約 5,047,647 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/535.html
戦うことを忘れた武装神姫 その22 ・・・その21の続き・・・ 「なぁ・・・お前らは、本当におっきくなっちゃっていいのか?」 「?」 久遠の問いかけに、怪訝な表情の久遠の神姫たち。 「ちっちゃいからこそ、出来ることがあると思うんだけど。なぁ、CTa。」 そのとき久遠に振られて、はっと気が付いた。 -なんで、あたしはちっちゃいもの研に入ったんだろう-。 「そう言われてみれば。」 シンメイが腕組みをして考える。 「うにゃー、にゃーは、やっぱりちっちゃいまんまでいいよー。」 と、ぐい飲みの日本酒を飲み干したエルガが言った。 「にゃーは、ちっちゃいからマスターとラヴーなの。 おっきくなったら、 マスターといっしょに出かけられない。 そうすると、マスターのお仕事の お手伝いができなくなっちゃうのダ。」 そういやエルガは最近、久遠の仕事でプレゼンのサポートするようになった とか言ってたっけ。。。 シンメイも続けた。 「大きな身体を頂けば、掃除やお料理で、マスターのお手伝いをすることが 出来るようになると思います。 ですが、そうすることであたしも多くの物 を失うことになりますし、マスターも失う物があるはずです。 たとえば、 あたしたちを『かわいがって下さる』事、とか。。。」 「そうなの。 おっきくなれば、もっといろんなことが出来るの。おっきく なって、お手伝いもしたいよ? でもね・・・シンメイの言うとおりなの。 にゃーは、やっぱりちっちゃいにゃーが好き。その方が、マスターはきっと かわいがってくれるの。」 「ですねぇ。。。 ちっちゃいあたしたちに一目惚れして、選んで頂いたん ですから。 ねぇ、マスター。」 「・・・その通り。」 久遠は2人の頭を撫でている。 「でもでも。」 エルガがさらに続けた。 「にゃーたちは、ちっちゃいままでイイっていったけど、きっとおっきな体 をほしがる娘もいると思うの。 本当に、マスターを助けたいって思ってる ひとも、いると思うよ? ねぇ、シンメイ。」 「私も同じ事を考えていましたよ。 それぞれの人間に、それぞれの進む道 があるよう、私たち神姫にも歩むべき人生・・・でいいんでしょうか、それ ぞれにあると思うんです。『神姫』として答えをひとつにすることは・・・」 「できません」 「できないにゃ」 2人は同時にあたしに向かっていった。 「ということだ。 なぁ、CTa・・・いや、木野羽よぉ。 思い出してみろ。 お前がちっちゃいもの研に入った理由を。」 -小さい存在だから、伝えられるものがある、だろ?- エルガとシンメイの小さな頭を撫でながら、久遠がぼそり呟いた。 -そうだ。 なんで、忘れていたんだろう。 こんなに大切な想いを。 -目前で久遠と飲んだくれているのは- -人と機械との垣根を低くした、小さくも画期的な存在- 「ん? どうした? そろそろ寝ゲロの時間か?」 「ばかたれ。 考えごとしていたんだよ。 ったく・・・いっつも寝ゲロを するわけじゃないっつーの。」 久遠の突っ込みに、テーブル下で軽くケリを入れながら答えた。 「痛ぇなぁ。。。 何も蹴ること無いだろ。」 「・・・久遠、ありがとな。」 「へ?」 「・・・何でもない。あーあ、なんか今日は酔えないなぁ。久遠、帰るぞ。」 「はいよ。割り勘でいいかな?」 と、久遠がエルガを持ち上げると、 「えー? にゃーはもっと飲む〜。」 名残惜しそうに徳利をつまみ上げようとするエルガ。 「エルガ、そろそろおひらきにしましょう。マスターもCTa姉様も、明日は 仕事なんですから。」 「ちぇー。」 久遠の頭にのぼったシンメイにたしなめられ、しぶしぶ久遠の胸ポケットへ 収まるエルガ。 その光景に・・・あたしの心は決まった。 「はは、いいモン見せてもらったし、いい話も聞けたし・・・今日はあたし がおごるよ。」 翌朝、まだ街が目を覚ます前。あたしは自慢の愛車(バイクだぞ)を飛ばし、 鳳条院グループのとある施設へ来ていた。フェレンツェ・カークランド博士 からもらった名刺の裏に手書きで記載されていた場所。。。 その門前にいる守衛に声をかける。始めは怪訝そうな顔をしていたが、博士 の直筆メモの入った名刺を見せると話は早かった。 あたしは、守衛に頼み、 ちっちゃいもの研の名刺と一通の手紙を渡してもらうようお願いした。 守衛は快く引き受けてくれた。あたしは丁寧に礼を言うと、おそらく二度と 来ることがないであろうこの施設に背を向けた。 ・ ・ ・ ・ ・ -親愛なるフェレンツェ・カークランド博士へ 先日は直々のお誘い、大変光栄に存じます。 ですが、誠に申し訳ありません。今回の件につきまして、残念なご返答を せざるを得ない結論に達しました。 博士の研究には、私も多大な関心を寄せております。 私が研究しており ます理論・技術の多くは、博士の取り組んでおりますHVIFに於いて、現段 階でもその多くが(HVIFのように、大型筐体であるならば)実現が可能と 思われます。 しかしながら私は、「小さきもの」での可能性を探ることが、私にとって 生涯の研究課題と思っております。 つきましては、HVIF計画への参加は、見送らせていただきたいと存じます。 ご期待に添えぬ回答となりました事、深くお詫び申し上げると共に、貴方 の研究がより一層の発展を遂げますよう、心よりお祈り申し上げます。 東杜田技研・小型機械技術研究製作部(ちっちゃいもの研) 主任研究員・工学博士 木野羽 さんご(Dr.CTa) 追伸:技術その他、相談にはいつでも応じます。その際、肩書きは無しで、 あくまで新規好きの一人として会っていただけると大変に嬉しく存じます。 ・ ・ ・ ・ ・ もう迷わない。 あたしの「道」はちっちゃい機械を極めること。 ちっちゃい機械が秘める「可能性」を追い続けたい。 だからこそ、この研究所に入ったんだ。。。 まだクルマも少ない国道を、アクセルを全開ですっとばす。 さー、早く出勤しないと。 溜まった仕事片付けないと、まーたヴェルナに ブチブチ言われちゃうからな。 おっと、ついでにロボビタンを買っていく かな。沙羅もお疲れの様子だし。。。 これでいいんだ。 あたしは、ちっちゃいもの研の主任、Dr.CTaなんだっ!! それに・・・。 神姫にあいつを取られたなんてなろうものなら、人間として失格だもんね。 <その21 へ戻る< >その23へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1961.html
