約 2,014 件
https://w.atwiki.jp/jososs/pages/31.html
会食彼女 (「偽装彼女」シリーズ・短編) 学生街のファミレスは安くて美味い。 奥のボックス席に向かい合わせに座り、俺がステーキののったハヤシライスを、相手は マグロのづけ丼を注文。ほっそりした清純派美少女がデート中に頼むモノではないが、現 役男子高校生は腹が減るのだ。 割に合わないドリンクバーはスルーし、代わりにシーザーサラダの大皿をシェアして食 べる。 白いハイネックや真新しいえんじ色のワンピースを汚さないようにか元々お行儀が良い のか、嫌味がない程度のテーブルマナーで須藤はドレッシングのかかったレタスを取って いく。ベーコンもクルトンも半分こ。 俺も腹が減っていたのでそれなりに食べながらではあったが、初めて見る奴の食事風景 を楽しんだ。大人しそうな見た目でも中身は年相応に食欲旺盛。白いドレッシングが赤い プルプルの唇に付いて、エロいなあと思ってたら舌先で舐めてしまった。 フォークを口に運ぶ手つきは危なげないどっかのお嬢様そのものなのに、食べる量はや っぱり同級生の野郎だった。 愛想のないウェイトレスも気にせずに、運ばれてきた料理をモリモリ食べる。トロ盛り もメニューにあったので「マグロ好きなの?」と聞くと、「一番食べやすい」と短く返し セットの味噌汁を音をたてずに啜った。シジミは美容に良さそうだ。 俺の食べるデミソと半溶けチーズが絶妙なハヤシライスもなかなかだが、上にのった肉 が特に美味かったので丼と少し交換する。ニンニクだか玉葱だかのソースが絡まってて、 噛むと肉汁がジュワッとして、ステーキだけでも美味い。奴の食べてた飯盛も、甘すぎず しょっぱすぎない醤油だれが染みてて飽きがこない感じ。 もりもり平らげてデザートを注文。どうせあとで俺の部屋でレシート付き合わせて割り 勘するので、お互い食欲のおもむくままだ。 「美味かったー」「うん」と空の皿を見送り、俺のパフェが来たあたりで色気のなさに ようやく気付く。これじゃあ部活帰りのスポーツ少年だ。 締めは洋風なのか、自分の注文したホットケーキを待つ須藤に声をかけた。 「来るまで食べる?ほれ、イチゴあーん」 「…要らない」 首を振って水を含み、厨房を気にする優等生。エロい意味じゃなく落ち着きない様子は なかなかレアな気がする。 「今焼いてんだろうから、一緒に食いながら待ちゃ良いじゃん」 「一人で勝手に食べてろよ」 俺にはうるさそうに吐き捨てて、出てきたウェイトレスを目で追う。仏頂面の女の手元 を凝視してから期待が外れたような顔をした。残念、別のテーブルのだったみたい。 「…ホットケーキ好きなん?」 なんとなく聞いてみただけなのにピクリと肩を震わせて、見向きもしなかった俺にゆっ くり向き直る。気にしてないよぅ、単にちょっと見てみただけだものー、とその仕草で超 アピール。わざとらしすぎだ。 「いや、そんな…それほどでも、ないけど」 「じゃあこのパフェと交換して良い?」 「………」 「…好きなの?」 あきらめたように首肯する女装イケメン君。別に気にするほどのことでもないと思うの だが、ウキウキしてたのが俺にバレて悔しいみたいだ。 そんな顔して、俺がつつかないわけがない。 「へぇ~」 アイスの層を終えてパイ生地にスプーンを差す。コーンフレークだと裏切られた感がある んだけど、こっちのサクサクは食べごたえがあってかなり嬉しい。 「ユカちゃんはホットケーキが好きなんだぁ?可愛いですねえ~」 「っ…お、お前だってそんなん食べてるじゃないか!」 人目を気にして、押し殺した声で反論してくる。赤いヘアピンでセミロングのサイドを 留めてるから、赤らんだ目の縁がよく分かった。 「いっつもツンツンしてるのに、フワフワのケーキが好きだなんて、ユカちゃんってば面 白いなあ。今度ケーキバイキング行こっか?」 「別にケーキ全般が好きなんじゃない!ホットケーキ!」 「おまたせしました」 素敵なタイミングで店長っぽいおっさんが、自ら宣言した少女の前に湯気のたつ皿を置 いた。ご立腹だった奴は途端に俯き、小さな声で「ありがとうございます」と言う。 「ごゆっくりどうぞ」 その愛想の良さを店員に分けてやってくれと言いたくなるような笑顔で、おっさんは伝 票を置いて離れて行った。 「食べないの?ずっと待ってたのに」 「…うるさい」 しばらく下を向いてたが、生クリームとストロベリーソースをパイのかけらと混ぜなが ら見ていると、おもむろに白い手がナイフとフォークをそれぞれ掴んだ。 二段重ねの厚いホットケーキに、バナナとイチゴが生クリームとチョコシロップに飾ら れのっかっている。下段には何も塗られてないのか、メイプルシロップの小さなポット付 きだ。 コテコテしたのよりシンプルなのが好きみたいで、大きな皿の中で慎重に上段をずらし、 何も付いてない生地を一口分切る。そういえば、普通のホットケーキはメニューになかっ たかもしれない。 きつね色に焼き上がった湯気をたてるそれを、軽く息を吹きかけてから食べる。キスす るみたいにすぼめられた小さな唇が開かれ、ぱくりとケーキを含んだ。 もぐもぐ、ゴクン。向かいの俺を気にして無表情を装ってはいるが、皿の上を見つめる 奴の顔は意中の相手に薔薇の花束をもらった少女のようだ。なまじ顔が良いから、無駄に 背景を描き込むことができる。 黙々と食べ進める奴を見ながら俺はパフェを完食。水を飲んでから、上段を果物をのせ たまま品良く切り分ける相手に再び声をかけた。 「一口もらって良い?」 「………は?」 うわ怖い。なんか怖い。お楽しみを邪魔された奴の背景から点描や花柄トーンは消え、 社会の底辺でも見るような目で俺を射る。彼女のこんなまなざしなんて初めてっ! 「だって、ユカちゃんてばすんごい嬉しそうに食べてんだもん。下のが好きみたいだから 、俺は上のでいっから」 「……仕方ないな」 奴が折れたのは、絶対セリフの後半部分のせいだと思う。 「あ、違う違う」 テーブルのペーパーナプキンでフォークを拭い、ナイフとそろえて皿と共に差し出そう としてきた奴を制止する。 「食べさせてよ」 「…はぁ?」 いよいよ彼女、いや彼の目つきは厳しくなった。 「お前、気は確かか?そんな…は、恥ずかしい真似できるか!」 押し殺した声で冷たいことを言うので、俺は大げさに溜め息をついてみせる。 「あーあー、ユカちゃんこないだアイス食べた時は『食べさせて』って甘えんぼさんだっ たくせに、俺にはしてくれないんだ?覚えてる?こないだ『あーん』ってさぁ…」 「わ、わかったから!わかったから声大きい!」 カウンター席の客に興味本位に振り返られてるのに気付き、慌てて皿を引き寄せた。先 ほど切り分けたのにたっぷりクリームとイチゴをのせてくれる。 そろりと掬い上げ、俺の口元へ。離れているので中腰になって身を乗り出してきた。ソ ファでなければ、裾の短いワンピの中が丸見えだったろう。 「……ほ、ほら。早く食べろよっ」 羞恥にフォークを持つ指も、その下に添えた手も震わせながら黒髪美少女は促す。 「俺がやってあげたの覚えてる?同じみたくしてよ」 「………そ」 「……忘れたんなら再現してやるけど」 「ぁ……っあーん!ほら、あーん!」 「そんなのできるか」と紡ぎかけた唇を震わせながら、奴は憎い相手に甘いホットケー キを差し出した。 「はい、あー…」 チョコシロップの染み込んだ生地に食らいつき、咀嚼する。舌でつぶせるイチゴの酸っ ぱさがクリームの甘みとマッチしていて、なるほどたしかに美味い。ほんのちょっぴり塩 味のあるホットケーキ独特の風味が、とってもノスタルジーだ。 差し向かう相手は、白い頬を上気させた黒髪美少女。カウンター席の横を通れば誰もが 注視してきた、そんな誰もが羨む「女の子」に恋人ごっこをさせている。 学校ではクールな王子様の須藤豊が、女装して同級生の野郎とファミレスデートだなん て、誰が知ってるというのだろう? 恥ずかしさに先程までの満足感もすっかり吹っ飛んでるっぽい相手に、俺はニッコリ笑 って「ごちそうさま」と言う。 「…んじゃあ今度は、バナナんとこが食べたいなあ?」 腹が減ってたからこの配置で座ったのだが、なかなか悪い選択じゃなかったみたいだ。 (おしまい)
https://w.atwiki.jp/supergirl121/pages/336.html
ただいまっと。 一晩泊まっただけなのに、というより軟禁されていただけなのに、女装姿を人から見られないと思うと我が家のような安心感が有る。 パンプスを脱ぎ、玄関に上がりパンプスを揃え、スリッパを履き彼女の分のスリッパを床に置くいて立ち上がると、彼女に抱きしめられた。 このマンションの玄関の段差はあまり高くなく、上に立っていてもヒールを履いた彼女のほうが当たり前に大きく、普段通り僕の顔の位置に胸が来る。 少し強めに抱きしめられ、サバ折りのようになるがすぐに開放された。 彼女はその場にへたり込みそうになる僕の脇の下とお尻の下に手を回し、目線が合うように抱きかかえる。 興奮して力加減ができないのか普段より強く抱きしめられている。 柔らかいはずの彼女の胸が、今朝彼女にパッド入りのブラジャーを付けられた僕の胸を圧迫し、息ができなかった。 彼女はそんなことは気に留めずキスをしてくる。 「佐藤くん、しよっか?」 息ができず彼女の肩をタップする。 「あ、ごめんごめんやっと犯せると思うと興奮しちゃって。」 ご飯食べてからゆっくりやろうね。お姉ちゃんご飯作るからね。 「ぅう……めっちゃ濡れてるんだけど!」 ショッピングモールに併設されてるスーパーで食材や調理器具や食器を買ってただけなのに、何処に濡れる要素があったんだろうか。 まだ特殊な性癖を持っているのかこいつは…… 「違う、今日は一日中濡れてたの!もぅやっと犯せると思ったのに……けどご飯作ってもらってからにしないと、興奮してうっかり殺しちゃったら佐藤くんの手料理もう食べられないもんね。うん、わかった我慢する。」 人の命をなんだと思ってるんだろうなこいつは。 二人で荷物をキッチンに運びこみ、と言っても殆ど彼女が運んだが。 洗面所で手を洗い終えると、彼女に服を脱がされる。 「ちょっとコレに着替えて」 殆どお尻が見えるブーメランパンツの様なホットパンツと、ブラジャーを隠す程度の面積しかないTシャツを着せられる。 「そういえば今日、下も女の子用の下着着せてたんだったね。」 彼女は僕の腹部を腹筋の筋にそってゆっくりと舐める。 思わず声を出してへたり込んでしまう。 「もう、ちょっと味見しただけじゃん。佐藤くんは生娘か!」 僕の過剰な反応が興をを削いだのか、止めてた手を動かし、僕の髪を後ろにまとめ、エプロンを付けてくれる。 鏡を見ると、正面から見たら裸エプロンのみたいだった。 股間ギリギリの丈のエプロンよく見つけてきたな…… 料理に取り掛かる、1人で集中できて昨日今日の嫌なことを忘れられそうだった。 嫌なことの原因の為に作ってると思い出すと憂鬱になるが。 ちょうどご飯が炊きあがったと同時に料理が完成する。 シーザーサラダ、唐揚げ、つくねと豆腐のハンバーグ、ねぎとろ冷奴、豚肉と大根の炒めもの、ほうれん草のお浸し、豚汁。 作りすぎたというか、肉多いな…… 彼女を呼んでも返事がない、死んでくれてたら嬉しいな、なんて思いながら、ソファダイニングまでサラダを持っていく。 ソファでは彼女がイヤフォンで何かを聞きながら今日買った同人誌の整理をしていた。 テーブルの上に広げられた薄い本では男通しが抱き合っていた。 食欲なくなるなー。 「お、できたか!」 彼女と目が合うと彼女はイヤフォンを外す。 イヤフォンからは僕にも普通に聞こえるような音量で、昨日の僕の喘ぎ声が繰り返し再生されていた。後でこっそり消しとこう。 テーブル片付けて運ぶの手伝って。 「じゃじゃーん♪」 テーブルに料理を並べ終えた所で、彼女はビールを持ってきた。 ビールなんて買ってないし冷蔵庫にも無かった気がするんだけど。 「棚の中に入れておいたの。」 それにしてもキンキンに冷えていた。 「スーパーブレスで冷やしました!」 凍らせずに一瞬で適温まで冷やしたりできるんだな、相変わらず能力は凄いんだよな。 調理器具や材料のないこの家と、昨日から食事と言ったらピザ屋牛丼ハンバーガーしか言わない彼女を見て、お酒と言ったらビールって安易に思ってるんじゃないかなと、疑ってしまう。ずらっと並ぶ銀色の缶を見ると特に。 今こいつにスプーンを舌に押し当てた味って描いてる漫画読ませたら作者殺しに行くだろうな。 そもそも彼女はお酒飲めるんだろうか? お酒に酔うと能力がなくなるとかないかな? 僕はアルコールパッチテストでは問題なく飲める体質のようだった。 「お酒?飲めるよ、こないだ1人で飲んでみたけど特に問題なかったし。けど何かあったら止めてね?」 人類には無理です。 「大丈夫、佐藤くんがチューしてくれれば、佐藤1人の犠牲で止まるよ!」 自分で犠牲って解ってるんだ…… ビールをグラスに注ぐ。 「頂きます、カンパーイ。」 彼女が僕の作った唐揚げに手をつける。 口にあうか気になる。 「美味しい!唐揚げってこんなに美味しかったんだ!さくさくしてて、噛んだら旨味の塊みたいな肉汁が出てきて、味付けされた衣と合わさって味が変化するし、肉がぷりぷりしててすごい美味しい!こんなのつくれるなんて佐藤くん凄いね!」 コンプレックスのある容姿の事や、彼女に逆立ちしても叶わない勉強じゃなく、料理を褒められてすこし嬉しかった。 口がほころんで照れてしまう。 ご飯食べてる時可愛いね、また作るから一緒に食べようね。 うっかりお世辞を言ってしまった。 「佐藤くんも食べていい?」 やさしくしてね。 自分でもなんでこんなことを言ったのかわからない。 慣れないお酒を飲んだ所為か、ハイスペックな彼女に料理を褒められて嬉しかったからか その瞬間、壁に何かが刺さる音がした。 こめかみの横を視認できない速さで何かが飛んでいったのを、まとまりきらず下ろしていたウィッグの髪が揺れ、何本かがキレて落ちるのを見て理解する。 天井と壁に彼女が持っていた端が刺さっていた。 非常識な速さで握りつぶすと箸って飛ぶのか…… 運が悪ければ死んでいたな…… 気が動転したまま、自分の箸で唐揚げをつまみ、彼女の口へ放り込む。 あーんっ 声に出してしまった。多分僕はお酒に弱い。 「佐藤くん今日殺しちゃったらごめんね…」 彼女が小声で言う。 今までの行動から、彼女がこういう事を言う時は僕に萌えているんだと思うようになった。 そう思うと少し自信がつく。 自分の口に唐揚げを挟んで直接彼女の口に持っていった。 彼女は戸惑い気味に受け取る。 軽く彼女をハグし胸に顔をうずめてから、彼女の顔を見上げる。 涙を流していた。 「絶対殺す。」 ぼーっと言う彼女を見て酔いが覚め現実に引き戻される。 いろいろ省略されすぎだろ… 残った分を翌日に食べることを想定してかなり多めに作った料理も、彼女がほとんど1人で全部食べてくれた。 彼女の箸を取りにキッチンへ行った時に作った、おつまみの旨塩キャベツを食べながらビールを飲む。 気が付くと彼女の腰の上に座らされ太ももや腹部を撫でられていた。 テレビではサッカーの話題ばかりだった。 「佐藤くんサッカーしないの?」 できるわけねーじゃん、お前もできないだろ? 「私はできるよ、何年気を使いながら体育受けてると思ってるのよ。」 彼女は僕の頭を撫で笑いながら答えた。 お酒のせいで、そんな彼女が愛おしく思えた。 振り向いて座り直し、彼女にキスをする。 唇を重ね、彼女の上唇を軽く舐め舌を口に入れようとするが、彼女は受け入れてくれなかった。 顔を離される。 どうしてだろう、いい雰囲気だと思ったのに。 早くやらないと目をつぶると眠ってしまいそうだ。 彼女の胸をいじくりながらそう伝える。 「寝ていいよ。と言うか早く寝て欲しい。」 なんでここに来て急に冷たくなったんだろう。 「オナニーしたい。」 素直な彼女が可愛く思えキスをする。 「佐藤くん死にたいの?」 震えながら彼女が言う。 死にたくないキスがしたい。 舌動かしてよ。 「知らないよどうなっても…」 そう言うが彼女の舌は震えて動かない。 僕の舌の力では彼女の舌を動かす事ができないので 彼女の舌を愛撫する。唐揚げにかけたレモンの味がした。 おっぱい舐めたい。 「絶対無理。」 大女のキャミワンピースを脱がせるのは流石に無理と諦めた。 彼女の肩に頭を乗せてぼーっとする。 彼女にお姫様抱っこされて、寝室に移動する。 ベッドの上に彼女と一緒に横になる。 彼女に腕枕をしてもらう、彼女は呼吸が早く小刻みに震えていた。 もう始めてるのか… 目を閉じると意識が溶けていった。
