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322 :名無しの紳士提督:2014/09/10(水) 11 35 45 ID hx4Xp/wM 私は知らなかった 大人になれば、自然とレディになれるのだと思っていた もちろん、レディになるための努力は欠かさなかったし、だからこそあの時、夜警も引き受けたのだ 私は知らなかった大人というものを でも、あの時ついうっかり寝入ってしまったのは私が紛れもない子どもであったことの証明だと思う 「やっ…!やめっくひぃっ!暁…っちゃんが!あ!こんな…こんなぁ…」 「ふふ…そんなに騒いで起きちゃったらどうします? お か あ さ ん ?」 「あぁ…っそんなそんな言い方!堪忍…堪忍してくだっんひぃ!あ!あ!あ!あぁっ!!」 何か水っぽい音と、妙に鼻にかかったような声に意識をくすぐられ、薄目を開けた私の見たものは… 「??、へ?え…?」 そこにいたのは楚々とした仕草の美しい軽空母でも、少し意地悪だけど大好きな司令官でもなく ただ、獣たちが、そこにいた 323 :名無しの紳士提督:2014/09/10(水) 11 42 03 ID hx4Xp/wM 「あぁ、暁起きたんですね…いや遂に観念したのかな?っと!」 「んひィっ」 私が憧れて"いた"2人…獣、いやケモノはそんな声を上げると組み敷いていたケモノの顔をぐいとこちらに見せてきた 「ぁ…あぁ…」 綺麗にまとめていた髪はほつれ、優しい表情を浮かべていた顔はよだれまみれでひきつり、目はうつろで…! 咄嗟にかけられていた毛布にくるまり、目を閉じ、耳を塞ぐ アレはダメだ、見てはいけないものだ、だって私の理想の中にあるものは… あんなに、きたなく、ない その後のことはよく覚えていない 何か顔にかけられた気もするけれど、本当に覚えていない ただ、思い出そうとするだけで切なくなるのがもどかしくて、ついに私は姉妹に相談することにした でも、自分でも要領を得ないと思う私の話を根気よく聞いてくれた妹は、響は私に顔を近づけてきて… 「それは…もしかしてこんな感じだったかい…?」 そう、ささやいたのだった 324 :名無しの紳士提督:2014/09/10(水) 11 48 58 ID hx4Xp/wM 憧れは人を盲目にする きたないケモノと同じモノになってしまった暁 暁はきたなくなんかない 全てをさらけ出しているからこそ 暁は綺麗なんだよと耳元で囁き続ける響 自己卑下と響の囁く甘言の板挟みになった幼い精神が悲鳴を上げる 次回、暁に響き亘る やはり赤ずきんは狼に喰われるが宿命か これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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非エロ:提督×翔鶴1-678避「翔鶴と、提督の決断」の続き 翔鶴と、提督の決意 「いよいよ明日で着任一周年だそうですね。おめでとうございます」 ある雨の日の執務室、報告書作成中。秘書艦の翔鶴がお茶を淹れつつ、笑顔で提督にそんなことを言った。 「そうか、もうそんな頃か。……我ながら良く更迭もされずに保ったものだね」 「あなたが司令官で良かったと、瑞鶴もみんなも言っていますよ。もちろん、わたしも」 苦笑しながら言った提督の言葉に、にっこりと本物の笑顔で言葉を返す翔鶴。 あの雨の日から一ヶ月ほど。思わぬ時間を二人で過ごした後、提督と翔鶴は互いに特別な関係に発展していた。 仕事の合間を縫って軽いキスを交わしたり、二人で朝まで語り合ったり。もっとも、あの日を含め一線を越えたことはない。 彼女の性格上、きっと望めば応えてはくれるのだろうが、それを本心で望んでいるかは分からない。そう考えると、提督は軽々しく踏み出せずにいた。 「それで……ですね。提督は今晩、何かご用事がお有りでしょうか?」 もじもじしながら視線を外して訊いてきた翔鶴に、いや、特に無いよ、と提督が答えた瞬間、彼女の表情がぱっと明るくなった。 こんな時の彼女はいつもの大人びた感じが隠れてしまうせいか、本当にただ可愛いな、と提督は思った。 「で、では、よろしければまた部屋に遊びに来られませんか?今夜は瑞鶴が友人のところに泊めていただく予定とのことで、あの、良いお茶が手に入ったので」 妙にわたわたしながらお誘いの言葉を述べる翔鶴。秘書艦なので当然、提督が明日が非番であることは把握済である。 そして無論、提督に断る理由はない。夜半の来訪の約束を交わして、彼らは再び報告書に向かった。 仕事が終わったフタヒトマルマル。何度か邪魔したことのある翔鶴型居室のドアを、提督がこんこん、とノックする。 「はい、どうぞ。開いていますよー」 中の声に誘われ、部屋へと足を踏み入れる。 「あ、錠は下ろしてくださいね」 暗さを妙に思いながらも言われるままに鍵を閉めると段差で靴を脱ぎ、そっと中扉の障子を開けた瞬間。 和風のスタンドライトの間接照明が、淡いオレンジに染めるほの暗い和室内。 いつもの和服とは違う、やや大きめのパジャマを来た翔鶴が、部屋の中央に敷かれた一組の布団の上にちょこんと座っていた。 予想もしなかった完全な『お膳立て』に、提督は思わず息を飲んだ。 「ここへ座って下さい、提督。お話と……」 ぽんぽん、と布団の端を叩く翔鶴。 「……そのほかいろんなことをしましょう」 緊張と勇気の伝わる、精一杯の笑顔。 ……分かりきっている、互いの本心。もはや逆らえるはずも、誤魔化せるはずもなく。 「……ん」 待たせたことを、申し訳ないなと思いながら。 気持ちが先走り過ぎ無いよう、静かに唇を味わいつつ。 提督は彼女を、寝所にゆっくりと押し倒した。 いい匂いのする淡青の上衣のボタンをひとつ、ふたつと外し、胸元の上半分を露出する。 「提督……大好きです。本当です。可愛がって下さいね……」 言葉に応えるように、紅潮する頬に手を添えて、互いに積極的なディープキスを交わす。 「……ん………んん……っ……」 上衣を左右へ完全にはだけると、柔らかそうな翔鶴の双丘が淡い光のもとに晒された。 「は……はずかしい、です……あまり、見ないでください……」 恥じらいながらの上目遣い。その瞬間、理性の堰が音を立てて決壊した。 やわらかな胸元に密着し、揉みしだきながら舌で先端を愛撫する。 甘い喘ぎを聞きながら、下衣も脱がさず下着の中に上から手を無遠慮に差し込み、茂みの奥の秘所を撫で擦る。 聞き慣れたはずの彼女の声、耐えるような、堪えるような喘ぎが、更に理性を犯していく。 愛しい。愛しすぎて、……もっと完全に、自分のものにしてやりたい。翔鶴。 下衣と下着をもどかしいように奪い去り、彼女の白い脚を開かせ、既に滴るほどに潤う秘所を露わにする。 直後、勢いに任せた乱暴な挿入の試みが、爪を噛んで羞恥に耐えていた翔鶴に艶やかな悲鳴を上げさせた。 破瓜の痛みに耐えつつ、それでも濡れた瞳で愛しい人に手を差し伸べる翔鶴。 薄血と愛液の混じった分泌物に塗れながら、本能のままに抽送を続ける提督。 熱さ。柔らかさ。汗。熱い呼吸。喘ぎ声。動悸。髪。におい。震え。 たまらない心地よさ。受け入れられた達成感、否定されない安心感。 そして……同時に達する、融け合うような一体感。 提督と翔鶴の『初めて』は、勢いと幸福のうちに幕を降ろした。 「今夜は。お泊りになっていきます?」 「うん。お言葉に甘えようかな。瑞鶴は帰ってこないんだっけ。友達のところって誰かなあ?」 一線を越えても、いつも通り。いや、それまで以上にお互い好きになったような気がする。 布団のうえに二人並んで寝転がりながら、そんな簡単なことに提督がこの上ない安堵感を覚えていると。 「……大鳳と飛鷹のお誘いに。私の代わりに行ってくれたんですよ」 はっとする。今日の日付……6月19日。 ……まさか……いや、間違いないだろう。 「翔鶴、そんな大事な日に……」 「私には、提督の一周年を一番最初にお祝いするのが、一番大切なことでした。みんな、笑顔で賛成してくれましたよ?」 「……それは……まいったな。関係はもうバレバレなのか」 提督がそう言って、思わず苦笑いをすると。 「お話をしましょう、提督。もっと知りたいです。貴方のことも、私が……沈んでから、今日までのことも」 目前の翔鶴が、静かな瞳と声でそう言った。 そして。 提督の知らない、戦争。翔鶴の知らない、平和。 その日二人は、夜更けまでいろいろな話をした。 「提督。マルナナマルマルです。朝御飯、何にしましょう?」 甘く優しく、それでいて芯の強さを感じさせる翔鶴の声で目が覚めた。 畳の香り、見慣れぬ天井……翔鶴型の部屋、彼女の布団の中。 「ようやくお茶を煎れられますね~」 カチャカチャという茶器の音、至高の芳香。 朝起きてすぐに彼女が手の届くところにいることに、この上ない幸せを感じる。これをずっと、できれば一生続けたい。 僕の心が、嘘偽りなくそれを感じているということは……。 そう。たとえそれが、どんなに困難なことであったとしても。 やはり、もう一線を越える努力をしよう、と提督は密かに固く心に誓った。 (終) これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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前の話提督×あきつ丸7-166 243 :名無しさん@ピンキー:2014/02/02(日) 15 45 55.37 ID PSZt5LJ7 あきつ丸「……ん、ん~zzzzzz……はっ!」ピクッ 外道提督「ようやくお目覚めか。よく眠れたかね?」ニヤニヤ あきつ丸「くぅ……貴様よくもぬけぬけと!誰のせいだと――いや、いいであります……」プイ 外道提督「ふふふ、ようやく立場が分かってきたようだな。それに全裸で凄まれてもお笑いにしかならん」 あきつ丸「……服を着たいので部屋から出ていってほしいであります」 外道提督「何を言っているのだね、あきつ丸?ここは私の部屋だ。 むしろここで裸になって寝ている君の方が異常なのであり、私に非は無いはずだ」ニヤニヤ あきつ丸「なっ……自分が服を着ていくのをずっと見ているつもりなのでありますか!?///」カァッ 外道提督「はっはっは、何をいまさら。全身余すところなくさらけだしあった仲じゃないか」 あきつ丸「っ!」(昨日の記憶があきつ丸の脳裏をかすめる――自分の物とは思えない声 味わったことのない感覚、言葉にできない背徳感、そして……快感――) 外道提督「とりあえず私はこの書類に目を通さなければならない。服を着たいのなら勝手にしろ」 あきつ丸「……わかったであります」(とりあえずベッドのシーツで身体を隠して 部屋に散らばった自分の服を回収するであります)ズリズリ 外道提督「……」ペラペラ(くっくっく、イタズラをされているのに気づいていない奴を見るのはかなり愉快だな) あきつ丸「スカートは……ここでありますか。あとは……?」(あとは下着だけでありますが……見当たらない?) 外道提督「……」ペラペラ(くっくっく、そろそろ気付く頃だな) 244 :名無しさん@ピンキー:2014/02/02(日) 15 46 36.45 ID PSZt5LJ7 あきつ丸「……ない、ないであります……」(パンツとブラがないであります……)ソワソワ 外道提督「どうした、あきつ丸まだ着てないのか。それとも私を誘っているのか?」ニヤニヤ あきつ丸「ぐぬぬっ……!」(言い返せないのを良いことに好き勝手言って……!) 外道提督「はっはっは!そんなに怒ると可愛い顔が台無しだぞ?」ニヤニヤ あきつ丸「なっ!///貴様のような外道に言われてもうれしくないであります!」カァッ 外道提督「ふふふ、照れ隠しとして受け取っておこう。(ずいぶんとちょろい奴だな。まあそこがいいのだが) さあ、さっさと服を着ろ。お前にはやってもらうことがあるんだからな」 あきつ丸「……わ、わかったであります」(な、なんとかうまく隠してあとで自分の部屋に下着を取りに行くであります……)ゴソゴソ 外道提督「私は書類の山を片付けなければならないのでな、今日の演習の監督はお前に任せたい」(この書類もう見たんだけどな) あきつ丸「い、今すぐでありますか?」