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亜種聖杯戦争の設定 "聖杯大戦"その後、魔術協会は、その地の管理の権利を手に入れた。 その地では、"大聖杯"の喪失により、霊脈の均衡が乱れた。 そして、偶然にも、その地には、数十もの聖杯を呼び出すだけの魔力を有してしまった。 だが、"大聖杯"無くては、今後正規的な聖杯戦争をすることはできない。 ───ならば、"大聖杯"の復活の為に、霊脈の高いこの地を、"召喚の地"としりよう。 ───ならば、この地に別の"聖杯戦争"が起きないために、"亜種聖杯戦争"と名を騙り、"聖杯戦争"を続けよう。 そうして、魔術協会は"亜種聖杯戦争"を始めた。 シスターK シスターKの正体は、ブカレストの調停者(ルーラー)。 彼女は、聖杯に呼ばれたサーヴァントである。 彼女は、"聖杯戦争"に、干渉する気はない。 ───彼女は、只、籠の中で祈り続ける。 謎の男 coming soon ●■▲聖杯大戦 coming soon
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聖杯戦争炎上 ◆devil5UFgA 「あの人がどんな人だったか、だって?」 「アンタだって知ってるだろ、今でも追悼番組が作られるほどだぜ?」 「古事記に記されたマッポーの世に舞い降りた聖人。 約束された千年王国へと人々を導く救世主。 やっと、聖人の認定を受けたその時、しかし、卑劣なテロリストに殺された悲劇の英傑」 「ん? 俺の意見を聞いてるのか?」 「それこそ、特集番組で耳にタコが出来るほどに言っただろう」 「あの人は悪魔さ、聖人認定されようがね」 「俺は無神論者だがね、それでも信じざるをえない存在ってのもある。 あの人に会って、俺はそう思ったんだ。 あの人は俺なんかとは違う、別格さ」 「ラオモト=サンは実際神様さ、なのに、人間なのさ」 ――――だから最高に悪魔なんだ、人間なのに神様だからね。 ◆ 「ムッハハハハ!」 諸君らは聖ラオモトという聖人をご存知であろうか。 かつて、聖人認定を受けたその日、卑劣なテロリストニンジャに暗殺された悲劇の聖人だ。 マッポーの世に舞い降りた聖人、ラオモト・カン。 「も、申し訳ありません、ラオモト=サン!」 その聖ラオモトへと跪く一人のニンジャ。 ニンジャ……? そう、ニンジャだ! 聖ラオモトは神話的怪物であるはずのニンジャを跪かせているのだ! これもまた聖人たるラオモトの威光か!? 答えは、否だ。 ニンジャはラオモトの聖なる後光に跪いているのではない。 ラオモトが宿す七つのニンジャソウルと、ラオモト自身が持つ比類なきカラテに跪いているのだ! そう、聖ラオモトはニンジャ……ニンジャなのだ! 「気にするでないヘルカイト=サン!」 「ハ、ハハー!」 ラオモトの赦しの言葉を聞いてもニンジャ―――ヘルカイトはただひたすらに平伏していた。 その瞳には恐怖だけが浮かんでいた。 ヘルカイトはラオモトがただの聖人でないことを知っている。 いや、恐らくこの世で聖人から最も遠い存在。 暴君、己以外の民から全てを吸い取る者なのだ。 マッポーの時代の都市、ネオサイタマはラオモトのための都市だった。 その世界でラオモトは君臨していた、一人の狂った死神が現れるまでは。 「立つが良い、間違いは誰にでもあるコウボウ・エラーズと言うではないか」 「ハハー!」 そう言われてもなお平伏し続けた。 ヘルカイトは恐ろしさの中に、敬意を抱いているからだ。 ラオモトの前で無礼な真似は出来ない。 「確かにヘルカイト=サン、オヌシが運んできた案件、多くのシックスゲイツ・ニンジャが犠牲となった。 オヌシの偵察任務の不十分な結果と言えるだろうが。 しかも、この火災……聖杯はなんとも言わんが、オヌシの隠蔽工作であろう? NPCもそこそこ死んでしまったのではないか」 「オ、オユルシヲ、オユルシヲ! ラオモト=サン!」 「ムッハハハ! 気にするでない、ヘルカイト=サン!」 おお……なんたることか。 この二人は『そこそこ』という言葉で片付けられるNPCたちの魂なき哀しみを理解していない! 「泥棒がバレたら火をつけろと、かの英霊ミヤモト・マサシも言っておる! 聖杯=サンもルーラーたるワシの手足のオヌシの行動になんの問題提起も行わん! テすなわちワシから生じる行動は聖杯の意思、すなわちワシこそがルール! この場でムーンセルとのパイプを作り……また別の聖杯戦争において、ルーラーとして召喚されようではないか! ワシこそがルール! すなわち、ワシこそが聖杯! ワシのために戦わす! そして、憎きニンジャスレイヤーが現界した際には弄ぼうではないか!」 「さすがですラオモト=サン!」 「ムッハハハ!」 これが、これが願いを計る天秤の所業だとでも言うのか! ラオモトはルーラーであるその立場を良いことに、私腹を肥やしている! 死してなお尽きぬその欲望! 「ムッハハハ!では、ヘルカイト=サン、良きように、の!ムッハハハ!」 「ヨロコンデー!」 そう言って偵察任務に秀でたヘルカイトは飛びだっていった。 ラオモトにとって、聖杯戦争もまた児戯だ。 死して見つけたある種の世界。 その世界を漂うラオモトは聖杯によってルーラーとして招かれた。 この偽りのサツバツ都市に跋扈するサーヴァント。 彼らを殺し、魂を食らう。 ラオモトにはそれが可能であった。 【クラス】 ルーラー 【真名】 ラオモト・カン@ニンジャスレイヤー 【パラメーター】 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A++ 幸運A+ 宝具C 【属性】 秩序・悪 【クラススキル】 真名看破:B 「ルーラー」のクラス特性。 直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・宝具などの全情報を即座に把握する。 あくまで把握できるのはサーヴァントとしての情報のみで、対象となったサーヴァントの思想信条や個人的な事情は対象外。 また、真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなど隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要となる。 【保有スキル】 自己改造:D 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。 他者のニンジャソウルを奪い取ったラオモト・カンは自己改造スキルを持つ。 直感:A 戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。 研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。 すなわちカラテだ。 カリスマ:A(B) 大軍団を指揮する天性の才能。 Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。 本来Bランクであるカリスマスキルを聖人スキルを使って1ランク上昇させている。 聖人:- 聖人として認定された者であることを表す。 聖人の能力はサーヴァントとして召喚されたときに"秘蹟の効果上昇"、"HP自動回復"、 "カリスマを1ランクアップ"、"聖骸布の作成が可能"から、一つ選択される。 ラオモトはカリスマを1ランクアップを選択した。 【宝具】 『葬界六門(ソウカイ・シックスゲイツ)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:上限なし クロス・カタナ・エンブレムを代紋に活動する、非合法ニンジャ組織の威力部門担当ニンジャを召喚する。 最強のイーグルである己が動くことを是としないラオモト・カンの手足のような存在。 『シックスゲイツの六人』とそのアンダーガードに名を連ねたことのあるニンジャならば、ラオモトは例外なく召喚できる。 『慾張計画(デモリション・ニンジャ)』 ランク:C 種別:対魂宝具 レンジ:- 最大捕捉:- ラオモトはリー先生の「ヨクバリ計画」によって、元々の憑依ソウルである「ブケ・ニンジャ」に加えて六つのニンジャソウルを宿す事に成功した特異体質である。 常ならば一人に一つしか宿らないソウルを複数所持している。 ということは、それぞれのソウルの特性を引き出して、カラテ中にいきなり全く別の戦い方が出来るということ。 当然相手はラオモトが宿すソウルを知り得ないため、圧倒的なカラテも相まって非常に強力。 【weapon】 かの英霊ミヤモト・マサシが所持していたナンバンとカロウシ、二本の刀を所有している。 【人物背景】 ソウカイ・シンジケートのドンにして、七つのニンジャ・ソウルを同時に憑依させた悪魔的存在「デモリション・ニンジャ」。 平安時代の伝説的剣豪ミヤモト・マサシを崇拝し、彼が使ったとされる双子の刀「ナンバン」「カロウシ」を持つ。
