約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/76.html
第二話 閃光のように 前ページ次ページゼロの影 竜騎兵達は旗艦へと光点が迫るのを見て首をかしげたが、正体を視認できず己の任務へと意識を戻した。 無事に甲板へと降り立ったミストバーンは立っていた兵達をすぐさまなぎ倒し、風石の置かれた部屋を探す。 巨大戦艦を拳で撃墜することはできないが、動力を破壊すれば落とせる。アルビオンに向かう際に耳に挟んだ知識が役に立った。 謎の人物が侵入し次々に兵達を打ち倒しているという情報が飛び交うが、兵力を集めようにも狭い場所ばかりであっさり突破される。 だが、廊下を走る彼の足が一瞬止まりよろめいた。倒れかけるのを壁に手をついてこらえ、再び走り出す。 やがてそれらしき部屋の前まで足音も立てずたどり着き、扉を破ると同時にデルフリンガーの警告が響いた。 「まずい、相棒――!」 まるで彼の行動を読み切っていたかのように空気の槌がカウンターで叩きこまれた。 デルフリンガーを抜いて吸収し、室内の人物を見たミストバーンの顔からあらゆる表情が一瞬にして抜け落ちた。 かわりに浮かび上がるのは純然たる怒り。 そこには、兵士達と共に閃光のワルドが杖を構えて立っていた。 一方、ギーシュとルイズは物陰に隠れながら敵兵の行動を妨害していた。 今までならばワルキューレを七体出現させ即座に精神力を使い果たしていただろうが、オーク鬼達との戦闘で懲りている。 ギーシュ一人が倒れるならばともかくルイズもいる。 もし殺されるようなことがあればミストバーンがあの世まで来て引きずり戻し、拳の叱責とともにギーシュだけ冥府へ送り返すだろう。 だが、彼らだけでは出来ることなどたかが知れている。頭を悩ませていると巨大な影が兵士達を相手に剛腕を振るっているのが見えた。 「フーケのゴーレムだわ」 彼女が何故村を守ろうとするのかわからないが、力が必要なことは事実。一時的に手を組むしかない。 体勢を立て直すため敵の集団が一度退いた隙に、フーケが隠れていそうな方へ呼びかける。 「貴族様に従うのは気に食わないねえ!」 ルイズのこめかみが波打ったが、ギーシュは頭を深く下げ、叫んだ。 「土くれのフーケと呼ばれた貴女の力が必要なんです! お願いします!」 貴族にあらずんば人にあらず、平民など貴族のためだけに存在すると考えていたギーシュの変わりようにルイズはあっけに取られていた。 この変化は一体どうしたことだろう。もしや、身分不明のミストバーンに打ち負かされて真の強者とは何か知ったのか。 盗賊風情に頭を下げるなどプライドが無いとしか思えないのに、ルイズは彼の姿に圧されていた。 村を守るために彼女の力が必要だと知って手を尽くそうとしている。 「何でそこまで……」 学院ならばともかく、タルブの村のために必死になって戦う義理などないはず。 ルイズも強く止められていたら振り切ってまで行こうとはしなかっただろう。 ギーシュの答えは力に満ちていた。 「そりゃもう可憐なヴィオレッタ、聖なるアリシア、優雅なガラテア――他にも多くの美しき女性達が暮らす村だからさ!」 どうやら真に素晴らしい女性には貴族も平民もないらしい。いつの間にその境地にたどり着いたのか。 「モンモランシーに後で言いつけてやろうかしら」 呆れるルイズに声が届いた。 「……小娘とボンボンに従うのは気に食わないけど、あいつらはもっと気に食わないから協力するよッ!」 土煙で目をくらましている隙に岩陰からフーケが姿を現し、二人の元へ走り寄って来た。 やがて敵の集団が再度攻撃してきた。 今度は正面から挑まず回避に重点を置き、周辺にいるはずの操作者を探している。 そのうちゴーレムが特定の方角を守るような動きを見せたため、兵士達はゴーレムの腕をすり抜けるようにしてそちらへ殺到した。 術者さえ倒せば全て終わる。そう意気込んだ彼らの足元が崩れた。穴に落ち込み、異臭が漂っていることに気づく。 「はーい、ご機嫌いかが? ……とっとと降参しないと火だるまになるよ」 ようやく彼らは臭いの正体に気づいた。油だ。焼き尽くされたくないため武器を捨てた彼らを拘束し、抜けだせないように檻を作る。 それを見たギーシュがヴェルダンデに抱きつき頬ずりした。 オーク鬼達の時と作戦は同じだが、ルイズとギーシュでは上手く誘導できないためフーケのゴーレムを使った。 さらに、フーケは土のトライアングルクラスのメイジである。落とし穴の範囲を広げるのに役立った。 ギーシュが成功に浮かれているとゴーレムの拳が彼に襲いかかってきた。ルイズが尻を蹴飛ばし、自分も地面に転がる。 拳の先を見ると残党が襲いかかってきたところだった。 「気ィ抜いてんじゃないよっ!」 鼻水を垂らしながらギーシュが頷く。 ルイズは心が沈みこむのを感じていた。自分が使える魔法は爆発だけだ。意地を見せようと思っても役に立たない。 何か自分に出来ることは――そう考える彼女は、心を励まそうと指に水のルビーをはめた。 動力室の空気は異様に張り詰めていた。帯電し、今にも肌を焼きそうなほどに。 ワルドは四体の偏在と共に立ち、笑みを浮かべた。左腕を奪い、消えることのない恐怖を刻みこんだ男に復讐できる。 復讐より試練と言った方が近いかもしれない。ここで彼を殺さなければ、前へ進めないと知っている。 ミストバーンが己へ突進するのを見て予想が的中したことを悟る。 『レキシントン』号に乗り込み、艦内を荒らし回るような人物は一人しかいない。この艦を落とそうとする彼が目指す場所はここしかない。 真っ先に主を侮辱した己を殺そうとするだろう。おそらく、誇りにかけてガンダールヴを使わず拳で戦うに違いない。 それを読み切っていた彼は偏在達と連携して致命の一撃を叩きこもうとする。 彼には覚悟があった。目的のためならば己をも駒とする覚悟が。 己へと迫る拳を観察し、動く。常ならば目でとらえきれぬ速度だが、命をも武器とする彼には見えた。 紙一重で回避すると偏在が腹部に空気の渦巻く杖を突き刺した。 偏在は手で胸を貫かれ消滅したが、その隙に後退した彼は余裕をもって魔法を放った。 『ライトニング・クラウド』を、突き立ったままの杖に向けて。 雷が杖を通じて体内へ送り込まれた。凄まじい音とともに嫌な臭いが室内に広がり、兵士達が標的の死を確信する。 だが不用意に近づいた兵士は頭部を掌撃で砕かれ息絶えた。 その間に他の偏在が『ライトニング・クラウド』を再び叩きこむ。一瞬体が震えたもののミストバーンは杖を引き抜き投擲した。 偏在の首に得物が突き刺さり消滅するのをワルドは視界の端で捉えていた。 ――死なないならば、徹底的に殺す。 怖くないと言えば嘘になるが退く気はない。恐怖のあまり逃げ出した自分が何より許せなかったのだから。 それに、かつてと同じく激怒しているが―― (わずかばかり……動きが鈍い) 冷静に観察するものの油断はしない。慢心の代償として腕一本を失い、甘さを思い知らされた。 ミストバーンが本体を狙うのに対しワルドも攻撃しては退き、退いては応戦し、偏在達と力を合わせている。 自身を駒とみなすだけの覚悟が彼らの連携を完璧なものにしていた。 根源的な恐怖を植えつけた相手を消すことで過去を乗り越えようとしている。 「化物であろうと知ったことか」 彼の道を進むためにどうしても倒さなければならないと知っている。 義手を掴まれ捩じ切られてもワルドの眼光は苛烈さを失わない。次に右腕が狙われるのを察して得物を振るう。 閃光のように杖が翻り、首筋に刃がめり込んだ。手を緩めず、踏み込みつつ一気に切り裂く。 鮮血が床を叩く音と反撃の掌撃をかわす足音が軽やかに響き合った。 (僕と同じ間違いを犯すとはな……) 遊び過ぎて計画そのものを台無しにするところだった。 己の力量に自信を持つ者が陥る過失。復讐に溺れる影も例外ではない。 「人間を甘く見るなよ?」 言い放つワルドの目は攻撃の機を窺い氷のように冷徹な光を放っている。 最初から殺すつもりで攻撃すれば余計な傷を負うことも無かった。獲物に恐怖と苦痛を味わわせようという傲慢さが隙となったのだ。 ワルドの言葉に過ちを悟ったミストバーンは拳を構え直した。殺意を新たにして。 多くの敵兵の動きを封じたもののまだまだ戦いは終わりそうにない。 魔法使いと言えども万能ではなく、射程外から矢を射かけられるなどしたら手も足も出ない。 ルイズへ矢が飛んだがワルキューレが出現し盾となった。 「僕の前では! レディには指一本触れさせないッ!」 聞きようによっては格好いいと言えなくもないが、顔が青いため締まらない。限界が近いはずだが膝を震わせながらも力を振り絞っている。 ルイズへ次々と刃が迫るのをワルキューレを召喚して防ぐ。だが、とうとう蒼白な顔色で膝をついた。 矢が降り注ぐのをフーケのゴーレムが手の平で庇ったが、数本がルイズへと飛ぶ。 それを目撃したギーシュが目を見開いた。どこか苦いものを含んだ言葉が蘇る。 (……人形が無ければ何もできんのか?) このまま目の前でレディが傷つくのを見ていることしかできないのか。諦めるしかないのか。 (そんなのは――ごめんだね!) 彼が彼であるために、最後の力を振り絞って立ち上がり――閃光のように飛び出し、己の身で食い止めた。肩を射抜かれ、倒れこむ。 「ギーシュ! 何で……?」 「薔薇に棘がある理由を……証明したかっただけさ」 涙をこぼすルイズにギーシュは弱々しい声で囁いた。 「美しい頬を涙で濡らさないでくれたまえ。その真珠のような――」 「寝てんじゃないよ!」 苛立ったフーケが瞼を閉ざしかけたギーシュの脇腹を蹴とばした。ぐえ、と呻いた彼の襟首を掴み、ルイズを伴って一度隠れる。 「このままじゃジリ貧だね」 フーケももう長くはもたない。ルイズは拳を握りしめ、震えていた。 (……わたしだけが違うんだわ) フーケもギーシュもミストバーンも、皆譲れぬもののために戦っている。それなのに自分だけが何もできないでいる。 彼女は自分の甘さを知った。タルブの村まで来たのも、何もせずにいる後ろめたさに耐えられなかっただけ。 いざとなればミストバーン達が何とかしてくれるという甘えがどこかにあった。 本当に何かを守ろうとする覚悟があるのならギーシュのようになりふり構わず行動できるはず。 常に本人が突っ込めばいいというものではないが、いざという時に動けるか否かで戦い方は大きく変わる。 泥にまみれたギーシュの顔にはある種の気高さがあった。それに引き換え自分は――。 いつしか流れる涙は己への怒りと悔しさに変わっていた。 (力が――力が欲しい――!) 命が削られようとかまわない。ここで戦わなければ貴族たる資格などない。 心の底から力を求めながら地面を拳で殴りつけると『始祖の祈祷書』が落下し、風でページがめくれた。涙でにじむ視界に文字が浮かび上がる。 書かれているのは四つの系統、そして零――虚無の系統について。選ばれた読み手が指輪を嵌めることで書を読めるとも書いてある。 「もしかして……わたしが読み手ってこと?」 さらに読み進めると爆発(エクスプロージョン)について書いてあった。 今まで失敗だとしか思っていなかったが、これこそが自分の力だったのだろうか。四つのどの系統にも属さない、虚無の――。 信じられないがここで何も出来なければゼロのままだ。試してみる価値はある。荒い息のギーシュをちらりと見て覚悟を決める。 キメラの翼で『レキシントン』号の上まで飛び、フライでさらに上空へ行くことをフーケに頼んだ。 詠唱し、力を高めていく。 ――エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド 詠唱がルイズの中にリズムを作り出していく。体の中から何かが生まれ、行き先を求めて回転するような感覚が生まれる。 ――ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ 合図して飛びあがる。『レキシントン』号の上にまで達し、さらにフーケがフライで抱え上げる。 ――ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル 呪文完成の瞬間、ルイズは己の魔法の威力と性質を理解した。 自分の魔法は眼下に広がる全てを巻き込み、消滅させることができる。 だが、選択もすることもできる。殺すか、殺さないか。破壊するか、破壊しないか。 ルイズは選び、杖を振り下ろした。眼下に広がる艦隊に向けて。 艦内で戦う彼らまでも、太陽のような閃光が照らしだした。 ワルドがほんの一瞬光に目を奪われた隙に、ミストバーンの手が左胸を貫き、そのまま一気に切り下ろした。 身体を深々と切り裂かれたワルドの口から大量の血液が溢れる。血だまりの中に崩れ落ちたワルドはどこか遠い眼差しで呟いた。 「今のは……ルイズの、力だ」 手に入れることはできなかったが――自分は間違ってはいなかった。心中で呟いたワルドの目から力が抜け落ちる。 ミストバーンも誰が魔法を放ったのか悟っていた。今まで彼が見たどの魔法とも違う、異質なそれを。 四つの系統のいずれにも属さない特殊な魔法ならば法則が違う元の世界でも使えるのではないか。 最初は、何が何でも一撃を食らわせようとする意地を認めた。次に、努力する姿勢を、強敵が相手でも退かない誇りを認めた。 他者に認められたい、必要とされたいという想いを知った。 そして今、彼女は力を見せた。 それは――彼女が真に認めるに値する相手になったということだ。 彼女の魔法は風石の大半を破壊しており、残りはミストバーンが打ち砕いた。間もなく『レキシントン』号は落ちるだろう。 艦内から脱出し、キメラの翼を使い地上に降り立つ。 そして知った。彼女の魔法の威力を。 『レキシントン』号だけでなく全ての艦が撃墜されていた。 前ページ次ページゼロの影
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/769.html
祈祷の覚醒者カンナギジーダ VR 自然文明 (26) サイキック・クリーチャー:アース・ドラゴン 23000 W・ソウル ■このクリーチャーが覚醒した時、クリーチャーを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出す。 ■Q・ブレイカー 覚醒前:《時空のシャーマン・フウスイ》 作者:赤烏 収録 MG-08 「DOOMSDAY」5b/20 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anchorlegendscenario/pages/843.html
システム:アリアンロッド2E タイトル:少女祈祷中 極東の島国、ダイワ群島国。 他国と海で隔たれたこの国は、その文化も独自の変化を遂げていた。カンナギもその一つである。 カンナギとは、エリンディル東方の神官に位置する職であり、その身に神の力を降ろす者達のことを呼ぶ。 カンナギはその力を用いて妖魔と戦うだけでなく、人々の暮らしている地域に恵みをもたらすために神を降ろすこともある。 ここにも一人、人々に喜びを与えるために精進している少女がいた。 彼女は定期的に儀式を行いその地域一帯に恵みの雨を降らせていたが、 ある時、儀式に必要なサカキの枝と呼ばれる神聖具が何者かに盗まれてしまう。 これはとても希少なものであり、新しい物や代替品を用意することが難しく、 このままでは神降ろしをすることが出来なくなってしまう。 君たちは失われた神聖具を見つけ出すため、行動を開始する。 アリアンロッド2E「少女祈祷中」 冒険の舞台が君を待つ!
