約 5,047,696 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1025.html
軽量級クラス用武装コンセプト:“EL DoLL”アドバンスド・ターミナル:“マビノギオン” 第二世代型補助アーマー:“シルフィード” ハイブリッド・アーマードレス:“レーラズ” 多重可変型戦術支援システム:“[魔女の箒(ブルーム)]アルファル” 専用統括制御プログラム:“W.I.N.K.” データ誘導システム:“W.I.N.G.S. Ver.ALC” 軽量級クラス用武装コンセプト:“EL DoLL” 槇野晶が、自らの“妹”たる三姉妹の生き様を補助する為に己の全てを 注ぎ込んで作り上げた、軽量級ランク用武装群を総称するカテゴリー。 攻撃を堪え忍ぶと言うよりは、致命傷を避け一撃を加える戦術を採る。 【コンポーネント一覧】 Ver.:6.5535-ALC [[Arch vaLkyrja Concept]] 武装:elMGS_KS999 “魔剣”(ライナスト/エルテリア/コライセル) elVTA_AL777 多重可変型戦術支援システム“アルファル” (フィオナ/モリアン/アルサス) elAAA_AL555 アドバンスド・ターミナル“マビノギオン” exMWU_AL123 共通武装(フェンリル/ヨルムンガルド/ヘル) 装備:elHAD_AL333 ハイブリッド・アーマードレス“レーラズ” elSSA_AL111 第二世代型補助[[アーマー]]“シルフィード” 情報:elTAS_AL000 専用統括制御プログラム“W.I.N.K.” exTWS_AL123 データ圧縮システム“W.I.N.G.S. Ver.ALC” 色調:装着する神姫専用のパーソナルカラーに合わせてある。 解説:三姉妹の軽量級ランク用装備として特別に開発された、 [[特殊武装]]。正真正銘、“三姉妹”の為だけに存在する。 製造コンセプトは「戦乙女を越え、大いなる者へッ!」 大型化により、神姫バトルにて重要な“速さ”を殺ぐ結果を招いていた “Valkyrja”の長所は生かしつつ、小型・軽量化を図っている。更に、 『追加武装の必要を無くす』為、“偏執狂”的な多機能化が施された。 武装と“レーラズ”は、サイドボードに合わせて設計した専用ケースに 纏められ、神姫は“シルフィード”等と好みの服飾を身につけるだけ。 三機が製作されロールアウトしたが、神浦琥珀嬢が作成した“魔剣”と 三種存在する“マビノギオン”以外は、色調や装飾等の違いしかない。 (なお“魔剣”及び共通武装に関する詳細についてはこちらを参照の事) コンセプト名は“Electro Lolita Dress of Light Lord”の略であり、 “Electro Lolita”の一つの頂点として、コスト度外視で生産された。 それ故に量産化の予定は一切無く、実行するには再設計が必要となる。 勿論その場合、今の性能を維持する事は極めて困難になると思われる。 またその運用は、専用のラーニングプログラムを考慮しても神姫本人に スキルが求められる。一方のオーナー側も、システムのメンテナンスは “職人”的直感が要求され、晶以外に個人での修理や調整は出来ない。 (但し高度な技術者で有れば、精密検査を経て各種修理等は可能である) アドバンスド・ターミナル:“マビノギオン” 槇野晶が、軽量級クラス用に開発した次世代武装コンセプトの一部分。 基本システムで補えない装着者の要望や戦闘スタイルに対応する為に、 追加武装等に変形する拡張武装ターミナルである。ガントレットとして 両腕に装着するが、利き腕側は電磁浮遊式の急加速ブースターである。 従って各機の特色は、MMS用ジョイントを備えた反対の腕に現れる。 【ガードタイプ:武装データ】 装備:hmAFS_AL000 複合多層型パワーシールド“バルドル”×1 ロッテのそれは“ガード”タイプと呼ばれ、腕上部に特殊なユニットが 埋め込まれている。これはポップアップする事で、莫大なエネルギーに よって、何層にも重ねた斥力場を発生させる。他の機能は存在しない。 しかしシンプルな分、構造強度や信頼性は他の2タイプよりも数段上。 また、外部からの電力供給により持続時間や斥力場の出力を伸ばす事が 可能な他、シールドの強靱性を活かした“体当たり”にも用いられる。 【アサルトタイプ:武装データ】 武装:hmSSB_AL222 特殊湾曲式スリーブ・ダガー“フィン”×2 hmHCS_AL444 電磁加熱機構付ロングスピア“ピーク”×1 hmLWE_AL666 十三節分割構造型エストック“テイル”×1 装備:hmEFS_AL888 電磁浮遊式急加速ブースター“フレイ”×4 アルマのそれは“アサルト”タイプと呼称する。これに搭載する武装は ブースターを備えた基部ガントレットへと、折り畳んで接続している。 中でもスリーブ・ダガーは、晶独自の特殊製法によって“しなる”為、 外周部に巻き付けて固定するという、特異な構造のソードブレイカー。 なお、ブースター以外の全武装は合体させて“スキーズブラズニル”と 呼称する大槍になる。また、これらは“エルテリア”の影響を受ける。 即ち、“魔剣”による遠隔操作(及びそれに付随する硬度強化)が可能。 【ウィザードタイプ:武装データ】 武器:hmSCU_AL666 小型魔術執行シークエンス“モイライ”×1 クララのそれは“ウィザード”タイプとされる。名前の通り、クララの 攻撃法である“魔術”の執行を『単独で補佐する』為の複合ユニット。 孔雀の翼風に展開するストレージパネル、ガントレットに埋め込まれた 情報処理補佐用コンパイラ、手袋の爪や掌に仕込んだ執行用アンテナ、 肘部分に搭載したリボルバー式緊急充電システム、の四つで成り立つ。 展開速度は前より向上しているが、出力と“魔術”の種類で若干劣る。 第二世代型補助アーマー:“シルフィード” 三姉妹用に仕立てた、次世代型のアーマードレス。基礎中の基礎として 晶所持の神姫には欠かさず着せる物であったが、以前はベスト風であり 単体で着るには若干野暮ったい印象があった。その通気性及び保温性は 折り紙付きだったが、デザインと機能面どちらでも問題を抱えていた。 そこで第二世代型では、“Electro Lolita”で培ったデザインセンスを 活かし、活動的な半袖・ミニスカートのドレスという意匠に変更した。 更に撥水加工を施し、共通装備として開発した急速移動用ブースターの “前進・スライド・後退”、三種類全ての同時搭載までも成し遂げた。 反面、防御力や衝撃吸収性は以前のバージョンよりも若干落ちている。 デザイン段階で胸が若干協調されており、スタイルがよく見えるという 副作用が存在する。構成はフリルのミニスカート及び薄手のスパッツ、 半袖ブラウスにジャケット、オーバーニーソックスとガーターベルト、 強化コードタイとアンダーウェア、胸部バッテリーに補助ブースター。 更に専用のカチューシャ(天使の輪・悪魔の角・犬種の耳の装飾入り)と 謎めいた意匠の十字架型ロザリオが揃って、初めてワンセットとなる。 色はアルマ:黒・銀・赤/ロッテ:白・金・青/クララ:灰・銅・翠。 ハイブリッド・アーマードレス:“レーラズ” 三姉妹用に仕立てた、次世代型アーマードレスの更なるパーツにして、 “真のドレス”である。“シルフィード”はあくまでも補助用な為に、 その上に着る“防御を高める服飾”はどうしても必須だったのである。 “Electro Lolita”の量産タイプ・“フィオラ”を製作する際に培った 様々なノウハウを活かし、可憐な外見と着やすさを重視している。更に 撥水性・通気性・保温性は勿論、耐刃・耐衝撃・耐弾性能も一応考慮。 その複雑怪奇な多機能性故、“シルフィード”との重ね着を考慮しても 純粋な防御力は並みの神姫バトル用装甲に及ぶか否か、というレベル。 しかし、回避機動を重視した当コンセプトでは問題ないとされている。 なお、後述する“アルファル”とは完全連動をする関係にあり、簡素な 可変機構や特殊ジョイントを内蔵する。更に、着用神姫の“タイプ”を 意識した装飾や体型調整を施す為、完全オーダーメイドとなっている。 色はアルマ:赤・黒・銀/ロッテ:青・白・金/クララ:翠・灰・銅。 多重可変型戦術支援システム:“[魔女の箒(ブルーム)]アルファル” 神浦琥珀嬢に依頼して作り出した“魔剣”が戦術の鍵ならば、こちらの “アルファル”は所謂“鍵穴”でも形容すべき、もう一つの要である。 これを投入する為に他の部分を敢えて軽装にした位には、重要な装備。 ぷちマスィーンズを参考にして槇野晶が、己の技術力全てを注ぎ込んで 三機のみ開発した、“EL DoLL”専用の特殊戦術支援システムである。 マスター登録された神姫との“接合”通信により、一心同体とも思える 連携を行う。会話機能は持たないが、YES/NOでの受け答えは一応可能。 なお、その開発に際してはゼンテックスマーズ社の所有していた技術を 余す事なく投入している。晶が“アルファル”を設計・製作出来たのは その技術的資料が有ればこそだが、案の定その入手経路は不明である。 