約 4,798,924 件
https://w.atwiki.jp/mormon/pages/973.html
箴3 箴言 第3章 箴3 1 わが子よ、わたしの教を忘れず、わたしの戒めを心にとめよ。 箴3 2 そうすれば、これはあなたの日を長くし、命の年を延べ、あなたに平安を増し加える。 箴3 3 いつくしみと、まこととを捨ててはならない、それをあなたの首に結び、心の碑にしるせ。 箴3 4 そうすれば、あなたは神と人との前に恵みと、誉れとを得る。 箴3 5 心をつくして主に信頼せよ、自分の知恵にたよってはならない。 箴3 6 すべての道で主を認めよ、そうすれば、主はあなたの道をまっすぐにされる。 箴3 7 自分を見て賢いと思ってはならない、主を恐れて、悪を離れよ。 箴3 8 そうすれば、あなたの身を健やかにし、あなたの骨に元気を与える。 箴3 9 あなたの財産と、すべての産物の初なりをもって主をあがめよ。 箴3 10 そうすれば酒ぶねは新しい酒であふれる。 箴3 11 わが子よ、主の懲らしめを軽んじてはならない、 箴3 12 主は、愛する者を、戒められるからである、あたかも地hciがその愛する子を戒めるように。 箴3 13 知恵を求めて得る人、悟りを得る人はさいわいである。 箴3 14 知恵によって得るものは、銀によって得るものにまさり、その利益は精金よりも良いからである。 箴3 15 知恵は宝石よりも尊く、あなたの望む何物も、これと比べるに足りない。 箴3 16 その右の手には長寿があり、左の手には富と、誉がある。 箴3 17 その道はたのしい道であり、その道筋はみな平安である。 箴3 18 知恵は、これを捕える物には命の木である、これをしっかり捕える人はさいわいである。 箴3 19 主は知恵をもって地の基をすえ、悟りをもって天を定められた。 箴3 20 その知識によって海はわきいで、雲は露をそそぐ。 箴3 21 わが子よ、確かな知恵と、慎みとを守って、それをあなたの目から話してはならない。 箴3 22 それはあなたの魂の命となりあなたの首の飾りとなる。 箴3 23 こうして、あなたは安らかに自分の道を行き、あなたの足はつまずくことがない。 箴3 24 あなたは座しているとき、恐れることはなく、伏すとき、あなたの眠りはここちよい。 箴3 25 あなたはにわかに起る恐慌を恐れることなく、悪しき物の滅びが来ても、それを恐れることはない。 箴3 26 これは、主があなたの信頼する物であり、あなたの足を守って、わなに捕われさせられないからである。 箴3 27 あなたの手に善をなす力があるならば、これをなすべき人になすことをさし控えてはならない。 箴3 28 あなたが物を持っている時、その隣り人に向かい、”去って、また来なさい。あす、それをあげよう”と言って はならない。 箴3 29 あなたの隣り人がかたわらに安らかに住んでいる時、これに向かって、悪を計ってはならない。 箴3 30 もし人があなたに悪を行ったのでなければ、ゆえなく、これと争ってはならない。 箴3 31 暴虐な人を、うらやんではならない、そのすべての道を選んではならない。 箴3 32 よこしまな者は主に憎まれるからである、しかし、正しい者は主に信任される。 箴3 33 主の、のろいは悪しき者の家にある、しかし、正しい人のすまいは主に恵まれる。 箴3 34 彼はあざける者をあざけり、へりくだる者に恵みを与えられる。 箴3 35 知恵ある者は、誉を得る、しかし、愚かな者ははずかしめるを得る。
https://w.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/52.html
陽炎に座す。 射す、光の熱量が肌を押し、敷き詰められた熱砂は満遍なく熱を体に押し上げて際限なく篭もらせる。吹けば熱風、吸えば熱気、目を見開けばそこは空気にすら熱色が染めこまれていそうな真っ青な空間で、彼のまとう衣の色にも熱焼けた白い照り返しの艶が塗りこめられ、また浅黒く焼けた素肌では、開いた腹の腹筋からもふつぷつと汗の珠が、呼吸ごとに上下する動きにあわせ、浮いては流れ、また、にじみ、衣に重たく皺を寄せていく。それをまた、砂避けの衣が上から薄くだが覆っているのだ。 たまらぬ暑さであった。 砂漠。 海風も、届かぬ場所のことである。 灰色の長い髪をその熱にさらした男の目元は深く傾けられた帽子の広いつばにさえぎられて見えない。口元も、笑ってはおらぬ。結跏趺坐、緩く組み合わさった手が、組んで座した足の上。 男は無為にその身を熱の情報の熱で焼いていた。 情報は、フィクショノートの身を焼かぬ。だが、心は焼く。なればそれは身を焼いたも同じことである。 男の属する領域は文族だったが、男の想じたI_Dressは猫士でありまた吏族であった。人を助け、支えることのできる、護国の盾のひとつの立派な形である。出来うるなら、つい先日正式に認可が下りたばかりの護民官のI_Dressも、想じてみたいと願っている。 壊すのには、飽いた。 ささやかなものの幾多をも気付かず踏み壊してきた。これからも壊し続けるだろう。 またささやかなものの幾多を見ぬ振りで捨て壊してきた。これからも壊し続けるだろう。 ならばせめて仮と想じるこの世界では、壊してきたものを守りたい。見なかったものを見ていきたい。 欺瞞であると知っている。欺くものは何か。自分と他者である。 逃避であると知っている。逃げた場所はどこからか。現実である。 それゆえ男の唇には、常に皮肉と怠惰の狭間にあるような、笑顔と上辺の狭間にあるような、そんな表情が浮かび続け、止まらない。 それが今、止まっている。 情報の輪環が青く青く青く青すぎるほどに青く、千夜の黒となってその身を幾重にもゆっくりと廻る。感情は、情報ならざるか。否。情報である。なればそれがその身より溢れかえればそれは自然と世界を満たす。世界を変える。その現象が、今、男の周りに起きていた。 何を変えることもない。何をつくることもない。ゆっくりとただ、その身の周りを廻りめぐっていずこともなくその身の中へと還り来る情報である。それは道化の身に起こるのに相応しいものであった。 誰にも見られぬ道化は誰をも笑わせることがない。 誰にも見られぬ道化は誰にも笑うことがない。 ただ砂漠の黄に染みた、一粒の黒い滴。 ふつふつと、止まぬ熱が砂漠に降り注いでいる。 利己的に煮える白い感情が色に混じる。次なる大動員の噂が彼の元に昨日から流れてきていた。冷酷な打算が金属的に思考を動かす。迷いがその思考の歯車を鈍らせずらす。 男は立ち上がり、市街を目指して飛んだ。 * * * ……街には賑わいが満ちていた。変わることのない、笑顔と活気と笑い声に満ちた国。ここはいい国だ。貧しさを苦にせず戦う、背負った重みを力に変えるやり方を知っている。つまり、愛することを。 この国が内乱に巻き込まれたら自分はどうするだろうか。 殺意の、羨望の矛先に充てられたら、どうするだろうか。 この国のかつての歴史は伝えている。何の理由でかはわからぬ。だが一つ、確かに憎悪がそこには存在し、そしてそれを吹き飛ばした、一つの悲恋のあったことを。 この国は心を重んじている。芸術の盛んであるのはその何よりの証だ。連邦制の、今に至るまで絶えず、支えられているのが、それに対する何より雄弁な答えだ。学問の盛んであるのは、無力に対する何より雄弁な意志だ。かつて何も出来なかった心の無力を嘆いた一人一人が今に至るまで積み上げ積み重ね続けてきた結果が、ここにはある。 一つ一つの都の、一つ一つの大学、工房、また、それらと関係した商店や事務所を見上げ、見て通り、心に留める。 その店の中の一つに果樹園から運ばれてきたらしいヤシの実を眺めながら、思う。 今、帝國では内乱の危機が訪れているという。亡命者の受け入れについてを最初の議題として、新築されたばかりの議事堂で話し合いが持たれるのも遠くない話だろう。 なぜか。 故意か、過失か、いずれにせよ、正しく生きたものがそこに生まれた不正を許せぬがゆえのことであろう。あるいはまた、正しく生きんと努めたがゆえの結果なのかもしれない。 この共和国にもその余波は確実に及ぶ。なぜなら二国は互いに古くからにらみあい戦い続けている、切っても切れない関係だからだ。 戦いが始まればまた食糧不足が始まる。未開の地が多いとはいえ、いずれどこかの開拓に手をつけねばなるまい。そしてその戦いの結果がまた不和を生み、戦いがどんどん降り積もり続けるなら…… かぶりを振る。 戦いの元凶を終わらせなくては。 守るだけでは駄目だから、困難に挑むための力として新たに舞踏子たちのI_Dressが設計されたのだ。それはドランジ招聘も同じことである。 歩く、黒衣が揺れる。いつの間にか額に輝く、黒い宝玉。砂避けの形が変わっていた。(※註1)その足はまっすぐに勤務地へ。口元には、しまりの足りない笑い。 今はまだ何をすればいいかわからない。だがそれを探るために知恵を集めることなら出来るのだ。ならば、それをやろう。 無力が罪であるかと言われたらそれはYESだ。だがその罪を許さぬことがそれより軽い罪かと問われたら、断じてのNOを持って答えたい。恥を知るものを許さぬことをどれほどの恥かと言うならば、それは最初に恥を感じたもの以上に恥ずべきことであると、そう思う。 人を許すためには力が必要だ。自分にはそれがない。文族である自分にとって力がないということは、それについての文字を織れぬということだ。情報に、触れども手繰れぬ、触れれば手折りぬ、そういう危うい程度の加減を持ってしか接することが出来ないということだ。 文族は文字で世界を編むのが仕事だろう。それが出来ぬというのなら、それを出来るようになるまで文字で世界を編み続けるだけが、今のやるべきことだろう。 そしてなによりも、文族が操る言葉とは、それを持ってして人を動かすものではない。それを持ってして人を共感せしめるものでなければならない。 だから。 新たな物語の題材を探し、黒衣の男はどこかに消える。何かをするために、どんなことを感じてもらえばいいだろう。それを感じてもらうためにはどんな物語がいいだろう。その物語をつくりあげるためには、どんな世界を、人を、運命を、見たり、呼んだり、編むのがいいんだろう。 迂遠な迂遠な自身の軌跡の物語、編んで己と世界を変えるため、1人の文族は物語を探す。 そのペンは、いまだ運命の大河に突き立てられることはない。 * * * -The undersigned:Joker as a Liar:城 華一郎 ※註1:レンジャー連邦の猫士+吏族には、その額につけた宝石で階級や役職を区別し、砂避けも特別製のものが採用されている。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/46523.html
えーる【登録タグ VOCALOID thus え 初音ミク 曲 殿堂入り】 作詞:thus 作曲:thus 編曲:thus 唄:初音ミク 曲紹介 どうも、迷子を導くthusです。 この度は…って書き始めると、何か悪い事でもしたの哉って誤解されて了うかもしれないので、止めておきます…という文章は自己矛盾しています。…そんなことは扨知らず。 この曲はピアプロさんのパズルゲーム公募その2に応募した曲ですが、落選した今となっては余り関連はありませんね。結構好きな曲なので、寧ろ「落選しろ」とか思っていたという、何とも本末転倒な構え。 丸4箇月続いた無休の曲作りも病院送りにならず無事済みました(轢き逃げに遭いかけるというXレアイベントに遭遇しましたが)。今日はのらりと爽健美茶を飲み乍ら于を書いています。然し油断をすると直ぐに締め切りが間近に迫って大変な事になるので、事は早めに済ませた方が良いなと噛み締めた次第です。 あそうだ。「投コメ怪文書P」というタグについて一寸書いておきましょう。「シグレ」で初めてタグが付いたのですが、其以後の動画には粗必ずそのタグが付き、且つ投コメに言及するコメントも明らかに増え、更に当タグが過去曲にも伝染し始めていたので、私の名前のタグと纏める事にしました。二つ名として、有難く拝受致します。 曲を投稿し始めた2013年当時の第一目標は実は「P名を貰う事」でした。「P名取得頑張って!」と同期に言われた物です。P名を貰う為、意図的に色々仕掛けたのですが、その幾どは続かず自然消滅し、数少ない残った仕掛けが「動画タイトルに『…のつもり』と付ける」ことだったので「付くとしたら『つもりP』とか付くのだろうか」とか薄っすら思っていました。時は流れ、P名取得何てすっかり考えもしなくなって数年、別に仕掛け狙った訳でもない投コメを元に「投コメ怪文書P」という名を頂いたのでした。本当に仕掛けた訳ではなく、私の自然な表現であり、会話もまあ大体こんな感じです。二つ名いうのは、自分の意図しない自分の自然な所からぽっと出て来るんだなと思いました(実際、似た話を幾つか聞いた事があったので…)。「P名取得頑張って!」と嘗て言ってくれた同期とはもう音信不通でお互い何処にいるやら分かりません。私が知る最後の情報では、くも膜下出血になったと聞きました。…あ、同期は無事生きてます。くも膜下エピソードはその本人から直接聞いたので。「搬送中、頭から血を流し乍ら、何度も同じ質問を数時間繰り返していたらしい。覚えてないけど」って言ってました。ご心配なく。 (若しか、此を読んでくれてるでしょうか) いつも通り、投コメが長すぎる。「轢き逃げに遭いかけるというXレアイベント」については「『±0』」の投コメを参照。また、「投コメ怪文書P」というP名を投コメでついに認めている。 いつも通り、難解な歌詞で構成された爽快なポップソング。 イラスト・動画もthus氏が手掛ける。 わずか2週間足らずで自身初の殿堂入りを達成。 歌詞 (動画概要欄より転載、ルビ追加) 横たわり既に 目覚めは朧(ろう)して 朽ち果てた家屋 壊れた肖像 影形すらも見慣れぬ身辺 見知らぬ誰かが 只(ただ)に棲む そっと 変わり映えしないお化けのようにか 貴方は容姿を稽(とど)めてました 睡眠麻痺から 狼狽(うろた)う僕を 迷子と手に取り 共に行く 見えない 消えない 弋(いぐるみ) 絡まった 茨の針と刺す苦み 立てない 芽が無い この程度が重なって 僕はこんなに脆いかなって 只(ただ) 生まれ居ることを 潸(さん)と寿(ことほ)ぐ 間に抱き上ぐ 三日月のよう 「私はいつでも見守るよ」 「そう、戻れぬ君を相(たす)けれるように」 ほら 言葉を通した 温もりが 只(ただ) 楔(くさび)を融かせば 軋(きし)りを落として 「非力をどうか厭わないでいて」 「君は私より凄くなるから」 狭間を発ったは いつからだったか 夢で旅続け 隣 保って 手を引き続けた目先の線から 案内されずと前を見ていた 千里の道 見て 彼方(かなた)を次第にか 透明と感じ 傍(はた)見守って 向こう見ず越して 路 外されば 身動きも取れぬ悪場に遭う しがない 性ない 柵(しがらみ)に心が 嘉(よみ)を読みして壊れそう 尊い 稚(いとけな)い 役 演じ切る末に 皸(ひび)果つ前に奈落で逢った 今 生き延びたことを 潸(さん)と寿(ことほ)ぐ やおらに包んで 痍(きず)を嘆いた 「君が生きていて 良かったよ」 「さあ 憊(つか)れたろうから 添い寝ましょうか」 心に入れ墨(ず)む 子守唄 いつか眠れぬ夜中が泣き止むように 「変われぬことを 厭わないでいて」 「君はそのままで凄くなれるから」 単(ひとえ)の道 万里で狭まっていて 近づく幅は一人だけ 離せない手が 躊躇(ためら)いに指繋いで 髪引く僕を 見透かし擁(だ)いた 「ほら」 「私の鼓動を鑑みて」 「そして君の祝福で数え満たした」 「途切れる痛みを忘れぬようにさ」 「今だけできる サヨナラをしよう、」 復(また) 生き続くことを 潸(さん)と言祝(ことほ)ぐ 逞(たくま)し 初目(ういめ)の面影 残して 「私はここから見送るよ」 「もう、君は私より凄いから」 その言葉で沁み入る 愛情が今 指の一先 震え伝わった 「最後に言うよ 忘れないでいて」 『君は私より凄いから』 「さあ この手を離して お行きなさい、」 「私はここから見守ってるから」 『君は私より凄いから』 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/suproy/pages/299.html
