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魔法少女たちの聖杯戦争@wikiへようこそ 当サイトは「魔法少女たちの聖杯戦争」という二次創作作品のまとめサイトです。 企画性質上、キャラクター同士の殺し合いや、残酷な描写を含む場合があります。また原作設定の改変やオリ設定など、様々な創作要素が絡まってくることが予想されますので、そちらもどうぞご了承ください。 まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 編集モード・構文一覧表 @wikiの設定・管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください アットウィキモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み ワープロモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン一覧 @wikiかんたんプラグイン入力サポート まとめサイト作成支援ツール その他お勧めサービスについて 2ch型の無料掲示板は@chsをご利用ください フォーラム型の無料掲示板は@bbをご利用ください その他の無料掲示板は@bbsをご利用ください バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
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暗いところで待ち合わせ ◆EAUCq9p8Q. ☆ 蜂屋あい まるで、凄惨さという概念が見た夢のような光景だった。 荒廃した遊園地。崩壊し、打ち捨てられた遊具。回転木馬が行き交っていた空は、主を失い打ち捨てられた様々な車が並んで浮かんでいる。 昼間見た、ほんのり血なまぐさいメルヘンチックな遊園地とは程遠い、シュールさすら感じる空間だった。 目線を下ろせば、車から失われた主たちが虚ろな目をしてうろついている。 あいの目を引いたのは、その顔ぶれだ。 今まで見てきた彼女の『オトモダチ』には含まれていない顔ぶればかり。 見たことある顔を見つけられないのは、あいの注意力不足というわけではないはずだ。 もぞもぞとポケットの中で何かが蠢く。取り出してみれば、預かったトランプがうねうねと身を捩っていた。 紙札の中でにこやかに微笑んでいたクイーンが、紙の中から身を乗り出し、遊園地へと飛び出す。 駆けていった先に居るのは、クイーンの本体にしてこの遊園地の女王様。キャスター・アリス。 「あいちゃん!」 振り向いた女王様は、遊園地同様ひどい有様だった。 ひときわ目を引くのは左半身。肩から先が消えている。 アリスが大好きなおふざけや手品の類じゃないことは、無理やりちぎられたようにほつれている青いワンピースと、白いを通り越して蝋人形の域である血色を見れば分かる。 答え合わせはきっとこうだ。「戦闘」。そして「辛勝」、あるいは「惜敗と逃走」。 あいの居ない間にアリスはちょっとした遊び心から何者かを陣地に呼び込み、戦った。 でも、火遊びが過ぎて、陣地を打ち壊され、左肩から先を食い千切られ、それでも生き延び、あいと再会した。 「ごめんね、あいちゃん。私……」 雨に濡れた子犬みたいな顔で、アリスがあいを見つめる。 だからあいは、当然、アリスにこう言った。 「がんばったんだね」 ただ、木之本桜との時間を守ってくれた自身のアリスを抱きしめ、くしゃくしゃなままの髪の毛ごと彼女の頭を撫でる。 あいの体に回されるアリスの右手。心だけなら、きっと、アリスはあいを両手で抱きしめている。 「ありがとう。わたしの時間を守ってくれて。 おかげでわたしは、さくらちゃんととってもなかよくなれたよ」 偽りのない言葉。偽りのない感謝。 生前あるがままの生活を続けていた生かされる死体たちを失い。 儀式の贄になり冷たい土の下に封じられていた死体たちを失い。 魅了術によって洗脳され自我を持たない生きた死体たちを失い。 それでもアリスはくれたから。あいの望むだけの時間と、あいの望むだけの結果を。 仮にアリスが負けていたらたどり着けなかった世界に、あいとアリスはたどり着いた。 仮にアリスが負けていたらたどり着けなかった明日には、木之本桜が微笑んでいる。素敵な色の炎を瞬かせながら、あいの横で微笑んでいる。 聖杯戦争に勝つとか、負けるとか、万能の願望器を得るとか、そういう難しいことは関係ない。 アリスはやんちゃがすぎるけど、それでもちゃんとあいの夢を守ってくれた。 それだけで、十分だ。 「ただいま。アリスちゃん」 「お帰りなさい、あいちゃん!」 見つめ合い、微笑み合う。 溢れるような笑顔だけが、遊園地に相応しく、あの時から唯一変わらないものだった。 ☆ 「と、いうことで」 突然の割り込みは、いつだって彼女の十八番だった。 「お久しぶりね、お嬢さん。私の用意した逢瀬の時間は刺激的だったかしら」 髪型が変わる。ストレートのロングヘアからおでこを丸出しにしたオールバックへ。 「この状況についてはあたしの方から説明したほうが早そうだかんな」 髪型が変わる。オールバックから、ボサボサの野生児ヘアへ。 「アイサツから始まってグワーンでジャバーンでバリーンでギャリギャリガブガブでグワングワンのサヨナラーッ! あとは流れで、よっといでって感じ!!」 身振り、手振り、髪型が変わる。ポニーテール、みつあみ、おさげ、夜会巻き、ゆるふわウェーブヘア。 メガネをかけたり、ヘアピンを付けたり、出っ歯になったり、そばかすをちらしたり、劇画調になったり。 怒り、悲しみ、喜び、焦り、間抜け、困惑、見下し、ごますり、下心、切り替わっていくいろいろな感情。 でも、感情に合わせて燃えるはずの炎はいっさいぶれず、ただの真っ黒が広がるだけ。 「で、今に至るってわけ。分かった?」 「あんまり」 「そんなもんだよ、人生なんて!」 最後はやっぱりおなじみの、ツインテール。 百面相の向こう側からようやく現れた、最大にして最後の一人。 「いらっしゃい、盾子ちゃん」 「お邪魔してるよ、あいちゃん」 こともなげに空飛ぶ車に飛び乗って、ボンネットでセクシーに足を組む少女。 桜とは別の意味であいの興味を引いてやまない先輩・江ノ島盾子は、車から飛び降り、片膝をついて着地し、土煙の向こうから当然のようにガーデンテーブルのセットをあいの目の前にセットした。 「マジシャンみたいですね」 「種も仕掛けもありきたりなもの……奇跡の術なんて本当はどこにもないのです……」 あいの素直な感動に、自嘲するように呟きながらティーセットを並べる。 客人が振る舞うお茶の山が少しおかしくて笑うと、江ノ島盾子もまた笑った。 草木も眠る丑三つ時、二人の少女の内緒のお茶会が始まった。 ☆ 言葉足らずなアリスの説明と、断片的な江ノ島盾子の説明をつなぎ合わせると、あいの見ていない時間のあらすじが見えてきた。 白坂小梅とジェノサイドというサーヴァントの襲撃。(両者とも脱落済みとのこと) 襲撃によって崩壊したアリスの王国。 だが、死神様事件のために見張りに訪れた小学校教諭や、ジェノサイドによってみじん切りにされた生きた死体が帰らぬために様子を見に来た保護者や。 肝試しをしにきたチーマーや、死神様にお願いをしにきた子どもたち。通報を受けて駆けつけた警察官。 そういう人たちをオトモダチにして、今まさに復興の最中らしい。 警察官をオトモダチにするのは危険が伴うかと思ったが、小学校にも放っていた生きた屍にして「何事もない」として送り返したそうだ。 しばらくは、バレずに済むだろう。 「そ。しばらくは、ね」 江ノ島盾子が口を開く。 「それで十分でしょ?」 「十分って?」 「べぇつに、ハナからケツまでボロ出さずに居んでもえっぺってこっさなぁ」 大地を蹴ってガーデンチェアーを漕ぐ。安楽椅子みたいに揺れながら、まんまるメガネをかけて続ける。 「だってあい氏、聖杯戦争の勝ち抜きなんぞに興味ナッシングでござ候」 メガネをクイクイ持ち上げながら、若干早口で話し、メガネを投げ捨て本題に入る。 「私様もそうなのです。強烈電源でギンギラ輝く眩しい奇跡の聖杯よりも、木漏れ日のようなありふれた絶望を望んでいる。 そして、聖杯なんかに望む前に欲しいものに向かって走ってるし、聖杯なんかに頼らなくても欲しいものは手に入れられる。 だから、極論、聖杯戦争なんて知ったこっちゃない」 言い切られる。 返す言葉は必要ない。言われてみればそのとおりだと思ったから。 あいにとって現状の聖杯戦争は、桜の心の炎のゆらめきを楽しむためだけの環境装置でしかない。 仮に聖杯戦争が起こってなかったとしても、手を尽くして桜を手中に収め、その色を楽しむ自分が居たことは想像に難くない。 聖杯戦争が始まる前から行っていた死神様の儀式。あれでも十分満足出来ていた。 あれこそ、聖杯戦争とは無関係な、NPCの暗い感情が土を掘り抜いたオケラみたいにモゾモゾ出てきた結果だ。 あいにとって、聖杯戦争とはなにか。あってもなくても同じもの。あると選択肢が増えるけど、なくても困らないもの。 あいの知らないところでボロボロになってしまったアリス。彼女を労えるのは、あいが勝ちを望んでいないから。 聖杯戦争に投げ出された蜂屋あいという放物線の着地点は、聖杯にはなくて、あいの心ひとつで決まる場所にあるから。 「だから」 江ノ島盾子は笑っている。 真っ黒な闇の中で、ただ、笑っている。 聖杯戦争すら関係ない、単なる趣味の人・蜂屋あいを見ながら、笑っている。 「一緒に遊ぼうよ、あいちゃん」 そして、口を開く。 そんなあいを巻き込むように、引きずり込むように、最悪の一手を打ってくる。 「ルールは簡単。しばらくの終わりが来る前に、夢を叶えた方の勝ち」 「夢?」 「そう、お互いの夢。聖杯戦争とかまっっっっったく関係ない、趣味の方の話。 どっちが先に趣味でほっこり出来るかゲームやろうっつってんの!」 「……どうして、そんなことを?」 「えー? だってさぁ――」 江ノ島盾子はニンマリ笑って答える。 「――こういうことされるのが一番困るでしょ、あいちゃん」 それは、予想外の答え。 「ううん、どうかなぁ……」 「余裕たっぷりで構えて周りをうまく使って自然とそういう雰囲気にして楽しんでいる蜂屋あい選手にとって、外的要因で行動に制限がかかるのは非常に厳しい。 更に外的要因が私様選手のような取り上げた玩具をブチ壊して遊ぶ相手ならばなおさらでしょう。 今までにない環境での戦いは当然不利な状況が続き、思うように展開を運べなくなってしまいます。 出来るはずのことが出来ず、普段なら造作もない問題で計画が転ぶ。小学校の女王蜂にとってこれほどまでに屈辱的な展開があるでしょうか!?」 江ノ島盾子はつばを飛ばしながらマイクに向かってまくし立て、続ける。 「素敵な素敵な楽しみを外から勝手にブチ壊されるのも嫌。 だからといって、せっかく見つけた楽しみを味わい尽くせないのも嫌。 絶望と絶望の板挟み。あいちゃんにあげるよ、素敵な初体験、ファースト絶望を」 言われてみれば、一方的に望まぬ状況に追い込まれるのは初めてな気がする。 江ノ島盾子はやるといったらやる。うかうかしてたら桜を取り上げられてしまうのも容易に想像できる。 取り上げられれば、もう戻ってはこない。 「時間制限がつくだけで、ワックワクのドッキドキですやん? さあ、江ノ島盾子ちゃんは、どのタイミングで、蜂屋あいちゃんの楽しみをブチ壊しにかかるのでしょうか! 乞うご期待!!」 とっても楽しそうに笑う、真っ黒な闇の中の少女。 その様子を見て、ああ、と気付いた。 真っ黒。あいが見てきたみんなにとって、何かが終わる前の色。何かが壊れる前の色。 でも、江ノ島盾子を見ていると、分かった。 本物の黒が、こんなにも綺麗だと、分かった。 あの子の青を見たときと一緒。濁った結果の黒じゃなく、宇宙の端っこで生まれた、世界で一番純粋で、世界で一番綺麗な黒。 あいが江ノ島盾子に惹かれた理由は、こんなに美しい黒があると知ったからだと、分かった。 その上で、なんとなく思った。 確かに江ノ島盾子は綺麗だけど、彼女と交わっても、あいの色が綺麗にならないのは、分かった。 あいが求める色は、やっぱり、黒じゃないんだと、分かった。 「ちなみに、拒否権など存在しない。 貴女がなんと申し開こうと、私様は勝手に動き、予定通りに世界を絶望させる。 はーい、よーいスタート」 「やだなぁ、むずかしいなぁ」 「ふわはははは! 絶望しろ~、絶望しろ~!」 初めて心に生まれる感情。獲物を横取りされる焦燥感。胸の高鳴りは、今まで聞いたことがないくらい。 ☆ 江ノ島盾子が小学校を離れてしばらく。 突然降って湧いた競争に勝つため、令呪を二つ切ってアリスには回復に専念させながら、0時に届いた通達を見て考える。 今後の動きと、どうやって桜の色を見るか。どんな場面での桜の色を見たいか。 どうやって桜を誘導し、どうやって心の色を変えるイベントを起こすか。 そして、必要とあらば回避しなければならない江ノ島盾子という爆弾への対処法は。 切れる手札は。 望めるパターンは。 江ノ島盾子の手札は。 彼女がもたらす絶望の計画とは。 考えれば考えるだけ、夜なのに目が冴えていく。 なんだか、本当に、ゲームをしてるみたいな気持ちだった。 それにしても、と考える。 死神様と話したいと言った江ノ島盾子が、まさかあいのあれこれを見抜いて逆手に取りまるごと絶望させにかかってくるとは思わなかった。 この先のあいに待っているのは、本当に、絶望にまみれた未来かもしれない。 でもこの瞬間だけは、そのあまりに綺麗な真っ黒が鮮やかすぎて、笑顔がこらえきれなかった。 江ノ島盾子について考えているその時だけは、あいの心の色のことも忘れられた。 【D-2/小学校/2日目 未明】 【蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている】 [状態]疲労(小)、魔力消費(小)、ちょっと楽しい [令呪]残り一画 [装備]なし [道具]なし [所持金] 小学生としてはかなり多めの金額 [思考・状況] 基本行動方針: 色を見る 1.江ノ島盾子と競争しながらさくらの色を見る。 2.さくらの色をもっと見たい。 [備考] ※双葉杏、諸星きらり&バーサーカーを確認しました。 諸星きらりの『色』を見ることで、今後バーサーカーの出て来るタイミングが察知できるかもしれません。 ※江ノ島盾子から夢バトルを仕掛けられました。 【キャスター(アリス)@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)】 [状態] 霊体化中、魔力消費(中)、憔悴、陣地によるMAG回復(小)、左肩から先欠損(治癒中)、腹部にダメージ(中)(治癒中)、 令呪二画「元気になあれ」の効果で回復に超ブースト、疑似ニンジャ・リアリティ・ショック(大・軽減中) [装備] なし [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針: オトモダチを探す 0.MAGが足りない、遊園地も寂しくなった。辛い。 1.あいが来るまで少しお休み。エノシマジュンコチャンの連れてくるオトモダチでもう一度遊園地を建て直す。 [備考] ※陣地『不思議の国のアリス』の大部分が破壊されました。MAG回収の効率や道具作成の補助効果はかなり低下しています。 ※オトモダチのストックが復活しました。 ※エノシマジュンコチャンとは魔力パスがつながっていないため念話は使用できません。 ※欠損した左肩から先は魔力によって再生が可能です。ただし補佐がない場合相応の魔力と時間が必要です。 ※ニンジャに対して強いトラウマを抱えました。精神汚染スキルによって時間経過で軽減されていきますが、時折ニンジャへの本能的恐怖に苛まれます。 ニンジャを想起させるものと出会った場合、この本能的恐怖の発生率が上がります。 また、ニューロンにニンジャへの恐怖が染み付いたため、精神汚染のランクがE→E+に変化しました。 ☆ 江ノ島盾子 羽音。 駆動音。 刻む音。 奇声。 ある日。 森の中。 絶望は。 出会った。 「おっとこれは、流石の私様も想定外」 吹き出すモノ。 その理由。 まったく分からない『混沌』が、形作ってそこにあった。 「君はどこから来たのかな」 奇声。 「何をしに来たのかな」 駆動音。 「誰が呼んだか、教えてくれる?」 刻む音。 月下に怪しく光るものあり。 だが、それは、江ノ島盾子にとっては、とても心地よい。 超高校級の絶望でも想定外だが、絶望的に運命的な出会い。 「もっと知りたいな、君のこと」 絶望が深淵を覗く時、深淵もまた絶望を覗いている。 【D-2/裏山付近/2日目 未明】 【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ】 [状態]健康、絶望的にハイテンション [令呪]残り三画 [装備]諸星きらりの携帯端末 [道具]なし [所持金]大金+5000円分の電子マネー(電子マネーは自分の携帯を取り戻すまで使用できません) [思考・状況] 基本行動方針:絶望を振りまく 0.世界に絶望あれ――――っ!! 1.まずはあいちゃんと夢バトル! 私様が勝ったらお前の夢絶望以下な! 2.きらりちゃんと杏ちゃんも待ってて! 一緒に絶望させてあげるから! 3.キャスター(木原マサキ)からの電話を待つ。 [備考] ※諸星きらりを確認しました。彼女の自宅の位置・電話番号・性格なども事前確認済みです。 ※木之本桜&セイバー(沖田総司)、アーチャー(森の音楽家クラムベリー)、フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)、双葉杏、蜂屋あい&キャスター(アリス)、 キャスター(木原マサキ)、アサシン(クロメ)、諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)、輿水幸子を確認しました。 アーチャーと情報交換を行いました。アサシンについて、宝具の一つが『死体を操る能力を持つ』ということをアーチャーから聞いています。 ※自身の最後の書き込み以降のスレは確認できません。 ※数十分、もしくは数時間、あるいは数日、ひょっとしたら数年は同じキャラを演じ続けられるかもしれませんし、続けられないかもしれません。 ※ランサーのスキル『困った人の声が聞こえるよ』に対して順応しています。順応に気付いているかいないかは不明です。動揺しない限り尻尾を掴まれることはないかもしれません。あるかもしれません。 ※バーサーカー(悠久山安慈)の敵対のきっかけが『諸星きらりの精神・身体に一定以上の負荷をかけた相手(≒諸星きらりを絶望させた相手)』と見抜きました。 そのラインを超高校級の絶望故に正確に把握しています。彼女自身が地雷を踏むことは(踏もうと思わない限り)ありません。 ※蜂屋あいに夢バトルを仕掛けました。 [地域備考] 楽園濃度の上昇とアリスの陣地の影響でD-2の裏山付近に何かが現れました。 特定の条件を満たすものに対して反応を示すようです。 BACK NEXT 050 にんぎょ注意報! 投下順 052 眠るもの 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 044 アリス・イン・ザ・アビインフェルノ・ジゴク -不死戯の国のアリス- 江ノ島盾子 055 新しい朝が来た、絶望の朝だ 043 帰宅 蜂屋あい 057 演者は集う 044 アリス・イン・ザ・アビインフェルノ・ジゴク -不死戯の国のアリス- キャスター(アリス)
