約 1,416,895 件
https://w.atwiki.jp/giin/pages/1837.html
政党 名前 よみ 住所 TEL FAX Mail HP Blog Tw FB Yt テスト 山田 太郎 やまだ たろう てすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすと 999-8888-9999 999-8888-9999
https://w.atwiki.jp/giin/pages/1846.html
政党 名前 よみ 住所 TEL FAX Mail HP Blog Tw FB Yt テスト 山田 太郎 やまだ たろう てすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすと 999-8888-9999 999-8888-9999
https://w.atwiki.jp/giin/pages/1834.html
政党 名前 よみ 住所 TEL FAX Mail HP Blog Tw FB Yt テスト 山田 太郎 やまだ たろう てすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすと 999-8888-9999 999-8888-9999
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3964.html
【第三章黒糖の巫女――私が壊れた日Start】 どうせ、誰も愛してくれないのに。 それでも、願ってしまうのは罪なのでしょうか。 愛して欲しいと思うのは間違いなのでしょうか。 ――生きてて、いいことなんてなかった。 ――誰も、愛してくれなかった。 それは、■■■■■が■■■でなくなる前の記憶の断片。 流れ星にそっと祈った。全部、壊れてしまえばいいって。 強く、願ってしまったから。 みんな、死んじゃったんだ。 【第三章一節いつか、届く、あの空に。】 春「……久しぶりに嫌な夢を見た」 春(思い出したくもない過去の夢。もう見るはずないって思っていたのに 春(朝から憂鬱。もう引きこもりたい) 春(そういう訳にはいかないから困るんだけど) 春「とりあえず、起きよう」ガバッ 春(眠い。頭がフラフラする) 春「水、飲みに台所まで行こう」タッタッタッ 【廊下】 京太郎「よっ、おはよう」 春「……!?」 京太郎「どうした、そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」 春(ど、どうしよう……まさか、こんな朝から会うとは思わなかった) 春(とりあえず、この前のことを謝らないと……!) 春「好き」 京太郎「は?」 春(あ、慌てすぎたせいで。私、何かよくわからないことを言ってる……!) 京太郎「お前……大丈夫か?まだ寝ぼけてるだろ?」 春「あ……そ、その……」 京太郎「いや、眠いなら無理に喋らなくていいから」 春(違うのに。私が言いたいのは京に謝ることなのに) 京太郎「デリカシーないけどさ。トイレ行くんだったら他の人に付いてもらえ。今のお前じゃ寝ぼけて辿り着けそうにねーぞ?」 京太郎「とりあえず、大人しく部屋にいろって。怪我すんなよ」タッタッタッ 春(あ、このままだと行っちゃう……!何か、言わないと!) 春「あ、ああっ。う……」 春「うげぇぇぇぇぇぇぇ(混乱と緊張と無理矢理何かを喉から捻り出そうとしたことによる嘔吐)」 春(あ、終わった。これ、完全に嫌われた) 春「……ううっ」ゲロマミーレ 春(京、びっくりして逃げちゃったよね?) 京太郎「おい、大丈夫かよ!だから、無理すんなって言っただろうが!」 京太郎「ああ、もう!とりあえず、顔だけ拭いとくからな」フキフキ 春(……えっ) 京太郎「さすがに身体拭いたり、服を着替えさせたりは出来ないから人呼んでくるから」 京太郎「少しの間、一人にするけど我慢しとけよ」タッタッタッ 春「……あっ」フクノスソニギッ 春「やだ」 春「やだよ……」 京太郎「何が嫌なんだ?早く拭かないと」 春「行かないで……っ!」 春「一人は……嫌……っ」 京太郎「……ったく。仕方ねえな」 京太郎「とりあえず、誰か通ったら俺は離れるからな」 春「……京」 京太郎「いいから喋るな。黙って寝てろ」 春(……また迷惑をかけたのに) 春(まだ、謝ることすらできていないのに) 春(京は、どうしてそんなに優しいの?) 春(そういうことをされたら、私……期待しちゃうよ?) 春(京のこと、友人じゃなくて……好きな人として見ちゃうよ?) 春(京のことを考えるだけで幸せな気分になれるんだよ?今の関係を壊して一歩、踏み出しそうになるくらい) 春(だから、これ以上……優しくしないで) 春(もう、自分の気持ちに……嘘はつけなくなるから) 春(京のこと、独り占めにしたくなるから……) 【はるるの部屋】 京太郎「……大丈夫か?」 春「うん。ごめんね、迷惑をかけて」 京太郎「いいよ、これぐらい」 春「違う」 京太郎「違うって何が?」 春「それだけじゃないよ……」 春「私だけを見て……おねがい」 京太郎「おい、はるる?」 春「京……あのね」 京太郎「言いたいことがあるんなら後で聞いてやる。今は大人しく寝てろって。霞さんに頼んで今日のお前の仕事はお休み。 俺は午前中はお前の看病をしとけって言われたし」 京太郎「だから、今はさ。休んどけ。はるるが調子悪いのは俺も嫌だからさ」 春「………………い」 京太郎「ん?どうした?」 春「もう、私は自分を抑え切れない」ガバッ 京太郎「はるる……?」 春「京は私のことをどうとも思っていないけど。私は違うんだよ?」 春「私は、京が…………」 京太郎「……違う」 春「えっ」 京太郎「違う。まだ会って間もないかもしれないけれど。俺ははるるのことをダチだと思っている」 京太郎「お前のことを何とも思っていない。それだけは間違いだぜ」 春「……」 京太郎「まっ、気が合うってのもあるけどなー」ケラケラ 京太郎「だから、ゲロ吐いて迷惑かけたことなんて気にすんな」ナデナデ 春「……っ。」ポロポロ 京太郎「うわっ!何で泣くんだよ!?」 春「だって……嬉しくて」 春「京が私のこと、嫌っているかもしれないって思っていたから」 京太郎「はぁ?んな訳ねーだろ。何言ってるんだ」 京太郎「言っただろ、ダチだって。仲良くなった奴嫌ってどうするんだよ?」 春「で、でも……ゲームの時、私っ。京にひどいこと……」 京太郎「ああ、あれか。別にいいよ。俺だって仕返しにやったし。それでおあいこってことで一つ」 春「やっぱり京、優しい」 京太郎「そんなことねーよ。つうか勘違いすんなよ、今回はたまたまだからなっ。もう、ゲロの処理なんてしねーぞ!」 春「うん。でも、また私が調子悪かったりした時、助けてくれる?」 京太郎「あ、当たり前なんだな」 春「なぜ、口ごもる」 京太郎「ちょっと噛んだだけだっつーの。よいしょっと」ガタッ 春「京、もう行っちゃうの?」 京太郎「ちげーよ。お前の朝飯、作ってくるんだ。食べやすいようにお粥にしねぇと」 春「ありがとう、京」 京太郎「だーかーらー!気にすんなって。お前は病人なんだから大人しく看病されてろ」 春「うん……ふふっ」 京太郎「お前今……」 春「不思議と笑えた。いつもは“笑えない”のにね……」 京太郎「いいことじゃん。女の子は笑った方が可愛いんだしさ」 春「……バカ」 京太郎「バカで結構。じゃあ飯持ってくるまでちゃんと寝てるんだぞ」タッタッタ 春「もう、京は甘やかしすぎる」 春「でも、嫌いじゃない。むしろ……嬉しい」 春「もしかすると、京とずっと一緒にいたら……私、笑えるようになるのかな」 春「きっと、いつかは届くのかな」 ――――全てを壊したあの空に。 【廊下】 京太郎「……」 悪霊(おうおう、臭いセリフ言ってんじゃねぇかよ。思わずアソコが濡れちまったってかぁ!) 京太郎(何言ってるんだっての。アホか、お前) 悪霊(んなこと言っててもよ、あの子、お前に惚れてると思うぜ?) 京太郎(“知ってる”さ。だから――アイツが俺に倒れこむ前に割り込んだ) 京太郎(あのままの状態を続けていると、間違いなく俺に告白でもしていただろうな。 今から俺は力を手に入れる為に動くんだ、余計な荷物は背負わない方がいい) 悪霊(じゃあよ、最初から仲良くならなければいいじゃねぇか) 京太郎(それができたら苦労はしねぇよ。この同じ屋根の下で働くんだ、仲良くなるに越したことはねえ。 完全に割り切ることができないヘタレだって言われたら否定はできないけどな) 悪霊(ハッ。色男は辛いねぇ) 京太郎(茶化すなよ、第一……一種の迷いみたいなもんだろ) 京太郎(霞さんも、はるるも。今まで俺みたいな年頃の野郎と話したこと無いんだろう。女子高通いだって聞いたしな) 京太郎(俺なんかを好きになるってことが信じられねぇっての。大方、男性慣れしてねぇとこに俺が登場! 今まで見たことのない珍獣見て珍しがってるだけだと思うぜ。でなきゃ、ありえねえって、俺を好きになるなんて) 悪霊(……前言撤回だ。テメエ、やっぱ自分のこときちんと見てねぇわ) 京太郎(はぁ?どこがだよ?) 悪霊(さあな。自分の胸に聞いてみろ。ともかく、午前中はあの劣等の世話だろ) 京太郎(そうだな、力の源を捜すのはその後だ。とは言っても、割り振られた仕事をきちんとやってからだけどな) 悪霊(ケッ……めんどくせぇな) 京太郎(しかたねえだろ。怪しまれたらそこで終わりなんだから。アホ話は終わりだ、とっとと行くぞ) 京太郎(さてと、台所に来たけど……) 小蒔父「やあ、京太郎くん。昨日と朝は災難だったね」 京太郎「あっ、小蒔父さん」 小蒔父「いや、まさか初日に悪霊に取り憑かれるとは……体のほうは大丈夫かい?」 京太郎「おかげさまで。俺よりも、今は滝見さんの方が心配です」 小蒔父「そうだね、体調を崩したと聞いて心配したよ。早く良くなってくれるといいが」 京太郎「そうですね。ところで、小蒔父さんはなぜ台所に?」 小蒔父「お腹が減ってね……妻と娘は寝ているから起こす訳にはいかない。 ということで、自分で何か軽く作ろうと思ってここに来たのさ。京太郎君の方はどうしたのかな?」 京太郎「滝見さんが食べやすいようにお粥でも作ろうかと思って」 小蒔父「ほう。やはり君は気が利くな。君みたいな子が小蒔の婿になってくれたらいいんだがね」 京太郎「えっ!?」 京太郎「俺は衣と添い遂げる!」 小蒔父「ほう。あの小さな金髪の子か。確かにあの子は可愛かった。無垢な笑顔、時より見せる艶やかな表情。 それにやられたのだね」 京太郎「は、はい……」 京太郎(この人大丈夫かな……?) 小蒔父「まあ、気味の気持ちもわかる。あの純粋な笑顔、小さな体。それなのに、自分は子供じゃないと言いはる強情さ。 実に素晴らしいと私は思うよ」 京太郎(実はロリコンなんじゃねえかな……この人) 京太郎「まあ、衣さんは可愛いとは思いますけど」 小蒔父「そうだろう、話がわかるね。今度、ちょっと二人でじっくりと語らいたいものだ」 京太郎「まあ、いいっすよ」 小蒔父「はっはっはっ。嬉しいな、こういう話をできる者がなかなかいなくてね。 皆、真面目で困った困った」 京太郎「最初の威厳はどこに行ったんですか……」 小蒔父「そんな威厳など溝に捨ててしまったよ。人生楽しまなくちゃ損だからね。 自分を抑えてては疲れるのさ」 京太郎「そうですね……。