約 845,779 件
https://w.atwiki.jp/makihitowiki/pages/31.html
2009-04-15 固定ハンドル色々一覧 『地域振興券』を貰ったコテ一覧 higher/コメントログ 自己紹介板迷惑メール一覧 今日からスゴイ★春ワンピー★ぞくぞく・・・「ショック」 お仕事をお願いします。報酬は10万円です。 抜けてませんか? 私の部屋でHしない?? 91cmでパイズリします 『スラムダンク』あれから10日後 『スラムダンクあれから10日後』で省かれたキャラ一覧 『スラムダンク』あれから10日後(ダイジェスト) 『スラムダンク』あれから10日後(湘北一年トリオ) 『スラムダンク』あれから10日後(三井) 2009年4月15日の自己板エロい女コテのブログ 暴露本・不揃いのコテ一覧/コメントログ まきひとウィキプレミアム 昨日まきひとウィキに繋いだ馬鹿一覧 まきひとウィキプレミアムメンバーリスト まきひとウィキプレミアムニュース一覧 まきひとウィキプレミアムニュース 2009年4月15日(水) 『関わる事』にも理由があるなら『関われ(≠ら)ない』にも理由がある、それを予想して楽しむんですよ 自己紹介板ニュース一覧 自己紹介板ニュース 2009年4月15日(水) 自己板で『地域振興券』貰ったコテって誰ですか? 自己紹介板ニュース 2009年4月15日(水) 明日から『マクドナルド』で夕方五時以降100円キャッシュバックキャンペーン! 面白スレ一覧(2007年) 『自己紹介板』に置いての色んな『フラグ』に付いて 自己紹介板を『いつもここから』風に語るスレ 『ギター侍』風に自己紹介板を語るスレ 自己板版『それでもボクはやってない』 ㈲ 死ぬ死ぬ産業 自己板唯一の面白さ『地獄wiki』をマンセーしまくるスレ 夏厨どもに『固定殺すにレス不要』を教えてやろうぜ コテはスーパーロボット大戦の精神が使えるらしい みんなで『asks』しようぜ!! 『Yahoo!ニュース』一覧 2009年4月15日のYahoo!ニュース 2009年4月15日の自己板スレ一覧 自己板新人コテのブログ 2009年4月15日の自己板新人コテのブログ まきひとの夕飯一覧 まきひとのオカズ(性的な)一覧 2009年4月14日のまきひとのオカズ(メガストア) 2009年4月14日のまきひとの夕飯(からあげクン)
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/26.html
純真なる抗体、真紅の悪鬼 ◆9cdcQ8fLVY 「………」 殺し合い……か。 「……昔を思い出す、な」 負の感情を求め、戦いにばかり明け暮れていたあの頃。 もう、終わったと思っていたのに……また、戦わなければならない。 「………ジョシュア」 ジョシュア・ラドクリフ。 居るはずだ、この会場のどこかに。 「やはり、会いに行かないと、な」 そうだ。 ジョシュアなら何とかしてくれるはずだ。 「参ったな………」 アルバトロ・ナル・エイジ・アスカは、少なからず戸惑っていた。 グラドス軍からみんなを逃がすため囮に出たら………これだ。 「まずは何処へ……ッ!?」 レーダーに反応。慣れない巨体を動かし、視認する。 「………アレは?」 こちらには気付いていない、が……… 「………駄目だ!」 急加速。ブースターを点火し急降下。 「……ユウゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」 「!?」 上空からの強襲、何か、憎悪に満ちたモノが迫る。 ラキは………ラキの乗る蒼いブレンパワードは、とっさに動けず固まってしまう。 と、……… 「危ない!」 背後から体当たり。ブレンパワードよりも大柄なその機体。 「ジョシュア……?ジョシュアなのか?」 ラキは、見覚えのあるその機体、共に戦ったジョシュアの乗っていた機体、俗に……フォルテギガスと呼ばれるスーパーロボットに聞く。 エイジはビームハンマーを敵機体の居た方向に射出し牽制しながら、言う。 「違う!僕の名はエイジ、君は狙われている!早くここから逃げよう!」 「逃がすものかッ!ユウ!」 真紅の翼を携えた機体は……真ゲッター1は、ゲッターサイズでビームハンマーを切り払い追いすがる。 「クッ……バイタルジャンプは、他人も一緒に飛ばせるのか?……答えろ、ブレン」 蒼いブレン……ネリー・ブレンもブレンバーでチャクラ射撃、援護する。が、悪鬼のごとき真ゲッター1は、慣性機動を無視した動きで避ける。 (…………) (………ブレン、行けるか!?) 「……よし、掴まれ。エイジッ!」 「え?うわッ!」 「ゲッタァァァァァ!ビィィィィィィムッ!」 胸部展開、ゲッター線を収束した光条が二体の居た場所をなぎ払おうとした。が、 (………左!?) 「つッ!」 ……ドォォン!! 緊急回避。左方から質量砲撃、それから避けるため上空へ飛び上がる。が、完全には避けきれず脚部に披弾する。 「邪魔をォ………?」 クインシィは、砲撃のあった方向を見るが………誰も、いない。 レーダーの反応もない。 「何なんだ?………ッユウ!」 呆気に取られた間、ブレンパワードは消えていた。 「ぃい~ッやっほぉ~!」 クルツ・ウェーバーは喝采をあげていた。 「鬼さんこちらっ手の鳴る方へ~だ!へへっ、やっぱ見えてないでやんのっと」 ジャミングを最大限に効かせ、物陰に潜ったその機体。そう簡単には見付からないはず。なにより……… 「さすがの鬼にも遠すぎたかな~?」 隣のエリアからの、超長距離砲撃。クルツの狙撃の腕と、この機体の性能。慣性無視軌道を見切るのは初めてだが、何とかうまくいった。 「この俺を舐めんなよ………」 一方的な攻撃を見て、隙だらけだったから攻撃した。クルツにとってはたったそれだけのこと。 またしばらく、隠れて狙撃。 狙撃屋の本領発揮だ。 「鬼に見付からなきゃいいんだ……逃げるか」 クルツはまた、赤い砲撃戦機体……ラーズアングリフの計器類を睨みはじめた。 「………どこに行ったの」 ネリー・ブレンとフォルテギガスは、その場から消えていた。 バイタルジャンプ……ブレンパワードとグランチャーだけが使える、バイタルネットを介した瞬間移動法。 どうやらこの地にもバイタルネットは通っているらしいが…… 感じられるのは………違和感。 紛い物の大地、バイタルネットも、本物とはおもえないほど………そう、オーガニックさがない。 だが、 そんなこと、今は関係無い。 「ねぇ、どこに行ったの?私のユウ、私の……私だけを見てくれるユウ……」 真ゲッター1のパイロット……クインシィ・イッサーは、弟の幻だけを見つめていた。 先程、砲撃されたことなど気にもとめずに……。 【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード) パイロット状況:健康 機体状況:少しEN減少、フォルテギガスの体当たりの時の傷 現在位置:??(バイタルジャンプにより何処かへと移動した) 第一行動方針:ジョシュアと合流 最終行動方針:未決定】 【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:フォルテギガス(スーパーロボット大戦D) パイロット状況:健康 機体状況:少しEN消費、機体は無事 現在位置:???(バイタルジャンプにより何処かへと移動した) 第一行動方針:当面はラキについていく 最終行動方針:未決定】 【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ~世界最後の日~) パイロット状況:情緒不安定 機体状況:脚部に披弾。飛んでいるため少々バランスが悪くなったこと以外問題無い。ゲッタービーム一発分のEN消費 現在位置:B-1 第一行動方針:ユウの撃破(ネリー・ブレンにユウが乗ってると思い込んでいる) 最終行動方針:とにかくユウを殺す】 【クルツ・ウェーバー 搭乗機体:ラーズアングリフ(スーパーロボット大戦A) パイロット状況:絶好調 機体状況:フォールディングソリッドカノン一発消費 現在位置:B-2 第一行動方針:近くにいる敵機を狙撃 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【時刻:12 30】 ※バイタルジャンプは機体のEN残量が十分な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べないということにします。 BACK NEXT DARK KNIGHT 投下順 天駆ける少女 彼女の答え 時系列順 天駆ける少女 BACK 登場キャラ NEXT ラキ ウルズ6 エイジ ウルズ6 クインシィ マジンガーZvsゲッターロボ! クルツ ウルズ6
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/276.html
絶望の中の太陽 220 バトルロワイアル――殺し合い こんな絶望的な状況下でも、私の心はまだ折れていない。いまだ希望に満ち溢れている。 そう私、宇都宮 比瑪の心は!! ベガスに乗った比瑪は森の木々の隙間を縫うように飛んでいた。 武装が無いベガスでは、ゲームに乗った参加者に見つかる=死。イニシアチブを取る事が最重要課題だ。 逃げるにしても機動力には自信があるベガスだが、生身の比瑪では耐えられない。 レーダーに引っ掛かるわけにもいかない。出力をMinにしてギリギリの高さを飛ぶ。 「ねぇベガス君、このまま行けば街まで行けそうだね」 「ラーサ」 いつも通りの通じているのかどうか分からない会話が弾む。 順調だった。とても順調「だった」 だった…… 比瑪はつい先程までの何事も無かった時間、今まで生きてきた中で経験した記憶が意識と関係なく溢れ出てくる。 眼前の巨人が今から自分の命を奪う。 そう考えただけで心が折れてしまいそうになる。 「小生、このギム・ギンガナムと勝負しろ!!」 そう言って空から降り立った巨人、シャイニングガンダムは腕を組み仁王立ちしたままこちらを見下ろしている。 シャイニングガンダムが降り立ってから18年に等しい2分が過ぎた。 「ふんっ、興に乗らん。女を斬り捨てたとて、武門の名家に傷がつくだけだ。お主、今回は見逃してやろう。立ち去るがよい」 ギンガナムの声には少なからず落胆の色が混じっていた。 「見逃…す…?」 「そうだ、見逃してやる。それともここで殺し欲し 「あなた良い人ですね」 比瑪の口から出てきた言葉はギンガナムの予想外だった。 「何を言っ 「ですよね」 比瑪の絶望に染まっていた顔が輝きを放つ。 「いくら殺し合えと言われたからって、本気で殺し合う人なんて居ないですよね!!」 「おい、お主何を言っ」 「バトルロワイアル……。謎の強大な力によって集められた哀れな人間達。我を忘れる者。 悲しみに暮れる者。死に逝く者。そして強大な力に立ち向かう者。運命の歯車は今動き出す」 シャイニングガンダムはモビルトレースシステムを採用した新機軸の機体だ。 そのシャイニングガンダムが一歩退いたということは、ギンガナムが一歩退いたことを意味する。 「あなたのその誇りに満ちた態度、威厳ある声、当に獅子!!獅子とは繋いではおけない者……、 Mr.アンチェイン!!あなたはあの怪物を倒すため立ち上がるんですね!!」 妄想モードフルスロットルの比瑪の気迫が遂にギンガナムを追い詰める。 「小生は戦うために、ここに居るのだ、そのようなことはせん!!」 超ポジティブ比瑪にはそのような言い訳は逆効果だった。 「そう言いなが(はっ!もしかして盗聴を気にして警戒してるんじゃ…、うわぁこの人頭良いなぁ)」 超ポジティブ比瑪の自己推論、自己発展、自己完結の三大スキルをフル活用して導き出された答えは、 背を向けしゃがみ込む比瑪。 「そういうことだったんですね……」 「何がそういうことなのだ……」 この時、ギンガナムの武人たる誇りを兵法家としての本能が抜き去る。 逃走。 「私も連れて行って下さい!!!」 比瑪がもう一度シャイニングガンダムを振り返った時、そこには小さくなっていく巨人が見えた。しかし、 「行くよベガス君!今この瞬間に死んでる人がいるかもしれない。あの人はそれを見逃せないの(断定)。 私達に出来ることなんて無いかもしれない。だけど必ずどうにかなるよね!だって私達はオルファンとも解り合えたんだから!!!!」 逃げる巨人、追いかける(追い詰める)美少女。 実にシュールな光景であった。 【ギム・ギンガナム 搭乗機体 シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム) パイロット状態 健康。電波怖い電波怖い 機体状態 損傷無し。移動にEN消費 現在位置 ifなんで特に設定無し 第一行動方針 比瑪から逃げる 第二行動方針 戦うに値する戦士を探す 最終行動方針 バトルロワイアルを勝ち抜く】 【宇都宮 比瑪 搭乗機体 ベガス(宇宙の騎士テッカマンブレード) パイロット状態 健康。ナチュラルハイ 機体状態 損傷無し。移動にEN消費 現在位置 ifなんで特に設定無し 第一行動方針 仲間を集める 第二行動方針 ゲームを壊す 最終行動方針 主催者と分かり合う】 【IF】 本編― ―
https://w.atwiki.jp/nekoidai/pages/39.html
#blognavi なんつーか、このwikiって更新失敗して打ち込んだデータを お釈迦にするわ、アップデートもまともに出来ないわで最悪なんスけど、、 で、本サイトに行って不具合報告見てみると見たくなかった現実がわらわらと、、 これはもう駄目かもわからんね、、 乗り換えるにしても登録したハズのMyWikiからは返事が来ねーし、 pukiwikiはおいらのスキルじゃ無理臭い、、 てか、会社で頭一杯一杯なのにこんな事で頭使うのがダル過ぎる、、 てか、無理、、 あぁ、、せっかくTrackファイル作ったのになぁ カテゴリ [日記] - trackback- 2006年04月06日 12 48 21 #blognavi
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/203.html
