約 48,005 件
https://w.atwiki.jp/yyyigame/pages/802.html
花咲くトーク 伊予島杏 プロフィール ホーム CV 近藤 玲奈 ステータス ※ステータスの数値は初期値になります。 型 属性 レア度 HP ATK 踏ん張り 速度 CRT コスト SP 遠射型 黄 SR 710 1430 D B+ C 23 25 リーダースキル 憧れのかわいい 黄属性の勇者の攻撃ペース+15% 必殺技 ジェニィ 種別 効果 ゲージ 技再使用時間 仲間攻撃昇 CRT昇 16倍ダメージをライン範囲の敵に与え、12秒間仲間全員のATK+13%、自ペアのCRT+250 2 19秒 アビリティ 女の子ですから 発動条件 効果 会心 クリティカル発生時、5秒間自ペアのATK+10%、10秒間自ペアのダメージカット200 神花・覚醒 神花/覚醒時 獲得精霊 初回神花 二回目回神花 三回目神花 R雪女郎(黄) SR雪女郎(黄) 一定覚醒値報酬 必要覚醒値 15 SR雪女郎(黄)×30 神花解放 段階 必要コイン 必要属性結晶 上限Lv30 - - 上限Lv50 - - 上限Lv70 - - 入手方法 勇者・フレンドガチャ 名前
https://w.atwiki.jp/harukaze_lab/pages/298.html
花咲く頃 徳田秋声 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)高原《かうげん》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)一|緒《しよ》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) (例)※[#「塞」の「土」に代えて「足」、72-下-3] /\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号) (例)しら/\ 濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」 桔梗原の高原《かうげん》にあるお寺で行はるゝ義弟《ぎてい》の上堂式に参列するために、私は或夜《あるよ》おそく、妻と一|緒《しよ》に市中《まちなか》の或停車場から出発《しゆつぱつ》して、久振で山国《やまぐに》の旅に登つた。 立つ前に私は今一度病院を訪《たづ》ねるつもりであつたが、時間《じかん》がなかつたので、病人《びやうにん》の見舞《みま》ひに来てゐる一人の甥《をひ》に後《あと》のことを委ねて、急《いそ》いで停車場へ嚮《むか》つて車を走らせた。私の家《いへ》のつい近くの病院《びやうゐん》には、私と殆んど同じ年輩の病人《びやうにん》が、もう三週間余《しうかんあま》り病床に横《よこた》はつてゐた。彼は直腸にできた癌《がん》の療治《れうぢ》をするために、わざ/″\遠《とま》い其の故郷から上京したのであつたが、診察《しんさつ》を受けた外科医《げくわい》から、ラヂユームを最《もつと》も多量に所有《しよいう》してゐる皮膚科の博士に紹介《せうかい》されてから、可也《かなり》手数《てすう》の多いラヂユームの療法《れうはふ》によつて、悪性な其の腫物《しゆもつ》を除かうとしてゐるのであつた。それに其の患者《くわんじや》の傍《そば》には、これも私の姪《めい》にあたる貞淑《ていしゆく》な彼の妻が、五人の子供《こども》を留守宅において来《き》て、夜となく昼となく良人《をつと》の病床に侍してゐた。たゞの一|日《にち》でも私はそれらの気毒な病人夫婦《びやうにんふうふ》をおいて、旅に出るのは不安《ふあん》であつたが、義弟《ぎてい》の式に参列《さんれつ》することは、去年からの約束《やくそく》でもあつたので、二三日の予定《よてい》で、家を出《で》た。 私たちの俥が停車場《ていしやぢやう》へ着いたのは、十時半頃であつたが、辛《から》うじて座席を取つてから、疲《つか》れた体《からだ》を汽車の動揺《どうえう》に委《まか》せたのはそれから一|時間《じかん》の余も経つてからであつた。