約 5,047,391 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1106.html
誇り──あるいはちょっとした挑戦(後半) 物の十分もしない内に、周辺は予想以上の騒ぎとなっていた。曰く、 『あの香田瀬に隠し子が居た』だの『実は浮気までしていた』だの。 そんな私達と、私刑場に引きずり出されるが如き香田瀬を見ようと、 僅かでも暇を持っている社員全てが、その視線を一点に向けている。 青ざめた顔で香田瀬がやってくるのに、そう時間は掛からなかった。 ……にしても、広大な敷地なのに集合が早いな。香田瀬も野次馬も。 「あ、晶ち……さん、いきなり乗り込んでくるなんて。しかも、それ」 「何か文句あるか?こちらとて本気なのだ。それに、アポは取った筈」 「た、確かに……とりあえず一課の研究棟に!あーもう、散れ散れッ」 「ふふん。子供だと侮る貴様に、それなりの報復をしてやったまでよ」 そう、私とて自分の容貌と性格位は承知の上だ。なればそれを逆手に、 香田瀬をハメる位の事は出来る。今後暫く、奴めが酒宴の席などで何を 言われようとも、私には何のダメージも及ばない。胸が空く思いだな。 そして案内された建物の会議室には……女子高生の様な女性が、一人。 なるほど、外見だけに囚われない物言いはこの女性が養ったと見える。 「というわけでだ、依頼されたインナー三種に服飾三種が完成した」 「図面を先に送ってくれてもよかったのに、一体どうしたんです?」 「その科白は、これを読んでから言ってもらおう。自慢じゃないが」 「……どれどれ……見せてもらいます………………えっと、えっと」 ばさ……と会議用のテーブルに投げ出した設計図面に、二人が目を通す。 ポシェットに折り畳んで入れてきた事を考慮しても、プリントアウトした “暗号”が何の説明も無しに読めるとは思っていない。他人に見せる事を 敢えて前提としていない、直感を優先した書き方だからな。案の定……。 「……あの、これ……とてもじゃないけど……読めません、晶さん……」 「そうだろう?だから、実物を見せるついでにとな……ふむ、部長か?」 「………………斗小野水那岐と、言います……よろしくね、晶さん……」 「宜しく頼む、水那岐。これが図面データの入ったディスクだ、香田瀬」 「へぇ。いきなり呼び捨てなんて、流石は晶ちゃ……おっと、危ないッ」 閉口する香田瀬の横で、水那岐部長はそそくさと図面を仕舞い込んだ。 僅かな所作でも、彼女が見かけに依らぬ切れ者というのは予想が付く。 斗小野の関係者が役員でなく、敢えて“部長”の椅子に座っているのも ただの趣味だけで続けられる事ではない……この女性は気に入ったぞ。 苦い顔の香田瀬に促され、私は席に着く。“妹”達もテーブルの上だ。 「で……実物って言ってたけど早速見せてもらえるかな、晶さん?」 「貴様の目は節穴か?目の前に“三着”揃えてあるだろうが、ほれ」 「え?……え!?ひょっとして、ロッテちゃん達のこれがです!?」 「そうみたいだよお兄ちゃんっ。ほらインナーも企画通りの型だし」 「きゃ、きゃああああっ!?スカートめくらないでください~!?」 香田瀬の服から出てきたマオチャオ……にしては頭身が大きめだが……に 黒いスカートをめくられ、狼狽するアルマ。う、ううぅむ……可愛いッ! って、感心している場合ではない。そうだ、このマオチャオは香田瀬めが 交渉に来た時、同行していたユキという神姫だ。慌てて、彼女を止める。 「は、はぅぅ……ユキさんいきなりだから、ビックリしました……」 「慌てないでおくれユキとやら。これからちゃんと見せるつもりだ」 「は、はーい。えっと?皆が着ている服が、試作品でいいんです?」 「そうだ。ロッテとクララも、見せてやるといい。ほら、アルマも」 「はいですの~♪まず……わたしの服はテーマが“躍動”ですの♪」 「……わたしの?神姫さんも、デザインに……加わったんですか?」 私達は揃って水那岐部長に肯く。ロッテのそれは、薄く明るい橙色と青を ベースにデザインした、キュロットスカートとジャケットを軸とする姿。 帽子とコードタイもあまり派手過ぎてはいない、スポーティーな服装だ。 と言っても、基本的なデザインは“Electro Lolita”そのままである為、 随所に施した装飾に、少女趣味とも言える私の嗜好が詰まっているがな。 「で、インナーが……んしょ、これですの♪スパッツとソックスに」 「手袋と……上はベストですか?薄い紺色の素材に、レース模様?」 「有無。形状の制約があるので、本当のレース加工は使わなんだが」 「それでも、パターン化した表装印刷でここまで誤魔化せましたの」 インナー姿を披露するロッテと入れ替わる様に、クララに押し出されて 香田瀬と水那岐部長の前に出てきたのは、真っ赤になっているアルマ。 黒と朱色をベースとした、フリル満載のドレスなのだ。先程、ユキ嬢に めくられて見えたインナーは、灰色を基調としたランジェリータイプ。 恐る恐るスカートをたくし上げ、皆に見せるアルマ。鼻血が出そうだ。 「あたしは……よ、“妖艶”がテーマなんです……インナーは、その」 「……ランジェリータイプ……だから、恥ずかしかったんですね……」 「は、はいっ。あの、インナーは……もういいですか、水那岐さん?」 「……ガーターベルトオプションまで、ありますね……あ、いいです」 「あ、有り難うございましたぁ~……って、わわっ、ユキさんッ!?」 「緊張しすぎはよくないよ?ささっ、肩の力抜いて~。ほらほら……」 ユキ嬢に連れて行かれたアルマを横目に、クララが進み出る。彼女は、 白とワンポイントに翠色を用いた、パニエ入りのスカートとブラウス。 その上からベストとリボンを装備した、御嬢様系統のスタイルなのだ。 クララのそれは、ハーフカバー型の実験でもある。従って、ブラウスと 一見ストッキング風のパンツ……そしてブーツ類は、実はインナーだ。 勿論其方も、袖や太腿・腕などのワンポイントにはフリル模様がある。 「ボクのテーマは“貞淑”。犬型のハウリンが、敢えて挑戦したんだよ」 「へぇなるほど。あの時みたいに大人しい娘で可愛いね、クララちゃん」 「あの時?何の話だ、クララと貴様は初対面だろう香田瀬……まさか!」 「お、落ち着いて晶ちゃん話せば分かる、ってぶごはぁっ!?……ぐぅ」 「……不用心過ぎだよ、お兄ちゃん。あのね晶さん、実はあの時に……」 怒れる私に、アルマを連れて戻ってきたユキ嬢が説明する。既に彼らが “梓”の正体を掴んでいた事。膝蹴りを浴びてノビている香田瀬めが、 何故私が完成度の高いHVIFを保有しているのか、気にしていた事。 ……確かに、見る者が見れば誤魔化しきれる事柄でもないか。香田瀬は 復活しそうにないので、信頼出来る水那岐部長に打ち明ける事とする。 「……そう、だったんですか……依頼を受けて、試用……三人で……」 「そう言う事だ。手伝いの役に立つのは事実だが、それだけではない」 「色々大変なんだね、アルマちゃん達って。大丈夫、内緒にしとくよ」 「あ……香田瀬さんには言っても良いですよ。気付かれてますしね?」 それにしてもアルマとユキ嬢の二人、短時間で随分と仲が良くなったな。 着衣の乱れ等は一切ないが……果たして目を離した隙に何があったのか。 これも神姫ならではの“シンパシー”という奴なのかもしれんな。有無。 「試作はこれで一応全部だけど、何か問題があれば教えてほしいもん」 「……香田瀬君が、後で起きたら……みんなで、検討しますね……?」 「分かりましたの~♪なら、國崎の色々な物を見せてほしいですの♪」 ──────私の仕事と誠意……“誇り”は、皆に伝わったかな? メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/426.html