解し得ぬ存在 ◆7vhi1CrLM6 実に不可解な現象が起きていた。首輪にだ。 AI1にかけた首輪の解析は捗ってはいない。変質パターンの解析は終わっていないのだ。 しかし、無為に時間が過ぎたのかというとそうではなかった。二種類のナノマシンが確認されたのである。 一つは無機質で機械的な物に生物的な特徴を付与したもの。恐らくは自己増殖のプログラミングを施されたもの。 もう一つは有機的で生物的なもの。こちらも侵食性を見せている。 両者は性質的に極めて近い。近いがゆえに相容れない存在だ。相手の領土を侵食しようと互いが互いを喰らい合っている。 おそらくは有機的なものの方がアインスト細胞なのだろう。玉の周辺により多く展開していた。 今のところは機械的なものの方が侵食力が強い。結果、首輪は徐々に異形からさらなる異形へと変化していっている。 ただしこれらは全て表層の変化である。視認可能な見かけの形状変化。それをナノ単位まで落としたものに過ぎない。 ゆえにどういった変化が生じているのかは分かれども、変化の規則性は現時点では見出せてはいなかった。二つのナノマシンの動きは複雑さを極めている。 これらの情報の中で重要なのは―― 「なるほど……このナノマシンの侵食力はアインスト細胞を上回っているのか」 そう。機械的なナノマシンがアインスト細胞の侵食力を上回っているという一点。 これは別の可能性を示唆している。 この機械的なナノマシンをコントロール下に置けばアインスト細胞の除去が行なえる可能性を秘めているということだ。 それに、それだけではない。弾頭にでも仕込み、着弾と同時に侵食させれば、あの化け物に対する切り札となりえる。 それだけの可能性をこのナノマシンは秘めていた。 「面白い」 唇を噛み締めて仮面の男は噛み殺すように笑う。 無論、そこに到達するためには幾つものハードルが存在する。ナノマシンの解析は必要不可欠である上に、自身の手で改良を施さなければならないのだ。 常識的に考えれば時間が足りない。時間を費やせば費やすほど犠牲者は増える。しかし、だ。 しかし、この男はただお気に入りの玩具を与えられた子供のように無垢な笑い声を上げていた。 ◇ レーダーに灯りが灯る。暗緑色の画面に映し出される光点。そこに添えられている文字はUNKNOWN。 それが電磁波の跳ね返りを受けるごとに瞬き、電子的な警告音を伴って場所を知らせてきていた。 その音に、知らず知らずの内に泥のような眠りに引きずり込まれかけていたベガは、ハッと目を覚まし、慌ててレーダーを見やる。 相対距離は20キロ未満。歩みは遅いが程なく目視圏内に入るだろう。 手早く情報を整理すると手を伸ばし通信コンソールのパネルに触れた。小気味のいい音を立てて通信がユーゼスの乗機ゼストへと繋がる。 「何事だ?」 「基地西部からアンノウン一機接近中。ユーゼス、どうします?」 「ふむ……そうだな、ローズセラヴィ単機で接触。信用が置ける相手かどうかの判断は任せるが、極力施設には近づけさせないでもらいたい。 それと私の援護は期待できないものとして当たれ。いいな?」 援護が期待できない――そこに僅かな引っかかりを覚える。ふと視線が絡む。 そこで感情を読み取ったのか、ユーゼスは首輪を指し示しながら言葉を重ねてきた。 「私の機体はこちらに回していて他の事に割く余力がないのだよ。無論、動きが取れるようになり次第加勢には出るが、余り期待しないほうがいい」 『メリクリウスは……』そう喉元まで出掛かった声を押し殺した。 きっと彼に考えがあるのだろう。理論的に物事を捉える人だ。メリクリウスのことを見落とすはずはない。 ならば、要らぬ詮索は必要ない。要るのはただ一つの言葉だけ―― 「……了解」 「では、健闘を祈る」 それで交わした視線は離れ、通信は砂嵐に塗れて閉じられた。胎の底に冷え冷えとしたモノが残り、僅かな嫌悪感が身に纏わりつく。 それを頭から振り払い―― 「彼は感情表現が不器用なだけなのよ」 思いなおした。 だから自分がしっかりせねばならない。その不器用さから起こる衝突をフォローしなくてはならない。 その為には誰よりもまず自分自身が彼を信頼すべきなのだ。それが彼が見せる未来に、道に身をゆだねると決めた者の最低限の責務なのだ。 そう思い定めると、迷いを振り切るようにローズセラヴィーをベガは発進させた。 ◇ 何かが頭上を通り過ぎる重音と駆動音が地下の天井を揺らし、鉄骨に吹き付けられた耐火皮膜がパラパラと降って来た。 それを両手を後ろ手に鉄骨に縛り付けられたままぼんやりと眺めている。 『俺の言葉はお前の言葉だ。俺の考えはお前の考えだ。 ……さぁ、もう一度聞くぞ。 ――お前は一体どうしたいんだ?』 あれからずっとその答えを考えている。そして、その最も単純な答えは見つけていた。 生きたい。そこに疑いはない。何の為に生きたいのか、その明確な目標もある。 アルに、クリスにどうしようもなく会いたいのだ。あの温かい日々が恋しいのだ。 だったらあの男の誘いに乗ればいい。そう思う。それしか生きる道はないのだ。 だが、それでもあの声が耳元でざわめく。 『殺して生き残って、それでもアルやクリスに会えるのか? 人殺しの癖に胸を張って会いに行くのかい?』 あの男の言うがままに動けば、死ぬことよりも更に恐ろしいことになる。 あのとき、感じたそんな予感。 人殺しなんかよりも遥かにおぞましいモノに加担してしまうのかもしれない。今、ひたひたと忍び寄ってくるそんな予感。 それを感じるだけに余計に言葉が詰まる。当たり前だったはずの答えが出ず、思考は堂々巡りを繰り返す。 結局は夢の中と何も変わりはしない。煮えきらず。流れ流される半端者。 そんな思考の波の中でバーニィはふと思った。 ――本当にあの男に従うしか、生きる方法はないのか? ◇ 通信を閉じたあと、シートに浅く腰掛け直すと体重をシートに預けてグッと体を伸ばした。 それだけのことをしてもコックピットシートは軋む音一つあげはしない。 中空を見つめて目を瞬かせたあと、口元にうっすらと笑みを浮かべる。 ――他の事に割く余力がない? 馬鹿を言うな。 通常AI1のメディウスの制御に割かれているものまで総動員して首輪を解析するなど、自らの身の安全を丸ごと他人に委ねるなど、誰がそんな馬鹿げたことをするものか。 あんなものはただの口実だ。 接近してくる機体とローズセラヴィー、二つの機体のデータを収集しAI1に学習させる。そのための口実だ。 「その程度ことも見抜けないとは……自ら目を塞いだか」 本来ならば、この程度の嘘など軽く見破るだけの洞察力を備えた女であるとユーゼスは見ている。 にもかかわらず、見えていない。いや、見えてはいるのだろう。しかし、そこから必死に顔を背けている。 人は自らが見たくないものを見ようとしない習性があるという。 これがまさしくそうだ。 『信頼』などという形のないモノに囚われて、目を塞ぐ。それも四方八方の者に対してだ。 実に愚かな行為と言えるだろう。だが、それだけに―― 「……惜しいな」 そう思わずにはいられない。自分のみ忠誠を誓い、他の者に対して非道に徹しきれれば、どれほど有能な駒となれるものか。 才を活かしきれぬ者。それが残念でもあり、不憫でもあった。 「まぁいい。今はメディウスの……いや、ゼストの糧となれ」 呟く。これからの行動は全てAI1に解析され、フィードバックされる。ベガの動きも、新手の動きもだ。 才を活かせぬ存在とは言え、AI1の教育には利用できる。その上で戦況如何では介入も辞さない心構えだった。 そして、もし万が一相手の機体の必要性をAI1が、いやユーゼスが感じたそのときは―― 「ッ!!」 瞬間、コックピット内に響き渡った警報に顔を上げた。 咄嗟に目を走らせたディスプレイが真っ赤に染まるのを確認して、思わず唇を噛み締める。 ――ウィルスだとッ!! 手元に引き寄せたキーボードを素早く叩き、撃退ワクチンを投入する。 リセットされる警報に胸を撫で下ろしたその瞬間、再び警報がざわめきを発した。 ディスプレイが防壁突破の事実を指し示す。 舌打ち一つ。無意識下で複数のワクチンを投入しながら頭を巡らせたユーゼスは、解析中の首輪を睨みつけた。 その周辺はベンゼン環を思わせる六角形の金属片に変質している。侵入経路は疑うべくもない。 再び唇噛む。ワクチンなど何の役にも立ってはいなかった。侵食力が強すぎる。 打つ手がなく、AI1の中枢プログラムへと侵入が開始される。 その時だ。ラズナニウムの自己修復プログラムが起動を果たした。 ラズナニウムの自己修復プログラムはあるべき状態に機体を保つためのプログラムである。 正常な状態に機体を維持するべくラズナニウムが活性化する。 それがナノマシンを押さえ込み、ソフト面とハード面両面からの侵食を押さえ込みにかかった。 だが、まだ弱い。 AI1の中枢プログラムまで侵入しかけたウィルスの進行を押さえ込むことには辛うじて成功した。 だが、それは辛うじての均衡だ。 膨大な数の防壁の敷き合いと崩し合い。それがAI1とナノマシンの演算の元行われている。 奪われては奪い返す。その均衡は、剣切っ先を突き合わせて全力で押し合っている形によく似ている。 一度切っ先がずれればどちらの胸元に剣先が突き刺さるかは分からない。 そんな簡単に崩れ去る均衡だった。 事実、均衡は簡単に崩れ去った。一連の流れの傍らで作成した自作のプログラムをユーゼスが走らせる。 それがAI1の一助となりナノマシンの侵食を徐々に押し戻し始めた。そして、それはすぐに抗い難い勢いとなりメディウス・ロクスを正常な状態へと戻していく。 程なくウィルス駆除完了をディスプレイが告げた。告げたかに見えた。三度、警報は鳴り響く。 首輪の解析開始と同時に侵入し、これまで各所に潜伏していたウィルスが同時に侵食を開始したのだ。 もはやどことは言わない。 目に留まるコックピットの周辺だけですら、至る所からナノマシンが侵食を開始し、変質させていく。 その勢いは完全にラズナニウムの自己修復能力を上回り、AI1は自己の中枢プログラムの防衛をユーゼスの手を借りて辛うじて死守している状態だった。 だが時間の問題だ。十重二十重の防壁が数秒も持たない。時間稼ぎが精一杯。その事実がユーゼスに呻き声を漏らさせる。 「……馬鹿な。この私がたかがナノマシン如きに敗れるというのか・・・・・・。 何故だ。何故……何処で間違った!」 が、次の瞬間、コックピットの床から吹き上げてきた緑の蛍火が場を満たした。 それが下から上へと溢れ出す。何かに呼応するように明度と輝度を増し、活性化していく。 その光が突き抜けていったとき、場の至る所に浸食していたナノマシンは首輪に完全に押さえ込まれていた。 一連の出来事に呆気に取られたユーゼスは、それでも頭の隅を働かせて考えていた。 恐らくはこれで解析は一気に押し進むだろう。 一度侵入を許し変質しかけたメディウスにはその痕跡が残っているはずであり、解析パターンの一助となりえるはずだ。 しかし、しかしだ。 自己の理解の届かぬ範疇の出来事。自身がただ何かに踊らされたかのような出来事。 それが気に入らない。絶対的に気に喰わないのだ。 だが、もうどうしようもない。全ては自分の手の届かぬところで起こり、終わってしまったのだ。 それゆえに歯を食いしばり、悔し紛れに呟くことしか、ユーゼスには残されていなかった。 「……全て計算通りだ」 【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX) パイロット状態:苛立ち 機体状態:第二形態 竜馬の接近に伴いゲッター線活性化 良好 現在位置:G-6基地 第一行動方針:半壊した首輪の解析 第二行動方針:AI1の育成、バーニィへの『仕込み』 第三行動方針:首輪の解除 第四行動方針:サイバスターとの接触 第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る 備考1:アインストに関する情報を手に入れました 備考2:首輪を手に入れました(DG細胞感染済み) 備考3:首輪の残骸を手に入れました(六割程度)】 【ベガ 搭乗機体:月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー) パイロット状態:良好(ユーゼスを信頼) 機体状態:良好 現在位置:G-6基地西部 第一行動方針:接近してくる者(竜馬)との接触 第ニ行動方針:G-6基地の警護 第三行動方針:首輪の解析 第四行動方針:マサキの捜索 第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:仲間を集めてゲームから脱出 備考1:月の子は必要に迫られるまで使用しません 備考2:ユーゼスの機体を、『ゼスト』という名の見知らぬ機体だと思っています 備考3:ユーゼスのメモを持っています】 【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争) 搭乗機体:なし パイロット状況:頭部に軽い傷(応急処置済み)、後ろ手で柱に縛りつけられている 現在位置:G-6基地地下発電所 機体状態:苦悩 第一行動方針:ユーゼスに協力するのか選択 最終行動方針:生き残る】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル) パイロット状態:怒り、衰弱 機体状態:装甲表面に多数の微細な傷、頭部・右腕喪失、腹部装甲にヒビ、胸部装甲に凹み 現在位置:G-6西部(基地外) 第一行動方針:G-6基地で機体の整備 第二行動方針:クルツを殺す 第三行動方針:サーチアンドデストロイ 最終行動方針:ゲームで勝つ 備考1:ゲッタートマホークを所持 備考2:百式の半身を引き摺っている】 【メリクリウス(新機動戦記ガンダムW) 機体状況:良好 現在位置:G-6基地内部】 【二日目4 30】 BACK NEXT Shape of my heart ―人が命懸けるモノ― 投下順 ヘヴンズゲート Withdrawal Symptoms 時系列順 ハンドベノン BACK 登場キャラ NEXT 『未知』と『道』 ユーゼス 穴が空く 『未知』と『道』 ベガ ハンドベノン 『未知』と『道』 バーニィ 穴が空く 私は人ではない 竜馬 ハンドベノン
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/150.html
