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概要 信義の槍-姉川の戦い-天国・第一陣-乱世の花 天国・第三陣-魔王の妹 初級・第一陣-盟約破棄 初級・第三陣-浅井と朝倉 中級・第一陣-長政の信義 中級・第三陣-盟友 上級・第一陣-市の想い 上級・第三陣-金ヶ崎撤退戦 地獄・第一陣-次なる戦場 地獄・第三陣-帰還 修羅・第一陣-姉川の戦い 修羅・第三陣-姉川十一段崩し 羅刹・第一陣-二人の鬼 羅刹・第二陣-市の覚悟 羅刹・第三陣-魔王との対峙 羅刹・第四陣-姉川の戦い・終幕 概要 第二章実装以降の合戦イベントで紹介札を獲得した時及び条件達成時に発生する、会話イベントの一覧。不自然な全角スペースの箇所は、作中の台詞における改行箇所に当たる。 信義の槍-姉川の戦い- 天国・第一陣-乱世の花 お市:あなたが浅井家の当主? とてもお優しい感じがする…… 浅井長政:いかにも! それがしが浅井家当主・浅井長政 にござる! 浅井長政:しかし、これは驚いた。これほど 美しい方だとは……実は家臣から、 「魔王の妹」と脅されていたのです 浅井長政:百聞は一見にしかず! こうして、顔を合わせてみないと わからないものだ お市:ええ、本当に 浅井長政:こんな可憐な人を妻に迎えられるとは この長政、天下一の幸せ者だ! 浅井長政:若輩者ゆえ至らぬところも多いが、 そなたのために力の限り尽くしたい お市:はい……私も妻としての務め、 果たしとうございます お市:お市殿…… いや、市よ。それがしを、 浅井家をよろしく頼む! 天国・第三陣-魔王の妹 磯野員昌:長政様、お市様は魔王と恐れられる 兄とは似ても似つかねえと聞いたん ですが。そりゃあ、本当の話ですか? 浅井長政:そうなのだ、員昌よ!それがしも、 市を見たときに言葉が出なかった…… 浅井長政:そう、それはまるで…… 目の前に天女が舞い降りたかと 思う程であった! 磯野員昌:長政様…… 天女って、表現はどーかと思うが…… 浅井長政:ああ、そうだな…… 天女よりもさらに素晴らしき存在だ! 今度、員昌にも紹介しよう! 磯野員昌:……まあ、長政様が幸せそうで 俺ぁ嬉しいですよ 初級・第一陣-盟約破棄 明智光秀:朝倉は再三の上洛命令を 無視しております 織田信長:無駄に抗うか…… 兵を挙げよ 明智光秀:信長様、朝倉に兵を挙げるとなると、浅井とお市様の婚儀の際に交わした 朝倉に攻め入らぬという盟約が…… 織田信長:ぬるいわ、光秀…… 織田信長:生を投げ捨てた朝倉よ うぬが望む未来、信長がくれてやろう 初級・第三陣-浅井と朝倉 真柄直隆:織田が当家に兵を向け、進軍 既に、金ヶ崎城が堕ちております 朝倉義景:直隆…… 火急、長政に報せを 真柄直隆:浅井と織田は同盟関係にある故、 我らに力添えなど期待できぬの ではありませぬか? 朝倉義景:長政は義を大切にする男…… 織田よりも長く続く、浅井と朝倉の 同盟を軽んじるはずがない 朝倉義景:私は信じているぞ…… 長政が掲げる信義を 中級・第一陣-長政の信義 ナレーション:織田信長が、浅井長政との盟約を破り 朝倉討伐に兵を動かした ナレーション:浅井家中は信長の盟約を守るべしと いう者と、朝倉を助けるべしとい う者に二分された 磯野員昌:長政様、俺ぁ、信長側に立つべきだと 思うぜ。好機を逃すような優柔不断 な朝倉じゃあ、先が知れている 浅井長政:義景殿が義兄上に討たれれば、皆が 手を取り、幸せに暮らせる世が 成らなくなる 浅井長政:それに…… 義景殿をお救いできるのは それがしだけ 浅井長政:それがしは義景殿を助け、 織田の背後を突き、義兄上から 天下を奪う浅井長政:その上で、それがしが、この手で皆が 幸せに暮らせる世を打ち立てよう と思う 磯野員昌:天下を奪う、か……随分と強気じゃ ねえか。だが、俺ぁ、長政様の天下 を見てみたいって思いますぜ 浅井長政:すまない、員昌 それがしのわがままに付き合わせて しまって 磯野員昌:水くせぇこと言わないでください! 長政様を支えんのが俺の役目ですぜ! 中級・第三陣-盟友 浅井長政:義景殿!盟友の義を果たすため、 浅井が力をお貸しいたします 朝倉義景:長政、頼もしい限りよ ……だが、本当にいいのか? 信長はお主の…… 浅井長政:義兄です ですが……貫くべき義が、 ここにあります 朝倉義景:すまぬ、長政…… 浅井長政:謝らないでくだされ。これは己の 信義を貫くための戦いでもあります 共に、戦いましょう!義景殿! 上級・第一陣-市の想い 浅井長政:まもなく、織田との戦が始まる…… 市、織田に戻ってくれ 浅井長政:市と義兄上と、それがし、皆が手を 取り、幸せに暮らせる世ができたら、 迎えに行く お市:長政様。市は…… 織田に戻りません! 浅井長政:……そなたを己の戦いに巻き込みた くない。だから、市…… それがしの話を聞き入れてくれ お市:いいえ、聞き入れることはできません お市:長政様に貫きたい義があるように、 わたしにも貫きたい想いがあります! 長政様の歩まれる道が私の道なのです! 浅井長政:………… ……わかった、もう何も言わない 行こう、二人で お市:はい、長政様! お市:……お兄様、ごめんなさい 上級・第三陣-金ヶ崎撤退戦 ナレーション:朝倉攻めの織田の陣中。朝倉家に 嫁いだお市から届け物が来た 松永久秀:これは……? 両の口が縛られた小豆。ふふ、何とも 心強き陣中見舞いでしょうか 織田信長:長政、抗う……か 織田信長:馬を引けい! 全軍、京へ目指して早駆けに 駆け抜けよ! 松永久秀:浅井長政が裏切るとは……両方の口が縛られている小豆は我ら のこと 松永久秀:朝倉と浅井に挟まれ、動けなくなる ということですかな。ふふ、ははは! 愉快な展開になってきましたねえ 松永久秀:撤退戦は人が多く死ぬ。これより、 この場は朱に染まるのですね くく……貴殿について参って良かった 織田信長:死線の先にこそ、我が望みはある ここで死する者なぞ……無価値! 地獄・第一陣-次なる戦場 磯野員昌:金ヶ崎で信長を仕留め損ねちまった か…… 浅井長政:いや、朝倉を救えた、 これだけで十分だ 磯野員昌:しかし、信長がこのまま黙って 引き下がるとは思えねな 浅井長政:ああ……わかっている。争いなき世を 作るため、それがしは義兄上を 迎え撃つ 浅井長政:義兄上…… 必ず、次の戦ではそれがしが勝ちます 地獄・第三陣-帰還 徳川家康:信長殿、互いに無事の帰還が叶い 何より……して、次の手はどうなさ るおつもりで? 織田信長:我らが向かう先、とうに決まっておる 朝倉……浅井を討つ 徳川家康:!? しかしながら、浅井には妹君の 市殿が…… 織田信長:市も、覚悟は出来てるであろう 兄を討たねば、望みは叶わぬ 織田信長:無論、留まることは許さぬ 乱世を共に興じよう、ぞ ……なあ、長政、市よ…… 修羅・第一陣-姉川の戦い ナレーション:金ヶ崎を逃げのびた織田信長は 報復として、浅井家に攻撃を 仕掛けていた 浅井長政:この戦で、勝ちを決したいな…… 皆が手を取り幸せに暮らせる世を 成すために 真柄直隆:それは我が主、義景様も 同じ考えである 真柄直隆:我が軍は夜のうちに移動 翌朝、姉川河岸の織田軍を強襲、 潰乱させる 真柄直隆:長政様の策はこの通りで よろしかったか 浅井長政:うむ。少々、無理をしても 勝たねば。姉川での戦が世の行く末 を決めるのだ 修羅・第三陣-姉川十一段崩し 磯野員昌:おらおらおらぁっ! 命が惜しくねえ奴からかかってきなあ! 豊臣秀吉:十三段に構えた陣が十一段まで破ら れてしもうた……それもたった ひとりの男に……まさに猛将 磯野員昌:おらおらおらっ! 信長の首まであと少しだあ! 豊臣秀吉:こ、こりゃあ、いかん!奴を止めねば! 信長様に絶対に近づけるな! 全員でかかれえー! 磯野員昌:へえ、まだ戦える奴がいんのかあ ……全員、まとめてあの世におくっ てやんぜえ! 羅刹・第一陣-二人の鬼 真柄直隆:織田に押されておるか ……さすが、魔王率いる軍よ 真柄直隆:……だが、これで終わりではない! わしの太郎太刀が徳川公の首、 頂戴する! 本多忠勝:返り血で染まった体、振り乱れし髪 ……その姿、まさに悪鬼が如く 相手に不足なし! 本多忠勝:本多平八郎忠勝、この蜻蛉斬にて、 太郎太刀ごと打ち破らん! 羅刹・第二陣-市の覚悟 柴田勝家:武器をお収めください。お市様に 戦場など、似合いませぬ お市:覚悟はできています。もちろん、 あなたと刀を交えることも…… 遠慮せず、向かってきなさい、勝家 柴田勝家:……それがお市様の望みですか お市:……勝家、ここは戦場 黙して戦うのです 柴田勝家:………… ……御意 羅刹・第三陣-魔王との対峙 ナレーション:奇襲作戦が功を奏し、初めは浅井側が 優勢であった。しかし時を刻む毎に 情勢は変わっていく ナレーション:織田側の兵の数も勝り、 浅井、朝倉は撤退を余儀なくされた 織田信長:信長を討たぬか、長政よ 浅井長政:それがしの望む世のため、義兄上は 討ちませぬ。それがしのやり方で 必ず、決着をつけてみせましょう 織田信長:ぬるい……己が信義を貫きたくば、 迷わず討て。それができぬのならば、 ここで朽ち果てよ 浅井長政:それがしは……義兄上を信じています。 いつの日か、手を取り合う日が くることを…… ナレーション:姉川の戦いは織田側の勝利で幕を 閉じたのだった 羅刹・第四陣-姉川の戦い・終幕 ナレーション:その後も、浅井は朝倉と共に織田を 攻めた。しかし、織田を倒すには 至らなかった お市:長政様、改まってお話とは 何でしょうか? 浅井長政:……市、織田に戻ってほしい お市:そんなの嫌です!どうしてそんなこ とを仰るのですか……!二人で行こ うと仰ったじゃないですか! 浅井長政:この戦いに勝ち、皆で手を取り合って 暮らせる世を築かねばならぬ ……これはそれがしの役目 浅井長政:だから、市…… それがしが迎えに行くまで、 待っていてくれ お市:長政様……! 浅井長政:市……娘たちを…… それがしと市との絆を頼む お市:………… ……はい 浅井長政:ありがとう、市 そなたは、それがし自慢の妻だ お市:……長政様 私は待っています。あなたを ずっと、ずっと……
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刑法 (明治四十年四月二十四日法律第四十五号) 最終改正:平成二五年一一月二七日法律第八六号 (最終改正までの未施行法令) 平成二十五年六月十九日法律第四十九号(未施行) 刑法別冊ノ通之ヲ定ム 此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム 明治十三年第三十六号布告刑法ハ此法律施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス (別冊) 第一編 総則 第一章 通則(第一条―第八条) 第二章 刑(第九条―第二十一条) 第三章 期間計算(第二十二条―第二十四条) 第四章 刑の執行猶予(第二十五条―第二十七条) 第五章 仮釈放(第二十八条―第三十条) 第六章 刑の時効及び刑の消滅(第三十一条―第三十四条の二) 第七章 犯罪の不成立及び刑の減免(第三十五条―第四十二条) 第八章 未遂罪(第四十三条・第四十四条) 第九章 併合罪(第四十五条―第五十五条) 第十章 累犯(第五十六条―第五十九条) 第十一章 共犯(第六十条―第六十五条) 第十二章 酌量減軽(第六十六条・第六十七条) 第十三章 加重減軽の方法(第六十八条―第七十二条) 第二編 罪 第一章 削除 第二章 内乱に関する罪(第七十七条―第八十条) 第三章 外患に関する罪(第八十一条―第八十九条) 第四章 国交に関する罪(第九十条―第九十四条) 第五章 公務の執行を妨害する罪(第九十五条―第九十六条の六) 第六章 逃走の罪(第九十七条―第百二条) 第七章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪(第百三条―第百五条の二) 第八章 騒乱の罪(第百六条・第百七条) 第九章 放火及び失火の罪(第百八条―第百十八条) 第十章 出水及び水利に関する罪(第百十九条―第百二十三条) 第十一章 往来を妨害する罪(第百二十四条―第百二十九条) 第十二章 住居を侵す罪(第百三十条―第百三十二条) 第十三章 秘密を侵す罪(第百三十三条―第百三十五条) 第十四章 あへん煙に関する罪(第百三十六条―第百四十一条) 第十五章 飲料水に関する罪(第百四十二条―第百四十七条) 第十六章 通貨偽造の罪(第百四十八条―第百五十三条) 第十七章 文書偽造の罪(第百五十四条―第百六十一条の二) 第十八章 有価証券偽造の罪(第百六十二条・第百六十三条) 第十八章の二 支払用カード電磁的記録に関する罪(第百六十三条の二―第百六十三条の五) 第十九章 印章偽造の罪(第百六十四条―第百六十八条) 第十九章の二 不正指令電磁的記録に関する罪(第百六十八条の二・第百六十八条の三) 第二十章 偽証の罪(第百六十九条―第百七十一条) 第二十一章 虚偽告訴の罪(第百七十二条・第百七十三条) 第二十二章 わいせつ、姦淫及び重婚の罪(第百七十四条―第百八十四条) 第二十三章 賭博及び富くじに関する罪(第百八十五条―第百八十七条) 第二十四章 礼拝所及び墳墓に関する罪(第百八十八条―第百九十二条) 第二十五章 汚職の罪(第百九十三条―第百九十八条) 第二十六章 殺人の罪(第百九十九条―第二百三条) 第二十七章 傷害の罪(第二百四条―第二百八条の二) 第二十八章 過失傷害の罪(第二百九条―第二百十一条) 第二十九章 堕胎の罪(第二百十二条―第二百十六条) 第三十章 遺棄の罪(第二百十七条―第二百十九条) 第三十一章 逮捕及び監禁の罪(第二百二十条・第二百二十一条) 第三十二章 脅迫の罪(第二百二十二条・第二百二十三条) 第三十三章 略取、誘拐及び人身売買の罪(第二百二十四条―第二百二十九条) 第三十四章 名誉に対する罪(第二百三十条―第二百三十二条) 第三十五章 信用及び業務に対する罪(第二百三十三条―第二百三十四条の二) 第三十六章 窃盗及び強盗の罪(第二百三十五条―第二百四十五条) 第三十七章 詐欺及び恐喝の罪(第二百四十六条―第二百五十一条) 第三十八章 横領の罪(第二百五十二条―第二百五十五条) 第三十九章 盗品等に関する罪(第二百五十六条・第二百五十七条) 第四十章 毀棄及び隠匿の罪(第二百五十八条―第二百六十四条) 第一編 総則 第一章 通則 (国内犯) 第一条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。 2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。 (すべての者の国外犯) 第二条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。 一 削除 二 第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪 三 第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪 四 第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪 五 第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪 六 第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪 七 第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪 八 第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪 (国民の国外犯) 第三条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。 一 第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪 二 第百十九条(現住建造物等浸害)の罪 三 第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪 四 第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪 五 第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪 六 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪 七 第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪 八 第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪 九 第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪 十 第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪 十一 第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪 十二 第二百三十条(名誉毀損)の罪 十三 第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第二百四十三条(未遂罪)の罪 十四 第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪 十五 第二百五十三条(業務上横領)の罪 十六 第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪 (国民以外の者の国外犯) 第三条の二 この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。 一 第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)及び第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)の罪 二 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪 三 第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪 四 第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪 五 第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪 六 第二百三十六条(強盗)及び第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)の罪並びにこれらの罪の未遂罪 (公務員の国外犯) 第四条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。 一 第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪 二 第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪 三 第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪 (条約による国外犯) 第四条の二 第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。 (外国判決の効力) 第五条 外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。 (刑の変更) 第六条 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。 (定義) 第七条 この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。 2 この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。 第七条の二 この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。 (他の法令の罪に対する適用) 第八条 この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。 第二章 刑 (刑の種類) 第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。 (刑の軽重) 第十条 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。 2 同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。 3 二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。 (死刑) 第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。 2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。 (懲役) 第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。 2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。 (禁錮) 第十三条 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。 2 禁錮は、刑事施設に拘置する。 (有期の懲役及び禁錮の加減の限度) 第十四条 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。 2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。 (罰金) 第十五条 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。 (拘留) 第十六条 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。 (科料) 第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。 (労役場留置) 第十八条 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。 2 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。 3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。 4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。 5 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。 6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。 (没収) 第十九条 次に掲げる物は、没収することができる。 一 犯罪行為を組成した物 二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物 三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物 四 前号に掲げる物の対価として得た物 2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。 (追徴) 第十九条の二 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。 (没収の制限) 第二十条 拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。 (未決勾留日数の本刑算入) 第二十一条 未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。 第三章 期間計算 (期間の計算) 第二十二条 月又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。 (刑期の計算) 第二十三条 刑期は、裁判が確定した日から起算する。 2 拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。 (受刑等の初日及び釈放) 第二十四条 受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。時効期間の初日についても、同様とする。 2 刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。 第四章 刑の執行猶予 (執行猶予) 第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。 一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。 (保護観察) 第二十五条の二 前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。 2 保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。 3 保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。 (執行猶予の必要的取消し) 第二十六条 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。 一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。 二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。 (執行猶予の裁量的取消し) 第二十六条の二 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。 一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。 二 第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。 (他の刑の執行猶予の取消し) 第二十六条の三 前二条の規定により禁錮以上の刑の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。 (猶予期間経過の効果) 第二十七条 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。 第五章 仮釈放 (仮釈放) 第二十八条 懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。 (仮釈放の取消し) 第二十九条 次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。 一 仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。 二 仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。 三 仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。 四 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。 2 仮釈放の処分を取り消したときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。 (仮出場) 第三十条 拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。 2 罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。 第六章 刑の時効及び刑の消滅 (刑の時効) 第三十一条 刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。 (時効の期間) 第三十二条 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。 一 無期の懲役又は禁錮については三十年 二 十年以上の有期の懲役又は禁錮については二十年 三 三年以上十年未満の懲役又は禁錮については十年 四 三年未満の懲役又は禁錮については五年 五 罰金については三年 六 拘留、科料及び没収については一年 (時効の停止) 第三十三条 時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。 (時効の中断) 第三十四条 懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。 2 罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。 (刑の消滅) 第三十四条の二 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。 2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。 第七章 犯罪の不成立及び刑の減免 (正当行為) 第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。 (正当防衛) 第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 (緊急避難) 第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。 (故意) 第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。 2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。 3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。 (心神喪失及び心神耗弱) 第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。 2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。 第四十条 削除 (責任年齢) 第四十一条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。 (自首等) 第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。 2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。 第八章 未遂罪 (未遂減免) 第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。 (未遂罪) 第四十四条 未遂を罰する場合は、各本条で定める。 第九章 併合罪 (併合罪) 第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。 (併科の制限) 第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。 2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。 (有期の懲役及び禁錮の加重) 第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 (罰金の併科等) 第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。 2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。 (没収の付加) 第四十九条 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。 2 二個以上の没収は、併科する。 (余罪の処理) 第五十条 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。 (併合罪に係る二個以上の刑の執行) 第五十一条 併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。 2 前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。 (一部に大赦があった場合の措置) 第五十二条 併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。 (拘留及び科料の併科) 第五十三条 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条の場合は、この限りでない。 2 二個以上の拘留又は科料は、併科する。 (一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理) 第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。 2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。 