約 845,779 件
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/105.html
オーガニックな機体とニュータイプの邂逅 ◆9NAb4urvjA 俺達は当初の予定通りにH-2に留まり他の参加者が接近するのを待っていた。 「なあアムロ」 この横にいる核ミサイルに乗った男はシャア・アズナブル。自分の生涯のライバルであり、敵から 味方へ、味方から敵へ、敵から味方へと変わり身の早い油断のならない男だ。 「どうしたシャア」 「暇だ」 「……索敵すらしない役立たずはもう助けてやらんぞ」 「冗談だ。ところで、もしここが奴らの言っていた禁止エリアになったらどうする?」 たしかに、奴らが監視等をしているとすれば自分達が動かないことに業を煮やして移動させようと するだろう。だが、そこまで考え俺は自惚れていると気付く。 この状況では単独で行動したとしても奴らを出し抜くどころか勝ち抜くことすらできやしない。まして 足手まといを抱えている状況では尚更だ………こいつにはMS-05Bでもいいから早く核ミサイル以外 の機体に乗ってもらいたいところだ。 「そうなったらH-1かG-1に移動するまでだ」 そうしていると唐突に北東の方に何かが現れたのを感じた。 「シャア?」 「貴様も感じたか。だがこれはいったい?」 「カミーユともララァとも違う。強化人間にしては穏やか過ぎる」 なんだ、この唐突さと妙な感覚は? 「とりあえずお前は上空で待っていろ。俺が接触する」 「何度も同じ台詞を言わせる気か?私を置いていこうとしたら追い縋って貴様ごと自爆すると言ったはずだ」 チッ!折角こいつと離れるチャンスなのに。 「こら、露骨に嫌そうな顔をするな。さっさと先に行け」 「まあ、慌てるなよ。とりあえず放送を聞いてから行くことにするぞ」 放送では10人もの人間が呼ばれたことに驚きはしたが知っている名前はいなかった。だが、奴らが言った 『ご褒美』の『死者の復活』『世界の改変』等とは大きくでたものだ。しかしそんな話を信じてやる程には 子供ではないし、そんな理由でゲームに乗ってやるつもりもない。 例えその話が本当で誰かを生き返らせることが可能としてもだ。 「奴らの話をどう思う?」 「あいにくと興味はないな。お前こそ馬鹿な考えは起こすなよ」 「フッ、アクシズの連邦軍を騙し撃ちする計画を立てたのは私だぞ。奴らの話を信じると思うのかね?」 どうだか、貴様を信じるぐらいならプチモビに乗ってサイコガンダムに喧嘩を売る方がマシだと 思うがな。とりあえず、思考を元に戻す。 一番気になるのは奴らの目的だ。ゲームを実行して優勝者を出すことが目的ではなくあくまで それから得られる結果が重要なはずだ。でなければこんなことをしでかす理由がないだろう。 …考えていたところで埒があかないな。 とりあえずは北東を調べることにし放送の内容をメモしてからシャアを後ろに付け北東に向かう。 「…赤いが大破しているな。残念だ」 しばらくすると大破したと思われる赤い機体とその前にへたり込む人影、そして 俺達に妙な感覚を感じさせるピンクの機体を見つけた。 とりあえず、殺し合いに乗った可能性が決して低くないとは思い、機体を変形させてある程度距離を保ち ガンポットを構え外部音声のスイッチを入れる。 「こちらは………」 アムロ・レイだ、と言いかけて止める。この名前は有名すぎて味方も多いが敵はそれ以上に多い。 とりあえず、偽名を使うことにする。 「………ハヤト・コバヤシだ。そちらと話し合いをしたい」 「私はエドワウ・マスだ」 こいつも俺の意図を読んだのか、偽名を使う。 すると、ピンク色の機体が動いた。パイロットが乗っているのかと思い身構えているとピンク色の機体は 人影を庇うかのように両手を広げ立ちふさがった。 相手を完全に信用したわけではないが、殺し合いに乗っているわけではなさそうだと思いガンポッドを下ろす。 「俺達は殺し合いに乗ってはいない、とりあえず話し合おう」 すると、ピンクの機体がその人影をまるで壊れ物を扱うかのように両手ですく上げこちらの方に近づいてきた。 敵意がまったく感じられず、目の前に来るまで武器を構える発想さえできなかった。そのおかげかじっくりと 相手を観察できた。 人影の方はへそを出しているよく分からない服装をしており赤毛の若い女性であることが確認できる。 最近の若い人間のセンスはよく分からんな。 機体のほうはこの機とほぼ同サイズであり、武装らしき物が見受けられず内臓火器等も見受けられない、 ピンクのカラーリングの所為か穏やかな印象を受ける、なにより先刻の機体ともMSとも違い無機質的である が同時に有機質的な外見が特徴である。 そして、開いているコックピットのような場所には誰も乗っていなかった。 だが、ガンタンクのような構造ならばコクピットが二箇所あるので別の所にパイロットがいるのだろう。 「……………………………………………………」 女は俯いたままこちらを見ようとはせず、なんの反応も返してはこない。 この落ち込み様からすると、先刻の放送で家族か恋人が死んだかもしれないと仮定し、 このピンクの機体のパイロットは俺達に慰めさせようという魂胆かもしれないと考える。 こいつの相手よりはマシとはいえ、女性を慰めるということは俺にとっては苦手な分野である。 とりあえず、シャアの方が女の扱いにはたぶんうまいはずなので接触通信で奴に話しかけるように促す。 『お前が話しかけろ』 『アムロよ。複数の女性の股をかけているくせに女が苦手とかいうのは罪だぞ』 『いいからさっさとしろ!また振り回されたいのか!というか、今の発言はどういうことなんだ!?』 だが奴は俺の疑問に答えるもことなく、ミサイルから掌に移り女性に話しかける。 「何があったのかね?」 「……」 「黙っていては話すらできんよ」 「……」 シャアは仕方がないという表情を浮かべは彼女の肩を揺らす。 すると、ようやく女がこちらに気付き驚愕の表情を浮かべ奴の腕を振り払い後ずさる、 そして掌から落っこちた。 「「な!?」」 慌てて操縦桿を動かすがマニピュレーターと彼女の間にある距離は絶望的なまでに開いている。 奴も腕を伸ばそうとするが僅かに届かない。 「間に合わないか!?」 だが、ピンクの手が地面に落ちる彼女を間一髪で掴んだ。どうやら一安心のようだ。 「いや~!!離して!離してよ!!」 「落ち着くんだ!俺達は君の敵じゃない!」 だが彼女は俺達の言葉を聞き入れず、ピンクの手に掴まれたまま暴れ続ける。 そうして彼女が暴れ疲れてからやっと会話ができる状態となった。 ピンクの機体が奴を右手に乗せ、女性を左手で掴んだままの状態で。 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」 「落ち着いて聞いてくれ。俺はハヤト・コバヤシ、こいつはエドワウ・マス、ゲームには乗っていない」 「…信用できない」 「私達がゲームに乗っていたらもう既に戦闘状態になっているはずだ」 「…あんたらの作戦なんじゃないの?足手纏いがいるし」 「ならばこそハヤトは乗っていないと考えるべきではないかね?」 「……」 そのまま黙り込む、こちらを信用する気は毛頭ないらしい。 どうしたものかと思っていると彼女が口を開いた。 「…ねえ、あんたら殺し合いに乗ってないんだよねぇ?」 「ああ、そうだ」 「それなら、まずあんたら二人とも機体から降りてみなよ」 「それは出来ない。そちらの機体にパイロットが乗っている以上こちらとしても用心したい」 そういうと、彼女はキョトンという表情を浮かべ、自分を掴んでいる腕を見た。 「あれ、なんで?…ジョシュア、ジョシュアなんでしょ?生きているんでしょ、出てきてよ」 女がコクピットを除き込む。 「…いない」 「コクピットがもう一つあるのではないのかね?」 「一つしかないよ」 「なら、人工知能でも付いているんじゃないのか?先刻から動いていたぞ」 心あたりがあったのかハッとした表情を彼女が浮かべる。 とはいえ、俺の知っている技術ではこのサイズだと先刻の様な動きはできず、 彼女がニュータイプ等ならばサイコミュ等の遠隔操作で動かす手段もあるがとてもそうとは思えない。 無論この異常な状況下では俺の知識が当てになる保障もないが。 「とりあえず、AIが搭載されているのなら君のことを離すように言ってみればどうかね?」 「…離してよブレン」 彼女がそう言うとピンクの機体がゆっくりと彼女を奴の目の前に降ろす。 「…かしこいな、それに優しい」 「ジョシュアもブレンは優しいて言ってた」 「ハヤト、私の勘ではどうやらこの機体は生きているようだ」 「どうやらそうらしいな」 機体の動作とこの妙な感覚からしてそう考えるしかない。信じ難いが。 「…おっさん達、軍人なの?」 彼女が奴のパイロットスーツを見ながらそう問いかけてくる。 もっとも、それはここに連れて来られたさいに奴に支給されたものだが。 「おっさんはひどいな。こう見えても30前なのだよ、軍人が嫌いなのかい?」 嘘こけ、お前は34だろうが。そう突っ込みたくなったがとりあえず我慢する。 「別に…」 「これから、どうするのかね?よければ私達と共にくるかい?」 「…あんた達はラキって女の人を知らない?」 「いや、私達はゲームに乗ったと思われる男と遠距離攻撃を仕掛けてきた赤い機体しか知らない」 それと、知り合いにはそんな名前の女などいないという言葉を心の中で呟く。 あのドームでは奴も俺もプレッシャーに圧倒されて他のことに気遣うことなどできなかったので他に 知っている人物がいるかどうかすら分からなかったしな。 「そのラキという女性は先刻の放送で呼ばれたジョシュアという人物の知り合いかね?」 「……あんた達に答えてやるつもりはない」 「もしそうなら私達と共にくるべきだ。君一人ではこの状況で見つけるには少々辛かろう」 「足手纏いはごめんだよ」 たしかに、お人好しでもなければ今のこいつと行動を共にしたいとは思わないだろうな。 「フッ。たしかに今の私が足手纏いである事は認めよう。だが、私と彼は地球圏で一番有名な パイロットこと、シャア・アズナブルとアムロ・レイなのだよ」 「……おい。俺が偽名を使った意味を考えていないのか?」 だが、こいつは俺の呟きなど聞こうともせずにそのまま喋り続ける。 「欺いたことは謝ろう。だが、今地球圏を騒がしている二人が目の前に現われて共に手を取り合って いると言っても信じられずに余計な警戒心を持たれるだろうと思いあえて偽名を使わせて貰った。 君が宇宙の民か地球の民であってもこの状況を打破するために我々と協力しては 貰えないだろうか?」 あいかわらずこのようなアジが得意な奴である。 「知らない」 「は?」 だが、彼女の言葉は俺達の想定していないものだった。 「…地球やコロニーでもニュース等でやっているだろう。ネオ・ジオンが5thを落としたとか」 「ねおじおんとふぃふすって何?」 「…ジオンは?一年戦争は?赤い彗星は?連邦の白いヤツは?ガンダムは?」 「他は分からないけど連邦なら知ってるよ。地球連邦政府は常識でしょ」 おかしい。彼女は知らなさ過ぎる。仮に嘘をついていたとしても何のメリットもないし、下手な嘘をついた ところで相手に警戒心を持たせるだけでこの状況ではマイナス要因になるだけだ。 そう考えていると、頭の中にとある言葉が浮かんだ。 『パラレル・ワールド』 SFではよく使われる設定で、世界は複数に渡って存在するといった解釈だ。 この解釈を用いれば彼女が俺達を知らないことや、このピンクの機体や先刻の赤い機体、今俺の乗るZタイプ とは違う可変機の存在が納得できる。 普段なら一笑にするところだがこの状況では信じるしかないだろう。 「どうやらお互いに知らない情報があるな。とりあえずは情報交換をしないかね」 彼女は奴の言葉に少し逡巡してから口を開く。 「…いいよ。そのかわりにジョシュアを埋めるのを手伝うのと、放送の内容を聞かせてよ」 そうして、俺が機体に乗ったまま奴と彼女が情報交換をすることになった。 無論、奴が大法螺を言ってもすぐ分かるよう収音マイクのボリュームを上げておくのは忘れない。 【アムロ・レイ 搭乗機体:VF-1Jバルキリー(ミリア機)(マクロス7) パイロット状況:良好 機体状況:ガンポッド、ホーミングミサイル共に若干消費 現在位置:H-2北東部 第一行動方針:とりあえず情報交換 第二行動方針:首輪を確保する 第三行動方針:協力者の探索 第四行動方針:首輪を解析できる施設、道具の発見 第五行動方針:核ミサイルの破棄 最終行動方針:ゲームからの脱出 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している】 【シャア・アズナブル 搭乗機体?:核ミサイル(スーパーロボット大戦α外伝) パイロット状況:良好 機体状況:真っピンク 現在位置:H-2北東部 第一行動方針:とりあえず情報交換 第二行動方針:核ミサイルをダシにアムロに身の安全を確保させる 第三行動方針:仲間を増やし自分(と核ミサイル)を守らせる 第四行動方針:強力な機体の入手 第五行動方針:首輪を確保する 第六行動方針:缶切りを手に入れる 最終行動方針:ゲームからの脱出 備考:核ミサイルの荷物収納箱からブライト、ガトー、アズラエルのマスクを発見、所持。 ボイスチェンジャー機能付き。H-2の何処かにシャアの吐瀉物あり】 【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ヒメ・ブレン(ブレンパワード) パイロット状況:良好 機体状況:ブレンバー等武装未所持。機体は表面に微細な傷。バイタルジャンプによってEN1/4減少。 現在位置:H-2北東部 第一行動方針:とりあえず情報交換 第二行動方針:ジョシュアの遺体を埋めたい 最終行動方針:考えていない 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません。放送をまともに聴いていない。 H-2北東部にクインシィ・グランチャー が大破(上半身が消失している)しており 右手のソードエクステンションは無事なまま放置されている】 【時刻:18 30】 BACK NEXT 煮えきらぬ者 投下順 殺し合い Time Over ―私の中のあなたにさよならを― 時系列順 青い翼、白い羽根 BACK NEXT ふりまわされる人、ふりまわす人 アムロ 赤と流星、白と勇者王 ふりまわされる人、ふりまわす人 シャア 赤と流星、白と勇者王 アンチボディー ―半機半生の機体― アイビス 赤と流星、白と勇者王
