約 5,047,726 件
https://w.atwiki.jp/shinki_ss/pages/67.html
※このページは、各投稿者様の神姫紹介【五十音・タ&ナ行】ページです。 五十音順で配置。読み仮名違いなど、ソートにご意見あれば まとめwiki管理人のメールアカウントに直接投げてください。 素体略称は、以下の略号で表記します。 ヘッドと素体が異なる場合(例「頭・犬/素体・兎」)は「ヘッドの素体名を記入」して 紹介本文にて素体構成を書いていただくようお願いします。 【略号一覧】 天使:アーンヴァル 悪魔:ストラーフ 忍:フブキ 猫:マオチャオ 犬:ハウリン 兎:ヴァッフェバニー 騎士:サイフォス 侍:紅緒 津軽:ツガル 花:ジルダリア 種:ジュビジー 砲:フォートブラッグ 鳥:エウクランテ 魚:イーアネイラ 海豚:ヴァッフェドルフィン 黒天:アーンヴァルbk 白悪:ストラーフwh 寅:ティグリース 丑:ウィトゥルース 建機:グラップラップ 水猫:マオチャオ(リペ) 水犬:ハウリン(リペ) HST:アーク HMT:イーダ 蝶:シュメッターリング 戦車:ムルメルティア 戦闘機:飛鳥 火器:ゼルノグラード 黒鳥:エウクランテbk 黒魚:イーアネイラbk 白HST:アーク 白HMT:イーダ カブト:ランサメント クワガタ:エスパディア サソリ:グラフィオス コウモリ:ウェスペリオー 天コマ:ウェルクストラ 夢魔:ヴァローナ ナース:ブライトフェザー シスター:ハーモニーグレイス フェレット:パーティオ リス:ポモック 【投稿フォーマット(追記用)】 ●神姫名(アンカーを挿入)/素体型:(ヘッドの略号)/投稿者:(「武装紳士録」投稿者アンカーへリンク) オーナー:(設定上のオーナー名です) / 所属:(組織所属であれば記入をお願いします) 投稿者紹介: オーナー様のコメントです。 コメント: 投稿者様以外の方で、この神姫嬢に対するコメントをお願いします。 コメントの最後に、お名前を付記してください。【CainEdge】 【タ&ナ行】 チヅル(侍) 雪冠(ゆきかんむり) チハ(砲) Ex-Mavis 燈彗(津軽) 蓮吻(レンウェイ) つばめ(鳥) とっきー ティアイエル(天使) みずねこ(ねこ隊長) ディーヴァ(魚) 風雷坊 ディートリンデ(黒天) セイロン ティニア(種) シン=アカツキ ティマ(白悪) 比呂雪 テミス(兎) ゆーげん 巴(侍) 風雷坊 とりこ(仮名)(鳥) strangedays ナオ(犬) K-Kurasawa ナゴミ(和)(猫) 雪見 菜月(黒天) とっきー ノアーレ(猫) 雪冠(ゆきかんむり) ノウアー(悪魔) 雪冠(ゆきかんむり) ノエル(砲) 風雷坊 ノーシア(天使) 雪冠(ゆきかんむり) ノワール(悪魔) ぱぴこん ノン(砲)ティーノ ●チヅル / 素体型:侍 / 投稿者:雪冠(ゆきかんむり) オーナー:雪冠 / 所属:神姫TV所属雪冠プロダクション 投稿者紹介: 姐さんキャラ。 遠からず近からずな位置で皆を見守るポジションらしい。 刀で戦える巫女さんとしても(やや)有名 コメント: ===== ●チハ / 素体型:砲 / 投稿者:Ex-Mavis オーナー:(軍属のため無し) / 所属:防空軍第601試験飛行隊所属 投稿者紹介: 准尉。20歳相当。 名前の由来は旧日本陸軍九七式中戦車より。 元陸軍の変り種。陸軍時代はドジ極まりなかったが航空適正が高かった事から グレイスが引き抜いた。601期待のホープ(?)として日夜修行中。 コメント: ===== ●燈彗(チョウセイ) / 素体型:津軽 / 投稿者:蓮吻(レンウェイ) オーナー:? / 所属:特殊航空機動課 投稿者紹介: 二丁のライフルを使い主にヒット アウェイの戦法を多く取る。 作戦では主にカルミア、サルビアと多く組む。 好戦的で常に銃器の手入れを欠かさない コメント: ===== ●つばめ / 素体型:鳥 / 投稿者:とっきー オーナー:とっきー / 所属:とっきー家 投稿者紹介: 百合華に負けず劣らずのアツい性格、部活の後輩タイプ。 重度のメカ好き(特に飛行機が好き)で、機械いじりが趣味。 一人称は「ボク」、他の神姫を「~先輩」と呼ぶ癖がある。 コメント: ===== ●ティアイエル / 素体型:天使 / 投稿者:みずねこ(ねこ隊長) オーナー:みずねこ(ねこ隊長) / 所属: 投稿者紹介: みずねこ家四女。最初はまともだったが、途中でスイッチが入り暴走する。 主にシャオが被害にあいやすい。後半、頭に皿が刺さったままになる(爆 コメント: ===== ●ディーヴァ / 素体型:魚 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・電子戦部隊シャドウダイバーズ 投稿者紹介: 最近設置された電子戦部隊シャドウダイバーズの冷却材。ネット空間内での 戦闘力・ハッキング力は共に上の下程度なので、基本的には二人(リディアス、 氷雨)のサポートが任務。二人の漫才を途中で止めることが出来る唯一の存在。 コメント: ===== ●ディートリンデ / 素体型:黒天 / 投稿者:セイロン オーナー:セイロン / 所属: 投稿者紹介: 略称ディー。ヴィルケと同じ事件を経てやってきた、元はヴェルケのオリジナルを 抹殺するために作られた神姫だったが、その役目を終えている。 バルクホルンを姉としたいチャンスがあれば抱きついている。 ヴィルケほど積極的な行動をとらないのでバルクホルンも気にしていない。 コメント: ===== ●ティニア / 素体型:種 / 投稿者:シン=アカツキ オーナー:シン=アカツキ / 所属: 投稿者紹介: 楽しいことが大好きでとても明るい性格。自分が大切だと思っているものを 傷つけられたり奪われそうになると本気で怒る。実はかなりの力持ちである。 コメント: 重機アーム無しで重兵装を軽々片付ける、驚きのパワー!! 【CainEdge】 ===== ●ティマ / 白悪 / 投稿者:比呂雪 オーナー:比呂雪 / 所属:(ストーリー「防衛隊のお仕事」では:連邦宇宙軍・第4防衛艦隊・准尉) 投稿者紹介: 寂しがりやで、オーナーをからかっては楽しんでいる。おそらく妹属性なのではないかと… コメント: ===== ●テミス / 素体型:兎 / 投稿者:ゆーげん オーナー:??? / 所属:なし 投稿者紹介: ゆーげんズ・ガレージ常連客。気風のいい姉御肌で、店長であるゆーげんを “旦那”と呼び慕う。トラップ解除はあまり得意ではない。 コメント: ===== ●巴 / 素体型:侍 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・陸戦部隊グランドフォース 投稿者紹介: グランドフォースの副隊長。武士道を貫くごく普通の侍型。でも好戦的。 性格はアルメルスとほとんど一緒。口調は基本和の雰囲気が漂う喋り方。 コメント: ===== ●とりこ(仮名) / 素体型:鳥 / 投稿者:strangedays オーナー:strangedays / 所属:ストレインジ・エレクトロニクス社所属 投稿者紹介: 五女。超弩級のどじっこ。 そのレベルは某未来人と良い勝負が出来るほどである。 個性の強い姉達に押されていつも貧乏くじを引かされる。 まだ名前がないのがコンプレックスらしい。 コメント: ===== ●ナオ / 素体型:犬 / 投稿者:K-Kurasawa オーナー:K-Kurasawa / 所属:クラサワ研究所 投稿者紹介: HST計画の重要参加者。真面目かつ純粋で正直者。 それゆえに厳しい発言も。(自覚無し) コメント: ===== ●ナゴミ(和) / 素体型:猫 / 投稿者:雪見 オーナー:雪見 / 所属: 投稿者紹介: 雪見家のボケ担当。トラブルクリエイター。 だが終わってみれば上手くまとまっている事が多い? 仕切る場面も見られ、その言動が素なのか計算なのかは謎。 コメント: ===== ●菜月 / 素体型:黒天 / 投稿者:とっきー オーナー:とっきー / 所属:とっきー家 投稿者紹介: 心優しい真面目な優等生、臆病なところ有り。 雪奈とはとても仲が良く、いつも一緒に行動している。 一人称は「わたし」 コメント: ===== ●ノアーレ / 素体型:猫 / 投稿者:雪冠(ゆきかんむり) オーナー:雪冠 / 所属:神姫TV所属雪冠プロダクション 投稿者紹介: オーナーが居ないとかなり真面目な性格になる。 みずねこ隊長により巫女さんになることができた。 コメント: ===== ●ノウアー / 素体型:悪 / 投稿者:雪冠(ゆきかんむり) オーナー:雪冠 / 所属:神姫TV所属雪冠プロダクション 投稿者紹介: 人とのコミュニケーションが下手な子。 ノーシアとは仲が良いらしい。意外と巫女さんにしてもらっていない。 コメント: ===== ●ノエル / 素体型:砲 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・陸戦部隊グランドフォース 投稿者紹介: グランドフォースのフルバックアタッカー。単体での任務もこなすため、近接戦用 に二挺拳銃を使用する我流の銃闘戦技術を編み出した。 まじめで優しいのはフェスティアと変わらないが、フルバックというのもあり 人当たりのよさはメンバー中、一・二位を争う。 コメント: ===== ●ノーシア / 素体型:天使 / 投稿者:雪冠(ゆきかんむり) オーナー:雪冠 / 所属:神姫TV所属雪冠プロダクション 投稿者紹介: ガン○ム種が好きだったりする、しかも百合で仕方がない。 初代巫女さん。 コメント: ===== ●ノワール / 素体型:悪魔 / 投稿者:ぱぴこん オーナー:虹浦としあき / 所属: 投稿者紹介: としあきが所有する神姫達のリーダー的存在。 オーナーを脅迫したり、どちらかといえば自己中心的な気分屋。 面白いことに飢えていて、アンニュイな毎日を過ごしている。 気だるそうな物言いが特徴。(CV 田中○恵様) コメント: ===== ●ノン / 素体型:砲 / 投稿者:ティーノ オーナー:(オーナー登録無し) /所属: 投稿者紹介: マスターの家の居候。 元々はとある男子学生の神姫だったが、受験を控えて忙しくなったことから 両親がオーナー登録を抹消。廃棄、もしくは譲渡されるはずだったが 「廃棄はさせないし、よく知りもしない人には渡せない」と拒み、ふたりで 話し合った結果『自分で納得できるオーナーを探す』という答えに辿り着き、放浪姫になる。 現在はマスターの家に居候しながら彼の言う『頼めそうなやつ』が紹介されるのを待っている。 新しいオーナーを探す一方、今でも前のオーナーの元に戻りたいと思っている。 コメント:
