約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/sengokutougekipc/pages/299.html
◆勢力 姫 ◆カードランク C ◆レベル レベル1 ◆強化ポイント 0 ◆特技 追跡 ビュースコープ内に敵ユニットが入ったとき、追尾して攻撃する。 ◆秘技 祈祷“冠落陣” ◆秘技コスト 8 戦場に妨害陣を一定時間、設置する。妨害陣に入った敵ユニットの武勇と統率力が低下する。この秘技は相手からは見えず、城内退却によって消失しない。 ◆出身地 安芸(広島県) 謀聖と謳われる出雲の戦国大名・尼子経久の正室。父親は「鬼吉川」の異名をとる猛将・吉川経基。 夫・経久と父・経基は戦友の間柄で、経久の知略を見込んだ経基が娘の吉川夫人を嫁がせた。これにより尼子家と吉川家は縁戚関係となる。 名門・吉川氏という強大な後ろ盾を得たことは経久にとって大きく、周辺諸国の多くの豪族らが二家の同盟を契機に尼子家に服属した。 ◆イラストレーター みせお 秘技効果 効果範囲 カテゴリ 闘魂 武勇 智謀 統率 速度 兵力 効果時間 その他 祈祷 8 -4 - -4 - - 40.0c(智謀依存?c) 城内退却による効果消失は無い ※撤退では効果が消失する 解説 秘技や特技等の解説、カードの運用法等を書く。 備考 武将自体の元ネタやエピソード等
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9452.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 幕間その十「歴史の真実と謎」 ガリア王国が送り込んできた恐るべき超古代怪獣軍団は、ウルティメイトフォースゼロと ウルトラマンティガに変身した才人の活躍によって撃滅された。しかし、これはガリアとの 真の戦いの、ほんの前哨戦でしかなかったのだ。 ヴィットーリオは即位三周年記念式典で、ガリアへ対する“聖戦”を宣言したのだ。 「我が親愛なるロマリアの民、及び始祖と神の僕の諸君。此度は北方より来たる悪魔の軍勢が 神の遣わした戦士たちにより退けられ、この祝祭の席を開けたことは真に幸いです。……しかし ながら、あの悪魔どもは悲しいことに、我々と同じ人間の手によってけしかけられたものなのです」 ヴィットーリオの演説に、集ったブリミル教の信徒は一斉にどよめいた。 「その黒幕とはガリア、悪魔を操り神に仇なす異端の名はガリア王ジョゼフ一世。そうでなければ、 あの悪魔どもがガリアをただ通過してこのロマリアの地に侵攻してくる理由がありません。また、 ガリアの異端どもはエルフとも手を組み、我らの殲滅を企図しているのです」 信徒たちに動揺が走る。ヴィットーリオの言には確たる裏づけが欠けているが、先ほど 怪獣たちの脅威に晒されて不安と恐怖のどん底にあった民たちは、その反動もあって面白い ほどに鵜呑みにし、ガリアに対する怒りに燃え上がった。 「最早悪魔の力を行使し、我が物顔に我々の土地と生命、そして信仰を蹂躙しようとする 異端の陰謀を許してはおけません。わたくしは始祖と神の僕として、ここに“聖戦”を 宣言します」 そのひと言により、ガリアとの戦端がはっきりと切って落とされてしまったのであった。 ……アクイレイアのルイズたちがあてがわれた客間では、ロマリアの耳がないことを確認 してから、ルイズがそのことに対しての苛立ちをぶちまけた。 「何が陰謀を許してはおけない、よ。陰謀を張り巡らしていたのは自分たちの方じゃない! あんな奴の持ちかけた話に乗っかった自分を呪いたいくらいだわ!」 ルイズの格好はロマリアから与えられた巫女服ではなく、普段の学生服だ。才人から、 地球へのゲートをくぐろうとしたら撃ち殺されていたという話を聞いた途端に、怒り心頭して 巫女服を捨てたのであった。曰く、もうこんなものに袖を通していられない、と。 「ガリア王をおびき寄せて廃位に追い込むなんてのも、こっちを乗せるための建前に 過ぎなかったんだわ。この状況こそが本当の目的……。そのために国境付近にあらかじめ 軍を配備して、ガリアを挑発した。何が“人間同士の戦火を止める”よ! そのために 戦火を起こすなんて、本末転倒じゃない! ここまで来たらエルフとの交渉なんてのも 信用ならないわ!」 才人はヴィットーリオへの怒りを喚くルイズにうなずきながらも警告する。 「気をつけろよ。あいつらは異常だぜ。おまけにその異常さに気づいてて、しかも肯定してやがる。 一筋縄じゃいかないぜ」 「サイト、やっぱりあんたは帰るべきよ。こんな世界につき合うことはないわ。向こうは あんたを生かして帰さないつもりみたいだけど、ゼロに変身さえしてしまえばどうしようも 出来なくなるわよ」 改めて才人を説得するルイズだったが、才人はきっぱりと言った。 「見足りない。だからまだ、帰らない」 「何を?」 「お前の笑顔」 そのひと言にルイズは言葉の通りに真っ赤になり、照れくさいやら嬉しすぎるやらで ぎくしゃくとした動きをした。 そんなところに口を挟むゼロ。 『いちゃついてるとこ悪いんだがよ』 「い、いちゃついてなんかないわよ!?」 『ガリアとロマリアのことは一旦置いておいて、そろそろ才人が見たっていう六千年前の 夢のことについて話し合おうぜ。きっとかなり重要なことに違いねぇ』 この客間には今、ミラーとグレン、そしてミラーがシエスタから腕輪を借りてきたという 形でジャンボットもいる。彼らはこれから、才人の夢のことについて相談と会議を始めるのだ。 話し合いの席をミラーが仕切る。 「まずはサイト、改めて確認します。あなたが見た夢というのは、始祖ブリミルと初代 ガンダールヴが出てくる内容で間違いないですね?」 「ああ」 はっきりと肯定する才人。 「初めは単なる夢かと思ったけど、やたらとリアルだったし……それに、夢と同じように現実に 俺がウルトラマンティガに変身したんだ。今はほんとに時間をさかのぼったとしか思えねぇや。 今はもうティガに変身できないけど……」 才人がゼロと再び融合してから、スパークレンスはいつの間にか消えてなくなっていた。 恐らく、ティガはもう自分の元からは去ったのだろう。きっと、才人を助けるという役目を 終えたからだ。 これに反論するルイズ。 「でもおかしいじゃない。あんたの身体はずっとこの現代の時間にあったままだったんでしょ?」 「ジュリオの奴がずっと監視してたみたいだからな。あいつが嘘を言う必要はないだろ」 「それじゃあ過去に行くなんてこと出来ないじゃないの。変な言い方だけど……現代と過去の 二つの時間に、同時に存在するなんて」 そのルイズの意見についてジャンボットが論ずる。 『これは憶測に過ぎないが、サイトは精神だけが過去へ移動したのではないだろうか』 「精神だけ?」 『そうとすればつじつまが合う。精神が今の時間にないのならば、サイトがずっと眠ったまま だったのも当然となる』 「いや、いくら何でもそれは無理があるんじゃ……」 半信半疑のルイズだが、ゼロはジャンボットを支持した。 『ウルトラ戦士の周りじゃあ奇跡的な出来事がよく起こるもんだぜ。俺自身、何度か経験がある』 「奇跡ってそうそう起こらないから奇跡って言うんじゃないの……?」 冷や汗を垂らすルイズであった。 ここでグレンが話題を切り換える。 「難しいことは分かんねぇけどよ、今重要なのはサイトが実際過去に行ったかどうかじゃ ねぇだろ? サイトの体験したことが真実かどうかだ」 重々しくうなずくルイズ。 「そうね……。仮にサイトの見たものが全て事実だとしたら、これはハルケギニアで語り 継がれた歴史がひっくり返るほどの大発見よ。始祖ブリミルがエルフを使い魔にしてたなんて!」 興奮するルイズ。それはそうだ。エルフと言えば人間の仇敵であり、始祖ブリミルの最大の 敵だった悪魔。その教えが、完全に否定されるのだ。 才人が後を引き継ぐ。 「しかも六千年前の時点で既に怪獣はハルケギニアにいたんだぜ。そしてブリミルとエルフは 一緒にそれに立ち向かってた。ほんとに、今まで聞いたことと丸っきり真逆だ」 「でも、それをどうやって事実か確かめればいいのかしら……」 「そうだ、デルフに聞いてみよう」 才人はデルフリンガーを鞘から引き抜いた。デルフリンガーが初代ガンダールヴの得物 だったのならば、当然当時のことを知っているはずである。 「よ。伝説」 「やぁ相棒。ようやく俺の存在を思い出したってのか。全く薄情なこって」 「ごめんごめん、忙しくて気が回らなかったんだよ。それで、俺が見たものってほんとのこと? それともよく出来たフィクション?」 「ほんとのこったろ」 デルフリンガーのあっさりとした肯定に、この場の全員が目を丸くした。ルイズはデルフ リンガーをなじる。 「あんた、何でそんな大事なことを今まで黙ってたのよ!」 「黙ってた訳じゃねぇよ。忘れてたんだ。でも、相棒の言葉で思い出したんだ。そういや、 そうだったなって」 「じゃあ思い出したこと、全部話なさいよ!」 「無理だよ……。何せ断片的でな。つまらねぇことなら割と思い出せるんだが、肝心なことは サッパリさ」 「ブリミルさん、何かニダベリールとか名乗ってたよ」 「多分、若い頃の名前だな。そん時は俺はまだ生まれてなかったから知らねえけど」 「そういや、あの時お前はどこにもいなかったな」 相槌を打つ才人。ここでミラーが一旦注目を集める。 「これで裏づけが取れましたね。サイトが見たものは真実だった。……ですが、そうとすると 別の疑問が生じます。それは、何故その内容が今の世に全くといっていいほど伝わっていないのか」 「だよなぁ~。怪獣が元々この星にいたなんて話、今ここで初めて聞いたぜ」 腕組みしながらうんうんとうなずくグレン。中にはソドムのように伝説の巨竜という形で 存在が言い伝えられていた例外もあるが、そんなのは極一部だ。ゼロたちはこれまでずっと、 ほとんどの怪獣たちは次元震の影響でハルケギニアに侵入したものだと思っていた。 ジャンボットは言う。 『正確には、元からいた訳でもない。六千年前、ブリミルたちとほぼ同時期にどこかから 出現するようになったみたいだな』 「そのどこかってどこだよ」 『それが分からないから、今こうして話し合っているのだろうが』 グレンに手厳しく突っ込むジャンボット。ミラーは顎に指を掛けて考え込んだ。 「始祖ブリミルは元々ハルケギニアの民ではなかったのですよね。“虚無”の力で、どこかから 移住してきた……。それと怪獣の出没が同時というのは、無関係ではない気がします。始祖の 元いた土地とはどこなのか……それが分かれば答えに一気に近づけるのでしょうが」 「でも始祖ブリミル降誕の地、つまり聖地はエルフに牛耳られてて、近づくことすら出来ないのよね」 ため息を吐くルイズ。その聖地を取り戻すことが、ヴィットーリオの最終目的のようだが。 ゼロがミラーに提案する。 『ミラーナイト、お前の能力で探りを入れられねぇか? 鏡の世界からエルフの土地を覗き込んでさ』 「やってみましょう」 「俺としては、怪獣もそうだけど、ウルトラマンが六千年前のハルケギニアに来てたって ことの方が興味あるな。それも一人や二人じゃなかったみたいだぜ」 才人が少しわくわくしながら言った。それに同意するゼロ。 『俺も同じウルトラ戦士として興味深いな。けど、それも怪獣の存在と同じように伝承されて ないみてぇだな』 「一応、始祖ブリミルの伝説には、始祖は神の遣わした天使とともに悪魔と戦ったとあるわ。 わたしはずっと、悪魔っていうのはエルフのことだと思ってたけど……」 顔をしかめるルイズ。ここまでの話から考えるに、悪魔の正体とは怪獣だったのだろう。 「でも、この程度の表現でしか言い伝えられてないってのはちょっと奇妙よね。いくら六千年の 隔たりがあるとはいえ、もうちょっと具体的に伝承されてても良さそうなものなのに」 とのルイズの言葉に、ミラーはしばし考え込んでから、言い放った。 「もしかしたら、長い時間の中で自然に忘れられたのではなく、何者かが情報を隠蔽したの ではないでしょうか。だから後世に正しい形で伝わらなかったのでは」 「えぇ!?」 「そもそも始祖の祈祷書、“虚無”の呪文書も、指輪がなくては読めないという注意書きが、 読めない文の中に含まれていたのでしょう。普通、そんな致命的なミスをすると思いますか?」 内心同意するルイズ。これまでもいささか妙なことだとは思っていたが……誰かが“虚無”を 目覚めさせないように、そのように細工したとするなら納得できる話だ。 「デルフリンガーもほとんどのことが思い出せないのも、ひょっとしたら記憶を封じられて いるからかもしれません」 「ってことはこいつをいじったり何かしたら、記憶が一辺に思い出させられるかもしれねぇってか?」 「おいおいやめてくれよ。変なことすんのはさ。頭はねえが頭ん中いじくられんのはさすがに 御免だぜ?」 グレンの提案を拒否するデルフリンガー。ジャンボットも同意する。 『デルフリンガーは生物でも、電子頭脳でもない。私たちには未知の力で生命を維持している。 下手なことをしたら、デルフリンガーという存在そのものが消えてしまうかもしれん。危険すぎる』 「だよなぁ。さすがに仲間の命に代えられることじゃねぇや」 デルフリンガーの記憶を無理に呼び覚ますという手段は却下される。しかしそうすると、 現状ではこれ以上謎に近づく道はない。 議論が煮詰まってきたところで、ゼロが取り仕切った。 『これ以上俺たちで話し合ってても先には進まねぇ。この先ハルケギニアでの冒険を続けりゃ、 答えに近寄れるものも見つけられるだろう。それまでは放置だ』 「そうね。とりあえずは、今目の前にある問題を解決するところから始めましょう」 「ああ。まずはガリアをぶっ倒して……それからロマリアの聖戦とやらを止めてやるんだ」 ゼロの出した結論にルイズ、才人と賛成し、全員の気持ちが一致した。 これから彼らは、再び起こってしまった戦乱と、争いを引き起こす目論見を阻止するために 行動することを、ここに決意したのであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8446.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第四十二話 囚われのティファニア 深海怪獣 ピーター 登場 「虚無の担い手が、さらわれたですってえ!」 ウェストウッド村での事件から三日後、魔法学院に帰ってきたルイズたちを待っていたのは、ルイズの部屋にけたたましく 響き渡るエレオノールの怒声であった。 虚無の担い手であるかもしれないティファニアにもう一度会うために、アルビオンへと向かったルイズたちを待っていたのは 思いもよらなかった罠であった。怪獣マグニアの出現と、怪獣に操られたウェストウッド村の子供たち、それらすべてが ティファニアをさらったシェフィールドがルイズたちの目を逸らし、時間稼ぎをするための陽動でしかなかったのだ。 そのため、気がついたときにはティファニアははるか遠くに運び去られた後で、すでに手の出しようがなくなっていた。 しかも、勝ち誇ってあざ笑うシェフィールドの幻影からは、ティファニアの心を操って、虚無の魔法を使う人形にするという 恐るべき企みが伝えられた。 ルイズたちはそのことを、ティファニアが虚無の担い手だったことも含めてエレオノールには秘密にするべきか悩んだが、 結局は正直に伝えることにした。なぜなら、すでにティファニアも虚無に関わる争いに巻き込まれてしまったからで、今更 存在を隠したところでいずれ知れる。それに、正直自分たちの手に余る事態になってしまい、エレオノールの知恵がどうしても 必要になったからだ。 ただし、そのためにはまず怒れる女神の鉄槌を、甘んじて受ける必要があった。 「それであなたたちは、なにも果たせないままおめおめと帰ってきたというの?」 「も、もうしわけありません、おねえさま」 エレオノールの鬼でも睨み殺せそうな弾劾に、ルイズたちはただ縮こまることしかできなかった。むざむざ敵の策略に はまったのは事実であるし、なによりティファニアをさらわれてしまったというのは、言い訳のしようがない。ルイズと才人だけでなく、 今回ばかりはキュルケやタバサも、エレオノールの怒りの雷鳴を間近で聞き続けた。 「まったくあなたは、目的を忘れて敵の罠を見抜けないなんて洞察力が足りない証拠よ、恥を知りなさい! それにツェルプストーの あなた。ヴァリエールの宿敵のくせにまんまとルイズと同じ罠に落ちるなんて、ご先祖さまが泣くわよ。もう、どいつもこいつも 最近の若いのはふがいないんだから。いい、まずは先代のヴァリエール侯爵と……」 話がどうやらそれてきているようだけど、注意する勇気はキュルケにもなかった。それにしても、思い切り地が出ている今の姿、 花婿募集中とはとても思えない。学院の生徒たちは式典でもうしばらく戻ってこれないけど、戻ってきたときに淑女を演じる ことができなくなっていたらどうなることか。 お説教はそれから三十分ほども続き、エレオノールが喉をかれさせてようやく終わった。 「はぁ、まあ過ぎてしまったことはもういいわ。それで、その子は虚無の担い手で間違いないのね」 「一度だけ見ましたけど、あの記憶を奪う魔法の力のありえなさを考えたら……それに、シェフィールドの勝ち誇った様子からして、 まず間違いないかと思います」 「そう……ともかく、これで虚無の担い手は二人まで判明したことになるわね。あとの二人が誰かはまだ不明だけど、記憶を 操れるなんて能力、ルイズの『爆発』よりも敵にまわすと怖いわね。なんとか奪回したいものだけど」 無理よね、とエレオノールはため息をついた。そんな簡単に後を追わせてくれるほど、シェフィールドは馬鹿ではあるまい。 それに、エレオノールの言うとおりにティファニアの魔法が悪用されたときの脅威は『爆発』よりも恐ろしい。人間の人格は 過去の記憶の積み重ねでできている以上、それを動かせばどんな変化が起きるか想像もできない。さらに、使い方によっては 恐るべき洗脳手段としても使える。たとえば火を熱いという記憶を消せば、火中の栗を拾わせることもできるし、悪いことを してはいけないという記憶を消せば、罪悪感のない人間を生み出すというおぞましいことも可能だ。 むろん、ティファニアは優しい子だからそんなことは間違ってもしないだろう。しかし、系統魔法にも高等なものになれば洗脳を 可能とできるものがある。