https://w.atwiki.jp/aciii/pages/24.html
ストーリー・世界観検証 このページはアサシンクリードIIIの設定や物語・人物関係などを検証・考察するものです。 本編とDLCのはげしいネタバレを含みます。 削除などする場合は、コメントアウトで理由を書くなど、他編集者への配慮をしましょう。 コメントアウトする際は理由の併記もお願いします。 未解決の謎前作からの謎 今作の謎 アメリカ独立戦争前後(1753~1783年) 現代編(2012年) その他 コメント欄 未解決の謎 前作からの謎 ★マークの付いている物は、解決済みの謎。 +ルーシーの正体★ ブラザーフッドにて、Sequence6以降ルーシーがモンテリジョーニのどこにもいない、鷹の眼で見える赤い足跡がヴィラに続いている、デズモンドがリンゴに触れた途端ジュノーが彼を操りルーシーを刺させたなどのことから、ルーシーは裏切り者ではないかと考えられていた。 リベレーションのDLC「失われた記録」にて、ルーシーが教団を裏切っていたことが判明。デズモンドを脱出させたことや隠れ家で他のアサシンと合流することも全て計画の内だった。 +被験体16号の言葉の意味★ 隠された真実の中で被験体16号が語った言葉の意味。録画されたメッセージではなくデズモンドと会話しているため、実は生きているのではないかと考えられた。被験体16号ことクレイ・カズマレクは、死の直前に自らの意識をデータ化し、細分化・暗号化してアニムス内の随所に隠していた。それをデズモンドらが「隠された真実」としてII、ブラザーフッドで見つけ出したため、彼はアニムス内でのみの生を得ることとなった。つまり、彼は実際に生きているのではなく、コンピュータ上で人格を再現したプログラムに過ぎない。 「彼女の正体」→彼女=ルーシー?アサシンではなく実はテンプル騎士団のスパイ?彼女=ミネルヴァやジュノーなどのかつて来たりし者たち?実はデズモンドらの味方ではない?彼女=イブ?ルーシーが裏切り者だったと判明したため、恐らくはルーシーの事を指していたと考えられる。 +ウィリアムの正体★ ウィリアムとは、ルーシーやショーンらにメールで指示を与えていた、より高位のアサシン(メールでの署名はW.M.)。本編エンディングのスタッフロールで、彼を含む複数名の男性が会話をしていた。 DLC「ダ・ヴィンチ、失踪」の開始時、終了時にもウィリアムらの会話が挿入される(本編クリア前にDLCを導入するとメール表示に置き換わる)。英語版の台詞から、会話しているうちの一人はウィリアムであると判明。 心拍の上昇を鎮静剤で抑えなかったため、デズモンドは一種の昏睡状態に。 メールの文面から、ウィリアム(=W.M.)はルーシーやショーンにはこの情報を隠したがっている。ウィリアムはアサシンとは目的が違う?ルーシーかショーンまたはその両方がスパイだと考えている? メールのサービス名(?)の「ヘーパイストス」とは、ギリシャ神話の鍛冶の神。カイン(テンプル騎士団の源流)も鍛冶を司ることから、「ヘーパイストス=カイン」説もある。 カインとの関連、ルーシーらに情報を隠そうとしていた態度、デズモンドを昏睡状態に陥れておきながら悪びれる様子もない、などの事実から何らかの形でテンプル騎士団と繋がりがあるのではないかと考えられていた。 W.M.とはウィリアム・マイルズのイニシャルであり、彼はデズモンド・マイルズの実の父親であることがリベレーションで判明した。しかし、もちろん彼が裏切り者ではないという確証はない。 +DLC「ダ・ヴィンチ、失踪」の文字列の意味★ DLC「ダ・ヴィンチ、失踪」の最後に、レオナルドが読み上げる数字とアルファベットの羅列。これは緯度と経度を表している。アメリカ合衆国、ニューヨーク州のはずれにあるグレンフィールドという小さな町の、ウエッツトン ガルフ州立公園にある奇妙な穴の位置である。 next-assassins-creed-teased-oxcgn-1.png この穴は、1998年の時点では存在していない。 bildschirmfoto20110322u.png この座標の地点(下図、"COORDINATES")からフローレンス(下図、"FLORENCE" フィレンツェの英語名)とローマ(下図、"ROME" ローマの英語名)を線で結ぶと、ピタゴラスの三角形となる。 acbtrianglenotations.jpg また、アメリカ建国の父であるジョージ・ワシントンは一時リンゴ(PE3)を所有していた事が前作の「隠された真実」で判明しており、このことから「次回作(=AC3?)はアメリカ独立戦争の時代が舞台になるのでは」という説もあった。 この地点はかつて来たりし者たちが世界中に築き上げた 宝物庫 の情報を集約する施設が存在した場所であることがリベレーションで判明。DLCのあの時点でその座標が表示された理由は不明だが、ウィリアムらはこの座標を基にNYCへと向かった。また、IIIの舞台がアメリカ独立戦争前後の1753年~1783年のアメリカ植民地が舞台であることも明らかになった。 +隠された真実のメッセージ ブラザーフッドの隠された真実にて表示される「奇跡は処刑の中に」というメッセージの意味が判明していない。アサシンクリードシリーズで登場した「処刑」というと、1.キリストの磔刑 2.ジャンヌダルクの火刑 3.マハド・アッディーンによる市民の処刑 4.サヴォナローラの火刑 5.テンプル騎士団総長ジャック・ド・モレーの火刑など。3番はほとんど無意味、4もそこまで重要でないことを考えると、1・2・5の何れかの事を指していると考えられる(もちろん、これ以外のまだ出ていない処刑の可能性もある)。また、処刑にまつわる「奇跡」というとキリストの復活が代表的。 なお、キリストが処刑されたのちに死体を包んだ聖骸布はPoEの一種であり、キリストの復活は聖骸布の力による。 +被験体16号の言葉の意味 隠された真実の中で被験体16号が語った言葉の意味。「イブを探せ」「隠された真実」に登場したイブ?現代でも生存している?それとも墓や遺体、遺物などを探すという意味? 「お前の子」デズモンドに子供がいるという事実は判明していない。被験体15号が懐妊していたことと関係?将来の子供? +"Erudito"の正体 "Erudito"(イタリア語で「学者」の意)は、現代編でデズモンドにルーシーやショーンのメールアカウントのパスワードを教えた人物。彼ら全員のパスワードを知っている人物は、今までの所登場していないと思われる。なお、 Erudito は Facebook のアプリ "Assassin s Creed Project Legacy" でも登場している。ACPL では、プレイヤーはアブスターゴ社の新入社員となるのだが、時折実施されるアンケートに対してアサシンのような回答を行うと、主人公に対して「お前の身に危険が迫っている」という旨のメールを送信してくる。 アブスターゴ社の内部資料(アブスターゴファイル、ファイル0.07)でも言及されているが、「個人なのかグループなのか」や「アサシン教団と共謀しているか否か」さえ不明となっている。 "Erudito"の文字を並び替えると"UDITORE"(イタリア語で、Auditore)となる。 +エツィオがヴィラに帰った理由 現代編の冒頭で、デズモンドが流入現象によりエツィオの幻覚を見た際に「随分老けてるな。襲撃の後にもここに来たのか、何故だ?」と言っていたが、結局理由不明のままである。「1420 等のヒントを書きに行った」という説が現状では有力。 +「エツィオの秘宝」の意味 現代編1の時点では存在しない 街中に 500 年前の物が無造作に置いてあるのも不自然。また、5 つすべて集めても実績やトロフィーは無く、イベントなども一切存在しない。キャラクターも一切言及していない。 エツィオ編をクリアしてリンゴの位置が判明した後、現代に戻ると停電が起きるが、その後には棚から全て無くなっている。 どれか一つでも手にすると「ちりはちりに」という実績/トロフィーを取得出来る。本シリーズはキリスト教関連のエピソードが多数みられるので「土は土に、灰は灰に、塵は塵に」という祈祷書の有名なフレーズに関連があるかもしれない。ちなみに祈祷書のフレーズの意味は「アダムとイブが楽園から追放されるとき、神がアダムに対して語りかける台詞である。楽園から追放されたことによって死する存在となったアダム(人間) を象徴させる場面である。なお、アダムはヘブライ語で「土」と「人間」の両方を意味する言葉であり(正確には「土」はアダマーという)、アダムは元々神が土から作ったため、アダムが死ねば土に還るという背景が暗示されている」 (出典 Wikipedia) +「72」の意味 物語終盤で、コロッセオ地下の宝物庫に入る際に使ったパスワード。デズモンドが音声認証で入力した。この数字には多くの意味が込められている。アブスターゴ社によるエデンの果実搭人工衛星の打ち上げ予定日(2012/12/21)はデズモンド達が宝物庫に入った日(2012/10/10)から72日後。 ジュノーが述べた「目覚めのとき」までの日数。 コロッセオの建設開始年。 ロドリゴ・ボルジアが死亡した際の年齢。 "テトラグラマトン"(ヘブライ語で神を現す4文字≒YHWHの事)、つまりメタトロン(神と同格視される天使。)の名前の数。 +ユン・シャオに渡した箱の中身 『エンバース』でエツィオが中国人アサシンのユン・シャオに渡した箱の中身。様々な仮説が述べられているが、どれも確たる根拠は無く可能性が高いと言えそうなものはない。 +エツィオの死因 『エンバース』で描かれているエツィオの死の原因。 エツィオが死ぬ寸前に若い男が近づいて話しかけているが、この解釈が問題となっている。男はテンプル騎士団などの手先で、エツィオを毒殺したという説。 男はエツィオの見た幻で、エツィオは天寿を全うしたという説。なお、この説では幻の男がヴィエリ・デ・パッツィに似ているのではとも言われている。 今作の謎 +デズモンドの安否 本作エンディングでのデズモンドの生死について。彼が死亡したのか、単に意識を失っているだけなのか詳細が不明のままとなっている。但し、本作発売前に「デズモンドの物語は今作が最後」との発表があったため、彼は死亡したのではないかという説が有力となっている。 +クリア後の被験体 本編終了後もプレイヤーは引き続きコナーとしてプレイできるが、本編終了後にデズモンドがアニムスに入った描写は無い。このことから、クリア後のアニムス被験体について複数の仮説が考えられている。被験体はデズモンド説:デズモンドが実は生きていた、又は彼の死体の一部や残留DNAを使用してコナーの記憶を辿っているとする説。また、クレイの場合と同様にデズモンドがアニムス内に何らかの形で意識を残しているとする説もある。 被験体はウィリアム説:デズモンドの父のウィリアムが被験体だとする説。本編中でも、デズモンドが彼に「同じDNAを持っているんだから、あんたがアニムスに入れば良い」という旨の発言をしている。 その他の被験体説:この説については具体的に誰なのかは今の所推論できるだけの証拠がないものの、アブスターゴ社が既に用意していると言及していた被験体18号、アブスターゴ社が作ったデズモンドのクローン(もちろん、クローンの存在そのものが憶測に過ぎないが)、クレイの語っていた「イヴ」、次回作(AC4?)の主人公など様々な候補が挙げられている。 被験体はいない、又はコナーと縁のない人物だとする説:アブスターゴ社のアニムスは一度辿ったDNAの記憶は同じ被験体でなくとも辿ることができるので(マルチプレイヤー)、被験体は誰もおらず、一度辿ったコナーの記憶を辿っているだけだとする説。但し、この説ではクリア後に接触してくる男性(「ピボットの意味」参照)が話しかけている相手がいない事になってしまうので、可能性は高いとは言えない。 +ピボットの意味 本編クリア後に収集可能なピボットの意味について。何者かがアニムスを介して被験体(プレイヤー)に接触し、ピボットを収集するように指示するが、収集する意味も指示を与える男性の正体も判明していない。各ピボットを集める度に新たなチートがアンロックされる。全てのピボットを集め終わると、最初に指示を与えたのと同一と思われる男性が喜んで興奮した様子で「クラウドにデータをアップロードした」等の謎の言葉を述べる(「クラウド時代」、英語では"Head in the Cloud"のトロフィー/実績も取得できる)。