約 5,047,566 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/525.html
2月14日の武装神姫-01 それは、去年のこと・・・。 「いってらっしゃいなのにゃー」 珍しく早起きしていた猫子・エルガに見送られ、久遠は出勤。 「さーて。ヌシさん、出かけたな?」 久遠が出かけたのを確認し、リゼと、シンメイが顔を出した。 「あ、シンメイ〜。イオを起こしてきてよぉ。」 「え・・・まだ寝てるの?」 「うにゃ。」 「全く・・・こういう日に限って低電圧発症するなんて。。。」 ブツブツ言いながら、イオの寝床へ向かうシンメイ。 「それじゃ、準備にかかりますか。」 いつの間にか、リアアームを装着してきたリゼが。一方のエルガもエプロン スタイルとなっている。 「今日はヌシさんサイズの調理だかんねー。 エルガ、仕切役よろしく〜。」 「にゃっはー!任せるのダ!」 と、シンメイが、 「はぁ・・・ダメでした。。。」 黄色い狐型の装備(後に工臨壱型と名付けられるアレ)を整え、げっそりと して戻ってきた。どうやらイオは起きなかった模様。 「ハリセンで叩いてもダメだったか?」 「それで起きれば苦労しませんよ、リゼ。。。ファンビーでひっぱたいても 起きなかったんですもの。」 ・・・ため息を付く3人。 イオの寝起きの悪さは折り紙付きであるので、 諦めて3人で作業にかかることに。。。 「まずは、ブロックチョコレートを砕くの。」 ずるずると、どこからかブロックチョコレートを引きずり出すエルガ。 「・・・どうやるんだよ。」 「リゼがまず砕くのだ。 それをにゃーがみじん切りにするのダ。」 「なるほどね。 それでは・・・」 リゼがリアアームをふりかざしたところで、 「にゃー!! 待つの! 汚れないようにテーブルにラップを敷くのだ!」 と、エルガ絶叫。 「エルガ・・・案外マメなんですね・・・。」 ちょっと驚いたように、ラップを敷く作業をエルガと共に手伝う。ラップを 敷き終えたところで、改めて作業開始。 リゼが大まかに砕いたブロックを、エルガがヤンチャオでさらに細かく切り、 シンメイがドサドサとステンレスボウルへ放り込む。あっという間にチョコ ブロックは粉砕された。 「つぎは熱湯ぶろ〜。」 「ちがうでしょ。湯煎っていうの。」 シンメイが突っ込む。 「にゃーん。 ちょっと間違えただけなの。」 イオのフライトユニットを拝借して、湯沸かし器を操作するエルガ。 「・・・ちょっと・・・か?」 苦笑いをしながら、リゼが大きめのボウル・・・というより洗面器にお湯を 受ける。そこへ、シンメイが先のステンレスボウルをゆっくりと下ろす。 「ここからは・・・エルガのお仕事ですよ。」 「はいにゃー!」 リゼとシンメイが押さえるボウル、その中で徐々に溶けるチョコレート。 冷蔵庫からコーヒーミルクとバニラエッセンスを取りだしてきたエルガは、 様子を見ながらそれぞれ投入、手早くしゃもじで混和する。 「お前、上手いな。」 感心したようにリゼが呟いた。 「うにゃ? 料理は愛情って、いつもにゃーさんが言ってるの。 だから、 教えてもらってるにゃーも、愛情込めるのにゃ。 だから上手なの。」 「上手、って自分で言うことではないでしょ。 ほらほら、あとは私が押さ えていますから、あなた達は型の準備をしてはいかがです?」 「はーい。」 シンメイにボウルを任せ、2人はガラガラと型の準備をする。 ついでに、 トッピング用に久遠の好きなアーモンドや、きれいなマーブルチョコなども 並べる。食べたそうにするリゼを小突きつつ、ボウルの元へ戻ってきた2人。 「並べたの。」 「小物も準備完了だよ。」 「それじゃぁ・・・運びますか。エルガ、ワイヤーは大丈夫? リゼも耐熱 カバー付けた?」 珍しく拳狼を装備したシンメイ。 ・・・フライトユニットを着けたエルガ がワイヤーを用いて吊り上げる。 それを下でサポートするリゼとシンメイ。 ゆっくりとテーブルへ移動させ・・・シンメイが慎重に位置を指示する。 「エルガ、もうちょっと右!」 「ここかにゃ?」 「そうですね、この辺でいいでしょうか。。。」 「それじゃぁ、流すよー。 引っ張るから、リゼ、よろしくなの。」 「ほいきた。」 2本かけたワイヤーの一本を引き上げ、ボウルを傾ける。後の部分をリゼが 補助で持ち上げ、湯口はシンメイが見張る。 見事な連携プレー。。。 ・・・>2月14日の武装神姫-02へ続くっ!!>・・・ <トップ へ戻る<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2718.html
レバー一回転+C 7月27日(水) 三回目であっても、やはり慣れないものはなれないらしい。私はこの煙草の臭いが嫌いだ。 「慣れてるあたしはもう終わってるってことかしらね?」 「そうとは言ってない」 笑いながら、今日も私はゲームセンターへとやって来ていた。昨日華凛に言われたのもそうだが、私もここで神姫バトルをするのは好きだった。私もなんだかんだ言って私も終わってるのかもしれない。 「今日もやってるわねー」 モニターには、現在プレー中のバトルが映し出されている。 今やっているのは、アーク型とミズキ型のバトルだった。ミズキは忍者のような神姫だった。鶴をイメージされているらしいが、ものすごい旧型らしい。 対するアークはトライク(三輪のバイク)になれるらしく、現在ハイウェイを疾走している。 ミズキの名前はミヤビ。そしてアークの名前は…… 「『紅葉』……?」 「どしたの樹羽?」 「ううん、なんでもない」 もしかしたら、あの人なのだろうか? 思わず筐体を見回してしまう。 「シリア、紅葉って名前のアーク型がバトルしてる」 バックの中にいるシリアに話かける。シリアは顔だけバックから出した。 「それって、もしかして楓さんの?」 「かもしれない」 私はもう一度モニターを見た。たった今、バトルが終わったらしい。画面には『winner アーク型 紅葉』のテロップ。重要なところを見逃したみたいだ。 「見損ねた」 「すごかったよ。こう、ギュイギュイってやって、ズバズバっていって、最後にギュガァァァってえげつなかった」 よくわからないが、フィニッシュは総大だったらしい。 その時、一台の筐体が空く。一人は中年のおじさん、たぶんミズキのマスターだろう。もう一人は、昨日見た長ラン姿だった。 「すいませんね、手加減が効かなかったもんで」 「く、お嬢ちゃん強いね」 「あったり前だ! 姉貴とあたしのコンビは最強なんだよ!」 「紅葉、それは相手に失礼だ」 落ち着いて紅葉に注意した楓さんは、相手に軽く会釈した。 「すいませんね、熱くなるといつもこうで……」 なんだか、口調や物腰が服装とはマッチしているんだが、何か違う気がする。『けっ、話にならねぇな』とか言いそうなのに。 「いや、構わんよ。それより……」 中年マスターは楓さんに近付く。なんだか目が怪しい。 「この後、一緒に食事でも……」 そう言って、肩に手を伸ばす。 「ば、ちょ、待っ!」 紅葉が何か言おうとするも、その手は肩に触れ 「あたしに……」 た。 「触るなぁっ!!!」 次の瞬間、中年マスターはダクトが露出していた天井すれすれまで飛んだ。 手をバタバタさせもせず(たぶん失神しているのだろう)背中から地面に落下する。 周りからはため息混じりの声。 「あーあ、今のはおっさんが悪いな」 「だよな、ていうか姉さんに手ぇ出そうってのがなぁ……」 「ま、初見の奴はみんな飛ぶさ。今のはむしろダクトに突っ込まなかっただけましだぜ?」 どうやら、今のはもはや日常らしい。人ひとり投げ飛ばしてもスタッフの一人も出てこないというのは、そういうことだろう。 「くそ、遅かったか。ミヤビさん、だっけ? ごめんね、姉貴、男性恐怖症でさ、触れられただけでああなるんだよ」 「いえ、問題ありません。今のはマスターが悪いのですから、謝るのはむしろ私たちの方です。マスターに代わりまして、不快な思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした」 ミヤビさんは利口だったらしい。 その後ペコリと頭を下げると、失礼しますと一言断り、その小さな手で中年マスターの首筋にパシッと手刀を当てた。 「は、私は何を?」 「帰宅しますよマスター。後、そちらの楓さんにはちゃんと謝ってくださいね」 「? なにやら無礼があったようで、申し訳ありませんでした」 落下の衝撃で記憶が飛んだのか、中年マスターはあまり理解がいかない様子で頭を下げる。その後、観客をかきわけ帰っていった。 「シリア、やっぱり楓さんだよ」 「みたいだね、あんな豪快な投げっぷりは、間違いなくあの人だ」 シリアは去っていく中年マスターを見送りながら呟いた。 「相変わらずね、楓さん」 気付けば後ろに華凛がいた。腕を組んで、一人頷いている。 「知ってるの?」 「そりゃ、あんだけ派手に人を飛ばしてりゃ有名にもなるわよ」 聞けば2年程前からいるマスターらしい。現在大学2年生。極度の男性恐怖症で触られただけでああなるそうだ。 「樹羽も知ってたんだ」 「うん、昨日知り合った」 不良の件は伏せた。華凛のことだ、下手をするとその場で卒倒しかねない。 楓さんがバトルし終えると、次は私の番だった。楓さんは私を見るとすぐに声をかけてくれた。 「ああ、昨日の女の子! 確か名前は……あれ、なんだっけ?」 「樹羽です。奏萩樹羽」 言っていなかったから、知らなくて当然だ。 「樹羽ちゃんか、大丈夫だったかい? あの後は」 「はい、大丈夫でした。紅葉もこんにちは」 「はいよー、樹羽ちゃんもゲーセン来るんだねぇ。なんかイメージと違うや」 「こら紅葉、そういうことは思っても言うんじゃないよ」 どっちかと言えば、楓さんの方がイメージと違う。もっとこう、我が道を行く番長のような感じかと思ったら、その実礼儀正しい人だ。なんだってこんな格好をしているんだろう。 「バトルするんだろ? じゃ、さっそく用意しようか」 互いに筐体を挟んで座る。華凛は私の右後ろに立っていて、なんだかセコンドみたいだった。 「樹羽、あの人は強いからね。油断しないように」 「わかってるよ、華凛」 元より相手を舐めてかかったことなど一度もない。 シリアが筐体に滑り込む。それを見て、私もヘッドギアをつけた。 『準備完了、いつでもいけるよ樹羽』 「わかった」 さっそくボタンを押す。アナウンスが流れ始めそして―― 『……3、2、1、0、RideOn―――』 今日はあたしが口を挟む余裕はなかった。昨日知り合っていたらしいとはいえ、やっぱりこれは快挙だったと言えるだろう。 (着実に樹羽は人との付き合い方を覚えてる) いや、もしかしたらただたんに自分に自信が持てなかったり、無意識に相手を遠ざけていただけかもしれない。なんにせよ良い方向に向かっているのは確かだ。このまま行けば、遠からず樹羽は人付き合いを覚える。出来れば定着が望ましいが、あまり欲を言っていられない。 (時間は限られてる……この夏休みの間に、なんとか……) 時間は容赦なく迫り来る。私たちはそれに乗り、流されるしかないのだ。 第七話の2へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinki_ss/pages/63.html
