約 30,345 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3987.html
約一年ぶり、わたしはまた涼宮ハルヒやキョンくんたちの居る北高に帰ってきた。 ただし、条件付で。 情報操作能力は長門さんの許可を得て初めて使える。 涼宮ハルヒ及びキョンくん、その関係者に危害を加えた場合、情報結合解除されるようプログラムされている。 それでもわたしは、また長門さんのパートナーとして存在できる事に喜んでいた。 わたしは長門さんの部屋に一緒に住み、長門さんの世話をする。 コレは強制された事ではなく、わたしが長門さんにやらせて貰っている事だ。 「長門さん、今日の晩御飯は何がいい?」「必要ない」長門さんは本から目を離さずに一言そう言った 一人で食べるのも寂しいので晩御飯は抜きにした。そもそも食事を取る事に意味は無いので別に構わない。 する事の無いわたしは近くにあった本を手に取り読むことにした。 「朝倉涼子」 呼びかけられたわたしは顔を上げる。その瞬間、わたしの目に映ったのは長門さんの膝 ゴッ!と言う音と共に顔に鈍い衝撃が走った。 「ぐあ…う…」一瞬何が起こったのか、わからなかった。顔に激痛が走る。 恐らく長門さんに膝蹴りをされたんだろう。 「朝倉涼子、私は本を読む事を許可してはいない」 痛みの走る顔を抑えながら見上げると、冷たい目をした長門さんがわたしを見下していた。 「ご、ごめんなひゃい…」顔を蹴られたせいか上手く喋る事が出来ないけど、わたしは長門さんに謝罪した。 ガッ!「げひゅっ!」 長門さんはわたしのお腹につま先けりを勢い良く入れる。一瞬体が浮き、わたしは床に 倒れこむ。 「ゲホッ!ゲホッ!」上手く呼吸が出来ない。苦しい、痛い。 「それが貴女の謝罪する態度なのか?」長門さんの声が聞こえる。何がいけなかったのか、わたしには分からなかった。 床に這いつくばった状態で見上げ、もう一度謝罪する「うう…ご、ごめんな…!」 ガンッ 次は頭を踏まれた。床に思いっきり顔を打ち付けられたわたしは一瞬意識がとんだ。 「う…うう…ごめんなさい…ごめんなさい…」 次々に与えられる暴力と痛みに、わたしはただ謝ることしか出来なかった。 ばしゃ!「!!!」 突然掛けられた水の冷たさにわたしは目を覚ます。 しかし、体を起こそうにも動かすたびに激痛が走り、力が入らない。 窓から差し込む光から、今が朝なのが把握できる。 昨日の記憶が曖昧だけど、恐らく途中で気を失ったのだろう。 痛みを堪えて体を起こし、顔を上げるとコップを持った長門さんがいた。 「もう朝」 長門さんはわたしに一言そう言ってカバンを持って出て行ってしまった。 「今日は学校休もう…」 体中が痛いから、と言うのもあるけど見える範囲だけでもアザだらけの体で学校に行くわけにはいかなかった。 激痛の走る体を無理矢理動かして電話を手に取り、学校へ連絡する。 「あ…岡部先生ですか?体調が良くないので今日は休みます」 「そうか、分かったよ。お大事に」 電話はすぐに終わった。長電話できるほどの話題も無いけど。 連絡し終えたわたしは顔を洗おうと洗面所へと向かった。鏡に映る自分の顔は酷いものだった。 アザだらけで、鼻から流血した後もある。ところどころ腫れていて、とてもじゃ無いけど外には出られない。 うがいすると口の中が沁みた事から何処か切れたのだろう。 体中が痛い。少し動かすだけでも激痛が走り、泣きそうになる。でも それでもわたしは、長門さんの事を嫌いにならない。 キョンくんを殺そうとし、長門さんに酷い事をしたわたしを、もう一度パートナーとして再構成してくれた。 だからわたしはどれだけ長門さんに酷い事をされても耐えられる。 長門さんを見ているだけでわたしは幸せになれるから。 わたしは救急箱を取り出し、傷の手当てをするために服を脱ぐ。 情報操作能力があれば一瞬で治る傷も、制限されているわたしには自然治癒に任せるしかない。 目の前にある鏡に映る自分の体はアザだらけで、普通の人なら目を背けたくなるような酷さだ。 「んっ!…くっ…」 湿布の冷たさと、動かすたびに痛む体に思わず声が出てしまう。治療が終了する頃にはお昼になっていた。 「ハァ…ハァ…」 痛みに耐えながらやっていた治療が終わった事に気が抜けたわたしはもう動けなかった。
https://w.atwiki.jp/gekisou/pages/13.html
会場当日の風景とか、サインとかいろいろ 会場内は撮影・録音禁止でした。会場内の画像はアップロードではなくリンク程度にしてください。特に開演中の盗撮画像は厳禁でお願いします 涼宮ハルヒの激奏@大宮ソニックシテイ(2007/03/18) http //lapislazuli.ath.cx/image/1174225291208 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174225207225 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174225103570 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174225012102 声優さんの寄せ書き http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224502876 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224371128 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224212475 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224656560 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224291317 花環 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224955291 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224821839 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224877964 http //lapislazuli.ath.cx/image/1174224906791 古泉の「ふぅもっふ!」 出演者が終演時に投げたサインボール ハルヒ団長 ゴトゥーザ様 長門 キョン 古泉 鶴屋さん 朝倉涼子 キョン妹 谷口(表) 谷口(裏) 国木田
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/713.html
208 :最低最悪の下劣な行為(春雨痴漢凌辱) ◆vUo//O.X1M:2015/11/15(日) 11 04 07 ID jDktFZak 投下します。痴漢モノ注意。 209 :最低最悪の下劣な行為(春雨痴漢凌辱) ◆vUo//O.X1M:2015/11/15(日) 11 04 42 ID jDktFZak (これまでのあらすじ) 輸送任務を終えて兵士人間を救助し終えた春雨達。 だが兵士人間達は春雨を待機室に誘い込み、最低で下劣な痴漢を行うのだった……。 「んっ……」 密着した兵士のいやらしい手が春雨の下半身に伸びる。 第二水雷戦隊で鍛えてはいるが、春雨の雰囲気にあった華奢な太ももが汚らわしい手に蹂躙される。 だが春雨にあるのは嫌悪感と恐怖と同時に快楽だった。艦娘は人間LOVEで調整されているのだ。 「どうした? 艦娘さんよ」 下卑たにやにやした声で挑発する兵士。 彼は分かっているのだ。艦娘が人間に手を出せない事を。 「あの……触るの、やめて……んあっ」 春雨は抵抗するが、しかし人間の手は春雨にぷりぷりしたお尻に手が伸びて蹂躙する。 焼き芋や秋刀魚を食べて贅肉がついたせいかお尻は柔らかい。 「艦娘さんはいい食生活してんだねぇ」 「さ、秋刀魚は人間さんにもちゃんと譲り渡していますけど……あっ」 「お尻も鍛えなきゃダメだよぉ」 お尻をさすられた春雨は嫌悪感や恐怖もある。 だが艦娘は【人間に触られる事】で快楽と安心を感じるように調整されている。 だからこの世界では艦娘への痴漢は罪に問われないという歪みがあるのだ。 「(夕立姉さん……たすけて……)」 春雨は涙を浮かべて頼りになる姉を思い浮かべる。 だが姉は別の所で戦っているし、そもそも兵士は入り口をわざとらしく塞いでいる。 しかし人間の手はお尻をさするだけでなく、春雨の秘所まで手を伸ばしてきた。 「やっ……そこはダメ……んっ。次の輸送任務が……」 「次の輸送任務がどうこうとか言いながら感じてんだろ? 艦娘なんかそんなもんさ」 ぐへへと笑いながら兵士は春雨のパンツごしに秘所に指を入れる。そして春雨を焦らすように動かす。 馴れた手つきからすると彼はこれまでも似たような事をやって来たのかもしれない。 だがそんな事は置いても春雨は涎すら垂れ流し、嫌悪感を越える快楽と人間LOVEを感じていた。 更に兵士はもう片方の手で胸を揉み、それが春雨のトドメになった。 「あはあっ!」 弄られて達する春雨。 元々濡れていたパンツがもっと濡れてぐちょぐちょになる。 「へへっ。おもらしかい」 兵士は手をパンツから引っこ抜くと、わざとらしく愛液の糸を人差し指と中指で作った。 「黄色っぽいな。お嬢ちゃん、おしっこはちゃんとしなきゃダメだぜ? へへっ」 「はぁ……はぁ……」 完全に達した春雨は涎と涙を流して座り込む。 嫌悪感ではない。人間LOVEを促されて発情しているのだ。 「お、おじさん……春雨をもっと気持ちよく……」 「わりぃな。時間だ」 春雨への痴漢行為だけで終わらせて、春雨を置いて彼は部屋を去って行く。 「おねがいします……もっと……痴漢して……ください」 後には自分で自分を慰める春雨だけが残った。 彼女は抑え切れぬ人間LOVEに涙と愛液を流すだけだった。 ~了~ +後書き 本番前の放置プレイですが一旦ここで終わります。 212 :名無しの紳士提督:2015/11/15(日) 12 21 41 ID TmftQBaU 乙です。続き待ってます これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/sasurauyoudesu/pages/14.html