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/125.html
極めて近く、限りなく遠い世界の邂逅 ◆960Bruf/Mw 瓦礫の街並みの中、四機の航空機が羽を休めている。 その羽の下、崩れた家屋の残骸に腰をおろしている男がいた。男の名は神隼人という。 その眼は三機のゲットマシンを見ていた。 ――間違いなくゲッターだ。 真ベアー号に乗り込んだときに理解した。コックピットの内装、ゲットマシンの外観こそ知るものと異なってはいたが、首輪が教えてくれた。こいつは―― ――真ゲッター。 ゲッターの後継機としてつくられた機体。早乙女博士の尽力にも関わらず、5年前のあの日起動しなかった機体。それが―― ――なぜ動いている? 早乙女研究所の地下に封印されていたはずだ。 ――いや、それよりも……。あの時、こいつが動いていればムサシは。 噛みしめた奥歯が鳴る。古傷が顔に浮かび上がってきていた。 一つ深呼吸をして心を静める。 ――落ち着け。好都合だ。 あの化け物がどうやってこいつを持ち出したのかは知らんが、好都合だ。 決して動かなかったこいつが何故か順調に稼働している。そして―― 動かした視界に一組の男女が映し出される。 おそらくクインシィを宥め連れ戻すのに苦労したのだろう。ガロードは正座で終わりの見えない説教を受けていた。 ――ゲットマシンを扱えるパイロットがここに二人いる。 あの化け物はただ無作為に人を集め訳じゃないらしい。 翔と剴を見つけた後、どうしても見つけることが出来なかった三人目がここに二人もいる。 となると、当面の目標は三人目を探すことか。 そこでようやく隼人は、助けを求めてチラチラと視線を送ってきているガロードに気づいた。 「クインシィ、そのくらいにしておけ」 少女の意志の強そうな瞳がこちらを向き、鋭い視線と怒気の矛先がかわる。 それをこともなげに受け流し、話し出した。 「俺たちは別々の世界から集められた可能性がある……」 最初に交換した情報の中に各自の世界観が異なることはすでに検討がついていた。 「そ~いうこと。ヘイコン世界に住む者同士ってわけだ」 「並行世界だ」 以前、クインシィと同様の会話をしていたガロードが得意気に相槌をうち、即座にクインシィの訂正が入る。 「それでこれからの話だが、お前たちはこのままゲッターに乗れ。俺もこのままYF-19に乗る」 その言葉に、これまで隼人に対してゲッターという単語を口にしてないクインシィの眉がぴくりと動いた。 「そう警戒するな。あれは元々俺がいた世界で俺が乗っていたものだ。お前たちよりはあれに詳しい」 そして「もっとも肝心なときに動かなかったがな……」とどこか自嘲気味に続ける。 「なら、なぜお前も乗り込まない? 」 「古傷があってな……。だが、そんなことはどうでもいい。それよりひとまず話は中断だ」 『アー、アー、ただいまマイクのテスト中ですの……』 まるで見計らかったかのようなタイミングで、どこらかともなく少女の声が響いてきた。 ――6時間で10人。 それを多いととるか少ないととるかは、人それぞれである。 平時に50人強の集団から6時間で10人の死者が出たと考えれば、それは異常に多いだろう。だが未曾有の災害に巻き込まれたと考えれば、その数は少なかった。 しかし、あの化け物が提示したルール上死者はまだまだ増える。 最終的に1人しか生き残れないのであれば、その犠牲の数はやはり異常だ。 ――1人? 疑問が浮かんだ。 この殺し合いはシステム上必ず1人は生き残るように設定されている。 ――何のために? 自分に科せられた首輪を撫でる。 ただ殺すのが目的ならば、奴らはたやすくやってのけれるはずだ。 最初に集められたときでも、今この瞬間でもだ。 つまりこれは我々を殺すのが目的ではない。ただの娯楽、気まぐれ、余興と言われてしまえばそれまでだが……。可能性としては―― 「選定……もしくは観察か……」 ここに集められる前の記憶――ネオゲッターチームを集めるために自分が出した犠牲者を思い浮かべる。 ――なんてことはない。俺もあの化け物と同類か。 小さく哄笑が漏れた。 「俺について来い。まずはゲッターを合体させるぞ」 「なぜお前にそんなことを命令されなければならない」 立ち上がり歩き出そうとした隼人にクインシィが噛みつく。 「こんなとこで死ぬのはごめんだろ? なら今はくだらんプライドは捨てて俺に従え。ゲッターの扱い方を教えてやる」 視線がぶつかり合ったあと、隼人は背を向けて真ベアー号のほうに歩きだす。 背後では納得がいかないといったふうのクインシィを、ガロードが宥めていた。 痩身長躯の男が真・ジャガー号のコックピットに張り付き、ガロードにあれこれと指示を飛ばしている。 その様子をモニター越しに眺めていた。 ――気に入らない。 神隼人と名乗るその男は、沈着冷静、頭脳明晰、そういった類の人間なのだろう。 そして、おそらくは最低限の冷徹さも兼ね備えている。 物に例えるならばナイフのような男――それが抱いた感想だった。 この先、生き残っていくのには必要な男。それは理解していた。 だが、どうにも気に入らない。イライラする。ようはそりが合わないということなのだろう。 ――くだらないな。 そう思い。気持を落ち着かせる。気持の問題など些細なことでしかない。 「クインシィ、操縦方法は頭に入っているな。ベアー号はオートで発進させる。まずはゲッター1だ。イーグル・ジャガー・ベアーの順で合体しろ。いいな」 隼人から通信が入る。それにほんの一瞬前までの考えを忘れて、彼女は苛立った。 どこか上から物を言うような口調、それが気に入らない。 「黙ってみていろ。私の好きにやらせてもらう」 感情が判断を鈍らせることを下らないと思いつつも、感情的になる自分を御することができない。クインシィはそういう自分に気づいてはいなかった。 赤、白、黄色、三色のゲットマシンが空を飛び、一列に連なる。やがてその間隔は狭まり、合体は三度目で成功した。 「遅い! 時間がかかりすぎだ」 筋はいい。そう思いつつ苦言を飛ばす。クインシィから返事はなかった。 「まぁいい。次はゲッター2だ。ジャガー・ベアー・イーグルの順に……」 そこまでで一度隼人は言葉を区切った。 「神さん? 」 不審に思ったガロードが声をかける。 「ひとまず中止する。南西の方角にお客さんだ」 ビル群の中をゆっくりとこちらに近づいてくる青い巨人の姿が目視できた。 距離から推し量るに、その巨体は真ゲッターと同程度の大きさであろうか。 その足取りの確かさからまずこちらを確認していると見てほぼ間違いなさそうだった。 ひとまずは接触すべきと考え、一歩前に踏み出す。 その瞬間、一陣の風が隼人の横をすり抜けていった。 零コンマ何秒の世界でその赤い風はキロ単位の距離をふいにし、無造作に頭蓋を鷲掴み、大地に叩きつける。 技術もへったくれもないただ力任せの一撃。しかし、掛け値なしの渾身の一撃。 重低音が響き、土煙が柱の如く聳え立つ。 不意を突かれた隼人も、ガロードも、静止は愚か反応さえもできない間の出来事だった。 ラキと出会ったときに相対した相手だ。警戒はしていた。 その時の経験をもとに不意を突かれないだけの距離は取っていた――はずだった。 どろりとした血液が額を伝って流れ落ち、口の中には錆びた鉄の味が広がる。 軽く脳震盪でも起こしたのか、視界がぶれてうまく焦点が合わない。揺蕩う視界に赤い悪魔が映し出されていた。 「………した…」 ガラスを引っ掻いたような耳鳴りがするなか、呟きが聞こえてくる。 「……どこへ隠した。勇をォどこへ隠したアアァァァァアアアアア!!!! 」 聞き返す間もなく呟きは叫びへとかわる。 フォルテギガスの頭蓋が持ち上げられ、今度はビルの壁面に叩きつけられる。 「答えろ! 勇はどこだ? 」 「な、何のことだ? 」 何かが潰れるような鈍い音を響かせてフォルテギガスの頭部が打ちすえられる。 「隠すな! お前は知っているはずだ。勇の……私の弟の行方を!! 」 意味が分からなかった。 勇という知り合いはいなかった。グラドスにも、地球にも、ここにもだ。 にもかかわらずこの少女は自分が勇を知ってると思い込んでいる。 まったく意味が分からなかった。 ただ一つわかるのは――この少女がどこか普通ではないということだけだった。 赤い悪鬼が巨人の頭蓋を鷲掴みにしていた。 いや既に頭の形を保っていないそれは、頭蓋と呼ぶにはふさわしくないかもしれない。 言ってみれば潰れた鉄屑だった。 それが大地に、ビルの壁面に、ところ構わず無造作に叩きつけられている。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も 永遠にループするその光景を現すなら、『凄惨』の二字がぴったりであっただろう。 「ガロード、何が起こっている! 状況を説明しろ!! 」 その狂気の惨劇を眼の前に、隼人が吠える。 「俺にだってわかんないよ。こんなお姉さんは初めてなんだ!! 」 返ってきた返答に苛立つ。 「ともかく。クインシィを落ちつかせろ」 吐き捨てるように言い、モニターに視界を戻した。 巨人が逃れようと鷲掴みにする腕を両の手で掴んでいる。しかし、既に力はない。そんな感じだった。 ――いや、あれは。 「クインシィ、離れろ! 」 隼人が叫ぶのとほぼ同時に、フォルテギガスの胸部にある四つのハッチが十字に開かれ、閃光が放たれた。 立ち込めた爆煙を裂いて東西に赤と青――二機の巨人が弾けとび、数棟のビルが巻きこまれて瓦解する。 ――くそっ! まさかあんな方法で相殺されるなんて。 逃げられないように腕を掴み放った起死回生の一手――フォルテギガスのギガブラスター。 それはゲッターの腹部から放たれたゲッタービームに相殺され、二機は弾けとんだ。 「レイ、損傷を……」 そこまで言いかけて居ないことを思い出し、機体を立て直す。 立ち上がったフォルテギガスの中、視界が回る。腹の底から何かが込み上げてきて思わず吐き出す。出てきたものは赤かった。 あれだけ絶え間なくコックピット内部で揺れに翻弄され続けていたのだ。無理もない。 揺れる視界、いかれた平衡感覚、遠距離戦は不可。逃げ切ることも難しい。 ――どうにかして接近戦に持ち込むしかない。 特殊自律型兵器フィガ、それを射出して距離を詰める。そう決めたときに予想外の衝撃がエイジを襲う。 強き巨人の名を冠する50m超の巨体が地に埋没し、エイジの意識はとんだ。 首のないその風貌が死を司る首なしの騎士――デュラハンを連想させる機体が、強き巨人を足蹴にたたずんでいる。 爆発が一つ起こり、近場に一つの機体が吹き飛ばされて来た。 即座に駆け寄り、蹴り倒し、踏み潰した。そこには容赦も慈悲もない。 生きる為に他人を蹴落とす。今の彼にとっては至極当然の行為だった。 「ちっ、さすがにでかいだけあって硬え」 踏み砕くつもりで潰したはずの巨人の背にはヒビが入っていたが、砕けてはいない。 そこに踵の裏で圧力をかける。 装甲の外板が悲鳴をあげ、四方を持ち上げつつ剥がれていく。圧迫された内部の機器が火花を散らし、黒いオイルが血の如く飛び散った。 その時、立ち込める土煙を裂いて赤い悪鬼が姿を現した。 横薙ぎにはらわれる大鎌。 咄嗟のダッキング。風切り音が頭――否、首の直上をすり抜けていった。 そのまま懐に潜り込み、振り上げられる拳。 金属同士がぶつかり合う音が響き―― ――大鎌の柄と拳が接触した。 「なっ!? 貴様は誰だ! 」 「俺の知らないゲッターだと!? 」 互いの言葉が交錯する。押し合う拳と大鎌。 「その声、竜馬か! 」 「……!? 」 割り込んだ声に誘発され生じたわずかな隙。それを見逃さずクインシィは力を緩め、拳を受け流す。 前のめりに崩れる大雷凰。上段に大きく振り上げられる大鎌。 次の瞬間、『轟』と呻りをあげて振り下ろされた大鎌は―― ――大雷凰の数センチ上でピタリと静止した。 大雷凰の腕が大鎌の柄をがっちりと掴んでいる。 「てめえ……、隼人かああぁぁぁああああ!!! 」 強引に大鎌の柄でゲッターの顎をかちあげる。 ふわりと浮かび上がるゲッター。