草は枯れ、花は散る(1) 朝の光が、血と憎悪に濡れた大地を照らす。 それはどこか神秘的であり、血生臭い殺し合いが行われているとは思えない光景だった。 憎たらしくなるほど美しいその朝焼けの中を、二体の巨人が並んで飛んでいく。 ディス・アストラナガンと、マジンカイザー。 今や、殺し合いを止めるための鍵とも言える二機の姿は、禍々しさを感じさせる。 満身創痍の悪魔と魔神、それらと朝の光とのコラボレーションは、 絶望に抗う彼らへの嫌味か当てつけかのように、ミスマッチ極まりなかった。 四度目の放送が流れてから、ミオとヴィンデルは一言も口を開いていない。 もっともミオのほうは、盗聴の可能性を考えて、会話は控えているのだが。 しかし、彼女の表情には普段の明るさはなかった。 突きつけられた現実から考えれば、それも当然である。 22人――放送で読み上げられた死者の数は、これまでとは比較にならないものだった。 三度目の放送の段階で、生存者は31人。この12時間で、そこから実に3分の2の命が失われたこととなる。 異常な進行速度だ。デビルガンダムの暴走を考慮に入れたとしても、である。 いくら彼女と言えど、この非情な現実を前に、冗談を言う気分になどとてもなれなかった。 二人がしばらく進んでいると、眼下に大破した機動兵器を発見した。 白いMSらしき機体だった。それを見て、ミオは機体を止める。 (殺し合いは……続いてるんだ) わかっていたことだった。 デビルガンダムのコアとなっていた間、ミオは数多くの断末魔の思念をその身に受けていた。 どれだけの殺し合いがこの世界の中で行われていたか、わかっていたはずだった。 それを証明するものが、今しがた流れた放送だ。 だが、全てをクールに受け入れられるほど、彼女は老成しているわけでもない。 いっそ思い切り叫び出したくなる衝動を、ぐっと堪える。操縦桿を握る手に、自然と力が込められた。 「……行くぞ。ここで、足を止めている時間はない」 ヴィンデルがミオに声をかける。 「マシュマー達から託された遺志を継ぐためにも…… 我々は、ここで立ち止まっている暇はない。……わかるな」 昇進の少女に対して多少厳しいことを言っているのは、ヴィンデルも承知の上だった。 (……ヴィンデルさん) だがミオはヴィンデルの意図を察し、無言でアストラナガンを頷かせた。 彼女は比較的精神年齢は高かった。何より、彼女自身もわかっていた。 ゲッターの世界で出会った、死んでいった人達の遺志を無駄にしないためにも、 そして自分を救ってくれたマシュマー達のためにも、決して絶望に屈するわけにはいかないのだ。 だから、ミオは再び進みだす。 (……強い子だ) 再び進み始めたアストラナガンを見ながら、ヴィンデルは素直にそう思った。 (あの年代の子には不釣合いなほどに、な) この絶望的状況においてなお折れない心。 デビルガンダムやゲッター線との接触が、彼女をそうさせるのか。 あるいは、この世界に召還される前からか―― ヴィンデルの彼女に対する感想は、奇しくもアクセルが彼女に抱いたものと同じだった。 (だが、今となっては……彼女の強い心こそが、ユーゼスに立ち向かうための希望になる) 希望――かつてチーフがリュウセイに対し、それを見出したように。 ヴィンデルもまた同じものを、ミオに見出していた。 (ならば……私は、あの子を守り抜いて見せよう。 アクセル、マシュマー……お前達が命を賭けて守った、この少女を) そう決意して、ヴィンデルは微笑する。そして、気付いた。 普段の自分からは考えられないほど、穏やかな表情を浮かべていることに。 (……まだ、こんな風に笑えたのか。私は) ヴィンデルはもう一度、眼下の破壊されたMSを一瞥する。 (……今なら、お前達のような者の気持ちが、わかるような気がする) ヴィンデルは以前にもこのMS、そしてそのパイロットと遭遇したことがある。 彼らといた時間は短かった。会話もほとんどなかったし、顔合わせもモニター越しでしか行っていない。 だがそれでも、彼――いや、彼らがどんな人間だったか、その短時間である程度想像はついた。 このMSに乗っていた頼りなさそうな青年と、彼に付き従っていた銀髪のツインテールの少女。 (ホシノ・ルリを見殺しにしたこと……この場で、詫びておく。テンカワ・アキト……) マジンカイザーはその惨状を暫し見届けて、アストラナガンを追いかけた。 * * * * * * * * * * * クォヴレー・ゴードン。 彼には、このバトル・ロワイアルに参加する以前の記憶がない。 だから、彼にとってはこの二日間の出来事が全てだった。 その中で生まれた仲間との絆は、彼という人格を構成する要素の大部分を占めていた。 クォヴレーの人格は、いつしか仲間に依存するという形で初めて、成立するようになっていた。 そんな彼に突きつけられた、トウマ・カノウの死。 相棒的な存在にもなっていた身近な人物の死は、それまでどこか漠然としていた 殺し合いの恐ろしさを、リアルな認識へと昇華させた。 トウマの死により、彼はバトル・ロワイアルという殺し合いの現実を改めて痛感することとなる。 彼はやがて仲間を失うということに対し過剰なまでの恐れを抱くようになった。 過去を失った彼にとって、この世界で出会った仲間の死は、自らの半身を失うことと同じ意味を持つのだから。 それを嘲笑うかのように、四度目の放送はクォヴレーの心に容赦なくナイフを突き立ててきた。 リュウセイが死んだ。ジョシュアが死んだ。 セレーナも、リョウトも。おそらく、セレーナと共にいたエルマもそうだろう。 E-1の島で別れた仲間達は、いなくなっていた。クォヴレーの与り知らぬ所で。 悪夢にはそれだけに留まらなかった。 今、クォヴレーはシロッコと共に、レイズナーのコックピットの中にいる。 きな臭さと血の匂い漂うそこで二人が目にしたのは、散らばった首輪の破片と、 シートに紅い色を撒き散らして倒れている、巨漢の男。 それは紛れもなく、今しがた放送で呼ばれたガルド・ゴア・ボーマンの成れの果てだった。 だが、クォヴレーはそれを見てから『ガルドの死』という現実を受け入れるまで、数秒を要した。 死体の首から上は、ガルドの、いや人としての形を完全に失っていた。 彼がありのままの現実を受け入れるには、その死に様はあまりにも悲惨すぎたのだ。 「木原マサキ、か……こちらの想像以上に危険な人間のようだな」 「そんなことは……わかっている」 すぐ隣で呟いたシロッコに、クォヴレーは苛立たしげに吐き捨てた。 その苛立ちを向ける対象は、ガルドを殺したマサキでも、不愉快なほど冷静さを保つシロッコでもない。 (わかりきっていた……こんな事態が起きる可能性は、十分に考えられたはずなのに) 彼は自分の迂闊さを呪った。木原マサキに付け入る隙を与えた、自分自身を憤った。 (あの男を放置しなければ、目を離したりなどしなければ……! あいつが、トウマが死んだ時誓ったはずなのに……なんてザマだ……!) 次第に彼は、ガルドの死を背負い込んでいく。 無意識のうちに、何もかもを自分ひとりで背負い込んでしまうのは、悪い癖だった。 (俺が、もっとしっかりしていれば……死なずにすんだかもしれない。 ガルドも、トウマも。いや、リュウセイやジョシュア達だって……!) ガルドだけではない。他の仲間の死までも取り込んでゆく。 しかし、ただでさえトウマの死、さらに記憶喪失による不安やストレスが蓄積し、 精神的に疲弊していた彼が、この上、仲間の死の全てを背負い込むには、それはあまりにも重過ぎた。 その重みで、糸が切れ始めた。 『彼』と『クォヴレー・ゴードン』を繋ぐ糸が、一本、また一本と……。 そして――彼の中で、何かが狂い始めた。 (人間の所業じゃない……) ガルドの亡骸を見て、クォヴレーは握った拳を震わせた。 惨たらしい。あまりにも惨すぎる。 どれほどの猟奇的趣味の持ち主でも、ここまで酷い殺し方などできないと思えるほどに。 (こんな真似を平然と行える奴が、人間であってたまるものか……!) 心の奥底から、怒りと憎しみが湧き上がる。それを止められる者は、この場には存在しなかった。 (こんなことが、許されるはずがない……こんなことをできる悪魔が、許されていいはずがない!!) 「クォヴレー!?どこへ行く!?」 シロッコが叫んだ時には、クォヴレーは既にレイズナーのコックピットを飛び出していた。 地面に降り立つと、そのまま駆け出す。向かう先はもちろん、ブライガーのコックピット。 それに乗ってどうするかは、決まっている。 (イキマを追わなければ……でなければ、あの悪魔にイキマが殺される――!!) ブライガーの操縦席へと戻ったクォヴレーは、すぐさま機体の起動作業に取り掛かった。 黙々と、しかし焦りを顕にしながら、システムを立ち上げる。 (あいつは……イキマは、こんな所で死んでいい奴じゃない。 過去を乗り越え、新たな道を見出しつつある、あの男は……!!) イキマがグルンガストに乗り込む前に見せた、確かな覚悟を秘めた表情が脳裏に蘇った。 (絶対に、イキマを死なせるわけにはいかない……ましてや、あんな悪魔に……!! 木原マサキ……ガルドを殺したあの男は、何としても止める。 奴がイキマを殺そうとする前に、何としても……殺す!) 仲間を守りたいという想い、そして仲間の仇を討つという復讐心が、憎悪を加速させる。 やがて彼の中に殺意という名の刃が生まれ、その刃先は明確に、倒すべき敵へと向けられた。 だが憎悪から生み出されたその刃には、憎悪に囚われた彼には制御する術がなかった。 (いや、マサキだけじゃない。あのラミア・ラヴレスも信用が置けるものか。 あのユーゼスの犬が、素直にイキマと共闘などするはずがない) 刃を向ける対象が、暴走とも取れる勢いで、次第に広がっていく。 (そして、トウマやリュウセイ達を殺した奴らも……! 敵は倒す……全て、一人残らず倒す……!もう二度と、躊躇わない……!) その決意は、彼がバトル・ロワイアルの理に取り込まれつつあることを意味していた。 そうなったきっかけが仲間との絆だというならば、皮肉な話ではある。 (マサキを、ラミアを……そして皆を殺した奴らを……! 何よりも、ユーゼス・ゴッツォ……この殺し合いを仕組んだあの男だけは……! 俺の大切なものを奪い尽くした、あの男だけは!) 修羅でも乗り移ったかのような形相で、彼はユーゼスと殺人者達を、心の底から憎悪した。 その表情には、もはや記憶を失う前のクォヴレー・ゴードンの面影など見当たらなかった。 彼の憎悪に呼応するかのように、ブライガーの瞳に光が灯る。 同時に、コックピット内のモニターにも、外の光景が映し出された―― 「な――!?」 モニターに映し出された光景を見て、クォヴレーは自分の目を疑った。 ちょうど、ブライガーの真正面。 先程までグランゾンが停められていた所に、それは転がっていた。 (あれ……は……!?) 何故、今の今まで気付かなかったのか。 いや、それ以前に、何故あれがここにあるのか。 だって、あれを持っていたのは―― 視線を移す。レイズナーに……いや、その中に残ったままの、パプテマス・シロッコに。 (シロッコ……まさか、お前は……!?) クォヴレーの頭に、一つの疑惑が生まれた。 その瞬間、まだ心の一部で収まっていたはずの復讐心が、急激に肥大化した。 それは憎悪と共に、彼の心の全てを黒く染め上げる。 同時に彼は、今本当に為すべきことを見失い、目の前の疑惑の元凶に思考の全てを注ぐようになった。 狂った歯車が、動き始めた―― * * * * * * * * * * * (依存の対象を失って、精神の均衡が崩れたか。 今は矛先を向ける明確な存在がいる分、崩壊までには至っていないが……) レイズナーのコックピットに一人取り残されたシロッコは、飛び出していったクォヴレーの姿を 見ながら、その精神状態に危険を抱き始めていた。 コックピットを飛び出す直前に一瞬見えたクォヴレーの目には、以前にも見覚えがあった。 つがいを失い精神を崩壊させた少女――ゼオラ・シュバイツァーの目とよく似ているのだ。 (これであのイキマとやらが死ねば、決定打となるな。ゼオラと同じ道を進み始めるのも時間の問題かもしれん。 暴走して、見境がつかなくなれば面倒なことになるが……) 目の前の死体を一瞥する。表面上平静を保っているシロッコでも、その惨い死に様には吐き気を催していた。 (……こんなものを見せられれば、錯乱も致し方なし、か) 思えばキラ・ヤマトの崩壊も、きっかけはこれと似たものだった気がする。 他人の精神崩壊にやけに縁がある。あまり歓迎したくない縁に、シロッコは溜息を一つついた。 (それにしても、何たる失態だ……ここに来てグランゾンを奪われるとはな。 それも、これだけの残虐性を持つ男の手に渡ったとなると…… ……ん?) 何気なくシートに目が行く。そこには、見たことのない丸い物体が置かれていた。 手にとって見定めてみる。何かの機械のようだ。 「これは……もしや」 マサキが去り際に言い残していった言葉が思い出される―― そこまで来て、シロッコの思考は中断された。 (!! 敵意……いや、この鋭さ……殺意か!) 自分に向けられたプレッシャーに、シロッコは振り返る。 こちらを向いて立つブライガーが、目に飛び込んできた。プレッシャーの出所は、彼だ。 前に突き出された右手には銃が握られている。 その銃口は、レイズナーに――今シロッコがいる、コックピットに向けられていた。 事態の急変を悟ったシロッコはすぐさまシートに座り、ブライガーとの通信回線を開いた。 レイズナーの元の操縦者であるマサキはグランゾンに乗り換えたのだから、躊躇う必要はない。 マサキが機体を起動させたままにしていたのは幸いだった。行動は迅速に進められた。 「クォヴレー……一体どういうつもりだ」 通信機越しに、シロッコはブライガーの中のクォヴレーへと問いかける。 「お前が、殺したのか」 返ってきた声は、先程の姿からは考えられないほど、冷たかった。 「お前が、リュウセイやジョシュア達を殺したのか」 それも爆発寸前の怒りを無理矢理抑え込むかのような、どこか危うさを感じさせる冷たさだ。 「……何を言っている。いや、何故そういう結論に辿り着いたか、説明してもらいたい所だが」 余計な刺激を与えないように言葉を選びつつ、シロッコは再度問い返した。 それと同時進行で、機体のサポートAIに指示を与える。 (AIは生きているか。よし……機体のマニュアル、及び現在の機体状況をモニターに映し出せ) 「READY」 そんなシロッコの行動など気付くことなく、クォヴレーは返答する。 「お前は嘘をついている。お前は、俺の仲間達と出会っているはずだ」 「……どういう意味か、わからんが」 さらに出方を伺うべく、シロッコは肯定でも否定でもない返事を返す。 「白を切るな。根拠は……あれだ」 ブライガーの左手が指し示した先。 そこには、人型機動兵器の動力部が放置されていた。 シロッコがE-1で拾い、グランゾンに隠し持たせていた高エネルギー体。 ――トロニウムエンジン。 「何故セレーナが……俺の仲間が持っていたあのエンジンを、お前が持っていた?」 (抜かった――) なんと迂闊な!シロッコは内心で舌を打った。 別にエンジンのことを忘れていたわけではない。クォヴレー達にも、追々経緯は説明するつもりだった。 だが、そこに至る前に、マサキの手でグランゾンを強奪され、段取りは有耶無耶となった。 しかも、マサキは逃亡の際、トロニウムエンジンを回収し忘れていってしまったらしい。 エンジンの存在は、クォヴレーのシロッコに対する疑念を一気に膨らませることになる。 グランゾン強奪に、放送のタイミング――あらゆる偶然が重なり合った結果、 シロッコにとって最悪のシナリオが作り出された。 (フン……どうやらティータイムで緊張を解しすぎたらしいな) 追い詰められたこの状況に自らを皮肉りつつも、シロッコはこの場を切り抜けるべく思考回路を稼動させる。 「どうした、答えてみろ」 そう問い詰めるクォヴレーの声色には、震えが僅かに感じられた。まさしく怒り心頭といったところか。 面倒を避けるためについた嘘が、ここに来て裏目に出た形となってしまった。 (ラミア・ラヴレスはこういった展開も見越して、私に嘘をつかせたのかもしれんな) そんなことを考えながら、シロッコは口を開く。 「そのエンジンは拾い物だ。とある戦闘の跡で発見した」 「拾った……だと?そんな言い訳じみた言葉を信用できると思っているのか」 「真実だ。信じてくれ、としか言いようがないな」 無理な話だとは思うが。シロッコは内心でそう付け加えた。 この状況では何を言っても言い訳臭くなる。相手が感情を先走らせているとなれば、尚更だ。 シロッコは嘘は言っていない。リュウセイと遭遇したことを隠している以外は、確かに全て事実である。 だが潔白を証明できる決定的な証拠がない以上、クォヴレーを納得させることは極めて困難だった。 「君の仲間のことはわからんが、その場には生存者はいなかった」 「お前が殺したから、か……!」 「誤解だ。君の仲間については、先程伝えた情報以外には……」 クォヴレーの言葉、そして必要以上に向けてくる敵意に、説得は期待できそうにないとシロッコは改めて判断した。 受け答えと並行して、シロッコはモニターに映し出された機体状況を確認する。 (左腕損失に、背面部装甲に損傷……現状で使用できる武装は、脚部のカーフミサイル程度か。 だが、戦闘などできる状態ではない。逃げるにしても、背面部スラスターが完全に破損していてはな……) 想像以上の機体の損傷に、シロッコは顔を顰める。 状況は絶望的――それに追い討ちをかけるように、クォヴレーは問い詰めてくる。 「お前はこれを拾ったんじゃない……奪ったんじゃないのか。セレーナや、リュウセイ達を殺して――!」 一言一言から怒りが滲み出ている。堪忍袋を縛る緒の限界が近いらしい。 「……随分な言いがかりだな」 「あのエンジンに限ったことじゃない。ユーゼスのスパイと行動を共にしていたこともそうだ。 いや、マサキにグランゾンを奪われたことすらも……」 まさしく言いがかりも甚だしいクォヴレーの言動に、シロッコは閉口した。 疑心暗鬼に陥ったクォヴレーの思考は暴走しつつある。 シロッコの予感は、あまりにも早い段階で現実のものとなっていた。 