※このページは、各投稿者様の所有神姫索引ページです。 神姫五十音順でソートしてあります。 ソート間違いなどご指摘・ご意見あれば、まとめwiki管理人のメールアカウントに直接投げてください。 素体略称は、以下の略号で表記します。 ヘッドと素体が異なる場合(例「頭・犬/素体・兎」)は「ヘッドの素体名を記入」して 紹介本文にて素体構成を書いていただくようお願いします。 【略号一覧】 天使:アーンヴァル 悪魔:ストラーフ 忍:フブキ 猫:マオチャオ 犬:ハウリン 兎:ヴァッフェバニー 騎士:サイフォス 侍:紅緒 津軽:ツガル 花:ジルダリア 種:ジュビジー 砲:フォートブラッグ 鳥:エウクランテ 魚:イーアネイラ 海豚:ヴァッフェドルフィン 黒天:アーンヴァルbk 白悪:ストラーフwh 寅:ティグリース 丑:ウィトゥルース 建機:グラップラップ 水猫:マオチャオ(リペ) 水犬:ハウリン(リペ) HST:アーク HMT:イーダ 蝶:シュメッターリング 戦車:ムルメルティア 戦闘機:飛鳥 火器:ゼルノグラード 黒鳥:エウクランテbk 黒魚:イーアネイラbk 白HST:アーク 白HMT:イーダ カブト:ランサメント クワガタ:エスパディア サソリ:グラフィオス コウモリ:ウェスペリオー 天コマ:ウェルクストラ 夢魔:ヴァローナ ナース:ブライトフェザー シスター:ハーモニーグレイス フェレット:パーティオ リス:ポモック 【記入例】 神姫名(淑女録アンカーにリンク)(ヘッド素体) 投稿者名(武装紳士録アンカーにリンク)【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】【ア行】 葵(侍) 白羽 アキナ(種) 雪冠(ゆきかんむり) アクエル(魚) 雪冠(ゆきかんむり) アニエス(猫) strangedays アネット(兎) K-Kurasawa アマテル(忍) ・シン=アカツキ アルティ(天使) あると アルメリア(猫) 蓮吻(レンウェイ) アルメルス(騎士) 風雷坊 アレキサンドライト(砲) 蓮吻(レンウェイ) イェーガー(種) セイロン イザベル(悪魔) みずねこ(ねこ隊長) 因幡(兎) 白羽 イリーアン・マザー(悪魔) ツインガンナー ヴァル(種) Ex-Mavis ヴィオラ(騎士) ゆーげん ヴィルケ(白悪) セイロン うぃん(天使) strangedays エクサ(丑) 比呂雪 エミリー(天使) Ex-Mavis エリシア(天使) ゆーげん エリス(天使) K-Kurasawa エリュス(騎士) 雪冠(ゆきかんむり) オメガ(黒天) あると 【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】 【カ行】 ガーベラ(犬) 我闘 怪盗フォックス(犬) シン=アカツキ 伽倶土 焔乃華(侍) 万年睡眠不足 カチューシャ(津軽) Ex-Mavis かなで(津軽) あると カノーネンフォーゲル(砲) 白羽 カマエル(天使) シン=アカツキ カルミア(種) 蓮吻(レンウェイ) 神無月(悪魔) 蓮吻(レンウェイ) キララ(悪魔) ゆーげん クオン(津軽) ゆーげん 薫・茜嵐(犬) 蓮吻(レンウェイ) 神代 緋月(黒天) 万年睡眠不足 神代 雪月(天使) 万年睡眠不足 グレイス(兎) Ex-Mavis 紅(侍) 蓮吻(レンウェイ) クロエ(忍) みずねこ(ねこ隊長) ケイ(犬) ゆーげん ケイト(花) Ex-Mavisコテツ(寅) 我闘 こるり(犬) あると コレー=アカツキ(悪魔) シン=アカツキ 【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】 【サ行】 サーニャ(忍) セイロン さーりゃん(騎士) ぱぴこん サイ(騎士) 蓮吻(レンウェイ) 彩雲(侍) Ex-Mavis サイフォス(騎士) ツインガンナー サウシア(黒天) 雪冠(ゆきかんむり) サマエル(天使) シン=アカツキ サルビア(花) 蓮吻(レンウェイ) シーヴァ(津軽) 雪冠(ゆきかんむり) 忍子(忍) ぱぴこん シャーリー(花) セイロン シャオ(犬) みずねこ(ねこ隊長) シャドウ(悪魔) 我闘 シュネー(白悪) ゆーげん ジル(騎士) Ex-Mavis スズネ(猫) ゆーげん ステンノ(鳥) 白羽 ストラーフ(悪魔) ツインガンナー ストラーフ・リーフィ(悪魔) ツインガンナー スノーフレーク(鳥) 蓮吻(レンウェイ) 切ちゃん(騎士) 我闘 ゼファー(鳥) 雪冠(ゆきかんむり) セリナ(種) ゆーげん ソーン(天使) 比呂雪 【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】 【タ&ナ行】 チヅル(侍) 雪冠(ゆきかんむり) チハ(砲) Ex-Mavis 燈彗(津軽) 蓮吻(レンウェイ) つばめ(鳥) とっきー ティアイエル(天使) みずねこ(ねこ隊長) ディーヴァ(魚) 風雷坊 ディートリンデ(黒天) セイロン ティニア(種) シン=アカツキ ティマ(白悪) 比呂雪テミス(兎) ゆーげん 巴(侍) 風雷坊 とりこ(仮名)(鳥) strangedays ナオ(犬) K-Kurasawa ナゴミ(和)(猫) 雪見 菜月(黒天) とっきー ノアーレ(猫) 雪冠(ゆきかんむり) ノウアー(悪魔) 雪冠(ゆきかんむり) ノエル(砲) 風雷坊 ノーシア(天使) 雪冠(ゆきかんむり) ノワール(悪魔) ぱぴこん ノン(砲)ティーノ 【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】 【ハ行】 ハウ(犬) ぱぴこんハウリー(犬) strangedays ハウリン(犬) ツインガンナー ハクウ(天)ティーノ バニー(兎) あると パラレル真夜(侍) タイガ ハル(天使) 蓮吻(レンウェイ) バルクホルン(悪魔) セイロン パルティア(魚) ゆーげん ハルトマン(犬) セイロン ビアンカ(天使) ぱぴこん ヒカリ(光)(天使) 雪見 ヒカリ(鳥) 蓮吻(レンウェイ) 氷雨(忍) 風雷坊 姫月 華倶夜(悪魔) 万年睡眠不足 緋藤(侍) 我闘 ヒルダ(津軽) 白羽 フィア(悪魔) K-Kurasawa フィア(天使) 風雷坊 フィリア(黒天) 風雷坊 フェス(津軽) 比呂雪フェスティア(鳥) 風雷坊 フォーチュナ(白悪) 雪冠(ゆきかんむり) フォルテ(鳥) あると フブキ(忍) あると フブキ(忍) 白羽 フブキ(さん)(忍)ティーノ フレア(忍) シン=アカツキ フレア(津軽) 風雷坊 ベティ(悪魔) Ex-Mavis 紅緒(侍) ツインガンナー 紅緒(侍) ぱぴこんベル・ゼファー(悪魔) 白羽 ヘルツ(黒天) 比呂雪【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】 【マ行】 真衣(忍) K-Kurasawa マイ(猫) 我闘まおちゃ(猫) ぱぴこん マオチャオ(猫) ツインガンナー マオニャー(猫) 白羽 真神 要(犬) 万年睡眠不足 マコト(砲) ゆーげん マスクドコック(兎) 黒虎 真夜(侍) タイガ みあん(悪魔) あると 御影 忍(忍) 万年睡眠不足 ミツキ(砲) 雪冠(ゆきかんむり) ミナーヴァ(兎) シン=アカツキ ミニア(悪魔) タイガ ミフユ(忍) ゆーげん ミュー(猫) みずねこ(ねこ隊長) ミューシア(悪魔) strangedays ミリアン(兎) 雪冠(ゆきかんむり) 宗像 雫(騎士) 万年睡眠不足 宗像 遥(魚) 万年睡眠不足 メイ(犬) 雪見 メイヴィス(鳥) Ex-Mavis 【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】 【ヤ・ラ・ワ行】 八千代 千華音(花) 万年睡眠不足 八千代 千種(種) 万年睡眠不足 ユウ(遊)(悪魔) 雪見 ユーティライネン(天使) セイロン ユキ(天使) 蓮吻(レンウェイ) 雪奈(天使) とっきー 百合華(犬) とっきー ライラ(花) ゆーげん嵐凰(鳥) 我闘 リーネ(砲) セイロン リーン(鳥) 比呂雪リオナ(猫) 比呂雪リコ(花) 雪冠(ゆきかんむり) リツ(律)(忍) 雪見 リディア(白悪) シン=アカツキ リディアス(悪魔) 風雷坊 リデル(猫) 蓮吻(レンウェイ) リファ(忍) 雪冠(ゆきかんむり) リューネ(魚) タイガ リン(犬) 蓮吻(レンウェイ) リン(犬) 雪冠(ゆきかんむり)林檎(津軽) ぱぴこん ルゥ・ガルゥ(犬) 白羽 ルキ(犬) タイガ ルクス() 比呂雪ルッキーニ(猫) セイロン レナイヤ(騎士) 我闘 レラ(鳥) ゆーげん ロスヴァイセ(天使) 白羽 ロゼ(騎士) タイガ ロラン(騎士) 白羽 【ア行】 【カ行】 【サ行】 【タ・ナ行】 【ハ行】 【マ行】 【ヤ・ラ・ワ行】 【▲このページのTOPへ】
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/472.html