花時《はなどき》の客車《かくしや》は可也《かなり》込合《こみあ》つてゐた。気忙しい思ひをして、漸《やつ》と間《ま》に合つた私たちは、頭脳《あたま》を休めるために肱を曲《ま》げるにさへ、窮窟《きうくつ》を感ずるほどであつた。新宿《しんじゆく》からは、また二三の乗客が乗込《のりこ》んだりした。そして汽車がそこを過《す》ぎると、乗客は初めて自分自身《じぶんじしん》の領域に落着いたやうに、枕《まくら》を脹《ふくら》ませたり、敷物のうへに坐《すわ》り直《なほ》したりした。 「この汽車《きしや》に乗るのは、ちやうど十一|年目《ねんめ》ですわ。」 汽車が東京を離《はな》れた頃、妻はつい此頃《このごろ》のことのやうに思つてゐる、初めて故郷《こきやう》といふものゝ姿《すかた》を見せられた折のことを憶出《おもひだ》したやうに言つた。七八つ頃《ごろ》に別れて来てから、二十年《ねん》ぶりで見た故郷《こきやう》は、彼女が想像《さうぞう》してゐたほど美しいものではなくて、停車場《ていしやぢやう》を降りるときから、山間《やまあひ》の淋しい町の姿か、滑稽《こつけい》なほど総ての期待《きたい》を裏切《うらぎ》つてしまつた。 「さうかな」と私はその間《あひ》に一度、これも弟の江湖式に臨《のぞ》むために、独りでここから立《た》つたことなど憶出してゐた。 「あの時はみつ子がまだ漸《やつ》と四つか五つでしたにね。」三|年前《ねんぜん》に死んだ子供《こども》のことが、またこんな折《をり》の彼女の心に浮んで来《き》たりした。 夜《よ》が更《ふ》けるに従つて、私たちの頭脳《あたま》は次第にぼんやりして来て、眠《ねむ》るともなしに夢現《ゆめうつゝ》のやうな気持に誘はれた。笹子隧道《さゝことんねる》を通るときの劇しい汽車《きしや》の響が、時々私の心《こゝろ》を脅《おびや》かすのを感じた。 しら/\夜《よ》が明《あ》けたと思つて、窓を明《あ》けると、そこがもう甲府《かふふ》で、客車の内外《うちそと》が何となくざわついてゐた。そして私がプラツトホームへ降《お》りて、外の洗面所《せんめんじよ》で顔を洗ひ、そちこち運動《うんどう》してから、再び座席へ戻つて来たころは、入替《いれかは》つてそこから乗込《のりこ》んで来た人の新らしい顔《かほ》か、そここゝに見《み》られた。 富士見へ来た頃には、高《たか》い山の姿が晴《はれ》わたつた空にくつきり見《み》えて、爽やかな朝風が、寝熱《ねぼと》りのした顔に快《こゝろよ》く触つた。 生糸工場の煙突《えんとつ》の多い湖畔の或町《あるまち》へ来たとき、私たちは荷物《にもつ》を一つに纏めて、窓《まど》の外を眺《なが》めた。そこにはつい此頃東京を遊覧《いうらん》して帰つたばかりの――そして其時《そのとき》そんな約束の成立《なりた》つた妻の親類の人《ひと》たちか男衆を従へて、私たちの着《つ》くのを待《ま》つてゐた。 一日一夜そこに過《すご》して、その親類の人と一|緒《しよ》に、私たちが其の寺のある場所《ばしよ》へ向つて出発《しゆつぱつ》したのは、翌朝《よくてう》の九時であつた。 初めて見る湖畔《こはん》の町では、私たちは久振《ひさしぶり》で妻の妹に逢つたり、町《まち》の後《うし》ろにある山へ登つたりした。妹は電話《でんわ》を受けて、二人の子供《こども》をつれて、近くの町から汽車《きしや》で姉に逢ひに来たのであつた。夜汽車《よぎしや》で疲れた体を起して、妻《つま》は懐しい妹を迎へるために、男衆《をとこしゆう》と一緒に停車場まで出て行つた。私はその間に、骨董好きな主人《しゆじん》から幾十種となく集《あつ》められた古い鈴や、彫刻類《てうこくるゐ》などを見せられた。 「やい/\」などゝ、金縁眼鏡《きんぶちめがね》をかけて、奥《おく》に坐りこんでゐる主人《しゆじん》は、時々そんな声《こゑ》をかけて、店を切廻してゐる若い細君《さいくん》を呼んだり、男衆《をとこしゆう》に用を吩附《いひつ》けたりした。 裏の土蔵《どざう》の前に大きな臼が据《す》えられて、男衆《をとこしゆう》や女たちが、餅を搗いた。昨日《きのふ》山《やま》から摘んで来た青い餅草《もちぐさ》が蒸《む》されたりした。 