(ぅぅ……股がすぅーすぅーするであります……)モジモジ 外道提督「あたりまえだ、もう演習予定の艦隊は演習場についている頃だ。私の代理が監督することも伝えてある。さっさと行け」 (こっそり後をつけて何枚か写真に収めておこう) あきつ丸「了解であります、演習の監督に行ってくるであります」モジモジスタスタガチャバタン 外道提督「ああ、頼んだぞ」(カメラよし、あきつ丸の下着よし、方位よし、外道丸!微速前進!なんっつって) 245 :名無しさん@ピンキー:2014/02/02(日) 15 47 07.82 ID PSZt5LJ7 あきつ丸「演習場に着いたであります」(潮風でスカートが……)モジモジスタスタ 暁「あ、今日はあきつ丸……さんが監督なのね」 響「提督は忙しいからな」 雷「もっとあたしを頼ってくれればいいのにー」 電「はわわわ、きょ、きょうはよろしゅくなのです!」 島風「おっそーい!」 雪風「何があっても雪風は大丈夫!」 あきつ丸「では、みなさん演習頑張ってください」モジモジ 駆逐艦一同「「「はーい!」」」 ~演習開始~ チュドーンドドーンドンドンドーンドカンバカーンパンパカパーンドッカーン ~演習終了~ あきつ丸「補給と艤装の整備はしっかりしてから休憩してください。ではみなさんお疲れさまでした」モジモジ 駆逐艦一同「「「おつかれさまでしたー!」」」 あきつ丸「ふぅ……なんとか隠しきれたであります……あとは部屋に戻って――」ホッ 外道提督「よく見えますな~」スカートペラリ あきつ丸「!!!?!??!?!!!!!?!?!?」ビックゥ 外道提督「はっはっは、ただの生身の人間に後ろを取られているようでは艦娘の名が泣くぞ」ニヤニヤ あきつ丸「き、き、き、貴様……見たな……!///」カァッ 外道提督「いやはや、よもや陸軍艦にこんな性癖があろうとは思いもしなかったよ……」ニヤニヤ あきつ丸「いや、これは、ちが、あの……///」アウアウアー 外道提督「いやいや、別にお前の性癖に文句を言うつもりはない。 むしろどんな性癖を持っていようとも私色に染め上げるつもりなのだから問題はない。 しかし私に打ち明けてくれなかったのが残念だなぁ」ニヤニヤ あきつ丸「いや、だから、これは、違うであります……///」アタフタ 外道提督「何が違うと言うのかね?ここはもうこんなことになっているぞ?」クチュクチュ あきつ丸「あっ!そ、そんな……はずは……」ハァハァ 外道提督「正直になれあきつ丸。君が露出狂であろうとなかろうとここで君が私を拒んでも救出作戦が遅れるだけだ。 私に身をゆだねれば同胞の命も助かり、君も私も気持ち良くなれる。すばらしいことだろう?」アクマノササヤキ あきつ丸「それは、そのとおり……であります、が……」ハァハァ 外道提督「さあ、いつものようにあの言葉を言ってごらん?」ゲス顔 あきつ丸「て、提督の主砲で……自分の変態露出狂バイタルエリアを……お仕置きしてほしいであります……」ジュン このあと滅茶苦茶セックスした 次の話提督×あきつ丸7-322
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441 :名無しの紳士提督:2015/07/19(日) 23 10 28 ID h69sGV4I 夏服の艦娘の悩み 「衣替えしてから明らかに提督がよそよそしい」 「提督が常に前屈みでとても辛そうにしている」 442 :名無しの紳士提督:2015/07/20(月) 16 14 01 ID ewpME9kc 短めっつーか1レスだけど大淀さんで。禁欲提督ってアイディアいいよね… 執務中に水着を見せびらかしに来た第七駆や天龍に愚息が反応してしまい、椅子から立ち上がることができなくなった。 大淀「提督、そろそろお昼にしないと食堂が閉まってしまいますよ?」 提督「…すまないがここ(執務室)まで運んでもらえないかな、ちょっと立て込んでて」 大淀「そうですか? 私が見たところむしろ普段より進んでいたような…」 手元の書類を覗き込むように顔を近づける大淀。流れる黒髪からはシャンプーに混ざったほのかな女の子の匂いが鼻孔をくすぐった。無防備な胸元からは白い小振りな乳房とラベンダー色の下着が見え隠れしている。 提督(い、いかん… ここ最近ろくに処理してなかったから大淀の貧相な胸でも股間に来る!) 大淀「提督、どうしました? 顔が赤いですけど、風邪ですか?」 提督「え、いやこれは」 大淀「少し失礼しますね、んっ…」 前髪を掻き分けると大淀はこつんと額を合わせた。互いの吐息が感じられる距離に思わず全身が硬直する。大淀の瑞々しい唇と美しい鎖骨のラインから目が離せない。 大淀「…やっぱり、少し熱っぽいような…」 提督「そうか… 医務室から薬を貰ってきてくれないかな、少し休んだらまた執務に戻るよ」 大淀「あまり無理はなさらないで下さいね? さっきも言いましたがお仕事は順調ですから」 執務室から退出する大淀を見送ると、提督は大きなため息をついてぐったりと机に突っ伏した。 提督「…ちょっと出ちゃった…」 443 :名無しの紳士提督:2015/07/20(月) 17 17 58 ID smtx2ctc GJ! 昂ぶってるおかげで普段まったく性的に意識してない娘に欲情するのって良いですね
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照り付ける太陽と紺碧の海。 熱い陽光を覚ますかのようにさわやかな海風がわたる。 透明度の高い海中に目をやれば、色とりどりの魚が薄い水色の海中に華やかさを添える。 東部オリョール海。 なにもなければここ南洋は楽園と称してかまわない海だろう。 「なにもなければ、な…」 双眼鏡を下した青年-というには少々歳のいった男は独り言ちた。 彼の頬に当たる海風に含まれる鉄と油と硝煙の匂いがここが楽園でないことを示していた。 水平線の彼方に黒煙が上がっている。 上空には任務を終え母艦に戻る艦載機の轟音。 「提督。撃沈、軽巡1。大破、雷巡2、戦艦と空母は無傷です」 太眉と切りそろえた前髪が印象的な艦娘が男-この艦隊の司令官に戦況を伝える。 「了解。航空先制はまずまずか…。一航戦を下がらせろ」 「はい、赤城さんと加賀さんには必要以上に前に出ないように伝えます」 「ふふ、相変わらず気が付くな。妙高」 妙高型一番艦妙高。提督の鎮守府には妹たちに遅れてやってきた。 どこか、ほんわかぼんやりしたような艦娘だが、さすがに4姉妹の長女だけあってかしっかりとしており何くれとなく提督に尽くしてくれる。 妙高の何気ない気づかいに思わず頬を緩め頭を撫でてしまう。 「……。では、行ってきます」 されるがままに掌を堪能した妙高は、ドキドキする胸と上気した頬を隠すよう にクルリと背を向けた。 提督の顔に緊張が走る。 「うむ。戦略的にはもう勝っている。無理をしないように皆に伝えてくれ」 「了解しました……、第5戦隊敵艦隊に突撃します」 号令一下、かつて連合艦隊が誇った一等巡洋艦4隻の魂を引き継いだ艦娘達が35ノットの快速力で飛び出した。 世界を瞠目させた強武装の一万トン級巡洋艦妙高型の魂は今、艦娘として蘇り、 再び祖国を脅かす夷敵-深海棲艦を倒すため戦場を疾駆する。 紺碧の海を割り裂いて白い航跡がたなびく。 眼前には戦艦を先頭とした敵艦隊が迫る。 戦艦ル級の生気のない青白い顔に薄い笑みが浮かんでいる事すら見える。 敵艦、発砲。 4隻の周囲、右に左に16インチ、8インチといった砲撃の水柱が上がる。 水柱の壁をくぐり抜けるように彼女たちは距離をつめていく。 柔肌を至近弾の破片がかするがものともせず疾る。 そして、距離10,000。 「撃ちます!」 「砲雷撃戦用意!」 「砲雷撃戦てぇーっ!」 「撃ち方、始めてくださぁーい!」 空と海の狭間に乙女たちの号令がかかる。 20.3サンチ連装砲が敵を指向し測距を始める。 同時に61サンチ魚雷発射管が敵の未来位置を定め回頭する。 いち早く4姉妹の中で最も冷静かつ戦術判断に優れる次女の那智が砲撃を開始する。 「敵一番艦に初弾、夾叉!良し、いいぞ。姉さん、ワレ統制砲撃ヲ希望ス」 「了解、目標敵一番艦、5戦隊統制砲撃始メ!」 砲撃データが姉妹たちに分配されるや否や、4姉妹で最も血気盛んな三女足柄が10門の主砲を斉射する。 「弾幕を張りなさないな、撃て!撃てぇー!」 砲撃時の発射干渉を避けるため0.03秒ずつ遅延して放たれた砲弾は彼女のかつ ての異名 餓狼”のように敵戦艦に襲い掛かった。 水柱と閃光。 足柄の砲撃を追うように妙高、那智、羽黒の砲撃も命中する。 近距離から放たれた20.3サンチ砲弾は敵戦艦の装甲を食い破り確実にダメージを与えていく。 ル級の能面が歪み、明らかに砲撃の精度が落ちていく。 速度が衰え、煙を吐き出しながら傾斜するル級の陰から空母ヲ級の姿が除く。 「いかん!艦載機を発艦させてるぞ!」 那智が振り返るよりも早く敵艦載機は後方の一航艦に襲い掛かっていた。 上空で直掩滞空していた零戦52型が銀翼を日本刀のように煌かせ敵機に突撃する。 しかし、慢心からか不用意に突出していた母艦を助けるには時間が足らなかった。 急降下爆撃機が猛禽のように赤城と加賀に襲い掛かる。 「敵機直上、急降下!」 飛行甲板に火柱が上がる。 「後方、一航戦に命中弾!火災が発生しています!」 最後尾を進む末の妹羽黒が悲鳴を上げる。 「あの、あのっ、助けに行かないと!」 「大丈夫、羽黒ちゃん。あれぐらいじゃ赤城さんも加賀さんも轟沈しないわ」 パニック気味に叫ぶ羽黒をやんわりと妙高が制する。 「それに対空戦闘は私たちには向いてないわ。私たちは-」 「目の前の敵を葬るだけだ、砲雷撃戦で!」 「そうよ、さあ行くわよ!勝利が私を呼んでいるわ」 三者三様の励ましを受けて羽黒はハッと我に返る。 まだ目に涙は溜まっていたが顔を上げ戦場を見据える。 「わかりました。精一杯、頑張ります!」 電撃を放ちながら雲海を進む一匹の竜のごとく妙高級は縦横に戦場を駆ける。 既にヲ級は爆発を繰り返しながら傾斜し、最後に残った重巡ももはや雷撃する 余裕もなくなっている。 距離5,000。 93式酸素魚雷の必中距離だ。 「青い殺人者」「ロングランス」と恐れられた連合艦隊所属艦艇の最大の秘密兵器にして最強の切り札。 「5戦隊統制雷撃戦用意」 「統制雷撃戦、ヨーソロー」 「そのままそのまま、よーい、テェーっ」 「魚雷発射、始めてくださーい!」 海原に放たれた32本の魚雷は静かにしかし素早く海中を進む。 3分後。 「敵戦艦に水柱4つ!巡洋艦に水柱2つ確認。敵艦大傾斜、沈みます」 冷静に敵情を見わたした那智が報告する。 「皆さんの努力結果です。よく頑張りました」 にっこりと妙高がほほ笑む。 「だって私がいるんだもの!当然の結果よね!大勝利!」 至近弾で少々傷を負ったが未だに元気な足柄が興奮冷めやらぬ様子で胸をそらす。 「勝って兜のなんとやら、だ。さあ、帰投しよう」 那智が怜悧な顔に満足げな笑みを浮かべてたしなめた。 4人姉妹は傷ついた2隻の空母を護衛しつつ母港への帰路に就いた。 未だ沸き立つ海面を眺めながら羽黒は呟いた。 「このまま、すべての戦いが終わってしまえばいいのに」 「以上で戦闘報告を終わります。……あの提督?」 東部オリョール海突破、おまけに戦闘後新しい仲間蒼龍を戦列に加えられたにも関わらず提督の顔は冴えなかった。 「主力空母が2隻とも大破、これは痛いな…」 母港にたどり着くやいなや2隻の空母はドッグ入りとなった。 「俺のミスだ。陣形をもう少し考えてやれば損害は防げたかもしれないな…」 この男は戦果よりも艦娘の損害を気にする、いや気にしすぎる傾向があった。 「それは後知恵というものだ。戦略的にも戦術的にも我々の勝利だ」 「そうです、そうです!大勝利ですよ」 冷静に那智が、興奮冷めやらぬ足柄が提督を慰める。 「あの、司令官さん。私ももっと頑張りますから…あの、その…」 わたわたする羽黒の頭を撫でながら提督はようやく笑みを浮かべた。 「そうだな、皆ありがとう。一航戦が使えない以上大規模な作戦は難しい。