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はじめての聖杯戦争 ◆qB2O9LoFeA 「おっ、いらっしゃいませー。」 その人物――便宜的に彼と呼ぼう――が最初に見たのは青い髪の少女が事務用らしいデスクの前でにこれまた事務用らしいイスに座って煎餅を食べている光景だった。 白一色の廊下。そこにデスクを挟んで立っている彼の顔を見ると「おぉっ!?もしかしてもしかすると‥‥」などといって少女は古めかしいMacを操作する。「とうとうあの世界から」とか「でも勝ち残れるかなー」とか「まあ予選次第かな」などと一人で呟いている。それに彼が困惑して声をかけようとしたとき、これまた古めかしいPHSが音を立てた。 「モッテイーケッサイゴニッワラッチャウーノワッアタシノハッ↑ズッ↑ピ。あ、もしもし?そっちもういれちゃっていい?うん、うん、なんかペース早くなってきたね。うん、そろそろルーラーさんにシフト代わるよ。んじゃねー。」 懐かしの着ウタならぬ着メロを響かせたPHSを切ると少女は彼に向き直りニッコリと笑う。 「おめでとうございます!こちらは第1回ムーンセル聖杯戦争受付です!詳しくはこの廊下の突き当たりにあります面接会場でご説明致します。あ、それとパンフレットどうぞ。」 そう言うと少女はデスクに山積みされた二つ折りの冊子を彼に渡した。彼の困惑は深まったが別の場所で説明するといわれた以上素直に従うのは彼の性格がそうなのかそれともこの異様な空間がそうさせたのか。 とにもかくにもデスクの横を通りすぎて彼は廊下を進み始める。少女の後ろにある段ボール――中には今手に持っているのと同じパンフレットがぎっしりと、恐らく百枚単位で入っている。それが何箱もあることを考えると千枚はおろか一万枚は下らないだろう。――に足をとられるも進んでいくが同じ光景を見続けているというのはつまらない。自然目線は彼の手にあるパンフレットへと向いた。 『第1回ムーンセル聖杯戦争~最強のマスターは俺だ!~』というタイトルの下で全身を金色の鎧で身を包んだ男が不適な笑みで腕組みしている写真が表紙だ。タイトル以外には『七番目のサーヴァントクラス決定!バーサーカー対ビースト完全決着!!』とか『スキルエラッタ プロトタイプルールとどこが変わったの?』とか『英雄王の英霊問答 第一回ゲストは仮面ライダーディケイドさん』とか『ついにあのエピローグが投下!?』などの煽り文句が並ぶ。 ページをめくると、左のページは七かけ二の十四のブロックに分けられていた。左の列にセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー←NEW!と並びクラスなるものの簡単な紹介文が書かれている。右の列にはスキルなるものが存在し、それぞれがどういった効果を持つのかが書かれていた。なかでも対魔力は太字で書かれていて、『魔力の代わりとなるものを用いた攻撃にも対応しました!』などとアンダーラインまで引いて主張している。 そして右のページの英霊問答というやたらきらびやかでこころもち材質も違うページを読もうとしたとき。 ! 今までなかったはずの扉が目の前にあった。 振り返れば白い廊下が延々と続きその果ては見えない。どうやらこの扉を開けるしかないようだと彼は悟ると銀色のノブを廻して部屋へと入った。 「お待ちしておりました。」 部屋へと入った彼をイスに座って迎えたのは黒髪の青年だった。どうぞこちらへ、という言葉と共にパイプイスを指される。彼は先ほどと同じようにデスクを挟んで青年と向き直った。 「上級AIのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと申します。」 そう言って頭を下げるとルルーシュは「規則ですので 価値 の測定を」というとその目に謎の紋様が浮かびすぐ消える。 彼はここがどこか、聖杯戦争とはなにかを尋ねる。それを聞いた青年、ルルーシュは一つ一つ説明を始めた。 「聖杯戦争とは今回我々『第1回聖杯戦争実行委員会』が主催を勤めます『第1回ムーンセル聖杯戦争~最強のマスターは俺だ!~』の略称です。」 「聖杯戦争は聖杯、つまり願望器の所有権を奪い合う戦いです。参加者の皆様には聖杯が再現した英雄をサーヴァントというプログラムとして操り、そのマスターとして最後の一組になるまで戦っていただきます。そして最後の一組には我々『第一回聖杯戦争実行委員会』から聖杯の所有権を譲渡いたします。」 「次に聖杯について説明します。聖杯は量子コンピューターを魔術的概念によって運用している自動書記装置です。地球が誕生してから地球に関する情報を全て記録しつづけています。それによって過去の英雄を再現することができるのです。」 「英雄を再現する際、一定の書式に基づいて再現されます。お手元のパンフレットの2ページを御覧ください。当聖杯戦争ではその七種類の書式に基づきサーヴァントという形で再現いたします。」 「マスターはサーヴァントを令呪と呼ばれるプログラムを用いることで使役できますが通常サーヴァントは自由意思を持ちます。サーヴァントの行動を強制させる場合令呪を一画以上使用してください。なお、一人のマスターには三つの令呪を予選参加時に支給いたします。令呪を全て使いきる、またはサーヴァントを失う等した場合マスターのデータは失われます。」 「今回、記念すべき第一回目の聖杯戦争を行うにあたりまして広くマスターの参加を募りました。有形無形問わず様々な伝達手段を試した結果、我々の予想を大幅に越える参加希望者が現れました。ですが、一度に適正に管理できるサーヴァントの数には限りがあります。そこで当聖杯戦争では臨時に予選を開催することになりました。」 「予選会場は『札幌』『仙台』『東京』『名古屋』『大阪』『高松』『博多』の七つの臨時サーバーで行われます。会場はそれぞれサーバー名の都市を再現しており、現地に配置されたエネミーを撃破することなどで本選参加のマスター及びサーヴァントを決定いたします。」 「お手元のパンフレットの四ページを御覧ください。そこに書いてある番号が参加希望者のIDです。参加希望者は聖杯戦争に道具を持ち込むことができますが、公正を期すために一度だけ元の世界に帰ることができます。その際再び聖杯戦争に参加するためにはお手元のパンフレットが必要です。また元の世界での準備期間は二十四時間とし、それ以上時間が経過した場合パンフレットが自動で消滅しますので遅れることのないようお気をつけください。また持ち込む道具は手に持てる範囲でお願い致します。浮遊、飛行できる物は持ち込む際それらの機能を無効化して検査いたします。ご了承ください。」 「参加希望者は予選開始まで一時データを凍結させていただきます。その後解凍の際一時的な記憶障害を起こす可能性がありますがただちにデータに影響はないものと考えられます。ご了承ください。」 「聖杯戦争のルールは事前に参加者への予告なく変更する場合があります。ご了承ください。」 「当聖杯戦争における参加者間のトラブルに『聖杯戦争実行委員会』は一切責任を持ちません。ご了承ください。」 「それでは さん。一時元の世界に戻られますか?もしくはデータの凍結に移りますか?」 「ルルーシュくんお疲れ~、さっきの人どうだった?」 「‥‥その名で呼ぶな連絡用AI。モデルと俺は関係ない。」 「えぇ~、でも運営用AIって言いにくいし。でどうだったの?」 「元の世界に帰ったよ。たぶん戻ってこないだろうな。」 「え!せっかくあの世界から来たのに!?あの世界ってたしか――」 二つの上級AIの会話する姿は、見るものが見れば既視感を得られるだろう。 もっとも所詮はただのデータ。ムーンセルが観測した人物の劣化コピーでしかない。 ムーンセルが外部の願望器と接続してもっとも興味を引かれたのは自らと似通った願望器だった。 その願望器は何万という人間のデータを集めその一つたりとも元の世界に帰ることはなかった。はずだった。 ある三人の人間の例外が発生するまでは。 