心、千々に乱れて ◆7vhi1CrLM6 あくびをし、寝ぼけ眼を擦りながらカテジナー=ルースは起き上がった。 暗い闇の中手探りで灯りをつけるとレーダーを覗き込む。 何かが近づいてくる。そういう気がしたのだ。 根拠は何もない。ただ感じただけ、そういう気がしただけ、それでもそれは確信に近いものだった。 レーダーに映し出された二つの光点によって、程なくそれが正しいものだったと証明される。 レーダー類の不調のせいで距離はそう遠くない。 最初はかなり速い速度で接近してきていたのが、暫くして静止した。 おそらくはこちらの姿が見えない為警戒をしているのだろう。あるいは迷っているのかもしれない。 彼女は今湖の底に隠れていた。 「迂回をしてくれるようなら楽なのだけれどね」 あくびを一つ噛み殺してぼやく。 疲れが抜け切っていないのか、どうにも眠たかった。 接触を図るよりも今はまだもう少し寝ていたい。それが本心だ。 しかし、そんな思いを裏切るかのように光点がすっと接近を始める。 「やっぱりほうっておいてはくれないわよね」 女の見栄というか、習性のようなもので身支度を整えながら、思案を練り始める。 今の動きで分かったことがある。 まずは二人組という点でおそらくは好戦的な相手ではないということ。 そして、二対一という局面において一度動きを止めたということは、用心深い性質の持ち主がいるのか、あるいは戦力に不安が残るということ。 にも関わらず接近していたということは、捻じ伏せるか、逃げ切るか、どちらかの自信があるという現われ。 それを念頭において逃げるべきか、接触すべきかを考える。 逃げようと思えば逃げることは可能だった。 なにしろまだ互いに姿を見せてない上に、こちらは視界の悪い水中だ。 一度レーダーのレンジ外に抜けてから物陰に身を潜めれば、相手を撒くことは難しくない。 「だけど……接触すべきでしょうね」 いかにも乗り気でないといった態度。緩慢な動作でシートに腰を掛けなおす。 何かを潰したような感触があった。驚いて腰をずらしてみると、三種の樹脂マスクが出てきた。 あの核ミサイルに乗った男から得たボイスチェンジャー付きのそれは、正体を隠しつつ交渉するという点において、これほど都合の良いものはない。 だが、それを何の躊躇もなしにぽいっとコックピットの後方へ投げ捨てる。 理由は特にない。強いて言えば似合わないからである。 そういえばこのマスクを持っていたのも二人組だった。 核ミサイルなどというふざけたものを乗り回し、追い回してくれたことは、今思い出しても頭にくる。 だが、その二人はもういない。 カテジナ=ルース、彼女自身が手を下し核の炎で葬った。 理由は単純。必要ない、利用する価値もない存在だと判断したから。 その点、最初に出会った二人は違った。 ギャリソン時田とユウキ=コスモ。この二人は外れ機体引いた自分の盾になってくれたという面で非常に役に立った。 そして、熱気バサラと彼を知る一人の少年。彼らもまたラーゼフォンを運んできてくれたという点と、その性能を試させてくれたという点において役に立っている。 ならば、と彼女は思う。 ならば今度の二人組は何をもたらしてくれるのか、それを思うと気持ちが僅かに上向きに修正された。 既に距離はかなり近い。 いきなり攻撃を仕掛けられてもつまらない、と思い、ラーゼフォンをゆっくりと上昇させる。 湖面を抜け開けた視界に二機の人型機動兵器の姿が飛び込んできた。 「こんばんは。こんな夜更けに若い女の子に会いに来るものではないわよ」 眉間に皺を寄せて不機嫌を装い、口を尖らせる。 それで相手が機嫌を取ろうとすれば御の字。主導権を握ることができる。 だから殊更に嫌悪感を露にして言葉を続けた。 「もっとも、夜這いにでも来たって言うのならば話は別でしょうけどね」 むっとした様子を年若い方が顔に出すのが見えた。対して年嵩の男のほうの顔色は変わらず判断が難しい。 機体間の距離は遠くはない。しかし、不意をつけるほど近くもない。 そして、左右に分かれている。それもごく自然な動作でその配置についていた。 場慣れしているといっていい。 「何か不機嫌を買うようなことをしたのなら謝ろう。キョウスケ=ナンブという」 「カミーユ=ビダンです」 「カテジナ=ルースよ。何の用かしら?」 「単刀直入に聞く。敵か? 味方か?」 「敵よ。生き残れるのはただ一人なのだから、この世界にいるのは全員敵。 でも今のところ交戦の意志はないわ。あなたたちの出方によるけど……」 言い切り、動きを伺う。 嘘は言っていない。考え方にも不自然なところはないはずだ。 そのうえでどう出てくるのか、それに少し興味があった。最悪戦闘になる覚悟は出来ている。 「こちらにも交戦の意思はない。情報の交換を行いたいのだが構わないな?」 「構わないわよ」 そうして暫く情報の交換が行われる。 受け取った情報は、補給ポイントとG-6基地で交戦したという複数の機体、それに獅子を模した胸部装甲の機体について。 対して提供した情報は、ギャリソン・コスモ・バサラ、そして最初に交戦した黒いガンダムについて。 もちろん、情報に手は加えてある。 コスモ・バサラという味方を装った二人組に騙されて襲われ、同行していたギャリソンさんは死亡。自分も命からがら逃げ出した、といった塩梅にだ。 そうすることで二人と距離を置いている理由が説明できる。同時に争いの扇動にもなる。 見たところこの二人は戦闘慣れしている。そんな人間を二人も相手取るよりも、どこかであの二人と潰しあってくれたほうが得という算段だった。 「カテジナさんも一緒に来ませんか?」 「えっ?」 突然、予想外の言葉をかけられてはっと顔をあげる。 その言葉は青い髪の少年――カミーユ=ビダンのものだった。 「まだG-6基地には二人の仲間がいます。 そこのほうが一人より安全だし、上手くいけば殺し合いをしなくてすむかもしれない」 言葉を探す。 答えは決まっていた。しかし、頭の中に言葉が浮かんでこない。 何故――迷っているとでもいうのか? ちらりとキョウスケという男の顔を盗み見る。 相変わらずの能面面。人工的な笑みの一つくらい浮かべてみせても損はないだろうにと思う。 だが、黙っているということは、黙認するということだろう。 基地に仲間がいるというのは、この男があえて伏せていたはずの情報だ。 それを口走っても止めない程度の信用は築けたということか。十分だ。これ以上の深入りは望むものではない。 「一緒に行きましょう、カテジナさん。あなたは殺し合いなんかしちゃいけない人なんだ」 何を根拠にそんなことを、と思う。 そう思った後で、ウッソに似てるなとふと感じた。 何処がではない。このカミーユと名乗る少年の容姿・性格はウッソのそれとは大きく異なっている。 纏っている空気も雰囲気も違う。 それでもこの少年から受けるプレッシャーは何処となくウッソに似ていた。 となると迷っている心はウーイッグに対する里心。未練か? ――馬鹿らしい。 それで合っているのかは分からなかったが、ようやく胸の内に言葉が浮かんできた。 「無理だよ。少なくとも私はあなたたちを完全には信用できはしない。 そんな相手と一緒にいれるはずがないだろう?」 「何故ですか?」 そう。目の前の少年が放つ気はウッソのそれに似ており、私を惑わせ、苛立たせる。 この少年と同行するのは危険だ、と直感が告げている。 「甘い言葉を使って騙してくる者もいる。ここでは自分以外を信用できるはずがない。 お別れだよ、坊や。次は敵同士だ」 そう言い残し、逃げ出すようにラーゼフォンはその場から飛び去る。北に向かってただ一直線に、ただひたすらに。 煩わしい、と思う。何故私が逃げなければならないのか、とも思う。 だが、あの場から逃げ出したかったのは事実なのだ。 ――この私がいたたまれなくなったとでもいうのか? 馬鹿らしい。 情報は得た。 奴らはG-6の基地を本拠に行動している。ならばやることは決まっている。 これから出会う参加者全てに情報を吹き込み、送り込めばいい。善良そうな奴には危険人物が潜んでいると、危険な奴には参加者がいるとただ吹き込む。 それだけで奴らは勝手に潰しあい、やがて全滅するだろう。 そんなことを考えつつ十数分ほども飛んだときだろうか、唐突に一つの考えが頭を過ぎった。 「地球クリーン作戦やギロチンと同じ?」 腐らすものは腐らせ、焼くものは焼く。汚い大人たちは潰して地球の肥やしにしてしまう地球クリーン作戦。 そして、リガ・ミリティアのような反目するものを黙らせるためのギロチン。 この二つはザンスカール帝国が掲げるマリア主義の為の必要悪。 ならばこの殺し合いも危険因子を摘み、黙らせ、古いものを次代の肥やしにする必要悪? だったら何故―― 「何故、私が巻き込まれている?」 分からない。分からない。分からない。 頭の中が混乱し、思考にノイズがかかる。不愉快極まりない。 そして、ドンッと何か重くて巨大な塊に体当たりされたかのような衝撃が奔った。 ◆ そこは真っ白くてなにもない空間だった。 何故ここにいるのか? ここは何処なのか? 不思議に思い、あたりを見回しているうちにテーブルが現れ、椅子が現れ、そして日常の風景が姿を現した。 黒髪の少女が金髪の少女を叱っている。 またコックピットにチョコでも持ち込んだのかと思わず苦笑いが漏れた。 やがて黒髪の少女を諌めるように軽い感じで赤毛の少女が割って入り、涙目になっていた金髪の少女がほっとした表情を見せる。 そんな日常の風景。 三人の少女が文字通り空から降ってきてここに飛ばされるまでの僅かな間に、幾度となく繰り返され、すっかり馴染んでしまった光景。 それが眩しくて思わず立ちすくむ。 不意に声をかけられた気がして振り向くと、二人の女性がそこに立っていた。 二人はただ笑い。ただ立っていた。 いや、よく見るとその口元は動いている。 だけど言葉は届かない。何故だか分からないが声は届いてこなかった。 でも、と統夜は思う。 そんな顔で俺を見ないでくれ、と。 俺はカティアもメルアも救えなかった。助けられなかった。 いや、助けようとすら思わなかったんだ。 そりゃ、気にはなったさ。 だけど、自分のことで頭が一杯で! あんた達のことまで気が回らず!! ただ……自分が生き延びることしか……選ばなかった。 仕方ないだろう。 一人しか、一人しか生き残れないんだ。 だから…… だから…… 頼むから、そんな優しい顔でうれしそうにこっちを見ないでくれ。 そんな顔される資格なんて俺には……ないのだから……。 目の前の黒髪の少女は少し驚いたような表情を浮かべて、何かを口走り、そして深々と頭を下げた。 だけれども、言葉はやはり泡となって大気にとけ、届いてくることはなかった。 ◇ 目を開けると目の前にぼやけた壁があった。 右手は毛布を掴み、体は猫のように丸まっている。 寝てたのかと思い、体を起こすと頬を伝って涙が零れ落ちた。 それを見て、我ながら女々しいと思う。 何故こんな夢を見たのか。 おそらくは覚悟が足りないのだろう。 一人生き残ることを誓いつつも、誰一人殺せず。未だに迷ってあんな夢を見る。 覚悟が足りない証拠だ。 お前は生き残りたいのだろう? 生き残ると決めたのだろう? 違うか? 大きく長く息を吐く。顔を上げ宙空の一点をぼんやりと見つめる。 「違わないさ……」 ポツリと呟いた。 ――そうだ。何も違わない。 周囲を埋め尽くしている水の振動が伝わり、機体が震える。 レーダーが接近してくる何かを捕らえた。 ――ならば、どうする? 上空にゆっくりと何かが接近してくる。 ――決まっている。 「斬ろう……敵も……迷いも……」 気取られぬようゆっくりと機体を起こすと体勢を整え、しっかりとした足場を探す。 慎重に、慎重にだ。 足場が整うと今度はオープンチャンネルのスイッチを入れた。 通信する気はない。だから身は潜め、呼吸の音にすらも気を使う。 やがて独り言を漏らす女の声がコックピットに響いた。ほっと一息。 テニアではない。声が違った。 懸念が晴れる。同時に、またどうにもならない事に拘っている、と自分を叱り付ける。 だが、後はやることをやるだけ。目の前のことに集中するだけだ。 敵機が直上に迫る。 頼む。気づかないでくれ、と念じている自分に気づいた。 同時に大丈夫だと理性が囁く。 夜の湖底。月明かりも届かぬそこは決して湖上から見えないはず。 仮に見えたとしても、微動だにしないヴァイサーガは暗礁のようにしか映らないはずだ。 そして、レーダー。恐らくは敵のレーダーもこちらを捉えているだろう。 だが、オープンチャンネルで漏れてくる言葉を聞く限りは、こちらに気づいたそぶりはない。 何に気を取られているのかは知らないが、運はこちらに傾いている。 大丈夫。この奇襲は成功する。そう念じて心を落ち着かせる。 やがて、敵機はゆっくりと上空を通過する。不審なところは何もない。 落ち着け。落ち着けと自分に言い聞かせて、逸る心を抑えた。 パネルを引き出しゆっくりとコードを入力する。 一撃でかたをつける。そのために入力したコードは―― ――『光刃閃』―― 掌に刃の重さを感じ、足場を踏みしめ、ヴァイサーガは音を超え、一筋の閃光となって突撃した。 瞬く間に水中を抜け、闇夜に飛び出る。 風を斬り、鞘から解き放たれた居合いの一撃は深々とラーゼフォンに食い込んだ。 背後のからの虚を突いた不意打ち。防ぐ術はない。 轟音が遅れてやってくる。同時に硬く重い衝撃が伝わる。 咄嗟に感じ取る、このままでは刃が止まると。 いかにヴァイサーガ最大の攻撃である光刃閃といえど、50m級の機体を一刀の元に両断するのは容易なことではない。 深々と食い込みはすれど、その屈強で頑丈な装甲が刃を止める。 それを力ずくで抜くには、片手の居合いでは腕力が足りなかった。 ――重い。凄く重い。これが断ち切ろうとしているものの重み。 鞘に添えていた手を離す。 刀の勢いが完全に止まってしまう前に柄へと手を伸ばす。 ――これをここで断ち切る!! 片手から諸手へ。両の手に力がこもり、男は獣のような咆哮を挙げる。 そして、一刀の元にラーゼフォンは両断され、刃が抜けた。 止まらぬ勢いのまま上空に投げ出された無防備なヴァイサーガの中、統夜はラーゼフォンを睨む。 ラーゼフォンの傷口は狙った正中線を逸れ、右腰から入り上へ。そして、右肩殆ど首の付け根といってもいいあたりから抜けていた。 ショートした回線が火花を散らし、潤滑油にでも引火したのか、濛々と黒煙が噴き上げている。 その様を見て統夜は小さくガッツポーズをした。全身にじっとりと汗をかいている自分に気づく。 緊張が解けて、ぐったりとシートに沈み込む。そして、何かが聞こえた。 思わず顔をあげて周囲を見回す。 不審なものはないもない。あるのは夜空に浮かぶ月と黒煙を上げて燃え盛る大型機。 ――今の声は一体どこから? そう思ったとき、統夜は思い出した。通信回線を開いたままにしていたということを。 ということは――。 全身を怖気が襲った。通信から漏れてくるのは生きながらに焼かれる人の声。 大きく損傷した機体のせいか、よくは聞き取れない。 だがしかし、これは悲鳴だ。人の叫び声だ。 それが『熱い』と言っている。『助けて』と言っている。 咄嗟に耳を両の手でふさぐ。それでも脳髄に叩き込まれた声は消えない。 通信を切ろう。そう思い、手を伸ばした。 だが、まるで真冬の悴んだ手のように震え、言うことを聞かない。そしてその手は統夜の望むことと反対のことをした。 映像通信のスイッチが入り、通信が繋がる。 そして、目に飛び込んできたのは、焼け爛れ、熱に溶けた皮膚がビニールか何かのように両の腕から垂れ下がり、黒く燃え、火に包まれた何か。 だがそれでもそれは生きている。のたうち、転げ周りながらも苦しさを訴え、助けを求めている。 ――助けよう。 ここに来て始めてその言葉が脳裏に浮かんだ。 目の前で苦しんでいる人がいる。助けを請う人がいる。 