約 541,861 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/97.html
1スレ目ログ ____ ________________ 1-5 Aサイド ◆kxkZl9D8TU 小ネタ いちゃいちゃするのを愛でる場所 1-7 1-007 いちゃいちゃの究極っつとABCとかになるんかね? 1-36 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 小ネタ 10年後 1-37 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 小ネタ 自転車に二人乗り 1-41 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条、○度目の入院後。 1-43 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 小ネタ しりとり 1-44 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 小ネタ 美琴のままごと 1-47 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 小ネタ 美琴は通い妻状態 1-50 D2 ◆6Rr9SkbdCs シークレットメッセージ 1 プロローグ 1-51 カミサカ ◆somJVmVTuY 遊園地デート 1 1-62 カミサカ ◆somJVmVTuY 遊園地デート 2 1-70 D2 ◆6Rr9SkbdCs バレンタインデーとホワイトデー 1 1-77 D2 ◆6Rr9SkbdCs バレンタインデーとホワイトデー 2 1-88 D2 ◆6Rr9SkbdCs 能力とパーソナルリアリティ、ストレスの関連性 1 1-93 D2 ◆6Rr9SkbdCs 能力とパーソナルリアリティ、ストレスの関連性 2 1-100 カミサカ ◆somJVmVTuY 遊園地デート 3 1-112 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 二人の関係は? 1 1-116 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 大覇星祭のフォークダンス 1-118 カミサカ ◆somJVmVTuY 遊園地デート 4 1-128 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 二人の関係は? 2 1-133 D2 ◆6Rr9SkbdCs 美琴が積極的になった場合を考えてみた。 1-139 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 二人の関係は? 3 1-143 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ そうめん 1-147 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 裁縫スキル 1-153 1-152 小ネタ 上条さんの服選び 1-158 カミサカ ◆somJVmVTuY 遊園地デート 5 1-164 カミサカ ◆somJVmVTuY 小ネタ しりとりで勝負よ! 1-167 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 特定の単語を使わずに、2828してもらったり妄想してもらったりする 1-169 1-169 クリスマス・町でラブラブ 1 1-172 デレ好き(1-172) 小ネタ なんか思いついた 1-177 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 宿題の宿題を美琴に手伝ってもらったにもかかわらず 1-180 1-180 クリスマス・映画デート 1 1-183 1-169 クリスマス・町でラブラブ 2 1-188 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ここはお前の夢の場所 1-189 1-180 クリスマス・映画デート 2 1-191 1-180 クリスマス・映画デート 3 1-194 1-180 クリスマス・映画デート 4 1-195 1-169 クリスマス・町でラブラブ 3 1-199 1-180 クリスマス・映画デート 5 1-200 1-169 クリスマス・町でラブラブ 4 1-201 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 第12話「AIMバースト」の放映が終わりました。 1-206 1-180 クリスマス・映画デート 6 1-210 1-180 クリスマス・映画デート 7 1-211 1-169 クリスマス・町でラブラブ 5 1-221 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 美琴の逆襲 1-222 1-169 クリスマス・町でラブラブ 6 1-223 1-223 クリスマスに珍しく計画を立ててアプローチしてきた美琴 1 1-229 1-223 クリスマスに珍しく計画を立ててアプローチしてきた美琴 2 1-239 1-180 クリスマス・映画デート 8 1-240 1-169 クリスマス・町でラブラブ 7 1-245 1-244 小ネタ お前、本当に常盤台のお嬢様なんだな 1-250 1-169 クリスマス・町でラブラブ 8 1-254 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 1 1-270 小ネタ あのさぁ頼みがあんだけども 1-274 1-169 クリスマス・町でラブラブ 9 1-285 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 美琴から上条さんにメールが届きました。 1-293 小ネタ とある事情で入院中 1-295 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 目指せ最短消費でいちゃいちゃ。 1-298 カミサカ ◆somJVmVTuY 小ネタ アニメ13話の後日談 1-299 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 1 1-315 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 2 1-333 ◆tr.t4dJfuU 小ネタ 大掃除イベント(仮) 1 1-336 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条さんがどっかから帰ってきました。 1-337 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 1 A 1-346 ◆tr.t4dJfuU 小ネタ 大掃除イベント(仮) 2 1-350 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条さんがお疲れです。 1-353 カミサカ ◆somJVmVTuY 相合い傘 1-357 ◆tr.t4dJfuU 小ネタ 大掃除イベント(仮) 3 1-358 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 3 1-369 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 2 B 1-376 小ネタ とある少女の髪型事情 1-381 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 4 1-388 ◆tr.t4dJfuU 小ネタ 大掃除イベント(仮) 4 1-394 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 出会ってちょうど半年の記念日 1-397 小ネタ 彼女にお酒が入りました。 1-399 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 3 C 1-408 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 4 D 1-424 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 5 E 1-444 D2 ◆6Rr9SkbdCs パラレルライン 1-456 小ネタ 雪山で 1-474 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条さんと美琴が二人っきりになりました。 1-476 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 5 1-488 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 6 1-506 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 6 あふたーA 1-514 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 2 1-517 1-517 16年後 1-526 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 美琴ちゃんの卒業式、代わりに出といてね 1-529 スピッツ ◆Oamxnad08k 2年後を妄想してみた 1-534 D2 ◆6Rr9SkbdCs シークレットメッセージ 2 一端覧祭数日前のとある日 1-545 D2 ◆6Rr9SkbdCs シークレットメッセージ 3 一端覧祭当日 1-571 ぐちゅ玉(1-337) 帰省編 7 あふたーB 1-580 D2 ◆6Rr9SkbdCs シークレットメッセージ 4 一端覧祭終了後 1-592 スピッツ ◆Oamxnad08k 小ネタ エロ要素入れる? 1-601 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 3 1-606 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 3 1-620 スピッツ ◆Oamxnad08k 小ネタ とある少女の初夢 1-623 1-623 美琴の初夢 1-634 ぐちゅ玉(1-337) 妹からのプレゼント 1-655 D2 ◆6Rr9SkbdCs 23 30 1-667 スピッツ ◆Oamxnad08k とある修羅場騒動 1 前編 1-669 スピッツ ◆Oamxnad08k とある修羅場騒動 2 後編 1-673 スピッツ ◆Oamxnad08k とある修羅場騒動 3 後編 1-687 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 4 1-703 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条さんが美琴に襲われました。 1-707 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 7 1-717 ぐちゅ玉(1-337) ロシア帽のフラグ男 1-735 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 大覇星祭四日目。種目『男子騎馬戦』。 1-745 小ネタ 公道でパンツを見せびらかす 1-751 スピッツ ◆Oamxnad08k 巫女美琴 1-760 ぐちゅ玉(1-337) 8巻あふたー 1-764 D2 ◆6Rr9SkbdCs Danse_avec_moi. 1-780 小ネタ 御坂さんの魂を骨抜きにした男がいるとか、いないとか? 1-786 D2 ◆6Rr9SkbdCs Rendezvous 1-802 スピッツ ◆Oamxnad08k 雪合戦で決着つけるのかと思ってた 1-813 こたつ~ ◆yCXoE.oqws 特売デート? 1 (前) 1-824 D2 ◆6Rr9SkbdCs Will 1-845 1-845 もしも16巻のあのシーンがこんな内容だったら 1 1-858 D2 ◆6Rr9SkbdCs twenty_five 1-884 1-845 もしも16巻のあのシーンがこんな内容だったら 2 1-887 スピッツ ◆Oamxnad08k 勉強ネタ 1 1-892 豚遅(1-892) 小ネタ カルマを上条さんが歌うMAD見て思いついた。 1-895 1-895 あるお話 1 1-900 1-895 あるお話 2 1-910 スピッツ ◆Oamxnad08k 勉強ネタ 2 1-917 スピッツ ◆Oamxnad08k 勉強ネタ 3 1-926 1-926 小ネタ ちょっと捻ったネタです。 1 1-928 1-895 あるお話 3 1-934 1-926 小ネタ ちょっと捻ったネタです。 2 1-952 スピッツ ◆Oamxnad08k 勉強ネタ 4 1-960 小ネタ 新種の風邪ひいちゃったのよ 1-972 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 5 1-992 豚遅(1-892) とある学園の執事喫茶 1 プロローグ ▲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3313.html
とある聖夜の恋人空間【スウィートタイム】 「ピンポーン」とチャイムが鳴る。今まで時計とにらめっこをしながらソワソワしていた上条は、待ってましたとばかりに玄関のドアを開ける。「メリー・クリスマス!」「おじゃまします」の代わりにそう言った美琴は、片手にプレゼントの入った大きな紙袋を持ったまま、もう片方の手を小さく振った。「いらっしゃい。外、寒くなかったか?」「ん、平気。…てか、楽しみすぎて寒さとか忘れてたわよ♪」コートを脱ぎながら、満開の笑顔を上条に向ける美琴。今日という日が、本当に楽しみだったようだ。それもそのはずだ。何しろ本日はクリスマス・イヴ。恋人達の恋人達による恋人達のための祭典だ。……少なくとも、ここ日本では。そしてそれはこの二人としても例外ではない。それどころか、今回のイヴは特別で、おそらく一生の思い出になるはずなのだ。何故なら。「…やっぱ、ちょっと緊張するな。付き合ってから初めてのクリスマスだし」「そ…そうね。お互いにこ……恋人…ができたのも初めてだもんね…」改めて『初めて』を意識してしまい、上条は照れくさそうに頬をかき、美琴は俯く。お互いに、ほんのりと顔を赤くさせながら。「あっ! ホ、ホントにプレゼント以外何も用意しなかったけど、良かったの!? ケーキとかチキンとか!」いつまでもモジモジしていても始まらないので、美琴は話題を変える。「…ん? あ、ああ。それはこっちで用意したから大丈夫。 つか、招く側の俺が何もしてなかったら失礼だろ」「でもアンタ、いつもあまりお金がないって嘆いてるじゃない」「あのなぁ! 上条さんにだって、いざって時に使う用の貯蓄ぐらいありますよ!…少ないけど」なけなしのヘソクリを使ってまで、美琴とのプチパーティ用の会場を用意したらしい上条。彼もまた、今年のクリスマスを特別な物にしたいようだ。美琴はそんな彼の様子にクスッと笑った。しかし直後、ふと疑問が浮かんできた。「…あれ? 料理…これだけ?」テーブルの上にはケーキにチキンにピザにサラダ、更にはノンアルコールのシャンパンと、二人で楽しむには充分なクリスマスメニューが並べられていたが、美琴からの思わぬ不満の意見に、上条は慌てた。「えっ!!? す、少なかったか!? それともメニューがショボかった!? で、でも上条さんの懐事情を考えるとプレゼントも買ったしこれ以上のクオリティは―――」「あー、違う違う! 料理にケチつけたいんじゃなくて、 あの子も食べるならちょっと足りなくないかって思っただけよ!」あの子とは勿論、腹ペコシスターことインデックスの事だ。彼女は上条と同居しており、彼女も一緒に食べるならば最低でもあと2~3人前は必要なはずだ。「ああ、その事か。大丈夫、インデックスは一時的にイギリス帰ってるから。 やっぱクリスマスは十字教徒には神聖なイベントだしな。 インデックス自身もイギリス清教にとって特別な存在だし、 どうしてもって神裂…あー、神裂ってのはインデックスの知り合いな。…が、連れてったよ。 ついでにオティヌスとスフィンクスもな」「えっ!!? ちょ、待! じゃ、じゃじゃ、じゃあ今日は私とアンタの二人っきり!!?」「ああ……そう…なるな」寝耳に水である。インデックスやオティヌスがいるであろう事を想定して上条の寮に訪問した美琴は、彼と二人っきりになるというプランを全く考えていなかった。ルームメイトの白井にも、「部屋には他にも人を入れる」というのを絶対条件に、クリスマスデートを渋々ながら了承させたので、この現状を知ったら白井は発狂するかもしれない。色々と覚悟を決めて望んだクリスマスであるが、二人っきりとなると、『別の覚悟』が必要になってしまう。美琴は耳まで赤くなってしまった。「んじゃあ、さっそく乾杯するか」しかし上条は特に気にした様子もなく、グラスにシャンパン(ノンアルコール)を注ぐ。美琴が赤面する事など、上条にとっては『日常茶飯事』なのだ。 ◇「むぐむぐ……けど本当に良かったのか? せっかくのクリスマスなのに、どこかに出かけないで俺の部屋で済ませちまってさ。 外はイルミネーションとか綺麗なんだろ?」ピザを口の中でもぐもぐしながら、上条がそんな事を聞いてきた。美琴は骨付きのチキンステーキをナイフとフォークで切り分けながら答える。