そのまま流れるように繰り出された大雷凰の回し蹴りが―― ――ゲッターの脇腹に食い込み、その巨体が弾け飛ぶ。 「プラズマビュート! 奴を逃すな!! 」 まだ終わりではない。発せられたのは青白く輝くプラズマの荒縄。 捕えられるゲッター。強引に引き寄せられ、一度広がった両者の距離が急速に縮まる。 「調子にぃ……のるなああぁぁぁぁぁぁああああ!!!! 」 ゲッターバトルウィングが展開されプラズマビュートが断ち切られる。 肩口から斧槍――ゲッタートマホークを取り出し、速度を落とすことなく――否、むしろ加速しつつゲッターが大雷凰に迫る。 動じることなく竜馬も大鎌――ゲッターサイトを構え、迎え撃つ。 「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!! 」 「隼人おおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!! 」 ぶつかり合う互いの気迫。交錯する斧槍と大鎌。入れ替わる両者の位置。 音をたててゲッターの装甲に亀裂が奔った。 互いに向きなおり、再び対峙したその時―― 「落ち着け、二人とも!! 」 ――静止が入った。 大雷凰と真ゲッター。その二つの大型機のちょうど中間に一つの小型機が割り込んでいた。 「リョウ、どういうつもりだ? お前もあの化け物の企てに乗った口か?」 その小型機から送られてくる通信モニターに隼人が映っている。 ――ちっ……。ゲッターに乗ってたのが隼人、てめえじゃないとわな……。 先入観からかゲッターに乗っているのは隼人。そう思いこんだのは間違いだった。 「俺はなぁ、てめえと早乙女のジジイに引導を渡せりゃ、この殺し合いも化け物もどうだっていい」 モニター越しに隼人を睨みつけ言い放つ。 「どういうことだ? 何故、早乙女博士をお前が狙う! 」 「とぼけるな、隼人! 」 「答えになってないぞ、竜馬!! 」 噛み合わない会話の往復。隼人の顔に困惑した表情が浮かぶ。 「いつまでとぼける気だ! 三年前のあの日、てめえが早乙女のジジイを殺し、俺に罪を着せて逃げた!!そのせいで俺はなぁ、隼人!! 永久刑務所で地獄を見たんだ!!! 」 今にも飛びかかりそうな、隠そうともしない剥き出しの憎悪、それが隼人に向けられていた。 「何のことだ? 何を言っている? 」 「うるせぇ! 俺はここでお前を殺し、後ろのゲッターを手に入れて、ジジイに引導を渡しに行く。ただそれだけだ!! 」 吐き捨てるように口にされたその一言、それに反応した者がいた。 「できるものならやってみろ!! 」 YF-19を跳び越え、ゲッターが大雷凰に差し迫る。 「ひっこんでいろ、クインシィ! 」 隼人の言をまるっきり無視してゲッターは駆ける。 クインシィにしてみれば、勇の手がかりを目の前にして邪魔をされたのだ。 彼女の性格を考えれば止まるはずはなかった。 その様子に苛立ちつつ奥歯を噛みしめ、指示を飛ばす。 「ガロード、オープンゲットしろ! 」 「へっ!? な、なんで? 」 突然ふられたガロードが素っ頓狂な声を挙げた。 「無駄口を叩くな! ゲッター2だ!! 」 既にゲッターと大雷凰の間の距離は幾許もない。 ゲッターの背中越しに大雷凰が構え、そして踏み込み、大鎌が振るわれる。 「りょ、了解! 」 「待て、ガロード! 」 クインシィの静止は一歩間に合わず。ゲッターは分離した。 振るわれた大鎌の脇を三機のゲットマシンがすり抜け、大雷凰の背後でゲッター2へと姿を変える。 ゲッター最大の弱点、合体の瞬間。それを狙って竜馬は追撃をかけようとして―― ――やめた。 考えを読んだのか、竜馬の目の前に隼人が立ちふさがっている。 「ガロード、ここから脱出して三人目を探せ。ゲッターの本当の力を引き出さなければ、あの化け物には太刀打ち出来ん!! 」 「わ、わかった」 隼人の勢いに押される形でゲッターは地中に潜り離脱していく。 その中でガロードは、怖ろしいほど目を吊り上げているクインシィを確認して、泣きたい気分に駆られていた。 照準モニターの向こうで首のない機体と小さな小型機の目まぐるしく動き回っている。 「ちっ……こう動き回られちゃ当たりゃあしないぜ」 群がるビル群、ところ構わず立てられた広告塔、人目を惹くための派手な看板。そういったものに姿を紛れ込ましている赤い機体の中、クルツはぼやいていた。 目標は小型機。 離脱前に存在を確認した赤鬼には、前に直撃させた砲撃の損傷は見当たらなかった。ゆえに同程度の大きさを誇る今回の大型機にも効果は薄いと、かなりいいかげんに予測。 よって標的は小型機に絞っていた。もっとも当てるだけなら、大型機のほうが遙かに楽なのだが。 だが、少なくともあの大型機に致命的なダメージを与えるには―― 視線を動かし、地に伏したままぴくりとも動かないフォルテギガスを見る。 ――どうしてもエイジが必要であった。 「ったくあの馬鹿。肝心なときにお寝んねしやがって……だいたい生きてんのか? 生きてんなら返事くらいしやがれってんだ」 通信はすでに何度も試みていた。しかし、のびているだけなのか、はたまた死んでるのか、依然として応答はなかった。 そもそもだ。そもそも作戦目的がエイジの離脱なのだ。 奴らの勝敗が決してフォルテギガスにとどめを刺す前に、小型機を撃墜し大型機をひきつける。そのための行動だ。 仮にエイジがすでに死んでいるのだとしたら、やろうとしていることに大した意味はなかった。 強いてあげるならば敵機の撃墜だが、ほったらかしにしておいても勝手に潰し合ってくれる。となると後に残るのはリスクだけであった。 「ええい。あと3回……いや5回だ!後10回通信しても応答がなかったら離脱してやる!!」 そう言って無為に時間は過ぎて行っていた。 横一文字にはらわれた大鎌をくぐり抜け、YF-19が大雷凰に肉薄する。 ヒビの入った腹部を確認し、マイクロミサイルの発射管を開いた瞬間、急制動をかけて機体の勢いを殺す。 鼻先を膝がすり抜けていった。続けて振り下ろされるのは肘。 反射的にかわせないと判断した隼人はピンポイントバリアを機体上部に展開。バリアごと弾き飛ばされて一旦距離を置いた。 「勘は鈍ってないようだな、竜馬」 「ずいぶん苦しそうじゃねぇか、隼人」 息が荒く、呼吸が落ちつかない。古傷は確実に体を蝕んでいる。 だが、この男に泣き言を言うつもりは全くなかった。 「フ……気のせいだ。それよりもリョウ、落ち着いて聞け。 俺は神隼人だが、お前の知っている神隼人ではない。お前もおそらく俺の知っている流竜馬ではない」 わずかに竜馬に反応がでる。 「……どういうことだ? 隼人、俺にわかるように説明しろ! 」 食いついてきた――隼人の内心の思いであった。 「平行世界。おそらく俺とお前は極めて似通った世界からあの化け物に集められたのだろう」 「何を言い出すかと思えば」 竜馬が鼻で笑う。 「コロニー、MS、NT、オルファン、アンチボディー、グランチャー、どれも俺には聞き覚えのない言葉だ。お前にもないだろう。真ゲッターに乗っていた二人の世界の言葉だ」 反応を見つつ、言葉を紡ぐ。竜馬の説得をあきらめたわけではなかった。 「真ゲッター、それがあのゲッターの名前か? 」 「そうだ。そして、俺の知っている竜馬は真ゲッターを知っている。お前は知らない。それが理由だ。根拠としちゃ薄いがな……」 全てを語り終え、流れる静寂。これが最後の説得であった。その静寂を―― 「クク……ハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! 」 ――竜馬のどこか狂った笑い声が打ち消す。 「俺とてめえが違う世界の人間? それがどうした。だとしたら、俺はここでてめえに引導を渡し、他の集められた奴を全員ぶっ殺して、俺の世界のジジイとてめえに引導を渡す。 それだけだ。やることはかわらねぇ」 その言葉を受けて、隼人は―― 「そうか。俺もここでお前に生き残る理由を譲ってやるわけにはいかん」 ――竜馬の説得を諦めた。 おあつらえ向きに二機が動きを止めた。狙撃を行うなら今がチャンスだった。 だが、依然としてエイジと連絡は取れない。撃てば奴らは間違いなくこっちに気づく。 撃つべきか、撃たぬべきか、どうする? どうする? 思考が渦を巻き袋小路に追いやられる。 その時、耳元に雑音が届く。通信機の先で何かが身じろぐ気配を感じた。 「エイジ! エイジ、無事か? 」 はじけたように通信機に齧りつき叫んだ。 見上げた視界に、ぼんやりと天井がうつっていた。見慣れないコックピットに一瞬ここはどこなのかと考える。 「痛っ! 」 次の瞬間、体中に針の筵にくるまれているかのような痛みが奔って、意識は急速に覚醒していった。 「エイジ! エイジ、無事か? 」 通信機から聞き覚えのある声が流れてくる。体中に奔る痛みのせいか、こいつは今の今まで何をしていた――そういう感じの怒りが込み上げてきて。 「怒鳴らなくても聞こえている! 今まで何してたんだ? 遅い!! 」 怒鳴り散らした。 「ほぉ~、お言葉だがな。今の今まで呑気に気絶してた奴に言われる筋合いはねぇ。大体てめえがなぁ、不用意に近寄っていくのがわり~んだ! 」 そうして始まった口喧嘩は、暫くの周囲の状況をほったらかしに繰り広げられた後、『今はそれどころではない』ということで一応の和解が結ばれた。 「機体は動くか? 」 「接続部がやられたのか、フォルテギガスとしての運用は不可能。だが、分離すればたいして問題はない」 機体の各部の損傷チェックを行いながらエイジが返す。 「わかった。俺は小型機を狙う。そっちは大型機を頼む。隙は俺がつくるからうまくやってくれ」 「了解した」 「それと一撃当てたら成功・失敗に関わらず離脱しろ。援護は一回きりで俺も離脱する。誰かさんのせいで補給する暇もなかったんだ」 ラーズアングリフのFソリッドカノンの統弾数は8発。すでに今までに二度使用しているので残弾は6発。クルツからすればあまりここで消費はしたくなかった。 「十分だ。離脱後は僕はビルに紛れつつ西の壁目指す」 「俺は北の壁で目視を遮った後、C-8の市街地を目指す。お互い命があったらまた会おう。それじゃ、始めるぞ」 赤い機体がタイミングをはかりつつ折り畳み式の砲身を展開する。 強き巨人の中、息を潜めつつ分離の手順を簡略化できるように、エイジはコンソールに向かい合った。 冷静に状況を分析する。 敵は共に癖を知りつくした難敵が一機。 古傷の影響で自機のスペックはフルに引き出せず。体が機体の速度に耐えきれない以上、離脱も戦闘も現実的ではない。 その中で、足掻けることと言えば、体の状態を無視しての離脱。もしくは――ー撃に賭けた撃破。 共に現実的ではないながらその二つしか思い浮かばなかった。 神隼人はリアリストである。ゆえに他の相手なら逃げることを選んだであろう。相手が流竜馬であるからこそ隼人は―― ――ー撃に賭けることを選んだ。 YF-19の右腕にピンポイントバリアが収束されていく。 狙うのは胸部装甲の凹み、コックピットの可能性の高いその一点。 そこに限界まで収束、圧縮させたピンポイントバリアパンチを叩きこむ。 普段と比べ段違いに小さく収束されていったピンポイントバリアはやがて通常のナックルカバーの形状から逸脱し、針の先ほどの点となる。 その様子をモニター越しに、クルツはタイミングをはかる。浮遊する小型機のブースターの燐光。大きく、小さく、不規則に瞬くその光に呼吸を合わせる。待っているのは突撃の瞬間。 先ほどまでの戦闘から予測される小型機の速力。それをもとに狙いを定める。 口の中は渇き、汗が頬を伝っていった。トリガーがやけに重い。外すわけにはいかなかった。 小型機のブースターが唸りをあげ燐光がひときわ大きく輝く。 ――今だ。 そう思った時にはトリガーを引いていた。撃ったのは二発。 モニターに視線が釘付けになる。成功したのか、失敗したのか。 小型機は機体がゆらぎ―― ――しかし、何事もなかったかのように突撃した。 眉間にしわがより、顔に苦渋の表情が浮かぶ。 ――くそっ!失敗だ。 「エイジ、敵をひきつける。まだ動くな! 」 そう叫んだ時にはフォルテギガスがすでに分離を始めていた。 「あの馬鹿……ちくしょう! 」 苛立ちを隠しもせずにクルツは赤い機体の足を戦場へと向けた。 大雷凰とすれ違ったYF-19の周辺に細かく砕かれた金属片が散らばっている。 ――ちっ、外した。 あの突然の砲撃、それはYF-19に抵触していた。その結果、狙いのずれたピンポイントバリアパンチは脇腹を抉るに留まった。 そして現在、コントロールを失い機体は地表へと流れていっている。 体が限界だった。せまいコックピットの中で丸くなってうずくまる。 ――情けねぇ……。 地表が迫ってくる。 ――泣き言を漏らしている暇もないか……。 体を起し、機体を立て直そうとしたその時、機体を反転させた竜馬のゲッターサイトが唸りを上げて迫っていた。 金属音が響き―― ――いつの間にか迫っていたガナドゥールがファルシオンセイバーごと弾かれて瓦礫に叩きつけられた。 その外部の様子に気を取られる間もなく機体を立て直そうと抗う。 次の瞬間、風斬り音が耳元に響き、YF-19は爆発を起こした。 目の前の突然爆発を起こしたYF-19が黒煙をあげて流れていき、やがて地表に激突して粉微塵に吹き飛んだ。 「隼人おおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!! 