また、「○○(ユーザーのPSN又はXboxliveのID)はクラウドとシンクロしています」という文言と共に謎の文字列(5523C23D2553)が表示される。ピボットを全て収集した後に表示される謎の文字列は暗号文だとする説もある。具体的には、まず文字列を2進数に置き換え(0101 0101 0010 0011 1010 0010 0011 1011 0010 0101 0101 0011)、これを6桁ごとに区切り(010101 010010 001110 100010 001110 110010 010101 010011)、base64で置き換えると「V S P C P S V T」となる。さらにこの文字列をシーザー暗号のようにアルファベット順に一文字前に置き換えると(V→U)、「UROBORUS(ウロボロス)」という単語になる。ただしその単語が何を意味するのかは不明であり、憶測の域を出ない説ではある。 トロフィー/実績の英語名"Head in the Cloud"は、"Have one s head in the cloud(空想にふける)"という熟語とIT用語のクラウドを引っ掛けた名前と思われる。 男性については、ERUDITOではないかとする説がある。 「アップロード」したものについても、デズモンドのDNA、アニムスの実験データ、アニムスの設計図、アブスターゴ社の機密情報など様々な仮説が考えられている。ただし、アニムス自体についてはアブスターゴ社が既に商品化しているので(今作のマルチプレイヤー)、設計図を流出させる必要性はそれほどないとも考えられる。 +LLエンディングの円盤の預言の意味 レディリバティのエンディングで、PoEとみられる円盤からかつて来たりし者達と思しき三人組が現れた際に彼らが語った言葉の意味(彼らの台詞については資料を参照)。"Eve will lead us through the war of generations.""war of generations(世代間の争い)"とは、旧世代の人類(=かつて来たりし者達)と新世代の人類(=我々現生人類)との争いの事と思われる。但し、"Eve will"と未来形が使われているので、TWCBの文明が滅亡するきっかけになった過去の戦争とは別物と思われる。恐らくは、ジュノーによる支配とそれに抗う人類による、III現代編終了後に勃発するであろう戦争の事? "There will be great sacrifice, great sorrow, to end the enslavement of the human race.""great sacrifice(大いなる犠牲)"とはデズモンドの死(生死自体が未確定だが)の事?但し、この犠牲は上記の戦争勃発以前であり、ここでも"There will be"と未来形が用いられているので、また別の犠牲があるのかもしれない。 アメリカ独立戦争前後(1753~1783年) +ヘイザムの経歴 ヘイザムはアサシンであるエドワード・ケンウェイと彼の二番目の妻であるテッサ・ケンウェイの息子として生を受け、アサシンとしての訓練を受けながら成長した。 だがエドワードはヘイザムが10歳の年、彼が所有する書籍(第一文明について暗号化された情報が載っていた)を狙った強盗に殺害される。この後、本編冒頭にも登場するテンプル騎士団イギリス支部総長のレジナルド・バーチ(彼はエドワードの主席資産管理人でもあった。つまり、書籍等を含む彼の資産を一覧できる立場にあったと言える)に勧誘され、ヘイザムはテンプル騎士団に加わる事になる。 +ヘイザム編で登場するアサシン 当初は意図的に隠されているが、ヘイザム編には数人のアサシンが登場している。冒頭の王立オペラ劇場で暗殺し、大神殿の鍵であるアミュレットを盗んだ相手はミコというアサシン。彼とヘイザムはこの以前にもコルシカ島で面識があり、その際にヘイザムは彼が護衛していた暗号解読者のみならず、彼のアサシンブレードをも強奪した。だが、その際にヘイザムは彼を殺す理由が無いと判断したために彼を殺害しなかった。なお、彼は後にコナーの協力者となるダンカン・リトルの叔父であり、ヘイザムが彼を暗殺した後にその現場に出くわした少年はリトル本人である。 ヘイザムが新大陸へ向かう際に乗船したプロビデンス号にて、樽を海に落として他の船が同船を追跡できるようにした人物はルイス・ミルズというアサシン。彼はヘイザムがミコを暗殺した後に、ヘイザムを追跡する任を教団から受けていた。彼の努力によりプロビデンス号が他船から襲撃を受けた際、彼は下層デッキに降りたヘイザムを待ち受け彼を捕縛しようとしたものの、圧倒的力量の差は埋まらず、ヘイザムに殺害されるに至った。 +コナーの名前の由来 「コナー」という名前はアキレスが付けた名前だが、これは夭逝した彼の息子と同じ名前。アキレスの死後に彼を埋葬した墓の隣には彼の妻と息子の墓があり、かすれてはいるものの墓碑に刻まれた名前が読み取れる。 アキレスに頼まれてニューヨークから取って来たものの飾らず、彼の死後コナーが飾った肖像画で息子の顔も確認できる。 +モホーク族の人々の名前の由来 コナーの本名であるラドンハゲードン(Ratonhnhaké ton)は、モホーク語で「傷のある人生」の意。なお彼の英語名についてであるが、彼は父の苗字である「ケンウェイ」の名を引き継ぎはしなかった(父との確執云々の話だけでは無く、ラドンハゲードンとして成長し、「コナー」の名はアキレスから貰ったものである以上、彼が自身を「コナー・ケンウェイ」という名前であると思っていたとは考えにくく、周囲の人も彼を「ケンウェイ」とは捉えていなかったであろう)為、フルネームを「コナー・ケンウェイ」とするのは(UBISOFTまでもがそうしているが)、厳密に言えば誤りである。 コナーの母であるガジージーオ(Kaniehtí io)の名は、彼女の声を担当したモホーク人声優Kaniehtiio Hornの名に由来している。 ガネンドゴン(Kanen tó kon) +コナーの特異性 コナーは、デズモンドが記憶を追体験した彼の先祖の中では様々な点で特異である。デズモンドの先祖の内、アルタイルとエツィオの二人はデズモンド本人と同様に口の右端に縦の切り傷を負っているが、コナーは負っていない。その代り、彼は右頬に傷がある。 アルタイル、エツィオ、アブリーン、そしてニコライ(被験体4号こと、ダニエル・クロスの先祖であるロシア人アサシン)などの多くの重要なアサシンはその名前などに鷲にまつわるモチーフが用いられているが、コナーの場合は狼にまつわるモチーフが用いられている("Connor"というのはゲール語の"Conchobhar(=犬を愛する者、狼を愛する者)"に由来するアイルランド系の名前)。 アルタイル、エツィオと違い、コナーの両親は何れもがアサシンではない。 +トリビア ガジージーオは劇中でイーグル・ダイブを華麗に決めているが、アサシン教団・テンプル騎士団のどちらにも所属していない人物でイーグル・ダイブを行ったのはシリーズ全編を通じて今の所彼女だけである。 ホームステッドでオリバー夫妻が経営する宿屋の名前は"The Mile s End"、直訳すると「マイルズの終わり」である。 現代編(2012年) +摩天楼 デズモンドたちが最初の動力源を確保しに向かった建築中の高層ビルは、アメリカ同時多発テロで崩壊したワールドトレードセンター跡地に建設中のOne World Trade Center。 その後、デズモンドがパラシュートを利用して侵入したビルは米国の大手通信会社ベライゾン・コミュニケーションズの本社であるVerizon Buildingである。そのため、第一の動力源を保有していたのはVerizon社かその関係者であったとも考えられるが、同じ位置に存在するというだけであって、劇中ではアブスターゴ社の関連施設という設定なのかもしれない。 +「マナ」 現代編でショーンに話しかけると、「マナ、つまり神の食事の生成装置を見つけた」といった旨の会話を聞ける。 日本語で「マナ」と聞くと、カードゲームなどでもお馴染みの「太平洋島嶼部の原始宗教における、神秘的な力の源とされる概念」の事と勘違いする向きが多いかもしれないが、ここでいうマナは旧約聖書「出エジプト記」第16章に登場する食物で、モーセの祈りに答えた神が飢えたイスラエルの人々の為に天から降らせたもの。 「蜜のように甘い」とする記述もあるが、ショーンの説明を聞くに決して美味しいという訳では無いようだ。砂糖などが豊富にあるはずもない紀元前の、長らく虐げられていた人々にとっては至上の甘味でも、人工甘味料などになれた現代人にとっては甘くもなんともないということなのかもしれない。ただしショーンの説明は冗談めかした物であったため、どこまで本当なのかはよくわからない。 +ジュノーの伴侶 現代編では、ジュノーから第一文明の人々が太陽フレアの災禍から免れるために取った様々な手段を説明される。 その中で、彼女に「エイタ」という名の伴侶がいたという発言があったが、"Eita"("Aita"とも)とはユニ(=ローマ神話のジュノー)やメンルヴァ(=ローマ神話のミネルヴァ)などと同様にエトルリア神話における神の名である。つまり、彼もジュノーらカピトリーノ三柱神と同様に第一文明の一員であった。 エトルリア神話におけるエイタは、冥府を司る神でありローマ神話のプルートと同一視される。なお、エトルリア美術においてエイタは髭を蓄え、狼の毛皮を被った姿で描かれる。 様々な手段を講じても太陽フレアの影響を免れえないと悟った第一文明の者たちは、精神だけを肉体以外の器に移し替える事で太陽フレアを生き延びる計画を思いつくが、結局はこれも失敗。その実験台に自ら志願したエイタは精神が崩壊し不安定となった。波のように周期的に戻ってくる正常状態の際、彼はジュノーに無意味な苦しみを終えるよう哀願し、それに応えたジュノーは彼の胸を刺すに至ったとジュノーが語っている。彼を安楽死させる際、ジュノーはナイフのようなもので彼の胸を刺しているが、これはかつて来たりし者たちといえども急所を刺せば命は無いということであり、今後ジュノーと人類との間で再び戦争が繰り広げられるのであれば参考となるかもしれない。もちろん、ただのナイフではなく一種のPoEであった可能性もある。 +トリビア 今作のマルチプレイヤーは、アブスターゴ社がアニムスを一般向けに商品化した物という設定。そのため、トレイラー映像にアニムスのテレビCMをイメージした映像があるが、これは1でのルーシーの冗談(デズモンドがアニムスは極秘プロジェクトなのかと尋ねた事に対し、「何よ、CM流れてるでしょ?」と返した)を本当にしてしまった一種のセルフパロディーと考えられる。 アブスターゴ(Abstergo)はラテン語で「浄化する、清潔にする」という動詞の一人称単数の形。この社名は、テンプル騎士団の「エリートによる民衆の支配」の思想を体現した物であると言える。 アブスターゴ社のロゴマークはペンローズの三角形をモチーフとしている。作者によると、この三角形は「不可能性を最も純粋な形で表したもの」。なお、今作のマルチプレイヤーで表示されるロゴに関して、「色彩が付いていたり微妙に形状が異なる」とする意見があるが、これはこのロゴがアブスターゴ社(Abstergo Industries)のものでは無くアブスターゴエンターテイメント社(Abstergo Entertainment)のものだからである。 その他 +公式Twitterの謎 2012年8月8日に公式Twitterアカウントがツイートした一連の謎のメッセージ(以下参照、翻訳は筆者)。_-_-_He is gone. #16 is no more. And now they begin. To search for 1 more _-_-_彼は逝ってしまった。#16はもういない。そして今奴らは始めた。もう一つ探す事を。(https //twitter.com/assassinscreed/status/233197713225822208) _-_-_THEY are responsible. Abstergo s to blame. They play with our lives. Like it s only a game_-_-_奴らには責任がある。アブスターゴは責めを負う。奴らは俺たちの命を弄ぶ。まるでゲームに過ぎないというかのように。