【武装データ】 Ver.:4.268 [[コスト排除タイプ]] 武装:hmAGB_AL368 アクセラレート・ガンブレード“リディル”×2 hmPLD_AL497 レーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”×2 hmTBG_AL152 三連ビーム・ガトリングポッド“セイバー”×2 hmARD_AL765 伸縮式ブレード“デストロイ・マチェット”×2 hmHHH_AL620 ハードヒートホーン“メタル・ストライド”×1 ※この他、可変形態に応じて様々な武装が神姫に提供される 装備:hmFAS_AL000 位相転換型装甲連動式フィールドアーマー×36 hmFSU_AL241 超小型フレキシブル・スラスターユニット×18 hmWBA_NO666 大型光学偏向式防御システム“ミラージュ”×2 hmGXD_AL999 電磁圧壊フィールド“スプライト・ボルト”×2 hmSSS_AL046 真空破断式防御外殻“ソニック・ブランド”×1 ※この他、可変形態に応じて様々な装備が神姫に提供される 色調:モノトーンとクロームが基本だが、使用者に応じて変色する。 アルマ 赤・黒・銀/ロッテ 青・白・金/クララ 翠・灰・銅。 解説:“ビルト・パンツァー”の試作品をヒントに開発した、 “十五の可変機構”を備える“偏執狂”多重複合装甲。 製造コンセプトは「単騎で、着用神姫を補佐せよッ!」 解説の欄にも書かれている通り、この“アルファル”は十五形態に及ぶ 複雑怪奇な可変・合体パターンを備えている。この為、基幹部品自体の 物理的な強度は、衝撃・荷重や空力特性に耐えうる最低限度しかない。 更に全身の装甲は、補助バッテリーを外殻とのサンドイッチ構造にした “Heiliges Kleid”由来の素材だが、薄さの為に防御性能は平均以下。 防御力は、位相転換型装甲連動式フィールドアーマーで補完している。 可変機構は、ジェネレータ内蔵のドラム型メインフレームを採用した。 従って全てのパーツが、精緻極まりないフレーム類で接続されている。 電磁結合システムとMMS汎用ジョイントだけでは不十分だったのだ。 その代わり、全身に隈無くエネルギーを供給する機能を獲得している。 それら設計段階からの無茶が祟った為か、最早“アルファル”その物に 部品を追加する事は(設計に組み込んだ“魔剣”を除き)不可能である。 また単独で用いる携行武装も、出力の大きな代物は採用出来なかった。 従って文字通り『単騎で、着用神姫を補佐』する事が求められており、 その為に変形機構をフル活用する事こそが、着用神姫には必須となる。 搭載された可変パターンと、その機能概要は以下の通りとなっている。 【三姉妹共用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 クルーザー :独立稼動用の飛行形態。円盤形をしており、文字通り UFOの様な機動性能で、ガトリングを用いて攻撃。 バトルフィールドに出現する時の基本形態でもある。 スライダー :独立稼動用のホバー形態。涙滴型のボードに、手足を 生やした様な形。搭載された武装で高速戦闘を行う。 水上を、ホバー性能により滑走する事も可能である。 ジェスター :独立稼動用の人型形態。“スプライト・ボルト”は、 この形態でのみ使用可能。神姫との連係攻撃を行う。 マスターの神姫に応じて、各機“クセ”が存在する。 アーマード :神姫の躯を覆う強化装甲形態。“魔剣”と共通武器の 使用を意識した、防御重視形態。大きな翼を備える。 “Valkyrja”と“SSS”にシルエットが酷似する。 マーメイド :神姫の躯を覆う潜水補助具形態。水中戦に対応する為 存在する形態だが、単体での攻撃力は皆無に等しい。 その代わり、人魚の様な姿に違わず潜水能力が高い。 ギガノイド :神姫の躯を覆うパワーローダー形態。三機を合体して 形成出来る姿。双振りのレーザー・カタールを始め、 円盾・レーザーガンランスと神姫の共通武装で戦う。 【アルマ専用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 シリンダー :神姫が使用する、ギガビームガトリング形態である。 莫大な速射性能を誇り、面制圧に強い力を発揮する。 “セイバー”の、装甲貫通力の弱さも克服している。 フライヤー :神姫が使用する飛行補助システム。水平翼を備えた、 大型バックパック。小回りと三次元機動性に優れる。 また、神姫の手足を一切束縛しない自由性も特徴的。 アクセプト :ブルームファミリアー“シームルグ”と呼称される。 “舞剣”での戦闘を補助する、光の翼を持つ鋼の鳥。 剣で作り上げた“神鳥エルディナス”とも共に戦う。 【ロッテ専用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 スナイパー :神姫が使用する、ロングレンジライフル形態である。 姿勢固定用の二脚を備えており、狙撃を得意とする。 有効射程千smを誇る物の、特性は極めてピーキー。 サーファー :神姫が使用する飛行補助システム。サーフボード型。 盾として使用出来る他、巡航速度は全形態中で最速。 形状故、水上を低空で高速疾走する事も可能とする。 アクセプト :ブルームキャリバー“カラドボルグ”と呼称される。 “閃牙”を内蔵出来る、光学砲搭載型巨大ブレード。 電力をレーザーに変換出来る他、加圧機能も備える。 【クララ専用の形態:名称は、後の“・フィギュア”を省略している】 スレイヤー :神姫が使用する、実体・光学併用型巨大デスサイズ。 各部のスラスターを駆使して、取り回しを補佐する。 身体能力は不要だが、推進器を制御する頭脳が必要。 クリーナー :神姫が使用する飛行補助システム。その姿は“箒”。 どこか“タイヤのないバイク風の乗物”にも見える。 実体槍になる他、直進性能とホバリング性能が優秀。 アクセプト :ブルームハンガー“メギンギョルド”と呼称される。 “魔奏”の余波を軽減可能な、緩衝用ガントレット。 機体装甲内には、当形態専用の補助刻印が存在する。 この様に変形可能パターン数は多いが、後述する“W.I.N.K.”の助けを 借りてもなお、神姫一人が扱える形態は九つがやっとである。これは、 超高コストになる事を予期していた晶が、一種類の機体設計で三姉妹の 戦闘パターン全てを補助する為、わざと計画していた“仕様”である。 ただこれは、チームバトルの際に互いの武装を貸せる利点ともなった。 以降は、搭載された武装や装備を解説していく。まず、主力兵装である ガンブレード“リディル”は、小型の電磁ジェネレータを搭載している 複合武装である。ライフル機能としてはビームとハンドガン用小型弾の 撃ち分けが可能である。その伸縮式バレルは、縁がエッジとなっており スタンブレードとしての運用も想定されている。更に二段可変機能付の クローアームやウィンチ、止めにブースターをも六つ組み込んである。 クローアームは、ヒートクローと拡張アームの切り替えまで行う逸品。 但し補助武器としての側面が強い為に、個々の機能は中途半端である。 ライフル時の実体弾カートリッジが“ハンドガン用”なのもその為で、 あくまでも“リディル”は、神姫を補佐する為に使う補助武器なのだ。 但し拡張アームの機能は割と優秀で、神姫が使用する武器を運用可能。 掌にエネルギー出力用丸形アダプターが存在し、武器としても使える。 レーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”では、若干だがこの傾向が 改善されており、基本的には軍用ナイフ風の光刃を形成する単機能品。 但し、変形させて露出した専用丸形アダプターからエネルギーの供給を 行う事で、刃の長さを“日本刀”のレベルまで延ばす事が可能である。 更に三本を集めて合体させる事で、大型レーザー・カタールにもなる。 ビーム・ガトリング“セイバー”は、神姫素体の腕へとマウント可能。 その他、一部形態においてはビーム加速器の機能を発揮する事もある。 この武器は“アルファル”本体同様、中枢となっているドラム式の可変 フレームにアーム類で直結しており、エネルギーもそこから受け取る。 速射性能は高いが一発ごとの集束性能は低く、装甲貫通力が若干弱い。 大型ブレード“デストロイ・マチェット”は、一部形態で使用している 鉈状のパーツ(主翼やシールド)を分離、白兵武装に流用した物である。 単体では取り立てて特殊な力はないが、“リディル”の拡張アームにて ホールドした場合、エネルギー供給を受けて加熱する事が可能である。 更に双振りある剣を峰同士で繋げれば、アウトレイジ風の巨剣になる。 ハードヒートホーン“メタル・ストライド”とは、アンテナユニットの 外装を熱溶断式大型サバイバルナイフにした、一種の隠し武器である。 相手神姫やぷちマスィーンズを追尾するレーダー端子は必要だったが、 剥き身では“脆弱性”が払拭できなかった為、やむを得ず武器化した。 そんな経緯で搭載された武器であるが、熱効率と切断力はかなり高い。 但し搭載位置の関係でリーチが極めて短い為に、使いにくいのが欠点。 大型光学偏向式防御システム“ミラージュ”は、円柱の形をした比較的 大型のユニットであり、弱い磁場を用いて光学系ビームを偏向させる。 これにより射撃兵器を防御するのだが、実はその出力には限界がある。 それ以上の力を一遍に受けた場合、熱線をそのまま被弾する事になる。 位相転換型装甲連動式フィールドアーマーは、超小型ビームシールドと 装甲板の電離位相を利用した、物理的な装甲硬度強化システムである。 こちらも同様に、一秒ごとに減殺処理出来る圧力の限界を持っている。 即ち“アルファル”は、瞬間的に与えられる強い圧力には非常に脆弱。 それ故必然的に“避ける”戦術を求められるのが、最大の弱点となる。 なお使用者に応じ機体の配色が変わるのは、この機構の副作用である。 電磁圧壊フィールド“スプライト・ボルト”は、“ミラージュ”前部を 保護する装甲シャッターに組み込まれた電圧集積砲撃システムである。 “ミラージュ”の発生させる電磁力を圧縮・増幅し、前方に対し解放。 放散されたエネルギーは、巨大な雷の様に至近の敵を破砕してしまう為 白兵武器としても、ミサイル等への積極防御装置としても使用出来る。 真空破断式防御外殻“ソニック・ブランド”は、大気の流動性を用いて 敵の実体弾攻撃を反らす、積極防御装置。この機構をフルに活用して、 敵に接触した場合、カマイタチの様に装甲を切断する事も可能である。 しかしこれらを以てしても、避ける戦術が重要なのは変わっていない。 専用統括制御プログラム:“W.I.N.K.” “Weapon Integrated to Nerves frameworK(中枢構造への武装統合)”。 神姫をコアシステムとして、装備した全武装を有機的に活用する為の、 戦闘用拡張プログラム。但し、開発者である槇野晶の性格もあってか、 神姫の性格や戦闘パターンをダイレクトに変更する“力”は持たない。 例えるならばこれは“軍事教練用のデータDVD”であり、神姫自身が アクセス・解読して、自らを鍛えていく事で自然と身に付いていく物。 その為プログラムと言うよりは、リーダ付きデータライブラリに近い。 その上武装が損傷した時は、神器に痛みが伴うという副作用を備える。 非合理極まりない代物だが、晶は機械的に神姫達の“心”を書き換える 行為を嫌っている為に、彼女の神姫用プログラムは全てこの様な構造。 なお、作成に際しては日暮夏彦のプログラミング指導が役立っている。 データ誘導システム:“W.I.N.G.S. Ver.ALC” “Valkyrja”に搭載されていた“W.I.N.G.S.”の、最適化バージョン。 “EL DoLL”への導入に際して、拡張性と機能を極限まで絞り込んた。 その為、必要となるユニットは両耳のピアスだけとコンパクトな設計。 その機能とは“レーラズ”を展開・装備する事。ただそれだけである。 戦闘開始前、その日の気分に応じた神姫本人が望む衣装で出場させる。 たったそれだけの為に搭載されており、戦略上に於いて無意味である。 しかも“レーラズ”自体は、専用ケースに収める方式でサイドボードへ “アルファル”と共に入れる必要がある。従って現状、このシステムは 服の交換を武器転送以上の精度で執行する為の、補助装置に過ぎない。 但し副作用で、エントリー時に“レーラズ”を着る必要は無くなった。 しかしこれこそが、晶がマイスター(職人)たる所以である。戦闘以外に 衣服等の細かい拘りを如何なる時も追求する、その姿勢の現れなのだ。 なお“W.I.N.G.S.”自体の理論や仕様・経緯等は、こちらを参照の事。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2720.html
「あたしたまに樹羽が怖くなるわ」 「……そう?」 「だから怖いんだって樹羽」 華凛とシリアの両方に言われる。バトルは終わった。私が勝ったのだ。あろうことにあの楓さんを投げて。 「まさかあたしが投げられるとはねぇ、投げられる側の気持ちが軽くわかったよ」 今は楓さんとも話している。話してみるとやっぱり気さくな人だ。 「あれは……合気道かなんかかい?」 「昔教えてもらった」 幼稚園から小学校一年生まで、親に通わされた合気道教室で、当時師範をしていた女性に教えてもらったのだ。今思えば、その時教えられるような技ではなかったが、不思議と出来てしまったのだ。 「楓さんも人をよく投げてますよね、そりゃもう容赦なく」 「まぁな。ただまぁ、最近はちょっとは余裕がでてきたんだぜ? わざと触らせて飛ばすなんてのも出来るようになったんだ」 「今研究してるのは、如何に回転をかけて飛ばすかってことだよな」 確か、前回は四肢があらぬ方向にねじ曲がっていなかっただろうか? たぶん、その研究は最終段階まで行っていることだろう。 あの後、気を失うことなく無事にライドアウトした私は、連続戦闘を辞退して楓さんと一緒に話している。まだ一回バトルすると疲れる。 「最近は不良を飛ばしたっけな」 「あんまり穏やかじゃないですね」 「だろ? 樹羽ちゃんにちょっかい出そうとしてたから、容赦なくやったよ」 ……あ。 その話を聞いた途端、華凛は笑顔のまま固まった。こうなるんじゃないかと思って話さなかったけど、やっぱり正解だった。今となっては徒労だけど。 華凛の首が、昔のからくり人形のようにカタカタとこちらを向く。すごく怖い。 「ネェ樹羽? 不良ッテドウイウコトナノ?」 壊れたレコーダーのような声で尋ねられる。やっぱり怖い。 「えと、ぶつかっちゃって、それで……」 「ソレデ?」 「腕を掴まれた時、楓さんが助けてくれた」 「ソウ……ならよかったわ」 安心したのか、華凛はいつもの調子に戻った。やっぱり私は華凛の方が怖いと思う。 「華凛の方が怖い」 「私的にはどっちもどっちだと思うけどな」 シリアは苦笑しながら言った。この分だと、もしかしたらシリアも怖いところがあるのかもしれない。 華凛は楓さんに向き直って頭を下げた。 「楓さん、本当にありがとうございました」 「いいって。あたしが気に入らなかっただけだ」 それに、と楓さんは付け加える。 「ここだけの話な、タイミングがよかったってのもある」 「タイミング?」 何のタイミングだかわからないでいると、楓さんは目を閉じ、おもむろにハチマキを取り始める。取られた白いハチマキは、まるで包帯のように見えた。紅葉が軽く目を見開くのが視界の端に映る。 閉じられた目がゆっくりと開かれた。なんだか、ハチマキがないだけですごく印象が変わるように感じる。 「実を言うと、私、この格好でハチマキを付けるとああなるんです」 「へ?」 一人称が私? それに、話方もだいぶ違う気が……。 「姉貴が……いや、楓が自分の本性を出すなんてな」 紅葉が驚きいたように呟く。本性、と言うことは、こっちが本来の楓さんと言うことだ。 「本性って、じゃあ普段ゲーセンにいる時のアレは?」 「変な話かもしれませんが、多重人格に似たものだって医者に言われました」 話によると、事の発端は数年前、突如として男性恐怖性になってしまった楓さんは、男性に触れられた時にだけあの性格が出るようになったらしい。そのうちに、性格が変わる時間がだんだんと増えていき、今のような感じになったそうだ。 「今みたいに、ハチマキがトリガーになったのは3ヶ月くらい前。性格が変わってる間の記憶もあるから、ただの二重人格じゃないみたい」 「へぇ……」 楓さんは再びハチマキを頭に巻く。キュッ、と縛る音が聞こえると、 「ま、そんなとこだ」 またさっきと同じ調子に戻った。 「昨日は夕方からバトルの約束があってな。ちょうどここに向かってたところだったんだよ」 だからタイミングがよかったと言うわけか。そこを通りかかった時、この状態でなければ、多分ああはならなかったかもしれない。 「悪いね、いきなりあたしの話しちまって」 「あ、いえ、そんな迷惑には思ってませんから」 「問題ない」 「むしろ一層親近感が沸いたって感じですね」 三者三様の答えを返す。楓さんはにっかりと笑った。 「じゃ、あたしはもう一勝負してくるわ。3人とも、またな!」 「また戦うことになったら、もっともっと強くなってるからな!」 そう言って、楓さんと紅葉は休憩室から再び戦場へと戻っていった。 「私は帰るけど、華凛はどうする?」 「樹羽を家まで送る」 即答だった。 家に着き、華凛と別れた後、私は一息ついた。今思えば、私はビルの屋上から落下したんだっけ。飛び降りだけは絶対やめよう。 シャワーを浴びた後、牛乳片手に部屋に戻る。カルシウムは大事なのだ。まめに摂取したい。 シリアは自分のクレイドルを拭いていた。余談だが、このクレイドル、頭を置く部分に簡易枕をつけてある。私が作った物だ。綿をたっぷり詰めた神姫サイズの枕は、シリアのお気に入りになりつつあるらしい。 「今日は疲れた」 私が席に着くと、シリアは手を止め、クレイドルに座った。 「そうだよね。そう言えば樹羽、体は大丈夫?」 「体?」 「ほら、昨日バトルの後に気を失っちゃったでしょ? 今日は平気だったみたいだけど」 そう言えばそうだった。今回はなんともなく普通にライドアウト出来た。前回は気を失ったのに、何でだろう? 考えた末、私は電話してみることにした。 『え? 今回気を失わなかった理由?』 「うん、華凛はなんだと思う?」 電話の先で華凛は少し唸った。突然こんなこと言われたら誰だって困るだろう。 『うーん、わかんないわねぇ。樹羽は何か思い当たる節は無いの?』 無い、と言いかけて少し考えた。今回のバトルと、前回のバトルの相違点を頭の中で一つ一つあげてみる。いくつか出た中で、一番可能性のありそうなもの……あった。 「ブースター?」 『はい?』 「ブースターの使いすぎかも知れない」 今回はアイオロスを壊されてしまったせいで、一回も自分でブースターを使うことは無かった。変わって前回は、自分でブースターを使い続けた。 何事にも反動はある。私だけが持っている力。便利ではあるが、その反動がもしかしたらアレではないだろうか? 『…………』 電話の向こうで華凛は沈黙している。考え込んでいるようだ。 やがて華凛は、 『……樹羽、これはあくまであたしの仮説なんだけど、良いかな……?』 と言ってきた。 「うん」 私はそれに対し肯定の意を示す。 『人の脳には、使われていない部分があるのって知ってるよね?』 知っている。人間が無意識の内に制限している部分のことだ。何故そんな制限が存在する必要があるのか、その理由まではまだわかっていない。 『たぶん、たぶんだけどさ、樹羽が神姫にライドした時、その制限の一部が解除されるんだと思うの』 「どういうこと?」 