約 1,321,896 件
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/729.html
669 :練習は大事だと感じた日―バレンタイン編―:2016/02/14(日) 18 54 45 ID 9VTy/C22 2月14日は…… 「ビスマルクと伊良湖の誕生日だったよな、今日は」 戦艦ビスマルク、及び伊良湖の進水日であり、 同時にその艦の力を行使できる艦娘の誕生日でもあった。 「そうか。後で何かあげないとな」 「瑞雲でも送るのか日向」 「まあそうだな。君は何を?」 「提督として間宮のタダ券をあげたよ」 「そうか。ところで鹿島の姿を見ないが彼女はどうした?」 「鹿島は挨拶に来た新艦娘達と話をしているよ」 だから始業前の準備は日向に手伝ってもらっていたのだ。 「特訓を終えて正式に艦娘となった者達か……」 「最近は作戦にあわせて正式な艦娘として登録されるからな。 昔は作戦以外の時期にも正式な艦娘が誕生していたからな。 それとイタリアから日本にやって来た艦娘も一人いる」 「そうか。ところで今朝入ってきたニュースだが、霞達が大活躍をしたらしい。 詳しい話はまだわからないがこの鎮守府から出撃した艦娘達が活躍するのは鼻が高いな」 「そうだな。みんな若いのによく頑張っている。 それに比べて何も出来ない俺ときたら…」 「みんな若いって……君も今年三十になるところではないか」 「だけど俺は彼女達と同じような年齢だった頃には今程真剣に生きていなかったから、 幼い頃、若い頃からしっかりと立派に頑張って輝いている彼女達を見ていると 何の考えもなく生きてきた昔の自分が情けなく思えてくるよ……」 「昔の事を悔やんでも仕方あるまい。 それに今でも大きな鎮守府を統括する提督としては十分すぎるくらい若い」 「だが人間というものは無い物ねだりでさ… 俺はやはり若い頃から活躍した、って事に憧れてしまうものだ。 自分が出来なかった事…というかどちらかというと 人生の一番大事な時に回り道ばかりして生きていた事が悔しいんだ。 駆逐艦娘達はみんな艦娘としての業務をこなしながら、 学生としての本分も立派に果たす優秀な子達ばかり。 今の俺はすべき事が提督としての仕事だけであるにもかかわらず 一ヶ月経った今でも一人ではほとんど出来ない始末…… 昔からもっとちゃんとやっていればこんなに苦労はしなかったろうな……」 相手が鹿島じゃないからか愚痴をこぼしてしまっていた。 もし鹿島相手だったなら弱みを見せていないだろう。 「……まるで五月病だな」 「今は二月だぞ」 「五月病は四月に新しい環境に入った人がなりやすいものだ。 君は提督になって約一ヶ月。五月病になる条件と同じだ」 「まあそうなるな」 「確かに未だに一人だけではこなせないが状況を考えれば仕方あるまい。 それよりも過去をただ悔やむのではなくこれからをどうするのかが大事だろう」 「理屈じゃわかってるけどな……」 「……君がここに来るまでに通ってきた道は寄り道や回り道だったかもしれない。 だがもしその道を通らなければここに来ることはなかったと考えたら……」 「ん…………ああ……」 日向の言う通りかもしれない。もし昔の俺が自分の将来を考えて、 真剣に生きていたとしたら鎮守府の一員となり、 そして提督になるという人生とは違う人生を歩んでいたかもしれない。 他に生きる方法ができたのなら間違いなくそちらの生き方をしたはず。 「塞翁が馬と言うが、人生というものは何がどう転ぶのかわからないな。 寄り道や回り道だって自分の望んだ幸せとは違ったものとはいえ 別の幸せへと向かう道だったと、そう考えなければやっていけないな」 「まあそうだな」 「悩んでる暇はない。今日は新たなる艦娘と会うんだ。 気持ちが沈んでちゃみんなを不安にさせてしまう。頑張らなきゃな」 俺は気合いを入れた。新たなる艦娘達に悪い印象は与えられないからな。 そうこうしているうちに時間が来た コンコン 「鹿島です。三名の艦娘をお連れしました」 「わかった。入っていい」 「失礼します」 そう言って鹿島がドアを開けて司令室に三人の艦娘を連れて入ってきた。 「君達がこの度新たに艦娘となった子達、 そしてイタリアからやって来た子だね」 「はい。私は夕雲型駆逐艦、その十四番艦の沖波です。 えっと…はい、頑張ります。よろしくお願い致します!」 まず沖波という少女が名乗った。 眼鏡をかけていて少々おどおどとした感じだが、 精一杯頑張ろうとしている姿勢が伝わってくる。 俺もよろしく頼むと返して次に沖波の隣の艦娘に顔を向けた。 「秋月型駆逐艦、その四番艦、初月だ。お前が提督か」 「ああ」 「ちょ、ちょっと、初月!?」 「気にしないでくれ。『お前』という言葉そのものは 本来は相手を敬っている意味合いの言葉だ」 「そうなのか」 「ああ」 驚いた沖波だけでなく初月自身も言葉の意味を知らず、 一般的に使われる意味合いで使っていたようだ。 「駆逐艦初月はその活躍や最期が正にストロンガーと言わざるをえない艦だ。 君も初月の名に負けぬ活躍をするよう期待しているよ」 「言われなくてもそのつもりさ」 そして俺は最後に初月の隣の子に顔を向けた。 「イタリアから参りました、ザラ級重巡洋艦、その一番艦、ザラです。 巡洋艦同士の昼間水上砲戦なら、誰にも負けない自負はあります」 見た目からして日本人離れしているこの子はイタリアから来た艦娘ザラである。 ザラは駆逐艦の二人とは違って前々から艦娘だった。 「君は艦娘としての経験はかなりあると聞いたが 日本での本格的な活動は初めてだろう。 君も、新人の二人も、これから共に戦うのだ。 互いに色々と知っておくべきだと思い会食の場を設けた。 そこまで案内しよう」 俺達は三人を連れて鎮守府の大食堂に行った。 「対空に優れた秋月型駆逐艦…いつか手合わせをお願いしたいです」 「提督からストロンガーだとか言われていたけど、 なんだか改造人間みたいな異名ね」 「そりゃあ駆逐艦なのにこんなポディ、 改造でもしたんじゃないかって思いたくなるわよ」 「ず、瑞鳳さん、そういう意味じゃないと思います…」 初月は武勇艦である。その為か他の艦娘達の興味を引いていた。 「まるでライダーみたいですね」 「ずばりライダーを指すぞ三日月」 「えっ。でも駆逐艦初月は仲間を逃がす為に たった一人で艦隊に立ち向かい、そして沈んでいった……。 でもストロンガーがそうしたという話は聞いたことが…」 「20年ちょっと前に児童誌に載ってた漫画でな、 脱出するV3達を守る為に一人ボウガンで戦うも弾切れし、 自身は戦闘員のボウガンで撃たれるも それでも倒れる事なく守りきり死んでいったんだ」 「ヒーローが死んじゃうとかどう考えても児童誌に載るような話じゃありませんよ」 「しかもSDだ」 「よくもまあそんな話……昔っておおらかな時代でしたねえ……」 「…………」 「あっ、ごめんなさいね。提督はこういった例え話をよく用いりますから…」 「…鹿島から聞いた通りの人ね。だけど提督としての能力はどうなのか。 私にはあなたは提督としてまだまだだと感じます」 場を凍り付かせるような言葉を口にしたのはザラだった。 「ザラさん」 「日本の中心にあるこの鎮守府は大きな工業地帯の守りも考えて作られたと聞きます。 ならばそこを総轄する者には優れた能力が必要なはずです」 「あんたに提督の何がわかるってのよ!」 俺の能力を不安に思っている (そしてだいたいあってる)ザラに対し 曙は反発の言葉を述べた。 「最近提督となった事は知っています。 この鎮守府の前の提督はイタリアの鎮守府でも名が知れた方でした。 その提督の後任であるこの提督も素晴らしい提督かもしれないと思っていました。 鹿島が恋に落ちて結婚することを決意した相手ですから とてもすごいと感じられるような人だと思ってました」 「司令官に何か落ち度でも?」 「落ち度はありません。人間的にもいい人とは思います」 「そもそもあんたは提督を評価できるほど一緒にいたわけないでしょ! ちょっとの時間で全部を判断されてほしくないわよ!」 曙の言った通りザラは今日初めて俺と顔合わせをした。 事前に話を聞いていたとしても直接目にする機会はなかったはずだ。 他所の鎮守府に知られる程の功績も落ち度も何もない。 「確かに。ただ今は彼からはすごいという印象を感じられないだけです。 仕事をしている姿を見れば少しは違った印象を受けるでしょうけど…… 鹿島が信じた人だから、私も提督の力を信じたいのです……」 仕事をしている姿を見せても彼女が少しは認めるくらいのレベルに 能力が現時点で達しているという自信は今の俺にはなかった。 仕事は大淀に支えられながらであればかなりこなせたものの 大淀が礼号作戦でこの鎮守府にいない今、 鎮守府の機能は十分に発揮されているとは言えなかった。 艦娘達の戦闘訓練の時間を削って仕事を手伝ってもらい 何とか十分に発揮出来ている状況である。 提督として情けない俺だが、経験不足を言い訳にする事も出来ない。 俺を選んでくれた人、支えてくれる人に申し訳が立たないからだ。 俺の気分がよく沈むのもそういった事が関係していた。 「ところでさ…あんたさっきから鹿島鹿島と馴れ馴れしいんだけど あんたは一体鹿島の何なのよ!?」 「……曙ちゃん、ザラは私の昔からの友達なの…」 「昔からの…友達…」 「私達が艦娘になるずっと前、子供の頃からの親友なの」 「子供の頃からの親友?」 「ええ…私は小さい頃から旅行が好きで… イタリアに行った時にザラと知り合って、友達になったの。 それからずっと親交を深めていたわ。 艦娘になる前も、なった後もずっと…… みなさんごめんなさい……ザラが楽しい雰囲気を壊しちゃって…… 彼女は本当はとてもいい子なの……」 「わかってるよ。鹿島が親友って言ってたくらいだしさ。 だけどザラの気持ちもわからなくはない。 自分の友達がもし変な奴との付き合いがあったら…… そう思って心配する気持ちとか、 変な奴に対して何か言いたくなる気持ちとかもわかるよ」 「へ…変な奴だなんてそんな…」 「それにザラは別に俺の事を悪いと言ったわけじゃないし、 少なくともまだ俺に期待して発破をかけてくれているみたいだしさ。 もし問題があるのならどんどん言ってほしいものさ」 「……………提督………」 「ザラ…」 「やっぱり鹿島は間違っていなかったみたいね… …私もあなたに期待できます……」 俺を認め始めるような事を言ったザラはみんなの方に向いた。 「みなさん、このような楽しい場を壊してしまって本当に申し訳ありませんでした」 自分の軽率な行動が雰囲気を壊してしまったと思ったのだろう。 自らの非を詫びる彼女に他の艦娘達もザラを責めようとはしなかった。 こうしてまた楽しい会食は再開されたのだった。 会食が終わり、俺達は午後の仕事が始まる前の小休止をとっていた。 「提督さん、本当にごめんなさい……」 「鹿島、君が謝る事はないだろう。 確かにザラは感情的になってしまったのだろう。 だけどそれは俺と一緒にいる君を心配してつい言ってしまったのだろう。 感情的になった面こそよくなかったが…いい友達を持ったな鹿島」 「すみません…」 「提督、チョコレート…って鹿島さんすみません」 「いいのよ。私に気にしないで」 「すみません…………司令官さん、チョコレートです」 俺は艦娘達からチョコレートをもらった。 他の事務員他裏方スタッフはチョコの代わりに喫茶店のスイーツ無料券をくれた。 