(https //twitter.com/assassinscreed/status/233202595248865280) _-_-_They search for the ‘’prophet’’ They’re grasping at straws. Their ill-conceived plans, are riddled with flaws_-_-_奴らは「預言者」を探している。藁にも縋るようだ。奴らの愚かな計画は、欠陥だらけだ。(https //twitter.com/assassinscreed/status/233206218271903744) 一連のツイートの直後、これらは単なる「technical issues(技術的な問題)」であり、解決済みだとするツイートがなされた。https //twitter.com/assassinscreed/status/233209481289412609 なお、2012年8月8日は被験体16号が死亡した日である。 +Assassin s Creed Initiates シリーズ現代編の出来事を、実際の日付と連動させて再現している公式企画。Assassin s Creed Initiatesを参照 +Hacked History 公式サイトで展開されている企画 Hacked History Webgame。バンカーヒルの戦いなど、歴史的な場面を描いた絵画に隠されたPoEなどを発見することで進捗度があがるウェブゲームである。クリア後はデズモンドが闘技場とおぼしき場所にいる画像が表示され、その中にはQRコードと数字の羅列が埋め込まれている(Photoshop等でRGBのブルーチャンネルのみを表示するとはっきりと見える)。QRコードから飛べるページにパスワード「Desmond」を入力すると、アメリカ独立宣言の全文が表示される。さらに、画像に埋め込まれた数字を独立宣言のページにある入力欄にすべて入力すると、デズモンドトレーラーが見られるという仕組み。 ちなみに、画像に埋め込まれた数字は独立宣言文からスペースを除いた○文字目を拾えということ。これに従い解読すると、"If the first civ couldn t save the world - how the hell are we supposed to swing it" という文章になる。 コメント欄 過去ログはこちら あさしんくりーどは、やっぱなぞが多いですね - yamamoto 2013-07-13 15 46 43 仮説だけど、アルタイル=かつて来たりしものの子孫 アルタイルの子孫=デズモンドだから、デズモンドにはかつて来たりしものの血が流れてるって事だし、だから最後のかつて来たりしものが作った(多分)あの台座では死なないんじゃない? - 名無しさん 2013-11-28 20 21 55 ピラミッドに目があるやつってオーパーツとかゆー名前じゃ無かったっけ? - 名無しさん 2013-11-28 20 25 16 デズモンドの安否ってもう - 名無しさん 2013-12-01 02 04 35 デズモンドの安否ってもう4で判明したから解決済みにしていいんじゃないかな - 名無しさん 2013-12-01 02 05 11 名前
https://w.atwiki.jp/onmyoutetu-jinro/pages/516.html
(ver.1.5.0α4実装) ※ver.1.5.0系列の役職です。 基本データ 特徴 コメント 基本データ 所属 村人陣営/司祭系 役職表示 祈祷師 占い結果 村人 霊能結果 村人 毒見結果 無毒 精神鑑定 正常 夜投票 無し 耐性 護衛制限対象 登場 超闇 ログ表記 [祈] 翌日発生する天候を知る事が出来ます。 5日目以後、3n+2日目に特定の条件を満たすと何らかの天候を発生させる、司祭系の役職です。 特徴 翌日発生する天候を知る事が出来ます。 5日目以降の3n+2日目(5,8,11,14…日目)において、 生存する村人陣営役職と人狼系を除く生存者数が人狼系生存者数より多い場合、何らかの天候を発生させます。 神話マニア陣営に関しては、能力による変化後の陣営として判定されます。変化前は村人陣営扱いです。 サブ役職【恋人】の有無は天候発生条件に関与せず、メイン役職のみで判定されます。護衛制限対象です。 能力発動判定が蘇生より後なので、蘇生直後でも能力は発動します。 なお、能力発動時に【天人】が蘇生した場合、その【天人】はカウントされていません。 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/th_sinkoutaisen/pages/71.html
効果 信仰収入+10%(重複可) 使用例 効果の通り、手番のはじめに加算される信仰収入が10%加算される 効果は重複するので、デッキによっては100%を超える場合もある 収入の量には制限があり、表示される%の1000倍までしか一度に加算されない 信仰が1,000,000あり信仰収入が10%の場合、加算されるのは100,000ではなく10,000となる
https://w.atwiki.jp/rickdom/pages/73.html
コメント
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/139.html
最終話 一(ひとり)後編~ゼロと一~ 前ページ次ページゼロの影 力無くへたりこんだ少女が呆けたような表情で呟いた。 「た……助かった、の?」 ワルドも草原に腰を下ろし、ウェールズは倒れている。 「あれ見た後だとあいつが天使に思えるわ。……冷酷で暴力的だけど」 「奇遇だねルイズ。僕も同じことを思ったところさ」 乾いた笑いと引きつった表情をかわしたあと、よくも切り抜けることができたものだと冷や汗をかきながら二人は何が起こったかを思い返した。 別れの挨拶の直後、ルイズは諦めずに杖を振り下ろした。 あのままでは発動すらしないはずだったが、キルバーンの言葉は彼女の怒りに火を点けたのだ。 感情の波があっという間にうねり、高まり、渦巻いて『虚無』の力に変換される。 だが、効果が十分に発揮されなかった。 何しろ、慌てるあまり自分でもどんな魔法を唱えたのかわかっていないのだから。 「何あれ?」 彼女が間の抜けた声で呟いたのも無理はない。 人形の後方に水晶のように光る鏡が現れ、ここではない別の光景を映し出している。鏡は大きさを増し、人形の頭部よりやや大きい程度まで膨れ上がり止まった。 規模が小さく、そのままではどうしようもない。 考えるより先に、閃光の名に違わぬ速さでワルドは詠唱とともに素早く杖を振るった。 風の刃が飛来するが、位置の関係上人形に直接叩き込むことはできない。 (戒めを完全に切断する威力も無い。だが――!) 彼を信じるしかない。 彼は死神には無いものを持っているのだから。 蔓の一部が切り裂かれ、無理やり引きちぎったミストバーンが爪を伸ばし形成した剣で首をはねた。 もはや力など残されていなかったが、主のために戦い続けてきた数千年の経験が――彼の体を動かした。 接近し、油断した状態で、機械のように正確かつ容赦の無い斬撃を回避することはできない。 神速で首を切り離してのけたミストバーンだが、それ以上動く前に限界を迎え、自由になった片腕が力無く垂れた。 宙に舞った頭を吹き飛ばしたのは、ウェールズの生み出した空気の槌だった。 鏡のような扉の中へ頭部が吸い込まれる。 数秒とかからぬ一連の行動に遅滞は無く、あらかじめ打ち合わせていても不可能なほど息の合った動きだった。 扉の向こうに一つ目の小人がちらりと見えた直後に、扉は消えてしまった。 確認はできないが、おそらく“向こう”で黒の核晶は爆発したはずだ。 自分が仕込んだ爆弾の爆発に巻き込まれたのだ。密かに作動させていれば、またはルイズを甘く見ずに詠唱を阻止しておけば、違った結末を迎えただろう。 命を落としたか生き延びたかわからないが、今は確かめようという気にはなれない。 彼女は背を向けて立っているミストバーンを見て口を開きかけたが、虚しく言葉を飲み込むしかなかった。 敵の陣営に属するとはいえ、気の合う友人だと思っていた相手が機械でできた人形だったのだ。 そして、数百年続いた友情があのような終わり方をした。 こんな時どんな言葉をかければいいかわからない。 告げられた言葉の残酷さより、友情が偽りかもしれないという思いの方が彼を打ちのめしているように見えた。 罠の拘束から脱した彼は、頭部の無い人形を見下ろし胸の内で問いかけていた。 奇妙な友情は、真の姿と同様に不確かで儚いものだったのか。 敵同士でも通じ合うものがあったと思ったのはただの幻想――そうであってほしいという願望に過ぎなかったのか。 何も分からない。 答える相手はもういない。 認め合い、主の下で共に闘った相手との友情は終わった。終焉を予想していたとはいえ、このような形で幕引きを迎えるとは思っていなかった。 対極の性格だというのに奇妙なほど気が合ったのは、無意識のうちに同じものを感じたためではないか。 彼が普通の魔族ならば、相手が人形だったと知ってもそこまで衝撃は受けなかっただろう。 何が本物で何が偽りか、彼にはわからなくなっていた。 他に本物だと思っているものも、そう思い込んでいるだけで偽物ではないか。 そもそも、偽りでないものなどあったのか。 「私も偽りだったというだけのこと……」 これこそが、相応しい結末と言えるかもしれない。 自分のもの――本物ではない身体。 本物ではない力。 それに似つかわしい、“人形遣い”と人形の間の友情。 何もかもが偽物。 対等な相手など最初から存在しなかった。 騙されたなどと詰る気もその資格も彼には無い。秘密を抱き正体を隠していたのはどちらも同じだ。 人形の力で戦うやり方を非難する権利も持たない。 主を殺そうとしたのは許せないが、それを除けば憎しみも心の中に見当たらない。 容赦ない攻撃は戦闘において当然のこと。告げられた言葉の残酷さも、ああいう性格だとよく知っている――はずだった。 死神は、最後まで死神らしく振舞った。 あの状況下で武人らしい行動をとったり、友愛に満ちた感動的な言葉を吐いたりする姿を想像する方が難しい。 幻に打ちのめされることまではキルバーンも意図していなかっただろう。 胸に開いた虚無の穴にあらゆる感情が吸い込まれてしまったような、無限に砂漠が広がるような、空虚な想いが彼を支配している。 彼は幾千年も前から元々一人だった。 一人で大魔王を守り抜いてきた。 仕えてきた数千年こそが彼にとっての誇りだ。 そして、彼にとって主は絶対的な存在であり、対等の立場にはなり得ない。 立ち尽くす彼は淡々と呟いた。 「私は一人だ」 どことなく笑っているような口調だった。 当たり前のことを突き付けられただけだ。 主以外との他者との関わりなど所詮うたかたの夢に過ぎないと知っている。これからも主のために戦い続けるだけだとわかっている。 偽りでしかない存在は、永遠に本物を手にすることは無い。 この手で何かを掴むことはできない。 これが長い年月の果てにたどり着いた真実だとすると、あまりにも虚しい。 ルイズは反論しようとして口を閉ざした。 二人の友情の一部しか知らない彼女が、ただの間違いだったと過去を切り捨てるような真似はできなかった。 また、友情は確かに存在していた、一人ではないと主張したところで口先だけの否定にしかならず、意味を持たない。 (認めないわよ、そんなの) そう思うものの言葉が出てこない。ワルドも考えこみ、黙りこくっている。 重い空気の中ウェールズが立ち上がり、よろめきながら歩いて彼の前に立った。 意を決したように顔を上げ、息を吸って吐き出す。 「命の恩人にあのような態度を取ってしまった非礼……今さら許してくれなどとは言えぬ。すまない……!」 全て暗黒闘気やキルバーンのせいだと片づけられればよかった。 だが、黒い感情を増幅させ、弾けさせたとはいえ奥底にあったのは紛れもなくウェールズ自身の思いだ。 尊敬すると言いながら、同時に越えられぬ淵を感じていた。 その証拠に、内に流れる力がミストバーンの体と同質のものだと知った時、嫌悪し、恐怖した。 自分もあんな風になるのではないか。 忌まわしい体へと変貌するのではないか。 魂を認めたはずだったが、完全に受け入れたわけではなかった。 己の狭量さを認めたくなくて、国を守れなかった苦悩とともに全てを憎悪に向けてしまった。 