っとこうして話している場合じゃないです。さっさとお粥を作らないと」 【はるるの部屋】 京太郎「邪魔するぞー」ガラッ 春「邪魔するなら帰って」 京太郎「わかった、じゃあなー」ガラッ 春「…………」 タッタッタッタッ 春「えっ」 春「…………京」 京太郎「なんてな。冗談だよ」 春「冗談にしてはたちが悪い」 京太郎「何言ってるんだ、お前からやってきたんじゃねぇか」 春「むぅ……」 京太郎「はいはい、膨れてないで食べるぞ」 春「京もここで食べるの?」 京太郎「心配だしな。他の三人は勝手に何か作ってるだろう」 春「そう……」 春(京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり 京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり 京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり京と二人きり) 京太郎「ん?どうかしたか」 春「何でもない。せっかく作ってくれたんだし有難くいただかせてもらう」 京太郎「おう、食べろ食べろ。じゃあ」 「「いただきます」」 春「あつっ」 京太郎「そりゃあ作ったばかりだしな。俺の方も配慮が足りなかったな、悪い」 春「悪いで済んだら警察はいらない」ジーッ 春「京、覚まして」 京太郎「何分か経ったら勝手に冷めるだろう」 春「私はお腹が凄く空いている。この意味がわかるね」 京太郎「しゃーねえ。わかりましたよ、お姫様」フーフー 春「……計画通り」ボソッ 京太郎「全く、手間がかかるお姫様だな」 春「女の子はそういうもの」 春(京のふーふーしたお粥……御飯三杯はいける)フーフー 京太郎「ほい、これで大分冷めたはずだ」 春「ありがとう、京」 京太郎「ったく、今回だけだからな」 春「そうは言っても、京は優しいからやってくれる」 京太郎「俺を頼るな、俺を」 春「仕方ない。京が一番頼りになるんだから」 京太郎「そういうことをさらっと言うんじゃねぇよ。恥ずかしい……」 春(京は優し過ぎる……そうだから私も、ついつい甘えてしまう) 春(やっぱり。私、京のことが……) 京太郎「さてと、飯も食い終わったことだし寝ろよ」 春「えー」 京太郎「えーじゃない。一応看病するという名目で午前は時間もらったけど仕事をしなきゃ申し訳がたたねえよ」 春「でも、夜普通に寝たのに……」 京太郎「それでも、だ。体調が悪い時は寝ないとよくならないからな」 春「……京がそこまで言うならわかった。ちゃんと寝る」 京太郎「よし、いい子いい子」ナデナデ 春「うっ。子供扱いしないで」 京太郎「うるせー。自分の体調をきちんと調整できないんだから子供だ」 春「同じ歳の癖に」 京太郎「そういうツッコミは置いといてくれませんかねぇ」 春「うるさい。口答えしない」 京太郎「ったく、身体は弱ってても口は元気だな」ガタッ 京太郎「それじゃあ、俺は仕事に戻るから。じゃあな、また暇を見つけて来るから」 春「うん……必ずだよ」 京太郎「その保証はしかねるな。まあ、努力はするさ」ガラッ 春「……やっぱり京は甘やかし過ぎ。そういう態度を取るから……」 【廊下】 京太郎「さて。仕事に戻るとは言っても……誰かに聞かねえと」 小蒔「聞かねえと?」 京太郎「そうそう、聞かねえと……って神代さん!?」 小蒔「はい、皆の姫様、神代小蒔ですっ」キラッ 京太郎「……」 小蒔「すいません、ちょっと冗談でもと……」カアアッ 京太郎「と、ともかく!どうしたんですか、こんな所で?」 小蒔「はるるちゃんが心配でお見舞いに行こうと思ったんです……そしたら須賀さんが部屋から出てきて」 京太郎「なるほど。はるるでしたら一応は大丈夫です。作ったお粥も全部残さず食べましたしね」 小蒔「そうですか、良かったです!」 小蒔父「やあ、京太郎君。元気にしてるかい?」ニュッ 京太郎「うおっ!いきなり影から出て来ないで下さいよ!びっくりしたじゃないですか!} 小蒔父「はっはっは、こういう登場にもユーモアがないとつまらないだろう?」 小蒔「もう……お父様はまたっ。お母様に叱られますよ?」 小蒔父「大丈夫だ、問題ない」キリッ 小蒔「そんな事言って……この前もゲームのやり過ぎで注意されていたではありませんか」 小蒔父「ゲームは一日十二時間だからな」 京太郎「もはや半日じゃないですか……仕事の方はいいんですか?」 京太郎「もはや半日じゃないですか……仕事の方はいいんですか?」 小蒔父「それについては心配要らない。追い詰められたら本気になってやるだろうからね」 小蒔父「それよりも、朝の件についてだが、どうかね?君は衣君を好んでいるようだが……」 小蒔「???」 京太郎「言った筈だ、俺は衣と添い遂げる!」 小蒔父「ふっ……野暮なことを聞いたね。君の愛はどうやら本物だったみたいだ。謝らせてくれ」ペコリ 京太郎「いえ、このご時世ですからこういうことを言って疑われるのは当然です」 京太郎(よくわからないけど、衣さんは可愛いしなー。ずっと一緒にいて飽きないし) 小蒔父「私も昔はそうだった……おおっぴらに出来ないことから苦しい思いをしたよ」 京太郎「小蒔父さん……」 小蒔父「それでも、私は曲げなかった。この愛を、誰にも否定なんてさせないと足掻いて抗って……!」 小蒔父「その先に得たものが今の環境だ」 小蒔父「京太郎君、諦めることは簡単だ。だけど、そうしたら夢はそこで終わってしまう」 小蒔父「どんな時でも前を向いて進むんだ、神様は諦めない君を必ず祝福してくれるはずだ」 京太郎「はいっ……俺、頑張りますっ。夢を、諦めないで……絶対っ」 小蒔父「その意気だ。なぁに、苦しくなったらいつでも来い。酒を飲み交わしながら愚痴を聞こうじゃないか」ポンッ 京太郎「ありがとうございましたっ!」 小蒔父「大いに悩んで、そして、前を見るんだ……少年」タッタッタッ 小蒔(一体、何の話をしていたのでしょう……?) 京太郎「そういえば、長々と話していたんで忘れていました。霞さん達がどこにいるか知りませんか?」 小蒔「ふぇ?霞ちゃん達に何か用事でも?」 京太郎「午前中ははるるの看病で自由をもらったんですけど、やっぱり仕事を手伝わないといけないかなって」 小蒔「そうですね……霞ちゃんならさっき、外の玄関にいましたよ」 京太郎「わかりました、ありがとうございます!早速向かってみます!」ドピューン 小蒔「あっ……行っちゃった」 小蒔(できたら、私と一緒に看病しませんかって言いたかったのになぁ……) 小蒔(霞ちゃんみたいに積極的になれればいいのに……もっと仲良くなりたいのになぁ) 小蒔(私だけ立場が違うから……仲良くできないのかな) 【神代家・玄関】 霞「~~~~~~~♪」 京太郎「おおっ、いたいた。霞さーん」 霞「あら、京くん。どうしたのかしら?午前中は、はるるの看病をしているはずじゃ?」 京太郎「そうなんですけどね。思ったより、はるるの体調が良かったんで仕事でも手伝えないかなって」 霞「そう。なら、一緒に玄関の掃除でもしましょうか」 京太郎「そうですね」 霞「うん♪」 京太郎(こうして、ニコニコしている霞さんを見ると、辛い) 京太郎(俺は嘘をついているのに。返事を返す気なんてないのに) 京太郎(気の迷い……そうに決まってる) 京太郎(勘違いするなよ、俺?勘違いして手酷い失敗をするのはもう懲りてるだろ?) 京太郎(……だから、早く――諦めてくれ。霞さん……っ) 霞「そういえば、京くん。今度の日曜日って暇?」 京太郎「あ、はい。一応は予定は入っていませんね。というかまだこの家のシフトを把握していないんでなんとも」 霞「そう……一応私達のグループは土日は休みってなっているの。そ、それでね……」 京太郎「今日は木曜日ですから……まだ少し先ですけど。何かありましたか?」 霞「う、うん。わ、わわっ。私とっ!」 霞「デートしてくれませんかっ!」 京太郎「……え?」 霞「きょ、京くんが嫌だったらいいんだよ?別にしなくても私は……泣かないもん」 京太郎「既に目がうるうるしている霞さんが言っても説得力ないですよ?」 霞「うるさい!そういう細かい部分なんて気にするなっ!」ガーッ 京太郎「あーもう。ちょっと涙が出てるじゃないですかー。じっとしていてくださいね」ハンカチトリダシー 霞「えっ、何するの……きゃっ」 京太郎「はいはい、とりあえず涙をふきましょう。見てられないですから」フキフキ 霞「わ、私はおねーさんなんだよ?自分で出来るから!」 京太郎「涙目のおねーさんが胸張っても説得力皆無です。いいから、そのままでいて下さい」 京太郎「はい、終わりましたよ」 霞「あ、ありがとう……それでね、返事なんだけど」 京太郎(悪霊から助けてくれて……いい人だってわかる) 京太郎(俺があんなことをしても、許してくれた霞さんを疑いたくない) 京太郎(それでも、俺は怖いっ!最後まで信じて裏切られるのは……もう嫌だっ! 最後の最後に……この人も俺を…………裏切る可能性だってあるんだ) 京太郎「あははっ、何言ってるんですか」 京太郎「俺なんかよりも神代さんとか他の人達を誘った方が楽しいですよ」 霞「…………えっ?」 京太郎「この街に慣れてない俺を誘ってくれるのは嬉しいですけど」 京太郎「その優しさは他の人に向けた方がいいですよ?」 ――――何かが壊れる音が聞こえた気がした。 霞「そ、そう……で、でもね」 京太郎「さてと、掃除をしましょうか。早く終わらせないと次の仕事に差し支えますよ?」ニコッ 霞「う、うん」 京太郎(これで、良かったんだ……良くないと、俺が耐えられない) 京太郎(もう、戻れないんだ……今みたいに、自分を守ろうとして嘘をついたことがきっかけで) 京太郎(その嘘を守る為に、更に嘘をついて) 京太郎(勘違いするな、好意を簡単に信じるな。そう、塗り固めて) 京太郎(俺は…………) 霞(どうして?どうしてなの?違うよ、違うんだよ?) 霞(私は同情なんかじゃない。京くんのことが本当に好きなのに……) 霞(京くん、君の何が……私達に壁を作るの?) 霞(あのお風呂場で……君は、強くなりたいって) 霞(その思いは、私達よりも、大事なの?) 霞(私は君にとってどうでもいい存在なの?) 霞(ねえ、応えてよ……最初にあった時みたいに、笑ってよ……!) 霞(今みたいな嘘臭い笑顔じゃなくて……!) 京太郎(……さて、掃除も終わって休憩時間な訳だが) 京太郎(メールが染谷先輩からか。『身体は大丈夫か。わしらのことは気にせんでいいからお前は好きな事をやれ。 いつか、心の底から笑えるようになることをわしは願っているよ』。……本当に、あの人はもう) 京太郎(頭が上がらないよ、貴方には……) 『ありがとうございます、今回に限らず、先輩にはいつも助けて貰ってばかりで…… 私事ですけどこっちでは、気と、趣味の合う友人もできました』 京太郎「よし、こんな所だろう」ソウシンッ 京太郎(帰る時はお土産買っていかなきゃな……) 京太郎(後は、着信が二件) 京太郎(一つは母さんか。もう一つが……照さんか) 京太郎(母さんは後にして照さんに電話してみるか)プルル 照「はい、もしもし」 京太郎「あ、照さんですか。俺です、須賀京太郎です」 照「須賀君か。どうしたの?」 京太郎「どうしたのって……照さんが電話をかけてきたんじゃないですか」 照「ああ、そうだったね。