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/709.html
戦うことを忘れた武装神姫 その26 ・・・その25の続き・・・ 再び、久遠のグラスの氷がカランと鳴った。 「・・・すまないね、『ゼリス』のことを答えるはずが僕の昔話で終わってしまったようだ・・・。」 「いえ・・・それで十分です。」 すっかり氷も解け、なかば水割りになろうとしているグラスを久遠はすっと飲み干した。 ヒトと対等に意思疎通ができる、ちっちゃいけれど頼もしい存在。 「死」すらも、恐れることなく正面から向きあえる程の強い存在。 ヒトに愛され、ヒトを愛することができる、優しく、温かな存在。 - ヒトは何故、「心」を持つこの「存在」を造り出したのか - うつむいたまま、ドツボにはまったかの如く黙り込んでしまった久遠。と、彼の目の前に新しいグラスが差し出された。 「・・・。」 はっとした久遠、見ればグラスを差し出したのは・・・心配そうなまなざしで、じっと久遠を見つめるエルガだった。 「にゃーさんの考えてること、にゃーにも、少しだけど判るよ?」 「・・・そうか?」 「にゃーたちが『戦わなくていいの?』て聞いたとき、にゃーさん、『戦うだけがすべてじゃないんだよ』って言ってくれたの、覚えてるよ? だから、にゃーたちも時々、なんで神姫なのか考えるの。。。 でもね、答えは急ぐことじゃにゃいのだ。 一緒に考えてあげるから、にゃーさんもゆっくり、のんびり考えるの。」 エルガは普段の勢いとはまるで違う、実に穏やかな、落ち着いた声で久遠に語りかけた。 「だけど・・・だけどね? にゃーたちは、にゃーさんよりもずーっと早く壊れちゃうと思うの。だから、にゃーさんが答えを出したときに・・・」 大きなエルガの瞳に、うっすらと涙が浮かんだ。 「にゃーたちは居ないかもしれないよ? だけど、にゃーたちのこと、ずーっと忘れいよね? ね、にゃーさん・・・?」 エルガの頭に、何かがぽたりと落ちた。 「馬鹿っ。。。 無責任なこと言うなっ・・・!」 久遠の涙・・・。 「おまえらが『ここに居ること』が俺には大切なんだよ。。。 それに、一緒に、ゆっくり考えようって言ったな? 言った以上、一緒に答えを探す義務があるっ! 答えが見つかるその日まで、何が何でも俺のそばに・・・傍に・・・っ!」 「わかったのだ。。。にゃー、約束する。ずっと居るの!」 「よしっ、それでこそ俺の猫爪『エルガ』だ。。。」 久遠はグラスをそっと傾けてエルガに一口飲ませた。 「ありがとなの・・・。」 涙でぐしゃぐしゃのまま、グラスをはさんで静かに見詰め合う二人・・・。 その様子を静かに見ていたマスターは、久遠に、そしてエルガにももう一杯グラスを差し出した。 「僕の昔話が、君たちにとって少しでも役に立ってくれれば幸いだよ。今日は・・・僕のおごりにしよう。 好きなだけやってくれ。」 「にゃーん!! マスターさん、ありがとなの!」 「ちょ、エルガっ、すこしは遠慮しないか!それが大人のマナーだっつーの。」 「えー? にゃーは大人じゃないよー?」 「・・・ったく、お前ってヤツは・・・。」 と、グラスを片手にエルガの頭をぐりぐりする久遠の顔は、実に穏やかであった。。。 ・ ・ ・ 終バスの時間が近づき、帰ろうと久遠が支度を始めたときだった。 何かを思い出したように、マスターはCDを入れ替えた。 「君たちは、角子さんと呼ばれるクラリネットタイプの声を持つストラーフの噂を聞いたことはないかな。」 CDが再生される・・・ 「知り合いに無理を言って録音してきてもらったんだ。」 スピーカーから奏でられるは、生録の女性の歌声。 決して音質がよいとはいえない・・・が、久遠と、なによりエルガが反応を示した。 「マスターさんっ! こ、この声・・・っ!」 「何かを感じる・・・そうだろ?」 大きく頷くエルガ。 傍らの久遠も、その歌声に聞き入ってしまい、動く事を止めていた。 「マスター、もしかして・・・。」 久遠が何かを言おうとしたが、マスターは遮るように語った。 「あまり教えてくれるな、とは言われてはいるんだけれど。」 メモ用紙を取り出すと、住所を書き始めた。 「君たちなら、おそらく彼女たちも迎え入れてくれるだろう。場所を教えてあげるから、今度の休みにでも会いに行ってきなさい。 求めている答えのきっかけくらいはつかめるはずだから・・・。」 最後に『MOON』という、おそらく店の名であろう文字を記し、エルガをポケットに入れた久遠に手渡した。 「マスター、今日はありがとうございました。」 「ほんとうに、とってもありがとなの! おやすみなの、マスターさん!」 「僕のほうこそ、長々と昔話に付き合わせてしまって。お礼を言わせてもらうよ。ありがとう。・・・では、おやすみなさい。」 久遠とエルガが帰った店の中には、神姫の歌う『コーヒー・カンタータ』が流れていた。ひとり、カウンターに座りしばし聞き入るマスター。やがてCDの演奏が終わると、酒瓶の後ろに大事にしまっている小箱を取り 出し、カウンターに置いた。箱に記された文字- -type91- 量産試作型 - 「今ここにいることが大切、か・・・。 久遠さんもずいぶんと言うようになったもんだ・・・。」 呟きながら一度もあけたことが無い箱を開けた。 - 白いボディに、ストラーフの顔を持つ神姫 - ふっと小さく息をつくと、マスターは陰に置かれた古びた一枚の写真に語りかけた。 「そろそろ、僕も神姫のオーナーとなってもいいだろうか? ・・・なぁ、『ゼリス』-。」 最終バスの車内。なんとか間に合った久遠とエルガは、いちばん後ろの席で今日のマスターの話を思い返していた。と、窓の外を見ながら久遠が呟いた。 「明日の午前中に行くぞ。」 「にゃ? どこ?」 「なんつったっけ・・・そうそう、『MOON』だ。」 「みんなで行かないの?」 「リゼとイオは・・・どうする? あいつら連れて行ったら、何らかの騒ぎを起こしかねないから・・・。」 「うにゃはぁ、にゃーさん、言うのだー。 でも、みんなで行こうよー。でないと、行く意味がない気がするよ?」 「はは、そうだね。 これも何かの運命だろう。 この機を逃さず、一気に行ってしまおうか。 さっそく帰ったら連絡を入れて、と。 そうすると、まずは川崎製麺寄ってシンメイ拾って、東杜田いってイオとリゼ拾ってから『MOON』に向かおう。」 「さんせーい!」 「どうせアレで走るんだ、都合2時間もあれば着くっしょ。」 「りょーかいなのー!」 明日への期待に胸を膨らませた二人を乗せて、バスは静寂の夜の街を走る- 。 マスターと共に、今を楽しみ、明日へ向かう神姫がいる。 ここに居るのは、戦うことを忘れた武装神姫。。。 <その25 へ戻る< <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/501.html
神姫たちの夜──あるいはその本性 夜。作業も一通り終わって、私・槇野晶はそ~っと我が寝床に入った。 隣には神姫・ロッテとクララのクレイドルがある。起こす訳には……? いや、耳を澄ますと何か聞こえてくる様な。耳を峙てて聞いてみるか。 ──────それを後悔したのは、時間にして数秒後の事だったがな。 「ん……っ。クララ、そんな所なでちゃだめで……んっ!」 「でもロッテお姉ちゃん、これに反応っておかしいもん?」 「だって、マイスターがする時も……メモリが溢れそうで」 やたら甲高いロッテの声。そして好奇心を隠そうともせぬクララの声。 その、だな……えっと、あの。これってもしかして、アレなのかッ!? ううッ、迂闊に振り向けん。これを見てしまってはならん気がする!! 「メモリが……?ただ撫でているだけなのに、そんな現象が?」 「はいですの。その、あまり嫌じゃないデータでいっぱいにッ」 「じゃあ、こうしたら……どうなるの、ロッテお姉ちゃんっ?」 「きゃあんっ♪や、やだぁ。そこ弱いんですの……ふぁうっ!」 「ユーバープリューフング(確認)……センサー感度微少なのに」 ど、どうやらクララめ……ロッテに愛玩用のセンサーがあるかを、 走査した様だな。だが天に誓い、お前達にその様な物は付けない! ……その、望まれれば別だぞ?でも、そんないかがわしい事ッ!? 「センサーが普通でも、いっぱいになっちゃいますの……えいっ!」 「ぅぁっ?!……ぅ、んっ!少しだけど、ボクも感じるかもッ……」 「あ、ホントですの?……なら、これからお姉ちゃんがじっくり♪」 「え?……ボクはまだ、いいんだよ。こういうの……ひゃあっ!?」 ロッテ……ぎゃ、逆襲に転じるとはなんと大胆になってしまったか!? 受けているクララの方も、可愛らしい声を……せ、切なそうだぞッ!! ……多分鏡で見れば、今の私の顔は何処ぞの三倍な少佐より紅いかも。 枕元でそんな切なげに愛を睦み合われるとな、そのな……私、私はッ。 「ぅ、んっ……でも、これが本当に役立つの、ロッテお姉ちゃん?」 「はいですの!“メインディッシュ”のマイスターの為ですの~♪」 「はぅ、んんっ……“メインディッシュ”の為に、今は……えいっ」 「ひゃっ!?そうですの、一生懸命ガマンする時ですの。んんっ!」 「じゃあ、その時は一緒に……マイスターと入念にするんだよ……」 ──────え。今、なんて言ったの?“メインディッシュ”?! 私の脳がそれを理解すると同時に、全身に電撃が──────!? 「う゛ぁ……ちょ!?ちょっと待てぇ、お前達っ!!!?」 たまらず私は飛び起きた。仮にも私だって、アキバの住人である! この流れで“メインディッシュ”にされるという事は、私とッ!! その、まさかだな。あんな事やこんな事をするというのかぁッ!? 「あ……マイスター起きたんだよ、ロッテお姉ちゃん?」 「ふぇっ?あ、見つかっちゃいましたの~……てへへ♪」 ……妙に暢気な二人を確認し、私は改めて状況を見てみる事にした。 目の前のデラックスタイプクレイドル“ふたごのおひめさま”にある ベッド型クレイドルの上でパジャマ用のドレスを着て、二人は……。 「……なぁ、よいか。ロッテにクララ」 「は、はい?なんですのマイスター?」 「ロッテお姉ちゃん、多分怒ってるよ」 ──────お互いに“肩揉み”をしておった……。 「紛らわしい声を、深夜に出すんじゃないっ!!」 「……勘違いしたマイスターも、悪いと思うけど」 「で、でもクララってばピンポイントで~……!」 落ち着いて話を聞いてみれば、日頃働く私を見かねてか二人で 私の肩を揉んでやりたかったらしい。要するに早とちりだな。 ……でもな、なんだか恥ずかしくてたまらないではないかッ。 “メインディッシュ”なんて言い回しまでされては、な……? 「はぁ……わかった、揉んでくれんか?」 「はいですのっ♪ほら、クララ一緒にっ」 「……マイスター、みっちりやるんだよ」 ──────今日の肩が堅いのは、疲れだけではないかもね? メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/413.html