ルイズ達に杖を向けたのは羨望があったためだ。 叶わぬ想いを抱いたまま勝ち目のない戦に赴いた、滅びた国の王族である自分。 それに対し、互いに手を取り合って光の中を歩んでいく者達。わけのわからない力で生かされ、自己が侵食され失われる予感に脅かされることの無い彼ら。 二人を祝福した気持ちに偽りはないが、それだけではないこともまた事実。 もっと早く心の闇と向き合っていれば、死神の罠に抗しえたかもしれない。ミストバーンが苦しむこともなかった。 ウェールズは己の弱さを認める言葉を吐き出した。 「僕は君を――憎んでいたんだ!」 しばらく沈黙が漂ってから返された言葉は、ただ静かだった。 「知っている」 負の思念から生まれた彼には馴染み深い感情なのだから、とっくにわかっていた。 いまだに距離が遠く隔たっていることを感じたウェールズは唇を噛んだ。 ミストバーンは、ウェールズがいまだに憎しみしか抱いていないと考えている。記憶を失っている間の戦いをはっきりとは知らないようだ。 自分の蒔いた種とはいえ、戦いを経て何も変わっていないのだと思うと、虚しさがウェールズの心を支配していく。 否定しようにも、言葉が渦巻き、口にできない。 ルイズも同じ想いを味わっていた。 彼が一人だと肯定しては、召喚した意味がゼロだと認めることになる。 (何か……何かできないの? 何か……!) ワルドがミストバーンを挑発するように声をかけた。 「元の世界に戻るのだろう?」 かすかに頷いただけで返事は無い。 「先ほど死神もルイズが鍵を握ると言っていた。もしかすると本体は一足先に魔界に帰っていたのでは――あの扉は魔界につながっていたのではないかね」 扉の向こうにピロロがいたというだけでは、ハルケギニアの別の場所かもしれない。 だが、あえて希望を示すことで彼の活力を呼び覚まそうとしたのだ。 「魔界に……」 ぼんやりとした口調は気力の火が消える寸前だと知らせている。 体力は徐々に回復しているが、意志の力はかえって減退しているようだ。 記憶を奪われ抵抗できない状態で散々痛めつけられ、瀕死にまで追い込まれた。 感情を爆発させ、意識を取り戻した直後に気の合う友人との殺し合いに突入した。 力を振り絞って勝利したと思いきや、友の正体が人形だったと知らされ衝撃を受け、訣別の時を迎えた。 己を奮い立たせて戦った反動で張りつめた糸が切れかけているのだろう。憎悪すら湧かない状態なのだ。 彼も扉の先が魔界である可能性は考えた。 だが、ルイズの精神力はゼロに近い。 小規模な爆発ならともかく、異世界に通じる十分な大きさの扉を作り出すにはかなりの力が必要となる。溜めるには時間がかかる。 こればかりは彼の力でもどうすることもできず、待つしかない。 記憶を取り戻すことができただけでも十分な収穫と言うべきで、ここはひとまず引き上げればいい。 彼も、ルイズも、ワルドやウェールズも疲れきっている。休まなければならないのは皆同じだ。 だが、ルイズは諦めきれなかった。 ここで退いては後悔する気が――壊れた何かがもう二度と戻らない気がした。 共に闘った今しかないと、心のどこかで声がする。 ウェールズの言葉を信じてルイズは立ち上がった。 「……ミストバーン」 振りむいた彼の胸元のルーンが鈍く光った。存在を主張するように。 「ボロボロのあんたにこんなこと言うのも気が引けるけど……あんたの力、わたしに頂戴」 「君の力はもう尽きたはずだ。それに、『虚無』は負担も大きくなるんだぞ」 心配するワルドに対しルイズは首を振った。 「一刻を争うんでしょ?」 ミストバーンは、疲れ果てているのに行動しようとする少女を眺めている。全く理解できないというように。 「無茶するのがあんただけの特権だと思ってんの? おめでたいわね」 ルイズは鼻を鳴らし、答えを促すように睨みつけた。 彼は決断を迫られていた。 一旦学院に引き上げ、体勢を立て直すか。 それともこの場で困難に挑戦するか。 冷静に利を考えるならば前者だが、キルバーンの台詞や心を砕かれた間に見た光景を考えると、一刻も早く主の元へ馳せ参じなければならない。 切れかけた糸にすがってでも進むしかない。 限界まで消耗し、疲れ果てても、どうしても譲れぬものがあるのだから。 ルイズがあえて後者を選ぶというのなら、答えは一つだ。 「力が欲しければ――」 目に見えぬものを差し出すように、手をスッと伸ばす。彼に残された最後の希望へと。 「くれてやる」 ルイズはにやりと笑い、腕を組んだ。 つかつかと歩み寄り、冷たい手を掴んでぎゅっと握る。 「その言葉、待ってたわ」 彼女が杖を掲げるのを合図としたように胸のルーンが輝き、授業の時のように二人をつないだ。 彼の体から力が抜け落ちる代わりに、ルイズの中に『虚無』の力の源が流れ込んでいく。 彼女は『始祖の祈祷書』を開き、ページをめくった。その手が途中で止まりかけたが、再び動かして詠唱を開始した。 ――ユル・イル・ナウシズ・ゲーボ・シル・マリ からっぽだったルイズの中に入った力はうねり、高まり、『虚無』へ変換されていく。 ――ハガス・エオルー・ペオース だが、足りない。 ミストバーンの方は先ほどまで消滅寸前だったのだ。いくらか体力を取り戻したとはいえ、このままでは消耗するばかりで失敗してしまう。 それを見ていたウェールズは首を振った。何もできないままなど耐えがたい。 彼に対する敬意が本物ならば、今ここで見せる時ではないのか。 「どうか……彼らの力に!」 祈るように手を伸ばすと、ルーンから伸びた光が指先につながった。体の内に流れる力がルーンを介して二人に送り込まれていく。 その光景を見たワルドは、ミストバーンがルイズに召喚された理由を悟りつつあった。 ミストバーンの体は暗黒闘気でできている。 どす黒い思念から成り立つ彼の体がルーンによってルイズに流れ込むことで、怒りなどを糧とする『虚無』のエネルギー源となる。 もしミストバーンが万全の状態で、ルイズが力を溜めて挑めば。 共鳴を利用し、互いに力を増幅し合うことができれば。 召喚者と被召喚者の関係に無いウェールズが力を注げた仕組みを解き明かし、次の段階へ進めることができれば。 想像を絶する効果を発揮するだろう。 それこそ、歴史をも変えるほどの。 大気の震えが膨れ上がり、弾けると、異なる世界をつなぐ扉が形成されていた。 その向こうに見えるのは暗黒の地――魔界。 彼は夢の世界を歩むような足取りで進んでいく。立っているのもやっとの状態だとわかるほど力が無い。 「ちょっと! 待ちなさいよ!」 扉に踏み込もうとしていた動きが止まる。 「何か言うことあるんじゃないの?」 「……さらばだ。ルイズ」 全く顔を動かさないまま機械的に言い放たれ、ルイズが凍りついた。激しい憎悪や殺意を向けられた時よりも、淡々と呟かれた一言の方が遥かに深く心を抉っていった。 彼女の中で急激に何かが湧き上がる。力が抜けそうになる足を必死で動かし、闇の衣を掴む。 その頬には涙が流れていた。期待していた言葉ではなく、一方的に別れの挨拶を告げられたことが引き金になったようだ。 「どこ行くのよ」 「再び……戦場へ」 主の元へ。 今さら何を、と言いたげな声にルイズはぶんぶんと首を横に振った。 「何が偽りよ? わたしはずっとニセモノに認められようとしてたわけ? じゃあわたしは道化ってことになるじゃない……横っ面ひっぱたくわよ!? 爆発(エクスプロージョン)で!」 たたみかけるように言葉をぶつけ、肩を震わせる。ワルドは途中まで頷いていたが、勢いのまま吐かれた暴言にぎょっとして目を見開いた。 使い魔に影響を受けたのだろう。貴族の令嬢とは思えない発言だ。 息を呑んだが反応は無い。 (……重症だ) 感情が麻痺しているのだろう。痛手からまだ回復していないようだ。 ワルドは苦い表情になるのをこらえきれなかった。単に強敵と戦ったところでここまで精神的に疲弊することはないはずだ。 (僕には不可能だ、あんな表情をさせるのは。……そもそも、他にできる相手がいるのか?) いるとしても限られているだろう。 キルバーンだからこそ出来た。相手がミストバーンでも――否、ミストバーンだからこそ死神としての流儀に従ったのではないか。 考え込みそうになったワルドの意識をルイズの声が現実に引き戻した。 「一人ですってぇ……? 勝手に自己完結してんじゃないわよ、ばかっ!」 涙だけでなく鼻水も盛大に流しながら、顔をぐしゃぐしゃにして叫ぶ。 衣にしがみつくようにして泣き出した彼女にワルドが慌ててハンカチを差し出した。だが、彼女は見向きもせずに熱い涙をこぼし続ける。 何故泣くのかわからない彼に、ルイズが肩を震わせながら言葉を紡ぐ。涙やその他を白い衣に落下させながら。 「友達を喪ったら、泣くものよ。でも、あんたは泣けないでしょ?」 影は涙を流さない。 正体を知ってもなお、友達だとルイズは言った。 そう言うしかなかった。 道が隔たり真実が明らかになったからといって、それまでの過程全てが否定されるわけではない。 もし彼女がミストバーンに杖を向けることになったとしても、何もかも打ち消すことはないだろう。 大魔王のために利用するつもりだったとはいえ、与えられたものがある。 安易に相手との関係を否定すれば、今までの自分をも否定することにつながってしまう。 「それに、あんたみたいな変な奴のために泣く人間なんていないに決まってるわ。だったら、わたしがあんたの代わりに泣くわよ! そして――」 しゃくり上げて言葉が途切れたルイズの髪を優しく撫でて、ワルドが呟いた。 「僕のルイズを派手に泣かせるとはけしからん男だな、君は」 幼子にするように桃色の頭をぽんぽんと叩き、目を鷹のように細め睨みつける。その中には今まで見たことのない激怒が燃えていた。 全身に傷を負い血まみれの壮絶な姿で、刺すような視線を向ける。 「君のために戦った者達の想いを踏みにじっておきながら、強者への敬意だと? 笑わせるなよ」 「何……!?」 記憶を取り戻すまでの戦いの様子をほとんど知らない彼は、ワルドの言葉が理解できず鋭い視線を向ける。 怒りに触発され、心の働きを取り戻しつつあるようだ。 「誰が理由も無く死神に挑むものか。その身を焼かれる覚悟で炎の中に踏み込むものか。確かに君は強いが、今ここに立っているのは自分一人の力だと言うつもりか? ……自惚れるな!」 キルバーンはルイズ達が戦おうとしなければ手出しはしなかった。無力感に打ちひしがれるのを見物し、ミストバーンの死を確認すればそのまま立ち去っただろう。 だが、ルイズは罠を止めるために戦いを選び、ワルドは彼女を守るため杖を向けた。 ルイズが危険を承知でウェールズの心を戻そうとしたのも、アンリエッタだけでなくミストバーンとの間の敬意を想ったからだ。 ウェールズもそれに応え、自身の闇を克服して炎の中に足を踏み入れた。 罠の中の彼を放っておけば、見殺しにすれば、それだけで片付いた。自らの手を汚すことなく憎い相手は滅んだ。 打つ手がなかった、仕方なかったと後で言い訳すればいい。 だが、それをよしとせず、炎の中に歩み入った理由は。戻れなくなる可能性を承知の上で、危険に身を投じたのは――。 先ほど憎悪を明らかにしたのも全てを受け止めるため。 ミストバーンが怒りとともに刃を振りかざしても、避けるつもりはなかった。首をはねられることも厭わなかったに違いない。 ルイズが感情を抑えこんだ震える声で告げる。ウェールズの火傷は彼を救出したためだと。 死神との戦闘によって負ったとばかり思っていた彼はわずかに目を見開いた。 散々焼かれただけに炎の苦痛がどれほど激しいものか知っている。 だからこそ、生命力の劣る人間が憎んだ相手のために命をかけて行動するなど信じがたい。 ウェールズが怒りを込めて静かに問う。 「君は、僕が負債を返済するような義務感で動いたと思っているのか?」 命を救われてしまった借りを仕方なく返すだけ。単に戦力として利用するためだと。 「……冗談ではない」 呟く彼の表情は高貴さと威厳に満ちていた。 「この私、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーの認める相手を侮辱する者は――たとえ君でも許さんぞ」 以前とは違う、自分や相手の抱える闇を知った上での言葉だ。 その眼光は険しく、魂を貫き通さんばかりだ。対等の立場にいる者として相手を見つめている。 誰であろうと偽りなどとは言わせない――そんな気迫に満ちている。 ルイズが顔を上げ、涙に濡れた目で睨んだ。 「あんたはバカよ。大バカよ! わたしも行くのに先走っちゃって」 「ルイズ!?」 「え?」 ワルドが目を見開いて叫んだ。 