約 550,019 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/384.html
今晩は、ジェネシスです。ジェニーの方が通りが良いでしょうか。 私は今、繁華街の喫茶店に来ています。 少し、相談したい事がありまして。そして、私の目の前には… 「ジェニーちゃん、レーコ頼んでええ?」 「どうぞ」 ラストさんが居ます。男性としてのマスターを一番知っている方だと思うのですが。 「で?ウチに相談て何やのん?身体の事?」 「いえ、そうでは無いんですが…」 「んー?ちゃうのん?てっきりその話やと思たけど」 アイスコーヒーをストローで掻き回しながらラストさんがこちらを見ています。 愛想笑いなど浮かべつつどう話を切り出そうか迷っていると、向こうから話題が 振られてきました。 「そういえばジェニーちゃん元の身体もあるんやろ?どないして身体換装しとるん?」 「いや、それを言うならラストさんも。前から疑問だったんですけど」 神姫の素体とコアは基本不可分です。無論、そのシステムの盲点をつくような改造で 換装を可能としてる個体も居るのですが。 私達がお互いどういうシステムで動いてるのか。興味はあります。 「ウチは単純に身体を二つ持っとるんよ。神姫のボディとインターフェースのボディ」 「で、暗号化した専用の信号でデータを遣り取りしてデータ上の人格…人間で言うと なんやろな?心とか魂とか?を共有してるねん」 「二つのボディで性格や喋り方が変わるんはそのせい。で、片方がこうして起動 しとる時、もう片方は寝とるんよ。こないな感じで」 そう言ってラストさんが胸ポケットから取り出した手帳ほどのケースには彼女の身体が 眠っていました。成る程。 「私の方はもっと簡単ですよ。こうですから」 後ろ髪を上げてうなじの部分をラストさんに見せます。 私の首にはリンクコアがあり、そこに本体が直接収納、接続されているのです。 つまり、このボディは異常に大きな外装扱いなワケです。 「ああ、なるほどなぁ…また変わったテを。らしいちゅうか、なんちゅうか…」 快活に笑うその笑顔につられて笑みを浮かべます。 「そういえば、その身体どうやって誤魔化したん?店とか出たんやろ?」 「はい。まぁ、二日ぐらいでしたから…メンテという事にして、代理の教師として なんとか」 「ほっほぉ?偽名とか興味あるなぁ。何て名乗ってたん?」 「秋月 兎羽子(あきづき とうこ)ですね。苗字は由来がなんとかで名前は語呂で」 「へぇ…ちゃんと可愛い名前やん。てっきりフィーナ・ファム・アーシュライトとか ディアナ・ソレルとか月野うさぎとかかと思うて期待しててんけど」 「…流石にソレは。却下しました」 「候補には上がってたんかい。流石、夏はんは空気読めんなぁ…」 呆れたのか感心したのか解らない唸り声を上げながらラストさんが頷いています。 「ラストさんは…偽名とか持ってらっしゃるんですか?」 人間世界で生活するならそのぐらいは用意してるんでしょうか…? 「へ?ウチ?犬吠埼 凛奈(いぬぼうざき りんな)」 なるほど。ハウリンだから… 「…秋奈さんですか?」 「姉弟合作や」 神姫に歴史あり。でしょうか。あの人達は昔から… 「あー、ごめんごめん。ゼンゼン話ブレとんな。改めて、相談て何やのん?」 急に本題に戻られてこちらが面食らったり。 「ええと…マスターの、事なんですが…」 「夏はんの?」 きょとんとした感じで尋ね返すラストさんに頷きます。 「じ…実は先日、マスターに…その、こ、告白をしたんですがっ」 「ああうん、知っとるよ」 思い切って会話を切り出したんですが。え? 「し…知って?」 「いや実はな。あの時隣の部屋にウチとボスおってん」 「な…な!?にゃー!?」 「いや、んな判り易くパニくらんでも」 なだめるようにチョイチョイと手を振るラストさん。 いや、ちょっと冷静じゃ居られないんですが。 「いやぁ、何回掛けても夏はん携帯に出ぇへんし、こらマズいんちゃうかと思って 行ったんやけどな?したら二人とも爆睡しとるし」 「まぁ、疲れてるんやろ思て隣のボスの部屋で待っててんけど。したら何ですか、何か 隣の部屋からドラマチックな台詞聞こえてくるやん?」 「いやぁ、エエもん聞いたで。ウチもあんなん言うてみたいわぁ」 「な…な…」 大ダメージというか…ぐうの音も出ません。 「ああ、これ発見なんやけどガラスコップって意外と音集めるねんなぁ」 「ら…ラストさんっ…もういいです、勘弁してください」 「いや、勘弁も何も他意はないで。んで、告白してどないしたん?」 「そんなに簡単に気持ちを切り替えられませんてば。ちょっと待って下さい」 ゆっくりと紅茶を口に含み気分を落ち着けます… 聞かれてたのは恥ずかしいですが、これはこれで話が早いか。ポジティブシンキング。 「で…それ以来、マスターも少し優しくなったんですが…その、そういう男女の間に 起こる事態と言いますか…進展が無くてですね。ど…どうしたらいいでしょうか?」 「成る程。ウチが呼ばれた理由がよう解ったわ」 「すいません…他に相談出来る人居なくて」 「ええよええよ。で、ジェニーちゃんはどないしたいん?」 「私ですか?…それは、その…普通の恋人みたいにですね…」 「抱かれたいと」 ストレートな一言に思わずむせたり。 「ごほっ、ごほ!…ええと、そうなんですけど…言い方って物が」 「犯されたい、か。情熱的やなぁ、ジェニーちゃん」 「逆ですっ!!」 「うわ。しー。静かにせなアカンよ。目立ちたい話ちゃうやろ」 「う…はい。って、私のせいですか?」 指を立ててジェスチャーするラストさんにジト目で反論しながら、お互い顔を近づけて 声のトーンを落とします。 「で、逆っちゅう事は犯したいんか。そらナンボ何でもハシャギ過ぎちゃうか?」 「いい加減そのネタから離れて下さい?」 私の雰囲気を察したのかラストさんが咳払いを一つ。 「ええと。まぁ…夏はん根っからスケベやけどヘンなトコで真面目やで?」 「はい。なんか視線は感じるんですけど、我慢してるみたいで」 「…ちっとキモいなぁ。ソレ」 「…色々仕方ないんじゃないかと。考えさせないで下さい」 「まぁ、積極的かと思うくらいで丁度ええよ、夏はんみたく身体より頭が先に動く タイプ相手には」 「はい…そうですね」 言われてみれば。 頷き、カップに口をつけて答えます。 「ま、しっかりせな。見敵必殺の神姫さんたるモンが」 「オタオタしとったら、ウチが貰ってまうで?夏はんの事はよう知っとるしー」 からかい口調でこちらを挑発してくるラストさん。 挑発に乗るのもどうかとは思いますけど…しっかりと見据えて。 「…マスターが誰を選ぶかなんて解らないですけど。引き下がりはしませんよ」 「私だって、あの人を…あ、愛してるんですから」 「ん、その意気や。どもらんかったらなおええ」 「はい…」 照れはそう簡単には消えないです。うう… 「ま、それはそれとして。ウチも夏はんにコナ掛けよかな?」 「なっ!?」 突然の宣戦布告(?)に再び混乱の只中へ。 「ウチは家庭とかに幸せを感じられんタイプやから本妻は狙ってへんけど。まぁ、愛人 はアリやなー、とか」 「か、勝手に話を進めないで下さいっ!!」 「まぁまぁ、実際ウチみたいなんが居た方が間も持つし変化もあるで?花はジェニー ちゃんに持たすし?」 「いや、でも、それは…普通の恋愛から遠ざかっていくようなっ!?」 「スデに普通やないでー、神姫とマスターの禁断の恋愛」 「う…」 「まぁ、色々役に立つよって。任せとき。なんなら二人纏めて相手してもええよ?」 「…せめて最初は普通がいいです」 「後々はアブノーマルなプレイもアリ、か。発展家やなぁ」 「だから何でそうなるんですかっ!?」 結局、押し切られた私はラストさんの同居提案に協力する事になりました。 …毒を食らわば皿まで、という感じでしょうか。 しかしこれだって…今後の騒々しい共同生活のまだ一端に過ぎなかったのです。 私、本当に普通の恋愛は出来るんでしょうか…? 疑問は汲めども湧き出る泉の如し。でした。 メニューへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1456.html
武装神姫…それはテクノロジーが生み出した全く新しいロボットである。 MMSと呼ばれる基本素体にCSCチップを搭載、さらに様々なパーツを使用することで無限の能力を引き出す事ができるのである。 武装神姫と暮らす日常 第二章『べるの登場!?』 次の日… 「……き…な…さい」 (ん…誰だ…?) 気だるそうにしながら卯月は目を開け 「早く起きなさいってばっ!!」 「ぐがッ…」 よとしたところをチーグルアームで頬を思いっきり殴打された。 「………はぁ」 様子を静観していた耿が額を押さえながら溜息をつく。 「うぅ…何が起きたんだ…」 卯月は頬を押さえながら辺りを見回す。 「やっと起きたのね」 丁度胸の辺りにチーグルアームを装備したクラリスが立っていた。 「クラリスー…」 「ん?どうしたの、もしかしてあたしにお礼をいいたいのかな?」 「昨日から武装で人を殴るなっつってるだろうがッ!」 言って卯月はクラリスの頬をひっぱる。 「ふにゃっ…アンヒャこそっ、あひゃしの頬をひっぱらひゃいでっていっひぇるでしょッ!」 本日二度目の右フックが卯月の頬に決まった。 「昨日アレだけ念を押したのに、何で寝坊するのかな…」 「スイマセン…」 卯月達はある場所へと向かっていた。 「しかし、昨日の今日でいきなり実戦をするのか」 「そう言うマスターだって、僕達を起動した日にバトルやらなかったかな」 卯月の一言にすかさず耿が突っ込みを入れる。 「でしょ?なら私もやっても問題ないよね」 「まーそうだが……まぁいいか…この近くだと……雪ノ下かな」 「そうだね」 卯月の言葉に耿が頷く。 「雪ノ下って確か霜月さんが経営してるお店だよね?」 「そそ、あそこも一応神姫バトル用の筐体あるからね」 と言ってるうちに卯月達は雪ノ下の前に着いた。 「いらっしゃいませー」 卯月達が店に入ると柊が挨拶する。 「よっ、柊ーちょっとバトル用の筐体使うぞ」 「はい、どうぞどうぞ」 そう柊が答えるのを待ってから卯月達は筐体のある二階へと向かう。 「おーやってるやってるー」 筐体内では二人の神姫が戦いを行っていた。 『カッツェ、離脱して!』 『は、はいにゃ!』 一方は基本兵装に身を包んだマオチャオ 「マスター…あれって」 「極端というか何と言うか…てかあの装備量はレギュ違反じゃないのか……」 もう一方はミサイルランチャーからガドリングガンまで多種多様な重火器を全身に備えている外骨格を装備したツガルであった。 『ノエル、そんな雑魚神姫なんて早く止めをさしてあげなさい!』 『了解、マスター』 言ってノエルはカッツェに向けてミサイルによる弾幕を張る。 『にゃ?にゃにゃにゃにゃ!?』 カッツェは爆風を防ぐように防壁を構えつつその場で蹲る。 『カッツェ、足を止めちゃダメッ!』 『もう、遅いですよ』 ノエルは滑空砲をカッツェに向かって放つ。 カンッと言う軽い音と共にカッツェはアーマーの破片を撒き散らせながら吹き飛んでゆき、地面を二転三転したところで動きを止める。 