惨状を目の前に、そ知らぬ顔で見ないふりが出来るような神経を紫雲統夜は持ち合わせてはいなかった。 「待ってろ! 今、助けてやる!!」 声をかけ励ます。ヴァイサーガをラーゼフォンに寄せると切り口の断面から装甲に手をかけた。 コックピットの位置は分からない。 だが、火の手が回っていることから、切り口に近い場所に位置していることは予想が付く。 だから、断面から指を食い込ませ、コックピットを探して力ずくで装甲を剥がす。 これ以外に方法が思いつかなかった。 モニターをチェック。動きが先ほどよりも弱い。 だが、声は聞こえる。 急がなければと焦りが体を支配する。 声をかけ続け、励まし続ける。 装甲を掴む。掴む。掴む。 強引に剥がす。剥がす。剥がす。 何度それを繰り返しただろう。既に装甲というより内部を掻き分けている状態に近い。 モニターの向うの動きはもうほとんど見えなくなった。 だが、たまに掠れた様な声が聞こえる。 それを希望に作業を続ける。焦りはますます体を支配していた。 そして、モニターに巨大な指のようなものが映り、鮮血が飛び散った。 一瞬の出来事に思わず呆然とする。 暫くは焦点が噛合わず、ようやく合ったときには、モニターに飛び散り、乾き焼け焦げた黒い血痕だけがそこに残っていた。 「あ……あぁ……」 声をかけようとして言葉は出ず。奥歯がカタカタと震える。 支えていたヴァイサーガーの腕が離れ、焼け焦げたラーゼフォンが水面に落下して大きな水柱を上げた。 「ちが……違う。俺は悪くない! 殺そうとしたんじゃない! 助けようとしたんだ!! 助けたかったんだ!! なのに!! なのに!!!」 涙を浮かべ、だらしなく鼻水を垂らし、誰に言うでもなく言い訳をただひたすらに繰り返す。 しかし、それを聞くべき人間はもうこの世に存在しない。 そのことに少年が気がついたとき、持って行き場のない感情は悲痛な叫びとなって、闇夜に呑まれて消えた。 「うあ……ああ……あぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっっっっっ!!!!!」 【紫雲統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態:精神不安定 機体状態:無傷、若干のEN消費 現在位置:G-8 第一行動方針:逃げ出したい 第二行動方針:他人との戦闘、接触を朝まで避ける 第三行動方針:戦闘が始まり、逃げられなかった場合は殺す 第四行動方針:なんとなくテニアを探してみる(見付けたとしてどうするかは不明) 最終行動方針:優勝と生還】 【カテジナ・ルース 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン) パイロット状況:死亡 機体状況:大破】 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルⅡ(マクロス7) パイロット状況:良好、マサキを心配 機体状況:良好、反応弾残弾なし 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:キョウスケの護衛でG-8補給ポイントへ向かう 第二行動方針:マサキの捜索 第三行動方針:味方を集める 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊 備考:ベガに対してはある程度心を開きかけています】 【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 OG2) パイロット状況:頭部に軽い裂傷、左肩に軽い打撲 機体状況:胸部装甲に大きなヒビ、機体全体に無数の傷(戦闘に異常なし) 背面ブースター軽微の損傷(戦闘に異常なし)、背面右上右下の翼に大きな歪み EN60%、スプリットミサイル残弾ゼロ、オクスタンライフル残弾B2発W1発 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:G-8で補給を完了する 第二行動方針:首輪の入手 第三行動方針:ネゴシエイターと接触する 第四行動方針:信頼できる仲間を集める 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?) 備考:アルトがリーゼじゃないことに少しの違和感を感じています】 【残り27人】 【二日目2:50】 BACK NEXT 吼えろ拳/燃えよ剣 投下順 これから ・――言葉には力を与える能がある 時系列順 吼えろ拳/燃えよ剣 BACK NEXT 暗い水の底で 統夜 決意と殺意 星落ちて石となり カテジナ 謀 ―tabakari― カミーユ これから 謀 ―tabakari― キョウスケ これから
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/322.html
生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 ロジャー=スミスとの接触からおよそ三十分。 オルバとテニアの二人組は、今G-6エリアを目前にしていた。 支給された地図。機体に予めインプットされていた地理データ。 それらを見ればそこは、緑の森林に囲まれた高台に位置していたはずだった。 だが現実はどうだ? どこにもそんなものはない。 囲む木々のある所は焼け落ちて黒い炭となり、またある所は地盤が捲れ上がり普段人目に触れることのない根が上を向いている。 その光景を抜けたその先の高台もその一部は崖崩れを起こし土砂が堆積している。 そして肝心の基地は、見当たらなかった。 高台の上に存在するはずの、50キロ四方にも及ぶ一ブロックの大部分を占めるはずの広大な基地は、そこに存在しなかった。 あるのは瓦礫の山。瓦礫の荒野。僅かな建物が崩壊を免れているものの、それだけだった。 機体を進める。半ば崩壊しかかった高台の上へ。かつて基地だったはずのその上空へ。 何があったのかは分からない。だが、遅かったのだと言う事は分かる。そう、遅かったのだ。 あちこちに散在し、瓦礫に埋もれている大破した機体が物語る。 誰かがここにいた。 そして、争いがあり、人がここから失われた。 うち捨てられている機体は一つや二つではない。数多くの人材が失われたに違いなく、その全てが一人勝ちを狙った者とは考え難い。 恐らくその中には、首輪の解析を試みた者もいたのだろう。それが失われた。 素直に残念だと思う。駒として扱えればどれだけ役立ったことか。 「いや……まだ全滅したと決め付けるのは早いか」 壊滅的な打撃を受けて大半、いやほとんどの建物が瓦礫と化しているとは言え、僅かな建物は残っている。 規模を考えれば、地下施設やシェルターが存在する可能性も低くはない。 この惨状を乗り越えた者がいるのかもしれない。いたとすれば、それは喜ぶべきことだ。 この惨劇にも淘汰されずに生き残る。それはその者が有能であることの証。 戦力の有無に関わらず生き抜く力と運を持っているということだ。飼い馴らせば、きっといい駒になる。 それに生存者がいなくとも探索は行なうべきだった。 仮に解析を試みた者がいたとすれば、その痕跡があるはずだ。 解析済み、あるいは解析途中のデータ・首輪そのもの・図面・メモ・etc、それらが必ずしも残っているとは限らない。 基地と共に失われたのかもしれない。だが、探す価値はある。 そして、残されている可能性が最も大きいのは基地のメインコンピューター。そこが生きていればあるいは。 思考を切り上げて、通信モニターへと目を向ける。そこには伏せた一人の少女がいた。 機体の操縦こそ行い併走して飛んでいるものの、その目はどこか虚ろだ。 必死に何か考えているのだろう。聞き取れはしないものの時折何か呟き、爪を噛む。神経質とも取れる状態。 その心情を察するのであれば、心中に湧き上がる不安に怯えている、といったところか。 いい傾向だ、と人知れず笑う。 上辺を取り繕う余裕すら失われたのか、それとも自分相手にもう上辺を取り繕うことは不可能と判断したのか、それは知らない。 だがいい傾向だ。このまま行けばボロを出すのもそう遠くない。 「テニア、生存者の探索に移る。先導は君に任せよう。代わりに後方は僕が受け持つ。 気を引き締めて、警戒を怠るな」 通信。目玉だけが別のもののように動き、こちらを見た。 何を仕出かすか分からない気配を感じ、僅かに警戒心を高める。 やはりボロを出すのはそう遠くない。だが、ナデシコに戻る前に崩れられても困るのも事実。 ナデシコで、あの二人の前で自滅してもらう。それがベスト。 その為には隙を見せぬことだ。付け入る隙がなければ、テニアとて手は出せない。 だから先導を任せた。それは後ろから撃たれるリスクを減らすためでもあり、後ろから撃てるのだという脅しでもある。 後は妙な事を仕出かさぬよう監視を続けるだけで勝手に磨り減っていく。それは何よりも愉快だ。 ◆ 何故? どうして? その言葉を持ち出せば、それはきりがない。 どこもかしこも間違いだらけだったように思うし、それでいて何一つ間違ってはいなかった、という気もしてくる。 ただ一つ分かりきっていることは、今進んでいるこの道に行き止まりを作られたということ。 タイムリミットは午後6時――次回の放送。 そこがこの道の行き止まり。終着地点。そこより先の未来はない。 矛盾が露呈し、嘘が暴かれ、裁かれる。 そして、弁解も受け入れられずに無残にも亡骸となった者の上で、奴らは満面の笑みを浮かべるのだ。 あぁ、良かった。これで大丈夫。一安心、と。紛れ込んでいた悪い者はいなくなった、と。 アタシの屍の上で、さも良い行いをしたかのように笑い、互いの美徳を讃えあうのだ。 ――冗談じゃない。 狭いベルゲルミルのコクピットの中、噛み締めた奥歯が音を立てる。両頬が吊り上がり、笑った。 そんな未来は認めない。 ロジャー=スミス、キラ=ヤマト、あんた達とアタシのどこが違う。 一緒だ。同じだ。あんた達も、アタシもただ従っただけだ。自分の気持ちに、自分の心に。 絶対に譲らない。あんた達なんかにアタシの道を食い潰させてやるもんか。 アタシの道に先がないのなら、奪い取ってやる。奪った道をアタシ色に染め上げて、アタシの道にしてやる。 他人の道を塗りつぶしてでもアタシは先に進む。それが誰の道であろうと――。 「テニア、生存者の探索に移る。先導は君に任せよう。代わりに後方は僕が受け持つ。 気を引き締めて、警戒を怠るな」 通信。ぎょろりと動いた目玉がオルバの顔を捉える。 あぁ、そういえばこいつがいた。こいつは一体どういうつもりなのだろう。 信用できない、そう言ったかと思えば、Jアークの連中よりもアタシを信じる、と交渉人に言ってのけた。 その程度には信用させることが出来た、ということなのだろうか? くすりと笑う。 「大丈夫。気は抜いてない」 それはないな、と思った。この男に信用されている――それはない。 ロジャーの言葉と自分の言葉。その矛盾は酷いものだった。取り繕おうにもどうしようもない程に、だ。 それにこの男が気づいていない――それもない。 その証拠にこいつはアタシを先に行かせたがってる。何時でも後ろから撃てるのだ、という姿勢を崩そうとしない。 お陰ではっきりした事がある。 この男を生きてナデシコに帰してはならないということだ。それはこれ以上ない程明確に見えている。 まず最初にそれを成せねば、自分に先はない。 追い詰められているはずなのに、口元が不気味に歪んでいく。どこか愉快だ。 「オルバさん、見なよ。生存者なんてどこにもいやしない。基地も……壊れてる」 そう。基地は壊れている。首輪を解析し得る設備を誇るそこが、だ。 首輪を外させてはいけない。壊すんだ。首輪を解析し得る設備も、技術者も、一つ残らずぜ~んぶ壊してやる。 そうすれば奴らだって、集まろうとしている奴らだって最後には殺し合うしかなくなる。 そうさ。アタシの道に先がないのなら、奪い取る。奪った道をアタシ色に染め上げて、アタシの道にしてやる。 その最初の一人はオルバ、あんただ。 本当に楽しくなってきた。何故だろう。やりがいを感じ始めている。 いけない。顔がにやけてる。 悟られるな。気取られるな。真っ向勝負での勝ち目はない。 仮面をかぶりなおせ。いつものアタシの仮面を。 でも……。 でもいつものアタシって、どんなだったかなぁ? 「基地の規模と立地条件を考えてみなよ。地下空間があっても不思議じゃない」 「言われてみればそうだね」 確かにその通りだ。地表面がボロボロでも地下があればそこの機能は生きているのかもしれない。 だったら、そこも壊さないといけない。でもその前に、本当にそれが存在するのかどうか。 このレーダーが聞きにくい状況下でどれほどの期待が持てるか分からないが、基地の地下を重点的に探査する。 その手の芸当はお手の物だった。 主に機体の動作を直接受け持っていた統夜に代わって、索敵やジェネレーターの出力調整、システムチェックを担当していたのが自分達なのだ。 そうやって一つの大戦を乗り越えてきた。その経験と能力は、馬鹿にしたものではない。 だからだろう。地下に目を向けていたにも関わらずオルバよりも早く気づいた。 「オルバさん、三時方向。地表面付近に熱源反応、急速接近中。カウント1」 ――敵機の襲来に。 「距離28、いや27、26、25……速い。どう見てもお話しましょって速度じゃないよ。どうするの?」 「こちらでも確認した。慌てなくても、問題ない。確かに速い。 が、馬鹿正直に直線軌道で突っ込んで来ているだけ……引き付けて迎撃する。いいね?」 ディバリウムの位置取りはベルゲルミルの後方。敵機とベルゲルミル、その両方を視界に納められる位置。 そして同時に、アタシを盾にもしているのだろう。 流石にこの男は冷静だ。余裕を崩さずに正確に状況を判断している。 「合図は僕が出す。焦って先走るな」 「分かった」 隙を見せてはくれない。頼りになるが、それ以上に忌々しい。 光学センサーが敵機を捉える。青く深い色をした紺碧の機体を目視で確認。その瞬間―― 「敵機、さらに加速ッ!!」 その観測される速度は、もはや最大戦速というレベルのものではない。 点と点を最短経路で結んだ直線。その上を出し得る最大速度で突っ切る為だけの速度。 それはすなわち通常の有視界戦闘を放棄していることを示す。 あの速度で空中分解を起こさずに急旋回を行なえるだけの剛性を機体が持っているとしても、パイロットは別。 まず間違いなくブラックアウトする。 下半身を締め付けることで脳の血圧低下を押さえるパイロットスーツ。それを着用していたとしても、だ。 馬鹿げている。 そう思いつつも瞬く間に大きくなっていく敵機に、操縦桿を握る手の平がじっとりと湿っていく。 「オルバッ!」 「まだだ。まだ引き付ける」 人の気も知らないで、と睨みつける。 そう。まだだ。