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なぜ、2人の『男』はチームを組んだのか◆V8Hc155UWA 『彼』は突然、自らの記憶を思い出した。 最後の記憶は、いつも通りに愛車を格納し、自身のパートナーと呼べる青年と「また明日な」と挨拶を交わし、 部屋に一人となった直後の事だった。 「うぅむ、一体これはどういうことなんだろうねぇ」 次の瞬間、彼の『頭』に未知の情報が叩き込まれた。 ―――ムーンセル ―――電子の海 ―――聖杯戦争 ―――マスター ―――サーヴァント 突如湧きあがった様々な知識。 頭脳に軽い目眩…のような現象を感じ、彼は『体』を左右に軽く振った。 それにあわせて、表情も険しいものへと変化する。 「なるほど…どうやら、状況は理解できたようだ。 聖杯戦争……私はその戦いに呼ばれた、マスターというわけだね」 「ハッキリしたようで何よりだ、ミスター」 声は後部座席から聞こえた。 『顔』をそちらに向けると、座っていたのは一人の男性。 外見年齢は40歳ほど。 屈強とは言えないが、鍛えられた肉体に鋭い眼差しの外国人…おそらくアメリカ人だろう。 突然現れた彼に対し声を上げようと思ったが、彼の『胸』に自然と視線が集中してしまう。 光っていた。人間の胸部が。 自然の太陽光などではなく、明らかに人為的な何かによる光。 その光の元凶は、彼の胸に『埋め込まれていた』。 「き、君。その胸は…?」 「あぁこれ? 生きてた頃に、ちょいと怪我をしていてね。 英霊になって呼び出されたはいいけど、その怪我まで再現されちゃって、まぁ保護的なものさ。 それはともかく、君が僕のマスター…ということで、いいんだよね?」 「あ、あぁ。という事は、君が私の…?」 男は「そう」と返し、優雅に足を組み、笑みを浮かべて言った。 「今回の聖杯戦争にライダーのクラスで呼ばれた。 真名は『アイアンマン』だが、普段は本名の『トニー・スターク』って呼んでくれ。 よろしく、ミスター………」 そこまで言って、男――『トニー・スターク』は怪訝な顔をする。 彼の視線の先には、マスターとなる相手の存在。 その存在を目に入れた時、彼の顔に疑問が浮かんだ。 そこに『人』はいなかった。 視線の先にあったのは、車体の中心に装着されている『ベルトのようなもの』だった。 「……えーと、少々確認したいことがあるんだけど。それは通信端末か何かなのかな? ミスター」 「おっと、こちらこそ失礼した。そして正真正銘、これが私の『体』さ」 スタークの問いかけに、彼は答えた。 頭――『電子頭脳』が現在の状況全てを把握し。 体――車体の中央にセットされた、腰に装着できる大きさの『ベルト』が動き。 顔――『ディスプレイ』に表示された表情が笑みを浮かべる。 「改めて、こちらも自己紹介しようスターク。私は『クリム・スタインベルト』。 このマシン『トライドロン』のナビゲーションシステムであり、『ドライブシステム』の管理者でもある。 今回、君のマスターを勤めさせてもらうことになった。よろしく頼むよ」 声を発したベルト――『クリム・スタインベルト』は、そう答えた。 □ □ □ 赤い車体と後部に装着されたタイヤが目を引くマシン――『トライドロン』が疾走する。 魔術都市ユグドラシルの外周に位置する、一般住宅街、歓楽街、自然保護区をちょうど一周する形で作られた道だ。 ユグドラシルに電気やガソリンといったものはないが、クリムと共に召喚されたトライドロンのエネルギーは街の魔力で賄われているらしい。 聖杯戦争に呼ばれ、クリムの記憶が戻った以上、1次予選は突破したということだ。 まだ他の参加者と出会っていないが、今後、様々な能力をもったマスターやサーヴァントとの戦闘は避けられないだろう。 わざわざスーパーマシンまで呼んでくれたのだ。戦力や移動手段として使わないなど、宝の持ち腐れである。 そう判断した2人は、慣らしや情報交換も兼ねてドライブとしゃれこんでいた。 もちろん、運転はスタークが行っている。 「しかし、人型のロボットや人造生命体っていうなら理解できるけど、人工知能のベルトがマスターになるって、聖杯戦争的にどうなんだ?」 「私に言われても困るよスターク。内部機能をチェックしてみたが、マスターの証である令呪は私のメインサーキットにプログラムとして組み込まれている。 他のマスターと同じように、私の意志と言葉一つで発動できるようだ」 「まぁ確かに、僕も生前は人工知能の開発はやってたし、いろいろ手伝ってもらってもいたけどさ」 英霊となる前の自身の記憶――世界的巨大軍需企業『スターク・インダストリーズ』の頃の記憶が脳裏を走った。 少し懐かしみながらも、話題を今後の指針へと変更した。 「まぁそれは置いといてだ、クリム。君は聖杯に願いはないということでいいのかな? 願いさえすれば、元の肉体を取り戻すなんて事もできるんじゃないか?」 「私は既に一度死んでいる身だからね。 自分の不注意でこのような体になってしまったのだから、今更、生身の体を取り戻したいとは思わないさ。 強いて言えば、サーヴァントを使って参加者以外の人々に害をなす存在を優先的に倒していきたいというのが、私の願いだね。 もちろん、自衛のためには戦おう。倒されては元も子もない」 「了解だクリム。そういった方針の方が、僕も気兼ねなく戦える。 何しろ生前は、ヒーローやってたもんだからね。君も相棒とヒーローやってたんだっけ? さっき設計図だけチャチャっと引いてきたアレ……うん、実にいいネーミングだ。アイアンマンより実にヒーローらしい」 クリムと今までかわした会話の中で、スタークが一番興味を抱いたのは、その話題だった。 クリム自身を装備した資格者に特殊装甲を装着させ、生前のクリムの命を奪った機械生命体と互角に戦える戦士。 ただいま運転中のトライドロンを駆り、市民の平和を守る存在らしい。 「Exactly(その通り)。だが、この聖杯戦争でその力が使えるかといえば、答えはNoだ。 システムそのものは私の中に生きているが、肝心の変身アイテムが存在していない」 「それは残念。僕の宝具はセーフハウスに用意した陣地でしか発動できないし、 どこでも発動させる事ができるアーマーも、セーフハウスの質が低い現状じゃあすぐに用意できない。 その道具…小さいミニカー、だっけ? 設計図だけは用意したけど、やっぱアーマーと平行して、復元できるかしっかり試してみる方がいいね」 使える手は多いに越した事はない。 世界を超え、時代を超え、数多くの強敵が待ち受けているのだから。 だからこそ、スタークはクリムの持つ知識を求め、クリムはそれに応じた 「うむ、私の知識と君の英霊としての能力があれば、君のアーマーはもちろん、私の世界の技術の復元も可能だろう。 そのためにも、このユグドラシルの正確な全体図の把握と、安心して作業が行える工房の作成が第一だ。 セーフハウスもいくつか用意した方がいい。複数の拠点で別々の作業を行えば、時間はかかるが後々の我々に有利となるだろう」 「了解だクリム。複数の拠点を作るか、少ない拠点で性能を重視するか、どっちにするかは悩む所だけどな。 それじゃ、街全体の把握は今日中には終わらせておこう。久々の運転だ、ひとっ走り飛ばすとしますか!」 「OK! Start Your Engine!」 アクセルを踏み込み、トライドロンはユグドラシルを疾走する。 まだ見ぬマスター、サーヴァント達と戦うため。 何よりも市民の平和を守るために―― □ □ □ 同時刻、彼らが最初に用意した陣地――セーフハウス。 2人がこの地で出会い、この場に陣地を設置し、 2人が陣地にとどまっていた効果により、ライダーの武装を作成するための工房が、4時間で1ランク上昇。 それを確認してから2人がトライドロンに乗り込んだ後も、ライダーのスキルによって管理された工房は一切の無駄なく動き続ける。 光線を打ち出す鋼の腕を。 飛翔を可能とする鋼の足を。 あらゆる戦況を管理する鋼の頭部を。 まだライダーが生み出した素材の生成作業中だが、ほどなくパーツは一つずつ完成していくだろう。 スタークが戦うための武器にして、全てを打ち払う鋼の装甲――『アイアンマン』。 それの完成が先か、敵との戦いで脱落するのが先か。 運命は、どちらに微笑むだろうか。 そして工房の一角には、コンピュータ上で再現された2つの設計図が浮かび上がっていた。 一つは、スポーツカー、パトカー、ダンプカーなど、様々な形状のミニカー。 一つは、スポーツカーをイメージした赤と黒と白の装甲と、胸にたすきがけのように装着された1つのタイヤが目を引く強化服。 その設計図のファイルには、このような名称が刻まれていた。 『Shift Car』 『KAMEN RIDER DRIVE』 □ □ □ 2人の男と、1台の車が、聖杯戦争に挑む この男、発明家でヒーロー この男、人工知能で変身ベルト 異世界を舞台に、アーマーと車で戦う 聖杯戦争の歴史が、今変わる! Start! Your Engine! Enjoy! The Yggdrasill Wars! □ □ □ 【クラス】 ライダー 【真名】 アイアンマン(トニー・スターク)@アベンジャーズ 【パラメーター】 宝具発動前 筋力:E++ 耐久:D+ 敏捷:D 魔力:E 幸運:C 宝具:D 宝具発動後 筋力:C 耐久:A++ 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:D~A 【属性】 秩序・善 【保有スキル】 騎乗:B- 騎乗の才能。大抵の乗り物を自在に操れる。 ただし動物に関しては、野獣ランクの獣は乗りこなせない。 単独行動:C+ マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクCの場合、マスターを失ってから1日間現界可能。 胸部のアーク・リアクターにあらかじめ魔力を限界まで充填しておくことで、もう半日現界可能となる。 陣地作成:B 自らに有利な陣地を作り上げる。 主に装備製作のための工房作成、後述のアーマー装着を行う装着場の製作に使用され、 陣地作成に時間をかければかけるほど、装備製作スキルの性能が上昇する。 陣地は複数の拠点に別々で用意する事が可能。 新たな陣地を用意する際、その陣地の装備製作スキルはDランクからとなる。 スキル発動後、経過時間に応じてその陣地における装備製作のスキルランクが上昇し、 作成する装備のステータスが上昇する。 クリムまたはスタークが陣地にいる事で陣地作成の効率が上昇し、 ランクアップの必要時間が短縮される。 発動時間と装備製作スキルランク上昇の関係は、以下の通りとする。 通常時:8時間(D→Cなら8時間、D→Aなら24時間) クリムとスタークどちらかが陣地にいる:6時間(D→Cなら6時間、D→Aなら18時間) クリムとスターク両者が陣地にいる:4時間(D→Cなら4時間、D→Aなら12時間) 任意のタイミングで装備製作スキルランクの上昇を停止し、 その時点のスキルランクに応じたスーツの開発が開始される。 スーツの性能については、後述参照。 装備製作:D→A 武器や装備を製作する才能。 後述の宝具発動に必須となる、アイアンマンスーツを開発するためのスキル。 同時に、スーツに搭載する各種兵器の開発も可能となる。 製作した全ての兵器を他の参加者が使用する事は可能だが、 スタークが許可した人物しか使えないよう、機械的なプロテクトがかかっている。 前述の陣地作成スキルにより、その時点での装備製作スキルランクに応じた装備が開発される。 作成可能な装備の性能と作成に要する時間は以下の通りとする。 ランクD(無防備なマスターや、戦闘能力を持たないNPCなら撃破できる程度の性能) ・アーマー装着場 作成必要時間:1時間 アイアンマンマーク1~4、6の装着に必須となる装着場。 ・アイアンマンマーク1 作成必要時間:1.5時間 武装:両腕の火炎放射機、腕部小型ミサイル、使い切りロケットブースター 装甲は加工した鉄板なので、サーヴァント相手にはほぼ無力。 ランクC(サーヴァント相手でもある程度なら戦えるが、真正面から撃ち合えるほどではない) ・アイアンマンマーク2 作成必要時間:2.5時間 武装:低出力リパルサーレイ、飛行ブースター 本格的に製作開始した最初のスーツ。 自在に飛行可能なのはこのアーマーからであり、試作品のため装甲もあまり硬くない。 リパルサーレイは装備してるが、出力は最低クラスのため、サーヴァントにはほぼ無力。 ・アイアンマンマーク3 作成必要時間:3時間 武装:胸部ユニ・ビーム、リパルサーレイ、腕部ロケットミサイル、肩部マルチロックオン特殊弾 赤と金のカラーで塗装され、世間に初めてアイアンマンと認識されたスーツ。 金とチタンの合金を素材にする事で装甲が格段に上昇し、戦車砲とロケット弾を受けても装着者は無傷。 このスーツから、サーヴァントとある程度戦えるようになる ランクB(サーヴァント相手でもほぼ互角に戦える) ・アイアンマンマーク4 作成必要時間:3時間 武装:胸部ユニ・ビーム、リパルサーレイ、腕部ロケットミサイル、肩部マルチロックオン特殊弾 マーク3と装備は変わらないが、出力と飛行性能、装甲が上昇している。 ・アイアンマンマーク5 作成必要時間:3時間 武装:リパルサーレイ スーツケースの形になる携帯型スーツ。 装着場の有無に関わらずどこでも装着可能だが、武装の数と装甲が犠牲となっており、飛行も不可能。 陣地の外で敵に襲われた際、緊急で使用する目的が妥当か。 ・アイアンマンマーク6 作成必要時間:4.5時間 武装:胸部ユニ・ビーム、リパルサーレイ、腕部多段式ロケットミサイル、手甲部200ペタワットレーザー マーク4の武装をさらに強化した攻撃型スーツ。 一瞬で対象を切断する高威力のぺタワットレーザーが強力だが、カートリッジ式のために使い切り。 ランクA(サーヴァント複数が相手でも互角以上に戦える) ・アイアンマンマーク7 作成必要時間:6時間 武装:胸部ユニ・ビーム、リパルサーレイ、腕部多段式ロケットミサイル、肩膝ホーミング式小型ミサイル、手甲部200ペタワットレーザー 今回の聖杯戦争で製作可能な最高クラススーツ。 普段は変形収納した飛行ユニットとなっており、遠隔操作での装着が可能となっているため、装着場が不要。 ぺタワットレーザーもアーマーのエネルギーを直接使用できるようになっているため、連続しての照射が可能。 【宝具】 『装着せよ、強き自分(私がアイアンマンだ)』 ランク:D→A 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:1-5 トニー・スタークが自ら作り上げたパワードスーツ=アイアンマンスーツ。 