第五十五条 削除 第十章 累犯 (再犯) 第五十六条 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。 2 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。 3 併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。 (再犯加重) 第五十七条 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。 第五十八条 削除 (三犯以上の累犯) 第五十九条 三犯以上の者についても、再犯の例による。 第十一章 共犯 (共同正犯) 第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。 (教唆) 第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。 2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。 (幇助) 第六十二条 正犯を幇助した者は、従犯とする。 2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。 (従犯減軽) 第六十三条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。 (教唆及び幇助の処罰の制限) 第六十四条 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。 (身分犯の共犯) 第六十五条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。 2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。 第十二章 酌量減軽 (酌量減軽) 第六十六条 犯罪の情状に酌量すベきものがあるときは、その刑を減軽することができる。 (法律上の加減と酌量減軽) 第六十七条 法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。 第十三章 加重減軽の方法 (法律上の減軽の方法) 第六十八条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。 一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。 二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。 三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。 四 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。 五 拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。 六 科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。 (法律上の減軽と刑の選択) 第六十九条 法律上刑を減軽すべき場合において、各本条に二個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽する。 (端数の切捨て) 第七十条 懲役、禁錮又は拘留を減軽することにより一日に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。 (酌量減軽の方法) 第七十一条 酌量減軽をするときも、第六十八条及び前条の例による。 (加重減軽の順序) 第七十二条 同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。 一 再犯加重 二 法律上の減軽 三 併合罪の加重 四 酌量減軽 第二編 罪 第一章 削除 第七十三条 削除 第七十四条 削除 第七十五条 削除 第七十六条 削除 第二章 内乱に関する罪 (内乱) 第七十七条 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。 一 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。 二 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。 三 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。 (予備及び陰謀) 第七十八条 内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。 (内乱等幇助) 第七十九条 兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、七年以下の禁錮に処する。 (自首による刑の免除) 第八十条 前二条の罪を犯した者であっても、暴動に至る前に自首したときは、その刑を免除する。 第三章 外患に関する罪 (外患誘致) 第八十一条 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。 (外患援助) 第八十二条 日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。 第八十三条 削除 第八十四条 削除 第八十五条 削除 第八十六条 削除 (未遂罪) 第八十七条 第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。 (予備及び陰謀) 第八十八条 第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 第八十九条 削除 第四章 国交に関する罪 第九十条 削除 第九十一条 削除 (外国国章損壊等) 第九十二条 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。 (私戦予備及び陰謀) 第九十三条 外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。 (中立命令違反) 第九十四条 外国が交戦している際に、局外中立に関する命令に違反した者は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 第五章 公務の執行を妨害する罪 (公務執行妨害及び職務強要) 第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。 (封印等破棄) 第九十六条 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 (強制執行妨害目的財産損壊等) 第九十六条の二 強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第三号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。 一 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為 二 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為 三 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為 (強制執行行為妨害等) 第九十六条の三 偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 2 強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。 (強制執行関係売却妨害) 第九十六条の四 偽計又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 (加重封印等破棄等) 第九十六条の五 報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 (公契約関係競売等妨害) 第九十六条の六 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 2 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。 第六章 逃走の罪 (逃走) 第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。 (加重逃走) 第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。 (被拘禁者奪取) 第九十九条 法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (逃走援助) 第百条 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。 2 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (看守者等による逃走援助) 第百一条 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百二条 この章の罪の未遂は、罰する。 第七章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪 (犯人蔵匿等) 第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 (証拠隠滅等) 第百四条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 (親族による犯罪に関する特例) 第百五条 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。 (証人等威迫) 第百五条の二 自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 第八章 騒乱の罪 (騒乱) 第百六条 多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。 一 首謀者は、一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。 二 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。 三 付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。 (多衆不解散) 第百七条 暴行又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三年以下の懲役又は禁錮に処し、その他の者は十万円以下の罰金に処する。 第九章 放火及び失火の罪 (現住建造物等放火) 第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 (非現住建造物等放火) 第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。 (建造物等以外放火) 第百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 (延焼) 第百十一条 第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。 2 前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百十二条 第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。 (予備) 第百十三条 第百八条又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。 (消火妨害) 第百十四条 火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 (差押え等に係る自己の物に関する特例) 第百十五条 第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。 (失火) 第百十六条 失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。 2 失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。 (激発物破裂) 第百十七条 火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。 2 前項の行為が過失によるときは、失火の例による。 (業務上失火等) 第百十七条の二 第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。 (ガス漏出等及び同致死傷) 第百十八条 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 2 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 第十章 出水及び水利に関する罪 (現住建造物等浸害) 第百十九条 出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を浸害した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。 (非現住建造物等浸害) 第百二十条 出水させて、前条に規定する物以外の物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 2 浸害した物が自己の所有に係るときは、その物が差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は保険に付したものである場合に限り、前項の例による。 (水防妨害) 第百二十一条 水害の際に、水防用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、水防を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 (過失建造物等浸害) 第百二十二条 過失により出水させて、第百十九条に規定する物を浸害した者又は第百二十条に規定する物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、二十万円以下の罰金に処する。 (水利妨害及び出水危険) 第百二十三条 堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為又は出水させるべき行為をした者は、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金に処する。 第十一章 往来を妨害する罪 (往来妨害及び同致死傷) 第百二十四条 陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (往来危険) 第百二十五条 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。 (汽車転覆等及び同致死) 第百二十六条 現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。 3 前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。 (往来危険による汽車転覆等) 第百二十七条 第百二十五条の罪を犯し、よって汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。 (未遂罪) 第百二十八条 第百二十四条第一項、第百二十五条並びに第百二十六条第一項及び第二項の罪の未遂は、罰する。 (過失往来危険) 第百二十九条 過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。 2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 第十二章 住居を侵す罪 (住居侵入等) 第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 第百三十一条 削除 (未遂罪) 第百三十二条 第百三十条の罪の未遂は、罰する。 第十三章 秘密を侵す罪 (信書開封) 第百三十三条 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 (秘密漏示) 第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 2 宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。 (親告罪) 第百三十五条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 第十四章 あへん煙に関する罪 (あへん煙輸入等) 第百三十六条 あへん煙を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 (あへん煙吸食器具輸入等) 第百三十七条 あへん煙を吸食する器具を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (税関職員によるあへん煙輸入等) 第百三十八条 税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したときは、一年以上十年以下の懲役に処する。 (あへん煙吸食及び場所提供) 第百三十九条 あへん煙を吸食した者は、三年以下の懲役に処する。 2 あへん煙の吸食のため建物又は室を提供して利益を図った者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 (あへん煙等所持) 第百四十条 あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を所持した者は、一年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百四十一条 この章の罪の未遂は、罰する。 第十五章 飲料水に関する罪 (浄水汚染) 第百四十二条 人の飲料に供する浄水を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 (水道汚染) 第百四十三条 水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 (浄水毒物等混入) 第百四十四条 人の飲料に供する浄水に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、三年以下の懲役に処する。 (浄水汚染等致死傷) 第百四十五条 前三条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (水道毒物等混入及び同致死) 第百四十六条 水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、二年以上の有期懲役に処する。よって人を死亡させた者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 (水道損壊及び閉塞) 第百四十七条 公衆の飲料に供する浄水の水道を損壊し、又は閉塞した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 第十六章 通貨偽造の罪 (通貨偽造及び行使等) 第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。 (外国通貨偽造及び行使等) 第百四十九条 行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。 (偽造通貨等収得) 第百五十条 行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百五十一条 前三条の罪の未遂は、罰する。 (収得後知情行使等) 第百五十二条 貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。 (通貨偽造等準備) 第百五十三条 貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 第十七章 文書偽造の罪 (詔書偽造等) 第百五十四条 行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。 (公文書偽造等) 第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。 3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 (虚偽公文書作成等) 第百五十六条 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。 (公正証書原本不実記載等) 第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 3 前二項の罪の未遂は、罰する。 (偽造公文書行使等) 第百五十八条 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 (私文書偽造等) 第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。 3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 (虚偽診断書等作成) 第百六十条 医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。 (偽造私文書等行使) 第百六十一条 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 (電磁的記録不正作出及び供用) 第百六十一条の二 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 3 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。 4 前項の罪の未遂は、罰する。 第十八章 有価証券偽造の罪 (有価証券偽造等) 第百六十二条 行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。 2 行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。 (偽造有価証券行使等) 第百六十三条 偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 第十八章の二 支払用カード電磁的記録に関する罪 (支払用カード電磁的記録不正作出等) 第百六十三条の二 人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。 2 不正に作られた前項の電磁的記録を、同項の目的で、人の財産上の事務処理の用に供した者も、同項と同様とする。 3 不正に作られた第一項の電磁的記録をその構成部分とするカードを、同項の目的で、譲り渡し、貸し渡し、又は輸入した者も、同項と同様とする。 (不正電磁的記録カード所持) 第百六十三条の三 前条第一項の目的で、同条第三項のカードを所持した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (支払用カード電磁的記録不正作出準備) 第百六十三条の四 第百六十三条の二第一項の犯罪行為の用に供する目的で、同項の電磁的記録の情報を取得した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。情を知って、その情報を提供した者も、同様とする。 2 不正に取得された第百六十三条の二第一項の電磁的記録の情報を、前項の目的で保管した者も、同項と同様とする。 3 第一項の目的で、器械又は原料を準備した者も、同項と同様とする。 (未遂罪) 第百六十三条の五 第百六十三条の二及び前条第一項の罪の未遂は、罰する。 第十九章 印章偽造の罪 (御璽偽造及び不正使用等) 第百六十四条 行使の目的で、御璽、国璽又は御名を偽造した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 御璽、国璽若しくは御名を不正に使用し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用した者も、前項と同様とする。 (公印偽造及び不正使用等) 第百六十五条 行使の目的で、公務所又は公務員の印章又は署名を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。 (公記号偽造及び不正使用等) 第百六十六条 行使の目的で、公務所の記号を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。 2 公務所の記号を不正に使用し、又は偽造した公務所の記号を使用した者も、前項と同様とする。 (私印偽造及び不正使用等) 第百六十七条 行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。 2 他人の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。 (未遂罪) 第百六十八条 第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項及び前条第二項の罪の未遂は、罰する。 第十九章の二 不正指令電磁的記録に関する罪 (不正指令電磁的記録作成等) 第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録 二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録 2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。 3 前項の罪の未遂は、罰する。 (不正指令電磁的記録取得等) 第百六十八条の三 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 第二十章 偽証の罪 (偽証) 第百六十九条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。 (自白による刑の減免) 第百七十条 前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。 (虚偽鑑定等) 第百七十一条 法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。 第二十一章 虚偽告訴の罪 (虚偽告訴等) 第百七十二条 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。 (自白による刑の減免) 第百七十三条 前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。 第二十二章 わいせつ、姦淫及び重婚の罪 (公然わいせつ) 第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 (わいせつ物頒布等) 第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。 2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。 (強制わいせつ) 第百七十六条 十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 (強姦) 第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。 (準強制わいせつ及び準強姦) 第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。 2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。 (集団強姦等) 第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。 (未遂罪) 第百七十九条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。 (親告罪) 第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。 (強制わいせつ等致死傷) 第百八十一条 第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。 3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。 (淫行勧誘) 第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 第百八十三条 削除 (重婚) 第百八十四条 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。 第二十三章 賭博及び富くじに関する罪 (賭博) 第百八十五条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。 (常習賭博及び賭博場開張等図利) 第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。 2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (富くじ発売等) 第百八十七条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。 2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。 第二十四章 礼拝所及び墳墓に関する罪 (礼拝所不敬及び説教等妨害) 第百八十八条 神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。 2 説教、礼拝又は葬式を妨害した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。 (墳墓発掘) 第百八十九条 墳墓を発掘した者は、二年以下の懲役に処する。 (死体損壊等) 第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。 (墳墓発掘死体損壊等) 第百九十一条 第百八十九条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (変死者密葬) 第百九十二条 検視を経ないで変死者を葬った者は、十万円以下の罰金又は科料に処する。 第二十五章 汚職の罪 (公務員職権濫用) 第百九十三条 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。 (特別公務員職権濫用) 第百九十四条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。 (特別公務員暴行陵虐) 第百九十五条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。 2 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。 (特別公務員職権濫用等致死傷) 第百九十六条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (収賄、受託収賄及び事前収賄) 第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。 2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。 (第三者供賄) 第百九十七条の二 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。 (加重収賄及び事後収賄) 第百九十七条の三 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。 2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。 3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。 (あっせん収賄) 第百九十七条の四 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。 (没収及び追徴) 第百九十七条の五 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。 (贈賄) 第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。 