戦うことを忘れた武装神姫 その8 ・・・その7の続き・・・ 「・・・ロクな武装神姫にならないとは聞き捨てならないなぁ。」 振り向いた久遠は、M町センターのトップランカーに言った。 「別にこいつらは戦わせるだけが全てじゃないんだし。俺に言わせりゃ、あんな戦い方をする神姫こそロクでもない育ちをしている思うんだけどな。」 「言いたい事いってくれるっすねぇ、オッサン。」 と、言われたときだった。 「ヌシさんをオッサンと呼ぶなー!! このクサレ神姫使いがー!!!」 久遠の肩の上でリゼが叫んだ。あまりの声の大きさに周囲の目が一瞬にして彼ら に集まる。 側ではかえでがどうして良いのかオロオロ・・・。 「り、リゼ・・・肩の上では大声出すんじゃない・・・。」 片耳を押さえもだえる久遠。元々、耳が良い久遠にとってはかなりのダメージのようで、しきりに頭を振っている。一方のトップランカーもリゼに「クサレ」と呼ばれたことに動揺を隠せない様子。 「な、なんだよ神姫のくせに、偉そ・・・」 ヒュッ! さくっ、さくさくっ!! 作業台に降りたリゼの投げたデザインナイフの刃が数本、トップランカーの手にしていたケースに突き刺さった。恐ろしい形相で、さらにデザインナイフの刃を数本手にしている。 「神姫のくせに、だって? てめぇ、あたしらを何だと思ってるんだっ!!」 「お前らは機械なんだぞ! 人間に刃向かったらどうなるか、わかっ・・・」 ヒュッ! さくさくっ! 再びデザインナイフの刃が投げられ、ボックスに突き刺さる。・・・だんだんと刺さる位置が、ボックスを持つ手に近づいている。トップランカーの額には脂汗がにじんでいる。 「ほぉ・・・『機械』ねぇ。 そうかそうか。」 替え刃がなくなり、リゼは転がるナイフから刃を取り外し- ヒュッ! さくっ! 投げた最後の1枚は、ボックスの持ち手に刺さった。彼は完全に硬直した。リゼは彼を指差し、堂々と言い放った。 「なら、あたしたちが機械と神姫の違いを教えてやるよ。 よーし、準備期間を1週間与えてやる。対戦方式はそれぞれ4体、1vs1が4戦でいいな?」 「お、面白いじゃないっすか・・・。 やるっす、受けるっすよ!」 トップランカーはちょっぴり震えながら答えた。 「じゃ、決まりだな。 あたしじゃ正式な申し込みは出来ないから、ヌシさんが ・・・って、いつまでも耳押さえてるんじゃないよ!」 のっそり立ち上がった久遠だが、まだ耳鳴りは治まっていない模様。 「お前の所為だろ、この耳と頭痛とめまいは・・・。はいはい、対戦の申し込みするんだね。 受付に行って来るから、リゼはここでちょいと待ってろや。」 ちょいちょいとリゼの頭をなでつつ、片手は久遠は耳をさすっていた。 「本当にいいんすね、オッサン・・・」 と、トップランカーが言いかけたとき。「オッサン」という言葉を聞き逃さなかったリゼは、 ぶんッ! べちん!! 手元のマスキングテープを投げつけトップランカーの手にブチ当てた。 「ってー!! わかりました、いいんすね、ストラーフのマスターさん!」 「わかればよろしい。」 作業台上で仁王立ちするリゼの姿に、再び動揺するトップランカーは、ちょっと申し訳なさそうにする久遠に促され、共に受付へ向かった。 受付を終えた久遠が戻ると、心配そうにまだうろたえるかえでとティナに何やら語っている。 「・・・大丈夫だって! まー、見てなって。あんたとかえでちゃんの『痛み』 は、何が何でもあいつらに味わわせてやるから! あ、ヌシさんおかえりー。」 「お話中だったかな。ごめんなさいね、かえでちゃん。ちょっと待っててね。」 久遠はちょっとため息をつくと、リゼをひょいとつまみ上げた。 「リゼの気持ちはわからんでもないが・・・」 と、つまみ上げられて周囲を見回し、リゼはここで初めて、何をしでかしたか、事の重大さに気づいた。 廻りを取り囲むギャラリー。そのギャラリーの前で、このセンターのトップランカーに勝負を挑んでしまった・・・ だんだんと表情がこわばり、膝ガクガクになったリゼを久遠はじっと見つめる。 「わかった? いまの状況が。」 「や、やばい・・・ す、すまない、ヌシさん・・・ど、どど、どうしよう?」 久遠はリゼの動揺する姿をかえでに見られないよう、リゼを手のひらでちょいと包むように持った。 「まー・・・俺の言いたいことをリゼが全部言ってくれた感じかな。結局、俺が話しても対戦申し込んだだろうし。だから・・・」 手を顔の高さまで持ち上げ、リゼにそっと耳打ちするように、 「リゼ、お前は・・・何があろうと、かえでちゃんとティナちゃんのヒーローであり続けること。いいね。」 と付け加えた。しおしおになりかけ、悔恨と焦りと申し訳なさの涙がいっぱいになっていたリゼの瞳に、別の涙が湧いてきた。 「ありがと、ヌシさん・・・。」 「いいから、いいから。ささ、涙を拭いて。 そーだ。いい顔になったか?」 リゼはぎゅっと久遠の指に抱きつき、ぐぐっと涙を拭き取った。 いい目つきが戻ったリゼを久遠は手のひらに立たせ、ギャラリーの方を振り向き-。 「じゃー、やるぞー。リゼもいっしょに合わせてくれよっ!!」 ・・・ 「んで、その時の記事がこれかい。」 久遠から渡されたミニコミ紙の記事をつつきながらCTaが言った。 そこには、肩の上にリゼを載せた久遠が、リゼと同じ格好を決めている写真が。 「こんなトコロにまで宣戦布告と取り上げられているけど、どうすんの?」 山と積まれた皿や器、ジョッキに囲まれたCTaは、竹串で久遠を指していった。 「だから、それを相談しようと思てっ呼んだんだけど・・・」 いつものこととはいえ、つれないCTaにゲンナリの久遠。 「自分でまいた種なんだ、お前らが何とかしろ。 ・・・と、いつもなら言うところだけど。あたしゃ、こいつらを『機械』呼ばわりした事が許せないね。是非、あんた達には勝利してもらわないと。」 CTaは、新たに運ばれたジョッキカクテルを一気に半分呑み、続けた。 「だけど相手はM町のトップランカー、要は戦うことのセミプロだ。でもって 戦うことに関しちゃ、お前のところの4人は全くの素人。だろ?」 黙って頷く久遠。 「普通なら『勝率0%』と考えるだろう。だけどな、武装神姫は『戦うこと』を忘れていても、『戦い』を忘れているわけじゃないんだぞ。」 CTaの目が、さっきまでの酔っぱらいから、技術者としての目に変わった。 「いいか、あたしに言わせりゃ日常ってのは常に『戦い』なんだよ。 時間と戦う、食材と戦う、仕事と戦う、害虫と戦う・・・ どうだ?」 「間違ってはいないと思うけど、なんかピンと来ないな。」 と久遠が言うと、CTaは久遠の手にした手羽先に、ざっくりとフォークを突き立てた。 「だーかーら! お前んとこの4人、あたしが見る限りでは、そんちょそこらの戦闘マニア神姫よりは強いって事だよ!」 「そ、そうなのか?」 「そう! どうせ何でもありのフリーバトルでしょ? ならば、いつもの事をいつも通りにさせてみろ。絶対に勝てるから。」 「いつもどおりと言われてもなー。どうすりゃいいのかさっぱりわからんぞ。」 フォークの刺さった手羽先を持ったままの久遠・・・ と、その時。 「何? あたしのアドバイスがわからない、だぁ?」 技術者の目から、再び酔っぱらいの目に戻ったCTaは、久遠に絡みだした。 「あらしのはらしをらぁ、よくけけってんらよ! らぁ? わかっれんろか?」 「・・・はいはい、わかりましたわかりました。 ・・・全く、どのっくらい呑んだらすっ飛ぶか、統計でもとって管理しろよ、技術者なんだし・・・。」 どうやら、CTaの酒が閾値を超えたらしい。酒を飲むと途中まではむしろ冴え渡るくらいなのだが、閾値を超えるととたんにオヤジギャル(古)に豹変する傾向があるCTa、今宵もしっかり発揮している。 「ぉらー!! もぃっけんいくろー! つれてけひらろー!」 腰砕けの状態で、久遠の袖を引っ張り外へ行こうとする。 「ちょ、ちょい待てってば。イオ!沙羅!ヴェルナ!ちょっ・・・え?」 CTaに絡みつかれて困惑する久遠の目に入ったものは、積まれた食器の谷間で、呑み比べ大会に興じている沙羅、ヴェルナ、そしてイオ。 「おまえらー! 混乱したりつぶれたりの俺らをさしおいて何やってるんだ!」 「あれ、マスター。CTaさんとのお話は終わりました?」 名実ともザルのイオが、いつものペースで杯片手に振り返った。 「ったく・・・イオ、帰るぞ。でないと、こいつが寝ゲロする恐れがある。」 荷物をまとめた久遠は、沙羅、ヴェルナをとりあえず自らのジャケットのポケットへと押し込んだ。 「えー?もう終わりなんすか?」 「まだイオさんと勝負がついておりませんのに・・・。」 不満そうな沙羅とヴェルナ。 「ばかっ! イオと勝負するんじゃない、こいつはザルだっ!」 物欲しそうに指をくわえるイオを最後に自らの肩の上へ載せると、ずるずると崩れそうなCTaを反対の肩に支え、如何してもって帰るか、頭を悩ませる久遠だった。 ・・・この数時間後-日付が変わってからと言った方がいいだろうか-、久遠はちっちゃいもの研の仮眠室へ、CTaと沙羅・ヴェルナをほっぽり込んだ。心配そうに見る守衛に後を任せ、研究所を出る。 久遠の手には、背中についた「何か」を洗い流したジャケット。肩には、疲れきった様子で寝息をたてるイオ。 雨が上がり、広がる星空を見上げながら思い返すは、CTaの言葉- 「戦うことを忘れていても戦いを忘れてはいない」- 。 これが何を意味するのか。 ・・・また眠れぬ夜になりそうだ・・・ 久遠は一人つぶやき、傾きかけた月の下、家路へと急ぐのであった。 ・・・>その9へ続くっ!!>・・・ <その7 へ戻る< >その9 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/945.html
