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管理・運営スレに書き込まれたレスは議事録としても使用するので議論等に関係ない、議事録として残す際に不適当と判断されたレスは削除されます 議事録とは 【例】ある会議の議事録 部長「今月の売り上げをどうやって作るのか?」「新規先を回るのか?」 「それとも既存先にいくのか」「そうそう新規先といえば、例の大曲商事の方はどうなってるのかな?」 「最近訪問した、あの何て言ったかな?日本ベースボールの案件は取れたのかな?」 「日本ベース商事はどうなっているのか?最近売り上げが落ち込んでいるようなんだが・・・」 というように、単なる会話ログの場合、整理されていない為内容が理解し難いです。 これを「議事録」で書くとすると、以下の様になります。 当月営業拡大策について (←内容を要約したタイトル) 当月の売上目標達成の為に対象ターゲットを新規先、既存先かかわらず検討すべきである。 特に、新規先の大曲商事、最近訪問先の日本ベースボールの進捗確認が必要と考える。 加えて、日本ベース商事の売り上げが落ち込んでいる件は調査が必要である。(部長) http //www.insource.co.jp/businessbunsho/gijiroku_by_insource.htmlより引用、一部改 流石にここまできちんとするのはしんどいので、運用議論に関係ないレスを削除し議論をスリム化することで一応議事録としての体裁を整えている訳です。 まーそれならまとめwikiにきちんと議事録作れって話なんですが、そこまで器が広くないので無理です、面倒 一応、それに対するフォローとして過去ログにて削除の前のレス閲覧は可能です http //www55.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/410.html
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/677.html
提督×ビスマルクの和姦です。 「~♪」 入渠中のビスマルクは鼻歌交じりにシャワーを浴びていた。 戦場の汚れを洗い流し、金色の産毛が熱い湯を弾き返す。 ビスマルクは女性の身だしなみとして無駄毛の処理には気をつけており 今日もそれをするつもりであった。 顔の産毛を処理し、腋に石鹸をつけ泡立てる、剃刀を使って綺麗にそり上げて行く 両脇を処理し、浴槽に足をかけて脛を処理しようと少し前屈みになった瞬間、 後ろから誰かが浴室にの戸が開いた音がした。 「入るぞ」 そう言いながら堂々と裸で入ってきた提督はビスマルクのうなじに優しくキスをした。 「あん、ちょっと危ないじゃない」 「今日も大戦果か、褒美に俺が綺麗にしよう」 「恥ずかしいから…いいわよ…」 「そこに座れよ」 「もう…仕方ないわね」 提督はそう言いながら器用に、浴槽に腰掛けたビスマルクの足を処理して行った… 提督の目の前には優しげなビスマルクの金色の陰毛が見え隠れする。 そこにキスをして提督が太腿を押し広げる。 「ここも綺麗にするぞ」 「え、ちょ、ちょっと!」 と、ビスマルクの返事を待たず、石鹸を塗り広げショリショリと剃り上げて行く 陰唇を抓み、一本の剃り残しも無い様入念に剃って行く。 我に返ったビスマルクは抗議の言葉を提督に投げるが、その頃には少女のような丘に成った ビスマルクのヴァギナが出来あがっていた。 「中途半端は嫌いだろ、後ろを向くんだ」 自分のヴァギナが毛一本も無いつるっとした状況となったのを見たビスマルクは、諦めた顔をして 「ええ…お願い」 と呟き、魅力的に引き締まったヒップを提督に向けた。 その秘所の後方からアナルに掛けて、ビスマルクの肉体を傷つけない様丁寧に剃り上げた提督は 仕上げにザーッと湯を掛けて、石鹸の残りを洗い流すとそのつるつるになった秘所に口付をした。 「あぅ」 いつもビスマルクをクンニする時は少し毛が邪魔であったが今日はその邪魔者が一切無い為に アナルの皺一本一本を丁寧に舐め上げ、次いでヴァギナを丁寧に舐め上げた。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ…Gut、いいっ…いいわぁ、素敵ぃ、はぁん♪」 ビスマルクは提督にその尻を押し付け貪欲に快楽を得ようとする。 舌を硬くし、ビスマルクのヴァギナにねじ込む、、両手はビスマルクの持ち重りのする乳房を掴んでいる。 提督は、いきなり体をすっと離し、訝る視線を向けるビスマルクに向かって リンスを体中に振り掛ける、浴室内が華やかなリンスの香りで満たされる。 「何、何するの?」提督の意図が理解できないビスマルクは目を白黒させて驚く。 提督は改めてビスマルクに抱きつき、立位のまま、ぎんぎんに怒張した巨砲を ビスマルクのヴァギナに埋めて行く、ビスマルクは提督にしがみ付くが、リンスが塗りたくられた ビスマルクの体はぬるぬると滑って提督のピストン運動を助けている。 どう抱き着いてもぬるぬると滑る為、ビスマルクは、提督の首筋にしがみ付き 提督の耳たぶを舐めまわしている。 感極まった提督はビスマルクの両足を抱え上げ、抱え上げたスタイルで突きに突き抜いた。 「ひあっ!あっ、あっ、か、感じちゃう、感じちゃうのぉ…貴方を、あ、あぁっ…!」 仁王立ちになった提督にしがみ付き、己の甘い夢を貪るビスマルク。 シャワーが滝の様に流れ続ける浴室の中で、2つの絡まり有った体は 同時に絶頂を迎えお互いに震える体を硬く抱きしめ合った。 お互いに見詰め合ったまま体を離すと、ビスマルクのヴァギナからは提督の愛の証である白い液体が とろとろと太腿まで流れ落ちてきた。 提督とビスマルクの体のそこかしこからリンスの香りが漂った、それをシャワーでよく洗い流し。 お互いの体を洗い合って浴室を出た二人。 「腹減ったな、間宮の所に晩飯でも食べに行こうか?」 「いいわね、もちろん提督の驕りよね?」 「任せとけ」 終 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/334.html
前回の話 一体どれほどの戦争の傷跡を海の底に刻めば、民間人が呑気にヨットを出して日光浴に励む風景が蘇るのか。 この根本的な議題は、頭の柔らかい提督を百人選抜して集合しようが結論は出ないだろう。 深海棲艦を沈めても同じ場所にまた現れる謎のメカニズムは、どのような手段を経て止めることができるか。 その真相は、直々に彼らに自白剤でも飲んでもらわない限りは藪の中……ではなく、珊瑚礁の中だろう。 まず彼らの殆どが人の言葉を発するのかすら怪しい。 先に述べたこれらの事は、全て確かめようのないことなので、自分一人の勝手な予想にすぎない。 未来を見据える事は大切である。 が、現在を見据える事は輪をかけて大切だ。 そこで自分は一旦、その遠い未来について考えるのをやめ、今を見つめ直そうと考えた。 その結果が、この夢なのかもしれない。 …… ………… …………………… 『北上さん? あ、提督、なんですか?』 なあ。 『はい』 お前とは、もうかなりの付き合いだよな。 『……そうですね』 お前の隣にいるのは北上だということはよく分かっている。 『…………』 空いているもう片方の隣に、私を置かせてほしいんだ。 『……提督』 うん? 『提督は、女心が分からないようで困ります』 え? 『提督は、北上さんと私の間にいなきゃダメです』 ……いいのか? 『北上さんも、そう望んでいます』 ……私は、北上にはお前と同じように接することはできないぞ。 『それでも、せめて、傍にいてあげて?』 ……分かった。 それで、だ。 『はい』 私とケッコンしてほしいんだ。 『……ごめんなさい』 …………。 『この戦争が終わるまで、待ってほしいの』 …………!! 『あっ……! やだ、提督、離し――』 いやだ!! 『提督……?』 いつ終わるか分からない戦争が終わるまでなんて待てない! 『…………』 すぐにでもケッコンしたいんだ! 頼むよ、大井。私と―― …………………… ………… …… 「結婚、してくれ……」 「……!」 どんっ。 「ぐあっ!」 この日は、胸を強い圧迫感で押されてベッドに背中を叩きつけられ、 少しの間呼吸が止まり、息苦しさに耐えられず目覚めるという最悪の朝から始まった。 一生懸命に酸素を取り込もうと動く肋骨の中の暴れ馬を鎮めようと、思わず伸ばしていた手を胸に当てた。 ……はて。自分は何故両手を伸ばしていたんだ? 「……て、提督! 着任時刻を過ぎてます! 早く起きてください!」 ……嗚呼、この声を聞いて思い出した。 その瞬間、つい先程まで見ていた夢を覚えておかなければ、という謎の使命感によって、 自分の意識は急速に覚醒状態まで引き揚げられた。 その甲斐あって断片的ではあるが、夢の中盤と終盤辺りの映像を脳味噌に新たな皺として刻むことに成功した。 それから、浅いレム睡眠の中、何とか言葉を発し、腕を伸ばして何かを捕まえるよう脳が無理をして命令していた記憶もある。 そこに大井がいたという事はもしや……。 夢の中にしてはあの大井の抱き心地はやけにリアルだと思ったが、合点がいった。 寝ながらにして体を動かす体験をしたのは初めてかもしれないな、としんみりするのも束の間、 ベッドサイドテーブルの目覚まし時計を見てみると、確かに普段起きる時間よりも数十分過ぎていた。 起床時刻どころか着任時刻さえ過ぎるとは全く。 「……ああ、おはよう」 「おはようじゃないですよ、もう」 昼まで寝過ごしたような言い方をするな。まだ八時も過ぎていないんだから。 上体を起こして我に返り、一つ気になったことを投げかける。 「……さっき、私は何か言っていたか?」 「プロポーズの言葉を聞きました」 やってしまったのか。 そういうものは実行する時まで取っておきたかったのに。 いい夢かと思ったらそうとも言えない夢を見て、うっかり寝過ごし、あまつさえまだ秘密にしておきたかったことを漏らす。 今日は厄日か。開発任務も碌な報告にならないかもしれない。 朝から早々、気分が大破した。今の自分はとても迷走している。わざわざ重い頭を上げて大井の顔を伺う余裕もない。 それが原因で、無意識に追い出すような言葉が零れた。 自分が驚くほど声量も小さい。 「……起こしてもらってすまんな。少し一人にさせてくれるか」 「……はい。急いでくださいね」 ……良くない事ばかりだ。 それからこの部屋には、分かりやすく落ち込んだ男がベッドに腰掛けて頭を抱えるという、とてもつまらない静止画が数分程映った。 いつまでもうじうじしていないで、寝巻から軍服に着替えて軍帽を被り、 さて洗面所に行くかと寝室から執務室へ出たが、執務室に大井や紙の束の姿はなかった。 畳に置かれた炬燵は電源が入っておらず、寂しさを演出させる。 提督が寝坊していては秘書もやる気をなくすという意思表示か。 大井がそう思っても仕方あるまい。 どこへ行ったのやら。 洗面所にて排泄と歯の掃除を行い、栄養を取るべく真っ先に食堂へ向かった。 この時間の食堂は席の半分ほどが埋まっている。 真面目な物からフランクな物まで、幾つか飛んでくる挨拶に一つ一つ返していきながら、カウンターの間宮に一膳頼んだ。 間宮はやはりにこにこしていた。 そこまでは普通だった。 「あ、提督さん。大井さんはあちらのテーブルにいますよ」 ここ最近発動させる間宮のこのようなお世話には、喜んでいいのか困るところなのか、とても判断に困る。 結局困ってるじゃないか、とのツッコミは、空母がボーキサイト消費を躊躇って艦載機を飛ばさなくなる気遣いよりいらない。 どこへ行ったかと思えば、まさか食堂だったとはな。 少し遠い、食堂の真ん中に近い辺りに大井はいた。よく見れば北上も同席している様子。 頼んだ料理が出来上がるまで奴らの様子でも見ていようかと近づいて行った。 北上はこちらに気づいたが、向かい合う大井は背中を向けていてこちらに気づかない。 「あ、提督」 「……ふふ、北上さん。もう騙されないわよ」 大井は料理に向かって何を言っているんだ? 声をかけようとしたが、北上のしーっという手振りでそれは躊躇われた。 それに従うように、周りの席の艦も黙り、熱心にこの席を見ているのが異様だ。 大井は周りが見えていないのか、箸で料理を突つくだけ。 北上は話を続ける。 「もう引っかからないかあ。あ、そうだ大井っちさ。提督のどういうところに惚れたのか聞かせてよ」 「ええ!?」 おい朝からこの大衆の中何という話題を振るんだ北上よ。 面白そうだから続けろ。聞いてみたい。 それから声を上擦らせて顔を上げた大井よ。何故周りの異変に気づかない……。 その注意力の散漫が戦場では命取りになるんだぞ。 ほら、食事の手まで止まっている。 「ど、どういうところって言われても……私……」 「えー言っちゃいなよ。誰にも言わないからさ、ね」 確かにこの状況ならお前がわざわざ言いふらす必要もないな。 壁に耳あり障子に目ありと言うが、ここには壁や障子さえもない。 「……その、きつく当たっても態度を変えないでくれるところ、とか」 「ほう」 ほう。 「大事にしてくれるところ……かな」 「へえー」 うむ。私は大井だけでなく皆を大事にしているつもりだ。それが伝わっているなら提督として本望である。 大井のこれらのコメントには胸にじーんと来るものがあるな。 しかし、大井の科白はこれだけでは終わらなかった。 「それからね……さっき起こしに行ったら、抱きしめられて寝言で『結婚してくれ』って言われたの」 「えっ?」 これには流石の北上も唖然。 突然求婚について言及されるとは誰も予想できなかっただろう。自分もできなかった。 正直言ってあれはノーカンとしてほしい。 おい。お前ら私を好奇の目で見るな。見るならこいつらを見ろ。 夢というのはテレビを見ているようなもので、その中の自分は自分の意思で動かす事はできないんだよ。 この状況の手前、それを声に出す訳にもいかず、公開処刑は続けられる。 自分はどのタイミングで出ればいいんだ。誰か教えてくれ。 但し矢文等の危ない方法は使ってくれるなよ。特に一部の空母共。 「あと、夜の提督は――」 「おい」 それ以上いけない。 大井は割って入った私の声に大層驚いたようで、体をビクつかせて箸を盆に落とした。 箸が転んでも笑うと言う諺とはまるで無縁に、盆を転がる箸に構わずこちらへ素早く振り向いた。 それと同時か、あるいは一瞬早く、周りの艦は皆一斉に見るのをやめ、知らぬ振りを決め込む。 「って、提督!? いつからいたんですか!」 「……"もう騙されない"から」 「……! い、いるなら言ってください!」 「いやあ、でも――」 北上が、という責任逃れは、北上のニヤけたしーっという手振りによって憚られた。 最後のところはともかく、いい事を聞き出してもらったし、呑んでやるとしよう。 「――私も聞いてみたくて」 「…………!!」 おお、今補給している最中のはずなのに激務時のように顔が真っ赤だ。 面白い矛盾だな。 「う、海のもずくとなりなさいな!!」 落ち着け。お前今艤装つけてないだろ。 もずくじゃなくて藻屑じゃないのか。 宥めたところで、厨房から飛んできた誰のとも分からない彩雲に乗っかった妖精に、料理が出来上がった事を知らされた。 なんとも便利なものだ。 定食の盆を持ち、着座するのは一悶着起こしたあの四人用テーブルの席。 この二人もまた定食だったが、来るのが遅かった自分より既に半分ほど減らしていた。 早速自分も栄養補給を開始し、適当な話を振る。 大井。お前、ストライキを起こしたんじゃなかったんだな。 「……なんですか? 突然」 執務室に紙一枚見当たらなかったから、てっきり放り出したものかと思ったんだよ。 「私もまだ朝を済ませていなかっただけですから」 それなら、私が起きるのを待たないで食べてくればよかったじゃないか。 こう言うと、大井はぴくっと眉を顰める。 「はあー……」 ……北上。何やら言いたげだな、その溜め息。幸せが逃げるぞ。 「逃げたら裁判起こして提督に訴えるよ。あのさ、提督が起きるのを待っていた理由が分かんないの?」 大井が朝食を我慢して自分が起きるのを待った理由。 簡潔にこうまとめると、一つの答えが浮かび上がってくる。 半信半疑ながら、それを口に出してみる。 「私と朝食を摂りたかったから、かな」 「……気づくのが遅いのよ……」 大井は、そう言って箸で摘まんだ少しの米飯を口に運ぶ。 思い出したように不機嫌そうな顔をして文句を吐く声は小さなものだったが、自分にはよく響き、自分を悲しませた。 嗚呼、今日は朝から良くない事ばかりだ。全て自業自得と言えてしまうのがまた悲しい。 