これで鹿島をデートにでも誘えと言いたいのだろう。 「あ、これは大淀と足柄からの贈り物です」 「これは……」 袋の中は箱以外にボトルっぽいのもあるみたいだけど何だろう… 「そうそう。提督、私達は気の利いたお返しは望んでませんから。 鹿島さんへのお返しのためだけに気を利かせてくださいね」 「ありがとう」 「ところで鹿島からチョコレートを貰いましたか?」 「いや、まだだけど……」 「まだなのですか?ねえ、鹿島さん。どうして提督に一番にあげないの?」 「だってチョコレートをあげるにもタイミングがありますし…」 「あなたは午後からザラさん達を次の鎮守府まで護衛をするのでしょう」 「でもここからそんなに離れてませんから今日中には…」 「何かあって今日中にここに帰って来れなかったらどうするのよ。 さっさと渡してあげなさいよ!」 「は~い」 「不満そうな顔しない」 「別にあげたくないわけじゃありませんよ。タイミングというものが…………」 鹿島は少し不満そうだったが、一旦間を置いて、 笑顔で、でも少し恥ずかしがって緊張しながら 赤いリボンでラッピングされたピンクの箱を俺にくれた。 「ありがとう」 「どんなチョコレートでしょうかねえ。提督、開けて食べてみてください」 「い、今!?明石さん、ちょっと!?」 「鹿島さん、何を慌ててるんですか?」 「そ、それは…」 「今食べられてまずいことでも?」 「その……提督さんが食事を終えてからまだそんなに時間が…」 「甘いものは別腹というだろう。それだって限度はあるけど、 昼食も少なめにとったからチョコの一つや二つは大丈夫だ」 「………どうぞ……」 鹿島は観念したかのような顔だった。 一体なんでそういう態度を取るのかわからないけど、とりあえず俺は箱を開けた。 「これ、パンですか?形はシンプルにハートマークですけど色は茶色… っていうか珈琲の香りがしますよ」 「うむ……ああ、これはサンドイッチだな。中にチョコレートが挟まっている。 鹿島らしいアイデアだな。んじゃ、いただきます」 俺は鹿島の珈琲パンのチョコレートサンドを食べた。 「………どう……ですか…………」 「うん、おいしいよ。チョコレートはちょっと変わった味だけど別に妙な味ではないな。 甘さにくどさがなくてコクも柔らかさも調度良い。 それに珈琲の苦味がチョコレートの甘さを調度よく引き立てていておいしいよ」 「よかったぁ……」 「本当によかったですね鹿島さん。でも変わった味ってどんな味ですか?」 「どんな味って………栄養ドリンクっぽい気がしたよ」 「栄養ドリンク?ひょっとして鹿島さん、ユンケルでも入れましたか?」 「………うん……」 漣の問い掛けに鹿島が恥ずかしそうに答えた。 漣がユンケルと断定的に言ったのは 鎮守府がコラボしたコンビニでユンケルを買うと店舗ごとに先着十数名に 鹿島のタペストリーが貰えるキャンペーンが明後日からあるからだろう。 ちなみに鹿島がコラボした見返りにもらったというわけではなく、 ユンケルってどんなのかなあと思って試しに買ってみたらしい。 「あらら?冗談のつもりでしたのにまさか本当にそうだったなんて。 でも、入れたのはともかくとしてどうして今食べちゃ駄目だったのですか。 夜に渡そうとしてたみたいですし、ひょっとしてまさか…」 「あの、チョコレートは何を使いましたか」 このままだとたたならぬ事になりそうだったからか、 伊良湖が話を逸らそうと鹿島に話しかけた。 「何を使ったって…」 「レシピが知りたいんです。今後の参考にしようと思って… とりあえずチョコレートは何を使いましたか?」 材料やレシピが知りたいというのも伊良湖の偽らざる本心だろう。 彼女の料理人としての好奇心と向上心はかなりのものである。 「チョコレ~ト~は~明治」 「マージか」 「………………」 「………………」 つい駄洒落を飛ばしてしまったが、 みんなの顔を見るにどうやら通じなかったようだ。 「…………あっ、もうすぐ12時30分だ!早くしないと!」 壮絶に滑った俺は誤魔化すかのように言った。 実際に時間が迫っていたのもあったが、 状況が状況なだけに誤魔化したように思われてるだろう。 「あっ、そうね。もう行かなきゃ!伊良湖さん、レシピはまた今度ね」 「わかりました。それではお気をつけて」 俺達は別の鎮守府へ三人の艦娘と共に出発した鹿島達を見送り 午後からの仕事に取り掛かり始めたのだった。 午後六時。今日は日曜日であった為五時半頃に仕事を中断し、 恒例である笑点を見ながら夕食をとっていた。 もちろん緊急事態があればこんな事はしていられない。 「煮干しのお吸い物、どうでしたか?」 「大根に煮干しの出汁がきいていて中々だったよ」 「お口に合ってよかったです」 伊良湖はほっとした表情だった。 「でもどうして煮干しの出汁汁に大根だけなんですか?」 「今日はふんどしの日であり、煮干しの日でもあるからな」 「??……煮干しはともかく、大根と褌に何の関係が……」 「……昔とある勇者がふんどしともいえるような踊り子の服を見て興奮し、 仲間から落ち着けと言われてとった行動が 『ふんどし!』と言いながら大根を掲げた事だったんだ」 「はぁ……」 伊良湖はよくわかってないような顔だった。 元々みんなが知ってるような話ではない事くらい俺だってわかっている。 このネタがわかる奴はおっさんだろう。 「それにしてもずいぶんと元気になったな。 昼前までは少し暗かったが今はもう大丈夫みたいだ」 「日向や鹿島、ザラ達のおかげだ」 「私達のおかげ?」 「君達に言われた言葉とか、鹿鹿島の存在とか、 そういった事があって気を持ち直せたよ。 寄り道や回り道ばかりしていた俺にかけてくれた日向の言葉、 そして鹿島が俺にチョコを渡す時に言ったタイミングという言葉…… その二つが繋がって俺を前に向かせてくれた」 俺が鹿島と結ばれる事ができたのも言ってしまえばタイミング… その『瞬間』何をするかしないかの判断がよかったからだろう。 俺が一度は新泊地に着任する事になると知らされた時、 鹿島が勇気を出して俺をデートに誘い、 俺が怖じけづく事なく彼女の誘いに乗り、 そして互いの包み隠した気持ちのぶつかり合いの末に 勇気を出して本当の気持ちを伝え合い、そして結ばれた………… もし鹿島が本当の気持ちを打ち明けなかったら。 もし俺が怖じけづいて鹿島の誘いを断っていたら。 もし鹿島が俺を誘わなかったら。 もし俺が新泊地へ行かされると聞かされなかったら………… 小さい頃からの俺の数々の行動は数センチのズレとなって重なり合い、 幼い頃に思い描いていた幸せからは離れてしまったが それがなければ今ある幸せは手に入らなかったかもしれない。 数センチのズレを重ねて向かった今の幸せ… 一度数センチのズレを重ねてしまい幸せから遠ざかってしまったゆえに これ以上ズレてはいけないと思い、 懸命に動いた為に幸せから遠ざかるという過ちを繰り返さずに済んだ。 まあ結局新泊地へは俺が行く事はなく、 鎮守府提督という今に至るわけだが。 「かつての大平洋戦争は多くの悲しみを生み、あらゆるものを破壊した。 もし戦争がなかったら失われた芸術や文化、技術とかもなかっただろう。 だが戦争があったからこそ結果的に生まれたものだってある。 俺達とてあの戦争がなければこの世に生まれて来なかった可能性もある…… だからといって戦争を肯定できるものではない。 確かにその過去があったから現在というものがある。 だけど過去の出来事という変えようのないものは 肯定するものでも否定するものでもなく、 これからをどう生きるかという事を学ぶべきものだと思う。 日向が言った事、鹿島が言った事、 そしてザラが言った『鹿島が俺を信じている』という言葉…… それが俺を前に向かせ、今をどう生きていくかという事を教えてくれた。 暗い気持ちで生きるなんて俺を信じてくれる大切な人である鹿島を 俺が信じていないって事にはなりたくないしさ」 「……迷いは消えているみたいだな。今の君の目はとても輝いている」 「朝はすまなかったな日向。愚痴を聞かせてさ…」 「気にするな。君が立ち直ったならそれでいい。 鹿島には聞かせられないようなことだってあるだろうし、 何事も一人で抱え込んでいいというものでもない」 「ありがとうな。二人とも、今日はもう仕事を終わっていいぞ」 「提督、君はどうするのだ?」 「俺は鹿島が帰ってくるまで仕事をしているよ。 彼女が帰ってきた時に報告するべき相手がいないんじゃ可哀相だしさ」 「そうか。だが無理はするなよ」 「もしお腹が空いたら、私が何かお作りしますね」 日向達を見送った俺は再び仕事を始めた。 そして仕事をすること約3時間………… 「提督さん、鹿島、ただいま戻りました。 艦娘三名、無事送り届けました」 「ご苦労様だったな。おかえり」 鹿島が帰ってきたのは夜の9時だった。 「本日の仕事はこれで終了だ」 「お疲れ様です。これからどうしますか?」 鹿島が期待に満ちた目で俺を見つめていた。 「これって……コンドーム…ですよね……? それと……チョコローション……」 『夜戦』前に大淀と足柄がプレゼントしてくれた袋を 開けてなかった事を思い出して開けたが中身はこの二つだった。 「大淀さんに足柄さん……ナニを考えているんでしょう…… 家族計画は私たちが考えることなのに……」 「それだけ鹿島の力はここになくてはならないものだという事かもしれないな……」 「チョコレートの香りがするローションか… コンドームもチョコレートの香りがするらしいし……」 「……もしかしたら避妊どうこうというよりも コレで夜戦を楽しんでってことなのでしょうか?」 「そうかもな」 避妊とか感染予防が目的ならわざわざこんな事はしないだろう。 最初から普通のコンドームを普通に渡せばいいだけの話だ。 「……たまにはこういうのもいいでしょうね。 それじゃ私が付けてあげますから準備してくださいね」 「よし」 俺は彼女の下の口に食べさせようとずっと大きくなっていたチ〇コバナナの皮を剥いた。 「いきますね。ん……」 「おうっ!?」 「な、何か!?」 「いや、少し驚いただけだ…」 「えっちな漫画とかで見たことを真似してみようと思って…」 彼女がどんなエッチな漫画を読んでいるのかは知らないが、 俺が読んだ事があるようなエロ漫画ではほとんど… というか全くといっていいほど見ない。 ゴムを着けるシチュエーションさえもレアなのに 口でゴムを着けるなんて更にレアである。 「いけなかったかしら…」 「そんな事はない」 「よかった。それじゃもう一度…」 気を取り直した彼女は俺のチ〇コバナナにゴムを口で着けた。 チョコレートの香りがするゴムは色合いこそやや薄い茶色だったが、 俺のチ〇コバナナに被さっているのを見ると チョコプレッツェルを若干彷彿とさせた。 「美味しそう……」 物欲しげな目をしながら彼女は呟いた。 美味しそうと評した俺のチ〇コプレッツェル… …ボッキーを食べたくて彼女の口が涎を…… 「ん……ちょっとまだ……」 あまり垂らしていなかった。十分に濡らさないとマズイ。 こちらはゴムをしている以上カウパー液による潤滑効果にも頼れない。 「このローションも使ってみるか」 「使ってみましょ。せっかくのバレンタインなんですから」 プレゼントされたチョコローションが早速役に立つ。 俺は彼女の下の口にローションを注ぎつつボッキーにも満遍なく塗り、 彼女の下の口に指を入れて確認した。 一本………二本………三本…………行けるはずだ。 