このまま酷くなれば、彼は――いや、この調子ではその先へと至る前に、シロッコは命を落とすことになるだろう。 「お前には不審な点が多すぎる」 そう言って、ブライガーは銃を構え直す。 いつ銃声が轟いてもおかしくないほどの緊張感が、周囲に張り詰めた。 逃げ場はない。まさしく絶体絶命と言ったところか。 しかし、それでも彼は取り乱すことなく、口を開いた。 「私を撃つか。だが、それは君のためにはならんぞ。クォヴレー・ゴードン」 「何……?」 クォヴレーの返答を待たず、シロッコはコックピット内の映像をブライガーへと送信した。 「!! それは……!!」 クォヴレーの発する声が、明確に焦りを含んだものへと変わった。 彼からも見えているはずである。シロッコが、丸い機械を抱えているところが。 「私に当てれば、この機械……首輪の解析装置も、失われることになる」 首輪の解析装置。木原マサキが残していった、脱出の鍵の一つ。そして今は、シロッコの唯一の生命線でもある。 「き……貴様!!」 「破廉恥だと笑ってくれて構わんよ。とにかく、まずはその銃を下ろしてもらいたい」 これでは三流の悪党だと、シロッコは内心で苦笑した。 (こういった手段は避けたかったが……今の状況ではやむを得んか) 後々の面倒を考えると頭が痛くなる手口ではあるが、現状でこの窮地を打開するための唯一の手段だ。 だがこの手段も、絶対であるとは言い切れない。 解析装置すら無視するほど彼が感情に呑まれていれば、それで終わりだ。 (さて、どう出る……クォヴレー・ゴードン) クォヴレーの取る次の行動に対処すべく、シロッコは操縦桿に手をかける。 平静を装っているものの、彼の額には汗が滲んでいた。 * * * * * * * * * * * (あの男、よくもぬけぬけと……!) レイズナーから送られてきたシロッコの映像を見て、クォヴレーは唇を噛んだ。 シロッコが抱える機械は間違いなく、マサキが首輪を外していた時に使用していた物である。 解析装置を失えば、ようやく見つけた首輪の解除手段を失うこととなってしまう。 それは、脱出の手段、そしてユーゼスに牙をむくための一歩をふいにすることと同義。 クォヴレーに選択肢は残されていないはずだった―― しかし。 (奴の言う通りにするしかないのか。みんなを殺したかもしれない奴の……!) クォヴレーは迷った。 首輪の解除を盾に自らの延命を図る――シロッコの取ったその行動は、同じなのだ。 あの憎き悪魔のような男、木原マサキの取った行動と。 『マサキと同じ行動を取った』という事実は、クォヴレーのシロッコに向ける敵対心をさらに煽ることになった。 (マサキと同じように、みすみす殺人鬼を野放しにしろというのか。 そして……また、過ちを繰り返すのか。ガルドの時と同じように……) ガルドの死に様が、再び脳裏に浮かび上がる。『マサキを見逃したばかりに』殺された、ガルドの姿が。 ――殺せ。過ちが繰り返される前に。 心の奥底にある何かが、クォヴレーに囁きかけてきた。 ――殺せ。この男は皆の仇だ。この男はマサキと同類だ。 ――殺せ。そして仇を討て。もう二度と、悲劇を繰り返さないために。 ――たとえ、脱出の手段を失うことになっても―― (!! 俺は何を考えて……!?) おかしくなり始めている。 それを自覚し、クォヴレーは自分の思考に恐怖した。 だが、囁きは疑念に囚われた彼の心を徐々に蝕み、その感覚すら消し去っていく。 ――何を躊躇う?甘さは捨てろ。トウマが死んだ時、決意したのではないのか? ――お前の甘い考えのせいで、トウマもガルドも死んでしまったのではなかったのか? (……そうだ。もう、あの二人の過ちを繰り返すわけには……) ――殺せ。取り返しかつかなくなる前に。 ――それが、取り返しのつかない事態を引き起こすとしても―― 思考が、破綻を起こしていく。 麻痺した感覚は、明らかに狂ったその思考を、自然に受け入れていく。 クォヴレーの手が、トリガーに添えられる―― 「―――――ッ!?」 突然、頭の中に電気が――いや、稲妻でも落ちたかのような感覚が走り抜けた。 それはクォヴレーの思考を中断させ、同時に彼を我に返らせた。 (な、何だ今のは――ぐぅっ!?) 続いて、激痛がクォヴレーの頭を襲った。 今まで感じたことのない、得体の知れない痛みが脳全体に広がっていく。 (く……この感覚は何だ!?何かが……何かが近づいてくる?) 激痛の中で、クォヴレーはこの場所に接近してくる何者かの存在を感じ取った。 額に脂汗が滲む。痛みは徐々に強くなっていく。 クォヴレーの直感に呼応するかのように、コックピットに警告音が鳴り響いた。 その音と共に、レーダーに新たな機体の反応が表示される。 「……クォヴレー」 「動くな!!」 声をかけたシロッコを、クォヴレーが怒声を発し制した。 同時に、銃口から光が走り、レイズナーのすぐ横を掠めていった。 「お前は黙っていろ……!!」 苛立ちも顕にシロッコを一蹴し、クォヴレーはレーダーに注目した。 北側から反応が2つ、自分達のいる場所に近づいてきている。 「シロッコ……そこから動くな。少しでも動けば、次はコックピットを狙う……!」 半ば取り乱しつつシロッコに釘を刺すと、クォヴレーは痛む頭を抑え、反応のある方角へと目を向けた。 2つの機影が、肉眼でも見えた。 (間違いない……俺が感じたのは、あの片方……!) 2機が接近してくると共に、頭痛は激しさを増していく。 その痛みとは別に、何か言いようのないもどかしさがクォヴレーを包み込んでいく。 それは、クォヴレーにさらなる苛立ちを提供することになった。 (ぐっ……一体どうしたというんだ!?こんなことをしている場合ではないというのに……!) 2機の影はだんだん大きくなり、やがて姿がはっきりと見えてくる。 片方は赤い翼を持った、黒い魔神。 そして―― 「あれは……!?」 もう片方の黒い機体を見た時、クォヴレーの両目が大きく見開かれた。 彼にはその機体に見覚えがあった。手足を失い、ボロボロだが……間違いはなかった。 「あの……黒い奴は……!!」 草は枯れ、花は散る(2)へ
https://w.atwiki.jp/memo77/pages/38.html
PageLastUpdate 2007-07-24/today - /yesterday - DebugTimer 2007/07/23 デバッグ用のマーカーとして、メッセージボックスを利用できる静的クラスです。 インスタンスの宣言は必要ありません。 呼び出しと呼び出しの間隔を出力するのでパフォーマンスのボトルネックがすぐわかります。 既存の「MessageBox.Show」をそのまま「DebugTimer.Show」に置き換えて使えます。 既存の「Debug.WriteLine」をそのまま「DebugTimer.WriteLine」に置き換えて使えます。 どちらの方法で指定しても、各呼び出し間の所要時間を出力ウインドウに表示してくれます。 メッセージボックスを開いてから結果を返すまでの「ユーザーオペレート」の時間が別途測定されるので 操作待ちなのかそうでないのかがはっきりします。 使用例) IF DebugTimer.Show("×××します。よろしいですか?","xxxの実行",MessageBoxButtons.OKCancel) = DialogResult.OK Then 処理 DebugTimer.WriteLine("xxx処理終了") End IF 出力ウインドウへの出力) ※罫線が出るわけではなく、タブ区切りです。 動作 起動から 前回から 表示テキスト SHOW 00 00 000 00 00 000 ×××します。よろしいですか? ---- 00 01 000 00 00 968 OK MEMO 00 03 006 00 02 974 xxx処理終了 動作の種類はShowで呼び出したときは「SHOW」、メッセージボックスの結果には「----」、WriteLineで呼び出したときはデフォルトでは「MEMO」が表示されます。 特に重要なポイントではWriteLineの第二引数を指定することで、別の文字を出力できます。 使用例) DebugTimer.WriteLine("ここ大事!","ERR!") 出力ウインドウへの出力) ※罫線が出るわけではなく、タブ区切りです。 ERR! 00 01 000 00 00 000 ここ大事! コードは長そうに見えますが、MessageBoxのShowのバリエーションをひたすらラップしているだけです(^-^; Option Strict On Imports System.Windows.Forms Public Class DebugTimer Private Shared _start As Date Private Shared _before As Date Private Shared _timer As New DebugTimer Private Shared _result As DialogResult Private Sub New() _start = Now _before = _start End Sub Public ReadOnly Property StartTime() As Date Get Return _start End Get End Property Public Shared Sub WriteLine(ByVal message As String) Debug.WriteLine("MEMO" vbTab _ Format(Date.Parse("2000/1/1").Add(Now().Subtract(_start)), "mm ss fff") vbTab _ Format(Date.Parse("2000/1/1").Add(Now().Subtract(_before)), "mm ss fff") vbTab _ message) _before = Now End Sub Public Shared Sub WriteLine(ByVal message As String, ByVal messagetype As String) Debug.WriteLine(messagetype vbTab _ Format(Date.Parse("2000/1/1").Add(Now().Subtract(_start)), "mm ss fff") vbTab _ Format(Date.Parse("2000/1/1").Add(Now().Subtract(_before)), "mm ss fff") vbTab _ message) _before = Now End Sub #Region "Show-ウィンドウ指定なし" Public Shared Function Show(ByVal text As String) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(text) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal text As String, _ ByVal caption As String) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(text, caption) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(text, caption, buttons) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons, _ ByVal icon As MessageBoxIcon) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(text, caption, buttons, icon) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons, _ ByVal icon As MessageBoxIcon, _ ByVal defaultButton As MessageBoxDefaultButton) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(text, caption, buttons, icon, defaultButton) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons, _ ByVal icon As MessageBoxIcon, _ ByVal defaultButton As MessageBoxDefaultButton, _ ByVal options As MessageBoxOptions) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(text, caption, buttons, icon, defaultButton, options) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function #End Region #Region "Show-ウインドウ指定あり" ■ Public Shared Function Show(ByVal owner As IWin32Window, _ ByVal text As String) As DialogResult WriteLine(Text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(owner, Text) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal owner As IWin32Window, _ ByVal text As String, _ ByVal caption As String) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(owner, text, caption) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal owner As IWin32Window, _ ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons) As DialogResult WriteLine(text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(owner, text, caption, buttons) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal owner As IWin32Window, _ ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons, _ ByVal icon As MessageBoxIcon) As DialogResult WriteLine(Text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(owner, Text, caption, buttons, icon) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal owner As IWin32Window, _ ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons, _ ByVal icon As MessageBoxIcon, _ ByVal defaultButton As MessageBoxDefaultButton) As DialogResult WriteLine(Text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(owner, Text, caption, buttons, icon, defaultButton) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function Public Shared Function Show(ByVal owner As IWin32Window, _ ByVal text As String, _ ByVal caption As String, _ ByVal buttons As MessageBoxButtons, _ ByVal icon As MessageBoxIcon, _ ByVal defaultButton As MessageBoxDefaultButton, _ ByVal options As MessageBoxOptions) As DialogResult WriteLine(Text, "SHOW") _result = MessageBox.Show(owner, Text, caption, buttons, icon, defaultButton, options) WriteLine(_result.ToString, "----") Return _result End Function #End Region End Class comment このページの記述で聞きたいこととか間違ってることとかありましたらコメントを。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/talesrowa/pages/420.html