戦乙女は、かく降臨せし(後半) 相手はサイフォスタイプ。但しその手には片手剣でも大型の槍でもなく、 専用にチューンしたであろう、厳ついツヴァイハンダーが握られている。 全身の装甲は重装型と軽装型の折衷。背部には……ツガルタイプの翼か。 ともあれ剣一本を極めようとしているようで、油断はできそうもないな。 「仕掛けぬのか?では、一本往くぞ……ハイヤァーッ!!」 「はいですの……畏れず突進ッ、いやぁああーっ!!」 白兵戦に強いとされている第三シリーズだけあり、一太刀の威力は重い。 私のロッテにもフレーム換装を施してあるとはいえ、地力では一歩譲る。 それでもロッテは懸命に、右に構えた長大な細身のランスで受けている。 ヴァーチャルとはいえ飛び散る火花に、私は興奮と期待を全く隠せない。 「うっ、く……サイフォスタイプの剣技は、やっぱり凄いですの」 「そなたこそ、アーンヴァルタイプの細い躯でよくやる……ぬんっ!」 「え?……きゃうっ!?」 「ロッテっ!」 ロッテに装備させたランディングギアには、私が開発した接地用アームを 装甲類と共に取り付けている。アーンヴァルタイプの弱点である地面での 踏ん張りを可能としており、四本の可動爪によるグリップは相当な物だ。 それ故にサイフォスタイプとの斬り結びも可能なのだが、零距離ではまだ 経験であちらに分がある。現に今、蹴りを食らって突き飛ばされたしな。 「斬り合いではまだ不利か。ロッテよ、一度距離を取るのだ!」 「Ja!(了解)……白き翼よ、開いてっ!」 「何?!……そうか、アーンヴァルタイプは“天使”であったな」 「いいえ、私は……“戦乙女”ですの♪」 大いなる翼を以て、朱に染まる空へ舞う戦乙女。そう……これだ、これ! “天使を越えて、戦乙女となれ”!これこそが、軽量級用装備に於ける、 私のコンセプトであり……戦闘指針でもある。本領は、空にこそあるッ! 「じゃあここからは……本気で、いきますの。フォイエル!」 「うっ!?レーザーキャノン?馬鹿な、そなた何処から!」 「えっと、この槍からですの。ほら、これ♪」 「槍だと……?く、あれは……銃口か!」 フリッグとやら、不意に蒼い一撃を受けてやっと、事に気付いたらしい。 本来アーンヴァルタイプは、エネルギー兵器を得意とする“武装神姫”。 その特性を活かすべく、私のロッテにもレーザーキャノンは搭載済みだ。 その場所は──槍。そう、ロッテの槍はいわば“レーザーガンランス”! 「撃ちまくれ!弾幕を張れ、チャンスを狙うのだ!」 「Ja!フリッグさん、いきますのっ……それそれっ!!」 「ぬっ、く!ううっ!?チャージは遅い筈、何故だ!」 「出力を搾れば、それだけチャージは速くなりますのっ!」 「それに重ねて、ハンドガンの制圧射撃か……くうっ!」 流石熟練。弾幕自体は上手くいなしておりダメージの方は少ない様子だ。 だが、飛ぶ隙を与えぬこの作戦は奏功した……奴めの剣が下がったのだ! すかさずロッテは動き出した。制限時間も少ない、これが唯一の好機!! ハンドガンをホルスターに仕舞い、戦乙女が空から一気に舞い降りるッ! 「今ですの、せやぁああああっ!!」 「ッ!?しま、っ……うあっ!!?」 「これで決めさせて、もらいますのっ!」 弾幕の陰に隠れて、ロッテが超鋭角・高々度のミサイルキックを加えた。 接地用アームの爪を束ねれば、それは優秀な刺突用の白兵装備になるッ! 一撃で装甲を砕かれ狼狽したフリッグを、逆の脚部アームで掴みあげる。 そしてそのまま宙に投げ、左手で掴む!この瞬間、私は勝利を確信した! 「ぐ、あああっ!?ば、バッテリーが……第三種特殊攻撃、だと?!」 「あなたの“魂”を少し頂戴しますの……“アインホルン”充電!」 「ぬ、く!?は、離せ……力が、落ちる……!?」 第三種特殊攻撃。有り体に言えば“エナジードレイン”という類の技か。 強力ではあるが公平を保つ為に、公式試合では射程が大幅に制限される。 そこで私は、接触距離でのみ相手の電力を吸い取れる義手を作ったのだ。 吸収した電力は、即座にロッテの槍“アインホルン”に還元されていく。 「これでお仕舞いですの。……零距離射撃、フォイエルッ!!」 「ぐぅっ!?う、うあああああっ!!……ま、負けだッ」 『テクニカルノックダウン!!勝者、ロッテ!!』 そして自己の電力も上乗せした、最大出力のレーザーキャノンを見舞う。 しかも槍の穂先で盾代わりの大剣を貫いた、その先からの零距離攻撃だ。 たまらず相手は吹き飛び、審判システムが戦の終わりを高らかに告げる。 勝利の鐘が鳴り響く中、倒れ伏すフリッグを……ロッテが抱き起こした。 無論右手の槍はパージして。戦う意味は、今の2人にはないのだからな。 「ロッテ……負けとはいえ良い試合だった。礼を言おう」 「わたしこそ、フリッグさんにはお礼を言いたいですの」 「ふふ、良い娘だ。これからも、気を引き締めてな……」 あの娘はこういう優しい……甘い所がある。だがだからこそ“妹”として 私も彼女、ロッテを誇りに思うわけである。本当に良い娘だ……有無ッ。 早速、ヴァーチャル空間から還ってきたロッテを抱きしめ、ねぎらおう。 「マイスターっ!わたしの戦い、いかがでしたかっ!?」 「よくやったぞロッテ~!よし、今晩は祝勝会だっ!!」 ──────今宵、“私達”はとかく上機嫌なのである。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1367.html
