約 2,706,738 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/317.html
一般的意見21(2017年):路上の状況にある子ども 一般的意見一覧 CRC/C/GC/21 配布:一般(2017年6月21日) 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) I.はじめに:「いままでと違う語り方」 II.全般的文脈 III.目的 IV.子どもの権利アプローチに基づくホリスティックな長期的戦略 V.路上の状況にある子どもに関連する条約の主要な規定 VI.普及および協力 I.はじめに:「いままでと違う語り方」 1.この一般的意見のための協議に応じてくれた路上の状況にある子どもたちは、尊重、尊厳および権利に対するニーズについて力強く口にした。自分たちの気持ちを表現するにあたり、子どもたちはとくに次のように語っている。「人間として尊重してください」「路上で暮らしたことが一度もない人たちに、私たちは普通の人たちのようにプライドのある人間なんだとわかってほしい」「僕たちを路上から追い立ててシェルターに入れればいいという話じゃない。地位を認めてくれという話なんです」「政府は、私たちが路上にいるべきではないと言うべきじゃない。路上にいてもいやがらせをするべきじゃない。私たちは受け入れられるべきなんです」「路上で暮らしているからといって、私たちが権利を持てないということにはなりません」「路上に出れば、影響が残る。そこから立ち去ろうと、そうでなかろうと」「助け、慈善、憐れみはほしくない。政府は、コミュニティと協働して僕たちに権利を与えるべきです。僕たちは慈善を求めているんじゃない。自分でやっていける人間になりたいんです」「(人々は)僕たちに、夢をかなえるために才能を活用するチャンスを与えてくれるべきです」「いままでと違う語り方をする機会をください」[1] [1] 引用した子どもたちの声はいずれも、この一般的意見のための協議で出されたものまたは提出された意見書に掲載されていたものである。それぞれ、バングラデシュの子どもたち(ダッカから提出された意見書)、ラテンアメリカの子どもたち(メキシコにおける協議)、ブラジルの15歳男子、インドの18歳男子・女子、コンゴ民主共和国の子ども・若者たち、ヨーロッパの子ども・若者たち(ブリュッセルにおける協議)、パキスタンの16歳男子、ブルンジの男子、ブラジルの18歳男子の声。 II.全般的文脈 趣旨 2.この一般的意見で、子どもの権利委員会は、路上の状況にある子どもに関する包括的かつ長期的な国家的戦略(ホリスティックな子どもの権利アプローチを活用し、かつ子どもの権利条約にのっとって防止および対応の両方を取り上げるもの)の策定についての有権的指針を提示する。条約はこれらの子どもに明示的に言及していないものの、条約のすべての規定は、条約の大部分の条項の違反を経験している、路上の状況にある子どもにも適用されるものである。 協議 3.7回の地域協議で、32か国の子ども・若者たち計327名が協議の対象とされた。市民社会を代表する人々が意見書提出の一般的呼びかけに応じてくれたほか、先行版草案は全締約国と共有された。 用語 4.これまで、路上の状況にある子どもを表すための用語として「ストリートチルドレン」(street children)、「路上にいる子ども」(children on the street)、「路上の子ども」(children of the street)、「家出した子ども」(runaway children)、「放逐された子ども」(throwaway children)、「路上で生活しかつ/または働いている子ども」(children living and/or working on the street)、「ホームレスの子ども」(homeless children)、「路上とつながっている子ども」(street-connected children)等が用いられてきた。この一般的意見では「路上の状況にある子ども」(children in street situations)を用い、(a) ひとりでいるか仲間または家族と一緒にいるかを問わず、路上に依存して生活しかつ/または働いている子ども、および、(b) より幅広い層の子どもであって、公共空間と強いつながりを形成しており、かつその日常生活およびアイデンティティにおいて路上がきわめて重要な役割を果たしている子どもを包含するものとする。このより幅広い層には、常時ではないものの周期的に路上で生活しかつ/または働いている子ども、および、路上で生活しまたは働いているわけではないものの、仲間、きょうだいまたは家族に同行する形で定期的に路上に出ていく子どもが含まれる。路上の状況にある子どもに関わって、「公共空間にいる」(being in public spaces)とは、路上または露店市場、公園、公共のコミュニティ空間、広場ならびにバスおよび鉄道の駅で相当の時間を過ごすことも含むものとして理解される。学校、病院またはこれに類する施設のような公共建築物は含まない。 主要な所見 5.路上の状況にある子どもとの関連では複数の異なるアプローチが用いられており、時にはそれらが組み合わされている。これには、子どもの権利アプローチ(子どもが権利の保有者として尊重され、かつ決定がしばしば子どもとともに行なわれるもの)、福祉アプローチ(子どもを客体または被害者として捉えて路上からの「救出」が図られ、かつ子どものための決定がその意見を真剣に考慮することなく行なわれるもの)および抑圧アプローチ(子どもが非行少年と捉えられるもの)等がある。福祉アプローチおよび抑圧アプローチは子どもが権利の保有者であることを考慮しておらず、かつ子どもを路上から強制的に排除することにつながるので、その権利をさらに侵害することになる。実際のところ、福祉アプローチおよび抑圧アプローチが子どもの最善の利益にかなうと主張しても、それが権利を基盤とするアプローチになるわけではない [2]。条約を適用するためには子どもの権利アプローチを用いることが不可欠である。 [2] 一般的意見13号(あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利、2011年)、パラ59および一般的意見14号(自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利、2013年)参照。 6.路上の状況にある子どもは均質な集団ではない。とくに年齢、性別、民族、先住民族としてのアイデンティティ、国籍、障害、性的指向およびジェンダーアイデンティティ/ジェンダー表現という観点からの特質は多様である。このような多様性は、さまざまな経験、リスクおよびニーズがあることを含意する。物理的にどのようにおよびどのぐらいの時間路上にいるかは子どもによって相当に異なっており、仲間、家族構成員、コミュニティの構成員、市民社会関係者および公的機関との関係の性質および規模も同様である。子どもたちの人間関係は、路上で生き抜くうえで役に立つ場合もあれば、その権利が暴力的に侵害される状況の固定化につながる場合もある。子どもたちは、公共空間において、仕事、社会化、レクリエーション/余暇、寝泊まりする場所の確保、睡眠、調理、洗濯および有害物質濫用または性的活動を含むさまざまな活動に従事している。子どもたちは、このような活動に自発的に従事することもあれば、現実的な選択肢がないために、または他の子どももしくは大人による威迫または強制を通じて、従事することもある。子どもたちは、このような活動を単独で行なうこともあれば、家族構成員 [3]、友人、知り合い、ギャングの構成員または子どもを食い物にしようとする仲間、年長の子どもおよび/もしくは大人とともに行なうこともある。 [3] 家族とともに路上の状況にある子どもについて、この一般的意見では主たる権利の保有者である子どもに焦点を当てる。路上の状況にある子どもが自分自身の子どもを持っている場合、各世代の子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。 7.データが体系的に収集されまたは細分化されていないことが多いため、何人の子どもが路上の状況にあるのかはわかっていない。推定数は、社会経済的、政治的、文化的その他の諸条件を反映した、用いられる定義によって変動する。データが存在しないためにこれらの子どもは不可視化されており、そのために政策が策定されず、または場当たり的な、一時的なもしくは短期的な措置しかとられない状況が生じている。その結果、子どもを路上に追いやり、かつ子どもが路上にいるときにも継続する複合的な権利侵害が根強く残ってしまう。この問題はすべての国に関わるものである。 8.子どもが路上の状況に置かれる現象の原因および広がりならびにこのような子どもの経験は、国の内部でも国によっても異なる。経済的地位、人種およびジェンダーに基づく不平等は、路上の状況にある子どもの出現および排除の構造的原因のひとつである。このような不平等は、物質的貧困、社会的保護の不十分さ、対象等が明確化されていない投資、腐敗、および、より貧しい人々が貧困から脱出する能力の弱体化または消失につながる財政(税・支出)政策によって悪化させられる。紛争、飢饉、伝染病の流行、自然災害もしくは強制立退きによって引き起こされる突然の不安定化、または避難もしくは強制移住につながる出来事により、構造的原因の影響がさらに加重される。その他の原因として挙げられるのは、家庭またはケアもしくは教育のための施設(宗教的施設を含む)における暴力、虐待、搾取およびネグレクト、養育者の死亡、子どもの遺棄(HIV/AIDSによるものを含む)[4]、養育者の失業、不安定な家庭状況、家庭の崩壊、複婚 [5]、教育からの排除、(子どもまたは家族の)有害物質濫用および精神的疾患、不寛容および差別(障害のある子ども、魔術を行なう者であると非難されている子ども、家族から拒絶された元子ども兵士、および、自己のセクシュアリティについて疑問を持ちまたはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスもしくはエイセクシュアル(無性愛)であると自認したために家族から追放された子どもに対するものを含む)、ならびに、児童婚および女性性器切除のような有害慣行 [6] に対する子どもの抵抗を受け入れられない家族の姿勢等がある。 [4] 一般的意見3号(HIV/AIDSと子どもの権利、2003年)、パラ7参照。 [5] 女性差別撤廃委員会の合同一般的勧告31号/子どもの権利委員会の合同一般的意見18号(有害慣行、2014年)、パラ25-28参照。 [6] 前掲パラ19-24。 III.目的 9.この一般的意見の目的は次のとおりである。 (a) 路上の状況にある子どものための戦略および取り組みに子どもの権利アプローチを適用するにあたって国が負う義務を明らかにすること。 (b) 子どもが権利侵害、および、生存および発達のために路上に依存しなければならない状態につながる選択肢の欠如を経験しなくてもすむようにし、かつ、すでに路上の状況にある子どもの権利を、一連のケアを確保しかつ子どもが自己の可能性を全面的に発達させられるよう援助しながら促進しかつ保護することを目的として、ホリスティックな子どもの権利アプローチを活用することに関する、国に対する包括的かつ有権的な指針を提示すること。 (c) 路上の状況にある子どもが権利の保有者および完全な市民として尊重されることを増進させるため、これらの子どもにとって条約の特定の条項がどのような意味を持っているのかを明らかにするとともに、子どもが有している路上とのつながりに関する理解を増進させること。 IV.子どもの権利アプローチに基づくホリスティックな長期的戦略 A.子どもの権利アプローチ 説明 10.子どもの権利アプローチにおいては、子どもの権利を実現するプロセスが最終的成果と同じぐらい重要になる。子どもの権利アプローチは、権利の保有者としての子どもの尊厳、生命、生存、ウェルビーイング、健康、発達、参加および差別禁止を確保するものである。 11.国連児童基金(UNICEF)によれば [7]、子どもの権利アプローチとは次のようなものである。 (a) 条約その他の国際人権文書で確立された子どもの権利の実現をさらに進める。 (b) 振舞い、行動、政策およびプログラムの指針として、条約その他の国際人権文書に定められた子どもの権利に関する基準および原則(とくに差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利、意見を聴かれかつ真剣に考慮される権利、ならびに、自己の権利の行使にあたり、子どもの発達しつつある能力にしたがって養育者、親およびコミュニティの構成員による指導を受ける子どもの権利)を活用する。 (c) 子どもが権利の保有者として自己の権利を主張する能力、および、義務の保有者が子どもに対して負っている自己の義務を履行する能力を構築する。 [7] UNICEF, Child Rights Education Toolkit Rooting Child Rights in Early Childhood Education, Primary and Secondary Schools (Geneva, 2014), p. 21 参照(https //www.unicef.org/crc/files/UNICEF_CRE_Toolkit_FINAL_web_version170414.pdf より入手可)。一般的意見13号、パラ59も参照。また、"Human Rights Based Approach to Development Cooperation" も参照(http //hrbaportal.org/the-human-rights-based-approach-to-development-cooperation-towards-a-common-understanding-among-un-agencies より入手可)。 路上の状況にある子どもにとっての重要性 12.委員会は、子どもの権利アプローチを採用する戦略および取り組みにおいては、段階または文脈にかかわらず、望ましい実践に関する主要な基準が充足されるものであると考える。路上の状況にある子どもは、自分たちの生活に対する大人の介入に不信感を抱いていることが多い。これらの子どもは、社会で大人から人権侵害的取扱いを受けてきたせいで、たとえ限られたものとはいえやっとのことで勝ちとった自律を放棄することにためらいを覚えるようになっている。この〔子どもの権利〕アプローチが重視するのは、これらの子どもが路上への依存に代わる手段を見出せるよう支援することを含む、子どもの自律の全面的尊重である。そこではこれらの子どものレジリエンスおよび対処能力が促進され、意思決定における主体性の強化と、社会経済的、政治的および文化的主体としてのエンパワーメントが図られる。このアプローチは、このような子どもがすでに有している強みと、自分自身の生存および発達ならびに仲間、家族およびコミュニティの生存および発達に対する積極的貢献に立脚するものである。このようなアプローチを適用することは、道徳的および法的要請であるのみならず、長期的な解決策を路上の状況にある子どもたちとともに特定しかつ実施していくための、もっとも持続可能なアプローチでもある。 B.国家的戦略 概要 13.条約上の義務を遵守するため、国は、路上の状況にある子どものためのホリスティックかつ長期的な戦略を採択し、かつ必要な予算配分を行なうよう促される。以下、諸分野を横断する問題およびプロセスを掲げた後、このような戦略で取り上げられるべきテーマ別の内容を扱う。路上の状況にある子どもたちが、自分たち自身の生活に関する専門家として、戦略の策定および実施に参加するよう求められる。国にとっての第一歩は、これらの子どもの権利を擁護する最善の方法を決定する目的で、自国にいるこれらの子どもに関する情報を収集することである。国は、ある分野(たとえば財政分野)の政策が他の分野(たとえば教育分野)にどのような影響を及ぼし、ひいては路上の状況にある子どもたちにどのような影響が生じるかを理解するため、分野横断的アプローチをとるよう求められる。国は、部門横断的な協力および国家間の協力を奨励するべきである。 立法および政策の見直し 14.国は、この一般的意見の勧告を反映させる目的で法律および政策をどのように改善できるかについて、評価を行なうべきである。国は、即時的効果をともなう対応として、子どもまたはその親もしくは家族が路上の状況にあることを理由として直接間接の差別を行なっている規定を削除し、子どもおよびその家族を路上または公共空間から一斉にまたは恣意的に退去させることを認めまたは支持するいかなる規定も廃止し、路上の状況にある子どもを犯罪者として扱いかつこれらの子どもに不均衡な影響を及ぼす罪名(物乞い、夜間外出禁止規定違反、徘徊、浮浪および家出等)を適宜廃止し、かつ、商業的性的搾取の被害者であることを理由に子どもを犯罪者として扱う罪名およびいわゆる道徳犯罪(婚姻外の性交渉等)を廃止するよう求められる。国は、子どもの権利アプローチに基づき、かつ路上の状況にある子どもについて具体的に取り上げる子ども保護法または子ども法を導入しまたは見直すべきである。このような法律は、権限付与のための政策、委任命令、運用手続、指針、サービス提供、監督および執行機構によって実施されるべきであり、またその制定にあたっては主要な関係者(路上の状況にある子どもたちを含む)と連携することが求められる。国として、法的権限を委ねられた専門家およびサービス機関による支援介入を容易にするために必要な状況下において、参加型調査に基づき、国内的関連性を有する政策およびこのような子どもの法的定義を定めなければならない場合もありえよう。ただし、法的定義を定める手続によって、権利侵害に対処するための行動が遅延させられるべきではない。 国の役割ならびに国以外の主体の責任、規制および調整 15.路上の状況にある子どものための戦略では、国および国以外の主体が認知されるべきである。第一次的義務を負う国の役割については後継Vで述べる。国は、親または養育者が、その能力および資力の範囲内でかつ子どもの発達しつつある能力を尊重しながら、子どもの最適な発達のために必要な生活条件を確保することを援助する義務を負う(第5条、第18条および第27条)。国はまた、補完的主体である市民社会組織が、子どもの権利アプローチに基づき、路上の状況にある子どものために個別化された専門的サービスを提供するにあたっても、資金提供、認可および規制を通じて支援を行なうべきである。企業セクターは子どもの権利に関わる責任を履行しなければならず、国はそのことを確保するよう求められる [8]。国と国以外の主体との調整が必要である。国には、国以外のサービス提供者が条約の規定にしたがって活動することを確保する法的義務がある [9]。 [8] 一般的意見16号(企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務、2013年)、パラ8参照。 [9] 一般的意見5号(子どもの権利条約の実施に関する一般的措置、2003年)、パラ42-44、同7号(乳幼児期における子どもの権利の実施、2005年)、パラ22、同9号(障害のある子どもの権利、2006年)、パラ25および同16号、パラ25参照。 複雑さへの対処 16.戦略では、構造的不平等から家族間暴力に至る複合的な原因を取り上げなければならない。また、即時的実施のための措置(子どもの一斉検挙または公共空間からの恣意的退去の強制を停止すること等)および漸進的に実施すべき措置(包括的な社会的保護等)も考慮する必要がある。法改正、政策転換およびサービス提供のあり方の変更を組み合わせることが必要になる可能性が高い。国は、子ども時代が終了して以降も人権を充足していくことへの決意を表明するよう求められる。国はとくに、代替的養護の環境および路上の状況にある子どもについて、支援およびサービスが突然停止されないようにするため、これらの子どもが18歳に達して成人期に移行する際のフォローアップのための機構を確保するべきである。 包括的な子ども保護制度 17.立法上および政策上の枠組みのなかで、子どもの権利アプローチを基盤とするホリスティックな子ども保護制度のために予算を拠出し、このような制度を発展させかつ強化することは、防止および対応のための戦略において必要とされる実際的措置の基礎である。このような国家的な子ども保護制度は、路上の状況にある子どもに手を差し伸べられるものでなければならず、かつこのような子どもが必要とする具体的サービスを全面的に編入したものであるべきである。このような制度は、あらゆる関連の状況を横断した一連のケア(防止、早期の支援介入、路上でのアウトリーチ、ヘルプライン、ドロップインセンター、デイケアセンター、一時入所ケア、家族再統合、里親養育、自立生活または他の短期的もしくは長期的な養育オプションを含む)を提供するものでなければならない。ただし、このような状況のすべてが、路上の状況にあるすべての子どもにとって妥当性を有するわけではない。たとえば、防止および早期の支援介入は、路上との強くかつ有害なつながりを発展させつつある初期段階の子どもにとっては優先的課題だが、路上の状況下で生まれた子どもにとっては妥当ではない。入所措置を経験していない子どももいる可能性がある一方、家族再統合が妥当または適切ではない子どもも存在する。戦略においては、子どもの権利アプローチがひとつひとつの状況に適用されることを明確にするべきである。子ども保護制度にアクセスする際の行政的負担および遅延は軽減することが求められる。情報は、子どもにやさしくかつアクセスしやすい形式で利用可能とされるべきであり、かつ、路上の状況にある子どもに対し、子ども保護制度を理解しかつうまく活用するための支援が提供されるべきである。 子どもと接触する人々の能力構築 18.国は、路上の状況にある子どもと直接間接に接触する可能性がある、政策立案、法執行、司法、教育、保健、ソーシャルワークおよび心理学等の分野のすべての専門家を対象とした、子どもの権利、子どもの保護および路上の状況にある子どもの地域的背景に関する良質かつ基礎的な着任前研修および現職者研修に投資を行なうべきである。このような研修は、国以外の主体の専門性を活用して実施することも考えられるほか、関連の養成機関のカリキュラムに統合することが求められる。指定された任務の一環として路上の状況にある子どもとともに働く専門家(たとえば路上を基盤とするソーシャルワーカーおよび警察の子ども保護専門部署等)に対しては、子どもの権利アプローチ、心理社会的支援および子どものエンパワーメントに関する綿密な付加的研修が必要である。「アウトリーチ・ウォーク」や「ストリート・ウォーク」は、現場研修の重要な手法に数えられる。基礎研修および専門研修には態度面および行動面の変革ならびに知識伝達およびスキル開発が含まれるべきであり、また部門を越えた協力および連携が奨励されるべきである。国および地方の政府は、危険な状況にある子どもがいる家族および路上の状況にある子どもの早期発見およびこれらの家族および子どもに対する支援の提供においてソーシャルワーカー(路上を基盤とするソーシャルワーカーを含む)が果たしているきわめて重要な役割を理解しかつ支援することが求められる。専門家には、運用手続、望ましい実践のあり方に関する指針、戦略的訓令、諸計画、達成基準および懲戒規則を参加型のやり方で策定する過程への関与が求められるべきであり、かつこれらを実際に実施するための支援が提供されるべきである。国は、路上の状況にある子どもと直接間接に接触する可能性があるその他の関係者(交通機関で働く人々、メディアの代表、コミュニティおよび精神的/宗教的指導者ならびに民間セクター関係者等)を対象とする感受性強化および研修を促進するよう求められる。これらの関係者は、「子どもの権利とビジネス原則」[10]を採択するよう奨励されるべきである。 [10] http //childrenandbusiness.org 参照。また一般的意見16号も参照。 サービス提供 19.国は、路上の状況にある子どもが保健および教育等の基礎的サービスならびに司法、文化、スポーツおよび情報にアクセスできることを保障するための措置をとるべきである。国は、地元の路上のつながりを熟知しており、かつ子どもが家族、地元のコミュニティサービスおよび一般社会とつながり直すことを援助できる、訓練を受けたソーシャルワーカーの関与を得た路上における専門的サービスのための対応が、自国の子ども保護制度においてとられることを確保するよう求められる。このことは、子どもが路上とのつながりを放棄しなければならないことを必ずしも意味するものではなく、むしろ支援介入においてはこれらの子どもの権利が保障されるべきである。防止、早期の支援介入および路上を基盤とする支援サービスは相互に強化しあう要素であり、効果的、長期的かつ効果的な戦略の枠組みのなかで一連のケアを提供することにつながる。第一次的に義務を負うのは国であるものの、市民社会の活動は、革新的かつ個別化されたサービス対応を発展させかつ提供していく国の努力を補完するものとなる可能性がある。 地方政府レベルでの実施 20.取り組みの成功は、地元の状況に関する詳細な理解および子どもに対する個別化された支援にかかっている。取り組みを拡大する際には、その過程で子どもたちを見失うことがないよう配慮されなければならない。国は、小規模かつ柔軟で、十分な予算を有しており、しばしば地域的専門性を持った市民社会組織が主導している、子どもの権利アプローチを基盤とした、地方レベルの、パートナーシップに基づく専門的支援介入を奨励しかつ支援するよう求められる。これらの支援介入は、地方政府が調整し、かつ国が全国的な子ども保護制度を通じて支援するべきである。これらの支援介入にとって、能力構築のための資源および組織運営スキルについては民間セクターからの、また科学的知見に基づいた意思決定を可能にする調査能力については学術研究機関からの、支援が役に立ちうる。子どもにやさしいまちおよびコミュニティは、路上の状況にある子どもを受容する雰囲気づくりに貢献し、かつこれらの子どものための社会的ネットワークおよびコミュニティを基盤とする保護制度の基礎となる。路上の状況にある子どもに対し、地方における、分権化されたボトムアップ型の計画プロセスに参加するための支援が提供されるべきである。 監視および説明責任の確保 21.法律、政策およびサービスの効果的実施は、透明でありかつしっかりと執行される、監視および説明責任の確保のための明確な機構にかかっている。国は、路上の状況にある子どもに焦点を当てながら公共政策を監視する、国および国以外の主体の連合組織、委員会または作業部会のような社会的説明責任の確保のための機構等への、路上の状況にある子どもの関与を支援するべきである。子どもの権利オンブズパーソン等の、条約の実施を促進しかつ監視するための独立した国内人権機関 [11] は、路上の状況にある子どもにとって容易にアクセスできるものでなければならない。 [11] 一般的意見2号(子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割、2002年)、パラ2および15参照。 司法および救済措置へのアクセス 22.路上の状況にある子どもであって人権侵害の被害者またはサバイバーである子どもには、実効的な法的その他の救済措置(弁護士による代理を含む)に対する権利がある。これには、子ども自身および(または)大人の代理人による個人の苦情申立てのための機構へのアクセス、ならびに、国および地方のレベルにおける司法的および非司法的救済機構(独立した人権機関を含む)へのアクセスが含まれる。国内的救済措置が尽くされたときは、適用される国際的人権機構(通報手続に関する条約の選択議定書によって設置された手続を含む)にアクセスできるようにされるべきである。被害回復のための措置としては、賠償、補償、リハビリテーション、謝罪および権利侵害の再発防止の保証などが考えられる [12]。 [12] www.ohchr.org/EN/ProfessionalInterest/Pages/RemedyAndReparation.aspx 参照。 データ収集および調査研究 23.国は、学術研究機関、市民社会および民間セクターと提携して、路上の状況にある子どもについてデータを収集しかつ細分化された情報を共有するための、体系的な、権利を尊重する参加型の機構を発展させるべきである。国は、このような情報の収集および利用がこれらの子どもにスティグマを付与しまたは害を及ぼすことがないようにしなければならない。路上の状況にある子どもについてのデータの収集は、子どもに関する国家的なデータ収集に統合されるべきであり、その際、国内データが世帯調査だけに依拠するのではなく、世帯環境の外で暮らしている子どもも対象とすることを確保するべきである。調査研究の目的および項目の設定、ならびに、情報の収集、政策立案の参考に供するための調査研究の分析および普及ならびに専門的支援介入の立案に、路上の状況にある子どもが参加することが求められる [13]。路上の状況は急速に変化するのであり、調査研究は、政策およびプログラムが更新されることを確保するために定期的に実施されなければならない。 [13] Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights (OHCHR), "A Human Rights-Based Approach To Data" 参照。www.ohchr.org/Documents/Issues/HRIndicators/GuidanceNoteonApproachtoData.pdf より入手可。 V.路上の状況にある子どもに関連する条約の主要な規定 概観 24.条約およびその選択議定書に掲げられたすべての権利は、すべての子どもにとってと同じように路上の状況にある子どもにとっても、相互関連性および不可分性を有している。この一般的意見は、委員会の他のすべての一般的意見とあわせて読まれるべきである。この一般的意見では、路上の状況にある子どもにとって特段の重要性があり、かつこれまで委員会による一般的意見の焦点とされてこなかった条項に焦点を当てる。たとえば、暴力、教育、少年司法および健康に関連する規定が重要なのは明らかだが、ここでは、すでに採択した一般的意見をどちらかといえば簡潔に参照する形でしか取り上げていない。他方、他のいくつかの条項については、路上の状況にある子どもにとっての意味合いおよび委員会がこれまで詳細に検討してこなかった経緯に鑑み、より詳しく吟味している。以下の条項の選択は、路上の状況にある子どもにとって社会的、経済的および文化的権利よりも市民的及び政治的権利が優越することを意味するものではない。 A.子どもの権利アプローチにおいて総括的関連性を有する条項 第2条:差別の禁止 社会的出身、財産、出生その他の地位を理由とする差別の禁止 25.国は、自国の管轄内にある子ども1人ひとりに対し、いかなる種類の差別もなく、条約に掲げられた権利を尊重しかつ確保しなければならない。しかし、子どもたちは差別を主要な原因のひとつとしてが路上の状況に身を置くことになっている。子どもたちは次に、路上とつながりを持っていることに基づいて、すなわちその社会的出身、財産、出生その他の地位を理由として差別されることになり、生涯にわたる悪影響を受けることになるのである。委員会は、条約第2条に基づく「その他の地位」を、子どもまたはその親その他の家族構成員が路上の状況にあることを含むものと解釈する。 制度的差別 [14] 26.差別は直接的である場合もあれば間接的である場合もある [15]。直接差別には、「ホームレス問題に対処する」ための不均衡な政策アプローチであって、物乞い、徘徊、浮浪、家出および生き残るための行動を防止するために抑圧的取り組みを行なうもの(たとえば地位犯罪の法定 [16]、路上浄化活動または「一斉検挙」ならびに警察による標的化された暴力、いやがらせおよび強要行為など)が含まれる。直接差別には、路上の状況にある子どもが窃盗または暴力の被害を申告した場合に警察が真剣に対応しようとしないこと、少年司法制度において差別的取扱いを受けること、ソーシャルワーカー、教員または保健ケア専門家が路上の状況にある子どもへの支援を拒むこと、ならびに、学校で仲間および教員によるいやがらせ、辱めおよびいじめを受けることも含まれる場合がある。間接差別には、たとえば料金の支払いまたは身分証明書の提示を要求することによって基礎的サービス(保健および教育など)からの排除をもたらす政策が含まれる。路上の状況にある子どもは、たとえ基礎的サービスから隔離されなくとも、そのような制度の内部で隔離される可能性がある。子どもは、たとえばジェンダー、性的指向およびジェンダーアイデンティティ/ジェンダー表現、障害、人種、民族、先住民族としての地位 [17]、出入国管理上の地位およびその他のマイノリティとしての地位(とくに、マイノリティ集団は路上の状況にある子どもたちのなかで人口比以上の比率を占めていることが多いため)を理由とする、複合的かつ交差的形態の差別に直面する場合もある。差別の対象とされる子どもは、暴力、虐待、搾取〔および〕HIVを含む性感染症の被害をいっそう受けやすい立場に置かれ、その健康および発達がさらなる危険にさらされる [18]。国は、差別の禁止に対する権利の保障とはあらゆる形態の差別を禁止する消極的義務に留まるものではなく、条約上の権利を享受する実効的な機会平等をすべての子どもに対して確保するための適切な積極的措置も要求するものであることを、想起するよう求められる。そのためには、実質的不平等の状態を是正するための積極的措置が必要である [19]。制度的差別は法律上および政策上の変化に敏感であり、したがってこれらの変化によって対処することができる。路上の状況にある子どもたちは、公衆による差別および否定的態度に直面していることを具体的な懸念として強調するとともに、それに対抗するための意識啓発措置および教育的措置を求めている。 [14] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見20号(経済的、社会的および文化的権利に関する差別の禁止、2009年)、パラ12参照。 [15] 前掲、パラ10参照。 [16] 一般的意見4号(条約の文脈における思春期の健康と発達、2003年)、パラ12および一般的意見10号(少年司法における子どもの権利、2007年)、パラ8-9参照。 [17] 一般的意見11号(先住民族の子どもとその条約上の権利、2009年)参照。 [18] 一般的意見4号、パラ6および同3号、パラ7参照。 [19] 一般的意見4号、パラ41参照。 差別の解消 27.差別は、国の憲法、法律および政策において路上の状況にあることを理由とする差別が行なわれないことを確保することによって形式的に、また路上の状況にある子どもたちに対し、根強い偏見に苦しんできて積極的差別是正措置を必要としている集団として十分な注意を払うことによって実質的に、解消されるべきである [20]。路上の状況にある子どもの事実上の平等を加速させまたは達成するために必要な一時的な特別措置は、差別とみなされるべきではない。国は、路上の状況にある子どもが法の下で平等であること、路上の状況にあることを理由とするすべての差別が禁止されること、差別およびいやがらせの扇動 [21] への対処が行なわれること、路上の状況にある子どもおよびその家族が財産を恣意的に奪われないこと、ならびに、夜間外出禁止規定が法律に適合した、比例性を有する、かつ非差別的なものであることを確保するべきである。国はまた、態度を積極的な方向で変革する目的で、路上の状況にある子どもの経験および権利に関する専門家、民間セクターおよび公衆の感化を図るよう求められる。国は、路上の状況にある子どもたちが主導しまたは関与する創造的な芸術プログラム、文化プログラムおよび(または)スポーツプログラムであって、目に見える相互の対話および交流を通じ、専門家、コミュニティ(他の子どもたちを含む)およびより幅広い社会とともに誤った考え方への対処および障壁の打破に役立つプログラムを支援するべきである。このようなプログラムとしては、路上のサーカス、演劇、音楽、アートおよびスポーツマッチなどが考えられる。国は、子どもの権利アプローチに基づいて感化およびスティグマ除去のためのメッセージならびにストーリーを普及させかつ増幅させる目的で、印刷媒体、放送媒体およびソーシャルメディアと協働するべきである。路上の状況にある子どもが行なう犯罪についての公衆の恐怖心は、メディアによって煽られた、現実に見合わないものであることが多い。メディアは、正確なデータおよび証拠を活用し、かつ、子どもの尊厳、身体的安全および心理的不可侵性を保障するための子どもの保護基準にしたがうよう、積極的に奨励されるべきである。 [20] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見20号、パラ8参照。 [21] 前掲、パラ7。 第3条(1):子どもの最善の利益 28.この権利に付随する義務は、路上の状況にある子どものホリスティックな身体的、心理的および道徳的不可侵性を保全し、かつその人間の尊厳を促進するための、子どもの権利アプローチの一環としての基本的義務である。これらの子どもはとりわけ脆弱な状況に置かれていることが明らかにされてきている。委員会がすでに指摘したように、特定の脆弱な状況に置かれた子どもの最善の利益は、同じ脆弱な状況に置かれたすべての子どもの最善の利益と同一にはならないであろう。子どもは一人ひとり独自の存在であり、かつ各状況はその子どもの独自性にしたがって評価されなければならないので、公的機関および意思決定担当者は、子ども一人ひとりが有する脆弱性の種類および度合いの違いを考慮に入れなければならない [22]。このような文脈においては、「脆弱」性は、路上の状況にある個々の子どもの回復力および自立との関連で考慮されるべきである。 [22] 一般的意見14号 、75-76参照。} 第6条(生命、生存および発達に対する権利 生命に対する権利 29.路上の状況にある子どもは、とくに国の関係者によって超法規的に殺害され、大人または仲間によって殺害され(いわゆる自警団的正義と関連する殺人を含む)、かつ犯罪者個人およびギャングと関係を持たされる/その標的にされるおそれがあるとともに、国がこのような犯罪を防止しない場合には、危険な形態の児童労働、交通事故 [23]、有害物質濫用、商業的性的搾取および安全ではない性的実践と関連した、生命を脅かされる可能性がある状況にさらされるおそれ、ならびに、十分な栄養、保健ケアおよび居住場所にアクセスできないために死亡するおそれもある。生命に対する権利は狭く解釈されるべきではない [24]。これは、自然死ではないまたは時期尚早な死を引き起こすことを意図したまたはそのような死を引き起こすことが予想される作為および不作為から自由であり、かつ尊厳のある生活を享受する、個々人の権利に関わるものである。1999年、路上の状況にある子ども3名および若者2名を警察が1990年に拷問しかつ殺害した事件について、米州人権裁判所は、生命の恣意的剥奪は殺人という不法行為に限定されるものではなく、尊厳をもって生きる権利の剥奪にも及ぶと判示した。