先は自分があんな事を言ってしまったから、大井は私と朝食を摂る事を諦めたのだ。 自分はテーブルに両手を付き、頭を下げて詫びを入れる。 やれやれ。自分は大井に謝ってばかりだ。 「さっきは変な事言ってすまなかった。機嫌を直して、昼も付き合ってくれないか」 「……昼だけですか」 「……良ければ夜も」 昼だけでは不満らしい。勿論こちらとしては夜も万々歳だ。 大の男が少女に頭を下げる事の何と情けない事。 非は自分にあるのだから、尚更機嫌を損ねる事のないよう、低い姿勢で許しを得る他ない。 「……ふふ」 少しだけ気分を良くしたようなこの声で、自分は頭を上げてみた。 そこにあるは馴染みの微笑。 「まあ、いいかな」 許してくれたのか。 しかし、以前から散々聞いてきた大井の説法は、今回も連撃の如く続く。 「提督は、そういうところ鈍臭くて困るんですよ。ほら、髭も剃ってないし。……時計も忘れてるじゃないですか」 「あ……、申し訳ない」 上から下までを眺める大井に、律儀に指でピッピッと指摘されて初めて気づく。 顎に手を当ててみれば髭は剃り忘れていて、左手首には錘となるものがなかった。 先程、大井の注意力は散漫だと大言を語ったが、こちらも提督の不養生だったようだ。 ふとそこまで考え、自分は懲りず先程の話を蒸し返す。 「って、鈍臭いのはお前も大概だろう。"夜の提督は"とか、お前は人の多い所で何を喋ろうとしたんだ」 「そ、それは……!」 「あー二人とも。今は、食べよう?」 いよいよ話の方向性が狂った羅針盤に導かれようとしたその時、苦笑いする英雄艦北上によって軌道修正された。 我に返ってみると、自分ら三人のうち北上だけが目の前の朝食の処理を進めていた。 足の引っ張り合いは後で幾らでもできるので、共々冷めかけている飯を先に掻き込むことにする。 「結婚してなくても充分夫婦だよ」 英雄艦という肩書きの進呈は撤回だ。やはりお前はハリケーン北上でいい。 むせ始め、言われなくとも自分で味噌汁を飲む大井は少しだけ成長したな。まだまだ練度は上がるようだ。 …………………… ………… …… 「提督、新しい仲間が艦隊に加わりました」 今日の演習の内訳と艦の名簿を並べて演習編成について熟考していると、大井が扉を開けてすぐそのような知らせを告げる。 毎日とまでは言わずともそれなりに耳にするこの報告だが、 少し嬉しそうにしていた以前と比べると、最近は義務的な部分が強調された調子に聞こえてならない。 大井にどのような心境の変化があったか、こちらが知る術はない。 「分かった。すぐ向かう」 まだ今日は建造の指示を行っていないので、内心では何時建造させた時のものか疑問だったが、 なるほど、秘書と共に工廠を訪れてみると確かに、艦娘用の大型建造ドックの傍に一人、見たことのない者が佇んでいた。 そういえば昨夜遅くに建造の指示を出してから音沙汰なく、自分も忘れて眠りについてしまったのだが、その時のものか。 とても用心深そうな表情で揺らぎなく直立不動する凛としたその姿は、 華奢であっても見る者全てに頼もしそうな印象を与えるだろう。 「あ……!」 印象通りの注意力を持っているらしいその者は、 まだこちらが充分に歩み寄っていないにも関わらず、こちらに気づいてぱたぱたと近寄ってきた。 上が寄越した必要資材と艦船の資料が正しければ、恐らく。 「君が新造艦だな」 「そう……私が大鳳」 この子がかつての海軍最後の正規空母の生まれ変わりという訳だ。 不沈空母という名に反した史実の不運さには目も当てられないものがあるが、打撃力はとても強いとのこと。 その声は、他を圧倒するようなものではなく、とても優しい色をしていた。 意識していないと顔から力が抜けそうだ。 「私が提督である」 「はい。出迎え、ありがとうございます。提督……貴方と機動部隊に勝利を!」 大鳳はそう言って、気を付けで敬礼の姿勢を見せた。 ううむ。この言動の何と勇ましいことか。 それに反して癒されるような声もあり、とても印象に残るだろう。 「良い心構えだ。今日これから何度か演習を行うが、やる気はあるか」 「はい! 充分に」 「良し。ではまず艦載機についてだが、……」 …………………… ………… …… 「まだ増やすつもりなんですか?」 大鳳に使わせる艦載機を指定してから、 大鳳建造の報告書作成や部屋の割当等の仕事のため執務室に戻っていると、大井は突然そう尋ねてくる。 これだけの問いかけから意味を汲み取る事はできず、聞き返すしかない。 「何を?」 「艦です」 艦娘の事か。 一日に何度も出撃を繰り返す事などざらなので、疲労という問題を解消するには艦娘は多くいる方が良いと考える。 そして今のところ、この鎮守府、もとい艦娘寮に空きはあるので……。 「ぼちぼち、な」 「…………」 黙ってしまった大井の顔を振り向いて伺ってみると、それは考え事をしているようで、あまり嬉しそうには見えない。 どの感情に属するのか迷っているような、複雑な表情、といったところか? 魚雷が失速して海底に落ちていくような状況を明るくできないかと考え、 試しに明後日の方向を向いて茶化してみる事にした。 「それにしても、あの子は随分と可愛らしい胸を――」 「提督」 ほんの戯言は、超弩級戦艦も威圧できそうな声によって、喉から出ききる前に殺され、足の動きを拘束された。 敵戦艦も怯えかねない迫力は、ただの人間である自分ならば失禁しても何らおかしくはないと言える。 軍人と言えども結局は人なのだ。 それでも自分は、起床後に膀胱の中身を排出していたのが功を成したかは分からないが、 みっともなく漏らす事なく、錆びた砲塔のようにぎこちないながらもぎぎぎと頭を回す事ができた。 そこにいたのは、艤装があれば本気で自分を討っていたのではないかと思える、雷巡改二フラグシップ級だった。 怒りの表現に笑顔を用いる事があると本でしばしば見るが、一理あると感心している場合ではない。 「裏切ったら海に沈めるって……言ったわよね?」 自分としてはそういうつもりで言ったのではないのだが、これはきちんと口に出して否定しておかないと後で殺される……! 「でも、提督のことはまだ信じていたいからやめておきます」 しかし、否定する前に大井の殺気はどこかへ引っ込んだ。 いつもの微笑を瞬時に取り戻したので、先程見た光景は幻覚だったのではないかとも逃避したくなる。 幻覚でも見たくないが。 自分は学んだ。冗談でもそういう事を話に出してはいけないと。 「……冗談だよ」 自分はそう締めて足を再び踏み出した。大井もついてくる。 "信じていたい"……、か。 割と本気で自分が目移りしないか不安がっているようなので、これからは控えよう。 不安にさせたくて茶化したわけではないのだから。 朝あんな事があったにも関わらず、まだ納得が行かないのか。 「もう、さっきまであんな調子だったのに」 第一印象は重要だからな。 初めて顔を合わせる時にへらへらしていては、その後はきっと侮られ続ける。 単に舐められていい気なんかしないというのも勿論だが、 いざ作戦遂行の際に指揮を聞いてもらえないような事があっては、 その艦だけでなく艦隊全体に危険が及ばないとも言えない。 それでもあの調子を保つのは息が詰まるので、大井や北上のように本性を曝け出せる存在もまた必要だ。 「……困りますね」 なに? 「それじゃ、私達がいなくなったら、提督は窒息しちゃうじゃないですか」 自分は立ち止まって大井の方に振り返った。 大井は少し俯いていて、こちらに合わせて立ち止まりつつ科白を続ける。 「提督が提督を続けられなくなったら、他の提督が着任するでしょうけど、 提督のように艦を大事にしてくれる保証はないでしょう?」 直接口にする事を避ける代わりに、淡く薄い笑みが縁起でもない事を物語っていた。 自分は見ていることができなくなり、怖いものから守るようその体を包んだ。 「あ……」 「口は災いの元、と言うだろう? 仮定でもそんな事を考えて良い事なんかないぞ」 本当は戦闘なんぞやめさせて匿いたい気持ちもあるが、それでは艦娘としては死を表す。 子供で欲張りな自分は、どうしても生命の存続と誇りの両方を取る事しか頭にない。 全くこいつは、臆病な本質をしている。 頭を撫でて、優しく言葉をかけてやるくらいじゃ安心してくれないかもしれないが。それでも。 「絶対に沈めてやらないから。そんな事言うのは、もうやめにしよう」 「……私が至らなくて、ごめんなさい」 それを言うなら、そういう事を考えさせてしまう自分の甲斐性のなさについて謝罪したいところだが、 それをやると堂々巡りになりそうだった。 一先ずは執務室へ向かう必要がある。まだ昼も回っていない。 少しは元気を取り戻してくれるといいんだが。 大井の肩を抱いて促し、自分らはゆっくりと歩き出す。 この際大井の気分が下がって執務ができなくても、一緒にいてやりたかった。 大鳳の事を放ってきてしまったが、大丈夫だろうか。 切りが良くなったら迎えに行くから、それまでどうか時間を潰して待ってほしい。 本来なら新たに鎮守府に配属した艦は上に報告しなければならないのだが、執務室はとても静かだ。 書類や筆記具は目前に置いただけで、それに手を付けようとも口を開こうともしないからだ。 電源を入れた炬燵に並んで浸かり、密着したこの状態が二十分は続いている。 寝ているんじゃないかと思い頭を横に回すと、偶に目が合うのでその心配はいらないようだ。 目が会うと、自分の事は気にしないで、と言うように表情を柔らかくするだけで、何も口にしない。 じっとこうしている間にも熟考を重ね、頭の中で演習編成を構成できたので、その旗艦に問う。 「……今日の演習、行けそうか?」 「もう大丈夫よ」 「良し、ならばもう少ししたら行くぞ」 「……うふふ。魚雷を撃てるのね」 戦闘狂の片鱗を今から現す大井に自分もにんまりしてから、 炬燵の上のマイクを引き寄せて呼び出し音を流し、内線を入れる。 「三十分後に出港し、演習を行う。以下の艦は、それまでに補給所に集まるよう。 旗艦、大井。随伴艦、北上、木曽、大鳳……」 頭の中の六隻の艦名を読み上げ、最後に内線を切って邪魔なマイクを遠ざける。 「……さて。それまで、こうしていようか……」 「……そうね……」 結局呼び出しておいた自分は、戦闘狂の血も一旦は鎮まった大井とぎりぎりまで肌を温め合う事に徹した。 自分らが最後に集まったのは言うまでもない。 木曽が苦笑している様子は眼帯をつけていても充分に分かるし、 北上がにやけ始めるのもまた見慣れてきたものだった。 …………………… ………… …… 勝利、戦術的勝利が続き、午前の最後の演習を済ませて帰投した時は、もう時針が真上を過ぎていた。 朝の約束通り、昼食も大井と頂く事になった。 北上も誘おうとしたが、北上は大鳳らと共に頂くからと遠慮され、少し離れたところで他の艦と着席していた。 自分も大井も北上を邪魔に思ったりはしないのに。 いや、これは北上以外なら邪魔だという意味ではない。大井はどう思うか分からないが。 醤油や生姜等の調味料で柔らかく焼かれた豚の切身を飲み込んでから、大井に話しかける。 「今日のお前は砲の不発が多かったな」 「む……」 大井は小さく唸って口を止め、しかしすぐに動かし始めた。 大井の御膳の鰻もうまそうだな。少しくれないか。 そう言うと、大井はちゃんと飲み込んでから返事を投擲する。 「交換ならいいですけど、提督の方には釣り合う物がないから嫌です」 お前、金銭の事なんか気にするのか。 その国産鰻が見えなくなるくらい高価な魚雷を脇目も振らず乱射するくせに。 「武器を出し惜しみして怪我はしたくないです」 きっぱりと言い切って鰻を一口含んだ。 勿論こちらとしても被弾しないのが一番なので、 敵を押し退けるのに弾をケチれというような、本末転倒な指揮をするつもりもなく箸を動かす。 正直な所、海域の制圧は命令されれば赴く程度の気持ちしかないので、戦闘に拘りはない。 ……話が逸れた。 えーと、大井の鰻を貰う話だったな。 「違います。鰻はあげませんから」 一切れでいいから、な。 不満なら豚の生姜焼きを半分やるぞ。食いかけだがな。 「要りません。……一口だけよ」 大井は結局手に持って遠ざけていた重箱を盆に置き直した。 鰻を箸で少しだけ切り分けているところを見て、我、妙案思い付くせり。 「……提督、口を開けてどうしたんですか。まさかとは思うけど……」 「あーん、だ」 「周りに他の艦もいるんですよっ」 少し声量を控えめにして早口でそんな事をのたまわれてもな。 大井は恥ずかしいのかもしれないが、私は大井に食べさせてもらいたいんだ、気にしないぞ。 さあ一思いにやるんだ。 「もう……っ」 大井は頭を動かさずに目だけで周りの状況を伺ってから、さっとこちらの口に箸を差し込んだ。 即座に口を閉じたが、伝わるのは温かい鰻の柔らかさとタレの甘辛さだけ。 畜生、箸引っ込めるの速いぞ。 「何考えてるんですかっ。変態ですか」 世間のアベックが普段やっていることだぞ。 これくらいで変態呼ばわりされるなら、自分らは不純異性交遊で揃って仲良くとっくに憲兵沙汰だ。 ついでに言うと、自分はちゃんと責任能力があるので不純にも当てはまらない。 「あの、今食事中なんですが」 おっとすまん。鰻は美味しかったぞ。 えーと、そう。お前の砲撃が不調の話だったな。 「……チッ」 おい。 …………………… ………… …… 流石に執務においては喋り始めると筆が止まるので、黙々と処理していく。 本日中に行った演習や建造完了の報告書の作成をまず済ませてから、 上から課せられた任務をどうにかしてこなそうと頭を使う。 が、流石に疲れてきた。 「……休憩を入れさせてくれ」 「あ、はい。お疲れ様ね」 しかし大井は自分の作業をやめようとしなかった。 戦闘も執務もこなして、お疲れなのはそっちじゃないのかと問いたい。 しかし、今は一人で何も考えず頭を休ませたい気分なので、声はかけないでおく。 席を立ち、壁にかかった上着を羽織る。 「どこか行かれるんですか」 「敷地内を歩くだけだ」 「あまりサボらないで下さいね」 「……ああ」 そして部屋を出た。 部屋を出て、すぐ建物を出たのではない。 間宮に断りを入れてから厨房に寄り道し、冷蔵庫に潜ませておいた刺身のパックをビニールごと持ち出す。 外に出ると潮風が吹いている。少し寒いが、頭の中を空にすればいい。 本棟の横っ面を覗きに行ってみれば、数匹の猫が軒下で丸くなっていた。 自分は手に持っている物を取り出し、何も考えず、何の表情も作らず、 群がる野良猫に切身に加工された鮪を与える。 ここは民家ではないし危険な場所も多い。 こんなところに住み着いていないで、民間人に媚び売って拾ってもらった方が幸せだと思うんだがな。 一枚一枚刺身を猫の口に持っていき、食う様をぼーっと眺めていると、珍しく足音が近づいてきた。 それもよく聞いてみると、二人だろうか。 「提督」 「……大鳳か」 しかし一つの声の発信源へ首を回すと、大鳳だけでなく大井も同伴していた。 「猫がお好きなんですね」 「猫くらいしか動物に興味がないだけだ」 そそくさとごみをビニールにしまい込み、改めて向き直る。 大井もそうだが、艤装を外すと華奢さが強調されて見える。 そのようなどうでもいい感想はさておき。 「どうだ、他の艦とは。上手くやっていけそうか?」 「はい。みんな仲良くしてくれています」 なら良かったの一言に尽きる。 大鳳は優しそうな雰囲気が見て取れるし、心配はいらないか。 大鳳の事は済んで大井に目をやると、片手を差し出された。 その手には何の装飾も素っ気もない手紙が一つ。 「提督に、お知らせみたいです」 なるほど。寒い中ご苦労だった。 艦娘という特性を持ったこの二人は、格好の割にちっとも寒そうには見えないが。 二人とも半袖スカートに加えて、 脇が露出している大鳳はともかく、臍を出す大井ほか多数の艦は、もしも普通の人間だったら風邪を引きかねないだろう。 肉体は耐寒仕様と聞いても病気に罹らないとは聞いていないので、風邪を引かないともまた言えない。 受け取った封を開けて印刷された手紙を見ると、充ては上からだった。 知らせ文が一枚入っているだけで書かれている事も長くないが、要約すれば以下のような内容である。 『艦娘の性能向上を図る為、最大まで練度を高めた艦に限り、 装着することで練度を更に高める事のできる"結婚指輪"の購入を、二月一四日より許可する』 これを最後まで読んで、一分程前まで動かしていなかった顔の筋肉は気持ち悪いくらいに歪んだ。 新入りの艦が目の前にいるのに早速悪印象を与えるのはよくないのだが、顔の筋肉は笑う事をやめさせてくれない。 大鳳は首を傾げ、大井は訝しげな目を向ける。 「……ラブレターじゃないわよね?」 ははあ。そういう考えに至るのか。 