「んー…私としては人ごみで騒ぐよりも、少人数でゆったり過ごしたかったし。 ……ま、まぁ、流石にアンタと二人だけってのは予定と違ったけど…」「予定と違った」という台詞の前に、「いい意味で」という言葉が隠させているのはご愛嬌。「んー…じゃあ美琴の友達でも呼ぶか? 佐天とか」「ふぇっ!!? あ、い、いや佐天さんは中学の同じクラスの友達とパーティーするみたいだし、 黒子や初春さんは風紀委員だから、この時期は交通整理とかで忙しいみたいだから!」「…そっか」美琴の言った事は、半分本当で半分ウソであった。実は美琴、当初の予定ではいつものメンバー(先に挙げた三名に加え、婚后、湾内、泡浮、固法、春上、枝先など)とパーティーする予定だった。しかし、そこに待ったをかけたのが佐天だったのだ。ファミレスで美琴から誘いを受けた際、「彼氏との初めてのクリスマスだってのに、何考えてんですかっ!!!」と大却下されたのだ。美琴も、「だだだって! 前に『クリスマスは皆でパーティしようね』って約束したじゃない!」と反論したのだが、佐天曰く「そんなもん御坂さんに彼氏が出来た時点で無効ですよ無効っ!」なのだそうだ。佐天さん、ファインプレーである。「そ、それにイルミネーションだって、わざわざ外に出なくても見られるし!」「…? いや、ここからだと見れないぞ?」上条は窓に目を向けるが、いつもの風景しか映らない。上条の不幸体質がそうさせたのか、ちょうど角度的に街のイルミネーションがギリギリ見えない位置に、この部屋はあるらしい。しかし美琴は、「違うわよ」と言いながら立ち上がり、そのまま部屋の電気を消した。「おわぁっ!? 急に暗くしてどうし…た…?」真っ暗なはずの部屋に明かりが灯る。しかしそれは、部屋の電気ではない。「えへへ~…どう? 美琴センセーの自家発電イルミネーションは」美琴が自らの能力を使い、体の周りに火花を散らしていたのだ。その幻想的な光景に、上条は「おぉ…」と感嘆の声を漏らした。「すげーな…そんな力の使い方もあるのか。これは上条さんも負けてはいられませんなぁ」言いながら立ち上がり、腕まくりして右手の準備をする。「しかと見よ! 俺の右手の第二の能力を~~~!」「えっ、えっ!? わきゃっ!!!」上条はそのまま美琴の後頭部に右手を回し、そのまま優しく抱き締める。ぽふん、と美琴の顔が上条の胸元に埋まった。「ふっふっふ…これは彼女殺し【ミコっちゃんブレイカー】と言って、 ミコっちゃんの能力を打ち消しつつ、更には大人しくさせる事もできるのですよ!」「……………」「これこそが上条さんの右手の真の使い方…って、美琴? 聞いてるか?」「……………」美琴からの返事がない。が、その代わりとして心臓の音が徐々に大きくなるのが伝わってきた。火花が消えて暗闇となった部屋の中では、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされ、しかも体を密着させている事で相手の心音が直に届く。その場のノリと悪ふざけで美琴を抱き締めてしまった上条だが、この美琴の様子に自分が何をしたのかを理解し、急激に恥ずかしくなってきた。「わ、わーっ、ごご、ごめん美琴! す、すぐ離れるからっ!!!」バッと体を離し、そのまま部屋の電気を点ける上条。するとそこには、顔を茹で上がらせたまま呆ける美琴の姿がそこにあった。「もう少しだけ、抱き締めたままでも良かったのに…」という思いすら浮かばない程、思考を硬直させて。 ◇「じゃあそろそろ、プレゼント交換でもしますかねぇ」食事も終わり、ケーキを食べた際に指に付着した生クリームをチロッと舐め取りながら、上条は立ち上がり、そのまま押入れにしまってあった紙袋を取り出す。ちなみに上条が指を舐めた時、美琴はその仕草を少しセクシーに感じてしまい、ちょっとだけドキッとしてしまったのだが、それは内緒だ。「私からは…これ! この前、新しいフライパンが欲しいって言ってたから」「おおお、サンキュー! もうボロくなってたから買い換えたかったんだけど、 イマイチ踏ん切りがつかなくてさ! すっげぇ助かるよ!」「ふふっ! そんなに喜んでくれるなら、選んだ私としても嬉しいわ」美琴が取り出したのは、高級な鍋やフライパンなどの入ったキッチンセットだった。クリスマスプレゼントとしては少々ロマンスが足りないが、上条の本当に欲しい物を選んだという意味では、流石は彼女と言ったところか。「俺からはコレな。……美琴のに比べるとお安い物なので申し訳ないのですが…」上条が取り出したのは、紙袋いっぱいのヘアピンだった。「わぁ! いっぱいある…どれも可愛い~!」「本当はゲコ太の何かグッズを買おうとしたんだけど、コレクター相手には逆に失敗するかと思ってな。 プレゼントした物が『実はそれ持ってます』じゃカッコつかないし… てか俺の場合、その確率のが高そうだしな。 で、美琴っていつもヘアピンしてるから、こっちに変更したんだよ。 これなら量があっても困らないし、色んな種類も買えるからな」「ありがとう! 大事に使うわね!」心の底から嬉しそうに、ひまわりのような笑顔を向ける。上条からのプレゼント。ただそれだけで、美琴が幸せを感じるには充分な理由だった。と、ここで大量のヘアピンの中に、一つだけ不恰好な物がある事に気付く。美琴はそれを紙袋の中から取り出す。「あれ? これだけ他のと違う…?」ギクリ!と上条が冷や汗を流した。「あー…バレちまったか……こんだけ多ければ、うまく紛せられると思ってたんだがなぁ… 実はそのヘアピンだけ……その…ワタクシの手作りなのでござんす…」「えっ…」その時、美琴は自分自身の胸がキュンと高鳴るのを感じた。「いや…せっかくだから手作りの物とかいいかな~とか思ってネットで調べながらやってみたんだけど、 やっぱ慣れない事はするもんじゃないな…おかげでその有り様ですよ。 けど捨てるのもアレだし、大量の既製品と混ぜればそれっぽくなるかと…」説明しつつ、気恥ずかしそうに頭をかく上条。美琴はそのヘアピンを胸の前でギュッと握り、瞳を潤ませながら。「……これは…これだけは使えないわよ…」「だよなー…そんなん付けて街歩けないよな。ごめん! いらなかったら置いてっても―――」「違う! そうじゃないのっ!」上条の言葉を遮るように否定する。 「使うのが嫌だ、とか…そういうんじゃないの! 付けたまま外に出て汚れたり…ましてや壊したり落としたりしたくないもん! こんな素敵なプレゼント貰っちゃったら…大切に取っておく事しかできないじゃない!」「えっ…あ、そ、そうか…? ま、まぁ気に入ったんなら…別にいいけど…」美琴から実直な気持ちの塊をぶつけられ、上条も思わず「かあぁっ…!」と赤面し、美琴から目を逸らしてしまう。この雰囲気ならば、もしかしたらこのまま…おそらく自分でもどうにかなっていたのだろう、と美琴は自己分析した。上条からの心のこもったプレゼント。美琴には、もう抑えきれない程の「ありがとう」と「大好き」が溢れ出していた。だから―――「ね…ねぇ……も、もう一つ……その…プ、プレゼント…が…あ、ある、んだけど…」「へっ? あ、いや…このセットかなり高そうだし、これ以上は―――」上条が言い終わるその前に、唇に、柔らかい感触。上条は一瞬、何が起きたのか分からなかったが、すぐにそれが何なのかを理解する。上条にとって、そして美琴にとっても、それは初めての口付けだった。「なっ!!! ちょ、きゅ、急に何をっ!!?」慌てて離れて大声を出す上条とは対照的に、美琴は顔をトロンとさせながら呟く。「私の…初めて……あげる…」「い、いやいやいや! ご自分が何を仰ってるのか分かってらっしゃりますかっ!!?」「何よ…私だって…すっごく恥ずかしいんだから……」「~~~っ!」目を伏せて、指をモジモジと弄りながらそんな事を言う美琴に、上条も一瞬、どうでもよくなってしまいそうになるが、相手はまだ中学生だ。流石にキス以上の事をする訳にはいかない。なので、「、きゃっ!!?」上条は美琴をベッドに押し倒した。ただし、このまま襲うためではない。「……あのな、美琴。 俺だって男なんだから、彼女からそんな事を言われたら我慢できなくなっちまうんだよ。 こんな風に無理やり美琴を…なんて事も出来ちまうんだ。そんなの怖いだろ? だからあまり大人ぶらなくてもいいから。こういう事はさ、ゆっくり時間をかけて……」自分の中の本能と葛藤しつつ説得を試みる上条。しかし美琴はベッドに横たわったままの状態で、首をゆっくりと横に振る。「…怖くなんて…ないわよ……だって…だってアンタが相手だもん。 それに…私、言ったじゃない。………私の、『初めて』あげるって… キスだけじゃなくて………ね…? 『こっち』も…アンタにプレゼント…したいの…」「っ!!!」美琴の言葉に、上条は生唾の呑み込み、額からは脂汗が流れ出す。しかしここで、美琴から更なる衝撃の一言。美琴は少しだけ困り顔を浮かべて。「あっ…で、でも………優しくしてくれると…嬉しい…かな?」この瞬間、辛うじて保たれていた上条の理性が完全に途切れた。二人のクリスマスは、まだ始まったばかりだ。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2056.html
美琴「ゆっゆっ幽霊が出たの…」 上条寮の近くの路地にて時刻は午後7時半頃当麻「御坂、どうした、何があった説明してくれ」美琴「ゆっゆっ幽霊が出たの…」当麻「うん? 幽霊? 御坂すまない、ご飯の支度しないといけないから、帰るな」美琴「ちょっとまってよ、カヨワイ女の子が泣いて困ってるのよ、今説明聞いてくれるって言ったじゃない」当麻「いやー当麻さん、ってきりビリビリが事件か何かに巻き込まれたのかと、それでは、じゃーな御坂」美琴「ちょっとまってよ」当麻「御坂さん手離してくれますか!当麻さんお腹減ったんですが」美琴「うっうっう…」当麻「しゃーねーな、御坂、何歳だ~? 幽霊なんてものは、100%存在しないんだぞ」美琴「うっ…」当麻「それに、ここは科学都市、そういった類の物は科学的に証明して信じないんじゃないのか」美琴「うっうっう…」当麻「泣いてたらわからないだろ…」美琴「うっ…」当麻「しょうがない、ここ寒いし俺の寮が近いし家で暖かい物でも飲むか?」美琴「うん」 …………………………………………………上条寮内当麻「御坂、ココアで良かったか」美琴「うん、ありがと」当麻「少しは落ち着いたか」美琴「うん」当麻「ご飯食べるか?上条さんお手製の手作りカレーだ」美琴「うん」当麻「今から作るから待ってろ」美琴「あっ、、アタシも手伝うわ」当麻「いいぞー御坂はお客さんだからゆっくりしてろ」美琴「………」当麻「泣きそうな顔するなよ、あー分かった、御坂も手伝ってくれ」当麻(一人で居るのが怖いのかな)美琴「うん」割合 ご飯作った食べた当麻「みさか手際いいし料理すごく上手だな」美琴「ありがと」当麻(やけに素直だな)当麻「っで、どうしたんだ? … 何があったんだ…」美琴「うん、えとね」美琴「今日の朝寮で長い髪の毛が散乱してたの」当麻「髪の毛?」 美琴「うん、アタシや黒子の髪色と違う黒くて長い奴だったの」当麻「それ誰かの悪戯じゃないのか?」美琴「黒子もそう思ってジャジメントとして科学的に調べてるわ、でも…」当麻「みさかは違うと思っているのか?」美琴「うん」コンコンコン コンコンコン当麻「うん?誰か着たのか? ハイハイどなたですか?!」ガチャ当麻(あれ誰もいない)美琴「誰?どうしたの」当麻「誰も居なかった」美琴「…」当麻「みっみさかさん、抱き着く様にしがみ着いてこられても、上条さん困ることですのよ」美琴「…」当麻「うーん、ただの風かなんかだよ、でっみさかは何で幽霊と思っているんだ?」美琴「えとね」当麻「御坂、顔が近すぎ」美琴「うん、それでアタシ電気能力者じゃない、それで電気の違いで、見てなくても近くに誰か居たら分かるのよ」当麻「それで」美琴「ここ一週間くらい前から、誰かに付けられてる気がするの」当麻「ストーカか何かじゃ?」当麻(みさかさんムネが腕に)美琴「違うの目では見えないの」 当麻「うーん、何らかの能力とかは考えられないのか?」美琴「ちょっとトイレ借りていい?」当麻「あー断らなくてもいいぞ好きに使ってくれ」美琴「ねぇ…」当麻「うん? トイレはあのトビラだぞ」美琴 「えと…」当麻「どうしたんだ?」美琴「着いて来て欲しいの」当麻「みっみさかさんトイレは目と鼻の先ですよ」美琴「…」当麻「泣くなよ、しょうがない、着いて行くよ」美琴「うん」当麻「みっみさかさん、無理です、手引っ張らないで流石にトイレ中まで一緒に入るなんて」美琴「…」当麻「みさかは花も恥らう乙女だから…」美琴「…」当麻「あー分かったよ扉の外から手を延ばして繋いどいてやるから、これで簡便してくれ」美琴「うー…」当麻(うっ新しいスキルに、、目覚めそうだ)割合美琴「戻ろ」当麻「あぁ」 当麻(私は駄目な男だ 私は駄目な男だ 私は駄目な男だ 私はHentaiだ 私はHentaiだ 私はHentaiだ)×10当麻「それで能力者でも無いと思っているのか?」美琴「うん、その線も考えたわ、説明しにくいんだけど能力の場合と感じ方違うの」当麻「昨日の深夜にもその感じがあったんだな」美琴「うん…」当麻「それで何で俺の所に来たんだ?」美琴「数日前に公園で会ったじゃない」当麻「あー、たまたま出くわしたな」美琴「うん、それで、 その時、付け回されてる感覚が無くなったの」当麻「って事は、俺の近くだと安全と考えたんだな」美琴「うん」コンコンコン コンコンコン美琴「ベランダから、、、」当麻「誰だ」シャーガラガラガラ当麻「あれ、誰も居ない」美琴 「うっうっ、、、」当麻「電気的能力で幽霊の感覚は今なかったのか?」美琴 「うっ、」当麻「みさか俺が守ってやるから大丈夫だから」美琴「…」当麻「…」 美琴「うん、ありがと、少し落ち着いた」当麻「それで」美琴「電気的感覚は無かったわ、部屋の外までは解らないし」当麻「そうか~」美琴「…」当麻「…」美琴「…」当麻「もう10時過ぎか、、、」美琴「嫌よアタシ帰らない」当麻「、、、あー、御坂泊まってけよ」美琴「うん」当麻(御坂弱気になってるな)美琴「お風呂入りたいんだけど」当麻「あーいいぞ使って」当麻(嫌な予感)美琴「一緒に入ろ」当麻「みっみっみっみさかさん」当麻(鼻血が)美琴「いこ」当麻「ちょっと待ってムリムリムリ」美琴「…」当麻「あーもう、トイレの時見たいに扉の外から手繋いでやるから」美琴「うー」当麻「それでいいか」美琴「うん」当麻「じゃー、とうまさんのジャージ貸手やるよ」美琴「ありがと、いこ」 ガチャン脱衣所当麻(まずい、御坂恥じらいもなく服を脱ぎ始めたぞ)当麻(見たいけど見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ)美琴「じゃー手離したら駄目だからね」当麻「あぁ…」当麻(みっみさかさんの短パンとパンティーとブラ、、、おし、、、)割合二人とも風呂入って出た当麻「今日はもう寝るか」(鼻血が止まんね~)美琴「うん」当麻「布団一つしか無いから御坂ベット使ってくれ」美琴「嫌、アンタも」当麻「御坂さん、とうまさんも男なんですのことよ」美琴「うー」当麻「あー、ウルウルしないでくれ わかったよ ベットの端と端な、電気消すぞー」美琴「嬉しい」当麻「みさかくっつくな~」当麻(キスは愚かデートもしたことないのに、うっくっうわー、あーーあー)美琴「今日ゴメンね」当麻「あーいいよ、、、」当麻「思ったんだけど、幽霊っているのかな」美琴「科学において、幽霊が居ないことは証明されてないわ」 当麻「でも、居ることも証明されてないよな」美琴「うん、科学って原点をたどると解らないことだらけなの」当麻「原点?」美琴「例えば水って100°になったら沸騰して0°なら凍るじゃない、気圧によって変わるけど」当麻「そうだな」美琴「でも、それが何故なるのかは解らないの」当麻「それは、水の分子構造そうなってるからじゃないのか?!」美琴「じゃー、その分子構造なら沸騰するの?その原子構造なら沸騰するの?ってことになるのよ」当麻「それが原点か」美琴「そう、科学は現象から結果は証明出来るけど、元の元はなんで起きてるか解らないの」当麻「うーん、、それで幽霊の発生原因が科学でも解らないってことか、なんか難しい話しだな」美琴「うん、まー幽霊が存在する結果として証明されてないから、居る結論にはならないんだけどね」当麻「とうまさん、もう頭がショートだ、結論は100%否定は出来ないってことだな」美琴「うん」当麻「そろそろ寝よう」美琴「うん」当麻「明日原因が分かるかわかんないけど、探してやるよ」美琴「うん」当麻「みさか オヤスミ」美琴 「うん オヤスミ」美琴 (とうま、ありがとね)
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3377.html