第二十六章 殺人の罪 (殺人) 第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 第二百条 削除 (予備) 第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。 (自殺関与及び同意殺人) 第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。 (未遂罪) 第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。 第二十七章 傷害の罪 (傷害) 第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (傷害致死) 第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。 (現場助勢) 第二百六条 前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (同時傷害の特例) 第二百七条 二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。 (暴行) 第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 (凶器準備集合及び結集) 第二百八条の二 二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 2 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。 第二十八章 過失傷害の罪 (過失傷害) 第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 (過失致死) 第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。 (業務上過失致死傷等) 第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。 第二十九章 堕胎の罪 (堕胎) 第二百十二条 妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。 (同意堕胎及び同致死傷) 第二百十三条 女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (業務上堕胎及び同致死傷) 第二百十四条 医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。 (不同意堕胎) 第二百十五条 女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 (不同意堕胎致死傷) 第二百十六条 前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 第三十章 遺棄の罪 (遺棄) 第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。 (保護責任者遺棄等) 第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。 (遺棄等致死傷) 第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 第三十一章 逮捕及び監禁の罪 (逮捕及び監禁) 第二百二十条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 (逮捕等致死傷) 第二百二十一条 前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 第三十二章 脅迫の罪 (脅迫) 第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。 (強要) 第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。 2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。 3 前二項の罪の未遂は、罰する。 第三十三章 略取、誘拐及び人身売買の罪 (未成年者略取及び誘拐) 第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 (営利目的等略取及び誘拐) 第二百二十五条 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 (身の代金目的略取等) 第二百二十五条の二 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。 (所在国外移送目的略取及び誘拐) 第二百二十六条 所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。 (人身売買) 第二百二十六条の二 人を買い受けた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 未成年者を買い受けた者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 3 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 4 人を売り渡した者も、前項と同様とする。 5 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二年以上の有期懲役に処する。 (被略取者等所在国外移送) 第二百二十六条の三 略取され、誘拐され、又は売買された者を所在国外に移送した者は、二年以上の有期懲役に処する。 (被略取者引渡し等) 第二百二十七条 第二百二十四条、第二百二十五条又は前三条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 第二百二十五条の二第一項の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 3 営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、又は蔵匿した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 4 第二百二十五条の二第一項の目的で、略取され又は誘拐された者を収受した者は、二年以上の有期懲役に処する。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする。 (未遂罪) 第二百二十八条 第二百二十四条、第二百二十五条、第二百二十五条の二第一項、第二百二十六条から第二百二十六条の三まで並びに前条第一項から第三項まで及び第四項前段の罪の未遂は、罰する。 (解放による刑の減軽) 第二百二十八条の二 第二百二十五条の二又は第二百二十七条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。 (身の代金目的略取等予備) 第二百二十八条の三 第二百二十五条の二第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。 (親告罪) 第二百二十九条 第二百二十四条の罪、第二百二十五条の罪及びこれらの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びに同条第三項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、営利又は生命若しくは身体に対する加害の目的による場合を除き、告訴がなければ公訴を提起することができない。ただし、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときは、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がない。 第三十四章 名誉に対する罪 (名誉毀損) 第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。 (公共の利害に関する場合の特例) 第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。 2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。 3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。 (侮辱) 第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。 (親告罪) 第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。 第三十五章 信用及び業務に対する罪 (信用毀損及び業務妨害) 第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (威力業務妨害) 第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。 (電子計算機損壊等業務妨害) 第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 第三十六章 窃盗及び強盗の罪 (窃盗) 第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (不動産侵奪) 第二百三十五条の二 他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。 (強盗) 第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 (強盗予備) 第二百三十七条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。 (事後強盗) 第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。 (昏酔強盗) 第二百三十九条 人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。 (強盗致死傷) 第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。 (強盗強姦及び同致死) 第二百四十一条 強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。 (他人の占有等に係る自己の財物) 第二百四十二条 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。 (未遂罪) 第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで及び第二百三十八条から第二百四十一条までの罪の未遂は、罰する。 (親族間の犯罪に関する特例) 第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。 2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。 (電気) 第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。 第三十七章 詐欺及び恐喝の罪 (詐欺) 第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 (電子計算機使用詐欺) 第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。 (背任) 第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (準詐欺) 第二百四十八条 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。 (恐喝) 第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 (未遂罪) 第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。 (準用) 第二百五十一条 第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪について準用する。 第三十八章 横領の罪 (横領) 第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。 2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。 (業務上横領) 第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。 (遺失物等横領) 第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (準用) 第二百五十五条 第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。 第三十九章 盗品等に関する罪 (盗品譲受け等) 第二百五十六条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。 2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。 (親族等の間の犯罪に関する特例) 第二百五十七条 配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。 2 前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。 第四十章 毀棄及び隠匿の罪 (公用文書等毀棄) 第二百五十八条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 (私用文書等毀棄) 第二百五十九条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。 (建造物等損壊及び同致死傷) 第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (器物損壊等) 第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (自己の物の損壊等) 第二百六十二条 自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。 (境界損壊) 第二百六十二条の二 境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (信書隠匿) 第二百六十三条 他人の信書を隠匿した者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (親告罪) 第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 附 則 (昭和一六年三月一二日法律第六一号) 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム 附 則 (昭和二二年一〇月二六日法律第一二四号) ○1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から、これを施行する。 ○2 第二十六条第二項の改正規定は、刑の執行猶予の言渡を受けた者がこの法律施行前に更に罪を犯した場合については、これを適用しない。 ○3 第三十四条ノ二の改正規定は、この法律施行前に刑の言渡又は刑の免除の言渡を受けた者にもこれを適用する。 ○4 この法律施行前の行為については、刑法第五十五条、第二百八条第二項、第二百十一条後段、第二百四十四条及び第二百五十七条の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。 附 則 (昭和二八年八月一〇日法律第一九五号) 抄 1 この法律の施行期日は、昭和二八年十二月三十一日までの間において政令で定める。 附 則 (昭和二九年四月一日法律第五七号) 抄 1 この法律は、昭和二九年八月三十一日までの間において政令で定める日から施行する。但し、刑法第一条第二項の改正規定及び附則第三項の規定は、公布の日から施行する。 2 この法律による改正後の刑法第二十五条ノ二第一項前段の規定は、この法律の施行前に犯された罪については、適用しない。但し、その罪とこの法律の施行後に犯された罪とにつき、刑法第四十七条又は第四十八条第二項の規定を適用して処断すべきときは、この限りでない。 附 則 (昭和三三年四月三〇日法律第一〇七号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 この法律の施行前の行為については、なお従前の例による。 3 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百五条ノ二、第百九十八条第二項及び第二百八条ノ二第一項の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。 附 則 (昭和三五年五月一六日法律第八三号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第二百六十二条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。 附 則 (昭和三九年六月三〇日法律第一二四号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 この法律の施行前にした行為については、この法律による改正後の刑法第二百二十八条ノ二及び第二百二十九条の規定にかかわらず、なお従前の例による。 附 則 (昭和四三年五月二一日法律第六一号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律の施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律の施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定を適用することが改正前の同条の規定を適用するよりも犯人に不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定を適用する。 3 前項の規定は、この法律の施行前に確定した裁判の執行につき従前の例によることを妨げるものではない。 附 則 (昭和五五年四月三〇日法律第三〇号) この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (昭和六二年六月二日法律第五二号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第一条中刑法第四条の次に一条を加える改正規定、第二条及び第三条の規定並びに次項の規定及び附則第四項中新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五十三年法律第四十二号)第二条第一項第十一号の改正規定は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約又は人質をとる行為に関する国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。 (経過措置) 2 改正後の刑法第四条ノ二の規定並びに人質による強要行為等の処罰に関する法律第五条及び暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第三項の規定(刑法第四条ノ二に係る部分に限る。)は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に日本国について効力を生ずる条約並びに戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約、海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約及び戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約により日本国外において犯したときであつても罰すべきものとされる罪に限り適用する。 (罰金等臨時措置法の適用) 3 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百六十一条ノ二及び第二百三十四条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。 附 則 (平成三年四月一七日法律第三一号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (条例の罰則に関する経過措置) 2 条例の罰則でこの法律の施行の際現に効力を有するものについては、この法律による改正後の刑法第十五条及び第十七条の規定にかかわらず、この法律の施行の日から一年を経過するまでは、なお従前の例による。その期限前にした行為に対してこれらの罰則を適用する場合には、その期限の経過後においても、同様とする。 (罰金の執行猶予の限度に関する経過措置) 3 この法律による改正後の刑法第二十五条の規定は、この法律の施行前にした行為についても、適用する。 附 則 (平成七年五月一二日法律第九一号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰並びに施行前に確定した裁判の効力及びその執行については、なお従前の例による。ただし、この法律による改正前の刑法第二百条、第二百五条第二項、第二百十八条第二項及び第二百二十条第二項の規定の適用については、この限りでない。 2 前項の規定にかかわらず、併合罪として処断すべき罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがあるときは、この法律による改正後の刑法(以下この条において「新法」という。)第十条、第十四条、第四十五条から第五十条まで及び第五十三条の規定を適用し、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる場合において、これらの罪名に触れる行為にこの法律の施行前のものと施行後のものがあるときは、新法第十条及び第五十四条(同条第二項において適用する第四十九条第二項を含む。)の規定を適用する。 3 前項の規定により同項に規定する新法の規定を適用した後の刑の加重減軽、刑の執行の猶予その他の主刑の適用に関する処理については、新法の規定を適用する。 附 則 (平成一三年七月四日法律第九七号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 附 則 (平成一三年一二月五日法律第一三八号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。 附 則 (平成一三年一二月一二日法律第一五三号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (処分、手続等に関する経過措置) 第四十二条 この法律の施行前に改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において同じ。)の規定によってした処分、手続その他の行為であって、改正後のそれぞれの法律の規定に相当の規定があるものは、この附則に別段の定めがあるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相当の規定によってしたものとみなす。 (罰則に関する経過措置) 第四十三条 この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 (経過措置の政令への委任) 第四十四条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。 附 則 (平成一五年七月一八日法律第一二二号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律による改正後の刑法第三条の二の規定並びに附則第三条による改正後の暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第三項及び附則第四条による改正後の人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)第五条の規定(刑法第三条の二に係る部分に限る。)は、この法律の施行前にした行為については、適用しない。 附 則 (平成一五年八月一日法律第一三八号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 附 則 (平成一六年六月一八日法律第一一五号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、第一追加議定書が日本国について効力を生ずる日から施行する。ただし、附則第三条の規定は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 附 則 (平成一六年一二月八日法律第一五六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 第三条 この法律の施行前にした第一条の規定による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第二百四十条の罪に当たる行為の処罰については、なお従前の例による。 2 この法律の施行前に犯した罪の公訴時効の期間については、第二条の規定による改正後の刑事訴訟法第二百五十条の規定にかかわらず、なお従前の例による。 第四条 併合罪として処断すべき罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがある場合において、これらの罪について刑法第四十七条の規定により併合罪として有期の懲役又は禁錮の加重をするときは、旧法第十四条の規定を適用する。ただし、これらの罪のうちこの法律の施行後に犯したもののみについて第一条の規定による改正後の刑法第十四条の規定を適用して処断することとした場合の刑が、これらの罪のすべてについて旧法第十四条の規定を適用して処断することとした場合の刑より重い刑となるときは、その重い刑をもって処断する。 附 則 (平成一七年五月二五日法律第五〇号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (検討) 第四十一条 政府は、施行日から五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。 附 則 (平成一七年六月二二日法律第六六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (調整規定) 第二条 この法律の施行の日が犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律の施行の日前である場合には、第一条のうち刑法第三条第十二号及び第三条の二第五号の改正規定中「第三条第十二号」とあるのは「第三条第十一号」とし、第四条のうち組織的犯罪処罰法第三条第一項第八号の改正規定中「第三条第一項第八号」とあるのは「第三条第一項第四号」とする。 第三条 この法律の施行の日が犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律の施行の日前である場合には、同法の施行の日の前日までの間における組織的犯罪処罰法別表の規定の適用については、同表第二号ワ中「国外移送目的略取等、被略取者収受等」とあるのは、「所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等」とする。 第四条 この法律の施行の日が旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律第一条中旅券法第二十三条の改正規定の施行の日前である場合には、当該改正規定の施行の日の前日までの間における第三条の規定による改正後の出入国管理及び難民認定法第二十四条第四号ニ及びヨ並びに第二十四条の二第二号の規定の適用については、同法第二十四条第四号ニ中「旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第二十三条第一項(第六号を除く。)から第三項までの罪により刑に処せられた者」とあるのは「削除」とし、同号ヨ中「イからカまで」とあるのは「イからハまで及びホからカまで」とし、同法第二十四条の二第二号中「第四号ハ」とあるのは「第四号ハ及びホ」とする。 2 附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日が旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律第一条中旅券法第二十三条の改正規定の施行の日前である場合には、当該改正規定の施行の日の前日までの間における第三条の規定による改正後の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の二第一項第三号及び第六十一条の二の四第一項第五号の規定の適用については、これらの規定中「第四号ハ」とあるのは、「第四号ハ及びホ」とする。 第五条 附則第一条第四号に掲げる規定の施行の日が旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律第二条の規定の施行の日前である場合には、第四条のうち、組織的犯罪処罰法第二条第二項第一号イの改正規定中「別表第一第一号、第二号若しくは第四号から第六号まで」を「別表第一(第三号を除く。)」とあるのは「、第四号若しくは第五号」を「若しくは第四号から第九号まで」とし、組織的犯罪処罰法別表第一第四号ニ中「ト」を「ル」に改め、同号ト中「ヘ」を「ヌ」に改め、同号中トをルとし、ヘをヌとし、ホをヘとし、ヘの次にト、チ及びリを加える改正規定中「別表第一第四号ニ中「ト」を「ル」に改め、同号ト中「ヘ」を「ヌ」に改め、同号中トをルとし、」とあるのは「別表第一第四号ニ中「ヘ」を「ヌ」に改め、同号ヘ中「ホ」を「リ」に改め、同号中」とし、組織的犯罪処罰法別表第一中第六号を第十号とし、第五号を第六号とし、同号の次に三号を加える改正規定中「第六号を第十号とし、第五号」とあるのは「第五号」とする。 2 前項の場合において、旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律第二条のうち、組織的犯罪処罰法第二条第二項第一号イの改正規定中「、第四号若しくは第五号」を「若しくは第四号から第六号まで」とあるのは「別表第一第一号、第二号若しくは第四号から第九号まで」を「別表第一(第三号を除く。)」とし、組織的犯罪処罰法別表第一第四号ニ中「ヘ」を「ト」に改め、同号ヘ中「ホ」を「ヘ」に改め、同号中ヘをトとし、ホの次にヘを加える改正規定中「別表第一第四号ニ中「ヘ」を「ト」に改め、同号ヘ中「ホ」を「ヘ」に改め、同号中ヘをトとし、ホ」とあるのは「別表第一第四号ニ中「ヌ」を「ル」に改め、同号ヌ中「リ」を「ヌ」に改め、同号中ヌをルとし、リ」とし、「ヘ 旅券法」とあるのは「ヌ 旅券法」とし、組織的犯罪処罰法別表第一に一号を加える改正規定中「六 旅券法」とあるのは「十 旅券法」とする。 (罰則に関する経過措置) 第十条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 附 則 (平成一八年五月八日法律第三六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 次に掲げる罰金又は科料の執行(労役場留置の執行を含む。)については、第一条の規定による改正後の刑法第十八条の規定にかかわらず、なお従前の例による。 一 この法律の施行前にした行為について科せられた罰金又は科料 二 刑法第四十八条第二項の規定により併合罪として処断された罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがある場合において、これらの罪に当たる行為について科せられた罰金 附 則 (平成一九年五月二三日法律第五四号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。 附 則 (平成二二年四月二七日法律第二六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前に確定した刑の時効の期間については、第一条の規定による改正後の刑法第三十一条、第三十二条及び第三十四条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。 附 則 (平成二三年六月二四日法律第七四号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 附 則 (平成二五年六月一九日法律第四九号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (経過措置) 第二条 第一条の規定による改正後の刑法第二十七条の二第一項の規定は、この法律の施行前にした行為についても、適用する。 2 第三条の規定による改正後の更生保護法第五十一条第二項第六号(売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第二十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、前条ただし書に規定する規定の施行前に次に掲げる決定又は言渡しを受け、これにより保護観察に付されている者に対する当該保護観察については、適用しない。 一 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第二十四条第一項第一号の保護処分の決定 二 少年院からの仮退院を許す旨の決定 三 仮釈放を許す旨の決定 四 刑法第二十五条の二第一項の規定による保護観察に付する旨の言渡し 五 婦人補導院からの仮退院を許す旨の決定 3 第三条の規定による改正後の更生保護法第四十九条第一項及び第六十五条の三の規定は、この法律の施行前に前項各号に掲げる決定又は言渡しを受け、これにより保護観察に付されている者に対する当該保護観察については、適用しない。 附 則 (平成二五年一一月二七日法律第八六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (罰則の適用等に関する経過措置) 第十四条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 第十五条 前条の規定によりなお従前の例によることとされる附則第二条の規定による改正前の刑法第二百十一条第二項の罪は、附則第三条の規定による改正後の刑事訴訟法第三百十六条の三十三第一項の規定の適用については同項第四号に掲げる罪と、附則第四条の規定による改正後の少年法第二十二条の四第一項の規定の適用については同項第三号に掲げる罪とみなす。 第十六条 この法律の施行前に附則第二条の規定による改正前の刑法第二百八条の二(附則第十四条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における当該規定を含む。)の罪を犯した者に対する附則第五条の規定による改正後の出入国管理及び難民認定法第五条第一項第九号の二、第二十四条第四号の二、第二十四条の三第三号、第六十一条の二の二第一項第四号及び第六十一条の二の四第一項第七号の規定の適用については、これらの規定中「第十六条の罪又は」とあるのは「第十六条の罪、」と、「第六条第一項」とあるのは「第六条第一項の罪又は同法附則第二条の規定による改正前の刑法第二百八条の二(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律附則第十四条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における当該規定を含む。)」とする。