『つまり、例のブースターの制御能力が、その制限された部分なんだと思うの』 華凛の仮説は、つまりそういうことだった。 私のこの特異能力は、私が普段無意識に使っていない部分に該当し、私が神姫にライドした時のみその力が解放されると。 私が倒れた理由は、普段使っていない部分を酷使しすぎたからだと、そういうことらしい。 『これはあくまで仮説――ううん、妄想に近いわ。もしこの妄想があってるとして、なんで樹羽にそんな力が宿っているのか、さっぱり検討もつかないもの』 確かにそうだけど、この能力は確かにあるのだ。 改めて考えるとおかしなことだ。これではまるで―― 『ま、今は深く考えないでいいんじゃないかな? どうせ考えても答えなんかでないし』 「……そうだね、そうする」 早く寝なさいよ、と言い残し、華凛は電話を切った。私はベッドに携帯を放り、私自信もベッドに倒れこんだ。 「樹羽、どうだった? 華凛さんなんだって?」 シリアが顔を覗きこんでくる。小さなその顔を見ていて、私は尋ねた。 「確か神姫って2031年に発売されたんだよね」 「へ? ああ、うん、そうだよ。それが?」 確かエウクランテ型の発売が2037年。今から7年前になる。初めて神姫が発売されたのは2031年。私が生まれたのは2028年だから…… 「やっぱり、偶然」 「?」 「なんでもない」 私は考えるのを止め、しばらくシリアとたわいもない会話を楽しんだ。 あり得ないんだ、そんな事――。 第七話の2へ 第八話の1へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/927.html
和の心とは即ち、着物に宿る物也 常日頃から地下にて暮らしている私・槇野晶と三人の“妹達”であるが、 ビルの間から差す陽の光は、毎日きっちり浴びている。皆の精神衛生上、 こういった事を欠かすと陰鬱になっていかんのでな。例え集光タワーから 太陽光を地下に引いているとしても、だ。その手段が、朝の体操である。 「いっちに、さんし……にぃに、さんしっ。有無、今日もいい日だ」 「それにしてもマイスター、なんでわたし達までブルマ姿ですの?」 「私だって着替えているだろ?運動には、運動に適した姿が大事だ」 「さんに、さんし……。動かさないと、モーターが鈍りますしねッ」 ……貴様、じろじろ見るな。私や“妹達”が、ブルマ姿で何が悪いッ! ジャージ必須という程寒い季節ではなくなったのだしな、人の勝手だ。 更に気分という物もある。ほら、クララにさえも似合っているだろう? そう言えば、これからは春を過ぎて夏か……それに、連休も遠くない。 「なあお前達。今日は店も昼までだ、午後から買い物にでも出ぬか」 「お買い物?よい、しょっと……でもマイスター、何を買うのかな」 「まずは、お前達の部屋を増設する。個室がそろそろ欲しかろう?」 唐突な私の誘いに、背筋を曲げた皆がきょとんとする。勿論、私自身に 腹案あっての提案である。買ってやりたい物は既に決まっているのだ。 それに太陽を浴びる為、私が日頃から行う手段には“買い物”もある。 「あたし達の個室、ですか?それ位のスペースはありますけど……」 「それなら、わたしは和室がいいですの♪後はついでに、お着物も」 「こらロッテ。私が思っていた事を、先に言うんじゃない……もう」 『てへへ』と運動用の壇上で笑うロッテに、私は苦笑いした。その通り。 毎日洋装では飽きると思ってな、和室系の装飾品やクレイドルを買いこみ 更に“個々の和室に似合った和装”を買ってやろうと思うのだ。日頃から 店を手伝う彼女らに、定期的に何かをしてやりたい……それが私なのだ。 「という訳で、座敷の調度品を選んだら和装を一着ずつ買ってやろう!」 「何だか悪い気がするんだよ、マイスター……でも、甘えちゃおうかな」 「そう……ですね。流されちゃおう、かな?今から楽しみです、あたし」 「体操と朝食が終わったら早速、お出かけの準備しちゃいますの~っ♪」 はしゃぐロッテを宥め、体操を終えて朝食を摂る。私は、半日仕事だ。 ん、『何故一着ずつなのか』だと?貴様、着物の相場を甘く見るなよ。 僅かな不具合で価格が数段落ちた“B反”でも、バカには出来ぬのだ。 それに洋装や浴衣と違い、神姫用完成品は殆ど市場に出回っていない。 何せ最初から着こなせる神姫等、第三弾の武士型・紅緒位の物なのだ。 いっそ自分で作っても良かったが、やはり私は洋装の方が得意らしい。 ……などと色々考えている内に、あっという間に時間が来てしまった。 「というわけで、昼食も済んだ事だし出るとしよう。準備は良いか?」 「はいですの~♪でも和服買いに行くのに、この姿で大丈夫ですの?」 「こればかりは仕方有るまい。断られたら潔く出ていくしかないがな」 「和服がないと和服を買えない……というのはちょっと大変ですしね」 「とにかくまずは調度品とクレイドル群の調達なんだよ、マイスター」 上機嫌で、私達はアキバを後にした。まずは新宿のドールショップで 調度品と和室用の建材調達からだ。そこはMMSも扱っている為か、 東杜田技研製のクレイドルも僅かに揃っていた。そこで、正規販売の 始まった“和壱式”を始めに、壷や掛け軸などのミニチュアも買う。 「え~と……この達筆な文字は“木”って読みますの、クララちゃん?」 「それは“心”だよ、ロッテお姉ちゃん……ボクはこの行灯がいいかな」 「うんと……あたしはこの捻れたツボが欲しいです、造花とか入れたり」 「か、買いすぎではないか?これは、ちょっと持ち運べぬぞ……ううむ」 実際に使える陶器の湯飲み等が、皆の興味を惹く。私はそれを見ながら、 四人の箸置きを選ぶ。結局調度品や建材も含め、分量は相当数に及んだ。 その品数は既に、私が一人で持ち運び出来る容量を超えてしまっている。 止むを得ず、殆ど全てを宅配でアキバの我が家に届けてもらう事とした。 次は、同じく新宿の呉服屋。規模は大きくないが、その方が都合はいい。 「よし、では着物を選ぶ段だな。店主、電話で頼んだ通り宜しく頼む」 「ああいや構いませんえ、御嬢はん。で、この娘らに着せるんどすか」 「もちろんですの♪浅葱色の着物で何か、いいものはないですのっ?」 「……ん、ボクは青竹色か萌葱色が好みなんだよ。お願い出来るかな」 「えっとえっと。赤色……じゃなくて、桃色系統で何か無いですか?」 「はいはい、少々待っとくれやす。今奥から反物持ってきますさかい」 店主を急かす様にして、我が“妹”たる神姫達も呉服屋の奥に消えた。 ──暫し時が流れて。何故か私を呼ぶ声が店の奥から響いた。何事だ? 言われるままに進んだ私は、そこで予想だにしなかった物を目にする。 「決まったのか店主、ってそれは紫系の反物ではないか。誰が着るのだ」 「この娘らが、どうしても御嬢はんにも着物着せたい言いはりますんえ」 「私に!?……お前達な、勝手な事をして……嬉しいじゃないかこのッ」 困った顔で笑う店主と、その横には思い思いの反物を抱えた三姉妹達。 その前には、“人間サイズの”紫の反物が幾つか並べられていたのだ! そう。予め私にも着せる事を想定してロッテは承諾したのだな、全く。 「きゃっ!?だ、だってわたしたちだけなんてちょっと寂しいですの~」 「……ボクらに着せる物はマイスターも着る、いつもそうだったもんね」 「だから、マイスターも着てみてください!……着てくれます、よね?」 「しょうがない娘らめ、分かったッ!店主、私にも見繕ってくれないか」 ──────お財布は厳しいけど、やっぱりお揃いがいいもんね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1572.html
過去と流血に囚われし、嘆きの姫(その一) ──嘆きと喜びで飾った時を分かち合い、追い求めるは彼方よりの使者。 それは私達の予想を超えて、絶望を深く纏った憎悪と哀しみの塊だった。 しかし恐怖を感じてもなお……だからこそ、それは皆の心に留まる──。 第一節:鳴動 あの爆発事故……否、“事件”より数日後。私・槇野晶は神姫達と相棒を 伴って再び秋葉原の雑踏に繰り出した。あれから店の営業を半日で休み、 もう半日を周辺の聞き込みや路地の捜索に費やす日々が続いている。無論 警察等も出張っては居た様だが、爆発その物が“事故”扱いされた事で、 街全てを洗う程の捜査ではなかった。その間隙を、私は縫っているのだ。 「ふぅむ……小学校近辺までの路地は凡そ調べたが、目立った物証は」 「ないですね、お姉ちゃん……あの“闇樹章”以外影も形もないです」 「有無。やはり、残党か運び屋か……兎も角誰かが匿っているのか?」 這いつくばって地面を漁っていたアルマのHVIF・茜が溜息をつく。 そう、相棒は彼女だ。クララは私の胸ポケットで携帯電話を掛けており ロッテは神姫用の電子双眼鏡で、茜の頭頂部に乗りビルの外壁を見る。 しかしその何れからも、これという手懸かりは掴めなかった様だ……。 「う~ん……流石に、これだけ離れちゃうと爆発の痕も少ないですの」 「……倭さんにも電話してみたけど、噂以上は聞き出せなかったもん」 「すまんなクララや、まさか“梓”の友達にも当たってくれるとはな」 「どの道、怪我した娘には電話したかったから……構わないんだよ?」 クララは首を振り、“梓”のPHSに繋いだイヤホンマイクを仕舞う。 更にロッテも双眼鏡を茜の胸ポケットに放り込み、肩に腰を下ろした。 どうやら、ここでの捜索は無駄な様だ。私達は立ち上がり、埃を払う。 「しかし、混雑するメインストリート以外は大凡当たったが……むぅ」 「何にもないですの。建物や敷地にまで踏み込んでない所為ですけど」 「流石に無許可で入っちゃうと、住居侵入とか色々言われますし……」 「かといって許可を一々もらってたら、“当たり”の時に面倒だもん」 所詮一個人。