分からなくもないが、斜め上の反応だ。可愛い奴め。 上官に向けるべきとは言えないだろう言葉遣いに大鳳が少し慌てても、大井は構わず不審げにこちらを見定める。 大鳳の心配も虚しく、自分は色んな意味で笑いを堪える事ができなくなるだけだった。 艦隊が全くの無傷で戦闘海域から帰還した時よりも気分がいいのは確かだ。 「あっはは! 馬鹿言うな。そんな物貰ったこともない」 笑い飛ばしてから手紙の内容は自分の胸だけにしまいつつ、二人を促して共に本棟に戻る事にした。 …………………… ………… …… 「チッ、なんて指揮……。あっいえ! なんでもありません。うふふっ」 聞こえているんだがな。 しかも今日初めて聞いたわけでもない。 にも関わらず、普通の人間なら十中八九どころか百発百中で怒るかしょげるに違いないこの場面で、 自分の頬の筋肉は持ち上がり、腹の中でこっそり笑うという的外れな反応を下すだけだった。 かくいう自分も以前はこの悪態を耳にすれば少し不愉快になったのに、毒されてきたのかもしれない。 今となっては、偶には聞いておかないと少し心配になる。 朝から晩まで所々に命中率の低下が見られた、不調続きの旗艦の肩を軽く叩いて声をかける。 「次、頑張ろう。な?」 「…………」 すると、長い付き合いでなお取り繕って浮かべる笑顔を流石に崩していった。 先はあのような悪態を偶には、などとのたまったが、 この元気をなくした姿を見ると、本気で作戦指揮を考え直さなければならんのではという気にもさせられる。 真っ暗な空の下で潮風吹く中、人の手で整形された岬に艦娘が並ぶのを確認してから顔を一旦引き締める。 「これにて、本日の演習は締めとする。艦隊解散」 破損した艦に入渠させる指示を出してから、自分は一人執務室へ向かった。 演習の報告書を作成しなければならない。 …………………… ………… …… あまり時間もかからず全ての執務を終え、 艦娘修復ドックとは別に備え付けられている、いくつか並ぶ個室の風呂場の一つにて疲れを流す。 実際のところ艦娘の修復ドックの内訳は大きな風呂場だけではないが、ここでは割愛する。 まず頭を適当に洗い、次に体を―― がらっ。 「!?」 洗おうとすると、背後で突然引戸が開かれる音に驚く羽目になった。 ここの風呂場は恐らく自分しか使わないはずなので霊かとさえ思ったが、 流石に身に覚えのない罪は背負っていなかったようだ。 深海棲艦が霊になって出てくる可能性があるなら心当たりは山ほどあるが、 かの小松兵曹長も絶賛してくれるのではないかと言える素早い首振りで、それは妄想の一つに過ぎなくなった。 「お邪魔しますね」 何故なら、入ってきたのはクリーチャーじみた霊なんかではなく、バスタオル一枚巻いただけの大井だったからだ。 いや、確かに呪われたり後ろから刺されたりする心配はないと言えるが、これはこれで安心できない。 自分は大井みたいにタオルなんか装備していない。 体はこれから洗うところなので、股間がうまい具合に石鹸で隠れているという事も、ない。 回り込まれればたちまち見られてしまう。 「なっ、何しに来たんだ」 「お背中流しに、です」 自分の記憶が正しければ大井には入渠の指示を出したはずだが。 小破だから長時間かからないとはいえ、短時間で二度も風呂に入るという奇行の真意を読めない。 首だけ後ろに向けると、タオルに覆われた二つの山が気になるが、 なるべくそこではなく顔を見て、立ったままの大井に問う。 「入渠はしたのか?」 「シャワーだけ。だから提督と入るんです」 「待て、それなら私にタオルを一枚――」 「必要ありません」 「…………」 出口は大井の後ろ。 タオルは脱衣所。 分かった。投降しよう。 「……好きにしろ」 「! ……はい」 心なしか嬉しそうだな。 すぐに背後で腰を下ろすのが分かった。 背中を流してくれると言うのでそれに任せようと待っていると、 横から手が伸びてきて前に置いてあるボトル石鹸を持って行った。 手拭いでがさがさと石鹸を泡立てる音を聞いて落ち着こうと、俯き目を瞑る。 やがて硬い手拭いが背中に押し当てられた。ゆっくりと上下に全体に石鹸が広がる。 一人では落とし辛い背中の垢がどんどん浮かべられていくも、落ち着いて安らぐ事ができない。 猫背で緊張を隠していたが、少しだけ経って不意に手拭いが背中から離れて今度は困惑する。 どうかしたかと振り向こうとしたがそれは叶わなかった。 むにゅ。 「んっ……」 泡立てやすいよう少し硬めに作られている手拭いから一転、 とても柔らかい何かが二つ背中に押し当てられた。 それにはそれぞれ小さいながらも硬く自己主張する何かが付いていて、 もしや、という予想は、両肩に両手を置かれて背中の何かで上下に擦られ始めたところで確信に変わった。 大井は小さく喘ぐ。 「ん……、あ、あ……」 「……! 何やって――」 「背中、流してる、んっ、ですよ」 いつの間にかタオルも取っ払ったらしい。 せわしなく頭を左右に回すと、湯船のふちにタオルがかかっているのが見えた。 このやり方では風俗嬢だ。 これもまた演習後の相手の艦隊から聞いたのか。 せっかくの情報交換で妙な事ばかりを吹き込むのはやめて欲しい。 もう今後は演習が終わったらさっさと帰投するべきか? 「ん、ふ、ん、んっ」 一言で言えばはしたないと大井に非難する自分と、大井に奉仕されて馬鹿正直に喜ぶ自分がいる。 自分はどちらの姿勢を取ればいいんだ。 脳内で急遽開かれた軍法会議は、大井が起こす独特の快楽の荒波のおかげで一向に進まない。 大井の息遣いがずいっと左の耳元に近づく。 「あっ、てい、とく。気持ち、いい、です、か? ふ、う」 柔らかくて大きいタンクが背中でずりずり擦られる。 決して激しくはないが、リズムを取って断続的に息を耳に吹きかけてこう囁くので、 冷めた自分が少し小さくなり、喜ぶ自分が少し大きくなる。 どことは言わないが、文字通りの意味でも少し大きくなる。 ただ、冷めた自分はまだ死んではいないので、その問いには何も答えない姿勢を取る。 「何も、ん、言わない、なら、続けちゃい、ますよ、はあ……」 しかし、大井の奉仕に懸命に抗って突っぱねようという考えはない。 何も言わないのは、まだその気になれていないからだ。 それでも、あと少しもすれば素直になるだろう。 柔らかい中にある突起物がとても気になって仕方が無い。 「ふう、っ、っ、あっ」 正直こんなすべすべなもので擦られても垢がちゃんと落ちるとは思えないが、垢の事なんか今更どうでもいい。 大体毎日入っているんだからそこまで気にする必要もない。 「……前も洗っちゃいますよ」 待て。 いつの間に肩から離したのか、見えるは横から伸びる手拭いを持った白い腕。 「おいっ、前は自分で――」 「嫌ですか?」 「…………」 そう言いながら手拭いを持った手を動かす。 好きにしろと言ってしまったし、仮に嫌だと言ったところでやめる気はなさそうだ。 「……嫌じゃない」 止まっていた背中流しも再開され、前後を同時に効率的に洗われる。 こんな状況で世間話をする雰囲気なわけもなく、かと言って他に何を言えばいいかも分からず、 体の垢だけでなく、自分も状況にただ流される。 やがて体の前後が満遍なく石鹸で満たされた時、自分の魚雷にはもう充分に血液が装填されていた。 「ん……、あらあ?」 きゅ。 「いっ……」 何かに気づいた声を発してから、前を洗う手拭いを持った左手が引っ込んだかと思えば、 何も持たずにまた伸びてきた左手が自分の魚雷を掴んだ。 「……うふふ」 妖艶に小さく笑ってからそれを扱き始める。 先まで体を洗っていて石鹸でまみれた手は、摩擦係数を著しく落としていた。 大井がずっと主導権を握るこの一連の流れは、どう考えても風俗を模倣しているとしか思えないが、 こいつは分かってやっているんじゃないだろうな。 魚雷の根元から先までをぬるぬるした手で扱き、カリの部分を程よい力加減を持って通過するところもまた粋らしい。 「はあ……んむ」 「ッ!」 背筋を震わせられた。 大井が耳元でこちらが気の遠くなるような吐息を零してから、突然耳たぶを口に含んだからだ。 口内で舌をちろちろ動かし、弄ぶ。 「ちゅっ、……ちる」 「じゅ、ちゅる、じゅる、はあ……」 くちゃ、くちゃ。 ゆっくり扱きつつ、上も耳たぶだけでなく耳全体に唾液をねっとり絡めていっている。 温度が低めの耳は、大井の口に包まれ熱い舌で巻かれる事でやっと温められて、というより、熱くされていく。 「ふっ、んん……、れろ、はあ、ぺろ」 「っ、はあ……、はあ……、あぁ、むっ」 大井は、息を荒げて性感帯の一つである耳を丸ごと喰らう。 耳の中にまで舌を差し込み、精一杯演出しようと派手に唾液の音を立てる。 その間も魚雷の扱きは決してやめない。 愛撫もまた単純なものでなく、耳にせよ魚雷にせよ弄る位置を微妙に変えたり緩急をつけている。 耳は中を舐めたり外を甘噛みして、魚雷はただ扱くだけでなく先端を撫でたり玉を揉んだりする。 なんとも器用なものだ。 別に夜戦について指導したわけでもないのに、この上達ぶりは不思議だ。 「くちゅ、はあ……、ちゅう、んん、じゅる」 不言実行と言うのか、全ての意識を行動に注いでいるようで、口数はめっきり無くなっている。 この場では水の音が反響し、耳の傍から荒い息と粘液の音をしつこくぶつけられるだけだ。 自分の足はだらしなく開き、 体は押し当てられているタンクに拘束されたように振りほどく気になれず、耳も無抵抗のままに喰われる。 多分魚雷もだらだらと何かを垂らしていると思うが、段階的に速めくなっていった大井の激しい手付きでよく分からない。 やがては魚雷はただ扱くことだけに愛撫を絞られる。 大井は体の表面積をなるたけ広く密着させ、右手も私の右肩に置くのではなく、抱く状態に変えた。 これではまるで縋り付かれているような体勢だ。 ぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃ! 「じゅっ、じゅるっ、んん、ちゅる、ああ、ちゅっ」 「んむ、ちろ、ちゅっ、ちゅぷっ、はあ、はあ、提督……」 なんだ。こんなときに。 こっちはもう達するところなんだが。 「えう、ちゅ、ん、ふ、はあ、ちゅうううっ、ああ、提督……」 「はあ、提督、ていとく……」 びゅっ! びゅくっ! びゅくっ! 「――――……」 もみくちゃにされた玉が、とうとう穴の開いた風船のように中身を一点の出口目掛けて魚雷の中を走らせた。 耳元で熱く呼称を発せられながら、自分は石鹸水より明らかに白く粘り気のあるもので床に汚い花火を描く。 熱気が充満する風呂場の中、一歩間違えれば逆上せかねない程に頭がくらくらした状態で背筋を震わせても、 達した直後に大井が漏らした、声帯をまともに使っているとは思えない微かな呟きを、 自分は何とか聞き取ることができた。 その意味が気になって考え始めてしまい、 その後は互いに言葉を発しないまま体を流してから共に湯船に浸かるという、 前戯がまるでなかったような空気に変わっていた。 二人で入るにはやや狭い湯船に並んで無言で浸かる光景は、端から見れば異様だろう。 例えば、対面して入って互いの恥部が見えたり、抱くように入って密着、という事も考えなかったわけではない。 が、大井はタオルを巻き直し、自分も腰に巻くためにわざわざ脱衣所まで取りに出た時点でその可能性は潰えた。 情事の誘いかと思っていたのに、前戯の続きをする気さえ起きないのだ。 そうさせた根源である大井の一声について、勇気を出して話を切り出してみる。 「……"見捨てないで"って、どういう意味なんだ?」 「……聞こえてたの?」 音が反響する風呂場では、小さな声でも充分会話ができた。 それにあれだけ耳に近ければ、蚊が鳴くより小さい声でも聞こえる。 冷静に考えてみれば当然の事なのに、大井は目を合わせてそんな事を聞き返す。 覇気のない調子はまだ長引いていたらしい。 「……最近また、失敗が多くなって、今日なんかも……」 再びお湯に向かってから、心の内を吐露し始める大井を黙って見つめる。 「提督に興味を持つ艦は増えるし、後になって考えてみれば、朝の提督の寝言も、私の名前なんて出てないし……」 名前までは口に出さなかったのか。 なんと中途半端な寝言だ。 全く口に出さないか名前ごと口に出していれば、ここまで悪い結果にはならなかったのかもしれないのに。 それと、自分に興味を持つ子が大井と北上以外にいるというのも思わぬ話だ。 「私より可愛い艦もいっぱいいるし、提督は私に興味なくしちゃうかなって……」 最後に自身に対して小さく嘲笑してから、それきり黙ってしまった。昼にも見たそれと同じだった。 やめてくれ。そんな笑顔は見ていて悲しくなってくるんだよ。 いつもの優しい微笑を浮かべてくれよ。 裏切ったら沈めるって自分で打った釘にも自信を持てないのか。 ……嗚呼、朝から晩まで全て自分が原因だったな。 あまりこんな事ばかりやってるとこちらが興味を尽かされかねない。 それでもこういう時、こうして寄り添うか腕で包む以上の事が考えつかないのだ。 「夢に出た相手もお前だったよ。戦争が終わるまで待てと断られたけど」 こんな男でも許してくれるのなら。 「でも、お前の調子が良くとも悪くとも、戦争が終わろうとも終わらんとも」 山と積まれた失敗を前にしても望みを捨てられず、自分は痛くしない程度に抱く力を強めた。 大井がしたように、自分も恥なく自分の内を曝け出す。 できれば失敗ばかりの自分を受け入れて貰いたい。 「私は、すぐにでも大井と一緒になりたいと思う」 「……本当? 他の艦に興味はないの?」 北上には悪いが、北上でも大井と同じように見る事はできないんだ。 大井だけだよ。 「……まだ足りないわ」 ……今晩、一緒に寝ようか。 「それは、どっちの意味で?」 両方のつもりだが、嫌かな。 「いえ……。そう聞くと私、燃えちゃいます」 大井は静かに覇気を取り戻していた。 振り返るその横顔は、気のせいかきらきらしているようにも見える。 胸のわだかまりを解消した頃には体も充分温まったので、一言添えてから先に風呂を上がった。 畳に敷いた布団に枕を二つ並べながら声に出さず一人笑う。 明かりを電気スタンド一つに任せて布団に潜り、文庫本を片手に考える事は本の内容ではない。 手持ち無沙汰の為に何となく読み流しているだけで、 実際は隣の枕の主とさて何を話してやろうかと頭の引き出しを漁っている。 小学生の遠足前日の気分に共通するところがあって、やはり自分は子供だなと少し嘆息する。 きい。 ……かちゃん。 大井は扉の開け閉めをなるべく控えめにして入室し、靴を脱ぐ。 掛け布団を上げると、もう一つの枕にもそもそと潜り込んできた。 ところで、睡眠時に見る夢とは、自分の知識、記憶、想像を元にして作られるらしい。 だから、例えば博識だと知っている人に夢の中で何か質問をしても、 自分がその答えを全く知らないとその人も答える事はできないし、 その人が何と答えそうか自分が想像できていても、それは自分の独断と偏見の塊でしかないため、 結局は自問自答となんら変わらないと言える。 だから、夕べの夢について気になった事を天井を見ながら、隣で横になる本物に尋ねてみた。 「……私は、北上をお前と全く同じように見る事はできないんだが、北上の傍にいてやるべきなのかな」 こんな事を聞いたら、大井は激昂するだろうか。 解釈の仕方によっては、下手な同情と取られても仕方がない。 愛にも色々あるが、それでも自分が北上に向けるのは『親愛』なのだ。 大井は、少しも待たず答えを出す。 「別に、北上さんから離れなきゃいけない理由はないでしょう?」 しかし大井の反応は、自分の予想していたものとは毛先程も合わない、平静したものだった。 大井の答え、というより考えている事は、自分が想像していたものとは、もしかすると根本から違っていたのかもしれない。 「まずこの戦争が終わったとして、提督は、北上さんや他の皆から離れるつもりなんですか?」 「……いや、そんな事はないけど」 「なら、何も気にする事はないでしょう?」 この疑問を一人で考えても悩んでも分からなかったのに、人に聞いただけで、呆気なく打ち破られた。 別の視点からも物事を見るのはとても大事だ。大井はそれに気づかせてくれた。 全く。大井はどの面においても私より優秀だ。 私なんかより大井が艦隊の指揮を取るべきじゃないのか。 「戦いながら他の艦に命令しろっていうんですか? それじゃ存分に戦えませんよ」 そうなるな。 海戦の時は眼前の敵を討つ事のみ考える大井らしい回答だ。 にしては、今日は不思議と著しい命中率の低下が見受けられたが、それについてはどうお考えで? 「それは……」 責めている訳ではないが、こんな事を言われて大井が黙ってしまうのを責める事もまたできない。 