部揃ってたのに、後で入ったら無くなってたんだ。 私がお茶を飲んでる間に料理した人なんていないはずだし……」 「つまり、【包丁は朝日奈さんが食堂にいる間に持ち出された】……という事ですわね」 これは重要な証言だ。セレスさんの言葉を、しっかりと頭に刻み付けておく。 ひとまず、凶器の情報はこれでいいだろう。他に調べられる所は── 朝日奈さんも加えて三人で話しているところで、再び例のチャイムが鳴った。 『えー、ぼくもいい加減待ち疲れたので、さっさと“学級裁判”を始めます。 生徒の皆さんは、速やかに校舎棟の赤い扉の部屋に集合しちゃってくださーい!』 もう聞き慣れたモノクマの声。……どうやら、時間切れみたいだ。ボク達は捜査を切り上げ、指定された場所に向かった。 校舎棟の赤い扉を開けると、そこは広いエレベーターホールになっていた。 次々と仲間が集まってくるが……皆、暗い顔で口を閉ざしたままで重苦しい雰囲気だ。 その中で──セレスさんだけがボクの顔を見て微笑みかける。 ほっとしていいはずなのに、何故かその時は挑戦的な笑顔に見えた。 エレベーターで下に降りていった先にあったのは、天井が高い円形の部屋だった。 ドラマで見たことがある裁判所に似た内装だが、部屋の中央で人数分の証言台が向かい合わせに並んでいる。 葉隠クンの場所には本人の代わりに遺影のようなパネルが掲げられているのが悪趣味だ。 「まず一つはっきりさせておきましょう。……被害者を殺害した犯人はこの中にいます! ……うぷぷ……一回言ってみたかったんだ、コレ。まあ、そんな訳で、事件のまとめから議論を開始してください!」 モノクマの宣言によって始まる。命がけの“学級裁判”が── 石丸「断言しようッ! 殺害されたのは葉隠康比呂だッ!」 舞園「さすがに、それくらいはわかります……」 十神「事件があったのは苗木の部屋。犯人はそこに葉隠を呼び出し、いきなり襲い掛かった。 被害者は部屋を逃げ回ったが抵抗空しく、シャワールームに追い詰められて殺された……というところか」 大和田「犯人が<ナイフで>ぶっ刺しやがったんだな……! クソがッ、えげつねぇ事しやがる……!」 苗木「いや、【凶器は包丁】だよ。遺体に刺さったままだったし、後で厨房を調べたら包丁が一本、無くなっていたんだ」 大神「うむ……その包丁が凶器なのだな」 桑田「……つーかさ、凶器が何かなんてどうでもいいじゃん。事件は苗木の部屋で起こったんだろ? ……だったら、苗木が犯人で決まりだろうが!」 腐川「そ、そうよ。他人の部屋に他人を呼び出して……こ、殺すなんて、おかしいわ。犯人は苗木よ!」 苗木「ちょ、ちょっと待ってよ。ボクじゃない! ……ボクは、包丁なんて持ち出してないんだ」 セレス「ちゃんと証人がいますものね。……ねえ、朝日奈さん」 朝日奈「えっ……あっ、わ、私!?」 苗木「【包丁は朝日奈さんが食堂にいる間に持ち出された】んだ。朝日奈さん。その時の事、話してくれないかな」 朝日奈「う、うん……。私、ずっと食堂でさくらちゃんとお茶を飲んでたんだけど、 厨房で包丁を見てからそれが無くなるまでの間……苗木は多分……ううん、絶対に来なかったよ!」 不二咲「朝日奈さんは大神さんと一緒だったんだね。……じゃあ、この二人も苗木君も包丁を持ち出してない……?」 桑田「だ、だったら、他に誰が食堂に来たんだよ!? そいつが包丁を持ってった犯人なんだろ!?」 大神「……被害者の葉隠だ。奴は水を飲みに来たと言っていたが、恐らくその時に……」 石丸「な、なんだって!? ならば被害者は自害したという事じゃないかッ!!」 江ノ島「それっておかしくない? 現場の部屋ってかなり荒れてたんでしょ?」 舞園「護身用に……と思ったのかもしれませんね。モノクマにあんな話を聞かされた後ですから……」 十神「だが犯人に包丁を奪われた、か。……なら、苗木が凶器を持ち出していなくても“シロ”とは言えんな」 苗木「そ、それは……ち、違うんだ。ボクは」 山田「そうやって議論を間違った方向に導こうとしているのかッ!? ぐぬぬ~……!」 霧切「落ち着いて。……ここにいる全員の命がかかってるのよ。議論は慎重に進めましょう。 実は、苗木君が犯人だとしたら不自然な点が一つあるの。あの部屋……調べたら髪の毛一本落ちてなかったわ」 大和田「……それのどこが不自然なんだ? ヤッた後に掃除して証拠を消したんだろ」 セレス「苗木君が犯人ならば、自分の部屋で犯行に及んだ時点で掃除など無意味……という事ですわね」 霧切「ええ。寄宿舎の個室は事件の直前に解放されたばかりだったわ。 綺麗な床に、明らかに被害者とも苗木君とも違う長さや色の髪の毛が落ちていたら命取りになってしまう」 山田「な、なるほど。……それで犯人は手早く“コロコロッと”掃除をしたんですな……」 “コロコロッと”──? 聞き逃せない発言だ。ボクは議論に集中していた思考を切り替える。 「ちょっと待って、山田クン。“コロコロッと”って……どういう意味?」 ボクのふいの質問に、巨体の同人作家は狼狽しながら答えた。 「い、いや、粘着テープクリーナーですぞ。部屋に備え付けてあったでしょう。か~なり強力なヤツが!」 彼は言い終わって全員の顔を見渡すが、皆釈然としない表情を浮かべている。 「……そんなのあったか?」 「さあ……」 「大体部屋はまだ汚れてないし」 「掃除なんかしない……」 ざわめきが波紋のように広がり、十神クンが一同を代表して口を開いた。 「どうしてお前は掃除に粘着テープが使われたと思ったんだ? しかも何故それが“強力”だと知っている?」 「そ、それは……ですな、さっき自分の部屋を掃除したからで……」 あたふたと腕を振り回しながら答える山田クンだが、発言の不自然さは拭えない。 「でもさ、山田が犯人だったら、どうやって葉隠を苗木の部屋に連れてったの? 葉隠は包丁持ち出すくらいには警戒してたんでしょ? 自分の部屋に来て、って呼び出すならともかくさ……」 さっき霧切さんが『慎重に』と言った影響もあるだろう、江ノ島さんはまだ半信半疑という表情だ。 「そ、そうですぞ! 例の部屋で最も自然に犯行が行なえるのは部屋の主! 拙者は無実です!」 山田クンの発言で、再び場に動揺が広がる。 ……まずい。このままだと議論が堂々巡りになってしまう。最悪、またボクが犯人に……。 何とか現状を打破しようと、ボクは必死で考えた。 他の誰かが、ボクの部屋に自然に葉隠クンを呼び出した方法──。 「“犯人は部屋の主”……ですか」 一同のざわめきの中、何故かセレスさんの一言だけがはっきりと聞こえた。その言葉が、ボクに閃きを呼び寄せる。 ────そうか、わかったぞ! 「もしかして、事件があった現場……本当は山田クンの部屋だったんじゃない?」 一瞬、皆が口を閉ざして、それからまた様々な言葉が飛び交い始める。 「ど、どういう事?」 「そんな馬鹿な!」 「いや、考えてみれば」 「可能性は…」 ざわめく場が少し静まってから、霧切さんが口を開いた。 「……面白いわね。確かに、事件の直前にプレートが貼られて部屋に入れるようになった……。 まず、真っ先に自分の部屋に被害者を呼び出して殺害。犯行後、他の人に気づかれる前に プレートだけを別の部屋とすり替えてしまえば、それだけで部屋の入れ替えが出来てしまう……」 霧切さんに同調して、セレスさんも大きく頷く。 「事は素早く行なわなければいけなかったでしょうが、他人に罪を着せられるメリットは無視出来ませんわね」 ボクは自分の頭の中で事件の流れを再現する。 まず、犯人が解放されたばかりの自分の部屋に被害者を呼び出す。 被害者の葉隠クンは“超高校級の占い師”だから、「内密に自分の事を占って欲しい」とでも頼んだのだろう。 葉隠クンは念のために厨房で包丁を調達し、犯人の部屋に向かった。 そして彼が部屋の中に入った所で犯人がいきなり襲い掛かる。 被害者には致命傷とは別に肩に打撲があったらしいから、 最初に犯人が用意していた凶器は床に転がっていた筒状の花瓶だろうか。 葉隠クンは花瓶の先制攻撃をかわしたものの、肩を打たれて手に持っていた包丁を落としてしまった。 犯人に落とした包丁を奪われた葉隠クンは部屋の中を逃げ回ったが、ついにシャワールームに追い詰められて──! ──犯行後、犯人は部屋を粘着テープクリーナーで掃除。 最後に自分の部屋と、(より疑われにくくする為に遠くの?)ボクの部屋のプレートを入れ替えて、その場を離れた……。 ……その犯人は────“超高校級の同人作家”、山田クンだ! 「証拠は……あるのですかな? 拙者が部屋を入れ替えたという証拠は……」 山田クンが呻くような声をあげた。 「ふん……。さっきの失言で十分のような気がするがな。……おい、モノクマ。あそこは本当は誰の部屋なんだ? 直接言えないのなら、本来の苗木の部屋にしかない備品を挙げるだけでも構わんぞ?」 十神クンの問いかけに、モノクマはにやにや笑いながら答える。 「本来の苗木クンの部屋に? おいおい、そんな都合のいい物が…………あるんだよね、これが! うぷぷ、ぼくは中立の立場だから黙ってたけどさ、実は苗木クンの部屋、“シャワールームのドアの立て付けが悪い”んだ! 開けてみればすぐにわかるよ。……でもさ、笑っちゃうよね。“超高校級の幸運” なのに、一人だけドアが壊れてるとか!」 「なななな、なんですとぉ!?」 山田クンが、真っ青になって大きく仰け反った。この反応だと、入れ替えた部屋のドアは開けていないようだ。 「では……試しに山田君のプレートがついた部屋のドアを開けてみましょうか。 それで無実が証明できるのなら、安いものですわよね?」 セレスさんの凍てつくような声が犯人の心を打ち砕いた。 山田クンはその場に崩れ落ち、ぶつぶつと何かを小声で呟いている……。 「うぷぷ……。どうやら結論が出たみたいですね。それでは、議論はここで終了です! そしてお待ちかねの投票ターイム! 皆さん、お手元のボタンを押して“クロ”を指名して下さーい!」 モノクマの号令によって、皆が証言台に取り付けられたボタンを押した。……もちろん、ボクも── 「……ハイ、投票の結果が出ました。なんと満場一致で山田クン! さあ、正解は── ──もちろん、山田クンです! ……ちょっと簡単過ぎたかな? まあ素人だからこんなもんだよね、うぷぷぷぅ」 その後の事は、思い出したくもない。……“クロ”は鎖で別の場所に引き立てられ、悪夢のような“オシオキ”を受けた。 モノクマの哄笑に追い立てられるようにして、ボク達は赤い扉の部屋を後にした。 皆口を閉ざしたまま、足取り重く自分に与えられた個室へと向かう。ボクも、今度は本当の自分の部屋に。 ボクがドアノブに手をかけた時、セレスさんが足早に近づいてきた。 「苗木君。……あなた、なかなかやりますわね」 さすがに疲労の色が混じってはいるが、彼女の微笑は相変わらず優しく上品だ。 「いや、皆のお陰で何とか乗り切れただけだよ。セレスさんにも助けられたし」 ボクがそう言うと、セレスさんは小さく首を横に振った。 「いいえ。あなたには確かに、何か他の方には無い物を持っています。 “超高校級の幸運”──そう聞いて、どんな方かと思って興味深く、そばで見させて頂きましたが、 思った以上に“見込みがありそう”ですわ。あなたなら、あるいは……」 褒められるのは嬉しいが、どうにも要領を得ない。 「どうか、わたくしの期待を裏切らないで下さいね。……では、ごきげんよう」 ボクが何か答える前に、セレスさんは優雅な足取りでその場を去っていった。 ……何だったんだろう。 彼女の事は気になるが、それを考えるにはあまりに疲れ過ぎている。 ボクは部屋に入るなりベッドに倒れ込んでそのまま眠った。 ──ボクはまた、夢を見た。いつか見た、白と黒の「もや」の夢だ。 ほんの少しだけ前より「もや」の輪郭がはっきりしていて、人の形に近づいたようにも思える。 ──これは、モノクマ? それとも、別の──