君のことが心配だったから電話をかけたんだけど出なくて」 京太郎「それだったらメールでいいでしょうに。まだ、メールを覚えてないんですか?」 照「メールは難しい……菫は簡単だって言うけど私にはそうは思えない」 京太郎「ただ、文章作って相手に送るだけじゃないですか」 照「それが出来ないから困ってる。須賀君のメールを受け取る事は菫にやってもらってるから大丈夫なんだけどね」 京太郎「……菫さんの苦労を察します」 照「そんな些細なことはいいの。それよりも、元気にしてる?」 京太郎「えーと……」 京太郎「あははっ。元気ですよ、俺は」 照「……嘘。声が上ずってる」 京太郎「そ、そんなことないですよ?」 照「あの時、約束したよね。私には隠し事しないでって」 照「確かに私は頼りないかもしれないけど」 照「それでも、頼って欲しい。君の重荷を少しでも背負ってあげたい」 京太郎「だけど、それだと照さんに迷惑が……」 照「それは君の悪い癖だと前も言ったはず。あんなことがあったら無理もないと思うけど」 京太郎「あーあ。どうやら、お見通しみたいですね」 照「当然だ。私はこれでも君の“姉”になると決めたから」 京太郎「その言葉を言うべきは別の人だと思いますけどね……」 照「そうだね……でも、私も、君も。あらゆる点でもう無理なんだ」 京太郎「照さんは俺と違って間に合いますよ?」 照「それは無理。こうして君と話している時点である意味裏切りなんだ」 京太郎「ままならないですね……」 照「いつだってそうだよ。この世界は、不条理だ」 京太郎「ホント、不条理ですよ。俺に力があればあんなことは起きなかったでしょうし」 照「……そうだね。でも、私は違うって信じてる」 照「君には潜在的な才能があるって。あの場所ではそれを引き出すことが出来なかったっていうだけ」 京太郎「…………」 照「環境が悪かっただけ。君の話を聞く限り、そうとしか思えない」 京太郎「だから、俺は前へと進もうと思って」 照「崖から落ちちゃった」 京太郎「その結末があの、雨の日でしたね」 照「偶然だった出会いだけど。この出会いがなければ私も、君も……立ち止まっていただろうな」 京太郎「傷の舐め合いでも、当時の俺には特効薬でしたよ。感謝してます」 照「私もだよ。このことを知っているのは確か、天江衣さんと君の友人であるハギヨシさん、それと染谷さんだけか」 京太郎「ですね。あまり、周りに広めることでないんで」 照「まあ、広めたら大騒ぎだからね」 照「なにせ――君はあの時、死のうとしたんだから」 京太郎(……思わず休憩時間ずっと電話してしまった。お互いの近況を話すだけでも時間は経つもんだ) 京太郎(鹿児島まで行くからって言った時はどうなることかと……一応は止めたけど) 京太郎(でも、照さんだしなぁ……本当に来そうだからな) 京太郎(来たらどうしよう……もし、何らかの間違いで咲と会ったら――もう、逃げられなくなりますよ?) 京太郎(今のぬるま湯の関係が、壊れちゃいますよ?) 京太郎(俺の狭い世界が更に狭くなっちゃうかもな?) 京太郎(ははっ……何が霞さん達の世界が狭いだよ。俺の方がよっぽどだ、この目に入れてないものが多いのは……俺の方だ) 京太郎(全く……この世界は不条理ですよ、照さん。手を伸ばしたいのか、それとも手を伸ばしてもらいたいのか) 京太郎(俺の本当は……何なんだろうな。力を得る、それだけは正しいって信じてるけど) 京太郎(いつかは届くのかな。最強の称号に。それとも、空みたいに近くても届かないって感じかな) 京太郎「さてと、何だかんだで昼飯だー!」 小蒔父「お、京太郎君じゃないか。今日はよく会うなぁ」 京太郎「あ、どうも。本日三回目ですよ、もう」 小蒔父「はっはっはっ。まあいいじゃないか。それよりもこうして会えたのも何かの縁だ」 小蒔父「一緒に昼食でもどうかな?妻を紹介したいしな」 京太郎「ああ、そういえば未だ会っていませんね、俺」 小蒔父「小蒔も京太郎君と話したがっていたしね。いい機会だ、ぜひ受けてくれないかな?」 京太郎「はい、じゃあお言葉に甘えさせて頂きます」 【小蒔父の部屋】 小蒔父「紹介しよう、私の妻だ」 小蒔母「君が小蒔ちゃんが言ってた須賀君だね~」 京太郎「はい、初めまして。須賀京太郎といいます。この度は挨拶が遅れて申し訳ありません」ペコリ 小蒔母「いいよ~、そんなの。私も堅苦しいの苦手だしね~」 京太郎「そうですか、そう言ってもらえると幸いです」 京太郎(おお……すっげぇ。傍から見ると一児の母とはとても見えねえ。というかちびっ子に見えるぞ……) 小蒔父「うちの妻はそういうのはめんどくせーとか言ってあまり気にしないからな。京太郎君も楽にしてもらって構わないよ」 京太郎(犯罪としか思えないっすよ、小蒔父さん……というかこの母からどうして神代さんみたいな巨乳が生まれたんだろう) 小蒔母「えへへ~。そういうのは夫が全部やってくれるから~」 小蒔父「任せておけ。お前との語らいを増やす為だ……これからも仕事は全て私がやるからな」 小蒔母「もう、貴方ったら~」テレテレ 小蒔父「お前の笑顔があれば、私は何とだって戦える。そうだろう?」 小蒔母「私もそうだよ~。貴方がいるから生きていけるもんね~」 京太郎(うーん、ごはんを食べる前からご馳走様です) 京太郎(あれっ、神代さんが何か寂しそうな目で見ているぞ) 京太郎(まあ、いいや。気のせいだろう) 小蒔(…………)グスッ 小蒔父「ということで私と妻はラブラブなのだよ!」 小蒔母「もう貴方ったら~須賀君が置いてきぼりになるでしょう~」 京太郎「い、いえ。聞いていて楽しい話ですし」 小蒔父「さすが、私の見込んだ子だ。いやあ、須賀さんが体を壊した時はどうなることかと思ったが」 小蒔母「いい子が来てくれてよかったわね~」 京太郎「いやあ、そんなに褒められると照れますよ~」 小蒔父「本当のことを言ったまでだぞ、なぁ?」 小蒔母「そうよ~。須賀君は胸を張っていいんだからね~」 小蒔父「おっと、雑談もここまでにしないとな。食事が冷めてしまう」 小蒔母「そうね~。じゃあ、いっせいの~で~」 「「「「いただきます」」」」 京太郎「おっ、これうまいですね!} 小蒔父「クックック……それは私が作ったものだ」 京太郎「小蒔父さん……あなたっ!」 小蒔父「これでも、私は料理がすごいうまい!」 小蒔母「きゃーーーっ!貴方素敵ーーーーーーーっ!」 小蒔(いいなぁ……須賀さんと楽しくお喋りできて) 小蒔(私もしたいのに……) 小蒔(どうしても、積極的になれないなぁ) 京太郎「うわあっ!?この卵焼き美味いっ」 小蒔父「そうだろうそうだろう!何なら弟子にしてやってもいいんだぞ!報酬は衣ちゃんの写真で」 小蒔母「貴方……衣ちゃんって誰かしら?」 小蒔父「あ」 京太郎「……自業自得ですよ、小蒔父さん」 小蒔(あの後、はるるちゃんに聞いたけど……須賀さんにふーふーしてもらったり) 小蒔父「ご、誤解だ!衣ちゃんっていうのは猫の話なんだ!」 小蒔母「本当に~?」 小蒔父「ああっ、神に誓って言える!」 小蒔(看病してもらったって嬉しそうに話していた) 小蒔母「あっ、そういえば衣ちゃんが貴方に会いたいって来てたわね~」 小蒔父「いやっほおおおおおおおおおおおおおおうう!今すぐ行くよ、衣ちゃああああああんんん!」 京太郎「小蒔父さん、それは罠ですよ!」 小蒔父「えっ」 小蒔(あの時助けてもらったお礼も満足にできていないのに……もっと、須賀さんと仲良くなりたいのに) 小蒔母「うふふ……これはお仕置きが必要ね~」 小蒔父「ひゃあっ!?やーめーてー!」 京太郎「ご愁傷様です……」 小蒔父「京太郎君助けてくれーーーーーーーーー!妻のお仕置きは洒落にならないんだ!」 小蒔母「洒落にならなくするのは貴方なのよ~」ズズズッ 京太郎「さてと、美味しいご飯を食べたことだし仕事仕事~」 京太郎「そういえば、午後は誰と一緒に仕事をするんだろう?確か今日も付けるって小蒔父さん言ってたな」 初美「ということで、午後は私が京太郎につきますよー」 京太郎「お願いします」ペコリンッ 初美「午後は倉庫の掃除と整理をするんで頑張りましょうー」 京太郎「はいっ!」 京太郎(どうしてだか、薄墨さんがいつもより可愛く見える……) 京太郎(うーん、俺に貧乳属性はなかったはずなんだがなぁ) 京太郎(一時の迷いかな?あのぺったんに俺が恋焦がれるなんてありえねぇと思うんだけど) 初美「どうしたんですかー。早く行きますよー」 京太郎(あの笑顔が可愛いって思った俺はちょっとやばいかもしれない) 【倉庫】 初美「じゃあ行きますよー」ガタガタガタッ 京太郎「はーい」ガタガタガタッ 京太郎「やっぱり倉庫だから物が多いですねー」 初美「それは由緒ある家ですからねー。物が多くなることも仕方ないですよー」 初美「うんしょっと」ドスッ 京太郎「ああ、薄墨さん。そういう重いものは俺が運びますから軽いものを運んで下さい」」 初美「大丈夫です、一人で出来ますよー」フンス 初美(ううっ、これ重すぎですよー……)フラッ 京太郎「あっ、危ないっ!?」 初美「ひゃあっ、倒れ……てないですよー」 京太郎「大丈夫ですか、間に合ってよかったです」ダキッ 初美「あ、ありがとうなのですよー」 初美「……ってどこ触っているんですかー!」 京太郎「あっ、ご、ごめん!」 初美「ごめんで済むなら警察はいらないのですよー」 初美「まだ、誰にも触らせたことがないのに……」 京太郎(触る胸はないと思うけどなー) 初美「まったく、デリカシーが無いですよー。プンプンですよー!」 京太郎「す、すいません。以後注意します」 初美「で、でも……助けてくれてありがとうなのですよー」テレッ 京太郎「何言ってるんですか、薄墨さんには色々と恩があるんですから……」 初美「そこまできにしなくてもいいんですよ?」 京太郎「駄目です。そういう訳にはいきません」 初美「京太郎は無駄に背負いすぎですよー?」 京太郎「ははっ、そうかもしれませんね……」 京太郎(ん?何だ、これ?) 京太郎(何か剥製をつなぎとめている槍だけど……) 京太郎(触ってみよう……なにか力を得る機会になるかもしれないし)ピタッ 京太郎(これは……!何かが流れ込んでくる……!) 京太郎(もしかすると、これを持てば……雀力が上がるかもしれない!) 初美「京太郎ー何かあったんですかー」ヒョイッ 京太郎「わぁえっ!?いきなり脅かさないで下さいよ!」 初美「ああ、それはですね~。妖怪を封印しているらしいですよー」 初美「本当かどうかはわかりませんけどねー」ケラケラッ 京太郎「妖怪……?」 初美「もしかすると、これを持てば京太郎も悪霊退治が出来るかもしれませんよー」 京太郎「そんなことしませんってば……というかこの槍引き抜いたら妖怪復活しちゃうんじゃないですか」 初美「あははっ、まさかー。剥製に決まってますよー」 京太郎(本当にそうなのかなぁ……) 京太郎「うーん、なかなか片付きませんねー」 初美「そうですねー。まあ、今日中に終われるとは思っていませんでしたよー」 京太郎「残りは次になりそうですよ、このままだと……」 初美「むーっ!京太郎早く終わらせますよー」 京太郎「ああ、もうっ!そうやって急いだらまたっ!」 初美「あっ!京太郎どいてくださいー」 ドンガラガッシャーン 京太郎「いってぇ……頭打ってないかな……。っと、それよりも!薄墨さん大丈夫ですか?」 初美「何とか、ですよー……」 京太郎「つうか、何だこの重いのは」フニッ 初美「ひゃあっ!?」 