真っ正面に敵を捉えて命のやり取りをする艦娘の視点がどのようなものか、 自分には知る由もないからだ。 その艦娘を利用して海や陸を守ろうとする自分ら指揮官のその想いと期待を、 どれほどなら艦娘に背負わせて良いのか、非常に難しい問題だ。 大井は仰向けで天井を見る頭を少しだけ向こうに回したので、 横顔を伺う事ができなくなってしまった。 「……よく、分からないの。もう睡眠時間は削っていないし」 「…………」 「もしかしたら、提督に見捨てられたくないとか、褒められたいとか、焦ってるのかもしれません。 前は、『重雷装艦にまでなれたんだから、沈んでも悪くないかな』って考えていたのに……」 所謂深夜の気分なのか、あるいは部屋の明かりが少ない事によるものか、 そんな事を大井は抑揚なく、まるで他人の話のように明かす。 「提督は、こんな私でも艦娘を続けてほしいって、思いますか?」 大井はやっと頭をこちらに回してくれたので、大井とは十五サンチ程の距離で見つめ合う状態になる。 壁際に寄せた炬燵の上の大きくない明かりが布団一つを照らす中、 影のかかった今にも暗闇へ消えてしまいそうなその顔に、誰が無理強いをできようか。 最高戦力が艦隊から抜ける事でもたらされる影響はあるだろうが、 その穴をカバーできなくはない筈だし、何より大井の意思を尊重したかった。 「私としては、傍にいてくれればいいんだ。 続けるかやめるかは自由だが、大井がどっちを選んでも見捨てる事はあり得ない」 大井の、艦娘を続けて欲しいか否かの問いにはこのように曖昧な事しか言えないが、これが自分の答えなのだ。 これを時間をかけて意味を咀嚼したらしい大井は、泣くのを堪えるように顔を歪ませた。 瞼は瞳が何とか見える程度まで下ろされていて、唇もぴったりと力が入ったように閉ざされている。 この回答だけではやはり不充分だったのか。 「す、すまん!」 しかし弁解やら慰めやらは何と言っていいか分からず、謝罪の言葉しか出なかった。 行動で表す慰めとして、慌てて仰向けの体を九十度回して寄り添い、 片腕を大井の体の上から背中に回す。 顔はさらに近づく。 開かれたその目が潤んでいる事は、光が少ししか当たっていなくてもこの距離で分かってしまう。 それを直視できなくて、思わずこちらが瞼を下ろしてしまった。 大井をこうしたのは自分なのに。 「ん……」 これは大井の息遣いだ。 それを聞いたと同時、自分の瞼は開かれた。 何故自分は目を瞑った大井に脈絡なく唇を押し当てられているのだろう。 押し当てられていると言っても大井が顔を何とか前に動かして触れさせている程度だが、 自分には唇の柔らかさと熱が充分に伝わる。 「は……」 たった一秒程で離れた。 これではいつもなら名残惜しさが残るだろうが、今は戸惑いが残る。 「……私の回答がショックだったんじゃないのか?」 「ショック? 安心してるんです。すごく」 枕に頭を預けたまま首を振るような動作を小さく行って、大井は涙を一滴流す。 つー、とそれは重力に倣って枕へ流れたが、大井は気にせず、潤んだ目を隠そうともせず続ける。 「あの時の人達はみんな、お国の為だなんて言って、国の物を好き勝手に使い潰して」 「でも提督は、私達を大事に使ってくれるから、私は、『この人を好きになってよかった』って……」 捻りのない直接的な告白は、何度聞いても全く飽きない。 自分も大井に大事にされていることが、すぐ、よく分かる。 自分もまた、大井を更に大事にしたくなる。 横になりながらなので片腕で申し訳ないが、この拙い抱擁にあらん限りの想いを込める。 「あ……、提督、何ですか?」 なんだ。 ドラマのような空気はもう終わりか。 突然飛び出る場違いなまでに惚けた科白が、自分らの性格を短く表しているようで、笑わせてくれる。 密やかに笑う様が、大井をほんの少しだけむっとさせたらしい。 「……笑ってないでちゃんとやってください」 「ふっ、くく……ちゃんと、とは何を?」 笑いを堪えて抽象的な部分を問い返す。 実のところこういう事ではないか、と半分程は分かっているのだが、 男の子というのは好きな娘を困らせるのが性分だからな。 烈風をどれだけ積もうが、付いて回る性分というものは撃墜できまい。 思惑通り、大井は多少恥ずかしげに視線を枕にやって言い淀む。 嗚呼、面白い。可愛い。 「だから、その、両手で――」 「はいはい。体、浮かせて」 「……ん……」 敷布団側の片手も大井の体をくぐらせ、大井の背中で掛布団側の片手と邂逅を果たす。 掛布団側の足も大井の両足に被さるようにして、 目を閉じて触覚を研ぎ澄まし、最後に心ゆくまで腕に力を込めれば、柔らかい立派な抱き枕の完成だ。 抱き枕が漏らす鼻息が口元に当たってこそばゆい。 「んっ、力、入れすぎなので、提督に二十発、撃っていいですか……っ」 「……なら、撃てないようにもっときつくしないとな……」 「あぁっ……もう……」 そうそう。 抱き枕は持ち主に逆らっていないで大人しく抱かれていればいいんだよ。 こうして目を瞑っていれば、そのうち深い眠りにもつけるのではとの考えが過ったが、そうは問屋が卸さないらしい。 「ん……」 生意気な事に抱き枕が再び口をつけてきた。 もう二度目なので驚かず、ただ受け入れてやる。 かと思えば、またすぐに離れてしまった。 目を開けてみれば、互いの顔の距離にして僅か五サンチくらいか。 とても近い。 「さっき自分で言った事、忘れてませんよね?」 「……そうだな……」 危うく寝るところだったがな。 早速動かしやすい上の片腕を、大井の装甲の裾から差し入れて弾薬庫をまさぐる。 「……お腹なんて触っても……」 気持ち良くさせたいとかではなく自分が触りたいだけだ。 気持ち良くなくても我慢してくれ。 ここは中々に引き締まっていて、見なくても触っただけで無駄がない美しい艦体をしている事が分かる。 側面が緩やかな曲線を描いていて、何度でも撫でてみたい。が、先へ進む。 大井はどこを触っても本当にすべすべだなあ、とぼんやりした考えでタンクに辿り着く。 手の中で一番長い中指の指先がタンクに、ふに、と無遠慮に当たった。 「っ……、乱暴にしないでください、燃料が漏れちゃいます」 小突いたくらいで穴が空く訳ないだろう。 しかし痛くする理由はないので、陶器製の高級お椀よりも大切に優しく扱う。 その事を念頭に置いて撫でる程度にまさぐっている途中、ピーン、と頭の中で閃きの音が響く。 「ここを大きくすれば、航海時間が伸びるのかな?」 「知らな、ぁ」 むにゅ。もみもみもみ。 「んう……っや」 「嫌?」 「いや……っ、じゃない、です……」 改修も並行して行えるとは、何とも効率的な夜戦があったものだ。 自分は顔が気持ち悪く歪まないよう精一杯堪える事で忙しかった。 口の端に力が入っているのを、多分大井は気づいているだろう。 何せこの距離だ。 そして私が大井に触れる事ができるという事はつまり、大井もまた私に触れる事ができる訳で。 大井より背がある私のズボンまで手を伸ばすのに長さが足りないのか、 少し身を下にずらし、それに倣って顔もやや掛け布団に隠れるのが微笑ましい。 言ったら拗ねるかもしれんな。 大井は器用に片手だけでベルトを解除し、ズボンを緩めてから探索の手を入れていく。 「ぁ……提督のも、こんなになってるじゃないですか」 「魚雷、好きだろう?」 「私の知ってる魚雷はこんなに熱くないですよ」 「提督の魚雷って?」 「熱くって、素敵、って何言わせるんですか」 今自分らがやっているのはテレビで見る漫才かコントの類か。 二人でくすくすと一頻り笑いあってから、事は再開する。 先程一回出したので自分の感度は幾らか落ちているが、まだ行ける。 下から上に向かって捻りながら引っ張るような、変わった扱き方だ。 体勢的にこのやり方が合っているのだろう。 風呂場では大井に一方的に攻撃されるだけだったが、いつまでもそれでは格好が付かない。 身長一五二サンチの大井の下部装甲まで腕を伸ばすのは、難しいものではなかった。 手探りするまでもなくまず外側の装甲を捲り、秘所をカバーの上から柔く擦るが、大井は拒まない。 「直接じゃ、ないんですね、っ」 「っく、直接か。今は、我慢してくれ」 「そういう、んっ、の、自意識過剰、って言うんですよ、あっ……ぁ」 ならばそんな口が叩けなくなるまで、ずっとカバーの上から擦るだけだ。 ある程度まではやや強めに擦ってやるが、そのうち擦るだけでは満足できなくしてやろう。 それぞれ手一つだけを使って相手を攻める防御なしの一騎打ちは、練習航海が一度できる程度の時間を使った筈だ。 「あぁっ! はぁ……はぁ……」 ぐっしょりと濡れたカバーの上からでも分かる突起物を指で弾くと、 大井は甲高く啼いてから、口呼吸する。 そこは結構な性感帯だと聞いている。 それに手をつけてからは、またあまり刺激にならないような部分を柔く擦る。 「ていとく……まだ、足りないわ……」 「だから?」 「う……、ちょく、せつ……」 大井はいつの間にか扱く手が止まっていたので、主導権はこちらに移っていた。 ただ大井も長く耐えたので、こちらもいい加減触りたい欲のままに余裕なく、最後まで聞く前にカバーの中に手を入れる。 もし素面なら、自分はきっと手を突っ込む事に躊躇いを覚えるだろう。 何せそこは源泉と化してしまっているのだ。 もはやこのびちょびちょのカバーは使い物になるまい。 バケツでぶちまけたかのように潤滑油が溢れた状態では、 遠慮する必要はサーモン海域まで探しても見つからないと踏み、すぐに穴に中指を差し込む。 くちゅ。 「あ! むうっ!」 恥を知るらしい大井は、口元の布団を噛み締めて嬌声を抑えようとした。 この執務室が防音加工されているから、そんな事をしなくても表に漏れる事はないのに。 そして、布団を噛もうが下から発する水音ばかりはどうにもできないだろう。 「うわあ……」 すっかりほぐれているそこは中指をそのままに、薬指も付け根まで抵抗なく受け入れた。 女ってのはここまで濡れる事ができるのか、と、新たな発見を前にこれまた場違いな声が小さく漏れた。 経験の浅い男の分かりやすい反応だな、と情けなく思ったが、もう遅い。 これが大井には別の意味にでも聞こえたのか、眉を潜めてこちらを睨む。 それでも布団は口にしっかり咥えたまま。 その噛まれるものが布団から自分の鼻っ面に変わらぬうちに二本の指を動かす。 「っ! ……っ!」 粘っこい音がする。 どろどろの重油とも違う、独特の水質を表現するその音が、指をくいと曲げて中を抉る度に耳にへばり付く。 指だけでなく手全体を動かすようにエスカレートさせてみれば、 大井はピクピクと痙攣しながら口の端から声のない息を漏らす。 軍艦ではなく音楽の指揮者になった気分だと面白がるのもほんの一瞬に、 布団の中から自分の手をゆっくり取り出して、無色透明の潤滑油にコーティングされた中指と薬指を口に含む。 「ん……」 「!?」 すると、大井は敵艦を照らす探照灯のように目を見開いた。 と言っても、明かりの少ない部屋を輝かせる程の光に自分の目が潰された、とか厄介な事にはならず、 口に大井の味が広がって自分の性欲にぐんと拍車がかかっただけだ。 「……少し、しょっぱいな」 「~~っ! 変態ですかっ」 「お前もやった事だぞ」 「あ……」 最初に大井が夜這いに来て私のを飲んだ事、忘れたんじゃないだろうな。 あれは自分にとっては衝撃的な出来事だったんだが。 しかしそんな事を追及している場合ではない。 「……この体勢、好きだな。お前」 「提督はお嫌いですか?」 「いや、好きだよ」 行為の後寝てしまう事を考えて、ストーブに火は起こしていない。 寒さを凌ぐ為に、布団を被ったまま服も碌に脱がず私に跨って上体を低くし、 私の頭を挟んで布団に両手を置く大井の発射管に、自分の魚雷を収めるべく手を添えて場所を探る。 見えないと場所が分かり辛く、度々周囲に当たる。 「ぁ、もう少し、手前……」 多少曲げたりして融通の聞く魚雷を言われた通り動かすと、大井はほんの僅か腰を下ろした。 すると、先端がめり込む感触がしたので……。 「ん……ふわあああ!」 すとんとすんなり行った。 にしては、大井は軽巡時代の悲鳴に色気が添付されたような大きな嬌声を上げた。 感度良好だな。こちらとしても張り合いが出てくる。動くのは大井だが。 「……ぁ、ふぁ、あ、ん、んん……!」 割とすぐに加速していくようだ。 先程の焦らしを意識した前戯が効いたのかもしれない。 「あ! やだ、止まらな、ふぁあ!」 こちらも最大限に快楽に溺れ、抗う。 大井の発射管も練度が上がっているのか、 自分の魚雷にちょうどいい大きさに形が変わっていて、以前よりスムーズに大きく動かせるようだ。 もちろんどう動かすかは大井にかかっているのだが、こちらが注文を付けるまでもなかった。 「あうっ! はあ、ああ!」 自分らは見つめ合って互いを求める。 自分が大井をここまで喜ばせているのだと、大井の色気に満ちた、寒さの欠片もない顔を見て実感できる。 愛しい感情がこみ上げてくる。 嗚呼、大井。私の大井。 「キス……」 「ぁ、え? ……ふふっ」 小さく漏れた私の声も拾う大井は上下運動をやめ、 軍服に包まれた私の胸板に両腕を置いて顔を近づける。 自分が瞼を閉じると同時、閉じかけの視界の中、大井も瞼を閉じるのが見えた。 直後口に来る感触あり。 「ん、ん、ぅ」 「ちゅ、ん、ふぅ」 「あぁ、ちゅく……、ん、うぅ……」 体を重ね、舌まで連結しても、触れ合いたいという欲は止まらないまま深まるばかりで、 左手は背中に添え、右手は頭頂から後ろ髪までを何度も梳かす。 左手には傍まで寄ってほしいという想いが、右手には精一杯の愛でたい想いがある。 温かい。 やはり艦娘と言っても、一緒にいてくれたら人肌恋しさを満たす事もできる、普通とは少し違うだけの人間なのだ。 口を離し、体を完全に預けてきた大井は頭を私の右肩に埋める。 髪が右頬をくすぐる。 「はぁ、……温かい、ですね」 「ああ……」 ストレートの髪を撫でる手が震える。 知ってしまったこの温もりを喪った時の事を考えてしまい、怖くなったのだ。 不安にさせたくなくて大井には大口を叩いたが、本音としては、 幾ら自分の指揮に自信があっても、運命を見る事ができない限りは、絶対に喪わないようにできるとは言えない。 「提督? 手が震えてますよ……」 それを大井が気づかない筈がない。 私の肩に埋めていた顔をあげて、私の顔を覗き込もうとする。 いよいよ本当に風邪に罹ったように、少しの汗をかいて上気した顔が、眉尻を下げて心配そうに見下ろす。 軍人とはその役職柄、冷徹な人間が向いているだろうが、自分含めそうでない軍人等珍しくない。 かく言う自分はお世辞にも軍人に向いているとは言えない。 配属されている艦娘の殆どの前では自分の考える『軍人らしさ』を演じているが、 せめて大井には、自分の弱さを受け入れて認めてほしく、顔を逸らせという脳の命令を撤回する。 大井はとても優しい顔を見せてくれた。 「怖いんですか?」 今の自分は弱々しい声をしているに違いないので、声に出す代わりに頭を小さく縦に動かした。 大井は再び私の右肩に顔を埋めて、右手で頭を包むように撫でてくれる。 「……大丈夫ですよ、大丈夫……」 こうは言ってくれるが、自分が何に対して慄いているのか、大井はきっと分かっていないだろう。 必死の思いで口元の大井の耳に、殆ど喉を使わない小声で伝える。 「大井は沈まないよな……?」 ここにきて、艦娘として活躍してほしい、使命を帯びた艦娘を縛り付けてはいけない、等の考えと、 艦娘をやめさせれば喪う事はなくなる、という考えの、盛大な葛藤を直視してしまった。 依存しているとも言えるまでに大井の不調を気にかけている事に気づいた。 自分の体に大井の体を押し付けようとする両手に尚、力が入る。 「……それは提督次第ですけど」 なるほど、現実的な答えだ。 客観的に考えればこれこそが模範解答である筈なのに、 自分の中ではこっそりと諦めムードが流れようとしていた。 しかし大井の科白はまだ終わってはおらず、私の耳元で囁きかける。 「十年以上も練習艦をやってきた私が、沈むなんてありませんよ。何なら、提督にも教えてあげます」 「……それは心強いね……」 これが、幾人もの軍人見習いを指導してきた練習艦ならではの余裕というものか。 大井が持つ珍しい経緯もあって、自信と余裕に満ちたその科白は非常に説得力があり、 大井に問いかけた自分の疑心は、基盤が豆腐でできていたかのように脆く崩れた。 練習艦にだって調子のいい時と悪い時はある。 こうして脱力して両手からも力がなくなった隙に、大井は上体を起こした。 「あ……」 「……うふふ」 温もりが離れてしまい、切ない声が漏れる。 