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/6194.html
ダンガンロンパ 作品情報 公式HP http //danganronpa.com/ 5枚 モノクマ01 モノクマ02 苗木誠 舞園さやか 霧切響子
https://w.atwiki.jp/budoumatome/pages/2.html
メニュー 初心者用Q&A 色別品種まとめ 仕立て方 参考文献 苗木生産・販売業者 リンク 植原葡萄研究所 中山ぶどう園 ここを編集
https://w.atwiki.jp/tsuttsu305/pages/18.html
公共施設 植林場(伐採したら苗木を植えておいてください。) 第一植林場 第二植林場
https://w.atwiki.jp/soumusya1994/pages/206.html
雪害で折れ曲がったクヌギ。周辺に苗木を植えるには、事前にこれを除伐する必要があった。 作業日誌(2010年4月25日)に戻る
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/189.html
たまには広い湯船にゆっくり浸かろう、そんな風に考えてボクは大浴場へと向かった。 すると大浴場の前の廊下で、珍しい人たちが話し込んでいるのが視界に入り、思わず立ち止まった。 あれは……セレスさんと大神さん? 超高校級のギャンブラーと格闘家……珍しい組み合わせの上に、どこか深刻そうな雰囲気を漂わせている。 不審に思ったボクは二人に近づき、声をかけた。 「やあ、何かあったの?」 セレスさんが驚いたようにびくりと肩を震わせた。 「ああ、苗木君でしたか。驚かさないで下さい」 振り返ったセレスさんは、どうやらお風呂上りだったようだ。まだ少し湿気を含んだ黒髪は艶やかで、上気した頬も色っぽい。 表情は普段は見られないような憂いの色を帯びていて、ボクは場違いにどきりとした。 「苗木君には関係ありませんわ。どうかお気になさらずに」 セレスさんはそう言ってひらひらと手を振った。向こうに行け、ということか。 今日のセレスさんは妙に冷たいな。……でも、女の子同士、聞かれたくない話もあるのかもしれない。 ボクが釈然としないながらも大人しく脱衣所の暖簾をくぐろうとすると、それを大神さんが引きとめた。 「待つのだ、苗木よ」 そしてセレスさんにも声をかける。 「ここは苗木に協力してもらうべきではないか? 少なくとも、我よりは力になれるであろう」 セレスさんは細い顎に手を当て、少し俯いて考え込むような仕草を見せた。数秒の沈黙の後、顔を上げる。 「……そうですわね。……苗木君、相談がありますの。中でお話を聞いて下さい」 ボクはセレスさんに促され、二人で脱衣所に入った。 ボクと二人きりになったセレスさんは、おもむろに口を開く。 「わたくし、先程までこちらのお風呂に入っていたのですが……どうやら、お風呂に入っている間に盗まれたようなのです」 予想外の言葉にボクは驚いて聞き返した。 「盗まれた!? ……何を?」 「……大切な物です。脱いだ服と一緒に脱衣籠の中に入れておいたのですが、お風呂から上がると無くなっていましたの」 盗難事件か。何を盗まれたのかは、はぐらかされたが、よほど大切な物だったのだろう。 いつも微笑を絶やさないセレスさんが辛そうに表情を曇らせている。ボクは犯人に怒りを覚えた。 「苗木君、一緒に犯人を探して頂けませんか。わたくし、悲しくて……」 セレスさんが潤んだ瞳でボクを見つめる。……異論など、ある訳がない。ボクは力強く答えた。 「わかったよ。絶対に盗まれた物を取り返そう!」 犯人を探す前に、まずは事件の流れを知っておく必要がある。 「じゃあ、事件が起きた時のことを、始めから聞かせてくれるかな」 ボクの言葉にセレスさんは頷きを返すと、記憶を辿るように目を伏せた。 「あれは、一時間ほど前だったでしょうか。わたくしが食堂でお茶を飲んでいると朝日奈さんと大神さんが来ましたの。 お風呂がまだなら、これから一緒に大浴場に行かないか、というお誘いでした」 朝日奈さんと大神さんが一緒にいるのはいつものことだ。 きっと朝日奈さんが、セレスさんはいつも一人でいるから、と声をかけたのだろう。 でも、社交的な性格の彼女なら、もっと大勢を誘いそうな気もするな……。 「それで、一緒にお風呂に行ったんだね。他の人は誘わなかったの?」 「たまたま、食堂にはわたくししか居ませんでしたから。ですが、脱衣所に入ると先に腐川さんが居ましたわ」 意外な人物の登場に、ボクは思わず「えっ」と声をあげた。 お風呂嫌いの腐川さんが一人で大浴場に居るなんて……。 戸惑うボクに構わず、セレスさんは説明を続ける。 「腐川さんは、朝日奈さんが話しかけてもいつもの調子でしたが、結局は一緒に浴場に入ることになりました」 「四人で一緒にお風呂に入ったんだ?」 「いいえ。……それが、わたくし達がいざ服を脱ごうとしたところで、葉隠君がやって来たのです。 そのまま何食わぬ顔でお風呂に入ろうとしましたので、当然、すぐに大神さんに叩き出して頂きましたわ」 は、葉隠クン……。 いつもの天然ボケなのか、前回の「男のロマン」で味をしめたのかわからないが、ボクは呆れて物も言えなかった。 「また同じように男子がやってきたのでは、のんびりお風呂に浸かるような気分にはなれません。 そこで、わたくしと腐川さんが先に入浴して、朝日奈さんと大神さんが脱衣所の前の廊下で見張りをすることになりましたの」 「なるほど。二人ずつ、交代でお風呂に入ることにしたんだね」 「ええ。それから、わたくしが体を洗って、ゆっくり湯船に浸かっていると先に腐川さんが浴場を出て行きました。 十分ほど遅れて、わたくしもお風呂を出たのですが、体を拭いて服を着ようとした所で盗難に気がついたのです……」 セレスさんが悔しそうに唇を噛む。 ボクは同情に痛む胸を押さえながら、疑問に思った事を口にした。 「さっき、盗まれた物は脱衣籠に入れてたって言ったよね。ロッカーに鍵はかけなかったの?」 「鍵を持ってお風呂に入るのは面倒でしたし、脱衣所の入り口は朝日奈さんと大神さんが見張ってくれていましたから。 わたくしも腐川さんも、ロッカーの中の籠に服を入れただけで、扉も開けっ放しでしたわ」 荷物そのものは無防備状態だったわけか。 それにしても……脱衣所の入り口は朝日奈さんたちが見張っていて、浴場にはセレスさん自身がいた。 犯人は一体、どうやって脱衣所に侵入してセレスさんの荷物に近づいたんだ……? 「……苗木君、説明を続けてもよろしいですか?」 ボクの思考は、セレスさんによって中断させられた。 推理の前に、とりあえず一通りの話を聞いた方がいいだろう。ボクは頷きを返す。 「盗難に気づいたわたくしは、すぐに周囲を探しましたが見つかりませんでした。 そこで、帰ろうとしていた腐川さんに声をかけ、朝日奈さん、大神さんもお呼びして事情を説明したのです」 さっき、脱衣所の前で大神さんと話していたのは、そういう事だったのか。 ボクが納得していると、脱衣所の入り口に掛けられた暖簾が揺れ、ぬっ、と大神さんが顔を出した。 「苗木よ、何かわかったか?」 「いや、まだ説明を聞いていたところだよ」 折角だからセレスさんだけじゃなく、大神さんからも話を聞いてみようか。 セレスさん一人の説明では記憶違いや思い込みもあるかもしれない。 ボクはセレスさんの説明の続きを、大神さんから聞き取ることにした。 「……我と朝日奈が見張りをしていた間、猫の子一匹たりとも脱衣所には近づいておらぬ。 ゆえに、セレスから盗難の知らせを受けた我らは脱衣所の中を詳しく調べる事にした。 我らが風呂に向かう前から、脱衣所に曲者が潜んでいたのやもしれぬからな」 「でも、誰も隠れてなかったんだね?」 「うむ。脱衣所の中には、そもそも人が身を隠せるような場所は無い。 セレス自身も、盗まれたという品がどこかに移動しておらぬか調べたが、見つからなかったようだ」 ここで再び、セレスさんが説明に加わる。 「それで、大変申し訳ないとは思ったのですが……皆さんの荷物を調べさせていただきましたの。 もっとも、お風呂セットは元々この大浴場に備え付けてありましたから、皆さん手ぶらでした。 ですから、服のポケットの中身を見せて頂くことしか出来なかったのですが」 「一人ずつポケットの中身を出して全員に見せたのだが、朝日奈のポケットには飴玉しか入っておらぬし、 我と腐川の制服の胸ポケットは空だった。いよいよ、お手上げというわけだ」 そう言って大神さんは本当に両手を上げて見せた。 確かに彼女の言う通り、このままではお手上げだ。 ボクは別の人の証言に活路を求めたくなった。 「……朝日奈さんと腐川さんは今、どうしてるの?」 「また何か聞きたいことが出るかもしれませんからと、そのまま食堂で待機して頂いていますわ。 一応は容疑者でもありますし。お二人にも話を聞いてみますか?」 是非もない。ボクたちは朝日奈さんたちに話を聞きに、食堂に向かうことにした。 ボクたちが食堂に入るなり、椅子に腰掛けていた朝日奈さんが声をあげた。 「あれ、苗木じゃん! どうしたの?」 「あまり事を大きくしたくはなかったのですが、わたくし達だけでは真相がわかりそうもありませんから、 苗木君に捜査をお願いしましたの。彼、こう見えて結構頼りになりますもの」 セレスさんがボクに目配せをする。 ボクは彼女から期待を寄せられている事に、身が引き締まる思いがした。 「そうだね。苗木なら何とかしてくれそうな気がするよ。苗木、頼んだよ!」 朝日奈さんはそう言って、元気よく立ち上がった。 一方、少し離れた椅子に座った腐川さんはというと、ボクの方をちらりと見ただけで不機嫌そうに爪を噛んだ。 どこか陰気で落ち着かない彼女の態度には慣れているので、今更何とも思わない。 ボクはまず、事件について朝日奈さんから聞くことにした。 「朝日奈さんは、大神さんと二人で見張りをしていたんだね?」 「うん、そうだよ。また葉隠のやつが戻ってきたらダメだからね」 葉隠クンか……。そういえば、彼には犯行のチャンスは無かったのだろうか。 「葉隠クンは、最初に脱衣所に入ってきたんだってね?」 「葉隠を疑ってるの? うーん……さすがに無理だと思うよ。本当に脱衣所に入って来るなり追い出したから」 朝日奈さんは腕を組み、一人で納得するように頷いた。 セレスさんからも、葉隠クンは「服を脱ごうとした」時に現れたと聞いている。 「脱いだ服と一緒に入れた」品物を盗めたわけがなさそうだ。 さらに朝日奈さんからも順を追って話を聞いたが、新しい事実は出てこない。 ボクは一旦、質問を切り上げて腐川さんに話しかけた。 「腐川さんが、大浴場に来るなんて珍しいね」 腐川さんはびくりと体を震わせて、立ち上がった。 「な、な、何よ! あ、あんたも私を疑ってるわけ!?」 その表情は、恐怖と狼狽に満ちている。だから怪しいという事はない。……いつものことだから。 「い、いや、落ち着いて。事件について聞きたいだけだから」 何とか腐川さんをなだめると、ボクはさっきと同じ質問を繰り返した。 腐川さんはまだ落ち着かない様子だったが、ボソボソと小さな声で答えた。 「びゃ、白夜様に、臭うから、お風呂に入ってこいって言われたのよ……。 わ、私、部屋にお風呂の道具を置いてないし、それで大浴場に来たの……」 腐川さんが珍しくお風呂に入ったのは、十神クンが絡んでいたから。 