戦うことを忘れた武装神姫 その11 ・・・その10の続き・・・ 「『おめざめはおたま』、かぁ。。。ありゃ俺でも痛いし。神姫だったら下手すりゃ致命傷になるぞ。」 苦笑いをしながら、イオを肩に乗せてフィールドに歩み寄る久遠。 「・・・そういえば、ヌシさんが朝起きないときはエルガがいっつもアレをやってたっけ。 あの間合いと速度は・・・流石だわ。」 「ええ、その後毎回のたくってましたよね、マスター・・・。」 モニタ席に残ったリゼとシンメイが、フィールド上で誇らしげにおたまを かざすエルガを見ながら言っていた。 シールドが解除され、エルガは久遠の姿に気づいた。 「おー、よしよし。良くやったぞー。えらいえらい。」 「にゃーさーん! たっだいま〜! 勝ったよー!」 久遠に飛びつくエルガ。だが、右手のヤンチャオを装備したままだった為、ヤンチャオが久遠の腕にざっくり刺さる。 「あ・・・。ごめんにゃさ〜い。。。」 「痛いけど、この勝利に免じて無罪放免である、ってね。いやぁ、お見事。まさか台所のフィールドがあるとは。やりやすかったろ?」 「うん! それに、おうちのよりきれいだったから、走りやすかったの。でもね、隠れるところが少なかったからちょっと大変だったかにゃー。」 「エルガ・・・それは大きな声で言うところじゃないよ、俺の部屋が散らかっていることを暴露している以外の何物でもないんだから・・・。」 周囲のギャラリーからは笑い声も聞こえる。 妙に和やかな久遠サイドの反対側では、まだ目を覚まさないアスタを乱暴にストックボックスへ放り込むと、サイトウは無言のまま次の対戦に使用する神姫の装備を選んでいた。その雰囲気に、彼の応援団もだんまり。。。 「ネクストフィールド、準備完了しました。」 ジャッジマシンが告げた。今度のフィールドは・・・ RPG・ダンジョンスタイル。 「あらぁ・・・かわいらしい舞台ですねぇ。」 久遠の肩の上に乗ったイオが、フィールド上に構築されたちょっと不気味な、地下神殿遺跡の様子を見ていった。 「か、かわいらしいのか?」 「えー?そう思いませんか?」 首を横に振る久遠とエルガ。 「まぁいいや。えっと、次はイオが行くんでいいのかな?」 「はい〜。どこまで出来るかはわかりませんが・・・ よいしょっと。」 フィールド上に降り立ち、久遠から装備の入った袋を受け取ると、ちょいちょいと装備を調える。 「にゃー、イオぉ、かっこいいよぉ!!」 装備を終えたイオの姿に、エルガが目を輝かせる。 「え・・・そうですか?」 ちょっと恥ずかしそうにするイオの姿に、ギャラリーも集まる。基本は白子装備・・・なのだが、翼がちょっと独特の形状になっている。 そして補助翼の代わりなのだろうか、ツガルの装備を真っ白にリペイントしたものを適宜追加。 そして翼には、ブースターではなく埋め込み型のジェットエンジンタイプの推進器。ツガル装備も翼+ジェットエンジンも、CTaから(久遠が知らぬ間に)もらった、とのこと。 「はいはい、すみません。写真はあとでお願いします。 時間押しちゃうんで・・・」 珍しい姿に写真を撮ろうと集まったギャラリーをかき分け、フィールドにイオをセットした久遠。反対側では、待たされて、より不機嫌さが増した顔付きのサイトウが、フィールドに合わせたのであろうか、「あの」騎士子をセットしていた。 「それじゃ、いってきまーす。」 手を振るイオに久遠とエルガもまた手を振って応える。 フィールドバリアがおろされ、第二試合が始まる。 「第2試合、アーンヴァル『イオ』 VS サイフォス『ディサ』、試合開始いたします。」 そして、再びの静寂-。 「Ready- ・・・GO!」 『行け!あの装備なら動きは鈍いはずだ!』 サイトウに命じられ、ジャッジが言い終わるか終わらないか、フライングとも思える速攻のサイフォス・ディサ。 「とああぁぁあぁ!!!」 デファンスを構え、重武装に身を固めたディサだが、その重量をものともしない速さでイオに迫る。 だが、イオは・・・ 「・・・おかしいですねぇ・・・。エンジンに火がつきません・・・」 グリグリと推進器のダイヤルだのスイッチだのをいじる。その様子を確認したディサは、一撃で勝負を決めようと、狙いを定め・・・。 「あ、忘れてました、安全装置。 えっと、たしk・・・きゃーーー!!」 安全装置を解除した途端、左の推進器のみが全開に。反時計回り方向に、もんどりうつ形で転がっていくイオ。 「な・・・っ!」 結果として、ディサの突撃をかわすことになる。イオは転がって、神殿の柱にぶちあたってようやく止まった。 「もう、CTa姉様の作るものはいっつも何か抜けているんだから・・・。」 と、自らの装備をチェックするイオに再びディサのデファンスが迫る。 「とあぁ!」 「あらまぁ、 補助翼が一個取れてますね。よっと。。。」 さっと、イオは足下に落ちている補助翼を拾おうと頭を下げ、またしてもディサの突きをかわす。 モニターを見ながら顔が引きつっている久遠に、リゼがお茶を持ってきた。 「ヌシさん、大丈夫か?」 「あ、ありがとう、リゼ。。。 イオのやつ、天然なのはわかるけどさ、なにもこんな場でも発揮しなくたっていいだろうに・・・。」 「それがイオなんだってば、ヌシさん。それに、あいつの強運は恐ろしいくらいだし。」 とにこやかに言うリゼだったが、 「フォローになってないよ、強運も怖いかも知れないけど、俺はこの試合を見ている方が怖いよ。」 久遠の目元は、小さく震えていた。 突撃を外されたディサのディファンスは柱に深々と刺さってしまい、抜けなくなっている。 引っこ抜こうとするディサを後目に、イオは補助翼を 装着し、今度はきちんと推進器を作動させた。 『そんなものは捨てろ! まだ武器はあるだろう、馬鹿者!』 サイトウの声にディサはディファンスを捨て、特殊武装の鎖鎌を取り出すと、大きく振りかざし飛び上がったイオめがけて投げつける。だが。 「あらー! 宝箱も置いてあるんですねー! すっごーい!」 フィールドの片隅に設置された宝箱めがけて急降下。 飛んできた鎖鎌の分銅をあっさりと避けてしまう。 「・・・でも中身はダミーですね。」 近づいてよく見れば、あくまでダミーで、ただ光っているだけに過ぎない中身にがっかりのイオ。その後ろから、投げナイフが飛んできた。 「貴様!無視するんじゃない!!!」 「はーい、ごめんなさいねー。 あまりにこのフィールドがかわいらしく出来ていたものですから。」 と、イオが振り返ると、その側をナイフがかすめる。振り返ったことで、やはり「結果として」ナイフを避ける事になってしまった。 「こ、こ、このぉ・・・!!!」 ついにブチ切れたディサ、しかし、繰り出す攻撃をイオはのらりくらりとかわしてしまう。 「・・・。 なんであんなに避けるのが上手いんだ?」 「イオ本人に、『避けている』気が全くない無いからだと思いますよ。」 モニタでその様子を観戦しながら分析をするシンメイ。 「天然の境地を極めた者のみが手に入れられる、ある意味で無我の境地にも通じるものがある・・・ それを会得したのだと思います。」 「この状況見ながら冷静に考えられるお前が羨ましいよ、シンメイ・・・」 冷や汗ダラダラの久遠に、エルガはそっとおしぼりを差し出していた。 『焦るな、ディサ! よく見ろ、相手は接近戦で攻撃する手だてをあまり持っていない! いったん間合いを取って、頭を冷やせ!』 「オーケー、マスター。」 接近戦に移り、膠着状態になりかけた(といっても、避けられているだけなのだが)ところで、ディサは柱の陰へといったん下がった。 ごそごそと陰で得物を用意するディサの姿に、 「じゃぁ、私も・・・そろそろ攻撃をいたしますよ?」 と、イオも対抗して何かの準備にかかろうとした、その時だった。 「くっそぉ、元・在庫のくせに・・・」 ぼそっとつぶやいたディサのその一言に、イオが反応した。 「・・・ディサさん、いま何とおっしゃいました?」 イオの頬が、今までにない引きつり方をしていた。 「白い在庫っていったんだよ、この天然ボケが!」 「い、いま、在庫って言いましたね・・・」 「あぁ、言ったさ。 白い子といえば在庫、一時期は代名詞にもなってたくらいだからな。」 「あっ!!! 馬鹿っ!!! あいつ・・・」 久遠が声をあげた。 「どうした? ・・・あー。ヌシさん、もしかして・・・。」 リゼも、勘づいたようだった。 そしてシンメイも、エルガも。 「にゃー、あの騎士のひと、言っちゃいけないこといっちゃった・・・」 「それも、3回も言っちゃいましたね。。。」 イオに対する唯一のNGワード、それが・・・「在庫」。 以前、何の気なしにCTaが口走って、シャレにならない事態に陥ったことすらある禁断 の単語・・・。 みるみる変わって行くイオのその顔に、モニターを見る久遠と神姫達は、相手のディサが無事であるよう、祈る気持ちへと変わり つつあった。。。 「在庫・・・在庫じゃない・・・ あたしは・・・ 在庫じゃないもん!!!!!!!!!!」 くわっ!と、イオが顔を上げた。そこには、今までの「のほほん」とした表情が消え失せ、目に一杯の涙を浮かべ語るも恐ろしい程の形相となった、 「鬼」となったイオが浮かんでいた・・・! ・・・>続くっ!>・・・ <その10 へ戻る< >その12 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/971.html
剣の目覚めは、未だ遠く(前半) 神浦琥珀嬢に“妹達の魔剣”を仕立ててもらってから、暫くが経過した。 それぞれの練度にも、若干の違いが出てきている様でなかなか興味深い。 例えば、今ここで模擬戦を行っているロッテとクララの方を見てみよう。 敢えて今回“Valkyrja”は装備せず、基本武装と魔剣のみで戦っている。 「まだまだ行きますの♪……“放ち刺し穿て、ライナスト”ッ!!」 「くっ……不可視の傘、疾く来たれ!“ソニック・アンブレラ”!」 「う、うわ……あの雷撃が三つも一遍に出ましたよ、マイスター」 「有無。だが、クララの防御も……いや、防御とは呼べんがな」 並みの装甲を射抜く、ロッテの雷撃。クララが“魔術”とコライセルに 備わる防御障壁を駆使しても、超音速のそれを凌ぐのは非常に厳しい。 そこで彼女は、受けきらず……己が避ける為の時間稼ぎを行っている。 “魔術”にて産み出した真空波の傘で電離的な防護壁を作り、その間に コライセルの斥力場を纏い別の場所へ退避……無論それでは終わらぬ。 「左がガラ空きなんだよ、ロッテお姉ちゃん……ふっ!!」 「きゃっ!?むむ、クララちゃんってばやりますの……えいっ!」 「方法論は銃剣とほぼ同等。防御が課題だもんね、ロッテお姉ちゃん」 「クララちゃんだって、“魔術”の展開がちょっと遅いですの!」 「うん、今はマニュアル展開しか出来ないからね……よっと」 クララが左側からワイヤーを飛ばしつつ、互いの弱点を指摘している。 そう。ロッテは防御が、クララは速度が……今の弱点と言えるだろう。 無論、それらを補う為の装備・戦術は“EL DoLL”に組み込む予定だ。 む、『なんだそれは』だと?魔剣に併せて私が作成する物の一つだな。 「こうして問題点が出てくれば、設計もしやすいですねマイスター」 一つは弟二世代型補助アーマー“シルフィード”、胸のあるドレスだ。 