レーダーに映し出されている相対距離はまだ遠い。それは分かっている。 だが、後何分だ? 後何分、このプレッシャーに耐えさせるつもりだ。 そう思い、時計を見る。5分にも10分にも感じられた時間は、まだ20秒も経っていなかった。 ――嘘でしょ。 絶句。想像以上に1秒1秒が長い。 そして、改めて気づいた。 たったそれぽっちの時間でこの相対距離の減りよう。速度が馬鹿げている。 戻した視界が急速に接近してくる敵機を映し出す。 右腕に誂られた巨大な杭打ち機。それが目に留まった。 あれで串刺しに――直に恐怖心を刺激されて、堪らず叫んだ。 「オルバッ!」 「まだだ」 ふざけるな、そう思い、何処からか疑念が湧き上がる。 ――捨て駒にするつもり? 驚愕に瞳が揺れる。 ディバリウムの位置取りはベルゲルミルの後方。敵機とベルゲルミル、その両方を視界に納められる位置。 それ即ち、ベルゲルミルを餌に一撃を喰らわせられる位置。 顔から血の気が引き、背筋を悪寒が駆け抜ける。オルバが薄く笑うのが見え、その口が動いた気がした。 そして、巨大な光がディバリウムから放たれる。 全周囲モニターが、後方から迫り見る間に大きくなっていく蒼白い光を映し出す。 それはMAP兵器規模の一撃。悲鳴と絶叫の入り混じったモノが臓腑から漏れ―― 何故信じたんだ、この男を……いや、最初から信じてなんかいなかった。 甘かった。ただ甘かったんだ。心の何処かで自分だけは死ぬはずがないと思っていた。 ハハ……どれだけ呑気なんだ、アタシは。ほんと、欠伸が出るほど呑気だ。 こんなんだからカティアなんかに先を越されるんだ。 殺される前に殺す。それだけが真実なのに。 ……こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかった! こんなはずじゃなかったッ!! こんな結末を望んでカティアを殺したんじゃないッ!! 新しい世界で結ばれるはずだったんだッッ!!! カティアのじゃない!!『アタシだけの統夜』と今度こそ結ばれるはずだったんだッッッ!!!! でも……もう何もかもが遅すぎる。遅すぎるよ。 ――後悔が脳天を突き抜ける。 しかし、そんなテニアを嘲笑うかのように蒼白い光はベルゲルミルの間際を駆け抜け、標的に命中した。 直撃。巻き起こる爆発。 耳を劈くような爆音の直後、爆発によって生じた衝撃と共に視界を埋め尽くしたのは―― 「嘘……」 直撃を受けたはずの敵機そのもの。 頭部に誂られた角がベルゲルミルの脇腹に突き刺さり、激震。重い衝撃が機体を揺らす。 弾丸のような突撃を受けた機体が串刺しのまま、信じられない速度で後方に。 静止状態から一気に加わった加速による巨大なG。脳から血液が引いて行く。視界が暗くなる。 警告メッセージがモニターに。 脇腹に突き刺さった角が灼熱。位置は浅い。だが縦に裂かれる、それが分かった。 これじゃ無駄じゃないか……こんなところでアタシが死んだら、何の為に。 そうだ……何の為にカティアも! メルアも!! アタシが統夜と結ばれないと二人の死が―― 「無駄になるんだッッ!!!」 その瞬間、マシンセルが反応を示した。活性化を起こす。 場所は腹部。角が突き刺さるそこ。 起こった変化は、マシンセル同士の結合を強めた装甲の硬質化――否、逆だ。 結合を弱め、一部の装甲を脆くした。 金属だからこそ角は突き立ち串刺しにされていたのだ。 これが豆腐なら削れるだけ、突き刺さったまま押し流される道理はない。 脇腹が抉れ飛ぶ。角から開放されたベルゲルミルは弾かれ、そのまま地表へと落下していった。 ◇ そのタイミングは流石と言うべきものだった。 狙いすまして放たれたゲルーシュ・エハッドの一撃は、寸分のズレもなくカブト虫のような蒼い機体へと伸びていく。 だが同時に加えられるはずだったテニアの攻撃はなかった。 合図は送った。撃て、と確かに言った。疑問は残る。 だが、何故撃たなかったのか、それは後で問いただせばいい。 蒼白い光の帯が吸い込まれるように、包み込むように伸び、今着弾。爆発。 直撃だ。避ける素振りも見せなかった。 ――生き残りならばどれ程の腕かと思えば、フフ……僕にかかればあっけないものだねぇ。 薄い笑いを浮かべて勝ちを確信した刹那、それは起こった。 前方に位置していたベルゲルミルが吹っ飛ぶ。瞬く間にディバリウムの脇を掠めて、遥かな後方へと。 擦れ違いの瞬間目に留まったのは、蒼カブト。 馬鹿な、と考える間も惜しんで振り返った。 瓦礫の山、廃墟と化した基地へ、ベルゲルミルが落ちて行く。その脇腹は浅いが抉れている。 行動不能になるような損傷ではないだろう。最もパイロットが無事ならばの話だが。 それよりも問題は――視線を移す――蒼カブト。そう、こいつが問題だ。 突っ込んで来た異常な速度から一撃離脱を計るのかとでも思えば、そうではない。 この空域に留まりながら、直線軌道を繰り返し戻ってくる。 抉れたベルゲルミルの脇腹。何に抉られたかは不明、だが―― 「……懐には入ってもらいたくないね」 ――接近戦は危険。アウトレンジでしとめる。 ディバリウムの前面に誂られたダグ・アッシャーの砲門は計4門。 小振りな火器なれど即射性に優れるそれをばら撒きながら、機体中央にエネルギーを溜め込む。 避ける蒼カブトの軌道は相も変わらずの直線軌道。だがしかし、それが異常だ。 直線軌道を繰り返しジグザグに鋭角を描きながら、飛んでいる。普通じゃない。 弧が少しもない癖に減速した感がまるで見受けられない。飛んでいる速度そのままに何の前触れもなく、向きを変える。 ダグ・アッシャーの光弾が尽くかわされていく。 「少し傷つくな……パイロットは本当に人間か」 それは負け惜しみでもなんでもない。重ねて言おう。軌道が普通じゃないのだ。 慣性だとか、遠心力だとか言ったものを頭から無視した軌道。端的に説明するならそれは、ゲッターの動きに最も近い。 MSを代表とするA.W.の機動兵器群にはない出鱈目な動き。 中に乗る人間のことをまるで考えてない。普通ならパイロットがもつはずがない。 それを繰り返し、急速に間合いを詰めてくる。 距離が潰される。アウトレンジが瞬く間にクロスレンジへ。だが、それも―― 「悪いけど、読みどおりだよ」 ――計算の内。 溜め込んだエネルギーを開放。 放ったのは、収束した光の帯を放つゲルーシュ・エハッドではなくゲルーシュ・シュナイム。 それは溜め込んだエネルギーで針状の光弾を無数に形成し、扇状に散布するMAP兵器。 一発一発の威力はゲルーシュ・エハッドに劣るものの、交わしきれる数ではない。 事実、蒼カブトもこのときかわせなかった――否、蒼カブトはかわさなかった。 蒼カブトは爆発的なスラスター光を背負い、次の瞬間―― 「なっ!!」 ――天を衝くが如き勢いと圧力で駆け抜け、針山へと飛び込んだ。 強引過ぎる軌道。無数の針が装甲に突き立つ。だが、それを意にも介さない。 迅い。何よりも力強い。そして、それだけでもない。 光弾の威力が削がれている――ビーム・コート、その存在に気づいた時には既に眼前。 機体の軸をずらすのが精一杯の反応だった。 装甲の表面で火花が散る。極太の杭が打ち込まれ、ダグ・アッシャーの砲門が1門潰された。 ――だが、この距離ならッ!! 杭を引き抜くその間に、残った3門が火を吹く。 しかし、減衰されたビームではビクともしない。ゲルーシュは? 充填中、打つ手がない。 機体の前面を抱えるようにして押さえ込んだ蒼カブトが仰け反り、その角が赤熱した。 「な、なにをッ!!」 頭突き。角が突き立ち、装甲が割れる。血の様に黒いオイルが噴出する。 機体が潰れる音に、怖気が奔った。 ゆっくりと頭を持ち上げ、もう一発。さらにもう一発。 割れた装甲が更に割れ、陥没し、オイルとコードと装甲の砕けたモノがグチャグチャに入り混じる。 そこに角を突き立て、顔をうずめていた。傍から見ればそれは捕食しているかのような絵面。 捕食者から逃れようと脱出を図り、遮二無二にディバリウムは暴れまわる。 だが、手足のないディバリウムでは文字通り手も足も出ない。 再び頭が持ち上がり、四発目が加えられた。 機体が悲鳴を上げる。コックピットが揺れる。全周囲モニターの上部に亀裂が奔り、破片が剥落してくる。 思わず見上げた亀裂の向こうに、頭をめぐらせてこちらを見下す身長20mの巨人の姿が、見えた。 顔中を黒い血のようなオイルで塗れさせて蒼カブトの目が、見つけたぞ、と嗤う。 反射的に動いた右腕がグリップを掴む。もはや充填中だなどと言っている余裕はない。 現在溜め込まれているエネルギー全てを出し尽くす勢いで、ゲルーシュ・エハッドを放った。 その砲門は機体中央。抱えるようにして押さえ込んでいる蒼カブトの下腹部が、丁度接触している位置。 密着状態であるが故に交わす術はなく、光の帯に押しやられた蒼カブトが剥がれ、弾き飛ばされる。 が、それは同時に苦肉の策でもあった。 零距離でのゲルーシュ・エハッド。それは大砲で零距離射撃を行なうに等しい。 暴発とそう変わらないということだ。 至近距離での爆発の影響は両者に等しく与えられる。 そして、ディバリウムのコックピットには穴が空けられたばかり。 僅かとはいえ、帯電した空気と熱波に晒されたオルバもただではすまない。 オゾン臭が鼻に突く。湿度がどっと上がった空気を感じる。肌が熱い。だが、それに構っている余裕はない。 「テニア、聞こえてるか?」 通信を繋げながら蒼カブトの状態に目を走らせる。装甲表面に黒焦げの弾痕が確認出来るもののそれだけだ。 それも最初の一撃のものか、今の一撃のものか、判別はつかない。 確実なのは、今のように中途半端な出力での一撃は意味がない、ということ。 今は決め手に欠ける。それでも兄がいればどうにかならないでもないが、テニアでは分が悪い。 第一、射撃主体の二機では懐に入られればどうしようもない。アタッカーの不在、それが痛かった。 「……聞こえてるよ。うぅ、吐きそう。あんなに朝ごはん食べるんじゃなかった」 心底気持ち悪そうな顔がモニターに映し出される。 突然の加速に晒されたのだ。胃の中をごちゃごちゃに掻き回されれば、そうなるのも無理はない。 だが、それは口実だろう。 このまま死んだふりを決め込み、隙を見つけて逃げ出そうとしていたに違いない。 この女狐め。 「後にしろ。ここは撤退する」 「……逃げるの?」 「戦略的撤退さ。パートナーが君では勝ち目がないからね」 「やっぱ逃げるんじゃん」 「……手伝う気があるのか、ないのか、どちらだい?」 「あるよ。残念だけど、アタシ一人になったらあいつから逃げ切れない」 「いいだろう。役に立ってもらうよ」 撤退プランを手短に伝え、同時にエネルギーの溜まり具合を確認する。 ――MAP兵器使用可能まではまだ間があるか……時間を稼ぐ必要があるね。 簡単に見逃してくれる相手とも思えない。通信を蒼カブトへ。 「何故、僕達を襲う?」 「何……故? 何故、ナゼ、なぜ、ククク……ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!! 俺は作らねば……ならない。世界を……静寂でなければならない」 「意味が分からないね。それが僕達を襲ったこととどう繋がる?」 「お前達は望まれていない……世界を創る。だから撃ち貫くのみ、だ」 高エネルギー反応。その中心は機体の胸部中央、人で言う鳩尾の位置に設置された赤い球体。 ――主動力はあそこ、か。 そこから全体にエネルギーが行き渡り、装甲それそのものが一つの原生生物かのように動いた。 伸び、欠けた部分に浸透し繋ぎ合わせていく。黒く焦げた表面が深い蒼に戻っていく。 自己修復。それはオルバに取って未知のテクノロジー。 直に目にするのはこれで――ちらりとベルゲルミルを盗み見る――二機目。 だが、数時間もかけて修復を行なうベルゲルミルに比べて、修復速度が段違いだ。 「人間……自らの生い立ちを呪う兄弟………お前達は純粋な生命体には、なりえん」 「……少しは僕達のことを知っているようだね。どこで耳にした? お前はニュータイプなのか?」 「ニュータイプ?……違う。俺は……そう、俺こそが完全なる生命体。 世界を創造し、望まぬ世界を……破壊」 その尊大な物言いに哂う。直感した。こいつは同類だ。 古い世界を壊し、自らの思うように作り変えようとしている自分らと似た存在だ。 「完全なる生命体だって? 随分と大きく出たものだね。 でもね。僕らに言わせれば、そんなものはニュータイプとなんら変わりはないんだよ。 人の心にあるニュータイプという幻想が言葉を変えた。それだけだ。 そして、君は君の望む世界を創ると言う。フフ……どうやら僕らは相容れない存在のようだ」 「フフフ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!! 創造と破壊……破壊と創造。創造は破壊……破壊の創造」 狂笑。こいつは似ているのかもしれない。だが、別物だ。 「話、通じてるのか通じてないのか分かんないね。 自分に浸ってるっていうか何ていうか、変にかっこつけてるし」 テニアの声がした。全くだ。このとち狂った男相手に冷静な判断を求めるだけ無駄ということか。 溜め込んだエネルギー量を確認。十分だ。十分に時間は稼いだ。 「テニア、退くよ」 同意の言葉が返って来る。それを合図に火線を敷き、後退を開始する。 ベルゲルミルが瓦礫の廃墟から上空へ。ディバリウムもまた徐々に北へ。動き始めたその瞬間―― 「逃がさん……憎しみ合う世界を広げる者達……」 ――獲物が掛かった。 位置取りは地上に蒼カブト、上空にテニア。自身はその中間。 小火器類の火線など物ともせずに蒼カブトが、下から上へと間合いを詰めてくる。そんなことは先刻承知。 そして、収束率を上げた大火力の攻撃では容易に捉えられないことも、だ。 必要なのはこいつ相手に撤退するだけの足止めを喰らわせられる攻撃。その条件は威力と範囲を兼ね備えていること。 距離を冷静に測る。あと半秒引き寄せて――今だ。 ディバリウムの主兵装ゲルーシュ。 それは、溜め込んだエネルギーを用途に応じて三種類に使い分けられるMAP兵器である。 一つは、収束率を高め、射程距離と高い貫通力を備え、直線上に撃ち出されるゲルーシュ・エハッド。 例えるならばそれは、巨大なビーム砲。 一つは、針状の散弾を扇状に散布し、一撃一撃は軽いながらもそれを補って余りある無数の弾数で敵を砕くゲルーシュ・シュナイム。 例えるならばそれは、ショットガンの一撃。 そして、このとき使用したのはそのどちらでもない最後の一つ――ゲルーシュ・シュロシャー。 その特徴は、自機を中心にして全周囲に向かって撃ち出す球状の効果範囲と貫通力はないながらもその爆発による破壊力。 例えるならばそれは、一個の爆弾。 格闘武器どころか手足すら持たないディバリウムにとってこの兵装は言わば奥の手であり、最後の手段と言える。 それを使う。射程距離の奥深くまで誘き寄せた今、回避は不可能。