しばらくは蒼龍の慣熟訓練と資源の備蓄務めるとしようか」 「ということは?」 「第5戦隊もしばらくはお休みだ。みな、ご苦労だった」 4人の艦娘達は揃って執務室を辞した。 「さて、しばらくは休みだな。ということは少なくとも今日はしっかりと飲めるわけだ」 普段はクールな那智が相好を崩す。 「それなら獅南島に果物を使った美味しいお酒があるらしいわよ」 ほんわかと妙高が返した。 「なにっ?それはいいな。よし、みなで繰り出そう」 「勝利をつかむには休息も大事ね」 「あの、あの、頑張ります」 こうして4姉妹は夜の街に消えていった。 …… ……… ………… それから数時間後。 羽黒は多少フラフラする頭を抱えて鎮守府に帰ってきた。 4人は獅南島の一流ホテルのバーで杯を交わした。 いつものように、那智がハイスピードでグラスを開けていった。 妙高は那智に付き合ってしばらく飲んでいたが、とうとう 轟沈 してしまいカウンターに突っ伏して幸せな寝息を立てている。 獅南島は日本酒こそ少ないものの、かつてイギリス統治下だったこともあり船乗りの酒-ジンやラムが豊富に取り揃えられていた。 多分、那智は未だに飲んでいる。多分。 『今日ぐらいは飲ませてくれ』と那智は言うが出撃前以外はほとんど毎日飲んでることを羽黒は知っていた。飲んでもほとんど乱れないが飲み始めると止まらないことも知っていた。 さすがに出撃した後は自室の布団で寝たいと思った羽黒は妙高を起こすことを断念して一人鎮守府への家路についた。 「……羽黒山、飲みたいなぁ」 はるか遠い祖国のきりっとした飲み口と芳醇な香りを持つ酒を思い出しながらフラフラと鎮守府の廊下を歩く。 「そう言えば足柄姉さんはどこに行ったんだろう?」 飲んでる最中も興奮気味だった足柄は2時間ほど前に『おさまりがつかないわ。しようがない夜戦してくる』と大股で店を出ていった。 『頑張ってね~』と手を振る妙高と『ふんっ』とプイと顔を背け不機嫌にグラスを乾した那智をいぶかしげに見ながらその背を見送った。 「姉さんと一緒に帰れば良かったかな?」 そう思いながらふと顔を上げると司令官公室の方からなにやら声が聞こえてきた。 艦娘達の寮に行くのに提督の自室前を通るのが近道であることは鎮守府では半ば常識であった。 小首を傾げて扉に近づく。 「……ぅぅ……ぃぃ…ゃぁ……」 薄らと開いたドアから漏れ聞こえる声に羽黒は聞き覚えがあった。 「足柄姉さん?」 そっと中を覗いて羽黒は言葉を失った。 「あぁぁぅっ、おぉぉぉぉぉぅっ」 全裸の足柄がベットの上で四つん這いになり嬌声をあげている。 覆いかぶさるように足柄を抱きしめる影を見て羽黒は腰が抜けたようにしゃがみこむ。 「し、司令官さん」 夜戦で鍛えた目が影の正体をとらえる。汗みずくで腰を振る男は紛れもなく鎮守府の顔、提督であった。 「足柄、少し、強すぎないか?」 結合部は羽黒の位置からは良く見えないが長大な男根が足柄のすらりと伸びた足の間を行き来しているのがわかる。 「いゃいやぁん、もっと、もっと突いてぇっ」 ストロークが弱くなると足柄は尻を振って抗議する。 「いやぁん、おちんちん、ズボスボして、くださぁい」 普段の自信に満ちた表情から想像もつかない蕩けた”メス”の表情で肩越しに提督をねめつける。 「全く、仕方がない奴だっ」 「あぉぉぉ、ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 再び力強く抽挿を開始する。足柄の豊満な尻に提督の腰が当たりバシバシとリズミカルな音が響く。 「あっおっおっおっぉっんんんん、気持ち、いいっ」 提督は腰を叩き付けながらそっと足柄の股間に手をやる。 濡れた秘所、太い男根を食い占める膣口の上あたりをまさぐりそれを見つける。 「ひゃっんっ、それっ、イイっ」 背筋をビクンと跳ねさせて足柄の嬌声が一オクターブ上がる。 提督はクリトリスを摘まんだのだ。 「足柄はこれが好きだったな」 「くぅぅぅっクリ、お豆ぇもっと、もっとぉぉ、引っ張ってぇ、痛くしてぇ」 さすがに全力で引っ張ったりはしないがそれでも指の力を強める。 膨らんだクリトリスを引っ張るだけではなく押し込むようにぐりぐりと擦る。 「そ、それ、それぇぇ、くひぃぃぃぃぃ!」 ぶるぶると背を震わせながら足柄がよがる。 抽挿のたびに豊満な乳房が揺れる。 「あっあっあっぁっんん、気持ちいいぃぃっ」 「おちんちん、中にいるのぉ、いい、いいのぉ」 戦闘で昂ぶった足柄を落ち着かせるのに抱くようになったのはいつ以来だろうか。 この方法をとっている-肉体関係を持っている艦娘は何も足柄だけではない。 そのことを、自分以外の艦娘が彼に抱かれていることを彼女たちは皆知っている。それでもなお、彼との肉体関係を続けている。 提督自身これが最良の解決方法だとは思わないが少なくとも足柄達はこの方法を受け入れている。 だが、提督とて男だ。普段、きりっとした自信家の足柄が自分に組み敷かれてあられもない声をあげるのに興奮しないわけが無かった。 「ああああっ、好き、好きぃっ、くあぁぁぁぁっ」 「っく、そんなにセックスが好き、か」 自嘲も込めて提督が問う。 「ちがっ、違うぅんっ」 足柄は乱れた髪をさらに振り乱して答えた。 「提督もぉ、提督も好きぃぃぃ」 足柄の潤んだ眼を見て抽挿が止まる。 「提督も、提督の……おちんちんも、好きぃ」 ぞくりとするような会心の笑顔を見て、提督の心に火が付く。 さっきに倍する力で己が男根を足柄のぬかるみにねじりこむ。 「あっあっぁっあっあっ、すごっ、強いっ」 熱い肉筒が嫌というほど男根を食い締める。 「くっ、だめだ。出る」 そう言ってペニスを引き抜こうとする提督に足柄は尻を押し付ける。 「いやっ、いやぁっ、抜かないでぇぇ」 「お、おい、足柄」 足柄は後ろで回した手で腰を抑える提督の手を握る。 「お願い。このまま、はぁはぁはぁ、このまま来てっ」 足柄の手を握り返すともう一方の手で抱くように上半身を持ち上げる。 「いくぞっ」 今までに無い強いストロークで足柄の最奥を突き上げる。 「あは、ぉっおおっ、んっ、中に、中にきてぇぇぇっ」 「んっ出るっ」 ペニスが胴震いすると灼熱の白濁が艦砲射撃のように足柄の奥を叩いた。 「あっ熱ぃ、イクッ、イグゥ、イグぅぅぅぅぅぅ」 がくがくと体を痙攣させてそのまま後ろに崩れる。 受け止めた提督も荒い息のまま足柄とともにゆっくりとベットに倒れる。 ずるりとペニスが足柄の膣から抜け出る。 後を追うようにして白濁が秘裂からどろりと垂れた。 愛しい艦娘を胸に抱く男と戦いの高揚と快楽の絶頂を味わいつくした巡洋艦娘が戸口から足早に去っていく影に気付くことは無かった。
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189 :名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 18 34 22.18 ID AtwVUep/ ※鬱展開、キャラ崩壊あります。ある意味悪堕ちというかNTR 「よく来てくれた。時間通りだな」 「……何かご用ですか?」 使われなくなって久しい軍の施設内に男女の声が響く。 男は軍の高級将校、女は艦娘。 「なに、簡単な話だ。君に新しい任務を与えようというのだよ」 「それなら私の上官に仰ってください」 「無茶を言うな。いない人間とは話はできん」 「……」 男はこの艦娘、伊勢の上官である提督のさらに上の立場にある。 そしてこの男の言う通り、現在彼女達の提督は鎮守府にはいない。 いや、既に提督などと呼ばれる者は数えるほどしかいないのだ。 深海棲艦との戦いに勝利し、敵を失った軍はそれまでの発言力を失い、それまでの規模を維持できなくなってきていた。 しかし、戦争の功労者がそう簡単に失脚する事はない。縮小にはそれなりの理由がある。 膨れ上がったまま敵を失った軍はやがてあらゆる腐敗の温床となった。 軍の縮小は事態を重く見た政府による刷新政策の一環ではあったが、即座に全てが良くなるわけではない。 現に、よく分からない容疑で拘束された彼女達の提督は未だに戻ってきておらず、後任の者も現れない。 「君の上官がいない以上、君に直接下命するのは当然だろう?」 伊勢は俯いたままぎゅっと拳を握った。以前に一度あった時から、この男は心底気に食わない。 彼女達の提督は実直で口数の少ない職人肌の人物で、周囲からは頑固親父とも言われてはいたが、 部下である彼女達の事は常に気にかけており、実の娘のように可愛がってもいた。 そんな提督を伊勢も憎からず思ってはいたが、今目の前にいるこの男はそれとは正反対だ。 保身と出世にしか興味のない、一言でいえばいけ好かない男というのが伊勢の抱いた第一印象だ。 自尊心と虚栄心が人の形を持ったようなその男は、まさに腐敗した軍の象徴のように思えた。 「わかりました……ご命令を」 とは言え、気に食わないからと上官の命令を無視するわけにもいかない。 190 :名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 18 37 26.56 ID AtwVUep/ 「単刀直入に言おう。兵の慰問を命ずる……どういう意味かは君も分かるだろう?」 「なっ!?」 艦娘の慰問とは何か、暗黙の了解であった。 「わ、私には出来ません!」 とは言え、年頃の娘である彼女らがそんな命令を簡単に聞けるものでもない。 「娼婦でもない君には難しい任務だとは思うが、これならどうかね」 男は横に置かれたモニターのスイッチを入れる。 映し出されたのは、薄暗い部屋の中で椅子に縛り付けられ頭に拳銃を突きつけられた妹の姿。 「日向!?」 「伊勢!駄目だ!逃げろ!」 お互いの音は聞こえるようになっているらしい。 「君が出来ないと言うのなら、君の妹にやってもらうだけだ」 「伊勢、私は覚悟できている」 日向の言葉に男の唇が歪む。 「ああ言っているが?」 「ぐっ……」 男を睨みつける伊勢。 「こんな下種共のいう事を聞く必要はない。私は慰み者にされるお前なんか見たくない」 「下種だと?貴様、それが上官に対する態度か!」 モニターの中で拳銃を突きつけていた士官が日向を殴り倒す。 「やめてっ!止めてください!私が……私がやります」 「よせっ!駄目だ伊勢!戻れ!」 引きずり起こされた日向が叫ぶ。 「私だって慰み者にされる日向なんて見たくないよ」 伊勢はそう言いながらモニターに背を向け、背後に集まってきた下卑た笑みを浮かべる兵士たちの方へ歩いていく。 「やめろ!私がやる!」 「日向、私は日向のお姉ちゃんだよ?たまにはお姉ちゃんらしいことさせなさいな」 「実に美しき姉妹愛か、いいねぇ。終われば二人とも自由を保障しよう」 男の言葉には反応せず、伊勢は笑顔でモニターに振り返る。日向を安心させるためか、自分を安心させるためか。 「終わったら、一緒に帰ろ」 「伊勢……」 「さあ、最初は誰?」 大柄な兵士たちに囲まれながらいつも通りの声で叫ぶ。 191 :名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 18 41 10.23 ID AtwVUep/ 兵士たちは目くばせすると、そのうちの一人の士官が進み出て伊勢の胸ぐらを掴み、乱暴に引き倒した。 「ぐうっ!」 「へへっ、流石は戦艦か。良い体してやがる」 言うなり士官は伊勢の袴に手を突っ込み下着に手をかけるとその中に指を入れ、まったく濡れてない秘部を触る。 「ううぅ……」 嫌悪感に顔をゆがめる伊勢だが、士官はお構いなしに下着ごと袴をずり下げながら自分もズボンを下ろして、怒張した一物を突きつける。 「さて、後がつかえていることだし早速……」 「あうっ!」 士官の大きな手が伊勢の胸をインナーの上から鷲掴みにし、巨大な一物を一気に伊勢の中へ押し込んでいく。 「んあああああっ!!」 押し広げるように進む侵入者に伊勢は苦痛の悲鳴をあげるが、 士官は侵入する速度を少しも緩めず最奥に押し込み、伊勢の腰を掴みあげて大きくゆする。 「あっ、ぐううぅ!いぎっいあああっ!」 伊勢の悲鳴に周囲から歓声が上がる。 やがて二人の間に滴る血に交じって白濁液が流れ落ちる。 「うくぅ!