ミストバーンも虚をつかれ目を丸くした。 ただの人間が――それも肉体の脆弱な少女が、弱肉強食の則の支配する魔界に行くなど自殺行為だ。 ワルドが何か言おうとするより先に、照れたように微笑む。 「ねえワルド、新婚旅行の行き先は魔界でいいかしら?」 共に行くことが前提だと知ったワルドの顔に理解と納得、歓喜が浮かび上がる。彼は実に紳士的に一礼した。 「もちろんさルイズ。休暇届も出していたからちょうどいい」 さらに、ウェールズが悪戯を思いついたように笑いながら手を広げた。 「異文化交流や異国視察は後の戦いに役立つだろう。二人の邪魔などという野暮なことをするつもりはないゆえ、同行させてくれまいか」 ルイズとワルドは歓迎するように頷いた。異文化や異国どころではなく異種族かつ異世界なのだが、指摘することはない。 「血迷ったか! 危険が待ち受けているというのに……っ! お前たちにはバーン様のために戦う理由は無いだろう!」 「危険そのもののあんたに言われたくないわよ。大魔王のために戦う気なんてさらさらないわ」 「ならば何のために……!?」 「あんたの――あんたの作った手料理が食べたいもの。あんたを召喚した意味がゼロじゃないって証明したいだけ」 恥ずかしいことを言っていると彼女は自覚していない。 ルイズを守るようにすぐ傍に立ち、ワルドが告げる。 「言ったはずだ。大切な者を守るために力が欲しいと。魔界に君臨する大魔王の力――この目で見なければ気が済まない」 黒の核晶爆破直前に味わった無力感は心に深く刻み込まれている。 もっと強くなりたい。信念を抱くならばそれを貫き通すための力が必要だ。 あの時感じた衝動が、彼を駆り立てる。 一同の中では最も常識的なウェールズも同意するように頷いている。 「憎悪しか抱いていないと思われたままでは納得いかぬ。このまま立ち去るなど貴族にあるまじき行為だ」 ミストバーンへの態度を命がけで救出することによって償ったとしても、ルイズを傷つけたという負い目が残っている。 何より、彼女に心を救われた恩義を感じている。 そのため力になろうとしているのだ。 ハルケギニアに戻ってきた時、彼が本当に出発することとなる。 呆然とする彼の口から言葉が転がり落ちた。 「魔界を甘く見て――」 「そっちこそハルケギニアなめんじゃないわよ。あんたが不死身なら……わたしだって不死身なんだからっ!」 勢いよく叫んだルイズに彼はすっかり動転している。 「な……何故そうなる……!?」 フーケと戦った時、人間が脆弱であることを肯定したというのに。 そこでワルドが胸を張り、白い歯を輝かせながら微笑んだ。 「一人では弱くとも、誰かと共に在ることで強くなれる。……ということで、僕は君の微笑さえあればいくらでも不死身さ! ミ・レィディ」 「ひとまず落ち着きたまえ。子爵」 鼻息荒く目を輝かせながら宣言したワルドにウェールズが苦笑した。 (うう……っ!) 長年の間沈黙を命じられてきた彼が、弾丸のような勢いで言葉を叩きつけてくる相手に口で勝てるはずがない。 予期も理解もできぬ言動を繰り出す三人に彼は何と言えばいいのか分からなかったが、ルイズがビシッと指を突きつける。 「早くしないと扉が消えるわよ。……ダメって言うなら別にいいわ。今のあんたなら――この通り!」 「あっ?」 細い腕で、思いきり押す。 体勢をわずかに崩した彼をウェールズとワルドが絶妙の連係で扉の中へ突き飛ばした。 吸い込まれた彼を追って、彼女はためらいなく飛び込んだ。衣の袖を引っ張り、手を掴む。 「あんたはさっき“一人”って言ったけど、メイジは召喚した相手と一心同体なのよ」 信じられないというように目を瞬かせた彼に眼をギラリと光らせて言い放つ。 「知らなかったの? わたしからは逃げられない……!」 彼が一人で行こうとするならば、追いかけるだけだ。自分の存在を認めさせるために、何度でも。 残った二人も頷きあって同時に飛び込む。光が弾け、思わず瞼を閉ざした。 硬い感触に襲われたため目を開くと、彩りに乏しい荒涼とした大地が広がっていた。 黒雲に閉ざされた空、煮えたぎるマグマが不毛の世界だということを実感させる。 「後悔しても知らんぞ……」 呆れたような力の無い呟きにウェールズが不敵な笑みを浮かべた。 「しないさ」 ワルドがルイズの服についた埃を払い、すぐそばに立つ。 「さて、まずは大魔王の居城に行かねばな」 傷が塞がり表情にも生気が満ちている。扉をくぐる際に精神力や体力がわずかに回復したのかもしれない。 ルイズが笑い、ミストバーンの隣に立った。 「わたし、ずっと“ゼロ”って呼ばれてきたのよね。……近いと思わない?」 ゼロのルイズと一人のミストバーン。 ゼロと一。 隣り合う存在。 彼女は自分の道を進んでいくつもりだ。 今はまだ力が足りないが、いつか肩を並べることができるように。 「今のわたしが“ゼロ”じゃないなら……あんたも“一”じゃなくなるかもしれないわね?」 彼はふと疑問に思った。 もし自分の正体を知ったとしたら、ルイズ達は――そして、キルバーンは嘲るだろうか、と。 彼にとってのキルバーンは仮面をかぶった陽気な死神であり、ピロロではない。 友情が本物だったのか結論はまだ出ないが、いつか答えが分かる日が来るのだろうか。 先ほどのルイズの言葉が蘇る。 『あんたを召喚した意味がゼロじゃないって証明したいだけ』 おそらく、答えはこれから見つけるしかない。 彼の内心を見透かしたかのように、ルイズから言葉が届いた。 「そういえば……前思ったわ。あんたたちは、お互いに鏡みたいなものなんじゃないかって」 反対かつよく似ている――対称的な存在。 今までの、そしておそらくこれからも彼の在り方を映し出すもの。キルバーンの方も同じかもしれない。 だとすれば、倒して全てが消えるわけではない。 対極の立場でも共感を覚えたならば、相手の像を残したまま進んでいくことになる。 鏡像(ゼロ)と自身(一)。 互いにゼロであると同時に一でもある、とても近い存在。 全てを受け入れたわけではないが、知った以上は向き合うだけだ。 行動しようとせず、何も知らないまま過ごすことも――認めたくないものから目をそむけ、遠ざけることも――主が嫌う行為だろうから。 胸の中で主の名を呼ぶ。 すると、それに応える声が聞こえた。 『ちょうどよいところに戻ってきた。つい先ほど面白いことが起こったばかりだ』 その声をルイズ達も聞き、一斉に彼に視線を向けた。 (ああ――) 力が湧き上がるのを感じる。消えかけていた炎がたちまち激しく燃え上がる。 『早速働いてもらうぞ。お前の力が必要なのだ……ミストバーンよ』 目が輝き、全身から放たれる空気が変わる。力に満ちたそれへと。 「仰せのままに。バーン様」 黒い霧の下、久しぶりにわずかに笑みを浮かべた彼にルイズも微笑んだ。 「“べほま”かけられたような顔しちゃって。やっぱり不死身――」 「大魔王様のお言葉はすべてに優先する……!」 湧き立つ闘志が痛みを忘れさせる。 戦いしか知らぬ存在ならば、心が折れぬ限り戦うだけだ。何度でも、何度でも、主のために。 彼らの様子を見たウェールズが苦笑し、杖を抜く。 「そこまでにしておきたまえ。ここは歓談するのに相応しい場所ではないようだ」 風の刃が飛び、敵を切り裂く。ミストバーンも爪を伸ばし剣を作る。 いつの間にか周囲には見たこともない魔物の集団が現れていた。倒さなければ大魔王の居城へは戻れない。 魔物たちを睥睨し、ワルドがひげをなでた。傍らに立つミストバーンに呼びかけるように言葉を紡ぐ。 「まったく……可愛いルイズや君と一緒にいると、楽しくてたまらないな! どんな敵にも立ち向かう勇気が湧くのだから!」 ルイズを守るための戦いがさらに厳しいものになると知っていながら、彼は高らかに笑った。 昔、大切な家族を喪い一人だと絶望した。だが、ルイズによって孤独(ゼロ)の影は払われ、前に進めるようになった。 ウェールズも一度は自分を見失いゼロになったが、己を取り戻し一人の人間として再生を果たした。 ゼロから一へ。 彼らを見てルイズは世界扉の呪文を詠唱した時の様子を思い返した。 『始祖の祈祷書』のページをめくった時にほんのわずかな間、別のページが光り、書いてあった呪文の “天候”という部分だけが見えた。 暗くよどんだ魔界の空を見上げる。 この黒雲をも晴らすことができるのだろうか。 そんなことは不可能としか思えないが――。 (こいつとわたしなら――) 大魔王の腹心の部下と、伝説の『虚無』の使い手ならば。 『閃光』の二つ名を持つ風のスクウェアクラスのメイジに、アルビオン王国皇太子もいるのだ。 杖を構え、叫ぶ。桃色の髪が風になびいて逆立った。 「さあ、行くわよっ!」 ルイズが“ゼロ”ではないと証明できたのか。 ミストバーンは“一”ではないと感じることができたのか。 彼らが魔界でどんな光景を見、どんな影響を与えたのか。 召喚した少女。 彼女を愛する男。 後に男からレコン・キスタの情報を入手し、戦いに身を捧げた青年。 そして、魔界を照らす太陽が答えを知っている――。 ゼロの影~The Other Story~ 『ゼロと一の物語』 完 前ページ次ページゼロの影
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5979.html
前ページ次ページ鋼の使い魔 夕陽に染まるアルビオン、ロサイス港。 見下ろす地平線を背に、艤装を完了した『レキシントン』号の甲板上に主要各艦の長が整然と不動のまま並んでいた。 彼らの前に設えられた台上には『レキシントン』号艦長ボーウッド。今回の親善艦隊の総指揮を貴族議会から任命されたジョンストン卿。 その他旗艦参謀員が並び、目の前に並ぶ艦隊構成員達を視界に収めている。 ジョンストンは一歩踏み出して声を張った。その声は制音【サイレント】の応用によって甲板上はもとより艦隊各艦へと伝えられ、総ての船員達に聞こえるようになっている。 「諸君。愚かなる旧アルビオン王家との輝かしき戦いを乗り越えた英雄諸君。ここに停泊する戦列艦30、非戦列艦20にて私の声を聞いている英雄諸君」 …アルビオン内乱の折、ジョンストンは自らは決して前線に出ることはなかった。レコン・キスタに所属し、王家に反目はしたものの、 明らかに積極的に王軍打倒に参加しなかった。 彼は日和見に徹し、今、ここにいた。 「我々はロサイスを出発し、トリステイン領空上にてかの国の艦隊と合流した後、トリステイン中部からゲルマニア南部、そしてそこより南西に進路を取り、 帰国するものである。かの国の者たちに我々神聖アルビオン帝国が、始祖の権威に安座し怠惰に国を治めるあの者らへ、我らが彼らに劣る事無く、 優越する国の品格を有するものである事を示して欲しい」 訓示が終わるとアルビオン式の敬礼と足を揃える音が乱れる事無く木霊する。 ジョンストンが下がり、変わってボーウッドが前に出た。彼は自身も敬礼し、台上に向かった。 「当艦各員。此度の航路は当艦としては初めてとなる。さらに新艤装後とあっていくつかの面において操作上の変更をきたす箇所もあるだろう。 だが諸君らはいささかの懸念を持つ必要は無い。いつもどおりにやってくれ。 もっとも…船上の常だ、『不測の行動』も迫られるだろうが、この船で共に過した各員の冷静沈着なる行動に期待する。以上だ」 艦長の敬礼に答えるように、眼前の船員達の敬礼が返される。 それは乱れはおろか、たった一つの大きな音として帰ってくる。ボーウッドは我知らず満足げに頷くのだった。 台上で訓示や指示が行われる中、黄昏る船の陰に入るようにして集団を見つめる一人の男がいた。 お決まりの魔法衛士大隊兵制服と、唾の広く取られた羽帽子だ。…しかし今は、帽子が深く被り直されていて顔色が窺えない。 号令とともに船員達が解散し、台上にいたボーウッドとジョンストンも艦橋に向かう通路に向かう。するとワルドが当然のようにその中に入った。 「見事な演説でしたなぁ、艦長、総司令殿」 嘗ての彼を知るものがいれば随分と衝撃を受けるだろう、実に剣呑とした調子でワルドが二人に声を掛ける。 それにボーウッドは憮然としていたが、ジョンストンの方は機嫌よさ気に答えた。 「おお、子爵殿。正直言って、緊張しっぱなしだったよ。壇上に君を乗せられず閣下に悪かったと思っているくらいでね」 「とんでもない。私はあくまで客将。『不測の行動』までなんの配役もない、ただの乗り合いだ男に過ぎません。そうですな、艦長?」 ボーウッドは押し黙ったまま、視線を通路に向けている。 「…親善訪問の『概要』は委細承知している。