」 その光景を目の前に竜馬はただ叫ぶ。何が起こったかわからなかった。 「へっ! てめえで殺そうとしておいて、何が悲しい!! 」 レーダーの有効範囲ギリギリの距離に一つの反応が浮かび、同時に通信が入る。 その瞬間、怒りの矛先はそこに向けられ―― 「貴様かああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!! 」 ――注意が全てそこに注がれた。 同時に響く重低音。大きな揺れがコックピットを支配し、大雷凰はエッジブラスターの直撃を受けて地に倒れる。 流れる視界のなか離脱していく青い機体が目に入った。 「邪魔をするなああぁぁぁぁあああああ!!! 」 瞬間、血走った目で体勢を立て直すと同時に突撃。瞬く間に大雷凰とガナドゥールの彼我距離が狭まる。 「をおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!! 」 背後からの蹴りが一閃。そのままの体勢でさらに一閃。そして、そこを足場に軌道を変えた大雷凰が空を駆けた。 前のめりに吹き飛ばされるガナドゥールの中、エイジもこのままでは逃げ切れないと悟る。 ――やるしかない! 「V-MAX起動!! 」 前のめりの体制のまま、各部ブースターがフルブースト。機体そのものがさながら火の鳥の如く赤い炎に包まれた。 空を駆ける大雷凰と火の鳥が真っ向から迫る。そして―― 「砕け散れえええええーーーっ!!! 」 「ヒートダイブッ! 」 ――轟音が響き、一つの爆発が起きた。 立ち込める煙を裂いて当たり負けしたガナドゥールが大地に突き刺さる。 そして、それを追って大雷凰がなおも駆ける。上空から踏み砕くように繰り出された蹴りは、ガナドゥールの頭部を砕いた。 続けて足を持ち上げ、二撃目を繰り出そうとして、飛び退く。装甲を擦過して抜けていった砲弾が瓦礫を巻きあげた。 北に赤い機体が見える。うっとおしい。 心底そう思った竜馬は衝動に駆られるまま、それを目掛けて駆けていった。 クルツ=ウェーバーは機体を北東へと全速で走らせていった。背後に迫ってくるのは例の大型機。 そうとうに距離は開けてあったが徐々に詰めてきているのがわかった。 ――くそっ! 野郎のケツを持つのなんて、ごめんだってのによ。 注意をこっちに引き付けたのだ。エイジが生きていれば助かるだろう。生きていればだが。 ともかく今は全速で光の壁を抜けて逃げることだった。あれを抜ければ一度相手はこちらを見失う。そうすればあとは物陰に身を隠しつつH-8の市街地へ紛れ込む。 ――それで撒けるはずだ。 そう思いつつ機体を走らせること十数分後、クルツは無事に壁を越えてほっと一息をついた。 【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~地球最後の日) パイロット状態:憤慨、やや疲労 機体状態:ダメージ蓄積、 現在位置:B-3 第一行動方針:ガロードを問い詰める。場合によってはお仕置き 第二行動方針:勇の撃破(ユウはネリーブレンに乗っていると思っている) 第三行動方針:ギンガナムの撃破(自分のグランチャーを落された為逆恨みしています) 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】 【ガロード・ラン 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~地球最後の日) パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。 機体状態:ダメージ蓄積 現在位置:B-3 第一行動方針:お姉さんを宥める 第二行動方針:ゲッターのパイロットを探す 最終行動方針:ティファの元に生還】 【神 隼人 搭乗機体:YF-19(マクロスプラス) パイロット状況:死亡 機体状況:大破(木端微塵) 現在位置:B-1】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル) パイロット状態:怒り、衰弱 機体状態:装甲表面に多数の微細な傷、頭部喪失、右肩外部装甲損壊 、腹部装甲にヒビ、胸部装甲に凹み 現在位置:C-1 北西部 第一行動方針:クルツを追う 第二行動方針:サーチアンドデストロイ 最終行動方針:ゲームで勝つ 備考:ゲッターサイト(大鎌)を所持】 【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:ガナドゥール(スーパーロボット大戦D) パイロット状況:死亡 機体状況:中破(頭部全壊、全体に多大な損傷) 現在位置:B-1 備考:ストレーガは損傷軽微で放置】 【クルツ・ウェーバー 搭乗機体:ラーズアングリフ(スーパーロボット大戦A) パイロット状況:冷静、脇腹がちょっと痛い 機体状況:Fソリッドカノン残り二発、ファランクスミサイル1/3消費 現在位置:C-8 市街地南部 第一行動方針:竜馬を撒く 第二行動方針:ラキの探索 第三行動方針:ゲームをぶち壊す 第四行動方針:駄目なら皆殺し 最終行動方針:ゲームから脱出】 【残り39人】 【初日 19 40】 BACK NEXT 青い翼、白い羽根 投下順 例え死者は喜ばずとも 休息 時系列順 ゲスト集いて宴は始まる BACK NEXT アンチボディー ―半機半生の機体― クインシィ 我が道を走る人々 アンチボディー ―半機半生の機体― ガロード 我が道を走る人々 アンチボディー ―半機半生の機体― 隼人 血に飢えた獣達の晩餐 竜馬 Take a shot Time Over ―私の中のあなたにさよならを― エイジ Time Over ―私の中のあなたにさよならを― クルツ Take a shot
https://w.atwiki.jp/atenza/pages/313.html
【作品名】スーパーロボット大戦Z 【ジャンル】ゲーム 【共通設定・世界観】 世界観は無限の平行世界と、ある事象に生じる可能性分岐により発生する新たな世界の多元+α 太極:多元宇宙の全てを司る意思 源理の力(オリジン・ロー)もこれに属する力だと思われる 亜空間:この空間内だとバルディオスの移動速度は無限速になる(設定) なお、テンプレメンバーは亜空間内の戦闘でバルディオス移動に反応できたり攻撃を避けれる奴と同等以上の反応速度 オーバースキル:超能力のようなもの時間停止や読心能力など使用者によって異なる スパロボZのマス計算は最大ユニットの惑星サイズのゴーマ、一マス12000kmで計算 共通テンプレ:ソルグラヴィオンは惑星破壊可能な攻撃力で、他のテンプレメンバーもそれと同等の威力の攻撃力(効果範囲も惑星サイズ) オーバーデビルの攻撃速度は無限速反応でも避けない速度 オーバーデビルはあらゆる物を停止させるオーバーフリーズが効かない 【名前】オーバーデビル 【属性】意思を持つオーバーマン 【大きさ】50mほど 【攻撃力】オーバーフリーズ:詳細は特殊能力 【防御力】惑星破壊の4倍には耐えられる 【素早さ】反応及び戦闘速度は無限速 移動速度は約マッハ4075 【特殊能力】宇宙空間戦闘可能 オーバースキル オーバーフリーズ:物質や精神、成長や進化、ブラックホールまで有形無形問わずあらゆる物を停止させる能力 常時半径半径60000kmに展開し任意で半径72000kmの範囲攻撃も可能 一分間に20%の肉体再生が可能 【長所】オーバーフリーズ 【短所】それ以外 【戦法】オーバーフリーズ 【備考】気力150状態(オーバーフリーズ常時展開)で参戦 833 :格無しさん:2009/06/19(金) 10 20 27 オーバーデビル考察 ○~真ゲッター 停止勝ち ○ソル~キングゲイナー 攻撃のオーバーフリーズは効かないが常時は効いてる ×エンペラー 追放負け ×ライディーン 宇宙破壊負け エンペラー>オーバーデビル>キングゲイナー
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/286.html
キラ ◆vQm.UvVUE. どこからともなく殺し合いの場に似つかわしくない声が聞こえてきた。 『アー、アー、ただいまマイクのテスト中ですの。…こほん…最初の定時連絡の時間となったので放送を 始めますの。まずは死んでしまった人たちの報告からですの…』 …エクセレン=ブロウニング …メルア=メルナ=メイア …グ=ランドン・ゴーツ …ラクス=クライン 気絶したジョナサンをつれて、 なんとか補給ポイントに辿り着き一息ついたキラに待っていたのは信じたくない現実だった。 ラクス=クライン、彼がよく知る少女。 恋人、そう言える関係だったかもしれない少女。 無論、考えられる事ではあった。 こんなところで死んでいい人じゃなかった。 彼女はここでは明らかに無力だ。 最初に会った人間がもしもゲームに乗っていたなら、彼女は格好の的だっただろう。 分かっていたはずだった。 乗らない方もいますのでやる気を出してもらうために ご褒美のことを説明いたしますの。ご褒美は、死んでしまった方を生き返らすことから世界の改変まで 望むがままですの。なので、みなさんちゃきちゃき頑張って欲しいですの』 「え?」 今の放送はなんと言ったか。 死んでしまった者を生き返らせる。世界の改変? ラクスを、そしてフレイを思い出す。 もしも自分が優勝したのなら・・・・・・ ラクスやフレイを生き返らせ・・・そして彼女達に戦争の無い平和な世界を見せてあげられる。 彼女達の父親だって生き返らせてあげられる、ついでにトールも。 「・・・・・・でも」 だからといって、自分がこのゲームに乗ってラクスのような力のない人達を殺して、 それでラクスが生き返っても彼女は喜ぶだろうか。 いや、大丈夫だ、自分が優勝したらここで死んだ人達も生き返らせればいい。 そして、争いや犯罪の無い平和な世界を作るんだ! 気絶しているジョナサンを横目に見る。 今なら簡単に・・・ そう思ったが止めた。 流石にここでたった一人で最後まで生き残るのは不可能だろう。 幸い、ジョナサンは気絶していてこの優勝商品を知らない。 だったら最後まで付き合い、最後の最後で不意をつけばいい。 大丈夫だ、すぐに生き返らせられる。 そうだ、先程闘った、あのもう一つの戦艦も利用できるかもしれない。 「ラクス、待っていてね、僕がすぐに生き返らせてあげるから」 キラは気付かない、自分の思考がラクスの死によって狂っている事を。 その証拠に彼はラクスの死に涙を流す事も悲しむ事もしてないのだから。 【キラ・ヤマト 搭乗機体:ガンダムF-91( 機動戦士ガンダムF-91) パイロット状態:良好 機体状態:良好 現在位置:C-5 第一行動方針:ジョナサンの信用を得る 第二行動方針:なるべく使えそうな駒は残し、危険そうなのは排除したい 最終行動方針:勝ち残り、皆を生き返らせ平和な世界を作る】 【ジョナサン・グレーン 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー) パイロット状態:気絶中 機体状態:キングジェイダーへの変形は不可、左舷損傷軽微 現在位置:C-5 第一行動方針:クインシィの捜索 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先)】 本編86話 キラ
https://w.atwiki.jp/uncyclopediamabiwiki/pages/1009.html
サイトポリシー あんさいくろぺでぃあマビノギ Wiki( 以下「当サイト」)は主にWikiという複数人が共同でサイトを構築していくシステムで作られています。 当サイトの構築に参加する方( 以下「編集者」)はサイトポリシーに従って編集をお願いします。 出所や算出、計測方法が不明なデータは掲載不可とします チート、ツールの使用に関しての記事、LINKは管理者の権限において記述を禁止いたします。 マビノギクライアントに関して解析したと思われる記事、LINKは管理者の権限において記述を禁止いたします。 投稿された旨がありましたら、管理人までご連絡ください、個別に対処いたします。 基本的には、放置(荒れるから)、管理人側で対処という流れのスタンスを取りたいと考えています。 情報について あんさいくろぺでぃあマビノギ Wiki管理者( 以下「管理者」)は、当サイトに掲載する情報について様々な注意を払っておりますが 内容の正確性、有用性、安全性、その他いかなる保証を行うものでもありません。 当サイトに掲載されている情報は、あくまでも掲載時点における情報であり、時間の経過により掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。 管理者は当サイトの情報を利用した結果生じた損害について、一切責任を負いません。 あくまでご自身の責任においてご利用ください。 情報の保存 間違った情報でない限り基本的に情報は残すように編集者は配慮をお願いします。 他の人が書いた情報はなるべく保存する 以下の理由に該当する場合は削除してもよい。 重複 関係のない内容 無意味な記述 明らかに不正確である 反映済 ネタバレ情報について ゲームの楽しみ方は人により違いますので、 不本意に閲覧しなくてすむような配慮をお願いします。 例えば、以下のような方法があります。 注意書きを挿入する 別ページにする 通常では閲覧できないように細工する このように 見えなくする 方法もあります。 情報の真偽判断、情報の使用は自己責任にてお願いします。 不具合だと思われる情報について 当サイトでは不具合だと思われる投稿も未確認情報として扱います。 ネタバレ同様、不本意に閲覧しなくてすむような配慮をお願いします。 ※情報によってはゲームサーバーに深刻なダメージを与える可能性がありますので 記事を削除させていただく場合もあります。 問題発生時 問題発生時におけるエスカレーションは下記の順番に従う。 投稿者及び編集者 ↓ 管理者 ※管理者への連絡は、上部ツールバーのツールこのWIKIの管理者へ連絡にてお願いします。 編集合戦 編集合戦になりそうな場合は、管理者がページを保護する場合があります。 大規模な編集 大規模な編集を行う場合は以下の項目を厳守する 着手するまでに十分な時間をとる 編集作業における影響範囲を考慮する 中長期的な運用を考慮する 管理者の了解を得る Nexonマビノギチームへ投稿内容の確認について 基本的に管理者は、Nexonマビノギチームへの問い合わせは行いません。 投稿可否の判断がつかない場合はフォーラムにて議論されるか、Nexonマビノギチームにお問い合わせ下さい。 Nexonマビノギチームから管理者に、記事の削除依頼があった場合は速やかに対応いたします。 ダウンロード支援ツールの使用は禁止します。 管理者は利用者の承諾を得ることなく必要に応じてサイトポリシーの変更できるものとします。