食蜂さんの大誤算 Ⅱ 上条当麻は「食蜂操祈」という人物を認識する事ができない。かつて上条が重症を負った際、食蜂が応急処置で上条の脳の構造を変化させた為なのだが、その時の後遺症によって、残酷にも食蜂に関する事は一切記憶できなくなったのだ。以来食蜂は上条に直接干渉する事を控え、いつか上条が自分の事を思い出すその日まで、小さな奇跡を待つ事にしたのだ。が、ここへ来てそう悠長な事も言っていられない事態になりつつあった。理由は単純。御坂美琴の台頭だ。何やら最近、美琴がやたらと上条のポイントを稼いでいるらしいのだ。(おそらくは某・柵川中学の生徒の仕業ではあろうが)同じ常盤台のレベル5にして、お互いに忌み嫌っている存在。美琴は食蜂の性格が、そして食蜂は美琴の境遇が気に入らなかった。歴史に「たられば」は無いが、それでも一年半前のあの事件がなかったら、上条【かれ】の隣に立っていたのは美琴【かのじょ】ではなく食蜂【じぶん】であったはずなのに、と。だから美琴にだけは負けられない。美琴にだけは上条を(寝)取られたくはないのだ。故に食蜂は、上条の学校の近くのカフェで、こんな事を暗躍していた。(いっその事、私の洗脳力を使っちゃおうかしらぁ… あ、でも御坂さんは電磁バリアで能力の遮断力が利いてるのよねぇ。本当に厄介だわぁ。 となると上条さんの方を洗脳するしかない…かぁ… あんまり気は進まないけど、背に腹は代えられないって言うしぃ、仕方力がないわよねぇ)食蜂はカバンからリモコンを取り出し、頬杖をつきながら考える。どうやらターゲットを上条に絞り、洗脳によって食蜂【じぶん】への恋心を植え付ける気のようだ。おそらく美琴に能力が通用すれば、手っ取り早く美琴の上条への想いを消去していたのだろうが、残念ながらそれはできない。しかし先程説明した通り、上条は食蜂の顔も名前も記憶できない体質である。「食蜂操祈に恋をする」と脳を書き換えても、その食蜂操祈が誰だか分からないのだ。これでは上条は、誰だか知らない人の事を無性に恋焦がれるという、悶々とした日々を送ってしまう。見ている分には面白いが、本人的にはあまりにもむごい。だが食蜂もそんな事は分かっている。(要は上条さんが私に好意力を向けてくれればいいんだしぃ、 「私を好きになる」じゃなくて「目の前の女性を好きになる」って洗脳すればいいのよねぇ)上条へ「目の前の女性に惚れる」という暗示をかけて、食蜂と認識しなくても自分を好きになってくれるように作戦を立てた。これならば瞬間的に食蜂の事を忘れても、自分が上条の目の前に顔を出すだけで、その度に自分を好きになってくれる、という算段だ。こんな物、所詮その場しのぎだという事は食蜂も理解している。そもそも上条が右手で自分の頭を触ってしまったら、洗脳の効力も簡単に失うのだ。しかしそれでも。(…それでも私と上条さんがラブラブな所を御坂さんに見せ付ければ、 御坂さんに傷心力を与える事は出来るかも知れないものねぇ…)食蜂は黒い笑みを浮かべた。しかし残念ながら、彼女の思惑通りには行かないだろう。だってここ上琴スレだし。 ◇上条が下校してくる時間。食蜂は校門近くの曲がり角から、リモコンを構えながら様子を窺っていた。上条のいつもの通学路なら、このままこの曲がり角に歩いてくるはずである。ちなみにだが、すでに自らの能力で人払いは済んでいる。この高校の女生徒全員に、下校時は上条に近づかないように操作しているのだ。理由は勿論、これから上条に行う「目の前の女性を好きになる」という洗脳で、関係ない女生徒に誤爆させない為だ。その生徒の為ではなく、自分の為に。上条の通う高校の生徒数は数百人程度。その中で女性は単純計算しても1/2だ。食蜂の心理掌握は単純な命令ならば三桁近い人間を操る事が出来るので、これ位は余裕である。数分後、人払いも効果もあってか上条の周りに女生徒の姿はなかった。邪魔な金髪グラサンアロハ野郎と、青髪ピアスエセ関西弁野郎はいたが。「今日はカミやん、珍しく小萌先生の補習がないんだにゃー。 こりゃ明日は雪かも知れないぜい」「小萌てんてーの個人レッスンが無いとか、カミやんとちゃうけど不幸やわー… ほんなら一体何の為に宿題忘れたんか分かれへんやん」「俺だって補習が無い日くらい普通にあるわっ! それと青髪。小萌先生が泣くから、わざと宿題忘れるのは止めとけ」本当に邪魔である。食蜂は気にせず、上条目掛けてリモコンのボタンを押した。後はこの曲がり角で待つだけだ。(…あっ、今から上条さんが私の事を好きになると思ったら、 何だかドキドキしてきちゃったわぁ……)今更ながら、乙女力を全開にしてしまう食蜂。しかし妙な事に、それから1分、2分と過ぎても上条は来なかった。不思議に思った食蜂は、そっと曲がり角から顔だけ出して様子を見てみると、何故かそこには、口をあんぐりと開けたまま固まる、金髪グラサンと青髪ピアスの姿しかなかった。「えっ、えっ!? か、上条さんはぁ!?」残念ながら、ここから先は上琴の時間なのである。 ◇食蜂が近くの曲がり角でドキドキしているのと同時刻。デルタフォースに近づく一人の少女の姿があった。「ちょ、ちょろっと~? アンタ今帰り? ぐ、偶然ね私もなのよ」その正体は言わずもがな、美琴だ。偶然も何もわざわざ(以下略)。食蜂は人払いする為に、この学校の女生徒全体に暗示をかけたのだが、そもそも美琴はこの学校の生徒ではない為、食蜂の能力から逃れられたのだ。もっともそうでなくとも、美琴には食蜂の能力は効かないのだが。食蜂も元々美琴に見せ付ける為に上条を洗脳した訳で、そこは予定通りではあるのだが、彼女は二つだけミスを犯した。それも飛び切り致命的な奴を、である。一つ目は、まさか美琴が上条の学校まで足を運ぶとは思わなかった事だ。上条が食蜂【じぶん】に惚れた後、そのまま街を練り歩いて噂にでもなり、あわよくばその様子を美琴の目に直接焼き付けてやろうかなどとほくそ笑んでいたが、思いのほか美琴が偶然的【せっきょくてき】だったのだ。そして二つ目は、上条がすでに食蜂の洗脳を受けてしまっている事である。上条は今、食蜂の能力によって「目の前の女性を好きになる」脳をしてしまっている。「…? どうしたのよ、アンタ。何か呆けてるけど」「……な、何で今まで気付かなかったんだろ…美琴って、こんなに可愛かったんだな…」つまり上条は、目の前の女性【みこと】に対してトゥンクしていたのだ。頬をうっすらと桜色に染めながら美琴を見つめる上条。そして歯の浮くような台詞。あまりの出来事に、土御門も青髪も、美琴本人ですら、「……へ?」と呆気に取られた。しかし上条の奇行はこれで止まらなかったのだ。上条は美琴の手をギュッと握り、とんでもない事を聞いてきた。「なぁ、美琴って彼氏とか…もしくは好きな奴とかっているのか?」「えっ!? ひゃ、はぇ!!? べ、べべべ別にそんなのいないけどっ!!?」突然手を握られた事と突然の色恋に関する質問で、即座に顔を爆発させる美琴。好きな人がいないと言うのも、当然ウソである。好きな人なら今、目の前で自分を見つめながら手を握っているのだから。だが洗脳されていても鈍感が直った訳ではない上条は、その言葉をそのままの意味で受け取る。そしてホッと息を吐いた後、上条は―――「じゃあさ、俺が付き合ってくれって言ったら…ダメ、かな?」「かっっっ!!!!!??」その瞬間、美琴の思考が停止した。ついでに、土御門と青髪も。「ま、まぁ今すぐ返事くれとは言わないけど、この後デートするくらいはいいよな? つー訳で、俺ちょっと急用できたから、また明日な」言いながら、上条は硬直して動けなくなった美琴を『お姫様抱っこ』しながらその場を去った。口をあんぐりと開けたまま固まる土御門と青髪に別れを告げ、寄り道でもするのか、いつもの通学路と違う道へと足を進ませながら。 ◇「……ハッ!?」美琴はそこで目を覚ました。状況を把握するべく、周りを見回す。何か記憶が飛んでいたようだが、いつの間にかカフェにいるらしい。上条も美琴も知らないが、ここは奇しくも冒頭で食蜂が暗躍していたカフェである。「あ、あれ…? なに、夢…? そ、そうよね。アイツがいきなりあんな事を―――」記憶があやふやなので、上条の衝撃的な告白もきっと夢だったのだろうと落胆する美琴。しかし美琴の幻想はぶち殺される事となる、珍しく、いい意味で。「あんな事ってどんな事?」「わっしょいっ!!!」ひょいっと視界に入ってきた上条の顔に、思いっきりテンパってしまった。「ななななアアアアンタどどどどどうして!!!?」「ん? いや、お恥ずかしながらトイレ行ってきてまして。 美琴が寝てる間にコーヒー3杯もおかわりしちまってさ」美琴としては「どうしてこんな所に」とか「どうして私はここに」とか「どうして何がこうなった」とか「どうしてあんな事を」とか色々な意味で聞いたのだが、上条は「どうして席を外していたのか」と勝手に解釈をして、「トイレに行ってきたから」なのだと、どうでもいい情報をくれた。しかしそのどうでもいい情報の中にも、気になる事が一つ。 「さ、3杯もおかわりしたの…?」「ああ。あれから結構時間が経ったからな。美琴ってば、全然起きねーんだもん」どうやら美琴【じぶん】が気絶したのは間違いないようで、上条はそんな自分を担いで近くのカフェで休ませていたらしい。本来ならば寮に送るか病院に送るのが妥当なのだが、美琴が上条の目の前で顔を爆発させて気絶するのは『いつもの事』なので、大した事ではないと判断し、こうしてカフェの中でまったりしている訳だ。「で、でもだったら、さっさと起こしてくれれば良かったじゃない」「んー…まぁ、無理に起こすのも可哀想だし、何より美琴の寝顔を見ていたかったからな」「にゃぼっ!!?」上条から再び歯の浮くような台詞。やはり気絶前に聞いたあの告白は…「ねねね、ねぇ…ア、アア、アンタさっき言った事、おおおお、おぼ、おぼぼ、覚えてる?」「さっきって……いつだ?」「だか、だから、アンタのががが学校の校門でアンタが……わ…私の事を……その…………」ぼそぼそと口ごもる美琴の様子に、流石の上条も察しがつく。「あぁ、俺が付き合ってくれって言った事か? 勿論、覚えてるよ」「にゃっしゃらあああああああいっっっ!!!!!!」あの告白が夢じゃなかった事で、美琴の中のあらゆる感情が総動員する。おかげで意味不明な言葉(らしき奇声)を発してしまう程に。「ふ、ふぅん? で、でで、でも何でいきなり? て言うかいつから? そもそも私のどんな所が好っ! ……スキ…なの?」しかし一度思いっきり奇声を出した後は意外と冷静になり、カタカタと手が震えてはいるが、お冷を飲んで喉を潤すくらいは落ち着いている。ついでに上条に対して、質問攻め出来る程に。どうやらテンパり具合が限界点を超え、一週回って逆に平静さを取り戻しているようだ。後々この時の事を思い出して、とんでもないぶり返しが来そうだが、とりあえず今は大丈夫だ。「どんな所が好きって…そうだな。 抱き締めたくなるその小さい背中も、握りたくなるその温かい手も、 撫でたくなるそのサラサラの髪も、キスしたくなるその柔らかい唇も、 そして太陽みたいなその笑顔も、全部…美琴の全部が好きだぞ」「ばっひゅうううううううううう!!!!!」どこが好きなのか聞かれたので素直に答えたら、美琴の口から含んだばかりのお冷が自分の顔目掛けて噴射された。不幸である。「にゃにゃにゃにゃにへんにゃこといってんのよばかじゃにゃいのっ!!!?」美琴【そっち】から聞いてきたのに素直に答えたら馬鹿呼ばわり。不幸である。冷静になれたのはほんの一瞬だったようで、美琴はいつもの美琴に戻る。上条も上条で「おっ! いつものミコっちゃんらしくなったな」と笑いながら、濡れた顔をおしぼりで拭く。「で、結局どうかな。その…俺と付き合ってくれっていうのは……」「っ!!!」顔を拭きながら、さらりと人生の分岐点を聞いてくる上条。美琴も肩をビクッとさせて、そのまま俯き、黙り込む。やはりこんな大事な返事を急かすのはよくないか、と上条がそう思った時。小さく、「パキィン」と音がした。上条が『右手』におしぼりを持って頭を拭いた時、親指が直接頭に触れてしまったのだ。当然ながら上条本人は知らないが、それは食蜂の洗脳が解けた瞬間だった。(………俺、こんな所で何してんの…?)洗脳はされていたが、その間の記憶が無くなった訳ではない。自分が今、何をしているのか、また何をしたのか理解はしている。しかし納得は出来ていない。明らかに先程までの自分はおかしかったのだから。(なななななんつった俺っ!!? い、いい、いや、『確かに』、 美琴の小さい背中は抱き締めたくなるし温かい手は握りたくなるし サラサラの髪は撫でたくなるし柔らかい唇はキスしたくなるし 笑顔も太陽みたいだけどもっ!!!)洗脳は解けたはずなのに、美琴の好きな所が何故かスラスラと出てくる上条。そして訳が分からず頭をかきむしる上条を目の前に、美琴はポツリと呟いた。「わ…私、で良ければ……その、ふ、不束者…です、が…ど…どうぞよろしく……です…」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1989.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/素敵な恋のかなえかた 恋、はじまる 「…………」 「…………」 夕方、目を覚ました上条は同じように目を覚ました美琴と無言で見つめ合っていた。 もっとも両者とも冷や汗をかいているやたらと緊張感のある見つめ合いなので、甘いひとときなどといった物とはまったく縁遠い見つめ合いではあったが。 「あ……」 いつ電撃を浴びせかけられるのだろうか、などと思いながら上条がようやく口を開いた。ちなみに彼は未だに美琴の膝に頭を埋め続けている。 「あの、御坂さん?」 「何よ」 低い声で美琴は返事を返す。 「わたくしは、何故にこのような格好で寝ているのでございましょうか?」 「そ、それは……」 「もも、もしかしてひょっとして、万が一のことなんですが、恐れ多くも御坂さんがわたくし上条当麻の頭を……」 「違うわよ! これは偶然よ、偶然! 偶然アンタの頭が私の膝の所に来て膝枕みたいになっただけで、私の方からしたわけじゃ! ああもうこのスケベ! 早くどきなさいよ!」 顔を真っ赤にして早口に言い訳をした美琴は、自分の膝を枕にしている上条の頭をポカポカと殴りつけた。 「いて! わかった、どく! どくから! それ以上殴んな!」 上条は美琴の攻撃から自らの頭をかばうように立ち上がった。 「いってーな。これ、俺が悪いのかよ」 立ち上がった上条は不満たらたらといった様子で美琴を見た。 そんな上条から美琴はぷいと目を逸らせた。 「……そうよ」 「どこが?」 「それは、その……あ、アンタが寝ちゃったから! ほら、他にも行きたいとこあったのに、夕方になっちゃってるじゃない! どうするのよ、この状況!」 「あ」 美琴に指摘され、上条はきょろきょろと辺りを見回した。確かに周りの景色も自分達の体もオレンジ色に染まっており、その色合いは今の時刻が既に夕方、しかもかなり日没に近い時間だということを示していた。 大人の男女であればむしろこれからがデートの始まりだと張り切るところであるが、上条達はまだ高校生と中学生。ましてや付き合ってもいない二人なので、デートはこれでお開きである。 「そっか、もう夕方か。じゃあ今日のデートは……」 「そう。今日のデートはもう終わり。全部アンタのせいよ、馬鹿」 少し唇を尖らせる美琴に対して上条はばつが悪そうに頭をかいた。 「俺のせいって……。じゃあ起こしてくれりゃよかったのに」 「それは、しょうがないじゃない。だってアンタ、ものすごく疲れてたみたいだし。さすがに、起こすの、忍びなくて……」 「悪い」 上条は申し訳なさそうに頭を下げた。 美琴はそんな上条に向かって静かに首を横に振った。 「ううん。もういいわよ。アンタは疲れてたんだし、結局私もいっしょに寝ちゃったんだから、責任は私にもあるし。だからアンタのせいって言葉も取り消すわ」 「…………」 「だからね、お互い後腐れなし。今日はもう、これで終わりにしましょう!」 美琴はパチンと手を叩いて明るい口調でそう言うと、上条に背を向け自分のバッグを開けた。 「…………」 上条は帰り支度をする美琴を黙って見ていた。 やや調子の外れた鼻唄を歌いながらバッグの中身を確認している彼女からは、これといった感情の揺れは伺えない。 だが美琴の調子は普通であるにも関わらず、上条の方は彼女を見ているうちに自分の胸の奥に奇妙な感情が生まれつつあるのを感じ取っていた。 ――気持ちわりい。 上条は思わず右手で心臓を押さえていた。 決して痛みというわけではないのだが、心臓や肺が内側から直接引っかかれるような、そんな気持ち悪さを感じたからだ。胸の奥の奇妙な感情がその原因であろうことは、上条にもなんとなく理解できた。 上条が言葉にできない感情と戦っている間も美琴の作業は進んでいき、結局すぐに美琴は帰り支度を整えてしまった。 美琴はパンパンと手を叩いた。 「さて、ゴミも片付けたし帰る準備はこれで完了!」 そう言ってうなずく美琴の様子に、上条の胸の奥の奇妙な感情はものすごい勢いで一つの形に成長していった。 「う、あ……」 上条の胸の奥に生じた感情は寂しさ。 とは言うものの、先週の日曜に吹寄と対峙した際美琴が感じたような、あのような絶望的な感情ではない。 あくまで終わるのは今日のデートだけ。美琴が上条の目の前から永久にいなくなってしまう要素など、どこにもないのだから。 けれど、それでも上条は寂しかった。 美琴ともっといっしょにいたい、美琴と同じ空気を味わっていたい、そう強く思った。 さながらその気持ちは、相手との別れを惜しむ、付き合いたての恋人同士のそれに近いものだった。 もちろん上条にそのような自覚はまったくないのだが。 「み、御坂、まつ、マ、待って、くれ」 美琴から離れたくない、上条の中に生じたそんなある種純粋な感情はいつの間にか上条の口を介して美琴を呼び止めていた。 「? 何?」 バッグを手に取ろうとしていた美琴は、小首を傾げて上条を見た。 「あ、の、その……」 美琴に声を掛けた瞬間、しまったと思った上条は声を詰まらせる。自分には美琴を止める権限も、そうする大義名分もないことに気づいたからだ。 当然、ただなんとなく寂しいから、などと言った、言い訳にもならない理由で止めることだってできない。 「どうしたのよ?」 しかしそんな上条の苦悩など知るよしもない美琴は、上条についと顔を近づける。 「お、え、あ……」 美琴が近づいたことにより上条の鼻腔をくすぐる、女の子特有の匂い。それがますます上条の思考を混乱させる。 「いう……あ、あ……あ!」 進退窮まった、そう上条が思った瞬間彼の目に飛び込んだのは既に東の空に昇り始めていた月だった。 月齢は10ほどであろうか、満月まで後もう少しといった様子のそれを指差した上条は、美琴ともう少しいっしょにいたい、ただそれだけを願いながら口を開いた。 「あのな御坂、月!」 「はい? 月?」 美琴はますます首を傾げる。上条が何を言いたいのかまったくわからないからだ。 だが上条はそれでも言葉を続ける。 「そう、月、月だ! 今確かに月は出てるんだけど、まだ太陽も出てて月だけじゃないから、その、月だけになるのを待って、いっしょに、月を見ないか? それまで散歩でもしてさ」 「…………」 「嫌、か? でも、せっかくの、俺から誘った初めてのデート、なんだから……」 ――何言ってんだ俺、意味わかんねーよ。 軽い自己嫌悪に陥りながら必死で言葉を繋げる上条だったが、やがてその声は小さくなっていった。 「…………」 そんな上条の様子を見ながら美琴は黙ってベンチに腰掛けた。 「ど、どうしたんだ御坂?」 動揺の様子を隠さない上条を美琴はじっと見つめた。 「アンタね、女の子を誘うならもう少し説得力のあること言いなさいよ。どうして満月でもないのにお月見しなきゃいけないわけ」 「す、すまねえ、頭悪くて」 「そんな言い方じゃ誰も誘えないわよ。そんなので誘えるのなんて、よっぽどの物好きくらいね」 「そうか」 上条はがっくりと肩を落とした。 「でも」 「?」 「わ、私は、その、物好き、みたい……」 美琴は顔を上条から背けた。 