シェフィールドが言い捨てていったように、ティファニアを単なる魔法道具としてやつらは使うだろう。 「ルイズ、あなたのほうはなにか進展はないの? なにかしら、役に立つ魔法が使えるようになるとか」 「いいえ……できることが増えてないかと、確認は怠ってないのですが、始祖の祈祷書にはいまだにエクスプロージョン以外の 魔法は現れていません」 「残念ね。こんなときにこそ、伝説の力にすがりたいものだけど」 エレオノールはまたため息をついたけれど、こればかりはどうにもならない。虚無の魔法は強力すぎるため、その教本である 始祖の祈祷書には幾重もの制限がついている。デルフリンガーによれば、必要なときになれば自然と見れるようになるというが、 今のところそれはひとつもない。ルイズは、せっかくアンリエッタから水のルビーまでも貸してもらったのに、いまだになんの進展も ないことに焦りを感じ始めていた。 ただ、才人は場合によっては命をも削るという虚無の力に、ルイズが目覚めてほしくはないと思っていた。前にアンリエッタに 言われたことでもあるけれど、人間は慣れやすい生き物である。強大な力を持てばそれに頼る。そして力におぼれたものには 相応の報いが待っている。歴代のウルトラマンたちが人類から正体を隠し、人間が全力を尽くしたときにだけ現れるように していたのにも、そのあたりに大きな理由がある。 才人は、力というものの危うさを思って、虚しげにつぶやいた。 「始祖ブリミルって人は、いつか来るかもしれない厄災に備えるために祈祷書を残したって書いてた。つまり、虚無の力は本来は みんなのため、正義のために使うべきものなんだ。でも、いつの世でも馬鹿野郎はいるってことか」 ブリミルの善意を、その子孫たちが踏みにじる。天国のブリミルには本当にすまないことだ。 でも、ルイズなら虚無の魔法を正しい方向に使ってくれるだろうと才人は思う。いろいろと今でも問題は多いけれど、奪う・騙す・ 殺すという三つだけは絶対にやらない。それはルイズの貴族としての誇りでもあり、人間として正しく生きれているという誇りでもある。 だからルイズを、虚無を悪用しようとするものたちから絶対に守ろうと才人は決意している。 もちろんティファニアも、彼女だけでなく、彼女の姉代わりとして育ててきたロングビルや、彼女をしたう子供たちのためにも 絶対に助け出さねばならない。 ウェストウッド村の子供たちは、あのまま村に置いておくことはできないので、やむを得ずトリステインまで連れてきた。 アルビオンはだいぶ平和で安全になってきているとはいえ、まだ野盗や人攫いがいなくなったわけではなく、子供たちだけでは 万一のときにどうしようもない。 トリスタニアにある、修道院を改修した孤児院に彼らを預けたとき、才人たちは院長の神父さまに念を押して頼んだ。 「子供たちを、くれぐれもよろしくお願いします」 「神に誓って、お引き受けいたしましょう。ここにいる子供たちは、みな不幸な災いで親を失い、絆の尊さを知っている子ばかり、 きっとあの子たちも温かく受け入れてくれるでしょう。あなた方がお迎えにきてくれる日まで、彼らを飢えさせることはしません」 落ち着いた様子の壮齢の神父の答えに、才人たちはほっとした。この孤児院はトリステインが、ベロクロン戦で大量に出た 孤児たちを受け入れるために拡張したもので、今では国中から身寄りをなくした子供を引き受けて、引き取り手を探したり する活動をおこなっている。 しかし、ずっと辺境の村で閉鎖された暮らしをしていた子供たちが、まったく環境の異なる場所で暮らしていけるかは心配だった。 それでも、彼らは気丈に胸を張って、一番年長のジムが皆を代表して才人たちに言ったのだ。 「ぼくたちなら心配いらないよ。テファおねえちゃんは、ぼくたちよりもっと大変なんだ。だから、おねえちゃんが帰ってくるときまで、 ぼくたちもがんばるから、おねえちゃんをお願いします」 才人たちの半分、やっと生きてきただけの年齢しかない彼らの言葉は深く心に染み入った。必ずティファニアは探し出してくる。 それまで待っていてくれと、涙ながらに彼らと別れた。 「みんな、大丈夫かな」 「心配要らないわよ。あの子たちは、みな強い芯を持っている。このくらいのことで負けはしないわ。それに、あそこは国の 直轄の孤児育英施設、人攫いとか悪党のつけいる隙はないわよ」 不安そうな才人を、キュルケが肩を叩いてはげました。以前は人身売買組織などが根を張っていたトリスタニアも、現在では その手の組織は大元締めだったリッシュモン興の死亡以来、ほぼ壊滅状態になっている。子供が安心して育つことのできない 国に未来などないというアンリエッタと、人身売買を心から憎むミシェル以下銃士隊の徹底した掃討の成果だった。 「子供たちのことは心配しないで、今はティファニアを助け出すことだけ考えましょう」 「ああ、でもまったく手がかりがないんだ。どうしたもんかな……」 居場所さえわかれば、すぐにでも飛び出していけるのにと才人はデルフリンガーで壁を叩いた。「いてえよ、やつあたりすんなよ」 とデルフリンガーが文句をつけてくるけど、相手をする気にはならない。なにせハルケギニアは広いのだ。トリステイン、ゲルマニア、 ガリア、ロマリア、国の数は少なくても領土は広大であり、日本中を探すのにも匹敵する。 「まさか、怪しそうなところを片っ端から調べるわけにもいかないしねえ」 キュルケがつぶやいた方法は、もちろん論外。そんなことをするには何千人も必要になり、まったく現実的ではない。 考えに詰まった彼らは、エレオノールの提案で別のことから考えてみることにした。ティファニアがさらわれたことはもちろん 重大だけれど、シェフィールドはどうやってルイズたちの先を越したのか。 「聞いた話では、そのティファニアって子が虚無かもしれないってことは、そのときはあなたたちしか知らないってことになるのよね。 じゃあ、シェフィールドはなぜその子の存在を知れたのかしら?」 「それは、わたしも尋ねてみました、けど、しらばっくれられてしまって」 「ふん、肝心なところはきっちり隠しておくとはかわいげがないことね。しかし、タイミングから考えて、やつらが自力で見つけ出したとは 考えにくいわ。こちらの情報が漏れた、としか考えられないわね」 「でも、虚無に関することは他人に聞かれないように注意していたのに、そこまで詳しいことがわかるなんて」 虚無に関して重要なことを話すとき、誰かに『サイレント』の魔法を使ってもらって声が漏れないようにした。また、『ディテクト・マジック』で 盗聴される危険も排除してきた。仮にどこかからガーゴイルないしを使って監視していたとしても、遠巻きからでは得られる情報は たかが知れているはずだ。 ところが、答えに窮しているルイズに対して、エレオノールは想像もしていなかったことを言った。 「内通者でもいるんじゃないの?」 「え……」 一瞬、言葉の意味がわからなかったルイズは絶句した。しかし、エレオノールは容赦なく続ける。 「秘密の漏れ方からして、私たちの近くに敵と通じてる人間でもいなきゃ説明がつかないわ。だいたいツェルプストーの人間なんて、 最初から信用がおけないし、そっちの陰気な小娘だってなに考えてるんだか」 「いいかげんにしてください! それ以上はいくらお姉さまでも許しませんわよ!」 ルイズは激昂して叫んだ。それでもエレオノールは、ルイズの反応くらいは予測していたように冷断に言う。 「へえ、許さないってどういうふうに? まさかこのわたしに魔法を使うとでも」 「そ、それは……」 口ごもったルイズをエレオノールは尊大に見下ろす。怒りも、長年かけてつちかわれた姉への恐怖に押しつぶされそうになった。 だがそこで、才人がルイズの肩を叩いて指の関節を鳴らしたのである。 「ルイズ、かまわないから吹っ飛ばしてやれよ。その後でおれもぶん殴るから」 「サイト……」 「へぇ、平民がずいぶん生意気なことを言うじゃないの。この私に対してその無礼、相応の覚悟があってのことでしょうね?」 エレオノールは杖を取り出して才人に向ける。高位の土のメイジにとって、たかが平民の剣士ひとり、生き埋めにするもゴーレムで 踏み潰させるもたやすい。しかし、才人はまったく臆することなくエレオノールを正面から睨み付けた。 「黙れよ」 「なんですって?」 平民が貴族、メイジに対して侘びを入れるどころか命令してきたことにエレオノールは驚いた。 「いくらルイズの姉さんでも、言っていいことと悪いことがある。おれの友達を侮辱されて、生意気もクソもあるか! 覚悟すんのは あんたのほうだ」 「くっ!」 このときエレオノールははじめて平民に気おされた。カトレアに勝ったことがあっても、まだ才人をただの平民だとあなどっていたのが、 甘かったと思い知る。確かに、昔の才人ならエレオノールの威圧感にはなにを言われても対抗できなかっただろう。しかし、数々の 冒険や戦いを経て才人の心は強く鍛えられていた。 いや、それは才人だけではない。本来誰の心にでもある強さなのである。親が子を守り、兄が弟を守り、そして友を守る強さは 特別なものではなく、誰にでも宿ることができる。そして、強さはひとりだけのものよりも、束ねていけば無限に大きくなる。才人の 怒りが引火して、ルイズの心にも再び炎がついた。 「おねえさま、ルイズはずっとおねえさまの言うことには従ってまいりましたが、わたしにも譲れないものはあります。たとえ旧怨ある ツェルプストーのものとはいえ、学友の名誉を踏みにじられてはわたしの誇りが許しません」 「ルイズ、あなた」 「謝ってください。キュルケとタバサに、でなければいくらおねえさまとて、虚無の威力をご披露することになりますわ」 まっすぐに杖を向けてくるルイズに、エレオノールも虚無の威力を想像してあとづさる。 だがそこで、姉妹の争いを静観していたキュルケが割って入ってきた。 「待ちなさいよルイズ、実の姉妹同士で争ってどうなるっていうの。そのへんでやめときなさい」 「ちょっとキュルケ! わたしたちは誰のために怒ってると思ってるの」 「だからこそよ。わたしたちのために姉妹で血が流れたら、それこそ後味が悪いわ。まあ、任せときなさいって」 キュルケは、いきりたつルイズを平然とした様子でなだめると、エレオノールにわずかな微笑を浮かべて向かい合った。 「さて、ミス・エレオノール。内通者がいるかもというあなたの説、現状を客観的に見れば間違ってはおりませんわ。ですけれど、 確たる証拠もなしに疑いの眼を向けられるのははなはだ不本意というもの。もしも、いわれなき侮辱を一時の気の迷いと なさらぬのでしたら、ヴァリエールからツェルプストーへの挑戦状とみなして、傷つけられた誇りを回復するために全力を行使させて いただきますが、そのお覚悟はありますか?」 「ぐっ……」 誇りを守るために全力を行使する。それはツェルプストーとヴァリエール、二大貴族による戦争を意味する。エレオノールは キュルケの目に、顔は笑っていても激しい怒りが内蔵されているのを感じて、本気だと悟った。たかが口げんかから戦争とは おおげさに思えるかもしれないが、この二つの家は何百年も前から争い続けてきた宿敵同士であるから、きっかけはわずかでも 本気の激突になりかねない。そこまではいかなくても、たとえばキュルケがエレオノールに決闘を申し込んだりすれば、貴族同士の 決闘は固く禁じられていることもあって、きっかけを作ったエレオノールは断罪され、母カリーヌの激怒を招くだろう。 この小娘がと、エレオノールはキュルケを睨んだ。だが、いわれなき疑いを向けて侮辱した事実は変わらないので、分は圧倒的に エレオノールのほうが悪い。なによりも、ほんの軽口のつもりだったエレオノールには、キュルケの本気に対抗する覚悟がなかった。 「わ、わかったわよ。私が軽率だったわ。あなたたちの名誉を傷つけるような発言をしたことは謝罪するわ」 「ならけっこう。先の発言はこれ限りで水に流すことを誓約しますわ。それでいいわね、ルイズ、サイト、タバサ」 「ええ、いいわよ」 「おれもだ。さすがキュルケ」 最後にタバサが無言でうなづき、キュルケはいつもと変わらない笑顔を見せた。 ルイズも才人も、見事にしてやってくれたキュルケに、おおいに溜飲がさがったようだ。賞賛のこもった視線を受けて、生来の 目立ちたがりであるキュルケも、充分な達成感を得れたようだった。 「ま、わたしたちがシェフィールドの一味と通じてるなんて、馬鹿馬鹿しいこと言うからよね。ねえ、タバ……あれ?」 見ると、ついさっきまでキュルケのそばにいたはずのタバサが消えていた。 はて? と思って見回してみると、いつの間にかタバサはシルフィードに乗って窓の外に飛んでいくところだった。 「どうしたのかしら? 突然出てくなんて」 「シルフィードのメシの時間かなんかだろ。タバサは真面目だからな」 才人がなにげなく言ったことで、キュルケもうーんと考えてうなずいた。 反面、エレオノールは少々気が抜けた様子で、気持ちを切り替えようとしているかのように眼鏡を拭いていた。 ”まさか、この私がこんな小娘にやりこめられるなんてね。さすが、ツェルプストーの眷属というべきか……そういえば、 コルベールも何かにつけて生徒の自慢をするけど……ふぅ” 汚れを拭いた眼鏡を灯りに透かしてみて、エレオノールは落ち着いた心で自分のやったことを考え直してみた。 虚無を奪われたということで、機嫌が悪くなっていたとはいえ、確かに言いすぎたかもしれない。かりそめとはいえ、教師として 受け持った生徒を疑うとは醜い限りだ。怒ると物事が見えなくなる、ルイズにも共通する悪い癖だ。ただし、自己嫌悪する中で エレオノールは自分に歯向かってきたルイズや、平民のくせに噛み付いてきた才人に、ある種の敬意を覚え始めていた。 ”私に、なんの躊躇もなく歯向かってくるとは、無謀なのか勇敢なのか。しかし、この無茶さ加減でこれまで数々の戦いを 生き延びてきたのね……以前の地下書庫でも、彼らのクラスメイトたちは年齢に見合わぬほどの活躍を見せていた。普段は ろくに授業を聞いていないくせに、私の目が曇っているのだろうか……?” 答えを見出せないままで、彼女は眼鏡をかけなおした。レンズが陽光を反射し、彼女の知的な感じを強調する。 そうして、一回咳払いをして場を仕切りなおしたエレオノールは、一同を見渡して話を再開した。 「あなたたち、シェフィールドの一味がどんな魔法なり薬なりを使って、虚無の担い手を洗脳しようとしているかはわからないけど、 一週間くらいの猶予はまだあるはず、そのあいだに奪還するわよ」 「どうしてそんなことがいえるんですか?」 「洗脳といってもピンからキリまであるのよ。一時的に思い通りに動かすくらいなら、高等なメイジであればできるし、ご禁制の惚れ薬 とかを使えば人格まで大幅に変えることができるわ。でもね、心を操るっていうのはそんな簡単なことではないのよ。ほんの数時間 操れればいいとかいうならともかく、効果が薄れたり切れたりするときは必ずやってくる。そして、同じ魔法をかけ続ければ本人への 負担も増していくのよ」 簡単なところでは、酒を飲み続けてストレスをごまかし続ければ、次第に心にダメージが蓄積されておかしくなっていくようなものだ。 魔法は使い手の精神状態に大きく威力を左右されるから、完全に心を壊してしまっては意味がない。ましてティファニアは換えの 利かない虚無の担い手なのだ。 「なるほど、奴らにとってはティファニアはいわばジョーカーってわけか」 才人がそう例えたように、失ったら二度と手に入らない切り札を、そう危険な手に使うとは思えない。ティファニアの心をある程度 維持して、なおかつ自分たちの意のままに動かせるようにするためには、時間と手間が大量に必要になるだろう。魔法を使うなら スクウェアクラスの上級メイジ、薬にしても希少な材料を精密に配合して熟成させなくてはならない。 だが、それは裏を返すと、奴らはそれだけの準備をすることができるということに他ならない。そこに思い至ったルイズは、 背筋にぞっとするものを感じた。 「シェフィールドの一味は、それほどの組織力と資金力を持っているっていうの?」 「もしかしたら、敵はわたしたちが思ってるよりはるかに大きな勢力なのかもしれないわね。また、レコン・キスタみたいなのが 生まれようとしているのかも」 キュルケの一言で、ルイズはアルビオンを二分した戦いを思い出した。そういえば、アルビオンでウェールズとアンリエッタの前に ヤプールが姿を現したとき、奴はレコン・キスタを操っていたものは別にいて、それをさらに利用したに過ぎないと言っていたそうだ。 世界の影に隠れて暗躍する謎の組織、目的はやはりハルケギニアの征服か? 国を動かすような相手に狙われているかもしれないと、 息を呑むルイズ。しかし才人は、それがなんだといわんばかりに軽く言ってのけた。 「んなことはどうでもいいんだよ。どこのバカだか知らねえけど、テファをさらうなんて真似したやつらを許しておけるか。シェフィールドめ、 テファになにかしたらただじゃすまさねえぞ」 「サイト、あんな不安はないの? 相手はレコン・キスタよりも強大な組織なのかもしれないのよ」 「だからなんだよ。テファをあきらめろってのか? 第一どんなご大層な目的があったとしても、女の子さらって言うこと聞かせようなんて 考えるようなやつにビビれるか。どこの誰がボスでも、いつか必ずしばきたおしに行ってやる!」 はぁ、とルイズは呆れた。まるで恐れてないどころか、敵をただの少女誘拐犯と言い切ってしまった。才人らしい無鉄砲な、青臭い 正義感。それに考えてみたら、近いうちにヤプールとの決戦に臨まなければならないというのに、悪の秘密組織ごときにやられては いられない。すると、ルイズもなんだか腰が引けていたことが馬鹿らしく思えてきた。 「そうね。わたしたちはもっと大きな目的のために働かなきゃいけない。エレオノールおねえさま、そういうわけなので、ティファニアを 取り戻すためにお知恵をお貸しください」 「言わずもがなよ。さて、どこから調べたものかしらね」 意気があがるルイズたちとは裏腹に、エレオノールは頼られても仕方がないのにと考え込んだ。元気がよいだけで勝てれば 苦労はしない。だが、虚無の力が世界を揺るがすほど強大である限り、ルイズは今後も虚無にまつわる戦いに、否応なく巻き込まれて いくということになる。そうなったとき、彼らのその無謀すぎるくらいの元気が困難を吹き飛ばす原動力になるかもしれない。 エレオノールは意気あがるルイズたちに、なんとか力になってやりたいと思った。