引き続いて羽休め──あるいは叙情 神田明神を後にした私・槇野晶と愛すべき三人の神姫達は、その脚で 良さげな蕎麦屋へと入る事にした。普段通り、洋食やジャンク系でも 構わぬのだが折角の和装だ、それに見合っただけの立ち居振る舞いを してみたい。それが人情って物だろう?何より蕎麦を希望したのは、 神姫・クララなのだ。彼女は辛味を好む以外は、割と淡白なのでな。 「へいらっしゃい!……うん?おい、嬢ちゃん一人で食事かい?」 「文句あるか!?見ろ、身分証明書だ……私とこの娘らに蕎麦を」 「へぇ~、最近は人形まで食事でき……ああ悪ぃな。口が滑った」 「……オヤジ、二度と“妹達”をそう喚ぶな。味で、評価したい」 「ヘッ。どうも石頭はいけねぇや……座んな、旨ぇの茹でてやる」 何の気なしに入ったその店は、路地裏の奥にある鄙びた蕎麦屋だった。 このご時世でもアキバ……地勢的には神田やお茶の水か……に、こんな 老舗があるとは知らなかったが、さてどんな蕎麦を出してくれるのか。 蕎麦等をあまり食べないロッテやアルマは、今から気が気でない様だ。 「マイスター、わたしお蕎麦って駅の立ち食いしか知らないですの♪」 「む。そうか?アキバの外れには別の蕎麦屋もある筈だが……うぅむ」 「うん、精々ボクが塾帰りに時々立ち寄る程度なんだよ。マイスター」 「あたし達の中で一番外出するのは、梓……クララちゃんですからね」 「だな。私自身もあまり蕎麦屋は入らぬし……灯の奴ならば別だがな」 碓氷灯。先だってまで、東京……というよりアキバへ遊びに来ていた、 私の従姉だ。彼女の現住所は有名な蕎麦所であり、知る人ぞ知る忍者の 里でもある……裏を返せば、伊賀・甲賀より数段マイナーなのだがな。 数年前だかに送ってもらった生蕎麦は、実に旨かった覚えがある……。 「……しかし、私の料理技能はお前達も知っての通り。凡庸だしな」 「その時は旨く出来なくて……マイスターも今、楽しみなのかな?」 「有無、そう言う事だ。殆ど食べた事がない二人よりは普通だがな」 「そうは言っても、なんだか良い香りがしてきますよ?……ほらッ」 「へいお待ち、ざる四つ!ウチ自慢の自家製手打ちだ、喰いな!!」 「うわぁ……この状態からでも、香ばしさが感じられますの……♪」 出てきた黒い麺は、カツオ出汁の汁と相まって実に食欲をそそる香りだ。 灯の言う所では、余り噛まず汁も付けすぎず……に喉の奥でコシと香りを 感じるのが通の食べ方だッ!みたいな力説振りだったが……さて、問題は 神姫の口と喉でそれが出来るのか?という所だ。流石に少々不安である。 「──という事だが、くれぐれも無理して咽せるなよ?では戴きます」 「え?……マイスターが“いただきます”を敬語で言いましたの……」 「い、いいだろう。そう言う気分なのだ!ほら、お前達も乾く前にッ」 「は、はいっ!いただきます、おじさん……んむ、んっ……ちゅるっ」 「戴きますなんだよ、店主さん……んっ、むぅ……良い喉ごしだもん」 「いただきますですの~♪……はむ、んんっ……ちゅるちゅる……♪」 ──────が、それは杞憂だった様だ。三人とも器用に喉を鳴らして 1~2本ずつ啜っている。しかもかなりのハイペースでだ!普通に食す 私より、若干遅い程度であり……店のオヤジもこれには目を丸くする。 しかし着物を汚さずに蕎麦を啜るとは、“妹達”も何とも器用な物だ。 「くぅ~、旨そうに喰うじゃねぇか!味ぃわかるんだな、驚きだぜ」 「まあ訳ありでな、んむ……旨い。見た目で判断してはいけないな」 「ったりめぇよ!嬢ちゃんがさっき、俺に言い放った事じゃねぇか」 「ウチのマイスターがすみません、おじさんッ……でも、美味しい」 「言葉がなくなってくるんだよ……着物に気を遣うのは大変だけど」 「はむ……♪んっ、んんっ……はぁ。日本人最高の贅沢ですの~♪」 「お、男を泣かせんじゃねぇ!次も贔屓にしてくれよ、嬢ちゃん達」 珍しい光景を見た店主もすっかり上機嫌で話に応じる様になり、時間は あっという間に過ぎた……ほぼ私と同時に、“三姉妹達”も完食する。 そして店主に見送られ、着物を正しつつ店を出る。屋号を確認すると、 “更級屋”という所だったらしいな……覚えておくとしようか、有無。 「しかし、着物は……有無、全員汚れていないな。流石私の“妹達”」 「汚さない食事の仕方は、普段の衣装でしっかりと教わったもんね?」 「はいっ。だから、冷静に食べられました、マイスターの御陰です♪」 「やっぱりマイスターは、愛すべきわたし達の“お姉さん”ですの~」 ロッテの言葉に、少々胸が痛くなる……が、彼女は全てを分かっている。 故に悪気がない事も理解できる。そのまま皆を抱き上げ、私は移動した。 『何処へ』だと?このまま帰っても良かったのだが、少々気が変わった。 そこで、お茶の水駅から電車を乗り継いで……水上バスへと乗り込んだ。 「マイスター……葛西臨海公園行の水上バスなんて、なんでですの?」 「ちょっと潮風に吹かれたくなってな……本当に只の気分だ。嫌か?」 「いえ、そんなことっ。それに、なんだか着物に海って似合いますし」 「……それは歌謡曲辺りの影響だと思うんだよ、アルマお姉ちゃん?」 照れ笑いをするアルマ。そう、彼女は偶にAMラジオを聞く事がある。 私がラジオを使わない間、自室で色々している時によく聞くらしいが、 そこで演歌を聴いているのかもしれんな……私の肩で、慌てるアルマ。 桃色の着物と小柄な躯が、本当に愛らしい。そっと、抱きしめてみる。 無論アルマだけではなく、ロッテとクララも一緒にだ。そう、一緒に。 「きゃ……ま、マイスター?どうしたんですか、急に抱きしめて……」 「理由など無い……が、暫くこうさせてくれんか。潮風の所為かもな」 「……分かったんだよ、マイスター。海は人を、神姫を変えるのかな」 「かもしれませんの……でも本当いい風ですの、天気もいいですし♪」 ──────人恋しく、なったのかな……? メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1461.html
重量級クラス用武装コンセプト:“EL GrAND”ポイント・ドレスプロテクター:“セイクレール” 重装型高機動戦闘システム:“[星龍姫(ライナー)]プルマージュ” アルマ用“プルマージュ”:“[壱号機]ファフナー” ロッテ用“プルマージュ”:“[弐号機]ウィブリオ” クララ用“プルマージュ”:“[参号機]リンドルム” 重量級クラス用武装コンセプト:“EL GrAND” 槇野晶が、“妹”たる三姉妹を重量級ランクという新たなステージへと 送り出すにあたり、日暮夏彦の助言を得て創造した専用武装群の総称。 “EL DoLL”の構成アイテムを流用しつつも、大胆に用法を変更した。 【コンポーネント一覧】 Ver.:2.55-ALC [[Advanced Lancer Concept]] 武装:elMGS_KS999 “魔剣”(ライナスト/エルテリア/コライセル) elVDV_AL777 重装型高機動戦闘システム“プルマージュ” (壱号機ファフナー/弐号機ウィブリオ/参号機リンドルム) exMWU_AL123 共通武装(フェンリル/ヨルムンガルド/ヘル) 装備:elPDP_AL444 ポイント・ドレスプロテクター“セイクレール” elSSA_AL111 第二世代型補助[[アーマー]]“シルフィード” 情報:elTAS_AL000 専用統括制御プログラム“W.I.N.K.” exTWS_AL123 データ圧縮システム“W.I.N.G.S. Ver.ALC” 色調:基本は白、他は神姫のパーソナルカラーに合わせてある。 解説:三姉妹の重量級ランク用装備として開発された[[特殊武装]]。 “プルマージュ”搭載AIの関係で、他人には触れない。 製造コンセプトは「不死の翼を纏い、光の槍を掲げよ!」 “バイザー”流用派と“真鬼王”に代表される公式武装ミキシング派の 二派閥が大勢の重量級ランクに於いて、まだまだ少数派の“自作”派が 上位に少なからず存在する事実に晶は着目し、そして実行してみせた。 また、日暮夏彦の助言がそのコンポーネント構築には反映されている。 即ち“変幻自在”を旨とする多面的な戦法の経験と、ロッテ達三姉妹が 本来持つ長所を活かした“得意攻撃”を両立させる事が主目的である。 武装類は“EL DoLL”同様、専用ケースに“解体された状態”で梱包。 これにより省スペース化を実現、ケースごとサイドボードに装填可能。 “プルマージュ”以外は軽量級での構成とほぼ同様だが、メイン装備の “プルマージュ”は“アルファル”と違い、各神姫専用に開発された。 コンセプト名は“Electro Lolita Grace brANd Divider”の略である。 『加護たる信念の刻印』という意味合いであり、これその物に量産化の 計画は存在しない。但し“量産型”の為にデータ収集は行われている。 無論量産化が行われた場合、その性能は大幅にダウンすると思われる。 ポイント・ドレスプロテクター:“セイクレール” 重量級ランクへ挑むにあたって、表面化した問題の一つは神姫の防具。 本格的な防御力を全て後述の“プルマージュ”に頼っているとは言え、 間接的な衝撃や電磁パルス等の“かすり傷”を軽減する必要はあった。 また“竜と騎士”をデザインモチーフにした手前、“シルフィード”と 槍・盾等の武具だけでは『物足りん!』という拘りも、晶にはあった。 だが搭乗スペースや変形機構と比較して、“レーラズ”は豪奢過ぎる。 そこで考案した打開策が、『“シルフィード”の強化パーツ』の開発。 “シルフィード”のデザインを殺さず、尚克これらの要請をクリアする 手段として、特殊素材のファッションアイテムが複数作成されたのだ。 その構成は“階級章”のペンダントヘッドを留め具に用いるケープと、 装甲繊維を利用して編み上げた、フリル付きの手袋にスタイリッシュな ブーツ。更に太腿と二の腕(スペーサー部)に嵌める“リング”である。 ケープには絶縁・吸磁系の素材も用いられており、電撃や電磁パルスを (簡易防具としては)効率よく吸収する。また“リング”には、相棒たる “プルマージュ”との“接合”を強化するブースター機能が存在する。 機構的に“レーラズ”との重ね着も可能であり、晶達の野心が窺える。 色はアルマ:黒・銀・赤/ロッテ:白・金・青/クララ:灰・銅・翠。 重装型高機動戦闘システム:“[星龍姫(ライナー)]プルマージュ” 重量級ランクのキモと言える要素の筆頭こそ、大掛かりな武装である。 通常は規約違反となる大出力装備を、ヴァーチャル式フィールドのみに 戦場を限定するにより、その上限と可能性を大幅に拡大したのである。 “プルマージュ”は、そんな未知の戦場へと神姫達を送り出す槇野晶が 三姉妹……厳密には神姫一人毎……専用に作り上げた特殊装備であり、 基本的に“竜と騎士”をモチーフとして、基本設計が考案されている。 “アルファル”の技術が活かされる一方、野心的な機構も搭載された。 まるで野獣の如くピーキーに調整された超AIも、その一つと言える。 この副作用として、他の神姫及び人間によるコンタクトが少々難しい。 