多勢の人たちと一|緒《しよ》に、山で飲食《のみく》ひをしてから、町へ降《お》りて来て湯に入つた頃《ころ》には、私は一時に疲労《ひらう》をおぼえて、日が暮《く》れると間もなく、軟かい天鵞絨《びらうど》の蒲団のうへに横はつて眠つた。花の綻《ほころ》びかけた山には、一|町《ちやう》ばかりの間、明いイルミネーシヨンがついてゐた。 朝は朗《ほがら》かに晴れてゐた。停車場《ていしやぢやう》のプラツトホームから見える附近《ふきん》の山には、春らしい長閑《のどか》な靉靆《あいたい》が棚曳いて、日影《ひかげ》がうら/\と輝いてゐた。私《わたし》たちは間もなくそこへ入つて来《き》た汽車《きしや》に乗つて、一夜の旅に疲《つか》れた人達《ひとたち》の間へ割込んだ。 「あの辺がお×さんの家《うち》ですよ」などゝ、妻《つま》は工場の白壁の多い殷賑《いんしん》な次の駅へ来たとき、窓《まど》の外を眺めながら言《い》つたが、彼女の逢《あ》つて行きたいやうな人《ひと》は、そこにも此処にもあつた。 汽車が彼女《かのぢよ》の産れ故郷のO駅を通過《つうくわ》したのは、それから間もなくであつた。白壁《しろかべ》の土蔵や、生糸工場や、村から出た横浜《よこはま》の或る富豪《ふがう》が建てたといふ三階造の病院《びやうゐん》などが、懐かしく彼女の目に映《うつ》つた。不治の病を抱いて、村へ引込《ひきこ》んで行つてから、暫《しば》らく其処に院長をしてゐて、この春《はる》到頭《たうとう》死《し》んでしまつた身内の若い医学士のことなども想出された。彼女の産《うま》れた村の南部《なんぶ》が廃頽《はいたい》したかはりに、著しく北部へ向つて発展《はつてん》して来たことも、目《め》についた。 「あゝ」と、彼女は思出《おもひで》の深さうな溜息《ためいき》をついて、窓から首を引込《ひつこ》めたが、それと同時《どうじ》に同じ式に臨《のぞ》むために、乗込《のりこ》んで来た親類の人の姿が、三四|人《にん》、目《め》についた。 寺のあるS駅《えき》で、私たちは其人たちと顔《かほ》を合して、あわたゞしい思《おも》ひで、互に久闊を叙《の》べた。久振で彼等の領域《りやうゐき》へ入つて来ながら、どこへも立寄《たちよ》ることのできない事情を断《ことは》つてから、私たちは車《くるま》で石高な道を、寺の方へと急《いそ》いだ。五日間授戒のためにH禅師《ぜんじ》が駕籠で乗込んで来たときの話《はなし》などを、車夫《しやふ》から聴《きか》されながら、私たちはやがて町《まち》へ入つて行つた。そして其町から田圃《たんぼ》なかへ出ると、山蔭《やまかげ》の寺の大きな棟《むね》や、それを取囲んだ白壁《しらかべ》の蔵《くら》や、幾箇もの建物が、直《す》ぐ目についた。雪《ゆき》が消《き》えても間もないほどのまだ春浅い高原地《かうげんち》の畑地には、麦が所々に漸《やうや》く青い色を見せてゐたり、梅の花が咲《さ》いてゐたりした。 車はやがて、鉄道線路《てつだうせんろ》の小いアーチ型のトンネルを潜《くぐ》つて、お寺の門前《もんぜん》へ引込まれた。そこには多勢《たぜい》の人が、人夫《にんぷ》を指図して、今日の上堂式《じやうたうしき》の後に執行されることになつてゐる、先住《せんぢう》の荼毘式の式場を示すための、大きな位牌形《ゐはいがた》の建札《たてふだ》が、杉の葉で飾《かざ》られつゝあつた。私たちは其処で車を降《お》りて、広い門内《もんない》へ入つて行つた。正面に見《め》える大きな本堂や広い庫裏《くり》や、門のうちの広場《ひろば》や、左手の山の木蔭《こかげ》、右手の裏の方にある幾箇《いくつ》かの建物のあたりには、今日《けふ》の式を観るために、近郷《きんがう》から集《あつま》つて来た人たちが、もう其処にもここにも一|杯《ぱい》になつてゐた。折詰《をりづめ》などを積みあげて、幾箇《いくつ》もの机をならべた受附口《うけつけぐち》へ入つて入つた私《わたし》たちが、そこにまごついてゐる姿を見《み》つけて、いつか東京で逢《あ》つたことのある一人の長老《ちやうらう》が、直に奥へ案内《あんない》してくれた。