わらにもすがるような思いだけれど、望みはかすかに 存在する。あの古代遺跡から発掘された碑文の残り、始祖ブリミルの時代の戦いの歴史を記録していたあの遺跡ならば、虚無に関する なんらかの手がかりが存在しているかもしれない。ちょうど、今ごろは壊れた碑文の復元と解読も終わっているころだろう。終わり次第、 すぐに伝えに来てくれることになっていることになっているそれに、なんらかの希望があればよいのだが…… 一方、ウェストウッド村から連れ去られたティファニアが、そのころどこにいたのか。 シェフィールドによって拉致されて、睡眠の魔法薬で深く眠らされたティファニアはそのままアルビオンから連れ出された。そしてそのまま 飛行ガーゴイルによって輸送された彼女は、ガリアに運ばれてジョゼフに眠ったまま引き合わされた。 「これが次なる虚無の担い手か……ハーフエルフとは、始祖の血もなかなかおもしろい演出をしてくれるものよ。よい仕事であったぞ、 余のミューズよ。これで余にはすばらしい手駒ができた」 グラン・トロワの最奥の一室で、ジョゼフは床に転がされたティファニアを見下ろして高らかに笑った。シェフィールドは、賞賛の言葉を 受けて極上の達成感を味わい、満面の笑みを浮かべた。 「お褒めいただき、感激にたえません。それでこの娘、いかがいたしましょう? 目を覚まさせて、お話になりますか」 「いや、無益であろう。無垢な乙女の顔を絶望に染めるのも一興かもしれんが、さすがに下品にすぎる。そうだな……おお! よいことを 思いついたぞ。やはりエルフの処理はエルフにまかせるとしようではないか」 「はっ、ではビダーシャル興にお預けすると……しかし、彼奴らが蛮人と忌み嫌う人間との混血児が、彼奴らがもっとも恐れる虚無の 担い手であったと知ったら、この娘を始末しようとするのではありませぬか?」 「ふふふ、できるならばそうしたいに違いない。しかしな、奴らにはそうしたくてもできぬ理由があるのだ。まして、奴は余との契約を 反故にすることはできぬ。どうしても心配なら、見張りをつけても構わぬぞ。そんなことより、ビダーシャルがこの娘を見て、憎悪するか 同情するかは知らぬが、どちらにせよ見ものであろう」 蟻の巣を掘り返して楽しむ子供のように、無邪気だが残酷な笑顔がジョゼフの顔に現れる。シェフィールドはうやうやしく頭を垂れ、 主人の楽しみに無条件で賛同するかのように微笑んでいた。 「では、さっそくビダーシャル興を呼んでご命令なさいますか?」 「まあ待て、ここでは人が多くてやつも仕事がしにくかろう。僻地で落ち着いて仕事ができるようにしてやれ。そうだな、この娘も自分の 母親の故郷を一度は望んでから心を失いたいだろう。同胞としての、余のせめてもの慈悲だ」 最後に、ジョゼフはティファニアの髪を優しくなで、「美しいものよ」と、つぶやくとシェフィールドに運び出させた。そうして、シェフィールドも 扉の外に去ると、ジョゼフは先程とは違う、喉を鳴らすような含み笑いを浮かべた。 「さて、これで虚無の担い手は我が手に入ったも同然……と、誰でも思うであろうな。しかし、伝説の虚無ともあろうものが、そう簡単に 一角を崩されるものかな? ふふふ……チェックメイトを目前に、どう運命のシナリオを描く。余を楽しませてみよ。始祖ブリミル?」 まるで、自分を含めた世界のすべてがゲーム盤の上の出来事だとでもいわんばかりの笑い。ジョゼフはテーブルの上のチェス盤から、 駒をひとつ掴み取ると、部屋にすえつけてある国宝の始祖の像に向かって投げつけた。 グラン・トロワから連れ出されたティファニアは、再び空路をガリアの奥深くへと運ばれていった。 そうして、さらわれた日から三日経ったとき、ティファニアは幼い日に戻ったような光景の中で目を覚ました。 「ここは……どこ?」 はじめに目に入ってきた天蓋つきのベッドから身を起こし、部屋を見渡したティファニアの目に飛び込んできたのは、まるで夢の国だった。 ベッドを中心に置いた広い部屋は白く清潔な壁紙と豪奢な調度品で彩られ、毎日寝起きしていた村の家とはまるで違う。自分の身なりを 確認すると、やはり豪華な寝巻きを着せられていて、ティファニアははるか昔に母親といっしょに過ごしていた日々のことを思い出した。 「おかあさま、どこ……?」 ウェストウッド村に住む前、アルビオンの大公だった父のもとで、なに不自由なく暮らしていた子供のころにティファニアは帰っていた。 これは夢の中だと思い、床に素足をつき、夢うつつな眼で室内を歩き回り、母親を探し回る。 しかし、窓際に立って外の風景を眺めた瞬間にティファニアは我に返った。 「これって……砂漠!?」 そこに広がっていたのは、地平線の先まで広がり渡る黄色い世界であった。文献で聞きかじり、母の昔語りにのみ登場してきたものが、 今目の前に現実として現れている。自分は、その砂漠の中にある丘に立てられた城の中にいるとわかったとき、ティファニアははっとして 自分の身になにが起こったのかを思い出した。 「そうだ! わたし、森に落ちた燃える岩を見に行って、そうして霧に包まれて……ここはどこなの? みんなは? わたしどうしちゃったの!?」 自分が理解不能な状況に立たされていると知ると、ティファニアはパニックに陥った。 そのとき、部屋の扉が開く音がして振り向くと、そこには幅広の帽子を被った長身の男性が立っていた。 「目が覚めたようだな」 「あなた、誰ですか?」 突然現れた見知らぬ男に、ティファニアは当然ながら警戒心を向けた。すると男は一瞬困ったような表情を見せ、部屋の中まで歩いてくると、 おもむろに帽子を脱いだ。 「私は”ネフテス”のビダーシャルだ。出会いに感謝を、と普段なら言うところだが、今回に限っては難しいな」 「エルフ……!」 あいさつをしたビダーシャルの耳が、自分と同じエルフの尖った形のものであってティファニアは驚いた。しかし、ビダーシャルは表面は 平静とした様子で、慌てているティファニアに言った。 「驚くことはあるまい。君もエルフなのだろう……もっとも、君の場合は半分だけのようだが」 「えっ! 私のことを知ってるんですか?」 「ああ、おおまかなことはな。少なくとも、今君をどうこうしようというつもりはない」 敵意はないと、ビダーシャルは部屋の隅のクローゼットに歩み寄った。その中から、ティファニアがさらわれたときにかぶっていた帽子を 取り出してきて渡すと、受け取った彼女は帽子をぎゅっと抱きしめた。 「あなたが、わたしをここに連れてきたんですか……?」 初めて見る母以外のエルフに、ティファニアはおびえながら問いかけた。 「その質問に対する答えなら、否だ。ここは、ガリア王国の東端の国境上にあるアーハンブラ城というところだ。我はただ、ここに来て お前の相手をしろと命じられたにすぎん」 「アーハンブラ……確か、何度もエルフと人間が争った場所ですね」 「そうだ。よく知っているな」 「母から、聞かされたことがありますから……教えてください。ウェストウッド村は、村の子供たちはどうなったんです? いったい誰が、 こんなことをさせてるんですか?」 「質問には順に答えよう。最初のほうは、我は聞いていない。次のほうは、依頼人の名はガリア王ジョゼフという。その男が部下に命じて、 お前をここに連れてきた」 「ガリアの……王様!?」 想像もしていなかった答えに、ティファニアの目が丸くなった。それと同時に、ジョゼフのことを言うビダーシャルの口調に、露骨な嫌悪の 色が浮かんでいたことに気がついて、彼女の困惑はより深くなる。 「どうしてガリアの王様が、私をさらうんですか。それに、どうしてエルフが人間に従ってるんですか?」 「質問は一つずつにしたまえ。我らの名誉のため、あえて後の質問から答えるが、我らにも事情というものがある。ハルケギニアで 起きていることと同様のことが、サハラでも起きている。我はネフテスの代表として、異変の根源を突き止めなければならない。 蛮人の王と契約をかわすのも、その一端だ。そしてもう一つ、この地で目覚めようとしている悪魔の力の復活を阻止しなければならない」 「悪魔の力?」 「人間たちは虚無の系統と呼んでいる魔法のことだ……世界を滅ぼすほどの力を誇り、かつてエルフの半分を死滅させたといわれている。 その力は蛮人たちの聖者の血筋から現れ、いずれまた大厄災を引き起こすと我々は恐れてきた……しかし、まさか我らの同胞の 血筋から、その担い手が現れようとは想像もしていなかった」 ティファニアは、突然ビダーシャルの自分を見る目が鋭くなったのにびくりと怯えた。そして、彼の言った言葉の意味を吟味すると、 その意味の持つ恐ろしさに身を震わせた。 「まさか……その悪魔の力の担い手って」 「そう、君のことだよ」 ビダーシャルはそこで、ティファニアにすべてを明かした。記憶を奪う魔法が虚無であること、そのためにジョゼフが自分を欲していること、 思い通りに操れるように心を奪わせようとしていることなど、一切を包み隠さず教えた。 「心を奪うって、そんなっ!」 「それが、我がジョゼフの協力を得るために必要なことなのだ。それに、悪魔の力が見つかったのなら制御する必要がある。本来なら、 殺害するべきなのであろうが、そうすれば別の誰かが悪魔の力に目覚める。そういうふうにできているのだ。我としても、この条件は 呑まざるを得なかった」 淡々と告げるビダーシャルに、ティファニアはしだいに怒りが胸に湧いてくるのを抑えられなかった。 「わたし、ずっと思ってた。エルフは母のように優しい人たちばかりだって! なのになんで、そんなひどいことをしようとするんですか。 わたしが、わたしが混じり物だからですか?」 「優しさ、というがそれにはいろいろな種類がある。我は、サハラの同胞たちの安全を第一に考える義務がある。ただし、個人的には 君に対して深く同情している。生まれをどうするかを、選んで生まれてこれるものはいないからな」 ビダーシャルの言葉はやはり淡々としていて、本心を告げているのかどうかティファニアにはわからなかった。 ただ、どうしようもないということだけは嫌というほどわかった。ここは見も知らぬ異郷の地、逃げ出すところはない。また、当然ながら 杖も取り上げられていて、唯一の頼りである『忘却』の魔法を使うこともできなかった。 絶望して、カーペットの床にへたりこんでしまったティファニアに、ビダーシャルは少しのあいだ目を閉じてじっとすると、やがて踵を返した。 「水の精霊の力で、心を操る薬が完成するまで十日ほどかかる。それまでは城の中に限るが、自由にふるまうといい。望みがあれば 使用人に告げれば、たいていはかなうようにしてある」 それが、ビダーシャルのティファニアに対するせめてもの侘びだったのであろうか。ティファニアにはわからないし、意味のあることでもなかった。 だがせめて、せめてエルフと会えたのなら言っておきたいこともあった。 「待ってください」 扉を閉めていこうとするビダーシャルをティファニアは呼び止め、彼は扉を半開きのまま振り返った。 「なにかな?」 「ここは、人間とエルフの国境線だとおっしゃいましたよね。ということは、この砂漠の先に、エルフの住む場所……わたしの母の故郷が あるのでしょうか?」 「そうだ。その砂漠を超えて、さらにその先に我らの故郷サハラがある。それがどうしたのだ?」 「お願いがあるんです。わたしの母は、最後までわたしに人間の世界に危険を冒してまでやってきた理由を教えてはくれませんでした。 母がなぜアルビオンにやってこなければいけなかったのか、母はどういう人だったのかを知りたいんです!」 必死に訴えるティファニアの言葉を、ビダーシャルは黙って聞いていた。だがやがて、わずかに憂えげな表情を覗かせると、扉を 閉めなおしてティファニアに向かい合った。 「母君の名前は、なんというのだ?」 「普段は、世を忍ぶためにティリーという偽名を使っていましたが、父だけは母のことを”シャジャル”と呼んでいました」 するとビダーシャルは、ふむと考え込む仕草を見せた。 「我らの言葉で、”真珠”を意味する名前だな。よろしい、調べてみよう。人の世界に出て行ったエルフはまずおらぬから、何かしらの 記録が本国に残っておるかもしれぬ」 「本当ですか?」 ティファニアの顔がわずかに明るくなると、ビダーシャルは視線をそらして背を向けた。 「保障はできかねるが誠意は尽くそう。しかし、結果がどうであれ、我はそのことを変化なく君に伝えることになる。その覚悟だけは しておきたまえ。そして、結果がどうであれ、十日後には我は君の心を奪うことになる」 あとは何も言わずに、ビダーシャルは立ち去っていった。 残されたティファニアは、ただ一人残された孤独感からしばらくの間すすり泣いた。 それから何時間か経ったのだろうか、泣くことにも疲れたティファニアはなにげなく城の中を歩き回った。 城内はきれいに整えられていて、砂漠の小城だというのに宮廷のような趣があった。しかし、人影はほとんど見えなく、生活観の なさが冷たくも感じられる。たかが少女ひとりを幽閉するのに兵士は必要ないということであろうか、城門までまったく邪魔されずに 着いたティファニアは、分厚い鉄の壁にさえぎられた。 「やっぱり、逃げられっこないわよね」 自分が籠の鳥だと思い知らされたティファニアは、なにをすることもなく城の中を散策した。途中、黒いローブをまとった男と会い、 生活の世話は任されていると告げられた。ローブで深く顔を隠しているので容姿はわからないものの、きっと彼がビダーシャルが 言っていた使用人なのだろう。 その後は、ビダーシャルが薬の精製をしているらしい塔にだけは立ち入れなかったものの、ほかの場所にはすべて立ち入ることができた。 「ほんとうに、ここは夢の国ね」 自嘲を込めて、ティファニアは城の中庭にある池のほとりに腰掛けてつぶやいた。ここでは、自分はお姫様だ。普通の女の子が 望むような豪華な生活はすべてかなう。だが、自分がほしいものは何一つここにはない。夢の国の形をした悪夢の牢獄でしかないのだ。 「ジム、エマ、アイ、みんな大丈夫かな……」 できることは、子供たちの無事を祈ることだけだった。 そのとき、池の中から小さなトカゲのような生き物が浮いてきて、ティファニアがすくいあげると瞬時に子馬ほどの大きさに変わった。 「あなた、わたしを慰めてくれるの?」 長い間、森の中で動物たちと過ごしてきたティファニアは、恐れることもなく、その大きなトカゲのような生き物をなでた。すると、 その生き物は嫌がらずに気持ちよさげに鳴いて、ティファニアの手に顔を擦り付けた。 「あなた、不思議なにおいがするわね……そうか、この池は地面の中で外の世界とつながっているのね。うらやましいわ、わたしに 水の中で息ができる力があったら、ここから逃げ出せるのに」 自分が自分でいられるのは、あと十日。けれど、それが今すぐであったとしても別に変わりはないだろう。自分の人生は、こんな ところで終わってしまうのか。ティファニアは運命の残酷を呪い、まぶしく照りつける砂漠の太陽を仰いで思った。 塔の頂上の部屋から、ビダーシャルはたそがれるティファニアを見下ろしていた。 「すまないな」 口をついて出た言葉は、ビダーシャルの本心であった。先に、ティファニアに言ったことのすべてにも嘘はない。 人間とエルフの混血であるハーフエルフ。それは誇り高いエルフにとって忌むべき象徴であるが、ビダーシャルは無抵抗な ものをいたぶる趣味は持ち合わせていない。 しかし、感情と使命とは別個である。同情はしても、それで使命感までは曲がらない。 ビダーシャルは部屋の隅に立てかけてある鏡に向かって、なにやら呪文を唱えた。すると、鏡がぼんやりと光って、部屋の 光景ではない別のものを映し出しはじめた。 「聞こえているか? お前の協力が必要になった。すぐにこちらに来てもらいたい」 「あら叔父様、なにかおもしろそうなことが起きたんですの? ふふっ、こちらに来てから毎日が刺激の連続ね」 鏡の向こうから、まるでトラブルを楽しんでいるような若い女性の声が部屋に響いた。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9112.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第十八話 引きちぎられた絆 剛力怪獣 シルバゴン 登場! 竜から降り、足を着けた聖マルコー号は異様なほど静まり返っていた。 「まるで幽霊船ね……」 ふたりを乗せてきた竜が飛び去り、甲板にルイズの声と、ふたりの靴底が船板を叩く乾いた音が小さく響く。 だが、それだけで、船の上には生気のかけらすら感じられない。船べりから覗けば、まだ地上では天使の奇跡に湧く人々の 騒ぎが見て取れ、歓声がここまで聞こえてくるというのに、まるで別世界のようだ。 「船員はどこに行ったんだ……? 前は、大勢いたはずだろ」 「気をつけてサイト、人の気配がまったくないわ。この船、ほとんど無人で動いてるみたい……教皇陛下のお召し艦に、そんなことがあると思う?」 「おれでもそんなヘマはしねえよ。どうやらもう罠だということを隠す気もないみたいだな……ちっ」 才人は舌打ちして、ごくりとつばを飲み込んだ。もう、教皇がただの人物ではないのは、ここを見たことで九割九分九厘の確信に 変わっている。教皇が座上するにしては不自然すぎる船上を見たからには、ただで帰れるとはとても思えない。帰りの竜もいない 今の状況で助かるには、元凶を叩く以外に方法はない。 「こんなところに、ルイズとふたりで……ん?」 才人がそう思ったとき、背中でカタカタ鳴る音に気づいた。それで、「あ、やべえ」と思って背負っていたデルフリンガーを抜くと。 「よお相棒、やっと抜いてくれたねえ。ずいぶん、ほんとーにずいぶん久しぶりで俺っち感動で泣いちゃいそうだよ! ったく、 相棒と来たら、やっとお前の背中に帰ってこれたってのに使うどころか抜いてもくれねえんだもんな。今度のガンダールヴは 冷たいよ。剣にだってハートってものがあるんだぜ! こんなんだったら武器屋の片隅で親父を相手にくだ巻いてるほうがよかったよ。 聞いてる相棒? やっと戦闘になって出番があるかとワクワクしていた希望を打ち砕かれた絶望がお前にわかる? ひとりぼっちは 寂しいんだよ。鞘の中でサビで真っ黒になっちゃいそうだったぜ。あー外の景色が懐かしいぜ。わかる? 俺のこの感動をさ!」 「デ、デルフ……いけね、そういえばここ最近忙しすぎて、返してもらったけど暇なときに抜くのも忘れてた」 抜いたとたんに一気にまくしたててきたデルフに、才人は冷や汗まじりで答えた。 