https://w.atwiki.jp/wakures/pages/1036.html
スパイスLv3_9 スパイスLv3_9ミートボールパスタ ピクルス&ソーセージ コーンチャウダー 牛肉麺 最高級フィレ赤ワインソース煮込み 豚足のハニーマスタード添え 最高級フィレステーキ 半熟ポークカレー 黄金の豚カツカレー クラシックシーザーチキンサラダ 前のページへ 1 2 3 4 5 6 7 8 10 11 12 次のページへ ミートボールパスタ ミートボールパスタ台湾台北士林「トイレパーク」 バジル風味のトマトソースに、大きくごろごろとしたミートボールをパスタに絡め、心行くまでほおばって下さい。 特級 ジャンル ご飯・麺 価格(一押し) 38(?) コスト(一押し) 29(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 378(?) 包丁技 486 香(一押し) 369(?) 調味技 483 味(一押し) 353(?) 火加減 484 調理情報 習得条件 調理時間 15時間 習得Lv制限 Lv60 調理費用 2400ドル 特級料理習得数 18 習得数 16~24個 食材 肉Lv3 9 野菜Lv3 6 米穀Lv3 6 スパイスLv3 3 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) ミートボールパスタを編集 ▲TOP ピクルス&ソーセージ ピクルス&ソーセージ台湾台北士林「葡萄荘園」 ドイツ風のピクルス&ソーセージを、ピリっとしたマスタードソースでお酒のあてとしてお楽しみください。 レア ジャンル 前菜 価格(一押し) 113(?) コスト(一押し) 102(?) 風味(一押し) 175(?) 品質 属性条件 色(一押し) 375(?) 包丁技 347 香(一押し) 372(?) 調味技 349 味(一押し) 383(?) 火加減 345 調理情報 習得条件 調理時間 30分 習得Lv制限 Lv75 調理費用 160ドル 特級料理習得数 24 習得数 12~18個 食材 肉Lv3 10 野菜Lv3 7 果物Lv3 6 スパイスLv3 4 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) ピクルス&ソーセージを編集 ▲TOP コーンチャウダー コーンチャウダー台湾台北士林「四海遊龍」 燻製ハムや新鮮なキノコと相まって、ミルクの香りが滑らかな味と幸福を貴方に届けます。 特級 ジャンル スープ 価格(一押し) 96(?) コスト(一押し) 87(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 267(?) 包丁技 271 香(一押し) 276(?) 調味技 274 味(一押し) 282(?) 火加減 273 調理情報 習得条件 調理時間 30分 習得Lv制限 Lv60 調理費用 120ドル 高級料理習得数 18 習得数 12~18個 食材 野菜Lv3 9 ミルクLv3 6 キノコLv3 6 スパイスLv3 3 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) コーンチャウダーを編集 ▲TOP 牛肉麺 牛肉麺(niu rou mian:ニィゥロウミィェン)台湾台北士林「四海遊龍」 多くの牛骨から出汁をとり、牛肉もふんだんに使用した牛肉麺をどうぞご堪能下さい。 レア ジャンル ご飯・麺 価格(一押し) 93(?) コスト(一押し) 82(?) 風味(一押し) 175(?) 品質 属性条件 色(一押し) 440(?) 包丁技 513 香(一押し) 438(?) 調味技 514 味(一押し) 447(?) 火加減 511 調理情報 習得条件 調理時間 3時間 習得Lv制限 Lv75 調理費用 630ドル 特級料理習得数 24 習得数 16~24個 食材 肉Lv3 8 野菜Lv3 5 キノコLv3 5 豆製品Lv3 6 スパイスLv3 2 × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) 牛肉麺を編集 ▲TOP 最高級フィレ赤ワインソース煮込み 最高級フィレ赤ワインソース煮込み台湾台北士林「マタドールファミリー」 あふれ出す肉汁が素晴らしい高級サーロインを赤ワインソースで煮込みました。 特級 ジャンル おかず 価格(一押し) 72(?) コスト(一押し) 63(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 365(?) 包丁技 273 香(一押し) 362(?) 調味技 275 味(一押し) 373(?) 火加減 270 調理情報 習得条件 調理時間 30分 習得Lv制限 Lv60 調理費用 120ドル 高級料理習得数 18 習得数 12~18個 食材 肉Lv3 9 野菜Lv3 6 キノコLv3 6 スパイスLv3 3 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) 最高級フィレ赤ワインソース煮込みを編集 ▲TOP 豚足のハニーマスタード添え 豚足のハニーマスタード添え台湾台北士林「マタドールファミリー」 コラーゲンたっぷりの豚足にハニーマスタードをかけてお召し上がり下さい。 特級 ジャンル 前菜 価格(一押し) 61(?) コスト(一押し) 52(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 378(?) 包丁技 282 香(一押し) 368(?) 調味技 278 味(一押し) 354(?) 火加減 281 調理情報 習得条件 調理時間 1時間 習得Lv制限 Lv60 調理費用 200ドル 高級料理習得数 18 習得数 20~30個 食材 肉Lv3 9 野菜Lv3 6 豆製品Lv3 6 スパイスLv3 3 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) 豚足のハニーマスタード添えを編集 ▲TOP 最高級フィレステーキ 最高級フィレステーキ台湾台北士林「マタドールファミリー」 最高級フィレの肉厚重厚さが売りの高級ステーキです。 レア ジャンル おかず 価格(一押し) 81(?) コスト(一押し) 70(?) 風味(一押し) 175(?) 品質 属性条件 色(一押し) 447(?) 包丁技 350 香(一押し) 444(?) 調味技 345 味(一押し) 434(?) 火加減 347 調理情報 習得条件 調理時間 2時間 習得Lv制限 Lv75 調理費用 520ドル 特級料理習得数 24 習得数 20~30個 食材 肉Lv3 10 野菜Lv3 7 ミルクLv3 6 スパイスLv3 4 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) 最高級フィレステーキを編集 ▲TOP 半熟ポークカレー 半熟ポークカレー台湾台北士林「マイルホーム」 半熟卵をのせたポークカレーは、カレーの辛さをちょうどいい辛さにしてくれます。 特級 ジャンル ご飯・麺 価格(一押し) 96(?) コスト(一押し) 87(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 357(?) 包丁技 271 香(一押し) 376(?) 調味技 272 味(一押し) 367(?) 火加減 274 調理情報 習得条件 調理時間 30分 習得Lv制限 Lv60 調理費用 120ドル 高級料理習得数 18 習得数 12~18個 食材 肉Lv3 7 卵Lv3 7 野菜Lv3 6 スパイスLv3 4 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) 半熟ポークカレーを編集 ▲TOP 黄金の豚カツカレー 黄金の豚カツカレー台湾台北士林「マイルホーム」 自慢の黄金の豚カツカレーはスペシャルな味に仕上がっています。 特級 ジャンル ご飯・麺 価格(一押し) 85(?) コスト(一押し) 76(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 366(?) 包丁技 330 香(一押し) 362(?) 調味技 332 味(一押し) 372(?) 火加減 328 調理情報 習得条件 調理時間 1時間 習得Lv制限 Lv60 調理費用 200ドル 高級料理習得数 18 習得数 20~30個 食材 肉Lv3 9 ミルクLv3 6 野菜Lv3 6 スパイスLv3 3 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) 黄金の豚カツカレーを編集 ▲TOP クラシックシーザーチキンサラダ クラシックシーザーチキンサラダ台湾台北士林「the Chips」 自家製シーザードレッシングが自慢のボリューム満点チキンサラダです。 特級 ジャンル 前菜 価格(一押し) 57(?) コスト(一押し) 48(?) 風味(一押し) 145(?) 品質 属性条件 色(一押し) 309(?) 包丁技 320 香(一押し) 306(?) 調味技 321 味(一押し) 320(?) 火加減 317 調理情報 習得条件 調理時間 2時間 習得Lv制限 Lv60 調理費用 400ドル 中級料理習得数 18 習得数 20~30個 食材 肉Lv3 9 野菜Lv3 6 果物Lv3 6 スパイスLv3 3 × × × × 一押し食材 × × × × × × × × クイズ 問題 A. B. C. D. 答え(反転) クラシックシーザーチキンサラダを編集 ▲TOP 前のページへ 1 2 3 4 5 6 7 8 10 11 12 次のページへ
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/8081.html
342: 奥羽人 :2022/07/24(日) 21 48 30 HOST sp49-98-167-247.msd.spmode.ne.jp 近似世界 1940年9月末 とある広い一室に置かれた円卓。 そこに着席するのは、この日本に住まう人間の中でも有力な者ばかりだ。 「……それではこれより定例会議を始める」 夢幻会。 彼らは全てがその会の有力なメンバーであり、尚且つ、とある目的の為に集まる仲間……つまり派閥である。 「さて……まずは皆に紹介しておこう」 そして今現在、この円卓の椅子に座っている者達こそが、その派閥の主要メンバーであった。 「彼は帝国総合商社の者で、今回の交渉の纏め役を担って貰っている」 そう言って、一人の男が隣に立つ男を手で示す。 「以後、宜しくお願い致します」 丁寧に頭を下げるその男は、如何にも仕事が出来そうな風貌で、スーツ姿も実に様になっている。 「では早速だが……説明を頼む」 「はい」 進行役らしき男の合図を受け、男が口を開く。 「ご存知の通り、今回我々がこうして集まった理由は他でもありません。我ら帝国総合商社とハーランド氏の間で締結される予定の協定についてです」 その言葉を聞き、その場の雰囲気が少しだけ張り詰める。それも当然だろう。何せこれから話し合われる内容こそ、彼らにとって(今のところ)最も重要な議題なのだから。 「既にハーランド氏との話し合いには私も参加させて頂きましたが……」 そこで一度言葉を区切り、全員の顔を見渡す様に視線を動かす。 「結論を申し上げますと……………… …………交渉は成功しました。ハーランド氏は日本国内での活動に意欲的な姿勢を見せております」 瞬間、室内にどよめきが広がる。 それはそうだ。何しろ難航すると思われていた交渉が、たった一日足らずで纏まったと言うのだから。 「……ふむ。どうやら我々の予想以上に事は上手く運んでくれたようだな」 「えぇ、お陰様で。ハーランド氏は……人格に少々難はありましたが……元々事業拡大に意欲的であったようで、皆様方の“出資”が彼の心に届いたとのことです」 「成程。ならばこちらとしても、より一層協力しやすくなるというものだ」 満足げに呟くメンバー。 「しかし、本当に大丈夫なのか? あの国は我が国とは文化も違えば価値観も異なる。そんな状況で無理に事業を展開しても、損失が膨らんでしまうのではないか。事実、史実での一号店はほぼ失敗に終わっている」 そう口にしたのは、先ほどの人物の隣に座っていたメンバーだ。 この中で一番の古株である。 343: 奥羽人 :2022/07/24(日) 21 49 55 HOST sp49-98-167-247.msd.spmode.ne.jp 「その点に関しては問題ないかと思われます。確かに価値観の差異はありますが……我々の活動によって、舶来品を受け入れる土壌は確実に育っております。更に言いますと、史実での失敗は当時の経営者の資質によるものが大きく……ハーランド氏が直接指揮している間は問題無いと予想されています」 「ほう……。随分と言い切るのだな」 自信満々に答える男を見て、古株の男はフッと笑みを浮かべた。 「そうか。ならばこれ以上は何も言うまい」 それだけを言い残し、再び椅子に深く腰掛ける。 すると他の面子も納得したのか、それ以上何かを言う事は無かった。 「では続きまして、本題に入りたいと思います……例のモノを!」 男の声に合わせ、後ろに控えていた者が台車を押して前に出す。 そこには、クローシュ(金属製の半球状の蓋)が被せられた皿が、人数分載せられていた。 その皿達が一つづつ、メンバーの前に提供される。 「これが……?」 「はい。事業展開の打ち合わせの為に来日しているハーランド氏が、出資者達にと」 「おぉ……」 目の前に置かれた皿を覗き込みながら、メンバーが感嘆の声を上げる。 「では早速、頂かせて貰おうではないか」 「あぁ」 そしてリーダー格の男の言葉を皮切りに、一斉にクローシュが開かれた。 そこから姿を現したのは……なんとも食欲を刺激する匂いを放つ、香ばしい香りの衣に包まれたチキンだった。 それは、まるで今し方揚げられたかのように艶やかで、見ているだけで唾液腺を刺激してくる。 そして、クローシュが解放された瞬間から、匂いはより一層強くなって鼻腔をくすぐっていた。 その油と肉と、いくつかのスパイスがブレンドされた薫りは、早く食べろと急かしてきているようにさえ感じるほどだ。 「これは……素晴らしい出来栄えですね」 「あぁ。見た目だけでなく、味の方も期待できそうだ」 そのチキンを見た瞬間、その場に居た全員がゴクリと喉を鳴らす。 「では、失礼して……」 「うむ」 最初に手を伸ばしたのは、やはりと言うべきか、この場のリーダーを務める男だ。 彼はそのままチキンを手に取り、ゆっくりと口元へと運ぶ。 そして―――パキッ! 小気味の良い音を立て、チキンが噛み切られる。 