基本的なコンセプトや基礎性能は共通している物の、武装を初めとして 細かいスペックや容姿は各機で大きく異なっている。従ってこの項では 搭載した変形機構の基本的分類と、基礎的な武装のみを紹介していく。 【武装データ】 Ver.:3.427 [[ムーバブルフレーム試験導入タイプ]] 武装:hmBWS_AL109 マスター・スピア“センチュリオン”×1 hmBCS_AL000 ブレス・キャノン“フォールダウン”×1 ※この他、各機種・各形態毎に様々な武装が提供される 装備:hmBSS_AL890 エンブレム・バックラー“ティンクルスター”×1 hmFAS_AL000 位相転換型装甲連動式フィールドアーマー×12 hmFSU_AL241 超小型フレキシブル・スラスターユニット×24 hmWBA_NO666 大型光学偏向式防御システム“ミラージュ”×2 hmSSS_AL046 真空破断式防御外殻“ソニック・ブランド”×1 ※この他、各機種・各形態毎に様々な装備が提供される まず紹介するのは、基礎武装である。これらも実際は機種毎に違う物の カテゴリーとしては事実上の標準装備とされる為、この項で紹介する。 “センチュリオン”は“騎士の槍”を目標として設計した、ロッド状の 携行武装である。ロッテ用の物はケースレスタイプの大型マシンガン、 アルマ用は徹甲型の電磁槍、クララの物は“Valkyrja”で使用していた “ライデンシャフト”同様の“魔術”執行用ブースターとなっている。 これは僅かだが記録用デバイスも内包し、効率的な執行を可能とする。 “ティンクルスター”はビーム・実体併用装甲としての能力を持つ他、 前述の“センチュリオン”及び“魔剣”と合体・変形する機能を持つ。 ロッテの場合は、ライナストと合体して“プラズマ・クロスボウ”に、 アルマはエルテリアを芯とする事で“ソリッド・バスタード”になり、 クララの杖はコライセルを取り込み“キャノン・ウィザード”と化す。 これらは何れも、魔剣の直接的な役割を先鋭化させた能力を発揮する。 # 即ち順番に、雷での狙撃/直接斬撃/“魔術”による砲撃、である。 “フォールダウン”は“プルマージュ”本体……竜の顎に内蔵された、 砲撃システムである。“竜の吐息”を意識してデザインされたそれは、 円錐型の専用砲弾により、それぞれ炎・氷・雷を着弾点に撒き散らす。 炎は直接的に神姫の装甲を灼き、氷……即ち液体窒素は駆動系の動きを 阻害する。また、雷は電磁パルスの暗喩であり神姫のセンサーを乱す。 容積等の問題で二発しか搭載されていないが、威力は何れも侮れない。 次に紹介するのは、基本的な変形機構である。こちらは“変幻自在”の 戦術を維持する為に、用途の異なる三種類が大まかに設定されている。 なお、以下の“AI”とは“プルマージュ”自身の専用超AIである。 【変形機構:名称は、後の“・シルエット”を省略している】 ドラグーン :独立稼動形態。基本的には“竜”全般を模している。 単独戦も可能としているが、基本的には主たる神姫を 背に載せての突撃がメイン戦法。AI駆動率が高い。 ゴーレム :重装防御形態。人型と竜型の中間といった姿である。 神姫を制御コアとした重装甲型のヴィークルであり、 “武器腕”による戦闘を行う。AI駆動率は中程度。 ティターン :大型装甲形態。神姫の特殊装甲服兼キャリアーとして 機能する、専用大型武装を扱う為の形態。翼を持つ。 AIは殆ど使わず、身体制御を神姫自身が担当する。 下位にある形態程、神姫個人の特性を引き出す為の機能となっており、 全体のボリュームも小さくなる。反対に“ドラグーン・シルエット”は 3on3等のチーム戦にも対応出来る様、ピーキーな部分が抑えられる。 これらの変形は“ムーバブルフレーム”と命名された専用のフレームを 大量に使用する事で、防御力を大きく削る事無く円滑に行う事が可能。 電力伝導系と駆動系を骨格として組み込んだフレームであり、量産化が 行われる際にも、汎用性の高いこの機構自体は流用されると思われる。 アルマ用“プルマージュ”:“[壱号機]ファフナー” アルマのそれは、試作モデル“ビルトパンツァー”以降から最も初期に 建造された、最初の“プルマージュ”である。“灼地龍”という異名を 持っている由来でもある、そのデザイン的モチーフは“火竜”である。 【武装データ:各機共通の武装は除外済み】 武装:hmRWH_AL472 リボルバー・ウォーハンマー“ボルケイノ”×1 hmVCS_AL581 ストライク・クロー“レイジング・ハロウ”×2 hmCLS_AL639 対装甲用散弾砲“フルメタル・クラッカー”×2 hmBLT_AL123 内蔵式拡散ビーム砲“ブレイズ・ストーム”×2 装備:hmHNB_AL946 二連装大型推進器“レコード・ブレイカー”×2 特徴:対実体弾防御力(ミサイルの直撃にも耐えうる程の、多重装甲) 色調:紅と白が基本パターンだが、一部パーツは黒色や銀色である。 解説:“ビルト・パンツァー”の系譜である、大型複合装甲。 『アルマの白兵技能を活かす』目的により開発された。 直進加速性能と防御性能・白兵戦闘能力に秀でている。 製造コンセプトは「地を駆け、全てを灼き尽くせッ!」 【変形パターン】 ドラグーン :T-REX等に似た姿を持つが、巨大な角も持っている。 二足歩行が基本行動だが、格納式の翼とブースターの 併用で一応飛行可能。尾側面の内蔵拡散ビーム砲は、 格納式のガイドを用いる事で集束射撃にも転用可能。 ゴーレム :頭部にセットした“センチュリオン”と“武器腕”の 高熱輻射式大型クローアームを用いた格闘戦が得意。 特に後者は“ヨルムンガルド”を爪に接続出来る他、 全ブースターをオーバードライブしての突撃が強力。 ティターン :竜の頭部に内蔵してあった大型ハンマーを振るう為の 巨神形態。紅のドレスを思わせる風雅な意匠である。 また“センチュリオン”と“ティンクルスター”及び エルテリアがハンマーに合体すると、巨大剣に変形。 究極的には“ボルケイノ”の一撃を叩き込む為に存在すると言える程、 その機能は白兵攻撃を中心として設計されている。その一方で、機体に 散弾砲や拡散レーザー砲を仕込む等、一応は射撃攻撃も考慮した模様。 但しどちらも射程距離が短く射出範囲が広いという、近接武装である。 ロッテ用“プルマージュ”:“[弐号機]ウィブリオ” ロッテの機体は、最もスマート且つ最も暴力的な機体として建造された 著しくピーキーな“プルマージュ”である。異名は“霜天龍”であり、 デザイン的モチーフは紋章等で用いる“翼竜(ワイヴァーン)”である。 【武装データ:各機共通の武装は除外済み】 武装:hmHBC_AL246 エクステンド・ビームライフル“イグニス”×2 hmIGS_AL157 マグナム・アーム“デイヴァイド・パイル”×2 hmLLL_AL839 大型ライトセイバー“フォトン・ランサー”×2 hmBLT_AL123 多目的ランチャー“レイン・スティンガー”×2 装備:hmSBB_AL758 真空波外殻整流器“ブランド・ダイナスト”×1 特徴:機動性能(ブースター出力が高い為、超高速戦闘を得意とする) 色調:蒼と白が基本パターンだが、一部パーツは橙色や金色である。 解説:“ビルト・パンツァー”の系譜である、大型複合装甲。 『ロッテの射撃技能を活かす』目的により開発された。 戦闘機並みの飛行性能と小回り・射撃戦闘能力が優秀。 製造コンセプトは「天を翔け、敵を凍て付かせろッ!」 【変形パターン】 ドラグーン :巨大な翼が印象的な、翼竜を思わせる姿。小柄ながら 前肢が存在する為、これで“フォトン・ランサー”を ホールドしての剣戟さえこなす事も可能。飛行速度は 全機体中最速だが、その分機体の反応性もピーキー。 ゴーレム :頭部にセットした“センチュリオン”と“武器腕”の 腕部内蔵式バレットランチャーを使った射撃が得意。 これは徹甲性能を当て込んだ近距離射撃が強力だが、 小型炸裂弾を利用する事で、遠距離支援砲撃も可能。 ティターン :尾翼が変形した二挺のビームライフルを運用する為の 巨神形態。二挺を並行に合体させ、出力上昇が可能。 更に“センチュリオン”と“ティンクルスター”及び ライナストをこれに接続する事で、最大出力となる。 ミサイルランチャーが搭載されており、殆ど戦闘機の様な機体である。 こちらも最終目標に“イグニス”での掃討を設定している。この業物は 二挺に分けての全周攻撃や三点バースト等の多彩な運用を可能とする。 しかし制御機構が複雑で繊細な為、ロッテの射撃管制能力は半ば必須。 クララ用“プルマージュ”:“[参号機]リンドルム” クララ機は、テクニカルな戦いを得意とする彼女の性質に合わせ機体も 水中戦闘対応等の付与機能が持たされている。その異名は“樹海龍”、 デザイン的モチーフは“東洋の龍”と“毒竜(リンドヴルム)”である。 【武装データ:各機共通の武装は除外済み】 武装:hmPMR_AL942 テクノウィズ・チャージャー“グングニル”×1 hmMBA_AL358 アーム・チャンバー“クルセイド・スペル”×2 hmEAS_AL716 電磁フィールド“スプライト・ボルトIInd”×2 hmWSS_AL123 大型ワイヤーブレード“ミスト・バインド”×2 装備:hmMSP_AL694 魔術補助特殊機関“アカシック・スフィア”×1 hmABC_AL000 複合防御装甲外套“ウォーロック・コート”×1 特徴:水中行動能力(電磁フィールドの応用で、推進機能を確保する) 色調:翠と白が基本パターンだが、一部パーツは灰色や銅色である。 解説:“ビルト・パンツァー”の系譜である、大型複合装甲。 『クララの“魔術”を活かす』目的により開発された。 その能力は徹頭徹尾、クララの戦術をサポートする物。 製造コンセプトは「海をも翔け、障害を打ち砕けッ!」 【変形パターン】 ドラグーン :東洋風の胴長な“龍”を思わせる容姿。動き方は他の 二機と違い、波を打つ独特のモーションである。躯を 螺旋状に巻く事で収束した電磁フィールドを利用し、 雷や物体を(クララ自身さえも!)射出する事も可能。 ゴーレム :頭部にセットした“センチュリオン”と“武器腕”の “魔術”用電磁パルス収束機構を使い、大型の魔法剣 “スペリオル・イグナイト”を精製する事が出来る。 他にも、電磁フィールドを流用した雷撃で攻撃可能。 ティターン :尻尾から取り出した、超大型“魔術”増幅杖を用いる 巨神形態。補助機関とクララの異能・経験の統合で、 大型・大出力の儀式級“魔術”さえ容易に執行可能。 その能力はコライセル等の合体で、更に強化される。 この機体は“魔術”がメインウェポンである為に、最終目標は不明確。 しかしその分、他の二人よりも“変幻自在”の色合いが強いと言える。 “グングニル”は大型化による性能向上の恩恵を最も受けた杖であり、 クララが凡そ扱える限りの“魔術”が、自在に構築可能となっている。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1374.html