やる夫PT 固定枠 やる夫ナル イカ娘 チンク フェイト・アーウェルンクス やらない子 高嶺清麿フェイト・テスタロッサ 射命丸文ゆっくり ヤガミはやて 霧雨魔理沙 選択枠 長門有希シャミセン 朝倉涼子 ジャギ 巴マミシャルロッテ ドーラ・コイ・ホワイトドラゴンイルククゥ カレン 柚原このみゲンジ丸 ライバルPT オプーナアッガイ チルノ 水銀燈 ライダー こなた アカギ 拠点不明の知人 やらない夫 ブロリー キル夫 ネウロ とがめ 七花 オーフェン ドッカノ街の住人 ギルドメンバー 烏丸ちとせ ミルフィーユ・桜葉 蘭花・フランボワーズ キース=ロイヤル 志村新八 お店関連 ジョセフ 森近霖之助 神宮寺まりも マカ・アルバーン 御大将(丸井ギンガナム) 小牧愛佳 エドワード・エルリック タツミヤ・レナ タツミヤ・マナ ホワイトドラゴン邸 ブラッドレイ 十六夜咲夜 十六夜アキフィサリス アプサラス その他 柚原春夏 ミーア 丸井ひとは 丸井ふたば 丸井みつば 岡崎夢美 ネフェルピトー ネコアルク・カオス やってられっか夫 コッチノ街の住人 ギルド・冒険者学校 ブラボー 佐天 阿部高和 新城直衛 シグナム メイドガイ クラース・F・レクター薔薇水晶 キャスター お店関連 オリバー ビスケ 言葉 華琳 レベッカ宮本 蒼崎橙子 黒服 一条 不二子 言峰 ギルガメッシュ 防衛駐在兵 メリッサ・マオ シグナム 沖田総悟 流竜馬 クルツ・ウェーバー ミスト・レックス ジップ村の住人 青子 ラオウ アラキ村の住人 南斗聖拳道場 シン シュウ レイ さやか サウザー その他 ジョージ マリオ ディアボロ エンヤ婆 キタキタ親父 ククリ 永澄 キタキタ村の住人 キタロー クロコダイン 荒野に住む知り合い スナドリネコ ノボノボシマリス ノボノボラッコ クアットロ シャナたん ヴィータ
https://w.atwiki.jp/tekiyakusaikyou/pages/911.html
【作品名】ひぐらしのなく頃に 祭 【ジャンル】ゲーム 【名前】竜宮レナ 【属性】L5少女 【大きさ】中2~高校生少女並み 【攻撃力】大きな鉈所持。 金属バットを振り回す少年と夕方から月がしっかり見える夜になるまでガチンコで打ち合っていたので 結構楽にぶん回せる様子。作中チンピラを奇襲でカブト割りする。 レナパン:軍隊で訓練を受け、合気道を極めた魅音が全く見切れないほどの速度でうちこめるパンチ。 大人も吹っ飛ぶ威力。 【防御力】 全力の金属バットの打撃に両腕でガードしているとはいえ、5・6発以上は耐えることができるくらいの防御力。(途中から耐えられなくなったが) 【素早さ】 足場の悪い校舎の屋上で一時間以上は金属バットと本気で打ち合いをしている為、 年相応よりはかなり反応が上だと思われる。 移動速度は鍛えられた少女並み 【長所】はう~、かぁいいよ、お持ちかえり~♪ 【短所】嘘だ!! 【備考】原作が同人版なのでこちらで参戦。 鬼隠し編:主人公が自分を狙う敵と認識する。 罪滅ぼし編:途中ガチで主人公を殺しにかかる。学校ごと皆を爆破しようとする。 43スレ目 585 :格無しさん:2009/01/03(土) 19 21 19 竜宮レナ ○>川島清志郎>ルイジーニョ・エメルソン>朝倉涼子 :鉈を叩きつけまくって勝ち ×>カイゼル・フォン・バッハブルグ:ナイフ持ち数人に勝てるのはまずい。 ×>大年寺三郎太:包丁速過ぎ負け カイゼル・フォン・バッハブルグ>竜宮レナ>川島清志郎 この辺はちょっとした解釈で順位変わるから一度見直してもいいかも
https://w.atwiki.jp/hikari_goroku/pages/19.html
キャラクター ef - a fairy tale of the two. 雨宮優子/羽山ミズキ 狼と香辛料 ホロ おジャ魔女どれみ おんぷちゃん/ハナちゃん C.C.さくら すぴねる/ともよ/雪兎さん 学園アリス 委員長/みさき かんなぎ ざんげちゃん/つぐみ ギャグマンガ日和 うさみちゃん/にゃんみ CLANNAD 一ノ瀬ことみ/伊吹風子/岡崎汐/坂上智代 クレヨンしんちゃん シロ/野原しんのすけ/野原ひまわり コードギアス 反逆のルルーシュ 紅月カレン/C.C./シャーリ/ナナリー コードギアス 反逆のルルーシュ MAD 怪盗しーちゅー ご愁傷さま二ノ宮くん 北條麗華/真由 新世紀エヴァンゲリオン 綾波レイ/碇シンジ 涼宮ハルヒの憂鬱 朝倉涼子/朝比奈みくる/鶴屋さん/長門有希 S・A~スペシャル・エー~ 東堂明/山本芽 とらドラ 川嶋亜美/櫛枝みのり ひぐらしのなく頃に 園崎詩音/鷹野三四/羽入 ひだまりスケッチ さえ/宮子/ゆの VOCALOID 2 シリーズ 鏡音レン/初音ミク ポケットモンスター トゲピー/ピカチュウ 名探偵コナン 円谷光彦/遠山和葉/灰原哀 名探偵コナン MAD 江戸川コカン らき☆すた 高良みゆき/柊つかさ ローゼンメイデン 金糸雀/真紅/水銀燈/翠星石/蒼星石/薔薇水晶/雛苺 ロザリオとバンパイア 仙道ゆかり/モカ 声優 井上喜久子 植田佳奈 緒方恵美 喜多村英梨 釘宮理恵 小清水亜美 後藤邑子 田村ゆかり 丹下桜 戸松遥 中原麻衣 能登麻美子 平野綾 堀江由衣 皆口裕子 宮村優子 ゆかな その他 けいおん/かみかり/銀魂/SHUFFLE!/ToLoveる/その他 etc.
https://w.atwiki.jp/thinkaboutnagato/pages/4.html
@茨城 長門関連説明 情報統合思念体(じょうほうとうごうしねんたい) 全宇宙に広がる情報系の海から発生した、肉体を持たない超高度な知性を持つ情報生命体。実体を持たず、有機生命体と直接的にコミュニケーション出来ないため、長門有希や朝倉涼子、喜緑江美里のような対人間用インターフェースを作った。 「統合」思念体といってもその意志は一つではなく、様々な思惑が交差しているらしい。そのため、様々な派閥が存在する。 TFEI端末(ティーエフイーアイたんまつ) 長門や朝倉のような情報統合思念体のヒューマノイド・インターフェースを指して古泉達「機関」が付けた略称。端的に言えば、「宇宙人が作ったアンドロイド」のこと。 広域帯宇宙存在(こういきたいうちゅうそんざい) 情報統合思念体とは起源を異にする存在。思考プロセスが完全に違うため、通常手段での相互理解は不可能である。その為、長門達と同等の機能を持つTFEIを生み出して接触を図ってくる確率が高いらしい。第5巻『暴走』収録の「雪山症候群」にて、SOS団を閉じ込めた謎の洋館の建つ空間の主と思われる。 クラスの女子がハルヒになった(゚A゚)スレにて、 1(サダキョン)に連絡を取ろうとした人物。最初に登場。彼女曰く、「偽ハルヒは涼宮ハルヒである可能性が高い」 他の人間とは離れ離れになったため、探し続けている。 (ここで貼られている人物が本物であるとは限らないため、お互いの事を本人と断定しているかどうかは不明。) 現在は空間の歪みを直しているらしい。今回の事件で最も動いている。 数名に下のようなメールを送った模様。 695 :愛のVIP戦士:2007/02/15(木) 23 18 49.67 ID 0xNQc6MBO ヤター じゃあちょっと割愛して、重要と思われる部分を…… 空間の歪みの発生が原因でこちらの世界と長門たちの世界の定義が揺らいでいる。明 確な境界線がなくなっている。 そのせいで、長門達は様々な時空間に散り、連絡がつかなくなるものも続出した。 散ったやつらの空間と俺達の空間は、確実に繋がっている模様。 長門が連絡するのには理由はそこにある。 俺達を介することにより、鍵が徐々に揃った。 なお、涼宮ハルヒはこれらのことを知らない。 彼女が気付いているのは、たくさんのメールが来るということだけ。 只、これを機会に朝倉達がなんかやりそう。 長門は今だキョン、朝倉涼子と連絡がつかない。古泉一樹を名乗る者も複数存在し、混乱している。 キョン、朝倉とは連絡がつかないので第三者(俺たち)を経由して連絡を取っている状況。 16日朝時点で3000通以上のメールを裁いたらしい。 鍵はsos団全員揃うことを最低条件に、ある男(=この世界のハルヒ的存在)の影響があるとした。その男にハルヒが存在している事を伝える必要が合った。 17日になった後、以下のようなメールを送信した。 901 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 00 13 22.13 ID aQRBa1Uf0 どうやら間に合ったみたいだ 23 13 その鍵となる人物を特定、サダキョンに協力を要請 00 00 タイムアウトになる瞬間に、偽ハルヒから鍵となる人物にメール送信 本当に間に合ってよかった。あと0,000001秒遅ければ、大変な事態に陥ってた。世界の終焉 改変阻止後、以下の伝言を残した。 