そしてその願望器は、その例外が発生してすぐに消滅した。そのことは聖杯にあるシミュレートを行わせる。 なぜ聖杯は消滅したのか。 ムーンセルはその現象を観測するために動き出す。万全のセキリュティを整え、規格外の人数のマスターを集め、外部の願望器と接続しデータを集める。 そしてムーンセルは考えうる最高のAIを用意した。もっとも優秀でもっとも変化をもたらすであろうNPC達を。 ぶん、という音と共に突如二人の周囲が暗くなる。それを見て連絡用AIはため息を吐いた。 「ねぇ、セキリュティに廻すリソース減らさない?最近なんか体調悪いんだけど。」 「ただ処理落ちしているだけだ。何も問題はない。」 「いやいやいやまずいですよまだ予選も始まってないのにこれは!また『札幌』サーバー落ちてるし壊れるなあ‥‥」 「‥‥もうすぐ試験用に動かしている他のサーバーのテストが終わる。そちらのリソースを回せば対処は可能だ。」 「まあ元は全部ムーンセルだしね‥‥あっそうだ。エデンバイタルのことなんだけどやっぱりうまく接続できなかったよ。あっちの聖杯の消滅からアクセスができなくなってるみたい。神崎とローゼンは陽介くんが探してるけどなかなか見つからないっぽいね。あとアカシック・レコードはものすごい簡単にアクセスできたよ。『聖杯戦争やるのか!またあの殴り合いが見れるんじゃなっ!』ってムルムルって子が言ってた。やっぱ好きなんだね。」 「やはりムーンセル以外にもあの現象を観測していた存在はいたか。願望器ならありえるとは思っていたが‥‥」 外部との接続を強めるにしたがつてムーンセルはそのセキリュティを強めていった。それは同時に次々と現れる参加希望者達に対処するためでもある。 ムーンセルは、聖杯の消滅はウイルスの感染によるものという可能性を考えていた。あれだけのデータを集めれば悪性情報が紛れ込む可能性もある。それを考えたムーンセルは、その手足となりうるルルーシュこと運営用AIにセキリュティの強化をさせたのだ。 もっとも機能が違う連絡用AIにはそんなことはわからないしわかったとしても強化しようとは思わなかったが。 運営用AIは鳴り始めたPHSを手に取る。受付からの連絡でこちらに新たな参加希望者が向かっていることを聞くとしっしっと邪険に連絡用AIを追い払う。くちびるを尖らして出ていくのを見届けるとそれは天井を見上げた。なんとなく先程よりさらに暗くなっている気がするが彼にはそんなことは些末事。重要なのは聖杯戦争を滞りなく行うこと、そのためにセキリュティを万全にすることだ。 「全てはムーンセルのためだ。」 彼はそう呟くと扉に目を向ける。今まさにドアノブが廻り人が入ってくるところだった。 「お待ちしておりました。」 そう言うとそれは新たな参加希望者にパイプイスを指しめした。 《第二次二次キャラ聖杯戦争、登録開始中》 《主催者》 主催:聖杯戦争実行委員会 【運営用AI@第二次二次キャラ聖杯戦争】 [思考、行動] 聖杯戦争を成功させるためにセキリュティを万全にする。 [備考] 処理落ちしています。 外見はCLAMPデザインな感じの魔眼持ってそうな草食系男子です。 【連絡用AI@第二次二次キャラ聖杯戦争】 [思考、行動] 聖杯戦争をもっと楽しんでもらうためにデータの収集につとめる。 [備考] 処理落ちしています。 外見は青髪ロングの貧乳がステータスなロリです。 【探索用AI@第二次二次キャラ聖杯戦争】 省略 【ルーラー@?】 省略 後援:願望器に関わりのある人たち [思考、行動] 聖杯戦争を楽しむ。別に参加者を送り込んでも構わんのだろう? [備考] 本編投下マダー?(・∀・)っ/凵⌒☆チンチン [備考] 舞台はムーンセル・オートマトン@Fate/EXTRAです。 登場話は予選に参加している扱いです。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、高松、博多の予選会場が用意されています。演出に使えばいいんじゃないでしょうか。 NPCが存在しており日常生活を送っています。なお、予選会場の時間は2002年の八月です。 マスターは最初記憶を失っている可能性がありますが、仕様です。最初から令呪はありますが、サーヴァントの契約はしていません。しようと思えばいつでもできますしひょんなことで契約してもおかしくはないですね。 予選会場内にはエネミーが配置されていてそれを倒したりすると本選に出場できますがそうじゃなくてもいいみたいです。 演出に使えばいいんじゃないでしょうか。 監督役のルーラーはたぶんジャンヌですがもしかしたら他のサーヴァントかもしれないし全然違う二次キャラかもしれません。演出に使えばいいんじゃないでしょうか。 予選は2002年8月1日(木)から8月31日(土)までです。それまでに本選に出場できなかった場合消滅させられます。 外部を観測していること、参加希望者が多すぎること、それにともないセキリュティを厳しくしていることでムーンセルが処理落ちしています。AIもサーヴァントも処理落ちしています。結果的にセキリュティに穴が開いているかもしれませんがルルーシュがそのうちなんとかすると思います。 持ち込める魔術礼装などは手に持てる範囲でお願いします。生きててもいいです。個人的にはアインツベルンのホムンクルスとかいい感じです。 魔力を用いない攻撃にも対魔力が対応するようになるという明らかなチートが行われました。そこまでして三騎士を強くしたいのでしょうか。 後援は基本的に見てるだけの煽り担当です。つまりにぎやかしです。
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第一回聖杯戦争 第三次聖杯戦争の舞台は例年通り冬木市となった。 聖堂教会監視役路定 想武郎はマスターが揃った事を確認し、聖杯戦争開始の合図を発する。 しかし、呼ばれたサーヴァントは今までの常識の範疇外だった。 呼ばれる筈のない地域の英霊、八人目のマスター、更には「エクストラクラス」までもが召喚されてしまう。 聖杯に異変が生じている。それは明らかだった。 しかし、一度始まってしまった聖杯戦争は止められず―― 参加マスターは8人という普通の規模から外れた物となった。 召喚されたクラスはセイバー、アーチャー、ランサー、キャスター、アサシン、バーサーカー、ルーラー、エスカトス エスカトスは、オリジナルクラスである。 舞台参考は冬木市。大体そっくりそんな感じ。
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【レギュレーション】 形式:PvP、NPCあり 難易度:★★☆☆☆ 所要時間:1回3時間程度、複数日に分割 PL人数:3~8人+NPC1人 【シナリオの概要】 ここは温泉で有名な草津町。この地には古くからの巨大な霊地がある。 しかし現在は魔力が飽和状態にあり、特殊な儀式を行うなどで溜まった魔力を発散しなければならない。 その儀式の名は「聖杯戦争」。 7騎のサーヴァントを7人の魔術師が従えて万能の願望器「聖杯」を奪い合う魔術儀式。 魔術協会によって雇われた魔術使いによって、その戦いは開始が告げられる。 【リプレイ・ログ】 https //trpgsession.click/topic-detail.php?i=topic151499397187 ディレクターズ・カット版(キャスター陣営除く) https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/32 【参加者】 ラーミナ・イグニス:セイバー 水元 明良:アーチャー 漆谷るか:ライダー 煤居 秋:キャスター 春原 和子:バーサーカー 赤威 麗華:アヴェンジャー 【NPC】 ランサー