「俺のボッキー、存分に味わえよ」 「ええ、それじゃ、いただきますね」 にゅるりっ 「やんっ!?だからっていきなり…」 俺もここまでいきなり全部入れるつもりはなかったが ローションのおかげか予想以上にすんなりと入っていった。 もちろん今までの積み重ねも大きいだろう。 去年のクリスマス…彼女が全く男を知らなかった頃に 同じ事をしても初めての行為に緊張してしまってこうはならなかっただろう。 約二ヶ月近くの間に幾度も互いの愛を確かめ合ってきたからこそ 彼女は今こうして苦もなく俺を受け入れられるのだ。 「…あの…どうしましたか?気持ち良くありませんでしたか?」 「あ、いや、君があんな声をあげたからちょっと…」 確かに今までとは違って気持ち良さは感じにくい。 しかしそれはゴム一枚を隔てて触れ合っているからであり 決して彼女に問題があるわけではなかった。 「少し驚いただけです。痛くも苦しくもありませんから、どうか…」 「わかった」 彼女に請われて俺は早速腰を動かしボッキーを擦らせた。 にゅるっにゅるっにゅるっ 「やっ、いつもとちょっ…違っ…けど気持ちいいですっ!」 ローションのおかげかいつもより滑りが良い。 それに俺からしたら感覚を鈍らされてるようなものだが 彼女からしたらいつもと違う感覚という事だろう。 ならそれでいい。彼女が気持ち良くなっているなら俺の事など。 パンッ、パンッ、パンッ! 「いつもより…激し…です…っ…」 ローションが彼女への負担を減らしていた為、 俺の腰は欲望を全開にして激しく動いていた。 ゴムによる感覚の鈍りこそあったが、 いつもより激しいピストン運動による刺激が俺の性感を補っていた。 「ごめん、そろそろ…」 「くっ……いいです…先に…イッても………」 彼女のその言葉に俺の我慢は解かれた。 俺は無駄と知りながらも一番奥までボッキーを突き入れた。 どくんっ 俺は射精した。しかしチ〇コバナナはコンドームに包まれている為、 行き場のない精液がゴムの先端に溜まって… 「あ……びくん…びくん…ってして…… お腹の奥……あったかぁい……」 「え…」 俺は思わずボッキーを彼女から引き抜いた。 びゅるん、ポタッ…びゅるん、ポタッ… なんという事だ。ボッキーの先っぽが溶けていたかのように チ〇コバナナの中身が剥き出しになっていた…… ……要するにコンドームの先端が破れてしまっていて、 抜いたチ〇コバナナから放出された温かい特製ホワイトチョコが 彼女のお腹の上に吐き出されていた。 予想外の出来事に二人とも呆然とする事しか出来ず、 放出が終わった後も沈黙が支配していた。 「……ごめんなさい、私が練習もせずにえっちな漫画の真似をして コンドームを口で着けるなんて真似をしたからこんな事に……」 先に謝ったのは彼女の方だった。 「……よくよく考えたら俺達は結婚していたわけだろう。 コンドームが破れてしまって思わず動転してしまったけど 前々から何回も生でしていたわけだしさ」 「あ…………それもそうでしたね…………」 達した為に賢者タイムとなった俺は いち早く冷静になって彼女を落ち着かせた。 「……もう一回できませんか……今度は生でしてほしいです……」 「いいよ。君も俺もまだまだ不完全燃焼だろうしさ」 「いいんですか!?体は大丈夫ですか?」 「君がお昼にくれたユンケル入りの特製チョコの珈琲サンドイッチで、 今日の仕事も捗っていたし、『夜戦』だってまだまだ頑張れるさ」 「本当ですか?よかったぁ……」 彼女の安心した笑顔を見ていると 本当に彼女と結婚してよかったという事と これから頑張らなきゃという事を思った。 「艦娘はストレスが溜まりやすくて、 成長期の子達の成長が鈍くなることもありますけど 大人でも生理不順になって排卵日を特定できなくなっちゃいますから やれることはできる時にできるだけやっておきたいです。 あなたは一人っ子でしょう。だから、少しでも早く お義父様とお義母様を安心させてあげたいし……」 「俺もできる時ならしたい。さあ、本番……始めるぞ」 今日は2月14日だ。煮干しのように枯れ果てたって構わない。 俺達は恋人の日の夜戦を心行くまで愉しんだのだった。 《続く》 + 後書き 685 :名無しの紳士提督:2016/02/14(日) 19 26 34 ID 9VTy/C22 以上です まさか鹿島に完全書き下ろしな限定グラが突発で来るとは思いませんでした どうにか限定グラの要素も話の中にちょこっと入れれました 16日からのローソンのフェアは深海棲艦との戦い以上の激戦となるでしょうね 提督とテンバイヤーの熾烈な争いが間違いなく起こるでしょう バレンタインの話なので当然ホワイトデーの話に続きます これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/684.html
325 :幼妻大鯨ちゃん:2015/07/07(火) 21 33 39 ID ydASYHzY 七夕に合わせた話を投下します 今回も独自設定とか艦娘論とかが多くて エロが少なめですのでNGはいつものでお願いします ある日の朝、俺は葱を切っている音で目が覚めた。味噌の匂いがした。 「…………おはよう」 俺はまだ少し眠たかったが布団から起き上がった。 「おはようございますう」 そこにいたのは愛する妻だった。 幼さを醸し出している顔と声からは想像できないほどスタイルのいい女性だ。 彼女は一見するとおしとやかな美少女に見えるが、第二次世界大戦を戦った航空母艦龍鳳、 その前身となった潜水母艦大鯨の力を宿した艦娘だ。 「昨日は遅かったみたいですからもう少しお休みになられたらいかがですか?」 「いや、今日は大事な行事がある日だからいつまでも寝ているわけにはいかん」 「そうですか…………まあ今五時半ちょっと過ぎですから別にいいでしょうね。 でも夜は早く寝てくださいね。自分の体をもっと大事にしないと……」 心配そうにする妻を見て少し心が痛んだ。俺は身支度をし、 朝食が用意されたちゃぶ台の前に座り、味噌汁を啜った。 「ん?これ、まさか去年みたいに…」 「ええ。生姜を少々入れました」 ほのかな生姜の味が再び活力を与えてくれるようだった。 「あなたに初めて褒めていただいた思い出のお料理です」 『インスタントの味噌汁でさえこんなに美味しく作れるなんて、大鯨は将来きっと…料理で人を幸せに出来るだろうな』 そう、去年の今日の朝そう言った事もあった。いいお嫁さんになれそう、と言いかけたのは内緒だ。 「………うん、出汁が効いていて美味しいな。 去年の工夫を凝らしたインスタントの味噌汁も美味しかったけど、 材料から作った味噌汁は格別だな」 「お口に合ってよかったです」 彼女の笑顔に俺の心も緩んだ。誰かと自分の空間で朝ごはんを再び食べるようになって調度一年。 それから毎日朝ご飯を彼女と一緒に食べている。 一緒に暮らすようになってからも、そして結婚してからもずっと。 ずっと一緒にいるわけだから良いことばかりではなくちょっと悪い事もあるだろう。 他人に気を使うことは煩わしい事であるかもしれない。 だが彼女にそのような感情を抱いていたとしても、 一人の人間としてはずっと孤独だった俺にとってそれは心地よいものだった。 この先何があるのかわからないが、提督として人々を護りながら、 一人の男としてどんな時も彼女を守り一緒にいたい。 俺はそう思いながら朝の平穏なひと時を楽しんでいた。 ジリリリリン! だがそんな朝の平穏なひと時は一本の電話によって終わりを告げた。 「はあ……こんな朝から…………ああ、私だ」 「大淀です!提督っ、大変です!鳥海さんが!」 「大淀、鳥海がどうした!?」 「突然倒れて…」 「なんだって!?」 鳥海。その名の通り重巡洋艦鳥海の力を秘めた艦娘である。 彼女がそう簡単に倒れるなんて信じられないが…… 「鳥海が倒れた。大鯨、急いで支度を!」 「…はいっ、提督!」 平穏な朝は終わりを告げ、電話を切ったとき俺達は提督と艦娘になっていた。 「心配いりません。疲労の蓄積と寝不足とが重なっただけです。 今日一日ゆっくりと休んでいれば治りますよ」 「よかった……」 医師の言葉に俺達は胸を撫で下ろしたが… 「ごめんなさい…こんな大事な日に倒れてしまって……」 鳥海だけは俺達に何回も謝っていた。 「だって今日は七夕で…子供達にお話の読み聞かせを…ゴホン…」 「いかん、その体では何もできぬ」 「でもでも…」 「君の体調不良に気付かず働かせた俺の責任だ。君はゆっくり休め。いいな!」 「……はい…………」 俺の剣幕に鳥海は渋々ながらも納得した。 「それでどうなさるのですか? 子供達はきっと七夕の物語の朗読会を楽しみに待っていたはずです。 それを今更中止にするわけには……」 大淀の心配はもっともだ。俺達は今日、 深海棲艦によって被害を受けた子供達の慰問に行く予定だ。 深海棲艦を倒すだけではなく、 俺達が深海棲艦から護れなかった人達を助けるのもまた俺達である。 俺自身は人的被害は幸いなことに一度も出していなかったが、 物的被害を出してしまったこともあるし、 それ以上に艦娘をただ戦うだけの兵器・兵士にするわけにはいかなかった。 艦娘は戦力である。それゆえにかつての過ちから『戦力』という存在を嫌う日本では 深海棲艦出没当初は艦娘に対して否定的な意見も沢山見られた。 しかし、深海棲艦が今までの常識が通用する相手ではなかったこと、 日本と同盟関係にあったアメリカ、 対立があったとはいえ隣国である中国やロシア、朝鮮半島の国々など、 それらの国々が自分達の国を守る事で手一杯であり、 とても日本を手助けする余裕などなかった事などから 艦娘という存在を否定する者はいなくなった。 だが今は深海棲艦という敵が存在するからこそ許されていると言えなくもない。 もし深海棲艦がいなくなって平和な世界になったら人間同士の争いで使われるのではないか…… そういった不安を持つ者達はいないわけではなかった。 もちろん艦娘の中にだってそういった娘はいる。 だから俺達は艦娘をただ兵器・兵士という扱いにはさせなかった。 艦娘は戦う事以外の才能に優れた者達も数多くいる。 料理の上手な大鯨や鳳翔に間宮、絵心がある秋雲、真実を求め続ける青葉………… 彼女達が艦娘となってからそれらの力に目覚めた者もいれば、 艦娘になる前からそのような力を持っていた者もいた。 彼女達にはその特性を生かした、戦い以外の任務も与えていた。 艦娘がただ、敵と戦いそれを討ち倒す為だけの存在とならないように………… 「て・い・と・く!提督っ!!」 大鯨の少し怒気に充ちた声に俺は現実に呼び戻された。 「なんだ…ああ、今日の朗読会の事だったな」 「そうですよ、ちゃんと考えてくださいよ」 「ちゃんと考えていたさ」 少し脱線したりしたけど。 「今回の朗読会は深海棲艦のせいで不幸になった子供達の慰問の為のもの。 今の俺達とは直接関係がないとはいえ、 かつて艦娘達が守れなかった為にああいった子供達が生まれたのも事実。 ならばこそ、彼等を支えるのも俺達の役目だ。 いつか平和な時が来た時に艦娘達が戦い以外の生き方もできるようになる為の練習でもあるしな……」 「ええ、私は元々お料理が上手でしたからともかく、他の艦娘の大半は……」 「今はそんな話をしている場合ではないでしょう。倒れた鳥海さんの穴埋めをどうするか…」 「まさか中止にするわけには……」 「…………大鯨、大淀。君達に緊急の任務だ……」 「え……はい」 「朗読会は俺と大鯨と大淀がやる。