戦うことを忘れた武装神姫 その40 時間はそろそろ18時を廻ろうとする頃。 紫色の初秋の夕暮れを背景に、色とりどりの灯りで飾られ浮かび上がる街。 行き交う人々も、クルマも、すべてが迫る夕闇の街に溶け込み、今日もまたあたりまえの景色を作り出していた。 そんな景色を切り抜く大きなキャンバスのようなショーウインドゥに・・・黒いバイクが風の如く映り込んだ。 今ではすっかり旧式となり、見ることも少なくなった久遠のバイク。 独特のメカノイズに振り返る人はいるものの、やはり都心とあってかさして珍しがって足を止める人もいない。 きれいに整備さた久遠のバイクは、シュラウドにも街の表情を映しこみながら、混みあう国道を軽やかに駆け抜けてゆく。 今宵の久遠は出張帰りであろうか・・・。 ジャケットの胸ポケットからは、マオチャオのエルガがぴょこんと顔を出し、夜風に緑色の髪をなびかせ、大きな翠色の瞳は流れ行く街の光を湛えていつも以上に輝いていた。 ターミナル駅そばの、大きな交差点の信号につかまったときだった。 まるで潮の流れのようにスクランブル交差点を通り過ぎる人間、ニンゲン。 身体を乗り出し、じーっと眺めていたエルガが、 「にゃーさん、おさかなー。」 と、ぼそり久遠に言った。 おねだりする時ともまた違った口調のエルガに、何事かと考える久遠。 どこかに焼き魚の屋台でもあるのか? いや、そんなものはない。 だいたい魚と言っても、この近辺にあるのは海鮮居酒屋くらい・・・。 「んー、おなかすいたか?」 久遠の問いかけに首を横に振るエルガ。 「ちがうの。 にゃーさんが、おさかな。」 何のことやらさっぱりの久遠に、エルガはなんとも楽しそうな笑みと共に続けた。 「バイクに乗って、街の中を駆けてくにゃーさんがおさかな。 にゃーさんはね、ひかりのうみのなかをおよぐおさかななんだよ!」 ・・・あぁ、なるほど・・・。 歩行者用の信号点滅を始め、これから進もうとする道が開けつつあるとき、久遠はエルガの言わんとしていることを理解した。 「光の海を泳ぐお魚、と・・・。」 久遠は呟きながらクラッチを握り、ギアを入れる。 その振動はエルガにも伝わり、半身を乗り出していたエルガは再びポケットに身体を深く納めた。 「にゃーさんも、ひとつの光になって、海を作って、海を泳ぐの。 このおっきな街からみたら、にゃーさんはちっちゃな光のひとつだけど、にゃーにとっては・・・みゅぅ・・・その、あのね・・・街よりもおっきな光なの!」 そういうと、顔を赤らめてぎゅっとジャケットに顔を埋めるエルガ。 前を見る久遠はエルガの動きを知ってか知らずか、使い込まれたグローブをはめたままの右手でちょんとエルガのアタマを突付いた。 「それじゃ・・・珊瑚の脇での休憩はおしまい。 ぼちぼち大海原へと泳ぎだそうか。」 信号が変わり、前方には広い道路が・・・いや、海の回廊がひらけた。 「いくぞっ!」 「うにぁー!」 エルガの声にあわせるかのごとく久遠はアクセルをひねり、光があふれる大海原へと再び飛び込んでいった。 透きとおる眼差しで、街を見つめる神姫がいる。 そう、ここにいるのは、戦うことを忘れた武装神姫・・・。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2722.html
そして何より○○が足りない 7月28日(木) ここに来るのが、段々と日課となりつつある気がするのは気のせいだろうか? 「連続3日目で何言ってんのよ」 「そうなんだけどね」 最初は肺炎でも起こすんじゃないかと思っていた煙草の臭いも気にならなくなってきた。人間、慣れる生き物らしい。 「あれ? なんだか今日は空いてるね?」 シリアの指摘する通り、今日はなんだか人がまばらだった。バトル用のブースに空きがあるほどだ。 「まぁ午前中だしね、学生連中はそろそろ夏期講習だし」 「華凛は?」 「はて、なんのことかしらね」 どうやらサボったようだ。 「でも、これじゃ対戦相手もいませんね」 「そういう時は座っとけばいいのよ。それが対戦待ちの状態だから」 「ん」 華凛が言った通りに椅子に座り、対戦相手を待つ。一体どんな人と当たるんだろうと考えていると、筐体を挟んだ向こう側の椅子が引かれる音がした。 「よう若ぇの。昨日は無事だったみてぇだな」 そう言ってきたのは、60歳前後のおじさんだった。仁兵衛の上に黒いコートをはおっている。少し日に焼けた顔には頬と額に切傷の痕があり、未だに老いを感じさせない鋭い眼光。 世に言うところの“渋いオジサマ”がそこにいた。今にも刀を持ち出しそうな雰囲気。 「誰、ですか?」 「俺は宮下亘彦。そこにいる赤毛の知り合いだ」 つまり、華凛のことを言っているらしい。当の華凛は、何故だか少し険しい表情をしている。 「宮下さん、樹羽と戦うんですか?」 「だからそこに座ってるんだろ? 静、いくぞ」 宮下さんが言うと、コートのポケットの中から何かが飛び出した。黒く飾り気のないボディ。青くて短い髪が着地とともに僅かに揺れる。フブキ型だった。この間見たミズキと同じブランドの神姫。あれもそうだが、かなり昔の神姫だ。静と呼ばれたフブキ型は、ゆっくりと音もなくそこに立っている。なんと言うか、隙と言うものが存在しないように思えた。 「準備しな」 「御意」 フブキ型は短く答え、筐体の中に滑り込んだ。その一つ一つの動作でさえ、無駄が一切ない。 「シリア」 「うん、わかってる」 シリアも筐体の中に入る。ヘッドギアをつけ、椅子に深く腰掛け直した。 「樹羽、宮下さんは強いからね」 「ん」 言われなくてもわかっている。気迫と言うか、オーラがすでに一般マスターの域を軽く凌駕している。 ただ者じゃない、まさにそんな感じだ。 「シリア、大丈夫?」 『私は問題ないよ。樹羽こそ大丈夫?』 大丈夫、のはずが、若干手が震えてきた。恐怖から来るものか、はたまた武者震いか、どっちなのかはわからない。 「……行くよ」 私は意を決してボタンを押した。 ここだ、多分ここが一番の難所。樹羽が潰れるか、強くなるかの分岐点。 (樹羽は多分、負ける……) それももう手も足も出ない程に完膚無きまでに。きっと一発も入れられないだろう。 もしそうなった時、樹羽はどうするのだろう。人は壁に突き当たった時、それを乗り越えるか避けるかの選択肢が生まれる。その選択肢が出た時、樹羽はちゃんと向き合えるのだろうか? (ううん、大丈夫。樹羽なら絶対に) 樹羽はもう歩き出している。もしこの程度で歩くのを止めるようなら、無理矢理にでも元の道に戻す覚悟だ。 (そうならないように、しっかりね) あたしは画面の中の小さな影に、そっとエールを送った。 第八話の2へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1152.html