その途端、口の中に広がるジューシーな肉汁。 「……美味い」 「えぇ、非常に」 他のメンバーも、次々に口へ運び始める。 その表情は、どれも満足げなものばかりだ。 「これですよ……これです……!」 「あぁ。実に………………良い」 「流石は…………」 口々に賞賛の言葉を述べる。 そして誰もが心の底から思うのだ。 ―――また、あの店に行ってみたい、と。 344: 奥羽人 :2022/07/24(日) 21 50 52 HOST sp49-98-167-247.msd.spmode.ne.jp ハーランド・サンダース 別名ケンタッキー・カーネル………… …………【カーネル・サンダース】 これだけで、もう詳しい説明は不要だろう。 史実における、世界的なフライドチキンチェーンの創始者である。 「転生・憑依」を経てこの世界にやって来た無幻会のメンバーにとって、故郷である史実世界の思い出。 それをもう一度堪能したい、そう思うのは不自然ではないだろう。 特に、“一回目”で敢えなくアメリカを崩壊させてしまった所の面々は、よりその想いが強い。 しかし、その手の飲食チェーンの製法というのは基本的に企業秘密であり、いくら前世の知識を持ち、文明を進め、世界を影で操る夢幻会だとしてもどうにかできるような事ではなかった。 “秘密のレシピ”が入った金庫の中身を知る者が転生してくる、などというピンポイントな幸運は望むべくもない。 故に、彼らは自らの力を使い、早期の輸入を志した。 夢幻会の有志を集め活動資金を募り、商社をフロント企業として世界中(特にアメリカ)へと飛び、そこで将来の“才気ある者達”に目を付け………… そういった者達がポケットマネーを出し合い、帝国総合商社を窓口にしてハーランド・サンダースにラブコールを送った結果が、彼のフライドチキンの日本上陸なのである。 彼は史実通り、今年の7月に「11種のハーブとスパイスからなるオリジナルレシピ」を発明しており、その味は、まさしく彼ら夢幻会メンバーの記憶の中のそれを思い出させるモノであった。 彼らは皆、それに夢中になった。 それはまるで、心の飢えまでをも満たす様に。 だがしかし、いくら食べても飽きない様な……そんな中毒性すら感じてしまう程の、極上の心地であった。 ────── 少しの後 「おや、もう始めていましたか」 円卓の間に一人の男が入室してくる。それはスーツ姿の初老の男性で、片手には書類鞄を抱えていた。 「随分と遅かったですね」 入ってきた男に対し、一人の男が声をかける。 「えぇ、今戦争のことで新たな情報が」 「何かあったのか?」 男が口にした言葉を聞き、部屋の空気が僅かにざわつく。それも当然だろう。何せ現在は、まさに第二次世界大戦真っ最中なのだから。 そうして部屋中の意識を集めた後で、その男はようやく口を開く。 「そうですね…………中華民国軍が香港とマカオを占領、その勢いで南明と武力衝突が始まった話と……ダカール沖で仏戦艦リシュリューが英艦隊を叩きのめした末に対英宣戦した話の、どちらから聞きたいです?」 345: 奥羽人 :2022/07/24(日) 21 52 55 HOST sp49-98-167-247.msd.spmode.ne.jp 今回は以上となります
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4768.html
※何気にシリーズものだったりする ※でも、過去作は見なくても無問題 中学校で教職員やりながら剣道部顧問をやっていると色んなガキ共に出会う 暴力事件を起こす奴もいれば、高校でインターハイ準優勝なんてしてしまう逸材もいた モンスターペアレントの保護者に殴り込みをかけられて辟易した事だってある それはさて置き、目覚まし時計のメアリーにたたき起こされた俺はいつも通り6時半に電車に飛び乗り、7時には学校に到着した 俺がこんなに朝早くから学校に向かうのは剣道部の朝練のためで、もはや日課になっているのでなんら苦痛ではない ここまでは良い。要するにいつも通りの平凡な朝の風景だからな 「うーっ!おじさん、れみぃにけんどうおしえてほしぃどー!」 何故か学校の正門前で物陰に隠れていたゆっくりれみりゃに剣道を教えてほしいと言われた さすがの俺も、こんな経験は初めてだった もちろん、今までにそんな話を聞いた事だってない さて、どうしたものか・・・ 「・・・まあ、いいか。ただし、教わる限りは真剣にやること!いいな?」 「うっうーっ!ゆっくりりかいしたど~♪」 俺の返事を聞いたれみりゃは両手を頬にぴたっとくっ付けるとしなを作る その後、両手を天に掲げると腰を振りながらうーうー歌い始め、一向に道場に向かう気配を見せない 痺れを切らした俺は踊り続けているれみりゃに背を向け、さっさと道場へ急いだ 「うぅ?れみぃのおれいのだんすをみないの~?」 「・・・それ、お礼のつもりだったのか」 やっぱりゆっくりの考えることは良く分からん 「いいか、これが竹刀で、これが防具だ」 「うーっ!そんなことよりはやくおしえてほしいんだど~♪」 「そんなこととか言わないっ!」 防具を放り投げて竹刀を掴んだれみりゃの手を素早く打ち据える すると、れみりゃは「うぎゃ!?」と短く悲鳴を上げて竹刀をぽとりと落とした 「うあ゛あ゛ああ゛あああ!いだいどおおおお!?」 「防具を甘く見るとこうなる。わかったな?」 「いだい゛いいい゛!?ざぐやああああ!ざぐやああああ!?」 「やかましいっ!」 今度は面打ち 軽快な音と衝撃の効果で一瞬泣き止むが、れみりゃは再び泣き顔になる 何となく『となりのト○ロ』のさつきの泣くシーンを髣髴とさせるものがある あれ、映画館で見たときは正直リアルすぎて引いたんだ・・・ 「やかましいっ!!」 「うぎゃん!?う、あ゛うー!いだぃぎゃ!?」 「しゃらっぷ!!」 どうやら全然学習しないらしく、一向に泣き止む気配を見せない 痛みで教えるなんて時代遅れの方法は流石にゆっくり相手でも無理だったか? 「なあ、れみりゃ?」 「うあ゛あああ゛あああ!?いだいいい!ざぐや゛ああああ!?」 「泣き止んでくれないか?」 「ざぐや゛ああああああ!?あのおぢざんがいぢべるどおおおお!?」 「おーい、れみりゃ?」 「お、おばえなんが・・・ざぐやにやっづげあれぢゃえええええ!?」 「無理だ!これ以上は近所迷惑だ!喝っ!」 「うぎょべ!?」 と言う訳で、れみりゃが泣くことすらも叶わなくなるまで叩き続けることにした 教育者として正直どうかとは思ったが、まあ仕方ないだろう 「さて、ようやく泣き止んだ所悪いが早速防具をつけてもらうぞ?」 「うぅ・・・でびりゃのぶりぢーなあだまがぁ・・・」 「・・・・・・話を聞いてるか?」 「は゛、はい゛いぃぃ゛ぃ!?ぎ、ぎぃでまずぅぅぅうぅ!」 どうやら散々引っぱたいたのが効いたらしく、れみりゃは俺の言葉に即座に反応した もっとの、想像を絶する恐怖に震え、双眸からは恐怖のあまりに涙が零れ落ちているが まあ、瑣末なことだろう。気にするほどのことでもない 「さあ、面は超大顔面用!篭手と胴は一番小さいサイズを用意してやったぞ!袴は・・・別にいらんだろ」 「うぅ・・・もうげんどーは・・・」 「今更剣道嫌とか抜かしたら脳天かち割るからな?」 「うぅ・・・ぼーぐをゆっくりづげるどぉ・・・」 「待て待て。流石に初心者が自力で防具を着けられる訳が無いだろう」 と言う訳で、俺が手際良くれみりゃに防具を装着させてやる 何故か凄まじい表情を浮かべたまま大人しくしているのでこの作業が案外楽で助かった 「さて、最後は面だな」 「・・・・・・」 と、れみりゃに面をつけつつ、いきなりゆっくりに関する豆知識を披露したい もっとも、この時点では知らなかったことで、後で朝練にやってきた部長に教えられて初めて知ったことなんだが ゆっくりってさ、全身が嗅覚で、人間よりもずっと敏感らしい で、更に話が逸れてしまって申し訳ないんだが、剣道の防具って物凄く臭いんだよな 剣道を始めたばかりの頃部室に入った瞬間異臭騒ぎで警察呼んで先輩に殴られたことがあるくらい臭い 一体、何であんなに臭いんだろうな 「うあ゛あ゛あ゛あああ゛あああぁあ゛!!?」 そんな訳で、れみりゃは気が狂ったかのように叫びながらぶんぶん竹刀を振り回し始めた しかも、そのまま俺めがけて思いっきり突っ込んでくる 今にして思えば異臭で正気を失ってしまっていたんだろうが、その時俺はれみりゃのやる気の表れだと勘違いしてしまったんだ 「しかしゆっくりしすぎだ!篭手っ!!」 「うあ゛ああ゛あああ゛あああ゛あ゛!?うるざいどおおおおお!?」 「いやあ、お前のが五月蝿い!胴っ!!」 「うっぎゃああああああ!?」 ここでまたゆっくりトリビアで申し訳ないんだが、ゆっくりって全身聴覚でもあるらしい しかも、大きな音で鼓膜もとい皮が破れることはないんだろうが、最悪大きな音で苦痛を感じることもあるとか そして、面に綺麗な打ち込みをもらうと分かると思うが、あの時の音は結構な音量だったりする 俺達人間には分からないんだろうけど、胴や篭手のときも似たような状況になっているんだろうな・・・ 「うあ゛ああ゛ああっあ゛あああ゛あ゛!?」 「だからそんなデタラメな打ち込みじゃ無駄だっての、面っ!!」 つまり、今れみりゃは素人の蛮勇で俺に挑んできているように見えるがその実態はもがき苦しんでいるだけ にもかかわらず、俺がそのことに気づかないので延々と轟音と異臭と苦痛に苛まれる かと言って、痛みに耐え切れずにうずくまろうものならがら空きになった背中に竹刀による一喝が飛んでくる 「竹刀を持っているときにうずくまるな!」 「ぼうやだど・・・うぎゃぴぃっ!?」 「竹刀を放り投げるな!」 こんな調子でれみりゃの初めての剣道体験は件の部長がやってくるまで続いた 「へぇ、あのれみりゃ。お前のペットなのか」 「ペットじゃなくて友達です」 「何にせよ、あのれみりゃはお前に構って欲しくて剣道を教わりに来たんだな」 「みたいです。ちょっと感動しちゃいますよね・・・と言う訳で、れみちゃん!」 彼女は長い白髪を揺らしながら竹刀を手に勢い良く立ち上がると、あのれみりゃに半ば強引に防具を装着し、道場の真ん中へと引きずっていく それから、れみりゃの竹刀を悠々とかわしながら軽く屈伸を済ませ、更に防具を着けると「今度は私が稽古をつけてあげるね!」とれみりゃの面を引っぱたいた ちなみに、彼女は辻斬り属性持ちと恐れられるほどに試合形式になると過激になり、練習内容も恐ろしくハードになる 「うあ゛ああ゛あ゛あっああ゛あ!?」 「遅い!面っ!!寝転がらない!破っ!!竹刀を投げない!篭手っ!!」 「ぼうやだああああ!でびぃ、ごーまがうぎゃっ!?」 「敵前逃亡は死と同義!突っ!!」 分間20回以上もの打ち込みを食らって、よだれや肉汁や涙を撒き散らしつつのた打ち回るれみりゃを眺めながら呟いた 「・・・ご愁傷様」 ‐‐‐あとがき‐‐‐ 2代目が誕生したよ! 『ゆっくりいじめ系2897 ゆっくりボール』の作者さんだよ! 皆、ゆっくり沢山可愛がってあげてね!・・・主に性的な意味で それはさて置き、高校時代剣道部に可愛い先輩が居たんだよ 美人とか格好いいじゃなくて可愛い、ね しかもかなり強い先輩だった 私は勇気を振り絞ってこんなお願いをしてみたんだ・・・ 「先輩!先輩の防具の匂いを嗅がせてください!」 困惑しつつも了承してくれた彼女の防具の匂いは・・・普通に臭かった、んほぉ byゆっくりボールマン このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/83452/pages/9141.html
律梓「くわずぎらい!」 律「梓~くわずぎらいやろうぜ!」 梓「とんねるずのやつですか?」 律「そうそう!やろうぜ!」 梓「…練習は」 律「いいから~」 梓「…仕方ないですね」 律「じゃあ好きな料理三品と嫌いな料理三品きめるんだ!」 「あたしはこれだぜ!」 ハンバーグ 生春巻き 豚骨ラーメン オニオンサラダ 梓「…じゃああたしは」 オムライス つくねやきとり レアチーズケーキ ビシソワーズ(じゃがいも冷静スープ) 律「じゃあ実食だぜ!」 梓(律先輩たべたいだけなんじゃ…) 実食! 律のターン 梓「…それじゃあ」(ここは軽めのもので様子見…でもこれは好き嫌いわかれるぞ!) 「生春巻きで!」 律「…そうくるのは予想済みだよあずさぁ!」バンッ 梓「にゃあっ!」ビクッ 律「…中身は挽き肉と野菜諸々か…日本人向けにアレンジしてある感じかな?」 「それにこの甘辛いソースを…」 とろ~り 「よし…いただきます」 パクッジュワーシャキシャキモグモグ 律「うん!いいかんじだ!ちょっとこい挽き肉とソースが新鮮な野菜と中和されて絶妙だ」シャキシャキ 「うん…ピリ辛なソースがいいな…食欲を掻き立てる!」モグモグ 梓「…」ゴクリ 律「野菜が新鮮だから口の中が水分でみたされてる!」 律「」パクパクシャキシャキモグモグゴックン 「ごちそうさまでした!」 梓「」ダラァ 律「どうしたのかね、上のお口がだらしないよ?」 梓「う…次はあたしのたーんです!」 律「…それじゃあ梓には…レアチーズケーキだな!」 梓「…な!物事にはセオリーというものが…」 律「なにを注文してもいいルールだが…」 梓「くっ…」 チーズケーキ「ふわふわ」 梓「…まあいいでしょう!うわぁ…おいしそう」 律「…」ゴクリ 梓「いただきま~す!」フワッパクン モグモグ 梓「うん…程よい…ただ甘ったるいんじゃなくてさっぱりとした甘さ…なのに濃厚なんです」モグモグ 「ベリーソースの甘酸っぱさと混じって口の中がパラダイス!…チーズの香りも新鮮だし…」 「あ…下のタルト生地もいい…柔らかいだけじゃなくてメリハリつけてくれる…」サクサク 律「…う…うまそう」 梓「…ふう食前にドルチェとはいただけませんでしたが…なかなかおいしかったですね」 律「…今のは好きだな…めちゃくちゃうまそうに食ってた…」 「さああたしの番だぞ!早く選びなさい!」 梓「…それじゃあ」 律「…豚骨か」 梓「律先輩共食いになるんじゃないですか?」 律「」グリグリ 梓「あひー!」 豚骨ラーメン 律「うまそーっ!」ダラダラ 「いただきまーす!」 パキン ズズーッズルズルムニャムニュ 律「…うん!細麺がうまい具合に豚骨スープと混ざり合ってる!」 ズズーッ 律「なかなか喉越しがいいな…次はスープを」 梓「…レンゲつかわないんですか」 律「」ズルーッゴクゴクゴク プハーッ 律「いや、なかなか濃厚なスープだよ!ダシがでてコクがある!とってもまろやか!」 梓(良くこんな濃いの直のみできるな…下品) 律「…おまえいま下品っておもったろ?」 梓「…さあ?」 律「…まあいいや…チャーシュー…トロトロ」パク 「うん…でも赤身のところもしっかり残ってるこの噛みごたえがなきゃ肉食ってる感じしないんだよな」モキュモキュ 「メンマもたれがしみてて…程よい味付けだな…」シャキシャキ 梓「…」 (ああーっうまそうだ!私も次郎入れときゃよかったかな…ああ!今すぐ食べにいきたい!) 律「」モグモグズズーッズルズルゴクゴクゴク 「…ぷはーっ!ご馳走サマ!」 梓「次はアチシの番です!」ダラダラ 律「おいおいせかすなよ…つかよだれ…」 律「うーん…じゃあ…つくねの焼き鳥かな!…でもなぜつくね?」 梓「肉団子って美味しいじゃないですか!」 律「…おこちゃまうすだな」 梓「そんなことないです!」 つくね パチッパチッジュー 律「焼きたて…炭火…」ゴクリ 梓「うおォン」ゴクリ 「いただきまーす」 ハフッハフッモグッ…モキュモキュ 梓「うほっ…柔らかすぎずかたすぎず…なかなかの肉の弾力です!モチモチして…」コリ 梓「………!?」コリコリ 梓「…これは軟骨!!…ああ…口の中でいいリズムを刻んでます」モグ…コリコリ 「そしてこの甘いタレが肉の油と合わさってまろやかに…」 律「…」ゴクリ 「あ…あずさ?