「な、なあデルフ? お前もしかして、ルイズとふたりだけって言ったの、怒ってる?」 「べぇつぅに! 俺っちはどこまで行っても剣だし、頭数に入ってなくても当然だもんね! それに相棒にはすっげえ強い銃が あるもんね。しょせん剣は飛び道具には勝てませんもんね。別に気にしてませんからね俺っちは」 「あーあ、すっかりすねちゃって。サイト~、自分の武器の手入れもろくに出来ないなんてサイッテーね、あんた」 「ル、ルイズ、お前まで言うか?」 思いも寄らぬところで二対一で責められてしまい、才人は困り果ててまいってしまった。 しかし、本気で困った顔をする才人を見てルイズが笑っているのに気づいて、才人は自分が遊ばれていたことに気がついて苦笑いした。 「そういやお前もいたよな。悪い、おれたちはふたりだけじゃなかったな。頼もしい仲間がもう一人、お前も合わせて三人だった」 「へっ、わかりゃいいんだよ。なんかめちゃくちゃヤバいことになってきたみたいじゃねえか。まったくお前らは、ろくでもない運命を 引き当てるくじ運だけはすげえな。だから俺が忠告したろ、この国はろくなもんじゃねえってな」 「ああ、おれも心からそう思うよ。けど、まさかここまでなんて思うかよ。お前のくれるヒントは役に立つようでどっか抜けてんだからな」 それに関しては、デルフもすまねえなと詫びた。思い出そうとしているのだが、まだ記憶が完全に戻っていないのですまないと。 「あとちょっと、なんかのきっかけがあれば思い出せると思うんだけどな。そしたら娘っ子、お前さんの隠された力の残りも大方 わかると思うんだが、面目ねえ」 「わたしの力、わたしの遠い遠いご先祖様、始祖ブリミルから受け継いできた虚無の魔法。ねえボロ剣、虚無の魔法はわたしが 今覚えているもののほかにもあるんでしょう?」 ルイズが尋ねると、デルフは少し考えるように沈黙すると、少し疲れたような声で言った。 「ああ、ブリミルは偉大なメイジだった。奴が呪文を唱えるたびに、あらゆる奇跡が起こったよ。なにせ、あいつの魔法には 今のメイジの系統なんて制限がなかったからな。それでも、二個や三個の魔法でどうにかなるほどブリミルは楽じゃなかった。 あいつはそれこそ、命を削って虚無を使い続けた。その数は、始祖の祈祷書の余白を思い出してみればわかるだろう?」 「そうね、始祖の祈祷書の残りのページ数は百はゆうにあったわ。その全部に呪文が記されてるわけじゃないにしても、 あのエクスプロージョンさえ初歩の初歩に過ぎないなら、後の数と質はバカでも見等がつくわね。それで、次は回りくどいことなしで 簡潔に答えなさい。わかってるんでしょ? わたしたちの見た、あの”奇跡”を起こせる魔法が、あったの?」 「ああ、あった」 デルフは観念したように認め、その魔法の詳細を話した。 「やっぱりね、そんな魔法があれば、どんな”奇跡”だって演出できる。なんで早く言わなかったのよ」 「お前さんもわかるだろう? 俺にだって、認めたくない現実ってもんはあるんだよ。それよりもお前ら、わかってるだろうが 相手は娘っ子よりもはるかに格上の使い手だ。しかも、向こうはこっちの手の内はお見通しだ。勝てる見込みは少ないぞ」 だろうな、とふたりは思った。この先に待っている相手は、ある意味自分たちの天敵と言える、しかしすでに腹をくくったふたりに 迷いはない。互いのことを支えあっているふたりには恐れもない。 目の前には、船内へと続く入り口が口を開けている。中からは魔法のランプの明かりが漏れてくるが、やはり人の気配はなく、 へばりつくような薄気味悪い妖気が漂ってくる。 「サイト、行くわよ」 ルイズは先頭に立って行こうとした。手には杖をぐっと握り締め、いつでも戦える体勢に自分を置いている。 才人はそんなルイズの度胸にいつもながらの頼もしさを覚えたが、ぐっとこらえて呼び止めた。 「ルイズ、ちょっと待て。こいつは、お前が持ってろよ」 そう言って才人は懐のホルスターから、あるものをルイズの手に取り出して握らせた。 「えっ? これ、あなたの! サ、サイト、この銃って」 「ああ、おれのガッツブラスターだ。エネルギーカートリッジは新品に換えておいたから心配すんな」 「違うわよ! これ、あなたの武器でしょ。き、貴族のわたしに銃なんて、いえそれより、これはサイトの世界から持ってきてもらった大事なものじゃないの!」 ルイズは愕然とした。この光線銃は才人がずっと使い続けて、何度も窮地を乗り越えてきた、片腕ともいうべき武器だ。けれども 才人は真剣な表情で言った。 「いいから持っとけって。お前、平気そうな顔してるけど、さっきのエクスプロージョンで魔法の力はほとんど尽きてるはずだろ。 余力があるんだったら、とっくにテレポートで一時撤退してるもんな?」 「うっ、あんたってほんと妙なとこで鋭いわね。しょうがないわね、こ、今回だけはあんたに従ってあげる。けど、あんたは これなしでどうする気よ?」 「おれにはデルフがあるさ。ま、なんやかやで姉さんたちに剣技も習ったし、これ以上こいつをスルーしたら、それこそ二度と 抜けなくなるかもしれねえしな。そいつの使い方はわかるよな?」 「バカにするんじゃないわよ。まったく、あんたのおさがりに頼らなきゃいけないなんて、とんだ屈辱だわ」 ルイズは才人の優しい気遣いがうれしく、肝心なときに十全に力を発揮できない自分が恨めしかった。 だが、足手まといになるのだけは嫌だ。ルイズは才人から借り受けた異世界の武器をぐっと握り締め、船内の闇の果てを凝視した。 人の気配のしない聖マルコー号の船内。その廊下を、二人は木の床がきしむ音だけを共にして進んでいった。 目的の場所は考えるまでもない。待っているといって招待されたのだから、教皇のいるべき場所はひとつだけだ。 船内中央部、聖堂の間にその男たちはいた。 「ようこそおいでくださいました。お忙しい中呼びつけてしまいまして恐縮しております」 「教皇さん、ここまできてつまらない学芸会はやめようぜ。おれたちは遊ぶのは好きだけど遊ばれるのは大っ嫌いなんでね。 ついでに言うと、今日限りで二度とお目にかかりたくない。エルフを相手に戦争なんて、お前たちは悪魔だ」 「そういうことよ。まさかまさかと思って、今日までじっとしていたけど、もう私はあなたたちを許さない。ハルケギニアを あんたたちのおもちゃにさせないわ」 丁寧な物腰で語りかけてきたヴィットーリオに、才人とルイズは正反対の態度と口調で応えた。腹の探りあいなどは一切なし、 最初から遠慮なくケンカを売っている。しかしヴィットーリオは気分を害した様子もなく、にこやかに笑いながら言った。 「ふふ、どうやらかなり嫌われてしまっているようですね。できれば、あなたがたとはずっと仲良くしていきたかったのですが、 実に悲しいものです。私たちはこんなにも世のためを思っているというのに、そうでしょうジュリオ?」 「ええ、好意が相手に伝わらないというのは実に悲しいです。僕たちは何度も君たちを手助けしてあげたじゃないか? ねえ」 けれども才人もルイズもそのくらいでごまかされたりはしない。 「しらじらしいぞエセイケメン野郎。手助けどころか手回しがよすぎるんだよ、まるで予定されてたみたいにな。最初から全部、 今日のために仕組んでたんだろう?」 「まったく、よくこれだけ大掛かりに仕組んだものだけど、考えてみたらロマリアの力なら簡単よね。ガリアのジョゼフ王とも実は つるんでるんじゃない? あの戦争自体、あんたたちの仕組んだ自作自演だった。違うかしら!」 ふたりの推理は証拠があってのものではない。しかし、すでに正体を隠すつもりのなくなっていたヴィットーリオは楽しげに 拍手をして褒め称えた。 「いやいや、おふたりとも見事な洞察力です。実にすばらしい。下で浮かれ騒いでいる愚かな人間たちに聞かせてあげたいくらいです」 「どうとう本性を表したわね。教皇、ヴィットーリオ・セレヴァレ、あんたの正体は何? 人間とエルフの戦争を作り出して、 なにを企んでいるの!」 才人がデルフリンガーの柄に手をかけて、ルイズが懐にガッツブラスターを隠しながら杖を向けて教皇を問い詰めた。 すると、教皇はそれまでの人のよさそうな笑顔をどけて、口元をゆがめると、いままでとは逆にぞっとするくらいおぞましい 笑い顔を浮かべた。 「うっくっくく、企んでいるか? ですか。そうですね、確かに企んでいるといえばそうなるでしょう。私たちは、ある役割を 受けてこの星に送り込まれた者です。そう、遠い昔より、我らはこの星を見守ってきました」 「やっぱり、宇宙人か。テファのお母さんの前に現れたのも、てめえだな。そんな昔から侵略の機会をうかがってやがったんだな」 才人が怒りを込めてヴィットーリオを睨みつける。しかしヴィットーリオは、やれやれとばかりに首を振る。 「侵略? 私たちはそんな下卑なことはいたしません。我らの主は、ただ昔からこの星をじっと見ておられました。この星は 美しい……主は、この美しさをとても大切に思っておられます。けれども、同時に主はとても憂いておられました」 「なんですって?」 「ルイズ、惑わされるな。侵略者の常套手段だ。どうあれ、こいつらが戦争を起こそうとしてるのに変わりはないんだ。 おとなしくハルケギニアから手を引けばよし。さもなければ」 「ふふ、さもなければ?」 決意を込め、抜き身のデルフリンガーの切っ先を突きつけて宣告する才人にもヴィットーリオは余裕の態度を崩さない。 才人は、平和的解決の可能性がほんのわずかもありえないことを知りつつ、それでも最後の望みと、鬼になる覚悟を 込めて言い放った。 「ここで、死んでもらう」 「うふふ、ははは、大きく出ましたね。世のしくみもわからない無知な生き物が、我らに挑もうとは本当に呆れ果ててしまいます。 その野蛮さが、やがてすべてを滅ぼすとも知らずに。仕方ありません、ジュリオ、少々相手をしてあげてください」 交渉は決裂した。そして、口出しこそしてこなかったが、隙なくヴィットーリオを護衛していたジュリオが剣を抜きながら前へ出てくる。 「ではサイトくん、ご命令なんでね、僕が君を殺してあげよう。こう見えても、剣には少々の自信があるんだ。 最初から真剣にこないと、首が飛ぶよ」 「なめんな」 次の瞬間、ふたりの剣が閃いて火花をあげた。 空気を切り裂いて進むデルフリンガーと、それを迎え撃つジュリオの鋼鉄の剣。鍛え抜かれた金属が高速で激突するたびに 鋭い音が鳴り、次の瞬間には攻守を逆転させて、ジュリオの斬撃がデルフリンガーにさえぎられて、才人とジュリオは 激しい剣戟の応酬を重ねた。 「やるね。君に血反吐を吐かせたらルイズくんを屈服させられると思ったんだけど、どうもそれなりの剣術を持ってるらしいね」 「なめるなよ、こっちゃハルケギニアで一番と二番の剣士のコーチつきだ。ルイズ、こいつはまかせろ! お前はそっちのニヤケ面を やっちまえ!」 「わかったわ!」 才人がジュリオを抑えているあいだにと、ルイズはヴィットーリオと向かい合う。しかし、ルイズはいきなり攻撃を仕掛けることはせずに、 十数歩ぶんの間合いを置いてヴィットーリオを睨みつけたままでいる。 「どうしました? 私はこのとおり丸腰ですが、かかってこないのですかな?」 「うかつに飛び込んで吹き飛ばされるのはイヤですからね。あんた、私が気がついてないとでも思ってるの? あんたがさっきみんなの 前で演じた茶番劇の手品、もうとっくに見抜いてるのよ」 「ほう? 先ほどのというと、私が天使の祝福をこの身に受けたことですか。ふふ、まああなたなら直感的にわかるでしょうね。 そう、この世界の人間は魔法という特別な能力を持っていますが、反面魔法でもできないことがあると簡単に奇跡だと 信じ込んでしまいます。増して、私という信仰の対象であればなおさらです。ですが、あるのですよね、魔法でも起こせない 奇跡を起こすことのできる魔法が」 「……始祖ブリミルは、自分の遺産である四つの秘宝を子孫たちに分けて残した。ひとつはトリステインの始祖の祈祷書、 あとのふたつはそれぞれガリアとアルビオンに伝えられ、残るひとつはロマリアに……あなた、虚無の使い手なんでしょう」 断言したルイズの視線がまっすぐにヴィットーリオを見据える。その眼光は鋭く、もしも心に偽りを持つ者であれば 耐えられずに視線を逸らしてしまうであろう。だが、ヴィットーリオはにこやかにルイズに向けて微笑んだ。 「ご明察です。我がロマリアには、始祖の円鏡が伝わっております。そして、私の身には始祖ブリミルの血脈があるのです。 すなわち、私はあなたと同じ虚無の担い手。時代に選ばれた神の使途というわけですよ」 「……ペテン師のくせに偉そうに。間違っていてくれればと思ったけど、わたしたちの仲間のひとりが敵だったなんて。 虚無の担い手の体を乗っ取ったのか、それとも担い手が魔がさしたのか。どっちでもいいけど、虚無の力でさっきの 天使の幻影を作り出したのね」 「そのとおり、あなたはまだ啓示を受けていない虚無の魔法で、名を『幻影(イリュージョン)』と言います。効果は読んで 字のごとく、イメージしたものの幻影を作り出すことができるのです。大きさから動きまで、自由自在にね」 「まさしくペテンにふさわしい魔法ね」 たっぷり嫌味を込めてルイズは言った。しかし、使いようによってはいくらでも応用が利く魔法でもあるわねと思った。 もちろんよい方向にも、しょせんどんな力も使い手の意思の善悪次第で価値が決まる。偉大な始祖の遺産も、悪の手に 渡ってしまったのでは道端の石ころほどの値打ちもない。 「始祖も天国でさぞ嘆いておられるでしょうね。仕方ないわ、身内の不始末の責任は、わたしがこの手ですすいであげる。 始祖の御許に送ってあげるから、土下座して謝ってきなさい」 ルイズも決意した。自分の仲間であるはずの虚無の使い手が敵であったという事実は受け入れがたかったが、こいつらを 野放しにしておけば何万という命が無駄に散ることになってしまう。 「エクスプロージョン!」 ほぼ同時に、ルイズとヴィットーリオは杖を振るった。両者のあいだの空間が爆発し、ふたりの体が爆風にあおられて 髪とマントがたなびく。 ルイズはほんのわずかに残った精神力を使った、詠唱をともなわないエクスプロージョンの暴発をぶっつけようとしたのだが、 ヴィットーリオはまったく同じ魔法でこれを相殺してきたのだ。 「ほう、無詠唱にも関わらずになかなかの威力ですね」 「くっ、わたしと同じ虚無……当然ね、わたしと同じ血統なら、わたしと同じことができる、か」 「同じではありません。あなた以上ですよ」 ヴィットーリオの言ったとたん、ルイズのすぐそばで爆発が起こった。ルイズも詠唱を気づけなかったほどの早業で、 ルイズの上着の左肩がこげてマントが舞い落ちる。遅れてきた痛みにルイズは顔をしかめ、ヴィットーリオが口だけでは ないことを知った。 「やるわね。こんなに詠唱が早いメイジは、わたしの知る限り数人もいないわ」 「それは光栄。しかし、あなたも鍛錬を積めばこの程度はすぐにできるようになるはず。あなたとは友人になりたかったのですが、 残念でなりませんよ」 「ふん、利用するための関係を友人なんて笑わせてくれるじゃない。あんたこそ、これほどの力を悪用するなんて、まったく惜しいわ」 「……それは、どうでしょう? この世界にとっての真の悪とはなにか、考えたことはありませんか?」 「そんなの決まってるわ。勝手に人の家に上がりこんで、あまつさえ我が物にしようとするあんたたちみたいな侵略者よ」 ヴィットーリオの問いかけに、ルイズは隙を見せないように注意を払いながらも、売り言葉に買い言葉で答えた。すると、 ヴィットーリオは悲しげな表情を見せて。 「残念です。あなたもまた、そのような狭い考え方しかできないのですね。私は、この世界にとっての悪と言ったのです。 この広い世界に住んでいるのは人間だけではありません。いえ、むしろ人間などは少数派でしょう。にも関わらず、人間は この世界になにをしてきたと思いますか?」 「……なにを言ってるか、さっぱりわからないわ」 正直、ルイズはヴィットーリオの言うことを理解できなかった。それよりも、才人の言うとおり、適当な言いがかりで こちらを惑わせてくるのだろうと、攻撃の隙をうかがうことに神経を使う。しかしヴィットーリオは気にした様子もなく 話を続けた。 「かつて、始祖ブリミルの時代にこの世界は一度滅びました。その時の様は、大地は荒れ果て、空は濁り、生命の 存在を拒絶する不毛の荒野がただひたすら続いていたといいます。それから数千年、大地はその偉大な力で森を生み、 動物や鳥や虫を育ててきました。これはまさに神秘でしょう」 ルイズの記憶に、虚無の力が以前見せてくれた過去のビジョンが蘇る。 「しかしながら、人間は森を切り開き、山を削り、我が物顔で己のテリトリーを広げ続けています。そこに、どれだけの 生き物がいて、住処を追われているのか、考えたことはありますか?」 「それは、わたしたち人間が生きるうえでもしょうがないことよ。動物同士も生きるために他者を食い、縄張りを広げていくわ。 人間だけがなにもせずに生きていけるわけがない。その生き物たちは、かわいそうだけど人間との競争に負けたのよ」 「人間は度が過ぎるのです! いえ、この世界の人間たちはまだその自覚すらないのですね。ならば少し教えてあげましょう。 このハルケギニアでは、まだその兆候がはじまったばかりですが、人間たちは自らの手で自分の世界を破壊することを なんの罪悪感もなくおこなっているのです。例えば、先年のアルビオンの内乱がおさまるまでのあいだに、軍船を作るための 木材を伐採するために広大な森林が消えました。トリステインでもガリアでもゲルマニアでも、この近年ですさまじい勢いで 森が消えていっています! 森が、どれだけの年月を経て育つのか、あなたはご存知ですか?」 「な、なにを言っているのよ! 森なんてハルケギニア中にいくらでもあるじゃない。ちょっとやそっと使ったところで変わりゃしないでしょ」 取り付かれたように熱弁をふるうヴィットーリオに、ルイズはうろたえながらも言い返した。しかし、ヴィットーリオは嘆き悲しむように 整った顔を歪めて語る。 「ああ、なんという愚かな! やはり人間に未来などはない。無制限に増え続け、世界の隅々まで蔓延して、あらゆるものを 食い尽くすまで止まらないのです。無知とは恐ろしい! あなたは知らないのですね、森を削られ住処を追われたオークや トロルがよその土地で暴れて起きる被害を、戦争のための大砲を作る製鉄所の石炭の煙で病に苦しむものを、そして 高価な薬をとるためだけに無慈悲に命を奪われていく竜や幻獣たちの嘆きの叫びを!」 