京太郎「あれっ……この柔らかい感触は?」フニフニッ 初美「ひゅうっ!い、いつまで触っているんですかー!!!!」 京太郎「す、すいませーーーんってこの俺の胸に乗っかっているのって……」 初美「私ですよー!」 京太郎「は、早くどいて下さい!」 初美「そうしたいのは山々なんですけど……荷物が乗っかって」 京太郎「俺も起き上がりたいですけど、足が何かに引っかかって動けなくて」 初美「ええっ!?ということはしばらくこのままですかー!?」 京太郎「それは困りましたね……巴さん辺りが見に来てくれるといいんですけど」 初美「助けて欲しいですよー」 京太郎(やばい、何でか知らないけど……薄墨さんが可愛くて仕方ない) 京太郎(俺は……俺はロリコンじゃねぇのに!) 京太郎(巴さん、早くきてくれーーーーーーっっ!間に合わなくても知らんぞーーーーーーーーっ!) 初美「……っふぁ……んっ」 京太郎「上でモゾモゾしないで下さいよ、擦れて痒いですっ」 初美「そんなこと言ってもここから早く抜け出さないと困りますよー」 京太郎(上で変な声出してる方がヤバいんですよっ!ああ、もうチラチラ見えるピンク色があああああ!9 初美「やっぱりこのまま待つしかないのでしょうか……」ションボリ 初美「誰かーーーー!助けて下さーーーい!!!」 霞「……はっちゃんの声が聞こえた気がしてここまで来たけど……」ガラッ 初美「ここでーす!霞ーーー!」 霞「ダンボールの転がっている場所から声……?はっちゃーん、何処にいるの?」 初美「ここでーす。ダンボールや物に引っかかって潰されているのですよー……ここは狭くて暑いいのですよー……」 霞「わかったわ……今どかすわね」ウンショット 初美「ぷはーーーっ!外の空気ですよー!」 霞「はっちゃん、大丈夫!一人で怖かった……でしょ………う」 京太郎「はぁ……どれくらい密着していたんでしょうかね」 霞「えっ、何で京くんがここに……」 初美「もう、京太郎がきちんと私を受け止めないのが悪いんですよー」 京太郎「元はといえば薄墨さんが無理に重い物を運んだのが原因じゃないですか 全く、ずっと体を押し付けられて困りましたよ?」 霞「…………えっ」 初美「ふっふっふっ、このはっちゃんバディーで興奮しましたね?」 京太郎「し、しないから!そんな薄い身体をずっと当てられてもなー」 初美「むーーーーっ!あれだけの近距離で私と密着できたんですよー!?」 京太郎「ノーセンキューで」 初美「何でですかー!私と一緒は嫌なんですかー?」 京太郎「いや、そういう訳じゃないですよ。薄墨さんとは仲良くしたいですし」 霞「!!」 霞「ええ……」 霞(私とのデートを断ったってことは仲良くなりたくないの?そういうことを言ってるってことなの?) 霞(京くん……私、もしかして嫌われてるの?) 初美「うりゃーーーっ!」 京太郎「暑苦しいから後ろから抱きつくなーーーーっ!」 初美「にはははははっ!このはっちゃんボディをとくと味わうがいいですよー!」 京太郎「さてと、今日の仕事も終わりか……」 京太郎(そうだ、時間もあることだし……倉庫に行こう) 京太郎(何か、あの槍以外にもてがかりがあるかもしれないしな)ガラッ 京太郎(さてと、探してみるか!) 京太郎(ん?何だこれ?) 京太郎(刀身から鍔まで全部真っ赤じゃねぇか) 京太郎(血でも吸ったのかよって言いたいくらいだぞ、これ) ???「我を……継承せよ……」 京太郎「うわあっ!?剣が喋った!」 悪霊(落ち着け。これはお前の頭に語りかけてるだけだ) 京太郎(どっちにしろビビるわ!) 京太郎(この剣について何か知ってるか) 悪霊(いいや。とにかく、これを取り込んだら強くなれることは確かだな。 声が聞こえるってことはテメエは選ばれたってことだよ) 京太郎(俺が……選ばれた?何の才能もない俺が?) 悪霊(そうだ。それは紛れもなくテメエがつかみとった結果だ。誇れよ、ガキ) 京太郎「……クッ。ククッ」 京太郎「俺が、選ばれた……!いいねぇ、ゾクゾクしてきやがる」 悪霊(ハッ。喜ぶのはまだ早いぜ。それに、すぐに取り込まなくてもいい) 悪霊(もっと吟味してみな。この剣以上に力を得れるものがあるかもしれねぇんだからな) 京太郎(……わかった。とりあえず、これは保留だな) 悪霊(慌てることはねえ。いつでもこの剣は呼べば応えてくれるんだ) 京太郎(ああ、じっくりとやろう。此処から先の領域に行くにはもっと力が必要だからな) 京太郎(何かを捧げる……覚悟が、この先必要なら。俺は選ばなくちゃいけない) 巴「おーい、きょーちーん!さがしたよー!」 京太郎「巴さん。どうしたんですか?」 巴「うん、実はさ。きょーちん晩御飯まだ食べてないでしょう?」 京太郎「はい。今日は何処で食べるのかを聞こうかなって思っていたんですが」 巴「うん、私が言いたいことはズバリそれだよっ!」 巴「今さ、はるるが寝込んでるでしょ。だから、はるるだけ消化に優しい物を作ったんだ」 巴「それで、はるるに御飯持って行ってくれないかな?なんならきょーちんもそこで食べていいからさ」 京太郎「俺と、はるるの二人きりですか?」 巴「うん。こっちはちょっとやることがあるから御飯遅くなりそうだし。 ああ、きょーちんの御飯はちゃんと作ってあるから安心してね」 京太郎「そうですか……わかりました。じゃあ、はるるのとこで食べてきますね」 巴「うんっ。よろしく頼むよー」 【はるるの部屋】 京太郎「という訳で一緒に食べることになった」 春「うん。わかった。京は私と一緒に食べたいってことだね」 京太郎「何でだよ!?いや、確かに強く否定することでもないけどさ」 京太郎「ともかく!お前は病人なんだから大人しくしとけって」 春「えー」 京太郎「えーじゃないっ!自分の立場をちゃんと考えておけって」 春「だって、別に大丈夫だし」 京太郎「大丈夫な奴がいきなりゲロを吐くかっ!」 春「誰だって朝は吐く。京もそうでしょう?」 京太郎「ああ、そうだな……って吐かねえよ!」 春「うっそだー」 京太郎「そんな棒読みで言われても」 春「この通り、私は元気だから」 京太郎「アホか!そうやって無理して倒れたらどうすんだ」 春「京がまた看病してくれるんでしょ?」 京太郎「あのなぁ……俺だっていつまでもここにいるんじゃないんだから」 京太郎「つーか、冷めちまう。いい加減飯食おうぜ」 春「じゃあ、いっせーのーで」 「「いただきます」」 春「さすが巴。美味しいご飯を作る」 京太郎「巴さん何でもそつなくこなすからなぁ」 京太郎「そういえば、はるるって」 春「?」 京太郎「いつも黒糖を食べてるけどさ、どうしてそんなに好きなんだ」 春「トップシークレット」 京太郎「ははは……手厳しい」 春「でも」 春「どうしても、って言うのなら教えてあげるのもやぶさかではない」フンッ 京太郎「何か、無駄に態度がでかいけどとりあえず、お願いしますっ」 春「よろしい。じゃあ話す」 春「この黒糖は従姉妹が私に教えてくれたの」 春「甘い物を食べたら頭に血がきちんと循環する。特に黒糖は風味が豊かでベリーグッドですーって」 京太郎「へぇ……はるるには従姉妹がいたんだな。その従姉妹さんから黒糖を勧められて食べるようになったんだな」 春「うん。戒能良子って人。麻雀のトッププロ」 京太郎「……えっ」 春「私自身も麻雀をやってるからその“才能”が受け継がれてるのかも」 京太郎「…………」 春「何せ、良子さん……中東の元傭兵でイタコであるとか、ソロモン王の力で役満を和了ったという逸話があるくらいだから」 春「だから、その血があるから私にも運があるのかもしれない」 京太郎「……麻雀やるんですか」 春「うん。これでも鹿児島代表」 春「姫様、霞、はっちゃん、巴、私の五人」 春「チームで代表」 京太郎「皆、強いんですか」 春「強いよ。私は一年だから違うけど他の四人は去年も出たよ」 京太郎「全国でも……活躍したんですか」 春「うん。特に姫様はすごかった。神様に愛されてるとしか思えないくらいにバカツキ」 春「霞やはっちゃんも特有の才能があるし、巴も安定して上手い」 京太郎「……全員、才能があって上手いんですね」 春「もしかして、京も麻雀やるの?というか途中から敬語になってる。何か、あった?」 京太郎「ああ、ごめんな。はるる達も麻雀やってるって聞いたら動揺しちゃって……だけど俺は、生憎と非才の身なんで遠く及ばないと思うけど」ニコリ 春「そう。でもやった。今度は京も一緒に遊べるね」 京太郎「いやぁ、俺は弱いから“才能”がある皆には遠く及ばねえって」ニコリッ 春「そうかな?頑張れば誰だって強くなるよ?」 京太郎「……そうじゃねぇから、苦しいんだよ」ギリッ 春「京?」 京太郎「いや、なんでもないよ。羨ましいよ、強いってだけで色々得れるものがあるんだしな」 春「そうだけど……強いって正直“拘ることじゃない”と思うけど」 京太郎『あははっ、そうだよな……ああ、そうだよなぁ』 京太郎『才能なんていらないよな、麻雀はたのしくやるもんだからなぁ……っ』 春「……やっぱり、京おかしい。何かあった?」 京太郎「だから、何でもないって言ってるだろー。とりあえず、この話は終わりだっ。早く残りの飯を食おうぜ」 春「うん」 春(何か、京が動揺することを言っちゃったのかな?) 京太郎(……麻雀は楽しむもの。そうだな、あんなことがなければ今もそう思っていたんだろうな) 京太郎(強くなきゃ誰も認めてくれない。むしろ、馬鹿にされて、叩かれて……) 京太郎(シンパにボコられて、最終的には咲達にも否定されて) 京太郎(強かったら……そんなこともなかったんだ) 京太郎(なかったことにできたんだ) 京太郎(俺だって、取り戻したいさ……あの日々を) 京太郎(でも、もう取り戻せないんだよ。才能に全部塞がれて) 京太郎(せめて、全国大会に出れなくても……個人戦である程度勝ち進めたら) 京太郎(こうなっていなかったかもしれないし) 京太郎(大好きでいれたんだろうな、あの空間を) 京太郎「さてと、飯も食い終わったし。明日も早いし部屋に戻ろう」 コケコッコー 京太郎「朝だ……」ガバッ 京太郎「眠すぎる……」 京太郎(特に携帯をいじっていた訳でもないんだけどなぁ) 京太郎「顔、洗いに行くか」タッタッタッ 【廊下】 京太郎「あ」 春「あ」 京太郎「はよー」 春「おはよう」 京太郎「今日は前みたいにゲロを吐かないでくれよ?」 春「人をゲロ魔人みたいに言わないで」 京太郎「はいはい。で、体の調子はどうだ?」 春「一日休んだおかげで万全」 京太郎「それはよかった」 春「京の方こそ、大丈夫?」 京太郎「何がだよ?」 春「昨日、様子がおかしかったから」 京太郎「気のせいだっての。考えすぎだ」ポンッ 春「なら、いいんだけど」 京太郎「じゃあ、俺は洗面所に行くから」 春「ねぇ、京」 京太郎「何だ?」 春「あのね、私が……私がだよ」 春「私が、明日死ぬかもしれないってなったら、どうする?」 京太郎「最後まで抗う。例え、相手が誰であっても」 京太郎「はるるが死ぬのは、嫌だ」 京太郎(才能があって、麻雀が上手いとしても……はるるは、はるるなんだ。 簡単に嫌いになんてなれるかよ!) 春「じゃあ、期待してもいい?もし、私が死にそうな時、京は助けに来てくれるって」 京太郎「確証はないけど。でも、こういう時は約束、するもんだろ」 春「じゃあ、指切り」 京太郎「ああ、指切りだ」 京太郎「よし、これで 春「そのかわり、私も助ける」 春「京が何に苦しんでいるかは知らないけど。