しかも私達のナリは、誰を掻き集めても少女しかいない。 OK、“幼女”とか言うな。今この場でボロゾウキンに換えてやるぞ? ともかくだ。捜査する権力もノウハウもない私達の限界は、早かった。 こんな姿を巡回中の警官に見つかり、職務質問されては面倒だからな。 従って、発見できる手懸かりは殆ど皆無と言っても良かった……むぅ。 「……帰るか、皆。しかし参ったな、逃げられていたら一巻の終わりだ」 「もう一度近所で爆発事故が起きれば、その時に追い縋れそうなんだよ」 「でも……流石にまた被害を出させるのは、不謹慎ですからね……はふ」 「偶然でも何でもいいから、もう少し手懸かりが欲しい所ですの~……」 絶望は捨てた。が、こうも手応えがないと徒労感を覚えてしまう。それは 神姫の感情としても同じらしい。一度紅茶でも飲んで、情報を整えた方が いいのかもしれん。と言っても、ネット検索が精々だが……実に参った。 「……しかしだ、あれだけの“事故”があったというのに賑やかだな」 「やっぱり、人の欲望……というか感情は強力なんだよ。神姫も然り」 「オタクさんのパワーは、かつて台風さえ退けたそうですしねぇ……」 「ふぇ?え、ええと……茜お姉ちゃん、それ何処で聞いた話ですの?」 そんな事を皆でぼやきつつ、店へ戻る前に昭和通を見てみる事とした。 ゲーム店や書店を中心に、相変わらずヲタ共でごったがえしている街。 “欲望の生命力”というのは恐ろしい物だ。そう簡単に客は減らぬな。 「……まぁ、ここでぼぅっとしていてもしょうがない。戻ろう──」 諦めの混じった私の呼びかけは、最後まで届かない。再び場を覆うのは、 耳障りな爆音。電器部品を扱う古いビルの看板が、光に包まれて捻れる。 そう、紛れもなく数日前と全く同じ手口の“爆破”だった!爆風に混じる 異質な閃光は、火薬とは違う……プラズマの様な波紋を放っていたのだ! 網膜を焼き尽くす勢いのそれを感知して、私の眼鏡がフィルタを掛ける。 車道や太陽から届く強烈な光に対抗する為のそれは、先日入れた機能だ。 「ぐぁ!?眼、眼が……く、また爆発か!フィルタ機能オフ、くっ!」 「大丈夫ですか、お姉ちゃん!?また看板が歩道に……きゃあっ!?」 「おのれ、また犯行に及びおったか……む!?茜、アレを見ろッ!!」 鈍い轟音と共に、大質量の残骸は路面の石畳を割り潰す。だが、その中で 私は見たのだ。それは、“影”。頭上を覆う黒煙と、鉄道の高架に隠れた とても小さな“影”。それは到底石礫とは思えぬ、直線的な軌道を描いて 私達の上空を今まさに通り過ぎていったのだ!反射的に、脚が動き出す! 「追うぞ、茜!ロッテ、クララッ!あれが実行犯のMMSだ!急げッ!」 「茜お姉ちゃん、早くしてくださいのっ!軌道は、真っ直ぐ北西ッ!」 「は、はいっ!!その方向って、確か小学校か神社がないですか!?」 「あるんだよ。多分これは……神社の方角だもん。近道を行こうよっ」 クララのナビゲートとロッテの目測によって、幸いにも超高速で飛翔する その“影”が着陸するまで、私達はそれを見失わず追跡する事が出来る。 黒い物体が降り立った先は……クララの予測通り、極々小さな社だった。 そして私達が入口にたどり着いた時、石畳の上に……それはあったのだ! 「うッ……こ、これは……“闇樹章”!?」 ──────それは、暗く切ない定めへの呼び声……かな。 第二節:邂逅 “闇樹章”に見えたそれは、同じ柄の符丁をプリントされた紙片だった。 ズタズタに破けて吹き曝された紙クズが周囲に散乱しており、この紙片も その一部だったのだろう……しかもこの紙は、よくよく見ると妙だった。 陽光に照り映え私達を照らすのは、透明なビニール片であった。それが、 紙片の至る所に張り付いていたのだ。引き剥がし、破いた様な格好でな。 「む……透明なテープが張り付いている。これで何か梱包したのか?」 「間違いないですの、裏に張り付いてるこれは……梱包用の帯ですの」 符丁を内側にする様な形で箱か何かを包み、テープで止めたのだろう。 それを強引に破いた様なテープ屑の帯も、程なく石壁の側で見つけた。 つまり“実行犯”は、この辺りで封を開けられ解き放たれた事になる。 そして爆破工作を追えたそのMMSは、この社へと帰ってきたのだ……。 「……にしても、警察どころか公安や防衛省にさえ追われる身の筈だ」 「ふぇ?そ、それってどういう事なんですかお姉ちゃん?意味が……」 「あまりにも不用心すぎますの。わたし達で無くても見る人が見れば」 「誰が此処にやってきたのか、判るだろう。そうなればすぐ足が着く」 「これはすぐ側にいる……そうでなくてもここに居たという証明だよ」 『そう言えば!?』と、茜が納得した様に手を打つ。そう、MMSは確実に この社から放たれここに舞い戻った。恐らく、遠くには行っていないな。 時間的な余裕を考えると、ひょっとしたら……この社にいるかもしれん。 となればやる事は一つだ。機会を浪費するのは、この場合良策と言えぬ。 「……皆、探すぞ。だが気を付けろ、潜んでいたら抵抗されるだろう」 『は、はいっ!!!』 と言う訳で、茜・ロッテと私・クララの二手に別れて小さな社を漁る。 小さな、と言っても……家の一軒程度は入る敷地だ。潜んでいるだろう MMSを逃がさない様にしつつ、植木や繁みを中心に捜索していく。その 最中に、私は先の疑問を反芻した。致命的な痕跡を、運び屋が遺すか? ……プロフェッショナルという認識があるのならば、断じて否だろう。 「運び屋がそもそも二流だったのか、それともよもや……いやいや」 運び屋なりエージェントが、そこまで気の回らぬ二流で有ればまだいい。 だがしかし、そうでないとしたらどうなる?敢えて気を回す必要がない、 それ故に残骸を“棄てていった”のなら?それが、私の不安だったのだ。 そんな事を考えていた時、ふと眼に止まるのは……無惨に割れた賽銭箱。 「……む?あの賽銭箱、側面にヒビが入っているな。見てみるか……?」 「うん、気を付けてほしいんだよ。何処に潜んでいるか分からないもん」 頭を掠めた嫌な予感を振り解きつつ、私はそっと賽銭箱に近付いて…… 割れ目から中を覗き込もうとする。だがその瞬間に、クララが叫んだ! 「……ッ!?マイスター、退いて!モーターの音がするんだよッ!!」 「何ッ!?……そこに、誰か居るのか。出てくるのだ、隠れるな……」 ハウリンタイプならではの超感覚に加え、“ゲヒルン”によって身体の 運動能力を抑制されているクララは、私には聞き取れぬ僅かなノイズを 鋭く察知してくれた。クララの忠告に従い、私は賽銭箱から顔を離す。 モーター音の持ち主が爆弾かトラップならば、逃げなければならん…… しかし、不思議と恐れはない。逃げてはならない予感が、私にはある。 「……出てくるのだ、さぁ。お前がここへ飛んできたのを見ている」 「誰……誰なの、人間?警察とか軍隊……スパイ?別の、運び屋?」 暗い亀裂の底から聞こえてきたのは、怯えと怒りに満ちた声。厳密には、 “怒りの相”が遙かに勝っている……様にも感じたが。兎に角、この中に MMS……否、神姫同然の娘が居るのは間違いない……何故分かるかだと? 憎悪の色が濃くとも、私が聞いたのは紛れもなく少女の声だったからだ。 だが……そんな私達の予想を越える存在が一人、この中には入っていた! 「違う……運び屋、じゃない!?何しに来たのよ、貴女!来ないで!」 「お姉ちゃん、どうしまし……ってこれは、MMS?!でも、これ……」 剣幕に気付いてやってきた茜の表情が強張る。出てきたのは、どうみても フルフェイスのヘルメットだった。その表情は窺い知れない。否、顔面が 有るのかさえ分からない。鏡面仕様のバイザーは、私達の目ではその中を 見ることも叶わぬからだ。最悪、人間型の顔ですらないかもしれん……。 やがて、私と茜……人間の姿を認めたその娘が、ゆっくりと姿を見せた! 「アタシは止まらないわよ!絶対に、絶対に赦さないんだから……!」 ──────貴女は、一体……誰? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1311.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 神姫の構造と戦闘について ※この雑文は武装神姫に対するALCの勝手な解釈です。 一応本編ではこの解釈で考えてますよ、的なものです。 以上を考慮した上でお読み下さい。 オレ設定に興味は無いと言う方はどうかスルーして下さい。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 神姫の構造 武装神姫の構造は中枢部、末端部、装備の3つに分類できる。 中枢部 神姫の最低必要条件。 頭部、首部、胸部(胸アーマーの部分、及び腹部は含まない)のみの構成。 これにCSCを搭載すれば神姫と識別される。 (この状態では電源は無いため、有線接続が必要だと思う) 交換が効かず、破損=神姫の死であるため堅牢なシェルで守られていると思う。 バトルに使用する武器は、このシェルを傷付けられないのが前提。 非常用のバッテリーもここに内臓されていると思う。 頭部は思考、嗜好などを決定する部分のひとつ。 CSCから影響を受け、その方向性を決定するが、頭部自体の傾向も強くあると思う。 (アーンヴァルは真面目な子が多いとか…) 胸部はCSCの基部であると同時に、神姫の身体機能の最大値を決定する部分だと思われる。 トルクがここで決まると言う感じだろうか? (マオチャオは素早いとか、サイフォスは腕力があるとか…) もちろんCSCの影響を受け、性能は変化すると思う。 