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保全作 保全作(ルート分岐) まーどぅー編 J農編
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第一幕 暗闇に引き込まれ、落ちていく感覚。此所はどす黒い血とタールを混ぜ込んだような海。それは、憎悪と嫉妬の海。息ができない。体が動かない。 「コワイ」「クルシイ」「死ニタクナイ」 この海の奥底に棲んでいる醜悪な怪物の鳴き声だ。このまま落ちていけば僕はこの怪物たちの餌食となってしまうだろう。 「生キタイ」 生きたいのは僕の方…いや、僕は本当に生きたいのか?わからない。自分が何なのかさえわからなくなってくる。そんな虚脱感が押し寄せる。このまま僕はあの化物の虜になってしまうのだろうか。 「「君の名前は?」」 誰かの声がする…名前…? 僕の名前は…。 「フール」 そう思い浮かべた途端にチカチカと眩しい走馬灯のように様々な映像が視界いっぱいに映し出される。 それは失った過去の記憶のような、または僕が作り出したただの幻想のような、そんな曖昧さが襲ってきて、目の前が塗りつぶされた。 気がつけば僕はしっかりと地面を踏みしめていた。さっきまでの息苦しさも無い。見渡すと、霧の立ち籠めた悪趣味な空間。そうだな…僕はこの空間に見覚えがある。何度も訪れた事のある場所。僕の夢の中ではあるけれど、ここは僕の世界じゃない。此所は、「彼」の世界だ。 「やあ、来たね。さっきは危なかったじゃないか。」 「…君が助けてくれたのか、クロラー。」 「助けたわけじゃないさ。そもそも僕はあの世界に直接干渉できないからね。ただ君に…君の意思に呼びかけて、眠りかけた自我を起こしただけだよ。」 彼はクロラー。「精神回廊」の主で、僕の頭の中に住んでいる。 「ん。君の頭の中という表現は少し変だな。ここは君の脳内とも、ましてや君の住んでいる現実世界とも違うベクトルに存在している。君は偶然、いや必然に、この世界に干渉する権利を獲得しただけのことだよ。まあ僕からは君の見た事聞いた事、考えている事は大体わかっているから、君の言う事も間違いとは言い切れないけれどね。」 「…。」 そう、彼には嘘偽りは通用しないのだ…。そういう部分では厄介な存在だけれど、実際彼には何度も助けられている。 「相変わらずおしゃべりなんだね、君は。そんなになんでも知っているのなら、あの化物たちの正体もわかっているんだろ?教えてくれたって良いと思うんだけれど。」 「もちろん、知っているさ。奴らに打ち勝つ方法もね。」 「それじゃあ…。」 「だけど、これを教えてしまうと、将来的に君のためにならないんだよ。これは君が抱えている問題だ。そして君が考えている以上に深刻な問題だってことを忘れちゃならない。君の過去、そして未来にも関わってくることだからね。」 「今僕が君に助言できるとすれば…
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