いつか、わかった時は全力でサポートする」 京太郎「……いいのか?」 春「うん、だから――約束だよ」 京太郎「ああっ」 春「そういえば、京」 京太郎「ん?」 春「今日は土曜日。つまり、私と京はお休み」 京太郎「ああ、霞さんから聞いたよ。いきなり休みって言われてもどうするか困ってるんだよな」 京太郎「一応、霞さんからは街に出ないかって誘われたんだけど」 京太郎「他の人達といけばいいと思って断ったんだ」 春(霞……不憫な子) 京太郎「部屋でのんびりしてるかな、久しぶりにボーっとするのも」 春「ね、ねえ。京」 春「あのね……私、今日は街に出てほしいものがあるの」 春「で、でも……ほしいものって結構重いんだ」 春「だからね、荷物持ちが必要なんだけど……京、お願いできる?」ウワメヅカイッ 京太郎「あー、悪い。今日は休もうって決めてるんだ」 京太郎「初めてやる仕事が色々あったから疲れてるってのもあるしな」 春「そう……じゃあ今度、お願いね」 京太郎「まあ、俺で良ければ」 春「うん。京は力がありそうだからこきつかえそうだし」 京太郎「それが目的かよ!?」 春「そうだよ」 京太郎「肯定しやがった、いい性格してるなぁっ!」 春「でも、京を頼りにしてるってことだから」 春「つまり、そういうことだよ」 京太郎「どういうことだっての……」 京太郎「さて、部屋でのんびりしている訳だが……」 コンコン 京太郎「入って、どうぞー」 ガラッ 小蒔「た、たのもーっ」 京太郎「神代さん?どうしたんです、こんな朝早くに」 小蒔「それは朝早く起きれたから須賀さんとお話したいなって」ボソッ 京太郎「俺と話したい?」 小蒔「はいっ!あの時のお礼もあまりできなかったので……」 京太郎「そうですか、なら朝食の間までならいいですよ」 小蒔「ほんとですかー!」パアッ 京太郎「さてと、何を話します?」 京太郎「じゃあ、神代さんのお父さんについて」 小蒔「はい。話すといっても、特にはないですよ?」 小蒔「どこにでもいる優しい父ですし」 京太郎(それはない。あんな人が何人もいてたまるか) 小蒔「ただ、私の方を見てため息をつくのはどうしてかなって思いますけど」 京太郎(ああ、胸か……) 小蒔「で、でも!本当に優しいんですよ?」 京太郎「ああ、はい。それはわかります」 小蒔「ただ、前みたいに部屋には絶対に入れてくれなくなったのはちょっと悲しいです……」 京太郎(大方、エロゲとか隠してるんだろうなあ) 京太郎「まあ、いいじゃないですか。それでも、仲がいいんですから」 京太郎「親子仲がいいのは悪いことではないと思います」 京太郎(親がロリコンでもな) 小蒔「そうですよねっ!」 京太郎「まだ、時間はありますし……どうします?」 小蒔「もっと、お話していたいですっ!」 京太郎「そうですか。それにしても、家族っていいもんですよね、神代さんは結婚願望とかあるんですか」 小蒔「ふぇ?け、けけけけけけっっっこんでしゅか!」 京太郎「何故にそこまで顔を真っ赤にするのかが謎ですけど。ただ、神代さんの話を聞いていて羨ましいなあって」 京太郎「俺には縁がないと思うんですけどね……」ハハハ 小蒔「そんなことないですっ!!!!」 小蒔「須賀さんは自分のことを過小評価し過ぎですっ。本当はとっても優しくて気配りができるのに」 小蒔「そんな須賀さんを好ましく思ってるひとだっているんですよっ!」 京太郎「ははっ……お世辞でも嬉しいです」 京太郎「でも、俺なんかにそんな評価はもったいな「お世辞なんかじゃありませんっ!」パチンッ……え?」 京太郎「神代さん……?」 小蒔「訂正、して下さい。須賀さんはそんな人じゃないです」 小蒔「須賀さん。私と初めて出会った日のことを覚えていますか?」 小蒔「あの時の私は相当参っていました。周りが見えず、全部真っ暗のようにさえ感じていました」 小蒔「誰にも頼らずに逃げ出して。もう、何もかもを投げ出そう。そう、思っていたんです」 小蒔「でも、そうはなりませんでした。貴方が、須賀さんがいてくれたから。私は踏みとどまれたんです」 小蒔「貴方が差し出してくれた手に救われた人がいるんですよ……っ!」 小蒔「貸してくれた服、一緒に食べたアイス、困っている私にくれたアドバイス……全部が私にとっての光だったんですよっ!」 小蒔「それを……っ!“嘘”にしないで下さい!」 小蒔「須賀さんがどんなひどいことをしたとしても、私を助けてくれたことは嘘になりませんっ!」 小蒔「だから――――っ!」 京太郎(俺は……どう、答えればいいんだ?わからねぇ……わからねぇよ) 京太郎「訂正はできません…」 京太郎「神代さんの考えは神代さんのものです。それを、俺は否定して……訂正させることはできないでしょう」 京太郎「……正直、迷っています。進むと決めた道が正しいか。神代さんが言ってくれたことが本当か」 京太郎「だけど……俺の価値観は。やっぱり、どうしても変わらないんです」 京太郎「もう……変えられないんです」 京太郎「凝り固まったものは、もう解せないんです」 小蒔「そうですか……須賀さんは本当に意固地ですね」 小蒔「わかりました。なら、私も勝手にします。勝手に――須賀さんに関わりますから」 小蒔「嫌でも付いていきますから」 小蒔「私は、負けません。絶対に」 小蒔「どんなに時間がかかってもわからせます。貴方の価値は決して小さくないんだって」 小蒔「だから、これからもよろしくおねがいしますね?“京太郎”さん」ニコッ 京太郎(あの後、神代さんはものすごくいい笑顔で帰っていった) 京太郎(神代さんじゃなくて、小蒔でいいですって言われたけどさすがになぁ) 京太郎(だけど……俺のことを、本当に心配してくれる人が照さん達以外にもいるのかもしれない) 京太郎(信じてもいいのかな。ここの人達を。心から) 春「ねえ」 京太郎(だけど、一度変わった考えは簡単に変わらない) 京太郎(俺と神代さんの我慢比べみたいなものか……) 春「さっきから一人で難しい顔してるの」 京太郎「って、うわっ!はるるかよ」 春「はるるかよとは失礼。私への態度が適当」 京太郎「ソンナコトハナイヨ」 春「カタコトになってるよ、京」 春「それでごまかせると思ったの?」 京太郎「全然」 春「もう……本当に適当だね」 京太郎「いいんだよ。こういう冗談でも言わないとやってられないって」 春「ふーん……」 春(京の顔が前と違って少し、明るい) 春(あの麻雀の話をした時みたいに苦しそうじゃない) 春(聞いてみよう) 春「それにしても、京が考え事なんて珍しい。何かあったの?」 京太郎「あー……」 京太郎「神代さんに言われたんだ」 京太郎「俺は、自分を低く見過ぎだって」 京太郎「前にさ、はるるにも言われたよな。でも、俺は信じれないんだ」 京太郎「トラウマがあってさ。それが理由の全部を含んでるって訳じゃないけど」 京太郎「何が嘘で、何が本当か。誰が味方で、誰が敵か」 京太郎「ちょっと、わかんなくなっちゃって」 京太郎「ゴメンな、辛気くさい話で」 春「京、私は約束したよ。全力でサポートするって」 春「姫様だけじゃない。私も、京は自分を低く見過ぎだって思っている」 京太郎「…………」 春「過去は変わらないけど、未来は変えられるよ?」 春「京の過去に何があったかは知らないけど……今は違うよ」 春「皆、いる。京のことをちゃんと考えている人がいる」 京太郎「……」 春「明日」 春「明日の夜。この街にある高台に来て」 春「そこで、証明する。京は決して無価値じゃないって」 春「高台については後で地図で説明するから」 京太郎「……わかった」 京太郎「明日の夜、高台だな」 春「うん、“忘れないで”」 京太郎「……」 京太郎「そういえば、はるるは何で俺の部屋に?」 春「朝食できたから呼びに来た。皆もう待ってる」 京太郎「じゃあ、さっさと行かないと」 春「それじゃあ付いてきて」 京太郎(証明、か。俺の価値を証明って何をするんだろうな?) 京太郎(それにしても、明日の夜に高台か。忘れないようにメモでも書いとくべきかな) 【自部屋】 京太郎「さてと、朝食も食ったことだし。午前中は何をしようかな」 京太郎「忘れないようにメモを書いておかないとな」カキカキ 京太郎「机の上に置いておけば忘れることもないだろう」 京太郎「うん、これで完璧だ。ついでに部屋の掃除もしておこう」 京太郎「今まで溜めておいたツケだな、これは」 京太郎「さてと、昼飯だな。今日の当番は……」 春「私だよ」ニュッ 京太郎「うわあっ!!!!!扉から首だけ出すなよ!」 春「京も言ってたでしょ。冗談でもやらないとやってられないって」 京太郎「まあ、そうだけどさ」 春「ともかく、今日作ったのは自信作だから」 京太郎「そうか、楽しみだな」 春「……ねえ、京」 京太郎「何だ?」 春「私、明日の夜待ってるから」 京太郎「ああ、そのことか。任せておけって」 京太郎「ちゃんとメモも書いたし忘れねえって」 京太郎「そうだな、忘れるとしたら……悪い妖怪が現れてさ。はるるのことを消さない限り」 春「それも冗談?」 京太郎「ああ、ブラックジョークっていうやつだ。実際はありえねえことだけどな」 春「……そうだね」 春「行こう。御飯が冷めない内に食べて欲しいから」ダッ 京太郎「おい、待てよー!」 春「ねぇ、京」 京太郎「何だ?」 春「……私が消えたとしても、捜してね」 京太郎「当たり前だ」 京太郎「どんなに見失っても、忘れても。きっと、思い出して、捜すから」 春「ありがとう。やっぱり、京を信じてよかった」 京太郎「変なはるるだな。大丈夫だって」 京太郎「俺は諦めが悪いからな」 京太郎「大丈夫だって。妖怪が現れても、ぶっ飛ばすから」 京太郎「安心して待っていろ。必ず、迎えに行くよ」 京太郎「これ、新しい約束な」 春「うん、約束」 春「ふふ……二人だけの約束っていい響き」 京太郎「何言ってんだか……」 【自部屋】 京太郎「……食い過ぎた」 京太郎「駄目だ、これはもう動けない」 京太郎「夜眠れなくなるかもしれないけど、今寝とくか」 京太郎「たまには昼寝もいいだろ……」 京太郎「ふぁぁ……よく寝たな」 京太郎(うわっ、もう夜の八時かよ。これは夜は寝れないな) 京太郎(おい、悪霊。どうせお前も起きてるんだろ?徹夜で付き合えよ) 悪霊(ハア?何で?) 京太郎(いいだろ、もうこのままだと徹夜確定なんだからさ) 悪霊(うっぜぇ……わかったよ。どうせ暇だしな) 京太郎(しかし、起こしてくれてもいいのにな。晩御飯食べ損なっちまった) 悪霊(うるせぇな、いいから寝ろよ。無理して目を閉じたら寝れるもんだ) 京太郎(んな、スパルタなことを言うなよ) 悪霊(いいから寝とけって……うるせえんだよ、テメエ) 京太郎(わかったよ、じゃあお休み)パチンッ 京太郎「……朝の目覚めはすっきりだ」 京太郎「それでも、一応顔でも洗いに行くかな」 「今日ものんびりしようかな、特に予定もないことだし」 【第三章一節いつか、届く、あの空に。End】
https://w.atwiki.jp/warvish2go/pages/16.html
【鹿児島から】バイクでぶらり一人旅【復路】(京都~名古屋~)
https://w.atwiki.jp/karaage/