君達は今から練習していてくれ」 「提督……」 俺にいきなり任務を振られたからとはいえ、二人とも驚きを隠せていなかった。 「それじゃあ本日の秘書や提督がいない間の仕事は…」 「名取に任せる。君達は俺の指示に従ってくれ。 俺も出来るだけ早く仕事は終わらせるからそれまで君達二人だけで頼む」 「りょ、了解!」 二人の声が重なって執務室に響いた。 ―むかしむかし、夜空に煌めく天の川のほとりに織姫という娘がおりました― 大淀のナレーションで朗読は始まった。 ―織姫の織る布はとてもとても美しいものでした。 織姫の父親である天の神様、天帝はそんな娘が自慢でした。しかし……― 「美しい布を織る織姫はわしの自慢の娘じゃ。 じゃが、機織りばかりしていて自分の事を何とも思っておらん。 年頃なのにかわいそうじゃ……そうじゃ、婿を探してやろう」 俺が天帝役として台詞を言う。 ―こうして天帝は娘の為によい夫を探しはじめました。 ある時天の川のほとりを歩いていたら……― 「天帝様、いつもご苦労様です」 「お主もな彦星……そうじゃ、彦星よ、わしの娘を嫁にいらぬか?」 「て、天帝様の娘と、私とが夫婦になれと…」 「その通りじゃ。いつも真面目に働いておるお主ならきっとわしの娘とお似合いじゃ」 彦星の台詞も俺である。一人二役、結構大変なんだよなこれが。 ―こうして、彦星は織姫と出会いました。 そして、真面目な二人同士、気が合ったのか、すぐに結婚しました― 「織姫……好きだよ……」 「彦星様……私もあなたを愛しています。 いつも……はい、いつも、いつまでも、あなたと一緒に……」 ―夫婦となった織姫と彦星はとてもとても仲良く暮らしていました。 ですが、二人は一日中遊びつづけ、まったく仕事をしなくなりました。 これには天帝も怒り、二人に注意をしました。― 「お前達、夫婦仲が良いのは結構だが、お前達にかせられた仕事も忘れずにな」 「わかりました。これからは気をつけます」 「これからはきちんと仕事しますから、どうか許してください」 ―しかし、二人は注意をされたにもかかわらずまったく仕事をしませんでした。 織姫が機織りをしなくなったために神々の着る服はボロボロになりました。 また、彦星が牛の世話をしなかったために牛はやせ細り、 田畑も草が生えたままとなり、 これには天帝もついに堪忍袋の尾が切れました。 そしてとうとう、織姫と彦星を引き離してしまったのです― 「いくら注意してもお前達は与えられた仕事をしなかった。 もはやお前達が一緒に暮らすことははかぬ。 お前達二人は今日からもう夫婦ではない」 「そんな!?」 「散々忠告してこの有様。彦星、もはやお前を認めぬ! 織姫よ、さあ帰るのじゃ」 「嫌っ!私は彦星様と一緒に…」 「いいから帰るんじゃ!」 「嫌ああぁぁぁぁぁっ!」 ―こうして、愛し合う二人は離れ離れとなってしまったのでした― 「これで、二人は仕事を頑張るだろう」 ―ですが、天帝の思うようにはいきませんでした―」 「織姫……ああ、織姫…………」 ―大切な人と引き離された二人は、悲しんでいるばかりでした― 「彦星……様………グスッ……………」 ―これにはさすがの天帝も大弱り。何かいい方法はないかと考えました。そして― 「お前達を引き離してすまなかった。お前達にもう一度夫婦として暮らす事を許そう」 「ほ……本当ですか!?」 「ただし、一つ条件がある」 「どんな条件ですか!?」 「お前達二人が出会えるのは一年に一度、七月七日だけだ。 それ以外の日はただひたすら仕事を行う」 「構いません!一年に会えるのがたった一日だとしても、織姫と会えないよりはずっといい!!」 「大切な人と会えない悲しみなんて、二度と味わいたくありません!!」 「そうか……ではこれからは真面目に仕事をするのじゃぞ」 「はいっ!!!!」 ―こうして、二人は再び仕事を頑張ったのです。 神々の服は再び輝くものとなり、田畑も大いなる穣りに恵まれたのです。 そして今でも二人は仕事を頑張っているのです。 一年に一度、七月七日にもう一度巡り会う…… それを心の拠り所にして…………― お話はこれで終わりだ。 パチパチパチパチパチパチパチパチ………… 朗読が終わり、皆拍手をしていた。 失敗せずに済んだ……俺はそう思っていた。 「私がしっかりしていたらみなさんに迷惑をかけずに済みましたのに……」 俺達は鎮守府へ帰り、真っ先に鳥海のもとへ向かった。 話を聞いた鳥海は俺達に平謝りをしていた。 「いえいえ、司令官、大鯨さん、それに大淀さん。三人ともとてもよかったですから」 新聞記事の為に同行していた青葉が俺達を褒めた。 「お世辞はよせやい」 俺はわざと信じていないような感じの口調で応える。 「お世辞なんかじゃありませんって。司令官の演じ分けは見事でした。 大鯨さんも山場では必死さが出ていてまるで本当に引き離されたんじゃないかって感じでした。 あ、そうそう、大淀さんも優しい語り口調がよかったですよ。なんだか鳥海さんみたいな感じで……」 「私みたいな……」 「え?いや、その…大淀さんは別に鳥海さんができる事はなんでもできるなんてことは……」 しどろもどろになった青葉はきっと自分でも何を言っているのかわかってないだろう。 コンコン そんな青葉に助け舟を出すかのようにドアのノック音が響いた。 「あ、どうぞ」 鳥海の返事の後にほんの少しだけ間を置いてドアが開いた。 「鳥海さん、具合はどうですか?」 「名取ちゃん?」 入ってきたのは名取だった。そうだ、あとで報告を聞かないと。 「うん、もう大丈夫よ。あと少し寝ていれば明日にはもう元気になります」 「よかった…」 「名取ちゃん、お見舞いありがとう」 「お礼なんて…………」 お礼を言われ慣れていないのか、名取は恥ずかしがって顔を赤らめた。 「あ、司令官さん、朗読会お疲れ様です。 司令官がいない間任された仕事、私がやっておきました。 詳しいことはあとで大淀さんに聞いてください 「そうか、わかった」 俺に気付いた名取が報告した。 「あの…名取さん……」 「な、なんですか…」 何か気になることがあったのか、大鯨が名取に尋ねた。 「どうして眼鏡をかけてらっしゃるのですか?」 「え?どうしてって……その……」 「名取さんは本を読むときは眼鏡をかけているんですよ」 名取への質問に青葉が割り込んで答えた。 「それに眼鏡をかけた姿ってなんだか秘書みたいじゃないですか。 せっかくだからと形から入ってみたんじゃないのでしょうか?」 「秘書みたい……」 秘書みたい、という青葉の言葉に何か思うところがあったのか、 話のあとの方は聞いていなかったみたいだ。 鳥海への見舞いの後に大鯨に買い物へ行かせる予定だったが、 少し遅くなりますけどよろしいでしょうかと尋ねてきたので 許可を出したら少し帰りが遅くなりますと改めて言って如月と共に買い物に行ったのだった。 その日の夕方…… 「そういえば今日で提督と大鯨が一緒に暮らして一年になるんだよな」 「出会って一ヶ月でなんて凄くはっやーい!」 「運命にひかれたみたいで、まるでそれは星座の神話みたいですね」 「七夕で星座の神話とか恋愛関係では不吉でしかねーよ」 「どうしてなのです?」 「最近調べてみたけどギリシャにも七夕の伝説はあるらしいけど、 それが琴座・ライラの神話、オルフェウスの悲しき神話と一緒なんだよな」 「それは不吉ね。そういえばドイツには七夕伝説はないけどフィンランドにも七夕伝説はあるらしいわね」 「イタリアにもありませんわ。七夕伝説は恋愛関係の話ばかりなのですから イタリアにもあってもよさそうですのに」 「話を元に戻すわ。提督ったらどうして大鯨さんとあんなにも早く一緒に暮らしはじめたのかしら」 「一目惚れっぽい?」 「ああ」 あまりの即答に聞いた夕立も、そこにいたみんなも半ば呆れ気味に驚いていた。 「テートク、バカショージキなのもいいけどさ、少しは隠そうよ」 「下手に誤魔化して間違った情報が流れちゃ嫌だからな」 「けど提督はともかく大鯨ちゃんはどうして……」 「あんまり聞いてやるな、大鯨から聞けよ。それよりさ……」 天龍がそう言って話題を変えてくれた。一応詳しい事情は知っているが気が利くな。 「空は晴れ間が見えないな。雨は止んだのに」 「雨はいつか止むさ。止んでも雲が晴れるとは限らないけどね」 「雨だったら鵲さんが橋になってくれるけど、曇りだったらどうなるんでしょう」 「一年に一度会える日だからみんなに見られたくない事をするんじゃないかしら」 「お?如月、帰ったか。大鯨は…」 「ただいま戻りましたあ」 「お帰り大げ……」 戻ってきた大鯨は眼鏡をかけていた。 「どうしたんですか大鯨さん。まさか…」 「ただのオシャレですよ。決め切れなかったのとセールとでたくさん買っちゃいましたけど。 あ、安心してください、私の私費で買いましたから」 「そういえばお昼に私が名取さんが眼鏡をつけて秘書艦業やっていたのは 形から入ってみたんじゃないかって話しましたね。 それを真に受けちゃいましたか?」 「どっちでもいいでしょ」 「そうよ。それに眼鏡をかけたら夜戦がもっと捗るかもしれませんわ」 「夜戦が捗る!一個頂戴!」 「それさえつけたらお肌も荒れなくなるかしら?」 「あらあら、私も夜の戦いに備えて一つくらいは欲しいわね、うふふ」 「よかったら一つずつどうぞ」 如月のいつも通りの突拍子もなさそうな言葉をそのまま受け止める者、 勝手に勘違いする者、わかっててとぼける者。 あまりにもいつものことなのでもう誰もつっこまなくなった。 「ところでみなさんどんな願い事考えましたか?私は健康第一です」 「そういえば鳥海さん珍しく体調不良だったわね」 「ごめんなさい、今は大丈夫です。無理は禁物ですが」 「どうしてあんな事になったんだ」 「朗読会でちゃんと演じ分けしようとして、夜更かしばかりしてしまって…」 「責任感強いんですね。そういえば司令官、あまり練習してないのに演じ分けが結構上手でしたね」 「台本のコピーをもらっていたからな。暇なときにちょっとやってたんだ。 演劇の類は昔は結構得意だったからな。まあそのおかげで大鯨にどやされずに済んだわけだ」 「私はそんなこと言いませんよ」 「いやな、ちょっと前に夢の中で劇か何かの台詞を大鯨と一緒に読もうとして、 突発的でいきなりでタイミング掴めなくて全然読めなくて、 それで大鯨に物凄く怒られたってのがあったからな」 「不思議な夢ね。でも大鯨ちゃんは怒ったとしても司令官を見捨てたりはしないわ。 だって短冊に司令官と一緒にいたいって書いてあったし」 「乙女ね。でもいつまでもそう思うことは大切かもしれないわね」 「司令官は何かしら…………来年の伊勢志摩サミットが成功しますように……」 「はっやーすぎぃ!そもそもなんで今からなのよ」 「今度のサミットは伊勢志摩の賢島で開かれる」 「カシコジマ…確か陸路が鉄道以外ではほとんどなく、周りは海に囲まれて…… ……アトミラール、まさか!?」 「察しがいいなビスマルク。そうだ、周りが海に囲まれている。 つまり深海棲艦の攻撃に晒される危険がかなり高い。 もし襲撃されて被害が出れば俺の首一つが飛ぶだけでは済まないだろう」 「私達艦娘がちゃんと守らなければいけませんね」 「責任重大っぽいね」 「艦娘という存在の意義さえも揺らぐ事になるのは目に見えている。 だから今からでもやらないと…」 「わかりましたから湿っぽい話はここまでにしましょ。 今日は上を見ても天の川が見えませんから前や下を見ましょ。 今夜は流し麺です。