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/146.html
私は人ではない ◆7vhi1CrLM6 「動きそうか?」 暗い森の真っ只中に直立している金色の機体――百式。 その輝く装甲の隙間からひょっこりと頭を出したクインシィ=イッサーを見つけて、ジョナサン=グレーンは声をかけた。 「無理だな。派手な損傷は見当たらないが、壊れているようだ」 装甲の上に立ち上がり、彼女はこちらを見上げて話を続ける。 「これに乗っていたのがお前の言うキラとかいう奴なのか?」 「いや、違うな。奴は戦艦に乗っているはずだ」 本来キラが待っているはずの場所にキラの姿はなく、代わりとして近場に残されていたのがこの百式だった。 ということはだ。 「Jアークにその機体のパイロットも同乗して移動したのだろう。周囲に戦闘の跡もない」 「どう思う?」 「どう思うとは?」 「パイロットについてだ。コックピットでこんなものを拾った。見えるか?」 「ちょっと待て……。よし、いいぞ。良く見える」 慌てて手元を操作してクインシィが摘んでいるものを拡大してモニターに表示する。 そこには20cmあまりの茶色い糸のようなものが映し出されていた。 「これは……頭髪か。だが、それがどうした?」 「他に緑のものと5cm程度の白いものと黒いものの種類が確認できる。そしてさらにこれだ」 目を細めて新たに画面に向かって掲げられた白い一本の線を注視する。 「長いだけで特に違いはないと思うが……」 「よく見ろ。全体的に太く、弾力を持っている。これは髭だな。猫の髭なんかがちょうどこんな感じだ」 「四色の毛に動物の髭……そいつは人間か?」 「わからない。しかし、可能性は考慮しておいたほうがいい」 動物の特徴を持ち、なおかつ機動兵器を操縦しうる存在。 そんなものを考え、思い浮かんできたのは―― 「化け猫……まさかそんなものが実在するとでもいうのか」 「オルファンやアンチボディーだって発見されるまではそんな存在があるとは、夢にも思われていなかった。 それに我々を集めたあの化け物に比べればその程度の存在可愛いものだ」 「だが、そんな奇抜な者がいれば最初の場所で……待てよ。 そういえば仮面を被った者がいたな。一人……いや二人か」 「そういうことだ。馬鹿げているとは思うがこの環境に適応するしかあるまい」 「しかし、与太話もここまでだな。熱源反応が一つ。迷走しているが確実に近づいてくる」 空気が変わり、動きが変わる。緊張が充満していく。 すぐさまゲッターに乗り込んだクインシィから通信が入り、レーダーから視線をずらした。 「この反応は……ジョナサン、敵だ。問答無用で叩き潰すぞ」 獲物を見つけた猫のような顔がそこにあった。それにジョナサンもにぃっと笑い、答える。 「ならばまずは俺にやらせろ」 ◆ ほの暗い森の中に何かがきらめくのを見つけて流竜馬は大雷凰の動きを早めた。 きらめきの元が何かまでは判断がついていない。しかし、何か金属質なものが月明りを反射したものであることは間違いない。 この世界で、こんな森の中、そんなものは機動兵器ただの一つしか存在しない。 つまりは己の敵だという事だ。 ――隼人を殺った奴か? 一瞬の自問。同時にそんな考えが頭を過ぎった自分を苦々しく思い、苛立つ。 それが、長年追い求めてきた仇敵を目の前で掻っ攫われたことによるものか。 あるいは、かつての仲間を眼前で殺されたことによるものか。 それを考える思考を竜馬は持たない。というよりは、思考の方向性がそちらを向いていないといったほうが正しいか。 己の気持ちの在り処を探るよりも、そういう行為自体を疎ましく思う――そういう荒い気質の持ち主なのだ。 「へっ、関係ねぇ。奴が隼人を殺った奴だろうとなかろうと敵はぶっ潰す」 竜馬が口元で笑い。大雷凰が一足跳びに黒々とした木々を飛び越える。 眼下には20m前後ほどの機体が一機。大鎌を頭上に大きく振りかざし、迷いもなくそこに飛び込む。 「うおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」 獣のような咆哮と共に大鎌は月夜に振り下ろされた。 金色の機体が真っ二つに切り裂かれ、刀身が深々と大地に突き刺さる。 そして、大地に亀裂が走り、その中心から高速回転をするドリルと共に真ゲッター2が姿を現した。 「何だと!!」 差し迫るドリルに、大鎌を引き抜く余裕もなく手放し、咄嗟に地を蹴り上空へ飛び退く。 次の瞬間、大雷凰はドリルの回転に掻き乱され巻き起こった竜巻状のエネルギーに呑み込まれた。 「かかったぞ、クインシィ!」 翻弄される大雷凰を尻目に、赤・白・黄、三色のゲットマシンがその渦に乗り脇を駆け抜ける。 「おうさ、ジョナサン!」 大雷凰が押しやられ、追い込まれていくその先で三体のゲットマシンは合体し、赤い悪魔が姿を現した。 見ずとも、聞かずともゲッター1を知り尽くした竜馬には分かる。この後に来る攻撃は―― 「ゲッタアアァァァァアアアッッ!! ビイイィィィィム!!!」 「なめんじゃねええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!」 ピンクの閃光が鋭く走り、大雷凰の肩口を抉り飛ばし、大地に穴を穿つ。 瞬間、ドーム上の火球が地表に現出し、その余波で真ゲッター2の巻き起こした竜巻は吹き飛んだ。 その中心を竜馬は駆け上がる。ゲッターに向かって、一直線に、脇目も振らず。 ゲッタービームを放ったことによる僅か零コンマ数秒にも満たない硬直。その隙に二機の距離は詰まり、大雷凰の左腕はゲッターの頭部を鷲掴み、無造作に引き寄せる。 駆け上がってきた勢いそのままの膝蹴りが、ゲッターの腹部にめり込む。 ゲッターの巨体が折れ曲がり、僅かに浮かび上がったその刹那、腹部から閃光が迸った。 だが、すでにそこには大雷凰はいない。その姿は遥かな上空に存在していた。 「へっ! 隼人の野郎に見込まれただけあって、ちったぁやるじゃねぇか」 ◇ 大雷凰は左腕で鷲掴みにした頭部を膝蹴りの時には既に離し、腹部を蹴り上げたその瞬間には、勢いを殺さず流れるように上空に離脱した。 その動きを目の当たりにして、クインシィは一つの疑念を頭に抱く。 「奴はこの機体を知っている?」 現実には流竜馬は真ゲッターのことを知らない。しかし、ゲッターについては熟知している。 ゆえにゲッタービームの発射口の存在するゲッター1の腹部、ゲッタードランゴンの額、その二点に対する注意は片時も怠っていなかった。 この差は地味なようでいてかなり大きい。 真正直に使ったときのみならず、兵装を知らないことによる不意打ちも成立しないだろう。 ならばどうする、とクインシィは自問する。そして、その答えは決まっていた。 「ジョナサン、正攻法で奴を突き崩す。大技はここぞというときにとっておけ」 「クインシィ、なにびびってる。たった一機の! それも半壊した機体だぞ!!」 「侮るなと言っているのだ」 「どうした? オルファンのクインシィ=イッサーともあろうお方が臆したのか」 「そうではない」 「なら、決まりだな!」 ゲッターが分離し、ジャガー号が先陣をきって大雷凰に突撃する。 こうなってしまっては渋々追いかけるほかなかった。 「ジョナサン! ちぃっ!!」 距離は十全。合体は可能だ。 機体を故意にぶらせて速度を削ぎ、ベアー号を先に行かせる。 ジャガー号とベアー号がドッキングするその先で、大雷凰が重心を落とし低く構えるのが見えた。 そしてその次の瞬間、大雷凰は一筋の雷の如く天から突撃を開始する。 十全と思われた距離が潰れていく。 「しまった!」 間に合うか――そう頭に思い浮かべたときにはレバーを引いていた。 二つの声が響き唱和する。 「チェエエェェェエエエエンジ!!」 「ゲッタアアァァァアアアア!!!」 両脚部に変化したイーグル号がベアー号とドッキングを果たし、ライガー号からは両椀が突き出していく。 その右腕には巨大なドリルが、左腕には鉤爪のようなものが構成され、ワイヤーやケーブルが剥き出しの椀部を白いパネルが覆い尽くしていく。 そして、最後に頭部が僅かに迫り出し、両眼が見開かれた。 「逝けよやああぁぁぁああああ!!!」 既に激突寸前、無に等しい距離の中を真ゲッター2は右腕のドリルを突き出し加速する。 大雷凰の蹴りは真ゲッター2の腹部を掠め抉り、真ゲッター2のドリルもまた大雷凰の脇腹を掠める。 高速回転を続けるドリルと装甲の狭間で火花が散り、耳に衝く甲高い高音と焦げ臭い異臭を放つ。 「ジョナサン、次が――」 全てを言い終わる前に大雷凰に肩膝でのしかかられるような格好になり、拳が顔面にめり込む。 続けて二発三発と打ち込まれ体勢が崩れ、四発目を掌で打ち込まれてそのまま顔面を押さえつけられた。 一瞬の浮遊感。そして、一気に落下が始まる。 ――叩きつけられる! 地面に!! サブパイロットの位置座り込んだとて、ゆっくりと落ち着いている暇はない。 メインパイロットは目の前の敵に意識を集中せざるお得ない。その分、周囲に対する警戒はこちらの肩に圧し掛かってくる。 計器を読み取る。 高度は――十分。 レーダーは――東に熱源反応。 「ちぃっ! ジョナサン、オープンゲットだ!!」 返事を待たずに強制分離。 三つに分かれたゲットマシンはそれぞれに大雷凰の脇をすり抜ける。 急速に離れ、大地へと降り立った大雷凰とは対照的に上空で合流すべく上昇を続けるゲットマシン。 その中でクインシィは目まぐるしく周囲を伺い、見つけた。 まだ夜明けまで程遠い東の空、森林の上を飛ぶ蒼いブレンパワードの姿を―― 「ジョナサン、勇がいたぁ! 勇がぁ!!」 ◆ 蒼くまっすぐな長い髪と抜けるほどの白い肌を持った青年期の女性グラキエース。 彼女は蒼いブレンパワードの中で必死の抵抗を続けていた。 視界の内では二機の機動兵器が死闘を演じている。 一つは、赤いマフラーを首に巻き、片腕と頭を失った機体。 もう一つは、西洋の小悪魔を思い起こさせるシルエットの赤い機体。 それらが放つ猛々しいまでの激情が、体を取巻いていた。 流竜馬の内に篭る激しい復讐心が、ジョナサン=グレーンとクインシィ=イッサーの捻じ曲がった肉親に対する情念が、肌に纏わりつきじわじわと浸透してくる。 その感覚は無視できるほど弱くはなく。 また理性を失わせるほど強くもなく。 もどかしい。 好物を目の前に、焦れて体から湧き出たメリオルエッセの本能が囁きかけてくる。 あれをよこせと。 あの感情のベクトルをこちらへ向けろと。 そのぞくぞくと這い上がってくる陰湿な本能に嫌悪し、かぶりを振った。 ――嫌だ! そんなこと……私は望んでいない!! 拒絶に意味はなかった。 負の感情を吸い取るように作られた体は、意志の力に左右されはしない。 しかし、体は意志に容赦なく干渉してくる。 それに反抗するということは、弄られているようなものだった。 いっそ流されてしまえば楽なのは目に見えて分かっている。 だけど、流されるということは昔の自分に戻るということだ。 ジョシュアと会う前までの自分に戻るということだ。 ジョシュアと出会ったことが、過ごした日々がなくなるということだ。 それは、苦しい。泣き出したくなるほどにつらい。 でも、流された苦痛の先に快楽が見える。このままではいつか押さえが利かなくなる。 逃げよう。 この場に残っていても意味はない。 ここから少しでも遠くに、遠くに逃げよう。 そう思ったとき、体を包み込む情念が数倍に跳ね上がった。愛憎の入り混じった複雑で強烈な情念が向けられている。 ――どこから? 何故、私に? 体が強張り、自分を自分で抱きしめるようにして身を縮める。 無理だ。 もう耐え切れない。 