蒼天にて、星を描きし者(前編) そしてその日はやってきましたの。わたし達三姉妹がセカンドに向けて、 ついに扉を通る日がッ!……あ、申し遅れましたの~♪わたしはロッテ。 “マイスター(職人)”槇野晶お姉ちゃんと共にある、神姫が一人ですの♪ 今は皆、準備でてんてこ舞いですの。武装は用意出来たんですけど……。 「クララや、躯の洗浄が終わったなら服を選んでおくれ!時間がない!」 「分かってるんだよマイスター、ボクのは決まってるけど……大丈夫?」 「あうぅ……これも可愛くていいんですけど、こっちも棄てがたいです」 「わたしの予定時刻まで、もう一時間弱ですのアルマお姉ちゃん~!?」 わたし達は“服を着る神姫”、素体のまま外に出る習慣はないですの。 だから今日は下着と戦闘用補助アーマードレスに、お気に入りの一着を 着込んで、近所の秋葉原神姫センターに赴く事になったんですけど…… わたし達はマイスターのブランド“Electro Lolita”を背負う看板娘、 生半可なファッションセンスではいられませんの!だから、つい……♪ 「そういうロッテちゃんだって、決まってないじゃないですか~!?」 「こっちの水色のワンピースもいいんですけど、白のドレスも……♪」 「……こっちは大忙しだもん……マイスターの服選びも、大丈夫かな」 「む?う、有無……ストラップレスと長袖のどちらにしようかとな?」 「今日も四十度近くになるらしいし、日焼け対策次第だと思うんだよ」 どうしても皆、服選びや躯の洗浄には拘ってしまいますの。わたし達の オーナーであるマイスターは女の子ですし、わたし達もその辺の影響を いっぱい受けていますから、しょうがない所ですの。そんなこんなで、 準備が出来て皆で住居代わりのビルを出たのは、四十五分前でしたの。 「ふぅ……今日も街が灼けるな、水分補給しないと死んでしまうぞ」 「……ボクらも、熱暴走しない様こまめに冷却水を補給するんだよ」 「そうですね~……大事な日ですし、コンディションは大切ですッ」 「バッテリー充電率98.16%……他の機能も全部問題ないですの~♪」 そうですの、今日は高みに昇る日……昇進を賭けた試合の予定日ですの! この日の為に用意した“アルファル”他の装備も、バッチリカートの中。 ここ数ヶ月は、全て今日この時の為に使ってきたとさえ言えますの~っ♪ その割に、神姫センターで受け付け出来たのは刻限五分前ですけど……。 「サードの槇野晶様……神姫はロッテ、アルマにクララの三機ですね?」 「有無。事前に昇進試合への予約を通してあるはずだ、マッチメイクを」 「畏まりました……三機が応募してます。ランダムでよろしいですか?」 「構わぬ。どんな相手でもこの娘らならば、打ち倒してくれるだろう!」 「はいっ……では皆さんの試合をこれから準備します、お待ちください」 どうやら今日セカンドを目指しているのは、わたし達を含め六人ですの。 誰と戦う事かはわかりませんけど、マイスターの為に勝ってみせますの! ……と一人で集中していた時、マイスターの呼び出しが掛かりましたの。 『槇野晶さん、ご希望のバトルが開始出来ます。オーナー席にどうぞ』 「よし……さ、まずはロッテだ。姉妹達に、しっかり見せるのだぞ?」 「ロッテちゃん!……頑張ってくださいね、勝てると信じてますっ!」 「……大丈夫。これまでの積み重ねを大事にすれば、必ず行けるもん」 「はいですのっ!!皆、見ていて下さいですの……わたしの、戦い!」 マイスターに促されるまま、エントリーゲートを降下していきますの。 サイドボードへの武装装填完了を示すシグナルを確認して、準備OK! 選んで身につけた水色のワンピースを翻して、発進位置へと付きます。 ここで“意識”がヴァーチャルフィールドに投影される仕組みですの。 降下を完了したわたしの意識は、ゲートの閉鎖と同時に揺らいで……。 『ロッテvs狛恵、本日のサードリーグ第7戦闘、開始します!』 「ヴァーチャル化完了……では、行きますの~っ!!」 次の瞬間には、水平なレールを電磁加速する様に打ち出されていました。 そうして駆け出していったのは、最初の戦いでも使った古戦場でしたの。 ただ今度は、バトルのダメージを反映してか剣が突き立っていますけど。 でもじっと見ている暇はないですの!空を切る様な砲弾の音が、すぐ側を 切り裂いて……直後にわたしの躯は軽く吹き飛ばされましたの……痛ッ。 「きゃっ!?遠距離からの砲撃、でもフォートブラッグ程じゃ……!?」 『これは……ロッテ、相手は砲撃特化のハウリン系列だ!!』 「“砲狗の”狛恵、行きますッ!ドラドラドラドラドラァッ!!」 「く、確かに……大きな姿が見えていますの!」 「むむ、見つかりましたか!でもアタシは、破壊するのみですッ!」 「きゃあああっ!?く、このままじゃ……!」 カメラアイで見たのは、四肢……自分の脚とパックパックの補助脚……を 地に降ろし、両手・両肩・胸・背中の火器でわたしを撃つ神姫でしたの! 短くカットされた榴弾砲やミサイル、ガトリング……実弾ばかりのそれは 質より量という勢いで、わたしの服を灼き焦がしていきますの……でも! 「……でも数撃てば当たる、という悠長な結果は待てませんのッ!」 「そんな丸腰の姿で何が出来ますかっ!一気に殲滅してあげますッ!」 「黙ってやられはしませんの……“フィオナ”ッ!」 『Yes,sir(強襲します)』 わたしがその名を呼んだ時、夜闇の空に逆三角形状のラインが生まれ、 それに沿って“妖精の騎士”が、UFOの姿で飛び出してきましたの。 下部に据え付けられたのは、二挺のビームガトリング“セイバー”…… 青き流星は、そのまま戦場へ降下して狛恵さんに威嚇射撃をしますの! 「うあぁぁっ!?あれはぷち、いや……レインディア・バスター!?」 「そっちがオリジナルの砲撃支援システムなら、こっちは……!」 『“W.I.N.G.S.”……Execution!』 「変身、した!?聞いてた姿と違います、その服と剣は一体……!」 「蒼天の旋姫(セレスタイン・ヴァルキュリア)の、真の姿ですのッ!」 フィオナが作り出した一瞬の隙を使って、わたしは戦闘の為にある姿を 呼び出しましたの。それは即ち、アーマードレス“レーラズ”と魔剣! 煤けたワンピースは消えて、手先や足首まで覆う青のドレスがわたしを 包んで、両の腰にライナストとフェンリルが光の中で装着されますの。 シンプルな“変身”で驚かせましたが、ここから“本番”ですの~っ♪ 「虚仮威しでしょう、春の大会でのマグレには騙されませんッ!」 「マグレかどうかは……これから貴女に確かめてもらいますのッ!!」 ──────さぁ、ここからが天国への階段ですの! 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1297.html