更に魔剣補助の中核となるアーマーシステム……そして設計上は余裕が 産まれる左腕に装備する、サブウェポン。これで弱点補完を行うのだ。 後、基本装備の補強も“EL DoLL”に含まれているプランの一つだな。 「有無……だが、いいのか?お前だけそう言った事が出来ぬままに」 「はい。ただ修行してるだけじゃ、エルテリアは認めてくれません」 「と言っても、未だ封の解けぬ剣を抱えて戦うというのか……午後」 「……それ位してないと、ロックを解いてくれる気がしないんです」 そう。アルマの魔剣……エルテリアは内部のスキャン画像で大凡の構造は 把握出来た。だが、未だ一度も鞘のロックが外れた事はないのだ。破壊を 以て解き放つ事は可能だが、それは琥珀嬢への冒涜になる。そこまでして 魔剣が力を貸すかについても、疑問が残るしな。やるしかないのだろう。 「分かった。“Valkyrja”に“SSS”を搭載した状態で、やってみろ」 「有り難うございます、マイスター!……絶対、認めさせるんですから」 そして昼は過ぎ……あっという間に予定時刻がやってくる。午後からは ロッテがHVIFの当番日となっている。つまり私と葵の二人連れで、 アキバの神姫センターへと赴く事になる訳だ。この場合クララは、葵の 所持神姫として同行する事になる……“あの時”とは逆の立場なのが、 少々可笑しくもある。葵用の“フィオラ”を着せてやり、お出かけだ! 「しかし、梓の時も似合っていたがロッテ……葵もなかなかに似合う」 「もう。そんなに褒めても。何も出せないですのお姉ちゃんってば♪」 「でも着心地は神姫用の方が、やっぱり馴染むんだよ。ボクらにはね」 「それは仕方があるまい。お前達は何処まで往っても“神姫”なのだ」 「人にはなれないし、なる必要もない……あたし達は自分の立場で!」 武装を着込みつつ肯くアルマに同調する。HVIFを使おうとも、それは 必ずしも人になったという意味にはなり得ない。だが、それでいいのだ。 ……等と少し考えつつも、腰のジョイントに魔剣の入った鞘を接続する。 今日はアルマの希望故に“Heiliges Kleid”は用いず、直接“SSS”を 装備してエントリーゲートへと赴く。対戦相手は……“ティール”だと? 「アルマよ、どうやら相手も白兵系の様だ。加減は要らぬ、全力で行け」 「えっ?あ……は、はいっ。頑張って、認めさせます……頑張らなきゃ」 アルマの反応が鈍い。どうも集中しきっていない様だが……まさか、な。 それはそうと“ティール”とはな……北欧神話にて片腕を魔狼に捧げた、 軍神の名前だ。なんとなく想像が付くが、それだけにアルマには手強い。 嫌な予感がするが、彼女を信じるしかあるまい。準備完了の合図を出す。 『アルマvsティール、本日のサードリーグ第25戦闘、開始します!』 「い、行きます……さぁ、出てきてくださいティールさんッ!!」 「……言われずとも、すぐ行く。せぁぁあああああっ!!!」 「え──────」 「いかん、避けろアルマッ!!?」 バトルフィールド……今回は、浮遊島だ……に転送された瞬間だった。 黒光りした巨大な剛腕が、アルマの胸元目掛けて打ち込まれたのだ!! 装甲が重くなっているアルマにとって、それは致死の一撃ともなろう。 “SSS”を盾にして、ダメージを殺すのがやっとだったな……だが。 「う、うぅ……」 「立て、それでもサードリーグを抜け出すつもりか」 「……い、言われなくてもッ!!」 ──────熱くならないで、見失わないで……!! 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/850.html
春爛漫とは、“全て”が花開く時 色々と一段落し、我がMMSショップ“ALChemist”にも平穏が戻ってきた。 忙しさで気付かなんだが、あっという間に春ではないか。季節が巡るのは 実に早い物である。となれば、これを楽しまない訳には行かないだろう。 何せ、四人で春を迎えるのは初めてなのだぞ。季節の変わり目故なのか、 ロッテは勿論、アルマとクララも何処か落ち着かぬ……そうと決まれば。 「皆、今日は少々遊びに出かけぬか?店も幸い、定休日の事だしな」 「お出かけですの?!春ですし、わたしは公園に行きたいですの♪」 「えっと、そうですね……そう言えば、そろそろ桜が咲いてますよ」 「……ボクらは、何時でも出られるよ。マイスターも、準備して?」 ……落ち着かない所か、既に私・槇野晶の考えは見透かされていたか。 彼女らは隠しておいた外出用衣装を、めいめいに引っ張り出してきた。 そうと決まれば、私も着替えねばな……見たら首をへし折ってやるぞ? 自室に戻って、クローゼットから衣装を何着か出して鏡に翳してみる。 そうして私が難儀している間、外から黄色い声が響いてきたのだ……。 「それにしても、昨晩の内に躯を磨いておいて正解でしたね、皆ッ」 「……うん、今日辺り来ると思った。それにしても、二人とも綺麗」 「きゃっ!?クララちゃん、そんなところ触っちゃだめですの~!」 「ふぁうんッ!ろ、ロッテちゃんもドサクサに紛れて……このぉっ」 「んっ、んん……!ちょっとじゃれただけなのに、赦さないよっ!」 ──────な、何も聞こえないっ。何も聞いていないぞ、私はッ!? 決して振り向かない様にしつつ、手早く身支度を整える。白色の服だ。 丸い眼鏡を掛け直しコードタイをきっちりと締めて、ベレー帽を被る。 普段の白衣姿を彷彿とさせつつも、可憐さで明確に差が出るスタイル。 春らしく、あの“三姉妹”もパステルカラー系に合わせるだろうしな。 「なぁ……もう良いか三人とも?迂闊に振り向けない気がするぞ」 「うん、もうとっくに着替え終わったよマイスター……真っ赤?」 「う゛、煩いっ!振り向くぞ!!……お、おお。これは可憐だッ」 「な、何言ってるんですかマイスターっ?!恥ずかしいです……」 「マイスターは褒め上手ですから♪全く、しょうがない人ですの」 三人はそれぞれ空色と薄桃色、そして萌葱色のコーディネイトである。 そのパーツ構成は三人とも個性を反映してか、スカートの丈から違う。 更に言えば、私が選んだジャケット風のそれとも似ていない……見事! 「ふーむ、しかしお前達も随分着こなしが良くなったな。流石は“妹”」 「マイスターの教えが有ってこそですの、わたし達も研究してますけど」 「……それに、外に出る事もどうしても多くなってきたし。気になるよ」 「HVIFで人間のお洒落を研究して、神姫用にアレンジしてるんです」 「そうか、アレも人の姿だからな。テストには丁度良いかもしれん……」 そう言いつつバッグを手に、私は“妹達”を両肩と胸の谷間に入れる。 ……今『谷間?』とか言った奴、背骨ごと粉砕するからな。覚悟しろ。 無論素肌ではなく、ベストとブラウスの間だ。変な期待をするなッ!! ともあれシャッターをしっかり施錠し、私達は颯爽と電車に飛び乗る。 無論途中のコンビニで食料品等々を調達するのも、忘れてはいかんな。 「さあ、各々好きな食べ物を買うのだ。但し、食べすぎはダメだぞ?」 「はいですの♪このジュースと、サンドイッチ……クララちゃんは?」 「このキムチおむすび……は止めるよ。辛い物は、ボクだけだからね」 「ほっとしました~……じゃああたしは、このフライポテトにします」 「私はこれとこれにするか。店員、会計を頼む……って何だその顔は」 あからさまに不審な目を向ける店員が、私の身分証明を求めてきた。 それを無事確認した後、普通に会計をしてくれたのだが……何故だ? まあ、無礼講であるしそんな事を気にしても始まらん。荷物を持って 電車を乗り継ぎ、私達は都心の大型公園に辿り着いた。そこは……。 「ぅわぁ~……桜の花弁がいっぱい舞っていて、綺麗ですの~……♪」 「あ、梅もあるよ……こっちは散りかけだけど、良い香りがするもん」 「花って、こんなに綺麗なんですね……この街に、まだあるなんて!」 「壮観だろう。この東京だって、まだまだ棄てた物ではないのだぞ?」 暖冬故なのか、今時の桜や梅は結構早い時期に開花する。丁度満開が 今日だ……私が調べてなかったとは言わない。しっかり知っている。 ともあれ季節が早まっても、まだまだその可憐さは比類が無いのだ。 若干混雑していたが、運良く私達は桜の下にあるベンチを確保した。 「よし、広げ終わったな……では、乾杯といこうか。乾杯ッ!!」 『かんぱ~い♪』 各々が選んだ好きな飲み物を……“妹達”はお猪口に移して……乾杯。 乾いた音が春の公園に響き渡って、私達は景気よくコップ等を空けた。 ……む。なんだこの匂いは?アルコールの様な……ってあああぁっ!? 「待てロッテ!お前が飲んでいるのは、カップ酒ではないか!?」 「はえ?……大丈夫ですのマイスター♪ちょっと暖まりますけど」 「そ、そうなのか?ならばいいのだが……迂闊だった、あの時か」 「人間とは違って、アルコールが作用しないから……なのかな?」 クララの分析通り、いくら“食事機能”とは言えど人間と寸分違わぬ 効果を発揮するとは限らない……のかもしれん。だが彼女の顔には、 人間と違って何も変化が出ない。これは、安心してもいいのか……? 「ねぇねぇ、アルマお姉ちゃ~ん……♪ちゅ~、ですの……♪」 「むぐっ!?んん、ちょっとロッテちゃん。皆見てるよッ!?」 「待てぇっ!?やっぱりロッテ、お前酔っているだろうッ!!」 「そうですの?なんだかドキドキしちゃって、皆が大好きで♪」 「ロッテお姉ちゃん、落ち着いて……ん、んぷっ!?ふぁ……」 ……前言を撤回する。一部だが、アルコールは神姫に影響する様だ。 しかも、ロッテめ……普通の人間が酔っているのとは違って、単純に 気分が高揚し、なのに理性が保たれている……これは個別ケースか? 数分程ロッテの昂揚状態は続き、そしてあっけなく収束してくれた。 無論ロッテのカップ酒は没収して、宴会中のオヤジにくれてやった。 「しかしまさか酒類に弱いとは思いもしなかったぞ、ロッテや?」 「ぅ、ぅぅぅ……ごめんなさいですの、みんな。胸が高鳴って♪」 「……確信犯ではあるまいな?まあいい、私達の宴会を続けるか」 「あっ。じゃあ、改めて乾杯しましょうか?はい、ロッテちゃん」 「折角の花を楽しまなくちゃ、もったいないもんね……行くよ?」 『かんぱ~いっ!!!!』 ──────貴女達だって、十分可憐な“華”だと思うよ。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1938.html