End of the Game -禽獣層・鏡の中の自由な真実- 雨が降っていた。 押さえきれない悲しみを表すように、苛烈に。 けれど雨は重たい水滴で身体を濡らすだけで、更に気持ちを募らせ鈍らせる。 決して、その穢れを洗い流すような真似はしてくれない。 逃げる背中に追い打ちをかけるように雨は降っていた。 惨めな自分を責める雨は、細かく細かく、目を凝らさねばよく見えないほどの量だった。 当然、洞窟に雨が降る訳が無い。白妙に目が眩むほどの、攻撃術の雨だった。 雨垂れにしては大きすぎる炎の滴、霧雨にしては白く輝きすぎている光の粒。 過剰纖滅の雨は、防がれることなく、少年と抱えられた少女の死体を掠める。 決して自然の音ではない、けたたましい半鐘<サイレン>の音。時折、無数の視覚センサーが赤い光を覗かせる。 雨は優しくなどなかった。 雨は、侵入者を排除するためのプログラム――望むならば、大量の同胞を殺された憎しみに過ぎなかった。 先程まではいくら束になって数で襲おうとも雑魚でしかなかったが、今は違う。 戦意を喪失した、逃走しか能のない奴に躊躇する理由はない。高らかにサイレンを鳴らし、天上万歳、天上王万歳と人を殺す機械は行進するのみ。 幼い怪物の泣声が雨音に混じる。雲霞む軍列の中に、不規則な重量感ある足音が響く。 それだけで、彼の剣は怯懦に震えた。その両腕は、か細い亡骸を包むことしかできなかった。 雨は外側より鳴りて、彼の身を紅く濡らす。死ねと、死ぬべきだと。 雨は内側より鳴いて、彼の心を黒く塗らす。どうして、どうして生きているのと。 強い雨足で降り注ぐ音の中で、少年の弾むような息はかき消されてしまって聞こえてこない。凍えた吐息も、白くは色つかない。 ただ重さに平伏し、ただ跪いて息絶えろと、雨は背中を追い立てる。 やがて背を押していた雨は、向かい風が吹き、身体の表側を傷付けていく。 顔を上げると、天上の機械モンスターが大群割拠として、波のように広がっていた。 ひとりに向けるには幾ら何でも多すぎる量だ。絶望以上のものを与えようとしているのか。 前から後ろから、過去から未来から耳から頭から半鐘の音が交差する。 重なり合い、追随し、ぐわんぐわんと響き渡る不協和音は、もはやどこから聞こえるのかも分からない。 ただ、あの日の憎悪と悲痛が蘇るようで。脇に抱える少女の体は、半分なのにいやに重くて。 ああ、煩い。黙れ。何も聞こえないくらいに煩すぎる。 何も聞こえない無音に終ぞ耐えかね、少年は大口を開けて向かい風に牙を剥いた。 耳の周りを飛ぶ蠅を払う様に、握った時の剣を振るう。白い雨の中に、黒に近い暗すぎる蒼が光を放つ。 彼の感情を物語るかのように、蒼い光は音速を越えて忌まわしき鐘の音を呑み込んでいった。 切り裂かれた雨を、彼――クレス=アルベインは駆け抜ける。更に彼の身体が傷付かれようとも。 ◇◆◇ あの鏡は何だ。 いきなりどこからか声が聞こえたかと思えば、作り物の短い足が生えた鏡が遠くから迂回しながら走ってきた。 盤のそばまで来たかと思えばピョンと跳ねて立ち止まる。登場にしてもダイナミック過ぎないだろうか? 対岸の椅子に腰掛ける女神が唖然とする。 それを差し置き、鏡はまるで胸を張っているかのように身体を仰け反らせて女神の方を見る。 一体なにをそんなに誇らしげにする必要があるのか。だが、誇らしげになる理由も分かる。 鏡には女神の表情が映っていた。状況に追いつけてないのがありありと分かる、何とも間抜け面だった。 対面する道化師サイグローグはこれは愉快と、ほの暗い笑い声を上げ、目を細めて微笑を被る。 『どったの? お腹冷えたとか~?』 いきなり現れたかと思えば、いきなり言葉で責めてきた。 なんと無礼にも程がある鏡だろうか。結果として反発心が表に出る。 女神が握り拳を作り上げ、卓上へ向かってどしんと拳を叩きつける。柔和な顔つきに似つかわしくないほど、表面を歪めさせていた。 そんな怒気など通じない、いや、そもそも怒りを向けられていることさえ理解せず、鏡は人懐こそうにグリューネをマジマジと見つめる。 その瞳に、一瞬でも醜く浮かび上がった感情を見逃すことはしない。また愚かしい表情が銀盤の上に映る。 「何の趣向ですか」 「さあ……私は何も……聞くのであれば、あちらの精霊にお聞き下さいませ……ほう、次は綺羅星ですか……私も勉強しなければ……」 眼を鏡から背けるように道化に問うが、サイグローグは女神の詰問もするりと抜けてわざとらしく書物を読んでいた。 ひょいと手を捻らした途端、手の中には虫眼鏡が現れる。 仮面越しに虫眼鏡を使って、老人のように書物の文字を見ている。読んではいない。あくまで、見ているだけだ。 何も言わない女神に、サイグローグは手の虫眼鏡をぐうっと相手の方へと伸ばす。届いてさえいれば押しつけてしまうほどに。 「グリューネ様……まぁた顔が歪んでおりますよ……」 にたにたと笑うサイグローグに、女神グリューネは苦虫を噛み潰したような顔をした。 当然だろう。虫眼鏡越しに見れば顔が歪んで見えて当たり前だ。 しかし、グリューネの方から虫眼鏡を覗いてもサイグローグの瞳は見通せない。 仮面の奥に隠れた目はどこを見ているのか、見当すらつかない。見当も付けたくなかった。 これ以上、いたちごっこをしていても仕方がない。グリューネは顎を持ち上げ、道化師の後方で空に漂う精霊を見つめた。 鷲のように大きな翼と、翡翠を思わせる緑色の長髪。 髪を留める、花のつぼみと枝葉を模した簪の飾りが女性らしさを更に引き立てていた。何よりも、彼女が大樹に纏わる者であることの証左になる。 本来ならば、敵対すべき存在ではない筈なのだが――目尻を引き絞り、大樹の守護者を見据えた。 「ノルン、この鏡は一体?」 『先ほど述べた通りですよ……あの時の紡ぎ手ともあろう者が、とても酷い顔をしていたものですから。 一度ご覧になった方が良いのではないかと思い、こうして呼んだのです。日曜大工程度の拵えとはいえ、使う分には役に立ちますから』 ノルンの答えに、随分と楽しそうな家具がいたものですね、とグリューネは呆れがちに息をついた。 当の鏡はというと皮肉が通じないのか、頭(と思しき鏡の上部)に手を当てながら盤面の裏側をマジマジと見つめている。 『ふんふん、凄っご。こーなってるのか~~……ってあれれ? いつのまにか置いてけぼりでお話~? こら~無視するな~!』 と思えば急に諸手を上げ、地団太を踏んでぷんすかと怒り出すものだから、こっちの方が愉快なのではないかと思ってしまう。 「顔なら見ました。私としたことが、随分と取り乱してしまったようですね。少しはポーカーフェイスというものも学ばないといけませんね」 目を閉じ、テーブルの上で手を重ねるグリューネ。鏡の方へは、もう見向きもしなかった。 もう用済みだから引っ込みなさいと言わんばかりの態度に、鏡は怒ったままだ。 そうだ、そのまま無視してしまえばいい。このようなもの、道化師と審判者の単なる幻惑、戯れだ。 『――――1つだけ、忠告をしましょう』 耳の鼓膜が、後ろ側から撫でられた。もちろん直接ではない。静かな女性の声音が冷水のように浴びせられる。 良く言えば冷静で客観的な、悪く言えば冷徹で感情の乏しい声に、ぶるりと身体が震えた。 『ポーカーフェイスは“表面だけを隠すもの”です。確かに心の内を悟られぬようにするのは、有効かもしれません……ですが』 いつの間にか、前方にいた筈のノルンがグリューネの後ろへと立っていた。 振り返って確かめるまでもない。否、振り返ることができないのだ。 いつの間にか目前のテーブルと盤は消え、代わりに先程の鏡が立っていたのである。 そして、鏡に映る自分の顔が、 『それは、悟られるだけの心の内を自分が知る時のみ。真実を知らなければ、嘘はつけません。 真実のみを純粋に求めるこの鏡の前には、真の無い偽りなど無意味―――――さあ、見えるでしょう? 貴方の心がざわつき、荒れているのが。そう、嵐の日の時化のように』 平静をまるで隠さず、ひどく怒り狂ったものだった。 あまりに自分とは似ても似つかぬ姿に、とても目を逸らすことなどできなかったのだ。 「一体、何を。こんなもの、ただの“まやかし”でしょう」 『まやかしかどうかは、鏡に問えば分かること……鏡よ、この場で一番醜いのは誰ですか?』 『えっとねー、グリューネって人が現在世界ナンバーワンだってさ』 痛烈な皮肉に、ぎこちない笑みを浮かべるグリューネとは反対に、魔法の鏡は楽しげにくるりと一回転してみせた。 回転したところで鏡の向こうにいる自分の表情は変わらない。 「サイグローグを差し置いて私が? 冗談も大概に……」 『まちがーいごーざいませ~ん。嘘だと思うなら何か聞いてみてよ、質問してくれれば何でも答えてあげるよ~!』 「~~~ッ! 何も問うことなどありません。すぐに去りなさい!」 勢いよく手を払うも、魔法の鏡は天を仰いで考え込むような素振りを見せる。 何て空気が読めない鏡だ。ここは場の空気を汲むところだろう。 空気を読まなければ、まるで、見てはいけないものを。 『あり、つまんないな~。じゃ、ちょ~っと意向を変えて、あたしが質問しちゃおーかな!』 ――敢えて。 この鏡は、敢えて空気を読んでいない。珍妙な行動に出るかと思えば、裏側ではかなりの頭脳を働かせている。それすらも自然体というのか。 先程の白銀の騎士のように、サイグローグやノルンの仲間なのか、それとも操られているのかも分からない。 だが、どちらにせよ。この鏡は、確かに女神を追い込むべく動いていた。女神がそれに気付いたときには手遅れだった。 『さっきから酷い酷いってむくれてるけどさ、何がどう酷いのさ?』 先ほどまでと変わらない音調、しかし確かに真剣な声色で鏡は眼前の女神に問う。 『死んじゃった人がいきなり生き返ったこと? 確かに普通は生き返らないよねー。 けど、バトルロワイアルが始まった時だって、死んじゃった人は生き返ってたんだしさ~。 別におかしくないんじゃないかな? 悲しいことだけど、あの子だって死んでた筈だよね』 グリューネは下唇を噛んで溢れ出しそうな言葉を堪えた。 確かに、この遊戯の駒は、元いた世界では既に死んでいる筈の者が大量にいる。 かつて時空剣士と刃を交えた魔王も、人を唆して愉しむ蛇も、実験の果てに壊れてしまった狂人も。 王に弄ばれていた幼き客員剣士でさえ、命は零れ落ちてしまっていた筈だ。 何より王は、勝ち抜いた者への褒美として“死者蘇生”ということも吹き込んでいた。 嘘だと考える者もいた。だが、初めから死んだ者が生き返っているのだから、王は死者蘇生が可能だという点も否定できない。 「ですが、これだけ大掛かりな現象を犯したのです! 王とて、何度も蘇生が出来る訳がありません!!」 『出来ないなんて、誰が言ったの? 【蘇生の為に用いられる術】は使えないよ? 制限されてるからねぇ。 でもさー、制限する側の王様が出来ることは、そんなに不思議? ねえ?』 「そ、それは……!」 最初の一回だけしか出来ないだろう。出来るのであればマーダーを蘇生させているだろう。何度も繰り返した考察だ。 だが出来ないとは、しないとは明示されていない。穴熊に籠った王様のことなど、誰も知らないのだ。確証のない推理など、妄想にも劣る。 正体不明のヴェールに隠れた王様を否定することはできない。それは、例え1パーセントであろうと肯定も在り得るということなのだ。 『あ~っ! それとも、さっき戦ってた剣士くんとあの子が知り合いなのに、戦い合ってたのがダメ? そうだよねー。知り合いとなんて戦いたくないもんね~。あたしもまた教官とかと戦うことになったらイヤだな~』 うんうんと頷く鏡に、グリューネの表情が一瞬和らぐ。 たった少しの呼吸の間は、か細い希望は、後に訪れる絶望のためにのみ存在する。 『けど、それはグリューネやあたしの都合だよ。 もしかしたら、ピピピ~って操られてたのかもしれないよ。お薬とか、魔法とかね。 もしかしたら、誰かを人質に取られてたのかもしれないよ。大切な人の為なら、仕方ないよ。 もしかしたら、混乱して相手が誰かも分かってなかったのかもしれないよ。暗いしね。 もしかしたら、本当に殺そうとしていたのかもしれないよ。優勝して叶えたい願いがあったかも。 整合する可能性は幾らでもあるよ。なのにさ~“ただ知り合いをぶつけた”ってだけで酷いって言うのは、ちょ~っとイジワルじゃないかなぁ』 悪意も諧謔も無く、純粋に不思議そうに自分を見つめる魔法の鏡に、グリューネは漸くその本質を理解し始めた。 この鏡は論理に真実を求めている。感情面で同調することはあれど、理に沿っていなければ女神に味方することなどないのだ。 サイグローグよりも、ノルンよりも、むしろその在り方はベルセリオスのそれに近い。 グリューネの白磁のような顔に、さっと赤味が差す。決して照れや恥といった類の感情ではない。 膝の上で丸められた手が、僅かに震えていた。 「この状況が認められないことを、ただの意地悪だと言うのですか?」 『ほら、あたし、一応研究者だからさ。目の前の現象をただ納得できないからって否定されたら、堪ったものじゃないよ~ 100回同じ実験をして99回同じ結果が出て1回だけ違う結果が出てさ、その1回をただの偶然とか間違いだって切り捨ててたら実験にならないよ』 がたん、と椅子が倒れる。 「それとこれは話が違います! 王が蘇生できたとして、戦わせることが出来たとして、何故、あの少女である必要があったのです!」 勢いよく立ち上がったグリューネは、もはや目の前の鏡像と同じ表情をしていた。 暢気にふらふらと揺れる鏡に、できることなら椅子を投げ付け割ってしまいたい。 止めていたのは椅子を放り投げるはしたなさとまだ少し残る理性、そして白銀の騎士の末路だった。 『事実は事実。こういうことを出来るかもしれない王様のお城で、こういうことが起きた。それだけだよ』 またしても自信たっぷりに胸を張る魔法の鏡に、苛立ちしか覚えられない。 理不尽に対して湧いて出る不快感は本物だ。だが、理不尽が論理によって主張され、道理となる以上、反論することはできない。 『魔法の鏡、マフラーが曲がってますよ』 『あ、ゴメンゴメンお姉さ……よっととい。それじゃ、いきますか~~~?』 鏡がもぞもぞと動き、表面がぼこぼこと波打っている。 ……そもそも。今まで疑問にも思わなかったが、あの鏡、自分のことを研究者だと言っていなかったか? ただの鏡が手もないのに、一体どうやって何を研究するというのか。そして鏡の内側から聞こえる、不自然な衣ずれの音。 ――あの鏡、ただの着ぐるみか! ならば怒り狂った表情も、単なる作りものに過ぎないということではないか。所詮は幻だ。 『って、ほらほら! よそ見していいの? もうかなりピンチだよ?』 今気付いたと叫ぶ鏡の声につられて盤を見て、グリューネはようやく平静を取り戻した。 気付けば、目の前にいた鏡は消え去り、テーブルと盤が戻っている。 だが、事態は少しだけ動いていた。対面している道化師が、剣士の周りへと無数の駒を“詰め終えていた”。 ピンナップマグを読みながら、サイグローグは足で駒を動かしていたのだ。 「……しまった……!」 身体を前のめりにさせ、グリューネは厳しい目で詰問する。 しかし後方に大樹の精霊を侍らせる道化師は、足の指を開閉しながらいつものように卑しく嗤うだけだ。 「隙だらけでございますよ、グリュゥネさまぁ?」 ◇◆◇ 気づけば、少し広々とした空洞へと出ていたらしい。おかげで、敵の総量がおぼろげに把握できる。 「虚空蒼破斬」を放った後でも、まだ機械兵士は残っていた。 流石に、蒼破斬の衝撃波に合わせて駆け抜けても、一発だけでは完全に喰らい切れなかったらしい。 いや、喰い尽くすことができなかった。あの機械の中に埋もれた少女の残骸までも喰うことを躊躇った。 前方を蹴散らすことはできたが、生き延びた兵士たちが後続する。 片やエネルギー量はあろうとも疲れを知らない機械、片や少女の亡骸を抱えた手負いの魔王。 物量で考えても、やがて体力を切らして追いつかれ、無慈悲に命を奪われる羽目になるだろう。死に様はあえて想像しないことにする。 遠くからのデルタレイやバーンストライクといった術が、じわじわと血を奪っていく。 動揺が心を支配し、息に混じり嗚咽にも似た声が漏れるが、少女だけは落とすまいと必死に抱えていた。 むしろ落ち着きのない心理が、手に込める力を強めていたとも言えなくもない。 だが冷静さの欠如が仇となったか。それとも前へ逃げていれば何とかなると思ったのか。 “完全に逃れ切るには、時間が必要”なのだ。 