戦うことを忘れた武装神姫 その38 ・・・昼下がりの会議。 実にだるい。 なんでも、新製品の受注数がさっぱり伸びないんだとか。 あたしは設計側の人間として同席するハメになってしまったのだが、一部の連中がヒートアップしてマーケティングと企画とで水掛け論状態。 新製品は、多機能健康コタツだとか。 全く・・・あたしがあれだけ忠告したのに。こんな無駄な機能満載の製品にしやがって・・・。 本当に売る気があるのかよ・・・。 「だから、より機能を充実させ、付加価値を高めて幅広い層に受け入れられるようにするべきなんだ!」 「違う! もっと調査サンプル数を増やし、厳選した機能にするべきなんですよ!」 それさっきも言ってたよお前ら。。。 あぁもう、アタマ痒くなってきたぞ! あたしのイライラがピークに達したその時。 「多機能高品質が今は求められているんだ!」 「そんなに付加価値を付けたいのなら、非常食にできるよう『食べられる』ものを作れとでも・・・」 にゃーん 突如、罵声とも取れる激しいやりとりの中に「猫」の声が混じった。 会議室の空気が、一瞬固まった。 だが、あたしを含めた誰しもが外からの声だと思い、再び空気が殺伐と・・・ 「・・・食べられるものにしろと」 にゃーん! ・・・しなかった。 今度は、誰の耳にもハッキリと、室内からの猫の声が届いた。 会議室内がざわめき、皆足元や備え付けられたロッカーの上などへ視線が泳ぐ。 がさがさがさ。 かたり。 「うるさいのー! もう、ゆっくり寝てられないのだー!」 プロジェクターの脇に置かれた、プレゼンテーション用の製品模型の中から・・・マオチャオが出てきたではないか! しかもどこかで見たことのあるアホ面・・・ 「え・・・エルガ?!」 「あ、おねーちゃん。 おはにゃー。」 思わず声を掛けると、エルガのやつは、資料や飲み物で散らかりきったテーブルの上を、ちょいちょいと楽しそうに飛び跳ねながらあたしの手元へやってきた。 会議室内にいる全員の目があたしに集中する。 「ちょっとエルガ、何でここにいるんだよっ!」 「うみゅー・・・あの中で寝てたら、ここにいたの。」 なるほど、ウチの部署で作っていた模型の中で・・・って違う! 「ねぇねぇ、みんな怖い顔してなにしてるの?」 「企画会議って奴だ! とりあえずここに入ってろ!」 こんな席に神姫が紛れ込んだことが上司に知れたらって上司同席の会議じゃないかぁっ!!! 「やだー。 あ、設計図ー!」 捕まえようとするあたしの手をするり逃げて、臨席に置かれた新製品の設計図をしげしげと眺めるエルガ。 と、ひとり焦るあたしの背後にすっと企画部長が立った。脂汗がうなじを伝うあたしの肩をぽんと叩き、 「ちっちゃいロボットが好きなのもわかるけれど。程々にしてもらわないとな。 さぁ、二人まとめて出ていってもらおうか。」 企画部長が設計図に見入るエルガに手を伸ばした、その時だった。 「これ、おじちゃんたちが考えたの?」 顔を上げたエルガは、企画部長に設計図を指し示しながら訊ねた。 部長はロボットに何がわかると言わんばかりの顔付きで首を縦に振った。すると、エルガは- 「・・・ふっ」 いかにも小馬鹿にしたような・・・そう、久遠の家で、あたしがネタにされるときのあの目つきで- 鼻で笑いとばしたのだ。 「こんなこたつ、売れるわけにゃいのだ。」 言われた企画部長の頬がぴくぴくと引きつる。 「コタツのココロが無いコタツなんて、売れるわけにゃいのー。」 びっ! と、企画部長に言い放った。 「ふん、ロボットに何がわかると言うんだ。」 「えらそーなクチを叩くのなら、もっと売れるもの作ってからいうのだ。」 切り返されてうろたえる部長の姿に、凍りかけた会議室の空気が・・・和んだ。 「コタツ使いのプロのにゃーが、コタツのココロを教えるのだ! みんにゃ、よーくきくの!」 エルガはあたしの前に、どこからか持ち出した手のひらサイズみかん箱を置いて上に乗り、何事か状況が掴めずに唖然とする出席者を前に、堂々と「コタツとは何たるか」を語り始めた。 語り口がネコネコしい為、始めは冗談半分で聞いていた連中も、徐々にエルガの話に耳を傾け。 ふと気づけば、エルガのワンマンショーとなっていた。 久遠の神姫の中でもエルガは結構語る方ではあったけれど、ここまで肝が据わって、かつ知識が豊富だったとは。 なにしろ、エルガの展開する「コタツ論」に、あたしも含め誰一人として反論できる者は- いなかったのだから。 それから一月の後。 食堂でやや遅い昼飯を食べていると、ぶら下げられたテレビでは通販コーナーをやっていた。 『では、今月の新商品です! 東杜田技研の『なごみ』! コタツの心、和の心を、とことんまで求めた、シンプルでありながら味わい深い、健康コタツのご紹介です!』 「ほー、もうタナカにも卸したのか。。。」 キツネ蕎麦をすすりながら、商品紹介を眺める。 結局、エルガのコタツ論に則り、機能をトコトンまで絞り込んだところ・・・当初とはうって変わり、生産予定数を軽く越える受注数が。 『ではここで、このコタツの設計に携わりました神姫のエルガさんに、このコタツのポイントをお伺いしましょう!』 先週、あたしの机の上で収録されたエルガの解説ショーが映し出された。 『どーもにゃのだ。 この「なごみ」は、テッテーしてコタツにゃの。なぜなら・・・』 あの時と同じ堂々とした面持ちで「なごみ」の解説・・・というかコタツ論を展開するエルガの姿。 まさか神姫が、ニンゲンの商品の開発に関わろうとは・・・だれが想像しただろうか。 神姫と人間。 すなわち、機械と人間の垣根が・・・ またひとつ、低くなった気がした。 ありがとう、エルガ。 アホ猫だと思っていたけれど、ちょっと見直したぞ。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2710.html
手にしたのは戦う力 7月23日(土) そして、今に至るわけである。私はソファに座った。神姫へのライドは、肉体的な疲れは無いが、精神的に疲れる。 「お疲れ様です。何かいれますよ。珈琲でいいですか?」 「カフェ・オ・レで」 「ははは、了解しました」 柏木さんが二人分のカップを持ってくる。そういえば、カフェ・オ・レを直訳すると、温い珈琲牛乳だと誰かから聞いた気がする。 うん、どうでもよかった。 「はい、カフェ・オ・レです」 ベージュ色のカップが渡される。始めから牛乳が入っており、手にちょうどいい温かさが伝わる。 「牛乳とみせかけて練乳」 「ははは、ありませんよ」 「実は豆乳」 「ありません」 「まさかの飲むヨーグルト」 「からかってますよね?」 「バレました」 私はカフェ・オ・レの入ったカップを仰いだ。ほどよい暖かさが、口一杯に広がる。余談だが、この珈琲はインスタントではなく、豆からひいているらしい。柏木さんの実家から送られてくるんだとか。 柏木さんもソファに座る。 「ここ2、3日で、随分と腕をあげましたね。これなら、近いうちにゲームセンターで戦ってもいいんじゃないですか?」 「そこまでじゃないですよ」 「いやいや、謙遜することないですよー。私も店長もそう言ってるんですから、間違いありませんって」 ここ一週間練習に付き合ってくれたエリーゼも称賛の声をかけてくれる。 砂糖の入っている小瓶の中から。 「エリーゼ、またあなたはそんなところから……」 「ん~、あまりインパクトが足りませんでしたか。今度はカップの中から現れてみせますね店長」 「やめてください」 柏木さんは、ぐっと拳を固めるエリーゼを摘み上げる。 「というかあの中にいて、大丈夫なんですか?」 今度は私の神姫が顔を出した。燈色の髪をサイドでまとめてあるのが特徴だ。 「あ、大丈夫ですよ。中に袋が入ってますから」 「あ、そうなんですか? なら、安心ですね」 もっと別のところにツッコンで欲しかったな、シリア。 「とにかく、明日ゲームセンターに行ってみませんか?」 「……行ってもいいですけど、お店はどうするんです?」 店長である柏木さんがいなくなったら、店が空になる。他にスタッフもいないし。 「休みでいいでしょう。どうせそんなにお客さんは来ませんし」 「店長、そういう時に限ってお客さん来ますよ? こう、狙いすましたかのように」 柏木さんは、エリーゼのツッコミに黙ってしまった。 「……じゃあ、明後日はどうですか? 明後日なら、定休日ですし」 「それでいいと思います」 そもそも私には予定らしい予定もない。 「う~ん、でも押しに欠けますね~……」 柏木さんは軽く考えた後、時計を見た。現在の時間は、午後4時16分。 「この時間ならいますね」 柏木さんは立ち上がり、電話を手にとった。そしてあらかじめ登録してあるのか、ワンプッシュで待機。 「あ、もしもし? えぇ僕です。柏木仁です」 しばらくして、会話が始まる。向こうの声は聞こえない。 「明日、僕のお店に来てもらえますか? 時間は……3時でいいですか?」 柏木さんが数回頷く。 「ありがとうございます。ちゃんと、神姫は連れてきて下さいね?」 そこで電話を切った。柏木さんがこちらに戻ってくる。 「というわけで、明日3時に来てください」 「いいですけど、何するんですか?」 柏木さんは眼鏡を直す。 「ま、卒業試験ですかね」 7月24日(日) 翌日、現在2時45分。私は柏木さんの店に来ていた。 「早いですねぇ、中々良心的なタイムですよ」 「基本は10分前行動ですので」 店に入る。相変わらず客はいなかった。 箱に入った神姫たちが、すこし憂いを帯て見えるのは気のせいだろうか? 多分、気のせいじゃないと思う。 「まだ、相手の人は来てないんですか?」 「う~ん、まだみたいですね」 「もう少しで来ると思いますけどね~」 エリーゼも首を傾げる。 陳列された箱の中で。 「かなり分かりづらいよ、そこ」 「う~ん、最近スランプですね~、どこかにネタは転がってはいませんかね~……。すいません、ちょっと出してくれませんか?」 蓋がテープで閉じられているが、どうやって入ったのだろう。 「ま、もう少ししたら来るでしょう。僕は筐体のチェックをしてきます」 柏木さんは練習用のブースに行くと、筐体を調べ始めた。 その時、店のドアが荒々しく開いた。 「あ、よかった。まだ始まってないわね」 「華凛?」 現れたのは制服姿の華凛だった。普段着の時とは違い、長い髪をそのまま垂らしている。 「華凛が相手なの?」 