うっ、あっ……」 ビクンと伊勢の体が跳ね、人形のように動きを止める。 「この体で生娘とはな」 「艦娘ってのは男日照りなんだろ」 「あのおっさん、思ってた以上の堅物だったか」 周囲の兵士たちが口々に騒ぎ、伊勢の嗚咽を掻き消していく。 「少尉。時間短縮のため口及び肛門の使用を提案いたします」 「はっはっは。時間短縮か!まあいい。全員好きな所に並べ」 伊勢から一物を引き抜きつつ、少尉と呼ばれた士官が言うと兵士たちから再び歓声が上がり、やがて三つのグループに分かれた。 「よし、次」 少尉が伊勢から離れ、次の兵士が跨る。 同時に仰向けに寝かされている伊勢の背中側にも別の兵士が入り込み自分の腹の上に伊勢を乗せるように陣取る。 「えっ!?ちょ、ま、待って!やめて!そこは……」 「うん?何だ?やめてもいいのか?」 背中側の兵士の言葉に伊勢の理性が蘇る。 (駄目だ。私が拒めば日向が……) 「何なら妹ちゃんにやってもらってもいいんだぜ」 「そ、それだけはやめて!私がやります。私でやってください!」 三度兵士たちから歓声が上がる。 「聞いたか。自分からやってくださいだと」 兵士たちがはやし立てる中、伊勢は覚悟を決めて目を閉じる。 192 :名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 18 43 43.19 ID AtwVUep/ 「いぎああああっ!!いっ、いだっ、お尻壊れぎいいいいいい!」 絶叫が響く。 「かひゅ!ひゅ!ひゅう!」 「おい殺すなよ」 笑い声が広がる。 前からも同時に突き上げられ、声にもならず肺から空気が絞り出されていく。 苦しさのあまり大きく開かれた伊勢の目に、先程と同じぐらいに巨大な一物が迫ってくる。 「ごむぅ!うむううう……むぐっ」 「ほらさっさと扱け」 叫び声に蓋をするように一物が口に押し込まれるが、とてもそんな事をする余裕などない。 とは言え、伊勢が落ち着くのを待ってくれるような紳士であればこのような事は端からしない。 「ほら、こうするんだ」 「ぐむう!もごぉ……」 兵士は伊勢の結わいた髪の根元を掴むと頭を前後させる。 苦しそうに顔を歪める伊勢だったが、吐き出すことは許されない。 「うぷっ!ごほっ、ごほっ!ごっ……くひいっ!」 噴出した大量の白濁液が伊勢の口から溢れだし、むせ返っている間にも前後の穴からの突き上げはやまない。 「おおっ、なんだかんだ言って感じてるじゃねえか」 「ちがっ……そんなんじゃ、ひゃあん!」 幸か不幸か、伊勢の体は前に関しては女として正常な反応を示し始めている。 「ふああっ!違う!気持ちよくなんか……あん!」 口とは裏腹に、伊勢はすでに快楽を感じ始めていた。 (なんで?私こんなの嫌なのに。気持ちいいなんて……そんな……) 「うふぁぁ!ひゃあん、ひっ、くううぅ」 伊勢の心とは裏腹に、前はくちゃくちゃと音を立てる。 「よし次だ」 洪水のように流れ、広がっていく白濁液の海の中、もう何度目か分からない交代の号令がかかる。 「ふひゃん!はぁ…はぁ…次、早く…」 「はは、乗ってきたじゃねえか」 伊勢の気持ちなど本当は知っているであろう兵士たちの中には、わざとじらすような態度を見せる者も出始めた。 (日向……もう少し、もう少しだからね…) 「いぎっ!ひゃあん、ひゃああっ!ぐむうぅぅ!」 かわるがわる全身を犯される中、伊勢はただ日向の事を思い耐え続ける。 「よし。これで全員か」 無限に続くように思われた責め苦は、ついに終わりを迎えた。 193 :名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 18 47 03.47 ID AtwVUep/ 「よく耐えたな。敬服に値するよ」 「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。日向、日向は……?」 「ああ。勿論開放するさ」 一部始終を見ていた男は薄汚い笑みを浮かべながらそう言うと、顎で隅に設置された古い建屋を示す。 元々何かの格納庫か整備工場だったのだろうこの場所は、在りし日には事務所にでもしていたのだろう小さな建屋があった。 示された場所に、動かない体を引きずりながら一歩一歩近づく伊勢。 全身のどこにももう力は入らず、痛みを訴える下半身はいう事を聞かず、鉛のように重たく感じる。 「日向、日向……終わった、終わったよ……」 ようやく辿り着いた建屋の扉の前で伊勢は呟く。 涙と白濁液でぐしゃぐしゃになった顔に初めて笑顔が戻った。 「さあ、帰ろう。日向」 倒れ込むように扉を押し開け、中に転がり込む伊勢。 その目に映ったのは、 「んひいいっ!もっと、もっとぉ!ひひっ、あひいっ」 兵士たちに囲まれ、自分と同じぐらい白濁液に塗れながら、一糸まとわぬ姿でよがり狂う妹の姿。 「ひゅう、が…?」 目の前の現実が理解できず立ち尽くす伊勢に背後から男の声が聞こえてくる。 「ああそうだ、言い忘れていたが、殊勝な妹さんだね。姉の姿に心を痛めて自分が変わると言い出したよ。 それで本来なら君に行くはずだった分のいくらかを妹さんにお願いした」 「日向?嘘でしょ……?ねえ、ひゅうがぁ……」 「とは言え流石に私も気の毒に思ってね。少しでも助けになればと、ある薬を打ったんだが……どうも一回の量が多すぎたかな?」 男はおかしそうにそう続ける。 「おお何だ?姉ちゃんの方も混ざりたいってか?」 一人の兵士が立ち尽くした伊勢の腕を掴もうとした瞬間、 「日向に触るな糞共!!」 その腕を逆手にとって引き付けると、体勢を崩した兵士の首を掴み、後頭部を壁に叩きつけた。 崩れ落ちる兵士を尻目に、どこにそんな力が残っていたのか不思議なほどの勢いでもう一人近くにいた兵士にとびかかる伊勢。 怒りと憎しみに染まった悪鬼の如き表情からはいつもの温和な彼女は到底想像できない。 銃を抜くのも間に合わないと判断して素手で応戦しようとしたその兵士の腰から、 すれ違いざまに拳銃を奪い取るとハンマーのようにして頭を殴り飛ばす。 しかし、そこがお終いだった。 一瞬の隙をついた他の兵士たちが伊勢を羽交い絞めにし、一斉に馬乗りになって取り押さえる。 194 :名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 18 49 09.45 ID AtwVUep/ 「いやはや、驚いたな。まだそんなに動けるか」 「貴様!殺す!殺す!殺してやる!」 素直に驚いたという風に現れた男に、伊勢は足元から睨みつけてそう叫ぶ。 「その調子ならもう一巡お願いできるかな?」 「離せっ!離せくそ!ぶっ殺してやる!」 呪詛の言葉を吐き続ける伊勢を集まってきた兵士たちが取り囲む。 やがて伊勢の声は途絶えたが、直後に一人の兵士が叫ぶ。 「おい!拘束具だ。何でもいい。口にはめろ!こいつ舌噛みきる気だ!」 腕を伊勢の口に押し込みながら部下に命じる。 「口は売り切れか」 「仕方ねえだろ。噛み千切られたいか?」 兵士たちが冗談めかして呟く。 「ああそうだ。元戦艦が二人。どちらも調教済みだ。薬代は料金に入っている」 建屋の中で男が電話でどこかに話している。 「ああ、うん。ははは、いやこれからも宜しく……では」 電話を切った男に一人の士官が報告する。 「中将。姉が到着しました」 「よし来たか。全くいい商売だ」 ほくそ笑みながら男は建屋を出ると、護衛の兵士たちと共に時間通りに現れた相手の前に立つ。 「妹は、山城は無事なんですか!?」 「ああ、無事だとも」 終 +後書き 以上スレ汚し失礼しました。 伊勢日向は健全な意味で仲良しな感じが良いと思った。 普段温厚な子がブチぎれる程度の絶望感ていいよね(ゲス顔ダブルピース)
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806 :クズ ◆MUB36kYJUE:2014/07/06(日) 20 55 04 ID WPQREMKw 以前浜風が無理やりフェラして吐く長編を書いた者です。 上の方でトリップつけたほうがいいというような議論があったみたいなのでつけさせていただきます。 祥鳳って前付き合ってた男の事をずっと根に持ちそうだなという発想から大鳳との修羅場ものを書きました。 長編未完 エロ薄い(後の話でもっとがっつり塗れ場を書きます) なので苦手な方はスルーをお願いします。 行間詰めすぎとの事だったので台詞前後に空行を入れます。 序章 吸い込んだ空気は容赦なく、喉を炙るように通り過ぎた。肺腑凍てつき、背筋には槍の刺さったような痛みが走り、彼は思わず真白 い吐息に手をかざした。波の岸壁に打ちつけるごぅごぅという音が、厭に大きく厭に不気味に、辺りを猛然と駆け巡っている。 正月飾りの取り払われた玄関には、寂寞と孤独が横たわっている。目前にあるはずのアスファルトは夜の闇に解け消えて、灰色の石 段だけがくっきりと浮かび上がった風であった。未開拓の無人島にぽつねんと取り残されたような、そういった凄まじい哀情が沸いて きて、彼は居た堪れなく焦って足を動かし始めた。吹き荒ぶ海風に当てられた耳が裂かれたかのような痛みを発し、頬は一歩踏み出し た途端に真っ赤になる。外套のポケットに突っ込んだ掌は、それでも隙間から入り込む冷気によって一向温まる気配もない。鳥肌立っ た背中が肌着と擦れ、ぞっとしない感触に肩が震えた。 少しでも中から体を暖めようと、彼は足を速め岸壁沿いを進んで行く。 寒風荒ぶ夜の中この提督が外へと繰り出したのは、何も酔狂によるものではなかった。元来風来坊の性質を持って生まれたために、 確かに周りからは変人という肩書きを与えられていた彼ではあったが、今回のこの行動に限って言えば、常識の範疇内の理由による外 出なのだと説明できる。 腕時計を見、現在時刻が体感のものより大分遅れている事を、彼はどこか安堵した思いに受け止めた。意外にも、執務室を飛び出し てからまだそんなには経っていない。眇めた眼にて用心深く辺りを見渡し、人の気配の無いのが分かるとまた足を速めてゆく。 秘書艦である祥鳳が、鎮守府宿舎から出て行った。その情報の執務室へ転がり込んできたのが、つい五分ほど前のことである。 それは当直の警備に当たっていた妖精が報告したものであった。息を荒らげ興奮気味に戸を抜けたそれは、提督に宥められつつ叫ぶ ようにしてあらましを説明した。 曰く、怪しい人影がふらふらと危うげな足取りにて歩いていた、そのシルエットは大きな二つ結びで確証はないにしても 祥鳳らしき事、声を掛けようとしたものの背後から発せられていた徒ならぬ雰囲気に怖気づいてしまい、結局は黙って見送ってしまっ た事。大雑把にそんな内容である。 日はとうに西に沈み、月とクレーンの航空障害灯だけが静かに闇を照らす時分。霧のようにぼんやりとした白光を赤い明滅が彩る様 は、途方も無く寂しいものである。秘書仕事を終え部屋に戻ったはずの彼女が、今こんな時に外出するなど俄か信じがたい事であった。 急ぎ内線で門の警備に連絡を取った所、一切外へ出て行った者はないとの返答。恐らくは、鎮守府の敷地内を放浪しているらしかった。 そこまで差し迫った危険性は無いと分かったにしろ、やはり憂慮せずにはいられない。もしかしたら余計なお節介なのかもしれない と、そう思う気持ちもありはした。しかし、胸を締め付ける気遣わしさには到底敵うわけがなく、提督はラックに掛かった外套へ急ぎ 袖を通したのだった。 彼女の赴きそうな所に、幾つか当てはあった。事の報告をした妖精は他の艦娘にも協力を仰ぐよう提言したが、すかさずにそれは却 下された。この破滅的行動は間違えなく心内の問題から発生してるのだろうし、だとしたら解決しやすいのは自分であると、提督には そういった自負があったのだ。 何も自惚れであるとか、過剰な自意識によるものではなかった。客観的に見ても、彼の考えは実に妥当なものだと言えた。おおよそ、 その鎮守府の誰もが知りえない秘密が、二人の間には確かに存在していたのである。 即ち祥鳳と提督は、実に三ヶ月ほど前より恋仲にあった。秘書と直属の上司という間柄は、厳重な秘匿の元で時に男女の関係に変化 していた。