彼の人生、ひいては自身そのものといえるスーツが宝具となったもの。 スーツを装着することで発動し、スタークの各ステータスが上昇する ガントレットの掌から発射される光学兵器「リパルサーレイ」。 自身の生命維持装置でもある半永久発電機関「アーク・リアクター」による無尽蔵のエネルギー。 リアクターのエネルギーを直接照射する高出力ビーム「ユニ・ビーム」。 両足のスラスター・ブーツによる飛行機能、自らの意思を持つAI「J.A.R.V.I.S.」とのリンクによる戦況把握能力。 全身に装備されたロケットミサイルや、対象を麻痺させる特殊弾など、様々な兵器を全身に装備している。 宝具とは銘打っているが、装着には機械的な手順を必要とし、 上述の装備製作スキルが低い状態では、陣地作成によって用意された専用の装着場でしか装着ができない。 スキルランクが上昇することで、どのような場所でも装着(携帯型のマーク5、飛行ユニット型のマーク7)可能なスーツが製作可能となる。 なお、令呪によるスーツ作成時間の短縮、緊急召喚、装着場を無視しての装着は可能だが、 それぞれの動作を行うために、令呪1画を必要とする。 例として「マーク7スーツを今すぐ完成させ、手元に呼び出し、装着場なしで装着する」といった願望を令呪で叶えるためには、 「スーツ完成」に1画、「アーマーを手元に呼び出す」に1画、「装着する」に1画がそれぞれ必要となる。 【weapon】 アイアンマンスーツ 装着することで宝具が発動し、アイアンマンスーツの武装が使用可能となる。 共通して全ての武装が機械を用いたものとなり、魔術的攻撃力はほとんど持たない。 アーク・リアクター スタークの心臓付近には爆弾の破片が突き刺さっており、その破片から心臓を守るために製作した小型のエネルギー装置。 心臓保護用の物とアーマー起動用の物があり、胸に空いた空洞に装着することで起動、 心臓の保護とアイアンマンスーツのメイン動力源として機能する。 サーヴァント化に伴い、通常の魔力消費とは別にリアクターに魔力を蓄積することが可能となり、 通常のサーヴァントより長時間の活動と、スーツの魔力消費を代用できる機能が追加された。 【人物背景】 アメリカ巨大軍需企業「スターク・インダストリーズ」の社長にして天才発明家。 17歳でマサチューセッツ工科大学を首席で卒業し、20歳の誕生日に両親が事故で他界してしまい、 莫大な遺産と大企業の経営権を得ることになった。 社長に就任したスタークは、自身の頭脳を使って数々の新技術を次々に開発する。 自身が開発した兵器の試射に立ち会ったスタークだが、現地のゲリラが彼にミサイルを発射。 ミサイルに自身の会社の名前が刻まれている事を見たスタークは爆発に巻き込まれ、 破片がスタークの心臓周辺に突き刺さったものの、どうにか一命は取り留める。 ゲリラに拘束されたスタークは更なる武器の製造を強要され、やむを得ず一度は製造を了承する。 だが、ゲリラの目を掻い潜りながら、スタークはある物の開発に取り組み始めた。 生命維持を可能にするアーク・リアクターと、リアクターと連動するアーマー「マーク1」である。 マーク1を完成させたスタークはゲリラを撃退し、脱出に成功した。 国を守るために作った武器がゲリラの手に渡り、罪のない人々にその銃口が向けられている現状を思い知らされたスタークは、 脱出時に破損したマーク1に変わり、最新技術を満載したパワードスーツ『アイアンマン(マーク3)』を開発。 世界中のテロを撲滅すべく、アイアンマンとして活動を開始した。 今回の聖杯戦争にライダーとして召喚されたのは、彼が「アーマー」を「自らの身」として自在に乗りこなすことから。 彼が所属していたヒーローチーム『アベンジャーズ』の装備全般を製作していた生前の歴史から、 武装製作に特化したエクストラクラス『製作者(クリエイター)』として召喚されていた可能性もあったかもしれない。 なお、今回の聖杯戦争のスタークは、『アベンジャーズ』として異星人と戦った所までの記憶を持つ。 よってスキルによって製作できるアーマーは、マーク1~7までとなる。 アベンジャーズの戦いからそんなに日が経ってないため、 この後の未来で描かれた、不眠症やアーマー依存症には陥っていない 【サーヴァントとしての願い】 マスターであるクリムと協力し、市民に害をなす敵を倒していく 襲ってくる敵に対しては自衛のために戦う 【基本戦術、方針、運用法】 聖杯戦争開始直後は、どれだけ陣地作成と装備製作に時間を割けるかが最大のポイント。 召喚時からすぐに陣地作成を開始したため、本編開始時にCランク以上のスーツ(アイアンマンマーク3)なら、ほぼ開発が完了していると思われる。 陣地作成に時間をかければかけるほど、製作できるアーマーの性能も上昇するため、必然的に優勝の可能性も上昇していく。 複数の拠点で低クラスの装備を同時に製作するか、拠点数を絞って高性能な装備を作成するか、ここが運命の分かれ目となるだろう。 陣地作成に注力すれば、武装製作のランクを12時間でAまで上昇させ、最高レベルのマーク7スーツを6時間で作成。計18時間で、最高性能で勝負をかける事が可能。 時間と戦略さえ十分ならば、各地の拠点に複数のスーツを待機させ、何度も装着を繰り返して長時間の戦闘を行うという芸当も可能。 武装製作スキルがAになれば、クリムの世界の知識を得たことで、ドライブシステムに関する道具を製作することができるかもしれない。 マスターであるクリムが自身での行動が不可能のため、クリムと行動を共にする際の霊体化ができないのがどう影響するか。 【マスター】クリム・スタインベルト 【出典】仮面ライダードライブ 【性別】男性(電子頭脳) 【令呪の位置】内部のメインサーキットにプログラムとして組み込まれている 【マスターとしての願い】 聖杯にかける願いは今のところなし スタークに『元の体を取り戻したくないか』と言われ、否定したが・・・? 【weapon】 ドライブドライバー クリムそのものであるベルト状のアイテム。 装着者を仮面ライダードライブに変身させる能力があるが、変身アイテム「シフトカー」と変身ブレス「シフトブレス」が存在しないため、 実質、ドライブへの変身機能は封印されている。 自身での行動が不可能なため、普段はライダーが用意した活動拠点で待機しており、陣地作成の性能上昇役。 必要に応じてライダー自身、もしくはトライドロンで持ち運ぶ形で行動する必要がある。 トライドロン クリムが開発した2人乗りの自動車型マシン。 仮面ライダードライブの能力強化アイテムの生成や、クリムの指示による無人走行等が可能なスーパーマシン。 クリム自身と呼べるマシンであり分身とも言える存在であるため、共に召喚された。 基本形態のタイプスピード、悪路の走行に適したタイプワイルド、アームクローを操るタイプテクニックの3パターンに変形が可能。 【人物背景】 トライドロンに搭載されているナビゲーションシステムであり、機械でありながら人間と同じ知識と感情を持つ。 かつては高名な科学者だったが、自身が製造に携わった機械生命体「ロイミュード」の反逆によって致命傷を負い、 死の間際、自らの記憶と意識をドライブドライバーにインストールした。 その後はロイミュード撲滅のため、協力者の手を借りながらトライドロンやシフトカーを開発。 警察組織に身を隠しながら、自身を用いて戦ってくれる協力者を探していた。 ある一人の警察官と出会い、彼と共に秘密の戦士「仮面ライダードライブ」としてロイミュードと戦っていく。 【方針】 NPC=市民に害をなす存在と戦う 襲ってくる敵に対しては自衛のために戦う
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キャラシート(マスター用) 【名前】 三谷 扶希 【サーヴァント】 バーサーカー 【性別】 女 【性格】 何かを考えているようにみえない楽観的 わがままをいう時はいうがすぐに諦めてくれる 【出典】 オリジナル 【属性】 中立・中庸 【ステータス】 筋力 E(10) 耐久 D(20) 敏捷 D(20) 魔力 C(30) 幸運 C(30) 供給 A(50) TOTAL 160 【詳細】 聖杯戦争なんていい暇潰し。そんなことを考えながらこの聖杯戦争に望んだ 彼女は柊 司の義理の妹である。七つ年が離れており、司が生きていればきっとこの場にいたのは扶希ではなく25歳になった司だった。 実家がヤクザだというのに彼女は姉とは違いフィジカルは並大抵、思考は少し子供じみたところも多く、とにかく勝てる見込みがある場合は負けたくないの一点張り、一方負け試合の場合は試合放棄をするなどする執念深いのかあっさりしているのかが分からない態度をとる。純粋に小さい子供が大きくなったような感じで、周りの空気を読まない、大泣きしながら騒ぐ、我儘ばかり、それでいて落ち着けばちゃんと誠意をもって謝り、他人の悩みなどを真摯に聞いてくれる生徒会の庶務ちゃん。 人形やコスプレが大好きで、プライベートでたまにコスプレをするほどである。 姉よりもたくさん父に甘やかされた為甘え上手。 裏設定
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305 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/09/18(火) 04 26 21 二機が轟音と共に道を走り抜けていく。 その轟音を内心で咎める者は何人もいたが、ただの暴走族だろうと考え、走り去り、音が聞こえなくなるままに任せていた。 『Y2Kの乗り心地はどう?』 ライダーの耳元、そこに取り付けられたインカムから声が聞こえてくる。 『これまで乗ってきた機械の中では最高ですね、多少癖はありますが問題はありません』 そうやってちらりと後方、それを映すモニタを見やる。 小道であると言うこともあるのだろう。 彼女達としては控えめな、それとて常人の限界を超えた速度でぴったりと追随してくる姿が映っていた。 『ルートは大丈夫?』 『ええ、このまま5キロ先の地点で県道に戻るんでしたね』 T字路の遙か手前で車体を傾け、殆ど減速せぬまま、200キロオーバーで抜けていく。 『ええ、このまま工事中の循環道へ』 20年ほど昔、M県にて近隣各県との循環道を敷設する計画が提唱され、数年前から着工が行われている。 現状完成しているのはおよそ4分の1程度であり、S市から冬木市までのルートは工事中で、県境の高架部分で丁度途切れている。 故にM県側から循環道に入り、そこから冬木市へ再び接近、突入する。 それでもこのルートを選択したのは地理的な関係で多少警戒が手薄であろうと予測されること、そして徒歩で接近する別働隊の速度との調整を行える事、そして、これは楽観的な考え方だが完全に気付かれていなかった場合通過する高架は作戦領域を掠めており、そこから飛び降りれば意表を突くことが出来る、というのがその理由だ。 工事中の看板が見え、そう認識した直後には間近に迫ってくる。 だがそれとて二人には大した障害にはならない。 ガードレールの切れ目を抜け、未整備の歩道を加速しながら走り抜ける。 その速度のまま、百メートル近い、高架の切れ目に突入する。 落下の寸前、僅かに減速しつつ前輪に体重を掛けてサスを沈ませ、バネが戻る反動を利用して数秒間だけバイクごと空中に身を躍らせる。 僅か数秒であったが、300キロを超える時速は、落下先を高架の下ではなく上に変更させ、タイヤが白煙と悲鳴を上げる。 『……ミズ・シャリフ、時間は大丈夫ですか?』 着地の反動を抑えつつ尋ねる。 『予定時刻とのズレは10秒未満、問題ないわ』 着地の衝撃を殺しきれぬライダーと比し、もう一人のライダーであるシャリフはその最中であろうと片手を離し、時計を確認する余裕さえあった。 この辺りは既に有する熟練度の差が物を言った。 M県を殆一回りしたにも関わらず、予定との時間差は殆ど無い。 予定通りならば別働隊は冬木の大橋を越えた頃だろう。 あと数分でこちらが突入すれば、その時点で戦闘開始となるはずだ。 『……では行きましょう』 一度だけ深く呼吸し、アクセルを全開にして加速を開始した。 それに気付いたのはシャリフのK1200Rが最高速に達する直前だった。 『ミズ・シャリフ……』 『分かってるわ、敵ね』 この速度で下道を併走しているバイクが居る。 二機の物とは明らかに違うエキゾーストノートが聞こえてきているからだ。 併走出来ていることから、敵は300キロを超えているのは間違いない。 ちらりと視線を下道に向ける。 どうやらかなり改造されているようで、そのエキゾーストノートだけでは車種や敵の姿まで認識することは適わない。 『このまま併走されるのは危険ですね』 真下から大口径火器やなんらかの魔術で攻撃された場合為す術は殆ど無いと言える。 だが下道を走る敵にはその気、ないし手段がないのか、併走したまま一分ほどの時間が流れていく。 そうして領域突入予定時刻まであと一分、突入予定領域まで8キロほどの距離になったところで、エキゾーストが一際甲高く耳に叩き付けられる。 『どうやら敵は加速したようですね』 『このまま行けば3キロ程先で鉢合わせになる上に頭を抑えられる形になる、それは有利ではあるけれど……先手を取りましょう』 『……派手にするのは本意ではありませんが、わかりました』 どちらにせよ、戦闘が始まってしまえば静かに、なんて気にしている余裕はなくなる上に元よりこの爆音だ。 ならば少々音を大きくしようと、問題にはならない。 それだけを考え、シャリフのK1200Rが僅かに減速し、逆に加速したライダーのY2Kが前に出る。 同時に背中に括り付けられた二つの棒切れ……RPG-7の内一つを握った。 そのまま肩に乗せて敵の出現予測位置を睨み、RPGの先端を視線と同期させた後、発射時点での敵への距離を予測、照準を調整する。 そして敵との相対速度、そして発射から着弾までのタイムラグを基準に更なる修正を加える。 刹那が何十秒にも感じられる緊張感がライダーにのし掛かる。 これほど簡単な代物ならば扱いを間違えることは無いと思っては居たが、いざ使う段になってみれば、一度くらいは実際に使ってみた方が良かったと考えてしまう。 保有する火器の量全体で見ればともかく、対甲火器であるRPG-7は彼女が成形炸薬弾装備の物が2本があるのみで予備弾頭はない。 大凡の火器はともかく、建造物に対して弾頭を叩き込むならば熟練しているかどうかは大して問題にはならないためだ。 果たして、敵は側道との合流地点から姿を現し、その直後にライダーはRPGの引き金を引いた。 本体のみならず、最高速に近いY2Kというカタパルトから発射されたロケット弾は、彼女から幾らも離れぬうちに安定翼を展開する。 敵の姿を睨もうとしたライダーの視界が一瞬消える。 爆発音と同時に推進用火薬を点火させさらに速度を増し、敵に突入したのだ。 その瞬間の炎が真正面を見据えたライダーの視界を埋め尽くしたのだ。 車体をウィリーさせてその眩しさから逃れたが、その数秒後に起きた爆発炎と爆風で車体が激しく煽られた。 僅かに後方を走るシャリフには、その爆発までのプロセスが見えていた。 RPG-7が推進用火薬に点火した直後、敵がライフルらしき何かを構え、発砲したのだ。 発砲はただの一度だが、そこから発射された散弾がロケット弾を『撃墜』してのけたのだ。 エンジン音とエキゾーストの切れ間から聞こえた発砲音から判断して、軍用ショットガンであることはまず間違いはないだろう。 その技量に戦慄すると同時に理解した。 この速度である、それと同時に発射直後のロケット弾へ正確な照準を行い、さらに散弾で撃墜したのだ。 これがライフルだというならばサーヴァントとしてはそう驚くことではない。 だがショットガンのように広域に弾が分散するスラッグ弾でそれを行うのは極めて難しい。 爆発炎で闇の中から詳らかに浮かび上がったバイクの姿は猛禽類を思わせ、エキゾーストと併せて考えればそれが原形を留めぬほどに改造された代物であることが明白となった。 一方てに握ったままのショットガンも近接戦闘が可能なように改造されているようだが、銃そのものは有り触れたSPASのようだ。 これによって宝具と予測される物は遠距離攻撃武器ではなく、騎乗するバイクにあると判断でき、そこからアーチャーである可能性は極端に減ぜられる。 『敵のサーヴァント、クラスは恐らくライダー』 予測は出来ていたが、これでほぼ確定した。 『ええ、でも作戦を中止するわけにはいかない……』 シャリフの言葉に、ライダーも体勢を立て直し、インカムに返答を行う。 ライダーであろうとあれだけの射撃能力を持った相手、しかも機動力はこちらと互角。 スピードで掻き回すことは不可能であり、今見せつけた技量から考えれば二人がかりとて即座に撃破することも適うまい。 だが作戦は続行しなければ別働隊が危険に曝される。 ならば片方をあのサーヴァントにぶつけ、もう片方が作戦を続行するのが策と言うことになるだろう。 この『クラスが重複していようと関係なく、幾らでも召還されうる』という異常な聖杯戦争であるとはいえ、これほど特異な、現代機械を用いる英霊がそう多く居るとは思えず、突入した一人は機動力を生かして攪乱することは可能だろう。 『……早くも障害ね』 互いにその辺りのことは言葉を交わさずとも理解できている。 ただの弾丸ならば問題となることはない。 だがサーヴァントの、英霊の装備ならばただそれだけで神秘が自動的に付加され、サーヴァントに対しても有効打となりうる。 『そのようね』 炎がその光を失う寸前、敵サーヴァントに視線を送る。 何の呪いか、拘束具を装備したその姿は己を押さえつけているように見えた。 いずれにせよ、先制攻撃は失敗し、背後をとったものの進行方向を押さえつけられた形となってしまった。 互いに速度は維持したまま、ライダーは言葉を発した。 snake:「私が足止めを、その隙に中枢を」 vampire:「足止めをお願いします、中枢は私が」
