約 138,617 件
https://w.atwiki.jp/siamshade623710/pages/16.html
基本レギュレーション 経験点23000 所持金40000 所持名誉点400 冒険者レベル7の人族のみ。 一部蛮族は許可、デモルラ技能× 成長回数18回 成長割り振り6/5/3/2/1/1 信仰と流派について 影炎国は影神スカディアを信仰するものが多い他 ラクシアの国々同様、調和を司るライフォスと、鍛冶を司るグレンダールが信仰されています。 しかし、ティダンについては死をもたらす神として忌避されているため、卓での信仰は推奨しません。 ひいて太陽を愛するソレイユの数は少なく、ナイトメア以上の迫害にあっています。 シーンについては、解釈の別れるところではありますが 基本的に荒神であるティダンを諌める妻という印象で、夜に安らぎをくれる神として信仰されています。 他の大神も同様に、信仰されています。 ラクシアの小神の信仰について、その存在が伝わっていないため、信仰を認めていません。 流派については、相当ルールとして 影の国に伝わるものとして、オリジナルで制作します。 影ノ国と陽ノ国 影ノ国とは、大昔にスカディアが治めた国アンブラのことで この世界では、シェイドウォールによって影に覆われた地域全般のことを指します。 陽ノ国というのは、影ノ国に伝わる伝承であり、伝説の国です。 主にそれらは、悪神ティダンを信仰している国家で、この外の砂漠の地獄は その国家の企みと呪いによってもたらされているもので 影神スカディアはその太陽の力から、国々を守ってくれているというのが、一般的な認識です。 所謂、外のラクシアの世界から、奇跡的にたどり着くことができる影ノ国ですが 砂漠を渡ってくるものは災いをもたらす存在『陽ノ使者』として扱われ 太陽の光をもたらすものとして、多くの国々では処刑されます。 近頃、影炎国の女王ヘルニールが、砂漠を渡ってきた『陽ノ使者』を私刑にせず、庇護することを宣言しました。 しかし其れだけでなく、その者と婚約を結んだなどという噂がたち これは前代未聞の出来事で、国々に混乱が広がっています。
https://w.atwiki.jp/wikipen/pages/26.html
マルキューイチヨンシンデレラオーディションでグランプリを獲得した都筑瑛里(18)が「ミュージカル・桃色の歌姫」を降板することが明らかになった。 本作は女性アイドルグループPeachとその姉妹グループによる劇団、「劇団桃色」のミュージカル作品で、2010年4月から2014年5月まで上演されてきた。一度は完結した本作品だが、その人気から再び上演が決定した。 アイドルグループ「ビートレターズ」のメンバーがメインキャラクターとして描かれている本作だが、都筑はビートレターズのメンバーである奥園未唯(おくぞの・みい)を五代目キャストとして演じており、2014年10月30日より「ミュージカル『桃色の歌姫』- ビートレターズ、生誕 -」公演がスタートしたばかりだ。 都筑をオーディション時代から知る芸能関係者は以下のように語る。 「都筑は元々強くない子。マルキュー(マルキューイチヨンシリーズ:都筑瑛里がオーディションでグランプリを獲得し、シリーズ主演を掴んだ舞台)だけでも最後まで駆け抜けられるか不安だった所に、ここぞとばかりに仕事を詰め込んでしまったばかりに最近は常に不調そうだ。新人にはやはり難しいことだったのだろう」 実際、都筑がオーディションでグランプリを獲得してからの仕事はレギュラードラマ1本、バラエティレギュラー・準レギュラー3本、そして舞台がマルキューイチヨン一作目とミュージカル・桃色の歌姫だ。6月にデビューしたとは思えない仕事量で、ネットでも心配の声があがっていた。 事務所によると都筑はミュージカル・桃色の歌姫を明日11月8日の東京千秋楽で降板、11月17日より予定されている大阪公演は同作品に川崎麗奈役で出演しており、「桃色ミュージカル」時代に四代目奥園未唯役として出演した福井美姫が再び奥園未唯役として出演する。それに伴う川崎麗奈役には柴田蘭奈が抜擢された。 都筑の今後の活動に関しては不明だが、現時点ではマルキューイチヨンシリーズは続投するそうだ。
https://w.atwiki.jp/examinationroom/pages/65.html
LIVE FOR YOU (舞台) 14 ・◆・◆・◆・ ――土台無理な話だったのだ。 子供が敵の本拠地に突入するだなんて、そんなアクション映画みたいな真似は。 できっこなかった。できるわけがなかったんだ。 後悔は今さらのように押し寄せてきた。 どれだけ悔やんだって、訪れた結果はもう覆らないというのに。 「……やよいっ!」 くたりと垂れる右手から、プッチャンの悲痛な叫びが木霊する。 それに応える、いつもの元気な声はない。 「……てけり・り」 代わりに返ってくるのは、ダンセイニの奏でる沈痛な音。 半透明の黄色い体に浮かぶ一つ目は、子供の泣き顔を想起させるほどに歪んでいた。 一番地本拠地、中層エリア。 スペースが広く取られたその空間には、各所に渡るための通路が多数並んでいる。 通路の数はざっと数えて八つ。プッチャンとダンセイニはその内の一つを通ってここに辿り着いた。 重傷を負ってしまった、高槻やよいの救護の果てに。 「ちくしょう……なんでこんなことに……っ」 自らの体を簡易ベッド、いや担架のようにして、彼女を上に載せて運ぶダンセイニ。 やよいの右手に嵌ったまま、ただひたすらに彼女の名前を呼び続けるプッチャン。 三人中、意識を保てていたのは二人だけ。 注意力を進む前方に向けられていたのは、一人だけ。 この状態で敵に襲われたとして対応策を持っている者は、いない。 「……違う。俺の落ち度だ。一瞬でも気を緩めなけりゃ、やよいはこんな風にはならなかった……!」 プッチャンから漏れる、慨嘆。 慨嘆の根源である、高槻やよいの容態。 未だ敵地の真っ只中、仲間との合流は果たせていない。 状況は、なにからなにまで最悪だった。嘆くしかない。嘆きしか出てこない。 ――けれど、そんな弱音は許されない。 もちろんわかってはいる。わかってはいるのに、嘆いている。 自分が自分でいられない。気が動転して混乱して切羽詰って行き詰っている。 プッチャンにとって、状況は最悪を通り越して最凶と言えた。 「てけり・り」 「わかってる……わかっちゃいるんだ。けどよ」 ダンセイニの冷静になれという声にも、まともな返しができない。 高槻やよいの容態――惨状は、直視に耐えがたいほどだった。 敵兵からの銃撃、バーニングによる体力の消耗、直後に乱入してきた敵アンドロイドの攻撃、それらは問題ではない。 やよいの命に最も強い圧力をかけたのは、敵兵の一人がいたちの最後っ屁として投げ放った手榴弾の爆撃である。 アンドロイドのブレードを防ぐので精一杯だったやよいとプッチャンは、これを避けることができなかった。 結果、手榴弾はやよいとプッチャン、それに近くにいたダンセイニやアンドロイドをも巻き込み――爆ぜた。 敵兵はその爆撃を最後に力尽き、気絶。アンドロイドは爆発の直撃を受け大破。 ダンセイニは多少、体から粘液が飛び散ったが、すぐに再生することができた。 プッチャンもまた、正面にいたアンドロイドの体が上手く防壁となり、事なきを得た。 が、パペット人形でもショゴスでもない、ただの人間であるやよいには、爆風の余波とて深刻なダメージとなる。 人体というものが爆風にどれだけ耐えられるか、プッチャンは熟知しているわけではない。 なのでただ見たままを捉えると、やよいの復帰はもはや絶望的のようにも思えた。 まず目を背けたくなるのが、やよいの双眸と耳。どちらも赤く滲んでいる。これは眼底出血と鼓膜損傷を意味していた。 先ほどからプッチャンやダンセイニが喋りかけても、やよいには声が届いていないのか反応が返ってこない。 皮膚にはいくつかの裂傷が。これは爆風の余波だけでなく、傍にあった食堂の窓、割れたガラス片が齎したものでもある。 目と耳、そして顔……やよいの身に降りかかった災いは、どれもアイドルにとっての死活問題と言える。 見ていて痛々しい生傷が、人形の身であるからこそ無傷で済んだ自分が、なにもかもが呪わしかった。 そんなプッチャンに追い討ちをかけるように、 『――これより、二十二回目となる放送を行う』 基地全域に、その声は響き渡った。 「なっ……!? ちょっと、待てよ。冗談やめろよ、こんなときに……」 「てけり・り……」 「……嘘だ。俺は、俺はぜってぇ信じねーぞぉぉ!」 神崎黎人による、第二十二回定時放送。 死亡者として告げられたのは、玖我なつき、山辺美希、ファルシータ・フォーセット。 最悪を通り越した最凶の状況は、この訃報によりさらに悪化し、プッチャンにとっての生き地獄と化す。 「あいつらが死んじまっただなんて……やよいにどう伝えりゃいいんだよ……っ」 やよいの耳には、もちろん放送など届いていないのだろう。 周囲の音に対する反応はまったくといいほど見られず、そして、 「……ぉっ」 不意に小さく呻き――プッチャンが見守る中で、咳するように血を吐いた。 「やよい! しっかりしろぉ!」 口元が赤く染まった。口内ではなく、喉の奥、呼吸器から出血しているようだった。 外傷ばかりに気を取られていた。爆風を間近で受けたとあらば、ダメージはその内部、肺や内臓器官にまで及んでいてもおかしくはない。 現状をより深刻に捉え、プッチャンはだからといって、なにをすることもできなかった。 無力だからこその、慨嘆。 ダンセイニは懸命に、仲間を求めてやよいの身を運搬する。 やよいには俺がついている、そう豪語していた相棒は、所詮人形なのだ。 「――やよいちゃん!?」 通路を這い進む内、ついに第三者の声に行き当たる。 それは敵兵の獰猛な号令ではなく、聞き慣れた少女の声。 前方から駆け寄ってくる、羽藤桂と羽藤柚明の声だった。 「やよいちゃん! ねぇ、やよいちゃんどうしたの!?」 「酷い怪我……っ。待って桂ちゃん、不用意に揺さ振っちゃ駄目」 一目見ただけで、二人にもやよいの怪我の深刻さがわかるのだろう。 桂はダンセイニの傍に寄るなり顔を青ざめ、柚明は即座に治癒の力を行使し始める。 ダンセイニもそこで立ち止まる。上で横たわるやよいは依然、絶対安静の状態だった。 「プッチャンさん、この怪我は……」 「爆弾がっ……! 近くで爆弾が爆発して、俺とやよいは吹っ飛ばされて……ダンセイニがここまで!」 「落ち着いてプッチャン。とりあえず、どこかゆっくり治療できる場所に移ろう。誰か来ると困るし……」 治癒の力が使える柚明と再会できても、まるで安寧を得られない。 説明も満足にこなせないまま、プッチャンはやよいの苦しげな表情ばかりに目がいってしまう。 桂が先導し、柚明が後衛を務めながら、ダンセイニがやよいを運ぶ。 プッチャンはやはり、この場では嘆くことしかできない。 一度は死に、しかし蘭堂りのの守護者としてこの世に魂が残留することを許された、人形の自分。 この矮小な体をここまで呪わしく恨めしく憎たらしく苛立たしく思ったのは、生まれ変わってから初めてのことだった。 ・◆・◆・◆・ 「……青い……空」 私はついに、クリス君を待つ為の舞台まで辿り着いた。 だが、辿り着いた先の舞台はなぜか天井に大きな穴が開いていて、そこからぽっかりと空が見える。 床に流れ落ちてきている土砂やなにやらを見るに、どうやら、最初の爆発の時にできたらしい。 そこから見える空はとても、とても青かった。 私は暫く惚けたようにただ、青い空を見続ける。 眩しく輝く太陽を何処か懐かしく感じていた。 実際、缶詰に近い状況だったのだから本当に久々だともいえる。 そして、これが、私が最後に見る空と太陽だろうとも。 そう思うと、いつもは当たり前に見上げるその空もどこか惜しく、私はずっと見続けていた。 ずっとずっと。 この空がずっと残るように。 心に焼き付けていた。 「しかし、粋なはからい……と言えばいいのか」 空から視線を下ろし、まわりをを見渡して私は苦笑いをする。 私とクリスが出逢うべき舞台。 そこはまるで、”彼と最初に出逢った場所”にそっくりな形で。 これも神崎黎人のお膳立てによるものだというのだろうか。 二人が出逢った大聖堂の様で。 だだっ広い空間は礼拝堂のような作りになっていた。 長椅子や、段を上った先にあるオルガンの位置もあそことそっくりだった。 惜しむならば、それがパイプオルガンではないことぐらいか。 まぁ、そんなのものは一朝一夕準備できるものではない。なので偶然なのだろう。 私はそう思いながら、オルガンのある所まで歩いていく。 天井が爆破されてきた時に流れ込んできたのだろう。どこも水浸しだ。 しかしそれが、これも偶然なのだろうが流れる水が演出となりこの場所を荘厳なものへと変えている。 一段だけ高い礼拝堂の周りは空色を映す水が満ちており、 まるで、あの時の出会いを劇の1シーンと切り取ったかのように見える。 本当に、彼と私のための舞台のようであった。 そういえば、クリス君と出逢った時もオルガンを弾いていたな。 階段を一段ずつ上り、私はあの時のようにオルガンの前へと座る。 そこからは舞台全体を一望できて、そして空を見上げることもできた。 綺麗だなと思って私は椅子に寄りかかる。 一息して、目を閉じた。 もう少しだ。 もう少しで終わる。 全部、全部だ。 だから、今はゆっくりと思い出そう。 大切な人達のことを。 大切な想い出を。 かけがえのないものを。 みんな、みんな。 死ぬ前に。 私はずっと生きていた。 それを実感して心に焼け付けよう。 そう思ったら。 自然とオルガンを奏でていた。 それはクリス君と出逢った時に弾いていたもの。 全てのハジマリの曲だった――。 ・◆・◆・◆・ 僕はただ進んでいた。 進んで進んで。 歩き続けていた。 全ては唯湖に会う為に。 一歩ずつしっかりと。 どれくらい、歩いたのだろうか。 通路の先から、ふと懐かしい旋律が聞こえてくる。 それはハジマリの時に聞いた旋律で。 僕はただ、その音が流れてくるところへと全力で駆け出していた。 ある確信を持ちながら。 それは唯湖がそこに居るという確信で。 僕はただ前だけを見て走って。音を辿って。 少しでも早く着くようにと思って、残り少ない力で進む。 そして―――――― そこで見たものをなんと表現すればいいのだろうか。 高い位置に置かれているオルガンの前に彼女は座っていて。 長い黒髪が吹き抜ける風でさやさやとまるで水面のように揺れていて。 彼女を囲う水面から反射する光が照らしだし、とても奇麗に、輝かせている。 後姿だけでも、息を飲むほどに美しい。 そう、それはまるで御伽噺の中に住まうどこかの国のお姫様のようで。 本当に彼女とのハジマリの出逢いと全く一緒で。 静かに振り続ける霧雨の先に見えたお姫さまは。 「――――唯湖」 名前を呼ぶ声に振り返って、優しく微笑んだ。 そのお姫さまは来ヶ谷唯湖。 僕はずっと待ち続けていて。 そして、 「……クリス君、君の雨はもうやんだかい?」 僕を労わるように彼女はそう言った。 僕は微笑みながら進んで。 「まだ……まだだよ……君を……君を止めてから」 そんな僕の呟きに唯湖は哀しく笑って。 「そうか……そして、御免な」 辛そうな謝罪と共に僕の目の前に何かを投げた。 それは、 「……………………え?」 鍵と錠が着いたペンダント。 僕となつきでおそろいのもので。 そしてそのペンダントには……真っ赤な血がべっとりとついていた。 ……え? ………………………………え? 「クリス君……玖我なつきは私が殺したよ」 ………………………………………………え? 「嘘………………だ」 『――死者の発表をする』 僕の否定に、それを断じる放送が重なって。 そこに………………なつきの名前が呼ばれていた。 ……………………あ……あぁ。 あぁ………………僕は………………、 また………………護れなかった…………のか。 また………………失った…………の……か。 『私はお前が――クリスが好きなんだ』 なつき。 ……大好きななつき。 『なつき――と、そう呼んでくれ』 優しくて。 そう言った君は本当に綺麗で。 あらためて君に惹かれたと思ったんだ 『わかるか? 私はなぁ……クリスの傍がたった一つの居場所なんだ!』 僕にとっても、君の傍がたった一つの居場所だったんだよ。 君が居たお陰で僕はここまでこれた。 僕は強くあれた。 『クリス……死なないよな? ……ここにいるよな』 なつき……。 君が死んでどうするんだよ。 君が死んだら……意味がないじゃないか。 『う、うるさい!』 顔を真っ赤にして照れる君が可愛かった。 出来るならずっとずっと君の顔を見ていたかった。 『そうだ、その笑顔が好きなんだ。笑っていてくれ……クリス』 僕も君のその笑顔が好きだったんだよ。 笑っているその笑顔が。 