本気でからあげの旅を考察するサイト。 あぁん? アンチも信者も黙ってろカス。 - ライブ配信 - http //www.stickam.jp/profile/djkaraage - 現在の位置が分かります 「今どこ?」って聞く前にGPS! - http //imakoko-gps.appspot.com/view?users=kara.age.live trace=kara.age.live - からあげのBlog - http //kara-age7.com/blog/ - 知りたいことは「鹿児島から北海道まで、旅するよ。自転車で。 wiki」- http //wikis.jp/karaage2009/index.php - からあげ支援アップローダー - http //loda.jp/karaage2009/
https://w.atwiki.jp/vipkotei-j/pages/1307.html
もどる 独身男爵 ◆sitmWKBSyQ
https://w.atwiki.jp/hawawa0925/pages/23.html
自軍 レイ ナナ 味方機×4 敵軍 油槽艦×4(6) 軽巡洋艦×3(6) 市街地有 補給拠点有 勝利条件 敵全滅
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3968.html
京太郎「……勝てない」 京太郎(加治木さんに言われた通り、色々と考えてやってるけどあんなオカルトに対抗できねぇよ) 京太郎(悪待ちだのリンシャンだの東場最強だのデジタルのどっちだの) 京太郎(染谷先輩はまだ子供の頃から雀荘で牌を触ったり対局を見続けていたらしいからわかるけど) 京太郎(アレは無理ゲーすぎる) 京太郎(気分転換に買い出しに無理やり行ったけど、メゲルな……) 京太郎(やっぱり、天才には届かないのか?) 京太郎「くそっ……」 ???「……ちょっといいでしょうか」 京太郎「ん?何ですか?」 ???「実は道に迷ってしまって。できれば、ここから駅までの道のりを教えて欲しいのですが」 京太郎「いいですけど……えーと、かくかくじかじかです」 ???「ありがとうございます」ペコリ 京太郎「よければ、案内しましょうか?」 ???「え、よろしいんですか?」 京太郎「はい、俺も丁度時間がありますし」 ???「それでは、お願いしてもよろしいでしょうか?」 京太郎「ええ、では行きましょうか」 京太郎(んー、珍しい服装。というか、もろ巫女さんじゃん) 京太郎(俺とそんな歳は変わらなそうだし……学校とか行ってないのかな) ???「ああ、そう言えば自己紹介がまだでしたね……私は――狩宿巴といいます」 巴「いや、助かりました。長野は一度も来たことがないもので」 京太郎「そうなんですか?長野の中でも田舎の方っすよ、ここ。そんなとこにどうして?」 巴「ちょっとした仕事ですよ。言うなれば、悪霊退散っていうやつですか」 京太郎「へー」 巴「信じていませんね……まあ、当然でしょう」 京太郎「そりゃあ、悪霊って言われても実感わかないですよ。漫画じゃあるまいし」 巴「でしょうね。ですが……貴方はとっくに気づいているはずですよ」 巴「オカルト、麻雀をやったことがあるなら。そのオカルトに何度も打ちのめされている貴方なら」 京太郎「……!」 巴「ねぇ、須賀京太郎くん」 京太郎「どうして、自己紹介もしていないのに俺の名前を……?」 巴「それは企業秘密です。まあ、仕事の関係上知ってしまったといいますか」 京太郎「……仕事と、俺の正体を知っていることに何の関係が?」 巴「ぶっちゃけますと、貴方の高校、相当やばいですね。空気が淀んでいます」 京太郎「……」 巴「それも、貴方を中心に。知っているはずです、今の環境が少しずつ狂い始めていることに」 京太郎「ということは……!俺に送られてくる嫌がらせじみたメールも!」 巴「それについては存じ上げませんが、とにかく……注意しておいて損はないですよ」ヒョイッ 京太郎「これは……」 巴「私の電話番号とメアドです。何かあったら連絡を。とはいっても、私にできることは限られていますが」 京太郎「……教えてくれないんですか、今、俺の周りで何が起きてるか」 巴「教えても意味がありませんよ?今起こっているのはありのまま、真実が曝け出されているだけなのですから」 京太郎「……真実?」 巴「誰しも、人は仮面を被るものでしょう?それがなくなりつつあるということですよ」 京太郎「よくはわからないっすけど、注意しておきます」 巴「それが一番です。はぁ……君とはもっと違う形で会いたかったんですけどね」 京太郎「違う形とは?」 巴「あはは、一応私も女の子ですんで。ロマンチックに憧れたりもするんですよ」 巴「こんな堅苦しいのはやめにしてフランクにいきたいのですが……どうも私はそれが苦手で」 京太郎「……それなら、ちょっとずつでも変えていけばいいじゃないですか」 京太郎「例えば、仲がいい友達にあだ名を付けるとか」 京太郎「それから口調も変えて、おちゃらけた風にしたり」 京太郎「狩宿さん、せっかく綺麗なんですからもったいないですよ?」 巴「……須賀君それってナンパですか?」 京太郎「違いますよ!ありのままを言っただけですって!」 巴「……ぷっ。必死ですね」 京太郎「そりゃあ勿論、狩宿さんに嫌われたくないですから」 巴「……巴。巴でいいですよ、“きょーちん”」 京太郎「なっ……というか、そのあだ名は何ですか!?」 巴「言い出しっぺの君からあだ名をつけようと思って。ダメかな?」 京太郎「いや、いいですけど……じゃあ、俺は“巴さん”で」 巴「うん、いい響き。この口調も変えられたらいいんですけどね、いきなりは難しいですよ」 京太郎「ちょっとずつでいいんですよ、こういうのは」 巴「では、努力してみましょうかね……おっと、もう駅ですか」 京太郎「喋りながらだったから早かったですね」 巴「まあ、いい気分転換になりま……なったよ」 京太郎「俺の方も。じゃあ、巴さん。また会えたら」 巴「ええ。じゃあね、きょーちん」 京太郎(巴さん、か……) 巴(うん、やっぱりいい響き。きょーちん、か) 「「また、会えるといいな」」 京太郎「さてと、買い出しも全部終わったことだし早く戻らないとな」 京太郎(巴さん、か。落ち着いていて綺麗な人だったな……) 京太郎(まさか、部室で言った冗談が本当になって出てくるとは。これは、幸先がいいかもしれんな) ハルカーナルヤシロノカミヨー 京太郎(ん、メールか。大方、部長達が早く帰って来いメールだろ) 京太郎「………………えっ」 京太郎「なん、だよ……このメール」 京太郎「おい、悪戯にしちゃあ洒落になんねーぞ……!」 Fromモブ女 『たすけて』 【清澄高校・保健室】 京太郎「おい、大丈夫か!」 モブ女「……あ、須賀さん」 京太郎「あの後のメールで保健室にいるって書いてあったからさ、急いできたんだよ」 モブ女「そうですか、すいませんわざわざ」 京太郎「気にすんなって。それよりもあのメールはどうしたんだ?」 モブ女「はい、それが階段を降りようとした時、誰かが私を押したんです」 モブ女「幸いに、転がり落ちる前に手すりに捕まったんで打撲で済んだんですけど」 モブ女「改めて、考えると怖くて……それであんなメールを送っちゃったんです」 京太郎「そっか……」 京太郎(これも偶然か?でも、偶然にしちゃ出来過ぎだぞ。モブ友達が言ってた俺を嫌ってる奴等か?) 京太郎(うーん、情報が足りないな……) 京太郎「その、押した奴の顔は見たのか?」 モブ女「後ろ姿しか……その、髪の短い女の子でした」 京太郎「わかった。サンキューな、教えてくれて。身体、大事にしろよ」ガラッ 京太郎(畜生……俺だけならまだいいけど、周り巻き込んでんじゃねえよ!) 京太郎(くそっ、イライラする) 京太郎「ただいま、戻りましたー」 まこ「おお、帰ってきたか。遅かったのう」 京太郎「まあ、途中色々ありまして……そういえば、他の人達は?」 まこ「ああ、アイツらなら休憩と称して食堂にデザートを食べにいきおった」 京太郎「そうですか……それなら、どうして染谷先輩は残っているんですか」 まこ「まぁな……いい機会じゃ、話しておきたいことがあってな」 まこ「メールで伝えるとは言ったが、本人がいるんじゃ。今話すぞ」 京太郎「はい、それで用件って?」 まこ「アイツらの様子がおかしいことについてじゃ。お前さんが鹿児島に転校するって冗談で眼の色が変わったじゃろ?」 京太郎「はい、いつもだったらすぐに流してくれるんだろうなーって思っていたんですけど」 まこ「それなんだがな、アイツら……お前さんが麻雀部をやめて転校するって噂を聞いたんじゃ」 まこ「何でもお前さんがアイツらを苦手にしているだのなんだの。それで、お前さんの挙動に過剰に反応してるんじゃろう」 京太郎「はぁ……?訳わかんないですよ。俺はそんなこと一言も言った覚えがないっすよ」 まこ「じゃろうな、わしもそう思っとる。全く、みんな噂に流されておるよ」 京太郎「染谷先輩は信じてないんですか?」 まこ「アホ抜かせ。わしはちょっとやそっとのことじゃあ揺らがんのよ。アイツらはまだ子供じゃ、成熟しきっておらん」 京太郎「それだったら染谷先輩も……」 まこ「わしは小さい頃から雀荘の手伝いをやっていてのぅ。大人の中で育ったから嘘だの恫喝だの慣れっこなんじゃよ」 まこ「わしが言えることは流されるな、今まで培ってきたものを信じろ、だけじゃ。それは京太郎にも言えることだと思うがな」 まこ「知ってるぞ、雑用の合間に牌譜を読んだり、ネトマをして必死になってたり。夜もわしらが帰った後、毎日一人で練習してるそうじゃな」 京太郎「っ!?」 まこ「こっそりと覗いてたんじゃ。お前さんも男じゃ、女の影でこそこそ雑用なんて本当は嫌なんじゃろ?」 京太郎「……そうですよ。俺には雑用をやることしかない。そんなのは嫌だ、強くなってアイツらを見返したい」 京太郎「力があれば、今の状況だって覆せる。誰にも文句なんて言わせない」 京太郎「才能が空っぽだけど強くなれるって。俺が麻雀部にいる意味の証明を」 京太郎「力が欲しい……!」 まこ「だが、今の状況でそれは厳しいぞ?最近はお前さんに対して嫌な空気があるしな」 京太郎「関係ないっすよ。確かに、先輩には言ってないんすけど、最近は色々あって参っていました。」 京太郎「だけど、吹っ切れましたよ、この程度を乗りきれなくて、強くなんてなれるかっ!」 京太郎「今より前に進むには!認めてもらうには!俺は、勝つしかないじゃないですか!」 京太郎「今までの俺は覚悟が足りませんでした。このぬるま湯の環境を、関係を壊す覚悟が」 まこ「……その道は茨じゃぞ。アイツらと今までどおりにいかんかもしれんぞ」 京太郎「それでも、俺は勝ちたい。咲達が掴んだ栄光を俺自身の手で掴みたい」 京太郎「それで、言ってやるんですよ。俺だって一発決められんだぜ?って」 まこ「そうか。そこまで決意が固いならわしは何も言わん。京太郎自身の問題じゃ、あまり突っ込むのも野暮というもんじゃろ」 まこ「だが、一つ訂正しときたいことがあるのぅ」 京太郎「えっ、何か……!そ、染谷先輩!?」 まこ「ふむ……こうして後輩を抱きしめるというのもなかなかにいいものじゃな」 京太郎「ちょ、ちょっと恥ずかしいっすよ……」 まこ「何を言っておる。お前さんはもう少し、人と触れ合っておくべきじゃ」 まこ「さてと、訂正じゃ。わしは、お前さんを認めている。一人の男として、な」 まこ「それだけは訂正してもらわんと困るなぁ。