熱烈に十神クンを信奉する腐川さんらしい理由だ。 一つ疑問が解消してすっきりしたボクを尻目に、腐川さんは一人で話し続ける。 「う、うふふ、白夜様ったら、綺麗になった私をどうするつもりなのかしら。 あんな事や、こんな事も!?うふ、うふふふふ!」 腐川さんは自分の体を抱きしめながら、恍惚とした表情で笑い始めた。 ……いつものように自分の世界に入ってしまったようだ。 恐らく、十神クンは自分について回る腐川さんを遠ざけようとしただけだろう。 まあ、そんな事は今、どうでもいいな……。 ボクは幸せそうな腐川さんを放っておくことにした。 証言を聞き終えて、ボクは頭の中で、事件の関係者たちの情報を整理する。 セレスさんは被害者。入浴中に「大切な物」を盗まれた。 朝日奈さんと大神さんは一瞬たりとも一人になっていない。 腐川さんはセレスさんより先に浴場を出たが、ポケットの中身は空。 葉隠クンは脱衣所に入るなり全員の目の前で追い出された。以降は目撃されず。 わからない。……誰にも、犯行は不可能なのか……? ボクが頭を抱えると、セレスさんが心配そうに覗き込んできた。 「苗木君……。苗木君でも、無理ですの……?」 ボクは思わず、この場にいない女の子を頼りたくなった。ボクなんかより、ずっと頭が切れて行動力がある、あの人を。 だが、頭を振って弱気を追い払う。 セレスさんがボクを信じて頼ってくれたのに、ボク自身の力で解決しなくてどうするんだ。 何か……何か突破口はないだろうか。 ボクは必死で思考を巡らせ、一つ、まだ解決していない疑問に突き当たった。 「……セレスさん、盗まれた『大切な物』って……何?」 「えっ? ……そ、それは……」 ボクの真剣な表情に圧倒されてか、セレスさんは口ごもった。 大神さんも追い討ちをかける。 「確かに、セレスは何を盗まれたのか教えてくれなかったな。それは一体何なのだ?」 全員が口をつぐんでセレスさんの答えを待った。 重苦しい沈黙の後、やがてセレスさんが諦めたように口を開いた。 「……下着ですわ」 し、下着!? 盗まれた物は、セレスさんの下着……。 ボクは驚きのあまり声を出せなかった。 皆の視線が集中し、セレスさんは恥ずかしそうに俯いてしまう。 ……ちょっと待てよ。下着を盗まれたって事は! 今、セレスさんは……! ボクは非常にイケナイ想像をしてしまった。 と、突然、右耳に鋭い痛みが走り、ボクは悲鳴をあげた。 「い、痛い!」 セレスさんがボクの耳をぐいっと引っ張ったのだ。 「あなた今、不埒な事を考えませんでしたか?」 「そ、そんな事ないよ! 絶対!」 ボクは頭をぶんぶん振って、全力で否定した。するしかなかった。 「あなたが来る前に、わたくしは一度、一人で部屋に戻りましたから。余計なことを考えませんように」 セレスさんは頬を染めながら、不機嫌そうにため息をついた。 ボクは少し安心して、思考を推理に傾ける。 セレスさんが何を盗まれたのか、どうしてそれを言いたがらなかったのは、よく分かった。 何としてもこの情報を元にして、犯人を特定しなくては。 ……そして、ボクは思いあたった。犯人たりうる唯一の人物に……。 ボクは食堂に集まった皆の顔を見渡して、自分の推理を話し始めた。 「まず、現場になった脱衣所には葉隠クンがやってきたけど、セレスさんが服を脱ぐ前だったから関係ない」 セレスさんが黙って頷く。 「朝日奈さんと大神さんには、ずっと一人になるチャンスがなかった。そうだね?」 朝日奈さんと大神さんも、揃って頷いた。 「そうなると、犯行が可能だったのは一人しかいない。セレスさんより先にお風呂を出て、 一人で脱衣所にいる時間があった……腐川さんだけだよ」 今度は、全員の視線が腐川さんに集中する。 当の腐川さんは激しく狼狽し、すくみ上がった。 「な、な、な、何で、そうなるのよ!わ、私は知らないわ!」 「さっき言った通りだよ。腐川さん以外には誰も下着を盗めなかった」 「う、うう……。そ、そうだわ、あれはどう説明するのよ? わ、私のポケットには下着なんて入ってないし、 脱衣所のどこにも、盗まれた下着は無かったんでしょ? い、いい加減なこと、言わないでよ……!」 腐川さんの反論に、朝日奈さんが同意する。 「そうだね。私達、下着が盗まれてからはずっと一緒にいるし、どこかに隠したりはできなかったはずだよ」 腐川さんは勝ち誇るような笑みを浮かべたが、ボクはすかさず言い返した。 「隠したりする必要なんてないよ。下着なんだから、身に着ければいい。 腐川さんとセレスさんは体型も近いし、そんなに難しくないよね?」 「う、うぐっ!!」 息を詰まらせるような声と共に、腐川さんは言葉を失った。 大神さんが、ゆっくりとした口調で腐川さんに語りかける。 「腐川よ、潔白だと言うのならセレスに調べてもらうがいい。それではっきりしよう」 「腐川さん、お調べしてもよろしいですか? 抵抗なさるのなら苗木君にも手伝って頂きますが」 セレスさんが静かな……それでいて凍りつくような冷たい声で、腐川さんを追い詰めた。 腐川さんはがっくりと首を折り、ぽつりと言った。 「……ご、ごめんなさい……」 「腐川さん、どうして……?」 ボクの言葉に、腐川さんはうなだれたまま答える。 「わ、私、お風呂を出て、白夜様に会いに行こうと思ったの。そ、そしたら、脱衣籠から色っぽい下着が見えて……。 私、地味な下着しか持ってないし、白夜様に見てもらったら、どんな風になるんだろうって、思って。 い、いけないのはわかってたんだけど、試しに着けてみたのよ……」 「……わたくしがお風呂を出た時には、もう服を着ていましたわね?」 セレスさんが抑揚の欠けた声で問いかけた。 「え、ええ。上から服を着て、鏡の前で、スカートをひらひらさせてみたりして。 しばらく眺めていたら、あんたがお風呂から上がってきちゃって、大騒ぎになって、言い出せなかったの……」 ボクはふと思ったことを口にする。 「えっと……それじゃ、今、腐川さんの下着は……」 「だ、脱衣所よ。わ、私が使ったロッカーの中に置いてあった……はずだけど……」 今までの証言の中で、セレスさんが二度も脱衣所で自分の下着を探した事がわかっている。 その時、残されたままの腐川さんの下着に気がつかなかったのだろうか。 ボクがセレスさんの方を見ると、彼女は思い出したように呟いた。 「……ああ、そう言えばロッカーの中に汚い布きれが落ちていましたわ。 わたくしは自分の下着を探していたので気にも留めませんでしたが、あれが腐川さんの下着だったのですね」 ボクはつい苦笑したが、そういうものかもしれない。 セレスさんの下着と腐川さんの下着は、かなりデザインが違う物のようだし、 突然、自分の下着が盗まれたら男のボクだって余計な物は目に入らなくなりそうだ。 「まったく、早く言っておればよかったものを……」 大神さんが呆れたように言った。腐川さんは身を大きく縮ませる。 「な、何度も言おうと、思ったのよ。で、でも、結局言い出せなくて……。 あ、あの、本当にごめんなさい。……し、下着は返すわ」 セレスさんは憐れむような目で腐川さんを見ると、ふぅっと、大きなため息をついた。 「もう結構ですわ。事情はわかりましたから。その下着は差し上げます。 ……一度他人が身に着けた物なんて、気持ち悪いですもの」 最後の言葉は、腐川さんの耳には入らなかったようだ。彼女は飛び上がって喜んだ。 「ほ、本当!? あ、あんたって、結構いい人なのね! み、見直したわ。 う、うふふ、この下着があれば、白夜様もメロメロだわ! うふ、うふふ、ありがとう!」 セレスさんへのお礼もそこそこに、そのままの勢いで腐川さんは食堂を飛び出して行った。 早速、十神クンの所に向かったのだろう。多分、彼女の思うようにはならないだろうけど……。 セレスさんは朝日奈さんと大神さんに頭を下げると、今回の件を口外しないように頼んでから二人を帰した。 そして食堂を出て行く二人の背中を見送ってから、ボクの手を取って言った。 「苗木君、あなたのおかげで助かりましたわ。あなたを頼って良かったです。どうもありがとう」 改まって言われると何だか照れ臭い。ボクは頬を指で掻いて答えた。 「セレスさんの役に立てて良かったよ」 「あ、あの……。それで一つ言っておきたいことがあるのですが」 セレスさんが上品な仕草で胸に両手を当て、頬を染めながら俯く。 「腐川さんが言っていた下着ですが、いつもそのような下着を身に着けているわけではありませんの。 『大切な物』、というのは嘘ではなくて、あれは特別な物だったのです」 ボクは腐川さんの告白を思い出した。 彼女によれば、「色っぽい下着」……。だいぶ希望的観測が入っているにしても、十神クンがメロメロになるような下着……。 ひょっとすると、いわゆる「勝負下着」というやつだったのだろうか。 ボクはおぼろげに色っぽい下着姿のセレスさんを想像して、顔が熱くなるのを感じた。 「ですから、誤解なさらないで下さいね。……ああ、わたくし、何を言っているのでしょう。……忘れて下さい」 セレスさんは珍しく動揺したそぶりを見せ、ゆるゆると首を横に振る。 そんな彼女の様子を見ていると、胸が高鳴った。ボクは場の空気を変えようと、軽口を叩く。 「うん、忘れるように努力するよ。……前向きに善処します」 セレスさんは一瞬、呆気に取られたように固まったが、すぐに表情を和らげた。 「……なんですか、その言い方は。ナイトのくせに、ご主人様をからかうと許しませんわよ?」 彼女は冗談と本心が混ざったようなことを言って、クスリと笑った。 ……良かった。少しは、機嫌が治ったかな? いつも微笑んでいるほうが、セレスさんらしくていい。 ボクがほっとしていると、セレスさんは少し真剣な表情になって囁くように言った。 「……でも、そうですわね……。あるいは、忘れる必要なんてないのかも……。 あなたには、いずれ見せて差し上げる可能性も……ありますものね」 「ええっ!?」 ボクはどきりとして思わず聞き返した。 セレスさんは白い頬をほのかに赤く染め、にっこりと微笑んだ。 「うふふ、驚きましたか? 冗談。冗談ですわ」 これは嘘なのか、本当なのか……。ボクは激しく心を揺さぶられた。 ボクの動揺をよそに、セレスさんはいつものポーカーフェイスに戻ってしまう。 「それでは、湯冷めするといけませんから、そろそろお部屋に戻りますわ。……ご機嫌よう、苗木君」 うやうやしくお辞儀をすると、彼女は優雅な足取りで食堂を出て行った。 一人残されたボクは、しばらく放心して動けなかったが、やがて我に返った。 ……ボクも部屋に帰ろう。 本当に、しばらくは忘れられそうにない。下着のことも、彼女の言葉も。 ボクは自分の頬を軽く叩いて、いけない想像を追い払うと、食堂を後にして自室へと戻った。
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/279.html