電気スタンドに照らされるようになったおかげで、大井が私の顔を見下ろして小さく笑っているのが分かった。 私が漏らした声が面白かったのか、それとも力の抜けた顔が面白かったのかは、分からない。 大井は襟首に装飾されている白いスカーフを解いてするりと抜き取り、装甲を緩めて肩を肌蹴させる。 最後に頭に被さっていた布団を鬱陶しげに手で退かした。 もしかすると、暑かったのかもしれない。 「手、つなぎましょう……?」 呆然としていて言葉の意味を理解するのに少し遅れた。 掌印のように差し出された両手に自分のをそれぞれ合わせる。 大井の指と指の間に自分の指を挟み込み、全ての指が互い違いに合わさってから、 自分らは初めて手を握る事を覚えた赤子のように、一本一本確かめつつ手をやっと握り合った。 「あは」 久しぶりとも思えるくらいだった。 大井は、さながら錆びてくっついてしまった魚雷発射管から魚雷を抜くようにゆっくり腰を持ち上げた。 ずるりと引き抜かれて、今までじっとしていた反動か急に刺激が来る。 かと思えば、糸が切れたように体を落とした。 「んあっ!」 一度だけで滑りが回復したのか、規則的に上下運動を始める。 くちくちと、ぐちゅぐちゅと、音も変化していく。 自然と両手にも力が入ったり抜けたりし、それに反応して大井も握り返してくる。 「ぁ、あ! あん! 提督っ、どうですかぁ……? どうなんですかっ?」 「はぁっ……」 「気持ちいいですかっ、あ!」 「うっ、気持ち、良くないわけ……」 「そうですよ、ねえ、んっ、こんなに、硬くっ、してるんですから……」 自分のはとっくに限界まで硬くなっている。 やはり一回出したとは言え、それを感じさせない程、大井とは相性が良くなっていたようだ。 練習艦とは夜伽のいろはまで知っているものなのか。やはり敵わないな。 いや、そういう事は最近になって自分で予習していたのだった。 私より上であろうとする姿勢へ尊敬し、その裏に垣間見る慎ましい努力に微笑ましく思うのもつかの間、 指を絡め合う両手と形の合った性器で強く結ばれる事で、精神的にも昇り詰めるのは難しい事ではなかった。 ここで、大井の嬌声の中に、今度は大井の心の弱みを具現化した科白が混ざる。 「あっ! 提督っ、提督は、裏切りませんよねっ?」 正直、何を言っているんだろう、と思う。 裏切ったら沈めるだの、絶対に見捨てないだの、散々言い合ったのに。 自分らが互いに存在を必要としあっているのは、今分かった事ではないのに。 それでも、大井に蔓延る不安を打ち消す為ならきっちり応えてやる。 「裏切らない。っ……、私はここにいる、ずっと大井の傍にいる」 こうして言葉に出すと、自分の気持ちも更に骨組みを補強するように熱くなった。 それでも大井はまだ納得しないらしい。 「本当っ? っ、ずっと……?」 「ずっとだ」 「んっ、ふふっ、……ちょっと、嬉しい」 "ちょっと"だけなのか。 しかし、大井の口の端が持ち上がったり、締まりが強くなったりと、変化は"ちょっと"ではなかった。 嗚呼、やはり、二人とも、目に映っただけでは安心できないのだ。 目に映して、声を聞いて、体と心を絡めて、やっと心の震えは鎮まるのだ。 互いの存在を確認しあうようなこの応酬は、このひととき、"ちょっと"ばかりでなく。 「……ッ!!」 「ふああ……!!」 これからも、幾度となく繰り返すのだろう。 繋がった手と性器、腰に乗る大井の体重等の感覚を強く感じ、 目を瞑り、眉間に力を入れて達しながら、自分はそんな事を考えていた。 …………………… ………… …… ぱち、と目を開けるとまず飛び込んでくるのは、少しだけ茶色がかった綺麗な髪だった。 私の背中で両腕を固め、私の胸に顔を埋める大井は、目を覚ましているのか確認できない。 窓の外を見れば、夕方とも間違えそうな微妙な明るさの空と大きめの雲が広がっている。 今日は天気があまり良くないかもしれない。 億劫に思いながら右手で優しく目の前の頭を撫でる。 「提督? 起きてるの?」 腕の中から、普段よりゆっくりとした声がした。起きていたらしい。 大井が寝ている自分に何らかの行動を起こす事を期待して、 返事をせず、寝ぼけている体(てい)で頭をゆっくり撫で続ける。 「……愛してます」 軽い気持ちで藪を突くのは、確かに危険だった。 静寂にぽつとこの科白だけが残る。 温もりを抱いて眠りから覚め、安らいだ精神状態でこんな言葉を聞ければ、今日は普段より頑張れる。 「提督、やっぱり起きてますよね」 「……おはよう」 予想できず愛を囁かれて、反応するように頭を撫でる手が止まれば、ばれても仕方がない。 窓を見ながら空と大井に挨拶する。 「今日は夢を見なかったよ」 「……だからなんですか?」 「夢でもまた大井に会いたかったな、とね」 「虚像ですよ、夢なんて」 「……夢がないな」 起きたと分かった途端大井は素っ気なくなった。 かと思えば、私の背中に回す腕の力を強めてこんな事を囁く。 「それに、夢の私は断ったんでしょう?」 「戦時中だから、なんて理由で私は断ったりしませんよ」 自分の頭の中の書類に『指輪と書類一式の購入』と書いて重要の印を押しておこう。 大井がやったように、自分も抱きしめる力を強めて、ただこう呟いた。 「……私も愛してるよ」 胸に顔を埋めたまま、起床時間まで何分あるかと何度も問う大井を微笑ましく撫でつつ、 起床時間を過ぎればまた怒られると分かっていながら、自分は実際の残り時間より長い時間を大井に伝え続ける事にした。
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100 :提督×大淀:2014/08/26(火) 16 45 17 ID vCTkZqVQ 提督と大淀がエロいことしてるだけの話です こんな時間まで執務室に残っていたのは、確かに仕事をこなす必要があったからだった。けれどもしかした ら、自分はこの状況を心の何処かで望んでいたのかもしれないと軽巡大淀は考える。 「うーむ。流石に一日中机に向かっていれば、いくら艦娘といえど肩はコるか」 男の無骨な指先が、女学生めいたセーラー服に包まれた大淀の肩へ背後から触れる。見た目とは裏腹に 繊細な手つきで、男の指先はコリをほぐすかのように大淀の細い肩を揉みしだいていった。 この執務室に大淀と提督は二人きりであり、提督はマッサージと称して大淀の肩に触れたのだった。 「うっ、あっ……提督……」 気恥ずかしいような、か細い声が大淀の唇からは漏れ出た。普段は理知的に執務に向かう彼女の眼鏡越し の瞳は、どこか羞恥に潤んでいるようだった。 「随分とコッてるなあ。なら、こっちの方はどうかな」 「い、いやッ」 非難するような大淀の声には構わず、提督の指先は胸元へと降りてゆく。両方の手で包み込むように胸元を 揉みしだかれ、大淀は羞恥とくすぐったさに椅子に腰掛けたまま身を捩った。 「ダメです。こんなところで……まだ書類が残って……」 そうは言うものの、大淀は身を硬くするだけで、積極的に抵抗する様子は見せない。提督は口元を歪めると、 大淀のおっぱいへと触れる指先に更に力を込めてゆく。 布越しに感じるひどくもどかしい刺激は、まるで大淀の身体の芯に熱を灯らせていくようだった。 「ダメだとは言うが、最近は仕事仕事で、全然セックスしとらんだろう」 「それは……」 「こうも仕事漬けだと身体に悪いぞ。たまには気分転換をせんとな」 言うが男の指先は、更に下へと降りていく。締まったウエストをなぞり、そして男の指先がスカートの中へと 潜り込む。その間も大淀は、羞恥に耐えるかのように唇を引き結んでいるだけだった。 提督の指先が下着のクロッチ部を軽く押し込めば、湿り気が指先を濡らす。湿り気の理由に気がついた提 督が面白そうに唇を歪めるが、大淀は白い肌を耳まで真っ赤にしながら顔を俯かせているだけだった。 「何だ大淀。ダメだと言っておきながら、お前もその気になっていたんではないか」 「違います。これは……」 「ははは。何が違うというんだ、んんぅ?」 指先が薄布の上から、割れ目を何度もソフトタッチで擦り上げる。触れるか触れないかの生殺しのような感 覚に、しかし大淀の秘所は敏感に反応を返し、更に愛液を溢れさせていく。 「いやぁっ……」 自分の意志とは関係なく提督の指先に反応を返す身体に、大淀は戸惑ったような声を上げた。下着の上か ら撫でられているだけで花弁はヒクつき、まるで何かを淫らに求めているかのようだ。大淀の半開きになった 唇から漏れる息には、自然と熱がこもっていく。 (苦しい……ああっ、もっと直接触って欲しいのに……) 既に大淀の身体は熱を持ち、出来上がりつつあった。それは提督とて分かっているのだろうが、依然として 直接触るような事はせずに布越しの愛撫を続けるだけだった。 (こんなの続けられたら、オカシクなる……もう駄目っ……) 大淀の指先が、提督の右手へと伸ばされる。提督の手首を掴んだ大淀は、縋るように提督を見上げた。天 井灯を反射する眼鏡のレンズ越しに、潤んだ瞳が提督を見つめている。 101 :提督×大淀:2014/08/26(火) 16 47 42 ID vCTkZqVQ 「ん? どうしたんだ大淀」 「ああっ……提督、私もう……限界です」 「ほう。限界、ねえ。だったら俺にどうして欲しいんだ?」 「それは……」 提督にどうして欲しいのか、そんな恥ずかしいことを大淀は口に出すわけにはいかなかった。しかし提督は 面白そうに大淀を見下ろしているだけだ。おそらく自分が言うまで、提督はずっとこうやっているつもりなのだろうというくらいは、長い付き合いで大淀も理解できた。 「……もっと、直接……触って欲しいんです」 「そうか。なら言葉通りにしてやろう」 言うが提督の指先が、大淀の下着の中に入り込む。薄布の中に溢れていた愛液で指先を濡らすや、提督 は萌毛の中に隠れていた肉芽を指の腹で撫で上げた。 「ふぁぁッ、ああ! そこ、駄目ぇっ……」 クリトリスに提督の指先が触れた途端、大淀は喉奥から掠れた嬌声を漏らし、眉根を寄せて快感を堪える かのようにする。 「ああっ、指……入れたら、そんな……」 クリトリスを撫で擦る手を休めないままに、提督はもう一方の手をスカートの中に潜り込ませ、中指を花弁 の中へと潜り込ませていく。既に溢れていた潤滑油によって提督の指先は難なく大淀の中へと飲み込まれて いった。 「随分とエロいマンコだな。指をぎゅうぎゅうと締め付けてくるぞ」 「イヤ……そんなこと、言わないでください……」 羞恥に頬を染める大淀の膣内を、提督は指先で楕円を描くように掻き回す。上下の膣壁を擦られた大淀は 快感の痺れに声を漏らすが、提督は膣壁の天井部のザラつく一点を見つけるや、そこを重点的に擦り上げる。 「ああっ、ああああッッ!!」 白い喉を反らせ、大淀は喉奥から堪えられない喘ぎを漏らす。当然クリトリスを刺激する指を提督は休めて いるはずもなく、Gスポットとクリトリスの両方を同時に刺激され、大淀の脊髄を快感の電流が休みなく駆け上 がる。 提督は膣内に二本目の指を挿入し、ゆっくりと前後に動かし始めた。指がピストンを繰り返す度、掻き出され た愛液がじゅぷじゅぷと音を立て、下着や椅子を汚していく。普段はどこか鉄と油の匂いが漂う執務室だが、 今はむせ返るような甘酸っぱい女の匂いで満ちていた。 「ダメッ、ダメェ! わたし、そんなッ、ああああッッ!!」 ここが執務室であるということも忘れ、大淀はあられもない喘ぎ声を漏らしていた。自らの肩を抱くようにし て、快感の世界に浸っている。 だらしなく口を半開きにしたまま快感に身体を震わせる大淀に、普段の取り澄ました優秀さは感じられない。 しかしそんな何も隠すものが無い素の大淀の姿は、提督のことをひどく興奮させるのだった。 「あああっ! 提督、わたしもうッ……いくっ……ああっ、ああああああッッ!!」 一際大きく身体を震わせ、大淀は絶頂を迎えたようだった。その証拠に愛液を吹きこぼしながら膣肉が収縮 し、提督の二本の指先をきつく締め付ける。熱くうねる膣内を指先で感じながら、提督は自らの主砲が疼くのを 感じていた。 102 :提督×大淀:2014/08/26(火) 16 49 20 ID vCTkZqVQ 大きな絶頂を迎えた大淀は、机に突っ伏したまま息を整えるように肩を上下させている。 「提督……」 恨めしいような口調で大淀は提督のことを見上げる。まだ今日の分の仕事は残っているというのに、こんな 状態になっては仕事どころではない。 イッたばかりにも関わらず、大淀の内側はまだ火が収まっていなかった。むしろ一度イッてしまった分だけ、 自分の中で燃え燻る情欲を自覚してしまっていた。 (セックスするのなんて、凄い久し振り) どころか自慰でさえ、仕事に追われ最近はしていなかった。そのせいなのか、愛液は椅子を伝って床まで 垂れ落ち、まるで漏らしてしまったかのようだ。 「わたし、まだ……満足、できてませんからね」 まるで生まれたての子鹿のようにふらつく足取りで立ち上がると、大淀は提督に言われるまでもなく、自ら 衣服を脱ぎ去っていく。スカートを床に落とし、もどかしくネクタイを外す。あっという間に淡い水色の下着姿に なった大淀は、その下着さえ躊躇なく脱ぎ去った。 (わたし、執務室で裸になってる。どうしよう、本当にここでセックスするんだ……) 興奮に生唾を飲み込みながらも、大淀はキュンっと下腹部が疼くのを感じていた。服を脱いでいる最中もだ らしなくヒク付く花弁からは、愛液が滴っていた。 乳首をツンっと勃起させ、愛液を滴らせながら、大淀は提督へと一歩を踏み出す。頬は薔薇色に染まり、自 分の体温で眼鏡が曇ってしまいそうだった。 そんな大淀の姿に、提督の主砲はビクリと更に体積を増す。既に提督もズボンを脱ぎ捨てており、赤黒く淫 水焼けした巨大な主砲が外気に晒されていた。 「そこのソファーに横になるんだ」 提督の言葉に頷き、大淀は応接用のソファーに仰向けで横たわる。淫熱で濡れそぼった視線は、まるで期 待するかのように提督の主砲を見つめていた。 「そんな風に期待されたら、俺も張り切らないわけにはいかんなあ。何せ大淀とセックスするのも久々だから な」 言うが提督はソファーに腰を据える間もなく、大淀の両足を筋骨隆々とした身体で割り裂くようにして正常位 で主砲を挿入する。 「あああっ! 提督っ……凄いっ、大っきいっ……」 挿入の痺れに大淀は歓喜の声を漏らすが、提督は余裕なく歯を食い縛った。 「くぅ、これは……」 入り口は痛いほどにキツく締め付けてくるにも関わらず、大淀の膣内は熱く濡れており、突き挿れた主砲が 火傷してしまいそうだった。まるで主砲を舐め擦るかのように膣ヒダは敏感な亀頭部分に絡みつき、蠕動運動 を繰り返しながら主砲に快感を与えてくる。 気を抜けば一瞬で射精してしまいそうな快感を、顎を引いて必死で追い払いながら、提督は大淀の膣奥へ 主砲を進めていく。 「ああっ、提督のオチンチンでわたしの中、一杯になって」 自らの指先を胸元に伸ばした大淀は勃起した乳首をくりくりと刺激しながら、提督の主砲を感じようと腰をグ ラインドさせる。 「ああっ! あああッッ!」 それだけで軽くイッてしまったのか、キュッと膣が窄まって更に提督の主砲を締め付ける。熱く爛れるかのよ うな膣内は更に温度を増し、まるで主砲の先端から溶けてしまいそうだった。 「くぅっ……大淀、俺も一度イクぞ」 掠れた声で宣言するや、提督はピストンを開始する。浅瀬を何度か前後させれば、それだけで射精感が駆 け上がってくる。 「ひぅっ、ああ!! ください、提督!! 提督の精子……わたしの中に、出してぇっ!!」 まるで射精を求めるかのように、大淀の膣は突き挿れた主砲をきゅうっと咥え込む。抗いようのない射精感 が身体を駆け抜け、提督は大淀の子宮口に密着させながら精液を吐き出した。 「ああああッッ! 凄い、中に精子……一杯出てます……」 じわりと下腹部に広がっていく精子の感覚に、大淀は心底気持ちよさそうに身体を振るわせた。 103 :提督×大淀:2014/08/26(火) 16 52 29 ID vCTkZqVQ 光悦とした吐息を漏らしながら、大淀は提督に蕩けたような笑みを向ける。一度射精したにも関わらず、提督 の主砲は未だ体積を保ったままだった。 「ああっ、オチンチン。まだ大っきいです」 「当たり前だ。そう簡単に終われるか」 言うが提督は腰を前後させ、大淀の奥を抉るかのように突き上げる。吐出されたばかりの精液と溢れ出てく る愛液の混合液を泡立てながら、提督のピストンは何度も大淀の最奥部を抉った。 「ひぁぁっ! あああッッ!! 奥、奥まで届いて……これっ、ああ……凄い……ッッ!」 