逃げるための時間が足りない内は、敵の攻撃を受けることも厭わない。 逃走には相応の覚悟が必要なのだ。時間を止めている訳でもあるまいし。 終わりなき道に、クレスの体力は刻一刻と削られていく。 そして――誰が一体想像するだろうか。 何と情けない。数多の命を屠ってきた魔王は、あろうことか、石に躓いたのだ。 そして、その拍子に一番手放してはならない欠けた躯を手離してしまう。 <あっちゃー。勝負の邪魔をする気はなかったんだよ、ごめんね~。でもコレ私のせいだよね。う~ん、責任感じちゃうな~~~> すぐさま拾いに立ち上がろうとするが、穿たれる雨がそれを阻む。 前方へ突き動かす力は消え、倒れ伏せたまま、その場に留まる。 顔のない機械兵士たちがニタァと笑ったように見えた。獲物を仕留め、我らが勝利する時を今か今かと待ち望んで楽しんで笑っている。 あるモノは手のサーベルを振りあげ、あるモノは一斉に晶術を唱え始める。 <よっし、じゃあ“ここは私が助けてあげるよ”! カチャカチャ~~ポンっと!!> 不味い、躯を失ったその手で剣を握り直したとき。 そのときには、既に遅かった。 【我が友が吹かせるは祝福<zelhes>の風、夜天の再会を祝して力を貸して<リィンフォース>!!】 “機械兵士”には、遅かった。 ――振り上げたサーベルを落とす前に、本体であろう鎧の胴を矢が貫いたのだ。 クレスがはっと顔を上げようとすると、すぐ横を目にも止まらぬ速さで矢が飛び進んでいった。 頬を掠める炎は目が眩むほどに熱い。だが、その後に感じるのは背筋を凍て付かせるほどの憎悪だ。 我を無くしたかのような乱れ撃ちは、決して出鱈目に放たれているのではない。どれもが機械兵士たちの身体の要所を狙っているのである。 矢羽の一部を毟りて曲射。親指を除く四指の関節に矢を挟みて三射。射法八節全てを無視して狙われるは太股、手首、目、首、心臓、眉間。 弄んだり、確実に殺しにかかり。じわりじわりと、確実に。残される傷にはは憎しみしか残らない。 クレスが今見た、そして“かつて見た”その光景は―――――正しく、狩りとしか言いようがなかった。 連続で矢を放ち、時には同時に矢をつがえ、気付けば機械兵士も化物もみな沈黙していた。 クレスは矢の主の方へと振り返る。疲れ切った顔には、それを忘れさせるほどの笑顔さえ浮かんでいた。 数々の技、矢を放出するリズム、どことなく感じる“匂い”。 それらは、決して悪い結果をもたらさないと予感させるものがあった。 見覚えのある、ひとつに束ねられた銀髪。切れ長の瞳。油断のない、正に獲物を狙う豹のような佇まい。 よく彼が戦場で用いていた弓も一緒だ。矢がつがえられ、引き絞られようとしている。 クレスの笑みが凍りつく。 鳴弦の音がいやに大きく聞こえた。 「……チェスター」 親友は黙ったままクレスを通り過ぎて死んでしまった少女の亡骸へと近付き……座り込んだまま、妹を抱え上げる。 下半身を失った躯を深く、深く抱きしめるその背中から迸る感情が、まるでそれ自体が矢のようにクレスに突き刺さる。 そして感情はすぐさま鉄へと変性し、親友――――チェスター=バークライトの鋭鏃がクレスへと向けられていた。 なぜ。それを問う前に、冷たく矢は放たれた。 無意識に避けようとした本能と乱れた理性がせめぎ合うが、鏃に微かに輝く無色の液体を見た瞬間大きく矢を避ける。 噛み締められた唇は強さのあまり血の気が引き、今にも血がぷつりと現れそうだ。 既に息絶えた妹の死に顔を見つめる相貌には、音さえ聞こえてきそうなほど眉間が寄っている。 瞳孔が開いている。青みがかった眼の黒目から、どす黒い憎しみに満ちた冷気が溢れる。 思わず後ずさりし、刺々しい気を放つ親友から遠ざかった。気付かずに湿った洞窟の壁へと肩が触れる。 壁の低熱でさえ、今ここに立っている目の前の彼が作ったのではないかと錯覚してしまう。 こんな姿見たこともない、と言うつもりはない。 クレスには、この表情にどことなく見覚えがあった。全てが終わって始まったあの日も、こんな顔をしていた。 だが何よりも違うのは、身が凍えてしまいそうな視線――――殺意が、明らかに自分へ向けられていることだ。 「何の冗談だよ、チェスター」 張り付けられたような笑みで顔面を固めさせたまま、クレスはうわ言のように呟く。 もしかしたら、殺しという名の薬でキメてしまったせいで幻覚でも見ているのではないか、とさえクレスは思った。 しかし、この予想でさえ理性的な判断の下に弾き出したものである以上、嘘に違いなかった。 <ピンチに駆けつける親友! ロマンだねえ、お約束だねえ。絶望にはそれに見合った希望を――――物語はこうでなくっちゃねえ> むしろ幻ならどんなに良いだろうか。 チェスターはクレスの言葉に耳を傾けることなく、手で血に固まった妹の髪を解いた。 「こんなにめちゃくちゃに、酷い有様にされて……可哀想に……」 少女の手足は原型を留めていないほどグチャグチャにされており、指も掌も足の甲も記憶の中にある姿を思い出せない。 言ってしまえば少女の体は飾りのついた一本の棒にしか過ぎず、まるで子どもの乱暴で綿を千切り取られた人形のようだった。 そこには人間の尊厳はなく、正に単なる“遊び相手”の姿だ。 <でも“ここは違うよ”。さーって、借金もチャラリらったことだし、あたしに出来ることをやろっかな~!!> 「許さねえ……絶対に……」 チェスターは妹を地面に横たわらせ、幽遠として立ち上がる。 ゆっくりと持ち上げられた腕は、矢を番え、弓を構えて弦を絞る。 身体から指先へ、そして弓へと伝播した憎悪は、鳴弦を首を絞めるかのような音に変化させる。 三日月型にしなった弓の体は美しく、ゆえに冷たくて孤独だ。決して届くことのない、遠い存在。 「俺は絶対……テメェを殺す……!!」 【ほいさ、流れて転ベ紅蓮の螺旋<ファーストアタック>!!】 チェスターの双眸がクレスを捉える。既にクレスは矢で括り付けられたかのように、身動きを取ることができなかった。 暗闇の中に浮かぶふたつの眼は、相手に狙いを研ぎ澄ましているようで、まるで何も見ていないようだったからだ。 空虚に満ちる殺意だけが、今の彼を動かしている。 “殺したい人間”という存在が、的を射止めるためだけに、矢の精度を確かなものとさせる。 放たれた弓は避けてさえいなければ、確実にクレスの心臓を抉り一瞬で命を終わらせていた。 だが、さっきの機械兵士たちのときのように、矢は一本で終わらず霰として降り注ぐ。 太股、手首、目、首、心臓、眉間。チェスターにとって、目の前の殺人鬼は狩りの対象でしかないのである。 「止めろ! 止めてくれ、チェスター!」 抵抗することなく、回避と戦斧による防御を繰り返してクレスは呼びかける。 しかしチェスターが手を緩めることはない。 「テメェがアミィを殺したんだろう! なんだよ、あの傷。逃げるあいつを、甚振るように、楽しそうに!!」 ざわり、と背筋に悪寒が走る。 殺した。確かに――殺したのは僕だ。剣を突き立てたのは僕だ。反論のしようのない事実に喉の奥が渇く。 けれども、甚振ったのは僕じゃない。僕の姿をした、僕じゃない別人だ。 それともあれも僕なのか? 目を逸らしてはいけない、もうひとりの僕なのか? 確かに、あれも僕だ。全力で反吐を吐きたいくらいに僕だ。けど、だけど。 自分と、自分じゃない自分、けれども自分自身。どちらも違く、どちらも正しい。 何を肯定していいのかも分からない感覚に、クレスの頭は混迷し、いっそのこと煩わしい全てを斬り捨てろと心が囁く。 「……違う! あれは、僕じゃない!!」 「そんな物騒な得物を振り回しておきながらよく言うぜ! 全く、大した快楽殺人者だな?」 必死に内側の疼きと、それが齎しただろう惨事を否定するも、チェスターには届かない。 ただ目前の殺人鬼を殺すために指先が弾かれる。せめて荘厳に逝けと音色を奏でるかのように。 「あんな無残な姿になるまで痛めつけるなんて、テメェは人間か?」 「違うんだ! あれは」 キッとチェスターの目付きが鋭くなると、矢に赤い光が集う。 「黙れよ、この気狂い!!」 クレスの身体が跳ね、動きを止める。 矢が首元を掠めていったが、気にする余裕など奪い取られていた。 ――――気狂い、だって。僕はもう狂人でしかないのか、チェスター。 血のように赤い光を帯びた矢は……否、矢の形をした光は、幾重にも分岐し無数の矢を形成する。 洞穴を照らす冴えた光は、憎悪に満ちたチェスターの表情と、今にも張り裂けそうなクレスの心を曝け出させる。 【夜鷹の爪跡、円環を描き龍を屠る<ホークネイル>!!】 「殺す……絶対ェ殺してやるっ!! 地獄の果てまで、どこまでだろうと、追いかけてやるッ!!」 背中から数本の矢を掴んで、チェスターは懐の瓶へとその鏃を浸す。 その様からクレスは容易に確信した。先ほどの矢の輝きは、やはり毒か。 だが、クレスの気づきなど知ったことかとチェスターは毒矢を掴んで射撃を放つ。 チェスターの最終弓技・屠龍が、それぞれが歪な曲線を描いてクレスの下へと収束する。 親友の弓の腕は誰よりも知っている。紙一重ならともかく、毒を食らわぬよう完全回避するのがどれほど困難なのかも。 クレスは襲い来る毒爪を防ぐことなく――「不味い」と警鐘を鳴らした無意識が、ひとりでに身体を動かし、前へ進みながら矢を避けさせた。 情けない面貌のまま、無駄のない身のこなしで回避する姿は奇妙にすら見える。 そして意識の制御を離れた肉体は、剣を携え、笑い、何気なく親友の肉を抉ろうと (だめだ) 剣を握る左手の首を右手で押さえ込む。笑いかけた口の端を必死に歯で食い縛る。 無意識は、もうひとりの僕だ。 理性で御し、意識で抑えなければ、浅ましく血を啜ろうとする欲望が露わになる。 たとえ既知の人間であろうと、幼い頃から一緒だった幼なじみであろうとも。 だが、攻撃を止めて敵に接近するなど痴愚の極みでしかしかない。絶好にして絶体絶命の隙が生じていた。 【前触れの無い悲劇、それは突然の衝撃<サドンインパクト>!!】 そしてこの少女が、阿呆な隙を狙わない理由がない。 「隙だらけです……五月雨ッ!」 クレスは、平静な声が聞こえてやっと後ろに誰かがいることを知った。 ぎりぎりのところまで気配に気づかなかったのは当然である。クレスの背後に立つ少女は忍者だからだ。 悟ったときには、既にクレスの首筋には赤黒く変色した血のような色の刃が添えられ、静かに、 「――――ッ!!」 刃は空を咲いた。 空間翔転移でとっさに移動したクレスは、逆に少女の後ろを取る。 まだ背が低く幼い体躯でも、纏った経験と冷酷さは隠し切れない。大きく束ねられた栗色の髪が目に留まる。 少女は静かに振り返る。横顔が髪の奥から覗く。あどけない面差しに、色のない眼光が宿る。 「すず、ちゃん……どう、して……!」 親友と同じく、ここにはいない筈の少女の姿に、クレスはおののく。 幼き頭領、藤林すずもまた死んだ筈なのだ。そう放送で言っていたではないか。 死者とは思えぬ大きく円らな瞳は悲しみに満たされ、クレスの顔を映していた。 だが、きゅうと半秒目を瞑り、再び開かれた“まなこ”には静湖の如き静謐な覚悟―――忍びの境地が映る。 「その振る舞い……ダオスに洗脳された方とお見受けしますが、私の使命は道半ばで潰える訳にはいかない……御覚悟を!」 立ちはだかる者の命を奪おうと、すずは忍刀を構え、空いた手で複数の苦無を備える。 有り得ない光景に、クレスは胃のむかつきさえ覚えた。 状況はワン・オン・ツー。こちらは剣を振るうことを躊躇し、相手方は仲間と同じ姿のくせに殺る気満々だ。 戦わなければならないのか。仲間を殺さねばならないのか。 悲しみは雨のように降り注ぐ。 【終焉の宣告にはまだ早いよ~~! グルーヴィな音階で運命を導け<フラックスフォーム>!!】 雨を、クレスは剣を翳して除けた。 逆さに突き立てた剣から、方陣が天に刻まれ、青い守護の傘を作り出す。 全ての機械兵士が矢に貫かれたはずが、術の雨は未だ止んではいなかった。 否―――クレスだけを狙って降り注ぐこれは“魔術の雨”だ。 傘越しにクレスが見上げれば、上空では箒に跨った魔女が飛んでいる。 指先にマナを集中させ、銃弾を放つような気軽さで低コストの魔術を連発する。 ファイアボール、アイスニードル、ストーンブラスト、ウィンドカッター。根幹たる四元精霊の基本術を、それこそ雨粒のように降らせている。 「アーチェ……!?」 「チェスター! あたし、チェスターと一緒だよ! 一緒にいるよ! チェスター!!」 桃色の魔女アーチェ・クラインは楽しそうに笑い声を上げながら、クレスを殺そうとしていた。 傘はやがて雨粒の威力に耐え切れず霧散し、やむを得ず虚空蒼破斬の闘気の網で無理矢理にでも術を掻き消す。 それでもなお詠唱を紡ぎ、クレスを誅殺せんと、さながら戦闘機械のように魔術を繰り出していく。 その箒の先につけられた神秘の紋章が、彼女の狂気に呼応するように詠唱を加速させる。 「うるせえぞアーチェ! 喋ってる暇があったらアミィを殺したあいつをそのまま貼り付けてろ!!」 「う~~~~でも、いいよチェスター! それでアンタが喜んでくれるなら、私は誰だってブチのめしちゃえるんだから!!」 魔術と弓術による遠隔攻撃のタッグを、ひたすらクレスは往なしていく。 隙を突いて必殺を狙うすずの一撃を、かろうじて防いでいく。 息が絶え絶えに切れる。何故だ、とクレスは頭の中で何度も何度も問うた。 何故、こちらを攻撃してくる。何故、戦わねばならない。 【……ホントにこれやっていいのかな~~~? ま、いっか! 四連携完了・4倍速詠唱!! 具現せよ新たなる原罪。その罪贖うは我が振う灰燼の剛腕<ドリームファンダム&フラドブランム>ッ!!】 決まっている――――――戦わなければならないからだ。お前が産み落とした罪を、購う為に。 「なっ……!!?」 突如、噎せ返るような熱波が洞窟内に巻き起こる。 肌を刺す熱が意識を一瞬でも空白にし、強烈な風が髪とマントを煽り立てる。 洞窟が強く赤く照らされた。光源は、洞窟の地面が融解したことによって現れた、活力に溢れたマグマだった。 クレスは絶句する。――どうして。どうして“貴方”がいるのか、と、呻きすらしなかった。 熱気に包まれ、人影はおぼろげにしか見えない。黒い影があるだけで、輪郭すらはっきりとしない。 本当に“貴方”がいるのか、一目見ただけでは分からなかった。 「援護、感謝します! このまま一気に押し切りましょう!!」 『試練でもなく、精霊王を敵に回すとはな……実に業腹であるが、この世界では主の契約に従うよりないか…!!』 だが、すずがイフリートの主と会話しているのを見ては、クレスにとってはそうとしか考えられなかった。 いきり立つマグマの中で聳えるは、火の精霊イフリート。召喚術を使え、そしてすずの仲間なのは、ただひとりだけ。 なぜここにいるのか、という問いさえ最早口に出来なかった。生と死をぐちゃぐちゃにされたこの地獄で、いるいないを問うことも徒労だ。 クレスの疑問に答えることなく、イフリートはゆっくりと炎で燃え盛る腕を掲げる。 「クラ―スさんも、敵だっていうのか……!!」 その光景にはやはり見覚えがあった。 世界の元素を司る高位存在、精霊。召喚術は彼ら彼女らと契約を結びて呼び出す。その威力は計り知れない。 クレスはもはや本能的に、召喚術を阻止しようと動いていた。 アミィのときは、狂気に身を任せずとも何とかすることはできた。 しかし、かつての仲間たちを複数同時に相手にするなど、今の“僕”にできるのだろうか? 否、“温過ぎる”。仲間だからといって剣を振るうこともできないなど、温過ぎる。ただの魔王には荷が重過ぎるのだ。 跳躍し、時空の剣に蒼い光を纏わせる。光は刀身の形を作り、本来の刃よりも数倍大きいものとなる。 時空剣技・次元斬が、精霊の腕から生まれる火球を切り裂かんと、 【すかさず回避! 我を守れ限りなく絶対たる騎士の円楯<アクセルモード・ラウンドシールド>ッ!!】 洞窟を駆け抜ける影が、跳躍し、剣を振り上げる。 クレスの目の前に現れた影もまた、同じように蒼い光を剣に纏わせていた。 長大した光の刃は、クレスの次元斬に酷似していた。ゆえに、それらが鍔迫り合いをすれば、打ち消し合うのも必然と言える。 蒼刃が消え、イフリートの赤光によって影が照らされる。姿が曝け出される。 時空剣技を真っ向から打ち破れるのは時空の剣しかない。 あの機械の群れに“自分”を混ぜてこなかったのはこのタイミングで隙を突くためかと、クレスは驚きを納得しようとした。 しかし、向かい合った自分の眼を見て、クレスはその気持ちを霧散させてしまう。そこにいたのは狂人ではなかった。 傷の付いた年季の入った鎧、赤いマント、赤いバンダナに……濁りのない、茶色の瞳。 クレスは思い出す。そうだ、チェスターが弓を射る隙を守ってきたのは、すずちゃんの忍術と共に前線を守ったのは、 アーチェの、そしてクラ―スさんの詠唱時間を作ってきたのは、いつだって君だった。 それはきっと、魔王が失ってしまった昔日の楯。誰かを失うことなく、その背中に守るべきものをもった青年。 (今更―――――俺に騎士の真似ごとなんて、見せるなよ!!) 剣の魔王は嗤った。自らの狂気に―――“嫉妬”に身を委ね、目の前の“光”を一瞬で惨殺した。 ◇◆◇ グリューネは、指先で掴んでいた白い駒をそっと静かに置く。 表情は晴れやかなものではなく、口唇の先は僅かに震えてさえいた。 