そして僧侶《そうりよ》たちや、今日の賓客の充《み》ち満《み》ちた部屋の幾箇《いくつ》かを通つて、私たちは初めて奥まつた一つの寮《れう》で、頭を青々と剃《そ》つて鼠色の紋緞子《もんどんす》の法衣をつけた彼の異つた姿《すがた》に行逢つた。 彼は机のうへで、各地から来た祝電《しゆくでん》を、朗読《らうどく》に便ならしめるために、発信人《はつしんにん》の姓名を書添《かきそ》へるのに忙しかつたが、私たちの顔《かほ》を見ると、さも懐しげな微笑《びせう》を浮べて会釈《ゑしやく》した。私たちは其等《それら》の準備のために東京《とうきやう》へ出て来たをり逢つたきり、半歳《はんとし》あまり彼を見なかつた。学校《がくかう》を出てから、幾許《いくら》にもならない彼は先住が不意《ふい》に亡つてから、急に法燈《はうとう》を嗣ぐことになつて、こゝへ引込んだのであつたが、近頃《ちかごろ》はまた寺格を進めたり、式の準備《じゆんび》についての仕事が忙《いそが》しかつたり、江湖会が初まつて、H禅師《ぜんし》が滞在《たいざい》してゐたあひだは、殊《こと》に事務が繁多であつた。学校《がくかう》を出たての青年僧侶《せいねんそうりよ》としては、それらの仕事《しごと》に、希《めづら》しいほどの思慮と手腕《しゆわん》とを彼はもつてゐた。 「兄さんは左《と》に右《かく》、姉《ねえ》さんは如何《どう》かと思つてゐましたに、よく来《こ》られましたね。」 妻は屏風《びやうぶ》ぎわに寄つて、ぼんやりしてゐたが、嬉《うれ》しいやうな悲しいやうな思《おも》ひか胸に塞《ふさが》つたとみえて目が涙に曇《うる》んでゐた。 「さぞ疲《つか》れることでせうね。」彼女は、そんな話《はなし》をしてゐる間にも、祝《いは》いに来てくれる人に接《せつ》したり、何かの指図をするに忙《いそが》しい弟の様子を見《み》ながら言つた。 「え、この間《あひだ》は寝ない晩が、幾晩《いくばん》もあつたりして、随分《ずゐぶん》忙《いそが》しい思ひをしました。でも禅師《ぜんし》が帰られたで今日の式《しき》さへすめば、百|箇日《かにち》引籠《ひきこも》るだけで………。」 彼はさう言ひながら、また筆を執つた。 「もう熟々《つく/″\》お経を読むのに飽《あ》きてしまつてね。でも、不思議《ふしぎ》と体は続くものさ。」 私たちのために存《こしら》へてくれた二階の別室《べつしつ》へ、案内されて、そこでのう/\した気持《きもち》で、膝《ひざ》を暢《のば》すことのできたのは、それから大分《だいぶ》たつてからであつた。山を背景《はいけい》に取つた広《ひろ》い庭が、そこから一|目《め》に見わたされた。 「風呂が湧《わ》いてゐますが、兄さんも姉《ねえ》さんも一|風呂《ふろ》お入りになりませんか。」 姉夫婦の気分《きぶん》を落着かせやうとして、若《わか》い方丈―弟―はさう言《い》つて、七声 引請寮などと貼札《はりふだ》のしてある二|階《かい》へ顔を出した。私は下の寮で羽織袴《はをりはかま》をとつて、廊縁づたひに湯殿《ゆどの》へ入つて行つた。妻《つま》は今朝湖畔の町を出るとき締《し》めて来た帯を釈《と》いたり、頸の白粉《おしろい》をつけ直したりしなければならないので、私のために湯の加減《かげん》を見に来たゞけで、風呂《ふろ》へは入らなかつた。 「いゝお湯殿だこと。」彼女《かのぢよ》はさう言つて、裾《すそ》を※[#「塞」の「土」に代えて「足」、72-下-3]《から》げながら、すぐ其の広い廊縁《らうえん》から酌取《くみと》れるやうになつてゐる山清水《やましみづ》をバケツに汲んで、一二|杯《はい》うめてくれた。※[#「塞」の「土」に代えて「足」、72-下-5]げた彼女の礼服《れいふく》の下からは、今日《こんにち》の式に詣るために、わざと亡つた愛児《あいじ》の小袖をほどいて作つた、紫友禅《むらさきいうぜん》の長襦袢が垂れてゐた。それは彼女《かのぢよ》の帯祝ひのとき作つたものであつた。 黒《くろ》い法衣の袖をからげた若い僧徒《そうと》が一人、そこへやつて来た。そして又《また》五六杯の水を汲足《くみた》してくれた。 「どうも済《す》みません」などゝ、妻はその温順《おとな》しやかな青年《せいねん》に言つた。 