耐える他以外に奴が生き残る道はない。 溜め込まれたエネルギーを開放。 自機を中心に蒼白い雷のような光球が瞬く間に膨れ上がり、蒼カブトを包み込み、爆ぜた。 爆煙が立ち込め、一拍遅れて発生した圧縮空気の衝撃波はそれを吹き飛ばす。 その中心でホンの僅かな時間ディバリウムの動きが固まる。 効果範囲と破壊力。その性能と引き換えに三種のゲルーシュの中でも最も多くのエネルギーを必要とするこの兵装。 この硬直はその消費の大きさ故にだ。 爆発に押しやられて地表に沈んだとは言え、未だに蒼カブトは健在。分かっていたことだ。 幾ら威力があろうとも表層的な破壊力しか持たない兵装では、決定打にはならない。 ビーム・コートを突き抜け、装甲を溶かしたとしてもそこまでだ。直ぐに回復する。 そして、回復を待つほどこの敵は悠長ではない。こちらの復帰の方が早いとは言え撤退するには不十分な足止め。 だから、だ。だから後一手。撤退の為に必要だ。それを行なうのが―― 「テニア、任せた!」 ――彼女だ。 空中で動きの硬直したディバリウムの更に上空。そこに佇むベルゲルミルの双眸が翡翠の色に輝く。 同時に同じ色を光球がマシンナリーライフルから、撃ち出された。 それらが殺到する先は蒼カブトとその周辺。その狙いは―― 「生き埋めになるのがどれだけ怖いか教えてやる!!」 ――地盤破壊。そう、D-7地区の市街地と同じ地下空間を持つここなら、それが可能。 無論、無敵戦艦ダイが起こしたものほど大規模なものは不可能だ。だが、機動兵器一機を地下に突き落す程度なら、出来る。 蒼カブトの周辺地盤が穿たれ亀裂が奔る。同時に散布していたマシンセルが活動を開始。地表面の構造を破壊する。 穴が空く。崩壊する様に崩れていく。そして、撃ち付けたマシンナリーライフルの光球に押されて、蒼カブトは地中深くへと堕ちて行った。 間髪いれずに瓦礫の山を崩し、穴を塞ぐ。 ゲルーシュ・シュロシャーの一撃から、地中に堕とし瓦礫で穴を塞ぐまで、実にこの間僅か2秒。 穴が塞がれた瞬間、上空のベルゲルミルが全速で離脱を開始。ほぼ同時にシステムが回復したディバリウムも離脱に移る。 「なっ!?」 移ったはずだった。 ディバリウムを中心に奇妙な力場が発生している。陰陽紋を模ったかのようなその空間に固定され、動くに動けない。 周囲には円周上に等間隔で設置された六つの勾玉。どこかで見たことがある。 そう、これは確か――通信? 「オルバ、あんた甘いんだよ。アタシのことを信じてなかった癖に、始末しようとしなかった。 何故、自分がって顔してるね。自分だけは大丈夫。死なない。殺されない。そう思ってた? ほんと、呑気だね。 騙し合いはアタシの勝ち。不思議だね。追い詰められてたのはアタシなのにさ。 残念だけど、あんたにナデシコに戻られるとアタシが困るの。だからここで――」 「テニア、貴様ああぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!」 絶叫。餌にされた。テニアが安全に逃げ切るためのスケープゴート。 今更気づいてももう遅い。離脱できるタイミングは逸した。間もなく奴が戻ってくる。 それに引き換えこちらは、六つの勾玉によって空間に固定され、身動きが取れない。 「――アタシの捨て駒になって死んじゃいな。じゃね~」 通信が切れる。そして次の瞬間、赤黒い光がディバリウムを包み込んだ。 ――大出力のビーム兵器……そんな物を使う素振りは今まで。 六つの勾玉が散り散りになり拘束が解かれる。しかし、今のディバリウムに自由に動き回る余裕はない。 赤黒い奔流の只中、抗うだけで精一杯なのだ。 そして、その奔流が途切れたとき、蒼カブトは間近に迫っていた。迅い。避けられない。 何処で拾ってきたのか、左腕には巨大な黒いライフル。 オルバの与り知らぬことだが、黒いライフルの名はディバイデッド・ライフルという。 それはメディウス・ロクスの第一形態における主兵装。 大出力のビーム兵器の零距離射撃にも耐えるその強固なつくりは、近接戦闘に置いての打撃武器にも成り得る代物。 本体が第二形態に移行した際に規格が合わず必要のなくなったそれは、地下に撃ち捨てられていた。 それを直に叩きつけられて機体の平衝を失う。ぐらつき、次の瞬間追撃を受けて弾き飛ばされる。 それで終わりではない。追いすがられる。一瞬で空いた距離は不意になり、取り付かれた。 「勝利……敗北……そこに意味はない。破壊されるか……創り出されるか、それ……だけだ。 そしてお前は……死ねッ!!」 コックピットの上方、砕けて欠けた全周囲モニターのその向こうで、黒いライフルを構える巨人の姿が、直に見えた。 「噛み砕き――」 ディバイデッド・ライフルが、ディバリウムの抉れた中央部に叩きつけられる。 強引に侵入してきたそれにコックピットの上半分は完全に砕け散り、砲口が間近に突きつけられた。 「――撃ち貫く」 目と鼻のすぐ先、ホンの数十センチ上で、赤黒い光が灯っていく。地獄の業火のようなそれが見えた。 両眼が見開かれ、瞳が恐怖に揺れ動き、怯えが奔り、そして次の瞬間―― (助けて、兄さん) ――オルバの体は蒸発し永遠にこの世から消え失せ、後に残ったのは狂った男の笑い声だけだった。 ◆ 主を失ったディバリウムが爆ぜる轟音が、僅かに聞こえてきた。 舌打ちを一つ。もう少し粘るものだとばかり思っていた。 三々五々に戻ってくる勾玉を回収しつつ空域からの離脱を急ぐ。 「あ~あ、基地の設備壊し損ねちゃった。念のため壊すつもりだったのに……」 そうふてくされた様にぼやきつつも、実はそれ程気にしていない。 あの狂った男がいる限り、そう易々と技術者の手に渡ることはないだろう。 それよりも気を払わなければならないのはこの先だ。 どこかに都合のいいお人好しでも転がってない限り、暫くは単独行動。 オルバやムサシのような盾がいないのだ。気が抜けない。 そして、北上しナデシコとの合流を優先する。それは出来るだけ早く行なわなければならない。 単独行動の危険性だけが問題ではない。合流が遅れれば遅れた分だけ、ナデシコを崩壊させる機会が失われていく。 「どんな顔してあいつらの前に戻ろうかな?」 怒り狂った顔がいいだろうか? 泣き腫らした顔がいいだろうか? 涙枯れ果てて茫然自失ってのもいいかもしれない。 とにかく、立ち回りは今からでも考えておくべきだろう。 そして、気をつけるべきはシャギア。疑われている様子は今の所ない。 だが、オルバに信用されてなかったのだ。念を入れて兄であるシャギアにも信用されてないと見たほうがいい。 伸びを大きく一つ。凝り固まった筋肉をほぐし、両頬を叩く。 気合を入れろ、テニア。ここまでも大変だったけど、本当に大変なのはこれから。 「さぁ、忙しくなるぞー!!」 【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ゲシュペンストMkⅢ(スーパーロボット大戦 OG2) パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染 機体状況:アインスト化。ディバイデッド・ライフルを所持。 現在位置:G-6基地跡地 第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く 第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。 最終行動方針:??? 備考1:機体・パイロットともにアインスト化。 備考2:ゲシュペンストMkⅢの基本武装はアルトアイゼンとほぼ同一。 ただしアインスト化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。 ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。 実弾装備はアインストの生体部品で生成可能。 胸部中央に赤い宝玉が出現】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル) パイロット状況:本来の精神状態とはかけ離れているものの、感情的には安定 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、ガンポッドを装備 EN80%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている 現在位置:G-5南部 第一行動方針:ナデシコの面々に取り入る 第二行動方針:統夜との接触、利用の後殺害 第三行動方針:参加者の殺害(自分に害をなす危険人物、及び技術者を優先) 最終行動方針:優勝 備考1:甲児・比瑪・シャギア、いずれ殺す気です 備考2:首輪を所持しています】 【オルバ・フロスト搭乗機体:ディバリウム(第三次スーパーロボット大戦α) パイロット状態:死亡 機体状態:爆散 】 【残り20人】 【二日目9 30】 BACK NEXT すべて、撃ち貫くのみ 投下順 最後まで掴みたいもの 判り合える心も 判り合えない心も 時系列順 風と雷 BACK 登場キャラ NEXT すべて、撃ち貫くのみ キョウスケ 膨れ上がる悪夢 争いをこえて テニア 獲物の旅 争いをこえて オルバ
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/363.html
伏せた切り札 全ては己が目的のために ◆ZqUTZ8BqI6 さて、どうする? ガウルンは、放送を聴きながら思案する。 お互い、手を組む要件で今のところは決まった話し合い。 お互いの手札はもう開ききり、現在の情報を共有した――ように見える。 しかし、それは違う。ガウルンは、手の中で白い粒を転がす。 それこそが、明かさなかったガウルン最後の札。 首輪の機能を一時的にカットする――つまり首輪の機能を停止させる魔法の錠剤。 服用すれば何か強烈な副作用があるらしいが、そんなデメリットは飲まなければ当然ゼロ。 つまり、解析する分には何の問題もないということだ。 機能を抑制する錠剤をもしユーゼスが手に入れたら、それこそ首輪はあっという間に外れかけない。 (それはお寒いねぇ、白けるってもんだ) もしかしたら数分で外れるかもしれない。だがそんなことをして何が面白いのか。 自分もこの機体の受諾など随分とルール外のことをやってはいる。いるが、それでもだ。 折角ルールの内側で必死に集めたもので、知恵の輪を解こうとしている相手に答えを教えるなんてつまらない。 ユーゼスのやろうとしていることに興味はある。 しかし、それは首輪が取れる取れないではなく、純粋にユーゼスの行動に対してだ。 正直、ガウルンからすれば首輪を外す必要性すらほとんど感じていない。 別に、ここにいる全員を潰し合わせて帰るというのも方法の一つとしてあるし、事実彼はそれを狙って動いてきた。 自分がいままでの行動方針を曲げてユーゼスと組むだなんておとなしいことをするはずがない。 ユーゼスもそれは承知の上だろう――そうでなければ随分と馬鹿だ――し、アキトは重々理解している筈だ。 しばらくの方向は協力。首輪が外れなくても首輪が外れても、どっちにころぼうが適当な時にユーゼスとはおさらば。無論、永遠の。 首輪を自力で外せるほどの人間なら、手を組み続けるもやぶさかでもないが、それはうまみが少ない。 ユーゼスは、せっかく手に入れた手駒を放そうとはしないだろう。 そうでなければ、折角のとっておきも、最悪食いぞこなってしまう。こんなもったいない話はない。 とはいえ、ユーゼスを沈めるのは手がかかりそうだ。自分ひとりでやるのは阿呆だろう。 当面のチャンスとしては、向こうの戦艦との潰し合いの時がベスト。 それにどうせ、ユーゼスも裏切るだろう。 ガウルン、その経験則による絶対の確信。理屈は、簡単だ。 ユーゼスの機体は、相手を食えば食うほど強くなる。 そのために、Jアークにいる連中の機体を食いたいとユーゼスは言う。 そしてパイロットはいらない、と。 あえて突っ込まなかったが、ガウルンにはすぐに分かった。 ――じゃあ、Jアークを食った後は俺たちか? ユーゼスは、他人なんて必要としていない。 せいぜい道端に転がる小石、もしくは使い捨ての駒か。その程度の価値しか見出していない。 仮面からちらちら覗く目を見るだけで簡単に察することができる。 しかも、言動もガウルンの予感そのままだ。 自分以外どうでもいい――自分以外残す必要はない。 そんな奴が、わざわざ目の前に残った「餌」を食い残すことがあるだろうか。 はい、シンキングタイム一秒。答えは当然NO。前提さえありゃガキだって即答できる質問だ。 統夜みたいは駆け出しにはちょっと酷だが、だまし合いの場数さえ少し踏んでいれば簡単に理解できる。 ガウルンが、口を釣り上げたまま、ちらりとヴァイサーガ――統夜を見る。 とても、そこまで頭は回っていないようだ。 さっき、こちら3人で行動することを提案したことは正解だった。 とりあえず、ユーゼスが消えたらそこらへんを話すとしよう。 連中が死者を生き返らせることができるとかそこらへんを交えて。 アキトは……気付いてるだろ。おそらく、こっちが手を返せば、そこらは合わせるだろう。 自分への復讐一念で、こっちと戦うためユーゼスにつくってケースもあるが……それはそれで。 この薬は、絶対に渡さない。 ユーゼスが、だれも逆らえないような絶対な立場をそうそう作らないように。 手元に届いた名簿をぱらぱらとめくる。指さし、一人一人確認する。 妥協でなく、方針の変更でもなく。ただ、ガウルンはガウルンらしく。 薬というジョーカーを離さず、常に最終ラインにおける有利な立場をガウルンは維持し続ける。 ◇ ◇ ◇ さて、どうする? アキトは、放送を聴きながら思案する。 はっきりアキトの心情を言おう。一分でも一秒でも早く、ガウルンを殺したい。 だが、それではいけないのだ。このユーゼスがいる限り、絶対にできない。 ギリリ、と奥歯が噛み砕けんばかりに歯を食いしばる。自分が優勝するためには、ユーゼスの薬が必要なのだ。 あと1錠では、次の戦い――おそらくJアーク掃討戦――で底が尽きる。 自分の勝ち残りの可能性、引いては自分自身の生存率はユーゼスが握っていることになる。 元はと言えば、アキトは優勝するため、ユーゼスは自分の生存のためと対等に、共犯者として結んだ協定だったはずだ。 なのに、気付けばその主従ははっきりと形として現れ、自分はユーゼスのいいように使われる人形と化している。 アキト自身、優勝を捨てたわけではない。 あのノイ・レジセイアは、ユリカを生き返らせてくれる保証はないが、死者を生き返らせるだけの力を持っている。 ユーゼスは、ユリカを生き返らせてくれる保証以前に、死者を生き返らせるだけの力を持てるかも不明だ。 