『ダンガンロンパ CHAPTER-1 Another』 信じられない映像が記録されたDVDをモノクマから渡された日の夜、舞園さんが僕の部屋を訪ねてきて一晩だけ部屋を交換して欲しいと言ってきた。 最初は妙に思ったものの、不審者に対する恐怖で顔が青ざめ、体を震わせる舞園さんを見た僕は彼女の頼みを受け入れることにした。 彼女の頼みで一晩だけとはいえ、舞園さんの使っていたベッドで寝るのは何だかラッキーなような気まずいような複雑な気分だった。 「う~ん、目が覚めちゃったな…。舞園さん、大丈夫かなぁ?」 一度は眠りについた僕だったが、舞園さんのことが気になって目が覚めてしまった。 時間は分からないけど、恐らく午前0時は回っているだろう。 「どうしよう。一度様子を見に行った方がいいかな?でも、舞園さんに余計な不安を与えたくないしなぁ…。………やっぱり見に行こう!」 少し考えた後、僕は一度舞園さんの様子を見に行くことにした。 舞園さんに余計な不安を与えてしまうかもしれないが、何事も無ければ謝ればいいだけの事だ。 だが、先程から妙な胸騒ぎがしてならなかった。何か良くない事が起きる前触れのような…。 僕はベッドから起き上がり、ドアを開けて廊下に誰も居ないことを確認し、舞園さんの部屋のすぐ隣にある僕の部屋の呼び鈴を鳴らした。 「舞園さん、もう寝てるよね…。と言うか、起きてても絶対開けないって言ってたっけ。」 呼び鈴を鳴らした後、僕は何気なくドアノブに手を掛けてみると、ドアに鍵が掛かっていないことに気が付いた。 あれほど不審者に怯えていた舞園さんが鍵を掛けていないのはおかしいと思った僕は、ゆっくりドアを開けて部屋の中へと足を踏み入れた。 「舞園さん。ドアの鍵、掛かってないようだけど…。」 「うああああああっ!!!!!」 突然、奇声と共にシャワールームの陰から何かが飛び出してきた。それは、右手に包丁を持った舞園さんだった。 「うわあああああっ!!!」 僕は咄嗟に舞園さんが突き出した包丁を躱したが、その拍子にバランスを崩して床に尻餅をついてしまった。 それに気づいた舞園さんはすぐさま僕に覆い被さって左手で僕の右腕を押さえ、右手に持った包丁を逆手に構え直し、その切っ先を僕に向ける。 その時の舞園さんの表情は、普段からは想像も出来ないほど鬼気迫るものだった。 僕は押さえられていない左腕で咄嗟に身を守ろうとしたが、包丁が僕の体を貫くことは無く、舞園さんは包丁を振り上げたまま固まっていた。 「なえぎ、くん…?」 両目を大きく開いてそう呟いた後、舞園さんは跳ねるようにして僕の上から飛び退いた。 僕はすぐに立ち上がり、壁にもたれ掛っている舞園さんの方を向く。 舞園さんは右手に包丁を持ったまま、滝のような汗を浮かべた真っ青な顔で震えていた。 「舞園さん…。どうして…どうしてだよ!?」 僕が声を荒げると、舞園さんはビクッと体を震わせ、その拍子に包丁を手から落としてしまい、包丁が金属音を立てて床に転がった。 「だって…だって、こうしないと…こうしなきゃ…外、出られないか、ら…。」 舞園さんは震える声で言葉を絞り出し、両手で頭を押さえながらその場にへたり込んでしまった。 今、こうしなきゃ外に出られないって言ったな…。まさか、舞園さんはここで誰かを殺すつもりだったの!? じゃあ、あの不審者の話も嘘で、部屋の交換を申し出たのは、僕の部屋を犯行現場にすることで僕に罪を着せる為だったってこと!? 舞園さんが僕を騙して、利用して、陥れようとした…。全ては自分が【犯人(クロ)】になって、この学園から【卒業】するために…。 信じたくない事実が瞬く間に僕の頭の中に溢れ、精神を侵食していく。そんな悪い考えを振り払うように僕は頭をぶんぶんと左右に振る。 「舞園さん、立てる?」 僕は床にへたり込んでいる舞園さんに歩み寄って手を差しのべるが、舞園さんは僕の手を取ろうとしない。 「舞園さん?」 「…さい。」 「え?」 「ごめん…なさい…。ごめんなさい…。」 舞園さんは一向に僕の手を取ろうとしないばかりか、聞こえるかどうか微妙なほど小声で謝り始め、同時に両目からポロポロと涙が零れ落ちていく。 「…舞園さん。謝るよりも先に、理由を聞かせてくれないかな?何で、誰かを殺そうだなんて考えたのか…。」 「………。」 舞園さんは顔を下に向けたまま答えようとしない。 正直に言って、こんな状態の舞園さんから真意を聞き出そうなんていうのは酷だろう。 しかし、だからってこのまま放っておくわけにはいかない。それでは何も解決しないから。 「舞園さん。本当に君が僕に対して罪悪感を抱いているのなら、話してくれないかな?」 「それは…。」 「大丈夫。僕は絶対に君を殺したりなんかしないから…。僕を…僕を信じて。」 「………はい。分かりました…。」 ようやく舞園さんが僕の手を取り、僕は彼女を立ち上がらせてベッドに腰掛けさせる。 僕は床に落ちている包丁を拾ってテーブルの上に置いた後、椅子をベッドの隣に置いて彼女と向かい合う形で腰掛ける。 それから、舞園さんは消え入りそうな声で全部話してくれた。 モノクマから渡されたDVDの内容も、今夜決行するはずだった殺人計画も、僕に罪を被せるために部屋の交換を申し出たのだということも…。 話を聞いた僕は、頭の中がグチャグチャになった。舞園さんが僕を騙し、人を殺そうとしただなんて嘘であって欲しかった。夢なら今すぐ覚めて欲しかった。 しかし、僕のそんな淡く儚い願望は容易く砕かれてしまった。僕が今日この部屋で体験したことは全て現実だった…。 僕が右手で顔を押さえて苦悶の表情を浮かべていると、舞園さんが口を開いた。 「苗木君の考えていることは分かります…。 例えどんな理由があっても、殺人なんてしちゃいけないって…。でも、私にはこうするしかなかったんです! 出口は無い!助けも来ない!いつ自分が殺されるのかも分からない!そんな状況でいつまでもここに居続けるなんてこと出来ません! 私には…私にはこんな所でグズグズしている暇は無いんです!早く…早く皆の無事を確かめないと!」 「まだここから出られないと決まったわけじゃない!まだ調べてない場所だって沢山あるし、皆と協力し合えば、きっと何とかなる筈だよ! それに、あのDVDだってモノクマの捏造かもしれないじゃないか!」 「そんな保証なんてどこにも無いじゃないですか!ここから確実に出るには誰かを…誰かを殺すしかないじゃないですか!」 舞園さんの言う通り、例え学園内の全てを調べたとしても出口や外との連絡手段が見つかる保証は無いし、DVDの映像が捏造されたものだという証拠も無い。 それに、この先舞園さん以外の誰かが殺人に及ぶ可能性や自分が狙われる可能性だって大いにある。 そんな異常な状況下での生活なんて一刻も早く抜け出したいと思うのが普通だ。 強靭な精神力の持ち主や外へ出ることを諦めた人でもなければ、次第に心理的に追い詰められ、いつ凶行に走ってもおかしくない。 「苗木君には分かりませんよ…。私が夢を叶えるために、どれだけ苦労してきたのかなんて…。努力して、苦労して、やっと掴んだ夢が、消えていく感覚なんて…。」 そう言われると、僕には返す言葉が無い。 確かに僕は夢らしい夢なんて抱いた事がないし、舞園さんが夢を実現するためにしてき事や、芸能界の実態なんて知らない。 以前、舞園さんは「夢を叶える為に嫌な事でも何でもしてきた」と言っていたけど、その「嫌な事」が何なのか僕には想像もつかない。 ただ、舞園さんは自分が苦労して掴んだ夢の結晶が壊れてしまうのが耐えられなくて、一刻も早く外へ出るために殺人を企てたのだという事は痛いほど伝わってきた。 けれど、だからと言って殺人が許されるわけじゃない。どんな理由があろうと、殺人を正当化しちゃいけないんだ!絶対に! 「舞園さん、これだけは正直に答えて。前に僕に話してくれた、舞園さんがアイドルを目指すようになった切掛け…。あれも、僕を抱き込むための作り話だったの?」 「そ、それは…。」 「もし嘘だったのなら、正直にそう言って欲しいんだ。それなら、騙された僕が極度のお人好しだったってことで済むから…。」 「………。」 僕は膝の上で拳を強く握り、舞園さんを睨みつけるように力を込めた視線を送る。 舞園さんは顔を逸らして僕の方を見ないようにしているが、僕は舞園さんから視線を動かさない。 舞園さんを本当に理解するためにも、僕は舞園さんと彼女が起こしたことから目を逸らしちゃいけないんだ。 しばらくそのままの状態が続いた後、舞園さんがようやく僕の方を向いた。 「あれは…あの話は…嘘じゃありません。 苗木君に話した通り、私がアイドルを目指す切掛けになったのは、子供の頃にアイドルに憧れたことなんです。 お父さんが仕事で居ない間、一人でお留守番をしていた私の寂しさを忘れさせてくれた、あのアイドルのようになりたくて…。 それで、ずっと必死で頑張って…やっと、やっと…。」 俯きながら服の裾をギュッと握り、舞園さんは言葉を紡ぐ。 舞園さんの両目に再び涙が溜まり、やがて頬を伝って落ちていく。 この言葉が本当なのか嘘なのかは分からない。けど、舞園さんは自分の夢に関しては嘘を吐かない筈だ。 だから、今の舞園さんの言葉は真実だと僕は思った。いや、思うことにした。 「なら、分かる筈だよね?舞園さんがしようとした事は、君の夢を最も穢す行為だって事くらい…。」 「…はい。」 「人を笑顔にするアイドルが誰かの笑顔を永遠に奪うなんてこと、絶対にしちゃダメだよ…。僕は舞園さんに…そんなことして欲しくない!」 舞園さんは辛そうな表情で僕の言葉を聞いている。 僕だって、こんな言葉を舞園さんに浴びせるのは辛い。だけど、僕は言わなくちゃいけない。舞園さんのために。 「………。そう、ですよね…。死んじゃったら笑うことも、悲しむことも、怒ることも、何も出来なくなっちゃうんですよね…。私…本当に、何てことを…。」 両手で顔を覆い、舞園さんは泣き崩れる。 僕は最初黙ってその様子を見ていたが、すぐに立ち上がって舞園さんに歩み寄り、彼女の肩に手を置く。 「舞園さん。もう少しだけ…もう少しだけ、頑張ってみようよ。保証は出来ないけど、皆と力を合わせれば、きっと何とかなる筈だから…。」 「…はい。私、もう少しここで頑張ってみます。苗木君と…皆と一緒に…。」 顔を上げて涙を拭い、舞園さんは僕の提案を受け入れてくれた。 その顔は涙と疲労のせいでお世辞にも綺麗とは言えなかったが、それでもさっきまでよりは遥かに良い表情になっていた。 「分かってくれてありがとう、舞園さん。」 「いえ、お礼を言うのは私の方です。私なんかのために…。あんな目に遭わせてしまったのに…。」 「だって、約束したじゃないか。何があっても、僕は舞園さんの味方でいる…って。だから、僕はこれからも舞園さんも味方だよ。」 「苗木君…ありがとう。本当に…ごめんなさい。」 舞園さんは腰掛けていたベッドから立ち上がり、僕に向かって深々と頭を下げる。 「それだけで十分だよ。もう人を殺そうなんて考えないって、約束してくれるね?」 「はい、勿論です。誰かを殺しても、裏切っても、私は自分の夢や大切な人達に顔向けできなくなってしまいますから。 それに、例え自分の大切な物の為にそんな事をしても、誰一人喜んでくれないって、痛いほど分かりましたから…。」 「舞園さん…。」 僕が安堵したような表情で舞園さんを見つめていると、舞園さんも黙って僕を見つめ返してきた。 目が合った瞬間、僕の心臓は今までにないくらい鼓動が早くなり、顔が熱くなる。舞園さんも頬がほんのり赤く染まっているように見える。 そのまま僕達は黙って見つめ合い、しばしの沈黙が訪れる。 ピンポーン! 部屋の呼び鈴が鳴り、沈黙は終わりを告げる。どうやら舞園さんが呼び出した人物が来てしまったようだ。 「どどど、どうしよう舞園さん!?」 呼び鈴の音を聞いた僕は我に返ると同時にパニックになる。 僕がここに居る理由はどうとでも説明出来るが、包丁はそうはいかない。絶対に見つけられてはいけないものだ。 「苗木君!包丁を持ってシャワールームに隠れて下さい!後は私が何とかします!」 「わ、分かった!」 舞園さんの素早い指示で、僕は急いでテーブルの上の包丁を掴んでシャワールームへ向かう。 建付けが悪いせいでドアを開けるのに少々手間取ったが、何とか部屋の入口が開く前にシャワールームへ隠れることに成功した。 先程とは違う意味で鼓動が早くなり、顔から汗が噴き出す。