生命に対する権利についてのこのような捉え方は、市民的および政治的権利のみならず経済的、社会的および文化的権利にも及ぶものである。もっとも脆弱な状況に置かれた人々――ストリートチルドレンの場合のように――を保護しなければならないということは、当然のことながら、生命に対する権利を、尊厳のある生活のための最低条件を包含する形で解釈することが必要になる [25]。 [23] 一般的意見4号、パラ21参照。 [24] 条約の準備作業では、第6条に基づく生命、生存および発達に対する諸権利は補完的なものであって相互に排他的なものではなく、かつ、同条は積極的義務を課すものであることが明らかになっている(E/CN.4/1988/28)。 [25] Villagran Morales et al v. Guatemala 事件における米州人権裁判所の共同意見(1999年11月19日)。www.corteidh.or.cr/docs/casos/articulos/seriec_63_ing.pdf より入手可。 30.委員会はすでに、絶対的貧困という条件下で育つことが子どもの生存および健康を脅かし、かつその基本的な生活の質を損なうものであることを強調している [26]。 [26] 一般的意見7号、パラ26参照。 生存および発達に対する権利 31.委員会は、各国が、「発達」を、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するホリスティックな概念として解釈するよう期待する。路上の状況にある子どもにとって、自己の生存および発達のために公共空間で選択できる活動および行動の幅は限られたものである。第6条に基づく国の義務により、子どもの行動および生活様式に対し、たとえそれが、特定のコミュニティまたは社会によって、特定の年齢層を対象とする支配的な文化的規範に基づいて容認されると判断された行動および生活様式に一致しないものであっても、慎重な注意を向けなければならない。プログラムは、路上の状況にある子どもたちの現実を認めるときに初めて効果的なものとなりうるのである [27]。介入においては、路上の状況にある個々の子どもたちを、これらの子どもが社会に最大限積極的に貢献できるようにしながら最適な形での発達を達成できるよう、支援することが求められる [28]。 [27] 一般的意見3号、パラ11参照。 [28] 一般的意見5号、パラ12参照。 尊厳のある生活の確保 32.国は、路上の状況にある子どもの尊厳ならびに生命、生存および発達に対するこれらの子どもの権利を尊重する義務(この目的のため、国家主導の暴力を行なわず、かつ生き残るための行動および地位犯罪を犯罪として扱わないようにすることが必要となる)、第三者が引き起こす危害から路上の状況にある子どもを保護する義務、ならびに、これらの子どもの発達を最大限可能なまで確保する目的で、子どもの権利アプローチに基づいてホリスティックな長期戦略を立案しかつ実施することにより、生命、生存および発達に対するこれらの子どもの権利を充足する義務を負う。国は、信頼のおける支援的な大人――家族構成員または国もしくは市民社会のソーシャルワーカー、心理学者、ストリートワーカーもしくはメンターなど――が路上の状況にある子どもを手助けするのを援助するべきである。国はまた、路上で死亡する子どものために尊厳および敬意を確保するため、葬儀に関する手続的および実際的な体制も整備することが求められる。 第12条(意見を聴かれる権利) [29] 33.路上の状況にある子どもたちは意見を聴かれることに関して特別な障壁に直面しており、委員会は、各国に対し、これらの障壁を克服するための積極的努力を行なうよう奨励する。国および政府間機関は、路上の状況にある子どもたちに対し、司法上および行政上の手続において意見を聴かれ、自分たち自身の取り組みを遂行し、かつ、コミュニティレベルおよび国レベルで政策およびプログラムの概念化、立案、実施、調整、監視、検証および広報に(メディア等も通じて)全面的に参加できるようにするための、支援的なかつ力を発揮できるような環境を提供するとともに、このような環境の提供に関して市民社会組織を支援するべきである。支援介入は、その対象である子どもたち自身が、これらの子どものために行なわれる決定の客体としてみなされるのではなく、ニーズの評価、解決策の立案、戦略の形成およびその遂行に積極的に関与するときに、これらの子どもにとってもっとも有益なものとなる。国はまた、防止および対応のための戦略を策定する際、家族およびコミュニティの構成員、専門家およびアドボケイトなどの関連する大人の意見にも耳を傾けるべきである。支援介入においては、路上の状況にある個々の子どもが、その発達しつつある能力にしたがって自己の権利を行使しかつスキル、回復力、責任および市民性を発展させられるよう支援することが求められる。国は、路上の状況にある子どもたちに対し、意味のある参加および集団的表現の空間を生み出すことにつながる子ども主導型の団体および取り組みを自分たち自身で形成するよう、支援および奨励を行なうべきである [30]。適当な場合、かつ適正な保護措置がとられるときは、路上の状況にある子どもたちが、スティグマおよび差別を軽減し、かつ他の子どもたちが最終的に路上の状況に至らないよう援助する目的で、自分たちの経験を共有することによる意識啓発を行なうことも考えられる。 [29] 一般的意見12号(意見を聴かれる子どもの権利、2009年)。 [30] 前掲、パラ128。 第4条(適切な措置) 34.締約国は、第4条に基づき、条約で認められた権利の実施のためにあらゆる適切な立法上、行政上その他の措置をとるものとされる。このことはすべての子どもに差別なく当てはまるのであり、その際、もっとも不利な立場に置かれた集団――路上の状況にある子どもがこれに含まれるのは明らかである――に特別の注意を払うことが求められる [31]。最低限の中核的義務として、すべての国は、何をおいても、1つひとつの社会的、経済的および文化的権利が最低限必要な水準で満たされることを確保しなければならない [32]。国は、このことが路上の状況にある子どもにも適用されることを確保するべきである。利用可能な資源が存在しないことは、それ自体では、国がこの中核的義務を遵守しないことについての有効な主張にはならない。委員会がすでに述べたように、子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない [33]。国は、経済危機の時期の後退的措置によって路上の状況にある子どもが影響を受けないことを確保するべきである。 [31] 一般的意見5号、パラ8参照。 [32] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見3号(締約国の義務の性質、1990年)、パラ10。 [33] 一般的意見19号(子どもの権利実現のための公共予算編成、2016年)、パラ31参照。 第5条(発達しつつある能力に一致した指示および指導) 35.国は、防止を強化するため、親、拡大家族、法定保護者およびコミュニティの構成員の、子どもにその年齢および成熟度にしたがって適切な指示および指導を行なう能力(その際、これらの者が子どもの意見を考慮に入れることを援助することも求められる)、子どもが発達できる安全かつ支援的な環境を提供する能力、および、子どもが主体的な権利の保有者であり、適切な指導および指示を与えられれば、発達するにしたがってこれらの権利をますます行使できる存在であると認識する能力の構築を図るべきである。委員会は、子どもの発達しつつある能力の原則について詳しく述べている――子どもの知識、経験および理解力が高まるにつれて、親または法定保護者は、指示および指導を注意喚起および助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならない [34]。路上の状況にある子どもに対しては、その人生経験を尊重する、とくに配慮した指示および指導が必要である。路上の状況にある子どもの大多数は家族との接触を維持しており、このような家族とのつながりを強化する効果的方法に関する科学的知見も増えつつある。路上の状況にある子どもが親、拡大家族または法定後見人との肯定的つながりをほとんどまたはまったく持っていないときは、第5条で言及されているようにコミュニティの構成員の役割がいっそうの重要性を帯びるのであり、これには、市民社会組織と関係する信頼できる大人からの支援も含まれると理解される。 [34] 一般的意見12号(意見を聴かれる子どもの権利、2009年)、パラ84および一般的意見14号、パラ44参照。 B.市民的権利および自由 第15条(結社および平和的集会の自由に対する権利) 概観 36.路上の状況にある子どもたちが生きている現実は、子ども時代に関する伝統的な定義または概念化には適合しない。これらの子どもたちは、他の子どもたちに比べ、公的空間と独特の関係を結んでいる。したがって、公的空間との関連で国が第15条に課す制限は、路上の状況にある子どもたちに不均衡な影響を及ぼす可能性がある。国は、これらの子どもが結社および平和的集会のために政治的および公的空間にアクセスすることが差別的なやり方で否定されないことを確保するべきである。 市民的および政治的空間 37.結社および平和的集会は、路上の状況にある子どもたちが、たとえば働く子どもの組合および子ども主導の団体を通じて権利を主張していくために必要不可欠である。しかし委員会は、総括所見のなかで、子どもたちが声をあげるための政治的空間が与えられていないことに関する懸念を恒常的に表明してきた。このような状況は、法律にしたがって団体登録を行なう際に必要となる場合がある信頼できる大人とのつながりを持たないことが多い路上の状況にある子どもたちにとって、とりわけ押しつけられやすい。路上の状況にある子どもたちは、結社および平和的集会のための取り組みを発展させていくための書類の記入および情報へのアクセスに関して支援を得られない場合がある。抗議または集会の参加人数を増やすため、路上の状況にある子どもたちに金が支払われることもありうる。これらの子どもは搾取の被害を受けやすい可能性があり、かつこのようなイベントに参加することの意味合いを理解していないこともあることから、保護と参加の権利との間でバランスをとる必要性に関する複雑な問題が生ずる。しかし、委員会が総括所見で表明してきたように、このことが、結社および平和的集会に対するこれらの子どもの権利を制限する言い訳として用いられるべきではない。第15条は、国に対し、路上の状況にある子どもたちが自己の参加権を行使し、かつ大人による吸収および操作に対抗できるようエンパワーすることを要求しているのである。 公的空間 38.市民的および政治的権利の文脈における結社および平和的集会に加えて、委員会は、路上の状況にある子どもたちが、生存および発達に関わる自分たちの権利(第6条)を満たすために、休息、遊びおよび余暇(第31条)[35] のために、ネットワークづくりおよび社会生活の組織化のために、かつこれらの子どもの生活全般の主要な特徴のひとつとして行なう、公の秩序を脅かすことなく公的空間で集まるための選択を尊重することの重要性を強調する。路上の状況にある子どもたちにとって、このような態様の集まりは生活の一部である。その生活は、食事、睡眠またはレクリエーションのような個別の活動に常に分解できるわけではない。路上の状況にない子どもたちにとっては、このような他者との協力的共存は主として家庭または学校のような場面で生ずるものである。路上の状況にある子どもたちにとっては、それは公的空間で生ずる。このような子どもたちは、結社の権利(ここでは、条約で保護されている他の諸権利とあいまって、「公的空間で他者と時間を過ごすこと」と解釈される)を行使できる安全な空間を持てなければならない。委員会は、第31条との関連で、公的空間における子どもたちへの寛容度が低下しつつあることを検討したことがある [36]。委員会は、この一般的意見で、寛容度の低下に関わるこれらの懸念を、第31条で対象とされているもの以外の目的で子どもたちが公的空間を使用することとの関連でも、あらためて表明するものである。 [35] 一般的意見17号(休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利、2013年)、パラ21参照。 [36] 前掲、パラ37参照。 第15条に対する制限 39.第15条(2)にしたがい、公の秩序との関連でとられる取締まりその他の措置が許容されるのは、当該措置が法律に基づいており、集団的評価ではなく個別の評価に基づいて実施され、比例性の原則を遵守し、かつもっとも侵害度の小さい選択肢である場合に限られる [37]。すなわち、路上の状況にある子どもに対するいやがらせ、暴力、一斉検挙および路上浄化活動(大規模な政治的、公的またはスポーツイベントを背景として行なわれるものを含む)、または結社および平和的集会に対するこれらの子どもの権利を制限しまたは当該権利に干渉するその他の介入策は、第15条(2)違反である。合法的に設置された働く子どもの組合もしくは路上の状況にある子どもたちが主導する団体を承認しないことおよび(または)路上の状況にある子どもが合理的アクセスの手段を有しない団体認可を要件とすることは、これらの子どもに対する差別であり、かつ第15条(2)に一致しない。 [37] 一般的意見6号(出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い、2005年)、パラ18参照。もともとは国境を越えた保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもとの関連で展開した解釈だが、委員会は、この一般的意見において、路上の状況にあるすべての子どもについてもこの解釈を適用する。 実施措置 40.国は、路上の状況にある子どもたちに対するいやがらせを行なうべきではなく、またこれらの子どもが公共空間において関係をとり結びかつ平和的に集会する場所から恣意的に退去させるべきではない。この権利を侵害する者に対しては制裁が科されるべきである。公の秩序に関わる状況に、路上の状況にある子どもの権利の尊重を擁護するようなやり方で対応する警察および治安部隊の能力構築のため、専門的研修が必要とされる [38]。地方政府の条例は、第15条(2)との一致を確保するために見直されるべきである。国は、子どもの権利教育およびライフスキルの育成を通じて路上の状況にある子どものエンパワーメントを図ること、関係者が、意思決定の際、結社および集会を通じて表明されるこれらの子どもの意見を受け入れる心構えを持つようにすること、ならびに、これらの子どもがコミュニティの他の子どもとともにレクリエーション、余暇、スポーツ、芸術活動および文化的活動に参加することを促進することなどの積極的な措置を支援するよう求められる。路上の状況にある子どもたちの結社および平和的集会が第15条に基づく保護を受けるために、これらの結社および集会が正式に登録されていることが法律上の要件とされるべきではない。 [38] 一般的意見13号、パラ44参照。 第7条(出生登録)および第8条(身元) 41.身元を証明する手段がないことは、教育、保健サービスのその他の社会サービス、司法、相続および家族再統合に関わる路上の状況にある子どもの権利の保護に悪影響を及ぼす。国は、最低限、あらゆる年齢のあらゆる子どもが無償の、アクセスしやすい、簡便かつ迅速な出生登録を利用できることを確保するよう求められる。路上の状況にある子どもに対し、法的身分証明書を取得するための積極的支援が提供されるべきである。国および地方政府は、市民社会の関係者/住所と関連づけられた非公式な身分証明書を提供することのような革新的かつ柔軟な解決策を認めることにより、子どもが当面、基礎的サービスおよび司法制度における保護にアクセスできることを可能にするよう求められる。路上の状況にある子どもは頻繁に移動することが多く、かつ物理的な身分証明書を、紛失し、毀損しまたは盗難されることなく安全に保持し続ける手段を有しないことから、これらの子どもが帳面している課題を克服するための革新的解決策が採用されるべきである。 第13条(表現の自由)および第17条(情報へのアクセス) 42.路上の状況にある子どもが自己の権利に関する情報にアクセスし、このような情報を求めかつ伝える権利は、これらの権利が理解され、かつ実際に実現されるようにするためにきわめて重要である。状況に特化したアクセスしやすい子どもの権利教育は、参加を妨げる障壁を克服し、これらの子どもの意見に耳が傾けられることを可能にするうえで役に立つだろう。路上の状況にある子どもは、(a) 国の役割および説明責任ならびに人権侵害に関わる救済のための苦情申立て機構、(b) 暴力からの保護、(c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルス(家族計画および性感染症予防を含む)、(d) 健康的なライフスタイル(食事および運動を含む)、(e) 安全なかつ敬意のある社会的および性的振舞い、(f) 事故の防止ならびに (g) アルコール、タバコ、薬物その他の有害物質の濫用の悪影響に関連する、正確な、質の高いかつ子どもにやさしい情報にアクセスできなければならない。 第16条(プライバシー、名誉および信用 43.路上の状況にある子どもは、公共空間で活動を行なわなければならないことを考えれば、プライバシーの制限を経験する場合がある。これらの子どもは、自らまたはその親もしくは家族が路上の状況にあることを理由とする差別により、第16条違反の被害をとりわけ受けやすい立場に置かれる。委員会は、強制立退きが条約第16条違反であることを認識するものであり、自由権規約委員会は、これまでに、これが市民的および政治的権利に関する国際規約第17条違反であることを認めてきた [39]。スティグマについて取り上げたパラ27の勧告および警察による非差別的なかつ敬意のある取扱いについて取り上げたパラ60の勧告は、名誉および信用との関連で指針となるものである。 [39] CCPR/CO/83/KEN, para.22 および CCPR/C/BGR/CO/3, para.24 参照。 C.家庭環境および代替的養護 第20条(家庭環境を奪われた子どものための特別な保護および援助に対する権利) 養護の態様 44.路上の状況にある子どもであって主たる養育者またはこれに代わる養育者がいない子どもについては、国が事実上の養育者であり、かつ、第20条に基づき、一時的または恒久的に家庭環境を奪われた子どもに対して代替的養護を確保する義務を負う [40]。養護の態様には、路上の状況にある子どもに対する実際的および精神的支援(子どもに対し、路上のつながりを放棄しかつ(または)代替的居住施設への移動を要求しまたは強制することなく、信頼できる大人のストリートワーカーまたは仲間同士のサポートを通じて行なわれるもの)、ドロップインセンターおよびコミュニティセンター/ソーシャルセンター、デイケアセンター、グループホームにおける一時的入所養護、里親養育、家族再統合ならびに自立生活または長期的な養護の選択肢(養子縁組を含むがこれに限られない)が含まれる。たとえば収容房または閉鎖施設における自由の剥奪は、保護の一形態にはけっして位置づけられない。 [40] 一般的意見13号、パラ33および35参照。 子どもの権利アプローチの適用 45.路上を離れて代替的養護に移行する過程で主体的行為者としての子どもを尊重しない介入策は、功を奏しない。子どもは、脱走した場合または措置が失敗した場合には、しばしば路上に復帰することになる。路上の状況にある子どもが馴染みのない地域に送られてほとんど知らない親族と暮らすことになった場合、措置はうまくいかない。国は、代替的選択肢の開発および提供に子どもの権利アプローチを適用することにより、子どもが自己の生存および(または)発達のために路上のつながりに依存せざるを得なくなることおよび自己の意思に反する措置を受け入れざるを得なくなることを回避することができよう。国は、立法、規則および政令を通じ、措置、養護計画の策定および見直しならびに家族の訪問に関わる決定において子どもの意見が求められかつ考慮されることを確保するべきである [41]。国は、施設措置を最後の手段に限定する、確立された国際的制限 [42] を尊重するとともに、子どもが不必要に代替的養護に措置されないことを確保し、かつ、代替的養護が行なわれる場合、子どもの権利および最善の利益に応じた適切な条件下で提供されることを確保するよう求められる [43]。国は、国および市民社会が運営するシェルターおよび施設が安全かつ良質であることを確保するべきである。路上の状況にある子ども自身と相談したうえで、家族構成員への措置がその子どもの最善の利益にかなうと判断される場合、両方の側で慎重な準備およびフォローアップが必要となる。路上と長期的措置との間にはしばしば移行段階が必要であり、この期間の長さは、子どもとともに、個別の事案ごとに決定しなければならない。代替的養護施設がないことを理由として子どもの収容目的で警察の留置房またはその他の拘禁房を使用することは、受け入れられない。 [41] 一般的意見12号、パラ54、同6号、パラ40および同7号、パラ36(b)参照。 [42] 一般的意見3号、パラ35参照。 [43] 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)。 第9条(親からの分離) 46.路上の状況にある子どもの多くは、路上でまたはそれ以外の場所で家族とともに暮らしており、かつ(または)家族とのつながりを維持しているのであって、このようなつながりを維持するための支援が提供されるべきである。国は、家族が路上で働いているまたは路上で暮らしていることのみを理由として、子どもをその家族から分離するべきではない。また、路上の状況にある子ども自身のもとに生まれた赤ん坊または子どもを分離するべきではない。金銭面および物質面での貧困、またはそのような貧困を直接のかつ唯一の理由として生じた状態のみを理由として、子どもを親の養育から離脱させることが正当化されることはけっしてあるべきではなく、このような貧困または状態は、家族に対して適切な支援を提供する必要性があることのサインと見なされるべきである [44]。長期的分離の防止策として、国は、親がたとえば季節的雇用のために年の一定の期間国外に出稼ぎに行く子どもを対象とする、一時的な、権利が尊重される養護の選択肢を支援することができる。 [44] 一般的意見14号、パラ62参照。 第3条(3)(ケアおよび保護のための機関、サービスおよび施設)および第25条(措置の定期的再審査) 47.ケアおよび保護に関わる権利が充足されなかったことの結果として子どもが路上の状況に至ることを防止する目的で、またすでに路上の状況にある子どもたちのために、国および国以外の主体によるサービスを設置し、維持し、かつその質を監視することは重要である。国は、良質で権利を尊重するサービスを提供するとともに、市民社会組織が同様のサービスを提供することを支援するよう求められる。路上の状況にある子どものために活動している国以外の機関、サービスおよび施設は、国による支援、資源の拠出、認証、規制および監視の対象とされるべきである。このようなサービスの従事者は、パラ18にしたがった研修を受けるよう求められる。 第18条(親の責任) 48.子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもを対象とする家族再統合プログラムを強化するためには、親および法定保護者への支援が不可欠である。国は、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与え、かつ、子どものケアのための機関、施設およびサービスの発展を確保する義務を負う。国は、不安定な状況にある家族に圧力を加える構造的な力を解消するための措置をとるべきである。対応すべき主要な問題としては、窮乏している地域において権利を基盤とするコミュニティ開発を向上させること、包括的な経済的および社会的セーフティネットを確立すること、安全かつ負担可能な保育所その他の専門的サービスを提供すること、ならびに、家族を対象として十分な住居および所得創出へのアクセスを改善することなどがある。構造的および政策的アプローチに加え、脆弱な状況にある家族には、十分な訓練を受けた専門家のファシリテーションによる、個別事案ごとの解決策が必要である。国は、子どもが路上の状況に至ることの増大につながる条件の世代間伝達の阻止につながることが証明されている、子どもの権利アプローチに基づく家族支援プログラムに投資し、かつその規模の拡大を図るよう求められる。国は、路上の状況に至るおそれのある子どもがいる家族を――スティグマを付与しないようなやり方で――優先させつつ、すべての親および養育者を対象として、子どもの権利および肯定的な子育てに関する、非選別的な教育を提供するための措置をとるべきである。このような教育には、子どもの権利(子どもの声に耳を傾け、かつ意思決定に子どもの意見を取り入れる方法を含む)、肯定的な子育て(肯定的なしつけのためのスキル、非暴力的紛争解決および愛着育児(アタッチメント・ペアレンティング)を含む)および乳幼児期の発達を含めることが求められる。パラ35および49も参照。 D.十分な生活水準 第27条(十分な生活水準に対する権利) 親、養育者および子どもに対する支援 49.第27条(3)にしたがい、国は、子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもの権利を充足するため、すべての子どもがその身体的、精神的、霊的および道徳的発達のために十分な生活水準を享受することを確保するべきである。国は、この権利の実施のために、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための適当な措置をとらなければならず、また必要な場合にはとくに栄養、衣服および住居に関して物的援助および支援プログラムを提供しなければならない。これらの規定は、国の裁量の余地を残さないものである。締約国の国内条件にしたがった、かつその財源内におけるこれらの規定の実施は第4条とあわせて解釈されるべきであり、すなわち、社会的、経済的および文化的権利に関する最低限の中核的義務を履行する国の義務をとくに顧慮しながら、締約国の利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要なときは国際協力の枠組みのなかで、進めることが求められる。物的援助という点では、路上の状況にある子どもが優先的ニーズとして挙げるのは、親および養育者に対する国の支援(とくに補助金をともなう十分な住居および所得創出に関連するもの)を通じて提供される、安全な生活場所、食料ならびに無償のかつアクセス可能な医療ケアおよび教育である。第27条(3)の解釈は、親および子どもの養育に責任を負う他の者を援助するための措置に限られるものではない。必要な場合に物的援助および支援プログラムを提供する義務は、子どもに直接提供される援助も意味するものとして解釈されるべきである。このことは、路上の状況にある子どもであって家族とのつながりが存在しない子どもまたは家族とのつながりに虐待がともなう子どもについて、とりわけ妥当する。サービスという形をとった子どもへの直接的な物的援助は、国が提供することもできるし、市民社会組織に対する国の支援を介して提供することも可能である。ひとり親家族および再構築家族にとっては、子どもの扶養料を確保するための国の措置がとりわけ重要となる(第27条(4)参照)。 十分な住居 50.住居に対する権利は、路上の状況にある子どもにとってとりわけ関連性が高い、第27条の重要な要素である。この権利は、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会によって、いずれかの場所で安全に、平和にかつ尊厳をもって生活する権利として広く解釈されてきた [45]。同委員会は、「十分」性の概念を住居との関連で考察する際には、保有の法的安定性、サービス、物資、便益およびインフラストラクチャーの利用可能性、負担可能性、居住適性、アクセス可能性、立地ならびに文化的相当性に注意を払う必要があることを明らかにしている [46]。また、子どもは強制立退きの実行によって不均衡な被害を受ける集団のひとつに数えられる [47]。強制立退き(非公式または不法な住居の解体によるものを含む)は、人生を子どもにとっていっそう不安定なものとすることによって、子どもが路上で寝泊まりすることを余儀なくさせ、かつさらなる権利侵害にさらす可能性がある。路上の状況にある子どもたちとの協議で目立ったテーマのひとつは、子どもたちが路上にいるほうがましだと感じるほどの、一部の国営「シェルター」の不十分さおよび不適切さならびにこれらの施設における高水準の暴力および安全性の欠如である。 [45] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見4号(十分な住居に対する権利、1991年)、パラ7参照。 [46] 前掲パラ8。 [47] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見7号(強制立退き、1997年)、パラ10参照。 実施措置 51.国は、子どもの保護を向上させ、かつ子どもが路上の状況に至る可能性を低減する手段のひとつとして、不安定な家族への圧力を弱めかつこれらの家族を強化する目的で、貧困および所得不平等の根本的原因に対応するための措置をとるべきである。このような措置には、経済的不平等を減少させる税制および支出政策を導入すること、公正な賃金をともなう雇用および所得創出のためのその他の機会を拡大すること、農村開発および都市開発のために貧困削減に寄与する政策を導入すること、子どもに焦点を当てた政策および予算策定を導入すること、移住が多いことがわかっている地域で子ども中心の貧困緩和プログラムを強化すること、ならびに、十分な社会保障および社会的保護を提供することが含まれる。具体的な例としては、欧州・北米諸国で活用されている子ども給付プログラムや、ラテンアメリカ諸国で導入され、かつアジア・アフリカ諸国で広く適用されている現金移転プログラムなどが挙げられる。国は、銀行口座を持っていない可能性があるもっとも周縁化された家族のもとにもこのようなプログラムが届くように努力するべきである。物的支援は、親および養育者に対して、かつ路上の状況にある子どもに直接提供する形でも、利用可能とされるべきであり、またこのような機構およびサービスは子どもの権利アプローチに基づいて立案しかつ実施することが求められる。住居に関しては、子どもが路上の状況に至ることを防止するために保有の安定性が必要不可欠である。これには、安全であり、かつ安全な飲料水、環境衛生および個人衛生のための便益へのアクセスをともなう十分な住居にアクセスできることが含まれる。子どもは、非公式または不法な住居で生活している子どもを含め、十分な代替的居住先を提供される前に強制立退きの対象とされるべきではない。国は、影響を受ける子どもに対して適切な対応を行なうことを要求される。立退きの悪影響を最小限に抑えるため、子どもの権利および人権に関する影響評価が開発事業およびインフラ整備事業の必須条件とされるべきである。 E.障害および健康 第23条(障害のある子ども) 52.障害のある子どもは、経済的および社会的要因を含むさまざまな理由で路上の状況に至るとともに、時として物乞いのために搾取されることがある。国は、このような搾取を防止しかつ明示的に犯罪化するためおよび加害者を裁判にかけるために必要な、あらゆる措置をとるべきである [48]。路上の状況にある子どもは、路上生活の諸側面(暴力、搾取および有害物質濫用など)の悪影響により障害が発達するおそれのある状況に置かれる可能性がある。また、路上の状況にある子どもは、知的障害および心理社会的障害により、搾取および虐待の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれうる。国は、障害のある子どもがサービス(インクルーシブな教育を含む)にアクセスすることを妨げる障壁を特定しかつ除去することを含む、特別な保護措置をとるべきである。 [48] 一般的意見9号、パラ76参照。 第24条(健康)[49] および第33条(薬物および有害物質の濫用 53.路上の環境は、心身の健康に関わる問題についての脆弱性を高める可能性がある [50]。課題として挙げられるのは、有害物質濫用、HIV [51] その他の性感染症への感染、妊娠、暴力(仲間によるものを含む)、希死念慮および自殺、規制対象外の医薬品を用いた自己流の治療ならびに感染症、汚染および交通事故への曝露の問題が生じる割合が不均衡に高いことなどである。委員会は、路上の状況にある子どもの具体的ニーズにあわせた健康教育および保健サービス(セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するものを含む)の必要性を強調する。このような教育およびサービスは、親しみが持ててかつ支援的であり、包括的であり、アクセスしやすく、無償であり、秘密が守られ、非審判的であり、差別を行なわず、これらの子どもによる自律的決定を尊重し、かつ親の同意を要件としないようなものであるべきである [52]。保健サービスは、物理的位置または社会的地位にかかわらずアクセスできることが求められる。路上の状況にある子どもは、普遍的な医療保障および社会的保護制度を通じた基礎的保健ケアサービスに無償でアクセスできるべきである。国は、路上の状況にある子どもを対象とする、有害物質濫用の予防、治療およびリハビリテーションのためのサービス(ハームリダクション〔危害軽減〕サービスを含む)ならびにトラウマ治療サービスおよび精神保健サービスの利用可能性を高めるよう求められる。これらのサービスを提供するスタッフには、子どもの権利および路上の状況にある子どもが置かれている特有の状況に関する研修を受けた専門家を配置するべきである。国は、有害物質濫用、性感染症およびHIVと闘ううえでとりわけ効果を発揮しうる、適切な支援を受けたピアエデュケーションを促進することもできる。路上の状況にある子どもを薬物売買への関与から保護するために、特段の注意が必要である。 [49] 一般的意見15号(到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利、2013年)参照。 [50] 一般的意見4号、パラ34参照。 [51] 一般的意見3号、パラ30参照。 [52] 前掲、パラ20-21、一般的意見4号、パラ11および26、ならびに、一般的意見15号、とくにパラ8、11および28参照。 F.教育、余暇および文化的活動 第28条(教育) 54.アクセスしやすい、無償の、安全な、関連性のある、かつ良質な教育は、子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもの権利を充足することのためにきわめて重要である。教育は、多くの子どもにとって、より広い社会との最後の接続点となっている。国は、路上の状況にある子どもが学校に留まれること、および、良質な教育に対するこれらの子どもの権利が全面的に充足されることを確保するため、親、養育者および家族への支援を含む十分な対応をとるべきである。教育上のさまざまな選択肢が必要であり、これには、市民社会とのパートナーシップに基づいて提供される、「セカンドチャンス教育」、遅れを取り戻すための学級、移動学校、職業訓練(市場調査と連結され、かつ長期的な所得創出支援によるフォローアップがあるもの)および公式な教育へとつながる経路などが含まれる。教員に対しては、子どもの権利および路上の状況にある子どもならびに子ども中心の参加型教授手法に関する研修が実施されるべきである。 第29条(教育の目的)[53] 55.路上の状況にある子どもを対象とする教育の目的は、第29条に合致し、かつ読み書き能力、計算能力、デジタルリテラシー、ライフスキル、子どもの権利教育、多様性への寛容および市民性教育を含んだものであるべきである。このような教育は、保護、発達および参加に対する子どもの権利の充足(子どもの自律の強化、ならびに、リスク状況の切り抜け方の向上を目的とする子どものエンパワーメントを含む)のために、子どもが路上の状況に至ることを防止するために、かつ路上の状況にある子どもにとって、死活的な重要性を有する。国は、学校カリキュラムを通じて、かつ学校に通っていない子どもも対象とするために非公式な教育および路上での教育を通じて、良質なかつ無償の子どもの権利教育およびライフスキル〔教育〕を、すべての子どもに対して普遍的に提供するための措置をとるべきである。 [53] 一般的意見1号(教育の目的、2001年)。 第31条(休息、遊びおよび余暇) 56.委員会は、休息、遊び、余暇ならびに芸術的および文化的活動への参加に対する権利を強調する。路上の状況にある子どもたちは、独自の創造性を発揮して路上のインフォーマルな環境を遊ぶ機会のために活用している [54]。国は、これらの子どもが、たとえば服装規則に関連して公園および遊び場から差別的なやり方で排除されないことを確保する [55] とともに、これらの子どもが創造性を発達させかつスポーツを実践することを援助するための措置(移動式のレクリエーション施設およびスポーツ施設による援助を含む)をとるべきである。 [54] 一般的意見17号〔パラ49〕。 [55] 前掲、パラ49。 G.子どもに対する暴力および特別な保護措置 第19条および第39条(あらゆる形態の暴力からの自由) [56] 57.あらゆる形態の――情緒的、身体的または性的な――暴力は、子どもが路上の状況に至ることの根本的原因のひとつであり、かつその結果のひとつである。路上の状況にある子どもたちの生活ではあらゆる種類の暴力が大規模に広がっており、そのことは子どもたち自身が強調する主要な懸念のひとつとなっている。路上の状況にある子どもを保護するために、具体的かつ即時的な緊急の措置がとられなければならない。一般的意見13号に掲げられたすべての勧告とあわせ、このような措置としては、体罰を含むあらゆる形態の暴力の禁止、家族およびコミュニティとの関係が切断される過程で脆弱な立場に置かれた子どもにアウトリーチするための機構、暴力、差別およびその他の形態の権利侵害を通報するための機構、および、国家的主体であるか非国家的主体であるか、個人であるか集団であるかを問わず暴力の加害者に責任を負わせるための機構などが挙げられる。一部の警察関係者ならびに組織犯罪および麻薬取引に関与している者など、これらの子どもからその安寧に対する脅威として通報された個人に対応するための、特別な機構を設置しなければならないこともあるかもしれない。 [56] 一般的意見3号、パラ19および36-37、同4号、パラ2および23、同8号(体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利、2006年)ならびに同13号。 第34~36条(性的虐待、性的搾取、人身取引その他の搾取) 58.