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ナレーション 長政を失い、 織田家に連れ戻されたお市は、 失意を癒す暇さえも与えられず ただ、人形のように 信長に従う日々を送っていた。 そして舞台は長篠、 織田軍と武田軍との決戦の場に 儚きお市の姿があった。 お市「長政さまが死んでしまったのは、市のせい… この罪の重さに…息が出来ない…」 『咽べ我が魂』 長篠銃撃戦 開始 信長「行くぞ」 お市「……」 (信長、お市に向かって発砲。お市の顔の横を銃弾が掠める) お市「……」 開始 信長「行けい…獣の波を滅してみせよ」 お市「できません…市にこの波は渡れない…」 信長「ならば溺れぬよう、足掻け!」 武田軍武将「戦国最強の武田騎馬隊とは我らのことよ! いざ参る!」 武田騎馬軍 襲来 武田騎馬隊を殲滅せよ! 信玄「血を分けた妹をも戦に出そうとは 尾張の…そなたのやること、分からぬ」 信長「フン…あれは余の思うがまま 言葉を知らぬ無邪気な赤子よ」 織田軍武将「皆の者! 銃撃開始だ! 撃て! 撃ちつくせ!」 鉄砲隊 銃撃開始 幸村「佐助、その女人は何者だ?」 佐助「魔王の妹…まさか織田に戻ってたとはね」 お市「市…こんな所で何をしているんだろう…」 お市「市のせいで、長政さまは死んでしまった…」 信玄「出でよ、佐助! この状況に埒を明けよ!」 佐助「まかせな大将! いざ、霧隠の術!」 奥義 霧隠 信玄「フッフッフ…佐助め、霧を出したか」 織田軍武将「霧のため銃撃不可能! 申し訳ございませぬ!」 信長「小賢しき虫どもめ!」 お市「長政さま、怒っているわ… 市が頑張らなかったから… きっと地獄で…市を恨んでいる…」 佐助「あんたが噂の魔王の妹、ね 悪いけど、手加減はしてやれないぜ」 お市「そんなのいらない…好きにすれば…」 佐助「一つ、勘で言わせてもらうよ あんた、あんまり苦しんでないだろ?」 お市「あなたに…市の気持ちなんて分からない…!」 信玄「むう、やりよるわ! 武田騎馬隊、火の如く!」 ※佐助を倒す 佐助「旦那……すまねぇ…」 織田軍武将「おお! 霧が晴れたぞ! 銃撃開始だ! 撃てー! 撃ちつくせ!」 ―味方軍 援護射撃再開 信玄「ぬおっ、霧が! …佐助は失敗したか…」 信長「時代遅れの虎は消え去るがよい」 織田軍武将「弾幕というものを見せてやれ!」 信玄・幸村登場ムービー 幸村「参りましょうぞ、親方様!」 信玄「おう! いかいでか!」 ―最強師弟 武田信玄 真田幸村 織田軍兵士「浅井を撃ったのって、信長様なんだろ?」 信長「その女を侮るは余の血を侮るに同じ」 織田軍兵士「浅井はお市様をかばって死んだらしいぜ…」 お市「戦の馬たち…いっそ、市を踏み越えて…」 幸村「すまぬ、だがこれも戦…騎馬隊、奮えよ!」 信玄「背を失い、戦に身をやつすか…哀れよの」 お市「好きに言えばいいわ…勝手に哀れんで…」 信長「人並みに嘆くなど貴様の役目にはあらず」 お市「はい…わかってます…」 信長「貴様に群がる虫共を斬り捨てい」 幸村「この暗き情念…まこと、人の心か…?」 信長「貴様に足りぬは血の歓喜よ」 信長「何を惑うか、余は斬れと言っておる」 信玄「尾張の…赤子に刃を持たせてなんとする」 幸村・信玄撃破 信長「この人形を飼い殺したか…長政、無能なり」 ムービー お市「あっ…ううっ…許して、長政さま… 市は、ただ…うっ…咽び泣くだけ…」
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ラノで見る(01の最初からになります) 桜子が家に戻ると、玄関には鍵がかかっていた。まだ聡実も帰っていないらしい。買い物か何かで時間がかかっているのだろう。 鍵を開けて家に入り、二階にある自分の部屋に行く。のろのろとボタンがすっかり無くなったブレザーを床の上に脱ぎ捨てると、桜子はばったりとベッドの上に倒れ込んだ。身体が重くだるい。 そのまま桜子は暫くじっとしていた。 どうしてこんな事になったのだろう、と改めて思う。 突拍子もない話をいきなり聞かされて、気がつけば、ずっとその為に勉強して、なんとか合格した志望校に進学するのではなく、東京の名前も知らない学校へ行く事になってしまった。そしてその理由が、わたしに何かの『資質』とやらがあって、『鬼』を呼び寄せるからだ、という。県庁の人や警察の人がいきなりやってきた。そして、そこに師範もいた。そういえばパパの会社の社長さんがどうとかも言っていた、気がする。なにしろ自分でも何がどうなっているのかよくわからない事だ。瑞穂にわかれというのが無理だったのかもしれない。 ただ、それにしても、瑞穂が投げつけてきた言葉は桜子には衝撃的だった。 あの子は何を考えていたんだろう。ずっと親友だと思っていたし、なんでも話した、――今回の事は別だが、殆どどんな事でも普通に話をしていた。瑞穂もそうだと思っていた。 しかし、今日桜子が見た瑞穂の姿は、いつも桜子が見ていた、大人しくて気が弱くて流されやすく、自分の方が悪くなくても、とりあえず「ごめんなさい」と言ってしまいがちな瑞穂の姿とは違っていた。あんなに怒りを爆発させた姿を見たのは桜子ははじめてだったし、何より――、 (――面白くないんでしょう、あたしなんて! 今までだってそうだった!) (――ずっと前から知ってたよ!) 瑞穂の言葉が頭から離れない。 わたしは瑞穂と一緒にいたのが面白くなかったのだろうか? 瑞穂は何を知ってたんだろう? 桜子にはさっぱりわからなくなった。そもそも本当に友達だったのだろうか。自分がそうだと思っていただけ。あるいは自分がそうだと思いこもうとしていただけ。そういうことだったのか。 気がつくと目から涙が溢れ出ていた。 「あ――」眼鏡が涙で濡れている。レンズに涙の水たまりが出来ていた。桜子はティッシュボックスを探して、眼鏡を拭いた。そうしている間も涙が止まらなかった。悲しいという気分もどこか虚ろだったが、涙はそれでも流れ出てきて、桜子の頬をぬらした。 「止まらないな――、駄目だこれ――」 桜子は階段を下りて、洗面台に走っていった。そして思いっきり水を出して、顔を洗う。勢いが強すぎて、白いブラウスにも水飛沫がかかった。二度三度ゴシゴシと洗ってから顔を上げて、自分の顔を鏡で見てみる。 酷い顔だった。自分で思っていたよりもずっと悲しんでいる様に見える。まずい、と思った。聡実が家に帰るまでこんな顔をしている訳にはいかない。 もう一度顔を洗い直して、前髪が落ちてこない様につけている白いカチューシャをつけなおす。髪にブラシも掛けた。これならなんとか誤魔化せるかも、という感じに見えた所で、桜子は洗面所から離れた。 「はあ」 自分の部屋に戻った桜子は、ベッドの上にへたり込んだ。疲れた。何をする気もしない。だが猛烈にさびしかった。誰かに会いたいと思ったが、思いつかない。親にも会いたくない。師範にも会いたくない。瑞穂にも――、今は会いたくなかった。由希は――、由希はどうなんだろう? 桜子は脱ぎ捨てた制服のポケットから携帯を引っ張り出して、由希に電話を掛けてみた。 何度かコール音が鳴った後に由希が出た。 「遅いよ」開口一番これだった。 「え?」 「え、じゃないよ。今何時だと思ってる?」 桜子は慌てて時計を見てみた。現在、午後の三時半。正午になる前には卒業式は終わったはずだった。 「もう打ち上げは終わる所ですよ、部長」カラオケでもやっているのか、わいわい騒いでいる声が聞こえてきた。音楽と誰かが歌っている声が聞こえている。恐らくは後輩の誰か。 「あ、ああ、そっか。そうだよね――、わかった。じゃあ、みんなにもよろしく言っておいて」桜子はそう言ってから、携帯を切ろうとした。 「ストーーップ!!」携帯から由希の声が響いた。 「なっ、なに? 何か用?」驚いて聞き返す。 「諸葉、今切ろうとしたでしょ?」 「そうだけど――」 「ちょっと待っててね。切っちゃダメだよ。そのまま待ってて」由希はそれだけまくし立てて、話を切った。 桜子は携帯に耳を近づけた。音がしない。多分、マイクのあたりを手でおさえているのだろう。 そのまま待っていたが、あまり待つ必要もなかった。 「おまたせー。諸葉さ、今どこにいるの?」由希の声が聞こえてきた。喧噪は聞こえてこない。カラオケだとしたら部屋を出たのだろう。廊下かトイレか、そこはわからないが。 「家だよ。それが?」 「じゃあさ、ちょっと出ておいでよ。他の子は知らないけど、あたしはここで抜けるから」 「楽しんでたんでしょ。悪いよ――」 「あたしの話聞いていましたか、部長。打ち上げは終わる所なんですよ」 「あ、ああ――」そうだった。ここ数日は調子が崩れっぱなしになっている。 「実はちょっと聞いて欲しい話があるんだよね、部長に」由希は桜子の事を『諸葉』と呼んだり、『部長』と呼んだりしてる。何かを押しつけたい時はほぼ例外なく『部長』と呼ぶのが由希の常だった。 「話? 今日じゃないとダメなの?」 「うん、ダメ。それじゃ、待ってるね。場所は――」桜子の家からちょっと離れた所にあるファーストフード店だった。自転車で行けば十分もかからない所である。由希の家にも遠くなく、桜子も由希も二人だけで遊ぶ時や下校途中によく利用している場所だ。最近はそういう事も少なくなってきていたが。 「あのね、由希。あたしはまだ行くって――」 桜子が言いかけた所で携帯は唐突に切られた。 「全く――」桜子は少しムッとした。リダイヤルして掛け直す。コール音が一度鳴った所で由希が出た。 「由希、わたしは――」 「来なさいよ。来ないと絶交」絶交という言葉に桜子はドキリとした。そして電話はそこで切られた。 桜子は携帯を手に持ったまま、しばし憮然としていた。それから、はあ、と小さく息をついて立ち上がる。 絶交か。瑞穂とはあんな事になって、由希は冗談だろうが、絶交とか言い出す。いつもならば気にもとめない言葉だが、今日の桜子には文字通り重くのしかかった。絶交は流石に困る。とても困る。 電話をしたのは失敗だったかも知れないと思いながら着替えをする。あまり人には会いたくない気分だった。さびしいとは感じたが、出かけるのは億劫だった。剣道部で練習したり、尚正の所で稽古をした後よりも身体がずっしりと重い。 黒のフードパーカーと茶色が基調のチェックのスカート。それにやはり黒いハイソックス。とりあえずこんなものでいいだろう。 玄関に腰を下ろして茶色のショートブーツを履いていると、玄関のドアが開いた。 「ただいま」聡実だった。「あら――、今から出るの?」 「うん、わたし今からちょっと出てくる」 「もう空気も冷たくなってきてるわよ。風邪引かないようにしないと」 「大丈夫。ちょっと友達と待ち合わせしてるだけだから。多分すぐに帰ると思う」コート掛けからハーフコートを取って着込む。 「そう――、あまり遅くならない内に帰ってきなさいよ」 「うん、わかってる」 外に出ると確かに空気は冷たくなっていた。日の光も弱くなっている。 「ホントだ。寒い――」桜子はブルッと身体を震わせて、自転車を出しに行った。 「遅い」 「急いできたんだよ、これでも」 「みたいね」由希はすまして言った。 ファーストフードの入り口からちょっと離れた所に由希は立っていた。黒いダウンのハーフコートにジーンズ、黒のスニーカーを履いた由希は、パッと見た感じ少し華奢な男の子に見える。 「話ってここでするの?」桜子は周りを見回した。 「もちろん中だよ。財布持ってきたんでしょ? 行こ」由希が身振りで促す。 「でも――」 「でもじゃない。さっさと入るの。行くよ」 ふう、と桜子は溜息をついた。店の中に入ってしまった由希の後を追いかける。 「さて、何にするんですか、部長は」カウンターの前で由希が聞いてくる。 「わたしは別に。そんな食欲無いし」 「あたしはお腹空いちゃった。だから食べる。って事で、部長おごって」 「なんで?」 「副部長に後輩を任せて放置した。そのペナルティですよ、部長。ついでに言えば、あたし今苦しいし。カラオケ行ってきたから」 「ふう」痛い所をつかれてしまった。「わかった――、でもあまり高いものにしないでね。わたしもそんなに余裕無いし」 結局、由希が頼んだのはエビバーガーセット、ポテトはLで。飲み物はコーラ。桜子も同じものを頼んだ。ポテトはMだが。食欲など無いと思っていたが、実際に注文する段になって、お腹が空いている事に気がついたのだった。朝食を食べたきりで、今まで何も口にしてなかった。 店の奥の窓際の席が空いていた。そちらに移動して、向かい合って座る。 「とりあえず食べてからにしようよ」 由希はそういうとバーガーにかぶりついた。桜子も食べた。いつもと何か味が違う。あまりおいしくないというか、油が少し気になる。ただ、お腹は空いていたのは一口食べた所でわかった。ぼーっと噛みしめながら食べた。ふと目を上げると、目の前に座っている由希がじっとこっちを見ている。もう食べ終わったらしく、指の先にフライドポテトを挟んでいた。 「どうしたの?」 「どうもしないよ。お話は食べ終わってから。ま、ゆっくりどうぞ」 由希はそう言ったが、なんだか待たせるのも、ここに長くいるのも抵抗があり、桜子はコーラで流し込むように無理矢理バーガーを喉の奥に流し込んだ。 「で、話って何?」 「急がなくてもいいのに」 「急いでないわよ、わたしは。話があるって言うから来たのに」 「じゃあ言うけど――。今日の諸葉、ちょっとおかしくない?」 そんなことない、と言おうとして、桜子は黙った。 「卒業式が終わった後もなんか暗かったしね。みんなも『今日の部長ちょっとヘンだったね』って言ってたんだよ。で、気になって呼び出してみたら――」ふー、と由希はわざとらしい溜息を漏らした。懐に手を入れて何かを取り出した。黒い二つ折りのプラスチックケースにおさまったコンパクトミラー。「はい、これ。自分の顔見てみなよ、諸葉」 桜子は手渡された小さな鏡の中を覗き込んでみた。目が少し充血してる。まぶたのあたりもやや腫れぼったい。 「諸葉のショボい目と違ってあたしは目はいいですから。何かあったの? あの子と」 どうするべきか桜子は迷った。瑞穂みたいな事になるかも知れない。でも、そうじゃないかもしれない。整理して考える事が今の桜子にはとても難しかった。 「ま、言いたくないら黙っててもいいけどね。余計な事まで聞く気もないし。でもさ、やっぱりか、って思ったよ」由希は窓の外に視線を向け、フライドポテトをつまんで口に放り込みながら言った。「ただね――、後輩達、残念がってたよ。顔だけでも出して欲しかったんじゃないかな。諸葉になついてたからね、みんな」 「どうだろう? うるさい部長だと思ってたんじゃないかな――」 「そこも間違いないね。ガミガミやってたし。ただ、諸葉に憧れて剣道部入っちゃいました、って子がどれだけいるか知ってる?」由希は桜子の方に視線を向けると、ニヤッと笑って見せた。 「そんなのいるの?」はじめて聞く話だった。 「いるの、じゃないよ。例えば、今野。あの子がまず代表。他にもいるよ?」 「留実ちゃんが?」桜子は今野留実の日に焼けた小さな顔を思い浮かべた。「ホントに?」 「ホントに、じゃないよ」由希は桜子の口調を真似て言い返すと、フーとわざとらしい溜息をついた。 「そうそう、そういえばさ、あの子、瑞穂ちゃんって言ったっけ?」由希はいきなり話題を変えた。 「え、ええ。そうだけど」 「聞きたくないって言ったけどさ。あれ、ウソ。実は聞きたいんだ。あの後何があったの? あたし達とわかれてから」由希はちょっと身を乗り出すようにしてそういうと、そのまま桜子の耳元まで顔を近づけて小声でささやいた。 「実はあの子とおつきあいしてたとかそういうオチは無しだよ?」 おつきあい? おつきあいって? 確かに瑞穂とは友達だけど、おつきあい? もしや――、 「由希ちゃん!」桜子はつい声を張り上げた。周囲の客の何割かが桜子達の方を振り向く。 「声大きいよ、諸葉」由希はふてぶてしい態度で桜子をたしなめた。「恥ずかしいって」 「そんな事はありません! 絶対に無い!」桜子は声を気持ち小さくしつつも、強い口調で言った。いくら何でも酷い。そういう目で見られていたのだろうか。 「まあね、諸葉がそういうのは信じるけどね。相手はどうだかわかんないよ?」 相手がどうだかわからない。 今の桜子の胸にその言葉はズシリと響いた。身体から力が抜け、自然に頭が垂れた。何故だか目からまた涙がこぼれそうな感じがしてきた。 「あ、あ、冗談だから、諸葉。そこで落ち込んだりしちゃ困る。今のは冗談です。ねっ? ここで泣いちゃダメだよ? それはダメ」うつむいて肩をふるわせはじめた桜子を見て、由希が慌てた。 「――泣いて、ないよ」そう言いながらも桜子の目から涙がこぼれはじめている。 由希は焦って、ダウンコートのポケットをあちこち探りハンカチを取り出す。 「はい、これ。ちゃんと拭いて」桜子は顔のすぐ前に差し出された由希のハンカチを手にとって、涙がとまらない自分の目に押し当てた。流石に恥ずかしいという気持ちはあった。しかし、なかなか止まらない。 「はー、やっぱり、今日の諸葉はヘンだよ」やれやれという感じで椅子に腰を座り直した由希は、飲みさしのコーラの紙コップを手にとって口に含んだ。「とりあえず話聞かせてもらうわ。一体何があったの?」 「話って――」 「そもそもあんたがそんなに辛気くさい様子になった理由だよ。何かあったんでしょ?」 「――うん」桜子はどうしようかとやはり迷ったが、何かに抵抗するのも疲れた。それにいつもと変わらない由希の態度に気持ちがさっきよりは落ち着いてきているのも感じていた。由希は剣道部の仲間に自分の進路変更がある事も話しておかなければ、と考えていた事も遅ればせながら思い出した。 「聞いてくれる?」 「聞くって言ってるでしょ? そもそもその為に呼び出したんだよ、あたし」 「じゃあ、えーと――」桜子はぽつりぽつりと言葉を選びながら話し始めた。 『鬼』の事などは話せない、刃がついてない模造刀で巻き藁を切ったとか、そういう事は言えない。結局、桜子が由希に話した内容については、瑞穂に言った事とあまり変わらなかった。突然、東京の学校に行く事が決まった事、東筑摩高等学校に行けなくなった事、そして入学辞退ももうすまして締った事、春からは竹上市を離れて一人で寮生活になるだろうという事。 桜子が話す間、由希は多くは黙って聞いていた。時々、「それで?」と促したり、相づちを打ったりする程度でこれといって大騒ぎする様子は無かった。落ち着いて話を聞いてくれる由希の態度に桜子の気持ちも徐々におさまってきて、ずっとどこか靄がかかったような感じだった思考も少しずつはっきりしてきていた。 「――、という事」桜子は話し終えた。 「それで終わり?」由希は念を押した。 「うん。終わり。というか、一応終わり。ちょっと色々と言い辛い事が多くて」 「聞きたい、って言ったら困る?」 「困るよ」桜子は苦笑した。 「それなら、今は聞かない。」今は、を強調して由希はそういうと、いきなりおかしそうにクククと笑った。 「なによ?」 「いや、瑞穂ちゃんが怒って泣いて走って去った、って言ったでしょ。ああ、そりゃあ無理もないな、って思って。確かにあの子じゃ泣いちゃうかも」 「なんでよ?」桜子にはさっぱりわからないのだが。 「あたしはあの子苦手だよ、ぶっちゃけた話ね。嫌いってほどじゃないけど、仲良くしたいとか、話をしたいとかそういう風には思わない。あ、これ貰うね」由希はそういうと桜子のフライドポテトに手を伸ばした。「ただね、なんでそういう事になったのかは、もう凄くよくわかる。もういかにもって話じゃない」 「わたしにはわからないよ」桜子は憮然として言った。物事が何か自分と関係ない所で動いている気がした。自分だけが蚊帳の外にいるような変な感じである。 「ま、そうでしょ。高校にしたってさ、東筑摩に行くって言いだしたのはそもそもどっちなの? まず間違いなく諸葉だろうけど」 桜子は記憶を探った。どうだったろう。そういえば中学二年の秋頃にそういう話を瑞穂にしたような記憶がある。その後、瑞穂の希望進路も同じだって話になって――。 「まさか」 「まさかじゃないよ。頑張ってたんでしょ、大好きな友達と同じ高校に行く為に。笑っちゃいけないんだろうけどさ――」由希はクツクツ笑いながら、とうとう最後の桜子のフライドポテトも食べてしまった。「一生懸命頑張って、なんとか目的を果たしたのに、諸葉が『いけなくなったの。ごめんなさい』じゃ怒るよ。これは確かに泣ける」 「でも、そんな事で進路を決めるなんて」 「親が反対する訳無いじゃん。あの子ならどうせ進学校に行くんだろうし。あたしはウチの花屋継ぐ事になるだろうし、勉強嫌いだからそうはしないけど。でもね――」由希は少し改まった様子になって続けた。「ウチの事情が無くてさ、好きに行く学校決めてもいいし、って事で、ちょっと頑張ればなんとかなるかな、って成績だったらあたしもあの子と同じ事したかもよ?」 「由希が?」 「かも、だよ。かも。でも、そんな所だったんじゃないの? 瑞穂ちゃんとしては」 「そんな。それに由希の想像でしょ?」 「確かにただの想像かも知れないよ。でも、そうじゃないかなー、ってあたしは思った訳。今日だってね、諸葉の角度からは見えなかっただろうけど、あたし達とあんたが話してる時、凄いさびしそうだったし」 「そうだったの――、の?」桜子の気分は少し軽くなったが、反面何か落ち着かなくなってきていた。 「そうだったのでした。『あたしの桜子ちゃんを取らないで光線』を浴びせかけられれば、そりゃすぐに解放するしかないでしょ。ねえ、桜子ちゃん?」 「わかった! もういい。大体わかったから――」桜子としては居心地が悪い話だった。 「わかったならいいのよ、部長。後は瑞穂ちゃん関係は自分でやって。――でも、東京か。いいなぁ。しかも一人暮らし」 「一人暮らしって言っても、寮だよ。一人部屋かどうかはわからないんだけど」 「そっか。さびしくなるなぁ」由希はそういうと、ふーと溜息をついた。「ああ、でもあたしは後回しだったんだな、諸葉的には。瑞穂ちゃんが優先だったんだな」 「ちっ、違うよ、それは違う」桜子は慌てて言った。「そういう事じゃなくて」 「わーってるよぅ。言ってみただけ。とりあえず難問解決しましょう、みたいな感じ?」 桜子は肯定も否定も出来なかった。が、ある意味では当たっていた。瑞穂がああなってしまった事については、確かに漠然とした予感があった事は間違いない。 「うん。まー、そうだよね。それはそうとさ、他の部の連中にはどうするの? 言わなくてもいいかな、って気はするけど、一応ね」 「それは――」桜子は迷った。何をどこまで言っていいものかわかりづらいというのが、こんなに面倒なものだとは思わなかった。 「じゃ、あたしが決めてあげる。みんなには折を見てあたしから話す、って事でいいかな?」 「うん。そうして」桜子はホッとした。確かに由希はいつでも頼りになった。こういう時ですら。 ここに来て桜子は一気に気が抜けた。なんだか肩の荷が下りた気がする。完全に下りた訳ではないにしても。 くたっとなって背もたれに寄りかかる。 「嬉しそうだね、諸葉」 「嬉しいっていうか、ちょっと気が楽になったよ」来てよかったと桜子は思った。 「あんたのクラスの連中でこの事知ってる人いるの?」 「先生は知ってる。後は瑞穂くらい。他の人には言ってないよ。あれこれ聞かれたりするのイヤだったし」 「なるほどねー。つまり、諸葉が東筑摩に行かないって事を知ってるのは、先生と瑞穂ちゃんとあたしだけって事?」 「校長先生とか他の先生方は知ってる人もいるだろうけど。他には多分いないと思う」 「そっか」由希は苦笑した。「じゃ、こっそり消えるんだ」 「そ。ドロンってこの竹上市からいなくなる訳」軽口を叩く余裕もいつの間にか出てきている。 「それで消えるのはいつ?」 「まだわかんないよ。でも、四月前にはそうなると思う」 「じゃあ、諸葉が東京へ行っちゃうまではあたしも知らなかったって事にしておこう」由希はニヤッと笑って言った。「で、消えた後でメールか電話貰った事にして、酷いねー、ってあんたを薄情者にする事にするよ」 「薄情者なのか――」桜子の首ががっくりと項垂れる。 「その方が話が簡単でしょ。後でフォローも入れておくから。何か事情があったんだよ、とか。それとも出発する前にふれ回って欲しい?」由希はにやにや笑いながら言った。 「それは――、困る」正直な所、一々言い訳をする羽目になったりするのはすっかりイヤになっていた。 「じゃあそうするね、諸葉」 その後、桜子も由希も暫く黙っていた。桜子はすっかり消耗していたし、由希も何か考えているのか、あえて話をしようとはしなかった。周囲の喧噪が、逆にちょうどいい感じで間を持たせてくれていた。 気持ちは少し楽になった桜子だったが、瑞穂の事については、少し何かわかってきたよう感じになった事で、ちょっと前のような感情の濁流こそ無くなったものの、別の意味で少し心配になってきていた。 もしも由希が言ったような事が少しでも瑞穂の気持ちの中にあったのなら、それは確かにショックだったのかもしれないと思う。桜子自身は、瑞穂が別の高校に進学すると言っても残念と思う気持ちがあったとしても、それで自分の進路を変えたりするという事はおよそ考えられない。剣道をやり始めた事も、尚正に誘われて道場に通うようになった事も、高校をどこにするかについても、桜子は誰かがいたからとか、あるいはいなかったから、とかそういう事で決めた事は覚えている限り一度もない。 だが、冗談交じりではあったが、目の前にいる由希も瑞穂の気持ちがわかると言った。桜子にはさっぱりわからなかったのだが。それに他にも気になる事を言っていたような気がする。はっきり思い出せないのだが。 瑞穂とはずっと友達だと思っていた。だが、あんな風な瑞穂の反応は漠然と予感していたかもしれないが、やはり予想も出来なかったし、なによりもあんな一面を見たのははじめてだった。そして、由希が思っていたよりもずっと頼りになる事も今日はじめてわかった気がする。卒業式の日になって――。 桜子がぐるぐるとそんな事を考えていた最中、 「ねえ、諸葉」由希が唐突に口を開いた。 「なに?」 「外さ、もう暗いよ。どうする?」 桜子は外を見てみた。窓の外はすっかり暗くなっていて、車のヘッドライトや赤いテールライトが目立っている。たまに通りかかる自転車も多くがライトをつけていた。桜子は携帯を取りだして時間を見てみた。午後六時ちょっと前。もうちょっとしたら完全に夜になるだろう。 「帰らなきゃ――」桜子は腰を浮かせた。すぐに戻ると聡実に言ったのを思い出したのだった。 「うん、思ってたよりも長居しちゃったね。あたしも帰る」そう言って、由希も立ち上がった。 二人は使ったトレイを片付けてから店を出た。 「由希は自転車?」 「ううん。今日は歩きだよ。どっちにしてもたいした距離じゃないしね」 由希の家の自宅兼店舗の松岡生花店は、駅前通り商店街からちょっと脇道に入った所に店を構えている。確かにここからなら目と鼻の先と言っても良かった。 「そう。それじゃ気をつけて帰ってね」 「あたしに言われてもねえ。諸葉こそ気をつけて帰ってよね」 「ん、うん――」ごもっともであった。 桜子が家に帰ると、既に六時二十分を回っていた。 「ただいまー」 「おかえり。遅かったわね」キッチンの方から聡実の声が聞こえた。 「パパはまだなの?」ショートブーツを脱ぎながら返事をした。温かいが脱ぎにくいブーツなのだった。 「そうみたいよ。それと、手が空いてたら御飯の準備手伝って欲しいんだけど」 「わかった。ちょっと待ってて、ママ。着替えてくる」 桜子はブーツからどうにか足を引っこ抜くと、洗面所に回って、手洗いと鵜飼をした。 キッチンからは香ばしい臭いとパチパチとはぜる音がテレビの音に紛れて聞こえてきた。天ぷらか揚げ物かフライか、なのだろう。 二階に上がって桜子は部屋着にしているジャージに着替える。乱雑に脱ぎ捨ててある制服を見て、由希に呼び出されて部屋を出る前はかなり参っていたのを実感した。脱ぎ捨てられた制服を拾い集めてて畳みながら、あらためて由希に感謝する。あのままこの部屋にいたなら、きっと今でも落ち込んでいたままだろう。担任の中川梓から貰った名刺も取り出しておいた。これは持っていこうと思う。 その時、机の上に置いた携帯から着信音が鳴った。手に取ってみてみると、瑞穂からだった。 メールを開封してみると、ただ一言、 「ごめんなさい」 とだけ、書かれてあった。 桜子は「気にしてないよ」とだけ書き込んで返信した。後でちゃんとしたメールを出そうと思う。 瑞穂からメールがあった事は素直に嬉しかった。だが、その反面、わかってくれたのかなあ、とも思う。由希はああだったが、瑞穂はまた違うだろうし。 そう、ウーンと考えていると、下から聡実の声がした。 「さくらこー、まだなのー?」 「今行くよ、ママ」 桜子が部屋を出た直後、携帯から着信音がまた鳴った。 しかし、急いで階段を下りていた桜子はそれに気がつかなかった。 第三章につづく ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 色々な意味で卒業編です。 自章からやっと双葉学園編(となるはず)です。 作中で本格的に活躍する登場人物も桜子ちゃん以外はこれから続々出る予定。 初期構想の段階での主人公は次から登場する事は確実です。 やっとここまで来た感じ。 PCとしての能力についてはまだ出してません。 三章と同時に出す予定です。予定は予定ですが。 PN REDFOX777a トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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【作品名】行くぞ!ゴーダム 【ジャンル】突っ込み所満載のアニメソング 【名前】ゴーダム 【属性】ロボットと思われる(発進して命令で動く、少なくとも物を踏み潰せる足があるものなので) 【大きさ】ビルに負けないでかいやつ 【攻撃力】大きさ相応に強いやつ。ネンドロイドをぶっ飛ばし地底魔神をやっつけられるが、どちらも詳細不明。 【防御力】大きさ相応のがっちりしたやつ並み。地震の元を踏み潰したり台風の目に体当たりしてもびくともしない。 【素早さ】大きさ相応、飛行可能。戦うぼくらのメカ乗せても青空を飛べる推進力。 【特殊能力】コンビナートの火事を消したり、火山の爆発食い止められる 【長所】頼りになるやつ いかすやつ すばらしいやつ すてきなやつ、ととにかく褒められてる 【短所】無茶苦茶な命令ばかりされる vol.61 181 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 21 47 42.97 ID I+4c3Y+C [2/6] ゴーダム考察、ビル並みの大きさのロボ 90式戦車が三階建てのビルを一発で破壊できるので、おそらく戦車の壁の下 標準的なビルは4~6回、一回あたりは4,6~4,8mとのこと。だいたい、25~30mくらいの大きさ その上で、大きさ位以上に強い奴とのことなので、 紺藤拓馬with近衛兵 が24m前後で、自分と同じ大きさのロボということを加味してこの上 このすぐ上のラリーカーには近づく前に撃たれまくって負けるので、 (戦車の壁)>太田withパッソル改>>主人公withラリーカー>ゴーダム>鳶口鷹士with旅客機=紺藤拓馬with近衛兵 ハトの嫁 考察 猛獣を一発で倒せて小型車の激突に耐える、反応移動はやたら早い 車の壁あたりには攻撃きかないし、中型が多いので超えないだろうとふんでそこから下がる ×わたしwith光武 はとビームが効かない ○伏見藤矢 近づかれる前にはとビーム勝ち ○恵太二人 近づかれる前にはとビーム勝ち ○田中ぷにえ 捕まらないのではとビーム連打してれば勝てる 飛べる+数センチからマッハ反応なのがでかい、車には勝てないがそれ以下ならだいたい勝てる (車の壁) >わたしwith光武>ハトの嫁>伏見藤矢> 何キャラ考察すればいいんだっけ?