やがて、ドアの向こう側から話し声が聞こえてきた。 (いや~待たせちゃってゴメン!身嗜み整えてたら思ったより時間掛かっちゃってさ!それで、こんな夜中に俺と2人きりで話したいことって何?) あの軽い喋り方は間違いなく桑田君だ。まさか本当に来るなんて…。 そういえば桑田君、野球選手よりもロック歌手になりたいとか言ってたっけなぁ。 音楽という共通の話題があるから舞園さんも桑田君を標的にしたんだろうけど、桑田君の方は下心が見え隠れするのは気のせいだろうか? (はい。桑田君、芸能界に興味がおありのようだったので、お話を伺いたいなと…。) (はぁ?話ってそんな事?んだよ、期待して損したぜ…。でも、他ならぬ舞園ちゃんの頼みだし、せっかくだから俺の人生プランを聞いてもらっちゃおうかな~?) そう言って桑田君は自分が歌手になったらどうしたいとか、どんな歌を唄いたいとか、そんなことを上機嫌で話し始めた。 時々、舞園さんを口説いてるようにも取れる発言があったような気がしたけど、舞園さんはのらりくらりと受け流していた。 それから1,2時間ほどして舞園さんと桑田君の話が終わり、舞園さんがシャワールームのドアをノックして僕に合図を送ってきた。 その後、廊下に誰も居ない事を舞園さんが確認し、僕達は入れ替わったネームプレートと部屋の合鍵を交換し直して、それぞれ元の部屋へ戻ることにした。 「苗木君、今夜はその…ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ありませんでした。」 そう言って舞園さんは、もう一度僕に向かって頭を下げる。 「もう謝らなくていいよ、舞園さん。君が誰も殺さずに済んだ。それだけで十分だから。お休み、舞園さん。」 「苗木君…。ええ、お休みなさい。」 舞園さんが部屋に入った後、僕も自分の部屋に入ってベッドに横になる。心身共に疲れきっていたけど、この学園に来てから初めて心地良く眠れた気がする。 翌朝、朝食会が終わった後、僕は後片付けを買って出た。 その理由は勿論、舞園さんから預かった包丁を元に戻すため、誰にも怪しまれることなく一人で厨房へ入る口実を得るためだ。 石丸君が手伝いを申し出てくれたのだが、包丁を取り出すところを目撃されるわけにはいかないので、僕は丁重にお断りした。 そうやって厨房へ一人で入った僕は、上着の内側に隠してあった包丁を取り出し、元あった場所へと戻す。 「これでよし…と。ふぅ…。」 包丁を戻し終え、僕は大きく息を吐く。思えば今朝の朝食会はこれのせいで冷や冷やしっ放しだったからなぁ…。 目的を果たし終えた僕が食器を洗おうとした時、背後に人の気配を感じたので後ろを振り向くと、入口の方に舞園さんが立っていた。 「あ、舞園さん。どうしたの?」 「えっと…何かお手伝いしようと思いまして。」 「ありがとう。でも、僕一人で大丈夫だよ。」 「いえ!お手伝いさせてください!」 そう言って舞園さんは胸の前で両手をグッと握り、熱のこもった視線を僕に送る。 ひょっとして罪滅ぼしがしたいのかな? 「そうですね。罪滅ぼし…かもしれません。」 「え?僕、口に出しちゃってたかな?」 「………。」 いつもならここでお決まりの「エスパーですから」が出る筈なのだが、舞園さんは無言で首を横に振っただけだった。 「苗木君が私のことを責めていないのは分かっています。 でも、私が私自身を許せないんです。ですから、この先苗木君のお手伝いをして、少しでも苗木君の力になろうと決めたんです。自分を許せる時が来るまで…。 勿論、桑田君には機会を見て謝罪するつもりです。実行しなかったとはいえ、無関係な彼に殺意を向けてしまったのは事実ですし…。」 「分かったよ、舞園さん。それじゃあ、後片付けを手伝ってもらおうかな?」 「は…はい!」 舞園さんの顔がパアッと明るくなり、嬉しそうに僕の方へ駆け寄ってくる。 やっと…。やっと舞園さんに笑顔が戻ってきた。僕に元気と勇気をくれる、あの笑顔が…。 それから僕達は2人で朝食会の後片付けをし、それを終えた僕達は一緒に体育館ホールへ足を運んだ。 「思えば、あの時ここで苗木君にお話ししたんですよね。私の夢のこと…。」 「そうだったね。」 「例え外に出られたとしても、私はアイドルに戻れるでしょうか?自分を信じてくれた人を裏切って、無関係な人に殺意を向けてしまった私が…。 それに、昨夜のことは黒幕も監視カメラで見ている筈ですから、皆にバラされてしまうかもしれません。そうなった場合、私はどうしたら…。」 この先のことを考え、舞園さんは不安そうな表情になる。 声を大にして「大丈夫だよ」と言ってあげたかったが、軽はずみな発言は却って彼女を傷つけるだけだ。 あの性質の悪いモノクマのことだ。昨夜の一件を利用して殺人が起こるよう仕向けてくるのは時間の問題だろう。 でも、それでも僕は舞園さんの味方で居ると決めた。でないと、舞園さんは本当に孤独になっちゃうから。 「それは…舞園さん次第だと思う。でも、安心して。この先何があっても、僕は舞園さんの味方だから。それに、もしアイドルじゃなくなっても、舞園さんは舞園さんだよ。」 「ありがとうございます、苗木君。でも、アイドルの仕事は私の全てでした。もしそれが無くなったら、私には何も残りません。そう思うと…。」 「う~ん…。その時は…その時は僕と一緒に探そうよ!新しい夢を!」 ………。ちょっと待て。僕一体何言ってんの?うわ!メチャクチャ恥ずかしい!穴があったら入りたい! 舞園さんもキョトンとしちゃってるよ…。 「探す…。ふふ…そうですよね。今の夢が無くなっても、また新しい目標を立てればいいんですよね。どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんでしょう!」 そう言って舞園さんはクスクスと笑い、少し笑った後で真面目な顔になる。 「私、苗木君の心の強さが羨ましいです。私は状況に負けて、良くない事ばかり考えて、どんどん自分を追い込んでしまっていました。」 「そんなことないよ。僕は舞園さんや他の皆と違って特別な才能なんてないし、取り柄といっても他の人よりもほんの少し前向きなだけだよ。」 「今と言う時では、その前向きさが一番大事ですよ。どうか、その前向きさを失くさないで下さいね。」 「うん。舞園さん、絶対に黒幕に勝とう!そして15人全員で、この学園から出よう!」 「はい!苗木君、今はまだ言えませんが、もし生きてここから出られたら…伝えたいことがあるんです。」 「伝えたいこと?一体何かな?」 「それはその時になってからのお楽しみです。うふふ…。」 舞園さんは悪戯っぽく微笑み、答えをはぐらかした。 彼女の「僕に伝えたいこと」が何なのか気になるが、今はここから出ることの方が先だ。だから、僕はその時が来るまで心の奥にしまっておくことにした。 絶対に生きてここから出てみせる!舞園さんと、皆と一緒に!僕は改めて心にそう誓う。 だが次の瞬間、そんな僕らを嘲笑うかのようなモノクマの校内放送が流れた。 『死体が発見されました!生徒は至急、体育館にお集まり下さい!繰り返します…。』 「苗木君、今の放送…。」 「死体って…。まさか、誰かが殺されたってこと!?そんな…どうして!?」 この閉ざされた学園から全員で脱出するという僕らの青写真は呆気なく消え失せてしまった。 そして、殺された人物を除いた僕達14人は、モノクマから【学級裁判】についての説明を受けることになる…。 『ダンガンロンパ CHAPTER-1 Another』 END
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1244.html
登録日:2011/02/08 Tue 22 35 21 更新日:2024/09/22 Sun 02 24 26NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 ギャル ダンガンロンパ モノクマ「助けてー!グンニグルの槍ー!」 レーションが好き 体験版の彼女は輝いている 江ノ島盾子 神田沙也加 豊口めぐみ 超高校級 超高校級のギャル 途中からヤバいしか言わない 高校生 どーも、江ノ島盾子でーす。 よろしくねー! 江ノ島(えのしま) 盾子(じゅんこ)とは、ゲーム『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』の登場人物。 肩書:《超高校級のギャル》 身長:169cm 体重:44Kg 胸囲:80cm CV:豊口めぐみ 演:神田沙也加 【概要】 若者のバイブル的ファッション雑誌のカリスマ読者モデルを務める、世の女子高生たちのファッションリーダー。 喜怒哀楽がハッキリしているところや、裏表の無いサバサバした態度が世間から高い好感度を得ているらしい。 スタイル抜群だが、それにしても170cm近くあって体重が40kg台前半というのはいくらなんでも痩せすぎである。 右側をウサギ、左側を赤白のリボンの髪飾りでまとめた巨大な薄ピンク髪のツインテールが印象的で、 その距離の近さと大きく開いた胸元(立ち絵をよく見ると、見せブラらしきものが少し見えている)で男性を翻弄するエロカワ系ギャル。 はいそこ!ビッチだとか言わない! むしろ貞操にはうるさい方であり、この辺りの考え方も彼女が絶大なカリスマを誇る「超高校級」たる所以なのだろう。 ただ、実際の容姿は目が細く顔にそばかすがあり、上記のようにかなりスレンダーな体型であるなど、雑誌の写真とは結構異なる。 苗木との初対面時には、この印象の違いについて訊ねられると、 「アハハ、当たり前じゃーん!あれは雑誌用に盛ってるんだって!」 「だからさ、加工してんだって!画像編集ソフト知ってんでしょ?」 というファンの夢を壊す発言を平気でかました。桑田とかもそうだが超高校級の生徒はこんなんばっかりなのか…。 が、ここで変に取り繕おうとしないのもまた彼女の魅力の1つである。 女子キャラの中でも比較的初めから苗木に好意的であり、(非)日常パートでの彼女とのイベントでは、 ただ学級裁判で使用可能なスキルを入手できるだけでなく、感情豊かな彼女とのやり取りや意外なギャップを楽しめる。 なぜかレーション(=軍隊で配給される糧食)をプレゼントすると最高に喜ぶという一面も。 意外と軍事オタクなのかもしれない。 体験版では「噛んだ奴が怪しい」という議論になった際に、 「マジで!? 噛むと怪しいの!?」 と焦る姿が可愛らしい。 シャレにならない『ダンガンロンパ』の世界観において、フレンドリー且つポジティブな彼女の存在は、プレイヤーにとっての清涼剤であり続けたのだった。 他の作品では 『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』のおまけモードである超高校級の才能育成計画でも登場。 ノリの軽さは相変わらずだが、セクハラ発言を繰り返す花村にキレたり、なぜか戦闘バカの終里に戦ったら強そうだと目を付けられたりと気苦労も絶えない。 『ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』では、赤と白の柄のセパレート水着を披露。 才能と無関係の事をやるお祭りでは自作アクセサリー販売をやっている。 マジで!? 追記・修正すると怪しいの!? △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ そんな希望ゲーな訳ないよね… うぷぷ… -アニヲタWiki- ※以下、第1章のネタバレを含みます。 第1章で何者かによって舞園さやかが殺害されると、モノクマが生徒全員を体育館に集合させる。 