路上の状況にある子どもは性的な暴力および搾取の被害をとりわけ受けやすい状況にあり、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書はこのような子どもにとってとりわけ関連性を有する。路上の状況にある子どもの具体的事情を理解する訓練を受けた専門家によって、ジェンダーに配慮した対応が行なわれるべきである。子どもは、性的搾取または労働搾取を目的とする人身取引を通じて路上の状況に至る場合があり、かつ(または)、路上の状況に至ったとたんに、そのような人身取引および身体部位のための人身取引ならびにその他の形態の搾取の被害を受けやすい状況に置かれる場合がある。 第32条(児童労働) 59.委員会は、各国に対し、路上の状況にある子どもを経済的搾取および最悪の形態の児童労働から保護するため、条約第32条(2)ならびに国際労働機関の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)の規定を実施するよう促す。児童労働に反対する行動は、子どもが教育に移行することを可能にし、かつ子どもおよびその家族に対して十分な生活水準を保障する支援の提供を含む、包括的措置から構成されるべきである。このような措置は、子どもの最善の利益を反映し、かつ当該措置が子どもの生存および発達にいかなる意図しない悪影響も生じさせないことを確保するため、路上の状況にある子どもおよび他の主要な関係者と連携しながら策定することが求められる。物乞いまたは無認可売買を犯罪化することは、結果として商業的性的搾取といった最悪の形態の生存行動をもたらしかねない。路上の状況にある子どもを対象とした、金銭のやりくりのスキルを発達させかつ収入を保護するための貯金制度は有益である。 第37条および第40条(少年司法) 60.路上の状況にある子どもは、標的とされ、犯罪者として扱われ、かつ最終的に少年司法制度または成人司法制度に関与することになる可能性がより高いほか、保釈金を負担できず、かつ身元引受人となる責任ある大人がいない場合もあるために、ダイバージョン、拘禁に代わる措置または修復的司法実践から利益を受けられる可能性はより低い。警察の違法行為――いやがらせ(子どもの所持金および私物を盗むこと、これらの子どもを一斉検挙すること、または、しばしば上官および(または)政治家の命令によってこれらの子どもを恣意的に移動させることを含む)、腐敗、強要(金銭または性交を求めるもの)および身体的、心理的または性的暴力など――は一般的に見られる権利侵害であり、国はこれらの行為を緊急に犯罪化するべきである。委員会は、路上の状況にある子どもを犯罪者扱いし、かつ強制的な施設措置につながる「寛容度ゼロ」政策の適用について懸念を覚える。国は、路上の状況にある子どもの処罰ではなく保護を重視しながら、コミュニティ志向の警察活動を支援するとともに、多文化的な警察機構を採用するべきである。国は、懲罰的ではない修復的な少年司法制度の文脈において、路上の状況にある子どもを含むすべての子どもに対してすべての権利を保障するよう求められる [57]。 [57] 一般的意見6号、パラ61ならびに一般的意見10号、パラ6、8-9および16参照。 第38条(武力紛争) 61.武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書は、路上の状況にある子どもが軍隊または武装集団への徴募の被害を受けやすい立場に置かれているがゆえに、関連性を有する。紛争の結果、子どもたちは、社会的ネットワークが破壊されること、家族がばらばらになること、コミュニティからの避難を余儀なくされること、または動員解除された子どもの戦闘員がコミュニティから拒絶されることを通じて路上の状況に至る可能性がある。防止との関連では、平和教育を含む子どもの権利教育および徴募防止のための取り組みが、路上の状況にある子どもたちに届くようにしなければならない。家族からの子どもの分離を積極的に抑制するために武力紛争の影響を最小限に抑える介入が必要であり、また家族追跡プログラムを優先的に実施するべきである。子どもを対象とする武装解除・動員解除・再統合プログラムにおいては、武力紛争への子どもの関与の原因および結果である路上とのつながりの力学を考慮することが求められる。 VI.普及および協力 普及 62.委員会は、各国が、政府、法制度および行政機関内で、かつ路上の状況にある子ども、親および養育者、職能団体、コミュニティ、民間セクターならびに市民社会に対して、この一般的意見を広く普及するよう勧告する。印刷媒体、インターネットおよび子どもたち自身のコミュニケーション手段(語り聞かせおよびピアエデュケーションなど)を含むあらゆる普及手段が活用されるべきである。そのためには、この一般的意見を関連の言語(手話、点字ならびに障害のある子どもおよび読み書きの水準が限られている子どもにとってわかりやすい形式を含む)に翻訳することが必要になろう。また、文化的に適切なかつ子どもにやさしい版および文字中心ではなく図版中心の版を利用可能とすること、ワークショップやセミナーを開催すること、一般的意見の意味合いおよびそれを最善の形で実施する方法について話し合うための年齢および障害に合わせた支援を行なうこと、ならびに、路上の状況にある子どものためにおよびこれらの子どもとともに働くすべての専門家の養成・研修に一般的意見を編入することも必要である。国はまた、路上の状況にある子どもについての情報を委員会への報告書に記載することも奨励される。 国際協力 63.委員会は、各国に対し、子どもが路上の状況に至ることの防止およびすでに路上の状況にある子どもの保護に関する国際的なコミットメント、協力および相互援助を強化するよう求める。これには、効果的であることがわかっている権利基盤型の実践の特定および共有、調査研究、政策、監視および能力構築が含まれる。協力のためには、各国、国際連合諸機関、地域機関、市民社会組織(子ども主導の団体および研究者団体を含む)、子どもたち、民間セクターおよび専門家グループの関与が必要である。委員会は、これらの主体に対し、防止および対応を目的とする良質な、科学的根拠に基づく支援介入策に関連した、継続的かつハイレベルな政策対話および調査研究を推進するよう奨励する。これには、国際社会、国内、広域行政権および地方の各レベルにおける対話が含まれる。このような協力においては、移住者、難民および庇護希望者ならびに国境を越えた人身取引の被害者/サバイバーとして国境を越える子どもの保護に対応しなければならないこともありうる。 更新履歴:ページ作成(2018年7月29日)。
https://w.atwiki.jp/slls/pages/18.html
管理人からのメッセージ 2013年4月1日(月) 日本アニマシオン協会会報19号巻頭に掲載された拙稿を許可を得て転載します。 東日本大震災から3年目を迎えて-子ども読書支援のその後 震災から丸2年 2011年3月11日から2年が経過しました。今年の、その当日をめぐるメディアの報道ラッシュは凄まじいものでしたが、あの日に立ち戻り、震災がもたらした多くの災厄がいまだ過ぎ去ってはおらず、今もなお生活のすべての面に及んでいることに向き合う機会があらためて与えられていると感じています。 NPO法人日本アニマシオン協会には、震災後間もない時期から「会報アニマシオン」に筆者を中心とした、ささやかな支援活動の情報を掲載いただきました。今回震災から2年という時期に、再び執筆の機会を頂戴し、この1年間の活動や経緯について報告をさせて頂くことになりました。あらためて御礼申し上げます。 インターネット上の「ウィキ」を拠点とした私共の活動(被災地の子どもたちに贈りたい本@ウィキ)のうち、図書を選定し贈る活動は、2011年の後半には募金活動を含めほぼ終息しました。その頃には既存団体が組織的な支援活動を開始していましたし、私自身も、学会からの助成を得て調査を行うなど、一研究者としての活動に移行したという状況の変化もありました。 被災地を訪れて 私が初めて被災地に足を運んだのは、2011年の7月でした。アニマシオン協会の遠田理事のご紹介で、まず宮城県岩沼市の小学校に、そこからお隣の名取市図書館をご紹介いただきました。それがその後の名取市図書館絆まつり(2011年11月)や、2回にわたる名取市学校図書館研修会(2011年12月/2012年2月)への参加につながりました。アニマシオン協会の方々にはこの2つの行事両方にもご参加をいただきました。感謝申し上げます。 名取市の図書館絆まつりで図書の展示を行ったときには、展示の「店番」をしながら現地の方々と交流する貴重な機会が得られました。 今でも忘れられないのは、ひとりの女性が話すともなく「ウチは津波の被害を受けていないので、津波で家が流されたり、家族を亡くされた方に対して、申し訳ないように思い、どのように接していいのかわからない」とおっしゃったことでした。私もなんと言ってよいかわからず、聞き役に徹しておりましたところ、その方は、はっと我に返られ、「思わずこんなことを話してしまった。周りがみんな被災しており、辛いのは自分だけではないと思うと、身近な人にはこんな話はできない」とおっしゃり、「外の人だと思うと、思わずしゃべってしまった」と微笑まれました。 震災で傷ついていない人はいない 実はその翌日に、図書館絆まつりで名取市民の方々に向けた講演をさせていただくことになっており、被災の度合いが違う様々な参加者の方々に向かって、どのようなスタンスでお話をすればよいのか、大きな不安を抱えていたのですが、その方のお話から「被災の度合いは違えど、今回の震災によって傷ついていない人はいない」ということに気づかされました。 もちろん肉親や家を失われた方々の苦しみ哀しみは、体験していない者には計り知れません。しかし、たまたまその隣で無事であった人が、まったく災厄から逃れて無傷であると言えるものでしょうか?それを敷衍すれば、広く「東日本」の人々はこの震災によってなべて大きく傷つきました。それはまた「日本」という国全体、日本人全員にとっても大きなショック、痛手でありました。では海外の国々はどうでしょうか?多くのお見舞いのメッセージや義捐金、たくさんの支援プロジェクトが贈られたことは、日本の、東日本の、被災地の苦しみを、ただ他者のものとして切り捨てることができない多くの人々が存在することを私たちに教えてくれたように思います。 この地上のどこかに起こった大きな苦しみや哀しみは、たちまち全世界に影響を及ぼさずにはいません。自分の立場がどうであれ、苦しむ他者のために何ができるか、という、人間の基本的な徳性が試されている時であると感じます。 津波被害のあった場所で 私が初めて津波の跡地である名取市閖上(ゆりあげ)海岸を訪れたのはさらに遅く、震災から1年がたった昨春でした。ところどころに移動できない船の残骸を残してガレキは撤去され、一面の更地となった海岸線を、日和山に立てられた手づくりの碑が見下ろしていました。津波被害を受けた閖上中学校の体育館は、遺留品の整理場所となっていましたが、泥だらけの衣類が床に並べられ、名前が書いてあるにもかかわらず引き取り手の無い様々な品々、写真、赤ちゃんの所在を尋ねる貼り紙など、思わず目をそむけたくなる悲惨な現実がそこにありました。 津波被害の地に立って最も強く感じたのが、お腹の底から突き上げるような原初的な怒りの感情であったことに自分でも驚きました。自然の脅威に対する怒り、1年経ってもなんら救いが無いように見える現状への、誰に対するのかわからない怒り、何もできない自分に対する怒りなど、今でもその中身がうまく分析できていません。 その後被災地を訪れる回数が増すほどに、情報発信することが難しくなりました。その理由はわかりません。ただ現地に立つことで、今回の災害が、いかに甚大かつ広範なものであるかは、しっかりと理解することができたように思います。機会と意思がある方は、出来る限り被災地を訪れていただきたいと思う所以です。 長期的な支援に向けて 実は、震災から2年が経った今も、私が震災直後から目指していた学校図書館の復旧・復興に関わる支援活動には手が届いていません。それ以前に学校図書館の被災状況の悉皆調査ができていないという厳しい現状もあります。この1年は、調査の報告や、ささやかな支援活動の総括などの活動にシフトしてきた観がありますが、いろいろな機会に情報発信や交流をさせていただくことを通して、東北各地の方々と接点を持ち、長期的な視点で、研究者として、また一個人として課題に取り組んでいけるよう努めたいと思っています。 ウィキ上では、震災直後のような直接の支援の呼びかけはしておりませんが、管理人として細々と情報発信を続けています。今後とも末長いご関心をいただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。 被災地の子どもたちに届けたい本@ウィキ http //www45.atwiki.jp/slls 震災と子ども読書・学校図書館支援(国際子ども図書館の窓 第12号) http //dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3532976_po_2012-mado-full.pdf?contentNo=1 (了) 2013年3月13日(水) 震災から丸2年が経過しました。メディアでの映像の氾濫は、哀しみを増幅させる負の側面もありますが、多くの被災地外の者(私も含めて)に対しては、震災を風化させない効果があると思います。時の経過を重く受け止め、自分にできることについて引き続き考え、行動していきたいと思っています。 震災直後の活動が一段落し、2011年後半以降は、本ウィキでの報告も間遠になっていました。ただ、本ウィキでの活動を支えてくださっていたメンバーと共にしてきた組織的な活動が一段落したというだけのことで、管理人を含むメンバーは各地での支援活動にそれぞれシフトしていったということだと思います。 管理人の活動も、研究者個人としての支援活動や調査活動に収束していきましたので、いちいちウィキでの報告は行いませんでしたが、今後少しずつ整理し、報告していきたいと思います。 宮城県名取市図書館の皆さんとの交流は、2011年から2012年を通じて断続的にではありますが、つながっています。震災から1年たった昨春、初めて名取市閖上地区の津波被災地を訪れました。津波被害の甚大さ、深刻さを痛感するとともに、その場所の悲惨さに触れた時もっとも強く感じたのが、「怒り」の感情であったことは自分でも意外でした。それは「このままにしてはいけない!」という、誰にともいえない原初的な怒りの感情、何もできない自分への怒りでもあったように思います。訪問時には、2012年1月にユニセフ・東海大学等の支援により、名取市図書館の敷地内に建設された「どんぐり子ども図書室」を拝見することもできました。2012年の秋には横浜で開催された「図書館総合展」に参加されていた名取市図書館のスタッフの皆さんと名取市長さんと東京で再会する機会を得、交流をさせていただきました。2013年1月には、カナダ政府の支援により「どんぐり・アンみんなの図書室」が旧名取市図書館の跡地に開設されたという嬉しいニュースにも接しました。 しかしながら、管理人が当初から目的としていた学校図書館の復旧・復興に関わる支援活動には、震災から2年経過した今も手が届いていません。それ以前に学校図書館の被災状況の悉皆調査ができていないという厳しい現状もあります。いろいろな機会に情報発信や交流をすることで、被災地の方々と接点を持ち、長期的な視点で、研究者として、一個人としてこの課題に着手していけるよう努めたいと思っています。 2011年8月11日(木) 震災からまたひと月を数えました。お盆や夏祭りを通して、過去と向き合い、精霊を迎える作業をしている方も多いと思います。すべての人が季節のうつろいを心安らかに迎えられるようにと祈ります。 私たちの活動には、この1カ月大きな動きはありませんでした。ひとつの区切りとして、これまでに各地にお送りした本の支払い手続きが済み、募金口座がほとんど空になりました。世間には大口の募金もあり、本を贈る活動も各地で組織的に行われていますので、本ウィキでの募金と図書寄贈の活動はひとまず休止としたいと思います。これまでの募金・寄贈活動に関わってくださった皆様、ご協力ありがとうございました。 今後は、他の組織とネットワークを組みながら、本や学校図書館に関わるボランティア活動のほうにシフトしていきたいと考えています。皆さんの動きやすい夏休み期間にボランティア活動が企画できることを希望していましたが、相手のあることで、なかなか話が進みません。決まり次第、本サイトで告知をさせていただきます。 2011年7月11日(月) 震災から4ヶ月が経過しました。7月11日午後2時46分は、山形県から仙台に向かうバスの中で迎えました。日本図書館情報学会の助成を受けて、初めて東北入りしての調査の中日でした。ちょうど作並温泉に差し掛かったところで手を合わせました。 その後、夕方に宮城県岩沼市の岩沼小学校に到着し、ちょうどその日に着いたばかりの、ウィキ寄贈図書の開封に立ちあいました。発注と発送作業は沼津市の有志の皆さんにお願いしているため、パッケージ全体を見るのは私も初めてのことでした。中には初めて見る本も多かったのですが、ウィキ有志の皆さんの思いがこもった本たちだけに、どの本も美しく、楽しい外観と内容を備えていました。このたびの震災では、日本各地から多くの本が被災地に送られましたが、寄贈図書の中には受け取った側が首をかしげる内容のものも多いと聞いています(今回の調査でもそうした声をお聞きしました)。私たちの支援はささやかなものですが、その質の高さには胸を張れます。書き込んでくださった皆さんの思いの深さとお志の高さによるものと思います。感謝申し上げます。その思いは本を通して子どもたちや先生方に伝わっています。 今回の被災地調査の中間報告はおいおいウィキにアップしていきますのでご覧ください。 2011年6月10日(金) 明日で震災から3ヶ月になります。長い長い3ヶ月でした。被災地外の私たちでさえ、震災後の生活に心と身体を合わせるのにエネルギーと時間を要した気がしています。ましてや被災地でまだ不自由な生活が続く皆さんの生活はいかばかりでしょうか。季節は変わり、雨や暑さといった新たな課題も容赦なく押し寄せています。 図書をお送りした先から切れ切れに情報が入ります。幼稚園や小学校の子どもたちがとても本を喜んでくれているそうです。きれいなステッカーが貼ってあるので「これは何?」と聞いてくれる子も多く、そのたびに先生が、本ウィキによって、いろいろな人の気持ちや手を経て送られた本であることを説明してくださっているようです。しおりも大好評で、同じ年頃の子どもたちが作ってくれたことがわかるので、興味しんしんで喜んで触ってくれているようです。そうですよね。本を読むときにしおりを使う幼稚園児や小学生はあまり見たことがないので(笑)、きっと本についてくる「おまけ」だと思っているのかもしれません。 いわき市にも、読み聞かせやお話会の出前の申し出は、全国各地からあるそうですが、新学期の開始も遅れ、さまざまな学校行事のやりくりもあり、受け入れのほうが伴わないそうです。福島は3月に予定していた教員の人事異動が8月に実施されるそうで、先生方のやりくりもあり、引き続き不安定な学校運営のご様子です。夏休みに現地に行ければ、と思っていましたが、まだまだ読書活動や学校図書館復旧の出番は回ってこないようです。 2011年5月28日(土) いろいろな方々のリレーでとうとう26日、最初の図書が現地の子どもたちのもとへ届きました。本ウィキの趣旨にご賛同いただいた皆さま、ありがとうございました。3月14日に活動を始めてから2カ月以上かかってしまいました。これからもささやかですが息長く支援を続けて行きたいと思います。 宮城県の岩沼市立岩沼小学校からも図書寄贈の要請がありました。現在準備をしています。 日本は梅雨の季節を迎えています。被災地に大雨による二次被害が出ませんように祈っています。 2011年5月16日(月) ここへきて支援の動きが活発化しています。 (1)福島県4カ所への寄贈図書が納入されました。1週間以内には被災地に届くかと思います。 (2)東京の高校生が寄贈図書に貼付するステッカーを製作してくれました。さっそく福島行き図書に貼付されます。 (3)宮城県内2カ所からの図書要請がありました。現在連絡調整中です。 (4)管理人が応募した日本図書館情報学会特別研究助成が採択され、助成金がいただけることになりました。これは東日本大震災に特化した研究助成で、被災地の学校図書館調査などに充てられます。研究テーマは「東日本大震災被災学校における図書および図書館ニーズに関する調査研究」です。7月には現地調査を開始したいと思っています。その過程で現地のニーズに併せたボランティア活動についても細かい情報収集ができればと思っています。 2011年5月11日(水) ゴールデンウィークも終わりました。私事ですが連休中に身内の法事があり、その準備や応接のため、自宅と実家を何度か往復し、あまり休んだ気のしない落ち着かない休日になりました。連休を利用してボランティアに参加している方々の様子をニュースで横目で見ている日々でした。個人的には本務との兼ね合いで7月の現地入りを目指しています。 連休前に発行された「会報 アニマシオン」の読者の方々なのか、新たにいろいろな方々から声を御寄せいただいています。会報の発行と本の登録の4月末締め切り時期が重なってしまったため、登録締め切りをひとまず5月末まで延ばしました。あまりブックリストが分厚くなると、今度は本が多すぎて1パッケージの予算が高くついてしまいますので、きりのいいところでストップしたいという思いもあります。難しいところです。 2011年4月27日(水) トップページにも書きましたが、本日現在で4ヶ所の図書寄贈先が決定しました。管理人として、募金をいただいている立場でもあり、ようやく具体的な支援に取り掛かることができほっとしています。同時にこれからが本番!と身がひきしまる思いです。 支援先が決まったきっかけは「口コミ」でした。連絡手段は携帯電話とFAXです。インターネットでいくら呼びかけても、まだまだ切迫している被災地の通信状況では、インターネットは有効な手段ではないことがあらためて痛感されました。被災地とつながりを持っているどなたかが人を介して結びつけてくださることが必要なのです。 一つの小学校は、津波被害はまぬがれたものの、隣の中学校は津波で被災したため、小学校に中学生も受け入れての新学期です。特別教室は中学生がいるため、小学生は図書室を使うことができません。校舎の窓から見えるところに津波の惨状が広がっており、自宅の前に津波で流された乗用車が引っ掛かったままの風景の中を子どもたちは自宅から、避難所から通学しているそうです。パニック障害と診断されたお子さん、健康な6年生でも授業中に突然泣き叫んだりと、先生方はいまだ余震の恐怖とも闘う中で、子どもたちを安心させることで手一杯というお話でした。お話を聞きながら電話を持つ手が震えました。 他の二校もまた被災地の小学校が避難してきた小学校を支えているという状態だそうです。被災地外にいる私たちにはやりきれない、心の痛む現状です。 「心のケア」と言っても、毎日変わり果てた故郷の景色を目の当たりにする子どもたちの苦しみや悲しみはいかばかりでしょうか。ひととき本の中に別の世界を見せてあげたいと思う私たちの気持ちが早く届いて欲しいと作業を進めながらも祈っています。 FAXで、ウィキに登録された本のリストを送信しましたところ、対象校の先生から「本のリストにある、それぞれの推薦者の方々が書かれたコメントを読むと、その方の思いや願いが伝わってきます」とお返事をいただきました。書き込んでくださった皆さんのお気持ちは確実に被災地に届き始めています。今後とも引き続き息長いご支援をお願い申し上げます。 2011年4月25日(月) 数日前のNHKのニュースだったと思いますが、釜石だか石巻の図書館が再開したという報道がありました。年配の男性が嬉しそうに「私くらいの年になると本はご飯と同じ」とインタビューに答えていました。「滋養になる」と。本が、読書が「滋養になる」って、なんて素敵な表現だろうと思いました。読んだ言葉が身体の中に沁みわたるという感じがとてもよく伝わってきました。みなさん、「滋養になる」本を読んでいますか? 2011年4月22日(金) 福島県いわき市の幼稚園と小学校から図書の希望がありました。支援第一号として鋭意発送準備をしていきます。 東京の幼稚園の園長先生からのおたよりです 「子供たちは、礼拝の献金をいろいろな紙に包んだり、小さな袋に入れたりして持ってきます。4月中の礼拝献金は東日本大震災義援金とする話をしていました。今日の礼拝献金を整理していたところ、こんな包み紙が出てきました。親子で献金を包みながら、祈りも込めているのでしょう。『きょうすけくん』は年長です」 2011年4月21日(木) 昨日、文部科学省の子どもの学び支援ポータルサイトに支援情報を登録しました。同時にNIERの被災地学校運営支援サイトにも情報を上げました。 これまでこのウィキでは本を登録してブックリストを作ることを掲げてきましたが、最終的には、それを誰かが仲介しながら、たとえば読み聞かせやお話会などをしたり、荒れてしまった図書館を復旧整理したり、というボランティアと一緒に届けたいという思いがありましたので、ボランティアの支援という形で登録をしました。それに合わせてメニューの構成も変えています。 実はこのウィキの運営協力者のなかには、新潟中越地震の際に学校および学校図書館でボランティアを体験したことのあるメンバーが複数おり、このほどその際の体験記事も公開されました。新たに追加した支援内容のページ下部にリンクを置きましたので、ご興味のある方はご覧ください。記事にもありますが、一度に最大50名程度で図書館復旧作業をしたこともありますので、規模としてその程度のことは出来るかな、と見込んでいます。もちろん東北は新潟よりさらに遠いので、日帰りは無理かと思いますが、ぜひお手伝いをさせていただきたいと思っています。 一方で本の登録が4月に入ってほとんど動いていませんので、4月末でこれまでのブックリスト作りは締め切る予定です。個人でご登録を考えている方はお急ぎください。5月以降は、学校図書館向けの選定図書リスト各種(たとえば「辞典・事典類10万円コース」とか、「娯楽読み物20万円コース」とか、ニーズに合わせて選択できるような推薦図書リスト)を作成したり、各分野の専門家集団が作られたブックリストなどを順次掲載していきたいと思っています。これらのリストは個人ではなく団体単位での情報提供を対象にする予定です。 2011年4月18日(月) 今年の一月、大学の年度最後の読書の授業で学生と共に読んだ、詩人・長田弘氏の詩「カシコイモノヨ、教えてください」を、最近になって読み返してみました。 この詩は、長田氏が日本語で書かれた世界最古の聖書「覆刻ギュツラフ訳聖書」(詩によれば「北ドイツ生まれの、宣教の人ギュツラフが、日本人の、三人の遭難漂流民の助けを借りて」シンガポールで刷った聖書)に想を得て書かれたものです。 長田氏は、詩の終わりで、神(おそらく確固とした信仰)を持たない現代日本人の悲哀をうたっている(と思われる)のですが、震災後の今日その詩を読むと別の感慨に胸を打たれます。長田氏が詩の後半で引いているのはヨハネの福音書の一節です。 ヒトノナカニ イノチアル、 コノイノチワ ニンゲンノヒカリ。 コノヒカリワ クラサノナカニカガヤク。 私たち日本人にとっての信仰の姿は、既存の宗教・宗派・教義の中にではなく、未曾有の大災害の中にあって、喪失の悲しみと衝撃を耐え忍んでおられる東北の人々の姿の中にこそ存すると感じられてなりません。そうでなければ、世界中の様々な国の数多くの人々が、被災地の方々の振る舞いにあれほどの感動を覚える理由はないでしょう。 辛さの中を生きる被災者の方々の姿に、私たちは クラサノナカニカガヤクヒカリ を見ます。被災地の外にいる私たちも、そのヒカリに支えられて今日を生きていると思うのです。 2011年4月12日(火) 新学期が始まりました。管理人の勤務校は4月上旬からの予定どおりの授業開始となったため、先週から教壇に立っています。教職員にも学生にも東北を郷里とする人がおり、様々な被災体験を聞く日々です。大学生の若い顔には苦労は刻まれていませんが、家族が被災、教育実習先としていた母校が被災など、多くの辛さや困難を背負っての年度初めであることが切実に伝わってきます。 さて、本やおもちゃを送る活動をしている団体はいろいろありますが、現地のニーズと集まった本のマッチングがうまく行っていないという話も伝わってきます。本ウィキの活動でも、どこに送るかということが現在の検討課題です。基本的には、受け入れ側のニーズがはっきりしているところ、出来れば仲介役として本を届けて読み聞かせなどの活動を現地(被災地あるいは避難所など)でしてくださる人がいるところに届けたいと思っています。 一方で、学校復興・復旧のための予算措置はどうなっているのか?学校図書館復興のための支援策について要望は出されているか、などが気になってきました。公的な予算で行われるべき措置と、現在の応急的なボランティア支援が重複しないように、十分配慮したいと思うからです。学校図書館復興時のための本格的な図書選定も始めたいと思っています。本ウィキは今のところ投稿式で選書をしていますが、各団体や有志が独自に制作したブックリストを共有する場にしてもいいと思っています。また被災地ニーズと支援側ニーズをマッチングさせる場としても使えないか、と考えているところです。先週から今週にかけてしたことは以下の点です。 ・3月中に登録されたブックリスト1&2BL1&2 Excel版3月登録分をエクセルで表形式にしました。個人で本を購入して送りたい方はこちらのリストをお使いください。 ・身近な書店に、支援図書購入時の割引率を問い合わせています。 ・募金口座開設しましたに本日時点の残高を記入しました。これから毎日更新していきます。 どうぞ引き続き募金へのご協力をお願い申し上げます。 2011年4月7日(木) 4月6日の読売新聞「くらし」欄(朝刊多摩版12版17面)に「ボランティア支援の募金を」という記事がありました。「義捐金」が被災者に直接配分されるのに比べ、「活動支援金」というのは、ボランティア団体の支援活動に使われるものを指すのだそうです。大手の募金団体でも、すべてを義捐金に充てるのではなく、活動支援金として、選考したボランティア団体に募金額の一部を配分することを行っているそうです。本ウィキでの募金はまさしく後者の「活動支援金」にあたります。 どうぞ引き続き募金へのご協力をお願い申し上げます。 2011年4月4日(月) ようやく本ウィキ支援活動のための 募金口座開設しました。世の中には大手大口の募金がたくさんありますが、学校図書館のような平生から社会的認知度の低い施設に、そうした大口の義捐金から果たして配分されているのだろうか?という疑問がいつもありました。私たちのような草の根ボランティアの出来ることはわずかかもしれませんが、たくさんの支援のチャンネルがあることはけして悪いことではないと思います。子ども読書の必要性、学校の復興、学校図書館の復興、ということが被災地の具体的なニーズになってきたときのために準備をしていきたいと思っています。 どうぞ募金のご協力をお願い申し上げます。 2011年4月1日(金) 新しい年度が始まりました。学校は新学期ですが、東京にあっても震災の影響がそこここに感じられる始業となります。それぞれの生活の中で出来ることを少しずつ積み上げていきましょう。 国際子ども図書館のウェブサイトが、本ウィキへのリンクを貼ってくださいました。左側のメニューの下の部分にリンク 国際子ども図書館 東北地方太平洋沖地震と子どもの読書についての情報を貼っておきました。 募金口座の開設は週明けになりますが、少しずつ本を送る体制が整いつつあります。送る本に貼るステッカー作りは高校生に、本にはさみこむしおり作りは小学生に、と身近な方にお願いをしているところです。 2011年3月29日(火) 先週土曜日のミーティングを受けて、本を届けるための具体案が固まりつつありますので少しだけ予告を。 1.近日中に募金のための口座を開設します。 2.本の取りまとめと発送を引き受けてくれる有志が見つかりました! 3.支援の第一歩として、関東に一時避難をしている東北の被災者の方々向けの支援を考えています。 登録された本をリスト BL1 安らぎを求めて・BL2 楽しく元気に・BL3 乗り越えるために に分類したら、ピタリと書き込みが止まってしまいました。登録手順は今までと変わりませんので、引き続き 本を登録 のほうに書き込みをお願いします。 2011年3月26日(土) 今日管理人が主催するSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会でミーティングを開催しました。冒頭の議題は、本ウィキサイトに基づいた支援を今後どのように展開するか、ということでした。 一日も早く子どもたちに心の拠り所となる本を提供したい、という思いはすべての出席者に強かったのですが、一方で、学校や行政機関にお勤めの方々からは、公的な支援との切り分けをどうするか、どこに支援することが最適なのか、という問題も提起されました。 行政機関や、名のある団体は、公的な支援や組織的な支援を行うことができるでしょう。このウィキでは、公的な支援から見過ごされがちな声を拾い上げて、顔の見えるきめ細かな支援を行うことを目指しています。管理人はじめ今日の会議の参加者のうち数名は、新潟の地震の際の学校図書館復旧支援を体験していますが、そのとき支援活動を始めるきっかけとなったのは、あるメーリングリストを通じてもたらされた被災地の図書館関係者からの声でした。 あえて学校図書館支援にこだわるのは、平時であってさえ整備不十分な日本の学校図書館に、災害後に十分な公的支援が回るとはとても考えられないからです。日本の約40,000校ある学校(小・中・高および各特別支援学校)の半数は、学校図書館に人がいません。残る半分もほとんどが兼任で、学校図書館の業務に専任する教職員のいる恵まれた学校は極めて少数です。専門家がいなくてすべきことがわからない、という学校・学校図書館にこそ、本を届けるきめ細かい支援が必要だと思われます。 一方で、被災地が本格的な学校および学校図書館の復興・復旧支援にとりかかるにはまだまだ時間を要することでしょう。その間、手をこまねいているのではなく、身近な被災者の方々になんとか本を届けられないかと考えています。 繰り返しますが、本ウィキから発する支援は、組織的・網羅的には出来ないかもしれません。ただ声のあるところには 本を届けたいと思っています。そのための仕組み作りにもう少し時間をいただければと思っています。 2011年3月23日(水) 登録メニューのリストが長くなったのと、登録するべき本の内容について複数のお問い合わせがありましたので、これまでにご登録いただいた本を3つに分類してみました。これから登録していただく方にブックリストの趣旨が伝わる分類になっていればと思います。既にご自分の登録された本の分類についてご意見等ありましたら(違う仲間に入れてほしいなど)遠慮なくお知らせください。修正いたします。当面この分類でやってみたいと思っています。 2011年3月21日(月・祝) 2011年3月11日(金)に発生した東北関東大地震で被災した皆さまにお見舞いを申し上げます。 地震から3日後の14日にサイトを開設し1週間が経ちました。 この間少しずつ趣旨に賛同してくださる方が増え、ブックリストもようやく20冊ほどになり、海外からのメッセージに日本語訳もつけていただきました。皆さまのご支援とご協力に御礼申し上げます。 まだまだこれからすべきことがたくさんあると思いますが、運営体制が整っていません。また、せっかくメンバー登録をしていただいた方々と、個別のメールのやりとりは出来るものの、交流のスペースが無く、もどかしく思っております。 とりいそぎ日々の経過を受けて管理人からご報告をさせていただく場所として、このページを設けました。日々考えていること、今後の展開についてのアイディアなどを、皆さんに問いかける場とさせていただければ幸いです。 引き続きどうぞご協力のほどお願い申し上げます。 -
https://w.atwiki.jp/ddo_story/pages/125.html
マーケットプレースへ 種類:クエスト 名前:フレッシュン・ジ・エアー 依頼人:ハーヴェン・グララック ハーヴェン・グララックと話す。 「お前にその能力があるといいんだが、兵士が至急必要なんだ。臭うだろう? グールの息やオークの足の臭いより、もっとひどいだろう? トログロダイトの臭いだ。何十匹もいる! 私の家の下を通る下水道の通風孔を塞いじまった。 すぐに通風孔を開放しないと、重要な委託契約がご破算になる! 人肌脱がないか?」 PC①「トログロダイトを数匹追い払うだけか?どうってことないな。やってやるよ」 ⇒talk②へ PC②「ひどい仕事だ。辞退するよ」 ⇒talk①へ talk① 「じゃあ行け!バグベアーの女郎屋のような臭いのする家にハウス・デニスのお偉方を 入れるわけにはいかない。 助けてくれないんだったら、とっとと出てけ!」 会話終了 talk② 「中に入ったら、ドガートが通風孔まで案内してくれる。 通風孔の詰まりを除いて出てくればいいだけだ。 もうすぐ重要な客が来ることになっているんだが、トログロダイトの臭いが プンプンしてたらすぐに出てっちまうだろう。 幸運を祈ってるぞ!」 クエスト『フレッシュン・ジ・エアー』を受ける 会話終了 再度話す 「何てことだ。デニス一族が私に戦術家として働いて欲しいと言って、 交渉に代表団を送ってくる。 1つや2つ戦いで勝利を収めたことはあるが、地下にいるトカゲどもさえ駆除できない私が、 強力な軍隊の配置計画をどうやって作成できるっていうんだ? トログロダイトどもを追っ払わないと仕事はご破産だ」 会話終了 入口:トログロダイト・クラッチ レベル:4 長さ:普通 【クエスト説明文-①-】 ハーヴェン・グララックから、自宅に充満するトログロダイトの悪臭を なんとかしてほしいと頼まれた。 それには家の地下を通る下水道におりて、通気孔をふさいでいるバリケードを 壊さなければならない。 下水道はトログロダイトの巣窟だ―支援や加勢の申し出はありがたく受けること! トログロダイト・クラッチに入る。 DM 慢心したトログロダイトで溢れた地下室を見つけるのに、 それほどの専門技能は必要ない。 ドッガートと話す。 「トログロダイトとやり合うためにここに来たんだろう?下水道に入れば道はすぐわかる。 だが、一人では行くなよ。行った道を戻ってこれないからな。 通風孔を塞いでるものを取り除いたら、反対側から出してやる。 だが、途中でやられたらトログロダイトの餌になるだけだ。 一緒に行ってくれる者がいないなら、やめておけ!」 PC「ちょっと待って!手に入った!」 会話終了 DM トンネルに入ると、強烈にひどい悪臭に気を失いそうになった。 コイン・ロードが助けを求めていたのも当然だ。 DM 下水道の広い場所に出ると、かぎづめの付いた足が石の上を歩く ひっかくような音が聞こえてきた。 DM トログロダイトが高い出っ張りから飛び下りてきて目の前に立ちはだかった! DM 前方の閉じた扉の向こうには、扉では押さえきれない腐臭の原因があるようだ。 DM 前方の部屋からは廃物や排泄物などあらゆる種類の汚物の臭いがしてくる。 換気孔の前には6つの大きな木箱が積まれている。すべて破壊するのだ! ドッガートと話す。 「大したもんだ!奴らを皆殺しにして、通風孔の詰まりも直したんだろう? そんでもって、ここから出てきたわけか。 私達は皆長い間ここににいたんだから、賃金を払ってもらう資格はある。 こっち、こっち。トログロダイトどもがまた這い上がってくる前に!」 PC「私もそう思ってた」 会話終了 クエスト『フレッシュン・ジ・エアー』をアドバンス コンタクト:ハーヴェン・グララック 【クエスト説明文-②-】 激しい戦いの末トログロダイトのバリケードを壊し、ハーヴェンの家に充満する 悪臭の元を絶った。戻ってハーヴェンに首尾を報告する。 ハーヴェン・グララックと話す。 「甘い空気!晴れやかな空気!トログロダイトの臭いがしない空気! ハウス・デニスとの取り引きが予定通り進んで、お前にも金が払えるってもんだ。 おめでとう。いい仕事をしてくれた」 PC「助けになれて嬉しいよ」 クエスト『フレッシュン・ジ・エアー』完了 会話終了 再度話す 「ハウス・デニスに対する私の名声が保てたし、これで家を売る必要もなくなる。 腐ったチーズのような臭いがプンプンする家を売るのは簡単じゃないからな、まったく」 会話終了 【クエスト説明文-概要-】 自宅の地下からトログロダイトが一掃されたと聞いてハーヴェン・グララックは満足し、 気前よく報酬を支払ってくれた。 マーケットプレースへ