『ネコガタカッツェ…コアシステムキノウテイシヲカクニン……Winner Beruno』 「マスター、勝ちましたよ」 言いながらノエルは筐体から出てくる。 「私の神姫なのですから当然のことでしょう?」 「はい、マスター」 ノエルは自らのマスターの肩へと座る。 「私に勝てるような人はここにはいないでしょうしね」 挑戦的な笑みを浮かべながらノエルのマスターは言う。 「むーなんか見ていて腹立つな~」 その様子を見てクラリスは言う。 「だなぁ…よし、ここは俺とアキで」 「私が華麗に初勝利飾ってみせましょ!」 言いながらゆかりは卯月を遮る様に前に出る。 「あらあら、初めてのバトルでこの私に挑もうなんて無謀すぎることですわよ?」 そのゆかりの姿を見てノエルのマスターは嘲笑うかのように言う。 「無謀かどうかなんてやってみなくちゃわからないじゃない!」 睨む様にしてゆかりが言い返す。 「ふん、まぁいいでしょう…行きますわよ、ノエル」 「はい、マスター」 言ってノエルは筐体の中へと入る。 「こっちも行くよ、クラリス」 「うん!」 笑顔で答え、クラリスは筐体へと入ってゆく。 「頑張ってくださいね、応援してますよ」 ゆかりの肩に乗りながらアリエスは言う。 「……俺の出番は?」 「どんまいなのにゃ」 卯月の頭に乗っかりながらラキは言う。 『サンタ型ノエル オーナー:美月べるの ランク:C 悪魔型クラリス オーナー:鴻乃ゆかり ランク:C バトルフィールド:工場跡 .........配置完了』 「やめるなら今のうちですことよ」 「その言葉そのままそっちに返すよ」 『READY』 「実戦経験も無し…装備も初期装備…それでは私には勝てませんよ?」 「そんな減らず口すぐにたたけなくしてあげるよ!」 『FIGHT』 ―次回予告― 「悪の秘密結社べるの団の卑怯な罠に瀕死の重症を負うアリエス!」 「え、何で私が重症負うんですか?」 「その仇を討つため単身べるの団本拠地に乗り込むクラリス!」 「えっ?えっ?」 「果たしてクラリスはべるのの罠の数々を突破できるのか!そして囚われの身となったゆかりの運命や如何にっ!?」 「何でマスターが囚われてるんですかっ!!」 「次回マジカルトラッパークラ☆リス第三幕『べるの団アジト火で染めて』」 「嘘ですよ!信じちゃダメですからね!」 「クラリスのトラップが起動するときまた神姫が吹き飛ぶ…」 「何しんみりした言い方してるんですかーッ!!」 続く 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2604.html
神姫バトルの世界へ:第1話 204X年3月某日17時ごろ 「ありがとうございました~。」 店内に定番の入学式ソングがなれる。そんな新たな旅立ちを連想させる雰囲気に包まれる店内。 「もうすぐ新学期。君も神姫と一緒に新しい時代へ踏み出そう。」 新学期にシーズン用に向けて神姫ショップ用に作成されたPOPの見出しである。 ゼルノグラード型の神姫に肩をかけた男性(F1クラスのマスターらしい)が神姫とともに空の星を高らかに指さしている構図である。 数週間前に帰ってきた義弘は「自衛隊のポスターみたいだな。」と苦笑していたのを思い出す。 レジ仕事の合間を縫って休みながら隆明が見ても、いまどきこのセンスはないだろうと思うが、 当のマスターと神姫の希望を採用したポスターらしい。二人ともノリノリだったそうな。 ここは隆明がアルバイトをしている大宮駅目の前の「arch」ビル内全部を使っている神姫ショップである。 神姫ショップ埼玉 大宮駅の目の前にあるビル「arch」内にある埼玉県唯一のFバトルが開催される会場のある神姫ショップ。 地下2階と地上6階建てすべてに神姫関連の施設が入っている。 1階:総合受付・神姫関連商品の予約や公式大会・Fバトルの受付などを取り扱うコーナー 2階:神姫素体販売コーナーとマスター登録を受け付けるカウンター(たいていのマスターは神姫素体を購入してから登録するため1階の受付とは差別化されている。) 3・4階:神姫関連商品販売フロア。武装やアクセサリなどを販売している。また私服やコスプレ服などバトルとは関連のないものも多数取り扱っている。 5・6階:ゲームセンターと公式バトルのフロア。公式バトル用フロア決まった日時に公式バトルが行われ、バトルが開催されない日にじはゲームセンターとトレーニングルームーとして解放している。 地下1・2階:Fバトル時のみ使用されるFバトル専用会場。 隆明はビル2階素体・神姫武装販売フロアである。 ここで1年ぐらい前からアルバイトを始めている。隆明の目標である神姫のマスターになるための知識の収集と資金集め、社会経験。 と一石三鳥の職場と考え仕事を始めて早一年。そろそろと思っていることをきょう実行する。今日は義弘が家に来る日。アルバイトを始めると決めた時から考え 、また義弘から3人の神姫を受け取った時に現実として見えてきたこと。それが今日から始まる。そう考えると、仕事にも気づかないうちに力が入っていた。 同日21時過ぎ インターホンが鳴り、親機から「こんばんは」義弘の声が流れる。 「いらっしゃい。弘兄(にぃ)」 すぐにドアを開け義弘を招き入れる。今義弘は住居に一人暮らしをしているが、後見人ということもあり時々様子を見に家を訪れる。 といっても堅苦しいそれではなく、元は一緒に住んでいた家であることもあり、勝手知ったる何とやらで一緒に料理をつくったり雑談をしたりと 同居していたころと変わらない。 「3人ともこんばんは。」 「こんばんは義弘様。」 与一がテーブルの上で正座を崩さず声だけで挨拶をする。正座で閉眼したままのあいさつなど礼儀正しい彼女からは少し考えがたいことではあるが、 義弘たち親しい者の前でしかしないことである。彼女は精神統一とたびたび何もせず正座をして過ごしている。 「義弘様来た来た~。」 いつも変わらず元気そうなアテナ。そんなアテナをキュベレーが塞ぐ 「こんばんは義弘様。」 「んもう何するのよキュベレー。」 折角のあいさつをふさがれて怒るアテナ。そんなアテナを意に介さずキュベレーはいつもの調子だ。 「アテナ、与一姉(ねぇ)が正座しているときくらい静かにしなさい。」 「そうだけど~。義弘様が来たんだから挨拶するのはあたりまえじゃない。」 キュベレーも正論に押し黙る。すると、ゆっくりと与一は立ちあがる。 「こんな遅くに義弘様がいらしてくれたのよ。やめなさい。」 「二人ともそのくらいにしておいて。」 与一はピシッと二人をいさめ、口げんかに発展する前に義弘はやんわりとたしなめる。義弘はそんな光景に少し苦笑する。3人が隆明のもとに来てからよく光景であった。 しばらく5人でたわいもない話をして時間を過ごす。義弘が帰還してから1週間5人はときには甚平とたま子を加え義弘のいない間の話に花を咲かせていた。 そんななか隆明はいつ例の話を切り出そうかとずっと考えていた。 「弘にぃ。ちょっと相談があるんだけど。」 アルバイトの話をしていた時に隆明がずっと考えていた本題を意を決して切り出す。いつもとは違う雰囲気を察してか与一たちはテーブルの隅に移る。 「俺神姫のマスター登録して神姫バトルをしたいんだ。」 「いいよ。とすぐに言いたいところだが、どうして神姫バトルに参加することにしたんだ?いつも言っていることだが、 結論だけ言っても誰も納得はしない。しっかりと理由をきいてからだ。」 何事にも必ず理由がある。社会に出て「なんとなく」は通用しない。何かをするときは必ず動機を。それは義弘が昔からの口癖だった。 「弘にぃからみんなを受け取ってからずっと考えていたんだ。ただみんなと過ごすだけじゃなく、みんなと前に進みたいと思ったから。 それに俺は受け取っただけでみんなのちゃんとしたマスターじゃない。だから、きちんとマスターとなって進みたいんだ。」 いつもは物静かで人に意見をするのも一苦労な隆明が義弘の瞳をまっすぐに見つめて理由を告げる。 義弘は確かに3人の神姫を隆明にマスター権を渡したが、神姫の登録上いまだマスターは義弘のままだった。 それではマスターが行うクリーニングなどさまざまなサポートを受けられない、神姫ショップの店長は隆明とも、 もちろん義弘とも顔見知りだったため問題なく行えていた。 「その目標が神姫バトルというわけか。」 「うん。」 「それで隆明たちが前に進めるのなら、反対する理由はない。いいよ。」 そんな義弘たちの傍らで様子を見ていた神姫3人はそれぞれ緊張を解き喜ぶ。 隆明は早速神姫ショップからもらってきたマスター登録のための必要書類をテーブル広げ、5人はそれぞれの紙を眺める。 「隆明すべてに目を通したか?」 「うん。一通りは。」 重要事項説明書を見ながら義弘は問う。神姫ショップで働いている隆明にとっては、ショップで働いているときによく見る光景だったので内容については知っていた。 「マスター登録するには要約すると。」 「1.マスターの登録には本人の住民皆番号が必要である。18歳以下の場合保護責任者の住民皆番号と同意書が必要である。」 「2.犯罪を犯すなど公序良俗に反したマスターは無条件でマスターの権利を剥奪もしくは無期限停止される。」 「3.神姫関連の商品についての売買。施設使用料は神姫ポイントで行なう。」 「4.神姫への改造。武装について許可されたものを除いて改造を禁止する。」 「5.神姫の犯した犯罪はマスター並びに、保護責任者が追うものとする。」 「他にもいくつかあるがこんなところだな。本当にこれでいいんだな?」 最後に義弘が確認するが、隆明は「うん。」とうなずく。すると義弘は同意書に自信の情報を書き込んで隆明に渡し、欠落項目がないか確認をさせる。 そして隆明はあらかじめ記入していた項目を確認する。 「最後に隆明。与一とアテナとキュベレーのマスターを正式に隆明に移す。そのための書類を神姫ショップに提出する。 これが遅いと二重登録になってしまうから、私も隆明の登録に一緒に行くよ。書類はいつ出しに行く?」 「書類はそろったし明日にでもと思っていたけど。弘にぃ明日は?」 「明日は夕方からなら18時からなら大丈夫だ。19時ごろに神姫ショップの前で待ち合わせよう。」 義弘が明日の予定を決め、隆明のマスター登録の段取りがきまる。「予定はきっちりと。」それが義弘の信条だった。 「うん。よろしくお願いします。」 そういって隆明は最敬礼で義弘に礼を表す。そうして今日の義明の決心は終了した。 そのすぐ後に義弘は帰り、その日隆明入浴中。 月を見上げながら与一は立ちつくす。 「与一ねぇ。どうしたの?」 いつもと同じしとやかなたたずまいだが、どこか声をかけずらい。 そんな雰囲気にキュベレーが声をかけるべきか迷っていると後ろからアテナがそんなキュベレーの思いに気づかないようで与一に声をかける。 「……ううん。なんでもないわ。アテナ。キュベレー明日もマスターを起こさなきゃいけないんだからマスターが上がってきたらすぐに休みましょう。」 一呼吸置いてそういった与一はいつも通りだった。 与一にあった声をかけずらい雰囲気はどこかへ消えていた。 「何も変わらないもの。」 そうつぶやいた与一の眼はどこか遠くを見ている。キュベレーはそんな気がした。 