「あの人は何だか見覚《みおぼ》えのある人だと思《おも》つたら、いつか弟を送《おく》つて停車場で逢つた、弟のお友達《ともだち》ですよ。」 そして今度《こんど》の式に助《すけ》をするために、やつて来《き》てくれた若い学校出の僧徒《そうと》が、他にも沢山《たくさん》あつた。 風呂《ふろ》からあがつて、せい/\した気持《きもち》で、私が二階へあがつて来《き》た頃には、既《すで》にそこへ案内《あんない》された親戚の人達が四五人、昼《ひる》のお膳についてゐた。若《わか》い方丈《はうじよう》は、懐かしさうに時々《とき/″\》二階を覗きに来《き》たが、後から/\用ができて忙《いそが》しさうにおりたり上つたりしてゐた。彼《かれ》はこんな場合に、自分のお寺《てら》で見る姉を誰よりも懐《なつ》かしく思つた。つい近頃《ちかごろ》まで学校にゐるあひだは、始終《しじふ》出逢《であ》ふ機会のあつた姉ではあつたが、来るもの/\僧侶《そうりよ》や村の人たちばかりの山の伽藍《がらん》に彼女を迎へたことが、殊《こと》にも悲哀《ひあい》な嬉しさであつた。 「せめて今夜《こんや》だけでもお泊《とま》りね。」 彼はさう言《い》つて、姉に勧《すゝ》めた。 「さうね。荷物《にもつ》をYさんのとこに、そつくり置《お》いて来たし、帰りにまた寄《よ》るつもりで出たのですからね。どんなにあの人たちが喜《よろこ》んでくれたか知れないんですよ。」妻は悩しげに言つたが、一|夜《や》をこゝに過したくも思《おも》つた。弟のために逢《あ》つておかなければならぬ人もあつた。 「荷物《にもつ》は己の方から、取《と》りにやればいゝ。いくらも人手《ひとで》があるで。」 「ぢや、Yさんに其《そ》の訳《わけ》を話して、さうしませうかね。」 そして然《さ》う決ると、彼女の気分がまた一|層《そう》安易《あんい》になつて来た。 つい三|週間《しうかん》ほど前、中国から京阪《けいはん》、伊勢、名古屋などをまはつて、しばらく東京《とうきやう》に滞在《たいざい》して、一緒に芝居《しばゐ》などを見てあるいた、妻《つま》の従兄のM氏も、間《ま》もなくやつて来た。 「この山《やま》へ、子供をつれて来《き》て放《はな》しておけばいゝ。」 彼は山がゝりの広庭《ひろには》を見下しながら言《い》つた。 「そして貴君《あなた》はあの山のお亭に立籠《たちこも》つて書いてゐれば、いくらでも仕事《しごと》ができるぢやないか。」 「ほんとに然《さう》ですね。」妻もうつとりとした、目《め》をして庭を眺めてゐた。 「崖や水が危い。」私《わたし》は大きな石のごろ/\してゐる、滝《たき》のあたりを見《み》ながら呟いた。 「去年の仮葬《かさう》のとき、此処がいゝなんて言《い》つて、あの山の離房《はなれ》へ陣取つて、酒《さけ》を飲《の》んでゐるうちに、ぐで/\に酔つて転《ころ》がりおちて、水へはまつたものがあつたからね。」若《わか》い方丈はそんな話《はなし》をして笑つた。 「あの時も酒《さけ》が五石………今度《こんど》は一般の人には四|合壜《がふびん》で渡したで、それほどでもないが、でも昨日《きのふ》は千二百といふ人数《にんず》だでお赤飯の折詰を前晩《まへばん》に拵へるので、皆なへと/\になつてしまつた。本膳《ほんぜん》をすゑるやうなお客は、さう沢山《たくさん》はないでね。」 やがて上堂式《じやうたうしき》の時間が来ると、若い方丈《はうぢやう》は緋の法衣に着替《きか》へるために、下へおりて行つた。私たちは今度《こんど》檀徒《だんと》の某が寄越したと云ふ其の法衣を着て、某《なにがし》の母堂から贈られた朱塗《しゆぬり》の駕籠で山間まで乗込《のりこ》むことになつてゐる彼の列《れつ》を観《み》るために、急いで玄関口《げんくわんぐち》へ出て行つた。 堂の内外、山の上下《うへした》に、人の群が一|層《そう》殖《ふ》えてゐた。出迎への僧侶《そうりよ》と三十人余りの檀徒総代《だんとそうだい》とが本堂から出向いて行つてから、山門《さんもん》の外で駕籠を乗棄てる、隆《たか》い帽子を冠つて払子《ほつす》をもつた彼の丈の高《たか》い姿が両側に堵を築いた人群《ひとむれ》のあいだを縫《ぬ》つて、長い途を静《しづ》かに本堂の方へ前《すゝ》んで来た。