「分隊長、ちょっと…」「?」 ゼルノグラードがムルメルティアに話しかける。 「クレイドルに見知らぬMMSが寝ているのでありますが…」 「別に減る物でもないですし、そっとしておくべきですよ」 「しかし…」 「サイ、隣に居るナァダが気付かない訳がありませんし、何もしていないのならその子は無害という事ですよ」 「……」 「復唱は?」 「は! そっとしておきます!」 二人がそっとしておいたのが"怪物"だったと知るのは、暫く経った時であった。 無頼22「神姫のウェディング・ベル」 「何やってんだ?」 長瀬の自宅を訪れた南雲は、彼が作っている物に疑問を感じた。 三面の壁にステンドグラスらしきプレート、そして十字架。 サイズは12分の1と言ったところか。 「見て解らないのか? 教会のセットだよ」 「何でまたそんなものを? この忙しい時に」 「今度センターでウェディングコスチュームを販売する事になってな、それのPR用のポスターを作るためだ」 「ご苦労な事で。で?、モデルはいるのか?カメラマンは?」 「カメラマンは問題ない、被写体は…あいつらがいいかな?」 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 翌日、神姫センター。 「長瀬さん、私達を呼び出すなんて…何のご用でしょうか?」 メンテナンスショップに来たのは聖憐と光一。 「いや、零牙とマオをちょっと借りたいんだ」 「マオをですか、一体何するんですか?」 「撮影さ、まぁ奥に入ってくれ」 ~・~・~・~・~・~・~ 「教会かニャ?」 「うむ、教会だな」 休憩室に組み立てられた小さな教会のセット。 各アクセサリの揃った完璧なものだ。 「今度ウェディングコスを販売するに当たり、モデルになってほしい」 「我が!? 何故選んだ?」 「秘訣はセンター内で名が通っている事だな、だからナンバー1と2な君たちな訳だ」 「マオ、受けてやろうではないか! こんな機会などまず訪れないぞ」 「う…うん」 マオはセットと…零牙を見て考えた。 私が零牙のお嫁さん…? ここで扉を開けガタイのいい男が入って来た。 「君たちがモデルかい? いい写真が撮れそうだね」 「どなたですか?」 「僕は時報(ときほう)、フリーのライターさ。趣味が写真撮影だから祁音君に呼ばれたんだ」 眼鏡の奥に映る瞳は優しそうだった。 「ほら、衣装替えしますよ!」 ラスターとジュラが衣装を持ってやって来た。 「我に拒否権はないのか!? アッー!?解ったから!!自分で着るから脱がすなぁぁぁっ!!」 ……… 数分後、そこには見事な新郎新婦がいた。 零牙は白のタキシード、元々顔は中性的なだけに良く似合う。 ちなみに、豊満な胸はサポーターで抑えてある。 きゃーきゃー言いながら写真を撮りまくる聖憐に、顔を赤くしながら言った。 「主…止めてください、いや本当に。」 「いい! これはいいぞマオ!!中々似合っているぞ」 対するマオのウェディングドレスは、一般的なAラインドレス。色は淡い青。 「ささ! 撮影開始だよ!」 ~・~・~・~・~・~・~ …主の目線が熱い。 ついでにライトアップが原因で物理的にも暑い。 我とマオは牧師―ラスターである―の前で誓いの口づけを交す直前の体勢をとっていた。 マオの顔が近い、というか何だこの百合臭溢れる状況は。我は同性愛に興味など無いぞ。 「うーん、照明の光度をもう少し下げてくれないかな? …そこでストップ」 効果的な照明をセットするのに非常に時間がかかっている、モデル撮影は簡単ではないのだ。 「よし、行くよ。そのままの体勢を維持していてね!」 ようやく撮影か、長かった…。 「3…2…1…フラッシュ!!」 カシャ フラッシュと言ったが、ストロボは焚いていない。焚いたら意味がないからな。 「2枚目行くよ~! 3…2…」 後二枚ほどで終わる、そしたら窮屈なサポーターも気に入らないタキシードともおさらばだ。 ここで、本当に口づけをされた。 我の時間が止まった。 ~・~・~・~・~・~・~ 「フラッ…ああっ!?」 カシャ 突然の事に時報は言葉を失った、でもしっかりシャッターは切っている。 「き、きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」 聖憐が悲鳴をあげて連続撮影を行う。 長瀬と光一は完全に凍結している。 「な…なななななっ!?!??」 突然の事態にようやく我を取り戻し、マオを突き飛ばす零牙。 「なな何をする!? キスの予定までは入っていないぞ!!?」 「……」 マオは答えなかった。 「あらあら、これはひどい」 「本当に口づけするなんて…」 ラスターとジュラも、唖然とするばかりであった。 「……零牙が欲しくなったの…」 マオはそっと、呟いた。 数日後。 「だぁけど、ルルルル…」 呑気に「俺の忘れ物」を歌うのは形人。 風間との待ち合わせでセンターに来たのだ。 「WAWAWA忘れ物~俺のw…のぅわっ!?」 谷口のようなポーズで硬直する形人。 「どうしたの? 形人」 「いや…、このポスター見てみ」 「……? のぅわっ!?」 ヒカルも硬直する。 「…何してんだ二人揃って?」 「誤解を招く場面に遭遇したカンジですね」 風間がやって来た。 「風間…これって、零牙とマオだよな?」 「…言われてみればそうだな。モデルやってるなんて聞いていないぞ」 一同が見たポスターには、ちょっと見では判りずらいほど華麗な二人の姿があった。 「きれい…でもあの二人ってあれな関係じゃないよね?」 「そうだと思いたいが…まさかな」 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1413.html
そして姫を護る、神竜へ(後半) 暢気にじゃれ合う竜達を横目に、アルマ達三人の神姫は己の服に新たなる パーツを付け足していく。まずは“セイクレール”だ。大柄のケープに、 長手袋とブーツ。そして、四肢に嵌め込む“リング”で構成されている。 ケープの留め金には、“階級章”を用いたペンダントヘッドを流用する! これで“シルフィード”標準装備のロザリオを併用出来る、という訳だ。 「流石マイスターなんだよ、デザインも色味もボクらにぴったりだもん」 「“シルフィード”のデザインも殺さないですしね、良い感じですっ♪」 「後は、この盾を利き腕の逆に嵌めて武器を持って……出来ましたの~」 「よし!では早速、見せてやれ……私もそうだが、何より彼女らにな?」 『グオオオォォンッ♪』 待ちこがれたッ!という感じの“プルマージュ”達が一斉に飛びかかる! そう、彼女らは全機飛行能力を備えている。“霜天龍ウィブリオ”は特に 空中戦志向だが、他の二機もそれなりの大推力を持って飛翔出来るのだ。 対する神姫達の姿は、“レーラズ”の姿とも違い非常にスタイリッシュ。 一方で少女らしい可憐さも忘れておらず、“竜と騎士”の対比……と共に “竜とお姫様”の対比も象徴している。後は、それらに見合う“竜”だ! 「もうウィブリオってば、そんなに待たされて不安だったんですの~?」 『キュィィッ……!キュイイ、キュィッ!』 「ん……そんな絡みつかれるとボク苦しくなりそうだよ、リンドルムっ」 『クルルッ、クル!クルルッ!』 「ファフナーも、落ちついてくださいってば!突進しちゃダメですっ!」 『グァウウッ!グァッ!』 ……その成果は遠くに見えていた、が。私はその考えを一瞬で改める。 何故か、だと?私の足下をうろつく、三つの“機影”が見えたのでな? 作業台の方を見れば、クララが案の定後手に“ヘル”を用意していた。 そして、その時は訪れる。力を振りかざすファフナーの突進が契機だ! 『きゃああああああっ!?!!』 『グァ……?アアアッ!?』 『クル!?クルゥウッ!?!』 『キュィィイーッ!!』 その優しさに欠けた一撃で、クララは無論ロッテやアルマまでが跳ねた! 軌道は大きく放物線を描き、三人は『一塊りとなって』台から落下する。 ──────そこからは刹那。気高き“竜の魂”は、危急を見過ごさぬ! 『キュ、キュィィィィーッ!!』 『クルゥンッ!クルルルゥッ!?』 『グァオンッ!!』 最初に動いたのは、スピード特化の“ウィブリオ”。彼女は“本能的”に 翼をはためかせ、作業台の下へと飛翔したのだ!それを、波打つ様にして “リンドルム”が追い掛け、最後に“ファフナー”が走って飛び降りる! 全ては、己の未熟で危機に陥った“護りたい者”を救い出す為に……だ。 「きゃうっ!……“ヘル”の反動、じゃないですの。これってまさか?」 「そのまさか。みたいだよ。危険を冒して一芝居打った甲斐があるもん」 「失敗してもいい様に“アルファル”は呼んでおきましたけど……ふぅ」 そして、その志は実った。三機の竜は、己の躯を張って落下せんとする 神姫達を見事受け止めたのだ!尤もクララが咄嗟に張った“ヘル”で、 床への落着はしない様に細工が施されていたし、万一の場合でも床下に 隠れていた“アルファル”がキャッチする手筈になっていた様だがな? 『キュィ、キュイッ!?』 「ええ、もう大丈夫ですのウィブリオ♪やればちゃんと出来ますの~♪」 『Yes,sir(評価出来る仕事です)』 『グゥゥゥ……』 「えと、しょげないでくださいファフナー。助けてくれましたし、ね!」 『No problem(これなら心配は無いようです)』 『クルルル、クルルッ』 「甘えるだけじゃなくて“役”を果たす……出来るかな、リンドルム?」 『Ja(問題ないでしょう)』 下手すれば自らの破損さえ有り得た荒療治だが、本能を刺激する意味では 大いに効果があった様だ。事実、“竜”達は先程までと全く違った動きを 見せている。未だ覚束ぬ所はあるが、しっかりと主を背に乗せて飛翔した その動きから無駄や迷いは凡そ消え失せ、“竜の威厳”の片鱗が見える。 「しかしここまで“プルマージュ”達に“本能”が宿るとはな。意外だ」 「やって出来ない事はないですの!この娘達もわたし達も、そして……」 「……マイスターだって、“アルファル”達だってそうなんだよ?うん」 「だから、第一段階はクリア。もっと絆と経験を深めていくんですっ!」 『グォォォンッ!!!』 皆の殊勝な態度に、私はある部品を取り出した。本来ならばもう少し後で ロッテ達三姉妹に与える筈の物……それは、半透明のプラスチック片だ。 “階級章”を嵌め込んだペンダントを覆う様に装着する、ハードカバー。 更に、このカバーには“コレ”と同じ意匠の“紋章”が刻んであるのだ。 私は“それ”を……常時首から下げて服に隠している物も、取り出した。 「マイスター、これは……“階級章”のカバーですの?でもこの印……」 「そう、このペンダントを模した“剣の紋章”だ。以前も使っていたぞ」 「え?……あ、旧バージョンの“W.I.N.G.S.”で使ったペンダント!?」 「その通りだアルマよ!これは私の宝なのでな、是非復活させたかった」 「……マイスターと改めてお揃い、って事になるのかな?嬉しいんだよ」 「照れる事を言うなクララッ!さ、“竜”達との訓練を見せておくれ?」 『はいっ!!!』 『グォォォンッ!!!』 ──────深まる魂と心の絆、その果てに何が見えるのかな? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1519.html