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/258.html
国連・表現の自由に関する特別報告者(Frank La Rue氏)による報告書:表現の自由に対する子どもの権利 意見および表現の自由に対する権利の促進および保護に関する特別報告者の報告書 A/69/335(2014年8月21日) 配布:一般 原文:英語 日本語訳:平野裕二〔日本語訳PDF〕 目次 I.はじめに II.特別報告者の活動 III.表現の自由に対する子どもの権利A.国際人権法上の表現の自由に対する権利 B.第13条:表現の自由に対する子どもの権利 C.第12条:自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視される子どもたちの権利 D.第17条:情報にアクセスする子どもの権利 IV.表現の自由に対する子どもの権利の制限 V.表現の自由に対する比例性を欠いた制限の正当化事由として利用される子どもの保護 VI.子どもの表現の自由の促進A.団体を作り、かつ政治に参加する子どもたちの自由の奨励 B.子ども主導型アドボカシーの奨励 C.さまざまな情報源からの情報へのアクセスの確保 D.メディアの自主規制の促進 VII.子どもたちによるインターネットへのアクセスA.比例性を欠いた制限が採用されることについての懸念 B.インターネットの利用に関する子どもたちのエンパワーメント C.調査研究の拡大 VIII.結論および勧告 I.はじめに 1.特別報告者は、人権理事会決議25/2にしたがって提出される本報告書において、表現の自由に対する子どもの権利に焦点を当てる。 2.子どもの権利条約では、子どもを権利の全面的主体として認識することが強調されている。条約にしたがい、子どもが未成熟であることを、子どもから権利を剥奪して当該権利を成人のみが享有するようにすることの正当化事由として利用することは受け入れられない。子どもは、ミニチュアサイズの人権を認められたミニチュアサイズの人間ではないのである。それどころか、条約は子どもの市民的および政治的権利の保護を拡大するとともに、すべての子どもがその人格を可能なかぎり最大限に発達させることを確保するための具体的措置をいくつか掲げている。また、条約にしたがい、表現の自由に対する権利は子どもの成熟にともなって漸進的に行使されるべきである。 3.子どもを害から保護することおよびおとなが子どもを指導する義務の重要性について疑義を唱える者は誰もいない。しかしながら、年齢が低いことおよび相対的に未成熟であることの結果として子どもが直面する可能性のあるリスクが過剰に言いたてられ、表現の自由に対するおとなおよび子ども双方の権利を不当に制限することの弁明として利用されることがあまりにも多すぎる。このような不当な制限は、何が有害情報であるかについての定義の曖昧さおよび幅広さから生じることもあれば、単に学校、家庭および社会一般における権威主義的態度が暗黙のうちに受け入れられていることによって固定化されることもある。 4.インターネットが開発と人権を促進するための不可欠な手段として広く認められるのであれば、インターネットが子どもにとって不可欠な手段であることも理の当然である。しかし、暴力または虐待の目的でこれらの手段を利用することについての懸念が生じている。デジタル・コミュニケーションの利用を広範に制限することおよび検閲を行なうことは、単に受け入れられないのみならず、これらの懸念の解決策としても実効性を持たない。人権規範が求めているのは、コミュニケーションに対する制限が必要性および比例性の厳格な基準に一致する形で行なわれる、バランスのとれたアプローチである。 5.特別報告者は、本報告書で、表現の自由に対する子どもの権利が国際人権条約でどのように規定されているか、子どもの権利条約にとくに注意を払いながら明らかにする。続いて、この権利の実現を妨げている重要な障壁(表現の自由および情報へのアクセスに対する子どもの権利の直接の制限、ならびに、表向きは子どもの保護を目的としているものの実質的に表現の自由に対するおとなの権利も制限している全般的制限を含む)について詳述する。また、表現の自由に対する子どもの権利の保護および促進に関わる若干の経験についても述べる。インターネットが現代社会に与えている未曾有の影響に鑑み、特別報告者は、子どもの権利の促進にとっての新たなテクノロジーの重要性と、この分野で浮かび上がりつつあるいくつかの具体的懸念についても取り上げる。最後に、国際人権法が定める関連の基準に国内法および国内実務を適合させることに関する勧告を行なう。 II.特別報告者の活動 6.(略) 7.(略) 8.本報告書の作成にあたり、特別報告者は、表現の自由に対する子どもの権利に関する関連の研究の検討および専門家との協議を行なった。また、Child Rights International Networkが蓄積した情報も活用している。加えて、特別報告者は、リオデジャネイロ(ブラジル)、フィレンツェ(イタリア)、メキシコシティおよびヨハネスブルグ(南アフリカ)でこの問題に関する専門家協議を開催した。 III.表現の自由に対する子どもの権利 A.国際人権法上の表現の自由に対する権利 9.表現の自由は、市民的および政治的権利に関するすべての国際・地域人権文書に掲げられている [1]。市民的および政治的権利に関する国際規約第19条では、表現の自由に対するすべての者の権利(国境にかかわりなく、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える権利を含む)が承認されている。同条に基づき、あらゆる形態の表現およびその普及手段が保護の対象となる(第2項参照)。この権利には、規約第19条第3項および第20条に掲げられた制限に服することを条件として、他者に伝達しうるあらゆる種類の考えおよび意見の通信を行ないかつ受けることも含まれる。 [1] 世界人権宣言第19条、市民的および政治的権利に関する国際規約第19条、欧州人権条約第10条、米州人権条約第13条および人および人民の権利に関するアフリカ憲章第9条参照。 10.子どもも規約に定められたすべての市民的権利から個人として利益を得る [2] にもかかわらず、従来、表現の自由に対する権利は子どもたちと関連づけられてこなかった。ジュネーブ子どもの権利宣言(1924年)および〔国連・〕子どもの権利宣言(総会決議1386 (XIV))など、子どもについて取り上げた従前の国際文書では、子どもは未成熟さゆえに意味のある選択を行なうことはできないという憶測に基づき、この権利に関するいかなる言及もなかった。子どもの権利条約は、子どもの権利および固有の尊厳の保護における分水嶺である。従前の国際法文書とは異なり、条約は、子どもに対するおとなの義務を基盤とするアプローチ(子どもの権利宣言参照)から権利の保有者としての子どもに焦点を当てるアプローチへの、重点の劇的な転換を促している。 [2] Official Records of the General Assembly, Forty-fourth Session, Supplement No. 40 (A/44/40), annex VI, para. 2. B.第13条:表現の自由に対する子どもの権利 11.子どもの権利条約は、表現の自由に対する子どもの権利を宣明した最初の国際法文書である [3]。第13条の文言は、市民的および政治的権利に関する国際規約第19条第2項および第3項の文言を緊密になぞっている。一部の論者によれば、第13条は規約第19条の規定を、子どもに適用するための試みをほとんど行なうことなく「剽窃」したものにすぎないため、それ自体ではほとんど価値がない [4]。しかし、意見を聴かれる権利および情報にアクセスする権利を保護する条約第12条および第17条に掲げられた規定とあわせて読めば、第13条は、表現の自由に対する子どもの権利について、規約第19条による保護よりも優れているとまではいかなくとも、同等の水準の保護を与えているということができる。 [3] 子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章(1999年発効)第7条も参照。 [4] Sylvie Langlaude, "On how to build a positive understanding of the child s right to freedom of expression", Human Rights Law Review, vol. 10, No. 1 (2010), pp. 33-66. 12.第13条では子どもの発達しつつある能力について言及されておらず、また表現の自由に対する権利を行使するための最低年齢もしくは一定の成熟度も定められていない。この意味で、表現の自由には発達の側面があると捉えられてきた。表現の自由の目的は、子どもたちが、社会において他者とともに精神および自分自身を発達させ、かつ公的生活に参加する市民へと成長していけるようにするところにあるからである [5]。子どもの表現の自由は、子どもが自律的に意見を表明する能力を身につけたときまたは子どもがティーンエイジャーになったときから始まるのではないし、そのようなことはありえない。子どもが、事前に機会を与えられることもなく発達し、18歳という魔法の年齢に達した途端に自律的な存在として社会に参加するようになるなどと期待することはできないのである [4]。 [5] Herdis Thorgeirsdottir, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child Article 13 - The Right to Freedom of Expression (Martinus Nijhoff Publishers, 2006). 13.とはいえ、子どもはおとなではなく、子どもが発達しつつある能力を有しているという事実を回避することもできない。子どもの権利条約第5条に掲げられたこの原則は、単純に、子どもの「子どもらしさ」を考慮する必要性と、子どもの発達および権利行使のあり方はおとなのそれとは異なるという事実を反映したものにすぎない。条約第5条に基づいて親および子どもに責任を負う他の者に付与されている役割が示唆するのは、子どもが表現の自由に対する権利を享有する度合いは、実際上、子どもに特化したものではない国際人権文書において同様の文言で表されている権利をおとなが享有する度合いほど幅広くはないということである [6]。表現の自由に対する権利の行使は子どもの成熟とともに拡大する一方、第5条に基づいて親が行なう適切な指示および指導はそれにしたがって後退していく [4]。 [6] Aoife Nolan, Human Rights Law in Perspective Children s Socio-Economic Rights, Democracy and the Courts (Oxford, Hart Publishing, 2011). 14.条約第13条の文言は全体として規約第19条の文言をなぞっているが、一部の規定は省略されている。第一に、第13条には、干渉されることなく意見を持つ権利(規約第19条第1項)が含まれていない。ただしこの権利は、第13条第1項に黙示的に含まれているか、または条約第12条もしくは第14条に包含されていると推論することもできよう [7]。第2に、第13条には規約第19条第3項の第1文(「2の権利の行使には、特別の義務および責任をともなう」)が含まれていない。現代的表現媒体の強力な影響力ゆえに規約に導入されたこの1文を含めることは、子どもの表現の自由との関連では必要ないと判断されたものと思われる [7]。 [7] Sharon Detrick, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child (Martinus Nijhoff Publishers, 1999). 15.表現の自由に対する権利の適用範囲はかなり広い。子どもの権利委員会によれば、条約第13条は、国家に対して行使できるだけではなく、家庭、コミュニティ、学校、公共政策の決定および社会においても行使できる権利を付与するものである [4]。 16.とくに、家庭は、表現の自由に対する子どもの権利の実現におけるもっとも重要な柱のひとつと考えられている。親が子どもの養育および発達について第一次的責任を負っており、かつ子どもの最善の利益を基本的関心事としていることは、広く認められているところである。委員会は、家庭の構造を、子どもが自由な意見表明を学び、それによって社会に参加するために必要なスキルを身につけられるような参加型のものにすることを奨励している。家族構成員の義務には、子どもの意見を聴き、かつそれを真剣に受けとめる義務や、条約上の権利の実現について子どもを支援する義務が含まれる(CRC/C/43/3, paras. 999-1,002〔訳者注/「意見を聴かれる子どもの権利」に関する委員会の一般的討議の勧告、パラ16-19〕参照)。 情報を求める権利 17.情報を求める権利(子どもの権利条約第13条第1項)は、情報、とくに公的機関が保有する情報にアクセスする権利としばしば関連づけられてきた。この権利は、子どもが国内外の多様な情報源からの情報および資料にアクセスできるようにすることを目指す、条約第17条の規定とも密接に関連している。 18.情報を求めることおよび情報にアクセスすることは、子どもの発達にとって必要不可欠であるとともに、社会生活への参加に欠かせない前提条件である。したがって、子どもの権利委員会はこの権利を、公的機関が保有する情報にアクセスできるようにする積極的義務を国に課すものと解釈してきた。自由権規約委員会の見解によれば、この権利を実効あらしめるために、国は、公益に関わる情報に容易に、迅速に、効果的かつ実際的にアクセスできることを確保するためにあらゆる努力を行ない、かつ、ある者が(情報の自由法などの手段により)情報にアクセスできる必要な手続を制定するべきである(CCPR/C/GC/34、パラ19参照)。 情報を受ける権利 19.子どもは、あらゆる種類の情報および考えを受ける権利も有している。子どもの権利委員会がその総括所見および勧告でこの規定に言及することは多くない。打ち立てられつつある原則は、子どもを異なる文化に親しませるための措置がとられなければならないこと、メディアは子どもが他の文明について学ぶのを援助しなければならないこと、および、すべての子どもを対象とした児童文学の刊行、普及および提供を奨励するための措置がとられるべきであることぐらいである [4]。 20.情報を受ける権利は、教育に対する子どもの権利を締約国が承認した第28条、および、子どもの教育においてはとくに子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることを目指すものとすると強調されている第29条と、密接に関連している。 情報を伝える権利 21.最後に、子どもは他者に情報を伝える権利を有する。情報を受ける権利の場合と同様、子どもの権利委員会の先例にはこの権利への言及がほとんど見られない。委員会は、たとえば、子どもには子どもの雑誌、テレビその他のメディアに寄与する権利、学校の内外で政治的活動に従事する権利およびインターネット上のチャットルームを開設する権利があると述べている [4]。 許容される制限 22.子どもの権利条約第13条第2項では、表現の自由に対する権利の行使には一定の制限を課することができると明示的に規定し、当該制限を掲げている。子どもの権利委員会は、この権利に対する制限として許容されるものについての包括的先例を発展させていない [4]。ただし、規約第19条第3項の解釈および適用について自由権規約委員会が行なった分析は、表現の自由に対する子どもの権利についても必要な修正を加えて当てはめることができる(CCPR/C/GC/34、パラ21参照)。 23.第1に、制限は公衆がアクセスできる法律によって定められ、かつ、個人が自己の行動をしかるべく規制できるよう十分に精確に定式化されていなければならない。第2に、制限は、第13条第2項(a)および(b)に掲げられた事由、すなわち他の者の権利または名誉の尊重および国の安全、公の秩序または公衆の健康もしくは道徳の保護に基づいてのみ課すことができる [8]。第3に、制限は必要性および比例性の厳格な基準に一致するものでなければならない。 [8] 子どもの権利条約の起草過程においては、制限の正当化事由に追加する形で「子どもの霊的および道徳的福祉」への言及を含めるという提案が、そのような制限を子どもにのみ課すのは不公正となること、および、その問題は情報へのアクセスに関する第17条ですでに扱われていることを理由に却下されている。Sharon Detrick, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child参照。 C.第12条:自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視される子どもたちの権利 24.子どもの権利条約第12条は、国際人権法において他に例を見ない規定である。これは子どもだけが有する権利であって、おとなが有する権利ではない。子どもは、市民的および政治的権利に関する国際規約に明示的に掲げられた、自己に関わるあらゆる状況について意見を表明する一般的権利を有していないためである [4]。子どもの意見に常に耳が傾けられるわけではないという事実が、意見を聴かれる一般的権利を条約に含めることの正当な理由となる。第12条の目的は、おとなが有する全面的自律権を有しない一方で権利の主体でもある子どもの法的・社会的地位に対応するところにある(CRC/C/GC/12、パラ1参照)。 25.同条第1項は、自己の意見をまとめる力のある子どもに対し、自己に影響を与えるすべての事柄に関して自由に意見を表明する権利と、その後、その子どもの年齢および成熟度にしたがって当該意見を正当に重視される権利を付与している。第2項は、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても意見を聴かれる子どもの権利を定めている。 26.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられるすべての子どもの権利は、条約の基本的価値観のひとつを構成するものである。子どもの権利委員会は、第12条を条約の4つの一般原則のひとつに位置づけてきた。これは、同条はそれ自体でひとつの権利を定めているというのみならず、他のあらゆる権利の解釈および実施においても考慮されるべきであることを強調するものである(CRC/C/GC/12、パラ2参照)。 27.第12条にしたがい、締約国は、当該権利を自国の法体系において承認する義務、子どもに影響を与えるすべての行動および意思決定プロセスへの子どもの積極的関与を容易にするために適切な機構を整備する義務、および、表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行する義務を負う。子どもの権利委員会は、子どもの意見に耳を傾けているように見せることは相対的に難しくないものの、子どもの意見を正当に重視するためには真の挑戦が必要であると指摘してきた。委員会によれば、子どもの意見に耳を傾けることは、それ自体が目的とされるべきではなく、むしろ、国が、子どもたちとの交流および子どもたちのための行動において、子どもの権利の実施にこれまで以上の配慮を払うようにするための手段として見なされなければならない(CRC/GC/2003/5参照〔パラ12〕)。 28.表現の自由に対する権利は、第12条に掲げられた、意見を聴かれる権利と混同されることが多い。子どもの権利委員会は、どちらの条文も強く関連し合っているとはいえ、これらの条項は異なる権利を定めたものであって混同されるべきではないと考えている。第12条は、子どもに影響を与える事柄について具体的に意見を表明する権利、および、子どもの生活に影響を及ぼす行動および決定に関与する権利に関連している。この規定が、締約国に対し、子どもに影響を与えるあらゆる行動および意思決定への子どもの積極的参加を容易にし、かつ表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行するために必要な法的枠組みおよび機構を導入する義務を課している一方、表現の自由は、締約国によるこのような関与または反応を要求するものではない。ただし委員会は、子どもの自由な意見表明を可能とする環境をつくり出すことは表現の自由に対する権利を行使する子どもの能力の構築にも寄与すると考えている(CRC/C/GC/12、パラ81参照)。 29.表現の自由との関連で第12条が有するもうひとつの興味深い側面は、参加が重視されていることである。この文言は同条では用いられていないものの、子どもの権利委員会は、さまざまな機会に、子どもは社会に参加することによって意見を聴かれ、公共の問題に関する見聞を広め、かつ自国の生活において役割を果たせるようになると指摘してきた(たとえばCRC/C/SR.379、パラ55参照)。参加は、家庭、学校および社会一般において奨励されるべきであり、政治的、社会的、経済的および文化的生活に関わるものであるべきであり、かつ、既存の諸制度を通じておよび子どもに特化した機関の創設を通じて行なわれるべきである。子どもの参加権を奨励することの理論的根拠は、子どもの発達を促進するところにある。子どもが学校およびコミュニティの生活に参加する経験を持たなければ、長じて社会の全面的構成員になることは期待できないからである(たとえばCRC/C/SR.277、パラ50参照)。 D.第17条:情報にアクセスする子どもの権利 30.子どもの権利条約第17条は、情報にアクセスする子どもの権利を扱うとともに、そのような情報の提供をマスメディアに対して奨励する際の国の役割について取り上げている。この規定の目的は、子どもが国内外の多様な情報源からの情報および資料(とくに自己の福祉および健康の促進を目的とするもの)にアクセスできるようにすることである。同条は、マスメディアが果たす重要な機能も認めるとともに、第17条に基づく子どもの権利を実施するために締約国がとる必要のある多くの措置を列挙している。これらの権利には、とくに書籍、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ番組および図書館を通じて情報を求めかつ情報にアクセスする積極的権利も含まれる。 31.締約国は、第17条(e)に基づき、子どもの福祉に有害な情報および資料から子どもを保護するための適切な指針を発展させるよう求められている。したがって、子どもは成熟にともなってますます広範囲の資料へのアクセスを認められるべきであるが、その発達しつつある能力次第で、発達にとって有害となる可能性がある資料から保護されるべきでもある。委員会の先例では、「有害な資料」の包括的定義は示されておらず、暴力的、人種主義的またはポルノグラフィー的資料への一般的言及が見られる程度である。 32.この権利は、条約第13条に掲げられた、情報を求める権利と密接に関連している。この権利の行使は、子どもが見聞を広め、よって社会生活に参加できるようにすることを目的とするものだからである。子どもの権利委員会は、この権利を充足することは意見を聴かれる権利(第12条)の効果的行使の前提条件であるとも指摘してきた。委員会は、子どもは自己に関わるすべての問題についての、子どもの年齢および能力にふさわしい形式による情報(たとえば子どもの権利、子どもに影響を与える手続、国内法令および国内政策、地元のサービスならびに不服および苦情の申立て手続に関連する情報)にアクセスできなければならないと説明してきた。 33.委員会はまた、メディアが、子どもの意見表明権に関する意識を促進することおよびそのような意見表明の機会を提供することのいずれにおいても重要な役割を果たすとも指摘してきた(CRC/C/GC/12、パラ83参照)。この規定に基づくメディアのその他の義務には、さまざまな情報源からの情報へのアクセスを提供すること、若者が社会に対して行なう前向きな貢献を描くこと、子どものためのサービス、施設および機会に関する情報を普及すること、平等主義的な原則および役割を促進すること、ならびに、ポルノグラフィー、薬物および暴力の描写水準を最低限に留めることが含まれる(総会決議45/112付属文書〔リャド・ガイドライン〕参照)。 IV.表現の自由に対する子どもの権利の制限 34.子どもたちは、子どもの自由なコミュニケーションを認めることのリスクを過剰に言い立て、かつ子どもの主体性を過小評価することの多いパターナリスティックな態度が確立されていることの結果として、表現の自由に対する権利の実現を妨げる特有のハードルに直面している。加えて、子どもたちの権利は、おとなの表現の自由を阻害するすべての障壁の影響も受ける。 35.子どもの権利委員会は、多数の国々に対し、家庭、学校および社会一般を含むあらゆる領域で子どもに対する伝統的態度が残っていることにより、自由な自己表現に対する子どもたちの権利の受容が引き続き遅れていると指摘してきた(たとえばCRC/C/SGP/CO/2-3〔シンガポール〕、パラ33およびCRC/C/ECU/CO/4〔エクアドル〕、パラ40参照)。子どもたちの表現の自由を妨げる障壁は、子どもに対するおとなの権力に疑問が呈されないままの環境においてとりわけ蔓延している。教育現場は、子どもは自分自身の権利、意見および気持ちを有する人間であるという認識と子どもに対するパターナリスティックな見方との間に存在する緊張の一部が、特段のわかりやすさをともなって浮き彫りになる環境である。 36.教育の目的に関する一般的意見1号のパラ8で、子どもの権利委員会は次のように述べている。 「子どもは校門をくぐることによって人権を失うわけではない。したがって、たとえば教育は子どもの固有の尊厳を尊重し、かつ第12条第1項にしたがった子どもの自由な意見表明および学校生活への参加を可能にするような方法で提供されなければならない」 37.しかしながら、多くの国では、教育とはおとなが子どもをあらかじめ定められた形に成型するための手段であるという考え方のゆえに、子どもたちが自由な自己表現の権利を否定されている。このことは、たとえば生徒に学校の運営方法についての意見表明をさせないことが多い、権威主義的な学校環境および教育手法の蔓延(CRC/C/KOR/CO/3-4〔韓国〕、パラ40参照)に明らかである。場所によっては、意見を発展させかつ表明するよう子どもに奨励する参加型の教育手法ではなく、暗記学習が引き続き標準とされているところもある(CRC/C/15/Add.148〔サウジアラビア〕、パラ39)。 38.生徒が団体を作ることおよび政治的意見または論争を招きかねない意見を表明することを認めていない学校は多い。1969年のティンカー対デモインズ独立コミュニティ学校区事件(Tinker v. Des Moines Independent Community School District)は、おそらく子どもの表現の自由の保護に関する最初の重要判例であろう。1965年12月、3人の生徒(13歳、15歳および16歳)が、ベトナム戦争に抗議するため、平和のシンボルをあしらった黒い腕章を着けて学校に行くことを計画した。その抗議の計画を耳にした地方学校当局は、学校における腕章の着用を禁止し、関与した生徒らを停学にした。生徒らはアメリカ自由人権協会の支援を得て裁判所に不服申立てを行ない、その申立ては、1969年、アメリカ合衆国最高裁判所によって認められた。 39.司法制度は、根深い権威主義的慣行を修正するうえでしばしば重要な役割を果たす。いまのところ、表現の自由および情報へのアクセスに対する子どもの権利を確認した裁判所の決定例はほとんどない。しかし、とくに米国では教育現場における実例が増えつつある。たとえば、フロリダのある高校生は、学校でゲイの権利を支持するいかなるシンボルも着用してはならないとされた。校長が、虹をあしらったいかなるシンボルも生徒にゲイの人々のセックスを連想させると考えたためである。連邦裁判所判事は、前述のティンカー事件判決を引用した決定で、学校は当該生徒の権利を侵害したと判示した [9]。 [9] American Civil Liberties Union, "Federal judge rules that students can t be barred from expressing support for gay people" (13 May 2008). 40.生徒が運営する刊行物は、生徒が意見を表明できるもうひとつの重要な手段である。これらの刊行物は、若者にとっての関心事であり、おとなが議論に居心地の悪さを覚えるかもしれない問題についての報告が掲載されることから、支援の供給源となる。しかし、生徒の記事は、ティーンエイジャーの妊娠や親の離婚の影響等の問題を取り上げているという理由で検閲の対象とされてきた。生徒によるソーシャルメディアへの投稿もますます監視の対象とされるようになっており、場合により、子どもが学校の批判を投稿したという理由で退学になることもある。 41.文化的活動への子どものアクセスも、正当な理由なく検閲の対象とされる場合がある。1993年のドゥンドゥズ・チシザ対ケイト・カインジャ大臣事件(Dunduzu Chisiza Jr. v. Minister Kate Kainja)で、マラウィの裁判官は、公立学校で独立系グループが行なうすべての劇その他のパフォーマンスを禁じるのは表現の自由の侵害であると異議を申立てた役者の申立てを認容した [10]。一部の学校が宗教的理由で音楽の自由を禁じているという報告もある。 [10] Article 19, "Kid s talk freedom of expression and the UN Convention on the Rights of the Child" (1999)参照。 42.学校カリキュラムの内容の制限も、多様な情報源からの情報に対する子どものアクセスに影響を及ぼす場合がある。これとの関連で、学校管理者が支持する考えに逆行する考えを記載した書籍および教材が禁じられることも、もうひとつの懸念事項である。たとえば、1982年の教育委員会対ピコ事件(Board of Education v. Pico)で、米国の裁判所は、思想上の理由で書籍を学校図書館から取り除くことはできないと判示している。 43.情報を直接禁止することに加え、一部の学校カリキュラムでは、歴史に関する偏った見方または特定の集団(女子、セクシュアルマイノリティ、民族的マイノリティまたは障害のある子どもなど)に対する偏見のある見方が提示される場合もある。自分自身の意見を形成する子どもの自由に悪影響を与え、かつ逆に差別を固定化させることにつながる可能性があるこのような状況については、さまざまな国連条約機関が各国に対する勧告のなかで提起してきた。 44.この問題については欧州社会権委員会も取り上げている。同委員会は、2009年、性教育を取り上げたクロアチアの学校カリキュラムが性的指向を理由とする差別を行なっていると認定した。同委員会は、カリキュラムに掲げられた一部の説明は同性愛者にスティグマを付与するものであり、かつ否定的な、歪められた、非難されるべき、かつ品位を貶めるステレオタイプに基づいていると指摘している [11]。 [11] International Centre for the Legal Protection of Human Rights v. Croatia. 45.表現の自由に対する子どもの権利を制限することの影響は、校門の内側には留まらずに公的生活にも及ぶ。子どもたちは、おとなとまったく同様に、政治的意見を表明したことを理由に過度の暴力または恣意的拘禁の対象とされる可能性がある。たとえば、子どもの権利委員会は最近、シリア・アラブ共和国に対し、南部の街であるダルアで、校舎の壁にペンキで反政府的な落書きを行なったとして罪に問われた8~15歳の児童生徒の集団が逮捕および隔離拘禁の対象とされたこととの関連で、このような人権侵害があったことを強調した(CRC/C/SYR/CO/3-4、パラ46参照)。ベラルーシに対しても、2010年12月の大統領選挙との関連で行なわれたデモの際に青少年が拘禁されたことについて懸念を表明している(CRC/C/BLR/CO/3-4、パラ35参照)。 46.法律による比例性を欠いた制限は、おとなおよび子ども双方の権利への干渉となる。これには、たとえば表現の自由は「イスラムの原則」に照らして解釈しなければならないという要件を引用する曖昧な文言の制限条項を掲げた法律や、安全保障に対するリスクの過度に広範な解釈が含まれる。これは、子どもの権利条約第13条第2項および第15条に定められた制限を超える可能性がある(CRC/C/15/Add.254〔イラン〕、パラ40およびCRC/C/PRK/CO/4〔北朝鮮〕、パラ27-28参照)。 47.平和的集会に対する子どもの権利の不当な制限には、子どもの表現の自由を妨げる一般的な障壁の一部が反映されている。平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者は、最近の報告書で次のように指摘している。 「若者が一部のデモに参加することについて安全上の懸念があることもあろう。しかし、……マレーシアの法律のような法律〔15歳未満の子どもはデモに参加できないとするもの〕は、そのような懸念に具体的に対応するのに十分なほど限定されたものとなっていない。むしろ、特定の年齢の個人を対象とする全面的禁止は、住民のある層全体について平和的な集会に参加する権利を例外なく消滅させるものであって、子どもの権利条約第15条に反している」(A/HRC/26/29、パラ24参照) V.表現の自由に対する比例性を欠いた制限の正当化事由として利用される子どもの保護 48.分野によっては、一部のタイプの情報へのアクセスに関して子どもの安全および福祉を懸念すべき正当なかつ理解できる理由が存在する場合もある。たとえば、多くの国は、とくに子どもの保護を目的として放送(とくにテレビ)を規制している。国による規制にはたとえば何らかの年齢別放送制限システムが含まれ、かつそのシステムを執行するための独立機関が設置されていることが多い。子どもにはふさわしくないと一般的に考えられている内容には、性的に露骨な内容、暴力および攻撃的言葉が含まれる。ただし、規制はメディアの自由に相当の影響を与えかねない。そのうえ、何が有害な情報にあたるかの定義は主観的なものである。したがって、子どもの保護を目的とするあらゆる規制および当該規制を執行するために設けられた機構は、おとなおよび子ども双方の権利を縮小させる比例性を欠いたまたは恣意的な制限が課されることを防止する目的で、開かれた、かつ透明なやり方で定期的に再検討することが求められる。さらに、これらの規制の執行を委ねられた機関の独立性を確保することはきわめて重要である――たとえば当該機関の構成に関する規則は、とくに政治的勢力または経済的利害によるいかなる干渉からも保護されるような形で定めることが求められる。 49.たとえばインターネットのフィルターの設定方法の決定にあたって有害な情報を曖昧かつ広範に定義すれば、結果として、十分な情報に基づく決定を行なうための支えとなりうる情報(性教育および薬物の使用等の問題に関する誠実な、客観的なかつ年齢にふさわしい情報を含む)に子どもがアクセスできなくなりかねない。これは、リスクに対する子どもたちの脆弱性を軽減するのではなくむしろ悪化させてしまう可能性がある(さらに詳しくはインターネットについて取り上げた後掲VII参照)。 50.有害な資料から子どもを保護するために事前検閲を行なうことは、国際人権基準に逆行する比例性を欠いた制限の一例である。たとえば、『最後の誘惑』(オルメド・ブストスほか)対チリ事件(The Last Temptation of Christ (Olmedo Bustos et al) v. Chile)において、米州人権裁判所は、チリ政府が子どもの道徳を保護するためにマーティン・スコセッシの映画『最後の誘惑』を禁止したことは米州人権条約第13条(思想および表現の自由)の違反であったと判示した。同裁判所は、判決理由として、映画館への子どもの入場を規制することなど、事前検閲よりも制限度の低い措置をとることによって子どもを保護することは容易であったと述べている。 51.事前検閲に関するより最近の判例(南アフリカ印刷媒体連合ほか対内務大臣ほか〔Print Media South Africa and Another v. Minister of Home Affairs and Another〕事件)で、南アフリカ高等法院は、南アフリカ映画および出版物法(1996年法律第65号)の改正は表現の自由に対する憲法上の権利を侵害していると宣言した。同改正は、子どもが年齢にふさわしくない資料に接することを防止し、かつ児童ポルノを禁止する目的で、出版者に対し、出版物を提出して事前の承認を得るよう(若干の例外を除いて)要求するものであった。同決定は、事前抑制システムについての懸念ならびに出版物の分類に関する曖昧かつ過度に広範な基準についての懸念を指摘している。 52.子どもを保護しなければならないという主張は、情報への子どものアクセスのみならずおとなの権利に対する制限をも正当化するために子どもがますます利用されるようになってきているという、新たなパターンの一部となっている。多くの場合、制限は、子どもを有害な情報から保護したいという、真摯なかつ善意に基づく願いに根ざしたものであるが、差別および検閲を擁護するために子どもが利用される場合もある。 53.もっとも憂慮されるのは、子どもを保護しなければならないという主張が、たとえばレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーに関する問題についての情報へのアクセスを妨げるために、またそれによってセクシュアルマイノリティへの差別を正当化するために利用されていることである。