余談だが、神姫は全て裸素体だと考えている。 フィギュアの塗装はパイロットスーツみたいなもの? (ジルダリアならブラとパンツだけだ!!) 当然“デフォルトでは”胸の先端や股間部分は何も無いと思うが…。 交換用の18禁パーツが出回らない訳は無い!!(力説) 末端部 いわゆる手足、それに加えて中枢部に含まれない腹部も末端部のひとつ。 ここは神姫の体であると同時に交換可能な装備でもあるため、換装やカスタマイズも可能。 (作中ではレライナが脚部を改造していると言う設定になっている) 腹部には神姫のメインバッテリーである燃料電池が内蔵されている。 燃料電池の種類はさまざまだが、基本的には水素を補給し、酸素と反応させることで電力を得る仕組み。 しかし、この機能を使用したとしても、やはりクレイドルによる睡眠と充電は必須。 (補給用の水素は商品なので有料。バトロンの急速充電池がこれだといいな、とか・・・) もちろん、この機能を使用せずにクレイドルの充電のみでも活動可能。 また、別売りのバイオ型燃料電池と換装すれば、神姫は食事から糖分を摂取し電力に還元することが可能になる。 (食事できる神姫の科学的説明・・・になる?) そして、燃料電池だということは活動すると“水”が生成されてしまう訳なのだが…。 あ…、えっち機能のある(性器のある)お腹も売ってると思う。 装備 言わずと知れた武器防具。 取り外しは容易であり、簡単に換装が可能。 手で握るものの他、ぷちマスィーンズなどもこれに分類される。 武装の威力はおそらく最大でもガスガン程度。 これ以上になると人間に対する殺傷能力を持ってしまい玩具としては危険。 近接武器ならカッターナイフとか? どちらにせよ使い方しだいで人間に攻撃も可能。 (神姫の銃弾が目に入れば失明の危険はあるし、頚動脈を狙えば刃物で殺せる) これは現実のエアガンや包丁等でも同じ事なので許容できるはず。 当然、防具はその威力で破壊できる物に限られる。 (その場合、アーマー系は消耗品なので値段も安いはず) また、前述のとおり中枢部は堅牢なシェルで守られる為、バトルによる神姫の『死亡』は無いはず。 もちろん、中枢部を守るシェルのような強度の高いものは、防具としての使用は禁止だと思う。 つまり、これに当てはまる武器防具が公式レギュレーション(この作品内の公式です)に相当するはず。 自作武器や改造武器はこの審査を受けなければ公式戦での使用は認められない。 もちろん、違法改造の武器はこれに相当しない。 戦闘について 神姫が強くなると言うのは、力が上がるとか素早さが高くなるとかでは無いと思う。 きっと百戦錬磨のアーンヴァル(たぶん非力)が、生まれたてのサイフォス(腕力は凄そう)と腕相撲すれば必ずサイフォスが勝つと思う。 これが、剣を使った勝負となると話は別。 (剣道八段の小柄な老人と、剣道初段の大男の戦いを想定すれば分かりやすいだろうか?) つまり、神姫の強さは能力値ではなく技術(スキル)的な強さと、経験を反映した最適化による効率の向上だと言う事になる。 また、神姫は案外“頭が悪い”と思う。 計算の速さとかはコンピュータなので当然早いのだろうが、応用力に欠けるのではないだろうか? 狙撃が得意な神姫と言うのは、遠くの目標に弾を当てられるだけであり、狙撃の最適なポジションの選定とかはマスターの指示待ちになる筈。 でないとマスターが戦闘を指示する意味が無くなるし…。 もちろん、経験を積んだ神姫はかなりの精度でその手の判断が出来るようになるのだろうが、マスターの指示が完全に不要な神姫はいないと思う。 実力差がある場合ならともかく、互いの実力が伯仲している場合、マスターの指示の有無(あるいは良し悪し)は確実に勝敗に影響する。 こんなところですね。 くれぐれもALCの勝手な解釈だとお忘れなく。 そのうちコラムとか、対談形式で纏めて読み物にしておきたいけど・・・。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/739.html
麗しき戦い──あるいは予選その一(前半) “鳳凰カップ”は周辺イベントやブースの賑わいも勿論目玉だけど、 一番のウリはやっぱり“聖杯”を目指した、神姫達の戦いだもんね。 だから今年は、ボク達MMSショップ“ALChemist”の面々も全力全開。 その一環としてボク……クララである所の“槇野梓”は、この会期中 お姉ちゃん・槇野晶の全権代理人として、バトルを担当するんだよ? 「梓ちゃんっ、わたしもなんだか“ニキニキ”してきましたの♪」 「……どこで覚えたのかな、ロッテ……ちゃん?それはさておき」 「うん。極力“コレ”を脱がない様に、頑張って戦ってきますの」 「でも、いざって時は迷わず脱いで本気を見せてね。相手も必死」 「もちろん分かっていますの。でも、やっぱりスタイルも大事!」 “神姫”として戦いに出るのは、次女でありボクらの精神的支柱である ロッテお姉ちゃん。ボクは“仮初めのマスター”として、戦局を分析。 本当なら晶お姉ちゃん……“マイスター(職人)”の役目なんだけれど、 今回は物販ブースも展開してるから、晶お姉ちゃんは自由に動けない。 だからフェレンツェ博士に、ボクのマスター参加をお願いしたんだよ。 『それでは、予選Hブロック第一回戦・11試合目を開始しまーす!』 「……出番だよ、ロッテお姉ちゃん。行こうか?戦いの“舞台”へっ」 「はいですの!こういう大会は初めてですから“ゾワゾワ”ですの~」 ……テレビの見過ぎかな?ともかく、ロッテお姉ちゃんは普段通りに “Heiliges Kleid”を装着し、エントリーゲートに入っていったよ。 ボクも手順を教わった通り、“SSS”をサイドボードにセットして オーナー用の席に座って……準備OKっ。開始の合図をじっと待つ。 今回のバトルフィールドは、どうもダンスホールが舞台みたいだよ。 『ロッテ・ヴァーサス・ミモザッ!!レディ──────ゴー!!』 「ミモザ……梓ちゃん、相手の神姫ってマオチャオタイプですの?」 「そうだけど……あ、そう言えば!?だとすると、リハビリかな?」 「みたいですの。でも、遠慮はしませんし出来ません……さぁっ!」 ロッテお姉ちゃんは勿論、ボクも伝聞でその名前は知っていたんだよ。 裏バトルの犠牲となってデータを“拉致”され、眠っていた猫型神姫。 ついこの間ホビーショップ・エルゴの日暮さんから返却されたばかり。 まだ一ヶ月も経っていないはずだから……多分これが、復帰の第一戦。 でも、そこで手加減するのは却って失礼。二人ともそれを知ってるよ。 『やっちゃえミモザ!運動不足だったろ、駆け回ってこいっ!!』 「うにゃーっ!!あ、アーンヴァル……なのに、装備がないにゃ?」 「お久しぶりですの、ミモザさんっ!ほら、“ALChemist”の♪」 「ロッテにゃんにゃ!?……その格好、今日の売り物にゃ?」 ロッテお姉ちゃんは肯く。事実、現在天使型の神姫が着込んでいるのは “Heiliges Kleid”ではなく、今回展示ブースで販売している神姫用の トータルコーディネイト“フィオラ”の……エクストラエディション。 実際の製品を微調整して、ロッテお姉ちゃんに最適化したバージョン。 見た目は、春らしく淡い空色のジャケット姿。でも、能力は確かだよ? 「ええ。でも、戦いだって手抜きしませんの!さ、踊りましょうっ?」 「うにゃ!ずっと縛られてて遊べなかったから、一杯遊ぶにゃっ!」 「行きますっ!……“フェンリル”、頑張ってくださいですの♪」 サイドボードに収納していたのか、ぷちマスィーンズが周囲に現出。 でもそれに頼るよりも速く、ミモザさんはロッテお姉ちゃんに突進! “研爪”を両手に嵌め込んで、猫科動物らしい俊敏さで迫るんだよ。 対してロッテお姉ちゃんは……動く事なく、二挺拳銃を構えるだけ。 でも余裕のある微笑から、何をしたいかはボクにも分かったんだよ。 「こっちから攻めるにゃーっ!!えやーっ!!!」 「よい……しょっ!」 「あにゃ!?」 煌めく爪が空を切る!……けど、ロッテお姉ちゃんはそこにはいない。 折角補助アーマーを着込んでるんだもん。急速移動用ブースターだって 使えないと勿体ないんだよ……というわけで、後退用のそれを駆使して ロッテお姉ちゃんは数smの距離をバック・ステップ。“フィオラ”の エクストラエディションって、補助アーマーを活かす工夫の事だもん。 「さ、まだまだ来てくださいの!」 「う、ううう~。ちょこまか逃げるにゃー!!」 「ふふ……えいっ!」 『ビビーッ!!』 「あにゃ、ぷち一号っ!?」 華麗にバク転を決めながら、お姉ちゃんは“フェンリル”を曲撃ち。 アーンヴァルタイプの姿勢制御力を活かして正確に撃たれた鉛玉は、 そんな状況でも正確に一機のぷちを撃ち抜いて、射撃を殺すんだよ。 ボクらには武装が多く与えられているけど、だからって個々の武装を 疎かにはしない。これだって、マイスター流教育の賜物なんだもん。 「にゃううう……撃て、撃つにゃーっ!!」 「そうです!もっと楽しみましょうっ♪」 ──────舞い踊る様に、優雅に戦う。それがボクらの使命だもん。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1543.html