戦うことを忘れた武装神姫 その35 とある休日。 僕はツガルのマーヤと共に昼飯がてら近場の公園を散策していた。 穏やかな天気の午後とあって、公園内は家族連れも多い。 「そろそろ紅葉の季節だね・・・」 僕が言うと、 「・・・朝晩が涼しくなりましたから・・・。」 ポケットに収まるマーヤも木立を吹き抜ける風を感じていた。 ・・・と、突如子供の泣き声が側から響いてきた。・・・やべっ、転ばせたか?立ち止まって振り返る。 なんだ、別に転ばせたりしたわけでは無さそうだ。単に駄々をこねているだけかな。 「あの、おにいさま・・・あれ・・・っ!」 再び歩き出そうとしたとき、マーヤが僕を呼び止めた。 マーヤの視線の先には、ジュビジーが風船にくくりつけられフワフワと上昇しているではないか。 その下では子供が泣き叫び、おそらく母親と思しき女性がうろたえていた。 ・・・おいおい、何をしたんだあんたたちは。 幸いにも風船は紐が木の枝に引っかかったが、とても手が届きそうもない高さ。 母親が周囲の人に声をかけ助けを求めてはいるが、宙づりのジュビジーが半ばパニックとなり、早くしないと・・・ 「あっ!!」 様子を見ていた一人が声をあげた。 ジュビジーが暴れたことで風船の紐が枝から外れ、再び上昇を・・・こりゃいかん・・・!! 「おにいさま、私を投げて下さい!」 さっとフル装備を整えたマーヤがポケットから飛び出した。 「おう、了解だっ!」 マーヤが何を言いたいか、目を見ればわかる- 。身を丸めたフル装備のマーヤを手に乗せ、かつてリトルリーグ時代には地区準優勝まで導いた自慢の肩で- 「どっせぇいっ!!!」 風船めがけてマーヤを放った。 どこまでも抜けるような青い空を撃つ、赤い弾となったマーヤ 。 さっくり風船を撃ち抜き、すぐさま全身の装備を展開、エアブレーキと同時にバーニア全開で反転。悲鳴を上げて自由落下するジュビジーに追いつき・・・見事にキャッチ。 重量の割には高い出力のある装備を纏うツガル型であるマーヤは、軽々とジュビジーを抱きかかえて、かの子供の手の届く高さの枝へと降り立った。 「ふぅ・・・ミッションコンプリート、ですね。」 子供の手の中に飛び込むジュビジーを確認し、ほっと一息ついたマーヤがふわりと肩へと戻ってきた。 周囲から沸き上がる歓声と拍手。 「おつかれさん。」 「おにいさまこそ、ナイスで正確なスローでしたよ。」 ・・・聞けば、母親が目を離した隙に子供が風船にジュビジーを結びつけて、振り返ったときにはあの状況だったらしい。 「今度からは悪戯をしないようにね。神姫はおもちゃじゃないんだよ。」 まだ涙目の子供に、しゃがんで声をかける。 横では母親がまるで何かの、それこそおもちゃのように頭をヘコヘコ下げている。なにも、そこまでされる柄じゃないってば・・・ん? どうしたマーヤ? 「おにいさま大変です! あと・・・15分で、これから行くラーメン屋の替え玉無料サービスが終わってしまいます!!!」 差し出された小さな神姫サイズの懐中時計を見れば、時刻は間もなく14時。 「うおぉ! い、いかん! いそぐぞっ!!」 「はいっ!」 再びマーヤをポケットに収め、僕はラーメン屋を目指し秋の風を頬に感じながら、公園を駆けていった。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1397.html
遙かに見据えし巨神の宴(後半) ロッテの“心”を持つ葵の言葉に、目前の日暮はふと疑問符を浮かべた。 此処までの評価は良好。とすれば次に何を相談されるのか、という事だ。 私も少々方針に悩んでいた所であったので、神姫たる彼女らに言わせる。 「えと……あたし達が悩んでいるのは、二つです。一つ目は武装の傾向」 「もう一つは、生まれ来る“相棒”の傾向なんだよ……結構、大事な事」 「武装の傾向、というと……ああ、種類とか数の話かいアルマちゃん?」 日暮の言葉に、アルマが何度も肯く。それは、私の生来の性分だけでは フォローしきれない、新たな戦い方の模索であったのだ。同時にそれは その戦法を体現する“相棒”の模索でもある。皆が矢継ぎ早に語った。 「今の重量級ランクは、バイザー派と神姫パーツ派が主流です……が」 「それと別に、“重武装派”と“単武装派”という区分もあるんだよ」 「ロッテちゃんは、『どちらの区分に入るべきか』を悩んでましたの」 「軽量級ランクでは日暮、貴様も知る通りに無数の武装で戦っている」 「あの“アルファル”は多芸だね……で、スタイルを護るか否かと?」 皆で首を縦に振る。変幻自在、これが私と“妹”の神姫達が育ててきた バトルスタイルだ。これを完全に捨て去るのは、懸命ではないだろう。 だが、重量級ランクでそのままの戦いをすべきか?という疑問はある。 何せ今度は相手も超重武装が基本となるのだ、絶大な一撃を振るう者も 多種多様な技を繰り出す者も……恐らく両極端な形で存在するだろう。 となれば、どんな方法論を以て荒波を乗り切るか。それが重要なのだ! 「うーん……もう一つは、“相棒”の傾向だったっけ?クララちゃん」 「そうなんだよ。見立ての通り、それは変形を前提にしてるフレーム」 「でも……高速戦闘機や戦艦等に変形するのは、結構見かけるんです」 「多段変形は勿論出来ますけど、それは戦い方にも関わってきますの」 「という訳で、貴様の見解も聞いてみたいと思ってな。どうだ日暮よ」 暫し逡巡した後、日暮は一つのアイデアを口にした。それはシンプルだが 悩む神姫達への解答として、理に適った方法論でもあった。それは……。 「軽量級での多彩な能力を活かした変幻自在な戦い方、これは大事だね」 「……それは即ち、武装の類も大量に積む事が肝要と言う事か?日暮よ」 「いや、クララちゃんを初めとした神姫達の“才”も同じく大事なんだ」 「それってつまり、“重武装”と“単武装”両方使うって事、ですの?」 「そう。可変する“相棒”は臨機応変に使い、でも戦法は長所を生かす」 「で、でも要求を満たす“相棒”は、どんな変形をすればいいんです?」 『そこは晶次第さ』と日暮は私を見つめる。これは、彼なりの挑戦状だ。 恐らくは“アルファル”を初めとしたこれまでの開発ノウハウを、試す。 それを望み、全ての心中を吐露するのを控えたという事なのだろう……。 「よし……変幻自在に戦う相棒と、単機能特化の武装を両立してやる!」 「マイスター、大丈夫……というか日暮さんの言葉で、掴んだのかな?」 「嗚呼。お前達の経験と才能、両方を活かせという事だ!そうだろうッ」 「オレに出来る助言はここまで。それをどう昇華するかは晶と君ら次第」 「十分だ!やはり他人の視点という物があると違うな。日暮、礼を言う」 私は、その挑戦を受ける事とした。ここまで積んできた経験を活かし、 必ずや日暮とうさ大明神様の鼻を空かしてやる!それこそ、言葉以上に 彼らに対する礼になる、と私は直感したのだからな。ここで黙っていた “うさ大明神様”こと胸像神姫のジェニーが、私達を暫し見て呟いた。 「そう言えばマスター、神姫のお二人は以前より自信に溢れていますね」 「だなぁ、なんていうかこう……変な話、目の輝きが違うって言うかな」 「それはもう♪アルマちゃんもクララちゃんも、色々経験しましたの!」 「うん。ボクらはロッテお姉ちゃんやマイスターと共に過ごしてきたし」 「それが……結果としてあたし達を支える、強い力になっているんです」 彼女ら二人を加えてからの生活、“時間”は短い。だが“濃度”は違う。 先駆者のロッテと全く遜色ない愛情と試練を、共に与えてきたつもりだ。 そしてその甲斐もあり妹達は、己を心身共に強く保てるまでに成長した。 新たなフィールドに挑むにあたり、その“心”は強き武器となるだろう! そして“技”も、私がこれから産み出す“体”も、良き支えとなる筈だ。 「……そう、これが今まで重量級ランクへの参戦を先送りにした理由だ」 「自分の“妹”だから、大好きだからこそ成長して欲しい……って所?」 「こら、あっさり“大好き”等と口にするな日暮!恥ずかしいだろッ!」 「痛っ!でも晶なら、そうだと思ったんだぜ?短い付き合いじゃないし」 「く……敵わんな、貴様には。そう言う訳で、皆……これからも頼むぞ」 『はいっ!!!』 ──────戦う心も整ったし、後は相棒だけ……かな? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1752.html