一口だけ…」モジモジ 梓「…仕方ないですね」 梓「…はい」アーン 律「…え?」 梓「はやくしてください」 律「お…おう」ドキドキパクッ 梓「…」モジモジ 律「う…うまい」 (でもなんでだろ…いつもよりおいしく感じるのは…素材がいいのか?) 梓「…この黄色いのは?」 「ハッ」 「わ…ワタシとしたことが黄身につけるのをわすれていた…」 律「…なんか趣旨ずれてきてないかな」 梓「…仕方ないこの最後の一個を」チョイチョイトロ~ン パクッモグトロン 梓「うん…黄身が肉をコーティングしてよりまろやかに…タレの甘さもおさえられて…」 律「」シュビッ (いかん…またよだれ…) 梓「律先輩ですね…」 律「まってました!」 梓(危うく趣旨を忘れていたけどこれは相手の嫌いな料理を当てるゲーム…) (相手の考えを読み取りかつ完璧な演技で相手を欺く…そう!夜○月のように!) 律「はやくしろよー」 梓(くっ…読めない…) (いつもはふざけてばかりで一見ただのバカにしか見えない…) (だが…実は想像より頭の回転が早い…多分澪先輩も目じゃない…) (そう…!それはまさに信長!) 律「あずさぁ!」バンッ 梓「はいっ!ただいま!」 「ハンバーグで!」 (だいたい律先輩作ってたし!嫌いな人がいるはずがないし!) 律「まってましたあ!」 ハンバーグ ジュワアアアアアアア 律「うおお!この音!」 梓「…」ゴクリ 律「さっそくきっちゃうぜー!」シャキン キイッ…ジュワン 律梓「…」ゴクリ 律「いただきー」 ハグッモムモム…ジュンッ… 律「これは…すごい!ボリュームたっぷりでまさにティーンエイジャーって味だぜ」 梓(なんだそれ…) 律「ただ…何かが…何かが足りな…」ハッ! 唯「失礼します!」 律「…?唯?どうして…しかもその格好…メイド?」 唯「りっちゃん!ごはんはおかず…だよ?」パチッー☆ 律「…!」 唯「じゃあ失礼しました!またね!あずにゃん」 律梓「…」ゴクリ ご飯「」ホカホカ 律「…我慢できないよ梓」…いいかな」ゴクリ 梓「…はい…いっちゃってください…」ゴクリ 律「…うおお」ワシワシ ガツガツアフッモグモグモムモム 律「ふぁ…ふぁんばーぐむぉ…」 バクンッ…ジュワアアモムモムガツガツ …ゴクンッ 律「ふぁ…ふぁ…ひぃあわふぇ…」 梓「…」 シュビッ 梓「…!」 (な…よだれが…) 律「へへん…やっぱりハンバーグ大好物だな!」 梓(あ…コイツバカだ…) 律「うーんやっぱりこの肉汁と食感…幸せってこんななんだな…」 梓(絶対バカだ…) 律「梓…幸せだったよ…」ニコニコ 梓「…まったく」(無邪気な律先輩可愛いな…) 律「じゃあ梓…」 梓(さあ…どうでる!) 律「オムライス!」 梓「…きたか」 オムライス 梓「きましたあ!」 律「ふふっ…」(意外と無邪気だな…) 梓「しかも卵が…」 トロトロ… 「半熟ですぅ!」 梓「ハムッ」 トロン…モムモム…ゴクンッ 梓「…」 律「…梓?」 梓「…すいませんトリップしてました」 梓「このふわトロたまごがチキンライスをつつみこんで周りのデミグラスソースが食欲をかきたてる…」モムモムポロポロ 律「食ってからしゃべれ!」 梓「…」ハグリモムモム 梓「…ふぅ」カラン 律「満足そうだな!」 梓「まあ満足ですね!」 律「じゃああたしの番か…」 オニオンサラダ 梓「玉ねぎだけですね…」 律「みずみずしくて新鮮そうだろ!しかもあたしの大好物澪特性のドレッシングがまたいいんだよな…」 梓「…」ムッ… 律「いただきまっする」 梓「…」 バク…ザクッシャキシャキモグモグ 律「おほっ…やっぱり野菜食べると体が喜んでる感じがするねぇ…玉ねぎのパンチのきいたなかに繊細な甘味が…いい…」 シャキシャキ 梓「シャキシャキって音がここちいいですね…」 梓「さあラストですね」 律「オシャレなスープだな…」 梓「お上品な味なんですよ」 ビシソワーズ 梓「…」スイッ スゥ…ゴクン 梓「はぁ…落ち着きますね…まろやかで優しく口の中に広がるんです」 律「…」ゴクン 梓「スウ…」 梓「ごちそうさま」 律「さあ食べおわったことだし」 「梓は何が嫌いかなー」 梓「覚えてたんですね…」 梓「さあ!勝負です」 律「おう!こい!」 梓(やっぱりメニュー的にここは…) 律「~♪」 唯「では両者解答を!」 15
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/897.html
幻想郷。 失われた自然といまだ人が共存する地。 大地の恵み、川の恵み、風と雨に立ち向かい、その猛威を畏れ、恩恵に感謝する。 自然と対峙し、ときに糧を得るべく狩り、または育む。 人が自然の中に生きるために狩るもの…それは、ゆっくりと呼ばれる存在であった。 この村には風変わりな家がある。この家には一人の男が住んでいる。 村の規模はまだ小さく、発展の途上にあることが十分に伺える。頑丈な、これだけはまずしっかりと拵えた柵の内に村人は家を建て畑を耕し、しかし、この男と幾人かの村人は農民の生活に合わせず、 朝は遅くまでベッドの上、夜はいつ帰るともしれず、それでいて男を見る村人の眼はいつも尊敬の念にあふれていた。 そんな男の家は村の中心にあり、村長の家をしのぐ大きさを誇る。ただ、その形が異様だ。大きな台形のような外見で、二階には大きな窓が二つ、屋根は真っ黒に塗られ、天井は高く尖り、家の後ろには波打った藁のようなものが垂れていて、 近くで見るとつるつるとした壁肌が、村からゆっくり離れて、段々とその形が周辺の者なら誰でも見覚えある形にまとまって見えてくる。大きな、大きな、ゆっくりまりさの形に。 この男の家はゆっくりでできていた。 村の中で異彩を放つ、その家は庭のようにちょうど周囲を取り巻く柵を境に、ゆっくりを丸ごと家に改造したものなのだ。 かつて村を襲った脅威の一つ、10m級ドスまりさを剥製化して、職人を招き、住居として手を加えたもの。 あんぐりとあけっぱなした巨大な口には、すっぽりと豪奢な鉄のドアを嵌め込んで。 目の部分は二つの円窓を誂え。 皮は、樹脂とゆっくりの餡子を練りこんだ特製の油を塗りこみ、コンクリートのように硬化処理し。 風船のようにぷっくりと広げた内部は餡子を残らず抜き取って大黒柱と支柱を数本立て、床には絨毯を敷き詰め。 帽子と髪の毛も腐敗処理を施して屋根として利用してある。 この家はまさしく、「ゆっくりの家」だ。 そんな奇妙な家の内装もまた、あらゆるものがゆっくりで作られていた。 成体のゆっくり各種を背中から切り開き、餡子を抜いて代わりに綿を詰めて縫い合わせたゆっくり縫いぐるみ。 生きたままのゆっくりの頭部に穴をあけ、花の種を植えたゆっくり植木鉢。これはゆっゆっと掠れた声でぴょんぴょん跳ねながら、頭の花をゆらゆら揺らしている。 柱に打ち付けられたゆっくり時計。膨らんだ腹部に鳩時計と同じ仕掛けを施し、定時になると生まれたての赤ん坊ゆっくりがぽーんと転がり出てくる。 箪笥や、床に置いた道具箱などもゆっくりから拵えたものばかり。 なぜ、これほどにゆっくりにこだわるのか。男にしてみると、こだわるとかそういった問題ではなかった。ただ、生活に関わるあらゆるものが、ゆっくりであっただけで… この男の職業は、ゆっくりハンターだから。 人口は百足らず。時折訪れる行商人とのわずかな交易と狩りの成果に頼る小さな村は、つい最近の開拓によって作られた。 都市を出て郊外を離れ、ずっと森の中に分け入ったさらに先、自然の趣たっぷりな平野に新天地を求めた人々によって築かれた。 だが、そこは伝説でしか知られない不自然の脅威にさらされる地だったのだ。 大きな森や山に必ずいるという、生まれつきの素質をもつ個体が、強運と狡猾さで生き延びて、群れを支配するまでに巨大化した、ドスまりさ。 都では滅多に確認されない、ドス級の巨体に加え、鮮やかな桜色のリボンがトレードマークのれいむ種、リオれいむ。ドススパークに匹敵する火炎球を放つという。 姿かたちは元の種と変わらず、やや大きめの体に人間でも追跡できぬ異常な素早さと凶暴性を秘めた、ちぇんクック。さらに凶悪なちぇんガルルガなる種も噂に語られる。 遠目からでも、地響きと20mという巨体ゆえに目立つ、ティガれみりゃ。 それ自体が一つの山と数えられ、もはや災害そのものにまで増長し、都の防衛庁が対策を講じねばならぬという、ラオシャンみょん。 もはや伝承ですら語られることも稀な、 伝説に忘れ去られた古代の知識を身に着け、天を裂き山を揺るがし、自然現象を操る超常の種、ミラボレぱちゅ。 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………… 辺境の村はどこもゆっくりの脅威に晒された。ある村は蝗の様に襲いかかるゆっくりの大群に畑を食い尽くされ、ある村は見たこともない巨大なゆっくりに家を踏み潰され、村があった場所はもはやただの平原に変わったという。 ゆっくりを対処する手段が求められた。ゆっくりを研究し、ゆっくりにのみ通用する毒やゆっくりの本能を刺激して罠にかける方法が編み出された。だが、それだけでは足りなかった。 小さなゆっくりには人的手段が通用したが、災害に等しい巨大種には常人では対抗しきれない。 そうして立ち上がったのが、ゆっくり虐待派と呼ばれた青年たちだった。はじめ、彼ら彼女らは生き物を無残に遊び殺すと忌避された。しかし、ゆっくりを様々な方法で玩ぶうちに、虐待派はゆっくりのあらゆる特性を学んでいった。 彼ら彼女らはただゆっくりを殺害する手段だけではなく、生活に役立つ道具としてゆっくりを加工する手段も編み出していったのだ。 いつの間にか、森に棲むゆっくりを狩り、ゆっくりから武器や防具を加工して、仲間同士で連携して巨大種を倒す技を身につけた者を 「ゆっくりハンター」 と呼び、いまや開拓村、辺境の町ではなくてはならない存在となった。 ハンターには素質が必要だ。それはゆっくりを傷めつける虐待の精神がなにより重要とされる。 ゆっくりは極めて世代交代のサイクルが短い。また、個体自体の「進化」と他の生命体なら呼ばれるだろう環境への適応能力もまた著しく高いのが特徴である。 その最たる例が、『虐待などで過度のストレスを長期受け続けたゆっくりの餡子は非常に甘くなる』というものである。 これは殆どのゆっくりに当てはまる、環境への自己適応である。 ハンターはゆっくりを狩り殺すだけが能ではない。生業として成立するために、ゆっくりから様々な道具を作り出す知識を身につけている。ゆっくりにかける負荷の度合いや部位によって、硬度や弾力性に変化を持たせることで、 巨大種の皮や餡子、または眼球や舌などから衣服、調度品、薬品、そしてハンターがゆっくりを狩るための武具を作り出すのだ。 ゆっくりを狩る者にも色々いるが、(都では、身長を超えるような大きな玄能を嬉々として振り回す少女のハンターがいるともっぱらの噂だが)時には、胴体付きゆっくりを捕獲して調教ないし教育し、 ペットや使用人、あるいは狩りの手伝いをする助手として利用することもある。 この開拓村に、ゆっくりの家を造って暮らす男は、随一のハンターである。討伐、捕獲、採集、あらゆる依頼をこなし、かつてはラオシャンみょんの進行を阻止する要塞戦で勝利を収めたほどの猛者だ。 日が沈み、夜が訪れる頃。 男の家に客人が現れた。村長だ。曲がった腰を杖で支え、ドアをゆっくり叩いた時、男はちょうど食事の時間で、飼いゆっくり(ピンクと白の縞々帽子をかぶせたまりさ)を撫でながら、コックのれみりゃが作った小籠包を味わっていたところだった。 村長の用事はわかっていた。それは依頼だ。 「急ですまんがの。また森のほうでゆっくりがあらわれたそうじゃ。行商人が依頼を持ってきた。なんでも近く都のほうで新しい建設の計画があるそうじゃが、その付近で凶暴なゆっくりが群れをつくっとるそうじゃ。都から派遣されるハンターと共同で討伐してくれとの。」 男はそれだけ聞くと、口元の肉汁を拭い、膝の上のゆっくりを払い落して無言のまま、壁に掛けた武具を取り出し装着した。 彼が身につけるのは、かつてラオシャンみょんを討伐した際、剥ぎ取った表皮を乾燥させ、薬品に漬けこむことで銃弾の衝撃を吸収するほどの耐衝撃性をもたせたものを甲冑として鍛えた「暁丸」、 武器はラオシャンみょんの牙を削った太刀「楼観剣」である。 準備が整うと、村長が手配したゆっくり車(底部に車輪を取り付け、横長に変形した2m級のドスまりさ二体が牽引)に乗り、鞭を振るった。 ひぃっと小さく声を上げると、ドスまりさがゆっくりと移動を始めた。 地図に示された狩り場に辿り着くのは深夜。もっとも狩りに適した時間だ。それまで男は休息を取るべく目を閉じた。ハンターの習性ゆえに、男はすぐに眠りに落ちた。 目が覚めた時には、非情かつ冷酷なハンターがそこにはいるだろう… (続く) おはようとそしてこんにちは、それからこんばんは VXの人です。 どうしても書きたかった。後悔はしてはいけないと信じてる。シンジテル。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/hikaroon/pages/42.html
<ベトナム|1|2|3|4|5|6|7|8|9|> 大雨 8時頃起床。寝ながら聞こえていたが、車外からは激しい雨の音がする。3人はまだ寝ている。僕は日記の続きを書いて過ごした。10:00、列車は1時間遅れてフエに到着した。3人はフエで何泊かするらしい。別れを言って、列車はまた動き出す。さっきまでの賑やかさから一転、急な静けさに変わり、すっかりセンチメンタルな気持ちになってしまった。天気も益々下り坂だ。 水没した田 景色は一面の田んぼだが、大雨のせいか、大部分が水没している。そこに、アヒルの大群が、まるで米粒のように集まっていたり、牛が嬉しそうに草を食べている。特に、子牛がジャボジャボと嬉しそうに跳ね回りながら、親牛の周りをぐるりと周る様子は、平和そのものだった。広大な田を抜けると、列車は湾の南側を進む。この辺から天気は回復に向かい、透明な川に飛び込んで遊ぶ子供たちが見えたりした。列車の中は冷房が効いていて涼しいが、それでもあのように川で泳いだら、どれほど気持ちいいだろうと思った。湾を抜けると、列車は山を一つ越える。山道に入った途端に、天気はまた下り坂だ。果たして、ハイバン峠で晴れるだろうか?山の天気は本当に変わりやすく、サイコロを振っている気持ちだ。 ハイバン峠 列車は湖畔を進む。湖からは無数の柱が突き出ていて、その上に家が建てられている。湖上で生活しているようだ。それから、南シナ海を左手に、崖を登っていく。この辺の海は、一部青いところもあるが、泥で黄色く濁っている。大シケだ。ところが、いよいよハイバン峠にさしかかると、不思議に雲が去り、陽が差してきた!そのおかげで、断崖を右へ左へうねりながら進む列車と、崖下に臨む濃緑、海の明黄、空の軽青を楽しんだ。遠くにはダナンのビル群が見える。峠を越えてしまうと下りは早いもので、20分ほどでダナンへ到着した。時刻13時頃。 ダナン ダナンは快晴。なので、太陽の位置を参考に方角を知る。Hai phong通りを東に進み、Tran Phu通りで南下した。まず気づくのが、生活水準の高さだ。店は路端でやっているのは皆無で、きちんとした看板がある。道で物売りをしている人や、ザルを運んでいる人など見かけない。そして何より、(交通量の絶対量も少ないのかもしれないが)渋滞が無く、クラクションも全くうるさくない。歩道は広く歩きやすい。むしろ、歩道がきちんとあることが衝撃的だった。それから、信号等の交通ルールもしっかりしていて、大変道を横断しやすい。建物も、高めのビルや、変わったデザインの橋や、音楽ホール等があり、ハノイと比べて大分近代的に感じた。一方で、ハノイのクラクション地獄に慣れてしまった僕には、秩序が物足りなく感じるのだった。 