曙の女神達──あるいは新年三ヶ日(後半) 雪は無くとも、元日の空気は刺す様な冷たさを以て私達四人を襲う。 真っ白い息を吐きながら、私は大切な“妹”達を抱えて歩を進めた。 その行き先こそ“狛犬はうりん”が居るという、近所の神社が一つ。 「こういうのは久しぶりだな、有無……お前達、寒さは問題ないか?」 「あ、大丈夫です。特に関節の動きも悪くないですし、平気ですよっ」 「……それにしても、ハウリンタイプの娘に逢うのが楽しみなんだよ」 「クララちゃんはやっぱり、どんな感じか気になっちゃいますの~?」 私の腕の中で、クララが肯く。やはり情報を知っていただけあってか、 その“狛犬はうりん”とやらに酷く強い興味を抱いているらしかった。 今が元日である事も考えると、忙しくて逢えぬかもしれないが……だが それでもなお、クララは『行ってみたい』欲求を隠さなかったのだな。 「……む、この神社か。“大混雑”という程、忙しそうには見えぬな」 「んと、神田明神とか色々ありますからね……秋葉原近辺の神社って」 「でも混んでないなら、好都合だよ。早速、社務所に行ってみるもん」 「あ!マイスター、クララちゃん!あの娘じゃないですの?ほら……」 ロッテが何かを見つけ、振り袖の絡みついた腕で指し示す。その先には 巫女服に身を包んだ、清廉そうな一人のハウリンタイプが甲斐甲斐しく 他の巫女や禰宜を手伝っていた。絵馬やお守りの販売、片付け等々だ。 「……ほう、この娘が“狛犬はうりん”か。大人締めで可愛らしいな」 「新年明けましておめでとうございます……私は“結”と申しまして」 「結さん?気分悪くしたら謝るんだよ、噂でしか名前知らなくて……」 『何処でそんな通称が流行っているのでしょう?』と、結という神姫は 困った様に首を傾げてみせる。その目に宿る意思の炎は、強いと見た。 大人しくとも一本筋を通した、真面目で実直な娘なのだろう。そして、 受付の傍らにある竹箒……無論、神姫用だ……も仕込みの痕跡が見え、 “只者ではない”という印象を持つには十分すぎる立派な娘であった。 「結さん。わたし達、この近所でMMSショップをやっていますの~っ♪」 「えと。あたしはアルマでこっちの娘は、クララちゃんとロッテちゃん」 「そして私がマスタ……“マイスター(職人)”の槇野晶だ。宜しく頼む」 「はい、槇野さんに神姫の皆さん……本日の御用件は、何でしょうか?」 営業トークじみてしまった挨拶にも嫌な顔をせず、彼女は用件を聞いた。 ここで、ふと悩む。ついつい社務所に寄ってしまった物の、御神籤位しか 頼む事は無い。信心深い、という程でもない私は明確な目的を持たずに、 ここに居る事となる……が、頼んでもよさそうな事は私の胸中にあった。 「ふーむ……そうだな、まずは四人分の御神籤と、願掛けをしたいが」 「はい。ではこの絵馬と……神姫の皆さんにも、個別に必要ですか?」 「有無。頼む……って、御神籤の筒を抱えて大丈夫なのか、結とやら」 「はい?あ、ええ。ご主人が私に配慮して、軽く作って下さったので」 そう言って軽々と御神籤箱を運んでくる彼女を見て、成程と実感する。 紛れもなく、彼女はここの“巫女”なのだ。彼女が社務に携われる様に この神社は設計されている。神姫センターもある秋葉原の中に、神姫が 携わっている神社。神姫オーナーにこれから人気が出るかもしれんぞ? 「では、皆さんどうぞ振ってみて……出てきた棒を見せて下さいまし」 「アルマからやってみるといい。何、神姫でも振れるはずだろうしな」 「わ、分かりましたっ!よいしょ、っと……あ、出てきました結さん」 出てきたのは、御神籤の在処を示す札の様な物だった。数は『十三』。 ……西洋の数としては不吉だが、ここは神社。気にする事はなかろう。 「十三番ですか。皆さんも一通り振ってから御神籤をお渡ししますね?」 「ではロッテ・クララと続けて、最後に私が振るとしよう。さ、ロッテ」 「はいですの!よいしょ、よいしょ……あ、出ましたの!『二十四』!」 そして、クララが『八』で私が『十』。一通り出揃った所で、結が私達に 折り畳まれた御神籤を一枚ずつ差し出してくれた。横には、四枚の絵馬。 その内の三枚は、子供や神姫に合うサイズで作られた小柄な絵馬だった。 「小吉に、凶……吉に、私は中吉か。ロッテが凶というのは不安だな」 「大丈夫ですよ槇野さん、後はロッテさんの運気が上がるだけですし」 「そう言う物なのか。だそうだからロッテや、あまり凹むでないぞ?」 「は、はいですの~……結さん、ありがとうございますですの~っ♪」 「どう致しまして。それでは、この絵馬に“願”を書いて下さいまし」 「はいっ……やっぱり、他の人に見せない方が気分出ますよね。これ」 そして、互いが互いの願いを知らぬままに絵馬は完成した。後は奉納か。 一つ心の底を書いてみたら、多生はモヤモヤが振り切れた……気がする。 来て良かったな。可愛い神姫に逢え、私達の道標が一つ増えたのだから。 「それでは、後はお参りして帰るとしようか。また合おう、結とやら」 「はい。どうか槇野さんと皆様に、良い事のある一年となります様に」 「有り難うなんだよ、結さん……巫女のお仕事、どうか頑張ってね?」 ──────神様にだけ見せた願い、何時か叶えてみせるよ。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/565.html
暗き過去に、深き眠りを(前編) 爽やかに晴れた日曜日。今日は一月に一度の“週末の定休日”である。 普段は毎週水曜日に休みをもらうMMSショップ“ALChemist”なのだが、 私・槇野晶は勿論、“妹達”にも週末をいっぱい満喫してもらいたい。 というわけで、今日は久しぶりに秋葉原神姫センターへ行こうと思う。 その為にはまず、身だしなみからちゃんと整えねばならんな……って。 「ほら、初舞台に出るのだ。今日は入念に躯を磨かねばならんぞ」 「きゃうっ……ま、マイスター!シャンプーが目に沁みますっ!」 「すぐ流してやるから、少しだけ耐えてくれんかアルマや?ほら」 「ロッテお姉ちゃん……そこ、少しかゆいかもしれないんだよ?」 「こうですの?ん、クララの緑色の髪ってやっぱり綺麗ですの♪」 今すぐ後ろを向け。3秒で応じたなら赦してやる……そう、それでいい。 普段から神姫専用の洗浄剤で清潔にしている“妹達”だが、他人様の前に 出るだけでなく、アルマとクララは今日が初陣なのだ。身だしなみには、 尚一層気を遣わねばならん。そうだろう?風呂の後は勿論、衣装選びだ。 「今日はこの青いスーツを着ていきたいですの、マイスター♪」 「有無。派手過ぎず、丁度良いな。観戦もそれなら楽だろうて」 「……ボクは、緑色のコートかな?帽子に似合う気がするもん」 「あたしは紅いこれで、いいですか?ちょっとスリットが……」 「どうせアレだし、自信がなければ大人締めでもいいのだぞ?」 「う、ううん……いえ、これでいきます!今日は冒険ですから」 ロッテはブラウスとロングスカートを用いた、青色のシックなスーツ。 クララは前閉じ式のロングコート。私が誂えたお揃いの帽子も装備だ。 アルマはこれまた私が作った、チャイナドレス風の紅いジャケットを。 ショートヘアのクララ以外は、髪をそれぞれポニーテールとお団子に。 武装も大事だが、戦闘時以外は“神の姫”に相応しい姿も必要だしな? 例えHVIFを使っていようとも、彼女らには優雅さを保ってほしい。 「さ、準備は出来たな。まずはアルマとクララのリーグ登録に往くぞ!」 「はいですの~♪わたしの時みたいに色々言われないといいんですけど」 「……溜息なんか付いてる。何かあったのかな、ロッテお姉ちゃんに?」 「ああ。物分かりの悪い担当者に当たって、登録に少々手間取ったのだ」 「うんと、そういえばマイスター。何かトランクに積んでましたよね?」 目敏いアルマには“アレ”を見られていた様だ。重量級ランクに出す 装備の先行試作品なのだが、その存在故に最初は一悶着あった物だ。 今回も恐らくそうなるだろうが、レギュレーションは何ら問題ない。 案の定見知った八階の担当者は渋い顔で私を出迎え、愚痴ってきた。 「……槇野晶さん、また貴方ですか?しかも二体とも同じ様に」 「勿論だ。今回も重量級・軽量級、どちら共規約範囲内だぞ?」 「相変わらずギリギリですねぇ……いいんですか、って愚問か」 「構わない、と言っただろうが!他に問題があるのか、ん?!」 「……こっちのハウリンタイプ、規約変更に凄く弱いですよ?」 「ならば規約内に収まる様、都度調整すればいいだけだろう!」 という一喝で以前よりもずっと早く参加審査は完了し、晴れて彼女らにも 重量級ランク用と軽量級ランク用、双方のIDが無事に交付された訳だ。 その脚で、私達は三階のサードリーグ用バトルフィールドに向かい……。 「あ、あっ……マイスター……あ、あの人!」 「……猪刈め、よくも図々しくここに居るわ」 「全然反省してなかった、って事なんだよ?」 「みたいですね……あ、神姫を抱えてますの」 一番この界隈で見たくない最悪な卑劣漢、猪刈久夫と再びまみえた。 あの外道めは、新しい神姫……どう見ても改造済みだ……を撫でて、 己の対戦予約を始めようとしていた。私は皆の意思を確認し、接近。 程なく此方に気付いたのか、奴は卑賤な笑いをこちらへ向けてきた。 「ぶ、ぶひゃ!?……あ、あの時のロリッ娘と“あくまたん”?」 「その様な穢らわしい名は棄てた。今、この娘はアルマという!」 「……もう、あたしは貴方の物じゃないんです。見ないで下さい」 「ぶひゃひゃ、すっかりツンツンしちゃって……可愛くなった~」 ……この胆力だけは褒めるべきかもしれんが、自分のやった事すらも 数週間で省みなくなるというのは、頭痛がする程に不愉快な物だな。 しかも彼奴めはすっかり有頂天らしく、馬鹿な事を突然言いだした。 「ぷひひぃ、ボク良い事考えたんだよねぇ~。絶対泣かせるッ」 「……ロクでもない思考に時を費やす位なら、自己改造をしろ」 「あるまたんだっけ、あくまたんだっけ。そいつと試合する!」 「なんだと?