神姫ちゃんは何歳ですか?第二十八話 天使の舞い降りた夜 書いた人 優柔不断な人(仮) 「おーい香田瀬、悪いけどコレを運んでいってくれ」 商品開発を終え、割と暇な年末を過ごしていると不意に営業の富士田部長からお呼びがかかった 技術部と違って営業部は戦場のような忙しさだった これから年末年始にかけ、各店舗では大規模なセールが行われる 今日日、在庫一掃セールだけでは客は来ないので、新商品や定番商品なども大量に店頭に並べる必要がある その為、我が社としても大量に発生する受注を処理しなければならない 基本的には取引をしてる運送屋に依頼するのだが… 「…全く。なんで伝票を見落とすんだ!…」 どうやら、午後の発送が終わった後に伝票が出てきたらしい 「すいません、白雪関連の伝票だったもので、分けておいたのですが…」 営業の新人が言い訳するも 「置き忘れてどーする!…全く、近くだから良かったものの…」 と一喝される 「まぁ、富士田部長、そのくらいに…彼もまだ慣れてないのですから」 「すまんな香田瀬、そういう訳でコレを『エルゴ』まで運んでいってくれるか?」 と言って俺に小さな箱を渡す富士田部長 「白雪用の補修パーツですね」 「夕方に引き取りに来るそうだ。まだ時間はあるが、道も混んでるだろうし、気を付けてな」 「分かりました、行くぞユキ!」 俺はユキをナビシートに乗せ、車を走らせた ユキのナビゲーションにより(といっても、GSPやVICS等から受けた情報をユキが教えてくれるのだが)比較的すんなりとエルゴに辿り着いた といっても、店の近くは渋滞しており、少し離れたコインパークに車を停めたのだが 「こんにちわー」 「あら、いらっしゃい」 迎えてくれたのはこの店の看板娘のうさ大明神様だ 「誰がうさ大明神ですか」 「心を読まないでくださいよジェニーさん。それより、頼まれてた物を持ってきました」 「それじゃあ、中身を確認しますので、開けていただけますか?」 俺は、ジェニーさんに言われた通りに箱を開ける 「…っと、はい大丈夫です」 ふよふよと浮きながら中身を確認するジェニーさん …いつ見てもシュールだ 「それじゃ、ハンコお願いします」 「わかりました、よいしょっと」 ぽん 伝票の上に着地するジェニーさん 再び浮くと、そこに判が押されていた 「確かに。有り難うございました」 「こちらこそ、急な発注でごめんなさいね」 「それにしても混んでますね」 さすがにシーズンなだけあって、店内は混雑していた 人も、神姫をクリスマスという事で楽しい気分になっているようだった ささやかながらも装飾された店内が、その気分を一層盛り上げてるようでもあった 「そうなのよ。売り上げも好調で、在庫が足りなくなってきそうだから、他にも色々追加で発注したのよ」 「日暮さんも無事に新年を迎えられそうですね」 元々ジェニーさんと二人でやっていたこの店も、いつのまにか自称オーナーの高階さんと彼女の神姫のオウカちゃんが増えて賑やかになっていた 「すごい賑やかになりそうですが…」 困った口調とは裏腹に、嬉しそうな顔のジェニーさん 「楽しそうですね」 「あら?香田瀬さんも大変じゃない?」 「そうですね」 「そっちも楽しそうじゃない?」 「そうですね。楽しみです」 等と話してると 「ジェニーは~ん、何時までもサボってないで、はよレジ打ちに戻ってや~」 「すいませんジェニーさん、引き留めちゃって」 「いえ、いいんですよ」 「それじゃあ俺はこれで。ユキ、帰るぞ」 俺は店内のスペースで他の神姫達と話していたユキを呼び寄せた 「あ、はーい。それじゃ、またね」 ユキが神姫達に別れを告げた後、俺達は店を出た 「うわ、変わってねぇ…」 あいかわらず駐車場は満杯、外の道も渋滞が発生していた 「離れた所に停めてよかったね…」 「そうだな…」 うっかり店の前まで来てたら出られなくなるトコだった 見れば遠くに運送屋の人も見える 俺達のように離れた所に停めて荷物を店まで運ぶようだが… 「重そうだね」 神姫のパーツだけだった俺達と違い、彼らが持っているのは大きなダンボール箱であった 箱にはラインバレル・ロボティクス社のロゴが入ってる 「神姫のフルセットか」 俺達は狭い車の隙間を歩いてくる運送屋をやり過ごす為、その場で待っていた しかし ブロォ~ン! 脇道から、一台のスクーターが飛び出してきた 「うわっ!」 ダンボールで死角となり脇道が見えなかったのか、運送屋が気づくのが遅れた 「やべっ!」 慌ててブレーキレバーを握り、急停止をするスクーター キキーッ さらに車体を倒し避ける ドスン ギリギリ当たらなかったものの、驚いた運送屋は倒れてしまった。そして… ガン! 持っていたダンボール箱がガードレールへと当たる バラッ ダンボールが破れ、中に入っていた黄緑と朱色の箱が飛び出し、イルミネーションが施されている民家の塀に当たる グサッ! 箱は二つ共、もっとも薄いウインドウ部分にプラスティックの星が当たる バチィッ! 電飾がショートし、切れる プスプスと音を立て、焦げた臭いを立てる二つの箱 「なんや?何があった…」 「来ちゃダメだ凛奈さん!」 物音を聞き店の外を窺おうと出てきた凛奈さんに俺は叫んだ 彼女にはこの光景を見せたくなかったからだ いや、神姫には見せたくなかった 出来るならユキにも見て欲しくなかった 何故なら 神姫が産声を上げることなく『死んだ』瞬間だったからだ 「すいません、ウチの方で弁償しますので…」 ペコペコと頭を下げる運送屋 結局あのままスクーターは逃げてしまい、運送屋は日暮さんに平謝り 目の前には焦げた箱が二つ並んでいる 金銭面の問題はカタがつく。運送屋もこういう時のために保険に入ってるのだから しかし、心情面での問題は… 『もし、こんな事にならなければ、どんなオーナーの元へと行ったのだろうか?』 ふとそんな事を考え、彼女達を見る 外装スキンの一部は溶け、内部骨格まで見ている ティグリースの方は右腕が、ウィトゥルースの方は両足が砕け、痛々しい 頭の方はこんなに綺麗なのに… ふと、技術者としての俺がこう考える 『まだ、直せる』 「ねぇ…お兄ちゃん…」 ユキの声に我に返る 「…なんだ?」 「この子達、直せないのかな?」 ユキも同じ事を考えていたようだ そんな俺達の会話に運送屋が割って入る 「直すって言ってくれるのは嬉しいですが、傷物になっちゃ売り物にはなりませんから…」 「いや、そういう事じゃ無いんだ」 「へ?」 俺の返事に戸惑う運送屋 「日暮さん、この子達を俺に売ってくれ」 「センパイ!こっちです!」 日暮さんを説得し、二人を引き取った俺は大急ぎで会社へと戻った 商売人として壊れた神姫を売ることに難色を示していた日暮さんだったが、思いは俺と同じなのか最後には応じてくれた ちなみに原価で譲ってくれると言ってくれたが、丁重にお断りして定価で売って貰った。安く譲って貰うと、彼女達がまるでジャンク扱いでもされるようだったからだ 勿論、日暮さんにそんな意図はないのだが 戻る途中、ユキに皐月へ連絡して貰い、緊急手術の準備をして貰っていた 「皐月、準備は出来てるか?」 「勿論です。ラインバレル・ロボティクス社の方からもデータが届いてます!」 一見無事に見える頭部だが、電気ショックを受けた為、データが飛んでしまっている可能性が高い。したがって、失われてしまったデータを再入力する必要があった 本来、神姫の根幹プログラムのデータは非公開である にもかかわらずこうして寄越してくれるのは、水那岐部長のおかげだろう 「本体の…方も…準備…出来て…ます…」 そう言って水那岐が二つの箱を差し出す 中に入ってるのは、来春発売予定の新型素体『タブリス』だ 『自由意志の天使』の名が付けられたこの素体は、先頃発売されたMMS2ndをベースに、白雪で培った技術を投入し、さらに武装神姫規格のパーツをそのまま使う事が出来るように改良された物である スペック的には通常素体と白雪LMとの間くらいだが、価格は2神姫程にまで下げる事が出来た 「まずは、損傷箇所のチェックからだ」 俺は二人をスキャン装置へとセットする 少しの時間の後、二人のダメージ状況が表示される …やはり状況は真っ赤だ 砕けた手や足は勿論、電撃に晒された本体も内部に大きなダメージを受けていた 「…でも…CSC関連は…なんとか…無事です…コアユニットは…内部に…物理的な…損傷は…ありません…」 しかし、さすがに中枢部は幾重にも保護が為されており、中枢部のダメージは無いとは言わないが思った以上に軽微だった さらにコアユニットに至っては、素体換装をする人もいるため、クレイドルでセットアップを始めるまでは仮止めのみで接続自体されていないのだ 「起動してなかった事が幸いしてますね」 起動していなかった為、過剰な電流が流れずに物理的な被害が最小限に押さえられたようだ もっとも、起動していればこんな事にはならなかったのだが 「これなら、修理すれば問題は無い。あとは頭部の方だな…」 俺は頭部を取り外し、模擬体へと接続する これは本来、初期不良が無いかをチェックする為の物である。コアユニットを作っていないウチの会社だが、白雪のセットアップで神姫を組み立てる場合も多い その場合には、各社からコアユニットとCSC中枢部、武装一式を直接取り寄せて組立て、お客様に発送するのである 「さて、内部のエラーチェックはっと…」 『感情プログラム・エラー、言語プログラム・エラー、バトルサポートAI・8,12,32エラー…』 「さすがに、半分が飛んでるか…」 消えたデータを修復すべく、送られてきたデータを入れようとディスクを探してると… 「あのねお兄ちゃん、ちょっと提案があるんだけど…」 ユキが俺に話しかけてきた 「ん?どうしたユキ?」 「あのね、その壊れちゃったデータ、私から直しちゃダメかな?」 「私からって…自分のデータをコピーして入れるってのか?