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*4* ハルヒの調査をしてはや2週間がたっていた。 ハルヒが来なくなってもうすぐで1ヶ月経ってしまう。その間に集まった情報はあまりなかった。 おれはふと、谷口と国木田には聞いていなかったことを思い出した。 「お前ら、ハルヒこと何か知らないか?何でもいい」 「涼宮?」と谷口。弁当をほおばりながらいう。 おれは2人(特に谷口)にはあまり期待していなかったが予想外の情報が入った。 「そういや…この間女の子2人と一緒に帰ってるのを見たぞ」 「! それは本当か?」 「ああ。だから最近は活動してないのかと思ってたんだけどな」 まさか、谷口から重要な情報が入るとは予想外だった。よくやった、谷口。お前のランクを『谷』から『川』にしてやろう。大した意味はないが。 「そういえば僕もみたなあ…涼宮さん」 さすが国木田! なかなかの男だ。 「その…なんて言えばいいんだろ…?ほら、中庭みたいな所あるだろ?」 ああ、あそこだ。おれが古泉からハルヒのことを聞いた場所だ。恐らく。 「あそこで女の子の友達と一緒に昼ご飯食べてたよ」 女の子…? 『川(谷)』口といい、国木田といい… とりあえず、その2人の容姿について聞いてみた。 「その2人の容姿は?名前とかは?」 すると谷口が 「1人はショートカットだ。もう1人は背の高いメガネの子だ。恐らく一年…同い年だな。なかなか可愛いかったぜ」 それな聞いてない…と言おうかと思ったが止めた。いい情報を持ってきたので我慢してやることにした。 授業が終わり、下校時間になるとハルヒを見てみた。 しばらくするとハルヒは教室からでていった おれは部室に向かい、今日聞いたことをみんなに話した。 するとやはり古泉はいった。 「つまり…我々が想像していた最悪のパターンになったかもしれないということですね」 その通りだ。 「ですが、それだけわかれば上々です。あとは僕に任せてください」 殺人スマイルを見せた。 「なにをする気だ?くどいとうだが、機関は使うなよ」 笑いながら古泉がいう。 「もちろんですよ。僕がいいたいのはその2人が誰だか調べるのを任せてください、といっているんです」 古泉がいい終わったあと朝比奈さんが話し出す。 「どうして調べるんですか?」不思議そうに首をかしげる。 「もしかしたら何かの役に立つかも知れないからですよ」 「何かってなんだよ?」 「さあ?でも一応調べてみたいだけです」 どうやら古泉は探偵業が気に入ったらしい。 「という訳でしばらく話し合いに参加できなくなりそうです。たった3人では話し合いは厳しいでしょうから、明日から3~4日休みにしましょう。各々で情報を集めるということで」 確かに正論だ。 そんなこんなで今日の話し合いは終わった。 家に帰ったおれはベットに横になり考えてみた。 しかし、どちらから一緒に帰ろうと誘ったのだろうか…? ハルヒのほうから誘うということはおれが知るハルヒなら絶対しないだろう。だとしたら向こうからか? 誘う理由はわからなかった。本人に聞くしかないだろう。 そんなことを考えている間に寝ていたようだった。 時計を見ると深夜の2時だった。 その後風呂に入り残っていた夕食を食べて再び寝た。その間母親にうるさいと叱られた。ここは素直に誤るしかない。 朝起きて学校に着く。1ヶ月前までは習慣だったハルヒに話し掛けるという行為は徐々に減っていき最近は全く話し掛けなくなっていた。 最近は接点が全くない。そして、なんだかモヤモヤする気持ちがあったが、正体はわからない。 授業が身に入らず、1時間、また1時間と時間が過ぎていった。 そんなとき、 「え~この問題を…〇〇! 答えなさい」 当てられた。まずい、全くわからない。谷口は信用できないし頼りの国木田は席が遠い。 おれは焦って『後ろの席』に聞いた。 「悪い。教えてくれ」そのあとすぐにおれは『しまった』と思った。なぜなら後ろは… 『後ろ』の奴は一瞬キョトンとしたような顔をしたあと溜息をして答えた。 「あんた、こんな問題もわかんないの!? cos45゜よ!」 そう、後ろはハルヒだ。 「cos45゜です」 「正解。座ってよし。」 おれは後ろを向いて礼を言う。 「ありがとうな。ハルヒ」 「…」 ハルヒは黙って窓の外をみた。 確信した。ハルヒは変わっていない。別におれのことを嫌いになったわけじゃない。 そういえば、ハルヒとまともな会話をしたのは1ヶ月振りだ。 そして、4日振りの部室に向かう。 入るとすでに、他の3人はいた。 古泉がいう。 「久しぶりです」 「4日会ってないだけだろうが」 「それもそうですね」 他愛のない会話を済ませ、席に着く。 するとやはり最初にしゃべったのは古泉だった。 「さて、僕の調査の結果を言います」 そうだ。これのために4日も休んだのだ。 「結論からいうと、彼女たちは一般人です」 当たり前だ。 「宇宙人、未来人、超能力者ではありませんでした」 なるほど、それのための調査か。 「あのう…」 朝比奈さんが手を挙げている。 「なんですか朝比奈さん?」 よし、古泉がいう前にいえた。 「私… トイレで涼宮さんの話を聞いたんです」 「ハルヒの話?」 朝比奈さんの話はこうだ。 『ねえねえ、一年の涼宮っているじゃない?』 『うん、居るよ』 『入って来た頃はめちゃくちゃであんまり好かれてなかったんだけど…最近男女問わず人気が出てきたらしいよ』 『へー そうなんだ』 このあとの話は関係らしい。 古泉がいう。 「新しい可能性が見つかりましたね。涼宮さんが丸くなったということも考えられます」 「…」複雑な気分だった少なくともいい気分ではない。 その後も話し合いは進まず解散となった。 そしてしばらく経ったある日、長門から情報が入った。 「今日涼宮ハルヒと例の2人が居るのをみた…涼宮ハルヒが嫌がっているようには見えなかった」 長門の情報を聞いた古泉は顎に手をおいていった。 「僕に提案があるのですが、よろしいですか?決して熱くならないでください…」 神妙な面もちで古泉はいう。 「一度我々も解散してみてはいかがでしょうか…」 おれはさっき古泉がいった言葉を忘れて古泉にくってかかる。 「何をいってんだ!!古泉!?」 朝比奈さんが慌てて止めに掛かる。長門はハルヒに負けず劣らずな大きな瞳をさらに大きくあけてこちらを見ていた。 「落ち着いてください」 「古泉!お前は機関のためだけにSOS団にいたのか!?ハルヒが問題を起こさなくなったらそれでおさらばか!?」 朝比奈さんが慌てて仲裁する。 「キョンくん落ち着いて…古泉くんも理由があるんだから…話をきいてあげて」 熱さは冷めてなかったが座った。 「ごめんな… 古泉」 「いえ。こちらこそ急過ぎました」 古泉はネクタイを直しながらいう。 「確かに、機関のためにSOS団に入ったというのは否定しません。ですが、僕自身もSOS団といるのは楽しかったですし、面白かったです」 古泉はさらに続ける。 「しかし、団長である涼宮さんが来なく、その涼宮さんが友達と楽しそうにしている…」 ネクタイを直し終わった古泉は机にひじをつき、またいう。 「我々は涼宮さんの監視、調査、それいぜんに団員であり涼宮さんの友達です」 黙って古泉の話を聞いていた。 「涼宮さんが我々SOS団に興味がなくなり、友達と一緒にいる楽しみに気が付いたのは、機関的にもいち友達としても喜ばしいことです」 その通りだ。だが、ハルヒは友達と一緒にいる楽しみは前から知っていたはずだ。おれたちといたんだからな。 恐らく古泉の見解は『当たらずとも遠からず』だろう。 「そんな涼宮さんを無理やりこちらに戻すなら、彼女の幸せを壊すことになります。それは『閉鎖空間』など関係なく、いけないことではないでしょうか…」 朝比奈さんは下を向いている。長門は無表情だがどこか悲しそうだ。 「だから、我々も一度解散してみて考えてみようと思ったのです」 すると黙っていた長門が話し出す。 「みんなで策を考える。涼宮ハルヒがこのままなのは情報統合思念体も拒否している。私という個体もそう感じている」 長門は続ける。 「解散している間、皆で策を考える。策を思いついたら全員を集め、会議。その策をいつ決行するかを考える」 「それはgood ideaですよ。長門さん」 古泉の眼に光った。さっきいったことはやっぱり嘘じゃないようだ。安心した。 「そうですよね!このままなんて納得できませんしね!」 朝比奈さんがいう。 ありがとう長門。長門はハルヒのいないSOS団のまとめ役だ。 こうして、おれたちは決意を胸にした。 *5* 解散して2週間が経った。色々と策を考えてその度に会議をしたんだが、いまいちいい策がなく完全に手詰まりな状態だった。 (なんとかならないか…)そんなことを考えていた。 そして、みんなの頭には1つの策が浮かんでいた。 強攻策だ。 しかし、古泉もいっていたように無理やりやるのは危険だ。ハルヒを傷つけかねない。 おれはいつぞやの朝倉の言葉を思い出した。 『待っているだけじゃ何も変わらないわ』 全くその通りだ。環境が変わると考えも変わる。 これしかないのか… 他の策はいまいち不安だ。 考えながら歩いていると 「疲れているようですね」 後ろには爽やかイケメンが立っていた。 「古泉」 みたものの名前をいってしまうのは人間の習性だ。 「なかなかいい策がみつかりませんね…」 まただよ。心を読みやがった。それともおれは顔に出るタイプなのか? 「もう少し考えてみましょう。焦りすぎてはいけません」 「そうだな」 「では僕はこれで」 古泉はそういうと歩いていってしまった。 「………」 おれは髪をかきながら教室に戻った。 授業が終わり、教室から出た。ふとおれは他のメンバーのことを考えた。 朝比奈さんは時々見る…古泉はさっき会った… そうだ、長門は? 長門とは部室以外で会うことは滅多に会わない。 おれは長門が何をしているのか気になった。 ふと長門は『あそこ』にいるのではないかという考えが浮かんだ。 おれはまさか、と思いながら『あそこ』へ向かう。 扉を開けた。…………いた。 長門はこちらに目を向ける。そう、ここは部室だ。 「そろそろ来る頃だと思っていた」 長門はいった。 「もしかして…会議のない日も部室にいたのか」 長門は頷く。 そして、おれは悩みを打ち明けた。強攻策にすべきか。他策にすべきか。 長門はいう。 「あなたは彼女を信用していない」 長門はいった。おれは当然反論する。 「信用してるさ」 長門はすぐにいう。 「違う。悩んでいないなら、強攻、他策、どちらかにしているはず。 あなたは強攻すれば彼女が傷つくと思っている。そして、傷ついたら彼女が立ち直れないと思っている。これは信用していないということ」 反論できない。 「あなたは涼宮ハルヒを一番知っている。もう一度よく考えて」 「彼女が傷つくとしたら、そういう気遣い…」 確かにそうだ。SOS団を作ったときも部員集めは全部もの凄く直球だった。 なんだ簡単だ。そうだ、そうすればいいんだ。 「ありがとうな。長門。お前が気づかせてくれた」 おれは長門に礼をして部室を出た。 バカだ。何を悩む必要があるんだ。 おれはおれのやり方でいいじゃないか。 家に帰ったおれはSOS団のメンバーに連絡した。 「古泉か?ハルヒの件でいい策が浮かんだんだ!おれに任せてくれ!決行する日はその日になったら連絡する」 『どうしたんですか?急に?』 「頼む!」 『…わかりました』 古泉が笑っているのは容易に想像できる 次は朝比奈さんだ。 コールするが出ない。仕方がないので留守電だ。 古泉同様にいう。 夜に返事が来た。電話ではなくメールだ。 メールには『わかりました。任せます』 よし、了承はとった。あとは実行するだけだ。 その計画をたててからさらに時間がたちもうすぐであの日から2ヶ月経とうとしていた。 なぜかといえば… 非常に言いづらいんだが、おれが優柔不断、ヘタレ野郎なせいだ。 (今日こそは…) と思っているが話しかけるきっかけがない。 くそ!単に一言いえばいいだけなのに…! 時間はそれほど傷を与えていた。 チャイムが鳴る… 今日はおしまいだ。ハルヒが帰り仕度をしていた。 ハルヒの背中がどこか遠くにいってしまいそうな寂しさがあった。 「…何よ」 ハルヒが不意に話しかけてきた。 おれは自分の手が何かを握っているのに気が付いた。 ハルヒの手だった。 「何よ。いいたいことでもあるの!?」 「放課後に話があるから待っててくれ」 「なんでよ。面倒くさい。」 帰ろうとするハルヒの手をさらに強く握った。 「大事な話なんだ」 「…わかったわよ」 ハルヒはしぶしぶだが引き止めることに成功した。 おれは3人に連絡する。 「部室で待っててくれ。ハルヒを連れて行く」 これはそういった時の3人の反応だ。 古泉バージョン 『今日ですか!?ついにやりましたね!少し遅かったですがやってくれると思ってましたよ』 ああ、遅くてごめんな。おれがヘタレのせいだ。 朝比奈さんバージョン 『そうですか!涼宮さんをよろしくお願いしますね!部室に先にいってます』 何がよろしくなのかわからないが、朝比奈さんの声を聞いたので元気100%だ! 長門バージョン 『そう……………………待ってるから』 ああ、待っててくれ。これでいままでにケリをつけるから。 場所は教室にうつる 「ハルヒ」 「何よ」 「ちょっとついてきてくれ」 「話ならここでいいじゃない」 「ここじゃだめなんだ」 おれはハルヒの手を取り、歩きだす。 「ちょ…ちょっと!痛いわよ!離して!」 「あの時と逆だな」ボソッとおれがいった。 あの時とはハルヒが階段の踊場までおれをつれていき、説得(脅迫?)した時のことだ。 「! ……あの時って何よ」 声がうわづった。ハルヒの癖だ。わかっているのに知らない降りをする時によくこうなる。 部室塔に続く廊下にでるとハルヒはいった。 「わかったわよ!わかったから離して!」 手を離す。 観念したのか自分が先頭になり歩きだす。 そして部室の前についた。 *6* おれとハルヒは部室の前にいた。 「………」 ハルヒは扉を開けようとしない。俯いて少し震えていた。 扉はおれが開ける。そこには定位置にいる古泉と同じく定位置にいる長門。奥の席に座っている朝比奈さんがいた。 おれが自分の席に着く。ハルヒはおれの隣のスペースにわざわざ椅子を持ってきて座ろうとした。 「ハルヒ、お前の席はあっちだ」 おれは団長席を指差す。 「あたしは…」 ハルヒが何か言い掛けたが、おれはそれを遮った。 「いいからあっちに座れ」 これだけハルヒに強くいうことなんてめったにない。 「…」 ハルヒは団長席に向かい、腰掛ける。 おれは全員を見たあとにいう。 「ハルヒ、なぜ呼んだかわかるよな?」 「…」 黙っている。 「急におれたちの前からいなくなった理由、急に来なくなった理由をいってくれ。おれたちは誰一人納得していない」 「理由?どうせだいたい察してるんでしょ!?」 ハルヒは立ち上がり、机をバンっと叩いた。 「もうわかるでしょ!? 嫌気が指したのよ!」 ハルヒは続けて言う。 「何も起こらない不思議!部室なんてただの暇つぶしの場になってるだけじゃない!否定できるの!?」 否定はできない。 「不思議探索だって名ばかりのお遊びになってるじゃない!適当にその辺ぶらぶらしてお昼食べて、午後も同じことして…どうせ不思議なんて見つからないのに!」 全員黙って聞いていた。 「これでわかった!?だから来るのがバカバカしくなったのよ!」 ハルヒはいい終わると肩で息をしていた。 「本物にそれだけが理由か?ハルヒ?」 おれがハルヒにいう。 「何がよ」 「本物にそれだけが理由かってきいてるんだ」 ハルヒは少し時間をおいてからいった 「そうよ!あたしは自分で作ったものにも責任が持てない女なのよ!だからもうほっといて!」 荷物を持ってでいこうとするハルヒを止めた。 「ハルヒ!まだ話は終わって(ry」 おれはまた手を掴む。 「離してよ!」 ハルヒはおれの手を無理やりはがした。荷物が床に落ちる。しかし、気にせずハルヒは出ていく。 「くそ!」 だめか…と思った瞬間に朝比奈さんが大きな声でいう。 「なにしてるんですか!早く涼宮さんを追いかけて!」 「そうです!ここで追いかけなきゃ二度と彼女とは話せませんよ!」 「涼宮ハルヒの精神状態は不安定…早く行ったほうがいい」 朝比奈さん…古泉…長門…そうだ。おれたちは本当のことが知りたいんだ! バンっ! 扉をあけると全速力で走る。 「ハルヒー!」 ハルヒはいた。 「待ってくれ!ハルヒ!」 ハルヒはびっくりした顔で見たあと走りだした。 ハルヒはおれより足は速いはずだがなんとか追いついた。 「離して!」 ハルヒ暴れる。 「おれの話をきいてくれ!」 「離してよぉ…」 泣き声だ。おれは慌て離す。 ハルヒはその場に座り込む。 おれはハルヒの肩を抱いて隅に連れて行った。 「どうしてよぉ…もうあたしなんかほっといてよ…」 「そういうわけにはいかない」 泣いている女の子を放っておくわけにはいかない。先追いつけたのもハルヒが泣いていたからだろうか。 「なんでよ… あたしはあんたたちを裏切ったのよ…」 「おれたちは誰も裏切られたとは思ってない」 ハルヒは泣いている。おれはまた聞いた。 「ハルヒ…本当にあれだけが理由なのか?他にもなにかあるだろ?」 しばらく時間が経った。3分くらいか? 「半分は本当よ…もう半分…いえ、こっちのほうが理由しては強い…」 ハルヒは『もう半分』について話し始めた。 第三章へ