ロシア連邦では、子どもを有害な情報から保護する行政法の改正が2013年7月に施行され、子どもたちの間で「伝統的ではない性的関係を宣伝すること」が違法化された [12]。平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者は、他の委任受託者らとの合同声明で当該法についての懸念を公に表明した。子どもの保護を理由としてロシアの反同性愛者法を正当化しようとする論拠は、欧州人権裁判所によっても、2011年のアレクセイエフ対ロシア事件(Alekseyev v. Russia)において拒絶された。このような批判にもかかわらず、他の国々も追随している。ウクライナでは、2013年、子どもを対象とする「同性愛関係の宣伝」を禁止する法案を議会が検討するべきである旨の勧告が行なわれた [13]。同法案では、「宣伝」は、同性間の関係に関する情報の拡散を目的としたあらゆる公的な活動と定義されている。2014年6月には、キルギスタン議会の人権委員会が、「伝統的ではない性的関係に対する肯定的な態度の形成を目的とした」情報の普及を犯罪化する法案を承認した [14]。 [12] ロシア連邦法第135-F3号(2013年7月29日)参照。 [13] 子どもを対象とする同性愛関係の宣伝の禁止に関する法案第1155号(2011年6月)参照。 [14] 子どもの健康または発達にとって有害な情報からの子どもの保護に関する法案(2014年)参照)。 VI.子どもの表現の自由の促進 54.表現の自由に対する子どもの権利の保護することとは別に、国は子どもの表現の自由を促進する義務も負っている。子どもの表現の自由を保障するためにおとなが組織する音楽、芸術および演劇等の活動への子どもの参加を奨励するだけでは十分ではない。子どもたちは、処罰を恐れることなく、自分たちの意見を口頭またはその他の手段で詳しく述べる、満足に足る機会および空間を持てるべきであり、かつ多様な情報源からの情報に国境を越えてアクセスできるべきである――このことは、すべての子どもに対し、差別なく適用される。このような積極的義務は、公立図書館、音楽指導等の活動および遊び場等の施設のための資金が真っ先に削減されることの多い経済危機の際にも留意されるべきである。子どもたちの表現の自由を積極的に促進するために考えられる方法の若干例を以下に示す。 A.団体を作り、かつ政治に参加する子どもたちの自由の奨励 55.若者市長制から子ども議会に至るまで、子どもたちが政治に参加するための仕組みがますます用意されるようになりつつある。アイスランドでは、財政危機後の2008年、市民による憲法の書き換えを行なうことが合意された。この一環として、憲法改正プロセスで子どもおよび若者の意見も考慮されることを確保する目的で「若者憲法プロジェクト」が設置された。ドミニカ共和国では、学校における安全な飲料水の供給等の問題を扱う自治会評議会が創設され、若者による選挙でその構成員が選ばれている。 56.政治に新たな世代の子どもたちの関与を得ることは、政治文化を刷新し、かつ選挙への参加を増進させるために役立つ。最低投票年齢を16歳に引き下げた国もいくつかあるが、これは、子どもたちの意見の正当性を公的に認め、かつ子どもたちの政治参加を奨励することにつながる前向きな一歩である。あらゆる年齢の子どもたちが、自ら希望するのであれば、公共政策に関する政治的プロセスおよび協議に何らかの形で関与する機会を与えられるべきである。 B.子ども主導型アドボカシーの奨励 57.子どもたちが主導するキャンペーンは、重要な議論を喚起し、かつ社会全体に利益をもたらしてきた。子ども主導型アドボカシーの取り組みを展開する際には学生連合が中心的役割を果たすことが多い。たとえば2011年には、チリの高校生および大学生数千人が法外な教育費負担への抗議を行なった。これらの学生による動員の政治的影響は、チリの教育制度に関して続けられている議論のなかで引き続き感じられている。教育費負担に対する同様の学生による抗議はいくつもの国で行なわれてきた。 58.韓国では、教育制度内の権威主義的慣行に反対する大規模な社会的動員を高校生が進めてきた。生徒によって喚起された公的議論の結果、2012年、ソウル特別市議会は児童生徒権利条例を採択した。これは、とくに生徒の抗議権、体罰の禁止、宗教的活動への参加義務の撤廃ならびにレズビアン、ゲイ、トランスジェンダーである生徒ならびに妊娠した生徒の差別からの保護を確保するものである。この動員の流れで韓国の生徒により結成された韓国青少年権利行動は、引き続き生徒の積極的活動を推進している。 59.英国の13歳の少年は、自分が通う学校の差別的な服装規則(夏期に女子のスカート着用を認めながら男子の短パン着用は認めない)に反対して立ち上がった。クリス・ホワイトヘッドは、男子のスカート着用は禁じていないという、制服に関する学校方針の抜け穴を利用した。仲間の生徒約30名が抗議に加わり、これがきっかけとなって学校は政府に関する方針を見直した。一方、クリス・ホワイトヘッドは自由人権賞候補にノミネートされた [15]。 [15] Lucy Sherrif, "Chris Whitehead, schoolboy who wore skirt to school, up for human rights award", Huffington Post (21 November 2011). 60.インドでは、「児童婚に反対する女子クラブ」ネットワークのメンバーが、若年婚の有害な影響に関する啓発活動を行なうことにより、娘を幼くして婚姻のために手放すことがないよう家族を説得する支援をしている。このような活動は、家族の圧力に抵抗したいと考える女子だけではなく、ジェンダーを基盤とする期待にさからえば娘が排斥されたままになると恐れる親にとっても命綱となっている [16]。 [16] Melanie Kramers, "Indian girls persuade parents they are too young for marriage", Guardian, 29 June 2011. C.さまざまな情報源からの情報へのアクセスの確保 61.子どもたちが自分自身の意見を形成し、かつ見識および責任のある市民になれるようにするためには、さまざまな情報源からの情報にもアクセスできなければならない。このようなアクセスは、多くの子どもたち、とくに孤立したコミュニティで暮らす子どもおよび自由を奪われた子どもにとっては限られたものとなっている。子どもの権利委員会も、マイノリティ集団にとっての情報のアクセス可能性(情報がこれらの集団のニーズに十分に関連しておらず、またはこれらの集団自身の言語でアクセスできるようになっていない可能性)および障害のある子どもにとっての情報のアクセス可能性の問題を提起してきた。 62.委員会は、「子どもとメディア」に関する一般的討議をもとにまとめられた勧告において、子ども向けの書物、雑誌、演劇その他の形態の表現の制作および普及を確保するための国による予算的支援の重要性および国際協力を通じた援助の重要性を確認している(CRC/C/15/Add.65、パラ256)。コミュニティ放送および公共放送への投資は、多様な情報源からの情報へのアクセスを促進するうえで、また子どもたちの声をメディアに反映させるうえで中心的役割を果たすことが多い。たとえばアルゼンチンでは、通信および視聴覚サービス法により、公共放送機関を対象として、子どもたちのための、および商業放送によって軽視されているその他の層のための番組を放送する時間を確保する義務が定められている。同法の実施の監督を委ねられている公的機関は、通信および視聴覚サービスについて議論するための公聴会(子どもたちを対象とするものを含む)を推進している。また、最近では、生徒が主導して自分たちの学校で行なうラジオ放送活動も支援してきた。さらに、アルゼンチン教育省は、コンテンツ制作への子どもの積極的参加を通じたものも含む、子どもに配慮した教育番組制作の促進を目的としたチャンネルの開設を支援している。 D.メディアの自主規制の促進 63.予算的支援を提供することに加え、国は、メディア団体に対し、子どもたちの取り上げ方および関与のさせ方に関する自主規制を奨励することができる。国際ジャーナリスト連盟は子どもに関連する問題についての報道に関する指針案および原則案を策定してきたが、これは70か国のジャーナリズム団体によって採用されている。これには、ステレオタイプの使用および子どもが登場する話のセンセーショナルな提示を回避することについての規定も含まれている。 64.子どもたちはメディアへの参加権も有しており、刊行物のなかには完全に子どもたちによって運営されているものもある。前述の一般的討議をもとにまとめられた勧告で、子どもの権利委員会は、メディアに対する子どもたちの参加権を促進しながら、生徒はメディアとの関わりおよびメディアの活用を参加型の方法で実践し、かつ広告を含むメディアのメッセージの解読方法を学習できるようにされるべきであると主張している(CRC/C/15/Add.65、パラ256)。 VII.子どもたちによるインターネットへのアクセス 65.インターネットは、世界のすべての地域に住む子どもたちおよびおとなの、迅速かつ安価にコミュニケーションをとる能力を劇的に向上させてきた。そのためインターネットは、子どもたちが表現の自由に対する権利を行使するための重要な手段のひとつであり、また子どもたちが他の権利(教育、結社の自由ならびに社会的、文化的および政治的生活への全面的参加に対する権利を含む)を主張するのに役立つツールになりうる。インターネットはまた、子どもたちを含むすべての市民の関与が必要とされる開かれた民主的社会の発展にとっても不可欠である。しかし、インターネットの規制をめぐる議論では、子どもによるインターネットへのアクセスと関連した潜在的リスクについても突出した形で取り上げられ、保護のための政策において、インターネットが有するリスクにもっぱら焦点が当てられて、インターネットが子どもたちのエンパワーメントにつながる潜在的可能性は見過ごされる傾向がある。さらに憂慮されるのは、子どもを保護したいという真の思いからか、または検閲の隠れみのとしてかにかかわらず、比例性および有効性を欠いた措置(すべての人を対象としてオンライン上のコミュニケーションを阻害する、広範で配慮を欠いたフィルタリングおよびブロッキングのシステムなど)を利用する国もあることである。 66.インターネットが広がったことにより、数百万人の人々が前例のない規模で学習、発信およびコミュニケーションをすることができるようになった。インターネットは、学校における双方向的利用の可能性およびそこで利用可能とされる広範囲の情報を通じ、大いなる教育的利益を提供しうる。たとえばウルグアイの「プラン・セイバル」(Plan Ceibal)は、教育制度を通じてインターネットへのアクセスを促進する注目すべき実例である。より具体的には、子どもの権利委員会が提案するように、インターネットは、通学することのできない子どもたちに対し、インターネットに依拠した移動学校プログラムを通じて教育を提供できることから、教育において重要な役割を果たす(CRC/C/GC/11、パラ61)。 67.インターネットはさらに、若者が公の議論に参加するための他に例のない経路となる。たとえば米国では、17歳の少年が、学校で同性愛について話し合うことを教師に禁ずる法案に抗議するためのツイッター・キャンペーンを組織したという [17]。 [17] Shira Lazar, "Is it okay to say gay? Devon Hicks protests Tennessee bill", Huffington Post, 25 May 2011. 68.ソーシャルネットワーキングサイトも、人間関係を育み、かつ情報交換および交流を容易にする手段として、子どもたちにとってますます重要なものとなっている [18]。子どもたちの報告によれば、ソーシャルネットワーキングは、創造性を助長し、仲間の好みを参考にした選択および意見形成を可能にし、議論を促進し、かつオフラインでは利用できない自己表現の場を提供してくれるものである [19]。これらのサイトは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーのコミュニティなど、このような場がなければ孤立感を覚えるかもしれないマイノリティ集団のメンバーにとってとりわけ重要な役割を果たす可能性がある [18]。 [18] UNICEF Innocenti Research Centre, Child Safety Online Global Challenges and Strategies (May 2012). [19] Child Exploitation and Online Protection Centre, Understanding Online Social Network Services and Risks to Youth Stakeholder Perspectives (2006). 69.とはいえ、インターネットの利用には子どもたちにとって若干のリスクがともなうのも事実である。インターネットの利用に関連するリスクとして広く認知されているものには、ポルノグラフィ―的資料にさらされること、ネット上での性的勧誘およびネットいじめなどがある。 70.たとえば性的搾取の場合、テクノロジーの進歩(インターネット接続の高速化や、インターネットサービスプロバイダを迂回する新たな資料伝達方法を含む)により、児童虐待をともなう画像の共有が容易にされてきた。ネット上での性的勧誘にもインターネットが用いられているが、現在では、性的虐待を行なう目的で子どもまたは若者と「仲良く」なり、オンライン上で性的接触を図ることまたは実際に会うことがその目的となっている [18]。犯罪者は、このような目的で、チャットルーム、ソーシャルネットワーキングサイトおよびインスタントメッセージのようなオンライン上のフォーラムを利用することが多い。これにより「伝統的なプライバシーの境界が解体され」、子どもたちがリスクにさらされる結果が生じている [18]。最後に、最後に、ネットいじめとは、情報通信技術を通じておとなまたは他の子どもが行なう心理的いじめおよびいやがらせと理解されている。ネットいじめは、脅迫および威嚇、いやがらせ、ネットストーキング、中傷および名誉毀損、排除または仲間からの拒絶、なりすまし、私的な情報または画像の勝手な公表ならびに自分の思い通りに行動させようとすることなど、さまざまな形態をとりうる。これは、ただでさえ社会のなかで弱い立場にあると考えられている集団にとってはとりわけ問題である [18]。 A.比例性を欠いた制限が採用されることについての懸念 71.インターネットはすべての子どもにとって危険であるという一般的な恐怖心は誤解につながりやすく、インターネットは特定の状況下で有害にも有益にもなりうるという現実を過度に単純化している。オンライン上のリスクに対する子どもたちの脆弱性をより幅広い社会的・文化的視点から理解することにより、これらの懸念がどのような性質のものであり、かつそれをどのように捉えるべきかについて、より深い知見を得ることが可能である。子どもたちによるインターネットの利用状況、その行動およびリスクに対する脆弱性は年齢によって異なり、かつ個々の子どもによっても変わってくる。保護のための措置は、子どもおよびおとなに同様に悪影響を与える絶対的ブロックまたは検閲の措置を利用するのではなく、子どもたちの発達しつつある能力を認めようとするものでなければならない [18]。 72.平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者はかつて、インターネットに対する制限が増えていることを懸念とともに指摘していた。たとえば、活動家および批判者を標的にして沈黙させ、かつ合法的表現を犯罪化する目的でオンライン上の活動のブロックおよび監視を行なうことなどである――一部には、政府がそのような措置を正当化するために制限的法律を制定したケースもある(A/HRC/17/27、パラ23参照)。このような制限は透明性を欠く形で課されることが多いため、検閲問題の報告が困難になる。さらに、たとえ若干の水準の制限は正当化される場合があるとしても、不法な内容以外の資料を一括して禁ずることは保護という目的との関係で比例性を欠く(前掲、パラ44)。それどころか、そのような措置は、表現の自由に対するおとなの権利を過度に制限してしまうことから、オンライン上のリスクに関する議論を抑止することで子どもたちをいっそう危険な状況に置いてしまうことに至るまでの、意図しない影響ももたらす。 73.特別報告者は、親および学校当局が、インターネットへの子どものアクセスを管理するためのソフトウェアを利用し、かつオンライン上の安全について子どもたちを指導することができる場合、国の関係機関による全面的禁止は必要とされないと指摘している(A/HRC/17/27、パラ27参照)。それどころか、国の関係機関がそのような広範な禁止を決定することは、インターネットへの子どものアクセスに関する判断権を親および養育者が行使することの妨げとなるので、子どもの権利条約第18条と両立しない。加えて、自主規制戦略に関してコンテンツ提供者を援助するためのプロジェクトもいくつか進行中である。 74.子どもたちによるインターネットの利用状況に関する理解が限られているために、子どもの保護を目的とした、より制限的なアプローチがしばしば採用される [20]。実のところ、子どもおよび若者の圧倒的多数は、オンライン上の自分たちの振舞いが被害または危害につながるとは考えていない。子どもたちはすでにインターネットから身を守るためのさまざまな戦略を活用しており、これにはオンラインまたはオフラインの友人に相談すること、望まないコンテンツをブロックしまたは無視すること、プライバシー設定を変更することなどが含まれる [18]。調査によれば、親および教師がインターネットのことをよく知らない場合に、子どもたちはオンライン上でよりリスクの高い振舞いをすることが明らかになっている [20]。逆に、親が十分な情報を得ており、積極的に関与しようという姿勢を有しており、かつインターネットおよび自分の経験について子どもたちと話し合うことこそ、より安全なオンライン経験を確保するためのもっとも強力な保護措置であることも、証拠により示唆されているところである [18]。このことは、親および養育者がとる措置のほうが、広範な制限を課すことに傾斜する現在の傾向よりも、子どもたちを保護するうえでより効果的であることを示唆していると思われる。 [20] Sonia Livingstone and Monica E. Bulger, "A global agenda for children s rights in the digital age recommendations for developing UNICEF s research strategy" (September 2013). B.インターネットの利用に関する子どもたちのエンパワーメント 75.インターネットを含む情報通信技術が、安全も促進しつつ子どもたちの権利および発達を促進するような方法でこれらの技術を活用できるように子どもたちのエンパワーメントを図るという観点から規制されかつ監視される環境をつくっていく必要がある(CRC/C/GC/13参照)。欧州委員会による「子どもたちのためのインターネットの改善に関する欧州戦略」は、オンラインにおける子どもたちの安全を向上させるための戦略の有益な実例である [21]。ただし、エンパワーメントとは、インターネットを子どもたちにとってより安全な空間にするというだけの話ではない。インターネットがどのように情報アクセスツールおよび子どもたちの批判的思考を支援するツールとなっているかという点に注意を向けることも必要である。 [21] Brian O Neill, "Policy influences and country clusters a comparative analysis of Internet safety policy implementation" (London School of Economics, 2014) も参照。 76.子どもたちのエンパワーメントには、子どもの発達しつつある能力を念頭に置きながら子どものインターネット利用を支援するための、親を対象とした訓練および子どもとともに働く専門家を対象とした訓練が含まれなければならない [18]。オンライン上の安全および子どもの発達にとって有益な情報を紹介する積極的方法のひとつは、情報通信技術に関する学校方針の策定に子どもたちの関与を得る等のやり方も含め、学校カリキュラムを通じてそれを行なうことである。非政府組織および公共通信(ラジオなど)は、学校に行っていない子どもたちに対して同様の支援を提供することができる [16]。子どもの安全を確保するための取り組みの例をいくつか挙げるとすれば、「セイファーネット・ブラジル」、「スロバキア・セイファーインターネット・センター」、ベネズエラ・ボリバル共和国の「マノス・ポル・ラ・ニニェス・イ・アドレッセンシア」(子ども・青少年のための手)などがある。 77.インターネット上の保護およびインターネット利用促進のための戦略を策定する際には、子どもたちのニーズを満たし、かつ子どもたちがすでに用いている多様な知的戦略および創造的戦略を活用するために子どもたちの関与を得ることが、とくに子どもおよび若者は最新技術にいっそう親しんでいる傾向があるだけに、重要である。このような関与戦略は、信頼関係の構築および開かれたコミュニケーションの奨励にも役立ちうる。子どもの権利委員会は、すべての国が、保護のための子どもにやさしいヘルプラインをともなった、アクセスしやすく子どもにやさしい通報制度を設置するよう勧告している(CRC/C/GC/12、パラ120参照)。 C.調査研究の拡大 78.子どもの権利の行使におけるインターネットの役割を明らかにするためには、とくに、子どもがインターネットをどのように利用しているか、子どもはインターネットの安全な利用法をどのように学習しうるか、および、どのようにすれば親、養育者および国はインターネットを破壊的なツールではなく肯定的なツールとしてとらえられるかということとの関連で、いっそうの調査研究が実施されなければならない。また、インターネットについて現在行なわれている利用制限を注意深くかつ批判的に検討することにより、子どもおよびおとなにとっての潜在的悪影響を明るみに出し、インターネット上の安全に関わる懸念の実際的解決策を奨励し、かつインターネットにおける子どもたちのための機会を最大化することも重要である。 VIII.結論および勧告 79.表現の自由に対する子どもの権利は、すべての子どもの権利の保護にとって画期をなした子どもの権利条約を含む国際人権条約によって十分に確立された権利である。実際上、子どもたちを権利の全面的主体として承認すること――条約に掲げられた理念――は、法律、政策および態度の転換を必要とする。表現の自由に対する子どもの権利を尊重し、保護しかつ促進することは、このような転換の中核である。 80.世界人権宣言と市民的および政治的権利に関する国際規約は、第19条で表現および意見の自由に対する権利を定めているが、この権利を享有するのはもっぱらおとなであるとは述べていない。それどころか、規約前文では、国際連合憲章において宣明された原則にしたがい、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳および平等のかつ奪いえない権利を認めることが世界における自由、正義および平和の基礎をなすものであると定められている。前文ではまた、これらの権利がすべての者に固有の尊厳に由来するものであることも認められている。 81.子どもの権利条約が世界のほぼすべての国によって批准されたにもかかわらず、表現の自由に対する子どもの権利を実効あらしめるためにとられた措置はあまりにも少なく、子どもたちにとってのこの権利の実現を妨げる多くの障壁が依然として残っている。学校および家庭では、異議を申し立てられないままの権威主義的な態度がおとなと子どもとの関係を形づくっていることが多い。より憂慮されるのは、通信技術の進展とともに一部の国が表現の自由に対する比例性を欠いた制限を採用し、それを、実質的に子どもおよびおとなの権利を制限するものでありながら、子どもたちを危害から保護するための措置として打ち出していることである。 82.国が子どもたちを保護する基本的義務を負っていること、および、子どもに指導を行なうのがおとなの義務であることは明らかである。しかし、子どもの保護と表現の自由を対立する目標として扱ってはならない。逆に、子どもたちが優れたコミュニケーションスキルを発達させ、かつ新たなテクノロジーの積極的活用を学べるよう支援することによってこそ、危害から身を守る子どもたちの能力を増進させることができるのである。 83.子どもたちはおとなと同じ成熟度に達していないかもしれないが、子ども時代とは変化のプロセスであり、その過程で成熟が徐々に進んでいく。意見を発展させかつ明確に表現する能力は、人生の最初期の段階から開始される学習プロセスより生じるものであり、当該プロセスの完遂のためには適切な尊重および奨励が必要である。子どもを危害から保護する義務の懈怠が重大なリスクをもたらすとすれば、子どもたちがその精神、批判的思考および意見を発達させる余地を否定することも同様の結果につながる。特定の事柄に関する情報を奪い、かつ公的議論への参加を禁止することは、子どもたちの孤立および政治的疎外を強化させるだけになりかねない。子どもが意見を聴かれる権利を行使できるようにすることは、義務であるだけに留まらず、保護措置の有効性の増進にとってもきわめて重要なのである。 84.国は、あらゆる公共政策の最前線に子どもの最善の利益という目標を据え続けることをけっして忘れてはならない。これには、子どもたちを危害から保護するための規制の規範を確立することとともに、同時に、すべての規範において表現の自由に対する権利に関連する国際基準が遵守されるようにすることが含まれる。 85.特別報告者は、各国が次に掲げる措置をとるよう勧告する。 子どもの表現の自由に対する不当な制限を撤廃する目的で法令および政策を見直すこと 86.国は、国際人権基準との一致を図る目的で、子どもの自己表現の権利および情報へのアクセス権を制限する国内法令および国内政策を改正するべきである。おとなまたは子どもの表現自由を制限するいかなる法律においても、この権利の制限について確立されている3つの基準、すなわち曖昧さのない法律による規定、正当な目的の追求ならびに必要性および比例性の原則の尊重も遵守されなければならない。 87.国は、放送活動、インターネットおよび他のあらゆるメディアにおける子どもの保護についての法令を注意深く改正するべきである。たとえば、放送活動における子どもの保護のための番組類別制度は受け入れられるが、いかなる特定の表現についても、それが公表される前に事前検閲の対象とすることは受け入れられない。通信に関する規則の執行権限を与えられた機関の独立性は、政治的および経済的干渉から保護されるべきである。 88.国は、子どもの主体性の促進において学校が中心的位置を占めることに鑑み、教育制度における権威主義的な規範および実践を取り除くことに特段の注意を払うべきである。 表現の自由に対する子どもの権利を促進すること 89.国は、表現の自由に対する子どもの権利(情報へのアクセスを含む)をあらゆる場面で積極的に促進するべきである。家庭、学校および社会一般を含むあらゆる領域で見られる、子どもたちへの伝統的な権威主義的態度に異議を申し立ててもよい。とくに国は、子ども主導の活動のための回路の創設に注意を払うべきである。 90.国は、子どもたちが学校で多様なコミュニケーション形態(口頭、文書およびあらゆる形態の芸術を含む)を用いることを奨励するべきである。学校カリキュラムにおいて、社会的コミュニケーション、メディアおよびジャーナリズムについての知識を伝達することが求められる。 91.国は、異なる年齢層の子どもを対象とした教育的および娯楽的内容を有する番組づくりならびに内容を子どもたちが制作する番組づくりを促進するべきである。 インターネットへのアクセスおよびオンライン上の安全を促進すること 92.国は、あらゆる場面で子どもたちによるインターネットへのアクセスを促進するために積極的措置をとるべきである。教育制度において、子どもが有するすべての権利(とくに表現の自由に対する権利、公的生活に参加する権利および教育に対する権利)の促進におけるインターネットの中心的役割を考慮することが求められる。インターネットを、否定的なまたはその他の点で危険な媒体と見なすのではなく、肯定的な――個々の子どもおよび社会全体にとっての利益を有する――資源として捉え直すための努力が行なわれるべきである。たとえば、すべての社会的出身の子どもにとって、インターネットは書籍にアクセスするための優れた手段となる。 93.国は、子どもたちの安全を脅かすインターネットのリスクに対し、オンライン上の危害から身を守るための利用者の能力の増進を含むホリスティックな戦略を通じて対応するべきである。戦略には、親を対象とする訓練および子どもとともに働く専門家を対象とする訓練を含めることが求められる。オンライン上の安全の促進を目的とした取り組みの立案および実施には、子どもたちの積極的関与を得るべきである。インターネットが子どもたちの生活に及ぼす影響についても、さらなる調査研究が必要とされる。 表現の自由に対する子どもの権利への国際的関心を高める 94.表現の自由に対する子どもの権利の侵害に対し、すべての国際人権保護機構によって常に注意が払われるべきである。とくに子どもの権利委員会は、各国に対する勧告のなかで第13条および第17条を組織的に取り上げていくことができる。 更新履歴:ページ作成(2015年4月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/334.html
子どもの権利委員会・一般的意見25号:デジタル環境との関連における子どもの権利 一般的意見一覧 関連資料一般的意見25号最終草案(有料記事) 参考資料欧州評議会 デジタル環境と子どもの権利ガイドライン(2018年) CRC/C/GC/25 配布:一般 2021年3月2日 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 子どもの権利委員会 デジタル環境との関連における子どもの権利についての一般的意見25号(2021年) I.はじめに 1.この一般的意見のための協議に参加した子どもたちは、デジタルテクノロジーは自分たちの現在の生活および未来にとってきわめて重要なものだと報告している――「デジタルテクノロジーで、世界中から情報を手に入れることができる」、「(デジタルテクノロジーは)自分のアイデンティティをどう考えればいいかについて、大切な視点を与えてくれた」、「悲しいときには、インターネットが楽しめそうなものを見つけるのに役に立つ」[1] 。 [1] “Our rights in a digital world”, summary report on the consultation of children for the present general comment, pp. 14 and 22. https //5rightsfoundation.com/uploads/Our%20Rights% 20in%20a%20Digital%20World.pdf より入手可能。子どもたちの意見に関するすべての言及は同報告書による。 2.デジタル環境はやむことなく変化・拡大しており、情報通信技術(デジタル化されたネットワーク、コンテンツ、サービスおよびアプリケーションを含む)、インターネットに接続された機器および環境、バーチャルリアリティおよび拡張現実、人工知能、ロボティクス、自動化システム、アルゴリズムおよびデータ分析、バイオメトリクスならびに人体埋め込み型テクノロジーが含まれる [2]。 [2] 用語集は委員会のウェブページより入手可能である。https //tbinternet.ohchr.org/Treaties/CRC/Shared%20Documents/1_Global/INT_CRC_INF_9314_E.pdf 3.デジタル環境は、教育、政府のサービスおよび商業を含む社会的機能が徐々にデジタルテクノロジーに依存するようになりつつあるなか、危機の時期を含め、子どもたちの生活のほとんどの側面を通じてその重要性を増しつつある。デジタル環境は、子どもの権利の実現のための新たな機会を提供すると同時に、これらの権利が侵害されるリスクをもたらすものである。子どもたちは、協議の際、デジタル環境は自分たちの安全かつ公正な関与を支援し、促進しかつ保護するようなものであるべきだという意見を表明した――「政府、テクノロジー企業、先生たちには、オンラインの当てにならない情報に対応する手助けをしてほしい」、「自分のデータが実際どうなるのかについて、はっきりさせてほしい。……誰がデータを集めるの? どんなふうに集められるの?」、「自分のデータがシェアされることが心配」[3]。 [3] "Our rights in a digital world", pp.14, 16, 22 and 25. 4.デジタル環境においてはすべての子どもの権利が尊重され、保護されかつ充足されなければならない。デジタルテクノロジーの革新は、子ども自身はインターネットにアクセスしない場合でさえ、子どもたちの生活および権利に広範かつ相互依存的なやり方で影響を及ぼす。デジタルテクノロジーに意味のある形でアクセスできることは、子どもたちが自己の市民的、政治的、文化的、経済的および社会的権利を余すところなく実現することの支援につながり得る。しかし、デジタルインクルージョンが達成されなければ、すでに存在する不平等がますます大きくなる可能性が高く、かつ新たな不平等が生じかねない。 5.この一般的意見は、締約国報告書を審査してきた委員会の経験、デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議、人権条約機関の先例、人権理事会および特別報告者の勧告、コンセプトノートおよび発展版草案に関する各国、専門家その他の関係者との2度にわたる協議、ならびに、複数の地域の28か国において多種多様な状況下で暮らしている子どもたち709人との国際的協議を踏まえたものである。 6.この一般的意見は、委員会が発表した他の関連の一般的意見、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書の実施に関する委員会のガイドラインとあわせて読まれるべきである。 II.目的 7.委員会は、この一般的意見において、デジタル環境で子どもたちの権利の促進、尊重および保護を図る際の機会、リスクおよび課題に照らし、各国がデジタル環境との関係で条約をどのように実施すべきかについて説明するとともに、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務の全面的遵守を確保するための関連の立法上、政策上その他の適切な措置に関する指針を示している。 III.一般原則 8.以下の4つの原則は、条約に基づく他のすべての権利の実施の際に持つべき視点を提供するものである。これらの原則は、デジタル環境との関連における子どもたちの権利の実現を保障するために必要な措置を決定するための指針とされるべきである。 A.差別の禁止に対する権利 9.差別の禁止に対する権利により、締約国は、すべての子どもが、子どもにとって意味のあるやり方で、平等かつ効果的にデジタル環境にアクセスできることを確保するよう要求される [4]。締約国は、デジタル面での排除を克服するためにあらゆる必要な措置をとるべきである。これには、専用の公共空間において子どもたちが無償でかつ安全にアクセスできるようにすることや、すべての子どもが、教育現場、コミュニティおよび家庭において負担可能な費用でデジタルテクノロジーにアクセスし、かつこれらのテクノロジーを賢く利用することを支える政策およびプログラムに投資することが含まれる。 [4] 一般的意見9号(2006年)、パラ37-38。 10.子どもたちは、デジタルテクノロジーの利用から排除されることによって、またはこれらのテクノロジーの利用を通じてヘイトスピーチ的な通信または不公正な扱いを受けることによって、差別される可能性がある。情報フィルタリング、プロファイリングまたは意思決定につながる自動化されたプロセスが、バイアスのかかった、部分的なまたは不正に入手された子どもに関する情報に基づいて進められる場合、その他の形態の差別が生じる可能性もある。 11.委員会は、締約国に対し、性、障害、社会経済的背景、民族的もしくは国民的出身、言語または他のいずれかの理由に基づく差別、ならびに、マイノリティおよび先住民族の子ども、庇護希望者、難民および移住者である子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインタセックスである子ども、人身取引または性的搾取の被害者およびサバイバーである子ども、代替的養護下の子どもならびにその他の脆弱な状況に置かれた子どもに対する差別を防止するため、積極的措置をとるよう求める。 B.子どもの最善の利益 12.子どもの最善の利益は、特定の文脈にふさわしい評価を必要とする動的な概念である [5]。デジタル環境は、もともと子どもたちのために設計されたものではないが、子どもたちの生活で重要な役割を果たしている。締約国は、デジタル環境の整備、規制、設計、管理および利用に関するすべての行動において、すべての子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するべきである。 [5] 一般的意見14号(2013年)、パラ1。 13.締約国は、このような行動に、子どもの権利の充足を監督する国および地方の機関の関与を得るべきである。締約国は、子どもの最善の利益を考慮するにあたり、情報を求め、受けかつ伝える権利、害から保護される権利および自己の意見を正当に重視される権利を含むすべての子どもの権利を顧慮するとともに、子どもの最善の利益の評価および適用された基準に関する透明性を確保するよう求められる。 C.生命、生存および発達に対する権利 14.デジタル環境によって提供される機会は、子どもたちの発達にとってますます決定的な役割を果たすようになりつつあるとともに、とくに危機の状況下においては子どもたちの生命および生存にとってきわめて重要なものとなる可能性がある。締約国は、子どもたちをその生命、生存および発達に対する権利へのリスクから保護するため、あらゆる適切な措置をとるべきである。コンテンツ、接触および契約に関連するリスクには、とくに、暴力的および性的コンテンツ、ネット上の攻撃およびハラスメント、賭け事、搾取および虐待(性的な搾取および虐待を含む)、ならびに、自殺または生命を危うくする活動(犯罪者によるものまたはテロリストもしくは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団によるものを含む)の促進または扇動が含まれる。