そこで「学級裁判」の開催が宣言されるが、江ノ島は「何が…学級裁判よッ!」「あたし、そんなのに参加するのヤだからね…!」と猛反発。 ヒートアップしていく江ノ島にモノクマも譲らず、トテトテと向かってくるが、 「はい、これで満足?」 売り言葉に買い言葉で、モノクマを踏みつけてしまう江ノ島。 しかし、学園長であるモノクマへの暴力行為は校則違反…… 「学園長ことモノクマへの暴力を禁ずる。校則違反だね…」 「召喚魔法を発動する!助けて!グンニグルの槍ッ!!」 ドスッ ドスドスッ ドスッ 「あれ…?」 「お…おかしくない…?」 「なんで……あたしが…………?」 どこから発射されたのか、江ノ島の上半身に突き刺さる無数の槍。 支えを失った彼女の身体は、噴き出す血と共にその場に崩れ落ち…絶命した。 かくして江ノ島は学園から脱出するための殺人による死亡ではなく、ある意味デスゲームではお約束の「見せしめ枠」として殺されてしまったのであった。 生徒たちを脅し学級裁判の拒否権を与えないためにも、ストーリーの展開上これは必要な犠牲だったのかもしれないが、 序盤で女子キャラが立て続けに2人も退場してしまうこの展開には多くのプレイヤーが驚き、スタッフの悪趣味さを呪ったとか。 これ以前にも、大和田がモノクマを引っ掴んで脅したせいで危うく爆殺されかけるというシーンが既にあった。 これで「見せしめ」シーンは既に済んだと思っていたプレイヤーも多く、舞園の死亡を見た直後でのこれに心を抉られた人も多数いたことだろう。 あれを経た上でまだモノクマに絡みに行った江ノ島が迂闊だったのも事実ではあるが… 【余談】 《超高校級のギャル》としての彼女のスタイルの良さを上述したが、女性キャラのバストサイズのランキングを作ると、 1位 大神さくら(130cm) 2位 朝日奈葵 (88cm) 3位 舞園さやか(83cm) 4位 霧切響子 (82cm) 5位 江ノ島盾子(80cm) 5位 セレスティア・ルーデンベルク(80cm) 7位 腐川冬子(79cm) 8位 不二咲千尋(70cm) このようになる。 微妙な位置にいるが、これは別に彼女が《超高校級のギャル》らしからぬ数値というわけではなく他が異常なのである。特にさくらちゃん。さくらちゃんのは骨格&大胸筋だろって?言うな。 というよりもむしろ「“超高校級のスタイルの持ち主”を意図的に学園側が集めているのではないか?」という疑惑の声すらある。 「助けてー!IP規制ー!」 「あれ……?おかしくない?なんで、あたしが追記・修正できないの……?」 …うぷぷぷぷ。 …と、このように序盤で舞園らほど印象に残る活躍がなく、学級裁判すら参加出来ずにあっさり死亡した、本作屈指の超不遇なキャラである江ノ島盾子。 しかし一方で、あまりにもあっさり過ぎる退場なので「後で何らかの見せ場とかがあるのでは?」と期待するプレイヤーも多かったが… 警告!!(WARNING!!) この先は更なるネタバレ情報があります。 本編クリアがまだの方は十分にご注意ください。 6章において、生存者達を疑心暗鬼にさせるためにモノクマが配った「集合写真」。 そこには、あるものが必ず載っていなかった。 それは、「江ノ島盾子」の顔。 どの写真にも、江ノ島はなんらかの形で写り込んではいたのだが、 何故だかどの写真でも、水を被っていたり、前の人物の腕に被っていたりで、顔が見切れていた。 さらに、6章では5章と同じく、戦刃むくろ殺害の真相を探っていくことになるのだが、 改めて戦刃の遺体を調べた結果、戦刃の致命傷は「全身に負った傷」であること、 戦刃の死体発見時、遺体がしていたマスクを取ろうとした瞬間に爆発が起き、遺体の上半身が焼き爛れて顔が確認できなかったこと、 生物室にあった死体安置所に収められた、「コロシアイ学園生活」の死者の遺体の数は、実際の死者数より一人少なかったことから、 「実は戦刃は既に『戦刃以外の誰か』として殺されており、安置されていた遺体がその後『戦刃むくろ』として殺された」…つまり、戦刃は事実上「二度」殺されていて、 戦刃がある意味「身代わり」となって死んだ『戦刃以外の誰か』は密かに生き延びており、暗躍していた可能性が浮上する。 その『戦刃以外の誰か』を特定するカギとなったのは、「戦刃むくろの死因」であった。 扱いの上では戦刃は、『戦刃以外の誰か』と『戦刃むくろ』として二度殺害されたことになったが、 実際に戦刃が一度蘇ってからまた殺されたわけではないため、調査で判明した死因は「彼女が『戦刃以外の誰か』として殺された時のもの」ということになる。 さらに言えば、焼け爛れていたとはいえ、戦刃の遺体の体格は一般的な女子生徒のそれを大きく外れるようなものではなく、 故に、そもそも性別・体格が異なる男子生徒や、一般的な高校生のそれとはかけ離れた体格の犠牲者は除外される。 そして、それらの条件を満たす者で、『戦刃むくろ』と死因が一致するコロシアイ学園生活の犠牲者は、一人しかいなかった。 待っていたわ!私様は待っていたのよ! あなた達のような人間が現れる事をね! 江ノ島盾子(本物) 登録日:2011/02/08 Tue 22 35 21 更新日:2024/09/22 Sun 02 24 26NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 うぷぷぷ だいたいこいつのせい ひどい動機 ギャル スーパーヴィラン ダンガンロンパ ドM ドS プレス機 モノクマ ラスボス 七変化 分析力 初代ラスボス 双子 変態 外道 天災 妹 妹様 巨乳 思想以外の全てが完璧な傑物の力を有する怪物 悪女 江ノ島盾子 理解不能 生きた天災 神田沙也加 絶望 絶望フェチ 絶望的 絶望的な完璧超人 絶望的に容姿端麗 絶望的に運動神経抜群 絶望的に頭脳明晰 豊口めぐみ 超高校級 超高校級のおっぱい 超高校級のギャル 超高校級の分析力 超高校級の絶望 超高校級の絶望的おしおき 飽きっぽい 飽き性 高校生 黒幕 実はプロローグ~第1章に登場した「江ノ島盾子」の正体は《超高校級の軍人》戦刃むくろ。 彼女をいわば「身代わり」にして退場させ、以降ずっと裏で潜んでいた黒幕こそ……本物の《超高校級の絶望》江ノ島盾子だった。 CV 豊口めぐみ(二役) 【プロフィール】 誕生日:12月24日 身長:169cm 体重:45kg 胸囲:90cm(*1) 血液型:AB型 容姿 変装していた偽物とは異なり、目はパッチリ開いた愛くるしい顔をした(*2)美少女。 胸囲も90cmと、かなりの巨乳である。 苗木が入学前に認識していた「江ノ島盾子」とは彼女のことであり、ほぼナチュラルメイクで雑誌のグラビアを飾っていた。 ツインテールなのは偽物と同じだが、髪飾りはモノクマの左半身の白いクマと右半身の黒いクマの顔のヌイグルミのついたヘアゴム。 なお、リボンは制服の胸元に付けている。 性格 一言で言い表すならば、「他人だけでなく自分自身の絶望すら取り込む究極の絶望フェチ」。 他人を罠に陥れて絶望させるよう策を巡らせ、標的の絶望に愉悦を覚える悪趣味極まりないサディストにして、 自分自身が失敗により絶望しても、その絶望に快楽を感じるマゾヒストでもある。 そのためには如何なる手段をも厭わず、あの手この手の策を巡らせることで他人を操り、 更には自分が被害を被ってもそれすらダメージにならない、最早「常人には理解不能」な域に達している。 それは先天的なもののようで、「生まれた時に流した涙は『この世に生まれてこなければ良かった』という絶望の涙」と豪語するなど、更生は不可能と言っていい。 そしてその精神構造上、その正体を暴くことで『デスゲームの黒幕』である彼女を負かすことは出来ても、 『一個人として精神的に屈服させる(=計画を台無しにすることで精神的に打ちのめす)』ことはどうやっても不可能。 反面、希望に溢れた人間を毛嫌いしており、生理的嫌悪感を覚えている。 「ゼロ」では記憶を失っても、苗木に対する嫌悪感を隠そうともしなかった。 また、戦刃むくろが「江ノ島盾子」として死亡してからは、ずっと「モノクマ」を演じざるを得なくなっていた上に、 少し話すだけで「自分のキャラクター」にも飽きてしまうほどに「絶望的に飽きっぽい」性格であるため、 『学級裁判』の場についに引きずり出されることとなった彼女は、他人と話す時のキャラクターがころころ変わるという妙な性質となっており、 例えるなら魔法陣グルグルの風の王のような性格で話すその異様な光景は、苗木たちをその本性共々困惑させた。 なお、本編では8パターン立ち絵が用意されており、髪型も変われば表情もポーズも変わる百面相はもとより、 それに応じて豹変するキャラクターを演じ分ける豊口めぐみ氏の演技力を堪能することが出来る。 これには豊口氏もインタビューで「最後は頑張りました」とコメントしている。ネタバレ厳禁なので何のことかまでは語れなかったが。 ん?「序盤に退場する江ノ島が最後に出てくることのネタバレになってる」って?気にすんな。 ①女王 一人称は「私様(わたくしさま)」。 傲岸にして尊大な性格であり、常に他人を見下しながら発言する。 ②キザ 一人称は「アタシ」。 ジョジョ立ちをしながら会話し、クールに振る舞いつつも他人を小馬鹿にする。 ③凶悪 一人称は「オレ」。 ハイテンションで高笑いし、威圧感が凄い。 ④メガネ 一人称は「私」。 主に説明パートで使用される。秘書風のキャラで、どこか慇懃無礼な印象がある。 ⑤ぶりっ子 一人称は「わたし」。 幼女風のキャラだが、話す内容は大して変わっておらず、極めて腹立たしい。 ⑥陰気 一人称は「私」。 頭にキノコが生えており、常に涙目かつ言動もネガティブ。しかし、自画自賛するのは相変わらず。 ⑦モノクマ 一人称は「ボク」。 抱きかかえたモノクマのヌイグルミで顔を隠しながら会話し、話し方はもちろん声もモノクマに寄せている。 ⑧素 一人称は「アタシ」。 旗色が悪くなり、キャラを作る余裕がなくなった時になる状態。主に無表情、驚愕、恍惚の3パターン存在する。 能力 江ノ島の真価はギャルとしてのカリスマ性を持っているところだけではなく、より深いところにある。 それは、一度見た、あるいは聞いただけであらゆる状況を分析し、未来を予測し、解決策を導き出せる《超高校級の分析力》である。 一度会った人間から性格、次に取るであろう行動を予測し、それに相応しい対処を導く。 それにより、彼女の人生は全て「予想通り、希望通り」であると言って良かった。 何より、勉強もスポーツも、最適な方法を導き出し、最高の結果を出しており、 「絶望的に容姿端麗、絶望的に頭脳明晰、絶望的にスポーツ万能な完璧超人」とは言い過ぎではない。 彼女がギャルとして高校生の間のカリスマになれたのも、流行を分析してその先取りをし、他人の「喜ばせ方」を熟知していたからに他ならない。 ……しかし、それにより江ノ島が得られたのは「予想通り」で「飽きる」、「絶望的」な人生。 彼女の極端なまでの飽きっぽさは、その能力の高さ故なのだろう。 そして彼女は、「絶望」を自分だけではなく、他人にまで求めるようになる。 世界に絶望をばら撒き、自分自身もまた絶望するために。 また、全てを最初から分析して見通しているが故に、本来なら発生しない「想定外」には弱く、 追い詰められると子どものように取り乱し、脆い姿を見せてしまう面もある。 もっとも、彼女は絶望的に飽きっぽく、絶望的に絶望を希望して絶望する性質から、 どれだけ綿密に計画を立てても、簡単にこれを放棄して刹那的な絶望を求めてガバガバのオリチャーを発動する悪癖があり、 これによって自分から「想定外」を引き起こすことが多いため、結果的に自業自得であることがしばしば(*3)。 