新《あたら》しい方丈さまに対する讚美の私語《さゝやき》が、私たちの周囲《しうゐ》の其処此処にひそ/\聞《きこ》えた。老杉や古檜の生茂《おひしげ》つた山を背景《はいけい》にしての其等の物々《もの/\》しい晋山式の光景が、何となく遠《とほ》い昔しの絵巻物じみて見《み》えたと同時に、現代《げんだい》の空気にそぐはないやうな、舞台《ぶたい》めいた古い宗教《しうけう》の東洋風の儀式が、私に異様《いやう》の感《かん》じを与へた。 雷鳴《らいめい》のやうな太鼓の音が堂《だう》に顫《ふる》えてゐるあひだ、上つて行つた、若い方丈《はうぢやう》が打扮《いでたち》をかへて壇上に立つて、一場の演説《えんぜつ》を試むるまでには、可也《かなり》の時間《じかん》と、芝居の台辞《せりふ》めいた応答《おうたふ》の多くの辞が費《つひや》された。壇上に立つた彼の前に、やがて多くの僧徒《そうと》が、法問を試みるべく前《すゝ》んだ。開堂式と貼出《はりだ》された広い本堂は、それらの僧徒《そうと》と、色々の法衣《はうい》や袈裟をつけた僧侶たちが充《み》ちあふれてゐた。一人々々|前《すゝ》んだ若《わか》い僧徒たちのうへに、新《あたら》しい方丈の手から、警策《けいさく》がはげしく打揮はれた。警策がその度《たんび》に折《を》れては取替へられた。 式《しき》が滞りなく終《をは》つたのを見て、私たちは又た二階へ上つて来た。 「やあ汗《あせ》びつしより」などゝ、彼は重《おも》い法衣の袖をかゝげながら私たちの傍《そば》へやつて来《き》た。そして急《いそ》いで袈裟《けさ》や法衣《ころも》を脱《ぬ》ぎすてた。 広い門内で、荼毘式《だびしき》の準備ができるまで、私たちは打寛《うちくつろ》いで、雑談に耽つた。今度《こんど》の式《しき》に、総ての監視をするために、多勢の弟子《でし》をつれて来てゐる伊豆《いづ》の或寺の方丈が、そこへ請《しやう》ぜられて、 しばらく私たちと話を交《まじ》へてゐた。 やがて続いて行はれた荘厳《さうごん》な荼毘式が終りを告《つ》げたのは、もう四|時過《じすぎ》であつた。二階の引請寮に集つた私たちは、やがて若い一人の僧徒《そうと》のお給仕で酒を飲《の》んだり、こて/\並べられた精進料理《しやうじんれうり》を食べたりした。 夜に入つてからは、また本堂《ほんだう》で一|時《しきり》行道が行はれ、続《つゞ》いて明朝行はれる長老《ちやうらう》の披露式《ひろうしき》に先《さきだ》つ物静かなお茶の式《しき》があつた。そして方丈の体が、すつかり明《あ》いてから、彼《かれ》はまた姉たちと親しむために、二|階《かい》へあがつて来《き》た。 「方丈さん、瓶茶《びんちや》を一つ………」などゝ、M氏《し》はいつか聴覚《きゝおぼ》えた隠語で、酒を要求《えうきう》したりした。 夜に入つてから、間《ま》もなく私たちの荷物《にもつ》が届いた。 翌日は、お寺は割合《わりあひ》に静であつたが、でも寮ごとに飲食《いんしよく》をしてゐる僧俗が、そこにも此処《こゝ》にも見られた。 私たちはこの式の裏面《りめん》に潜んでゐる多くの人たちの心理《しんり》を、若い方丈の話から想像《さうざう》することができたが、若い方丈《はうじやう》の人望は、総てそれらの嫉視《しつし》や阻害から切脱けるに十|分《ぶん》であつた。彼は総ての仕事《しごと》を同窓の若い人たちと頒《わか》つた。 一足先きに、こゝから二つ目の駅《えき》になるM町《まち》へ帰つて行つたM氏《し》に続いて、車の来るのを待《ま》つて私たちが伊豆の方丈や総代《そうだい》の主なる人に別を告《つ》げて、そこを出たのは、もうお昼近《ひるちか》くであつた。 名古屋から乗換場《のりかへば》になつてゐる其処の停車場《ていしやぢやう》は、可恐《おそろ》しいほど混雑した。善光寺《ぜんくわうじ》の開張に詣でる善男善女が、圧《お》しあひへし合ひしてゐた。 私たちの傍には、九|州《しう》から四国をまはつて来た青森《あをもり》の人などもあつた。M駅で下車《げしや》するまで、私はその老人夫婦から、長旅《ながたび》の話を聞された。船や汽車や、騒々しい宿屋《やどや》で、彼はすつかり苦しい旅《たび》に飽《あ》き果てゝゐた。