ここから早く逃れよう。 そう思い動き出そうとした瞬間、栗毛でショートカットの少女がモニターに映し出された。 「勇ッ!!」 少女が叫ぶ。その声に乗って情念の波が襲ってくる。 腕に力を込めて、唇を噛み締めて押し黙り、波が過ぎ去るのをじっと耐えて待つ。 モニター越しの少女の表情が瞬く間に曇っていき、眉間に皺が寄っていくのが見えた。 「お前は誰だ? 何故、勇のブレンに乗っている?」 愛しさの入り混じった捩れたものから純粋な憎悪へと感情の質が変わる。 そしてそれが真っ直ぐ射抜くように自分へと向けられている。 「答えろ! 勇をどこへやった?」 全身に血が巡る。 メリオルエッセとしての本能が押し寄せる。 押さえつけていた理性の箍が外れていく。 それを必死で繋ぎとめる。 「勇だよ! 勇を出しなさい!!」 問いに答える余裕は既にない。 痺れを切らした少女の通信が途切れる。 ぼやけた視線の先で赤い悪魔が姿を消し、間際に現れた。 同時に振り下ろされた巨大な斧を、咄嗟に半身になってかわす。 そしてそのとき、迫る斧に対応するために意識がわずかに削がれた。 一瞬だった。 その刹那とも言える一瞬で、驚くほどあっけなく理性は敗北する。 押し切られ、一線を越えて――心が堕ちてゆく。 後はもうふわふわと浮ついた夢のようで、何が何だかよく分からなかった。 ◇ 赤いマフラーの機体と赤い悪魔が真っ向から衝突し、押し合い、せめぎ合う。 その間隙を縫って、蒼いブレンパワードが駆け抜ける。 大雷凰、真ゲッター、ネリー・ブレン、三機の機体が入り乱れていた。 その内の一機――真ゲッターの中でジョナサン=グレーンは「まずいことになった」と一人ぼやく。 ここで三つ巴の形になるということは予測していなかった事態だ。 半壊した機体を落とし、敵対する参加者を一人減らす。それが目的だったはずだ。 それが、クインシィが勇のブレンパワードを見つけたことで狂った。 戦いの最中には時として思いがけなかったことが起こるものだ。三つ巴になったこと事態がその現われといっても良い。 三つ巴になったことでそれが起こる可能性は飛躍的に高まった。 一対一ではありえなかった事態が起こりうる。 これを二対一の形に持っていけば危険性は格段に減るのだが、クインシィの気性はそれを受け入れないだろう。 ならばやることは決まっている。 「クインシィ=イッサー」 「うるさい! 何だ!」 戦闘中である。視線も合わせずに怒鳴り返された。 が、ここで怯むわけにもいかない。不機嫌を買うことを承知で話を続ける。 「ここは引き上るぞ」 「な……に?」 「俺だって、引き上げ時ぐらい知っているつもりだ」 「正気かジョナサン? 勇のブレンパワードがいるのだぞ!」 ここでクインシィを説得できるかどうかが一つの分かれ目だった。 元々理屈の分からない女ではない。それを受け入れる余裕が有るか否か、そこが問題なのだ。 そして、今はそれが有ると踏んでいた。 先の読めない三つ巴の中にどっぷりと漬かってしまうわけにはいかない。 「あのブレンパワードに乗っているからといって、伊佐美勇と面識があるとは限らない。 ここでは何のゆかりもない機体に乗っている奴が五万といる。それはご存知のはずだ。 ならば、下手に潰し合いに混ざるよりは離脱したほうが得。そういうことだ」 「ブレンパワードはオルファンを傷つける」 「それの後始末も上手く行けば奴がやってくれる」 「だが……くっ!!」 そこで会話が途切れた。 踏み込み振るったゲッタートマホークが隻腕となった大雷凰に掴まれたのだ。 「悪いな。鎌より斧のほうが好きなんだ。こいつは貰っていくぜ」 通信に割り込んできた男の声が鼓膜を揺らす。 同時に衝撃が奔り、ゲッターが地面に背中から蹴り落とされる。 「クインシィ、体勢を立て直せ!」 「今、やっている!」 大地に激突し、起き上がろうとしたゲッター。 その腹の上でバイタルジャンプを示す鋭い異音が鳴った。 途端に背筋にぞくりとした悪寒が走る。 そこは僅か装甲一枚を隔てたコックピットの向う側。直線距離で言えば1mもない。 画面一杯に映し出されているブレンよりも、直にコックピットに反響してくる音に恐怖を感じる。 突きつけられたブレンバーにチャクラ光が灯るのが鮮やかに目に映っている。 ゴトリ、とゲッターの装甲を足場として確保した音が直に響き、顔が蒼白になり、叫んだ。 「クインシィ!!!」 が、次の瞬間、それは発射されることなく、異音と共にブレンの姿は掻き消える。 そして、代わって視界を占めたのは唸りを上げて迫り来る大雷凰の蹴り。 右手で近場に転がっていた百式の半身を掴み、横から叩き付け、そのまま横に転がるようにして蹴りをさけた。 画面の向うで唇を噛み締めつつクインシィが叫び、判断を下す。 「ちっ! ゲッター2で地中に潜行。その後、離脱する。いいな!!」 「その言葉、待っていた!!」 瞬間、分離。千に砕けた金色の破片が降り注ぐ中、ゲットマシンは上空を目指し、真ゲッター2へと姿を変えた。 一転して、大雷凰直上からの垂直降下。 「そこにいると怪我するぜ。ドリルハリケエエェェェエエエエン!!!!」 叫び、右腕のドリルを突き出し、速度を上げ、全速で突っ込む。 サイドステップでさけた大雷凰を掠め、大地にまともに激突する。 が、これでよかった。ゲッター2の右腕はいかなる岩盤をも打ち砕き大地に穴を穿つドリル。 地中へとゲッターは潜行し、その姿を隠した。 ◇ 岩盤を掘削する音が遠のいていく。ゲッターの放つ信号がレーダーの範囲外に抜けていく。 途中で地上に出たのだろう。その速度は驚くほど速い。 追いかけることは既に諦めていた。 地上を疾駆するゲッター2に追いつける存在など在りはしない。 「また逃げやがったか……」 口から漏れた言葉はゲッターにだけ向けた言葉ではない。あの蒼い小型機もまたいつの間にか消えていた。 二機――否、隼人を落とした機体も合わせれば三機とも逃した。 結局、この30分余りのいざこざが竜馬に残したものといえば、他には真っ二つに切り裂かれた機体の半身とゲッタートマホーク。 代償は大雷凰の片腕とゲッターサイト。それに自身の体力の消耗だった。 望んだ戦果には程遠い。 「ちっ! けちが付いてやがる」 その付き始めはおそらくあの濃紺の可変機と相対したときからだろう。 あの一戦で負った損傷が大雷凰の力を大きく削いだ。 そして、その後戦闘を重ねるにつれて徐々に、しかし確実に大雷凰は力を落としていっている。 決まると思った攻撃が決まらず紙一重でかわされる。 機体の動きと体の動きの間に僅かな齟齬が生じてきている。 一度調整が必要だった。 「このまま勝てれば楽なんだがな……」 誰に言うともなく呟き、竜馬はサブモニターに地図を引き出した。 現在地から東、あるいは西に四ブロック。そこに存在する基地に目が止まる。 整備の為の設備ぐらいはあるだろう。部品の有無は分からないが、最悪この金ぴかの機体を使えば良い。 規格はまず合わないだろうが、何一つ流用できないということも考えにくい。 整備のことを考えるなら間違いなくそこだった。 だが、そこは同時に他の参加者が集まりやすい場所でもある。 だったらどうする―― 「へっ! そんなことは関係ねぇ」 蹴散らし、血祭りに上げる。ただそれだけだ。 大雷凰もまだ二三戦は優に戦えるだけのタフさを持っている。 頭部を?がれ、片腕を失った現在でさえ、あの見知らぬゲッター相手だろうと遅れを取るとは微塵も思っていない。 ギラついた目で竜馬は笑う。 あらゆる物に化け、何処からともなく無数に沸き、襲ってくるインベーダー。それを相手にした月面戦争。 復活した早乙女博士を相手に、大地を覆い尽くすゲッタードラゴンの群に囲まれていたここに飛ばされる寸前の状況。 それらに比べれば、この程度の状況はぬるま湯につかっているようなものだ。 巨大な鉞を肩に担ぎ、百式の半身を引き摺り、大雷凰は再び動き出す。 目指す先はG-6基地。その足取りはしっかりと大地を捉え、迷いなくゆるぎないものだった。 ◆ 流竜馬から北にちょうど50km――C‐5地区の暗い森の中にネリー・ブレンは姿を隠していた。 その中で、ラキは体をブレンに預け、ぼんやりと木々を眺めていた。 戦場から離脱したのはラキの意志ではない。ブレンが独断で跳んだのだ。 あのときのことは夢の中の出来事のようにしか覚えていなかった。 醒めてしまえばそれは途切れ途切れの記憶の断片とでしか残らない。 しかし、それでもおぼろげにどういうものだったのかは分かる。 ギンガナムに立会いを申し込まれたときはこうではなかった。 明らかにメリオルエッセとしての機能が修復していっている。本能が、欲望が増している。 それが徐々に進んでいるのか、負の感情に当てられたときに一気に進行しているのかはわからなかった。 「くくく……フフ……ハハハハハハハハ……」 ひとしきり笑い。そして、肩を震わせて泣いた。 ぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちる。 今になって本当の意味で自覚する。 私は人ではない。 もしかしたら、もうメリオルエッセですらないのかもしれない。 少なくともジョシュアに出会う前、純粋なメリオルエッセであった頃には、こんなに惑わされなかった。 こんなにも自分の体を嫌だと思うことなんてなかった。 ジョシュアの心と混ざり合うまでは感情が希薄だった。 そのせいかも知れない。 人と混ざり、メリオルエッセでもなく、人でもない――半端者。 私は壊れているのだ。 だからといって心を捨て去ることも出来ない。 それは裏切りだ。 ジョシュアに対する酷い裏切りだ。 ジョシュアは言ってくれた。 人でなくても関係ないと。 でも私はやっぱり人になりたかった。 ジョシュアと同じ人になりたかったんだ。 だからいくら辛くてもこの心は捨てれない。捨てられない。 もう人になることが叶わぬとしてもせめて……。 せめてあの頃に戻りたいんだ。 ジョシュアがこんな私でもいいと言ってくれた、あの頃の私に。 【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日) パイロット状態:疲労小 機体状態:ダメージ蓄積 現在位置:C-6 第一行動方針:ジョナサンと共にキラのところへ 第二行動方針:勇の撃破 第三行動方針:ギンガナムの撃破(自分のグランチャーを落された為逆恨みしています) 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】 【ジョナサン・グレーン 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日) パイロット状態:良好 機体状態:ダメージ蓄積 現在位置:C-6 第一行動方針:クインシィと共にキラと合流 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする 第三行動方針:強集団を形成し、クインシィと自分の身の安全の確保 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先) 備考:バサラが生きていることに気付いていません。 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル) パイロット状態:怒り、衰弱 機体状態:装甲表面に多数の微細な傷、頭部・右腕喪失、腹部装甲にヒビ、胸部装甲に凹み 現在位置: C-6 第一行動方針:G-6基地で機体の整備 第二行動方針:クルツを殺す 第三行動方針:サーチアンドデストロイ 最終行動方針:ゲームで勝つ 備考1:ゲッタートマホークを所持 備考2:百式の半身を引き摺っている】 【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード) パイロット状況:精神不安定。放送の時刻が怖い 機体状況:無傷、EN残量3/4 現在位置:C-5 第一行動方針:アイビスを探す 最終行動方針:??? 備考1:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません 備考2:負の感情の吸収は続いていますが放送直後以外なら直に自分に向けられない限り支障はありません】 【二日目0 30】 BACK NEXT ・――言葉には力を与える能がある 投下順 吼えろ拳/燃えよ剣 鍵を握る者 噛合わない歯車 時系列順 謀 ―tabakari― BACK NEXT 我が道を走る人々 クインシィ それぞれの思惑 我が道を走る人々 ジョナサン それぞれの思惑 Take a shot 竜馬 解し得ぬ存在 暗い水の底で ラキ Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/41.html