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きっとどこかに繋がる世界◆A23CJmo9LE 「さっさと起きなアゲハ!」 自室でまどろむアゲハの耳に響いたのは姉、吹雪の声だった。 切羽詰まった様子のそれに寝過ごしたかと瞼をこするが、部屋の時計を見ると眠りに落ちて数時間、まだ夜明け前の時間帯だった。 「ンだよ、姉キ、こんな時間に」 「地震があったの!津波の危険があるから高台に避難!」 「はあ!?マジかよ!?」 聖杯戦争の最中だってのにそんな面倒くさいことまで起こるのか、と突然の事態に寝ぼけた頭を覚醒させる。 思考を整理するだけの意識が戻ると、アゲハは真っ先に窓から外を確認した。 その視界に映ったのは恐らく避難しているであろう人影がいくつか、そして空に輝く不気味な貌を浮かべた月。 「おい、これ……夢じゃねえよな?」 起きてみると通達の情報がなぜか認識できていた。 それだけでもなかなかファンタジーだが、アサシンの脱落はともかくとして、迫りくる月の脅威は文字通り天を仰ぐものだった。 (トランスの応用か?そんなこともできたのかあいつ) 今まで見せていなかった能力の可能性に疑問を覚えるが、それはそれとして避難している人たちが見えたことで事態に現実味を覚える。 欠伸をしながら適当に上着を見繕い、外に出られるように心身ともに整えていく。 「チンタラしない!急ぐ!」 「うるっせえよ、着替えくらいさせろ!」 バタバタと寝間着を脱ぎ捨て、最低限の防寒具と貴重品を持って避難の準備を進める。 即座に支度を済ませて玄関へ向かっていくと、その道中にはテレビのチャンネルを回している流子がいた。 「何やってんだよ、纏。急いで避難――」 そこまで口にして疑問が湧く。 サーヴァントに地震だの津波だのは有効なのだろうか、と。 もし効かないならこれだけ呑気しているのも納得するが、人間である自分たちはそうはいかないのだからそのあたりは気にしてほしいとアゲハは少しだが口を尖らせた。 「おい、纏。こっちは津波とか避難案件なんだ。頼むよ」 寝起きなのもあって少しばかりキツイ言い方になってしまう。 流子は少しだけそちらに視線をやるが、すぐにテレビに視線を戻し、少しおいてまたリモコンを弄り始める。 「さっきからニュース漁ってるけどよー、津波の危険なんてテロップ出てこねえぞ。 それどころか地震に関してもほとんど取り上げてねえし」 現代人ならば半ば習慣にまでなっている行動、地震が来たらニュースを確認する。 近現代の英霊である流子も当然のようにそうした。 しかしどこを見ても津波という単語は出てこないのだ。 流子、アゲハは揃って首をひねる。 「姉キ、津波が来るから避難しろってどこから聞いたんだ?」 「え?さっきお隣さんが荷物纏めてそう言ってきたのよ」 吹雪の返事を聞き終えると即座にアゲハは外に飛び出した。 そして外を歩く人を捕まえて同じように掴みかかるようにして質問する。 「おい、アンタも避難してるんだろ?誰から津波が――」 来るなんて聞いた、と口にしようとしたところで言葉に詰まる。 そして咄嗟にライズまで発動して一足で大きく距離をとる。 「津波…そうですよ。津波が来るから早く避難しないと」 そう答える男性はアゲハの態度を気にも留めないように、穏やかな調子で答えた。 その目の中に、星のようなものを浮かべて。 夜科アゲハはそれを何度か見た覚えがあった。 購買に並んでいた、大量の食品を買い占めていった生徒にも。 危うく舌を噛み切りそうになった人吉善吉の瞳にも浮かんでいたもの。 ――――あのキャスターの、痕跡。 (なんだ!?あいつ、地震と津波なんてデマ流して何しようとしてんだ?) 人を避難させて……人払いで、いなくなった隙に何かするつもりなのか。 あるいはどこか避難場所に人を集めて何かするつもりなのか。 とりあえず目の前の男にどういうつもりなのかダメもとで聞いてみるかと、拳を握ったところで。 「はああああああ!?学園が壊れたあ!?」 家の中からやかましい声が響く。 纏の声だ、そう思ってそちらに視線をやる。 その振り向きは偶然だった。 故に、それに気付いて反応できたのも偶然だった。 視界に飛び込んできた異形の化け物。 不気味に赤い、芋虫のような体。 その背には薔薇の花弁のような蝶の羽。 随所から飛び出た茨のような無数の足。 全身で主張している無数の眼。 禁人種(タヴ―)ともどことなく違う化け物が高速で、何かから逃げるように飛来してきた。 アゲハは再びライズを発動し、その軌道上から避難する。 飛来する化け物のコースが操られているらしき男へと向かっているのに気付き、交差する瞬間反射的に化け物に蹴りを入れた。 それによって化け物の軌道は僅かに変わり、地面へと向かう羽目になるが。 それでも、男を巻き込むコースであることは変わりなく、接触と同時に車に人が撥ねられるような音を立てて男を吹き飛ばす。 化け物はアゲハの蹴りで地面へ叩きつけられ大きな音を立てて損傷し、男は化け物に轢かれて悲鳴を上げる。 「痛ッ…!あ、ひ、うわあああああああああああ!」 ぶつかった衝撃で折れたか外れたか、右肩から先を力なくぶら下げて逃げ去っていく男。 怪物もその声に反応するように唸り声をあげて起き上がる。 「おい、何の騒ぎだ!?」 その風景を家から顔を出した流子が目にする。 逃げている男の背中、謎の怪物、それと向き合うアゲハ。 危機と察し、即座に片太刀バサミを取り出して怪物へと斬りかかる。 「おらッ!」 起き上がったばかりの怪物、魔女Gertrudには躱せない一閃だった。 だがそこに別の存在が割り込み、怪物を救う。 カイゼル髭を蓄えた、タンポポの綿毛のような怪物、使い魔Anthonyという新たな怪物がその手に持ったハサミで流子の一太刀を受け止めた。 一体では力負けするが、十数体の使い魔が力を合わせて造園用のハサミを束ね、片太刀バサミに拮抗し弾き飛ばす。 それによって僅かに空白ができ、その瞬間を利用してアゲハと流子は並び立ち、Gertrudは態勢を整える。 「何だ、あれ?」 「分かんねえ。いきなりどっかから飛んできやがった」 間違っても吹雪のもとにはいかせない、と二人して意気込むが。 Gertrudはそれを無視するように反転し、かなたへと飛び去ろうとする。 「あ、逃げんのかテメエ!」 「いい、纏!俺がやる!」 叫びとともにアゲハの右掌に小さな黒い星が顕現する。 それを見た流子はとっさに霊体化し、魔力をできる限り抑える。 「暴王(メルゼズ)」 小さなつぶやきと共に流星を開放すると、それは真っすぐにGertrudへと向かって放たれる。 そして着弾、内部の一切を蹂躙し呻き声をあげる暇もなく魔女は絶命した。 主を失った使い魔たちも後を追うように姿を消していく。 「やった、か」 「ああ」 再び実体化した流子が確かめるように小さく語り掛けた。 歯を食いしばるように、アゲハも小さな声でそれに答える。 カラン、とそんな言葉に重なるような小さな音がした。 コンクリートの地面に何かが落ちて転がる音だ。 二人して足元に目をやると、小さな球体を中心とした奇妙な物体が転がっていた。 茨模様の黒い玉、下に針状の金属が伸び、上部には蝶のようなエンブレムが刻まれている、見たこともない材質のオブジェ。 特に危険物ではないだろうとアゲハは手に取って観察し始める。 「敵を倒したら落としたアイテムって……ゲームかよ」 しかし一体何なのか一見してわからない。 武器の類ではない。 インテリアなら必要ない。 一通り手の内で弄び、覗き込んできた流子に投げ渡す。 受け取った流子も首をかしげるばかりだが 『これは恐らくこの星のものではないな。おそらく生命戦維(われわれ)に近い、地球外のものが基になった存在だ』 「鮮血?」 何かに気付いたのは流子の身に着けたセーラー服、鮮血だった。 その言葉を受けて流子もアゲハも思い至る。 先ほどの怪物は禁人種(タヴ―)/カバーズに近い存在で、この球体はイルミナ/極制服のようなものかと。 「うまく使えば何か役に立つかもな……鮮血、これも吸収できたりするか?」 『何だかよく分からないものを無闇に口にするのは、あまり……そもそも繊維でないからな』 用途には悩むが何かに使えるかもしれないとひとまずアゲハが持つことにする。 一段落ついたところでアゲハの放り出した荷物などを纏めて吹雪が家から出てきた。 「アゲハ、あんたニュース見てなかったけど。何だかアッシュフォード学園が壊れちゃったらしいのよ……」 「はぁ?なんだそ、れ」 ぶっ飛んだニュースに怪訝な顔をするアゲハだったが、今が聖杯戦争のただ中ということを考えればなくはないかと思い返す。 腕利きのサイキッカーなら成し得る事象だ、サーヴァントなら容易くやってのけるだろうと空恐ろしく思いながらも納得する。 「深夜だったから幸い被害者はいないみたいだし、流子ちゃんのお姉さんも大丈夫だとは思うけど。 災害時の避難場所ってあの学園じゃない?だからどうしようかと思ってたんだけど、どこか思い当たる場所ある?」 行く当てを失って三人は悩むことになる、ように傍からは見える。 吹雪は避難先に思考を巡らせ、他二人は聖杯戦争について考えているが。 「てか壊れるって……何があったんだ?」 「さあ。巨人とか意味わかんない目撃情報もあるみたいだけど、たぶんこの地震のせいじゃない?」 考える吹雪をよそに、アゲハもまた思考する。 避難するべきなのか否か。しないとしてもどうやってこの姉を説得するのか。 ひとまず状況を共有すべきかと流子に念話を繋ぐ。 『あ~、纏。伝え損ねてたんだけどさ、さっきの男はあのキャスターに操られて地震とか津波から避難しろって言ってたみたいなんだよ』 『はあ?どういうことだよそれ』 『いや俺にもよくわかんねえけど、あいつが何かやってるってことは下手に避難とかしてあいつの思い通りに動くのはまずいんじゃねえか?』 策謀の気配を感じる。 学園で暗躍し、多数の主従に囲まれた窮地においても逃げ延びたあのキャスターの思う通りに動くのはあまりに危険に思えた。 『避難場所が学園でそこが壊れたってことは、そこに人を集めて一網打尽にしようとしてたとかさ』 『お前は寝てたから分からないかもしれねえけど、地震があったのはついさっきだ。さすがにこの短時間で学園まで人集めるのは無理だ』 頭をひねるが、お世辞にも頭脳派とは言い難いと自覚する二人、相手の思考を読むというのは難しいとすぐに労力を別方向に向ける。 自分たちはいかに動くべきかに。 先に定めたのはアゲハだった。 「で、考えてるみたいだけど二人はどこか避難のあて浮かんだ?」 その様子を察した吹雪がそれを促す。 一応は姉、ということか弟の変化に敏い。 「悪い、姉キは先にどっか避難しててくれ」 「ちょっと何言ってんのアゲハ!?」 しかし答えた内容は予想できるものではなかったか、怒声に近い声が吹雪の口から洩れる。 流子も疑問を表情に浮かべ、問いただそうとするがアゲハが念話でそれに先んじる。 『あの化け物、明らかにやる気がなかった。っつうか何かから逃げてた。 いるんだ。海の方に、あの化け物が逃げ出すようなおっかねえ奴……多分地震を起こした奴と、もしかするとあのキャスターが。 あのキャスターたちが川に飛び込んだならたどり着くのは多分海の方だろ。 地震だとか広めてるってことは誰か来たらあいつらにとって都合が悪いってことかもしれないし。 何よりあいつらがそこにいるなら、もしかしたら人吉の奴も向かってるかもしれねー』 とうに人吉の消失までのリミットは過ぎている。 通達の情報によると誰か一人帰還したらしいが、あの男が負けたまんまでいられるとは、リベンジもせず帰るような男には思えなかった。 拳を交えたアゲハだからこそ、そう思えた。 ならば新たなサーヴァントを得た彼が何をするか……あの金のキャスターに挑むのでは、この先に彼がいるのではとそう思えてならなかった。 「友達が取り残されてるかもしれないんだ。だからそれだけ確かめたいんだよ」 二人に向けてアゲハはそう告げる。 当初の目標としていた学園にいくのは最早叶いそうにない、と流子は押し黙る。 対照的に吹雪は感情を抑えるようにだが、アゲハに対してはっきり反対の言葉を告げた。 「アンタね……気持ちは分かるけど、そういうのはまず自分の安全を確保してからでしょ。アンタが無茶してどうすんの」 弟を心配する色を目に浮かべて、力づくでも連れて行くとアゲハに手を伸ばす吹雪。 そこへアゲハを庇うように、自信に満ちた笑みを浮かべて流子が割り込んだ。 「大丈夫だよ、あたしもついてく。いざとなったら、あたしが首根っこ掴まえてでも避難させるからさ」 その雰囲気にどこか頼れるものを感じ、吹雪の心境が和らいでいく。 そして小さくため息をつくと、ついにはアゲハへと伸ばした手を引いた。 「本当に、いい娘を彼女にしたね。あんたにはもったいない」 「「だから彼女じゃないって!」」 何度目かになるやりとりを繰り返し、そのむず痒い空気を払拭するようにアゲハは話題を戻した。 「で、姉キはどこに避難するか思いついた?」 津波の情報はデマだとしても、避難を止めるほどの説得力のある材料はない。 いや、地震があったのは流子も確かだと証言しているし、実際に起こる可能性はある。 ここで吹雪の避難を止めるのはあまりにも不自然で、まず納得しないだろうと、ひとまずの合流地点をさだめようとする。 投げっぱなしな発言に吹雪の顔に呆れた笑みが浮かぶが、少し考えて思いついた案を述べた。 「ホテルや病院の方に行きたいけど、川に近づくのも津波だと危ないし……あそこ。この道真っすぐ行ったところに結構大きな公園があるでしょ。 間桐さんっていう大きなお屋敷が近くにあるやつ。そこにひとまず避難しているから、アンタも友達見つけて急いで合流しなさい」 この地で過ごした時間のあまりに短いアゲハにそれが具体的にどこかは浮かばなかったが、それだけの情報があればなんとかなるだろうと高を括り、頷く。 「いってらっしゃいは言わないわよ。どうせすぐにまた会うんだし……でしょ?」 「…ああ、当たり前だろ」 それだけ言葉を交わして、歩き出した姉の背中を見送る。 余計な騒ぎは避けられた、と安堵し。 そしてこれから新たな面倒ごとに首を突っ込むことを考えて少し気が重くなる二人。 「……悪いな、俺の勝手で」 「何かしこまってんだよ今さら。気にすんなって」 仮初とは言え姉を心配する、その気持ちはアゲハにもよく分かる。 未だ視界に映る姉……のことも複雑な思いはあれど気にかけているのだから。 それを事態が急転したとはいえ、後回しにする判断をしたのに罪悪感が湧き上がるが。 「さっきのバケモノが逃げてくるようなやべー奴、たぶん地震を起こすやつがいるんだろ。 もしかしたら学園をぶっ壊したのにも関係あるかもしれねえし。 少なくともあのキャスターが関わってるんなら、人吉のためにも放っとけないだろ」 軽くアゲハの背中を叩いて、口の端に笑みを浮かべてそう言葉を紡ぐ。 言葉以上に、その思いに俯きそうだったアゲハの視線を目指す地、前方へと向く。 流子もまた視線をアゲハと同じ方角へ向け、肩を並べて歩き始める。 ――――最後に、思い出したように一言述べた。 「ああ、でもこれだけは言っとく。姉さんのこと、大事にしろよ」 それをきっかけに現代で交わした姉との最後のやり取りがアゲハの脳裏に蘇る。 エルモア・ウッドを出て未来へと向かった日、吹雪のもとへと帰る約束をした。 その約束は、本当の意味では未だに果たせていない。 「どうした?」 「いや、絶対姉キのところに帰らなきゃなって、考えてた」 「当たり前だろ……じゃ、行くか」 「おう」 待っていてくれ、と心中で姉に向けて呟き。 待っていやがれ、と天戯弥勒への決意を新たにした。 【B-4/アゲハ自宅/二日目・未明】 【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(小) [装備]なし [道具]グリーフシード×1 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。 2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。 [備考] ※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました ※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※ランサー(レミリア)を確認しました。 ※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。 ※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています ※グリーフシードを地球外由来のもの、イルミナに近い存在と推察しています。 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]魔力消費(中)疲労(小) [装備] [道具] [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。 2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。 3.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり 4.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す [備考] ※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。 ※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました ※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。 ※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています BACK NEXT 063 呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」 投下順 065-a 聖なる柱聳え立つとき 063 呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」 時系列順 065-a 聖なる柱聳え立つとき BACK 登場キャラ NEXT 055 僅かな休息]|[[夜科アゲハ&セイバー(纏流子) 068 おかえり聖杯戦争