● 三毛猫観察日記 ● ◆ 番外編4 「彩音とトモコと黒い神姫(後編)」 ◆ ≪第六節:「桜花」稽古中に悩む≫ 「最初は準備運動からだ。『短冊の構え』から素振り百本、始め!」 アキオの号令に従い、短冊の構え―――山城自顕流の八双―――を構える。 ここはアキオの屋敷の一画、トレーニングジムを兼ねた小さい道場。アキオも私も 羽織袴の格好で稽古に臨んでいます。 素振りをしながら考える。あの女の子……人の心とはあんなに変るものなのだろうか? その変容ぶりは姉さん達を思い起こさせる。でも皆の場合はアキオを襲うために頭脳回路を 改造された結果。つまり金城さんにも「改造レベル」のショックがあったってこと? 心の移ろい……人間だけ?いえ神姫にも。私の思い、移ろい。そもそも神姫に心って? 「桜花、何をやってるんだ!注意力散漫だぞ!!」 アキオに嗜まれて現実に戻る。 「ああっ、ゴメンなさい!………」 「どうしたんだ、今日は全然集中出来てないじゃないか」 少し心配そうに訊くアキオに私は答えた。 「……アキオ、心って何なのでしょう?」 ちょっと考えてからアキオは私の傍に来ると、そのまま目の前で正座をした。 「難しい質問だな、俺に答えられるかどうか……ちょっと違うかもしれないが…… 山城自顕流の本質は『後の先』にある事は理解しているな?それはつまり相手を理解して 先んずると言う事だ。その究極形に『絶刀』という奥義がある」 「絶、刀、……ですか」 「あぁ。『己が意を絶ち、気配を絶ち、相手と同化する』―――極めれば相手の考えが 読めるというテレパシーみたいな技だ。まぁそんなの空想だとは思うがな。 だがその根底にある考え方は間違っていないと思う。つまり相手を理解する為には 先入観や思い込みを排除し、ありのままを受け入れる必要があるということだ。 桜花、オマエは考えすぎなんだよ……相手の心なんて考えたって解らない。なら いっそ頭を空っぽにして相手にぶつかる……そういうのもアリだと思うぞ」 「頭を空っぽ、ですか……」 また考え込んでしまった私を見て、ヤレヤレと仕草をしてアキオが言いました。 「桜花、出かける準備をしろ。これからカルチャーセンターに行こう」 「えっ?急にどうして……」 「悩みの原因ってあの女の子だろ?頭を空っぽに……考えるより行動だよ」 ≪第七節:「転機」幾つかの出会い≫ 「先生、彼女の事を教えてくれませんでしたね……」 「予想はしていたがな。やっぱり他人に軽々しく言う事じゃないし」 「さて、どうしましょうか……」 「あ、あの……ちょっとよろしいでしょうか?」 二人でロビーで考え込んでいると、突然セーラー服の女の子が話しかけてきました。 「えっと、君は……?」 「失礼しました。私は金城静音(かねしろ・しずね)、彩音お姉ちゃんの妹です……」 ちょっとビックリ。そういえば顔立ちとか似ていますねぇ。 「ご免なさい、立ち聞きをしてしまいました……お姉ちゃんのお知り合いでしょうか?」 アキオが事の経緯を詳しく説明します。 「……そうですか、やっぱりお姉ちゃん…… 多分お姉ちゃん、貴方の思っている以上に酷い状態なんです。精神的に追い詰められてて、 家族の皆もまるで腫れ物に触るみたいに敬遠して、家でも孤立して…… もう私、どうしたらいいのか………お願いします、お姉ちゃんを助けて下さい!」 姉を想う心。助けたいと願う心。これも人の心。 「俺もそのつもりなんだけど……とにかく色々と状況が解らなくてね」 「それならお姉ちゃんを助けてくれた大学生さんに話を聞くと良いです。事件の事は多分 あの人が一番詳しいと思いますから」 「へぇ。その人って?」 「赤峰秀弘(あかみね・しゅうこう)さん。携帯の番号は………」 静音さんと別れて駅前の喫茶店へ。赤峰さんとはここで待ち合わせをすることに。 突然の電話なのにちゃんと対応をしてくれるあたり、しっかりした人物みたいですね。 それから20分ぐらいして、店に一人の男性が入って来てレジの人に声を掛けました。 「すみません、待ち合わせをしているのですけど……」 「あっ、赤峰さんですか?徳田です。お忙しい処を急にお呼びして……」 「いやいや大丈夫。マヤーとテレビを見ていただけだから」 「大丈夫じゃ無いニャ!二人のスウィートなヒトトキが邪魔されたのニャ!!」 赤峰さんの胸ポケットからマオチャオ型の神姫が顔を出しました。 「あ~コイツの事は無視して。とにかく座って話をしよう」 自分の頭の上によじ登って髪を引っ張ってる神姫を無視して、赤峰さんが言いました。 「つまり君達は金城さんを助けたいと?」 「ええ。彼女とは多少の縁がありますし」 「……失礼な言い方になるが勘弁してくれ。 それは自己満足かい?好奇心かい?半端な気持ちなら止めたほうがいい。これは小説でも テレビドラマでも無い。ましてや人一人の人生が係っているんだ。 事の重大さを理解した上でのことだろうね?」 「……ええ。よく考えた結果です。 俺は基本的に損得で動く人間ですからね。普通ならこんな得にならない事はしませんよ。 でも赤嶺さん、俺はね、この桜花に命を助けられているんですよ。比喩じゃなく実際に。 その為に桜花は闇に堕ちた。俺はこれ以上桜花に闇を見せたくないんです……」 「あ……アキオ…………」思わず呟いてしまう。 「……まぁソチラの事情は解らないが、半端な気持ちじゃないって事だけは解ったよ」 頭の上にマヤーを乗せたまま、赤峰さんが真剣な顔で話します。 「とにかく違法神姫狩りを止めさせる事だ。このままじゃ目的が達成されたとしても 彼女が救われる事なんて無いぞ」 「そうですね。止めさせて……そして彼女の心を救うには……」 ちょっと考えてから赤峰さんは答えました。 「違法神姫狩りを妨害していればイヤでも俺達を意識するようになるだろう。 そうやって関係を深めていけば、いつか説得するチャンスも出来るかもしれない。 俺達で彼女を阻止しよう。でもその為には「怨蛇」に対抗出来るような神姫じゃないと」 彼は頭の上のマヤーを掴むと、自分の目の前にぶら下げました。 「マヤーは起動してまだ一年経ってないからな。ちょっと役不足か……」 ムキャーとか言いながらジタバタするマヤー。何か……妹のナンバー6に似ている…… 「だ、そうだ。桜花、オマエは自信あるか?」 「楽勝ですよ!……とは言えませんね。彼女の“メガス・磁界制御装置”ってつまり テレキネシスみたいな物ですからね。