コロシアイ学園生活でも、レンズが曇るという理由で大浴場に監視カメラを仕掛けなかったり、 その構造上、監視とモノクマの操作が同時に出来なかったりとガバガバな隙が目立ったが、 これらも絶望を感じたい≒敵に追い詰められたいという彼女の性格を考えれば、ある程度は意図的に隙を作っている可能性も考えられる。 未来を分析によって見通せる故に、苗木誠は最大最悪の天敵。 なにせ苗木の才能は発動、発生のパターンが存在せず本人にとってもアンコントローラブルで江ノ島も分析できない(*4)との事。 簡潔に言えば苗木の『幸運』とは上記の『想定外』といういつか『希望』につながる因子を無作為無差別にバラ撒くようなものであり、 『絶望』を追い求める江ノ島にとっては、彼や彼の持つ『幸運』はひたすら悍ましく思えた事だろう。 江ノ島もそんな苗木は当然ながら脅威として一応最初から認識しており、元々はコロシアイ学園生活開幕前に殺しておく予定だった。 実際に実行に移したものの幸運が発動した事で失敗、結局は例にもよってガバオリチャーを優先些細な事として、 そして何よりそんな些細な事に計画を乱されるならそれはそれで絶望的として見逃し、彼女自身の破滅を招き入れている。 協力者 戦刃むくろ 双子の姉の《超高校級の軍人》。 自分を信奉し、溺愛しているが、江ノ島は体のいい駒程度にしか思っていない。 とはいえいざとなれば平気で切り捨てられるものの、姉妹の情はあるので、彼女を殺した際は絶望(という名の狂喜)に溺れた。 寧ろ『絶望的に飽きっぽい』江ノ島が『駒としての有為性を見出し続けていた』という時点で十分特別扱いなのは間違いないし、 何なら『絶望』を好む江ノ島が『とっておきの絶望を味わわせて殺害した』ということからも、江ノ島にとって大切な存在だったことが窺える 松田夜助 幼馴染の《超高校級の神経学者》。 母親を精神崩壊という形で失った彼から依存されており、普段は口は悪いが愛されている。 しかし、「愛する人を失う絶望」を味わいたかった江ノ島により利用され、数々の殺人や隠蔽工作を行った挙句、最期は江ノ島の手によって殺された(*5)。 彼から「音無涼子」という別人になるよう記憶を消されたが、後に江ノ島はその技術を流用し、コロシアイ学園生活の生徒達に施している。 カムクライズル 希望ヶ峰学園の集大成たる《超高校級の希望》と呼ばれる謎の少年。 江ノ島同様に並外れた分析能力で未来を見通す事が出来、故に「ツマラナイ」が口癖となっている。 自身と同じ境遇と視点を持つ彼に対し「希望は予定調和で絶望こそが予測不能」と吹き込み、 「希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件」を通して自らの計画へ引き入れた。 ただし、江ノ島の計画に引き入れられたとはいえ、絶望に傾倒した訳では無いようで、 希望と絶望のどちらが自身にとって予測不能であるかを見極める事を宣言し、彼女と袂を絶っている。 後に彼があることを経験したことで、絶望でも希望でもない『ある概念』に傾倒するでも信奉するでもなく『己だけの才能』として覚醒する事は、予想外であっただろう。 人類絶望化計画 希望ヶ峰学園に入学した江ノ島は、《希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件》を引き起こす。 これは、希望ヶ峰学園の生徒会役員を旧校舎に閉じ込め、血生臭い殺し合いをさせるという陰惨極まりないものであった。 結果、生き残ったのは生徒会長の村雨早春と《超高校級の希望》と称される謎の学生・カムクライズルのみ。 カムクライズルが殺し合いに勝ち残ったという事実は希望ヶ峰学園の予備学科の生徒達を絶望させ、「パレード」と称したデモを引き起こす。 やがて、デモは肥大化し、本編の1年前に「人類史上最大最悪の絶望的事件」が発生。 世界は壊滅状態となり、希望ヶ峰学園のシェルター化が学園長の霧切仁により提案される。 その対象となったのは、江ノ島と戦刃を含めた希望ヶ峰学園第78期生だった。 しかし、それこそが江ノ島最大の計画―――「人類絶望化計画」の幕開けだった。 江ノ島は、自分と戦刃以外のクラスメイト達の記憶を希望ヶ峰学園入学前の2年前まで戻し、霧切学園長をおしおき「宇宙旅行」にて殺害。 それぞれ面識のない状態になったクラスメイト達は、モノクマというヌイグルミの「動機」の介入によって疑心暗鬼に陥り、絶望して殺人を犯す。 そして、その様子は全て電波ジャックで荒廃した世界に生中継されていた。 わずかに残った人類の《希望》14人が絶望に堕ち、殺し合う様を見せつけ、まだ希望を抱いている外の人間達を絶望させるために。 そしてこの計画の恐ろしいところは、14人が外の世界に関する記憶を失ったところにある。 詳しくは、モノクマが与えた「動機」について見てみよう。 第1章:「人間関係」メンバーの大切な人間に危害を加えたと示唆。結果、舞園が外に出るために桑田を殺害しようとし、逆に殺し返される。 しかし、外の世界が滅んだ以上、その人間が生きている保証はもうない。 第2章:「思い出」メンバーの知られたくない思い出を暴露すると脅迫。結果、動揺した大和田が不二咲を殺害。 しかし、もうその秘密があってもなくても意味がない状態である。 第3章:「欲望」殺人を犯したら100億円を褒美としてやると宣言。結果、セレスが金を得るために石丸と山田を殺害。 しかし、滅んだ世界に金など意味はない。 第4章:「裏切り」大神が黒幕の内通者だと暴露。結果、生存者達の人間関係が最悪になったが、最終的に大神の自己犠牲により団結出来た。 このように、特に1章~3章は「被害者は殺されたことにより絶望」し、「クロは犯行が発覚して“おしおき”を受けることにより絶望」する、 あるいは「クロが外に出たとしても動機が全くの無意味だと明らかにされて絶望する」という、「どう転んでも14人は絶望する」結果になる。 しかも、彼ら14人は2年間を共に過ごしたクラスメイト同士なのだ。 そして、それを敢えて明らかになるようヒントをちらつかせ、最終的に判明しても残る生存者達を絶望させようとしたのだった。 加えて言うと、最後の計画の駒として78期生を選んだのは、江ノ島にとってもあらゆる面で己と真逆な苗木を除いて「大切なクラスメイト」だからであり、 彼らが殺し合う様を眺めることもまた、彼女にとって絶望が大きくなると考えたためである。 ……まさに、どう転んでも隙が無い、完璧な計画だったと言える。ただし、一人の誤算を除いては。 絶望の誤算 江ノ島盾子の誤算、それは《超高校級の幸運》として入学し、存在を軽視していた苗木誠だった。 彼は、如何なる逆境に晒されても、決して諦めず、前向きに黒幕打倒だけをコロシアイ学園生活における目標に据え、全員の団結を心から望んでいた。 そして、彼は死んだクラスメイト達を「引きずる」として、「黒幕を倒し、外に出る」ことからブレなかった。 そもそもとして、江ノ島がその正体を暴かれたきっかけとなったのは、戦刃むくろの殺害に関する一度目の学級裁判だったが、 これは元々、苗木と霧切響子の存在を危険視したモノクマ(江ノ島)が、彼らのどちらかを学級裁判で処刑させようとでっち上げたものであった。 江ノ島の正体が暴かれるルートに繋がるストーリー分岐では、苗木が霧切の以前の言葉を信じ、彼女を庇う形で「クロ」として処刑されることとなるが、 「仲間」を護ろうとしたアルターエゴの最期の献身と霧切の奮闘で、苗木は絶望的な状況から生還を果たし、結果として江ノ島の目論見はご破算になった上に、 霧切に「学級裁判でクロではない人物をクロとする決断が下されたにも関わらず、真実を指摘せずにクロではない人物を処刑した」というルール違反を指摘され、 「もう一度『戦刃むくろ』の死に関する学級裁判をやり直せ」という霧切の要求を呑まされたことが、正体を暴かれるきっかけとなってしまった。 霧切も指摘したが、「絶体絶命の窮地でも、同じ状況下にいる他者を庇おうとする」苗木の善性は、モノクマ(江ノ島)には信じられない精神性であり、 それが意図せずして江ノ島の陰謀を砕き、巡り巡って彼女の喉元に刃を突きつける結果になったのだ。 もっとも、江ノ島もこの時はまだ余裕があった。 むしろ、「コロシアイ学園生活」が進行していけばいずれ状況が煮詰まるのは明白だったはずであり、 そうなった際に、生き残った生徒たちに「最大級の絶望」として自身の正体を含めた「全ての真実」を開示する想定が元からあった事が劇中の描写からも伺える。 こうして、事件の真相と自らの犯行を暴かれた江ノ島は、「コロシアイ学園生活」の真実を語り、 既に破滅的状況に陥っている「外」の世界の真実を明かした上で、生存者達に迫る。 「安定して停滞した永遠の希望ヶ峰学園内での生活(苗木のみおしおき)」か「荒廃した世界への追放」のどちらかを選べ、と。 ことここに至って、何をどうしても絶望しない苗木を、とうとう脅威に感じたのだ。 彼女の揺さぶりに、ここまで生き残った霧切たちも動揺を誘われ、絶望しかけることになるが、 やはり苗木だけは絶望に抗い、仲間たちにも《希望》を持たせ、「外に出る」という決断を選ぶに至らせている。 苗木がコロシアイ学園生活で戦い抜いた事で覚醒した最後の最後の『才能』、 つまり、『愚直なまでの諦めの悪さを有し、その諦めの悪さを他者に感化させる形で伝播させる』という、 『何があっても絶望しない』という意味での『希望』の才能――『超高校級の希望』によって、学級裁判は江ノ島の敗北で幕を閉じた。 そして、これまでと同じく全世界に向けて学級裁判の模様が放送されていたことにより、 江ノ島盾子――『超高校級の絶望』が、苗木誠――『超高校級の希望』に打ち破られた様子が、全世界に示された。 『希望』とその芽を摘み取るために企画・開催され、放送されていた「コロシアイ学園生活」が、 最後の最後で、『希望は前に進む』という苗木たちの『希望』を全世界に示すことになったのだ。 最後まで江ノ島盾子が理解できなかった、苗木誠という人間の有り方――、 『自分達を弄び、仲間を死に追いやった黒幕に何があっても決して屈さず必ず打倒する』という『希望』が、 『超高校級の絶望』を打ち破る“銀の弾丸”だったのである。 最期 結果、全員一致で生存者6人は江ノ島のおしおきを選択した。 だが…… ……最高じゃない!! これが…これが絶望なのね…! 2年も前から…この学園に乗り込んで…綿密な計画を練り上げて… そして、計画の為に、実の姉まで殺したって言うのに… それなのに、最後の最後で失敗するなんてッ!! これ以上ないほどの超絶望だわッ!! アタシは、絶望的に絶望的だったの!生まれた瞬間にすべてに飽きてたの! だから、ずっと楽しみにしてたのよ…人生で1度きりの…このイベント… 最初で最後の最大の絶望!死の瞬間!! それを、“計画の失敗”という最大級の絶望の中で味わえるなんて… あぁ!絶望的に幸せだわ!! ……とまぁ、江ノ島盾子は幸福の絶頂の中にいた。彼女は、「死の絶望」すらも快楽に変えていたのだ。 これには、苗木含めて全プレイヤーもドン引きするしかない。 しかし、苗木達は外にどんなことが待ち受けようと、絶対《希望》を失わないと宣言する。 それに対し江ノ島は一言。 これから先、オマエラの前には、次々と“絶望”が立ちはだかる事になるよ。 どこへ進もうと…どこへ逃げようともね… 表と裏…だけど紙一重…希望があるところには必ず絶望もあるんだよ。 それでも、オマエラは希望を持ち続けていられるかしらん? そして、彼女は自分自身を処刑しようとする。