「御坂……」 「散歩とかしなくたってここで月は見えるんだから、ここにいるわよ。それでいいわよね。それにここの方が、街の灯りで月が邪魔されることも少ないと思うわよ」 「あ、ああ」 「言っとくけど、完全に日没して月明かりだけになるのを待つだけだからね。そ、それから、変なことしたら怒るわよ」 「ありがとう、御坂」 「……うん」 美琴がうなずいたのを見た上条は、おずおずと彼女の隣に腰掛けた。 二人はベンチに並んで座り、しばらくの間互いに何も言わずじっと空を見上げていた。 やがて美琴がぽそりと口を開いた。 「ねえ」 「?」 「今日は、ほんとにありがとうね、誘ってくれて」 「なんだよ、あらたまって。礼を言うのはこっちの方じゃねーか。俺なんかの誘いを受けてくれて、こっちこそありがとうだ」 「何よ、私だって礼を言われるようなこと、なんにもしてないじゃない」 「何言ってんだよ、映画代奢ってくれたし、弁当作ってくれたじゃねーか。十分すぎる」 「じゃあ、お互いありがとうってことかしら?」 「だな」 上条達は互いに目を向けることこそなかったが、二人揃って小さく微笑んだ。 美琴は小さく咳払いをして、いったん言葉を句切った。 「あの、話変わるんだけど、アンタさ、明日からも課題出るんでしょ?」 「ああ、間違いなくな」 「明日からも一人でやるの?」 「当然」 「私が、手伝ってあげようか。前みたいに?」 上条は思わず美琴の方を向いた。 「い、いいのか?」 「うん。それにお弁当も、また、明日から作ってあげようか?」 「それも、いいのか? お前の迷惑に、ならないのか?」 「別にいいわよ。アンタ、今日のお弁当、すごく喜んでくれたし」 「…………」 上条は美琴から顔を背け、体を小さく揺らした。 「どうしたのよ」 「悪い。いや、その、大したことないはずなのに、なんかやたら嬉しくって」 「…………」 体の揺れが治まった上条は美琴の方を向いた。 しかし頬の引きつり具合から彼が緩みそうな顔を必死で固定しているのがわかり、それが美琴にはやたらおかしかった。 「じゃあ、できるんなら明日から早速頼んでいいか? あれ、やばい。なんか俺、今、かなり嬉しい」 「うん」 美琴は嬉しそうにこくりとうなずいた。 しばらくして再び美琴が口を開いた。 「そう言えばさ、アンタ。こんな時間まで表に出てて今日の晩御飯は大丈夫なの? あのシスター、アンタの帰りを待ってるんじゃないの?」 「ああ。インデックスなら、たぶん大丈夫だ」 「どういうこと?」 「俺、課題が大変だって言ったろ? だから正直言ってインデックスの面倒見てる余裕がなくてな、俺の担任の先生に預かってもらってるんだ。今日の夕飯までは面倒見てもらうことになってる」 「そう、なの」 「だから、完全に夜になってから帰ってもなんの問題もないんだ」 「ふーん。担任の先生にね……」 上条の言葉を聞きながら、美琴は胸の奥にちくりと痛みが刺すのを感じていた。 学園都市に住む学生には共に住む保護者はいない。だから保護者代わりの人間が必要となる。 美琴達のような寮住まいの人間にとってのそれは寮監であり、上条達のような人間にとってのそれは学校の担任である。 つまりインデックスは上条の保護者にその存在を認知されている、ということである。 同居しているのだから当然といえば当然なのだが、美琴はそのことがほんの少し、悔しかった。 そんな話をしているうちに時間は過ぎていき、とうとう太陽は完全に西の空に溶けていった。それと同時に月の高度もかなり高い位置に来ていた。 上条が必死で作った二人きりの時間も、とうとう終わりである。 美琴がつまらなそうに口を開く。 「日、落ちたわね」 「ああ」 「月、見たわよね」 「ああ」 「じゃあ、これで終わり?」 「ああ」 「そう……」 美琴はじっと月をにらみつけた。 ――馬鹿。どうしてもっとゆっくり昇らないのよ。 完全に八つ当たりのようなことを考えながら月をにらみ続けていた美琴だったが、やがて目を閉じ微笑みを浮かべた。 精一杯の詫びのつもりなのだろうか、そんな美琴を月が優しく照らした。 ――でも、今日はこれ以上わがまま言ったら罰が当たるかもしれないわね。 上条から誘いを受けた今日のデート。 どのような考えからなのかわからないが、意外にもそのデートは上条からの提案で夜になるまで続いた。 最初から最後まで上条からの意思で行われた、奇跡と呼ぶ他に当てはまる言葉がないようなデート。 それだけで今日はもう、十分幸せだったではないか。 それ以上を望むのはやはりわがままが過ぎる。 そう考えた美琴はまぶた越しに感じられる月明かりをその身に浴びた。 美琴の脳裏は今、上条のことで占められており、周りにまったく注意を払っていなかった。 だから彼女は自分の身に起ころうとしていることに気づけなかった。 一方、完全に日が落ちたことを確認し、これで美琴とのデートが本当に終わることを理解した上条は胸に去来する寂しさを必死で堪えていた。 もっと美琴といっしょにいたい、本心ではそう思っていた。 けれどこれ以上はダメだ。 夕飯の面倒は見てもらっているとはいえ、インデックスがそろそろ帰ってくる時間だろうし、何より上条自身の勝手でこれ以上美琴を拘束することはできない。 そんなことをしては紳士上条当麻の名折れだ。 それに朝からこんな時間まで美琴といっしょに穏やかな時間を過ごすことができたのだ。 不幸な自分にとってこれ以上の幸せを望むのはあまりにも図々しすぎる、そう思った。 それに明日からだって美琴には会えるのだ。勉強も見てもらえるし、何より弁当を作ってもらえる。 寂しいことなんて何もない。 だから上条は自分の中の弱い心を必死で抑えつけて美琴の方を見た。 「…………!」 美琴の姿を見た上条は思わず言葉を失った。 月明かりに照らされた美琴。 その姿はなんとも形容できないほど、神秘的だった。 上条はごくりとつばを呑み込み自分の体を見た。美琴の側にいるのだから、上条にだって月の光は注がれている。 けれど上条の体はただ月に照らされているだけ。そう上条には思えた。 翻って美琴はどうだろう。上条はあらためて美琴を見た。 やはり美琴の様子は自分とは違う、上条にはそう思えて仕方なかった。 なにしろ美琴の体には月の光が粒子として舞い降りている、今の上条にはそう見えていたのだ。 キラキラと輝く月光の粒子が美琴に降り注ぎ、その体で飛び跳ね、彼女の周りを舞っている。 満月ではない、それよりも光量の劣る今日の月だからこそ起こせる美。 本当に神秘的で、美琴が何かの魔術を使っているのではないかとさえ思われた。 少なくとも今の美琴の姿は何かの神に祝福されている、それだけは上条の中に確信としてあった。 上条は今初めて、心の底から、美琴のことを、美しいと思っていた。 美琴の姿に目を奪われた上条の心臓が、ドクンと強く鳴った。 再びつばを呑み込んだ上条は、はっとして自分の手を見た。 ぷるぷると震えており、何かの行動を起こしたそうにしていた。もちろん上条は自分の手が何をしたいのかわかっていた。 それは今し方上条自身の中に生まれた欲望が命ずる行動だったからだ。 けれど上条は必死で自分の手、そして自分の中に生まれた欲望を抑えつけていた。 そんなことをしては取り返しの付かないことになってしまう、上条の理性が必死で彼の中の欲望にそう語りかけていた。 上条が欲望を解放してしまえば目の前の少女を傷つけてしまう、上条の理性は何よりそれを恐れたのだ。 けれど上条の目には未だに美琴の美しい姿が映っている。 その姿はどんどん上条の中の欲望を強くしていっていた。 そしてついに、上条当麻の理性は、欲望の前に屈することになった。 上条はつばを呑み込む。 今日何度目かわからないそれをした上条は、抑えつけるような低い声を出した。 「御坂、ごめん」 「え……!」 上条は自らの欲望、彼の願いが命じるままに美琴の華奢な体を抱きしめた。 ――あれ、どうしてコイツの顔が私の側にあるの? 美琴は初め、自分の置かれている状況を理解できていなかった。 彼女にわかったのは上条が今まで感じたことがないほど自分の側にいることや、彼のぬくもりや体の感触までもが感じられるということだった。 そして美琴の耳に聞こえてくるのは上条がついているのであろう、荒い呼吸音だけ。 ――ああ、そうか。コイツ、私を抱きしめてるんだ。え。抱、きしめ、てる……! 上条が自分を抱きしめているという事実を美琴が認識したのは、上条の体温や感触が美琴の脳に届いてから二秒後のことだった。 「ふぇ」 当然のように美琴の脳はオーバーヒートを起こす。 「みゅみゃ、にゅにょにゃあぁ……」 だが偶然上条の右手が美琴の頭に触れていたため、かろうじて自分だけの現実の崩壊による漏電だけは防げていた。 ――どうしてコイツは、私を抱きしめてるんだろう? 予想外の状況に対する混乱と漏電を終えた美琴の脳は、ようやく正常運転を開始し始めようとしていた。 上条がこのような行動を取った理由を知らなければならないし、そのことに対して自らもなんらかのリアクションを取らなければならない。 しかし、 「ふにゃ」 ――なんか、考えなきゃいけないんだけど、気持ちいいし。嬉しい。 美琴が何かを考えようとするたびに、上条から感じられるぬくもりが彼女の思考を阻害した。 ――もう、このままでいいのかな? しかも上条は抱きしめる以上のことは何もしてこない。ただ美琴のことをしっかりと抱きしめ、頭を優しく撫でるだけなのだ。 比較しては悪いのかもしれないが、ルームメイトである白井黒子のように胸を触ろうとしたりなどといった性的なことは何もしてこない。 ただひたすら上条は美琴のことを優しく抱きしめていた。 その行動や彼のぬくもりは、麻薬のように美琴の脳を侵し始めていた。 いつまでもこのままでいたい、美琴がそう思い始めた時、上条が口を開いた。 「み、御坂。その、ごめん、あの、嫌なら、突き飛ばして、くれたらいい、から」 「…………」 美琴は自分の耳を疑った。 美琴が上条に対して抵抗らしい抵抗は何もしていないにもかかわらず、上条は自分が嫌がっていると思っていたからだ。 確かに普段の美琴であれば相手が上条であろうが誰であろうが、男性に抱きしめられるようなことがあればその相手に能力を使って全力で報復するであろう。 しかし今の美琴は違っていた。 上条のことだけを考え、彼と過ごす今の時間を大切に思っていた今このときだけは、美琴の心は普段よりずっと素直になっていたのだ。 そんな素直な美琴は上条のぬくもりを、感触を、嫌だとは決して思っていなかった。 なのに上条はそんな自分の気持ちを誤解していた。 哀しくなった美琴は、自分の気持ちを上条に伝えようと思った。 上条に誤解して欲しくない、そう考えた美琴は言葉ではなく、上条の体を抱きしめるという行為で上条に対して返事をした。 上条からの抱擁を自分は決して嫌がっていない、美琴は必死で上条にそう伝えようとしていた。 一方、美琴を抱きしめた瞬間、上条の心にたぎっていたマグマのように熱い欲望は一瞬にして冷めてしまっていた。 あんなにも触れたかった、抱きしめたかった美琴なのに、それが達成できた瞬間、彼女を傷つけたのではないか、嫌われるのではないかという恐怖が上条の脳裏を駆けめぐったのだ。 どうしよう、大変なことをしてしまった、それが今の上条の心の大半を占める言葉だった。 今日上条は美琴と共に一日を過ごした。 上条の記憶では、戦いなど関係なく、純粋に娯楽のために女性と共に一日を過ごした経験は、これが始めてである。 そんな相手である美琴ともっといっしょに過ごしたい、そう思う気持ちは決して間違ってはいないはずである。 けれどだからといって自分より年下の中学生の女の子を抱きしめるという行為が許されるとは、上条にはとても思えなかった。 それに気の強い美琴がこのような行動を許すとも思えなかった。 その証拠に美琴は抵抗らしい抵抗をしてこなかった。 これはかなり怒っているせいだろう、上条はそう判断した。 だから上条は美琴の体を放そうと思った。美琴にこれ以上嫌われないために。 しかし上条の中にわずかに残っていた欲望、美琴の体温や彼女の髪や首筋から漂う女の子特有の匂いが、上条の決意を邪魔した。 美琴の体を抱きしめたいという欲望と、美琴に嫌われたくないという理性、その二つの間で上条ができたことは美琴の髪を優しく撫でること。 そして美琴自身に上条の行動を拒否してもらうことによって、欲望を抑え込むことだった。 「み、御坂。その、ごめん、あの、嫌なら、突き飛ばして、くれたらいい、から」 上条は意を決して美琴に声を掛けた。 しかし上条の期待に反し美琴の取った行動は、上条を抱きしめ返すというものだった。 ――コイツ、何やってんだ? 上条は美琴の行動がまったく理解できなかった。 美琴は自分に抱きしめられることに対して怒りを覚えているはず。 なのに美琴は上条を突き飛ばすどころか逆に自分から抱きついてきた。 上条は思った、これはもしかすると密着状態から電流を流そうとしているのかと。 だから上条はそっと美琴の体から右手を離した。 これは御坂美琴という電撃使いの少女に対する行動としては、自殺行為以外の何物でもない。 しかし今の上条は美琴にならどんなことをされても構わない、そう考えていた。 気が動転している上条の中では、彼が美琴をこれ以上なく傷つけたということが確定してしまっていたのだ。 上条は静かに目を閉じ、美琴からの攻撃を待った。 「…………?」 しかしいくら待っても美琴は上条に何もしてこない。 それどころか上条が体を少し動かすと、離れまいとしてますます美琴は強く抱きついてくる。 まるで何かを自分に伝えようとしている、そんな感じまでした。 二人はそのままの体勢で五分ほど抱き合っていた。 「…………」 美琴はもしかしたら嫌がっていないのかもしれない。 上条の脳裏に誰かがそう語りかけてきた。 上条の理性は即座にその言葉を否定した。 しかし次の瞬間、上条の中の欲望はその言葉を肯定した。 更に言うなら美琴を抱きしめた時からずっと上条が感じている、彼女の体の柔らかさや体温、匂いといった五感を直接刺激するものは、既に現段階で上条の理性のほとんどを崩壊させており、また同時に上条の欲望を強くしていた。 結局常に紳士であると自称しているはずの上条は、再び欲望の軍門に下ることになった。 上条はそっと美琴の腕をほどき、ゆっくりと彼女の体を自分から離した。 上条はじっと美琴を見つめる。 美琴もじっと上条を見つめ返している。 互いの瞳には、互いの顔だけが映っていた。 ふいに上条の脳裏に昼間観た映画のワンシーンが浮かんできた。 主人公とヒロインが艱難辛苦の末、ようやく互いの気持ちに正直になり口付けをかわすシーン。 上条にはいつの間にかその二人が自分と美琴の姿に重なっていた。 見ると、美琴はいつの間にか顔を上げ、目を閉じていた。 意を決した上条も目を閉じ、ゆっくりと美琴に顔を近づけていった。 ――これってやっぱり、そういうことでいいのよね。 上条が自分の腕をほどいた時、美琴はやはり抵抗らしい抵抗をしようとは思わなかった。 上条と離れたくないという自分の心はきっと上条に届いたはず、そう確信めいたものがあったからだ。 今の自分の心を素直に表現すれば、きっと上条は応えてくれる。上条の目に映った自分の顔を見た瞬間、美琴はそう思った。 だから美琴は上条を見上げ、そっと目を閉じた。 この行為が何を示しているのか、もちろん美琴にはわかっている。 雰囲気に流されているだけだ、確かにその考えは否定できない。 けれど今の美琴にとってはこれが一番自然なことだと思ったのだ。 心のままに、素直に自分の想いを表現した結果が今美琴がしている行動なのだ。 そして上条は、そんな美琴の気持ちに応えようとしてくれている。 美琴はじっと上条が自分に触れてくれるのを待った。 「御坂……」 上条はぽそりと美琴の名前を呟いた。 美琴は閉じた目にぎゅっと力を込め、唇にも力を込めた。 トクン、トクンとどちらの物ともわからない、きっとどちらの物でもあろう心音が二人の間に響いた。 それは二人の体の距離がほぼないということを示している。 美琴は期待した、次の瞬間に来るであろう、生まれて初めての感触に。 上条は歓喜した、不幸ばかりの自分に訪れる、初めての人間らしい幸福に。 そうして、二人の距離は、ゼロに――。 「☆ね※◎さ×●ぶ□ま△――――!!」 「へぶぼぅぶあ!!」 上条と美琴の唇が触れあう寸前、得体の知れない叫び声と何かがひしゃげたようなうめき声、そして何かが吹き飛ばされるような音がしたため美琴は動きを止めて立ち上がった。 結局二人の距離はゼロにはなることはなかった。 「…………」 「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様――!」 「え、え……あれ?」 美琴は地面に倒れている上条と、自分の腰にへばりついている白井黒子を交互に見やって首を傾げた。 「よくわからないけど、とりあえず離れなさい」 美琴は白井の首根っこをひっつかんで無理矢理自分から引きはがすと、血の涙を流しながら自分を見つめる白井をにらみつけた。 「アンタはいったい、何やってんのよこんな所で!」 しかし白井も負けていない。滝のように涙を流しながら美琴に食ってかかった。 「それはこちらのセリフですわお姉様! お姉様こそ、日も暮れたというのにこんな公園で何をなさってらしたんですの? しかも、黒子が風紀委員の活動で留守なのを見計らって!」 「え」 「ほら、答えて下さいまし! わたくしを差し置いて何をなさってらしたと言うんですの?」 「あ、あの、そのね、えと……」 「まあ、わたくしとて多くは聞きません。上条さんと映画を見たことも、お弁当を食べあったことも、膝枕をなさったことも、今回は大目に見て差し上げましょう!」 「あ、アンタ、なんでそんなことを! っていうか知ってるんじゃないの!」 「で、す、が!」 白井は溢れる涙を拭おうともせず美琴をにらみつけた。 「最後のアレはなんですの? あ、あなあんなあんな、あんな類人猿と、きききききききっしゅを! キスをしようとするなんて!」 「あ、あれは、だから、その……」 「温厚なわたくしもこればっかりは絶対許せません! お姉様の初めては、ふぁーすときっす、から文字通りの純血まで、全部黒子の物で……へぶっ」 段々怪しいことを叫びだした白井を、美琴は怒りのままにとりあえず一発殴った。 「調子に乗るな、この馬鹿! だいたいアンタ、いつからどうやって私達のこと監視してたのよ!」 「膝枕までは風紀委員の監視カメラで! それ以降はわたくしのこの両眼でですわ! けどそんなの、どうでもいいことではありませんの!」 「いいわけあるか――!! 結局アンタ、全部見てたんじゃないの――!!」 「いてててて……。ハァ……。俺、帰ってもいいのか?」 その頃、白井に蹴られた頭をさすりながら起き上がった上条は、いつ果てるともないケンカを続ける美琴と白井を見て、盛大なため息をついた。 こうして、初めて上条から美琴を誘ったデートは、うやむやのうちに終わることとなった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/素敵な恋のかなえかた