締約国は、子どもたちが直面している特有のリスクの性質に関して子どもたちの意見を聴くことなどの手段により、多様な状況下で子どもたちが直面する新たなリスクの特定およびこれへの対処を図るべきである。 15.デジタル機器の利用は、害をともなうものであるべきではなく、また子どもたち同士のまたは子どもと親もしくは養育者との直接の相互交流にとって代わるべきでもない。締約国は、脳がもっとも可塑性に富んでおり、かつ子どもの認知的、情緒的および社会的発達のあり方の形成において社会環境(とくに親および養育者との関係)がきわめて重要である乳幼児期におけるテクノロジーの影響に、具体的注意を払うべきである。乳幼児期には、テクノロジーの設計、目的および利用のあり方によって、予防的対応が必要になる場合がある。デジタル機器の適切な利用に関する訓練および助言を、デジタルテクノロジーが子どもの発達(とくに乳幼児期および思春期の神経学的成長加速の臨界期における発達)に及ぼす影響についての調査研究を考慮しながら、親、養育者、教育者その他の関係者に対して提供することが求められる [6]。 [6] 一般的意見24号(2019年)、パラ22および一般的意見20号(2016年)、パラ9-11。 D.意見を聴かれる子どもの権利 16.子どもたちは、デジタル環境が、自分たちに影響を与える事柄について声が聴かれるようにするためのきわめて重要な機会を与えてくれていると報告している [7]。デジタルテクノロジーの利用は、地方、国および国際社会のレベルにおける子ども参加の実現に役立つ可能性がある [8]。締約国は、子どもたちが個人としておよび集団として自分たちの権利を効果的に唱道する存在になれるよう、子どもたちが意見を表明するデジタル手段についての意識およびこれらの手段へのアクセスを促進し、かつ、子どもたちが大人との平等を基礎として、必要な場合には匿名で参加するための訓練および支援を提供するべきである。 [7] "Our rights in a digital world", p.17. [8] 一般的意見14号(2013年)、パラ89-91。 17.デジタル環境との関連における子どもの権利についての法律、政策、プログラム、サービスおよび訓練を発展させる際、締約国は、すべての子どもたちの関与を得て、そのニーズに耳を傾け、かつその意見を正当に重視するべきである。締約国は、デジタルサービスの提供者が、製品およびサービスの開発にあたり、適切な保障措置を適用しながら積極的に子どもたちの関与を得て、かつその意見を正当に考慮することを確保するよう求められる。 18.締約国は、関連する立法上、行政上その他の措置について子どもたちと協議するためにデジタル環境を活用するとともに、子どもたちの意見が真剣に考慮されること、および、子ども参加が、プライバシー、思想および意見の自由に対する子どもたちの権利を侵害する不当な監視またはデータ収集につながらないことを確保するよう奨励される。国はまた、協議のプロセスが、テクノロジーへのアクセスまたはテクノロジーを利用するスキルを欠いている子どもたちを包摂するようなものであることを確保するべきである。 IV.発達しつつある能力 19.締約国は、子どもが能力、理解力および主体性を徐々に身につけていくプロセスを扱った、権利行使を可能にする原則としての子どもの発達しつつある能力 [9] を尊重しなければならない。このプロセスは、子どもが親および養育者の監督からいっそう独立して参加できるデジタル環境においては、特有の重要性を有している。デジタル環境への子どもの関与に関連するリスクおよび機会は、子どもの年齢および発達段階に応じて変わっていく。締約国は、デジタル環境で子どもたちを保護し、または子どもたちによるデジタル環境へのアクセスを促進するための措置を立案する場合には常に、これらの考慮事項を指針とするべきである。年齢にふさわしい措置の立案に際しては、さまざまな学問分野から得られる、利用可能な最善かつ最新の調査研究を参考にすることが求められる。 [9] 一般的意見7号(2005年)、パラ17ならびに一般的意見20号(2016年)、パラ18および20。 20.締約国は、現代世界における子どもたちの変化しつつある位置づけおよび子どもたちの主体性、スキルおよび活動の諸分野全体で不均等に発達する子どもたちの能力および理解力、ならびに、関連するリスクの性質を考慮するべきである。これらの考慮事項については、支援のある環境において自己の権利を行使することの重要性ならびに個人のさまざまな経験および状況との衡量が図られなければならない [10]。締約国は、デジタルサービスの提供者が、子どもの発達しつつある能力にふさわしいサービスを子どもたちに提供することを確保するべきである。 [10] 一般的意見20号(2016年)、パラ20。 21.子どもの養育責任の履行にあたって親および養育者に適切な援助を与える国の義務にしたがい、締約国は、子どもの発達しつつある自律性、能力およびプライバシーを尊重する必要性に関する親および養育者の意識を促進するべきである。締約国は、デジタル環境における子どもたちの権利(保護に対する権利を含む)の実現に関して子どもを援助することに関して親および養育者を手助けするため、デジタルリテラシーおよび子どもたちにとってのリスクに関する意識の獲得に関して親および養育者を支援するよう求められる。 V.締約国による一般的実施措置(第4条) 22.デジタル環境における子どもの権利の実現および子どもの保護のための機会は、広範な立法上、行政上その他の措置(予防的措置を含む)を必要とする。 A.立法 23.締約国は、デジタル環境が条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利と両立することを確保するため、国際基準にのっとって国内法の見直し、採択および改定を図るべきである。立法は、テクノロジーの進歩および新たな慣行の誕生のなかで妥当であり続けることが求められる。締約国は、デジタル環境に関連する法律、予算配分およびその他の行政決定に子どもの権利を確実に位置づける目的で子どもの権利影響評価の活用を指示するとともに、デジタル環境に関連する公的機関および企業の間でその活用を促進するべきである [11]。 [11] 一般的意見5号(2003年)、パラ45、一般的意見14号(2013年)、パラ99、一般的意見16号(2016年)、パラ20。 B.包括的な政策および戦略 24.締約国は、子どもの権利に関連する国家的政策においてデジタル環境が具体的に取り上げられることを確保するとともに、規制、業界規範。設計基準および行動計画(これらはすべて定期的な評価および改定の対象とされるべきである)を実施するよう求められる。このような国家的政策においては、デジタル環境への関与から利益を得る機会を子どもたちに提供すること、および、子どもたちによるデジタル環境への安全なアクセスを確保することが目的とされるべきである。 25.オンラインにおける子どもの保護が、子どもの保護に関する国家的政策に統合されるべきである。締約国は、子どもたちをリスク(ネット上の攻撃、ならびに、デジタル技術によって促進されるおよびオンラインで行なわれる子どもの性的な搾取および虐待を含む)から保護するための措置を実施し、このような犯罪が捜査されることを確保し、かつ被害者である子どもたちに救済および支援を提供するよう求められる。締約国はまた、(必要な場合には関連のマイノリティ言語に翻訳された)子どもにやさしい情報を提供するなどの手段により、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちのニーズにも対応するべきである。 26.締約国は、子どもがデジタル環境にアクセスするすべての現場(家庭、教育現場、ネットカフェ、ユースセンター、図書館ならびに保健ケアおよび代替的養護の現場を含む)において、オンラインにおける子どもの保護のための効果的なしくみおよび安全確保方針が運用されることを確保するべきである。 C.調整 27.デジタル環境が子どもたちの権利に及ぼす分野横断的な影響に網羅的に対処するため、締約国は、中央政府の諸部局および各レベルの行政機構の間で子どもの権利関連の政策、指針およびプログラムの調整を図る任務を委ねられた政府機関を指定するべきである [12]。このような国家的調整機関は、部門横断的にならびに国、広域行政圏および地方のレベルにおいてデジタル環境に関連する子どもの権利を実現するため、学校および情報通信技術部門との連携ならびに企業、市民社会、学界および諸団体との協力を図るよう求められる [13]。このような機関は、必要に応じて政府内外の技術的専門性および他の関連の専門性を活用できるべきであり、かつ、その義務の履行における有効性に関して独立の評価の対象とされるべきである。 [12] 一般的意見5号(2003年)、パラ37。 [13] 前掲、パラ27および39。 D.資源配分 28.締約国は、デジタル環境における子どもの権利の全面的実現およびデジタルインクルージョンの向上を目的とする法律、政策およびプログラムの実施のため、公的資源の動員、配分および活用を図るべきである。このような対応は、デジタル環境が子どもたちの生活に及ぼす影響の高まりに対処し、かつ、サービスおよびコネクティビティへのアクセスの平等および負担可能性を促進するために、必要とされる [14]。 [14] 一般的意見19号(2016年)、パラ21。 29.資源が企業セクターから拠出されまたは国際協力を通じて獲得される場合、締約国は、自国の委任事務、歳入動員、予算配分および支出に関して第三者による干渉または阻害が行なわれないことを確保するべきである [15]。 [15] 前掲、パラ27(b)。 E.データ収集および調査研究 30.恒常的に更新されるデータおよび調査研究は、子どもの権利にとってのデジタル環境の意味合いを理解し、デジタル環境が子どもたちに及ぼす影響を評価し、かつ国の介入の有効性を事後に評価することにとって、きわめて重要である。国は、しっかりした包括的なデータが十分な資源を得たうえで収集されること、および、データが年齢、性別、障害、地理的所在、民族的および国民的出身ならびに社会経済的背景によって細分化されることを確保するよう求められる。このようなデータおよび調査研究(子どもたちとともにおよび子どもたちによって実施された調査研究を含む)は、立法、政策および実務の参考とされるべきであり、かつ公有物とされるべきである [16]。子どもたちのデジタル生活に関するデータ収集および調査研究では、子どもたちのプライバシーが尊重され、かつ最高度の倫理基準が満たされなければならない。 [16] 一般的意見5号(2003年)、パラ48および50。 F.独立の監視 31.締約国は、国内人権機関および他の適切な独立機関の委任事項においてデジタル環境における子どもの権利が対象とされ、かつこれらの機関が子どもおよびその代理人からの苦情申立てを受理し、調査しかつこれに対応できることを確保するべきである [17]。デジタル環境関連の活動を監視する独立の監督機関が存在している場合、国内人権機関は、子どもの権利に関する委任事項を効果的に遂行するため、当該機関と緊密に協力することが求められる [18]。 [17] 一般的意見2号(2002年)、パラ2および7。 [18] 前掲、パラ7。 G.情報の普及、意識啓発および研修 32.締約国は、とくに子どもたちに直接または間接の影響を及ぼす行動に従事している人々に焦点を当てながら、デジタル環境における子どもの権利に関する情報の普及および意識啓発の実施を進めるべきである。締約国は、子どもたち、親および養育者ならびに一般公衆および政策立案に携わる人々を対象とする、デジタル製品およびデジタルサービスに関連した機会およびリスクに関わる子どもの権利に関する知識を増進させるための教育プログラムを促進するよう求められる。このようなプログラムには、子どもたちがデジタル製品およびデジタルサービスからどのように利益を得られ、かつデジタルリテラシーおよびデジタルスキルをどのように発達させられるか、子どもたちのプライバシーの保護および被害化の防止をどのようにして図るか、ならびに、オンラインまたはオフラインで加えられる害の被害を受けた子どもをどのように認識し、かつどのように適切に対応するかについての情報が含まれるべきである。このようなプログラムにおいては、調査研究ならびに子どもたち、親および養育者との協議を参考にすることが求められる。 33.子どもたちおよび企業セクターのためにならびに子どもたちおよび企業セクター(テクノロジー産業を含む)とともに働く専門家は、デジタル環境が複合的状況下で子どもの権利にどのように影響を及ぼしているか、子どもたちがデジタル環境でどのように自己の権利を行使しているか、および、子どもたちがテクノロジーにどのようにアクセスしかつそれを利用しているかに関するものを含む研修を受けるべきである。これらの専門家はまた、デジタル環境への国際人権基準の適用に関する研修を受けることも求められる。締約国は、あらゆる教育段階で働く専門家を対象として、その知識、スキルおよび実践の開発支援を目的とした、デジタル環境に関連する着任前研修および現職者研修が実施されることを確保するべきである。 H.市民社会との協力 34.締約国は、子どもの権利に関連する法律、政策、計画およびプログラムの策定、実施、モニタリングおよび評価に、市民社会(子どもの権利の分野で活動している子ども主導のグループおよび非政府組織を含む)およびデジタル環境に関係している人々の組織的関与を得るべきである。締約国はまた、市民社会組織が、デジタル環境に関連する子どもの権利の促進および保護に関わる活動を実施できることも確保するよう求められる。 I.子どもの権利と企業セクター 35.非営利組織を含む企業セクターは、デジタル環境関連のサービスおよび製品の提供に際し、子どもたちの権利に直接・間接の影響を及ぼしている。企業は、子どもたちの権利を尊重し、かつ、デジタル環境との関連で子どもたちの権利侵害の防止および救済を図るべきである。締約国には、企業がこれらの責任を履行することを確保する義務がある [19]。 [19] 一般的意見16号(2013年)、パラ28、42および82。 36.締約国は、自社のネットワークまたはオンラインサービスが子どもの権利(プライバシーおよび保護に対する権利を含む)の侵害を引き起こしまたは助長するようなやり方で利用されることを防止する義務、ならびに、子ども、親および養育者に対して迅速かつ効果的な救済を提供する義務が企業によって遵守されることを確保するため、法律、規則および政策の策定、モニタリング、実施および評価などを通じた措置をとるべきである。締約国はまた、企業に対し、子どもたちによる安全かつ有益なデジタル活動を支援するための公的情報およびアクセシブルで時宜を得た助言の提供も奨励するよう求められる。 37.締約国には、企業体による権利(デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力から保護される権利を含む)の侵害から子どもたちを保護する義務がある。企業が有害な行為の実行に直接関与するわけではない場合もあるとはいえ、企業は、デジタルサービスの設計および運用などを通じ、暴力からの自由に対する子どもたちの権利の侵害を引き起こしまたは助長する可能性がある。締約国は、暴力からの保護に対する権利の侵害の防止、ならびに、デジタル環境に関連して生じる権利侵害についての捜査、判決および救済を目的とした法令を整備し、モニタリングしかつ執行するべきである [20]。 [20] 前掲、パラ60。 38.締約国は、企業セクターに対し、デジタル環境が子どもたちに及ぼす、それぞれ異なった、かつ時として深刻になることもある影響をとくに考慮しながら子どもの権利デューディリジェンス(相当の注意)を履行すること、とくに子どもの権利影響評価を実施しかつ公衆に開示することを求めるべきである [21]。締約国は、企業による子どもの権利侵害を防止し、モニタリングし、調査しかつ処罰するために適切な措置をとるよう求められる。 [21] 前掲、パラ50および62-65。 39.締約国は、法律および政策の策定に加え、デジタル環境との関連で子どもの権利に影響を及ぼすすべての企業に対し、自社の製品およびサービスの設計、エンジニアリング、開発、運用、流通およびマーケティングに関する最高水準の倫理基準、プライバシー基準および安全基準にしたがった規制枠組み、業界規範および利用規約を実施するよう求めるべきである。これには、子どもたちをターゲットとする企業、エンドユーザーに子どもたちがいる企業またはその他の形で子どもたちに影響を与える企業が含まれる。締約国は、これらの企業に対し、高水準の透明性およびアカウンタビリティを維持するよう求めるとともに、子どもの最善の利益にのっとった革新のための措置をとることを奨励するべきである。締約国はまた、子どもたちに対するまたは乳幼児の親および養育者に対する、利用規約についての年齢にふさわしい説明を要求することも求められる。 J.商業広告およびマーケティング 40.デジタル環境には、収益創出コンテンツまたは有料コンテンツのターゲティングを目的とする個人データの処理に財政的に依拠している企業も含まれており、このような処理が、意図的か否かにかかわらず、子どもたちのデジタル経験に影響を及ぼしている。これらのプロセスの多くに複数の事業提携先が関与していることから、子どもの権利侵害につながる可能性がある商業活動および個人データ処理の供給網がつくり出されている。このような子どもの権利侵害には、子どもがより過激なコンテンツに向かうことを想定しかつ誘導する広告デザイン上の特徴、睡眠を妨げる自動通知、または商業的動機によるコンテンツであって有害である可能性があるもののターゲティングを目的とする子どもの個人情報もしくは位置情報の利用を通じて行なわれるものが含まれる。 41.締約国は、子ども向けのおよび子どもがアクセスできる広告およびマーケティングを規制する際、子どもの最善の利益を第一次的に考慮するべきである。スポンサーシップ、プロダクトプレイスメントおよび商業的動機による他のあらゆる形態のコンテンツは、他のあらゆるコンテンツと明確に区別されるべきであり、かつ、ジェンダーまたは人種に基づくステレオタイプを固定化させるようなものであるべきではない。 42.締約国は、実際の属性または推定された属性のデジタル記録(グループデータもしくは集約データ、相関分析によるターゲティングまたは嗜好性プロファイリングを含む)に基づいて子どもたち(年齢を問わない)を商業目的のプロファイリングまたはターゲティングの対象とすることを、法律で禁止するべきである。製品、アプリケーションおよびサービスの販売促進を目的としてニューロマーケティング、感情解析、没入型広告ならびに仮想現実および拡張現実の環境下における広告に依拠する慣行についても、子どもたちに直接または間接に働きかけることを禁止することが求められる。 K.司法および救済措置へのアクセス 43.子どもたちは、さまざまな理由により、デジタル環境との関連で司法にアクセスする際に特段の課題に直面する。このような課題は、とりわけ、デジタル環境にとくに関連する子どもの権利侵害について制裁を科す法律が存在しないこと、証拠の取得および加害者の特定が難しいこと、またはデジタル環境における子どもの権利についてもしくは何が子どもの権利の侵害に当たるのかについて子どもたちおよびその親もしくは養育者が知らないことから生ずるものである。子どもたちが機微なまたは私的なオンライン活動の開示を求められる場合、または仲間からの報復もしくは社会的排除に対する恐れを理由として、さらなる課題が生じる可能性もある。 44.締約国は、デジタル環境に関連する子どもの権利侵害についての適切かつ効果的な司法的および非司法的救済の仕組みが、すべての子どもおよびその代理人にとって広く周知され、かつ容易にアクセスできることを確保するべきである。苦情申立ておよび通報のための仕組みは、無償で、安全で、秘密が守られ、応答性が高く、子どもにやさしく、かつアクセシブルな形式で利用可能であることが求められる。締約国はまた、クラスアクションおよび公益訴訟を含む集団的苦情申立て、ならびに、デジタル環境においてまたはデジタル環境を通じて権利を侵害された子どもに対する法的その他の適切な援助(専門サービス機関によるものを含む)についても定めるべきである。 45.締約国は、このような事案を付託し、かつ被害を受けた子どもに効果的支援を提供するための枠組みを確立し、調整し、かつ定期的にモニタリングおよび評価を実施するべきである [22]。枠組みには、被害を受けた子どもの特定、治療およびフォローアップケアならびに社会的再統合のための措置を含めることが求められる。付託のための仕組みには、被害を受けた子どもの特定に関する研修(デジタルサービス提供者を対象とするものも含む)が含まれるべきである。このような枠組みのなかでとられる措置は、捜査過程および司法手続を背景として生じる子どもの再被害および二次被害を防止するため、複数の機関が関与する、子どもにやさしいものであることが求められる。そのためには、秘密を保持しかつデジタル環境に関連した害を是正するための特別な保護措置が必要となる場合もある。 [22] 一般的意見21号(2017年)、パラ22。国連総会決議60/147付属文書〔訳者注/著しい国際人権法違反および深刻な国際人道法違反の被害者の救済および賠償に対する権利に関する基本的原則および指針〕も参照。 46.適切な被害回復措置には、原状回復、補償および満足が含まれ、かつ、謝罪、是正措置、不法なコンテンツの削除、心理的回復サービスへのアクセスその他の措置が必要となる場合もある [23]。デジタル環境における権利侵害との関連で、救済のための仕組みにおいては、子どもたちの脆弱性ならびに継続的および将来的被害を迅速に終了させる必要性が考慮されるべきである。締約国は、関連の法律および政策の改革ならびにその効果的実施などを通じ、侵害が再発しないことを保証するよう求められる。 [23] 一般的意見5号(2003年)、パラ24。 47.デジタルテクノロジーは、国境を越えて行なわれる場合もある子どもに対する犯罪の捜査および訴追をいっそう複雑なものとする。締約国は、デジタルテクノロジーの利用が子どもに対する犯罪の捜査および訴追をどのように容易にしまたは阻害し得るかについて対処するとともに、国際的パートナーとの協力なども通じ、防止、執行および救済のために利用可能なあらゆる措置をとるべきである。締約国は、デジタル環境ととくに関連する子どもの権利侵害に関して、国際協力なども通じ、法執行官、検察官および裁判官を対象とする特別研修を実施するよう求められる。 48.子どもたちは、デジタル環境において企業体による権利侵害を受けた場合に、とくに当該企業が世界的に操業している状況下では、救済を得ることに関して特段の困難に直面する可能性がある [24]。締約国は、企業による域外での活動および操業との関係で、自国と当該行為との間に合理的な結びつきがある場合には、子どもたちの権利を尊重し、保護しかつ充足するための措置を検討するべきである。締約国は、企業が効果的な苦情申立ての仕組みを提供することを確保するよう求められる。ただし、これによって、国を基盤とする救済措置に子どもがアクセスできなくさせられるべきではない。締約国はまた、子どもの権利に関連する監督権限を有する機関(健康および安全、データ保護および消費者の権利、教育ならびに広告およびマーケティングに関連する機関など)が、デジタル環境における子どもの権利侵害に関する苦情申立ての調査および十分な救済措置の提供を行なうことも、確保するべきである [25]。 [24] 一般的意見16号(2013年)、パラ66-67。 [25] 前掲、パラ30および43。 49.締約国は、子どもたちに対し、子どもの権利、ならびに、デジタル環境に関連して自己の権利が侵害された場合に利用可能な通報および苦情申立ての仕組み、サービスならびに救済措置についての子どもに配慮したかつ年齢にふさわしい情報を、子どもにやさしい言語で提供するべきである。このような情報は、親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対しても提供することが求められる。 VI.市民的権利および自由 A.情報へのアクセス 50.デジタル環境は、子どもたちが情報にアクセスする権利を実現するための、比類のない機会を約束するものである。この点に関しては、デジタルコンテンツおよびオンラインコンテンツを含む情報通信メディアも重要な機能を果たす [26]。締約国は、子どもたちがデジタル環境で情報にアクセスできること、および、当該権利の行使の制限が、法律で定められており、かつ条約第13条に規定された目的のために必要な場合以外には行なわれないことを確保するべきである。 [26] 一般的意見7号(2005年)、パラ35および一般的意見20号(2016年)、パラ47。 51.締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがった、年齢にふさわしくエンパワーメントにつながる子ども向けのデジタルコンテンツを提供しかつその制作を支援するとともに、子どもたちが、文化、スポーツ、芸術、健康、公民・政治問題および子どもの権利に関する多種多様な情報(公的機関が保有する情報を含む)にアクセスできることを確保するべきである。 52.締約国は、多様な形式を活用し、かつニュースメディア、放送事業者、博物館、図書館および教育・科学・文化組織を含む国内外の多数の情報源から発信される、このようなコンテンツの制作および普及を奨励するべきである。締約国はとくに、障害のある子どもおよび民族的、言語的、先住民族その他のマイノリティの子どもを対象とする多様な、アクセシブルなかつ有益なコンテンツが提供されることを増進するために努力するよう求められる。子どもたちが理解する言語で関連の情報にアクセスできることは、平等に対して相当に肯定的な影響を及ぼし得る [27]。 [27] 一般的意見17号(2013年)、パラ46および一般的意見20号(2016年)、パラ47-48。 53.締約国は、すべての子どもたちが、オンラインの多様かつ良質な情報(商業的または政治的利益集団から独立したコンテンツを含む)についての情報を提供され、かつこれらの情報を容易に見つけられることを確保するべきである。締約国は、自動化された検索・情報フィルタリング(推奨システムを含む)において、商業的または政治的動機を有する有料コンテンツが、子どもたちの選択よりも、または情報に対する子どもたちの権利を犠牲にする形で、優先されないことを確保するよう求められる。 54.デジタル環境には、ジェンダーのステレオタイプを反映した情報、差別的、人種主義的、暴力的、ポルノ的および搾取的な情報のほか、虚偽の言説、誤情報および偽情報ならびに不法なまたは有害な活動への関与を子どもに奨励する情報(武装テロ集団による情報を含む)が含まれている可能性がある。このような情報は、他のユーザー、商業的コンテンツ制作者、性犯罪者またはテロリストもしくは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団を含む、多様な主体から発信されている場合がある。締約国は、有害コンテンツおよび信頼できないコンテンツから子どもたちを保護するとともに、関連の企業その他のデジタルコンテンツ提供者が、子どもたちをその権利および発達しつつある能力にしたがってこのような有害な資料から保護しつつ、情報および表現の自由に対する子どもたちの権利を認識して、子どもたちが多様なコンテンツに安全にアクセスできるようにするためのガイドラインを策定しかつ実施することを確保するべきである [28]。情報普及のためのインターネットを基盤とするシステム、電子的システムその他のシステムの運用に対するいかなる制限も、第13条にのっとっていることが求められる [29]。締約国は、いかなる地域においても、部分的にか全体的にかを問わず、電力供給、移動体通信ネットワークまたはインターネット接続を意図的に妨害しまたは他者に対してそのような妨害を認めるべきではない。このような妨害は、情報および通信に対する子どものアクセスを阻害する効果を有する可能性がある。 [28] 一般的意見16号(2013年)、パラ58および一般的意見7号(2005年)、パラ35。 [29] 自由権規約委員会、一般的意見34号(2011年)、パラ43。 55.締約国は、子どもたちが利用するデジタルサービスの提供者に対し、たとえばコンテンツの年齢へのふさわしさまたは信頼性に関する、簡潔明瞭なコンテンツのラベリングを行なうよう奨励するべきである。締約国はまた、子ども、親および養育者、教育者ならびに関連の専門家集団を対象とする、アクセシブルな指針、訓練、教育資料および通報機構の提供も奨励するよう求められる [30]。年齢にふさわしくないコンテンツから年齢またはコンテンツに基づいて子どもたちを保護するためのシステムは、データの最小限化の原則に一致しているべきである。 [30] 一般的意見16号(2013年)、パラ19および59。 56.締約国は、デジタルサービス提供者が、関連のガイドライン、基準および規範を遵守し [31]、かつ法律にのっとった、必要かつ比例的なコンテンツモデレーション規則を執行することを確保するべきである。コンテンツ管理、学校フィルタリングシステムおよびその他の安全指向技術は、デジタル環境における情報への子どもたちのアクセスを制限するために用いられるべきではない。これらの技術は、有害な資料が子どもたちに供給されることを防止するためだけに用いられるべきである。コンテンツモデレーションおよびコンテンツ管理においては、子どもたちのその他の権利、とくに表現の自由およびプライバシーに対する権利とのバランスを図ることが求められる。 [31] 前掲、パラ58および61。 57.ニュースメディアその他の関連組織が定める職業行動規範には、子どもたちに関わるデジタル関連のリスクおよび機会についての報道のあり方に関する指針が含まれるべきである。このような指針は、被害者およびサバイバーである子どもの身元を明らかにせず、かつ国際人権基準にしたがった、エビデンスに基づく報道につながるようなものであることが求められる。 B.表現の自由 58.表現の自由に対する子どもの権利には、自ら選択するすべての媒体を使って、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える自由が含まれる。子どもたちが報告するところによれば [32]、デジタル環境は、子どもたちの考え、意見および政治的見解を表明する相当の機会を提供するものである。不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちにとっては、自分の経験をシェアしてくれる他の子どもたちとの、テクノロジーによって容易になる相互交流は、自分自身を表現する一助となり得る。 [32] "Our rights in a digital world", p.16. 59.デジタル環境における表現の自由に対する子どもたちの権利のいかなる制限(安全措置を含むフィルターなど)も、法律にしたがっており、必要であり、かつ比例性を有するものであるべきである。そのような制限の根拠を透明なものとし、かつ子どもたちに対して年齢にふさわしい言葉で伝えることが求められる。締約国は、他者の権利および尊厳を尊重し、かつ法律(憎悪および暴力の扇動に関連するものなど)に違反しないようにしながらこの権利を効果的に行使する方法(とくにデジタルコンテンツを安全に制作しかつシェアする方法)についての情報および訓練の機会を、子どもたちに提供するべきである。 60.子どもたちがデジタル環境で自己の政治的その他の見解およびアイデンティティを表明する際には、批判、敵意、脅迫または処罰の対象とされる場合がある。締約国は、ネット上の攻撃および脅迫、検閲、データ漏洩およびデジタル監視から子どもたちを保護するべきである。子どもたちは、デジタル環境で意見を表明したことを理由として訴追されるべきではない(ただし、条約第13条と両立する刑事法で定められた制限に違反した場合、このかぎりではない)。 61.特定の世界観を推進しようとする商業的および政治的動機が存在することに鑑み、締約国は、情報フィルタリング、プロファイリング、マーケティングおよび意思決定に関する自動化されたプロセスの利用が、デジタル環境において自己の意見を形成しかつ表明する子どもたちの能力を代替し、操作しまたはこれに干渉しないことを確保するべきである。 C.思想、良心および宗教の自由 62.締約国は、デジタル環境における思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである。委員会は、締約国に対し、デジタル環境で(たとえば感情の解析または推論によって)思想および信条の自由に対する子どもたちの権利を操作しまたはこれに干渉する慣行を特定し、定義しかつ禁止するデータ保護規則および設計基準を導入しまたは改定するよう、奨励する。自動化システムは、子どもの内心に干渉するために利用される可能性がある。締約国は、子どもたちの行動または感情に影響を与えもしくはこれを左右すること、または子どもの機会もしくは発達を制限することを目的として自動化システムまたは情報フィルタリングシステムが利用されないことを確保するべきである。 63.締約国は、子どもたちがその宗教もしくは信条を理由として処罰されず、または他のいかなるやり方によっても将来の機会を制限されないことを確保するべきである。デジタル環境において自己の宗教または信条を表明する子どもたちの権利の行使に対しては、法律にのっとった、必要な、かつ比例性を有する制限しか課すことができない。 D.結社および平和的集会の自由 64.デジタル環境は、子どもたちが自己の社会的、宗教的、文化的、民族的、性的および政治的アイデンティティを形成し、かつ、仲間として結びついたコミュニティならびに熟議、文化交流、社会的結束および多様性のための公的空間に参加することができる [33]。子どもたちが報告するところによれば、デジタル環境は、関心を共有する仲間、意思決定権者その他の人々と会い、交流しかつじっくりと議論する、貴重な機会を与えてくれるものである [34]。 [33] 一般的意見17号(2013年)、パラ21および一般的意見20号(2016年)、パラ44-45。 [34] "Our rights in a digital world", p.20. 65.締約国は、自国の法令および政策において、部分的にまたはもっぱらデジタル環境で活動している団体に参加する子どもたちの権利が保護されることを確保するべきである。デジタル環境における結社および平和的集会の自由に対する子どもたちの権利の行使には、法律にのっとった、必要でありかつ比例性を有するもの以外のいかなる制限も課すことができない [35]。このような参加が、それ自体として、これらの子どもたちに対する否定的な結果(停退学、将来の可能性の制限もしくは剥奪または警察による個人ファイルの作成など)につながることがあるべきではない。このような参加は、安全であり、プライバシーが守られ、かつ官民の機関による監視から自由であるべきである。 [35] 自由権規約委員会、一般的意見37号(2020年)、パラ6および34。 66.デジタル環境における公的な注目およびネットワーキングの機会も、子どもが主導する行動主義を支え、かつ人権擁護者としての子どもたちのエンパワーメントにつながり得る。委員会は、デジタル環境によって、人権擁護者である子どもたちおよび脆弱な状況に置かれた子どもたちが、相互にコミュニケーションを図り、自分たちの権利を擁護し、かつ結社を結成できるようになることを認識する。締約国は、特別なデジタル空間の創設を促進するなどの手段によりこれらの子どもたちを支援し、かつその安全を確保するべきである。 E.プライバシーに対する権利 67.プライバシーは、子どもたちの主体性、尊厳および安全ならびに権利行使にとってきわめて重要である。子どもたちの個人データは、子どもたちに教育上、健康上その他の利益を提供する目的で処理されている。子どもたちのプライバシーに対する脅威は、公的機関、企業その他の組織によるデータの収集および処理からも、個人情報の不正な取得・利用のような犯罪活動からも生じ得る。脅威はまた、デジタル環境における子どもたち自身の活動からも、家族構成員、仲間その他の者の活動(たとえば親が写真をオンラインでシェアすることまたは見知らぬ者が子どもに関する情報をシェアすること)からも生じ得る。 68.データには、とくに子どもの身元、活動、位置情報、通信、感情、健康および人間関係に関するデータが含まれる場合がある。生体データを含む個人データのある種の組み合わせは、子どもを一意的に特定するために利用し得る。自動データ処理、プロファイリング、行動ターゲティング、義務的本人確認、情報フィルタリングおよび大量監視のようなデジタル慣行が、当たり前に行なわれるようになりつつある。このような慣行は、プライバシーに対する子どもたちの権利への恣意的または不法な干渉につながる可能性がある。このような慣行は子どもたちに悪影響をもたらす可能性があり、子どもたちは人生のその後の段階においても影響を受け続ける場合がある。 69.子どものプライバシーへの干渉が認められるのは、それが恣意的または不法でない場合のみである。したがって、このようないかなる干渉も、法律で定められ、正当な目的の達成を狙いとし、データの最小限化の原則を維持し、比例性を有しており、かつ条約の規定、目的および趣旨に抵触しないものでなければならない。 70.締約国は、子どものデータ処理を行なうすべての組織によっておよびそのようなデータ処理が行なわれるすべての環境において子どもたちのプライバシーが尊重されかつ保護されることを確保するため、立法上、行政上その他の措置をとるべきである。法律には、強力な保障措置、透明性、独立の監督および救済措置へのアクセスを含めることが求められる。締約国は、子どもたちに影響を及ぼすデジタル製品およびデジタルサービスへの、プライバシー・バイ・デザインの統合を要求するべきである。締約国は、プライバシーおよびデータ保護に関する法律を定期的に見直すとともに、手続および実務によって、子どもたちのプライバシーの意図的または偶発的侵害が防止されることを確保するよう求められる。暗号化が適切な手段であると考えられる場合、締約国は、子どもの性的搾取・虐待または子どもの性的虐待表現物の発見および通報を可能にする、適切な措置を検討するべきである。このような措置は、法律適合性、必要性および比例性の原則にしたがい、厳格に限定的なものとされなければならない。 71.子どものデータ処理に対する同意が求められる場合、締約国は、同意が、子どもによって(または、子どもの年齢および発達しつつある能力に応じてその親もしくは養育者によって)、十分な情報に基づいてかつ自由に与えられ、かつ当該データの処理の前に取得されることを確保するよう求められる。子どもの個人データを処理するのに、子ども自身の同意では不十分であると考えられ、親による同意が必要とされる場合、締約国は、同意が十分な情報に基づく意味のあるものであり、かつ子どもの親または養育者によって与えられたことを、このようなデータの処理を行なう組織が確認するよう要求するべきである。 72.