明日18:55時 もう4月になるアルバイトのない日。神姫ショップの入ったビル「arch」の目の前で隆明は義弘を待っていた。19時になりほぼ時間通りに義弘が現れる。 「待ったか?」」 「大丈夫。さっききたところ。」 いつもきっかり時間通りに義弘が来ることを知っていた隆明はさほど待つことない時間から義弘を待つのはいつもどおりであった。 合流し二人で店内の受付へと向かう。 「仁店長。」 「久しぶりです。仁さん」 今日は2階の神姫素体販売フロアで店内巡回をしていた店長に挨拶する隆明と義弘。 「河野君。今日はマスター登録する日だったな。話に聞いてるぞ。それに義弘先生。お久しぶりですな。」 義弘も元は神姫のマスターだった身。神姫関連で世話になったことあるし、患者でもあるので顔見知りであった。 橋本仁 埼玉市大宮にあるビル「arch」内の神姫ショップの店長 隆明のアルバイト先の上司であり、義弘にとってもマスター登録を行ったり、神姫たちのクリーニングをしてもらったりと なにかと世話になっている。また仁も義弘の患者として世話になったことがあり、互いに世話になったと思っている。 人当たりがよく、親身になってくれること。また、組織の人間としてもしめるるところはしめ、ゆるめるところはゆるめるやり方で、 人望も厚く、店長として信頼されている。義弘とは公私の付き合いがある。酒好きである。 ちょうど2階にある受付カウンターに人がいなかったため仁が直接受付を行う。 「そっかぁ。ついに与一ちゃんたちのマスターになるのかぁ。」 受付しながら仁は感慨にふける。義弘がクリーニングをお願いしたりしていたので仁にとっても神姫たちも知らぬ中ではなかった。 「仁さん。今日は店内がやけに混んでるけど何かあったですか?」 隆明のマスター登録中。少し離れてみていた義弘が店内の様子から少し世間話を始める。 「今日ね。珍しくストラーフMk.2型の素体が入荷してね。それを知るや何人もマスターが買いに来て大変だったんだよ。」 「なるほど・・・」 「はい。できたよ。」 書類手続きも終わり、マスターの証しである神姫カードを受け取りすべての手続きが終わる。 神姫カード 神姫のマスターとなったとき必ず公布されるカード。それにマスターとしての様々な情報(住所・郵便番号・登録電話番号・暗証番号・所有神姫等) が入っている。神姫ポイントも神姫カードに入れるためクレジットカードよりも高度保護がかけられていて、紛失した際の身元の照会は警察や神姫ショップ等で限られた人物しかできない。 (アクセス権限を限定することで悪用された際の犯人特定を迅速化する狙いがあるといわれる。) 名前が入っただけというシンプルなつくりだが、シンプルさは保護の頑強さ故といわれている。 神姫ポイントは神姫ショップでチャージしたり、電子マネーを購入しその金額をポイントに変える方式などがとられる。 神姫ポイントは日本円で1円=1ポイントである。 「それじゃあ河野君頑張れよ。」 そういって仁は隆明を送り出す。隆明は多少緊張しているのかカードを握りしめている。そんな隆明を気遣い義弘は先に立って歩く。 エスカレータへの通路を曲がったところで義弘は突如エスカレータを走って降りてきた女性にぶつかる。 「いたっ。」 神姫の素体と思われる箱を胸に抱えた女性はしりもちをつく。義弘は少しよろけただけだった。しばらくぶつかったことに気づかなかったのか、 ぶつかった当の本人を少し見上げて少し呆ける。だがそれも少しの間。 「ちょっと、どこを見て歩いてるんですか!」 「ぶつかってしまったことは謝るが、君も気をつけなさい。君だけではなく折角の神姫も台無しになってしまう。」 そう諭すが、言われるが否やすぐに女性はきすびを返しエレベーターをかけ下りて行ってしまった。 「誰なんだあいつは。まったく謝るくらいすればいいのに。」 「うーん。感じからして隆明や甚平と同年代くらいかもしれないな。」 隆明は怒っていたが、義弘は全く別のことを考えていた。 「ん。これは…」 床に落ちているカードを隆明が見つける。 「これは神姫カード?さっきの子のかな?」 「小早川千歳。」 この後店内の受付の仁にに届け、そののちに遺失物として警察にとどけられ、神姫カードは小早川千歳のもとにもどる。 小早川千歳と隆明・義弘との初めての出会いは衝突から始まった。 編集後記 Fバトルへの前章をこれから開始していきます。前回からの更新から時間がたってしまい申し訳ありません。頑張って鋭意努力します。 今回は追加項目を分けるのではなく作中に入れました。読みにくいようでしたら、別々にしますのでコメントまでお願いします。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/433.html
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷めはしても逃げはせん、落ち着いて食べろ……って、もうッ」 「はむ、はむ、はむっ……もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ……♪」 「相変わらずおいしそうに食べるなぁ、ロッテ。可愛い“妹”だ」 「はみゅう?ふぁいすふぁ~、んぎゅっ……どうかしましたの?」 「う゛ぁ……そ、そのな。ほら、ドレッシングを零すんじゃない」 この通り、ロッテは平然と“人間用の”チキンサンドを食べている。 飲んですぐに「嫌いですの」と言い放った、炭酸飲料や辛い物以外は 食料ならなんでも食べてしまう。無論、15cmの体格に見合った量しか 食べられぬ故、自然と私と半分ずつシェアする事になるのだが……。 「そう言えば、ロッテや。お前がその様に食事するようになったのは」 「えっと……確か、以前定期メンテナンスにお出かけしてからですの」 「む、そうか……あの時頼んだ先は、確か“ちっちゃい物研”だな?」 「はい♪あれからなんだか、とても快調ですの。お腹は空きますけど」 東杜田技研。そう大きな会社ではないが、マイクロマシン分野に強い。 そこの一部署が“ちっちゃい物研”と自らを名乗っている。そして以前 メンテを依頼する際、知人を頼って同部署を指名した覚えがあるのだ。 あれは研究員……“Dr.CTa”の技術論文を読み、感銘を受けたからか? 実際同社の手際は見事な物だ、私に解決できない不調は全て解消した。 特に補助バッテリーの持続性が、30%程伸びているのは驚きだった。 「だが、ううむ……その時の事は、まだ思い出せないのかロッテ?」 「えと、あ。そう言えば……白衣のお姉さんが嬉しそうに手を……」 「ふむなるほど、そういう事か。感謝せねばならんな、ある意味で」 なんとなく掴めた。が、追求はするだけ無意味であるとも理解が及ぶ。 “Dr.CTa”か仲間の誰かが、実験の為ロッテに改造を施したのだろう。 となればロッテからそれを取り外すのは、かなりの大手術になる筈だ。 そもそも、だな?こんな可愛く物を食べるのに……外すなどとはな?! せっかくの“妹”から、食を取り上げるという冷酷な行為はなッ!?! 「……マイスター?なんだか顔が紅いですの、どうしました~?」 「な、なんでもないっ!……そう言えば、こんなビラがあるぞッ」 「武装神姫・第五弾?セイレーンにマーメイドに、イルカ……?」 「うむ。今度は海シリーズらしい……水着も開発せねばならんか」 と私が水着のデザインを思案し始めた横で、何やらロッテが唸り出す。 あからさまに縦線が入る程の、負のオーラさえ背負っている様だった。 何事?と顔を近づけ、ロッテの様子を伺ってみる。そして出た言葉は。 「……マイスター。なんだかこの妹達、胸がおっきいですの」 ホットティーを噴いた。見ればなるほど、確かにキャンペーンガール…… 正確にはキャンペーン神姫か。彼女らの胸部は、至上類を見ない豊かさ。 成長期なのに躯が小さい私も、アーンヴァルタイプのロッテも心は同じ。 どちらから切り出そうかと悩んでいたが、先行したのはやはりロッテだ。 「マイスターも、わたしの胸大きい方がやっぱり……いいですの?」 「ぐ!?……いいんだ。ロッテは今のロッテが一番可愛いからな!」 「てへ……マイスターも、今のマイスターが一番大好きですの~♪」 そう言って肩に飛び乗ったロッテに、私は頬を寄せ頭を預けさせてやる。 嫉妬心が無いわけではないし、今後は豊満な躯用の服も作らねばならん。 我々としてもいろいろネガティブな物は感じるが、それはそれであるッ! 別に胸の善し悪しで全ての価値が決まるわけではない、気楽に構えよう。 彼女は大切なパートナーであり、彼女にとって私もそうであるのだから。 「あ。マイスター、紅茶が付いてますの。んっ……♪」 「わ゛!?こ、こらっ、頬にとはいえキスするなっ!」 「えへへ~、大好きって言ってくれたご褒美ですのッ」 ──────この笑顔があればね、別にいいじゃないの。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2563.html
ここには「美咲さんと先生」のいろいろな設定などを書きたいと思います。 人物 「先生」 :名字は竹田。齢四十に近い男性。常に敬語で話すために真面目な人間かと思いきや、中身は変人である。だが、オリジナル装備製作やプログラムの組み立て、神姫のメンテナンス等をこなせることからかなりの知識人であると思われる。株式会社「カサハラテクニカル」の神姫用玩具開発部門の主任。結果重視の会社であるため、特定の拘束時間はないが出勤日数は二十日間以上と決められている。まれに一日五分しか会社にいないこともあるらしい。フブキタイプ・美咲のマスター。メガネはかけていない。 「カエデ」 :本名・一条 楓(いちじょう かえで)。どこにでもいる普通のOL。薄給から何とかやりくりして神姫を楽しんでいる。会社の休日は火曜、日曜。アーンヴァルタイプ・エルスのマスター。幸薄感に溢れている。 「ケイゴ」 :本名・柏木 圭吾(かしわぎ けいご)。ニートに近いフリーター。親が甘いので神姫もほぼ親の金で楽しんでいる。ただ、嫌味のないさわやかな性格であるため、あまり疎まれてはいない。触手好き。マリーセレスタイプ・ステルヴィアのマスター。ぽっちゃり系。 「エンドウ」 :本名・遠藤 健太郎(えんどう けんたろう)。大学生。先生を師として仰ぎ、尊敬している。アルバイトをしながら大学生活と神姫を満喫している。セカンドリーグのトップクラスに在籍してるので、金銭的に余裕がある。大学生特有の自由時間を生かして全国各地を回り武者修行をしている。ウェルクストラタイプ・『弾丸』のフェフィーのマスター。精神面は幼め。 「ケイイチ」 :本名・東雲 慶一(しののめ けいいち)。高校生。四人の神姫を維持するための電気代や経費を稼ぐため、言うことをあまり聞かない姉妹を引き連れ日々放課後バトルに明け暮れる。バトルセンスはピカイチであり、特に多対多でのチーム戦や混戦においてその真価を発揮するタクティカルコマンダー。今現在は親元を離れて一人暮らしであるが、騒がしい毎日を送っている。アルトレーネタイプ・イール、マオチャオタイプ・アルマ、アークタイプ・マリネ、アルトアイネスタイプ・ネムのマスター。