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*4* ハルヒの調査をしてはや2週間がたっていた。 ハルヒが来なくなってもうすぐで1ヶ月経ってしまう。その間に集まった情報はあまりなかった。 おれはふと、谷口と国木田には聞いていなかったことを思い出した。 「お前ら、ハルヒこと何か知らないか?何でもいい」 「涼宮?」と谷口。弁当をほおばりながらいう。 おれは2人(特に谷口)にはあまり期待していなかったが予想外の情報が入った。 「そういや…この間女の子2人と一緒に帰ってるのを見たぞ」 「! それは本当か?」 「ああ。だから最近は活動してないのかと思ってたんだけどな」 まさか、谷口から重要な情報が入るとは予想外だった。よくやった、谷口。お前のランクを『谷』から『川』にしてやろう。大した意味はないが。 「そういえば僕もみたなあ…涼宮さん」 さすが国木田! なかなかの男だ。 「その…なんて言えばいいんだろ…?ほら、中庭みたいな所あるだろ?」 ああ、あそこだ。おれが古泉からハルヒのことを聞いた場所だ。恐らく。 「あそこで女の子の友達と一緒に昼ご飯食べてたよ」 女の子…? 『川(谷)』口といい、国木田といい… とりあえず、その2人の容姿について聞いてみた。 「その2人の容姿は?名前とかは?」 すると谷口が 「1人はショートカットだ。もう1人は背の高いメガネの子だ。恐らく一年…同い年だな。なかなか可愛いかったぜ」 それな聞いてない…と言おうかと思ったが止めた。いい情報を持ってきたので我慢してやることにした。 授業が終わり、下校時間になるとハルヒを見てみた。 しばらくするとハルヒは教室からでていった おれは部室に向かい、今日聞いたことをみんなに話した。 するとやはり古泉はいった。 「つまり…我々が想像していた最悪のパターンになったかもしれないということですね」 その通りだ。 「ですが、それだけわかれば上々です。あとは僕に任せてください」 殺人スマイルを見せた。 「なにをする気だ?くどいとうだが、機関は使うなよ」 笑いながら古泉がいう。 「もちろんですよ。僕がいいたいのはその2人が誰だか調べるのを任せてください、といっているんです」 古泉がいい終わったあと朝比奈さんが話し出す。 「どうして調べるんですか?」不思議そうに首をかしげる。 「もしかしたら何かの役に立つかも知れないからですよ」 「何かってなんだよ?」 「さあ?でも一応調べてみたいだけです」 どうやら古泉は探偵業が気に入ったらしい。 「という訳でしばらく話し合いに参加できなくなりそうです。たった3人では話し合いは厳しいでしょうから、明日から3~4日休みにしましょう。各々で情報を集めるということで」 確かに正論だ。 そんなこんなで今日の話し合いは終わった。 家に帰ったおれはベットに横になり考えてみた。 しかし、どちらから一緒に帰ろうと誘ったのだろうか…? ハルヒのほうから誘うということはおれが知るハルヒなら絶対しないだろう。だとしたら向こうからか? 誘う理由はわからなかった。本人に聞くしかないだろう。 そんなことを考えている間に寝ていたようだった。 時計を見ると深夜の2時だった。 その後風呂に入り残っていた夕食を食べて再び寝た。その間母親にうるさいと叱られた。ここは素直に誤るしかない。 朝起きて学校に着く。1ヶ月前までは習慣だったハルヒに話し掛けるという行為は徐々に減っていき最近は全く話し掛けなくなっていた。 最近は接点が全くない。そして、なんだかモヤモヤする気持ちがあったが、正体はわからない。 授業が身に入らず、1時間、また1時間と時間が過ぎていった。 そんなとき、 「え~この問題を…〇〇! 答えなさい」 当てられた。まずい、全くわからない。谷口は信用できないし頼りの国木田は席が遠い。 おれは焦って『後ろの席』に聞いた。 「悪い。教えてくれ」そのあとすぐにおれは『しまった』と思った。なぜなら後ろは… 『後ろ』の奴は一瞬キョトンとしたような顔をしたあと溜息をして答えた。 「あんた、こんな問題もわかんないの!? cos45゜よ!」 そう、後ろはハルヒだ。 「cos45゜です」 「正解。座ってよし。」 おれは後ろを向いて礼を言う。 「ありがとうな。ハルヒ」 「…」 ハルヒは黙って窓の外をみた。 確信した。ハルヒは変わっていない。別におれのことを嫌いになったわけじゃない。 そういえば、ハルヒとまともな会話をしたのは1ヶ月振りだ。 そして、4日振りの部室に向かう。 入るとすでに、他の3人はいた。 古泉がいう。 「久しぶりです」 「4日会ってないだけだろうが」 「それもそうですね」 他愛のない会話を済ませ、席に着く。 するとやはり最初にしゃべったのは古泉だった。 「さて、僕の調査の結果を言います」 そうだ。これのために4日も休んだのだ。 「結論からいうと、彼女たちは一般人です」 当たり前だ。 「宇宙人、未来人、超能力者ではありませんでした」 なるほど、それのための調査か。 「あのう…」 朝比奈さんが手を挙げている。 「なんですか朝比奈さん?」 よし、古泉がいう前にいえた。 「私… トイレで涼宮さんの話を聞いたんです」 「ハルヒの話?」 朝比奈さんの話はこうだ。 『ねえねえ、一年の涼宮っているじゃない?』 『うん、居るよ』 『入って来た頃はめちゃくちゃであんまり好かれてなかったんだけど…最近男女問わず人気が出てきたらしいよ』 『へー そうなんだ』 このあとの話は関係らしい。 古泉がいう。 「新しい可能性が見つかりましたね。涼宮さんが丸くなったということも考えられます」 「…」複雑な気分だった少なくともいい気分ではない。 その後も話し合いは進まず解散となった。 そしてしばらく経ったある日、長門から情報が入った。 「今日涼宮ハルヒと例の2人が居るのをみた…涼宮ハルヒが嫌がっているようには見えなかった」 長門の情報を聞いた古泉は顎に手をおいていった。 「僕に提案があるのですが、よろしいですか?決して熱くならないでください…」 神妙な面もちで古泉はいう。 「一度我々も解散してみてはいかがでしょうか…」 おれはさっき古泉がいった言葉を忘れて古泉にくってかかる。 「何をいってんだ!!古泉!?」 朝比奈さんが慌てて止めに掛かる。長門はハルヒに負けず劣らずな大きな瞳をさらに大きくあけてこちらを見ていた。 「落ち着いてください」 「古泉!お前は機関のためだけにSOS団にいたのか!?ハルヒが問題を起こさなくなったらそれでおさらばか!?」 朝比奈さんが慌てて仲裁する。 「キョンくん落ち着いて…古泉くんも理由があるんだから…話をきいてあげて」 熱さは冷めてなかったが座った。 「ごめんな… 古泉」 「いえ。こちらこそ急過ぎました」 古泉はネクタイを直しながらいう。 「確かに、機関のためにSOS団に入ったというのは否定しません。ですが、僕自身もSOS団といるのは楽しかったですし、面白かったです」 古泉はさらに続ける。 「しかし、団長である涼宮さんが来なく、その涼宮さんが友達と楽しそうにしている…」 ネクタイを直し終わった古泉は机にひじをつき、またいう。 「我々は涼宮さんの監視、調査、それいぜんに団員であり涼宮さんの友達です」 黙って古泉の話を聞いていた。 「涼宮さんが我々SOS団に興味がなくなり、友達と一緒にいる楽しみに気が付いたのは、機関的にもいち友達としても喜ばしいことです」 その通りだ。だが、ハルヒは友達と一緒にいる楽しみは前から知っていたはずだ。おれたちといたんだからな。 恐らく古泉の見解は『当たらずとも遠からず』だろう。 「そんな涼宮さんを無理やりこちらに戻すなら、彼女の幸せを壊すことになります。それは『閉鎖空間』など関係なく、いけないことではないでしょうか…」 朝比奈さんは下を向いている。長門は無表情だがどこか悲しそうだ。 「だから、我々も一度解散してみて考えてみようと思ったのです」 すると黙っていた長門が話し出す。 「みんなで策を考える。涼宮ハルヒがこのままなのは情報統合思念体も拒否している。私という個体もそう感じている」 長門は続ける。 「解散している間、皆で策を考える。策を思いついたら全員を集め、会議。その策をいつ決行するかを考える」 「それはgood ideaですよ。長門さん」 古泉の眼に光った。さっきいったことはやっぱり嘘じゃないようだ。安心した。 「そうですよね!このままなんて納得できませんしね!」 朝比奈さんがいう。 ありがとう長門。長門はハルヒのいないSOS団のまとめ役だ。 こうして、おれたちは決意を胸にした。 *5* 解散して2週間が経った。色々と策を考えてその度に会議をしたんだが、いまいちいい策がなく完全に手詰まりな状態だった。 (なんとかならないか…)そんなことを考えていた。 そして、みんなの頭には1つの策が浮かんでいた。 強攻策だ。 しかし、古泉もいっていたように無理やりやるのは危険だ。ハルヒを傷つけかねない。 おれはいつぞやの朝倉の言葉を思い出した。 『待っているだけじゃ何も変わらないわ』 全くその通りだ。環境が変わると考えも変わる。 これしかないのか… 他の策はいまいち不安だ。 考えながら歩いていると 「疲れているようですね」 後ろには爽やかイケメンが立っていた。 「古泉」 みたものの名前をいってしまうのは人間の習性だ。 「なかなかいい策がみつかりませんね…」 まただよ。心を読みやがった。それともおれは顔に出るタイプなのか? 「もう少し考えてみましょう。焦りすぎてはいけません」 「そうだな」 「では僕はこれで」 古泉はそういうと歩いていってしまった。 「………」 おれは髪をかきながら教室に戻った。 授業が終わり、教室から出た。ふとおれは他のメンバーのことを考えた。 朝比奈さんは時々見る…古泉はさっき会った… そうだ、長門は? 長門とは部室以外で会うことは滅多に会わない。 おれは長門が何をしているのか気になった。 ふと長門は『あそこ』にいるのではないかという考えが浮かんだ。 おれはまさか、と思いながら『あそこ』へ向かう。 扉を開けた。…………いた。 長門はこちらに目を向ける。そう、ここは部室だ。 「そろそろ来る頃だと思っていた」 長門はいった。 「もしかして…会議のない日も部室にいたのか」 長門は頷く。 そして、おれは悩みを打ち明けた。強攻策にすべきか。他策にすべきか。 長門はいう。 「あなたは彼女を信用していない」 長門はいった。おれは当然反論する。 「信用してるさ」 長門はすぐにいう。 「違う。悩んでいないなら、強攻、他策、どちらかにしているはず。 あなたは強攻すれば彼女が傷つくと思っている。そして、傷ついたら彼女が立ち直れないと思っている。これは信用していないということ」 反論できない。 「あなたは涼宮ハルヒを一番知っている。もう一度よく考えて」 「彼女が傷つくとしたら、そういう気遣い…」 確かにそうだ。SOS団を作ったときも部員集めは全部もの凄く直球だった。 なんだ簡単だ。そうだ、そうすればいいんだ。 「ありがとうな。長門。お前が気づかせてくれた」 おれは長門に礼をして部室を出た。 バカだ。何を悩む必要があるんだ。 おれはおれのやり方でいいじゃないか。 家に帰ったおれはSOS団のメンバーに連絡した。 「古泉か?ハルヒの件でいい策が浮かんだんだ!おれに任せてくれ!決行する日はその日になったら連絡する」 『どうしたんですか?急に?』 「頼む!」 『…わかりました』 古泉が笑っているのは容易に想像できる 次は朝比奈さんだ。 コールするが出ない。仕方がないので留守電だ。 古泉同様にいう。 夜に返事が来た。電話ではなくメールだ。 メールには『わかりました。任せます』 よし、了承はとった。あとは実行するだけだ。 その計画をたててからさらに時間がたちもうすぐであの日から2ヶ月経とうとしていた。 なぜかといえば… 非常に言いづらいんだが、おれが優柔不断、ヘタレ野郎なせいだ。 (今日こそは…) と思っているが話しかけるきっかけがない。 くそ!単に一言いえばいいだけなのに…! 時間はそれほど傷を与えていた。 チャイムが鳴る… 今日はおしまいだ。ハルヒが帰り仕度をしていた。 ハルヒの背中がどこか遠くにいってしまいそうな寂しさがあった。 「…何よ」 ハルヒが不意に話しかけてきた。 おれは自分の手が何かを握っているのに気が付いた。 ハルヒの手だった。 「何よ。いいたいことでもあるの!?」 「放課後に話があるから待っててくれ」 「なんでよ。面倒くさい。」 帰ろうとするハルヒの手をさらに強く握った。 「大事な話なんだ」 「…わかったわよ」 ハルヒはしぶしぶだが引き止めることに成功した。 おれは3人に連絡する。 「部室で待っててくれ。ハルヒを連れて行く」 これはそういった時の3人の反応だ。 古泉バージョン 『今日ですか!?ついにやりましたね!少し遅かったですがやってくれると思ってましたよ』 ああ、遅くてごめんな。おれがヘタレのせいだ。 朝比奈さんバージョン 『そうですか!涼宮さんをよろしくお願いしますね!部室に先にいってます』 何がよろしくなのかわからないが、朝比奈さんの声を聞いたので元気100%だ! 長門バージョン 『そう……………………待ってるから』 ああ、待っててくれ。これでいままでにケリをつけるから。 場所は教室にうつる 「ハルヒ」 「何よ」 「ちょっとついてきてくれ」 「話ならここでいいじゃない」 「ここじゃだめなんだ」 おれはハルヒの手を取り、歩きだす。 「ちょ…ちょっと!痛いわよ!離して!」 「あの時と逆だな」ボソッとおれがいった。 あの時とはハルヒが階段の踊場までおれをつれていき、説得(脅迫?)した時のことだ。 「! ……あの時って何よ」 声がうわづった。ハルヒの癖だ。わかっているのに知らない降りをする時によくこうなる。 部室塔に続く廊下にでるとハルヒはいった。 「わかったわよ!わかったから離して!」 手を離す。 観念したのか自分が先頭になり歩きだす。 そして部室の前についた。 *6* おれとハルヒは部室の前にいた。 「………」 ハルヒは扉を開けようとしない。俯いて少し震えていた。 扉はおれが開ける。そこには定位置にいる古泉と同じく定位置にいる長門。奥の席に座っている朝比奈さんがいた。 おれが自分の席に着く。ハルヒはおれの隣のスペースにわざわざ椅子を持ってきて座ろうとした。 「ハルヒ、お前の席はあっちだ」 おれは団長席を指差す。 「あたしは…」 ハルヒが何か言い掛けたが、おれはそれを遮った。 「いいからあっちに座れ」 これだけハルヒに強くいうことなんてめったにない。 「…」 ハルヒは団長席に向かい、腰掛ける。 おれは全員を見たあとにいう。 「ハルヒ、なぜ呼んだかわかるよな?」 「…」 黙っている。 「急におれたちの前からいなくなった理由、急に来なくなった理由をいってくれ。おれたちは誰一人納得していない」 「理由?どうせだいたい察してるんでしょ!?」 ハルヒは立ち上がり、机をバンっと叩いた。 「もうわかるでしょ!? 嫌気が指したのよ!」 ハルヒは続けて言う。 「何も起こらない不思議!部室なんてただの暇つぶしの場になってるだけじゃない!否定できるの!?」 否定はできない。 「不思議探索だって名ばかりのお遊びになってるじゃない!適当にその辺ぶらぶらしてお昼食べて、午後も同じことして…どうせ不思議なんて見つからないのに!」 全員黙って聞いていた。 「これでわかった!?だから来るのがバカバカしくなったのよ!」 ハルヒはいい終わると肩で息をしていた。 「本物にそれだけが理由か?ハルヒ?」 おれがハルヒにいう。 「何がよ」 「本物にそれだけが理由かってきいてるんだ」 ハルヒは少し時間をおいてからいった 「そうよ!あたしは自分で作ったものにも責任が持てない女なのよ!だからもうほっといて!」 荷物を持ってでいこうとするハルヒを止めた。 「ハルヒ!まだ話は終わって(ry」 おれはまた手を掴む。 「離してよ!」 ハルヒはおれの手を無理やりはがした。荷物が床に落ちる。しかし、気にせずハルヒは出ていく。 「くそ!」 だめか…と思った瞬間に朝比奈さんが大きな声でいう。 「なにしてるんですか!早く涼宮さんを追いかけて!」 「そうです!ここで追いかけなきゃ二度と彼女とは話せませんよ!」 「涼宮ハルヒの精神状態は不安定…早く行ったほうがいい」 朝比奈さん…古泉…長門…そうだ。おれたちは本当のことが知りたいんだ! バンっ! 扉をあけると全速力で走る。 「ハルヒー!」 ハルヒはいた。 「待ってくれ!ハルヒ!」 ハルヒはびっくりした顔で見たあと走りだした。 ハルヒはおれより足は速いはずだがなんとか追いついた。 「離して!」 ハルヒ暴れる。 「おれの話をきいてくれ!」 「離してよぉ…」 泣き声だ。おれは慌て離す。 ハルヒはその場に座り込む。 おれはハルヒの肩を抱いて隅に連れて行った。 「どうしてよぉ…もうあたしなんかほっといてよ…」 「そういうわけにはいかない」 泣いている女の子を放っておくわけにはいかない。先追いつけたのもハルヒが泣いていたからだろうか。 「なんでよ… あたしはあんたたちを裏切ったのよ…」 「おれたちは誰も裏切られたとは思ってない」 ハルヒは泣いている。おれはまた聞いた。 「ハルヒ…本当にあれだけが理由なのか?他にもなにかあるだろ?」 しばらく時間が経った。3分くらいか? 「半分は本当よ…もう半分…いえ、こっちのほうが理由しては強い…」 ハルヒは『もう半分』について話し始めた。 第三章へ