雷帝の御剣、神殺しの槍(中編) それはアルマにとっても、私にとっても予期していなかった奇襲。ミラの 籠手はこの為にあったのだ。即ち、蛇腹部から伸展させての遠距離打撃。 見ればミラの脚部装甲はパイルバンカーになっており、腕の反動を完全に 受け止める土台を作っている。それを確認してか、籠手が更に変形した。 神姫の細腕より一回り大きかった掌はさらに巨大化し、巨大な拳となる! 「さぁ、思いっきり叩きのめしてあげるわ!私は“力”の象徴よッ!!」 「ち、力?……きゃぁああっ!?」 『アルマッ!?』 壁に投げつけられたアルマは、すんでの所で翼をはためかせて制止した。 だが、ミラの剛腕は凄まじく躯の各所にも影響が残っている……拙いな。 ミラの方は止める筈もなく、伸びた腕を縦横無尽に振り回して薙ぎ払う! 「いたたた……これ、リーチが長いのにストラーフよりも柔軟ですね」 「そうッ!姉様が精一杯の勇気を振り絞って、店で作ってもらったの!」 「くっ!?う、腕を乱暴に振り回して……きゃあぁっ!?」 『アルマ!無事か!?』 「……ど、どうにかまだ動けます!」 フィールドアーマーと“ソニック・ブランド”、更にスラスターをフルに 活かし、アルマは腹に打ち込まれたラリアットの衝撃を殺す。さもなくば “アルファル”は一瞬で砕け散っていただろう……と言ってもこれ以上は 恐らく凌ぎきれまい。要はミラがあの姿勢を維持出来なければいいのだ。 『よし……アルマ、雪崩れに呑み込まれそうな時はどう逃げる?』 「ふぇ?え、えっとそれは……あ、はい!わかりましたっ!!」 「無駄よっ!一気に止めを刺してあげるッ!!えやああああっ!!」 優勢と見たミラが、得意の白兵能力をフルに活かして叩き潰しに掛かる。 しかし、その為に両腕で挟み込む様な動きをする……これが勝機だった。 普通なら飛び上がる所だが、アルマは銀の翼をはためかせて突撃するッ! 手にはエルテリア……鋭き魔剣が、真一文字に鋼の雪崩れを潜り抜ける。 「雪崩れに立ち向かうには……垂直に、動くんですっ!」 「え──────きゃ、あああうぅっ!?」 『ミラ、脱落!“黒翼の戦姫”、残り二体!!』 そう、左右より迫る力から水平に逃げてもジリ貧。横に、逃げ道はある! それを見抜いたアルマは、迫る剛腕から垂直に……つまり、ミラの懐へと 飛び込んで、魔剣の刃を腹へ突き立てた!装甲を砕かれた“力”の使徒は 壁に叩き付けられ、操られた無数の刃にて全身を貫かれる。勝負有りだ。 「まずは一人……あれ、パーツが残ってますね。って、それより今は!」 「さぁほらほら、どうしたのよ!ずっと逃げ回るだけっ!?」 「くッ……そう言っても太刀筋は早い。隙を見せたら一刀両断だもん」 「今の私は“フリーハンド”ティニア、疾き“心”の使徒よッ!」 『Nein(若干劣勢です、お気を付けて)』 私の意識は、アルマが気付いた異変よりもクララの戦いに向いていた。 相手をしているティニアは、床に弾ませている無数のボールを隠れ蓑に 死角からの奇襲攻撃を連発していた。その得物は……トンファーの様な 両下腕部のブレードと、神姫には巨大な“人間用”バタフライナイフ。 それらを操るテクニック自体は未熟だが、異様な走行速度が脅威だな。 「ほら、背中がら空き……ってまた機械人形が邪魔するッ!?」 『Ja(主君を守る者が騎士なのです)』 「……後一手、これで決まる。もう大丈夫だよアルサス」 『Ja(了解です)』 クララは全身に傷を負って、疲労の色……厳密には躯の駆動率低下……を 濃くしている。“アルファル”のアルサスが良く護っているにも関わらず この傷と言う事は、守りが突破されれば恐らく一溜まりもない。しかし、 あくまでクララは冷静且つ大胆に行動した……ティニアの前に出たのだ! 魔杖・コライセルより、光の刃を産み出し真っ直ぐ構える。勝負の時だ。 「直線距離が一番得意だって、さっきまでの攻撃で分からない?!」 「……分かってるもん。だからこそ、この一撃に賭けるんだよ」 「なら……終わらせてあげるわよ──────ッ!?」 それを見たティニアの声は、最後まで言い切る前に止まった。爆音と共に 駆け出した彼女の上半身へ、鋼の糸が食い込んでいたのだ。そのリールは クララから離れた所にいるアルサスと、クララ自身の手に握られていた。 「ぐ、ぁ……何よ、これ……!?あの時の、ワイヤー……!?」 「貴方の軌道を読むのが間に合って、助かったんだよ……ごめんね?」 「この一撃の為に……相変わらず切れるわね、クララは……ぐッ!」 『ティニア、脱落!“黒翼の戦姫”、残り一体!!』 斯くてティニアの躯は、クララの慈悲の一刀によりデータに還元される。 だが……やはり同じ異変が残った。彼女が装着していた装甲スカートが、 脚部のブーツ諸共一体化したモジュールの形で、まるごと残されたのだ。 ──即ち、このパーツの管理者は……生き残ったイリンという事になる! 『どういう事だ?……ロッテの加勢に向かえ!中央で戦っている!!』 「わかりましたマイスター!クララちゃん、そっちも来てっ!」 「……分かったんだよ。でも、これ……嫌な予感がするもん」 そして全員の注目が、体育館中央のロッテとイリンに向かう。イリンは、 実に異様な姿で戦っていた。腰にあった拳銃らしき物と両肩のコートが、 分離・再合体して一挺のガンランスとなっていたのだ!周囲の床面には、 それを突き立てたと思しきクレーターが幾つも出来ていた。しかも彼女の 両腕には恐るべき物が嵌め込まれていた……発電用の、小型ダイナモだ! その電力を受けて、銃は半ばリニアレールガンと化しているのだろうな。 「ふぅ、ふぅ……流石じゃない、前より強いわよロッテちゃん」 「はぁ……そういうイリンさんだって、個性を活かしてますの!」 「私は“技”の“トゥーハンド”イリン、そして“トゥルーハンド”よ」 「“トゥルーハンド”……ですの?」 しかしブルームキャリバー“カラドボルグ”を構えて相対するロッテも、 周囲の床や機材を穿ちつつ、無限の雷を解き放って戦っている。従って、 彼女らの周囲には電磁嵐とも言うべき、一種の結界が出来上がっていた。 「……ロッテお姉ちゃん、大丈夫かな?」 「今加勢しますからね、ロッテちゃんッ!!」 「アルマお姉ちゃん、クララちゃん……無事で何よりですの!」 そこへ、ミラとティニアを倒したアルマとクララが駆けつける。勝負は、 これで半ば決した様な物だった……だが、灯の一言がそれを覆したのだ! 『イリン、負けないで下さいです……“雷帝の御剣”を見せてッ!!』 「了解、姉様!……私は姉様が好きだから、貴方達に勝つのッ!!」 「ッ!?ガンランスをロケット代わりにして、飛びましたの!?」 ──────灯の本心、純心。それは、どこまでも強かったんだね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/779.html
激烈なる拳──あるいは決勝その一(中編) そうしてボク・槇野梓とロッテお姉ちゃんは、決勝ブロックの舞台へ 上がっていったんだよ……でも、クローズアップされるのはこの後。 この第一回戦を勝ち上がった八人で再度組み合わせ抽選が行われて、 そこから大々的な演出が行われるんだよ……ここはまだ入口だもん。 と言っても、専用のヴァーチャル型バトルフィールドは大きいけど。 「それじゃ行くぜ、リアル系!ちょこまかすんじゃねぇぞッ!!」 「いえいえ、全力で参りますの。それじゃあ……始めましょう!」 『ハンゾー・ヴァーサス・ロッテッ!!レディ──────ゴー!!』 『“W.I.N.G.S.”……Execution!』 「変身、しやがったっ!?」 「流石に“フィオラ”のままでは、勝てませんの」 戦闘開始と同時にロッテお姉ちゃんは、瞬時に“Heiliges Kleid”へと 変身するんだよ。流石にこれはハンゾーさんも驚いたみたいだけど…… 何か、ハンゾーさんも妙なポーズを取ってるんだよ。腕組み……かな? ちなみに舞台設定は何故か、古い採石場の様な谷底の荒れ地なんだよ。 「そっちが変身するなら、こっちも行かせてもらうぜ!!」 「え、空間のゆらぎ?ううん……これって、“気”ですの!?」 「行くぜ!“猫獣装着”!!」 