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日常に潜む妖怪◆A23CJmo9LE 『それでさやか、動くといっても当てはあるのか?』 目的地も何も言わず歩き出した少女にエレベーター内で問いかける。 『んー、どこに行っていいのか全然分からないし、とりあえず散策して地理を把握しといたほうがいいかな。一通り街を回ってみようよ』 向こう見ずというか前向きと言うか、朗らかに答える少女に微笑ましいような呆れたような笑みを内心浮かべる。 『それならまあ病院を把握できたのは悪くないか。NPCというからどんなものかと思えば設備や人員はまともそうだ。俺達が世話になる心配はあまりなさそうだが、宝具による病などがあるかもしれん。知っておいて損はない』 二人とも再生能力を持ち、さやかは他者の治癒も可能とはいえ、何が起こるかわからないのが聖杯戦争。そう考え戦略的な思考を進めるバーサーカーだが… 『ああ、うん…そうだね。そういう意味もあるかもね』 自身には思いつかなかった発想にさすがは英霊、と感心する。しかし彼女とて何も考えずにここに来たわけではない。 思い出すのは二人の姿……かつて恋焦がれた幼馴染と、今もなお尊敬する魔法少女の先輩。 彼を助けるため、彼女を遺志を継ぐために自分は魔法少女になった。病院のベッドに横たわる者、病院を守るために命を散らしたもの。 美樹さやかにとって病院はあらゆる意味で戦いの原点であり、戦争のスタート地点にこれ以上の地はない。 だからこそ覚悟を決めるためにも彼女はここから聖杯戦争を始めようとしたのだ。 『よし、それじゃあ改めて出発!』 内心の決意を新たにしながらも態度は変わらず。これも一種の才能だろうか。 患者でも見舞いでもない少女を訝しげに見る目は少なくないが気にせずロビーを出る。 そして病院近くのバス停に向かい、扉の閉まりかかるバスに霊体化したサーヴァントと共に慌てて乗り込む。 サーヴァントは無賃乗車になるが、さすがにそこまで目くじらを立てるほどではないだろう。 『ギリギリ間に合った…がどこで降りる?周遊バスではないようだが』 『所持金とかも忠実に再現されててね…女子中学生にあまり余裕はないから遠くまでは無理。幸い通学定期でバス使ってることになってるから圏内でどっか適当に降りよう。ぶらり旅ってやつ?』 お嬢様ならよかったんだけどねー、などとぼやくさやか。幸運にも自分たち以外乗客のいないバス内で席に着く。 霊体化して座る必要のないバーサーカーは前方の電光掲示を眺めると 『このバス、学校とは逆方向に向かっているが、その定期はそんなに範囲の広いものなのか?』 『えっ嘘?うわ、ホントだ。あっちゃー使い慣れてないから間違えちゃったか』 定期券をもってこまめに利用しているのはあくまで設定上のことであって、実際の彼女はほとんど利用したことがない。おまけに駆け込み乗車なんてするから、ホテルなどのある中心街からは離れていく。 道理でラッシュアワーなのに空いてると思ったよ、などと現状にも納得する。 『一つか二つで降りれば財布へのダメージは減らせるが…強行突破しても俺は構わんぞ?なにせ今は戦時中だ』 『何言ってんの!?駄目に決まってんじゃん!』 理知的に振る舞う己がサーヴァントから予想外に荒っぽいセリフが出てきて驚く。 それでも財布の寂しい身としてはその発言に惹かれるところもあって…いや正義の魔法少女がそんな真似をするわけにはいかないと自制する。 『もう、次の停留所で代金払って降りる!で、その辺散策!とりあえず公衆電話とか参加者とか探すよ!』 『わかったわかった。そうかりかりするな』 雑な対応…だがマスターの方針を軽んじるわけではないようだ。 『はぁ~、属性善なんじゃないの?真っ当な英霊がバス代けちって犯罪行為とか勘弁してよ…』 『さて、生憎と元は不良学生でね。信心深い性質でもない。そもそも属性善と言うのは一般的な善性に限らない。俺は自分なりの正義を貫きはしたがそれが他人に、ましてや神だの聖杯だのにどう思われたかは分からん。 属性混沌というのは社会的な規範に囚われないということ。つまり俺の属性、混沌・善というのは世間一般とは重きを置く大切なものが違う者、というわけだ。 ……だからさやか。今回は俺が折れるが、戦闘中や食事、宿など生き死にに関わることであれば、俺は君の倫理観やルールよりも君の命を優先するぞ』 ルールよりも重んじるものがある。他を犠牲にしても君を守る。 それはなかなかに魅力的な文句でらしくもなく照れが入ったりもしたが 「次は、終点――」 アナウンスが聞こえ、その不自然さに冷静さを取り戻す。 『なんだ、もう終点か。まだ街の真ん中のようだが』 『……気になるね』 よほどの田舎で停留所が離れているのかも…とも考えるが背後には大きなビル群が見える。それなりに大きなこの街でバスが先に進まないというのは些かニーズにあってない。 一つ分の代金で終点まで来たのは幸運だが、まだ随分と進めそうだ。 『行こうか。バーサーカー』 『ああ』 まっすぐ東へ歩み出す。少し歩いても変化は特に無いようだが、なおのことバスが進まないのが気にかかる。すると 「止まれ、さやか」 突然呼び止めるサーヴァント。実体化までして警戒し、後ろを振り返る。 「何かあったの、バーサーカー?」 「…正面に大きなビル群が見えるな?あれは先ほどまで背後にあったはずの風景だ」 そう言われ目を凝らすと確かにそのように見えるが、彼らは一度たりとも道を曲がっても引き返してもいない。 「うそ…バスがいつの間にか曲がってたとか、道が歪曲してたとか?」 「そんな単純なことに気づかないほど俺も君も馬鹿じゃないだろう。丁度今、突然に景色が切り替わった。つまりその疑問の答えは、この道の先にある」 そう言って二人はビル群を背に道を睨むと 突然道の先に多数のナニカが現れた。蜘蛛のようなもの、鳥のようなもの、恐竜のようなもの……共通点と言えば体に球状のものがあることくらい。 魔女のような不気味さを感じ、魔法少女の姿となって臨戦状態に入るが 「そんな警戒しなくていい。殺気はおろか戦意もないようだ。戻るぞ」 「ちょ、ちょっと!?」 そういって背を向けて元来た道を戻りだし、挙句霊体化までしてしまう。 『早くいくぞ。説明は道中歩きながらしてやる』 『……ああ、もう!』 しばらく警戒しながら後退していたが一向に動きがないので意を決してサーヴァントについていく。背を向けてもかかってこないので確かにバーサーカーの発言は正しかったようだ。 『どういうつもり?まさか逃げ出したの?』 色々と言いたいことはあるが直近のことから詰問する。すぐそばに敵がいるというのに背を向けるなどそれでも英霊なのか、と怒り露わに。 『まさか。あれの戦闘能力自体はそう大したものではない。サーヴァントはおろか腕利きのマスターなら十分勝てる。 さやか、君ならさほどの苦戦はしなかっただろう。退いた理由はあれが恐らくキャスターなどサーヴァントの手の者ではなく、また現時点では敵ではない可能性が高いということだ』 マスターの怒りをいなし、推論を述べるサーヴァント。狂戦士に似合わぬ知的な振る舞いは考察相手が怪物であるが故か。 『どういうこと?あれが敵じゃないなんてなんでわかるの?野生動物にしちゃグロテスクがすぎるよ』 『あれは俺に近似した存在、人間に何か別の生命体がとりついているものだ。近い存在だからわかる。恐らく元はNPCだったのではないか。 だが俺たちが引き返させられたのと同じかは分からんがむこうもこちらには干渉できないようだったな。まるで魚が陸上では呼吸できないように。 加えて不自然な個所で途切れたバス、先に進めない道……参加者が聖杯戦争を行う地を出ないようにしている仕掛けが今俺たちが体験したものなのだろう』 見ているものは同じでも観えているものは異なる…魔法少女と言う戦士の端くれとはいえ、英霊の経験値と洞察力には舌を巻くざるをえない。 『つまり私たちはあの先に進めないってこと?』 『脱出にはテレホンカードがある。逃げられなくとも決着すれば問題はないはずだ、楽観的に考えるなら。 もし強行突破を考えるなら、仕組みを知る必要があるな。精神干渉により無意識のうちに引き返してしまっているのか、空間が湾曲しているのか。 強力な精神耐性スキルか精神操作能力、もしくは対界・結界宝具の使い手と協力する必要があるかもしれん』 情報が少なく十分な考察とは言えないが探索の甲斐はあったといったところだろうか。 『それじゃあこれからは天戯の出方を見るの以上に他の参加者との協力も考えたいね』 『そうだな。ひとまずは天戯の名を呼んでいた男を見つけられればいいのだが…情報が増えた以上方針も変わってくるな…ん?』 道を歩み、方針を固めていると何かを聞きつけたらしく黙考し出すバーサーカー。 考えがまとまったようで実体化して道端に停めてあったバイクに近寄ると 「ちょ、何やってんの!?」 自己改造のスキルの応用で一時的に合体したのか無理矢理エンジンを起動させていた。 「救急車のサイレンだ。追うぞ、乗れ」 「え、なん…」 「いいから早く!」 慌てているわけでも切羽詰っているわけでもないが急いだように声をかけメットを投げてよこす。 仕方なくかぶって後ろに座ると途端に法定速度など知ったことかとばかりに走り出した。 『今度はどういうつもり?救急車って?』 高速のバイク上でメットをかぶっては会話にならないと考え念話で問いかける。 バスでの発言といい、先ほどの振る舞いと言い振り回してくれるサーヴァントにいい加減呆れ気味だ。さすがはバーサーカー、といったところか。 『こちらに向かってはいないが、救急車が出たのは聞こえた。耳は人よりいいんだ。ようするに怪我人か病人が発生したということ…聖杯戦争の会場でだ』 『なるほど。どっかでやり合ってるやつがいるかもってことね』 『そうだ。正確にはやりあっていた、だろうが。負傷したのが、救急車を呼んだのが誰かはわからんがそこで戦闘があったのなら何らかの情報が得られる可能性は高い』 戦場は刻一刻と動く。それなら急ぐのも納得だが… 『いやでもNPCの事故とか病気とか関係ない事だったらどうするの?』 当然無関係な事象である可能性は神ならざる二人には否定できない。NPCが病気するのか、事故を起こすのかも彼らにはわからないが。 『それならしかたない。あてのない散策に戻るだけだろうが、今はこの盗品のバイクが利用できるだろう。 先ほどの異形は人間に何かが憑りついたものだといったな?全てのNPCはあれの材料、つまりは天戯の手駒だと考えられんか?意に沿わぬものをどうにかするためのな。 不登校、盗難、二人乗りにスピード違反。現状俺達はかなり目立っているはずだ。何らかの干渉があってもおかしくはないだろう。 加えて言うならあえて目立つことにより天戯だけじゃなく他の参加者との接触も狙うぞ』 『な、なるほどねー』 思い返すのはバーサーカーの言葉。〈願いを叶えるその過程はけっして間違えてはならない〉、〈世間一般とは重きを置く大切なものが違う〉。 そして赤い魔法少女の姿。彼女は粗野な言動の内に優しさを秘めていたが、バーサーカーは知的な言動の裏には意外と暴力性を秘めている。 秩序を重んじるさやかには少々受け入れがたい方策ではあるが、代案も思いつかない。NPCや天戯を気遣うのもおかしな気がし、しぶしぶではあるがその策を受け入れることにした。 『患者がマスターならそのまま交渉に入る。癒しの術はいい交渉材料になるだろう。これなら病院内でも交渉は可能だからさほど慌てる必要は無い。 戦闘に巻き込まれたNPCなら周囲に聞き込みだ。おそらく野次馬や警察も来ているはずだからすぐに戦闘の跡地は分かるだろう。 関係がなければNPCとの接触を行うしかないか。警察がいれば俺達を捕えようとするだろう。もし力ずくでマスターを抑えようとするなら先ほどの異形になる可能性が高いだろう。 そこから天戯の能力や居場所のヒントを狙うなら警察のNPCと接触するのが狙い目か』 混沌たるサーヴァントの方針に多少の不満のようなものはある。それでも大切なものを見失わない、頼れる相棒と共にいるならば不安はないし、何も怖くはない。 【C-8・西部/一日目・早朝】 【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]ソウルジェム [道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる 1.救急車の後を追い、状況に応じて動く 2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う [備考] 【不動明(アモン)@デビルマン】 [状態]健康 [装備]なし [道具]バイク(盗品) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる 1.救急車の後を追い、状況に応じて動く 2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う 3.マスターを守る [共通備考] ※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています ※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています ※追い駆けている救急車はセイバー(纏流子)が間桐雁夜のために呼んだものでD-4の公園に向かっています [地域備考] ※マップ外に出ようとするといつの間にかループしたように戻ってきます。またマップ外には禁人種(タヴー)がいますが、中に入ってくる様子は今のところありません。 BACK NEXT 024 『僕と協力して同盟相手になって欲しいんだ』 投下順 026 火種 の オカリナ 024 『僕と協力して同盟相手になって欲しいんだ』 時系列順 026 火種 の オカリナ BACK 登場キャラ NEXT 025 だからね、あたしは大丈夫だよ 美樹さやか&バーサーカー(不動明) 032 これって魔法みたいだね