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では今一度、私の最後の話を続けさせて欲しい。 第二十四話 「あなた」 「は・・・はい!」 百合子は滅多に熱くなることはない。常にたんたんとこちらを責める。 「あれほど危険なことはしないでと、いったでしょう? 二、三日で帰るどころか警察にまで連行されて・・・ 自分の立場を分っているの? あなたに何かあったら、私や麻衣はどうなるか、考えたことあるの? 正社員じゃないあなたは労災もおりないのよ。」 私は小さくなって妻に平謝りだ・・・休みをもらって嬉しいのか嬉しくないのか・・・。 「はい、もうおっしゃるとおりでございます、返す言葉もございません・・・。」 「それであなた」 まだ来るよおぉ! 「私が編んであげた・・・赤い手袋はどうなさったのかしら?」 ・・・私の妻はきつい妻だったようです。 「・・・え・・・と、向こうで失くしちゃった・・・かな?」 人形にあげちゃった、なんて言えるはずがない! 「その程度なのね、もういいわ、もう作ってあげません。」 「ごめんなさい・・・百合子・・・」 妻は後ろを向いて、洗濯物をたたみ始めた。もうこの場にはいづらい! 「・・・スロット、行って・・・きていいですか?」 小さくポツリとつぶやくと、後ろを向きながら 「はい?」 何の感情も見えない言葉が返ってくる。どちらが人形なんだか・・・。 「あ・・・あの、(泣きながら) 町じゅう探してきまっす!」 魔法使いには会いませんように! 何か機嫌の良くなるものでも買ってこよう・・・。 玄関で靴を履いていると、後ろから、ばりばりとおせんべを食べながら、麻衣がトコトコやってきた。 ああ、もう麻衣は本当に可愛い! 「ぱぱぁ!」 「出かけてくるね、麻衣、あ〜あ、ほっぺにおせんべつけて・・・」 私は麻衣の唇についた煎餅のかけらを取りながら話しかけた。 「あのね、ぱぱぁ? 昼間ね、お昼ねしてたらね! 」 「うん、うん」 「 お に ん ぎ ょ う さ ん が ね ! 」 ⇒
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第二十話 私の頭上を巨大な何かがかすめ飛んだ! それは人形に激突して「彼女」は弾き飛ばされる。 かろうじて後ろを振り返ると、丸山がいた。 丸山が投げたのは、和室にあった巨大な壺のようだ。大音響と共に「人形」は床に倒れた。 丸山はラグビーか柔道をやっていたのか、すぐさま「人形」に突進し アラベスク文様のある鎌を蹴り飛ばした。 武器がなければどう考えても人形に勝ち目はない。 ・・・だがそれは私や丸山の思い違いだった。 丸山は馬乗りになって石膏で覆われた人形を殴りつけていた。 しかし、考えれば当然なのだが、殴ったところで人形にダメージはない・・・。 そのうち人形は細い腕を丸山の首に延ばし、彼の首を押さえ始めた。 彼も殴るのを止め腕を押さえにかかったのだが、みるみる顔が青ざめ紫色になっていく。 あの細い人形のほうが力が強いというのか!? 私は耳を疑った・・・このとき、人形ははっきりとしゃべったのだ。 「わたし・・・メリー、 抵抗すら 許されず 縄に吊るされた 少女に 安らぎを 」 「うおぉ!」 丸山は必死に人形ごと立ち上がり、首を絞められたまま人形を壁に叩き付けた! その衝撃で指が離れたようだ、間髪入れず丸山は人形の身体を逆さに持ち上げ、頭からまっ逆さまに廊下に叩き付けた! 決定的な鈍い音が廊下に響く・・・。 彼はむせりながら、なおも人形の身体をけり続けた。 既に人形の首は、支柱が折れたのか、変な角度に折れ曲がったままだ、 人間ならとうに死亡しているだろう。 丸山はそのうち蹴るのを止め、その大きい肩で息をしながら、人形を黙って見据えていた。 だが、もう人形はピクリとも動かない・・・。 私はようやく口を開けることができるようになっていた。 「ま、丸山・・・さん、あなたが・・・あの子の殺害を・・・?」 丸山は私のほうを見たが、咳き込むだけで何も答えなかった。 プーッ 内線が鳴った。丸山は、人形に、もはや何の反応もないことを確かめると、 ゆっくりとわたしを通り越し、広間の向こうの受話器に向かった。 そこまで目で彼の動きを追った後、私は再び「人形」を見ようとして、信じられない光景を見た。 そこには 人形も 鎌も 残っては いなかったのである。 ⇒
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SOS帝国宇宙艦隊総旗艦兼第一艦隊旗艦ブリュンヒルトは、新人類連邦で建造された最新鋭艦隊旗艦級大型戦艦であった。試作艦としての色合いが濃く、コストを無視した装備がふんだんに使用され、火力、防御力、通信能力、情報処理能力、どれをとっても既存の艦隊旗艦級大型戦艦を上回っていた。さらに、防御スクリーンの効率を高めるために曲線を多用した設計を取り入れ、無骨なイメージが付きまとうそれまでの軍艦とは一線を画する繊細なフォルムに仕上がっている。白鳥に喩えられるその優美な姿は、見る者のため息を誘い、乗員の保護欲を大いに高ぶらせた。 ブリュンヒルトは艤装後、数ヶ月間評価運用がされてから、この最新鋭艦と同じく軍の期待を一身に受けていた英雄の座乗艦となった。英雄は一度乗っただけで「極上の乗り心地よ!」とブリュンヒルトをいたく気に入り、自身が新人類連邦に反旗を翻してからも、密かに呼び寄せたこの艦に乗って指揮を執り続けていた。 現在、コンピケン連合軍迎撃作戦の中枢部となっているブリュンヒルトの司令室では、目の負担を軽くするために暗くされた照明の中、中央に備え付けられた三次元戦況図が妖しく輝いていた。その中では敵を示す赤が、劣勢になった味方を示す青を各所で分断して飲み込まんとしていた。通信士からも各艦隊の悲痛な叫びが伝えられている。 「第二艦隊の戦闘可能艦が半数をきりました。まもなく敵に完全包囲されます」 「第四艦隊旗艦ヒューベリオン大破。キョン提督以下艦隊司令部要員は戦死した模様。分艦隊の指揮をとっていた副司令官クニキダ提督が艦隊の指揮を引き継いでいますが、艦隊は混乱状態に陥っています」 「各艦隊司令部との通信が不安定になっています。敵の電子妨害が我が軍の対電子妨害を上回ったからだと思われます。現在対抗処置を・・・」 司令室の主である超元帥ハルヒは戦況図の前に立って、いらだたしげに報告を聞いていた。ハイヒールを踏み鳴らす音が通信士の声をかき消す。 「閣下、我が第一艦隊も敵C艦隊に半包囲されて防戦を強いられております。ここは艦隊を紡錘陣に編成するなりして前面の包囲を突破し、善戦を続けている第三艦隊へ合流するのが得策かと思われます。合流して敵の総旗艦がいる敵A艦隊を攻撃すればまだ勝機が・・・・・・」 総参謀長であるコイズミが第二艦隊の指揮を執っているので、事実上ハルヒの補佐に当たっているユーリ・イヴァノフ参謀副長が意見を具申した。 「そんなこと分かってるわ。でも、半包囲されてる状態で艦隊を編成するなんて、敵の良い的になるだけよ。あっ、第三十二戦隊に艦隊の中心部へ移動するよう命じて。損害が大きすぎるわ」 ハルヒは刻々と不利になっていく味方を映し出す戦況図をにらみつけながら答えた。豪快で派手な戦法を好むハルヒにしては消極的な姿勢だった。今回の戦いにはハルヒの心を消極的な方向へ引っ張っている理由が存在していたのだ。 「しかし、それでは」 イヴァノフの発言は探査参謀の悲鳴に等しい報告によって遮られた。 「第四艦隊を包囲していた敵A艦隊が移動を開始しました!予想到達地点は我が艦隊の後方RU77ポイント。このままでは敵に挟撃されます!」 ハルヒは鋭い舌打ちをすると、ようやく決心をつけた。 「艦隊を大急ぎで紡錘陣に組み直して!挟撃される前に敵C艦隊を突破するわよ!」 第一艦隊は敵C艦隊の相手だけで手一杯である。味方から支援を受けられないまま、後背から攻撃されて挟み撃ちにされればひとたまりも無い。ゆっくりと死刑執行を待つよりは、一か八かで勝利をつかむことを選んだのだ。 だが、艦隊運動はハルヒの期待を裏切った。戦況図の中で再編されていく艦列の動きは蝸牛よりも遅いだけでなく、無駄が多すぎるようにハルヒは思えた。こちらの意図に気づいた敵が間断なく砲火を浴びせ、味方の動きをさらに鈍らせる。 「閣下!これ以上編成に時間をかけていると手遅れになりますぞ!」 「もう限界です。突撃命令を!」 副司令官のビッテンフェルトとグエンが通信画面に現れて気炎を上げた。この二人はハルヒが新人類連邦軍で戦っていたときからの部下であり、SOS帝国独立時にはリテラート星系駐屯艦隊の司令官と副司令官だったので、そのままSOS帝国軍に加わっている。もっとも、ハルヒに信仰心ともいえる絶対的な信頼を寄せているので、宇宙のどこにいても駆けつけていただろう。 それぞれ非凡な才能を有する指揮官で、特に艦隊の攻撃力と破壊力を引き出す能力はずば抜けて優れており、“猛将”“猪武者”の異名を付けられ敵味方に恐れられていた。どちらも司令官の冷静なコントロールの下でこそ絶大な破壊力を振るえるタイプで、ハルヒの指揮下になった際にはその特性を十二分に発揮していた。ただ、同族嫌悪からなのか二人の仲は非常に険悪で、会議だけでなく廊下で顔を合わせる度に角を突き合わせてきた。一説によると、とある辺境艦隊司令部と赤毛の美女にまつわる挿話からはじまった確執だとされている。 「あんた達正気!?こんな中途半端な編成で突撃するなんて自殺行為よ!あたしに陳情してくる暇があったら、分艦隊の指揮を執りなさい!」 ハルヒは二人の無謀な案を一蹴したが、既に遅かった。軍艦には不釣合いなほどの美しさを持つブリュンヒルトが、ついに敵艦隊の火力の網に捕まったのだ。 「本艦及び旗艦護衛戦隊に対艦ミサイル多数接近。数・・・およそ4000!」 「旗艦を下げるわけにはいかないわ。ブリュンヒルトと護衛戦隊は味方の再編成が終了するまでこの場に踏みとどまり、全力で対艦ミサイルを迎撃しなさい!艦長、この子のことは任せたわよ」 ハルヒはマイクをつかんで艦橋で艦の指揮を執っているザイドリッツ大佐を呼び出した。 「これは……できる限りの努力はしてみます。何か固定されているものにつかまってください!」 艦長の言が終わるや否や、ブリュンヒルトは身体中に付いている姿勢制御噴射口を目一杯吹かして回避運動を開始する。重力制御を超える振動が来る前にハルヒは真後ろにある、快適な座り心地を提供する司令官用の座席の背をつかんだ。視界の隅でイヴァノフがよろめく姿が見えた。 雄雄しき戦乙女と彼女を守護する艦達に装備された近接防御火器が火を噴き、ミサイルを次々に破壊していくが、いかんせん数が多すぎた。必死に艦を守る対宙レーザーの火線や短距離ミサイルの群れをかいくぐり、敵の対艦ミサイルが命と引き換えに自らの使命を果たしていく。 「戦艦アエリア、デ・ロイテル、巡航艦コルドバ、ドーロホフⅢ、タスケ・テエーリン、ハイフォン撃沈。その他護衛戦隊の半数が戦闘不能」 「第五モジュールにミサイル命中!E3からE7ブロック損傷。E1からE10ブロックの気密が破られました。九十七名が死亡、負傷者多数。くそっ!第二と第三にもミサイル!」 「ダメージコントロール間に合いません!」 味方の損害報告に混じって艦橋からのブリュンヒルトの損害報告が入る。 「どうやらブリュンヒルトもここまでのようです。閣下の棺がこの艦になることを艦長である私は幸せに…」 「馬鹿っ!あきらめたらそこで戦闘終了なのよ!」 艦長が不吉なことに最後の別れの挨拶を始めたので、艦隊の司令官らしい風格のある言動で黙らせたが、ハルヒにできることはもう何も無かった。 「推進機関被弾!反物質燃料槽に誘爆しま…」 ここで報告は強制終了させられた。艦内の全ての灯りが消え、一瞬後に復旧する。次に機械音声の無機質な声が、気まずい沈黙の流れる司令室に響いた。 「本艦は撃沈されました。本艦は撃沈されました」 「全軍に告げます。総旗艦ブリュンヒルトが撃沈されました。我が軍の敗北です。繰り返します…」 SOS帝国暦一年十一月二十四日、コンピケン連合艦隊よりニ、三足ほど早くウィンダーズ星系に到着したSOS帝国艦隊は、休息もそこそこに、万能と沈黙をつかさどる女神ナガトが開発した戦術シュミレーションシステムを使用した演習を行った。百隻単位の艦艇で構成されている戦隊レベルでの演習はこれまでにも行われていたが、五個艦隊、70000隻以上の艦艇が参加する大規模な演習はSOS帝国宇宙艦隊成立以来初であった。SOS帝国軍とハルヒの威信をかけた演習の結果は、先のように目も当てられない、もはや一方的な虐殺と表現しても申し分ない結果だった。 実戦はもちろん、士官学校の艦隊戦シュミレーションから通して振り返ってみても、これほどまでに一方的な負け戦はハルヒの記憶層のどこを探っても出てこなかった。ハルヒの自尊心は敗北という鋭利な文字によっていたく傷つけられた。シュミレーションの敵のレベルが最強だったことを差し引いても、己の能力に絶対の自信を持っているハルヒにとっては、耐え難い屈辱的な出来事だった。 影響はハルヒだけにとどまらなかった。無敵のはずだった英雄の敗北は、英雄を信じて付いてきている者達の心に無視できない波紋を広げさせていた。戦闘不能判定をされた艦では、仕事を取り上げられた乗員達が不安な顔をして、上官の目を盗んでは私語をしていた。その上官達でさえも深刻な表情で仲間と相談をしていた。 「閣下、演習終結コードを」 イヴァノフがブリュンヒルトが撃沈された瞬間から、形の良い眉毛を危険な角度に急降下させ、腕を組んだまま身動き一つしない司令官にそっとささやく。司令室の誰が見てもハルヒが怒りを堪えていることは明らかだった。 「……“ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で”」 マイクを通してハルヒの声紋が認識された途端、艦外ディスプレイを埋め尽くしていたCGのミサイルが消え去った。戦況図からも敵を示す赤が消え、戦闘の過程で破壊された青が冥界からの復活を果たした。それと同時に全てのシステムが回復、膨大な量の通信が開始された。演習を記録したデータをブリュンヒルトに集め、解析する作業を行うためだ。 ハルヒは無残にも散り散りにかき回された青が映る戦況図を一瞥すると、通信参謀に全軍に通信回線を開かせるように命じると、通信用カメラのある場所を向いて無理矢理、万人を魅了してきたハルヒ特有の不敵な笑みを作った。うなだれた姿を見せて敗北で低下している部下の士気を更に下げる、それだけは避けなくてはならない。ときとして、指揮官は虚偽の姿を見せて部下を鼓舞しなければならない時があるのだ。 「みんな、これで演習は終わりよ。負けちゃったけど、お疲れ様。どうやら行軍の疲れがまだ残ってたみたいね。あたしもコンピューターが敵だと思ってついつい甘くなっちゃったし。今日はそれぞれの艦、戦隊で反省会を開いてじっくり話し合うこと。もちろんRC12ポイントに集結しながらやりなさいよ。時間がもったいないから。反省会が終わったらゆっくり休んで疲れを取って頂戴。ただし、明日も演習をするから、覚悟しておきなさい。もし負けたりしたら、全員死刑だから!!あと、各艦隊の司令部要員は今すぐ通信室に集合。以上!」 威勢よく普段とほとんど変わりないハルヒ節をマイクに叩きつけると、すぐに偽りの仮面を脱ぎ捨てて、まとわりついている敗北の魔手を振り解くように専用通信室へ早足で歩き出した。 その後を追って浮かない顔したイヴァノフ以下の参謀グループ、護衛兼人員不足から首席副官へ昇進したメイ・ユンファ中尉が続く。本来ならば首席副官には佐官以上で副官経験がある軍人が就く予定であったが、ハルヒが強引にメイを任命したのだ。メイは思わぬ抜擢に驚き、かつ自分がハルヒに目を掛けられていたことを知って非常に感動したのだが、彼女はこの大抜擢の真の意図をまだ知らなかった。 ハルヒが専用通信室の席に着いたときには、各艦隊司令部と秘匿回線がつながっていた。司令官から艦隊参謀グループまでが皆、この非常事態を受け止めており、各々の面持ちをしてディスプレイに顔を並べていた。明るい表情の者は一人もいなかった。 「何たるざまなの!」 開口一番ハルヒの怒鳴り声が回線を支配した。ミクルは数万km離れた座乗艦で一回り身を縮こませた。 「我が軍にとって初めての大規模演習だったことを考慮しても、これはひどすぎるわよ。あたしを含めてだけど、みんな反省が必要だわ。特にタニグチ!あんたはブラックホールより深く反省しなさい!!」 「何で俺だけ名指し!?」 正面ディスプレイにかろうじて美形の部類に入るが、部下からはむしろひょうきんな顔と見られ愛されているタニグチの顔がアップで飛び出した。 「あんたがしょっぱなに変な艦隊運動をして撃破されたところから、全てが狂ったんでしょうが!」 奥歯をむき出しにして口角泡を飛ばしているハルヒはタニグチに向かって話しているつもりなのだが、カメラ映りの関係から通信に加わっている全員がハルヒに責められているような気分になる。 「ありゃ敵が予想外の方向から現れたから、そいつを迎撃しようとしてだな…」 「それくらい作戦の許容範囲でしょ!もっと余裕を持って対処しなさい!」 「アホのタニグチに怒りをぶつけるのも良いがな、ハルヒ。お前が突撃ばっかりして味方から離れすぎるのも問題だと思うぜ。あれじゃあ、敵に包囲してくださいって言っているようなもんだ」 ハルヒがタニグチの必死の抗弁を粉砕していると、もはや諸々の会議で定番となっているキョンのつっこみが入った。当然怒りの矛先はキョンへと方向転換する。 「ちょっと、第三者面して説教するつもり?あたしは作戦主任参謀の立てた作戦に従ったまでよ。