何よりも僕にとっての幸せだった。 『クリスといっしょに』 君と一緒に居たい。 ずっとずっといたかったのに。 ずっとずっと笑っていたかったのに。 『クリス…………頑張ろうな……明日を希望に変える為に』 明日を希望に変えなきゃ。 でも君も、その明日に生きてなきゃ駄目なんだよ。 君が死んじゃったら意味なんてないじゃないか。 『―――互いの心が結ばれたまま、解けないようにって』 もう君の事を忘れるなんて無理だ。 哀しいぐらいに僕の心を奪って、結んでいる。 なのに、君が逝ってしまった。 『クリス、進めっー! 振り返らず進めっー!』 君の言葉があったから。 僕は進めたんだ。 振り返らずに進めたのに。 なのに、 君はもう……いない。 『クリス……愛している』 僕も……。 君のことをたまらないくらいに。 本当に心の底から…… ――愛していたんだよ。 なのに……君はいない。 なつきと笑いあうことも。 なつきと触れ合うことも。 なつきの優しい笑顔を見ることも。 なつきの楽しい表情を見ることも。 なつきの哀しい涙も見ることも。 なつきとずっと一緒にいることも。 ずっとずっと一緒に生きることも。 できないんだね。 君は……死んじゃったんだ。 唯湖の手によって。 あぁ。 あぁぁ……。 「うわぁあああああああああああああぁああああああああああああああ!!!!!!!!!」 雨が。 雨が降っている。 土砂降りの雨が空を覆っている。 前も見えないぐらいに振って、何もかもを覆っている。 哀しみの雨が降っている。 この雨は僕の涙なのだろうか。 わからない。 わからないけど。 ただ、ただ哀しかった。 雨が……止まない。 けたたましい音と共に。 これから永久に振り続ける。 「……クリス君、君の雨はいつやむのかな?」 そんな呟きが聞こえてきて。 雨の先から唯湖が現れた。 僕は、ただ静かに、悲しみを断ち切るべき剣を彼女の方へと向けた。 唯湖は哀しく笑ってぼくの方にも同じように剣を向ける。 剣と剣が交差して。 二人は見つめあっていた。 雨は降り続いている。 ただその音はすこしずつ強まってきている気がした。 いつまでも、いつまでも。 あの雨の降る大聖堂と似ているこの場所で。 二人の再会を証明するように。 ずっと降り続いている――。 ・◆・◆・◆・ [とある研究員のメモ] NYPとは“なんだかよくわからないパワー”の略称であり、とある世界の科学部員が発見したものだ。 NYP適合者はビームライフルやらサイバーバリアなどのサイバー兵器を利用可能になる。 ただし、この力のエネルギーの発生プロセスは不明、作用プロセスも不明、適合者の条件も不明。 シアーズの研究者たちはNYPの正体を計りかねていた。 参加者の来ヶ谷唯湖いわく、どこかの世界の超越者が、不思議っ子にインスパイアされて、 その者のためにノリと勢いで細かい設定を考えずにでっち上げた力などというものらしい。 だが、それではあまりにもなんだか良く分からない。 だが、S氏はこれを突き詰め、NYPの力の源はなんだかよくわからないこと自体ではないか、との仮説を立てた。 日本のことわざに『幽霊の正体見たり枯れ尾花』というものがある。 夜中に揺れる枯れススキは、遠目では得たいが知れないので、時に見る者に恐怖を与える。 NYPはそれ似たようなもので、更に精神だけではなく、生命力や物理にも作用するのではないか。 もちろん、ススキならば、正体が明らかになった時点でその力を失ってしまう。 だが、NYPはいくら観測しても正体を知ることはできない。それは不可解そのものを構成要素とするからだ。 なんだか良く分からない結論。しかし、実験データはそれを裏付けているように見えた。 そうなると、NYPパワーがアンドロイドに高い効果を上げる理由も見えてくる。 ジョセフ・グリーアは機械人形を人間の心を持つことを期待して設計した。 そのひとつは通常のプログラムで記述できない思考プロセスをすることである。 言ってしまえば、彼は人工知能に“なんだかよくわからない”ブラックボックスを組み込んだのだ。 当然、この技術は不可解そのものであるNYPよりは意味不明度が低い。 水は高いところから低いところに落ちると決まっているように、NYPの力はアンドロイドに一方的に流れ込む。 そのため、アンドロイドはサイバー兵器を無防備に食らってしまう。 また、彼らにはサイバー兵器にNYPの力を注ぎ込めない。 しかし、人工知能のブラックボックスとNYPは親和性が高いのも事実。そこで発想の転換。 我々はブラックボックスの意味不明度を極限まで高めることで、擬似的なNYPエレメント兵器を作り出せた。 使い手のNYP適合性は不要。今回のプロトタイプの成果を足がかりに、NYPリーサルウェポンの開発に着手する。 この兵器は複数の人間の媒介に起動するとき、通常の何倍もの効果を上げるだろう。 補足: 擬似NYPエレメントは長時間使用すると、精神力を磨耗するという欠陥が明らかになった。 一番地に研究用のエネルギーや人材を指し止められたため、いまだに改善が行われないでいる。 ・◆・◆・◆・ 銃声の鳴り止んだ戦場に軽い切断音が響く。セラミック製のドアの斜め上半分はスライドして内側に倒れた。 深優は剣を左手に再変形し、情報処理室に踏み込む。コンピュータールーム特有の焦げたワイヤーの匂いが漂っていた。 人や量産型アンドロイドの気配は無い。敗残兵たちは戦力を集中するために下層へと移動したのだろう。 深優はそこに少ない戦力の有効利用だけでなく、生存の意志のようなものを感じた。 恐らく、シアーズの人間達は言霊に操られていない。自分の意思で戦っている。 もし、深優ひとりでなければ、彼らを武装解除し、投降させることもできたかもしれない。 その反面、彼女単機でなくては、ここまで派手に戦えなかったのも確かだ。 深優はセキュリティシステムを破壊して、周囲に危険がないことを確認。 そして、自分自身を端末代わりにして、スーパーコンピューターに接続、強引に起動させる。 九条むつみの特製ハッキングツールを強制インストール。 深優本人の持つ高速演算能力と組み合わせて、コンピューターから改鋳前のデータから削除済みデータまで丸ごとサーチする。 収穫は既知の情報とダミーデータだけだった。重要なデータは下層に移動させた後だったのだろう。 一度、九条むつみにデータをハッキングされたため、かなり警戒されているらしい。 当然ながら、外部ネットワークとは物理的に遮断されており、これ以上の進展は望めない。 そもそも戦場での情報管理の鉄則を考えれば、コンピューターごと破壊されていてもおかしくないのだ。 徹底的に調べれば何か見つかるかもしれないが、援軍の危険を考えると余り時間は掛けられない。 残るは戦場で拾ったこのメモリースティックだ。これはあの命乞いをした研究者が慌てて落としていったもの。 これも罠かもしれないが駄目元でアクセスする価値はある。深優は警戒しつつメモリースティックを挿入した。 深優はデータをロックするパスコード24桁を入力。そして閲覧。先ほどに比べると、拍子抜けするほど緩いセキュリティだ。 内部のフォルダはたったひとつ、『プロメテウス計画』と名付けられていた。 ・◆・◆・◆・ 脚だけしかないテーブル。融解したフラスコ。新鮮な死体の横に並ぶ骨格標本。 銃声と爆音、加えて絶望と恐怖の絶叫が右からも左からも流れている。 下層ラボの張り詰めた静寂な空気は、たった10分で激変していた。 恐怖に駆られた研究員は対戦車無反動エレメント砲を闇雲に撃ち続ける。 無尽蔵のエレメント弾が天井に命中。槍を構えるアンドロイドは剥き出しの鉄骨に押し潰された。 戦闘員は弓型エレメントでこの男を射殺。進路の邪魔になる研究者も射殺。彼らも周りの人間を守る余裕がなくなっている。 横一列に並ぶ3人の戦闘員は隠し芸の演目のように、ほぼ同時に後方に吹き飛ばされる。 足元に転がる投擲直前の手榴弾、爆発。衝撃はドア付近の窓ガラスに押し寄せ、透き通った刃となって拡散。 ヒゲを蓄えた男の頬を貫通。音無き声を上げ、床でもがく。恰幅の良い中年女は彼に躓いて転倒。 すぐに起き上がり、再び走り始める。だが、彼女の必死のサバイバルは徒労に終わるだろう。 下層セクション2の連中はセクション1との連絡通路を閉鎖してしまった。 「HiMEの力には限りがない、それはあながち誇張でもないようだな」 紅眼のアリッサはこの阿鼻叫喚の破壊劇、否、深優=グリーアの戦闘データを鑑賞し終え、静かに双瞳を開く。 動画の狂騒と対照的に、少女の居城はいつものように、空は真っ赤で星は黒ずんでいた。 隔離された最下層に、彼女以外に誰もいない。アンドロイドは下層の警備のために出払ってしまった。 にわかに左手首のケーブルが振動する。アリッサは床の銅板から生えたコードで、外部と情報をやり取りするのだ。 「さ、先ほどの動画データは見てくれましたか」 声は若い男性。早口で微妙に上ずっている。これは過度のストレスのためか。 「深優=グリーアは計算以上の数値を叩き出しているな。 この調子で暴れてくれれば、プロメテウス計画の完成も早まるだろう」 アリッサは満足そうに答えた。プロメテウス計画、すなわち人工の星詠の儀の完全なトレース。 これさえ完成すれば、元の世界でもこれと同じ殺し合いを再現できる。 紅眼の少女にとって、地下基地全体は巨大な粒子加速器のようなもの。 加速器内部では、高エネルギーの粒子を衝突させると、より興味深い粒子を観測できる。 それと同じように、結界内で人工HiMEが火花を散らせば、人工媛星製作の有益なデータを収集できるのだ。 「いや、そうじゃなくて。いくら計画を完成させても、帰還できなければ意味がないんですよ」 「いくら犠牲がでようと、星詠の儀を執り行えば、我らは帰還できる。 怪物Xは一番地側の参加者を全滅させ、我は深優=グリーアを破壊する。何の支障があろうか」 彼女は少女特有のソプラノボイスで研究員を突き放す。 確かに、深優=グリーアは成長している。だが、この程度でアリッサが敗北する可能性はゼロに近い。 ただ、勢い余って彼女を拘束も、半殺しもできずに、オーバーキルしてしまうかもしれない。 その後、一番地基地へ向かう前に、神埼に星詠の儀を完了されたら問題だ。 プロメテウス計画を完遂できず、星詠の儀式も乗っ取れず、そのまま元の世界に強制帰還させられてしまう。 「防衛総括は暴走気味で、最終兵器の威力上げるためにもっと人柱増やせとか、このままだと……」 「つまり、上官の方針に変更はないわけだな。我の独断で動くわけにもいくまい。せめて、神崎の死亡が確認されてから報告せよ」 紅眼の少女は通信を一方的に遮断した。無意味な平穏を求めるのは人間の悪い癖だ。 ゲームは勝利条件さえ満たせば事足りる。チェスで敵のキングを追い詰める際に、味方の犠牲に臆すれば勝利はない。 もともとここの人間は、シアーズ財団にとって不要な存在なのだから。 カ ミ ノ コ ト ノ ハ その時、アリッサは擬似エレメント『real the world』の波長変化を感知する。 この古青江の原型は“コア-O-A 誠一筋”、その使い手は思い人に病的なまでに一途たりえた。 ゆえに、そのイデアのコピーである刀も想いの力の流れを敏感に感じ取るのだ。 「ほぉ、本当の戦いはこれからという訳か。貴重なデータが取れそうだな」 アリッサは視線を前方に移す。擬似チャイルド、サンダルフォンは無数のコードに覆われていた。まるでサナギのようだった。 ・◆・◆・◆・ アリッサ=シアーズのメモリーには、シアーズ幹部すら閲覧を禁じられた領域があった。 そのデータの冒頭は、ガラス越しに見える黒い空、万華鏡のように散らばった黄金色の星々。 彼女の足元は、大きな天窓を持つ小さな礼拝堂にあった。黄金の瞳を持つ燭台が石造りの内部を照らし出していた。 この灯火は瞳に闇を持たぬアリッサには不要のもの。光を求める人間のためのもの。 講壇からシアーズの総帥が降りてきた。"黄金の夜明け"の仮面は男の顔貌も表情も覆い隠していた。 彼女は彼の脈拍や呼吸、発汗を計測しても、彼の内面を覗くことはできなかった。 そして、アンドロイドのアリッサ=シアーズ本人も"月の蛾"の仮面を被っていた。 紅眼の少女はシアーズの儀礼に従って、彼に特別の握手をした。 男は仮面をつけたまま、委員会について語り始める。 「委員会の中には、幸運の女神の提案を信用してない輩も多くてね。 彼らは黄金世界は二の次で、邪魔な連中を体良く始末する場と割り切っている。 だが、その制約の中で、勝利の方程式を組み立てさせてもらった。 私個人は、新世界の野望に燃えているからね。まあ、男のロマンみたいなものだよ。 それに、委員会の連中の鼻を明かすのも楽しみだからね」 シアーズ財団自体は至高者の探求や人類の福祉を求める、ただの機能集団に過ぎない。 一応、『徒弟』、『職人』、『親方』と言った階位もあるが、今はあくまで名誉勲章のようなものだ。 だが、内部に委員会と呼ばれる秘密の結社を持ち、黄金世界実現のために裏で世界を動かしている。 『司祭』、『摂政』、『魔術師』、『王』などの密儀の階位は、その者が委員に所属することの証左だ。 「ゲームの構成員の多くに密儀の階位を授けた。彼らに今から教える暗号を示せばいい。 そうすれば、彼らはお前が『王』から生殺与奪の権威を委託されたことを認めるだろう」 『王』たる総帥は、それぞれの階位しか知りえぬ暗号をアリッサに授けた。 アリッサはこれをメモリーの特殊領域に格納。『王』に恭しく一礼、そして問いかける。 その口調は少々不遜だが、これも総帥直々の要望だ。 「王よ、結社の秘密を他者に教えるのは掟に反するのではないか」 「それは、お前は人間ではなく、ただの道具だからだよノートやコンピューターに秘密を記そうと私の勝手だからね。 そして、君はこの世界に戻ったときに解体されるのだ。問題はない」 男はきわめて自然に冷淡に、機械仕掛けの少女に答えた。 アリッサは彼の言葉に納得し、先程の暗号で『王』に絶対忠誠を表す。 「ガンジス川の砂の数に等しい本数のガンジス川、その川すべての砂に等しい数の平行世界を 七種の宝で満たすよりも、優れた宝をシアーズの前に献上しよう」 彼女に死の恐れはない。血に染まり切った兵器が、理想郷で砕かれるのは当然のこと。 自分は道具。全ては適材適所。それは眼前の王にしても同じこと。結局は歯車だ。 「あのクローンも、君くらい本物のアリッサとかけ離れていれば、気楽に接せたのだがね」 総帥はそう呟いて背中を向けた。この角度では"黄金の夜明け"の仮面を見ることはできない。 先ほどと違って、言葉に僅かにノイズがこめられているようだった。 「実際のところ、委員会はシアーズの支配者ではない、理念を横領する不実な会計人だ。 その帳尻あわせのために、あらゆる善行を施し、時にあらゆる悪事を尽くす。 私は黄金時代の幕開けを前者と信じている」 男はゆっくりと息を吐いて沈黙。そして、告白するようにつぶやく、 「だが、いかなる理想郷であろうと、そこに幸福を見出せるかは当人次第。そして、その逆も然り。 私が娘の死を振り切れたのが、無貌の邪神の対話で追い詰められている最中とは皮肉なものだよ。 ……おっと、ここに『人間』は私しかいないな。これまでの話はただの独り言、ほら話だ」 語りきった頃には男の脳波の乱れは収まっていた。 今のは偽らざる感情の吐露なのか、それさえ計算した上での発言なのか、紅眼の少女には判断できない。 だから、アリッサの姿を持つアリッサでないものは、ただ、それを聞いていた。 アリッサ=シアーズのブラックボックスはここで終わっている。 ・◆・◆・◆・ 「それでは、現状をまとめましょうか」 放送を終え、再び司令室へと戻ってきた神崎は新しく用意された紅茶を一口啜ると、そう言葉を発した。 彼の目の前には重そうなファイルを小脇に抱えた秘書と、相変わらず気だるげな警備本部長とが立っており、 隣には妹である命。その後ろにはボディーガード兼お目付け役のエルザが控えていた。 神崎自身を含めれば5人。 人口密度で言えば決戦が始まってより最も高く、そしてまたその決戦も重要な局面へと差し掛かっている。 「まずは、各参加者の動向と対応について検討しましょう」 神崎が言い。それを了承すると秘書と警備本部長は部屋の端にある大型モニターが見えるよう脇へと身を引いた。 モニターを指して、秘書が報告を開始する。 「一番地本拠地・下層外縁部へと進入を果たした羽藤桂とユメイが、高槻やよいと接触。これと合流しました」 「こちらの誘導通りにね」 「目論んでいた通り、負傷した高槻やよいを治療すべく3人は居住エリアへと移動し、一室にて動きを止めています」 「すでに戦闘員を周囲に配置しているわ。今すぐにでも襲撃をかけることは可能よ」 二人の報告を聞き、神崎はふむと頷く。 放送で司令室を離れていた間のことであったが、那岐から柚明と桂の二人を離れさせる作戦は滞りなく成功してた。 