「情報統合思念体に許可をとる。いつになるかは分からないが説明は必ずする。 ただ、記憶が消されることを彼らが臆さないこと。無駄な先入観を排し、私の話しを受け入れること。それが条件。」 17日昼前に書き込みがある。 670 名前:長門有希[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13 01 54.60 ID yzWyQrZ50 情報伝達完了。 理解できたなら、情報を消す 681 名前:長門有希[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13 04 41.76 ID yzWyQrZ50 成功した。 11時に私が説明を開始したのを誰も覚えていない。 情報の操作が成功した。 以上の書き込みからスレにて説明をした後、理解した全員の記憶を消したと主張。叩く者も現れるが、説明を望む書き込みから 「妹カフェがハルヒ的存在であり、今回の事件はその影響。彼を引き金に、8人の偽ハルヒ的人物が発生した模様。偽ハルヒから謎の男メールが送信され改変は阻止された。彼を引き金に、8人の偽ハルヒ的人物が発生した模様。現在調査中。まだ事件は解決していない。」 と説明をする。書き込み全文 調査のため、スレを離れ現在は忙しい模様。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3745.html
約一年ぶり、わたしはまた涼宮ハルヒやキョンくんたちの居る北高に帰ってきた。 ただし、条件付で。 情報操作能力は長門さんの許可を得て初めて使える。 涼宮ハルヒ及びキョンくん、その関係者に危害を加えた場合、情報結合解除されるようプログラムされている。 それでもわたしは、また長門さんのパートナーとして存在できる事に喜んでいた。 わたしは長門さんの部屋に一緒に住み、長門さんの世話をする。 コレは強制された事ではなく、わたしが長門さんにやらせて貰っている事だ。 「長門さん、今日の晩御飯は何がいい?」「必要ない」長門さんは本から目を離さずに一言そう言った 一人で食べるのも寂しいので晩御飯は抜きにした。そもそも食事を取る事に意味は無いので別に構わない。 する事の無いわたしは近くにあった本を手に取り読むことにした。 「朝倉涼子」 呼びかけられたわたしは顔を上げる。その瞬間、わたしの目に映ったのは長門さんの膝 ゴッ!と言う音と共に顔に鈍い衝撃が走った。 「ぐあ…う…」一瞬何が起こったのか、わからなかった。顔に激痛が走る。 恐らく長門さんに膝蹴りをされたんだろう。 「朝倉涼子、私は本を読む事を許可してはいない」 痛みの走る顔を抑えながら見上げると、冷たい目をした長門さんがわたしを見下していた。 「ご、ごめんなひゃい…」顔を蹴られたせいか上手く喋る事が出来ないけど、わたしは長門さんに謝罪した。 ガッ!「げひゅっ!」 長門さんはわたしのお腹につま先けりを勢い良く入れる。一瞬体が浮き、わたしは床に 倒れこむ。 「ゲホッ!ゲホッ!」上手く呼吸が出来ない。苦しい、痛い。 「それが貴女の謝罪する態度なのか?」長門さんの声が聞こえる。何がいけなかったのか、わたしには分からなかった。 床に這いつくばった状態で見上げ、もう一度謝罪する「うう…ご、ごめんな…!」 ガンッ 次は頭を踏まれた。床に思いっきり顔を打ち付けられたわたしは一瞬意識がとんだ。 「う…うう…ごめんなさい…ごめんなさい…」 次々に与えられる暴力と痛みに、わたしはただ謝ることしか出来なかった。 ばしゃ!「!!!」 突然掛けられた水の冷たさにわたしは目を覚ます。 しかし、体を起こそうにも動かすたびに激痛が走り、力が入らない。 窓から差し込む光から、今が朝なのが把握できる。 昨日の記憶が曖昧だけど、恐らく途中で気を失ったのだろう。 痛みを堪えて体を起こし、顔を上げるとコップを持った長門さんがいた。 「もう朝」 長門さんはわたしに一言そう言ってカバンを持って出て行ってしまった。 「今日は学校休もう…」 体中が痛いから、と言うのもあるけど見える範囲だけでもアザだらけの体で学校に行くわけにはいかなかった。 激痛の走る体を無理矢理動かして電話を手に取り、学校へ連絡する。 「あ…岡部先生ですか?体調が良くないので今日は休みます」 「そうか、分かったよ。お大事に」 電話はすぐに終わった。長電話できるほどの話題も無いけど。 連絡し終えたわたしは顔を洗おうと洗面所へと向かった。鏡に映る自分の顔は酷いものだった。 アザだらけで、鼻から流血した後もある。ところどころ腫れていて、とてもじゃ無いけど外には出られない。 うがいすると口の中が沁みた事から何処か切れたのだろう。 体中が痛い。少し動かすだけでも激痛が走り、泣きそうになる。でも それでもわたしは、長門さんの事を嫌いにならない。 キョンくんを殺そうとし、長門さんに酷い事をしたわたしを、もう一度パートナーとして再構成してくれた。 だからわたしはどれだけ長門さんに酷い事をされても耐えられる。 長門さんを見ているだけでわたしは幸せになれるから。 わたしは救急箱を取り出し、傷の手当てをするために服を脱ぐ。 情報操作能力があれば一瞬で治る傷も、制限されているわたしには自然治癒に任せるしかない。 目の前にある鏡に映る自分の体はアザだらけで、普通の人なら目を背けたくなるような酷さだ。 「んっ!…くっ…」 湿布の冷たさと、動かすたびに痛む体に思わず声が出てしまう。治療が終了する頃にはお昼になっていた。 「ハァ…ハァ…」 痛みに耐えながらやっていた治療が終わった事に気が抜けたわたしはもう動けなかった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/34.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 ループ・タイム コンピ研部室を乗っ取り、夏休みの間に行った工事でつなげて、小型のヤクザの事務所くらいに広くなったSOS団部室で、長門有希と俺は、SOS団活動方針秘密会議を開いていた。 俺はいつもの団長席で、パソコンに向かいながら、深海にひっそりと住む、静かなチョウチンアンコウのごとく、黙々と本を読んでいる長門に声をかける。 「なあ、長門、ハルヒがまたこの八月を繰り返しちまうってことはないか?」 「ない」 お気に入りの、ふかふかの椅子に深く腰掛けた長門有希は、読んでいる本から目を上げずに即答した。今日読んでいるのは、ハインラインのSF小説のようだ。有名な、猫の登場するやつである。 「現在、涼宮ハルヒの精神状態は、非常に安定している……あとは、私たちが適切なイベントを用意すればよいだけ」 そうだな。そう願いたいもんだ。 俺は、再びパソコンとの不毛な睨めっこに戻った。早いところ、この『SOS団夏休み特別行事予定表』を仕上げてしまいたい。 予定表のトップにあるのは、もちろん明日の市民プールだ。 長門が、パラとページをめくった。 ……おそらく、そのとき既に、長門は二週間後について静かに考えていた、と今にして思う。 ……………… 市民プール、夏祭り、虫取りとアルバイト、天体観測、バッティングセンター、花火大会、肝試しなどなど。夏野菜のサラダのように、盛りだくさんのSOS団の行事が、その後二週間に渡って、滞りなく行われた。 特筆すべきことはないな。 最終日には、俺の家で皆でわいわいと宿題を終わらせ、ハルヒも十二分にこの夏を満喫したようだった。 俺は、やれやれとベッドにもぐりこみ、次の瞬間には既に眠りの国に落下していた。 こうして、SOS団の夏は終わった。 長門のメッセージのように簡潔に、繰り返しもなく。 だから、ここからは、後日談になるのだろう。 やけに騒がしい蝉の声で、俺は眠りの世界から連れ戻された。 やれやれ、九月に入って、少しは奴らも大人しくなるだろうと思っていたのにな。蝉取りでキャッチ・アンド・リリースしたのが間違いだったのかも知れない。 世界の終わりに向かってわめきたてる蝉の鳴き声を聞きながら、俺はゆっくりと目を擦る。今日は、どうやら妹の目覚ましダイブはないみたいだ。ああ、今日から新学期か……。 そのときになって、ようやく、俺の寝ぼけた脳みそは、自分を取り巻く異常に気が付いた。 ここは俺の部屋じゃない。 光が朝の光じゃない。 俺が寝ているのがベッドじゃない。 ……そして、俺は一人で寝ていない。 「……んん」 横で寝ている少女が、身じろぎして寝返りをうつ。かかっていた薄い布団がずれて、その小ぶりな胸が露になった。 まじまじとそのピンクの突起物――じゃなくて、そいつの安らかな寝顔を眺めて、俺はやがて、地面を突き抜けてブラジルまで届きそうなほど、深く深く溜息を吐き出した。 OK――、落ち着こう、素数を数えろよ。 ――と、俺の携帯の着信音が、突然マンションの一室に鳴り響いた。 俺は慌てて電話をとる。電話をかけてきたのは……やっぱり涼宮ハルヒだ。 『今日、あんたヒマでしょ』 おいおい、いつかどこかで聞いたぜ、このセリフ。 『二時ジャストに駅前に全員集合だから。ちゃんと来なさいよ。……そうそう、持参物があったわ』 ハルヒはマシンガンのような早口で、俺に持ってくるべきものを告げた。 『それとあんたは自転車で来ること。それから充分なお金ね。おーばー♪』 切れた。 「……でんわ?」 長門有希が、裸のまま、目を擦りながらゆっくりと起き上がった。 『ループ・タイム番外編――エンドレス・エイト――』 「遅いわよ、キョン、有希!」 頭に、黄色いリボンつきのカチューシャをつけたハルヒが、満面の笑みを浮かべて、俺と長門に指を突きつけた。手にはビニールバッグをブンブンと振り回している。 「やあ、お久しぶりです。長門さんとご一緒に、どこかへ旅行でも行かれていたのですか?」 