このまま、ユーゼスと行動し続け、ユーゼスの言うとおり行動する。 なるほど、生存のためなら非常に魅力的なプランだろう。――ただしユリカが生き返るかはかなり微妙なラインだ。 これでは、意味がない。ユーゼスとともに行動し、ノイ・レジセイアを倒し、元の世界に帰ってもユリカがいなければ意味はない。 ノイ・レジセイアを倒すか倒せないかは、ユーゼスの都合であって、アキトの都合ではない。 だが、優勝が遠い。 この巨大な機神を駆るユーゼス。 異常なまでの力を行使するキョウスケ。 そして、無傷の特機を手に入れたガウルン。 この全員の息の根を止める? どうやって? アキトの前にあるのは、二つの道。どちらも険しく絶望しか見えないような道だ。 ユーゼスに従い、比較的平易な道を進む。ただし、ユリカは返ってこないかもしれない。 優勝をめざし続け、全てを殺す。 ただし、方法すら見えてこない。 ユーゼスを殺すことは、薬を放棄すること。薬を放棄すれば、優勝は消える。 しかし、ユーゼスを残し、一対一か二対一といった状態に持ち込んだとして、勝てるとは思えない。 放送が流れだす。 機体を修復した少女の声。 皮肉にも、彼女が修復したアルトアイゼンはキョウスケの手に渡り、彼女たちを脅かす存在になり果てた。 放送の内容に従い、名簿が手元に転送される。その名簿を眺め、視界のゆがみに目をこする。 この体が五体満足ならば。戦うことができるならば。 ――ユーゼスを切ってしまうこともできるというのに。 目をこするため、黒い矯正機を上に押し上げる。 そして、気付く。 クリアになる視界。矯正機を外したほうが明確になる世界。懐かしい色の概念が、目に飛び込む。 信じられない出来事に、目を見開き、何度も目をこする。世界は変わらない。まったく、変わらない。 矯正機を外し、名簿に視界を落とす。――読める。何もかも。字のフォントの僅かなとめはねまで見える。 手が震える。気付く。今、この出来事に手を震わせている自分。つまり、この出来事がなければ、手が震えていなかった自分。 手に力を込め、握る――開く。しびれはない。震えはない。それどころか、手の感触もはっきり感じる。 今思い当たる――ここまで、自分はユーゼスの手を借りず、かなりの速度で飛んでいた。もはや、平時と遜色ない。 感覚が、五感が還っている。しかも、視界から推理するに健常者並みに。 アキトは、ディバックに手をおもむろに突っ込んだ。鞄の中をかき回し取り出したのは、固形食糧。 箱には、カロリーメイトチョコレート味と書かれていた。アキトは、その封を切り、そのまま口に放り込んだ。 涙が頬を伝った。涙は自然と溢れてきた。 お世辞にもうまいとは言えない。ぼそぼそとして、水気がない。気持ちチョコのような味がするだけだ。 けど。だけど。まずいと、分かる。味が、分かる。もう二度と戻ることはないと思っていた味覚が、ある。 ぐちゃぐちゃに頭をかき回され、奪われたモノ――料理人としての夢と、最愛の人。 過去は還らない。自分のやったこと、憎しみは消えない。 けど、諦めていたものが還ってきた。還ってきたのだ。 掌にある、小さな錠剤を眺める。自分の体に変化を与えたものは、間違いなくこれだ。 今思い返せば、薬を飲むたびに、回復していたのかもしれない。 ――そう言えば、ユーゼスとともに遠方を確認した時、健常者並みに見えていた。 ただ、自分が気付けなかっただけで。バッドトリップも、程度がどんどん軽くなっていた。 最初は手足を震わせることしかできなかったが、先ほどのそれは、暴れるだけの余力があった。 今でも、健常者とほぼ同じ。最期の一錠を服用すれば、バットトリップはいくらかあるだろうが、その後は…… もう、薬はおそらく必要ない。少しずつ現状を回復させるならば、そう言わず説明をすればよかったろうに。 内心アルフィミィに僅かに毒づくが、ある意味納得もする。 アルフィミィは、ガウルンにも同様に強力な機体を与えていた。戦える素質あるならば、その力を与えていた。 自分には、特機を渡さない代わりに、加えて薬を渡した。薬は、あの特機のかわりだった。 ――勝てる。 アキトは確信する。無論、優勝へのプランが見えたわけではない。 だがそれでもこの状態は見るべきところがある。それはユーゼスの不意をつけるかもしれないことだ。 やつは、相も変わらず自分は薬がなければ木偶だと思っているだろう。 そして、薬ある限り自分に逆らわないと思っているだろう。 その傲慢を、撃つ。撃ち貫く。そして、奪う――あの機神を。 別に機体の損傷を気にする必要もない。あれは、コクピットだろうと再生するのを自分は見ている。 ユーゼスの首を確実に描き切る瞬間まで顔を伏せ、そしてユーゼスの全てを奪うのだ。 名簿を見る。全部でわずか17名。つまり殺すべきは現状16名。ユーゼスを殺した時点で最低15名。 いや、それまでの乱戦でさらに減るだろう。せいぜい10人か。 それならば、このゼストの力で押し切れる。 優勝への光明。今、それを悟られるわけにはいかない。 静かに涙をぬぐいアキトは黒い矯正機をかける。黒の下に眠る虹色を知られないように。 いいさ、ユーゼス。今は犬になってやる。お前の最期まで、従順な犬だ。 お前が隙を見せたとき――俺が猟犬として牙を見せた時、お前はもうこの世にはいない。 キョウスケ・ナンブにやったこと。忘れてはいないだろう? 取り戻すのだ。全てを。そして過去を清算するのだ。 愛する人と、夢を再び両手に掴むために。 自分の五感の回復を誰にも悟らせてはいけない。 手元に届いた名簿をぱらぱらとめくる。指さし、一人一人確認する。 妥協でなく、方針の変更でもなく。ただ、アキトはアキトらしく。 五感の回復というジョーカーを離さず、常に最終ラインにおける有利な立場をアキトは維持し続ける。 ◇ ◇ ◇ さて、どうする? ユーゼスは、放送を聴きながら思案する。 まず、自分たちは他者に先駆けて会談の地にいかなければない。 会談の主催者としてまず先に行き、地形やそこにあるモノをしっかり検分する。 そう、会談の地はそのまま奴らの墓場となるのだ。 けして逃がさず、完全な形でラプラス・コンピューターを手に入れるためにも、事前に全てを知りつくすのだ。 敵のデータ、地形、状況、一人一人の思想……分かる限りすべてをユーゼスは頭に叩き込む。 ――それじゃお待ちかねご褒美発表タイムですの。やっぱり目標があったほうがやる気も出ると思いましたので、特別に名簿をプレゼントしますの! 残りの人たち全員の名前が書いてある特注品、受けとってほしいですの。水や火からは離れて待っててくださいの。再度支給はなしですの。 その言葉を聞き、僅かにモニターから視線を外し、周囲を探す。 「……?」 転送は、放送が終わった後かと思い、少し手持ちぶさながらも待つ。 放送はすぐに終わった。しかし、何かが手元に届いたようには見えない。ディバックの中に転送されたかと鞄をあさる。 ない。そんなものは、どこにも見つからない。 名簿は転送されていないのか? いや、主催者サイドは、送ると言っている。 僅かに考えを巡らす。 ガウルンは聞いてもまともに答えない。 アキトは答えるかもしれないが嘘が混じったとき分かりにくい。 相手は、自然とお人よしそうで愚鈍な青年へ。 「統夜。名簿の記述を読み上げろ」 突然声をかけられ、少し声を裏返させながらも、統夜は答える。 「な、なんでだよ。あんただって名簿は持ってるだろ?」 「内容にズレがないかの確認だ。主催者側が意図的に情報を改ざんし、個別に送っている可能性を調べる」 考える暇も与えない。一拍の間もおかずユーゼスは言いきった。 相手に、いらない勘ぐりをあたえさせない。統夜も、不満げではあったが、名簿を読み上げ始めた。 読み上げる名簿がある――つまり名簿を持っている。 ユーゼスは、正確に統夜の読み上げる名前を記録していった。 統夜が読み上げ終わると同時に、ユーゼスは他の面々の顔を見回したあと、確認を取る。 「全員、齟齬はあるか?」 にやにやと笑みのまま「さぁ?」と言わんばかりの表情の男が一名。 首を横に振るものが二名。どうやら、内容に差異はないようだ。 どういうことだ? 内容に差異がないことを確認できる――イコール名簿を持っている。 何故か自分だけは名簿が転送されていない。原因を、ユーゼスは黙考する。 まず、真っ先に考えたのは、自分が主催者にとって目障りだからだ。気に食わない、だからこその嫌がらせ。 だが、その可能性を即座に切って捨てる。 主催者は、たしかに参加者全員に平等に接しているとは言い難い。 それでも、ゲームを進めるにあたって最低限の平等守っていた。 なにか異常事態がない限り無干渉で、全員に干渉するのは放送のみ。 そして、その放送で告げた内容を実行しないなど何かがおかしい。 第一、なにか自分に危機感などを覚えているというのなら、こんなすぐに取り戻せるような些細な嫌がらせでは済まないだろう。 首輪を爆発――はない。キョウスケが生きている以上、生死はルール上の規則以外では処理しないのだろう。 そうだとしても、いくらでもやりようはあるように思える。それこそ、空間転移の力で機体を破壊するのもいい。 直接、余った無人機でつぶしに来るのもいい。 ルールを破るなら、方法は選り取り見取りだ。 だというのに、わざわざ自分にだけ転送しなかった理由。 考えるが、ほぼないに等しい。 となれば、逆か。「転送しなかった」のではなく、「転送できなかった」。 そう考える。では、何故転送できなかった。 転送する位置が分からなかった。もしくは、自分の存在に気付かなかった。 これは考えにくい。なぜなら、これだけの大規模グループで動いておいて、そのメンバーを見過ごすなどあり得ない。 単独で行動し、うっかり忘れていましたというのも考えようだが、首輪で監視している以上集団が分からなかったというのは変だ。 自分の存在に気付かないはずがない。第一、グループの中でないのは自分だけなのだ。 違う、と判断できる。 転送したが、転送されなかった。 これは電波で例えるならば、発信はしたがこちらは受信できなかったという場合だ。 つまり、全員に向かって一斉送信はしたものの、自分の首輪だけは受信機能に破損があり、届かなかった。 これなら、他者全員に同一のものがあるのに、自分だけない理由にはなる。 だが、今度は、これはこれで問題がある。 何故、自分の首輪の機能が壊れているのか――ということだ。 自分の首輪に細工をした覚えは一切ない。正直、破損する理由がないのだ。 気付いたら自分の首輪の機能が壊れていました、と信じて喜べるほど頭が足りない人間ではない。 比較するべきだ。自分の首輪、つまりは自分が経験しており、他者にない経験を。 まず思い浮かぶのは先ほどの戦いでのゲッター線だった。現状、首輪の解除にもっとも役立つと思われていた存在。 それを、ユーゼスはF-1で大量に浴びた。 これは、違う。これで首輪の機能が停止するというなら、自分だけでなくガウルンとアキトの首輪も止まっていなければいけない。 次に思い浮かんだのは、ガウルンにも伝えた、空間と首輪の解除、その両方の鍵になると思われる熱気バサラの歌。 これも、やはり違う。あれを、あそこにいた全員が聞いていた。自分だけではない。 では、それ以前か。 ラーゼフォンを取り込んだとき。いや、体などには何もなかった。 しかも、自分はラーゼフォンの機能を熱気バサラのように引き出していない。 さらに遡る――思い当たる。 「そうか……あの、時」 そう、首輪の解析とともに、始まった謎の侵食。食い合う異常な細胞同士のせめぎ合い。 あのまま進めば、自分の首輪にまで浸食が進むと追い詰められた。だが、それを救った存在があった。 ゲッター線だ。ゲッター線が、全てを抑え込み、正常に戻した。 その時、首輪は多少変質し――機能が停止した。ユーゼスは、その何らかの原因を探ろうとしていた。 形状の変化という目に見えて分かる変化があったために、そこに注目し、今まで頭の外に追いやっていた。 首輪の機能を停止させ、機体を正常に戻した緑色の輝き――ゲッター線を己も浴びていたことを。 あの時、空間を閉じるのに作用したゲッター線と、首輪の機能、侵食を停止したゲッター線では効能などが微細に違ったのだろう。 死者を蘇生する場合の力もあるなど、まったくその本質は見えておらず、単純にその力の発露しかないため分からなかった。 ウインドウに、自分の姿を映し、そっと服を下げ、首輪を露出させる。 本来、血の色に輝き脈動するはずの宝石は、黒ずみ光を失っている。 もう一度統夜――首がよく見える――を見る。その首輪の宝石は、赤々と輝いている。 自分の首輪と統夜の首輪の差異。それで、確信する。自分の首輪の機能が停止していることに。 一つ言っておこう。 このユーゼスの推論は間違っている。停止したのはF-1の戦いのときであり、原因もゲッター線化は不明だ。 間違いも混じったもので、あくまで推論以上でも以下でもない。 だが、ユーゼスの首輪が停止しており、ユーゼスがそれに気付いたことには間違いない。 「さて……話の細部を詰める件についてだが」 ユーゼスは、さらなる高まりを押さえ、話を切り出す。 「こちらは私とアキト。ガウルン、そちらは統夜とテニア……ということでよかったか?」 提案の確認を、ユーゼスはガウルンに振る。 こうなれば、ガウルン達とは離れたい。一刻も早く、首輪の状態を確認し、外したうえで理論を構築する。 後ろからばっさり切られかねない狂人は現状いらない。 アキトのような薬のため逆らえず、首輪をはずす実験台にもできる存在一つあればいい。 そのほうが、注意する対象がアキト一人ですむ。 「ああ、そうだよ。で、いつパーティの会場に行けばいいだ?」 「24時の会談の前に、来てもらえればいい」 戦闘が始まってから、飛び込まれてはたまってものではない。 無論、素直に守るとも思えないが最低限釘を刺す。 「ところで……これを見りゃわかるがどうやら俺たちと、奴らと、あの化け物しかいないようだな。 まあ、適当にお譲ちゃんの要件をこなしてそっちに行くさ。ただし、あの青カブトは遠慮させてもらうがね」 「それでいい。勝ちが確実に見えるまであれ相手は撤退したほうがいい」 妙に話がかみ合うことに違和感を覚えながらも、ユーゼスは最後の詰めに入る。 お互い、情報を伝え切り、大まかな予定を伝えた。 両者が分かれたのは、その30分後のことだった。 首輪の停止を誰にも悟らせてはいけない。 手元に届いたデータを確認。指さし、一人一人確認する。 妥協でなく、方針の変更でもなく。ただ、ユーゼスはユーゼスらしく。 首輪の停止というジョーカーを離さず、常に最終ラインにおける有利な立場をユーゼスは維持し続ける。 【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル) パイロット状態:疲労(小) ハイ 機体状態:EN残量100% データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました。 