それは、まさに鬼気迫るとしか言いようのない叫びであった。教皇として信者に教え諭すときとはまったく違う、搾り出すような 怒りと嘆きの怨念の声。 ルイズは圧倒され、喉が凍ってなにも言い返すことができない。 だが、才人はジュリオと切り結びながらも、ヴィットーリオの叫びは耳に響き、その意味を知っていた。ヴィットーリオの言うこと、 それはかつての地球人類が刻んできたのと同じ歴史をハルケギニアも刻もうとしていることであり、同時に同じ過ちも再現しようと しているということであった。 ”ハルケギニアでも、人間による自然破壊が始まっている。しかも、この世界の人々には自然保護という概念がまだない” 社会科の時間で習った、森林破壊や生物の大量絶滅の歴史が蘇る。二十世紀中ごろから二十一世紀初頭にかけての 地球は環境破壊や東西冷戦での度重なる核実験による影響で、いつ地球が滅亡してもおかしくないという危機感が 常に人々の胸のうちにあった。 いや、そんな被害者意識は傲慢であろう。人間は間違いなく、ほんの少し前の時代には地球を滅ぼしかけていたのだ。 そして、このロマリアに来る前にたどり着いたエギンハイム村で聞いた話では、利益を拡大しようとする村人と原住民である 翼人の間に争いがあったという。 才人は思った。こいつらは、いずれハルケギニアが地球と同じようになると思っている。それを未然に防ぐために、この世界の 人間を抹殺しようというのが、奴らの大義名分なのだ。 「だが、そんなもん、身勝手すぎるぜ!」 才人は吼えた。確かに、ハルケギニアの人間も地球人と同じ愚行の道を歩みつつある。だからといって、こんな一方的な 行為を是認するわけにはいかない。ジュリオとつばぜり合いをしながら、才人はヴィットーリオに向かって叫んだ。 「おい教皇さん! 人間を、まるでばい菌みたいに言ってくれるじゃないか。確かに、人間は欠点だらけの生き物だ。この世界も、 下手すれば遠くない将来、ひどいことになるかもしれねえ。だが、悪い物と決め付けてバッサリと切り取ろうなんて、てめえに そんな権利があるのか? ハルケギニアの将来は、ここに住む人間たちのもんだろ!」 「ええ、本来ならそのはずです。けれども、人間たちは力を持てば持つほど増長して、己のために平然とほかの生き物を 犠牲にしていきます。いずれこの星に飽き足らず、宇宙そのものまでを……私たちも滅ぼされたくはないのです!」 間違ったことは言っていない。才人にもそれはわかった。 かつての地球でも、人類の際限ない増長に反発するかのように、自然界から幾多もの脅威が現れた。住処を追われ、 眠りを妨げられてしまった怪獣たちの逆襲。怪獣頻出期の初期からそれは始まり、ゲスラ、ザンボラー、ステゴン、 ハンザギラン、シェルター。これらはほんの一例であり、皆人間の被害者だ。 また、それにも増して救いようもなく凄惨だったのが放射能の恐怖だ。核エネルギーは、本来は平和利用の大きな力として 扱うべきなのに、この偉大なパワーはただ兵器として開発され、広島長崎から始まる悲劇の連鎖を生んできた。 レッドキングによる水爆の持ち出しは地球壊滅の危機を生み、ビキニ環礁での核実験は生き延びていた古代恐竜を変異凶暴化させ、 その猛威によって、ようやく戦後から復興を遂げていた東京は再度灰燼に帰すことになった。さらにその後も、各国の核実験は エスカレートの一途を辿って宇宙にまで拡大し、ギエロン星獣やムルロアの脅威が地球を滅亡の危機に追いやった。 中には、そんな地球人を脅威に思って攻撃してきたマゼラン星人や、地球人の卑劣さに単純にキレたピッコロのような 宇宙人もいる。愚かな地球人という宇宙人の罵り文句は、一面においては完全に正しいのである。 現在でも、東西冷戦が終わって沈静化してはいるが、愚かなことにいまだ一部の国では核開発がおこなわれている。自国を 守るためにある程度の武力は必要だが、身の丈を超えた力を欲するのはならず者と臆病者のやることなのである。 才人は思う、地球人は馬鹿だった。そしてハルケギニア人にも同じ資質があるだろう。地球人はギリギリで回避できたが、 ハルケギニア人がいずれ自分でこの世界を滅ぼす可能性は十分以上に存在する。 「あんたらの言いたいことはわかったよ。でもな、そういうあんたらが人間以上に高尚な生きもんだって証拠がどこにある。 むしろ、やり口の悪辣さはあんたらもひでえじゃねえか。人間にとって変わって、今度はあんたらがハルケギニアを滅ぼすか?」 「私たちは、この星をあるべき自然の姿に返すだけです。今度こそ、人間という汚れた存在のないきれいな星を作るために」 「この、いかれたエコロジストが!」 才人の激昂の叫びが轟いた。 「てめえらがどれだけ進んだ文明を持っていようと、この星の行く先はこの星に生まれたもののもんだ。そっちの勝手な好き好みで きれいだの汚いだの見るのは勝手だが、ハルケギニアを自分の箱庭だとでも思ってるのか?」 「人間こそ、この星の絶対的な支配者だとでも思っているのですか! この星は今、人間というウィルスに犯されているのです。 互いに憎しみあい、騙しあい、殺し合いながらも決して死滅せずに増殖し続ける悪性のウィルスに。今、これを取り除かなくては 手遅れになってしまいます」 「ふざけんな! てめえは人間の悪いとこしか見ちゃいねえ。いや、自分にとって都合のいいところだけを強調して、侵略の口実に 使っているだけだろ」 「私はロマリアの人間として、長い年月をかけて人間たちを見てきました。どれだけ年月を重ねようと、彼らにはなんの進歩もない。 もはや破滅だけが彼らに残された救いなのです」 怒りが、抑えようもない怒りが胸に満ちてくるのを才人は感じた。ジュリオの剣をデルフで受け止めながらする歯軋りは、 力を込めるためのものだけではなく、どこまでも偉そうに上から目線のこいつらへの憤りによるものだ。 「サイトくん、無駄な抵抗はやめたまえよ。この星から人間がいなくなれば、動物や植物が大地に満ち、自然を大切にする亜人たちが それを守っていく。すばらしいユートピアじゃないか」 「ああ、確かにそりゃそうだろうな。けど、そんなもんはまやかしだ!」 ジュリオの攻撃を振り払い、才人は大きく息を吸う。そして、ルイズに向かってはっきりと告げた。 「ルイズ、聞いてたろ! こいつらは、なんともすばらしい聖人たちだよ。本気ですばらしい世界とやらを作ろうとしてらっしゃる。 けど、こいつらの頭には未来への希望がねえ。邪魔者を削るだけで、新しいものを作ろうって気がねえようだ」 「ええ、わたしも感じたわ。あなたたちは、ただ過去を懐かしんで、美しい思い出を蘇らせようとしてるだけだわ。時間を逆流させ、 停滞させようとしてるだけで、なんの進歩も示さないあなたたちにわたしたちの未来を奪う権利なんてない。覚悟なさい…… あなたたちは、わたしたちが倒す!」 「よくおっしゃいました。ですが、私たちはあなたたちウィルスの進化など許すわけにはいきません。次は本気でいきますよ」 意思はすれちがい、決裂した。後は、戦う以外に道はない。 剣と剣をぶつけ合う才人とジュリオ。 「ほんとうに、いいかげん素直にやられてくれたまえよ。手足を切り落とされるのは、けっこう痛いと思うんだけどね」 「ざけんじゃねえ、てめえらみたいに人の痛みをヘラヘラしながら見てられる奴らに絶対負けるかよ!」 杖を抜き放つヴィットーリオに、小柄な身をかわして反撃の機会をうかがうルイズ。 「なかなかすばしこいですね。虚無の使い手としては未熟でも、場慣れはかなりしているようで、あまり長い詠唱はさせていただけそうも ありませんねえ」 「余裕しゃくしゃくで褒められてもうれしくないわよ。こっちこそ、詠唱のためにちょっとでも気をそらせばたちまち吹き飛ばされる。 始祖の力で、これまでどれだけ悪事を働いてきたの!」 教皇ヴィットーリオが、なぜ絶対的な支持を集めているのか、その一端がわかった気がした。全てではないにしろ、彼が虚無の 力を利用して成り上がって来た事は想像にかたくない。それは虚無の力を私欲のためには使わないと決めたルイズとは 対照的で、ルイズはなにがなんでもこの男を倒そうと心に決めた。 拮抗する才人とジュリオ、反撃の隙を狙いながらも追い詰められていくルイズ。両者の戦いは、ルイズたちの側が不利に見えた。 だが、ルイズはエクスプロージョンの機会をうかがうように見せながらも、たったひとつの隙を狙っていた。 ”ほんの一瞬でいい。サイト、その隙を作って!” ヴィットーリオは強い。このまま勝負を続けていたら、遠からず自分はエクスプロージョンの直撃を受けて死ぬ。しかし、 たったひとつだけ自分に勝つ手段がある。だがその一瞬を逃せば終わりだ。それに、ヴィットーリオは自分の一挙手一投足を 念入りに観察していて隙がない。だから、ヴィットーリオの注意を少しだけでも他に逸らさなければいけない。 ルイズの体力は長くは持たない。それに、才人の技量もジュリオに勝っているわけではなく、長引けば才人が不利だ。 余裕の表情で才人を追い詰めるジュリオ。だが、才人にも一度限りの隠し球があった。 ジュリオが才人の首を狙って剣を振り下ろしたとき、才人はデルフリンガーの柄に特別なひねりで力を込めた。 「わあぁーーーーっ!!」 「っ!?」 いきなり、それまでずっと黙っていたデルフが大声をあげたことで驚いたジュリオの剣閃が鈍った。その瞬間を逃さず、才人は 全力で横なぎに切り払った。 「くらえぇぇっ!」 「しまっ、うわぁぁっ!」 手ごたえあり。ジュリオは部屋の隅まで吹っ飛ばされ、起き上がってはこない。致命傷かはわからないが、才人はそれよりも ルイズを援護するために叫んだ。 「ニヤケ野郎、次はてめえの番だ!」 「ぬっ! ジュリオ」 その瞬間、ヴィットーリオの注意がわずかに逸れ、ルイズは間髪いれずに懐からガッツブラスターを取り出して撃ち放った。 「うわあぁぁぁぁぁっ!」 初めて引く銃の引き金。ビームが空気を裂く音が響き、青い光の矢がヴィットーリオの胸に突き刺さる。 「うっ、がっ……ま、まさか、あなたがその武器を。ぬ、ぬかりました」 「はぁ、はぁ、覚えておきなさい。わたしたちは、誰かを利用して戦ったりはしない。互いに、持てる力を合わせて戦う。 人間を、なめるんじゃないわよ」 起死回生の大博打が成功した脱力でルイズはひざを折って大きく息をついた。 だが、これは確実に効いたはずだ。たとえ奴が宇宙生命体の変身でも憑依体でも、怪獣にもダメージを与えられる ガッツブラスターの直撃を受けたのだ。あと一発食らわせればこいつを倒せる。教皇が消えて、ロマリアは大パニックに なるだろうが、エルフとの戦争が起こるよりはましだ。 しかし、今まさにとどめを刺されようとしているヴィットーリオの顔に、不敵な笑みが浮かんだ。 「ふ、ふふふ、どうも少々遊びすぎてしまったようです。あなたを、いえあなたたちを見くびっていたことを謝罪しましょう。 そしてわかりました。あなたちの力が互いの結束にあるのなら、それを奪えばよいということを。見せてあげましょう。 あなたのまだ知らない虚無の魔法を」 「なんですって、そうはさせるものですか!」 詠唱をはじめたヴィットーリオを阻止しようと、ルイズはガッツブラスターの銃撃を再度撃ち放った。だが、なんと光線は ヴィットーリオの直前で、稲光のようなものにはじかれて逸れてしまったのである。 「銃弾を、はじいたの!?」 「電磁波シールド……くそっ、化け物め」 いつの間にかヴィットーリオは自分の周りに不可視のバリアーを張り巡らせていた。それが、今の攻撃をはじいてしまったのだ。 苦し紛れに才人がデルフリンガーで斬りかかるがそれも通用せず、ヴィットーリオの詠唱が不気味に響き渡る。 「ユル・イル・ナウシズ・ゲーボ・シル・マリ……」 「くっ、くっそぉ。ルイズ、いったい奴はなんの虚無魔法を使おうとしてるんだ!」 「わたしにもわからないわよ。でも、この詠唱の長さと威圧感、下級であるはずがないわ。少なくとも中級、気をつけてサイト」 「気をつけろって、なにをどうすりゃいいんだよ!」 「こいつは、まずいぞ相棒! 今すぐ逃げろ!」 「逃げ場所なんてねえよ!」 見守るしかない才人たちの前で、ヴィットーリオの詠唱は続き、ついに彼は詠唱を完成させた。 「お見せしましょう。中級の中の上、その名を世界扉。これがあなたたちの最後に見る魔法です」 ヴットーリオの振り下ろした杖の先、そこに小さな光る粒が現れたのが始まりだった。 粒は見る間に風船のように膨れていき、まるで銀色の鏡のような姿へと変わる。その大きさは呆然と見守る才人たちの 見る前で、手鏡大から姿見の大きさ、さらには鏡の壁とさえいえる大きさへと膨れ上がっていき、さらに巨大化を続けていく。 「なっ、なんだよこれは! ち、近づいてくる」 「これが虚無? まるで生き物。教皇、いったいなにをしたの」 銀色の球体は巨大化を続け、才人とルイズへと迫ってくる。それはまるで銀色のアメーバのようで、とても魔法とは思えない。 教皇は、肥大化する銀色の球体の影になかば隠れながら、ふたりをあざ笑った。 「ふふふ、これは確かに虚無の魔法ですよ。移動をつかさどる虚無のひとつ世界扉、本来ならばこの世界と別世界とを結ぶ 次元ゲートを発生させる高位な魔法です」 「じげ、なんですって」 「次元ゲートだって? つまり、この銀色のグニャグニャの先は別の世界につながっているってのか!」 「そのとおりです。まあ、本来は莫大な精神力を消耗する物なのですが、それは脆弱な人間の話です。それよりも 気をつけたほうがいいですよ。私は行く先のイメージをせずにこの魔法を発動させました。つまり、このゲートをくぐった先に どんな世界があるかは、私にもわからないのです。ふふ、ははは」 「なんだとお!」 愕然とする才人たちに向かって、次元ゲートはさらに速さを増して迫ってくる。その大きさは歯止めを失い、とうとう船室を 飲み込み、船そのものをも侵食しはじめた。 「サイト大変! 船が、このままじゃ墜落するっ!」 「畜生、なっなんだ! 吸い込まれるっ!」 突然、ゲートから引力のようなものが発生してふたりを引き込み始めた。まるで、急な坂道にいきなり立たされたかのような 吸引力に、才人はデルフリンガーを床に突きたてて耐えようとするが、じりじりと吸い寄せられてしまう。 「教皇ぉっ!」 「フフフフ、どうやら異常な発動をしてしまった虚無の暴走が生贄を求めているようですね。偉大なるあなたがたの始祖の遺産で 消えれるなら本望でしょう。あはははは」 嘲笑するヴィットーリオの前で、才人とルイズは船をも破壊しながら肥大化していくゲートに吸い込まれていく。だめだ、このままでは ゲートにふたりとも飲み込まれてしまう。才人は片手で支えになっているデルフを持ちながら、ルイズにもう片手を差し出した。 「ルイズ、掴まれ! おれたちは、いつもふたりで一人だ」 「サイト、サイトっ……あぐっ!」 才人の伸ばした手をルイズが握ることはなかった。その直前に、火薬の破裂する音とともに、一発の銃弾がルイズの体を 貫き、彼女の体は力なく崩れ落ちたのである。 「ルイズ? ルイズ! ジュリオっ、てめえ!」 「あははは、さっきの仕返しさ。君たちの絆とやらはやっかいそうだけど、一発の鉛球にはかなわないんだね。さあ、そのまま ふたりとも、どこともしれない次元のはざまでさまよい続けたまえ。もう互いに、二度と会うことはない」 ジュリオに胸を撃たれたルイズは、そのまま落ちるようにして次元ゲートの銀色の海の中へと吸い込まれていった。 「サ、イト……」 「ルイズーッ!!」 次元のかなたへと落ちていくルイズを追って、才人は迷わず飛び出した。重力の感覚が消え、目の前にひたすら不気味に うごめく銀色の海が広がるその中へ。 「相棒、相棒ぉーーーっ!」 床に突き刺さったままのデルフが見守るその前で、ルイズと才人の姿は次元ゲートの銀色の光の中に消えていった。 残ったのは、高笑うヴィットーリオとジュリオの声。そして、暴走する世界扉の次元ゲートは聖マルコー号の船体を飲み込み、 優美な船はやがてバラバラの木片となって空に散っていった。 そして、いかばかりの時間が流れたのか……才人は目を覚ました。生きて、それが幸運だったか不幸だったかは別としても。 「う、お、おれは……ここは、どこだ? な、なんだこりゃあ!」 目を開けた才人が見た景色は、どこまでも続く荒野だった。草一本ない砂漠に等しい大地、濁った空……明らかにハルケギニアとは 違う光景に、才人は自分が次元を超えてしまったことを理解した。 「おれは一体、どこに来てしまったんだ? うっ、ごほごほっ! なんだ、このひでえ空気は」 喉をひっかかれるような痛みに才人は顔をしかめた。この世界は大地と空だけではない、大気までまるでスモッグの中のような ひどさだ。才人はとっさに、持っていたハンカチで口を覆ってなんとかしのごうとした。 「なんなんだこの世界は……そ、そうだ! ルイズは。ルイズーっ!」 気がついた才人は、とっさに周りを見回した。しかし、周囲にはルイズのあの桃色の髪のあざやかな色の気配はなく、どこまでも 無機質な荒野ばかりが続いていた。 しかもそれだけではない。ルイズを呼ぶ声を聞きつけたのか、地中から地響きをあげて巨大な怪獣が飛び出してきたのである。 「今度は怪獣かよっ! くそっ……しまった! ガッツブラスターもデルフも。ちくしょう、なんでこんなときにっ!」 自分が丸腰だと気づかされた才人にできることは逃げることだけだった。 荒野の上を、必死で走る才人。しかし、現れた屈強な体つきを持つ銀色の怪獣は雄たけびをあげて才人をまっすぐに追ってくる。 才人も全力で走ったが、しょせん人間と怪獣では歩幅が違いすぎる。 もうダメか……才人がそう思いかけた、そのときだった。 「あなた、伏せて!」 突然才人は誰かに押し倒されて地面に押し付けられた。 いったい誰だ? ルイズ? いや違う。頭を押さえつけられながら見上げたその相手は、きらめくような薄い金髪をしていたからである。 「な、なにすんだよ。はやく逃げないと怪獣に踏み潰されるぞ!」 「しっ、黙って。だいじょうぶよ、あいつは動くものしか見えないの。じっとしていたら、そのうち行ってしまうわ」 「そ、それはどうも……えっ!」 少し頭を動かせるようになり、あらためて相手の顔を見上げた才人は絶句した。その相手は、翠色の瞳を持つ、見惚れてしまうほどの 美しい女性だった。だがそれ以上に、彼女の長く伸びた耳は、才人にとっても忘れられない種族のものだったからである。 ”エルフ!? どうなってるんだ、ここはハルケギニアじゃねえのか? ほんとに、いったいおれはどこに来ちまったんだ……ルイズ” 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/rodokuch1/pages/13.html