女難の相ならぬ神姫難の相が出ている。 「タチバナ」 :本名・立花 菊子(たちばな きくこ)。先生と同じ「カサハラテクニカル」の社員。神姫武装開発部門の若き主任(年齢は二十代中盤らしい)。立花財閥のお嬢様だが神姫に没頭するあまりに勘当される。彼女が開発する武装はどれも派手さや見た目に重点を置いたものであるが、それに詰め込めるだけの性能を詰め込んだ、高性能だがピーキーなものがほとんど。故にカサハラ製の武装は目立ちたがりの玄人が好む傾向にある。苦いものが大嫌いで、タバコは吸えないがくわえるのは好き。ジュビジータイプ・ホムンクルス、他「カサハラテクニカル」の社員神姫のマスター。残念美人。 「ムースのマスター」 :本名・柊 麻昼(ひいらぎ まひる)。女子高生。明るく元気な女子高生だが、時々ブツブツと独り言を呟いてはニヤリと笑うちょっとアレな子。ゲームの類が大好きで、それが高じて武装神姫に手を出した。友人に機械に強い人が居り、武装の製作を委託している。 神姫 「美咲さん」 フブキタイプ。初期に販売された神姫。比較的角ばった作りの初期素体のままなことをちょっと気にしている。より人間の少女らしい丸みを帯びた新型に換装することを先生に申し出たが、「今のままがいいです」と却下された。どんな武装も使いこなし、どんな間合いにも対応するオールラウンダー。比較的高次元な戦いにも対応できるが、並列処理能力は低いので臨機応変には戦えない。先生の的確な指示が勝利の鍵。 「エルス」 アーンヴァルMk-2タイプ。美咲のギターの副作用の媚薬プログラムのせいでおかしくなったと皆は思っているが、実は初めから百合属性。今までは抑えていたが、プログラムによって解放されただけ。アーンヴァルの標準通り飛行特化の射撃重視装備を施されている。回避以外特に目立った性能はないバランス型。マスターであるカエデ自身があまりいいセンスではないため、実力はサードリーグクラス。だが本人達は気にしていない。 「ステルヴィア」 マリーセレスタイプ。自称地区一の触手使い。マリーセレスの標準装備の触手をカスタマイズし長くしている。触手マイスターになるのが夢。装備はマリーセレスの標準装備にカスタマイズした触手のみの近接格闘型である為、飛行型の敵には弱い。が、地上戦ならばかなりの戦闘力を見せる。マスターであるケイゴはステルヴィアに指示を与えるより、ステルヴィアに敗北しチョメチョメされる相手を見ることに力を注いでいるらしい。 「フェフィー」 ウェルクストラタイプ。『弾丸』の二つ名をもつ。一度CSCを破損し交換されているため、今のフェフィーは記憶を継承した二代目である。コアとCSCの相性が悪かったようで、知らぬ相手には無愛想になり、BL好きになってしまった。さらに、全ての神姫がBL好きだと思い込んでいる為、知り合った神姫に普通にBL話を持ち掛け、どん引きされるのだそうだ。故に友好関係はあまりよろしくない。格闘特化のCSCに合わせて、装備も格闘特化型である。足に備えたバッタの足のようなシリンダーは瞬発力を増加させるための装置で、バネのように足を弾くため高機動用モーターよりもバッテリーの消耗は低い。が、素体への反動は大きい為、こまめに整備をしないと素体自体が破損する恐れがある代物。手足に装備している武装は、エネルギーを内部にて圧縮し、攻撃時に解放させることにより威力を数十倍させることができる。冷却装置は付いているが、すぐに熱を持つので一度の解放ごとに表面を開き熱を逃がさなければならない。スカートバーニアは加速力増加と空中での姿勢制御を兼ねている高出力低持続性の小型バーニアである。内部には小型のエネルギータンクを備え、戦闘時の稼働時間を僅かに延長させている。ちなみにこれは本戦仕様であり、軽い手合わせ等の手加減用装備も別に存在している。 「イール」 アルトレーネタイプ。仲良し四姉妹(笑)の長女。標準のアルトレーネの性格であり、マスターであるケイイチに従順である。が、熱しやすい性格で「牛丼」と呼ばれることを何よりも嫌い、頭に血が上ると冷静さを欠く。武装は近接特化で、紅黒のダークカラーに塗装されたアルトレーネの標準アーマーに七つの細剣を装備するのみ。一対一では勝率はあまり高くないが、多対多の混戦時には無類の強さを誇る。その強さの秘密はアーマーにあるらしい。待て次回!(←未定)末妹であるネムが可愛くてしょうがない。 「アルマ」 マオチャオタイプ。仲良し四姉妹(笑)の次女。性格は捻じ曲がっており、常に他人に突っかかる。ケイイチに起動させられたわけではなく、色々あって人の手から手に渡り歩き、最終的にケイイチのところにたどり着いた。武装は紅黒のダークカラーな標準装甲にカスタマイズされたドリルとレーザー刃の切れ味抜群なレーザーソー。攻撃力はとても高く、さらにマオチャオ特有の機動力の高さで地元神姫センターのトップに君臨する。特に妹のマリネとのコンビは強力で、一部ではそのカラーリングと強さに『夕闇の旋風』と呼ばれている。普通のマオチャオと違って辛いものを好む。末妹であるネムにデレデレである。 アルマ語講座。 「~無い」という否定形は「~にゃー」となる。例「馬鹿じゃないよ」→「馬鹿じゃにゃーよ」 一人称・二人称・三人称。「おまえ」は「おみゃー」。「私」は「あちし」。「あいつ」は「きゃつ」。「こいつ」は「こやつ」 語尾ににゃーをつけるかどうかは気分らしい。「な」を「にゃ」にするかどうかも気分らしい。 「マリネ」 アークタイプ。仲良し四姉妹(笑)の三女。性格は粗暴。一人称は俺。恐ろしく口が汚く、言語矯正プログラムによって規制音が鳴り響く。普段マスターであるケイイチの言うことには馬耳東風だが、バトルの時には忠実である。武装は紅黒のダークカラーなイーダのトライクのカスタム品である。走行可能ギリギリまで積載した火器による砲撃が得意で、地元神姫センターで二位の実力を誇る。アルマとのタッグでは負け知らずで五十連勝以上はしているらしい。末妹であるネムにゾッコンである。 「ネム」 アルトアイネスタイプ。仲良し四姉妹(笑)の四女。仲良し四姉妹(笑)が仲良しでいられるのは彼女のおかげ。性格はかなり幼く甘えん坊で泣き虫ではあるが、芯は強い。武装は紅黒のダークカラーで姉妹たちとおそろいになるように塗りなおされているが、彼女はバトルすること自体は嫌なので装備したことは無い。強いて言うなら、相手の母性や保護欲を掻き立てるその性格が最大の武器。実質一家の支配者だが自他ともに自覚はない。 「ムース」 ストラーフタイプ。クールな印象をあたえるしゃべり方をするが、頭の足りない子。普段から黒いロングコートを愛用している。武装はストラーフの標準装備である強化脚とサブアームに、昔のゲームの主人公が使用していたケルベロスと呼ばれる大型二丁拳銃とデスホーラーという火器満載の棺桶を装備する。それらの火器を自在に使いこなし、セカンドリーグの上位に在籍しているが、そんな装備よりも歌のほうがより強力で凶悪である。 「ホムンクルス」 ジュビジータイプ。派手好きで自意識過剰で自信過剰で自己中心的でポジティブでハッタリ屋。ファーストリーグランカーだが順位は高くないらしい。詳しい記述は未登場なので避ける。 その他 「ギタにゃん」(CV若本規夫 推奨) 『ニャンたるロック』ギター担当にしてリーダー。音楽に対して固有の価値観を持ち、それにそぐわないものには容赦がない。 「にゃんベース」(CV千葉繁 推奨) 『ニャンたるロック』ベース担当。ノリがいいともっぱらの評判。 「ぬこドラム」(CV大塚明夫 推奨) 『ニャンたるロック』ドラム担当。性欲はもてあましてない。 「にゃんセイザー」(CV子安武人 推奨) 『ニャンたるロック』シンセサイザー担当。超クール。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2656.html
「……っち」 さっきまで曇りだった空が雨空に変わり、雨粒が顔に落ちて降ってきたのを見て、俺は舌打ちをした。 ついてねえな。 俺は眼鏡のレンズについた水滴を服の袖で拭ってから、今日は本当についてないなと思った。 気に入っている缶コーヒーがいつも行くコンビニに売ってなかったのもムカつくが、ついでの帰り道でなんで濡れなきゃいけないんだろうか。 少し遠かったが缶コーヒーが売っているコンビニを商店街の一角で見つけたのが唯一の救いではあった。 周りを見渡してみると通りでは鞄から折り畳み傘を出すサラリーマンや通学バックを頭に載せて雨を防いで走ってる学生の姿がちらほらいる。 「お~お~、走ってるねぇ」 俺も急ごうかなと思ったが、混じって同じように走るのはメンドくさい。 このまま濡れて帰っても、風邪を引くほどやわな作りはしてないし、服とかも乾かせばいいかと思いなおした。 缶コーヒーが何本か入ったビニール袋を持ち直し道を歩く。 するとその先、高校生ぐらいの3人の集団がビニール傘を差して寄り集まっているのが見えた。 その一人のチャラそうな男が手に人形を持っているのが見える。 「これって噂の武装神姫だろ? 売れば金になるかもなー」 「だけどさ、こいつ片目取れてるし身体とかもボロボロじゃん。売れねーよ、ただのゴミだって」 「確かにな。……でも、こんなになっててもやっぱ武装神姫って可愛いよな~」 「うわ、お前キモいな。人形に欲情すんのか。もう俺たちに近寄んなよ」 「違ぇって!」 そう言ってゲラゲラと笑う高校生の集団。 (……っけ。ウザってーな) 一般的に見れば無視すればいいのだが、俺は一般的に外れていた。 そして身体が勝手に動いていく。 あーあ、いつもの悪いクセが。 「おい、そこの学生ども」 俺が低く睨みを利かせた声を出すと、向こうの高校生の集団が自分たちに言ってると気づいた。 「ん? なんだよ。俺たちに何か用かよ」 「……その人形こっちによこせ」 簡潔にそう言った。 俺がろくに説明もしないで要求を言うので、それを聞いた学生たちはもちろんこちらを馬鹿にしてきた。 「うっわ、おにいさん、これが欲しいの? キショー!」 ――ッピキ。 「ゴミだけど、俺達が拾ったもんだからねー。タダじゃやれないなー」 「……ふーん、で」 「わかるだろ? 金だよ、金。店で売るよりあんたみたいな隠れオタクに売った方が高くなりそうだしな。出す物は出してもらわないとな」 ――ッピキピキ。 「……いくらなんだ?」 濡れた髪で隠れているが俺はさっきからイラつきが顔から滲み出てきて我慢できなくなっていた。 額には青筋にひびが入りまくりだった。 「これって普通に買ったら滅茶苦茶高いんだろ。だったら、同じくらいは出さないとなー」 「うわー。テツヤぼったくりー。でも、俺もさんせーい」 「にいちゃん聞いただろ、ほらほら、欲しいならついでに有り金も全部出しなよ、な」 これ以上は無理だ。もう限界。 俺は眼鏡も外し髪を掻き上げて、うるさい学生を思いっきりドスを効かせた声を出した。 「よこすのか、よこさないのか。どっちなんだ!? あ"!!」 睨みながら言ってやると格が違うほど怖い人間だとわかったのか、学生のガキどもは身体を固くさせて凍りついた。 そして、顔も強張らせ明らかにビビった声で。 「っひぇ!! よ、よよこします。どどうぞお好きにしてください」 「お、おい、こいつヤベーって。