わしも誤解されたままは嫌じゃし」 京太郎「……は、はは」ポロポロ まこ「全く、泣き虫じゃのう。ほれ、胸、貸してやる。遠慮なく飛び込んでこい。相手が和だったらよかったんじゃがの」 京太郎「冗談、言わないで下さいよ……アイツらの前でこんなみっともない姿、見せられませんよ」 京太郎「だけど、先輩。今だけ、今だけでいいから……思いっきり泣いてもいいですか?」 京太郎「これ、終わったら……俺頑張るんで。絶対、強くなるんで」 まこ「遠慮無くって言ったじゃろうが、アホ」ダキシメ 京太郎「……ありがとう、ございます」 扉の向こう側 咲「…………へェ」 和「……」ギリッ 優希「おかしいじぇ……こんなのありえないじぇ」 久「落ち着きましょう、そうよ落ち着きましょう」 咲「大事なことだから二回言ったんですね。そうです、落ち着きましょう」ゴッゴッゴッ 久「……何か様子がおかしいからこっそり覗いてみたらねェ。おねーさん、予想していなかったわ」 咲「どうして、どうしてどうして……!」 優希「落ち着くじぇ、咲ちゃん。ひとまずは撤退だじぇ」 和「……」 久「もしかしたら、噂……本当なのかもしれないわね。まこに対してはいつも通りだけど私達には最近そっけないしね」 咲「…………………染谷先輩」 優希「行こうじぇ。今は、私達が入っても適当にごまかされるだけだじょ」 和「そうですね……」 咲(どうして、その立ち位置に私が入ってないのかな?) 【夜・帰り道】 京太郎(とりあえず、一通り泣いた後……咲達が帰ってきたんだけど) 京太郎(どこかぎこちないなぁ……やっぱり噂を信じてるのかなあ) 京太郎(はぁ……最近疲れることばっかだ) 京太郎「かったるいなぁ……」 ???「あ!」 京太郎「ん?」 衣「お前はこの前の!」 京太郎「ああ、天江衣さん、でしたよね。こんばんは」 ハギヨシ「どうも、タコスの店を教えた時ぶりでしょうか」 京太郎「そうですね、その節はお世話になりました」 ハギヨシ「いえいえ、こちらこそ」 ハギヨシ「衣様……チャンスですよ」 衣「な、何がだ?」 ハギヨシ「須賀君と初めて会った時、落ち込んでいたではありませんか」 ハギヨシ「何か言葉をかけるには今が、よろしいかと」 京太郎「で、俺に何か用ですか?」 衣「悩んで、苦しんで、自分が孤独だと思うなら、衣が添い遂げてやろう!」ドヤッ 京太郎「…………」 京太郎(ど、どう反応すればいいんだろう?) 京太郎(とりあえず、悪いことを言ってないってのはわかるけどさ) 衣(あれ、外したか?衣なりに考えたのだが。添い遂げるって一緒にいることだろ?) 京太郎「え、えーとですね……」 ハギヨシ「須賀君、少々お待ち下さい」 京太郎「へ?」 ハギヨシ「衣様。それではダメですよ。もう少し言葉を選ばないと」 ハギヨシ「……大丈夫ですか」 衣「うむ!こんどこそ間違えないぞ!」 ハギヨシ「ご武運を」 京太郎「えっと、もう返ってもいいですか?」 衣「ちょ、ちょっと待って欲しい!」 衣「衣が本当に言いたいことは……!」 衣「お前は強さを求めているようだが、強いことが幸せに繋がるとは限らないぞ」 京太郎「……!」 衣「そのいい例がお前の目の前にいる」 衣「強さにこだわってばかりで、衣は何も見えていなかった」 京太郎「それと、俺に何の関係が?」 衣「何も強さだけが全てではないということだ。気分を害したらすまない。だが、これだけは伝えておきたかったんだ」 衣「衣としては同じ道をお前に歩ませたくないのだ」 京太郎「……そうですか」 京太郎「ありがとう」ナデナデ 衣「むーっ!子供扱いするなっ!」 京太郎「俺のことを心配してくれて。赤の他人にそこまで言うなんて天江さんは優しいんですね」 衣「えっへん!」 京太郎「でも……ごめんなさい」 京太郎「強くなりたいのは俺が悩んで悩み抜いた結果、願ったことです」 京太郎「もう決めたことですから。天江さんの理論は……強いから言えることなんです。 それでも、少し……響きました」 衣「っ!……このわからずやーっ、ハギヨシっ!」 ハギヨシ「承知いたしました。すいません、須賀君」ドスッ 京太郎「ぎょほっ!」 衣「よし、家に運ぶぞっ!」 衣(……須賀京太郎、こいつは危うすぎる。このままだと、いつか自壊してしまう) 衣(止めないと。咲やトーカ達が衣を引き戻してくれたように) 衣(今度は衣がその役割を果たす番だっ) 京太郎「……うーん、ここは」 京太郎(何だ、この豪華な部屋は……!俺、何があったの!?) ???「お目覚めのようですね」 京太郎「あ、はい……って」 ハギヨシ「おはようございます、というには少し遅すぎますが」ハダーカ 京太郎「」 ハギヨシ「はっはっは、須賀君との熱い夜は私の人生で一番の思い出になりました」 京太郎「」 ハギヨシ「二人は幸せなキスをして終了ですね!」 京太郎「なにいってだ、アンタ」 ハギヨシ「私の穴に入れて、どうぞ」 京太郎「オーケー、三発殴って活路を開く」グーッ ハギヨシ「暴力反対!暴力反対!」 京太郎「うるせーーーー!人の処女奪ってんじゃねえええええ!!!!」 ハギヨシ「たった一度与えーられたー処女貫通はチャンスだーからー」 京太郎「何口走ってんだ、アンタ!?」 ハギヨシ「ハギヨシルートにもう入ったから安心!」 京太郎「今までのシリアスムードはどこ行ったんだよ!?」 ハギヨシ「うるさい、そんなことよりセックスだ!」 京太郎「というか、キャラ変わってるんだよ!!」 ハギヨシ「というか貴方だってキャラ違うじゃないですか!声優的に全裸の方でしょう、労働者じゃない!」ホ 京太郎「……」ドカッ ハギヨシ「無言で殴るのは良くないですよ!というか何ですか、この仕打ちは!」 京太郎「ハギヨシもげろ」 ハギヨシ「そんなご無体な!これがなくなったらどうやって須賀君のお尻を掘ればいいんですか!」 京太郎「掘らなくていいよ!?」 ハギヨシ「金髪巨乳の王女と別れてまで貴方の元へと走ってきたのに!」 京太郎「ふざけんな、テメエ」ドカッ ハギヨシ「グボッ!いい拳をお持ちで……」 京太郎「誰のせいだ、誰の!」 ハギヨシ「…………冗談はここまでにして。気はほぐれましたか?」 京太郎「えっ」 ハギヨシ「先程までの貴方は抜き身の日本刀のようでした。寄るもの全てを斬り捨てるかのような」 ハギヨシ「確かに、勝負事の時はそれでいいかもしれません。ですが、日常にまで及ぶともはやただの凶器……」 ハギヨシ「それを一旦無くすためにこのようなことをやらせていただきました」 京太郎「……ハギヨシさん」 ハギヨシ(この台本を書いた智紀様、後で仕事五倍に増やす。衣様が面白そうだとさえ言わなければこんなことしませんよ!!!) ハギヨシ「どうかお許しを。お詫びに私にできることであれば何でもするので」 京太郎「ん?今何でもするって言ったよね?」 ハギヨシ「ファッ!?」 ハギヨシ(まさか、この短期間でホモに目覚めてしまったのですか!?) ハギヨシ(ホモの申し子、須賀京太郎……!) 京太郎「とりあえず」 ハギヨシ(ああ、透華様、衣様お許し下さい。私は一足先に大人の階段を登ります……! 智紀様、後で仕事八倍に増やしますから) 京太郎「家に帰せ」 ハギヨシ「……ですよねー」 京太郎「とりあえず、いきなり拉致は犯罪でしょ、犯罪!」 ハギヨシ「バレなきゃ犯罪じゃないですよ」 京太郎「駄目だよ!?俺にバレてるから!!!!」 ハギヨシ「お待ち下さい!まだ、本題が始まっていませんよ!」 京太郎「はぁ。じゃあせっかくですし、聞きますよ」 ハギヨシ「ふぅ、やっと本題に入れますよ。長い道のりでした」 京太郎「……ここまでの流れに意味はあったのか」 ハギヨシ「では、ゴホン。まず、ここに連れてきた理由からお話しましょう」 ハギヨシ「貴方は力がほしい、そう話しましたね?」 京太郎「まあ、そうですね。追いつきたい奴等がいるから、俺は強くなりたいです」 ハギヨシ「その過程で……大切なものを失う可能性があったとしても?」 京太郎「……どういう意味ですか」 ハギヨシ「言葉の通りです。何かを得るには同等の代価が必要です。力の代わりに失うものがあるだろうということですよ」 ハギヨシ「今から道を変えるということは視野には入れていませんか?」 京太郎「くどいですよ。俺は、決めたんです。迷うぐらいなら前に進むって」 京太郎「強さを手に入れるまで、走り続けるって」 京太郎「後悔なんて、ある訳ない」 ハギヨシ「そう、ですか……ならば、最後に一つだけお願いをしてもよろしいでしょうか」 京太郎「何ですか?」 ハギヨシ「衣様のお友達になってはもらえないでしょうか」 京太郎「いやいやいや。俺よりも適任がいるでしょうよ。咲達の方が仲良くなれるんじゃないですか」 ハギヨシ「貴方は自分のことを過小評価し過ぎですよ。まあ、私の方からは何とも言えません」 ハギヨシ「衣様がなぜ、貴方を気にかけるのか。答えは私よりも直接本人から聞かれた方がよろしいでしょう」 京太郎「……わかりました。タコス屋のお礼もあります、ここは言う通りにします」 ハギヨシ「感謝、します。では、ご案内をいたしますのでお後に」 【衣の部屋】 ハギヨシ「私はここまでです。後は、お二人で」シュタッ 京太郎「消えちゃったよ、おい」 京太郎(天江衣、去年のインターハイでも大暴れした娘。才能に恵まれた……)ギリッ 京太郎「聞くだけ、聞こう。それから、さっさと帰ろう」 京太郎「失礼します」 衣「……来たか」 京太郎「ハギヨシさんにはお世話になっていますから。その御礼も兼ねています」 京太郎「質問しても、いいですか」 衣「いいぞ、今日は夜通し語り合う覚悟でいる。メガシャキも飲んだから眠くないぞっ!」 京太郎(本当に大丈夫なんだろうか?) 京太郎「俺に興味を抱いた理由です。ぶっちゃけると、天江さんから見ると俺は塵レベルの存在だと思いますが」 衣「……似ているからだ。衣とお前は」 京太郎「それはないでしょう。天江さんは才能に恵まれて、俺には何もない」 衣「才能、か。今思うと、才能なんてなければ、そう思うよ」 衣「古い話をしよう。才能がなまじ人よりあったせいで勘違いしていたバカな少女の話だ」 京太郎「そんな、ことが原因で……!」 衣「そんなことが衣の人生を縛り付けていたんだよ」 京太郎「監禁だなんて……!家族よりも、重いのかよ!? 麻雀が家族を壊しちまうのかよ!!!!!」 衣「狂ってるんだろうな……麻雀が家族を壊すなんて。だが、それが衣にとっての世界だった。 その影響か、衣の存在価値は麻雀しかないとしか思っていなかった。 目の前で手を差し伸べてくれる人達に気づかずに、強者のみを追い求めた」 京太郎「それで、俺に対して強さだけが全てじゃないって」 衣「そうだ、お前は衣と違って……戻れる。修羅の道を歩まなくてもいい」 衣「お前に手を差し伸べる者だっているだろう?というか、衣だ!」ズイッ 京太郎「天江さん……」 衣「別に、今すぐこの手を取れという訳ではない。ただ、お前の身を案じている者がいるんだってことは覚えておけ」 衣「それと、天江さんじゃなくて……衣で、いい」 衣(と、友達になりたいって言いたいのに……恥ずかしくて言えん) 京太郎「……衣さん」 京太郎「わかりました。俺、ちょっとだけ周りに目を――――――」 ズキン、と。 京太郎「が、あ。あっ」 ズキンズキンズキンズキン。 京太郎「が、ああっ!」 重い痛みが、これから発しようとする言葉を忘却の彼方へと押し流す。 