その律儀さたるや、噂好きの幾らかの艦娘にさえ、未だ疑われもしていないほどである。 決して公に睦まじくすることはなかった。両者とも、絶対に第三者に知られてはならないと固く信仰しており、その無言に交わされ た約定のような制限が、決して外れぬ楔となっていたのだった。 彼らは、立場ゆえの関係の掩蔽に烈しい刺激を見出してもいた。仕事の関係から外れたたまの逢瀬は、痛く思えるほど耽美に過ぎ、 それは当人達でさえ思い出すだけでも頭を抱えたくなるような代物だった。それだけの慈しみがこもっているからこそ、提督は決して 捜索に仲間を募らなかったのである。 凍えに凍えた空気は、しかし幾ら取り込んだところで煮えた頭を少しも冷ましてはくれない。一番近しい所にいたくせに、彼女にこ んな事をさせてしまった事。まったく何にも気が付かなかった自身の鈍感さが恨めしく、歯痒かった。地団駄の踏みたいのをぐっと堪 え、提督は後悔と贖罪の意を胸に、暗闇に目を凝らしていった。 幾らほど歩いたか。やたらに早まっている体内時計を鑑み、およそ五分は経った頃か。提督は視線の先に薄ら女性の輪郭を捕らえる ことができた。鎮守府の敷地内でもっとも大きな防波堤の末端。海水のぶつかった飛沫がかかるのを意にも返さず、ぽつねんと体育座 りに腰掛ける、大きな三つ編み二つ結びの影である。 彼女は身じろぎ一つせず、物思いに耽っているのかただ暗晦な海面を見つめている。暗がりからぼぅと影が浮き出た様には身の毛の よだつ程の凄みがあって、事情を知らぬ者が見たならきっと心霊の類と見なすだろう。そう思えるほどの気味の悪さが漂っていた。 かっぽりと削り取られるようにして作られた防波堤の階段。その小さな段を一歩ずつ昇り、とうとう彼女と同じ地平に立つ。乱雑に 詰まれた波消しブロックの、海水のぶつかる度に降りかかる霧が、途端提督をしっとりと濡らした。 氷のような冷たさを湛えた霧である。海に向かって進めば進むほど、それはより濃くなっていった。耳の感覚は消え失せ、指先や膝 が独りでにがたがたと震え始める。 「祥鳳!」 防波堤の中腹、ちょうどくの字に曲がるその起点にまでたどり着いた頃、提督は彼女の名を自棄になったように叫んだ。前髪の毛先 がシャリシャリに凍り、それがちょうど眉間を叩くから不快な事この上ない。足先や指先の感覚が、末端から溶ける様に消えていた。 かちかちと歯が鳴った。顎を震わせている姿を想像すると、何とも無様で格好の付かない様に思われ、彼は無理やり飲み込むように してそれを収めた。状況として、決して彼はそう意図しているのではないが、どうしてもこの先颯爽と登場するようになってしまうの だから、最低限瀟洒な風情を漂わせようと思ったのである。 情けなく震えた叫び声を耳に入れ、祥鳳は途端無意識に背を跳ねさせた。 すぐ近くにまで寄ると、彼女はゆっくりと振り返る。その佇まい、髪は濡れ唇は青白く瞳はどんよりと濁り、それでも微塵も震えて はいないその様子には薄ら寒い気持ちを抱きもした。提督は彼女の頭を撫で 「帰ろう。皆心配している」 開口一番にそう言った。 何故ここに来たのかだとか、何故こんなことをしたのかだとか、そういったことを聞くのはやはり憚られた。話したいのならば自分 から口を開くだろうから、今はただ何時もらしくに接すればいい。提督はそう結論付けると、あとは濡れそぼった彼女の髪をひたすら 指で梳くだけになった。 それ以上両者から、何も言葉は発されなかった。静けさに耐えられなくなったか、祥鳳はしばらくの後、彼から目を逸らして再び海 面に視線を向けた。 触られることに抵抗しない様子を認め、とりあえずは彼女を立たせようと、提督は地に置かれた小さい手を取ろうとした。冷えて感 覚も希薄になった掌は、それでも祥鳳に比べればまだまだ血の気は通っているらしく、握った手は吃驚するほど冷たく思えた。 華奢で骨ばっている為か、まるで氷に厚手の布を巻いたかのような感触である。戦闘時には何時も弓の弦を引き絞っているから、人 よりも皮膚が厚くなっているのかもしれない。幾回も体を重ねその度に指を絡ませていたにも拘らず、今初めて知った事実であった。 きっとそういう鈍感さだからこそ、今まで彼女の仔細な機微にも気が付かなかったのだ。そういった自嘲の念がわだかまり、彼は頭を 抱えたくなった。 今すぐにでも額を地につけ、ひたすら謝罪をしたかった。彼女の望む事なら何でもこなしたい、仮にこの海に飛び込めと言われたな ら喜んでその命に従うだろう。そういった悔悟はじくじくと胸を痛ませたが、果たしてそれが免罪符にならないことも知っていた。 今この段階ではとにかく帰ることが先決だと、そう思い直して腰を上げる。掴んだ掌を引っ張ってみると、まるで釣り上げられるか のようにして彼女も立ち上がったのだった。 提督は自身のコートのポケットに、掴んだその掌を入れ、更に指を絡ませて握った。服越しの体と掌で挟みこみ、少しでも暖かいよ うにと体を寄せる。カイロや、何かそういった類のものを持ってこなかった事が、今更になって悔やまれた。 一歩、恐る恐る足を踏み出してみると、彼女も続いて歩を進めた。足取りは覚束なかったが、抱える必要があるほど衰弱しているわ けでもなさそうである。ゆっくりと歩くべきか、冷えるから足を速めるべきか。気遣うという同じ源泉から湧き出した背反する思いは、 何とも煩悶たるものであった。 「寒いね」 「上のケチ共は資材上限を絞っているんだな、まったく」 「新たにレ級なんていう敵も発見されたらしい。物騒なことだよ」 帰路につき、そのようなことをポツリポツリと話しかけてみても、まったく何も反応はなかった。彼女はただ顔を伏せ、半歩遅れて ついて来るだけである。握り返してくれている手の感触だけが、唯一の繋がりを示す楔に思えてきて、感じられる存在の気配はどんど んと希薄になっていく。やがて話題のストックが消え果てると、提督もただ黙々と足を動かすだけになった。 来た時よりも大分長く感じられるアスファルト舗装の道は、それでも何時しかその終端には辿り付けるのだった。ずっと先に見えて いたはずの光の粒が、今でははっきりと鎮守府の窓から漏れる灯りだったのだと認識できる。そのぼんやりと浮き出た建物の影に、ど こか安堵を覚えた。 彼はつと祥鳳の方へ視線を向けた。もうすぐ着くぞと、そう言いたかった訳であるが、思い返せば手を握ってから彼女の顔をきちん と見てはいなかった。腕の触れるほどすぐ近くにいたために、寧ろ何時もより様子を認めるのを怠っていたのだ。普段外では大っぴら に、恋人のように寄り添って歩くこともままならなかったわけだから、変に緊張していたのかもしれない。だがこの時まで、祥鳳のそ れにまったく気がつかなかったのは、間抜けとしか言いようのない愚鈍な過ちだった。 彼女の顔を見て、提督の口からは吃逆のような音が漏れ出した。祥鳳は空いていた方の手でひたすら目元を拭い、よく耳を澄ませば、 波飛沫の音の狭間に、小さな嗚咽も聞く事ができる。歯を食いしばり、時折肩を跳ねさせながら、手の甲を湿らせている。そういった 状況を認識するのにも時間が掛かり、顔を向けてから十秒は経った頃、ようやく 「どうした?」 そう一言訪ねる事ができた。 言ってしまってから、何て気の利かない言葉だろうと思った。訪ねたということは、察す事ができなかったと宣言しているようなも のではないか。そう気が付くと、腹から脳天へ悔恨がさぁっと駆け抜ける。 「ごめんなさい」 搾り出すようにして吐き出された謝罪へ、提督も慌てて反応を寄こす。 「いや、別に気にしていない。……だから、泣くのは止めなさい。何も責めないし、言いたくないことは言わなくていいんだから」 「違うんです! そうじゃなくて……それ以外にも、私、謝らなくちゃいけないんです」 過呼吸気味に途切れ途切れ言葉を紡ぐ彼女の様子は、とても痛々しいものである。彼女はここまで言い切ると、後から堰を切ったように漏れ出す嗚咽に、続きを言う事ができなくなった。 気まずい間が開いたが、提督は決して先を急かすような事をしなかった。そんな事のできる権利はないと思われたし、悪意はなくとも結果的に追い詰める事になってしまうのは厭に思えた。 気が付けばポケットの中に手は無く、いや向かい合っているのだからそれも当然な訳であるが、掌に残っている温もりの残滓が寂寞 を掻き立たせてならなかった。一抹の不安感が足元を通りすぎ、胃がきゅうと縮み上がる。ぞっとしない感覚に、提督は思わず生唾を飲 みこんだ。 「一つお願いがあります」 意を決した風に、祥鳳は彼を見つめた。纏う雰囲気からいうならば、睨むと形容してもおかしくは無い。語気は冷静沈着なれど、滲 む凄みは紛れも無く、高ぶった感情のそれである。 「うん。何?」 「私と、別れてください」 提督の口からは、再び引き攣った吐息が漏れだした。 意外にも、その言葉を聞いたときに何かショックを受けるような事はなかった。ただ厭な予感が的中してしまったと、そういった納 得のようなものが漠然と心内に広がっただけである。一旦は流れを止めた彼女の涙も、だがすぐに眼は潤みだす。それをぼんやりと眺 め、しかし頭はそういった視界の状況さえ処理できないほどだった。真っ白に、虚無が果てまで伸展する。 「ごめんなさい。理由は聞かないで。……ごめんなさい」 やがて彼女は泣きながら、走って提督の横を通り過ぎた。 その場に立ち続けていると、今更遅れて防波堤で座るという行為の意味を理解できた気がするのだった。極寒が自身を罰してくれ、 しかも地平線に広がる闇は思考を煮詰めてくれる。 一体自分は、彼女の何を分かっていたというのか。 自嘲の念は何時までも、彼の心に纏わりついていた。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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提督×足柄の続き 潮風と窓から差し込む陽光が艦娘の頬をくすぐる。 うすぼんやりと覚醒した彼女は体をよじる。 汗でしっとりと肌に張り付いた布の感触。 対照的にスースーとする下半身の解放感。 切りそろえられた黒髪の下の大きな瞳がうっすらと開かれる。 奇妙な感触がする指先を目の前に持ってくる。 何かの液体が乾いた後と微かな性臭が彼女を急速に覚醒へと押し上げる。 「はうっ、…これって……」 乱れた夜着から零れ落ちた白い双球とあられもなく晒された太腿と淡い翳り。 右足首に丸まっているのは間違いなく下着だ。 「や、やだっ!…わ、わたしったら……」 もぞもぞと布団を手繰り寄せて、妙高型4番艦羽黒は赤面した。 出撃から帰投した昨晩、偶然覗いた提督の部屋で行われた秘め事。 姉の足柄と提督との激しいセックス。 行為が終わると足早に隠密発射された酸素魚雷のごとく彼女は自室に飛び込んだ。 まんじりともせず布団にもぐりこんだが、おさまりがつかない。 耳に残る姉の嬌声と図らずも最後まで見てしまった姉の痴態が瞼の裏から離れない。 意識下で昂ぶっていた戦闘終了後の精神と相まって思わず股間に手をやってしまった。 乳房をまさぐり、幾度も陰核を擦る。 尖った桜色の乳首を弄び、蜜に指を濡らす。 いつしか脳裏に浮かんでいたのは提督の姿。 逞しい彼自身で貫かれる自分を想像した彼女は竜骨が折れんばかりに背をのけぞらす。 まだ未成熟の秘裂から大量の蜜を吐き出し上り詰めてそのまま落ちた。 昨夜の自分の痴態を思い出し赤面する。 そして、提督を”おかず”にしてしまったことも彼女の頬をより熱くした。 「-ぐろ……羽黒?」 布団の外から聞こえる声にひょこりと顔を出す。 太眉に切りそろえられた黒髪-姉、妙高のいつもの優しい笑顔があった。 「どうしたの二日酔い?」 額に当てられた手がひんやりとして気持ちいい。 「ううん、大丈夫」 「そう。出撃後のお休みだからいいけど、そろそろお昼よ」 もそもそと布団の中で身繕いをして起き上がる。 「朝ごはんは出来てるからおあがりなさい。それと1730に提督が執務室に、って」 羽黒はていとくの四文字を聞いてびくりと体を固くする。 「あ、あのー、妙高姉さん?」 「なぁに?」 「あの、その……」 姉の顔を真正面から見れず下を向いて、もじもじと布団を胸の前でこねくり回す。 