どうみても極道方面のレベルだって。さっさと置いて逃げようぜ」 「…………」 声が震えて敬語になった奴と、逃げ腰気味の奴、恐怖で何も言えなくなった奴がそこに生まれた。 度が入ってない眼鏡を外して、俺が目をギラつかせて威嚇すれば耐性のない人間は大抵こうやってビビることになる。 まあ。この眼つきのせいで、ずっと喧嘩三昧な日々をしていた時期があったのだが、色々あって眼鏡を掛けるようになり、自分からはあまり喧嘩は仕掛けていない。 このような時の例外を除いて。 「じゃ、じゃあ、こ、こここに置いときますね。さよならー」 「おいテツヤ、待ってくれよ!」 「…………っは! す、すんませんでしたー!」 持っていた人形――武装神姫を濡れた地面に放り投げて、学生たちは後ろに全速力で逃げていった。 ……ったく、ただのガキが調子づいて人様から金取ろうとするからだ。 俺は地面に落ちている神姫に手を伸ばし、そいつを拾った。 そして、拾ってから座り込んで――俺は気落ちした。 「はーあ。また、やっちまったよ」 これじゃあただの病気だ。 時々、自分の神姫に乱暴をはかる人間がいるわけだ。 色々理由があるんだと思うんだが、大きい大人とか小さい子どもでもいい。そんな人間が人形の武装神姫に本気で殴ったらどうよ? シャレにならんくらい、マジでぶっ壊れんだろうが。 といっても、こんな出来事に出会ったのは片手に数えるぐらいだ。 しょっちゅうそんな神姫の持ち主がいたら、武装神姫なんて日本で売られないだろうが。 でも、いるところにはいるもんで、俺はそんな人間に出会う時がある。 そんで説教する。 それでだめだったら助けようとしちまう。主に神姫の方を。 あー、武装神姫にこんなことをやらかしている俺もウゼー。 そんなことを自分自身に言い訳をしている。 なんでこんな病気にかかっちまったのか。 ……昔に――。 スッと。 突然、頭上に大きな影が差しこんだ。と同時に身体に雨も降ってこなくなった。 雨が止んだわけではなくて、なにかに遮られたようだ。 俺はすぐさま眼鏡をかけなおして、顔を後ろに反らす。 下校途中なのか、そこには赤茶色の制服を着た女子がいた。 肩までの黒髪で赤いリボンを付けた女子が自分が濡れるのにも関わらず、俺に水色の傘を傾けさせていた。 「具合でも悪いんですか?」 そう聞いてくる。 心の底から親切心で聞いているのがこの女子からは感じ取れた。 優しい子なんだろう。 俺としてはそんな風に赤の他人に優しくできるのが少し羨ましく感じられる。 「悪くないんだが。ちょっとな」 ぶっきらぼうになり、返事がぞんざいになってしまった。 正直、馬鹿な学生たちから奪い取ったコイツをどうするかを考えていなかったのだ。 それが、頭の中を支配していてちゃんと返せなかった。 と、その女子が俺の手元にある物に気づいた。 「その子、神姫ですか?」 「ああ、みたいだな。ここで……その……拾ってな。詳しいのか?」 俺は武装神姫のことを知らないわけではないが、成人を越えた男性がお人形を持ってたら正直気持ち悪いだろうが。 だから知らないふりをした。 「ええ。私も神姫の子を一人持っているので。それと、私の叔父が神姫専門のお店を経営してもいます」 そうか、渡りに船とはこのことだ。 偶然、この道を通った学生の女子。 この子の叔父さんの店で見せればこの神姫をどうにかできるかもしれんな。 「その叔父さんの店は近くか?」 「そこですよ」 指差した方向は少し先にある建物。推測で30メートル。 近ぇー。 「そこは神姫の修理もできるのか?」 「……一応は出来ると思います」 一応ね。 素人の俺よりかはマシだろうし、今から遠くの神姫センターに行くのもめんどい。 俺は今からそのお店に行くことに決めた。 左手に缶コーヒーの入ったビニール袋、右手に壊れた神姫を持って立ちあがる。 立ちあがった俺を見て傘を預けていた女子も動いた。 「私の神姫も叔父のお店にいるので、連いて行きます」 横に名前も知らぬ女子が並ぶ。 この子は赤の他人の男性に警戒心はないのだろうか。 純真すぎるのも危険だろ。 だが、俺がそう思っていたのがバレたのか、隣の女子が弁解し出した。 「わかっていますよ。でも神姫を大切にしようとする人に悪い人はいません。あなたは乱暴に扱おうとしていた人たちから、その子を取り返しました。……だから、あなたは信用できる人です」 ニコッと笑顔でこちらの目線を合わしてきた。 あれを見られてたのか。 あーあ、そうかい。 具合とか聞いたのは俺に話しかけるきっかけだった訳ですかい。 嫌なところを見られちまった。くそ恥ずかしい。 「……っけ。あっそう」 明らかに身長差がある俺と彼女では傘を入れるのが大変そうだ。 差している傘の柄を無理矢理ひったくった。「あ、」と彼女は声を出したが、理由がわかったのかそれ以上は何も言ってこない。 そのせいで俺は熱くなった顔を誰もいない方向に向ける。 頭の後ろからはその女子がなにかを喋っていたのが聞こえた。 「――ありがとうございます。あと私の名前は霧静 璃美香です」 どうやら、自己紹介らしい。 俺としては眼つきの鋭い自分とあまり仲良くなってほしくないのだが……この場合はしょうがない。 「……漣同 猛だ」 俺は軽く握る右手から人形の堅い感触を感じながら、こんな相合傘してたら“アイツ”どう思うんだろうなと別の事を考えていた。 第二章 琥珀の神姫 店の雨避けに入った。 少し目線を上にやればMMSショップ『Blacksmith』と書かれた看板札。 『鍛冶屋』とか、どこの漫画の世界だよ。 ここの店長は変な奴なんだろうかと思いながら、霧静に水色の傘を返す。 「ここが叔父のお店です。――漣同さん、いらっしゃいませ」 そう言って霧静は店内に入っていった。 うん? 霧静はこのお店でアルバイトでもしてるんだろうか。 叔父のお店らしいし、まあそれも当然か。 そう思って俺も店内に入る。 「いらっしゃせー! ……わお、この人がその例の彼ー? 内気で引っ込み思案のリミちんにしては思い切ったことしたねー」 「……私だって、頑張れば人並みには話せるよ」 霧静がカウンターにいる一人の神姫と話していた。 武装神姫の種類とかはあまり知らないが、あれは軍隊の兵士みたいな神姫だとは知ってる。 俺はそれだけしか知らん。 「あ! 漣同さん紹介しますね。この子は私の神姫でゼルノグラード型のアリエって言います」 「おっすー。初めまして、アリエでーす。漣同……レンドウ……じゃあレンレンねー」 「レンレン? なんだよそりゃ」 もしかしなくても俺の名前のつもりか、それは。 「す、すいません。この子初対面でも名前を知ったらあだ名で呼んじゃうんです。すいません」 「ふーん……別にどうでもいい。好きに呼べ」 こんなことで怒るのは馬鹿らしいし。 あだ名くらいでキレるとか俺はそんな短気ではない。 俺の経験上、こういう輩は訂正させてもずっと変えないやつだ。 「おっとー? 怒ると思ったけど案外紳士なんだなー、レンレンは」 「こら! もう」 自分の持ち主に迷惑を掛けまくってるな、この神姫は。 よく、これで良好な関係を築けてるな。 こういう奴らが世の中多かったら俺の病気が発生もしないのに。 「とりあえず。……こいつ治せる人はどこよ?」 「あ、すいません。すぐにお呼びしますね。あとタオルも持ってきますので」 霧静はアリエの相手を放り出して、カウンターの奥に消えていく。 俺が壊れた神姫をカウンターに置くとアリエが話しかけてきた。 「ねえねえー。ズタボロだけどこれって軍曹の神姫さんかなー?」 「軍曹?」 「ありゃ、知らない? 私たち火器型とか砲台型とかより階級が上の武装神姫。戦車型ムルメルティアは階級が軍曹なんだよー」 「マジで軍隊かよ」 「戦車型はどっちかっていうと傭兵なのかなー。でも、私たちよりかは偉いって設定だねー」 「設定って……身も蓋もねえな」 「そういうもんだよ武装神姫って。それより、レンレンが持ち主じゃないのー?」 「違う。……そこで拾った」 「へぇー」 ちょっと訝しそうな目をするアリエ。 まあ、俺も傍から見たらそう思うわ。 他人の神姫にどう思われようが気にしない。 「う~ん、それは嘘だねー」 また顔に出てたのか? 表情は変えてないはずなのだが。 「なんでそう思う?」 「別にテキトー。なんとなくそう感じただけー」 「…………」 こいつは案外鋭いのか。 それともただ単にアホで鈍いだけなのか、全然わからんな。 俺は店内を見回してみた。 ちっこい武器が棚に並んでいたり、鎧みたいにゴツい服とかが箱詰めで置かれていり、『ヂェリカン・シリーズ』とか用途がわからん物も一緒に置かれていたりする。 端っこの方では武装神姫の素体状態というやつが大型ガラスのケースに見本で何体か置かれている。 その中には俺が唯一知っている“種型のジュビジー”もいた。 ……そりゃ当然、普通に売られているわな。 俺が視界を店内からカウンターの奥に移すと、ちょうどでかい人影が見えてきた。 そいつがカウンターに立つ。 「おめぇか。壊れた神姫持ってきたっつう眼鏡のにいちゃんは?」 「……ああ。俺だ」 でけーな。 2メートルはあろうかという巨体。腕は丸太のように太い。 黒いエプロンに白い文字で店名の『Blacksmith』とプリントが入っている。 顔に大きい絆創膏が貼ってあるが、取れかけてて頬に傷があるのがわずかに見える。 このおっさんと本気で喧嘩しても勝てんかもしれないな。 「レンレンあんまビビんないね、さすがー! ほら、テンチョーは新しい絆創膏ちゃんと貼ってねー」 「おう! すまねぇーな」 アリエが引き出しから絆創膏を取り出し、今は貼ってるのを剥がして新しい絆創膏を頬に貼る。 手慣れてる感がある。毎回来る客の前でそれを披露してるのか。 ……絆創膏がすぐなくなっちまうだろうが。 「ほんでぇ、これかい?」 「そうですよ店長。蓮同さん、これタオルです。使ってください」 「……すまねえ」 後から出てきた霧静に渡されたタオルで俺は顔を簡単に拭く。 服装を見れば霧静も『Blacksmith』とプリントされたエプロンを制服の上から着ている。 ただし、それは花柄エプロンである。 確かに女性が同じような黒いエプロンじゃ似合わないな。 「ふーん、どれどれ……」 店長のおっさんは置いておいた神姫を手に取る。 身体の節々を動かしたり、顔や空いた目を触ってみたり、立たせて倒したり、胸の部分にあるCSCだったかをまじまじと見てる。 「治せるかもしれんが、う~ん……」 「どうしたんだよ。治せるんだろ?」 「この『目』がな~。パーツが今はこの店にねぇな」 店長のおっさんは苦渋の色を浮かべている。 完全に治すには目の部品が必要らしい。 「うっそーん!? 在庫不十分っすよー。テンチョー」 「うっせぇ! 神姫の目はデリケートで扱いづらい物なんだよ!!……ったく、とりあえず、この神姫は俺の店で預からせてもらっていいか?」 「あ、ああ。俺はそれでもいいんだけどよ……」 別に俺がこいつを引き取りたいわけではないのだが。 拾っただけだし。……奪ったとも言えるが。 ただ、瞳がない武装神姫か。 眼つきにコンプレックスがある俺としては人事とは思えんな。 「なんだ? にいちゃんはこいつの親じゃねぇのか」 「違う――」 「確かに違いますけど、今この子には漣同さんが必要なんですよ」 霧静が俺の言ったことを付け足す。 顔を見れば、なにが面白いのかなんでかニコニコとしている。俺がどうするか分かってるみたいに。 それを見て俺はため息をついてから、 「……わかった。またここに来て、それから決めるさ」 「おー! さすがレンレン。見かけによらず甲斐性があるねー」 「あ、こらアリエ! 失礼でしょう」 「落ち着け璃美香。怒った璃美香も可愛いが、喧嘩はイカンぜぇ!!」 うっせー店だな、ここは。 缶コーヒー買うだけだった筈なのに変なことを自分で引き起しちまったな。 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1500.html