放置しておいたやよいにしても上手く足手まといとして離れた二人に合流させることができている。 「では、彼女達が不得意とする狭い空間へと誘導するよう兵をけしかけて下さい。 戦力に関しては人間の戦闘員のみで――ただし、本拠地内での爆発物の使用をレベル2まで解除します」 「了解したわ。そう伝達しておく。 けど、最悪の場合、最下層のプラント等が利用できなくなる可能性があるけどかまわないのかしら?」 「この決戦が終われば地下に篭っている必要もなくなります。施設の損傷については気にしなくてもかまいません」 なるほどね。と頷くと、警備本部長は無線を取り出した。 神崎にも解らない暗号化したコマンドで手短に指令を手勢へと下すと、ひとつ頷いてまた神埼の方へと向きなおる。 「さて、次は最も重要な標的である凪に対してですが……警備本部長。戦力の準備についてはどうでしょうか?」 「言われた通り、各所からアンドロイドを集めているわ。 彼も霊脈の乗っ取りに時間をかけてくれたし、本拠地への通路も爆砕済み。上がってくる前に囲むことは可能よ」 上々だと神埼はいつもどおりの薄い笑みを浮かべて頷いた。 霊脈を餌として放棄させたのは確かに痛手と言えるが、結果として那岐を孤立させることには成功している。 参加者が神埼の首を落とせば勝利であるのと同じく、一番地側も那岐さえ滅することができればそれでいいのだ。 「現存しているオーファンの数は?」 「21体、ね。霊脈を乗っ取られたから新しく召喚することはできないけど、制御に関しては問題ないわ」 「では、特定の指示を出していないものは例の魔術師の方へと当てて下さい。 代わりに残存しているアンドロイドを那岐の方へと移動させます」 「魔術師相手だと相性が悪くないかしら?」 「凪相手だとなおさらに、です。 あちら側は基地そのものを放棄しても構いません。いざとなれば崩落させて足止めとしましょう」 了解すると、警備本部長は再び無線を取り出す。 今度は少し時間がかかりそうだと見ると、神崎は続きの報告を秘書へと促した。 「クリス・ヴェルティンが来ヶ谷唯湖と接触を果たしました。現在、交戦状態にあります」 「ふむ。すぐに懐柔されるかとも思いましたが、なによりですね。ところで――」 「は?」 「そこに玖我なつきの死体が転がっているはずですが、それはどうでしょうか?」 「死亡時の様子はこちらのカメラでも捉えていますし、首輪からのバイタルデータも消失しています」 「なるほど。死んだフリはないと……安心しました。 クリス・ヴェルティンと来ヶ谷さんに関しては予定通りに経緯を見守り、決着がつきましたら残りを処分してください」 神崎はほぅと息をつく。 先程の放送で3人の名前を呼び上げたものの、基地内の監視体制が万全でない為にその死亡は明確ではなかった。 最初に死亡が報告された時、山辺美希とファルシータ・フォーセットの死亡状況が不明だっただけに、 参加者側の策ではないかという疑いもあったが、しかしどうやら思い過ごしだったらしい。 「崩落に巻き込まれた杉浦碧のバイタルも微かで動く気配もありません。じきに死亡するものと思われます」 「なるほど。彼女に当てていたアンドロイドはどうでしょうか?」 「残念ながら、オーファンと同じく崩落により機能を停止しています。新しく兵を派遣しましょうか?」 それには及ばない。と、神崎は秘書からの問いに首を振る。 確実に止めを刺しておきたいというのはあるが、いかんせん場所が場所だけに戦力のロスを考えるとそれも憚られた。 「他はどうでしょうか?」 「アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナが本拠地中層まで辿りついています」 「近いですね」 「しかし、動きを見ると、どうやら彼女は羽藤桂、ユメイ、高槻やよいの方への合流を優先する模様ですが」 「なるほど。でしたら、そちらに当てていた戦闘員を使って対応することにしましょうか。 それと、中層の戦闘員も合わせて移動させてください」 「そうしますと、ここを守る者がいなくなってしまいますが……」 神崎からの提案に秘書が口ごもる。 いかに参加者を撃退する為とはいえ、それはリスクがあるのではないか? と、口にせずともそれが表情に表れていた。 しかし、神崎はそんな心配はしなくていいと、部屋の端に並び立つ美少年らを指差す。 「十干兄弟……ですか」 ただの人形のように立っている少年らを見て、秘書は喉を鳴らした。 一見、アンドロイドにも見えるが彼らはそうではない。しかし、その実力と危険性はアンドロイドを遥かに凌駕している。 更にはシアーズから提供された擬似エレメントにより強化され、再調整も加えられているのだ。 なるほど、どうりで黒曜の君は涼しい顔をしている訳だと秘書は納得した。あれに比べれば戦闘員の数など誤差程度にすぎない。 「それに、命もいますからね。僕だって、そう簡単にやられてしまうつもりもありません」 言って、神崎は隣でうとうとしていた命の頭を撫で、もう片手に新生した弥勒を掲げて見せた。 ・◆・◆・◆・ 「さて、残りについてはどうでしょうか?」 指示を終えて戻ってきた警備本部長を加え、神崎は改めて彼女らに問いかける。 残りの参加者らについては、どれもその扱いが特殊なものばかりだ。 「深優ちゃんだけど、八面六臂縦横無尽の大活躍ねぇ。シアーズからの救援要請が引っ切り無しよ。勿論、無視しているけど」 「被害のほどはどうでしょう? 彼女はアリッサちゃんを倒せると思いますか?」 「この調子なら、シアーズそのものは完膚なきまでに叩き潰してくれると思うけど……、そこまでかしらね。 そもそもどうして深優ちゃんひとりなのかというのもあるけど、あまり期待しすぎるのもよくないと思うわ」 「では、抑えてくれているだけでよしとしましょう」 ではと、神崎は話題を変えた。次に名前が挙がったのは目下行方不明中の吾妻玲二である。 「作戦は変わらないわね。通過する必要がある地点にて待ち伏せ。 ここを抜かれちゃ、もう本拠地だしね。アンドロイドに加えてオーファンも強力なものを揃えたわ。さすがに二の舞はないわよ」 ふむと頷くと神埼はレーダーに映らないもう一人の名前を挙げた。 「九条むつみ……ね。彼女も今はどこにいるか定かではないわ。幕僚長直下の部隊が捜索にあたってはいるけど」 「目的はおそらく、鍵を持った言峰綺礼か因縁のあるシアーズでしょうね。 首輪については今更外されても、むしろ解放された想いが命の元へ集中することを考えれば有利なぐらいですし、 シアーズにしても彼女が深優に加勢するというのなら、これもこちらにとってはありがたいことです」 「つまり、放置するということかしら……?」 「ことさらに追う必要はないでしょう。娘さんも死んでいることですし、藪蛇になりかねません」 それもそうね。と頷くと、それじゃあれはどうしましょうか? と、警備本部長はモニターへと視線を移した。 モニターの一角。監視カメラやアンドロイドから送られてくる映像が並んだそこに、ひとつ黄金に輝く存在がある。 深優・グリーアが八面六臂縦横無尽とするなら、こっちは絶対無敵三国無双という風の大活躍を見せる最強のロボ――。 「……ドクター・ウェスト」 神崎、警備本部長、秘書と、3人から呆れ半分の溜息が零れる。 傍若無人に好き勝手の限りを尽くすそれに、3人もこればっかりは想定外だと、そんな表情を浮かべていた。 地上で無双の限りを尽くしていたドクター・ウェストの黄金に輝く破壊ロボであるが、 さすがにあの巨体では地下基地内には入ってこれまいと思っていたのに――いや、それは正しくはあったが、 しかし、その姿は島の”地下”に存在している。 「まさか、そのまま地下を掘り進んでくるとは……」 「それもやたら滅多らにね。 一気呵成というほどでもないけど、これじゃあこっちからも中々手が出ないし、さてどうしたものかしら? 言ってる間にこの本拠地まで辿りつきかねないわよ」 通路を無視して自慢のドリルで地中を好き勝手に進行しているドクター・ウェストの破壊ロボ。 多種多様なオーファンにしてもそれに対応できるものは少なく、何より黄金のフィールドが全てを跳ね返してしまう。 まさに無敵と埒外の権化というべきそれに、神崎の表情もさすがに曇ったものになっていた。 「――エルザがいくロボ」 と、その時。背後に控え、発言も慎んでいたエルザが一声を発した。 「こんな不条理はないロボ。 あんな存在が負け知らずに全戦全勝と勝ち進んでいくなんて、この世にあっていいことではないロボ。 というか、すっごく見ていて不快だロボ。イライラするロボ。虫唾が走るロボ。 あれは……あれはもっと間抜けで貧弱でボロ負けして『覚えておくがよいであーる』なんて言って遁走するのがお似合いなはずで、 こんな勝利とか栄光とは程遠い下水道のドブ水に浸かってわんわん泣いて、それでエルザに……エルザに……」 怒り、であろうか。 珍しくも?感情を露にするエルザに神崎をはじめ、そこにいる全員が驚いていた。眠っていた命も起きて、何事かと目を丸くしている。 「とりあえず、エルザがぶっちのめてくるロボ!」 叩きつけるように言い放ち、エルザはカツカツと音を立てて司令室から出て行こうとする。 明らかに命令を無視した勝手な行為であったが、しかし彼女が部屋を去るまでそれを留めようとするものはいなかった。 「いいのかしら? 彼女の勝手にさせて。しかも、相手が相手よ……万が一ということも」 「しかし、あれと渡り合える存在がどれだけあるかと考えると、ここは仕方ないでしょう。少なくとも時間はかせげます。 それよりも……」 何か別の問題があるのか? 眉根を寄せた警備本部長へと、神崎はさらりとこんなことを口にした。 「これから、僕の紅茶は誰がいれてくれるんでしょうかね?」 LIVE FOR YOU (舞台) 13 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) 15
https://w.atwiki.jp/compels/pages/403.html
技術の進歩というのは目まぐるしいものだ。 北条沙都子は、実に百年ぶりに心の底から感心していた。 人が利便性や快適性を突き詰める生き物なのは、漠然と分かってはいたがまさかトイレもより発展性を遂げるとは。 昭和という時代もあれど雛見沢のような田舎では、まだ汲み取り式も珍しくない。 古手梨花が死んで、汚物塗れの便槽に遺棄されたのは記憶に新しい。エウアから聞かされた時は、流石に引いたものだ。 「気持ちは分かりますが、こんなものまで付いてるなんて」 女子トイレの個室に入る。 清掃も行き届いていて、不気味な薄暗さはなく明るすぎない。丁度良く、人が落ち着けるよう照明が調整されていた。 悪臭もなければ、便器の汚れもない。水洗トイレでウォシュレットまで備わっている。 雛見沢分校の厠とは比べるまでもなかった。 特に目を引いたのが一つのボタン、これはいずれ使えると目を付けたものだ。 音と書かれたボタンを押す。 すると、川の流れと鳥の鳴き声がわざとらしく、トイレに響き渡る。 令和の世であれば、珍しくもない音姫と呼ばれる機能である。 排泄音を聞こえなくなるように、別の音を流して掻き消そうという魂胆だろう。 沙都子も、これでもまだ年頃の少女のメンタルだ。そういうのを、気にする気持ちは分かるが、酔狂な物を取り付けたものだとも思った。 「聞こえますか?」 イヤリングに小さく声を掛ける。 『ああ、聞こえるけど…なんだこの変な音、雑音が凄いんだけど』 イヤリングからメリュジーヌの声が届いてくる。沙都子もやたらトイレ内に響く大自然の効果音で聞き取り辛いが、止むを得なかった。 「貴女、ドラゴンなんでしょう? これくらい聞き分けは簡単だと思いますが」 『君、竜を何だと思っているんだ』 文句を言いながら、返事はしっかり返すあたりは聴力も優れているのだろう。 「手短に済ませましょう。あまり時間はないものでして」 先ず口にするのは、悟飯達と合流しそこでシュライバーの襲撃を受けて、毒を盛られたという事実が暴露されたこと。 とんだ流れ弾だった。しかも、沙都子では暗殺するのが難しい、日番谷冬獅郎という対主催に目を付けられている。 音姫を流しているのも、この通話を聞かれる可能性を極力排除する為である。 (芳しくありませんわね) メリュジーヌもサトシと梨花を殺害して以降、沙都子にとっても厄介な展開になっていた。 海馬モクバとドロテアを襲撃したのは良いが、取り逃がしたと聞いた時は唖然としたものだ。 「四人の内、一人しか仕留められないだなんて、もう最強の看板を下ろした方がよろしいのでは?」 『…………彼が、強かったんだよ』 「? 言い訳は聞きたくありませんが」 更に厄介なのはもう一人ディオという少年まで、しかも別の方角へ逃がした事だ。 同行していれば纏めて始末できたが、別々に逃がしたのが面倒だった。 (モクバさん達を追撃して殺しても、ディオという少年まで手が回らない……) モクバ達の目的地は恐らく海馬コーポレーション。 彼らだけなら、メリュジーヌに付近で待ち伏せさせ、もしやってきたのなら殺させるのもアリだったが、ディオの存在がイレギュラー過ぎて動向が予想できない。 モクバ達の殲滅にメリュジーヌを投入した間に、ディオが強力な対主催でも引き連れて海馬コーポレーションに来られるのが一番困る。 メリュジーヌに襲われたと吹聴されれば、その同行者であった沙都子まで疑われるだろう。 (悟飯さんに疑われるのだけは、避けなければならないというのに) 不味いのは、モクバやディオの証言が悟飯の耳に入ること。 忘れてはならないのは、悟飯は既に雛見沢症候群を発症している点だ。 一度でも沙都子達に疑心を向けば、いずれ破裂する暴は沙都子にも平等に例外なく降りかかる。 当初の予定では、カオスとメリュジーヌを入れ替えて、カオスを邪魔な参加者に変身させてから本物のメリュジーヌと茶番の一騎打ちをさせて信頼を得る算段だった。 だが、気や霊圧という感知能力を持つ者達を欺くのは難しい。 しかも今、沙都子が利用しようと考える悟飯もその能力を有している。 そればかりか、首輪の解析について手掛かりを掴んでいる悟空も同じだ。 最悪なのが悟空とその相方のネモだけで、殺し合いを破綻させる算段がついてしまうこと。 いくら沙都子が不和を煽ろうが、彼らが頑なにそれらを無視して、内々に処理して事を運ぶだけで殺し合いは終結する。 いくら別の対主催や参加者を屠ろうが、悟空一味を止めなければ殺し合いの続行はあり得ない。 この計画は、軌道修正せざるを得なかった。 孫悟飯をL5へと進行させカルデアの悟空達を滅ぼす必要がある。 それも悟飯から沙都子が狂気の標的にならぬよう慎重に。 『そこから離れて、別の対主催に潜り込めば良いんじゃないか? 君なら、いくらでもそこから離れる屁理屈は浮かぶだろ。日番谷冬獅郎も君が消えるなら、喜んで送り出してくれると思うよ。警戒対象が守るべき対象から、勝手に離れてくれるんだし』 悟飯はいずれ発狂して死ぬ。雛見沢症候群の発症も確認したのなら、それはほぼ確定事項だ。 毒を盛って、症状まで出始めたのならそこから離れて、死ぬのを待てば良い。 無駄なリスクを負って、海馬コーポレーションに滞在する理由はない。 メリュジーヌはそう考えていた。 「いえ、悟飯さんは必要です。そうでなければ、この殺し合いは破綻し貴女の願いは決して叶いませんわ」 カルデアの対主催達について、沙都子は懇切丁寧に説明した。 孫悟空という鉄壁の守りを崩すには、同格の実力者である孫悟飯を使うしかない。 『……なるほどね』 今までと違い、反応に違和感があった。 (僅かでも、悟空さんを倒せる算段がある?) 悟飯を初めて見た時、メリュジーヌは全力を出して勝てるか分からないと評していた。 小学生のように最強と自称していたメリュジーヌがだ。 しかし、今は悟空に対してそこまでのリアクションがない。彼女が勝てないかもしれないと言った、悟飯の親族であるにも関わらず。 制限以外は万全のカオスですら返り討ちにした男で、その実力は直接関わらずとも十分推察できるはずだ。 (……別の協力者? まさか、私に隠して) もうじきに第二回放送を迎え、殺し合いも中盤戦に差し掛かる。 現在の死亡数は不明だが、0回と1回の放送のペースで考えるのなら、参加者も半数を切る。 元々、メリュジーヌは味方ではなく手を組んでいるだけの相手だ。 カオスと違って、メリュジーヌは明確に沙都子を嫌っている。悟飯に毒を盛った時やカオスを勧誘した時の反応から、それは明らかだった。 いずれ裏切る相手なら、別行動をしている最中に沙都子以外の手札を揃えるのは自然な話。 「妬けますわね。私以外に誰か新しくお友達が出来まして?」 『君、僕と友達のつもりだったのかい?』 「つれないですわね」 誤魔化しているのか、素なのか判別に困る。 