まぁ出来なくは無いが…」 「ううん、そうじゃなくて、私が直すの。二人の中に入って、教えてくるの」 「…つまり、二人とユキを接続して、デバックしてくるって事か?さすがに無茶だ!一人で二人分のデバックをするなんて!」 ユキの無茶な提案を俺は止めた ユキの体は高性能な白雪のテストモデルだが、コアユニットそのものは普通の物だ。そんな高負荷かけたらどうなるか分かったモンじゃない 「一人じゃなくて、みんなでやればいいのだ」 声に振り返れば、4人の小さな人影があった ミチル、ムツキちゃん、花乃ちゃんにひじりんであった 「あ、あの…健志郎さん、私も頑張りますから」 「私はまだ他人のデバックが出来る程の経験はありませんが、みなさんをバックアップ致します」 「ひじりんも、みんなのお手伝いをするよー」 「ケンシロウ、ここで皆の申し出を袖にしては男が廃るぞよ?」 「みんな…思いは…一緒です…」 「そうですよセンパイ。みんなでこの子達を助けましょ!」 「みんな…有り難う…よし、必ず助けるぞ!」 『おー!』 と言う訳で、コアユニットのプログラム修復はユキ達神姫組が、素体の修復は俺達が行う事にした CSC中枢部の移植は俺が、それ以外の所は観奈ちゃんが行い、それを水那岐と皐月がサポートする 神姫組は模擬体とユキ、ミチル、ムツキちゃんを接続し、外から花乃ちゃんとひじりんがモニターをする 「よし、出来た。ティグリースの方の仕上げを頼むぞ」 「…センパイ、その呼び方辞めません?」 「…は?」 「名前ですよ名前!ちゃんと付けてあげないと!」 「…そうだな。実は考えてあったんだが、セットアップ時じゃ無いとマズイかなって」 「別に…セット…アップ時…じゃなくても…いいんですよ…」 「そうじゃな、ここはやはり、ちゃんとした名前で呼びたいものじゃ」 う…なんか非難されてる俺? 「えーコホン。ティグリースは『ティール』、ウィトゥルースは『ファロン』だ」 「ティールちゃんに」 「…ファロンちゃん…」 「可愛い名前なのじゃ。花乃、火蒔里、ミチル達に教えてやるのじゃ」 「分かりました」 「りょーかいっ!」 「…なんで今?いや別に良いんだが、ユキ達も大変じゃないか?」 「デバックする時には、相手の名前を呼んで上げた方が落ち着くのですよ」 「まぁコレは神姫特有のものだから、ケンちゃんは気にしなくていいよ」 「うーむ、そういう物なのか…っと、ファロンの方も出来たぞ」 「センパイ、早いですよ~」 「まぁこっちも頼む。俺はもう一つやらないといけない事があるんでな」 「もう一つって?」 「コレさ」 と言って俺は作業台の上に壊れたパーツを並べる 「コレって、二人の武装?」 「その通り。真鬼王も直してあげないとな。コッチはデータが飛んでても、神姫から写す訳にはいかないし。ついでに強化もしておこうと思ってな」 「ふえ~、見てる間に分解されていく…さすがセンパイ」 「皐月殿!こっちを忘れては困るのじゃ」 「あっ!ゴメンゴメン…」 こうして、体の方の修理は順調に進んでいった 闇 そこにはただ何もない空間が広がっていた いや、二つの光る物が寄り添っていた 一つは右腕を失った人影。もう一つは両足を失った人影 泣きそうな表情で辺りを窺っている そんな二人に三つの光が近づいた 「あう…」 「もう大丈夫だよ」 光の一つが話しかけてきた その光は人の形へとなった ユキであった 「そっか…話すことが出来ないのだったのだ」 もう一つはミチルに 「でも、私たちが教えてあげます…色々な事を…」 最後の光はムツキへと 「さあ、おいで。ティールちゃん、ファロンちゃん」 二人に手を伸ばすユキ 「え…あ…う…」 「そう。あなた達の名前」 右腕の無い方に向かって 「貴方がティールちゃん」 足の無い方に向かって 「貴方がファロンちゃん」 二人は差し伸べられた手をしっかりと握り 「えう…ちーる…?」 「…はろん…?」 答えてくれた 「これから二人に、色々なことを教えてあげるのだ」 「だから。もうちょっとだけ頑張りましょ」 三人の呼びかけに、二人は顔を見合わせた後 「「…うん!」」 力強く、満面の笑みを浮かべて答えてくれた それと同時に、暗闇に一つの光が現れ、辺りを強烈に照らし始めた 「うーっ、大丈夫かなぁ…」 夜、二人の修理は無事終わり、あとはセットアップをするだけとなった 「センパイ、落ち着いてください」 「…そう…ですよ…診断も…異常なし…なのです…から…」 「そうだな、よし!起動するぞ…」 キーボードを叩き、起動プログラムを実行する 最後に本体の診断プログラムが作動し、チェックを行う 『各部問題無し。これより、セットアップを実行します。貴方がオーナーですか』 「ああ、俺が君たちのオーナーだ。名前は香田瀬健四郎」 『了解しました。それで、オーナーの事は…』 ホっと一安心 「パパと呼ばせて戴きます」 「親父と呼ばせて戴きます」 …はい? 「ちょっと待て!ここは「何とお呼びすれば宜しいのですか?」じゃないのか!?」 そんな俺の言うことは無視して目を閉じる二人 そして再び開いたとき、生気の籠もった目で俺を見つめ 「この度、私をお買いあげ戴き有り難う御座います、私は寅型MMSのティールと申します。これからよろしくお願い致します」 「よっ!あたいを買ってくれてサンキュ!あたいは丑…まぁ見りゃ分かるか。名前はファロンってんだ。ヨロシクな!」 ぽかーん 呆気にとられる一同 「…おかしいですね、デバック時に名前で呼んでも、セットアップ時には忘れているはずなのですが…?」 どうにか正気に戻った花乃ちゃんが言った 「なんで、名前知ってるんだ…?」 「え…そういえば、まだ名前付けて戴いてませんでしたよね…?」 自分の発言に驚くティール 「まぁいいじゃん、細かい事は。んじゃ変える?」 笑いながら答えるファロン 「いや、その名前で良いんだが…」 「ほっ…良かったです。なんかこの名前、とても大切な気がしたので」 「だな。あーは言ったが、実際変えるって言われたらどうしようかと思ったよ」 「大切?」 「ええ。とっても大切な名前です。私たち、夢を見てのです」 「夢?」 不思議に思って訪ねてみる 「…突然まばゆい光に包まれたかと思ったら、深い闇に飲まれそうになって、手をのばそうと思ったら右手が無くて、隣でもがいてるファロンも両足が無くて、だんだん意識が遠のいていったのです」 これってまさか… 「そしたらさ、あたい達を闇から救ってくれたおっきな手があったんだ。とても大きくて、とても暖かい手が」 「その後に現れた光が、私達に名前をつけてくれたのです…そんな夢」 この子達…覚えてるのか? 起動して無くても、自分の身に起こった事を… 俺は二人にそっと手を添え、こう言った 「これからヨロシクな」 「はい…この手…暖かい…」 「ああ…この手だ。あたい達を助けてくれたのは…」 俺は泣いていた いや、みんな泣いていた よかった… この子達を助けられてよかった…
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2719.html
始めに目に映ったのは今にも崩れそうなビル群だった。瓦礫が至るところに散乱し、車が放置されている。ステージ『廃墟』だ。荒廃した都会をイメージされており、このステージは他のステージに比べて僅かに広い。さらに不定期に濃い霧が発生する。 (相手はアーク型、地上は危険) (あの大きいビルの屋上に行こう。あそこなら辺りを見回せる) 2時の方向に、一際大きなビルがあった。まずはあそこに行って、不意打ちの可能性を減らさなければならない。 武装を展開、そして相手の武装も確認する。 ハイスピードトライク型神姫、アーク。前が1輪、後ろが2輪のトライクモードになることが可能でその速さは神姫の中でもトップクラスの速さだ。その姿はトライク版のフォーミュラカーが一番近いかもしれない。 武装は少し大きなナイフが2本、アサルトライフルが一丁に大型ライフルが一丁。他には何もない。またしても純正装備だけだ。神姫は様々な武装が可能なのに、なんで純正装備だけなんだろう。もっとも、自分も純正装備だけだからそんなこと言えた義理ではないが。 (それでも、バランスが取れてるよね。近接武器がナイフ2本だけっていうのがこころもとないけど) (ナイフ1本で人は殺せるけど?) (物騒だからそれ) ともあれ、確かにクロスレンジではリーチの差でこっちが有利だ。問題は、速い相手をどうやって捉えるかと言うこと。 (路地に誘い込めばなんとかなりそう) (なるほど、その先が行き止まりならなおよしだね) そうすれば相手はナイフで応戦せざるを得ないはずだ。あとはこっちの腕次第。 (勝とうね、樹羽) (うん、勝つ) 上空にスクリーンが投影される。バトルの始まりだ。 『Ready…GO!』 スクリーンが消えたのを確認する前に素早くバイザーを降ろす。 (行くよ、樹羽!) (うん!) 大地を蹴るように跳躍する。私の体は重力に逆らい、上へ上へと上昇する。冷たい風が頬を切るこの感じ、これがバーチャルなんて今でも信じられない。 やがて目標のビルの屋上まで上がってきた。静かに着地し、辺りを見回す。幸いなことに霧はまだ発生しておらず、ステージを一望出来た。のだが…… (いない……) (赤いからわかりやすいはずなんだけどな) 大きい通りはもちろんのこと、小さな路地にまで目を向けたが、動く影すら見えない。 やがて霧が発生し、辺りの状況が掴めなくなった。これでは高いところに登った意味がない。 (下が全然見えない) (だね、こんなに濃いと飛んでも探せそうにないし……ん?) その時、どこかからうるさいエンジン音がした。どこから響いてくるのか、イマイチわからない。 (……この音) (間違いなく相手のだよね、でも、場所が特定出来ないよ) とにかくエウロスとゼピュロスは出しておき、いつ相手が来てもいいようにする。 静かだった廃墟に、やかましいエンジン音。なんだか、一昔前の暴走族を思い出す。 音が次第に大きくなっていく。相手が近い。やがて音は上から聞こえてくるように――。 (4時の方向! 上70度!) 言われた方向からは、エンジン音が響いてきていた。振り返る。見上げた場所の霧は、不自然に歪んでいた。 (っ!) とっさに右にサイドステップ。次の瞬間、さっきまで私がいた場所のコンクリートに、何かが3発跳ねた。 (ロックっ!) バイザー越しの風景に丸いサイトが現れる。そこにアークがいるのだ。霧が濃すぎて、辛うじて相手の赤い色がわかる程度。 相手のアサルトライフルのマズル・フラッシュで霧が歪む。 (くっ!) それを走って回避する。