……そのフォートブラッグ改造品で来るか、猪刈」 「そうそう、でボクが勝ったらお前を一晩言う事聞かせるの~」 何処から突っ込んでいいのかわからんが、少なくとも“一晩”等と 区切る辺り、猪刈の底の浅さが見て取れるな。乗る気はなかった。 その様な賭けで、“妹達”を無闇に不安にさせるのは愚かしい事。 ……だからこそ彼女が切り出した時、驚きつつも心が躍ったのだ。 「……じゃああたしが勝ったら、二度と神姫に酷い事しないで下さい」 「アルマ!?……お前、本当によいのだな。無理はせずともいいぞ?」 「勝つのは、マイスターの“妹”であるあたしですから……それに!」 その言葉で、私はアルマが己の闇に刃向かう訳を知る──猪刈の神姫。 武装自体はかつての“あくまたん”程でない彼女だが、目に光がない。 カメラ機能は生きているが、確固たる意思という物が失せているのだ。 それは、猪刈めが何も懲りずに非道を繰り返したという……証だった。 「この娘を、どうしても解き放ってあげたいんです……マイスター!」 「ふむ、よかろう。猪刈、貴様が負けたらその神姫を即刻他人に渡せ」 「ぶふふ、どーせ勝つのはボクだもんね。泣かせてやるんだ、ぶふ!」 アルマの志を信じ、私は指名戦を予約。程なく呼び出しが掛かった。 両肩のロッテとクララが案じる中、私は新型の装備をアルマに装着。 それは、メイド服の様であり司祭の様でもある“聖なるドレス”だ。 実戦ではこれが初めて。だが、私には不思議と絶対的な自信がある。 「よし、全ての準備は整った……蹴散らしてこい!」 「は、はい!……決着、つけてきます。マイスター」 「ぶふぅっ、さあボクの“かまきりん”、壊せッ!」 「────────────イエス、マスター……」 そして、戦いを告げる荘厳なサウンドが鳴り響く! 『ロッテvsかまきりん、本日のサードリーグ第24戦闘、開始します!』 ──────忌まわしき過去の為に、素晴らしき明日の為に。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/435.html
「僕とティキ」 そのいち・改訂版 「前夜」 改訂前の「前夜」 そのに・改訂版 「回顧録・一」 音声ファイル2036を勝手に参照 改訂前の「回顧録・一」 そのさん・改訂版 「良く晴れた日」 改訂前の「良く晴れた日」 そのよん 「初陣」 『不良品』と勝手にコラボ そのご 「思春期男子なんだから時にはそういう事もある」 /エロ? ばんがい 「これがティキの日常なのですよ」 そのろく 「類は共を呼び友になるのか?」 そのなな 「回顧録・二」 そのはち 「そうだ、有名ショップに行こう♪」 HOBBY LIFE,HOBBY SHOPと勝手にコラボ そのきゅう 「たまには勝敗の無いゲームを」 そのじゅう 「そして少年は少女と再会す」 そのじゅういち 「勝ち負けよりも価値ある性質の立ち合い」 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 第4話3on3と勝手にリンク そのじゅうに 「口に出して言うには恥ずかしい話」 そのじゅうさん 「強敵と書いてもテキとしか呼ばない!」 そのじゅうよん 「そして明日は笑おう」 そのじゅうご ひとつめ 「さあ反撃の狼煙を上げろ・1――いまはおやすみ――」 ふたつめ 「さあ反撃の狼煙を上げろ・2――回顧録・三――」 みっつめ 「さあ反撃の狼煙を上げろ・3――ジジィと神姫――」 よっつめ 「さあ反撃の狼煙を上げろ・4――エルゴのおうさまたち――」 いつつめ 「さあ反撃の狼煙を上げろ・5――風輝纏いし猫戦姫――」 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン いつか光り輝く より勝手にゲスト多数 そのじゅうろく 「僕らの上に雪が降る」 もどる
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/510.html
哀れなる傀儡に、祝福を(前半) 日曜日。クララのサードリーグ登録を済ませ、私・晶が向かう先は 秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。 今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。 クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。 「アレス・グリューン──────マイスター、今日も快調ですの♪」 「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」 「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」 「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」 この通り“ゲヒルン”の効能もあり、分析能力では私を越えている。 確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。 何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか? 何せバトルフィールドは毎回、基本的にランダムで選択されるしな。 「だったら、どっか~んって衣替えしちゃえば解決しそうですの♪」 「“どっか~ん”って……クララお姉ちゃん、無理があるんだよ?」 「む、いや待て?……ロッテ、お前の発想は使えるやもしれんぞ!」 以前入手した“アレ”を使えばどうにかなるかもしれんな、有無。 解析は少し骨が折れるが、そこはクララや日暮と共同作業で……。 『槇野晶さん、バトル開始時刻です。オーナー席に付いてください』 と、時間の様だ。思いついた事を咄嗟にテキストエディタに書き込み、 私はクララを肩に乗せて、ロッテをエントリーゲートへと送り出した。 そう言えば今日の対戦相手とそのオーナーは……って彼奴めかーッ?! 「うひはッ、あくまたん良い娘だから今日もしっかり勝ってよ~?」 「は、はい御主人様ッ……あたし、がんばりますっ」 「あれは猪刈ではないか!?アレだけ叩かれて舞い戻ってきたのか?」 「マイスター、猪刈さんって確か……その、わたしの姉妹達に……」 「……覚えておったのかロッテや。まあ、気にする事はないぞ」 猪刈久夫、34歳無職。俗に言う“ネオニート”であり、神姫の敵だ。 む、「何故知っているのか」だと?当然だろうッ!彼奴は某掲示板の 神姫板で、己の神姫に不埒な扱いをして挙げ句壊し……しかもそれを ネット上で動画公開したのだぞ──“彼女”の悲鳴も収録の上でだ! 無論散々叩かれまくり個人情報も暴露されて、奴は有名人となった。 何故罪に問われなかったのか、と事件当時の私は酷く憤ったが……。 「あくまたんはとってもエロカワイクて強いから、あんな人形なんて」 「は、はい……“けちょんけちょんのこなごな”にします……」 「……彼奴め、前の一件でもちっとも懲りておらん様だな」 『ロッテvsあくまたん、本日のサードリーグ第7戦闘、開始します!』 “あくまたん”とやらの姿は見えなかったが、すぐに分かるだろう。 今回のバトルフィールドは……廃工場らしい。CQBの課題探りには うってつけの戦場だな。案の定ロッテは、翼を広げずに相手を待つ。 「さ。始めましょう、出てきてくださいですの!」 「は、はいっ……えっと、宜しくお願いしますっ……」 「……えーと、それって重くないですの?」 ロッテが突っ込むのも無理はない。相手はストラーフタイプなのだが、 その機動特性をガン無視して、大量の火器を無理矢理くっつけている。 近日発売のフォートブラッグタイプと撃ち合いでもする気か、猪刈め。 「だ、大丈夫ですっ。あたしは、御主人様の為に……勝たないとっ」 「きゃっ!?わたしだって、マイスターの想いを背負ってますのっ!」 「ぷひひ、いいぞあくまたん~!そんな鳥なんか、撃っちゃえ!!」 素早く身をよじり風切り音をかわすロッテの後ろで、弾頭が爆ぜる。 爆風がロッテを襲うが、閉じた翼は耐爆装甲の役を果たしてくれた。 増設した脚部の安定性もあり、次々飛来する砲弾の9割は回避する。 とは言え、100%とは行かない。そう思い分析を始めた時だった。 「きゃああぁっ!?」 「な……ロッテッ!!」 「ぶっひひ~、壊せ、壊せっ!」 「ご、御主人様……はいっ」 白い羽が舞い散り、ロッテが地に伏せる。砲弾が直撃したのだ。 その結果に“あくまたん”は最初不安がったが、猪刈の叱咤にて トドメを刺そうと、その砲身を零距離まで突きつけてきた……! 「ご、ごめんなさい……勝たないとあたし、あたし……」 「……あなたは何故、自分で戦おうとしますの?」 「え……!?」 相手の窮地に際して、それは猪刈も“あくまたん”も予期せぬ問い。 半ばでロッテは見抜いておったのかもしれんな、彼女の戦う意味を。 その証拠に、現在優位である筈の“あくまたん”は……泣き出した。 「だ、だって……御主人様に喜んでほしい……!!」 「なら“ごめんなさい”は、勝ってからでいいですの」 「うんと……で、でもっ、わたしはっ」 「あなたの“心”に誇りがあるなら……!」 「きゃぅんっ!?」 翼を纏ったロッテがバネの様に起きあがって、彼女を突き飛ばす。 猪刈の趣味であろう重火器に足を取られ、転んだ“あくまたん”。 だがそこでロッテは仕掛けたりせん。代わりに、凛と叫んだのだ。 「自分の戦いには、自信を持ってくださいの!」 「……自分の、戦い?」 ──────その言葉は、戦乙女の誇りに賭けて。 次に進む/メインメニューへ戻る