彼女の答え ◆Y3PBSdzg36 「これが私の機体ね…」 カティアはそうつぶやくと機体を調べ始めた しばらくして、 「これは!?」 この機体、VF22S・Sボーゲル2Fには反応弾つまり核兵器が搭載されていたのだ とりあえず持っていることで相手の戦意削減にもなるが… (できれば使いたくはないですね) 次に索敵をして敵がいないことを確認して考えをまとめようとする (統夜たちが無事でいて欲しいけど…) しかし、これは殺し合いなのだ 最後に立っているのは一人なのだ だが… (私は、殺せない) (他に方法はないけれど、私は逆らってみせる) 仲間を集めゲームを脱出する、それが彼女の出した答えだった (だけど… あの場所で見た統夜は何かが違っていた いまの明るい統夜じゃなくてまだ最初のとき、戦うのを拒絶していたころのような…) 「…とにかく仲間を見つけることからはじめましょう」 彼女は行動を開始した 【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:E-2 第一行動方針:仲間を集める 第二行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【初日 12 25】 BACK NEXT 邪龍空に在り 投下順 花言葉は「勇敢」 無題 時系列順 純真なる抗体、真紅の悪鬼 BACK 登場キャラ NEXT カティア 追悼
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/150.html
心、千々に乱れて ◆7vhi1CrLM6 あくびをし、寝ぼけ眼を擦りながらカテジナー=ルースは起き上がった。 暗い闇の中手探りで灯りをつけるとレーダーを覗き込む。 何かが近づいてくる。そういう気がしたのだ。 根拠は何もない。ただ感じただけ、そういう気がしただけ、それでもそれは確信に近いものだった。 レーダーに映し出された二つの光点によって、程なくそれが正しいものだったと証明される。 レーダー類の不調のせいで距離はそう遠くない。 最初はかなり速い速度で接近してきていたのが、暫くして静止した。 おそらくはこちらの姿が見えない為警戒をしているのだろう。あるいは迷っているのかもしれない。 彼女は今湖の底に隠れていた。 「迂回をしてくれるようなら楽なのだけれどね」 あくびを一つ噛み殺してぼやく。 疲れが抜け切っていないのか、どうにも眠たかった。 接触を図るよりも今はまだもう少し寝ていたい。それが本心だ。 しかし、そんな思いを裏切るかのように光点がすっと接近を始める。 「やっぱりほうっておいてはくれないわよね」 女の見栄というか、習性のようなもので身支度を整えながら、思案を練り始める。 今の動きで分かったことがある。 まずは二人組という点でおそらくは好戦的な相手ではないということ。 そして、二対一という局面において一度動きを止めたということは、用心深い性質の持ち主がいるのか、あるいは戦力に不安が残るということ。 にも関わらず接近していたということは、捻じ伏せるか、逃げ切るか、どちらかの自信があるという現われ。 それを念頭において逃げるべきか、接触すべきかを考える。 逃げようと思えば逃げることは可能だった。 なにしろまだ互いに姿を見せてない上に、こちらは視界の悪い水中だ。 一度レーダーのレンジ外に抜けてから物陰に身を潜めれば、相手を撒くことは難しくない。 「だけど……接触すべきでしょうね」 いかにも乗り気でないといった態度。緩慢な動作でシートに腰を掛けなおす。 何かを潰したような感触があった。驚いて腰をずらしてみると、三種の樹脂マスクが出てきた。 あの核ミサイルに乗った男から得たボイスチェンジャー付きのそれは、正体を隠しつつ交渉するという点において、これほど都合の良いものはない。 だが、それを何の躊躇もなしにぽいっとコックピットの後方へ投げ捨てる。 理由は特にない。強いて言えば似合わないからである。 そういえばこのマスクを持っていたのも二人組だった。 核ミサイルなどというふざけたものを乗り回し、追い回してくれたことは、今思い出しても頭にくる。 だが、その二人はもういない。 カテジナ=ルース、彼女自身が手を下し核の炎で葬った。 理由は単純。必要ない、利用する価値もない存在だと判断したから。 その点、最初に出会った二人は違った。 ギャリソン時田とユウキ=コスモ。この二人は外れ機体引いた自分の盾になってくれたという面で非常に役に立った。 そして、熱気バサラと彼を知る一人の少年。彼らもまたラーゼフォンを運んできてくれたという点と、その性能を試させてくれたという点において役に立っている。 ならば、と彼女は思う。 ならば今度の二人組は何をもたらしてくれるのか、それを思うと気持ちが僅かに上向きに修正された。 既に距離はかなり近い。 いきなり攻撃を仕掛けられてもつまらない、と思い、ラーゼフォンをゆっくりと上昇させる。 湖面を抜け開けた視界に二機の人型機動兵器の姿が飛び込んできた。 「こんばんは。こんな夜更けに若い女の子に会いに来るものではないわよ」 眉間に皺を寄せて不機嫌を装い、口を尖らせる。 それで相手が機嫌を取ろうとすれば御の字。主導権を握ることができる。 だから殊更に嫌悪感を露にして言葉を続けた。 「もっとも、夜這いにでも来たって言うのならば話は別でしょうけどね」 むっとした様子を年若い方が顔に出すのが見えた。対して年嵩の男のほうの顔色は変わらず判断が難しい。 機体間の距離は遠くはない。しかし、不意をつけるほど近くもない。 そして、左右に分かれている。それもごく自然な動作でその配置についていた。 場慣れしているといっていい。 「何か不機嫌を買うようなことをしたのなら謝ろう。キョウスケ=ナンブという」 「カミーユ=ビダンです」 「カテジナ=ルースよ。何の用かしら?」 「単刀直入に聞く。敵か? 味方か?」 「敵よ。生き残れるのはただ一人なのだから、この世界にいるのは全員敵。 でも今のところ交戦の意志はないわ。あなたたちの出方によるけど……」 言い切り、動きを伺う。 嘘は言っていない。考え方にも不自然なところはないはずだ。 そのうえでどう出てくるのか、それに少し興味があった。最悪戦闘になる覚悟は出来ている。 「こちらにも交戦の意思はない。情報の交換を行いたいのだが構わないな?」 「構わないわよ」 そうして暫く情報の交換が行われる。 受け取った情報は、補給ポイントとG-6基地で交戦したという複数の機体、それに獅子を模した胸部装甲の機体について。 対して提供した情報は、ギャリソン・コスモ・バサラ、そして最初に交戦した黒いガンダムについて。 もちろん、情報に手は加えてある。 コスモ・バサラという味方を装った二人組に騙されて襲われ、同行していたギャリソンさんは死亡。自分も命からがら逃げ出した、といった塩梅にだ。 そうすることで二人と距離を置いている理由が説明できる。同時に争いの扇動にもなる。 見たところこの二人は戦闘慣れしている。そんな人間を二人も相手取るよりも、どこかであの二人と潰しあってくれたほうが得という算段だった。 「カテジナさんも一緒に来ませんか?」 「えっ?」 突然、予想外の言葉をかけられてはっと顔をあげる。 その言葉は青い髪の少年――カミーユ=ビダンのものだった。 「まだG-6基地には二人の仲間がいます。 そこのほうが一人より安全だし、上手くいけば殺し合いをしなくてすむかもしれない」 言葉を探す。 答えは決まっていた。しかし、頭の中に言葉が浮かんでこない。 何故――迷っているとでもいうのか? ちらりとキョウスケという男の顔を盗み見る。 相変わらずの能面面。人工的な笑みの一つくらい浮かべてみせても損はないだろうにと思う。 だが、黙っているということは、黙認するということだろう。 基地に仲間がいるというのは、この男があえて伏せていたはずの情報だ。 それを口走っても止めない程度の信用は築けたということか。十分だ。これ以上の深入りは望むものではない。 「一緒に行きましょう、カテジナさん。あなたは殺し合いなんかしちゃいけない人なんだ」 何を根拠にそんなことを、と思う。 そう思った後で、ウッソに似てるなとふと感じた。 何処がではない。このカミーユと名乗る少年の容姿・性格はウッソのそれとは大きく異なっている。 纏っている空気も雰囲気も違う。 それでもこの少年から受けるプレッシャーは何処となくウッソに似ていた。 となると迷っている心はウーイッグに対する里心。未練か? ――馬鹿らしい。 それで合っているのかは分からなかったが、ようやく胸の内に言葉が浮かんできた。 「無理だよ。少なくとも私はあなたたちを完全には信用できはしない。 そんな相手と一緒にいれるはずがないだろう?」 「何故ですか?」 そう。目の前の少年が放つ気はウッソのそれに似ており、私を惑わせ、苛立たせる。 この少年と同行するのは危険だ、と直感が告げている。 「甘い言葉を使って騙してくる者もいる。ここでは自分以外を信用できるはずがない。 お別れだよ、坊や。次は敵同士だ」 そう言い残し、逃げ出すようにラーゼフォンはその場から飛び去る。北に向かってただ一直線に、ただひたすらに。 煩わしい、と思う。何故私が逃げなければならないのか、とも思う。 だが、あの場から逃げ出したかったのは事実なのだ。 ――この私がいたたまれなくなったとでもいうのか? 馬鹿らしい。 情報は得た。 奴らはG-6の基地を本拠に行動している。ならばやることは決まっている。 これから出会う参加者全てに情報を吹き込み、送り込めばいい。善良そうな奴には危険人物が潜んでいると、危険な奴には参加者がいるとただ吹き込む。 それだけで奴らは勝手に潰しあい、やがて全滅するだろう。 そんなことを考えつつ十数分ほども飛んだときだろうか、唐突に一つの考えが頭を過ぎった。 「地球クリーン作戦やギロチンと同じ?」 腐らすものは腐らせ、焼くものは焼く。汚い大人たちは潰して地球の肥やしにしてしまう地球クリーン作戦。 そして、リガ・ミリティアのような反目するものを黙らせるためのギロチン。 この二つはザンスカール帝国が掲げるマリア主義の為の必要悪。 ならばこの殺し合いも危険因子を摘み、黙らせ、古いものを次代の肥やしにする必要悪? だったら何故―― 「何故、私が巻き込まれている?」 分からない。分からない。分からない。 頭の中が混乱し、思考にノイズがかかる。不愉快極まりない。 そして、ドンッと何か重くて巨大な塊に体当たりされたかのような衝撃が奔った。 ◆ そこは真っ白くてなにもない空間だった。 何故ここにいるのか? ここは何処なのか? 不思議に思い、あたりを見回しているうちにテーブルが現れ、椅子が現れ、そして日常の風景が姿を現した。 黒髪の少女が金髪の少女を叱っている。 またコックピットにチョコでも持ち込んだのかと思わず苦笑いが漏れた。 やがて黒髪の少女を諌めるように軽い感じで赤毛の少女が割って入り、涙目になっていた金髪の少女がほっとした表情を見せる。 そんな日常の風景。 三人の少女が文字通り空から降ってきてここに飛ばされるまでの僅かな間に、幾度となく繰り返され、すっかり馴染んでしまった光景。 それが眩しくて思わず立ちすくむ。 不意に声をかけられた気がして振り向くと、二人の女性がそこに立っていた。 二人はただ笑い。ただ立っていた。 いや、よく見るとその口元は動いている。 だけど言葉は届かない。何故だか分からないが声は届いてこなかった。 でも、と統夜は思う。 そんな顔で俺を見ないでくれ、と。 俺はカティアもメルアも救えなかった。助けられなかった。 いや、助けようとすら思わなかったんだ。 そりゃ、気にはなったさ。 だけど、自分のことで頭が一杯で! あんた達のことまで気が回らず!! ただ……自分が生き延びることしか……選ばなかった。 仕方ないだろう。 一人しか、一人しか生き残れないんだ。 だから…… だから…… 頼むから、そんな優しい顔でうれしそうにこっちを見ないでくれ。 そんな顔される資格なんて俺には……ないのだから……。 目の前の黒髪の少女は少し驚いたような表情を浮かべて、何かを口走り、そして深々と頭を下げた。 だけれども、言葉はやはり泡となって大気にとけ、届いてくることはなかった。 ◇ 目を開けると目の前にぼやけた壁があった。 右手は毛布を掴み、体は猫のように丸まっている。 寝てたのかと思い、体を起こすと頬を伝って涙が零れ落ちた。 それを見て、我ながら女々しいと思う。 何故こんな夢を見たのか。 おそらくは覚悟が足りないのだろう。 一人生き残ることを誓いつつも、誰一人殺せず。未だに迷ってあんな夢を見る。 覚悟が足りない証拠だ。 お前は生き残りたいのだろう? 生き残ると決めたのだろう? 違うか? 大きく長く息を吐く。顔を上げ宙空の一点をぼんやりと見つめる。 「違わないさ……」 ポツリと呟いた。 ――そうだ。何も違わない。 周囲を埋め尽くしている水の振動が伝わり、機体が震える。 レーダーが接近してくる何かを捕らえた。 ――ならば、どうする? 上空にゆっくりと何かが接近してくる。 ――決まっている。 「斬ろう……敵も……迷いも……」 気取られぬようゆっくりと機体を起こすと体勢を整え、しっかりとした足場を探す。 慎重に、慎重にだ。 足場が整うと今度はオープンチャンネルのスイッチを入れた。 通信する気はない。だから身は潜め、呼吸の音にすらも気を使う。 やがて独り言を漏らす女の声がコックピットに響いた。ほっと一息。 テニアではない。声が違った。 懸念が晴れる。同時に、またどうにもならない事に拘っている、と自分を叱り付ける。 だが、後はやることをやるだけ。目の前のことに集中するだけだ。 敵機が直上に迫る。 頼む。気づかないでくれ、と念じている自分に気づいた。 同時に大丈夫だと理性が囁く。 夜の湖底。月明かりも届かぬそこは決して湖上から見えないはず。 