とはいえ、無理に聞き出そうとして、協力関係が決裂するのも避けたい。 メリュジーヌからすれば、シャルティアは絶対に沙都子には靡かない、そして不和の種になるであろうことを見越して伏せていた。 なおかつ、現在も同盟相手の為、不用意に情報を流さないように義理を通している。 問い詰められれば話はしただろうが。 (予定を少し早めた方が良いかもしれませんわね) 本当なら第二回放送後に、もう少し様子を見てから行動に移る予定だった。 だが、メリュジーヌの動向も気になる。 まだ沙都子の指示に従っている内に、やれるだけの布石を打つ方がいいのかもしれない。 モクバとディオ以外にも、西側の参加者には殆ど、沙都子の悪評が触れ回っていると考えて間違いない。 シカマルと一姫もまだ死んではいないと想定する。特に、一姫はメリュジーヌにも対抗しうるガッシュを保持しているのが厄介だった。 カルデアも同じく西側にあり、そしてカオスの変身を見破れるであろう孫悟空が居る。 時間の経過と状況次第では包囲網が形成されて、動き辛くなる可能性もある。 そうなれば、メリュジーヌもいずれ見切りを付けるだろう。 時間は沙都子に味方をしない。 (まあ、口喧嘩では負けませんわ……でも) それでも対主催達に疑われる時が来れば、沙都子も頭脳を持ちうる全てを総動員で回転させ、自分達の擁護を行う事は出来る。 ただ、その場で表向きは全員を納得させたとしても、問題は悟飯が内心でどう考えているかだ。 理屈で納得するようであれば、雛見沢で惨劇など起きない。 どれだけ沙都子が取り繕った嘘(シナリオ)を思い付いても、狂気に染まった妄想が全てを書き換えてしまう。 しかも、どんな脚本改変を行うか、沙都子にも想像が付かない。 絶対に沙都子だけは無事でいられる保証はない。 梨花の心を折るべく、百年間惨劇を引き起こしながら沙都子自身正体を隠し続けていられたのは、彼女が盤上にある駒の特性を知り尽くしていた事も大きな要素だ。 最も身近な部活のメンバーは当然として、大石、鷹野、富竹、その他大勢の雛見沢に関係する人物の思考や行動パターンを予め殆ど知っていたのは大きい。 悟飯の性格もある程度把握出来たが、まだ想定しきれない不確定要素がないとは言い難いのだ。 必要のない刺激は避けたかった。 (……嫌ですわね。悟飯(じらい)を前にして、シカマルさんといけ好かないあのにくったらしい銀髪と言い合うのは、ちょっと。 やはり、そうなる前に悟飯さんには、私を仲間だと強く植え込まないと) ただ沙都子を味方だと強く認識させ、沙都子を守らねばならないと強く意識の底に植えこむことが出来れば。 対主催達に何を吹き込まれようと、逆に沙都子を守ろうとしてその相手を殺害してくれる見込みはある。 雛見沢の星の数だけある惨劇の中には、発症者が奉仕対象を守る為に発狂し、それ以外を皆殺しにするカケラも存在した。 沙都子が目指す惨劇としては、それが一番望ましい。 当然、奉仕されるのは沙都子だ。 (先ずは探りを入れないと、悟飯さんがどんな精神状態か知らなければいけない) 短い時間で簡単に済ませるのであれば、沙都子を襲う敵が居て悟飯がそれを守ろうとする。 そんなシンプルな構図が望ましい。 狂気の中にあっても、本当に大事な信念は揺るがない。 雛見沢で大石蔵人が敬愛するおやっさんの無念を晴らす為に、黒幕と思い込んだ梨花から自白を引き出そうと、多くの人死にを出しながら躍起になったように。 悟飯をそう誘導させることも不可能ではない筈。 ここから、沙都子に依存するように仕向ける事も、沙都子にはやれるという自信があった。 沙都子以外の他の対主催もマーダーも全て敵に見えてくれれば、これほど扱いやすい殺戮兵器もない。 邪魔さえなければ。 (日番谷さんが、本当に計画の邪魔なんですのよね) 面倒なのが、日番谷の存在だ。 やはり疑いの目を掻い潜って動くのはやり辛い。雛見沢では、基本ノーマークだったからこそ自由に動けて、かつ危ない橋を渡ろうとも疑いの眼すら向けられなかった。 沙都子は梨花が繰り返した百年のループ、その記憶を垣間見てそれぞれの惨劇の攻略方法とその対策(メタ)を知り、その上で誰からも容疑者として疑われる事にもなり辛い立場という、強力なアドバンテージの上で暗躍していた。 現在の殺し合いに於ける、同等の立場と目線で疑われるという状況には慣れていない。 それは沙都子も自覚しており、だからこそ時間を置いて様子を見ながら事を運びたかった。 (しかし、ダラダラしているわけにも……) しかし、メリュジーヌが襲って取り逃がした三人が、やはり不確定要素過ぎる。 三人纏めていればまだしも、二手に別れた形で分散して逃げたのが最悪だ。 逃がし方からして、ディオとモクバ達が合流を目指す事は殆どないだろう。 暫くすれば海馬コーポレーションを発つと日番谷は話していた。 運が良ければ、モクバ達とはニアミスで済むかもしれないが。 ただ、出会えば最悪のケースにも繋がりかねない。 口封じをするにしても、メリュジーヌをモクバ達殲滅かディオ殲滅のどちらか片方にしか投入できず、万全な後処理を命じられない。 もっと言えば、沙都子がここで道草を食っている間に悟空とネモが首輪を外しかねない。 そう簡単に外れる代物ではないと思いたいが、進捗の詳細を知らない以上は一時間後に外れたと言われても、有り得ない事ではない。 「海馬コーポレーションに来られますか? お願いしたいことがありますの」 『構わないけど』 時間がなかった。 メリュジーヌの不穏な動き、二手に別れてしまったモクバ達、悟空達カルデアの対主催の存在、疑いの目を向ける日番谷。 そこに加えて、西側で今も敵が増え続ける現状を鑑みれば、余計な事が悟飯の耳に届く前に、早急に沙都子の信頼を確固たるものにしたい。 些か急ぎ足になろうとも。 「これから先の指示を聞いたら、カオスさんにも通信してもらえますわね?」 その為には、今最も近くに居て強さもあり沙都子を疑う日番谷は邪魔だった。 ここで何か事を成そうにも、日番谷の目を欺かなければならないのが最大の時間ロスなのだ。 時間が惜しい沙都子には、それが一番の障害だ。 「物音さえしなければ、多少暴れても誰も気付きはしないでしょう」 そういえば、失念していましたが…カオスさんに使える能力がありましたわねと、楽し気に沙都子は話す。 海馬コーポレーションは広い、異変が起ころうともイリヤ達ですら早々気付きはしないだろう。 逆に、下手に狭い民家に拠点を移動されれば、イリヤ達も勘付きやすくなる。その前に、日番谷には御退場願う。 日番谷さえ消しておけば、後はどうにでもなる。 そうなれば、多少無理で乱暴な方法であろうとも、カオスを連れている沙都子に戦力で適う者はない。 そしてこの場にいるなかで、知略を以てして沙都子を上回る者も誰一人として居ない。 「メリュジーヌさん、貴方には日番谷さんを処刑(け)して貰います」 今こそ、その最強の名に恥じぬ働きをして下さいね。 そう皮肉を飛ばして、沙都子の口許は釣り上がった。 ─── ベッドの上で、呆然と天井を眺める。 無機質な白い壁紙が広がって、時間の流れがゆっくりと進んでいくようだ。 普段なら、退屈で窮屈な光景。 それでも今は遅く進む体感時間が救いに思える。 嘆息をついて、孫悟飯は目を閉じる。 どうしたらいいんだ。ずっと、そればかりを考え続けていた。 最初にシュライバーと戦った時に、スネ夫とユーインを守れなかった。 シュライバーは強敵だった、不甲斐ないがどう上手く立ち回ってもあの時の悟飯の目線では、犠牲を失くすことは無理だと思う。 それでも、全員は救えなくても悟飯が冷静にスーパーサイヤ人2を御しきれていれば、ユーインは死なずに済んだかもしれない。 その後、美柑が怯えてしまったのも無理もない事だ。 セルとの戦いで、豹変した悟飯を見た悟空も動揺していた。 あの頃の悪癖をずっと、改善していない。きっと修行をサボって勉強に専念しだしてしまったからだ。 もっと、感情をコントロールする術を身に付ければ、スーパーサイヤ人の凶暴性に支配される事はなかった。 (だけど、その後は…どうしたら良かったんだ……) ずっとずっと、化け物を見るような目で美柑は悟飯を見続けていた。 こっちは死ぬほど怖い目に合って戦い続けていたのに。 どれだけ守っても、美柑は悟飯を人として扱ってくれなかった。触れたら破裂する腫物のように、距離を空けていた。 イリヤものび太も悟飯が居なければ死んでいたのに、のび太に言い過ぎたのは悟飯の落ち度だが言い分は正しいのに。ケルべロスも美柑ものび太に味方して。 挙句の果てに、誰かに毒まで盛られた。 最初にスネ夫とユーインを死なせたから、だからその報いだというのか。 「ぼ…僕の頭がおかしくなる、前に……」 もし報いだとするなら。 悟空もスネ夫もユーインも、そしてニンフという少女も。 彼らの死を咎められる事は受け入れよう。 だが、その前にやらねばならない使命が残されている。そのように感じ始めていた。 悟飯に毒を盛ったイリヤの抹殺。 そこまで考えかけて、背筋が凍った。 まだイリヤが犯人と決まった訳じゃない。自他ともに悟飯に異常があるのは間違いないが、だからといってイリヤが元凶と何故結びつく? 悟飯から見て、身内が二人もマーダーになり、不審に見えた点もなくはないが。 決定的な証拠は何処にもない。 不審な点も悟飯の心証でしかない。 「悟飯さん」 ドアの戸を叩いて、沙都子の声が扉越しに響く。 悟飯がベッドを借りているこの部屋は医務室だ。流石は大企業の施設だけあり、具合の優れない社員が簡易的な処置を受けられるよう設けられたのだろう。 イリヤ達がいる応接間からは少し離れた場所にあり、仕事の喧噪から遠ざけられるように配慮されている。 手間を掛けてわざわざ沙都子がやってきたのはどうして? そんな風に穿った見方をしていた。 「はい…どうぞ」 「失礼しますわ」 がちゃりと高い音を鳴らし、ドアを開けて沙都子が入ってくる。 古びた木の音が全然しないのは、やはり最先端の企業だけあり常に施設も最新のものを更新し続けているのかもしれない。 「……なんだか、慣れませんわね」 「そう…ですか?」 「ええ、誰もいないとはいえ。こんな立派な会社、やはり畏まってしまいますもの」 微笑みながら沙都子は話す。 悟飯も山で育っている。 時々街に出て買い物に出掛けたり、運転免許を取りに行った悟空とピッコロを見に行く事などもあったが、やはりこういう大きな建物に色んな機械が置かれた施設は落ち着かない。 「私、田舎育ちですから」 どちらかといえば、木々や川などの自然や鳥や猪などの動物のが馴染み深い。 沙都子も同じようで、舗装されてない砂利道や道を挟んで縦横無尽に広がる田んぼ。 排気ガスの混じらない澄んだ空気。 民家以外の建物など殆どない、そんな田舎の方が落ち着く。 「僕も山に住んでたので、気持ちは分かるかもしれません」 「あら、私と悟飯さんはお仲間でしたのね? イリヤさんも美柑さんも、とても良い人達でしたけど都会っ子でしたから、実は少し肩身が狭かったんですのよ」 あの二人から、沙都子さんは疎外感を覚えているのか。 一瞬、イリヤと美柑が秘密裏に結託して沙都子を害そうとしている。そんな邪推が生まれた。 「大丈夫でしょうか……」 「……大丈夫、ちょっとは落ち着きました。すぐに皆さんのところへ行きますよ」 行きたくなかった。 肉体的な疲労はかなり軽減されたのに、億劫で鉛のように手足が重い。 また、美柑に会って怖がられると思うと嫌気がする。 もういい加減にして欲しい。 いつまで、あんな態度を取られなきゃいけないんだ。 最初の時はともかく、こっちも余裕がなく精一杯善意で守っているのに。 イリヤは信用できるか分からない。 どう考えても、親友と妹が殺し合いに乗るなんて異常だ。 のび太とも、和解したがそれでも顔を合わせたくない。 今だって、悟飯はのび太に言ったことは間違ってないと思う。彼が居なければ、雪華綺晶は死なずに済んだのだ。 ニンフも上手くやって、リップだけに狙いを定めて殺せたのに。 のび太が余計な横槍を入れて、挙句にリップだって死にたくないだのと非難を重ねてきた。 悟飯の心配をしてくれているようだが、正直、もう放っておいて欲しい。 鬱陶しかった。 ああ、もう疲れた。 「もう少し、ここで休んで行きましょうか?」 「いえ…僕は……」 沙都子に気を遣わせてしまった。 それに気づいて、慌てて、取り繕うように声に覇気を込めた。 「私が休みたいんですの。 悟飯さんには、その間ここの護衛をお任せしたいですわ」 にっこりと笑って、沙都子は悟飯のベッドに腰を掛けた。 「すみません」 「いえいえ、悟飯さんは頑張ってますもの。いい子いい子ですわ」 そっと手が悟飯の頭に置かれて、さわさわと撫でられる。 「え、ちょっと…」 同年代の女の子に急に甘やかされてるようで、気恥ずかしさと慣れない異性との距離感に戸惑う。 悟飯は頬を赤らめて、視線が泳いだ。 だけど、こんなことを人前でされたら溜まったものじゃないが。 気分は悪くなかった。 「……悟飯さん、一人で抱え込まないで下さいまし」 「いえ、僕は……」 「悟飯さんが強いのは知っていますわ。 だから、心配なんですの」 髪を撫でて、そのまま手は流れていくように頬を撫ぜる。 幼気でいて繊細な手遣いはこそばゆく、くすぐったくて、柔い指先は温かな熱を帯びていた。 人肌が触れた頬から温もりを感じる。 「もし、どんなに考えても解決できない事があるのなら……」 指先から手が動き、掌がぴったりと頬に張り付く。 「誰か信頼できる方にご相談して下さい。 誰でも良いですわ。イリヤさんでも美柑さんでも、日番谷さんだって頼りになる方ですもの。 どんなに強くても、悟飯さん…貴方は誰かに頼ったって良いんですのよ」 私の唯一無二の親友が、言っていた事ですわ。そう付け加えて。 沙都子は悟飯を導くように、微笑んだ。 気付けば、悟飯の瞳から涙が伝って沙都子の手へと流れ落ちる。 「す…すみません……あの、僕……」 急に人前で泣いてしまって、他人の涙が触れるなんて気持ち悪いだろう。 悟飯は我に返って、沙都子から離れようとした。 「悟飯さんは、一人ではありません。忘れないでくださいね?」 もう片方出の手で悟飯の顔を固定して、離れていくのを止めるように自分の顔の前へ視線を向けさせて。 沙都子は真摯な瞳で悟飯を見つめていた。 ─── (シュライバーが来る様子はなさそうだが) 海馬コーポレーションの外、青眼の白龍の銅像が立ち並ぶ中で、日番谷は腕を組んで周囲を警戒していた。 シュライバーの再襲撃と別マーダーを警戒し、見張りを買って出たのだ。 この場での最高戦力は、悟飯が実質リタイアと考えれば、後は日番谷しかない。 カオスも見張りという大役を任せるほどまだ信頼できない。 沙都子の同行者であり、彼女が黒だった場合はカオスも同じく協力者である可能性は高い。 イリヤに見張りを任せるのも考えたが、シュライバーの相手をあんな子供にさせたくなかった。 クラスカードとやらを使えば、相応に渡り合えそうではあったが。 世界の負を詰め込んだ厄災のようなあんな男と、戦えるとはいえ子供のイリヤには触れさせたくない、そんな思いもあったのだろう。 本音を言えば、カオスや沙都子から目を離すのは避けたかったが、外部からの脅威への警戒を怠る訳にもいかない。 少なくとも、現状では日番谷達と同行することでメリットがあるのなら、この場で襲う事は先ずない。 あとは、もう一人の戦力であるイリヤを信じるしかない。カオスへの抑止力にはなるだろう。 それにいくら悟飯が限界でも、カオスが凶行に及べばイリヤ、日番谷、悟飯の三人を纏めて相手をする羽目になる。 現状、直接牙を向く可能性は低いと判断していた。 (……クソッ、藍染の奴がちらつきやがる) 日番谷の脳裏を過ぎる一人の男。 かつての護廷十三隊五番隊隊長、藍染惣右介。 霊王の殺害を目論み、世界とそれを維持する零番隊もとい護廷十三隊へと弓を引いた大逆者ではあったが、計画を実行に移すその寸前まで誰もがその素性にも目論見にも気付けなかった。 それどころか、温厚で温和な実力者として誰からも信頼を置かれていた。 日番谷とてその一人。大事な家族であった雛森桃を任せても大丈夫な、そんな信頼に足る男だった。 それが北条沙都子と被って見える。 沙都子の挙動は善人のそれだが、あまりにも完璧過ぎて、その藍染を見ているかのようだ。 (考えすぎなら、良いんだが。 だが分からねえな。一体だれが……) 毒を盛った犯人探しについても、結論を急くのは早計。 現世にある警察のような捜査力はなく、個人の主観と推理だけで犯人を見付けるのは困難を極める。 仮に犯人を炙りだしても、それが冤罪でないとは言い切れない。 だからといって、この中に犯人が居ないと決めつけ油断もできない。 常に日番谷が警戒をし続けるにも限界があった。 (何か手を打たねえと) 内部に裏切者が居る。 例え信頼し合っていても、僅かな疑念が崩壊の片道切符になるのは珍しくない。 