阿龍 浦野 おはよう洗濯機、にくや、久遠 カフェモカ 久遠 くま くれぐれ しもやか sukeichi すずきさん スタン 竹取 ちょぴん Policy MAD じゃわてぃー (朗読した人) (朗読した人) (朗読した人) (朗読した人) (朗読した人) (朗読した人) (朗読した人) 阿龍 山田悠介『DUST』(プロローグのみ)(ust) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「囚われの心で」 「勇者の帰還」(ust) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「晩鐘」 「白い花」(ust 録画有) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「光の雨」 「遺影画家」(ust 録画有) エスエス製薬 エスカップ成分表(ust) KIRIN 大人のキリンレモン(ust) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「天国にいちばん近い村」(ust 録画有) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「さかのぼる民」「饒舌な傭兵」(jus/ust 録画有) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「英雄」(ust 録画有) 丸美屋 のりたま (ust) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「「殻」の中の住人」「さらば相棒」(ust 録画有) 重松清『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』「グレオ爺さんの話」(ust 録画有) 浦野 アパシー 学校であった怖い話VNV 第一話(ust 録画有) アパシー 学校であった怖い話VNV 第二話(ust 録画有) アパシー 学校であった怖い話VNV 第三話(ust 録画有) アパシー 学校であった怖い話VNV 第四話(ust 録画有) アパシー 学校であった怖い話VNV 第五話(ust 途中まで録画有) アパシー 学校であった怖い話VNV 第六話(ust 録画有) アパシー 学校であった怖い話VNV 最終話(ust 録画有) 飯島多紀哉「後ろの正面」(ust) 木原浩勝+中山市朗「新耳袋 現代百物語 第一夜」(jus) アパシー 学校であった怖い話VNV 新装版 飴玉ばあさん(11月26日 jus) 木原浩勝「九十九怪談 第一夜」第39話まで(4月19日 jus) おはよう洗濯機、にくや、久遠 サチコ「tea for two」 サチコ「ハイウェイ・ロマンス」 サチコ「Look up at the Velvet Sky」 サチコ「ワインレッドの夜」 サチコ「トーキョーの空高く」 カフェモカ 宮沢賢治「よだかの星」(ust 録画有) 久遠 立原 えりか (著), 永田 萠 (著) 「きんいろのあめ」(jus) くま ハリーポッターと賢者の石 (ust 録画有) くれぐれ 竹久夢二「夜」「風」(ust) 太宰治「カチカチ山」(ust 録画有) 西加奈子「しずく」(ust) 西加奈子「灰皿」(ust) 田辺聖子『新源氏物語』「眠られぬ夏の夜の空蝉の巻」 (jus) 田辺聖子『新源氏物語』「生きすだま飛ぶ闇の夕顔の巻」 (jus) 田辺聖子『新源氏物語』「あけぼのの春ゆかりの紫の巻」 (jus) 田辺聖子『新源氏物語』「露しとど廃苑の末摘花の巻」 (jus) 筒井康隆「寝る方法」(jus) 田辺聖子『新源氏物語』「燃ゆる紅葉のもと人は舞うの巻」 (jus) 田辺聖子『新源氏物語』「めぐる恋ぐるま葵まつりの頃の巻」 (jus) 小川未明 「金の輪」「野ばら」「赤いろうそくと人魚」「月夜と眼鏡」 (jus) 石田衣良『スローグッドバイ』「泣かない」(jus) 田辺聖子『新源氏物語』「秋は逝き人は別るる賢木の宮の巻」(jus) 金城一紀『対話篇』「花」(jus) 田辺聖子『新源氏物語』「ほととぎす昔恋しき花散る里の巻」(10/04 jus) ダ・ヴィンチ編集部編『秘密。私と私の間の十二話』(jus) よしもとばなな『アルゼンチンババア』(jus) 平岩弓枝『西遊記』第一話(jus) 平岩弓枝『西遊記』第二話(jus) 平岩弓枝『西遊記』第三話(jus) 平岩弓枝『西遊記』第四話(jus) 金城一紀『映画篇』「ドラゴン怒りの鉄拳」(jus) 田辺聖子『新源氏物語』「海はるか心づくしの須磨の巻」(jus) 西加奈子「木蓮」(jus) いしいしんじ『雪屋のロッスさん』(jus) 浅田次郎『あやしうらめしあなかなし』「赤い絆」(jus) 山田詠美『Tiny Stories』(jus) 『ぐりとぐら』『ぐりとぐらのおきゃくさま』「ぐりとぐらのかいすいよく』(jus) 石田衣良『スローグッドバイ』「ハートレス」(jus) 三浦しをん『君はポラリス』「骨片」(jus) 浅田次郎『あやしうらめしあなかなし』「お狐様の話」(jus) 角田光代『彼女のこんだて帖』1回目~8回目(jus) サン=テグジュペリ『星の王子さま』(新潮文庫版)(jus) しもやか 星新一 『ボッコちゃん』「ボッコちゃん」 「おーい。ででこーい」 「生活維持省」(ust) sukeichi 上田秋成 『雨月物語』「浅茅が宿」ttp //mouryou.ifdef.jp/ugetsu/asadi-ga-yado.htm (ust) 星新一『これからの出来事』「気ままな生活」「ひとつのドア」(7/12 jus) 星新一『ひとにぎりの未来』「世界の終幕」(7/12 jus) 時雨沢恵一『キノの旅 Ⅰ』「レールの上の三人の男」(8/2 jus) 時雨沢恵一『キノの旅』ドラマCDブックレット「嘘つき達の国」(8/7 jus) 星新一『マイ国家』「国家機密」(8/10 jus) 山際淳司『スローカーブを、もう一球』「八月のカクテル光線」(8/21 jus) 星新一『つねならぬ話』「はじまりの物語(風の神話 他)」(8/26 jus) 坂口安吾『堕落論』「文学のふるさと」「日本文化私観・一「日本的」であること」(9/6 jus) 星新一『宇宙のあいさつ』「宇宙のあいさつ」(9/12 jus) 佐藤雅彦『毎月新聞』「取り返しがつかない」(9/12 jus) 筒井康隆『日本以外全部沈没』「パチンコ必勝原理」(9/? jus) マイケル・ルイス、中山宥『マネーボール』まえがき(9/? jus) 時雨沢恵一『キノの旅 Ⅱ』「絵の話」(9/22 jus) 佐藤雅彦『毎月新聞』「新しい心配」(9/22 jus) 梶井基次郎『檸檬』「桜の樹の下には」(10/21 jus) 星新一『ひとにぎりの未来』「お祈り」「番号をどうぞ」(10/21 jus) 秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏 その3』「番外編・ESPの冬」(10/23 jus) 星新一『おせっかいな神々』「笑い顔の神」「現代の美談」「サービス」(10/25 jus) 佐藤雅彦『毎月新聞』「ネーミングの功罪」(10/27 jus) 筒井康隆『くたばれPTA』「くたばれPTA」(10/27 jus) 星新一『ひとにぎりの未来』「異変」「お待ちください」「フィナーレ」(11/9 jus) 時雨沢恵一『キノの旅 Ⅰ』「人の痛みが分かる国」(11/17 jus) 太宰治「走れメロス」(11/28 jus) シャルル・ペロー「長靴をはいた猫」(12/6 jus) 星新一『マイ国家』「秘法の産物」(12/6 jus) アラビヤンナイト「アリ・ババと四十人のどろぼう」(12/14 jus) 星新一『ボッコちゃん』「おみやげ」「最後の地球人」(2010/12/31 jus) 星新一『宇宙のあいさつ』「その夜」「初雪」(2011/6/14 jus) 星新一『これからの出来事』「安全な生活」「これからの出来事」(12/11 jus) すずきさん 新美南吉「ごんぎつね」(ust) スタン 森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(ust) 竹取 芥川龍之介「蜘蛛の糸」「Mensura Zoili」「藪の中」「アグニの神」「杜子春」「無題」「樗牛の事」(ust) 夢野久作「悪魔祈祷書」(ust) 幸田露伴「五重塔」其一~其十一(ust) 幸田露伴「五重塔」其十二~其二十四(ust) 幸田露伴「五重塔」其二十五~其三十五(ust) とだけん(夢野久作)「ルルとミミ」(ust) 太宰治「人間失格」はしがき~第一の手記(ust) 太宰治「人間失格」第二の手記(ust) 太宰治「人間失格」第三の手記 一(ust) 太宰治「人間失格」第三の手記 二~あとがき(ust) 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)「葬られたる秘密」(ust) 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)「停車場にて」「雪女」(ust) 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)「轆轤首」(ust) 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)「耳無芳一の話」(ust) 芥川龍之介「地獄変」一~七(ust) 芥川龍之介「地獄変」八~十三(ust) 芥川龍之介「地獄変」十四~二十(ust) 芥川龍之介「邪宗門」一~十一(ust) 芥川龍之介「邪宗門」十一~十五(ust) 宮沢賢治「マグノリアの木」「やまなし」(ust) 森鴎外「高瀬舟」(ust) 太宰治「HUMAN LOST」(ust) 横光利一「機械」(ust) 小栗虫太郎「失楽園殺人事件」(ust) ちょぴん ノベルゲーム 赤川次郎「魔女たちの眠り」(jus) Policy 「完訳 グリム童話集1~5巻 訳:金田鬼一」 グリム童話 KHM1「カエルの王さま」(ust) グリム童話 KHM153「星の銀貨」(ust) グリム童話 KHM77「知恵者のグレーテル」(ust) グリム童話 KHM83「かほうにくるまったハンス」(ust) グリム童話 KHM無し「子どもたちが屠殺ごっこをした話」(ust) グリム童話 KHM198「マレーン姫」(ust) グリム童話 KHM無し「ふしあわせ」(ust 録画有) グリム童話 KHM189「百姓と悪魔」(ust 録画有) グリム童話 KHM151「三人の怠け者」(ust 録画有) グリム童話 KHM15「ヘンゼルとグレーテル」(ust) グリム童話 KHM26「赤ずきん」 フランス民話「赤ずきん」(ust 録画有) グリム童話 KHM6「忠義者のヨハネス」(ust 録画有) グリム童話 KHM55「小人のルンペルシュティルツヒェン」(ust 録画有) グリム童話 KHM177「死神の使い」(ust 録画有) グリム童話 KHM14「三人の糸紡ぎ女」(ust 録画有) グリム童話 KHM53「白雪姫」(ust 録画有) グリム童話 KHM12「ラプンツェル」(ust 録画有) グリム童話 KHM79「水の魔女」(ust) グリム童話 KHM171「みそさざい」(ust) グリム童話 KHM102「みそさざいと熊」(ust) グリム童話 KHM132「狐と馬」(ust) グリム童話 KHM48「ズルタンじいさん」(ust) グリム童話 KHM200「黄金の鍵」(ust) グリム童話 KHM5「狼と七匹の子山羊」(ust 録画有) グリム童話 KHM64「黄金のがちょう」(ust 録画有) グリム童話 KHM103「おいしいおかゆ」(ust 録画有) グリム童話 KHM65「千匹皮」(ust 録画有) グリム童話 KHM4「こわがることをおぼえるために旅に出かけた男」(ust 録画有) グリム童話 KHM52「つぐみのひげの王様」(ust 途中まで録画有) グリム童話 KHM21「灰かぶり(シンデレラ)」(ust 録画有) グリム童話 KHM50「いばら姫(野ばら姫)」(ust 録画有) グリム童話 KHM9「十二人兄弟」(ust 録画有) グリム童話 KHM25「七羽のからす」(ust 録画有) グリム童話 KHM130「一つ目、二つ目、三つ目」(ust 録画有) グリム童話 KHM11「兄と妹」(ust 録画有) グリム童話 KHM19「漁師とおかみ」(ust 録画有) グリム童話 KHM27「ブレーメンの音楽隊」(ust 録画有) グリム童話 KHM10「ならずもの」(ust 録画有) グリム童話 KHM69「ヨリンデとヨリンゲル」(ust 録画有) グリム童話 KHM188「つむと、ひと、ぬいばり」(ust 録画有) グリム童話 KHM29「金の毛が3本生えた鬼」(ust 録画有) グリム童話 KHM2「猫とねずみとお友だち」(ust 録画有) グリム童話 KHM161「雪白と薔薇紅」(ust 録画有) グリム童話 KHM129「四人の名人兄弟」(ust 録画有) グリム童話 KHM71「六人の男が世界をまたにかける」(ust 録画有) グリム童話 KHM13「森の三人の小人」(ust 録画有) MAD 西尾維新「クビシメロマンチスト」第一章 (jus) 西尾維新「クビシメロマンチスト」第二章 (jus) じゃわてぃー 夢野久作「卵」(ust 録画有) 夢野久作「崑崙茶」(ust 録画有2013/5/19) (朗読した人) 絵本 ユーリー ノルシュテイン セルゲイ コズロフ 「きりのなかのはりねずみ」(ust) (朗読した人) 鷺沢萠「グレイの層」(ust) (朗読した人) 石田衣良「てのひらの迷路」(ust) (朗読した人) フリーノベルゲーム「Collage」(jus) (朗読した人) 京極夏彦『幽談』「十万年」(ust 録画有) (朗読した人) 「光草―ストラリスコ―」第一回目(ust 録画有) (朗読した人) 睡眠導入「円周率」(ust)
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/3128.html
霞の谷の祈祷師(OCG) チューナー(効果モンスター) 星3/風属性/鳥獣族/攻1200/守1200 1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上のモンスター1体を手札に戻して発動できる。 このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで500ポイントアップする。 チューナー バウンス 下級モンスター 自己強化 風属性 鳥獣族
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9317.html
前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 秘密の地下通路の捜索を終えた一行は、その後ほどなくして学院へ帰還することにした。 既に十分な収穫があったのだし、翌日にはルイズの上の姉がやってくる予定になっているということもある。 今日は早めに帰って休み、見つけたものを調べるのは学院に戻ってから落ち着いた環境でゆっくりとすればよいだろう、という判断だ。 ディーキンは見つけたもののうち、書類やその他細々したものは自分の荷物袋に仕舞い込んで持っていくことにした。 それ以外の重たくかさばる物は、シルフィードに積み込んで運んでもらうことにする。 屋敷に残っていた使用人用の魔法の荷物入れなども活用すると、めぼしいものは大方積み込んで持ち帰ることができそうだった。 そうして準備を済ませると、一行はシルフィードとディーキンの用意した幽体馬とで学院に向けて出発した。 その途上で、ディーキンはいつになく難しい顔をして、エンセリックと共に屋敷で発見した研究記録の束を調べていた。 別の乗騎に乗っている他の仲間たちとは大分距離が離れているので、話を聞かれる心配はなかった。 シエスタに頼んで、デルフリンガーも相談役として借り受けている。 「ねえ、デルフ、エンセリック。あんたたちは、ここに書いてあることについてどう思うの? タバサのお父さんは、自分のお兄さんが『虚無』じゃないかって思ってたみたいだけど……」 ディーキンは、2振りの剣に意見を求めてみた。 「そうだなあ……。ジョゼフとかいうやつに実際に会ったことはねえから、確かなことはわからねえ。 けど、そこに書いてあることが本当なら、確かにそいつは『虚無』っぽいかもな」 「私には『虚無』とやらのことはわかりませんから、何とも。 ただ、この記録を書いたシャルルという人が並大抵の人物ではなかったことは確かですね。 そのシャルルが劣等感を抱くほどの兄だというのなら、ジョゼフとやらも凡庸な人物ではないのは間違いないでしょうね」 「ウーン……、」 隠し戸のさらに奥に隠されていた、シャルル大公の研究記録……。 そこには、彼の進めていた調査・研究や、考察などに関して、順を追ったかなり詳しい記述が残されていた。 それによれば、シャルル大公は希代の天才メイジと呼ばれながらも、以前から兄ジョゼフへの劣等感に苛まれていたらしい。 他の者たちがどれほど兄を暗愚だと揶揄しようと、実の弟である彼は兄の優秀さに気付いていたのだ。 魔法は使えずとも、ジョゼフには優れた頭脳があり、王としての才能があった。 昔から、一緒に遊んでいても、一緒に学んでいても、自分が兄に勝っていると思えたのはただ魔法の腕前だけだった。 そして、実の父である当時のガリア国王も、おそらくは2人の息子たちの能力についてよく知っていただろう。 慣習から言っても、順当にいけば王に選ばれるのは兄のほうに違いないことをシャルルは理解していた。 