だが少なくともラ・ロシェールの合流地点までは子爵、君はまさに乗り合いだ客人に過ぎない。そこをわきまえてもらう」 「結構結構。大いに結構…」 くっくっく、と篭る笑い声がワルドから聞こえて、ボーウッドはさらに表情を渋くするのだった。 その日、アルビオン空軍艦隊は一等戦列艦『レキシントン』を旗艦としてロサイスを出港。ラ・ロシェールまでの航路を夜間航行で進むのだった。 『開幕、長い一日』 夜の帳が下りた、トリステイン魔法学院。 既に夕食の時間も終わり、後はもう寝るだけ。勿論、眠らずに思い思いに夜を過す者も多い。 幸か不幸か、そんな眠らない住人の一人にギーシュはいた。ただ、普段であればそれはモンモランシーか自分の部屋、なのだが、今はコルベール研究塔前にいる。 目の前には木材に布を張った大きな天幕の下で、掲げられたランタンに照らされる半壊状態の『飛翔機』があった。 ギーシュが昼間、ちょっとした好奇心から『飛翔機』を動かした時、誤った操作により完成したはずの飛翔機に早急の修復を必要とする損傷が加えられたのである。 具体的には、風を掴むために計算されて作られた鉄枠が歪み、そこに張られた布が破け、後部にある噴射推進器の二本一組が使えなくなっている。 大慌てで駆けつけたコルベールとギュスターヴだったが、結局のところ夜も更けた今になっても修理が終わらずにいた。 ギーシュは指示されて資材置き場から織られたままの白い布生地をせっせと持ち込み、コルベールは飛翔機のフレームから羽布を剥し、 ギュスターヴは新たに鋼材を取り出して足りない部品を作っている。 「ミスタ・コルベール…まだ終わりませんか…?」 当事者とはいえギーシュはかなり疲れていた。 「機体前面を作っている鋼材を凡そ全て点検しなければいけないので、もう少しですかな…」 そう言ったコルベールは剥ぎ取った鉄の棒を見定め、使えるものは歪みを直し、使えなさそうなものをより分けている。 「明日からアンリエッタ王女の婚礼儀式が始まるから、学院全体の人も減る。そのうちに飛行実験をする予定なんだよ…」 ため息も漏れそうなギュスターヴから『お前のお陰で余計な仕事が増えたじゃないか』といわんばかりの雰囲気がギーシュに伝わってくる。なんとも気まずい。 「う…で、でもさ。誰が見たってこんなもので空を飛べるなんて思わないよ。…いい所、フライフィッシャーの模型か何かにしか見えないじゃないか」 と抗弁するギーシュ。ちなみに『フライフィッシャー』とは、アルビオンの洋上軌道上に生息しているといわれる伝説上の生き物である。 その姿はロマリア南方の海で見られる巨大なエイに似ているという…。 半刻ほどしてから、流石に余り長い間引き止めておくのはかわいそうだからとコルベールはギーシュを解放してあげるのだった。 …結局、フレームの修理が終わったのが手元の時計の針が日付を越した頃だった。 「明日の朝一番で布を張り直せば、大体正午頃には飛行実験が出来ますな」 眼鏡を外して目頭を解すコルベールと、腰を伸ばしてトントンとするギュスターヴ。 傍目には大の男二人が奇怪な玩具をせっせとこさえているようにしか見えない。実のところ、学院に務める教職者たちは殆どがそのように思っている。 間抜けなコルベールめ、また奇怪な道具を作って遊んでいるな。と。 家を食い潰して道楽に励んでいるのだから、一般的貴族の価値観から見ればそのように見るのも当時は仕方のないところだった。 ギュスターヴはそっと扉を開けて、ルイズの部屋へと戻ってきた。 寝台では既にルイズが静かに寝息を立てている。 閉じきらないカーテンから漏れる、変わらぬ明るさで双月の光がルイズの頬に掛かっていた。 起こさぬ様に、そっと寝台の脇に丸められたマットを広げて、横になる。 「んぅ…」 「ん…?」 起こしてしまったか、と思ったが、むにゃむにゃとルイズから寝言が漏れている。 「あんたは……私の…使い魔……なんだから……」 …どうやらギュスターヴを夢に見ているらしい。せっかくの夢だというのに、眉をひそめて噛み付きそうな顔をしていた。 「……主人の……傍に……」 ギュスターヴは暫くルイズの寝相を見てから、やがて埃も立たない様にそっと頭を撫でた。綿のような髪が流れ、次第にルイズの眉間の寄り上がりが解れ、 相から棘が抜けて穏やかなものへと変わった。 「ん……」 ルイズが緩く寝返りを打つと、部屋に戻った頃と同じく静かな寝息が聞こえるようになった。 「嬢ちゃん最近はずっと机にかじりついてっから、色々と溜ってるんだろうよ」 壁に立掛けたデルフはそう言った。 「…ま、仕方が無い。婚礼の儀式とやらが終わったら、たっぷり面倒見るさ」 身に帯びるものを外して身体を伸ばし、静かにギュスターヴは眠りに付こうとした。 「相棒」 だが、再びデルフがまどろむ間際に声をかける。 「……なんだ?」 「相棒は何時まで使い魔やる気なんだい?嬢ちゃんが死ぬまでかい?」 うっすらと目を空けて、ギュスターヴは答えた。 「…ルイズが自分の道を見つけるまではここにいる。少なくとも」 「じゃあよ、そいつが見つかるまでは帰ることが出来ても帰らねーって言うのかい」 脳裏にタルブに住まう背の曲がった老人が思い出されては、消えた。 「そうおいそれと帰れるわけでもないだろう。…時間はあるさ」 幼い頃、自分が死んでも大地に還るアニマすらないのだ、とどこかで諦観した。 その思いは年を経てもギュスターヴの心の中に残っていた。深淵な洞の様な孤独に浸りながら、せめて今生きることを謳歌して、死ぬ時は死ぬ。そう決めていた。 なら、この生まれた地より遠く離れた異界だって生きるに都合が悪くもない。 「どこで何をしようと俺の勝手さ…なんて言うと、レスリーが怒りそうだがな…」 「なんか言ったか相棒?」 「なんでもないよ。…寝るぞ、起こすなよ」 どこか自嘲気味に笑うと、ギュスターヴは再び眠りにつくのだった。 ルイズはその時、一人小舟の上に居た。 妙だ。さっきまでギュスターヴが一緒にいたはずなのに。 「ここ…どこ…?」 自分の乗る小舟はオールも竿もなく、水の上を流れていた。 「ギュスターヴー、近くにいるんでしょー?」 四方に向かって使い魔を呼んでみても、何も返ってこない。地平の先はインクを落としたようにぼやけていて、響く音を吸い込んでいく。 「ぅー…」 恨めしげに鳴いてみても何も届かない。辺りは暗く、静かだった。 「もー、どこなのよここはー!」 苛立たしく水面をぱしゃぱしゃと手で叩いてみても同じだった。空は薄暗く、水面が鉛色に揺れるのが見える。 ルイズが途方にくれていると、薄暗い水の流れの先で、仄光る何かがこちらへと流れてくる。 それはルイズの小舟まで来ると流れてゆく事無く、小舟と併走するようにずっと近くに漂っていた。 「なにこれ…?」 ぐっと手を伸ばす。光る何かに手が届き、拾い上げた。 …それは濁りの一切ない大理石か何か、真っ白な石材から削りだしたと思われる卵のイミテーション(模造品)だった。 「綺麗…」 感嘆するルイズの両手に収まる大きさの卵は、石材特有の滑らかな手触りが掌に吸い付くようだった。 そしてそれはどこか…脈打っていた。手のひら越しに仔犬を抱いた時のようなしっとりとした暖かさが広がっていく。 それを感じると、今置かれた場所がとても淋しいものに思えた。暖かな卵の温もりが逆に心に安らぎを与えてくれる様でもあった。 孤独の中でルイズはやがて、親鳥が卵を抱くように卵のイミテーションを抱き込んで眠った。 小舟はそのまま闇の中を流れていく。夢の中で眠るルイズを覆う闇を、更に濃くしながら…。 翌日。朝食の時間が終わった頃、学院に王室の紋章の入った馬車がやってきた。 受付をする衛兵に馬車に乗っていた王宮の役人が告げる。 「ラ・ヴァリエール公息女ルイズ・フランソワーズ殿をお迎えに上がりました」 同じ頃、部屋でルイズは鞄に始祖の祈祷書を入れ、指には秘かに『水のルビー』を填めていそいそと支度に掛かっていた。 「これで準備はよし。…祝詞の原稿はもったし…」 ルイズはこれから王宮に上がり、諸侯と共に婚礼の儀式に参加するのである。 まず、夕刻から始まる諸侯の集まりに父ラ・ヴァリエール公と共に出席して翌朝、アンリエッタの一団と共にゲルマニア帝都ウィンドボナへと出発し、 彼の地で行われる式典で祝詞を読むのである。 ルイズの部屋をノックする者がいた。 「開いてるわ」 普段ならここでシエスタがやってくるのだが、帰省中のため別のメイドがやってくる。 「ミス・ヴァリエール。お迎えの方がお待ちになっています」 「もう少し待たせて頂戴。それほど時間はとらせないから」 そう言ってルイズはメイドを素通りして部屋を出て行く。 「あ、あの、ミス・ヴァリエール!何処へ?!」 「貴方は迎えの馬車まで行って待つように伝えなさい」 つかつかと足取り早くルイズは学生寮を出て行った。 コルベール研究塔前では晴天の下、修理の終わった飛翔機に布を張り直す作業に追われていた。 骨組みの上でピンと張られた布が継ぎ目を重ねるように貼り付けられている。継ぎ目から布が剥げるのを防ぐ為だ。 鋼材から作った骨組みに布を合わせ、しわやたるみなく鋲や接着剤で貼り付ける。鋲も飛行中に緩んだりしないように、接着剤を塗りこんで骨組みに打ち付けている。 「ギュスターヴ!」 ルイズはコルベール研究塔に寄って塔前の広場に広げられた作業現場にいるギュスターヴを呼んだ。 飛翔機の前で梯子に登っていたギュスターヴは振り向くとルイズに手を振り、梯子から降りて近寄った。 「今日はもう王宮に行くんだろう?」 「そうなんだけど…暫く部屋を空けるから、顔見ておこうと思って……」 「ほぅ…」 顎に手を当てしたり顔のギュスターヴに、ルイズはカッと顔を崩す。 「なっ、何よ?!ち、違うんだからね?連れて行けない使い魔がかわいそうになっただけなんだからね?!」 「はいはい、判ってるよ。…自分の使い魔なら信じてくれよ」 「…うん。……ところで…飛ぶの?これ」 ルイズが怪訝そうに指差す飛翔機はまだ羽布の張り直しが半分ほどしかされていない。噴射推進器は予備を装填され、噴射口はゴミが入らないように今は布を縄で縛って蓋がされている。 「…飛ぶらしい。本当は昼前には飛ぶ予定だったんだがな」 「ねぇ、帰ってきたら怪我してました、とかだったら承知しないんだからね!」 判ってるよ、と言ってふと、ギュスターヴは作業現場の台に掛かっている懐中時計を見た。 「もうそろそろ行かないと不味いんじゃないか?」 「え?……そうね。御者も待たせてるし、もう…行くわ」 ルイズは軽く手を振ってその場を後にしようと歩き出した。 「ルイズ」 ギュスターヴに声かけられ、振り返く。 ギュスターヴは腰に手を当て、笑っていた。 「いってらっしゃい」 ルイズはハッとして、暫く困惑したが、にっこり笑って、 「いってきます」 そしてそのまま振り返らず、御者の待つ正門まで歩いていった。 前ページ次ページ鋼の使い魔
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/132.html