締約国は、合理的かつ法律にのっとった制限に服することを条件として、子どもおよびその親または養育者が、保存されているデータに容易にアクセスし、不正確なまたは古くなったデータを訂正し、かつ、公的機関、私人またはその他の機関によって不法にまたは不必要に保存されているデータを削除できることを確保するべきである [36]。締約国はさらに、データ管理者がデータ処理のための正当なかつ優先されるべき理由を示せない場合には、子どもが同意を撤回しかつ個人データ処理に異議を唱える権利を確保するよう求められる。締約国はまた、子ども、親および養育者に対し、子どもにやさしい言葉およびアクセシブルな形式で、このような事柄に関する情報を提供するよう求められる。 [36] 自由権規約委員会、一般的意見16号(1988年)、パラ10。 73.子どもたちの個人データへのアクセスは、定期的監査およびアカウンタビリティ措置のような適正手続上の保障を遵守しながら当該データを処理することについて法律に基づく指定を受けた公的機関、組織および個人に対してのみ、認められるべきである [37]。定められた目的のために収集された子どもたちのデータは、いかなる場面(デジタル化された犯罪記録を含む)においても保護され、かつ当該目的のためにのみ用いられるべきであり、また不法にもしくは不必要に保持されまたは他の目的のために利用されるべきではない。ある場面で提供された情報を他の場面で(たとえば学校教育および高等教育の文脈で)利用することが子どもにとって正当な利益となり得る場合、そのようなデータの利用は透明であり、説明責任が確保され、かつ子ども、親または養育者の同意に適宜服するものであることが求められる。 [37] 前掲および子どもの権利委員会、一般的意見20号(2016年)、パラ46。 74.プライバシーおよびデータ保護に関する法律および措置によって、子どもたちのその他の権利(たとえば表現の自由または保護に関連する権利)が恣意的に制限されるべきではない。締約国は、データ保護法がデジタル環境との関連で子どものプライバシーおよび個人データを尊重することを確保するべきである。継続的な技術革新を通じてデジタル環境の範囲は拡大しつつあり、ますます多くのサービスおよび製品(衣服・玩具など)も含むようになっている。自動化システムに接続された埋込センサーの利用を通じて、子どもたちが時間を費やす環境が「接続した」状態になっていくなか、締約国は、そのような環境に寄与する製品およびサービスが、データ保護およびその他のプライバシーに関わる確固たる規制および基準の対象とされることを確保するべきである。これには、路上、学校、図書館、スポーツ・娯楽施設および商業施設(店舗や映画館を含む)のような公的な場所ならびに家庭が含まれる。 75.子どもたちを対象とするいかなる監視も、関連する自動化された個人データ処理とともに、プライバシーに対する子どもの権利を尊重して行なわれなければならず、かつ、日常的に、無差別に、または子どもが(もしくは乳幼児の場合にはその親もしくは養育者が)知らないところで実施されるべきではない。そのような監視は、商業的場面ならびに教育およびケアの場面において、当該監視に反対する権利が認められないまま行なわれるべきでもなく、かつ、所期の目的を果たすために利用可能なもっともプライバシー干渉度の低い手段が常に考慮されるべきである。 76.デジタル環境は、プライバシーに対する子どもの権利の尊重に関して、親・養育者に特有の問題を生じさせる。安全目的でオンライン活動をモニターするテクノロジー(追跡デバイスや追跡サービスなど)は、慎重に運用されなければ、子どもがヘルプラインにアクセスしたりデリケートな情報を検索したりすることの妨げとなる可能性がある。締約国は、子どもたち、親および養育者ならびに公衆に対し、プライバシーに対する子どもの権利の重要性について、また自分自身の対応が当該権利をどのように脅かしかねないかについて、助言を提供するべきである。どのように対応すれば、子どもたちの安全を保ちつつ、デジタル環境との関連で子どもたちのプライバシーを尊重しかつ保護できるかについても助言を提供することが求められる。親および養育者による子どものデジタル活動のモニタリングは、比例性を有しており、かつ子どもの発達しつつある能力にしたがって行なわれるべきである。 77.身元を保護するオンラインアバターまたはオンライン名を使用している子どもたちは多く、このような対応は子どもたちのプライバシー保護に関して重要なものとなり得る。締約国は、匿名による実践が有害なまたは不法な行動(たとえばネット上の攻撃、ヘイトスピーチまたは性的搾取・虐待など)を隠すために常用されないことを確保しつつ、匿名性に対するセーフティ・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デザインを統合したアプローチを要求するべきである。デジタル環境における子どものプライバシーの保護は、親もしくは養育者自身が子どもの安全にとって脅威となっている場合または子どもの養育をめぐって紛争中である場合に、きわめて重要になり得る。このような事案では、プライバシーに対する子どもの権利を保護するため、さらなる介入および家族カウンセリングその他のサービスが必要となる場合がある。 78.デジタル環境における子どもたち向けの防止サービスまたは相談サービスの提供者は、子どものユーザーが当該サービスにアクセスするために親の同意を得なければならないとするいかなる要件からも免除されるべきである [38]。このようなサービスは、プライバシーおよび子どもの保護に関する高い基準の遵守が求められる。 [38] 一般的意見20号(2016年)、パラ60。 F.出生登録およびアイデンティティに対する権利 79.締約国は、保健、教育および福祉を含むサービスへのアクセスを促進するため、すべての新生児が国の公的機関によってその出生を登録されかつ公式に承認されることを可能にする、デジタル身元確認システムの活用を促進するべきである。出生登録が行なわれないことは、条約およびその選択議定書に基づく子どもたちの権利の侵害を助長する。締約国は、とくに遠隔地の子ども、難民および移住者である子ども、危険な状況にある子どもならびに周縁化された状況にある子どもを対象として出生登録へのアクセスを確保するため、移動登録班を含む最新のテクノロジーを活用するとともに、デジタル身元確認システムの前に出生した子どもも対象とするべきである。このようなシステムが子どもたちにとって有益なものとなるようにするため、締約国は、意識啓発キャンペーンを実施し、モニタリング機構を設置し、コミュニティの関与を促進し、かつ、民事登録担当官、裁判官、公証人、保健担当官および子どもの保護機関要員間の効果的調整を確保するよう求められる。締約国はまた、プライバシーおよびデータ保護に関する確固たる枠組みが整備されていることも確保するべきである。 VII.子どもに対する暴力 80.デジタル環境は、子どもが暴力を経験する状況や自分自身または他者に害を与えるよう感化される可能性がある状況を助長することにより、子どもたちに対して暴力が加えられる新たな道を開く可能性がある。パンデミックなどの危機にあっては、このような状況では子どもたちがバーチャルプラットフォームで過ごす時間が増えることに鑑み、オンラインにおける害のリスクが高まるおそれがある。 81.性犯罪者は、性的目的で子どもを勧誘したり、オンラインでの子どもの性的虐待に(たとえばライブビデオストリーミングによって、子どもの性的虐待表現物の製造および頒布によってならびに児童エロチカを通じて)参加したりする目的で、デジタルテクノロジーを利用する可能性がある。デジタル化で容易になる諸形態の暴力および性的搾取・虐待は、子どもが信頼する人間関係のなかで、家族もしくは友人によってまたは思春期の子どもの場合には親密なパートナーによって行なわれる場合もあり、またネット上の攻撃(いじめおよび名誉への脅威を含む)、同意を得ずに行なわれる性的テキストまたは画像の作成またはシェア(誘惑や強要による自製コンテンツなど)および自傷行動(刃物による自傷、自殺行動または摂食障害など)の促進などが含まれ得る。子どもがこのような行動をとった場合、締約国は、可能な場合には常に、関係する子どもを対象とする予防、安全確保および修復的司法のアプローチを追求するべきである [39]。 [39] 一般的意見24号(2019年)、パラ101およびCRC/C/156〔子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の実施に関するガイドライン〕、パラ71。 82.締約国は、デジタル環境における暴力から子どもたちを保護するための立法上および行政上の措置をとるべきである。これには、デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力に関わってすでに認識されているリスクおよび新たに生じつつあるリスクから子どもたちを保護する確固たる法令上および制度上の枠組みを定期的に見直し、改定しかつ執行することが含まれる。このようなリスクには、身体的または精神的暴力、傷害または虐待、ネグレクトまたは不適切な取扱い、搾取および虐待(性的搾取・虐待を含む)、子どもの人身取引、ジェンダーに基づく暴力、ネット上の攻撃、サイバーアタックならびに情報戦が含まれる。締約国は、子どもたちの発達しつつある能力にしたがって安全措置および保護措置を実施するべきである。 83.デジタルテクノロジーは、テロリストまたは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団を含む非国家集団が、暴力への関与または参加を目的として子どもたちを募集しかつ搾取するための新たな道を開き得る。締約国は、テロリスト集団または暴力的過激主義者集団による子どもの募集が法律で禁じされることを確保するべきである。このような文脈で刑事上の罪を問われた子どもは第一次的には被害者として扱われるべきだが、告発される場合には子ども司法制度を適用することが求められる。 VIII.家庭環境および代替的養護 84.多くの親および養育者は、デジタル環境との関連で子どもたちを援助するための技術的理解、能力およびスキルを発展させるために支援を必要としている。締約国は、親および養育者がデジタルリテラシーを獲得し、テクノロジーがどのように子どもの権利の支えになり得るかを学び、かつオンラインの害の被害を受けた子どもを認識して適切に対応するための機会を持てることを確保するべきである。不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちの親および養育者に対し、特別な注意を払うことが求められる。 85.デジタル環境に関する支援と指針を親および養育者に提供するにあたり、締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがって子どもたちの自律性の高まりおよびプライバシーの必要性を尊重することに関する意識を促進するべきである。締約国は、子どもたち(親および養育者が想定するよりも低い年齢の子どもたちを含む)はデジタルな機会をしばしば積極的に利用して実験するものであり、かつリスクに遭遇する可能性があることを考慮するよう求められる。子どもたちからは、とくに親および養育者のアプローチが懲罰的であり、過剰に制限的であり、または自分の発達しつつある能力にあわせて修正されていない場合に、自分たちのデジタル活動に関してもっと支援と励ましがほしいと報告する声もあった [40]。 [40] "Our rights in a digital world", p.30. 86.締約国は、親および養育者に提供される支援と指針が、親子関係の特殊性および特有の性質に関する理解に基づくものであるべきことを考慮するよう求められる。このような指針は、親が、禁止または管理よりも相互の共感と尊重に基づき、子どもの保護と高まりつつある自律性との間で適切なバランスを維持することを支援するようなものであるべきである。親および養育者が親としての責任と子どもの権利とのバランスを維持する一助とするため、子どもの発達しつつある能力の考慮とあわせて適用される子どもの最善の利益を指導的原則とすることが求められる。親および養育者向けの指針では、デジタル環境における子どもたちの社会的活動、創造的活動および学習活動が奨励されるべきであり、かつ、デジタル機器の利用が、子どもたち同士のまたは子どもたちと親または養育者との、応答性に満ちた直接の相互交流にとって代わるべきではないことが強調されるべきである。 87.家族と離れ離れになった子どもがデジタルテクノロジーにアクセスできることは重要である [41]。科学的知見が示すところによれば、デジタルテクノロジーは、たとえば親が別居している場合〔もしくは〕子どもが代替的養護に措置された場合に家族関係を維持するうえで、子どもと養親または里親の候補との関係を確立するうえで、または人道危機の状況下にある子どもが家族と再会できるようにするうえで、有益なものとなる。したがって、家族が離れ離れになっている状況下で、締約国は、子どもの安全および最善の利益を考慮しながら、子どもたちおよびその親、養育者またはその他の関係者を対象として、デジタルサービスへのアクセスを支援するべきである。 [41] 一般的意見21号(2017年)、パラ35。 88.デジタルインクルージョンを増進させるための措置は、親もしくは他の家族構成員または養育者(同居しているか別居しているかを問わない)が子どもを危険な状況に置く可能性がある場合には、子どもを保護する必要性とのバランスが図られるべきである。締約国は、このようなリスクが、デジタルテクノロジーの設計および利用を通じて(たとえば人権侵害を行なう可能性のある者に対して子どもの位置情報が明らかにされることによって)発生する可能性があることを考慮するよう求められる。締約国は、これらのリスクを認識して、セーフティ・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デザインを統合したアプローチを要求するとともに、親および養育者がこのようなリスクおよび子どもを支援しかつ保護するために利用可能な戦略について十分に認識していることを確保するべきである。 IX.障害のある子ども 89.デジタル環境は、障害のある子どもたちが他の子どもたちと社会的関係を結び、情報にアクセスし、かつ公的意思決定プロセスに参加する新たな経路を開くものである。締約国は、このような新たな経路を追求するとともに、新たな障壁が生み出されることを防止し、かつデジタル環境に関連して障害のある子どもたちが直面している障壁を克服するための措置をとるよう求められる。 90.さまざまな態様の障害(身体障害、知的障害、心理社会的障害、聴覚障害および視覚障害を含む)がある子どもたちは、コンテンツの形式がアクセシブルではないこと、家庭、学校およびコミュニティにおける負担可能な支援テクノロジーへのアクセスが限られていること、学校、保健施設その他の環境でデジタル機器の使用が禁じられていることなど、デジタル環境へのアクセスに関してさまざまな障壁に直面している。締約国は、障害のある子どもたちがアクセシブルな形式のコンテンツにアクセスできることを確保し、かつ、これらの子どもたちに差別的影響を及ぼす政策を廃止するべきである。締約国は、とくに貧困下で暮らしている障害のある子どもを対象として、必要な場合には負担可能な支援テクノロジーへのアクセスを確保するとともに、障害のある子どもたち、その家族および教育施設その他の関連の現場の職員がデジタルテクノロジーを効果的に活用するための十分な知識およびスキルを身につけられるよう、意識啓発キャンペーンおよび訓練の実施ならびにリソースの提供を図るよう求められる。 91.締約国は、さまざまな態様の障害がある子どもの必要を満たす技術的革新を促進するとともに、デジタル製品およびデジタルサービスが、すべての子どもが例外なくかつ調整を必要とせずに利用できるよう、ユニバーサルアクセシビリティを目指して設計されることを確保するべきである。デジタル環境における障害のある子どもたちの権利の実現に影響を及ぼす政策、製品およびサービスの設計および提供には、障害のある子どもたちの関与を得ることが求められる。 92.障害のある子どもたちは、デジタル環境において、ネット上の攻撃および性的搾取・虐待を含むリスクにいっそうさらされる可能性がある。締約国は、障害のある子どもたちが直面するリスクを特定しかつこれに対処して、これらの子どもたちが直面する過剰な保護または排除につながりかねない偏見に対抗しつつ、デジタル環境がこれらの子どもたちにとって安全であることを確保するための措置をとるべきである。デジタル環境に関連する安全情報、保護方策および広報情報、サービスならびにフォーラムは、アクセシブルな形式で提供することが求められる。 X.基礎保健および福祉 93.デジタルテクノロジーは、保健サービスおよび保健情報へのアクセスを促進し、かつ妊産婦、新生児および児童期・思春期の子どもの身体的および精神的健康ならびに栄養のための診断・治療サービスを向上させ得る。デジタルテクノロジーはまた、不利な立場もしくは脆弱な状況に置かれた子どもたちまたは遠隔地の子どもたちにサービスを行き届かせる重要な機会を提供するものでもある。公の緊急事態または保健上もしくは人道所の危機の際には、デジタルテクノロジーを通じた保健サービスおよび保健情報へのアクセスが唯一の選択肢となる場合もあり得る。 94.子どもたちが報告するところによれば、子どもたちは、健康およびウェルビーイングに関連する情報および支援(身体的健康、精神的健康、セクシュアル/リプロダクティブヘルス、第2次性徴および避妊に関わるものを含む)をオンラインで検索することを重視している [42]。とくに思春期の子どもたちは、精神保健およびセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する、無償で、秘密が守られ、年齢にふさわしくかつ差別的ではないサービスにオンラインでアクセスしたいと考えている [43]。締約国は、子どもたちが、信頼できる保健情報および保健サービス(心理相談サービスを含む)に安全に、安心してかつ秘密が守られる形でアクセスできることを確保するべきである [44]。これらのサービスは、サービス遂行のために必要な限度を超えて子どもたちのデータを処理するべきではなく、かつ専門家または適切な訓練を受けた者によって提供されるべきであり、また規制された監督の仕組みをともなっていることが求められる。締約国は、デジタル化された保健製品および保健サービスによって、対面型保健サービスへの子どもたちのアクセスにおける不平等が生じまたは強化されないことを確保するべきである。 [42] "Our rights in a digital world", p.37. [43] 一般的意見20号(2016年)、パラ59。 [44] 前掲、パラ47および59。 95.締約国は、子どもたちの特有の保健ニーズに焦点を当て、かつ技術の進歩を通じて子どもたちにとっての肯定的な健康アウトカムを促進するような調査研究および開発を奨励し、かつこのような調査研究および開発への投資を行なうよう求められる。デジタルサービスは、子どもたちに対する対面型保健サービスの提供を補完しまたは向上させるために利用されるべきである [45]。締約国は、規制の導入または改定により、保健テクノロジーおよび保健サービスの提供者に対して、その機能、コンテンツおよび頒布の中心に子どもの権利を位置づけるよう要求することが求められる。 [45] 前掲、パラ47-48。 96.締約国は、誤情報ならびに子どもの精神的または身体的健康を害する可能性がある資料およびサービスの拡散を防止するため、既知の害に対して規制を行なうとともに、公衆衛生セクターで新たに判明した調査研究の結果およびエビデンスを積極的に考慮するべきである。デジタルゲームまたはソーシャルメディアへの不健康な関与を防止するための措置(子どもたちの発達および権利を阻害するデジタルデザインの機制など)も必要になる場合がある [46]。 [46] 一般的意見15号(2013年)、パラ84。 97.締約国は、身体活動および社会的活動を含む健康的なライフスタイルを促進するためのデジタルテクノロジーの利用を奨励するべきである [47]。特定の食料品および飲料品、アルコール、薬物ならびにタバコその他のニコチン製品を含む不健康な製品の販売促進に子どもたちがさらされることを防止するため、締約国は、ターゲティングによるまたは年齢にふさわしくない広告、マーケティングまたは他の関連のデジタルサービスを規制するよう求められる [48]。デジタル環境に関連するこのような規制は、オフライン環境における規制と両立しかつ足並みを揃えるようなものであるべきである。 [47] 一般的意見17号(2013年)、パラ13。 [48] 一般的意見15号(2013年)、パラ77。 98.デジタルテクノロジーは、休息、運動ならびに仲間、家族およびコミュニティとの直接的相互交流の必要性とのバランスがとられている場合には、子どもたちが健康およびウェルビーイングを向上させる多くの機会を与えてくれる。締約国は、子どもたち、親、養育者および教育者を対象として、デジタル活動と非デジタル活動および十分な休息との健康的バランスの重要性に関する指針を策定するべきである。 XI.教育、余暇および文化的活動 A.教育に対する権利 99.デジタル環境は、質の高いインクルーシブな教育(フォーマルな学習、インフォーマルな学習、子どもたち同士の学習および独学のためのリソースを含む)への子どもたちのアクセスをおおいに可能にしかつ増進させることにつながり得る。デジタルテクノロジーの活用により、教員・生徒間および学習者間のエンゲージメントも強化される可能性がある。子どもたちは、教育へのアクセスを向上させ、かつ学習および課外活動への参加を支えるうえでデジタルテクノロジーが重要であることを強調している [49]。 [49] "Our rights in a digital world", pp.14, 16 and 30. 100.締約国は、多様かつインタラクティブなデジタル学習リソース(先住民族に関するリソースを含む)および子どもたちが理解できる言語でのリソースに子どもたちがアクセスできるようにするため、文書館、図書館および博物館のような教育・文化施設を支援するべきである。これらのものをはじめとする貴重なリソースは、子どもたちが自分たち自身の創造的、市民的および文化的実践に従事することの支えとなり、かつ他者の実践について学べることにつながる可能性がある [50]。締約国は、オンライン学習および生涯学習のための子どもたちの機会を増進するべきである。 [50] 一般的意見17号(2013年)、パラ10。 101.締約国は、学校その他の学習現場における技術インフラに対して公平な投資を行ない、十分な数のコンピューター、良質かつ高速なブロードバンドおよび安定した電源、デジタル教育テクノロジーの活用に関する教員研修、アクセシビリティならびに学校テクノロジーの時宜を得たメンテナンスが利用可能でありかつ負担可能であることを確保するべきである。締約国はまた、多様かつ良質なデジタル教育リソースが子どもたちの理解できる言語で制作されかつ普及されることを支援し、かつ、既存の不平等(女子が経験している不平等など)が悪化しないようにすることも求められる。締約国は、デジタルテクノロジーの活用が対面型教育を阻害しないことおよび教育目的のために正当なものであることを確保するべきである。 102.学校に物理的に出席していない子どもたちや、遠隔地に暮らしておりまたは不利な立場もしくは脆弱な状況に置かれている子どもたちにとっては、デジタル教育テクノロジーによって遠隔学習または移動学習が可能となり得る [51]。締約国は、遠隔学習のために必要な基本的便益(機器、電気、接続環境、教材および専門的支援へのアクセスを含む)にすべての子どもたちがアクセスできるようにするための適正なインフラが整備されることを確保するべきである。締約国はまた、学校が親および養育者に対して家庭での遠隔学習に関する指針を示すための十分な資源を有すること、ならびに、デジタル教育のための製品およびサービスが、対面型教育サービスへの子どもたちのアクセスに関する不平等を生じさせまたは悪化させないことを確保するべきである。 [51] 女性差別撤廃委員会の合同一般的勧告31号/子どもの権利委員会の合同一般的意見18号(2019年)、パラ64ならびに子どもの権利委員会、一般的意見11号(2009年)、パラ61および一般的意見21号(2017年)、パラ55。 103.締約国は、学校と、価値のある教育上の利点の提供を増進させることを目的として教育テクノロジー・教材の調達および利用に責任を負うその他の関連機関を対象とする、エビデンスに基づいた政策、基準およびガイドラインを策定するべきである。デジタル教育テクノロジーに関する基準においては、これらのテクノロジーの利用が倫理にかなっておりかつ教育目的にとって適切であること、ならびに、子どもたちが暴力、差別、個人データの悪用、商業的搾取またはその他の権利侵害(子どもの活動を記録し、かつ子どもが知らないまままたは子どもの同意を得ずに当該記録を親または養育者と共有するためにデジタルテクノロジーを利用することなど)にさらさないことを確保するよう求められる。 104.締約国は、デジタルリテラシーが、就学前の段階から全学年を通じて基礎教育カリキュラムの一環として学校で教えられること、および、このような教育方法がその成果に基づいて評価されることを確保するべきである [52]。カリキュラムには、幅広い範囲のデジタルツールおよびデジタルリソースを安全に取り扱うための知識およびスキル(コンテンツ、制作、合作、参加、社会化および市民的関与に関連するものを含む)を含めることが求められる。カリキュラムにはまた、批判的思考、信頼できる情報源を見つけ出しかつ誤情報およびその他の形態のバイアスがかかったまたは虚偽のコンテンツ(セクシュアル/リプロダクティブヘルス関連の問題を含む)を判定する方法に関する指針、デジタル環境における子どもの権利を含む人権ならびに利用可能な形態の支援および救済措置も含まれるべきである。締約国はまた、コンテンツ、接触、行動および契約に関連するリスク(ネット上の攻撃、人身取引、性的搾取・虐待その他の形態の暴力を含む)にさらされることによって生じる可能性のある悪影響と、害を低減させるための対処方策ならびに自分自身および他人の個人データを保護する方策および子どもたちの社会的・情緒的スキルとレジリエンスを構築するための方策に関する意識を、子どもたちの間で促進するべきである。 [52] 一般的意見20号(2016年)、、パラ47。 105.子どもたちが、デジタル環境(そのインフラ、事業慣行、巧みな誘導戦略ならびに自動化処理および個人データの利用ならびに監視を含む)と、デジタル化が社会に及ぼす可能性のある悪影響について理解することは、ますます重要になっている。教員、とくにデジタルリテラシー教育およびセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育を行なう教員は、デジタル環境に関わる安全確保についての研修を受けるべきである。 B.文化、余暇および遊びに対する権利 106.デジタル環境は、子どもたちのウェルビーイングおよび発達にとって不可欠である、文化、余暇および遊びに対する子どもたちの権利の促進につながる [53]。すべての年齢層の子どもたちが、自ら選んださまざまなデジタル製品およびデジタルサービスに関与することを通じて喜び、興味および気晴らしを経験したこと [54] とともに、他方で、デジタル環境での遊びがどれほど大切か、またそれを友達とどのように共有できるかについて大人がわかってくれないかもしれないと心配していることを報告している [55]。 [53] 一般的意見17号(2013年)、パラ7。 [54] "Our rights in a digital world", p.22. [55] 一般的意見17号(2013年)、パラ33。 107.デジタルな形態の文化、レクリエーションおよび遊びは、子どもたちの支えおよび利益になり、かつ子どもたちのさまざまなアイデンティティ、とくに文化的アイデンティティ、言語および遺産を反映しかつ促進するようなものであるべきである。このことは、子どもたちの社会的スキル、学習、表現、音楽・芸術などの創造的活動、帰属感および共有された文化の促進につながり得る [56]。オンラインでの文化的生活への参加は、創造性、アイデンティティ、社会的結束および文化的多様性に貢献する。締約国は、子どもたちが、情報通信技術を試し、自己表現し、かつオンラインで文化的生活に参加するために自由時間を利用する機会を持てることを確保するべきである。 [56] 前掲、パラ5。 108.締約国は、デジタルテクノロジーおよびデジタルサービスであって余暇時間の子どもたち向けのもの、余暇時間に子どもたちがアクセスするものまたは余暇時間の子どもたちに影響を及ぼすものが、文化、レクリエーションおよび遊びに関する子どもたちの機会を増進させるようなやり方で設計され、頒布されかつ利用されることを確保するため、規制を行ない、かつ専門家、親および養育者向けの指針を示すとともに。デジタルサービス提供者と適宜連携するべきである。これには、子どもたちの自律、人格形成および楽しみを支えるデジタル環境での遊びおよび関連の活動に関する革新を奨励することも含まれ得る。 109.締約国は、デジタル環境における文化、余暇および遊びの機会の促進と、子どもたちが生活している物理的場所での魅力的な選択肢の提供とのバランスがとられることを確保するべきである。とくに乳幼児期には、子どもたちの言語、協調、社会的スキルならびに感情的知性は、もっぱら身体運動および他者との直接の対面型相互交流をともなう遊びを通じて獲得される。年長の子どもたちにとっては、身体活動をともなう遊びおよびレクリエーション、チームスポーツならびにその他の野外レクリエーション活動は、健康上の利益ならびに機能的および社会的スキルの獲得をもたらし得るものである。 110.余暇時間をデジタル環境で過ごすことにより、子どもたちは、たとえばそれとはわかりにくい広告もしくは誇大広告または著しく誘導的もしくは射幸的なデザイン上の特徴を通じて、害を受けるリスクにさらされる可能性がある。締約国は、データ保護、プライバシー・バイ・デザインおよびセーフティ・バイ・デザインのアプローチならびにその他の規制措置を導入しまたは活用することによって、企業が、これらの技法および子どもの利益よりも商業的利益を優先させることを目的としたその他の技法を用いて子どもたちをターゲットとすることがないようにするべきである。 111.締約国または企業が、デジタル環境における特定の形態の遊びおよびレクリエーションに関して指針の提示、年齢によるレーティング、ラベリングまたは認証を行なう場合、それらの指針等は、デジタル環境全体への子どもたちのアクセスを縮小し、または子どもたちの余暇機会もしくはその他の権利に干渉しないような形で作成されるべきである。 XII.特別な保護措置 A.経済的、性的その他の形態の搾取からの保護 112.子どもたちは、デジタル環境との関連で、その福祉のいかなる側面にとっても有害なあらゆる形態の搾取から保護されるべきである。搾取は、児童労働を含む経済的搾取、性的搾取・虐待、子どもの売買、取引および誘拐ならびに犯罪活動(サイバー犯罪を含む)に参加させるための子どもの募集など、多くの形態をとって行なわれる可能性がある。子どもたちは、コンテンツを制作しかつシェアすることによってデジタル環境で経済的主体となり、その結果として搾取される可能性もある。 113.締約国は、子どもたちが経済的、性的その他の形態の搾取から保護され、かつ、デジタル環境での仕事に関わる子どもたちの権利および関連する報酬の機会が保護されることを確保するため、関連の法律および政策を見直すべきである。 114.締約国は、適切な執行の仕組みが設けられることを確保するとともに、適用される保護へのアクセスに関して子どもたち、親および養育者を支援するべきである [57]。締約国は、子どもたちが有害な物品(武器もしくは薬物など)またはサービス(賭け事など)から保護されることを確保するための法律を制定するよう求められる。子どもたちが自己所有または自己使用のために不法な製品およびサービスにアクセスすることを防止するため、しっかりした年齢認証システムが利用されるべきである。そのようなシステムは、データ保護および安全確保に関わる要件に一致したものであることが求められる。 [57] 一般的意見16号(2013年)、パラ37。 115.人身取引(その構成要素である行動および関連の行為を含む)を捜査し、訴追しかつ処罰する国家の義務を考慮し、締約国は、人身取引対策法を策定しかつ更新して、テクノロジーによって容易になる犯罪集団による子どもたちの募集が禁止されるようにするべきである。 116.締約国は、デジタル環境で発生する犯罪(詐欺および個人情報の不正な取得・利用を含む)子どもたちを保護し、かつデジタル環境における犯罪が捜査および訴追の対象とされることを確保するために十分な資源を配分することを目的とした、適切な法律が整備されることを確保するべきである。締約国はまた、このような犯罪のリスクを最小化するため、子どもたちが利用するデジタルサービスおよびデジタル製品に関して高水準のサイバーセキュリティ、プライバシー・バイ・デザインおよびセーフティ・バイ・デザインを要求することも求められる。 B.子ども司法の運営 117.子どもたちは、サイバー犯罪法に違反したとして申し立てられ。罪を問われまたは認定される可能性がある。締約国は、政策立案者が、このような法律が子どもたちに及ぼす影響を考慮し、防止に焦点を当て、かつ、刑事司法上の対応に代わる選択肢を設けかつ活用するためにあらゆる努力を払うことを確保するべきである。 118.子どもたちによる自撮りの性的表現物であって、本人の同意を得て、かつ自分たち自身の私的利用のみを目的として所持しかつ(または)シェアするものは、犯罪化されるべきではない。性的にあからさまな自撮りコンテンツに関して子どもたちが安全に助言および援助を求められるようにするための、子どもにやさしい回路が設けられるべきである。 119.締約国は、犯罪の防止、捜査および訴追において配備されているデジタルテクノロジー、監視機構(顔認証ソフトウェアなど)およびリスクプロファイリングが、刑事犯罪について容疑をかけられまたは告発されている子どもを不公正に対象とする目的で使用されず、かつその権利、とくにプライバシー、尊厳および結社の自由に対する権利を侵害するようなやり方で使用されないことを確保するべきである。 120.委員会は、裁判手続のデジタル化によって子どもとの対面での接触が行なわれなくなる場合、子どもとの関係の発展を踏まえた更生措置および修復的司法措置に悪影響が生じる可能性があることを認識する。このような場合には、また子どもが自由を奪われている場合にも、締約国は、裁判所に意味のある形で関与する子どもの能力および子どもの更生を促進するため、対面での接触を行なうようにするべきである。 C.武力紛争下の子ども、移住である子どもおよび他の脆弱な状況に置かれた子どもの保護 121.デジタル環境は、脆弱な状況下で暮らしている子どもたち(武力紛争下の子ども、国内避難民である子ども、移住者、庇護希望者および難民である子ども、保護・養育者に付き添われていない子ども、路上の状況にある子どもならびに自然災害の影響を受けている子どもを含む)に対し、その保護にとってきわめて重要な死活的情報へのアクセスを提供し得る。デジタル環境はまた、これらの子どもたちが、家族との接触を維持し、教育、保健その他の基礎的サービスにアクセスし、かつ食料および安全なシェルターを手に入れることも可能にし得る。締約国は、このような子どもたちがデジタル環境に安全に、確実に、秘密が守られかつ有益な形でアクセスできることを確保するとともに、あらゆる形態の暴力、搾取および虐待からこれらの子どもたちを保護するべきである。 122.締約国は、子どもたちがデジタル環境を通じて紛争(武力紛争を含む)で徴募されまたは使用されないことを確保するべきである。これには、たとえばソーシャルネットワーキングプラットフォームまたはオンラインゲームのチャットサービスを通じてさまざまな形態で行なわれる、テクノロジーによって容易になる子どもたちの勧誘およびグルーミング〔性的目的での勧誘〕を防止し、犯罪化しかつ制裁の対象とすることが含まれる。 XIII.国際的および地域的協力 123.国境および国家を超えるデジタル環境の性質により、国、企業その他の主体がデジタル環境との関連で子どもたちの権利を効果的に尊重し、保護しかつ充足することを確保するためには、強力な国際的および地域的協力が必要となる。したがって、締約国が、国内的および国際的非政府組織、国連機関、企業ならびにデジタル環境との関連における子どもの保護および人権を専門とする組織と個別かつ多面的に連携することは、きわめて重要である。 124.締約国は、専門的知見および優れた実践の国際的・地域的交流を促進しかつこれに貢献するとともに、デジタル環境における子どもたちの権利のすべての国による実現を可能とする能力構築、資源、基準、規則および保護措置を、国境を越えて確立しかつ促進するべきである。締約国は、デジタル環境における犯罪の共通定義の策定、共助ならびに証拠の共同収集および共有に努めるよう求められる。 XIV.普及 125.締約国は、この一般的意見が、デジタルテクノロジーも活用しながら、すべての関係者、とくに議会および政府機関(横断的および部門別デジタルトランスフォーメーションを担当する機関を含む)ならびに司法機関、企業、メディアおよび市民社会の関係者、公衆一般ならびに教育舎および子どもたちに広く普及され、かつ、複数の形式および言語(年齢にふさわしいバージョンを含む)で利用可能とされることを確保するべきである。 更新履歴:ページ作成(2021年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/osanpo2/pages/34.html
マップ 01┬ドアノブヲ ヒネル02┬ナク チャオ!03 │ └ネル チャオ! ? └カベヲ シラベル? 01 02 03 01 ☆ビル街 □チャオ チャオ チャ~ チャオ チャオ チャ~ ○チャオ!? ○ナンダカ ヘンナ タテモノニ マヨイコンダ チャオ~ ▽「ガッシャーン!」 ○!!? イリグチ ガ シマッタ チャオ!! ○トジコメラレタ チャオ~!! ○ドシヨ? グス・・・ (ドアノブヲ ヒネル→02 (カベヲ シラベル 02 ○アワテナイ アワテナイ ○ドアノ ノブヲ マワセバ アクチャオ! ○エート ドアノ ノブハ・・・ ○シマタ チャオ!! チャオ オテテガ ノブニ トドカナイチャオ!!! ○コマタ チャオ~ (ナク チャオ!→03 (ネル チャオ! 03 ○モウ ナクチャオ~チャオハ モウオシマイ チャオ~ ○エーン・・・・エーン、エーン、エーン! ウワーン! ウウ・・・ エゲ・・・ ズズッ・・・ エーンエーン! ▽「パタン!」 ▽「ウルサーイ!! ダレダ! ヒトンチデ ワンワン ナイテル ヤツハ!!?」 ○ハッ! トビラアイタチャオ!! イマガチャンスチャオ! ○ワーイ! ダッシュツセイコウ! ○サクセン ドオリ チャオ! チャオ! テンサイ!!