奥を突かれるのが余程気持ちいいのか、大淀は主砲が前後する度に軽イキしたかのように身体を震わせて いた。 その度に膣内は収縮し、暖かくもキツく主砲を包み込んでくる。射精したばかりの敏感な主砲に与えられる には強すぎる快感であり、一突きごとに提督の背筋には痺れるような射精感が駆け上がってくる。 肉同士のぶつかる音と淫水の泡立つ音をかき消すかのように、普段からは想像も出来ない程に淫らな大淀 の嬌声が響いている。眼鏡越しに潤む瞳を見つめれば、提督の中に抗いようのない一つの欲望が沸き上がっ てきた。 興奮からか生唾を一つ飲み下すや、提督は絶頂へと至るためにピストンをより強める。ごりごりと膣内を削ら れ、大淀の嬌声も一段と高くなった。 「あああああッッ!! ダメ、提督ッ……もうっ、んあああぁッッッ!!」 ソファーが軋むほどに身体を反らせ、大淀は何度目かの深い絶頂を迎える。柔肉で主砲全体を圧迫され、 提督も限界だった。すると提督は腰を引き、膣内から主砲を引き抜く。 愛液で濡れ光る主砲を掲げるや、提督は大淀の顔面めがけて勢いよく精液を吐き出した。 白濁が踊り、黒く艶やかな髪を、形の良い眉を、そしてアンダーフレームの眼鏡を汚していく。 「精液かかって……凄い、匂い……」 顔面を精液で汚されながら更にイッてしまったのか、大淀は小刻みに何度も身体を震わせていた。 行為後、一人で大浴場で湯船に身体を浸しながら、大淀は考える。提督はまだ仕事が残っているらしく、ま だ執務室だった。 (わたしもまだ、仕事が残っているんですけどね……) そうはいってもあのままの状態で残りの仕事を片付けるわけにもいかず、渋々と大淀は執務室を引き上げ たのだった。 「……いつまでも、このままでいるわけにもいかない……か」 裏方を支えるのは確かにやりがいがあるし、自分にも合っているとは思う。しかし大淀は、自分も戦線に出 るべきではないかという思いが大きくあった。 (連合艦隊の運用は、これからの戦いできっと必要になる。わたしの能力も前線で役に立つはず) しかしそれは、一種の建前であることを大淀は理解していた。 (それに戦線に出るようになれば、今よりもきっと提督と一緒に居られる時間も増えるでしょうし……) そんなことを考えると胸の鼓動が早くなり、自然と顔が赤くなってしまう気もするが、長風呂をし過ぎたせいだ ろうと大淀は考えることにした。 +後書き 以上です、ありがとうございました! 眼鏡っ子に顔射というのは、やはりロマンがあると思うんです これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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91 :実は『悪い男に引っかかりそうな艦娘』の話:2014/05/24(土) 21 56 57 ID o6rYhbK. (注、1レス小ネタ、微エロ~非エロ) 今回、語り手をさせてもらう若葉だ。 少しだけ語らせてもらおう。安心しろ、嘘はつかない。 例えば若葉の振りをした皐月だとか、雷とか、そんなことはない。駆逐艦、若葉だ。 だが、音声報告である以上、多少の齟齬は発生するかもしれないな。 決まってする前には他の艦をオリョール海やタンカー護衛に送り出すんだ。 見られながら、というのも好き同士なら悪くないとは思うがまぁ気にするな。 少ししたら提督から、連絡が来る。それで彼の執務室へ向かうんだ。 何故か布団がある。普段、昼間は畳まれて徹夜対策に使われるらしいが若葉がいる時は大抵正しくない使われ方をする。 僕の肩に手を回して、必ず口付けをする。それからいつものように今日は構わないかと聞いている。 大丈夫だ。そもそも、そういった行為が嫌いであれば自ら来たりはしない。 形式だけの確認を終えると互いに服を脱ぐ。たまに着たままを希望されるが汚れるのは困る。 そう伝えていたからか、手渡されたのは同型艦の服。なるほど、汚しても良い予備と言うことか、悪くない。 提督はかけるのが好きだ。まるでマーキングしたがっているように全身にかけようとする。 血や硝煙で手ばかり汚れるよりよほど良い。 今回は珍しいことに手でして欲しいと言われた。何分、若葉の手は戦うものの手だ。 そういう行為であれば器用な明石に求めると思っていた。 しばらくして得心がいった。大きくなれど出る気配がなく、そして妙な笑み。 イかせてみせろという意味か。 早くしたり遅くしたり、強く弱くと錯誤を繰り返すこと四半刻といったところか、ようやく欲望を吐き出した。 若葉の体を使えばよほど早いと言うのに、つくづく性格が悪い。 まだ、手しか汚れていないから次は何をされるのかと思えば、解放された。 服は汚れていないからこのままでも良いだろうと。なるほど。 今日はこの二番艦の格好のまま過ごせと言うのか、提督は本当に性格が悪いな。 ん? 何をしてるのかだって? 音声報告さ。秘書艦としての勤めだ。 ところで今回はどうだったんだい、司令? 陸奥か。次に期待だな。安心しろ『支援』もある。 ビスマルク、大和に大鳳。全て揃うまで付き合おう。 んっ、ふふ、くすぐったい。だが、どうも気分が高揚する。 これが奇跡のキスか。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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136 :名無しさん@ピンキー:2013/08/27(火) NY AN NY.AN ID Jav7v0bd 8月25日 拾った軽空母1隻と『牧場』産の軽巡で赤城を近代化改修した。 これで装甲と対空兵装は現時点で限界まで鍛えられたはずである。 施工後に『これでもっと働けます!』と笑顔で感謝された。 なに、この強化でお前の食費が少しでも浮けば僥倖さ。 8月26日 各海域の深海棲艦に動きがあったようだ。通達によると新兵器による戦力増強か、とのこと。 早速うちの艦隊も甚大な被害を受けた。なんだあの戦艦の主砲の数は。 隊で一番の大怪我をした赤城は10時間の入渠を余儀なくされた。 女性の見舞いに男性が訪れるのはタブーだが、どうしても帰投後の沈んだ表情が焼きついて離れなかった。 非礼を承知でこっそり見舞いに行く。カーテンの向こうで彼女は『……モト提督』と寝言を口にし眠っていた。涙が見えた。 俺の名前ではない。 差し入れのボーキドーナツを冷蔵庫に忍ばせて、去った。 8月27日 戻ってきた赤城の様子が少しおかしかった。 髪を、いつもの流れるようなストレートではなく、ツーテールに結わえて周囲を驚かせていた。 ふるまいにしても、いつもの落ち着いた様子ではなく勝気な言動が目立った。 イメチェンを図って意識の段階から自らを変えようとしているのだろうか? 彼女なりの努力なら温かく見守り、サポートしてやろうと思う。 8月28日 赤城だけじゃなく島風や金剛の様子も似たように変わってきた。 あのヘアスタイルが流行っているのか?今度同僚に訊いてみるかな。 8月29日 提督の夏休み。またも瞬殺 糞が! 137 :名無しさん@ピンキー:2013/08/27(火) NY AN NY.AN ID Jav7v0bd 9月3日 やはりおかしい あれではまるであの娘が いやそんなことはあるはずがない どの提督だってやっている事だし だが自分の鎮守府の娘だけあんな風になるなんて 9月5日 どの娘の改修にも彼女を使った、それも何隻も 今になって工房に連れて行く時の彼女の顔が思い出される 酒で洗い流そうとしても無理だった 何も映さない瞳、全ての気勢を削がれ力なく運ぶ白い足、前向きな言葉とは裏腹に死人のようだった顔色 俺達を恨んでいるのか 9月14日 執務室にいるのが怖い 四六時中あの娘の声と顔に囲まれている 転属希望の書類はとっくに送付したはずだがまだ返事が来ない 郵便課の連中はなにをしている! 月 日 (読めない) 月 日 ごめんつぎはもっとだいじにするからゆるして
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442 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 03 15 48 ID 15pInkfc 「ねえデーニッツ?信じて友邦に送り出した我がおpp…最新鋭戦艦から○ーメン美味しいとか通信が来てるんだけど…どうなってるの?」 ははーっ!送られて来た映像はこちらで検閲して処分しましたのでご安心下さい 全120分で見所も随所に散りばめられておりました! 443 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 06 29 28 ID Qasltn4I ラーメンかな?(すっとぼけ) 444 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 06 35 05 ID o5oDfrYA ソーメンかもしれない 445 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 06 56 15 ID AwWXaHBM 通信回線開いたまま夜戦を始めちゃったのかな? 446 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 08 08 15 ID oRhnETDE DMMの別のブラウザゲームだと艦娘はガチャ購入可能、イベント限定の強化艦娘有り、 性交して改二となってたな。なんだただのLoWか 447 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 08 32 17 ID Ih/FVqI6 信州のB級グルメ・ローメンの可能性も 448 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 12 42 46 ID DPE9r6HU ちょび髭「うちのビスマルクに次郎の味を覚えさせたのは誰だぁ!!!」 スズキのあらいを食った雄山ばりに怒鳴り込んでくるのか 449 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 12 47 46 ID rfUiHYsQ 横須賀のアンソロで潜水艦娘の方がおっぱいぶるんぶるん言ってたから反応するか怪しいな 450 :名無しの紳士提督:2014/09/22(月) 17 12 21 ID AwWXaHBM 448 ケッコンカッコカリの時にも同じことが起きそう。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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272 :名無しの紳士提督:2014/11/26(水) 22 15 03 ID .PGBTALQ 七英雄コラで深海棲艦ネタ ヲ級「駆逐棲姫!大本営は我らの改造を異端改造と決定したぞ!」 駆逐棲姫「…中間棲姫! あんな大量のボーキを食べ尽くすなんて!」 ヲ級「…奴を責めることはできまい。あの改造を試すように持ちかけたのは私達だ」 港湾棲姫「わかっていただろうにねえ、駆逐棲姫」 駆逐棲姫「港湾棲姫」 港湾棲姫 「あの気の弱い連中が人間と物質が同化する改造など認められるものか」 ヲ級「では我々に何の手だてもないまま、彼らを守って戦い、死ねと言うのか!」 港湾棲姫「そう。それが大本営の言う『正しい人間』の一生だ」 駆逐棲姫「自らは砲もとらずに、私達に戦わせておいて?」 空母棲姫「ヲ級!北方海域が猫に襲われているわ!!」 ヲ級「よし!」 港湾棲姫「行くの?」 駆逐棲姫「…死なないで」 ヲ級「猫など何万倒したか知れないよ」 中間棲姫「ここはどこ?」 空母棲姫「何もない…!」 レ級「ハッ、どうやらまんまと捨てられたらしいな」 ヲ級「……何故だ!」 駆逐棲姫「ヲ級…」 港湾棲姫「奴らにとっては我らは化け物なのよ」 北方棲姫「私達のどこが化け物なの!?あいつらを守るために戦いに戦いぬいてきたのに!」 港湾棲姫「そう…戦えるというだけで、私達は化け物とみなされたのよ…」 空母棲姫「ヲ級…みんなはどこ?新しい国に一緒に行くって言ったのに…」 駆逐棲姫「許さない…必ず探し出して復讐してやる……!!」 深海棲艦には七英雄的な何かを感じられなくもなさそうな気がする 278 :名無しの紳士提督:2014/11/27(木) 08 38 52 ID eonh8h2M ウォン ウォン ウォン… これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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清々しい朝。開かれた窓の外に見える鎮守府近海は穏やかで、カモメの声さえ届く。 淹れたてのコーヒーを嗜みながら、僕が青葉が刷ったばかりの朝刊を読んでいると―― 「提督! おはよう!」 ノックも無しに元気良く扉を開いて、我が艦隊の秘書艦娘、最上が現れた。 「おっこれは……う~ん、いい匂い! 提督、何それコーヒー?」 部屋に入って敬礼も早々、最上は鼻をくんくん利かせて、僕のカップを指差す。 「あぁ、そうだ。最上も飲むか」 「えー、いや、まあ……僕はいいや。匂いだけで」 「苦くて嫌いなんだよな?」 「そんなコト無いよぉ。お風呂上りにいつも飲んでるし」 最上は腰に手を当てて、右手をくいっと口元で傾けて見せた。 「コーヒー牛乳だろそれは」 「絶対にコーヒー牛乳のが美味しいもんねー。間宮さんのは絶品なんだよ?」 「いつまでもお子様だと、駆逐艦娘どもにバカにされるぞ」 「なっ、余計なお世話だよ!」 最上は口を尖らせて、べぇっと小さく舌を出した。 正直このお友達感覚……もう少しどうにかならないものかと思ってはいる。 僕は黙ってコーヒーをもう一口。 「……で、それで? 提督、今日はどうするの?」 その一瞬で、最上はもう気持ちを切り替えていた。 これから始まる一日に思いを馳せ、にっと歯を見せて笑う。 この切り替えの早さや、さばけた雰囲気が、僕が彼女を秘書艦娘に指名している理由だ。 「えっと、第4艦隊はまず補給だね。そうしたら、深海棲艦の動きが活発な方面で偵察かな」 作戦の立案補助能力や、部隊への配慮も上々だし、 「この前ドックで衝突しかけちゃってさあ……あそこの角、ミラーがいるよ。まったく」 そそっかしい彼女が時折挟む他愛のない会話も、僕にとっては重要な情報源だった。 ――でも。僕は一つだけ気にしていることがある。 「う~ん、そうだな……」 僕は資料やらを情報やらを最上から手渡されると、いつもあれやこれやと考えを巡らせる。、 当然その間、最上は手持ち無沙汰だ。はじめこそ、まっすぐに立って僕の様子を伺っているが、 しばらくすると癖毛をいじったり、つま先をとんとん鳴らしたり、暇そうにし始める。 「ソファ、座ってていいぞ」 「ん? いや、別にいいや」 「じゃ楽にしてろ。まだかかる」 「イエッサ~」 最上も邪魔する素振りは見せない。自分がこの鎮守府で戦闘に参加する以上、この僕の決定が いかに重要なことか、彼女なりに理解しているのだろう。 そうして最上はいつも決まって窓の方へと向かうと、窓枠に手を突いて外を眺め始める。 開け放たれた窓から吹き込む涼しい朝の風が、栗色の髪をさあっと揺らす。 言動も服装も髪型も、どこか少年らしい最上だったが、こうやって窓の外を眺めている横顔に、 僕は最上の中に確実に存在する『少女』を意識せずにはいられない。 きっと結ばれた口元や長いまつ毛、キュロットからすっと伸びる健康そうな脚。 窓の外のに広がる果てない海を見つめるくりっとした瞳も、艦娘らしい不思議な憂いを湛えている。 ――でもね? ぐい、ぐいぐいっ。 しばらくすると最上は、決まって爪先立ちになって、窓の縁に押し付け始めるんです。 えぇ、その、キュロットの。はい。正面の。 ……股の辺りを。 最上は、別にそれをしているからと言ってヘンな声を出したりするわけじゃない。 表情一つ変わらない。ただ一心に窓の外へと気持ちを傾けているはずだ。なのに―― ぎゅっ。ぎゅ。 最上は質素な窓の木枠に対し、股の辺りで全体重を預けている。 キュロットに隠された小さなお尻が時折、何かを探るように左右に揺れる。 ――絶対無意識なんだよな、アレ。 僕は別にそれに対して邪心を抱いたりしない。まだ子供の、少女になりかけの艦娘がひとり、 何だか良く分からないうちに何だかイイキモチー? になっているだけなわけで。 