待ち望んでいた「死の絶望」を味わうため……。 うぷぷ…うぷぷぷ…! あぁ、素敵だわ…これが死の絶望なのね…! この絶望の10分の1でも…100分の1でも…! 世界中のみんなに、もっと味わって欲しかった…! 世界中を、この素晴らしい絶望に染め上げたかった! じゃあ!始めるよ! 最後にふさわしいスペシャルなおしおき!! では張り切っていきましょう!おしおきターイム! アーッハッハッハッハッハッハッハ!! CONGRATULATIONS! エノシマさんがクロにきまりました。 おしおきをかいしします。 おしおき:「超高校級の絶望的おしおき」 笑顔で右手を振る江ノ島。彼女の背後に、今まで登場した6つのおしおきのセットが組み立てられていく。 彼女は、全てのおしおきを味わうこととなるのだった。 「千本ノック」。野球ボールの連打を余裕で受け止める。 「猛多亜最苦婁弟酢華恵慈」。腕を組み、高速回転に目を回しながらもへっちゃら。 「ヴェルサイユ産火あぶり魔女狩り仕立て」。禅を組みながら火にあぶられると、上から消防車が落ちてくる。 「ショベルの達人」。ショベルカーで叩かれ、目から星を出す。 「宇宙旅行」。楽しそうにロケットに入り、打ち上がった後、落下。 「補習」。モノクマのヌイグルミを抱きながら、笑顔でプレス機に運ばれていく。 そして―――死の絶望にすら飽き、一瞬真顔になった瞬間、プレス機が落ちる。 血まみれのプレス機の下には、脱出スイッチが転がっていた……。 こうして、《超高校級の絶望》江ノ島盾子は自らの手でその命を終わらせた。 苗木誠らを苦しめたコロシアイ学園生活も、遂に終わりを迎えたのだった。 ……だが、これで本当に終わったのか?彼女が死んだら、世界から絶望は消えるのだろうか……? 役目を終え、主を失って停止したモノクマは乱雑に学級裁判の舞台に置き去りにされていた。 彼を動かしていた江ノ島はもうおらず、二度と再起動するはずはなかった。 ……………… ……………… クックック… 面白いよ… 面白くなってきたクマ… うぷぷ… うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぅ〜!! そう…ヌイグルミじゃないんだよ… ボクはモノクマなんだよ… オマエラの…この学園の… 学園長なのだッ!! 君は希望という名の絶望に微笑む + ... さて、苗木誠と彼に感化され希望を胸に抱いた彼の仲間達の手で彼女の計画は見事に破綻した。 しかし、そもそも彼女の真の目的が本当に計画の完遂だったのかは疑問が残る。 彼女にとって自分の人生を彩った絶望を世界中の人間に味わって欲しい、というのは恐らく本心であるし、その為の計画も本気で練ったのだろう。 一方、全て計画通りに世界中が絶望するのであれば、それは彼女が嫌った予定調和に他ならないはずなのだ。 計画を破綻させる可能性が少しでも存在する因子を見逃し、ガバガバなオリチャーを随所で発動しまくる脇の甘さを見せた彼女が本当に望んだのは、 まさに本作のような希望溢れる絶望的なクライマックスだった……のかもしれない。 また、『3』ではある人物の企みで世界中から絶望の感情が排除された希望溢れる世界が創られようとしていたのだが、 彼女はそれを「希望しかないのもまた絶望的」と評しむしろその結末こそが自身の望み通りと言わんばかりの態度を見せている。 そもそも、その人物がその企みを抱くよう誘導したのは自分の配下でもある絶望の残党の一員である。 世界中の人間が希望だけを胸に生きていく。 絶望を愛し絶望に絶望を絶望する彼女にとってこれ程絶望的な世界は無いだろう。 ともすれば、この世界の希望を誰よりも望んでいたのは果たして誰だったのだろうか……? 他作品での活躍 ダンガンロンパ/ゼロ 希望ヶ峰学園の監視から逃れるため、松田夜助の手によって記憶を消され、普通の学生「音無涼子」として生活する。 しかし、前もって仕掛けておいた変装した戦刃むくろの介入によって評議会殺人事件に巻き込まれ始め、徐々に記憶を取り戻す。 記憶を完全に取り戻し、「音無涼子」が消失するや否や、松田を殺害し、「愛する人を失う絶望」を心行くまで楽しんだ。 スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園 絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期 ネタバレ禁止なので出てくるのかは秘密。 ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-絶望編 前日譚のアニメ。 彼女が如何にして希望ヶ峰学園や世界中に絶望をばら撒いたのかが判明する。 超高校級の才能育成計画 ニューダンガンロンパV3のおまけモード。 立ち絵は過去作からの流用なので、本物の江ノ島と戦刃むくろ(江ノ島ver)の2人が登場。 ただし、正式に入学しているのはどちらか片方だけで、それぞれパラレル扱いとなっている。もちろんこの2人のやり取りもある。 片方のみに発生するイベントもあれば、両方に共通で発生するイベントもある。共通イベントでは、江ノ島か戦刃かによって会話内容等がやや異なる。 ちなみに江ノ島曰く、自分には双子と影武者とドッペルゲンガー、合わせて4人の同じ顔がいるらしい。まぁ1つ目以外嘘だが。 ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿 やはり2人とも登場し、水着も異なる(戦刃は赤と白の柄のセパレート水着、江ノ島はスクール水着)。前作同様、2人同時には登場しない。 仲良しマスのイベントは両方共通だが、どちらかによって会話内容等が異なり、特に一部のキャラからの反応は違いが大きい。 行事イベントの内容は大きく異なり、例えば才能と無関係の事をやるお祭りではどちらも売店をやるが、戦刃は自作アクセサリー販売をやり、江ノ島は占い屋をやっている。 「私様の項目を追記修正したら、世界の半分をあなた達に差し上げましょう。すでに不動産権利書も用意してあるわよ!」 「今なら地位と名誉と、私様の手料理も付けるわ!どうする?私様の項目を追記修正する?」 「あー、本気で答えちゃった?ごめんごめん、今のはジョークなんだよ。」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 依頼通りリセット -- 名無しさん (2017-07-13 17 02 04) ジュウオウジャーのジニスやエグゼイドの檀親子 SAWのジグソウなどのデスゲームマスター達が最後ら辺で醜態を晒して株を下げているに対し、最後までブレなかったのが印象的だな。 -- 名無しさん (2017-07-17 10 41 50) やっぱネタばれになるから記事内容こんなに少ないの?? -- 名無しさん (2018-07-14 13 11 15) えのじゅん(本人)がゲートだったら何体のファントムが生まれることだろうか -- 名無しさん (2018-07-14 13 16 31) ⬆︎苗木くん達がゲートなら終盤で笛木がサバトし放題で大喜びだな -- 名無しさん (2018-11-05 15 28 23) とりあえず1章で彼女と仲良くなると苗木に対しての本心が見えるぞ☆ -- 名無しさん (2019-07-18 18 47 05) 舞台で演じてたのは神田沙也加。舞台練習中に豊口さんから江の島ボイスの応援メッセージもらったそうな。 -- 名無しさん (2020-05-04 20 30 20) ネタバレ厳禁ではあるが、ほとんど公然の秘密状態からなのは推理もののサガよなあ… -- 名無しさん (2022-04-11 10 09 19) ↑まあ2以降は作中でも言及されるしな… -- 名無しさん (2022-07-21 23 43 14) じゅんこちゃんは存在がネタバレに等しいからなぁ。アニメ見るんだったら無印見てから絶望編見て未来編、絶女、2.5の方がじゅんこちゃんの良さが分かる。 -- N無しさん (2022-10-26 15 28 57) 1のネタバレ解放によってやっぱり大幅に加筆されてたか。どうしても作品進むにすれ公然の秘密と化してたとはいえ、こうやって文章化されてると分かりやすい -- 名無しさん (2023-01-04 21 09 35) 何が面倒くさいって愛情も友情も本心の上で絶望するための道具にするところだよなあ。だからキャラクターとしては面白いんだが。 -- 名無しさん (2023-01-05 10 58 46) 偽江ノ島の一人称は「あたし(平仮名)」で死ぬ間際も変化しなかったはず。 -- 名無しさん (2023-01-18 23 12 26) ギャル系で意外に頭切れるってキャラは他にもいるが、なんでもこなせる黒幕ポジは唯一無二だわな -- 名無しさん (2023-02-06 11 38 24) 本来の能力は「分析とトレース」。だから無意識にむくろの絶望をトレースし、世界のことがなんでもできるしわかってしまい退屈で暴走したのが本編らしい。全知全能客はヒマ持て余すよなー… -- 名無しさん (2023-03-16 06 54 09) 豊口めぐみさんの演技力がすごい役。個人的には大山のぶ代さんのモノクマの真似も好き -- 名無しさん (2023-06-29 20 50 33) ……ホントに、絶望的に迷惑な奴だなおい…… -- 名無しさん (2023-07-11 20 12 41) ゼロの(というか松田の)結末のくだり見て好きになったな。そうなる計画だったんだろうがこんなキャラが愛する者を失う絶望なんてものを知ってしまったら…。 -- 名無しさん (2023-12-04 02 05 01) 心から絶望に染まってるせいでありとあらゆるどんな目に遭わせようが絶望と捉えて己の糧として満たしてくる。本当にこいつどうしたらいいの。 -- 名無しさん (2024-01-30 21 18 59) ↑どうしようもない。そもそも根本的に人類と相互理解できる生き物じゃないし、例え絶望に染まろうが希望に染まろうが彼女は絶望的と絶頂するし、そんですぐ飽きる。本編世界同様なんとかこの世から排除して直接的に世界に干渉できないようにするしかない(死ねば干渉しなくなるとは言ってない) -- 名無しさん (2024-02-27 00 07 00) 1の作中時点の描写だと「超高校級の絶望」という集団の一員(幹部級込みで)って感じだったが、2より後は「超高校級の絶望」とは彼女個人を指す悪のカリスマリーダーと何気にランクアップしてる。まあそれだけインパクトと存在感あった故にだろうが。 -- 名無しさん (2024-05-10 00 50 33) 二次創作で『絶望させない』絶望叩き込んだのはあったけど -- 名無しさん (2024-05-14 12 52 03) ザンキゼロやレインコードにも出てくんじゃないのかと疑ってた。全然出てこなかった。 -- 名無しさん (2024-07-04 00 17 41) 5↑舞台版はオシオキせずに学園に放置だっけ。それが一番無難な対処法かも -- 名無しさん (2024-07-08 18 10 35) 3↑気になる。どこから見れる?良ければタイトルも教えて欲しい -- 名無しさん (2024-08-05 15 57 40) ダンガンロンパ1の実況動画見たんだけど、モノクマの操縦室とモニタールームが別々なのは二人で運用するためだったからなのかなと思ったりした -- 名無しさん (2024-09-03 00 07 52) 名前 コメント