モチロン制限はありますけど」 「ふむ。アメコミでも磁力を操る悪ボスがいるしなぁ。キビシイか?」 ニヤニヤしているアキオの表情に少しカチンときた。 「何言ってるんですか!私に勝てるのは姉さんだけです!」 私の返事を聞いて、アキオは赤嶺さんに答えました。 「と、いう事です。その線で行ってみましょうか」 ≪第八節:「怨蛇」天使と死神≫ 「やった……遂にやったでぇ!!!」 部屋に入るなり、マスターは私を机の上に放り投げて、枕元のトモコの写真に話しかけた。 「トモコ、遂に『蛇』のシッポを掴んだんや!ヤツは郊外で違法神姫の賭けバトルの 胴元をやっとったんや!やっと…………やっと!!!!!!」 血走った目。上ずった声。口元には泡を吹いている。 マスターは……本当にギリギリの所で正気を保っている。狂気の一歩手前。 無理も無い。無二の親友を殺され、敵討ちの為とはいえ自ら闇に堕ちた女の子。 まだ中学生なのよ……何故マスターがこんな目に…… 「三日後や。三日後、ヤツは月イチの大会を開催する。そこで大会優勝者と 自分のご自慢の神姫、『蛇』を戦わせる気なんや!!! チャンスや、怨蛇で大会を勝ち抜いて『蛇』をバラバラにしてやるんや!!!」 マスターは私の事を「チップ抜き」、感情の無い違法神姫だと思っている。 実際マスターは違法改造屋にそう注文したし、その方が良かったのだ。 でもその違法改造屋は……意図的なのか偶然なのか、その注文には答えなかった。 そう、私には心がある。 何を以って「機械に心」かは解らないけど、少なくとも私はマスターを愛しいと感じてる。 友達を想う気持ち。傷ついて尚その意思を貫こうとする強さ。そして弱さ。 あぁ、私はマスターを愛している……だからこれ以上マスターを傷つけたくない…… 「もうスグや、もうスグで全てが終わる……待っててや、トモコ……」 そのままベッドで眠ってしまうマスター。トモコの写真を抱えながら。 そう、もうすぐ全てが終わる…… それまで私は「チップ抜き」、非情な死神の役を演じよう。 なぜそんなフリをするかって?解らないの? マスターは……ちゃんと自分が悪い事をしているのを理解している。そのうえで「仇討ち」 だからと、「正しい行い」だと自分に言い聞かせている。本当にギリギリなのよ…… なのにもし自分が「心ある存在に非情な事を強要していた」なんて気が付いたら…… マスターの精神は………本当に崩壊してしまう……… 無論私はマスターの為に喜んで戦っている。でも潔癖なマスターは自分を許さないだろう。 だから私は……最後まで非情な死神を演じていなくてはいけない。 そして私は。全てが終わったら自らを破壊しよう。心があると気付かれる前に。 そっとベッドに上がり、眠っているマスターの傍へ。そして彼女の頬を軽く撫でる。 でもねマスター、私は死神なんかじゃなく………本当は貴女の天使に成りたかったのよ…… ≪第九節:「賭けバトル」桜花、開眼する≫ 「待たせたね徳田君。ここがその場所かい?」 私とアキオが到着してから5分後、マヤーを連れた赤峰さんが到着しました。 「えぇ。妹さんが教えてくれたのはココ……破棄された神姫の公式大会会場です」 喫茶店での初顔合わせから一週間、事態は急変しました。 どういう経緯で判明したのか、金城さんは遂に『蛇』を発見したそうなのです。 そしてこれはその会場、『蛇』が治める万魔殿。私達はこの巣窟に足を踏み入れました。 中には思ったより人が。10、20、30………50人弱?観客席にポツポツと座ってます。 「とにかく彼女の居場所を知る事が先決だな。その上で阻止しないと」 「そうですね。それじゃ俺と桜花は………桜花、大丈夫か?ボンヤリして」 心配そうに私を見るアキオ。 「え、ええ。大丈夫ですよ……私は単独行動をします。こういうのは慣れてますから」 アキオの返事を待たずに一人で飛び出す。 そんなにボンヤリしてたんでしょうか?……してたわよね。 アキオに『絶刀』の事を聞いて以来、努めて私は心を無にしようとしている。 でもダメ。単にぼけぇ~っとしてるだけになる。やっぱり空想上の奥義なのかしら…… 気を取り直して自分の装備を点検する。今日の私は侍型の標準装備と花鳥風月を身に付けて います。これならあまり目立たないでしょう。それじゃ行きましょうか! 昔取った杵柄、潜入作戦は得意なのです。天井裏から控室を順番にチェックしていき、 7つ目の部屋で……彼女達を発見しました。 『トモコ……見ててや。遂にこの日が来たんや!仇は絶対に……………』 気付かれていない。センサーすら作動させてないみたい。まぁこの状況じゃ当たり前か。 とにかくインカムでアキオに知らせないと…… ふと机の上を見る。居た。黒い神姫・怨蛇だ。 写真に語りかけているマスターを無表情に見つめ……… 無表情?確かに無表情なんだけど、何か、こう、違うような…… 彼女を見ていると、今まで感じたことの無いデータが流れ込んでくる。 そのデータの処理に困り、一時的に自分の機能を制限する。 気持ちとか、思いとか、自分を、静めて、このデータを、でもこれは、初めてなのに、 知っている、これは、決意、覚えている、私も以前、同じ思い、守ると決めた、 そして戦い、自らで決着を、自分を破壊、彼女は………私と同じだ!!!!! 私は天井板をブチ抜くと、勢い良く彼女達の部屋へ飛び降りた。 「な、なんや!何事やぁ!?」 驚くマスターを無視して、私は黒い神姫に近づいた。 無表情に構える怨蛇。でも今の私には……何故か貴女の心が理解できる…… 「貴女、感情があるわね?」 一瞬、彼女の表情に変化が現れたような気がしたけど……そのまま襲ってきた。 私はその攻撃を軽く避けると、そのマスター―――金城さんに小刀を投げつけた。 突然の事に仰天したのか、怨蛇は必死にその攻撃をギリギリで防いだ。 その形相を……慌てぶりを……マスターは見た。 「あ……え……怨蛇ぁ?アンタ本当に………」 「ち、違いますマスター!!私に心なんて有りません!!!」 その返事こそ隠し切れない証拠だった。 「そんな………それじゃウチ……今までウチは………そんなぁ………」 力無く床にへたりこむ金城さん。呆けた表情で怨蛇を凝視する。 「マスター、聞いてください!私の名は怨蛇、復讐の為だけに存在する死神。 その性格は残忍で非情、感情という物を持ち合わせていません。戦いを好み、 相手を破壊する事こそ喜び………マスター!!聞いてくださいマスター!!!!」 いくら怨蛇が話しかけても金城さんの反応は無い。まるで魂が抜けた様。 怨蛇は振り返ると、私に近づいて頬に平手打ちをした。パン!と乾いた音が部屋に響く。 「だから……だから秘密にしなくちゃいけなかったのに!!こうなると解っていたから!! マスターの心は壊れてしまった……アンタの……アンタのせいで!!!!」 私は怨蛇の手を掴むと、彼女を睨みつけながら諭した。 「だったら心を癒してあげればいいじゃない。貴女、最初から間違っていたのよ。 貴女がやらなくちゃいけないのは戦うことじゃない。