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この宇宙には、幾つもの並行世界があり、 そうしたものの中でも、現し世にもっとも近い世界の一つ それが鏡世・・・ またの名を 【 鏡 界 】 という。 それは、現し世に隣接し、 ことあらば人を飲み込み、吐き出す。 今宵、この鏡界に7つの客人が訪れた。 彼らはそれぞれ、譲れぬ願いを持っている。 ならば、その願い、叶えてあげようではないか。 安価式聖杯戦争のルール 安価式聖杯戦争の参加者データ一覧 登場人物一覧 セイバー組 コリエル12号・アナキン あまり声を出せないコリエルと、フォースで声を解することなく会話が出来るアナキンのペア 仲のいい組み合わせであった 自身の願いのために他者を犠牲にすることは自分の願いの否定だとして、聖杯を諦めた アーチャー組 真・ジャンパーソン お姫様に憧れる真と、正義を守る特捜ロボジャンパーソンの組み合わせ 真にとっては嬉しい組み合わせであっただろう 聖杯が使われる時、最後の場に現れなかったため、気がつけば帰還しているものと思われる ランサー組 オリヴィエ・アンク 今再びの命を望むオリヴィエと、命を求め死を受け入れたアンクの組み合わせ 互いに人外であり共通項も多く、互いを理解し合った 聖杯によって望みである受肉を叶えた ライダー組 アシュレー・牙狼 恋人の為に職場に異動したいアシュレーと、金色の黄金騎士牙狼のペア お互い人を脅かす化生を討つ生業なので気はあったようだ 最後は一度負けたアンクにリベンジを挑む、勝負の結果は・・・? キャスター組 千雨・スフィンクス オカルトに関わりたくない千雨と、インフェルシアの賢神スフィンクスのペア はじめはスフィンクスがなだめながら、後に千雨が自らの意志で歩き出した 聖杯の器となった少女を救うため願いを放棄、千雨の冒険はこれからだ! アサシン組 ミツルギ・スーパーX2 猫耳好きなミツルギと、(AAの都合で)狐耳なスーパーX2の組み合わせ 猫耳から獣耳全般に性癖を広げたミツルギはある意味勝ち組 戦争中何度も獣耳の良さを広めようと努力し続け、理想の嫁の姿を見て、轟沈したw バーサーカー組 ナッパ・ゴジラ 髪の毛が欲しいナッパと、最強候補であったゴジラの組み合わせ おそらく単純に見れば最強の組み合わせであった 安価の導きにより真っ先に脱落、その毛根を散らした イレギュラー組 新城・アマゾン 聖杯戦争に巻き込まれた少女を救いに来た二人 ただし参戦時は少女が聖杯になっていると知らなかった 無事に少女を救い出した十分な勝ち組
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小規模聖杯戦争 ここではプレイヤー人数が2~4人で構成される「小規模聖杯戦争」における特殊ルールを解説します。 小規模聖杯戦争では、セッション時間の短縮のため、クリンナップフェイズでの令呪、運命点の使用を禁止とします。 それ以外は全て通常のルールと同じです。
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この宇宙には、幾つもの並行世界があり、 そうしたものの中でも、現し世にもっとも近い世界の一つ それが鏡世・・・ またの名を 【 鏡 界 】 という。 それは、現し世に隣接し、 ことあらば人を飲み込み、吐き出す。 今宵、この鏡界に7つの客人が訪れた。 彼らはそれぞれ、譲れぬ願いを持っている。 ならば、その願い、叶えてあげようではないか。 安価式聖杯戦争のルール 安価式聖杯戦争の参加者データ一覧 登場人物一覧 セイバー組 春ちゃん/桃太郎 欲にまみれた季節の妖精春ちゃんと面倒見の良い桃太郎のペア アーチャー組 立華奏/アスカ・シン 恋する聖杯少女奏と正義の守護者ウルトラマンとのペア ランサー組 やんの香/イワンの馬鹿 考えるのが苦手なやんの香とお気楽なイワンのペア ライダー組 鹿目まどか/シンデレラ 恋する魔法少女まどかタイタスと運命に立ち向かうシンデレラのペア キャスター組 神条紫杏/マミさん 婚活求めるカルトの蟲使い神条紫杏と、恋する天然黒幕娘マミさんとのペア アサシン組 尾神桂/ギャル夫 日常生活不適合者寸前の尾神と未来の英霊ギャル夫のペア バーサーカー組 見学会めぐる/野獣 婚活小聖杯戦争OLめぐると意外に紳士な野獣のペア
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あなたは唐突に中空に浮かんでいた。 そこは、まるで小惑星帯のように星々が動き、またぶつかり合っている宇宙空間のようだ。 周囲を見渡すと、銀髪の青年が目の前に立っていることに気づいた。 「やあ。この地に最後まで残ったマスター」 青年は柔らかい物腰で語り掛ける。 「改めて自己紹介しておこう。僕はこの聖杯戦争を司る裁定者、ルーラーのサーヴァント『アルヴィース』だ。 聖杯戦争の本選開始まで、後1時間も無い。そこで君に質問をしよう。君が抱くのが『できれば叶えたい』という程度の願いならば、これ以上は止めておくことをお勧めするよ。 今なら僕に与えられた令呪で、瞬時に君を元の世界へ帰還させる事が出来る。どうだい?」 あなたは言葉を発さないことで、帰還の意思がないことを示した。 「帰る気は無いようだね。では、質問をもう一つしよう」 アルヴィースは指を一本立てた。 「『この聖杯戦争は聖杯のあるべき場所『楽園』に辿り着く者が既に確定している。そして、それは君ではない』」 その言葉をアルヴィースが口にした瞬間、あなたの頭の中を何かが通り抜けた。彼の言ったことは真実であると思うようになった。 「そう知ったとしても、君は戦えるかい? 奇跡に手を伸ばせるのかい?」 聖杯を手に入れるのは自分ではない。そう悟ったあなたの返答は―― 『そうだとしても、確定した未来の後は白紙でしょ? 勝者の横からぶん殴って聖杯を手に入れられる可能性がある以上、未来が決まっていても、まだ現在を変える余地があるなら私は決してあきらめないわ』 『だったらそいつが聖杯にたどり着く道を探り、横から令呪をかっさらって私が願いを叶える』 『僕は別に人を殺してまで聖杯を手に入れる気はないよ。でも最後のマスターがどんな願いを叶えるのか見届けたい』 『辿り着く者が決まっていたとしても、その後聖杯を手に入れるとは限りません。あなたが測定した未来でも現在を変える権利は今を生きる僕たちにあり、そして聖杯を手に入れるのは僕です』 『なら、俺とその一人が生き残った時点で、そいつを死ぬ方がマシな状態まで追い詰め俺の願いを叶えさせればいい』 『私は! そんなこと信じない! 私は聖杯を手に入れて過去をやり直す!』 『波紋の催眠術みてーなこと使って言われても信じられねーな。それに俺は黒幕をぶちのめすのが目的なんだ。聖杯は悪人の手に渡らなければそれでいい』 『聖杯を一目見ようとは思うが、僕はそこまで執着していない。あなたを倒すのは僕の目的の一つだ。特にスタンド能力のようなものを使い、意志を無理やり押し付ける相手は』 『それがあなたの未来予測だとしても、私は聖杯を求めるわ。諦めるよりやって後悔した方がいいもの』 『私は聖杯に叶えるべき願いはありません。ですが最後の一人が私欲で世界に悪意をもたらすのならば、それを止めます』 『……その言葉が真実だとしても、俺は友に会いに行く。絶対に』 『俺は聖杯にたどり着く結果より、そこまでの過程で何を信じたくて、何を願いたいかを知りたい。だから手に入らないとしても戦う』 『そいつがマスター全員を殺しつくした上でたどり着くのなら、そいつの願いと造る世界はさぞ醜いものだろう。俺が手に入れなくても人間は皆必要なら誰でも殺すことが示されればそれでいい』 『なんでそんなこと言うの? ぼくは家族のために、ポーキーにむちゃくちゃにされた世界をなおすために聖杯を使いたいのに。その思いはアルヴィースに聖杯に行けないと言われても変わらないよ』 『それならそのたどり着く人の首にかぶりついて、無理やり私の願いを叶えさせるわ』 『私は……聖杯を手に入れる。そのためならそのたどり着く人が聖杯に向かう途中でその人を殺してでも聖杯にたどり着く』 『貴方は高天原と同じで価値を決める意志がない。ならば私が聖杯とその担い手を見極めましょう。遥かな過去、聖杯と似た力を持つ矛を奪い取った者として』 『もし聖杯が手に入らなくても、私が先輩を殺しさえしなければそれでいいんです』 『……もうあたしに戻る道はねえ。戻っても行っても死ぬのなら戦って死ぬ』 『不可能だとしても最後まで戦う。元々俺は国を相手にしてきたんだ。今更言葉一つで決意が変わりはしない』 『あんたも"大赦"と同じよ。いいように人を操ろうとするそんな奴のいう事なんて信じられないわ。私は絶対に聖杯を手に入れる!』 『それでも俺は最後まであきらめずに戦い、生きるよ』 『『もし人が私に繋がっており、また私がその人と繋がっておれば、その人は実を豊かに結ぶようになる』。私が聖杯に到達できなくとも『人はなぜ出会うのか?』。その「答え」を知る者が現れればいい』 『洗脳など私にとっては無意味だ。聖杯を手に入れるのは私以外にいない』 『とーぜん! だってあたいはサイキョーなんだから!』 『私じゃなければエミリコが手に入れる可能性もあるってことね。