素麺だけじゃなくてラーメンや春雨、パスタもありますよ」 「まさに日本の行事って感じですね、じゃあ私も…」 「大鯨さんはお疲れでしょうからいいですよ。私、伊良湖が全て行います」 「苦労かけてすみません。せめて飲み物だけは持ってきますね」 そう言って大鯨は飲み物を取りに行った。 彼女が取りにいった飲み物はほとんどがノンアルコールだった。 隼鷹や那智のようなアルコール好きは既に勝手に自分で持ってきていた。 「はあ…癒されますね」 そう言いながらも大鯨が飲んでいたのは低アルコール飲料だった。つまり… 「ねえ提督、流し麺とかは提督の発案ですけどよく思いつきますね」 思案しようとしたところを大鯨が入り込んできた。 「ここは軍の類とは違うとはいえ、旧日本海軍気質な考えの人もいますし…」 「だがそうばかりではないだろう?艦娘をはじめとして多くの者がかつてではなく今を生きる人間だ。 特に艦娘は旧日本海軍の人々の力と魂をその身に宿せる存在。 いわば彼女達は旧日本海軍の艦船といえるだろう。 そんな彼女達だ。自らの意思で戦う者がたくさんいて、 わずかだが己の意思にかかわらず戦わされている者もいる。 だがどちらにしても戦いで心が傷付いている事に変わりはない。 戦いが好きな奴も嫌いな奴も。どこかで人間の心が壊れて言っている。 俺は彼女達を兵器にはしたくない。最後まで人間でいてほしいんだ。 だからこうやって人間らしさを忘れさせないようにしているんだ。 そして、守るべきものの存在を忘れさせない為に……」 「提督…」 熱く語った俺に改めて惚れ直した、いや、アルコールのせいなのか。 顔を赤らめていた理由はわからない。でも………… 「ん……はっ……どうです…か……気持ちいい…ですか……?」 「ああ、柔らかさが心地好くて、最近致していないからもうすぐ出そう…」 「出すときは言ってくださいね」 七夕行事を終えた後、俺達は二人だけの夜戦に臨んだ。 彼女がアルコールを飲んだ時、それはOKサインだというのがいつしか暗黙の了解になっていた。 そして彼女は買ってきた眼鏡をかけている。何となく目的は…やばい!? 「すまない、もう出そうだっ……」 「はいっ!」 俺の限界を言葉で聞いた彼女は豊かな胸に挟んでいた肉の棒の先端を自分の顔に向けた。 ビュルルッ! そしてすぐに肉の棒の先端から熱くドロリとした少し濃い白濁が彼女の顔や髪にかかった。 目はつむっていたが、眼鏡に守られて少しもかからなかった。 「……おわったよ、もういいよ…」 「ん……はい…………こんなにたくさん…」 ぶっかけられた彼女はその量に驚いていた。久しぶりとはいえたくさんだった。 そんな彼女の綺麗な顔も髪もとても汚れていたが、 興奮するどころか罪悪感が込み上げてきた。 元々俺はぶっかけるよりも中に包まれながら出す方が好きだからな…… あそこだけじゃなくて口の中や胸の中とか。 さすがに尻の穴はちょっと……という感じだが。 俺は眼鏡も好きだったが、やはりぶっかけ趣味には合わないと今思った。 それでもやってくれた彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 なんとかして…彼女を気持ち良くさせないと…… 「あなた…どうしました?」 彼女が俺の様子を見て驚いていた。 彼女に言われて俺も気付いた。猛烈な眠気に襲われたことに。 なんだかまぶたが重い…… 「心配なぃ…」 「心配ですよ、言葉になっていませんから! 最近もまた仕事ばかりであまり休んでいないんでしょ? だから私のことは気にせずに休んでください」 「でも……君をまだ……」 「いいから休んでください!鳥海さんの二の舞になってほしくないんです!」 「っ…………すまない……」 俺は絞り出すような声で言っていた。そしてそこで意識は途切れた…… 『もう……しょうがない人ですね……』 って思わず言いたくなりますね。 今日は久々に夜戦出来ると思っていたのに…… でもあまり無理させちゃいけませんからね。 この人だって別に私としたくないから眠っちゃったんじゃないことは分かっています。 いつもいつも……私や他の艦娘達、 そしてこの地上の人々のことを考えているんですからね。 私ばかり相手にしていたらそれこそ七夕伝説と同じ轍を踏んじゃいます。 今わかりました。七夕伝説って 『好きなことばかりしてちゃダメ。やらなきゃいけないことはやらなければならない』 という教訓があったんですね。 だけど……やっぱりこの体が火照ったままじゃ寝られません。 かといって自分で慰めるのも…… あ……この人寝ちゃってますから好き勝手しちゃいましょう。 私は前に寝ていたりしても好き勝手してもいいって言いましたから、 私がこの人に好き勝手しちゃっても別にいですよね。 大丈夫です、別に負担になるようなことはしませんから。 だ・か・ら…… 「好きにさせてくださいね、あ・な・た」 終わり +後書き 339 :幼妻大鯨ちゃん:2015/07/07(火) 21 48 20 ID ydASYHzY 以上です 最近の情勢とか、夢で見たこととか、近くで長崎のことをやっていたりとか そういったいろいろなものが無造作に入り混じってしまった気がします でも大好きな人と一緒ならどんな状況だろうと前向きに頑張っていける そういう気持ちを忘れないでいたいです それでは これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/384.html
403 :名無しさん@ピンキー:2014/05/15(木) 01 22 03.94 ID LH5ck0+J ほーぅ。最近妙ーに解体に回される艦が多いと思っとったら。 ウチの提督は強い艦さえあればいい、お喋りはいらん、弱い軽空母など一切いらん言うんやな。 いやいや、それもまた真理や。否定する気ィはないで。 でもな。戦艦と正規空母だけの艦隊をな、黙々と運用してて楽しいか? 巨乳ばっかりに囲まれるのがホンマに天国か? たまには弱くても貧乳でもおもろい娘が欲しいと、バカ話もしたいと、ほかの連中がそう思うことは無いと言い切れるんか。 自信のあったネタがウケなかったこと、 どうでもええと思った話が意外にも大ウケ、そんなのはウチもしょっちゅうやで。 そのネタが「イイ」かどうかは、誰かが決めるもんやない。語るウチですらもはっきり分からん。 だからハズレ聞かされたー思ても「そいつを消す」やなく「聞かなかったフリをする」でなきゃ、絶対に次が続かなくなるんや。 提督はまだ若いから、ちょっち分かりにくいかも知れんけどな。 エロくないのはいらんて?そりゃ技量やボリュームの差は当然、ある。千差万別や。 でもな。これだけは覚えとき。 どんな乳も最初から巨乳だったワケやないで。 お前の目の前の貧乳も化けるかもしれないんやで。 素材も見極めず追い払うのは結構やけど、その時になって後悔するなやっちゅう話や。提督。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/516.html
456 :名無しの紳士提督:2014/08/04(月) 00 39 30 ID XFR4HtZQ 風呂上がり、艶のある黒髪が綺麗な彼女を見ると、ああ今日も終わったのだと感じる。 ここは前線、昨日いた艦娘が一昨日いた提督が骨となりあるいは勲章となり故郷へ帰る場所。 そんな環境に嫌気が差したのはお互い様で抱き合って眠るようになったのはいつからだろうか。 肌を重ね、一つに繋がったこともあるが互いに何か違うと感じ、以来日頃は一糸まとわず抱き合って寝るだけだ。 たまに口付けを交わしたりはするがその程度だ。 私も以前はこうなるとは思っていなかったし、裸の女性を前にしていたさぬのは逆に失礼だとも思っていた。 しかし、今となってはぬくもりさえあれば良いと思ってしまう。 壊れかけの心は性欲さえも抜け落ちているのかもしれない。 彼女とて、まるきり無事とはいかない。たまに私と抱き合っているとき、閉じられた扉に向かってこう言うんだ。 「大井っち、どうしたの」 と。おかしいだろう。大井は既に除籍されて久しいと言うのに。 だから、そんな時は、そんな時だけは私は初雪を抱くと決めている。 縁もゆかりもない大井呼ぶ彼女を見ていられないから。 私と初雪の情事をしるのは甲標的、それだけだ。 それが少しもどかしい。 きっと初雪には白無垢が似合うから。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/527.html
前回の話 「楽しみにしているよ」 書類に目を落としたままこう言うこの人は一見無愛想に見えるが、 それとは不釣り合いに口角がやや上がっている。 何の面白みもない書類なんかを見ていてそうなっているのではない事くらい、最早私でなくても分かるのではないか。 「……ふふっ」 その差異が可笑しくて、つられて笑いを零しながらも、私は後ろ手に扉の把手を捻る。 今日も提督からこの科白とその内の透け透けな感情を補給し、私は厨房へ出撃する。 それにしても、今までは鎮守府近海を巡回警備する時と同じような心持ちだったこの習慣が、 今はどこか新しい海域へと足を踏み入れるような心持ちになっているのは何故か。 把手を握った時に、昨日まではなかった硬い輪の感触が薬指にあるからに違いない。 …………………… ………… …… 食堂の暖簾を潜る。 遠征に駆り出す艦、鎮守府海域の警備に駆り出す艦、夜戦だけに備えて寝ている艦等、 留守の艦が多いお昼前の食堂は空席が目立つ。 逆に、正午を過ぎてから席が埋まるので僚艦と窓際の席を取り談笑に花を咲かす艦もいる。 料理の仕込み時間をそうやって潰す艦を尻目に、私は厨房に入った。 奥で別の料理を仕込む間宮さんに一声かけてから割烹着に身を包み、まず米飯を作る作業から取り掛かる。 朝のうちに空になった大釜を軽く洗い、米を数えながら釜に放り込んでゆくと、がたがたと何やら騒がしい音が。 「あ、やっぱり大井さんだったっぽい!」 声の方に振り向く。 するとそこには、カウンターから乗り上げるように夕立ちゃんが紅い目を輝かせて私を見つめていた。 椅子の上にでも立っているのだろう。 海戦時では駆逐艦にあるまじき火力を発揮するこの狂犬と思しき彼女も、 こういった場では見た目相応に可愛らしい仕草を見せてくれるので微笑ましい。 唯、これでは椅子ごと後ろに倒れたりしないかが心配だけど。 「あれー? 指に付けてるのなぁに?」 "指に付けてるの"……。 これしかないわよね。中々目敏い。 一応見せて確認してみたが、当たりだった。 少し気恥ずかしいのを抑えようと、私は止めていた作業を再開し、大釜に米を移しながら説明する。 「これはね、結婚指輪っていうの」 「ケッコン? 提督さんに貰ったの?」 「っ……、そうよ」 「ふ~ん……」 沈黙が訪れ、私が釜に米を移す音だけが響く。 自分から聞いておいて反応はそれだけ? さっきの旺盛な好奇心はどうしたのか。 夕立ちゃんに目を向けていないので、夕立ちゃんがどんな顔をしているか分からない。 しかし、そんな状態は数秒で終わりを告げる。 「ケッコンしたってことは大井さん、コドモできるっぽい~?」 「こっ……、子供!?」 ――この子はいきなり何を言っているの!?―― 突然の事に対応できず暫し言葉が詰まる。 飛躍しているとしか思えないその話について行けず夕立ちゃんを見やったが、 夕立ちゃんはあくまでも"今言った事の何がおかしいのか"という顔で不思議そうにしている。 見た目相応……なのかしら。 