マスターの心を癒す事だったハズ」 「そんな、知った風な事を………!!」殴りかかろうとする彼女。 「だから戦うよりやる事があるでしょ!マスターをあのままにしておくつもり!?」 怨蛇は私を睨みつけながらもマスターの傍へ行き、優しい言葉で彼女に語りかけ始めた。 『まもなく試合が開始されます。控室の選手は会場へお願いします』 部屋のスピーカーからアナウンスが流れた。 二人を後に残して部屋を出て、一人会場へのゲートへ向かう。下品な歓声が近づいてきた。 そう、ここからは私が引き継ぐ。彼女の替わりに私が戦おう。その思いを引き継いで。 ふと金城さんの事を考える。彼女はきっと大丈夫だろう………怨蛇が傍にいるから。 でも怨蛇はきっと私を死ぬまで許さないでしょうね。まぁそれは仕方が無い…… 私は花鳥風月の鞘を強く握りしめると、跳梁跋扈の舞台を目指してゲートをくぐった。 ≪第十節:「後編エピローグ」一ヵ月後のアキオ邸にて≫ あの時は大変だったなぁ。まさか桜花が替わりに大会出場しちまうとは…… 結局桜花は全ての敵を粉砕して親玉を引っ張り出したんだが、アレは『蛇』じゃなかった。 だから『蛇』は今でも何処かで身を潜めている…… 「おーい徳田君、ジュースがもう無いんだけど」 「あ、ウチにはポテチ持って来てくれんか?」 ……………何故この二人が俺の家に居るんだ……………エラい寛いでいるし。 そのリクエストに答えて桜花が試作品の大出力低速ブースターで二人に給仕する。 「あら桜花さん、ご苦労様」 怨蛇―――今はボディを交換して正規のアーンヴァル―――が桜花を迎えた。 「怨蛇……アンタも手伝いなさいよ!」 「その名で呼ぶの辞めてもらえません?あれは単なるニックネームで、私にはちゃんと 『アルテア』って本名があるんですから」 「……それじゃアルテアさん、ちょっと手伝って貰えないかしら?」 「まぁ、私だってお客さんですよ?何て失礼な事を言うメイドさんでしょう!」 「……ちょっとでもアンタを心配してた私がバカだったわ……(怒)」 二人のケンカ(?)を無視して赤峰さんが大声を出した。 「そうだ徳田君、君の名前でウチにハムの詰め合わせを贈ってもらったから」 「ち、ちょっと何を勝手な事を!非常識じゃないですか!!」 「非常識なのは君だろぉ?お世話になってる人にお中元を贈るのを忘れるなんて。 『仕方ないから』代わりに手配までしてあげたんじゃないか!」 ぽかーん。 「あ~金城さん、君のウチにも高級菓子の詰め合わせが届く予定だから」 「わぁ、サスガ赤峰はんや!徳田はんも見習わなくちゃアカンでぇ?」 「だから何を一体………」 非難しようとした俺の傍に来て、赤峰さんが小さい声で話した。 「……いいか、彼女は今までツラい事ばっかりだったんだ。違法神姫狩りを辞めて 立ち直ったとは言っても心の傷はそう簡単には消えやしないだろ。『蛇』もまだ 捕まってないしな……今はこうやってバカ騒ぎをして慰めてやるしかないんだ。 その為に俺はピエロを演じているんだぞ」 「そ、そうだったんですか……スミマセン、俺、一瞬でも赤峰さんを疑っちゃって……」 そんな俺の肩をポンポンと叩くと、赤峰さんは金城さんに向かって言った。 「おーい、徳田君がお昼に天ぷらをご馳走してくれるって!これから料亭に行くって!」 「ホンマかいな!ウチ金持ちは嫌いやけど、徳田はんなら友達になってあげてもええで!」 あ、あの……赤峰さん?俺、貴方の事を信じて良いんですよね?本当に良いんですよね? 大喜びをする金城さんを見て、とりあえず俺は無理矢理納得する事にした。 第十九話 ※作成中※ 番外編3 彩音とトモコと黒い神姫(前編) へ戻る 三毛猫観察日記 トップページへ戻る
https://w.atwiki.jp/kijyou/pages/2.html
ルール関係 ・ゲームを始める前に ・ユニットデータ作成 ・ゲームの手順と各種行動について ゲーム内における各種解説 ・命中効果について ・武装解説 ・スキル解説 ・用語解説 ・サブユニット解説 ・機動砲台 パーツデータ ・パーツ ・チップ 武装データ ・白兵系武装 ・射撃系武装 ・投擲・射出系武装 ・搭載武装 ・防御装備 スキルデータ ・白兵系 ・射撃系 ・投擲・射出系 ・搭載武装 ・防御・回避系 ・移動系 ・サブユニット系 リンク @wiki @wikiご利用ガイド wikiの編集方法についてはこちら 左メニューの編集方法についてはこちら ここを編集
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/757.html
熱気の坩堝──あるいは初日その三(前半) 予選を無事勝ち上がり、我が“妹達”が意気揚々と引き揚げてくる。 予選各ブロックは館内のミニFMでダイジェスト紹介されているが、 この電脳時代に、ラジオを聴取する者は決して多数派ではない為に、 全国中継される明日の決勝ブロック実況程には、注目されていない。 とは言え私は、作業しながら楽しめるラジオや音楽が大好きなのだ。 「よく戻ったな、ロッテに梓。勝ったという放送だけは聞いたぞ」 「ただいまですの~、マイスター♪物凄く、手強い人達でしたの」 「……あの“光の舞い”も、色々と改良点が見えてきたんだよ?」 「だろうな。明日はこれを持っていけ、どちらを使うかは任せる」 そう言い私が梓に握らせたのは、マイクロミサイルランチャーである。 コンテナタイプのそれは2~3種の弾を併用出来る。煙幕弾も然りだ。 インパクトカノンより威力は若干劣り、両方の同時装備も出来ないが、 これで射撃姿勢を隠しつつ威嚇射撃すれば、より精度と威力は上がる。 棺桶や盾の様な物々しい装備だが、実効性は確かなのだ……ん、何だ。 『展示ブースを構えているのに、何故そんなにも暇そうなのか』だと? 「それにしても……結構売れたんだね、お姉ちゃん。もう完売だよ」 「有無。アルマの御陰もあってか神姫と人間、双方から好評でな?」 「……ふふ、他人様の前で唱うのがあんなに楽しいなんてっ……♪」 「アルマお姉ちゃん、顔が明るいですの!頑張ってるみたいですの」 当然ながら“フィオラ”が売り切れた為だ。無論製作した全数ではなく 明日売る分も、今日以上に残してある。今日が四割なら明日は六割か? ロッテの活躍、彼女を指揮する梓のクールさ、ここで唱い踊るアルマの 激しい歌声……私自身の感性と技術。これら全てが評価された結果だ。 この状況に確かな手応えを感じていたが、現状には別の問題もあった。 「今日はこれで暇だ、“Electro Lolita”の受注も一段落したしな」 「でも……閉会時間まで後2時間くらいあるんだよ、お姉ちゃん?」 「有無。連絡手段さえ残しておけば、ここを留守にしても構わぬが」 「……じゃあっ、この後の暇潰しどうしますの?マイスター……♪」 「そうですね、予定何にもないですし……暇なんですよね、ねっ?」 ……皆の視線が痛い。というよりむず痒いッ!?いかにもこれはその、 『私達を連れて行って?』