仮に見えたとしても、微動だにしないヴァイサーガは暗礁のようにしか映らないはずだ。 そして、レーダー。恐らくは敵のレーダーもこちらを捉えているだろう。 だが、オープンチャンネルで漏れてくる言葉を聞く限りは、こちらに気づいたそぶりはない。 何に気を取られているのかは知らないが、運はこちらに傾いている。 大丈夫。この奇襲は成功する。そう念じて心を落ち着かせる。 やがて、敵機はゆっくりと上空を通過する。不審なところは何もない。 落ち着け。落ち着けと自分に言い聞かせて、逸る心を抑えた。 パネルを引き出しゆっくりとコードを入力する。 一撃でかたをつける。そのために入力したコードは―― ――『光刃閃』―― 掌に刃の重さを感じ、足場を踏みしめ、ヴァイサーガは音を超え、一筋の閃光となって突撃した。 瞬く間に水中を抜け、闇夜に飛び出る。 風を斬り、鞘から解き放たれた居合いの一撃は深々とラーゼフォンに食い込んだ。 背後のからの虚を突いた不意打ち。防ぐ術はない。 轟音が遅れてやってくる。同時に硬く重い衝撃が伝わる。 咄嗟に感じ取る、このままでは刃が止まると。 いかにヴァイサーガ最大の攻撃である光刃閃といえど、50m級の機体を一刀の元に両断するのは容易なことではない。 深々と食い込みはすれど、その屈強で頑丈な装甲が刃を止める。 それを力ずくで抜くには、片手の居合いでは腕力が足りなかった。 ――重い。凄く重い。これが断ち切ろうとしているものの重み。 鞘に添えていた手を離す。 刀の勢いが完全に止まってしまう前に柄へと手を伸ばす。 ――これをここで断ち切る!! 片手から諸手へ。両の手に力がこもり、男は獣のような咆哮を挙げる。 そして、一刀の元にラーゼフォンは両断され、刃が抜けた。 止まらぬ勢いのまま上空に投げ出された無防備なヴァイサーガの中、統夜はラーゼフォンを睨む。 ラーゼフォンの傷口は狙った正中線を逸れ、右腰から入り上へ。そして、右肩殆ど首の付け根といってもいいあたりから抜けていた。 ショートした回線が火花を散らし、潤滑油にでも引火したのか、濛々と黒煙が噴き上げている。 その様を見て統夜は小さくガッツポーズをした。全身にじっとりと汗をかいている自分に気づく。 緊張が解けて、ぐったりとシートに沈み込む。そして、何かが聞こえた。 思わず顔をあげて周囲を見回す。 不審なものはないもない。あるのは夜空に浮かぶ月と黒煙を上げて燃え盛る大型機。 ――今の声は一体どこから? そう思ったとき、統夜は思い出した。通信回線を開いたままにしていたということを。 ということは――。 全身を怖気が襲った。通信から漏れてくるのは生きながらに焼かれる人の声。 大きく損傷した機体のせいか、よくは聞き取れない。 だがしかし、これは悲鳴だ。人の叫び声だ。 それが『熱い』と言っている。『助けて』と言っている。 咄嗟に耳を両の手でふさぐ。それでも脳髄に叩き込まれた声は消えない。 通信を切ろう。そう思い、手を伸ばした。 だが、まるで真冬の悴んだ手のように震え、言うことを聞かない。そしてその手は統夜の望むことと反対のことをした。 映像通信のスイッチが入り、通信が繋がる。 そして、目に飛び込んできたのは、焼け爛れ、熱に溶けた皮膚がビニールか何かのように両の腕から垂れ下がり、黒く燃え、火に包まれた何か。 だがそれでもそれは生きている。のたうち、転げ周りながらも苦しさを訴え、助けを求めている。 ――助けよう。 ここに来て始めてその言葉が脳裏に浮かんだ。 目の前で苦しんでいる人がいる。助けを請う人がいる。 惨状を目の前に、そ知らぬ顔で見ないふりが出来るような神経を紫雲統夜は持ち合わせてはいなかった。 「待ってろ! 今、助けてやる!!」 声をかけ励ます。ヴァイサーガをラーゼフォンに寄せると切り口の断面から装甲に手をかけた。 コックピットの位置は分からない。 だが、火の手が回っていることから、切り口に近い場所に位置していることは予想が付く。 だから、断面から指を食い込ませ、コックピットを探して力ずくで装甲を剥がす。 これ以外に方法が思いつかなかった。 モニターをチェック。動きが先ほどよりも弱い。 だが、声は聞こえる。 急がなければと焦りが体を支配する。 声をかけ続け、励まし続ける。 装甲を掴む。掴む。掴む。 強引に剥がす。剥がす。剥がす。 何度それを繰り返しただろう。既に装甲というより内部を掻き分けている状態に近い。 モニターの向うの動きはもうほとんど見えなくなった。 だが、たまに掠れた様な声が聞こえる。 それを希望に作業を続ける。焦りはますます体を支配していた。 そして、モニターに巨大な指のようなものが映り、鮮血が飛び散った。 一瞬の出来事に思わず呆然とする。 暫くは焦点が噛合わず、ようやく合ったときには、モニターに飛び散り、乾き焼け焦げた黒い血痕だけがそこに残っていた。 「あ……あぁ……」 声をかけようとして言葉は出ず。奥歯がカタカタと震える。 支えていたヴァイサーガーの腕が離れ、焼け焦げたラーゼフォンが水面に落下して大きな水柱を上げた。 「ちが……違う。俺は悪くない! 殺そうとしたんじゃない! 助けようとしたんだ!! 助けたかったんだ!! なのに!! なのに!!!」 涙を浮かべ、だらしなく鼻水を垂らし、誰に言うでもなく言い訳をただひたすらに繰り返す。 しかし、それを聞くべき人間はもうこの世に存在しない。 そのことに少年が気がついたとき、持って行き場のない感情は悲痛な叫びとなって、闇夜に呑まれて消えた。 「うあ……ああ……あぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっっっっっ!!!!!」 【紫雲統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態:精神不安定 機体状態:無傷、若干のEN消費 現在位置:G-8 第一行動方針:逃げ出したい 第二行動方針:他人との戦闘、接触を朝まで避ける 第三行動方針:戦闘が始まり、逃げられなかった場合は殺す 第四行動方針:なんとなくテニアを探してみる(見付けたとしてどうするかは不明) 最終行動方針:優勝と生還】 【カテジナ・ルース 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン) パイロット状況:死亡 機体状況:大破】 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルⅡ(マクロス7) パイロット状況:良好、マサキを心配 機体状況:良好、反応弾残弾なし 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:キョウスケの護衛でG-8補給ポイントへ向かう 第二行動方針:マサキの捜索 第三行動方針:味方を集める 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊 備考:ベガに対してはある程度心を開きかけています】 【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 OG2) パイロット状況:頭部に軽い裂傷、左肩に軽い打撲 機体状況:胸部装甲に大きなヒビ、機体全体に無数の傷(戦闘に異常なし) 背面ブースター軽微の損傷(戦闘に異常なし)、背面右上右下の翼に大きな歪み EN60%、スプリットミサイル残弾ゼロ、オクスタンライフル残弾B2発W1発 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:G-8で補給を完了する 第二行動方針:首輪の入手 第三行動方針:ネゴシエイターと接触する 第四行動方針:信頼できる仲間を集める 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?) 備考:アルトがリーゼじゃないことに少しの違和感を感じています】 【残り27人】 【二日目2:50】 BACK NEXT 吼えろ拳/燃えよ剣 投下順 これから ・――言葉には力を与える能がある 時系列順 吼えろ拳/燃えよ剣 BACK NEXT 暗い水の底で 統夜 決意と殺意 星落ちて石となり カテジナ 謀 ―tabakari― カミーユ これから 謀 ―tabakari― キョウスケ これから
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/61.html
追悼 ◆Y3PBSdzg36 ―――カティアちゃん… ふとメルアの声がした気がした (気のせいよね) カティアはMAPの南の方の町のほうに向かうことにしていた 理由はない なんとなくその方が逢えるかと思ったからだ できるだけ高度を上げ、目標に向かって飛び立っていった ―――しばらくして 「ひどい…!」 そこには大破した機体があった もう辺りには誰もいないようだが とりあえずバトロイドに変形して降り立つ 辺りを見回すと緊急離脱したのか穴だらけのコックピットが落ちていた 中を覗くとかろうじて女性と見分けられる死体があった 顔は無事であったので判別できたのである 女性の顔は悲しそうな顔をしていたが、気のせいか安らかにも見えた とりあえずコックピットを調べる 撃墜した相手との戦闘データを得ようとしたが機体が特殊でわからなかった (とりあえず埋めてあげよう) 機体で穴を掘りそこに死体を埋める そして数秒黙祷をささげた 目を開けた瞬間強烈な吐き気がカティアを襲う なんとかこらえ呼吸を整える 「私は、絶対に負けない!」 叫び、彼女は飛び立っていった 【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:E-3 第一行動方針:7-Dに向かう 第二行動方針:仲間を集める 第三行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【時刻:14 00】 BACK NEXT そして騎士は走り出す 投下順 黄色い幻影 そして騎士は走り出す 時系列順 赤い彗星 BACK 登場キャラ NEXT 彼女の答え カティア 堕ちた少女
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/268.html
偽名 ◆T0SWefbzRc 「ほう…」 懐から出した手鏡を覗き、男は思わず嘆息した。 「これは…」 額の、三日月型の飾りに指を這わす。 「ふむ。良いではないか。目元の造形が少し因縁深い感じだが、またそれもいいだろう」 地上にそびえる、肩に二本のドリルを白い巨大なロボット。 「あれは…」 アムロ・レイはその巨体を、何も無い平原という位置取り故にレーダーの範囲外から目視で確認した。 「どうしたものか…」 自らの機体、トーラスの変形を解き離れた場所に止める。 「あれ程の大型機だ。味方に引き込めればいいが…」 遠くからの目視だ。比較対象になる物体も無く、正確な大きさは計ることが出来ない。しかし、 ざっと見でもアムロの機体の倍の大きさはあると思われた。 「ここでこうしていても始まらない」 言いながら、操縦系に手を掛ける。 「いざとなったら変形を使って逃げられる、か?」 その頃。当の巨大なロボットのコックピットの中。 「何故だ!何故だ外れん!」 取れない。押しても引いてもヘルメットが取れない。 「く、なんと無様な…!」 男はとても焦っていた。 事の始まりは、コックピットの収納ケースに入っていたマニュアルと衣装だった。 「ふむ。スレードゲルミル、か…」 彼は最初にマニュアルに手を伸ばし、読み耽った。そして、操作法を一通り学んだ後。 「ウォーダン変身セット…!」 彼は、その項を見た瞬間、衣装に手を伸ばしていた。 アムロの優れた直感力が彼に警戒を促した。 「この感じ…!シャアか!?」 近付いて通信を繋げるまでもない。良く知った感覚だ。 「く…!向こうも気が付いたようだな」 巨人が、旋回しアムロの方に近付いてくる。 「攻撃してくるか?いや、奴だってこんな所での決着は望まないはずだ。ならば…」 通信回線を繋げるためにアムロは手を伸ばした。 「初めまして」 しかし、それよりも早く、相手は通信を繋げてきた。とりあえずは交戦の意思が無いようだ。 「初めまして…だと?」 アムロは、目を疑った。目の前にいるのは自分の良く知るシャア・アズナブルに相違ない。アムロの直感は彼にそう告げていた。だが。 「…ふざけているのか?シャア」 「私は、シャア・アズナブルなどではない。…ウォーダン。ウォーダン・ユミルだ!」 モニターに映っているのは、珍妙な仮面を付けた男が顔を真っ赤にして叫んでいる姿だった。 【アムロ・レイ 搭乗機体:トーラス(白)(新機動戦記ガンダムW) パイロット状況:シャア? 機体状況:良好 現在位置:G-1 第一行動方針:協力者を募る 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【ウォーダン・ユミル(シャア・アズナブル) 搭乗機体:スレードゲルミル(スーパーロボット大戦OG2) パイロット状況:私はシャアではない 機体状況:良好 現在位置:G-1 第一行動方針:NOT シャア宣言 最終行動方針:??? 備考:ウォーダン変身セットと手鏡を所持、ヘルメットを被って取れなくなった】 【初日 14 35】 本編10話 赤い彗星