たとえ私が死んでもエミリコは必ず元の世界に戻して、あの忌まわしいおじい様を倒してみせるわ』 『その辿りつく者ってのは『主催者』か『黒幕』の事じゃねえのか? もしくは辿り着いたヤツをそいつらが利用するとか。どっちにしても聖杯に繋がる道を見つけ裏から操ってる黒幕野郎をブチのめしてみせるぜ』 『それなら『前』みたいに辿り着く道を探って横からそいつを殺すだけよ』 『俺は俺が聖杯にたどり着けなくても、戦いを止めるため、人を救うため戦うだけだ』 『私はまだ聖杯が何なのかも、どう願いを叶えるのかもわからない。だけどお前の言うことが本当だとしても、私は私を取り戻すために戦う』 『それでも例えばマスターみんなでそこに行きさえすれば、誰が本当にたどり着く人間かなんてわからなくなっちゃうでしょ? 私はそのために戦うわ』 「君の『覚悟』は受け取った。その意志が強く保たれん事を」 あなたとアルヴィースの距離が離れてゆき、小惑星帯のような景色は暗闇に塗りつぶされていった。 ◇ ◇ ◇ 教会内で言峰綺礼とDIOがそれぞれ手を後ろに、前に組んで空中投影パネルの前に立つ。 カウントタイマーが00 00 00 00になった瞬間、パネルにマスターの名前とサーヴァントが並んで表示された。 01.マスター:遠坂凛 サーヴァント:セイバー 02.マスター:巴あや サーヴァント:セイバー 03.マスター:ユウキ サーヴァント:セイバー 04.マスター:レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ サーヴァント:セイバー 05.マスター:黒岩満 サーヴァント:セイバー 06.マスター:二階堂ルイ サーヴァント:アーチャー 07.マスター:ジョセフ・ジョースター サーヴァント:アーチャー 08.マスター:パンナコッタ・フーゴ サーヴァント:アーチャー 09.マスター:朝倉涼子 サーヴァント:ランサー 10.マスター:胡蝶カナエ サーヴァント:ランサー 11.マスター:静寂なるハルゲント サーヴァント:ランサー 12.マスター:吉野順平 サーヴァント:ライダー 13.マスター:尾形百之助 サーヴァント:ライダー 14.マスター:クラウス サーヴァント:ライダー 15.マスター:エスター・コールマン サーヴァント:キャスター 16.マスター:新条アカネ サーヴァント:キャスター 17.マスター:日瑠子 サーヴァント:キャスター 18.マスター:間桐桜 サーヴァント:キャスター 19.マスター:佐倉杏子 サーヴァント:キャスター 20.マスター:キロランケ サーヴァント:アサシン 21.マスター:犬吠埼風 サーヴァント:アサシン 22.マスター:千翼 サーヴァント:アサシン 23.マスター:エンリコ・プッチ サーヴァント:アサシン 24.マスター:ザキラ サーヴァント:バーサーカー 25.マスター:チルノ サーヴァント:バーサーカー 26.マスター:ケイト・シャドー/エミリコ サーヴァント:バーサーカー 27.マスター:エドワード・エルリック サーヴァント:バーサーカー 28.マスター:和田垣さくら サーヴァント:アヴェンジャー 29.マスター:衛宮士郎 サーヴァント:アルターエゴ 30.マスター:小蝶辺明日子(■■▪■) サーヴァント:アルターエゴ 31.マスター:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン サーヴァント:ブレイド XX.マスター:ミザリィ サーヴァント:アヴェンジャー、フォーリナー 「ミザリィを除いた全マスターの端末に回線を接続」 綺礼が口を開く。 「只今を以って聖杯戦争の本戦開始を宣言する。これより各自元の世界に戻るための扉は消え去り、聖杯を手に入れ帰還できるのはただ一人となった。 その事実を認識し、皆存分に殺し合い給え。そして汝自身を以って最強を証明せよ。 されば『天の聖杯』は勝者の元にもたらされん」 ◇ ◇ ◇ ビッグアイ屋上。 真下で正月のパレードが行進している中、ガラクシアはそれを怒りの念を込めて睨みつけた。 「憎み、恨み、叫び、吠え、全ての者に何物とも知れぬ怒りを抱いてきた同志たちよ」 ガラクシアは高らかに宣言する。 「時は満ちた。今こそ、我らガラクシアの底無き憎悪を存分に叩きつける時だ!」 ガラクシアの胴体から機械の部品が作り出され、一つの何かが構築されようとしている。 出来上がっていく形は、巨大な爆弾だ。 完成した瞬間、ガラクシアはためらいなく起爆。轟音が鳴り響き、爆風が夜空を赤く染めた。 ◇ ◇ ◇ 物質転換炉、特別捜査官ルームにてオペレーターが叫んだ。 「『ビッグアイ』屋上で大規模な爆発が確認されました!」 「録画をズームして爆発の対象を確認」 動揺するオペレーターに対し、冷静にアルヴィースは指示を下す。 「これは……女性です! 女性が爆弾に体を変換しているようです!」 「顔認証システムで全ての監視カメラから同一人物をチェック」 意図が分からないままオペレーターは指示に従い検索を始めた。 「確認できました。対象一致者はB-1地区『Eアイランド』内、D-2地区『ラストアンコール』屋上。D-5地区タウンゼン街、C-6地区ティア―ブリッジ1のケーブル上です。 その全てが、10名以上の武装した人間を連れています」 「起動兵を随伴した防衛隊を出動。武装した人間共々テロリストグループ「ガラクシア」として処理。抵抗するなら射殺も許可」 「了解しました」 驚きを隠せないルーム内のメンバーはアルヴィースに尋ねた。 「捜査官……あれは我々にとって未知の起動兵なのでしょうか……。自我を持つ起動兵は我々も所持していますが」 「あれは憤怒と憎悪の結晶だ。これが未知というならこれから先僕たちはさらに未知なる異変を目撃することになる」 そう言ってアルヴィースはモニターに目を向けた。 「これで全ては始まった。これからは君たちマスターが未来を、世界を創るんだ。 叶うならば、停滞と閉塞の未来ではないことを」 アルヴィースは誰にも聞こえぬ小声で呟く。かつて自身が見届けた『二つ』の『世界創造』を思い起こして。 ――――聖杯戦争、開幕――――
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月を望む聖杯戦争 ◆Ee.E0P6Y2U ……月が綺麗な夜だった。 彼がその坂を登るのは何度目だっただろうか。 僅かに息荒くしながら彼はたった一人で歩き続ける。 その途中風が吹く。道沿いに生い茂る木々がざわざわと生き物のように揺れた。 こんなにも涼しくて気持ちの良い夜だというのに、彼の身体はじっとりと汗ばんでいる。 この山のせいかな。 彼は学生服の襟元を正しながら思った。 その視線の先には延々と続く坂道だ。艶のないアスファルトの道が月に照らされぬっぺりと浮かび上がっている。 ゆるやなに蛇行しているため坂の上に何があるかまでは見えなかった。 こんなにも長い坂道では帰るのも一苦労だ。 この山の上には幽霊が出ると噂の屋敷があるが、幽霊だってこんな山の上には住みたくないに違いない。 と、そこまで考えたとき、あんな坂は山とは認めない、といっていたクラスメイトを彼は思い出した。純朴だが、変な奴だった。 実際、山というのには少し無理があった。それなりに長く、それなりに急な坂であるが、それでも一時間もあれば登り切れてしまう。 だから疲れはするが、別に登れない訳ではない。特に今日は月が綺麗だ。 彼は空を見上げた。都会の雑踏から逃れくっきりとその存在を示す星々の中心、漆黒の夜を背景に真ん丸と光る大きな月がある。 あれはきっと満月だろう。彼は理由もなく決めつけた。 あれがあるから今日は楽だ。実際、深夜にこの坂を上るのに道沿いに備えた電灯では少々心もとない。足下が見えるだけ楽なのだろう。 空を見上げる彼の頬をと不意に風が撫でた。熱がすう、と引いていくのが分かった。 寒いとまではいかなかったが、汗ばんだ体に冷えた風は少し堪えた。 早く帰った方がいい。 冬はまだ遠いとはいえ、こんな夜<じかん>なのだから。 そう思い彼が足を進めようとしたとき、 「……あら」 ――美しく響く銀色の声を聞いた。 そこには一人の少女がいた。 金色に光る瞳は夜の中浮かび上がる。その肌はぞっとするほど白い。 そして、おかしなくらい美しい月に照らされ、その銀色の髪は艶やかにきらめいた。 声は出なかった。 その美しさに見蕩れたか、少女の持つ妖しげな雰囲気に気圧されたか、彼は呆けたように彼女を見ていた。 