日番谷も間近で、藍染の暗躍を巡り、同じ護廷十三隊の雛森桃と吉良イヅルが斬り合いに発展しかけたのを、寸前で食い止めた経験がある。 仮にも訓練を詰んだ死神の戦士ですら、激情に飲まれる事もあるのだ。 こんな、感情を制する術も身に着けていない子供達では猶更だ。 いつ、仲間割れが始まってもおかしくない。 早くに事態を打開すべきなのだが、早期に犯人を探し出す事も難しい。 下手な刺激を与えるより、現状を維持しながら様子を伺うほかない。 「ッ!!」 実体を持った殺意が明確に襲い掛かる。 轟音を鳴り響かせ、小さき紫の甲冑を着た少女騎士が突貫する。 「てめえは───!?」 突如として現れた襲撃者。 トンファーのように左右の腕に装着された鞘を鈍器のように振り回し、日番谷の知識に照らし合わせるのなら、霊圧を噴射し推進力を持たせ莫大な膂力へと変換させ叩き付ける。 「ぐ、ッ……!」 背の太刀を抜刀し受け止める。 鞘と太刀が十振り以上交錯し、日番谷の横腹へ衝撃が走った。 騎士のミドルキックが炸裂し、その細い足が減り込む。 自分の全身が軋む音を耳にして、ボールのように日番谷は蹴り飛ばされていく。 甲冑を除けば、可憐な矮躯の少女とは思えない剛力。 (どういう…ことだ……?) 蹴り飛ばされ、受け身を取った後、日番谷は腹部を抑えて膝を折り眉を顰める。 「おい! 乾! イリヤスフィール!!」 数回の攻防から伝う襲撃者の高い実力もさることながら、何故これだけの騒ぎを起こして誰も異変に気付かない。 まるで世界から、日番谷とあの騎士だけが隔離されているかのようだ。 「中々やる」 騎士、メリュジーヌは日番谷を蹴り上げた左足を一瞥する。 触れただけで表面だけだが凍らされていた。 幸いにして足の周りを氷が囲うだけで、内面まで凍結されてはいない。 だが、恐るべき凍結速度だ。 蹴りを入れた時も、感触は硬かった。 触れる寸前に氷を鎧のように展開し防御しいたと推測する。 衝撃までは、殺し切れなかったようだが。 「……随分ときな臭くなってきやがったな」 作為的。 蹴り飛ばされた先は海馬コーポレーションの反対側。 日番谷を、海馬コーポレーションから遠ざける為に遣わされた刺客のようだ。 誰も何の反応もなく、二人の交戦以外は静寂しかないのも違和感がある。 呼び声すら届かない。 二人だけの戦場を創り上げ、そこに隔離されたと言われれば信じてしまいそうだ。 「難しい事を考える必要はないよ。これから、君は僕が切開して殺す」 物騒な物言いを残して、メリュジーヌが消えた。 日番谷の視線が動く。 その右側の死角から、鞘の先に形成された剣が刺突する。 水平に太刀が薙ぎ払われた。 火花が散り、太刀の刀身が刺突を止める。 切開するという宣言の通り、ただの一度の剣戟だけでは終わらない。 メリュジーヌは鞘に魔力をより滾らせる。音を置き去りに、優に二桁を超える斬撃。 風のように繊細で、嵐のように雄渾に切り刻む。 「氷竜旋尾!!」 振り払った氷輪丸の太刀筋をなぞるように、大気中の水分を凍結させる。 数メートル規模の氷の斬撃が具現化した。 その様、まさに竜の尾のように。 「上手く出来た造形品だ」 子供の工作を見て、出来の良さに驚く大人のような物言いだった。 両腕を胸前で交差させ、振り開く。 魔力を伴った風圧は作り物の竜を粉々に粉砕する。 「本物には遠く及ばないけど」 仮面の下、眉一つ動かさず悠々とメリュジーヌは立つ。 粉々に砕かれ、破片が飛び散る氷の雨の中、白い髪を靡かせて魔力の紫電を纏う。 傷一つなく、細かな氷が日光を反射しメリュジーヌの美しさをより彩る。 「……まるで、本物を…知ってるような言いぶりだな」 肩で息をして、息を荒げながら全身に掠り傷を幾つも作り、羽織を点々と赤く染める。 優雅さとは程遠い。 だが、最強の妖精騎士を相手にして、白兵戦で命を繋いでいる。それだけで、既に偉業の域にある。 尸魂界全土を見ても、あの剣戟を剣技のみでいなし無傷で生還を成し遂げる剣士はそうはない。 日番谷が致命となる一撃を全て避けれたのは、剣を振るい続けた賜物だった。 (黒崎の天鎖斬月に近い) 剣技だけでも、日番谷が剣を交えた者達の中での最上位だ。 それだけに留まらず、霊圧の量すら桁違い。 本体の敏捷と筋力だけならば、恐らく日番谷のが勝る。だが莫大な霊圧を上乗せし、全ての肉体性能を飛躍させ、上振れた破壊力と速度を両立させている。 始解状態とはいえ、互いに斬り合えるだけの至近距離で放った氷竜旋尾、それに俊敏に反応し容易く切断せしめたのがその証。 つまるとこ、天鎖斬月のように純粋に速く強い。剣技の研鑽も疎かにせず、長きに渡りその腕に沁み込ませ、練り上げた極上の技。 複雑怪奇なルールを強いる鬼道系の能力と違い、攻略法は単純そのもの。 相手より上回る力量で斬り伏せる。 単純だが、何よりも困難な方法しか残されていない。 (卍解抜きの白兵戦じゃこちらが不利か) 卍解と始解では、霊圧に最低でも5倍以上の差がある。 始解での正面からの斬り合いでは、一方的に消耗し削られていくだけだった。 距離を空けて奴を上回る最大の一撃にて葬り去る。 構えた剣をメリュジーヌへと向け、その背に広がる海馬コーポレーションから日番谷は一歩後ずさる。 (早いとこ、戻らなきゃならねえってのに) それが、あの騎士の目論見通りであると理解しながら。 ─── 「沙都子さん、実は……」 悟飯さんは、重々しくも意を決して私に全てを打ち明けてくれた。 ええ、当然…来たと思った。 何処かのお嬢様学校で、お姫様のように祀り上げられ調子に乗った、誰かさんの名言を引用した甲斐があるというもの。 上手く、悟飯さんの心を開く事に成功した。 全くもって、とても素敵な台詞でしたわ。ありがとう梨花。 のび太さんを納得させるのに、大分苦労した甲斐がありましたわ。 『悟飯さんの様子を見てきますわ。イリヤさんはお疲れのようですし、もう少し休んだ方が良いでしょう。 カオスさん、皆さんの事をお願いします。 もし何かあれば、すぐに助けを呼びますし、日番谷さんがその前に悪者をやっつけてくれますもの』 『なら、僕も行くよ沙都子さん! 絶対に行くからね!!』 『いえ、のび太さん───』 『でも!』 『ですから』 『だけど!!』 『いいですか』 美柑さんは、何処か安心した顔をしていたのに、それに比べてのび太さんと来たら。 あんなに強情なのは、何処か梨花を彷彿とさせて。 ……いえ、感傷に浸る場合ではない。 今頃は見張りの日番谷さんを、メリュジーヌさんが襲撃している頃合いでしょう。 カオスさんに、ジャミングという便利な能力があって良かったですわ。 メリュジーヌさんが、悟飯さんの乱入を恐れて、日番谷さん襲撃を断る事も考えましたが……。 音を遮断して、後は私がここで悟飯さんを足止めすれば、外の異変には殆ど気付けない。 気の感知も、制限で壁を挟めば上手く働かないようですし。戦闘に気付く事は早々ない筈。 こう、予め話しておいたお陰か、快諾してくれました。 さて、メリュジーヌさんには、殺せなくとも絶対に遠ざけろと強く念を押しましたし。 それくらいはしてくれないと、最強の名が廃りますわよ。 モクバさん達を取り逃がした汚名は、ここで挽回なさってくださいね? まあ仮に日番谷さんがメリュジーヌさんを返り討ちにするかして、生きて早急に戻ってきても、私は悟飯さんと一緒に居たという確固たる事実がある。 メリュジーヌさんと結びつける証拠は、彼女がヘマをしなければありませんし、悟飯さんも目の前で真摯に接し続けていた私を疑うことは、そうはないでしょう。 もし日番谷さんが死んだ場合なんて更に好都合、彼は2回放送で名を連ねる事になる。 その時、日番谷さんの死亡時刻は12時以前の数十分の何処かになる。 そして私は、その時には、やはり悟飯さんと居たという、悟飯さんにとってはこれ以上ないアリバイを有する。まあ、どのみち私では彼を殺すのは実力的に無理なのですが。 まずここから、私のアリバイと信頼を重ねていく。 「───そう…ですか……」 悟飯さんが話してくれたのは、殺し合いが始まって、ユーインとスネ夫という同行者を早速死なせて、そこから美柑さんとぎこちなくなったこと。 ここはその後、途方に暮れた二人に私も多少なりとも立ち合い、彼らの仲が決して友好的でないのは知っていましたが。 深堀すれば、なるほど…これは美柑さんが、あれだけ怯えているのは無理からぬ事ですわね。 私から見ても、あんなに怖がっていた美柑さんに違和感があったが、蓋を開ければ簡単な事。 悟飯さんは頭に血が上ると、我を忘れてしまう。 私が惨劇を始める前、まだ梨花が一人でループしていた頃の圭一さんにも見られた、正義を成そうとして視野が狭くなる、そんな欠点とでも言いましょうか。 サイヤ人という宇宙人の血筋も悪さをしているのかもしれませんが、私の見立てでは元の性格も影響しているでしょうね。 恐らく、悟飯さんにはヒーロー願望が根底にあって、自分が正しいと思う場面で怒りが頂点に達した時、歯止めが効かなくなる。 私と別れた後、黒いドレスの女…特徴から聞くに悟空さんと戦ったリーゼロッテという方。 彼女とも戦った時、悟飯さんはとてもその行いを許す事が出来ず、頭が怒りで一杯になったと話してくれた。 その後、シャルティアと名乗るマーダーに感情を爆発させ、後先考えず戦闘を強行したのも同じような理由らしい。 ヤミという変態と戦った時には、その性質を逆利用されて返り討ちにされたとも。 悟飯さんが連戦後だったとはいえ、かなりの要注意人物だ。 イリヤさんはともかく、のび太さんまで犯し始めるのは頭が狂ってる。ちょっと話が通じそうもない。 死ぬのに慣れてはいますが、凌辱されるのは御免被りますわ。 ともあれ、悟飯さんの性格は、かなり使えるでしょう。 私も直に見た訳じゃありませんが、リップというマーダーを人質を無視し、殺害しようとしたのはほぼ素でしょうし。 リーゼロッテとシャルティアに怒って我を忘れたのもそう。 きっと、私が薬を盛らなくても、特にリップの時の流れは殆ど変わらなかったのではないでしょうか。 ……正直、私からしても薬の影響か悟飯さんの素なのか、判別が難しいんですもの。 悟飯さん達では尚更ですわ。 まあただ…恐らく、致命的だったのはその後。 のび太さんとの口論。 彼に対し正論を述べて、それを実質否定された形でイリヤさん達がのび太さんを庇ってしまったこと。 ここが、完全に止めを刺したのでしょうね。 どちらかといえば、戦いは悟飯さんにとってストレス解消に繋がっていたのではないでしょうか。 日番谷さんは戦わせる事で負荷を掛けてはいけないと、悟飯さんを一人にする時間を与え、この先も戦いから遠ざけようと考えているようでしたが。 むしろ、戦うことで自己を保っている。戦闘民族だなんて言っていましたけど、しっかりその血を引いているようですわ。 その結果で後悔はしても、雛見沢症候群の緩和にかなり役立っていた。だって、発症してもまだかなり思考はクリアなんですもの。 本人は全く無自覚ですけれど。 だから、本当の意味で症状を進行させたのは。 閉鎖空間における人間関係の拗れ。 美柑さんから、ずっと腫物を見るような視線に晒され続けた事と。 それが伝染しケルベロスさんも、果てはイリヤさんまで悟飯さんに対して、色眼鏡で見てしまった事でしょう。 そも、例の口論でのび太さんに見張りを任せられないと憤ったのは。 美柑さん達を死なせない。皆を守らないといけないという、使命感から出た発言だと気付いていない。 皆を思っての言動が、その守るべき人達から否定されれば、阻害されていると感じるのは当たり前だ。 「……僕は、イリヤさんと美柑さんが…信用できなくて」 面白い流れですわね。 のび太さんが一人で悟飯さんに謝りに来たことが、むしろ彼女達が捨て駒を使い捨てるような素振りに見えたよう。 悟飯さんを追放する口実を作る為に、のび太さんを仕向けた。そんな風に思ったらしい。 二人が口論になり悟飯さんが、のび太さんを傷付ければ追い出す理由になる。 そんな悪女たちが、今度は悟飯さんに薬を盛ったのではないかと考えている。 悟飯さんは、自分がおかしくなったタイミングもばっちり合っていると話していた。 イリヤさんがチームに加わってから、のび太さんに対して攻撃的になったと明確に自覚したと。 もしかしたら、あの時から薬を既に盛られていて、口論が仕組まれたものかもしれない。 そんなことを本気で考え、信じだしていた。 「すみません。こんな、きっと僕の気のせいなのに…変な事を……」 笑ってしまいそうな被害妄想ですけど、症状の進行を裏付ける決定的な証拠になる。 狙うならイリヤさんと美柑さんでしょうかね。 のび太さんへ悟飯さん個人としては、嫌っている素振りも見えるけど。 むしろ捨て駒扱いされた事で、容疑者からは外れている。 そうなると、イリヤさんと美柑さんのどちらかか、または両方に悪者になって貰えると悟飯さんへのヘイトを向けた上で、雛見沢症候群の症状を進行させやすい。 丁度、イリヤさんのご友人にはお友達を守ろうとなさった美遊さんがいらっしゃいますし。 お仲間を美遊さんに殺された、紗寿叶さんも利用できそう。 日番谷さんが消えれば、霊圧とやらを感知できる者はいない。悟飯さんはここで私が釘付けにすればいい。 カオスさんの変身能力で掻き回しても、誰も真相に気付けない。 そして、明確な悪者が居れば私の信頼もうなぎ上り。 モクバさん達や別の対主催に何を言われようが、揺るがないよう悟飯さんの味方は私しかいないと刷り込める。 「大丈夫、悟飯さん…」 そっと、刺激しないように。 腕を広げて、優しく強く力を込めないように。 「安心なさって下さい。何があっても…私が悟飯さんを助けます」 温かみを込めるようにして、悟飯さんを抱き締める。 「沙都子、さ……」 私だけは貴方の味方であると、大丈夫私を信じてと訴えかける。 大事なのは、悟飯さんの言うことを否定しない事。肯定もしない事。 甘い甘い蜜のように、彼が求めていることを囁いてあげる。 どうしようもなく辛くて。 戦いは好きだけど、傷付けるのも傷付くのも嫌いで怖い、何てことないただの男の子に。 「さ、もう少し休んで…きっとまだ疲れが残っているでしょうから」 この子は疲れ果てている。 聞いてもないのに、殺し合いに呼ばれる以前、元の世界で行われたセルという方との戦いまで教えてくれた。 地球を壊せるような怪物を、悪戯に刺激して大勢の人を傷付けた報いを与える為に、制裁を加え。 いつでも倒せたにも関わらず、苦しめる為に生かし続けた。 苦痛と屈辱を晴らす為に、セルは地球諸共滅びる自爆を敢行し、それを悟空さんが自分の命と引き換えに防いだ。 見方によってはお母さんからお父さんを取り上げたのは、その息子の悟飯さん。 大変でしたでしょう? 父親の死の原因となり、母親を今度は自分一人で支えなくちゃいけない。 見た目はきっと普段通り振舞っていようと、心の中では自分を恨んでいるかもしれませんものね。 悟天という弟も生まれて、お兄さんにならなくちゃいけない。 ええ、分かりますわ。強くないといけないんですのよね? 戦いの強さではなく、在り方として。 この島でも、家に帰っても。 美柑さん達はおろか、家族にだって負担を掛けたくありませんのよね? もう二度と失いたくないから。 大切で掛け替えのないお父さんを亡くしてしまったことを、ずっと悔やみ続けてなさるから。 お母さんから、お父さんを奪い去ってしまったのは貴方だから。 「耐える事は、強さではありませんわ」 「……」 悟飯さんは強くあろうと決めているんでしょう? そんな貴方が望む私を演じてあげますわ。 ねえ、だから悟飯さん? 今度こそ、ヒーローになって下さる? 私の為の、私だけのヒーローに。 私が貴方に都合の良い惨劇(シナリオ)を描いてあげますから。 「泣いて、るんですか……?」 …………少し、役に入れ込み過ぎましたわね。 ─── (じゃみんぐ、どれくらい続ければ良いかな) 沙都子がカオスに出した指示は海馬コーポレーションにジャミングを仕掛け、メリュジーヌの奇襲とそれに応戦するであろう日番谷の戦闘音及び、その痕跡を一切消去する事。 カオスが辿る筈だった正史に於いて、風音日和を殺害する時、彼女を孤立させる為に桜井智樹宅にジャミングを掛けて、一切の声と物音を遮断する芸当を披露したことがある。 当然、沙都子がそんな便利な暗殺ギミックを活用しない筈がない。 日番谷とメリュジーヌが間近で戦闘を開始しているにも関わらず、カオスの近くに居るイリヤ達は誰も気付く様子がない。 後は、メリュジーヌの仕事だ。 目障りな日番谷を抹殺する。最低でも遠ざけろと、それが沙都子の指示だったらしい。 『カオスは、ここに残るんだ』 カオスも加勢したかったが、それはメリュジーヌに先んじて止められた。 『沙都子が孫悟飯に探りを入れる。 