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キャラシート【としあきの聖杯戦争TRPG】 泥 名前 ブリジット・メイア・ウィンザー・ライジェル 英名表記 Bridget Meir Windsor Rigel 誕生日・年齢 11月11日・16歳 身長・体重 159cm・45kg 血液型 A型 好きなもの 王道、紅茶 苦手なもの 卑劣な手段や策謀、カレー 特技 降霊術 起源 王道 属性 秩序・善 魔術属性 水・風・土 魔術系統 降霊術、召喚術、元素変換魔術など 魔術特性 支配 魔術回路 質:A / 量:C/ 編成:正常 略歴 現英国王室・ウィンザー家の傍流にあたる家系・ライジェルの若き当主。 父であるグレゴリー・ライジェルは多方面に優れ有力な当主であったが、朋友であった同盟家の裏切りを受け派閥争いに敗北。 その過程で呪殺された父の跡を継ぎ、弱冠14歳で当主の座に就く。 グレゴリーの優れた手腕を完璧以上に受け継いだブリジットは侮られる中でその才能を如何なく発揮。 僅か2年で傾いていた勢力図を塗り替え、元同盟家や敵対勢力を退け、再び元の地位へと返り咲いた。 その際に王家から「ウィンザー」姓を名乗る事を許され、彼女の代からその名前を採択している。 英国政府より「率爾発生特異点夢覚処方機関」――通称デスペルタドールによる、夢界事象への対応を要請され、第三夢界調査に際して同組織に合流する。 聖杯戦争儀式についての知識は有しており、セイバーを召喚し事態の解決にあたる。 人物 白いドレスの様な装束に身を包んだ、容姿の上ではまだ幼さの残る少女。 プラチナブロンドの髪をショートカットに切り揃え、透き通る乳白色の肌をあまり露出しないよう金縁刺繍のローブを纏っている。 家督継承後の手腕を「必要とはいえ汚い手段にも頼った故の恥」と認識し、君臨する者の責務として潔白且つ気高くあることを誇るなど、 その精神性は正しく高貴なる者(ノブリス)を体現している。 事実ブリジットは「王」としての素質を持って生まれ、知識や経験を積むにつれ上に立つ者として成長している。 とはいえ、ブリジット自身は王や統治者になりたいわけではなく、その精神性と環境がどうしようもなく王道であるだけ。 本人は寧ろ魔術師として大成したいのだが、能力はともかくその清廉さが災いして今以上に進まない事に悩んでいる。 但し自身の立場とそれに伴う責務は正しく自覚しているため、持ち得る権利と義務を正当に振るう事を心掛けている。 同時に「人の上に人あらば、それは機構として機能してはならない」という自論を持っており、「国の為の王」という在り方を嫌う。 王が王たるには民の為に在り、民無くして成立する国は無い。然し王もまた、その国に根付く民である。 故に彼女は一方的に非ず、その恩恵の流動をこそ大事にした義務の在り方を提唱している。 +人間関係 人間関係 セイバー デスペルダドールの特殊事象対策として召喚したサーヴァント。雷鳴の皇帝の腹心、当代最強の軍人皇帝。 能力 様々な系統の魔術を修めているが、特に降霊術に秀でている。 ライジェルの降霊術は通常の基盤に加え元素変換の延長線上にもあり、パラケルススの提示した四大精霊(エレメンタル)に関係している。 ブリジットはその中でも水の精霊ウンディーネと相性がよく、精霊の欠けた魂を補う事で自身に憑依させ、その力を借り受けることが可能。 これにより真エーテルを解き明かすことがライジェルの命題の一つでもあり、根源へのアプローチの一手段となっている。 魔術戦闘においては空気中の水分子に作用し、収束した水泡を急激に熱し水蒸気爆発を引き起こす『泡沫のクワイア』を主軸にする。 起源覚醒者ではないものの、その絶大な在り方は存在としての性質に大きく引っ張られている一例と言える。 事実ブリジット自身も自らの在り方を止める事ができないのか、魔術の研鑽という目的との両立に苦心している。 逆にその過程で手に入れた知識は豊富であり、各地の伝承や土着信仰に由来する魔術など比較的マイナーなモノについても知っている。 +主な魔術 主な魔術 『泡沫のクワイア』 「魔術師の本分は戦闘ではない。ですが、そうなる事を想定出来なければただの愚者です」 彼女の魔術戦における戦闘スタイル、及びライジェルの降霊術を用いた術式の名称。 空気中の水分子をウンディーネの力で操作し、急激な熱負荷を掛けることで水蒸気爆発を引き起こす。 魔術により引き起こされるが、水蒸気爆発そのものは物理現象であるため抗魔術などは意味を為さない。 純粋な火力もかなり高らしく、後先を顧みない最大出力であればカトラ山の噴火に匹敵するとも。 『剣たる騎士の叙勲(ナイト・オブ・オーダー)』 「――汝の身は我の元へ、我が命運は汝の剣へ。その使命、ヒトの世の現身として真理を守る防人となれ!」 聖杯戦争において、ブリジットが英霊召喚後に行う儀式魔術。 英国王家の宝器『慈悲の剣(カーテナ)』を投影し、騎士叙勲を模した儀式を行うことでサーヴァントとの相性を概念的に補強する。 サーヴァント側は一部能力値や魔力効率の上昇、ブリジットは令呪の強制力増加や指示の円滑化などの恩恵を得られる。 ブリジットとサーヴァント双方の承認が必要だが、無理強いをする気はないため最終的にはサーヴァント次第。 また、この『慈悲の剣』はあくまで形と最低限の性質のみを持たせた投影品であり、儀式礼装として以外の使用には向かない。
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聖‐judgement‐罰 ◆HOMU.DM5Ns 月の下で交わすものでなく 月を肴に交わすものでもなく 月の上で交わされるもの 配点(聖杯交渉)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ● 「あなた方に問います」 虚偽を許さぬ絶対の声だった。 怒りに震えた大声を叫んだわけではない。 むしろ逆。声はあくまでも静かなもの。表情は一切崩れず厳然としている。 静かであるがゆえに、気圧される。余分のない台詞は話題を逸らす事もできずいっそ容赦がない。 こちらを見据える瞳は鋭く、かといって強く睨んでいるという程でもない。 感情に流されず、あるがままの事実のみに焦点を当てる。 見た目だけなら、正純よりもやや年上でしかない金髪の少女。 纏う鎧を排したら、どこにでもいる純朴な田舎娘にも見えるだろう。 「聖杯戦争と戦争をする。その言葉がいかなる意図のものであるか」 それでも放たれた声は絶対だった。 裁定者の器(クラス)に嵌められた英霊の聖性を帯びた言葉で問う。 「此度の聖杯戦争を取り仕切るルーラー、ジャンヌ・ダルクの名において、嘘偽りのない答えを求めます」 真名(な)を明かした聖女の言葉は、この世界で何よりも重い響きをもって本多・正純に届く。 ……元々、予測の内ではあった。 正純達がアンデルセンとアーカードを補足するに至ったのは、深山町錯刃大学付近で起きた暴動のニュースだ。 この時期に、しかも夜に暴動だ。デモ活動が起きたでもあるまいに、聖杯戦争が関与した事件と判断するのはニュースを聞いた全員が一致した。 そんな公共の報道で流されるほど大規模な事件を聖杯戦争に関わる者が起こしたとすれば、ルーラーが現場に向かうのは自然な成り行きだ。 その中に正純達も飛び込む以上、相対することになると想定するのは難しくない。 民衆の暴動に、多数入り乱れるだろうサーヴァントとマスター。これだけでも大変な状況だというのに、そこにルーラーまでも介入してくる。 混迷の極みだ。接触のタイミングを間違えれば目標に辿り着くより前に足止めを喰らう。損だけを被る結果になりかねない。 だからこそ、時期を計った。ライダーからの補給物資(買い足してあったハンバーガー)を口に入れながらその時を待った。 参加者と接触し、その後にルーラーと対面できるようになる為のタイミング。 そして今は予定に概ね沿うルートとなっている。アーカード達との交渉が終え、混乱が収束しつつある矢先に現れた。 交渉を始める為に必要な条件は最低限とはいえ揃っている。だがあくまでもこれは前提。いまだスタートラインにすら立ってはいないのだから。 故に、命を賭けた駆け引きはここからだ。 ジャンヌ・ダルク。 オルレアンの聖女。乙女(ラ・ピュセル)。聖なる小娘(ジャンヌ・デ・アーク)。 フランスの王位を巡りフランスと英国が対立した百年戦争。劣勢に立たされたフランスに突如として神託を受けたと名乗り貴族の前に現れた田舎出の子女。 その存在を正純は知っている。過去の歴史再現でも彼女の功績は大きい。襲名者でなく実在した偉人本人に、畏敬を感じない事もない。 昔話に語られる神話の人物と違う、確かに現実に生きる人間が奇跡を起こしていく光景は、当時の人にはどれほど輝く星に見えただろうか。 曰く、説得力というもの。 軍事であれ治世であれ、指揮者として台頭してくる者が持つ魅力。求心力といってもいい。 暗示や洗脳、自らの意のままに相手の思考を支配、誘導する類のものとは違う。 それもまた指導者が弁舌で引き出す技術の一だが彼女のそれは別の要因だ。 見る側が、その印象から自発的に考えを改めてしまう天性の資質こそが、彼女が保有するもの。 例えるなら、昔の御伽噺に出る真実のみを映し出す鏡。 壁にかけられた聖画を地面に投げ踏みつける行為。 彼女の姿も、声も、後ろ暗い事情を持つ者にとっては全てが毒となる。 自分は何か間違いを犯したかもしれない。彼女の言葉を信じるべきかもしれない。 何の根拠もないままに、少女の言葉には逆らえないと、そう思わせてしまう。 「答えようルーラーよ。 聖杯戦争と戦争をする、という事の意味を」 心の中でのみ息を呑み、それをおくびにも出さず言葉を返した。 こちらを質そうとする威圧は感じる。裁く者であるルーラーとして、裁かれる者である正純と対峙している。 だが武蔵の副会長、交渉人として臨んだ数多の生徒会長や国の代表者と弁の剣を交わし合った身からすればまだ生温い。 この程度で竦むだけの肝は腹に収めてはおらず、また暴かれて怯えるような罪も犯した覚えはない。 「まず先に、誤解なきように一つ弁明をしておく」 だから正純は何一つ気負わずに無くルーラーに向かい合う。一方的に責め立てられるのではない、対等の立場として。 「我等は決して裁定者側との武力衝突による打破と排除、そしてそれによる聖杯の奪取を望むものではない。 聖杯への戦争とは、貴殿らに刃を向け、銃弾を放つ行為のみを意味するのではないということを、理解してもらいたい」 後ろの方で、ライダーが面白そうに口角を上げて笑みを浮かべている気がする。 ……頼むから、今は黙っておいてくれよな。 果たしてルーラーは、僅かに首を縦に下げた。 ……最初の関門は突破したか。 大げさなようだが、ここが大事な分水嶺だった。 この場で最も避けなくてはならない事態は、ルーラーからによる即座の制裁にある。 裁定者に与えられているという絶対特権を用いて、強制的にこちらを排除する視野狭窄な選択。 そんな真似をしでかすような輩を裁定者とはとても呼べまい。しかしそれを真っ先ににやられると終わりなのだ。 なにせ今自分達には後ろ盾というものがない。同盟を組んだサーヴァントも含めて四名、そのうち三は戦闘に秀でているタイプとはいえない。 シャアも正純も一騎にして千の兵に勝る強者ではなく、一個にして万軍を動かす「将」の器だ。 そしてその利もここでは失われている。味方になってくれると安心できる協力者。国家、コミュニティと切り離された状態で方舟に集められている。 ライダーにしても戦力面では大いに不足なのは否めない。まともに運用できるのがアーチャーのみでは分が悪過ぎる。 自らの意に反した者は一片の慈悲なく首を飛ばす、暴君の如き裁定であったならば、いよいよ正純に勝機はない。 横暴さを他陣営に示そうにも先に握り潰される。それを阻む手段がなく後に続く者はいなくなる。こうなっては交渉も答弁も全てがご破算だ。 その為にまず楔が要る。積極的に交戦するわけではないとアピールしておかなくてはいけない。 背を味方に頼めない以上、いつも以上に保身には注意しておくべきだ。 そして話を聞く姿勢を見せた事で同時に収穫も得た。 このルーラーはそこまで強硬には出てこない穏健派であるらしい。嘗めているわけではないが、そうであってくれればこちらとしても都合がいい。 聖女の代名詞のような真名。しかし歴史は必ずしも伝えられてる通りにとは限らない。 むしろ既に一生を終えた英霊は生前には抱かなかった願いを持つようになるかもしれない。 『国に裏切られ世界を呪った魔女』という解釈で、英霊になっている可能性も存在したからだ。 それほどまでに、かの英霊の駆けた生涯は激動だった。 英雄に相応しい活躍から一転、谷底に落とされる悲劇的な末路。 その過程で彼女がどこまで信仰的純潔を守り通せたかは諸説様々だ。 無念に思ったか。救済を求めたか。復讐を望んだか。そればかりは実際に体験した本人でなくては分かるまい。 望んで対立しているわけではない。対立などしなければそれが最良の選択だ。 しかしそれは叶わない。どうしても、どうあっても叶わない。 正純が聖杯戦争を否定する立場を崩さない限り、ルーラーが聖杯戦争を運営する役目を捨てない限り。そしてその可能性の低さは各々で確認するまでもない。 「では改めて申し上げる。ルーラー、ジャンヌ・ダルクよ。後ろに控える者を代表して私、本多・正純は提案する」 対立は避けられない。立場と役目は相容れない。 ならば。存分にぶつかろう。言葉を以て殴ったり殴られたりしよう。 互いの意見に信念、全て突き合わせ、気の済むまで容赦なく叩きつけ合おうじゃないか。 全員の立場をはっきりさせ、主張を纏め上げて、その果てに両者を融和させよう。 線が出揃えば点が新たに打てる。平行線であれ対角線であれ、どの線にも偏りのない平均の点を打てる場所が表れる。そこを我々の境界線にすればいい。 それが正純にとっての戦争の形。正純が望む論争の形。 「我々は、聖杯との交渉を望む」 さあ、戦争の時間だ。 絶対に負けられない交渉が、ここにある。 ● 「交渉……。聖杯を望むのではなく、拒むのでもなく、聖杯と交渉をすると?」 ルーラーの表情に僅かな困惑が浮かぶ。言葉の意味は解しても、その意図を計りかねると。 それはそうだろう。こんな要求をしてくる陣営が他にいたとは思えない。 仮にいたとしても、こうして監督役と直に交わす、などというのは本来なら早々やる事ではない。 ジャッジ 「Jud.我々はこの戦争の形態に疑問を抱いている。正しい戦争の形ではないと考えている」 だが正純は恐れず踏み出す。いつ崩れるかも分からない危険な橋に足を踏み入れる。 最初の一歩が肝心だ。この道は大丈夫だ、間違ってないと示す旗印の役が要る。 「聖杯。方舟。選別。戦争。殺し合い。これらには、ひとつを選べば全てが付随してくるような因果性は無い、どれも独立した要素だ。 それを一個に繋げ、戦争と定めている現状に私は歪みを感じた。アークセルの掲げる種の選別という目的にはそぐわないと感じた」 方舟と聖杯という、別個の伝承が合一している因果関係。 つがいと言いながら男女で組まれていない主従。 冬木という固有の地名。競争には不要なはずのNPC(いっぱんじん)。そして監督役。 ただ一組の勝者を選び抜くにしては不合理な点が数多くある。 「どうしても覆したい現実を抱える者達。奇跡に頼らねばならぬような望みを持っているわけではない者達。 どちらもみな等しく聖杯に支配され、戦い以外に願いは叶わないと、生存の道はないと突き付けられる。 準備もなく、覚悟も持たず、無差別に集められた彼らを"奇跡"の一言で掌握し、己を手に取るに相応しい種を選ぶと宣誓しながら殺し合わせる。 それが貴殿らが主導している、今の聖杯戦争の実情だ」 同じ方向に伸ばされる手を押し退けてまで叶えたい願いを持たぬ、闘争を望まない者達はおそらくはいるだろう。 だが彼らは願いが無い為に積極的に動き出せない。他の陣営を諌めるのに、監督役に睨まれるのに二の足を踏んでしまう。 「……断言しよう。それは本来無用の血だ。許されてはならない喪失だ。 罪無き者を、誰かの貴い願いの為の犠牲者に貶めるものだ。犠牲を出さずに目的を果たせたかもしれない者に、必要の無い罪を背負わせるものだ。 聖杯が真に万能たる器であろうともこの喪失は埋め難い」 必要なものは大義だ。彼らの背中を押して、前に先導するに足るだけの後ろ盾。 願いという、自己完結するが故強固な動機を持つ相手に対抗できるだけの、万人が認める正統性だ。 「故に私は聖杯戦争を"解釈"する」 告げる。 「方舟、サーヴァント、マスター。 いずれも私は否定しない。蔑ろにする気はない。 集められた者が死ぬ事なく望みを叶え、方舟も自らが認めるに足る"つがい"を得る。誰にとっても正しい形の戦争に改める。 これが先の貴殿の問いへの答えだ。"聖杯戦争への戦争"―――マスターの一人として、聖杯の意思との交渉の任を全うすべく、私はここにいる」 言葉を放つ。決定的な宣言を。 「返答を、裁定者(ルーラー)。 我らの要望に、応じるか否か」 目の前のルーラーに。後ろで見ているライダーに。共に進むシャア・アズナブルとアーチャーに。 まだ姿を見せていない、全てのマスターにも、この声が届くように。 今ここにいる人だけに聞かせればいいわけではない。 戦争の形を変えるには聖杯戦争参加者全員を巻き込まなければ実現し得ないのだから。 ……さあ、どう来る? ● ルーラーに言葉を投げかける正純。 シャア達は二人を同時に視界に収められるだけ後方に下がった距離で俯瞰している。 正確に言えば、ルーラーの進行を止めるように正純が先んじて数歩前に出た格好になる。 隣にはアーチャー、逆の隣にはライダーが共に交渉の成り行きを見守っている。 双方の表情は対極。後に起きる展開を読めず困惑を見せるアーチャー。待望の見世物を鑑賞しているように喜悦を隠さないライダー。 盟を組んだ自分達だけでなく、彼女の従者もまた主にこの場を預けている。 