だから彼は、幼い頃から一心に努力を重ね、特に自分の長所である魔法の腕前を磨いてきた。 周囲の者たちにも常に如才のない態度を示して、着実に評価を高めてきた。 そこまでなら、兄への対抗意識、競争心を持っていたというだけのことであって、別に不健全な話ではないだろう。 事実、最初の頃はシャルル大公はまっとうに努力をしていただけだった。 嫉妬深くはあったかもしれないが、非難されるようなことをしてはいなかったのだ。 しかし、自分の魔力を高めようと魔法の研究を続けていくうちに、雲行きが怪しくなってきた。 古の昔に失われた『虚無』について調べていたシャルル大公は、兄こそがその担い手なのではないかと疑い始めたのである。 もし、兄が始祖と同じ『虚無』を扱える素質の持ち主だったとしたら……。 自分が誇りにしてきた希代の魔法の腕前も、伝説の復活という輝きの前に完全に霞んでしまうことになる。 次の王になるという自分の望みがかなうことも、まずなくなるだろう。 その頃から、シャルル大公には焦燥が見え始めたようだ。 各地の遺跡を密かに調査させ、そこから見つけ出した古の魔法、特に『虚無』に関する調査・研究に熱心に取り組み続けた。 しかし、調査を進めれば進めるほど、兄こそが『虚無』に違いないという確信はますます強まるばかりだった。 彼はその事を兄に知られまいと、自分の研究や調査の内容に関しては一切外に漏らさず、厳重に秘密を守るようにした。 そうしながら、さらに深く『虚無』について調べ続けた。 自分にも王家の血は流れているのだから、なんとか『虚無』を扱えるようにならないものか、と考えたのだ。 それさえできれば、伝説を復活させた功績は、兄ではなく自分のものになる。 また、その頃からシャルル大公は、自分の評価を少しでも高めようと、あまり感心できない手段も取るようになっていったようだ。 裏金を渡したり裏取引を持ちかけたりして、より多くの家臣を味方に付けようとしたり。 兄の悪評を吹聴させて、評判を貶めさせたり……。 彼は、幼い頃から望んできた王の座を得ることにそれだけ執着していたのだろう。 あるいは、そうすることでずっと抱いてきた劣等感を振り払い、自分が兄よりも優れていることを証明したかったのか。 だが彼は、道を踏み外し始めたにもせよ、ただ姑息なだけの男ではなかった。 賞賛されるべき才能と努力の男であったことは疑いない。 長年の調査の結果、ついに『虚無』の呪文にまで辿り着いたのだ。 彼が始祖ブリミルに縁のある場所と伝えられる遺跡から発見したのは、太古の時代のものと思しき白紙の書物だった。 普通ならば、ただ古いことしか取り柄のないゴミだとして片付けるところだろう。 だが、長年『虚無』を研究してきたシャルルだからこそ、その重要性に気がついたのだ。 彼は、使い道の分からないガラクタのように見えるものが始祖の秘宝として各地の王家に伝えられていることを知っていた。 ガリアに伝わる『始祖の香炉』も、その手の秘宝のひとつだ。 そして、トリステイン王家に現存する始祖ブリミルが記述したという古書、『始祖の祈祷書』は、これと同じく白紙の書物だという。 シャルルは以前から、始祖がそれらに『虚無』の秘密を隠して子孫たちに遺したのではないか、という仮説を立てていた。 とはいえ、各国の秘宝である以上は、持ち出して調査するわけにもいかなかったのだ。 もしもこの白紙の書物が何らかの理由で失われた『虚無』の秘宝、もしくはその試作品か何かであったなら……。 シャルルはそう期待して、入念な分析を行ってみた。 「《秘密のページ(シークレット・ページ)》のような呪文の存在は忘れ去られ、《魔法解呪(ディスペル・マジック)》すらも無い。 そのような状況で、彼はこの本の秘密に気が付き、しかもある程度の内容の解読にまでこぎ付けたのですから。 相当な注意力と努力が無ければ成し得なかったことでしょう、大したものですよ」 今は亡きシャルル大公を賞賛するエンセリックに頷いて同意を示しながら、ディーキンは件の本を開いてみた。 二重の隠し戸に大切に保管されていたこの本は、『虚無』の担い手が開いた場合のみ内容が読めるような仕掛けになっているらしい。 しかしシャルル大公は、研究を重ねて隠された文面を少しずつ解き明かしていたようだ。 一緒に見つかった研究記録の束には、既にいくつかの『虚無』の呪文が解読され書き留められていた。 「うん、向こうに戻ったら、ルイズにこの本と、こっちの記録の束を読んでもらって……。 明日来るっていうお姉さんにも、一緒に見てもらうのがいいかな?」 自分の妹が伝説の系統だなどと聞かされて、その女性がどんな反応をするかまでは、もちろんディーキンにはわからない。 だが、別に身内に隠さなくてはならないような理由もないだろう。 それはさておき、シャルル大公の方はといえば……。 ついに伝説の『虚無』の呪文までも発見し、研究が順調であるにも関わらず、ますます焦燥を深めていたらしい。 というのは、研究すればするほど、『虚無』は自分にはどうしても使えなさそうだということが明らかになっていったからだった。 他の系統魔法と『虚無』には大きな違いがあって、何度詠唱を試みても無駄だった。 それにそもそも、完全な形で『虚無』を扱うには、自分の精神力ではまるで足りないらしいのである。 だが、シャルル大公は不屈の精神の持ち主だった。 それでも諦めず……、ならばかつて『虚無』によって作られた魔法の品を扱うことで同等の力を行使できないか、と考えた。 遺跡の探索を続けさせ、使い方の遺失した古い時代のマジックアイテムを大量に運び込んで研究し始めたのだ。 地下の研究室には、そうして見つかったたくさんの魔法具が並んでいた。 その中には、スキルニルなどのハルケギニアのマジックアイテムに混じって、フェイルーンの物と同じスクロールやワンドなどもあった。 それにポーションや、指輪やアミュレットなどの各種装備品に、もっと珍しい品々まで、多種多様だった。 もちろん、先程手に入れたシールド・ガーディアンのアミュレットもそのひとつだ。 そうした品の中には、古すぎて魔力が綻んだのか、あるいは事故で破損したのか、既に魔力を失ってしまっているものもあったが……。 それにしても、なかなか大した収穫だったといえるだろう。 「始祖ブリミルの時代にはこの世界と私たちの世界につながりがあったという仮説が、これでほぼ確実になったわけですね。 ……しかし、どうやらシャルル大公は、あまり芳しくないものまで見つけてしまったようで。 とても優秀だったためにその使い方まで理解できてしまったというのが、またいけなかったのでしょうね」 どうやらシャルル大公は、研究を続ける中で、他次元界のクリーチャーを召喚する魔法の品を見つけ出したらしい。 研究から、『虚無』の呪文には他の次元界に門をつなげたり、そこから生物を呼び出したりするものがあると既に知っていた彼は……。 その扱い方を見つけることでこそ『虚無』と同等の力が手に入ると信じ、それを熱心に研究し始めたのである。 そうして努力を重ねたの末に、彼はついにその品を使いこなすことに成功した。 しかし、彼がそれを使って最初に呼び出すことに成功したのは……。 よりにもよって、九層地獄界のデヴィルだったのである。 「これで、現在のガリアにはデヴィルが巣食っているであろうことは、ほぼ確実になりました。 そして、その最初の出所が誰だったのかも、また明らかになったわけです」 「……俺にゃあ、悪魔だののことはよくわからんがよ。 それにしてもまあ、あの小さい娘っ子には話しにくいことになったみてえだわな」 「うん……」 ディーキンが、顔をしかめて頷いた。 彼は二重の隠し戸の最奥から見つけた文書を広げて、今一度目を通し直してみた。 最初に読んだときは目を疑ったが、残念ながら何度読み返してみても、内容に変わりはない。 それは、奇妙な皮紙の束を綴った文書であった。 実のところ、材質は羊の皮ではない。 仔牛の皮とか、竜の皮とかいったものでもない。 それは、人型生物の皮であった。 おそらくは人間か、あるいはエルフか……。 処女か、それとも赤子か……。 その内容は、多数の仰々しい約定の事項がびっしりと書き連ねられたもので……。 要約すれば、ある見返りの提供と引き換えに、自身の永遠の魂を対価として差し出すという契約書であった。 最後のページの末尾にある署名欄には、契約者自身の血で書き入れられたサインがある。 “シャルル・ド・オルレアン” そこにははっきりと、そう記されていた。 何度見直してみても、九層地獄バートルのデヴィルが用意した『売魂契約』の書面に間違いなかった。 このようなことを、彼の妻であるオルレアン夫人や娘であるタバサに、一体どう伝えたらよいものか。 いや彼女らへの対応だけではない、デヴィルがこの世界に間違いなくいるというのなら、それに気付いた自分は一体どう行動したらよい? こうなった以上、フェイルーンの仲間たちにも協力を求めるべきだろうか。 ルイズらには、どこまで協力を求めてよいものか。 それに、シャルル大公の兄である現国王のジョゼフは、一体どこまでこの件に関わっているのか……。 ディーキンはあれこれと思いを巡らせながら、学院への帰路を急いだ……。 前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia
https://w.atwiki.jp/k-os/pages/2103.html
英名:Dream Prayer レアリティ:U 絵師:四季童子 番号:BS14-107 収録:覇王編1弾-英雄龍の伝説 コスト:3 軽減:1 カラー:黄 種類:マジック 『バースト:相手による自分のスピリット破壊後』 ボイドからコアを1個自分のライフに置く。 その後コストを払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮する。 『フラッシュ』 アタックしている回復状態の相手のスピリット1体を破壊する。 備考/性能 バーストマジック/コアブースト/スピリット単体破壊参照:強襲 無限アタッカー対策になる破壊効果。 公式Q&A/ルール 更新:111110 Q1 「バースト」ってなに? A1 参照:バースト Q2 アタック時に回復した天秤造神リブラ・ゴレムを、このマジックのフラッシュ効果で破壊できる? A2 はい、破壊できます。 Q3 相手の「フィールド」に未完成の古代戦艦:船尾があるとき、このマジックのバースト効果で「ボイド」からコア1個を「ライフ」に置けるの? A3 いいえ、置けません。 Q4 相手の「フィールド」に未完成の古代戦艦:船尾があるときにバースト発動したら、「ボイド」から「ライフ」にコアを置くことができないけど、このマジックのフラッシュ効果を発揮させることはできる? A4 はい、できます。 エピソード/キャラクター イラスト:ミスティック・ヒミコ 邪馬台国の女王:卑弥呼。 ここを編集 BS14-黄へ戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1568.html
本日はコルベールの授業…のはずであったが、ヅラを被ったコルベールの出現により事態は急変する! トリステインの姫殿下・アンリエッタが学院に行幸するというのである。 授業は中断し、生徒たちは出迎える準備に取り掛かる。 これこそが日常が魔界に変わるとき。そう、平穏な日常の崩壊の開始の合図になろうとは誰一人予測していなかった。 ゼロの奇妙な使い魔~フー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ~ [第二部 アルビオン、その誇り高き精神] 第一話(11) 王女のために! その① その日、ルイズは寝覚めが悪かった。マリコルヌの愛の言葉が五月蝿かったからではない。 なぜなら変な夢をみてしまったからである。それは昔の夢… そこは小船の上。ルイズは小さな頃、嫌なことがあると此処に逃げていた。 そうしたら憧れの子爵様が迎えに来てくれるのだ。 しかしここからが昔の出来事と異なっている。 子爵様がヴァリヴァリと半分に裂けて中から黒いウジャウジャ。 つまりフー・ファイターズが現れる。 更には湖全体が真っ黒になり盛り上がってくる。 そうして飲み込まれてしまうのだ。湖の中へと… ルイズは目が覚めた。 傍らにはカムフラージュの為にフー・ファイターズがつくっておいた、フー・ファイターズ(下っ端)がいる。 フー・ファイターズ本体に比べると少々不細工な作りになっており、人語も喋らない。 このことを知っているのは、ルイズのほかにオールド・オスマン、マリコルヌ、タバサ、そしてコルベールである。 因みにコルベールは前回のフーケ事件の報告の際に、出番がなく空気と化していたが、一応部屋にはいたので知っているのである。 そして以上が今朝のできごとである。 第一話(11) 王女のために! その② 時は戻って、アンリエッタが学院に到着。 主に男子がアンリエッタ姫殿下、女子が魔法衛士隊隊長ワルドを見ている。 正確には少し違うが、それはルイズも例外ではない。例え寝覚めが悪くたって見てしまう。寧ろ例外は別のところにいる。 まずは勿論無関心なタバサ。次にルイズを見つめているマリコルヌ。 そしてお互いに抱き合い、熱い口づけを繰り返す、ギーシュ・モンモランシーのバカップルである。 この四人を除いて大抵の人物が盛り上がったお出迎えが終わり、そうこうしている内に夜になる。 夜と言ったらアンリエッタの時間である。 フードを被り、見つからないようにと親友ルイズの部屋に向かう。 そうして部屋の前に着き、規則正しいノックをする。 そうしたら扉が開く。………はずである。 普通は開く、例え規則正しいノックじゃあなくても。 だけど開かなかった。だから無理やり開けた。 そうするとアンリエッタの目の前には、見たことのないグチュグチュした黒い化け物がいる。 アンリエッタは勢いよく扉を閉め、扉を背にして考える。 「えーっと、あれは…そうよ!きっとルイズの使い魔さんなんだわ!昔から何だか変わってたところがあったし…。」 そう考えてアンリエッタはルイズの部屋に入る。不法侵入だ。そんでもって話しかける。 「今晩は、使い魔さん。」 「フショアアァァァア。」 「ルイズはお元気ですか?」 「フーフォアアァァアア。」 暫くこんな感じでやりとりが行われた後、アンリエッタは会話が成立していないことに漸く気が付いた。 第一話(11) 王女のために! その③ その頃ルイズは… FFと一緒にマリコルヌと外にいた。 「おーいルイズ、僕のルイズ。」 マリコルヌが話しかけてもルイズは心此処に在らずだ。 「なんなら私の水を分けてあげようか?」 コップに注いだ水を差し出すFF。やはりルイズの反応はない。 なんだかんだで延々と惚けたあと、ルイズは自分の部屋に向かって歩き出した。 部屋の前に到着し、ドアを開けてルイズはあることに気が付いた。 誰かが自分のベッドで寝ていることを。ちなみに横ではFF下っ端が突っ立っている。 ルイズは誰だろうと思って近づいてみる。 そうするとどこかで見たことのある人物であることがわかる。 (姫様!姫様が寝てる。) そこでタイミングよくアンリエッタが目を覚ます。 「…んっ、……!!ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ。本当にお久しぶりね。」 「ひ、姫殿下、恐ればせながら何故このような下賎な場所に!?」 「そんなに畏まらないでちょうだい、ルイズ・フランソワーズ。わたくしたちはお友達ではなかったの?」 「もったいないお言葉でございますわ、姫殿下。」 ルイズはとても緊張した面持ちで話している。 それをよく思わないようで、アンリエッタはそのことを悲しみルイズに以前のように話すように懇願した。 アンリエッタの懇願に対してルイズは、感無量と言った感じで表情にその心のうちを映した。 第一話(11) 王女のために! その④ 「どうかされたのですか、姫様?」 数分の間、懐かしい話に花を咲かせていた二人であったが、突然アンリエッタの表情に影が差していることに気付き、ルイズが切り出した。 「わたくし、結婚するのよ…。」 「………おめでとうございます。」 先ほどの表情から、結婚はアンリエッタが望んだものでなく政略結婚であることをルイズは察した。 素直に喜ぶことのできることではないが、ルイズは形式的に祝福をする。 「…それで、…そのことで頼みたいことがあるのです……。」 「何ですか、姫様?」 「…このことは誰にも話してはいけません。わたくしにはあなたみたいに頼める人はほとんどいないのです。」 「もちろんです、姫様!なんなりとお申し付けください。」 ルイズはやる気満々だ。 「わたくしはゲルマニア皇帝に嫁ぐことになったのですが…」 「あの成り上がりのゲルマニアにですか!?……」 ルイズはもう少しでゲルマニア批判を続けるところであったが、キュルケのことを思い出し、しょんぼりと押し黙ってしまった。 だがそんなことはお構いなしと言うか、天然で気付いていないアンリエッタは最近の政治情勢を語りだした。 話を要約するとアルビオン王家が反乱軍の貴族派によって倒されそうだということと、貴族派はこの婚姻を基とした同盟を望んでいないという事である。 「もしかして婚姻を妨げる材料がアルビオンにあるということですか?」 気を取り直したルイズが心配そうに尋ねる。 「おぉ、始祖ブリミルよ…。この不幸な姫をお許しください………。」 ルイズは私が何とかするとでも言わんばかりに興奮している。 そこでアンリエッタは告げた。アルビオン皇太子ウェールズにしたためた、とある一通の手紙の存在を…。 第一話(11) 王女のために! その⑤ 「それを取り返してくればいいんですね?」 ルイズは自分がやることを理解した。『愛=理解』だ。しかしアンリエッタは心配そうに手を握り言った。 「いいえ、やっぱり駄目よルイズ…。無理よ、無理だわ。あんな危険な所にお友達であるあなたを行かせるだなんて…。きっとわたくしはあせっていて混乱していたんだわ。今のことは聞かなかったことにしてください。」 しかしルイズはやる気満々だ。 「大丈夫です!姫様の頼みであるのならば、たとえ蛙や蝸牛の中にだって行きますわ!それになによりお友達ではありませんか。私に任せてください。」 ルイズのこの言葉を聞き、アンリエッタは感動してルイズに抱きついた。 「あぁルイズ、わたくしの大切なお友達…。絶対に生きて帰ってきてくださいね。」 