その時、もし、僕と日番谷冬獅郎の交戦に孫悟飯が気付いたとしても、沙都子が注意を逸らすつもりらしいけど…万が一の時に備えて、近くに居て欲しいんだ。 周りに他の参加者が居るんだろう? 返事はしなくていい。 君はそこに居て、もう一度僕からの通信を受け取ったらジャミングとやらをして、そのまま待機していてくれ。…沙都子をいま…守れるのは君だけだ……』 (大丈夫だよね。強いもん…私もお腹が減ったから戦いたかったけど……) 傍に居て欲しいと言われればカオスも逆らう理由がない。 むしろ、頼られることに嬉しさを覚えていた。 沙都子はカオスを必要としてくれている。だから、そこに居場所がある。 (……気を付けてね、メリュ子お姉ちゃん) カオスは誰にも聞こえないエールを送る。 きっと、メリュ子お姉ちゃんは強いから、絶対にあんな人なんかに負けないと信じて。 (……………なに、これ…首輪? うそ、ニンフお姉様が遺した) それは本当に偶然だった。 ジャミングを仕掛けろと命じた沙都子にすら知りようがない。 ニンフが遺した首輪の解析データが、海馬コーポレーションに転送されていた事など。 (中身が見れない……) アクセスしようにも、カオスだけが弾かれるようにプロテクトが張られていた。 ニンフの時間軸ではカオスは成長して、肉体(きたい)は成人女性のそれに変わっていた。 だから、名簿が判明する以前は、参加者として巻き込まれた可能性を排除してイリヤやのび太にも知らせていなかったが。 乃亜からデータをハッキングした際、参加者の名簿情報まで読み取り、カオスの名前を確認。 急遽、カオスにはデータを渡さないよう特別なプロテクトも用意していた。 電子的なプロセスはおろか、物理的にディスプレイに表示した内容すら見ることは出来ない。 (……どうしよう) 沙都子に伝えようか? 首輪を外してしまえば、こんな殺し合いをする必要なんてない。 カオスには見れなくても沙都子や、ここに居る人達なら見れるだろう。 それに時間さえかければ、カオスがプロテクトを破るのも無理ではない。 もしかしたら、誰も痛い事をせずに、悪い事をしなくても、皆がお家に帰れるのかもしれない。 沙都子はカオスの願いを間違っていないと認めてくれたけど、悪い子にならずに済むなら、やっぱりそれに越した事はないと思う。 (だめ、メリュ子お姉ちゃんは、願いを叶えないと……) そこまで考えて、メリュジーヌの事を思い出した。 どんな願いかは分からないけれど、彼女はどうしても願いを叶えたいと話していたじゃないか。 殺し合いを続けないと、きっと乃亜は願いを叶えてくれない。 でも、と思う。 乃亜をやっつけて、願いを叶える方法と人を生き返らせる方法を奪い去ってしまえば? (ううん、このままの方が良いよね) カオスは手にしたデータを放棄した。 (あの乃亜(ひと)、シナプスのますたーみたいなんだもん) 歯向かったら、殺されてしまうかもしれない。 少なくとも、シナプスのマスターを名乗るあの男なら、きっとそうする。 それにもしも、殺し合いを邪魔するなんて事をしたら。 自分が倒されても、願いが叶う方法まで一緒に破壊する。そんな横暴な真似をするような気がした。 逆らう者は、全て捨て去る。自分が不利益を被って、それ以外が得するなんて事は許さない。 まさしく独裁者な有様が易々と想像できてしまう。 それでも、カオスと沙都子はまだ良い。生きて帰れれば、願いが叶えられなくてもそれでもマシだ。 生還さえ叶えば、それでも良いと沙都子も言っていた。 でも、メリュジーヌはきっとそうはいかないから。 (私ね…メリュ子お姉ちゃんが笑っているところ、見た事ないよ。だからね……) どうしてか分からないけど、メリュジーヌはずっと、悲痛な顔をしていた。 乃亜でしかメリュジーヌを救ってあげることが出来ないのなら。やっぱり、殺し合いは続けるべきだ。 沙都子(あい)と巡り合わせてくれたメリュジーヌにも、救われて欲しいから。 (一度くらいは、思いっきり笑って欲しいの) ─── 額を狙った刺突を後方へ躰を傾け、刀を眼前に構えて魔力を纏った鞘を逸らす。 そのまま日番谷はメリュジーヌへと肉薄し水平に斬りかかる。 頬に二つ赤く血の線が刻まれ、全身の切創は以前よりも増して、浅いとはいえ痛々しい。 数十秒の斬り合いの末、紙一重で致命傷を避け続け、だが十斬を捌く内に一斬は掠る。 着実に日番谷はメリュジーヌに刻まれ続けていた。 魔力の莫大な放流が、咆哮のように轟く。 日番谷の振るう刃の先に既にメリュジーヌの姿はない。防御から一転、攻撃に移ったのを悟り俊敏に飛び退いたのだ。 だが、ただ飛び退くと言えど、今は妖精の姿をしたとはいえ、最強の竜種の規模で行われた回避行動はそれだけで規格外の破壊を齎す。 魔力の余波だけで暴風を巻き起こし、コンクリートを砂塵のように巻き上げ、破片がコツコツと道路に当たり無機質な演奏を奏でる。 「ハァ───!!」 刹那、日番谷の正面から爆破音と聞き違える程の轟音を響かせ、メリュジーヌが吶喊した。 ただ接近し、離れ、再度接近する。ヒットアンドウェイのシンプルな戦術も竜の魔力放出によって、それそのものが破壊を誘発していく。 日番谷の太刀筋に導かれるように、氷の東洋龍が奔る。 二対の竜が激突した。 万物を凍らす冷気が、大気の水分を常に凍結させ続け、魔力による氷の破壊に拮抗し再生を繰り返す。 されど、破壊が再生を上回る。 「チッ───」 己が使役する氷の竜の敗北を悟り、日番谷は瞬歩で後退した。 メリュジーヌの鎧の表面が凍り付くが、全身の凍結には及ばない。 だが、僅かな拮抗時間は、そのまま日番谷とメリュジーヌの間合いを稼ぐ。 「逃がさない」 決して、その剣の届かぬ先へ行かせる事をメリュジーヌは良しとしない。 最強種の驕りとも取れる我儘を、力で示し押し通す。 瞬歩に追随し二刀の魔力の刃を振るう。 氷山を生成し、日番谷は即席の盾とする。 紙細工のように一瞬でメリュジーヌは氷を切り刻む。 幾度となく繰り返した攻防だ。 この繰り返しで、日番谷は徐々に海馬コーポレーションから遠ざかり、メリュジーヌは着実に日番谷の命を削り取り、己が勝利への盤面を整えていく。 「千年氷牢!!」 メリュジーヌの周囲に無数の氷塊が広がり、引き寄せられるかのようにその全てが吸い寄せ合う。 中央のメリュジーヌ目掛け、囲った氷塊が押し潰した。 卍解状態でシュライバーに使用したそれとは、破壊力も効果適用範囲も比較にすらならない劣化した代物だが。 倒しきるには至らなくとも直撃させれば、相応の消耗は望める。 メリュジーヌの速さはシュライバーを想起させたが、同時にシュライバー程ではない。 特に回避に関して、あれほどの攻撃感知をメリュジーヌは持ち合わせていない。 「カットライン───」 光が煮え滾り、沸騰するかのような光景だった。 鞘の基点が回転し、納める剣の存在しない鯉口が両手の甲に合わさる。 そのまま、拳を振るうかのように打撃が連打した。 「ランスロット!!」 確かに、メリュジーヌはシュライバー程の回避力はない。 必要がないからだ。力で全ての障壁を取り除けばいい。 凝縮された光が反発し弾け、球光が爆散するかのように。 鯉口から魔力の光が破壊力へと変換され、数十の打撃が氷に亀裂を刻み、強靭な氷の牢獄を粉微塵へと粉砕する。 「六衣氷結陣」 メリュジーヌの足元が六ケ所、妖しく光る。 地面に仕込まれた氷の結晶がセンサーのように呼応し、氷柱を呼び起こす。 派手な氷の技は罠を張り本命を隠す為、意識を逸らすブラフ。 (あの一瞬で、こんなものまで仕掛けたか) 技の豊富さは、数時間前に交戦したルサルカにも引けを取らない。 氷を操る能力。 ただそれだけだが、それ故に応用も効き、担い手の実力が諸に現れる。 未熟さはあるが、剣技も含め能力を理解し、巧みに戦う術を身に着けている。 なるほど、最強の竜の敵として不足はないと認めよう。 しかし、ルサルカに対しての評価と同じように、それでも竜を堕とすには力が足りない。 「ハイアングルトランスファー!」 右の鞘を高速で回転させながら、魔力を噴射し跳び上がる。 メリュジーヌを捕えんとする氷はその余波に触れ砕け散る。そのままメリュジーヌは頭上から、螺旋を描く鞘を振るい上げ、地面へ叩き付けた。 「ッ!!」 霊力で足場を硬め、数度虚空に作り上げた足場を蹴り上げて、日番谷は上空へと跳躍する。 ミサイルでも撃ち込まれたように、日番谷が先程まで居た場所は巨大な破壊痕が刻まれていた。 「それは愚行だよ」 冷たい鉄のような騎士が初めて微笑んだ。 そして、日番谷も遅れて己の失策を理解する。 「空は竜の支配下だ」 弾ける爆音。訪れる破壊。蝕む衝撃。 日番谷の左方から砲弾が撃ち込まれた。 否、それはメリュジーヌの打撃の一つに過ぎない。 「はああああああ!!!」 撃ち込まれた打撃を刀で受け、前面に氷の盾を展開し───無数の打撃が打ち砕く。 盾が壊される寸前、後方へ飛び退きダメージを回避する。 だが、その背後には既にメリュジーヌが居た。 恐るべき光景だ。日番谷の死神として磨き上げた動体視力も霊圧の感知も、全てを速さですり抜け、死角たる背を取られたのだから。 そう、空に於いてこの島で彼女に適う者はない。 シュライバーですら、空中戦ではメリュジーヌを相手に分は悪い。 両者との交戦経験から、日番谷はそう分析する。 日番谷は自ら、蜘蛛の巣に囚われに来た哀れな蝶のようなもの。 ハイアングルトランスファーの破壊規模を見切り、地上に留まるのではなく空中へ退避したのは、その場面に限れば優れた判断であったが。 例えダメージを受けようと、日番谷は地上での戦闘を継続し続けるべきだったのだ。 「ぐ、ッ」 伊達に護廷十三隊の隊長を務めていた訳ではない。 直撃の寸前、瞬時に振り向き刀を薙ぎ払う。 しかし、その行動の二手先でメリュジーヌの方が速かった。 斬撃を前屈みで避け、鞘から伸びた魔力の剣が袈裟懸けに日番谷を斬り裂いた。 同時に日番谷は虚空を蹴り、間合いを稼ぐ。 結果として、メリュジーヌの剣は皮一枚斬り裂くに留まり、未だその命を断てずにいた。 「上か!?」 速すぎる。 地上の白兵戦でも凄まじい神速だが、空中でのメリュジーヌは目で追うことも叶わない。 「若いね。呑み込みが早い」 速さ、破壊力において日番谷よりメリュジーヌが遥かに上回るが、瞬時の判断と技巧は拙さも目立つものの渡り合っている。 相当な修羅場を前線を張り続け、戦い続けたのだろう。 この島にくる以前からの戦闘の経験値を取り込み、強さへと昇華させている。 体を斬られながらも、判断力を保ち続け思考と肉体の稼働を停止させない、戦場を生き抜く泥臭さを備えている。 「ッッ!! が、ッ……!」 日番谷の頭上へと飛び上がり、両手を紡いで金槌のように振り下ろす。 空の世界に浮かぶ、目障りな蠅を叩き落とすように。 氷で受け、直撃は避けながら氷を伝う衝撃までは殺し切れない。 日番谷は撃墜された。 「君をここで倒せたのは、幸運だったかもしれない」 目でも霊圧でも察知不能の動きに辛うじて食らい付けたのは、これまでの歴戦の経験値から養われた勘に依るもの。 黒崎一護が尸魂界に乗り込んで来てからの2年間、護廷十三隊の隊長格の中で、更木剣八等を除けば前線に立ち続けた数は上位になる。 勝利も惨敗も等しく味わい実戦を潜った経験は、糧となって日番谷の強さとして積み上げられた。 メリュジーヌの言うように、長命種としては若く向上心が強い。 力も未だ未熟だが、それでも並みのサーヴァントに匹敵し得る程に研ぎ澄ませてある。 有り得ないが、もしも日番谷が成長し、より力を磨き上げたのなら───。 一人の騎士としては手合わせ願いたいものだが、オーロラの騎士としては胸を撫で下ろしたい気分だ。 惜しさを覚えつつも、巡り合わせの僥倖にも感謝をし、空から哀れにも撃ち落とされた小さな死神を見下ろした。 「距離を空けたがっていたようだけど、生憎こっちにも飛び道具はあってね」 黒い筒、邪気と見紛う漆黒の魔力を帯びた現代兵器を見て、日番谷は血の気が引いた。 ルサルカの交戦時にも使われた、汎人類史(あちら)のランスロットがある世界線の聖杯戦争(たたかい)で用いた宝具化されたマシンガンM61。 火薬が点火され、その稼働が始まったと同時に数十発の弾丸が落下する日番谷へと降り注ぐ。 その弾丸一発一発に魔力が伴い、メリュジーヌの無尽蔵に魔力を消化して射出するその段数は無限。 「ぐああああああああああああ!!!」 遮る氷の障壁を無限の質量で打ち砕き、魔弾は日番谷を逃がさない。 背中から落下し受け身すら取れない日番谷は地面に打ち付けられ、それと挟み合うように弾丸が迫る。 「君には一切の反撃も許さない。ここで、一方的に射殺する」 一秒後には血肉を弾けさせ、原形を留めない程のミンチが大地に広がり赤く染め上げるだろう。 「───な、に……?」 妖精騎士の手にある、M61の稼働が続いていたのなら。 「悪いな」 雪が降っていた。 この島の季節は、恐らく春の温暖な時期だ。 花が咲き、木々は緑葉で彩り、冬の眠りから生き物は目覚め新たな命を芽吹かせるであろう。 そんな気候の中で、雪なんてものがどうして降る? 先程まで、あれだけ我が物顔で天上に鎮座していた太陽が姿を隠し、日光を遮断するかのように雲が覆うことなどありえるのか。 「天(そら)は俺の支配下だ」 その中央から、大穴が拡がって雪が降り落ちる。 「馬鹿なッ!?」 雪は一片、花弁のように舞い落ちてM61に触れて、その機能を全凍結させた。 表面を氷が覆い、内部のあらゆる構造をその中の僅かな水分が凍結し氷へと変貌。 奇抜な氷のオブジェへと姿を変える。 「ありがとよ。お前が海馬コーポレーションから俺を離してくれたお陰で、巻き添えを考えずに済む」 天相従臨。 空を従え、天候すら意のままに操る。 氷輪丸が備える基本能力にして、最も強力な能力の一つ。 卍解を封じられ、始解状態であったことと乃亜から科せられたハンデにより、発動までに時間を費やすが、これが必殺の一撃への布石となる。 「氷天百華葬」 己の支配下に置いた天より、降り落ちる雪。 それは一度触れれば、あらゆるものを凍り付かせ氷結の華を咲かせる。 既にメリュジーヌの頭上には雪が舞い、その周囲を囲っていた。 最上位の虚、その中での藍染が殺傷力の高い者達を10名選りすぐった、序列第3十刃(トレス)ティア・ハリベルとの戦闘時にて、卍解状態では御しきれる自信がなく使用を躊躇う程に、広大な効果範囲と強制凍結力を持つ。 「今は知らず(イノセンス)───、」 短時間の連発が不可となっていた為、温存していた切札をここで躊躇いなく切る。 今までの技とは別格だ。 ここで使わなければ、待ち受けるのは何の宿願も果たせぬまま訪れる無様な死。 「それは愚行だぜ」 生成したアロンダイトの剣が、外気に触れ離散するより前に凍っていく。 氷はそのままメリュジーヌの腕を伝い、全身を覆う。 「ッッ……!!?」 首から下が凍り付き、メリュジーヌの顔面すら冷気の魔の手が忍び寄る。 「───、っ…」 メリュジーヌの身動きが取れぬまま、氷の華が天空に咲き誇り、最も強く美しい妖精騎士はその中心へと凍結された。 「舐めるな」 超新星爆発のような苛烈な光の放出が、氷の華から溢れ出す。 息も吸えず酸素もないであろう冷気の世界で、メリュジーヌは意識を保ち続けていた。 妖精(ひとがた)を模しているものの、元の竜種たるアルビオンは46億年以上の生命情報を持つ。 本来、通常の生物が生存しえない凍結された氷の中であろうと、メリュジーヌはその生命活動を維持し続ける。 最初に全身から魔力を放出し、氷に亀裂を入れた。 氷の華が罅割れ、徐々に外気とメリュジーヌを遮る氷壁が薄くなる。 メリュジーヌの持つ魔力回路、竜の炉心は核融合相当のエネルギーだ。 その出力自体は乃亜に制限されているが、絶えず魔力を放出し続け生成することは可能。 こうして魔力を放ち続け、氷を砕くのに1秒も必要としない。 核爆発のような魔力の光が氷を爆散させた。 「くそっ……」 予測はできたことだ。 始解状態ではやはり、化け物のような霊圧を持つメリュジーヌの完全凍結には至らない。 勝ち切るには、この手の刀で氷ごと穿ち、絶命させなければならないことは。 だが、こんな短時間で氷を打ち破るのは完全な計算外だった。 「誇るといい。ここで、私が血を流すとは思わなかった」 ピキリとメリュジーヌの目を覆うバイザーが罅割れた。 額からは赤い血が滴る。 その目は流血で赤く染まり、燃える炎のような形相で日番谷を睨み付けた。 口ぶりは高圧的で、だが賞賛を含んだ物言い。 「……ふざけやがって」 皮肉染みた賞賛に苛立つ。 日番谷は、制限下の中で繰り出した大技に消耗している。 メリュジーヌのアロンダイトが連発出来ないように、日番谷も時間を置かなければこれだけの技は放てない。 対して、期せずしてメリュジーヌはアロンダイトの発動を実質キャンセルされた。 日番谷は切札をなくし、メリュジーヌは残している。勝敗は既に決していた。 