注意 各項目は順不同に並びます。また、扱われる内容によっては 専用の解説ページを設ける事もありますのでご注意下さい。 また、以下は全て妄想神姫に於ける世界設定類の解釈です。 一部皆様の解釈とは異なる点がありますが、ご了承下さい。 それでも採用してくださる場合は、遠慮無くご利用下さい。 警告 この頁は物語の終盤に出てきた要素を、主に扱っています。 その為、所謂“ネタバレ”が含まれている恐れがあります。 前頁へ戻る ペンダント ロッテが飛べた理由 和食屋 春の新作 “ALChemist”の営業期間(及び時間) 最初の現場 デュアルCSCシステム ラグナロク 二回目の現場 心情の変化と、その代償 藤村外科 怪文書 主要国家の現状と意向 シンクロニシティ 決闘の舞台 模造された“魔術” 晶のペンダント 自己認識 総力戦モード 命を賭けるべき事 約束 ペンダント 晶が、ロッテ達三姉妹の為に作り出した装飾品の事。複数存在するが ここではセカンドランカーの“階級章”を嵌め込んだタイプを指す。 本来は“階級章”を装飾品として身につける為に作った追加パーツ。 しかし後に、晶の手で増設用ハードカバーが与えられている。これは 以前“W.I.N.G.S.”の端末用に作った初代ペンダントと同じ意匠で、 晶が身につけているペンダントと同じ“剣の紋章”が刻まれている。 なお、この“晶のペンダント”については何れ別の機会に語られる。 ロッテが飛べた理由 『検証は最早追い付かない』と晶が言っていた通り、ロッテが天空を 自在に駆けた理由は、生半可な検証作業では明らかに出来ない。その 秘密は、電磁浮遊システムの“反発力”を利用した基礎理論にある。 電磁力で“反発力”を産み、宙に浮くのが電磁浮遊システムである。 ロッテは新たな力を発揮したライナストが産み出す、莫大且つ異質な 雷……即ち電磁力を利用して、システムを再現したのかもしれない。 しかしこれもあくまで推論。その真相は魔剣の構造同様、謎である。 和食屋 厳密には、ここは定食屋である。秋葉原を訪れる人間を当て込んで、 数年前に開店した外食チェーンの実験店舗なのだ。拘りの素材を用い 尚克安値で、客に良い食事をさせる。という高級志向がコンセプト。 味は勿論、栄養価も(外食産業にしては)非常によく考えられており、 秋葉原や神田周辺で働く人間には、徐々に好評を博しつつある。また 買い物客にも、口コミでその評判は広まっている。かなりの人気店。 春の新作 心境的に色々な変化を受けた晶が、2038年の新作として考案中の服。 アンダーから外出用のマントまで、トータルコーディネイトを徹底。 『全ては神姫の為に』という初心を貫いた、華やかなセットである。 鞄やブーツ等の革製品等も揃っている品々は、値段の方でも最高級。 しかし、一切の妥協を排したデザインは可憐・風雅の極みとなった。 部分毎のバラ売りも可能とする事で、顧客層を拡大する方針らしい。 “ALChemist”の営業期間(及び時間) MMSショップ“ALChemist”は、店長たる晶の偏屈な性格を反映してか その営業スタイルも一筋縄とは行かない。新作の作成に没頭したり、 “取材”や“買い出し”で店を半日閉じるケースも、少なくはない。 基本が水曜日定休、年末は“聖戦”最終日から正月三ヶ日まで休む。 (これは最終日に秋葉原へ来る、膨大な人員を処理できない為である) しかし前述の通り不定休な場合があるので、来店時には注意が必要。 ちなみに営業時間の方は、午前十時から午後六時までが大凡の目安。 こちらも状況によっては前後したり、分割される事さえ少なくない。 最初の現場 昭和通に面した、某有名ゲームメーカー直営の店舗。落下したのは、 その内の看板で最も巨大な、キャラ物の看板である。事件直後、壁が 剥き出しとなっており、そこに穿たれたクレーターが全ての引き金。 火災を消し止められた翌日にはブルーシートが張られて、その痕跡は 既に関係者以外には見えなくなっていた。死者も出なかった事から、 検証も念入りという程は行われず、二週間程で修復工事が始まった。 デュアルCSCシステム カラーリングに応じて能力調整と性格設定を配分する現在のCSC。 プロトタイプとしてクリスティアーネが備えていたCSCは、現在の それに基礎レベルでは劣らない物だった。彼女はそれを六つ備える。 胸に六角形を描く様に装填されたCSCは、互いに共鳴したと言う。 演算機能等、バトルに関わる能力以外は同じ……という事は、性格の 構築に作用する効果も六つ分、全てが機能していた事となる。彼女の デュアルCSCとはそれらをバランス良く調整して、感情表現がより 細かい個体を産み出そう、というコンセプトの特殊な機構であった。 結局、メンテナンス性やコスト面……何よりも、CSCの性能が若干 向上しつつあったという事情により、採用は見送られる事となった。 これによりアイデア諸共“プロト・クリスタル”はお蔵入りとなる。 しかし現存する数少ないCSCの内、六つは晶の手中に残っていた。 ラグナロク 北欧神話で“神々の黄昏”という最終戦争の名称として用いる言葉。 同時に一部では、それに肖って名付けられた犯罪結社の名とされる。 有り体に言えば“死の商人”であり、北欧を根城に荒稼ぎしていた。 イタリアに於いて、土着のテロ組織に新作……爆破工作用特殊MMSを 販売して使用させた事から足が着き、遂に壊滅作戦で揉み潰される。 その際に、首謀者・幹部・研究者……主要メンバー全員が殺された。 またその際に押収された“兵器”も、危険な物は破壊されたと言う。 二回目の現場 JR某線の高架下に嵌め込まれる様にして存在する、古いパーツ店が 軒を連ねているビル。電子部品は大抵の物が揃うので、晶のみならず アキバを訪れる様な性質を兼ね備える電器マニアは、よく利用する。 今回の“事故”も看板以外の被害は少なく、怪我人も前より少ない。 だが高架下での爆発という事もあり電車は数時間に渡って停車。更に 『本当に只の事故?』という疑念は、長く人々の間に残る事となる。 なお政府機関の見解は、一貫して“事件性の否定”に終始している。 ビル内部の店舗に被害が少なかった事もあって、ここでも真相究明は 棚上げされ、まずは復旧工事や店舗の再開が優先される事となった。 心情の変化と、その代償 ラグナロクの幹部構成員が、単なる商材として産み出した筈の存在に 何故人間味のある接し方をしたかは、全く以て不明である。或いは、 それも“武装神姫”とそれに連なる存在の“可能性”かもしれない。 ともあれ、彼らが自分で産み出した“神の姫”達に対して、妙に甘く 接していたのは事実である様だ。だが、そうして人間味を取り戻した 幹部構成員の油断こそが、当局に尻尾を掴ませた原因の一端である。 結果“彼女”の為に組織が滅んだのは、紛れもない“事実”なのだ。 藤村外科 秋葉原を少し離れた、外神田の一角に存在する小さな外科医。噂では 二十世紀から開業しているとも言われ、秋葉原でケガをした作業員の 治療で磨いた腕は、確かである。ここの院長は、晶の掛かり付け医。 院長であり唯一の医者である藤村翁は、晶とロッテの成長を最初から 知っている、“オーナー”以外では唯一の存在と言えるだろう。彼は 生傷が絶えない未熟な頃から、ずっと晶とロッテを支えてきている。 怪文書 警視庁を初めとして、幾つかの警察署サイトに送付された怪メール。 スウェーデン語で印されたそれは文法に関して一切間違いが無い為、 スウェーデン人か、スウェーデン語を習っている人間の物とされる。 内容は本編中で語られた通りに、一小節で片づいている。荒唐無稽な 文面と、発信地があっさり特定できるIPからの送信という事もあり 警察組織は結局『悪戯の一種』として、関係各所への連絡に留めた。 しかしそれを目に留める者が居た為、事態はより深く進行していく。 主要国家の現状と意向 二十一世紀初頭に発生した大規模なテロ攻撃。その事件に端を発した “テロとの戦い”は、主要各国の重要な課題として2037年現在も 続行中。“ラグナロク”が、新興組織ながら殲滅されたのもその為。 そんな“敵対方針”を内外に喧伝している国家にとって、テロ組織の 残党が自国に潜伏している状況は、改善されるべき物である。更に、 その残党に人権がないのなら、あらゆる手段を執って止めるだろう。 前田達の出現は、そんな国家の意向によって起きた“必然”である。 シンクロニシティ 血縁関係等が存在しない神姫達が、人や他の神姫と関係を結ぶ場合、 大抵は人間のカテゴライズに当てはまらない“魂”の繋がりとなる。 定義が付随する事も多いが、未定義でも関係を保つ神姫は存在する。 そして余分なノイズが入り難い神姫の意志疎通は、深くなっていくと 無意識下で連動する程の密接な繋がりを見せる。人間でもそう言った 関係はまま見られるが、神姫の場合は特に強いとする説も存在する。 “姉妹”という定義を持った晶達の関係も、その例外ではない模様。 長く暮らしてきた為に、四人の意識は密接にリンクしつつあるのだ。 決闘の舞台 MMSショップ“ALChemist”の作業ブースにセットしてある、個人用の トレーニングマシンが舞台。決闘の為に各種の設定を変更してあり、 規約違反の機体でも、存分にバトルが出来る様な状況となっていた。 結果的にこれは、予期せぬ“事件”を引き起こす要因となっており、 しかし同時にその“事件”を解決する、唯一の可能性を産み出した。 模造された“魔術” “彼女”が偶然作った“魔術”は、クララのそれとは違い全く整理が 為されていない、言ってみれば“情報の混沌”である。それは一重に “彼女”の憎悪が凝縮する事で産み出された、“意思の力”である。 これは、直後に起きる“事件”で“敵”が使った攻撃も同様である。 駆動エンジンは違っても、力の拠り所は“彼女”と同じだったのだ。 晶のペンダント ロッテ達三姉妹が持つペンダントの、デザインソースとなった逸品。 これは槇野歩の遺品であるが、特別な何らかのギミックが有る訳では ない。単に歩が自作したと言うだけで、他に特別な意味もない物だ。 しかし、遺品のペンダントヘッドには裏に“言葉”が刻まれていた。 その言葉は、本編で出てきたキーワードと同様である。これは、歩が 何らかの想いを遺す為、敢えて共通の単語を用いたのかもしれない。 自己認識 “彼女”が、己と晶達との関係をあっさりと定義出来た理由は不明。 