古泉一樹は、歯ブラシのCMに登場するような、真っ白い歯を見せて、実に爽やかに微笑んだ。その横には、手にバスケットを提げた朝比奈さんが、ニコニコと笑っている。 ちょうど、一年前、終わらない八月に見た光景そのままだ……ただ一人を除いて。 長門有希は、俺の自転車の荷台から、トンと降りると、すこし恥ずかしそうに、俺の腕に自分の腕を巻きつけた。 「それじゃあ、全員そろったから出発!そうそう、自転車で行くわよ。みくるちゃん、古泉くんに乗せてもらいなさい。有希はキョンのに乗って」 おい、ハルヒ、お前はどうするんだ?まさか、三人乗りとか……恐怖と苦痛の思い出がよみがえる。 「あたしはタクシー拾っていくわよ。だから、キョン、お金頂戴」 ハルヒはまったく悪びれることもなく手を出した。だったら団員みんなで乗って割り勘しろよ。そっちの方が安上がりだろ。 「んー、そうねえ……じゃ、古泉くん、みくるちゃん、タクシー乗りましょ」 「では、僕の知り合いに、たまたまタクシーの運転手が居ますので、そちらを……」 古泉が携帯を取り出してタクシーを呼ぶ。そんなたまたま知り合いにタクシーの運転手がいたところで、勝手に呼びつけられるのか大いに疑問だ。まあ、おそらく、新川さんあたりが運転手だろうな。 「待てよハルヒ、俺と長門はどうなるんだ?」 あら、なに言ってるのかしらこのマヌケ、といった顔で、ハルヒはこっちを見た。 「バカねえ、あたしだって、青春の一コマを邪魔するほど野暮じゃないわよ。有希、たっぷり甘えてきなさいねー」 ハルヒは、まるで内気な妹を可愛がるように、俺の腕に抱きついている長門の頭を、目を細めてなでなでする。 「ふぁ、タクシーきましたぁ……あ、新川さん」 「お久しぶりでございます、涼宮さま、朝比奈さま」 予想通り、新川さんが運転するタクシーが、ハルヒと古泉と朝比奈さんを連れ去り、俺と長門だけが呆然と後に残された。 はあ、何がどうなっているんだか……。 「……行くか?長門」 コク、と長門は頷いて、また荷台に横座りになる。俺がペダルを踏み込むと、慌ててぎゅっと腰に手をまわし、背中におでこを乗せた。 やれやれ、心躍るシチュエーションではあるのだけど。 長門が世界改変したんだろうな、たぶん。 俺はまた深い溜息を吐き出した。そう考えると、いろいろなことの辻褄があう。 たとえば、ポニーテールじゃなく、黄色いカチューシャをつけたハルヒ。この世界で、長門有希が俺の恋人だとしたら、ポニーテールのハルヒ……つまり、俺の恋人としてのハルヒは邪魔だろう、やっぱり。 ちょうど、いつかの世界改変で、ハルヒと古泉を別の学校に飛ばしてしまったように。 長門有希の望む世界、か。 俺はぼんやりと考える。 宇宙人でも、ヒューマノイド型インターフェイスでもなく、普通の人間……少しだけ無口で内気な、文学少女の長門有希。 俺の恋人で、自転車の二人乗りをすると、そっと背中に頭をつける長門。 確かに、長門有希は幸せそうだったさ……だが……。 長門、本当にこの世界が望みなのか?いままで居た世界の全てを捨てて、この世界にずっと居たいと思っているのか? 「どうしました?なにかお悩みのようですが……」 俺が顔を上げると、目の前には、古泉のいつもどおりのにやけた面があった。 「……ああ、悩ましいよ」 お前の所属している「機関」の連中は、どうしてああもネジが一本飛んでる変人ばかりなんだ? 俺は、50メートルプールをあごでしゃくる。 きわどい競泳水着で腰をくねらせ、気持ち悪いぐらいに筋肉質な新川さんがジャリを掻き分けつつ、バタフライで泳いでいた。 ……新川さん、お仕事はいいんですか? ざぱりとプールサイドに上がって、爽やかにゴーグルを外した新川さんに、俺は尋ねる。 「タクシーの運転手とは世を忍ぶ仮の姿……本当は無職でございます」 やれやれ。 ……………… プールから帰ると、例によってファミレスでハルヒの夏休み計画表を見せられ、古泉が盆踊りの会場を探しておくと宣言した。やれやれ、一年前とまったく同じ流れだ。 ……ここまで同じだと、なんだか、長門の世界改変じゃなくて、ハルヒがループを創っちまったように思えてくるな。 「じゃ、みんな、また明日ね。キョン、ちゃんと有希を送って行きなさいよ!!」 涼宮ハルヒはそういいのこすと、ひらひら手を振って駆け出した。古泉と朝比奈さんも、俺と長門に手を振って帰っていく。 後には、俺と長門と新川さんが残された。 「……人の一生は、実に儚いものです」 新川さん、その人生訓話は今度聞きますから、とりあえず帰ってください。 なんとも寂しそうに新川さんが自前のタクシーで去り、ようやく俺と長門は二人になった。 「帰るか?」 長門有希が、江戸時代のからくり人形のように、コックリと頷いた。 ……………… 「ときどき、差し入れをしてくれて、一緒にご飯を食べた……それぐらい」 朝倉涼子について何か知っていることはないか、と尋ねると、そう長門は答えた。さほど親しいって感じでもなさそうだ。 さっきあったことは、とても長門には言えないな。 俺のスペックの低い脳内に、さきほど聞いた朝倉涼子の声がエコーのように響く。 『残念だけど、あなたを殺すわけにはいかないの』 やれやれ……俺の本能的な危機回避能力は、退化の過程の中で、とっくに壊滅しているみたいだ。今にして思えば、少しぐらい勘が働いてもよさそうなもんだった。 俺は軽く溜息をつく。 こちらは、長門有希のマンションの一室である。エプロン姿の長門は、戦後の炊き出しのごとく大量に米を炊いて、ただ今、カレー作りの真っ最中だ。 ちなみに、家に、夕食を食べてくるとの旨を伝える電話をしたところ、二週間は、長門の部屋に泊まることになっているはずだと、マジな声で母親に言われた。 あんた、高校生の息子が、女の子の部屋に、二週間も泊まりこんで気にならんのか!? 『キョンくーん、有希ちゃんと、まだけっこんしないのー?』 妹の、五歳児のごとく無邪気な質問である。ああ、俺と長門の関係が、家族にはどう認知されているのか、おおよそ分かったよ。 『長門さんは、あなた宛にメッセージを残したわ……本に挟まっているはずだから、探してみたら?』 「長門……本、見せてもらってもいいか?」 「いい」 俺は、長く厳しい冬を待つ、まめなリスのごとく、長門が家に溜め込んである大量の本を、片っ端からめくっていった。 ちなみに、この世界の長門の部屋には、ちゃんとしっかりした本棚がある。文芸部室で見た本が、長門らしくきれいに整頓されて収まっていた。 やがて、一冊のSFの文庫本――ああ、これ、ハインラインの『夏への扉』か――の中ほどに、探していたものが見つかった。 長門有希特有の、きっちりとした楷書体の字が書かれた、一枚の紙。俺がそれを見ようとしたとき―― 「ごはん」 エプロンをつけた長門が、キッチンから顔を出した。俺は慌てて、ポケットに紙をしまう。 あっちの世界の長門有希からのメッセージは、飯の後でゆっくり読むことにしよう。 ……………… すこし、回想シーン。 長門をマンションに送り届け、マンションの部屋で、長門が入れてくれた熱いお茶を、一服する。 「……夕食の準備」 長門がキッチンに向かう。その背中に、俺はちょっと家に電話してくるといって、長門の家から出た。 もちろんただの口実だ。当然のことだが、家への電話ぐらい、別に長門の部屋でもできる。 俺は、まっすぐ、そいつの家に向かった。同じマンションの、505号室。 皆で市民プールに行ったときから、ずっと思っていた。 ――やっぱり、こいつがいないSOS団は、本物のSOS団に思えないんだ、俺には。 長門は、確かにこいつをSOS団から消した。だが、この世界から完全に抹消してしまうとは、俺には絶対に思えない。 だから……ここにいるはずだ。単なる、俺のクラスメイトとして。 俺は、505号室のインターホンをぐっと押しこんだ。 ……今にして思えば、地雷原にはだしで突っ込むぐらいに軽率だった。 「………」 ガチャ……一瞬の間の後、ドアが開く。 やれやれ、居たか。 「あら、キョンくん。こんばんは」 朝倉涼子がドアから笑顔を覗かせている。 「わざわざ来てくれたの?……ありがと、キョンくん」 朝倉は、にっこりと微笑む……ひょっとして、こいつは記憶を改竄されていないのか? 「実は、お前にちょっと聞きたいことがあって――」 「うん、それ、無理」 ―――!! いつか聞いたことがあるセリフに、一気に血の気が引いた。違う、やばい。こいつは、俺と一緒にこの夏を過ごした朝倉涼子じゃない。 「あら、バレたかな?じゃあ、死んで」 瞬間、朝倉が右手に隠し持ったサバイバル・ナイフが、一閃、俺に突き出された。 ……………… 「冗談よ」 トン、俺の前にお茶を出しながら、朝倉は言った。まったくつまらないし笑えないぞ、正直言って。 「残念だけど、あなたを殺すわけにはいかないの……私には、最優先コードで、あなたの生命活動の維持が命令されているから」 朝倉はお茶をすすりながら、どこかの殺人狂の奇術師のように、器用に片手でくるくるとナイフを回した。 「やっぱり、お前は統合思念体の作ったインターフェイスなのか?……というか、その自覚があるのか?」 「もちろん」 朝倉は、カタンと湯のみを置く。 「いつか言ったでしょ。私は長門さんのバックアップだって。長門さんが何らかの機能停止をしたとき、必ず緊急プログラムとして私が再構築されるの。覚えてるでしょ?長門さんが前に世界改変した時のこと」 忘れるかよ。脳に刻まれたというより、実際に体に、ぐりぐりとナイフで刻まれた記憶である。 「で、今回は、長門さんが、あなたを助けるように、予め私に命令を下したの。前回の改変で、緊急プログラムの存在に気が付いたのね、きっと。まあ、優先順位から言えば、涼宮さんの観察が上だけど」 なるほど……やれやれ。 「それで、今回の騒ぎは、一体なんなんだ?