「こんなところで“マスター”に出会うなんて、少し意外でした」 が、対する少女は素っ気ない。自分との邂逅を、意外と言いつつも何でもないことのように語った。 吹きつける風に真っ黒な服が音を立ててたなびく。そこでようやく彼は少女が法衣服を纏っていることに気付いた。 シスターなのだろうか。そんな、あまりにもぼんやりとした印象を、彼は抱いた。 ひゅうう、と風が吹いた。 少女の髪が舞った。銀色が月光に溶け込むようだった。 吹きつける風に彼は身体を震わせる。 ……今度ははっきりと寒気を覚えた。 早く、早く帰らなくてはならない。 「…………」 だが彼は足は止まっていた。歩くどころか、指先一つ動かせない。 だって、少女が見ているから。 金色の瞳はまっすぐに自分を射ぬいている。その無機質な視線は、あたかも自分の価値<バリュー>を測ろうとしているかのよう。 見竦められた彼は不思議な息苦しさを覚えた。ここにあるだけで、何か罪を覚えているかのような、奇妙な居心地の悪さがそこにはあった。 少女がシスター服を着ているから、なのだろうか。 彼は手に持った学生鞄を手放さないようぐっと手を握りしめた。 教科書やら新聞部の資料やらの、ずっしりとした重みが少しだけ心地よかった。 「いえ。どうやら貴方は“まだ”のようですね」 ……しばらくして、少女は興味を失ったように彼から視線を外した。 そしてふぅ、と息を吐く。そこには僅かに失望の響きがあった。 「“マスター”でないのなら、私に会ったところで何も意味がありません。 少し早かったですね、私に会うのが」 少女はそう言ったきり、彼の方を見なかった。 その言葉の意味は分からない。 自分が何か失敗したのだろうか。 ……そう思いはしたが、それ以上に視線から逃れられた安堵が大きかった。 彼はほっと胸をなでおろす。降りかかっていた圧迫感から逃れられたようだった。 彼は迷いつつも、再び歩き始めた。 何かを探すように坂を見つめる少女を無視して、彼は帰ろうとする。 もうこれ以上、彼女の前にはいたくなかった。 「ああ、それと一応」 すれ違いざま、少女がぽつりと漏らした。 「名乗っておきます。今の貴方には無用の情報でしょうが、近いうちに必要になると思われますので」 彼はもう少女を見ていない。恐らく少女も彼を見ていないだろう。 淡々と仕事をこなす、事務的な素っ気なさで彼女は言った。 “――――――カレン” 機械を思わせる冷淡な口調でありながら、しかしその名は、人を思いやる上質な音楽のように胸に響いた。 「カレン・オルテンシア。私の名前です」 そう彼女は名乗り、そして去って行った。 夜道はくれぐれもお気をつけを、と最後に付け加えて。 そうして彼は歩き続ける。 凍てつくよう月の光を受け、彼は一人歩いていた。 結局彼は、少女に対し一言も喋ることができなかった。 ◇ そうして坂を上り切ると、そこには大きな門があった。 例の幽霊屋敷のものだろう。その門は、来訪者を拒むようにそびえ立っている。 錠前はついていないようだった。入ることだけなら、誰でもできるだろう。 本当に人が住んでいるのだろうか。 門の向こうに続く薄暗い林道を眺めながら、彼は少し疑問に思った。 幽霊だって住みたくないだろう、と先程は思ったが、 それこそ幽霊でもなければこんなところ、住めないのではないだろうか。 彼は何となしに門に触れた。ぎぃと錆びついた鉄の音がする。 硬く、冷たく、来る者を拒絶するような門。しかしこの門はいま開いている。 迷い込む者を口を開けて待っているのだろう。人をおかしな世界にぱっくりと呑み込むことを、この門は待っている。 この先にいけば、きっと―― 風が吹き続けていた。 夜の林はいまや歌っている。あちらでも、こちらでも、揺れ動く木々が奇妙な音を立てていた。 彼は森全体がバケモノになった気がした。 バケモノはこうささやいている。 カエレ カエレ カエレ と。 「帰ら、なくちゃ」 ようやく彼は口を開いた。 その声は変に上ずっていた。自分の声だと言うのに、初めて聞いたようなおかしな乖離がそこにはあった。 それでも、自分がするべきことを確かめ、彼は門から離れ自分の道を行こうとする。 意を決して一歩を踏み出そうとした。 しかし、彼は幽霊を見た。 「え」 見て、しまった。 幽霊は森に現れた。 静まり返った夜の中、白い顔がぬうっと浮かび上がってきたのだ。 そのヒトガタは人と呼ぶには小柄過ぎた。膝までの丈しかないような小人が、闇に溶け込むような黒いローブを羽織っている。 ――真っ白な髑髏が夜の中浮かび上がった。 声は出なかった。悲鳴すら上げられない。 こんなにも近くにいるのに、今の今まで気配すら感じることができなかった。 その事実に彼はぞっ、と総毛立つ。 一秒もなかったと思う。 彼は一目散に駆け出していた。 学校<にちじょう>のものが詰まった鞄を放り投げ、去ろうとしていた異界への門を通り抜けた。 そして、とにかく走る。 走る。走る。走る。汗が吹き出て、視界が歪み、足が悲鳴を上げようと彼は走り続けた。 は、は、は、と彼は必死に息をする。 苦しかった。辛かった。しかし止まる訳にはいかなった。 止まればアレがする。アレは駄目だ。追いつかれれば、自分はただ死ぬしかない。 何故だか知らないが彼はそう確信していた。乱れぼやけ曖昧な意識の中にあって、その事実だけははっきりとしていた。 ――だってあれはサ雎ァ縺トじゃないか。サ雎ァ縺トに人は勝てない。それが聖h縺戦¥譁というものだろう、 彼は叫びたかった。助けて、と。 だが声は出なかった。言葉が見つからない。あるべきはずの言葉を、自分は知らないのだ。 ――メモリーを、預けた記憶を返してもらわなくては。 でも、帰らないと。カエラナイと。 その思いが意識を探る彼の手を邪魔する。 もう指先はかすっている。あとほんの少し、少しだけ手を伸ばせば、届くと言うのに……! 逃げ続けながら彼は必死に手を伸ばす。 あった筈の記憶へ、持っていた筈の想いへ、秘めていた筈の悲願へ、魔術師<ウィザード>としての力へ、 ただ生き残る為に。 だが、届きはしなかった。 だって、それよりも速く暗殺者<アサシン>が追いついてきたのだから。 そもそも勝負にすらなっていなかっただろう。 小柄な体を生かした俊敏な動きを長所とするサ雎ァ縺トに、ただの人間が逃げようなどというのは。 あれ、と彼は思った。身体が急に動かなくなっていた。 変な音がした。すると何故だか力が抜けて、気付けば鈍い音を立て地面に突っ伏していた。 ぎこちなく彼は首を動かした。すると大きな大きなお屋敷が見えた。ああこれが幽霊屋敷か、と納得する。古い造りをしたそれは、いかにもな外観をしていた。 事実幽霊が立っている。突っ伏した彼を見下ろし、手に持った刃をてらてらと赤く光らせながら。 「他愛ない。目覚める前のマスターなどこんなものか」 不意に、幽霊はそんなようなことを言った気がした。 笑っているような、泣いているような、奇妙な表情をした面が彼を無慈悲に見下ろしていた。 「本来はルールに抵触しているそうだが、これも主人の命令だ」 幽霊の言葉は遠い。目の前にいるはずなのに、ずっと向こうの方から聞こえているような心地がした。 どういうことだろう、と疑問に思ったが、すぐに答えが出た。 ああ、遠のいているのは自分の意識の方か。 幽霊が近づいてくる。その手には刃がある。 確実にトドメを刺すつもりなのだろう。万が一生き延びることがないように。 そうして死が彼に触れようとしたとき、 「そこまでです、アサシン」 凛とした声が響いた。 「一般NPCの大量殺戮は禁じられています」 遠のく意識を何とかつなぎ留める。少しでも気を抜けば持っていかれそうだ。 それでも彼は何とか顔を上げた。ここでオイテイカレる訳にはいかない。 そして、一人の聖女を見た。 「貴方は既に再三の警告を受けているので分かっているでしょう。 これはメモリー復帰前のマスターにも適用される条項です」 凛然と語るその姿は気品に満ち溢れており、その青い双眸には一切の迷いがない。 銀の飾りに収められた金色の髪、輝く甲冑とたなびく藍色。 何よりその手にあるものが異様だった。 それは旗だった。大きな大きな、背丈ほどもある旗を聖女は堂々と握りしめている。 「アサシン、ハサン・サッバーハ。今すぐに攻撃を止めなさい」 その警告には差し迫ったものがあった。 最後通告。聖女が決して悪を告発する際の、有無を言わせぬ戒めがあった。 それを前にして、幽霊は僅かにたじろいだようだ。トドメを指さんとしていた刃はぴたりと止まり、幽霊は聖女を見た。 対峙する二騎のサ雎ァ縺ト。 