カンフー等での手を合わせるポーズから右の拳を突き出す、“非武装の” ハンゾーさん。その瞬間、躯から発散される紅い物が形になったんだよ。 それは“サバーカ”くらいは優にある、巨大な一匹のぷちマスィーンズ! しかもそれは各部で分離されて、純正のマオチャオ風パーツとして合体。 あっという間に、ハンゾーさんは格闘型の“武装神姫”になったんだよ。 「マオッ……タイガー!!!」 「まるで、戦隊ヒーローのロボットですの……!」 「ハン、どうだサード野郎。セカンドの俺が羨ましいか?」 「……常に憧れてはいます。でも、羨望はしませんの」 「言うじゃねぇか。ならスーパー系の威力、味わえッ!」 そう言うと後ろの空間がもう一度揺らいで、二機のぷちマスィーンズが、 ハンゾーさんに付き従ったんだよ……いや、正確には“ぷち”じゃない。 神姫に覆い被さる事も出来る、そのサイズと容姿は……“ビースト”ッ! 「黄色と青……これが、今回のハンゾーさんが使う武器、ですの?」 「そういうこった。ゲキジャガーとゲキチーター、行けッ!!」 「Grrrrrrrryyyyyyaaaaaaaaaa!!!」 「早いっ!?このライフルで……怯まないですの!?」 ロッテお姉ちゃんは後退しつつも“ムラクモ”で制圧射撃を掛けるけど、 俊敏な四肢と鋼の皮膚で武装した“ゲキビースト”達は、物ともしない。 “アサルトキャリバー”の高速ローラーダッシュも、この不整地では多少 駆動率が劣る……その隙に、ハンゾーさんが高速で接近してきたんだよ。 「まずは一撃……喰らえ、ゲキワザ“激気打”ッ!!」 「きゃあっ!?そんな、“Heiliges Kleid”の装甲服が……!?」 「痛ぇなぁ……縁が刃物になってんじゃねぇか、その服ッ!!」 「こういう服ですから。それよりも、わたしはまだ生きてますの!」 拳の一撃で、鋼鉄のメイド服はあっさりと砕け散るんだよ。でも、ボクは 見逃さなかったよ。彼方としても、そのパワーで強引に砕いているだけ。 恐ろしい力だったけど、コートのエッジ自体が効かない訳ではない……! だからボクはすぐに、サイドボード部分の起動コードを入力したんだよ。 「ロッテちゃん、3sm後退してジャンプ。出来るだけ引き寄せて!」 「梓ちゃんわかりましたの、さぁハンゾーさんこっちへどうぞッ!」 「ちょこまか逃げんじゃねえ!一気にブッ倒してやるぜっ!!」 『……ん?いけないハンゾー、深追いするな!』 「あん?!逃がす訳に行くかよッ!」 カウント・ゼロまで五秒。後退用ブースターまで駆使して引き寄せて、 一気に跳躍。ボクらの目論み通り、ハンゾーさんと獣達はそれを追って 飛びかかってきた……ここで彼女らは“刃の罠”に、嵌ったんだよッ。 コンマ数ミリで殴られる、その僅かな隙に……“SSS”が転移する! 『Plug-out!』 「うわあああっ!?服が、弾け飛びやがった……痛ッ!」 「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!?」 「“スヴェンW”とライドボード、展開して!着装しますのッ!!」 “Heiliges Kleid”のパージ機能によって、エッジの効いた刃と一緒に 弾き飛ばされるハンゾーさん。だけど流石に致命傷には至っていない。 この強靱さこそがセカンドの真髄なのかもしれないもん。でもそれは、 全力を尽くそうというロッテお姉ちゃんだって同じ事なんだよ、うん。 「“光と闇の舞い”、受けてみて下さいのッ!」 「さっきのレーザー攻撃か、あんなモン喰らわねぇぜ!」 「確かに……ハンゾーさん相手で、普通に撃つのは無理ですの」 「……分かってるなら、往生しなッ!!」 “Valkyrja・Skjald-maer・Phase”の姿を現したお姉ちゃんは、すぐに マントを振り解き、バインダーと翼を展開して蒼い空へと舞い上がる。 そして両肩のシールドを展開して、チャフを放出。ここまでは、同じ。 更にロッテお姉ちゃんは、その手にあるミサイルランチャーを掲げて、 上下に勢いよく開いたんだよ。そこにあるのは……無数の煙幕弾ッ!! 「CMMランチャー“ギャッラルホルン”、フォイエルッ!!」 「おうわっ?な、なんだこりゃ!くそ、煙てぇじゃねえか!」 『下がるんだ、ハンゾー。ロッテちゃんの狙いは……!』 「うっせぇ!そう言っても、この煙の中じゃ見えねぇッ!」 装填されていた六十数発を一斉に爆裂させ、周囲を暗い煙で包み込む。 即ちこれが“闇”。そう……“光”の雨を覆い隠す、夜の帳なんだよ! 「多次元測距レーダーアーム、観測終了。チャージ、完了ですの!」 「なん……だって!?」 「レーザーガンポッド、照準セット……フォイエルッ!!」 「のわぁああああぁっ!?」 「Grrrraaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!?」 黒い煙の中に幾本も打ち込まれる、小型レーザー砲による“光”の雨。 これで勝てた……とはあまり思えなかったんだよ。だってまだ、二匹の “ゲキビースト”がどうなったかが、分からないもん。そして懸念は、 まだ立ちこめる煙を渦巻かせ、有り得ない形で具現化していくんだよ! 「てんめぇぇぇぇぇぇ……赦さねぇぞ!ジャガー、チーター!!」 「まだ生きてる……何か、凄いプレッシャーを感じますの!?」 「あったりめぇだ!覚悟しろ、“猫獣合体”ッ!!」 ──────それは猛々しい、野獣の象徴なんだよッ。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/reddragon/pages/4.html
Wiki練習ページ(3項目) Wikiについて 練習ページ(Wiki) 練習ページ(ワープロ)
https://w.atwiki.jp/yonecchi_p10/pages/14.html
楽しい 簡単 無理がない どこからでも更新出来る アフリェイトも出来る サイトの中身を簡単に更新できるのが一番のメリットです。 更新の方法として、まずは簡単に説明文を作って、後で画像や詳細をアップする 方法に向いていると同時にブラウザがあれば簡単に更新できる。 インターネットに繋がっていればどこでも更新出来る ことが出きるのはYukiWikiと同じですが、perlやapacheのようにインストールや 多少複雑なコンフィグの設定がないぶん嫌気が出ないうちにコンテンツが完成し ます。 特に@Wikiについては無料なのがうれしいところです。 この@Wikiの活用方法として引用の場合に左右の枠を太くしてくれる機能があります。 各行ごとに をつければ表示してくれるのですが各行に手入力で を入れるのはしんどいのでTerapadで引用符つき貼り付けを行う簡単に引用部が作成出来ます。 ホームページ,ブログそれぞれの利点 ホームページの利点 今まで、それぞれを設置してきて優位点を把握して使いたい所です。 ホームページはある程度手間はかかるけど訪問者にとって軽い。よほどニューリ アルしなければ一定のアクセスが望めることや動作が軽いので訪問者を待たせる 事がない事です レンタルcgiを設置すればけっこうな解析出来ます。 ブログの利点 日々の日記や行動をメモにまとめたり金銭メモとしてその応用範囲は広い トラックバックやRSSに対応しているところもあるので その一方で特定のコンテンツと一緒に見せるのが難しいです。その半面更新したサイトの一覧がISPのトップページにあったり訪問者が増える仕組みはありますその半面レンタルcgiの設置が出来ないデメリット 特にプロジェクト別に使う場合には非常に便利です。 仕事の中にはいくつかのカテゴリがあると思います。そこで何人かでデータベー スを作るのに非常に有効です。 特に日常の業務について忘れやすいので、これをメモにとどめておくためにブロ グ風にして明記しています。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1624.html