但し、神姫ではない“彼女”に現行品のCSCは装填されていない。 そしてロッテ達“三姉妹”には、“プロト・クリスタル”が備わる。 その“生い立ち”が無関係だと言い切る事は、誰にも出来ないのだ。 総力戦モード 発生した“事件”の解決にあたって、晶は一時的に“アルファル”と “プルマージュ”六機の制御権限を、ロッテに一元管理させている。 これは碓氷灯が編み出していた戦術をヒントにした、急場凌ぎの策。 結局の所、それが決め手となる事はなかった。超AIを持つ彼女らは 権限を書き換えられても、本来の主を忘れられなかったのだ。しかし 主の“姉妹”という事で、その身を尽くす事に躊躇はなかった様子。 命を賭けるべき事 “事件”を解決出来なかった場合でも、国家や社会が危機に陥る様な 大問題が発生する事はない。だが“姉妹”にとってみれば、文字通り “命”を掛けるに値するだけの、極めて重大な“事件”とも言えた。 それはつまり、晶と“姉妹”の関係が単に神姫とそのオーナーという 物ではなく、更に大切な間柄へと純化されつつあった事に起因する。 そう言う意味では発生自体が、世界の命運に匹敵する程の物なのだ。 約束 それは永遠に過ごせなくとも、朽ちず共にある為の“誓い”である。 今後晶達がどうなっていくかは、誰にも分からない。皆を突き動かす “恋人”等が現れるかもしれないし、生涯純潔を護るかも知れない。 しかし“約束”がある限り、晶とその“妹”達。その間にある絆は、 誰にも断ち切る事が出来ないだろう。それは、文字通り命を賭ける程 強固な“願い”である。皆は、大切な“真の姉妹”に成り得たのだ。 そう。かつて見た亡き“姉”が、最期の瞬間までそうしていた様に。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2639.html
「……うーん」 「またか、キミは。今度はなんなのだね?」 いけない。またアルバイト中に考えこんでしまった。でも、どうしようもない。 お客さんが来れば、身体が勝手に動いて仕事はできるけど、気付かないミスがあるかもしれないから、バイトに集中したいけどこればっかりは。 「そうそう。キミが、神姫のことをよく話すものだから、実は……私も武装神姫を買ってしまったのだよ!」 ババーンと後ろで効果音が出てきそうな風に君島さんが言う。 だが、しかし、 「……うーん」 いまだに僕は考え込んでいる。 話し声が聞こえて、視界には入るのだけど、君島さんの話が頭に全然入ってこない。ゆえに、反応できない僕。 「……ふ、悲しいな、悲しいよ。だが、これでも、無視はできるかな?」 君島さんがスゥッと右手を顔の前まで上げて、 「来い『リンレイ』!!」 「え、え、なんですか?」 パチンっと軽い音が店内に響く。 君島さんが親指と中指を合わせ、勢いよく弾いた。いわゆる、指パッチンなのだけど、なんで今ここで? 店員なんだから、目立つ行為は控えて――。 「――お呼びでござりますか、主殿?」 「うわっ!!」 びっくりした。な、なんだ、どっから来たんだ? カウンター上に突然、人形、武装神姫が現れた。 片膝をつき、頭を垂れている姿。……これは確か忍者型神姫の『フブキ』だ。 真っ黒の忍び装束に身を包み、口元を黒布で隠している。 「はっはっは、いい反応だ。仕込んできて正解だったな、リンレイ」 「はっはっは、そうでござりますな、主殿」 イェーイ、とリンレイという神姫が手の平で、君島さんが指で疑似ハイタッチをする。 「どういう仕掛けですか!?」 「まあ、落ち着きたまえ。まずは紹介しよう。ちょっと、武装神姫に興味が出てきてしまってな、この前買ってみたフブキ型のリンレイだ。忍者ならこんなのができて当たり前なのだよ」 「リンレイでござります。以後、お見知りおきを」 再び頭を垂れて、挨拶をするリンレイ。 僕は君島さんを訝しげに見る。 腕を組んでフフンとなんか自慢げだ。 (間違った方向に忍者っぽいな~) いや、神姫もそれぞれ。これも一つの神姫としての姿なのだろう。 はっきり言って普通ではない。……でも、こちらが言えた義理でもない。 これほど、変ではないけど。 「それでは、話を戻すことにしよう。今度はどうしたのだね?」 「どうやって来たのかまだ聞いて――……はぁ、別にもういいです……」 聞いてもしょうがない気がした。 手品みたいなものだろうと割り切ることにする。 「いつも話してますけど、僕の神姫のシオンがですね、なかなかバトルがうまくいかなくて」 「件のバトル恐怖症の神姫かね? 苦労しているのだな」 「武装神姫は普通、バトルはスポーツみたいに楽しめるよう設定されているのでござりますが、シオン殿という方は戦えないという。不可思議でござりますな」 「……そうだよ、ね」 誰に言っても、見せたとしても、そう言うんだよな。もう慣れたよ。 「……キミは、以前に私が言ったことを覚えているかね?」 「えっと、なんでしたっけ?」 「ほれ、『神姫には心がある』と言った事だ」 「ああ……」 神姫が空虚な機械みたいにプログラムだけで動いてたら、こんな風に悩む必要はない。感情があるから、笑ってくれたり、喜んでくれたり――逆にバトルができなくて苦しむ――する訳だから、必死にこんな悩んでいるんだ。 悩むか悩まないか……あれ、なんか堂々巡りだな。 「キミが思っている通り、現実的に、神姫のカテゴリは機械だ。データを元にして、オーナーがプログラムを神姫にインストールさせて様々なスキルを手に入れることもできる。言語機能や身体機能もデータは……まあ、あることはあるのでな。 しかしだ。それでも手に入らないものはあったりもするのだ……長倉君は世界クラスの神姫バトルは見たことはあるかね?」 「いいえ……ありませんけど……」 シオンが来るまで、武装神姫なんて友達のでしか見たことなかった。武装神姫のバトルを直接見たのも、あのゲームセンターでのが初めてだったし。一応、知識はあったぐらいのレベルだ。 「インターネットの動画サイトで探せば、そういう大会の動画などゴロゴロあるのだが、あれはリアルファイトの真剣勝負。神姫が物理的に機能停止。故障、なんていうトラブルも少なからずある。命がけの試合。失敗は許されない。そんな神経を使うバトルだ。……神姫も怖いと思うのだよ」 「……怖い……か」 その言葉を噛みしめる。それだと、シオンはバーチャルでもバトルを怖いということだ。表現できないほどに。腰を抜かして動けなくなるほどに。 「それでも、世界レベルの神姫は戦うことができる。それも人が知覚できない程の戦闘技術でだ。なんでだと思う?」 「……多分、自分のオーナーを信頼して一緒に戦っているからじゃないですか? よくは、まだ、わからないですけど……」 「ふむ、それも一つの答えでもある。神姫オーナーそれぞれに無数に正解はあるのだよ。わたしもキミも持っている。だが、私が、仮に、あえて言うなら人と同じ“成長する”ということかな」 「んん?……」 口を紡いでしまう僕。 君島さんはこういう焦れったい説明が好きならしい。 「つまりはだ、プロのスポーツ選手と同じだ。血の滲むような練習をして、強豪から勝利を勝ち取る。……そして勝てない神姫も成長して勝てるようになる」 「それは正論ですけど……うーん……」 数年の時間をかければ、いずれはバトルで勝てるようになると思う。だけど、そんなにかけられない。僕は――いや、僕たちは、宮本さんとイスカが目標なのだ。日本を離れる前に、なんとかしたい。悠長にしてられないよ。 「おやおや、長倉君は早急に答えが欲しいらしいな。それで、参っているようだね。しかたない、な。ここはいっそのこと私が手ほどきをしてみようか?」 「えっ!?」 この人、君島さんならなんかやってくれそうな予感が……だけど……。 「ふ、神姫オーナーになって日は浅いが、キミよりかは幾分、私は大人なのだぞ? 生き方をキミのような子どもたち、色々と抱えている神姫たちを導くことなど容易いのだよ」 「……君島さん」 この人なら、どうにかすることもできるのではないか? シオンを拾った時も君島さんのアドバイスで進展したんだ。だったら、君島さんに任してみるのもいいと思う。……そんな気がする。 「ただし、私のやり方はスパルタだぞ? ついて来れるかはキミたち次第だ」 「……はい、お願いします!」 君島さんの手を両手でガシッと握る。 シオンが普通になるまで、どんなことでもやってやる。そう意気込むと、僕はやる気で満ち満ちてきた。 ――よぅし、やってやるぞ! 「こちらのお弁当は温めしてよろしいでござりますか?」 「きゃー、忍者っぽいお人形が店員やってるー! かわいいー!」 いけない。アルバイトの最中だった。 しかし、優秀すぎるなリンレイは。 僕たちが話をしている間、一人でいつの間にか店番をやっていた。 ―――― 次の週末に、君島さんは僕たちがいつも行くゲームセンターで、『授業』をしてくれると約束してくれた。 それで、今日は、ちょっと用事ができてシオンとお出かけしている。 「本当に、これ、いらないの?」 「私は、あのクレイドルを使っていたいですし、別の人が使ってくれたほうがいいと思います」 僕が持つ紙袋にはクレイドルが一つ入っている。 キズのある方ではなく、宮本さんから預かった方にあった、もともとシオンの、あまり使われていない方のクレイドルだ。 前に使っていたのより、今は貰ったキズのあるこっちを使いたいらしい。 武装を本格的に譲り受ける決意をして、クレイドルの使い道がなかったから、これはどうしようかと考えていたら、 「アリエさんが言ってたんですけど、オーナーの霧静さんの伯父さんがショップを経営してるらしいですので、そこで、相談したらどうですか」と言ったのだ。 「あと……『ゲルリン☆ヂェリー』も、あれば欲しいのですけど」とも言った。 二人を強制シャットアウトさせたあの飲み物。シオンにとってクレイドルはついでで、どうやらそっちが本命らしい。 いや、まあ、シオンが自分から欲しがるのは別にいいんだよ。 ……いいんだけど、なんでよりによってアレを欲しがるんだよ。 目的地は霧静さんから聞いている。 僕が住んでいる町の駅から少し離れて、線路の向こう側、そこの商店街になっている地域だ。 夕方なので、買い物帰りであったりする主婦さんたちが多い。他には僕と同じ学生の人だったり、会社帰りのサラリーマンが見える。 霧静さんの伯父さんが経営してる神姫ショップがこの商店街の端の方にあるらしいのだ。 大型のチェーン店とかじゃなく、自営業でやっているらしい。 武装神姫は年々流行ってきているので、商売ならそういうのに乗り出すのも悪くはないのかもしれないなと思った。ただの素人の考えだけど。 「えーと……これか」 「これってなんて読むんですか?」 目的のお店についた。 見上げれば店の看板。「MMSショップ『Blacksmith』」と大きく書かれている。 店の前には大型ガラス内に武装パーツが展示されていて、向こう側の中の様子が少し見える。 「……ブラックスミス。大体は鍛冶屋とか鍛冶職人を意味してるね。ファンタジーの小説でも時々出てきたりするけど」 「ああ、そういえば」 ファンタジー色を強く感じる。エレメンティアなんて名称が付く武器を作るくらいだ。そういうのが好きなんだろうな、なんて一発でわかる。 