聖女と幽霊。それはまるで生と死を象徴しているかのようであった。 一対の狭間で、彼は必死に意識を繋ぐ。 ――ああ思い出してきた。 ――ここで僕がやるべきこと、やりたかったことは。 つう、と右腕に痛みが走った。 それまでのぞっとするほど冷たい刃の痛みとは違う、熱く煮えたぎる力を感じさせる痛み……! 強引に痛みを振り払い、彼は右手を掲げた。 そこには三画の光が灯っていた。見覚えのない奇妙な紋章。しかしそれが力であり印であり、何よりこの場にいる証明であることを彼はもう思い出していた。 「令呪……! いままさに“マスター”としての目覚めが始まっているのですか」 聖女が僅かに驚きを滲ませ、動きを止める。 その瞬間を見計らってのことだろう、幽霊の黒衣が静かに待った。 刃がきらめく。白の髑髏が目覚めつつある彼へ猛然と迫る。 「令呪を以て命じます――止まりなさい、アサシン」 が、それを聖女が制した。彼女がその腕に灯した光をかかげると途端に幽霊は動きを止め、ぬぅ、と唸り声をあげた。 「何故止める、ルーラー! その男はもはや一般NPCなどではない。この聖杯戦争の参加者たるマスターだぞ!」 「その判断は“裁定者”のサーヴァントである私が下します。 完全に記憶が覚醒しない間、彼はNPCであり保護対象になります。そして――」 不平を叫ぶ幽霊に対し、聖女はそこで一度言葉を切る。 一瞬の間が空く。その間に彼女は持ち合わせた溢れんばかりの容赦をすっぽりと置いてきたかのように、 「――アサシン。再三に渡る警告の無視した貴方は処罰の対象になります。 ステータス低下、令呪の剥奪等のペナルティを課します。貴方のマスターに伝えてください」 そう突き離すように告げた。 その言葉に幽霊は一瞬動きを止める。だが、一瞬だった。幽霊は何かに突き動かされるように再び地を蹴った。 その標的は地に伏せる彼ではなく、聖女。 「【空想電――」 聖女の下へと飛び込んだ幽霊はその左腕を解放せんとする。 空間がぐにゃりと歪み、そこから秘められた神秘が溢れ出る。そして聖女の命を奪わんと異形の腕が迫る。 「愚かな」 しかし、幽霊の神秘が届く前に、聖女は告げていた。 「令呪を以て命じます――アサシン、自害しなさい」 と。 聖女の掲げる光が迸ったとき、事は全て終わっていた。 幽霊は己の胸を自ら突き、末期の言葉一つも漏らすことなく静かに倒れた。 そうして再び森は静かになった。幽霊の身体は光に包まれ、その存在感を薄めていき、最後には跡形もなく消え去っていた。 騒いでいた木々も、耳障りなほどうるさかった風も、幽霊のように何時の間にか過ぎ去っていた。 月はたださんさんと輝いていた。そびえ立つ古屋敷の前で倒れ伏したまま、彼は手に届きそうなほど大きな月浮かぶ夜空を眺めた。 ――ああ、月が綺麗な夜だ。 そう思った時、またあの声が聞こえた。 「終わりましたか、ルーラー」 月と同じ色をした、凍てつくほど美しい声が。 揺れる銀の髪、人形のように美しい肌、映すものの罪を表すかのような澄んだ瞳。 カレン・オルテンシア。 闇の中より歩いてきたのは、会ったばかりのあの少女だった。 今度は法衣服ではなく奇妙なほど扇情的な漆黒の衣装を身に纏っている。 また、一枚の長い布が彼女を守るようにその身に絡んでいる。 紅い紅い、布だった。 「はい。結果としてアサシンを脱落させることになりましたが、まずかったですか?」 「いえ問題ありません。あれほどの警告を無視した以上、当然の処置です。 最後の攻撃はマスターの令呪でしょうね。あのアサシンも愚かなマスターを持ってしまったものです。 もっとも、そのマスターも今頃解体が始まっているでしょうが」 淡々と語るカレンらの声を、彼は現実味の薄い、どこか遠くのことのように聞いていた。 が、しかしもはや彼はそれを無視することができない。先ほどまでは全く意味の分からなかった言葉が、今や自分の身に迫った情報として頭に入ってくるからだった。 「……それで、彼ですが」 聖女――ルーラーと呼ばれていた少女が倒れ伏す彼を一瞥した。 その視線には傷つく者に手を差し伸べる慈しみが感じられたが、同時に聖女として確かな規範を重んじているような色があった。 「“マスター”として目覚めているようですね。令呪が刻まれ、記憶も取戻しつつある」 カレンが平坦な口調で言った。ルーラーのそれと違い、非常に事務的な響きだった。 「で、あなたはもう今の状況が分かるでしょう?」 頭上から問い掛けが降ってくる。 カレンのの声色は先ほどの、何も知らなかった頃に会ったときと何ら変ってはいない。 「……聖hィ戦争」 彼は声を絞り出した。その単語をひねり出すだけで、じん、と頭が痛んだ。 消された筈の、空白に上書きされた筈の言葉を思い出す。そんな矛盾が痛みを読んでいるのかもしれない。 「まだ記憶の封印が完全には解けていないようですね」 その様子を見てカレンがふぅと息を吐いた。 「まぁこうして覚醒の瞬間に居合わせたのも縁です。少し手伝ってあげましょう。 貴方が持っている筈の記憶をたどる形で状況を説明していけば、おのずと記憶の回復もできるでしょうし。 では、説明いたしましょう。この聖杯戦争――月を望む聖杯戦争について」 セイハイ、センソウ。 聖杯戦争。 その単語がようやく意識に浮かび上がってきた。 そう、それがずっと思い出せなかった。 届かなかった。 「聖杯戦争とは万物の願いをかなえる“聖杯”を奪い合う争い。 魔術師たちが己が望みを物にすべく七騎の“サーヴァント”を統べ競いあう。 あり大抵に言ってしまえば、万能の願望機を求め殺し合う。 そんなシステムのことです」 聖杯、サーヴァント、願望機……その単語が聞こえる度、脳みそをかきまぜられているような痛みが走る。 同時に、ああ、あの幽霊はサーヴァントだったんだな、と納得もしていた。 「サーヴァントとは聖杯がこれまでに観測し記録してきた膨大なデータから再現される、過去の英霊たち。 人類が生み出してきた情報の結晶。それを七つのクラスに当てはめる形で再現する。 セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー……彼らサーヴァントを参加者たるマスターは令呪によって従えるのです。 このシステムは当初、それぞれ一騎づつ選出された、七騎のサーヴァントで行われていました」 ですがこの“月を望む聖杯戦争”は違います。カレンはそう淡々と告げた。 「この“月を望む聖杯戦争”で呼ばれるサーヴァントはその何倍にも多い。 二十……いえ三十に近いサーヴァントが呼ばれることでしょう。 それはひとえにあの月に依るもの。 地球をその誕生から観察し続け、地球上のあらゆる生物、あらゆる生態、あらゆる歴史、そして魂さえも記録してきた――月の聖杯。 ある者はそれをこう呼びました。 量子コンピュータが魔術的概念により実現されている自動書記装置。 “ムーンセル・オートマトン”と」 そして、とカレンは月を背に言った。 「ここは月を手にしようとする者が集う箱庭。月に停泊せし放浪者。存在しない筈の二番目の月。その観測のされ方は様々です。 月は観測者次第でいかようにも姿を変え得る。貴方方がここをムーンセルの付随物としてみたように、ある者はそれを方舟<アーク・セル>として見た。 しかし何にせよ意味は同じです。それは……月に到る階段<スパイラル・ラダー>」 月の聖杯、ムーンセル、方舟……理解が追いつかない。何しろ思い出しながら、だ。 それでも、彼は一つ分かっていた。 そうか、自分はいまあの月を目指しているのか。妖しくも美しいあの月に、手を伸ばしている。 「ここはムーンセルが観測した過去。月より降りそそぐ情報を受け船が造り出したユメ。 例えばこの屋敷。ここはかつて一人の魔法と使いと、一人の魔女、そして一人の孤独な青年が住んでいました。地名自体は白犬塚というそうです。 少なくともそんな可能性を持った並行世界があり、月は観測した。それを再現した場所。 ここでは月が識る、土地や歴史、木々、水、空、そして人間が再現されている。 どこでもあって、どこでもない、過去であり、未来であり、現在である」 そう、それが今回の聖杯戦争の舞台。 彼はようやく思いだしてきた。自分が何者であったかを。 「貴方がたは様々な方法でこの方舟にアクセスしてきました。 量子ハッカー、魔術師<ウィザード>として月を見つけた者、古来より伝わる魔術師<メイガス>として月に到った者、全く異なる並行世界の力より月を探し当てた者、はたまた月のきまぐれか何の能力もないのに呼びこまれた者……その手段は様々です。 