場所が違えば食べ物も違う 適当に通りの店に入る。この辺では、フォーはメニューにない。あったとしても、「ハノイのフォー」と書かれている。注文した料理名は忘れてしまったが、汁の少ない麺に、ナッツやら海老やら乗っているのを食べた。 Han市場 一階は日用品、食料品コーナーとなっている。野菜、果実、ハーブ、香辛料、肉、干物、魚介・・等が所狭しと並んでいて、歩いているだけで楽しい。面白いのは、生きているカニが売られていたこと。縄で縛られて、ハサミも動けないようにしてゴロゴロと転がしてある。僕はバナナが食べたかったが、売っているのは実が何十とついている一房単位だ。そこで、「一個だけ欲しい」と伝えると、商品にはならなかったため切り取っただろうバナナ屑をくれて、シッシッとやられた。少し黒い部分はあったがとても美味しかった。日本で普段目にするもの(フィリピン産?)よりも、黄色くて短い気がする。ダナン教会の前で頬張りながら、ホイアン行きのバスを待った。バスは一時間に一本だが、幸運にも直ぐに来た。ホイアンへは一時間ほどで着いた。 宿探し 市街地まで歩いていくが、バイタクが乗せてやるよとうるさい。まあ歩けば着くだろうと思って、バイタクに乗っていった外人の後をつけて行ったのだけれど、途中で見失ってしまった。仕方なくバス停まで戻って地図を見たのだけれど、バイタクが走っていった方向はなんと市街地とは間逆の方向だった!ぐるぐる遠回りしながら運ばれるのだろうか? このバイタクたちは本当にしつこい。たった1kmほどの距離なのに、5USDもふっかけてくる。こちらが低い値を言っても馬耳東風で、「市街地は5km離れていて遠い」とか、「皆乗っている」とか、ひたすら繰り返している。「どこへ行きたい?」「何を望んでいる?」って言うから、「こっちは何も望んでねーよ。何かを望んでいるのはそっちだろ」と言い返した。相当イライラしていた。 宿はいくつか見てすぐに決まった。4階の部屋で、窓は無いけれど清潔で、小さなテーブルまでついている。これで10USDなので大満足だ。シャワーを浴びて汗を流す。 予期せずミーソン遺跡ツアー 昨日今日は満月であり、ホイアンではランタン祭が開かれるらしい。シャワーを浴びながらも、外から賑やかな太鼓が聞こえてくる。急いで着替えて部屋を出る。地図を貰うためにフロントに寄るが、中国人のおばさん一行が、ミーソン遺跡のツアーを値切ろうとして盛り上がっている。このおばちゃん達がなかなか面白い人で、僕はミーソンに行く予定ではなかったにもかかわらず、いつの間にか負けてもらうための工作に加わっていた。そのおかげで、1USDも安く参加することができた。 ランタン祭 そしてランタン祭り。ホイアン旧市街に、色とりどりのランタン(というより提灯だが)が幻想的に光っている。小雨がさらにしっとりとした雰囲気にしていて、格別だ。いくつかの通りでは太鼓が聞こえていて、人々が集まって何かを見ている。それは獅子舞だった。子供二人が前足・後足となり、踊る。日本と異なるのは、獅子舞は子供の頭を噛むのではなく、「お金を噛む」こと。次次にお店をまわり、店の中で踊る。そして、店主は稼ぎの一部を持ってきて、獅子舞の口に入れる。それでも獅子舞は、「足りねぇぜ」って感じで店に居座って、手を舐めたり毛繕いを始める…その動きがコミカルで大爆笑であった。それから、灯篭流しもした。紙製の器の中にロウソクが輝いていて、それをThu Bon川へ流す。このとき、川縁まで来てみて、洪水があったことをようやく知った。水位はまだまだ高く、波止場は浸水していた。橋の欄干は流されていて、通行禁止になっていた。水位が高くなった橋には、流れてきた草が大量に引っかかっている。クレーンがそれをひっきりなしに掴んでは下流に流す。灯篭のいくつかは、草に絡まり、行き場を失っていた。まるで、託した望みもそこで止まってしまったかのように思われた。 久しぶりのお米 それから夕飯だ。ホイアンは観光の町。洒落た土産屋やレストラン、カフェが立ち並び、観光客で繁盛している。しかし、そんな店には興味が無いし、第一高すぎて予算が足りない。そこで中心街から少し離れたところにある市場で食べた。こちらは薄暗くて少し汚いが、住民が利用する場所という感じでとても気に入ってしまった。そこでDIA LONというのを食べた。ご飯の上に色々な種類のお肉が乗っていて、肉汁の染みたご飯がとても美味しい。これがたった20.000VDなのだから、とてもレストランで食べる気が起きない。あまりに美味しかったので、おばちゃんに「明日もまた来るよ~」と言って席を立った。おばちゃんは握手をして、「待ってるからね」と言ってくれた。 商人の町 それからBIERE LARUEを買った。お店のおばちゃんがまた面白い。何とか負けさせたくて、「ビールと水を買うから、5.000VD負けて!」というと、「ハァ?何言ってんの笑」と言われるが、それが茶目っ気に溢れていて楽しい。商売を楽しんでいるのだなぁというのが心底伝わってくる喋りだった。バイタクのように「押し売り」ではなく、潔い。買わないなら、それでよい、という感じ。それでお互い条件を出して楽しむのだ。港町ホイアンは流通がよく、昔から商売で栄えてきた場所だというが、まさにそれを味わった。 ベトナムのビール BIERE LARUE は15.000VD、333ビールは20.000VD、TIGERビールは25.000VDとあった。しかしBIERE LARUEでも十二分に美味しい。 <ベトナム|1|2|3|4|5|6|7|8|9|>
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3030.html
この物語は、幻想郷の日常を淡々と描写したものです。過度な期待はしないでください。 原作キャラ崩壊、独自設定、パロディーなどなんでもあり。 以上に留意した上でどうぞ。 パティシエールな小悪魔3 「美味しい! 何ですかこの肉まん?! まるで舌の上でとろけるような感じです!」 一口その肉まんを齧った小悪魔は、そのあまりの柔らかさに驚いた。 明らかに普通のものよりも柔らかく、とろりとした肉汁が溢れそうになっている。 「これは、確かに今まで食べたことがないほど柔らかいわね」 隣で同じように肉まんを食べたパチュリーも、驚いている。 「どうです、中国四千年の味は?」 特製肉まんを賞味する二人に、テーブルの向かいからニコニコしながら声をかけたのは紅美鈴。 紅魔館の門番であり、赤い髪に緑色の中華風衣装を纏った、気を使う程度の力を持つ妖怪である。 ここは紅魔館の門の内側に作られた、門番のための詰所。 美鈴は紅魔館内にも自室を与えられていたのだが、勤務時間中以外も何かと便利なので、この詰所で過ごす事が 多かった。 今日は美鈴にとって、久々の休日であった。 門の外では、代わりの妖精メイドが門番を務めている。 とはいっても、上空を含めた紅魔館の周りには美鈴が気を張り巡らせて、侵入者があった場合にはすぐ判る ようにしていた。 大体、危険な侵入者は殆どが空からやってくる。紅白とか白黒とか。 そういう意味では、外に立っていなくても警備は出来る。 毎日外に立っているのは、紅魔館の示威行為であり、デモンストレーションでもあるのだ。 余談だが、幻想郷の人里では、美鈴の人気は高い。親しみやすい雰囲気の美貌で、紅魔館一のナイスバディー、 その上拳法の達人だが、普段はのんびりとした性格で、礼儀正しく人間にも好意的である。 人里の男どもが勝手にやっている人気投票では、優勝したこともあるくらいだ。そのため、紅魔館には美鈴を 一目拝もうと遠巻きに見に来る里の者や、腕試しと称して殴られに来る者など、様々な人間が現れる。 いつも適当にあしらっているそれらの対応が、危険な侵入者よりよほど多いので、今日はその相手をしなくて いいだけ気楽な様子だった。 閑話休題。 今日のお茶会は、美鈴の招待で、門番詰め所の中の部屋で行われていた。 メニューは、美鈴特製、新作ゆっくりれみりゃの肉まんと、仄かに甘い香りが漂うジャスミンティー。 なんでも、この前小悪魔に貰ったクリーム・ブリュレのお返しに、新作点心の味見をして欲しいとの事だった。 美鈴は非番の日には時々、パチュリーや小悪魔のお茶会に参加し、点心をご馳走する事があるのだ。 「この柔らかさ、まるで高級霜降り肉のような… いや、もっと溶けて無くなる様な儚さ…」 きらきらと目を輝かせて賞賛する小悪魔。 このれみりゃの肉まんは、幸せな味がする。 栄養状態も最高で、思う存分ゆっくりしていたのだろうな、と小悪魔は感じていた。 美鈴は、小悪魔の幸せそうな顔に気を良くして言った。 「そう、そこでこれ、ゆっくりれみりゃの豚トロ饅頭なんて名前でどうでしょう?」 「そうね、鮪のトロは、人肌で脂肪分が溶けるので食すと溶けるように柔らかいと聞くわ。 食べたことはないけど、こんな感じかしら?」 パチュリーはいつか本で読んだ、未だ見ぬ外界の食材へと思いを馳せているようだ。 「食べるたびに熱々の肉汁がぴゅっぴゅっって飛び出してきますよ。とってもジューシィで美味しいです!」 「我等が紅魔館のパティシエール、小悪魔にそこまで褒めてもらえるとは、嬉しいですねえ」 「いえいえ、私のお菓子作りなんかただの趣味ですから。そんなに凝った物は出来ませんし… それにしてもの肉まん、中から肉汁がトロトロと溢れてきて、普通のゆっくりれみりゃの肉まんともぜんぜん 違いますよ、どうやって作ったんですか?」 「それは禁則事項です」 「それって、私の口癖、真似しないで下さいよぅ」 美鈴と小悪魔は、仕える主こそ違え、同じ紅魔館に住む者として仲が良かった。 赤いロングヘアーが共通する二人は、傍目には姉が美鈴、妹が小悪魔という姉妹のような雰囲気だ。 それを眺めてパチュリーは目を細める。 「お正月には、この豚トロ饅頭で飲茶スタイルのパーティーやりましょうか?」 「飲茶スタイルって?」 美鈴の提案に、パチュリーが疑問系で聞き返す。 「飲茶スタイルは、給仕用のワゴンにコンロや鍋を載せて、テーブルのそばで注文に応じて料理をする。 っていう形式の事ですよね? 居ながらにして屋台料理の雰囲気が味わえるという」 小悪魔は知っている範囲で答えた。 それに美鈴が相槌を打つ。 「そうそう、それですよ。 豚トロ饅頭を蒸かす以外に、ゆっくりめーりんを使った刀削麺の実演なんかもやっちゃいますよ? あいつら、面の皮が厚いから丁度良さげだし」 「あ、あの包丁で削って作った麺を、そのまま鍋の中に放り込むのですか? 良いですね、美鈴さんと咲夜さんの競演なんて、見てみたいなあ」 「中身はピリ辛ピザまんだから、坦々麺風スープかな」 もうもうと湯気を上げる大釜の前でナイフを構え、目にも留まらぬスピードでゆっくりめーりんの皮を削る 美鈴と咲夜。 小悪魔はその横で、ピリ辛のスープを作っている… 二人の楽しげな会話を聞くパチュリーの頭の中には、そんなビジョンが鮮明に浮かんだ。 「まあ、館の食堂なら良いけど、図書館ではやらないでね。 これ以上部屋の湿度を上げられたらかなわないわ」 「あー、私も泣きます」 最近特に、かび臭い本の手入れが大変なのだ。 パチュリーの言葉に本来の司書の仕事を思い出した小悪魔は、一転して本当に泣きそうな顔をしている。 それを見た美鈴は、思わず苦笑してしまう。 「はいはい、じゃあ食堂で」 そんなわけで、新作、ゆっくりれみりゃの豚トロ肉まん試食会は好評のうちに終了した。 美鈴は最後まで作り方を教えてくれなかったが、 「この肉まんは、仕込みが肝心でちょっと時間がかかるんです。 作り方は中国四千年の秘儀なんで秘密ですよ。特に咲夜さんには見せられませんからね。ウフフ…」 などと、意味深な事を言っていたのだった。 大図書館に戻った後、小悪魔は蔵書を整理しながら、クリスマスに作るケーキのレシピを考えていた。 (クリスマスにはやっぱり、ブッシュ・ド・ノエルが良いかな? チョコレートクリームが沢山要るから、ゆっくりちぇんを発注しようかな… でも、悪魔がクリスマスを祝うのも変な気もしますが…ケーキくらい良いですよね) パチュリーは中央のテーブルで本を読んでいたが、考え事をしているのか、どこか集中できない様子だった。 小悪魔を見ると、唐突に口を開く。 「美鈴の豚トロ饅頭だけど」 「はい?」 パチュリーの目が、悪戯っぽくきらっと輝く。 「中国四千年の秘密と言われると、是が非でも暴きたくなるわね」 流石、ノーリッジの名前は伊達ではない。 その知識欲は、自身に知らないことがあるのを許せないかのようである。 確かに小悪魔も、気にならないと言ったら嘘になる。 料理人としての好奇心が、あの肉まんの秘密に迫りたいと囁くのだ。 「でも、どうやって探るんですか? 流石に私やパチュリー様が嗅ぎ回ると、目立ちすぎて美鈴さんにばれちゃいますよ?」 「そうね、そこで、これを使ってみようと思うんだけど…」 「むぎゅ…ぎゅ…ぎゅ…ぎゅ…」 「チルノフの冷蔵庫で冷やされていた所為か、妙に顔色が悪くてガタガタ震えてるわね?」 小悪魔はパチュリーの取り出した直径15cmほどの水晶球と、同じく15cmほどのゆっくりぱちゅりーを見ると、 パチュリーのやろうとしている事に合点がいくと同時に、ちょっと残念気味に言った。 「ゆっくりに偵察させる気ですか? まあそれはともかく、その子は使えないと思いますよ」 「どうして?」 「外見は変わってませんけど、中身いじっちゃいましたから。 その子の中身の生クリームを半分抜いて、代わりにコーヒーゼリーを入れてありますから、 多分まともに動けないと思います」 小悪魔はパチュリーの手からゆっくりぱちゅりーを受け取ると、ちょっとシェイクしたり揉んだりした後に、 頭頂部に太目のストローを突き刺した。 「むぎゅっ!」 その瞬間だけ大きく痙攣したゆっくりぱちゅりーだが、それ以外は真っ青な顔でぶるぶると震えるのみだ。 「どうぞ。新しいデザートを試作中だったんです。ちょっと試食してみて頂けますか?」 パチュリーはそれを受け取ると、恐る恐る飲んでみた。 太目のストローを咥えるパチュリーの口に、白と黒のマーブル模様の液体が吸い込まれると、透けるように白く 細い喉がコクコクと微かに上下する。 「んっ、ちょっと喉に絡みつくような感じがするけど、トロっとして美味しいわ、これ!」 そう言うパチュリーは、唇に付いた白い生クリームを舌でペロッと舐めとる。 その光景に小悪魔はにっこり微笑むと、パチュリーに見えないように小さくガッツポーズをした。 「それ、ドロリッチなんとかって名前で、外界で流行っている最新スィーツだそうです。 山の上の神社の巫女さんに教えてもらったんで、試しに作ってみたんですけど」 「ふぅん、外界では不思議なものが流行るのね… それはともかく、あの娘は巫女じゃなくて…」 「まあ良いじゃないですか、青巫女さんのほうがわかり易いですし」 そうこうしているうちに、ゆっくりぱちゅりーは萎んでしわしわの干物のようになってしまう。 「思わず飲み干してしまったわ…どうしましょう」 「とりあえず厨房にストックしてある加工前の子なら居ますが、あんまり期待できないと思いますよ? 加工所で食用に育てられた子は、殆ど体力無いですし…」 「まあ実験だし、いいわ、一匹持ってきてくれない?」 「むきゅぅ…」 そんなわけで小悪魔に持ってこられた、直径15cmほどのゆっくりぱちゅりー。 箱から出され目は覚ましているが、半眼で眠そうな表情をしている。 まあこれは、ゆっくりぱちゅりー種に共通する特徴だが。 パチュリーは水晶球とゆっくりぱちゅりーをテーブルに置くと、何やら呪文を唱え始めた。 水晶球とゆっくりぱちゅりーの上に手をかざすと、それぞれの下に光り輝く魔方陣が出現し、今までうとうと していたゆっくりぱちゅりーが、急に痙攣したように動きを止める。 「むきゅ!」 