そう思いながら僕は店のガラス戸を開ける。 「いらっしゃやせー!……ってあら? ケートん、シーちゃんじゃない」 「あ、アリエさん。こんばんわ」 店のカウンター、台上にはなぜか見覚えのある神姫、アリエがいた。 最近は神姫でも店番できるような設定になっているのか。 「……なに、その挨拶の仕方……」 「ゲンさんのマネだよー。……あ、ゲンさんっていうのは3軒隣の八百屋の源内さんね。言いやすいからからマネしてるんだー。いらっしゃやせー」 「まあ、アリエがいいなら、それでいいんじゃないかな。ちなみに、なんで店番してるの?」 「あの後、リミちんに店からヂェリカンをパクっ……拝借したのばれててさー。労働で返しなさいってさー。まったく、リミちんは真面目なんだからー」 「倒れてれば、そりゃばれるって」 嫌な事件だったよ。 シオンは会話にも入らずキョロキョロと店内を見渡している。 ああ、事件を引き起こしたアレを探してるみたいだ。 「『ゲルリン☆ヂェリー』ってどこにあるんですか?」 「えぇ!? あれは、そっちだよー。あははー」 さすがにアリエも、あれはもう勘弁したいらしい。 店内の奥の方を指差してながらも、目が泳いでいる。 「螢斗さん、見てきてもいいですか?」 「……いいと思うよ」 僕の肩に座っていたシオンを床に降り立たせる。 ちゃんと神姫だけでも選べられるように、神姫の目線で、棚の商品の一部が床の台に置かれている。 工夫されている店内だ。 それにMMSショップ・ブラックスミスは、品揃えが豊富そうである。 シオンがいる方は、パーツやら武装やらが綺麗に箱詰めだったり、袋詰めで置かれてたりする。ついでにヂェリカンも並んでいる。 反対方向、僕から見て右側は、武装神姫の、CSCのない素体がガラスのケースで見本に置かれているみたい。 大型店じゃないから神姫の種類はそんなにないみたいだけど。 でも『鍛冶屋』っていうくらいだから、もしかしたら武器に趣を置いているのかもな。 だからって、変なヂェリカンも置かないでほしいな……。 「あちゃー、シーちゃん。アレを気にいっちゃったか。ますます変な神姫だねー」「……アリエもね。それより、これを引き取ってほしくて、来たのだけど」 紙袋から真新しくもあるクレイドルを取り出す。それをアリエの前に置く。 「ふーん、クレイドルかー。こういうのは店長だねー。ちょっと待ってて……テンチョー!!」 アリエがカウンターから降り立って、奥の方に声を掛けながら消えていった。 霧静さんの伯父さんらしいけど、どんな人かな? 優しい人だといいな。 お、奥から大きそうな人影が、 「おう。おめぇさんかい! クレイドル引き取ってほしいってぇのは」 まず、シャツを腕捲りしていて、筋骨隆々の体格が目についた。 黒いエプロンをしていて、胸元に「Blacksmith」と白い文字でプリントされている でも、頬に切られたような傷があるのはどうしてなんだろうな~。 滅茶苦茶、怖いな~。 「ええ、そ、そうです。……でも、お金とかにしたい訳では、なくてですね、あの、その、いらなくなったから、別のオーナーさんに役立ててほしくて、ですね……」 「なんだとぉ!?」 「ひぇっ! あああ、あの……」 「偉ぇな!!」 間近、しかも怖い形相の顔で両肩を力強く掴まれる。正直言うと痛いのだけど、なにも言えない。 ……正直、すごく怖いです。 「そうかぁ!! いやー、クレイドルだけ欲しがる奴なんて、そこらじゅういやがるから、そういうのは正直ありがてぇ。それに、金はいらねぇってかい。今時の子にしては偉ぇ!!」 「テンチョー、ケートん、怯えてますよー。怖がらせないでくださいねー。一応、リミちんのお友達なんだからねー」 「おぉい!! それを早く言えよ!! 璃美香の友達ならサービスするぜ。ゆっくりしてくれぇや。だけど、璃美香はアリエ預けただけで、まだ学校だけどな。ガッハッハ!!」 バンバンと肩を叩かれる。ものすごく痛い。 2メートルはあろうかとおもわれる巨体、それでいて、声もものすごく大きい。 元、ヤのつく職業の人か? でもなんでこんな人が武装神姫のショップなんかやっているんだろうか。こんな人が神姫を愛でてるとか……ありえないです。 「はいはい、ちゃんと傷とかは隠してねー。初めてのお客さんは大抵テンチョー見ると怯えて逃げちゃうんだからさー。……はいこれ、絆創膏っすよー」 「お! すまねぇな」 慣れた手つきで、引き出しから絆創膏を取り出すアリエ。 それを受け取って店長さんは自分の頬に貼る。 なんとか傷は絆創膏で隠れてくれたけど、脳裏から離れない。 「あはは、怖かったっしょー。でも、この傷はただ単に事故ってできたのだから心配しないでー。図体の割に、この人ただのゲーオタだから。極道関係者とかでもないよー」 「……ああ、そうなんだ」 ゲーム好きなカタギか。なんだ、よかった。胸を撫で下ろす気分だ。本当によかった。 「ゲーオタは余計でい!!……あっちにいるのがボウズの神姫かい?」 親指でシオンを指差す。 三つぐらいヂェリカンを持って来るシオンの姿が。……おいおい。 「そうです……シオン、そんなに買うの?」 「螢斗さん、いいですか?」 「――うん、いいよ」 上目遣いで言われたら拒否できない僕がいる。例え間違った買い物でも即答してしまう。 「おお!! それを欲しやがる神姫がいるとは。おめえさん気に入ったぜ」 「テンチョー。あんな危険物置くの止めましょうよー」 「そりゃ、できんぜ」 「なんでですかー?」 「武器は好きだ!! が、ヂェリカンも好きだ!! いずれは全国、果ては全世界のヂェリカン・シリーズを網羅して店内に置くのがオレの夢なんだぜ!!」 「武装を念頭に置いてくださいよー、武装を」 アリエがツッコミに専念している。それがなんか珍しい。 「ふん、とりあえず、ボウズはこのクレイドルを善意で金もなしに売りたいってわけかい?」 「まあ、はい」 「そっかい、そっかい。……ちょっと待ってろい」 言うと店長さんは奥に行って、すぐ戻ってきた。 「――礼に、コイツをやんぜ」 「いいんですか?」 「こちらも商売なんでな。等価交換ってやつさぁ」 カウンターにコロンと何かを置いた。両手にそれぞれ持つような、二つのナックル状の武器。 「ありがとうございます。……でも、これって」 神姫用の武器だろうけど。えっと、どこかで見たことあるような……? 「ボウズの神姫、アーティル型なんだろ。こいつはアーティルのアレだ、アレ。……なんだっけっか?」 「テンチョー、これは『ぺネトレートクロー』っすよ……形状がどことなく違いますけどねー」 「そうだった、そうだった。突然アイデアが降ってきてな、こいつは俺が暇で作った公式風味のオリジナル武装『ぺネトレートクロー・烈』だぜ。最新作だ。俺は暇つぶしでも、本気を尽くす男だからな。ガっハッハ!!」 「だったら、こういうオリジナル武装、いっぱい作ってひと儲けしましょうよー」 「ソイツはもう正式な申請とっといたが、いちいち神姫会社に申請するのが、時間が掛かるし……なにより面倒だぜ!!」 「もう、永久閉店しちまえー」 とりあえず、変なやり取りが展開されているが横に置いておく。 そうか、これって。アーティル型装備の一つか。 いずれは揃えようかなと思っていたけど、こんなところで手に入るなんて。 それも特別製らしい。 「……どんな感じ?」 「何か、しっくりくる気がします。すごく、使いやすそうなんですけど……でも、バトルで、私なんかがちゃんと使いこなせるかどうか、心配です」 手に持って、ブンブンっと素振りをしている。 シオンは武装だけが立派になるのを引け目に感じているみたい。 「大丈夫、大丈夫。次、やる時は秘密兵器の先生が来てくれるから。その人ならなんとかしてくれる……はず」 「……できるでしょうか」 期待はしているんだよ……しているんだけど不安。 そんな感情に雁字搦めになっていく僕。 成せばなるのか……なぁ。 「なんども言うっすけどねー。店の名前『ブラックスミス』なんだからさー、ヂェリカンはいらないでしょー」 「バカたれぇ!! RPGには、回復アイテムが必要だろうが。神姫ショップに武器屋も道具屋もないだろうからなぁ!!」 「ここはリアルっすよ。ゲーム内じゃないです。それに私は、そのアイテムで死にかけたんですけどねー。このゲームオタク店長めー。毒物は店に置いちゃいけないでしょー!」 「好きになった神姫が目の前にいるだろうが!! ゆえに毒物じゃねぇ。俺は置き続けるぜ!!」 「もう、店畳んじまえー」 呆れる神姫店員アリエと、巨体&大声の店長さんがどっちも止まる様子がない。 とりあえず、一番に声がでかすぎる。 会話がうるさくて、近所迷惑になりそうだから、帰る前に止めていかないとな。 不本意だけど、このヂェリカンの会計もしたいし。 ……これからブラックスミスは行きつけのお店になりそうだなーと思った。 店長が怖いけど、悪い人ではない。 「ぐだぐだうっせぇ神姫だぜ。スクラップにしてやろうか!? あぁん!!」 「へぇー、そんなこと言うんだー。それしたら、リミちん一生テンチョーに口利かなくなりますよー。それでもいいんですか、チクりますよー?」 「すまん!!!!」 アリエに潔く土下座する店長さん。 うん、いい人だ。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/666.html
武装神姫~ストライカーズ・ソウル~ 時は、西暦2036年。 昔に言われてた「第3次世界大戦」も勃発せず・・・。 ウィ○・ス○ス主演の「イ○ディペ○デン○・デ○」ばりの宇宙人の襲撃も無かった・・・。 まぁ、そんな物騒な事はゴメンなんだがな・・・。 そんな物騒な事以上に「ロボット工学」は進化・発展を続け、ホ○ダの「ア○モ」よりもロボットのサイズは小さくなり、あの「カス○ムロ○」の半分・・・「15cm」の掌サイズにまで縮小化・超低コスト化に成功。 神の如き美しき姫達は・・・・無骨なる鎧で「武装」し―。 己が仕える「マイスター」の誇り・プライド・信念に従い・・・―。 技・テクニックをぶつけ合う―。 人はそれを・・・「武装神姫(ぶそうしんき)」と呼び、新たなるホビーとして発展していった。 (ストライカーズ・ソウル第1話「起動~start up~」冒頭より抜粋) 武装神姫~ストライカーズ・ソウル~ メインキャラクター紹介 武装神姫~ストライカーズ・ソウル~ 武装神姫~ストライカーズ・ソウル~ 神姫紹介 準備中。 物語 第1話:起動~start up~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/245.html
なぜなに武装神姫* 「という訳で今回もやってまいりましたこのコーナー。いい加減ネタがやばいみさにゃんです」 「えー。せっかくユキにゃんがきたのにー」 「あはは……まぁ、今回はこちらっ」 『機械なのに姉妹ってどうして?』 「まぁ、ある意味武装神姫全員が姉妹と言えなくもないけどね。 同じマスターの元にいる神姫は姉妹、って感覚で付き合うマスターが多いかしら。早く来た順に姉~妹ってね」 「じゃあねここはユキにゃんのお姉ちゃんなのだ~☆」 「どう見ても妹だと思うけどね」 「え゛ー」 続く トップへ戻る