僕は結局今日も注意することも出来ないまま作戦をまとめると、ふうっとため息をついた。 それが僕の合図だ。 最上は待ってましたとばかりにこちらをくるっと振り向き、とととっと笑顔で僕の方に 近づいてきて、執務机の角に勢い良く両手を突き―― あろうことかですよ、はい。そうなんです。 ぎゅーっ。 そのままの勢いで、執務机の角っこに、ぎゅぎゅぎゅ~っと押し付けるんです。 ええ、キュロットの。はい。正面の。 ……オンナノコの、大事な辺りを。 「提督ッ、決まった?」 そしてそのまま、押し付けた股間を支点にして、やじろべえみたいにバランスを取って 僕に身を乗り出してくるんです。 「あ、あぁ……。だいたい最上が考えてくれた通りだ、まずは――」 聞く体勢はどうあれ、最上は真面目に僕の話に耳を傾ける。指示を二度聞き返すこともない。 最上はしっかり、秘書艦娘としての責務を果たしているのだ。 股間をぐりぐりと机の角っこに押し付けて、小さくお尻を揺らしながら。 「それじゃ提督、僕は先に作戦室で準備してるから。5分後に集合だよ?」 一通りの説明を聞くと、最上は資料を脇に挟んで足早にドアへと向かう。 そしてくるっとコマのようにこちらを振り向き、小さくウィンクして敬礼した。 「今日も僕、頑張るからね! 提督も頑張ろっ?」 ドアが閉じられて、残されたのは僕一人。 最上は部屋に長居するわけでもなく、僕に特別懐いているでもなく……。 ちょうど良い距離感を保って、僕と最上は互いの任務を果たしていると思う。 僕は冷めたコーヒーを飲み干して立ち上がり、さっきまで最上が身を預けていた執務机の角を撫でた。 まだ、ぬくもりが残っているような気がして、小さな罪悪感と虚しさ感じたが、それもそこまでだ。 ――そのうち、やらなくなるだろな。 僕はちょっとだけ笑うと帽子を被り直し、最上たちの待つ作戦室へと向かった。 =============== ~鎮守府 ヒトフタゴーマル~ 昼食を終え、青空の中天から、陽がまっすぐに降り注ぐ時間。 誰かが聞いているのだろう。古く歪んだクラシックのレコードが、穏やかな潮風に乗って聞こえてくる。 戦時、それも軍施設の中とは思えない、ゆったりまったりした鎮守府の昼下がり。 その柔らかな空気は、提督の執務室も例外ではない。 夏が過ぎ、真昼でも過ごしやすいこの季節だ。扇風機もエアコンも、とうにお役御免。 執務机の灰皿から立ち上る紫煙も、天女の羽衣のようにすぅっ……と天井へと消えていく。 誰にも邪魔されることの無い、何にも変えがたい至福の時間だが―― バーン! 何の遠慮も無しに、木製のドアが豪快な音を立てて開け放たれた。 「提督ー! 起床おぉーッ!」 暢気な空気をブチ破る、秘書艦娘・最上の大声が部屋中に響き渡る。しかし、 「んっがー んっごー」 提督は帽子で顔を隠し、机に脚を投げ出して高いびきだ。 「起床ー! 起床きしょうキッショー! ぱっぱらっぱらっぱらっぱぱっぱらー♪」 だが最上も負けていない。両手でメガホンを作り、起床ラッパの口真似をしながら提督の すぐ耳元で騒ぎ散らす。 「はがぁ~……許せ、あとゴフン……」 ようやく気づいたのだろうが、帽子の下から聞こえる声は夢うつつだ。 「何ノンキな事言ってるんだい提督! あと10分でヒトサンマルマルだぞ!?」 「ほわあぁぁ~……むにむに……」 「今日はこの後、お偉いさん達が会議に来るって言ってたじゃないか!」 「ん~? あと10分……あるんらろ……? いいじゃん……ぐぅ……」 「駄ぁ目っ!」 最上は提督の顔を覆っていた帽子をかっぱらうと、自分の頭の上にひょいと載せた。 白昼の眩しさに晒され、提督の眉間がぎゅーっと寄せられる。しかしそれでも起きない。 「ったくー、いーっつもこれなんだから……」 文句を垂れながらも、最上は少しだけ微笑む。 そして、食堂から持ってきていたキンキンに冷えたお絞りを提督の顔の上に広げた。 「ほらほら! シャキっとしてよ提督!」 そして乱暴な勢いで、ぐわしぐわしと脂っぽい顔をすっかりふき取ってやる。 「んが……ふわ~あぁ」 ここまでやって、ようやく提督の目覚めは半分。なおも寝ぼけ眼な状態である。 「提督、机から脚下ろして」 「あー」 「こっち向けて」 「んー」 寝ぼけている提督は、秘書艦娘――最上の言いなりだ。 背もたれつきの立派な回転椅子をくるんと半回転させ、ブーツを最上のほうに向ける。 「身支度ぐらい、自分で出来るようになってよ……ったく」 最上は腕をまくると、キュロットのポケットから布きれと靴墨、それからブラシを取り出し、 ブーツをピカピカに磨き上げる。 執務室の壁掛けの時計は、ヒトフタゴーサン。 ――おっ、いいタイムじゃない? 僕。 「はい、立ってー?」 「むー」 「襟正して、ボタン掛けてー?」 「はー」 「タバコいっぷくー?」 「すぱー」 「コーヒーひとくちー?」 「ごくー」 ここでようやく、最上は腕組みをして、目の前にもっそり立っている我らが提督の姿を つま先から頭のてっぺんまで確認する。 「靴よし、服よし、顔……まあよし」 最上はふんっと鼻息を荒くして笑うと、背伸びして提督の頭に帽子を返した。 「よし! 提督、完成! 至急、会議室に出撃されたし!」 「ふわあ~あぁ、ありがと、もがみん……『大将』……」 あくびまじりの提督は最上の顔を半開きの目でちらっと見て、気の抜けた敬礼をする。 「『大将』って何さ。僕は重巡洋艦、も・が・み、だよ!」 意味の分からない二つ名をつけられ、最上はぶすっとしながら敬礼を返す。 「ちゃんと名前を呼んでよね。僕まで笑われるだろ?」 「はいはい……んじゃ、後よろしくな……」 おぼつかない足取りで廊下を歩いていく提督の後姿に向かって、最上は火打石を振るう。 「提督、ちゃんと話し合ってよね? 途中で寝たりしたら、僕怒っちゃうぞ?」 提督はふらふらしながら背中越しに右手を振ると、階段の方へと消えていった。 「相っ変わらず世話が焼けるんだから、ホントに……」 自分以外誰もいなくなった執務室前の廊下で、最上はふうっとため息をつく。 そうは言いつつも、最上は提督の秘書という役割が気に入っていた。普段、特に寝起きは あんな感じだが、提督はああ見えて一応は提督になるだけの軍人である。 最上は執務室に戻り、建屋の正面玄関が見える窓から身を乗り出し、下を覗き込む。 ――あ、来た。 見れば、黒塗りの高級車が既に停車しており、そこから数人の将校がぞろぞろと敷地内に 歩いてきたところだった。我らが提督も玄関から現れ、先ほどとは別人のような きりっとした足取りと敬礼でもって迎え入れる。 最上は窓辺に押し付けた股の辺りで身体のバランスを取りながら――そうしているのが 何だか最上は好きなのだ――足をぶらぶらさせ、提督の姿が会議室のある建屋に消えるのを見届けた。 ボォン……。 執務室の柱時計が、ぴったりヒトサンマルマルを告げる。 「ふー……」 この執務室に押しかけて、ここまでたったの10分だ。 しかし、何より大きな仕事をやり遂げたような不思議な充足感が、最上の心を満たす。 自分達のリーダーのいちばん近くで仕事が出来る光栄さもあるし、鎮守府全体と海までを 一望できるこの窓を独り占めできるのも、最上は好きだった。 今頃は、駆逐艦娘で賑やかな第四艦隊が製油所地帯海域の偵察を終え、この穏やかな鎮守府へ 針路を取っている頃だろう。 ――今日も、明日も……平和が続くと良いけどな。 それだと艦娘の自分は仕事が無くなってしまうし、事実、到底無理なお話だ。 しかし、だからこそ最上は思うのだ。 雨でも、風でも、毎日こうしてこの風景を見続けられるなら、 提督や仲間の艦娘たちと一緒に鎮守府で過ごしてける日が続くなら、そして―― ――誰一人欠けることなく、少しでも長く、みんなと過ごせたなら良いな。 コン、コン。 「最上ちゃん、最上ちゃん?」 開け放たれたままの執務室のドアが控え目に叩かれ、最上は背中越しに振り向いた。 ドアの陰で、短めの黒髪をサイドに纏めた艦娘が、小さく手を振っている。 「あっ、長良!」 「司令官、会議行った?」 最上は頷きながら、こちらの様子を伺っていた長良を手招きした。 「大丈夫だって。僕しかいないから。コホン……君、入りたまえ」 長良はくすくす笑いながら、執務室のドアをくぐった。 「ウチの司令官、そんなじゃないし……って……? プッ、ククク……!」 最初は最上の真似事で笑っていたであろう長良が、最上の顔を間近で見るや、今度は 口を押さえて噴き出してしまった。 「ん? 長良、どうかしたの?」 「だって……ハハハ! 最上ちゃんの、その顔! ホントに司令官ごっこするつもり?」 「はあ!? 顔……って」 黒のサイドテールを揺らして笑う長良に指摘され、最上は慌てて窓ガラスに自分の顔を映す。 「あーっ!」 最上の鼻の下には、真っ黒なひげが横一文字に描かれていた。 見れば、両手が靴墨で真っ黒だ。 ――もしかして、さっきの『もがみん大将』って……ぐぬぬぬ! 「んもーっ、提督! 気づいてたなんて! 僕、本気で怒ったかんねー!」 悔しさと恥ずかしさがない交ぜになって、最上はぶんぶん拳を振り回した。 「アハハ。でも最上ちゃん、結構似合ってるよ?」 「あーっ、何? 長良までそんなこと言うの?」 「じょ、冗談だよ、冗談!」 思い切り頬を膨らませた最上に、長良もたじたじ、苦笑いで話題を変える。 「そ、それよりさ。午後、時間は大丈夫?」 「そりゃあ、もっちろんさ!」 提督の顔を拭いたばかりのタオルで自分の顔もごしごし拭きながら、最上がぱあっと 笑顔を見せた。 「走り込みでしょ? 行こう行こう! 第四艦隊が帰ってくる前に!」 「よしきたあ!」 長良はぐっとガッツポーズを見せ、こちらもにっこりと笑う。 「あ、でも長良、その前にさ」 「え?」 「ちょーっと掃除、手伝って」 バツ悪そうに最上が指差すその先には、真っ黒な指紋でべっとり汚れた窓枠があった。 ~鎮守府 営舎前 ヒトサンサンマル~ 「さぁーって、今日もコンディション最高! ひとっ走りいきますかあ!」 長良はぎゅっとハチマキを締めなおすと、手足の関節を入念にほぐしていく。 長良は袖の無い紅白のセーラー服に膝上丈の赤袴、それにニーソックスという、いつも通りの 服装のままだ。しかし艤装を解いたその姿は、艦娘たちの中でも一際陸上で運動するのに 適している服装だといえそうだった。ただ一点違うとすれば、腰の後ろにドラム缶を模した 水筒がくくりつけられているということだった。 「気合が入っているねえ、長良。よーし、僕も負けないよ」 ぐいぐいと腰を捻って体操する最上は、エンジ色のセーラー服の上着だけを脱いで、 白のタンクトップとキュロットという軽い出で立ちだ。長良の走りこみに付き合うときは、 いつもこの格好だった。 「ま、航続距離なら僕に軍配が上がるからね?」 「瞬発力だったら、長良の脚にだって分がありますから!」 準備体操をする二人は笑顔だったが、内心は本気だ。 負けず嫌いの艦娘の目線が、照明弾を思わせるほどの火花を散らす。 「がんばれー ふたりともー」 「お昼ごはんのすぐ後だってのに、よくやるよねー」 営舎で休んでいる非番の艦娘たちも、二人の走りには興味しんしんだ。 いつの間にやら、営舎の窓には見慣れた顔が幾つも並んでいた。 計らずも観客を背負った最上は、自分の中のエンジンがごうんと力強く動いたのを感じた。 横に並んだ長良も同じのようだ。その場で小さくぴょんぴょんと跳ねるたび、表情が リラックスという名の深い集中に満ち溢れていく。 「ふたりともー いいー?」 待ち切れなさそうな営舎の二階からの声に、最上と長良は手を振って―― 「よーい どん!」 背中から聞こえたスタートの合図と同時に、二人は秋の爽やかな風となって走り始めた。 「おっ先にぃ!」 先手を打ったのは長良だ。滑るように加速していく背中を見て、最上はにやりとする。 ――どうやらコンディション最高っていうのは、嘘じゃないみたいだね。 こうやって長良と走るようになったのはいつからだろうか。もう良く覚えてはいないが、 最上は長良と何かとウマがあった。提督が居ないときなどは食事を一緒にとることも多いし、 他の艦娘に比べてオンナノコオンナノコしていないところが、最上には何だか安心だった。 それに何より、長良の快活で裏表の無い性格や、朝昼晩と欠かさず走り込みを続ける実直さと 体力を、最上は尊敬していた。 作戦中の素早い動きや、波間を縫って深海棲艦に肉薄する姿は、持ち前の勇敢さと日ごろの 鍛錬による自信の賜物に違いない。 ――僕が提督だったら、長良を秘書にしたいなあ。 そんな事を思いながら、最上も腕を振る力を強め、長良の背中に追いすがり……そして並ぶ。 「いきなりそんなに飛ばして……。大丈夫なのかい?」 「最上ちゃんこそ、長柄の脚に着いてこれる?」 鎮守府の外周を大きく回るランニングコースにも、秋が来ているようだった。夏は吸い込む だけで火傷しそうに暑かった空気も、軽口を叩きながらでも走れるくらいに快適だ。 快晴の空に見上げる太陽も、汗ばむ肌に心地良いぐらいである。 「すっかり良い季節だねえ」 「本当に! コンディションも良いわけだわ~」 ランニング日和というよりも行楽日和という方がしっくりくる、柔らかな昼下がりのせいだろう。 工廠の裏を抜け、鎮守府の港近くの小さな砂浜へと到達する頃には、ふたりのボルテージは すっかり下がっていた。 「それで酷いんだよ、提督ってば。僕の顔見て『もがみん大将』なんて!」 「アハハ。今度寝てるときに、逆襲してみたらいいんじゃない?」 「あっ、いいねえ、それ! いまに見てろよ~、提督~!」 そんなお喋りが弾む、楽しいジョギングになってしまっている。 「それにしても、長良はスタイルがいいよねえ」 併走する長良のしゃきっとした姿勢を見て、最上は思ったことをそのまま口にした。 「そ、そんなことないよ。ふつうだよ」 照れながらも、長良は少し嬉しそうだ。 「謙遜しなくていいって。ランニング以外にも何かしてる?」 「うん、簡単な筋トレかな。でも、やっぱり走り込みが楽しいんだけどね」 ほうほうと、最上は長良の四肢をまじまじと観察する。軽く日焼けした肌の下で、 長良の細いフレームを包むしなやかな筋肉が躍動しているのが良く分かる。 「やだ最上ちゃん、なんだかオジサンぽいよ? 視線が」 気づいた長良が、最上の肩を冗談ぽく肘で小突いた。 「でも良いことばかりじゃないよ。長良、また脚に筋肉ついてきちゃったみたいで」 「いいじゃない、筋肉! 海兵隊みたいなモリモリマッチョマンは困るけど」 「よ、良くないよぉ~」 長良は風に流れる黒髪に滴る汗を掻き分け、はぁっと意味ありげなため息を突いた。 「あんまり鍛えすぎるとボトムヘビーになって航行しづらいし、それに……」 「それに?」 「えぇっと、その……」 珍しかった。いつも歯切れの良い長良が、言葉に詰まって頬をぽりぽりと掻いている。 「どうしたの? 顔、赤いけど」 「そっその、最上ちゃん、あの……これは長良との秘密だよ? 内緒にしてくれる?」 最上は一瞬ぎょっとした。あの長良が、自分に内緒話をしてくるとは思いも寄らなかった。 よっぽど言いづらいことが、この長柄のボディーに隠されているとでも言うのだろうか。 ――うーん、約束事は慎重にすべきだけど…… 「良いよ。黙ってるから」 長良の均整取れた肉体の秘密が分かるかもしれない……という好奇心にあっさり負けて、 最上は二つ返事で小指を立ててみせた。 視線を泳がせていた長良だったが、最上としっかり指切りをして、ようやくこそこそ声で話す。 『その、あの……結構さ。筋肉って、重くてね。長良、最近体重がさ……』 「えーっ、たいじゅう?! なー……」 「やだ――! 最上ちゃん、声おっきいってばぁ――!」 なーんだ、そんなことかあ、という言葉が放たれるよりも早く、長柄の人差し指が最上の唇を ぎゅーっと押さえ込んだ。 『ヒミツだって、言ったばっかりでしょーっ?!』 殆ど口パクで叫ぶと、長良はおでこが当たりそうなくらいに最上に詰め寄った。 体重。その言葉一言だけで、この反応だ。 その先まで口走っていたら、一体今頃どうなっていただろう? ――あ、危なかったなぁー、僕。 作戦中に等しいぐらいに鬼気迫る長良に気圧され、最上の足は、ぴったり止まっていた。 「ご、ごめんごめん。僕が悪かったよ」 両手を合わせてぺこぺこ、最上が平謝りに謝ると、長良は「もうっ」とむくれて、どかっと 砂浜に腰を下ろした。ふたりは、丁度ランニングの半分を終えようというところまで来ていた。 「最上ちゃん、デリカシー無いんだから……」 「で、デリカシー……かい?」 普段殆ど耳にも口にもしない言葉が、しかも長良の口から飛び出して、横に座る最上はたじろいだ。 「そうだよお。最上ちゃん、全然気にしないの?」 