10㎡程しかないビルの屋上は走ってみると意外と狭く、すぐに端まで追い込まれた。 そこで空中に逃げると言う選択肢をすぐに取れなかったのは、あまりにもビルが高かったせいだ。人間、ビルの上から飛ぶにはかなりの勇気がいる。 一瞬の躊躇い。それがこの場合命取りとなる。 「はぁっ!」 霧の中からアーク型が突撃してきた。手には2本のナイフ。それをゼピュロスで反らすが、相手の勢いは消えることはなかった。 体当たりのような形で、私たちはもつれあいながらビルの上から落下。 「がっ!?」 落下しながら腕を取られ、さらに首を腕で押さえられる。力が入らない。足をばたつかせるがそれも効果なし。取られていない方の手を動かしても、相手のリアパーツをカツカツと鳴らすだけだった。 シリアがリアパーツをガチャガチャと動かしたり、バーニアを動かしたりしているが、僅かに体が動くだけで私が下であることに変わりはない。 私は上を向いているため、後どれくらいで地面に衝突するのかわからなかった。 その時、相手の力が一層強くなったかと思うと、不意に相手が私を解放した。だが次の瞬間には私を踏み台に後方へと跳躍し――。 私はアスファルトの上に落下していた。 バトルが始まると、あたしはビルの影に隠れた。このまま、霧が発生するのを待つ。 (姉貴、やっぱりガツンと正面から行かないかい? こうコソコソしてるのは性に合わないよ) (大丈夫だ、ちゃんと真っ正面から突撃するよ) 相手の射撃武器はランチャーしかないから、相手は近距離に近付きたいはず。あたしが思うに、たぶん相手は高い場所からこちらを探すだろう。飛んで探せば、こちらに発見される恐れがあるから、それはないと思いたい。 高い場所。この場合、あの一番高いビルだ。ビルの影からチラッと覗く。思った通り、灰色の背景にポツンと白と紫色の点が見えた。 (霧が出たら時間との勝負だ。いいかい、トライクであのビルを登るよ) 何を言っているんだと思われるかもしれないが、やって出来ないこともない。あの廃ビルは南に僅かに傾いている。私はビルの北。ビーダマを転がすと少しコロコロと転がる程度だが、それで十分だ。後は猛スピードで駆け上がるだけ。 (あと、サーリットカウルはMM付きのだよな) (そうそう、霧の中じゃあれじゃねぇと見えねぇからな) 楕円形のヘルメットパーツであるサーリットカウルには、いくつかカスタマイズしてある。MM(ミストマスク)もその内の一つだ。 霧の中では、視覚が役にたたなくなる。そうなると神姫のセンサー頼りになってしまう。それを避けるための装置だ。 この“霧”というステージギミックは、厳密に言えばプレイヤーの視覚を遮るようなフィールドが発生している。この装置はそのフィールドを無効化する効果があり、この装置を通して見れば、例え辺りが10cm先も見えない濃霧だろうと、非常にクリアーになる。 そうこうしているうちに霧が出てきた。さぁ、突っ走ろうではないか。 (やるよ紅葉!) (おうよ!) タイヤの付いたリアパーツが変形し、トライクモードに移行する。さらに大型ライフルであるシルバーストーンにジェネレーターを付け、前輪に合体させる。目指すはあの廃ビルだ。 けたたましいエンジン音が廃墟に木霊し、トライクは発進した。もう曲がらずに、真っ直ぐと。 廃ビルの下には、お誂え向きにジャンプ台になりそうなプレートがあった。そこを上がり、一気に加速する。 (跳べぇっ!) 跳躍。トライクは後ろの方が重いため、ビルの側面に平行に接触。全力で体重を前に傾け、落ちないようにする。ここが成功すれば、後は鯉の滝登り。相手という登竜門目がけて一直線だ。 機体が安定する。タイヤが回転し、あたしは壁を登り始めた。体重を前に傾けたままでいれば、ダウンフォースで機体は壁に張り付いたままとなる。 やがてそれは見えてきた。ビルの縁、ゴールでありスタートである場所。一気にラストスパートをかける。 そして機体は灰色の空へと舞った。 (ライフル!) 意識の中で叫ぶ。すでに機体は形を変え、元の状態へと戻っている。 手に赤いアサルトライフルが出現する。MMのお陰で相手の姿ははっきりと視認出来る。あたしはアサルトライフルを相手に向かって撃った。撃ちすぎると反動でまたビルの下に落下するから、少ししかトリガーを引かない。それでも3発は飛んだ。 相手はすんででそれをかわす。逃がさない。地面に着地。そこからアサルトライフルをセミオートで乱射。相手はちまちまと回避しながらビルの縁へと逃げていく。 そこに追いやられているとも知らずに。 (ナイフ2本!) 短い意志伝達。それだけでそれは相棒に伝わる。手にしたアサルトライフルは消え、代わりにナイフが両手に現れる。 右手のナイフを突き出しながら体当たり。さすがにナイフは反らされたが、勢いまでは殺しきれない。 あたしは相手を中空へと押し倒した。もうナイフは手にない。紅葉が回収したあとだ。 さらにあたしは右腕を相手の首に押し付けた。さらに左手で相手の右手を押さえる。このまま後は地面に叩き付けるだけ。 相手は足をばたばたと動かす。無駄なあがきだ。さらに左手を動かすが、こっちの足に付いた後輪をカンカンと鳴らすだけだった。リアパーツもガチャガチャと動いたり、スラスターを噴射したりするも、それも効果がない。 やがて地面が近付いてくる。このまま落ちればこっちもただでは済まないが、そんなもの承知の上だ。 相手を解放した後、その腹を両足で踏みつける。その反動でこっちは後方へ待避。向こうは成す術なく地面へと叩き付けられた。 廃と埃が辺りに舞う。相手はピクリとも動かない。 (ちっ、クリティカルはなかったか) だがしかし、ヒットポイントはかなり削れたはずだ。後はどうにでもなる。 (今のうちにライフルをリロードするよ) (ああ) 出現したライフルの側面から、まだ数発弾が入っている丸い弾倉を放る。そして左手に出てきた新しい弾倉をライフルに取りつける。 だんだんと霧が晴れてくる。あたしは相手が起き上がってくるのを待った。不意打ちはやるが動けない相手にトドメを刺すほど腐っていない。 (さぁ、起き上がってきな、樹羽ちゃん) 相手の指がピクリと動いたのを、楓は見逃さなかった。 全身が痛い。それはもう立ち上がりたくないほどに。 (樹羽、無事?) (シリア……体が痛い……) (わかってる、私も痛いから。立てる?) (なんとか……なりそう……) 膝を曲げ、ゆっくりと立ち上がる。頭がふらふらする。たちくらみが酷くて立ってるのがやっとだ。 (アイオロスは、大丈夫?) リアパーツであるアイオロス・リアウイングは先程の落下でかなりのダメージを受けたはずだ。動かせるかどうか怪しい。 (起動力が48%ダウン、スラスターの出力が42%ダウン、ブースター出力が82%ダウン。かなり絶望的だよ) やっぱりだ。となると、アルトアイネス戦でやったあの攻撃は出来ず、むしろ飛ぶことすら出来ない。しまった方がいいかもしれない。 前を見ると、相手は腕組みして待っていた。楓さんが容赦も仁義もない人だったら、今頃アサルトライフルで蜂の巣だろう。 (樹羽……どうする?) シリアが不安そうに聞いてくる。無理もない。こっちは満身創痍、相手は無傷だ。この状況で絶望ないし不安にならない人はいない。中にはこう言った絶望的な状況からの劇的脱出に喜びを覚える人種もいるらしいが、私はそうではない。シリアもまた同じだ。 (ノトスは無事?) これはレッグパーツのこと。レッグにも小型のスラスターが付いており、飛ぶことは出来なくても動くのを楽にする程度は動くのだ。 (出力は12%ダウン。損傷は軽微だよ) 地面に衝突した際、背中から落ちたため、足はそれほどダメージを負わなかったらしい。 なら、もしかしたらなんとかなるかもしれない。 (アイオロスはしまって。エウロスも……いい。スキロンも外して) ショルダーパーツのスキロンまで外す。つまり、ゼピュロスだけ残すのだ。 (……勝算はあるの?) (……ないとは言えない) うまくいけばイケる。ただし、その為にはまず相手とのインファイトをしなければならない。 (わかった。私は樹羽を信じるよ) 背中から重みが消える。両手に掴んでいた物も消える。驚いたことに、私はエウロスを放していなかったらしい。手首に付いたジョイントパーツにゼピュロスは装備されている。これだけで戦うのは、より相手に接近するためだ。エウロスは、少し長すぎる。スキロンは、肩の動きが阻害されてしまうから外した。 頬を軽く叩き、頭をはっきりさせる。その後構えを取る。相手もナイフとライフルを構えた。距離は、10メートルはあるか。 僅かな沈黙。今回は私から仕掛けた。 スラスターも使って相手に近付く。相手はアサルトライフルを乱射するが、サイドステップだけで回避する。数発、股や腕をかすったが、止まったらそれこそ終わりだ。 やがて相手はアサルトライフルをしまい、ナイフをもう一本出した。向かえ討つつもりだ。 互いに交錯する。ゼピュロスを突き刺すように打ち込む。しかし相手はそれをうまくかわす。相手もナイフを振るう。私はそれを身を捻って回避し、またはゼピュロスで反らしたりした。 そのうちの一発がこちらのバイザーを割る。今の一撃、もう少し力が強かったらやられていたかもしれない。 一進一退の攻防。だがそれも長くは続かせなかった。 相手のナイフを後ろへ下がってかわす際、わざと体制を崩す。相手はこれと言わんばかりに右手のナイフを突きだして―― (かかった……!) 左足を前に出しながら右足を引き、同時に左手を上げながらギリギリでそれをかわす。ブレストパーツに傷が入るが、それを今気にはしていられない。体重は、後ろへ。 上げた左手を一気に相手の手首へ振り下ろす。相手はナイフを取り落とし、体制が僅かに崩れる。 「なっ!?」 そして、引いた右足をスラスター全快で振り、相手の足を払う。体重はを前に出しながらだ。さらに右手も上げる。 最後に、見事に足を掬われた相手の首筋に向かって右手で手刀を決める。結果としてどうなるか。答えは相手は一回転する。 相手のリアパーツは大きく、後ろにタイヤが付いていて相手の体は地面から数十センチ浮かんだ状態になる。 (シリア、エウロス! レールアクション!) (わかった!) シリアがレールアクションを発動させる。私の体は相手の真上に移動する。右手にはエウロスが現れている。後は落下するだけ。スラスターもフルで入れて。 (終わりだ……) レールアクションを使ったから、ジャミングがかかり、相手は緊急バリアが使えないはず。 だから私が突きだした刃は その赤いボディスーツを 容易く貫いた 第七話の1へ 第七話の3へ トップへ戻る