もう少し知っていてもおかしくはない筈。 この子の中では子供は例えばコウノトリが運んでくるという事にでもなっているのだろうか。 いやそれよりも。 私と、提督の、子供……子供……子作り……。 ……っ!! 「あっ、あの提督と、こ、子供だなんてそんな……、それに艦娘なんだから子供なんてできる訳……」 一杯一杯だった。 ひたすらに釜に米を放り込む作業に没頭する事で、せり上がる顔の熱を忘れ去ろうとするしかない。 その結果……。 「あ、あの、大井さん? お米、少し入れ過ぎでは……」 「えっ?」 いつの間にか背後に寄っていた間宮さんの指摘によって、熱を忘れる事は出来た。 しかし、私は大事な事まで一緒に忘れてしまっていたのだ。 ――お米、何合入れたんだっけ―― …………………… ………… …… 「……今日のご飯は柔らかいな」 提督は、カレーとご飯を共に掬ったスプーンを一回口に運んだだけでそう呟いた。 分かっている。 杓文字で掬った時の感触で不安が溢れんばかりに滲み出てきたのだ。 食べなくても分かる。 そこまで分かっていてもその評論から反射的に自衛するように、 私はこの人と同じように自分の皿にも盛った物を睨みながら言い訳を零す。 「夕立ちゃんが悪いのよ……」 「夕立がどうした?」 「あっいえ! なんでもありません、うふふ」 こうやって自分の失敗を認めたがらないところは私の短所だと思う。 理性の蓋が少しだけ開いて自然と口をついた言い訳は、今回は完全には聞かれなかったらしい。 私は口角を上げて取り繕った。 すると提督は、首を少しだけ傾げてからまたスプーンを口に運び、顔を綻ばせる。 「カレーはいつも通りよく出来ているな」 「どうも」 ――食べなくてもいいのに食べるのね―― この人は、柔らかいと評したくせにそれを口に運ぶ。 罪悪感が湧くも、それ以上に優しいんだか甘いんだか分からない提督の態度に、心の奥底で私は救われていた。 私も目前の失敗作を処理するべく口に運ぶ。 ……やっぱり水が少し多かった。 これはあまり他の艦には出したくないが、捨てるのも勿体無い。 「あれっ、提督さん、指輪は~? これじゃ子供、できないっぽい~?」 「は? 子供?」 私が調理の後片付けやら提督を呼んでいる間に食事を済ませたらしい夕立ちゃんが、 子犬のように無邪気に声をかけてくる。 しかし提督もまた、犬の言う事は分からない――悪意がある訳ではなく――とでも言うような反応だ。 「ごめんね? 提督も大井さんも。ほらっ夕立行くよ」 姉妹艦の時雨ちゃんが、えーだの待ってよーだの不満を零す夕立ちゃんを引っ張っていった。 あの二人には食事が済んだら出撃の準備をするよう指示が出ている。 私達も早めに食事を済ませてその準備にかからなくてはいけないのだけど、 肝心の提督はどう反応したらいいかで悩んでいるようでスプーンを置いてしまっていた。 「……あはは……、夕立は大分子供だなあ」 そう苦笑いして提督は肩を竦み、左手をやれやれと言った具合に上げる。 しかし、私は夕立ちゃんや時雨ちゃんの事なんかとっくに頭から抜け、提督の左手を凝視していた。 ――確かに付いていない―― 「さあ、自分らもさっさと食べ――」 「提督はどうして指輪を付けていないんですか?」 夕立ちゃんが指摘して、そこに初めて気付いたのだ。 自分の事ばかり考えていて浮かれていたのが原因か。そんな事にも気づかなかったなんて。 夕立ちゃんが指摘した顔のように、提督もまたきょとんとした顔で私を凝視している。 「ああ……、その指輪は上が艦娘用に作った物でな。提督用なんてのは用意されていないんだよ」 なるほど。 上層部としては艦娘の性能上昇が目的である筈だから、コストを増やして提督用の物まで作る理由はないのだろう。 しかしそれが理由になると思ったら大間違いだ。 私ばっかり浮かれていて提督がこれでは、私が一体誰と結婚したのか、別に忘れはしないが証は必要だ。 「明日、提督の分も一緒に買いに行きましょう?」 「は、いや、そんな時間は……」 時間はない? 無理矢理割いてしまえばいい。 書類なんかその後で幾らでも書ける。 少し語気を強めて再度説得にかかる。 「……行きましょうね?」 「……分かったよ」 まだ何もしていないのにもう疲れた表情をしながらも、提督はやはりその中に笑みを隠していた。 隠れてないけど。 こんな私にここまで付き合うこの提督は中々に物好くだなあ、と自分で思う。 「……あ、そういえば艦娘って、子供作れるんですか?」 「私が知ってる訳ないだろ」 まあそうか。 そんな事を知ったところで普通は何も成さないのだから。 艦娘は人間ではない。 それでも、軽い気持ちで少しの希望を持つのもまた、悪い事じゃないし。 「それなら……」 仮に、もし仮にそれが可能だとしたら。 色々と大変な事も付いて回るかもしれないけど、 それでも、それ以上にこの幸福の更なる彩りになるかもしれなくて。 希望を捨てられる程私は捻くれていなくて。 皿に盛られたカレーライスを半分程食してくれたこの人の面白い反応を見たくて。 言うだけなら自由でしょう? 「私達で新しい艦、作ってみます?」 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/674.html
4月29日は国民の祝日の一つ、みどりの日である。 「みどりの日は5月4日じゃないの?4月29日は昭和の日でしょ?」 21世紀に生まれた少女の暁が疑問を投げかける。 ああ、そうだった。昭和の日だったな。 「すまない、間違えたよ。 もうみどりの日が昭和の日に変わってから10年近くになるのに未だに間違えるよ。 俺の父親も今でもみどりの日は4月29日って思っていたし」 「でも昔の人ならむしろ昭和天皇誕生日として記憶しているはずでしょうけど、 みんなみどりの日って思っていますね」 「昭和から平成に変わったのですから天皇誕生日だって変わりますよ」 鳥海と大鯨も他愛のない話に乗ってくれた。 「でもなんで5月4日をみどりの日にしたんだろ? 国民の祝日にはさまれて休みになってたんだから 5月1日を祝日にしたら日曜日の代休もふくめて8連休になったのに」 「5月1日はメーデーで世界では休みになっている事が多いから 何かしらの形で祝日になってもいいのにな」 「でもどうせ私たちにはあまり関係のない話ね」 「そりゃあ俺達のすべきことは日本の防衛だからな。あまり自由に休みは取れないさ。 それに今は第十一号作戦の最中だ。各鎮守府の主力級の艦娘達が横須賀鎮守府に集まり、 深海棲艦打倒の為に日本を離れている。 日本を守る艦娘が少なくなっている今、尚更俺達が頑張らなきゃならん」 「みんな去年の夏の事がよほどトラウマになっているんですね……」 「AL/MI作戦……多くの艦娘が戦いに参加した重要な作戦。 それゆえに本土の守りが手薄になったあの時の… 深海棲艦の大規模な本土襲撃は本当に大変でした」 「司令官とのデートの予定が目茶苦茶になっちゃったからね」 「如月ちゃん!」 「な~んちゃって。でもお盆の時期でしたから艦娘の中には帰省した人達もいましたからね。 去年のこの時期はまだ本土襲撃なんてありませんでしたからGW休暇を取った人もいましたね。 もし本土襲撃がなければ今年のGWもゆったりとできたかもしれないのに……」 「……とにかくあれ以来、体制もがらりと変わった。 その結果君達の自由な時間もほとんどなくなってしまった。 人々を守る為とはいえ君達には苦労をかけ過ぎてしまってすまない」 「気にしないで司令官。そのために私たちがいるんじゃない」 「そうよ。それにみんなが出かけている中で私たちも出かけたりしたら 渋滞に巻き込まれちゃいますわ。そうなったらつまらないでしょうし」 「まあそういう考え方もあるな…… みんな、第十一号作戦が終わるまで頑張ってくれ」 「了解!」 みんなの元気な声が司令室に響いた。 しかし少し前まで日本のその憲法9条が変えられようとしていたのだ。 それは戦争を知らない世代によって。 だが憲法は変わることはなく、少なくとも今は護られたのだった。 ある日突然『彼女達』は現れた。 深海棲艦。そう命名された正体不明の謎の存在により、世界の全てが侵略に晒されたからだ。 日本もその深海棲艦と戦わざるを得なくなったわけだが、 皮肉にも未知なる存在である彼女達との戦いが、 9条を変えてしまう為に論ずる時間を失わせたのだ。 また、世界各国も共通の敵という存在があったからか、争い合うことをやめ、手を取り合った。 過激な武装集団も協力こそしようともしなかったが他の存在を攻撃する事がなくなった。 もしかしたら他の存在に戦わせて疲弊させ、漁夫の利を狙うという考えかもしれない。 このように多少の思惑は入り乱れていたものの、 人類同士の武力を伴った争いはこの地上から消えていった。 それは有史以来初めての出来事だったのかもしれない………… 「て・い・と・く」 「っ!?」 耳元で囁かれた甘い声が、考え事をしていた俺を現実に戻した。 「提督っ!」 「あっ、す、すまない如月、仕事中に」 「わかっちゃいましたか、うまく真似したつもりですのに…」 少し残念そうに落ち込む如月。当人としては上手く真似たつもりだろうけど 微妙な艶っぽさに大鯨との違いが出ていた。 ちなみに大鯨は隣で少し恥ずかしそうにしていた。 「提督、本日の仕事はもう全て終了致しました」 「そうか…………大鯨、如月、今日も一日ご苦労様。本日の業務はこれで終了だ」 俺は最終報告書に目を通し、今日の業務の終了を告げた。 「今日も一日何事もなく終わりましたね。それじゃ司令官、大鯨ちゃんと仲良くね」 そう言いながら如月は部屋から出ていった。 「もう…如月ちゃんったら…… ところでさっき私達の呼びかけに全然応じませんでしたけど……」 「あ、あれはだな…」 俺は仕事中なのに考え事をしていて気付かなかった事を謝りながら、 今日という日に対する様々な思いや不安など、何を考えていたかという事を言った。 「そうですね。確かに深海棲艦が現れて以来人間同士の争いがなくなった気はします」 「だがそれも深海棲艦という、人類全て…いや、地上に生きる者達全てにとっての共通の敵の存在あってのこと。 もし深海棲艦がこの世界からいなくなったとしたら次は人間同士の争いになるかもしれない。 そして艦娘達も人間同士の戦いをさせられるかもしれない」 「そんなことはさせません!それは私達艦娘に受け継がれた戦いの悲惨な記憶が絶対にさせません! 私達が戦っているのは戦争がしたいからではなく、戦いのない平和な世界を望んでいるからなのです。 かつての大戦に参加した兵士達も、みんなそうなのです! 彼等の魂を受け継ぐ艦娘は、平和への意思なのです!!」 普段は控え目で表情も優しく、囁くかのような口調の彼女が いつもとは違うはっきりとした口調で熱く語っていた。 「あ……ごめんなさい、大声あげちゃって……」 「いや、気にしないでいい。君の言う通りだ。 絶対に戦争をしない。その意思こそが大事なことだ」 「ありがとうございます」 彼女の顔と口調はいつものような雰囲気に戻っていた。 激しさのある口調は大鯨ではなく龍鳳のものかもしれない。 彼女は大鯨の艦娘であったが、龍鳳としての一面も時々覗かせていた。 今は『あの時の記憶』が彼女の中にはないが、もしそれが彼女の中に入り込んだら…… いや、考えるのはやめておこう。今はまだ大丈夫なはず。 もし『あの時の記憶』が彼女を押し潰そうとするのなら、その時は俺が支えればいい。 