それと同時に、水晶球にはテーブルの反対側からゆっくりぱちゅりーを覗き込む小悪魔の姿が映し出された。 「えっと、これはこの子の見ている景色。って事ですか?」 水晶球を指差しながら尋ねる小悪魔に、パチュリーは頷く。 「それだけじゃなくて、こちらからその子を自由にコントロールする事が出来るわ。 ゆっくりは構造が単純だから、魔法がよく効くわね」 なるほど、術をかけた相手を、遠隔操作出来る魔法らしい。水晶球はモニター代わりのようだ。 パチュリーが水晶球の上に両手をかざすと、ゆっくりぱちゅりーはきょろきょろと辺りを見回し始めた。 それと同期して、水晶球の景色も左右に動く。 「リンクはOKのようね、行くわよ、ドロリッチ2号!」 「むきゅっ!」 ドロリッチ2号というのはこの子の名前らしい。パチュリーが号令をかけると、ドロリッチ2号は、 ぽよん、ぽよんと軽い音を立てながら跳ねて前進する。 「うっ」 数歩行ったところでドロリッチ2号は急停止し、パチュリーは口に手を当てる。 「どうしたんですか! パチュリー様!?」 「…酔うわね、これ」 水晶球を覗き込んで青ざめるパチュリーを見て、不安になる小悪魔だった。 「大丈夫かなあ、これで…」 結論から言うと、ゆっくりぱちゅりーをリモートコントロールし、美鈴の豚トロ饅頭製作現場をスパイする、 「ドロリッチ計画」は頓挫した。 4機もの精鋭を送り込んだのだが、全て稼動不能という散々な結果に終わったのだ。 2号は気分の悪くなったパチュリーがコントロールを失った間に、小悪魔が止めるより早くテーブルから落下、 3号は階段を昇る途中で同じくコントロールを失い転落、 4号は扉に挟まれ作戦行動不能、 5号は庭に出たところで、うろついていたゆっくりれみりゃに捕食されてしまった。 「全く…、想像以上に…脆弱な種ねえ…、こんなので良く…今まで絶滅しないで…居るわね…」 青ざめた顔で、ぜいぜいと肩で息をして憤るパチュリー。 小悪魔は、ぱちゅりーの操縦で酔ってふらふらしているパチュリーをなだめながら、これ以上食材を無駄に するのは避けたいと思っていた。 「まあ、この子達は天然ものじゃなくて、加工所の養殖ものですから…あぁ、勿体無い…」 「やっぱり、食用のゆっくりを転用するのは無理があるわね」 「そういう問題でも無いような気がしますが…」 「仕方が無いわね、こんな事もあろうかと、密かに用意していたアレを出すわ」 パチュリーは暫く考えた末、ついに虎の子の最終兵器投入を決めたようだ。 「…まだやるんですか?」 何だか目的と手段が入れ替わっているような気もする小悪魔だが、パチュリー様は結構頑固なので、 言い出したら聞かない所がある。 (それに、こんなに楽しそうな主を見るのも久しぶりだ、自分も結構悪戯は好きだし、もう少し付き合おう…) 小悪魔は傍観するだけだと甘く見ていたのだ。その時までは。 パチュリー様が魔法の実験に使う小部屋から、見慣れない一匹のゆっくりを抱えて戻ってきた。 直径15cmほどの饅頭形態に、側頭部に蝙蝠のような羽。遠目にはゆっくりれみりゃの様に見えたが、めーりんの 様な赤い髪。おまけに、細くて黒い尻尾も見える。 (これって、もしかして…) 「こぁ!」 それが鳴いた。 小悪魔はある確信を得たが、あえて尋ねてみた。 「あのぅ、それって…」 「そう、あなたのゆっくり、“ゆっくりこぁ”よ」 「こぁ!」 「やっぱり…でも初めて見ました」 「そうね、だって、私が魔法で作り出したんだもの。 ゆっくりちぇん以上の俊敏性と、れみりゃやふらんより速く飛べる羽と強靭な牙、めーりんより強い皮膚と 赤い髪、もちろん知能も強化してあるし、必殺技も仕込んであるわ。 これが、“私の考えるちょっと強いゆっくり”よ!」 「こぁ!こぁ!」 パチュリーの説明に合わせて、何だか自慢げに鳴いてみせるゆっくりこぁ。 「えー、“さいきょうのゆっくり”じゃないんですか…」 自分で突っ込んでから、そんなのは自分に似合わないな、と思う小悪魔だった。 「でも何で…?」 と言いかける小悪魔を制し、パチュリーが続ける。 「本当はあなたへのクリスマスプレゼントにしようと思ってたんだけど。 あなた、咲夜が“ゆっくりゃざうるす”の話をするの、いつも羨ましそうに聞いてたでしょ? まあ、いつもお世話になってるから、これ位良いかなって。 ちょっと早いけど丁度良いわ、これから実戦投入よ」 「こぁ!」 「パチュリー様…」 照れ隠しなのか、ツンデレ口調で早口のパチュリー様。 本当は、クリスマスの朝にこっそり枕元に置いておくつもりだったのだろう。 アレな理由で先に貰ってしまい、サプライズは無くなったが。いや、今十分驚いた。 逆に、こんなに顔を真っ赤にしてプレゼントを渡してくれるパチュリー様が見られたのだ。 小悪魔は嬉しさで感無量だった。 「悪魔がクリスマスプレゼントなんて、貰っても良いんでしょうか?」 「ここは幻想郷、何でも受け入れる場所でしょ、そんな細かいこと誰も気にしないわ。 でもそうね、渡すタイミング外しちゃったから…お歳暮だとでも思えばいいでしょ?」 気恥ずかしさが増したのか、真っ赤な顔でツンツンした態度のパチュリー。 「ありがとうございます!」 「こぁ!こぁ!」 嬉しさは伝播するのだろう。 小躍りしそうにはしゃぐ小悪魔につられたように、ゆっくりこぁも嬉しそうにしている。 「さあ、感動のご対面のところ悪いけど、あなたには早速その子を操縦してもらうわよ。 私たちには、その子しか残されてないの」 パチュリーの言葉に、我に帰る小悪魔。 「でも私、そんなのコントロールできませんよ?」 水晶球を指差して言う小悪魔に、パチュリーが返す。 「大丈夫よ、私の魔法で、あなたの意識をこの子の中に飛ばすの。 それで、シンクロ率も上がって思ったようにコントロールできるわ」 「それってもしかして、幽体離脱とかいう厄いものでは…?」 何やら危険な香りを感じた小悪魔は、恐る恐る聞いてみる。 「大丈夫よ、危なくなったらすぐに引き戻してあげるわ」 「はぁ…」 あんまり大丈夫じゃないような気もするし、何より折角パチュリー様から貰ったプレゼントを、危険な目には 遭わせたくないと思うが、パチュリー様はやる気だ。 むしろその為に渡されたのだから。 仕方なく覚悟を決める小悪魔だった。 「お願いします…」 「こぁ!」 何故だかやる気満々のゆっくりこぁと、椅子に座る小悪魔。 パチュリーはにっこり笑うと、それぞれの額に手をかざす。 その手前に光り輝く魔方陣が現れると同時に、小悪魔は意識を失い、そのままテーブルに伏してしまう。 次の瞬間、テーブルに伏している自分の姿が見えた。 不思議な光景だな、と小悪魔は思う。 寝ている自分の姿を外から眺めるなんて、めったに出来ることではないだろう。 「シンクロ率は80%以上ね、どう、調子は?」 後ろからパチュリー様の声が聞こえる。 (はい、大丈夫そうです) 「こぁ!」 自分の考えた言葉とは違う鳴き声が発せられた。 やはり、自分がコントロールしているとはいえ、この子はこぁとしか喋れないようだ。 だが、人語を喋れない事と、頭の良さは別である。 小悪魔には、生まれてから今までパチュリー様に育てられた、この子の記憶の断片が感じられた。 パチュリー様は私にばれない様に、苦労してこの子を育てたようだ。 そして、パチュリー様の私への感謝の気持ちと、この子の、育て親であるパチュリー様への感謝の気持ち、 両方が感じられるその記憶の断片は、とても暖かいものだった… (ありがとうございます、パチュリー様) 「こぁ!こぁ!」 「凄いわね、シンクロ率100%よ」 ゆっくりこぁはパチュリー様に向き直ると、感謝の意を込めた挨拶をした。 パチュリー様は、水晶球に表示される数字を見て驚いた様子だが、こちらを見るとにっこりと笑う。 こちらの思いは、言葉にならなくともなんとなく伝わっているのだろう。小悪魔はそう思った。 (今までありがとうございました、行ってきます) 「こぁ!」 パチュリー様に挨拶をして、ゆっくりこぁは飛び立った。 小悪魔は、普段と同じように側頭部の羽を動かすことが出来、あまり違和感を感じることは無かった。 普段から空は飛べるが、本当に羽を使って飛んでいるわけではない。魔力を使って浮き上がっているのだ。 ゆっくりこぁも、よく分からないがそんな不思議な力で飛べるのだろう。 図書館を飛び出したゆっくりこぁは、門番の詰め所を目指した。 ゆっくりれみりゃの肉まんは、詰め所の奥のキッチンで作られたようだ。 秘密があるとすれば、その先だろうと思ったのだ。 「こぁ!」 「うー? うー?!」 紅魔館の庭に出たこぁは、ゆっくりれみりゃを見つけた。 ゆっくりれみりゃもこちらを見つけたようだ。 仲間だと思ったのか、食べ物だと思ったのか、ニコニコしながら近寄ってくる。 だが、こんな所で遊んでいるわけにはいかない。 こぁは、飛行速度を上げた。 その飛行速度は、ゆっくりれみりゃよりずっと速く、その高度はずっと高かった。 「ぅーっ!」 ゆっくりこぁは、今まで籠の中で飼われていた。無論、パチュリーがこっそり育てていたからである。 はじめて見る外の世界は光に溢れ、広く、清々しい空気に包まれている。 外の世界を自由に飛びまわれるって、こんなにも素晴らしいものだったんだ。 こぁの意識を感じ取った小悪魔も、嬉しくなる。そういえばこんなに自由に飛ぶのは、久しぶりだ。 「こぁ!」 そのころ大図書館では、パチュリーが水晶球を見て目を瞠っていた。 「凄い、シンクロ率が150%を超えたわ。 俄かには信じられない値ね…」 無論、危険なことがあれば、意識は引き戻すつもりだ。 傍らでテーブルに伏している小悪魔を、ちらりと見る。 ゆっくりれみりゃを振り切ったこぁは、門番詰め所にたどり着いた。 中に美鈴が居る様子は無い。 幸いにも自室に戻ったのか、出掛けているのか。 この隙に、こぁは詰め所の中へと入り込む。 控え室の奥には洗面所や小さな炊事場があり、簡単な調理が出来るようになっている。 そこにはコンロの上に蒸し器が載っているのが見えた。そこで豚トロまんを蒸しあげたのだろう。 しかし、蒸し器の中は綺麗に片付けられ、周りにもそれらしいものは置いていない。 「こぁ!」 さらに奥の階段を目指す。 こぁの意識が、更に奥にある階段に何かがあると囁くのを感じていた。 上に通じる階段は仮眠室へ。下に通じる階段には、小悪魔は入ったことがない。 (この階段は、地下牢に通じていると聞いたことがあります。この紅魔館は、中世ヨーロッパの城を改装して、 そのまま幻想郷入りしたものだそうですから。 詰め所の地下には、当時の敵の侵入者や不審者を閉じ込めたり、拷問したりする部屋があると…) (ちょっと怖いですが、行ってみよう…) 薄暗い階段に、ちょっとびくびくしているこぁ。 だが、ここで引き返すわけにはいかない。 小悪魔はこぁの意識を宥めながら、先へと進む。 (この先に、美鈴さんの言っていた秘密が?) 地下の扉の奥からは、「う゛う゛う゛…」という、うめき声のようなノイズが漏れてくる。 よほど凄惨な現場が待っているのであろうか?果たして中国四千年の秘儀とは? 「ギギギ…」 体全体を使って扉を押し開けると、そこは奥の牢屋に通じる小部屋の様である。 壁際には、奇怪なオブジェが置かれていた。 壁に固定されているらしい棚のような木の板の上に、ゆっくりれみりゃの頭が置かれている。 その顔は上に向けられ、その口には上から固定された大きな漏斗が差し込まれている。 暗く見難かったので、最初は頭だけのゆっくりれみりゃ、胴なしに見えたが、そうではない。 木の板は前後に分割されており、半円形にくりぬかれた部分に挟まれるようにれみりゃの首が嵌っているのだ。 ピンク色の服を着た胴体は、木の板の下に見える。 そして驚くべきことに、その体はぶくぶくと肥大化し、通常のれみりゃ種より2倍は大きい。 ピンク色の服は、肥え太った胴体ではちきれそうに膨らんで、まるでボンレスハムのようだ。 その丸々と太った足でも、通常のれみりゃよりはるかにふとましい体を支えられないのか、床に座り込むような 形で手足を時折じたばたさせている。 「う゛ぷぅーっ、う゛ぷぅーっ」 弱々しい叫び声も、口に差し込まれた漏斗の所為か、太りすぎた所為なのか、濁音交じりで聞き取りにくい。 (何ですか、これ…でもどこかで見たような?) 小悪魔はこんなに太ったゆっくりれみりゃは見たことがない。 通常の状態では、胴体つきのゆっくりれみりゃはここまで大きくならないのだ。 ゆっくりれみりゃには骨格が無いので、あまり大きくなると自重で潰れて動けなくなる。 今目にしているゆっくりれみりゃは、まさにそんな状態だ。 だが、どこかで見たような気もする。不思議な感覚だった。 と、そのとき部屋のさらに奥にある牢らしき部屋から物音が聞こえた。 こぁは飛び上がって驚き、咄嗟に壁の近くの物置らしき所に飛び込む。 体が小さいから出来た芸当だ。 小悪魔は恐怖に怯えるこぁの意識を宥めつつ、奥の部屋へと意識を集中した。 そこから現れたのは、美鈴その人であった。 ニコニコしながら、ゆっくりれみりゃに話しかける。 「さ、食事の時間ですよ、おぜうさま!」 そして、奥の牢屋らしい部屋からリボン付きの子ゆっくりを5,6匹持ってくると、壁に固定されている ゆっくりれみりゃに近づき、子ゆっくりをごろごろと漏斗に流し込んだ。 「ゆっ、ゆっくりやめてね!」 「れみりゃいやぁー!」 「れいむおいしくないよー!」 「だべだいでぇー!」 叫ぶ子ゆっくりに構わず、美鈴は木の棒で上から子ゆっくりを突き、漏斗の真ん中のれみりゃの口に繋がって いる穴にぐいぐいと押し込んでゆく。 「むぎゅ、やべでっ!」 「いだいいだいだい!押さないでね!ゆっくり押さないでね!」 「ぶぺっ!ぶごっ!」 漏斗の中で潰されながら叫ぶ子ゆっくりたちと、 「ぶぅ゛ーっ!ぶぅ゛ーっ!」 漏斗を咥えさせられ叫び声も上げられず、涙を撒き散らしもだえるれみりゃの頭。 餡子がのどに詰まると呼吸が出来ないのか、その顔は青くなったり赤くなったり忙しい。 その机の下では、ぶくぶくに太った体がじたばたと無駄な足掻きを続けている。 中々にシュールな光景だ。 そのうち、子ゆっくり達は美鈴の手によって、無理やりゆっくりれみりゃの口の中に押し込まれてしまった。 小悪魔は、この光景が何かに似ていると考えていたが、暫くしてそれを思い出す。 (そうだ、フォアグラだ、これ) フォアグラというのは、人為的に太らせたガチョウやアヒルのレバーを使った料理を指す。 このれみりゃと同じように首を固定して、漏斗で無理やり餌を与え続けると、レバーに脂肪が蓄積されて、 いわゆる脂肪肝と同じような状態になるのだ。 それを使ったフォアグラ料理は、脂が乗って軟らかく、世界三大珍味の一つと呼ばれる。 そういえば先程のとろけるような肉まんの食感、それもフォアグラに良く似ている。 このゆっくりれみりゃの仕込みだろう作業も、以前、大図書館の資料で見たことがあるフォアグラの写真に そっくりだった。 先ほどの疑問が解消し、美鈴の作業の秘密が分かって、小悪魔はほっとしていた。 だが、ゆっくりこぁの意識はそうではなかったようだ。 はじめて見る恐ろしい光景、怖そうに見えるお姉さんに怯えてしまい、小悪魔が意識を緩めた弾みで、思わず 泣き声をあげてしまったのだ。 「…こぁ!」 小悪魔がしまったと思うより早く、美鈴がこちらに気付いて振り返る。 「おやぁ? いつの間に逃げ出した子が居るのかな?」 (まずい、逃げなきゃ!) 「こぁ!」 だが、恐怖で萎縮してしまったこぁの体は、震えたまま動かない。 目前まで迫った美鈴は、獲物を前にした豹のように、目を輝かせて微笑んでいた。 「みぃつけた!」 恐怖心で震えるゆっくりこぁの意識は、冷たく、暗い闇となり、小悪魔の意識も覆い隠してしまった… 「はっ、ここは!?」 がばっと起き上がった小悪魔。その肩から椅子の上へ、ぱさりと毛布が落ちる。 