「違うわ。私は観客。昨日仁さんから連絡もらってね。走って来ちゃった」 そういえば今日は日曜日のはずだが、何故制服なのだろう。 「いやぁ、日曜日だってすっかり忘れてて学校に行ったら、同じ様に学校に来てた先生に捕まっちゃってね。朝から補習よ補習」 それは災難だったと言うか、ドジだったと言うべきか。 「いらっしゃい、華凛さん。どうぞ、座ってまってて下さい」 「はい、お言葉に甘えて失礼しますっと」 華凛がソファに座ろうとした時だった。 「トゥットゥルー」 「うわぁっ!?」 ソファがパカッと開き、中からエリーゼが飛び出した。このソファ、中が収納スペースらしい。 「も、もうっ! ビックリさせないでよ」 「あ、あぁ……」 エリーゼは肩を振るわせている。 「これですよ、この反応が欲しかったんですよ……」 そんな泣くほどだろうか? というかいつの間に入ったんだろう? 「よかったわね。それより早く退いてくれない? 座れないんだけど」 「あ、すみません」 エリーゼがピョンとソファから降りる。華凛もソファに座った。 「仁さんに聞いたけど、結構上達したんだって?」 「別に、そこまでじゃないよ」 「って言ってるけど、相方はどうなのかな?」 華凛が私のバックの中に話しかける。シリアはバックの中から顔だけをだす。 「んしょっと、樹羽は筋いいと思いますよ。結構バトルにも慣れてきたみたいですし」 「だって。相方にも認めてもらえてるじゃん」 「そんなことないって」 言いながら、私は嬉しく思っていた。 シリアが認めてくれる。相方に認めてもらえることほど、嬉しいことはない。 「どんな人なんだろうね」 「うん、楽しみ」 私はまだ見ぬ対戦相手に思いをはせた。 第四話の2へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2716.html
次第に開けていく視界、その瞬間にかける風と、水が高いところから落ちる音。ステージ『渓流』だ。木々の間に流れる川には少し大きめの岩が露出し、木の幹が横倒しになってバリケードのようになっている場所もある。 (シリア、どう?) (こっちは問題ないよ) 武装セットを出してもらいながら、相手のデータを確認した。 戦乙女型、アルトアイネス。かなり大きな鎧のようなアーマーを着けている。武器は小剣に大剣、さらにそれを柄の部分で連結した双剣の3種。ウェポンプールには武器はない。 (そもそも遠距離戦は想定していない。近距離戦型か) (とりあえず、ボレアスとゼピュロス出しておくね) 二爪とランチャーが姿を現す。遠距離戦を想定していないなら、何かしらの対策があるとは思うが、やってみる価値はある。 さらにデータを読み進めていくと、相手がリアライドであることがわかった。 神姫のライドには2種類の型がある。私のような『ノーマルライド』。そして、相手のような『リアライド』だ。 前者は体をマスターが動かし、火器管制やバーニアなどを神姫に担当してもらう。変わって後者は、その逆。体は神姫が動かし、その他をマスターにやってもらうのだ。 つまり、ライドシステムの出来る前の神姫とマスターの関係を崩さずより親密にしたのがリアライドと言うわけだ。 ま、それはそれとして。 (シンリーさん、さっきの勝負でもあんな感じだったのかな?) (だったら、余計に油断出来ない) あの状態で相手を捌ききったのだろう。なおさら油断など出来るはずがなかった。 (最初から、手加減する気なんてないけどね) (前から思ってたけど、樹羽ってバトルになると性格変わるよね) (……そう?) 中空に現れるバトル開始を告げるスクリーン。 『Ready……GO!』 バトルが始まり、スクリーンが消える。私はバイザーを下ろした。カメラを通して見る世界には残りの時間と残存HPが示してある。 (飛ぶよ、シリア) (任せて) 短い意志疎通。それだけで形となる。広がる双翼。後は、大地を軽く蹴るだけ。 (行くよ) ふわりと浮かび上がる。この感覚にもだいぶ慣れた。 ある程度飛んだ辺りで相手を視認。それでも、ボレアスの射程には十分入っている。 私は銃口を相手に向け、トリガーを引いた。上下2本の銃口から出た光の帯は、容赦なく相手に迫る。が、それは相手に当たることはなかった。当たる直前で相手の副腕が動き、その腕についた盾で防いだのだ。 いや、これだけなら別に驚きはしない。驚いたのは、相手が一切こちらを見ていないことだ。 (あの状態で、防いだ? なるほど、とことん近距離戦型ってことか) もはや射撃など見なくてもガード出来るというパフォーマンスなのだろう。なら乗ってみようじゃないか。 (樹羽、やっぱり性格変わってるよ) (……そう?) どうにも熱くなりすぎてしまうらしい。とりあえず様子見するのが吉だ。 私は高度をあげて、しばらく相手の出方を見た。 東雲榊は冷汗をかいていた。リアライドの形式をとっている彼は、副腕の操作もやっている。つまり、先程のボレアスの一撃を防いだのは彼なのだ。 (シンリー、せめて相手は見てくれよ) 彼の目は、神姫と共有している。よってシンリーの向いている方向にしか向けないのだ。 先程のボレアスを防げたのは、相手と自分の大体の距離に、相手の武器の弾速、あと勘だ。 (マスター……めんどくさい) (あのな……動いてないんだから楽だろ。それとも動くか?) (それもめんどくさい) (おいおい……) 基本的にマスターに従順である彼女たちだが、こういったこともまれに起こる。 (せめて相手は見てくれ、出来れば多少は動いてくれると助かる) (嫌だ、めんどい) こうなっては仕方がない。どんな計器より、やはり頼れるのは自分の目だ。だがまあ、今は計器に頼らざるを得ない。 (シンリー、一応『ロッターシュテルン』は出しておくぞ) シンリーの手に小剣を展開する。が、それを掴もうとすらしない。軽い音と共にロッターシュテルンが地面に落ちる。 (それもめんどくさいのか……) もはやシンリーは答えない。一瞬棄権を考えたが、秋已にあんな大見栄切ってしまった手前、今更棄権するわけにもいかなかった。 (休符だらけの勝負だな、これは……) 榊は黙って大剣『ジークムント』を副腕に展開した。 (やっぱり動いてこない。近付く気すらない?) 小剣と大剣を展開して以来、目立ったアクションは一切ない。やはり神姫の調子が悪いのだろう。 (今がチャンス?) (かもね、シンリーさんには悪いけど、絶好の的であることは確かだよ) さっきのもマスターがぎりぎりでフォローが間に合ったという感じであった。 つまり、今相手は計器でしかこちらの様子がわからない筈。 (エウロス2本。何かあるかもしれないから後ろから行こう) 両手に剣を持ち、相手の後方で高度を落とし、地面に水平に飛ぶ。そして、相手の無防備な背中に向かってエウロスを突きだした。 堅い物同士がぶつかり合う鈍い音がする。だが刃は相手に届いていない。 当たる寸前で現れた赤いバリアに阻まれたのだ。これは既存のバリアじゃない。 (ならっ!) その場に着地し、数発切る。が、やっぱりバリアはビクともしない。 その時、相手がゆらりと動いた。 「鬱陶しいなぁ……もうっ!」 足元にあった小剣の先を踏みつけ、僅かに浮かんだそれを掴むと、すさまじい速度でなぎ払われた。ぎりぎりで離脱する。そのまま距離を取り、岩陰に隠れる。 (つ、追加バリア?) シリアの声色がこわばる。確かに追加バリアなんて聞いてない。 確か、アルトアイネスの鎧に10ヵ所ある赤いクリアパーツは、小型のコンデンサ――つまり発電気だったはずだ。それを利用し、各所で独自の電力を供給し、高機動が可能になるというもの。それをバリアに使うなんて……。 (なんと言うか、荒いね) (うん、なんか無茶苦茶だよ) 今だって、相手は追って来る気配はない。あくまで迎え打つ気だ。今度はシンリーも少しは動いてくるだろうが、やはり問題はあのバリアだ。耐久力が設定されているのか、はたまたある一定以下の攻撃は無効化してくるドリームオーラなのか。 (どっちにしても、大火力をぶつけるしかない) (でも、ボレアスのフルチャージでもあれを突破できるかどうか……) 前回のイーアネイラのように、相手がバリアを張れない状況であれば、ボレアスのフルチャージショットも致命傷なのだが、今回はさらに追加バリアがある。突破は難しいだろう。 (なら、アレが使えるかも) (アレ……?) (テンペスト) 三種の武器にリアテイルパーツを組み合わせた大型ランチャー。それが『テンペスト』だ。その威力は――まだ試したことはないが、柏木さん曰く「まさに戦隊モノのとどめの一撃」クラスらしい。とりあえず一撃でボレアスのフルチャージを軽く越える攻撃力は出るらしい。あくまでらしい。 (でも、アレでもチャージしないとキツイんじゃ……) (だから、軽くバリアを削いでから) 両手の剣を持ち上げて見せる。耐久値の上限が決まっているなら、これをする価値があるだろう。 (じゃあ、さっそく……) (ちょっと待って) ブースターを起動させようとするシリアを止める。 (ちょっと、すごいこと考えた) (頼む、相手を見てくれ。じゃないとジリ貧になってこっちが負ける) (……わかった) なんとかシンリーを説得し、視界を確保した。ようやくこれで戦える。 その時、岩陰から相手がタイミングよく飛び出してきた。大丈夫だ、迎撃出来る。 近付いてきた頃合いを見計らって、大剣を振る。が、ブースターで細かく回避される。 (シンリー!) (むっ……) シンリーは手にした小剣を振る。これも当たらない。相手の剣が迫る。それをバリアでガードする。 (そこだっ!) 相手の動きが止まったところへ大剣を振る。しかしそれも予想していたのか、すぐに離れられ剣は空を斬った。そこからさらに右へ左へ細かく動く相手。 (くそっ、ちょこまかと……) 大剣を振ろうにも、相手の動きが速すぎて捉えきれない。シンリーも相手を見るだけで精一杯なようだ。相手が視界から消える。バリアを全面に張るのと、衝撃が来るのがほぼ同時だった。すぐに視界が動くが、すでに相手の姿はない。 衝撃が右から、あるいは左、上から来る。レーダーを見る、視界が役に立たない以上、計器に頼るまでだ。 だが、俺は困惑した。計器がぶっ壊れたのかと思った。 (な、なんだよこりゃ……) レーダー上で、自分の周りを物凄い速さで飛び回っている影が一つ。相手のエウクランテだ。だが、この速度は尋常じゃない。 周りからくる衝撃はさらに激しさを増し、全方向から毎秒7発単位で攻撃されている。 (レールアクションか? 違う、ならレーダーに最初から映らないはずだ……) 次の瞬間、強い衝撃が上から来た。それを最後に、相手は離れていく。だが、同時に強いエネルギー反応を後ろから感知した。 (後ろだ、シンリー!) 