彼《かれ》は話の相手《あひて》に渇えきつてゐた。 M町《まち》の駅では、M氏がそこから一里《り》ばかりの道程にある山の温泉《おんせん》で一日一緒に遊ぶために、自働車《じどうしや》を用意《ようい》して、私たちの着《つ》くのを待つてゐてくれた。[#地付き](大正7年5月「黒潮」) 底本:「徳田秋聲全集第12巻」八木書店 2000(平成12)年5月18日初版発行 底本の親本:「黒潮」 1918(大正7)年5月 初出:「黒潮」 1918(大正7)年5月 ※以下2個の外字は底本では同じ文字です。※[#「塞」の「土」に代えて「足」、72-下-3]、※[#「塞」の「土」に代えて「足」、72-下-5] 入力:特定非営利活動法人はるかぜ
https://w.atwiki.jp/angevierge/pages/733.html
《花咲く乙女 アウロラ》 プログレスカード レベル1/赤/P6000/G4000/S0 【女神】/【音楽】 リンクフレーム Σ 《起》リンク-メインフェイズ【【フォール】,リンク(4)-1Σ】 あなたの山札の上から6枚を、捨札に置いてよい。 他のあなたのプログレスを1枚選び、そのターン中、パワーを+3000。 誰かといるのは幸せだ。この気持ちは嬉しくて…とても、愛しい。 illust 柏餅よもぎ 蒼空の変転世界で登場のレベル1の赤色のプログレスカード。 収録 蒼空の変転世界 B4-061 C
https://w.atwiki.jp/vs-wiki/pages/1996.html
HSI/038 R “花咲くいつか”緒花/仲居 女性 パートナー “私の好きな喜翆荘”緒花/仲居 女性 レベル 3 攻撃力 3500 防御力 4500 【私ね、やりたいこといっぱいあるの。その中で一番好きな事を仕事にするんだ】《花》 【スパーク】【自】あなたは自分の山札を見て「“私の好きな喜翆荘”緒花」を1枚まで選んで相手に見せ、自分の手札に加える。その山札をシャッフルする。 作品 『花咲くいろは』 2012年6月6日 今日のカードで公開 2011年12月30日 今日のカードで公開 関連項目 〈仲居〉 《花》 『花咲くいろは』 名前に“緒花”を含むカード 称号に“仲居”を含むカード 能力別 エントリースパーク
https://w.atwiki.jp/asagaolabo/pages/5854.html
【花咲く季節 ~春~】 【Dolls きせかえワールド】 キャラクター 関連リンク (ただいま作成中・・・) カードコネクトのポップンミュージックカード第14弾に登場したレアカード。 【そよ風の季節 ~初夏~】と合わせることで絵が繋がる。 キャラクター サトウさん ししゃも エックノックガール 烈 鈴花 ポチコ ニャミ キャンディ 関連リンク 【そよ風の季節 ~初夏~】 レアカード カードリスト(ポップンミュージックカード)/コネクト/Vol.14#? カードリスト(ポップンミュージックカード)
https://w.atwiki.jp/yyyigame/pages/792.html
花咲くトーク 秋原雪花 プロフィール ホーム CV 千本木 彩花 ステータス ※ステータスの数値は初期値になります。 型 属性 レア度 HP ATK 踏ん張り 速度 CRT コスト SP 遠射型 青 SR 2230 3340 C- B- A+ 24 23 リーダースキル 素敵なカフェタイム 赤青属性の勇者のATK+15% 必殺技 花槍撃 種別 効果 ゲージ 技再使用時間 クリティカル昇 仲間自然回復 10倍ダメージをライン範囲の敵に与え、20秒間仲間全員のHPを自然回復、20秒間自ペアのCRT+200 3 25秒 アビリティ 自信持って行こう! 発動条件 効果 七段 七段昇段時、仲間全員の攻撃ペース+7%、移動速度+7% 神花・覚醒 神花/覚醒時 獲得精霊 初回神花 二回目回神花 三回目神花 R角盥漱(青) SR角盥漱(青) 一定覚醒値報酬 必要覚醒値 15 SR角盥漱(青)×10 神花解放 段階 必要コイン 必要属性結晶 上限Lv30 6,000 青の欠片x5 上限Lv50 - - 上限Lv70 - - ボイス 1 - 2 - 入手方法 イベント20年1月「百花の祭典 咲き誇る六花」各ステージランキング報酬、イベントpt報酬、バトルドロップ報酬 名前