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/556.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/memories 非日常の世界 PM09 51 上条当麻は魔術師が逃げていることも知らず一人、夜の町を歩いていた。 新聞の記事を読んで一時間、書いてあった内容は単純な話。魔術師と名乗る集団が学園都市を襲い、一部の能力者たちが学園都市を守ったというだけだ。 上条はこの記事を読んで感じたことは、特にない。能力者のリストには自分の名前と美琴の名前、あとは白井黒子、一方通行をなど『上条当麻』を中心とした名前が載っていた。 過去に偽海原ことアステカの魔術師、エツァリが『上条勢力』というものが存在すると言ったことがあるが、学園都市を守った能力者のほとんどはその『上条勢力』に名前を載せていたメンバーであった。もっとも一方通行は『グループ』として活動していたので、『上条勢力』に属していなかったが。 そして今回の事件で一番の肝となったのは『上条勢力』が魔術勢力を倒し、学園都市を守ったということだ。これが意味するのは『上条勢力』がどれほどの力を持つかを、科学・魔術両サイドに示したということを意味する。 それにより、魔術サイドは『上条勢力』を危険視し、魔術師の刺客を学園都市に派遣する勢力が急激に増えた。その結果、魔術の存在が知られることとなり、科学と魔術の境界はほとんど崩壊した。 「学園都市の夜って、こんなに静かだったか?」 そんなことも知らない記憶を失った上条当麻は、変わってしまった学園都市の変化にも気づけず、のん気に近くのコンビニへと向かっていた。特にやることもなかったので、散歩程度にコンビニへと歩く上条だったが、ホテルとコンビニの境目の距離で待ちの変化に気づいた。 「………人の気配が、ないのか?」 ホテルを出た時はそれなりに人とすれ違ったが、歩くごとに人は少なくなり今は気配すら感じられない。といっても、上条は人の気配をさっする技術を持っていない。その上条すら人の気配を感じないということは…。 「戻った方が、いいのか?」 冷静に考えれば、この先を進むのは危うい。人気がどんどん少なくなっていく中をさらに進むのは危険だと、直感的にわかるものだ。だが、上条は知っている。いや、"知っていた"。 (この先に…いるのか?) そう思ったとき、ドーン! と大きな爆発音が聞こえた。そして、その音がスタート合図だったのかその方向へと走った。爆発音に走った理由や戻る理由など、すでに上条の頭の中にはなかった。唯一の頭にあったのは…。 (まさか…?! 美琴??) 何故かその名前が、頭によぎったのだった。 PM09 57 御坂美琴と白井黒子は、まだ走り続けていた。 地下の天井を壊して作られた穴から魔術師を追い、地下街を走りぬけ、外に出た魔術師を初春たちのサポートで追いかけてきた。そして来たのは、白井が最初に来たビルの前であった。 「警備員が……いない?」 白井が驚いたのはその点であった。ここで爆発があってすでに一時間が経つが、現場に残ったのは立ち入り禁止の黄色いテープだけと警備員の車。そこには人がまったくいなかったのだ。 「固法先輩……これは?」 『あ、あたしにも……わからないわ。警備員からの連絡はないし…初春さんの方は』 『いいえ。そんな情報はいっさいありません』 情報にない事態。『超電磁砲』はポケットのあったコインの感触を確かめた。直感的に、魔術師はここにいると判断したのだ。 美琴はいいわと言って、白井を置いてビルへと歩いていく。テープを潜り抜け、真っ暗な明かりのないビルの入り口へと進んでいくと、お姉様という白井の声に気づいた。 「お姉様。一人で先走っては」 「黒子。行くわよ」 美琴は空いていた入り口をくぐり、先へと進む。真っ暗で人気の感じられない大きなビルは、まるでホラーゲームの舞台さながらの雰囲気を持ち合わせていた。ところどころにある、破壊の後はさながらホラーの演出に見えなくもない。 しかし厄介なのは明かりがないことだ。それは明かりはまだ残っていた懐中電灯で代用しながら、進むしかない。美琴は残った懐中電灯であたりを照らしながら、先へと進んでいくと、大きなエントランスへと出てきた。 「黒子。アンタ、ここに来たわよね? 変化とかある?」 「うーん……今のところはありませんわね。来た時と変化はありませんの」 と白井は思い出しながら美琴の後に続いていく。美琴は念のために、ポケットからすでにコインを取り出している。電撃で時間を稼ぎ、すぐに『超電磁砲』を打ち出せば、問題はないが、今すぐ撃てるようにと準備に越したことはない。 『白井さん。ちょっといい?』 ふいに白井の携帯から固法の声が届く。白井ははい、なんでしょう? と美琴にも聞こえるように答えると、気づいた美琴は歩くのを止め、白井の方を向いた。 『警備員に聞いたんだけど、その場所を撤退したなんて報告は受けてないそうよ。しかも、連絡も取れないらしいわ』 美琴と白井はその言葉が意味することに気づいた。 ここに魔術師は来た。そして、魔術師が警備員をこの場から消したのだ、と。 「わかりましたわ。また何かわかりましたら、教えてくださいませ」 そういうと、白井は通話を切り電源も切った。電池切れが寸前ですの、と白井は言って美琴の横に並んだ。 二人はすでに感づいている、ここに魔術師がいて、きっとここが最終地点であった、と。 PM09 59 美琴と白井が階段を登って上に上がってくる最中、上条も実はこのビルにいた。 爆発音に気づき、走ってきた先はこのビルであったため、立ち入り禁止のテープをくぐってここまで登ってきた。エレベーターなら楽であったが、入り口の悲惨な跡と人気のなさにそれはダメだと直感し、一段一段、階段を確実に登っていく。 「ったく。一体何階建てなんだ、このビルは」 すでに40階以上に達していると思われる。階段を登り続け、上条は何回かの標識を見ると46階という文字が目に移った。少なくとも、階段はまだまだ続いていそうであり、気が遠くなりそうだった。 だがそれを知りながらも上条は歩みを止めなかった。どんなに疲れようが、登り続け最上階へと向かうことが今の自分のゴールのように思えたのだ。 上条は一階一階進むごとに、自分の疲労が溜まっていくのがわかった。鈍った身体のツケが、ここでやってきたのだ。それを知らない上条はそれでも登り続けた。座りたい、休みたいと思いながらも、一段、また一段登っていく。 そして、そんな作業が続いていく中、53階にたどり着いた時、変化に気づいた。 「…………火?」 階段の先にあったのは小さな火。今にも消えそうなほど小さかったが、その熱は未だに健在であった。触れたらやけどどころではすまなそうな火は、階段を進むごとに多くなっていく。 階段の端や壁についている火は一歩間違えれば火事になりそうなのに、回りには燃え広がっていなかった。そこに上条はこの火の疑問を見つけた。 「この火、もしかして作られたものか?」 考えてみれば単純なことだ。このビルで火が燃え広がったら、全体に及ぶはず。だというのに、階段を登るたびに大きいかつ多くなっていく火は燃え広がることもなく、その場にとどまり続けている、自然に生み出されたものならば、火事にもなるはずなのにならない。 つまりこれは自然ではなく人工的に、能力者か魔術師が作った火に違いない。 上条は自分の右手を開いたり握ったりして見た。『幻想殺し』、もし考えていることがそうであるならば、右手に触れた瞬間、火は消えるはずだ。だが例え本物の火であろうとも、大きな火でもなければ軽いやけどで済むだろう。 やってみるとか思い、上条は恐る恐る火に右手を近づけてみる。熱さはいまだ健在であり、火とはいえ勢いも消えていない。だが試すに越したことはない。 右手を伸ばし、火に触れる寸前、熱さに怯み一瞬だけ躊躇した。が、それも一瞬だった。 PM10 05 時刻はついに十時を突破した。美琴と白井は階段を登りながら、周囲への警戒を怠らなかった。 上条と同じ考えでエレベータを使わず、走って階段を駆け上っていく二人はそれなりの速さで一階一階を登っていた。白井には『空間移動』があったため、体力はそれほど消費していないが、美琴は意外にも体力を消費していた。 「お姉様、大丈夫ですの?」 「はぁ…はぁ……これぐらい、どうってこと」 息が上がりながらも、美琴は威勢を張って答えた。だがどう見ても、疲れ切っているのがわかる。それでも白井は何も言わず、そうですかと苦し紛れに答えた。 「はぁ…それよりも…はぁ…さきに行っても」 「お姉様。寝言は寝てから言え、という言葉を知っておりますか? 今のお姉様の状態を見て、放って置ける状態ではありませんの」 白井に言われて、美琴はそんなことと言おうと思ったが、上がった息と流れる汗が筒抜けであったので、何も言い返せない。さらに白井からの無言の視線に美琴は、ごめんと謝るしかなかった。 「本当なら休んで欲しいのですけど、今のお姉様にはそういっても無駄ですの。ですから、お止めはしませんわ」 「はぁ…はぁ…ごめん、黒子」 「いいえ、お気になさらずに。ですけど、ご無理はなさらずに。このあとには魔術師との戦闘が控えておりますので」 美琴はそうねと答えながら、階段を登り続ける。全力で走り続けた身体はきっと戦闘ではあまり役には立たないかもしれないと、本来の『超電磁砲』の姿とはかけ離れているような弱さを、白井は感じられずに入られなかったが、やはりそれも唇をかみ締め、飲み込んだ。 今にも崩れそうな膝と流れ続ける汗は、上条のためのもの。美琴とずっといた白井はそれを最初から見ているが、慕う者としても大切な友人としても今の自分には何も出来ない。 地下からずっと気づいていたが、きっと美琴を止められるのは上条だけだ。しかし逆に言うのであれば、止められなくなる可能性すら与えてしまう可能性すらあるのも上条だ。だが上条本人はこのことに気づいていない。そして、気づかれてはいけないと美琴はこのために、自分を犠牲にしている。 八方塞、と白井は思いながら、自分の慕う美琴のあとを追う。今は40階、情報ではこのビルは60階建てらしく、長かった階段も次第に終わりを迎えそうだった。大体このペースで行けば、10分には60階にたどり着いているはずだ。そして、長かった逃亡もここで終わりを向かえ、あとは魔術師を二人で協力して倒すのみ。 (あと少し……あと少しで今日が終わる。いえ、終わらせないと…お姉様が) 白井は、これで終わって欲しいと心で祈りながら美琴の後を追った。つらそうな美琴を見るのは…そろそろ限界であった。 PM10 08 最上階の60階。この上にはまだ屋上があるが、この階段からはいけない。しかも、初春たちがこのビルを衛星から見ていたので、屋上に人影がいたら目撃しているはず。 白井は電池切れ寸前の携帯の電源をつけ、初春に連絡を取ってみた。今は情報が欲しい、美琴も白井も同じだった。 「初春、このビルや魔術師について変わったことは?」 『特にありません。それに何かあったら、御坂さんの携帯に連絡する気だったんですけど』 「それぐらいわかってますわ。それよりも、本当に何もないんですね?」 白井が念を押すと、初春も隣にいるであろう固法もないと言った。そうなると…ここが終着点。 「わかりましたわ。初春、今は最上階ですの。もしここにいなかったら……念のために、他の情報も集めておいてくださいますと助かりますの」 白井の頼みに、任せましたと初春は答えたのと同時に、白井の携帯の電池は切れた。白井は電池切れになった携帯をポケットに入れ、美琴を見た。 「お姉様、ここにいなければ」 「うん、わかってるわ。それよりも、行くわよ」 と美琴は白井に声をかけた…瞬間。 「――――なっ」 「ッ!!?? これは…?!」 声をかけ終えたのと同時に、上から何かを乗せられているような重量感とともに体中を見えない鎖で縛られたように束縛され、二人は動けなくなってしまった。。魔術、と思ったときにはすでに遅く、二人は早くどうにかしないとと思う焦りと、気を抜いてしまったと思う自分の不甲斐なさを感じていた。 白井は自分の能力でなんとか切り抜けようと思い、美琴を置いて一つ下の階に『空間移動』した。のだが、『空間移動』が終わったのと同時に、また同じような重量感と束縛が白井を襲った。 (どういうことですの?) 白井は冷静にこれを分析に、場所と範囲が広がらなさそうな50階まで下がり、階段途中にある折り返しの床に『空間移動』した。 だが。『空間移動』が終了した際の結果はまた同じであった。 (なんで…ですの?) 白井は魔術を良く知らない。そのため、拘束されているのはどんな魔術なのかも、どのぐらいの範囲なのかもまったくわからない。しかも術式や起点となる存在も、何を用いられたかもわからない。 だから、白井だけではなく美琴も気づけなかったのだ。 "入り口から存在していた、このビルを覆うように配置されたルーンの刻印の存在"を。 PM10 09 白井が『空間移動』した同時刻、美琴は一人になった60階の通路で一人、見えない何かに当たるように電撃の槍を無差別に放っていた。 暴れるように広がり、あたりを食い散らかしていく雷の槍は、腹をすかせたライオンのように獰猛で当たったら大怪我、場所によっては即死確実のものであった。当然、美琴も承知の上だがここには人気がまったくなかったので、それはとくには気にせずにいられた。 (どこ……どこにあるの、"花"は) 美琴はこの魔術の起点が、白井から話された『ガラスの花』だと思ったのだ。だが白井を殺そうとしたあの花は、爆発だけの代物である可能性もあった。でもこのような状況ではそんなことを言っていられない。それにもし『ガラスの花』がこの近くにあったら、美琴の死の可能性もありえたからだ。 そのため、デリケートや御しとやかになどならず、荒々しく能力を扱いあたりを食い荒らす雷の獣を、美琴は容赦なくあたりに放ち続ける。当然のことながら、全力で走り続けた体力では、長時間の使用はほぼ不可能であったし、もしものことを考えて温存したほうが良いため全ての力を使い果たせない。 こうなると同僚の白井任せにしたいが、魔術に疎い白井にもきっとこれの解除は難しいはず。そうなると、自分で何とかするしかないのが、今までの経験上での知恵であった。 「はぁ……はぁ……久々に……きついわね」 かつて上条当麻と戦った時も、体力が切れ負けたことがあるが、今は魔術師という存在の相手と命の危険があったため、それよりもきつい。身体も精神も、極限状態だということが十分にわかる。 それでも、美琴は能力を使い続けた。 自分はまだ死にたくないし死ねない。せっかく会えた人がいるのに、今度は自分がそれに会わせてしまうのは耐えられないと、自分を奮い立たせ、能力を出し続けた。 「はぁ…ま、だ……はぁ…死ね、ないわよ」 上条当麻…こんな極限状態でも美琴は忘れない。そう、自分を犠牲にしてもと思っているが、死ぬことは出来ない。死んだら…………美琴はそのことを十二分に理解していた。 だからまだ死ねない。守るといっても死ぬためではなく、一緒に新しい思い出を、好きな人と一緒に楽しく過ごせる日々を彼女は…。 「なるほど。それが噂の『超能力者』(レベル5)ですか」 という声とともに、美琴を拘束していた魔術は解除され、身体が自由になった。それがわかったのと同時に、美琴は声の方向を向き、地面を蹴って距離をとった。 相手は闇の中からだったため、姿は見えない。いや、魔術と言うもので見えなくしているかもしれないと思い、美琴は警戒をして自分の周囲に電撃を纏わせ、電撃の結界を作った。 「アンタが…魔術師か」 はい、と言う声は女性のものであった。だが魔術師と認めたということは、敵! 「それじゃあ、アンタを捕まえればおしまいね」 「いいえ。それは違います。いや、捕まえられないと言うべきでしょうか」 その言葉には自信や過小評価はなく、真実を言っていると思わせる何かを感じられた。美琴はポケットからコインを取り出し、右手の親指に乗せた。 「『超電磁砲』ですか。なるほど、そちらがその気ならどうぞ。それと、私はあなたを攻撃する気は"ありません"ので安心してください」 「ッ!! 舐めてくれるじゃない!だったら『超電磁砲』を見せてあげるわ!!」 という声とともに、美琴の周りの紫電は火のように燃え上がり、親指のコインは『超電磁砲』として、闇の中の魔術師を貫くために放出された。 そして、『超電磁砲』は闇の中の相手を貫いた。 その衝撃で廊下は抉られ、床に真っ黒な跡が残された。行き止まりの壁は穴が開いたらしく、外の風の音が美琴の耳にも届いた。相手にはなった『超電磁砲』の威力だが、一応手加減はしたが直接当たったら即死だろう。だが相手は魔術師、何があるかわからない。 美琴は『超電磁砲』をもう一発撃つために、コインを取り出すと同じように親指に乗せ、射抜いたはずの相手に再度向けた。そして、親指に乗せ構えた直後に、背後からお姉様と言う声が聞こえた。 「黒子…無事だったのね」 「ええ。それよりも、さきほどの衝撃…まさかお姉様」 美琴は振り向かずに頷いた。だが、"やっていない"。 「お見事です…というべきでしょうか。『超電磁砲』の御坂美琴さん」 射抜かれたはずの魔術師は、さも同然に歩いてくる。少なくとも、わかってはいたがこうもあっさりとしていると、美琴も動揺の汗を隠せなかった。コツン、コツンとリズムを刻むように近づいてくる足音に、美琴は『超電磁砲』を、白井は金属の矢を指に挟み、やってくる魔術師をにらんだ。 「ご紹介が遅れました。神裂火織と申します」 そういって出来てきた魔術師、神裂は魔術師とは言いがたい半そでのティーシャツに片方だけ太ももが見えるジーンズと言う格好であった。だが、彼女の手には刀、それも自分たちよりも大きな長い日本刀を持っていた。 美琴と白井はそれを見て驚いたがそれも一瞬だけ。二人は、出てきた相手を睨みつけ、攻撃の機会を狙っていた。 「魔術師ってもっと頭脳的なやつかと思ったけど、アンタは違うみたいね」 「ですけど、これでも立派な魔術師です。なのでお間違えのないように」 神裂は目を閉じて、刀を構える素振りを見せた。美琴と白井は、来る! と直感し、二人も構えた。 「あと勘違いしているようですが、今回の事件の魔術師は私ではありません。私はその魔術師を追っていた一人です」 「それを…信じると思いですの?」 白井の言葉に、いいえと神裂は答えた。 「………仕方ありません。出来れば、話し合いで解決したかったのですが、どうもそうにはいかないようですね。『超電磁砲』と……」 「そういえば紹介がまだでしたわね。風紀委員の白井黒子と申しますわ。そして、風紀委員の権限の元、魔術師のあなたを逮捕させていただきますわ、神裂火織さん」 「やはり、この場で会うべきではありませんでしたね。出来ることならもっと穏便な場所で会うことが出来れば、よかったのですが」 というと、神裂は閉じていた目を開け、能力者の二人をにらみつけた。 「こちらにもこちらの事情がありますので、少しばかり相手をさせていただきます」 そういって神裂は、"魔術師"として刀を抜いた。 申し訳ありません、『上条当麻』と思いながら……。 PM10 19、終了 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/memories