第三段階へ移行しました。 デザインの細部、能力(相転移砲などが使用可)が一部違いますが、基本MXのそれと変わりありません。 現在位置:B-2 第一行動方針:E-3に先んじて向かい、準備を整える 第二行動方針:AI1のデータ解析を基に首輪を解除 第三行動方針:サイバスターのラプラス・コンピューターの回収 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい? 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る 備考1:アインストに関する情報を手に入れました 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度) 備考3:DG細胞のサンプルを所持 】 【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター パイロット状態:五感が明瞭 意識の覚醒 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)ゲッタートマホークを所持 現在位置:B-2 第一行動方針:ユーゼスと共に行動し、優勝を狙う 第二行動方針:ガウルン、ユーゼスの首を取る。ゼストを手に入れる。 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す 最終行動方針:ユリカを生き返らせる 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。 備考2:謎の薬を2錠所持 (内1錠はユーゼス処方) 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可】 【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル) パイロット状況:疲労(小)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染 機体状況:万全 現在位置:A-2 第一行動方針:存分に楽しむ。 まずはインベーダーで慣らしつつ疲れをとる。 第二行動方針:テニア、ユーゼスはとりあえず適当なところで殺す。 第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す 第四行動方針:禁止エリアのインベーダー、基地のキョウスケの撃破 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す 備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です 備考3:謎の薬を一錠所持。飲めば禁止エリアに入っても首輪が爆発しなくなる(飲んだ時のペナルティは未定)】 【紫雲統夜 登場機体 ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態:精神的に疲労 怒り 機体状態 左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN70% ガーディアンソード所持 現在位置:A-2 第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処 第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。でも信用はしない 最終行動方針:テニアと生き残る】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル) パイロット状況:焦り 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている 現在位置:A-2 第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処 第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。隙があれば潰す。 最終行動方針:統夜と生き残る 備考1:首輪を所持しています】 【二日目 18 30】 BACK NEXT 貫け、奴よりも速く 投下順 銃爪は俺が引く 貫け、奴よりも速く 時系列順 銃爪は俺が引く BACK 登場キャラ NEXT もう一つの対主催 ユーゼス 銃爪は俺が引く もう一つの対主催 アキト 銃爪は俺が引く もう一つの対主催 ガウルン 竜が如く もう一つの対主催 統夜 竜が如く もう一つの対主催 テニア 竜が如く
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/199.html
SSタイトル元ネタリスト 作者さんの確認はほとんど取っていないので、間違ったまま記載されている可能性もあります。 No タイトル 元ネタ 10 赤い彗星 シャア・アズナブルの異名 48 楽勝! 「ガンダム0080 ポケットの中の戦争」よりバーニィの台詞 52 東北東に進路を取れ 1959年製作アルフレッド・ヒッチコック監督のアメリカ映画「北北西に進路を取れ」 59 我が道を往く人々 ガロード・ラン(我、道、走) 65 パンがなければお菓子をお食べ ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの言葉。ただし本当はそんなこと言ってないらしい。 77 彼らの乗機は強力です 機動新世紀ガンダムX第3話タイトル「私の愛馬は凶暴です」 87 巨虫、岩を打ち抜いて アイビス=ダグラス専用BGM「流星、夜を切り裂いて」 88 類(仮面)は友(仮面)を呼ぶ 日本のことわざ「類は友を呼ぶ」 91 歌えなくなったカナリア 童謡「かなりあ」の歌詞『歌を忘れたカナリア』から? 94 Time Over ―私の中のあなたにさよならを― スーパーロボット大戦Dリムルートステージタイトル「私に、さよならを」 102 極めて近く、限りなく遠い世界の邂逅 スーパーロボット大戦A最終話タイトル「極めて近く、限りなく遠い世界に」 104 獅子身中の虫 日本のことわざ「獅子身中の虫」 105 壁に耳あり、障子に目あり 日本のことわざ「壁に耳あり障子に目あり」 108 星落ちて石となり 古語「星落ちて石と生まる」 109 Take a shot 魔法少女リリカルなのは挿入歌「Take a shot」 111 とある竜の恋の歌 パソコンゲーム「竜†恋[Dra+KoI]」エンディングテーマ「とある竜の恋の歌」 112 失われた刻を求めて プルースト著の同名小説「失われた時を求めて」 114 爆熱! ゴッド晩ごはん!! 機動武闘伝Gガンダムよりドモンの台詞「爆熱! ゴッドフィンガー!!」TV番組「突撃! 隣の晩ご飯!」 116 愛を取り戻せ TVアニメ「北斗の拳」OP曲「愛をとりもどせ!!」 118 我が道を走る人々 ガロード・ラン(我、道、走) 119 未知との遭遇 1977年製作のアメリカ映画「未知との遭遇」 121 謀 ―tabakari― TVアニメ「ベターマン」各話タイトルより「(漢字一文字) ―(ローマ字)―」という表記形式 122 ・――言葉には力を与える能がある(1)・――言葉には力を与える能がある(2) 川上稔著、ライトノベル「終わりのクロニクル」より1st-G概念条文「文字には力を与える能がある」 124 吼えろ拳/燃えよ剣 島本和彦著、漫画「吼えろペン」「燃えよペン」司馬遼太郎著、歴史小説「燃えよ剣」 130 Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(1)Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(2)Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(3)Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(4) 1994年公開の映画「LEON」の主題歌「Shape of my heart」 143 戦いの矢(1)戦いの矢(2) 1953年公開の映画「戦いの矢」 151 計算と感情の間で 小説「冷静と情熱のあいだ」 152 家路の幻像(1)家路の幻像(2) 「schwarzweiβ~霧の向こうに繋がる世界~/霜月はるか†Revo」歌詞中のワンフレーズ 158 黄金の精神 荒木飛呂彦著、漫画「ジョジョの奇妙な冒険 第4部ダイヤモンドは砕けない」終盤のジョセフ・ジョースターのセリフ 159 風と雷 TVアニメ「勇者王ガオガイガー」第35話タイトル「風と雷」 164 揺れる心の錬金術師 アルフィミィ専用BGM「揺れる心の錬金術師(アルケミスト)」 179 怒れる瞳(1)怒れる瞳(2) TVアニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」第1話タイトル「怒れる瞳」 179 世界を止めて(1)世界を止めて(2) TVアニメ「機動戦士ガンダムOO」ファーストシーズン第23話タイトル「世界を止めて」 186 貫け、奴よりも速く スーパーロボット大戦OG2極東ルート第22話タイトル「貫け、奴よりも速く」OGsでは同ルート第29話タイトル 188 銃爪は俺が引く 機動新世紀ガンダムX第5話タイトル「銃爪はお前が引け」 193 Alter code Fire2nd IgnitionAdvanced 3rdAdvanced 3rd(2)The 4th DetonatorThe 4th Detonator(2)The 5th Vanguard RPG「ワイルドアームズ」シリーズタイトル
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/284.html
少年の決意 189 2スレ目の153を見た瞬間、思わず書いてしまった。反省はしていない。 『アー、アー、ただいまマイクのテスト中ですの。…こほん… 最初の定時連絡の時間となったので放送を始めますの。 まずは死んでしまった人たちの報告からですの…』 …エクセレン=ブロウニング …メルア=メルナ=メイア …グ=ランドン・ゴーツ …ラクス=クライン 戦闘を乗り切り、一息入れられると思った矢先に、 彼にとって最悪の事実が伝えられた。 簡単に予想される事だった。彼女はこのような馬鹿げた話に 乗るような人間では無い。むしろ、平和的解決のために、動くであろう 事は最初から分かっていた。そして、考えたくも無い事ではあるが、 ゲームに乗った人間からすれば彼女は格好の的だ。 そして、最悪の予想が現実となった。 声も出ないし、涙も出ない。悲しみ、そして怒りが大きすぎて 心がフリーズしているような感覚だった。心の自衛機能が働いているのだろうか。 そんなどうでもいい事を考えている所に、更に言葉は続く。 『乗らない方もいますのでやる気を出してもらうために ご褒美のことを説明いたしますの。ご褒美は、死んでしまった方を生き返らす ことから世界の改変まで望むがままですの。なので、みなさんちゃきちゃき頑張って欲しいですの』 死人の復活は元より世界の改変も可能…… 彼女はそう言った。 例えば、トール、フレイ、ムウさん、自分達を逃がすために死んで行った第7艦隊の人たち、 フレイのお父さんたち、シャトルの避難民の人たち…… いや、世界の改変と言うのならそもそも戦争の原因となった血のバレンタインすら 防ぐ事も出来るじゃないか。そうだ。全てはあれが原因だ。 友人と銃を向け合い、それぞれの友を奪って殺しあって、大切な人たちを失って…… それだけの血を流し、多くの物を失いながらも、また銃を向け合おうとする者は消えず、 近い内に再び戦争が起きるかもしれない明日に脅える……そんな世界を変えられると言うのか? そう考えるなら確かに魅力的な話ではある。だが、このゲームに乗るという選択肢は ラクスへの裏切りになるのではないだろうか? いや、待て。彼女は「願いは一つ」とは言ってない。 ならばこのゲームの参加者全てを生き返らせ、然る後に世界の改変を 願えばいい。そうすれば、全て大丈夫。誰も死なない。 その先には誰も死なない世界を作り出せる。 いや、それだけでは駄目だ。自分の機体、ジョナサンの機体、他の参加者の機体を 見る限り、未来、もしくは違う世界の技術を使ったとしか思えないような機体ばかりだ。 つまり、それはこのゲームの主催者が時を超えるどころか、時空すら超える力を有している事をも証明しているのでは? だったら………用済みになったら主催者も殺さないといけないんだ。 そうだ。あんな危険な存在が許される筈が無い。もし、このゲームが終わっても、 また同じ事を繰り返さない保障は無い。それに、ラクスが死んだのは誰のせいだ? 言うまでも無い。僕達をこんな狂った戦いに巻き込んだ主催者だ。 人を殺すのは嫌いだ。だけど、アレは人じゃない。只の化け物だ。 なら、殺した所で罪になる事も無い。 だから覚悟を決める。再びこの手で他人の命を奪うという覚悟を。 横には、気絶したジョナサンが乗るJアークがいる。その気になればすぐに 殺せるが、それにはまだ早い。確かに自分の乗る機体は悪くは無い。 だが、こんな状況なら仲間を集めようとする人間はいくらでもいる。 自分だってそうした。エネルギーを気にせずに戦えるフリーダムならともかく、 この機体は補給も必要だ。徒党を組んだ相手を敵にするなら、こちらも 徒党を組む方が効率的であるのは明白。利用するだけ利用して、 最後の最後に裏切ればいい。 そうさ、僕は辿り着く。誰も成し得なかった本当の平和な世界を築く存在に 僕は………新世界の神になる! 【キラ・ヤマト 搭乗機体:ガンダムF-91( 機動戦士ガンダムF-91) パイロット状態:良好 機体状態:良好 現在位置:C-5 第一行動方針:ジョナサンの回復を待ち、信用を得る 第二行動方針:役に立ちそうな手駒を集める 最終行動方針:優勝し、願いを叶えた後用済みになった主催者を排除し、新世界の神となる】 【ジョナサン・グレーン 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー) パイロット状態:気絶中 機体状態:キングジェイダーへの変形は不可、左舷損傷軽微 現在位置:C-5 第一行動方針:クインシィの捜索 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先)】 本編86話 キラ