ただその翼は、姫を解き放つ為に(その四) 第八節:明星 それは星が生じる時の様に、極々低い確率でしたの。ロキちゃんの言葉に 共鳴したわたし達の超AI……そして“プロト・クリスタル”。繋がった “心”の中で見出した共通のイメージが、“魔術”にも似た空間の侵蝕と いう形で、皆の躯を覆いましたの。マイスターの、叫ぶ声が聞こえます。 『“約束の翼”!?歩姉さん、ペンダントに……予期していたのか?』 「さぁ、最期の勝負ですの!……絶対に、勝ちますの!」 「やって、みせなさいよぉぉっ!!せやぁぁあっ!!」 隠し機能なんか無いはずのわたし達に、何故こんな異変が起きたのか…… それは、マイスターも分かりません。それでも“心”は叫んできますの。 一秒でも速くロキちゃんを止めろと、“心”が皆を突き動かしますの!! 「ふっ!!う、受けられた……これならっ!!」 「な!?そんな、アタシのラッシュが……この、このぉっ!!」 「今なら、躯が追い付きます!これ、どうして……!?」 「なんで!?どうして、こんなボロボロなのに此処まで……!」 「わかりません。でも……ロキちゃんを、止めたいんです!せぁっ!」 「きゃうっ!?」 翼は飛べそうですが、防具と武具は固いという以上の効果はないですの。 でも躯はそれこそ羽の様に軽くて……ロキちゃんの憎悪に満ちた連撃にも 耐えきるだけのスピードを、アルマお姉ちゃんに与えてくれましたのッ! そして返す刀で一閃!光の刃を受けて、ロキちゃんの“闇の衣”は崩壊を 始めましたの!今なら勝てる。そんな想いが、わたし達を満たしますの! 「ボクも、負けてられないよ……“セイクリッド・ストリーム”!!」 「きゃああああっ!?光の、嵐……ッ!?こ、のぉっ!!」 「……“魔術”の出力も上がってる。どうせだし、連打だよッ!」 「ひゃ、あああっ!?調子に、乗るんじゃないわよぉ……!?」 そしてクララちゃんには、ロキちゃんの黒いオーラを撃ち破る光の風を 与えてくれるこの装備。まるでロキちゃんを止めるためだけにある様な 凄まじい力は、彼女を覆う“魔術”の殻を少しずつ剥ぎ取りますのッ! そんな隙を狙って、わたしは槍を振り回して……飛び込みましたの!! 「ふっ!せやあああっ!!」 「きゃん!?壊す、殺す!滅ぼす!!うわああああぁぁッ!!!」 「ッ……皆、耐えて下さいですの!!!」 『はいっ!!』 十字に切り裂かれたロキちゃんは死力を振り絞って炎の龍を振りかざし、 更に自らの背に生えた黒い翼から羽を吹き散らして、空間を満たします。 わたし達は、そんな“破壊の暴風”に数秒耐えて……間一髪、五体満足で 凌ぎきる事が出来ましたのッ!ロキちゃんは、可哀想な程に戦慄します。 「そんな、アタシが負ける……!?アタシが、押し切られるッ!?」 「そうですの。こうなったら、この決闘は……わたし達の勝ちですの!」 「嫌、嫌ぁ!アタシから、皆で何もかも奪うの!?」 反撃が皮一枚の所で届かなかったショックから、完全に体勢を崩している ロキちゃんに向かって、わたしは槍を掲げましたの。浮遊感が腕を包み、 槍がすぐにでも飛んでいきそうなイメージを形取りますの……わたしは、 それをしっかりと握って、彼女に語りかけます。わたし達の“真心”を。 更にアルマお姉ちゃんとクララちゃんは、わたしの手を握りますの……。 「奪いませんの……与えますの」 「……あた、える……!?」 「そう、何者にも負ける事のない……“真心”をあげますの!」 「ぐ、あぅっ──────!!!」 その手から流れ込む暖かい力は……想いと共に凝縮され、弾けましたの! それは、容赦のない……或いはとても慈悲深い一閃ですの。わたしの手を 離れた槍は、文字通り閃光となってロキちゃんの胸に突き立ちましたの! 同時に、わたし達の躯を覆っていた白い光は消え失せて……ロキちゃんも また光となって、ポリゴンに還元されていきましたの。勝利ですの……! 「……いや、アタシ……消えるの……?イヤァァァァアアアアッ!!」 荒野と成り果てた花畑の全てを閃光が覆い、暫しの時間が流れました…… その間にわたし達の意識は実空間へと引き揚げられ、元に戻りましたの。 皆の目に飛び込んできたのは、泣きそうなマイスターの笑顔でしたのっ♪ 「御苦労だったな。アルマ、ロッテ、クララ!しかし、アレは何だ」 「ふぅ……あたし達が聞きたい位です、あんな機能あるんですか?」 「お前達のCSCにか?チェックした限りでは、無い筈だがな……」 「変なデータが出来ちゃったのかもしれないもん……このままじゃ」 「有無、迂闊に公式バトルへ出す訳にはいかん。一度検査せねばな」 「それは、後でも出来ますの。今は……ロキちゃん、ロキちゃん!」 笑顔に見惚れていたかったし、わたし達の身に起きている不可解な現象を 解明したかったですけど……まずはそれよりも、トレーニングマシンから 出てこない、ロキちゃんの方が心配でしたのっ!ハッチを開けて、彼女を 出してあげます。でも、可哀想な位に彼女は震えて……怯えてましたの。 「こ……壊しなさいよ!さぁ、負けたんだから殺しなさいよッ!!?」 「ロキちゃん!そんな事は、誰も望んでいないですよ!落ちついて!」 「いや、やぁ!アタシは全てを壊すのよ!何もかも壊したいのよッ!」 「……もう、そんな事はさせない。しなくていいんだよ?だから……」 「嫌!壊すの!アタシさえも、この手で壊すの!!そう、せめて──」 でもそれはとても我が侭な、拗ねた子供の様にも見えて……だからこそ、 わたしの小さな手が動きましたの。彼女の頬を、思いを込めて打つ為に。 即ち、してきた事としている事……『もう一つの事』を告げる為ですの。 「……貴女は今、とても軽率な事を言いましたの」 ──────だって、誰かが言わなければならない事ですの。 第九節:開花 乾いた音が居住区画に響き渡り、空間を静寂が満たしますの。彼女の…… ロキちゃんのヘルメットはその衝撃で外れて、暫く宙を舞った後に床へと 落下。わたしは、彼女の“素顔”を認めて……もう一度、言いましたの。 「ロキちゃん。貴女は今……そしてこれまで、軽率な事をしましたの」 「……ぁ?けい、そつ?……アタシがしちゃいけない事を……した?」 「はいですの。どれだけ貴女が苦しくても、決してしちゃいけない事」 ロキちゃんは、自分が何をされたのか……何を言われているのかさえ半ば 分かっていない様な、気の抜けた“表情”で此方を見ていますの。