記憶を維持しているお前なら分かっているはずだろ、教えてくれ」 「うん、それ、無理」 しゅっと朝倉が手首を返すと、ナイフがいつのまにか二本になった。左手に持ち変えるときにそれは三本に分裂し、朝倉は、涼やかな顔で、ナイフで、ポンポンと危険きわまりないジャグリングを始める。 「それも命令で規制されているわ。個別のインターフェイスは同期しないから、そもそも長門さんの考えの全部が分かるわけでもないしね」 長門、一体、俺に何を隠しているんだ……?また分からないことが増えちまった。 「ねえ、キョンくん」 ぱし、ぱし、ぱし、と落ちてくるナイフを受け止めた朝倉が、俺の顔を覗きこんだ。 「あたしのこと、怖くないの?」 「怖い」 0.5秒で俺は即答した。サバイバル・ナイフを持ってるんだ、怖いに決まってんだろ、ファイナル・アンサー。 「そうじゃなくて。今、あなたは、私もSOS団のメンバーにしているでしょ?なんでそんなことができるのかな?自分の命を狙った相手じゃない」 「……さあな。有機生命体は、けっこう意味不明な行動ができるんだよ」 朝倉涼子は、ふと、やけに真剣な表情になって、興味ある研究対象を見つけた科学者のように、まじまじと俺を見つめる。やがて、ふうと息を吐いた。 「前に、有機生命体の、死の概念がよく分からないって言ったよね?」 ああ。そういえば、いつかそんなこと言ってたな。 「最近、なんとなく分かるの」 「………」 「あたしの中にメモリがあるのよ……あたしが、キョンくんや涼宮さんたちと一緒に、不思議なことを探したり、野球大会に出たり、孤島に合宿に行ったりね。そんなメモリと、認識にバイアスをかけるエラーが、一緒になってるの」 記憶と感情……と、一般的な有機生命体なら呼ぶだろうな。 「それが全部、消滅しちゃうこと……それが有機生命体にとっての、死なんじゃないかしら?そんな風に思うのよ……ときどき恐怖さえ感じたわ。お笑いぐさだけど」 朝倉涼子はすっと立ち上がった。 「そうそう、最後に……長門さんからのメッセージがあるわ。彼女の部屋にある本の一冊に挟まっているから、頑張って探してね」 「……分かった」 「長門さんに優しくしてあげて。彼女、そのためにこの世界にきたんでしょう?」 ああ……たぶんな。 俺はお茶の礼を言って、朝倉涼子の家を出た。 ドアから出るとき、唐突に朝倉が、俺の腕をぐっと掴んだ。そのまま俺を引き寄せ、軽くキスをする。 「……なんのつもりだ?」 「有機生命体の、恋の概念が、まだよく分からないの……SOS団にいる私は、あなたに恋していたはずなんだけど」 やっぱり今の私には分からないな、と言って、朝倉涼子はドアを閉めた。 ……回想終わり。 …………… 長門特製のカレー(といっても、もちろんレトルトだが)を腹いっぱい食べ、長門が食器を洗っている間に、俺はあっちの世界の長門有希が送ってきたメッセージを取り出して読んだ。 ――どういうことだ……? きっちりとした長門の楷書体の文章。俺に安心しろと繰り返す内容。だが…… さっきからいやないやな予感が、頭の中を時速120キロで掠めているのが、どうしても止まらない。 エプロンをつけて、食器を洗っている長門有希の背中を眺める。心なしか、いつもより、その後姿は小さく見えた。 『 何も心配しないで欲しい。あなたに危害はないから。あなたに全てを説明できないことを謝りたい。 今回は、緊急脱出プログラムは存在しない。でも、あなたは元の世界に戻ることができる。平気。 できれば――そこにいる私に、やさしくしてあげて。その私は、何も知らないから。 二週間で全て終わる 長門有希 』 食器を洗い終わった長門有希が、頬を染めながら、うつむきがちに、俺と一緒に風呂に入りたいと言った。なんだか、呆然としたまま、俺は頷く。 長門は、恥ずかしそうに服を脱いだ。ごしごしと俺の背中を流すと、これまた恥ずかしそうに俺に体を洗わせて、一緒に、二人だと体が密着してしまう、やや窮屈な風呂につかった。 『二週間で全て終わる』 長門のメッセージの最後には、簡潔に、ただその一言だけが書かれていた。 長門――何が終わるんだ? なぜ、自分の記憶を消した? 長門、頼むから教えてほしい。何がお前に起きた?何がお前に起きようとしている? ……統合思念体は、あと二週間で、お前を処分しようとしているのか? ……………… 「……んっ……んっ……ああっ……」 俺の上に跨った長門有希は、今にも泣き出しそうな、切ない喘ぎ声を上げた。細くて雪のように白い華奢な体が、布団に横たわった俺の上で、激しく腰を動かす。 長門が達する瞬間、俺は長門の体を強く強く抱きしめていた。長門が、体を激しく震わせ、ひときわ大きく喘いだ。 「……んああああっ!」 長門は、ビクビクと、俺の腕の中で、快感に悶えている。 やがて、俺が抱きしめているうちに、長門はすうすうと寝息を立てて、寝てしまった。そっと体を離し、裸の長門に布団をかける。 ゴムを棄て、ぼんやりとした頭でシャワーを浴びる。もともと空っぽの頭の中が、さらに空っぽになってしまったみたいで、上手くものが考えられなかった。 ふと、部屋にあるドアの、どれか一つが、夏に通じてると信じて、『夏への扉』を捜し求める猫のことが頭に浮かんだ。 長門……お前は夏への扉を見つけ……俺を一緒に連れてきたのか? 翌朝、完全に睡眠不足の俺をハンマーの一撃のように叩き起こしたのは、例によってハルヒからの呼び出しの電話だった。皆で浴衣を買いに行くと言う。 ああ、そういえば、一年前も、浴衣を買いに行った。そして、夏祭りでは縁日を巡ったはずだ。 低血圧なのか、寝ぼけ眼の長門を起こし、急いで服を着せ、また駅まで二人乗りの自転車で向かう。 『長門さんに優しくしてあげて』 ……言われるまでもないさ、朝倉。 決して認めたくはないが、もしかしたら、この二週間が長門有希と過ごす最期になるのかもしれないんだ。 『彼女……そのためにこの世界に来たんでしょう?』 そうだ、おそらく……俺とこうして過ごすために。 ちょん、ちょんと、長門が俺の服を引っ張った。 「……へんじゃ、ない?」 幾何学模様の浴衣姿に着替えた長門有希は、頬を少し染めて俺をじっと見上げていた。 「……よく似合ってるよ」 「こーら、このアホキョン!有希にちゃんと可愛いって言ってやりなさい!!」 パカーンとハルヒに頭を叩かれ、ようやく、俺はその言葉をごにょごにょと呟いた。もちろん、俺だって初めから可愛いと思っていたさ……ただ……ええい、ちょっと照れたんだよ、悪いか。 クス、と長門有希が微笑む。 ……………… 盆踊りの会場では縁日がセットになっていて、俺は長門有希と腕を組んで縁日を回ることになった。 「長門、なにか食べたいか?」 「……わたあめ」 よしよし。俺が綿アメを買って、長門有希に差し出すと、長門は、割り箸を手で受け取らずに、そのままそっと綿アメに口をつけた。 「いやあ、甘いですねえ、実に……いえ、綿アメが、ですよ」 古泉、あとでお前のケツにロケット花火をさしてやるよ。泣いて喜べ。 ハルヒや朝比奈さんにも、目いっぱいからかわれ、ひやかされながら、俺は、長門有希が食べ終わるまで、じっと綿アメを持っていた。 「……つぎは……りんごあめ」 やれやれ。 「ふふーん、ホント、甘いわねぇ、あら、りんごあめが、よ」 「ふえ、甘いですぅ……、あっ、いえ、その、りんごあめのことです」 「いやいや、実に甘いですねえ、ええ……おやおや、もちろん、りんごあめのことですよ?」 お前ら……覚えてろよ。 「つぎは、みずあめ……」 「………」 ……………… 夜……ハルヒの「せっかくだから」の一言に、俺たちは、自宅で爆弾を作る危ない中学生のように、安物の花火を大量に買いこんだ。 ハルヒが俺に向けてロケット花火を打ちまくり、逃げ惑う俺。あぶねーよ。あ、古泉の尻に刺さった。実にいい気味だ、ざまあみろ。 一方、朝比奈さんと長門は、線香花火を楽しんでいる。目を丸くする朝比奈さんと、じっと火花を見つめる長門有希。 線香花火が、はじめは威勢良くパチパチと火花を放ち、やがて、小さなオレンジの玉になって、ジジジ……と微かに震え、やがて、ポトリと地面におちる。 「……落ちちゃった……」 どこか、さびしげな、諦めたような口調で、ポソッと呟く長門に、なんだか、俺は腹の底の方が、すうっと冷たくなったような気がした。 長門の姿が、まるで線香花火のように、儚いものに見えたから。 『……人の一生は、夢のように儚いものです』 ……まさか、な。頭をぶんぶんと振って、新川さんの人生訓話を打ち払う。 夏祭りの夜は、そうしてゆっくりと更けていった。 ……とまあ、だいたいがこんな調子で、夏休み最後の二週間は、あっという間に過ぎていった。 虫取りでは、怖くて蝉が触れずに、長門は半べそをかいていたし、長門の住んでいるマンションの屋上で行った天体観測では、疲れていたのか、すぐに寝息を立てていた。 アルバイトでは、なぜかバニーガールの衣装で客引き、ハルヒの一存で、バイト代は長門のウサギさん衣装に化けちまった。真っ白な有希ウサギが、絶対的に可愛いからすべて許そう。 昼間はSOS団の活動で長門有希と一緒だった。 夜には長門と一緒に飯を食べた。ただし、途中から基本的に料理担当は俺に代わったがな。カレーだけ食っていると、肌がミカンみたいに黄色くなりそうだ。 夜は二人で抱き合って眠る。そんな繰り返しがずっと続いていた。 ……だが、こんな日々がいつまでも続くはずがない。 終わりは、刻一刻と迫っていた。 八月三十一日。 全国の小中学生が宿題に追われる夏休み最後の一日だ。ちなみに、昨晩、肝試しを終えたハルヒが、「明日は予備日ね」と宣言していたので、SOS団の活動はない。宿題なんてものをする気もさらさらない。 ひょっとしたら、俺と、「この世界の長門有希」の過ごす、最後の一日になるかもしれないからな。 