あたしの艦隊の突撃は作戦の許容範囲じゃない!それと、あたしを呼ぶときは閣下!けじめをつけなさい!」 「俺の立案した作戦が敗北につながってしまったことには責任を感じる。だが、後退していく敵に突撃をかけて、味方の制止も聞かずに深追いしすぎてそのまま縦深陣に誘い込まれる。なんてことは作戦に入れた覚えがないぞ」 「んぐっ。あ、あれは艦隊の速度が思ってたよりも遅くて……はあ。要するにあたしはタニグチのヘマをカバーできないほどしょぼいってこと、か。スズミヤ・ハルヒの名も地に落ちたわね」 身体の中に溜まっていたうっぷんを吐き出した後に残ったものは、自嘲めいた寂しい、ハルヒには似つかわしくない笑いだった。普段の快活とした姿はどこにも無く、秘匿回線に参加している将官を驚かせた。 キョンはついつい嫌味を言ってしまった自分の舌を引っこ抜きたくなった。同時に、ハルヒの憂鬱はハルヒポリスの『黒猫亭』に置いてきたので当面は安全だと結論付けた自分の判断力に、苦情を言いたくなった。最後に、こう考えると俺はあいつよりも太い神経をしてるんだなぁ、というどうでもよい客観論を頭の隅に追いやると、大急ぎで、されど慎重にフォローするための言葉を選んで舌の上に整列させた。 「まあ、そんなに気を落とすな、ハ・・・閣下。今回の敗北の原因は色々とあるが、一番の原因はお前じゃない。艦隊の錬度不足だ」 戦闘中、ハルヒの脳裏に付きまとって積極性を削ぎ落としていた張本人はまさにそれであった。本来五カ国の異質な艦艇が寄り集まって編成された烏合の衆でしかないSOS帝国艦隊は、この演習で弱点を盛大に暴露してしまったのである。 キョンは艦隊の編成を任された際、同じ国の艦艇数百隻を束ねたものを戦隊とし、その戦隊を旗艦直属と分艦隊に振り分けて一つの艦隊としていた。これは、未だに全艦艇の武装の統一がされていない現状を無視して、出身国がばらばらな艦艇で戦隊を編成したら、戦闘で混乱が起きる上に、補給の観点から見ても好ましくないことは簡単に想像できるからだ。かといって艦隊を丸ごと出身国ごとの艦艇で統一したら、他国の兵士との交流が皆無になり、SOS帝国軍であるという意識が薄くなったり、兵士間でいらぬ対立が発生する恐れがある。キョンの処置は大いなる妥協の上に成り立ったものだったのだ。 しかし、演習では、例えば「前面の敵にミサイル攻撃をしろ」という単純な命令が旗艦より発せられたとき、とある戦隊はできるだけ敵との距離をとってミサイルを発射しようとし、別の戦隊では敵との距離を縮めてからミサイルを発射しようとしてお互いを邪魔してしまい、艦隊司令官はいちいちそれを是正しなければならなかった。このような事例は一つや二つで無く、艦隊司令官は続発する戦隊の行動の不一致の対処に時間を取られ、艦隊全体の指揮を妨害されてしまったのだ。ハルヒなどは途中からさじを投げてしまったが、おかげで艦隊運動能力は大幅に低下してしまい、行動の選択肢が減ってしまった。いくら優秀な司令官が知略を尽くした作戦を立てても、艦隊がその通りに動いてくれなければ意味が無いのである。 SOS帝国軍の基本的な運用思想を定めた戦闘教義は、新人類連邦軍のものを基盤としてSOS団のメンバーがアレンジを加えたものを使用している。しかし、新人類連邦軍の出身者ならまだしも、その他の人民統合機関軍や天の川情報共同体軍の出身の戦隊指揮官は、それぞれの軍が使用していた戦闘教義が完全に頭から抜けきっておらず、結果として戦闘中の行動に齟齬を生じさせてしまったのだ。要するに、艦隊にまとまりがなくなってしまったのだ。軍隊はワインやウィスキーと同じで良い味が出るまで時間がかかる、とはよく言ったものだが、生まれてからまだ半年のSOS帝国軍は熟成期間が足りていないことは明白であった。 「……分かってる。何とかしなきゃならないのが艦隊の錬度だってことくらい、あたしにも分かるわよ。ただ、それを言うと自分の失敗を誰かに押し付けてるようだし、あたしを信じて戦ってくれた仲間達に悪いと思って……ああもうっ!英雄やら皇帝やらに祭り上げられて浮かれている間に、あたしも武人としての感覚が鈍ったみたいだわ!」 キョンからの通信をじっくり頭の中で消化してから、おもむろに、ハルヒはポニーテールにするには若干短い髪をかきむしって叫んだ。 「わたしも宇宙艦隊司令長官として謝罪を。全艦隊を統括する役職に就きながら、このような結果を招いてしまったのはわたしのミス。願わくば汚名返上のために、明日以降の演習の修正案を具申させて欲しい。艦隊は実践的な演習より、基本的な艦隊運動の訓練が必要」 「総参謀長の職を全うできなかっただけでなく、シュミレーションとはいえ閣下からお預かりした艦隊を壊滅させてしまうとは失態の極み。本来ならば死を持って償うべきでありますが、もし閣下がお許しになるなら再戦の機会をいただきとうございます」 「えっと、えっと……とにかく補給に関しては気にしないでください。わたしが責任を持って皆さんに補給物資を送り届けます。ビームもミサイルも遠慮なくばんばん撃っちゃってかまいません!」 一時的に饒舌になった宇宙艦隊司令長官、うやうやしい表現を好む総参謀長に続いて、戦線の後方に留まって演習にノータッチだった後方主任参謀までが発言してくると、さすがにハルヒも苦笑して同時に口を開きかけたビッテンフェルトとグエンを手を上げて制した。残念なことにタニグチの「俺は?俺に押し付けてもかまわないのか?」という心の叫びは、ハルヒだけではなく他の通信参加者からも半分意図的に無視されてしまった。いつの時代、どんな場所でもストレス解消用サンドバックはつらい役目なのだ。 「みんなで責任を口にすればいいってもんじゃないわ。失敗はそれ以上の成功で埋め合わせをすること。あたしもそのつもりだから。で、今回の演習の結果を踏まえて、迎撃作戦の大幅な見直しをするわよ。艦隊集結後に改めてこのブリュンヒルトで会議。 本格的な話はそこで。それまでに具体的な案をそろえておいて頂戴。あと、ユキ。明日の演習は今日と同じ模擬実戦よ。負けっぱなしはあたしのプライドが許さない。士気にも関わるからね。ただし、敵のレベルは最弱でお願い。以上。通信終わり!」 こうして通信は一方的に切られ、キョンは安堵のため息をついた。最後の瞬間に見たハルヒは、普段の活力三割減であったが、SOS帝国の頂点に立つに相応しい剛毅な意思で瞳を光らせているハルヒの姿だったからだ。 惑星トナッリ・ベアーの赤道直下に、天候条件さえそろえば衛星軌道からでも視認できる巨大な建造物があった。全コンピケン教徒の精神的な拠り所、もしくは権力という甘い蜜を愛する者の集う場所、唯一神コンピケンを祭るインテルノン神殿である。神殿は縦横の辺が4000m、高さが500mの立方体で、外壁は清浄を表す白で統一され、その内部には高さ223mのコンピケン像をはじめ、300万人を収容できる礼拝堂、神の代理人の一方的な意思発表の場となり集会所とは名ばかりの教徒集会場、歴代指導者や聖人の納骨堂など多数の施設が存在する。コンピケン連合の指導部と一部の狂信的信者にとってこの神殿は聖域であったが、ほとんどの国民にとっては神の名において権力をもてあそび、人民から搾取した富を蓄えることに専念する亡者の住処、諸悪の根源に他ならなかった。 古代ギリシャのドリス式オーダーに基づいて作られた壮麗な円柱が立ち並ぶ神殿の廊下を、これまた古代ギリシャ風の衣服を模した軍人用礼服に身を包んだ二人の男が肩を並べて歩いていた。この二人の軍人は背丈の違いさえあれ、色の薄い目鼻立ちからやや貧弱な体格まで驚くほど似通っていた。一般人が考える優れた武人のイメージにはかすりもしない彼らなのだが、戦場での武勲より唯一神コンピケンと現世での代理人である教皇に対する忠誠心が昇進の条件になっているコンピケン連合軍において、例外的に武勲のみで昇進を重ねてきたのがこのブ・イン・エーとブ・イン・ビーの兄弟なのだ。彼らがいなければ、近年のコンピケン連合軍戦史は全て血文字で書かれた敗北という文字しか必要としなかったであろう。ブ・イン兄弟こそ、その他の提督や教皇ら指導部に代わって、虫食いだらけの傾いた家であるコンピケン連合を真の意味で支えている柱だった。 「なあ、弟者よ。この戦争、勝てるかと思うか?」 二人の足音のみが響き渡る広大な廊下を三分の一ほど進んだ頃、不意にブ・イン・エーが右を歩く弟に尋ねた。 「何を言うんだ、兄者。我々は大神コンピケンのご加護を受けているのだ。コンピケンのご威光の前には異教徒や裏切り者どもの艦隊など無きも同然。必ずや勝利を収めるだろう」 ブ・イン・ビーの答えはコンピケン連合に籍を置く軍人のもっとも模範的な回答だっただろう。軍広報部が喜んで宣伝放送に使いたがる類のものだ。 だが、ブ・イン・エーは回答に満足しなかったらしく、立ち止まって自分より背の高い弟の目を見上げるようにして覗き込んだ。 「安心しろ、この廊下には我らしかおらん。もし、見張ってる奴がいても、そいつらとその背後にいる誰かに大声で教えてやれ。我らを不敬罪なり背信罪なりで告発して辺境惑星か処刑台へ追いやったところで、困るのは奴らだ。我らには昔と違って力があるのだぞ」 「兄者……はぁ。勝利を信じているのは、ボードゲームと艦隊戦の区別もできない教皇と、教皇のご機嫌取りをするしか脳の無い取り巻き連中だけだろうよ。なにせ相手はあの英雄スズミヤが率いる帝国だ。勝てると思うほうが狂っている。まあ、奴らは元から狂っているがな」 見かけによらず豪胆な性格をしている兄を持った弟は、その誰かを探すように廊下を見回してからため息をつき、苦々しい口調で皮肉のオブラートに包んだ真実を吐き出した。もし、一介のコンピケン連合人が街中でこの発言をしたら、たちまち宗教警察が飛んできてその者の人間としての権利と未来への道を奪っていたであろう。 「素直でよろしい」 ブ・イン・エーは弟の回答に満足げにうなずいていたが、弟の方は一度開放してしまった反逆の思いを、再び胸の奥に押し止めることが難しかったようだ。 「兄者、この際聞くが、何でSOS帝国に亡命しないんだ。スズミヤは突拍子もないところがあるし、我らと幾度となく矛を交じ合わせてきた敵だ。それだけに、スズミヤがどれほど優秀か、どれほど良い部下に恵まれているか、どれほど強固な意志を持っているか兄者には分かるはずだ。恐らくSOS帝国は銀河を統一する。天の川銀河に住む全ての人民が待ち望んだ銀河再統一だ。これほど見返りが多く、なおかつ信頼性の高い株に投資しない手はないだろう。良識のある者達はことごとくコンピケンに見切りをつけて去っている。兄者なら今の地位を利用して艦隊ごと亡命できるのに。俺には何故それをしないが理解できない!」 「かくいう弟者はどうなんだ。それだけのことが分かっているなら亡命しているはずだろ。我が弟は良識ある者達の中に入っていると思っていたが?」 ブ・イン・エーは目を閉じて怒れる弟の胸の内を聞くと、年長者の余裕と弟思いな兄の表情を混ぜて聞き返した。 「俺は兄者の後ろに立つだけだ」 弟は間髪入れず憮然として答えた。自らの決意を表すかのように。 敬愛の対象にされた兄は思わず苦笑してしまった。俺を崇拝するのは嬉しいがそろそろ生涯の伴侶を探しても良いだろうに、とブ・イン・エーは考えているのだが、こうも弟のブラザーコンプレックスぶりを見せ付けられるとなかなか言い出せないのだ。もっとも兄の方は「俺は結婚したくないだけだ。別に結婚できないのではない」と見栄を張っているのだが。 「確かに、弟者が後ろにいてくれたおかげで、これまで何かと助かったな。よかろう。俺が亡命しない理由を教えてやる。俺はな、単に神ではなく俺を慕って戦ってくれる部下達を見捨てることができないのだよ。仮に俺が亡命したら、後釜には来るのは祈ること以外何もできない馬鹿提督だ。そんな奴に部下達を任せることは到底俺にはできないね。弟者は艦隊ごと亡命しろとも言ったが、我らの親族だけならともかく、500万人以上の艦隊要員全ての家族を連れて亡命するなど不可能だ。ただでさえ我らは監視されているのだからな」 その程度の予想は弟にもできていた。しかし、ブ・イン・ビーは引き下がらなかった。二人が提督の地位を手に入れるまでに、そして、手に入れてからも受けてきた差別、虐げ、それらに対する抵抗心、それらが一体となって彼の舌を動かしていた。腐敗したコンピケン連合に残っていても、狂信者どもと戦うばかりで少しでも行動を間違えば生命の危機にさらされる。それよりSOS帝国へ亡命してハルヒの下で武勲を立てた方がよっぽど良い。彼は何としてでも兄を説得したかったのだ。 「そうは言うがな、兄者。ウォラス大佐は指揮下の艦艇227隻と乗員の家族全員を亡命させた。艦隊丸ごとだって決して不可能なことでは…」 「と、今までのは建前でな」 「は?」 兄の意外な言葉に弟の反論の濁流が一瞬途切れる。その間隙にさらに意表をつく言葉が滑り込まされた。 「我らはこれまで権力の亡者や無能な上官に対する意地だけで戦ってきたようなものだ。コンピケンのためとはまったく考えないで戦場に立っていた。だからな、今度ばかりは軍人らしく国家を、人民を守るために戦おうと思うのだ」 ブ・イン・エーは蒼白になった。彼は兄との三十八年間の交流の中で様々のものを学んできた。コンピケン連合への反骨精神もその中の一つで、それゆえに国家を守るなどという虫唾が走るような言葉を兄が使うとはとても信じられなかった。 「なっ、兄者らしくもないことを。SOS帝国は銀河を統一して人々に平穏をもたらすことを最終目標として、その実現に向けて動き始めている。それに比べて、コンピケン連合はコンピケン教の布教と異教徒の排斥。SOS帝国に時代の総意がついていることは明白だ」 「そう、弟者の言うことは正しい。正しいが、この国のはじまりを知っているか?天の川銀河統一政府が崩壊した直後、混沌と化した銀河を憂えて、いくつかの星系が集まって銀河の再統一を誓ったのがコンピケン連合の源流だ。コンピケン教などといういかれた連中が台頭して、国名をコンピケン連合に改称したのはたかだか三十年前。しかも、大部分の国民は神の世迷いごとなど信じてはいない。つまるところ“大部分の国民”を守るために存在するコンピケン連合軍は、天の川銀河の統一というSOS帝国と同じ立派な旗を掲げて戦っているわけだ。決して狂信者のために戦うのではない。特に俺はな。これで善悪は問題にならないだろう?」 「あ…兄者はそのような大昔のかびた建前のために、新たな希望の光を阻害し、何百万もの兵士を死地へと追いやるというのか」 ブ・イン・ビーは理解できないという風に頭を振った。 「徴兵されてるとはいえ、コンピケン連合軍憲章に“宇宙艦隊の存在意義はコンピケン教と国家を守ることにある”と記してある。コンピケン教の部分は飛ばしても良いから、同義的には大丈夫だろう。国の興亡や戦争の勝ち負けだって最終的な判断は歴史がするものだ。SOS帝国が滅亡しても、時代が望んでいるなら新たな若く活力のある勢力が現れるはずだ。我らが負ければそれはそれで良い。もし、俺の主張が気に食わなかったり、世のためにならないと思ったら、弟者、この場で俺を撃ち殺してくれ」 世間話をするような軽い口調で大それたことを言われたブ・イン・ビーは、思わず思考の海に投げ出されて下を向いた。しかし、下を向いている時間は長くは無かった。ゆっくりと顔を上げたブ・イン・ビーの瞳には、兄と同じく漆黒の炎が宿っていた。 「……何度も言わせないでくれ。俺の意思はさっきも伝えた通り、兄者の後ろに立つ。それだけだ」 この瞬間、皮肉なことに神を奉る国コンピケン連合は、神を信じぬ二人の男によって守護されることになったのだ。 「そんなに心配するな、弟者。この戦いが終わったら奴らは、我らをまた昇進させなければならないだろう。十分な力がついたら、クーデターでも起こしてコンピケン教を信じている馬鹿どもを追い出して、二人で国を奪い取ろうではないか。銀河統一の大儀だって完全に復活させることができる。それにだ、相手は英雄スズミヤといえども、我らには例の技術があるではないか」 例の技術とは、二ヶ月前に天の川情報共同体よりもたらされたワープに関する画期的な新技術である。この技術を得た教皇コンピケン三世は、SOS帝国に奪われたウィンダーズの奪還作戦の立案を軍部に命じたので、戦争発端の直接の要因はこの技術にあるといっても良い。 「あの技術を使えば、SOS帝国との戦いで有利に立つことができるのは間違いないだろうな。だが、怪しすぎはしないか?」 他国から運ばれてきた戦争の芽にブ・イン・ビーは一抹の不安を覚える。弱肉強食の戦国時代において見返りも無しに新技術を渡すような甘い国は生き残れない。天の川情報共同体はそれを承知のはずで、これには何か裏があるに違いなかった。例えば、SOS帝国とコンピケン連合を戦わせておいて、その間に天の川情報共同体が漁夫の利を占めるような。 「あの国が何を考えているか俺にはわからん。だから、何も考えずに利用できるものはありがたく利用しておこうと思う。見返りを求めてきたり、裏をかかれたらその時考えればよい。SOS帝国との戦争は避けることができない段階だからな。当面はそのことに集中しないといかん。さて、行かねば。教皇も艦隊を率いて出陣するそうだから、他の提督と一緒にちゃんと指揮ができるよう調教してやらないと」 そう嘯いてブ・イン・エーは歩き出した。その後を少し遅れてブ・イン・ビーが続く。ブ・イン兄弟の前には稀代の英雄でも気鋭の帝国でもなく、まずは無能な味方との戦闘が立ちはだかっている。不毛で忍耐の必要な戦いであるが、それだけに勝たねばならない。 第三章へ