でも、 それは何れ誰かが言わないといけない、彼女の“罪”を示す言葉ですの。 「まず……無関係な人々を、貴女の我が侭で傷つけ……苦しめ続けた事」 「だ、だって!“ベルンハルト”達に笑ってほしくて、それに彼らを!」 「想う歓びも、奪われた哀しみも。人を傷つける材料ではないですよ?」 覚悟を決めたのか、アルマお姉ちゃんが続きます。そう、彼女の我が侭で 多くの人が傷ついてきました。それだけは、絶対に消せない過去ですの。 でもそれ以上に、もっと大事な想いを伝えないといけませんの。その任は クララお姉ちゃんが買って出てくれましたの……そう、例え辛くてもっ! 「そして、自分さえ傷ついてしまえばいいなんて事も……ないんだよ?」 「どうして……アタシは醜くて人を殺して、全てを傷つけたガラクタよ」 「だったら、なんで“ベルンハルト”さんは……庇ってくれたのかな?」 ロキちゃんが息を呑みます。そう。どれだけ辛くても息災でいてほしいと 願ってくれた人がいるならば、決して自分を粗末にしてはいけませんの! 人の隣人として、マイスターを愛する神姫として。ずっと幾つもの経験を してきたわたし達が一番告げたいのは、たったそれだけの事ですの……。 「……そして今また、私達もお前を大事にしたいと願っているのだぞ?」 「あ、あぁ……ああぁ……ッ!ごめんなさい、ごめんなさいッ……!!」 そして、マイスターの『受け入れる決意』を聞いたロキちゃんは小刻みに 震えて……膝を突きそうになりますの。わたしは、彼女をそっと抱きしめ その“長い髪”に指を通してあげますの。恐らくは、誰も触れた事のない 艶やかな人工毛髪は、長く外気に触れなかった為か未だに綺麗でしたの。 「死んで償う必要はなくても、誰かが叱らないといけない事でしたの」 「でもそれは悪い事をしただけ。ロキちゃんが“悪”ではないんだよ」 「あたし達を嫌ってくれてもいいです。憎かったら振り解いてもいい」 落ちつかせる様に、わたしは背中を撫で……アルマお姉ちゃんが右から、 クララちゃんが左から、ロキちゃんを優しく抱きしめますの。罪の意識と 自己認識を乗り越えた先で待つわたし達の存在を、深く教え込みますの。 そう……『例え嫌われても、わたし達は貴女を信じているんだよ?』と。 「……ぅうん、嫌いじゃない。嫌いになんか、なれる筈ないわ……!」 「そう。有り難うですの……♪それならもう、泣いちゃダメですの♪」 「泣く?……アタシが、泣くの……泣けるの?只の人形なのに……?」 「涙を流す機能はなくても、“心”が泣いている……震えてるんだよ」 「それがMMS……いえ、神姫って存在なんです。“心”を持った存在」 「あ──ああ、ああぁぁ……うわぁあああっ!うく、ひっく……うっ」 漸くそれを分かってくれたロキちゃんは、嗚咽の様な声を上げましたの。 わたし達はそれが落ちつくまで、ずっと抱きしめて……支え続けますの。 だって、これからずっと“五人”でそうしていく筈なんですから……ね? 「そういう訳だ。私達はお前を歓迎するぞ、ロキ……いや、そうだなぁ」 マイスターは、わたし達を胸元に抱き上げて……何か考え始めましたの。 それは、呪わしき過去を棄てるとまでは言わなくても。光輝く“未来”を 目指す為には必要な事かもしれなかったですの。そう、それは……命名。 「エルナ、なんてどうだ?可愛らしいお前に、相応しい新たな名前だぞ」 「“エルナ”?それが、アタシの名……でも、可愛らしくなんてないわ」 「何を言う!“菫色”の髪を靡かせて、とても可憐ではないか。ほれっ」 与えられた名前に戸惑う“エルナちゃん”でしたが、その抗弁はすぐに 消え失せましたの。マイスターが差し出したのは、鏡。そこに映るのは 紛れもなく、紫色の髪を持った可愛らしい“神姫”の顔でしたの……♪ 「……これが、アタシなの?誰も、言ってくれなかったわよ……これ」 「初めてなのかな、自分の素顔を見るのは?とっても、可愛いんだよ」 「ええ……顔立ちも整ってますし、作った人の“愛情”を感じますね」 「エルナちゃん、貴女は最初から愛されていましたの。そして今も♪」 「あ──ッ!?」 褒められて頬を染めるエルナちゃんのおでこに、わたしはそっと口付けを してあげましたの。それに続いて、アルマお姉ちゃんとクララちゃんも、 左右の頬に優しく……いよいよ以て、エルナちゃんは真っ赤っかですの♪ 何故か、マイスターまで頬を赤らめて目を逸らしてますけど……ふふっ。 「あのあの、えとその……ごめんなさい!そしてよろしくね、皆……」 「消え入る様な声で哀願するでない。此方こそ宜しく頼もう、エルナ」 「これで今日からエルナちゃんも、ボクら“姉妹”の仲間入りだよ?」 「そうですね……とっても愛らしいですし、さながら“五女”ですか」 「新しい“妹”ですの~♪改めてよろしくですの、エルナちゃんっ♪」 「ぅ、ん……アルマ、ロッテ、クララ……そして、ま……マイスター」 ──────これで全てが終わった。そう、想っていましたの……。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/329.html
対戦神姫データ 由来は間違っていたら修正してください タイプ 名前 名前の由来 忍者 シャウラ さそり座λ星 天使 メサルティム おひつじ座γ星 天使.bk シェラタン おひつじ座β星 悪魔 ハクラビ てんびん座γ星。ズベン・エル・ハクラビ 悪魔.wh カマリ てんびん座β星。元はさそり座の一部でズベン・エス・カマリ(アラビア語で北の爪の意) 犬 カストル ふたご座α星 犬.rp 猫 アスケラ いて座ζ星 猫.rp 兎 デネボラ しし座β星 騎士 アウストラリス てんびん座α2星。α1星との二重星。キファ・アウストラリス(ラテン語で南の皿の意) 侍 ゲヌビ てんびん座α1星。α2星との二重星。元はさそり座の一部でズベン・エル・ゲヌビ(アラビア語で南の爪の意) サンタ アルタルフ かに座β星 サンタ.bx プレセペ かに座のプレセペ星団 花 レグルス しし座α星 種 アクベンス かに座α星 砲台 スカト みずがめ座δ星 セイレーン グラフィアス さそり座β星・ζ星・ξ星 セイレーン.bk アンタレス さそり座α星 人魚 サマカー うお座β星 人魚.bk アルレシャ うお座α星 イルカ サダルメリク みずがめ座α星 寅 ハマル おひつじ座α星 丑 サバイジャワ おとめ座β星 建機 プレアデス おうし座のプレアデス星団。すばる星 HST ポリマ おとめ座γ星 HST.st スピカ おとめ座α星 HMT ヒアデス おうし座のヒアデス星団 HMT.st アルデバラン おうし座α星 蝶 エルナト おうし座β星 戦車 アルヘナ ふたご座γ星 砂戦車 ポルックス ふたご座β星 戦闘機 ゾスマ しし座δ星 夜戦闘機 アルギエバ しし座γ星 火器 サダルスウド みずがめ座β星
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/922.html