「長門」 俺は、あいかわらず裸で寝ていた長門に声をかける。 「……天気もいいし、どこか出かけないか?どこがいい?どこに行きたい?」 長門は、マージャンの勝負どころで何を切るか悩むように、しばらく、切ったら血が出そうなほど真剣に考え込んでいたが、やがて、きっぱりと言った。 「図書館」 ……そう言うと思ってたよ、実のところ。 ……………… 長門と自転車で二人乗りしながら、市立図書館に向かう。 「長門……お前に言っておきたいことがあるんだ」 「なに?」 「この二週間、お前と一緒に居られて楽しかった。本当に楽しかったんだ……きっと、絶対に忘れることができない夏になると思う……長門、お前のことが――」 ガタッ 「おっと」 ちょっとした道路の段差で、自転車がガタンと揺れた。長門は、慌ててぎゅっと俺の体に回した腕に力を込める。 「…………」 なんだか、タイミングを外しちまって、言いにくくなったな。貝のように黙り込む俺に、後ろから抱きついている長門有希が、そっと呟いた。 「あなたが……だいすき」 やれやれ、ひよっている間に、先に言われちまった。 「……着いたよ」 俺は自転車を止めた。 ……………… ソファーに座って、長門のメッセージが入っていた、ハインラインの小説を読む俺。さすがにちょっと時代がかっていてアナクロだが……嫌いじゃないな、こういう話も。 長門有希は、俺の隣で、そっと俺の肩に頭を乗せて、これまた古いSFを読んでいる。金色の目で、色の浅黒い火星人の出てくるお話。もっとも、それを読んでいる宇宙人の肌は、雪のように真っ白だが。 「今読んでいるのは、どんな話なんだ?」 「火星に一人取り残された男が……死んだ妻と子供たちにそっくりの自動人形を作る話……」 「…………」 長門が、真剣な表情で読んでいるその話の最後は、果たしてハッピーエンドなのだろうか? それとも……。 そんなことを考えているうちに、ふと頭に浮かんできた 火星に、たったひとりだけ、ぽつんと残された、長門有希の寂しそうな姿。 どこにもつながっていない電話を取り上げて、誰も出るはずがないと分かっていながら、ダイヤルをゆっくりと回す長門。 ひとりで、暖炉の前に置いた椅子に腰掛けて、なんどもなんども読んだ本を、また読み返しながら、決して聞こえるはずのないノックの音に、じっと耳を澄ます。 こつん、と音がして、あわててドアを開けると、風に飛ばされた小石がひとつ、ドアを叩いた音だった……。 長門は、それでも、しばらくの間あたりを丹念に見回し、居るはずのない来訪者を探す。お茶の用意さえできている。あとは、客が来るだけなのに。 やがて、長門有希は諦める。そっと静かにドアを閉め、また集中できない読書に戻るだろう。今度は、ぴったりとドアに鍵をかけて……。 やめろ。 そんなのは寂しすぎる。 俺はゆっくりと頭を振って、想像を打ち消した。 ……だが、北高に入学して、俺たちに出会うまでは、きっと長門はそんな生活をしていたんだろう。 たった一人で、静かに本を読みながら。 ……………… 「帰ろうか」 「うん」 自転車を漕ぎ出すと、空は見事な夕焼けだった。雲が夕日に照らし出されて、燃えるように真っ赤に染まっている。 「……きれい」 俺も息をのんだ。こんなに見事な夕焼けを見たのは、一体いつ以来だろう? 長門のマンションに向かう間に、それは赤紫を経て、だんだん濃紺に近づいていく。そして、雲の隙間に、最初の星の光が瞬く。 この夏の、最後の日の光だった。ゆっくりとそれは建物の群れに遮られ、やがて、ふっと消えた。 ……………… 久々に、長門にお願いして、特性のカレーを振舞ってもらった。腕まくりして作った、長門有希渾身の――レトルトカレーである、もちろん。 当然茹でるだけのレトルトであるため、長門の気合は、カレーにではなく、空中で三回転半して、キャベツの千切りとご飯の圧倒的な量となって着地した。十点満点、二人で食えるかよ、この量。 ふと、あることを思いついた。思い付きを長門に話すと、長門もコックリと頷いて賛同してくれた。 「もしもし……ああ、もう、夕飯食ったか?……よかったら、長門の作ったカレー食べないか?……あと、ナイフは持ってくんな」 『もう。持っていかないわよ、そんなの!』 十分後、にこにこと笑う朝倉涼子が現れた。手に持っているのは、大型のサバイバルナイフ……ではない。よかった。 「食後にたべようと思って……夏だもの、ね」 実に見事な、大玉のスイカだ。 三人の夕食……考えて見れば、変なメンバーだ。宇宙人が二人と、地球人がひとり……暗殺者とそのターゲットとターゲットの命を守った少女が、仲良くテーブルを囲んでカレーを食べている。 だが、こんな非日常的な日常こそ、俺が求めたものじゃないか?……かつて、長門有希の作ったあの世界で、Enterキーを押し込んだ時に。 だから、自信を持っていえるのさ……本当に、本当に楽しい夕食だった。 夕食が済んでスイカを食べると、朝倉涼子は帰っていった。 玄関先まで送った俺に、朝倉涼子は、それまでの笑顔から、ふと真顔になる。 「今日の終わりに、何が起こるか分からないけど……ちゃんと、最後まで、長門さんの側にいてあげてね」 分かってるさ。 「じゃあね、キョンくん……また会えるといいわね」 ああ、さよなら、朝倉涼子。 ………………… 一緒に風呂を浴びた俺と長門は、ぼんやりと二人で麦茶を飲んでいたが、やがて、長門が、顔を赤くして、立ち上がった。 「……いこ」 ああ。俺は、長門の頭をクシャクシャと撫でる。長門有希はくすぐったそうに俯いている。 「よっと」 軽い長門を、お姫様だっこで抱えあげた。 「……な、なに……?」 とっさのことに、長門はわたわたと慌てていたが、やがて、俺の首に手をまわすと、恥ずかしそうにキスをした。 ………………… 布団の中では、普段の控えめさと代わって、長門有希は非常に積極的だった。 服を脱いで、俺の上に跨ると、艶かしく腰をくねらせ始める。白い胸板に膨らむ二つの控えめな胸が、それでも生き物のように揺れ動いた。 「……ふっ……はっ……あ……」 長門はしだいに汗を浮かべ、ぎゅっと俺の胸に自分の胸を合わせた。薄い胸を俺に押し付けながら、俺の唇を求め、その間中、腰を動かすスピードを少し上げる。 「ちゅっ……ちゅく……んふ……」 ぷは、と唇を離し、泣き出しそうなほどに潤んだ瞳で、長門有希はじっと俺を見つめた。 「……いまだけ、キョン、と呼んでもいい?」 ああ。好きなように呼んでくれ、長門。 「……私のことは、有希、と呼んで欲しい……」 「有希。俺のことは、お前の好きな呼び方で呼べばいいさ」 長門は、クリスマスプレゼントを貰った子供のように、嬉しそうにニッコリと笑うと、コクリと頷いた。 さらに、くねらせる長門の腰の動きが速くなり、比重の重い液体が、ゆっくりと俺の下半身に溜まっていくような感覚がしてくる。 「キョン……あなたのが、深く……深く私の中に入っている……とても……」 大丈夫か……痛くないか、有希? 「……平気……とても……幸せ」 俺の腰に溜まっていく液体は、次第に溢れ、こぼれそうになってくる。どうも、そろそろガマンがきかなくなりそうだな。発射の感覚が、引き伸ばされた向こうに待っている。 「そろそろ……いきそうだ」 「……いい……きて……あくっ……あううっ……あはあっ!……」 「有希、大好きだ……」 「うん……私も……あん、ああ、ああっ……!!」 長門がもらす切ない声に、俺の我慢の堤防は完全に決壊した。 「あんっ!……んああああああっ!!」 長門がひときわ大きな声で、泣き出すような喘ぎ声を漏らし、同時に頂点に達した俺は、長門の中に自分を解き放った。ビクビクと長門の腰が震え、きつく俺の息子を締め上げる。 「……はぁ……はぁ……」 ポト、と俺の胸に倒れこんだ長門有希は、本当に嬉しそうな……満足した表情を浮かべて、俺にやさしく微笑んだ。 「……あなたのことが……だいすき――」 ――その瞬間だった。 「……長門?」 突然、長門は、まるで、パチンとスイッチを切られた、電気仕掛けの人形のように、そのまま動かなくなった。 「おい、長門……」 まさか、まさか、まさか……。 「おい、嘘だろ、長門、長門!!」 汗が吹き出る。俺はガクガクと長門を揺さぶった。だが、長門は、突然に魂の消えてしまった人形のように、身じろぎ一つしなかった。 「長門!!!」 俺の携帯電話が鳴る。一体誰からだ――? 『朝倉涼子』の表示が目に飛び込む。 「おい、朝倉、長門が動かなくなって――助けてくれ!!頼む!!」 『……うん、それ、無理。私の情報連結が解除され始めたわ……聞こえにくい?手がなくなるから、机に携帯を置いて話しているの』 ……情報連結の解除……朝倉が?……嘘だろ? 『このまま消えちゃうとしたら、すこし怖いな……また復元されると思うんだけど、ちょっと自信ないの。けっこう独断専行しちゃったからなあ。 もし、長門さんが起きたら、カレー、ありがとうって伝えてね……なんとなく、最期にキョンくんの声が聞きたくなったから』 「おい、待てよ、朝倉!!」 『そのまま喋ってて……口が消えても、耳は残ってると思うから……ねえ、これが死なの?』 朝倉の疑問に答えられない。 「いいか、絶対お前は消させたりしない。ハルヒをたきつけてでも何でも、統合思念体を脅してでも、お前は死なせないから――」 『ありがとう……そうだ。ねえ、キョンくん、私、恋って何か分かった気が――』 朝倉の言葉は、そこでぷっつりと途切れた。 「朝倉!!おい、聞こえるか、朝倉っ!!」 それっきり、携帯電話からは、何も聞こえてこない。俺は片手に死んだ携帯をもち、片手に動かない長門を抱えていた。 長門有希は動かない。 ……どれだけ経っただろう?ずいぶん時間が経ったように思ったが、あるいは、たいした時間じゃなかったかもしれない。 ガラ、と後ろで、ふすまが開く音がした。