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/392.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある恋人の日常風景 第二章 それは偶然か必然か ~ 十二月一日 「あー。今日も疲れた疲れたぜ疲れましたよ三段活用? 上条さんはもう心身ともにへとへとです。 インデックスは小萌先生のとこで焼肉パーティーらしいし、今日のところは久しぶりにファミレスで 優雅に晩飯でも食いますか」 放課後、上条は上機嫌で雑踏の中を歩いていた。いや、実際には上機嫌などではなく、ここ数日 の不幸続きで逆にハイになっているといったところか。 彼の不幸?は今日も例外ではなく、六限目が体育だったのだが、諸事情により授業に遅刻した上 条は罰として校庭を約四キロ分ぐるぐると走らされ、帰り際に小萌先生から『上条ちゃんはバカなの で課題をプレゼントです。期限は明日までに必ずですよー』と例の如く大量の宿題を渡され、学校の 正門前では車に轢かれそうになり、さらには美琴とデートの約束をしていたのだがドタキャンされて しまった。 ちなみにデートのドタキャンは、カエル顔の医者と御坂妹から呼び出しを喰らったとのことで、心配 になった上条は俺も一緒に付いて行くと言ったのだが、『私と妹の問題だからアンタがいちゃダメな のよ』とのことで断られてしまった。ただ、十九時に病院へ来るようにとのご命令は下りている。 という訳で、それまで何もすることがない上条は、久しぶりにちゃんとしたご飯でも食べようかななど と考えた結果、ファミレスでも寄って腹ごしらえと時間潰しでもしようということに決めたのであるが……。 「んー? あの変なツインテールは白井か?」 前方にふらふらと歩く見知った少女の存在を認めた。 「なにやってんだあいつ。ぼーっとしてるっぽいけど」 * (はぁ…。一体どうしてしまったというのでしょう。訳が解りませんの……) 白井黒子は、自身の胸中を支配しつつある莫大な感情に戸惑いを隠せずにいた。 白井は今、学生で多くあふれる放課後の第七学区を一人で歩いている。ただ、他の多くの学生た ちとは違い、彼女はここで遊んでいる訳ではない。風紀委員として巡回しているのだ。白井は人一倍 の正義感と、決して悪を許さないという強く堅い意思を持つ人間である。だからこそ、彼女は『風紀委 員』であるし、どんなに危険で大きな悪に対しても、その幼さの残る小さな体で立ち向かう。そんな揺 るぎない強く堅い意思は、彼女にとって憧れの存在となるお姉様――白井のルームメイトであり、学 園都市の頂点・超能力者(レベル5)の第三位である『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴を想い慕う 気持ちも変わらない……はずであった。 白井は今、学生で多くあふれる放課後の第七学区を一人で歩いている。風紀委員として巡回して いるのだ。しかし、彼女は周囲の光景をはっきりと認識していない。なぜなら、白井は今かつてない ほどの莫大な“何か”という感情に戸惑い、悩んでいるからだ。最近見た映画やドラマなど、いろいろ な事を考えても、目を凝らして周囲を見回してみても、気付いた時にはその“何か”について考え悩ん でしまっているのである。 (それもこれもすべてあの殿方のせいですの。ええ、絶対そうですの) 白井が今、ぐるぐると同じ思考を繰り返しているのには大きな訳がある。彼女が想い慕うお姉様、 つまり御坂美琴に、上条当麻という彼氏(こいびと)ができてしまったからだ。そして、その事実を 知ったとき、自分の胸の奥底から“何か”という感情が溢れ出したからだ。 美琴と上条が付き合っていることを本人たちは公表していない。黒子は先の事情により知ってしま っているが、それ以外に“事実”を知るものはいない。しかし、常盤台中学の校内では既に様々な噂 が飛び交っていて、美琴を祝福する者や妬む者も存在する。今の白井が“どちらの立場なのか”と 問われれば、間違いなく祝福する者ではないと断言できる。嫉妬しているのだ。しかし、その嫉妬と は一体“何に対して嫉妬”なのだろうか。 なぜ自分がそんなくだらないことを繰り返し考えているのかは解らない。しかし、頭の中では美琴 と上条のことばかり考えてしまう。本当に、そんなことばかり考えて歩いていた。周囲の喧騒など耳 に入らない。周囲の風景など目に入らない。だからだろう、目の前に地下街の入口があることにも 気づかず、白井はそのまま足を踏み出してしまった。 「ッ――!」 一瞬の出来事だった。足元にあるべき地面が“突然無くなった”。 いや、違う。白井は地下街の入口で階段を踏み外したのだ。 地下街というものは意外と深いもので、万が一転倒してしまった場合、ビル二階分もの階段を一 気に転げ落ちるような場所だって存在するのだ。下手をすれば骨折どころでは済まない。人間とは とても弱い生き物である。打ち所が悪ければ、たった1メートルの高さから落下しただけでも簡単に 命を失うのだ。 白井の能力は大能力者(レベル4)の『空間移動(テレポート)』である。空間移動では、三次元上、 つまり普段我々が認識している“この空間”に存在するものを、そのまま目的の場所へ投げるように 飛ばすのではなく、座標を一一次元上の埋論値に置き換えて空間を再把握・計算し、物体が今現在 ある座標から指定した座標へ“転送する”のである。三次元上からは一旦“消滅”させ、移動先の空 間を押しのけて“出現”するような格好になるのだ。 例えば鋼鉄の棒をまっすぐ立て、そこへ薄い紙切れを転送したとする。その棒のうち紙を転送され た場所は、転送したもの・されたものの強度に関係なく、その転送した紙の分だけ上下左右に押しの けられてしまう。もし棒の平面積より紙の平面積が広ければ、柱は完全に分割・切断されてしまうだ ろう。壁や土の中に物体を転送して、埋め込んでしまうことだって可能だ。白井が被疑者確保や護身 用として良く使う『金属の矢』もこれの応用なのである。 しかし、一見攻撃性が高くまた移動便利に見える白井の能力だが、ご存知の通り重大な欠点が、 大きく言って二つある。 一つとして、自らの体表面に触れているか、着衣やアクセサリーなどの体表面から極めて近い距 離、つまり能力の有効範囲内にあるもの以外は移動できないのだ。その為、遠くにあるものを移動 させる――例えば飲み物や雑誌などを、置いてある場所から自らの手元に転送させる、といった便 利な使い方は残念ながら出来ない。 そしてもう一つの欠点が、非常に複雑な一一次元上の埋論値に置き換えなければ空間把握・座 標計算を行えないため、正確な移動や転送のためには高い集中力と極めて高度な演算能力が求 められる。能力を発動する際に突然の衝撃などにより集中力が途切れてしまうと、正確な座標計算 が出来なくなり、能力が無効化(キャンセル)されたり転送を失敗してしまう。 つまり、現在の状況下では、白井は自身の能力を使用して安全な場所へ自身を転送することも、 衝撃緩和のためにクッションとなりうる物体を下に準備することもできない。自身の能力など、何の 役にも立たないのだ。重力に逆らうことも、危険を回避することもできない。 そして―――― 「…ぇ?」 白井は、階段を転げ落ちることはなかった。 能力が使えたのではない。誰かが白井の右腕を掴んだのだ。 「おい、大丈夫か!? お前何やってんだよ、危うく大ケガするところだったぞ」 「……か、上条さん。すみませんの、少し考え事をしていたもので。おかげで助かりましたわ」 「ったく、気をつけろよな。まぁ、ケガしなくて何よりだ。お前いつも一人で突っ走ってそうだし、これ以 上ケガされちゃ困るしな。つーか考え事? 悩みでもあるなら、この上条さんが何でもお聞き致しま すよ」 上条はそう言うが、白井の悩み事の原因がまさか自分と美琴にあるなんて思っていないだろう。 実際、上条は「風紀委員での仕事が大変なんだろうな」程度にしか考えていない。確かに白井以外 の人間からしたら、そちらのほうが重要なのだろうし。 「ご心配いただいて光栄ですわ。ただ、せっかくですが考え事のほうは大丈夫ですの。風紀委員の 支部でもうすぐ大掃除があるのですが、片付けなければならない書類が多いもので、今から頭が痛 くなっていただけですから」 白井は上条の胸元にぶら下がる、どこかで見たようなオープンハートのネックレスに気付いた。 彼女の心の中の“何か”傷む。それが“何なのか”、そして何故痛むのかはわからない。 「あら? 随分と可愛らしいネックレスされてますのね」 「あ、ああ。……男がピンクのハートってやっぱ変か?」 「別に、趣味は人それぞれですわよ。あと、せっかく助けて頂いたのに申し訳ないですが、今わたくし とても忙しいもので……。お礼は後日必ず致しますの」 忙しいなんていうのは嘘だ。白井は今暇であり、だからこそ支部に詰めずに巡回をしているのだ。 ではなぜ忙しいなんて言ったか? それは、なぜか上条の前から早く立ち去りたくなったのだ。しか し、それがなぜかはわからない。 「お礼? 別にいらねーよ。お礼してもらうために助けた訳じゃねえしさ。お前がケガしないで済んだ んだから、それだけで十分」 「あなた、本当に無条件で人を助けるんですのね……。ですが、お礼はわたくしが勝手にさせて頂き ますの。……それでは」 「ああ、気をつけろよ」 歩き始めた白井は、「あ、それと……」と何かを思い出したように立ち止まると、上条の方へと振り 返り、 「わたくしのお姉様にちょっかい出されましたら、例え命の恩人であろうと決して許しませんので、 そのつもりで」 にこやかな笑顔で上条にそう告げ、再び歩き出した。 その笑顔は、皮肉や当てつけではなく、“彼女なりの強がり”であった。 * 上条はかかりつけと言っても差し支えないほどまでに来なれた病院の前にいた。といっても彼の 体に異常はないし、入院患者の見舞いに来た訳ではない。そもそも時間は既に十九時であって、 本来ならば部外者は出入りできない時間だ。ではなぜここにいるかというと、この病院に入院して (住んで)いるとある少女に会いに来るようにと、美琴から呼ばれていたからだ。 妹達(シスターズ)――御坂美琴の軍用量産型体細胞クローンのうち、上条から御坂妹と呼ばれ ている検体番号(シリアルナンバー)一〇〇三二号を含む数名の“ミサカ”は、かつての絶対能力進 化(レベル6シフト)計画の中止後にこの病院へ保護された。ここで彼女たちはそれぞれが“ひとりの 人間として”、制限があるとはいえ普通に(と言えるかは別だが)生活できるようになったのだ。 「どっから入りゃいいんだ? つーかこんな時間に一体何なんだ??」 上条は病院の前で立ち尽くしていた。正面玄関はすでに閉まっていて、どこから入ればいいのか わからない。まさか救急入口から入る訳にはいかんだろう。美琴にメールしてみようかと思ったが、 院内では携帯の電源を切っているだろうから意味ないだろうと判断した結果、こうして途方に暮れ てしまっている。 恐らく帰宅するところであろう職員が、上条を怪訝な表情で見ている。はっきり言って、こんな時間 にこんな場所をうろつく男は不審者以外の何者でもない。そして、その職員と思わしき男性が上条 に近づく。 「あの、どうなさいました? 何かご用でしょうか。面会時間は十七時までですが」 「い、いや、別にあやしい者では」 その返答はおもいっきり不審さをアピールするようなものである。どう返答すればよいかわからな かった上条はついうろたえ、職員が彼を不審者として通報しようとする。そこに、突然第三者からの 声がかかった。 「どうしたんだい?」 「せ、先生! この少年がうろついていたもので」 「ああ。いいんだよ? 彼は僕の知り合いだからね?」 カエルのような顔をした医者が誤解を解く。 「はー助かった……。先生、ありがとうございます。いや、一体どこから入ればいいのかと……」 「ああ、それはすまないことをしたね? 彼女、入り方を君に伝えていなかったんだね?」 カエル顔の医者はそう言うと、上条を職員通用口へと案内した。そして、白衣の胸ポケットからID カードを取り出すと、 「君のIDは登録してあるからね? これ、上条クンのIDカードだ。いつでも好きな時に入っていいよ?」 「……、はい??」 カエル顔は、さも当然とでも言うように、 「君はとても重要な関係者だよ? 自由に出入りできるのは当たり前の事じゃないかい?」 「……あの、先生。なぜこのわたくし上条当麻がとても重要な関係者なんでせう?」 「とても重要な関係者だからに決まっているからだね?」 それは答えになってない、という言葉は飲み込んでおくとして、なぜか上条は自分の行く先が不安 でたまらないのであった。 結局、カエル顔の先生(美琴曰くリアルゲコ太)に案内されるがまま病院内へと足を踏み入れた上条 だったが、先生は医局へ戻るとのことで、一人で御坂妹の“部屋”へと向かうことになった。 臨床研究エリア――この病院にはそう呼ばれる区画がある。位置的に関係者以外が訪れることは ないと言ってもいいほど静まったエリアで、その一部では同じ身体の少女たちが一〇人ほど生活して おり、事実上そこは少女たちのための場所になっている。 その臨床研究エリアへと入ってすぐ、上条の目になにやら奇妙な光景が飛び込んできた。そこには 色違いのパステルカラーで無地の、ブラウスタイプのパジャマを着た四人の少女と、常盤台中学の冬 服を着た一人の少女が、“姉妹ゲンカをしていた”。 「またコソコソと汚い真似をしていたのですね! とミサカ一〇〇三二号はコイツを非難します!」 サックスのパジャマを着た、少年から唯一“御坂妹”と呼ばれる少女がそう声を張り上げると、 「ちょっとあんた! なんで私より“大きいのよ”!」 ベージュのブレザーを着た、彼女たちのお姉様である御坂美琴が怒り、 「み、ミサカは自らに迫る危機を――――ッ!」 ピンクのパジャマを着た、いま四人から取り囲まれている一九〇九〇号は、 「逃がしません! とミサカ一三五七七号は実力行使します」 オレンジのパジャマを着た少女に“上半身を脱がされ”、 「やはり明らかに大きいです、とミサカ一〇〇三九号は報告します!」 パープルのパジャマを着た少女に“胸を後ろから揉むように鷲掴みにされた”。 そして、上条にとって不幸なことに、 「い、いや、見ないで下さい、とミサカは……」 人一倍恥ずかしがりな一九〇九〇号が、上条を見つけてしまった。 * ここで状況を説明しておこう。 上条当麻と呼ばれるツンツン頭の高校生はいま、一九〇九〇号を除く四人の少女からフルボッコ にされ、床にへたり込んでいる。 一般的に、女性はパジャマの下にはブラジャーをつけない。これは寝る時に圧迫感があったり、ワ イヤー入りのブラの場合これが刺さったりして痛いからだ。だからこそ、パジャマ姿の彼女たちはいま ブラをつけていないし、もしそのブラウスタイプのパジャマの前ボタンを全部開放させたらどうなるかは わかるであろう。 つまり上条当麻は、いま顔を赤く染め涙目で自分の身体をぎゅっと抱きしめるようにしている一九〇 九〇号の胸をばっちりと見てしまったのだ。一応上条を擁護すると、胸の大きさについて揉めた少女 たちが実力行使した際、偶然上条が来てしまい見えてしまった、ということで、決して上条がケダモノ になった訳ではない。 しかし、見てしまったという事実は変らないため、美琴と三人の妹達から鉄拳制裁を喰らった訳で、 上条によると「ふ、不幸、だ……」とのことである。 妹達――それは“造られた心”を持った“造られた実験動物”であった。しかし、とある事件での とある少年の行動や言動がきっかけとなって、“自らの心”を持った“一人の少女”へと少しずつ 変っていった。 あれから三ヶ月以上が経ち、彼女たちはかなりの個性が出始めている。彼女たちが着ているパジ ャマの色もその表れだ。性格・趣味・趣向など、それぞれがそれぞれの“人間”へと成長を遂げている。 多くの妹達は感情や表情が多彩になり、自然な笑顔も見せるようになった。一九〇九〇号の恥ずか しがり屋という“個性”、御坂妹の表情が相変わらず乏しめという“個性”。それらは決して造られたも のではない、彼女たちの自然なものなのだ。 閑話休題。 上条はいま四人の同じ顔をした少女から睨まれている。理由は先の通りだ。 「あんた! ナニ人の許可もなく勝手に妹の胸見てんのよ!」 「いくらミサカがコイツの愛玩奴隷だからといって、これは許せません。とミサカはこの浮気男を睨み つけます」 「今の一〇〇三二号の奴隷宣言は聞き逃せません! と、ミサカは初めて会う当麻様に心奪われそ うになるのを我慢しながら二人を交互に睨みつけます」 「また一九〇九〇号は抜け駆けしようとしてますね? とミサカ一〇〇三九号は――」 「だから不可抗力だあああ!」 