「図書館よ、私があなたの意識を引き戻したの。 驚いたわね、シンクロ率が急に200%を超えて、危険な波形が見えたのよ。 一体何があったの? 大丈夫?」 パチュリー様が話しかけてくるが、それどころではなかった。 「すみません、あの子が危ないんです! 話は後で!!」 小悪魔はダッシュで図書館を出る。 階段を駆け上り、中庭へと飛び出す。 そこから、詰め所まで飛んで行く。 勿論、普段は歩いて行くのだが、今はゆっくりこぁが心配で気が気ではなかった。 美鈴さんに秘密を探っていたことがばれても、何とかしなければならない。 このままでは、あの子はゆっくりれみりゃの餌にされてしまうかもしれないのだ。 クリスマスにはちょっと早かったけど、パチュリー様から頂いた大事な子だ。 短い間だったが、暖かい記憶も共有したし、一緒に空も飛んだ。 そんな子を失ってしまったら、パチュリー様に申し訳が無い。 飛行の風圧なのか、それとも別の何かか。小悪魔は目尻から暖かいものが零れるのを感じながら、詰め所へと 飛び込んだ。 「美鈴さん! その子は駄目なんです!!」 詰め所の部屋の中には、美鈴と、テーブルの上で肉まんをパクつくゆっくりこぁが居た。 そのゆっくりとした様子は、すでに打ち解けて仲の良い家族のようだ。 その無事な姿を確認すると、小悪魔はその場でへたり込んでしまう。 「はぁ、良かった…」 「どうしたんですか、そんなに慌てて?」 「こぁ!」 のんびりと声をかけてくる美鈴と、小悪魔を見るなりその胸に飛び込んでくるゆっくりこぁ。 「すみません、この子はパチュリー様から頂いたプレゼントなんです。 美鈴さんが食べちゃったんじゃないかと心配になって…」 小悪魔は、ゆっくりこぁの髪を撫でながら言った。 あえて地下室の事については触れないように。 「この子を見つけたときに、小悪魔の気の流れを感じたんですよ。 だから、多分パチュリー様の差し金であそこに忍び込んだんだと、ピンと来ました。 何より、見たことの無い珍しいゆっくりでしたからね」 やはり小悪魔の感じたとおり、美鈴にはすでに察しがついていたようだ。 「良かった、本当に良かった…」 「こぁ!」 「でも、地下室のアレ、咲夜さんには秘密ですよ。 中庭で増えすぎたゆっくりれみりゃの間引きは任されているとはいえ、アレはショックでしょうから」 笑いながら言う美鈴。 小悪魔も尤もだと頷いて見せた。 「とにかく、この子は多分世界で一匹だけの存在なんです。 私はこの子を育ててみようと思います」 「こぁ!」 「分かりました。 まあ、咲夜さんも“ゆっくりゃザウルス”飼ってるし、私もれみりゃ飼育してますから、何かあったら相談に 乗れると思いますよ?」 そう言う美鈴の言葉を聞いて、この二人は当てにならないだろうなあ、と思う小悪魔だった。 終 by 神父
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1917.html
この物語は、幻想郷の日常を淡々と描写したものです。過度な期待はしないでください。 原作キャラ崩壊、独自設定、パロディーなどなんでもあり。 以上に留意した上でどうぞ。 パティシエールな小悪魔3 「美味しい! 何ですかこの肉まん?! まるで舌の上でとろけるような感じです!」 一口その肉まんを齧った小悪魔は、そのあまりの柔らかさに驚いた。 明らかに普通のものよりも柔らかく、とろりとした肉汁が溢れそうになっている。 「これは、確かに今まで食べたことがないほど柔らかいわね」 隣で同じように肉まんを食べたパチュリーも、驚いている。 「どうです、中国四千年の味は?」 特製肉まんを賞味する二人に、テーブルの向かいからニコニコしながら声をかけたのは紅美鈴。 紅魔館の門番であり、赤い髪に緑色の中華風衣装を纏った、気を使う程度の力を持つ妖怪である。 ここは紅魔館の門の内側に作られた、門番のための詰所。 美鈴は紅魔館内にも自室を与えられていたのだが、勤務時間中以外も何かと便利なので、この詰所で過ごす事が 多かった。 今日は美鈴にとって、久々の休日であった。 門の外では、代わりの妖精メイドが門番を務めている。 とはいっても、上空を含めた紅魔館の周りには美鈴が気を張り巡らせて、侵入者があった場合にはすぐ判る ようにしていた。 大体、危険な侵入者は殆どが空からやってくる。紅白とか白黒とか。 そういう意味では、外に立っていなくても警備は出来る。 毎日外に立っているのは、紅魔館の示威行為であり、デモンストレーションでもあるのだ。 余談だが、幻想郷の人里では、美鈴の人気は高い。親しみやすい雰囲気の美貌で、紅魔館一のナイスバディー、 その上拳法の達人だが、普段はのんびりとした性格で、礼儀正しく人間にも好意的である。 人里の男どもが勝手にやっている人気投票では、優勝したこともあるくらいだ。そのため、紅魔館には美鈴を 一目拝もうと遠巻きに見に来る里の者や、腕試しと称して殴られに来る者など、様々な人間が現れる。 いつも適当にあしらっているそれらの対応が、危険な侵入者よりよほど多いので、今日はその相手をしなくて いいだけ気楽な様子だった。 閑話休題。 今日のお茶会は、美鈴の招待で、門番詰め所の中の部屋で行われていた。 メニューは、美鈴特製、新作ゆっくりれみりゃの肉まんと、仄かに甘い香りが漂うジャスミンティー。 なんでも、この前小悪魔に貰ったクリーム・ブリュレのお返しに、新作点心の味見をして欲しいとの事だった。 美鈴は非番の日には時々、パチュリーや小悪魔のお茶会に参加し、点心をご馳走する事があるのだ。 「この柔らかさ、まるで高級霜降り肉のような… いや、もっと溶けて無くなる様な儚さ…」 きらきらと目を輝かせて賞賛する小悪魔。 このれみりゃの肉まんは、幸せな味がする。 栄養状態も最高で、思う存分ゆっくりしていたのだろうな、と小悪魔は感じていた。 美鈴は、小悪魔の幸せそうな顔に気を良くして言った。 「そう、そこでこれ、ゆっくりれみりゃの豚トロ饅頭なんて名前でどうでしょう?」 「そうね、鮪のトロは、人肌で脂肪分が溶けるので食すと溶けるように柔らかいと聞くわ。 食べたことはないけど、こんな感じかしら?」 パチュリーはいつか本で読んだ、未だ見ぬ外界の食材へと思いを馳せているようだ。 「食べるたびに熱々の肉汁がぴゅっぴゅっって飛び出してきますよ。とってもジューシィで美味しいです!」 「我等が紅魔館のパティシエール、小悪魔にそこまで褒めてもらえるとは、嬉しいですねえ」 「いえいえ、私のお菓子作りなんかただの趣味ですから。そんなに凝った物は出来ませんし… それにしてもの肉まん、中から肉汁がトロトロと溢れてきて、普通のゆっくりれみりゃの肉まんともぜんぜん 違いますよ、どうやって作ったんですか?」 「それは禁則事項です」 「それって、私の口癖、真似しないで下さいよぅ」 美鈴と小悪魔は、仕える主こそ違え、同じ紅魔館に住む者として仲が良かった。 赤いロングヘアーが共通する二人は、傍目には姉が美鈴、妹が小悪魔という姉妹のような雰囲気だ。 それを眺めてパチュリーは目を細める。 「お正月には、この豚トロ饅頭で飲茶スタイルのパーティーやりましょうか?」 「飲茶スタイルって?」 美鈴の提案に、パチュリーが疑問系で聞き返す。 「飲茶スタイルは、給仕用のワゴンにコンロや鍋を載せて、テーブルのそばで注文に応じて料理をする。 っていう形式の事ですよね? 居ながらにして屋台料理の雰囲気が味わえるという」 小悪魔は知っている範囲で答えた。 それに美鈴が相槌を打つ。 「そうそう、それですよ。 豚トロ饅頭を蒸かす以外に、ゆっくりめーりんを使った刀削麺の実演なんかもやっちゃいますよ? あいつら、面の皮が厚いから丁度良さげだし」 「あ、あの包丁で削って作った麺を、そのまま鍋の中に放り込むのですか? 良いですね、美鈴さんと咲夜さんの競演なんて、見てみたいなあ」 「中身はピリ辛ピザまんだから、坦々麺風スープかな」 もうもうと湯気を上げる大釜の前でナイフを構え、目にも留まらぬスピードでゆっくりめーりんの皮を削る 美鈴と咲夜。 小悪魔はその横で、ピリ辛のスープを作っている… 二人の楽しげな会話を聞くパチュリーの頭の中には、そんなビジョンが鮮明に浮かんだ。 「まあ、館の食堂なら良いけど、図書館ではやらないでね。 これ以上部屋の湿度を上げられたらかなわないわ」 「あー、私も泣きます」 最近特に、かび臭い本の手入れが大変なのだ。 パチュリーの言葉に本来の司書の仕事を思い出した小悪魔は、一転して本当に泣きそうな顔をしている。 それを見た美鈴は、思わず苦笑してしまう。 「はいはい、じゃあ食堂で」 そんなわけで、新作、ゆっくりれみりゃの豚トロ肉まん試食会は好評のうちに終了した。 美鈴は最後まで作り方を教えてくれなかったが、 「この肉まんは、仕込みが肝心でちょっと時間がかかるんです。 作り方は中国四千年の秘儀なんで秘密ですよ。特に咲夜さんには見せられませんからね。ウフフ…」 などと、意味深な事を言っていたのだった。 大図書館に戻った後、小悪魔は蔵書を整理しながら、クリスマスに作るケーキのレシピを考えていた。 (クリスマスにはやっぱり、ブッシュ・ド・ノエルが良いかな? チョコレートクリームが沢山要るから、ゆっくりちぇんを発注しようかな… でも、悪魔がクリスマスを祝うのも変な気もしますが…ケーキくらい良いですよね) パチュリーは中央のテーブルで本を読んでいたが、考え事をしているのか、どこか集中できない様子だった。 小悪魔を見ると、唐突に口を開く。 「美鈴の豚トロ饅頭だけど」 「はい?」 パチュリーの目が、悪戯っぽくきらっと輝く。 「中国四千年の秘密と言われると、是が非でも暴きたくなるわね」 流石、ノーリッジの名前は伊達ではない。 その知識欲は、自身に知らないことがあるのを許せないかのようである。 確かに小悪魔も、気にならないと言ったら嘘になる。 料理人としての好奇心が、あの肉まんの秘密に迫りたいと囁くのだ。 「でも、どうやって探るんですか? 流石に私やパチュリー様が嗅ぎ回ると、目立ちすぎて美鈴さんにばれちゃいますよ?」 「そうね、そこで、これを使ってみようと思うんだけど…」 「むぎゅ…ぎゅ…ぎゅ…ぎゅ…」 「チルノフの冷蔵庫で冷やされていた所為か、妙に顔色が悪くてガタガタ震えてるわね?」 小悪魔はパチュリーの取り出した直径15cmほどの水晶球と、同じく15cmほどのゆっくりぱちゅりーを見ると、 パチュリーのやろうとしている事に合点がいくと同時に、ちょっと残念気味に言った。 「ゆっくりに偵察させる気ですか? まあそれはともかく、その子は使えないと思いますよ」 「どうして?」 「外見は変わってませんけど、中身いじっちゃいましたから。 その子の中身の生クリームを半分抜いて、代わりにコーヒーゼリーを入れてありますから、 多分まともに動けないと思います」 小悪魔はパチュリーの手からゆっくりぱちゅりーを受け取ると、ちょっとシェイクしたり揉んだりした後に、 頭頂部に太目のストローを突き刺した。 「むぎゅっ!」 その瞬間だけ大きく痙攣したゆっくりぱちゅりーだが、それ以外は真っ青な顔でぶるぶると震えるのみだ。 「どうぞ。新しいデザートを試作中だったんです。ちょっと試食してみて頂けますか?」 パチュリーはそれを受け取ると、恐る恐る飲んでみた。 太目のストローを咥えるパチュリーの口に、白と黒のマーブル模様の液体が吸い込まれると、透けるように白く 細い喉がコクコクと微かに上下する。 「んっ、ちょっと喉に絡みつくような感じがするけど、トロっとして美味しいわ、これ!」 そう言うパチュリーは、唇に付いた白い生クリームを舌でペロッと舐めとる。 その光景に小悪魔はにっこり微笑むと、パチュリーに見えないように小さくガッツポーズをした。 「それ、ドロリッチなんとかって名前で、外界で流行っている最新スィーツだそうです。 山の上の神社の巫女さんに教えてもらったんで、試しに作ってみたんですけど」 「ふぅん、外界では不思議なものが流行るのね… それはともかく、あの娘は巫女じゃなくて…」 「まあ良いじゃないですか、青巫女さんのほうがわかり易いですし」 そうこうしているうちに、ゆっくりぱちゅりーは萎んでしわしわの干物のようになってしまう。 「思わず飲み干してしまったわ…どうしましょう」 「とりあえず厨房にストックしてある加工前の子なら居ますが、あんまり期待できないと思いますよ? 加工所で食用に育てられた子は、殆ど体力無いですし…」 「まあ実験だし、いいわ、一匹持ってきてくれない?」 「むきゅぅ…」 そんなわけで小悪魔に持ってこられた、直径15cmほどのゆっくりぱちゅりー。 箱から出され目は覚ましているが、半眼で眠そうな表情をしている。 まあこれは、ゆっくりぱちゅりー種に共通する特徴だが。 パチュリーは水晶球とゆっくりぱちゅりーをテーブルに置くと、何やら呪文を唱え始めた。 水晶球とゆっくりぱちゅりーの上に手をかざすと、それぞれの下に光り輝く魔方陣が出現し、今までうとうと していたゆっくりぱちゅりーが、急に痙攣したように動きを止める。 「むきゅ!」 それと同時に、水晶球にはテーブルの反対側からゆっくりぱちゅりーを覗き込む小悪魔の姿が映し出された。 「えっと、これはこの子の見ている景色。って事ですか?」 水晶球を指差しながら尋ねる小悪魔に、パチュリーは頷く。 「それだけじゃなくて、こちらからその子を自由にコントロールする事が出来るわ。 ゆっくりは構造が単純だから、魔法がよく効くわね」 なるほど、術をかけた相手を、遠隔操作出来る魔法らしい。水晶球はモニター代わりのようだ。 パチュリーが水晶球の上に両手をかざすと、ゆっくりぱちゅりーはきょろきょろと辺りを見回し始めた。 それと同期して、水晶球の景色も左右に動く。 「リンクはOKのようね、行くわよ、ドロリッチ2号!」 「むきゅっ!」 ドロリッチ2号というのはこの子の名前らしい。パチュリーが号令をかけると、ドロリッチ2号は、 ぽよん、ぽよんと軽い音を立てながら跳ねて前進する。 「うっ」 数歩行ったところでドロリッチ2号は急停止し、パチュリーは口に手を当てる。 「どうしたんですか! パチュリー様!?」 「…酔うわね、これ」 水晶球を覗き込んで青ざめるパチュリーを見て、不安になる小悪魔だった。 「大丈夫かなあ、これで…」 結論から言うと、ゆっくりぱちゅりーをリモートコントロールし、美鈴の豚トロ饅頭製作現場をスパイする、 「ドロリッチ計画」は頓挫した。 4機もの精鋭を送り込んだのだが、全て稼動不能という散々な結果に終わったのだ。 2号は気分の悪くなったパチュリーがコントロールを失った間に、小悪魔が止めるより早くテーブルから落下、 3号は階段を昇る途中で同じくコントロールを失い転落、 4号は扉に挟まれ作戦行動不能、 5号は庭に出たところで、うろついていたゆっくりれみりゃに捕食されてしまった。 「全く…、想像以上に…脆弱な種ねえ…、こんなので良く…今まで絶滅しないで…居るわね…」 青ざめた顔で、ぜいぜいと肩で息をして憤るパチュリー。 小悪魔は、ぱちゅりーの操縦で酔ってふらふらしているパチュリーをなだめながら、これ以上食材を無駄に するのは避けたいと思っていた。 「まあ、この子達は天然ものじゃなくて、加工所の養殖ものですから…あぁ、勿体無い…」 「やっぱり、食用のゆっくりを転用するのは無理があるわね」 「そういう問題でも無いような気がしますが…」 「仕方が無いわね、こんな事もあろうかと、密かに用意していたアレを出すわ」 パチュリーは暫く考えた末、ついに虎の子の最終兵器投入を決めたようだ。 「…まだやるんですか?」 何だか目的と手段が入れ替わっているような気もする小悪魔だが、パチュリー様は結構頑固なので、 言い出したら聞かない所がある。 (それに、こんなに楽しそうな主を見るのも久しぶりだ、自分も結構悪戯は好きだし、もう少し付き合おう…) 小悪魔は傍観するだけだと甘く見ていたのだ。