京太郎「がひゃえちゃうぇrjgjっrgんうぇctkmrsklらckgぁえわzwっq」 衣「お、おいどうした!!!!」 耐え切れぬ痛みに脳のキャパシティが超える。 ついには立っていることすらままならず、倒れこむ瞬間、京太郎の目には一つの景色が鮮明に写った。 見えた景色は、駆け寄る衣でもなく。 ドアを乱暴に開け放って飛び込んできたハギヨシでもなく。 京太郎「……おん、な……のこ?」 思い出してはいけない過去の記憶の一ページ。 それは、血の涙に塗れた、“俺”と。 京太郎「……」 涙を流して、雨の空を見上げる、女の子。 「ごめんなさい」 京太郎「……あ」 ハギヨシ「大丈夫ですか、どこか御身体の具合がよろしくないのであればすぐさま病院へと!」 京太郎「だ、大丈夫です。ちょっと、突然頭痛が……」 京太郎(な、何だったんだ、今見た光景は?) 衣「……ううっ」 京太郎「泣かないで下さいよ、もう……俺は生きてるんですから」 衣「だって、いきなり倒れて心配したんだぞ!!」 京太郎「……ハギヨシさん、俺どれくらい意識なかったですか?」 ハギヨシ「一秒、ジャストです」 京太郎「時間に換算すると少ないんですね……」 ハギヨシ「そんな些細な事は今は関係ありません。車を出します、病院へ行きますよ」 京太郎「んな、大げさな。今は平気です、ご心配おかけしました」 ハギヨシ「駄目ですよ、無理は禁物です。もし、途中で今みたいなことがあったらどうするのですか?」 衣「そうだぞ……もし、そのまま意識がなくなったままだったら」 京太郎「……わかりました。それでは、お言葉に甘えて」 ハギヨシ「お金に関してはこちらが負担します。元はといえば、私達が連れてきたせいでもあるかもしれませんしね」 【朝・京太郎の部屋】 京太郎「また、だ」 京太郎(嫌がらせのメールが増えてやがる……) 京太郎(マジでどうしよう。こんなことが続くと、もっとヤバいことになるかもしれねー) 京太郎(部活をやめれば、なくなるかもしれないけど 京太郎(……こんなことが原因で麻雀を諦めたくない) 京太郎(負けたくない、裏でコソコソ嫌がらせをしてくる奴等に) 京太郎(土日は部活に行っても何もなかったし……まだ、安心かな) 京太郎(しかし、あの頭痛は何だったんだろう。病院でも健康ですって言われたし) 京太郎「ああ、かったるい……」 衣「きょ、きょーたろーっ。ぐ、偶然だな?」 京太郎「天江さん……おはようございます」 衣「衣でいい、さん付けだと照れくさいんだ……」 京太郎「では、衣さんで」 衣「うむ、親愛を込めて呼ぶといいっ」フンッ 京太郎(うーん、何度見ても年上には見えんな……どうしたものか) 京太郎「そういえば、衣さんはなぜここに?ハギヨシさんとかに車で送ってもらわなかったんですか」 衣「それは……きょーたろーがきになったから」ボソッ 衣「ええいっ、その話は関係無いだろう!」 京太郎「まあ、いいですけど。学校とか大丈夫なんですか、こっから龍門渕までってそんなに近くない気が……」 衣「あ」 衣「…………」アセダラーリ 京太郎「もしかして、そのことに気づかずに……?」 衣「う、うるさーいっ!ハギヨシィッッッ!」 ハギヨシ「ここに」シュタッ 衣「ここから龍門渕まで今から向かっても間に合うか?」 ハギヨシ「衣様がお望みならばこのハギヨシ、必ずや時間までに」 衣「よし、なら急ぐぞっ!ではな、きょーたろーっ!」 ハギヨシ「須賀君も良き学校生活を」ビューン 京太郎「……一体何がしたかったんだろう」 【清澄高校前】 京太郎「おっす」 モブ友1「よう、今日は遅刻ギリギリじゃないのな」 京太郎「たまには余裕を持って登校もいいもんだろ」 モブ友1「違いねぇ」 京太郎「さってと、上履きに取り替えて-っと」ヌチャ 京太郎「……うわぁ」 モブ友1「どした?」 京太郎「上履きの中に噛んだガムが……」 モブ友1「……胸糞悪いな」 京太郎「お前達が前に言ってた奴等か」 モブ友1「多分な、とりあえずさっさと取って教室行こうぜ」 京太郎「ああ……」 :一応だから本編にギリ差し支えないッテ程度な。このままだとはるるダントツになる[saga]:2012/10/09(火)01 29 52.49ID 08smUdsw0【教室】 京太郎「はよー」 クラスメイト女「…………」 京太郎「……無視かよ」 モブ友1「やっぱ、抑えきれてねーのか」 京太郎「抑えきれてないって?」 モブ友1「ああ、お前のことを妬んでるって奴等だよ。 何のいい成績を麻雀で出してないからって嫌がらせしてるんだよ」 モブ友1「片や初の全国出場でルックス抜群。片や予選敗退のうだつのあがらない奴。 お前がいると邪魔だ、せっかくのきらびやかな麻雀部が汚れるってよ」 京太郎「何だ、それ。頭がおかしいとしか思えねーよ……」 モブ友1「元からそういう下地があったんじゃねーのかな? 原村とか会長って男女共に人気があってさ。宮永と片岡も可愛いって最近言われ始めてさ」 京太郎「染谷先輩は?」 モブ友1「なぜか言われてねー」 京太郎(一番頼りになって心強い先輩なのに……見る目ねーのな) モブ友1「ともかく、結構妬まれてるんだって、お前」 京太郎「わかった……夜道を歩く時には注意しとくよ」 モブ友1「そうしとけって」 京太郎(……しかし、これって結構辛いな) 京太郎(今はダチがいるから安心できるけど、もしいなくなったら……) 京太郎(それでも、麻雀は……やめられない。ここでやめたら今までの積み重ねが無駄になっちまう) 京太郎(それに、嫌がらせしてくる奴等に負けた気分は癪に障るし) 京太郎(うわっ教科書に落書きまでされている) 京太郎(くそっ……何か、嫌な気分だ) 京太郎(昼になった訳だが……) 京太郎(どうすっかな、こんな状況じゃあ麻雀部の奴らと飯なんて悪化するだろうし) 京太郎(そもそも、この噂ってアイツらに入ってるかもしれないんだよな) 京太郎(俺がやめるかもっつー噂も知っていたし) 京太郎(幸いに誰も誘いに来なかったし……) モブ友1「京太郎、飯食いに行こうぜー」 モブ友2「こんな時こそ、美味い飯を食べるべきだって」 モブ友3「あんなクソ連中のことなんざ気にしてんじゃねーよ」 京太郎「……ああ、そうだな」 モブ友1「今日のÀランチはコロッケラーメンと餃子のセットらしいぜ」 モブ友2「お前のあしたが明るくなるようおごったるぜー」 京太郎「お前等……」 【午後・清住高校麻雀部・部室】 とん、と小気味いい音が連続して響く。 その音は聞いていて不思議と気分を落ち着かせてくれる。 視界にはアイツらが時より談笑しながら麻雀をうっている姿。 そして、俺は牌譜の整理。まあ、適材適所というやつなのだろうか。 片や全国出場が控えている“宝石”と予選で負けた“石”である俺。 “石”は“宝石”に価値は到底及ばない。 抗うことを決めた今でもその事実は変わらない。 抗うきっかけはほんのささいな会話、アイツらにとっては取るに足らない日常会話だったと思う。 『えへへ、一位だっ』 『うへー、咲ちゃん強すぎるじぇー』 『そうですね、最初と比べて強くなりましたよ』 『それに比べて犬は弱すぎるじょー!』 その言葉はいつも聞き慣れているありふれたものだ。 俺は、弱い。それは当然の事実、自身でもわかっていることだった。 ここの連中と違って、俺は何のオカルトもデジタルもない。 正真正銘の凡人、雑用オブ雑用。 仕方ない、まあそれが現実だよね、これ以上は悲しくなるので以下省略。 多分、その時の俺は曖昧に笑っていたのだろう。 いつも貼り付けている軟派な笑顔を表面に出して。 だけど、一瞬……剥がれ落ちたんだ。 『京ちゃんも頑張ろう!今は弱いけど強くなれるよ!』 『とはいっても、私には敵わないと思うがな!』 『まあ、保証はありませんけど……』 いつもは流せるその言葉がどうしてか、チクリと胸に刺さった。 魚の骨が喉に引っかかったような、嫌な気分。 おかしいと自分でも思う。咲達からするとただの激励であるはずなのに。 どうして、こんなにも胸がざわつくのだろう。 だけど、このざわつきがきっかけでそれまで適当でいいやと思っていた麻雀に熱が入り始めたのは確かだ。 覚えきれてなかった役と点数計算を頭に入れて。 染谷先輩に頼んで雀荘でも練習のお世話になった。 思えば、この時こそ俺はしっかりと思ったのだろう。 アイツらの後ろじゃなくて横に並んで歩きたい。才能なんてなくても一緒にやれるってことを証明したい。 きっと、この思いは心の片隅に始めからあったんだ。 雑用をすることで俺の存在は認められているんだと逃げていたから。 雑用ばかりを押し付けられることを弱いから仕方ないと思い込んで。 見たくない現実から目を背けて、俺は……。 泥に塗れた“石”でも磨けば綺麗になるように。 掴むのは勝利の美酒か、それとも敗北の苦渋か。 俺は、欲しい。勝利の美酒が。咲達みたいな栄光を掴みたい。 所詮は夢物語、現実は甘くなかった。 目の前に吹き荒れる風は俺が前に進むことを許さなかった。 アイツらの背中すらこの目で見ることは出来ない。 おいおい、ちょっとぐらいの甘さがあってもバチは当たらないだろ? 神様は応えない。そっぽを向いて、“宝石”に夢中だ。 ガン無視かよ。ちょっとぐらい夢、見させてくれよ。なぁ、おい。 どれだけネット麻雀を打っても。 牌譜を読んで研究しても。 “宝石”は輝くのに“石”は輝かない。 神様は賽すらも投げない。俺の無条件敗北を暗に告げている。 嶺上開花、東場の王、悪待ち、デジタルの化身、瞬間記憶能力。 どうして、俺にはなかった。 皆と横に並び立って歩いていける力が! 足りないのか?もっと、貪欲にならないと駄目なのか? 何かを切り捨ててでもしないと、強くなれないのか? わかってるさ。麻雀は運が強いゲームだ、努力だなんて言葉で報われるものじゃない。 勝ちか、負けか。簡素に言ってしまえばそれに尽きる。 だけど、だけどっ!!! 意地があるだろ、男には!!! 女の影でコソコソと雑用やってるクソ野郎なんざ消えてなくなっちまえ。 前に出てこその男だろうが! 勝ちたい、勝ちたい……! アイツらに……勝ちたい。横に並び立つよりも、俺は前を歩きたい。 だから、俺は――覚悟を決める。 強さの代償を払う覚悟を。 立ち止まってしまったら、再び歩き出せる自信がないから。 引き返せと囁く悪魔を振り払って、前を見た。 拳を強く握り締める。爪が皮膚に刺さり、後がくっきりと残るぐらい、強く。 忘れたら、思いだせ。強くなりたいと恋焦がれるこの激情を。 覚悟を決めろ、須賀京太郎。無償で強さを得るなんてご都合主義はありえないんだ。 “勝ちたい、力が欲しい” 俺が最初に望んだ願いが間違いか、正解か。 皆で一緒に笑いあった日常は切り捨てる必要があるのか。 地区大会優勝で食べたラーメンの味は美味しかったか。 でも、そんなの今となってはどうでもいいのかもしれない。 『強くなる、誰よりも』 この思いだけは、きっと間違いなんかじゃない。 アイツらと横に並ぶよりも。ぬるま湯の日常に浸かるよりも。 俺が望んだことなんだから。
https://w.atwiki.jp/giin/pages/1836.html
政党 名前 よみ 住所 TEL FAX Mail HP Blog Tw FB Yt テスト 山田 太郎 やまだ たろう てすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすと 999-8888-9999 999-8888-9999