彼女がいつもとは違う姿を見せたからか、 俺もいつもとは違い不必要なまでに不安に思うなんてことはなかった。 「俺は信じるさ。悲劇を知る艦娘達が戦争の悲しみを伝え続け、 戦争のない世界が作られることを… たとえ俺達がこの世からいなくなったとしても、 悲しい記憶を受け継いだ次の世代が、それを伝え続けてくれるはずだ」 「だからそれを伝える次の世代を作りましょっ」 「は?」 いきなりの言葉にそう言うしかなかった。 「最近忙しくてご無沙汰でしたし、連休の中日にあたりますから調度いいかもしれないですし、 作戦もほとんど終わりで、主力艦隊がもうすぐ横須賀に帰ってきますし…」 珍しく真面目そうな話をしていたのになんて凄い話題転換だろうか。 酔った勢い…ではさすがにないな。少しだけ恥ずかしそうだし、 そもそもさっきまで仕事していたのだから酒なんて飲んでいられないだろう。 迫り来る彼女に気圧されながら俺は股間に迫る彼女の手を払えなかった。 払う必要もなかったけど…………その時だった。 「大鯨ちゃん、大丈夫!?」 如月の声が聞こえた。直後にドアが開く。 「ど、どうしたの!?」 「さっき大鯨ちゃんの叫び声が聞こえたんだけど…」 「……さっきの大声出したからそれが外に響いたのかしら……でも…」 「さっき開く一瞬前にドアの方を見たけどどうやら少し開いていた」 「閉まっていたならともかく開いていたら結構聞こえますわ。 でも大鯨ちゃんから司令官を……」 「な、なんでもないから!」 「本当に?」 「今日は憲法記念日だからそれについて言い合ってたんだ」 すかさず俺は言った。憲法が関係した話をしたというのは事実であるから多少は誤魔化せる…はず。 「まあいいけど……うるさくして周りに迷惑はかけないでね。明日も早いし、それじゃ……」 如月は去っていった。冷静に考えたら大声をあげてから如月が来るまで時間があったから、 もしかしたら俺達が夜戦に突入しようとしていたところを見ていたのかもしれない。 あえて言わなかったのは彼女なりの気遣いか。 「もう……如月ちゃんったら……」 「まあ彼女の言いたいこともわかる。今は作戦中だ。 俺達が呑気に楽しんでいるわけにもいかないよ」 「…ごめんなさい、我慢できなくて…… あなただって誰も沈まないでほしいという願掛けのために禁欲していたのに……」 「気にしないで。大人なら過ちは気にせずに次への糧にしたらいいじゃない」 暁がどこかの本で見たようなセリフを言いながら部屋に入ってきた。 「暁!?」 「さっき如月ちゃんとすれ違ったときに司令官たちが夜更かしするといけないから見てきてって言っていたから」 この口ぶりだと俺達が夜戦しかけた時に如月と一緒に見ていたというわけではないのだろう、多分。 「そうね…ごめんね暁ちゃん」 「まあお寝坊しないように私が起こしにきてあげてもいいんだけどね」 「その時は頼むよ。それじゃ、お休み」 そう言って俺達は寝ることにした。 翌朝、起床時間前に暁の寝室へ行ったら暁が寝ていた事は言うまでもなかった。 5月5日は子供の日。端午の節句である。 男の子を祝う日と思われているが、かつては女の子をお祝いする日であった。 ここら辺が雛祭り…桃の節句が 昔は女の子を祝うためのものではなかったということに似てなくもない。 しかし今回は子供の日の祝い事をやってる暇はなかった。 第十一号作戦はあったが、それはもう終わった。今日はそれの祝勝会と、 新たなる仲間、イタリアの艦娘のリットリオとローマの歓迎会を兼ねた催しを行うからだ。 「Vittorio Veneto級戦艦 2番艦 リットリオです」 「Vittorio Veneto級戦艦4番艦、ローマです」 「二人とも、これからよろしく」 「よろしく。でもなぜ私たちが横須賀ではなくここに来たのかしら?」 「確かに……リットリオさんもローマさんも、 かつて私たちが戦った未知なる艦と同じくらいの速度と射程を持った戦艦なのに……」 「リットリオさんたちがイタリア人だから、 私たち駆逐艦娘たちにイタリア語を教えるための教員として ここに迎え入れられたというのがだいたいの理由なのです」 「それだけ……?」 「私だってドイツ語講師としての任務でここに居るのよ」 「あなたはビスk…ビスマルク?」 金髪の女性が話に割り込んできた。ドイツ戦艦の艦娘ビスマルクである。 ローマがさっき言いかけた(であろう)ビス子というあだ名で呼ぶ者もいるらしい。 「いきなりあだ名、しかも不名誉な名で呼ぶなんて失礼じゃないかしら?」 「ではビスケと呼びましょうか?」 「ビスマルクはれっきとした姓なんだからそっちで呼びなさい。 あなたのローマなんて地名じゃない!」 会って早々いきなり喧嘩である。変に拗れたりはしないだろうが早く止めなくては…… 「二人と落ち着け。とりあえずビスマルク、早くスパゲッティを」 「わかったわよ。まったく…なんで私がウェイトレスみたいな真似を……」 「じゃんけんで負けたんだからしゃあないだろ」 「じゃ、じゃんけん……この鎮守府ってそうやって物事を…」 「そんなわけはないだろう。さすがに軍務ならそんな決め方はしないさ。 まあとりあえずスパゲッティを食べよう。 名古屋名物のあんかけスパゲッティとインディアンスパゲッティだ」 「インディアンスパゲッティ、なんてアメリカンな……ってカレースパゲッティじゃないですか!」 「このインディアンは『インドの』、っていう意味だ。カレーといったらインドだからな」 「はぁ…単純ですね…まあいただきますね」 「いただきます」 そう言って二人ともスパゲッティを食べはじめた。 「…………うん、あんかけスパゲッティ、おいしいわね」 「気に入って貰えて嬉しいよ」 「でもカレーのスパゲッティは少し甘いわね」 「甘い!?嘘でしょ、とーっても辛くしたのに…」 暁が!かすんぷしていた。そういやインディアンスパゲッティは彼女に作らせたんだった。 「あんまり辛くしたらリットリオさんやローマさんが食べられないかもしれないでしょう。 だから私がついてあげて味見してあげたんですよ」 「でもちゃんといいって言ってくれたじゃない!」 「あなたのやり方を尊重しましたから。 あまりにも辛かったり甘かったりしたら私が味付けし直しましたよ。 でも甘いといっても極端に甘くなかったし、味付けも甘さ辛さ以外はちゃんと出来てましたよ」 !かすんぷしていた暁を大鯨が優しく諭していた。 「気にしないでいいのよ、少し甘いだけで味はおいしいから。 それにしても……親子仲がよろしいわね」 「えっ?」 リットリオの発言に二人は声を出して驚いた。周りのみんなも驚いていた。 「待てって、それじゃ俺がとんでもない奴になっちゃうじゃないか!二人は他人同士だぞ!」 「あら、この二人は親子じゃなかったの?ごめんなさいね、結構似てましたから」 トンデモ発言に焦った俺に対しリットリオはあくまでも落ち着いていた。 だけど大鯨と暁が似てると言われてもそんなに間違ってはいないと思う。 外見も色合いが似ているし、着ている服も似ているからあまりおかしくはなかった。 「はあ…」 「どうしたのローマ?そういえばさっきから静かじゃない」 「カレー食べた人がパトロールするとかいう組織もあるから、 明日私たちがパトロールに行かされるんじゃないかって思ってね」 なんでこの子そんなネタ知ってるんだろう。 「さすがに軍務関係はそんなことでは決めないさ。 それよりもローマ、君にあだ名を考えてんだが」 「勝手にどうぞ」 「じゃあ…ロムっていうのはどうだ?」 「由来がブルガリアにあるロム川からだったら断るわ」 「違う。ローマ建国の祖となった神ロムルスからだ」 「ロムルス……リュウホウの父親と戦った者かしら?」 「…………君とはきっと話が合いそうだ。ちなみに彼女は龍鳳ではなく大鯨だからな」 そこそこディープなサブカル知識を披露したローマだった。 ちなみにこの鎮守府の艦娘は俺の影響か、突飛な話を聞いても 『ああ、なんか漫画やアニメとかの話か』と思って流すらしい。 「まああだ名の件は考えておくわ」 「じゃあ私にも考えてみてくれないかしら?」 「ならば君は……リタ、だな」 「……それ、私の本当の名前ですよ」 「なんだって!?」 俺は思わず大声を出して驚いた。 「知らなかったのですか?」 「ああ…『リタ』はリットリオとイタリア、両方に通じそうなネーミングだと思ってな……」 「でも私がリタって名付けられたのも リットリオ・イタリアの艦娘になる運命を表していたのかもしれませんね。 提督、ここに集まったみなさんはきっと運命にひかれたのだと思っています。 私やローマがやって来たのも日本国とイタリア国を結ぶ懸け橋になるためだと思います。 みなさん、これから妹共々よろしくお願いしますね」 「ああ、よろしくな」 こうして、色々あって歓迎会はいい雰囲気で終わったのだった。 「ねぇ~、あなたぁ…作戦が大成功したのですから早くしましょうよ~」 「私がここにいてもお邪魔ですから、この辺で失礼させていただきますね。 じゃ、大鯨ちゃんと燃えるような夜戦を楽しんでね」 「如月、お前も介抱するのを手伝……ああっもう!」 ……歓迎会はいい雰囲気で終わったのだが、妻が飲み過ぎたのである。 もう大鯨にしろ、とでも言いたくなるが、 歓迎会の最中には一切酔っ払っていなかったのでまあ少しは…と思うしかなかった。 「ほらほら、提督の猛《たけり》だって我慢しきれないようですよ」 彼女はそう言うや否や俺のズボンのチャックを下ろした。 「あら……元気ないですね……でも大丈夫です。私がすぐに元気にしてあげますから」 そう言って躊躇いもなく俺のちんちんをしゃぶり始めた。 こんなこと最近やってなかったせいか俺のものがすぐに大きくなった。 最大まで大きくなった後も彼女の口での奉仕は止まることはなく、 むしろさらに激しくなった。しばらく射精していなかった為当然…… びゅるん すぐに達してしまったのだ。 彼女は驚くこともなく、ただ口内で俺の欲望を受け止めていた。 「ん……カルボナーラよりも濃厚でこってり……」 酔っているせいで感覚が少しおかしくなったのか、 それとも酔っ払いを演じているのか、 俺には分かりかねていた。 「でも口に出しちゃうなんて勿体無い……ココに出してほしかったのに…… だけどまだまだ元気みたいですね。今日は子供の日だから子作りしまし…………」 最後は言葉になっていなかった。彼女は酔いつぶれたのか寝てしまっていた。 俺は正直まだまだ満足しきっていなかったが、俺も疲れからくる眠気には勝てなかった。 一週間以上休みなしだったからなあ……しかも明日から横須賀で報告会があるし…… 俺は愛する妻を抱きしめながら眠気に身を任せ眠りについた…… 5月10日は2015年5月の第二日曜日、つまり母の日である。 「私が働かなくていいのでしょうか……」 「今日は母の日だ。鎮守府の母も同然な君も休むべきだよ。 君はいつも働いてばっかりだからね」 「鎮守府の母も同然、ですか……でも私は本当のお母さんになりたいです……」 彼女の望みはわかっている。今はもうやることがないのなら、するべきことはただ一つである。 俺は彼女を後ろ向かせた。そして既に準備できていた所に 俺のちんちんを突っ込み、激しく動かした。 「ん……気持ちいい……」 かなり久々だったからか、彼女はとても嬉しそうな声を上げた。 「あんっ……もっと……奥……強く……」 彼女の艶かしい声に俺の腰の動きも早くなる。 そして久々のセックスだった為かすぐに果てた。 