視界が後ろに回る。その瞬間、視界が真っ白に染まった――。 速度を落とさず相手に向かっていく。相手が構える。大丈夫、かわせる。相手の大剣が振られる。だが、私はかわさない。かわそうとしない。やることは、プースターを起動させるだけ。 大剣が迫る。その瞬間にブースターを起動する。すると、体が上に浮かび上がる。 (次、右!) (っ!) シンリーの手が動く。それを右に避ける。そして、私はエウロスを突き出す。が、やはりバリアに阻まれた。 それをみこしてか、すぐに大剣が動く。かまわない、私はブースターを入れるだけだ。 体が後ろに引っ張られる。 (次に行くよ!) 今度はブースターを細かく入れる。体が左右に揺れる。続けて長く、短く入れ、相手の後ろに回る。そこからエウロスで再び突く。またブースターを入れ、左、また右、時に上に移動しながら、相手のバリアを削っていく。 私はさらにブースターを入れる。視界が目まぐるしく動くが、不思議と相手は見失わなかった。 そして、若干高く上がりそこから一気に振り下ろす。そしてブースターを一杯に入れて相手から離れる。 (いくよ樹羽!!) 一度リアテイルパーツとエウロスをしまう。そして、ボレアスを中心にエウロス、ゼピュロス、リアテイルパーツを展開する。 (テンペスト、起動確認! システムオールグリーン!) 大地を踏みしめ、相手に銃口を向ける。 「「発射っ!!!!」」 銃口から解放されたエネルギーの奔流は、相手の体をいとも容易く飲み込んだ。爆煙すらあがらない。 テンペストを撃ちきると、落とす勢いで置いた。以外と重い。確かにこれは5人で支えて撃つ物だ。 相手を見る。相手はまだ立っていた。副腕が神姫の体を覆うように守っている。あれでノーダメージな訳がないけど。 (守り切られたの……?) (でも、バリアは消えた) 相手を覆っていたエネルギー反応が消えた。あの赤いバリアはもう使えないだろう。 (決めに行く、エウロスを……) (待って、相手の様子がおかしい……) 見ると、相手の肩が僅かに震えていた。そして、 「あは……はははは」 笑った。 「あははははははははははははははははっ!!!」 奇跡的にやられていなかった。ただし、バリアはもう使えない。 (シンリー、お前大丈夫か?) 腕と肩のコンデンサのエネルギーを全部バリアに使ったから、ダメージは最小限に抑えられた。 だがシンリーは予想外にも笑った。ダメージで妙な事になったんじゃないだろうな? (ごめんごめんマスター、ボクは大丈夫) いつものシンリーの声だ。明るくて、ハツラツとした声。 (ねぇ聞いてマスター。ボク、ついに新曲のイメージを思いついたんだ。一見無理だって思ったことでも、地道に努力すれば乗り越えられるって言うの! 王道だけど、それ言ったらみんな王道だもんね!) 一気に巻くし立てる。ああ、いつものうるさくてやかましいシンリーだ。 (ったく、遅いっての。じゃ、ちゃんと動いてくれよ) (うん、任せてよ!) シンリーはやる気になっている。これなら、行けるだろう。 相手はかなりの機動力がある。なら、対抗するまでだ。 (『ノインテーター・フリューゲルモード』起動!) 鎧であるノインテーターは、別の姿を持っている。それを解放した。 (さぁ、本当の勝負はここからだ……!) 第六話の1へ 第六話の3へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1741.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 登場神姫の武装紹介 ~四姉妹編~ 花の四姉妹 カトレア 【イージスの盾】(Aigis) カトレアの有するバックユニット。 見た目こそキュベレーアフェクションとほぼ変わらないが、性能、性質は大きく違う。 防御自体は極一般的な電磁防壁で行うものの、その出力は桁違いであり、最大出力時には肉眼で見えるほどに強力な防壁フィールドを形成できる。 しかしながら、展開するフィールドを吸収、再放出する事で極限まで消費エネルギーを軽減している為、防御効率は極めて良好であり、出力に加え持続性をも完備するまさに絶対防壁と呼ぶに相応しい防御システム。 特に出力の高さは折り紙つきで、大気中のイオンを瞬時に変質させるほどに高く、実弾攻撃はほぼ完全に弾き、レーザーは即座に拡散し無効化される。 音波攻撃も波長を変動されるために無効であり、熱攻撃も高温、低温を問わずにほぼ無効。 さらには爆風や炎などの二次的なダメージも磁気で逸らされる為に通用しない。 実質的に、『飛び道具は完全に無効』と見なして良いだけの防御特性を備えていると言える。 ただし、質量体への防御は重量の二乗に比して出力の付加を増加させるために、一定以上重い物にはバリアは発動しない。 神姫の重量はこれを満たすため、神姫本体ならばバリア内部への進入が可能。 即ち、カトレアに対する格闘攻撃は有効に機能する。 また、バリアは双方向に機能するため、カトレアからの射撃、および【ぷちマスィーンズ】等の遠隔操作も不可能であり、カトレア自身も一切の飛び道具を有していない。 また、背部バインダーには高出力スラスターが追加されており、アーンヴァルに比肩し得る機動性も持つ。 更にイージスの盾を応用し、イオノクラフトを発生させ飛行することも可能。 ただし、飛行時にはバリアの使用は出来ない。 【レイブレード】(RayBlade) カトレア最大にして唯一の武器。 高出力のX線レーザーを使用した光線剣であり、非常に高い攻撃力を誇る。 減衰率が高い代わりに、浸透率の極めて高いX線を使用する事で、通常の対レーザー装備やコーティングを無効化してダメージを与えられる。 ただし、X線レーザーの放射には、通常の赤外線レーザーの比ではないエネルギーを消耗するため、カトレアのレイブレードは、通常ホログラフィックセンサーのみを展開しており、このセンサーを遮る物があった場合のみX線レーザーを放射する。 つまり、“斬る瞬間”以外はエネルギーをほとんど消耗しないため、小型の基部でありながら稼働時間は極めて長い。 更に、バインダー内部には最大四本のレイブレードを格納し、それぞれ個別に充電することも可能。 【メドウサーシステム】(Medousa Containment) イージスの盾を転用した特殊攻撃。 防御に使用する膨大な電磁場を収束、放出する事で対象の神姫を拘束する機能。 射程距離自体は極めて短く、使用中はイージスの盾によるバリアが発動しない等の欠点もあるが、対象となった神姫が独力で脱出する事は完全に不可能。 この状態から更に、相手を引き寄せ、イージスの盾で“抱き潰す”『アイアンメイデン』と言う攻撃方法もある。 アルストロメリア 【デメテールスラスター】(Demeter) X字状に展開するスラスターユニット。 出力のみに重点を置いて調整された【エクステンドブースター】四基を稼動させることで、最高速度と機動性を両立させたブースター。 【デメテール】に使用されているブースターは、通常の【エクステンドブースター】の三倍もの出力を持つものの、駆動させてからトップスピードに乗るまでの時間が非常に長く、本来は回避には使用できない。 しかし、【デメテール】はそのブースターを“常時稼動させ続ける”事で加速性の悪さを補っている。 常に稼動している為に、静止するにはスラスターをX字状に展開し、出力のバランスを取る必要があるが、移動、回避を行う際には、“稼動し続けている”スラスターを動かす事で推力の釣り合いを崩し、即座に最大速度にまで加速する。 移動中にもスラスターの角度は自在に変更可能で、急激な方向転換や急旋回も可能。 それを回避に活用した場合の回避力は筆舌に尽くしがたく、現行の技術で作られる神姫としてはほぼ最高級の性能といって言い。 【アルヴォ PDW9 改】 アーンヴァルの武装である【アルヴォ PDW9】を【高速弾】仕様に改造したもの。 威力自体はさほどでもないが、アルストロメリアの機動性を持って背後から撃たれた場合は、充分な脅威となる。 弾数は極めて少ないものの、必殺の威力を持つ【重芯徹甲弾】も発射でき、弾切れまで耐えるのは現実的な対処法ではない。 予談だが、面積の広い【アルヴォ PDW9 改】は飛行時のアルストロメリアの翼代わりとしても機能する。 ストレリチア 【オーロラモード】(Aurōra) ストレリチアの通常戦闘形態。 機動性と速度のバランスを最重視しており、高い回避力を持つ。 武装は電磁射出式のパイルランス。 武装の威力に加え、速度と腕力を上乗せして放つ突撃は、如何なる神姫も耐えることは不可能だろう。 皮肉にも、フェータと同様の戦法であり性能で勝る一方、技量では劣っており、結果的に双方の攻撃力はほぼ互角と言って良い。 背面のエクステンドブースターは、アルストロメリアのものとは違い純然たる加速用。 固形燃料を使用し、瞬間的かつ爆発的な推力を得ることが可能。 反面、いったん起動してしまえば、固形燃料一回分が燃え尽きる3秒間は何があっても加速を止められない。 更に、カトレアと同様のバリアも持つが、こちらはジェネレーターと機構の関係上、展開できるのは一瞬だけ。 攻撃を防ぐためではなく、突撃時に自身がクラッシュするのを防ぐ目的で使用される。 これを応用し、上空からブースターで加速しつつ“地面に激突”する事で、自身を大質量弾として周辺一帯を吹き飛ばす『ドラゴニックメテオ』と呼ばれる攻撃手段がある。 【タイフーンモード】(Typhon) ??? ブーゲンビリア 【ユピテルレーザーシステム】(Jupiter) 薬品の化学反応を源とする化学レーザーシステム。 出力も然る事ながら、最大の特徴は、薬品と反応室が一体化した“弾薬”を使用し、それを交換することで高出力レーザーを連射できる事にある。 更に、この“弾薬”は、最大装填数である3つまで“同時に”発射することが可能。 これらは単発使用時の“class1”から、3発同時使用の“class3”まで自由に切り替える事が可能。 特に3発同時使用の“class3”の火力は圧倒的であり、既に神姫武装の域を出てしまっている。 武器の威力は、敵を倒す事ができれば充分であり、それ以上の威力を持っていても意味は薄い。 正直な話、このような威力を持つよりも機動性なり装甲なりを強化するほうが“強く”はなる。 だが、攻撃能力はあっても戦闘能力を有さないブーゲンビリアにとって、通常の神姫には困難な“対物破壊能力”を保持することが、3人の姉と比した場合の存在意義だと定義しているため、このような火力一辺倒の武装構成を選択することになった。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る