鍵は様々なカタチで観測されました。それはある時はデータ上に浮かび上がるコードとして、ある時は聖遺物の欠片として現れ“ゴフェルの木片”として。 ただそれを手にし。参加者としてマスターとなった以上、何かしら願いを持っているはずです。 月を望み、月に到る。万能の願望機を願った貴方がたには先ほど告げたように殺し合ってもらいます。 ――最後の一人となるまで」 殺し合う。その言葉もまた、カレンは淡々と言った。 「そして、私たちはその監督役。聖杯戦争が滞りなく行われるかを裁定する者。 私とルーラーは参加者ではなく、運営に携わるものということです」 よろしくお願いします。 言ってカレンはぺこりと頭を下げた。 隣りに佇むルーラーも軽く礼をした。彼も挨拶をしようとしたが、それよりも早くカレンが口を開いていた。 「監督役として、助けを請われれば出来る範囲で応えましょう。円滑かつ平等に活動が行える取り計らいましょう。 ですが場合によっては警告と、そして制裁を下します。先ほどのアサシンのように」 今しがたルーラーにより脱落させられた幽霊――アサシンの姿が脳裏を過る。 ルールを破れば、ああなる。彼女らにはそうする力がある。 「もっとも、余程のことがない限り私たちは手を出しませんが。現状、一般NPCへの度を過ぎた無差別殺戮は禁じられていますが、それ以外で大きく動くことはないでしょう。 NPCの殺人も、よほどひどくない限りは何も言いません。サーヴァントの魔力源として魂喰いを行うこと自体は何らありません。 その他追加ルールがあれば随時お伝えします。ただしルーラーにはその権現、各サーヴァントへ二回まで使用可能な令呪があることを覚えていてください」 令呪。 その単語を聞いた彼は右手の甲に刻まれた三画の紋様を眺めた。 先ほどはぼんやりとしていた光も、今やくっきりと確かな輪郭を持ってその手に定着していた。 「令呪とは本来マスターとしての証、たった三回だけのサーヴァントへの絶対命令権。 それがあるからこそ、貴方たちはマスターでいられる。 逆にいえば、失われた時点でマスターとしての資格を失います。令呪なくともサーヴァントを従えることができるのなら別ですが、そうでないのならば強制的にSE.RA.PHより消去<デリート>されます。 それを手に入れるまでが“予選”でした」 “予選” 思わず彼は聞き返していた。 「“予選”です。全てのマスターはSE.RA.PHにアクセスした際、そのメモリーデータを封印された状態でアバターが生成されます。 聖杯戦争のことは勿論、魔術のことも、自分が秘めた願いのことも、全て忘れた状態でこの街で過ごしてもらいます。 その状態に違和感を抱き、記憶の封印を解き、自らマスターであることを思いだす。そのとき初めて令呪が浮かび上がるのです」 そうか、だから忘れていたのか。 自分自身のことを、こうまでも。 彼は不思議と腑に落ちた心地になった。 「それが“予選”。中には自分がマスターであったことを思い出すことすらできず、NPCとして埋もれていく者もいます。 そんな中、貴方は思い出しました。マスターとして、月に認められたのです」 おめでとうございます。カレンは平坦な口調で祝福の言葉を漏らした。 彼はそれを呆然と受け止める。 まずカレンの顔を見つめ、次にくっきりと浮かぶ令呪を見つめ、最後に蘇りつつある自身の願いを見つめた。 ――ああそうか、僕は……月を望んでいたんだな。 「記憶封印の解除と同時に、月よりサーヴァントが宛がわれます。 日常の違和感に気付き、心に刻んだ願いを思い出し、サーヴァントと契約する。 それが参加者に与えられた最初の試練」 胸が昂揚するのが分かった。自分はいま、喜んでいる。 最初の試練を、辛くも自分は突破したのだ。 「サーヴァントを手に入れれば、あとは残りのマスターを全て倒すだけです。 それだけで、貴方は月に到れる」 そんなこと簡単だろう、と彼は奇妙な自信に支配された。 先ほどの状況を突破できたのだから、あとはもう大丈夫、と。 根拠もなく思っていた。 カレンは顔色一つ変えず口を開く。 「ですが」 そこで、それまでカレンの隣で無言を保っていたルーラーが、どういう訳か顔を背けた。 「貴方にもうその資格はありません」 ――え? 「だって、貴方もう死んでいるもの」 ……その口調は相変らず平坦で、事務的で、淡々としていて、それでいで優しさやいたわりといったものを感じさせた。 彼はそこでようやく己の胸を窺った。 アサシンに一突きされた胸からは血がだくだくと流れ、心臓部はぽっかりと穴が開いていた。 身体<アバター>は既に解体が始まっている。情報が剥がれ落ち傷口は泥のように黒ずんでいた。 「あの時点で一般NPCだった貴方は保護対象でありましたが、だからといってその際に受けたダメージの回復まではできません。 貴方が助かる見込みはもうないでしょうね。目覚めるのが、あと少しだけ遅かったですね。 帰ろうなんて、思っているから。帰る場所もないのに」 ああ、そうか。 そういえば、さっき 自分はどこに帰ろうとしていたのだろうか? そもそも、僕の名前は。 「貴方の脱落は傷を見た瞬間分かっていました。 それでもわざわざ丁寧に説明したのは、半分マスターとして覚醒していた貴方のデータが、変な形で残らないようにするため。 死んだことにすら気づかず、サイバーゴーストになんてなられても監督役として困るもの。 だから、納得して死んでもらいます」 カレンはそう言って目を閉じた。 それはまるで冥福を祈るよう―― せめて名前を教えて欲しい。 僕の名前を、僕が何というカタチをしていたかを。そしてできることなら呼んで欲しい。 でも、無理だろうな。 そう思ったからこそ彼はただ陶然と月を見ていた。 綺麗な綺麗な、月。 空に浮かぶ月は依然変わらず手が届きそうで―― 「では、聖杯戦争を始めます」 ――絶対に届きはしない。 ◇ そうして、月海原学園の一学生を演じていた筈の彼は、消滅した。 彼がいかな願いを持った、どんな魔術師であったのか、カレンは知らない。 ただ、もう彼にまつわる全ての情報が解体されてしまったことは確かだった。 それを見届けたカレンは一言呟いた。 「では、聖杯戦争を始めます」 と。 「始まるん……でしょうか」 その呟きをルーラーはどこか自信なさげに反芻した。 「まだ、あとから目覚める人も居るんじゃないですか。 さっきのあの人のように」 「かもしれませんね。でも、恐らくないでしょうね。 記憶の封印を解けるとしたら、大体今ぐらいがリミットでしょう」 封印された記憶と、長く付き合えば付き合うほど元の記憶は埋もれていく。 だから、この辺りが限界だとカレンは当たりをつける。 恐らく各マスターが目覚めた時間にそれほど差はない。あって数時間程度の差だろう。 だから実質聖杯戦争が動き出すのは今ぐらいからだ。 「一体、どんなサーヴァントが呼ばれているのでしょうね」 ルーラーがぽつりと漏らした。 これから始まるであろう戦いに、思いを馳せるように。 カレンは視線を上げた。 その視線の先には、この丘から見下ろした街の光がある。 錆びれたマンションがある。昔ながらの商店街がある。できたばかりのレジャープールがある。奇妙な噂の絶えない名家の屋敷がある。人を導く教会がある。 月が用意した此度の聖杯戦争の舞台。 今頃街では多くのマスターがサーヴァントと出会っている頃だろう。 いかなる英霊、あるいは反英霊がこの地に呼ばれたのか。 それはまだ分からなかった。 ――ただひとつ分かることがあるとすれば、 カレンは無言で空を見上げた。 月が、ある。 美しく輝く、月が。 こんなにも近しくあの光を拝めるのは、きっとここだけだろう。 ――みなあの月を望んでいる、ということでしょう。 【アサシン(ハサン・サッバーハ)@Fate/hollow ataraxia 脱落】 【プロローグの青年 @Fate/EXTRA 脱落】 【二次二次聖杯戦争 開幕】 主催 【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】 【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】 BACK NEXT OP.1聖杯戦争序幕 ~ 宙船、来たる ~ 投下順 001 言峰綺礼・セイバー OP.1聖杯戦争序幕 ~ 宙船、来たる ~ 時系列順 001 言峰綺礼・セイバー BACK 登場キャラ NEXT 参戦 ルーラー(ジャンヌ・ダルク) 029 初陣 参戦 カレン・オルテンシア 050 主よ、我らを憐れみ給うな