https://w.atwiki.jp/childreninfukushima/pages/285.html
(情報掲載日:2012.05.22) 富士山の麓にある自然豊かな御殿場でおやこで楽しくキャンプをしませんか? 日常から離れ、心と体をリフレッシュしましょう! 【日程】6月22日(金)~6月24日(日)2泊3日 *部分参加も歓迎します。 【場所】公益財団法人 日本YMCA同盟 国際青少年センター 東山荘 【集合解散場所】 日本YMCA同盟東山荘(静岡県御殿場市) 現地集合・現地解散 【対象】原発事故を含む東日本大震災被災地に居住、および対象地域外に避難中のご家族。 岩手県、宮城県、福島県、青森県、茨城県、栃木県 *乳幼児からご高齢の方まで、どなたでもご参加いただけます。 *現地集合・解散のため、お子さまのみの参加はご遠慮ください。 【参加費】無料(宿泊・食事・プログラム費) 【交通費】交通費最大お一人様往復10,000円の補助あり 【定員】50名 【プログラム内容(予定)】ふじさんぽ、キャンプファイヤー など *プログラム内容は現在、調整中です。 *プログラム内容は変更になる場合もあります。 【応募方法】日本YMCA同盟東山荘ホームページから「第8回おやこリフレッシュキャンプ応募用紙」をプリントアウト又はダウンロードし、必要事項を記入のうえ、東山荘までFAX又はメールにてお送りください。東山荘の「のびのびキャンプ」「おやこリフレッシュキャンプ」にご参加いただいた事がない方を優先とさせていただきます。参加者確定には5月31日までに東山荘より郵送にてご連絡させていただきます。落選通知はいたしませんのでご了承ください。 FAX:0550-83-1138 Email tozanso@ymcajapan.org 東山荘キャンプ詳細 http //www.ymcajapan.org/tozanso/eastjapan/-8.html 【応募期間】2012年5月18日(金)~5月27日(日)AM9:00~17:00まで 【主催】公益財団法人 日本YMCA同盟国際青少年センター東山荘 【協賛】三菱商事株式会社 ご不明な点、ご質問などがございましたら、東山荘までお問い合わせください。 Tel 0550-83-1133 Fax 0550-83-1138 Email tozanso@ymcajapan.org
https://w.atwiki.jp/kaeuta-matome/pages/1871.html
元ネタ:Let s!フレッシュプリキュア!(フレッシュプリキュア! 茂家瑞季) 作:ヤジオーディエンス フィニッシュホリディ! フィニッシュ!フィニッシュ!フィニッシュ! 怠ける(ぼうっと!)時間は終わり(フィニッシュ!) 上辺だけでも(元気!)見た目とギャップ(あれえ?あれえ?) (フィニッシュ ホリディ! フィニッシュ ホリディ!) 目覚まし鳴って 朝が始まる オン・ザ・ワーク スタート! (なんだか ホリディ! 短い ホリディ!) お日様だって ハゲを炙るチープショット・ファイア フィニッシュホリディ!(やれやれお仕事! もうアヘアヘ!) 溜まったお仕事は 全然減らないけど 気分のスロットル 無理に全開 熱中症! フィニッシュ!フィニッシュ!フィニッシュ! 怠ける(ぼうっと!)時間は終わり(フィニッシュ!) プアなパワーも(元気!)ないよりマシよ(うるせえ!) エブリディ ヒートアップ!(ホット!)まだまだ暑い(シット!) 汗をビッショリ(ダミット!)休んだしわ寄せ(え?) ゲットだよ!! (フィニッシュ ホリディ! フィニッシュ ホリディ!) 勤しんじゃえば 無理も増えてくハードタイム イン・エフェクト (まだまだ ホリディ! 寝てたい ホリディ!) 相変わらずの 昨日と同じストーミー フィニッシュホリディ!(やれやれお仕事! OH! ノーウェイ) 精出した結果に 一喜一憂できず 勇んで進んでも オヤジのエナジー 期限付き リフレッシュ!リフレッシュ!リフレッシュ! 脂ぎる(スウェット!)顔を洗って(リフレッシュ!) 逆に香ばしく(臭気!)今日も四苦八苦(うるせえ!) エブリディ ワーカー(ホット!)気配っちゃって(シット!) また気が抜けて(ダミット!)誰かのしわ寄せ(え?) ゲットだよ!! でもね掛りきりじゃ 無理しても続かない ちょっと息を抜いて ライフのゲージ 増やしましょう フィニッシュ!フィニッシュ!フィニッシュ! 毎日(ぼうっと!)食っちゃ寝したいぜ!(フィニッシュ!) 休み終わって(元気!)目覚し鳴って(うるせえ!) エブリディ ホリディ(ウイッシュ!)お金のなる木(欲しい!) 願いかなえて(頼む!)そんなの無理よ(知ってるよ!) エブリディ ヒートアップ!(ホット!)まだまだ暑い(シット!) 汗をビッショリ(ダミット!)休んだしわ寄せ(え?) ゲットだよ!! フィニッシュ ホリディ! 検索タグ その他ネタ アニメ フルコーラス プリキュア ヤジオーディエンス メニュー 作者別リスト 元ネタ別リスト 内容別リスト フレーズ長別リスト
https://w.atwiki.jp/slls/
東日本大震災地域の子どもたちに本を通じて出来る支援を 新着情報 2014年1月25日 仙台にて 子どもと本をつなぐ人たちのネットワークフォーラム に登壇します。たくさんの方々にお会いできるのが楽しみです。 2013年6月20日・21日 仙台にて 北日本図書館大会 に登壇しました。東北の図書館関係の方にたくさんお会いできました。ありがとうございました。 講演会「東日本大震災と子どもの読書を考える」の紹介記事を掲載した国立国会図書館月報6月号が刊行されました。 2013年4月1日 日本アニマシオン協会会報19号巻頭に、震災から3年目を迎えての拙文が掲載されました。同協会様の許可を得て 管理人より に転載しています。 2013年3月2日 国際子ども図書館主催 「東日本大震災と子どもの読書を考える」講演会に登壇しました。 これまでの活動は、左側メニューの 実現した支援 に移動しました(2013年7月3日) 2011年3月14日開設時のページは 3月14日開設時トップページ こちら。 2011年3月14日以降の経緯につきましては、 管理人より をご参照ください。 このサイトの管理と活動は、河西由美子とSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会有志が中心となり行っています。 - -
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/313.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの権利と環境 一般的討議勧告一覧 (第73会期、2016年) 原文:英語 日本語訳:平野裕二 報告書目次 1.はじめに 2.子どもの権利と環境の位置づけ関連性 時宜を得た討議 3.法的枠組みの外観人権と環境:変化しつつある風景 CRC〔子どもの権利条約〕と環境 子どもの環境権の定義 子どもの権利の文脈における「環境」の意味 4.子どもの権利と環境の関係の主要な要素4.1 環境危害からの子どもの権利の保護 健康的な環境の確保義務 環境保健に関わる課題 欠陥 持続的な環境の確保義務 課題 政策上の欠陥 子どもにやさしい遊び環境の確保 自然界とのつながりの確保 4.2 変革の主体としての子ども 環境情報へのアクセス欠陥 環境影響評価 環境教育環境の文脈における権利基盤型教育の要素 欠陥 環境に関わる事柄への参加意思決定の機会へのアクセスの欠如 障壁 司法へのアクセス原告適格 立証責任 時効 金銭的負担 4.3 横断的問題としての脆弱性および差別 5.責任および義務政府子どもの権利アプローチの欠如 協力および調整の欠如 能力構築および研修 企業セクターの役割企業セクターの規制 環境の文脈における子どもの権利についての相当の注意(デューディリジェンス) 委員会の役割 NGO、専門家および学界を含む他の関連の主体の役割 6.勧告 7.結論 6.勧告 各国が自国の政策およびプログラムで考慮すべき論点を特定するために子どもの権利に関する意識啓発および議論を行なうフォーラムとしてのDGD〔一般的討議の日〕の目的に照らし、かつ、環境との関係で子どもの権利をどのように保護していけばよいかについての指針を他の関連の主体に提示するため、委員会は以下の勧告に賛同するものである。以下の勧告は、第一次的に義務を負う主体である国に主として宛てられたものであるが、企業セクター、国際機関、市民社会および委員会自身を含む他のステークホルダーの役割も検討している。 国 一般的勧告 国は、子どもの権利の享受を妨げる環境危害から子どもを保護しなければならない。子どもの特有の脆弱性および社会における社会的地位は、政府および政策立案担当者に、このような危害から子どもを効果的に保護し、子どもの力量を強化し、子どもの意見および能力を考慮に入れ、かつ実効的なおよび時宜を得た救済措置にアクセスできるようにするために持続的な努力を行なう、いっそうの義務を課すものである。 国は、子どもたちが有する環境関連の権利を、現在および将来の世代の子どもたち全員がそれを享受しうるような持続可能なやり方で実現することにより、これらの権利を確保するべきである。 国は、すべての子どもが健康的かつ持続可能な環境および自然に平等にアクセスできることを確保しなければならない。国は、環境に関わる不公正の結果として生じている複合的な脆弱性要因にさらされている子ども(女子、障害のある子ども、貧しい子どもおよび先住民族集団またはマイノリティ集団に属する子どもを含む)の権利に対し、具体的に注意を払わなければならない。 国は、国外の子どもの権利に影響を及ぼす越境環境危害を引き起こしまたは助長することを防止するための措置をとるべきである。 立法および政策 国は、現在および将来の子どもたちの権利を十分に反映した持続可能な開発の道筋をとることを可能にするような法的および制度的環境を発展させるべきである。環境に関する国内の法律、政策および行動ならびに国際的取り決め(たとえば国ごとに決定する貢献〔Nationally Determined Contributions〕/国別緩和・適応計画など)においては、子どもの権利に関連する措置を明示的に含めることが求められる。翻って、子どもの権利に関する法律、政策および行動においては環境リスク要因を明示的に考慮するべきである。 国は、たとえば気候変動、生後早期の曝露または大規模開発プロジェクトのための保障措置に関わる関連の法律および政策の立案、実施および監視に際し、子どもの最善の利益を第一次的に考慮すべき問題として考慮するべきである。 企業セクターの規制 子どもの権利を保護するための十分な法的および制度的枠組みを採択する国の義務は、企業によって引き起こされる危害にも及ぶ。とりわけ、国は、企業に対し、その操業においておよびサプライチェーン全体を通じて、環境悪化が子どもの権利に及ぼす有害な影響との関連で相当の注意(デューディリジェンス)を払うことを求めるべきである。 環境の文脈におけるビジネスの影響を考慮に入れながら、ビジネスと人権に関する国家的行動計画に子どもの権利を統合するべきである。 国は、子どもの権利に合致した、よりクリーンな、より環境にやさしい企業実践への移行を支える政策および計画(たとえば都市再開発計画)を策定するよう奨励される。 国は、自ら範を示すとともに、大規模公共部門契約に入札する事業者に対し、自社の活動および傘下のサプライチェーンの活動が環境への影響との関連で子どもの権利に悪影響を及ぼさないことを確保するためにとろうとしている措置の開示を求めるよう奨励される。 実施および説明責任 国は、環境危害から子どもを保護することを目的とする規則を厳格に実施し、執行しかつ監視するとともに、この点に関わる監督機関を強化するべきである。国家的な人権監視機構は、健康的かつ持続可能な環境に関連する子どもの権利を考慮に入れることが求められる。 国は、環境危害から子どもの権利を保護するための部門横断型の行動をとるとともに、保健専門家、環境部門、教育部門、労働部門、都市計画部門、運輸部門、採取部門、エネルギー部門および農業部門を含む関係者間の協力および調整を増進させるべきである。 国は、関連の多国間環境協定および環境政策枠組みを実施する際、自国が負っている子どもの権利関連の義務を編入するべきである。これには、子どもに特化した運用プログラム、ツール、技術的援助および能力構築資料の開発も含めることが求められる。 国は、環境の文脈における子どもの権利の保護のために十分な資源を用意するべきである。 報告 国は、委員会に対する定期報告書に、環境危害が子どもの権利の全面的享受にもたらす影響、および、子どもの権利がそのような危害から保護されることを確保するためにとっている措置を盛りこむべきである。このことは、環境に関わる関連の国際的枠組みのもとで自国がとる行動の文脈で子どもの権利を考慮するために行なっている努力についての報告にも、適用することが求められる。 国はまた、UNFCCC〔国連・気候変動枠組条約〕〔の締約国会議〕に対する環境報告(たとえば国別報告書、適応措置報告など)、化学物質および廃棄物に関する国際的協定ならびに生物多様性条約およびSDG〔持続可能な開発目標〕に基づく環境関連のターゲットの実施に関する報告においても、子どもの権利を考慮するべきである。 健康的な環境の確保 国は、具体的な法律および効果的な企業規制を発展させること等を通じて子ども時代における環境危害への曝露を防止し、かつ治療のための保健ケアへのアクセスを確保するために効果的措置をとるべきである。締約国は、子どもの環境保健上のリスクが不確実である場合には予防的アプローチをとることが求められる。子どもにとって有害である可能性があるすべての毒性化学物質の規制に関して、諸国の国際協力が勧告されるところである。 国は、WHO〔世界保健機関〕その他の関連の国際機関が定めた環境保健関連の基準、指標、定義および年齢分類を実施するために――子どもの権利および最善の利益を指針としながら――いっそう積極的な措置をとるべきである。 国は、子どもの環境保健をモニタリングするための国家的計画を策定し、リスク評価を実施し、優先的懸念事項(被害を受けやすい状況に置かれた子どもを含む)を特定するとともに、これらの優先的懸念事項に対処するための措置(たとえば汚染された土地の時宜を得た除染)を策定しかつ実施するべきである。国は、保健専門家が、環境危害に関連する健康上の影響の診断および治療に関する研修を受けることを確保するよう求められる。 国は、働く子どもが環境リスク要因にさらされる危険な労働実務の禁止および解消を図り、より安全な代替的選択肢を促進し、かつ影響を受けている子どものモニタリングを確保するべきである。国は、生じたいかなる危害についても子どもが必要な治療および補償を受けることを確保するよう求められる。国はまた、安全な仕事に対する親(とくに生殖適齢の女性および女子)の権利も保護するべきである。 持続可能な環境の確保 国は、生物多様性、生態系サービス および天然資源の保護のための、国際的な基準および計画に合致したアプローチおよび戦略の採択および実施ならびに法的枠組みの確立を進めるとともに、現在および将来の世代の子どもたちが生命、生存および発達に対する権利、意見を聴かれる権利、健康、食料および水に対する権利、文化的生活に参加する権利、十分な生活水準、情報および教育に対する権利を行使できることを確保するべきである。とくに国は、世界的な気候変動との関係で子どもの権利を尊重しかつ保護する自国の義務を認識するよう求められる。このような保護のためには、利用可能な最善の科学的知見を指針としながら、温室効果ガスを緊急かつ果敢に削減することが必要である。 国は、すべての子どもおよびその家族ならびにコミュニティが、天然資源および健康的な環境の利益に対してならびに生態系に対して 公平にアクセスできることを確保するべきである。国は、自分たちの土地に対して緊密な物質的および文化的紐帯を有しており、かつ環境悪化の影響をもっとも受けやすいコミュニティ出身の子どもの権利を保護するため、いっそうの取り組みを行なうよう求められる。 子どもにやさしい遊び環境の確保 自治体の計画においては、自分たちのコミュニティで遊び、かつ主体性および自立性を発揮するすべての子どもの自由を増進させる環境にアクセスできるようにすることが優先的に取り組まれるべきである。これには、家族住宅街の道路または学校外で遊びに利用されている通りで自動車の通行よりも歩行者または自転車利用者が優先されるゾーンを創設すること、インクルーシブな公園および遊び場を設置すること、手入れされた緑地、空き地、「自然のままの空間」(wildlands)または自然にアクセスできるようにすること、ならびに、全般的な「歩きやすさ」(walkability)を高めることなどが含まれうる。さらに国は、子どもに関連すると一般的に認識されていない分野における規制を、すべての環境が遊びおよび子どもにとってやさしいものとなることの確保に向けて誘導していく必要性を考慮するべきである。 自然界とのつながりの確保 国は、環境保護、都市計画、保健、教育等の分野における政策、戦略および行動を通じて、子どもが、健康および発達に対する権利の基底的な決定要因のひとつである自然と相互作用できることを確保するための措置をとるべきである。 環境に関する情報および調査研究 国は、人権および自由の享受にとって中心的重要性を有する、環境リスクについて知る子どもおよびその親の権利を承認するとともに、子どもの権利と環境に関連する事柄についての十分なかつ年齢にふさわしい情報が利用できることおよびこのような情報にアクセスできることを確保するべきである。 国は、子ども時代における環境危害への曝露についての調査研究およびモニタリングのための努力を、すべての国で、かつとりわけ開発途上国およびハイリスク状況について、強化するべきである。これとの関係で、国はとくに以下の措置をとることが求められる。モニタリングおよび政策関連の調査研究において、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)が平等に代表されることを確保すること。国として、調査研究およびモニタリングに子どもおよび親の積極的関与を得るためのインクルーシブなプログラムを立案することが勧告される。 子どもの脆弱性および権利ならびに実際の生活条件(「曝露実態」)を考慮しながら、確固たる曝露関連データを収集すること。 環境危害と子どもの権利への影響との連関性を経時的に探究する縦断的研究、ならびに、発達の臨界時期における曝露を把握する、妊婦、乳幼児および子どもについてのその他の研究を実施すること。 子どもの権利と生物多様性、生態系または自然へのアクセスとの関連のような、十分に探究されていない論点に関する情報の生成および収集を進めること。 個人情報の保護を確保しつつ、子どもの健康および経時的発達を左右する環境上の要因および社会的要因に関連する情報の統合を促進すること。 影響評価 国は、環境に影響を及ぼす可能性が高い法律、政策、行動計画(戦略的環境評価)およびプロジェクト(環境影響評価)の事前評価に際し、子どもの権利を明示的に考慮するべきである。これには、子どもたちをステークホルダー集団として認めること、子どもの権利、リスクおよび脆弱性を十分に考慮すること、ならびに、現実の影響および潜在的影響に対応することが含まれる。 環境教育 国は、CRC第29条第1項(e)に掲げられているように、自然環境の尊重の発達を促進する義務を有する。この目的のため、国は、子どもの権利の促進および若い市民の教育を目的として、子どもたちの意見および提案を包摂した具体的政策を策定するべきである。教員の養成および研修のプログラムには、権利を基盤とする環境教育の意味するところを十分に反映させることが求められる。 国は、早期の段階から、すべての教育段階におけるCRC第29条第1項(e)の意味のある実施に取り組むべきである。これとの関連で、国は、野外活動およびフィールドトリップのような非公式な教育手段を考慮するとともに、関連するときは伝統的知識を包摂することが求められる。カリキュラムは、環境の急速な変化に対応できるよう、頻繁に改訂されるべきである。国は、子どもの学習プロセスのきわめて重要な要素のひとつとして、また市民的参加を構成する社会的実践の実習として、環境保護への子どもの直接の関与を促進するよう奨励される。 国は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のSDG4(ターゲット7)およびSDG13(ターゲットb)、UNFCCC第6条/パリ協定第12条(気候対策エンパワーメントのための行動)ならびに他のMEA〔相互環境協定〕に基づく教育上の措置(たとえば生物多様性に関する愛知ターゲット1)の実施および報告に際し、CRC第29条第1項(e)を考慮するべきである。 締約国は、定期審査の際、委員会に対し、自国の全国的教育制度においてCRC第29条第1項(e)を実施するためにどのような具体的措置をとっているかについての情報を提供するべきである。その際、国は、これらの措置によって、環境に関わる自己の権利および責任に関する子どもたちの意識がどのように高まり、環境管理倫理がどのように浸透し、子どもたちが環境保護の主体となるために必要なスキルがどのように伝達され、かつ、すべての生徒が主体的に関与する平等な機会がどのように促進されているかを明らかにするよう求められる。 環境関連の意思決定における表現の自由および参加 国は、環境問題の影響に関する議論に参加する機会がすべての子ども(低年齢の子どもを含む)に対して与えられることを確保し、かつ、あらゆる段階の環境政策立案に子どもたちの意味のある参加を組みこむべきである。 環境関連の参加ならびに子ども同士の共有および学習のための、子どもにやさしい具体的な場の設置を検討するべきである。たとえば、国は、子どもたちが、UNFCCC、CBD〔生物多様性条約〕等のCOP〔締約国会議〕における意思決定において意見を聴かれる権利を有するステークホルダーとして認められ、かつ、気候変動適応および緩和、災害リスク削減または自然保護に関連するプロジェクトの立案および実施に積極的に関与することを可能にする、革新的な機構を発展させることが求められる。 国は、環境権擁護活動家に対して自由な活動を可能にする安全な環境を提供するとともに、18歳未満の活動家に対してはいっそうの配慮義務を負うべきである。 環境関連の事柄における司法へのアクセス 国は、健康的な環境に対する裁判適用可能な権利および世代間衡平の原則を国内法に掲げるよう奨励される。 国は、子どもが、環境危害を理由とする権利侵害について司法および効果的な救済(汚染された土壌の浄化、未然防止措置および予防的措置、必要な医療的および心理的ケアならびに十分な補償を含む)にアクセスできることを確保するべきである。これとの関係で、国は、子どもに関わる環境危害についての苦情申立てを妨げる障壁を取り除くため、立証責任および証拠規則の調整を行なうべきである。 国は、大規模な環境被害の影響を受けるすべての子どもに救済を提供しうるが、影響を受けたすべての子どもが手続に直接関与することは要求されない、集団訴訟および公益訴訟の機構(環境事件に関するものを含む)を確立するべきである。 国は、NGOおよび子どもたちが、環境権侵害の影響を受ける子どもたちの利益のための法的手続において、かつ将来の世代を代表して、訴訟を提起しかつ介入する原告適格を認められることを確保するべきである。 国は、環境との関連で子どもの権利および利益を保護する法的代理が行なわれるようにするための、高い専門性および応答性を備えた司法部門の専門家、市民社会グループおよび法的機構を支援するべきである。国は、司法へのアクセスの向上を促進するため、環境裁判所の設置を検討するよう求められる。 国は、国外の環境上の影響(当該国と当該行為との間に合理的な結びつきがあるときは域外の私企業によるものを含む)によって権利を侵害された子どもおよびその家族に対して救済を提供する、効果的な司法的および非司法的機構へのアクセスを可能とするべきである。 国は、国内人権機関および(または)子どもオンブズパーソンに対し、子どもの権利の妨げとなる環境問題についての苦情を受理する権限を委ねるべきである。 国際機関 環境問題に関する活動を行なっている国際機関は、その政策および技術的援助において、国連システム全体(UNEP〔国連環境計画〕、ILO〔国際労働機関〕、WHO、UNFCCC、HLPF〔ハイレベル政治フォーラム〕およびUNDP〔国連開発計画〕を含む)を通じて子どもの権利の主流化を図るとともに、関連の主体間の協力および調整を増進させるべきである。 ユニセフに対しては、ユニセフ自身のプログラムおよび活動の主流に環境上の考慮を位置づけるための努力を強化すること、環境関連のプログラムおよび活動において子どもの権利の視点を主流化する適切な政策の形成に関して国内的、地域的および国際的レベルで諸国を援助すること、望ましい実践を支援しかつ強調すること、ならびに、委員会に対する国別報告書において、環境危害が子どもの権利に及ぼす影響についての情報を提出することが奨励される。 子どもの権利委員会 委員会は、環境問題に対する子どもの権利基盤アプローチの諸要素の定義の確立に関して締約国に確固たる指針を提示するとともに、子どもの権利と環境との関係に関する一般的意見の作成を検討するべきである。その際、委員会はとくに以下の対応をとることが求められる。子どもの権利条約に含意されている、健康的かつ持続可能な環境に対する子どもの権利について詳細な説明を行ない、かつ、自然とつながる子どもの能力の重要性を承認すること。 気候変動に関するパリ協定で子どもの権利および世代間衡平に明示的に言及されていることを考慮に入れ、気候変動と子どもの権利に関して国がどの程度の義務(緩和、適応、および、気候変動の結果として避難民化した子どもの権利に関する義務を含む)を明らかにすること。 教育の目的としておよび権利として自然環境の尊重を発達させることに関するCRC第29条第1項(e)を実施する方法について、締約国に対していっそう具体的な指針を提示すること。 子どもの権利と生態系の保護、生物多様性ならびに天然資源の管理および天然資源へのアクセスとの関係、ならびに、これらの政策に関わって国が負っている子どもの権利関連の義務を明らかにすること。 子ども時代における毒性物質および汚染への曝露の防止およびモニタリングならびに診断および治療、企業セクター(サプライチェーン全体を含む)の効果的規制ならびに過去の権利侵害についての説明責任を確保する方法について、明確な指針を提示すること。 情報および参加の権利ならびに環境危害からの保護のための救済を受ける権利を子どもがどのように行使できるべきかについて説明すること。 委員会は、毒性物質および汚染が子どもの権利に及ぼす影響について、このような有害な物質および廃棄物への曝露を防止する国の義務を認識し、かつ〔企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての〕一般的意見16号に立脚しながら、研究を主導することを検討するべきである。 委員会は、環境との関連で子どもの権利を強化するツールとしての影響評価の役割を検討するとともに、この点に関わる望ましい実践の共有を図るべきである。 委員会は、締約国との対話の際、子どもに焦点を当てた環境保護措置を実施するよう政府に対して系統的に求めるとともに、子どもの権利と環境についてとくに取り上げる節を総括所見に設けるべきである。 委員会は、CRC第31条を考慮して、子どもおよびその養育者が地域環境をどのように利用しているのか理解する目的で、子どもおよびその養育者の日常生活についてならびに居住条件および近隣地域の条件の影響についての調査研究を実施するよう、締約国に対して勧告するべきである。 委員会は、環境関連の法律、政策および行動に子どもの権利を統合していく方法についての望ましい実践を、いっそう締約国と共有していくべきである。たとえば委員会は、環境保護の文脈におけるCRC第12条の実現に関する最善の実践から得られた教訓を共有していくことが求められる。 委員会は、環境問題に関する総括所見を、SDGと、またUNFCCC、水俣条約ならびに化学物質および廃棄物に関するその他の国際協定、「仙台防災枠組2015-2030」ならびに生物多様性条約に基づく国の誓約と一貫して関連づけることにより、国が有するCRC上の義務および国による報告にこれらの枠組みを堅固に位置づけることを図るべきである。委員会は、環境保護の文脈で子どもの権利を充足するために必要な影響および措置についてならびに達成された進展についてモニタリングし、行動しかつ報告する諸国の意識および能力を高める目的で、CRCとこれらの国際的枠組みとの整合性を強化するよう求められる。 委員会は、子どもの権利と環境に関わる関連の法的決定を監督するべきである。さらに委員会は、環境危害の文脈における子どもの権利侵害についての、人権機関および委任権限受託機関(国連人権機構、人権理事会の特別手続およびNHRI〔国内人権機関〕など)による調査を奨励することが求められる。委員会はまた、環境危害の被害者である子どもが効果的救済にアクセスできることを確保するため、利用可能な国際的苦情申立て機構の活用も促進するべきである。 委員会は、とくにUNEP、UNFCCC、UNDPおよびWHOに働きかけて、子どもの権利と環境の統合の改善を確保するための援助を申し出るとともに、委員会の自身の活動において、環境問題に関わるこれらの機関の意見および情報を求めるべきである。委員会は、環境問題および持続可能な開発の問題に関して国際的に行なわれる討議および交渉に対し、関連機関への書面の提出およびこれらのプロセスに参加する国々への技術的ブリーフィング等を通じて、意見表明および情報提供を行なうよう求められる。 委員会は、大規模災害の影響および企業セクターの責任について取り上げることなどにより、子どもの権利と環境との関係に関する公衆の意識啓発を図るべきである。 市民社会組織 NGO、研究者および学術機関を含む市民社会は、環境の文脈における子どもの権利の理解および保護の向上を促進するための科学的知見(説得力のある事例研究を含む)を収集しかつ普及するべきである。さらに、CSO〔市民社会組織〕は、法律上および政策上の欠陥に関する情報、ならびに、子どもの権利と環境に関わる最善の実践の実例の収集を援助するよう奨励される。 市民社会は、委員会および他の人権機構に対し、環境危害が子どもの権利に及ぼす影響についていっそうの情報を提供するとともに、これらの問題に関する子どもたちの意見をそこに含めるべきである。 市民社会は、人権、環境、公衆衛生、都市計画、ビジネスおよび他の関連の問題に関わるコミュニティ内で、環境問題の子どもの権利に関わる側面についての認識を強化するために連携を強めるべきである。子どもの権利および環境についての活動を行なっている関連の主体間の望ましい協力例を、学習プロセスの参考とするために共有することが求められる。 子どもの権利団体は、環境に関わる今後の取決め、法律および政策についての交渉に参加することを含め、自己の方針、プログラムおよび活動に環境問題を統合するよう奨励される。環境団体は、その活動において子どもの権利を十分に顧慮するべきである。 7.結論(略) 更新履歴:ページ作成(2017年5月29日)。