矢継ぎ早に飛び交う同じ顔の少女たちの言葉。 そして弁明する上条。 どういうわけか美琴と妹達は口調のみならず声色まで違うので、一人だけ別の声の美琴は聞き分 けがつくし、首にかかるネックレスでも見分けはつく。また、御坂妹は他の妹達より表情が乏しめ(穏 やかとも言う)であり、これまた首にかかるネックレスで見分けがつく。しかし、小っこいのを除いた他 の妹達に会うのは今回が初めてであり、恥ずかしがり屋で口調がごにょごにょした一九〇九〇号は すぐに掴めたが、後の二人はまったく見分けがつかない。 とりあえず今回はパジャマの色(一人は制服だが)で見分けることにした上条は、自らに怒りをぶつ ける“妹達に”、こう声をかけてしまった。 「そ、そうだ、お前ら、そのパジャマ似合ってるじゃねえか」 少女たちの怒りの声が止んだ。(お姉様を除く) そして、唯一隅で黙って顔を赤くしていた一九〇九〇号が、 「あ、あの、可愛い……、ですか? と、ミサカは不安になりつつ聞いてみます」 と上条に問いかけ、 「え? ああ、可愛いと思うぞ」 と上条が上条らしからぬ答えを返したことにより、 「か、可愛いと言ってもらえました、とミサカの胸は幸せでいっぱいになってしまいます」 と彼女は喜んでいたが、 「「「「……。」」」」 無言の怒りのような重圧が、ひしひしと上条に伝わってくる。 「あんたは……、」 「は、はい?」 「そんなに恥らう妹が好きかこのシスコンがぁぁぁあ!」 「ち、違う! そういう訳じゃねえええ!」 「では、姉妹セットでご購入ということですね? とミサカはこの粗大ゴミを見下ろしながら問います」 「粗大ゴミはこんな所に放置せず病院裏の集積所へ捨てるべきです。とミサカは一三五七七号はす ぐに実行しようと考えつつ提案します」 「粗大ゴミは勿体無いのでリサイクルすべきではないでしょうか。と、一〇〇三九号は独占を狙いつ つ――」 「ちょっとアンタたち、私の彼氏を粗大ゴミ扱いしてんじゃないわよ!」 「粗大ゴミは粗大ゴミです。とミサカは空気の読めないお姉様の発言に苛立ちを――」 * 結局、再び?燃え上がった姉妹ゲンカに巻き込まれ、何の為に病院へ行ったんだかまったくわから ないうちに、お怒りモードの美琴に連れられ外へ出た。なぜ怒っているのか問いかけたところ、「アン タがあの子たちにまで手を出すからでしょうがどバカ!」と怒鳴られた。どうやらさらに怒らせてしまっ たらしい。 仕方がないので少し恥ずかしいが抱きしめてキスしてやったら、途端に猫モードにシフトチェンジ したらしくおとなしくなった。最近ようやく美琴の扱い方がわかってきたかもしれない。 「アンタね、ちょっとは人の気持ち考えなさいよ」 「だから悪かったって。ほら、ヤシの実サイダーおごってやるからさ」 「い、いらないわよそんなもの。モノで釣れると思ったら大間違いなんだから。だいたい、私は飲み物 より、あ、アンタが……」 美琴は顔を赤く染めながら上条の顔を見上げていた。 「俺が、どうしたのか?」 「……ッ! このバカ!」 これは可愛すぎる訳で……。 しかし、ぎゅっと抱きしめたくなる衝動はぐっとこらえ、気になっていたことを聞いてみた。 「そういえばさ、結局何だったんだ? お前はなんだかずっと姉妹ゲンカしてたし、なんか知らねえ けど勝手に俺のIDカード作られてて関係者扱いされたし」 「え? あ、あー……、それね。私はあの子達に呼ばれたから行ったのよ。話しがあるからってね」 「話?」 「そう。なんかアンタと手つないで歩いてるところ見られちゃったらしくてねー。問い詰められただけよ」 「何だそんなことか……。てっきりあいつらに何かあったんかと心配してたんだぜ」 「……、あったと言えばあったわね、一人。胸とかお腹とか腕とか」 「は、はい?」 恥ずかしがり屋さんのスタイルの件を引きずっているらしい。 ちなみに抜け駆けの常習犯さんは、引き締まったウエストだけでなくバストも大きくなっている。 美琴や妹達の中で最もスタイルが良いらしいが上条はそれを知る由もない。 「なんでもないわよ! こっちの話」 「あのー、すげえ気になるんですが」 「気にすんなバカ」 「バカで悪かったですよー。じゃなくて、じゃあ関係者ってのは何なんだ? 勝手に俺の写真がIDカー ドに転写されてるんだが」 重要なのはそこである。上条の個人情報・写真などをもとにIDカードが作られていて、さらに指紋 なども登録されていた。本人の知らないうちに、だ。 「あー、それねー。私のIDカード作るって言うから、あんたのもついでに作ってもらったのよ」 「テメェかッ! 何勝手に作らせんだよ!!」 「いいじゃない。アンタはあの子達のお兄ちゃんなんだからね」 「お、お兄ちゃん?」 「私はあの子達の姉なのよ? その姉の彼氏は兄みたいなもんじゃない。だいたい、アンタがあの子 達を助けてくれたんだし、懐かれてるんだから立派な関係者よ」 「あのなぁ、それは否定しないけどな、一言くらい何かあってもというか本人の許可くらい取るだろふ つう」 「ゴチャゴチャうるさいわね。せっかく夜に星空の下を二人で歩いてるんだから、手つなぐとかもっと そういう雰囲気作りなさいよ」 そう言って、美琴は上条の右手を握った。が、 「ダメ。今は強引なお嬢様にお説教タイムです。とにかく、何で俺のID作らせたんだ? ついでじゃなく てなんか理由あるんだろ? 正直に言いなさい」 「ないわよ」 さらり、即答である。そして美琴は続ける。 「あったほうが無いより便利じゃない。それに、これからはアンタが関係者として病院へ行くことも増え るんだから」 「何で増えんだよ」 「私としては悔しいけど……、アンタも知ってる通り、あの子達はアンタの存在を必要としてるのよ? だからたまにでいいからアンタも“あの子達の家”に遊びに行ってあげること。おっけー?」 「遊びにって何だ? 何しろって?」 「雑談したりするだけでいいのよ。あの子達は“上条当麻という異性がいるから個性が出る”の。悔し いけどね。あ、許可なく浮気したらダメよ? 音速十倍以上で一〇センチくらいの鉄球を超電磁砲で プレゼント」 さらっととんでもないことを言う。しかし怒らせたら本当にされそうで恐いのだが。 「じゅ、十倍!? 三倍じゃねえのかよ?」 「三倍は公称値よ。コインを五十メートルプールの水に向かって限界まで手加減して音速の三倍毎分 八連発、それ以上だと測れないどころかプールが消滅するし。やったことないけど、巨大な金属の塊 でも本気でぶっ放したら、衝撃波で学園都市どころか都心まで吹っ飛ぶんじゃない?」 「いや、あの、やったことあったらもう俺どころか東京都民ほとんど死んでますから」 「大丈夫よ。もしそうなってもアンタだったら私を止めてくれるでしょ? 当麻には負けないけどこの右 手には勝てないわよ」 そう言って、美琴は自分の左手を握り締める上条の右手を引き上げた。幻想殺し(イマジンブレイ カー)――それは美琴にとっては敵であり必須でもある大切な彼の手。以前ほど漏電することはなく なったとはいえ、やはり不意打ちされたり妙に意識してしまうと漏電してしまうので、そんな時は右手 で止めてもらわなくてはならない。 「っていうか話はぐらかしすぎだろお前!」 「いいじゃない!」 美琴はクスリと笑い、 「私のため妹のため。裏も表も無いんだから、アンタはそう考えてればいいのよー」 「あ、おい待てコラ!」 上条の手を離し、タッ、と走り出す美琴。 そして美琴を上条が追う。 いつもとは逆の追いかけっこが、星空の下で始まった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12月1日  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 今日、街で考え事をしながら歩いていて つい周りが見えなくなってしまいましたの。 気付いた時には階段を転落しそうになり、 能力も使えず大怪我を覚悟したところ、 あの腐れ類人猿がまたしても わたくしを助けてくださいましたの。 そんなことで高感度をあげて、お姉様を 奪おうなんて百年早いですわ。 ケッケッケ。 でも、本当に助かりましたの。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある恋人の日常風景
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2175.html
とある鈍感の疑似恋愛【ギャルゲープレイ】 アレイスター『突然呼び出してすまない。実は君に頼みたい事がある。 学園都市発展の為に、実験サンプルになってもらいたい。 なに、そう心配しなくても危険な事はしないさ。ただ簡単なゲームをしてもらうだけでいい。 ルールも単純だ。九人の女性の中から一人を選び、その人物と恋仲になってもらう。それだけだ。 やってくれるかね?』上条 ⇒1:ああ、いいぜ 2:ふざけんな! その幻想をぶち―――アレイスター『協力感謝する。ではさっそくだが、これから恋人となるパートナーを選びたまえ』 1:インデックス 『所詮とうまはとうまなんだね……』 ⇒2:御坂美琴 『わわ、私!!? どど、どうしてもって言うなら、その…こ、ここ恋…人になってあげてもいいけど!?』 3:姫神秋沙 『……分かってた。私の扱いなんて。いつもこんなものだから』 4:風斬氷華 『そうですよね…私みたいな化け物じゃ、やっぱり嫌ですもんね……』 5:御坂妹 『やはりミサカは使い捨ての消耗品なのですね、とミサカは皮肉を言います』 6:神裂火織 『………ド素人が………』 7:五和 『夢…そうこれは夢…ただの悪夢です…きっとそうに違いありませんよね…は…ははは…』 8:オルソラ 『お選びになる前に、まずはお茶でもいかがでございますか?』 9:鈴科百合子 『くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけここくかくきくこく くけくかきくこけくけくきくきこきかかか―――ッ!!』アレイスター『なるほど、超電磁砲を選ぶか。ふむ、それもまた面白い。 せいぜい好感度を上げて、HAPPY ENDを目指してくれたまえ。 …これで私の計画【プラン】も……ふ。ふふ』 アレイスター上条『あ~…日曜の朝って気分いいな。 いい天気だし、こんな日は』 ⇒1:適当に街でもぶらつくか 2:たまには勉強でもするか 3:さ、二度寝二度寝上条『とは言ったものの、目的も無く一人でプラプラするのもなぁ……』 ⇒1:誰かと会わないかな 2:…美琴に会いたいな…… 3:ま、いっか美琴『ちょ、ちょろっとアンタ~?』上条『(おっ? この声は……)』 1:よう、ビリビリ ⇒2:おす、美琴 3:やあハニー、今日も可愛いね 4:……誰だコイツ? 5:[行動]スルー美琴『おす。てかアンタ今日ヒマ?ヒマよね?ヒマって言いなさい!』上条 ⇒1:まぁ、ヒマだな 2:逆にヒマじゃない美琴『!!! じゃ、じゃあさ! たまたま友達からチケット2枚貰ったんだけど、 き、期限が今日までだし、捨てるのも勿体無いし……だ、だから…その……アンタと……』上条 ⇒1:何で俺なんだ? 白井は? 2:マジか!? ラッキー! 3:「アンタと」の後の言葉が聞きたいのですが…… 4:え~…超めんどくせ~……美琴『く、黒子は風紀委員の仕事で忙しいのよ!! ほら、行くの!?行かないの!?』上条『う~ん……』 1:映画のチケットか…これ観たかったんだよな 2:動物園のチケットか…そういや行ったこと無いな ⇒3:遊園地のチケットか…面白そうだな 4:ゲ、ゲコ太ショーのチケットか…この歳だとかなり勇気がいるな 5:呪いの蝋人形館のチケット……ひ、人にはいろんな趣味があるよな…?美琴『で、でしょ!!? もちろん行くわよね!!」上条 1:もちろん行きますとも! ⇒2:つーか本当に俺でいいのか? 3:美琴とだったら、どこにでも行くよ 4:なァンてなァァ!! 本当にそンな事言うと思ったかァ!? 残念だったなァ三下ァァァ!!!美琴『ど、どういう意味よ…?』上条 ⇒1:知り合いに見られたら勘違いされるんじゃねぇか? 2:本当は好きな人と行きたいんだろ? 3:デートなんて、上条さん初めてなもので 4:俺エスコートなんて自信ねぇよ…… 5:私と行っても。多分。楽しくないと思う美琴『か、か、か、勘違いって何をよ!! べべ別にこんなの普通でしょ!? 考えすぎなのよ馬鹿!!』上条 ⇒1:そんなもんなのか? ならいっか 2:いやいや、男女で歩いてればそういう風に見られるだろ 3:まぁむしろ、勘違いされた方が俺的には嬉しいけどな 4:異教徒ごときに馬鹿呼ばわりされるなんて、心外なんですがねー美琴『そういうものなの! ほら行くわよ!?』上条 1:うし! せっかくだから楽しむか!! ⇒2:なんか…不幸の予感…… 上条『着いたー! …けど…』 1:めちゃくちゃ広いな 2:すげぇ狭いな ⇒3:混んでるなー…… 4:人少なくね? 5:来るまでに大分時間食ったな美琴『まぁ、日曜日だし…これくらいは仕方ないんじゃない?』上条『(けど、こんだけ人が多いとはぐれそうだな……よし!)』 1:美琴、俺の後にしっかりついて来いよ ⇒2:手でも繋ぐか 3:まずはリードと首輪を買おう 4:こりゃ別行動の方がいいンじゃねェかァ? 楽しみにしてたのに残念だったなァ三下ァァァ!!!美琴『なっ!!? きゅ、急に何なのよ!!』上条 ⇒1:迷子になったら困るだろ 2:美琴の手の温もりを感じたい…… 3:第一の回答ですが、恋人だからです 4:遊園地ではヒーローと握手をするもんだろ美琴『こ、子供じゃないん…だから……でも…アンタがしたいんなら…別に……』上条 1:そりゃそうだよな。子供じゃあるまいし 2:俺がしたいんならいいんだな? 3:嫌ならいいですよ…… ⇒4:いや…中学生は子供だろ美琴『こ、子供じゃいないわよ!! てかアンタと2歳しか違わないじゃない!!』上条 ⇒1:わ、悪かったよ。 じゃあいいよ、手は繋がなくて 2:そうだとしても、高校生と中学生では大きな壁があるのですよ 3:何言ってんだ! むしろ胸のサイズは小学生並みじゃねぇか!!美琴『……それと…これとは…話が別じゃない……』上条 1:どっちだよ! ⇒2:あ~も~! 面倒くさいから繋ぐ!! 3:あ~も~! 面倒くさいから繋がない!! 4:あ~も~! いっそのこと抱っこしちまえ!!美琴『ひゃう!!?』上条 ⇒1:文句なら後で聞くから、とりあえず今は我慢しとけ 2:ふっふっふ…これでもうミコっちゃんは、上条さんから逃げる事ができなくなった訳ですよ 3:[行動]にぎにぎする美琴『ままままぁ今だけの我慢ならべべべ別にいいかな!!?』上条『よし! じゃあさっそく回るか! まずは』 ⇒1:遊園地の花形、ジェットコースターだな! 2:定番と言えばこれ、メリーゴーランド! 3:回しすぎに注意、コーヒーカップ! 4:「キャー!」とか言って抱きつかれたい、お化け屋敷! 5:コンマ数秒の戦い、ゴーカート!美琴『やっぱりそうよね! 遊園地に来たらこれに乗らなきゃ!!』 ―――――20分後―――――美琴『アンタねぇ…あれだけ意気揚々と乗り込んで、何で酔ってんのよ……』上条 1:さ、さすがは学園都市製……ジェットコースターにジャイロ回転を加えるとは…… 2:か、川の向こうで一万人以上のミサカが手招きしてるのが見えた…… ⇒3:な、何で美琴はケロッとしてんだ!? 4:[行動]吐く美琴『あんなのテレポート酔いに比べたら、どうってことないわよ』上条 1:俺経験できないけど、そんなにすごいのか…テレポートって…… 2:うぅ…次は絶叫系以外のに乗ろうな…… ⇒3:ちょっと…休もうぜ…… 4:[行動]吐く美琴『ったく、だらしないわね。 ま、仕方ない。何かジュースでも買ってきてあげるわよ』上条 ⇒1:すまん、助かる…… 2:悪いな…… 3:できればスポーツドリンクで…… 4:ここで「きなこ練乳」とか、そういうボケいらねぇからな…… 5:[行動]吐く美琴『別にいいってば』 美琴『どう? 大分落ち着いた?』上条 1:あぁ、すっかり良くなったよ。 ありがとな ⇒2:うん、美琴の買ってきてくれたジュースが効いたのかもな 3:う~ん…もうちょいかかりそう…… 4:美琴がキスしてくれたら治る 5:僕を誰だと思っている? こんなのは治すうちに入らないんだね?美琴『そっか、良かった』上条 1:ホント悪い、せっかくのデートだったのに…… 2:けど、何でそこまで心配してくれるんだ? 3:じゃあ気を取り直して、次は何乗る? 4:さてと、そろそろメシでも食うか? ⇒5:ん? 誰かこっちに手を振ってないか?美琴『ホントだ…誰かしら?』上条『アレは……』 1:ウチのクラスメイトだ ⇒2:美琴の友達かな? 3:一方通行達か 4:浜面達だな 5:か、神の右席!!?佐天『おーい!御坂さーん!!』初春『だ、駄目ですよ佐天さん!! せっかくのデート邪魔しちゃ!!』美琴『い、いや! 違うの!! コイツはそういうのとかじゃなくて!!!』佐天『隠さなくたっていいですって!! こちらがウワサの彼氏さんなんですよね!?』美琴『だ、だから、本当に違うんだってば!! ア、アンタも何か言いなさいよ!!』上条 1:ほら、やっぱり誤解されちまったじゃねぇか…… ⇒2:えっ!?美琴って彼氏いたの!? 3:違くないだろ。俺達付き合ってるんだから 4:彼氏っつーか…むしろ夫? 5:ふざけンじゃねェェェ!!! 俺は12歳以下にしか興味無ェンだよ!! 誰がこンなババァと付き合うか!!佐天 初春『『……はい!?』』美琴『……二人とも分かったでしょ…? コイツはこういうヤツなのよ………』初春『な、なるはど…手ごわいですね……』佐天『大丈夫ですよ! ここの一番人気って実は観覧車なんですけど、何でだか分かりますか!?』美琴『えっ…知らないけど……』佐天『実はですね…ここの観覧車でてっぺんまで来た時、 夕日をバックに告白すると、両想いになれるって都市伝説があるんですよ!!』美琴『!!!』佐天『モタモタしてていいんですか? そろそろ夕暮れですよ?』美琴『ちょ、ちょっと急用思い出した!! 佐天さん、初春さん、また後でね!?』佐天『かわええのう……』初春『ほっこりしますね……』 美琴『ね、ねぇ! そろそろ帰る時間だし、最後に観覧車乗らない!? これなら激しくないし、アンタでも大丈夫でしょ!?』