今は、やむを得ず魔王に敵の一駒を斬り伏せさせたが、本当ならば手を出したくはなかった。 「……こんなオカルト、あり得る訳が……」 【コドクナタタカイヲツヅケタダオスヘノ……】 『セメテモノタムケダ~~ってね。よくできてるでしょ? 名付けて「メカボ中年2号」!』 真正面を見据え、グリューネは鷹揚すら見せずに吐き捨てた。 対面に配置されたのは4つの黒駒。いずれも、明らかにこちらの駒に対応して選出されている。 いくら王の下へ行かせるのを阻むためとはいえ、死んでいった仲間たちと戦わせるなど、鬼畜人外の行いとしか思えない。 道化師の後ろに控えていたノルンは、背の翼でふわりと盤の上空へと浮遊する。 「どうやって作った? いや、それより、何故プレイヤーでもない貴女が指せる?」 『どうやってって言われてもな~~~こう、ドデスカ~コン!ってね!! それにこれくらい、このオジサンじゃなくたってルールさえ分かれば誰だってできるよ?』 「…………これも、王の権利行使ですか? ノルン」 『そうです。死者の存在も、異なる世界の人間の召喚も、王は初手にて行っている。全ては合法、故に真実として受理される』 「そうでございます……勿論、ジャッジ……いや、元ジャッジ(仮)である私の目から見ても……これは“通し”でございます……」 無言でグリューネは歯を噛み締めた。 こんなことがあってたまるか! そう叫びたくなったが、法の、ルールの下で成立している以上、何も返すことはできない。 どんなに理不尽で、許しがたくとも、現実として受け入れるしかない。 (ですが……ですが……死者をいくらでも蘇らせることができ、かつ幾らでも追加で駒を召喚でき、 挙句理由も無く自分の思い通りに動かすことができるというのが絶望側の、王の権力だと云うのなら……それでは……) 『自分に勝ち目がないなんて“酷過ぎる”?』 それが鏡の言った言葉だったのか、自分の心から出た言葉なのか、グリューネは理解するのしばしの時を要した。 自分の顔はさっきの鏡に映ったような醜い顔をしているに違いなかった。思い出す度に戒めねばという気持ちに駆られる。 その鏡はというと、ついに正解を解き明かしたという陽気さで部屋の中でくるくると回って遊んでいた。 ノルンが目配せすると、魔法の鏡は数十秒考え込んだあと、どこかにある手をポンと打った。 「そっかそっか。やっぱりそう思ってたのかあ。なるほどねー。ほんじゃ“いきますか”~~~?」 訳の分からないコンタクトに、グリューネは頭部に電流が走るのを感じた。 何か、何か――嫌な予感がする。 ノルンは手に持っていた杖を魔法の鏡の方へと放り投げる。そして、鏡はどこからか腕をにゅっと伸ばした。 全身が映るほどの鏡に、腕と足だけが付いた、なんて不格好な姿。だが、魔法の鏡はその怪しい外見とは真逆の、厳かな姿を見せる。 精神集中によって杖はくるくると自転する。 敵の連携は全て揃った。陣容が整った以上、向こうがやることは一つしかない。 間違いない。これは、詠唱だ。例えその文句が、どれだけふざけていようとも。 ◇◆◇ びちゃり、と空から地面に死体が落ちた。 イフリートの振り落とした炎の腕が、灼熱の衝撃波を生み、死体は数秒で灰となった。 魔王クレスは転移によって後方へと陣取る。けれども、地面に着地した時には既に、次なる一手が訪れようとしていた。 【開け過去の扉。砕けたカケラ、一網打尽にみんな集まれ~~~~~~~~♪】 これまでの闇と打って変わって煌々と燃える地獄の底で、処刑人達が処刑道具を輝かせる。 弓は何本も矢を束ねて構えられている。 魔術は詠唱待機にされ、すぐにでも発動できる状態だ。 姿なき召喚術士は新たな術を紡がんとし、精霊と対話をしている。 そして、それらを庇うかのように、小さな忍者は忍刀を携え構えている。 誰もが、今ここで燃え尽きたクレスを見ていない。その眼は、殺すべき者だけを見据えている。 剣士というものは、例え複数が相手であろうと、攻撃の順序がそれぞれ違っていれば対処ができる。 だが一説によれば……3人同時に襲いかかった場合、世界で1番強い剣豪であろうと、命を散らしてしまうという。 これからクレスに襲いかかろうとするのは、正に“一斉砲火”だ。 仲間たちは、確実にクレスを殺そうとしているのだ。 <両者、布陣を確認……審議を開始します。グリューネ……願わくば、これが結審となることを祈ります> 弓の弦が鳴る。マナが爆発しようとしている。忍んで、静かに命を奪おうとしている。 決断せねばなるまい。ここで死ぬか、それとも―――― 【そんじゃお待たせしました! 希望が勝って当たり前、絶望が負けて当り前。 ―――――まだこれが“そんな物語”だと思ってるそこのカミサマに。アタシが勝利より重き敗北を具現するッ!!】 鏡の国に迷い込んだクレスに向けられるのは、自由な彼女が招きし時を越えた戦士達。 自由に楽しそうに、真実が物語を破壊する。 【いくぜみんな、レッツラゴー! 誰もが夢見た大進撃<ドリームストライカーズ>!! ぅいやっほ―――――いッ!】 悪夢が現へと突撃し、終焉の訪れを告げる銃杖の撃鉄が引かれた。 チェックメイト。 クレス=アルベインは、ここで死ぬ。 【クレス=アルベイン 生存確認】 状態:HP10% TP50% 第四放送を聞いていない 疲労 眼前の状況に重度困惑 狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました> 背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷多数 背中に複数穴 所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@少し血に汚れている 基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる 第一行動方針:君達も斬れと――――――? 第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。 現在位置:中央山岳地帯地下 【Chester Barklight? 存在確認】 状態:HP100% TP100% アミィを殺した者への深い憎悪 BOSS 所持品:クレインクィン@TOP(残り矢数:100%) 毒(液体) ???? アミィの上半身 基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。 現在位置:中央山岳地帯地下 【Arche Klaine? 存在確認】 状態:HP100% TP100% チェスターへの狂おしいまでの愛情 BOSS 所持品:ミスティブルーム ミスティシンボル ???? 基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。 現在位置:中央山岳地帯地下 【Fujibayashi Suzu? 存在確認】 状態:HP100% TP100% 忍としての冷徹な覚悟 BOSS 所持品:忍刀・血桜 苦無(20/20本) ???? 基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。 現在位置:中央山岳地帯地下 【イフリート 存在確認】 状態:HP100% TP100% 召喚状態 BOSS 所持品:無し 基本行動方針:契約者の指示に従い、敵を焦滅する。 現在位置:中央山岳地帯地下 【Cless Alvein? 死亡確認】 ※支給品(1~3。一つは剣型の武器)が周囲に落ちています。 前 次
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/666.html
箱庭の隅っこで愛を叫んだケモノ ◆2PGjCBHFlk 破壊されし夢の跡で、どれほどの時間を無為に費やしたものか―― 螺旋王四天王が一人、怒涛のチミルフは血を吐くような激情に区切りをつけ、立ち上がった。 もはやどれほど嘆き叫ぼうとも、失われた『夢』は戻ってこない。 それを理解していながら立ち上がる意志を幾度も挫かれたのは、ただただ未練が誇り高き獣人の背を掴んで放さなかったためだ。 それもそのはず―― 螺旋王に賜って以来、数々の武勇を打ち立ててきた紅蓮の威容。 ――その最期が斯様な残骸と化して終えるなどと、誰に想像できたというのか。 胸中に込み上げる感情は無念と悔恨の二重螺旋。 かの雄雄しき巨神の喪失は、ただ戦力を削られたという意味合いだけに留まらない。 ダイガンザンは螺旋王の手で、四天王一人一人に与えられた信頼の証。 身を粉にして獣人の世のためにと戦い、勝利してきた日々。 それを王の手ずから認められた血塗れの結晶―― ――流麗のアディーネに与えられしダイガンカイ。 大海原を優雅に進み、何より彼の女傑の気性を受け継いだように獰猛な青き世界の覇者。 ――不動のグアームに与えられしダイガンド。 大地にその巨躯を置き、如何な障害を前にも一歩も引かぬ王都防衛の堅牢な要塞。 ――神速のシトマンドラに与えられしダイガンテン。 見上げることのみが許された天空を統べ、螺旋王の手が陸海空の全てに及ぶことを体現した蒼穹の審判者。 ――そして怒涛にチミルフに与えられしダイガンザン。 人類掃討の御旗として、最前線に立ち続けるチミルフと常に共にあった旗艦。 数多の獣人がその強大な力を前に羨望と憧憬を抱き、勝利の象徴として邁進し続ける姿に誉れ高さを心に刻んだ。 言わばダイガンザンは獣人がニンゲンの上位存在であることの証明。 チミルフ自らもまた信じてやまない獣人達のアイデンティティ――存在の証明だったのだ。 それが眼前で、見るも無残に打ち砕かれ、大敗の汚辱に甘んじる光景はどうだ。 「あまりにも……そう、あまりにも滑稽ではないか」 それは朽ち果てたダイガンザンに対する言葉でもあり、大手を振るって戦乱に参戦した自身を顧みての言葉でもあった。 王の御心に反旗を翻し、ニンゲンの抹殺を誓って箱庭への参戦の許しを得た。 使い慣れた大槌の威力でもって殲滅――自分達の存在価値を揺るがす下等種族を根絶やしに。 その意志を持って降り立った戦場、そこで最初に出会ったのが別世界で自身の部下であったという曰くつきの獣人。 そして彼の獣人に寄り添う、その心中の見定めのつかぬ人とも獣とも違う女。 直後に現れた老人との死闘。凄まじい技量を持つ武人との戦闘に心は躍ったが、何もかもが中途半端の結果で最初の交戦は幕を下ろした。 建物の崩壊に巻き込まれ、女と老体は死んだだろうか。 ――否。少なくともあの老人に限っては満身創痍に近い身体で尚、永らえただろう確信がある。 それは実際に牙を交えたことによる獣の嗅覚、野生の直感からくる確信。 彼の老体は安息の中での穏やかな死より、血湧き肉踊る戦いの中で朽ち果てるのを望む同類。 なれば小競り合い程度の死合に果てる道理はなく、また別の戦場で己と敵の血を流すはず。 一方で、ヴィラルと共にいた女の生死は不明。 一見したところ、外傷はほとんど見当たらなかった。 それが常ならず傍らにいたヴィラルの功績か、女自身の持つ回復能力の力かは別としてだ。 問題は消防署を崩壊に導いた爆風の衝撃に細身が耐えたかられたかどうか。 あるいは崩落によって華奢な矮躯は瓦礫に押し潰されたやもしれぬ。 いずれにせよ、僅かばかりでも後味の悪さがあったのは事実だ。 シャマルの生死はチミルフの価値観からすれば些事にあたる。 憎むべきニンゲンでないにせよ、獣人でないという時点で向けるべき感情は欠片も湧かない。 だがしかし、その存在は獣人――いや、獣人の身体から改造されたヴィラルの心を占有していたほどのものだ。 時と場所が違えば愛すべき部下であったかもしれぬ男。 事実上は何の縁もないとはいえ、仮にも上司を騙った身で部下を裏切ったことになる。 さらにはニンゲンと獣人の狭間にあったヴィラルの心根、その見極めの機会をも失ったに近しい状況。 血風の吹き荒ぶ遊戯に興じれば、次に箱庭を埋め尽くしたるは漆黒の球体。 黒陽の出現に意気を上げ、与えられし力の全てを揮わんと盲目的にダイガンザンを起動。 直後の破滅はニンゲンを敵と認めるなどと口にしていながら、全力を払うに値せぬと心のどこかで思っていたが故の慢心。 この戦場に舞い降りた怒涛のチミルフの功績は、部下であったかもしれぬ男を謀り、 人質とした女を見殺しにし、満身創痍の老体をも仕留め損ない、 王より賜りし至高の力を惜し気もなく展開し、その力の上に胡坐を掻いた結果として全てを失う失態の積み重ね。 ――それがこの戦場でチミルフの起こした行動の全て。 「……獣人達の夢の城を無残にも破壊され」 「……王より与えられた臣下としての名誉も、献身を捧げた日々も無為になり」 「……己と部下に課した約束もまた、泡沫の彼方へと消え去った」 握る大槌の柄が震え、噛み締めた口の端から一筋の血が伝う。 巨体は屈辱とそれを上回る自身への不甲斐なさに力を失い、天を仰ぐ双眸に輝きはない。 「ニンゲンとは……なんだ……ッ! 獣人とは……なんだ……っ!! 俺がこの場で掴み取ったことなど……何があるというのだ……っ!?」 得たものは何もなく、元より手にしていた多くのものを取り落とし、欲しがる答えに辿り着く糸口さえも見つかっていない。 ヴィラルとの約束の時は近い――ニンゲンの首を持ってこいと命じたのと同じ口で、恨み言と負け惜しみばかりを紡いでいる我が身。 誇り高き獣人としての矜持を穢す。造物主たる螺旋王の勅命を果たすことができぬ。 ――それを理由にヴィラルを処罰せんとするならば、断罪されるべきはむしろ自分だ。 汚辱を死によってしか雪げぬというのなら、今の自分にこそそれは相応しい。 そう、死ぬことでしか償えぬというならば。 「ならばこの『怒涛のチミルフ』は死によって、この屈辱と決別する……ッ!」 武功を積み上げた日々、螺旋王四天王として『怒涛』の二つ名を授かった日々。 部下から向けられた羨望と信頼、その部下に注いだ惜しみない親愛。 肩を並べた戦友達――導かねばならぬものも、一目を置いたものも、性別を超えた絆に結ばれたものもいた。 そして造物主たる螺旋王に従い、忠誠を誓った誇り高き日々―― ――螺旋王四天王が一人、『怒涛のチミルフ』 ――その強すぎるほどの同胞と造物主、自らの種族への愛。 ――全ての想いを自らの行動で裏切った男は、自らの手で愚かな生に幕を下ろす。 「さらばだ……過ぎ去りし我が栄光の輝きよ……ッ!!」 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「――――アルカイドグレイヴ!!!」 雄叫びに呼応し、白銀の巨体がその手に握る神槍を鋼に突き立てる。 穿たれた槍の穂先より放出されるのは、如何な装甲も薄紙のように切り裂く灼熱のビーム刃。 それが紅の船体を貫通、溶解、上半身を模した機体を袈裟切りにして崩壊させ、 すでに大地に横たわっていた紅蓮の巨神を粉砕し、さらなる瓦解の道筋へ誘う。 風の精霊の名を冠したパイロット、そして白銀の機体の全機能の発現。 宙を舞う巨体が連撃によって、残骸と化した要塞にさらなる破壊を刻んでいく。 もはやそれが獣人の羨望を一身に集めた『夢』の具現であった事実を消滅させるように。 宛がわれただけの力に溺れ、全ての獣人の誇りに泥を塗った己の醜態と決別するように。 最後の一撃は奇跡的に原形を留めていた艦橋、その中心を真上から一直線に貫いた。 粒子の炸裂によって艦橋内の全てが発火――遂には爆炎でもって、踏み躙られし紅蓮の栄光に終止符を穿つ。 その大気を焼く暁の世界に雄雄しく立ち尽くす――二つの顔を持つ白き力の象徴。 手には無双の神槍を―― 内には一騎当千の武人を―― そしてその身は無類の強化に与った強靭な超鋼――! 哮り狂う西の守護者、風の猛虎の名を冠したカスタムガンメン――ビャコウ。 その操縦席にて腕を組むチミルフは、ただ無言。 その目は破片一つもまともに残さず消滅していくかつての城を前に、決して背けることなく光景を心に焼き付けていた。 屈辱を、敗北を、油断と慢心――そして臓腑に煮え滾るこの歓喜を忘れ得ぬために。 「これで何もかもが終わりだ……ダイガンザンも、そしてそれを賜った『怒涛』のチミルフも!」 震える両の腕を胸の前で交差し、肩当てに触れて我が身を抱き締めるように、不甲斐ない己の身を憎悪のままに押し潰してしまうように叫ぶ。 「今より俺はただのチミルフだ……! 四天王などともてはやされ、己が器を忘れて愉悦に浸る心など必要ない……!」 かつてのチミルフは何も持たぬ一介の獣人であった。 怒涛のチミルフの名の下に集った戦士達、その一人一人の立場と何一つ変わらぬ一兵卒。 獣人と呼ばれる種族に生を受け、地下暮らしのニンゲン共を支配する使命感と王への忠誠心。 生まれ持った強靭な肉体以外、彼の持っていたものはそれだけだった。 「それが武功を立て、慕ってくれる部下を持ち、 名誉を積み重ねる内に虚栄心を肥え太らせた……何たる未熟! 何たる情けなさよ!」 今のチミルフの自戒の言葉を聞けば、彼をよく知る女傑は真っ先にそれを否定したろう。 元よりこの獣人は己を顧みない男だ。立場に執着したことなどなく、権力を笠に理不尽な命を部下に強いたこともない。 戦いとあらば自ら最前線へ赴き、戦列に轡を並べた同胞達に率先して敵を打ち倒す。 積み重ねられた武功と信頼に見合うだけの人柄、部下や戦友、王までも彼を認めたのはその弛まぬ意志があってのこと。 