「もう、勝った気でいやがるのか」 それでも震える手で氷輪丸を握り締め、日番谷はその切っ先を天空のメリュジーヌへと向ける。 「まだ剣を握るんだね」 メリュジーヌは衰えぬ戦意に敬意は表すが、まだ手が残っているとは思えない。 何よりあったとしても、そんな時間すら与えない。 恐れからやけになっているのでもなければ、力量差が分からない弱者でもない。 正しく絶望的な状況を飲み込みながら、あの少年はそれを良しとはしない。 守る為だ。 立ち振る舞いだけならば、バーゲストのように思えた。 強き力を持つ者だからこそ、弱き者を率先して守る。強き者はその力に責任を持たねばならないとする在り方は。 きっと、仕える主への忠義を除けば。 メリュジーヌは自分よりもよっぽど、彼の方が騎士らしいとすら思う。 「───その意気やよし」 けれど、騎士としてオーロラへと忠義を尽くすというのであれば、メリュジーヌとて引けを取る気はない。 それがどれほど邪悪であろうとも、どれだけ悍ましい毒婦であったとしても。 最も美しく、自分すら含めた世界全てを蔑ろにしようとも、彼女の為ならば。 「今は知らず、無垢なる湖光(イノセンス・アロンダイト)」 粛々と呪詛のように、聖剣のレプリカの名を紡ぐ。 そこに何ら無駄な動作は、一つとしてない。結果に至るべく全てを機械のように精密で、迅速に行われた。 二対の聖剣を携え、音速を突き破る。 日番谷が次の一手を出すよりも早く、何もさせずに殺す為に。 「……信じるぞ」 死神、皆すべからく。 友と人間とを守り死すべし。 ここまで、とんだ失態を続けてきた。 守るべき者達を何一つ守れてはいない。 乃亜の暴虐を止められず、二人の子供と、食い物が好きなただの子供をみすみす目の前で死なせた。 一人の少女の夢すら穢してしまった。 あの妖精騎士が、何を抱き何を守ろうとして戦うのかは知らない。 だが、誇りなき者の剣では決してなかった。 背負う重さを乗せた強き剣だった。 ならば、責任だけを乗せた己の刃が負ける事はあってはならない。 最も恐れなければならないのは、例え如何な事情を持とうとも、悪となったあの騎士に敗れ去り無辜の子供達を殺し尽くされる事だ。 望まぬ死地といえど、死ぬ覚悟は護廷十三隊に就いてから決めている。 仮に共倒れとなろうが、あの凶刃は今ここで討ち取る。 「頼む、氷輪丸」 氷輪丸がその刀身から冷気を発し、氷の東洋龍が顕現した。 一点、メリュジーヌが違和感を覚えたのは、その背に翼を生やしていた事だ。 メリュジーヌが造形品と評した最初の氷龍には存在していない部位。 それだけならば、所詮はただ姿を模しただけの作り物だ。 日番谷が手にしたビン、その中に納められた力の結晶が光り輝く。 天空からマッハを超えた速度で吶喊するメリュジーヌへ、日番谷は刀を横薙ぎへと薙ぎ払い。 「シン・フェイウルク」 轟音と爆風が轟いた。 「ッ、───なん…だって……!!?」 魔界の竜族、その神童たるアシュロンが取得した最上級の魔法。 シン級とも呼ばれる魔界に住まう魔物達の最上級呪文の一つ。 乃亜はその力をビンに込め、数回のみ使用者に力を齎すアイテムとして支給していた。 効果は身体強化、速さを強化するものであり。マッハを遥かに凌駕する超スピード、少なくとも”妖精騎士”では追い付けない、驚異的な速さを使用者に齎す。 通常の使用方法であれば、自身の肉体に術を掛け自分自身が体当たりを行う。 故に、それだけの速さと威力に耐えうる肉体がなければ使用出来ず、いかに隊長格の死神といえど日番谷本人に竜のような屈強な肉体は備わっていない。 それこそ、死した境界竜アルビオンが遺した左手。 音速に耐えうる強靭な、竜の肉体を保持するメリュジーヌぐらいのもの。 「そうか、こいつ……!」 日番谷はその術を、自身の霊圧から創り出した氷竜に適用し刀を振るった。 竜でなければ使えないのなら、それを扱える竜を創り、委ねれば良い。至極簡単な話だ。 訂正しなければならない。ああ、ヤキが回ったなとメリュジーヌは思う。 あれは、上手く出来た造形品なんて代物ではなかった。 「───ッッッ!!!」 氷竜の突貫により砕け散るアロンダイトと、攻撃ではなく防御へと転向し鞘から生じる膨大な破壊力を全身で受け止める。 滞空し続ける事すら困難を極め、血を吐きながらメリュジーヌは衝撃に煽られていく。 「ッ…なん、だ…この技…制御が……ッ、嘘…だろ……!!」 メリュジーヌが空より堕ちたのとほぼ同時、氷輪丸の刀身が圧し折れ日番谷も反動の余波を抑えきれず吹き飛ばされた。 本来の術の使い手であるアシュロンですら、実戦で御しきれる程には達していない。 付け焼刃の日番谷では尚更、その反動に耐えきる事すらできない。 威力の大きさに氷竜は自壊し砕け始め、日番谷の衝撃に煽られる。 コンマ一秒もない衝突の末。 核弾頭で投下されたような爆音と豪風を巻き起こし、二者はそれぞれ互いに弾かれるように後方へ飛ばされていった。 ─── 「…ッ、がはっ……」 短く唸り声が上がった。 「不味…い、な……」 メリュジーヌの甲冑が罅割れ、鞘も亀裂が刻み込まれている。 それだけならば、魔力を充填させ修復を見込めるが、メリュジーヌの肉体からも損傷が見られた。 ここが妖精國であれば、全土を揺るがす大ニュースにもなり得ただろう痛ましい姿だった。 血を流し、腕を抑え足を引き摺り、歩く様は。 最も強く美しい妖精騎士らしからぬ姿だった。 この島に来てから、サトシとピカチュウを除けば最も大きなダメージを受けた。 あちらは電撃の性質から、外傷はさほどでもなかったが。今回は極め抜いた物理による体当たり、無傷ではいられない。 近くの岩に寄りかかり、腰を下ろす。 (流石に…沙都子の元へは、すぐにはいけないか) 傷が思いの外深い。 戦闘への支障も皆無ではないが、それでもやろうと思えば戦えるし、早々後れは取らない自負もある。 だが悟飯が相手となれば話はまるで違う。 こんな手負い状態で、暴走の恐れがある悟飯に不用意に接触したくない。 それにメリュジーヌもシン・フェイウルクを受けた影響で、かなり遠くへ飛ばされてしまった。 辺りは岩山だらけだ。 (しばらく飛べそうにもない) 竜種としての飛行能力もダメージの大きさと、制限もあり現状では行使出来そうになかった。 やはり、今は休息を取るしかなかった。 (とんだ無様を晒したけど、やることはやったんだ) 結果は痛み分けだが、日番谷は遠ざけた。 空を舞う竜(メリュジーヌ)を正面から撃ち落とすほどの威力の技だったが、あれは付け焼刃で制御しきれるものではない。 反動を受けて、日番谷もまた海馬コーポレーションから大きく遠ざかっただろう。 死んでいてくれれば、メリュジーヌからしても有難いが。 (後は君のお手並み拝見だ) この後、悟飯をどう利用し殺し合いを有利に進めてくれるのかは、沙都子の仕事だ。 もし失敗してもそれは所詮、その程度の駒でしかなかったというだけの話。 無理をして彼女の元へ駆け付ける理由もない。 (僕も、この妖精(すがた)を捨てる時が来るのかもね) 孫親子を除いても、メリュジーヌを打ち倒せる強者はまだいる。 制限こそされているが、いずれ妖精國を焼き尽くした災厄(りゅう)の姿になる覚悟も、必要なのかもしれない。 (カードは…もうじきに使えるな……あまり、使いたくないんだけど) 鎧と同様に傷も一定の回復は行えるだろう、使用可能になればディアンケトでより回復できる。 毎回、あのイラストの壮年の熟女が出てきて、心配そうに顔を覗き込んでくるのはやめて欲しかった。 まるで母親じゃないか。何なんだあれは。 妖精國に家族の概念はないが、汎人類史にはそういった概念が存在しているのは知っていた。 「……カオス」 ぽつりと、呟く。 自分がどうあっても救われない薄暗い沼に引き摺り込んだ少女のことを。 母親というワードが、否応にも母竜を連想してカオスへと行き付いてしまった。 沙都子は雛見沢症候群について、何か隠して事を進めようとしている。それは承知しているし、メリュジーヌも沙都子と対峙する事に何ら躊躇いもない。 あくまでお互い利用し合って、邪魔な対主催を消すのが目的だ。 けれど、カオスは多分そうはいかない。 あの娘の在り方は妖精に近い、仕えるべき主がいなければ右も左も分からない位に。 天使(エンジェロイド)がそういう思想の元、設計されている事にメリュジーヌは気付いていた。 優勝を目指す為、最後の三人になるまで力を合わせるという建前で、カオスを自分達の一派に引き入れたが。 きっと、彼女はその時になれば苦悩する。 己の在り方に逆らって生きる事がどれほど辛いか、メリュジーヌにはよく分かっていた。 だからこそ、オーロラを殺したのだから。 毎日死に続ける、地獄の未来に彼女を連れてはいけない。 沙都子はカオスに見せかけの愛を与え続けている。ともすれば、いずれカオスが彼女を主として定めたいと思うのは当然の摂理。 今はまだ自分が優勝しなくてはならないと自制しても、きっと耐えられず主として主従の契約を結ぶかもしれない。 そうなった時、地獄が始まる。 カオスが人を殺せるのは、彼女が残酷だからじゃない。知らないからだ。 まだ幼いから、何も知らないだけだ。 人を殺す痛みも、本当の意味ではまだ知らない。命の重さも、その身で背負うにはあまりに矮小過ぎる。 もしも、それに気付いた時、仕える主が沙都子であったのなら。 彼女は己の在り方と世界の差異に苦悩する。 だってあの子は必死にいい子になろうとする、ひたむきで一生懸命な優しい子だったから。 愛を理解はせずとも良いものとして捉え、それを与えようとする善良さがあった。 それに相反する沙都子という主は、いずれカオスを殺し続ける地獄を齎すだろう。 甘い言葉で胸の空白を一時埋めては、都合よく使う。そして使い潰す。 重要な部分はその時だけの本音で、必要とあらばきっと平気で使い捨てて。 捨てられない為にカオスは自分を殺し続けて、沙都子へと尽くすだろう。 従う主がなければ、天使は生きてはいけない。 分かっている。そんなことを続けたら、あの子の心はきっと壊れる。 メリュジーヌが一度、味わってきたことだから。 「今更、姉面か……」 姉として、母竜のように育てた『彼』の事を思い出して、勝手に重ねて。 ただ重ねるだけで、何もしてあげない。あげられないのではなく、敢えてしない。 そんな自分に、彼女の心配をする資格なんかない。 それだけの情を持ちながら、オーロラ以外の全てを愛さないと差別したメリュジーヌには。 主なんてなくても、自分で決められる。 在り方なんて自分で変えられる。 妹が間違ったのなら、それを叱って正す。 カオスに愛を教えられる。本当の姉はここにはいない。 ─── 「なんて、技だ……」 砕け散った斬魄刀の柄を見て、日番谷は驚嘆していた。 シン・フェイウルク。 莫大な破壊力を持つ技でありながら、直線的なその速さだけならばシュライバーすらも追い越す。 同時に反動の大きさと、速すぎるあまり制御が効かない。 日番谷は霊圧から創り出した氷竜に技をかけたが、それでも一瞬で氷竜は耐え切れず自壊しだした。 反動を受けた氷輪丸も刀身を砕き、今は霊圧をその修復に回しているほど。 「なに…が、起きてやがる…」 あの甲冑の少女は一体、何処から現れた? 的確に日番谷だけを狙い、そして海馬コーポレーション内には一切の感心を向けていない。 あの中に誰か、共犯者がいたのか? 分からない事ばかりだが、一つだけ断言できることがある。 「乾……!!」 あの場に戦う力を持たない少女を一人残す、それが如何に危険かは最早考えるまでもない。 霊圧の消耗具合と疲労度合いから見て、イリヤはシャルティアからのび太を守る為に死力を尽くし体を張り続けていたのは明白だ。 だから日番谷からすれば、沙寿叶を除けばあの中でのイリヤは信用が高いと考えていた。 しかし、沙寿叶はそうじゃない。 あれ以上、精神に負担を掛けるのは不味い。 悟飯に気を取られていたが、彼女とてイリヤとずっと同じ空間に居るのは限界だろう。 理屈では分かっていても、美遊の友達であるイリヤに抵抗があるのは当然だ。 精神的に摩耗した状態で、更にあの中に別のマーダーが居て、事を起こそうとしているとなれば、より沙寿叶への危険度は増す。 「ぐ……! …こんな、時に!」 逸る心とは別に、肉体は限界を訴え膝を折る。 シン・フェイウルクにより、海馬コーポレーションからも大きく遠ざかってしまった。 その距離を一気に縮めるには、日番谷も消耗し過ぎたのだ。 今はただ、守るべき少女の無事を祈るしかなかった。 【一日目/昼/E-7 海馬コーポレーション】 【カオス@そらのおとしもの】 [状態]:全身にダメージ(中)、自己修復中、アポロン大破、アルテミス大破、イージス故障寸前、ヘパイトス、クリュサオル使用制限、沙都子に対する信頼(大)、カオスの素の姿、魂の消費(中)、空腹?(小) [装備]:極大火砲・狩猟の魔王(吸収)@Dies Irae [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1 [思考・状況]基本方針:優勝して、いい子になれるよう願う。 0:沙都子おねぇちゃんを守る。 1:沙都子おねぇちゃんと、メリュ子おねぇちゃんと一緒に行く。 2:沙都子おねぇちゃんの言う事に従う。おねぇちゃんは頭がいいから。 3:殺しまわる。悟空の姿だと戦いづらいので、使い時は選ぶ。 4:沢山食べて、悟空お兄ちゃんや青いお兄ちゃんを超える力を手に入れる。 5:…帰りたい。でも…まえほどわるい子になるのはこわくない。 6:聖遺物を取り込んでから…なんか、ずっと…お腹が減ってる。 7:首輪の事は、沙都子お姉ちゃんにも皆にも黙っておく、メリュ子お姉ちゃんの為に。 [備考] 原作14巻「頭脳!!」終了時より参戦です。 アポロン、アルテミスは大破しました。修復不可能です。 ヘパイトス、クリュサオルは制限により12時間使用不可能です。 ルーデウス・グレイラットについて、とても詳しくなりました。 極大火砲・狩猟の魔王を取り込みました。炎を操れるようになっています。 聖遺物を取り込んでから、空腹? がずっと続いています。 中・遠距離の生体反応の感知は、制限により連続使用は出来ません。インターバルが必要です。 ニンフの遺した首輪の解析データは、カオスが見る事の出来ないようにプロテクトが張ってあります。 【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】 [状態]:疲労(小)、梨花に対する凄まじい怒り(極大)、梨花の死に対する覚悟 [装備]:FNブローニング・ハイパワー(4/13発) [道具]:基本支給品、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)、葬式ごっこの薬@ドラえもん×2、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン [思考・状況]基本方針:優勝し、雛見沢へと帰る。 0:日番谷が遠ざかっている内に、悟飯を発症させる。可能なら私を奉仕(まも)る方向性へと狂わせたい。イリヤさんと美柑さんに悪者になって貰いましょうか。 1:メリュジーヌさんを利用して、優勝を目指す。 2:使えなくなったらボロ雑巾の様に捨てる。 3:カオスさんはいい拾い物でした。使えなくなった場合はボロ雑巾の様に捨てますが。 4:願いを叶える…ですか。眉唾ですが本当なら梨花に勝つのに使ってもいいかも? 5:メリュジーヌさんを殺せる武器も探しておきたいですわね。 6:エリスをアリバイ作りに利用したい。 7:写影さんはあのバケモノができれば始末してくれているといいのですけど。 8:悟空さんと悟飯さんは、できる事なら二人とも消えてもらいたいですわね。 9:悟空さんの肩に穴を開けた方とも、一度コンタクトを取りたいですわ。 10:梨花のことは切り替えました。メリュジーヌさんに瑕疵はありません。 11:シュライバーの対処も考えておかないと……。何なんですのアイツ。 12:メリュジーヌさん、別にお友達が出来たんでしょうか? [備考] ※綿騙し編より参戦です。 ※ループ能力は制限されています。 ※梨花が別のカケラ(卒の14話)より参戦していることを認識しました。 ※ルーデウス・グレイラットについて、とても詳しくなりました 【孫悟飯(少年期)@ドラゴンボールZ】 [状態]:自暴自棄(極大)、恐怖(極大)、疑心暗鬼(極大)疲労(大)、激しい後悔(極大)、SS(スーパーサイヤ人)、SS2使用不可、雛見沢症候群L3+(悪化中 L4なりかけ)、普段より若干好戦的、悟空に対する依存と引け目、孤独感、のび太への嫌悪感(大、若干の緩和)、イリヤに対する猜疑心(大)、首に痒み(小)、沙都子への信頼(小) [装備]:無し [道具]:基本支給品、ホーリーエルフの祝福@遊戯王DM、ランダム支給品0~1(確認済み、「火」「地」のカードなし) [思考・状況]基本方針:……。 