上条 ⇒1:うん、まぁ、それなら平気かな 2:お、お、おう!(て、てかさっきの話聞こえてたんだが……まさか美琴が俺を!? いやいやまさかな……) 3:いや~でも…何かすげぇ混んでるぞ…… 4:うわ~い!観覧車って一度乗ってみたかったの!ってミサカはミサカははしゃいでみたり!!美琴『…結構混んでるわね……夕暮れまでに間に合うかしら………』上条 1:夕暮れまで? ああ、さっき聞いた都市伝説のことか 2:夕暮れまで? ああ、門限があるんだよな 3:本当に混んでるな……何分待ちだ? ⇒4:本当に混んでるな……けどもう、列の真ん中辺りだから、トイレにも行けないな 5:[行動]手を繋ぐ美琴『……トイレくらい我慢しなさいよ……こっちはそれどころじゃないってのに………』上条 ⇒1:あと何人くらいだ? 2:こ、こっちだって…その…き、緊張してんだよ…… 3:無理!限界!ちょトイレ行ってくる!!美琴『あと一人…いや、つ、次ね……』上条『やっと順番が来たか』 1:[行動]とりあえず先に乗る 2:[行動]美琴をエスコートして後に乗る ⇒3:[行動]仲良く同時に乗る 4:[行動]乗らない 5:[行動]トイレに行く美琴『の、の、乗っちゃったわね……』上条 1:おお~! どんどん景色が小さくなってくな! 2:そ、そうですね…… ⇒3:さすがにコレを降りたら終わりだよな……今日は楽しかったよ、美琴 4:…このまま時間が止まっちまえばいいのにな……美琴『ううん! 私の方こそありがとう! と、と、当……麻………』上条 1:礼を言うのは俺の方だって 2:今、何て……? 3:きゅ、急にそう呼ばれると照れるな…… ⇒4:……………美琴『な、なにか言いなさいよ!!』上条 ⇒1:ごめん、あまりにも綺麗だったから…… 2:わわわ悪い!! ちょっと見惚れて…い、いや!何でもない!! 3:……………美琴『…え………』上条 ⇒1:あっ!ゆ、夕日! 夕日が綺麗だって話な!? 2:だから…美琴が綺麗だって…言ったんだよ…… 3:[行動]無言でキスをする 4:だからンな事言う訳無ェつってンだろ!! 何回騙されれば気が済むンだ三下ァァァ!!?美琴『そそそそうよね!! 夕日よね!! あははは!…はは…… ………ね、ねぇ……頂上に着いたら……大事な…話があるの………』上条 ⇒1:いや、俺に言わせてくれ 2:…分かった美琴『………うん………』上条『俺は―――』 1:美琴のことが…好きだ!!! 2:お前を絶対幸せにするって約束する!! だ、だから…… 3:これからもずっと……例え爺さんになっても、隣には美琴にいてほしい…なんて思ってる 4:こんな気持ちになったの…初めてなんだ…… 5:美琴に迷惑をかけたくない……けど、抑えきれないんだ…どうしようもなく…美琴のことが…好き…なんだ…… 6:[行動]じっと目を見つめる 7:[行動]そっと抱き寄せる 8:[行動]ゆっくりと口づけを交わす ⇒9:ジュース飲みすぎたのかな…マジでトイレ限界なんだけど、あと何分くらいで降りられるんだっけ?美琴『知らねぇよ!!!!!!!!!!』 GAME OVERアレイスター『…失敗か………また私の計画【プラン】に誤差が………』
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1455.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 「∀」 ∀(2-230)氏 ▲ ∀(2-230)氏 とある帰り道 嫉妬する上条さん(美琴視点) やくそく 不幸を背負って バイト生活 1 0日目 バイト生活 1 1日目 嫉妬する上条さん(上条視点) バイト生活 2 2日目 バイト生活 3 3日目 上条さんがいちゃいちゃスレを見つけてしまいました。 1 バイト生活 4 4日目 勝手に終わりを想像してみた 上条さんがいちゃいちゃスレを見つけてしまいました。続き 2 小ネタ 本当と嘘 バイト生活 5 5日目 小ネタ バレンタインでの不幸(?) 悪夢 責任の取り方 1 責任の取り方 2 バイト生活 6 6日目 A lie バイト生活 7 7日目 バイト生活 8 おまけ 小ネタ みかん 小ネタ 黒子→美琴×上条の日常 1 小ネタ 上条さんが狼にっ!? 小ネタ 二人が何かしています。 1 小ネタ 二人が何かしています。 2 詳細 ▲ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 Back
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2433.html
ねむねむタイム それなりの修羅場はくぐってきた。ある時はレベル5の第一位と戦い、またある時は、ローマ正教を裏で牛耳る最強の魔術師と互角に渡り合った。ロシアでは戦場を駆け抜け、バゲージシティでは地獄も見てきた。たかだか一介の高校生には受け止めきれない程の心の傷を負いながらも、彼はここまでやってきたのだ。しかしここに、そんな彼すらもあざ笑うかのような、最大の敵が立ち塞がっている。過去の偉人たちに睨まれ、異国の言語を読み取り、暗号と数式の解を求め、化学式に頭を悩ませる。ぶっちゃけ課題である。上条はここ三日間、ず~~~っと問題集やらプリントやらとにらめっこをしていたのだ。それもそのはず。何しろ三日前、小萌先生に泣き付かれてしまったのだ。ただでさえ成績は下から数えた方が早いくらいなのに、度重なる無断欠席で出席日数もギリギリで、もはや小萌先生のフォローだけでは、学校側としてもどうしようもない状態になっていた。なので今回の三連休を使い、「せめて誠意だけでも見せる」ため、この三日間、ただひたすら、黙々と課題をやっていたのだ。だが人間の集中力には限界がある。そうでなくても、徹夜続きだ。フラフラするのも無理はない。しかし課題はまだ山のようにある。小萌先生のところにインデックスを預けてまで(本人は渋々だったようだが)やっている課題だ。さすがに終わらせないと色々とマズイ。けれども眠いし終わらない。上条は働きが鈍くなった頭をなんとか動かし、ある人物へと電話する。「……あ、美琴…か? 悪いんだけど………た、助けてください!」その言葉を最後に、上条は力尽きた。 せっかくの休日だというのに美琴はヒマである。ルームメイトの白井は、風紀委員で忙しいのだそうだ。ベッドに転がり、少女漫画を読みながらダラダラとしていると、ケータイが鳴り響いた。この着信音は一人だけにしか設定していない。ガバッと起き上がり着信相手の名前を見る。やはり上条からだ。まず慌てる事31秒、心を落ち着かせる事14秒、軽い発声練習8秒、鏡を見て前髪だけでも直そうかと思ったが「あっ、電話だから関係ないや」と思い直した事0.17秒。計53.17秒の準備期間の後、美琴はケータイを手に取った。「ななな、何の用かしら!!?」それでもこの体たらくである。『……あ、美琴…か?』上条の声は明らかに弱々しい…と言うより半泣きだった。『悪いんだけど………た、助けてください!』「助けてって…アンタ何があったの!?」尋常ではない上条の様子に、美琴は思わず声を荒げる。だがそれ以降は上条の声は聞こえてくる事はなく、代わりにツー、ツーという音が聞こえてくるだけであった。嫌な予感がする。美琴はケータイの着信履歴を見る。不幸中の幸いと言うべきか、どうやら寮の固定電話からかけられたものらしい。場所なら分かる。美琴は急いで上条の寮へと走り出した。 この野郎!それが現場に駆けつけた美琴の心の中の声の、第一声であった。被害者はコタツで突っ伏す形で倒れており、チャーペンを握り締めたまま固まった右手は、ノートに「(x-6)(x+2)=0 これより,x-6=0 またはx+2=0 よって,x=6,-2」という謎のダイイング・メッセージを残している。よほど凄惨な事件だったらしい。「ったくもう! 心配して損したわよ!!」そう言いながら毛布をかけてあげる美琴。本人のためを思うなら、本当は起こしてあげる方がいいのだが、上条がそこまで切羽詰った状態である事を美琴は知らないのである。だがコタツに広がった参考書やら問題集やらを見て、ある程度状況を把握した美琴は、「せっかく来たんだから、ちょっとくらい手伝ってやりますか」と、上条の握っていたシャーペンを抜き取ろうとする。その瞬間、美琴はとんでもない事に気付いてしまった。今ってもしかして、二人っきりなんじゃね?そうなのだ。この狭い空間で、美琴は上条と二人っきりなのだ。黒子はいない。いつもコイツにくっついている、ちっこいシスターも何故かいない。しかも目の前にいるコイツは熟睡していて、自分が何をしても起きそうにない。そのことに気付いた美琴は、声にならない叫びを上げる事5秒、色々と想像して悶絶する事246秒、一旦落ち着こうとして深呼吸する事133秒、そして再び想像して悶絶する事177秒、その後なんやかんやで405秒。計966秒、約16分間も何かワチャワチャしていたのだ。こんなチャンスは滅多にない。今こそ積年の恨み(主にスルーされたり、イライラさせられたり)を晴らす時。当初の目的【べんきょうのてつだい】はどこへやら、上条が無防備なのをいいことに、仕返しという名のイタズラが、今、始まろうとしている。 美琴は高鳴る胸を抑えながら、その油断しきった顔に近付いていく。くかーっと寝息を立て、よだれを垂らし、時折むにゃむにゃと何か言っている。非常にだらしない姿だが、恋する乙女はそれを「カワイイ」と表現するらしい。子犬でも見つめるようにウットリとしている。しかし、長時間直視する事はできないらしく、「見つめる→目を逸らす→深呼吸→見つめる」を繰り返していた。こうしてるだけでも充分幸せなのだが、しかしそれでは、せっかくのこの貴重な時間が勿体無い。コイツが起きる前に、普段できないような事をして、もっと楽しんでしまおう、と美琴は考えた。 [MissionⅠ NEGAO WO GEKISYA SEYO!]美琴はケータイを取り出し、その寝姿を保存しようと企んだ。一応建前上は、「何かあった時に、この写メを材料に交渉【きょうはく】する」というものだが、本当の使用目的は乙女の秘密である。何度もパシャパシャと音を立て、うまく撮れて保存したもの、緊張して手ぶれが激しくなり失敗したもの含めて、約100枚近くの写真を撮る。もうホクホクである。「ふっふ~ん。 いっつも私をスルーするから悪いのよ~♪」と、口では言っているが、顔はニヤケきっている。上条とは違った意味で、こちらもだらしない。と、その時である。上条が「みこ…とぉ……」と小さく呟いた。バレた!!? と思ったが、寝言だったようだ。「お! お! 驚かすんじゃないわよ!!」本当に心臓が飛び出るかと思ったらしい。後に美琴はこのときの事を、「14年間生きてきて、一番ビックリした瞬間だった」と語っている。しかし上条はどんな夢を見ているのか。その後も何度も「美琴」の名前を呟いている。実際は「ヘルプで呼んだはずの美琴が、課題の追加を大量に持ってきた」という、とんでもない悪夢を見ている訳なのだが、そんなことを知る由もない美琴にとっては、「ひょっとしてコイツ、夢の中で私と!?」とか思ってしまう。真実というのは残酷なものだ。 [MissionⅡ NAMAE WO YONDE MIYOU!]何度も何度も名前を呼ばれ、美琴も妙な気分になってくる。この特殊な空間がそうさせたのだろう。普段ならありえないが、コイツが寝ている今なら言えるかもしれない。コイツの名前を。「み、こと……」「ななな、何よ! と、と、とう、ととと、とう」「みこ…むにゃ……」「とう、とう、とと、と、とう…………ま………」「言えた!」と胸を張って言えるかは微妙だが、一応名前を呼んだと言えなくもないような気がする。その後も何度か挑戦したが、「と」と「う」と「ま」を繋げて呼べたのはこの時だけだった。 それにしてもこの男、まるで起きる気配がない。これだけ近くで美琴が大騒ぎ(本人的にはその自覚はない。あくまで冷静なつもりである)したというのに、相変わらずレム睡眠の真っ最中だ。これだけ起きないのであれば、多少無茶しても大丈夫なのではないだろうか。 [MissionⅢ IROIRO SAWATTE TANOSHIMOU!]一応、名前は呼べた(と本人は思っているらしい)ので、今度はもう一段階ハードルを上げてみる。ゴクリと生唾を飲み込んだ後、そ~っと腕を伸ばし始めた。どうやら触れてみたいらしい。相手を刺激しないように、まるで猛獣と触れ合うかのような、ゆっくりとした手つきではあったが、美琴の右手は、見事、上条の頭にポフッと着陸した。「ふぉ!? ふおぉぉぉおおおお!!?」感激と興奮のあまり、言語中枢がおかしくなった模様。そのままワシャワシャと頭を撫でてみた。トゲトゲした髪は、触ってみると意外と柔らかく、「大型犬ってこんな感じなのかな?」と、何となく思った。その後も鼻をつまんでみたり、耳たぶをフニフニしてみたり、首筋をコチョコチョしてみたりと、本人が寝ているのをいいことにやりたい放題だ。自分からやっておいてイチイチ悶える美琴も美琴だが、これだけされても全く起きない上条も上条である。だがほっぺたをプニプニと突いている時に事件は起こった。くわえやがったのだ。美琴の細い人差し指を、上条の口が無造作に。「!!? !!!!?? !!!!!!????」あまりの出来事に脳が追いついていないらしい。学園都市で第三位の演算能力をもってしても、処理できないことはあるのだ。上条は「千歳飴……」と、とても夢の内容が分かりやすい寝言をほざきながら、チュピチュピと美琴の指を、吸ったり舐めたり転がしたりしている。本当は起きているのではなかろうか。「や……ちょ、やめ………ぁ…は、あ…………んん!!」やだ、なにこれエロイ。やっとの思いで指を抜き取ると、上条の口と繋がった糸がツツーッと引いていた。美琴はそれを、心臓をバックンバックンさせながら、自分の唇へと当てようとする。もう一度言うが、普段の彼女は絶対にこんなことはしないだろう。何もかもこの状況が悪いのだ。だが唇に触れようとした瞬間、ハッと思い直し、頭を抱えた。(な、何をしようとしてんのよ私は~~~!!! これじゃ変態【くろこ】と一緒じゃない!!!)惜しい。もうちょっとだったのに。美琴はティッシュで指をふき取った。思い直してからティッシュを使うまで、色んな葛藤があった事は内緒だ。 冷静になったのか、さすがに懲りたのか、それとも、「思い返すととんでもなく恥ずかしい事をしていた」という自覚をしたため上条の顔をまともに見れなくなったからなのかは分からないが、これ以上ちょっかいを出さないでおこうと美琴は思った。そっと立ち上がり、帰ろうとする。ホント何しに来たのやら。だがその時、美琴は左腕をガッとつかまれた。一瞬、何が起きたのか分からない美琴に、本日最大の試練が訪れる。 [Final Mission KAMIJOU NO HANGEKI KARA MI WO MAMORE!]そのままグイッと引っ張られ、美琴は床に倒れこむ。「いった~! 何が起きた…の…?」本当に何が起きたのか。目の前には、自分に覆いかぶさる形で抱き締めてくる上条の姿があった。「ちょちょちょ持って待って!!? 何!? 何これ!!? えっ、アンタ起きてんの!!?」急な展開に焦る美琴だが、どうやらこれでも上条は寝ているらしい。「ん~…あと5分……」とか言いながら顔をスリスリしてくる。「や! ほ、ほんとに…やめなさいよ! ちょ、ちょっとおおお!!」それでも上条の暴挙はとどまるところを知らない。いつも幻想をぶち殺すその右手が、美琴の控えめな現実【むね】を鷲づかんだのだ。「ぇぇぇぇええええええええ!!!?」そのままモニュモニュと胸を揉む幻想殺し。「…肉まん……」などと寝言をぬかしてはいるが、肉まんはそんな持ち方しないだろ。こんな神業【ねぞう】ができるのは、彼か結城リトぐらいなものだ。「ん…は…あぁん……ら、めぇ………や…ぁ、あ…んあ!」やだ、なにこれ超エロイ。好きな男に押し倒され、胸を揉まれているのだ。変な気分になってもおかしくはない。どんどんエスカレートする上条の手つきに、美琴の高ぶる感情も歯止めが利かなくなりそうだ。が、いいところで上条の動きがピタッと止まった。焦らしまで寝相で行うとは、さすがは一級フラグ建築士である。「はえ…? なんれ…?」効果は抜群だ。美琴はトロンとした目つきで、上条の方を見る。すると上条は、ここで止めを刺しにきた。ムチュッ唇と唇が重なり合う感触。今まさに美琴は「奪われた」のだ。いわゆるファーでストなキスを。それも寝ている相手にだ。今日はあらゆる意味で頑張ったが、さすがにこれには耐えられなかった。いつものように、「ふにゃー」の掛け声を残し、美琴は心地よ~く気絶した。 何かあった。この状況はどうなってる。上条が目を覚ますと、もう夕方だった。腕から伝わってくる感触は、とても温かくて柔らかい。まるで女の子でも抱き締めているかのような感覚だった。いやいや、そんなはずがない。だって身に覚えがないもの。しかし目を開けると、そこには真っ赤に染まった美琴の顔がある。いやいや、そんなわけがない。だってありえないもの。きっとこれはまだ夢なのだ。上条はそう言い聞かせて再び目を瞑る。「って! んな訳あるかあああぁぁぁぁ!! 何で!? 何故に美琴センセーがワタクシめの部屋にいるのでせう!!? そして何で俺と一緒に仲良く寝てんの!!? てか何で俺は美琴を抱き枕にしてんだ~~~!!!?」抱き枕どころか、もっと大変な事をしてた訳だが。上条はとりあえず水を一杯飲み、落ち着いたところで今日の出来事を思い出していく。今日は課題に追われていた。ここまではいい。睡魔と戦いながらも手と頭はなんとか動かしていた。問題はここからだ。たしか数学の問題(多分、二次方程式だったと思う)を解いている時に限界に達し、最後の力を振り絞り、美琴に助けを求めた…気がする。だから美琴がここにいる理由は、まぁ分かる。では何故、その美琴を抱き締めながら、自分は寝ていたのか。その答えを鈍感王上条が導き出せるわけもなく、彼は訳も分からず頭をかきむしる。絶賛気絶中の美琴。全く進んでいない課題。それだけでも厄介なのに、さらにこの後、「よ~カミやん! 課題は進んでるかにゃー? ヒマだから冷やかしに来てやったぜい」と、最悪な理由で遊びに来た友人と、最悪なタイミングで鉢合わせする事になり、その翌日、クラスで上条の公開処刑が行われる事になるのだが、それはまた別の話。