「う、うーん……そういえば僕、もうずっと体重計には乗っていないね」 「はぁ~? お幸せですこと!」 呆れた表情の長良は、腰から水筒を外して飲むと、最上の頬にぴたっとくっつける。 「ひゃっ! ありがと!」 水筒を傾けると、キンと冷えた甘露が溢れ出し、レモンの香りと共に最上の喉を潤していく。 「ふーっ、生き返るぅ。長良のハチミツレモンは、本当に美味しいね!」 「間宮さん直伝だからね」 ひとくちふたくち味わって、もう一口飲んで、ようやく水筒を返す。 「でも何だろ、今日はいつもよりハチミツが薄目?」 「はぁ……ホントに最上ちゃん、何も気にしてないんだから……」 長柄のジトっとした非難めいた視線が、最上の身体の色んなところを突き刺す。 「長良ね、実は前から気になってたんだけど」 「え、僕?」 「そう、その……」 小さなためらいの後、長良は照れくさそうな早口で呟いた。 「最上ちゃん、いつもノーブラなの?」 「ノーブラ……ああ、うん。そうさ?」 長良の茶色い瞳が向かう先に気づいて、最上は事も無げに答えた。 タンクトップの襟元をぱたぱたしながら、そういえば……と思い出す。 「僕、ブラジャーって着けたことないなー」 「えぇっ、そうなの? 一回も?」 「一回も。だって持ってないし」 「まさか、一枚も?」 「一枚も」 ざぁ……んと、静かに寄せては返す波の音だけが、二人の間をすり抜けた。 長良はまるでその音を隠れ蓑にするかのように、座ったまま、そおっと少しだけ背伸びする。 そして、最上のはだけた襟元に視線を落とし―― 「あ、そ、そっか……そうなんだ。は、ハハハ……すみません」 ぎこちなく笑いながら、もじもじと膝を抱えて小さな三角座りになった。 「なんだい? 長良ってば、変なの!」 「だ、だから……すみません、ってば……」 「それじゃあ、そういう長良はブラジャーしてるっていうのかい?」 最上がたずねると、長良はもじもじしながら鎖骨の辺りをさすってみせる。 「長良は、してるよ? スポブラだけど」 「すぽ……ぶら?」 まったく聞いたことの無い単語だったが、心当たりにポンと最上が手を打つ。 「ああ、飛行機についてるアレ?」 「最上ちゃん、それスポイラー」 「違うの?」 「違う! ぜんっぜん違う!」 長良は「艦娘にスポイラー要らないでしょうが!」と不満そうに最上に詰め寄ると、 きょろきょろと周囲を伺い、意を決したようにセーラー服の襟元を引き下げ、中を広げて見せた。 「スポブラ! スポーツブラジャーのこと!」 最上は、長良の制服の暗がりの中に目を凝らす。石鹸とレモンの混じった香りの向こうに、 長良の胸をぴったりと覆っている桃色の下着が見えた。 「こ、これがスポブラだよ。分かったでしょっ!」 これ以上たまらないという感じで、長良はまたすぐに膝を抱えてしまった。 「ええっと……」 最上は思い出しながら、自分の胸の辺りでスカスカと手を動かし、ジェスチャーする。 「こう……肩紐とカップじゃなくて、何だろ。僕のよりもピッタリした、胸だけ覆った タンクトップ、みたいな……?」 「そう、そう!」 「そんなピタピタで、息苦しくないの?」 「ぜんっぜん! むしろ長良は動きやすいよ」 「ふーん?」 ――ホントかなあ? 生返事しつつ、最上はどうもピンとこなかった。 ――動きやすいって、胸が揺れないってことだよね? 一応ブラジャーだし。 今は外洋の任務にあたって鎮守府を離れている戦艦や、正規空母達なら話も分かる。 中にはドックの風呂に浮くような胸の持ち主さえいるのだ。あれを野放しにしておいたら、 両胸に水風船をぶら下げて動き回るような感覚になるのだろう。ブラジャーの必要性も頷ける。 しかし、長良の胸元はお世辞にも―― 「いやぁ、分かるよ? でもさ……っと、おおっと」 最上は慌てて自分の口を両手で押さえ、またしても飛び出しそうになった言葉を飲み込んだ。 「で、デリカシーデリカシー」 「も~が~み~ちゃ~ん~?」 急に周囲が暗くなり、最上ははっと頭上を仰ぎ――腰を抜かした。 そこには、歯をぎりぎり鳴らしながら涙目で最上を見下ろす、長柄の姿があった。 日輪を背負うその姿は、まさに護国の戦姫……いや大魔神である。 「わあっ、ななな、何だよ長良! 僕は何も言っていないだろッ!?」 「目は口ほどにモノを言うって言葉、知ってるよね……?」 長良の両手が、猛禽の爪のごとくワシワシと蠢いた。 今ならリンゴだろうと弾丸だろうと、豆腐のように握りつぶしそうだ。 「もう二度とブラなんかいらないように、長良が近代化改修してあげよっか……?」 その手が向かう先を察し、最上の背筋を冷たい汗が滴り落ちる。 「やっ、やめてよ長良! 早まるなって! きっとまだまだ大きくなるさ! ホントだよ!」 ブチィンと、長柄のハチマキが音を立てて千切れた。 「うううううるさーい! もう遅い遅い遅いッ! そんな言い訳、ぜんっぜん遅――」 パッパラッパラッパラッパパッパラー! 長良が最上に飛び掛らんとしようとした、まさにその時。 秋晴れの鎮守府に、スピーカーを通して乾いたラッパの音が轟いた。 その瞬間だった。 ばし、ばしばしばしいいいっ! 背中に、赤く鋭い雷のような衝動がほとばしり、最上は思わず「ひうっ」と声を上げた。 尻餅をついたままの最上をよそに、長良もその場に慄然と立ち尽くし、鎮守府の高台にある スピーカーを食い入るように見つめている。 ラッパの音がこだまするたびに、最上の頭の中で、胸の奥で、幾つものギアが次々と 噛み合い、海原を切り裂く鋼鉄の塊が動き出す轟音が迫る。きっと長良も同じだろう。 「「非常呼集……!」」 ランニングも。 ハチミツレモンも。 デリカシーも。 ブラジャーも。 そして、ふたりのわだかまりさえも。 艦娘たちのひとときの『非日常』は、ラッパの音がもたらす『日常』によって、既に遠く、 遥か夢の向こうへと追いやられていた。 そしてその代わりに、自分の中の『軍艦』が姿を現し、全身に熱い血を送り込んでゆく。 これが自分の本性なのかどうなのか、最上には分からない。 しかし、最上は感じるのだ。 ビーズを蒔いたようにきらめく水平線の彼方に迫る、倒すべき存在の陰、深海棲艦の姿を。 最上は長良に差し伸べられた手を取って立ち上がり、お互い目配せで「うん」と頷くと、 ここまで走ったときの何倍もの猛ダッシュで、営舎への道を引き返した。 背中を押し、大地を蹴る足を動かす、内なる衝動が命じるままに。 そう、心震わせる、あの『抜錨』の瞬間を求めて――。 =えんど=
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前回の話 「吹雪に魚雷の扱い方を教えてやれ」 重雷装艦となって間もない私たちが、提督に呼び出された。 早速重雷装艦の戦力が理解される時が来たかと思ったが、提督は私のそんな期待を切り捨てる命令を吐いた。 なんでそんな雑用のような任務をしなければいけないのか。 私はこの男に聞こえないよう小さく舌打ちした。 「うーん……」 北上さんが唸る。 こんなかったるい任務、断っちゃって。お願いよ。 心の中でそう念じたのが通じたのか、北上さんは横目で私に目配せする。 通じた? 通じたの? 通じたのよね!? しかし都合の悪いことに、北上さんが二の次を告げる前にこの男は動きやがったのだ。 「教えてやってくれ」 どういうわけか言葉遣いは少し腰の低いものに変わったが、私は一瞬にして憤りを感じた。 なんとその男は北上さんを一心に見つめ、あろうことか北上さんの両手を掴んで懇願してきたのだ。 私にとって存在そのものが気に食わないこの男が、私にとって大切な存在である北上さんに触れる。 そんな光景を見て私が我慢できるはずがなかった。 「なっ、あぁ貴方! 何してけつかる!! です!」 「は?」 思わず素の口調でものを言ってしまった。 この意識は別に上官である提督に対して無礼な態度を、ということではなく、 この男に素で接したくない、という精神的装甲に所以しての意識である。 何を言っているのか分からないことから察するに、この男の生まれは私と同じところではないらしい。 それだけは安心できた。 生まれが同じだと分かったらそれだけで反吐が出る自信がある。 提督は私へ首を回転させ、その顔を唖然とさせているらしい。顔は眉一つ動いていないけど。 ああ、その首が二度と回らないようにしてあげたいわ。 「い、いえ、なんでもありません」 「……嫌だってさ」 北上さんが私の言いたいことを言ってくれた。 そうよ。それでいいのよ。 任務受託を拒否してこの執務室を出て終わり。 そういう流れを期待したが、問屋はそうは卸さないらしい。 「なら大井が教えてやれ」 「……はあ?」 あらやだ。また素で返してしまったわ。 私の顔が、眉間が歪んでいることも自覚できる。 口調がよく崩れる奴だな、などと実は何も考えていないようにのんきに提督が呟いた。 「北上に教えさせるのが嫌ならお前がやれ。お前等なら他の艦より少しは分かるだろ」 「あら提督。この文書、出撃命令が書かれているではないですか。私たちなら簡単に敵を殲滅させられますよ」 艦種の名前が"重雷装巡洋艦"なんてものだから、それは考えなくとも分かっているのだろう。 魚雷を扱うなら私たちの右に出る者はいないと思われること自体は悪くない。 それだけの戦闘力があると分かっているなら使い方を間違えるな。私たちを暇にさせるな。 私は暗にそういう訴えを込めてちょうど執務机に置かれていた一枚の紙を掲げる。 「その任務は他の艦に遂行させる。今のお前等の任務は吹雪への講義であって出撃ではない」 「……なんですって?」 ああ、今魚雷が手元にあったら即座に振りかぶっていると思うわ。 私たちは戦闘としては使い物にならないと? 馬鹿にするな。 どちらかと言えば旧式艦に分類される私たちでもいい戦力を持っているのに、 もはや"特型駆逐艦"とかいう たすきが藻屑塗れになっているあの役立たずの詐欺艦は、教えたって無駄よ。 しかし口には出さない。 私が抑えて黙っているのをいいことに、この男は私を睨むかのように真顔で見つめ調子に乗り始める。 「大井は教える事自体が嫌だと言うなら、お前のこれからの処遇を少し厳しく検討せねばならなくなるのだがな」 こんな無能な男の下に配備されるとは、運命とはとても残酷なものだ。 艦隊を組んでも鎮守府周辺海域を徘徊させる事しかできないこの男も "提督"という たすきが煤塗れになっているくせになんて生意気な。 はっきりと戦果を示せないのに大口を叩くだけの上官は最悪だ。 黒い感情に任せて提督へ目を尖らせる。 しかし提督は張り合っているのかいないのか真顔のまま。 鳥のさえずりさえ入ってこない険悪な睨めっこが続く。 それを中断させたのは傍らの北上さんだった。 「……あーもうやめやめ! 大井っちは少し協力しないと駄目だよ。吹雪にはあたしが教えて……」 「私がやります」 即座に私は北上さんの言葉を遮るように被せた。 ごめんなさい北上さん。でもここは私に任せて。 不本意ながら気に食わないこの男に協力する形になってしまうが、背に腹は変えられない。 提督の言う"処遇"がどういったものか鋭く推測はできないけど、 将来的にこの男が私を残して北上さんだけ艦隊に組み込むような事でもあれば私は発狂する。 「北上さんの手を煩わせるくらいなら、私がやります。……提督のさっきの言葉、覚えておきますからね? 下手な指揮で負けておめおめと帰投させるような事があれば、ただじゃおきませんから」 「そうかい。ではそんな事になったら私は暫く雲隠れしておくさ。吹雪の事は頼んだぞ」 渋々ながら任務を受託すると分かったとたん、この男は淡々と踵を返して椅子へ戻っていった。 この男は私の攻撃を回避することが得意らしい。 ああ腹立たしい。気に食わない。 この男がいる部屋には長居したくないので、北上さんの腕を掴んで礼もせず執務室を後にする。 「……行きましょう、北上さん」 「大井っち、痛いってば」 「はあ、はあ……、あ、ありがとうございました……」 「明日もやりますからね」 海上で、満身創痍で息絶え絶えながら頭を下げた吹雪ちゃんに、私は岸壁からそう告げる。 満身創痍といっても、敵が出たとか私たちが相手になって戦闘演習を行ったとかではない。 自分で何度も派手に転覆したり的に衝突しただけだ。 話を聞いただけでも出撃どころか遠征さえ縁がなさそうな艦だと思ってはいたけど。 ――やる気はあるし勉強もしているみたいだけど実技では……。特型とは言うけど大丈夫かしら―― 「なんだかんだ言って、大井っち途中から熱入ってたよね~」 私は横から飛来した北上さんの言葉で我に返った。 私は無意識に顎から当てていた手を離し、弁明に努める。 「えっ!? だ、だって、提督がどうしてもやれって言うから!」 「明日もやれとは言ってなかったと思うけどね」 「この先一緒に出撃して足を引っ張られるような事にでもなったら困るのよ! 全く!」 …………………… ………… …… 「という具合にさ~」 「もう! やめてよ北上さん!」 あの頃とは違い、今や執務室は畳張りとなった。 私は左舷で炬燵の中で胡坐を掻く北上さんを制止する。 恥ずかしいからそんな昔の話は持ち出さないでほしいと訴えかけるばかりだ。 終始話を聞く事に徹していた対面の提督は私へ疑問を投げかける。 「一つ聞きたいのだが、あの時の"何してけつかる"とはどういう意味だ?」 「近畿の方言で、"何してくれてんの"という罵倒です」 そう説明したとたん、提督は顔を歪ませた。 あの頃から見ればこの人は驚くほど感情を露わにするようになった。 嬉しくないといえばそれは嘘になるのだけど、今ばかりはあまりいい気持ちではない。 私は目を細めて問いただす。 「……ニヤニヤしてどうしたんですか、気持ち悪いですよ」 「だそうだ、北上よ」 そこで北上さんに振る意味が分からない。 即座にそちらを見やると、北上さんも提督と同じように顔を歪ませていた。 ……何これ。私は見世物? 北上さんは俯いて暗い顔になってしまった。これ、私のせい? 「あたし気持ち悪いのか~。大井っちに嫌われちゃったな~」 「えっ? あっ、気持ち悪くないです! 嫌ってないです!」 ニヤニヤする北上さんも素敵です! 嫌う理由になりません! 嫌う可能性零です! 私の言葉で安心したのか北上さんは調子を戻す。 一つ安堵。したがここでも問屋は卸さないようだった。 「あちゃあ。提督の事は嫌いになっちゃったのか~」 「……そうか……。大井……」 ちょっと北上さん! 提督に自信喪失を移すのやめてください! 面倒臭いじゃないですか! 提督もいい年してそう軍帽が落ちるくらいに背中を丸めて俯くの、みっともないと思いませんか! 「"提督も愛してます"っていつも言ってるでしょう!」 「感情が篭ってないのだが」 「こっ、こういうのはむやみやたらに言うと価値が下がるんです!!」 激しく突っ込み役に回るばかり、私は言葉が矛盾してしまったかもしれない。 私は昂るあまり炬燵の天板に両手を突いて抗議していた。 やだ。少し顔が熱くなってきちゃった……。 炬燵か隅のダルマストーブ、少し焚き過ぎじゃないかしら……。 私が悶々としていると、急に北上さんは吹き出した。 「やっぱりさ。大井っちはからかうと面白いよね」 「分かっているじゃないか」 からかっていたの!? そして今までの話を私は全て真に受けていたと? 完全に見世物になってしまった。もう嫌だ。数分前の私を魚雷で殴って気絶させてやりたい。 この二人、こんなに意地悪だったかなあ……。 あの頃からは想像つかないが、この二人は意外と相性がいい。 改めて意気投合したらしい提督と北上さんは自然と同時に強く握手を交わした。 私、置物にされていないかしら。いや、見世物だったわね。 それから何故か提督と北上さんから同時に視線を向けられる。 何ですか。その、私が不調に見えるかのような顔は。 「……おや、もう言わないのかな? "何してけつかる!!"」 「"何してけつかる!!"」 「やめてください!!」 好き勝手に振舞う提督と、それに便乗する北上さんを制止する任務を、 やはり不本意ながら遂行させる流れになってしまった。 この二人は、あの頃の私の事を回顧しているんだろう。 でも過去は過去で、今は今。 この人の存在そのものとか、提督が北上さんに触れることが気に食わないとか、 私はそういった思考回路をこの人に改装されてしまった。不本意ではなく本意で。 だから、今の私がこの光景を見て黒い感情を生む事はない。 北上さんだけでなく、提督も大切な人だから。 でも、私で遊ぶのはまた別の話ですからね? 私は引き続きこの二人を制止する任務に取り掛かった。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/