あんなところにふすまがあったか? 「心配しなくていい。現在、凍結した記憶の解凍プログラムを実行しているだけ。じき、目覚める」 ……一体、何がどうなっている? 俺の後ろに立っているのは、紛れもなく、長門有希だった。セーラー服を着て、俺を見下ろしている。 長門は……世界改変をして、自分を二人創ったのか? 「違う」 じっと立ったまま、長門有希は答える。 「そこにいる私は、そもそも世界改変をしていない」 ………………… セーラー服姿の長門有希の説明に、俺は唖然とした。なんだ、そりゃあ。 「なんで、長門はそんなめんどくさいことをした?」 「あなたの恋人として、この夏を過ごしたかった……と推測される。同期は行っていないが、間違いなく、そう」 なぜ、そう思う? セーラー服を着た長門有希は、なんだかひどく無機質に感じる、無表情な目で、俺の目を見つめた。 「私が、今そう感じているから」 ……そうか。俺は、くしゃっと長門有希のくせっけを撫でた。長門はくすぐったそうに目を閉じる。 プールに一滴だけインクをたらしたように、淡い、感情のような何かが、長門の顔にさっと広がり、消えた。 「未来でまた会おうな……すこし待たせるかも知れないけれど」 「いい。時間は問題ではない……そろそろ完了する」 布団に寝ている、裸の長門が、ゆっくりと目を開く。 俺は、長門の顔を覗きこんだ。 長門有希はわずかに微笑んで、俺を見た。ああ、二週間ぶりに会う長門だ……間違いない。 「帰るか」 「……うん」 長門有希は、こっくりと頷いた。 ……………… 簡単に言えば、俺と長門は二人で時間遡行した、ということになる。それも、ハルヒがループを起こした、一年前の八月に。 『ここは、3124回目のシークエンス』 もちろん、その時間平面には、その時間の俺と長門がいる。この時間の長門は二週間待機、俺はその隣で、冷凍マグロのごとく、時間凍結されていたってわけだ。 情報操作されて、あることさえ気がつかなかった、開かずの部屋の中に寝ていた、ピクリとも動かない自分の姿を見たときは、ぞっとしたよ、まったく。 『なんだってそんなややこしいことを……』 俺はセーラー服の長門有希に聞いた。 『世界改変は、未来に非常に大きな影響を及ぼす。彼女は、それを回避しようとした』 それはなんとなくだが分かる気がする。前に長門が世界改変したとき、俺と朝比奈さん(大)がしゃかりきになって働く羽目になった。 『この二週間の間ならば、なにが起ころうとも、必ず、涼宮ハルヒの能力によってリセットされる。未来に影響はない。 彼女は、あなたと時間遡行し、周囲の人間の記憶に情報操作を行ったのち、自らも擬似記憶を作成、自分の本来の記憶は二週間の期限を設定して凍結した――』 ややこしすぎるぞ。 『あなたの、元の時間平面には、ちゃんと消えずに朝倉涼子も居る。安心して』 ……よかった。なによりだ……。 元の時間平面に戻ってきた俺と長門は、長門のマンションを出て、俺の家に向かって歩いていた。九月一日には、俺は自分のベッドで目覚めるはずだからな。 長門有希は、送っていくと言い張り、二人で、しんと静まり返った街をゆっくりと歩く。 「いくつか、聞いていいか?」 「……なに?」 街灯に照らされた長門の白い横顔が、こっちを向く。 「なんで、自分の記憶を消して、偽の記憶を入れるとか、手間のかかることをした?お前、それに合わせて、SOS団メンバーの記憶もいじっただろ」 さも当然のことのように、俺と長門は恋人になっていたからな。その上、長門は宇宙人でなく、普通の人間だった。 「一つは――私が、この私のままでは、あなたは恋人の振りをしてくれなかったと思うから。でも、あなたの記憶だけは、改変したくなかった」 もう一つは? 「宇宙人ではなく、普通の人間として、あなたと恋がしてみたかった――ただ、それだけ」 「…………」 俺は長門のくせっ毛を、くしゃくしゃと撫でた。 やれやれ、言いたいことは、なかなか言いたいときに出てこないものだな、まったくもっていまいましい。 「……それで、楽しかったか?」 「……うん」 長門有希は、顔を赤くして頷いた。 「二週間、ずっとあなたと一緒だった。あなたと一緒にご飯を食べた。あなたと沢山肌を触れ合わせた。沢山あなたの声を聞いた。沢山あなたとキスをした。沢山あなたとSEXした」 まあ、確かに。だが、それをそのまんま言うのは勘弁してくれ、こっちも赤面する。 「とても――素敵な、体験だった」 そう言って微笑んでいた長門は、ふと、心配そうな顔になって俺の顔を覗き込む。 「あなたは……怒っていない?急に、過去に連れて行かれて……」 「……いいや」 まあ、ちょっとはびっくりしたさ。いきなり何が起きたやら分からなかったからな。だが―― 「俺も楽しかった。もう一度行きたいぐらいだ……ありがとな、長門」 長門は、照れたように、俺の腕をぎゅっと掴んで、立ち止まった。 「目を、閉じて……」 俺は、少し戸惑いながらも、長門に言われた通りに目を閉じた。つまりまあ、キス――をされると思ったのさ。 はっきり言おう、一生の不覚だった。 なんだかいやな感覚が、すうっと体を通り抜ける。吐き気がこみ上げるこの感覚は……おいおい、時間酔い? まさか、まさか、まさか……。 目を開けると、ああ、昼間だ。長門のマンションの天井が見える。俺は布団に寝ていた。 「……ん……」 隣で寝返りをうつ、裸の長門有希。 ちくしょう、長門め、また過去につれてきやがった。 がら、とふすまを開けて、セーラー服の長門有希が入ってきた。 「……これは、3125回目のシークエンス。彼女が再び記憶を取り戻すのは、今から二週間後……頑張って」 それだけ淡々と言うと、長門は無慈悲にもパタンとふすまの向こうに消えた。 「おい、たのむ、長門、待ってくれ――」 と俺が叫ぶのも空しく、けたたましく俺の携帯が鳴りはじめる。 『今日、あんたヒマでしょ』 俺に構わず、早口で喋りまくるハルヒ。俺はなんとか途中でハルヒの早口を遮って、もうひとり追加で、市民プールに連れて行く、とハルヒに言った。 『え、でも、カナダに引越ししたんでしょ?』 夏休みの旅行かなんかで、二週間ばかし、こっちに戻っているんだ。そういうことにしておいてくれ。 電話を切る。 ……俺は溜息をついた。 やれやれ、まだまだ俺の夏休みは続きそうだ。長門有希と一緒の、長い長い休暇――。 終わらない八月――エンドレス・エイトが。 ……ちなみに、その後、何回、俺が長門によってこの八月に連れてこられたかは、ご想像にお任せする。 さて、朝倉涼子に電話するか。二時に、プールの道具をもって駅前に集合だ、と。まさかとは思うが、ナイフは持ってこないようにと、一応、釘を刺しておこう。 やがて、長門有希が、布団から裸の体をゆっくりと起こして、ごしごしと目をこする。 「……でんわ?」 おしまい 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 ループ・タイム
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4282.html
涼宮ハルヒ挙国一致内閣 国務大臣(敬称略) 内閣総理大臣 涼宮ハルヒ 内閣官房長官 古泉一樹 総務大臣 国木田 法務大臣 新川(内閣法制局長官兼務) 外務大臣兼沖縄及び北方対策担当大臣 喜緑江美里 財務大臣兼金融担当大臣 佐々木(内閣総理大臣臨時代理予定者第一位) 文部科学大臣 周防九曜 厚生労働大臣 朝比奈みくる 農林水産大臣 会長 経済産業大臣 鶴屋 国土交通大臣 藤原 環境大臣 谷口 防衛大臣 長門有希 国家公安委員会委員長 森園生 国務大臣以外の主な役職(敬称略) 内閣官房副長官(政務) 橘京子 内閣情報官兼内閣危機管理監兼内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当) 朝倉涼子 内閣広報官 妹 内閣広報室企画官 吉村美代子 内閣総理大臣秘書官(政務担当) 俺 ああ、なんというか、呉越同舟という言葉がぴったりな状況に陥ってしまった経緯については省略しよう。 まあ、要するに未曾有の国難ということで、対立していたSOS党と佐々木党が連立して挙国一致内閣を作ったということだ。 じゃあ、とりあえず、上から順番に説明しようか。 ハルヒが総理大臣なのは、当然だわな。何でも一番が好きなハルヒが二番以下の地位に甘んじるわけもない。SOS党は衆参両議院で第一党だから、その党首が総理大臣に選ばれるのは、普通に考えても当然だしな。 古泉は、どこまでいっても、ハルヒのフォロー役というわけだ。実質、この内閣を取り仕切っているのは、こいつということになる。ご苦労なことだ。 国木田は、総務大臣の役目を飄々とこなしている。昔からできるやつだったし、任せておいて問題はなかろう。 新川さんは、年齢構成が若すぎるこの内閣においては、御意見番的な存在だ。 喜緑さんは、あの薄い微笑で対外交渉をこなし、諸外国からはタフなネゴシエーターとして認識されている。 佐々木のところの括弧書きは、俗にいう「副総理」というやつだ。この国難の中で、財政金融をつかさどるのはかなりの激務だが、よくやってくれている。 九曜に文部科学大臣を任せるのは、日本の将来を担う子供たちのためを思うとおおいに不安なのだが……。教育行政が滞りなく遂行されることを祈るばかりだ。 朝比奈さんは、まさに適役だと思うね。ただ存在しているだけで、国民の福利厚生に絶大なる効果がありそうだ。 会長さん(俺はいまだに彼の本名を知らん。みんな会長って呼ぶしな)は、生徒会長時代に培った実務能力で、農林水産大臣の職務を難なくこなしている。 財界の重鎮である鶴屋さんは、まさに適材適所といったところ。あの明るい振る舞いで、日本の景気も明るくしてくれそうだ。 