剣よ集え、神なる姫の元(前半) さていきなりだが……その娘に対し私・槇野晶は“ワタリガラス”という 印象を抱いている。誰か?魔剣匠工房“鬼奏”の刀匠・神浦琥珀の事だ。 時に神聖視され、時に主の知らぬ事を以て補佐し、戦の場へと導く霊鳥。 しかし凶兆の象徴・カラスの名を冠し、一所に留まれぬ定めを背負う者。 彼女の刃を得た神姫は、戦の栄光と戦の死を逃れる事が出来ぬとも言う。 「……これが“閃牙”。こっちが“舞剣”で……これが、“魔奏”」 「ふむ……だが、その名を大っぴらに出す訳には行かぬのだろう?」 「あったり前でしょ!アンタん家のハウリンなら乗っ取れるわよ!」 「そうか?では此方で、当座の名を考えておこうか。エルギールよ」 だが今、私はその彼女から三振り……厳密には四振りだが……の刃を、 受け取っている。無論これは、ロッテとアルマ・クララの為にある物。 “栄光と死”?上等ではないか。私の“妹達”が、それを望んだのだ。 ならば私がそれを畏れて遠ざける愚策の、一体何処に幸福があろうか? その試練を乗り越え覆す、それ位の気概が無ければ彼女に頼みはせん! 「勝手になさいよ。必要ならあたしがテキトーに考えてもいいけど」 「いや、そこまで世話になる訳にもな……これ以降は私達の責務だ」 「……じゃ、晶ちゃん。毎度有り難う……何時か、何処かに行こう」 「そうだな、神浦琥珀にエルギールよ。今度、アキバを案内しよう」 琥珀と彼女の神姫・ジルダリアタイプのエルギールを見送って、荷物を 抱え……四振り目を、私用の引き出しに仕舞い込みつつだが……下階へ 降りる。そこには、弟二世代型の“補助アーマー”に身を包んだ三人が この先己の相棒となる“魔剣”の到着を、今や遅しと待っているのだ。 「あ、マイスターおかえりなさいですのッ!ちゃんと届きましたっ?!」 「こらこら。そうせっつくなロッテよ……アルマとクララも落ち着けッ」 「ぅ……あたし、そんなに物欲しそうな顔してました?クララちゃん?」 「そこはちょっと自信がないんだよ、アルマお姉ちゃん……マイスター」 補助アーマー……というよりも、ミニスカート・半袖・ニーソックスと “活動的なロリータファッション”という感の強い、ドレス姿の三人。 これが、魔剣に併せて私が作成した物その一だ。急速移動ブースターを 従来の三種全て搭載したその衣装は、瞬発力の補填と見た目の美しさを 第一に考えている。防御?当たらなければどうという事はないだろう。 「やれやれ、しょうがない娘らだ。よし、ではまずロッテ用のこれだ」 「わ~♪……これ、グリップが水平になってますの。ジャマダハル?」 「にしては刀身が長いです。距離を取った剣戟に適していますね……」 「……待って、何かを感じる。ロッテお姉ちゃん、それ抜けるかな?」 クララに促されたロッテがそっと柄を握り、念じる。その途端に鞘の ロックが弾け、刀身が解放された。青い刀に白の唐草模様が独特だ。 だが、何より気になったのは……材質と、手に取ったロッテの挙動。 言葉を発するでもなく、暫し“閃牙”を見つめ……そして瞑目した。 「マイスター。ちょっと横に退いて下さいですの、後ろに空き缶が……」 「ん?ああすまん、すぐに……ロッテ?ライフルの様に構えてどうする」 「この剣は、こうやって使うんですの……“放て、ライナスト”ッ!!」 狙撃でもするかの様な姿勢で刃を真っ直ぐ構えたロッテ。その刃先から、 彼女の号令と共に紫電が奔り……乾いた爆音と共に、一筋の光が迸るッ! 殆ど雷その物である一撃で、堅いスチール缶の両端には風穴が穿たれた。 全く予想だにしなかった効果に、ロッテ以外は驚きを隠せない。私もだ! 「う、うわぁ……まるで、プラズマライフル並みの力ですねこれ……」 「声紋がトリガーなのは少し大変だけど、それでも十分に凄いんだよ」 「これで三点バーストでも出来れば、実用には十分だな……要修練か」 「はいですの。この“ライナスト”……使いこなしてみせますのッ!」 有無。どうやら、それが“真名”を隠すロッテ命名の愛称である様だ。 この“電力”を活かしてやる追加装備が有れば、より良いかもしれん。 興奮気味のロッテを宥めつつ、私はクララ用の“魔剣”を取り出した。 それは短めのロッドとも言うべき物で、一見して剣とは思えない代物。 だが、クララは先程以上に何かを感じ取ったのか……すぐに接近した。 「マイスター。それをちょっと、貸してほしいんだよ……大丈夫だもん」 「む?どういう事だクララ……って、宝玉が光って──────ッ!?」 クララが握った時から、既にうっすら光っていたロッド両端の翡翠。 彼女がホルダー風の鞘を解錠して取り出した時、その光は増大した! そして光が収まった時、クララの眼前には……その、なんだ。有無。 「ハァイ、“魔奏”のマスターは君なのかい?俺はド……ぶぎゅ!?」 「貴様、その名を言うな!何処で誰が聴いているか分からんのだぞ!」 「わぁ!大丈夫ド……あわわ。ともかく、僕はミッ……ぎゃふぅ?!」 「だから見た目そのままの名はやめろ貴様!?一体全体何者だッ!!」 「……大丈夫だよ、マイスター。多分敵じゃない、これの関係者だよ」 深夜の海外通販番組の様なノリで喋る、二匹のナマモノが現れたのだ。 まず出てきたのは、紅い髪に白い肌・紅白の縞模様が印象的なピエロ。 相方は、目に黒い棒状サングラスを掛けた擬人化ネズミだ。躯も黒い。 ……そう。“アレ”そっくりなのだ。流石に、名を迂闊に出せぬッ!! クララの方はロッテの時同様、妙に落ち着き払っているが……関係者? 「兎にも角にも、貴様らは一体何なのだいきなり現れおって……」 「やあ、これは失礼お嬢さん。今回は、マスターになる彼女にね」 「わぁ、凄いやド……げふげふ。儀式を施してあげるんだね!?」 「“儀式”?なんだそれは、何の儀式をしようというのだ貴様ら」 「この……“コライセル”とのリンクを行う為の魔術刻印かな?」 「“魔導”刻印だよ!なくても使えるけど、真の力がいいだろ?」 「従来から160%もアップするんだよね!これはお買い得ッ!」 ……最早何処から突っ込んで良いか分からぬ私は、このナマモノ共と 熱心に話を聞いたクララに促され、“儀式”の補助をする事になる。 と言っても、ただクララの後に立ち両手を前に掲げるだけなのだが。 「さぁ、じゃいくよ。晶さん、くすぐったいけど我慢して……それっ!」 「くぅ……う、うおおおおっ!?手が、熱……うわ、あぁぁぁぁっ!!」 「うわぁ、生命のグリッドが転写されてくよ!これが刻印の素だね!?」 「ぅ……っ、手が……腕が、躯が……熱いよ……ッ、く……刻印が……」 ──とても筆舌に尽くしがたい珍妙な“儀式”は、数十秒で終わった。 私には特に傷もないが、クララの左手甲と右腕には……蔦の様な刻印が しっかり刻み込まれている。幸いデザイン的に酷い物ではないが……。 「……礼は言うが、妙に腹が立つ。終わったなら失せろ貴様らぁっ!!」 「これでマスターの“魔術”は“魔導”に変換され……ぶぎゃぁぁぁ!」 「現実世界でも魔法使いになれるんだよね、ドナ……ピギャァーッ!?」 ──────なんだったのかな、この人達? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1464.html