だが周囲の評価など、それこそ彼の男には何の意味も持たない。 彼にとって重要なのは己が信念と覚悟、何より王の意思に従って結果を出し続けること。 結果は自らの虚栄心を満たすためではなく、全ては我が種族全体の繁栄のために。 輩のために捧げ続ける一死一生。唯一、それを果たすためだけの全身全霊の祈り。 「そのためには四天王の座も、『怒涛』の二つ名も、縋り付く過去の栄光も惜しくはない!」 ――それが只のチミルフが生涯かけて、己に課した歪まぬ信念。 「見るがいい、王よ! これが獣人の正道だ! 俺の生きる道筋だ! ただ一介の獣人の、血と泥と屈辱に塗れた戦いの覚悟だ!」 滑稽な道化の戯言と、すでに王は見放しているかもしれぬ。 哀れな敗残者の遠吠えよと、立場を同じくした男達の嘲笑の的かもしれぬ。 確かな友情を誓った戦友の成れの果てと、唯一無二の彼女は嘆いているかもしれぬ。 だがもはや立ち止まれぬ。 後戻りする道はなく、確かにあった絆は自ら断ち切った。 絆が、愛が、進む足取りを重くするというのならば、今の自分には必要ない。 「――ただ、誇りだけがあればいい。それだけがあれば、俺は俺の生を誇れる」 ならば、征くとしよう。 この箱庭の戦争において、ただ一介の獣人の背にかかる責任はあまりにも重い。 それは獣人という種族全ての存在価値。獣人はニンゲンに勝るのか、劣るのか。 下等と侮ってきた劣等種族が、獣人の上に立つという世界を否定するための戦い―― 「だがこの身体の、この心の、何と軽きことよ――」 取り繕うべき上辺を脱ぎ捨てたその矮小な価値の、何たる軽さか。 名誉も信望もかなぐり捨て、今、チミルフは一介の武人の心を取り戻した。 ――それがこの上なく、心地良い解放感を伴う。 「そうだ……元より俺は戦うことしか能がない。戦うことでしか己の存在価値を証明できない。 戦うことでしか生を実感できない。戦わなければ生きてはいけない――そういう生き物だった」 そう理解したというならば、己の生き甲斐を、全生命を賭してできることを果たすがいい。 見せつけられた脅威に怯え、ただただ被った衝撃に慄くだけなどまさしく獣人に相対したニンゲンの姿。 獣人は違う。チミルフの信じる獣人に、斯様な弱さは許されない。 脳は全て戦いのために巡り、勝利することのみを貪欲に求める器官であればいい。 剛力は全て敵を叩き潰すためにあり、巨躯は弱者を震え上がらせるためのものであればいい。 心の虚栄心は掻き消し、ただひたすらに目的を貫き通す覚悟だけが据えられればいい。 胆が据われば胸を張り、憤怒の余熱は血の沸騰に変遷する。 瞑目する巨体の獣人の脳裏では、すでに次なる戦いのための綿密な戦議が始まっていた。 「先の紅の螺旋……まさしく破壊の象徴よ。ダイガンザンを一撃の下に葬る威力。恐るべきはそれがあの黒陽から発射されたものではないということか」 ビャコウの跳躍によって咄嗟に暴波から逃れたチミルフだが、 その威力の前に戦慄し、崩壊していく移動要塞に目を奪われていたわけではない。 砕け散るダイガンザンを目の端に捉えながら、 暴悪の衝撃に激しく心を揺さぶられながら、それでも戦いの本能は敵の姿を捜していた。 最初に光を放った病院よりさらに西――破壊の始まりはそこからだった。 モノレールの線路を掻き消し、病院を塵芥に変え、 ダイガンザンを葬った螺旋は世界の境界線に触れ、箱庭の反対側から再び顔を覗かせる。 海を、大気を消滅させる暴虐の前に石造りの灯台など障害の名目すら果たせず木っ端微塵。 ――そして出発点に破壊が舞い戻った時、再び鮮やかに世界が紅で染まったのだ。 その爆発の確認を最後に、チミルフの意識は崩壊せしダイガンザンへと向く。 その後の醜態は語るまでもなく、女々しい未練がましさと決別するのに要した時間はどれほどのものだったか。 気づけば東の空からは黒陽と対極の真の極光が昇っている。 朝焼けに瞼を焼かれながら、その輝きも、眼球に沁みるような痛みも妙に心地いい。 ――暁は目覚めを、戦いの始まりを告げる鐘だ。 深遠の闇の中で戦うことを許されない身体が、血の渇望を光の中に求めるが故の。 瞬き一つで戦意を新たに思考を切り替える。 忘我の間に起きた出来事もまた、見過ごすわけにはいかないものばかり。 墜ちた黒陽を映した目を細め、球体を三日月に削った一撃にチミルフは思いを馳せる。 あるいはその一撃も、紅の暴威の結果ではあるまいか。 世界を塗り替える破光が箱庭を一周した際に起きた一際強い爆発を、チミルフは相殺と捉えている。 かの一撃を放った者の下に破滅が回帰し、それを打ち払うために同じだけの破滅を必要とした。 故の煌き――あの滅亡の渦中にいたものが、相殺したとはいえ無事にいるとは考え難いが。 「死んだとすれば、次は黒陽を落とせしものの推測と矛盾するか」 そもダイガンザンを起動せしめたのは、あの漆黒の太陽と対抗するためのこと。 出現した瞬間の敵機体が万全だったことは、この双眸に懸けて疑いようのない事実。 つまりダイガンザンも、強大な黒き太陽も、運命を同じく紅の螺旋に引き裂かれたことになる。 さらにこの二つの目が恐怖のあまり夢を見ていたのでないとすれば、 先の赤き制裁はガンメンやそれに類する兵器の力によるものではない。 ただ一握の存在――チミルフの巨体に比すれば矮躯と表現する他にない、そのニンゲンが揮った力だというのだ。 ――これが笑い話でなければ、何になるというのだろうか。 「俺はここにくる以前に、ガンメンと対等に渡り合う”ニンゲン”に出会っていた。 にも関わらずありえないなどと、その発言こそがありえん」 少なくとも数多ある世界の中で、ガンメンに対抗し得る単体があることを自分は知っていた。 そしてこの会場内にいる参加者が、その単体と同等かそれ以上のものと螺旋王に目されて召集されたことも。 だとすれば黒の太陽もダイガンザンも、その力量をもって落とせる存在がいて不思議はない。 これまでの自分の考えはニンゲンを下等と侮ることで、その力に目をつけた螺旋王の眼力すら嘲っていたことになる。 ニンゲンは断じて下等種族ではない。 ただ獣人が、そのニンゲンと比較して尚、上等な種族なだけである。 チミルフが証明しなければならないのはその一点、そのために必要なのは意識の改革だ。 与えられた敗北感と、この六時間の間に経験した全ての情報から先入観を修正する。 ヴィラルとシャマルを抜きにしても、この会場の中にはまだおよそ三十人近い参加者が残っているのだ。 その中の一人、武人としての格を備えた老体との戦いを思い出す。 満身創痍の身ながら一切の遅れを取らぬ鋼の精神力――流石は螺旋王が選んだ適応者なだけのことはある。 最低限、あの老人クラスが二十人以上いることを想定すべきだ。 そしてその頂点には先の紅の螺旋の持ち主がいる。 あの破壊に再び相対することを思えば、知らずチミルフは身体が震えるのを隠せない。 恐怖――ではなく、より鮮烈な戦いに挑める歓喜の武者震いを。 強者に挑めるのは武人としての本懐、相手が強大であることを喜びこそすれ、嘆き慄くなど軟弱者のすることだ。 満を持して放たれた螺旋の暴威――なればあれこそが彼の参加者の渾身の一撃。 その破壊力は直撃されたものの身体を滅するだけに留まらず、その破滅を目撃していたものの心を折るほどの圧倒的さを誇る。 「だからこそ……あれを破れば、俺の勝利だ」 地金はすでに晒されている。 威力、範囲ともに驚異的な一撃ではあるが、それ故に生じる躊躇いがあろう。 相殺の経緯を見れば、あの転移現象が使用者の想定の埒外であったことは容易に想像できる。 またあれほどの攻撃が、このゲームの中で繰り返し使用されたはずもない。 今でこそ半壊状態にまで陥ったこの戦場だが、あの螺旋は揮われるまで曲りなりにも健在であった。 そこから導き出される結論は―― 「回数制限。あるいは威力を制御できていない。 もしくは……他の参加者を巻き込みたくない……とでもいう気か?」 前者はともかく、後者は想定する必要があるだろうか。 ヴィラルとシャマルの関係のように、この会場内で巡り合い、互いの利害によって同盟を結ぶ輩がいるのはわかる。 ニンゲンとは群れる生き物だ。種族として大多数のものが貧弱な肉体を持つ以上、小さきものが群れるのは当然のこと。 シャマルのように弱い存在もいる中では、そういったものが徒党を組む可能性も十分にある。 「だがあの破壊の具現者が、そういったものを庇護するような存在か……?」 力の性質だけで他者を推し量ることなどできはしないが、この想像に限れば正解な気がする。 何より問答無用でダイガンザンを打ち砕いたその手並み。 ――まさか起動したのがチミルフであったと見抜いてのことではあるまい。 断言する。彼の存在は騎乗者が誰であろうと、同じ暴威で紅蓮の要塞を落としたと。 そこから想像できる相手の輪郭は―― 「唯我独尊。己が力量に絶対の自信を持ち、己が信念の覇道に一切の疑念を持たぬ。慈悲も情愛も我欲に比すれば無為そのもの。 他者と共に行動することがあるとすれば、自身の目的に利用するため……まるで独裁者の有様だな」 力のみを追い求めるか。決して譲れぬ信念を律するか。 いずれにせよ、強者は個が強すぎるのが必定。 非凡な強さを持つものは、非凡な精神構造でなければ耐えられない。 まだ見ぬ孤高の覇道を唱える存在に苦笑しつつ、しかしチミルフの戦意は熱を上げ続ける。 過ぎた力は、強さは、自信は、戦いの中で全て鎖となりえる。 数刻前のチミルフが己に与えられた強力な力に溺れたように、強さに自負のあるものほど戦いには隙が生じ易い。 それは本来、弱者からは隙とすら見破れないような僅かな綻びでしかない。 その綻びを突くことこそが、今のチミルフが持てる最大にして一縷の勝機。 ――ダイガンザンの死は無駄ではない。 愚かな『怒涛のチミルフ』が死に、一介の武人たる獣人チミルフを戦場に呼び戻した。 さらには敵対する参加者が持つ、最大級の攻撃の実態を肌で感じ取ることができた。 もしも彼の存在に『怒涛のチミルフ』が一見の前に遭遇していたとすれば、為す術もなくあの滅びの前に大敗を喫したことだろう。 だがそのIFはない。規模も威力も知れた技など、恐るるに足らぬ。 技があると知れたならば、出させないか出せない状況を作り出せばいいだけのこと。 こちらがダイガンザンを失ったことと、敵の最大戦力が割れたことの痛手は拮抗している。 「……五分と五分だぞ、ニンゲン」 吠声は決して虚勢ではない。 戦いの中で最大級の力を最初に見せつけること、それの持つ意味をチミルフは知っている。 圧倒的な力でもって敵を殲滅、士気をへし折るというのは自身も人類掃討の折に幾度となく実行した手だ。 それを意趣返しの如くニンゲンにやられたわけだが、だからこそその狙いと弱点がわかっている。 「会場内の多くのニンゲンの心は折れたかもしれん……だがな! だがな、ニンゲン……ッ! 俺はまだだ! 俺の心は……獣人の牙は、容易く折れぬものと知れ!!」 仰ぎ見た天にまだ見ぬ夢の仇を幻視し、チミルフは正義でもなく悪でもなく、ただ高らかに己の存在を咆哮した。 ――ここに螺旋王が率いし獣人達の、その栄光の歴史の話をしよう。 かの王はかつて螺旋族の末席にその身を置き、宇宙をスパイラルネメシスの脅威より救済せんと目論むアンチ=スパイラルと戦う戦士であった。 しかし王の連なる螺旋族は他の螺旋の民が同じであったように、宇宙救済の大義名分を掲げる敵に対し敗れ去ることになる。 意志を挫かれるということは即ち、螺旋力の源を失うことに等しい。 生き残った王は螺旋力の大半を、目的のない永きに亘る怠惰の中で喪失した。 友を、家族を、愛する人を、争いの中で喪った王には再び剣を手に取る意志などない。 それでも大地を、空を、宇宙を求めるのが人の性。 人は暗闇の中では生きられない。光を、大気を、自然を彩る色を――人は求め続けた。 アンチ=スパイラルとの決戦でその数を減少させた人間は、それでも再び繁栄を目指す。 その意志はアンチ=スパイラルにとって忌まわしきものであり、敗北者からすれば歴史を掘り起こす蛮行に他ならない。 人類の進化に、歯止めをかける必要があった。 かくして王は獣人という人の亜種を創造することを決意する。 ――彼らを率いて地上を征圧し、人類に地下生活を強いることで一定数以上に数を増やさせぬように努めた。 その生命すら誕生させる膨大な螺旋力を理性で覆い隠すために、感情のほとんどを抑圧することを自身に任じてだ。 その統治が数百年にも上れば、地上の存在すら知らない無知な人間ばかりが増えた。 中には地上の覇権を求めて反旗を翻した輩もいたが、対するのはかつて世界どころか宇宙の命運を懸けて戦った男の部下たる獣人。 技術力、戦力その他の差は計り知れず、獣人側が人間に遅れを取る機会などあるはずもない。 惜し気もなく与えられる起動兵器ガンメンの力の前に、人間はひれ伏す他になかった。 ――獣人の歴史はまさしく、ただ勝利だけを与えられ続けてきた歴史なのだ。 だからこそ、その数百年はひたすらに停滞だけが支配した世界だったといわざるをえない。 獣人達の目的は種の繁栄ではなく、王の命に従って地上を支配し続けること。 そのために必要なものは全て揃っている。 それ以上を望むことなど、下等なニンゲン相手に過ぎた警戒、臆病な心の表れと揶揄された。 ――前進は種族の力を高めるのと同時に、獣人のプライドを傷付けかねない諸刃の刃であったのだ。 これまで必要なかったのだから、これからも必要とはなり得ない。 もしも今以上を戦いに要するのであれば、それは下等種族の力が増したことを、もしくは獣人の種族の力が衰えたことを意味する。 故に彼らは種族の本能からして停滞を望んだ。 ただその場に留まり続けることを。前進も、後退も、その長き生の中で価値を見出さず。 定められた必然的な勝利の上にのみ、自分達の存在価値を信じることで。 ――その数百年に及んだ本能の約定が今、根底から覆されている。 ニンゲン相手に敗北するなど、許されないという次元の話ではないのだ。 許されないのではなく、あり得ない。あってはならない。負ける方がむしろ難しい。 獣人達の間では話題に上ることすらない、妄言乱心の類の夢想――その屈辱にあろうことか、四天王が甘んじたのだ。 立場に未練を抱いていたかつてのチミルフは、その敗北の上辺の意味しか捉えなかった。 たとえ相手が何者であろうと、叩き潰すそれのみだ――口当たりのいい言葉で敗北感を紛らし、武勇に相応しい外面を取り繕った愚かな自分。 その慢心が機動六課との戦いに次いで、ここでの二度目の敗北に繋がったのだ。 「だがな……この二度の敗北が俺に、教えてくれたことがある……ッ!」 「それは敗北から学べたことで、俺は強くなれるということだ――ッ!!」 勝利を前提とし、変わらぬ戦いの日々では何一つ得ることなど叶わない。 真に勝利を欲さんとすれば、勝つか負けるかの殺し合いの果てに、魂を燃やし尽くすことが要求される。 これまでチミルフが踏んできた血に染まる大地は、全て『戦い』の名を借りた殺戮遊戯。 武人であると自らを誇り、他者からも形容された自身は虚像に過ぎなかった。 何故ならばチミルフは二度の敗戦を乗り越え――今ようやく、本当の戦場に立ったのだから。 負けることが恥だったのではない。戦わぬことこそが本当の恥辱だったのだ。 敗北から学べることのなんと多いことか。 己の身で体感して初めて、この臓腑を焼き焦がす屈辱にも種類があることを知った。 怒りとは胸を焼き尽くす憎しみではない、両足を支える礎なのだ。 『怒涛』の二つ名を冠していながら、その真の意味を知らなかったなど笑止千万。 今の状況になったからこそわかる、ニンゲン共の強さの価値を。 獣人の歴史が勝利の刻印だとすれば、ニンゲンの歴史は敗北の烙印だ。 ――宇宙全土! ――多元世界全土! ――無限の此処から無限の彼方まで全てを見渡したとしても、ニンゲンほど負け続けた存在など他にあるまい! だからこそ奴らは強い。強くなる理由がある。 なればこそ獣人はさらなる強さを求めなければならない。 敗北の味を知り、本当の意味で貪欲に勝利を求める心で、戦いの螺旋の中で高みへ駆け上がるのだ。 「笑え……今の滑稽な俺を笑うがいい、アディーネ。 お前と轡を並べた戦いの日々……それも全て遠き、ハリボテの上に栄光よ」 獰猛に歯を剥き出して、獣面を豪気な喝采で満たしてチミルフは笑った。 全てを失い、敗北に打ちひしがれ、愛も絆も何もかもを投げ捨てた男が満足そうに笑う。 ――今、チミルフは初めて、数百年の獣人生の中で初めて、生きていた。 激しい歓喜に身を打ち震わせた刹那のことだ。 ――唯一無二の王の声が箱庭に満ちたのは。 ――――生き延びた者達よ、聞くといい。 遠き空か、はたまた近き大気を震わせてなのか、幾年月も揺らぐことのなかった声に微かな感情が宿るのに忠臣は気づいた。 だが言及するまい。この時ばかりは頭を垂れ、膝を突き、伏して言葉を拝聴するのみ。 チミルフが箱庭に投じられてからの六時間、その戦場で起きた全ての出来事を透徹した眼差しで王は見届けていただろう。 ならば不徳によってダイガンザンを失いしことも、御身の眼前で果たした失態。 死者と禁止エリアを告げる王の言葉の中に、とうとう腹心に賜わされた言葉はなかった。 そのことに何ら落胆もしていない己を顧みて、チミルフは口の端を歪ませて獣面に皺を寄せる。 