「提督、何か…言ってなかった?」 真っ赤になった顔で上目使いで尋ねる。 「さあ?特に何も……何かあったの?」 「な、なにも!なんにも無いよ!」 妙に慌てふためく妹の挙動を不審がりながらも妙高は部屋を出た。 「あぅぅ…気付かれちゃったのかな……」 布団を畳みながら呟く。 「司令官さん……」 提督の顔が浮かぶ。 彼女達は兵器だ。戦うための道具に過ぎない。 だが、提督はそんな彼女達、艦娘を自分と同列の仲間として扱ってくれる。 この泊地以外でも各地の鎮守府、基地で連合艦隊の魂を受け継いだ艦娘達が謎の敵、深海棲艦と戦っている。 その中には大破した艦艇を無理矢理進撃させたり、駆逐艦を使い捨てにしている司令官もいると噂では聞いている。 だが、提督は決してそんなことはしていない。 艦隊に小破した艦娘が一隻でもあれば、たとえ勝利が目前でも必ず引き返した。 『帰ろう。帰ればまた来られるから』 那智や足柄、木曾といった積極策を唱える艦娘達が抗議の声をあげても彼は頑として流されることは無かった。 『資源は時間が立てば回復する。戦機はまた作ればいい。だが、君達は私にとって唯一無二の存在だ。代わりはいない』 そう言って、照れたように頭をかくのが常だった。 -提督、私の唯一無二の司令官さん。 羽黒の胸がほうと暖かくなる。 服を整えながら羽黒の頭の中は提督でいっぱいになる。 そうすると今度は艦本式重油専焼缶が燃え上がるように動悸が高まる。 昨晩の足柄の姿が浮かぶ。 -姉さん、あの凛々しい姉さんがあんな……。 私も司令官さんに……。 足柄を自分に置き換えたところで羽黒は頭を振った。 -私は姉さんみたいに美人じゃないし、それに……。 「もしそんな事になったらボイラーが爆発しちゃう!」 そう呟いて、ため息をつく。 そのため息が持つ意味を羽黒はまだ良く理解していなかった。 「妙高型4番艦羽黒、出頭しました」 「うん。入って」 1725に執務室に入ると秘書艦を務めている姉-那智とともに提督が出迎えた。 「あのぉ……わ、私…ご、ごめんなさい!」 「へっ?」 顔を真っ赤にして突然、平身低頭する羽黒に提督はポカンとする。 「あの、昨日はその、あの」 「ん、昨日?……ああ、一航戦なら大丈夫だよ。それに仲間を大事に思う羽黒の気持ちは間違ってないよ」 「へっ?」 今度は羽黒がポカンとした顔になる。 昨日の戦闘で不用意に突出した一航戦が敵の艦載機に襲われた。 統制砲雷撃戦突入直前にも関わらず羽黒は反転して空母の盾になろうとした。 提督はその事を気にしているのだと思っている。 「優しさは羽黒の良いところだよ。今度はもう少し視野を広げて考えればいい。私も気を配るようにするから」 デスクを立って羽黒の頭を優しく撫でる。 「あ、あの、その、…夜の……」 「ん?夜?」 羽黒は口からタービンが飛び出してしまいそうにドギマギしながらも昨夜の覗きを謝ろうとする。 「…何やら、意見の食い違いがあるようだが。それよりも、提督」 「あ、ああそうだな」 あきれ顔で間に入った那智に気付いて照れながら机に戻り、ファイルをパラパラとめくる。 「羽黒、大海令だ。我が艦隊は沖ノ島海域の攻略に乗り出す」 「えっ…あの、難攻不落の…」 沖ノ島海域は全世界の鎮守府司令を悩ませている敵の一大集結海域だ。 複雑な航路、濃密な敵の哨戒網、そしてフラッグシップと呼ばれる強大な戦艦、空母。 既に突破に成功した艦隊も無数の屍-轟沈艦娘の尊い犠牲の上にそれを成し遂げたと戦闘詳報にはある。 「いきなりの攻略は難しい。我が艦隊にはその力はまだ無い」 忌々しげに那智が机上の海図を睨む。 「そこでだ。積極的な偵察活動を行うことを私は決めた」 「小規模な機動部隊を組んで敵泊地周辺に遊弋。敵の小規模部隊にヒットアンドアウェイを繰り返す」 海図と編成表を指しながら那智が作戦概要を淡々と告げる。 「敵戦力の減殺と艦隊の練度向上、並びに航路開拓がこの作戦の意味だ」 先ほどの浮かれた気分は引っ込み羽黒の顔に緊張が走る。 「それでだ」 一際厳しい顔で提督は羽黒を見つめた。 「妙高型4隻は部隊の中核として作戦に参加してもらう」 「貴様も察しがつくと思うが、本命の敵泊地攻撃には航空戦力拡充が必須だ」 脳内に艦隊の編成を浮かべ羽黒はうなづいた。 艦隊の航空戦力は赤城、加賀、蒼龍の正規空母が主力だ。 軽空母に分類されてはいるが隼鷹、飛鷹の姉妹も航空機運用能力は高い。 だが、赤城を除く全ての空母が練度十分とは言えない。 艦隊に配属されたのがごく最近であるし、艦載機運用を支えるボーキサイトは慢性的に不足している。 「第5戦隊は一旦解隊。高雄達ともローテーションを組んで母艦航空隊を守ってやってくれ」 準同型艦の高雄型は普段は第四戦隊を編成している。 第五戦隊に比べると練度は低いが艦隊の中でも第二水雷戦隊と並んで有力な部隊だ。 「わ、わかりました…」 少し不安げに返事を返した羽黒に提督は優しい笑顔を見せる。 「姉さん達と離れて不安だろうけど、大丈夫。俺も必ず一緒に出撃するから」 頬を上気させて羽黒は元気に敬礼した。 「正式な命令は明日、全員の前で行う。下がって宜しい」 「失礼します」 妙に軽やかな足取りで執務室を出ていく妹を見て那智はやれやれといった顔をする。 「……罪なお方だ。」 「んっ?何か言ったかい」 「いいえ、何も…それより」 那智は彼女らしからぬ、茶目のある表情で提督の手を取った。 今夜は私に一杯付き合わないか?」
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168 名前:2-683 霞[sage] 投稿日:2015/02/22(日) 07 57 22 ID G9FxYqM2 今の時間は、どうなっているだろう。 どうでもいいか。 深い夜である事は分かる。執務を再開できる気分ではない。 今の自分は砂嵐が吹き荒れる心情にあったからだ。 蹴飛ばしたい衝動を抑え、執務室の扉を開けた。 秘書艦霞はずっと待っていたのか否か私をぞんざいに出迎えた。 霞は普段通りの気を緩めない顔でいるが、私は普段通りの精神状態ではないのだ。 今は霞と口を利く気分ではないのだが、霞からすればそれは関係のない事だろう。 大本営に呼び出された今日の事柄を霞に尋ねられ、私は全てを語った。 この鎮守府が設立されてから目立った戦果がない事を糾弾された事。 艦の犠牲を躊躇しない他の鎮守府を引き合いに出された事。 大本営のその身勝手な態度に、自分は首が飛びかねない程の危ない態度で応戦した事。 それら全てを聞き終えた霞は、私を見上げて歯向かって来た。 「はあ? それで逆切れ? だらしないったら!」 逆切れ? だらしない? 霞の怒号が疲れた身に染みるが、私は霞の言葉を頭で反芻した。 霞の辛辣な言葉は聞き慣れていると自負している筈だが、気が立っている所為なのか稚拙に口が動く。 上の価値観が狂っているから自分はそれを然るべき在り方へ導こうとしただけだ。 それなのに自分が間違っていると言うのか? 霞はあんな事を言う上がおかしいとは思わんのか? 霞は私に、そんな上の人間の犬になれとでも言いたいのか!? 自分は自然と声を荒げていった。 しかし霞は一蹴するように鼻で嘆息した。 「上の人間が発言力のない司令官の戯言を聞くと思ったの? それに、これで左遷でもされたらやり方も何もなくなるでしょ。 そんなことも考えられないんじゃクズ司令官は犬同然よ。馬っ鹿みたい」 ……何だと。 もう駄目だ。我慢ならん。 自分の周りには味方がいないようだ。 秘書艦にさえ自分を否定されたこの時、蔓延っていた黒い感情は爆発してしまった。 全く、上官に向ける言葉とは思えない。霞にはお仕置きと調教が必要のようだ。 霞を蹂躙してやりたい、そのような生意気な口を二度と叩けないようにしてやりたい。 この泥々とした感情を抑えられそうにない。 「っな!」 霞の手をひったくるようにして薄暗い自分の私室へ連れ込む。 邪魔者が入らないよう後ろ手に鍵をかけると、霞はその目に警戒心を色濃く表した。 霞には無意味かもしれないが、目をなるべく鋭くさせて威圧するように見下ろす。 抵抗出来ないよう霞の両腕を痣が残らんばかりに掴んだまま追い詰め、やがて寝具へ押し倒した。 「私に当たる気?」 霞は素行を改めない。 予想は出来ていたが、全く威圧出来ていないようだ。 もしくはこれからされる事が分かっていないのかもしれない。 自分はボタンが破損する事も躊躇わず霞の上部装甲を力尽くで開いた。 その中にある青緑を基調とした装甲をたくし上げると、慎ましいタンクが二つ露わになった。 それの片方を右手でむんずと掴む。 「っ……」 予想に反して霞は大声を上げるどころか唇を硬く閉ざした。 しかし仮に大声を上げたところでここは奥まった提督の私室だし、 ここを出た執務室の壁は防音効果もあるので誰にも聞こえる事はなかろう。 通りすがりの者に聞こえやしないか気を割く必要もない。 目前の霞に集中する。 自分の右手にすっぽり収まる程度の慎ましいタンクは張りが強いのか少々硬めだ。 だが、硬かろうが柔らかろうが自分がこうして昂る運命は変わらなかっただろう。 見た目は人間の少女そのままなのだ。背徳感を煽られる。 目を尖らせる霞の意思は"屈してなるものか"と言う歴戦の勇士のものだろうか。 そんな態度を取るならば、此方としても更に張り合いがあっていいと言うものだ。 空いている左手を口元に持ってきて指を舐ると、それを霞の下部装甲の、またその奥の装甲に潜らせる。 ぴったりと閉ざされている霞の艦内へ、舐った中指をぐりぐりとねじ込む。 「いっ……!」 当然だが霞の艦内は一切濡れていない。 それを見越して指をあらかじめ舐ったのだが、あれだけでは摩擦率の大幅な改善は見込めない。 別段太くない自分の指を一本入れただけなのだが、霞の艦内はとても狭かった。 私の中指を異物と察知して懸命に押し出そうとしてくる。 私はそれに抗うように小さいながらも指を前後に動かす。 この時点で霞の両手は私の束縛から解放され自由になっているのだが、 何故か霞は寝具にしがみついて耐えるだけだった。 おい。痛いだのやめろだの言ったらどうなんだ。抵抗しないならもっと痛い事をしてしまうぞ。 しかし霞は一向に抵抗しようとしない。 霞は今一体何に束縛されているのだろう。 私は霞から両手とも離し、冷めた目で霞を見下ろし、ズボンのファスナーを悠々と下ろした。 自分の動きは慢心と言える程に無防備なものだが、そんな私を霞は鋭い目付きで見上げるだけだった。 霞の下部装甲を捲り、白い装甲を外す手間を惜しんで横にずらす。 「……ひ、ぐ……、っは、ぁっ……!」 慈悲などなしに主砲を突き入れると、霞は声になっていない悲鳴を上げた。 歯を食い縛ったり酸素を求めたりと忙しなく口を開閉させている。 それにしても狭い。きつい。 ふと目を落としてみれば、結合部からは明らかに赤い液体が滲み出ていた。 おいおい。見た目人間のようだと思っていたが、これでは完全に人間ではないか。 霞の血を見て自分の頭から血が引きかけたが、今更やめる選択はない。 全ての鬱憤をこの小さな艦体にぶつけるべく、無理矢理自分を突き動かす。 霞の艦内を何度も力任せに押し広げる。 最早血を潤滑剤とする事で動かす事が出来ている有様だ。 「っ! ぅ、ううっ、ぎっ……」 嗚呼、だが気持ちいい。 小さく無垢な身体を蹂躙すると嫌でも滲み出る背徳感が、征服感が、酷く快感を煽る。 痛い位に、絞るように締め上げる霞の中が、気持ちいい。 一方瞼まできつく閉じ懸命に耐える霞に、真上から影を落として罵詈雑言を浴びせる。 ほら、痛いんじゃないのか。苦しいんじゃないのか。やめて欲しいんじゃないのか。 抵抗してみろ。霞から届く距離にある屑司令官の頬を張ってみろ。霞なら出来るだろ。 出来ないのか? 上官を粗末に扱う何時もの高慢な威勢はどうした!? 何か言ってみろ!! 「……めよね……」 あ? 「惨めよねっ……!」 自分は思わず動きを止めてしまった。 霞は、どこまでいっても霞だった。 外部から駄目出しされて憤慨する自分と、気にも留めない霞。 頭の螺子が飛んだ自分と、ボルト一本抜け落ちなかった霞。 勝手に征服感を感じていた自分と、己を睨み続けた霞。 