という……お強請りの合図ではないかッ!? うぅ……どことなく照れてしまう自分が情けないが、ここで突っぱねる 理由はないし、彼女らと共に物見遊山も悪くはない物だ……ぅぅぅっ。 「むう……ああ、暇だ!よし、皆で展示を見て回ろうじゃないか!」 「はいですの~♪みんなでおっかいっもの、おっかいっもの~っ♪」 「そうと決まれば急がねばならんな。アルマ、ボディチェックは?」 「大丈夫です、汚れも落としましたしバッテリーも十分ですッ!!」 「ロッテお姉ちゃんの方も急速充電しておいたもん、何時でもOK」 「……お前達、狙っておっただろう?まあいい、往くとするかッ!」 というわけで、ブースのテーブルに携帯端末のアドレスを書き残して、 私達四人は出かける事とした。無論、売上金は肌身離さず持っていく。 まずは、珍妙なぷち……と呼ぶにも躊躇われる男がビラを持ってきた、 神姫と動物のサーカスだ。そう言えば着ぐるみ生命体の肩にいた神姫、 “フィオラ”を偉く気にしていたな……余りにも人間側が気色悪いので すぐに蹴り倒してしまったが、あのハウリンには悪い事をしたか……。 万一明日も来たら、在庫を買わせてやってもいいかもしれんな。有無。 「おお!?神姫がライオンを操る……というよりあれは意思疎通か」 「普通人間がやる様な事なのに、巧くお互いを認め合ってるもんね」 「やっぱり“心”があれば、通じ合える……って事、でしょうか?」 「かもしれませんの♪あ、今度は空中ブランコっ!しかも神姫!!」 「なんと!?……見る限りブースターの類も無い、本気の体術か!」 そして、丁度第二回公演中の神姫サーカス“四堂”は……圧巻だった。 人と神姫、更に猛獣。三種の異なる生命が織りなす、躍動する舞台ッ! 神姫の可能性は常々実感している私だが……それを考慮しても、凄い。 超科学を使用せず、敢えて昔ながらの用法を多く使ったのも好印象だ。 結構時間は使ってしまったが、これはこれで実に有意義な体験だった! 「ふぅ、久々に童心に返る事が出来た。良い物を見たな、有無」 「……この場合、マイスターの躯に言及するのは死罪なんだよ」 「よく分かっているではないか梓、ってお前も似た物だろう!」 「んぁ~?この声、おお……晶ちゃんじゃないかい。おーいっ」 突如割って入る言葉に、私と梓は言葉を失う。錆び付いたネジの様に 振り返ってみると、そこに……メイド姿のDr.CTaがいるではないか! 梓……即ち神姫のクララは彼女と面識があるので、気が気ではない。 ドクターは多忙の所為かそんな事に気付かず、ブースから出てきた。 「やーもー、久遠連行しても全然追いつかなくて参ったねぇ……」 「……相変わらずドクターらしい。Mk.Z氏も随分と忙しそうだな」 「んだねぇ。“ポケットスタイル”の限定販売もあるしヘトヘト」 「流石に整理券方式では、今からは無理だな。時に、その服は?」 「あ、これ?ほらさ、この間服買わせてもらった時にこー色々と」 「……もういい、よーく分かった。難儀な性分だな、ドクターも」 恐らく、神姫を着せ替える内に自身が“目覚めて”しまったのだろう。 私も梓も流石にこればかりは、苦笑いする以外の対応は出来なかった。 ここで漸く、梓を紹介する。無論、私の腹違いの“妹”としてだがな? 「何時も“姉”や神姫達がお世話になってるんだよ、ドクター?」 「ぐわー!?晶ちゃん、こんな可愛い妹さん居るなんて初耳!?」 「と言われても……今まで紹介の時が無かったに過ぎぬぞ、有無」 「……意外とドクターってば、可愛い物に目がない性分ですの?」 「ロッテちゃん、勿論っ!今回のドレスも、くぁー……癒える!」 「えと、“萌える”の間違いじゃ……いえ、なんでもないですっ」 小さくとも“企業”だけ有り混雑振りは半端ではない。これでも一応、 ピークは越えたらしいが……流石に地力の差を思い知らされる場面だ。 私達の様に、余所へ出る余裕等は……この調子だと微妙とも思えるな。 というわけで物見遊山へ連れ出すプランは早々に放棄し、話を続ける。 「所で晶ちゃん達さ、この後は何処行くんだい?國崎技研とか?」 「國崎か。流石に菓子作りコンテストへと出る余裕はないが……」 「人間のお手伝いとかも、補助具無しでやるしねぇ“妹”さん達」 「明日余裕があれば赴くのもいいかもしれんが、今日はパスだな」 「その言い方だと、行きたい所あるっぽいね。邪魔したかこりゃ」 構わぬ、と笑ってDr.CTaを送り出す。そう、私には明確な目的地がある。 それは単語と得意分野こそ違えど、同じく“職人”に対する強い興味だ。 同時に、所謂“友”との再会でもあるのだが……奴は口が達者ではない。 それ故に逢う事もあまり多くはないのだが、今はピッタリの相方がいる。 「久方ぶりだな……魔剣匠工房“鬼奏”、いい店の名だ」 「あ……晶、ちゃん。何年……ぶりだったかな、逢うの」 「確か去年の冬だ。まだ3ヶ月くらいだぞ、神浦琥珀よ」 ──────それは“職人”同士のシンパシー、なのかな? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/359.html
戦うことを忘れた武装神姫 その4 後日談 第04話・戦うことを忘れた武装神姫-4 の続き。 その日、久遠が帰宅した後の話であります。。。 お土産のプリンを賞味ながら、食後のひととき。昨夜の件を 他の神姫達に話すと、皆一様に驚いた。 「へー、リゼって歌が上手かったんですね。」 とシンメイ。 「もう、別にそんなに上手いわけじゃないんだから・・・。」 照れながらも嬉しそうなリゼ。 「ねえねぇ、なにか歌ってよ。」 エルガがリゼの腕を掴んで懇願する。 「え、えー、じゃぁ・・・マスター、あのCDまだあったよね? いいかなぁ。。。」 「ほいきた。」 さっとCDを用意し、さくっと再生。 3曲程をさっくりと歌う。 ・・・上手い。 ・・・こりゃぁ・・・デビューできるんでない? ・・・ってくらいに上手い。 拍手喝采。赤面し、照れに照れるリゼ。でもトコトン嬉しそう でもある。。。 本来なら長姉になるべき生まれでありながら、 俺の所においては末妹と何とも微妙な立場であり、本人も相当 コンプレックスを抱いていたようだが・・・そろそろ吹っ切れ たのだろうか。 「リゼ、すごいじゃない。」 中でも、人一倍嬉しそうなのは、リゼと(ロット上は)同期のイオ。 「そうだ、日本の昔からの歌とかも歌えるの?」 シンメイが手を叩きながら聞いた。 「知っている曲ならいけるよ。そう・・・とおりゃんせ、とか。」 と言ったリゼ、静かに歌い始め・・・ ・・・シンメイが震えあがってしまった。 上手い人が歌うと、テッテー的に不気味さが増すこの曲。 怖い話がどうにも苦手なシンメイには、久々の一撃となったようで、 こんどはシンメイが寝付けなくなってしまった。結局この日の夜は、 シンメイの話し相手をするハメになってしまった。。。 昔話を怖がるほど、繊細な心の神姫たち。 そう、ここに居るのは戦うことを忘れた武装神姫。。。 <トップ へ戻る<