四 奇跡の草原 前ページ次ページゼロの影 学院に戻ったルイズはオスマンから呼び出され、『始祖の祈祷書』を渡された。 王女とゲルマニア皇帝の結婚式の巫女に選ばれたため詔を考えなければならない。 意気込んだもののすぐさま挫折した彼女は使い魔に助けを求めかけて即座にやめた。どう考えても祝福の言葉など持っているとは思えない。 うー、あー、と妙な声を上げながら床やベッドを転げ回る彼女の奇行にも一切関せず読書に耽っている。その傍らには数冊の書物が置いてあり、扱っている内容はバラバラだ。 今読んでいるのは始祖ブリミルについての本らしい。 約六千年前に活躍したハルケギニアで神の如く崇拝される偉大なメイジであり、その生涯や魔法は謎に包まれている。 魔界の魔法と始祖が操ったとされるものには似た部分があるため興味をそそられるところだが、書物は伝説の偉人として扱っており、どこまで確実かわからない。 何しろ彼の魔法で天地までもが鳴動したというのだ。神格化され大げさに伝わっている部分もあるだろう。 天空を思わせる模様が刻まれた表紙の本を閉じ、新たな一冊を手に取る彼を見てルイズの血管は切れそうになった。 (ななな何よわたしがこんなに苦労してるってのに自分は優雅に読書なんていい身分じゃない。そんなに大魔王さまのお役に立ちたいってわけ!?) と憤ってみたところで真面目に肯定されるに決まっている。 ますます釈然としないものを感じたルイズはささやかな抵抗を試みた。彼を連れて中庭に出た後、質問攻めを始めたのである。 青空の下に連れ出して少しでも開放的な気分にさせ、情報を聞き出そうというのだ。 まずは返事する確率の高い戦闘に関する質問――特に呪文について尋ねた。 こちらが知識を提供するだけでは不公平だ。前々から彼の世界のことも知りたいと思っていた。 すると、ほとんど喋らない彼の代わりに大魔王が質問に答えた。 一般的な火球呪文や氷系呪文といったものから天候を操る呪文まで様々なものを説明され、ルイズの目が輝く。 ミストバーンへの質問の大半は沈黙に撃墜されたが、答えが返ってきたのは大魔王の偉大さについての質問だった。 「バーン様をお守りするのが、私の使命なのだ!」 という高らかな宣言にはじまり、数千年の間仕えてきたと誇らしげに語られたルイズは妙な疲労を覚えた。 ワルドは愛情を向けてくれるが、召喚した使い魔ではない。 普段傍にいる相手が全く心を許さないと面白くない。 気を取り直して情報を探るべく質問を続け、ずっと気になっていたことをぶつける。 「あんたがいた世界――魔界って太陽が無いんでしょ? どうして?」 答えたのはやはり大魔王だった。 かつて世界は一つであり、人間と魔族と竜族が血で血を洗う戦いを繰り広げていた。 延々と続く争い憂いた神々は世界を分け、別々に住まわせることにした。脆弱な人間は地上に。強靭な体を持つ魔族と竜族は魔界に。 魔界にはあらゆる生物の源である太陽がなく、荒れ果てた大地が広がっているだけである。 ならば魔界は真っ暗なのかと尋ねると否定された。 数千年前に作られた人工の太陽が光源となり魔界を照らしているが、昼間でもかすかな光しかなく生命を育むほどの暖かさは無いのだという。 地上で見るものと同じ太陽を作り出すことはできず、彼らは太陽を手に入れようとしている。 ルイズは話を聞いてうーん、と考え込んだ。 馬の遠乗りで丘に登り気持ちのいい風を感じることも、光を浴びながら美味しいお弁当を食べることもない世界。 花々の無数の色彩や木々の緑、空の青も雲の白もない世界。 頭で理解しても実感は湧かない。 もし魔界に太陽があって地上と同じ豊かな地であれば、大魔王は何を望むだろうか。 試しに尋ねてみると「花見酒というのもいいかもしれんな」と笑いながら言われたが、どこまで本気かわからない。 話に熱中していたルイズは声の大きさに気を遣うことを忘れていた。 そのため、メイドの一人――シエスタが聞き耳を立てていたことに気づかなかった。 謎が多いミストバーンについての情報は生徒だけでなく使用人も欲しがっている。 彼女は舞踏会の時に聞いた会話を厨房の料理人や仲間に知らせたが、一笑に付された。「見た目からして闇っぽいのに太陽を求める奴に従うわけないだろ」というのである。 嘘じゃないと言い張っても聞き入れられなかったシエスタは意気込んでさらなる情報を集めようとしていた。 そして―― 「きゃああっ!?」 気配を感じたミストバーンの爪に危うく刺されかけた。皮膚一枚を隔てたところで奇麗に止まっているのは見事としか言いようがない。 「すごい、加減がずいぶん上手くなったのね。レベルアップしたんじゃない?」 使い魔の影響を受けて感覚が麻痺してきたようだ。 「……私が?」 彼は意外そうに己を指差した。褒められて反応に困っているらしい。 間違った方向に心温まる会話を繰り広げる二人にシエスタがおずおずと詫びる。 「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした! 太陽についてお話ししているのを聴いてしまいました……」 盗み聞きされたと知ってルイズは渋い表情になったが、そもそもこんな場所で大声で喋っていたのが悪い。 シエスタが再び丁寧に謝罪し、お詫びの気持ちとして故郷に行くことを提案した。 「すごくきれいな夕焼けの見える草原があるんですよ。おいしいシチューも」 その草原はあまりの美しさから『奇跡の草原』と呼ばれたこともあるらしい。 ルイズは迷ったが、素晴らしい光景を見ればインスピレーションが湧いて詔の文面が思い浮かぶかもしれない。 ミストバーンも主の目の保養になればと承諾し、ワルドも加えてシエスタの故郷――タルブの村に行くことに決めた。 だが、出発しようとしたその時、彼らの前に現れた人物がいた。 ずずっと地面から黒い首が生え、パチリとウィンクしてみせたのだ。 姿を現した人物は黒い衣に全身を包み、仮面を被っている。帽子にある輝くラインの数は不吉な十三だ。奇術師のような格好だが、手には鋭く光る鎌が握られている。 不気味な男にワルドとルイズが杖を向けたが、相手は敵意が無いことを示すように手を振ってみせた。 珍しいことに、ミストバーンがわずかに弾んだ口調で相手を呼ぶ。 「……キル!」 「久しぶりだねミスト。元気にしてる?」 「お前もハルケギニアにいたとは……!」 ルイズは事態についていけず口をあんぐりと開けている。 友好的な雰囲気が漂うなか、ワルドは警戒に満ちた目で尋ねた。 「何者だ」 キルと呼ばれた男は向き直り、深々と一礼した。 「初めまして。ボクはキルバーン。死神とも呼ばれているんだ。ミストの親友だよ」 ルイズがミストバーンの方を見ると、肯定するように頷いてみせた。 「嘘、あんた友達いたの?」 失礼な台詞も意に介さず、二人は喜んでいるようだ。 (こういうのを感動の再会って言うのかしら?) そんなことをぼんやり考えるルイズの前で会話が進んでいる。もっとも、口を動かすのはほとんどキルバーンの方だったが。 「キミがいなくなってしばらくしたらボクも召喚されたんだ。そこでバカンス気分で楽しんでたってわけ。バーン様に協力する義理はあっても義務はないからね」 キルバーンを召喚した人物はルイズと違って放任主義のようだ。 「戻れるかどうかもわからんのに気楽だな」 呆れたような声にキルバーンは目を瞬かせ、クスクス笑った。 「ボクはキミとは違うんだ。キミはバーン様のおそばにいられなくてストレスたまってるだろうけど、こっちはエンジョイしてるよ。ねえピロロ?」 キルバーンがそう言うとどこからともなく一つ目の小人が姿を現し、ぴょこんと肩に乗った。 ルイズが目を丸くして声を上げる。 「可愛い!」 「ピロロっていうんだ。よろしくね」 魔法使いの格好をしたつぶらな瞳の小人はキルバーンの使い魔であるらしい。明らかに怪しく物騒な得物を持つキルバーンと違い、実に心和む姿だ。 ワルドは心を動かされた様子も無く警戒を解かぬまま客人を見つめている。 「キル、魔界に戻る手がかりは見つかったか?」 キルバーンはやや大げさに肩をすくめてみせた。 「……さあ? 真面目なんだからミストは。ま、異世界で一人っきりじゃないってわかったわけだ……嬉しいかい?」 返事は沈黙だったが、眼の光が普段より明るく輝いているため喜んでいるようだ。 友人と言うのは嘘ではないのだろう。 敵に対して一切容赦のない彼だが、相手によっては人間のような感情を見せることもあるらしい。 「それより、これからお出かけするように見えるけど?」 タルブの村に夕焼けを見に行くと告げられ、ピロロもすっかり乗り気になったようだ。 「行きたいなあ。お願い、キルバーン」 「わかったよピロロ。観光しようじゃないか」 ルイズは心底嫌そうな顔をした。 白と黒で対になっている、バーンの名を冠する二人は目立ちすぎる。村人たちもさぞかし反応に困るだろう。 だが、承諾しなければ大変なことになる予感がしたため渋々頷いた。 ワルドはルイズよりもいっそう渋い表情になっている。愛する少女との甘美なる一時を邪魔されそうな予感がするためだ。 シエスタは不審人物に疑いの目を向けたが、ミストバーンの友人だと告げられると「ああ、道理で」と納得して頷いていた。 類は友を呼ぶのですね、と呟く彼女にルイズは複雑な心境だった。 さらに、形式的とはいえ二人が夫婦と知らされたキルバーンから 「あまり褒められた趣味じゃないねェ」 と呟かれたためいっそう心が沈んだ。 変な人物から遠まわしに趣味が悪いと言われるのは相当堪える。 (明らかに怪しい奴に言われたくないわよ……) 心の中で力無く呟いたルイズは、肺の奥底から溜息を絞り出した。 実際の夕焼けを目にしたルイズは言葉を失い、ただ見とれていた。 常に飄々としているキルバーンも感嘆したように口笛を吹く。 草原は燃える炎の色に染まり、沈みゆく太陽は普段見るものの何倍も美しかった。 その輝きは暖かく優しく照らすだけではなく、弱い者を容赦なく焼き尽くすようにも見えた。 奇跡の名に恥じぬ凄絶な光景を大魔王も気に入ったようだ。 さらに、反対側の山から昇る朝日も別の美しさがあるのだと言う。 「この光景こそが宝物だって思うわ」 食事を告げに来たシエスタがしみじみとしたルイズの言葉に嬉しそうに頷く。 いつものように沈黙しているミストバーンは主と地上に来た時のことを思い出していた。 『何千年後になるかはわからぬが……あの太陽は魔界を照らすために昇る』 偉大なる主は手で太陽を掴み取る仕草をしながらそう語った。 さらに思考は過去をたどり、主との出会いまでさかのぼる。 『お前は余に仕える天命をもって生まれてきた』 全てはそこから始まった。 どれほど永い時を生きても、何があっても、その言葉を忘れることはないだろう。 彼らは夕陽を見る間、確かに同じ思いを共有していた。 ただ、キルバーンだけはそこまで心を打たれた様子は無く、草原をあちこち歩き回っていた。 興奮も冷めやらぬままシエスタの家で名物のシチューを食べたルイズは目を輝かせながら舌鼓を打った。素朴ながらも貴族のぜいたくな舌を満足させるほどの味らしい。 ワルドは喜ぶ彼女を実に幸せそうな顔で眺めているが、キルバーンがいなければいいのにと思っている。 案内してくれたシエスタや二人の仲を邪魔する真似はしないミストバーンは仕方ないが、キルバーンは明らかに異分子である。 ワルドの内心も知らず、シエスタが恐る恐る二人にも食事を薦めた。 あっさり断られた彼女が落ち込んでいると、なんと大魔王その人が語りかけてきた。 「数千年生きればいくら贅を尽くした食事でも飽きもする……そのような料理を味わってみたいものだ」 たちまちシエスタの顔が明るく輝いた。 「じゃあ作り方教えますね! 実際に作る所を見た方がいいですよね……ミストバーンさんも一緒に作りませんか?」 ルイズとワルドがシチューを噴き出しそうになり、かろうじてこらえる。ルイズは慌てて飲みこんで必死の形相でシエスタを止めた。 「何言ってんの!? こいつが料理なんてドラゴンが裁縫する方がまだマシだわ!」 ワルドも激しく頷いて心から同意を示した。 彼は暴言にも動じず主からの指示を待っている。 「作り方だけ教えればよい……と言いたいところだがあえてお前に作らせるのも面白いかもしれんな」 (よっぽど退屈してるのかしら) 腹心の部下がやり遂げると信じているのか、奮闘する様を見て楽しもうと思っているのか――ルイズにはどうも後者に思えてならなかった。 「じゃ、決まりですね。最高の一品を作りましょう!」 「たまには逆らいなさいよ……」 その忠誠心の十分の一でいいから自分に向けてほしいと思いながら、ルイズはテーブルに突っ伏した。 一方、キルバーンは真剣な光を目に浮かべ、親友に顔を近づけた。 「ねえミスト、キミに訊きたいことがあるんだ。とっても重要なことだから、よく考えて答えてほしい」 重々しい口調にシエスタが唾を呑み、ミストバーンが目を光らせる。 キルバーンは真面目そのものの声で尋ねた。 「どんな柄のエプロンを着るつもりだい?」 「そんなの着るわけないでしょおおおっ!?」 即座に叫んだのはルイズ、こらえきれずシチューを噴き出したのはワルド、興味津々の顔をしているのはシエスタだ。 胸に手を当てて発言する。 「わたくしのものでよろしければ――」 「何を言ってるんだ!」 立ち直ったワルドが勢いよくテーブルを叩いた。食器が跳ね、真剣な語調にルイズが息を呑む。 「彼がエプロンを着たって嬉しくとも何ともない! ここは僕の可愛いルイズが着るべきだろうどう考えても!」 「ワルド様……」 早まったことをしたかもしれない。ルイズは頭痛を覚えこめかみをおさえた。 一同から注目されたミストバーンは、考え込んでから逆に質問した。 「エプロンとは何だ。私にも装備できるのか?」 防具の一種か何かだと思っているらしい。 試しに想像してみたルイズは身震いした。 記すことも憚られる。 「何も知らないんだねェ……。悪魔の目玉で魔界中に映像流して適当な情報バラ撒いても面白いかも? ククッ」 ほくそ笑んだキルバーンにルイズの忍耐力は限界に達し、 「あんたたち今すぐ魔界に帰りなさい! 帰ってくださいお願いだから!!」 と絶叫した。 前ページ次ページゼロの影