己を見失った私を、蔑む霞。 "惨め"と言うのが一体誰の事か等、考えたくもない。 「この、どうしようもない、クズ……!!」 霞の目には変わらぬ強い光があった。依然鋭く睨みを利かせてくる。 何故、挑戦的な目を向けてくる? 何故、ここまでされて屈しない? 何故、冷めた目をしていない? 「っ、……!」 自分は目を痛い位瞑って腰を慌ただしく動かし始める。 霞の底知れぬ何かを見、途端に恐怖心を抱いた。 霞の艦内を乱暴に抉って快感を得ようとし、と言うより、射精感を促してゆく。 逃げ道を作る為に、突く。突いて突いて突いて突いて……。 「め、目を見なさっ、この、クズっ……!」 「っぐ……!!」 黙れッ!! 「んんっ!! んや、ぁぁああ……!!」 歯を食い縛り、鬱憤を霞の最奥に掃いた。 暫し肩の荷が吹き飛んだような、ついでに螺子もまた数本吹き飛んだような感覚に支配される。 だが鬱憤を全て射撃し終えた頃、自分は糸が切れたように意識まで吹き飛んでしまったのだ。 …………………… ………… …… 今の時間はどうなっているのだろう。 目覚ましの音を聞く前に目覚めてしまった。 ……夕べの自分は随分と卑猥且つ下劣な夢を見たようだ。煩悩でも溜まっているのかもしれないな。はっはっは。 等と笑っている場合ではない。 その記憶の正体が夢であるならば、昨日自分は何をしていた? 開発、演習、遠征、執務、大本営に呼び出され、駄目出しされ……。 「…………!」 勝手に夢にするな。全て現実だ。 自分は、取り返しのつかない事を……。 いや待て。それなら自分がこうして服装の乱れ一切無く寝具に包まれている筈がない。 軍服のまま眠る習慣はないのだが、多分昨日の疲れでそれすら覚えていないんだろう。 起き上がって時計を見れば、起床時刻前だ。 随分と疲れが抜けた体は良い目覚めだろうが、精神的にあまり良い目覚めでないのは何故だろうな。 起き上がって私室を出ると、執務室中央のテーブルを囲うソファに、霞が腰掛けていた。 「おはよう」 「……おはよ」 霞は私の挨拶にも短くだが応じた。 ちらりと一瞥だけでもくれる霞は何時もと変わらぬ様子に見えた為、自分は安堵した。 やはり昨日のアレは、夢だったのだ。 霞、食堂へ行くぞ。 「もう食べたわ」 もう食べた? なんと早い。 起きるのは私より早くてもいいが、食事位は共にしたいぞ。 しかし過ぎた事を求めても仕方が無い。零れた水は盆には帰らない。 霞は執務を進めると言うので、お言葉に甘えてテーブルに少しの紙の束を置き、自分は食堂へ向かった。 朝の身支度も終わり、その後は自分も執務を進めようと戻った。 その頃には霞は私が提示した少しの執務を全て掃いてしまっていたから優秀だ。 それから暫くは自分の分の執務を進めていたのだが、妙だ。 "ちょっとぉ! この大事な時に艦隊を待機させるって、どういう事なの? ねえってば!" 今日の霞ときたら、いつまで経ってもこのように此方を急かそうとしないのだ。 どうしたかと悟られぬようにソファの霞に視線を向け様子を探る。 ソファに腰掛ける霞は膝上で小さく拳を作り、やや俯いたまま何処も動く気配がない。 おかしい。能動的な霞としては異常だ。 いや、能動的云々の前に像のように微動だにしないので機能停止していないか心配だ。 「霞!」 「っ、……何よ」 良かった。振り向いてくれた。機能停止してはいない。 いないが、反応が普段より遅い。寝ぼけているかもしれない。 自分は執務を取り止め、霞の手を引こうとした。 霞、少し運動しに行くぞ。 「え、う、嘘でしょ、いっ! たぁ……!」 「霞……!?」 自分はそれ程力を入れていない。 霞を立ち上がらせようと霞の手をくいと引っ張り上げただけなのだ。 しかし霞は、立ち上がったはいいが歩く事すらままならずその場で倒れこんでしまったのだ。 自分は咄嗟に屈んで霞を受け止め、床との衝突を回避させた。 だが、霞が苦痛に喘いで下腹部を抑えて蹲るその様子は、自分に良くないものだった。 脳裏に蘇る、夕べの記憶。 自分は霞を座らせ直してから、床に跪いた。 「霞、昨日はすまない……!」 「……思い出したようね」 最初から忘れて等いない。夢だと思い込んでいただけだ。 どうもおかしいと思っていたが、合点が行った。 自分の推測で補完すれば、霞は私が疲労で意識を失ってから後始末を行った。 動くのが困難になった霞は、このソファで眠りについた。 起床した私は忘れていると思い、食事もせずひた隠しにしようと嘘をついた……。 霞、何故責めないのだ。 霞を傷つけたのだ。 この罪はどうやっても償えない。 そうだ。せめて。 「責任を取って切腹を……」 「やめて!!」 私の自責の念は、霞の悲痛混じる大声で遮られた。 思わず顔を上げる。 霞は、見た事もない程顔にその感情を滲ませていた。 「あ……、なんでもないわ」 何故そんな事が言えるんだ。 何故撤回しようとするんだ。 霞は目を逸らして一つ咳払いをしてから、跪く私の目を覗き込むように顔を近づけた。 もう普段通りの吊り目が顔に作られていた。 「馬鹿でしょ。クズ司令官が死んだところで私にした事は消えないし、それに、他の艦の事はどうするのよ」 私より軍に向いているであろう士官なんかごまんといるだろう。 こうして艦娘に当たる自分よりマシな人間が後任に就く可能性は高いはずだ。 それに、死ねば消えると思って言っているんじゃない。 「責任取るって言うのなら、ちゃんと取りなさいよ。死ぬのは逃げの一手にしか見えないから」 それは……。 そういう考え方もできる。 私は納得してしまい閉口せざるを得なかった。 少しの沈黙が流れた後、霞は静かに口を開いた。 「昨日の話だけど、私は、あんたのやり方は嫌いじゃないわ。 私は別に、上の人間に従えって言ってるんじゃないの。 あんたはやり方が悪いんじゃなくて、やり方に見合った実力が足りてないだけ」 「だから、今は黙って私について来なさい。ガンガン行くから」 霞は、よく注意して見ないと分からない程度だが、私には笑っているように見えた。 嗚呼、優しさが身に染みる。少し優しさが過ぎるんじゃないか。 何故そこまで前向きに考えられるんだ。 全く、秘書はこんなにもできた艦なのに、昨日の自分は本当に何本螺子が飛んでいたのだ。 思えば、昨日の霞は単に私を励まそうと、慰めようとしていたに違いない。 自分が勝手に曲解して一人で暴れて霞をとばっちりに合わせただけなのだ。 阿呆だ。海軍軍人最大の阿呆だ。 そんな自分の部下である筈の此奴はこうも変わらず偉そうな口を叩くが、 実際それに見合った実力があるのだ。私とは違うのだ。 最早ついていけるか不安もあるが、ついて行ってやる。 霞らしくなくなってしまうから、待っていろ、とは言わない。 今は霞の背中を追うが、やがては追い付いて肩を並べ二人三脚が出来るくらいまで成長し、 あの憎たらしい大本営に勲章を出させてやるのだ。 私の戦いはまだまだこれからだ! 「司令官、何故今日は霞を負ぶっているのですか」 おはよう朝潮。 いや何、霞は昨日の夜戦で被害を受けてしまってな。 自身では動けないと言うからこうする事で秘書艦と行動を共にしているのだよ。 「ええっ! 霞は大丈夫なんですか!? それなら修復ドックに……」 修復ドックでも治せないんだ。しかしこうして私の背中にいればそのうち治る。 私の背中は特別な修復ドックでもあるのだ。すごいだろう朝潮。一隻限定だぞ。 「へぇー……!」 「朝潮、嘘だから真に受けないでよ」 違うと言うのか。 ならこの背中を降りて修復ドックに浸かるか? この問い掛けに、霞は返事をしなかった。聞こえていない振りか。 こうして私に身を委ねる霞の今の心境は如何ほどのものか。 きっと吐露しようとはしないだろう。 しかし、吐露してくれなくても分かる事はある。 霞は私の首に腕を巻き付けつつも、首が絞まらないように気遣ってくれている。 人の背中に体を預ける以上それは当たり前の事なのだが、 私に身を預ける事に何ら抵抗を示さないだけでも霞は私の事を蔑ろに思ってはいないと言う事だ。 私も吐露はしないが、昨晩あんな事をして置きながら態度を変えない霞が今は愛おしくてたまらなかった。 霞の嘆息をうなじで受けながら、私は霞と朝潮と共に食堂へ向かう事にした。 「あーもう、司令官が出来損ないのクズだと苦労するわ……」 177 名前:2-683[sage] 投稿日:2015/02/22(日) 08 02 55 ID G9FxYqM2 以上 15-188の続きみたいなもんで 霞好きな人を増やしたい 霞だって可愛いところはあるのよ 178 名前:名無しの紳士提督[sage] 投稿日:2015/02/22(日) 08 28 19 ID TKrX5a/c GJです! 179 名前:名無しの紳士提督[sage] 投稿日:2015/02/22(日) 10 35 55 ID Kw92rUww GJ。 霞は最近もっとあの隠れ面倒見の良さとか振り返られていいと思う これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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コン……コン。 控えめなノックが、執務室に漂う夜の静寂を打ち破った。 「入りたまえ」 僕は努めてぶっきらぼうに、ドアの向こうの気配へと声をかける。 「て、提督、失礼……します」 おどおどした様子のひとりの少女が、月明かりだけが照らす執務室の扉を開いた。 「い、磯波……です。ご、ご命令により……出頭いたしました」 消え入りそうな声で彼女は名乗り、執務室の入り口で敬礼をした。 僕が黙って頷くと、磯波は真鍮のドアノブを回し、静かに扉を閉めた。 しばし僕は、青白い月の光に浮かぶ磯波の姿をしげしげと観察する。 穏やかな波間を思わせる、三つ編みの黒髪。日々、遠征の任に駆り出されながらも白さを保つ若々しい肌。 膝より少しだけ高い、吹雪型のセーラー服から垣間見える、柔らかそうな太腿――。 普段彼女が足を踏み入れることも、いや、直接的に話したことさえも殆どない僕の部屋に 招かれた彼女は、いつにも増して小さく、儚く見える。兵装が完全に解かれている今は尚更だ。 現に、この部屋の中にいるのは磯波と僕だけだというのに、彼女は一向に僕と目を合わせようとしない。 照明が完全に落とされた執務室の中、磯波の長いまつ毛の奥にある瞳は、内股に寄せられたブーツへと 所在なさげに落とされたままだ。 ふぅ、と僕が大きくため息をつくと、それだけで磯波は細い肩をぴくっと躍らせた。 それでも僕は黙ったまま、磯波に更に視線を注ぎ込む。 「……ぅう」 磯波は、吹雪型が揃って纏うセーラー服の胸元の紐をいじりながら、チラチラと僕を見た。 僕からの一言を引き出そうと、必死のようだった。 海から吹き込む穏やかな風が窓から吹き込み、白いカーテンを揺らす。重たい空気の中、 時が確かに進んでいることを示すかのように。 だが、それでも僕は革張りの椅子に深く腰をかけたまま、彼女をじっ……と見つめたままだ。 磯波は、震えているようにさえ見えた。 「あっ……あのう……提督」 部屋の隅と僕の間を、まるでげっ歯類の動物のように素早く、しかし居場所なさげに視線を 揺らしながら、磯波がようやく唇を開いた。 「磯波に……何かご用でしょうか?」 彼女がこの鎮守府に配属されて2週間。僕は初めて、その声をまともに聞いたような気がした。 それは、本当に女の子らしく、か細く……そして消え入りそうな声だった。 仮に月が雲に隠れていて、磯波の実体が目の前に映し出されていなければ、耳に届いてさえ いなかったかもしれない。 磯波はそれ程までに控えめな声で、ようやく言葉を口にしたのだった。 僕はその声の余韻を耳に感じながら、彼女を手招きする。 部屋に入ってからというもの、一歩たりとその場を動かなかった磯波が、ようやく小股で 執務机へと近づいてきた。しかし絨毯が敷いてあるとはいえ、足音がほとんどしない。 意識的に音を殺しているのだとすれば、どれだけ自分に自信がないのだろうか。 ――もっとも、僕が彼女をこの部屋に呼んだ理由は、まさにそれなのだけど。 磯波は思った通り、執務机の前にたっぷり1メートルの間を取って、僕の正面に立った。 