https://w.atwiki.jp/elvis/pages/692.html
浮世絵に魅了され「日本に行きたい」と強く願っていたゴッホ?は、アルルの果樹園の一隅でこのアーモンドの木を見つけ、多くのスケッチを残します。バラ科・サクラ属・のアーモンドは日本画に出てくる梅や桜の“枝ぶり”を連想させ、ゴッホ?はこのアーモンドに「憧れの日本の香り」を嗅ぎとったのかもしれません。 最愛の弟テオに子供が産まれたことを祝し、ゴッホ?は喜びを込めてこの絵を描き、贈りました。それはオーベール?で自死してしまうわずか半年前のことでした。 所蔵 ゴッホ美術館蔵? 絵にまつわる話 この絵には素敵なストーリーがあります。 今でこそ世界的人気画家?になっているゴッホ?ですが、生前に売れた絵がたった一枚だったというのはあまりにも有名な話です。画家?としての活動は10年だけ。その間におよそ2000点もの作品を生み出します。その尋常ではないエネルギーは、観るものの心をつかんで離しません。 ゴッホ?の作家活動は弟のテオによって支えられます。テオは自分の息子に尊敬する兄の名を付けます。そのことをとても喜んだゴッホ?は、自分と同じ名を持つ甥のために一枚の絵を描きました。それが本作品です。 この作品を描いたわずか半年後、ゴッホ?は自らの命を絶ってしまいます。さらにその半年後、今度はテオも兄の後を追うように亡くなってしまいます。テオの妻ヨハンナは息子ヴィンセントにこの作品を通じ、父(テオ)と叔父(ゴッホ?)の果たせなかった夢を託します。そして叔父の名と父の意思を引き継いだヴィンセントはゴッホ?の絵を広めるため、生涯をかけて活動してゆくのです。そしてオランダ?政府の援助の元「ゴッホ美術館?」が完成。本作品も所蔵されます。それはゴッホ?とテオが亡くなってから83年後のことでした。 「花咲くアーモンドの小枝」はゴッホ?の意思を受け継いだ家族の結束の象徴なのかもしれません。
https://w.atwiki.jp/girlgame/pages/2783.html
花咲くまにまに の攻略対象。 とある理由で万玉屋の女形としているが、れっきとした男。 花魁と肩を並べて万珠屋を仕切っており、その独特の存在感と美貌で 遊郭にも関わらず女性客からの人気が大半を占めている。 用心深くやや潔癖症な所があるため近寄り難い雰囲気だが、 実はマイペースで子供っぽい部分もあり独占欲が強い。 名前 白玖 (はく) 年齢 身長 体重 誕生日 血液型 声優 櫻井孝宏 該当属性 女装、着物、紺髪 該当属性2(ネタバレ) 『』 該当属性(重大なネタバレ) 『史実キャラ(桂小五郎)』
https://w.atwiki.jp/vs-wiki/pages/1539.html
HSI/025 R “花咲く季節”民子/板前見習い 女性 パートナー 宮岸 徹/板前 男性 レベル 2 攻撃力 3000 防御力 5000 【でも、ほんとは暖かくて。誰よりも率先して動いて、仕事に一生懸命で……】《料理》 【永】〔リング〕あなたのベンチの、このカードのパートナーは相手の技によって控え室に置かれない。 作品 『花咲くいろは』 8月9日 今日のカードで公開。 関連項目 〈板前見習い〉 《料理》 『花咲くいろは』 称号に“板前”を含むカード
https://w.atwiki.jp/girlgame/pages/2782.html
花咲くまにまに の攻略対象。 万珠屋の番頭であり、事実上、見世を切り盛りする桜主の右腕的な存在。 遠慮が無く物事をはっきり言うため、初対面の人間には誤解されがちだが 面倒見が良く頼りがいがあるため、見世の者からは慕われ信頼されている。 名前 谷 和助 (たに わすけ) 年齢 身長 体重 誕生日 血液型 声優 鈴村健一 該当属性 世話焼き、泣きボクロ、喫煙者、刀剣、着物、茶髪 該当属性2(ネタバレ) 『』 該当属性(重大なネタバレ) 『史実キャラ(高杉晋作)』