その時までは。 パチュリー様が魔法の実験に使う小部屋から、見慣れない一匹のゆっくりを抱えて戻ってきた。 直径15cmほどの饅頭形態に、側頭部に蝙蝠のような羽。遠目にはゆっくりれみりゃの様に見えたが、めーりんの 様な赤い髪。おまけに、細くて黒い尻尾も見える。 (これって、もしかして…) 「こぁ!」 それが鳴いた。 小悪魔はある確信を得たが、あえて尋ねてみた。 「あのぅ、それって…」 「そう、あなたのゆっくり、“ゆっくりこぁ”よ」 「こぁ!」 「やっぱり…でも初めて見ました」 「そうね、だって、私が魔法で作り出したんだもの。 ゆっくりちぇん以上の俊敏性と、れみりゃやふらんより速く飛べる羽と強靭な牙、めーりんより強い皮膚と 赤い髪、もちろん知能も強化してあるし、必殺技も仕込んであるわ。 これが、“私の考えるちょっと強いゆっくり”よ!」 「こぁ!こぁ!」 パチュリーの説明に合わせて、何だか自慢げに鳴いてみせるゆっくりこぁ。 「えー、“さいきょうのゆっくり”じゃないんですか…」 自分で突っ込んでから、そんなのは自分に似合わないな、と思う小悪魔だった。 「でも何で…?」 と言いかける小悪魔を制し、パチュリーが続ける。 「本当はあなたへのクリスマスプレゼントにしようと思ってたんだけど。 あなた、咲夜が“ゆっくりゃざうるす”の話をするの、いつも羨ましそうに聞いてたでしょ? まあ、いつもお世話になってるから、これ位良いかなって。 ちょっと早いけど丁度良いわ、これから実戦投入よ」 「こぁ!」 「パチュリー様…」 照れ隠しなのか、ツンデレ口調で早口のパチュリー様。 本当は、クリスマスの朝にこっそり枕元に置いておくつもりだったのだろう。 アレな理由で先に貰ってしまい、サプライズは無くなったが。いや、今十分驚いた。 逆に、こんなに顔を真っ赤にしてプレゼントを渡してくれるパチュリー様が見られたのだ。 小悪魔は嬉しさで感無量だった。 「悪魔がクリスマスプレゼントなんて、貰っても良いんでしょうか?」 「ここは幻想郷、何でも受け入れる場所でしょ、そんな細かいこと誰も気にしないわ。 でもそうね、渡すタイミング外しちゃったから…お歳暮だとでも思えばいいでしょ?」 気恥ずかしさが増したのか、真っ赤な顔でツンツンした態度のパチュリー。 「ありがとうございます!」 「こぁ!こぁ!」 嬉しさは伝播するのだろう。 小躍りしそうにはしゃぐ小悪魔につられたように、ゆっくりこぁも嬉しそうにしている。 「さあ、感動のご対面のところ悪いけど、あなたには早速その子を操縦してもらうわよ。 私たちには、その子しか残されてないの」 パチュリーの言葉に、我に帰る小悪魔。 「でも私、そんなのコントロールできませんよ?」 水晶球を指差して言う小悪魔に、パチュリーが返す。 「大丈夫よ、私の魔法で、あなたの意識をこの子の中に飛ばすの。 それで、シンクロ率も上がって思ったようにコントロールできるわ」 「それってもしかして、幽体離脱とかいう厄いものでは…?」 何やら危険な香りを感じた小悪魔は、恐る恐る聞いてみる。 「大丈夫よ、危なくなったらすぐに引き戻してあげるわ」 「はぁ…」 あんまり大丈夫じゃないような気もするし、何より折角パチュリー様から貰ったプレゼントを、危険な目には 遭わせたくないと思うが、パチュリー様はやる気だ。 むしろその為に渡されたのだから。 仕方なく覚悟を決める小悪魔だった。 「お願いします…」 「こぁ!」 何故だかやる気満々のゆっくりこぁと、椅子に座る小悪魔。 パチュリーはにっこり笑うと、それぞれの額に手をかざす。 その手前に光り輝く魔方陣が現れると同時に、小悪魔は意識を失い、そのままテーブルに伏してしまう。 次の瞬間、テーブルに伏している自分の姿が見えた。 不思議な光景だな、と小悪魔は思う。 寝ている自分の姿を外から眺めるなんて、めったに出来ることではないだろう。 「シンクロ率は80%以上ね、どう、調子は?」 後ろからパチュリー様の声が聞こえる。 (はい、大丈夫そうです) 「こぁ!」 自分の考えた言葉とは違う鳴き声が発せられた。 やはり、自分がコントロールしているとはいえ、この子はこぁとしか喋れないようだ。 だが、人語を喋れない事と、頭の良さは別である。 小悪魔には、生まれてから今までパチュリー様に育てられた、この子の記憶の断片が感じられた。 パチュリー様は私にばれない様に、苦労してこの子を育てたようだ。 そして、パチュリー様の私への感謝の気持ちと、この子の、育て親であるパチュリー様への感謝の気持ち、 両方が感じられるその記憶の断片は、とても暖かいものだった… (ありがとうございます、パチュリー様) 「こぁ!こぁ!」 「凄いわね、シンクロ率100%よ」 ゆっくりこぁはパチュリー様に向き直ると、感謝の意を込めた挨拶をした。 パチュリー様は、水晶球に表示される数字を見て驚いた様子だが、こちらを見るとにっこりと笑う。 こちらの思いは、言葉にならなくともなんとなく伝わっているのだろう。小悪魔はそう思った。 (今までありがとうございました、行ってきます) 「こぁ!」 パチュリー様に挨拶をして、ゆっくりこぁは飛び立った。 小悪魔は、普段と同じように側頭部の羽を動かすことが出来、あまり違和感を感じることは無かった。 普段から空は飛べるが、本当に羽を使って飛んでいるわけではない。魔力を使って浮き上がっているのだ。 ゆっくりこぁも、よく分からないがそんな不思議な力で飛べるのだろう。 図書館を飛び出したゆっくりこぁは、門番の詰め所を目指した。 ゆっくりれみりゃの肉まんは、詰め所の奥のキッチンで作られたようだ。 秘密があるとすれば、その先だろうと思ったのだ。 「こぁ!」 「うー? うー?!」 紅魔館の庭に出たこぁは、ゆっくりれみりゃを見つけた。 ゆっくりれみりゃもこちらを見つけたようだ。 仲間だと思ったのか、食べ物だと思ったのか、ニコニコしながら近寄ってくる。 だが、こんな所で遊んでいるわけにはいかない。 こぁは、飛行速度を上げた。 その飛行速度は、ゆっくりれみりゃよりずっと速く、その高度はずっと高かった。 「ぅーっ!」 ゆっくりこぁは、今まで籠の中で飼われていた。無論、パチュリーがこっそり育てていたからである。 はじめて見る外の世界は光に溢れ、広く、清々しい空気に包まれている。 外の世界を自由に飛びまわれるって、こんなにも素晴らしいものだったんだ。 こぁの意識を感じ取った小悪魔も、嬉しくなる。そういえばこんなに自由に飛ぶのは、久しぶりだ。 「こぁ!」 そのころ大図書館では、パチュリーが水晶球を見て目を瞠っていた。 「凄い、シンクロ率が150%を超えたわ。 俄かには信じられない値ね…」 無論、危険なことがあれば、意識は引き戻すつもりだ。 傍らでテーブルに伏している小悪魔を、ちらりと見る。 ゆっくりれみりゃを振り切ったこぁは、門番詰め所にたどり着いた。 中に美鈴が居る様子は無い。 幸いにも自室に戻ったのか、出掛けているのか。 この隙に、こぁは詰め所の中へと入り込む。 控え室の奥には洗面所や小さな炊事場があり、簡単な調理が出来るようになっている。 そこにはコンロの上に蒸し器が載っているのが見えた。そこで豚トロまんを蒸しあげたのだろう。 しかし、蒸し器の中は綺麗に片付けられ、周りにもそれらしいものは置いていない。 「こぁ!」 さらに奥の階段を目指す。 こぁの意識が、更に奥にある階段に何かがあると囁くのを感じていた。 上に通じる階段は仮眠室へ。下に通じる階段には、小悪魔は入ったことがない。 (この階段は、地下牢に通じていると聞いたことがあります。この紅魔館は、中世ヨーロッパの城を改装して、 そのまま幻想郷入りしたものだそうですから。 詰め所の地下には、当時の敵の侵入者や不審者を閉じ込めたり、拷問したりする部屋があると…) (ちょっと怖いですが、行ってみよう…) 薄暗い階段に、ちょっとびくびくしているこぁ。 だが、ここで引き返すわけにはいかない。 小悪魔はこぁの意識を宥めながら、先へと進む。 (この先に、美鈴さんの言っていた秘密が?) 地下の扉の奥からは、「う゛う゛う゛…」という、うめき声のようなノイズが漏れてくる。 よほど凄惨な現場が待っているのであろうか?果たして中国四千年の秘儀とは? 「ギギギ…」 体全体を使って扉を押し開けると、そこは奥の牢屋に通じる小部屋の様である。 壁際には、奇怪なオブジェが置かれていた。 壁に固定されているらしい棚のような木の板の上に、ゆっくりれみりゃの頭が置かれている。 その顔は上に向けられ、その口には上から固定された大きな漏斗が差し込まれている。 暗く見難かったので、最初は頭だけのゆっくりれみりゃ、胴なしに見えたが、そうではない。 木の板は前後に分割されており、半円形にくりぬかれた部分に挟まれるようにれみりゃの首が嵌っているのだ。 ピンク色の服を着た胴体は、木の板の下に見える。 そして驚くべきことに、その体はぶくぶくと肥大化し、通常のれみりゃ種より2倍は大きい。 ピンク色の服は、肥え太った胴体ではちきれそうに膨らんで、まるでボンレスハムのようだ。 その丸々と太った足でも、通常のれみりゃよりはるかにふとましい体を支えられないのか、床に座り込むような 形で手足を時折じたばたさせている。 「う゛ぷぅーっ、う゛ぷぅーっ」 弱々しい叫び声も、口に差し込まれた漏斗の所為か、太りすぎた所為なのか、濁音交じりで聞き取りにくい。 (何ですか、これ…でもどこかで見たような?) 小悪魔はこんなに太ったゆっくりれみりゃは見たことがない。 通常の状態では、胴体つきのゆっくりれみりゃはここまで大きくならないのだ。 ゆっくりれみりゃには骨格が無いので、あまり大きくなると自重で潰れて動けなくなる。 今目にしているゆっくりれみりゃは、まさにそんな状態だ。 だが、どこかで見たような気もする。不思議な感覚だった。 と、そのとき部屋のさらに奥にある牢らしき部屋から物音が聞こえた。 こぁは飛び上がって驚き、咄嗟に壁の近くの物置らしき所に飛び込む。 体が小さいから出来た芸当だ。 小悪魔は恐怖に怯えるこぁの意識を宥めつつ、奥の部屋へと意識を集中した。 そこから現れたのは、美鈴その人であった。 ニコニコしながら、ゆっくりれみりゃに話しかける。 「さ、食事の時間ですよ、おぜうさま!」 そして、奥の牢屋らしい部屋からリボン付きの子ゆっくりを5,6匹持ってくると、壁に固定されている ゆっくりれみりゃに近づき、子ゆっくりをごろごろと漏斗に流し込んだ。 「ゆっ、ゆっくりやめてね!」 「れみりゃいやぁー!」 「れいむおいしくないよー!」 「だべだいでぇー!」 叫ぶ子ゆっくりに構わず、美鈴は木の棒で上から子ゆっくりを突き、漏斗の真ん中のれみりゃの口に繋がって いる穴にぐいぐいと押し込んでゆく。 「むぎゅ、やべでっ!」 「いだいいだいだい!押さないでね!ゆっくり押さないでね!」 「ぶぺっ!ぶごっ!」 漏斗の中で潰されながら叫ぶ子ゆっくりたちと、 「ぶぅ゛ーっ!ぶぅ゛ーっ!」 漏斗を咥えさせられ叫び声も上げられず、涙を撒き散らしもだえるれみりゃの頭。 餡子がのどに詰まると呼吸が出来ないのか、その顔は青くなったり赤くなったり忙しい。 その机の下では、ぶくぶくに太った体がじたばたと無駄な足掻きを続けている。 中々にシュールな光景だ。 そのうち、子ゆっくり達は美鈴の手によって、無理やりゆっくりれみりゃの口の中に押し込まれてしまった。 小悪魔は、この光景が何かに似ていると考えていたが、暫くしてそれを思い出す。 (そうだ、フォアグラだ、これ) フォアグラというのは、人為的に太らせたガチョウやアヒルのレバーを使った料理を指す。 このれみりゃと同じように首を固定して、漏斗で無理やり餌を与え続けると、レバーに脂肪が蓄積されて、 いわゆる脂肪肝と同じような状態になるのだ。 それを使ったフォアグラ料理は、脂が乗って軟らかく、世界三大珍味の一つと呼ばれる。 そういえば先程のとろけるような肉まんの食感、それもフォアグラに良く似ている。 このゆっくりれみりゃの仕込みだろう作業も、以前、大図書館の資料で見たことがあるフォアグラの写真に そっくりだった。 先ほどの疑問が解消し、美鈴の作業の秘密が分かって、小悪魔はほっとしていた。 だが、ゆっくりこぁの意識はそうではなかったようだ。 はじめて見る恐ろしい光景、怖そうに見えるお姉さんに怯えてしまい、小悪魔が意識を緩めた弾みで、思わず 泣き声をあげてしまったのだ。 「…こぁ!」 小悪魔がしまったと思うより早く、美鈴がこちらに気付いて振り返る。 「おやぁ? いつの間に逃げ出した子が居るのかな?」 (まずい、逃げなきゃ!) 「こぁ!」 だが、恐怖で萎縮してしまったこぁの体は、震えたまま動かない。 目前まで迫った美鈴は、獲物を前にした豹のように、目を輝かせて微笑んでいた。 「みぃつけた!」 恐怖心で震えるゆっくりこぁの意識は、冷たく、暗い闇となり、小悪魔の意識も覆い隠してしまった… 「はっ、ここは!?」 がばっと起き上がった小悪魔。その肩から椅子の上へ、ぱさりと毛布が落ちる。 「図書館よ、私があなたの意識を引き戻したの。 驚いたわね、シンクロ率が急に200%を超えて、危険な波形が見えたのよ。 一体何があったの? 大丈夫?」 パチュリー様が話しかけてくるが、それどころではなかった。 「すみません、あの子が危ないんです! 話は後で!!」 小悪魔はダッシュで図書館を出る。 階段を駆け上り、中庭へと飛び出す。 そこから、詰め所まで飛んで行く。 勿論、普段は歩いて行くのだが、今はゆっくりこぁが心配で気が気ではなかった。 美鈴さんに秘密を探っていたことがばれても、何とかしなければならない。 このままでは、あの子はゆっくりれみりゃの餌にされてしまうかもしれないのだ。 クリスマスにはちょっと早かったけど、パチュリー様から頂いた大事な子だ。 短い間だったが、暖かい記憶も共有したし、一緒に空も飛んだ。 そんな子を失ってしまったら、パチュリー様に申し訳が無い。 飛行の風圧なのか、それとも別の何かか。小悪魔は目尻から暖かいものが零れるのを感じながら、詰め所へと 飛び込んだ。 「美鈴さん! その子は駄目なんです!!」 詰め所の部屋の中には、美鈴と、テーブルの上で肉まんをパクつくゆっくりこぁが居た。 そのゆっくりとした様子は、すでに打ち解けて仲の良い家族のようだ。 その無事な姿を確認すると、小悪魔はその場でへたり込んでしまう。 「はぁ、良かった…」 「どうしたんですか、そんなに慌てて?」 「こぁ!」 のんびりと声をかけてくる美鈴と、小悪魔を見るなりその胸に飛び込んでくるゆっくりこぁ。 「すみません、この子はパチュリー様から頂いたプレゼントなんです。 美鈴さんが食べちゃったんじゃないかと心配になって…」 小悪魔は、ゆっくりこぁの髪を撫でながら言った。 あえて地下室の事については触れないように。 「この子を見つけたときに、小悪魔の気の流れを感じたんですよ。 だから、多分パチュリー様の差し金であそこに忍び込んだんだと、ピンと来ました。 何より、見たことの無い珍しいゆっくりでしたからね」 やはり小悪魔の感じたとおり、美鈴にはすでに察しがついていたようだ。 「良かった、本当に良かった…」 「こぁ!」 「でも、地下室のアレ、咲夜さんには秘密ですよ。 中庭で増えすぎたゆっくりれみりゃの間引きは任されているとはいえ、アレはショックでしょうから」 笑いながら言う美鈴。 小悪魔も尤もだと頷いて見せた。 「とにかく、この子は多分世界で一匹だけの存在なんです。 私はこの子を育ててみようと思います」 「こぁ!」 「分かりました。 まあ、咲夜さんも“ゆっくりゃザウルス”飼ってるし、私もれみりゃ飼育してますから、何かあったら相談に 乗れると思いますよ?」 そう言う美鈴の言葉を聞いて、この二人は当てにならないだろうなあ、と思う小悪魔だった。 終 by 神父