紡がれた死者の連名の中に、チミルフに纏わる存在は一つも含まれていなかった。 それでも尚、瞑目してしばしの黙祷を捧げたのは、人と獣人とを度外視した上で戦士達の死を悼んだからに他ならない。 相対する運命を与えられず、箱庭の無情に散った戦士達。 だがその死は決して無駄にはならない。その生は僅かばかりでも螺旋王の御心の礎となる。 ただ漠然と過ごしたものには与れぬ報奨――戦場を舞う存在にこれ以上の褒美があろうか。 「生きることは、戦うということなのだから――ッ!」 吠声に呼応し、ビャコウが高々と宙を舞う。 刃の肩装甲が静まり返った朝焼けの空を切り裂き、巨大な顔面の鮫ような牙が主人の覇気に打ち震えて歓喜を表す。 灰と煤に塗れたはずの白い機体が暴風の中で輝きを取り戻し、顔面の額に位置するもう一つの顔面の双眸が戦意の炎を滾らせた。 これまで幾度となく共に戦場を駆け抜けたカスタムガンメンが、真の意味で手足のように扱える感覚。 研ぎ澄まされた集中力、緩むことを忘れた戦意の鼓動、それらが脳を活性化させる。 口内を湿る血の味を味覚が鮮明に捉え、嗅覚が朝の気配を如実に嗅ぎ取る。聴覚は高き空を吹き荒ぶ風の声を聞いた。 大気の振動を細胞の一つ一つが肌で感じ取り、広がる視界は地平線の彼方まで遠く見渡せる。 これが敗北を知ったことの変化――心の殻を一つ破った男の前進。 何もかも失ったはずの、ただ一つ残ったこの身がやけに熱い――! その飽くなき前進の炎こそ、螺旋王が人間に求めた進化の灯火だと今のチミルフは気づかない。 未だ獣人の域を超えるまでに至らぬその身では、螺旋力に覚醒することもまた夢のまた夢。 だがしかしと、己の内側から溢れ出す止め処ない活力を手にしてチミルフは思うのだ。 たった二度の敗北から学べたことで、チミルフは自身が強くなれた実感がある。 頭が悪く、戦うことにしか価値を見出せなかった自分が、だ。 ならば賢き獣人は。まだ若き未来ある獣人は。この可能性を前に、さらなる飛躍を望めるのではないか。 (見たい……見たいぞ俺は! その世界を! 獣人がさらなる繁栄を遂げ、真に世界を支配するに相応しい種族となる未来を!) ――そのためにも、俺はまだニンゲンを知る必要がある。 ただ戦い、勝利するだけを追い求めるのならば今までと何も変わらない。 螺旋王が希望を見出した戦場にて、ニンゲンではなく獣人の方が彼の王の統治する世に相応しいことを証明し続けなければならぬ。 見定め、知る必要がある――そのためにも。 ニンゲンとの遭遇を求める。肉体は弱くとも、精神に強き芯を抱くものがいい。 肉体精神共に強いものに出会い、戦いたい気持ちは確かにある。 だが勝利するだけでは、この込み上げる衝動を口下手な自分では説明できないのだ。 賢く、心強きものとの遭遇が望ましい。 捕えてその心根を暴き、強さの根源を何としても持ち帰る――! 「それがこの場に存在する唯一の純粋な獣人、チミルフに課せられた一念だ――!」 優先すべきはヴィラルとの接触。 チミルフより早くこの戦場に馳せ参じ、ここまで生き残った古強者。 その経験に大いに学ぶところあり。仮初め偽りの上司と部下の建前など、より大きなものの前には無価値と化すのだ。 幸いなことにシャマルの名は放送に含まれていなかった。 つまり消防署の崩落から難を逃れ、今も生を繋いでいることとなる。 ヴィラルが約束を守ると信じて行動しているならば心は痛むが、全ては大儀のための小事と冷血に徹して切り捨てた。 そして今一つ、ヴィラルの他にチミルフの心を占めている人物がいる。 ――その名はニア。 ――螺旋王の第一王女、その冠を被ったニアという名の少女。 チミルフが忠誠を誓う螺旋王とは別の世界。 異世界の螺旋王の娘として生まれ、おそらくはその世界の獣人の上に立つ高貴な存在。 多元世界の理論を忠実に理解できてはいないものの、ヴィラルとの遭遇という経験を得て本質は理解しているつもりだ。 仮初めの部下との対話の中で違和感を持たれなかったということは、違う世界であっても自分は自分という存在であり続けるらしい。 ならばそんな自分が螺旋王の娘とやらにどのように接しているか、想像にも関わらず実体験の如く鮮明に思い浮かんだ。 造物主たる王と同様に忠誠を誓い、その御身のために献身、命を投げ出すことも厭うまい。 チミルフはその程度には今も自分を評価している。 その程度できなくて、獣人軍団の兵達に名を並べられるものか。 主のために命を投げ出す覚悟など、生まれ出でた時より本能に刻み込まれている。 獣人の頂点に君臨する螺旋王――だがその身は獣人のものではない。 今まではそのことに疑問を抱いたことはなかった。 チミルフにとって螺旋王は、ニンゲンの身体を持つ存在という以前に神に等しいからだ。 姿形が人型でも、その存在の本質は神――神を信じるものにとって、神である事実以外など些事に過ぎない。 その盲目的な妄信を螺旋王に向けるのは本能――ならば、その娘に対してはどうだ? 『こちら』のチミルフが生を受けた世界と同じく、獣人の支配する『あちら』の世界で生を受けた第一王女ニア。 獣人がニンゲンを下等と嘲り、掃討する世界の中で、王都テッペリンにて日々を送った彼女はどのような扱いを受け、その果てにどんな信念を持つのか。 それは正しく、チミルフの胸中を期待の感情で埋め尽くした。 螺旋王の『娘』――造物主と似た立場にありながら、決定的に違う場所に立つニンゲン。 獣人を従えるに相応しい志を持つのか、あるいは人に寄った思考を持つ裏切り者か。 大多数のニンゲンが絶望と失望、血と混沌の中に沈んだ戦場で永らえている王女。 その心情を拝聴したい。志を示してほしい。 そして生まれて初めて生を実感するチミルフを、王の系譜に連なるものとして裁いてほしい。 如何なる審判が紡がれようと、納得し、己を肯定できるような不可思議な確信で満たされている。 ビャコウを駆り、目指す進路の先には墜ちた黒き太陽がある―― あれだけの巨躯が浮上し、一撃の下に地へと打ち落とされたのだ。 箱庭の中のありとあらゆる参加者がその一連を目撃し、あの場で集うことが予想される。 それならばチミルフが果たすべきは、誘蛾灯にまんまと誘い出される愚かな獲物を根絶やしにすること――ではない。 油断は禁物。我武者羅に獣爪を振り上げるだけならば、それこそ獣と変わらない。 獣の敏捷性と戦闘力に、知能を併せ持つからこそ誉れ高き獣人と呼べるのだ。 紅の暴威の一件が、猪突猛進を申告する青い自分に歯止めをかける。 己を知った自分に次に必要なのは相手を知ること――さすれば勝利はぐっと近付こう。 「まずはニンゲンの見極めよ…… そのためにも、激戦の渦中に飛び込むのは向こう見ずな愚かさの体現。 俺が追い求めるに足る獲物は黒い太陽、それに向かう道筋にある――!」 参加者の集結地点足り得る旗印――それを目指す参加者こそが今の目的に相応しい。 高高度飛行を控え、伏した虎の如く静寂の移動を開始する。 牙にかかる獲物を獰猛に捜し求めるその姿は、血に飢えた獣と何ら変わらない。 だが戦意の炎に滾る双眸に、等しく光るのは理知の輝き――獣と一線を画す理性の証明だ。 ならば獣の本能と人の知に至った今のチミルフの姿は、まさしく獣人という存在の体現者であろう。 土壇場で生まれ変わった一握の武人が、白銀の猛虎の力を用いて逆襲を始める。 全てを失いし敗残者。見るも無残、惨めで愚かな敗軍の将―― そんな我が身であるからこそ、できることがあるのだと己の存在を高く高く謳って。 胸に抱くのは求めて止まない螺旋の意志の本質。王への変わらぬ忠誠。 真の武人として戦場に挑める昂ぶり。そして未だ拝謁の叶わぬ異世界の王女への期待。 ない交ぜとなる感情の奔流を猛る自身の咆哮に乗せ、一介の獣人が戦場を駆け抜ける。 一介の獣人が戦場を――駆ける。 【C-8/禁止エリア山中/二日目/朝】 【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】 [状態]:全身に肉体的疲労とダメージ(小)、敗北感の克服による強い使命感、ビャコウ搭乗中 [装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン(支給品扱い)、ビャコウ@天元突破グレンラガン [道具]:デイパック、支給品一式、(未確認の支給品が0~2個ありますが、まだ調べてません) [思考] 基本:獣人以外を皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。 0:黒い太陽方面にて参加者を捜索、相手を見て交戦如何を決める。 1:ヴィラルと接触したい。 2:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。 3:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。 4:ヴィラルが首を一つも用意できなければ、シャマルの首を差し出させるかもしれない。 5:夜なのに行動が出来ることについてはあまり考えていない(夜行性の獣人もいるため)。 [備考] ※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。 ※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。 ※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。 ※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。 ※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。 ※大破したダイグレンはチミルフの手で木っ端微塵、もはや墓標すら残っていません。 ※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。 ※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない) 【ビャコウ@天元突破グレンラガン】 チミルフ専用カスタムガンメンで、本編ではカミナの死因となる一撃を放ったという曰くつきの機体。 名前の由来は白虎。 主な武装はビーム刃を放つ槍で、 ビーム刃による貫通突撃アルカイドグレイヴと、ビームを刃から直接打ち出すコンデムブレイズという 近距離遠距離それぞれに対応した必殺技を併せ持つ。 必殺技を披露する機会すら与えられなかったシトマンドラwithシュザックに比べて随分優遇されている気がする。 時系列順に読む Back 俺達が愛したタフな日々 Next GOOD BYE MIRROR DAYS 投下順に読む Back 俺達が愛したタフな日々 Next GOOD BYE MIRROR DAYS 256 空の上のおもちゃ(後編) チミルフ 267 No Man s Land -はるか時の彼方-
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/21323.html
眠れぬ少年(ねむれぬしょうねん) 概要 ヴェスペリアに登場した称号。 登場作品 + 目次 ヴェスペリア 関連リンク関連称号 ヴェスペリア カロルの称号。 取得者 カロル 取得条件 効果 ▲ 関連リンク 関連称号
https://w.atwiki.jp/shinjitsuwiki/pages/134.html
自民党や公明党が進める毒ワクチンの時限爆弾が爆発し、被害が広がっている。これは、陰謀論などではなく、れっきとした事実である。創価学会USA会長の、荒川が内輪向けにその事を暴露していたのが、丁度2022年の出来事であり、トヨタ会長も「遅効性の毒」と、警告していた。 【新型コロナ】ワクチン打たされ「息子は国に殺された」「下半身不随…健康な体返して」 遺族ら集団提訴「危険性は広報せず」 https //archive.md/ZpBGr しかし、ネット空間では自民党工作員や、自民党や政府に無償で奉仕するネトウヨ達がワクチン被害者を冷笑し、「反ワク」という使いやすい蔑称を広め、真実を訴える人々を馬鹿にする空気を作り上げている。そして、トヨタ会長は関連会社の不正をでっち上げられ、ワクチン被害に対して国を訴えた遺族らは不当な攻撃されている最中だ。 マスコミもまた、政府とグルになり、毒ワクチン接種を推進している。なぜなら、国がワクチン接種を新聞広告やCMなどを使って広報し、マスコミは政府から金を受け取っている。一見マスコミは政府の不正や自民党批判をしているように思えるが、それはガス抜きであり、本当に都合の悪い真実は報道さえされず、「陰謀論」「偽情報」と、レッテルを貼られ葬られるのである。まさにこの毒ワクチンがそうであるように。 独裁体制は、ある程度国民の不満を発散させなければ、革命などで簡単に崩れてしまう。支配層はそれを知っているため、ある程度のガス抜きを行っているにすぎないのだ。だが、選挙結果は操作され、自民党以外が政権を取ることは、基本的に不可能にされているのである。 だからこそ、立憲民主党の議員はワクチン反対派・懐疑派が多いのである。 だが、あろうことか、自民党や政府に反対する人の一部にもワクチンの欺瞞を擁護する者がいる。恐らく、アメリカネトウヨがワクチンに反対する事がマスコミに報道され、ワクチン反対=ネトウヨというレッテルが貼られている印象操作もあるだろう。しかし、これはチェリーピッキングと呼ばれる、一部だけを切り出し全体がそうであるように見せかける詭弁であり、アメリカネトウヨだけが特殊な事例であるだけだ。彼等は政権を取れなかった腹いせに、アメリカ政府がする事へ条件反射で反対しているだけだ。 実際は、アメリカを始めとして全世界で権力者や支配層に懐疑的な人ほどワクチンに反対している。ケネディさんを始めとした人々や、元朝日新聞記者の塩原俊彦さん、DSを名指しで批判し、ウクナチ白人至上主義者の欺瞞も批判する鳩山さんもそうだ。 「政府の発表に疑問を呈することは厭(いと)わない。そして、それは人々にとって脅威であり、その脅威に対処する方法として、彼らはあなたを陰謀論者だというのだ」
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/62467.html
【検索用 いたすらこっこ 登録タグ 2024年 VOCALOID い ぬくぬくにぎりめし ヨワネヒトリ 初音ミク 曲 曲あ 瀬名航】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:瀬名航 作曲:瀬名航 編曲:瀬名航 絵:ぬくぬくにぎりめし 動画:ヨワネヒトリ 唄:初音ミク 曲紹介 『ただイジ「リ」が「メ」とならないように』 曲名:『悪戯ごっこ』(いたずらごっこ) 瀬名航氏の45作目。 莉犬氏オリジナル曲のボカロ版。莉犬版はこちら。 歌詞 (動画概要欄より転載) 食らってない 食らってない それくらい慣れるさ 本気じゃなくって遊びだって言い聞かせている セットじゃ雄弁に ホットなカルチャ煮 ハッとなる鋭利 失言(まちがい)探し モットーは清廉に “ごっこ”に勤しみ 真っ当に狂い咲く桜ノ雨 その言葉に責任はあるか? 悪意の自覚がはぐらかした 「友情」の「確認」は楽しいか? そんじゃ、だーるまさんがーこーろんだ。 振り向いたらきっと Cry, Lie ta la tatta エイジャー 食らってんな 食らってんな 悪戯って言えんな 冗談だって、アリストテレス 笑ってんな? 笑ってんな? わかってんならいいじゃん イジりすぎちゃって麻痺りっちゃって 泣きじゃくっている 本気にするわけないじゃんね? 悪者にはされたくないじゃんね? やばいやばいよw それ以上はもうw 洗いざらい茶化しまくって移行 ただ イジ「リ」が「メ」とならないように 構っている、し、たがっている 善も 悪も みんなで分け合った 独りではなかった 本当の悪者は自分か否か? 自己防衛は許されぬ罪か? 安心したがっているそれは本能か? そんじゃ、だーるまさんがーこーろんだ。 振り向いたらきっと Cry, Die ta la tatta エイジャー 食らってんな 食らってんな 悪戯って言えんな 冗談だって、アリストテレス 笑ってんな? 笑ってんな? わかってんならいいじゃん イジりすぎちゃって麻痺りっちゃって 泣きじゃくっている 白と黒の境界線 薄くなる 何気ない感情にひっくり返される 善と悪 考え続けている先にある真実は 想像よりも苦しくて冷たい 反省した? 反省した? 大丈夫、許しはしないよ 一生ずっと苦しまみれて 絶対に 絶対に 忘れはしないよ 君も辛いってわかってるから 楽にしてよ? 食らってんな 食らってんな 悪戯って言えんな 冗談だって、アリストテレス 笑ってんな? 笑ってんな? わかってんならいいじゃん イジりすぎちゃって麻痺りっちゃって 泣きじゃくっている 危ないとこだった、気が付いたら タヒにがっている コメント ボカロ ver. ありがたき 、最後の歌詞本当に好きです! -- ラムネアイス (2024-09-06 22 11 18) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。