同盟を提案したのは正純。方針を掲げ主導しているのも正純。なればこそ、重大な場面では常に矢面に立つ覚悟が要る。 基軸を揺るがせないために彼女は身一つでルーラーに向かい合うのだ。 「…………」 ルーラーは黙したまま何も語らない。 話の始めこそ顔に驚嘆の色を見せていたものの、聞いていくにつれて平静さを取り戻していったのが離れても分かる。 教師に教えを熱心に聞く生徒のように。怠惰に聞き流さず、途中で声を遮りもせず聞いていた。 ……監督役としては、やや真摯に過ぎると感じた。 聖杯戦争への戦争。 台詞のみを受け取れば何とも大胆不敵な宣戦布告に聞こえよう。 実際そう宣言しているのにも等しいし、正純の立てるプランにはその道を選ぶ覚悟も備えている。 それを直に監督役に聞かせるのだから、これはもう外した手袋を投げつけるのにも等しいだろう。即刻処罰されてないだけでも温情だ。 だが今並べた発言の内容に限って言えば、決して聖杯との対立を是認しているわけではない意図で述べられていることが分かる。 今言ったのは要するに改革だ。聖杯戦争を、従来と別の形態へ改変させる要求。 これは単なる敵対行為とは一味違う。あくまでも提案を持ちかけにきている。 アークセルが種の選別を目的とするならもっとよりよい方法があるのではないかという、問いかけだ。 聖杯戦争を破壊するつもりは毛頭なく、まして聖杯を、アークセルを否定する言葉は使っていない。 つまり、明確な叛逆を口にしたわけではないのだ。 "目的の為には手段を選ぶな"とはマキャベリズムの初歩だが、目的の為にはやってはいけない手段というものがある。 非道であればいいというわけではない。効率のみを重視するのではない。 全ては目的を定めた利益が確かに手に入れるがためだ。それを見失えば手段と目的を履き違える羽目になる。 この人間同士での殺し合いで、見合う成果は得られるのか。結果をこそ望むのなら躊躇などせず、方針転換を厭うな。 ―――そう思うのだが、どうか、と。こう聞いているのだ。 詭弁、ではあるのだろう。どの道今の形態を壊す結果には違いないのだ。 しかし監督役は言っている。聖杯戦争についてある程度の質問には応じると。 正純は聖杯戦争についての質問の延長線上として聖杯改革の案を差し出している。従ってルーラーにはこれに応える義務が発生する。 一度話に耳を傾けた以上はもう逃げられない。是か非か、彼女は答えを返さなくてはならない。 しかし答えたところで十中八九出てくるのは『拒否』だろうと、シャアは踏んでいた。 信念と自信を持って訴えようとも所詮は一参加者の言。その程度で揺れる根拠でこの聖杯は稼働していない。 そもそも主要なシステムすら理解していない身で聖杯戦争を語ろうとは烏滸がましいと見なされても仕方がない。 ルーラーはその根拠を持ちだして正純の稚拙な論を一掃するだろう。 ……そして、それこそが狙い目なのだろうな。 ● 首に縄でも回されてる気分だ、 正純は心境を内のみで独白する。 思考の間は返答の選択か、あるいは処罰の厳選か。 どちらにせよこの空白は意義ある時間だ。相手の要求に即座に反応をせず一考してる、考えるだけの余地が向こうにはあるということ。 正純、ひいては一定のマスターには不足しているものがある。 それは個々の能力とは違う、だがある意味この舞台での前提となるべきもの。 聖杯の知識。アークセルに対する正しい認識だ。 事前に情報を纏め自ら月へと臨んだマスターではない、シャアや正純のような巻き込まれた形でのマスター。 そんな者達は事前に聖杯戦争に関する知識を埋め込まれ、与えられた上辺だけの知識を頼りに戦わなくてはならない。 人に個性や能力差がある限り真に公平な状態など存在しない。かといってこれではあまりに分が悪い。 その差を埋める手段として、正純は望んで聖杯戦争に参戦したマスターか、監督役との接触を挙げた。 情報源として確実なのは監督だろう。だがいかに質問を受け付けるといっても聖杯中枢に関わる重要機密を簡単に教えてくれるわけもない。 「聖杯戦争と戦争する」などと宣言をした相手となれば尚更だろう。 だが、こうして真っ向に異論を突きつけられたのなら。 聖杯と、聖杯戦争その根幹を糾弾され、改革を叫ぶ者が目の前に現れれば、どうするか。 武力を以て排除する、選択の一つだろう。しかし向こうは軽々にそれに及べない。 なにせルーラーのお題目としては、マスターとサーヴァント同士での戦いこそ聖杯戦争の本来望まれる形なのだ。 違反者が出るからといって自らの手で処断するのは、なるべくなら取りたくない手段に違いない。 良くてペナルティの発令までだ。それはこれまでの手緩いとすら見える裁定からも分かる。 剣を取れぬのであれば、口を開く他あるまい。 熱に浮かれた者に冷や水を浴びせる真似。憶測で者を言う相手に動かしがたい事実を突き付けて、論を折る。 同じ土俵で論破してこそ敗者に強い敗北感を与えられる。叛逆の芽を一掃するにはまたとない好機。 そして裏返せば、ルーラー直々から言質を取れる最上の機会だ。 欲する精度のある情報を手に入れるにはこうすればいいと思っていた。 監督役こそが聖杯に一番近い側の人物。その彼女達に自分を批判する根拠として、聖杯にまつわる情報を言わせる。 聖杯戦争と反目し排除されるべき異分子に対してならば、通常は開かせない口にも緩みが出る。 お前たちは間違っているとそう断ずる為には、必要な正答を提出しなくては証明されない。 ……当然だが、捨て身戦法も同然だ。 肉を切らせて骨を断つ、とは言うがリスクとリターンが釣り合ってない。これでは肉は向こうで骨はこっちだ。 だがそれで十分。肉まで断てればそれで上等。 少なくとも、肌を傷つけるまでは到達できる。そしてそれはやがて鉄壁を崩す楔に変わる。 理想を言えば、先のアーカード達を味方に引き入れた上でルーラーと見える状況が望ましかった。 狂信者であるアンデルセンに聖杯の真実を教え、抱いた猜疑を確定させ得る。 闘争を望むアーカードは知ったとて行動に大差はない。故にルーラーの処罰対象からも外れ、情報を外に持ち出せる。 知ればその分思考には幅が出てくる。真実は知る人が増えるだけで意味がある。結果は失敗したので今更の話だが。 大学周辺での騒動も収束して時間が経っている。慌ただしい住民の声も遠い。 正純は第一に言う事を言い終え、ライダーとシャア達は俯瞰の立場を通し、そして答えるべきルーラーは未だ口を開いていない。 この一帯だけは、空間ごと切り離されているかのように静謐としていた。 シャア・アズナブルとの同盟、アーカードとアレクサンドル・アンデルセンとの交渉。 これらは目的達成の地盤固めに重要であったが、絶対条件ではない。失敗してもまだ次の一手があった。 だがこれにはない。ここで選択を誤れば正純は終わる。 自分とライダーは処断され、協力していたシャアとアーチャーも罰を受ける。何事もなかったように従来通りの聖杯戦争が進行する。 そうさせない策は用意しているが不確定要素も多い。絶対はない。確率として最悪は常にあり得る。 シャア議員だけでも逃がさなければ―――状況に備え打開案を思案し始めたところで、 「わかりました」 ● 心臓が跳ね上がりそうになるのを抑えつける。 早合点するな。今のはただの返事だ。 ただの確認作業、次に出す答えにワンクッション置いただけのものでしかない。 一息吸うだけの間を空けて、ルーラーは返答した。 「あなた方の言葉は確かに聞き届けました。 ですがルーラーの立場として……その要望には応じる事はできません」 結果は、否定。 にべもない言葉にしかし正純は落胆するでもなく、 ……まあ、そうなるよな。 ここで簡単に折れるほどやわな精神ではない。お互い様に。 上手く行くのに越したことは無かったが、そう楽に事が運ぶのも楽観論だ。 十分に予想できた。だからここまではまだ計算の内だ。 話題を切り出す理由、会話を続けるきっかけを作れただけでいい。 「……我々はより正しく聖杯を担う者を選定する方策を望んでいるだけだ。それを受け入れられないと?」 「ルーラーは聖杯戦争の推移を守る者ですが、聖杯を管理しているわけではありません。 聖杯とはこの世界を創造したもの。舞台から戦いのルールに至るまでを設定したアークセルそのものです。 一度始まった聖杯戦争を取り止め、ましてルールを変更する権限は私達にはないのです」 「それでも他のサーヴァント達よりは聖杯との繋がりも深いはずだ。方舟からの通知伝令のひとつもあるだろう。 そこを経由して貴殿の声を届ける事も可能ではないのか?」 「それは我々の管理を超えています。街の統制等の機能ならともかくシステムそのものへの干渉など到底認められないでしょう」 「では―――」 「いえ―――」 繰り返される質疑応答。 正純が問えば、ルーラーがそれに答える。そんなやり取りが何度か交わされる。 要望は悉く跳ね退けられる。ルーラーから聖杯への進言は不可能だと。 本当だとは思う。が、全てを話してるとは思えない。 報告の際に、一意見として混ぜておくだけでもいい。そうすれば少なくとも可能性だけは提示できる。 あるいは報告の段階を飛ばして直接観察しているのかもしれない。 会場が方舟内部にあるのならそれもまたあり得ることだ。 だとすると……やはり確実なのは、聖杯自体との直接交渉しかないということになる。 「……先に言ったように、我々は現状の聖杯戦争を良しとしない立場を取っている。 貴殿らからすれば、その意図はないとしてもやはり障害として映ってしまう一面もあるかもしれない」 そう思った正純は一端矛先を変えた。 「だが―――それならそもそも呼ばなければ済んだはずだ。なのに、私のように明確な願いを持たない者もこうしてここにいる。 我々のような、聖杯を望まない者と真摯に聖杯を欲する者を一緒くたに混ぜるのは、願いある者からすれば自身の願望を侮辱として受け取られかねない」 背後で控えているシャア・アズナブルにも、聖杯に託すべく願望は持っていなかった。 潜在的に願うものはあったが、それは何もこんな形式でなくともよかったはずだ。正純自身にしてもそうだ。 正直に話すには余りに馬鹿馬鹿しい経緯で方舟に来てしまった。 何故託すものがない者、自身を望まない者に聖杯は資格を与えたのか。 「参加者を招聘するのは私でなく聖杯によるものです。 地上から方舟への道程を繋ぐ切符(チケット)。ゴフェルの木を手にした者をアークセルは己が内部に招きます。 そこに資質や条件、選定の基準があるかは私には図れません。ですが呼び出された時点で彼らは聖杯を得る資格を手にしている。私はそう思っています」 ルーラーは答える。 「聖杯が望むのは最後まで生き残ったマスターとサーヴァント。そこには能力や人格の優劣、願いの有無も関係ありません。 何を願い、何処を目指し、どう動くか、それは各々の自由。因果が導く道は無数にありどれが正答である保証もない。 ルーラーが"相応しい"とする在り方を強制もせず、あなた達の方針にも極力干渉致しません。 全てのマスターとサーヴァントを迎え入れ、全員が勝利者であるのを願うのみです」 ……全員が勝利者である? 最後の言葉の意味が気になるが今は後回しにする。それより思考を充てるべき事がある。 ルーラーはふたつの重要な事実を口にした。 ひとつ目は"聖杯の意思"。参加者を選別したのは聖杯自体が選択したものと確かに言った。 正確には"ルーラーが選別に介在していない"だが、彼女以外に意思があるものならそれは実質聖杯、それに準ずる意思でしかない。 推測が事実へと確証が取れたのは大きい。 そして……ふたつ目。これはどこか引っかかるものを感じる言い回しがあった。 "最後まで生き残ったマスターとサーヴァント"。 方舟の役割を鑑みれば単に強さ……戦闘力のみに重きを置かず、生存力をこそ重視するというのも分かる。 だから、単純に一対一で性能を競い合わせる形式にしない……? 何かが引っかかっている。正純の捉えているものとの食い違いを感じる。 「無論、聖杯戦争を無視し殺戮の混沌を撒き散らす者がいたならばそれを正しに動きます。その為にこそルーラーはいるのですから」 思考を別に働かせつつも、正純はその台詞を見逃さなかった。 「現状、抑止が正しく機能しているものとは私は思わない」 B-4地区のマンションで起きたという違反。そして錯刃大学での暴力騒動。 運営の抑止力としての役割を正純は疑っていた。比較対象がないから何とも言えないが、お世辞にも十全に果たせているとは見られない。 「そうもこの方式を維持するのが正しいと規範する、その根拠を教えてもらいたい」 今が聞き時だろう。 交渉の目的たる核心の追及へと話題を進めた。 「我々は何も知らない。如何なる成り立ちでこの聖杯戦争が始まり、どうしてそれが殺し合いでなくてはいけないのか。 何故、予選が終わった今でも同じ土地を戦場に使用しているのか」 それはライダーやシャアとの話し合いでも共通してる考察の一片だった。 「この戦争の悪なる部分は、賞品となる聖杯の正体があまりに不明瞭だからだ。 ムーンセル、アークセルが何であるかは知っている。だがそれは全て聖杯側から一方的に与えられたものでしかない。 状況も分からぬまま外付けで断片的な情報を脳に刻まれて、それを求めるなどどうして出来るというのか?」 聖杯は貰って嬉しいトロフィーではない。 そうした価値もあるだろうが大多数はその機能に目をつけている。信頼性のない商品など誰が使うものか。 なのに方舟には、聖杯を求め殺し合いを進める者がいる。 そうするしか他にないから。手をどれだけ伸ばしても永久に届かない。一生を懸けてもまだ足りない。 普通では叶わぬ悲願の成就を渇望するからこそ彼らは選び、方舟は選んだのだ。 「そうまでして求めた聖杯に偽りがあれば……これほど彼らに対しての侮辱はない。 善悪に関わらず、餓い抱いた期待を目の前で打ち砕く。願いを虚仮にして嘲弄する」 それはなんと呼ばれるのか。 「最悪と呼ばれる行為だ。人類種の保存という、方舟側の大義すら消失する」 そんな最悪の可能性を避けるにはどうすればいい。 「資格があると言ったなルーラー。その通りだ。 我々には資格がある。情報を要求し、検証し、選択する権利がある」 全参加者の聖杯に関する情報を共有することだ。聖杯についての正しい認識を持たせることだ。 正確性に欠けたものではない、裁定者側からお墨付きのもので、だ。 「そうして考えた上で、我々は選択すべきだ……他者の命を奪う道を進むのか、止めるのか。 それは聖杯という高次の存在から授かるものではなく、個人毎の意思で決めねばならない」 想像の通りではないと知り願いを諦める者。矛盾を知りつつもなお己の道を通す者。 戦争を望む者。厭う者。 多くの道が分かたれるだろう。その過程で立場が明確になる。 言ってしまえばわざわざこうしてルーラーに直談判してるのもその辺りの曖昧さにあるものだ。 間を空け、次はルーラーの返答を待つ。 ジャンヌ・ダルクには、異端審問の際に専門家が舌を巻くほどの弁で審問側を圧倒したという逸話がある。 これまで投げた問いに対して淀みなく返答してみせたのもそういう理由だ。 それが神の奇跡の一端であれ本人の思慮分別であれ、無知な田舎娘でないということを意味している。 しかし、 「……」 ルーラーは唇を結び、沈黙している。 妙だな、と正純は思う。 黙秘する事自体ではなく、変化したルーラーの表情を。 黙秘権を使用しているでもあるまい。躊躇とも違い、どう答えたものか逡巡しているような様子。 それはまるで―――ではないか。 頭の中である考えが浮かびかけたところで、ルーラーは口を開いた。 「……その質問には答えられません。いえ、そもそも答えようがないともいえます。 裁定者はこの聖杯戦争を恙ない進行の為に存在する。翻せば、それ以外の役割は求められていない。 聖杯戦争が起きた理由、その成り立ち……そうした機密は何も知らされていないのです」 「な……!」 驚きの声。 思考を止めることなく次なる言葉を引き出そうとしていた正純の計算が乱れた音だ。 それでも、それでも正純の耳は常時通り働いていた。一言一句たりとも聞き逃さず、その意味をたちどころに理解する。 理解したからこその反応、狼狽だった。 「ルーラーとして参加者に受け答えするだけの聖杯に関する知識は保有しています。ですが真に秘匿すべき情報については持ち得ません。 僅かな確率であっても、私から情報が漏洩するのを防ぐ措置なのでしょう」 ……どういう、ことだ? あまりにちぐはぐすぎる。 裁定者側が聖杯戦争の正体を知らない。教えられてないなど考えられない。 造反、漏洩を防ぐ為。単なる走狗に対してであればまだよかった。聖杯の端末に等しい、それこそ意思のない機械であれば。 だがそれを意思持つサーヴァントに適用させているのが正純には解せない。面倒だろう、それは。 聖杯の意思の代弁者としてAIなどいくらでも作れたはずだ。それなのに聖杯はわざわざ情報統制を強いた上で、 明確な人格を持ち、過去に生まれた人間、歴と存在している英霊をルーラーに任命し召喚している。 労力を惜しんだから既に在る、条件を満たす英霊を選択した?ものぐさにもほどがあるだろ……! 「疑念を持たないのか、ジャンヌ・ダルク……この方舟に。この聖杯に。