藤原とは個人的にはそりが合わんが、この国難の中ではそんなこともいってられん。嫌味なやつだが、仕事は真面目にこなす。ただ、協調性が足りないのが問題だわな。国土交通省は防災担当機関でもあるから、いざというときは他省庁との連携が重要なんだがなぁ。 なんで谷口が大臣なんぞになれたのか。まあ、ハルヒの気まぐれなんだろうが。環境行政が停滞しないことを祈る。 長門が防衛大臣を担う限り、日本の国防は安泰だ。ひたすらに頼もしい。ただ、仕事をさっさとすませて、国会図書館によく出没するという噂が絶えない。 森さんは、警察組織のトップ。彼女がにらみをきかせれば、日本の治安は安泰だぜ。一方で、「機関」を通じて裏社会も仕切っているという黒い噂が聞こえてきたりも……。 橘京子は、古泉と一緒に内閣を取り仕切っている。SOS党と佐々木党の呉越同舟状態をうまく切り盛りしていくためには、この二人の連携は非常に重要だ。だから、佐々木を異常なまでに持ち上げて、ハルヒの機嫌を損ねるのはやめてほしいのだが。 朝倉涼子は、内閣官房の中では、古泉、橘に次ぐ相当な実力者である。情報・危機管理・安全保障を一手に握ってるからな。本人は防衛大臣をやりたがってたんだが、暴走して他国に戦争でも吹っかけられたら困るので、裏方に収まった経緯がある。 最近朝比奈さんにそっくりになってきた俺の妹は、内閣広報官。これが意外に天職だったらしく、毎日楽しそうに仕事をしている。 ミヨキチは、妹の補佐役といったところだ。妹と仲良くやっているようで、大変結構なことである。 で、俺はハルヒの秘書官というわけだ。ハルヒに振り回される雑用係というポジションは、どこにいっても変わらないものらしい。まったく、やれやれだ。 首相官邸。 「佐々木さんが、涼宮さんに使われる立場なんてありえないのです。佐々木さんこそが首相にふさわしいのです」 「また蒸し返すんですか、あなたは」 橘京子と古泉一樹が、また口論している。 ここ最近、すっかりお馴染みになってしまった光景で、もはや口をはさもうとする者はいなかった。 「第二党が何をいったって、しょせんは負け惜しみですよ」 「今度の選挙では、必ず勝って見せるのです」 橘京子は、ほおを膨らませて不満顔だ。 「せいぜい、頑張ってください。それよりも、例の件、佐々木党内の取りまとめはしてくれたんでしょうね?」 「もちろんです」 国家公安委員会・警察庁。 森園生は、極秘とスタンプが押された報告書を読んでいた。日本国内を跳梁跋扈する国外の諜報員を「非合法に処理」した記録である。昔はスパイ天国などといわれた日本国であるが、森園生が陣頭指揮をとって対策を進めた結果、状況はだいぶ改善されつつあった。 もう一枚の紙を取り上げる。こちらは何もスタンプは押されてないが、極秘文書には違いなかった。なぜなら、それは「機関」の文書だから。 TFEIの動向。天蓋領域の端末には変化は見られないが、情報統合思念体の端末は増員され、政府組織の中に潜入していた。いつでも政府を乗っ取れる体制でありながら、彼女たちは何もしようとしない。観測任務を第一とする態度は不変である。 現在、政府を乗っ取っている立場である「機関」と橘京子の組織としては、TFEIたちのそのような態度は不気味ですらあった。 政府の国防・外交・危機管理を押さえているTFEIトップスリー、長門有希、喜緑江美里、朝倉涼子ですら、人間レベルでなしうる以上のことをしようとはしていない。そして、そのレベルですら完璧人間に近いのだから、文句のつけようもないのだ。 森園生は、二つの文書を丸めて灰皿に置くとライターで火をつけた。情報流出を防ぐ最も手っ取り早い方法だ。 「宇宙人たちは不干渉ということね。なら、未来人たちはどうかしら……?」 そのつぶやきを耳にした者は、誰もいなかった。 厚生労働省。 真面目に書類仕事をこなしている朝比奈みくるのもとに、藤原がやってきた。 彼は、入ってきた途端に盗聴防止装置を稼動させると、口を開いた。 「あんたは、このまま状況を座視してるつもりか?」 「当然でしょ。介入は許可されてないわ。藤原くんだって同じじゃないかしら?」 「何百万人もの人間が犠牲になるんだぞ。それを黙って見てるつもりか?」 朝比奈みくるは、簡易シミュレーターを取り出し稼動させた。 無数の曲線と数式と記号で構成された光の三次元樹形図が空中に展開される。 「実際、それを阻止しようと思えば、介入しなければならない時点は1249箇所。二人だけじゃ、手に負えないわよ。あからさまな規定事項破壊行為だし、介入が全部終わる前に私たちが始末されちゃうわ」 朝比奈みくるは、簡易シミュレーターをポケットにしまった。 光の樹形図が消え去る。 「あるべき未来を守るためには仕方ないわよ」 「そんな未来なんぞ糞食らえだ」 「藤原くんだって分かってるはずでしょ。私たちはこの悪しき世界を守るために存在する悪党だってことは」 「……」 藤原の顔が渋面を形作る。 「それが嫌なら、未来に帰って組織を抜けることね」 国立国会図書館。 読書にいそしんでいた長門有希のもとに、喜緑江美里と朝倉涼子がやってきた。二人とも半ステルスモード。図書館という空間に同化している長門有希はともかく、二人はこのような場所では目立ちすぎるからだ。 長門有希も、半ステルスモードに移行した。 「大規模な情報操作をしない限り、戦争は不可避。その旨は、既に報告済みである」 「私も同じです」 「私も同じよ。三人とも意見が一致するなんて、つまんないわね」 「情報統合思念体からの指令は、観測の継続。積極的な干渉の禁止、つまりは、不干渉原則の維持である」 「穏健派はしぶしぶ同意したみたいですけどね。戦況が悪化した場合に、涼宮ハルヒの力が暴走して危険を招くことを懸念しているようです」 「その方が情報爆発を観測できていいじゃないの」 朝倉涼子はあっけらかんとそう発言した。 「主流派は、今のところ急進派と同意見。ただし、情報統合思念体に危険が及ぶことになれば、穏健派とともに阻止することになるだろう。むしろ、気になるのは天蓋領域の動向」 「周防九曜は、相変わらずのようです。あちらも、不干渉という点ではこちらと変わらないのではありませんか。むしろ、未来人の方が干渉してくる可能性は高いと思いますけど」 「戦争の発生自体は、彼女たちにとっても規定事項であると思われる。そうでなければ、そろそろ動きがないとおかしい」 経済産業省。 鶴屋大臣は、いろんな方面に電話をかけまくっていた。 「……戦争ともなれば鉄鋼の増産は不可欠だからねっ。……生産ライン増強の補助金? いやぁ、お国の財政が厳しくてねぇ。……あっ、そんなこと言っちゃっていいのかなぁ? あのことをバラしちゃうよっ。……うん、理解してくれて助かるにょろ。じゃあ」 電話を置き、次の話し相手の電話番号を確認する。 「ええっと、次は、○○商事だったかな?」 鶴屋大臣の脅迫電話は、その日一日中続いていたという。 首相官邸。 「ああもう! 今日もくだらない仕事ばっかりだったわね!」 「仕方ないだろ。一国の首相ともなれば避けられない仕事はいくらでもあるさ」 俺は、文句たれるハルヒをなだめる役目だ。この役目は昔から俺のもので、いまだに免れることができてなく、おそらく将来もずっと続くだろうと思われた。 なんたって、俺は、栄えあるSOS党党首殿の夫だからな。今さら免れることは不可能だろうし、その気もない。 「ねぇ、キョン」 ハルヒは俺の背中に手を回して抱きついてきた。 「なんだ?」 「あたし、そろそろ子供ほしい」 「いきなり何言い出すんだ、おまえは」 「いや?」 ハルヒの表情は真剣そのものだった。 「あのなぁ、ハル……」 俺が言いかけた瞬間に、背後から声が降ってきた。 「涼宮内閣腐敗の現場、そんなところだね」 振り向くと、そこには佐々木がいた。 「腐敗といってもこの程度でね。申し訳ない。でも、部屋に入ってくるときはノックぐらいはしてくれよ」 「したよ。ただし、お二人とも自分たちの世界に没頭するあまり、ノックの音を認識することを脳が拒否していたようだけどね」 俺たちは二人して顔を赤くするしかなかった。 「何の用だ?」 「酷い言い方だね。僕は、ここ一週間ほとんど寝ないで、この『戦時財政計画』をまとめていたというのに。ねぎらいの言葉ぐらいほしいところだ」 佐々木は、右手に握っていた分厚い書類を、近くのテーブルの上に無造作に置いた。 「すまん。それはご苦労だったな」 「ありがとう。君にそう言ってもらえると、僕の苦労も報われるというものだ」 何を大げさなと思っていると、背後に寒気を感じて振り向いた。 ハルヒが、剣呑な視線で佐々木をにらんでいる。 「涼宮さん。そんな目でにらまないでよ。別にあなたの夫をとろうなんて思っちゃいないわ。私だって、その辺はわきまえているつもり。キョンは誰にだって優しい人、涼宮さんだって分かってるでしょ?」 「分かってるわよ!」 ハルヒは不機嫌な顔のままだ。 「涼宮さん。お互い、この内閣が続く間だけでも仲良くやりましょう」 ハルヒはしぶしぶ頷いた。 「なあ、佐々木」 「なんだい?」 「この内閣が終わったら、おまえたちはまた野党に戻るのか?」 「当然だよ。キョンだって分かってるはずだ。涼宮さんには、常に張り合える敵役が必要なんだ。今は外敵がいるからいいけど、それがなくなったら、張り合いがなくなる。ならば、その役目は僕が果たそう」 「でも……」 「僕自身も、そういう役回りを結構楽しんでるのでね。おかげで、涼宮さんと出会えてからの人生はとても充実している。では、馬に蹴られないうちに退散するとしよう」 佐々木は去りかけて、再びこちらを向いた。 「キョン。君が愛妻家なのは結構なことだが、自重してくれたまえよ。この未曾有の国難の時期に、首相閣下が産休では、国民に示しがつかない」 俺たちが何かをいう暇すら与えず、佐々木は足早に去っていった。 終わり