「もちろんです、姫様。大船に乗った気でいてください。明日の早朝には出発いたします。」 それを聞いたアンリエッタは自らの指から水のルビーをはずし、ルイズに渡した。 「もし、旅の途中でお金に困ったらこれを質にでも入れてください。あなたの成功を祈っています。始祖のご加護がありますように…」 ルイズが頷いて返事をし、アンリエッタが退出をしようとしたとき、窓から丸いものが突っ込んできた。マリコルヌだ。 「僕のルイズ、さっきは元気がないようだったけど大丈夫かい?」 二人はきょとんとしている。するとマリコルヌが小瓶を取り出してルイズに渡した。 「これは元気の出る香水だよ。ミス・モンモランシに譲ってもらったんだ。早く君の笑顔を見せてね、僕のルイズ。」 因みにマリコルヌはアンリエッタに気付いていない。そこでアンリエッタは口を挿んだ。 「あなたはもしかしてルイズの恋人なのですか?優しい恋人を持ってよかったですね、ルイズ。」 「ちちち、違います姫様!こいつはただのクラスメイトです!!けけけ決してそのような関係じゃあありません。」 そしてマリコルヌもアンリエッタに気が付き、跪く。 「ひ、姫殿下、どうしてこのような場所に!?」 「ルイズに用があったのです。…そうだわ、貴方もルイズに付いていってくれませんか?ルイズととても仲が良さそうですし、きっととても信頼できる人なのでしょうね。」 「ひ、姫様、こいつとは姫様の思っているような関係じゃあありませんわ!」 「そんなに照れなくてもいいのよ、ルイズ。言わなくてもわかってますから。」 「姫様ったら~。本当に違うんですってばー!!」 結局アンリエッタには理解してもらえず、マリコルヌもお供することに決まってしまい、ルイズはため息をもらすのだった。 第一話(11) 王女のために! その⑥ 「オスマン学院長、では、こちらをお願いします。」 「うむ、確かに受け取ったわい。」 ルイズの部屋から出たアンリエッタが向かったのはオスマンのところであった。 城の中には貴族派の内通者がいるらしく、最近は重要な書類や古くからある貴重なものまで盗難が続いているという。 だから密かにアンリエッタは、始祖の祈祷書を数少ない信頼の置けるものの一人、オスマンに預けにきたのだ。 「では、ルイズが帰ってきたらしっかり渡してくださいね。巫女と詔についての説明も宜しく頼みます。…それじゃあわたくしはもう一人訪ねに行かなければなりませんので。」 そういってアンリエッタはオスマンのところをあとにした。 次にアンリエッタが向かったのは魔法衛士隊隊長ワルドのところだ。 「これはこれは姫殿下、どのようなご用件で?」 「あなたに頼みたい任務があります。」 「ふむ、何でも仰ってください。どんな任務でもこなしてみせましょう。」 ワルドのこの言葉を心強く感じ、手紙奪還の任務を話す。 するとドアを突き破り衛兵が入ってきた。 「アンリエッタ姫殿下、大人しくこちらまで来てください。」 アンリエッタはこの衛兵がアルビオンの手先だとすぐに理解した。 メイジ二人にたった一人で挑むなんて頭脳がマヌケとしか思えないのだが、衛兵は手を差し出す。 ドアの側にアンリエッタがいたのでワルドと衛兵に挟まれる形になっている。 緊迫する空間。ワルドはその二つ名『閃光』の如く、素早く呪文を唱えエア・ニードルを発生させて一直線上に向かっていく。 このような場所でライトニング・クラウドは使い辛いし、エア・カッターでは巻き込んでしまう恐れがあるからだ。 「ワルド子爵、早くあの賊を捕らえてください!」 ワルドのエア・ニードルが対象の心臓に突き刺さる。 アンリエッタは一瞬で終わるだろうと思っていた。だからアンリエッタ自身は杖をしまったままだったのだ。 しかし、それが間違いだと言うことにそのあとすぐに思い知ることとなった。 第一話(11) 王女のために! その⑦ 相手の衛兵は無傷だ。なんともない。血の一滴すらも流していない。 それもそのはずである。当然の結果だ。 ワルドの攻撃の対象は衛兵ではなく…… アンリエッタだったのだ!!! アンリエッタは一瞬で終わると思っていた、衛兵相手に…。ワルドはスクウェアクラスだ。 だからそう思っていた。それが間違いだったのだ。 いや、一瞬で終わったことには違いなかった。ただしアンリエッタがであるが。 「い…ったい、…な、な…にをする…んで…すか………」 アンリエッタは心臓を突き刺され、胸の位置からその綺麗な服は真っ赤な鮮血に染まっていった。 ワルドが杖を引き抜くと、アンリエッタは力なくその場に倒れた。 「死とは身近な友人だということを、彼女は自身で理解をしてくれたようだ。」 先ほどの衛兵が近づいてくる。その顔は、グロテスクにもグチャグチャになって新たな形を形成していっている。 その顔はいつのまにかレコン・キスタ軍の総司令官オリヴァー・クロムウェルのものとなっていった。 「まさかレコン・キスタ総司令官がこんなところにいるとは思うまい。」 そう言いながらアンリエッタの遺体に近づく。そうすると先ほどまで息絶えていたはずのアンリエッタが起き上がり、クロムウェルに跪く。 クロムウェルが靴を嘗めろと言うと靴を嘗めた。これにはワルドも内心顔を歪めた。 「この虚無の力と先住魔法クヌムがあれば、我らの勝利に間違いはないだろう。そう思わないかね、ワルド子爵。」 汚れた笑いが響き、衛兵は仕事に戻っていった。 to be continued…
https://w.atwiki.jp/fushiginakirisutokyo/pages/16.html
当ページでは、橋爪・大澤による「ふしぎなキリスト教」以外の、良質な入門書を紹介します(書籍紹介ページなので当ページは「ですます」調です)。 「ふしぎなキリスト教」が解り易いのだから、細かい少しの間違い(実際には量的に膨大、質的に最悪な間違いが沢山あるのですが)を気にせずに読んでもらえばいいじゃないか、と仰る方が結構巷間にみられますが、それはずっと良質な本を書いている他の人(実際に居ます)に失礼というものではないでしょうか。 批判者達は「もっと良質な本がある」事を知っているからこそ、批判しています。 一般日本人が「これだからキリスト教ってのはよく解らないんだよね(嘲笑)」という、結論が見えて居る内容の出鱈目な本ではなく、もっと真摯に「キリスト教ってどんな宗教なんだろう」と知りたい人に勧められる本を紹介して参ります。 (管理人より)ウィキシステムは使いますが、本ページでは「外部リンクに挙げられているトゥギャッターで、複数の人の間で高い評価を得た本を挙げる」という基準を設けます。 総合入門書 『なんでもわかるキリスト教大事典』 (朝日文庫) 八木谷涼子 ISBN 9784022617217 「ふしぎなキリスト教」を批判する人たちの間で複数から推されていたのがこれ。 外面的なところまでしか踏み込んでおらず、教派の違いを列挙するだけにとどまっていますので、それこそ専門家には深みの無い内容ではありますが、しかしだからこそ、「知ったかぶり」の無い、対象に誠実に取材した良書になっています。イラストも豊富で、各種考証が仕事で必要になる方にもお勧め出来ます。 950円という大変お手頃な価格も高評価。 『知って役立つキリスト教大研究』(新潮OH!文庫) 八木谷涼子 ISBN 9784102901335 の改訂増補版が上記『なんでもわかるキリスト教大事典』 (朝日文庫) になります。 『総説キリスト教―はじめての人のためのキリスト教ガイド』(キリスト新聞社) アリスター E.マクグラス (著), 本多 峰子 (翻訳) ISBN 978-4873955247 こちらは割りと本格的なキリスト教の総合入門書。 しかし、結構なお値段なので、図書館などのご利用もオススメします。 教派(宗派)について 『よくわかるキリスト教の教派 新装版』(キリスト新聞社) 徳善義和, 今橋朗 ISBN 9784873954974 キリスト教では、厳密には「宗派」ではなく「教派」といいます。。 八木谷氏の本とは違い、この本は、現在の日本にある教派につながる様々な流れを通時的に理解するのに役立ちます。 あと、分裂の歴史を持つプロテスタントの流れを追うのにも適していたり。 <注>日本における正教会の団体として、「ロシア正教会モスクワ総主教庁駐日ポドウォリエ」についても記載されているのですが 正教における用語として不適切な「皇帝教皇説」なども挙げられていたりするなど欠点も見受けられます。 神学の入り口 『キリスト教の精髄 (C.S.ルイス宗教著作集4)』(新教出版社) C.S. ルイス (著), 柳生 直行 (翻訳) ISBN 9784400520542 『ナルニア国物語』などで知られる作家、C.S. ルイスはキリスト教に関する著書を多く書いています。 特にこの本は定評のある本です。原題はMere Chrisitianity、つまり「ただのキリスト教」というタイトルなのですが、 日本語版は「キリスト教の世界」とか「キリスト教の精髄」とか、大げさなタイトルになってしまいます。 でも、それだけ、体験を通した信仰と、しっかりとした神学に裏付けられた本だからだと思います。 神学 『キリスト教神学基本用語集』(教文館) Justo L. Gonzalez (原著), 鈴木 浩 (翻訳) ISBN 9784764240353 西方教会についての用語が殆どで、東方教会については殆ど言及していないという弱点はありますが、逆に「東方についての知ったかぶり」はありません。「用語集」ですが著者は一人なので、「メソジストのフスト・ゴンサレスが一人で書いた」ことは念頭に置いた方がいいですが、お手頃価格で西方教会の神学用語のあらましを知ることの出来る良書です。 東西教会比較 『ギリシア正教 東方の智』 (講談社選書メチエ) 久松 英二 ISBN 9784062585255 「カトリック教会の神学者が正教会とカトリック教会を比較して書いた」という視点についての前提のもとで読むと大変興味深い良書。 正教会 『ギリシャ正教』(講談社学術文庫) 高橋保行 ISBN 9784061585003 1980年に書かれた本であり、世界の正教会の状況について書かれた部分はデータとして古くなっては居ますが、今も使える正教会についての総合的な入門書です。カトリックやプロテスタントの人物による翻訳・著作ではなく、正教会の司祭(神父)による著作なので、日本正教会での日本語表現・語彙のあらましも知ることが出来ます。 『東方正教会』(文庫クセジュ) オリヴィエ・クレマン(著), 冷牟田 修二(翻訳), 白石 治朗(翻訳) ISBN 9784560056073 「正教会の神学者が正教会について書いた」という前提のもとで読むと大変興味深い良書です。ただし、若干の基礎知識が要求されますので、総合的な入門としては上記がお勧め。神学面での入門書としてはこちら。 カトリック教会 『カトリック教会のカテキズム要約(コンペンディウム)』(カトリック中央協議会) 日本カトリック司教協議会 常任司教委員会 ISBN 9784877501013 バチカン認可の『カトリック教会のカテキズム』、さらにその要約版を、これまた教皇認可のもとにわかりやすく編集されたもの。 カトリックの内部向けだけでなく、外部にも、他の信仰を持つ人にも読んでほしいQ&A集。 『カトリックの信仰』(講談社学術文庫) 岩下 壮一 ISBN 9784061591318 戦前の書ですが、日本語で書かれた教義解説書の中で、今に至るも最高峰に位置します。聖書学などで著者の見解には乗り越えられた部分も多々あると思いますが、しかし、基礎的な教養として知っておいても損にはなりません。厳格な新スコラ主義的教育の薫陶を受けたと思われる硬質な文体もまた、現在の日本では失われたに等しい曖昧さや妥協を嫌う理知の輝きというものを放っています。 聖公会 (英国国教会) 『道をたずねて―祈祷書に基づいたカテキズム』(聖公会出版) B.D. タッカー(著), 赤井 勝哉(翻訳) ISBN 978-4882740834 またカテキズムになってしまうけれど、これもすごくまとまった良書です。 日本の大学で教鞭を執っていたタッカー教授が、できるだけわかりやすく、かつ神学的に正しくまとめたもの。 緑の表紙にケルト十字の表紙です。 『聖公会が大切にしてきたもの』(聖公会出版) 西原 廉太 ISBN 978-4882742111 2009年に聖公会関係学校教職員研修会で行われた講演をもとにまとめられた本。 日本の歴史などとからめ、身近な話題からに「聖公会とは何か」を優しくわかりやすく解説した本。 ルター派(ルーテル派) 『マルティン・ルター――ことばに生きた改革者』(岩波新書) 徳善 義和 ISBN 978-4004313724 ルターの伝記仕立てという読みやすい構成ながら、随所にルターの思想のかんどころや後世への影響を書いているので、読むだけでルターのことがなんでもわかってしまう。 音楽の才能にも恵まれたルターが作った讃美歌が、後のバッハやメンデルスゾーンの音楽に影響を与える一方、ナチスに利用された負の歴史もちゃんと紹介しています。 キリスト教を「ことばの宗教」ととらえ、「ことばに生きた」ルターがやった宗教改革は、聖書という「ことば」によってキリスト教を改革しようとしたことだと、「ことば史観」でルターをまとめあげたのも見事です。 <注>正教会に関して p109で、「(東欧は)北はロシア正教、南はギリシア正教」のような誤った記述が見られるなど、欠点も見受けられます。 『ルター―異端から改革者へ 』(教文館) T・カウフマン(著),宮谷尚実 (翻訳) ISBN 978-4764266858 ルターについての一般向けの概説として、良い本です。訳文も比較的、分かりやすいです。 カルヴァン派(改革派・長老派) 『長老教会の問い、長老教会の答え:キリスト教信仰の探求 』(一麦出版社) ドナルド・K・マッキム(著), 原田浩司(翻訳) ISBN 978-4900666818 問いと答え、という形式で、初歩的なところから細かく丁寧に解き明かしていく構成になっている本です。 会衆派(組合派) 『祈りのこころ』(一麦出版社) ピーター・テイラー・フォーサイス(著),大宮溥 (翻訳) ISBN 978-4-86325-002-4 会衆派(組合派)は、その長い歴史の中で、そしてそれぞれの会衆の中で、幅の広い神学を示してきました。 清教徒革命時やピルグリム・ファーザーズなどの清教徒の要素が強い時代から、19世紀以降の超教派的姿勢まで。 その中で、この教派の神学をきちんと追求し、広く認められている神学者がフォーサイスです。 この本は彼の本の中でも、わかりやすく「祈りについて」書かれたものです。 メソジスト 『メソジストって何ですか―ウェスレーが私たちに訴えること』(教文館) 清水光雄 ISBN 978-4764269019 メソジストの歴史から、その神学までわかりやすく書かれた入門書です。 聖公会・カトリック・東方正教から継承した信仰の遺産や、18世紀英国とアメリカ独立戦争とメソジストの関係などにも触れてあります。 福音派 注:「福音派」とは教派名ではありません。聖書信仰を重視し(聖書主義)、十字架の購いを重視し(十字架中心主義)、回心を重視し(回心主義)、伝道を重視する(行動主義)の教派やグループの総称です。 『わたしの使徒信条 ~キリスト教信仰の真髄~』(いのちのことば社) 藤本満 ISBN 9784264029694 基本信条である使徒信条を読み解きながら、信仰を総合的に体系的に解き明かし、告白する本です。 『総説 現代福音主義神学』(いのちのことば社) 宇田進 ISBN 9784264028970 現代という時代の文脈において、福音派の神学を解き明かした本です。 同じ著者の『福音主義キリスト教と福音派』とあわせ、神学校でも広く用いられている本です。 『信じてたって悩んじゃう〔合本・愛蔵版〕』(いのちのことば社) みなみななみ ISBN 9784264028970 タイトルにもあるように、「信じてたって悩んじゃう」等身大のキリスト教徒の姿を描いたもの。 信徒がさまざまな問題にぶつかって悩んでいく姿を等身大で描いています。 古典的著作 入門書とは少し異なりますが、おさえておきたい古典的著作を挙げます。 『世界の名著 16 アウグスティヌス』 (中公バックス) アウグスティヌス (著), 山田 晶 (翻訳) ISBN 9784124006261 言わずと知れた西方教会最大の教父、アウグスティヌスの有名な書、『告白』です。 『キリスト者の自由・聖書への序言』 (岩波文庫) マルティン・ルター (著), 石原 謙 (翻訳) ISBN 9784003380819 ルターの著作の中で最も有名なもののひとつ。短い文でやさしく語りかけながら、同時に信仰、特にプロテスタント信仰の基本を語る書です。 『信仰の手引き』 (新教新書) ジャン・カルヴァン(著), 渡辺信夫 (翻訳) ISBN 9784400540014 カルヴァンの『キリスト教綱要』の初版が出版された翌年に書かれたもの。『キリスト教綱要』の初版の考えをコンパクトにまとめた本としても評価が高い書です。 ページ一覧 間違いだらけの「ふしぎなキリスト教」 (2012年6月2日現在、2012年7月18日現在、130個以上の誤りが挙げられているが、まだ未完成。今後さらにページを分割することも有り得る。) 歴史篇(上記ページが容量オーバーになったため分割されたもの、以下同様) 聖書篇(総合・旧約) 聖書篇(新約その1) ・ (新約その2) 神学篇 他宗教篇(仏教・神道・イスラーム)(間違いだらけの惨状は他宗教の記述でも同様。これで比較が可能なのでしょうか?) 疑問符が山ほどつく「ふしぎなキリスト教」 外部リンク 間違いだらけの『ふしぎなキリスト教』とそれを評価する傾向につき 誤りと誤解と偏見に満ちている本, 2011/7/13 映画瓦版の読書日誌 ふしぎなキリスト教 橋爪大三郎×大澤真幸『ふしぎなキリスト教』に対する批判まとめ一覧 - Togetter 橋爪大三郎×大澤真幸『ふしぎなキリスト教』に対する批判100- Togetter 最新 橋爪大三郎×大澤真幸『ふしぎなキリスト教』に対する批判1 - Togetter(2以降と別のまとめ製作者によるもの) 橋爪大三郎×大澤真幸『ふしぎなキリスト教』に対する批判2 - Togetter(2以降のまとめの始まり)