「ああ……奥に……たくさん……中に……」 随分と待ちわびていたかのように、彼女も達していたようだった。 実際結構な期間してなかったからなあ。 「これで…赤ちゃん……できるかな……」 バックでのセックスは子供が出来やすいという俗説がある。 実際深い所にささるから精液が子宮内に入りやすいという話もある。 しかしそんな理屈よりもまるで獣の交尾のようなセックスに興奮を感じるというところもあった。 鯨の交尾は向かい合ってするものというのは今は忘れよう。 俺達はただ欲望のままに交わり続けたのだった。 「久々だったので沢山しちゃいましたね……」 彼女はとても蕩けた表情だった。 「来年の母の日はきっと本当のお母さんになれるかな…… もしなっていたらどんな気持ちになっているんでしょう……」 そしてまだ見ぬ日々を夢想する彼女。 「……今までごめんな。ずっと君をじらしてしまって……」 「いいんです。待っている間、とても思いが募りましたけど、 でも今のこの瞬間が訪れることを考えていたら、待たされるつらさも心地よくて…… それにあなたとずっと一緒にいたから何気ない日々もとても輝いていました。 ……これからもよろしくお願いしますね」 俺も彼女と同じ気持ちだった。 地上の愛と正義の為に戦う俺達にゴールデンウィークなんてなかった。 だけど、愛する人と過ごす何気ない日常は金色に輝いていた。 彼女と出会ってもうすぐ一年。あの日から俺の人生は変わった。 彼女とまだ結ばれていない時も金色に輝く日々だった。 そして彼女と結ばれて以降、もっと輝いていった。 これからも色々なことがあるだろう。 でも、愛する人が一緒にいてくれるならその輝きは消えることはないだろう、永遠に…… ―完― + 後書き 以上です 前書きで独自設定多数の注意書きを忘れてました ちなみにタイトルはもともとゴールデンウィーク中に投稿する予定だったものの名残です 母の日関係のタイトルが思い浮かばなかったので母の日の話も混ぜました それではまた これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/ryoudan-trpg/pages/252.html
GM(提督):ken25 完結!長らくのご利用ありがとうございました! ・共通レギュレーション 募集日時:木・土、21~22時頃開始を目安に プレイヤー人数 3~5人 必須:着任の書 推奨:自分のやりたい艦娘の載っているルルブ(建造弐までなくても追加ルールは頑張って説明します、スキルや装備はともかく) 艦娘について 新規作成を推奨、サンプル単発の場合は経験点を配布します。 別卓艦娘を使いたい場合はこの卓では一時的に経験点を300点まで(それ以下ならそのまま)、装備は一時的に初期装備を配布するので換装すること、感情値はすべて1に調整すること。 卓終了後の復旧などはPL側でお願いします ・木曜卓 完遂しました! 参加者 サプリ 予定艦娘 誤爆 全 明石 - - 深雪 四季 全 比叡 - - 蒼龍 BLOOM 全 浜風 きみたちの活躍によって、鉄底海峡は平和を取り戻した。 順調に水位が下降していくと、やがて鉄と土が混じっていたような地面が見えてきた。 これはもしや、ここで戦ってきた戦士たちの残骸なのだろうか? 真実は不明だがこの海域も静かになる、もしそうだとしても安心して眠ることができるだろう。 鉄底海峡と呼ばれた海域での長い戦いは終わったのだ。 いずれ避難した人たちが、放出してしまった以上の資材を手に戻ってくる。 トモシビ海域は君たちが携わったマーケットを中心に、物流の中心地として栄えるだろう。 三隈は一度本格的な整備も兼ねて本土へと帰還するが、またいつか笑顔で君たちを迎えてくれるはずだ ボウレイ海域ではジュピター機関を解体するため、大淀を中心に査察が始められた。 この地を知り尽くした陽炎の案内で作業は順調に進んでいるとのことだ。 クロギリ海域の南木鎮守府は、南方地域防衛戦の一角として急ピッチで再建している最中とのことだ。 後任の提督は予備役であった老人に決定したようだ、鉄底海峡を開放した蒼龍や深雪がいる限りいつまでも要としてあり続けるだろう。 + @鎮守府&声援持ちNPCズ 名称 栄光なきむせる機関 艦隊名 東京陸撃押入死神少女隊 レベル10 家具コイン 8 配布名誉点 10 温泉檜風呂(建造弐P179) メルヘンシェルフ(出撃P153) ドレッサー(建造弐P178) 高級ミシン(建造壱P175) 浦風&谷風 吹雪(加古艦隊) 伊8 陽炎 磯風・雪風・大和 霞・初霜 青葉 霧島(イザナミ部隊) 川内(夜戦仮面) ・土曜卓 キャンペ完遂しました! 参加者 艦娘 蒼羽 瑞鶴 Bloom 山城 四季 阿武隈 あるせて 夕立 狛犬 木曽 ~ 君たちが勝利した事により、この海域の謎は徹底的に暴かれた。 その結果、再び転移が起こることはないと断定され、凶悪な研究については全てが封印、あるいは抹消されたらしい。 細かい部分は何人か上層部の首が物理的に飛んだ当たり、教えない方が良いと判断されて不明のままだが… ともあれ、ショートランド地獄警備府は海軍でも広く知られるようになり、今では君たちの姉妹や新しい艦娘が沢山所属するようになった。 これからも戦いは続くが、一先ずここで筆を置くことにしよう。 君たち最強向日葵船団の行く道に幸あらんことを… 提督 山住雅也 少将 ・FAQ的な 集中攻撃、一撃必中でコンボ 集中攻撃は"命中判定の出目が"、一発必中は"達成値は10として"・"スペシャルではない"と名言されているのと、 行動力2D6払えば必ずスペシャルとか提督泣くのでどうかご容赦ください(深々) ・連絡帳 参加希望者はこちらにどうぞ、最低人数なので1周間の追加募集を行います。 参加可能な日時、使用キャラクター及びそのURL、所有サプリメントを書き込んで頂ければ幸いです。 土曜卓の方に参加希望出させてもらいます 参加可能:木△金○土○ サプリ全所持。使用キャラクターは面子次第ですが浜風にしようかと。http //character-sheets.appspot.com/kancolle/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFgsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYnJuHEww -- (Bloom) 2015-01-28 01 03 34 土曜卓追加希望で、多分夕立 -- (あるせて) 2015-02-22 00 10 42 http //character-sheets.appspot.com/kancolle/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFgsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYpOXMEww -- (あるせて) 2015-02-22 00 57 24 3月5日は参加できます。しかし3月12日は参加できません。それ以降は今のところ大丈夫です。 -- (誤爆) 2015-02-28 23 05 37 12日不可把握しました、連絡ありがとうございますね。 -- (GM_k25) 2015-03-01 20 17 13 データは木曾だキソー http //character-sheets.appspot.com/kancolle/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFgsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY56_hEgw 臨時収入があるかもしれないからもしかしたらセッションの日には足りないルルブも買ってくる……かも -- (狛犬) 2015-03-01 23 26 58 4月2日参加可能です。 -- (誤爆) 2015-03-28 11 56 27 職場で風邪を移されたようで、参加できる体調ではありません。申し訳ありませんが今週の木曜卓欠席させてください。 -- (Bloom) 2015-05-14 19 56 39 了解しました、ご無理なされずゆっくり治してくださいね。 -- (GM_k25) 2015-05-14 20 05 09 書き忘れていたので一応こっちに。今月は最終週以外は大丈夫です。 -- (誤爆) 2015-07-02 12 39 13 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/553.html
歴代トップ絵人気投票 何の漫画だこれ -- (名無しさん) 2014-10-05 20 19 13 水雷戦隊クロニクルのコラよ -- (名無しさん) 2014-10-10 00 25 12
https://w.atwiki.jp/earthruinfes/pages/1527.html
ニコニコ動画/多摩川自給自足生活 2011-06-30 多摩川自給自足生活【ラスト】 多摩川自給自足生活【その9】 多摩川自給自足生活【その8】 多摩川自給自足生活【その7】 多摩川自給自足生活【その6】 多摩川自給自足生活【その5】 多摩川自給自足生活【その4】 多摩川自給自足生活【その3】 多摩川自給自足生活【その2】 多摩川自給自足生活【その1】 多摩川自給自足生活 【予告】 ◇◆『ニコニコ動画』へ
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/419.html
管理・運営スレに書き込まれたレスは議事録としても使用するので議論等に関係ない、議事録として残す際に不適当と判断されたレスは削除されます 議事録とは 【例】ある会議の議事録 部長「今月の売り上げをどうやって作るのか?」「新規先を回るのか?」 「それとも既存先にいくのか」「そうそう新規先といえば、例の大曲商事の方はどうなってるのかな?」 「最近訪問した、あの何て言ったかな?日本ベースボールの案件は取れたのかな?」 「日本ベース商事はどうなっているのか?最近売り上げが落ち込んでいるようなんだが・・・」 というように、単なる会話ログの場合、整理されていない為内容が理解し難いです。 これを「議事録」で書くとすると、以下の様になります。 当月営業拡大策について (←内容を要約したタイトル) 当月の売上目標達成の為に対象ターゲットを新規先、既存先かかわらず検討すべきである。 特に、新規先の大曲商事、最近訪問先の日本ベースボールの進捗確認が必要と考える。 加えて、日本ベース商事の売り上げが落ち込んでいる件は調査が必要である。(部長) http //www.insource.co.jp/businessbunsho/gijiroku_by_insource.htmlより引用、一部改 流石にここまできちんとするのはしんどいので、運用議論に関係ないレスを削除し議論をスリム化することで一応議事録としての体裁を整えている訳です。 まーそれならまとめwikiにきちんと議事録作れって話なんですが、そこまで器が広くないので無理です、面倒 一応、それに対するフォローとして過去ログにて削除の前のレス閲覧は可能です http //www55.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/410.html