聖女である貴殿はこの戦争に納得しているのか? "これ"が貴殿らの信ずる御子の聖遺物足ると言えるのか?」 「承知しています。この"聖杯"は御子の血を受けた正真の杯でなく、ムーンセルという月の頭脳体を称したもの。 その演算処理能力を以て成される願望器としての機能を指して聖杯と字名されているものです。 "方舟"、人がアークセルと呼ぶそれもムーンセルとはまた独立した、魂を擁する揺り籠を目的とした古代遺物(アーティファクト)。 ……聖者ノアが造りたもうた真なる方舟であるかは、私には答えかねますが」 矛盾の根幹を突く言葉。 信仰に傾倒する程縛られる教派の教義にもルーラーは揺るがず。 そう……宗派の相違による衝突など彼女自身が身を以て思い知っている。 「ですが真贋はどうあれ、ムーンセル、そしてそれと接続したアークセルは願望器としての機能を持ちます。 容易く世界を変容させる力。人の望みを汲み上げる知恵の泉。いつしか人は、それを聖杯と呼んだ。 その争奪の経緯を総称して、やがて聖杯戦争という名が生まれました」 つまり、それは。 「……聖杯と名付けられたものを奪い合うのであれば、何であれ聖杯戦争というわけか」 「『私』が存在する世界に限れば、ですがね」 ルーラーは肯定した。 「ですので、贋作であるから、教義に反するからという理由で疑いをかける事はしません。 我欲を求めるのは人の本能。それが災厄をもたらす事がなければ叶えようとしても構いません。 もとよりここに集ったのはそれぞれ別々の人理を紡ぎ上げた世界の住人。信ずるものが異なるのは当然の話。 今の私は主を信じた小娘ではなくルーラーのサーヴァントとして求められたが故に」 知識の差が出始めた。 一世界から出でたに過ぎない正純と、英霊として多数の世界の知識を有するルーラー。 立ち位置からくる認識の差だ。知識の差は視点の差を生み、捉え方の違いを生む。 この場合のルーラーは信仰上の聖杯と願望器の聖杯を分けて考えているように。 あらゆる異世界に同数の宗教があり、同名の教派でも形態が違いそもそも存在すらしない時代と場所がある。 そんな住民を纏め集めた方舟で、ひとつの宗教観を絶対の基準に置けば破綻は避け得ない。 もしくは。はじめからそうした分け方ができる人間をルーラーに選んだのか。 そしてふと思った。 ムーンセル、そしてアークセル。このふたつの聖遺物が存在する、いわば基礎となる世界。 このジャンヌ・ダルクも、その"基礎世界"で生きた英霊なのではないかと。 「確かに私は全てを教えられてるわけではありません。それを承知の上で私はここに今も在ります。 聖杯戦争を恙なく進行させるルーラーとしてここに在る」 鎧姿の少女は厳かに告げる。 「ですが誓えることはあります。聖杯があなた方に伝えた情報―――それに偽りはありません。 肉あるものを集め、人類の種を保ち、使用者の願いを映す月の水面。宙の方舟は輝く魂を載せ天へ至る。それがアークセルの役割。 裁定者(ルーラー)と私(ジャンヌ・ダルク)、双方の名において譎詐せずに誓います」 最大限での潔白の表明だった。 監督役としての権利も、個の英霊としての誇りも全て賭けている言葉。だから軽く翻す事も出来ない。 決意は重圧と変性する。息苦しさを正純に押し付ける。 こうまで言われて疑うようではルーラーの全てを疑問視しなくてはならない。 そうすると今まで引き出した情報も信に置けなくなり、前提の崩壊になる。 「ここでの死を必要な犠牲と許容するのか?」 そして……完全でないにしても把握した。 彼女の行動と主張、その骨子にあるもの。古今の英雄を統制するルーラーのサーヴァントに選ばれた理由を。 「まさか。必要な死など世界にありません」 神への妄信。宗教の執着。一方通行の感情の暴走。 そんなものでは到達し得ない、目の前にすれば足が竦むほどの巨大で強大な意思。 「万人を救おうとも、一人の命を奪った罪が消える事にはなりません。 誰かを救う選択とは、そういう事です」 聖女の信念に正純は触れた。 BACK NEXT 156-b 話【これからのはなし】 投下順 157-b 聖‐testament‐譜 156-b 話【これからのはなし】 時系列順 157-b 聖‐testament‐譜 BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 156-b 話【これからのはなし】 シャア・アズナブル&アーチャー(雷) 157-b 聖‐testament‐譜 本多・正純&ライダー(少佐) ジャンヌ・ダルク
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第一回定時通達 ◆5fHSvmGkKQ 『――この『月を望む聖杯戦争』に参加しているマスター並びにサーヴァントの皆さま、こんにちは。 本来の記憶を取り戻し、令呪を宿し、サーヴァントとの契約を果たしてから幾日か経過している方もいると思います。 このたび予選期間が終了し“本選”へと進むマスターが確定したため、本日より定時通達を執り行うこととなりました。 今回の通達は私、カレン・オルテンシアが担当いたします。よろしくお願いします』 『既に聖杯から与えられた知識の中にもあったかと思いますが、通達は毎日正午12時に行われます。 なおこの通達は念話を用いていますが、遠隔及び多数同時に行っているため、非常に途切れやすいものとなっています。 しっかりと聞きたければ、せいぜい集中して耳を傾けられる環境を事前に整えておくことです』 『もし聞き漏らしなどがあった場合、可能ならば教会で対応いたしましょう。 もっとも私もルーラーも出払っているという場合もありますので、その際はあしからず。 また正午の段階での残存するマスターおよびサーヴァントの数に関するデータについては、検索施設からアクセスすることも可能です。 そちらではサーヴァントのクラスごとの数についても『方舟』によって公開されていますので、詳しく知りたい方はそちらへどうぞ』 『現時点で生存しているマスターは“28人”です』 『さて、改めて確認しますが、この聖杯戦争において“大量無差別に一般NPCを襲うこと”は禁則事項です。 全体への通達なので詳細は伏せますが、B-4地域にて重大なルール違反を行った方へ。 この通達をもって“警告”と致します。改善が見られない場合、次回は即刻ペナルティの付与を行うこともありますので、 自分の身の振り方を考えることね』 『そしてもう1点。たとえNPCを直接殺害等はしなかったとしても、 “この冬木の街の日常を著しく脅かすこととなる場合”、処罰の対象となる可能性があることをお伝えしておきます。 心当たりのある者は、以後それらを念頭に置くように』 『定時通達は以上です。 それでは明日の正午まできちんと生きていましたら、また』 ◆◆◆ 正午。教会の聖堂にて。 今この場にいるのは、監督役たるカレン・オルテンシアとルーラーのサーヴァント――ジャンヌ・ダルクの二人のみである。 あたかも見えない信徒に対して説法を行うかのように、祭壇に立っているカレン。 彼女の「定時通達」が終わったとみてジャンヌは各参加者とのパスを切り、カレンへと声をかけた。 「……ありがとうございました、カレン」 もともと通達はルーラー自身で行う予定であったのだが、カレンの強い勧めがあって、役割を交代していた。 二人での相談の結果、今回の通達ではB-4地域でのルール違反に対しての“警告”を盛り込むこととなったが、 違反の詳細が掴めていない現状で、ジャンヌがカレンほどに堂々と「ハッタリ」をかますことができるかというと若干の懸念があった。 もちろん役目である以上、職務に対して誠実にあたる心持も実力もジャンヌにはあるが、 中華飯店での岸波白野の問いがまだ尾を引いていたこともあって、カレンの申し出はジャンヌにとって正直なところありがたいものであった。 「いえ、お気になさらず。私自身通達をやってみたかったというのもありますので。 序盤から派手に立ち回っているのもいますが、そうでなくとも水面下ではみな動き始めています。 私の通達を経て、今後参加者たちはどう動いていくのか、 この聖杯戦争がどんな混沌とした様相を呈していくのか……想像すると実に楽しみです」 そう、神の信徒たるシスターには似つかわしくない嗜虐的な笑みを浮かべながら、カレンは言った。 ジャンヌは若干反応に困ったが、さほど間を置かずにカレンの表情が真顔に切り替わる。 裁定者の役割は、定時通達のほかにもまだまだたくさんある。そのことはカレン自身も理解しているのだろう。 「さて、通達も終えたところですし、これからどうします? 『泰山』で話した通り、私も現地へ赴いてみましょうか?」 カレンの反応を通して事件の真相を探る。 が、その条件は特殊でばらつきが激しい。カレン自身が言ったように、今回の件に対してカレンの体が反応するとは限らない。 闇雲に調査に臨んでは、先ほどと同じく徒労に終わる可能性が高い。 「『啓示』にあったマンション周辺で、異常は特に見受けられなかった。 NPC達の間で騒ぎ(エラー)や停滞(フリーズ)などが起きている様子もない。そうですね、ルーラー?」 「ええ。あくまで私の目で見た限りで、ではありますが」 ほんの一瞬ジャンヌの脳裏をよぎった弱気な考えが、顔に出てしまったのだろうか。 カレンは祭壇からおもむろに移動しながら、再度ルーラーに調査結果を確認した。 「……人の判断というものにはあいまいな部分があり、ある程度の“異常”は許容できるものです。 たとえヒトの常識から外れた『神秘』や本物の『魔』を目の当たりにしたとしても、 “気のせいだ”、“疲れていたのだろう”、“ただの幻覚ではないか”。 そんな風に考えたりして、異変も矛盾も看過してそのまま日常へと回帰することもできます。 それは『方舟』によって一般NPCとして再現されたデータであったとしても同様です」 「…………」 かつんかつんと静謐な聖堂に響いていたカレンの足音が、沈黙しているジャンヌの前で止まる。 「しかし閾値というものは存在します。 “NPC達の常識(ルーチン)で処理できる範疇を超える場合、その行為はこの聖杯戦争における規則違反であると見なされる”。 NPCの大量殺戮が禁止されているのも、聖杯戦争の舞台を維持する上で必要だからでもありましたね」 この『月を望む聖杯戦争』の参加者の中には、暗示や洗脳、その他の方法でNPCの思考・行動に介入することができる能力を持った者がいる。 しかしこの“幅”があるために、それらの行為自体はルールに抵触することではないとされている。 洗脳とはえてして当人にその意識はなく、またその人物の指向性を変えたり増幅するだけであったりするため、 個人の取りうる行動の範疇だと解釈することも可能であるからだ(もっとも程度や内容によっては充分ルール違反となりうるが)。 一方、“一般NPCへの度を過ぎた無差別殺戮”は明確な禁止事項として規定されている。 この『方舟』内においては、NPCに欠員が生じたとしても、新たに補填されることはない。 一度死を迎えたNPCは、その聖杯戦争の進行中に復元されることはなく、 以後そのまま「死亡」あるいは「行方不明」などの欠損した状態として扱われることになる。 街を構成しているのは人であり、支えている柱が欠けていくこととなれば――――コミュニティは瓦解する。 それ故の、禁則事項。 「……そういえば。これは是非についてではなく、ただの感想なのですが。 貴女のNPC被害に関する裁定は、私からすれば若干厳しめのように感じました。 これからは参加者同士の戦闘も激化するでしょう。建物も破壊されるでしょうし、巻き込まれるNPCの数も当然多くなる。 すべてに対処しようとしては、その身も令呪もいくつあったとしても足りなくなりますよ?」 急に変わった矛先に、ジャンヌは思わず息を呑むこととなった。 ほんのすぐ目の前で、カレンはジャンヌの紫の瞳をじっと覗き込んでいる。 その声は普段の平坦な調子ではなく“色”が乗っていて、口の端はわずかに上がってさえいる。 「それは貴女の裁定者としての役割への真摯さから来るのかしら。それとも――NPCへの同情心? 本選に進むマスターが確定した今、いずれ消去(デリート)されることが運命付けられた、ただの人形に過ぎないのに?」 「っ! それは……」 カレンの言葉に、ジャンヌは返答に詰まった。 参加者にルールとして伝えていたのは、“大量”殺戮の禁止。 “NPCに紛れている未覚醒のマスター候補の保護”という目的もあった予選期間中はともかくとして、 聖杯戦争が本格的に動き始めた今夜未明、倉庫群にジャンヌが“注意”に赴いたのは、まだ大きな被害の出ていないうちである。 付近にNPCはほとんど存在せず、明確な規則違反となりうる状況ではなかった。 過剰反応ではないかと。それはルーラーとしての立場というよりは、個人的な感傷に因るのではないかと。 そうカレンに言われてしまい、ジャンヌは強く言い返すことはできなかった。 「……まあ、話を元に戻しましょう。 ルール違反がなされているとの『啓示』は出た。しかし街の日常はつつがなく進行している。 この聖杯戦争において多少の無茶くらいならばルールの範囲内であると認められていて、『方舟』が介入するような事柄はそうそうない。 であるならば――これは“偽りの日常”。なんらかの方法を用いて表面が取り繕われているだけ……といったところかしら? もしくは今はまだ何もないけれど、そう遠くないうちに崩壊しかねないような状況にある。そんな可能性も考えられるかもしれないわね」 カレンはいつもの抑揚のない喋り方に戻って告げる。 二点目の話は、『啓示』が現在の違反というよりは“未来の被害”に対して強く反応したのかもしれないという話である。 そうであるのならば、被害が生じていない現時点ではそもそも証拠を集めることができないのかもしれないと、そんな可能性の話。 「さて、改めて問いましょう。――これからどうしますか、ルーラー? 遠坂凛たちの要請への返答も、おいおいせねばなりません」 『啓示』が出た違反行為について、自信を持ってペナルティを与えられるだけの根拠をルーラーはつかめていない。 さきほどの“警告”によって違反者が行為を改めるのならば、それでいい。 しかし警告が無視された場合。 規則違反が見過ごされ続けるとあっては、なんのためのルールであるか。 聖杯を得ようと必死なマスターは多く、サーヴァントにも反英雄的な性質を持つ者が多い。 あっという間にルールは形骸化し、抑止力としての効果を失うだろう。 ルーラーの令呪で強制的に従わせるにしても、それが可能な回数には限りがある。 間もなく遠坂凛たちとキャスターは交戦する。そうなると中立の立場としての介入は難しくなる。 また、「ボク、これからもおぉっと悪いことしちゃいまぁーす!」と、 さらに被害を拡大させることを宣言していた新都での事件など、懸念する事案は数多い。 ジャンヌはひとつ大きく呼吸し、覚悟を決める。 迷えば迷うだけ、動ける時間が無くなる。 再び顔を上げた彼女の表情は、毅然とした聖処女、ルーラーとしてのものだ。 そこに躊躇は存在しない。少なくとも、表面的には。 「そうですね、では――――」 【?-?/教会/1日目・正午】 【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】 [状態]:健康 [装備]:聖旗 [道具]:??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行。 1. ??? 2. 遠坂凛の要請をどうするか決める。 3. …………………………………………私は。 [備考] ※カレンと同様にリターンクリスタルを持っているかは不明。 ※Apocryphaと違い誰かの身体に憑依しているわけではないため、霊体化などに関する制約はありません。 【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】 [状態]:健康 [装備]:マグダラの聖骸布 [道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味 1. ??? [備考] ※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。 ※そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。 他に理由があるのかは不明。 [通達について] ※マスターおよびサーヴァントを対象に、ルーラーを介した念話によって行います。ただし睡眠中の者、集中状態にない者等には通じません。 ※正午時点でのマスターおよびクラスごとのサーヴァントの残存人数については、検索施設にて閲覧が可能です。 BACK NEXT 078-b 心の在処 投下順 080 対話(物理) 078-b 心の在処 時系列順 080 対話(物理) BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 078-b 心の在処 ルーラー(ジャンヌ・ダルク) 108 ゼア・イズ・ア・ライト カレン・オルテンシア 113-a 角笛(届かず) ▲上へ