僕からは机を挟んで、ほとんど2メートルも離れていることになる。 「はぁ……」 予想はしていたことだが、僕は思わず2度目のため息をつき―― 「磯波?」 ようやく彼女の名前を口にした。 優しく名前を呼んだつもりが、彼女は身体を強張らせ、両目をぎゅっと閉じてしまった。 言い訳もできず、叱られるのを待つだけの子供のようだ。 「自分がどうしてこの部屋に呼ばれたか、分かっているかい?」 首を縦にも、横に振るでもなく、ますます磯波は体を小さく、固くしてしまう。 僕はほの暗い中、デスクの書類受けに手を伸ばした。 「磯波、配属されてどれくらいになった?」 「えっ?」 「二週間だ」 忠実な秘書艦娘が纏めた数枚のレポートをぱらぱらと捲り、そのうちの一枚を彼女の方へと差し向ける。 「見たまえ」 磯波はまるで危険な生き物にでも触れるかのように、コピー用紙におどおどと手を伸ばす。 暗闇の中では読みづらいのだろう、柔和そうな垂れ気味の目が細められ、書類を走った途端―― 「あ……ぅ……!」 磯波は驚愕とも恐怖ともつかない顔になり、そのまま硬直した。 「それは君の、ここ二週間の成績を纏めたものだが、見てのとおりだよ。残念ながら 、先輩諸氏のような戦績を残せてはいない。遠征にしても、作戦にしても、だ。分かるね?」 「は……はい……」 磯波はがっくりと肩を落としたまま、細い首を小さく縦に振った。 「同じ吹雪型と比較すると、なおのこと顕著だ。どうしてこんなに差が出るんだろうな? ん?」 月明かりのせいでなく、磯波の顔は、真っ青だった。 「あのっ……あの、提督……!」 磯波はレポートを持つ両手を強張らせながら、何かを伝えようと必死だった。 「これは……そのっ、私……」 「それに聞いたところによれば、何度か他の艦娘と衝突しかけたとか?」 意見しかけた磯波を、僕はより強い言葉で一蹴してやる。 「その衝突が原因で隊は陣形を乱し、結果的に燃料と弾薬を海中に失ったそうじゃないか……」 磯波は口を開いたまま、自分の意見を完全に失っていた。息をするのさえ忘れていそうだった。 「あの日は悪天候だったからな。遠征の報告書には、荒天に伴う高波の影響で物資を消失した、 とされていたよ。正式な報告書には、君の不始末はひとつも上がってきていない。言った通り、 あくまで『噂』だ」 磯波は魂が抜けたような、愕然とした表情のまま、何も映ってはいないであろう瞳をレポート用紙に 落としている。提督である僕と会話していることさえ、否定するかのように。 「だが、君の成績を見るにつけ、一度直接に確認しておかねばと思ってね。磯波、衝突は真実か?」 答える代わりに磯波は、よろけるように半歩、後ろに下がった。 「どうした磯波、答えたまえ」 「……う……わ、わた……」 「磯波! はっきり答えたまえ!」 焦れた僕は、少しだけ語気を荒げ彼女の言葉を再び遮った。それだけで―― 「くぅ、 う……」 どこまでも静まり返った部屋に、たっ、たっ……と、絨毯に雫が落ちる音が響いた。 磯波の、涙だった。 磯波は薄い唇を噛みしめ、必死に涙を堪えようとしている。しかしその意志とは裏腹に、 熱い雫が白い頬に幾重もの軌跡を描いては、カーテンを透かす星の光に輝いた。 「それが貴艦の答えか、磯波?」 僕は椅子から立ち上がると、磯波の方へとゆっくり近づいていく。 「その涙が、僕に対する答えだというんだな?」 静かな僕の怒声に、ひんっと磯波が子犬のように鳴いた。 そしてまるで磁石の同極のように、僕が近づいた分だけ離れようとする。 だが、逃がすつもりは毛頭ない。 「どこへ行くんだ」 磯波の細い手首を、僕はがっしりと掴む。 「いや……あっ!」 磯波はレポートを取り落とし、僕から逃れようと顔を背けた。 「その涙が何で出来ているか、分かって泣いてるのか! 答えろ磯波!」 「うぅっ、は、放してぇ!」 「貴艦が目からこぼしているそれは、何だと聞いてるんだ、僕は!」 抵抗しようとする磯波の手を振り払い、僕はもう片方の手で磯波のきれいに編み込まれた おさげを掴み、容赦なく引っ張った。 「きゃあぁぁ!?」 磯波の悲鳴と散らした涙がきらめいて、暗黒の絨毯へと吸い込まれていく。 「提督ッ! うあっ、痛い、いたいですぅっ!」 「まだ『無駄』にする気か、その涙を、あぁ?」 悲鳴を上げるのも構わず、僕は磯波の小さな耳を引き寄せて、息さえかかるであろう距離で言い放つ。 「貴艦が流しているそれは、戦列を同じくしている駆逐艦娘達が運んできた『燃料』だろうが!?」 抵抗する磯波の体から、ふっと力が抜けたのが、良く分かった。 「日々危険な海域を掻い潜り、やせ細る兵站を何とか維持しているのに……何だ貴艦は? 燃料一滴持ち帰れもせず、ロクな戦果も無いくせに、のうのうと補給まで受けて、更に無駄遣いか!」 返事がない中、「ふっ」と僕は小さく鼻で笑い、もう一言。 「磯波……我が鎮守府はね、常に逼迫しているんだよ。燃料も弾薬も……それに鋼材も」 力の抜け切った磯波の腕を放し、僕は頬を伝う涙を指で掬った。人間のそれと同じく、熱い。 「この涙さえ、一滴も無駄にはできないんだぞ?」 言って、朴は磯波の雫を口に含んで見せた。 塩辛く、ほのかに甘い味が舌に広がり、消えた。 「常勝無敗、そんなもの僕は端から求めていやしないさ。だがね、子供のお使いにも劣るような 近海の輸送任務も果たせず、あまつさえ味方に損害を与えてしまうような艦は……僕の手には 少々余ってしまってね」 「あ……あ、ぁ……」 「君の処遇は、試験運用期間の終わりを待つまでもなく決まりそうだ、磯波。貴艦の意向は既に伺ったしな」 「え……?」 顔を背けたままの磯波が、怯えきった表情で僕を見つめた。 「わたし……まだ、何も」 「何を言ってるんだ、貴艦は。僕は確かに『聞いた』よ?」 磯波の細い肩にぽんと手を突き、僕は笑顔で首を横に振った。 「僕の質問に対して、磯波。貴艦は無言だった。即ち衝突の一件は申し開きの余地無し、と。そうだな?」 ただでさえ青白かった磯波の顔から、さああっと音を立てて血が引いていった。 「ち、ちが――」 「磯波、貴艦は最期に正しい判断をした。衝突した艦を修理するために、自ら一肌脱いで――」 「だめっ……提督! い、嫌……いやあぁ……ッ!」 僕の最後通告は、磯波のか細い悲鳴にかき消された。 硬直したままだった磯波の身体が急にがくがくっ! と震えたかと思うと―― ぽたっ、ぱたぼた……っ。 スカートの下から漏れ出した雫が、絨毯に染みを広がらせていく。やがてその波は勢いを増し―― しゅわああ、あああ……。 あふれ出した温かな金色の流れが、湯気を上げながら絨毯へと降り注いだ。 太腿にも幾筋もの細かな流れが至り、紺のハイソックスをしとどに濡らしている。 「うぅっ、うううう~ッ……」 磯波は絶望とも、解放ともつかない声で呻いた。きつく閉ざされた瞼の間からも、まだ涙が溢れている。 僕がおさげを放してやると、磯波は自分の作った水たまりの上に膝を折りへたり込んだ。 まだ全てが出切らないのだろう。細い肩を震わせ、磯波は両手で顔を覆い、すすり泣いている。 「ふっ、何だ貴艦は。燃料タンクにも欠陥があるのか?」 たった今、体を離れたばかりの生暖かく、そして若々しい磯波のにおいを吸い込みながら、僕は笑う。 「貴艦の姉さん達が聞いたら、さぞ悲しむだろうね。それこそ姉妹などとはもう――」 「いゃ……です……! て、と……く……!」 磯波は顔を覆っていた両手で濡れたスカートの裾を握りしめ、僕を食い入るように見つめていた。 「提……督……! 磯波の、お願いです……!」 そして涙に揺れる瞳に、ありったけの哀願と崩壊寸前の理性を浮かばせ、 「か、解体だけは……どうか……許してください……! えぐ……ひうっ……うぅぅ……」 何とかそれだけを言い切ると、磯波は天井を仰ぎ、静かにすすり泣き始めてしまった。 「すんっ……まだっ、まだ、磯、波は……うあぁ……あぁ……ぁぁ……」 僕の乱暴な扱いに抗ったからだろう。セーラー服はすっかり着崩れ、さらけ出た肩が夜風に震えている。 月夜に照らされながら細い顎を上げて涙にくれる磯波は、船首をもたげて静かに沈んでいく軍艦を思わせた。 磯波は、完全に堕ちかけていた。このまま放っておけば、手を下さずとも次の作戦あたりで 沈むかもしれない。 静かに彼女が朽ち果てる姿を見ていることもできる。だが、僕はそうはしなかった。 ――そうしては、意味が無いのだからね。 「磯波……解体は、嫌か?」 磯波はうっすらと黒い瞳を開き、言葉を知らぬ子供のようにこくっと頷いた。 まだ、魂は生きているようだ。そこは艦娘、歴戦の軍用艦の名を引き継ぐ少女達である。 「そうか……だが磯波、僕は貴艦を今のまま運用することはできない。故に『改造』する」 「かい、ぞう?」 「あぁ、そうだ」 言いながら、僕は磯波の前にしゃがみ込んで視線を同じくした。 「磯波……人にも艦にも、『向き不向き』がある。僕は貴艦らのようには戦えない。しかし、 貴艦らを率い、深海棲艦に立ち向かう術を与えることはできる。『適材適所』とでも言おうか」 「はい……」 磯波は時折しゃくりあげながら、涙声で応じる。僕はゆ磯波が落ち着くのを待ち、続ける。 「磯波、君は艦娘ではあるが、今はたまたま、戦いに『向いていない』だけかもしれない。 ならば、貴艦は生まれ変わらねばならない。貴艦が建造され、進水され、この鎮守府に就役した ことに、意味を持たせる。それは貴艦を『改造』する事のみによって成し得ることだ。分かるね?」 「は、はい……!」 磯波は若い。蒼白だった頬に血色が戻り、何も知らない子供同然の瞳に、月と星の光が再び 差し込んでいる。暴れて着崩れたセーラー服の奥で止まりかけていた心臓が強く動き出して いるのが手に取るように分かった。 僕はよし、と小さく頷く。 「磯波、では早速だが、改造の儀式に移る。深呼吸して、息を整えろ」 「はい、提督!」 磯波は袖で顔を拭うと、言われた通り、二度、三度と胸を開いて大きく息を吸い、少しむせながら 吐き出した。 「よおし、いいだろう」 僕は人差し指を柔らかな磯波の頬に寄せ、拭いきれなかった涙をそっ……と掬い取る。 そしてその指を、ゆっくりと磯波の鼻先へ。 「磯波……目を離すな。僕の、貴艦の提督の、人差し指から」 「はい……」 磯波の黒目がちな瞳が、しっかりと、僕の指先を捉えている。 「貴艦を改造する第一歩、それは、貴艦自信をよりよく知ることに他ならない」 「はい……」 僕はその視線を試すように、ほんの僅かに指を右へ、左へと動かしながら、静かに囁く。 「磯波、僕はこれからひとつ質問をするが」 「はぃ」 「貴艦はその答えを、もう知っている。僕は既に、貴艦に答えを与えている。磯波……いいね?」 「は…………ぃ」 極度の集中からか、磯波の表情は虚ろになりつつも、その唇は既に僕がこれから命じようと してることを鋭敏に察していた。 僕は磯波の正中で、ぴたりと指を止め、問う。 「磯波……貴艦の身体から零れた『これ』は、何だ?」 磯波は答えるよりも早く、そっと唇を開き―― 「んっ……」 僕の指を、優しく暖かな口の中へと運んで、ちゅぱっと涙を舐めとった。 「ん……ふっ……。『これ』は、皆が運んでくれた……燃料、です……提督」 「良い娘だぞ、磯波」 優しく頭を撫でてやると、雲間を抜けた月の光が、ふっと強まった。 カーテン越しに届くその静かで鮮やかな白に照らされた磯波の表情を見て、僕は少し驚いた。 磯波は、笑顔を浮かべていた。 「あ、ありがとうございます、提督……」 思わず細められた磯波の眼から、悲しみや恐怖とは違う涙がこぼれる。 「おっと、磯波?」 「も、申し訳ありません……れろ……んちゅ」 咄嗟に僕が手で受け止めたそれに、磯波は躊躇なく滑らかな舌を這わせ、丹念に舐め取る。 「は、初めて……だったので、つい」 「何がだい?」 「そのっ、提督に……褒められたのが」 磯波は僕の手を取ったまま、はにかむように小さく、口もとだけで笑った。 瞳からまた涙がこぼれるのを防いだつもりだったのかもしれない。 ――成程、健気で……想像以上に早い『仕上がり』だな。 「磯波……!」 次の段階の到来を感じた僕は、へたりこんだままの磯波の足元へと手を伸ばした……。磯波ちゃん×提督6-853に続く