0:沙都子さんには…お世話になってばかりだな……。 1:沙都子さんは、信じていいのかな……。 2:だ…誰が、僕に毒を……。い…イリヤさんが怪しいが、み…みんな怪しい……。 3:…………………………だ…だけど、み…みんなを……ま…まも…らない…と……。 [備考] ※セル撃破以降、ブウ編開始前からの参戦です。 ※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。 ※SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可 ※舞空術、気の探知が著しく制限されています。戦闘時を除くと基本使用不能です。 ※雛見沢症候群を発症しました。現在発症レベルはステージ3です。 ※原因は不明ですが、若干好戦的になっています。 ※悟空はドラゴンボールで復活し、子供の姿になって自分から離れたくて、隠れているのではと推測しています。 ※イリヤ、美柑、ケロベロス、サファイアがのび太を1人で立たせたことに不信感を抱いています。 ※何もかも疑い出してます。微妙に沙都子には心は開いているかも。 【一日目/昼/D-6】 【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(大)自暴自棄(極大)、イライラ、ルサルカに対する憎悪、鞘と甲冑に罅(修復中)、数時間飛行不可(体力の回復で可能) [装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』、M61ガトリングガン@ Fate/Grand Order(凍結、時間経過や魔力を流せば使えるかも) [道具]:基本支給品×3、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王DM、 デザートイーグル@Dies irae、『治療の神ディアン・ケト』@遊戯王DM、Zリング@ポケットモンスター(アニメ) [思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。 0:海馬コーポレーションへは向かわずに、しばらく休む。この状態で、悟飯と接触するのは避けたい。 1:孫悟飯と戦わなけばいけないかもね 2:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。 3:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。 4:ルサルカは生きていれば殺す。 5:カオス…すまない。 6:絶望王に対して……。 7:竜に戻る必要があるかもしれない。方法を探す。 [備考] ※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。 ※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。 ※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。 【一日目/昼/I-7】 【日番谷冬獅郎@BLEACH】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身に切創、卍解不可(日中まで)、雛森の安否に対する不安(極大)、心の力消費(大) [装備]:氷輪丸(破損、修復中)@BLEACH [道具]:基本支給品、シン・フェイウルクの瓶(使用回数残り三回)@金色のガッシュ!!、元太の首輪、ソフトクリーム、どこでもドア@ドラえもん(使用不可、真夜中まで) [思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し乃亜を倒す。 0:海馬コーポレーションへ戻り、乾達と再合流したいが……。 1:巻き込まれた子供は保護し、殺し合いに乗った奴は倒す。 2:シュライバーと甲冑の女を警戒。次は殺す。 3:乾が気掛かりだが……。 4:名簿に雛森の名前はなかったが……。 5:シャルティアを警戒、言ってる事も信用はしない。 6:悟飯を、何とかする方法を見付けてやりたいが…何とか、涅か浦原と連絡は取れないか? 7:沙都子の霊圧は何か引っかかる。 [備考] ユーハバッハ撃破以降、最終話以前からの参戦です。 人間の参加者相手でも戦闘が成り立つように制限されています。 卍解は一度の使用で12時間使用不可。 シャルティア≠フリーレンとして認識しています。 シン・フェイウルクを全く制御できていません、人を乗せて移動手段にするのも不可。 【シン・フェイウルクの瓶@金色のガッシュ!!】 日番谷冬獅郎に支給。 使用者の肉体を強化し、マッハを超える速度で体当たりをするシンプルな呪文。 原作の使用者であるアシュロンはガッシュ達を乗せて、日本から外国へ数十分程で移動していた事もあり、搭乗者を特殊な力で保護できるのかも? 使いこなせれば、移動手段にもなり非常に利便性もある強力な術である。 ただし、アシュロンですら制御しきれておらず、急な方向転換で自傷するなど非常に扱いが難しい。 使用回数は4回。 【瓶@金色のガッシュ!!】 魔物が操る術が込められた特殊な瓶。 中から術を取り出し、呪文を唱える事で使用出来る。 それぞれに使用回数が定められている。 ガッシュ2に出てくる瓶とほぼ同等の物であるが、このロワではあくまで乃亜が用意した別のアイテムとして扱う。 ディオガ・ゴルゴジオ等の強力過ぎる術(出すとしても要制限)は基本禁止と、ガッシュとゼオンの術とシン・ベルワン・バオウ・ザケルガは支給禁止とする。 111 竜虎相討つ! 投下順に読む 113 It s Only a Paper Moon 時系列順に読む 104 僕は真ん中 どっち向けばいい? 日番谷冬獅郎 118 シークレットゲーム ー有耶無耶な儘廻る世界ー 北条沙都子 116 セイラム魔女裁判 カオス 102 澆季溷濁(前編) メリュジーヌ
https://w.atwiki.jp/cursedcity/pages/40.html
概要 日本の平安時代に準拠する。西暦1100年辺りが目安。 ただし、魔性と異能が実在するため、陰陽師や僧がより実効的な権威を持っている。 武士 史実における武士と同様。朝廷の軍事を担うが身分は低い。 討魔異聞においては下級魔性への対処も職責のうち。ただし、異能力に頼ることは武士の本分ではないと考え、基本的に通常武器で戦う。 対魔性において陰陽師と共闘することもあるが、戦場以外では彼らを忌避する傾向が強い。 討魔 「とうま」と読む。 魔性討伐のために組織された退魔のスペシャリスト。 陰陽寮の下部組織という位置づけだが、任務の性質上「魔性を討つためなら何をしてもよい」という特権を与えられている。そして実際その通りに行動するため、疫病神のように忌み嫌われている。 出自は武士、陰陽師、貴族と様々だが、全員が一流の異能使い。
https://w.atwiki.jp/apicallover/pages/89.html
本日2018年8月25日より上演される「ミュージカル『親愛なる判事様 DVD 』 TRUMPシリーズ10th ANNIVERSARY」のDVDが2018年11月28日に発売されることが決定した。 舞台TRUMPシリーズは2019年に10周年を迎える劇作家・ 末満健一のライフワーク的作品で、永遠の命を持つ原初の吸血種“ トランプ”の伝説に翻弄される“ヴァンプ” を描いたゴシックファンタジー。アニバーサリー企画第1弾の『マリーゴールド』では、ガーベラという少女と、その母親を軸とした物語が展開する。 DVDは本編のほか、メイキング映像の収録やブックレットなどを封入。また、舞台会場で予約された方には特製ポストカードがついてくることも決定している韓国ドラマ 三十ですが十七です DVD。 なお本作品ではシリーズで初めてとなるライブビューイングの実施も決定している。8月28日に行われるライブビューイングチケットの一般発売は8月26日までとなっているのでこちらもお見逃しなく。 先日You Tube Liveにてシリーズ作品を3夜連続で配信、シリーズ初の戯曲集や『TRUMP』『LILIUM』『グランギニョル』の楽曲を収録したオリジナルサウンドトラックCDの発売決定、TRUMP展や繭期夜会と題したコンサートの開催も発表するなど 、10周年にむけて確実に盛り上がりを見せているTRUMPシリーズ。TRUMP series 10th ANNIVERSARY特設サイトも立ち上がり、彼女はといえば DVD今後もますます目が離せない。
https://w.atwiki.jp/pram/pages/40.html
辺境区(プラメイレン区)(Prameilen) フィニゴ共和国のほぼ中央に位置。 特殊な気候で、夏は30度を超し、冬は氷点下にもなる。 桑などの薬草の栽培が盛んで、各地に広大な薬草園があるほど。ここで作られた薬草は国内の全域に運ばれる。 そのため交通も発達していて、北の城下区(エテガラ区、Eteghara)、東の湾岸区(ツァーシュット区、Tsasciut)、西の山間区(タナヴィレ区、Tanavile)南の丘陵区(ヒューゲル区、Hügel)を結んでいる。 「プラム区、Pram」と呼ばれることが多い。中心都市はエーヴェルプルト(Ever-purt)。 公用語:主にエテガラ語。工房区からの移民が多いため、ニュムザン語が使われる事もある。 工房区(ブレナンシェ区)(Brenanché) 辺境区から見て北東方向に位置。 つい最近ニュムザン区から独立したため、公用語もニュムザン語。 国内一、工業と農業が発達し、それと関係した行事や祭りも多い。 中心都市はヴィラリス(Vilalice)。
https://w.atwiki.jp/voice_drama/pages/12.html
作品詳細 『GO!魔法男子アルかなっ!』 空閑暉が主宰しておりましたボイスアクターユニット【@THE dawn】で製作したドラマCD『魔法男子アルかなっ!』を元に 朗読劇用に書き下ろした新作の物語です。 アニメでいう二期のような扱いではありますが、前作(ドラマCD)を知らなくても楽しめる内容となっております。 コンセプトは『プリキュアを男性キャラで、全力でやろうじゃないか!』。 コメディ要素が強く感じられますが、内容自体は王道戦隊モノの胸熱ストーリーです。 ストーリー 現代世界の何の変哲もない、普通の男子高校生が 生きとし生けるものの想いの集まり『アルカナ』を閉じ込めて作られた『タロックカード』と突然共鳴し、 魔法男子(ウィザードボーイ)に変身する。 世界を滅ぼそうとしている金色(こんじき)の夜明け団と戦う。 日曜の美少女戦隊モノを男性キャラクターで演じる。 約束事として小中学生向けの番組をリスペクトした作品のため「死ぬ」「殺す」などの直接的表現はしていない。 また、悪役には悪役の正義や譲れないものが存在する。 結末を夢オチにし明確な表示をしないのも『正義は必ず悪を討つ』とは限らないことの暗喩。 キャラクター 名鍬 剛(なずき ごう) 本作の主人公、高校生。 幼いころから空手をやっており、強さと力には自信を持っている。 負けず嫌いで熱血、素直。戦隊モノのポジションでいう『赤』。 力のタロックカードと共鳴し、アルカナストレングスとなる。 必殺技は拳に力をためて放つ『クリティカル・リミット・フォース』。 祖父が歴代魔法男子の一人、アルカナジャスティス(※1) 「力は大切なものを守るためにある。」という祖父の言葉を真っ直ぐに受け止めている。 とにかく明るく、テンションの高いキャラクター。 【タロックカード】 力(ストレングス)⇒wikiページ 正位置:強固な意志、不撓不屈、勇気 逆位置:優柔不断、甘え ウェイト版:勇気、寛大 皇 司(すめらぎ つかさ) 主人公の先輩にあたる、高校生。 博学多才、眉目秀麗、イケメン王子様フェイスという天から二物以上与えられた人。 無愛想でいつもしかめっ面をしているが、心根は優しい。 お節介な面もあり、剛との出会いも倒れた彼を助けるところから始まる。 戦隊モノのポジションでいう『青』。 教皇のタロックカードと共鳴し、アルカナハイエロファントとなる。 必殺技は万華鏡のような空間を作り敵を混乱させる『ルパープ・カレイド・スコーピオ』。 動物、中でも猫がすきだが、子供のころ飼っていた猫が家を飛び出し 車に轢かれてしまうのを目の前で目撃してしまう。 その時に助けることが出来なかったという悲しみとつらさを引きずるが故に お節介すぎる行動に出る事がしばしばある。 【タロックカード】 教皇(ハイエロファント)⇒wikiページ 正位置:優しさ、思いやり、尊敬 逆位置:お節介、躊躇、虚栄 ウェイト版:信条、恵みと有徳 バトゥル マスコットキャラクター。蛇のような見た目、つるつるモチモチしていそう。 可愛く、素直で表情がよく変わる。 魔法男子に変身こそしないが、魔術師のタロックカードと共鳴した一匹。 金色の夜明け団に自分の故郷を破壊され、この世界に逃げてきた。 語尾や感情を表す際に「トゥルー」と喋る。 【タロックカード】 魔術師(仏:Le Bateleur/ル バトゥル)⇒wikiページ 正位置:機会、可能性、感覚、創造 逆位置:スランプ、混迷、裏切り ウェイト版:意志、外交 おばちゃん 校庭や中庭を掃除している用務のおばちゃん。 その正体は節制のタロックカードと共鳴した、初代・魔法男子アルカナテンパランス。 おばちゃんであり、おじちゃん。決してオカマではない。情に厚く、熱い心を持つ。 作中には出ないが初代・魔法男子アルカナジャッジメントの妹(弟?) 【タロックカード】 節制(テンパランス)⇒wikiページ 正位置:調和、献身 逆位置:消耗、生活の乱れ ウェイト版:調整、管理 シャリオ 金色の夜明け団の一人であり、悪役。 無邪気の中に内包する狂気、憎悪や復讐が主軸となったキャラ。 兄(※2)が『月色の魔法男子に殺された』と記憶を改竄されている(※3) 【タロックカード】※4 戦車(仏:Le Chariot/ル シャリオ)⇒wikiページ 逆位置:好戦的、自分勝手、暴走、失敗 正位置:負けず嫌い、解放、援軍 ウェイト版:援軍、復讐、勝利 デイユ 金色の夜明け団の一人であり、悪役。 妖艶なキャラクターであり、極悪非道な面が後半現れてくる。 いわゆる、ラスボス的位置。 『あの方』を敬愛・崇拝しており、『あの方』の描く物語を忠実に再現しようとしている。 【タロックカード】※4 塔(仏:La Maison de Dieu/ラ メゾン ドゥ ディユ)⇒wikiページ 逆位置:誤解、不幸、無念、緊迫 正位置:悲劇、崩壊、風前の灯、自己破壊 ウェイト版:悲嘆、災難、不名誉、転落 名鍬 穏(なずき おん) 過去作ドラマCD主人公であり、今作では剛の祖父として登場する。 正義のカードと共鳴したアルカナジャスティスであり、伝説の英雄の一人。 正義のタロックカードを幼い頃の剛にお守りとして託す。 同級生 剛の同級生、明るく気のいい性格。 ゴシップや噂好き。剛と仲良し。 キャスティングによって性別の変化あり。 ホロビアーン 金色の夜明け団によって生み出されるモンスター。 滅びの力を集めて変身させられる。 魔法男子に浄化されると、口調がホロビアーンからトレビアーンになり元に戻る。 ※1 ジャスティスは過去作であるドラマCDの主人公、名鍬 穏。 ※2 兄は過去作であるドラマCDの敵役、A(エイス)。 ※3 この記憶は過去作ドラマCDのものであり、半分は正しい。 事実CDでAはアルカナムーン(『あの方』、江戸川ウェイト)に殺されている。 ※4 悪役は逆位置と共鳴している。 ドラマCD『魔法男子アルかなっ!』 特設サイト⇒魔法男子アルかなっ! 『魔法男子アルかなっ!』トレーラー
https://w.atwiki.jp/voice_drama/pages/9.html
@wikiにはいくつかの便利なプラグインがあります。 RSS アーカイブ インスタグラム コメント ニュース 動画(Youtube) 編集履歴 これ以外のプラグインについては@wikiガイドをご覧ください = http //atwiki.jp/guide/
https://w.atwiki.jp/voice_drama/pages/5.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //www1.atwiki.jp/guide/pages/269.html#id_bf9eaeba たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。