樹海の如く、業の深き竜(後編) 漆黒の球体とも言うべき独特のプラズマ弾は、ゴーレム・シルエットごと クララを呑み込み、フィールド唯一の陸地である孤島へと叩き付けたッ! 凄まじい爆風が巻き起こり、島が消し飛んでいく。だが、希望はあった。 ジャッジシステムは、クララの大ダメージでも敗北を宣言していないッ! 「はは、ははははっ!これなら、生きてたってボロボロだろっ!?」 「……そうでもないんだよ、まともに直撃していればダメだったけど」 「なっ!?……平然と生きてる、だと!?」 「そうかな、結構堪えたんだよ?」 『クル……♪』 黒煙の向こうにいたのは、大型の杖を構えて佇む生身のクララだった。 そう、彼女が使わなかった初期武装の大杖“センチュリオン”と、盾の “ティンクルスター”。これらは“魔術”を旨とするクララに合わせ、 “Valkyrja”同様の簡易魔術補助用デバイスとして設計したのだ。更に 魔剣コライセルを核として合体させる事で、その機能を更に先鋭化した 砲撃魔術特化の大型ブースターロッドとして運用させる事が出来るッ! 「まさかその杖で、あの“ワキシングムーン”を相殺したってのか!?」 「それがあのプラズマ球の名前だね……結構シビアだったけど、ね?」 「チッ、そんならもう一発くれてやらぁっ!!二度も耐えるなよ!」 「……そうは行かないもん……変形、“ティターン・シルエット”!」 『クルル……ッ!?』 「大丈夫、畏れないで……力と未来を、信じて!」 『クルゥ……クルゥーンッ!!』 「なっ!?そっちもまだ、変形するのかよ!!」 すかさず追撃を掛けようとするシレイに先んじ、クララは“龍”の姿に 戻っていたリンドルムを勇気づけて、最期の姿に変形させる。それは、 他の“姉妹”同様、クララを覆う最強最大の鎧である!仕込んでおいた 天使の翼を広げ、同時に複合防御機能を備えたマントを、全身に纏う! 更にそれまでクララが抱えていた杖と、新たに龍の尻尾から射出された 巨大な杖が合体、クララの“魔術”を支える新たな杖が形成されるッ! 「“キャノン・ウィザード”合体、“グングニル・ウィザード”機動」 「……ま、魔法使いってか。テメェ、何者だっ!!?」 「ただの神姫。マイスターを想う、三姉妹が一人の神姫だよ!」 「ナメんな!切り刻んでやる、“ワーニングムーン”でなッ!!」 あくまでも冷静であるクララに激怒したシレイは、その禍々しい両腕から 漆黒の光剣を発生させた。緩く湾曲したそれを構える姿は、確かに新月。 だが黒き月というそのヴィジュアルは、やはり“瑞獣王”の名に合わぬ。 「……なんでその二つだけ、技名が英語なのかな?」 「う!?……煩ぇ、まだ決めてないだけだ!悪いかッ!!」 「悪くはないんだけど……統一感がほしいんだよ?」 「だ、黙れ黙れぇぇっ!うぉおおおおっ!!」 そこを冷静に突っ込まれると、案の定シレイは怒り狂って襲いかかった。 だが……クララはこれをこそ狙っていたのだろう。慌てる事もなく、杖を 空に掲げる。日も落ちて闇の迫る空に光が灯るのは、その刹那だったッ! 「……“アカシック・スフィア”始動、“マギウス・コード”圧縮開始」 「なっ!?なんだよ、あの光のリングと……胸から出てる光はッ!?」 「突っ込んだのは失敗だったんだよ……さぁ、虚無に帰って!」 「……んなろォォォッ!!」 「躯に刻め、神儀“処刑の光祭(エクスターミナス・セレモニー)”!」 最初は、足下に産まれた環状魔法陣だけだった。だがクララの鎧……その 胸部が開くと、その内に仕込んだ球状の補助演算装置が光を発したのだ。 それは“儀式級”とまでクララがランク付けした、精緻なる大規模魔術を 高速発動させる時に用いる為の、パワー増幅装置と考えればいいだろう。 而してそれは滞りなく機能し、瞬時に十数桁に及ぶ莫大なデータを編纂。 杖の先端に光球として集束させたのだ。一見それは、貧相だったが……! 「“アクティブ・スティング”……フォイエル!」 「なっ!?光の珠が1、2……十に分裂して……うわあっ!?」 「……“サーキット・アンカー”射出、目標を拘束せよ」 「く、くそッ!光の糸……いや、鎖が絡んで……ぬぉおおっ!!」 その実、この“魔術”は巨大モジュール戦に特化した極致の一撃なのだ。 十に分裂して発射された光弾は、光の鎖を以て“瑞獣王”を縛り上げる。 その間隙を縫って、クララはシレイの頭上と直下……即ち海上に、巨大な 魔法陣を構築した。その全面から迸るのは、光と闇……そして鋼の色だ! 「……“ロータス・ブレイカー”及び“アサルト・シェル”、発射!」 「なっ!?うわぁぁあっ!!れ、レーザーと重てぇ弾丸が一杯ッ!?」 それはレーザーだけでなく、極小重力弾と風を纏ったベアリング弾の嵐。 恐るべき破壊の旋風が、砂時計の様な形を描き的確に撃ち込まれていく。 装甲の最も脆い場所、駆動部の最も致命的なポイントを狙い澄ましてな! 勘のいい諸兄なら分かるかもしれんが、この“魔術”はクララの集大成。 これまでクララが編み出し使い込んできた“通常魔術”の複合技なのだ! 「仕上げだよ……“ゼロ・アンブレラ”展開……3、2……1!」 「ぐ、うぁあああああっ!?ち、畜生やべぇ……脱出だッ!!」 「“レヴナント・ドラフト”起動、爆破ッ!」 「うぁッ!!?……く、くそぅっ!?」 「ちなみにこの魔術は、本来“オーディナリィ・ノヴァ”って名前だよ」 止めに、二基の魔法陣を挟んだ中間点……即ち“瑞獣王”付近で、巨大な 電磁パルスを伴う激しい爆風が巻き起こる。しかもクララは低温と真空を 用いたバリアで機体を覆い、爆発のパワーを全て目標に集中させたのだ! 辛くもシレイ自身はレインディアバスターで脱出する物の、“瑞獣王”は “太陽”並の光を伴う炎に呑まれ、灰燼に帰した。勝負は決したも同然! 「……あ、シレイさんが逃げるもん……ってリンドルム!?」 『クルゥッ!』 「う、うわ!?あの竜追い掛けてきやがッ……ぐあああっ!?」 だが、そこからのリンドルムの動きは誰も予想しない行動だった。逃げる シレイを見た彼女は、自らの意思でクララから分離して“龍”の姿となり 捕まえに行ったのだ!無論、尻尾のワイヤーでクララを牽引しつつだが。 クララから離れる事を嫌がり続けた甘えん坊の姿は、もうそこにはない! 「く、そ……潰れる、離しやがれこのイモリめッ!」 「もう、決着は付いたと思うんだよ?皆を哀しませないで」 「ち……この落とし前、必ず付けさせてやっからな……」 『対戦相手、ギブアップ!勝者、クララ!!』 竜に乗って、コライセルから産み出した光刃を喉元に突きつけるクララ。 観念したシレイは、自らギブアップを申告する。見事な戦い振りだった! 私は戻ってきた彼女を抱き上げ、早速簡易クレイドルにセットしてやる。 「マイスター……どうだったかな、ボクらの……リンドルムの戦い」 「見事だ。彼女の勇気を、自制心を巧く育てる事が出来た様だな?」 「その評価だけで満足なんだよ……少し、眠るね?おやすみだもん」 「嗚呼、じっくり休め。目覚めたら、四人で祝賀会と行こうか……」 ──────竜を育てる偉業は、巧くいったのかな……? 次に進む/メインメニューへ戻る